運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-04-04 第26回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月四日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 米田 吉盛君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       永山 忠則君    山口 好一君       木下  哲君    小牧 次生君       高津 正道君    辻原 弘市君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         外務政務次官  井上 清一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      千葉  皓君         文務政務次官  稻葉  修君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君  委員外出席者         外務事務官         (アメリカ局第         一課調査官)  沢木 正男君         文部事務官         (大臣官房人事         参事官)    田中  彰君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 四月三日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として根  本龍太郎君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員柳田秀一辞任につき、その補欠として野  原覺君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第三六号)  農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及  び公立高等学校教員に対する産業教育手当  の支給に関する法律案赤城宗徳君外七名提  出、衆法第二一号)  学校教育社会教育及び学術に関する件     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員に対する産業教育手当支給に関する法律案議題とし、まず提出者より趣旨説明を聴取いたします。赤城宗徳君。
  3. 赤城宗徳

    赤城委員 ただいま議題となりました農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員に対する産業教育手当支給に関する法律案につき、その立案趣旨を御説明申し上げますとともに、内容概略について御説明申し上げます。  産業教育振興につきましては、さき産業教育振興法の制定以来見るべきものがありますことはすでに御承知通りでありまして、同法に基く国庫補助金により特に産業教育関係高等学校施設設備が充実されつつあることは、御同慶の至りであります。しかしながら、教育振興は、施設設備など物的な面の充実のみでは達成できないのでありまして、教員に優秀な人材を得ることがぜひとも必要なのであります。しかも、産業教育におきましては、その勤務特殊性から見まして、その資格定員待遇等につき特別の措置を講ずる必要があるのでありす。  産業教育振興法におきましては、特にこのような観点から第三条の三において「産業教育に従事する教員資格定員及び待遇については、産業教育特殊性に基き、特別の措置が講ぜられなければならない」と規定していのであります。ところが、教育職員免許法資格についての若干の配慮がなされたのみで、待遇については、今日まで何らの措置もとられなかったので、あります。  そこで、本案は、この規定に基き、農業及び水産関係教員待遇について特別の措置を講じようとするものであります。  従来、農業水産に関する教育は、第一次産業に直結するきわめて重要なものであるにもかかわらず仕事がじみであるため、とかく敬遠されがちであり、さらにその勤務内容は、自然的条件に支配されやすく、かつ、生物を相手とするものでありまして、時間を超越し、寸時もゆるがせにできない性質のものであります。たとえば、高等学校農業科教員は、農場、畜舎等において作物、家畜など、生命を持つものの栽培飼育等を担当し、その管理責任から寸時も解放されることはないのであり、さらに、生徒教育に際しましても、これらの、栽培飼育実習等、他の一般教科よりも極度に困難な実習を伴うものなのであります。また、水産科教員は、生徒教育のほか、実習船、和船、カッターを始め海中に設置した漁具、水中に養殖中の生物製造工場管理等特に困難かつ複雑さを伴う業務に当らなければならない責務を有するものであります。従って、これらの責務から生ずる早朝、夜間の作業、天候異変疾病等に応ずる細心周到な要する適時適切措置などその勤務は、全く特殊なものでありまして、これらの勤務に服する者に対しては、当然特別措置を講ずる必要があると考えられるのであります。  そこで本案は、これらの教員に対しまして、産業教育手当支給することといたしました次第でございます。  次に本案概略を御説明申し上げます。  まず、産業教育手当支給する者の範囲は、産業教育に従事する者のうち、高等学校において農業教育水産教育に従事する者に限定しております。すなわち、農業または水産に関する課程を置く国立及び公立高等学校農業農業実習水産または水産実習教諭または助教諭免許状を有する者または法令により免許状を有しないでも当該教科を担任し得る者が農業または水産に関する課程において、実習を伴う農業または水産に関する科目を主として担任する教諭助教諭及び常勤講師産業教育手当支給されるわけであります。  ここで支給対象農業水産関係に限定しましたのは、さきに述べましたように他の産業教育勤務と比較いたしまして著しく特殊なものでありますため、まずその必要性を痛感いたしますのでこれを取り上げた次第であります。また、農業水産関係のうちでも特に高等学校教員にのみ産業教育手当支給することといたしましたのは、高等学校産業教育が特に実務者養成の中核として、実習に多くの時間をさいていることにかんがみましてこれを取り上げたわけであります。なお、本案立案に際しましては、実習助手対象とすべきかいなかについて考慮いたしたのでありますが、実習助手は、責任の度合も低く、資格も明確でありませんので、この際は、一応支給対象からはずした次第であります。  次に産業教育手当支給の額並びに方法でありますが、国立学校教員につきましては、俸給月額の百分の十の範囲内で、文部大臣が人事院の意見を聞いて定めることになっております。が、この場合俸給月額一定率を乗じた金額を月額支給することを予想いたしております。  公立学校教員につきましては、地方公共団体の条例で定めるところにより、産業教育手当支給されるのでありますが、国立高等学校教員産業教育手当を基準として定めることといたしております。  なおこの法律は、昭和三十二年四月一日にさかのぼって適用することとし、本年の四月分から産業教育手出支給できるようにいたしております。  以上、はなはだ簡単でございますが、提案理由説明を申し上げます。何とぞ、御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  4. 長谷川保

    長谷川委員長 本案に対する質疑は追って行うことといたします。     —————————————
  5. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、文教行政に関する質疑を行います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。野原覧君。
  6. 野原覺

    野原委員 私は、先週のこの文教委員会稲垣政府委員に対しまして、このたび、たしか先月であったかと思いますが、三月の二十六、七日都留一橋大学教授アメリカ国会喚問をされております。そのことが意外に各方面に波紋を描いて参っておりますから、新聞の能事だけで質問いたすことはどうかとも考えられますので、外務省としてはすみやかに真相調査していただきたい、このことを要請いたしておるのであります。外務当局としては、都留教授アメリカ国会喚問をせられたその真相をどのように把握しておるのか、御発表願いたいと思います。
  7. 千葉皓

    千葉(皓)政府委員 お答え申し上げます。この事件につきましては、在米大使館からその後報告が参っておりまして、その報告によりますと、都留教授は、先月の十六日に米国上院司法委員会国内治安小委員会に出頭するよう喚問状による出頭命令を受けまして、二十六日、二十七日の両日事項して証言をいたしたのでありすが、委員会側質問は、主として都留教授がかつてアメリカに留学していた時代から始まりましたアメリカ人とのいろいろな交友関係について行われました。それにつきまして、都留教授が自分の個人的な立場、あるいは個人的なそういう交友について説明をいたしたものでございます。そういう報告が参っております。
  8. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、アメリカ上院国内治安小委員会喚問されて、都留教授がその喚問にこたえたのは、かって都留さんがアメリカ留学時代、これはハーバード大学じゃないかと思いますが、アメリカ留学時代の個人的な交友関係と申されましたが、それだけですか。それ以外に都留教授証言をしていないかどうか、お尋ねします。
  9. 千葉皓

    千葉(皓)政府委員 その後終戦後におきまして、都留教授は当時米軍司令部勤務しておられたようでありますが、その時分における同人の活動についても質問が行われたようであります。
  10. 野原覺

    野原委員 そこで、実は私が国会でこの問題を取り上げますのは、少くとも私個人は、それが赤狩に関する問題であったから、あるいは他に個人的ないろいろな影響を与えておるからというわけで取り上げておるのではありません。実は都留さんは御承知のように日本人である。日本公務員であります。日本人であり、日本公務員アメリカ国会喚問をされるという場合に、一体都留さんの場合はアメリカ国内法適用されるのか、それとも日本公務員である限りは日本国内法適用されるのか、いろいろ問題があろうと思う。その辺に対して、外務省としてはどういう見解を持っておられるか、お尋ねいたします。
  11. 井上清一

