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1957-04-25 第26回国会 衆議院 文教委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十五日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 米田 吉盛君    理事 河野  正君 理事 佐藤觀次郎君       永山 忠則君    塚原 俊郎君       木下  哲君    小牧 次生君       櫻井 奎夫君    高津 正道君       野原  覺君    八木  昇君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警 視 監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局予算実         地監査官)   穗刈 誠一君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  木田  宏君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 四月十九日  委員辻原弘市君辞任につき、その補欠として鈴  木義男君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員鈴木義男辞任につき、その補欠として八  木昇君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十八日  大学における単一学部制度実施に関する請願(  世耕弘一紹介)(第二七九二号)  同(受田新吉紹介)(第二八七六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法  律案内閣提出第九四号)  学校教育、学術及び宗教に関する件     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  文教行政に関し質疑の通告がありますので、順次これを許します。野原貴君。
  3. 野原覺

    野原委員 灘尾文部大臣に、緊急にお尋ねをいたしたいのであります。私がお尋ねをいたしたいことは、先般四月十日のこの委員会において、自民党の高村委員から、佐賀教職員組合の、二月におけるいろんな要求に関連してのお尋ねに対しまして、文部大臣から御答弁があった点についてでございます。つまり高村委員お尋ねに対しまして、文部大臣といたしましては、今回、佐賀教育委員会が、佐賀県の教職員十一名に対して停職処分をいたしたことを、私は支持するというような意味の御答弁がなされておるのでございますが、文部大臣は、何を根拠にして、佐賀教育委員会処分を支持すると、こういう御答弁をなさったのか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私が、どういうふうな用語を用いましたか、速記録によって御承知を願いたいと思うのでありますが、私は、今回の佐賀県の問題につきましては、県教委がこれを違法なりといたしまして処分をいたしましたことは、これはやむを得ないことであるというふうに申し上げたつもりであります。
  5. 野原覺

    野原委員 やむを得ないという根拠をお示しいただきたいのであります。実は、この点につきましては、私も、高村委員質問をされましてから、佐賀県の実情等については調査をいたしてみましたし、なおまた御承知のように、昨日は佐賀県の警察逮捕状執行をするというような、まことに遺憾な事態にまで発展をいたしておるのであります。従って、文教行政の最も責任のある地位におられます文部大臣の御発言が、今日の教育界に与える影響はけだし少くない、このように私思いますので、あなたが、佐賀教育委員会停職処分にしたのはやむを得ない措置だ、どういうわけでやむを得ない措置だという御解釈をおとりになるのか、お伺いしたい。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員が、その要求の貫徹のために、正常な授業時間を打ち切りまして、一斉早退するとか、あるいは賜暇闘争戦術に出るというようなことは、私は、現在の法規の上から申しまして、違法であると考えておるのであります。文部省といたしましては、さような見解を持っておる次第であります。その点につきましては、各地方教委にも、その趣旨は徹底いたしておると私は考えております。今回の佐賀県の問題につきましては、地方佐賀県教委におきましても、この三割、三割、四割の賜暇闘争戦術というものにつきましては、これは違法であるという考えのもとに、さようなことのないようにというので、いろいろ努力いたしました結果が、やはりこれが断行せられたわけであります。そういうふうな事態のもとにおいて、佐賀県教委がこの処置をとりましたことは、私はやむを得ないことと考えるのであります。
  7. 野原覺

    野原委員 あなたは簡単に、違法なる行為佐賀県の教職員諸君がとった、こういう断定を下されますが、これはきわめて重要なことでありまして、私は、佐賀教職員組合佐賀県の教職員諸君のとった行動が、違法であるか、合法であるかというこの問題は、相当検討してみなければ、簡単に結論は出せまいと思うのです。そこでお伺いいたしますが、佐賀県においてあのような問題が起った発端、つまり佐賀県の教職員諸君が何を要求するために、何のためにあのような事態にまで発展をしたのか、そのことを、どのような御認識を持っていらっしゃるか、承わりたいのです。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教組諸君が、整理反対でありますとか、あるいは地方財政の関係でいろいろ要求を持っておられる。これは私ども承知いたしております。その点につきまして、佐賀県の教組諸君が、それらの主張を掲げて、これを要求されることについてかれこれ申すのではありません。ただ、しかしながら、そのためにとられました行動は、これは違法である、かように私ども考えております。
  9. 野原覺

    野原委員 佐賀県の教職員諸君は、これは内藤初中局長も、この前の委員会答弁をされておりますが、この速記を読み上げるまでもなく、これは文部省も、大臣も、ただいま申されたように、佐賀県の定員の問題、佐賀教育界における学校、特に小、中校における定員を最低二百五十九名整理しようという、二百五十九名整理されますことによって、昨年度より二百五十九名のマイナスになる。せめて昨年度くらいの定員は確保していかねばならない。これは地方財政再建団体になっておりますけれども、しかしながら佐賀県は他府県に比較して、その教員定員数というものはきわめてよくない。それをまた二百五十九名マイナスするということになれば、これは事は、教育の問題、教育の危機の問題につながってくるという認識から、当然、教育を守り育てていかなければならないというために教職員団体を結成しておる組合としては、二百五十九名の整理には断固反対をする。同時に、これは内藤さんはよく知っておるでしょう。昇給昇格は、佐賀県では完全に履行されておりません。法律昇給昇格を命じておりながら、その昇給昇格すらも完全に実施されないということは、これは今日まで何回となく交渉もし、要求もし続けて参ったのでありますけれども、それが何ら実現をされない。そこで最も大切なこれらの問題をどうしたならば抜本的に一体解決ができるのかということを、本年の一月から、これは各学校において職場会議を開いて、そうして全組合員諸君によって討議を続けておるのであります。しかもこの二月十四、十五、十六の三日間に、佐賀市と唐津市に集まって集会を開くということは、これは全組合員諸君の民主的な意見によって決定をしておる。だから二月十四、十五、十六の三日間のこの集会決定というものは、これは教員組合執行委員長の独断でやったとお考えになっておるのか、それとも執行部の専断でやったとお考えになっておるのか、それともこの決定というものは、全教職員組合員の民主的な討論の結果、採決の結果、決議されて行われたものである、このように把握しておるのか、いかがですか、これを文部大臣に承わりたい。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教組一つ意思決定をなしたという手続につきましては、いろいろ大会を開いて組合員の意向を聞いて、その決定によってきめたということは、これは事実であろうと思います。しかしながらそのことは、決してこれは合法性を認めるわけには参らぬ、かように私は考えるのであります。事柄自体はいかなる動機に出たにもせよ、またいかなる理由によるにもせよ、今回とられましたところの行動は、これは適法なものではないというふうに私は考えます。
  11. 野原覺

    野原委員 そこで、もっと論点を明確にするためにお尋ねをいたしますが、佐賀教育委員会が今回停職処分に付し、それから警察がその疑いありとして逮捕にまで出たというその問題点の核心、それは一体どこでございますか。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は前々から申し上げておるのでありまするが、教職員組合諸君法令の範囲内において行動ぜられることについては何ら申し上げることはございません。しかしこれが法規を逸脱した行為をすることは厳に慎しんでもらいたいと考えております。その意味におきましては、私就任以来地方諸君にもそのことを申しておるわけでありまして、佐賀県の教委がその趣旨に基きまして、これを違法なりと断じ、そうしてこれに対する行政処分を行いましたことも、また今回警察権のことにつきまして、私かれこれ言うのもいかがかとも思いますけれども警察のさような認識のもとにその処置をとられたものと私は考えるのであります。
  13. 野原覺

    野原委員 そういたしますると、今回とった行動のどこが違法であるというのか、違法ということになれば、これは法令違反する、法規違反するということだろうと思う。佐賀県の教員諸君のとった行動のどの点が、どの法規違反すると考えておられるのですか、承わりたい。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教組が、二月十四日以降でございましたか、三日間にわたりまして三割、三割、四割という賜暇闘争をやられた、その点が私ども地公法の第三十七条に違反しておるものと考えております。
  15. 野原覺

    野原委員 賜暇闘争地公法三十七条に違反すると簡単に言われまするけれども賜暇闘争とは一体何でございましょう。賜暇とは、これは賜暇の暇はいとまでございますから、おそらく休暇を賜わって戦った、休暇を賜わりて戦ったことが何で違反になりますか。賜暇闘争違反であるとあなたは言われますけれども、これは賜わるのです。休暇を賜わって、そうして組合が、しかも教育を守るために、全組合員の民主的な意思に従って要求を貫徹しようということは何も違反じゃないじゃないですか。賜暇闘争は少しも違反じゃないじゃないですか。文字からいって私はこう考えるのですが、いかがでありますか。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は通常用いられておる言葉をそのまま引用したわけでございますが、それはお話の通り正確にいえば、あるいは賜暇闘争ということは当らぬかもしれません。今回の場合は、いわゆる年次有給休暇をとって、そうして学校を休んで大会を開こう、こういうことをやったわけでありますが、その休むのにつきましても、大多数の諸君上司の承認も許可もなくして、ほしいままに大会に集まっておる、かような状況でございますので、さようなことは地公法第三十七条に該当するものと私は考えております。
  17. 野原覺

    野原委員 年次有給休暇は、これは教員の場合は要求ができると思う。まずその点からお伺いしたいと思いますが、教員諸君年次有給休暇要求できるその法的根拠、並びに要求するに当っての配慮しなければならない問題点があれば、文部省はどういう点だと認識しておられるか、その点を承わりたいのです。
  18. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 労働基準法によりまして、年次有給休暇をとることができることになっておりますし、これは二十日間をただいまのところ認めておるわけでございます。ただし年次有給休暇を請求された時期に与えなければならぬのですけれども、そのときが業務の正常なる運営と申しますか、支障を来たすというような場合には、他の時期に与えることができるということになっておりますので、許可を受けて休むというのが建前になっております。
  19. 野原覺

    野原委員 実はその点が私は焦点だろうと思うのです。その点に対する法律解釈を明確にしなければなるまいかと思うのです。教育委員会停職処分が妥当であるかどうか、あるいは県の警察本部逮捕したことも、その可否を私どもが批判、論究する場合には、ただいま言われた年次有給休暇についての考え方を明確にしてかからなければならぬと思う。そこでこの第三十九条年次有給休暇第三項に何と書かれてあるか。「使用者は、前二項の規定による有給休暇労働者の請求する時季に与えなければならない。」、こう書いてあります。この解釈をどのように文部省当局はおとりになるつもりか。「使用者は、」「労働者の請求する時季に与えなければならない。」、与えることができるじゃない、与えなければならぬとある。従って年次有給休暇の申し出を教員諸君がした場合には、当然教員諸君を使用する者、これは法規上は教育委員会であろうと思いますが、その服務監督権限のある教育委員会というものは与えなければならぬのです。これは与えないわけにはいきません。ところがその次に「但し、請求された時季有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」とある。このことを内藤さんは指摘されて、事業の正常な運営を妨げるからだ、こういう解釈教育委員会がして与えなかったにかかわらず、教員諸君がその有給休暇をとった。従ってこの点が違法だ、こういう解釈だろうと思いますが、念のためにそうであるかどうか、なおあなたにしてこの点について御発言したいところがあれば、十分発言をしていただきたいと思う。そこなんだ。
  20. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいま野原委員お話の通りでございまして、確かにこの三十九条三項によりまして、使用者は、労働者の請求する時期に与えなければならぬ。しかしお話にもございましたように、ただし書きによって、請求された時期に有給休暇を与えることが学校事業の正常な運営を妨げるという場合においては、他の時期に振りかえてよろしい、こういうことでございますが、お話のように三、三、四というふうに相当広範囲に支障を与えることは、学校の正常な運営阻害する、かように教育委員会判断し、許可を与えなかったのであります。
  21. 野原覺

    野原委員 「与えなければならない。」というのですから、これは当然与えないわけにはいかないのです。有給休暇の申請に対しては与えないわけにいかない。与えなかったということに対しては、正常な事業運営阻害がある、こういうように判断した、こういうわけでありますけれども、正常な事業運営に、具体的にいえばどういう阻害があるとお思いになりますか。正常な事業運営の上に阻害があるかどうかという問題が、やはり論点焦点になる。どういう点が正常な事業運営阻害するとお考えになりますか。あなたは教育委員会を支持するとおっしゃるのですから、お聞きしたいのです。どういう点ですか。
  22. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 今お話の「与えなければならない。」というのは、他の時期にも与えればいいのであって、請求された時期に与えなくても差しつかえないと思う。そこでこの場合、佐賀県がとりました措置としては、三割、三割、四割——教員諸君が一ぺんに三割の休暇をとられた場合には学校が予定しておった事業運営は、おそらく困難になるわけでございます。こういう見地から佐賀教育委員会は、この休暇については休暇を認めない、こういう方針をとったわけでございます。
  23. 野原覺

    野原委員 この「与えなければならない。」という点は、非常に重要な意味があるのです。だから与えなければならないにかかわらず与えないという場合は、これは労働基準法第百十九条によって、六カ月以下の体刑なんです。これは労働者諸君有給休暇要求する場合には、やはり要求する理由がある、時期があるわけです。だから有給休暇というものは、労働者を主にして考えるべきものなんです。使用者がおのれの都合のいいとき、きょうは休め、これは有給休暇精神に沿わない。百十九条が罰則を規定しておるのは、労働者を主にして考えなければならない。与えなければならないときに与えないというところに、実は法的な措置を下さなければ、労働者有給休暇意味がなくなる。たとえば使用者都合のいいとき、盆や正月に使用者が、あるいは会社の石炭が不足で休まなければならぬ、こういう事態において、きょうは有給休暇をやるよと言われても、労働者はほしくない。労働者のほしいときにもらってこそ、初めてこの労働基準法が、労働者勤務条件労働者の生活を守るために作られておる労働基準法年次有給休暇精神が生きてくる。あなたは労働法を知らないかもしれないが、あなたは教育法規は詳しいかもしれないが、労働法規はそうなっておる。だから与えなければならぬにかかわらず、教育委員会が、正常な事業運営支障を来たす、こういう判断をすることが一体妥当かどうかということです。与えなければならぬにかかわらず与えなかった。与えなかった理由は、正常な事業運営支障を来たすのだ、こう判断した、こういうのでございますか。どの点が正常な事業運営支障を来たすのか、正常な事業運営支障を来たすというその見解、その解釈根拠になるものは何か、これははっきり述べていただきたい。
  24. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 それはお話のように三十九条三の後段ですから、与えなければならぬことは事実でございますが、しかしその時期は、使用者が正常な事業運営支障がないという判断をしたときに振りかえて与えることができるわけでございますから、お尋ね学校の正常な運営が、三割あるいは四割休んで正常な事業が維持できるということは、これは私どもとしては想像するだに不可能かと思います。もし、かりに三割なり四割休んでも学校の正常な事業が行えるということになりますれば、それだけ教員が多いということに私はなると思います。
  25. 野原覺

    野原委員 正常な事業運営ということを建前にして、与えなければならないところの有給休暇を与えなかったということは、正常な事業運営という名をかりて職権を乱用したととられる。よろしいか、これは与えなければならないにかかわらず与えない。与えない理由は何かといったら、正常な事業運営阻害するのだ。正常の事業阻害するという名前をかりて、この使用者である教育委員会職権を乱用した、こう解釈されるが、この労働基準法からいけば職権乱用でないというあなたの確信があれば述べてもらいたい。
  26. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 野原委員は前段を非常に強調されるのですけれども、これはただし書きがついておりまして、ただし書きと一緒に見るのが私は正しい解釈だと思います。その場合、与えるというのは、一年三百六十五日でございますので、適当な時期に、しかも教職員の希望する時期に与えることが可能だと思います。今回与えなくても他の時期に与えることはかまわないと思います。
  27. 野原覺

    野原委員 とんでもない解釈です。年次有給休暇というものは当然与えるべきものです。それはなるほどただし書きはある。しかし、このただし書き適用というものは、あなたは労働法の書物を読んでみて下さい。私は、これは結局出ると思って読んできたが、ただし書き適用というものは、これはよほど職権乱用にわたらない配意をしなければならないのです。私は佐賀県の場合には、これはいろいろこれからわれわれの見解を述べようと思いますが、あなた方は職権乱用でないという。だが職権乱用でないという確信はどこにもないじゃないか。あなたの今の議論を繰り返して私に言わしめるならば、それは責任者である教育委員会が正常な運営阻害すると認めたのです。阻害すると認めたなら、認めただけの根拠がなければならぬ。その根拠を明らかにしてもらわなければならぬ。与えなければ、この有給休暇というものは生きてこない。この労働基準法三十九条というものは死文になってしまうわけです。だから、それは職権乱用ではございません、正常な事業運営阻害するのはこういう実質的な内容を持つのだという確信があって、初めてあなた方は佐賀教育委員会がとった措置はやむを得ない措置だと判断するのでしょう。私はこういうことまで文部当局質問はしたくないけれども、やむを得ないという見解を軽率に下すから私は言っておるのです。これは職権乱用でないという実質的な内容はまだ示されていない。どういう点が職権乱用でないか。私は職権乱用であるという立場をとる。これは明らかに三十九条の精神を無視したやり方です。こういう調子でいかれるならば、年次有給休暇教員諸君はとれない。いつでも教育委員会はおのれの都合で、きょうは正常な事業運営阻害があるのだという判断を下されたならば、いつの日に年次有給休暇がとれますか。労働基準法三十九条は教員には適用されないじゃないか。教員だって労働者だ。職場で働いておる教員にもこの三十九条は適用されるわけです。それがいつも使用者都合で、正常な事業運営阻害するという判断をされてはたまらぬのです。正常な事業運営阻害する場合には、私は正常な事業運営阻害するという客観的な内容というものが納得されなければならぬ、それを示してもらいたい。
  28. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 この場合でも、決して有給休暇を与えないと言っておるわけじゃないのです。教育委員会でも、適当な時期に、支障がないなら、本人の希望する時期に、できるだけ与えたいということは私は変りはないと思います。ところが今回の場合は三、三、四という闘争一つの手段としてこの年次有給休暇をとる、こういう考え方でございますから、職場において三割、三割、四割というものが休まれたならば学校の正常な事業運営阻害されるという判断は、正しいと思います。こういう見地から今回の休暇を認めなかっただけでありまして、常時これを乱用するという考えは毛頭ないのであります。
  29. 野原覺

