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1957-05-11 第26回国会 衆議院 文教委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十一日(土曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 竹尾  弌君 理事 米田 吉盛君    理事 河野  正君 理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    清瀬 一郎君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       塚原 俊郎君    山口 好一君       木下  哲君    小牧 次生君       櫻井 奎夫君    高津 正道君       辻原 弘市君    野原  覺君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君        国 務 大 臣 大久保留次郎君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 五月十一日  委員八木昇君辞任につき、その補欠として辻原  弘市君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一  部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  佐賀県の教育問題に関する件     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  まず公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑通告がありますのでこれを許します。櫻井奎夫君
  3. 櫻井奎夫

    櫻井委員 この政府提案になりますところの公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部改正法律案、この法律案趣旨は、新たにできます集団的な住宅建設によって発生する不正常授業解消するための措置を講じられたわけでありますが、本年度これに該当するところの不正常授業を行う学校の見通し、数を大体お聞かせ願いたいと思います。
  4. 小林行雄

    小林(行)政府委員 御承知のように、集団住宅にもいろいろ規模の点で差違がございます。文部省といたしましては、集団住宅建設と、それから学校の不正常授業との関連が明確であるものについて補助をしたいというふうに考えておりまして、大体一団地当り三百戸以上建設する集団住宅について補助をする考えであります。現在の調査によりますと、大体三十二年度におきまして、三百戸以上建設するものが五十六団地ということになっております。この五十六団地のうち、千戸以上のものが九団地、それから五百戸以上千戸までのものが十五団地、それから三百戸から五百戸までのものが三十二団地というようになります。これらの団地におきまして、どういうふうに学校を建てていくかということにつきましては、現在各府県から資料をもらうことにいたしております。
  5. 櫻井奎夫

    櫻井委員 まだ数字ははっきり出ておりませんか。まだ資料が整わないという状況ですか。
  6. 小林行雄

    小林(行)政府委員 大体五月一日現在で、これは例年のことでもありますが、学校施設実態調査をやりまして、その結果に基いて予算の配分をし、事業の実施をするということにいたしております。この五月一日現在の実態調査がまだ完全に集計し終っていないのであります。各府県から具体的な学校建築計画がまだ出てきておらない状況でございます。
  7. 櫻井奎夫

    櫻井委員 まだ実態調査の最中だということであれば、私はそれ以上追及は避けますけれども、この法律趣旨はわかりますけれども公立小学校の不正常授業解消と申しますと、実に現在における公立小学校の不正常授業は数えるにいとまがない。一体全国で校舎の不足のためにすし詰め授業あるいは二部授業、こういうのが行われているのはどれくらいに把握しておられるか。私はここに詳しい資料があるので、私自身の調査についておるのでありますが、文部省はどういうふうにつかんでおられるか、一応お聞かせ願いたい。
  8. 小林行雄

    小林(行)政府委員 これは昨年の実態調査の結果でございますが、大体三十一年五月一日現在におきまして、坪数にいたしまして三十三万坪、学級数にいたしまして約一万二千五百学級というふうに数字が出ております。
  9. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そこで私はこの法律に不賛成というのではございません。これは一歩前進でございますから、この趣旨に決して反対の意見は申し上げないのでございますが、私は文部大臣に特に要求申し上げたいことは、今もそこで申された通り、実に全国坪数にして三十三万坪、学級数にして一万二千五百というものは正常なる授業が阻害されております。これは一体どこの責任ですか。地方教育委員会責任であるか、文部省責任であるか、こういうものがいまだに解消されず、戦後十二年の今日になってもまだこういう状態を放置されておる。実にこれは正常な授業を阻害しておることはなはだしい。こういう点について文部大臣所信を私はこの際はっきりお聞かせを願いたい。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日の公立小学校の不正常授業関係につきましては、われわれも櫻井委員と憂えを同じくするものであります。そのためには、今日までも政府といたしましてもいろいろ努力をして参っておりますが、何分にも財政関係がございますので、思うにまかせないのでございますが、御趣旨につきましては十分われわれも同様に考えておる次第でございますので、できるだけ今後ともに解消に向って努力いたしたいと思っております。
  11. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私は今日義務教育の完全なる実施を阻害しておるのは、実に国の文教政策そのものが力が足りない、この点に尽きると思うのです。すでに教員の数も、大体教育基本法あるいは学校教育法に定められたところの正常なる定員数によって行われておるところはまれであります。また施設においても坪数あるいは教室不足、そういうもののために実に正常なる授業運行は阻害されております。文部省学校職員の一部の行き過ぎがあったというようなことで非常な厳重な措置を講じておられるようでありますが、私はこの日本義務教育全体に対する正常なる授業の運営ができないという、こういう大きな欠陥を克服する努力文部省自体がもう少し持ってもらわなければ、いつまでも日本義務教育というものは進展をしない、こういうところに私はもう少し文部当局のこの際はっきりした決意を表明していただきたい。あなた方は佐賀県においてああいう事件が起きておる、こういうのに血道をあげておられるが、もっと大きな日本義務教育全体の運行というものに対する文部省努力というものについては、反省しておられると思うのですが、こういう大きなことを放置して、そうしてあの局部に起きた問題点を血眼になって警察権介入までも許すような措置をとって、これを弾圧しておられる。しかるに一方ではこういうもっと大きな根本的なことに対する文部省自体努力が足りない。これはわれわれが見ても国民が見てもはっきりしておるじゃありませんか。私は朝日新聞の五月七日の夕刊の「今日の問題」というのをここに抜粋して参りましたが、これは文部大臣もおそらく目を通しておられると思うのであります。ここにやはりそういう問題が実に簡潔に書いてあります。すなわち、長くなりまするから全文を読み上げることは差し控えますけれども、最後のところにこういうことが書いてあります。「学力低下の原因には、新教育の未熟な点や、教師の資質によることもあろう。それらについても、むろん対策を考えねばならないが、定員過剰の方は、教室をふやし、先生を増員すれば、いますぐにでも改善されよう。それはやらずに、教員の整理をやって、警察介入まで起している有様では、国や地方公共団体が、子ども学力低下をどう思っているのかと、心配になるのである。」これは私は偽わらざる今日の国民の声だと思う。こういう点にもう少し文部大臣は最善の努力を尽されんことをはっきりと私は確約してもらいたい。明年度予算においては、この不正常授業解消するためのさらに強力なる措置をとられるために、義務教育延長によるところの国庫負担法あるいは不正常授業解消特別措置法、こういうものを大幅に改正をして、もう少し国の力によってこのような事態を改善するための法律案なりあるいはもっと具体的な努力をされる決意であるかどうか、その点をお伺いをしたいのであります。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話のような事柄につきまして、われわれといたしましても十分の熱意を持っておるつもりであります。そのためにあらゆる努力はしなければならないと考えておる次第であります。先ほども申しましたように、なかなか思うにまかせない実情にございますので、まことに遺憾に考えておるところであります。御趣旨につきましてはわれわれも十分わかっておるので、できるだけ一つ今後ともに努力いたしたいと考えております。
  13. 河野正

    河野(正)委員 関連いたしまして一、二お尋ねいたしたいと思うのでございます。不正常授業解消のためにいろいろと御処置を願った点に対しましては、もちろん私ども異議のない点でございます。しかしながら今日の地方財政実情のもとでは、こういった集団住宅建設にいたしましても、あるいはまた町村合併等々によります点から生まれて参ります不正常授業に関しましても、私ども今日まで実際に痛感いたしておりますことは、それは今日の法そのもの一つ助成をするという建前をとって参っておりますために、もともと先ほどから申し上げますように、今日の地方財政が非常に困難でございますので、その基本になります財源が困難でございまして、助成は行われましても実際におきましては地方自治体が非常に困難な実情に置かれておるということは御承知通りだろうと思うわけでございます。そこでこういった法制化によって不正常授業解消のために処置をいたしてもらうことももちろんけっこうでございますけれども、しかし私どもから言わしめますならば、むしろ積極的に地方自治体財政助成するような努力をやっていただかなければならぬのじゃないかというようなことを強く痛感しているわけでございます。以前のことでございますけれども文教委員会におきまして自治庁からも行政部長等に御出席を願って、その点に対しまして私ども質疑を申し上げたことがあるのでございます。委員会におきましてはいろいろと好意ある御回答をいただいておりますが、実際にそういった面の折衝となって参りますと、なかなか思うように進んで参らぬというのが今日の実情でございますので、今日まで御努力願ったと思いますけれども、さらに一そう大きな御努力を願わなければ、自治体というものはこういった促進法が出て参りましても、困難な実情に置かれるのではないかと痛感するわけでございます。そこで今までとって参られましたいろいろな御努力、また今後積極的に御努力願うと思うわけでございますけれども、そういった点に対する大臣の御所信を承わっておきたいと思うのであります。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御質問の御趣旨はごもっともでございます。何と申しましても地方財政が充実して参らなければ、こちらだけでいろいろ考えておりましても思うにまかせぬ点が出て参るのであります。それにつきましても国の方で地方財政の充実について努力していかなければならぬ、これは当然のことであります。及ばずながら私どもといたしましても努力しているつもりでございますが、さらに将来一そうこの点につきましては努力して参りたいと考えます。
  15. 長谷川保

    長谷川委員長 他に御質疑はありませんか。他になければ本案に対する質疑はこれにて終局いたします。  これより本案討論に付します。——別討論通告もないようでございますので、討論を省略し直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、これより採決いたします。本案原案通り可決するに賛成諸君起立を願います。   〔総員起立
  17. 長谷川保

    長谷川委員長 起立総員。よって本案原案通り可決するに決しました。  この際佐藤觀次郎君より発言を求められております。これを許します。佐藤觀次郎君。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この際、公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付するの動議提出いたします。その案を朗読いたします。    公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  一、義務教育が国と地方公共団体との共同責任にかかる重要事項たる点と、地方財政実情とに鑑み、公立義務教育学校施設、設備についても、政府は、すみやかに、義務教育費国庫負担法の精神に則り、これに必要な経費の二分の一を国が負担するために必要な措置を講ずべきである。  二、公立義務教育学校における教育効果の向上と教育財政有効化を期して、多くの市町村が学校統合を企画しつつある現在、政府義務教育重要性地方財政実情とに鑑み、すみやかに、有効適切な措置を講ずべきである。 以上でございます。  委員各位の御賛成をお願いいたします。
  19. 長谷川保

    長谷川委員長 ただいまの佐藤君の動議に対し何か御発言があればこれを許します。——別に御発言がなければ、お諮りいたします。佐藤君の提出動議のごとく決するに賛成諸君起立を願います。   〔総員起立
  20. 長谷川保

    長谷川委員長 起立総員。よって佐藤提出動議のごとく、公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部を改正する法律案附帯決議を付するに決しました。  なお、本案議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  22. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、文教行政に関し調査を進めます。佐賀県の教育問題に関し質疑通告があります。これを許します。辻原弘市君。
  23. 辻原弘市

    辻原委員 去る八日の当委員会におきまして、佐賀県の問題に対して、取調べに当った警察及び検察当局取調べ方法人権の侵害になるのではないか、こういう点について具体的な問題を取り上げて、所管大臣である大久保さんにわが党からお尋ねをいたしました。その際、特に小城町の吉町節さんに対する家宅捜査の際の取扱いについては、われわれは具体的な実情調査いたしておりますが、いまだに大久保長官の方ではそういうこまかいことはあずかり知らぬという話であります。しかし実情を取り調べて早急に当委員会において発表されるということでありましたので、その点の実情はいかなることであったか、十分詳しく調べられたと思うので、この際大久保長官から発表を願いたい。
  24. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 大臣にかわりまして私から御報告いたします。  ただいま御指摘の吉町節さんの家宅捜索の際の状況でございますが、吉町さんのお宅では六畳の間に当時お母さん病気で寝ておられたのでございまして、捜索に臨んだ係員は、狭い部屋のことであり、病気お母さんの前で捜索するのも心ないことでございますので、御迷惑であろうと考えまして、しばらくの間むすこさんのお部屋の方へ移っておられたらいかがでしょうかというふうに申し述べておるのでございます。むすこさんと申しますと、つまり吉町節さんの弟さんになられる方でありますが、同じ屋根の下に別世帯で住まっておられるのでございます。その方へ、捜索する間しばらくお移りになっておられたらいかがでしょうか、何なら抱いてその方へお移ししてもけっこうでございますがというふうに相談いたしておるのでございます。ところが吉町さんは、それには及ばない、このままでけっこうである、こういうことであったために、そのまま休んでおられるままで家宅捜索をした、こういうことになっております。前回の当委員会におきまして、その捜索の際にいろいろなものを吉町さんのお母さんの寝ておられるふとんの上に積み重ねたというようなお話も出ましたが、そうした点につきましても十分調査をいたしましたが、押収品病人のふとんの上に置いたということは絶対ない、こういうふうに現地から報告が参っておるのでございます。
  25. 辻原弘市

