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1957-07-12 第26回国会 衆議院 文教委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年七月十二日(金曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 高村 坂彦君 理事 河野  正君       臼井 莊一君    大坪 保雄君       清瀬 一郎君    松野 頼三君       牧野 良三君    山口 好一君       櫻井 奎夫君    下川儀太郎君       高津 正道君    辻原 弘市君       野原  覺君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  委員外出席者         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局財務課長)  安嶋  彌君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務官         (社会教育局芸         術課長)    宇野 俊郎君         芸 術 院 長 高橋誠一郎君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 七月十二日  委員野依秀市君、根本龍太郎君及び赤城宗徳君  辞任につき、その補欠として臼井莊一君松野  頼三君及び大坪保雄君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員臼井莊一君松野頼三君及び大坪保雄君辞  任につき、その補欠として野依秀市君、根本龍  太郎君及び赤城宗徳君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  芸術院運営に関する件  佐賀県の教育問題に関する件     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  文教行政に関する調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 私は九日の第一日、十日の第二日、そして本日また日展の問題従って芸術院の問題について質問をするのでありますが、本日は高橋院長がおいで下さったので、私も日本美術の正しい発展のためにと思って聞いておるので、歯にきぬを着せずに何でも質問いたしますから、ざっくばらんなところを御答弁を願いたいのであります。  第一の質問、あなたは日本芸術院長であるとともに日展運営会の会長であり、かつ毎年その審査員長であります。そしてそれは多年続いておるのであります。美術国日本を自負するわが国において、このように多年にわたって一身に美術関係の重要な役職を兼務しておられるので、しかもそれは明治二十三年以来であります。そこでお尋ねするのでありますが、日本芸術院会員岩田藤七氏は、昨年の日展でその令息久利氏とともに親子二人そろって特選になったのであります。このときに父の藤七氏は重要な審査員の一人でありました。あなたは審査委員会委員長として、審査員の職にある者に特選を与えることを許容されたのでありますが、それは慣例があったのでしょうか、なかったことであるか。
  4. 高橋誠一郎

    高橋説明員 ただいまの岩田氏の問題でございまするが、岩田氏はガラス工芸によりまして会員となっておられるのでありますが、氏は他の分野におきまして、すなわち金工方面におきまして自分の腕をためしたいとお考えになったのでありまするか、出品を申し出られたのであります。これを許すべきやいなやということが運営委員会理事会の問題となったのでありまするが、金工方面に自信が十分あり、この点に出品するということであるならば、——ちょっと申し落しましたが、規定に反しまして二点出品いたしても差しつかえないだろう、一点はガラス、他は金工ということなら差しつかえないだろうということで、もし一点だけしか許されないということであるならば、自分は今回むしろガラスの方は取りやめにして金工だけを出品したい、こういう意向でございましたので、これを認めることにいたしたのであります。そしてこれが会員としてでなかったのでありまするので、当然審査の対象となりまして、審査委員会を通過いたし、やがて特選となったのでありまするが、これを特選にしたということにつきましては、その後におきましてなおいろいろ議論がありまして、決しかねておったのであります。本年からは会員特選たることを得ない、こういう規定を明らかにしたのでありまするが、昨年におきましてはこの規定がございませんために、同氏が金工におきまして特選となられたのでありまして、これは全く前例のないことと私は記憶いたしております。ただいま申しましたように、これにつきましてはずいぶん議論があったのでありまするが、先例なく、規定がないということでこれを認めたのでございます。  それからもう一つの点でありまするが、これはどうも親子関係を云々して親子とも特選になるとかなんとかいうようなことを制限すべきではないと考えておりまして、その問題には触れずにおりましたのであります。
  5. 高津正道

    高津委員 しかし審査員は全部の人が一品々々について共同の責任をみな持っておるわけで、その審査の中に入っておる人間のものを優先させるという扱いも、審査を通って入選させるということにも、自分発言権を持っており、特選にするということにも発言権を持っておる。それは非常に不合理じゃないでしょうか。
  6. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点につきましては、この審査会におきまして岩田氏は特に発言を差し控えておられたように聞いておりまするので、この点まで問題とすべきではないだろうというふうに考えておったのでございます。
  7. 高津正道

    高津委員 本人が入選させるか入選させないか、特選にするかしないか、その審議のときに発言を差し控えておったといっても、権限とか責任というようなものは同じものであって、そこが不合理だ。その際に発言をしなかっただけじゃしようがないと思うのです。やはり責任がある。重大なことだ。これを審査委員長のあなたがどうして許容されるのであろうか、これは考えてはどうかと差し戻すというようなお計らいがなかったのでありますが、それで私は聞いております。発言をしない、したという問題は小さい。やはり当人が入選を決定し、特選を与える責任者ですから、ずいぶん不合理な話じゃないですか。
  8. 高橋誠一郎

    高橋説明員 でございますので、昨年もこの点を問題といたしたのでありますが、先ほど述べましたように、先例なく、規定もないのでありますので、本年は審査員会決議にまかせておいて、さらにこの点を検討しようというので、今年になりましてさらにこの問題を取り上げ、先ほど申し上げましたような決議をいたした次第であります。
  9. 高津正道

    高津委員 まあ大体御意向はわかりました。  次に、日展はGHQの方から従来通り開くということはいけないということになったので、文部省から離れたような形をとるために、会員が一万円ずつ醵出して、それでもって始めたのだが、非常な黒字なので、ただちにおのおのの会員に一万円ずつ返してしまった。そうしてあとどんどん黒字が出るので、入場者一般映画館や劇場と同じように、さばを読む反対で、これは何と言えばいいか、数を少く報告して、資産を作って隠してあるといううわさが非常に高いのであります。そうしてその事実を知っておる人間は数が少い。それは高橋委員長辻永さんと、ほかに名前を言えばいよいよ気の毒でありますが、そこに来ておられる宇野芸術課長、そういうような少い人間が知っておる。その隠し財産を持っておるのは困るじゃないか、こういう会員があると、これに対して、今は黒字だけれども、赤字の場合にこれは役に立つのでやっておるのだ、こういう御答弁があり、そうしてまた、しかし脱税問題でも起きては困るでしょう、こういう言葉に対しては、出したところで税金でとられてしまうので、やはり非常の場合に備えておかねばならぬ、こういうことを言ったという会話のやりとりまで詳細に私は聞いておるのでありますが、動機はいいけれども、そういう含み資産というのか、隠し財産というのか、こういうことは非常におもしろくないと思うのでありますが、あなたはそういうことば全然ないとおっしゃいますか、まずここも尋ねておきます。
  10. 高橋誠一郎

    高橋説明員 全然ないとは決して申しませんのでありまするし、またただいまおっしゃったほど秘密にして、いわゆる隠し財産にしておいたというようなこともないと存じますのでありますが、非常な黒字と申しましても、終戦運営委員会に移りまして十一回開いております、その間に残りました金額は、正確なことをちょっと申し上げかねますが、六百何十万かだと記憶いたしております。それでこれは必ずしも巨額とは申すことができないのでありまして、一体にこれだけの黒字になっておりますならば、相当大きな金額と言われるかもしれないのでありますが、回を重ねまするその十一回の間に六百万ほど積み立てができたということは、それほど大きな余剰を残したとは申せないと存じます。それから終戦後非常に多くの入場者を得て好況であったというようなふうにも伝えられておりまするが、終戦直後に開きました日展は非常な不況であったのであります。そのころはまだ官展の性格を帯びておりまして、政府が心配をしてくれておったればこそよかったのでございまするが、ああいうようなことが運営会経営に移りまして後生じますならば重大なことでありますので、黒字のありました際に多少はこれを積み立てておくということがどうしても必要ではないかと考えておるのであります。これを出品者に割戻そうかというような考えも出たのでありまするが、出品者審査料を払いましたものの中で割合に少数であり、むしろ落選した人が多いのでありますから、それらの人にまで割戻さなければならぬ、こういうようなことをしまするよりも、これを積み立てておいて、いよいよ基礎が確実であるということになりましたならば、美術発展のためにこれを使うというような方がむしろいいのではないか。さしあたりこれまでは川合玉堂さんの御好意によりまして、玉堂さんの受けられます文化功労年金を年々御寄付下さいまして、約四十万、すぐれた美術品を購入することができたのでありまするが、玉堂さんがおなくなりになりますると、これもまず絶えるものと見なければならぬ。そういうような場合にこれをやめてしまうというようなことははなはだ遺憾であるので、何とか運営会の方で醵出できないものだろうか、こんなようなことも考えておりまするで、衆知を集めまして、いよいよ基礎が確実であり、これだけは使っていいということに相なりまするならば、その方向に向って支出いたしたいと思っております。  それから非常な秘密主義をとっておるというお話でございまするが、これは実は秘密といえば秘密でございまして、あまり公表はいたさなかったのであります。実ははなはだ申しにくいことでありまするが、どうも美術界には、早く申しますと、これに寄りすがろうとする、寄生しようとする、悪い言葉で申しますならば、たかろうとする者などがございまして、なかなかその申し出をことごとく拒絶するとか、その中で意義あるものを認めて寄付をするとかというような選択に迷わされる場合が多いのでありまして、これまでもそういうふうにして寄付を申し込まれまして、寄付いたしました場合もございますのでありますが、これがいろいろな方面から要求がありますると、運営会もたちかねる。ことに最も有意義な方面に使うということが妨げられないかというおそれがありまするので、でき得る限り一般には知られないようにしておきたい。ことに他の展覧会などは赤字になっておりまするものが多い際に、日展だけがこれだけの黒字になっておるというようなことでありまするというと、いろいろの要求が出はしないか、こういうようなことを考えましたので、あまり世間にこれが広がらないようにという注意はいたしておったのであります。
  11. 高津正道

    高津委員 公表しない隠した資産があることはあるという正直な答弁をいただいて、私はその点では満足しておりますが、その隠し金というものは何人くらいの範囲が知っておられるのでしょうか。今芸術院長お答えによれば、相当広範囲に会員の間では知っておるような、そういうニューアンスも含まれておるようで、そこが要領を得ないのでありますが、十人以内ですか、それよりもっと多くの人が知っておると、こういう意味でありましょうか。
  12. 高橋誠一郎

    高橋説明員 これは理事会におきまして収支決算報告をいたしておりまするが、そこでいろいろ質問が出まするならばむろん詳細お答えすべきでありまするが、この収支決算報告に対しまする質問などもあまり出ませんのがこれまでの慣例でございまするので、そうそう詳細にわたったことは申さないのでありまするが、やはり美術家の中でも特に経理に明るい人にはよく目を通してもらいまして、疑問のありまする点はこれを指摘してもらうというようなことにしておりまするので、積立金がどういうふうになっておるかというようなことを詳細お聞きになりたい方にはこれまで申し上げておるのでありまして、それが何人に特に詳しく申し上げたかということは、ちょっと申し上げかねるのでありまするが、ただいま名前をお出しになりました方々はいずれもよく御承知のことと存じております。
  13. 高津正道

    高津委員 理事会では質問があればそこで隠す意味はなく答弁をするのだ、こういうお答えでありますが、理事会であなた方の方から積極的にはその隠した資産のことは御報告にはならないのですな。問いがあれば隠さずに答えるつもりだ。こういうように承ってけっこうですか。
  14. 高橋誠一郎

    高橋説明員 隠したというお言葉でございまするが、これは隠したというわけでは決してないのでありまして、収支決算はこれだけになっておるということを申しておりまするからして、そこに赤字になる場合あり黒字になる場合があるということはおのずから明らかになっておることと思いまするので、特にこの点を取り立てて説明することを今までいたさなかったわけであります。
  15. 高津正道

    高津委員 その報告される分は表の数字であって、入場者の人数にからくりがあって、そうしてできた分が隠した資産だと聞いておるのでありますが、あなたはその資産のでき方は御存じないですか。
  16. 高橋誠一郎

    高橋説明員 要するに黒字になりました部分が積み立てられましてこれが資産となっておりますので、決して隠したとか後暗いことをしているとかいうようなことは全くないと存ずるのであります。
  17. 高津正道

    高津委員 さきには発表しない金があるということを認められたのでありますが、今隣の芸術課長と話をしたあとで、隠した資産はないようなお話です。前のお話と違ってきたのじゃないですか。
  18. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私は決して初めから隠した資産があるということは申さなかったのであります。つまり公表しないということは、むろん理事会には発表しているのでありますが、しかしながら世間一般には知らせなかったということだけを申しておるのであります。ただいま私が宇野課長と私語いたしましたのは、御質問のお言葉の中に聞きとりかねるところがございましたので、その点を伺っただけでございます。
  19. 高津正道

    高津委員 そういう公表しない資産を持っているということは、万一日展入場者が少くなって、赤字経営に苦しむ場合に、それを補てんするという目的なのか、今高橋院長の御説明のように、寄生しようとするというか、たかろうとする者から野付を申し込まれるので困る、有効なところには出すが断わらねばならぬので、その数を公表しないのか。つまり寄付申込者が多くなるから公表しないのか、赤字の場合に備えてとってあるのか、どっちですか。
  20. 高橋誠一郎

    高橋説明員 もちろん最初の積み立てをいたします考えは、お話のように入場者の少い場合、赤字になる場合がありますので、これをおそれて積み立てを行うということが第一でございましたが、しかしながらそればかりが決して目的ではないのであります。先年も挙行いたしたのでありますが、日展十回の祝賀会をやるような際にその中から醵出するということもございますし、そのほかには有意義な事業に寄付をするなり支出するなりしていきたいというようないろいろな目的が重なりまして積み立てをいたしておるのであります。必ずしも赤字填補のためのみとは申し上げないのでございます。
  21. 高津正道

    高津委員 この問題だけつついてもしようがないと思うから、次に、勅使河原蒼風という草月流のいけ花の第一人者、全国に数十万人の弟子を持っている人があります。この人は美術評論家もだれ一人として工芸家としては認めていないのです。いけ花では大へんな人であろうけれども、工芸家としては認めておらぬ。それなのにその人に審査という関門を通らずに、委嘱されている作家として出品し得る特権を与えているのであります。こういうことはずいぶん乱暴なことで、全国の何千、何万あるいは十数万の苦心して絵の研究あるいは彫刻の研究などいろいろやっている人々があるのに、全く——学校でいえば越境入学だ。こういう乱暴なことがあなたの日展において行われているのでありますが、これはやはり不合理だ、ひどいことをするものだという世評であります。私ももちろんそう思いますが、あなたはそれについてはどうお考えでしょうか。
  22. 高橋誠一郎