    野原委員 とんでもないことである。教育の場において正常な事業運営阻害されたかどうかということを判断する場合には、いろんな各般の情勢、事情の上に立って、総合的な判断をしなければならぬと思うのです。だから地方公務員法の第四十六条によって教員諸君勤務条件に関する措置要求ができるわけでしょう。「職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、」云々。これは職員団体を構成している限り、教員諸君といえども職員団体を通じて勤務条件に関する措置要求がこの地公法四十六条で認められておる。同時に労働基準法の三十九条によって年次有給休暇権限も与えられておる。だからして私はこれは決して違法な行為ではないかと思う。これは地公法の四十六条と労基法の三十六条に基く行為でございますから、これは権利行使なんです。与えられておる権限を行使したにすきないわけなんです。ところがこの権限を行使するには服務上の監督機関監督というものも考えなければならぬと思うのでございまするが、一体教員諸君服務監督庁というのはどこだと考えておりますか。簡単な質問でありますけれどもこれはもう一度念のためにお聞きしたい。教員諸君服務監督をするものはどこなんです。
  30. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 一般的にはその所管するところの教育委員会でございます。
  31. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、教育委員会というものは教員諸君の法上許された権利行使というものをその対象として服務監督することができますか。権利行使に対しては服務監督対象になり得ないと思うがどうか。
  32. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいまの賜暇のような場合は、大体校長権限を委任しておるわけでございます。
  33. 野原覺

    野原委員 校長権限を委任しておりましても、その校長は法上上司ではない。校長権限を委譲されておるけれども、私の知る限りでは校長というものは業務命令を出す権限はない。服務監督権限はない。委譲しておるというけれども校長は一体どういう法的な根拠によって上司になるのか、これを示してもらいたい。
  34. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 これは大体教育委員会服務の最終的な監督権を持っておるわけであります。で教育委員会がその権限をいかに行使するかは明文を待たずにもできると思うのであります。当然に従来は校長に対して一般的な賜暇許可権を認めておるわけでございますから差しつかえないと思うのであります。
  35. 野原覺

    野原委員 できると思うじゃないのです。できると思うというあいまいな答弁じゃ今の場合はいけないのです。これが相当問題になってきて停職がいけないとか逮捕がけしからぬということになれば、明らかにこれは法律上の問題になってきておるわけなんです。あなたができると思いますなんてことでは困る。できると思いますというような答弁をするから、私が突っ込むと、それは思いますということでありましたということであとで訂正されてもどうにもならぬので、一体校長は何によってその業務命令というものが出せるのか。
  36. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 学校教育法に基きまして校長は校務を掌理し、所属職員監督するところの責任があるわけでございます。
  37. 野原覺

    野原委員 それは学校教育法の第二十八条であろうかと僕は思うのだが、なるほど学校教育法の第二十八条を見てみますと、「校長は、校務を掌り、所属職員監督する。」と書いております。しかしこの「校務を掌り、所属職員監督する。」という条文から、直ちに校長が業務命令を出せるという解釈は僕は成り立たないと思う。というのは、教員の場合はどうかというと、児童生徒の教育をつかさどると、こうあるわけでございますから、教育そのものが絶対的な教員の職務なのです。教員の職務は教育そのものなのです。だからその教育について万全の措置教員諸君がとっておれば、校長から干渉されるべき何ものもないのです。だから教員諸君がこの重要な要求をやるために労働基準法によって賜暇を求めて集会をやる。その集会教員諸君は各学校を代表し、自分の意思を表示する。これはやはり全教員意思というものを表示しなければ、この種の要求というものはおよそ今日の時世では実現できない。組合が行っても、それはお前勝手に来たのだろうというような調子なのです、今日の監督官庁というものは。理解のあるものもあるけれども、大体においてそういう状態です。だからあるいは署名をし、あるいは一つの場所に集まって、この問題について一体どうなのだということを意見を出し合って、一体どうしたら佐賀県のこの教育の隘路を打開することができるかということになって集会というものは持たれる。私は内藤局長お尋ねしますが、教員諸君がこの集会に行くときには学校は野となれ山となれ、ほったらかしで出ていったのかどうか。出ていったとすれば私はあなたと同じように問題があると思う。どう受け取っておるか、受け取っておるその根拠教員諸君が子供をほったらかして、どうでもいいわい、きょうはおれは休暇をとったのだからあとはかまわぬ、こういう態度で出ていっておりますか、出ていっていませんか、承わりたい。
  38. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 大部分が自習とか、あるいは学校を休んだというところもあるようでございます。   〔「それはけしからぬ。教育を何と考えている。正常な授業もしないで、そんなものを弁護するのがいいのか、国会議員で。」と呼ぶ者あり〕
  39. 野原覺

    野原委員 委員長、ヤジのきついものは退場を命じていただきたい。そこで、休んだ学校はあなたの方に報告がきていましょうがね。その休んだ学校の報告はあなたからいずれ発表があろうかと思いまするが、なぜ学校が休んだかということも、これはよほど検討しなければならぬかと思うのです。まずその点を聞こう、休んだ学校は何という学校か。
  40. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 杵島市町村教育委員会連合協議会は児童生徒の安全のため十六日は管下三十九校の臨時休校を決定した。実際に臨時休校としたものが約十校ほどあったそうであります。(「それは教育委員会がやったのか」と呼ぶ者あり)教育委員会でございますけれども、こういう事態になって学校運営ができないので十校が現実に休んだわけであります。
  41. 野原覺

    野原委員 私はその休んだ学校を聞いておる。そういうことを教育委員会決定したかどうかは聞いていない。休んだ学校は何郡の何村のどこの学校だということがあれば述べてもらいたいと言っている。
  42. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 具体的に学校名は手元に資料がございませんので後刻御連絡申し上げます。
  43. 野原覺

    野原委員 あなたはよほどの確信を持って新聞記者諸君にも談話を発表しておるのです。内藤局長ぐらい今日、私の言葉をもってするならば、最も官僚的であり、あなたぐらい反動的な言を至るところで弄する者は少い。あなたは文部省切っての反動官僚である、私はこう考えておるのです。あなたは具体的に休んだ学校を知らぬのでしょう。休んだ学校も知らないでおって、今私に対する答弁は何と言った、休んだ学校がありますと言った。休んだ学校がありますと答弁をした限り、休んだ学校を今言えないはずはないじゃないか。そういうはったりの答弁をあなたはいつもやっておる。休んだ学校は今調べなければならぬと言うけれども、現実に知らないでおって何をもって言ったのか。あなたの休んだ学校がありますというその答弁を取り消すかどうか。
  44. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 武雄中学、武内中学、江北中学、若木中学、朝日小学校、武内小学校、若木小学校、橘小学校、大町小学校、東与賀中学校及び小学校、こういうふうなところでございます。
  45. 野原覺

    野原委員 休んだ学校はそういうところだと辛うじて名前をお読みになられたのでございますが、学校を休むという権限はだれにあるのか。しかも休んだ場合に、その授業を回復することはできるのかできないのか、そこら辺を総合して正常な事業運営阻害があるかどうかをわれわれは判断しなければならぬのです。学校を休むことのできる権限は一体だれにあるのです、それをお聞きしたい。
  46. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 教育委員会でございます。
  47. 野原覺

    野原委員 そうしたら教育委員会が休みを指令したのでしょう。教員諸君が休校にしたのじゃないんだ。教育委員会教員諸君をひっぱたくために休校にしておいて、盛り上げて、そうして学校が休みになったという手を使ったのではないか。この労働基準法の三十九条にしても職権乱用の傾向があるし、この際教員組合というものをここで一ぺん県民にたたかせろというので、教育委員会が休む必要もないのに休ましておる事実もわれわれの手元には上っておる。何も休まなければならぬ状況にはなかったのです。出ていく先生は子供に自習を命じており、同僚諸君が、おれが責任を持って預かるからお前は僕らの意見を持って行ってこい、これは佐賀県の長い教育上の根本問題だからというわけで、同僚諸君が互いに助け合い、校長諸君も理解をして——理解をしない校長も一人や二人あったかもわからないが、理解をして、そうして何とかやろうとしておったところが、教育委員会、あるいはそういう校長とつながりのある教育委員会が休め、休んでここで問題にするのがいいんだ。こういう事実をあなたはないと断言できますか、承わりたい。
  48. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私はそういう事実は存じておりません。
  49. 野原覺

    野原委員 そういう事実は存じていないで、あなたが軽率にやむを得ないとか当然のことであると断定するのがきわめてけしからぬことだと私は思うんです。そういう事実を究明しないで、そういう事情があったかなかったかということを係官を派遣するなりあるいは県の教育長を招致するなり、いろいろなことを確かめた上で、一体正常な事業運営阻害することであったかどうかという判断を下さなければならぬのですが、あなた方はそういうことを十分確かめていない。確かめないのに佐賀県教委のやったことを支持するんだ、こういうようなことは、私はこのことに名をかりて、この際教員組合というものにここで一撃を与えるという魂胆としかわれわれには受け取れない。だからあなたが今ここで、なるほどそう言われてみればごもっともだ、そういう事情があったかどうかもう一ぺん調査いたしますとおっしゃるかどうか、おっしゃるべきだと思うがいかがですか。これは文部大臣の所見も僕は聞きたいと思うんだが、こういうことは十分事情を調べた上で、正常な事業運営阻害すると判断した教育委員会判断が正しいのか間違いであるのか、こういうところの判断文部省が下す場合には、あらゆる条件、あらゆる事情というものを、私から聞かれても確信を持って答え得る内容を抽出した上で言うべきである。あなたは、そういうところは何も調べていないんだ、こういうことになるとこれはやむを得ない措置だ、これを支持するのだと言ったのは早計だったかもわからない。私は文部大臣があるところで、これは佐賀県に起った問題であるから、私としてはここで意思表示をすることは好ましくないと言われたことを、さすが賢明な灘尾さんだと思ってお聞きしたのです。これは当然なんです。それを一局長のあなたが失敬千万にも県教委のやったことは当然だ、こういう言い方は一体なんです。取り消しなさい。
  50. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私からお答え申し上げます。今回の佐賀県の教育委員会のとりました行動は、私は別にこれによって教組を弾圧するとか、ぶっこわすとか、さような政治的意図によったものとは考えません。これは教育の場の秩序を守り、規律を守ってもらいたいというところからいろいろ努力したにもかかわらず、さような結果が生まれたのであります。これに対しまして厳正な態度をとったということは当然だと私は考えております。そのことをもって直ちに何か政治的意図でもあってやったというように解釈されるのは、少し思い過ぎではないかと失礼ながら考えるのであります。また正常の事業運営支障があったかなかったかということでございますが、私はだれが考えても、同じ日に三割も休んで、学校の授業が正常に運営されるというふうには参らないのではないかと考えておる次第であります。
  51. 野原覺

    野原委員 大臣、それが常態であっては困るのです。それが年中行事で繰り返されても困るのです。ところが今度の場合には、これは大臣は経過を十分にお調べになればわかるのだが、一月から何回となく職場の意見を聞き、あるいは無記名投票で全員投票をやっておるのです。全員投票でこの種の手段を講ずる以外にないと思うがどうか、これは何も組合の幹部が、執行部が独断でやっておるわけではありません。私は経過を調べました。従ってそういうような経過の上に立って考えてみるならば、この種の問題が常態であるかどうか、常態でないとの判断はできるのです。月に一ぺん三、三、四の休暇をとる、あるいは一年に二回三、三、四の休暇をとる、そういうことは私も大臣と同じ見解です。そういうことをしてもらっては困る。しかしながら長い間、佐賀県の教員諸君は、この地方財政再建団体になる以前から、たとえば八百名の首切りが通告され、戦々きょうきょうとして、お互い同僚、同志ほんとうに職務に専念することのできない実情に置かれておったのです。これは文部当局がよく御承知のはずなんです。教員職場を追われるということはほんとうに重大なことなんです。教員があり余っておれば別なんです。ところがあり余っていない。佐賀県のごとき小さな県で三百名に近い教員整理するということになれば大へんなことです。しかもこういうことは好ましくないというので何回となくこれを問題にして、教育委員会にも要求し、知事にも交渉し続けておるけれども依然として打開できないから、もうほんとうにこれは百年に一ぺんだ、佐賀県のごときは百年に一ぺんだ、これはやむを得ない措置だというので、しかも授業を放棄するというようなことをだれも言っていない。君らが集会に来るときには子供には宿題を与え、自習時間も与えて、そうして同僚諸君ともよく話し合って出て来てくれ、子供の授業放棄をするという印象をたとえPTAにでも与えるということは好ましくない、われわれのこの要求というものは教育を守るための要求であるから、具体的に三日間休むとしても、その休んだ間の子供のことは責任を持って、あとで取り返しはできるであろう、自習その他十分な配慮をして出て来いというのが、教員組合から出された通達にあるのです。私は何校かわかりませんが、先ほど内藤さんが読み上げられた学校、その学校というものがどういう陰謀のもとに休校になったかということも調べなければならないと思うが、文部省はそれを調べるとともに、その他のたくさんの学校が、休校にしないで、自習時間でやって、何ら差しつかえない授業の学校経営の運営、学級経営の運営をやっておるのです。先生がおるにこしたことはありません。しかし先生だって人間だから休むときはある。五十人も六十人もおる学校では二人、三人休むことはざらにある。病気になり、あるいは事故のためにいろんな私用で休むこともある。休んだからといって、必ずしもそれが正常な事業運営阻害したとは言えないでしょう。しかも今回の場合は非常な配慮をしておる。だから、一日や二日その学級が自習時間を持ったからといって、正常な事業運営阻害されたと判断して、労働基準法の三十九条のただし書きをもって臨むということはけしからぬと思う。あなた方はここまで考え発言しておるかということを聞きたい。もう一度内藤局長の意見を聞きたい。
  52. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 もちろん労働基準法の三十九条もよく存じ上げております。しかし、私どもは、事業の正常な運営阻害されては困るということも事実でございます。そこで佐賀県の教育委員会がとられた処置はやむを得なかったと私は申し上げたいのであります。
  53. 野原覺

    野原委員 学校教育の場合に、正常な事業運営阻害するかどうかという判断は、これは相当な期間が必要なんですよ。私が聞きたいのは、その学級が一日や二日の自習時間を持ったから、正常な事業運営阻害した——これは常識的には言えるかもわからない。しかし、三十九条のただし書きの規定する正常な事業運営阻害という、それほど強力なものであるかどうかを聞きたいのです。
  54. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私どもは、学校自体が、記念祭とかその他の関係で、ある程度学校計画を変更されることはやむを得ないと思うのですけれども、少くとも教職員が自分たちの都合だけで学校事業運営阻害するようなことは好ましくないと思うのであります。
  55. 野原覺

    野原委員 自分たちの都合だけじゃない。定員を獲得するということは、年末手当をよこせという問題じゃない。たとい給与の問題にしても、教員の自己勝手な要求だとは私は思わない。あなたは、こういう経済的な要求というものは自分たちだけの要求だという認識に立っておるのか。これは重要な発言ですよ。そういう認識だから一向らちがあかぬのです。教員昇給昇格法律上きめられておるのに完全に実施されていない。完全に実施してくれということは、教員の得手勝手な要求なのか。それが一体教育にどう響くのか。そういう認識をどう思うか。
  56. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私は、その昇給昇格なり定員を確保するということは当然なことであって、それに努力されるのは一向差しつかえないと思うし、またしていただきたいと思うのですが、今回のように、学校の正常な運営阻害してまでやるようなことをしないでも、ほかに方法があったと思うのであります。
  57. 野原覺

    野原委員 どういう方法があったのか、教えてもらいたい。
  58. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 これは三、三、四のような休暇闘争をしないでも、適当なときに、適当な機関と話し合いの機会は何ぼでもあったと私は思うのです。現に私どもは自治庁ともいろいろ交渉しておるわけですから……。
  59. 野原覺

    野原委員 自治庁と交渉しておるけれども、あなたの方がらちをあけてくれないからこうなっておる。地方行政委員会では鍋島知事を喚問して、財政再建団体の実情について聞くということに決定を見ておる。これはあすかあさってやられるようです。そこで明らかになることだけれども、こういう事態にきたということはあなたの責任ですよ。われわれは、文教委員会で、昇給昇格予算についても、本年度は二%だ、こういうことでは完全に履行できないと言っておる。これは毎年々々要求してきておる。しかし、あなたの方は、自治庁が出さぬから、大蔵省がうんと言わぬからということで逃げるつもりかもしれないけれども教員諸君をこういう事態に追いやったということについてはやはり反省をしなければならぬ。文部当局の今日までの無力をほんとうに真剣に反省しなければならぬのです。まず反省をお聞きしましょう。どう反省していますか。
  60. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 地方財政が困窮しておりまして、教職員昇給昇格あるいは不当な首切り等が起きることは非常に遺憾でありまして、私どもの努力の足らなかった点もあると思うのであります。そこで、私どもは、今後教育水準の維持、向上のために、また昇給昇格が完全にできるように最善の努力をいたしたいとかたく心に誓っておる次第であります。
  61. 野原覺