    辻原委員 ともかく、この種の取調べに当っての人権問題を公けに取り上げると、必ず、今石井長官からお話があったような通り一ぺんの答弁があるのはさまっております。事実と突き合わさないからそういうふうな話で逃げられるというのが、今までの警察当局取調べに当る者の、また上で所管をされている人々の方でもとっている態度じゃないかと私は思うのです。具体的にそういうような話が取調べを受けた人から後刻出るというのは、必ずそこに何らかのことがあったのだ。本をふとんの上に積み重ねたか積み重ねないかというようなことをここで議論をいたしましても水かけ論でありますけれども、しかし、取調べを受けた御当人は御婦人であります。しかも親御さんが脳溢血というような病気で寝ておられる、そういうところへどかどかと入ってこられて取調べを受ける心理的な状態というものは、われわれが想像しただけでもどの程度のショックを受けるかということはわかっている。その際に、今石井さんが御答弁になられたように、もしほんとうに、ではどういたしましょうか、隣の部屋に移しましょうかというようなまことにいんぎんな態度でやっておったならば、あとで涙を出して、自分の親までが、病人であるのに、それを何ら顧慮されることなくこういうふうな取調べを受けたというようなことは公けに言わないと思う。それを言うところに、当時の取調べに当った出先の方々が、必ずしもあなたのお話のような親切な取扱いをしていなかったとわれわれは断定せざるを得ない。これはおそらく、あなたの方からどうであったかと言えば、いや決してそれはそうではありませんでしたと言うのはさまっておる。しかし事態はそういうことではなかったということは、佐賀県で、あの取調べ当時からずいぶんと話が出ている。しかし、この問題は水かけ論になりますから、一応あなたの方の取り調べられた結果だけをあなたには承わっておくことにいたします。  次の問題は、同様夜間取調べに当ってですが、この前、夜間取調べ特例のことであるから、時間的にも大した時間はかけていなかったはずだというような御答弁が、あなたと井本さんでしたか、たしかこの御両人からあったように私は記憶いたしておりますが、これは速記録もありますから……。ところが、私ども現地で調べた事実によりますと、夜間取調べは一人ではない、二人でもない、六人の多数の人々に対して、三十分どころかかなりの長時間の取調べをしているという事実がある。しかもこれは、事実取調べを指揮された検事正もそのことを認められておる。従って、この前のあなたの、大体三十分程度であろうということはきわめて不正確である。一体そういうような報告現地からあったのか、ないしは、その後さらにこうした夜間取調べについて——夜間取調べ自体、いわゆる人権の上では重大な問題である。すでに指摘をいたしておりますように、刑事訴訟法等においては、特例の形における取調べは特別な配慮をしなければならぬという趣旨によってそのことが許されている。従って、多数の人々に対し深夜相当長時間にわたって取調べをしたというこの一事は、少くともこの種の事件に対して行われる取調べ方法ではないと私は思う。いま一度、どの程度の時間を何人にかけてその取調べをやったか、克明に御報告を願いたい。
  26. 井本臺吉

    井本政府委員 前会お答え申し上げました際には、突然のお尋ねで、私、電報をうろ読みにいたしておりましたので不正確な点がありましたので、本日正確な点を御報告申し上げます。  この夜間取調べ関係でございまするが、四月の二十八日の夜の二十三時五十八分から、四月の二十九日の午前三時までの間、八人の方につきまして、一番短いのは四十分でございます。一番長いのは一時間五十七分調べております。大体一時間前後調べておる方が合計で八人ございます。  それからこの調べをするに至りました状況でございますが、これは前会にも申し上げました通り、検察庁が裁判所に対して勾留請求をいたしますと、およそ百件のうちで一人強が勾留請求却下になるのが通例の事例でありますが、この件につきましては、十人の方々に対しまして全部勾留請求却下になっております。おそらく比率でいきますと七、八百件勾留請求をしたものに対する率に該当するような勾留請求却下決定があったのでありますが、検察官といたしましては、事案の性質上そのままでは放置できませんので、直ちにその裁判官の勾留請求却下決定に対しまして準抗告の申し立てをいたしまして、十人のうち結局七人の方に対して、四月二十九日の午前三時四十分に原決定取り消し決定がございました。従って七人に対しましては、通常の手続と同じように、勾留状が出たわけでございます。そのほかの三名の方につきましては、同じ二十九日の午前三時四十分に、裁判所から原決定のままでよろしいという裁判があったわけであります。一人の方につきましては、二十八日の十一時過ぎにやはり同じように原決定のままというような裁判があったわけでございます。さように、夜中の十二時近くから午前三時四十分ごろにわたりまして裁判があったような状況で、さような事態のもとに、検察官がある程度取調べをしたのでありまして、ただ夜間取調べだけを取り上げますと、はなはだ不適当ではないかというような感じを受けるのでありますが、事情がさような状況でありますので、特殊例外的な措置であるというように御了承いただきたいのでございます。私どもといたしましても、夜間取調べはあまりほめたやり方ではないので、通常事例におきましては、さようなことがないように、日ごろしょっちゅう注意を加えておるのでございますが、この事案につきましては、さような状況で、特殊の事例で、例外的なものであるというように御了承いただきたいと存じます。
  27. 辻原弘市

    辻原委員 今まずその事実については、前会のあなたの御答弁とは非常に違ったということをお認めになりました。違うのにも、少し違うという程度であれば、これは人間の記憶でありますから、問題にはならぬと思うのでありますが、あなたの違いは少し違い過ぎております。三十分程度というのと、今のお話では一時間五十七分ということでありますが、その間、あなたに対してだれがどういう報告をしたかは知りませんけれども、いかにも不正確きわまるものである。そういうことで今までこの委員会で御答弁になっておったとするならば、重大な問題だ。しかも、今あなたの言われた点でも、われわれの調査と若干違う。これは水かけ論になりますけれども、参考のために申し上げますと、取調べをいたしたのは、末森さん外八名の方々に対して十二時二十分から午前三時にわたって、長い人になれば、北崎さん等のごときは二十九日の十二時から午前の三時にわたっておる。これは現地でわれわれが客観的にその調査を行なった結果に基いておる。少くとも深夜に、一時間五十七分にしても、これは実に深夜の取調べとしては苛酷なものである。それ以上取調べを受けておる人々がここにまだ一、二人おる。あなたは特例中の特例だ、こう言われた。特例だから、深夜取調べという問題だけを取り上げられたのでは、その事情が判然としないという今のお話でありますけれども、しかし私は前後の事情から勘案いたしましても、何がゆえにかような取調べ方法をとらなければならなかったかという理由については、これは一向に釈然としません。なぜならば準抗告をなさった、その準抗告の帰趨の決定が少くとも深夜に行われておる。当然決定があれば、いなやの決定があれば、自後の行動については、少くとも翌朝から直ちにできるはずだ。まさか夜中に逃亡したり、夜中に証拠隠滅をはかったり、そういうことができるものであるかどうか、また教職員という立場にあられる方々が、そういうことを、すでに取調べの段階に入って行うかどうか、私は常識的に考えればわかると思う。凶悪犯罪をとらまえたわけでもなかろうし、少し常識をもって考えればわかる。また事実裁判所のあなた方の準抗告に対する決定は、午前三時過ぎに行われておる。そうなれば当然夜明けを待って、正規の形において取調べが続行できるはずです。かりにその準抗告がいれられず、十人全部釈放されておったとしても、何ら私は取調べの支障はなかったと思う。しかしそれをおして深夜にたたき起してかような取調べをするというようなことは、いかに特例とはいえ、何がゆえにこの種事件に対してかかる特例をやったかということが残ると思う。この点に対して私は法務大臣出席を求めておりますが、法務大臣の見解も伺いたいと思う。特に本来ならば、この種の事件については、一つの労働運動の形態と見て、警察あるいは検察官介入を許すべき問題ではない。それを少くとも検察権がこれに介入をして、百歩下ってその点あなた方が独自の見解に立っておやりになるなら、批判はあれ、一応これはおやりになる権限を持っておりましょう。しかし調べられる方法等については、特別な配慮があってしかるべきだと思う。これは法務大臣も、また大久保さんも、その種のことを言っておる。慎重にやりたいという。慎重とは何か、どういう意味かというと、それは人権を尊重して、少くとも職務の遂行とはいえ、かりそめにもそういうような夜間に人をたたき起して取調べをするというような——極端にいえば、夜間なんというものは人間は多少ぼけておる。普通の状態ではない。そういうときに長時間にわたって取調べをするということは、言語道断だと思う。井本さん、いかにお考えになりますか。
  28. 井本臺吉

