○吉国説明員 ただいま途中で入って参りまして、前からの経緯をよく承わりませんので、的確なお答えになるかどうか自信がございませんが、ただいまお尋ねの
趣旨は、現在こういう状況で
滞納がある
ために
財産差し押えがある、しかもその結果を見ると落札
決定による収入額が非常に少いのではないか、そこで、新しい
法律を
施行してそれが改善されると思っておるのか、同時に、それが改善されるということは中小企業に対する圧迫にならないという自信があるのか、こういう御
質問だったと存じますが、その点について若干御説明申し上、げます。
実は、ここに出ております数字でごらんいただきますと、確かに公売を決行して落札して
税金をとったという額は非常に少いわけでございます。なぜ少いかと申しますと、ここに上っておりますのは
財産差し押えでなく、
差し押えをした件数が出ておりますので、そこで、
差し押えを出して競売に至らずに税がとれたものが相当数あるわけでございます。最後まで公売を決行するというものはかなり制限されて参るということから、この数字がこれほど開いてくるという点が
一つございます。同時に、御承知のように、最近の国税
徴収は、二十六年以来改正いたしたのでありますが、その改正の傾向は、どちらかと申しますと、
国税徴収法においては、戦後の
滞納の実感に即しまして、できるだけ納税者の実情を勘案いたしまして、
滞納処分によって一途に
税金を取り立てるその
ために納税者に再起不能というふうな結果を与えないように、
税金を
徴収しながら同時に納税者の立場をも考えるという、いわば社会政策的な立法をしてきたように思います。ところが、それの
ために公売まで至らず
差し押えをしながらも
税金が相当入ってくるということが言えると思うのであります。同時に、そのことは、国とか地方公共団体というような財政力の大きいところにおいては、何年間かを通算して考えますと、そういう余裕のある、納税者の立場を考えた
徴収ができるわけでありますが、それは国から見た場合だけのことで、第三者である
債権者から見ると、国が
差し押えをして、放置して、第三者の介入を排除している、それで
税金の全きを得るということは非常に迷惑だということになるかと思います。同時に、考えようによりましては、そうやっておいてくれれば
債権者も
あとでとれるじゃないかということもありますが、
債権者は国ほど余裕のある財政力を持っておりませんから、今すぐ金が要るというにもかかわらず、国の方がそういういわばゆうちょうな態度をとっておっては困るというようなことから、今度の
法律もそこに
一つ大きな
意味があると思うのでございます。私どもも、その点で、おっしゃいましたような検討というのは、
一つは、こういうことをやったが
ために、税法が企図しておる、しかも納税者を再建させながら長く取り立てていくということが阻害されるかどうかということが
一つの問題であったのでございます。しかし、同時に、考えますと、
滞納税金が国だけの関係であって、ほかに
債権者がないという場合ならばそれはまだしもでございましょうが、ほかに
債権者があって、その
債権者と
滞納者である
債務者の財政力というものを考えてみたならば、逆に沸納音の方が豊かであるという場合があり得るのであります。そういう場合に、ただ国の
国税徴収法の立場だけでものを考えておったんではかえって問題がある。
債権者も中小企業者、
債務者も中小企業者であるという場合が大
部分である。いろいろ
滞納状況を調べますと、
滞納者に中小企業者が多いということは当然でございますが、同時に
債権者も相当苦しい者が多いということもございますので、その場合直ちに
債務者に対して
債権者の立場を考えて
徴収猶予を短かくしたりするということはこれまた行き過ぎでございますので、何かそこに
調整するものが入用である、たまたまこの
法律によってその両者の立場をよく見ながら
裁判所でそこを
調整できるということになれば、
債務者である中小企業者に無理がかかるということもある程度防げるであろう、
債権者である中小企業者の場合も十分
調整されるであろうという判断を実は持ったわけでございます。
税が取れなくなる、それよりももっと悪くなるかどうかという問題でございますが、これまた、今申し上げたことと重複するかもしれませんけれども、少くとも、
調整法が働きますと、
債権者の立場から言って
続行した方がいいという判断が出た場合にはそれによって公売が促進されますので、その促進の結果税が減るということは考えられない。もしかりに優先する抵当権があるにかかわらず税の
差し押えを先にしてとめておった場合があっても、それはしょせん最後にいってもとれないものでありますから、促進されたとしても同じことでございます。その
意味では、これによって税収が少くなるということはあり得ない。中小企業者の場合も、裁判官の良識によって、国税の
範囲に入ってこない第三者の
債権者である中小企業者の立場まで取り入れて判断ができる。そういう
意味においては、
徴収法の各種の
規定がかえって生きてくるんじゃなかろうか。こういう判断をいたしたわけでございます。