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1957-08-20 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年八月二十日(火曜日)    午前十一時三十七分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 田口長治郎君    理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       石坂  繁君    加藤 精三君       亀山 孝一君    丹羽 兵助君       原  捨思君    松浦 東介君       赤路 友藏君    石田 宥全君       稲富 稜人君    川俣 清音君       久保田 豊君    楯 兼次郎君       日野 吉夫君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         建 設 大 臣 根本龍太郎委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁直税部         長)      金子 一平君         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農林事務官         (振興局長)  大坪 藤市君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         食糧庁長官   小倉 武一君         林野庁長官   石谷 憲男君         通商産業事務         官         (中小企業庁振         興部長)    今井 善衛君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         建設技官         (河川局防災課         長)      山内 一郎君         日本国有鉄道参         与       磯崎  叡君         (営業局長)         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 八月十九日  委員青木正君、綱島正興君及び徳田與吉郎君辞  任につき、その補欠として椎名隆君、渡邊良夫  君及び草野一郎平君が議長指名委員選任  された。 同日  委員渡邊良夫辞任につき、その補欠として綱  島正興君が議長指名委員選任された。 同月二十日  委員赤澤正道君、大村文男君及び中村英男君辞  任につき、その補欠として加藤精三君、亀山孝  一君及び久保田豊君が議長指名委員選任  された。 同日  委員加藤精三君及び亀山孝一辞任につき、そ  の補欠として赤澤正道君及び木村文男君が議長  の指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  西九州地方及び東海地方における豪雨による農  林漁業災害状況調査のための委員派遣承認申請  に関する件七月下旬の西九州地方等における豪  雨による農林漁業災害対策に関する件  農林水産業基本施策に関する件  種馬鈴薯の運賃に関する件     —————————————
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。  昨日に引き続き、西九州地方等における豪雨による農林漁業災害対策について調査を進めます。  本日は、まずさきに本院より派遣されました調査慰問団の団員である山田委員より、主として農林関係被害状況及び現地要望等につきまして、本委員会対策樹立参考のため御説明をお願いいたしたいと存じます。山田委員
  3. 山田長司

    山田委員 それではただいま委員長よりお話のありました通り西九州地方豪雨災害について調査のため本院より派遣いたされ、親しく現地の惨状を調査、慰問いたして参りましたので、この際特に皆さんの御同意を得まして、農林水産関係につき被害実情並びに現地要望等をごく簡単にその概要を御説明申し上げ、委員各位の御参考に資したいと存じます。  調査慰問団薩摩雄次君を団長にして中村寅太君、中馬辰猪君、三鍋義三君、及び私の五人をもちまして、八月一日から八日間にわたり佐賀長崎熊本鹿児島の各県の水害地調査いたしました。  調査慰問団一行は、まず佐賀県庁において今回の水害被害状況災害対策等説明を聴取した後、同県内の鹿島、北方、伊万里等県内災害地調査しました。続いて長崎県に入り、今回の水害の最もはなはだしかった諫早市、大村一帯を初めとして、愛野村、千々石町、島原市等水害地の中心をくまなく調査しました。同地では交通が途絶の個所多く、調査に困難と思われたのでありましたが、大村海上自衛隊の好意により海上機によって約一時間半にわたり全被害地視察することができました。続いて熊本に入りまして、三角、網田村より河内芳野村、天水村、宇土町、植木町、三名市、熊本市とほとんど水害現地全部を視察調査いたしまして、鹿児島川内川流域の被害地に向い、川内市、東郷村及び串木野周辺調査いたしまして、日程全部を終了いたしたのであります。  今回の豪雨の特長は、きわめて長時間に大きな雷を伴って集中して多量の雨が降ったことであり、しかも電信電話途絶したため、夜半寝込んだところを不意をつかれて避難するいとまもなく、予想以上の大被害をこうむり、尊い人命を多く失いましたことは、衷心よりお悔み申し上げるとともに、復旧の一日も早からんことを熱望いたす次第であります。  まず各県の被害状況につきまして御説明申し上げます。  長崎県におきましては、七月二十四日夜半より二十六日朝にかけて各地を襲った豪雨は、大村諫早地区が特にひどく、十二時間に七百五十二ミリにも達し、実に一年間の雨量の三分の一に当り、一時間百四十ミリの雨量は、かつて世界にも例を見ないと言われております。県当局調査によりますと、農林水産関係被害は、農地関係被害が三十一億円、それから農作物関係被害が十九億七百万円、山林関係被害が十五億四千万円、その他畜産水産等四億円に上っております。  次に熊本県におきましては、降雨量熊本市が五百三ミり、三名市四百八十ミリ、山鹿市三百二十七ミリに達し、そのため各地河川はんらん金峰山周辺山津波により、主として県の西北部に多大の被害を及ぼし、水田埋没冠水等による被害及び山津波による果樹の被害が非常に多く、県当局報告によりますと、耕地及び開拓関係人億一千万円、農林水産関係十八億円となっております。  次に佐賀県におきましては、七月二十五日の降雨量はわずか一、二時間に二十八年六月に西日本一帯を襲った大水害に匹敵する惨禍を与え、その被害長崎熊本に次ぎ大なるものがあります。そのため台風五号以来の損害及び今回の豪雨による被害を合せますと、農林関係におきましては五億七千万円に達しております。  次に鹿児島県におきましては、二十七口夜半より、驟雨性豪雨が降り、特に北部では二百ミリ以上四百ミリに達し、中でも北薩姶良地域は相当な被害を惹起したのであります。そのため被害面積は、田畑流失埋没百十四町歩冠水一千三百九十九町歩に及んでおります。  次にただいま申し上げましたような甚大な被害に対しまして、応急災害復旧対策及び災害を未然に防止するための恒久対策として、関係地元要望につきまして御説明申し上げます。  第一に耕地関係といたしましては、農地及び農業施設災害復旧につきましては、十万円未満のものは国庫補助対象となっていないので、これを三万円まで引き下げてもらいたいという要望があります。これは今回の局地的な豪雨による被害の特性によるものでありまして、これを望む農民の要望は熾烈なものがありました。また山津波によりまして莫大な土砂が堆積して農地復旧が不可能なところがありましたが、このようなところについては、他に就業の道をあっせんするとか、政府として適当な措置を講ぜられたいという要望がありました。また佐賀長崎県におきましては、地すべりにより農地家屋の壊廃等、被害がきわめて大きく、応急復旧対策とともに、これが恒久的な対策を早急に関係機関において考慮されたいという要望がありました。  また熊本県には天水村というところがあります。ここは山の中腹以下に大規模なミカンの栽培をしているところがありまして、豊かな村であったようですが、地元民の言うところによりますと、この山の頂上一帯国有林となっておりますが、国有林の乱伐が原因となって山が決壊し、それで死者五十数名を出したということであります。地元民はしばしばこれが払い下げを希望しておるにかかわらず、政府より何らの回答がなかったまま今回の惨事を引き起したのである、地元の人はこれが処置を強く要望しておりました。  第二に、川内川、菊池川等におきましては、堤防の決壊により河川はんらんし、農地家屋等に多大の被害をこうむっておりますが、現地の人々は、もしも堤防の補修が完全に行われておれば、これが災害の発生はあるいは防止できたのではないかと言っております七特に諫早地区におきましては、その土地のいろいろな事情河川改修工事に対する補助金昭和三十年度に打ち切られたので、改修工事の途中で放棄してあったという事情もあるとのことでありまして、この被害は単に天災によるもののみが原因ではなくて、人災にもよるというような地元人たちの声もありました。  次に罹災者に対する金融措置といたしまして従来の災害におけると同様に、一つには水陸稲にかかる共済金の早期概算払い 二つには自作農維持創設資金災害融資ワクの拡大、三つには天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の適用、四つには予約米に対する概算金延納措置、五つには公庫法に基く主務大臣指定施設災害復旧資金指定、六つには農薬、肥料等災害復旧のための経費に対する国庫助成、七つには柑橘園復旧についての復旧費限度引き上げ等がそのおもなるものであります。  その他九州地方における特異な問題といたしまして災害の常襲性にかんがみ、冠水地帯に対しては水稲の稲を常時確保して、被害が発生した場合には直ちに植えかえができるようにしてほしいという要望、さらに恒久立法として台風襲地帯等に対する特別な立法措置を講ぜられたいという要望が強かったのであります。  なお水産関係につきましては漁港施設等被害漁船流失養殖施設等被害の大きいものがありますので、これが復旧もしくは漁船建造資金確保等につきまして強い要望があったのであります。  次に、これは農林関係のみの問題ではありませんが、今回の災害は夜半にわたり十数時間の雷雨を伴う豪雨がありましたので、電信電話途絶、電灯が切れる等のことで被害地の人達は豪雨の襲来あるいは山津波等を知る方法がなく、就寝中のこととて逃げおくれ、人命災害が大きかったということでありますが、事前に警報を受けることさえできれば、人命災害を相当にとどめ得たと考えられる点があったということをいわれております。  以上、きわめて簡単に御説明申し上げたのでありますが、調査報告書調査団団長から議長に提出されていることと思いますので、それをごらん願いたいと思います。  最後に、今回の災害は、地域としては局地的な災害でありまして、災害の甚大さは未曽有のものがありまして、被害者は打撃を受けてぼう然として、いまだ心底から自覚復旧の途についておるものと考えられません。この中にあって自衛隊及び消防団隣接町村救援ぶりはまことに涙ぐましいものがありまして、これらについては感激にたえないものがあります。私たちは、被害者各位が一日も早く従来の状態に復して生業につくことを望んでやまないのであります。政府及び全国民の強力なる努力要望いたしまして、御説明を終る次第であります。(拍手)     —————————————
  4. 小枝一雄

    小枝委員長 この際お諮りいたします。ただいま調査いたしております西九州地方及び八月上旬の東海地方における豪雨による農林漁業災害状況調査及びその対策樹立のため、この際委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、派遣地派遣委員及び員数、期間等委員長に御一任願い、議長承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  それでは暫時休憩いたしまして、午後は一時から開会いたします。    午前十一時五十三分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  7. 小枝一雄

    小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  赤城農林大臣より新任のごあいさつを申し上げたいとの申し出があります。この際これを許します。赤城農林大臣
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、今般はからずも農林大臣の席をけがすことになりまして、重要な農林水産政策を担当いたすことになりました。非常に任重く力足らざるを感ずるのでありますが、幸い長い間農村にも深い接触を持っておりましたので、農村実態にも触れて参っております。このとうとい経験を生かしまして、農山漁村民の心を心といたしまして、今後の農政を担当して参りたいと考えております。  翻ってみまするのに、ここ数年における日本経済発展のめざましさにつきましては今さら申し上げるまでもありません。しかしながら最近になりまして、国際収支関係逆調に対処して諸般の措置がとられておりますために、経済は一時調整段階に入っているようであります。しかし多くの不安定な要素や解決しなければならない問題を含みながらも、その基調は依然としてかたく、今日の難関を切り抜けてさらに飛躍的に発展を遂げることを期しておるものであります。  このような全体的な経済発展の中にありまして、わが国農林水産業も、自然的条件に恵まれました点などもありますけれども、生産性割合に順調に伸び、農山漁家所得水準生活水準も上昇して参っておるのでありますが、他の産業の著しい生産の伸びと比較いたしますと、農林水産業はよほど努力を重ねませんと他産業との差がますます開く結果となるおそれがあることは申すまでもありません。また同じ農山漁村におきましても地域内あるいは農山漁家間の生産性所得の不均衡も目立って参っておりますので、これらを是正いたすことが強く要望されているのであります。  一方、農林水産業関係以外の方面からも農政につきましていろいろと御批判があるようであります。私はこのような農山漁村実態は、外部の御批判につきまして謙虚に反省を加え、誤まりなき農政を打ち立てて参りたいと存じておりますが、私といたしましては今後の農林水産政策基調は何よりも経営者として健全な安定、農山漁家を育成強化することを最終的な目標にしてもろもろの政策を打ち立てなければならないものと考えているのであります。  そのため第一は、土地改良、林道、漁港というような生産基盤をまず整備拡充しなければならない。生産基盤整備拡充こそ農林水産業発展のための第一歩であると考えるのであります。  第二にはこのような整備拡充された生産基盤の上に立って農林水産業生産性を向上させ、所得を大幅に増加させなければならないと考えます。特におくれた畑作の振興につきましては重点的に実施する必要があると考えるのであります。  第三には未開発または利用度の低い国内の農林水産資源を積極的に開発し、食糧の総合的自給力を向上させる必要があると考えるのであります。  第四には農林水産政策総合的効果が発揚できるようにその施策はそれぞれの地域特殊性に即しまして実施されなければならないと考えているのであります。  さらにこのような基本的政策の実行に当っては、その円滑な実施をはかるため農林水産団体の機能を強化することが肝要と考えております。  以上申し上げました事柄は私が農林水産行政の眼目と考えておるものでありますが、それに基いた具体的な施策につきましては目下慎重検討中でありますので、あらためて委員各位の御意見を拝聴いたす機会もあろうかと考えております。しかしながら申し上げるまでもなく、農林水産業の当面しております問題はあまりにも多くかつ複雑であります。この間の事情につきましては近くこれをまとめて委員各位及び世論の御批判を仰ぐ所存でありますが、その批判を率直に受け入れて今後の農政の上に生かして参る所存でおりますので、委員各位の絶大なる御指導と御鞭撻をお願いいたす次第であります。(拍手
  9. 小枝一雄

    小枝委員長 次に大臣に対する質疑は後刻に譲りまして引き続き西九州地方等における豪雨による農林漁業災害対策について調査を進めます。ちょうど根本建設大臣が御出席でございますが、他の関係上非常に時間を急がれますので、建設大臣に対する質疑を先に行いたいと思います。質疑の通告があります。これを許します。石坂繁君。
  10. 石坂繁

    石坂委員 今回の西九州災害は深刻かつ悲惨であります。政府は直ちにこの災害に対しまして現行法令の許す範囲内において最大限度措置を講ずるという態度を表明され、さらに機を失せず岸総理大臣根本赤城大臣等親しく現地を御視察になり、災害実情をつぶさに視察されますると同時に、罹災者に対して激励鼓舞せられましたことは、私どもも罹災民とともに深く感謝する次第でございます。従いまして、われわれはこの機を失せず決定されました政府態度が有効にかつ迅速に措置として実現をされることを期待しておるのでありまするが、この際まず建設大臣に若干の質疑をいたしたいと存じます。  すでに大臣みずから御視察の結果御承知だと思いますが、今次災害の特質は、第一は集中降雨による局地的の被害が甚大であったということ、第二は中小河川あるいはそれ以下と申しましょうか、小さい河川はんらんによる災害が甚大であったということ、さらに、地すべり山津波、岩くずれ等の被害が頻発いたしておるということ、さらに水田埋没冠水等による農家の被害の甚大であったということ、あるいはまた中小企業被害が多かったということ、そしてその被害を受けました九州地方の各県は、現在再建整備団体であって財政すでに不如意の県であるということであります。かようにいたしまして、今回の復旧に対しましては政府の力強い助成補助がなければ容易に復旧はできないと思いまするが、かような見地に立ちましてまずお伺いいたしますのは、第一、災害復旧に対する査定を急速に実施して参りたいということであります。この点につきましては昨日綱島委員からも希望があり、各地もこの点を強く要望いたしておりまするのみならず、われわれの希望といたしましては現地査定をもって終局的の査定としてすみやかに復旧措置を講じてもらいたいという点であります。まずこの点につきまして大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  11. 根本龍太郎

    根本国務大臣 石坂委員の御質疑の第一点は、災害復旧査定を急速に実施すべきだということであろうと思います。この点につきましては、私が総理の命を受けまして現地に参りまして、出先関係機関——建設省のみならず農林省、大蔵省その他関係の各機関現地において招集し、できるだけ早く受け入れ態勢を整備するように要請しておきました。これに基きまして各県とも一生懸命やっておったのでありますが、何分にも深刻で、かつ相当交通不便な点がありまして、現地においてはなかなかその態勢がとりにくい点がありましたので、建設省といたしましては地建の方、あるいは九州各県のうち被害の少かった地方からおのおの応援隊を出しまして、査定受け入れ態勢を作りまして、大体のところ現在は査定に入っている次第でございます。  なおこれに関連して、現地査定を直ちに最終的な決定にするようにということでございますが、これはやはり従来の経緯もございまして、現地においてすぐにそのまま決定することは困難な事情がありますし、大蔵省その他の関係もございますので、できるだけ御趣旨に沿いましてすみやかに結論を出しまして、緊急査定に基く緊急工事を実施いたしたいと考えている次第でございます。
  12. 石坂繁

    石坂委員 この段は大臣の御答弁を了承いたしました。  次に、先ほども一言いたしました通りに、今次災害の一特異性は、中小河川もしくはそれ以下の河川はんらんによる災害が非常に多いのであります。従いましてこの点から考えますと、従来の直轄河川あるいは準用河川等認定基準を改めて、従来それに入れなかったような河川指定河川とする必要がありはしないか。さらにまた中小河川に至らないものでも、今回のように災害の頻発いたしまする河川につきましては、地方公共団体負担が過重になりますので、復旧につきまして政府の特別の配意を必要とすると考えますが、この点に関する御所見を承わりたい。
  13. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、今回の豪雨による災害は、従来直轄河川あるいは準用河川として工事をいたしたところは割合に少いのでございます。むしろ公共事業対象になっていない渓流とか、あるいはまた渓流とも言えないようなところが、地すべりあるいは山くずれを起して、それによる被害が非常に甚大であるということは、一つの特色として私も認めて参りました。これにつきましては、国庫負担法によるほかに、災害関連事業といたしまして工事をいたすというほかに、非常に軽微なものにつきましても、これは自治庁とも相談いたしまして、交付税早期支払い、あるいはまた特別交付金的な考えで、地方財政において相当まかない得るような措置をも講じていたしているのでございます。詳細にわたっては、自治庁の方からあるいは御報告があるかと思いますが、そういう一応の処置を講じたことが一点。  それからもう一つ御質問になりました認定基準の問題でありますが、認定基準は従来と大体同じでけっこうと思いますが、しかし、災害を受けた明地の調査によりまして、今まで準用河川でなかったものでも、ある場合に驚いては、被害状況等、あるいは地理的、立地的条件から考えて、新たに準用河川なり、その他中小河川として認定しなければならぬものも出てくるのではないかと考えております。これは目下九州現地地建をして厳密な調査をさせておりますので、その結果に基いて決定いたしたいと考えておる次第でございます。
  14. 石坂繁