    井本政府委員 私どもの調べによりますると、北崎さんの取調べは、午後十二時から十二時五十分まで、五十分調べております。ただいまお尋ねのような三時間にわたって調べたというような報告になっておりません。それから、お前たちは勾留請求却下に対する裁判所があってからあとで調べたらいいじゃないかというようなお尋ねでございまするが、これは原決定が取消しになれば直ちに勾留状が出ますので、引き続きその後拘束のまま調べができまするが、このうちの三名の方につきましては、勾留請求却下の準抗告が棄却になっております。三時四十分でございまするが、その後に直ちにこの方々は釈放しなければならぬ法律上の義務がありますので、直ちに釈放するわけで、この事件も釈放しております。そのようなわけで、三時四十分までに決定があって、その後、朝調べればいいじゃないかということになりますと、これらの方々はあるいはお宅にお帰りになることでありましょうし、調べをするわけにいかないわけでございます。さようなわけで、この事案につきましては、一番長いのは一時間五十七分、これは末森さんでございまするが、大体において一時間前後調べをしておるわけでございます。先ほど申し上げたようにこの裁判所決定が非常に特殊な決定でありまして、調べが非常にかかり、しかもその決定に対する判断が夜の十一時過ぎから翌日の午前三時過ぎにわたりましてあったような事案でありますので、特殊の調べであったというようにお答えする以外には仕方がないと思います。ただしさような深夜の取調べが非常にいい調べで、かようなことを奨励するというばかなことはないのであって、かようなことは将来とも厳に慎しまなければならぬと考えております。
  29. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今の事件に関連して御質問申し上げます。これはこの五名の方を夜中の十二時から三時まで、あなたの答弁によると一時間五十七分にわたって取調べをした、その事実ば認められたわけでありますが、これはいずれも裁判所の都合によってということであります。一体裁判所の都合によってかような基本的な人権を無視してもいいのかどうか、これはあなた方がいいと言われるはずがない。第三者の立場におられる人権擁護局長の御見解を私ははっきりお伺いしたい。こういう裁判所の都合によって刑事訴訟法にも許されていないような取調べをしていいか。それが果して人権の侵害にならないのか。前の吉町氏の事件とともに擁護局長の御見解をはっきりお聞きしたいと思います。   〔「しっかり答弁しろ」「負けるな   よ」と呼ぶ者あり〕
  30. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 いや、私はこの問題は真剣に考えております。今御質問になりました吉町さんの家宅捜索の件、それから夜間取調べの点でございます。一般的に私が在野時代に経験いたしましたところによりましても、現在まだ家宅捜索方法、それから家宅捜索をやります係官の態度、それから逮捕拘留中における被疑者の訊問方法についてはまだ遺憾な点が多い。これはよく知っております。私はこの事件におきまして、こういうふうな家宅捜索あるいは夜間取調べの前提といたしまして、本件のような一種の形式犯的な問題について逮捕あるいは身柄の拘束をする必要があったかどうか、これが最も根本の問題ではないかと思います。従いましてこのいわゆる家宅捜索あるいは夜間取調べも、結局根本はこの逮捕あるいは逮捕による身柄の拘束からきた一つの無理な結果ではないかと私は考えるのでございます。私はこの点につきまして今後十分に関係当局が御注意あらんことを心から願うものであります。具体的に申しますと、吉町節さんの家宅捜索状況でございますが、まだどうも事実がはっきりしておらぬようで、できましたら私の方で直接果して先ほど議員の方から御指摘になりましたような事実があったかどうか調査してみたいと思っております。  それから夜間取調べでございますが、逮捕による身柄の拘留時間というものが割合に短かいために、その逮捕期間中に一つのある事実を引き出そうという、一つ取調べのために逮捕期間というものが利用される、そういうふうに思っております。これは本来の法の目的から言うと少し違うのではないかと私は思っております。本件の場合は身柄が釈放になる、いわゆる句留請求をしたがそれが却下になる、そしてその身柄が自由になるということを考えられて、急いで何らかの真相をつかむためにやむを得ず深夜お調べになったんじゃないか、そういう無理が出ておるんじゃないかと思います。私はそういう被疑者でありましても、こういう夜間取調べというものは原則として厳に慎しんでもらいたい、こういうふうに思うのであります。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 まだほかに今回の取調べの中にこの種の人権侵害、あるいは人権を無視した半ば威圧的な取調べの傾向が具体的に現われておるのであって、さらに去る八日にわが党の野原委員からも指摘いたしましたように、逮捕状を朗読することを拒否したというような——これ後刻その係官が謝罪をいたしておりまするから、結果としては問題がないにしても、そうした一つ態度であります。さらにこれは石井長官にもお伺いをしたいのでありますが、前回も尋ねておりますが、どの程度の参考人を呼んだか、私はこれらの参考人の呼び出し方の中にも、これは一つ人権問題が含まれておると思う。幸い今人権擁護局長は、この種の取調べ方法は、きわめて遺憾であるということをお認めになりました。まさに私は人権を保護するために設けられたあなたの職責としてりっぱな御態度であろうと思う。そうでなければ、今日警察あるいは検察当局のする調べに対して、国民が喜んでその取調べを受けるというような、協力的態度は生まれないと思う。かりそめにもいかなる事犯を起した被疑者にしろ、われわれはその人権は厳然として侵すべきでないという見解に立つがゆえに、この問題を特に重視しておるわけであります。  なお今あなたが最後に言われた夜間取調べの問題でありますが、何か一つの事実をつかまんがためにあせってその日の夜間取調べをやったんだろうと、こうおっしゃっておるのでありますが、私はしろうとでありますから、取調べがどういう形でやられなければならぬかということの詳細なことは存じません。しかし常識的に判断をいたしますと、少くとも今日の検察のあり方あるいは警察のあり方、また刑事訴訟法の建前等は、客観的資料に基いて少くとも本人に自白を強要したりあるいは拘禁をして精神的な一つの影響を与えた上で確証をつかむというような行き方は、厳にこれは排撃しておるはずであります。そうであるといたしますならば、今回のような一つの形式事犯については、少くとも客観的資料をもって十分立証ができるはずなんです。そのことはすでに四十数カ所に及ぶ家宅捜索でもって資料は手に入れられておると警察当局も言っておる。また察検庁とそのことは連絡をとってやっておるということを言っておる。しかも佐賀教育委員会は同じ立場におきまして、同様地方公務員法の三十七条をたてに、これに対して懲戒処分をやっておる。従って客観的資料というものは、私はこの二十八日以前において相当数検察あるいは警察当局がにぎっておると見ておる。そのあとにおいて何の必要があって夜間取調べまでして本人からその事情を聴取しなければならぬか、非常に不可解であります。考えられるところは、そういう夜間の何といいますか、正常ならざる状態において本人から自白を強要させた、こういうように第三者が考えるのは無理からぬことであると思うのであります。擁護局長は一体どういうようにお答えになりますか。
  32. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 これは少し深入りし過ぎるかもしれません。私は人権擁護局長といたしまして、この佐賀県の教職員の方々の逮捕事件、このことにつきましては、警察も、これは少し率直過ぎるかもしれませんが、教職員組合の方も、両方とも少しおとなとして上っておると私は考えるのであります。その陰にもう少し児童の人権というものをお考えになりまして、警察ももう少し今回の事件地方公務員法三十七条の違反であり、犯罪である、こうお認めになりましても、児童をかかえております教職員の特殊の立場をお考えになりまして、その逮捕権の発動について、十分慎重な態度をおとりになった方がよかった、私はこう考えるのであります。この夜間取調べの件につきましても、果して自白を強要するためにこういう処置がとられたのであるか、あるいは捜査の都合上やむを得ずこういうふうなことになったのであるか、根本問題は何のために、どういう理由のもとにこの逮捕権を発動されたのであるか、そこまでさかのぼりますが、その間の捜査官の方針あるいは事情がよくわかりませんので、もう少しその間の事情をはっきりさせまして私のお答えをしたいと思うのであります。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 今お答えになりましたように、われわれはこの問題の経過を追って、取調べ当局のなさった一つのやり方というものに、一つはさっきから指摘をいたしておりますような、少くともこの種事件にふさわしからぬ一つ人権侵害、あるいは取調べ方法が行われておるということに対する深い疑点、これは少くとも人権を擁護する立場にあられるあなたの職責としても、徹底的に解明をしていただかなければならぬと思います。従って今あなたが、詳細取り調べてしかるべき処置を講じられるというお話がありましたので、一応今あげました二つの点についてはそれでおいておきます。  そこで石井さん、あなたも今人権擁護局長のお話をじかに聞かれたと思いますが、いかなる所見をお持ちになりますか。あなた方は常に取調べをなさる立場におありなさるので、取調べを受ける立場を理解しにくい点があると思いますが、しかし思いをやはり取調べを受ける立場に立ってじっと考えてみますれば、夜間不測のときにとびらをたたかれて、そうしてさあ調べだといってやられる人の心境、あるいは親が重病人で寝ておる。そのそばでさあ取り調べだから家宅捜査をさせてくれ、寝ている親御さんはちょっとじゃまだから隣の部屋にでも移してくれといって、ばたばた本を落す、こういうようなやり方を受けた場合に、病人を持つ人の子としてどういうような心境に立つか、あなたはそういう点について深く思いをはせたことがありますか。一体井本さんはどうです。そういう点について思いをはせたことがありますか。大久保さん、あなたは今日をつぶって沈思黙考されておりますが、この間はそういうささいな問題ということを仰せられました。私はその言葉の端々をとらえようとは思いませんけれども、しかし人権というのは、個々に一人々々の中に生きてくるのです。それについて、客観的にわれわれはそう感じておる。また事実がそれを証明している。擁護局長もこの種の取調べ方法については、やはり慎重に講ずべき点がある、こういうふうに今おっしゃっておる。それやこれやを考えられて、一体大久保長官、あなたはどういうふうにこの問題について思いをはせられたか、いま一度伺ってみたいと思う。
  34. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 佐賀県の日教組の問題の取調べにつきましては、一番初めにこまかく申し上げておきましたのでありますが、事は教育に関すること、ことに児童に関することであります。世間の批判は、教員の行動は、一般の社会に影響を及ぼすことはもちろんでありまして、わかっておる。従ってこの事件の検挙につきましては、できるだけ慎重にという考えをもって実行したのであります。事件が起りましたのは二月中旬であります。検挙しましたのは四月、二カ月余も材料を収集し、方法を研究してやったのであります。私は精神においては擁護局長の精神と一致しておると考えております。なおその方法につきましても、できるだけの御便宜をはかり、なるべく本人の意向に従って、本人が自分のうちでやってくれ、あるいは学校でやってくれ、学校の休憩にやってくれ、あるいは始業前にやってくれという、なるべく個人の希望を尊重してやったような次第でございます。私としてはできるだけ慎重を期してやったつもりでおります。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 二月から四月まで慎重に考えたから、そういう取扱い人権擁護局長の言われたように、人権を尊重してやったのだというようなむずかしい論理を今なされたのでありますが、私はそういうことを言ったのじゃない。下手な考え休むに似たりということがある。幾ら長く考えても、その結果がやはり摘発をして、検挙をして、しかも今言ったような人権侵害のような取調べ方法をやっておるならば、長く考えたことは何もなっていないじゃないか。教育上支障のあることは世間の納得を得てやったということならわかる。長く考えて人権侵害を起している。それは何ですか。私はそういうロジック、論理というものはいまだかつて聞いたことがない。しかしとにかく苦しい答弁をせられたことだけは認めております。そこで問題をもう一つ発展させまして、この前にもやはり石井さんから承わったのですが、一体参考人は正確に何人調べられたのですか。
  36. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 はっきりした数字現地の方からまだ報告に接しておりませんので、今正確にお答えできませんが、相当多数の方に参考人として来ていただいたと聞いております。校長さん、あるいは普通の先生、相当数の方に参考人として事情をお述べ願ったということは聞いたのでありますが、この参考人の方にいろいろ事情を聞くときにも、行き過ぎがあったのじゃないかというようなことを御指摘になったようでございますが、(「そこまでは聞いていない」)私どもの聞いたところでは、きわめて慎重にやっておるというふうに聞いております。
  37. 野原覺

    ○野原委員 関連して。石井さんにこの前私が質問をしまして、そして私は三百名くらいじゃないか、こうお尋ねしたのは、私どもでもこの調査はなかなかつかめないのです。警察はこっそり参考人として調べることもあるわけですから、そこであなたは、実はこの前の文教委員会で、この人数を調べてくれということを要請をしまして、あなたは直ちに現地に問い合せをいたします、こういうことであったのでございますが、問い合せをしても向うが報告をしないのですか、わからないというのはどういうわけです。わからないとすれば、なお問題がございますね。何人調べたか発表しないということは、これは大へんな問題だと私は思います。あなたは故意でおっしゃっておるとは思いませんけれども現地に問い合せても、現地がそれを取り上げないのか、上司に報告しないのかどうなのか、その辺を質問した当事者の私としてはお聞きしておきたいと思います。
  38. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 現地の方に照会をいたしまして、正確、詳細な報告を求めておるのであります。今日ただいま私それを記憶をいたしておりませんので、いいかげんなことを申し上げてはかえって申しわけないと思いまして、慎重に、ただいまは正確な数字を存じ上げない、かようにお答えしておるのであります。いずれ近いうちに現地の方から正確な詳細なる数字報告があるものと期待をいたしております。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 今同僚野原君からお話がありましたように、これはこの間の八日に、やはりあなたが調べてすぐ報告するという約束の事項であります。そのときにも、われわれの調査をした範囲において、大体の数を申し上げておいたはずなんです。しかもそれはただ警察部外あるいは検察部外の人の話じゃなくして、当時取調べに当った検事正の話として発表した、いわゆる参考人招致の数字も申し上げておったはずなんです。ですからこれはまだ回答がないということでは、どうもわれわれも申しようがありませんけれども、しかしいささかやはりふに落ちないのです。参考人を呼ぶということ、また被疑者を逮捕することも、ひとしく人権に関する問題ですから、数がわからぬような呼び方をまさかやっているのじゃないと思う。大ていのことは、今吉町さんのお話でも、すでにあなたの方では調べられて、報告が来て、本を積んだのではないというような詳しい答弁をされているではありませんか。それが一体参考人を何人呼んだかという報告が来ていないというようなことは、いささか合点がいきません。これは石井さんが悪いのじゃありませんから申しません。あなたが悪いのじゃないと思う。報告しないのだから、おそらく現地が悪いのだと思うんだけれども、ふに落ちない。そこで正確な数字じゃないが、私たちが調べた範囲によると、約三百名を上回る参考人を調べております。調べた方法もいろいろな形でやっておりますけれども、総じて申せば、さっき人権局長も言われたように、この種の事件というものはいわば形式犯であります。その理念はいかにあろうとも、一つの形式犯であります。しかもさっき私が申しましたように、また大久保さんも慎重にやったという限り、一ヵ月あまりを資料を収集してやったのでしょう。ですからかなりのものが、警察にも検察庁にも——文部省もこれに協力したというのですから、文部省の方からもずいぶんいろいろ資料を出したと思う。いろいろな資料がすでにその手にありながら、かほどに多くの人々を呼んで、その強制的な裏づけをやらなければならぬということ、これまたわれわれは合点がいかぬ。これは一つ人権局長にお願いをいたしますが、さっきの二つの人権問題とあわせて、これら参考人のかかる招致、取り調べの方法が妥当なりやいなやということも、あなたの方の所管としては重大な問題でありますから、これは一つ徹底的にお調べを願いたい。なぜ私がかようなことを特に申すかといいますと、これは大久保さんも御経験があると思いますけれども、われわれ議員として選挙をやれば、往々にして知らずの間に形式的な一つの選挙違反に触れがちであります。そうした場合に、たとえば私の経験するところでは、これは一つ石井長官もよく耳をほじって聞いておいていただきたいと思うのでありますが、検印を忘れた、ポスターに検印が一つないということは、数多くの中でありますから、押し忘れることもあります。たまたまそのビラを配って、そのたった一つ、たまたまだれがどこで忘れたかわからぬような検印一つに対して、一週間、二週間にわたってその地域全体の人たちを参考人に呼んで取調べをやったというような、まことに御念の入った警察当局のあったことを、私は経験しておる。その際に地域住民の人は何と言ったか。その声をわれわれは実にお気の毒で聞くにたえなかった。たった一つの検印を調べるということで、はるばる遠い山奥から一日の弁当をかついで、その村の駐在に来いというのではない、はるかに離れた町の所轄の警察に出向いてこいということで、一日棒に振って参考人に呼ばれて、次から次へと参考人を呼ぶものだから、忙しいから待て、きょうも十分できなかったからあしたも調べる、こういうような行き方をやっているのです。それだからこそわれわれは参考人の招致という問題は軽々に見のがせないということです。この問題は数字が明らかでありませんから、後刻の問題にいたしたいと思いますけれども、これは警察庁長官としても十分考えてもらいたいと私は思う。重ねて人権擁護局長としては、この種の参考人招致というものが、かかる時間に適当なものであるかどうか、明確な判断を下してもらいたいと私は思います。
  40. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 人権擁護局といたしまして、この事件の捜査の方法、参考人の取調べ方法をできるだけ調査をいたし、御報告したいと思っております。
  41. 長谷川保