    井上(清)政府委員 都留教授アメリカの議会の上院司法委員会国内治安小委員会から三月十六日召喚を受け、同教授右召喚に応じまして、三月三十六日、二十七日の向日証言を行なったのでございます。ただいま、外国領土内にある外国人召喚を受けてそれに応ずる義務があるかないか、こういう御質問であったようでありりますが、米国領土内にあります外国人は、法権から免除を受けているのでない限り、すなわち治外法権を有する者でない限りにおきましては、純法律論におきましては、一般的に言ってこの召喚に応ぜざるを得ないと解釈されるのであります。なお詳細につきましては調査をいたしておりますが、一般論としては今申し上げました通りでございます。しかし、今回のように外国人、特に外国公務員の場合におきましては、任意に出頭いたしまして証言するなら別でありますけれども、本国の政府了解を求めることなく、国政調査上の証言を徴しますることは、きわめて異例のように考える次第でございます。つまり外交慣例なりあるいはまた国際礼讓から申しまして、異例に属することのように私どもは考えております。
  12. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、政務次官にお尋ねいたしますが、アメリカ国会都留教授証言を求めておりますが、この証言というのは——日本国会でも国会法規定に基いて証人喚問ができますが、その証人喚問をする場合に、日本の場合は、いわゆる証人参考人と二つ区別してある、だから証人として喚問をする場合には、正当の理由なくしてこれを拒否するならば罰則適用されることになっておる。ところがこの都留教授アメリカ国会に呼ばれたのは、いわゆる参考人としての証言を要求されておるのか、それとも罰則適用のある、罰則裏づけのある証言を要求されておるのか、その辺はどうなっておるかお尋ねします。
  13. 井上清一

    井上(清)政府委員 罰則適用のあります証人として召喚を受けたのでございます。
  14. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、都留教授は、あなたの先ほどの御説明によれば、アメリカ国許可を受けて入国した、アメリカにとっては外国人ですね。許可を得て入国した外国人法的地位というものは、先ほど政務次官は、たとえば外交官治外法権を有する者ということを言われましたが、その治外法権を有しない者は、国会から喚問をされると、罰則裏づけがあるわけですから、証言を拒否することができない、その辺をどのように把握しておられるか、お尋ねします。
  15. 井上清一

    井上(清)政府委員 アメリカにおきまして外国人国会に対して召喚を求められ、証言を求められました場合におきましては、一般論としては拒否できないと私どもは考えております。
  16. 野原覺

    野原委員 実は先般も稻葉政府委員が見えて答弁され、あなたが答弁されたことにも私の了解に苦しむ点がある。都留教授任意に出頭したのだ、任意証言をしたのだと、任意という言葉をお使いになりますけれども一般人として拒否することのできない証言が何が任意です。これは罰則適用があるのですから、拒否すれば罰則適用を受けるのですから、これは任意でない、強制です。だから証言拒否の自由というものは、都留教授にはなかったと思うが、一体これは証言を拒否しようと思えば拒否できた状態にあったのかなかったのか、その辺を明確に承わりたいのであります。
  17. 井上清一

    井上(清)政府委員 進んで証言をしたかどうかということは、これはまた事実問題として別といたしまして、決して都留教授任意に進んで出頭したわけでなしに、召喚に応じて出頭したわけでございます。
  18. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、証言を拒否することはできなかったわけですか。私どもが常識的に考えますと、なぜ証言を拒否しなかったのか、都留さんにも似合わぬ、こういう声が識者の間に高い。都留さんらしくないこと一をやるなという声が高い。証言拒否が百できなかったのかどうか、拒否しようと思えばできたのかということをお尋ねしたいのであります。
  19. 井上清一

    井上(清)政府委員 喚問状の文面から見ますと、証言を拒否するということはちょっと私は困難ではないか、かように考えております。
  20. 野原覺

    野原委員 そうすると、証言拒否の自由はなかったということがここで明確になったのであります。そうなると、問題はますま複雑化してくると思う。先ほど治外法権ということがございましたが、私はこの外交上の、国際法上の、これはおそらく国際慣習法になろうかと思いますが、原則論で二、三お聞きをしておきたいと思いますが、許可を得て入国をした外国人法的地位についてお尋ねしたいのであります。つまりその国の許可を得てその国に入ってきた外国人というものは、どういう法的地位が与えられておるのか。法的地位ということは、つまり法的権限、あるいは法的義務の問題ですね。私どもの常識によれば、外交官というものは治外法権ということになっておると思う。それから軍隊を構成するところの軍隊構成員軍人あるいはその軍人の家族というものも治外法権になっておると思うが、一体公務員の場合はその法的地位はどういうことになりますか。公務員は何らその権利義務については、そういった治外法権的なものはないのかということをお聞きしたいのであります。
  21. 井上清一

    井上(清)政府委員 国際法上、入国いたしました外国人は、治外法権を有せざる限りにおいては、国内法における内国人と同様の取扱いを受けることに相なっております。ただ、軍人だけは、従来国際慣行取扱いはやや異なっておるということであります。
  22. 野原覺

    野原委員 治外法権を有する者は、国際慣習法上どういう人、どういう範囲に限定されておりますか。
  23. 千葉皓

    千葉(皓)政府委員 お答え申し上げます。通常治外法権を有する者として考えますのは、外交官及び領事官であります。
  24. 野原覺

    野原委員 つまり広い意味外交官だ、こういうことになろうと思う。元首は別でしょうね、あるいはそういうものも入るのではないかと思うのですが、軍人の場合は特例で規定されるのだ、こういう政務次官の御見解のようでございます。  そこでお尋ねしますが、そういたしますと、公務員は何ら治外法権的なものはない、治外法権を厳密な意味で申し上げますと誤解を与えますが、公務員としての、そういった特殊な地位に立つ法的な権利義務状態はどういうことになりますか。
  25. 井上清一

    井上(清)政府委員 先ほどちょっと申し上げるのを私落しましたが、公務員でありましょうと非公務員でございましょうとも、入国いたしました外国人取扱いについては、別に異なるところはございません。
  26. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、入国した外国人——都留教授の例をとりますと、都留さんはアメリカ許可を得てアメリカに入国したのです。そうすると、都留さんはアメリカ国内法適用を受けると思う。同時に日本人です。日本公務員であるから、日本国内法適用も受けようと思う。その関係はどういうことになるのか、お尋ねします。
  27. 井上清一

    井上(清)政府委員 都留教授は、ただいま御意見がございましたように、アメリカに参りましたとたんにアメリカ国内法適用を受けますと同時に、日本人でございますので、日本国内法適用もあるわけでございます。
  28. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、教育公務員である都留さんは、一橋大学教授でございますから、国家公務員法適用を受けるかと思うのです。  そこで、私は国家公務員法に基いて外務並びに文部当局にお尋ねいたしますが、国家公務員法の第百条に、職員証言する場合の規定が書いてあります。第百条には「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」そしてその第二項に「法令による証人鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職行者については、その退職した官職又はこれに相当する官職所轄庁の長)の許可を要する。」とあって、所轄丘の長の許可な上に職務上の秘密にわたることの証言ができない、こういう規定がありますから、当然この規定都留さんは受けることになろうと私は思う。  そこで文部政務次官にお尋ねをいたしますが、都留さんはアメリカ国会に十六日呼び出しを受けて、証言が二十八、七日、十日間の期間があったわけです。一体都留さんの監督官庁は、国立大学の場合、文部大臣なのか、一橋大学学長であるのか、その辺を文部省はどういう考え方を持っておるか、まずその点からお聞きしたい。
  29. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 任命権文部大臣ですから、監督権文部大臣が持っているわけですが、大学の自治の原則から、任免につきましては一橋大学教授会の議決によって文部大臣が任命したり罷免したりすることになるわけであります。
  30. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、一次的には一橋大学学長、二次的には文部大臣。これらの本属長官と申しますか、監督賞丘に対して都留教授から何らかの連絡がございましたか。
  31. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 ございません。
  32. 野原覺