    高橋説明員 勅使河原蒼風氏の芸術につきましてはいろいろ批判があることと存じます。そしていけ花以外にもいろいろな方面におきまして力を持っている人である。これはずいぶんそれに対する非難もあるでありましょう、相当認めている人も私はあることと思いますので、高津さんのただいまおっしゃいましたことが蒼風氏の芸術に対してことごとく妥当するものとは考えないのであります。いろいろ敵の多い人でありますので、いろいろな非難も受けているでありましょうし、同君芸術そのものがまたはなはだ新しい行き方をしておりまするので、いろいろ批判の的となっているでありましょうけれども、それほど価値のないものであるとはなかなか断じがたいところのものだと存じます。
  23. 高津正道

    高津委員 私は高橋院長と同じようにいけ花の世界に新風を吹き込んだいわゆる前衛的な革新的な点では十分価値を認めるのでありますけれども、彼を工芸家としてだれも認めておらぬ、今まで工芸家の個展にも、いかなる展覧会にも工芸家として出したこともない者が、ぽんと運動によって日展招待作家になって入っていく。高橋先生はいろいろな方面で力を持っている人であると今おほめになりましたが、日展としては今までいけ花や茶道から入れてくれ入れてくれといって運動されたのを断わっているわけです。それをいけ花の草月流勅使河原蒼風その人だけが、そういうルートというか穴を発見して、そこから飛び込んできたわけです。世間ではあの人は金もたまりだいぶよく宣伝されたので、彼が今目ざしているのは芸術院会員たることだ、会員たることのためにはやはりそこへ入って行かなければならぬ、ついに目的を達した、こういうような批評をしている。それであの人はどういうものを出品するか、いけ花を出品するのか、花器のようなものを出品するのか、そういう展覧会にも出さない、批評家も全く認めないあの大げさなものを持ち込むだろうと思いますけれども、それを日展が受けるということに何の矛盾も不合理もないでしょうか。そういうような慣例があるのでしょうか。
  24. 高橋誠一郎

    高橋説明員 勅使河原氏が果して芸術院会員たることを希望してこのたびの挙に出られたものであるかどうか、これは私から何とも申しかねるのでありまして、実は私、勅使河原氏とは一度も会っておりませんのでありまして、同君芸術以外には全くその人物を知りませんので、その心事にまで立ち入りましてかれこれ申しまする資格はないので……。
  25. 高津正道

    高津委員 その答えでなくてけっこうですよ。彼が会員になろうとしたとかしないとか、そこはなくていいのですよ。
  26. 高橋誠一郎

    高橋説明員 はい。これまでにおきまして、ある方面で特に名前の出ております人が、他の技術によりまして日展出品をする。そのために入選し、入賞するというようなことが間々あったのでありまして、この点は勅使河原氏に始まるものとは申せないと思います。たとえば、これはずいぶん古い話になりまするが、びわ師として有名でありました高峰竹風氏でありますが、これがまた画家としても相当な腕を持っておる人でありまして、画家として展覧会などに出品されて相当高く評価されたというような事実もありまするので、芸術院運営会あるいは理事会そのほかにおきまして、同君のいけ花以外の芸術を相当高く評価いたしまして、その出品を求めるということがありましても、大して私は不思議ではないと思うのでありまして、何かそれが運動がましいことでもあったとすぐに想像すべきことではないと考えております。私は、これも芸術と密接な関係のあるものでありまするが、勅使河原氏の舞台装置を一、二度見まして、非常に感心したことがあるのでありまして、これは舞台装置芸術においても非常にすぐれた人だというふうに感じたことがありまするので、そのほかの方面のことはあまり詳しくいたしませんのでありまするが、やはり理事会そのほかの決定に誤まりあったとは判断しかねるのでございます。
  27. 高津正道

    高津委員 びわ師高峰竹風という人がやはり入選して、そうしてまた賞にもあずかったという例がある、こういうふうにおっしゃるのでありますが、それは異色作家日展招待作家として、上の方から飛び込んだのではなしに、平出品として審査を通って入ったんじゃないですか。
  28. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点は非常に古いことであり、私がまだ関係します以前のことでありまして、詳細正確に申し上げることができないのでございまするが、今まで他の方面におきましても全然日展とは関係のなかった人が異色作家となり、また審査員となった例もございまするので、必ずしもこれが先ほど来申しておりまするように不当とは申せないのであります。要するにこういうことは勅使河原氏のいけ花以外の芸術が、どこまで芸術品であるか、どこまで無鑑査出品に値するものであるかという、この芸術上の判断に待たなければならぬのでありまして、決して軽々に論ずべき問題ではないと思うのであります。果してこれが全く非芸術的なものである、無鑑査に値しないものであるということが決定的となりましたならば、われわれむろん考えなければならぬのでありまするが、これはすこぶる微妙な問題と考えております。
  29. 高津正道

    高津委員 そうすると、工芸部門から招待作家、いわゆる無鑑査出品できる権利を蒼風氏はもらったわけです。しかし彼のオブジェなるものを持ってくるのか、先生のほめられた舞台芸術の何かを持ってくるのか、オブジェ、あんなものをどこへ入れようといっても、建築なんだか工芸なんだかわからぬという議論があるのです。どっちへ入れられるのですか。
  30. 高橋誠一郎

    高橋説明員 芸術に入れるべきか工芸に入れるべきかという御質問、ちょっと私ふに落ちかねるのでございまして……。
  31. 高津正道

    高津委員 彫塑の方か、それとも——朝倉さんが勢力をふるっておる彫塑には入れられないですよ。受けつけられないですよ、彼は。それで入っていったのは岩田の線で、岩田運動して入れたのですよ。そのことはあとで詳しく申します。
  32. 高橋誠一郎

    高橋説明員 これはある部門におきまして無鑑査とならなかったものが、他の部門において無鑑査となるということはあり得ると存じまするし、またあっていいのではないかと思います。彫塑方面においてはさまで価値のないものであるが、工芸としてはりっぱなものだ、こういうことが認められまするならば、一方では問題にならなかったものが他方では取り上げられるということがあり得ると考えます。
  33. 高津正道

    高津委員 それは勅使河原蒼風氏に一般論としていけ花以外に他の才能はないということを言っているわけではないので、ミケランジェロも昔はおったし、宮本武蔵も、一芸に通ずるものは万芸に通ずるとも言っておるし、他方面才能人間は持っておるものです。しかしあの人の場合オブジェが問題になるわけですよ。それからもう一つは、岩田藤七という人は、今は岩田硝子の社長をやめておられるけれども、芸術院会員になったからやめられたわけです。子供の久利さんに表面譲られたわけです。だから会社の実権を持って実業家としてのそういう方面才能も十分に発達しておる人であります。数十人の草月流会員がおりまして、そこで岩田硝子の商品をどんどんとってくれるので、何とか大いに報いなければならないという、深い関係があるわけです。この間も東横で岩田藤七氏と勅使河原蒼風氏の二人の個展があったのです。そういうように密接な関係があるので、岩田さんが理事であり、そして審査をする人でありますから、非常に権限があるので、岩田さんがこれはこれはと言って推薦して押し込んだということは、天下、大ていくろうとなら知っておるのでありますが、私は入選という神聖なこと、あるいは招待画家をきめるというようなことは、実に神聖なことでなければならぬと思います。それなのに、そういうような情実がものを言う。ある実業家が自分の得意にサービスするために、一番多く消費してくれる得意先にサービスするために、その人を少し無理だがはめ込んでしまうというようなことがあってはならぬと思うのであります。高橋院長はこの点はどのようにお考えでしょうか。
  34. 高橋誠一郎

    高橋説明員 むろんただいまのお話のようなことはあってならぬことでございまして、これは理事の諸君も審査委員の諸君も十分認められておることと存じます。もし岩田氏にさようなやましいところがあることが知れ渡っておりまするならば、審査委員会もしくは理事会におきまして、相当抗議が出たことだと思います。これは正直なことを申しますると、ただいまではずいぶん岩田氏に対しましていろいろ風当りが強いのであります。今お話のようなことは一向問題になっておりませんが、正直なところを申しますると、先ほど御指摘になりました岩田氏の金工製作品が特選になりましたこと、あるいは自分の専門以外の金工方面出品されたことなどにつきまして、ずいぶん議論があったのでございまするので、もし一般がこれを認めておりまするならば、当然問題となったろうと思うのでありまするが、少くも私の耳にはかようなことは入っておらぬのであります。そうしてこういう全然違った方面芸術家の作品を一つにして一堂に並べるということは、相当おもしろい試みではないかと実は私どもも考えておりまするので、今御指摘になりました展覧会の以前におきましては、岩田氏の作品は陳列されなかったのでありまするが、丹下健三さんという建築家の設計家によりました部屋に、中村岳陵氏のかかれました絵画をかけまして、それにただいまお話の出ました勅使河原蒼風氏のいけ花を飾った展覧会などが行われました。なかなかおもしろい計画だとは考えたのでありまするが、その成績がどうかということは、これはいろいろ議論があったのでありまして、私ども裏の裏の事情は存じませんけれども、全然違った方面の二人の芸術家が一緒になって百貨店で展覧会を開くということは、必ずしも非難すべきことではないと存じております。
  35. 高津正道

    高津委員 非常に公明あるいはきれいにいっておって、不明朗なところがないように言われるが、会長であられるあなた、それから第一部長である朝倉文夫氏、そうして辻永氏、宇野課長、こういう人がいわゆる機密の金を知っているので、これが一番仲がいい。その人間が神聖な開票の立ち会いにいつも当るので、一票違いだったとか、いろいろなことが個人的には伝えられるけれども、全然発表はしない、実に不安だ。政治の世界ではそのように一味徒党だけが立会人になるということはない。こういうことは遠慮すベきではないか、きわめて不明朗である、私はそのように考えるのでありますが、その点はどうでしょう。そんなに見られておるのであれば、立会人は選挙で選ぶというようにしちゃどうでしょう。院長、第一部長、辻永氏、宇野課長、それだけが立会人になるというのはおかしいじゃないですか。非難がそんなにあるなら、何かほかに方法を変えるお考えはないですかどうか。知らぬは亭主ばかりなりで、あなたには耳に入っておらぬが、政治の畠の私にさえどんどん入ってきております。
  36. 高橋誠一郎

    高橋説明員 ただいまお話の点、特に私、朝倉さん、辻さん、宇野さんというような人たちが親しいという事実が一般に認められておりましょうかどうか。決して私どもうとうとしい間柄ではないのでありますが、少くとも私は朝倉さん、辻さんと特に芸術院会員の中で親しくしておる事実はないと申し上げることができると思います。先ほど来申しておりまするような事情によりまして、一般にこれを知らせることはいたしてないのでございまするが、今後もしこれがそこにいろいろなやましいことがあるというおそれが起るおそれがあるという懸念がわれわれの間に生じまするならば、先ほどおっしゃいましたように、運営会の中で立会人と申しますかを選出して、それらの人たちに立ち会ってもらうという方法なども、すこぶるけっこうかと考えておるのでありまするが、これまでには、私の見ておりました限りにおいて、何ら不明朗なものがなく、きわめて正しく行われておるというので、実は安心しておった次第でありまするが、ただいまこれが国会の問題とまでなったということでありまするならば、この点近く考えてみなければならぬと考えております。
  37. 高津正道

    高津委員 山崎覚太郎という人が新たに会員になりましたが、この人はメルボルンの美術関係を見てきた経験者だから、十二億七千六百万円といういわゆる国立競技場が目下建設中であるので、彫刻においてもいろいろ美術方面に注文が出る、それで一番大きい発言権を持っておるのが山崎覚太郎というので、それを上手に彫塑の朝倉文夫氏ににおわせて、そうしてその子分である同じく会員の吉田三郎氏が大いに動いて、順位はあの人は推薦者の中ではだれの見る目も四位であったわけです。それが一挙に一週間ばかりの間に急にその運動で二人の中にしぼられて入ったから、有力な候補としてそれがその会員になれたのだ、こういうのでありますが、ずいぶんこれも金銭がからまって不明朗きわまると思うのですよ。私は朝倉さんの性格や心理状態を別に分析しようとも思いませんけれども、朝倉さんが非常な有力者であって、あれに取り入ればたくさんの票が動くのだから、それであの人はいろいろ力を持っておられます。もしあの人に反対すれば、入選もできなければ受賞もできないし、むろん会員などになることもできない、そういう大へんな彫塑の世界における第一人者で、全くのワン・マンでありますが、この人もまた仕事をとる点では非常に熱心でありますから、朝倉君がそれじゃやってやれ、吉田三郎氏が動いた、こういうようにしかと聞いておるのでありますが、こういう人事は、あなたのような非常に高潔な人格の人が長を務めておられるところで、下の方はまるで伏魔殿のようになっておるのだ、この点に対してはどうお考えでしょうか。
  38. 高橋誠一郎

    高橋説明員 個人にわたりましてはなはだ恐縮でございまするが、私率直に申しまするならば、朝倉さんは、芸術院第一部の全部でないまでも、少くとも彫塑部門におきまして決してワン・マンではないということを、私ははっきり申し上げるのであります。すべて朝倉氏の意見が通るなどということは、これまでは私の見ておりまする限りにおいては全然ないことであります。朝倉氏の主張せられることでも、正しいことであるならば通りましょうけれども、一部に疑問があればどんどんこれに対する反対論が出まして、朝倉さんといえどもむろんこれに従わなければならぬのであります。たとえば日展審査員などをきめます際に、一番長く時間を費やしましたところは彫塑部門であったという経験を私は覚えているのでありまして、精養軒で夜の何時でありましたか、非常におそくまで議論をしておる。ほかはもう片づいてしまっておるのにまだ彫塑が片づかぬ、何とか早く片づけろといっておるのでありますが、議論が沸騰してどうしても片づかぬ。もし朝倉氏がワン・マンであるならば、朝倉氏の意見であれがばたばた片づいてしまわなければならぬと思うのでありますが、朝倉氏は決してワン・マンぶりを発揮しようとする人でもなく、またワン・マンぶりを発揮しようといたしましても、それが通るものではないと思います。山崎さんの芸術——芸術家に対する批判というものはいろいろでありますので、同氏の芸術を高く評価しておるものもありましょうし、低く評価するものもあるかもしれないのでありますが、他面ウルシ方面におきましてはすぐれた制作を発表しておられますので、この方面においては相当認められた人であるのでありまして、先ほど第四位が二位になったというようなお話でございましたが、第四位というのはどこできめたのでありますか。会員諸君から推薦せられました人の中で、あるいは票数が少かったという意味かもしれないのでありますが、これは実際におきましては、いろいろな事情によりましてその票数いかんということはあまり尊重いたしておらないのでありまして、それをもとにいたしまして全部それに従うわけではなく、選考委員会におきまして順位を決定する。場合によりますと前もって推薦せられなかった人を選考委員会で新たに名前を出して推薦するというような例もございまして、運動の結果すぐに第四位が第二位になったというようなことはどうかと思います。果してそういうことがあったかどうか、私としては申し上げかねるところであります。
  39. 高津正道