    長谷川委員長 関連して高津正道君。
  42. 高津正道

    ○高津委員 私は、今から三十数年前に、そこに来ておられる大久保大臣が、満州及び北支方面に出張されて、われわれが国外へ脱出するのを一生懸命に守っておられたのでありますが、やはり警察関係の担当の大臣になっておられるので、この際特に一言重要な問題を申し上げたいと思うのです。それは一つの政党の政治家、あるいは長く続いておる多くの内閣の、その一つの内閣の行動が国の運命にも大なき影響を及ぼすということを私は思うのであります。大正九年ごろに警察の取締り方はどういうものであったかというと、われわれがメーデーに参加しようとすると、みんなそれを引っぱってしまうのです。会場に集まろうとすると、入口にわれわれの顔を知った者が何十人もいてみんな引っぱってしまう。途中で行列に入ろうとすると、それをまた引っぱってしまう。仕方がないから、前の晩に隠れようと思うと、それを全部前の晩に予備検束といって引っぱってしまう。その次の年は一日早目に逃げようと思うと、それをまた一日早く検束してしまう。それでも家の中におれば検束しないのです。出たところをつかまえるのです。しかしその後弾圧はいよいよ激しくなって、家の中でメーデーの歌を歌っておると、土足でかけ上ってそれをみんな引っぱってしまう。こういうように乱暴になって、そうして戦争へどんどん深入りをしていったのでありますが、今日本はただ一つ世界に誇るべき、文明史的に見ても誇るべき名誉のものを持っております。昔は特攻隊が世界一だといい、綿製品の輸出が日本は世界一だといっていばったこともあるが、今日本は全く世界に誇るべき一つの宝のようなものを持っております。気づいておる人々は非常に少いのでありますが、私が言えば、それはそうだとみんな反省するに違いないことであります。クイズのような表現になって恐縮でございますが、それは原水爆禁止の平和運動において、日本が初めて世界をリードしておるこの姿であります。この平和運動をかくばかり盛り上げてきたのは革新勢力でありますが、この大津波の前にはほおかむりをしていると損をするというので、才人である岸さんは、乗りおくれてはいけないというので、松下特使を送ったところが、予想外の成功で、英国の労働党も動き、西ドイツも影響され、全世界が非常に動くような態勢を生んできたのでありますが、これは日本の革新勢力が原水爆実験禁止、使用禁止、製造禁止で署名運動を非常に盛んにやって、青年も婦人もの投票をひっくるめてその勢力に入ってきたから、それゆえに世界が日本について動かねばならないような状態になり、ソ連も日本とこの問題について共同提案をして、日本が共同提案者となって、アメリカとイギリスに提案しよう、こういうようなことまで言ってくるようになったのであります。私はこの平和主義運動とそれから民主主義運動というものは表裏一体の関係をなしておるものであると思うのだが、民主主義が日本でくずれたならば、この名誉ある日本のただ一つ持っている世界に誇るべき宝のようなものを失うことになるということをおそれるのであります。総評の中で量的には一番大きな勢力である教組を目がけて不当弾圧行為で臨んでおるのでありますが、このことは、いやしくも教員の大集団であり、教育家でありますから、これにはよほど慎重に、よほどお手やわらかに、婉曲に、ストレートで突き当らずにやるのでなければ、悔いを千載に残すと思う。私はこのような攻撃を日教組に加えるということは、現在の組合運動を一つの混乱事態に陥れるものだ、熾烈なる対立抗争を呼び起す。私は一つだけ覚えておる英語の言葉があるが、プロボーク、これが一番当るのです。あなた方が好んでそういうものを引き起す、呼び起しておる姿でありますが、そんな深い意味がある、そんな大きな問題を今呼び起しつつあることを全く知らないで、末の末の末のことのように考えておられるが、これは大へんなことになって、そのもとをなしたのは一体だれなんだ、そのときの大臣は謹厳そのもののような顔をして座っておった灘尾弘吉という者であるというようなことに歴史家は評価するのでありまして、三十数年前に高津正道その他の者を追っかけ回しておった人間が、またそのとき現われてきておって、ともにその大臣の職に連なっておった。スズメ百まで踊りを忘れずで、ずっとその本心を無拘束で、まる出しにして、日本を誤まるものであると私は思うのであります。今度の首切りのあの大量発表といい、これよりどうなるのですかね。必ず責任を負いますか。実に私は憂慮にたえないのでありまして、今からでもおそくはないから、佐賀県の問題については深甚なる反省をされて、残務整理に入られねば困るでしょう。何らかの手の打ちようがあるので、腹芸の政治家も、自民党の中にも、内閣の中にも——岸さんが行かれる前の日本状態は少し静かでなければならないはずであると思うのに、大へんな大混乱時代、国鉄の民同は勢力を弱めて、革同よ強まれといってこの内閣があおっておる姿でありますが、革同くらいではだめであって、少し右翼の方へ行ってはどうかといわぬばかりのような態度、そういう政策を現在の内閣はとっておるのであります。どうも知らないくらい安心な恐しいことはないのでありまして、今度打った政府の労働に対する攻撃がどういう結果をもたらすか、今ならまだどうにかからだをかわす手が打てますよ。その方が国のために賢明であり、あなた方もいついつまでも反動の元凶であったといわれないで済むのである。あなた方の名誉はまあ小さいけれども、これが大きいのでありますから、この際何らか転換をする用意ありや否や、昔なじみの大久保大臣や、県を同じくする灘尾大臣のお二人から、私も国を憂えて質問しておるのでありますから、御答弁をいただきたいと思います。
  43. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の事件についての考え方と申しますか、見方と申しますか、基本的に高津君とあるいは違っておるのじゃないかと私は思うのです。民主主義を尊重するということにつきましては、これはだれしも異論のないところであります。われわれもまた民主政治、民主主義を尊重したいと思います。民主政治を尊重いたして参りますためには、国民法律に従わなければならぬと思います。国民法律違反のことをやって、これをそっくりそのまま是認せられるかのごとき高津君の御意見につきましては、私はちょっと承服いたしかねる。お互いに法律を守っていかなくちゃなりません。そういう意味合いにおきまして、今回の佐賀県の事件は、これは法律違反であるということから出発いたしておるのであります。でありますからして、この教組の行動そのものを是認せられるというふうなお考えにつきましては、私は同調するわけに参らない。この点につきましては、教組の諸君一つ十分今後考えていただきたいと思っております。また高津君におかれましても、お互いに民主政治を尊重するということでありまするならば、ぜひこの教育の場における法律尊重という精神は一つつちかって参りたいので、これに対して御協力を願いたいと思っておるのであります。
  44. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 三十数年前の友だちが再登壇をされまして、私もまことになつかしく感じます。またあなたの雄弁にも敬服します。あなたの言われます通り、時勢は日一日進んでおります。警察の制度も、あの当時の制度と今日の制度を見ますれば、雲泥の差があります。御承知通り、最近におきましては公安委員会という会ができまして、国家の警察は五人の識者が加わって、さらに私が委員長になって相談してやります。この五人の識者の中には、法律家もおります、評論家も入っております、その他の学識経験を持った人も入っておるのであります。私どもは大きな問題はこれらの委員会に相談をして担当しておるような次第でありまして、ずいぶん慎重を期しておると思います。従って私どもの最近にとりました行動は、堂々たるりっぱなものであると信じます。
  45. 高津正道