    野原委員 何ら連絡がなかったということでございますが、その連絡のなかったことに対して、文部省としてはどういう所見を持っておるか、お聞きしたいのであります。
  33. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 都留教授証言内容いかんによることでございます。都留教授証言が、何らの連絡なしに、教授としての職務上知り得た秘密証言したとするならば、これはいけませんけれども、今まで知り得たところでは、都留教授職務上の秘密について証言したことはないようでございますので、本属長官許可なくして国家公務員法に違反した証言をなしたというふうには思っておりません。
  34. 野原覺

    野原委員 政務次官にお尋ねしますが、そうすると、都留教授アメリカ国会証言したその証言内容が、職務上知り得た秘密に属しないとあなたは断言をされますが、あなたは証言内容をしさいに検討されて断言しておるのかどうか、文部当局はその証言を文書か何かで手に入れて検討をしてそういうことをおっしゃっておるのかどうかをお聞きしたい。
  35. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 昨日アメリカ大使館から証言内容速記録が来まして、それをまだしさしには検討いたしておりませんが、一応検討いたした結果は、証言内容職務上の秘密証言していないというふうに認めておる次第でございます。
  36. 野原覺

    野原委員 証言内容速記録を検討されたというので、外務当局としては、その一同一答の証言内容速記録が来ておるわけですか、お尋ねします。
  37. 千葉皓

    千葉(皓)政府委員 お答え申し上げます。昨日在米大使館から参りまして、文部当局と検討いたしております。
  38. 野原覺

    野原委員 それはアメリカ国会が取った速記録に基いたものか、それともこういうことを証言したというので、大使館がその証言を概括的に、説明的に記載したものであるのかどうかをお聞きしたいのであります。
  39. 千葉皓

    千葉(皓)政府委員 その当該の小委員会そのものの公式の記録でございます。
  40. 野原覺

    野原委員 その速記録を他日私どもにもお見せ願いたいと思うが、それはできないかどうか。
  41. 井上清一

    井上(清)政府委員 アメリカ上院公聴会でなされたものでございますので、公表してさしつかえございません。
  42. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、私どもはその速記録を拝見いたしまして、稻葉政務次官の答弁が果して妥当であるかどうかをそのときにまた申し上げたいと思う。  そこで政務次官に重ねてお尋ねいたしますが、あなたの判断によれば、幸いにして職務上知り得た秘密証言していない、そういう結果になったということでありますが、もしかりに職務上知り得た秘密証言をした場合には、どういう問題があるか。
  43. 田中彰

    田中説明員 国家公務員が、国家公務員法百条——今御指摘の百条二項だと思いますが、職務上の秘密に関する事項を発表いたしますには、御指摘通り所轄庁の長の許可が必要でございます。それで、果して本件が職務上の秘密であるかどうか検討してから云々というお話でございますが、かりに職務上の秘密といたしましても、百条二項には該当しないのではないかと私は思います。と申しますのは、この百条二項の「法令による証人鑑定人」この法令と申しますのは、日本国内法をさしておるものである。純粋の法律論を申し上げますれば、日本国内法をさすというふうに解せられますので、外国法令による証人鑑定人は該当しないのではないかというふうに考えられます。
  44. 野原覺

    野原委員 田中さん、あなたは重要な発言をするが、国内法による証人鑑定人の場合だけが監督官庁許可を要するのであって、外国に行って公務員証言する場合には、監督官庁許可は要らない、勝手なことを言うてもいいんだ、これはとんでもないことだ。国家的な機密に属する事項公務員がしゃべられたらどうする。そういう解釈は、とんでもない解釈だ。  これは刑事局長にお尋ねいたしますが、文部省のような解釈をとると、外国では勝手なことをしゃべってもいいのだということになるが、どういう見解を持っているか、お尋ねします。
  45. 井本臺吉

    井本政府委員 国家公務員職務上の秘密を漏らした場合には、国家公務員法百条に触れるわけでありまして、この百条の罰則規定は、同法の百九条に帯いてあるわけでございます。従って、日本の国で国家公務員秘密を守らなかったというようなことがありますと、この法律に触れるわけでありますが、アメリカにおきまして秘密を守らなかったという場合におきましては、これは行政上のいろいろ懲罰を受けるということはあり得ると思いますが、刑法上の罰則規定、これに触れるかどうかということは相当疑問がありまして、私は消極に考えております。
  46. 野原覺

    野原委員 この点は、そのように思われるとか田中さんは言われているし、それから刑事局長は、あなたは法務省のこういうことに対する——理論的な学説上の見解の代表者でありませんが、あなたは一応やはり権威を持たれる人なんです。それが、思われるとかなんとか言うて、そういうことは一体どういうことなんですか、あなた自身もあいまいであることを表現していると私は受け取るのであるが、あなたは外国公務員は何でもしゃべってよい、この国家公務員法の第百条は国内における公務員証言だけだと断言されますか、それを明確に述べてもらいたい。
  47. 井本臺吉

    井本政府委員 ただいま申し上げましたように、行政上の監督を受けておりますので、懲戒その他の問題は起きますが、刑法上の罰則規定適用はございません。
  48. 野原覺

    野原委員 そうなると、刑事局長に重ねてお尋ねいたしますが、よしんば職務上の秘密に属する事項であろうとも、外国である限り、その公務員監督官庁に相談すべきでもないし、いわんや許可を求めるべきものでもない、こういう解釈法律上は成り立とうかと思うが、あなたはその解釈を御支持になられますか。速記録に残ることですから……。
  49. 井本臺吉

    井本政府委員 私が申し上げますのは、日本の裁判所が刑罰を適用するかどうかということだけに限って申し上げますので、本人の行政上の責任につきましては、何らさような結論が出るのではないのであり額して、公務員はあくまでも秘密を守らなければならないと私は考えております。
  50. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、国内であろうと、国外であろうと、公務員はいわゆる公務員としての地位に立つ、機密というものは守らなければならない、これは私も同感なんです。だから、そういう意味で当然監督官庁許可を求めるべきだ。ところが、それを都留教授の場合は、どういうわけか求められていない。これは関口泰さんの新聞報道によりますと、ハーバード大学に相談した。それからもう一つは、日米交換教授の何か委員会があるようでございますが、その日米交換教授委員会とハーバード大学に相談して、弁護士同道で二十六日に国会証言台に立った、こういうことなんです。このことを刑事局長はどうお考えになるか。これは、監督官庁に当然何らかの了解なり、あるいは許可なりを求むべきではなかったかと、あなたは刑事局長の立場でお考えになりませんかどうか。
  51. 井本臺吉

    井本政府委員 私は刑罰に触れるかどうかということに関しまして、私の所管事務を扱っておりますので、行政官庁の監督上の点につきましては、私どもの所管外でございますから、私は御答弁を遠慮申し上げた方が適当じゃないかと思います。
  52. 野原覺