    野原委員 教員諸君は好きこのんでこういうことをやるのではないのです。PTAからPTAの解散決議を突きつけられたり、新聞でたたかれたりするのに、だれが好きこのんでこういうことをやりますか。こういうことをやらなければならぬ今日までの長い経過というものがある。従ってあなた方が新聞記者に談話を発表する際には、もちろん文教委員会文部大臣発言する際には、そういう点についての反省をまずやりなさい。まずやって、いけないところはいけないとしかりなさい。今日までのあなた方の態度というものは、この問題に関する限り何らの反省もしておらない。今初めてあなたから、私が追及した結果、それはいろいろ足らなかった点があるだろう、こういうことを述べられておりますけれども、いろいろあったのです。あったからこうなったのです。佐賀県の教育委員会をここへ追い込み、佐賀県の教職員をこういう実情に追い込んだのは、文部当局の力が足らなかったからである。だからいけない点はいけない点として個人的に反省を求め、なお文部当局も努力をする、教員諸君と一緒になって佐賀県の教育再建のためにやろうではないか、教育委員会も呼び、教員組合の代表者も呼んで、われわれもこう考えるから、この問題は、君らもいろいろあっただろうけれども、来年を期待してくれというような話し合いをすることこそ、教育の最高権威の文部省です。それを、首切るのは当りまえだ、警察に引っぱられるのは当りまえだ、何たることです。自分は何もしてない、自分が何もしないから、こういう事態になって当然なんだということになれば、われわれにそれを批判させると、いろいろな陰謀をたくましくし、さてはこの機会に教員組合をたたく行動としかとれない。こういう点について私はもっと謙虚な態度に出てもらいたい。  この問題は重要でございますから、なお私はまだこれから十分われわれの見解も述べるわけでありますけれども、一体正常な事業運営阻害したかどうかという判断は、一日や二日の自習時間でやれるものではない。あなたは小学校、中学校、高等学校の全国の教育監督する初中教育局長なんです。あなたは調査局長ではない、社会局長でもない。今度は初中教育局長になったあなたです。あなたの意見というものは、国務大臣である文部大臣の意見とはまたおのずから違うのです。教育内容に立ち入った意見をあなたが出さなければうそです。一日や二日の自習時間で正常な事業学校教育阻害されるという、しかも労働基準法三十九条のここに該当するような、正常な事業運営阻害だ、こういう判断をするということはとんでもないことだ、教育の何たるかも知らぬ。私ははっきり言います。労働法の学者はこういうことをいっております。教員諸君有給休暇をとって、あるいは一日自習時間になる、二日自習時間になる。一体有給休暇をとれば自習時間になるのは当りまえです。だからこのただし書きをそのつど適用されたのでは、教員諸君有給休暇はとれないから、教員諸君の場合に関しては一日や二日という短期間で正常な事業運営阻害したと見るべきではない、正常な事業運営阻害は、少くとも一つの学期間において、その学級のレベルというものがそのために非常に低下をした、あるいはその学級の経営に困難を来たした、いろいろな事故が起ったというような総合的な判断から、正常な事業運営阻害したと見るべきである、こういっておる。だからこういうことをも考えて、佐賀県の教育委員会諸君がもっと慎重に考慮をしてほしかったのでありますが、そういう考慮がないのです。しかし、あなたは、こう言ったら失礼ですけれども佐賀教育委員会よりも賢明なはずですから——賢明でなかったら、われわれは、文部当局を退いてもらわなければなりません。国民の一人として全国の教育を担当させるわけにいかぬ。賢明であろうから、あなたが発言をする場合には慎重であってほしいのです。  なお、これは委員長要求いたしますが、警察庁長官が十二君に逮捕状執行しております。私は個人的に石井警察庁長官とも昨日面談いたしましたが、何と考えてもこの逮捕状執行はわれわれは了解できないのであります。この種の問題で教員諸君逮捕状執行する場合には、証拠隠滅のおそれがあるか、逃亡のおそれがあるか、そういうことが前提にならなければならぬ。しかし明々白々、公々然とこの種の行動を、佐賀県の教員諸君は県民の批判の前に立ってやっておる。証拠隠滅しようにも隠滅しようがない。逃亡するにも逃亡のおそれはない。そういう者にまで逮捕状を国警が執行したということは、これはどう考えても、いろいろな連絡やその他あって、この際教員組合活動というものをたたきつぶせというような動きが確かに流れておることを私は感知せざるを得ません。重大でございまするから、これは早い機会に、できれば本日の午後、石井警察庁長官を本日ここに来ていただいて、私は質問したいと思いますから、委員長の方でお取り計らいを願います。それで一応終ります。
  62. 長谷川保

    長谷川委員長 野原君に申し上げますが、石井警察庁長官は午前中公安委員会のために当委員会に出席できません。午後は出席する予定になっておりますから、午後御質問を願いたいと思います。  八木昇君。
  63. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私は実は佐賀県の者でございますので、佐賀県の今回の問題の実情についてある程度詳しく実は存じておるつもりでございます。従いまして、できる限り実情を基にいたしまして若干御質問を申し上げたいと思います。  そこで文部当局といたしましては、この教職員の言動について、これをいろいろ指導しあるいは監督するという立場はもちろんあるのでございますけれども、それよりはもっと大きな任務として、教育の実質的な低下をもたらすような状況に対しては、これを防止するだけでなく、日々発展する教育を今後ともさらにより発展をさしていくということがむしろ文部省としては大きな任務である、こういうふうに思いますので、できる限り一つそういう立場をとりながら私の質問にもお答えを願いたい、こう思うわけです。そこで私も本日のところはできる限り簡潔に御質問いたしますので、また答弁側も一つ簡明直截にお願いをいたしたいと思います。  まず第一の点でございますが、佐賀県の地方財政の状態は、全国で徳島県と並んで最低で、非常に有名でございます。そこで文部大臣は今日こういう事態に立ち至った経過について御存じであるかどうかお伺いをいたしたいのでありますが、昭和二十九年に、御承知のように千五百名に及ぶ教員整理ということが県会の問題となり、非常な混乱を来たしました。これについては県の各階層はもちろんのこと、保守的な県会議員も反対をいたしまして、遂に流れたのでありますが、この地財法の適用云々というようなことをめぐりまして、昨年四百八名の人員の縮小、こういうことになったのであります。そのときにはもちろんPTAも地教委も、あらゆる団体は非常に反対いたしました。その結果、当時は公選でありました六名の県教育委員のうち四名が、こういう人員整理にはどうしても納得ができないというので辞職をいたしました。残る二名の教育委員のみによってこの四百八名の問題を断行したという経過があります。さらに本年に入って二百五十九名の人員縮小、こういう事態が起きておるのでありまして、こういう経過について文部大臣は御承知かどうかをまずお伺いいたします。
  64. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教育に関しまして、主として地方財政の関係から出ておると思うのでありますが、ただいまお述べになりましたようなむずかしい問題が今日まであったということは承知しております。
  65. 八木昇

    ○八木(昇)委員 今の、公選された教育委員六名中四名が辞職したというようなことは、具体的に御承知になっておりましたでしょうか。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そこまでは私承知しておりません。
  67. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういうような深刻な事態を経て今日に至っておるという事情を——これは私は文部省の各局長さん以下ははなはだもってけしからぬと思う。文部大臣にそういう経過を教えておらないということはどういうわけでしょうか。
  68. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 大臣には実は全般問題として申し上げておったのですけれども佐賀県で特に今お話しのように、教育委員会側と知事側とで非常な論争になって、そして委員が辞職された、こういう事実は私申し上げたように記憶しておるのでございますけれども、その他の面が非常に多かったもので、あるいは十分お心にとめていただけなかったのかもしれません。
  69. 八木昇

    ○八木(昇)委員 実は佐賀県というのは昔からはばかりながらまことに優秀な人材が出ておるところです。教育佐賀と誇っておったところです。そこでこれがこういうような教育低下を来たし、特に高等学校方面におきましては、私の郡の高等学校のごときは、九州大学にたった一人しかことし合格しなかったのです。たった一人です。こういうような状況です。昔はそこの中学から陸軍士官学校だけにだって十人から合格した。佐賀県におきましてはこれは当時非常な大問題となったのです、この教育低下について。そこでいろいろな経過を経まして、ついに教育委員が四名辞職をするというような重大な事態までもたらし、しかもなおかつ今度さらに二百五十九名の縮小、こうなって参りますると、ただいまから三年前までは相当現在数よりたくさんいたのです。他方生徒数はふえている。それなのに教員はこれだけ減らす、また教員の人件費のみならず他のいろいろな経費についても縮小してくる、こういう実情になれば、これは何といっても著しい急激な佐賀県における教育低下ということになる、こう思うのです。そういう事実をお認めであるかどうか、そしてまたそういうことは両方にまたがる長崎県や福岡県の教育の実情と照らして、どうしても県民としては納得できないということになるのでありますが、こういうような教育低下をお認めになるか、そしてこれに対して文部大臣としては一体今日までどういう努力をされ、また今後されるおつもりであるか、一つ簡単に決意のほどをこの際お伺いしておきたい。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教育の低下ということをお話しになりましたが、果してそれがいかなる原因によるものであるかということにつきましては私よくわかりません。ただ佐賀県が財政が非常に苦しいために、いろいろな方面において非常に苦労しておるということは承知いたしております。それが教育の面におきましても相当な影響をもたらしておるということもございましょう。その点につきましては、私ども実は心配しておるのでございます。今回の整理計画等につきまして、われわれといたしましてもかなり無理があるというふうに考えまするので、知事あるいは教育委員会等にもその話をいたしておりまして、何とかもう少し緩和する道はなかろうかというのでいろいろ努力いたしておる次第であります。
  71. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで今度の教育委員会処分は——実はこういうことになるから教育委員会法の改正というものは重大問題であったと思うのでありまするが、今度の教育委員は知事任命の教育委員ですね。しかもこれには、やはり教職員団体からもいろいろなところからも相当委員の推薦をいたしました。ところが、実はそういう人は一名も加えておらぬ。そうしておそらく私どもの察するところ、特定の政治勢力の方から強力に働きかけた人たちが全部なったのであろう、こう思います。そこでこの前の四百何名の人員整理のときには、四名の教育委員辞任をするという重大事態を引き起し、とうとう四名ともそのまま教育委員に復帰しなかった。ところが今度の教育委員の方々は、そのときの整理をやった上にさらに二百五十九名を縮小するというのに、みんな賛成をしている。賛成をしておるから、こうなっておるのだろうと思う。実際に行われておる。主観的に自分は好ましくないがやむを得ない、こう考えたかどうか、これは知りませんが、結論的に賛成しておる。しかもその教育委員会が唐人町の副島という肥料店で秘密会をやった。そこは三回ほど衆議院に当選をした代議士で、一昨年の選挙に落選をした人の選挙事務所です。一体こういう公けの教育委員会を、県庁の建物からずっと離れた町のそういう私宅において開くということに対しては、文部省としてどういうお考えか、これは局長文部大臣に御答弁をお願いいたしたいと思います。
  72. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私その事実を聞いておりませんが、おそらく別に正式の委員会ではなかったのではないかと思うのであります。あるいは懇談会か、その程度のものではなかったと思います。
  73. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは教育基本法を私あたりしろうとが今さら言うべきじゃないのですけれども教育は政治に対して中立でなくちゃならぬということは、あなた方がもう常に言われているところです。今のことは、何か懇談会ならば、喫茶店かあるいはレストラン、あるいは簡単な料亭か何かならよろしゅうございますよ。しかしここは肥料店で、表がちゃんと事務所になっているところなんです。そういうところで懇談会をやったということを常識的にお考えでしょうか。もう少しこの点は調べていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  74. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私どもそういう事実を存じておりませんので、どういう種類の会合であったか、つまびらかにいたしておりません。
  75. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それでは一つそれを御調査願います。これはもうはっきりしておるのです。この秘密会で六ヵ月の停職処分をきめた、こう私どもは思っておる。しかしその会議に私ども出席はしておりませんから、その点は厳重に御調査を願いたい。もしそういうことで、委員会であるとか、懇談会であるとか、形式的にどうであれ、教育委員会がそういうふうなところでこういう重大な教員処分という問題をやるということについて、一体いいかどうかということについての御見解一つ文部大臣に承わりたいと思います。
  76. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 全然実情を知りません。今あなたからお話を聞くのが初めてですから、そのあなたのお話だけでこれがいいか悪いかということは、私どもちょっと判断いたしかねるのであります。
  77. 八木昇

    ○八木(昇)委員 すみやかに調査をしていただきまして、これは必ず御回答をいただきたいと思います。大臣とされましては正面切ってのお答えがしにくいのでございましょうから、これ以上は申し上げません。  そこで、今度県教委がとりましたこの措置について、どうもこれは佐賀県教委だけがこういう大それたことを独断ではとてもやれるものではなかろうと、私どもはこう考えましたので、先般郷里へ帰りましてから、教育長は文部省に呼ばれておるというので不在でございましたので、教育次長に会いまして、今度こういう措置をしたについては、文部省と十分に連絡をし、その指導助言を得てやったのであろう、こう問いただしたところ、文部省地方課を通じていろいろと指導助言を仰ぎました、こういう意味お話であったのですが、、そうでございますか。
  78. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 別に文部省としてはこのために特別な指導助言はいたしておりませんが、いろいろ法律的な解釈問題について特にお尋ねがあればお答えしております。
  79. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういうことを指導助言というのじゃないでしょうか、どういうのでしょうか。
  80. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 一般的に法律上の解釈その他についてお尋ねがございますれば、それに対するお答えはしておりますが、本件について特に文部省がどうしろこうしろとかいうことを指示した覚えはございません。
  81. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは指揮をされたということではないでしょうが、こういうふうに処分をしようと思っておるという地方教育委員会からの問いに対して、それは適法だろうというふうにはお答えになったわけですか。
  82. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 別にそういう質問はございませんでした。
  83. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それでは地方教育委員会は一体何のために文部省に来たのでしょうか。
  84. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 状況の報告、国会でもいろいろ御質問がございますので、詳細な事情はできるだけ私ども把握しておきたい、かように念願しておるのでございます。
  85. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは常識的に考えまして、今のお答えは、実際上はやはり佐賀県教委のやったことについて、まあ直接的か間接的か、あるいは陰というか陽というか、いずれにしても文部省と相当の連携のもとにやられたというよりほかに判断のしようがないのでございます。  そこでお伺いをいたしますが、今度のあの措置の中に非常に奇妙なことが一つ二つある。と申しますのは、今度教育委員会がやりました処分の十一名の中に、実は三・三・四の休暇闘争中には日本におらなかった人が処分されておる。フランスから中共へと、こう行って、この休暇闘争の一月も前から日本にいない人が処分されておる。それはどういうわけかといいますると、佐賀教組委員長であったということが理由です。委員長ではありますが、日本にはおらぬ。しかも三・三・四の休暇をきめた執行委員会大会にもむろんおらなかったのであります。しかしながら今度の教員の縮小については、これは前々からうわさをされていたので、その委員長は、休暇とか何か大会をやって、教員意思を当局者にも知らせなければいかぬ、こういうような会議には、出発をする前には当然委員長でありますから出ておりましたでしょう。しかしながらこれが行われる一月前に日本を離れておる。その人に停職二カ月の処分をしておる。これが一つ。それからもう一つは、鶴田という人がおるのです。ところがこの鶴田さんはこれも停職になっておるのですが、生活協同組合の仕事をしておりまして、もちろん休暇闘争中こういうふうな問題には全然タッチをしておりません、ところが同じ名字の鶴田というのが実は婦人部長におる。ところが鶴田婦人部長は停職も何も処分をされておりません。そうして生活協同組合の仕事をしていた鶴田という人が停職処分を受けておる。そして教組の代表がこの処分が発表された直後に行ったときに、教育次長かだれかが、これは鶴田の間違いじゃないかということを耳打ちしておったということを聞いたというのです。こういうような状況については御報告を受けておりますかどうですか。
  86. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 委員長処分を受けた点については、委員長は当時いなかったということは私聞きましたが、しかしこの闘争計画にある程度の責任があるのだということも私聞いておったのです。これはおそらく県教育委員会あるいは地教委の方の何らかの御判断によるのじゃなかろうかと思います。なお鶴田さんの話は、私全然聞いておりませんでした。
  87. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そんなことをやられたんじゃ、危っかしくて組合委員長になれませんよ。もう少し法律根拠を明確にして下さい。この際議事録に残しておいてもらわなければなりません。将来裁判所での争いになるのですから、いなくてもやられる法律上の根拠を明確に……。
  88. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 その点は佐賀教育委員会が地教委と十分協議の上にとられた措置でございまして、私どもがこれに対してとやかく言う筋ではないと思いますが、その佐賀県の教育委員会がとられた措置は、地公法三十七条の違反、こういうふうに解しております。
  89. 八木昇