    石坂委員 若干具体的な問題についてお伺いいたしたいと思いますが、熊本県下におきましての水田埋没冠水面積は一万九千町歩であります。そうしてこれは金峯山一帯の山くずれと、それよりももっと大きな原因は、坪井川、井芹川のはんらん、これは根本建設大臣ごらんになった通りであります。さらに、熊本市の南部に当ります無田川及び加勢川はんらんによる冠水田地が大へん多いのであります。これは赤城農林大臣の親しく御視察になっておるところでありますが、この罹災者要望といたしましてはまことにもっともなことでありますが、この坪井川加勢川改修工事に即刻着手していただきたい、同時に加勢川、無田川等改修を、それに劣らず直ちにこの改修工事に直手していただきたいという強い強い要望であります。われわれも現地をつぶさに視察いたしましてその必要を感じておるのであります。これらの河川改修は今日始まった問題ではないのでありまして、数年前からの要望であったのが、じんぜん日を送って参っております。現に建設大臣ごらんになりました坪井川石塘堰の問題のごときもずいぶん論議されて、ついに今日のような大損害原因となった。こういうようなことでありまするから、地元要望まことにもっともなことであります。これらの河川改修につきましてすみやかに御着手を願いたいと存じますが、大臣のこれに対する御所見を伺っておきます。
  15. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お示しの加勢川につきましては、本年中小河川に入れておるのであります。坪井川については明年度ぜひこれは認定いたしたいと思っております。それから無田川の方は支流になりますので、この点はもう少し実態調査の上決定いたしたいと思います。
  16. 石坂繁

    石坂委員 なおこれまた建設大臣ごらんになったのでありますが、あの金峯山の山くずれの結果の惨害であります。従いまして、これは当然恒久策といたしましては、これだけではありませんけれども、治山治水の問題となって参ると思いますが、応急当面の問題といたしましては砂防工事を急速に実施する必要があろうと思います。のみならず、この砂防工事は単年度の工事でありますが、これを継続事業といたしまして、現在堰堤工事のみに限られておることを流水工事まで施行する必要があるのではないかと思うのでありますが、この点大臣はいかようにお考えになっておるか、承わりたい。
  17. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お示しの通り今回の山くずれの惨害は非常に大きいのでございまして、しかもこれは従来とも治山治水に関しましては、単年度きりであるということは、工事の性質上も、それからまた成果の面と申しますか、経済効果の面から申しましても、計画的に継続してやらなければ、その目的を達成することは困難であると考えております。その意味におきまして建設省としましては、三十三年度からはこれらの諸問題を解決するために継続費的にこれを実行するという方針を立てまして、大蔵省並びに関係方面とも連絡をとりまして、御趣旨に沿うように努力したいと思って、省議では大体その方向をもって今努力しておるわけであります。
  18. 石坂繁

    石坂委員 大へんけっこうだと思います。なおこれも両大臣御承知と思いますが、熊本県下の天水村及び河内芳野村の被害に関してでありますが、これらの地方はミカン畑でありますが、この法例の措置以外の範囲に入っておるこれらの地区に対しまして都市計画地区に指定されてこれをはかられることが必要ではないか。あるいはまた現行基準では被害面積五千坪以下及び埋没量二万立米以下のものはたしか対象となっておらないのですが、これらの基準を緩和することによって復旧を促進ずる必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  19. 根本龍太郎

    根本国務大臣 天水並びに河内村の山くずれによる惨害は非常に大きいのでありまして自治体自体でこれを復旧することは非常に困難であろうということを私も感じまして、これは一応の私の思いつきでございますが、こういうところの復旧はむしろ県営で取り上げてそれに対する政府補助助成というようなことでもしないと、あそこは技術能力あるいはまた人員の動員その他から見て困難ではなかろうかと思って県の方にそれを勧めております。これが県営となって参りますれば、われわれの方といたしましても相当御協力ができるんじゃないかと思います。  なおまたこれが都市計画の問題と関連して等のお話でございますが、これが地元町村並びに県において災害を受けたこの両村について新たなる都市計画でも持って参りますれば、それに応じて御相談に乗って参りたい、かように考えております。
  20. 石坂繁

    石坂委員 大臣に対してもう一点でありますが、実は九州地方災害の頻発いたしますことはまことに困ったものであり、気の毒なことであります。当委員会におきまして、昨年でございましたか、台風常襲地帯農林水産施設に対する防除特別措置法、こういう名前で議員立法で提出する運びにいたしまして、当委員会を通過しようとしたときにそれが流れたような経験もございます。その際九州、山口地方の熱心なる議員の諸君によってさような議がまとまったのでありますが、当時の法案といたしましては、台風常襲地帯ということにしぼったのであります。しかるに台風常襲のみならずこれに伴う風水害あるいは今回の七・二六事件等の被害がひんぱんにやって参っておる現実であります。これは何とかして災害常襲地帯に対する特別措置法を政府といたされましても考慮していただくべきだと私どもは痛感いたしておるのであります。もっとも私どもの乏しい経験ではありまするけれども、先般台風常襲地帯に関する特別措置法を立案いたしましたときに、技術的に、たとえば台風常襲地帯をどの地域にしぼるかというようなこと、あるいはその被害対象をどうするとかいうようなことで立法技術上はいろいろ困難な問題があろうとは思いまするけれども、しかしながらこの頻発する天災を特別措置を講ぜずしてその都度その都度というわけには参らぬと思うのでありまして、従って恒久的立法措置をする必要を痛感しているのであります。幸いに最も災害等に関心の深い両大臣がこの席へ御列席になっておりますので、この点に関する政府の御所見を伺いたいと思います。
  21. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の九州、四国あるいは中国の一部が年々台風に襲われている常襲地帯だ。そのためにこれらの地区に対する特別措置法という声はわれわれも前から聞いておるのでございますが、石坂委員御自身で御指摘の通り、立法上かなりむずかしい問題がたくさんあるのでございまして今この席上においてどうするかということはなかなか困難だと思います。皆さんの御意見を十分に閣議に反映いたさせまして今後研究いたしたいと考えております。
  22. 石坂繁

    石坂委員 大臣の特にこの点についての御考究をお願いいたしたいと思います。建設大臣に対する私の質問はこれで一応終ります。
  23. 小枝一雄

  24. 田口長治郎

    ○田口委員 建設大臣に対しまして二、三お伺いいたしたいと思うのでございます。災害があるたびに原形復旧、こういうことが原則になりまして、まるでさいの河原に石を積むというような状況で、たびたび同じことを繰り返しております。今回の長崎県の災害地を回ってみますと、高来町方面に行きますと、もう四回も同じところの堤防が切れておる。そのためその下にある住家がそっくり流失しておる。これは川が回っておりまして、川の底の方が高くて、住宅地の方が低い。そうして直線にこう必ず切れるのでございますから、何かこっちを廃して、ここに新たに河川を作ることができますと、あの家屋が流れ、人が死ぬというような災害を繰り返さないでよいと思うのでございます。そういうような場合が多々あるのでございますが、どうもその原形復旧という原則にとらわれて、今日までそういうことがうまくいってないようでございます。建設省にいたしましても農林省にいたしましても、今日は大蔵省でも、大体改良工事はやむを得ぬだろうというような意向も相当強いようでございます。ただ法律関係もありましょうが、会計検査院関係でどこも困っておられるようでございます。これは法律そのものから改正をしなければならぬ問題とは思いますけれども、こういうような災害復旧では全く国費を乱費しておるという傾向にあるのでございますから、法律の改正は国会開会でなければできませんけれども、この点を一つぜひ御配慮下さいましてやはり効用復旧、こういうことを原則にしてぜひ一つやっていただきたいのでございます。建設省にいたしましても、農林省にいたしましても、その関連工事がある、あるいは改良工事がある、こういうようなことをよく言われますけれども、この関連工事にいたしましたところで、改良工事にいたしましたところで、金額はわずかでございますから、この方の予算をうんと取っていただいて、そしてやっていただくことができるならば、それでもよろしゅうございますが、何とかこの効用復旧ということを主眼に置いて原形復旧という弊風をこの機会に打破していただきたい。この点が第一点でございます。  第二の点は、今度の災害地をずっと見て歩きますと、いわゆる準用河川以上は別としまして、各町村にある普通河川、小河川が相当ひどくこわれておってこのために耕地がすっかり荒廃しておる。こういうような状態になっておるのでございますが、これが河川工事は単独でやる、あるいは農業関係はまた単独でやる、こういうことになりますと、非常に非能率的でございますし、また実際に困る問題があると思うのでございますから、小さい河川一つの用水路的の関係もありますから、この点建設省と農林省とよくお打ち合せ下さいまして、両方を並行してうまくやっていただく、こういうことを第二にはお願いをいたしたいと思うのであります。  それから第三点といたしましては、大臣ごらんになりましたあの諫早の本明川は、歴史的にたえず災害があっております。そうして今回は約千名近くの人命を奪っておるのでございますが、歴史的に見ましても五百人程度の人を殺しておるというような悪質の河川である。こういうような特殊性を持っております。しかしながら今日まで建設省直轄河川として指定されるのにはいろいろな標準があると思いますが、こういう特殊の河川は何とか一つ直轄河川指定していただきまして、国の力によってかような惨害を再び繰り返さないような思い切った施設をぜひやっていただきたい、かように考えるのでございますが、一つ本明川をぜひ直轄河川に取り上げていただきたいということを大臣にお願いする次第でございます。以上三点につきまして御答弁をお願いしたいと思います。
  25. 根本龍太郎

    根本国務大臣 災害復旧につきましては、国庫負担法によりまして、原則として原形復旧になっておることはお示しの通りでございます。しかしこれまた御指摘の通り毎年々々原形復旧のために、経済効果がかえって減殺され、国費乱費になるということも、事実具体的な例があるのでございます。そこで建設省といたしましては、ぜひ国庫負担法を改正いたしまして、災害復旧には原形復旧を原則とするという建前だけではなくて改良工事を加えて実質的に災害の防除に万全を期するという方向に進めたいと思いまして、先般も私は閣議においてその点を発言して閣僚各位の御協力を願ったのでありますが、これは御趣旨に沿いまして努力したいと思います。なお現実の問題といたしましては、今回は現地におきまして関連工事あるいは一定改修というような現行制度を行政的に最大限に活用して、実際に適応するごとくに査定もしくは指導するようにいたしておりまして、この点は従来より相当改善されることと考えております。  第二点の小河川改修とその付近の用水あるいは土地改良との関連を十分に考えて総合的に措置すべしという御要望でございますが、これもごもっとものことでございまして、これまた現地におきまして関係者並びに県にその方面を御指導していただくようにするとともに、農林大臣とも十分連携をとりまして現地において適切なる関連作業をするようにお願いしておる次第でございます。  第三点の本明川の直轄河川指定の問題でございますが、これは私が現地に参った際も強く県当局並びに関係者から要望されております。そこで九州地建の技術者を動員いたしまして、今厳密なる調査をいたしておりまして、その結果に基いて御趣旨に沿うようにいたしたいと考えておる次第でございますが、これは調査の結果を見てはっきりと裁定いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいまの大臣の御答弁によりまして大体了承ができるのでございますが、第一点の効用復旧の問題です。大臣のお考えはよくわかりましたが、具体的に関連工事だとかあるいは改良工事だとか、この予算を新たに要求されて、そしてお考えのような方向に持っていかれるつもりでございますか。あるいは今ある予算で今回の災害の分だけは大体間に合うというお考えでございますか。どうも従来は関連工事あるいは改良工事でやるということで、原則はそうなっておるのですが、予算の関係でなかなか徹底しないで中途半端になっておるのでございますが、今回だけはどうしても徹底した効用復旧をやっていただきたい、こう考えるのでございますが、予算関係はどういうことになっておりますか。
  27. 根本龍太郎

    根本国務大臣 予算はございますが、まだ最後の査定が参っておりませんからどの程度まで間に合うかどうかは、私は現在はっきり数字を持っておりませんから申し上げられませんが、しかし本年その方針で査定しておりますれば、足りない分は来年また——どうせ一年で全部できるわけではありませんからこれで運用できると考えております。先ほども申しましたように、これはいわば現行法の運用の妙でやっておるだけでございますから、本質的にはやはり国庫負担法の改正を必要とすることではないかと考えております。
  28. 田口長治郎

    ○田口委員 最後に一点だけお伺いしておきますが、今長崎県、佐賀県方面におきまして一番問題になっておりますのは地すべりの問題でございます。今度の災害なんかにいたしましても、諫早市は別でございますけれども、三人死んだ、十人死んだという各町村の死者というものは、大体この山くずれ、地すべりで参っておるような状態でございます。現に日々多少ずつすべっておるのでございますが、そこの住民に対して退去命令も出せないというような状態で非常に戦々きょうきょうたる日々を送っておるような状態でございますが、この地すべりにつきまして根本的な立法措置か何かお考えになっておられますかどうか。その点をお伺いいたします。
  29. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御質問の点はこれまた現地において関係各方面から強く要望されておりまして私も帰りましてから閣議にその様子を報告するとともに、省内におきましても、次の国会には地すべり対策に対する立法が必要であると考えて今立法の準備を進めておる次第でございます。御指摘の通り現在においても非常に危険なところであるからというので知事あるいは市町村長から退避を勧告して——法的拘束がないから実質上は勧告にすぎないのですが、それがなかなか守られない。またそういう権利をある意味においては放棄せしめたり、私有財産の一部を拘束するということは、立法措置がなければどうしても工合が悪いという点もございますので、御趣旨に沿いまして十分に検討の上次の国会には提案いたしたいと、目下検討中でございます。
  30. 田口長治郎

    ○田口委員 私の質問はこれで終ります。
  31. 小枝一雄

  32. 稲富稜人

    ○稲富委員 建設大臣に二、三の点をお尋ねしたいと思います。  最初にただいま田口委員の質問がありましたが、それと関連した問題についてお尋ねしたいのでありますが、諫早の本明川の直轄河川の問題であります。これはすでに大臣御承知であろうと思うのでございますが、実は以前あれは諫早市と長崎県との間に政治上の問題があって、そして長崎県があの堤防工事を途中で中止をしたという事件があるのであります。それがために今度の災害が非常に大きくなったので、あの地方では今度の諫早の被害は、天災にあらずして人災である。そして棺おけを知事官舎まで持ち込んでいけというような問題さえ起っておるのであります。そういうような問題を過去において起して、そして今度はあれほどの被害をこうむっているのであります。この問題はすでに大臣はその事情を御存じであるかと思うのでありますが、そういうことがやはり直轄河川にしなければならないという非常に重大な問題となってきているのであります。これは長崎県のみならず、堤防工事だとか河川工事復旧というものが政争の具に供されて、そうして当然やっておった工事を途中で中止するというような問題が将来もしも起ることがあるとするならば重大な問題であります。こういう問題に対して建設省としてはどういう考えを持っておられるか。そういう問題に対しては、これを未然に防ぐように自治庁等を通して十分監督をして、そういう不都合を来たさないように将来処置する、こういう決意があるかどうか、この点をこれに関連して最初にお伺いしておきたいと思います。
  33. 根本龍太郎

    根本国務大臣 本明川の改修に関して、いろいろのいきさつがあったということは、この前の建設委員会のときも一部から聞いております。ただしその実態について私は明らかにしておりませんので、どういう経緯でどういうふうな結論になったか、これは私よく存じておりません。ただしこれは直轄河川でありませんので、結局は県から申請されて、それについて政府は予算措置なり指導をいたすことになっておりますので、地元市町村と県との経緯について、これは直接政府からどうこうしろという態勢を今まではとっていないのでございます。その点はお含みおきを願いたいと思います。  なお問題は、直轄河川に早くせよという御要望のようでございますので、この点は工事の性質上、あるいはまた工事量の観点からいたしまして、赤字団体である、そしてまたああいうふうな深刻なところにおいて、これを従来の基準通りにしておくことが果しうていいかどうか考えなければなりませんので、私はでき得るだけ御要望に沿うて、直轄河川にするケースが強ければそれにできるだけしたい、かように考えている次第でございます。
  34. 稲富稜人

    ○稲富委員 私この際大臣に特にお尋ねしたいと思いますことは、最近降雨量に非常に変化があったのであります。最近の降雨量を見ますと、かつて見なかった降雨量というものが非常に被害を招来しておる。ところが日本の河川計画というものは、従来の降雨量というものを基礎にして立てられておる点がございますので、最近のように降雨量が非常に増加する際においては、やはり河川計画というものをもう一度立て直す必要があるのじゃないか。そうして恒久的な災害対策というものを河川に持たせる必要がある、こういうことをわれわれ考えるのでございますが、これに対して建設省はどういう考えを持たれておるか、ざらにただいま申し上げました直轄河川ならざる河川につきましても、やはりそういう点から申し上げまして、たといこれは県庁がやるとか、その他自治体がやるものにいたしましても、ある程度の総合的な一つの計画を、検討して国として立てる必要があるのではないか、こういうことによって河川計画を一つ再検討する必要があるのではないかと思うのでございますが、これに対してどういう処し方を考えておられるかということでございます。
  35. 根本龍太郎