    野原委員 あなたに似合わぬ御遠慮深いことです。あなたがそう御遠慮されるならば、私は何も遠慮する人からものを聞こうとは思わない。ただ刑事局長、考えていただきたいのは、国家公務員法の百条は、御承知のように、この百条に違反すれば百九条では罰則規定しております。そこで、その罰則適用するに当っては、異議があれば裁判所の問題になります。そこで私は重ねてお尋ねしますが、本人が職務上の秘密に属しないと判断しても、職務上の秘密に属するか属しないかという判断は本人もやるでしょうが、同時に監督官庁もやるのだろうと思う。本来その職務上の秘密に属するとか属しないかという最終判断は、百条の規定からいえば、監督官庁ではなかろうかと思う。それは、監督賞庁がそう判断したらできないととめるわけですから、最終の判断は本人か、監督官庁か、それはどういうことでしょうか。刑事局長に重ねてお伺いいたします。
  53. 井本臺吉

    井本政府委員 まことに恐縮でございますが、私は先ほど来申し上げましたように、国家公務員法の百条の罰則が、アメリカにおる日本人にまで適用があるかどうかということについては疑問を持っております。外務公務員法のように、外務公務員が国外で秘密を漏らぜば、直ちに日本に帰れば日本の法に触れるという規定がはっきりあるのでありますが、国家公務員法につきましては、同じような規定もございませんし、また刑法もしくは刑法施行法には、特別に国外において犯しました日本人についての罰則規定が書いてあるのでございますが、これにつきましては、明文がございませんので、刑法の適用につきましては多少疑問があるということを申し上げたのでございまして、ただいまの秘密をしゃべっていいかどうかということの判断につきましては、もちろん第一義的には本人が判断するでございましょうが、その上でさらに監督官庁が判断し、刑罰問題になりますれば、最終的には裁判所が判断するというのが当然であると考えております。
  54. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、稻葉さん、その監督官庁に何も話がなかった。そうなると、結果的には職務上の秘密をしゃべっていなかったから問題にはなりませんけれども、もししゃべられた事態が起って参りますと、あなたの方はその御本人に対して差しとめる機会を失うことになる。職務上の秘密に属することをしゃべってはならぬ、こう発言する機会すらも失うことになる。この点はきわめて遺憾なことじゃないかと私は思うが、文部省はどう考えるか。
  55. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 都留さんも一流の学者であり、十分そういう点の常識もお持ちになっている方でありますから、証言内容職務上の秘密にわたらな、という点についは、十分注意深くやっておられたことだろうと思いました。しかも速記録を一応見ましたところによりますと、職務上の秘密について証言をしておられるのではありませんから、あらかじめ監督官庁本属長官許可を得て召喚に応じなかったといたしましても、その点は都留教授が軽卒ではなかとか、あるいは手落ちがあったのではないかというふうには思いません。
  56. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、あなたの所管の教育公務員、これは大学の先生になろうと思いますが、これが証言台に立つ、あるいは裁判所の鑑定人として証言に立つというような場合には、何ら文部省連絡しなくてもかまいませんね。何も連絡しなくても、結果的にそれが職務上の秘密にわたっていなければいいのであって、もしその人が裁判所に行って——これは刑事訴訟法にも、民事訴訟法にも、国家公務員法の百条と同じ内容規定があるわけです。そういうことをやられた場合には、文部省はしゃべられたあとで、お前はなぜ事前に連絡をしなかったかとおしかりはいたしませんね。しゃべられてもかまわぬということになりますか。それは判断の機会があなたの方には与えられない。これはどうなりますか。
  57. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 尋問の内容職務上の秘密にわたるような場合には、証言を拒否する自由もあるわけであります。あらかじめあらゆる場合にどういう証言内容になるのか予想はできないわけでありますから、証言台に立って、その尋問の内容によって、これは職務上の秘密にわたるということになれば、許可を得ましてからやりますから、拒否すればいいのであります。そういう常識は、十分われわれの監督下にある教官はお持ちになっていると信じております。
  58. 野原覺

    野原委員 これは稻葉さん、どうして監督しますか。何も連絡はないのですよ。国内においても、国外においても、教育公務員証言する場合に、あなたに連絡がなくてもかまわぬですか。結果的にはそれが職務上の秘密にわたらなければいいのか、あなたの方の監督官庁というのは、その証言に対して監督のチャンスは何もないのですよ。それでもいいのか、これは大事な点です。あなたはそれでもいいということになったら、また次の文教委員会で前言取り消しということになりますよ。これは、慎重な研究を要するなら研究を要するとおっしゃればいいのです。大へんなことになる。そういう判断の機会を与えられなくてもよいのか、こういうわけです。
  59. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 私の今申し上げましたのは、純法律理論としてはその通りだと思いますが、実際上の場合には、あらかじめ召喚されているからという連絡があったり、そういうことはあり得ることと思います。またそれが場合によっては適当なこともありましょう。けれども純粋に法律論としては、この規定解釈上、あらかじめ監督官庁連絡していくのでなければ監督の機会を失うじゃないかということにはならないと思います。
  60. 野原覺

    野原委員 純法律論と実際論をどういうところでどういう使い分をされるのか私は知りません。しかし、これは非常に問題のあるところです。都留教授の場合、私も都留教授はあまり攻撃したくはありませんけれども、あの人は、外務政務次官の答弁をお聞きしましても、アメリカにおける外国人として、その法的地位はきわめて貧弱なんです。何もない。だから国会に出てこいと言われたら出ていかなければならぬ。しかも出ていかなかった場合には、罰則適用される。こういう状態に置かれておる都留教授には、同情すべき点が私は多々あろうと思う。ああいう理性的な大学者でありますから、あの人としては相当考えたに違いない。考えたに違いないけれども、自分は今ハーバード大学の客員教授アメリカに来ておるの、だから、呼ばれたらどうしても出ていかなければならぬ、いろいろ法律的にも検討した結果、罰則適用ということになれば、事めんどうであるからというので出ていかれた。つまりこれは、都留教授証言拒否の自由だになかったわけです。そういう事態でアメリカ国会が呼んだことの可否については、いろいろ批判があるわけなんです。しかしそれにしろ、私はハーバード大学に相談するならば、当然都留さんは、日本監督官庁に対しても、私はこういうわけで呼ばれる、しかし機密事項にわたっては何ら証言する意思はないということくらいの連絡は、大使知なりあるいは領事館なり、在外公館がたくさんあるわけでございますから、その辺を通じて御連絡があってしかるべき筋合いのものではないか、これは法律的にないとあなたはおっしゃいますけれども、その点はあなたももう断言なさらない方がいいのです。この点の法律的な分析解明というものは、もっと慎重に掘り下げてやられなければならぬと思う。  そこで外務政務次官にお尋ねします。証言拒否の自由がなかった、いわゆる証言についてのアメリカ合衆国の法典というもの、つまり罰則規定はどうなっておりますか。証言に応じなければどういう罰則適用されるか。
  61. 井上清一

    井上(清)政府委員 これは一九五〇年のインターナル・セキュリティ・ローという法律がございます。これにも関係があるのでございますが、今度の召喚の場合の一番有力な法的根拠になりましたものは、第八十一議会の上院決議第三百六十六号第二条でございます。この決議に基くものでございまして、この決議の根拠になっておりますものが、今私が申し上げました一九五〇年のインターナル・セキュリティ・ローという法律でございます。
  62. 野原覺

    野原委員 証言の求めに応じなかった場合、罰則はどういうことになっておるか。
  63. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいま申し上げました法律にあります罰則適用されるわけでありまして、正確にどの程度の罰則であるかということは、私ちょっとここに材料を持っておりませんので、お答えを差し控えさせていただきます。
  64. 野原覺