    ○高津委員 どうも私も年配でありますから、過去のお話が入って恐縮でありますが、しかし私の貴重な経験だから、やはりこれを話して質問を進めたいと思います。  大杉栄に四天王という弟子がありまして、三十数年前に私が共産党の最高幹部であったころに、その人々がわれわれの陣営に入ってきた。機械工労働組合の大会へ行ってみたところが、大杉栄が傍聴席に現われると、両方相拮抗する論争をやっておったのが、アナーキズムがずっと勝って、ボルシェヴィズムが負けた。これは東京の労働組合は全部大杉派にとられてしまうという報告を、共産党の本部に伝令がもたらしたのであります。それは近視眼であって、わずかその一日の現象を見て、まるで東京も日本も大杉栄で動くかのような考えを、経験の浅いものは持つのであります。日教組を見る場合、日教組は現在どうあるか、高さ三尺三寸のところにあるか、あるいは三尺のところにあるか、四尺のところにあるか、その高さは全然問題ではないですよ。代々木の方にだんだん近づいていきつつあるか、離れつつあるかという傾向こそが一番大事な問題であって、政治家はそういうところを見なければ私はだめだろうと思う。日教組はどうですか、現在の傾向はだんだんよくなりつつあるのですよ。教研大会にも力を大いにいたしておる。神武景気で二千億の自然増であるというのに、昇格昇給を停止したり、ベース・アップを押えたり、そして教員の数はだんだん佐賀県において減していく。これを黙っておったらどうなるかと言って立ち上るのは当然である。どっかの法律にどれだけ違反しておれば、違反は徹底的に追及するのだと言うが、わかっておりながらのがすのもずいぶんあるでしょう。裁判で大きな魚はみな逃げると国民は言っておる。形式犯という言葉を人権擁護局長は使われたのであるが、この形式犯でこれをつかまえて振り回してやろう、これをつかまえて組合を弾圧してやろう、山口県のあの裏切り者を何とか育てようという意図が、いつも出席して答弁を聞いておると、そういう底意が平素あるのであって、作戦戦略的にこの事件をとらえて、突撃に政府が出たのでありますが、それは将来歴史家からも、日本国民からも、大きい批判を浴びると僕は思う。東海道線がとまり、むろん山陽線もとまる、どこもかしこもみな動く必要はないので、重要なところがとまればみな麻痺するのでありますが、社会党はこれを一生懸命押えておる。(「どこの社会党だ」と呼ぶ者あり)いや、押えておりますよ。どうせ大臣になればあらゆる責任は引き受けねばなるまいけれども、人間に一番大事なのは、初めも大事であるが、終りは一そう大事であります。四十五まで芸者をやっておっても、それから最後までりっぱに慎めば、それは大したものです。貞女ですよ。五十まで貞婦で来ても、あとめちゃめちゃになったならば、それは貞女の反対のものであります。両大臣はこれから何回閣僚におなりになるか知りませんけれども、私と同じように晩年である。最後が一番大事なのでありまして、その最後に支配階級のために先鋒隊を承わって突撃を試みられるのであるが、その責任を負う考えであろうけれども、今のやり方では、かえって日本の労働運動というものを先鋭な対立に導くのではないか。そういう点に対する答弁が御両所とも抜けておるのであります。これならばよくなるという見通しでおやりになっておるのであるか。法律論争を越えて、私はこれは先鋭になるに違いないと思う。それからものの見方が、きょう雨が降るからといって何も一ヵ月降るのじゃない。その降る雨を見てものを判断しないで、科学的な気象台の報告を受けて天気を考える、ものを見るようにせねばならぬ。私は経験者として、これは荒れるようになるな、まあこう見るのでありますが、それに対する御答弁を承わりたい。
  46. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非常に経験の豊富な、かつまた私と同郷の先輩である高津君から、いろいろと私に対する御忠告だろうと思います。御忠告は御忠告としてありがたく承わっておく次第であります。ただ願わくは、高津君独自の見解一つでごらんにならぬように、色めがねでごらんにならぬようにお願いしたい。私は初めも終りも途中も同じつもりでやっていくつもりであります。別に途中で変ったとかなんとかいうことはございません。最初から今のような心持でおります。今後もこの心持で参りたい。すなわち、別に挑発するとか、けんかをするとか、そういう心持でものを考えておりません。日本教育の場をもっと平和なものにしたい、もっと筋道の通ったものにしたいという念願から出発いたしておるのであります。今回の問題にいたしましたところで、別に全国的に号令して文部省がどうしたとかなんとかいう問題ではございません。ただ佐賀に起りました事態は、いかにも残念なことであります。なぜ一体ああまでして教組の諸君はやらなければならなかったかということを、私は思わざるを得ないのであります。さような角度からも一つ高津君もごらんを願いたいと思うのであります。教職員の諸君がいろいろ御要求になる、それをかれこれ申すのではございません。この要求を通すためにはおのずからその道があると思います。その道を逸脱しないようにというのが、私の念願であります。さような心持から地方を指導して参っておる。たまたま佐賀にこの問題が起ってきたのでありますが、事態を聞いてみますと、かようなことにならぬようにというので、関係者がいろいろ努力いたしております。それにもかかわらず、あえてあの行動に出られたということは、返す返すも私は残念に思っておるのであります。さような意味合いにおきまして、私どもは決して日教組の諸君とけんかをするとか弾圧をするというようなことは考えておりません。願わくはその行動の正常化せんことをこいねがってやまないものであります。私どもは決してけんかをしようなどとは考えていない。ただ日教組、労働組合といいますか、今のお話は労働組合全般の問題のようでもありますが、そういう方面の立場だけをお考えになって、その方はそれでいいのだ、お前の方が遠慮しろというだけでなく、双方をよくごらんになって、お互いに一つ今後の事態をうまくいかせますようにお願いしたいと思うのであります。
  47. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 ちょっと私重大な失言をしておったと思います。それは先ほど形式犯と申しましたが、あれは取り消します。あれは行政犯であります。ただ私の考えますのは、勤労者の団結権なり行動権というものは、憲法が保障しております。それを地方公務員法で争議の禁止をいたしております。そうして争議の禁止条項に違反した行為を犯罪としておるわけであります。そうしてそれに罰則を規定しておるわけであります。従いまして行政犯でありましても、また特殊の犯罪でございまして、その犯罪に対する捜査あるいはその他の行動というものは、単なる法律観念だけではなしに、十分に慎重な考慮を要する一つの特殊な犯罪である、こういう意味に訂正をいたします。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 高津委員の大所からするこの問題に対する質問がありました。御答弁の中に、大久保長官が、三十数年前の警察と違って、今日の警察はずいぶん進歩して民主化された、公安委員会もできて、非常にりっぱになったというお話であったのですが、そのりっぱになったはずの警察あるいは検察のあり方に、先刻から私が追及をいたしておりますような、また人権擁護局長が、この種の問題については警察当局としても非常に考うべき点があったということを、公式に表明せざるを得ないような人権問題が生れたことは、これは全くわれわれとしては解せないのであります。同時にまた、これは文部大臣もしばしば言っておるのでありますが、いかに法律に違反する疑いがあるからとはいえ、事は教育に重大な支障を与える問題である。その教育に支障を与える問題の中に、その捜査のやり方が果して適当であったかどうか——適法であったかは知らぬけれども、適当であったかどうかについては、これまた重要な疑いをわれわれは持つのであります。それは一つの問題としては、事件直後四十一ヵ所に及ぶ捜査をやっております。詳しくは申しませんけれども、その四十一ヵ所の捜査に当っては、学校の内部に対する捜査を行なっておる。しかも当日は平日であり、授業が行われる日である。そういう日に捜査を行うことが、果して教育上の立場を尊重してこの取調べに当ったという、慎重な態度ということが言えるであろうか。これは私は常識的に考えれば、何人もそのことに対する警察当局のやり方が、口では教育を尊重する、あるいは教育者であるから慎重に取り扱わなければならぬと言いつつも、実際には何らこれをしていなかったという批判が生れるのは、これは当然だ。従ってこれらを含めて、私は擁護局長に、果してあなたの言われた行政犯としての特殊な事例——特殊というよりも、これは初めてであります。こういう事犯の取調べの行われた家宅捜査なり取調べ方法というものが、果して妥当でありゃいなやということは、これは高津さんの書ではありませんが、将来に対する大きな影響をもたらす問題でありますがゆえに、私は十分あなた方としては確固たる信念を持って臨んで、この調査に当っていただきたいということを重ねて望んでおきたいと思います。  そこで問題は一転をいたしまして、石井さんにお伺いをいたしますが、この事件の摘発をするに当ってあなた方の態度、これは大久保長官も衆参を通じて答弁せられておるし、また文部省態度も同様でありますが、地方公務員法の三十七条の違反としたその理由は、許可を得ないで集会に参加をした、いわゆる有給休暇の許可なくして参加をしておったというその点が、非常に問題であり、これが違反となった最も根本的な原因である、こういうふうに述べられておる。一体その当日の集会に何人参加をしたのか。またその参加の中で、全部許可がなくして参加をしたのか、許可があったのがどうか、許可があったものが何人かおるのか、この点の数字をまず明らかにしてもらいたい。
  49. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 十四、十五、十六日、三日間にわたって有給休暇闘争が行われたわけであります。全県下の教組の組合に対して、一日目は三割・二日目は三割、三日目は四割の人に対して、一斉に休暇をとるように指令されたわけであります。実際の状況は、第一日目は千六百三十人が参加されております。二日目は千六百二十一人であります。三日目は千九百六十四人であります。合計しますと五千二百十五人であります。これは全組合員の八七・九%に当る数字であります。この闘争に参加しました五千二百十五人のうち、承認の関係についての内訳を申しますと、第一、校長の承認を受けて出た者十六人であります。校長の承認を受けなかった者五千百九十九人であります。この五千百九十九人の内訳といたしまして、有給休暇請求書を提出したが、拒否された者が五千百三十七人であります。有給休暇請求書を提出しなかった者、これは全く無断でございますが、これが六十二人、こういうことになっております。なおこのほかに、四十五人の方は有給休暇請求書は提出しましたが、校長から承認を与えるわけにいかないと拒否されたために、休暇闘争に参加をしておられません。以上であります。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 その中で十六名が、今あなたの発表された数字によりますと、校長の承認を得たものと、こういうふうになっておりますが、一体この校長の承認を得たかどうか、そういうことについてどういう形においてこの調査が判明したか、この点を一つお聞きしたい。
  51. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私が今申しました数字は、佐賀県の警察本部が佐賀県の教育委員会から書類をもって報告を受けた数字であります。佐賀県の教育委員会は承わりますところによると、市町村の教育委員会、校長先生からの書面による報告によってこの集計をされておる、こういうことであります。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 それでは文部省に伺いますが、これらの資料教育委員会から警察に連絡をせられた数字である。そうすると、佐賀教育委員会は地教委を通じて、校長が許可を与えたのかどうか、その辺のところを調査されたようでありますが、その調査のやり方はどういう形において行われておったか、その点を文部当局から一つ伺っておきたいと思います。
  53. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 本件につきましては、佐賀県の教育委員会から、地方教育委員会に対して許可を与えてはならないという勧告が出ておるわけでありまして、地方教育委員会からさらに業務命令が校長に出ておる。その結果、当日の状況について県教育委員会報告するようにという指示が参っておりますので、その指示に従って校長が地方教育委員会報告し、その集計を県がまとめた、こういうことで私の方にも同様な報告が参っております。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 そこでその報告を求められた教育委員会趣旨、またそういう形において指導される文部省の立場というものは、要するに有給休暇を与える決定権というものは、これは校長にあり、従って校長より与えたか与えないかの回答を正式に文書でもってやれ、こういう形になったんだろうと思うのでありますが、そういうふうな判断に基いてやっておるわけでありますか。
  55. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 本件については、文部省は別に指導しておりません。私の方はこの事件が起きた後に、二月の二十二日に教育委員長及び教育長が文部省をたずねられて以上のような報告に接したわけでございまして、教育委員会としてできるだけこの十四、十五、十六の三日間の三、三、四割の休暇闘争が起きないように、事前において回避方について非常な御努力をされたわけでございます。PTAも同様に努力された。さらにそのもとになりました地方財政再建計画についての修正についての県の教育委員会の御希望もあったわけであります。そういう点で結果がこういうことになってしまった。非常に遺憾であったということで、当時私どもはこの報告を受けたのでございまして、別に文部省からは本件については事前に何らの指導もいたしておりませんし、またこういうことのあるということも私どもは聞いていなかったのであります。それから教育委員会が、今申しましたように、この運動を回避するために十全の措置をおとりになった、こういうことでございまして、あらかじめ結果を予期しておやりになったわけではないのでございます。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 肝心かなめの点が抜けておりますが、そういう点はあとで触れたいと思うのですが、この教育委員会が休暇をやったあと、その結果について正式に文書で求めた。そして警察当局の方ではその文書によってその数を握り、不許可多数によって参加した、こういろ判定をした、こういうふうに言われているわけですね。文書によって回答を求めた理由は、結局許可を与える権限というか、許可を与える応諾の決定権が校長にあるのだという意味において、校長の態度はどうであったかということを調べられたのだろうと思いますが、その態度文部省も支持されておるか。また教育委員会もあなたの方に二月の二十二日にやってきて報告しているはずなんです。その報告の際にも休暇の取り扱いについては校長に決定権がある、そういう見解においてその問題を処理されてきたかどうか。
  57. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 休暇の権限は、市町村教育委員会が本来持っておるものでありまして、これを校長に委任してその権限を行使さしているのが通例でございます。従って本件につきましては、佐賀県の教育委員会といたしましては、事後の報告地方教育委員会を通じてとったわけでございます。二月の二十三日に私の方にお見えになったときには、すでにこういう事態ははっきり判明しておりました。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 はっきり判明していたということは、要するに通例は市町村教育委員会にその権限はある、しかしながら事実上は学校長にその権限を委任しておった、こういうことを言われるわけですね。そこで佐賀県の場合には県条例がありましたね。これは県条例によって任命権者にその許可権を与えているように私は見ておるのです。その佐賀県の場合の任命権者が事実上学校長に委任をしておるということを前提にして、そして許可があったかなかったかの校長の判定を求めておる、こういうふうに解釈していいのですか。
  59. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 県条例の場合に、市町村の服務関係は、義務教育学校は市町村の関係でございますから、県条例は当然にはいかないわけであります。県立学校職員に通ずるわけであります。従ってこれは読みかえされると思うので、市町村教育委員会と読むのが適当であろうと思うのです。この場合に通例事実上は学校長に許可権限を行使させておるというのが普通のあり方でございます。本件については市町村教育委員会は三、三、四の十四、十五、十六日の休暇闘争については許可しては相ならぬということを厳重に校長に指示しておるのであります。従って校長はその教育委員会の指揮に従ってこの休暇を許可しなかった、これが事実でございます。
  60. 辻原弘市