    根本国務大臣 最近の豪雨、地区的に非常に従来の降雨の分布状況と変ってきておるということは、特に本年において言われておることと存じます。しかし長い統計を見ておりますと、必ずしもそれが年々繰返されるというわけでもないというところに、非常にこれは困難な問題がございまして、どうもこれは日本のみならず、最近各国とも降雨並びに気温が非常に変調を来たしておるというので、まだ的確な統計的な資料をもって判断することはできませんが、そういう傾向のあることは十分これは考えなければならぬと思います。従来の計画水量による工事の施行が、場所によって相当これは危険な状況のある点もあるようでございますので、これは現地地建方面の検討を待って、数年間そういう状況が続くというような結果が出ますれば、これは従来の計画を、若干かさ上げするなり、あるいは上流に砂防工事あるいは多目的ダム等を洪水調整のために作らなければならぬ、かように考えております。  それからその次に御指摘になりました直轄河川にあらざる中小河川等において、従来のような計画ではなく、今までは準用河川なり、あるいは直轄河川だけを政府が総合的にやっているけれども、中小河川以下についての総合的な検討がまだ足らぬではないか、こういう御指摘のようであります。この点は実は建設省におきまして治山治水の総合——これは図表等、従来の若干の資料によって作ったものがあったようでございますので、本日ちょっとひまがありましたので、その資料を見てみますと、日本の河川を大中小と合せまして全面的に災害防除の目的を達成するために工事をするとすれば大体一兆八千億かかるという計算が出ておるわけであります。これではあまりに大きいので、小河川に至るまでは国で計画を立てるわけに参りませんので、各都道府県の治山治水に関する計画と相関連しまして総合的に調整したい、こういう意図を持っておるのでございます。従いまして、あとで御指摘になりました問題については、今後各県の知事さんたちとも十分連携の上に総合的な措置を講じないと、今回見られるように従来の計画された方面でない一つのエア・ポケットが非常に惨害を受けたというお話で、これからその方面について検討の必要を認めておる次第でございます。
  36. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま建設大臣は、降雨量が本年度特に多くなったとおっしゃいますが、これは本年だけの問題ではありませんで、二十八年のときにも論じられた、二十八年のときにあの被害が大きかったということも、いまだかつてない雨量によって二十八年のあの大災害をこうむったへその当時からやはり降雨量に応じた河川計画というものを立て直さなければならぬということは十分論じられておる。しかしそれもそのときだけの問題だということで、おそらく流されたのだろうと思います。そういう問題が年々再々繰り返されておりますので、今年だけの問題だというのではなしに、一つここに総合的な計画を立てなければならぬのではないかということをわれわれは相当強く考えるわけであります。ことに直轄河川等の河川の改良等ができますと、おのずからまた水流というものは変ってくると思うのです。従来は逆流しなかった河川がこの直轄河川河川改良のために今度は逆流するような場合もあり得ると思うし、これが水田等に冠水するという問題が非常に多い。そういう点から私たちは国として直轄河川だけの河川計画をやるのではなくて、やはり河川全体の総合計画を立ててやらなければこういう点が非常に不ぞろいになるのではないか、こういう点から私たちは、どうしても河川計画というものは中小河川は県にまかせるのだというのではなしに、やはり一応計画は国としての総合計画を立てて、そうしてこれを県にまかせるものは県にまかせるということは第二段の問題でありますが、やはり河川計画というものは降雨量、あるいは直轄河川河川計画と同時に、当然総合的に行わるべきものだ、こういう考えをわれわれは持っているわけであります。この点に対して大臣のお考えを承わりたいと思います。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の通り災害の防除それから常日ごろにおける水利の利用等を考えます場合、やはり水系別の総合対策がなければならぬと考えております。その意味において先ほど申し上げたように水系別にこれを完備するということで一応の概算をいたしますと、先ほど申し上げましたような一兆八千億もかかるというような計画が出ておりまして、なおこの点は財政負担の問題もございますので、お示しの点は技術的には十分に研究をいたしまして、その後国でやるものとあるいは地方自治体でやるものとの仕分けをなさなければならぬと思いますが、概括的なことはできておりますが、専門的に各水系別にやるということは大へんな事業でございまして、従ってやはり全国の河川全部について調査することはできないでしょうけれども、御指摘のように台風並びに豪雨の毎年来るいわゆる常襲地帯については、できるだけ早く各水系別に総合的な調査研究の上対策を立てたいと考えておる次第でございます。
  38. 稲富稜人

    ○稲富委員 なお次にお尋ねしたいことは、今度の災害におきまして相当な死亡者、行方不名者が出ております、これに対しましてはすみやかに見舞金その他の方法を講ずることと思いますが、これに対して政府はどういう考えを持っておられるか。これはあなたの所管外かもわかりませんが、わかりましたらこの際一つお示し願いたいと思います。
  39. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今回の災害は、非常な特色として人命の損傷が非常に大きいことであったのであります。私も現地に参りましてその悲惨な状況を見て、全く言語に絶する状況でございましたので、さっそく現地から官房長官に連絡をとりまして、できるなら見舞金その他の措置を講ずべきものだという意見具申もいたしておるのでありますが、現行におきましてはこれはなし得ないという態勢なのでありますので、この前の前の閣議におきまして、私は将来ともこの問題はあってはならないことであるけれども、またないとは保証し得ない危険性がある、従ってこういう場合における見舞金制度かあるいは何らかの措置を講ずる必要があるということを発言いたしたのであります。これは本来いえば厚生省所管が一番適切かと思いまして、厚生大臣にもその検討をお願いしておきましたが、その際に郵政大臣から、これはその場における一つの構想として述べられたのですが、それは御承知のお年玉はがきの問題でございます。これに関連しまして、これは社会公共の費用として充てておるのでありますが、あれの一部を災害を受けた場合における見舞金並びに罹災者に対する見舞金に活用してはどうかというような構想も、ちょっと席上に述べられたわけでございまして、そういう問題等をもあわせて政府として考えていただくように発言しておりましたので、官房長官を中心としてこれは検討されるものと私は期待しておる次第でございます。
  40. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは私、この間党を代表いたしまして、この災害対策に対する申し入れをいたしまして、そのとき官房長官に会ったのであります。そのとき官房長官といたしましては、たとえば行方不明者に対する見舞金のごときものは、国としてこれをやる方法はないので県でやってもらう、県で何がしかの見舞金というようなものを出してもらえば、その金額は特別交付金にプラス・アルファして国は見るつもりだ、それは各大臣にそのことを話してあるのだ、それで委員会等でそういう質問があった場合には、そういうことをはっきり言ってもいいということを自分は言ってあるんだということを官房長官ははっきり言っておりました。それでもしもそういうことがあるとしますならば、非常にこの問題は県当局は困っておるのでありますから、そういうような政府の方針であるということは示してやったらいいと思う。きのうあたりの陳情を聞きましても、そういうことを知りません。官房長官は現に建設大臣にもそういうことを話しておるということを言ったと思うのでありますが、今のあなたの話を聞きますと、はっきりあなたはそういうことを言われません。そういうことは非常に具体化しておるように聞いておるのでありますが、そういう事実はないのでございますか。私たちにうそを言われたのですか。官房長官が言ったというと重大な問題でございますが、その点念のために承わっておきたいと思います。
  41. 根本龍太郎

    根本国務大臣 政府の番頭役としての官房長官が言ったことにうそ偽わりはないと存じます。ただ、今私が申しましたように、現地から私が連絡をしたときにも最善の努力をする、しかし現在どれだけのものを出すかということについてはまだ結論が出ていないということであります。閣議において私が、これは政府として何らかの措置をする必要があるということを申し上げたことも事実であります。これは赤城農林大臣も同席でありますから、よくわかっておることと思います。それで、官房長官が府県において見舞金を出されて、その跡始末を特別平衡交付金でやるということを言われたとするならば、これは自治庁からおそらく関係県に言っていくのが筋でございまして、見舞金の問題について建設大臣からそういうふうに連絡する筋合いではないと思いますので、その意味において、あるいは私の方に個々別々に言わないで、総括して自治庁長官から処置しているものかとも思います。そういう状況でありますので御了承願いたいと思います。
  42. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは実は、私たちが官房長官に会いました前にもう建設委員会をやっておった、そして建設大臣からそういうような意思表示はなかったということをわれわれが言ったから、それは知っておらなければならないはずなんですがという話があった——私はあなたの方は所管違いであるということは十分知っております、しかしながら建設大臣もそれは知っておるはずだという話がありましたのであなたに聞いたのです。一つその点官房長官にあなたからも念を押していただいて、そういうことが政府として方針がきまっておるならば——自治庁あたりからもまだ県にはそういう達しはいっていないようです、きのうここに来ました熊本県の県知事等もそういうことを知りませんでしたので、せっかく方針が国で立っておるならばすみやかに各県にそれを示達いたしまして、安心して県がそれに処せるような方法をとってやることが非常にけっこうではないかと思いますので、この機会に特にそれを要望しておきたいと思います。  最後に、私は一点だけ建設大臣にさらにお尋ねしたいと思いますことは、こういう災害復旧の急を要することは、建設省あるいは農林省所管として常に非常に復旧を急がれることは当然であります、ところがいつも行き当るものは予算の関係で、大蔵省がうなずかないということでおくれがちでありますので、今回は特にそういうことがないようにわれわれは考えたいと思う。ことに私が最も遺憾に思いますことは、たとえば二十八年の災害の当時のごとく、あらゆる委員会その他の機会におきまして、本年度のような大災害に対しては当然三カ年間の継続事業で一切を完了するのだということでしばしば国は意思表示をやっております。それで地方自治体におきましてはそれを信じて、ほかから金の借り入れをやってこの仕事を完成したということもある。ところがその後財政に対する都合があるということで、今日もまだ十分なる補助金をやっていない、せっかく補助額を決定いたしましても、それが長引くためにあるいはほかから借り入れた金利を支払うためにその恩恵に浴することができないという、逆な悲惨な結果が生じている場合が多いのであります。こういうことに対しましては担当大臣としては責任を持って処していただかなければ、かえってだまされたということになりますので、一つ今度のこの災害に対しましては、かつて二十八年度災害のときのような政府罹災者にうそを言わない、こういう方針で処してもらいたいと思いますが、これに対するあなた方の決意のあるところを伺って、みんなが安心するようにしていただきたいと思うのです。
  43. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の通り災害復旧につきましては、国庫負担等の建前からできるだけ早期にこれを復旧しなければ、罹災者はもとよりのこと、国の財政上も究極において損になると考えております。ただし、年度別どういうふうな割当にするか、これは一応ありますけれども、できるだけ大蔵省の協力を求めて完成するように努力をいたす気持でおります。その意味におきまして、私、現地に行って帰っての報告の際は、災害復旧はできるだけ短かい年度のうちに完成しなければ、特に災害が常襲地帯でございますのでますます傷が大きくなるということで、特に関係閣僚の御理解を要望するとともに、大蔵大臣に対してその点は強く指摘しておいたのでありますから、大蔵大臣も十分今度は認識しておられるように思いますので、一生懸命努力いたしたいと思っております。
  44. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して二点だけお尋ねしたい。与党の諸君がなかなか熱心に質問いたしましても与党であるだけに急所をなかなかついておりません。これではおそらく被害民ははがゆい思いをするであろうということから関連質問をするわけであります。今度の災害は、従来の机上の考え方あるいは官僚の考え方をみごとに打ち破ったのであります。それにもかかわらず従来のような原形復旧というような考えでは、災害に対処できないのではないかと思うのです。この点、石坂委員から尋ねておりますのは、いわゆる原形復旧できるようなところもなお改良復旧すべきだ、こういう意味であります。私のこれから聞かんとするのはそうじゃない。建設大臣説明あるいはわが同僚委員視察に行きました結果の報告によりますと、相当の渓谷あるいは小河川災害にあっております。小河川とか、あるいは渓谷とか、あるいはそれ以上の水源地ということになりますると、これは原形復旧をやろうと思いましても原形復旧はできるものじゃない。従ってこれは災害復旧ではない。災害復旧という観念ではやれない仕事なんです。新たな角度で災害対策を講ずるのであって、災害復旧の観念じゃない。大体原形復旧なんというものはできるものじゃありません。そこでなお国庫負担法は原形復旧だなんといいましても、原形復旧できないところに災害復旧をやろうとするところに、頭の切りかえが必要なのじゃないかと思うのです。従って従来の法律に基いてやることではとうてい被害民の要望に沿わないと思うのだが、この点について何か別に考え方があるのか、この点を伺いたい。
  45. 根本龍太郎

    根本国務大臣 公共事業対象にならざる渓谷のようなものは原形復旧はできない、これはほうっておくのかということでありますが、御承知のように、これは緊急砂防でやらなければならぬ問題でありまして、これはそのように指示いたしております。それから今まで渓谷であって河川の問題ではなかったけれども、今回のような災害によって一つ河川というように取り扱わなければならぬというような状況に変ったもの、あるいは流路が全面的に変って、これは御指摘のように原形復旧にならぬわけであります。そういうところについては、先ほどの石坂委員の御質問にお答えしたごとくに、調査の結果新たに準用河川なりその他のものに指定する必要がある場合には、指定して措置するというような方法も考えておる次第でございます。
  46. 川俣清音

    ○川俣委員 そこでお尋ねしたいのですが、小河川であれば、直轄河川ではない。従ってこれは地方公共団体がやるものか、建設省が受け持つのか、この点はどうなんですか。
  47. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは直轄河川となりますと、相当の延長、工事量の多いものについてやっておるのでありまして、そうでないものは中小河川なり準用河川にいたしておりますから、それは調査の結果によって決定したいと思っております。
  48. 川俣清音

    ○川俣委員 調査といいましても、重要河川であったりあるいは直轄河川であれば、これはあなた方の調査対象になる。調査対象にならないところの災害対策ですから、進んで建設省がおやりになるつもりなのかどうかということなんです。地方公共団体調査に待つのか、あるいは建設省がやるつもりなのか、この点が明確にならないと、調査の上、調査の上といっても、調査対象にならなければ、いつまでもこの問題は片づかない。この点どうなんですか。
  49. 根本龍太郎

    根本国務大臣 小さな渓流とか、そういうようなものは原則として府県が調査しております。県の方からの申請に基いて政府がこれを総合的な観点から決定するのでありますが、その調査自身が、非常に手が足らないので、これには非常に困難しておるというので、各県から約五十名、地建から十五名、これは応援隊を出してやっているわけです。それほどまでにして県の調査が進行するように措置するとともに、直轄その他の問題については、地建みずからが調査査定しておる、こういう状況であります。
  50. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がないから重要なる点だけお尋ねいたします。たとえば農地復旧の場合、あなたの方は宅地造成で、せっかくの農地をも、熟田地をも宅地に造成している。今度のような場合でも、いわゆる農地復旧をしてそれから宅地にまた変えていくということよりも、やはり宅地としての復旧が望ましいようなところが起っているんじゃないかと思われる。ところが従来の法律では、農地復旧し、それから宅地にしなければならない、こういうことになっている。これは個人的にもまた地方的にも非常なむだなものじゃないか。やはり熟田はなるべく宅地にしないようにした方がいい。こういう災害が起きたときには、農地復旧して宅地になることよりも、直接やはり宅地として効果あらしめた方が、土地利用度も高いんじゃないか、こういうような点についての検討が足りないと思うから——これは返答は要らない、検討を願いたい。  今度は質問です。一体建設省と農林省の砂防工事の限界はどこに置いておられるか。山を治めるのは林野庁でもあるようでありますし、これはときどき問題になる。どこの上流までが建設省の所管であり、どこからが農林省の所管か、この所管のエア・ポケットが投げやりになる場合がある。明確な区別がありましたら聞かしていただきたい。なければ、追って書面で願いたい。
  51. 根本龍太郎

    根本国務大臣 砂防につきましては、これは川俣さん御専門でよく御存じのように、決してエア・ポケットがあるわけでございません。所管は違いましても、渓流の方になりますれば、これは建設省でやっております。山腹の方になりますと、農林省所管でやっております。これは一般的なあれでありますが、砂防工事個々について協定をいたしております。どの範囲までは農林省でやる、それ以上のところは建設省がやるというように渓流別に個々に協定してやっておりますので、エア・ポケットはないというふうに御了承願います。
  52. 川俣清音

    ○川俣委員 エア・ポケットばかりじゃない。二重の施設をやっている。今度の会計検査院の指摘条項に、建設省も予算を取り、農林省も予算を取っている。同じ個所に二重に国費が使われている。これはエア・ポケットでない。二重投資である。あるところはエア・ポケットになる。これはやはり限界をきめて、渓流ごとにきめる。重要河川の上流は——上流といっても、山腹であるか、渓谷であるかということは問題なんです。雨量が多ければ渓谷になり、水がなければ山腹になる。山腹か渓流かということは、水の量によって違う。ですからそれは区別にならない。ただ抽象論では、エア・ポケットはない、二重投資なんかないことになっているが、現にある。統一された内閣だそうですから、不統一の内閣でないそうですから、この際すみやかに統一した方針を立てられたらいいじゃないか。立てられたならば、書面で一つ委員会に御提出願いたい。  以上で質問を終ります。
  53. 小枝一雄

    小枝委員長 それでは建設大臣に対する質疑はこの程度にとどめます。農林大臣に対する質問を許します。山田長司君。
  54. 山田長司

    山田委員 今回の西九州地方におきまする水害に当りまして、大水害でありますので、岸総理を初めといたしまして、農林大臣あるいは建設大臣等が災害地に行かれましたことにつきましては、われわれも、今までにないことでありますし、なかなか機宜を得た処置として実は感服しておったわけでございます。しかしこの感服も、りっぱな対策があってこそ初めてあなた方が現地に行かれた処置に対する国民の感激が起るわけなんであります。この対策なくしてただ飛行機で飛んでいってビラをまいたからといって、それで感激するものではないと思うんです。私は今ここで大臣に伺いたいことは、まず第一に耕地関係であります。農業及び農業施設災害復旧につきましては、十万円未満のものは国庫補助対象になっていない。これは先ほど長崎県からも陳情書が出ておるようでありますが、各府県とも、かなり九州の今回の局地的な災害と同じような事件が起っておると思うんです。これについて何か小災害に対しても立法措置を講ずる意思があるかどうか。ぜひ農林大臣として、これからも起るであろうところの小災害に対しても、どうしても何らかの明らかな対策を立てなければならぬと思うんです。これについて大臣はいかなる御所見をお持ちになっておるか、まず最初に伺いたいと思います。
  55. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現地災害地域を見まして、非常に災害がひどいので、十万以上の工事になる該当個所が多いと思います。しかしだんだん見てみますると、必ずしも十万円以上の工事費に該当しないものもあるようであります。いろいろ規定もありまして、私は現地査定の指導に当りまして、現在といたしましてなるべく一団地として、近いところの災害はこれは五十メートル以上離れてはいけないという制限はありますが、なるたけ団地として十万以上の工事費以上にまとめて査定をしていくように、法律の制約もありますが、制約を越えるわけには参りませんけれども、そういう指導をしております。それからまた今御指摘のような十万以下の工事につきましては、北海道の二十八年度の災害の例もありますので、よく現地からの報告をとりまして、研究の上対処したいと思っております。立法措置が当然要ることでありますから、それに対処すべく今十万円以下の工事の個所等につきまして調査中でございます。
  56. 山田長司