    高津委員 彫塑の会合の場合に、一回はかどっても、同じ息のかかった同門の中から入れて、そうしてこれとこれとの間できめよう、こういえばずいぶんひまがかかるが、自分責任を免れて、そうして結局落ちつくところへ落ちつく。五人選ぶ場合には六人候補を出して、みんなに勝手に討論させれば徹夜でもできるわけで、それは権限がないという証拠にはならぬのです。そうしてまた朝倉文夫という人は、全国の銅像などができる場合に、朝倉さんに憎まれたら全くどうにもならないという事実があるのですから、必ずその県のその銅像は朝倉さんのところへ持っていって、お目にかかる機会を得るというような苦しいことをみんなやっておるのです。原則論のようになって恐縮ですけれども、工芸部門には鋳金あり、彫金あり、いろいろなものが入っておって——あらゆるものが入っておりますから工芸という言葉を使いましたが、いわゆる美術の中には、幹事というか、委員をもっと出さなければどうにもならない、そうして一水会とか光風会とか美術院だとかいろいろな団体がほかにあるけれども、こっちの方はまとまっておらぬのでありますから、美術工芸はただ一辺倒で自己の会員にたよるよりしょうがないという実情があって、特にそこに権限があるわけであります。だから朝倉さんの意見がほとんどものを決するのだ、君がこう主張せよということできまっておると思いますが、院長は実にデモクラティックなフェアな人で、そういうようなことはないとやはり朝倉さんを大いに弁護されるのですか。
  40. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私は、特に朝倉氏を弁護するというつもりもないのでありますが、公平に私は今まで朝倉氏の人物を見ております。ずいぶん率直に自分の意見を吐かれる人であります。しかしながら、その意見の中で、先ほども申しましたように通らない意見が相当多いこともまた知っておるのであります。それから彫塑はすべて朝倉氏のお声がかりと申しますか、あるいは賛成がなければ頼まれないというようなお話のように伺ったのでありますが、私自分の恩師そのほかの彫刻を二、三の彫塑家に頼んだことなどがございますが、私は、その人などが朝倉さんに渡りをつけてそれからあとで引き受けたというような事実は全然認めることができないのであります。朝倉氏がそれだけ大きな力を持っておられるかどうか、この点私は芸術院並びに日展運営会におきまして何年か席を同じゅうしておるのでありますが、どうもその間に認めかねるのでありまして、ずいぶん朝倉氏ほどの先輩の言われることであるからして、この問題などは朝倉氏の意向通り通った方がよいではないかと思われますような問題でも、なかなか朝倉氏の主張が通らない、端におりましてちょっとお気の毒な感じをしたようなことが一再ならずあるのであります。
  41. 高津正道

    高津委員 それでは日展には師弟関係がものを言うとか、あるいはボスの取引——ボスが今年は君の方へやろう、来年は僕の方でとろうというように、配給のように批評しておるものもおるのであります。とにかく運動がものを言う。大いに運動しなければならぬ。ボスが非常にばっこしておる、こういうような事実が私はあると思うのでありますが、何もそういうようなことはない、きれいなものだ、上野へ入場者が来るではないか、こういうようなお考えでありましょうか。毎年十月から十一月のあの日展批評する、個々の作品はほめましょうけれども、日展のあり方についてはいつも批判があり、冷淡であり、毒舌的でさえあり、おのおの批判の理論的な立場は違っても、その点でみんな一致しているわけです。これほど不評な世論が統一せることは不思議な現象であります。このように世論が認めておって不公平だというものを、何ら反省することもなく、これでよいのだ、とにかく答弁さえ通ればよいという態度で今後これを改革しようというようなお考えはないのかあるのか、もう一つは、そういう批判に値する点が考えればありますということになるのか、そこのところを承わりたいと思います。
  42. 高橋誠一郎

    高橋説明員 師弟関係そのほかにあります縁故によって決せられるというようなことが、どういう具体的な場合をつかんでいるかということは、私は申し上げかねるのでありますが、これまでの師弟関係というようなものから考えますると、ある程度までこれがありはしないかとも考えられるのでありますが、実際審査会場に私もたびたび出かけまして、審査の状況を見ておるのでありますが、非常に大ぜいの審査委員が並びますると、その前に出品作品を持ってきて置くのであります。それに対しまして直ちに挙手できめる、何分の一以上の賛成があるならば通過させる、こういうようなことになっておるのでありまして、そこに特に自分の弟子の作品に対しては手をあげるが他のものに対しては挙手をしないというほどのことがあるかどうか、非常に疑わしく思っておるのであります。そういううわさはずいぶんたびたび聞いておるのでありまして、私も注意しておるのでありますが、昨年でありましたか、一昨年でありましたか、事務の方の非常な手違いで、まことに申しわけないことであったのでありますが、作品と出品者名前が違ってついておったのであります。その名義人でない人の絵が現われたのであります。それに対しましてもつまりきわめて公平な態度によったものと思うのでありますが、その人選に賛成する者が多かったのであります。全然だれのものかわからぬ。間違いが起って問題になったあとで、こういう人間を知っているのか、こう聞きましても、だれも知らぬ、こういうようなことであります。これはきわめて一例にすぎないものでありますが、比較的これは公平にいっているんじゃないか。多少それは自分の弟子とか目をかけてやった人の作品の通過を望むという情はこれは免れないことでありまするが、ことごとくこれによって動かされるということは考えられないのであります。また動かされたところであれだけ大ぜいの人が見るのでありますから、通過することはないと思います。  そしてボス云々ということでありますが、これらの人がボスに動かされているといえばそれまでの話でありますが、それほどのボスがあるかどうか、今のお話では朝倉氏などもそのボスの一人と見なされておるのでありましょうが、決して朝倉さんのワンマンぶりに従う者が全部であるとか、また多数であるとかいうようなことは申し上げることができないのでありまして、どうしてもこれはやはり多数は正しい判断に従いまして、入選そのほかのことをきめておるのではないか、こう考えるのであります。  それから日展に対しまして批評がはなはだ酷であるということもわれわれ承知いたしておるのであります。批評家によってあまりほめられない展覧会であるということも認めております。そしてこの点におきまして十分反省すべきものであるということは始終申しておるのであります。決して批評にそのまま盲従するということはよろしくないのでありますが、これは他山の石として尊重していくべきものだということは始終私ども申しておるのであります。しかしながら批評、世評があれほど酷な日展に対しまして、一般観衆は非常に多いのであります。入場者は非常に多いのであります。先ほどお話の出ましたように、他の展覧会はほとんどすべてと言っていいくらいみな赤字になっておりまするのに、日展だけが幾分の黒字になっておるという点をとってみましても、一般大衆は日展を喜んでおる。そしてその日展のあり方に対しましてもいろいろ批評はあり、これに耳を傾けなければならぬのでありまするが、とにかく日展の存在、今までのやり方に興味を持ちましてどんどん押しかけてくる。こういうことは認めなければならぬと思うのであります。しかしながら大衆に迎合することはむろん悪いのでありますが、そうかと申しまして、あまり高踏的な態度をとりますこともまたいかがと存じまするので、両者を考え合せまして、正しい道に向って進んでいかなければならぬということは、年々歳々私ども繰り返しておるところでありまして、他の諸君も同感だと思うのであります。改むべきところがありまするならば、むろんこれを改めていかなければならぬ、かように考えております。
  43. 高津正道

    高津委員 批評は参考意見として聞く、年々歳々改むべきは改むべきである、こういう考えで進んでおる。ことし一つこれはあり方を研究してみよう、これは何とかせなければならぬ、そういうお考えではなしに、平素の心得程度に、だれが悪いのか、一億総ざんげでみんなわからなくなってしまいますが、毎年々々反省しておるのでよきに改めようと思っておる、こういう意味でしょうか。それなら考えがありますよ。代作問題とかたくさんありますよ。私は遠慮しておるけれど、そうじゃないでしょう。
  44. 高橋誠一郎

    高橋説明員 年々歳々考えておるところでありまして、ことにこれがはっきり現われまするのは、年々審査員を新たにしておるということであります。いつも同じ人が審査員になっておりますると、そこに弊害も生じてこようから、各科によりましてそれぞれの事情がありまするので、すべてみな新しくするということはできない事情もありまするが、でき得る限り交替して、一部分に片寄らないようにしていきたい。ほかにもむろん考えなければならぬ点がありまするが、第一には、審査の公平を期さなければならぬ、審査の公平を得るがためには、審査員にその人を得なければならぬということを始終考えております。
  45. 高津正道

    高津委員 代作で大問題が起ったことを御存じでしょう。何もことし去年ではないが、それで私のところに激励の電報が来るし、速達が来るし、はがきや手紙や電話やら、また来訪者が来て、やってくれぬことには困る。こういうことの証人に立つ、選挙においてこういう不公正なことが行われておるから証人に立ちます、こういう人が来ておるのですよ。人格あるりっぱな人です。そんな問題をここで出してはいかぬと思うので、固有名詞を使わないように言っておるのでありますが、相撲界があれだけ改革したんですから、やはり美術の世界もこの際相撲界と同じように革新しよう、こういう御決意は、本日の御答弁では毛頭認められないのであります。新聞の論調を見ましても日展の改革ということはみな支持しておるようであります。これは去年とことしと同じように審査は公平にしなければならぬ、審査員になる人は、会員から選ぶ場合でも、人を変えねばならぬ、そのくらいなことでは私は満足できないのじゃあるまいか。そうであるならば次の国会も、臨時国会があります。そのあとには通常国会もございます。今度はこういうようなところだけを洗ってみるというか、質問したわけでありますが、これは美術は洋画、日本画と大変広いので、われわれ委員のところにはいろいろに言って、材料を読むのに困る、整理ができないほど参っております。証人に立つというのですよ。あなた御自身の口から公表してない資金があるというようなことも言われ、いろいろ問題があるのだろうが、この際特別に日展のあり方について考えよう、こういう御答弁をきょうはいただけるだろうと思って私は委員会に入ってきたのであります。福田社会局長は、芸術院の方でも考えておるのであろうし——それは改革の一つの方法としての芸術院日展の分離についての問題でありますが、文部省といたしましてもそれは考慮をせねばならぬ、研究課題だと存じます、こういう答弁をしておるのであります。あなたはそのいつもの心得、いつも院長たるものは公平な審査でなければならぬ、あまり同じ人間だけがそういう要職についてはならぬ、こういういつもの改革論ですか。年々歳々同じ改革論をもって今日まできたし、ちっともことし変ったところはない、そういう意味の改革ですか。
  46. 高橋誠一郎

    高橋説明員 日展の根本的な改革でございまするが、これは福田局長から答弁があったことと存じます。われわれはこれが国会の問題になりましてからどうというわけではないのでありまして、早くからこの点を考えております。久しいことになりますが、終戦直後であります、まだ文部省が展覧会を主催しておりました際、官展時代でございますが、終戦後のことでありまして、各方面にいろいろな改革が叫ばれまして、いろいろな美術団体、これまで日展、つまり文展あるいは院展と称しておりましたものときわめて密接な関係のありまする団体だけでなく、ほとんどあらゆる美術団体、たとえて申しまするならば、日本画でいえば院展であるとか、洋画で申しまするならば二科であるとか、独立展であるとか、新制作協会であるとか、そういうような方面から、代表者もしくは首脳者を集めまして、たしか三回ほども会議を開きまして、ここで審査員を設けまして、そうして展覧会を開いたのであります。こういうやり方などもいいのではないかというようなふうに一応は考えられるのでありまするが、このときの経験をいろいろ聞いてみますると、このときほど運動の多かったことは今までになかったという声が強いのであります。どうもこれほどひどく運動が行われたことはない、こう言っておられるのであります。そうして、やはりある美術団体の人がその後に言われたところによりますと、それは日展必ずしも運動なしと言うことはできないが、あらゆる展覧会の中で——といっては少し言い過ぎかもしれませんが、最も運動の少いものだとはいうことができるだろう。これは一部の人の声でありますからして、直ちにこれを全部認めるわけにはいかぬのでありまするが、今までの方法によりますと、相当運動があったようでありますが、他の方法を選んで、それで運動を根絶させることができるかと申しますと、私どもにはその確信のあります方法を見出し得ないのであります。そして日展は御承知の通り政府から離れて行われておるのであります。少くとも予算をとることができないのでありまして、全く運営会が主として経営するところになっておるのであります。しかしその背後に芸術院というものを控えておりますがために、財政的にやや確かなものを持っておる。これは何も芸術院から寄付をさせるというわけでは決してないのでありますが、いよいよ金がなくなったとき、いよいよ赤字に苦しむという場合には、会員の中の熱心な方々の寄付によりまして、年金の醵出によりましてこれを補っていくことができるだろう、あるいはまたこれによって維持していくことができるであろう、こういう安心感がありますので、芸術院から全然切り離してしまうということが果して得策であるかどうか。この点なども深くこれは考えなければならぬことと考えます。先ほどもお話のように、福田局長そのほかにおきましても御検討になっておることと存じまするが、芸術院としてもすでに考えており、また今後とも十分考えていかなければならぬところと存じます。
  47. 高津正道

    高津委員 私の問いは、芸術院の院長として、悪いところがあったら改めていかねばならぬ、入選とか、院賞を与えるとかいうことは重大な問題だから、それを公平にしなければならぬ、こういうことを年々歳々自分考えて今日に及んでおるので、国会で問題にしたからそれでそのほかにも改革しようということを多く考えたわけではない、だからやはり世間非難が多いから、これは改革の問題について委員会でも一つこしらえて検討してみよう、ことしはそういうことをお考えになった、そういう、何というか、そのくらいな改革ですか。そこのところはわからないのですよ。
  48. 高橋誠一郎