    野原委員 これは私の調べた範囲では、合衆国法典の第百九十二条で、一カ月以上十二カ月以内の体刑、それから罰金刑としては百ドルから千ドル以内の罰金刑、そういうふうになっておる。しかし、これはもっと相当な権威者に会って私も確かめたいと思いますが、そうだとするならば、これは都留さんとしては相当な拘束を受けるわけです。こういう罰則裏づけのある召喚を、アメリカ国会日本公務員にしておきながら、日本政府に対して——私は当然何らかのお話がなければならぬと思う。それがあったかなかったか、あなたの国の公務員、あなたの国の大学教授を、実はアメリカ国会が必要と認めて召喚いたしますという連絡が事前に大使館にあったかなかったか、これをお伺いいたします。
  65. 井上清一

    井上(清)政府委員 都留教授召喚に関しまして、在日アメリカ大使館から日本政府に対しましても、またアメリカ政府から在米日本大使館に対しましても、あらかじめ事前の連絡はありませんでした。
  66. 野原覺

    野原委員 私は、これは国際法上の問題ではなしに、国際儀礼の問題ではないかと思う。日本公務員をその国の国会召喚するに当って、当然これは、何も了解を求める必要はないにしても、君の国の公務員を必要があって呼ぶということくらいの連絡は、東京にあるアメリカ大使館を通じて外務省に、あるいはそれができなければ、ワシントンの谷さんのところにあってしかるべきものであろうと思う。国際儀礼としてこれはどうですか。
  67. 井上清一

    井上(清)政府委員 私も御意見通りに考えます。
  68. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、その国際儀礼をアメリカが守っていないことはきわめて遺憾なことです。この遺憾なことに対して外務省——私はこの点で岸総理大臣の出席を要求したのです。これは失礼だけれども政務次官としては任に重い御答弁じゃないかと思う。一体どうなさる、アメリカにこういう国際儀礼にそむくようなことをやられて、これはあまりにもばかにしたやり方じゃないかと私は思う。常識のない、非礼きわまるやり方だ。いかに日本が戦争に負けた国とはいいながら、今日独立しておるのでしょう。国際連合にも加盟しておるのでしょう。その日本に対して、公務員を呼ぶのに、アメリカの国民を呼ぶかのごとき能一度に出るということは、あなたもお認めになる通り、これは国際儀礼にそむく、非礼きわまるやり方だ。これは遺憾ではないですか。この遺憾なことについてどう対処なさいますか。
  69. 井上清一

    井上(清)政府委員 実は、先ほどもお答ええ申し上げました通りアメリカ政府並びに議会からは、あらかじめ何らの連絡もなかったわけであります。都留教授からは、召喚の前日、おそく在米日本大使館を来訪されまして、同人が召喚に応ずるということをすでに国内治安小委員会に回答済みであり、そして証言を行う予定であるということの御報告があったわけであります。しかし、これは日が前日のおそくでございましたので、非常に時間的な余裕がございませんでしたが、もし時間的な余裕がありますれば、在米大使館といたしましても、成功したか成功しなかったかは別といたしまして、相当いろいろその間に立ってあっせんし、また何らかの打開の方法を講ずる道もあるいはあったのではないかということを、今になって私も考えておるわけであります。ただいまお話しのように、この都留教授召喚ということは、今後渡米いたしまするわが国人に不安な、しかもまた好ましからない影響を与えるというふうに私どもも考えますので、今後同様なことが再び発生しないように、善処方を、在米大使館を通じまして、米国政府に対し申し入れをするよう措置をいたしております。
  70. 野原覺

    野原委員 これは、ぜひとも日本の権威のためにもやってもらいたい。こういう非礼は許すことができないと思う。これは国と国との力の問題ではない、国と国との儀礼です。ですから、これは政務次官の単なる御答弁に終らせないで、この次の適当機会に、どういうふうに対処なすったかお尋ねしたい。今度御承知のように、総理大臣岸さんはアメリカに渡米なされる。何のために行くのかということは、まだはっきりと国会には示しませんけれども、大体岸さんの答弁をお聞きしておりますと、基本的には日米の対等な関係、日米の正当な、対等な国際関係というものを樹立するのだ、それが安全保障条約や行政協定の具体的な改訂にはほど遠いとしても、基本的には日米の対等な関係をあらゆる面から検討しなければならぬ、基本的な話し合いをするのだ、こういう意気込みで渡米なされるそのやさきに、こういうことをアメリカからされて、日本外務省日本政府が黙っておるということは、日本の国民としては了解できない。これは、あなたから申されましたように、適当なる対処策をぜひとっていただきたい。このことを私は要望いたしておきます。  次に、文部当局に対する要望は、これは稻葉さんが御答弁になった速記録調査すれば、失礼だけれども、私はやはり問題があると思う。たとえば、都留さんがアメリカ証言した、ハーバート大学時代の個人的な交友関係が一つ、もう一つは、アメリカ日本を占領しておったときの都留さんの交友関係アメリカ日本を占領しておったときは、都留さんはたしか安定本部におった、総合調整委員長をしておった。そうなると、どういうところまでが職務上知り得た機密になるのかという判断は、具体的に検討しなければわからないのでありますけれども日本のことまで聞かれるということになると、そういうおそれが確かに出てくるわけです。アメリカのハーバート大学ということに限定すれば、日本の国としての機密、これはないかもしれない。しかし安定本部におった時代まで聞かれると出るかもしれない。そういう場合に、あなた方は監督官庁ですから、いかなる大学者といえども監督しなければならぬ。ところが監督の機会のない状態に置かれて、はあ、さようでございますかというのんきな態度では、監督官庁は勤まらぬと思います。この点は、稻葉政務次官としてもなお考えていただきたいと思うのであります。重ねて、政務次官に要望しておきます。あなたがお認めになったように、きわめて遺憾なことである。これは一つすみやかにアメリカに対して、この遺憾な措置に対しては抗議という強いものでなくても、何らかの対処をする必要があろうと思う。その点重ねてお尋ねいたしますが、すみやかになさるかどうかお聞きします。
  71. 井上清一

    井上(清)政府委員 今回のアメリカ側の措置につきましては、私どもまことに遺憾に存じております。日米間の国際礼譲の点からも、また日米間の親善というような意味からも、こうしたことが今後再び起らないように、出先大使館を通じまして申し入れをするよう、すでに措置をいたしてあります。
  72. 高津正道

    ○高津委員 視察のため、あるいはその他の用務を負って国会議員が向うに参り、アメリカに滞在している場合も、アメリカ法律ではやはりこのような喚問ができるのかどうか、できるとお認めになっているかどうかを伺います。
  73. 井上清一

    井上(清)政府委員 お答えを申し上げます。一般的な法律論、理屈からだけ申しますと、国会議員といえども召喚があった場合にはこれに応じなければならぬ義務が出てくると思います。しかし、これは国際礼儀の上からいって、さようなことはこれまでも例のないことのように私ども考えておりま。
  74. 高津正道

    ○高津委員 国家と国家の間にはまだ国交が回復していない場合でも、文化交流を盛んにしようと両方から努力している。日米の間でも、文化交流ということは非常に重視されております。そして文化交流の一部として都留教授が向うに行っておるものを、全くドライというか、えげつないというか、ああいう喚問をするということは、井上外務政務次官のお言葉によれば、親善の点からも儀礼の点からも遺憾であると言われるのでありますが、これは文化交流の支障になるとお認めになりますかどうか。
  75. 井上清一

    井上(清)政府委員 お答えを申し上げます。都留教授は、ハーバードの客員講師として、アメリカの知的交流委員会から招聘されて渡米をいたしておるのございますが、渡航の際は、もとより米側から右招聘に応ずるものとして査証を発給されているのでございます。しかし招聘と今回の召喚との間に直接の関連はない、理屈上はそう言い得ると思いますけれども、同人を喚問して証言させたということは、国際礼譲の上からいってまことに遺憾であると思いますし、今後知的交流というような点で、こうした問題を放置しておきますと、御意見のようにいろ支障が出てくるかとも考えられます。それで、そうしたことのないように、アメリカ政府に申し入れの措置をいたしたような次第でございます。
  76. 高津正道