    山田委員 ただいまの問題につきましては、現地調査ということでありますから、一応調査の結果についてさらにこれが対策をお立てになっていただきたいと思います。  第二点として伺いたいことは、農地復旧の個所の困難なところが、実は過日私も現地に行って参りまして、その個所を見てきておるのです。大臣もおそらく見てきておられると思うのです。こういう場合に零細な農地を持って何十年もの間農事に従事していた人たちが、もう農事に従事できなくなってしまっているのです。これについての就業の道というものを政府は何らかの措置でやはり考えなければならぬと思うのですが、これについての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第一の問題といたしましては、今九州の方には査定官を五十六人現地の方に出しております。それは各県から招集して出ておるのでありますが、災害査定を非常に早くするようにこういうことを進めております。災害査定が早く済みますれば、当然災害復旧工事を進めなくてはなりませんので、その工事にとりあえず就労してもらう、こういう措置を講じたい、こう考えております。
  58. 山田長司

    山田委員 各県では相当の人員を動員してこれが調査をやっておられるということは、やはり現地で伺ったのですが、そのあともおそらく対策を立てておられると思うんですけれども、とにかく二百十日も間近かになってきておるのです。きのう、おとといの九州地方に、ややもするとまた豪雨が来るやもしれないというような新聞報道がなされておった。こういう状態のとき、山津波の個所が各所たくさんあるわけですが、何か抜本的な処置がほんとうにとられなければ、また同じような災害が必ず起るような気がするのです。そういう点でやはり何らかの——ただ地方から人を集めて、その人たちが今盛んに調査をやっている。これは次の復旧工作のためにやむを得ないことでしょうけれども、何か抜本的な措置が講じられなければ、いつ何どきまた同じような事態が発生しないとも限らないのですが、何か抜本的な処置はないのですか。
  59. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 熊本天水とか河内芳野、松尾等につきましては、すでに林野関係で設計を作りまして、従来よりも強固な対策をとっております。しかしそれだけで足りるとは思っておりませんで、実はこの間佐賀へ参りましたときに地すべり対策につきまして、佐賀県で県条例を作りまして、地すべりの非常に予想されておる場所が相当ありますので、そういう人々を避難させたい。しかし避難をさせるにつきましても法的措置がないし、補償の方法がないので、危険と知りながらそのまま捨てておいたのだけれども、今度の災害にかんがみまして、とりあえず県といたしまして移転を奨励するといいますか、移転を進めて、移転する場合に融資として一戸三十万円のあっせんをする、こういうような条例がちょうど私が佐賀に行きましたときに可決されておりました。こういうような事例は各県にも起ってきて、各県ともそういう避難対策についての条例などができるんだろうと思われます。こういうことに対処しまして、国といたしましても建設省と今協議中でありますが、避難あるいは補償という問題につきまして立法をすべきではないか、こういう考え方で立法措置を進めております。しかしこれは消極的な問題でありますから、積極的に地すべり等を予防するということに対する必要が痛感されるわけでありますが、これにつきましては林野庁当局もやり方、工法等に工夫をこらしておりますので、相当やっていける、確信とまではいきませんが気持を持っております。ことに島原などにつきましても、今までずいぶん地すべり対策を講じておったのですが、さらに工法といいますか、やり方をかえてこれを徹底的にやる、現在の予算におきましても相当ありますので、その予算の範囲内においてもやりますが、なおさらに予算を取って徹底的にやる、こういうことで進めておるような状態であります。
  60. 山田長司

    山田委員 ただいまの大臣の話を聞いていると、もう少し具体的に話が進まなければ、私は再び災害が起ると思うのです。あれだけの山が、何百メートルの間がずっと地すべりしておるのですから……。徹底的な処置を講ずるというけれども、ただ徹底的な処置を講ずるだけではだめなんです。要するに今避難命令に三十万円あっせんするというけれども、これはくれるのですか、貸すのですか。問題はあっせんするということであっせんしてやってやはり返すのでは、あなたも百姓出ですから知っていると思うのですが、借りるということは子孫永劫借金を伝えるものだ。三十万円あっせんするというようなことでは地すべりの隣の人だってなかなか動きやしませんよ。あなたはどう考えているか知らぬけれども。避難の進め方を県の条例できめたといっても、必ずしもこれを承服してそこから立ちのくということは考えられない。そういう点でやはり立法処置が必要です。臨時国会でも開いてどんどん進める対策をあなたみずからやる必要があると思うのですが、どうお考えですか。
  61. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大へん誤解があるようですが、三十万円の融資をするというのは、私の方で融資をするというのではなく、県の条例でそういう方法をとっておる、赤字県でもそういう方法をとっておるから国としては捨てておけない、そこで今立法措置を講ずべく進めておるのです。だから私が三十万円出すというわけでもなければ、国の方でもそういうことで対策ができるという考え方ではないのであります。ただ県の方でそういう機運もありますから、国の方としてももっともっとやらなくちゃならないので立法措置を講じよう、こういうことでありますから御了承願いたいと思います。
  62. 山田長司

    山田委員 国の方では立法処置を講じておるというけれども、立法処置と同時に現地対策というものが必要なんです。徹底的に何か対策を立てるというようなことを言っておるが、今でも雨が降れば、何も大きな暴風でなくてもあの場所はかなりまた土砂くずれしますよ。あなた見てきてそういう印象を受けなかったですか。これは必ず起るということを建前にして徹底的な処置を講じなければいけないと思うのです。この点があなたのお話ではどうも徹底しないと思う。そういう点を立法処置の問題と並行して——今、痛感しておるから根本的に考えておるというような話だが、一体それではいつごろそれを完成して国会に出そうとしているのですか。
  63. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国会が開かれればいっても出したいと思っております。それから災害地天水等につきましてはすでに設計も作ってこれを防除するだけの工事にかかりかけておりますので、そういう点も一つ御了承願いたいと思います。
  64. 山田長司

    山田委員 そうすると各省とも地すべり対策にかかっておる、こういうわけですね。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今とりあえずは災害の方の分にかかっておるのでありますが、そのほかの分につきましてはまだかかっておるという段階にはいっておりません。
  66. 山田長司

    山田委員 天水のあの惨劇の場所も大臣は見ておられると思うのですが、地元人たちに言わせますと、あの金峯山の上の方に林野庁で管理しておる国有林がある、あの国有林をかなり乱伐したためにあの大きくくずれた個所が出たのだろうということなんです。そしてさらに地元人たちは、あの場所を管理したいと何度も払い下げを申請しているけれども、これについて何らの誠意がなかったと言っておる。あれだけの、ほかの国が持っておる場所に比較すれば問題にならぬほどの小部分ですが、一体どういうわけで国は払い下げなかったのですか。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私が出かけていきましたときには、一部にそういう話があることも聞きましたが、町長その他にも会いましたがその話は直接聞きませんでした。ただ伐採の点については、戦争中に伐採したが、それが直接の原因でもなかろう、非常に水位が上ったのでそれが大きな原因だという話を聞きました。国有林の伐採によってあの災害が生じたというふうには私は聞きませんでしたが、一部にそういろ話はあったようであります。  それから払い下げの問題も正式に私どもは聞いておらなかったのであります。また現地でもあえて払い下げを希望するというような話は、長い時間でありませんでしたから出なかったのかもしれませんが、まだ聞いておらなかったような次第であります。
  68. 山田長司

    山田委員 あなたの耳に入らなかったのかあるいはあなたが不注意に地くずれ状態をただ傍観して見てこられたのか知らぬけれども、あそこに行かれますれば、あそこのくずれておる個所は国有林の二個所があの決壊の大きな原因になっておるということは、これは見ただけでわからなければならないはずです。どうかこの点については、林野庁当局で厳重に一つお調べになっていただきたいと思うのです。そのことについて何か地元からの払い下げ申請について許可を与えなかった理由——あるいはこれが今度の災害の大きな原因になっておると地元ではいっておるが、これが事実であるとするならば、私は農林省としても地元で五十何人が地下に埋没してなくなっておるのですから、このままにしておくわけにはいかぬと思うのです。どういう点がその理由か、何か報告があるならばここで一つ発表願いたいと思うのです。
  69. 石谷憲男

    ○石谷説明員 確かに国有林の一部がくずれましてそれが押し流されて、下にありまする人家を埋めて五十一名の貴重な人命が損傷せられたという事実はその通りであります。ただ上方にあります国有林だけが崩壊したということでございますが、事実を調査いたしますると、すぐその山に隣っておりまする民有林の地域も実は流れております。これはいろいろと技術的に調査をさしたのでございますが、決して単なる崩壊ではございません。あの短期間に非常に猛烈な雨があの地域に集中いたしました関係で、土石粒となって押し出された、そういった土石粒あるいは崩壊土砂のみが流出いたします場合には、山腹におきまして一応それが堆積するという形をとるのが普通の場合多くある形であるわけであります。この場合におきましては山腹一帯は御承知のようにミカン畑に開墾させられておったというような事実もあったわけであります。確かに上方の国有林がそういうことに相なっておりますので、国有林の伐採方法がきわめてまずかったためにそうなったのではないかという点につきましては、私ども林野庁といたしましても十分に研究いたさなければならないと思うのであります。確かにこれは戦争中の伐採跡地でありまして、その後に造林をいたしたのでございますが、一部不成育地がありましたのでそれを改植補植するというような措置をいたしまして、現在は造林地に相なっておる場所であります。実は今のお話のように、地元の部落からこれをぜひ売り渡してもらいたいというような要請があったのでございます。これはどういう目的でございますかと申しますと、とにかくミカン畑の増反をいたしたいのであるという趣旨であったようであります。従いまして私どもの方といたしましては、そういう目的のためにあの国有林をじかに地元に売り払いいたしまする法律的な根拠もございませんのと、もう一つはやはりそういうのでなしに確かに戦争中に伐採をして裸地にしたのでございますが、その後は造林をいたして水源涵養的な機能を持たせなければならぬ森林であったということで払い下げをいたさなかったということにこの報告を得ておるわけであります。とにもかくにも上方の国有林の一部が土石粒となって流れて下流に大へんな迷惑をかけたということは事実でございますので、調査するだけは十分に調査をいたし、今後について完全な対策を立てたいと思っております。
  70. 山田長司

    山田委員 大臣に伺いたいのですが、柑橘類の果樹園が山の中腹まで何段もあまりりっぱな水はけもなく作られておる個所は、決してこの天水地区に限ったことではないと思うのです。全国にかなりふえていると思うのです。これについて一つの石垣なり堤防なりをこしらえてその上に果樹園を作った場合に、上の方を持っている人はそれでいいかもしれぬけれども、山すその人たちに対して水利のことや何かが検討されずに、何でもかんでもどんどん山の中腹以上に柑橘類が植えられるという問題について何らかの法的な水はけの処理というものが研究されるものかどうか。これは私は九州天水村のミカン畑を見まして、非常にりっぱなミカン畑であることには感心して帰ったのですが、上からの土砂がどこにも押えられずにきっと一挙に流れてきている。それから一つの川をなして各畑から流れ出してきたものが道路に出ておるというようなことを見ましたときに、これは将来何らかの方途が考えられないと、こういう災害各地に起るのじゃないかという気がするりですが、何かこれについて大臣所見を伺いたいのです。
  71. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘の通りだと思いますので、研究させていただきたいと思います。
  72. 山田長司

    山田委員 建設大臣の耳に入れたかったのですが、農林大臣でもいいと思うので農林大臣に伺うのですが、河川はんらんのために田畑が非常に毀損された、こういう場合に農民はあと堤防が直るまで見ているわけにいかないのです。どうしても田畑の改修というものをできる範囲のところは大急ぎでやると思うのですが、その認定基準というものが明確になっていないから、これによって損害の要求のし場所が百姓にとってはどうしていいのか見当がつかずにいると思う。こういう場合に何らかの処置地方の自治体というものが農民の奮起を促す意味においても、だれもその査定の状態を見に行かなくても何らかの処置をして知らす必要があると思うのですが、これについてどういうようにお考えですか。
  73. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ちょっと意味を十二分に了解しにくかったのでありますが、災害復旧につきましてさっき建設大臣にほかの方からも質問がありましたが、準用河川以外の普通河川につきましては、耕地復旧と一緒にしてやらなくちゃいけないのじゃないか。それから河川の路線なんかは変りましてもこれはいいんじゃないか。その河川が用水あるいは排水のような役割をしていますから、その河川と一緒に耕地復旧し、できることならば区画整理なども含めて新たな耕地河川も含めて造成する、こういうような形に査定の際にやるようにということを私は指導してきておるのであります。そういう意味において地方自治体、県等におきましても、そういう準備を進めて参る、そういうもとにおいて私どもの方としても河川埋没した耕地を含めて一つ災害復旧あるいは関連工事として仕事を進めていく、こういう方針であります。
  74. 山田長司

    山田委員 これは大臣の言うことはわからぬわけではないんですが、大きな堤防復旧まで農民は堤防のそばの田畑をそのままにしておくわけにはいかない。何としてでも一時も早くこの復旧の工作を農民自身でやらなければならぬと思うのです。そういう場合、失望している農民に対して、地方自治体というものが、堤防復旧がなされなくても、あなた方早く復旧しろ、その場合にはどういう認定で、一つの方法があるぞということがいわれれば、おそらく農民も奮起して土砂を片づけるのにも張り合いが出てくると思う。こういう場合に全然堤防復旧まではかまわない、ほっておくんだ、こういう形でなくて、何らかの形で地方の自治体にこういう農地復旧の一日も早からんために、何らかの処置が教えられてしかるべきだと思うのです。これが全然なされてないので、どうかと言うのです。
  75. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 わかりました。先ほど私が御答弁申し上げたのは、小さい川の問題でありますが、大きい川で建設省の所管で堤防を至急復旧しなければならぬ、こういう場所に続いている耕地復旧をどうするか、こういうお尋ねのようでありますが、これは建設省の方でも査定を急いでおりますから、堤防敷地といいますか、復旧の個所はわかりますから、それに関連して堤防復旧を待たずしても、農地復旧というものを進めるように急速に指令いたします。大体私も現地ではそういうふうには話してきたのでありますが、お話によりますと、徹底しないようでありますから、徹底するように自治体にも話したいと思います。
  76. 山田長司

    山田委員 この九州の特異な災害で感じましたことは、毎年たくさんの冠水地帯が起って困っている話を聞いてきたので、これは何らかの処置を講じなければならぬと思ったので申し上げるのですが、水稲の苗というものを常時国なり県なりで一定区画に確保しておいて——ことしのように植えられている稲を分けつして、それを持ってきて植えるということは百姓にとって血の出るような思いだと思うのです。私はよく福岡県の人たちがこれについて同意を与えたものだと実は感激して帰ってきているのです。そういう点で、九州の場合などは稲の苗について確保の対策というものが考えられなければならぬ、こう思って帰ってきているのですけれども、これについてはどうお考えですか。
  77. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 山田委員も御承知の通り、私の地方などでは自治的に予備苗を用意しているような状態であります。九州の場合は災害がおくれて起りましたので、予備苗というものはなくて、御指摘のようにすでに植えた苗をさいて災害地へ送り届ける、こういうことで私どもも全く見るにしのびないような気持がいたしたのでございます。一定地域にそういう災害の予備苗を置くかどうか、こういう問題でありますが、こういうことにつきましては、よけいな余った耕地というものを持たすか、試験場でも持っていませんと、直ちに実現できるかどうか非常に疑問な点もあります。御趣旨のような方法は一つ考えてみたいと思います。現実にどういうふうなことでそれを実現するかということにはまだ研究の余地があると思いますので、研究してみたいと、思います。
  78. 山田長司

    山田委員 昨日代理弁済のことにつきまして、官房長はもし単位の農協でこういう災害の場合にいろいろ農民の要需に応じ切れないような場合があれば、県の経済連なりあるいは全販連なりに応援を求めても緊急の処置を講じなければならぬというふうなことが言われたと思うのですが きのうは質問する機会がなかったので、このことについての御質問を申し上げませんでしたけれども、一体こういう場合、国はこれについて——戦後の民主化の結果、九州の場合はそういう地区はなかったようですけれども、場合によれば、一つの村に民主的な農協というものが二つもある場合があると思う。そういう場合にでも、なおかつこれが県経済連やあるいは県の全販連の応援を得させるように、農林省自体でも協力するものなんですか。それとも、ただそういう意図で単協から申し出て、勝手に交渉しろ、こういうことなんですか。一つ参考に伺っておきたい。
  79. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 昨日の質問の続きのようでありますから、事務当局から一応先に答弁させます。
  80. 永野正二