    ○八木(昇)委員 あなたは今度の地教委のとった措置はやむを得ないと言っておるのでしょう。それなのに、地教委がやったことであって、かれこれ言うことはできないなんということは、矛盾じゃありませんか。明確にして下さい。
  90. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 地教委も県の教育委員会と十分協議されて、証拠書類も固められてとられた措置、こういうふうに私は聞いております。
  91. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういうことは、一は一ですという答えです。そういうことは答えになりません。地公法の条文の解釈やその他については、文部省見解というものを当然明らかにする責務がある。これは今の応答を聞いておられて、文部大臣はどうお考えになるかわかりませんが、一つ文部省見解局長をして語らしてくれませんか。私どもは将来とも困りますから……。
  92. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私ども聞いておる範囲では、一せいに休暇闘争を三・三・四の割合で行なって、学校の正常な運営支障を来たした、しかもこの場合に、ほとんど全部の者が休暇願が却下されており、不許可のまま参加した、こういう事実を聞いております。この点から特にこの闘争を企画し、指導した者を処置した、それが十一名である、こういうふうに聞いております。
  93. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ことさらに答弁をそらさないでほしい。私が聞いておるのは、三・三・四の休暇闘争をきめた執行委員会にも、大会にもいず、三・三・四の休暇が実施されたそのときにもいない、しかも日本にいない、こういう人が処分をされるというのは、法律のどの条文のどういう解釈からかと聞いておるのです。
  94. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 いずれよくこの点につきましては県教育委員会に事情を聞いた上でお答えいたしたいと思います。
  95. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういうことでは全然これは答えずということになる。裁判では、弁護人や検察官の問いに対して、答えず、こういうことが記録に残るということは、ほぼ肯定したということになるんですよ。それでよろしゅうございましょうか。
  96. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 別に肯定したわけでございませんが、あなたのお話はよくわかっておりますので、また処分した県の教育委員会の方の意見も十分聞いて文部省としての判断を固めたいと思っております。
  97. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それではこの点は、時間も長くなりますから、きょうのところは一応これで終りますけれども、ただいま申し上げましたように、これはまことに非常識きわまると思われるようなことがあるのです。そこで実情を御調査になり——今の鶴田氏の問題でも、毒食わばさらまで、しまったと思ったけれども、何とかへ理屈をつけてこのまま押し通さぬと工合が悪い、こういうことにもしなるとするならば、これこそ人権じゅうりんもはなはだしいと思うので、誤まりを改めるにやぶさかであってはならぬと思う。しかも県教委がそれに遅疑逡巡しているとするならば、そういうことこそ文部省自体が助言し、あるいは指導すべきであろうと思うので、その点は必ずそういうふうにしてもらいたい、そうしてまたその経過をいずれかの機会に委員会において近々のうちに明らかにしてほしいと思うわけです。  それと、さらに先ほどの局長の御答弁の中で、休暇願を出したが、全部それは校長が認めておらぬ、却下しておる、こういうふうなお話であったのでありますが、校長がそれに判をつき、そしてまた出してきた休暇願に了承を与えたというようなところが相当たくさんあるのですが、それはどういうふうに把握しておられますか。
  98. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私どもの調査では、大部分が不承認になっていると聞いております。これは数字を申し上げますと、休暇願を出したが未承認のままに休んで大会に参加した者が五千百七十一名、休暇願を提出して承認を得て大会に参加した者が十一名、こういうふうに報告を受けているのであります。無断で休んで大会に参加した者が二十六名。
  99. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは私どもが把握しております資料とは非常に違っております。少くとも校長許可を得て休んでおる人も実は相当あるわけです。文部省はたった十一名と言われるのですが、たとい十一名にしたって、あるわけです。実情はもっと数千名に及ぶと私どもは聞いておるのですが、全体で六千くらいのうち、少くとも二千名くらいはある、こういうのですが、それは別といたしまして、今度の措置について、実は現地の状況は、私どもも知事といろいろと折衝いたしまして、こういう重大な段階にきて、教員組合の人は、すわり込みをやれば、教員がすわり込みとは何事か、デモをやれば、教員がデモをやるとは何事かと言われる。そうすれば一体どうすればよいのか。しかもここまで追い詰められた教員は、何らかの形においてこの苦衷を訴えなければならぬ。そのやむを得ざる処置として、三日間にわたって大会をやったわけです。それも全教員の三割ずつ参加して大会をやったというのが、実はその状況であります。しかもそれを処分をもって臨むということについては、一体県の知事としてはどう考えるか。そうですね、もう今まで三カ年間の問題が一応落着をした直後にこういう処分問題まで出てきて、私としては全く困っていると知事は言っておったのであります。それならばこの際一つ仲介あっせんの労をとって、そうして問題を円満に解決するというような方法を考えたらどうか、こういうのに対して知事が言うのには、教育委員の中に相当強硬な人があった模様だ、また文部省意思もあった模様だ、こういうことでこういった事態になったものと思うけれども、自分としても何とかその仲介あっせんの労をとるにやぶさかではない。教育長それ自体もあまりこういう措置には賛成ではなかったようです。そこで教育長にも私話をいたしたのであります。知事は、地方財政の窮迫の問題で、実はあした衆議院の地方行政委員会に参考人として出る、そのために上京をしておる、こういう状況のときに、突如として警察当局の逮捕事件が起っておるというのが今日の状況です。こういう状況について文部省としてはどういうお考えであるか。そしてまた、教員十名も逮捕して、さらに刑事問題へと持っていくという状況に対して、そこまでしなくてもというお考えがもしかりにあるとするならば、同じ政府機関でありますから、文部省としては、法務当局その他に対しても何らかの措置に出てもらいたいと思うのです。文部大臣、いかがでございますか。
  100. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の警察権の発動と申しますか、この処置につきましては、先ほど野原さんの御質問もございましたが、私はこれはやむを得ないということを申し上げたのであります。警察当局が違法と考え、犯罪の容疑ありというような立場において処置をとったことでありましょうから、それをかれこれ言うわけには参らぬと私は思うのであります。なお、政府全体の心持といたしましては、個々の問題はとやかく申しませんが、公務員がその要求を合法的にやられることについては、何も問題にしておりません。しかし公務員が法規を逸脱したような行為は厳に慎しんでもらいたい、こういう気持を持つということは、はっきりいたしておるわけでございます。その点については、ひとり佐賀県教委のみならず、全国の教育委員会に対しまして、私はその趣旨の徹底に努めております。
  101. 八木昇

    ○八木(昇)委員 教員といえども、憲法によって団体行動権は保障されておる。ストライキ権はもちろんないのであります。しかし今度の休暇というようなものがストライキであるかどうかということについては、私どもはそれは絶対にストライキとは考えられないという見解であります。それはいろいろ差がありますけれども、ここまでやられますと、実際問題として教員の場合、団体行動の余地がない。しかもだんだん立場が追い込まれてきておるというような状況でございまして、今度の教員組合の方々の行動というものは、逮捕をし留置をして、いかにも犯罪者であるかのごとき印象な世間に与えさせてまで、これを糾弾しなければならないようなことであったとは、私にはどうしても考えられない。  最後にもう一点伺いますが、もしこの事態発展をいたしまして、検察当局が起訴をするというようなことにでもなりますと——検察当局が起訴をするということについては、教育委員会休暇闘争はストライキであるという見解をとっておるから、検察当局としても、これは黙っておくわけにはいくまい、こういうつながりから出たのではないかと想像するのでありますが、もし検察庁が起訴をするというような場合、これはどうなるのでありましょうか。この地公法の条文に照らして、今日教育委員会は六カ月以下、一カ月までの十一名の停職という処分をいたしておりますから、この処分にさらに何らか変更が加えられることになるのでしょうか。
  102. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 行政処分行政処分であります。別に変更はないものと思います。
  103. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それはその通り承わっておいてよろしゅうございますか。念のために申しますと、地公法の二十八条の二項の二の刑事的な起訴を受けた場合には休職を命ずることができるという条項との関連において……。
  104. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 それは別問題でございまして、懲戒処分は懲戒処分でございます。
  105. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ただいまの点は一応わかりました。そこで先ほど来いろいろ聞いて参りましたところでは、随所に矛盾が明らかであり、しかも文部当局としては御答弁の通りとするならば、案外実情を御存じなくて、今度の措置はどうこうというふうに言っておられる面が多いと思う。これは非常に遺憾なことでありまして、さらに実情をお調べの上答弁していただきたいと思います。  なお今日十名からの人が逮捕されているという状況でありますので、今後私ども委員会でさらに実態を追及して参りますが、あくまでも文部当局としては——何かしら教員が少し動けば犯罪人扱いをして取締るのが能であるかのごとき態度ではなくて、教育を伸張発展していくのが文部省建前であり、これに対して大蔵省や、あるいは検察当局の出方が文部省の意に必ずしも沿わないという場合には、もっと強硬な態度ですべての問題に対処してほしいということを最後に要望いたしまして、一応私の質問を終ります。
  106. 長谷川保

    長谷川委員長 高津正道君。
  107. 高津正道

    ○高津委員 私は、文部大臣が科学技術の奨励に力をいたされる点については非常に賛成でありますけれども、その文部大臣が、あろうことか、世界メシヤ教——この世界メシヤ教なるものは観音教といって、脱税をやって、非常に天下の糾弾したところのものでありますが、今そういう名前になっているのに、一昨日その世界メシヤ教の水晶殿において——水晶殿というような名前をああいうものはよくつけるのですが、そこで狂犬病毒を浄霊にて治癒せしめる実験——浄霊とはメシヤ教でお浄霊といって、からだに手を触れないけれども、清い霊を向うに与えて病気をなおすというインチキであります。それから病気発生の原因と浄霊の意義、あるいは不在遠隔治療の治験例、あるいは原子病にきくお浄霊というように、きわめて非科学的なことをやる。しかも第一回心霊医学会発会式という名前をつけているのでありますが、これに対して文部大臣は、「祝辞文部大臣灘尾弘吉」と祝辞を贈られている。これは科学技術を奨励しながら、一方においてこういうようなものに祝辞を贈るということは、非常な矛盾ではないでしょうか。かつて保守党の大蔵大臣がキャバレーなどのできたときに大きな花輪を贈ったのが問題になり、それからいわゆるギャング的な存在を取締る立場にある中村法務大臣がまたこの間花輪を贈ったと同じように、これは許しておけないことのように考えますが、この点をお聞きいたしたい。(「それ以上だ」と呼ぶ者あり)むろんそれは中村、池田両大臣以上のことだと思いますけれども、これはちゃんと目録に麗々しくもいの一番筆で「祝辞文部大臣灘尾弘吉」と書いてあります。だれかを代読にやられたのか、本人が出られたのか、——そしてあなとのことについてはいろいろ政治資金ルートのことで、このことが活字にもなっておれば、うわさされておるのでありますから、この機会に弁明なり説明なりを承わりたいと思います。  もう一点は、東京教育大学の付属小学校の教官諸君によって、教育図書研究会なるものが昭和二十三年以来組織されておるのであります。それに対して特定の教科書会社が最初に寄付金というか、法律用語でいえば出捐でありますが、三十万円の金を出しておる。それをもとに財団法人ができたのであります。彼は発起人になっております。広島大学の場合同じ年に森戸辰男氏が会長になって、これは学校図書研究会という名前で同じように三十万円の——名前を言えば、学校図書株式会社の社長から出指した金をもとに、研究会をこしらえておるのであります。そうして年々二千万円ずつの印税を受け取っております。広島も二千万円、あるときは少し下り、ある場合はそれをオーバーし、東京の場合もそうなっておるのであります。このことについて、これは公務員法の違反であるかないかという点や、どのように実態を把握しておられるかという点や、問題は非常に大きいと思います。教育のメッカのごとくしろうとが考えておるのが東京教育大学で、教育の権威の根源のように考えておる者さえあるのでありまして、東京高等師範の後身であります。また広島高等師範の後身が今の広島大学の教育学部であります。そこに付置されてある文部省の直轄学校において、そのような営利的な事業が行われて、税金の特例を受けておるのであります。二千万円です。それから株は六万株ずつ持っていますよ。そうしてその配当を受けていますよ。この問題について私は質問しようと思うのであります。調査もしておるし、用意しておりますが、今時間がないそうでありますから、午後に時間をいただくなりあるいは明日の文教委員会でなり十分質問したいと思います。今のメシヤ教はどうですか。
  108. 齋藤正

    ○齋藤説明員 お話の点は、熱海のメシヤ教の会館でありました第一回心霊医学会の発会式に関することだと思います。これはメシヤ教そのものの行事というふうには、私たちは実は承知もいたしておりません。話の発端は学術団体として心霊医学会が発足するというので、——これは二木謙三先生が会長の会でございます。こういう心霊医学という観点の研究は、英米においてはかなり歴史があるけれども、まだ日本においては依然として迷信視されておるので、これを科学的に検討したい、こういう御趣旨であったので、そうしてそれに祝辞をいただきたいという申請がありましたので、担当の課で会って話し合った結果祝電を打っております。大臣は出席しておりません。従って代読等もいたしておりません。
  109. 高津正道

    ○高津委員 今私が読み上げたようなきわめて非科学的な療法を次から次へとその道の専門家がその会合で講演をしておるのでありますが、こういう会合に祝電を打っても、祝辞を述べても、文部大臣が奨励をすることになると思う。昔天理教などが時の内務大臣あるいは内務大臣夫人を引っぱって、そうしてその看板信者によって信者をたくさん集めたという事実があるのでありますが、今文部大臣はこのものに箔をつけて、この宗教団体文部大臣からも祝電がくるんだ、こういうのでいよいよ街頭宗教を奨励するようなことをされております。これは私は非常に問題だと思う。大阪の選挙では創価学会が、二大政党の一つが二十七万七千九百三票、それからもう一方は千八百票ほど少い二十七万六千飛び六十四票、そこへ十七万票までその間で入っていくだけの勢力を邪教が持っておるので、われわれは驚いておるのでありますが、こういう新興宗教というものはそれこそ指導するか、何らかの方策をとらねばならない。日本の悩みは汚職疑獄とそれから新興宗教とまだたくさんありますが、こういう宗教は、文部大臣の管轄でありますから、その一番大事な文部大臣から、そんなに祝電をもらうような、そういういろいろなお浄霊の話がその席でずっと出るのでありますから、科学振興などということをあなたが言われても、あそこと縁を切られなければ、百日の説法何とやらで全くだめだと思うが、大臣はずっと関係をお続けになるお考えでありましょうか。
  110. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま事務当局がお答え申し上げましたようなことであると思うのであります。心霊学会というものを、われわれは実は学術的な団体考えておるのであります。これがメシヤ教と関係があるとかないとか、さような関係があるものとは実は考えておりません。あるいは私どもの調査が粗漏であったのかもしれませんが、さようなつもりで事務当局で処置をいたしてくれたわけであります。あそこと関係があるとかないとかいうことですが、絶対に関係はございません。ただ学術研究の団体でありますならば、文部省といたしましては、これを認めていくということはお認め願いたいと思うのであります。今申しましたように、あるいは私どもの方で調査粗漏であって、実際は私どもの方で考えておかねばならなかったといたしますならば、これはまことに不行き届きであって遺憾に思いますけれども、ああいう種類のメシヤ教とかいうものと何らの関係のないことは一つ御了承願いたいと思います。
  111. 高津正道

    ○高津委員 そういう団体に限って学術団体のような看板を使う。あの団体とは関係がないと言われるが、今後世界メシヤ教の催しで祝電を送られるのですか。
  112. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 世界メシヤ教の催しで、ああいうふうに行われたというふうに私は考えておらないのであります。事実そうであるとするならば、また考え方を変えなくてはならぬと思います。さようには考えておりません。メシヤ教とは何らの関係がないということで御承知一つ願いたいと思うのであります。  なお今度の心霊学会が、われわれが考えておりましたようなことでなく、御指摘になりましたような妙なにおいがするということでありますならば、もちろん今後十分注意をいたします。
  113. 高津正道

    ○高津委員 文部省は日教組攻撃に血道をあげて、ほかに抜かった点があまりにも多いと思う。私は今まで清瀬文政や大連文政というようなものが、あまり激しく対立し過ぎたので、方向を改めるのかと人がいいのでそう思っておったところが戸高公徳事件の教育版みたいなものが現われてくるに及んでは、私は今までの考え方が甘過ぎた。これからはどんどんやります。今のこの問題だって、今の教科書会社から国家公務員がそういうようなことを続けてやっておって、それを手放しで、野放しでずっと今日まで及んでおるということも実に大問題ですよ。その他いろいろ調べておりますから、午後なり今後大いにただしたいと思うのです。
  114. 長谷川保

    長谷川委員長 午前の会議はこの程度とし、午後は二時より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後二時五十分開議
  115. 長谷川保

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  まず文教行政に関する質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。野原貴君。
  116. 野原覺

    野原委員 私は警察庁長官石井さんにお尋ねをいたしたいと思うのであります。あなたも御承知のように、昨二十四日の午前六時を期しまして、佐賀県の警察本部が、佐賀市にありまする佐賀教職員組合の本部、その他各小学校教職員の自宅等を入れますると四十数個所にわたる家宅捜索をいたしまして、そうして教職員の十数名が逮捕状執行されておるのであります。このことにつきましては、これは長官も御承知のように、地方公務員法違反だと新聞は報道いたしておるのでありますけれども地公法違反によって逮捕状執行されたということは、これはいまだかつてその先例を見ていないと私は思う。特にこれが教育界に起ったできごとでありまするだけに、全国民のこれに対する関心というものはきわめて強いものがあるわけであります。従って、佐賀県の警察がいかなる理由によって逮捕せられたのか、並びにその逮捕の詳細なる状況、この二点についてまず警察庁長官から御説明をしていただきたい、このように思うのであります。
  117. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいまお尋ねの点は、御承知の通り去る二月十四日から十六日にかけて、三日間にわたりまして佐賀教組執行部の指令のもとに、いわゆる休暇闘争が行われたのでございます。十四日の三割、十五日の三割、十六日の四割、結局三日間を通じて職員の全員が一日は休暇をとる、そうして闘争に参加する、こういう計画を立てられ、これを実施せられたのであります。実際に参加せられました者はおおむねこの三割、三割、四割に近い数字であるように聞いております。従いまして、この結果といたしまして、いわゆる学校教育の正常なる運営阻害された、こういうことに相なったのでございます。当時こういう闘争計画が立てられましたときに、佐賀教育委員会におきましては、これが中止を極力勧告せられたのでありますが、県教組の方においてはついにこれを聞き入れられなかったのであります。そうして休暇を申請されましたが、その休暇に対して許可がなかったのであります。にもかかわらず既定方針通り休暇闘争を実施をせられた、こういうことに相なっておるのであります。従いまして、これは御承知の通り、地方公務員法第三十七条に規定があります通り、こうしたいわゆる争議行為地方公務員には許されておらないのであります。しかも、そうした行為を行なった場合、これを企て、その遂行を共謀し、またそそのかした、いわゆる首謀者と申しますか、扇動者、こうした者に対しましては、地方公務員法第六十一条に罰則の規定があるのであります。これに基きまして、地元佐賀警察本部におきましては、かねがねこの事態のありました以後、これが実情把握に努めて参ったのでございますが、その結果、今申し上げましたような実態がわかりました。なお、その後におきまして、関係教員の方々の態度と申しますか、動向等につきまして十分注視をいたしておったのでございますが、こうした地方公務員法違反行為があったことに対するその後の反省の色というものが遺憾ながらうかがえない。こういう点にかんがみまして、佐賀警察といたしましては、これを地方公務員法違反として検挙するという結論に到達したというように、報告に接しておるのであります。昨日午前六時を期して、ただいまお話にありましたように、関係個所の捜索を実施するとともに、関係首謀者と見られる方々の、まず任意出頭を求めたのでございますが、多くの方は任意出頭に応ぜられたのでありますが、中には応ぜられなかった方も数名あったようであります。その任意出頭に応ぜられなかった方に対しては、遺憾ながら逮捕令状を執行いたしたという形になっております。なお、本日の報告によりますと、二名の方に任意出頭を求めておるということでございます。大体概況以上でございます。
  118. 野原覺