    ○高津委員 喚問状を見ると、喚問を拒否する事由はなかったように読み取れると言われたのでありますが、その喚問状の文句はどういうようになっているのでしょうか。
  77. 千葉皓

    千葉(皓)政府委員 きわめて大まかな翻訳になると存じますが、法的根拠に基いて、本人は三月二十一日木曜日午前十時、米国上院司法委員会の小委員会に出頭することを命ぜられる。そこにおいて、当該委員会で検討中の事案に関連して証言をすべきである。右に応ぜざる場合においては、法により定められたる罰則適用されるであろう。これは三月十四日付の喚問状でございます。大体そういう意味でございます。
  78. 高津正道

    ○高津委員 都留教授証言に基いて何十人もの教授などを調べるというようなことが報道されておりますが、それは、アメリカの全く自由でありましょうけれども日本人が何らかの証言をしたために、アメリカ赤狩の大きな手伝いをさせられた、こういう結果が生まれるのでありますが、その大きな大学教授を数十人もこれから調査を始めようとすることに対して、どのようなお考をお持ちでありますか。
  79. 井上清一

    井上(清)政府委員 都留教授召喚に関しましては、私が先ほど申し上げました通りでございますが、アメリカの問題につきましては、私どもの関知するところではございません。
  80. 長谷川保

  81. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 政務次官にお尋ねしますが、交換教授規定——身分の規定もあるだろうと思いますが、どういうふうになっておりますか、説明をしていただきたい。
  82. 井上清一

    井上(清)政府委員 都留教授が向うに行かれましたのは、アメリカの知的交流委員会から招かれて行かれたわけであります。そして日本にも日本の知的交流委員会というのがございまして、それを二つあわせまして日米知的交流委員会というものがあるわけでございます。これは米国のコロンビア大学の資金によりまして、日米両国の知識人の交流をはかる目的を持って設置されたものであります。日本委員会とアメリカ委員会が、先ほど申し上げましたようにあるわけでございまして、日本側の委員会は高木八尺氏が会長でございまして、その他委員が数名おりまして、それでもって委員会が構成されておるわけでございます。交流計画を実施する場合に当りましては、招聘側の委員会が旅費及び滞在費を負担する建前になっておると承知いたしております。
  83. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一度政務次官にお尋ねしますが、アメリカにおいて、日本以外のイギリスとかドイツとかフランスとかの教授がこういうようなところに喚問された例がありますか。
  84. 井上清一

    井上(清)政府委員 教授についての例は、私どもまだ調べておりませんけれども証人として召喚をされた例は、前にはあるようでございます。
  85. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私たちから考えますと、先ほど野原君の言われましたように、現在日本は国連に加入し、一応独立国になっておりますけれども、どうも実際のやられ方があまりひどいのではないかと感じるわけであります。  そこで稻葉政務次官にお尋ねするのですが、日本国会外国教授喚問した例があるかどうか、またそういうことがやれるものであるかどうかということを一つお尋ねいたします。
  86. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 そういう例が今まであったかどうかわかりませんが、私の記憶にはありませんけれども、今はっきりなかったと断言はできませんので、よく調査をいたしましてお答えいたします。
  87. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 今度の場合を考えますと、どうも日本教授がどういう立場か、都留君に聞いてみないとわかりませんけれども、少くとも日本教授アメリカ上院の司法委員会へ呼ばれたということは、だれが考えてもこれは不当じゃないか。われわれ国際法をよく知りませんからわかりませんけれども、一体文部省は、こういうような都留教授外国へ出す場合の身分の保障とかなんとか、こういうようなことを講ずるとかいうような監督上の責任をどれだけ持っており、どういうことをやられたか、勝手にやらして、あとは知らないというようなことでやっておるのじゃないかと考えるのですが、そういう点で、大学局長に、どういうことになっておるか、そこのところを説明願いたい。
  88. 緒方信一

    ○緒方政府委員 これは、都留教授は、日本国立大学教授の身分は保有して向うに出張の形で参っております。従いまして、身分につきましては、国家公務員の身分を保有しておりますので、それに関連いたします保障、あるいは監督という関係は残っております。
  89. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 きょうは大臣がおられませんから、いろいろまたあとでこういう機会に聞きたいと思うのですが、日本教授外国へ留学するような場合には、これは別でございますが、こういうような問題が起きて、今後たびたび思想の調査などをやられることになると、非常に重要な問題になってくると思うのです。こういう点で、今度の事件で、文部省はどういう方法で監督をやる意思があるか、これを一つ稻葉政務次官にお伺いします。
  90. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 文部省としては、大学に対してあまり監督を厳粛にしないという方針であります。むしろ大学の自主的な判断にまかせるという方針をとって参っております。このたびの都留教授のこの事件につきましては、純粋に法律的には都留さんに責任はないと思います。具体的にとられた行動につきましては、将来もいろいろあることでございますから、事前にこういう場合には連絡をおとり下さるようにというような方針で進みたい、こう思っております。
  91. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 稻葉政務次官は取り違えておられる。文部省は監督をやれというのじゃない。少くとも外国教授が行かれるときに、身分の問題とか、今度のような場合に、おそらく都留君は、自分が外国に行っておれば心細くなって行かれたのか、あるいはおそらくすぐ帰ってくるというようないろいろな問題があったかもしれません。これは当人がおらぬからわかりませんけれども、少くともこういう交換教授で行ったような場合、少くとも文部省は、これは留学生と違うのですから、そういう点に対して、一体こういうような問題——これは初めて起きた問題だから、今までは知らないけれども、こういう問題が起きたことを契機として、十分にこういうようなことについて注意をしていただきたいと思うのでが、この点、お立場を伺いたい。
  92. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 佐藤委員の御意見はごもっともでありますから、将来よく気をつけるようにいたします。
  93. 小牧次生

    ○小牧委員 この際関連して一言お伺いしますが、今度の都留教授の問題について、アメリカ側のとった態度も、国際儀礼上はなはだ遺憾な点があるわけですが、真相がよくわかりませんから、はっきりしたことはわかりませんけれども都留教授の態度にも、私は不可解な点が多少あるのではないか、こういう気がしてならないのであります。先ほど野原委員質問でわかりましたけれども文部省の方にも、大学の方にも事前に何ら問い合せがなかった、そこで、瞬間に応じなかった場合には、向うの法律罰則適用される、その内容等については、詳しくは御存じないような御答え弁でごさいましたが、ほんとうに喚問に応ずるということについて、全然都留教授に自由がなかったのかどうか、たとえば喚問に応じないといった場合に、果してアメリカ側が罰則適用して、その通り都留教授を処分したであろうかどうか、あるいはまた、都留教授喚問に応じない場合、アメリカ側から立ちのきを命ずる、本国に帰れ、こういった場合には、都留教授は帰るという意思があれば、そういうこともできたのではないかというように、いろいろ考えられる点がございまして、多少完全に納得のいかない点もわれわれにはあるわけでありますが、こういう点について、井上外務政務次官はどのようなお考えをお持ちでございますか。
  94. 井上清一