    高橋説明員 そのくらいな改革とおっしゃいますのがどうでありましょうか。私としては年々歳々改むべきところは改めていこうとしておる。現に改めておる。審査員の顔ぶれは年々新たに選ばれておるのでありまするし、それからまた運営会規定などにつきましてもほとんど毎年といっていいくらい、ずいぶん長い時間を費しまして、その改訂を論じておるのであります。絶えず改まっておるのであります。しかしそれらのものは部分的な改正である、もっと根本的に大改革をやるつもりがないか、こういうお話でありますと思いますが、ただいま申しましたように、根本的な大改革ということはまことに痛快ではございますが、しかしながら、そこにまたはなはだ危険なものもあるのでありまして、その改革後において果して日本芸術の向上、発展に資するものになるかどうか、かえってこれがために健全な発達を害するおそれがありはしないか、こういう点が十分慎重に考慮する必要のあるところと存じまして、すでにこれは何年か以前から考えているところでありますが、まだその成案を得ずにおるのであります。今後ますます芸術院並びに運営会の諸君と相議しまして、最善な方法があり、ぜひこの線に沿うて大改革を行うべきものであるということになりますならば、私もむろんこれに賛成し、そのために犬馬の労をとりますことをあえていとわないものであります。いまだ成案を得ずにおる。改革案と称せられておりますものの中に、はなはだ危なっかしいものがあるというようなふうにただいまは考えております。
  49. 高津正道

    高津委員 同僚諸君に、同じことを問答しておって相済まないと思いますが、芸術院日展とを分離するということをまずきめてしまって、その上で何か今後の処置をどうしようという委員会をこしらえる、こういうやり方もあるでしょうが、芸術院日展との関係をどのようにすべきか、あるいは日展はどのように運営したら合理的なものになるか、そういう予見を持たないで、そういう委員会を新たにこしらえる、そういうお考えはありませんか。
  50. 高橋誠一郎

    高橋説明員 つまり日展あるいは芸術院の今後のあり方について審査委員会というものを設けたらどうか、こう  いう御意見でございましょうか。
  51. 高津正道

    高津委員 芸術院会員から五名とか七名出し、それから美術批評家からも五名とか七名出し、学識経験者をその同数出し、三者構成で委員会をこしらえて、そして日展はどうあるべきかということをそこで検討する、あなたの方だけで改革案を年々歳々お考えになるというのでなしに、別個にそういう委員会をこしらえて、そして検討してみたらだいぶ大きく改善されるのではあるまいか、こう考えますが、この私の今の考えに対してはどのようにお考えでしょうか。
  52. 高橋誠一郎

    高橋説明員 それも一案と考えます。むろんこの点を考えてみることはけっこうだと存じますが、実は批評家、それから学識経験者と申しますか、そういう諸君を入れるということはどうか、ことに審査員の中などに入れるということはどうかということが私院長に就任当時に問題にされたことがあるのでありますが、そのときにはわれわれが見てこの人こそは批評家として実にりっぱなものであるとか、美術に関して深い造詣あり、良識を備えた人であるとかという押しも押されもしない人かおられるならば一そのとき名前があげられましたのは、たとえば岡倉天心さんのような方がおられるならば、これを仲間に入れて審議していい、しかしながら、今のところではこの方をわずらわしたいというほどの人がないというような意見などが出まして、そのまま立ち消えになった記憶があるのであります。二十三年か四年ごろのことであったと存じます。しかしこういう点も一つ考えてみようと思うのであります。どうも今まで政府にできました審議会というようなものは、まことに力の弱いものであります。私も幾つかの審議会の委員とか委員長も仰せつかっておるのでありますが、どうも実現せられる可能性がはなはだ少いのであります。そこへ参りまする前に、まずこれは芸術院の問題、運営会の問題として取り上げまして、そうして運営会あるいは芸術院の自主的な解決に待つことが第一ではないかとただいまのところは考えておるのであります。
  53. 高津正道

    高津委員 岡倉天心のごとき者があれば入れるんだが、今そのような人間がないから審査員には美術評論家は入れないというそのころの議論はわかりますが、審査員に入れるというのではなしに、日展のあり方、機構、そういうことに詳しい人は、かえって美術評論家にずいぶん多いかもしれません。その改革案についての検討をするための委員会を設けてはいかがですか。美術評論家は締め出した方がいい、こういう御意見ですか。
  54. 高橋誠一郎

    高橋説明員 決して締め出しがいいとは存じないのでありますが、まあこの点につきましても委員会あるいは芸術院におきまして相当議論のあるところと存じます。多数の意向がどういうことに相なりまするか、私としては無論独断専行でやることはできないのでありますので、この点を十分考えてもらいたい、こう考えております。  なお所管官庁であります文部省におきましてもすでにもう考えておられることと存じます。この方面の意見も聞き、芸術院として十分遺憾のないように態度をきめて参りたいと考えております。
  55. 高津正道

    高津委員 芸術院としては自主的に改革を検討し、自分の手で考えてみる、それは芸術院の中にこしらえるものであればいいが、三者構成のようなことは反対だ、こういう意味に受け取ってけっこうですか。
  56. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私の申しましたことは、芸術院としてできることは、つまり自主的の改革であります。自分みずからの手によってこれを改革するということ、それが一番望ましいことであります。しかしながら外部の意見に全然耳を傾けないというわけでもなく、また外部からの改革案はことごとく退けて、これに服さない場合は芸術院をつぶしてもいいというようなことまでは無論考えておらぬのであります。自主的にきめた改革案というものと他の審議機関でありますか、そういうところできめたものと比較検討して参るのがいいのではないかというふうに考えておるのであります。決して他を排斥するというのではないのでありますが、まずみずから反省し、みずから改むべきことは改めていくということが、第一に芸術院としてとるべきことではないか、かように考えております。
  57. 高津正道

    高津委員 それでは芸術院の方ではみずから自主的に改革するために考えをまとめてやる、そのほかにまたできればその御意見も十分参考にしたい、ほかにできるのも一かまわぬ、こういう御意見ですか。
  58. 高橋誠一郎

    高橋説明員 芸術院みずからがそういう審議会をこしらえるかどうか、そこは今のところは考えておりません。あるいは文部省の方にそういう審議会のようなのをこしらえていこうというお考えか、それらの点を伺いまして、これが一番いい方法だと思いますものに対してわれわれは賛成することに決してやぶさかではないわけであります。
  59. 高津正道

    高津委員 それは国会が提案してそこできめれば、芸術院長もあるいは日展委員長もやらねばならなくなることはもう当りまえですよ。それからまた芸術院は文部省の管轄のもとにあるのですから、文部省がきめればいやでも応でも、そればできますよ。そうでなしに、あなたの方でそういう委員会ができるということに対しては、どうも外部からの干渉のようだから困る、こう考えておられるのですか、それをはっきり承わりたいのです。国会は超党派の問題ですから、両党において了解がつけば国会の決議にもできるわけであります。表現がまずかったのですが、私の質問意味がおわかりですか。
  60. 高橋誠一郎

    高橋説明員 わかったと思いますが、私の希望といたしましては、これは他からの拘束は受けないで、みずから反省し、みずから改革すべきものはすべきである、こういうふうに考えておるのでありますが、その改革案を立てるがためにどういう形で他の方面の意見を問うべきであるか、こういう点は今のところまだ全然考えておらないのでありまして、芸術院の総会にかけましてかような審議会のようなものを設けることが適当であるということに決しますならば、当然その方向に向って進んでいかなければならぬと思います。とにかくこういう点は来たるべき次の総会に諮って決すべきものでありまして、芸術院長の独断をもつて決することはできないと存じております。
  61. 高津正道

    高津委員 朝倉文夫第一部長は、近く総会を開いて協議せねばなるまい、こういうことを言っておられますが、院長としてのあなたも近く総会を開いてこの問題を討議して、総意をもってでなければ回答ができない、近くその芸術院の総会を開いてこの問題を協議する、こういう意味に受け取ってようございますか。
  62. 高橋誠一郎

    高橋説明員 朝倉第一部長の意見は私全然聞いておりません。
  63. 高津正道

    高津委員 それは第一部だけの総会です。朝日新聞に発表しております。
  64. 高橋誠一郎

    高橋説明員 第一部だけの意見とすれば多分日展問題ではないかと思います。これはなお朝倉氏とも話し合いたいと思いますが、日展の問題でありますならば芸術院の総会を待たなくてもいいのでありまして、日展理事会を開きましてきめることができると思います。そこで検討せらるべきだと思います。ことに第一部長がその御意見であり、第一部長が発言せられますならば、そこで種々意見の交換があると思います。
  65. 野原覺

    ○野原委員 関連して。福田局長高橋院長にちょっとお尋ねしたいと思いますが、日本芸術院というのは日展をやるために、設けたものではない。官制によりますと、日本芸術院芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するために置かれる機関とする。日本芸術院会員には、予算の範囲内で文部大臣の定めるところにより年金を支給することができる。日本芸術院の内部組織、会員その他職員及び運営については政令で定める。これが芸術院の官制なんです。これだけなんです。今問題は日展との関連でありますが、芸術院日展とを切り離すべきで、切り離さなければ問題が起る。芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するために芸術院を置いただけで、日展をやらせるために置いたのではない。太平洋画展とか、春陽会とか、二科とか、こういうりっぱな展覧会はそれぞれ民間が自力でやっている。それで私は日本芸術の向上はできると思います。日展芸術院がやらなければ芸術向上ができないというような考え芸術の冒涜なんだ。あまり官側は芸術なんかに干渉すべきではない。私どもはこういう立場で考えている。この前の委員会で福田さんは、こういう点については検討してみてもいいのではないかという意味発言をせられたと思う。高橋さんは芸術院長だから芸術院の職務権限をなるべく縮めたくないでしょうが、法的な職務権限でも何でもなく、日展をやることは余分なことだ。余分なところに問題が起って、せっかく設けた官制上の芸術院自体がいろいろな疑惑を受けることになっては、文部省としてもやりきれないので、その所管の局長としては何とか検討しなければなるまいという意見を持っているわけです。だからあなたがどう言おうとも、私ども文教政策に携わる者としては至急に検討してもらいたいと思います。だからただそれだけあなたはここで答弁していただけばいい。答弁できなければできないでけっこうです。この点についてあらためて福田局長の所見をお聞きしたいと思います。
  66. 福田繁

    ○福田説明員 ただいまの御質問でございますが、この前の委員会におきまして同様の御質問に対しまして私の答えました要旨は、芸術院は栄誉機関でありますことはただいま申された通りであります。しかしながら栄誉機関が全然事業をやってはいかぬということにはならないのでありまして、栄誉機関といえども必要な事業を行う組織になっております。従って現在日展の運営につきましてはいろいろ沿革があり、また当初芸術院会員の方が醵金をされて日展を開いているというような関係になっておりまして、芸術院としても日展を開催することにつきましては十分この意義を認めて開催しているわけであります。従ってこれを改革する、あるいはまた芸術院日展との分離を考えていくというような事柄は非常に重要なことであります。従ってこういった根本的なことについては研究課題として今後われわれとしては大いに検討していってみたい、こういうように申し上げた次第であります。
  67. 野原覺

    ○野原委員 福田局長答弁はまことにごもっともだろうと思うのです。これを直ちに改革するとか、そういう即答ができないことは私どもよくわかっております。だから研究課題として研究しなければなるまい。たとえば日展赤字が出た場合の運営その他が困るから、芸術院がやはりこれをカバーする意味ででもやらなければならぬのだという高橋院長の先ほどの御意見であったように私は記憶しておりますけれども、やはり一応問題点を高津委員からたくさん指摘されて、その問題点に対する的確な回答というものはなされていない、速記録を読めばこれははっきりする。きのうのごときは芸術課長はしどろもどろなんです、はっきり言って。理事会にだけ決算を報告して、総会へ決算を出さぬというようなそんなばかなことはあり得ない、いかなる団体でも。それだけでもこれはおかしい、これはどんなしろうとが考えても変じゃないか、しかも総会に出した決算書をまた取り返す、一ぺん見せておいて持って帰らせない、そういうようなことがあっては文部省としてもはなはだ心外千万であるから、これはやはり慎重な研究課題として考慮しなければならぬという福田局長の御答弁はしごくごもっともだろうと思うのです。高橋先生は福田局長答弁に対してどうお考えになるか、御所見を承わりたい。
  68. 高橋誠一郎

    高橋説明員 先ほど来申しておりますように、これを引き離しますことにつきましてはいろいろ問題点があるのでありまして、その一部分はただいま野原さんがおっしゃったところでありますが、なぜ栄誉機関である芸術院日展をやっていくのかということは、これは主として私は歴史にあることだと思いますので、私ども古いことはあまりよく存じませんが、文部省の展覧会が主となりまして、あるいは母体となりまして、帝国美術院というものが現われ、さらにこれがその後日本芸術院となったのであります。こういう歴史によりまして今日芸術院がやはり運営会とともに日展を運営しておる、共同主催いたしておるのであります。占領下におきましては官展まかりならぬということをGHQの方で言っておりまして、一応文部省から引き離し、また芸術院からも引き離さなければならないような羽目になったのでありますが、ただいまお話になりましたようなわけで、会員の年金を醵出してこれでやっていく、こういうような歴史がございますので、ある点まではむろん歴史も尊重しなければならぬのであります。しかしながら過去の歴史のみに決してとらわるべきものではないと存じますので、これを引き離して全然別の団体にやらせるということ、それが果して日本美術発展に貢献するところが今よりは大であるという見通しがつきますならば、われわれもむろんこれに賛成するのでありますが、しかしそこまで参りますのにはいろいろ隘路があり、考えなければならぬ点がありますので、私は芸術院長として、特に大きな仕事をやっていきたいという考えは正直なところ全くないのでありまして、私就任の当時におきまして、日展を廃止すべきであるか、休止すべきであるか、あるいは再開すべきであるかという論争が激しく取りかわされまして、芸術院というところは非常にむずかしいところではあるという感じをそのとき初めて受けたと申していいのであります。決して自分日展運営委員会長として幅をきかせたいという気持は毛頭ないのでありまして、切り離した方が日本芸術に貢献するところがはなはだ多いという見通しがつきますならば、和みずからといえどもこれに賛成することにやぶさかならざるものであります。この点御了承を願いたいと存じます。     —————————————
  69. 長谷川保

