○福田
政府委員 ただいま
政務次官からお答えになりましたことにつきまして、若干補足してもう少し申し上げたいと思います。
憲法八十九条の
規定は、御存じのように、公金その他の公けの財産は、公けの支配に属しない慈善、
教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない、こういう
規定になっておりますが、この
規定の
趣旨は、公けの支配に属しない私的な
教育事業につきまして公金を出してはならないということ、すなわち、言いかえますと、公けの支配に属しない私的な
教育事業につきましては、この事業そのものの自主性を尊重するということと、一面、また公金の乱用を防止するというような
趣旨であろうかと私
どもは
解釈いたしております。従って、この憲法八十九条の
教育の事業というものには一体どういう
範囲のものが考えられるかということを一応
解釈いたしますと、これは従来の法制
意見による
解釈でもありますが、憲法八十九条によりますところの
教育の事業というものについては、
昭和二十四年に法制
意見が出ておりますが、この
教育の事業という
解釈につきましては、その精神的または肉体的育成を目ざして人を教え導くことを目的とする事業であって、
教育する者と
教育される者との存在を前提とする、こういうような
解釈がございます。すなわち、言いかえますと、
教育される者について、その精神的または肉体的育成を、はかるべき目標
——教育する者が
教育される者を導いて、計画的に目標の達成をはかる事業でなければ、
教育の事業とは言えないというのでございます。従って、今申し上げましたように、
教育される者と
教育する者とがありまして、その間に一定の
教育的な計画性を持ち、またその
教育される者に対する
教育の目標というものを持っておって実施される、これが憲法のいわゆる
教育の事業である、こういうように通説は解しております。これは公定的な法制
意見となっております。
もう少し申し上げますと、憲法におきますところの
教育の事業と申しますのは、
学校またはこれに類した
施設によって、特定の
範囲の受講者に対して、継続的、積極的に行う
教育をさす、従って
教育基本法でいいますところの
教育、あるいは
社会教育法でいいますところの社会
教育の概念よりも狭い、従って、たとえば
一般大衆に対する知識の宣伝啓蒙、あるいは
産業技術の普及のために行いますところの試演とか、あるいは放送、出版等は、いわゆる憲法の
教育の事業の中には含まれない、こういうような
解釈をとっております。こういう
解釈からいたしまして、社会
教育の分野におきしましても、社会
教育施設でありますところの図書館、あるいは博物館といったようなものの経営も
教育事業とは言い得ない、従ってまた運動競技の普及や体育大会の開催等も、憲法の
教育事業には該当しないというのが通説でもございます。
そこで
社会教育法の第二条をごらんいただきますと、
社会教育法の第二条には「「社会
教育」とは、
学校教育法に基き、
学校の
教育課程として行われる
教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な
教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)をいう。」こういうようになっております。ところでそれを受けまして、第十条には、社会
教育関係団体の定義がなされております。これを見ますと、「法人であると否とを同わず、公の支配に属しない団体で社会
教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。」こういうように社会
教育関係団体を定義ずけております。従って、この二条と十条との
関係におきまして、単に社会
教育分野におきましての
教育者、被
教育者という
関係の成立するものもあったのでありますが、それ以外に、社会
教育団体とし考えられますものは、そういった純粋な
教育者、被
教育者の
関係が成立する社会
教育というもの以外に、たとえば文化、芸術、あるいは体育、レクリエーションといったような面の社会
教育団体というものも広く存在するわけであります。これに対して第十三条におきましては「国及び
地方公共団体は、社会
教育関係団体に対し、補助金を与えてはならない。」こういうよな禁止
規定があるのであります。従って、先ほど
政務次官から申されましたように、この十三条の禁止
規定は、憲法の
教育の事業というものよりも、はるかに広い
意味において規律されておりますので、これに対する特例を設けまして、当分の間、運動競技に関する全国的及び国際的事業を主たる目的とする社会
教育関係団体に補助金を出しましても、憲法の禁止するところではない、こういうように
解釈いたしておるのであります。