    ○永野説明員 予約に基きます概算金の返納の問題でございますが、御承知の通り、農民は、政府に米を売り渡します際に、指定集荷機関である農協に委託をいたすわけでございます。また単位農協は、県の経済連、県の経済連は全販連というように、上級機関を経由して政府に対する売り渡しを実行するわけでございます。そういう関係で、その各段階に一定の手数料というようなものが政府から支払われておるわけでございますが、一昨年からとりました予約制度におきましては、個々の農家が、災害等の場合で、政府に売る米がなくなったという場合には、概算金政府に返すことが非常に困難な場合があるということが予想されましたので、そういう場合には、その委託を受けた集荷機関、まず第一次的には単位の農協、それから第二次的には、その農協から委託を受けて売り渡し事務を行なっておる県の経済連、さらに県の経済連でもできない場合には、最終的には全国の集荷団体である全販連におきまして、そういう概算金返納の困難な農民にかわりまして、概算金を代位弁済をするという制度に相なっておるわけでございます。その制度によりまして、今回のように災害を受けて弁済はとうてい不可能であるというような農民がある場合には、その分の概算金は、上位の指定集荷機関から代位弁済をさせるという制度を考えておるわけでございます。
  81. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいま事務当局からお話し申し上げたような次第でありますので、各村に民主的な農協が二つあるような場合も当然ありますが、集荷を扱ったか扱わないかによって決定することであります。集荷をしておるということでありますならば、甲乙を選ぶ理由は何もありませんから、二つの組合なら二つの組合、単協なら二つの単協に対しまして、代位弁済をしてもらう。その代位弁済が困難である場合には県の経済連、経済連が困難であります場合には中央の全販連の方から代位弁済をしてもらう。農家自体には、そういうことで、結論的には延納の結論になると思います。また金がないという場合には、県連あるいは単協等につきまして、営農資金というものを多く割り当てて、代位弁済にかえる、こういう方法もとりたいと、こう思っております。
  82. 山田長司

    山田委員 あと二点伺います。稲作が完全に水をかぶって、それでかわりに苗を植えた。この土地に対して共同作業でかなりりっぱに苗を植えられている姿を見て、よくこれだけ共同作業で新しい苗を持ってきて植えていると感心して帰ってきたのですが、一体これについての共済金はどうなんですか。  それからもう一つこのあと米が幾らかとれると思うのですが、このとれた米に対する供出の問題はどう処理するのか。災害地の問題としてやはり稲を植えられたあとを必ず考えられていると思うのです。小さい面積でないだけにこの点についてはいかなる処置災害地についてとろうと大臣はお考えになっておられるか。
  83. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一たん水害のために全部枯死してしまった。そのあとの耕地を共同管理といいますか、共同管理のようにして共同して苗を補植した、こういう形でありますと、前との連携はもうなくなったと私どもは見ますから、共済金の払い渡しといいますか、そういうものにつきましては全滅したのだ、あとから少しとれてもこれは共同作業や共同管理で別なものになっているのだから、これは収穫を見ないでいいだろう、全滅をしていると見ていいのではないかというので今指導しております。  それからあとで幾らかとれたものの供出というようなことでありますが、予約につきましては減免措置をとっておりますから、それ以上とれたからその分を見込んで政府で買い上げるというようなことはいたしたくないと思っております。
  84. 山田長司

    山田委員 最後に共済金の問題ですが、農民の、従来共済金を受けなければならぬような災害に見舞われた場合いつでもこれが非常におくれている、しかも次々と天引きされたような形で出てくるので全くわからぬ、こういう声を耳にするのですけれども、どういうところでそうおくれるのか。  それから災害の最後の決定は一体どこでしたものを農林省はポイントにしているのか、一応この点を伺います。
  85. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 こういうような災害には特に早く前渡しをすべきだということを指導してきましたが、おくれる理由がどこにあるかということでありますが、御承知の通り損害査定地元の共済組合でやることになっております。実はその査定を進めさしているわけであります。その査定が進めば共済金の前払いは県の共済連合会でできる県が相当あると思います。もしそれができないということでありますならば、これは国の方で再保険しているわけでありますから、その前渡しにからむものあるいは該当するものを国の方から至急出すことにいたします。この点につきましては国の方ではいつでも出す用意をしているのだから査定を急いで、そうして下から上げてくるように、そういうふうに指導しておりますので、来月の中旬ごろにはこれは前払いができるようなことになるのではないかという今の見通しであります。
  86. 山田長司

    山田委員 ただいまの問題については私は大臣希望しておくのですが、これは地元で農民からいろいろ要望事項として伺ってきているのです。これは従来よりも早く出せるようでありますけれども、できるだけ迅速に処置できるように切に希望しておく次第であります。
  87. 田口長治郎

    ○田口委員 先ほどからのいろいろな質問によりまして大体尽きていると思いますが、最初の質問で漏れた分、それからその問題に対して詳細にというような意味におきまして大臣にお伺いいたしたいと思います。  第一は耕地復旧の問題でございますが、私らが現地へ行きますと、どこの農民もこの荒廃した農地で、何とか来年からでも作物ができるような方法をぜひ一つ講じていただきたい、これが罹災農民の非常に熱烈な希望でございます。あの現地を見てみますと、さような復旧が直ちにできるようなところもありますが、なかなか工事がむずかしいというような場所もあります。結局罹災者といたしましては、農地復旧で生活するよりほかに方法がないのでございまして、何とか来年からでも作物ができるような、そういう復旧方法をぜひ考えていただきたい、こういうふうに考えるのでございますが、この問題に対しまして大臣のお考えを一つお漏らしを願いたいと思います。   〔委員長退席、芳賀委員長代理着   席〕
  88. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 全く御指摘の通りでありますので、耕地復旧につきましては、来年度植付ができるように指導いたしております。しかし今御指摘がありましたように、場所によっては非常に大きな石や何かでもって埋もれておるところもありますが、これは技術方面にも督励しておるのでありますが、機械力なども用い、石などは堤防の方へ持っていくとか、せきの方へ持っていくとか、そういう方法によって、ともかくも来年植付できるように災害復旧を急がせるように指導をいたしております。またそういうつもりでおります。
  89. 田口長治郎

    ○田口委員 この荒廃した農地復旧いたします方法といたしまして、この際私らが非常に困っておりますのは、この災害を受けた場所の復旧に対しましては、補助その他の問題が直接にあると思いますが、災害地の実際を見て歩きますと、その周辺のいろいろな工事をしなければ、災害地復旧というものもむずかしいような点があります。ところが周辺の工事ということになりますと、これは補助対象にならない、こういうような事情で、非常に因っておるのでございますが、今回のあの荒廃農地復旧には、私どもはどうしても耕地整理を加味して、そうして今までの耕地以上のものができた、そういうところまでぜひやってみたいと考えるのでございますが、この耕地整理を加味した復旧ということに対して、農林省といたしましてはどうお考えになっておられますか。さような観点からいたしますれば、この周辺の関連工事も当然それに含んでやれるのではないか、こういうように考えるのでありまして、耕地整理を加味した土地復旧という問題とそれに関連した周辺の関連工事も一体にした補助対象になるというような、そういう方法をぜひ一つ考えていただきたいと思うのでございますが、この点につきましていかがでございますか。
  90. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 全く同感でありまして、災害復旧に対しまして関連工事をできるだけ拡大解釈してこれを認めていきたいことが一つ、それからそのほかにも、ただ復旧しただけではいけませんから、耕地整理をこの際断行する、こういうことにするように、現地査定に当っても指導しているわけであります。それぞれ補助率等が違いますが、プールしてといいますか、そういうようなことで一応進めております。また法律等が変れば別でありますが、現在のもとでは補助の率などが違っております、災害復旧とか関連とか、あるいは耕地整理の関係補助率が違っておりますが、その基礎の上に立っても、ともかくも耕地整理まで含めて復旧の仕事を進めていく、こういうことに指導しておりまして、この御意見には全く賛成でございます。
  91. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいまの問題につきまして、すでに百姓はこの荒廃した農地のところに、自分の田はこれだということで石を置こうとしておりますが、こういうような区画をやってしまいますと、非常に問題が複雑になって参ると思うのでございますから、一日も早くその方針をきめていただきまして、また村と農民に対しましては、さようなことをしないように、何とかとめさせるつもりでおりますから、それに対しましても方針がきちっときまるということが非常に大事なような情勢になっておりますから、この点を一つお含み願いたいと思うのであります。  それから農地の問題でぜひお考え願いたい問題は、仕越し工事をやっているものが相当あるのでございます。これはもう県では放っておけないということで仕越し工事をやっているのでございますが、この仕越し工事をやったために、すでに工事ができたという関係からか、補助対象その他にならない、こういうようなことに従来なるのでございますが、これはほんとうにやむを得ないための工事をやっているのでありまして、むしろこういうものに対しましては、国としては金利の補給ぐらいしてでも応急のものはやらせなければならぬと思うのでございますから、この仕越し工事の問題につきましては、一つ認めていただくように、災害当時のあの状況はよくわかっているのでございますから、その点を一つぜひ農林省におきましても含んでおいていただきたいのでございます。
  92. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 耕地整理も含めて災害復旧をするようにということは、すでに農地局長名をもって府県に通達してあります。災害復旧の方についてしさいに通達してありますが、各県から災害地になお趣旨が徹底するように私どもでも取り計らいたいと思っております。それから応急的に仕越し工事をしたことにつきましての費用等につきましては、災害査定をいたす場合にその分を見ていくことになっておりますので、この点もよくわかっておれば申し出を災害地からするようにさせたいと思っております。災害査定の際に含まれることになっておりますから御了承願います。
  93. 田口長治郎

    ○田口委員 先ほど山田委員からも触れられた問題でございますが、今回の災害というものは非常に深刻でございます。従って農民あるいは県だけでこれを復旧することは容易でないのでありまして、全面的の国の援助を期待しておるのでございますが、この補助率の問題が二十八年災の特別立法程度に現在の法律の範囲内でできるものかどうか、また現在の法律で行政的に処置されて最高の補助率を与えられるとすればどの程度になるのか、その点が一点。それから小災害問題でありますが、これは今回の災害地の地勢にも関係すると思うのでございますが、大臣がお通りになったところは平坦地が非常に多かったのでございますが、あの災害地の奥の方をずっと回ってみますと、谷間なんかの耕地がそっくりやられておりまして、もうどうしても復旧ができないというようなところでは、土地を国で買ってくれ、こういうような話まで出ておるのでございますが、その下の方では段々田になっておりますために、小さい災害で全部こわれておるというような状態になっておるのでございます。従って十万円以上ということではこの農地復旧あるいは農民の救済ということはとうていできそうにないわけでありますから、現在五十メートルというような話がありますけれども、何とか法律を制定するまでは一水系によってまとめていただくというようなことができませんかどうか。今度の災害はどうしても谷間が非常にひどかったのでございますから、小災害というものがたくさん集まってつぶれてしまっておるというような実情になっております。その点からぜひこの点は特別立法によるか、あるいは一水系によってまとめていただくか、どっちかをとっていただきたいと思いますが、この二点についてお伺いいたしたいと思います。
  94. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在の法律におきましても最高限度補助率を上げるという方法もないわけじゃありませんが、これは全部どうこうというわけではありません。十五万円以上のもので全額補助というようなこともありますが、この点につきましては官房長からなお詳しく御説明申し上げます。  それから一区域を水系ごとにやっていったらいいじゃないか、というのは非常に小さい災害が多いから、十万円以下の工事費の場所も相当あるんじゃないか、こういう御指摘であります。これは法律改正を要しますので、今直ちに十万円以下に下げるというわけにはいきませんから、これは先ほど山田委員にも御答弁いたしましたように、現地査定の結果の報告を徴しまして、必要がありまするならば、立法の措置も講じたいと思います。  なお河川の流域によって連絡して一つ災害復旧工事を起したらどうか、こういうことでございますが、そういう方法で指導しておりますが、この点もなお詳しく農地局長から答弁いたさせます。   〔芳賀委員長代理退席、委員長着   席〕
  95. 田口長治郎

    ○田口委員 最後の問題、少し大臣誤解しておられるようでございますが、この十万円以下の小災害を五十メートル程度離れたものを一緒にしたということではどうしても包含ができないのでありまして、小さい河川でございますから、この河川水系別にずっとその人の耕地をまとめていただいて、十五万円以上にするというような行政措置ができぬかどうかということをお伺いしておるわけでございます。
  96. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう小さい河川建設省とも協議の上、農林省の方で復旧するということになっておりますから、それも災害の中に含んでおると思います。でありますから災害耕地耕地をつないでその河川がやはり災害にかかっておるということになれば、一集団地である、こういうふうに解釈ができると思います。そういうふうに災害査定を指導している次第でございます。
  97. 田口長治郎

    ○田口委員 私が今伺っておりますことは、一つ河川がありまして、田口長治郎の小災害が、ここにAが一つある、Bがある、Cがある、これが五十メートル以上みんな離れておる。しかしながら私としては三口この水系内にあるのでございますから、この三口を田口長治郎の小災害としてまとめれば十万円以上の工事になりまして、現在の法律でも補助対象になる。これ一つ一つだと三万円だとか、六万円だとかでその対象にならないから、この一つ河川にある私の他の災害は全部一口にして処置していただけないかどうか。こういうことをお伺いしておるわけです。
  98. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今のお話で三つに分れておっても、その間はやはり河川災害にかかっておるのだからつながるのじゃないか、一つの集団と見ていいのじゃないか、五十メートル離れているのじゃなくて、河川そのものの災害だから……。こういう見方をしたのですが、こまかい点は私ははっきり申し上げられませんから、今農地局長から御答弁をします。
  99. 安田善一郎

    ○安田説明員 農林大臣がおっしゃった通りでございますが、田口先生のおっしゃる通りの事態がございまして、十万円以下の被害一つ被害が孤立いたしまして補助対象にならないことが全くないかという段になりますとある場合もある、また現行法の場合には補助対象にならないわけでございますが、その運用を適切巧妙にいたしまして、先生もおっしゃる通り、水系別に普通河川は農業用水路、排水路と解釈いたしまして、田畑とともに復旧事業を設計するように指導をいたしまして、災害復旧事業と災害関連事業とを合せてみますと一地帯の被害額が大きくなりますから、これを被害戸数に割りますと一カ所は八万円以上になる、十五万円以上になる、それぞれ段階がございまして、五割、六割五分から施設は最高九割までの高率補助もいく、こういうことを次官通牒を出しまして、また口頭でも徹底するようにいたしまして、その設計を付近各県から五十六名の関係係官で協力を求め、通牒を地方庁、農地事務局長へ出しまして、具体的に災害復旧計画上でこれを片づける、こういうことにいたします。建設省との分担の問題もございますので、建設省が単独に河川について工事をいたしますとそのことについてできませんので、長崎県を例にとりますと普通河川の九割は農林省において今申しましたようにやることをすでにきめまして、他は建設省がやって、田畑復旧を別々に扱う。これは大きい河川、田畑は、またその付近は大きい被害だ、こういうように分けまして、具体的に解決するようにいたしておる次第でございます。
  100. 田口長治郎

    ○田口委員 大体わかったようなわからぬようなそういう問題がありますから、ぜひ一つ頭に入れておいていただきたいのでございますが、今度の災害地を見て回りますと、この耕地がすっかり荒廃して川原になっている、こういうような場所と冠水が非常に長かったために全滅しておる、こういう二つに大体分けられると思うのでございますが、これらの農家にとりあえず飯を食わせるという問題は、この川原になってしまっている農民に対しては、やはり農林省あるいは県の他の復旧事業に対する賃金の収入ということで生活させるよりほかに方法がないんじゃないか、こういうような考えからいたしまして、失業者の使用ということもありましょうけれども、この川原になっておる農村では一つ農民を人夫としてできるだけ使っていただいて、そうして賃金収入によって生活をさせる、こういう方向にいかなければしようがない、さように考えておるのでございます。それから冠水によりまして稲が全滅した、こういうところではこのあと作の問題をぜひ真剣に考えてみたい。そのためには、とりあえずはこの秋のバレイショあたりが一番適当でないか、こういうふうに考えておるのでございますが、ああいう状態で金もないというような農民でございますから、種子の購入の補助、それから肥料に対する補助、これはぜひ必要ではないかと考えるのでございますが、農林省でどういうお考えを持っておりますか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  101. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 復旧工事に優先的に地元民を就労きせることを指導いたしたいと思っております。  それからあと作のことでありますが、バレイショにつきましては非常に適当なあと作だと思いまして、奨励いたしております。その補助あるいは肥料の補助等につきましては、稲の輸送やら、その他いろいろなものがありますので、これを一括して今研究して大蔵省と折衝中であります。実現させたいと思っております。
  102. 田口長治郎

    ○田口委員 その次に農家の金の問題でございますが、農家を回ってみますと、くわもかまも何にも持たないという農家が非常に多いのでありまして、ここに何とか急いで金の供給をしてやらなければならぬと考えておるのでございます。もちろん天災法による融資の問題もありますが、金額が非常に小さいのでありますから、どうしても自作農創設維持資金のワクを拡大してもらいまして、この方の金を何とかして早く回す、こういう処置を講じなければならぬと思うのでございますが、この自作農創設維持資金に今ありますワクはどの程度あるのでございますか。うわさに聞きますと、五十億あるが、すでにそのうちの四十億は割当済みになっておる、あとの十億は開拓その他にお使いになる予定になっておるという話を聞くのでございますが、そこらの点がどういうことになっておりますか。この問題を解決しなければ、やっぱり農地を売るとかなんとかいう問題があるので、ぜひ自作農創設維持資金からこの問題を考えたいと思いますから、ワクの問題をお伺いいたしたいと思います。
  103. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 自作農創設維持資金から金を出したいと思っておりますが、今お話のように今十億くらいしか残っておりません。ワクを拡大していこうということで、今せっかく努力中であります。
  104. 田口長治郎

    ○田口委員 その十億はこの方に使える十億でございましょうか。
  105. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その通りでございます。
  106. 田口長治郎

    ○田口委員 長崎県だけでも十億程度の金が要るようでございますから、ぜひこの点は一つ御配慮を願いたいと思うのでございます。それから先ほど山田委員の質問に対しまして、官房長からの答弁があった次第でございますが、立てかえ払い、これは非常にけっこうであります。その間の金利は国で補給していただけるもの、かように考えるのでございますが、その点はどうお考えになりますか。
  107. 永野正二

    ○永野説明員 農民の個人の関係は、指定集荷機関が代位弁済をいたしますので、代位弁済をいたしました農協に対する債務が残るわけでございますか、こういう債務が高利でございましては、罹災農家に非常な打撃を与えることに相なると思いますので、この関係につきましては、天災法の営農資金概算金の代位弁済された分だけをプラスをして融資する。従いまして天災法の営農資金と同じ利率の借金になる、こういうことでございます。
  108. 田口長治郎