    長谷川委員長 この際委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。すなわち静岡県榛原町立川崎小学校が昨年七月焼失して以来、今日に至るまでいまだ校舎建築敷地決定等の見通しもつかないまま二十一カ所の分散教育を続けている現状であります。これが学校教育上に及ぼす影響の重大性にかんがみ、本委員会として現地に委員を派遣し、つぶさに実情を調査いたしたいと存じます。  閉会中の委員派遣につきましては、議院運営委員会の申し合せによる基準がありますので、委員派遣の員数、期間等につきましては、委員長議長と協議することとして、その手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  71. 長谷川保

    長谷川委員長 引き続き文教行政に関する質疑を行います。  佐賀県の教育問題等について質疑の通告があります。順次これを許します。辻原弘市君。
  72. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは佐賀の問題ではありません。愛媛の問題であります。昨年の四月から主として表面化した問題でありますが、事件は古く昨年の四月から起って、十一月に正式にきまった愛媛県の勤務評定の問題であります。この問題はかなり発端が古いことは、文部省もすでに御承知かと思いますが、その後いろいろな曲折を経て、勤務評定が具体的に愛媛県において今日交渉せられているようであります。このことにつきましては、当委員会でもしばしば私どもも文部当局に伺いましたが、われわれから見れば、愛媛県における勤務評定の扱い方、内容は、将来に問題をはらんでおりますし、また実施の方法にいたしましてもきわめて不合理な点が多い。ところがそういった勤務評定を文部省部内においても今日作成をしつつあるということをわれわれは聞き及ぶのでありますが、一体それば事実でありますかどうか。
  73. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 御承知の通り地方公務員法第四十条によりまして、地方公務員にはすべて勤務評定を行わなければならぬ、それに基いて適切な行政上の措置をしろ、こういう規定がございますし、また先般の地方教育行政の組織及び運営に関する法律では、県費負担職員につきましては、県の計画のもとに市町村の教育委員会が勤務評定を行うこと、こういうふうに法律できめられておりますので、私どもといたしましてはこの勤務評定を行うようにいたしたい。そこでいろいろ現場において混乱が起きることも予想されますので、できるだけ学校の実態に即した勤務評定を検討いたしておる次第であります。まだ私ども成案を得ておりませんが、できるだけ教育現場に即応するような、しかも人事配置その他勤務上有益な資料にいたしたい、かように考えておるのであります。
  74. 辻原弘市

    ○辻原委員 簡単に伺いますが、大体いつごろまでにその試案というものをまとめられるおつもりか。
  75. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 できるだけ急いでおりますので、近い将来と申しますか、少くともこの秋ごろまでにはまとめたいと思っております。
  76. 辻原弘市

    ○辻原委員 その勤務評定は、愛媛県の例を見れば、これは当初定期昇給の評定に活用するために出し、しかる後に人事異動にそれを関連づけていったというものでありますが、文部省が現在試案として作っている勤務評定も、そういうようないわゆる定期昇給ないしは人事の評定に直ちに活用されるような内容を含むのかどうか、この点を伺いたい。
  77. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 御承知の通り、勤務評定というものは人事管理上必要な資料でございますので、これが昇給、昇格の参考にもされる場合もあるでしょうし、あるいは人事異動等につきましても参照されることが私は当然あると思っております。
  78. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間を長くやるつもりはないのでありますが、問題は、今そういうふうなお答えでありますと、今日の給与制度においては権利として定期昇給というものが保障されております。そういたしますと、それに評定を加えてやろうとする限りにおいて、そこに当然一方の給与表なら給与表、それに基いた県の給与条例というものに背反するような一つの給与の昇給ないし昇格が行われるということが予想されるわけです。現に愛媛県の場合にはそれが問題になった。将来全国的にそういうような傾向をはらむことを文部省は是認をしておるのか、また給与法との関係においてこれはどう考えておるのか、この点を明確に伺いたい。
  79. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 給与に関する法律によりますと、一定の期間優良なる成績で勤務した者に対し、予算の範囲内において昇給させることができる、こういう建前になっておりますので、一定の期間勤務成績が良好であるかどうかということがまず判定されると思う。この勤務成績の良好かいなかという判定につきまして、ただいまの勤務評定を参考にされることも私はあり得ると思うのであります。また予算の範囲内でございますから、予算が全員にまかなえない場合にはある程度削減を受けると思う。こういう場合に勤務成績の悪い者が昇給から落ちるということもあり得ると思うのです。こういうことは給与法との関連において何ら私は矛盾がないと思っております。
  80. 辻原弘市

    ○辻原委員 論争はいたしませんが、給与法のそれに示され、条例で作られておるのは、明らかに全員に対して定期の昇給を確保するということを前提にしております。これは今日通例行われている昇給であり、しかもしばしばこれは文部当局も言明しておるように、各個人に対して個人比率の定期昇給率も予算上見込んで今日実施しておる。そういう行き方からすれば、この勤務評定が今あなたが言われたような形に活用されるということになれば、非常な問題となることは当然われわれも予想されるのであります。いま一つは、後段に申し上げた人事とこれは密接な関連を持たすということは、ただ単に異動とか転任とかいう問題だけじゃなしに、いわゆる職務上の昇任、降任あるいは懲戒、こういうものをもその勤務評定を一種の基準にして行う、しかもそういうことを行わしむるためのサンプルとして文部省が作っておる、お答えから考えまするとこういうことになって参るわけでありますが、そういう意味においてこれは将来活用されてていくものでありますかどうか、それを一つ伺いたい。
  81. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 人事異動について活用されると申しましたのは、今のところ科学的な根拠に基いて勤務の成績なり実態というものを把握した資料がないので、現在の異動について私非常に疑問を持っておる。いろいろ形式的な基準で人事異動が行われておるように思う。やはり教育の現場の実態に即して勤務の配置がえをする場合には、いろいろと要素があると思うのです。そういう点に科学的な人事の資料が必要である。この点は御異存がないと思う。それでただいまお話のように、懲戒とか分限の問題までこの問題で扱うということではないのでありまして、私どもの考えているのは、人事管理、人事配置の上に必要な資料である、懲戒は別個な問題であると私は考えております。
  82. 辻原弘市

    ○辻原委員 他の質問もありますからきょうはお尋ねだけにいたしておきますが、いま一点、愛媛県で作られたそれは、形としてはいわゆる委員会の勤務評定要領という形で通達をされておるわけです。従ってわれわれとしては法的な根拠を持たないと思う。今後文部省が一つの試案を作ってそれを具体的な実施に移すための手続はどういうふうに考えられているか、その点を承わりたい。
  83. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 勤務評定の評定責任者というのは、県費負担職員については市町村の教育委員会が行うことになっております。県の教育委員会は勤務評定の計画を立案したということでございます。文部省がかりに出す場合には、これは参考資料でございます。ですから府県があまりばらばらになってもいかぬと思いますし、また行き過ぎになってもいかぬと思うし、教育の現場にできるだけ即応して、それがあれば教員の勤務の成績が大体わかる、こういうようなものであってほしいという気持です。
  84. 辻原弘市

    ○辻原委員 承われば任命権君がやる勤務の評定は、地公法の四十条にそういうふうに書いてあるのです。ところが実際は、愛媛県の例を見ても、校長にそれを通達でもって委嘱しておる。業務命令でもってそれをやらしたという形でもなければ、法律でもって当然の校長の職務としてそれをやらしたのでもない。いわゆる委嘱をして、そういう形のものに準拠して勤務の評定を知らしてほしいということになっておると私は記憶しておるのです。そういうことになりますと、これは取扱い上きわめてあいまいなものになるし、また校長が本来正当に委任を受けた権限としてではなくして、これを内包する形において、この勤務評定いわゆる人事管理というものの主たる権限が校長に属してくるような結果になる。このことは私は教育上非常に、普通の行政官庁とは違って大きな問題になるであろうと思います。これは戦前の教育制度、視学制度を考えてみればよくわかる。やはり視学制度と結んだ、校長のいわゆる勤務として行われた職務内容、こういうものからきた教育上の弊害というもの、これは戦前の教育界を非常に毒した欠陥であったと思います。だから勤務評定、これは非常に進んだシステムであるといえばあり得るのです。普通の一般的な人事管理からいえば……。しかし私は取扱いは非常に後進的な、いわば封建的な、そういう結果を招くということにおいて慎重でなければならぬということをしばしば言っているわけです。従って戦争直後占領下においても、アメリカがこの種のことを指導したその経緯を知っておりますが、的確なものがなかなか得られなかった。そういう機械的なことにおいて人間価値判断というものを、いわば人間というものの価値判断をそういうことにおいてやろうとしているのですから、そこに非常な無理がある。あなたは、現在形式的な人事管理が行われているから評定の一つの尺度というものが必要だと言うけれども、その評定自身が非常に形式的なものである。どう考えても形式的……。そういうことを考えれば私は、秋ごろにそういうものを作るとあなたは言われておりますけれども、そう簡単に、簡単ということはこれは語弊があるかわかりませんが、むしろ作ってもらっては弊害が生ずる危険がある。  もう一つは、この四十条の規定においても、評定というものは、必ずしも、この評定の尺度というものを明確に、ある一定のサンプルを示して全国的に作って行えという趣旨ではなかろうと思います。評定というものは結局一つの適正な評定を行えという意味規定だろうと思います。これは論争にわたりますから避けますけれども、要するにこれは愛媛県一県で起った問題も、事件の発端として悪く活用されております。しかもあれだけのごたごたを起して、内容についても批判をされておる。こういう経緯があるのですから、この取扱いについては十分慎重を期して、相当各方面の意見も聞いて、そうして検討されるなら検討する。でき得べくんば私は、この際そういう問題があったからというので直ちに全国的に及ぼすような取扱い方を文部省はやめてもらいたいと思うのですが、この見解については一体どういうふうにお答えになりますか。
  85. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 これは法律ではっきりやることになっておりますので、やらなければ教育委員会が怠慢であると思うのであります。そこで全国的に見てみますと、やっているところもあるし、やらぬところもあるし、またやっているところでも行き過ぎがあったりしますので、できるだけ——お話のように形式的なものになるかもしれませんが、形式的にならぬように、学校の教師の実態が把握できるような評定要素区分というものを考えなければならぬと思う。ただいま人事院で示されておる評定要素区分によりますと、私は非常に機械的であり、形式的のように思われますので、教育の現場にできるだけ即応したような評定区分が選ばれなければならぬ。しかももっとたくさん選ばれなければ——その人の人格なり勤務の実態というものがほうふつできるようなものが理想ではなかろうか、こういうふうに考えておりますので、できるだけそういう趣旨から早い機会に成案を得て、それを都道府県の御参考にしていただければと思っております。しかしお話のように事は非常に重大な問題でございますので、私の方も非常に慎重に審議をしているもので、決して軽卒にこれをきめようという考えは持っていません。しかし地方公務員法が制定されて以来、すでに相当経過しておるわけでございます。これが実施を見ないということは私ども遺憾に思っております。  それから先ほど校長に委嘱というお話がございましたけれども、校長は人事権の責任の一端を分担しておるわけでございまして、これは今度の教育委員会に関する法律でも、校長にある程度の内申権を与えております。それから当然所属職員の監督権限を持っておりますので、校長が教育委員会の勤務評定なり人事の決定に対する内申権を持っておる、こういう考え方で人事権の一端を分担しておる。ですから私は当然の権限だと考えておるのであります。
  86. 辻原弘市

    ○辻原委員 この一問で終ります。最後に私は申し上げますが、愛媛県の場合はそれが問題になって、校長に本来その職務権限があるという考え方ではなくして、これは教育委員会の一つの委嘱の事項であるという形において取り扱っておること、それが私の申し上げた一つであります。それと新教委法に基いて内申権ということは認められておるのであります。しかしそれは勤務評定はあくまでも任命権者の職務権限になっておるわけなんです。校長は必要に応じて、内申権はあるけれども、あなたが言われるように、人事を分担しておる、いわゆる任命権者の職務を分担すべき権限は持っていない。そこまで考えることは行き過ぎであります。そういうことになりますと、校長の性格というものを法的に統一しなければなりませんし、それは私はあなたの考え過ぎだと思うのです。そういうふうに解したならば、校長の職務権限というものは非常に変ってくる。分担をする、それは求めに応じて内申をするということは、特殊的に認めたにすぎないと思うのです。これは法的な論争になりますが、結論として勤務評定をやらないで、人事の配置なんということはあり得ない。ただ全国的にサンプルとして機械的に扱わせるようなことは避けなければならない。それはその地方々々の特殊性を加味しつつ、一応自治庁がそういうサンプルを作っておるなら、それに各県の教育的なものを加味して、それに誤まりがあるならば文部省が指導すればよろしい。それはこちらから押しつけるのじゃないとあなたはおっしゃるかもしれません、またそうでないと私は善意に解釈いたしますが、しかし勢い各県がそれに準拠して、その県の実情よりも、全国的なサンプルということを中心とした勤務評定が行われるということがより問題だと思うのです。  もう一つ、あなたのニュアンスの中に、校長の職務権限というものを任命権者に近づけようとしておるのでありますが、これは非常な問題をかもす。具体的に言えば、勤務評定の中で校長が教員の総合点をつけろというような形をやれば、それぞれの学校における職員間のチーム・ワーク、校長と職員間の問題というものが、今日よりも非常にむずかしい関係になるということを予想するがために、そういう機械的なことはおやめなすった方がよいのではないかということを申し上げておるのございます。内容の点はまだわかっておらないようでございますから、いずれまた機会を改めてもう少しあなた方のこの問題についての認識も伺いたいと思います。きょうはお考えだけを承わるにとどめておきたいと思います。
  87. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 ただいま愛媛県の勤務評定を校長に委嘱、こういうお話でございますけれども、これは委嘱じゃなくて、校長の責任上やらしたわけでございます。従って周桑郡の三十四人の校長が拒否したので、これに対しては懲戒処分をしておるのであります。私どもは校長は管理者としての立場を持っておる、教育委員会の責任を分担しておるという見解をとっておるのであります。
  88. 野原覺

    ○野原委員 関連して一点。私の間違いなのか、内藤さんの考え方の違いなのか、お尋ねしておきたいと思います。勤務成績の評定は教員の場合は市町村の教育委員会だ、こういうことを言われましたが、これは県教育委員会の間違いじゃないのですか。
  89. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 県費負担職員と私申し上げました。県費負担職員につきましては、県教育委員会の企画立案のもとに市町村教育委員会が行うのであります。地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十六条でございます。
  90. 長谷川保