    辻原委員 そこで問題になる点は、一応法律の建前はあなた方の解釈によると、通例市町村教育委員会が許可権を持つ。事実上は学校長に委任しておる。従って実質的には学校長に許可の権限がある、かように判断をしても差しつかえないのですね。そこで問題になるのは、この佐賀の場合には事前に業務命令という形かどうかは知りませんけれども、ともかく市町村教育委員会から何か通牒が出ている。その通牒で許可を与えてはならぬ、こういうふうになっている、こう言うのですね。そこで問題となる点は、これはしばしば当委員会でも触れておりますが、労働基準法の有給休暇に対する本来の権限との関係であります。これをどうするかということです。その問題について従来のあなた方の答弁をしぼってみますと、こういうことになると思います。それは大久保大臣の参議院の文教委員会地方行政委員会等での御答弁からいたしますと、許可の判定は校長がやるんだ。その校長がやる場合に、いわゆる業務の運営に支障があったからいけないんだ、こう言われる。裏を返せば、校長の判断として支障がない場合には、有給休暇というものは当然の権利として与えられる。与えられないという特例は、三十九条二項ですか、ただし書きによって、特例として業務に支障があるということを校長が認めた場合に与えなくてもいい、こういうふうな解釈をされている。そこで私は突き詰めていくと、要するに今度の事件については、一体それじゃ業務に支障があるということはどういうことなのか。あるいは業務に支障があると判定するのは、本来校長に属するものであるか。あるいは法律上服務についての権限をゆだねられている地教委にあるのであろうか。いろいろな解釈上の疑問が私は生れてくるのであります。なぜならば、業務に支障がないというこのただし書きさえなければ、少くとも有給休暇が適法に要求された場合には、これは与えなければならぬはずなんだ。これは幾ら他の要素があろうとも、法律の明文はそうなっているわけである。従ってそれを打ち消す一つのものは、少くとも業務の運営に支障があったかなかったかという一点にかかると私は思う。これはもう少し文部省からも明確な答弁を私は聞いておかなければならぬと思うのでありますが、一体今回の場合三割、三割、四割というやつは、常識的には授業に差しつかえるという議論も——(坂田委員「大いに差しつかえる」と呼ぶ)今坂田君が言うように、あまり実情を知りませんから、そういう議論もある。ところが現在の学校運営の中において、一体学校授業はどういう範囲において企てられているかという、現在の教育上の本質的な問題に私は触れてくると思う。これは今日他の行政官庁においては、勤務時間というものが明確に法律に規定されているにかかわらず、教員の場合には、それが明確でないという特殊な事情もある。しかも一日において教壇でする授業それ自体を学校業務と見られない、科外も含めて見なければならぬという特殊事情もある。また一日においてやる単元それ自体、教壇それ自体も、一日に切って、一時間の授業をやったからその一時間の授業が効果が上ったと判定できない全体的な関連もある。こういう点をいろいろ要素として加味した場合に、三割、三割、四割という休暇をやったからすぐさま学校運営に重大な支障があると判定する一般論に対しては、教育論としてはそのままではいかぬと思う。私はその行為自体を弁護するためにそれを言うのではない。一体こうした機会において新教育のあり方というものがどういう形においてやられておるかということの実態を明らかにしなければ、国民に十分この教育のやり方というものを理解せしめる機会がないと思う。この点はあなた方は従来触れられておらぬわけです。一体業務に支障があるかないかはどこが判定をするのでありますか、その点をまず伺いたい。
  61. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 市町村教育委員会及び校長でございます。
  62. 辻原弘市

    辻原委員 その場合に、市町村教育委員会は服務分限についての権限を持っておる。任免権は都道府県教育委員会が持っておる。これは先般通った新しい教育法というのですか、これに基いて地教委にそういう権限が与えられて、任免権だけが抜かれておるのです。一体その服務分限そのものと任免権との関係というものも、これも議論が出てくると思う。それはさておいて、校長の権限というものは、これはこの間野原君の質問にあなたであったか答えられて、学校教育法の二十八条だと言われた。この学校教育法の二十八条には、校長の権限のみならず、教員それ自体の権限も規定されている。教員教育をつかさどるとある。校長はいわゆる校務を総理する、同時に職員を監督するという、きわめて短かい言葉で表現されている。そこにいろいろな解釈の方法も生まれてくると思うが、それだけを眺めてみた場合に、いわゆる校長は職員を監督する、権限は地教委にあり、その監督というものはどういう範囲の監督かということにも問題があるが、一体授業運営それ自体のことが校長の専権としてゆだねられておるかどうか疑問があるのです。教員教育をつかさどる、学校の運営ということは何かというと、授業を主体にした運営である、こういうことになると、今あなたは地教委と校長にその運営についての判断の決定権がある、こう言われる。そうすると教員それ自体には全然決定権はないということになる。しかし私はそういうことではないと思う。年間の授業計画を定めるについては、それぞれ教育をつかさどる権限を与えられた教員がまずそれを組む。そうして学校全体としての一つのものに調整するという形、それは校長に属するかもしれない。しかしそれも慣行としてやっているのであって、果してそういう決定権限というものが校長にあるかどうかについては、これは法律上も非常に疑問のあるところだ。そこで教員がそれについての判断権あるいはそれらについて関与する権限というものはないのかどうか、あなた方はどう見られておるか。
  63. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 学校経営の責任教育委員会が法的には持っておるのでありまして、それに従って学校長が管理運営をしておるわけであります。この場合学校の管理運営については、もちろん学校教育法教育基本法その他の規定が当然適用になるわけであります。その権限を総括しておるのが校長であって、計画自体を職員が勝手に変更することは許されないと思います。
  64. 辻原弘市

    辻原委員 あなたは勝手に変更することを許されないと言う。勝手に変更を許さないという権限が校長にどういう形において属しておるのか。その点をもう少し明瞭に答えてもらいたい。
  65. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 学校教育法の二十八条には、校長は校務をつかさどる、こういうふうに規定があります。教育委員会には学校の管理運営に関する権限がございます。この関係からすべて学校経営については、校長が承認をする場合、承認をするのであります。その承認された計画に基いて学校運営が行われておるのが正常である。その承認を得ないで計画を変更することは不正常でございます。
  66. 辻原弘市

    辻原委員 そこでその教員に属する教育をつかさどるということの内容と、校務をつかさどるという内容とを、もう少し掘り下げてみなければならぬと思うのでありますが、そのことは後日に譲りましょう。  そこであなたが今言った学校教育法の建前の校務をつかさどるという校長の権限において正常な運営を阻害するかどうかということについての判定が行われる。従ってあげてそのことは校長の判定にある。今の御答弁はこういうふうに言われておるわけですね。それでいいですか。もう一ぺん伺います。
  67. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 教育委員会及び校長であります。
  68. 辻原弘市

    辻原委員 教育委員会及びという、その教育委員会は法規において規定をされておることであって、しかしあなたが答弁されておる等々の言葉を読めば、一つの慣例としてというか、あるいは一般的にというか、あなたはそういう言葉で表現されておりますが、事実はそういうことが委任をした形において行われておるという意味から申せば、実際の最終的な判断というものは、事実問題をとらえて考えた方がいいと思う。そういう場合に校長の一つの判断、校長の校務をつかさどる学校経営の立場における判断というものによって決する、こういうふうに言い得るわけですな。
  69. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 大体それでけっこうだと思うのですが、ただ教育委員会は監督権を総括的に持っておりますので、いつでも校長に対して一般的な指揮監督命令を発することができるわけであります。
  70. 辻原弘市

    辻原委員 そうなると、私はもしこのことが実際の法律上の争いになれば非常に問題になるところだと思うのだが、教育委員会それ自体は全般的に服務権限を総括するということであって、事実上具体的に起った事象について、事前にそのことが学校の運営上支障ありやなしやということについての判断がつかぬことは、事実が実証する。そうでしょう。その判断を事実において実証するのは、教員がそれぞれの計画を立てた、それを総括して校務を総理する校長がその判断をする、それならばわかるわけです。しかし今回の場合に、最初にかくかくの休暇を与えてはならぬということを事実の発生しない前にぶっつけておる。地教委はいかなる判断においてやったか。問題は概念的なことでなしに、印象的なことでなしに、感情的な問題でなしに、具体的にこのことが果して校務に支障ありやなしやは、教育委員会は、何人が命令しようとも、個々の学校の中における学校運営についての判断というものは、さような形において軽々に取り扱わるべき問題ではない。しかもそのことは当然労働基準法において認められたいわゆる法律を否定する要素になるのですから、事実の一つの立証がなくしてそういう命令を発することは、かりに命令が発せられても命令に効力があるかどうかということは、実際問題として私は一つの大きな問題になると思う。だから地教委がその通牒によってストップしたということは、本来の業務に差しつかえありやなしやの判定に基いてやったものではない。それは事実上校長の方がやるのだ。またそこでなければ実際わからない。この点についての見解はどうなんですか。
  71. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 通例の場合ですと辻原委員お話のように、校長がその場の判断をするわけであります。従って休暇の権限も、個々の教育に休暇を与えるのが普通であります。しかし本件のように三、三、四という休暇闘争が行われたら、学校運営に支障がくるということは何人も異論がないと思う。そういうことによってどうしても学校運営が正常でなくなるわけであります。ですからあらかじめ県の教育委員会は地教委に対してそういうことのないように、従って本件に関する休暇を与えないようにという指導をしたわけであります。これと労働基準法三十九条の規定とは私は全然抵触しないと思う。本人に、その希望した時季に与えることが業務の正常な運営を阻害する場合には、他の時季に与えればよろしい、こうなっておるのでありますから、私はこれは全然抵触していないと思います。
  72. 辻原弘市

    辻原委員 全然抵触してないというのだが、そういう見解を支持するわけには参りません。他の時季に与えていないし、他の時季にどういう形で与えるかということも明示しないで、そしてこれを不許可にしたということは、これは法律の建前を、ただし書きの前段はやっておるけれども、後段についてはやっていないということになって、私は必ずしも法律の適用でないと解釈する。これは解釈上の問題だから、一応さておきましょう。  そこで、だんだんの質問によって明らかになったことは、事実問題としてはともかく学校長が判定を下すのだ、こういうことになるわけです。ところが、私は事前に本来の権利を否定するような通牒は無効であると思うのです。実際判定する者が、またそうでなければ判定ができないところを差しおいて、そしてやった行為は、実際上の何らの効力を持たない、こういうふうに解釈をするわけなんです。しかしあなたは、だれが見ても常識的にその場合には授業に支障を来たすという一般論からも、地教委の通牒の正当化というものを言われておるのですが、そこで伺っておきたいのは、佐賀県においては同様のことが前にも行われております。これは一つ石井長官にも伺いたいのでありますが、二月のたしか六日であったかと思うのですが、やはり高等学校の組合が半日の有給休暇の集会をやっておるのです。この件を石井長官は御承知でしょうか。
  73. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 承知をいたしております。二月六日に佐賀県高教組の方が、約一千名でございますか、集会を行なったということは承知をいたしております。この件は、私ども現地からの報告によりますと、午後二時ごろから五時ごろまで大会を開かれたようでございまして、これにつきましては各校長の承認を得て、午後の時間を短縮して、そういう大会に皆さん参加されたわけでございますので、六日の翌日七日、及び翌々日の八日、この二日に振りかえ授業をしておられるのでございます。校長の承認のもとに皆様がそういう大会にお集まりになったのでございますので、これは合法的なことであると考えております。
  74. 辻原弘市