    井上(清)政府委員 都留教授喚問に対して、それを拒否する自由があったんではないかというような御質問の御趣旨と伺います。これは、先ほど千葉アメリカ局長から申し上げましたように、喚問につきましては、罰則つきの喚問状でございますので、相当追い詰められたことは私は事実だと思います。しかし召喚を拒否した場合に、アメリカが果して罰則適用するか、また国外に対する退去を命ずるかどうかということは、必ずそうだということは、必ずしも断言できぬのじゃないか、こう私は思います。  それから都留教授大使館連絡いたしましたのは、召喚されます二十六日の前日の二十五日の夕刻であったわけでございます。で、もう少し早く連絡をしてくれますれば、あるいは大使館として国務省に連絡する道があり、またそれが成功したかどうかはわかりませんけれども、何らかの措置がとり得たんじゃないかと、今になって私ども考えておるような次第でございます。
  95. 小牧次生

    ○小牧委員 もう一言稻葉政務次官にお尋ねしますが、将来いろいろこういう問題について、われわれも考えなきゃならぬ問題が多々あることは、先ほど来の質問でよくわかったのでありますが、済んでしまったことで仕方はございませんけれども、今私が質問したような問題について、文部省においても、そういう点について果してどのような心境であったのか、これは十分御調査になる必要があるのではないか、これは大事な問題でございますので、このように考えておりますが、稻葉さんはどうお考えでございますか。
  96. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 都留教授の今度の証人喚問の事柄につきましては、文部省といたしましては、外務省と同じように、非常に遺憾な点がある、ぜひ外務省から適当な処置をとっていただきたいとも思っております。また今後は、こういうことの予想されるような交換教授等が出ていきます場合には、よく御本人とも連絡をとりまして、もしこういうような場合があった場合には、なるべく早く在外大使館なりに御連絡の上行動されるように御注意を申し上げて参りたいと思います。いずれにいたしましても、これを契機に、この問題の真相をよくたんねんに調査をいたしまして、再びこういう遺憾な問題が起りませんように、十分注意をいたすつもりでございます。
  97. 野原覺

    野原委員 これで質問を終りますが、私は先ほども申し上げましたように、わが国の公務員が、一片の通告も受けないで外国国会喚問をされる、アメリカ国会が、都留教授日本政府には一片の通告もなしに喚問する、私は国際道義の上から、これは許せないと思うのです。断じて許せないのです。こういうことをやられては国辱です。いかに日本は戦争に敗れたとはいえ、日本の国は現存しておる。アメリカに行った日本公務員を、日本に正式な何の通告もなしにどんどん喚問するというこの国辱を黙ってほうっておいたら、これは大へんな問題になってくると思う。先ほど政務次官は、大使館を通じて云々ということでございましたが、そういういいかげんななまぬるいことでは、この問題は許せない。国民感情からいって許せません。厳重なる抗議を発してもらいたい。これをアメリカ大使館に、あなた方は今日までやってきたかどうか。この問題を把握してなさっていないでしょう。アメリカの大使に対して、岸外務大臣から、まことに遺憾じゃないか、こういうことをやられたら困るじゃないかということを、虎ノ門におるじゃないか、やっていますか。これは井上さんにもう一ぺん聞きたいと思う。どうですか。
  98. 井上清一

    井上(清)政府委員 先ほど来繰り返し申し上げました通り、私どもといたしましても、まことに遺憾に存じます。直ちに在米大使館を通じまして、国務省に、今後かかることの絶対にないようにということの厳重なる申し入れをするように措置方を命じてございます。
  99. 野原覺

    野原委員 その厳重なる申し入れの内容なり、その申し入れに対するアメリカ側の回答なりを求める他日の機会を要求いたします。  そこで最後に、これは要望になりますが、アメリカ国会上院の小委員会の速記録、この早記録は、公聴会であるから出して何ら差しつかえない、こういうことでございますから、この速記録を、すみやかに出していただきたい。できたら大綱でも本日の午後発表してもらえないか。しかし、開くところによれば、相当膨大なものらしいから、本日無理であるならば、一両日のうちに文教委員全員に配付できるように措置していただきたい、これはできるかどうか、御回答願います。
  100. 井上清一

    井上(清)政府委員 速記録はもとより公開のものでございますので、できるだけ早く——何分膨大でございますので、あるいは一両日ということはとても不可能と存じますが、できるだけすみやかにお手元に印刷してお届けするようにいたします。     —————————————
  101. 長谷川保

    長谷川委員長 それでは、次に電波関係について、野原覺君。
  102. 野原覺

    野原委員 都留教授の問題はこれで終りますが、政務次官にお尋ねしたいことは、過日文教委員会教育テレビの問題で決議をいたしております。この決議をどのように支部省は処理されておるのか、お聞きしたいのであります。
  103. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 先日御決議の御趣旨を体しまして、文部省といたしましては、さっそく文部大臣灘尾弘吉名をもって郵政大臣平井太郎氏に対し意見書を差し出しておきました。大要を朗読させていただきます。   さきに貴省において明らかにされた「テレビ放送用周波数割当の基本方針修正案」の策定に当っては専務当局からの連絡に対して種々御配慮願って来たところでありますが、同案中「もっぱら教育的効果を目的とする放送を行う局の設置を必要とし且つ適当とする場合においては、その実施を可能にする如く考慮する」ことが明記されておりますが、この点について次のような意見をもっておりますので、その実現方についてよろしくお取計い願います。     記  1 社会教育学校教育の重要性と現代におけるテレビジョン放送の教育的利用の緊要性にかんがみ、この際、教育専門のテレビジョン局を設置されることはもちろん必要であるが、中央と地方、都市と農山漁村を通じて教育の機会均等を図るため、全国的な教育テレビジョン放送網が確保されるよう考慮されたい。  2 教育専門のテレビジョン局の設置者については、教育の公共性を保障するため、これにふさわしい者に対して認可するとともに、その認可に当っては、教育放送を永続し、教育の公共性と中立性とを維持するために遺憾のないよう必要な条件を具備するよう考慮されたい。  こういう意見書を提出しておりますから御報告申し上げます。
  104. 野原覺

    野原委員 その意見書の提出は、まことに同感にたえませんが、平井郵政大臣は、その意見書に対してどういう見解を持っているかもただしていらっしゃるはずです。そこまで私はなされていると思う。平井郵政大臣は、私どもの決議に対してはどういう所見を持っているようにあなた方はお聞き取りでございますか、伺いたい。
  105. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 文部委員会の御決議に対しましては、平井郵政大臣は、非常によく尊重をいたすというふうに私どもは承わっております。
  106. 野原覺

    野原委員 それは、儀礼的な言葉としてはそういうことを言うかもわかりませんが、私どもが仄聞するところでは、平井郵政相は、私の腹はすでにきまっていると、何だか妙な動きもあるように聞く。これは与党の方々と相談いたしまして、与野党一致の決議でありますから、この決議に対して、郵政大臣がどういう所見を持っているかを、与党の方々の意見を聞いて、他日この委員会にすみやかに出席をしてもらって、ただしたいと思います。どうか文部省としては、その決議の趣旨を体して、ゆるめないで、強硬に当っていただくように要望して終ります。     —————————————
  107. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、社会教育法の一部を改正する法律案議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。高村坂彦君
  108. 高村坂彦