    長谷川委員長 櫻井奎夫君。
  91. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 昭和三十二年七月六日に、佐賀地方検察庁の検察官である森崎猛氏より中島勇氏外四名にかかる起訴状が提出されておりますが、私はその起訴状についての法務省あるいは検察庁の御見解を承わりたいと思うのであります。この問題は非常に大きいのでありまして、遺憾ながら今日は私ども文教委員会は午前中から文教行政にかかる諸種の審議を続けておりまして、なおまた今現在の昼飯なしでやっておるわけです。時間が限られておりますので、私は最後まであるいは質問ができないかもしれませんが、残った分はあとにまた機会をあらためて質疑を続行する、こういうことで井本局長にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  この起訴状によりますと、公訴事実といたしまして、被告人中島勇は昭和三十一年四月一日から云々とずっと書いてあります。そうしてこの重大なところは「同組合における佐賀県内市町村立学校県費負担教職員の定員削減反対、完全昇給昇格実施の要求貫徹の目的を以って被告人等は同組合傘下組合員である市町村立小、中学校教職員をして年次有給休暇に名を藉り、市町村教育委員会及び学校長の承認なくしてもなお就業を拒否し、同盟罷業を行わしめるため、これを煽動することを他の執行委員等と共謀の上」第一、第二、第三、第四、第五、第六の行為があった、このことは地方公務員法の違反であって、同法第六十一条第四項、第三十七条第一項後段に該当するものである、こういう趣旨の起訴状であると思います。それでこの起訴状の公訴事実が成立するためには、まず先ほど読み上げました中の、果して佐賀県の今回行われた一顧賜暇の問題が、年次有給休暇に名を借りた同盟罷業であったかどうか、こういうことが第一点に考えられると思います。第二点としては、ここに述べてある通り、市町村教育委員会及び学校長の承認なくしてもなお就業を拒否した、こういうことが書いてあるわけでありますから、年次有給休暇の際は一体学校長及び市町村教育委員会の承認がどうしても必要であるのかどうか、こういうことがまず第二点の問題としてここに浮び上ってくるのであります。次に第三点としては、ここに羅列してある第一項から第二、第三、第四、第五、第六の中島勇君以下三名の行為が、他の執行委員と共謀して教唆扇動したところの行為であったかどうか、こういうことがこの起訴状の問題であると思うのであります。従って私はこの問題について以上の三点についてお伺いをしたいと思うのであります。  まず第一点といたしまして、この年次有給休暇についての考え方、これをあなたはどういうふうに考えられておるか。私どもはこれはあくまでも憲法に保障された権利であるというふうに考えるわけでありますが、これは非常に時間が長くなるわけでありますが、あなたはこれはどういうふうに考えておられるか。
  92. 井本臺吉

    ○井本説明員 学校の先生方が年次有給休暇をお取りになるということは確かに一つの権利だと存じますが、これは無条件に、要求次第いつでも休めるというものではなくて、この起訴状に記載してありますように、地方教育委員会もしくは校長の承認が要るという建前を私どもはとっております。先ほどのお尋ねの第一点の同盟罷業を行わしめるため云々という点をどう見るかというお尋ねでございますが、休む権限のないのに、許可のないにかかわらず休むということは、結局正当な職務行為の放棄でありまして、これは私どもは罷業行為だというように考えておるわけでございます。  次に共謀の上というのはどういう意味かというお尋ねがあったと思いますが、要するにこの起訴状の前段に記載してありまする通り、起訴されました執行委員の方々並びに他の執行委員の方々がいろいろ相談した上で、第一から第六に記載されますところのことを下に流したということで、これは私どもの法律的な用語をもっていたしますれば、地方公務員法の第三十七条、第六十一条の四号に当るような罷業行為を扇動したという行為に当るというように考えております。
  93. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 大体私の全体の質問に対してお答えになったようでありますが、この権利であるということは、あなたもお認めになったように、年次有給休暇というものは、これは憲法の第二十七条二項を受けて、そうして労働基準法がこれを定めておる。労働基準法の第一条は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」こういうことであり、これが第一項です。またそれを受けて二項として「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」こういうふうにはっきり労働基準法では打ち出しており、なお労働基準法の第三十九条は、年次有給休暇の権利は、先ほど申しました憲法第二十七条あるいは労基法の第一条の精神を受けてこれを制定をしてある。この労基法の第三十九条には、御承知のように使用者がその使っておる労働者に対して有給休暇を与えなければならない、これが第一項です。なお第三項として「使用者は、前二項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」こうはっきり法的にこれは規定されておるのでありますから、これはあくまでも権利であるということは一応成立をするわけであります。その権利を守るために施行規則の第二十五条等によって使用者が積極的に労働者の有給休暇の請求の時季を聞くべき義務を規定してあるのである。なおまた百十九条には、これに対して有給休暇を与えなかった場合の罰則六カ月以下の懲役、五千円以下の罰金、こういうふうにはっきりと規定をしてある。従ってこの年次有給休暇が法的に見ましてもあくまでも労働者の権利であるということはあなた方がお認めになった通りだと思う。ただしかしあなたのさっきおっしゃる三十九条のただし書きです。これをあなた方は唯一の根拠にしておられるようでありますが、この労働者に有給休暇を与えねばならないということは、いろいろな施行規則にも罰則が設けてあること、これは厳として侵すべからざる実は憲法から流れて来ておるところの大きな労働者の権利である。「但し、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」これはただし書き、このただし書きは本文に決して優先するものではない。この立法の精神からいって、ただいろいろ本文と先ほど申しました施行規則等との対照上、これは使用者が三項の本文に違反して処罰されることを免責する意味のものである、こういうふうに立法的には考えざるを得ない。これは与えなくてもいいという論拠は何も出てこない、また例をとるならば、長くなって恐縮ですけれども、吾妻光俊教授がその「労働基準法」の中で、次のようなことを述べておられる。「使用者が有給休暇の時季について、労働者の請求を求めることを怠り、そのため労働者がその時季を請求せずに年度を徒過した場合、労働者が、その求めた時季の休暇に労働しようとするときこれを阻止せずに、その年度を徒過した場合には、すべて本条違反が成立すると解すべきである。」これほど年次有給休暇というものを与えねばならないということには重点を置いて、法律学者も考えておる。そのためにこの厳重なる罰則さえも設けておる。この権利を労働者が施行する場合、これがかりに一人であった場合でも、共同にこれを施行した場合においても、その権利が権利でなくなるという法的理論は成り立たない。従ってまず、この一曹休暇の請求に対して、これを全面的に、だれも一人もとってはならないとうふうに拒否するのはこれは私は明らかにこの労基法三十九条違反、こういう疑いがまず考えられる。このただし書きというものは法的性質の上では私は決して本文に優先するものではない、こういう解釈をとりますが、局長の見解はいかがですか。
  94. 井本臺吉

    ○井本説明員 ただいまお尋ねのような見解もあり得るとは存じますが、私どもは違った見解をとります。労働基準法の三十九条第三項のただし書きに規定がありますように、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」とはっきり書いてあるのでありまして、学校業務の正常な運営を妨げるという事情にあります場合は、他のときにこれを与えることができるというわけでありますから、校長もしくは地方教育委員会の承認がなければ休暇がとれないというように私どもは解釈するのでありまして、要求したときにいつでも無条件に休めるというようには私どもは解釈しておりません。
  95. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 そこでしからば今あなたがおっしゃいました事業の正常な運営とは一体どういうことをさしているか、こういうことに発展してくるのであります。事業の正常な運営を妨げる場合にはほかのときにこれを与えることができるということになっているのでありますが、しからば事業の正常な運営とは一体何をいっているのか、こういうことになるわけであります。労働基準法三十九条でいうところの「事業の正常な運営」というのは、労調法の「業務の正常な運営」よりはるかに広範囲なものと解釈するのであります。業務でなく事業、ここで言えば学校としての運営、一個の有機体としての事業の運営が妨げられる場合、こういうふうに解釈できるのでありますが、あなたはどういうふうにそれを解釈されておりますか。
  96. 井本臺吉

    ○井本説明員 労働基準法の三十九条三項には「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と書いてありまして、具体的にどの場合が事業の正常な運営を妨げる場合に当るかどうかということにつきましては、これは結局通常の場合において、さようなことは正常ではないという結論になりますればこのただし書きに当るのでありますが、最後はやはり裁判所の判断に待たなければきまらないことではないかと考えております。
  97. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういう総括的なお答えをいただきましてもこれは判然としないわけであります。もちろんこのことはあなたの方で起訴しておりますから、すべての問題はそれによってはっきりするでありましょうけれども、問題は起訴をしたというその事実に対してわれわれは非常に合点のいかぬ点がありますから、起訴の事実について、列記をされたものの内容について聞いておるのであります。  それからこれは委員長に伺いたいのでありますが、きょうは法務省の担当の井本刑事局長のほかに、われわれは起訴をした検察庁当局について見解を承わりたいと思いまして、その御出席をお願いしてあったわけであります。これは出席がないのか、委員長からお答え願いたいと思います。検察庁は国会出席の義務は持たないのでありますか。
  98. 井本臺吉

    ○井本説明員 その点についてちょっと私の方から……。実は委員部の方に私どもからお答えしてありますが、本日朝九時から午後の五時過ぎまでにかけまして、全国の検事を集めまして、司法警察官あるいは検察事務官等の指導訓練の会議をやっております。最高検の方々もその会議の準備を前からいたしておりまして、ちょっと手が離せないので、私が代表して参ったわけでございます。お話の御趣旨によりましてはまた期日でも変えていただきまして、別の機会にまた御尋問をいただきたいと考えております。
  99. 辻原弘市

    ○辻原委員 井本局長が検察庁をも代表されるということであれば、本日はそれで了承いたしますが……。
  100. 野原覺

    ○野原委員 はっきりしておきたいのですが、実はこの前の文教委員会でも佐藤検事総長の御出席を要求したのですけれども、お見えにならないのです。委員部から私どもに対する返答によれば、検事総長が国会の委員会には出ない慣例になっているのだ、こういうようなことで御出席にならないとずれば、これはおよそ問題があろうかと私は思う。だからその辺はどうなっているのか究明したい。
  101. 長谷川保

    長谷川委員長 この点は、およそ国会で要求した場合出席をしないということはいかなる事情があっても許さるべきではないと思います。当然出席していただかなければならぬと思います。しかし何分にも急のことでございますから、そういうような事情があって出て来なかったということにつきましては、ただいま私も伺ったのでありまして存じませんでしたが、今後はそういうようなことのないように、国会は御承知のように国権の最高の機関でありますから、あくまで万障繰り合せて出て来るのが当然でありまして、今後これにつきましては私から注意をいたします。
  102. 高村坂彦

    ○高村委員 関連して。実は政府委員を国会が開会しているとき、あるいは委員会の開会しているときにお呼びになることは自由であります。しかしそうでない人、たとえば参考人などを呼ぶのは、いろんな手続を経て理事会等できめて、しかもここできめて呼んでもらわぬとやはり従来の慣例からいっても間違っていると思います。これから政府委員を呼ばれることはけっこうでございますから……参考人を呼ばれることは理事会等で決定されてきまったのですかどうか、私、ちょうど休んでおりましたので恐縮ですがどうなっておったのですかお聞きします。
  103. 長谷川保

    長谷川委員長 公安委員会の問題ですか、この点は別に諮ってありません。
  104. 高村坂彦

    ○高村委員 それはおかしいのではないですか、従来の例からいって……。今のお話では公安部長なんか呼んでおられるのでしょう。
  105. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは電話帳を見ましても、法務省の次にちゃんと検察庁というのがあるのです。われわれの理解では、これはやはり政府のいわゆる法務省に所属する機関と心得ているのです。これは裁判所とは事は違うと思う。従ってわれわれとしてはいわゆる国政の所管事項については当然検察行政という問題も入ってくるし、国会における常任委員会においても法務委員会がそれを所管しているはずだと私は理解している。従ってそういう政府機関の人を呼ぶのには、今高村さんのお話がありましたが、私はちょっと疑問が出て参っております。一々参考人を理事会委員会で議決して呼ぶ慣例もないのではないか、その場合には説明員ないし政府の補助的説明者の立場において従来慣例的に御出席を願っているのではないか。もし政府委員のバッジをつけていない人を呼ぶのに一々ここで議決を経なければならぬということになりますと、やはり多少今までの慣例も調べてみなければなりませんし、これからの慣例も作ることになりますから、これは明瞭にしておいた方がいいのじゃないかと思います。
  106. 長谷川保

    長谷川委員長 委員長はやはり検事総長は今まで国会で呼べば出て来たように思っておりましたが、委員長の理解が間違っているかもしれません。今慣例を調べさせておりますから、後ほどこの点は明確にいたしたいと思います。質問を続けて下さい。
  107. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで井本さんが、これは法務省でありますから当然それらを代表されていると私は理解いたしておりまするが、できれば当事者から具体的に承わった方が、あなたも調査の上でという言葉をたびたび申されるだけの煩瑣が省けると思いましたので、あえて私は御出席を願ったわけであります。  そこで先ほど櫻井委員お答えになりました有給休暇の取扱いに対する労働基準法の問題でありますが、あなたのお答えによりますと、一つは裁判がきめる。法律上の見解を実は求めておるわけであります。この問題について判定を下す場合の、警察なり、あるいは教育委員会もそうでありましたが、検察当局も、非常にこの三十九条のただし書きを重視された解釈のもとに、有給休暇というものは権利であると口では申しながら、事実上は何ら権利でないような認識の上でこれを問題にされておるというふうに私どもは理解をしているわけであります。そこで問題は、業務に支障がある場合は、これは他日にそれを与えることによって変えることができる。こういうふうな趣旨で書かれておる。ところが私どもは、この場合の業務というのは、これは起訴以前の捜査の段階においてもしばしばあなたにも申し上げました。特に教育の問題の中における業務というものは非常に広範なものであって、いわゆる行政官庁、デスク・ワークにおける業務というものとも若干意味合いが違う点があるということも指摘した。そういうこともかねて、この場合の業務というものは非常に範囲の広い形において、いわゆる総合判定せらるべきものである。だからちょっと都合が悪いからそれはあかんのだというふうな意味ではない。そういう単純な、常識的な意味ではなくして、もっと深い法律的意味も包括しておる、こうわれわれは理解しておる。そこで例として労調法の七条に同様の文言がありますが、その場合にはこれは漢文になっておる。言いかえると字が反対にひっくり返っております。事業と労基法には書かれておる。労調法の場合にはそれを業務と逆に書かれておる。一体その法律上の意味の相違はどうなのかということを聞いておる。ということは、われわれが常識的に今仕事をやっておるのだから、ちょっと差しつかえがあるという場合には、それは一つの業務をやっておる。ところが事業という場合にはそういう個々の、いわゆる業務をも包括したもっと範囲の広いもの、そういうような解釈を私どもはしておる。これは常識的な解釈であるかもわかりません。しかし少くとも同じような労働法関係において二つの用語で定義されておる。その一体相違点というものはどこにあるのかということをまず承わりたいのが趣旨なんです。先ほどのお答えにしても、それらの解釈については判然といたしません。どう解釈されておりますか。その見解を検察庁の見解もあわせ代表してあなたに伺っておきたい。
  108. 井本臺吉