    野原委員 法規違反をした疑いがある場合には、あなたの方は当然その違反の疑いを捜査することが役目であります。これは私は当然のことだろうと思う。しかしその捜査をする場合に、逮捕状執行して捜査する場合もあれば、任意出頭によって捜査のできる場合もあることは、これは刑事訴訟法もこれを規定しておるわけでございます。しかるに逮捕した者は、任意出頭を求めたけれども応じなかったから逮捕した、こういうお話でございますが、現在逮捕しておる者は何名、それから任意出頭によって捜査をしておる者は何名、それを明確にお示し願いたいのです。
  119. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えしました通り、昨日朝は任意出頭に応ぜられた方もあり、そうでない方もあったため、そうでない方には逮捕状執行したというようにお答えしました。昨日朝、任意出頭に応ぜられた方も、その後の捜査の状況にかんがみまして、さらに引き続き捜査を続行する必要がありますため、昨夜逮捕状執行しました。結局、昨夜合計十名の方に逮捕状執行した、こういう結果になっております。任意捜査でただいま捜査をいたしております者は、先ほども申しました通り、本日朝二名出頭を求めておる状況でございます。
  120. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、逮捕状執行いたした者は十名で、現在のところ任意出頭によって捜査をしておる者は二名だということが明確になったわけであります。そこでお尋ねをいたしますが、逮捕状は、これは申し上げるまでもなく、刑事訴訟法の第百九十九条によって逮捕状の請求を司法警察官がした場合には、裁判官がこれを発行して、その逮捕状を被疑者に示して逮捕できる、ということが明らかに法律に示されておる。これによってやられたのであろうと思うのでございますが、これ検察庁はどの程度関与しておるのか、あなたの方が直接裁判官に逮捕状を請求して、その逮捕状によって逮捕したのか、それとも佐賀の検察庁も、司法警察官と同様の立場に立って関係しておるのかどうか、まずこの点を伺っておきたいのであります。
  121. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 本件は、先ほども御指摘がありました通り、地方公務員法三十七条の違反で検挙するということは初めてのケースでありますだけに、地元の佐賀警察におきましても、きわめて慎重な態度をとられたようであります。法律解釈その他の研究につきましても、地元の検察庁との間にきわめて緊密に連絡をとられ、双方協議いたしまして、意見の一致を見まして、今回の決定に至ったものと聞いておるのであります。従いまして、検察庁と警察との関係におきましては、密接に連繋をとり、かつまた意見も完全に一致をいたしておるという報告に接しております。
  122. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、検察庁もこれに関係があるんだ、警察官と同じ立場に立って、裁判官の発行した逮捕状によって逮捕したのだ、こういうことが明らかになってきたのでありますが、警察庁長官の一番最初の私に対する答弁は、ある者には逮捕状執行し、昨朝六時、ある者には任意出頭を命じた。こういうように受け取りましたが、事実その通りですね。——その通りであるとすれば、それでは昨日は四名逮捕して、今朝十名にこれが増員をしたというのは、つまり昨日の六名が任意出頭であったけれども、任意出頭による捜査が困難になった、こういう判断でも起ったのかどうか、この点を承わりたい。
  123. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 本来、強制捜査によらずして任意捜査で目的が達せられるなら、努めてそうすべきであるというふうに、私ども日ごろ考えておるのであります。人権の尊重ということにつきましては、私ども、常々第一線の諸君にはやかましく注文をつけておるのでございます。捜査はすべて強制捜査によるのが常道ではないのであります。でき得べくんば、任意捜査によって目的を達するならば、そうした方法をとらせるようにいたしておるのであります。従いまして昨日は、当初すべての方に対して任意出頭を求めたのであります。中に任意出頭に応ぜられない方がありましたので、遺憾ながら、それらの方々に対しては最初から逮捕状執行した。その余の方々、つまり当初任意出頭に応ぜられた方々につきましては、昨日一日取調べをいたしました結果、捜査当局が十分満足のいくように目的を達せられれば、一日であるいは終了したかもしれません。そうでなかったために、さらに引き続き捜査を続行する必要上、やむなく逮捕状を夕刻に執行した、こういうふうになっておるのでございます。
  124. 野原覺

    野原委員 私は、その点が納得できない。あなたが昨日から非公式に述べられておられることも、佐賀の県警察は慎重にこのことをやるんだ、やるんだと言っておりながら、実は任意出頭命令を出したのは、逮捕状を出すための手段であって、その時間的な関係というものは、きわめて短かいように私ども考える。つまり、あなたの方は、裁判官に逮捕状の発行を要求すると、これは御承知のように、裁判官というものは、証拠隠滅のおそれがあるか、それとも逃亡のおそれがあるかというようなことを、具体的には検討しないで、司法警察官が要求した場合には発行するのが普通なんです。これはよく長官御承知だろうと思う。従って裁判官は、要求があれば逮捕状を発行する。しかしながら逮捕状による逮捕というものは、なるほど刑事訴訟法で当然できます。犯罪の疑いがあれば、それはできる。けれども、本来刑事訴訟法が考えておる逮捕状を発行する趣旨というものは、証拠隠滅のおそれがあるか、それとも逃亡のおそれがあるか、そのいずれかを持っておるか、あるいは両方を持っておるか、その場合に逮捕状によって逮捕するというのが、現在の刑事訴訟法の趣旨である。これは長官よく御存じの通りであります。きのう四名も逮捕した。この者は、証拠隠滅のおそれがある、あるいは逃亡のおそれがあると判断して四名を逮捕されたのかどうかは別としても、昨日は、任意出頭で出てきておるでしょう。あなたのところに出てきておって、捜査に対しては口を割らないわけではないでしょう。だから任意出頭で呼んでおきながら、これを逮捕に切りかえた具体的なわけをお示し願いたい。この点が私は了解できないのであります。どういうわけで逮捕に切りかえたのか、捜査ができない具体的な事実があれば、これを示してもらいたいと思う。
  125. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 昨日任意出頭されまして、取り調べをいたしたのでありますが、中には、自分はもうこれ以上述べる必要がないから帰るという方もあったのであります。そうなりますと、事柄の性質上、証拠隠滅のおそれも十分にあると認めまして、逮捕状執行いたいのであります。
  126. 野原覺

    野原委員 中にはそういう者がある場合には、あなたの方は、犯罪の疑いがあると思っておるんだから、逮捕状の発行はもとよりけっこうです。そうしなければ捜査はできない。しかし全部じゃないでしょう。中にそういう者があるというのは何名か。六名とも全部であったのかどうか、どうですその点は。
  127. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 詳細な氏名は、私も報告を受けておりませんが、ほとんどの方がそういう態度に出られたということはわかっております。
  128. 野原覺

    野原委員 ほとんどの方では、はっきりしない。警察当局も御承知のように、国会は、国権の最一局の審議機関であります。だからあなた方が答弁をするということは、きわめて重要な意味を持つ、もちろんこの種のものは、いずれは法廷に出て黒白を争うわけでありますけれども、しかしながら、私どもは、その法廷で黒白を争うというそのことよりも、もっと高い立場に立って、果して基本的な人権の侵害があるのかないのか、それとも警察権職権乱用ということがあるのかないのか、こういうことを私どもは究明しなければならぬ責任にあるわけであります。だから、中にはそういう者がある、ほとんどの方と、こうおっしゃいますけれども、もりと具体的に聞かなければ、私は了解ができない。それは六名とも全部であろうか、そういう者があるかもわかりません。それは何名であるのか、ほとんどということは、全部でないということなんだ、文章的には。これは言葉の解釈で、あなたもわかるでしょう。ほとんどということは全部でない。全部ならば、山口さんも、全部だと、こう断言をするだろうけれども、断言できないところを見れば、任意出頭によって捜査に応じておる者まで、逮捕状をつきつけて捜査をするということがやはりなされておるんじゃないか、断じてなされていないとあなたは断言できるかどうか、長官いかかですか。
  129. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 何分昨日のことでございまして、佐賀の現地で行われておることを、事詳細に私どもにはなかなか把握できないのであります。従いまして、大づかみな結論的なことを報告に接しておりますが、何の何がしを調べたとか、どういう経過であって、その結果、こうしてああしたというところまで、詳細な報告にはまだ接しておらないのであります。従いまして、今、私なり、警備部長がお答えしておるようなことに相なるのでございまして、いやしくも現地の警察におきましては、この問題につきまして、先ほど来申し上げます通り、事の重要さにかんがみまして、きわめて慎重なる態度をもってこれに当っておるのであります。逮捕令状を執行しなければならなかった事情が、必ずあったものと私は確信をいたしておるところでありまして、軽々裡にこれを執行するとは毛頭考えないのでございます。任意捜査で十分目的が達せられるものならば、必ずそうしたであろうと思うのであります。きのう一日の任意出頭に基く捜査におきましては、捜査当局の満足するだけの結果が得られなかった。そのままお帰りを願って、翌日また任意出頭をお願いするということになれば、その間に証拠隠滅等のおそれも十分にあるというふうな、逮捕令状を執行せざるを得なかった事情に基いて、令状を執行したものと信じておるのでございます。この点はさらに十分現地の実情を私ども確かめまして、御指摘の通り、もし警察にいわゆる行き過ぎがありとするならば、これは今後においても十分戒めるようにいたしたい、かように思っております。
  130. 野原覺

    野原委員 あなたがあなたの部下の、いわゆる地方警察を御信頼になることは、日本の警察行政のために、きわめてけっこうなことであります。私もそうあってもらいたい。しかしながら警察行政というものは力を行使するのであります。実力を行使するのであります。従ってその実力の行使がこの捜査の段階になりますと、限界をこえる。憲法が保障しておるところの人権を侵害する、こういうことはないとはこれは断言できないのであります。特に日本の警察は、今日までそのあやまちを繰り返してきておる。私どもはこの点をやはり指摘しなければならぬのであります。このことは、これは長官も当然そういうことがないとは保証できないでしょう。これはうなずいておられるところを見れば、私は重ねてこの問題についてはお聞きをしませんけれども、もう一度確かめておきたいことは、事は教員であり、しかもその教育職員が、実は破廉恥罪を犯したというところのものではない。これは長官はどのように受け取っておるか知りませんが、二百五十九名の同僚教員が首切られる。これは単に同僚教員でなしに、佐賀県が今日まで長い間、実は定員教員の数が少くて二部授業が行われ、六十名、七十名という授業が行われておる。これではがまんができない。これでは責任を持って教育をやれません。教職員各自がそれぞれの自由なる意思によって、何とかしてもらわなければならぬということが集約されて、実は集会になり、大会になり、決定がされておるわけであります。従って組合執行部というものは、これは御承知のようにその決議機関がきめたことを執行しなければならぬ立場にあるわけです。それを執行して、そうしてこういうことになった。しかもその執行の仕方というものは、これは私はあとで聞きたいと思うけれども、その執行の仕方というものは、決して組合が、幹部が独断でやってはいない。これは午前中、文部省もこのことは認めておる。これは本日の文教委員会速記録をあなた方があとでごらんいただけば、おのずから明らかになるのであります。  そこでもう一度大事な点を確かめておきたいことは、任意出頭に応じた者も、この逮捕状執行に切りかえたというこのことは、詳細な実情を把握していないから答弁できないということでありまするから、まことに遺憾なことではあるけれども警察庁の本部が把握していないということは遺憾に思うけれども、把握していなければ、私あえてこれはお聞きしません。しかしながら、警察庁長官としては、この種の問題で、しかも教員が任意出頭に応じてやったことは、はっきり申し上げましょう。こういう立場に出た者に対しては、逮捕状執行すべきものではない、子供に与える影響がある、逮捕状執行すべきものではない、このようなお考えのように私は受け取るのでございまするが、間違いございませんか。
  131. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えしましたことを繰り返すようなことになりますが、警察はあくまで任意出頭によりまして捜査の目的が達せられるならば、そういう方法をとるのであります。それによって目的が達せられない場合、遺憾ながら強制捜査をせざるを得ない、こういうことに相なるのでございます。人権の尊重ということにつきまして先ほどるる御指摘がございましたが、私ども現在捜査のあり方ということにつきましては、機会あるごとにこの点については反省を促し、私自身強くこの点を第一線の諸君に要望いたしておるのであります。捜査はどこまでも人権の尊重という基本理念の上に立って、合理的、科学的に捜査を進めて真実の発見に努める、こういうことでなければならぬということを、私は常々第一線の諸君に要望いたしておるのでございまして、時折数多い警察官の中に、いわゆる行き過ぎ行為をやりまして、捜査の不適正、人権の侵犯といったような不祥事を起す場合もいまだにありますことは、まことに遺憾にたえないところであります。その点は、われわれの日ごろの指導、教養がいまだ不十分であることを痛感いたしまして、今後さらに十分反省をし、また努力をして参りたい、かように思っておるのでございまして、今回の佐賀の事件の取扱いにつきましても、私がかねがね第一線に要望しておる、この捜査の基本的あり方について、佐賀警察は、本部長以下十分心得てくれておるものと思うのでありまして、それに基きまして、今日まで具体的の執行をやっておるものと思うのであります。先ほど申します通り、何分昨日のできごとでございます。まだ時間もたっておらないことでありまして、私どもに逐一詳細なる報告もございませんので、昨日の捜査の状況が詳細どうであったかということを、今日ただいま把握いたしておりませんので、私先ほど来抽象的なお答えをせざるを得ないのでありまして、その点は御了承願いたいと思います。
  132. 野原覺

    野原委員 捜査の目的が達成されない場合には逮捕をする、これは何回も申し上げるように、私とあなたとはこの点については見解が同一なんだ。これは当然そうしなければ捜査はできないからであります。ところが捜査の目的が達成されたにもかかわらず逮捕をされたという場合、これは警察庁長官もこのことはきわめて遺憾なことだとただいま申されたのであります。これもまた私同感であります。ところがあなたと私とが同感である捜査の目的が達成されたにもかかわらず逮捕された、この点が、あなたと私と同感でございまするが、もしそういう事実がそこに行われておった場合には、この点の責任問題というものは当然起るのであります。だから私は、あなた方が実情を把握していない、こういうことでございまするから、この点についてはただいまおきましょう。これは早急に実情をあなた方も調査して下さい。私の方でもこのことは実情を調査中であります。ただいま私どもに入った情報によれば、六名あるいはもっとの数でございますが、みな言う。何も隠すことはない、私ども教育者である、どうして隠しますか、証拠隠滅するにも、大会を開いたことはこれは事実だ、それから組合が出した指令というものも、これは各職場にあるわけですから、こんなものを焼却するといったって焼却はできない。それから職員が五千から六千佐賀県にはおるわけでありますから、教職員の口にふたするといっても、二人や三人でこの違反行為が行われるものと違って、これはできるものじゃない。だから証拠隠滅のおそれもない、逃亡のおそれもない、これは歴然であります。それであるにもかかわらず、逮捕状執行して逮捕をしたということは、私ども悪くとればそこに何らかの意図するものがあったのではないかとまで、実は考えさせられざるを得ない状況に今日では置かれておるのです。しかしこれはあなた方が私と同じ見解を表明しただけで、実情がわからないということでございますから、実情のいかんによって、あなた方が把握したその上に立って、私は委員長要求いたしますが、警察庁長官にこの委員会に再度来ていただいて、この問題についてはさらにお尋ねをしたい、このように思うのであります。  そこで、次にお伺いいたしたいことは、地方公務員法の第三十七条に違反した疑い、同時に地方公務員法の六十一条四号に該当するその疑い、このために逮捕をした、このように新聞も書いておるし、先ほど三十七条については石井さんもちょっと漏らしたようでございますが、そのように受け取ってよろしゅうございますか。
  133. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 御意見の通りでございます。今回の佐賀県の事件については、地方公務員法第三十七条に違反し、六十一条の罰則に該当する事犯であるということで検挙いたしたのでございます。
  134. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、地方公務員法の第三十七条は争議行為等の禁止をうたった条文であります。そうなりますと、警察当局が疑いを持ったのは、佐賀県の教職員のとった行動は明らかに争議行為である、こういう疑いであろうかと思いまするが、その通りでありますか。
  135. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 佐賀警察は争議行為であるという認定に立ちまして、先ほど申しました地方公務員法三十七条違反であり、同六十一条の罰則適用の事犯に該当するというふうに認定をいたしたのでございます。
  136. 野原覺

    野原委員 佐賀警察だけではなしに、事は警察の問題になりますと、警察庁長官の御意見もここで私どもは承わりたいのです。佐賀警察はと、あなた方は何か伏線を置いたような御答弁をなされておりますけれども、私ども警察の最も責任のあるあなたに来ていただいたのは、あなたの見解を聞きたいからです。これは三十七条に該当する争議行為である、こう言われましたけれども、そこのところをもう少し御説明を願いたい。争議行為とは何ぞやという点に立って、これが争議行為である、佐賀教組のとった行為が第三十七条に全面的に該当するのだということは何をさすのですか、お尋ねしたい。
  137. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 御承知のように、全県下の教職員に対して、きょうは全体の三割は休むように、あしたはさらに三割が休むように、その翌日はさらに四割が休むようにというような指令を県教組の木部から各支部、分会にお出しになって、そして教育委員会もそういうことをしないようにと極力反対をせられたのであります。また校長先生もそういうことをしないようにという説得をされたにもかかわらず、なお十四日のその直前までいろいろと教育委員会校長先生方から説得が行われたにもかかわらず、なおかつそういう休暇をとるというやり方をもって学校の正常な事業運営されないという事態が出て参りますれば、これは明らかに地方公務員法第三十七条にいいます争議行為に該当をいたすとわれわれは思うのであります。従ってその容疑で検挙いたしたのであります。
  138. 野原覺

    野原委員 あなたのその御答弁だけでは、私は質問を継続することすらできない。執行部の出した——執行委員長といいますか、闘争委員長と申しますか、そのものの出した指令を読み上げてもらいたい。その指令の文書を聞かなければ、そういうものを出したんだということを言ったって話にならぬのであります。いかなる指令が出ておるか、文書で読み上げてもらいたい。
  139. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 問題の点を申し上げます。二月十四日、闘争委員長名をもって、各分会は二月十四日、十五日、十六日の三日間、三、三、四割の年次有給休暇をとり、佐賀市及び唐津市において開催する要求貫徹総決起大会に参加せよという指令を出しておられます。この年次有給休暇をとるというところですが、これは先ほど申しましたように、県下全体の先生がそういうように一斉に休暇をとってやるということは、授業の正常な運営を害するのでやめていただきたいということを、教育委員会校長先生が説得されて、その明白な反対があるにもかかわらず、なおかつ休暇をとって休んで、そしていろいろの行動をせられるということは、私ども明らかに三十七条違反に該当するものと思うのであります。
  140. 野原覺