    ○田口委員 三分五厘ですか。
  109. 永野正二

    ○永野説明員 激甚の場合は三分五厘でございます。それから農協なり県の経済連の関係が代位弁済をいたしますのはだいぶ先のことでございますが、その場合の農協等の資金繰り等も十分に実情を見まして、もし必要ならば必要な措置をとって参りたい、こう考えておるわけでございます。
  110. 田口長治郎

    ○田口委員 昨年の九号台風佐賀県の大干拓地なんかの処置ですね、あの際の金利なんかはどういう処置を講ぜられましたか。
  111. 永野正二

    ○永野説明員 佐賀県全体といたしましての政府に売り渡します数量に対しまして干拓地の減収によります売り渡しの減少の分は、割合から申しますと、実はそう大きくなかったのでございます。従いまして県の経済連の段階におきましては、全県下をプールして考えますと、当然そういう資金のある程度の余裕があると考えられましたので、これに対して特に政府が利子補給をするというような措置はとらなかったと思っております。
  112. 田口長治郎

    ○田口委員 次に災害のあとには当然に病虫害の発生が予想されるのでございまして、すでにその徴候が相当あるのでございますが、これはどうしても予防措置を講じて、さようなことがないようにしなければならないと考えるのでございます。従って相当農薬を使うことになるわけでございますが、この農薬については個人あるいは県だけではとうてい負担ができないのでございまして、購入資金の一部をどうしても国で補助していただかなければならぬ、かように考える次第でございますが、この点について農林省では準備をしておられますかどうか。ぜひこれはお考え願って、病虫害の発生しないような処置を講じなければならぬと思いますから、その点を一つ御答弁願いたいと思います。
  113. 永野正二

    ○永野説明員 災害後の病虫害防除につきましては、現地におきまして器具及び農薬を準備いたしまして十分な態勢をとっておるわけでございます。もし異常発生が続いて起るというようなことになりますと、相当な経費の増加に相なると思いますので、ただいま現地の方の農薬についての補助の御要望等も再々伺っておるのでございます。農林省といたしましては、現地の御要望を十分くみ取りまして何とかその方向に実現できるように財政当局等と交渉いたしたい、こう考えておるわけでございます。
  114. 田口長治郎

    ○田口委員 その点につきまして、農林省では病虫害が発生したらというようなお気持があるかもしれませんけれども、発生をしたらもう追いつかないのでございますから、やはり予防防除でなければいかぬと考えるのでございます。発生したら何とかしょうということでなしに、発生しないように処置をする。こういうようなことでこの問題はぜひ処置をしてもらいたいのでございます。  最後に私は今度の災害の状態を見てみますと、やはり農林省といたしましては、林野庁関係の問題が相当重大であると考えるのでございます。あの崩壊した状態、あるいは渓流がすべて埋まっておる。こういうような状態を一日も早く復旧するというためには、林野庁の治山事業費が相当増額されて処置されなければ、仕事が進まないのではないか、こういうことを一つ考えるのでございます。それともう一つは、ああいう災害を再び起さないためには、やはり山全体の科学的調査一つ農林省で思い切ってやってもらう、その調査の結果によって対策を講ずる、こういうような科学的なほんとうの調査というものがもとにならなければ、いつまでも同じようなことを繰り返すのではないか、こういうふうに考えるのでございますから、どうか一つこれを契機にして、林野庁を中心に山というものを根本的に研究していただく問題が一つと、さしあたりの問題といたしまして、治山事業費を相当増額していただきまして、そうして今の措置を一日も早くしていただく。この二点を御要望申し上げまして、私の質問を終る次第でございます。
  115. 石坂繁

    石坂委員 関連して。他に大臣に対する社会党の諸君の質問があるそうでありますから、私は災害関係はきょうは見合わせまして、一問だけお許しを願いたい。  先ほどから小規模災害につきまして、山田委員なり田口委員との質疑応答によって伺いますと、大臣も、小災害につきましてはいろいろ御苦心になっておられるようであります。罹災者要望は、十万円以下三万円程度に引き下げてもらいたいという要望が強いのであります。かような点も十分おわかりのようでありますが、安田局長の言われる運用を適切巧妙にやられることによりまして、罹災者要望をかなえていただきますように希望を申し上げておきます。つきましては、やはり復旧の問題でありますが、熊本県下の一つの大き被害は、天水村及び芳野河内村の柑橘園被害、荒廃であります。これは普通の田畑と違いまして、御承知の通りに、今年の被害が来年直ちに復活するというわけには参らないのであります。しかのみならず、その復活に要する費用というものは相当多額に上るのでございます。現在の段階におきましては、大体復旧費限度を十五万円限度に限定されておるのでありますが、それではとうてい足らないのであります。実際は二十万円ないし三十万円を必要とする復旧費であります。従いまして、そうなりますと、農家の自己負担というものは非常に大きくなりますので、これは十五万円を二十万円ないし三十万円に引き上げるという措置が講ぜられないものであろうか、これについて特に御配慮をわずらわし、また御答弁を願いたい。
  116. 安田善一郎

    ○安田説明員 復旧事業費の単価、特に補助基準になります事業費単価の問題でございますが、お話のような点がございますので、復旧計画の査定を急いで、九月中旬までには予備費の支出をするように、その時分を目途に努力中でございますが、その点に関しまして、大蔵省と今折衝中でございます。
  117. 石坂繁

    石坂委員 そうすると十五万円ということじゃなしに、それが二十万なり三十万に増額される見込みありと承知してよろしゅうございますか。
  118. 安田善一郎

    ○安田説明員 私はそのように願わしいと思って努力いたしております。復旧計画そのものをもって話をまとめようということになっておりますので、もう少し時間をかしていただきたいと思います。
  119. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの小災害の問題につきまして、関連してお尋ねしてみたいと思うのであります。今度の災害の特色といたしまして小災害が非常に多かったということを聞いております。これに対しましては、先刻山田委員の質問に対しましても農林大臣は、何か調査するというような御意思のあるように承わったのでございますが、従来の十万円というものを、二十八災のときには三万円以上は補助対象になるという立法措置をやったのでございますが、今度の災害に対しましても、二十八年度当時のような機構ができ得るのでありますか。これに対してどういうふうな具体的な御方針を持っておられるのか、できますならば、この際大臣の御意中をお漏らし願えれば非常にけっこうだと思うのであります。
  120. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから再々お話がありましたように、十万円以下の工事個所でも極力関連さし連繋さして、十万円以上にまとめて工事をしていきたいということが考えておる点であります。それから、今調査して、十万円以下三万円程度の工事が非常に多いということでありますならば、これは特別に立法措置を講じなくちゃならぬじゃないかという考えでおります。また二十八年のときは非常に莫大な災害になっておりますが、今度の災害も非常に深刻でありますが、災害総額においては二十八年よりは少いようであります。そういうこととにらみ合わせながら、工事個所が非常に多い、このままでは救われないというようなことでありますならば立法措置を講ずる、こう考えております。
  121. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま大臣の御答弁では、十万円以上にまとめてやろうという御意思もあるようでありますが、この問題は、二十八年の災害立法措置をやるときも、実は考えられたのであります。しかしながら、災害が点々とあるものをまとめることが非常に困難だということで、十万円以下の五万円にするか三万円にするかということがずいぶん論議されまして、最後に三万円という案が出たのであります。そういうような、十万円にまとめてこれに対する対策を講じようということが、現在の事務上できるかどうかということに問題があると思うのでございます。この点はどういうような御検討をなされておりますか、承わりたいと思うのであります。
  122. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この点は、先ほども農地局長から田口委員の御質問に対してお話し申し上げたのでありますが、たとえば三カ所の災害地がある。しかしこれは工事としてはつながりがない。ところがこの間をつないで河川が連絡しておる。そして河川災害を受けておるということになりますれば、小河川は農林省でやることになっておりますから、これは三カ所が一カ所として復旧対象になるだろう、こういうふうに、災害復旧に対して指導をしておるわけであります。これは河川との関係において連繋ができる面が相当あるんじゃないか、こういうふうに見ておるわけでありますが、この点につきましては、先ほど農地局長からもちょっと申し上げておったのであります。
  123. 稲富稜人

    ○稲富委員 それからこの前の三万円の特別立法措置をやりますときには、大蔵省方面にはずいぶん強い反対があったことは大臣も御承知であると思うのであります。あの法律ができましたところが、これを実施するに当りまして、まず十万円以上の従来の法律による調査が早くいって、小災害調査がおくれて、あとから小災害が打ち切られたというような結果を生み出したと思っております。それがために、小災害人たちは当然補助対象になるものだと思っておったのが、つい恩恵に浴することができなかったという事実があるのです。それで、これが実施に当っては、かようなことがないようにいたすことが必要であると思うのでございます。これに対してもどういう見通しであるか、また、もしも十万円にまとめることができなかったならば立法措置もやらなければいけないだろうという大臣のお答えでございますが、そういう場合に、この三万円を限度になさるつもりであるか、あるいはいろいろいわれておりまする五万円を限度とする、こういうお考えであるか、その点大体農林省としての腹案がありましたならば、この際お漏らしを願えればなおけっこうではないかと思います。
  124. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現地査定とともに現地調査が上ってきませんと、どの程度にやっていくかということを今直ちにお答えする段階ではありませんので、この点一つ御了承願いたいと思います。
  125. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは小災害に対しては何とか罹災者の意思に沿うて特別立法措置なり何か方法をとろうという大臣の御意思があるようでございますから、その点は私は期待いたしまして、小災害の問題に対しましてはおそらくこれは立法措置の必要があるのであろうと思います。そうなれば当然臨時国会の開催という問題も起ってくると思うのでありますが、これとにらみ合せまして、急速にこの方策をとっていただきたいと思います。  さらに申し上げましたように、これは先刻建設大臣にも私はお尋ねしたのでありますが、国の災害に対する補助というものが日にちが非常に遅れるために、せっかくこの補助率の決定が法律上なされましても、その結果はこの恩恵に浴することができないという結果になりますので、これが施行に当りましては、そういうことのないように十分一つ誠意をもって実施に当られんことを特に私希望申し上げまして、この小災害の問題につきましてはぜひ一つ善処方をお願いいたしたいと思うのであります。
  126. 楯兼次郎

    ○楯委員 関連して。簡単にこの問題でお願いをしておきたいのでありますが、まだ詳細がわからないから十万円以下の災害についてはどれだけあるかわからない、こういう前提に立って御答弁をしておられるように見えますが、昨日あるいは本日の罹災該当地の陳情書を見ますと、第一番に十万円以下の点がどの申請書を見ましてもうたってあるわけです。従って詳細はわかりませんけれども、十万円以下の小規模災害が各地域にわたって相当あるということは、これは私は想像されると思います。そうなりますと、先ほど農地局長の答弁あるいは大臣の答弁では、いろいろ事務を遂行していく点についてそごを来たすと思います。たとえば十万円以上に統合をする、こういうようなこと、あるいはそれがむずかしければ立法措置をする、そういうあいまいな点で今後時日を経過いたしますと、手続上地方においては私は迷惑をすると思いますし、また二十八年災のように途中で打ち切られる、こういうような結果が生じてくると思いますので、一つどうか農林省の方針を早急におきめになって、立法措置をするのは、これはすぐというわけにも参りませんでしょうけれども、農林省はそういう措置をするのだ、そういうように下部に徹底をするように取り計らっていただきたいと思います。
  127. 安田善一郎

    ○安田説明員 私が申し上げましたのは、現行法の適用の問題でございまして、実情に即しまして、十万円以下の被害というふうの取扱いを受けるがために、そうでなければ補助ができるのに、補助を受けられないことを避ける査定の運用のことを申し上げたのであります。従いまして単独被害としてどうしても扱いまして、十万円以下になります場合には法律改正を要します。その法律を改正するかいなかは、今はしない建前で応急措置をとりませんと、この復旧について早急のことができませんので、そういうふうに申し上げた次第であります。また過般の災害ではまだなれないために査定上のそごがありまして、一度現地査定しましたものがあとで別の査定をくらって、補助を受けるべく予定したものが補助を受けられなかったという弊害は是正いたさなければなりませんので、今回は他事業や河川関係があるものは中央で他の役所とともに査定する要がありまするけれども、それ以外の農業災害、特に普通河川と一緒にでき得る、またやっていいとしました田畑災害、農業用施設の災害は、申しましたような方法を持ちまして現地査定をもって最終の査定として取り扱うように、それらを含めまして現在の手続、応急対策に間違いないように、多少勇気を要しましたが、私の名前をもって明確にいたしまして下部に浸透するように通牒を出しておる次第でございます。
  128. 楯兼次郎

    ○楯委員 今の局長の御答弁でこの対象がそのワクの中に全部入っているということなら私はけっこうだと思うのです。そういう方法によって補助対象になっているということならばけっこうだと思いますが、陳情書、該当地の代表者の意見を聞きましても、どうも小さいのがきわめて多い。従ってそういうワクに入っていかないものは立法措置をやらないとこれはオミットをするという結果になりまするから、そのときになっていろいろそごを来たさないように、ただいま農地局長のおっしゃったやり方で全部ワクにはめていくことができれば私はけっこうだと思いますが、その辺の使い分けを一つそごを来たさないように進んでいただきたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  129. 稲富稜人

    ○稲富委員 今のに関連しましてくどいようでございますが、ただいま農地局長はこの小災害に対しては法律の改正をやらないのだという御意向で御答弁なさったようでありますが、先刻大臣の御答弁は、十万円にまとまりができない場合は立法措置も考えなくてはいけないだろうというような御答弁でございまして、どうも御意見が違うようでございますが、その点を一つ明らかにしていただきたいと思うのです。
  130. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 違っておらないと思うのですが。農地局長の話によると、ともかく現行法のもとで災害復旧を急がなくてはならぬ、急がなくてはいかぬ場合に小さい災害というものが漏れてはしようがないから、これを漏れないようになるべく一括して集団的に取り扱いたい、これは法律改正の前に進めなくてはならぬ段階でありますから、その方を農地局長が話したような方法で進めていこう、同時に小災害につきまして、それでは救い得ないというような場合には立法措置をしなくちゃならぬだろう、こういう考えでありますから違いないと思います。
  131. 稲富稜人

    ○稲富委員 農地局長は今そういう答弁でございますが、現法律に適用することの困難な小災害があると思う。それがために二十八年においては小災害に対する特別立法措置をやったのです。それでもしも農地局長の言われるように、現在の十万円以下の小災害といえども現行法で処理することができるならば、二十八年はあえて三万円以下の小災害の特別立法措置をやることは要らなかったと思うのです。この点を農地局長として立法措置をやらぬでも小災害でも補助対象になってこれの復旧ができるかどうか、一つ明快に自信のあるところを御答弁願いたい。
  132. 安田善一郎

    ○安田説明員 現行法の運用で、できないことはできない。
  133. 稲富稜人

    ○稲富委員 できないことはできないから、できないところは特別立法措置をやるというのがさつきのあなたの話だったと思う。ところが今のあなたの話は、現行法で小災害といえども何とかみんなの期待に沿いたいという考えを持っているのだというようなことを言われている。その点がはっきりしていない。それで現行法でできない小災害のあった場合はこれに対してどういう措置をとろうとしているかということを聞いているわけなのです。できないことはできないことはわかっております。できないことはできないのをどうするかということを聞いている。
  134. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現行法においてできないような場合には、今調査中のものが上ってきますから、相当多くそういうものが出てくるということになれば、立法措置を講じなければならぬのじゃないか、こういうふうな考えであります。
  135. 稲富稜人

    ○稲富委員 それだから、われわれが要望いたしますことは、現行法でできないものは当然立法措置をやろうと思っているんだ、こういうことを早く政府が意思表示をしないと、地方で実際災害をこうむった人たちはこの復旧をどうするか、次の植付に影響する、そういう具体的な問題があるんだから、ただいま調査中だから、調査の上で多かったらこれに対する方法を取り上げると言わなくして、調査中であるが、現行法でできない小災害に対しては、何とか政府は特別立法措置でもやろうと思っているんだというような意思表示をやって、これに対して罹災者が早く対策を講じられるように安心するようにさせることが、私は政治であらなくちゃならぬと思う。この点を早くすることが今日私は政府の責任であると思う。ただ現行法でやれる分だけはやってみようと思っておりますというような、やれるような、やれないようなあいまいなことを言って罹災者を不安に陥れることは私はおもしろくないと思う。そういう現行法でできないことに対しては、立法措置をやろうと思っておる——立法措置をやるために臨時国会を早く開けという問題がからんでくるから、大臣はどうもはっきり言わぬのかもしれないけれども、臨時国会の問題は臨時国会の問題として現行法でできないものは特別立法措置をやるんだ、当然臨時国会が開かれればその問題を持ち出すんだということをはっきりされれば、それに対して罹災者は安心できると思う。この点を一つはっきり言ってもらいたいと思う。
  136. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話のようでもありますが、何しろ法律の改正でありますから、今私が勝手に立法措置をとるんだというところまで断言するわけにはなかなかいかないのです。そういう方向に持っていきたいという気持だけを持っております。     —————————————
  137. 小枝一雄