    ○井本説明員 私どもはこの本件起訴にかかる事実につきましては、いろいろ説をなす方もありますけれども、要するに一種の同盟罷業行為でありまして、それをただ有給休暇ということに名をかりた同盟罷業である、名をかりた同盟罷業であるというふうに解釈しておりますから、共謀して休んだ行為がいけないのだ。それがただ有給休暇に名をかりて、いろいろ権限があるかのごとく申し立てておりますが、これはほんとうにストライキ行為だというふうに解釈しておりますので、さような点につきましては多く論議するまでもなく、この三十九条、六十一条に違反するものであるというような考え方を持っております。
  109. 辻原弘市

    ○辻原委員 それはとんでもないことで、ただ印象的に同盟休業をやったらしいから、それは有給休暇に名をかりてやったんだろうというラフな考えだけで——その中に重大な法律上の争点が出てくる。しかもそれは捜査の段階でしばしば問題になっておるにもかかわらず、それについて明確な結論を得ずして起訴したということは、私は非常におかしいと思う。そういうことでしばしば事件というものが作り上げられるならば、これはわれわれは検察当局、それから法務省に対しては、いささか言葉は過ぎるかもわかりませんけれども、信を置くわけには参りませんね。そういうことはささいな問題なんだ、ともかく同盟罷業をやったんだ、それは有給休暇に名をかりてやったんだ、従ってそれらの間における個々の法律問題については多くは論争しませんでした。——それは重大な問題ですぞ、局長。ともかく問題の争点ははっきりしておる。これは前の当委員会においても大久保長官もあなたもそうおっしゃられておる。明らかに業務に、事業に支障があるかどうか、これがポイントです。その場合に支障があるかどうかの判定は、これはいろいろ見解がまちまちであります。あなた方の見解は、校長が承認すればよろしいのだ、こういうことなんだ。承認をせなかったからこれは違反の事実として問題になったんだ。逆にそれじゃ承認をしておったらどうだ、差しつかえありません。だから佐賀県における高教組が同様の行為をやったけれども、このことは承認があったから問題にならぬと申しておる。従ってここがポイントであることは明らかなんです。それにはいろいろな見解——これは刑訴法の問題もありましょうが、当然やはり一つの労働法上の問題であります。それについて見解を下さずして起訴したということをあなたは今申された。私はそれは納得がいかないのであります。その点の解釈が明瞭になれば、またそのことを探究していくことによって初めてあなたが、また世論が教育の業務というものの内容は一体何なのか、そこから生まれてくる先生方の教育に対する責任というものは那辺にあるのかということが明瞭にわかるわけです。こういうことを探究せずに、ただ一つの違反事件としてのみ取り扱われておるところに私は大きな誤謬があるということを指摘するのでありますが、あなたはそうはお考えになりませんか。
  110. 井本臺吉

    ○井本説明員 先生方がお休みになれば、これは業務が阻害されることは当然でありまして、ただし地方教育委員会なり校長さんが承認されるのであればさような点についての瑕疵はついえさるのでありまするが、従って、あとは校長さんの承認があればよろしいということを申し上げたわけであります。要するに本件につきましては、私どもはただいま申し上げましたように、これは校長先生の承認を得ずに先生方が業務を放擲されたのでありまするから、しかもそれが多数集まりまして放擲されたのでありまするから、これは同盟罷業ということに該当する、ただそれを有給休暇であるとかいや何であるとかいろいろ弁解しておりまするが、それは名をかりたのにすぎない、本質は同盟罷業であるというふうに解釈しております。
  111. 辻原弘市

    ○辻原委員 法律上の見解を承わっておるときに、それは弁解をしておるとか、あるいは名をかりたのだとかいう言葉は語弊があるように思います。そうじゃないと思います。これは、あくまでも裁判というものはそうでしょう。幾ら人間の印象、第六感があったって、やはり法律に書かれていることを正当に法律上の解釈によってやるのでしょう。私は公正な裁判はもとよりそう行われておると信じておるのです。従ってその裁判に対抗する検察当局の任務というのは、当然法律上正当な見解をもって起訴し、不起訴とするという態度でなければならぬ。しかしあなたのお答えから受ける印象は、どうもいわゆる人間の印象という総合的な、一つ人間の勘というもの、こういうものをもって判定せられているような、そういうきらいが、あるいは私の誤まりかもわかりませんが、あるように思うのです。そういうようなお態度では、われわれとしては検察当局について個々の法律の論拠をあげてお尋ねする勇気を失う。しかしこれはあなたがそうではないとおっしゃればそれまでのことでありまするが、どうも私はそういうふうな印象を受けます。  そこで今あなたがこの三十九条の問題についておっしゃられた、一日でも休めば事業に支障があるということと、しかし校長が承認をしておればその罪は免れる、こう言う、それにも非常に論理の矛盾があると私は思うのです。片一方は、前段は法律上のことを言われた。かりに業務に支障があっても許可を得ておったならばそれを免れるとおっしゃった。後段はそうではなしに、法律上の一般的認識を言った。あなたのお答えにも非常に問題があると思う。  もう一つ、それではお伺いしますが、その場合の承認というのは、あなたも実態をお調べになったと思うのですが、この場合の承認というものは、届け出て必ず許可を受けなければならぬ承認事項として、法律上、労働法上慣例としてやられておるかどうか。また労働法上ではなくして、一般の教職員のいわゆる休暇の取り扱い、職務分限の取り扱いについて、特に有給休暇の問題について従来の慣例なり実際行われている慣行というものは、そういうふうに必ず承認を受けなければならぬものというふうにでき上っておるかどうか、この点についてあなた方が捜査の段階で調べられたその結果についてお答え願いたい。
  112. 井本臺吉

    ○井本説明員 本件のように多数の方方が三、三、四という割合で休まれるというようなことについては、先ほど申しましたように、休むこと自体によって直ちに正常な業務に支障が生ずるということを申し上げたわけであります。個々の先生方がお休みになる際に、そのときの事情によりまして、ごく少数の方で、他に代替の人員もつくというようなことで、当然校長さんが許可されるというような事情のもとにおきましては、あるいは届出即慣例上許可をするということが、実際の運営になっておるということもあるやに聞いておりますが、本件の場合につきましては、その場合とは全然違うというように私は考えております。
  113. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 今の問題ですが、運営を阻害したかどうかということは、もっと非常に大きな争点があります。これは短時間では結論を得られないと思いますので、それは割愛いたしまして、この次の機会に譲るといたしまして、あとに言っておられるこの承認を得たかどうかという問題、地教委なり校長の承認を得れば同盟罷業ではないのだ、こういうことを言っておられるが、しからばこの有休休暇の承認権者は一体だれであるか、こういう問題が法的にはっきり浮かび上ってくるのです。この佐賀県の場合、佐賀県の教育委員会が懲戒処分事実の説明書というものを発表しておりまするが、これによると、やはり二月十四日には全教職員の二割七分、十五日にも同じく二割七分、十六日には三割三分余の者が一齊に休暇を請求し、市町村教育委員会ないしは校長の承認を受けないまま欠勤したのである、こういうふうに説明書にははっきり書いてある。この場合で見ましても、一体有休休暇の承認権は地教委にあるのか、校長にあるのか、法的にはっきりしていない。しからば佐賀県にはそういうことをはっきりした条例があるかというと、これは何もない。ただ従前の例によるということで、佐賀県の佐賀県立学校職員の休日及び休暇に関する条例というのがあります。この第四条によれば、「有休休暇とは、」「職員が任命権者の承認を得て成規の勤務時間中に給与の支給を受けて勤務しない期間をいう。」こういうことになっておって、承認権者はこの条例によれば、県教委ということになっておる。あなたは校長の承認があればそれでいいということを言っておられるが、佐賀県の条例ではそういうことは書いてない。しかも県教委は地教委または校長に承認権の事務委任をしておるのだ、こういうことを言うかもしれない、あるいはそういうふうに言ってきておる。ところがここに実に重大な問題があるのであって、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第二十六条で、教育委員会が事務委任をする場合は、教育委員会の規則でこれを定めねばならぬとちゃんと第一項に書いてある。ところが佐賀県においては、佐賀県教育委員会の規則にはこういう定めはない。こういう定めがないのに、校長の承認を得ればいいのだ、地教委の承認を得ればいいのだということは、法律違反じゃないですか。そういう規則も作らないでそういうことをやっておるということは規則違反であって、そういうことは明らかに法律的に無効であると思うが、この点はどういうふうに考えられるか。
  114. 井本臺吉

    ○井本説明員 市町村立の中小学校教育職員の休暇の承認権者の問題につきましては、いろいろ問題があることはあるのでございまするが、私どもは結局任命権者が承認をすべきものであるというように解釈しておるのでございます。学校長は、これは地方教育委員会の管理下にあって、所属の職員を監督する地位にあるものでありますから、結局地方教育委員会の権限を補助するというか、その手足になってやっておるというような考え方で、私どもの考え方は地方教育委員会が休暇の承認をする権限を持っておるものであるというふうに考えております。
  115. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 そこが非常におかしい。それじゃ法律違反じゃないですか。地方教育行政の組織及び運営に関する法律にはっきり、そういう事務を委任する場合は、これは教育委員会規則で定めるところによりとしてある。従ってあなたの言われることが合法的に成立するためには、佐賀県の教育委員会が佐賀県教育委員会規則を作って、その中に、こういうことを地教委に委任することができるということをちゃんと明記したものがなければならない。それが佐賀県にありますか。
  116. 井本臺吉

    ○井本説明員 ちょっと私思い違いをしておりまして、結局地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第四十三条によりまして、「市町村委員会は、県費負担教職員の服務を監督する。」という条文がございます。この服務監督から生ずる承認であるというふうに考えております。なお学校長につきましては、学校教育法の第二十八条に規定がございまするが、「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」という規定がございます。この規定とただいま読み上げました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第四十三条の規定に基きまして、地方教育委員会並びに校長はその有給休暇の承認権者であるというように考えております。
  117. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこはこういうことなんですよ。問題は佐賀県の場合はと限定しているのです。佐賀県の場合は一体有給休暇についての承認の専属権をどこが持っているかということです。今あなたのお話によると、組織及び運営に関する法律の四十三条、これは一般的事項ですね、これと、それから学校教育法の二十八条によって、主たる権限は地教委にある、そうして校長も、校務を処理するという点から服務に関する監督が出てくる、今こういうような解釈をされた。ところが従来あなた方はここで任命権者でありますということを答弁されておる。それからもう一つ、佐賀県の場合には県条例がある。県条例によって、佐賀県市町村立学校県費負担教職員の勤務時間、休日及び休暇に関する条例の第二条では、「例による。」とこう書いてある。「例による。」ということは、読みかえてみると、都道府県の教育委員会、すなわちそれが任命権者であるということです。従来はそう答弁されてきた。今あなたが言われたのは地教委と校長、これはどっちがほんとうなのか。従来この佐賀県の問題についてわれわれがしばしばこの点をお尋ねいたしたときには、これは任命権者であります、とこう言った。任命権者というのと地教委とは違います。どっちがほんとうなんですか。
  118. 井本臺吉

    ○井本説明員 もう一度……。
  119. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたのお答えになりましたのは、承認権者は地教委、それから学校教育法の二十八条に基いていわゆる校務を処理するという中から出てくるという意味において校長もある、こういうことですね。ところがその中には任命権者は入っていないでしょう。任命権者は都道府県の教育委員会、佐賀県でいえば佐賀県の教育委員会。今あなたのお答えは、任命権者が承認権を持っている、また佐賀県は条例を作って任命権者であると言っている。任命権者即佐賀県教育委員会だ、ごう言っている。今櫻井君に対するあなたの御答弁では、地教委だと言う。そこで非常に混迷を来たしました。これは非常に重要な点です。どっちなんですか。あなた方は承認があったらいいとか悪いとか言っているのですが、承認をあずかるところがわからないようなことでは承認を求めにいけませんよ。どこなんですか。
  120. 井本臺吉

    ○井本説明員 私の答弁の筋がはっきりしなかったかと思いますけれども、この休暇の承認をするものは監督権者にあるのでありまして、従って本件の問題におきましては、地方教育委員会が監督権者であって、そこに休暇の承認権がある。校長さんは地方教育委員会の補助機関として地方教育委員会の権限を代決しておるというように御了解願いたいと思います。
  121. 辻原弘市

    ○辻原委員 今地教委と校長との関係をお尋ねしているのではありません。県教委と地教委との関係を実はお尋ねいたしたいと思っているのであります。あなたは承認者は監督権者だと言われた。監督権者というものは、四十三条に基き地教委だと解釈するのであります。ところが佐賀県条例に基けば、佐賀県立学校教職員の休日及び休暇に関する条例第四条に、「職員が任命権者の承認を得て正規の勤務時間中」云々と書いてある。これとの関連はどうなりますか。これには「監督権者」とは書いてない。「任命権者」と書いてある。
  122. 井本臺吉

    ○井本説明員 昭和三十一年九月三十日の佐賀県条例第五十号の佐賀県立高校職員の休日及び休暇に関する条例の第四条の二項に「有給休暇とは、第五条の休暇、ならびに第六条から第十二条までの規定に基き職員が任命権者の承認を得て正規の勤務時間中に給与の支給を受けて勤務しない期間をいう。有給休暇は、一時間を単位として与えることができる。」と書いてございまして、昭和三十一年九月三十日の佐賀県条例第五十一号には、第二条に「佐賀県市町村立学校県費負担教職員の勤務時間、休日及び休暇については、佐賀県立学校職員の例による。」こう書いてございます。従って、この場合地方教育委員会がこの休暇を与える承認権者になるというように解釈いたしております。
  123. 高村坂彦