    ○高村委員 社会教育法の一部を改正する法律案につきまして、若干当局の所見を伺いたいと存じます。  この法律改正の内容は、社会教育関係団体のうちで、運動競技に関する全国的、国際的な事業を行うことを主たる目的とする団体に対しては、当分の間、国はその事業施行に必要な経費について助成ができる道を開きたい、こういうことでございますが、これについては、若干法律解釈の上におきまして疑問を持っている人がございますので、この際明らかにしておきたいと存じます。  その第一点は、社会教育法の第十三条に「国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、補助金を与えてはならない。」こういう規定がございますが、これの例外として、こういった規定を設けられるのですけれども、この社会教育法第十三条というものは憲法の八十九条の精神に基いてできた法律である、こういうふうな考え方を持っている人があるわけです。果してそうであれば、もしも第十三条の例外を認めるということは、憲法第八十九条の精神にもとる、こういうことになるおそれがある、この点を、一つ文部当局において明らかにしていただきたい。
  109. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 ごく簡単にただいまの点について見解を申し上げます。憲法八十九条と社会教育法十三条との関係につきましては、社会教育法十三条の方が憲法八十九条の規定よりも厳格に国の公金を教育団体に与えてはならない、こう規定してありますので、社会教育法の一部を改正して、今度のような例外規定を設けましても、憲法八十九条に許された範囲を逸脱して、国家の助成を憲法八十九条の禁ずる団体に付与するということにはならないと思っております。
  110. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま政務次官からお答えになりましたことにつきまして、若干補足してもう少し申し上げたいと思います。  憲法八十九条の規定は、御存じのように、公金その他の公けの財産は、公けの支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない、こういう規定になっておりますが、この規定趣旨は、公けの支配に属しない私的な教育事業につきまして公金を出してはならないということ、すなわち、言いかえますと、公けの支配に属しない私的な教育事業につきましては、この事業そのものの自主性を尊重するということと、一面、また公金の乱用を防止するというような趣旨であろうかと私ども解釈いたしております。従って、この憲法八十九条の教育の事業というものには一体どういう範囲のものが考えられるかということを一応解釈いたしますと、これは従来の法制意見による解釈でもありますが、憲法八十九条によりますところの教育の事業というものについては、昭和二十四年に法制意見が出ておりますが、この教育の事業という解釈につきましては、その精神的または肉体的育成を目ざして人を教え導くことを目的とする事業であって、教育する者と教育される者との存在を前提とする、こういうような解釈がございます。すなわち、言いかえますと、教育される者について、その精神的または肉体的育成を、はかるべき目標——教育する者が教育される者を導いて、計画的に目標の達成をはかる事業でなければ、教育の事業とは言えないというのでございます。従って、今申し上げましたように、教育される者と教育する者とがありまして、その間に一定の教育的な計画性を持ち、またその教育される者に対する教育の目標というものを持っておって実施される、これが憲法のいわゆる教育の事業である、こういうように通説は解しております。これは公定的な法制意見となっております。  もう少し申し上げますと、憲法におきますところの教育の事業と申しますのは、学校またはこれに類した施設によって、特定の範囲の受講者に対して、継続的、積極的に行う教育をさす、従って教育基本法でいいますところの教育、あるいは社会教育法でいいますところの社会教育の概念よりも狭い、従って、たとえば一般大衆に対する知識の宣伝啓蒙、あるいは産業技術の普及のために行いますところの試演とか、あるいは放送、出版等は、いわゆる憲法の教育の事業の中には含まれない、こういうような解釈をとっております。こういう解釈からいたしまして、社会教育の分野におきしましても、社会教育施設でありますところの図書館、あるいは博物館といったようなものの経営も教育事業とは言い得ない、従ってまた運動競技の普及や体育大会の開催等も、憲法の教育事業には該当しないというのが通説でもございます。  そこで社会教育法の第二条をごらんいただきますと、社会教育法の第二条には「「社会教育」とは、学校教育法に基き、学校教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)をいう。」こういうようになっております。ところでそれを受けまして、第十条には、社会教育関係団体の定義がなされております。これを見ますと、「法人であると否とを同わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。」こういうように社会教育関係団体を定義ずけております。従って、この二条と十条との関係におきまして、単に社会教育分野におきましての教育者、被教育者という関係の成立するものもあったのでありますが、それ以外に、社会教育団体とし考えられますものは、そういった純粋な教育者、被教育者の関係が成立する社会教育というもの以外に、たとえば文化、芸術、あるいは体育、レクリエーションといったような面の社会教育団体というものも広く存在するわけであります。これに対して第十三条におきましては「国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、補助金を与えてはならない。」こういうよな禁止規定があるのであります。従って、先ほど政務次官から申されましたように、この十三条の禁止規定は、憲法の教育の事業というものよりも、はるかに広い意味において規律されておりますので、これに対する特例を設けまして、当分の間、運動競技に関する全国的及び国際的事業を主たる目的とする社会教育関係団体に補助金を出しましても、憲法の禁止するところではない、こういうように解釈いたしておるのであります。
  111. 高村坂彦

    ○高村委員 私は、将来憲法が改正されるといったような機会がかりにくるとすれば、憲法の第八十九条というものは改正さるべきものだと思う。何ゆえに公けの支配に属しない教育というものに対して国家が助成していかぬかということについて、合理的な理由を発見するに苦しむわけであります。これは意見でありますが、八十九条の範囲社会教育法の第十三条の範囲とは非常に違う。第十三条は非常に広いのだということになれば、むしろ私のような考えからすれば、憲法すら機会があれば改正していただきたい、こう思うのですから、社会教育法の第十三条を削除していただくと、憲法の精神にもとらぬ範囲におきましては、広く助成ができるわけであります。それをあえてされないで、特に社会教育団体の中で運動競技に関する全国的及び国際的な事業を行うことを主たる目的とする団体、こういうふうに限定されたゆえんを一つ聞かせていただきたい。
  112. 稻葉修

    ○稻葉政府委員 高村委員の御質問の御趣旨については、そのように考えますが、私どもといたしましては、社会教育法全般について検討を慎重に加えた上、全面的な改正をしたいという意向もありますので、その際に、今の御質問の御趣旨を体しまして、十分盛り込めるような改正に持っていきたい、今日はまず暫定的にその程度にとどめたいという次第であります。
  113. 高村坂彦

    ○高村委員 時間もございませんから、これだけで終りますが、今度の改正の文言にございまする「社会教育関係団体で運動競技に関する全国的及び国際的な卒業を行うことを主たる目的とする」団体という表現でございますが、具体的に、現在これに該当する団体は何と何があるか、予想されておられると思いますので、明らかにしていただきたいと思います。
  114. 福田繁

    ○福田政府委員 この法律規定によりますところの全国的及び国際的な事業を行うことを主たる目的とする団体でございますが、これにつきましては、こういう考えでおります。全国的事業と申しますのは、もちろん一地方や、あるいは一ブロックにおきます事業でなしに、その事業の規模なり、あるいはその事業の性格というものが全国的な事業でなければならぬということと、もう一つ、それにプラス国際的な事業でございますので、この国際的事業と申しますのは、大体それぞれの種目について国際競技連盟が認められております公認の団体が幾つかございます。そういったそれぞれの種目におきますところの国際競技連盟に加入している団体で、そういう団体は、その種目については、日本を代表し、またそういった国際的な大会には日本から選手を派遣するとか、あるいはまたそれとの関連におきまして、わが国におきまして国際的な競技を主催するとか、そういう事業を行なっておる団体であります。そういった性格も規模も二国以上の国際的な運動競技の事業をやるものを国際的な団体というふうに定義を一応下しております。従って、これにつきまして該当するものを考えますと、ただいまのころでは、財団法人では四つばかり、たとえば、日本体育協会はさしあたりの問題でざごいますが、そのほかに全日本スキー連盟、それから日本馬術連盟、財団法人日本ラグビー・フットボール協会といったような、財団法人あるいは社団法人の組織になっておりますものはその四つでございます。そのほかに、たとえば日本漕艇協会とか、日本庭球協会とか、日本水泳連盟とか、日本ホッケー協会といったような、それぞれの国際競技連盟に加盟いたしておりますところの国際的な団体は、約二十ぐらいに上るわけでございます。
  115. 長谷川保

    長谷川委員長 他に御質疑ありませんか。——なければ本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。   午後零時二十四分散会