    辻原委員 私が次の質問に入る前に今石井さんからお話がありましたので、手間がはぶけてけっこうなのですが、二月の六日に約一千名参加したのは、これは午後の二時であったか、一時であったか、三時であったかは別として、ともかく校長の承認があったから合法でございます、と今御答弁があった。そうすると、文部省の見解も警察の見解も、常識的にいずれも多少度合いは私は違うと思うのです。人間の常識からすれば、度合いは違うと思う。三日間にわたって三割、三割、四割をやるというのと、半日をやるというのと、それは形は違う。しかしいずれもが集会に臨んで、やはり同様定員の確保の問題、教育上の諸問題を取扱うというその集会への参加であります。やはり有給休暇という形において、校長に願いを出した。一方は、ともかく校長が許可をしたことになっておる。それだから適法である。一方は校長が許可をしない。なぜ許可しなかったかというと、地教委が業務命令を出して許可するなと言った。にもかかわらず、支障がないといって許可をした校長があったに違いない。これは十六人の校長が許可を与えておるという事実がある。私はこの二つの問題の関連を見ると、非常にこれは常識的にも了解がしにくい。また教育的にも考えなければならぬ点がある。というのは、現在の教育のやり方で——もちろん全部休んでしまう、あるいは半分休んでしまう、また何らの手当もせずに休んでしまう、そういうことは教育上、これは教育者として許さるべきではないと思う。しかし今石井長官お話によっても、振りかえ授業を片方はやっている。ところが、片方の、摘発された佐賀県教組の義務教育学校の場合においても、これはいろいろな方法が講じられておる。しかも学校の運営というものは、先刻申しましたように、一日あるいは一週間という短かい間において、そういう教育効果を考えるべきであるという建前なのか、ないしは、少くとも年間を通じあるいは一学期間を通じてそういうことを考えるべきであるのか、これは私は後者に属すると思う。義務教育の段階においても、年間を通じての一つのカリキュラムというか指導計画というか、そういうものの上にのっかる、いわゆる一学期、二学期、三学期、それぞれの学期に適した教育計画にのっとってやる。そうなれば、半日を休んで振りかえ授業をやるということによって補うその教育の立場というもの、それから三・二・四をかりにやっても、それを三ヵ月あるいは半年ないしは全体を通ずるカリキュラムの上で補うという教育がある。これは印象は違うけれども教育上の支障については、片方は非常な支障があり、片方に全然支障がなかったという判定は、これはいささか軽率ではないかという教育上の見解を持つのであります。この点は、一体文部大臣はどういうふうにお考えになるか、それから大久保さんは、一体どういうふうにお考えになるか。私は現下の教育のやり方の上において、理解してもらう点は十分理解してもらう、そういう無理解の上に批判が加えられるということであっては、非常に重要な事態であると思う。警察当局としても、教育を尊重するというならば、そういう突っ込んだ点にまで立ち至って尊重したかどうかということを、私はこの機会に承わっておきたい。
  75. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の高等学校教員が集会を持ったというふうなことは、私はあまり事情はつまびらかにいたしておりませんで、事後において聞いたことであります。いかにもふつり合いではないかというような感じもせぬでもないわけでありますが、私どもといたしましては、前々申してあります通りに、格別こちらからああしろこうしろという指図をいたしておりません。現地の自主的な判断によってやったことと思いますので、いささかふつり合いというような感じはいたしますけれども、それ以上格別のことは考えておりません。
  76. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 両事件は、形の上におきましてはふつり合いのように見えますけれども、手続上にふつり合いがあることはやむを得ないと思います。ただしかし、警察の取締り方針も、文部省の方針と歩調を合わして、つとめて同一の歩調をとり協調して進むのが妥当な筋道だと思います。
  77. 辻原弘市

    辻原委員 その大久保さんの言われる手続の上にふつり合いがあったというのは、どういう意味なのですか。片一方は校長の許可があり、片一方は校長が許可しなかったという意味なのですか。
  78. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 そういう意味です。
  79. 辻原弘市

    辻原委員 そこで、だんだんお尋ねいたしますと、結局この問題については校長の正当な判断に譲られる——校長が自分で、これは支障があると判定して許可を与えなかった場合には、三百人に及ぶような参考人まで招致をした事件になり、片や、校長が、これは当然一週間あるいは一ヵ月の間に、教育の効果を別の形において十分補てんできると判断をして許可を与えた場合には、これは何ら問題にならない、こういうような不思議な事件があってはならないと私は思う。しかもこの二月六日の高等学校の集会には、佐賀県の教育長がこれに出席して激励演説をぶっておる。その教育長が片方の集会に対しては、これは違法なりとして地公法三十七条の違反として刑事罰を課そうとしておる。こういうことが教育上行われるということは、法のむずかしい解釈は別として、一体常識的に納得させられるかどうか、まことに疑問とするわけです。こういう点についてあなた方が年来ほしいという指導助言の権限は、あなた方を支持する自由民主党のお力によって先般与えられたのではありませんか。それならばなぜ世間の心配するような、要らざるときにその指揮監督命令権というものを乱用して、必要なときにそれをやらぬか。この点について事後の四月二十三日に相談に来るまでは何も知りませんという怠慢なことでなくして、なぜもっと、それ以前において一体何が原因でこういうことが起っておるのか、指導すべき点は教育委員会を指導し、あくまでも教育上の問題としてこれを解決しなかったかという点で、私は文部省態度としては、後日において指弾を受ける必要があると思います。文部大臣はこういう見解に対してどういうふうにお考えになりますか。あなたの御答弁を承わっておりますると、これはもう数回にわたって速記録を見ましても正鵠そのものであります。私は灘尾さんというお方は非常に尊敬をいたしております。(「好きだろう」と呼ぶ者あり)その尊敬の内容がどういうものであるかは公式の席上で申し上げることははばかりますけれども、ともかくあなたは今回文部大臣となられたからには新しい、そういう教育的な情熱を持っておられると解釈しております。しかしながら坂田君はこのことを非常に喜んでおるようでありますが、私はとんでもないことで、教育の中に警察が関与して父兄のうちにその取調べに行って、先生がそれによって逮捕されるというようなことは、事の適否はともかくとして決して喜ぶべきことではないと思う。そういう根源をなくすることが国の政治の上に、特に文部行政の中になければならぬということを私は強調するのです。だからそういう点で、なぜこれを教育の問題として処理するような方向に指導されなかったかという点について、大臣はどういう所見をお持ちになりますか。
  80. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えをいたします。教育行政につきましてなるほどお話通りに、文部大臣は指導、勧告、助言をする権限を持つ。従いまして必要に応じてこれは行使しなければならぬと思っておるのでありますが、ただ今日の制度の建前から申しまして、あまり中央の方で統制をするとか、干渉をずるとかいうようなことは避けるのがその精神だろうと考えております。従いましてなるべく地方の自主的な判断のもとでやってもらいたいと思っております。ただ教育全体のことを考えまする場合に、一般的にこうあってほしいというようなことは、これは申し上げるつもりであります。従いまして昨年以来年末闘争であるとか春季闘争であるとか、いろいろ問題がございましたが、さような際におきましても、われわれといたしましては一般的には法規違反のようなことはしてほしくない、十分注意してほしいという注意はいたしたつもりでございます。また地方に対しましてもその意味の指導はいたして参りましたつもりでございます。そういうふうな行き方は今後ともやって参りたいと思っておりますが、個々の問題につきましてはあまりこちらから干渉がましいことを一々やろうとは思っておらない。同時に今お話がございましたが、今度の佐賀県の問題につきまして、よって来たるところの理由があるというふうなお考え、私もこれはある程度認めるのであります。いろいろ地方教育委員会、教職員の諸君佐賀県の問題につきまして心配いたしておるという事実も承知いたしております。そのためにいろいろな運動をしておられるということも承知いたしております。この問題につきましては教員諸君が心配されることも、これは無理からぬことであります。同時にこれはわれわれの心配すべき問題で、教育委員会はもちろんのこと、県の協力も得、われわれといたしましても十分心配をいたしまして、教育内容の改善、教育行政の向上ということに努力すべきことは当然のことだと思います。及ばずながらその努力をいたすつもりでおります。願わくは教職員諸君も気持はお互いに同じなのでありますから、互いに協力をして、教育行政の向上発展をはかっていくという気持になってほしい。その熱意の余りと申しまするか、ほとばしりと申しまするか、知りませんけれども、これが違法にわたるということは厳に慎んでもらいたい、さような心持ちでいるわけでございます。
  81. 辻原弘市

    辻原委員 まことにお言葉はりっぱであります。しかも私がいい指導をしたらどうかと申せば、そう中央から押しつけてやるべきではない、これは私もそう思う。ところが必ずしもそうではないのです。今度の問題においても、あるいは事実はあなた方は否定されるかもわからぬが、ともかく二月の二十三日に上京して打ち合せたときに、りっぱな指導助言が行われております。これが押しつけであるか押しつけでないかは、解釈のしようもありますけれども、ともかく佐賀県の教育委員会の内部においてもこの事実については言っているのであります。当初佐賀教育委員会としては、あくまでも行政処分の域にとどめて地方公務員法二十九条でやりたい。ところが文部省の担当の人たちにこれを相談したところが、そういうようなことはなまぬるい。私ならこれは明らかに三十七条の違反だから、これでけっこうやれますよというおりっぱな指導を行われた。そこで佐賀教育委員会としても文部省の見解がそこにあるということになれば、われわれも自信を持ってそういう形でやりましょうということに最終的な結論を見出したというのである。言葉のあやはいろいろあり、私の表現がそのままであるかどうかは別であります。しかし助言を受ける立場から言えば、私ならこういうことをやってみせるとすごむ文部省の役人の見解の前にはひれ伏すだろうと思うのです。私はそういう形がりっぱな指導助言であろうかというのです。今大臣は、これは地方で独自におやりになったのだから、その地方の見解を左右するような指導助言はできる限り今後も行いたくない、こうおっしゃっている。ところがおっしゃっているその以前にもうそういうことが行われている。だから世上文部省は今回の事件に対して指導的な役割を演じ、警察や検察庁の協力を求めてこのことをやったというようなそしりが、そういうところから生まれているということを、大臣はよくお心にとめておいていただきたいと思う。私はそういう誤解が生まれることが教育上ますます文部省の信頼の失墜するゆえんだと思う。佐賀県の教組をやっつけ、教職員も縛ってその刑に問うたところで、教育は振興しないのであります。事態はそういう事態ではない。さっき高津さんも言われておりましたけれども、やはり大きな目で考えた場合に、いかにしてそういうような、お互いにひが目で見、お互いがお互いを信頼しないというやり方が、果してこれが将来教育を発展させる道であるかどうか、こういう点にもかねがね私は疑いを抱いているのです。私の信念としても、やはり教育の府にあるならば、これは是々非々で少くとも教育上の問題は教育で処理するという見解でなければ、法規がいかにあろうとも、その受ける影響は教育上甚大であります。そういう立場に立って私は、すでにこれは逮捕された者も釈放せられる段階に至っておるのでありますが、石井さん、それから大久保大臣にもよくこのことを聞いておいていただきたいと思うのです。問題は教育上の問題で、人権擁護局長の言葉をかりて言えば、これは行政犯の特例に属する問題だ、そういう見解に立てば、おのずからいかにしてこの問題を終熄するかということの見解が、私は文部省を中心にして生まれるはずだと思うのです。それくらいの見解を持って事態の処理に当られぬような大臣なら、私の先ほど申し上げました灘尾大臣尊敬という言葉ははっきり取り消します。(笑声)どうか私の最後に申し上げたことについて、灘尾大臣、それから大久保長官、また事務当局として石井大臣——石井大臣は少しおだて過ぎましたが、(笑声)石井長官はどういうように考えられるか、最後に承わりまして、本日の私の佐賀事件に対する質問は終りたいと思います。一つ誠意を持ってこの問題に対する善処方を御答弁を願いたいと思います。
  82. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 辻原君のお気持は私もよくわかります。われわれは決して教職員組合の諸君を弾圧するとか、押えつけるとか、そういう心持は持っておりません。その組合がほんとうに先生の組合らしく堅実な発展をすることを願っておるのです。今回の事件につきましても、かような事態になりましたということ全体につきましては、しばしば申し上げました通りに私はまことに残念に思っております。しかしあの事態になりました以上は、かような結果になってもこれはやむを得ないというふうに私は思っておるのであります。願わくはかようなことを再び繰り返すことのないようにやりたいと思っております。なおこの点につきましては、今辻原君からお話がございましたが、やはり教育界の大先輩としてお互いにこういうような問題がかような形をとって物事が出てくることのないように努力していくことを私は念願をしております。その意味におきましてはぜひ御協力を願いたいと思います。
  83. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 日本の現在起っております各種の運動、ことに組合運動あるいは日教組の運動、そういう運動自身に対して私どもは決して弾圧する考えはないのです。願わくはこういう団体を統率する人がその方法について誤まりのないようにしていただきたい。私どもはそういう運動については十分に尊重いたします。むちゃな弾圧はいたしません。
  84. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいま辻原委員から、佐賀県が二十九条で処分すべきであるのに文部省は三十七条で処分すべきだ、こういうふうな見解を事務当局が述べたようにお話があったのですが、そういう事実は毛頭ございません。その点は明らかにしておきたいと思います。
  85. 長谷川保