    ○高村委員 議事進行について。私以前から疑問を持っているのでお聞きいたしたいと思いますが、国会のいろいろな審査権が制限されることは困ると思いますけれども、ある一つの事件について検察当局が起訴している。それはもう起訴したから裁判にかかるわけです。裁判にかかって司法権が判断して有罪かどうかを決定する。その間において、最高の機関であるとはいいながら、立法の立場にある国会でその起訴の当否あるいは法令の解釈、そういうことを詳細に論議することは三権分立の建前からいってどういうものだろうか。あるいはそれが裁判の公平に影響を与えるようなことがありはしないか。私はこれは確信がありませんが、国会でやることに対して若干疑問があるのです。そういう問題について全然疑問がないということであれば別ですが、もしも疑問があるというならばその点明らかにしてもらって、それから次ぎにしてもらった方がいいんじゃないか。私はまだ国会の経験があまりございませんけれども、常識的に考えて、三権分立の建前から、司法権の公正という意味からいって若干疑問があるのです。ひとりこの問題だけではない。いろいろな問題について今後起ることがあると思う。私はこの事件について皆さんがおっしゃることに対してどうというのではないのですけれども、いろいろお聞きしておって、今後検察当局が公判を維持して行かれる上において弁護士との間にいろいろ問題があると思うのです。その場合、直接ではないが、国会の審議を通じて介入する結果になることは一体司法権とわれわれ国会との関係においてどうかという若干の疑問があるので、もし皆さんの御了解を得られれば慎重に考えてもらいたい。
  124. 野原覺

    ○野原委員 ただいまの高村委員の御発言でありますが、検察庁が起訴をするということは、司法権の発動ではなくて行政権の発動で、検察行政の範疇に属することは高村君の御承知の通りであります。佐賀県の場合に、検察庁が起訴をした、このことの事実に実は私ども大きな疑惑を持ちますので、これを裁判に係属される以前に国会が取り上げて論議するということは、決して越権でもなければ、法律の権限外のことをやっているものでは断じてないというように思うのであります。もしそれができないということになると、今後国会は検察行政に対しては何ら意見を差しはさむことができない。私ども国会の権限を縮小するかのごとき悪い慣例を残すことにもなります。これは従来なかったことではありませんので、やはりこの問題の論議は続けていくように、高村委員の特段の御考慮と御協力をお願いしたいと思います。なお私は意見がありますけれども、頭脳明晰な高村さんのことでありますから、このくらいでおわかりになると思うので、やめておきます。
  125. 高村坂彦

    ○高村委員 ちょっともう一点。私もまだこれは確信があるわけではございませんで、非常に疑問があるから皆さんの御考慮をいただいたというだけなのですが、今公判に係属する前というお話がございましたが、起訴すれば、もうこれは裁判所と検察当局との間の問題だと思うのです。従って公判が開廷はされませんけれども、もうすでにそれは係属しているものだと思う、そういう意味で申し上げたのですが、これはしかしまだ確信のあるわけでございませんから、皆さんの御了解が得られなければ、きょうお進めになってもけっこうだと思います。  いま一つ、先ほどの問題ですが、これは委員長お話し申し上げるのですが、私はやはり慣例からいって政府委員外の人を呼ぶ場合には、たといある省の官吏であってもこれは参考人として呼ぶよりないと思うのです。参考人として呼ぶ場合には、やはりこれは委員会の意思の決定に基いて手続をとられるのが当然である、そういうことがもし乱れてくるとこれは困ると思うのであります。おそらくほかの委員会においてもそういうことはなかろうと思います。それで、これは過去のことを私は申しませんけれども、今後はそういうことのないように一つぜひお願いしたい。
  126. 野原覺

    ○野原委員 これは起訴しておりましても、必ずしも裁判に係属されるとは限らない。起訴しておることはこれは取り下げられるわけです。だから井本さんが御答弁ができなくて、これは大へんなことだ、この公訴事実は少くともこれはえらいことになっておる、「年次有給休暇に名を藉り、市町村教育委員会及び学校長の承認なくしても」云々というこの箇所は、これはえらいことなんです。これはどんなに考えても、佐賀県の県条例によれば任命権者に承認権があることは明らかです。任命権者がこの地方教育委員会並びに校長に委任する場合には、櫻井委員が指摘したように、これは規則がなければならぬ。しかしその規則はないのです。だから任命権者の意に反してというこの公訴事実の文章であれば、これは一応筋が通るでしょうけれども、少くとも「市町村教育委員会及び学校長の承認なくして」というこの文言は、これは削除しないと、公訴事実の実体とこの文言とのずれが明らかに生じてきておると思う。だからこういうところから——なお、いろいろこれから申し上げます。これは私どもは重要ですから、今日は簡単にと思いましたけれども、どうも検察庁には確信なくしてこれを起訴したということが漸次明らかになりつつございますから、これは私どもあなた方のそういう考えをこれから逐次出していく、そうなると井本さんは帰られて、これは佐賀県の司波検事正並びに最高検察庁の佐藤さん方と相談されて、これはえらいことだ、もう一ぺん考え直そうじゃないかということで起訴を取り下げる、こういうことになれば、これは国会は大きな働きをしたということになるわけで、この辺は高村さんもわかっていただけようかと思うのです。だからそういう点で私どもは論議をしておる。県の教員が起訴をされる、また裁判に証人として喚問をされる、佐賀県の教育界は文部省と検察庁と警察とこの三つからとんでもない泥沼に過去半年間追い込まれて、また実は泥沼に追い込まれるということになると、これはやはり一佐賀県の問題ではないのです。国の教育全体の問題でございますから、文教委員会はこういう教育の混乱を予見して、その混乱を前もって引き起さない努力をするということは当然の職責なのです。こういう意味から私はこの論議というものは決して越権でもなければ、権限外のものでもない。重ねてこれは高村さんにも御了解願って——高村さんもしいてはっきりした意思を表明しておるわけではない、再考を求めておることですから、この辺で御了解をしてもらいたいと思うのです。  もう一点は、政府委員以外を呼ぶ場合に云々ということですけれども、これは私は先例がある。これは従来私も他の委員会にも関係したし、予算委員会にも出ておりますが、これは特段に他党から異議がなければそのことは認められてきておるのです。しかしながら従来、ここ一両日のこの委員会は、自民党の文教委員の方の出席もきわめて悪くて、いろいろ相談する時間的な余裕その他まずい点があったとすれば、これは手続の上で考えたらいいのであって、必ず理事会にはからなければならぬとか、委員会にはからなければならぬとかいう窮屈な運営には国会法はなっていない。私も国会法をあずかっておる議運の一人としてこれは責任をもって申し上げます。  以上で御了解を願いたい。
  127. 長谷川保

    長谷川委員長 今の高村さんのお申し出につきましては、一般の参考人を呼ぶときには従来通り理事会委員会の承認を得ていたします。今の検事総長その他官吏を呼ぶことにつきましては、なお委員部でだいぶ調べておりまして、多分委員部長と事務総長と相談していることだと思いますけれども、まだ調べに行ったまま帰って参りませんで、いま少しく後にまた申し上げることにいたします。  なおこの起訴事実についての審議につきましては、確かに高村委員のおっしゃる通り、裁判にかかりました後についてはある程度の疑点があると思いますけれども、従来もこれらの点につきましては、ことに人権侵害の疑いがあるような場合につきましては相当審議しておったように思われますので、当委員会はこのまま続行いたしたいと思います。
  128. 井本臺吉

    ○井本説明員 念のため申し上げますが、佐賀地方検察庁におきましては中島勇外三名につきまして本月六日付で公判請求書を提起しておりますので、現在この事件は佐賀地方裁判所で審理中の事件でございます。  また法律問題その他につきましては、先ほど来概略私が申しましたような状況で判断をしておるのでございますが、要するに、何回も申し上げますように、本件は個々のこまかい問題に首を突っ込んでいろいろ審議をいたしますると、いろいろな問題点もあるかとも存じますが、この関係の方々の供述などにもいろいろ出て参りますが、一つの実力行使ということで共同で自分の仕事を放擲したという点を追及しておるのでありまして、それが形では有給休暇に名をかりておるという点が問題でありまして、その点に関していろいろ御主張があると存じますが、これは結局裁判所が最後にきめなければならぬことであるように私は考えております。
  129. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 それではこの一番ポイントである承認権者がどこにあるか、あなた方ははっきり今まで任命権者がこれを承認すればこれは罷業行為ではないんだ、こういうことを何べんも答弁した。その承認権者がどこにあるかということが問題の焦点である。それを今論議したわけですが、あなた方の答弁によっても、佐賀県の条例を見ましても、これは任命権者とはっきり書いてある。任命権者であれば、県教委です。しかし県教委がかりに地教委なり校長なりにそれを委任事項として委任するということであれば、県教委の規則を作って委任事項をはっきり列記しておかなければならない。これは先ほど申しましたこの法律の二十六条に明記してありますから、これをやらないで、そういうことを言ったんでは法律違反だ、こういうことになります。これはあなたの答弁もわれわれが言っていることと全く同じことを言っておられる。これはこれ以上追及いたしますまい。  先に入りますが……。
  130. 長谷川保

    長谷川委員長 櫻井君にちょっと申しますが、時間もだいぶ過ぎて参りまましたから、なるべく簡単に。
  131. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 委員長から御注意がありましたから、簡単に申し上げますが、こういう観点のもとに、「これを煽動することを他の執行委員等と共謀の上」第一、第二、第三、第四、第五、第六の行為があった、こういうことをはっきりここに出してある。この行為というのは、簡単に申し上げますと、一月二十三日に佐賀市松原町村所在の教育会館で第百六十五回中央委員会を開催して、そこで、春季闘争に関する件という議題を提案し、それから一月二十五日に中央委員会の決定事項としてそのことを各組合員に指示第四号の通知を発した、これが第一点。第二の問題は、二月上旬、さきの百六十五回の中央委員会で決定した実力行使は、二月五日の第百六十六回の中央委員会及び全組合員の直接無記名投票を経て第三十二回臨時大会で決定をする、こういう決定を執行委員会が組合員に通知したということ、それからこのことを周知徹底せしめるために、組合の執行部は第三十二回臨時大会の春季闘争の意義を解説したところの佐賀県教育新聞百四十四号を三千部傘下の組合員に配布した、これが第二点であります。第三点は、二月五日百六十六回中央委員会を招集してそこで春季闘争に関する件の議案を臨時大会に提案することを執行部が提案をし、そうして、そこで決定した決定事項を組合員に周知徹底せしめたということが第三点になっている。第四点は、二月十日佐賀市の赤松町の産業会館において組合の最高決議機関であるところの三十二回臨時大会が招集され、そこに春季闘争に関する件、こういうものを上程をして、それが全組合員の意思によって可決、確定をし、その可決、確定、決定の後、執行部は指令第五号を全組合員に配布してこれを周知徹底せしめたということになっている。第五点は、二月十三日、「タイセイカンビハイレ」という休暇闘争実施の電信を各分会三百八校に打電、指令をしたということ、こういうことをすべて教唆扇動ということにあなた方は解釈しておられるが、一体佐賀県教職員組合というものは、これは何ですか。非合法な団体ですか。地公法第五十三条による職員団体の登録を明瞭にした合法的団体でしょう。こういうものが憲法に許され、地公法に許されておる組合活動を合法的にやっておるのが、どうしてこれが教唆扇動したことになるのですか。もしこういうことが教唆扇動に値するとするならば、組合運動というものは何も成立しない。全くこの検察庁というものは組合運動というものに対する全くの無知をさらけ出したか、あるいは知っても故意にこれをほおかぶりをしてこういう起訴状をでっち上げたか、こういうふうな解釈をせざるを得ない。こういったものをあなた方は教唆扇動したということに解釈しておられるのですか。その点をお答えを願いたい。
  132. 井本臺吉

    ○井本説明員 起訴状をお読み上げになりましたが、起訴状にあります通り、市町村教育委員会、学校長の承認なくしてなお就業を拒否した。これは承認がない点がいけないのであるということを起訴状にはっきりうたっておるのでありまして、われわれはこの休暇の承認権者は市町村教育委員会、学校長であるというように認定しておりますから、その前提のもとに一つ議論をお進め願いたいと思います。  なお私どもは、冒頭にも申しました通り、これは有給休暇に名をかりた同盟罷業行為である、この問題はさように考えております。従ってさような同盟罷業行為をやるようにいろいろな指令をいたしましたり、あるいは申し入れをいたしましたりしたところは、法律的にこれを申しますと、地方公務員法の三十七条に規定してありますあおり、そそのかしに当るのであるという法律判断をしておるのであります。何も正当なる組合活動を犯罪であるというように取り上げているわけではございません。しかしながらこれも私がそう申し上げましても、なかなか御理解がいかないかと存じますけれども、すべては先ほど申し上げましたように、すでにこれは公判請求中の事件でございまするから、佐賀の地方裁判所が第一審として明瞭な御判決をなさることと私は考えておるわけでございます。
  133. 長谷川保

    長谷川委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  134. 長谷川保

    長谷川委員長 速記を始めて。  高村委員の先ほどの問題についてお答え申し上げます。ただいま委員部において調べましたところ、検察一般行政としての調査として、審議として呼ぶ場合には、一般の政府委員と同じように出席をいたしております。それから個々の問題につきまして呼ぶ場合には、やはり参考人としての手続を経て呼んでいるようであります。両方の事例が出ておりますので、そういうように御理解をいただきたいと思います。今後は当委員会においてはさように取扱いをいたします。  この際、去る十日、文部大臣に就任されました松永東君より発言を求められておりますので、これを許します。文部大臣松永東君。
  135. 松永東

    ○松永国務大臣 今委員長から仰せになりました通り、一昨日はからずも文部大臣に就任いたしました。まことにこの重大責任を果して果し得るやいなやということ、非常にじくじたるものがあるのであります。もとより文字通り浅学菲才、何らなすところがないのでありますが、皆さんの厚い御支援があれば何とかこの責任を切り抜けていくことができると考えておるわけであります。どうぞ一つ皆さんにおかせられても絶大なる御支援、御協力を賜らんことを切にお願いいたします。  なお今日まで皆さんが審議せられました事項につきましては、いずれ速記録を拝見いたしまして、私もとくと研究して、また申し上げる機会があろうかと思います。どうぞ御了承願います。(拍手)
  136. 長谷川保

    長谷川委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十一分散会