    野原委員 その指令はそれで明らかになりました。そこで、年次有給休暇をとって佐賀市と唐津市の措置要求大会に集まれ、そういう指令だということでございまするが、一体教員諸君は、これは警察当局も御承知のように、年次有給休暇というものは労働基準法の三十九条でとれるわけです。そこでこの指令を出す前に何かあったでしょう。この指令というものは、組合委員長なり執行部が独断で出したとあなた方は受け取っておるのかどうか。この指令を出す前に、私どもの調査によれば、これは各学校職場会議を持った。つまり職員会議であります。そして二百五十九名の首切り、長い間の法律で定められておる教員昇給昇格のストップ、この問題を討議した結果、この種の方法に出なければならないということが一人々々の投票によって決定をされておる。これは明らかに何千票という札を入れさしておるのです。しかも秘密投票でやられておる。組合の幹部がにらんでやったのじゃない。自由なる意思を表明してもらいたいということでやったのであります。従ってなるほどこの指令は組合幹部が押しつけたように見えますけれども、これは組合員大衆の決定したことを言葉に出しただけなんだ。年次有給休暇をとれというのは、年次有給休暇、こういうような方法によって集会をもって要求しなければこの問題の解決はできないということで、これは全教員の総意によって決定したことを執行しただけなんだ。どこにこの問題で執行部の独断がありましょうね。あなたは、こういうような指令を出したから、これが企画をしたというけれども、実際上の企画は教員全体がやったのじゃないか。教員全体の企画をただ執行するのが、組合という団体における執行責任者としての当然の義務なんですよ。それをやらなければ問題なんです。ただそれだけのことじゃないか。そうなれば、どこにもこの指令からくる執行部責任ということは問題にならない、このように思うのだが、その点についての検討も警察はなさっておるのかどうか、承わりたい。
  141. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そういう大会を開いて全員投票をせられる際には、中央執行委員会としては、いろいろの御相談の上そういうことを事前にお話になったかもわかりません。あるいはそういう決議がかりに行われたといたしましても、教育委員会校長先世などによって、そういう行為はいけないのでやめていただきたいという御説得が極力あったにもかかわらず、なおかつその反対を押し切って組合に対してそれを決行するようにというようなお話でもあれば、これはやはりこの三十七条に書いてあります共謀するとか、あおるとか、あるいはそそのかすというような行為になるのではないか、かように存じます。
  142. 野原覺

    野原委員 そうなると議論がだんだん発展をしてきたのであります。つまりあなたは、服務監督庁が業務命令と申しますか、やめてもらいたいということを要求したにもかかわらず、あえてやったところが問題だ、そういうように焦点をはっきりおっしゃっていただきたい。それでないと私ども質問するのに困る。その点で問題だ、こういう主張ならば私はなおお尋ねをしたい。地方公務員法の第四十六条を見ますと、勤務条件に関して教職員団体措置要求ができるのであります。労働組合法による労働組合ではございませんけれども佐賀県の教職員組合は登録をしておる職員団体でありますから、地公法の第四十六条によって措置要求ができるのです。そうしてしかも労働基準法の第三十九条によれば、有給休暇の請求ができるのです。しかも請求した場合には、使用者はこの場合には教育委員会でございまするが、使用者はその有給休暇を与えなければならぬのです。与えない場合労働基準法の百十九条は使用者に対して六ヵ月以下の体刑を科しているのですよ。そうすると、首切りは佐賀教育のために困る、昇給昇格のストップ、こういうようなことをされたのでは教員全体の士気にも関するし、生活権の問題でもあるというので、その要求地公法四十六条で出しておる。同時に、年次有給休暇というものは指令の形では出されておりますけれども、実質的には教員みずからがきめたことなんです。教員自身が各個でその態度を決定されたことなんですから、これは問題にならない。労働基準法三十九条によって要求ができるのです。地公法四十六条ないしは労働基準法三十九条によって有給休暇の請求は権利行使なんです。これが権利行使であれば、一体権利行使対象としての服務監督はどこにありますか。あるとすればお示しを願いたい。権利行使対象として、その公務員に対して服務監督権があるというならば、法律上の根拠に立って示してもらわなければならぬ。これはとんでもないことをやっておるのです。服務監督というものは、権利行使には及ばないのですよ。その辺をどのように分析されてこういう行動に出ておるのか承わりたい。
  143. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 ただいまお述べになりました労働基準法に規定する有給休暇の規定はよく存じております。ただ先ほどのお話の中にはただし書きが抜けておるように思うのであります。ただし書きは、「請求された時季有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」こういうことになっております。従って全県下の学校の先生が、きょうは三割、あすは三割、さらにその次は四割というように、全員が三日間に有給休暇をとって休まれるというようなことは、学校事業の正常な運営を妨げると教育委員会が認定されて、そういう休暇を今そういった方法でおとりになってはいけないということをはっきり言われた場合、すなわち承認されないと言われた場合に、そうしてなお実際に行為が行われた場合には、これは正しい権利行使とは私ども考えられないのでございます。従って三十九条の違反になる、かように考えておる次第でございます。
  144. 野原覺

    野原委員 実はそこのところが私も問題であろうと思う。私はあえてただし書きを言わなかったのではありません。事業の正常な運営を妨げる場合、こう判断することはこれはよほど慎重でなければならぬのです。労働基準法によって有給休暇を与えなければならぬ、与えない使用者に対しては六カ月以下の体刑を課するくらいこれは労働者の特権として基準法が認めておることでありますから、事実その事業運営を妨げておるかどうかという使用者判断というものは慎重でなければならぬのです。使用者が何らの具体性もなく、全く自分の主観的、独断的な判断によって事業の正常な運営を妨げておる、こう勝手に判断を下して有給休暇を与えないとすれば、いかに業務命令を下そうとも、労働基準法の三十九条はそのようなことは承認しないのです。これは山口さんもわかってもらえると思う。職権乱用にわたるような判断の仕方で、事業の正常な運営を妨げる、こういうことをやられたのでは有給休暇はもらえませんよ。たとえば教員有給休暇を願い出る、これが偶然にも五十人の学校で十人が願い出る場合があるかもわからない。そのときに使用者として有給休暇権限を委託されておる校長が、事業の正常な運営阻害する、たとい二人行っても阻害する、こういう判断をされて、お前はだめだ、こういうことをやられたのでは有給休暇は実はもらえないのじゃないか。従って事業の正常な運営を妨げておるかどうかということが、やはり私もあなたと同じように、この判断をする最も大事なかぎではないかと思う。私はこう思う。なるほど十四日から十六日まで三日間、三割、三割、四割——これの何パーセントであったかは私も正確にはつかんでおりませんけれども、ある者は七五%、八五%と称しております。まあ三割、三割、四割、これが全面的に実行されたとしても、その学校休暇をとって休む先生が、あとはどうなってもかまわぬ、おれはとにかく集会に行くのだ、子供のことはほったらかしだ、こういう状態で出ておるのか、こういうことを把握されていらっしゃるかどうかということが第一点。第二点は、教員組合執行部が、先ほど言われた指令を出すときに、君らがそういう休暇をとる場合にはどういうことを考えよという副次的な指令が出ていないだろうか。この二点はあなた方も調査しておるはずです。そこで調査しないで、そうしてこの種の逮捕を承認するということは、これは賢明な石井さんのもとにおいては断じてあり得ない、調査しておるはずだと思う。それについて所見を述べてもらいたい。
  145. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そういう指令を出される際には、あとでたとえば合同授業をやるようにとか、いろんなことを御注意になっておると思います。しかしながら全県下の先生方が一日に三割も一せいにお休みになるという結果が、学校の授業にどういう影響を与えるかということは、これはもう賢明な先生方の御常識で御判断になればおわかりになると思います。しかも教育委員会校長先生が反対しておられるのに、なおそれをあえて押しておやりになるというところに問題がある。有給休暇を必要に応じておとりになるということは、私も少しも差しつかえないことだと思いますけれども、そういうようなやり方においておやりになった点に問題があると私は思います。
  146. 野原覺

    野原委員 私は本日午前中に灘尾文部大臣にも申したことでありますが、正常なる事業運営阻害する場合にのみ、使用者有給休暇を与えるときの期日の変更権が与えられておる。そこで使用者が期日を変更する場合には、正常なる事業運営阻害するかどうかという判断、これが大事なんです。そこで一日やった、二日やった、三日やった、それでその学級が自習時間をしたって、先生の何月何日の第二時間目に国語をやる——ここにプリントがある。しかもこの種の問題で先生が出て行くのは、勝手に町のお祭りがあって出て行ったのではなく、全職員の決議の要求に従って行動されておるのですから、同僚の教員がよしおれが引き受けようといって二日や三日自習時間をしたからといって、正常な事業運営阻害したと判断を下すのは早計きわまる。二日や三日自習時間があったから正常なる事業運営阻害したと見るべきものではなくて、これは山口さんも研究されていらっしゃると思いますが、教職員有給休暇をとる場合において、この種の判断をされたのでは有給休暇はとれないので、正常な事業運営阻害したかどうかという判断は、少くとも一学期間の学級の実績、学習の水準、あるいはその他いろんなものを総合的に判断してきめなければならないというのが、今日労働法学界の通説なんです。教員有給休暇をとる場合には、そうしなければとれないのです。これは校長が勝手にやられたのではとれないのですよ。だからそういう点をお考えになられて——もちろんお考えになられたかと言えばそれは考えてやりましたということになろうが、考えてやったとすれば私は問題だと思う。これは相当長期間における総合判断できめなければ、事業の正常なる運営阻害したかどうかはわからないと思う。単に一日休んだから事業の正常な運営阻害した、こうほったらかしに考えていいのかどうか、この点についての所見をまずお聞きしておきます。
  147. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 単に一日というようにおっしゃいますが、先ほどから言っておりますように、県下の全員の先生が三日間にわたって交代で休む、三割に及ぶ先生が、たとえば県下で三割といいますと、おそらく二千人に近いだろうと思います。それだけの先生が県下でかりにお休みになるということであれば、これは学校教育に及ぼす、事業に及ぼす影響というものは相当やはり私は大きいんじゃないかと思います。先ほど軽々に判断すべきでないというようにおっしゃいましたけれども、この点はやはり先生方としましても、おとりになる行動の結果が学校教育にどういうように影響を及ぼすかということは最もよく知っておられると私は思うのであります。従いましてただいま御質問がございましたが、私どもといたしましては、今回おとりになりました行動事業の正常な運営を妨げる疑いがきわめて濃厚であったということで、三十七条違反として取調べをいたしておる次第でございます。
  148. 野原覺

    野原委員 その点はあなたと水かけ論になりそうですからやめましょう。しかし大事な点が残っておりまするから重ねてお尋ねしておきますが、白昼公然とこの種の捜査はできるはずだ。どの点が一体捜査困難ですか。これはあなたに的確にお聞きしたい。これは調べていないからということでございましたけれども、どう考えてもあなたとそういうような問答を繰り返しているうちになおその壁にやはりぶつかる。これは全教員二千名、三千名と言われますけれども、何でもないのです。捜査をしようと思えばこのまま——証拠隠滅をしようとした教員組合幹部の中にあったのかなかったのか、この程度のことはわかるでしょう。それから出て来いといったのに逃げたのか、それを警官が追っかけてとっつかまえたのか、そういうような具体的な事実がない限り、逮捕状執行して逮捕するなんということは、これは教職員組合の自由なる活動、民主教育を実現するために組合を結成していろいろやっておりますが、その自由なる活動というものは憲法が保障しておる。憲法の保障する組合団結の自由を侵害するもあまりにひどいと思う。だからこれは憲法上の問題です。従ってそういう具体的な事実を一つでも二つでもよいから、知っておることがあれば申してもらいたい。
  149. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 任意出頭をお願いしてございましたところが、任意出頭に応じられないということをはっきり申した方もおられます。
  150. 野原覺

    野原委員 何人ですか。
  151. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 当初二人であります。それから途中の取調べにおいてもう帰ると言われた方もあります。さらに取調べが順調に進んでおればということでございましたが、執行委員としていろいろ活動されました状況について御質問をしても、十分にこれにお答えが願えなかった方もございます。そういう関係で昨日十名の方について逮捕状執行いたした次第でございます。
  152. 野原覺

    野原委員 その人数が何人かということは、最初の二人だけしか聞きませんでした。あまりにあなたを追い詰めるのは酷だと思ったのです。最初の二人は確認しておるけれども、残りの人数については確認していないのですから、そういうことで権威のある警察当局に恥をかかしたくないのです。だから私はあえて聞きませんでしたけれども、最初の二人がそういう発言をしたということはあまりにもばかばかしいのです。何も逃げるから、捜査に応じないからということじゃない。捜査をするにはあなたはそのくらいなことはわかってもらわなければならない。ばかばかしいのです。こんなことで警察が介入して、なんたることだ。どう考えても今日の正常な人間の常識からは判断できないのです。教育委員会がこれに干渉することは私はわかります。従って教育委員会はいろいろ組合の幹部とも話し合いをし、今後このようなことがないように、このようなことが起ったのはどういうところに原因があるのか、文省当局も入れて検討をして、そうして佐賀県の教育がうまくいくようにするのが教育委員会の役目であり、教職員諸君の務めなんです。だからそういう役目を持っている教育委員会がやるのは私はわかるけれども、犯罪取締りの警察がこの種の問題に乗り出して、何だかんだと尋問をする、こういうことはまことに噴飯ものでございまするから、がまんができなくなってそういうことを言ったのだろうと思う。しかしながらいずれにしてもあなたの方では違反事実があるから調べるのだ、それはそれでいいのです。だから二人について逮捕状を出すということは、これはあなたと私の見解の相違ですからあえてとやかくは申しますまい。私はこれは申さぬでおきますが、しかしいずれにしても全員が逃亡のおそれがあったとは思われないし、証拠隠滅といっても、この種の問題は証拠隠滅のしようがない。それにこういうようなことをされたということはきわめて私どもは残念にたえないのであります。問題は、警察権の権力関与が職権乱用になるという判断を受けることがあれば、今日の賢明なる石井長官の率いる国警を私どもはまた問題にしなければならない。ほんとうをいえば私どもはこういうことをいたしたくない。従って石井さんとしてはすみやかに実情を御調査になって、任意捜査できるものは、任意捜査をやる。がんとして口をあかない、あなた方が犯罪の疑いがあればこれを調べるのはあなた方の役目でございまするから、私は見解を異にするけれども、そのことについては申し上げません。これはお調べになってもよろしゅうございましょう。そういう者にだけ逮捕状執行する、こういうようなことを早急になさるべきではないかと思う。それが私は民主警察ではないかと思う。長官の御見解をお聞きしたいのであります。
  153. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 警察官が職務執行に当りまして職権を乱用してならないことは申すまでもないところであります。そういう点につきましては、日ごろより私どもは十分注意を喚起をいたしておるのでございます。捜査に当りましていわゆる捜査の行き過ぎのないように、捜査の目的を達成する上に必要なる最小限度の実力行使と申しますか、そうした点につきましては、きわめて慎重でなければならぬことは申すまでもないところでございます。捜査の目的が達せられたにもかかわらず、あえて不当に拘束するというようなことは、これは憲法の精神にも反することでございますので、こうした点は十分第一線の警察諸君には私十分注意を喚起いたしております。今回の事件の捜査に当る者に対しましても、重ねて注意を喚起しておきたいと思います。
  154. 野原覺

    野原委員 注意を喚起していただくということはまことにけっこうでございます。これはぜひそうしていただかなければならないかと思いますが、私は最後にいろいろな調査の結果、実は長官の考えておることは意に沿わない具体的な事実があがるおそれが多分にあるのであります。私はそういうおそれのないことを願いますから、長官にいろいろ苦言も呈しておるのでありまするが、なおもう一点申しておきたいことは、組合の幹部だけが捜査をされておる、逮捕になっておる。ところがこのことが私はどうしてもわからない。これはそういうことを企画し、そそのかし、そうして扇動した、いわゆる企画したり、扇動したりしたからだ、こういうことでございますけれども、このことの捜査というものは最初の経過から実は当ってもらわなければなりません。これはもとより今捜査中でございましょう。あなた方はそういえば、いやその点もただいま捜査するために実は聞いておるのだ、こういうことだろうと思いまするが、そういうことであればあるほど任意捜査でなければならぬのです。三十七条違反と申しましても、具体的にこれが争議行為であるという論断は最終的には裁判所がする。あらゆる判決は最終的には裁判所が下すといえばそれまでですけれども、明らかに今回の三割、三割、四割というものは、これは有給休暇労働基準法に従った合法的な権利行使であるという疑いもあるわけです。悪い意味の疑いもあれば、善意にとれる疑いもある。しかも教員諸君が革命をやろうとしてやったことじゃない、佐賀県の教育をよくする。三日間の授業時間は、なるほど先生が授業するよりもマイナスになることは賢明なる教員諸君もよく知っております。しかしながら、このことによって獲得できる定員の問題、昇級昇格の問題が抜本的に解決できるならば、そこで取り返す。しかも教員にはこのことを決行するときには注意を与えておる。決して父兄からとやかく言われないように気をつけろ、同時にもしマイナスの点があれば、教員諸君は、われわれの責任においてこのマイナスはカバーすると悲壮な——悲壮ではなしにそういう考えをしているわけなのです。だからいろいろなことを総合的に判断いたしますと、あたかも破廉恥罪を犯したかのような逮捕ということが、新聞に堂々と麗々しく掲載されるということは、事教育に関するだけに私どもは非常に心配するのです。自分たちの先生方が警察からつかまえられなければならない、警察逮捕するということは、ほんとうに一般市民、子供にとってはこれは大へんなことなんですよ。よっぽど悪いことをしたのだろうかと親も子も心配をするのです。そういう点についての政治的な配慮と申しまするか、教育的な配慮といった方がいいでしょう、それをお考えになって、この問題の捜査をお進めいただきたいのであります。私は最後の点は、賢明な長官あるいは山口警備部長に、このことは私心からお願いという言葉で申しましょう、あなた方にお願いをします。どうか一つそういう態度で捜査に当っていただいて、事教育でございますから、慎重に、子供に与える影響その他をも考えてやるように、佐賀警察本部に注意、勧告して下さるよう要望をいたしておきます。
  155. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま御要望の点、まことにごもっともであります。子供に与える心理的影響と申しますか、そういう点もありますればこそ、佐賀警察におきましては、この問題の取扱いにつきましてはきわめて今日まで慎重に配慮をしてきたようであります。御承知の通り、二月十四、十五、十六日の事柄であるにもかかわらず、昨日初めて検挙に着手する、その間相当の時間を経過しておるということは、とりもなおさず、この問題につきまして、佐賀警察としてはきわめて慎重な態度を持ち、なお時間を十分にかけて検討をしました結果、最後にそういう結論に到達した次第であります。今後の事件の捜査取扱いにおきましても、ただいま御要望の点は十分に私どもも現地の諸君に伝えて、善処さしたいと考えております。
  156. 長谷川保