    長谷川委員長 野原覺君。
  86. 野原覺

    ○野原委員 もう午後一時になっております。きょうは人権擁護局長もお見えでございますので、人権擁護の立場から、私も努めて本日のところの質問は簡潔にして昼食に入りたいのであります。従って御答弁なさる政府側におかれましても要点を明確に一つお願いをしたいと思います。  まず第一にお聞きしたいことは、逮捕勾留をいたしました理由がどうも私には不明確でならぬのであります。逮捕勾留は、いろいろ法律を調べてみますと、被疑者が逃亡のおそれがある、または証拠を隠滅する心配がある、そういう場合に逮捕勾留をするわけでございますが、私が納得できないというのは、本日も大久保国務大臣は、実は二ヵ月間も慎重に調査をしたのだ——二ヵ月間もかかってそれぞれ専門の関係係官が材料を収集してそうして決断を下した、こういうことであれば、そういう証拠隠滅のおそれはないのじゃないか、実はこういう感じを持つのであります。  従ってお尋ねしたい第一は、どういうわけで逮捕勾留をやられたかということです。どういうわけでやられたのか。これはわかり切った質問のようですけれども、大事な点ですからもう一度明確に御答弁を願いたい。これは検察庁を代表する井本さん、それから大久保国務大臣、御両人から御答弁願いたいのであります。
  87. 井本臺吉

    井本政府委員 刑事訴訟法に規定があります通り、結局住所、氏名が明らかでないとか、あるいは逃亡のおそれがあるというようなことではなく、証憑隠滅のおそれがあるから本人を逮捕勾留するということで、裁判所の令状をもらって逮捕勾留をしたということになるわけでございます。  それではどの点が証憑隠滅のおそれがあることになるかという意味のお尋ねかと思いますが、具体的に被疑者のだれだれがそういうおそれがあるということを申し上げるのではなしに、一般的に、この事件も客観的には同盟罷業というか、職場の放棄をやっておりますが、さような措置に出ますことについて、あるいはそそのかし、あおる、共謀ということが地公法の三十七条の違反になるということになっておりますが、具体的な問題としましてはだれがだれをそそのかし、あおり、共謀したのかということになると、非常に微妙なものがありまして、その間に通謀などがありますと、私の方ではとうてい取調べができないということで、さような請求をして、裁判所の令状をとって逮捕、勾留したということになっております。
  88. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 私からつけ加える必要はないと存じます。刑事局長の説明で尽きているわけであります。
  89. 野原覺

    ○野原委員 それでは重ねてお尋ねをいたしますが、証憑を隠滅しようとしたり、もしくは隠滅した、そういう事実があったのですか。この被疑者と称する者に、いわゆる三、三、四の有給休暇をとって集会を持った、あるいは組合が指令を出した、そういうふうな証憑を隠滅しようという可能性が実はあったからと、こういうことでございますが、それではこの被疑者諸君は、あるいは組合といってもよろしいが、佐賀県の教組は隠滅したのか、あるいは隠滅しようとしたのか、そういう事実があったからやったのか、この点はどうなんですか。
  90. 井本臺吉

    井本政府委員 先ほど申し上げましたように、具体的にだれだれが証憑を隠滅したというようなことを申し上げておるのではなしに、この事案の容疑事実が、あおり、そそのかし、共謀したのかとというようなことでございますので、だれがどういう点をあおったのか、そそのかしたのか、共謀したのかというような点が容疑事実になっておるわけでございます。ところがさような点は前々から問題になっております単なる措令だけがすぐ問題になるのではなしに、人間対人間の関係でございますから、その間に通謀が行われましては調べができないということになりますので、私どもが申し上げますのは、法律的には証憑隠滅のおそれがあるという点を申し上げたわけでございます。
  91. 野原覺

    ○野原委員 指令というものは、山口警備部長の手元にも実は持っていらっしゃる。指令が問題だとすれば、その指令というものは二ヵ月間のうちにあなた方の手元に入ったはずである。それが入らないで捜査に着手したとしたら、これはまた問題です。ですから二ヵ月もかかって指令を入手しておる。それから六千何百名の三日間にわたっての集会が持たれている。これもれっきとした事実なんです。なるほど検察庁あるいは警察庁当局が犯罪ありと思量した場合には、当然捜査をやらなくちゃなりませんけれども、具体的に佐賀県教組の今度の場合には、休暇をとったというれっきとした事実もあるし、資料もちゃんとあるんだから、一体何を血迷って証憑隠滅のおそれありとして警察に留置をし、検事勾留をやるというような処置をしなければならぬのか。しかも二ヵ月間捜査をされている。二ヵ月間も捜査されて、勾留しなければ証拠がつかめないくらい佐賀の検察庁は無能なのか、日本警察は無能なのかと申し上げたい。二ヵ月間調べている、それはあなたは三十七条で、共謀の事実とか、そそのかしといった対人的な関係は、どうしても警察に呼び出して調べなくちゃならぬ。呼び出すためにはやはり法の命ずるところに従って、検事勾留なり何なりをやらないと、その人間を拘束することができぬからやったんだ、こういうことですけれども、この具体的な場合においては逃げも隠れもできないことじゃないかと思うのです。この点で問題が一つあるのであります。ただいまの御答弁に対しては、私はなお納得ができないから、この質問は今後も継続いたしましょう。  それから人権擁護局長にお尋ねいたしますが、二十八日から九日にかけて、あなたもお聞きの通りの深夜取調べをやっております。この深夜取調べが世間で言うところの拷問に入るか入らないか。私は刑事訴訟法の正確な言葉を使ってもよろしゅうございますが、一体深夜取調べをやることが拷問に入るとお考えになりますかどうですか、局長さんのお考えをお聞きしたいのでございます。
  92. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 拷問になるかどうかのお尋ねでございますが、その当時の取調べ実情がまだよくわかりませんので、はっきり申し上げられません。ただ取調官が身柄の拘束期間中にできるだけ早く本人から何らかを聞きたいというので、十二時を過ぎたりすることは間々あるように聞いております。しかしそれが一がいに拷問に入るかどうかということは、今抽象的には申し上げられぬと思います。
  93. 野原覺

    ○野原委員 一がいに言う拷問という言葉が世俗的な意味のものでございますから、なかなかそう簡単に御答弁ができないとおっしゃることも私にはわかるわけですけれども、あなたも御承知の刑事訴訟法の三百十九条、自白の証拠能力という条文を読んでみますと、「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。」と書いてある。だから私は深夜取調べが訴訟法の証拠能力の規定に引っかかってくるんじゃないかという疑いを持つのですが、この疑いを持つのは間違いでしょうか、お尋ねいたします。
  94. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今の三百十九条の点でございます。これは大体三時ごろまでかかったようでございますが、深夜と申しましても果して自白を求めるための尋問であったかどうか、その点もう少しはっきりいたしましてからお答えをしたいと存じます。ただ従来の最高裁の判例から申しましても、三百十九条で証拠能力を否定されております自白は、いわゆる強い意味の拷問による場合が多いと思うのであります。
  95. 野原覺

    ○野原委員 このことは今後私どもがこの問題を追及していく場合において、人権擁護の立場から問題にしなければならぬと考えております。従って擁護局としてもぜひ一つ御検討をお願いしたいのであります。私はこのたびのあの深夜取調べは、先ほど答弁にもありましたように検事勾留が却下になった、そこで準抗告しなければならぬ事態になった。準抗告をするための資料を整備する必要から長いものは三間時——一時間五十七分というけれども、これはとんでもないことである。佐賀の司波検事正は私に三時間と電話をかけてよこした。司波検事正は速記録をとってお読みになるだろうと思う。私は五月五日の休み一日を利用して佐賀に参りまして検事正に会ったのです。どうですかと言ったら、事実は断じてないと私にたんかを切った。そこで私は、あったらどうする、よろしい、じゃあなたがそう言うならば、私はあとで資料を出してあなたと対決するからというので、私は県庁に鍋島知事をおたずねして、この問題の善後処置について所見を求めたのです。私が鍋島知事と話しているところへ検事正から電話がかかってきました。そして私にぜひ電話に出てくれというので、何だと聞きましたら、今あなたに断じてなかったと言ったのは間違いでありました、私はさっそく調べてみたところが、午前零時から短いものが一時間半、長いものは三時間にわたって深夜取調べをいたしております、しかしこれは理由のあることです、検事勾留が却下になったから、準抗告資料整備その他の必要があると判断したからやったのである、こういうことでありました。しかもこれは検事正の答弁にはありませんでしたけれども、ある者は休んでいる。これは擁護局長さんにお考え願わなければなりませんが、寝ている者が実はたたき起されて、ほんとうに疲労こんぱいしている者がいろいろただされている。この人々からいずれ直接に——今釈放になっている人もありまするし、まだ二名は拘留になっているようでございまするが、出てきましたならばこういう人々からもどういう尋問がなされたか、具体的に、どういう状況に置かれて答弁をしたかということを私どもも聞いて、これは実は法廷で私どもも争わなければならぬと思います。井本刑事局長に申し上げますけれども、あなたの御承知のように刑法の職権乱用罪という規定は一体何を意味するのか、第二十五章の涜職の罪、第百九十四条の特別公務員職権濫用罪、第百九十五条にはまた特別公務員の暴行陵虐、こういうものもきめられている。一体どの条文に該当するかは専門的に私ども検討いたしますが、私はこのような被疑者に対する人権侵害がなされている事実は、もう否定することはできないのです。だからこういう人権侵害があった場合の救済策について擁護局長さんにお尋ねします。百九十四条の特別公務員の職権濫用、こう書いてある。「裁判、検察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職権ヲ濫用シ人ヲ逮捕又ハ監禁シタルトキハ六月以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」と書いてある。この解釈はいろいろありましょう。こういうものには該当しないというのが刑事局長の見解であるに違いない。私はあなたに答弁は求めません。あなたはそう言うだろうけれども、しかしあの深夜の取調べ、その他大久保国務大臣の率いる今日の日本の国家警察佐賀県教組に対しとった処置というものは、多分にこのような刑法に該当するような疑いがあるし、それから刑事訴訟法上やはり問題がある。自白の証拠能力という点からも問題があるのであります。あわせてこの点につきましても、人権擁護局でもこの事実をあなたの方で慎重に御収集になられて、そうしてあなたの方の確信のある資料に立って御検討せられんことを私はお願いしておく次第であります。  なお申し上げたいことはたくさんあります。しかしながら私も今委員長を中に置いて与党の理事諸君とも約束したことでありますし、相当時間も経過して皆さんお疲れでありましょうから、本日の私の質問はこれで終ります。
  96. 長谷川保

    長谷川委員長 この際委員長から資料を要求しておきます。山口警備部長、前回の当委員会発言の中にありました例の別紙というのを御提出願いたいと思います。  本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。これにて散会いたします。    午後一時二十二分散会