    小枝委員長 次に先ほど農林大臣より農政の基本的な問題について説明を聴取いたしましたので、引き続きこれより大臣に対する質疑を行います。芳賀貢君。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど農林大臣から新大臣としての所信の表明がありましたので、その点について若干の質問をいたします。  第一にお尋ねしたい点は、新農林大臣は、現在の岸内閣が農政に対してどの程度の熱意を持っておるかということをまず御認識願わないと、その認識が欠けておっては赤城農政というものは今後うまく進まないと思う。ですから岸内閣の農政に対する態度、熱意というものはどの程度であるかということにどのような御認識を持っておるかということを具体的な事例をあげて一つお示し願いたいのであります。  最も卑近な例としては、私どもの判断としては保守政権下における農政というものは、昭和二十八年度を頂点として急激に後退しているということが指摘できるのであります。それでありますから、昭和二十八年から三十二年度までにおける国家の総予算、その総予算の中における農林関係予算の額と、総予算に対する農林関係予算の比率がどういうふうな変遷をたどっておるかということをまずお示し願いたいのであります。
  139. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 岸内閣の農林行政に対する熱意いかん、こういうことでありますが、私から申し上げるまでもなく、農山漁村民は三千何百万でありますし、食糧に関係ある人たちは全国民でもありますから、熱意を非常に傾けておるということは申し上げて差しつかえないと思います。しかしながら現実の推移から見ますと、何となく食糧自給態勢なども捨てていいのではないかとは言いませんが、安い外国の米麦などにたよってもいいのではないかというような気分もあったようでありますから、農林省を担当いたしております私といたしましては、そういうことであってはならないので、農林政策に対して岸内閣も強い熱意を持つようにさせたいと考えております。  そこで具体的な問題でありますが、二十八年度が最頂点といいますか、農林予算の総額が非常に多かったのが、その後漸次減ってきていることは御承知の通りであります。ただ二十八年は戦後荒廃した農村の再建というようなことで、どうしても予算を相当とらなければならぬ、あるいは災害なども非常に多かったので、そういう費用も含めて二十八年度が一番多かったようでありますが、漸次農林関係の予算が減ってきていることは、私どもといたしましてまことに残念であり、遺憾だと思っております。総ワクもいずれきまりますので——予算の総ワクをこえてまでというわけにはいきませんが、総ワクのまたきめ方にもよりますが、またワク内においても極力農林漁村対策の予算をつけて、何か農林行政がおろそかにされておったような気分を回復していきたい、こう考えております。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 抽象的に熱意を持っておるという程度ではうまくないと思います。ですから、大臣に就任された場合、現在岸内閣の中における農林行政の置かれた地位がどの程度に貧弱なものであるかということをまず十分把握されて、その上に立って勇猛心をふるってがんばらなければ赤城農政というものはあるいはまた後退するかもしれない。あなたは剣をとれば達人の域にあるということをわれわれは聞いておる。ですから今までの閣内における農林大臣の弱さというものを払拭して、この際剣道の達人のごとき勇猛心をふるって農政を大いに推進してもらいたいと私どもは期待を持っておるわけです。  それでお伺いしたい点は、先般社会党といたしまして休会中でありますので、質問状なるものを政府に発して、これに対する具体的な政府の今日進めておる施策の内容等に対しての回答あるいは国民に対する態度の表明を求めておるのでありますが、農林関係の件に対しましては政府当局からいずれ近い将来に委員会等を通じて質問状に対する回答を行うということになっておりますので、幸いの機会でありますから、この際農林大臣から社会党の農業関係についての質問状に対する政府態度を明確にお示しを願いたいわけであります。
  141. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 数項目にわたっての御質問でありますが、全般についてまだ目下研究中なのでありますが、私ども御質問に対して非常に反省しなければならぬ点もありますし、進めなければならぬ点もあると思います。あるいは意見の少しく違っておるような、考え方の違っておるような点もあります。いずれ具体的に研究の上御答弁したいと思いますので、一つ御了承願えればそれで御了承願いたいと思います。またそれでなければ御指摘によってあるいはお答えしていきたいと思います。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 質問は大体十一項目にわたっておるわけでありますが、これは緊急を要するような問題もありますので、それでは私の方から問題ごとにあらかじめ質問いたしますからして、農林大臣の責任において答弁のできる問題については率直端的な答弁を願いたいと思うのであります。  第一の点は農地補償の問題でありますが、この点に対しましては、当委員会におきましても、農地改革の成果を維持するために、旧地主の補償要求の運動等は農地制度の逆行を意味するということを厳重に警戒いたしまして、委員会等において決議もしばしば行いましたし、また前井出農林大臣の在任中におきましても、農林大臣を通じて政府の明らかな態度を表明してもらっておるような次第であります。しかし最近におきましても、やはりこの旧地主団体の運動というものは終息しておりませんし、また一面においては与党である自民党の内部の議員諸君の中においても、この地主運動に対して一脈相通じてこれを支援しておるような向きもありますので、この点に対しましては、赤城農林大臣が就任されても一貫した態度に変更はないと思うのでありますけれども、この際明確な、政府としての、農林大臣としての農地補償問題に対する態度を明らかにしてもらいたいわけです。
  143. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農地改革の成果を厳に維持していくという点につきましては、私どもはその通りやっていきたい、この点において変更はありません。また地主の土地補償問題につきましては、私ども聞いておるのには、理論的にも納得するような理論をまだ聞いておりません。納得するようなことでもありますならば、また研究してみたいと思います。あるいはまた納得した結果財源ということもありましょうが、そういうことが私の聞いておる範囲ではまことに不明確であります。農地改革の効果を維持していくということに一貫しております。この点は御了承願いたいと思います。
  144. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の大臣の御答弁によりますと、前の井出農林大臣の場合においては、農地補償に対しては政府としては断じて応ずる意思はない、補償すべきでないということを、これは井出さんも明らかにしておる。今赤城さんの御答弁によると、必ずしもその点が明確でないようなんです。研究が足らぬとかまだ結論が出ておらぬという意味なんですが、これは実に重大問題でありまして今に始まった問題ではないのですから、農林大臣として就任される場合においても、この問題に対しては明確な態度をもって就任されたと私は信じておるわけです。ですからこの点は当委員会において、農地補償問題に対しては全然これを取り上げる意思がなければない、そういうような端的な表現をぜひされた方がいいんじゃないかと思いますが、重ねてお尋ねします。
  145. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 解放農地の国家補償という考え方あるいはそういう意味におきましては、私はこれは取り上げるべきものではないと思います。しかしいろいろな政治的な問題として考えられる点がありますならば、その点については研究しますけれども、国家が解放農地の点について補償する、こういう考え方には私は同調できません。
  146. 稲富稜人

    ○稲富委員 ちょっと関連して。ただいまの農地補償の問題でありますが、これは従来の大臣土地解放が合法的に行われたものなるがゆえに、当然国家補償はすべきものではないということをはっきり、これは歴代の内閣の方針として示されておる。ところが常に農地補償連盟とかそういう旧地主団体は、いかにもこれに対する政府の支持あるがごとく主張して、いろいろな運動を展開しておるわけです。それですからこれがちまたにおもしろからざる現象を生じてきておるということは、おそらく大臣も御承知であろうと思います。それで、ただいま芳賀委員からも質問いたしておりましたように、前大臣もこれに対して意思表示をしておったということは、はっきりこれは補償はやらない、さらに、そういう旧地主の補償連盟のような運動はむだな運動であるから、そういう連動はやらないように——これは任意団体であるから解散を命ずるわけにはいかないけれども、そういう運動はやってもむだである、こういう方向で農林省は対処する。さらに、いかにも農地補償の研究をやっておるかのごとく、今日与党いわゆる自民党の中にもそういう運動があるとするならば、これは農林行政を担当している党出身の大臣として、そういう党内では誤解を招くようなことがあるからやらせないように努力をする、こういうはっきりした意思表示があったわけです。それにもかかわらず、一方ではいかにもあいまいでまたいかにも補償がされるかのごとくこれを誇大宣伝いたしまして運動をやっておるから国民を惑わしますので、この点はやはり前の農林大臣のように、あなたもこの問題に対してはっきりした意思表示をやっていただきたい。これは私は今日の農地問題に対する重大な発言であると思いますので、この点を一つ大臣から明らかにしていただきたいということを申し上げておるわけであります。
  147. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農林大臣としては、この農地解放というものは合法的に行われたもので何らこれに対して補償する気持は持っておりません。しかし非常にあいまいというか、政治的な問題になっていますので、その他のことにつきましては、これは内閣の動きとか党の動きとかいろいろあると思いますので、そこまで私が干渉していくということはちょっとどうかと思いますが、農林大臣としては、合法的に行われた農地改革については国が補償すべきものではない、こういう見解を持っておるわけです。
  148. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの農林大臣の御意見は、その意思はない、しかしながら党内のいろいろの動きに対しては自分としては干渉するわけにはいかないというような御意見のようでございますが、御承知のごとく内閣が政党内閣という立場をとっておりますので、やはり党の動きというものがおのずから政治に反映するのだ、こういうことが一般に考えられるわけなんです。それで逆に今度は、やはり党出身の大臣でございますがゆえに、党内にそういうような運動があって農林行政の面において支障を来すというようなことがあるならば、やはり党に対する発言として、そういう問題を通じて、国民が農林行政について誤まらないような認識をするようにすることは当然大臣としてなさなければならぬものだと思います。これに対しては党出身の農林大臣として、また農林行政として、当然やるべきものではないかという意思表示があってしかるべきだと思うのです。この点がはっきりしないので、大臣はやらない意思は持っておるけれども、党にはそういう動きがある、しかし何とかなるだろうというようなことでは国民を惑わすような結果になると思いますので、やはりおもしろからざるものに対しては何とか最善の努力をせられるように——命令することはできないかもしれませんけれども、そういう努力をする意思は御披瀝になってもいいのではないかと思います。
  149. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御説の通り努力をいたしてもおりますし、いたすつもりでおります。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第二点は、農地の壊廃に対する対策でありますが、御承知の通り最近一カ年間における農耕地の壊廃は実に二万町歩を越えているわけです。一方において戦後の緊急開拓以来十年たった今日、六十万町歩以上の農地というものが造成されたわけですが、農地の壊廃に対して今日まで政府の明らかな対策というものは講じられていないようです。せっかく巨額の費用を投じて造成されながら、そうした農地が工場敷地であるとか宅地であるとかいうような名目でどんどん壊廃されていく、こういう点がやはり農政上の問題としても重大だと思うわけでありまして、これに対する明らかな対策政府としては速急に講ずる必要があると思うのでありますが、具体的なお考えがあればお示し願いたいのであります。
  151. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 せっかく農地を造成したり開発したものが、宅地とかあるいは工場敷地にされることは、食糧を担当している私どもとしては、これは全く忍びがたいのでありますし、そういうことはさせたくないと思います。結局いろいろ農業委員会の同意等を得まして、あるいはまたその地主、土地所有者などの了解などを得まして、私の方へ最終的に許可をしてくれというように持ってきても、これにつきましては極力許可をしない、押えるという方針を堅持しております。ただ都市計画やその他の計画上で、どうしてもそういう土地がつぶれることが必要だという場合には、それにかわるべきものを造成する、こういうような方針を持っておるのであります。私見でありますが、そういうようなどうしてもつぶさなくてはならぬという要求があるものから、何か新しく造成する負担金でもとらせて、そうしてその費用でもってそれにかわるべき土地を造成していくというようなことも研究してみたい、こう考えております。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点についてはむしろ農地法にも問題があるので、現在の農地法のいわゆる脱法的な行為が各地に行われておることは御承知の通りであります。ですから農地壊廃の前に農地の売買あるいは用途変更等に対する農地法を通じてのいわゆる農業委員会のこれに対する明確な態度を、全国の農業委員会においてとられるように、これはやはり法の不備があれば速急に改正等もやって、今農林大臣が言われたように是正する必要があると思う。その点はどうですか。
  153. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業委員会等においてどうもいろいろな関係からこれを承認するような形が行われておることは事実あるのでありますので、そういう点につきましてはなお通知を出して、みだりに農地を壊滅するようなことをさせないようにいたしたいと思います。  それからまた今お話のように、研究の上それだけでは不十分だということでありますならば、法律改正の研究もいたしたい、こう思っております。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第三点は農業関係災害対策と開拓行政を通じ、不振地区に対する政府施策についてでありますが、災害問題は先ほど九州災害に対して同僚委員からの大臣に対する質疑が行われましたので、大体その中にも尽されておると思うのでありますが、それで今後の開拓行政に対して農林大臣は新たなる構想を持っておられるかどうか。以前は井出農林大臣の時代においては、河野農林大臣のときもそうでありましたが、国内における非常にコスト高になる農地開拓、あるいは無理な増産施策というものは漸次やめて、そうして外国の安い農産物を輸入することによって消流面の態勢を整えた方がいいというような現在の政府の方針になっておるわけでありますが、そういう関係もありまして、最近の開拓行政というものは非常に沈滞、消極的になっておる。当委員会においては前国会におきまして、開拓営農振興法等を成立させたわけでありますが、先ほどの農林大臣所見の中には、夫利用資源あるいは未開発資源の開発を行なって、食糧の総合増産を行うというような見解も示されておりましたけれども、今後の開拓行政に対する態度というものは、外国の食糧依存によって、開拓行政を放棄するような考えでいくのであるか。思いを新たにしてやはり国内における増産に力を注いで、外国の食糧依存の態度を改める考えであるか。この二点に対してはいずれをとるか、その点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  155. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 食糧を外国に依存するという政策は、これは今の需給状況から食糧を外国から入れなければならぬ量というものはおのずからありますけれども、さりとて国内の増産とか開拓とかいうようなことを放擲して外国に依存するというような考え方は全然持っておりません。でありますから、開拓等につきましては力を非常に入れたいと思っております。ことに畑地については力を入れなければならないと考えておりますが、それとも関連いたしまして、開拓営農の推進ということにも力を入れてみたいと思います。ことに開拓地の農家などにつきましては、終戦後いろいろと開拓地に入りましたが、分れ目にきておるといいますか、非常にいい開拓地と相当まずくいっておるものとありますけれども、開拓農業はやはり農業の先覚といいますか、先鞭をつけておるようなものでもありますので、ほかの農業技術や、あるいは営農形態等における模範にもなっておるような面も非常に多いので、これには相当力を入れてみたいと思っております。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間の関係で十分の質疑はできませんが、その次の第四点は、土地改良事業の推進の問題ですが、この点に対しましても、前国会において政府土地改良法であるとか、あるいは土地改良事業の特別会計法のごときものを持ち出して、これは主として土地改良事業に対する国の補助の切り下げをねらった法案でありましたので、私ども社会党としては、これに対しては全く不満であったわけでありますが、ついに二法案は成立したわけであります。今後の農業の生産性の向上と土地改良事業の推進というものは、これは不可分の関係にあるわけでありますからして、農林大臣としては、土地改良事業の推進実施に対してもう少し積極的に、たとえば政府財政的な支出をふやすような意味における土地改良事業の促進をどういうふうに考えておられますか。
  157. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 土地改良につきましては、先ほど私も申し上げましたように、生産基盤でありますからしてぜひ力を入れたい。しかしてこれが予算面を非常に多くしたいということももちろんであります。融資の面と財政投資の面と含めて全国的な計画も持っておりますから、その計画をぜひ進めて参りたい。  それから地元負担の問題でありますが、これは小さいもので二、三年ですぐ済むようなものについては、やはり融資あっせんというようなことなどもいたしましてこれを進めていくということになれば、二、三年のうちに元を取るといいますか回収できる面もありますので、予算面あるいは財政投融資の面、いろいろな方面から強力に進めていきたい、こう考えております。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第五点はタバコ耕作農民の生活擁護でありますが、これについて御所見があれば聞かせていただきたいのであります。  その次は酪農振興の問題であります。特に先ほど大臣の所信表明の中に、畑地農業の振興に対して重点を置くというような考えも述べられておりましたけれども、畑地振興対策の中には、何としても酪農問題は支柱的な役割を占めておると思うのであります。それで具体的に今後の酪農振興等の問題はどのような構想で進めていかれるか。最近は特に公正取引委員会の酪農問題に対する態度というものは、非常に不可解な動きがあるわけであります。たとえば酪農振興法あるいは農業協同組合法に対する理解の欠除といいますか、酪振法あるいは協同組合法に基いた酪農振興あるいは農業振興等の協同化の問題等に対しましても、あるいは共同販売の体制等に対しましても、公取の見解は、あたかもその行為というものは、独占法に抵触するかのごとき指摘さえもしているような点が間々あるわけであります。最近においては、特に青森県の三八地区の問題が公取の審判にかかっておるわけでありますが、これらの点に対しましても、当委員会としてはしばしば公取委員会を呼んでその理解の足らない点を指摘して参ったのであります。この点に対しましても、農林省当局の自信が足りない、あるいはその熱意の足らぬような点も、その一つの理由にもなっておるように私は考えておるわけであります。そこでこの際農林大臣の畑地振興の一環としての酪農振興あるいは飼料の自給態勢の問題であるとか、草地改良あるいは牧野問題に対してどういうような構想で今後進まれるか、その点に対してお伺いいたします。
  159. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 葉タバコ耕作組合の問題につきましては、前国会において法人化の問題とからんで法律が出たのでありまして、この点につきましては、農業協同組合とタバコ耕作組合との間に資材等の問題で少し残っておる点がありますけれども、調整の上葉タバコ耕作組合員の地位の向上をはかりたい、こう考えております。酪農振興もこれも畑作農業と関連いたし、また開拓などとも関連いたしまして、当然取り上げなければならない問題であります。御指摘のように乳価の安定というものも、流通機構の上において非常に大事なことであります。これも酪農審議会に今諮問いたしておりまして、生産者の利益が阻害されないように、そうしてまた消費者も適当な価格で消費できるような案を計画中であります。まだ結論に達しておりませんので、せっかく御趣旨のあるところを取り入れまして、結論を得たい、こう考えております。
  160. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと関連して。今葉タバコ耕作の問題について大臣から御答弁があったようでありますが、お願いしておきたいことは、大臣御承知の通りタバコ耕作合組法が出ております。継続審議になっております。これの内容も御承知だと思いますが、これの内容は全部各条文を見ました場合、法人化するということがこれが一つの目的である。問題はそこにあるのでなしに、タバコ耕作者の権利擁護をどうするかということが問題の焦点なのです。従って現在継続審議になっております専売法の一部改正こそが優先されなければならぬ。その上で考えらるべき問題だと思う。この順序を間違わないように十分一つ御留意願いたい。この点だけ要望しておきます。
  161. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 了承しました。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの御答弁の中で、公取委員会態度に対して、大臣就任早々でありますからして、その点は十分勉強ができておらぬと思います。たとえば酪農振興法に基く高度集約の指定を受けた地域内における生産者を代表する協同組合の共同販売行為に対して、公取委員会の見解というものは必ずしも了承できがたい。これらの問題は以前の国会からずっと問題になっておるわけです。それでそういう話をまだ聞いておらぬとすれば、速急に勉強してもらわなければならぬと思いますが、もし畜産当局から聞いておられるとするならば、これはゆゆしい問題でありますので、その点をお尋ねしておきたいと思います。
  163. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 公正取引委員会との関連においていろいろ個々的に問題が起きていることは聞いております。具体的にどこの問題ということはまだよく承知しておりませんが、しかしそのつど農林関係としての、また酪農振興の観点から、公取委員会については農林省の意思を十分に主張して、連絡はしているような状態であります。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題はまた次の機会に譲るとしまして、その次は余剰農産物の受け入れについて。最近政府は先般の岸総理の訪米を契機に余剰農産物の受け入れに対する具体的な取りきめを行うような動きがあるわけであります。昨年度は第三次協定は中止になったように私は承知しているわけでありますが、先ほど大臣の答弁にもありましたが、決して外国の余剰農産物に依存するがごとき農政はとりたくないということでありましたので、具体的な問題として今次の余剰農産物の受け入れと今後の農政との間における関連、余剰農産物の受け入れに対して農林当局としてはいかなる態度を持っておられるか、お尋ねしたい。
  165. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 余剰農産物は、アメリカから見れば余剰農産物であろうと思うのでありますが、私の方から見ると必要な量の限度においては入れざるを得ないじゃないか。でありますから、芳賀委員御承知の通り、日本の食糧関係については需給計画があるわけでありまして、麦類にいたしましては二百二十万トンかはどうしても入れにゃならぬ数量になっているわけであります。その外貨を払って当然入れなければならない範囲内においては、外貨を払わずに、いわゆる余剰農産物で小麦あるいは麦等を入れて、その金が土地改良というようなことに長期に低利に使われるということであるならば、開拓や農地の改良にもなりますので、そういう意味においては、必要の範囲内においてはこれを受け入れる方が外貨を使って買うよりはいい、こういう観点から必要量の範囲内においては入れることにいたしたいと思っているのであります。でありますから、これをもって外国に食糧を依存するというお考え方にはとらないでいただきたいと思うのですが、必要量の範囲内で外貨を払わないで、外貨にかわって余剰農産物という名前のもとで小麦、麦類を入れる、こういう考え方で進めているような次第でございます。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は農林大臣の見解がちょっと違うのではないですか。私どもは国民生活の上から見て、食糧の足らない絶対量を外国から買い付けるということに対しては、別に反対しているわけではありません。そういう場合においては、やはり機会均等の上から見て、世界のあらゆる市場の中で最も低廉な、最も良質な食糧を買い付けるということは、当然とるべき行為なんでありますが、余剰農産物の場合においては、それとは全く性質が違うわけです。通常不可欠な輸入の数量以外に、あたかも現物借款のごとき意味においてアメリカの余った農産物をまず買付して、それを処分することによった決済を長期の返済というような形でその間積み立てておいてそれを使うという方式がとられておりまするけれども、これはやはり問題があると思うわけなんです。経済的な一つの依存の現われなんですから、そういう正常でない形における余剰農産物の受け入れというようなことはとるべき方法ではない。しかもそれが陰に陽に日本の農業のあらゆる部面に一つの圧迫、あるいは好ましくないような影響を与えておるということは全く否定することができないことですから、これをいかに排除するかというところに農林大臣の大きな役割があるのではないかと考えるわけです。ですからこの点に対しては農林大臣として、日本の農林を守り、農民を守るという立場からはっきりした態度で臨む必要があるのではないかと思いまして、重ねて質問するわけです。特に余剰農産物を輸送する場合には、少くともその五〇%を相手国、いわゆるアメリカの船によって運ぶということも一つの条件になっておるわけです。ですからそういう正常でない形の余剰農産物の受入れに対しては十分反省の余地があると思うのですがいかがですか。
  167. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 特にアメリカからばかり余剰農産物の形で麦類を入れるというわけではなくて、普通の外貨で買う麦、小麦も、あるいはオーストラリアあるいはカナダ等にもあるわけであります。またアメリカからも買うものがあるのでありますが、それは先ほど私が申し上げましたように、現実的に絶対必要量といいますか、ことしの米穀年度なら米穀年度、食糧の需給関係から必要量だと私どもは考えておりますので、必要量の範囲内において入れることが外国依存だということにはならないし、またその金を使うことによって外国から押えられるという形になるとは私どもは考えておらないのであります。向うが余っておるから日本の必要量以外に借款の形で買わされるんだ、押しつけられるんだということであっては、私どもとしては極力排撃するし、受け入れなどはする気もないのであります。いずれは国内において自給態勢を確立しようとせっかく努力しておるのでありますが、まだ十二分に国内で麦、小麦類が自給できるという段階に行っていないので、本年といたしましては輸入する必要があるわけであります。向うからは余剰農産物という名前で言っていますが、私の方からは必要量を入れるということでありますから、外国依存とか外国に圧迫されるということになるとは私ども考えておらないのであります。その点はどうも見解が違うようでありますが、私は、信念といいますかそういう気持の上においてこの余剰農産物は入れたい。それから船腹問題でありますが、これにつきましても御指摘のように五〇、五〇ということでは感服いたしませんので、こういうこまかいことにつきましてはいろいろまた交渉して、これを是正するような方向へ持っていっておるわけであります。まだ具体的なことを申し上げる段階にはいっておりません。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は農林大臣がアメリカの余剰農産物処理方法を調べればわかるのですよ。アメリカ当局が余剰農産物の処理に苦しんで、結局そういう法案を作って、普通の農産物の貿易外に滞貨を処理するためにできた方式なんです。ですからこれは一般の取引以外ということになると、一般の取引というものを一つの実績といたしまして、その実績をくずさないそれ以外の取引の形で余剰農産物の処理を行うということになっておるので、これはやはり必要以外の数量に対しても買付をしなければならぬということに必ずなるわけです。この点は大臣の言ったような方式と内容が違っておるわけでありますから、これは事務当局にも命ぜられて、アメリカの考えておる余剰農産物の処理の目的がどこにあるかということを十分調べられた方がいいのじゃないかと私は考えて、この点は御注意申し上げておきます。
  169. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカの余剰農産物の法律によりますると、今御指摘のようだと思います。しかし現状から見ますると、しいて売ろうというほどではなくて、インドその他からも非常に希望が多いようであります。ですから今までの情勢とはアメリカの事情も違っておるのじゃないか。それからお話のようにある程度の通常輸入量というものは基礎としてはあるわけであります。その上に入るわけです。しかし日本の小麦の需給全体の状況からいたしますならば、その必要量のずっと低い範囲内できめていこう、こういうことでありまするから、日本としてはこれがよけいに買うとか余剰というような考え方でこの構想を進めるということではないのであります。なおお話の点もありまするから詳しいことを事務当局から調べてみたいと思いますが、今のところではそういうふうに進めようという考えであります。
  170. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して……。大臣の今の答弁はちょっと誤解があるのじゃないかと思うのです。大臣の答弁では結局国内の需給上余剰農産物を買い付ける余地があるのだということでした。また食管に赤字を出さないで買い付けられるのだ、こういうような見解のような御答弁ですが、小麦の場合はまだ国内需給の上から顧慮される余地があるというふうに受け取れないことはない。しかし大麦に至りましては国内の生産量からみまして、外国から買うよりも国内の買い上げの余地があるわけです。しかも大麦は国内よりも高く買ってこなければならないわけです。小麦の需要量から見まして、国内の買い上げが進みますれば、二十万トンの輸入計画はどうも必要をこえるのではないか。しかもほかの小麦との抱き合せで無理に買ってこなければならないのじゃないかということになると思うので、その答弁については誤解があると思う。将来誤解が生ずると思うが、この際明確にしておいてもらいたい。
  171. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今の最初のお話をちょっと私忘れたんですが……。私の考え方とどうも違うような気がしたのですが、どういうことでしたか、もう一度一つ……。
  172. 川俣清音