  157. 八木昇

    ○八木(昇)委員 だいぶ時間もたっておりますから、私はできるだけ簡潔に、ただいまの野原委員質問に関連いたしまして、三、四御質問いたしたいと思います。今度の事件で、私ちょっと不思議に思っておりますことは、実は行政処分を受けましたのは十一名でございます。ところが先ほどの御説明によりますると、任意出頭で取り調べておる者が二名、これは私先ほど最高検察庁に行って聞きましたところでは、婦人の方二名らしゅうございます。それから逮捕勾留を昨晩からしておられるのが十名、こうなりますると十二名、こういうことになっておるようでございます。そこで当然この公安にも関係をするような事件については、最高検察庁とも十分連絡をして出先も動いておられるようでございますし、そのことは先ほど最高検察庁も御否定になりませんでした。そこで皆様方の警察庁の方においても、その辺の状況は詳しくおわかりになっておるべきはずのものであると思いますので、はなはだ何でございますが、名字だけでけっこうでございます。十二名の名字をちょっと明らかにしていただきたい。
  158. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 それでは姓だけでごかんべん願います。中島さん、北崎さん、丸山さん、杉山さん、北村さん、篠崎さん、鶴田さん——鶴田さんは女の方であと一名おいでになりますが、男の方の鶴田さん。松隈さん、樋口さん、末森さん。女の方で鶴田さんと吉町さん、これだけでございます。この女の方の二人は、先ほども御指摘がありました通り、任意出頭を求めておるのでございます。
  159. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで一点お伺いをいたしますが、当時の佐賀教職員組合委員長であり、佐賀労働組合総評議会の議長でありました藤山正己さん、これは逮捕せられておるわけですね。
  160. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 藤山委員長逮捕されておりません。
  161. 八木昇

    ○八木(昇)委員 今呼ばれたんじゃなかったですか。
  162. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 いや、呼んでおりません。杉山さんと間違われたのじゃないですか。
  163. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それでは藤山さんは、行政処分対象にはなっているのだが、今度の被疑者になっておらないということは、何か特別理由がございましょうか。
  164. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 私ども報告に接しておるところによりますと、藤山委員長は、当時海外に旅行されておったやに聞いておるのでございます。従いまして今回のこの二月十四日から十六日にかけての休暇闘争の際の責任者ではないというふうな判断を現地ではしておるようでございます。ただし行政処分を受けましたのは、それ以前、海外に旅行される以前、組合委員長として、いろいろ活動されたことに基いての行政処分があったものと考えますが、これは私どもの直接関係のないことでございますので、私も詳細は存じておりません。
  165. 八木昇

    ○八木(昇)委員 しかしながらこの違反の疑いというのは、いずれも地公法三十七条違反の疑いであるということはその通りでございましょう。教育委員会が指摘している点も、警察当局が指摘している点も、それはその通りでございますか。
  166. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 その通りです。
  167. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そうしますと、これは三十七条の違反だと県教育委員会考えておることについて、検察当局の純法律的な見解ですね、この点は私は相当食い違っておるということになると思うのです。そうしてまた事実そうあるべきが当然だと思うのでありまして、三・三・四の休暇闘争決定する執行委員会にも、何の会議にも、もちろん参加しておらないし、それから三・三・四の休暇闘争が行われるときにももちろん参加しておらない。いずれの場合にも海外におったという事実を、大体お認めになっておるわけですね。
  168. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 御指摘の十四日から始まりました三・三・四の休暇闘争については、当時海外におられまして、御関係がないものと思います。ただし行政処分が行われましたことは、私が御説明するのは適当でないかと思いますが、その前に三・三・四と違う——間違っておったら訂正しますが、二上丁三・三というような休暇闘争を、中央執行委員会において御決定になったいきさつがあるようにお伺いしております。その点がおそらく行政処分については問題になっておるのではないかと思います。私どもの今問題にしておりますのは、現実に実施されました三・三・四の休暇闘争について問題を取り上げておるわけです。そういう関係で一応除かれておるわけであります。
  169. 八木昇

    ○八木(昇)委員 実際行われも何もしなかった二・二・三・三云々というようなある種の素案があったということについて、これも問題にするなどということは、教育委員会措置はきわめて筋違いだと思いますが、これは皆さんに申し上げてもいたし方ございませんので、この点は省略いたしまするが、もう一点、先ほど鶴田ということを言われたのでありますが、鶴田卓爾という男の人と、もう一人鶴田という女の人とありまするが、これは二人とも今取調べ中でございましょうか。
  170. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 男の方の鶴田さんは、昨日から出頭を求めて、逮捕状執行いたしております。女の方の鶴田さんは、けさ任意出頭でお出かけをいただいております。
  171. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこでいよいよ教育委員会のとった措置がきわめてずさんであったということがようやく明るみに出てきたと思うのでありますが、きょう午前中の質問におきましても。佐賀県の教員組合の本部十名の執行委員のうち、実は七名が行政処分を受けました。それから支部の書記長のうち四名が行政処分を受けて、都合十一名受けた。ところが本部の執行委員七名の行政処分を受けた人の中に、全然休暇闘争と関係のない、生活協同組合の仕事をしておる鶴田という人が処分を受けた。ところが実際に婦人部長として休暇闘争をやりましたところの鶴田という人は、同じ苗字でありましたためでありましょう、これは処分を受けていないのであります。そこで教員組合処分発表後交渉にいきましたときに、教育次長にか、これは鶴田の間違いだろうということをささやいた事実がある。そういう点から判断をいたしますと、これはどうも教育委員会のとった措置はまことにもって粗漏であり、ずさん千万だ、こういうふうにきょう午前中も文部省の方に言ったのでありまするが、行政処分対象になっていない女の鶴田さんを今度は入れておる。警察当局は被疑者にしておる。これは一体どういう経過があるのでありましようか。
  172. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 鶴田さんは県教組執行委員、給与対策部長という地位に当時あられたのであります。そうして中央執行委員会におけるいろいろな会議に御出席になっておったように思います。そこでほかの者と同じような取扱いをすべきであるという御意見であれば、これはまたそういう御意見も成り立ち得ると思いますが、私どもといたしましては、女の先生でもあられますので、その点は特別の考慮をいたしまして、任意出頭をもって取調べをいたしておる次第であります。
  173. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ちょっと念のために確かめますが、今の給与対策部長であったという鶴田さんは、行政処分対象となっておりません御婦人の方の鶴田さんのことですね。
  174. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そうです。
  175. 八木昇

    ○八木(昇)委員 以上で私は大体県教育委員会のとった措置がきわめてずさんであったという点は事実をもって明らかになったと思うのでございます。  そこでさらに質問をいたしたいと思うのでありますが、この被疑者になっておられる方々は、実際に御本人は休暇を取られたのでしょうか。
  176. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 一人々々の方について私はまだ報告を受けておりませんので存じませんが、中には、当日あるいはその前日から各地方にオルグ活動で出られた方も相当あるように伺っております。
  177. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは組合の本部並びに支部の専従の方々ばかりなので、御本人たち自身は休暇を取っておられないのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  178. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 専従職員であられる方についてはそうだろうと私も思います。ただ問題になっておりますのは、その御本人が教育委員会の承認なしに休暇を取った、取らないという問題ではなくして、教育委員会の承認なしに有給休暇闘争をされたことについて「このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、」というところにかかるわけなんです。専従職員の方が中央執行委員としてそういう問題について基本的な御方針を決定されて、それを流されたというところが現在問題になっているのであります。
  179. 八木昇

    ○八木(昇)委員 その点は三十七条には、実際にそういう行為をなした人、休暇を取った人、こういうのが前段の方に書いてあるわけで、そういう意味においても、その解釈は相当こじつけではないかと思うわけであります。ましていわんや、海外にいた人までも対象としたところの教育委員会措置のごときは、私はまことにもって了解しがたいと思います。  そこでさらにお伺いいたすのでありますが、きょう午前中に政府の官房長官にお会いしたときもそうでありましたし、先ほどの御説明でもそうでありましたが、行政処分後どうも反省の色がない、こういうふうにおっしゃった。反省の色がないので今回の処置をしたというようなことをおっしゃるのでありますが、一体どういうことがあるか、その後も何か実力行使をやるとかどうとかいうような事態があったわけでしょうか。
  180. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 反省の色がないという意味はどういうことでありましたか、私はそのときおりませんので存じませんが、おそらくそういう休暇闘争が決行されたあとにおきましていろいろと世論の批判等もあったように伺っているのであります。そういう世論の動向あるいはPTA等の御意見等もお考えになりまして、そうして教員組合の方で過去におとりになった行動について御反省になるということであれば、これはまた情状酌量というような問題もあろうと思います。その後におきまして私ども承知いたしておりますところでは、必ずしもそういうような状態ではなくして、むしろ地方公務員法第三十七条違反であるということに根本的に疑義があるということでいろいろな動きがあるようであります。従いまして、この点につきましては私どもといたしましても慎重にいろいろと検討いたしまして、そうして今回三十七条違反として措置をとることになったわけであります。
  181. 八木昇

    ○八木(昇)委員 その後何ら具体的な行動もないのに、反省の色がない云々と言われるのは、これは私としては納得ができないのであります。しかも今度の場合、実は重大な二つの点がございます。その一つは、この行政処分がありましてから佐賀の県知事にも会いまして、いろいろ見解をただしたところ、実は自分としては、これは困ったことになった、行政処分というようなことまでは、という意見であります。そこで自分としては教育委員会並びに教組側との間に仲介あっせんの労をとることについてはいささかも反対はない、やりたいと思う。他方、教育長に私ども話した結果も、教育長としては知事からあっせんの申し出があれば当然応じます、こういうことになりまして、しかも知事は地方財政の窮迫の問題のために、あした衆議院の地方行政委員会に出る、そのあとで問題を円満に解決するように処置をとる、結果がどうなるかは別といたしまして、何らかの問題解決に向おうとするような状況にあったのであります。そういった状況にあったことは地方の新聞にもずっと載っているのでありますが、出先の方から連絡を受けて、そういう状況はすでに御存じになっておったわけでしょうか。
  182. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そういうようなことは新聞等で拝見はいたしておりました。ただしかしながら先ほどお話しになりましたが、行政処分後の県教組の動きあるいはそれに関連する日教組その他の動き等は、新聞等で相当明らかになっておりますが、あの休暇闘争について十分反省の実を示されたものとはわれわれは考えられないのであります。
  183. 八木昇

    ○八木(昇)委員 具体的事実も明らかにされなくて、反省の色云々という抽象的なことを言われても納得ができません。  さらにもう一点問題があるのは、こういう行政処分をされた場合には、これに対する救済申し立ての制度が地公法であることは御存じの通りであります。従いまして不利益処分を受けたものとして、本人たちが人事委員会に審査請求の要求をいたしたのであります。そういう措置をすら反省の色がないというふうにお考えになるとするならば、これは一体何のための法律であるか納得ができないと考えるのは当然のことであります。だから納得ができない場合にはそういう手続をせよということがちゃんと法に明示してあり、それに基いて審査請求をしている。三ヵ月以内に、人事委員会は果してあの休暇闘争がストライキであったかどうか、そしてそれに基く行政処分が適切であったかどうかという結論を遠からず当然出すという段階になっているのに、なお今回警察当局がああいった措置に出られたことについてはどういう御見解であるか、これもこの際明らかにしておいていただきたい。
  184. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 これは人事委員会に提訴する道が開かれているのでありますから、そういう処分に御不満の向きがあればこれは当然のことかと思います。その問題は、これは処分を受けられた側として、当然そういう措置があることは申すまでもありません。私が申しますのは、その後における佐賀教組全体の動き、それに関連する県下全般の動向あるいはこれに各方面から応援等が出られまして、いろいろの事態が起っているのであります。そういう点を申し上げたのであります。
  185. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そうなりますと、法の運用について多分に政治的判断を加味してやっていく、こういうことに裏返して言えばなるだろうと思うのであります。それならば一体今回教育委員会のやったことは政治的な意味において許されるべきものであるか。御承知の通り四月一日に教育委員全員、教育長、教育次長、それから課長が秘密会を開きました。その秘密会を教育委員会の事務所とかその他の公式の場所でなく、町へ出かけて行って、ある個人の肥料を商う店の内でやっている。しかもその店は、ある党の代議士を三回やり、一昨年の選挙には落選をいたしましたが、そのときの選挙事務所になったところで、その会をやっている。教員組合の方はそういう事実を突きとめて、そこへ抗議を申し入れに行っているのであります。こういうことこそ全くもって教育は政治的に中立であらねばならないという法の命ずるところに従っておらぬじゃないか。そういう政治情勢というようなものについてどうお考えでしょうか。
  186. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そういうような政治情勢等は私どもは何ら関知するところではないのであります。私の申し上げましたのは、今回の検挙につきましてはいろいろと慎重に考えました末、やむを得ずとった処置だと思うのであります。その点を一つ御了承願いたいと思っております。
  187. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ただいまのような事実があったということは、あらかじめ御承知になっておったわけでしょうか。
  188. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そういう事情は私どもは存じませんが、またかりにそういうことを知っておろうがおるまいが、今回の措置には何ら関係のないことであろうと思います。
  189. 八木昇

    ○八木(昇)委員 実情をいろいろ考えていきますと、最近三ヵ年来の経過というものは、実はそう簡単に結論を下すべきものではないと思うのであります。昭和二十九年来の問題です。最初に四百数十名の人員整理、今回二百五十九名の人員整理、その間選挙によって選び出されたところの佐賀県の教育委員の人たちは、四百数十名の人員整理のときには、こういう整理をやられるならば自分たちは責任は持てぬというので、六名の教育委員中四名が辞職をしたのであります。その後教育委員会法が改正になって、知事の任命ということになり、そして今回教育委員会がその措置をやり、しかも会合を、私ども常識的に考えてまことにもって納得しがたいようなところでやった。その後の教員組合の動きに対する政治的判断警察当局がお考えになるとするならば、私がただいま申し上げましたような政治的な情勢についても当然お考えになるべきだと思うのでありますが、どうでしょうか。
  190. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 政治的な判断あるいは政治的な考慮というものは一切いたしておりません。いかなる事件につきましても、その事件を検挙するかどうかというときには慎重にその前後の事情を調べます。また事件後における関係者のいろいろな動向も慎重に検討した上に行う、これは当然のことであります。私どもは政治的な考慮あるいは政治的な判断というようなものは一切念頭に置いておりません。
  191. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そうしますと、先ほど野原委員の御質問に対する御答弁で、反省の色がないという意味のことをおっしゃったのでありますが、その点は御撤回になるわけでしょうか。
  192. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 反省の色がないというのは、そういう処分が行われました際に、定められた法的な手続に従っていろいろな再審査を御請求になることは私はしごくごもっともなことだと思います。ただそれ以外に、過去においてあれだけ大きく世論の批判を受けられた事態について、教員組合として皆さん方が十分に御反省になっていただけることがありさえすれば、私どもの方といたしましてはその問題の措置について十分に慎重に考慮することもあったと思います。しかもわれわれといたしましても相当長い期間にわたりましていろいろと事態の推移をながめておったのであります。その間御承知のように、県教組等におきましてはいろいろな会議、協議あるいは御決定等もしておられますから、そういうような推移を注視いたしました末に、やむを得ず今回この事件の検挙に薄手をいたしたのであります。
  193. 八木昇

    ○八木(昇)委員 世論の非難をあれほど受けた、こうおっしゃいますが、世論の非難とか動向ということも参考にされるわけですか。
  194. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 世論の動向を参照にするとは申し上げておらないのであります。私の申し上げたのは、世論の動向を考えてやるというようには申し上げておらないのであります。私どもが事件を取り扱う場合には、その事件の関係者の事件後におけるいろいろな動向というものは慎重に考えまして取り扱うのであります。そういうことを申し上げたのであります。
  195. 八木昇

    ○八木(昇)委員 どうも言葉の先ではいろいろそれはおっしゃるけれども、その後の反省とか、あるいは世論の動向とかいうようなことを口にされることの中から、どうも私は不明朗な感じを受けざるを得ないのであります。その後の動きといいましても、法に触れるような何か行動がその後の動きにあったわけでしょうか。
  196. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 法に触れるような行為というのをどういうような意味でおっしゃったのかわかりませんが、その後また再び休暇闘争をおやりになったということはないと思います。
  197. 八木昇

    ○八木(昇)委員 その後三月十一日には日教組の全国一斉早退戦術があったわけです。そのときに佐賀県ともう一つのどこかの県、二つの県だけは日教組の全国一斉早退に参加をしておらないということは御存じでしょうか。
  198. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 存じております。
  199. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それではいよいよもって先ほど来の御答弁は私にはいろいろ矛盾に満ち満ちておる、こういうふうに考えざるを得ないのでございます。そこで、私は本日のところは、さらに事実を地元の方から詳細に承わりましてから将来また御質問いたしたいと思いますので、本日はこの程度で終りますが、最後に一点要望申し上げておきたい点は、これは先ほど野原委員から言われた通りに、これは逮捕をして留置をされるということはどう考えましても穏当ではないと思う。しかも相手は学校の先生方でありまして、一カ月の停職処分を受けられた方は、今人事委員会に審査請求をしておりますけれども、四月二日かの発令でありましたから、あと数日でその一カ月の停職期限が切れるわけです。従って、去年は執行部であったが、ことしは執行部に出ておられないという方が教壇に復帰するのであります。そして子供を受け持つのであります。こういう状況になることを考えますと、これは警察逮捕勾留の措置ということはどう考えましても穏当を欠くと思う。しかも果して検察庁の考えでおることが正当であるかどうかは、裁判の結果を待たなければわからぬ。それにもかかわらず生徒並びにその先生に対していろいろな影響を与えるというようなことをするのはきわめて不謹慎である。そこで実際問題を考えていきますと、こういった問題を一体どういうふうにしようとしておられるのか、この際長官の御見解をお願いしたいと思います。
  200. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど野原委員の御質問の際にもお答えしたと同じことでございますが、およそ私ども警察の捜査に当る者としましては、あくまで慎重でなければならぬことは当然のことでございます。基本的人権の尊重ということは、捜査の執行に当る者の根本の心がまえでなければならぬのであります。従いまして、捜査の目的を達成した後においても、不当に長く勾留をするというようなことは絶対に許されないのであります。できるだけすみやかに捜査の目的を達成するように最善の努力を払うように、今後とも善処する方向に十分注意を喚起いたしたいと思うのであります。
  201. 野原覺

    野原委員 私は最後に委員長に要望いたしますが、本日警察庁長官並びに警備部長のお越しをいただいていろいろお尋ねをしたのでございますけれども、はっきり御答弁にもありましたように、実情を把握されてない面が警察当局に多分にあります。第二点は、違法だと判断をされておる、違反の疑いがある、そのために捜査を開始するんだ、こういうことでございまするけれども、法に違反をしておるということに対する見解が実は明確でありません。謹慎の意を表するならば捜査をするんでなかったと受け取れるような御発言があったのは、事重大であります。従って、委員長におかれましては、早急に理事会をお開き下すって、この問題は、警察権は正当に発動されるべきであって、事いやしくも乱用されることがあってはならない、このように考えまするから、再度警察庁長官並びに警備部長のお越しをいただいて真相を究明するよう、要望いたします。
  202. 長谷川保

    長谷川委員長 委員長より申し上げます。ただいまの野原委員の要望につきましては、委員長におきましても今日の警察当局の答弁は必ずしも明確であるとは存じませんので、理事会において協議し善処いたしたいと存じます。従いまして、本問題に対する質疑は、関係当局の調査を待ち、なお続行することといたします。     —————————————
  203. 長谷川保

    長谷川委員長 次に私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。順次これを許します。河野正君。
  204. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま上程になりました私立学校教職員共済組合法の一部改正に関しまして若干質疑を行なって御所見を承わっておきたいと思うわけであります。時間がございませんからあら筋のことを本日はお尋ね申し上げ、細部の点につきましては後日に譲って参りたいと思うわけでございますが、御承知のように、組合財政の健全化及び組合の事務の適確な運営をはかることが、この法案を提出したおもな理由であると述べられておるわけでございます。もちろん今日の国民にとりまして、社会保障制度の確立と申しますか、そういった制度が確立されますることはきわめて御同慶の至りでございます。そういった制度というものは、常に改善でありまた進歩であらねばならぬと思うわけでございます。今日政府におきましても、国民皆保険というようなことを御主張になっておりまする点は、私どもは欣快にたえないところであります。いろいろな制度の改革が行われ、あるいはまたいろいろな制度が確立をされることはけっこうでございますけれども、しかしながら、単にそういった制度が総花的にいろいろと改正されることにつきましては、一面におきましては個々の部分では退歩するというような面も出て参りまするので、そういったことは私は必ずしも国民皆保険の精神に沿ったものではないというふうに考えて参るわけでございます。そこで今度提案されました法案というものは、組合の財政の健全化をはかるためのものである、あるいはまた組合の事務の的確な運営と簡素化ということでございますけれども、この組合の財政の健全化という意味での提案に関しまして、この法案がいかなる処置をとっておられるのか、先ほどもいろいろと申し上げましたように、国民皆保険、社会保障制度の確立というような点に対しましてどのような処置が行われておるのか、そういった基本的な点でございまするけれども、まずそういった大まかな点につきまして御所見を承わっておきたいと思うわけでございます。
  205. 小林行雄

    小林(行)政府委員 今回の私学共済組合法の一部改正につきましては、ただいまお尋ねのございましたように、他にも理由がございますが、組合の財政の基礎の健全化ということを一つの事由にいたしております。これは御承知のように二十九年一月一日に発足いたしましてから今日まで三年間の実績があるわけでございますが、過去三ヵ年間の運営の実績に照らしまして、やはりこの際財政をより一そう堅実にする必要があると考えたわけでございます。今回こうした点を特に法律の一部改正をやってまでやろうといたしましたのは、この三ヵ年の間に短期給付におきましては三千五百万程度の赤字が出ておりますし、また現状のままで推移して参りますと、三十二年度では約四千五百万程度の赤字が見込まれるという状況でございます。そうなりますと三十二年度の末には八千万以上の赤字になってくる。そうしてこの赤字が年々堆積して参ることになりますと、やはり組合の短期経理の財政というものが非常に悪くなって参りまして、一面にはこの給付そのものにも影響を及ぼす懸念もございます。また掛金の率の引き上げというようなことも将来としては考えなければならぬということになりますので、この際組合のいろいろな制度そのものにおいて、できるだけ財政の健全化をはかる方策を考えたいと思ったわけでございます。今回の対策といたしましては、まず標準給与の最低と最高の額を改めていただくということを一つ考えております。それから標準給与の決定の時期につきましては、従来移動のつどこれを決定していくという随時決定の方式をとっておりましたが、定時決定ということによりまして正確な給与をできるだけ把握したい、また事務的な措置によりましてできるだけ今後収入の確実をはかっていきたいというように考えております。  それからただいまのは収入の面でございますが、支出の面につきましては、組合員の資格を明確にいたしまして、組合員といたしましても、学校法人等から給与の全部または一部を受けなければ給与給付が行われないというような措置を講じたいと考えております。また組合員であった期間についても、他の社会保険の例をとりまして、一年以上の者に限って継続給付を認めるというような措置を講じまして、それら収入及び支出の面をも相通じまして、できるだけ財政の健全化をはかって参りたいと考えておる次第でございます。
  206. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの局長の御答弁によりますると、大体組合の事務の的確な運営と簡素化、こういった点で今後組合の財政の健全化をはかっていきたいというふうな御趣旨に受け取れたわけでございます。ところが私どもが望みますことは、もちろんそういった組合の事務の的確な運営あるいは簡素化ということも必要ではございますけれども、今日まで政府の唱えて参られました方針というものは、積極的に国民皆保険を実施するのだ、そういったことによって社会保障制度というものを前進させていくということでございましたし、私どもが特に要望いたします点は、やはり積極的な援助の面でなければならないというふうに考えて参るわけでございます。御承知のように過ぐる日、今国会におきましても健康保険法の改正が行われて参りました。そうして政府管掌に関します保険に関しましては、三十億円の補助金が出て参りましたことはすでに御承知の通りであります。ところがそういった積極的な援助、育成というようなことではなくて、むしろ組合自身のいろんな運営なりあるいは方針なりというようなものを改正することによって、今後の組合の財政の健全化を達成していきたいというふうな御趣旨のようでございまするけれども、その点に対しましては私はむしろ今日までとって参りました政府の方針に対しまして多少矛盾があるというふうに考えるわけですが、その辺の御所見はいかがなものであるか、伺っておきたいと思うのであります。
  207. 小林行雄

    小林(行)政府委員 健保については短期給付に国庫からの補助がお話のようにございまして、との私学共済においてもそういった積極的な国からの助成方策をとるべきではないかというお尋ねでございますが、私どもも、もちろんそういうふうにいくことは望しいこととは思っております。ただ国庫からの助成ということになりますと、短期給付につきましては国家公務員共済等におきましても現在まだ国庫からの助成がないわけでございまして、そういったものを乗り越えまして私学の共済が特に国庫からの助成を仰ぐということのためには、やはり組合内部におきましてできるだけ、たとえば給与の把握を確実にする、あるいは給付の適正化をはかっていく、また事業の経営をできるだけ効率的にやっていくということについて努力をいたしまして、そういった面にいろいろ工夫をこらして、なおかつ依然として赤字があるというような場合に、さような措置をとるべきであると私どもは実は考えておる次第であります。今回の法改正が認められました後にしばらく推移を見て、なおかつこの私学共済に赤字が出るようでありますれば、やはりただいまお話の国庫助成ということにつきましても文部省としても十分研究をいたしたいと思っております。
  208. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまいろいろ質疑の過程におきまして、短期におきまする三千五百万円にわたります赤字の問題を御指摘いただいたわけでございますが、こういった問題にいたしましても、やはり先ほどから申しますように事務費の国庫補助が認められておらないというようなことも原因でございますが、なおまた、御承知のように、私立学校教職員共済組合におきましては、政府管掌健康保険の場合と異なりまして、いろいろと悪条件が重なっておるという事実を私どもは認めてもらわなければならぬと思うわけでございます。たとえて申し上げますならば、組合員数にいたしましても、一校当りが十一名でございますし、政府管掌の場合は一事業所当り二十二名というような数字もございますので、政府管掌の場合の半数というような状態でもございますし、なおまた、共済組合の一部を構成いたします幼稚園について見ますならば、実に僅少な組合員数になっておるということも御承知の通りでございます。こういった組合員数が非常に僅少である、言葉をかえて申し上げますならば、きわめて零細な事業所のみを包含しておるというような悪条件が、やはり今日の共済組合の財政において非常に大きな赤字を出してくる原因にもなっておるということを私は御指摘申し上げなければならぬと思うわけでございます。そういった点をあわせ考えますと、なるほど局長から御答弁いただきましたような事務能率の効率化あるいは事務の適確な運営等々も必要であるということは、私どもも否定するわけではございませんけれども、そういったいろいろな悪条件の集積が今日の非常に大きな赤字となっておるというふうな事実を、私どもは決して見のがしては相ならぬと思うわけでございます。  そこで、先ほど来局長は、今度の法案が通ったならば、その後の推移も十分あわせ含んで、さらに積極的な国庫補助も考慮するというようなお話でございます。しかしながら、私がただいままで御指摘申し上げましたようないろいろな悪条件があるという事実を決して否定するわけには参らぬのでございますから、この点に対しましては十分なる御善処をお願い申さなければならぬと思うわけでございます。従いましてそういった点に対しまする御所感を重ねてお伺い申し上げておきたいと思うわけでございます。
  209. 小林行雄

    小林(行)政府委員 この四月、共済は御承知の通り、私立学校の先生に対しまして、国家公務員あるいは地方公務員の先生に対すると同様な福祉事業を行うことでできておるわけでございますが、ただいま御指摘もございましたように、たとえば一事業所当りの平均の人数にいたしましても、政府管掌の健康保険より悪いというようなことも御指摘の通りでございます。またそれ以外につきましても、国家公務員共済あるいは公立学校の先生の共済組合等に比較いたしまして条件の悪いところも確かにございます。従ってやはりそういった条件を克服するためには、現在すでに私学共済におきまして相当程度努力をいたしておりますが、ただ先ほど答弁の中に申し上げましたように、国から短期給付について積極的な国庫助成を得るというためには、私どもといたしましては、部内におきましてまずいろいろな点で極力努力をしなければならぬ、その結果、現在と同様に、なおかつ赤字というものが出るならば、やはりその際に強く財政当局等とも折衝をいたしまして、国庫からの助成をもらうというのが順序であろうかと思っております。そういった意味で今後できるだけ事務の適正化あるいは給付の適正化ということに努力いたしまして、さらに必要があれば、国庫の財政的な援助ということにつきましても、所管官庁である文部省として十分努力をいたしたいと思っております。
  210. 河野正

    ○河野(正)委員 具体的ないろいろな事項につきましては後日に譲ることといたします。ただ私ども最後に御指摘申し上げておきたいと思います点は——この法案が改正されて、その後の推移によってなおかつ赤字が出てくるというような場合には、国庫助成ということも考慮したいということでございますけれども、その点につきまして、私が先ほどるると御指摘申し上げましたように、他の共済組合に比較いたしましていろいろ劣等な悪条件というものが積み重ねられておる一わけでございますから、事務当局から見て参りますと、一応そういった法改正を行なって、その後の推移を見て、さらに国庫助成を考えるということは、きわめて事務的な考え方ではございますけれども、むしろそういった推移も必要であろうと思いますが、社会保障制度の前進というような建前からも、さらに積極的な助成ということが必要ではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。いろいろ具体的な事項につきましては後日に譲るといたしましても、そういった面におきまして非常に不利な面があるわけでございますから、この法案の処置につきまして、私がただいま御指摘申し上げますような、いろいろな積極的な助成ということが必要である。この点を強調いたしまして、最後にそういった点の御所見を承わりまして、一応私の質疑を終りたいと思うわけであります。
  211. 小林行雄

    小林(行)政府委員 確かに御指摘のございましたように、たとえば事業所当りの人数が健康保険に比べて少いということも事実でございます。またたとえば国家公務員共済、あるいは公立共済等に比べて、私学の方におきましては比較的給与が低いということもございます。また組合員の年令別をとってみましても、比較的高齢者が多いということのために、病気等につきましても特殊な病気が多いということもございます。そういった悪条件がございまして、確かに現在まで赤字の出る素因はあったと私ども思いますけれども、それにつきましても直接国庫から助成を仰ぐということは、これは他の共済組合に対する国庫助成等とも関連いたしまして、なかなか困難なことでございます。さしあたってはできるだけ組合内部におきまして自身の手で自主的に財政の健全化をまず実施いたしまして、その後にさらに必要があれば国庫からの積極的な助成ということについて、文部省としても十分努力いたしたいと思います。
  212. 長谷川保

    長谷川委員長 永山忠則君。
  213. 永山忠則

    ○永山委員 本年度の赤字は三千万円でございますか、お尋ねいたします。
  214. 小林行雄

    小林(行)政府委員 発足以来現在まで三年たっておるわけでございますが、三十年度におきましては約二千七百万円の赤字であったわけでございます。ただ二十九年度におきましてはわずか三ヵ月間の実績でありまして、これは三百五十万円の黒字、従って三十一年度の赤字の見込みは三千百万でございましたが、三十一年度末の赤字は三千五百万でございます。現状のままで推移して参りますれば、三十二年度におきましては四千万程度の赤字が出るという予想をいたしておるわけでございます。
  215. 永山忠則

    ○永山委員 事務費はどれだけお使いになっておるのですか。
  216. 小林行雄

    小林(行)政府委員 組合の事務費につきましては、予算の範囲内で補助が出ることになっております。これは、現在までの事務費は、二十八年度には三百十二万、それから二十九年度には千七百七十万、三十年度には三千六百二十七万、三十一年度には四千九百九十四万、三十二年度には五千九百五十万、これが国庫補助になっておるわけでございます。
  217. 永山忠則

    ○永山委員 事務費に対する国庫補助が実際上使われている事務費より少いのでございますが、どういうわけで少いのでございましょうか。
  218. 小林行雄

    小林(行)政府委員 ちょっとただいまの数字を訂正させていただきたいと思いますが、ただいまお答え申し上げました中には、長期給付に対する政府管掌の補助金を入れておりますので、純然たる組合の事務費に対する国庫補助だけを申し上げますと、二十八年度が二百七十五万、それから二十九年度が千百万、三十年度が二千三百二十万、三十一年度が三十年度と同じ二千三百二十万であります。それから三十二年度は二千四百五十万というのが国庫補助の事務費に対する国庫補助の額でございます。ただ実際上といたしましては、国から出る事務費だけでは現在のところ共済組合の事務全般を処理することが不可能でございます。たとえば三十一年度の二千三百二十万という数字は、大体半額程度を国からもらっておる、従って約四千五、六百万の事務費が全体としてはかかっておるわけでございまして、そのうちの半分程度を国から見てもらっておるという実情でございます。
  219. 永山忠則

    ○永山委員 そこで問題は、事務費に対しては予算の範囲内においての補助ということになっておりますが、事務費の補助がどうしても実際より少いということが一番大きな赤字の原因になるのでございますから、実際問題としては、実務費だけを政府が事実上補助するという方針で行くならば、この赤字の累積を防止する一番大きな力になると思うのでありますが、どういうわけで事務費の補助を大蔵当局はしぼって出さないのでございますか。
  220. 小林行雄

    小林(行)政府委員 事務費につきましては、国家公務員共済にいたしましても、公立共済にいたしましても、やはり国からもらっておるわけでございまして、これが、共済組合の実情から申しますと必ずしも十分でないわけでございますが、私学共済につきましてもそういった国家公務員あるいは公立学校共済等と大体権衡をとって財政当局としては査定をしておられるようでございますが、ただ私学共済といたしましては国家公務員あるいは公立学校共済と違いまして、国あるいは地方庁を使うということができませんので、他に比べますと比較的割高になるという実情があると思います。ただ組合といたしましてはできるだけ事務の簡素化をはかる、事務の適正化をはかるということで、これをできるだけ圧縮して十分効果を上げるように努力はいたしておりますが、財政当局とされましては他との均衡等もございまするので、私ども要求が全部は認められていないという実情でございます。
  221. 永山忠則

    ○永山委員 他との均衡上から見ましても事務費は全額国庫が負担しなければならないのであります。すなわち健保に対しましても、国家管掌は事務費は全部出しておるわけでありまして、国民健康保険も事務費の全額を出すという建前で、本年度も全額に近いものを出しております。ただし国保の方は全国的な統計が大蔵省と厚生省と一致いたしませんので、両省が実態調査をしまして本年度内にその調査を終えて事務費の全額を出すととが申し合せになっておるのでございます。国家公務員または公立学校の共済組合関係のはお説のごとく国家または公立の職にある者が事務をとっておるのでありますから、やはり事務費全額を出しているとみなしても差しつかえないのでございます。それが私学共済組合の事務費の全額補助を得られないということでございますならば、いつまでたってもこの赤字解消は結局組合員に負担を強化することによってのみ解決することになると思うのであります。この点大蔵当局の考え方はいかがでございますか。
  222. 長谷川保

    長谷川委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  223. 長谷川保

    長谷川委員長 速記を始めて。
  224. 永山忠則

    ○永山委員 この次に大蔵当局の私学共済組合の予算に関係しておる主計局長並びにその関係者をお呼びいただきたいのであります。ほんとうは大蔵政務次官、大臣がおればけっこうですが、私の質問をしようとすることは、政府は社会保障を漸進するということを一大看板にしておきながら全然顧みない、ことに文教方面の社会保障を非常に押えておるということをわれわれは遺憾とするものであります。ここにおいて大蔵省のその関係者の出席を求めまして質疑をいたしたいと思います。
  225. 長谷川保

    長谷川委員長 ただいまの永山委員の御要求に対しましては次会において処置することといたします。  本日はこの程度とし、次会は二十七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会いたします。  これにて散会いたします。    午後五時一分散会