    ○川俣委員 国内食糧自給の上からまだ受け入れる余地があると言われておりますが、小麦の場合はそう言えないこともないであろうが、大麦の場合は当てはまらないのではないか。小麦の国内生産から見ましてまだ買える余地があるんだ、こういうことは大臣説明通りでいいだろうと思うのです。しかし麦全体ということになると違うのではないか。特に大麦は国内生産から見ましてもっと買い得る余地があるわけなんです。しかも外国から買ってくる大麦は国内価格よりも高いわけですから、国内の大麦の買い上げがもっと進むわけです。従って需給上から大麦が必要だという議論は成り立たない、こういう意味です。成り立たないのに成り立つような説明は誤解を招くのではないか。これは親切に言っているわけなんです。
  173. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大麦の数量の御指摘がちょっと違うようでありますが、なお数字の点その他こまかい点につきましてちょうど食糧庁長官が来ていますから答弁をさせたいと思います。
  174. 川俣清音

    ○川俣委員 それは新聞によると二十万トンと出ておる、あるいは二十万トンが十五万トンになるかもしれない。最初の計画自体ですら大麦が割合に多く見込み過ぎている。前年の実績を見ても大麦は小麦等の抱き合せの結果国内の必要以上に買い過ぎておる。そういう実績を持っておるわけです。今この小麦の実績を私はここで申し上げる必要はないんで、小麦との抱き合せで必要以上に買って赤字を出しているわけです。食管の会計の赤字をできるだけ出さなくするという建前をとっておるとすれば、これは一般会計から受け入れるんだ、こういうことで片づければ別ですよ、しかし、あえてこの際国内にある、しかも国内から集め得られる大麦を、絶対量は不足ではないのですから、それを国内需給操作のために買ってくるという理由は成り立たない、こういうことなんです。だからこれは事務的に説明されてもそれはまた議論が長くなるだけだから、今ちょっとここで申し上げたわけです。
  175. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 よく調べてみます。
  176. 小倉武一

    ○小倉説明員 川俣委員のお説はよく伺っておりまして承知しておりますので、実はその趣旨で大麦の輸入はできるだけ圧縮いたしまして国内の増産に期待するというつもりでやっておりますが、これは粒食が食糧不足時代に相当普及した関係上一挙に圧縮することはなかなか困難な関係にありますので、心がけとしてはできるだけ圧縮していくということはお認め願えると思いますが、これもことしの作柄からいたしますと大麦必ずしもよくございませんけれども、今後需給計画の改訂に当ってはよくお気持のほども十分取り入れて一つ処置をして参りたい。余剰農産物についての大麦の受け入れの量はあの程度の量ではそう御心配になることは私はさしあたりのところないというふうに考えております。
  177. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第八点は、畑作振興対策でありますが、これは先ほどの酪農振興との関係がありますけれども、特にこの場合畑地振興を進める場合には、畑地農産物の価格維持の問題が非常に大きな問題だと思うわけです。現在農産物価格安定法がありまして、たとえばバレイショ、カンショの澱粉であるとか、菜種、カンショの生切干等、昨年から大豆が対象になりましたが、これらの品目は安定法の対象になっておるわけでありますが、安定法だけをもってしてはなかなか農産物の価格維持を十分やっていくわけにはいかぬわけです。そこでこの際畑地振興をやる場合には、どうしても外国からの輸入農産物の競合をいかにして排除して国内の畑地農産物の主要なるものを保護するかという点も、これは大事な施策になると思うわけです。この点に対して特に農林大臣のお考えを聞いておきたいのでありますが、先ほどのたとえば余剰農産物の問題にしても、大臣は決して余分なものを大量に入れないから心配はないと言われましたが、政府は余剰農産物を必要以上に入れた場合においては、どうしてもそれをすみやかに処理しなければならぬわけでありますから、そういう場合においてはある程度国内の増産を押えてでも余剰農産物の処分を急がなければならぬということになるわけであります。その増産抑制の方法としては、まず農林予算を削減するとか、農産物の価格が暴落してもそれを傍観するというような態度をとればこれは農民の増産意欲等はたちまち後退するんで、政府の考えは、直接刀はふるわなくても農民圧迫はできるわけなんですから、この点に対しても余剰農産物と畑作農業の振興は不可分の関係があると思うわけです。ですからそういう点も一つ考えの中に入れて御答弁を願いたい。
  178. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 外国から入れるものと国内でできる農産物の競合を防いでいきたい、これはその通りであります。それからまた畑地農業振興一つのめどというものは、やはり土地生産性が高まるということと酪農との関係があること、機械化ができること、そういうものと同時に今の価格問題に関連いたしまして生産農家に生産費を補償する価格で買い上げることも必要でありますが、同時に農産物の生産費を下げるような方法でもっていかなければなかなか生産農家としてもやり切れない、こういうふうに思っておりますので、畑地農業に力を入れていきたい、こう思っているのです。それに関連して外国から輸入するものと競合する場合には、極力これは外国からのものは押えて、割り高であっても国内で生産するという方向に持っていきたいと思います。余剰農産物の場合はどうも先ほど私が申し上げたような事情でこれは入れたい、こう思っておるのでありますが、その他の農産物等におきましては、競合する場合は極力押えたい、かりに割り高であっても国内の増産をはかりたい、しかし畑作振興によって、直ちにはてきないでしょうが、国内の農産物の生産費も低めていくような方向に持っていきたい、こう考えております。
  179. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでもう一つお伺いしたいのですが、農産物の価格維持の場合において一番問題になるのはやはりイモ類ですね。澱粉の価格維持あるいは大豆の価格維持の問題だと思うのです。従来も政府におかれては、輸入大豆のAA制の実施を——今日においても政府部内において採用すべきであるというような意見も決して失われておらないと思うのですが、せっかく農産物価格安定法の中に大豆を指定しても、一方において輸入大豆の買付に当ってはAA制をとるということになりますと、農産物価格安定法の効果というものは非常に減殺されると思うわけでありますが、この点に対しては農林大臣として当然大豆のAA制に対して反対の態度は堅持されると思うのでありますが、その点が一つ。  もう一つは、イモ類の価格維持の場合の澱粉の問題でありますが、今日は政府は二十七年、三十年、三十一年度にわたって澱粉の買い上げを行なっておるのであります。現在約四千六百万貫程度の政府手持ちがあるわけでありまして、これは政府として食管制度の中においても相当重荷だと思うわけですね。しかしこれを市場へ出せばまた澱粉の価格維持ができないというような問題もあるわけであります。そうかといっていつまでもこれを将来手持ちをしてまたまた本年度産も買い上げをするということになりますと、これは財政的から見ても問題が大きくなると思うわけです。そこでこの際考えられることは、澱粉の何らかの新たな用途を開拓するかあるいは手持ち澱粉をある程度出血があるとしても国外へこれを消費するというような方策を本年度の出回り前に政府としては明確にされなければ、澱粉等の価格安定はなかなか堅持されないのじゃないかと考えられるわけです。この点に対しては農林大臣としても苦心されると思いますが、何らかの具体的なお考えがあればこの際に示していただきたいと思います。
  180. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大豆の輸入につきましてはAA制に対しては反対の立場をとっております。  それから澱粉の処理の問題ですが、これもお話のようにまことに澱粉の手持ちが多くて弱っておるのでありますが、出血輸出ということを今直ちに考えるわけにもいきませんが、用途につきましては、やはりこれは精製ブドウ糖というような方向へ持っていかして、この産業一つ奨励していこうじゃないかという問題が一つあるのであります。もう一つ、また産地の方に対しての考え方ですが、これは今すぐというわけにもいきませんが、畑地農業というものを相当進めていって、イモ作地帯の作物の転換といいますか、土地が肥えてくるというような形になってきて、イモでなくても、ほかのものが作れるという形に持っていきたいと思いますが、これはちょっと先が長い話でありますが、とりあえずは精製ブドウ糖の工業の方を進めて、その方へ用途の転換といいますか、向けていきたい、こういうふうに考えております。
  181. 石坂繁

    石坂委員 この際関連いたしまして、種バレイショの鉄道運費の問題につきまして、国鉄当局にお伺いたし、最後にこの問題に対する農林大臣所見をお伺いいたしたいと思います。  昭和二十八年の運賃改訂の際に、種バレイショの問題は、これは農家の再生産資材として必需品であるという特殊性からいたしまして、運賃等級は最下級の二十三級に格付されておりました。その上に調整措置として、一三%が割引きされておったのであります。また国鉄の定める期間に、国鉄の定める条件により輸送する場合は、千四百一キロ以上の輸送の場合には、北海道産のものは七%、内地産のものは二%を特別割引されておったのであります。しかるところ、本年四月の運賃改訂に際しまして、青函連絡船の運賃を従来の四百五十キロとして運賃計算をいたしておりましたものを、三百五十キロとして、百キロ短縮して計算しようという当初の案でありましたが、この場合七彩の北海道産のものの特別割引は残すということに了解ができておったようであります。その後与党側の要望をいれまして、三百五十キロをさらに短縮いたしまして、三百キロとして計算することになりまして、従いまして五十キロ分の減収になるので、そのかわり、この七%を削って特別割引を廃止することにいたしたということであります。しかし種バレイショに対するこの特割を廃止することによりまして、五十キロ分の減収を差し引きましても、私どもの承知しておる計算では、国鉄はなお七百万円余りの増収となっておるのであります。また今度の運賃改訂は平均十六%をこえないとの政府、与党の言明であったが、種バレイショについて見ますと、北海道より出荷するものを地域別に見ますと、その値上げ率は東京で二二・四三%、大阪では二四・五七%、福岡で二五・八%、愛媛で二七・六九%、鹿児島で二七・七人%となって、一俵八百円前後の現品で運賃は、東京で百十九円四十三銭であったものが約二十七円の値上り、鹿児島では百九十八円十四銭であったものが二百五十三円十九銭と五十五円以上もの大幅の値上げとなっておるのであります。従来実施されておった特別割引の品目のほとんど全部は現在なお残されております。農産物中夏ミカン、蔬菜類、果実等は、本年においても四月十日から実施されているようであります。現在特別割引の実施されている農産物に比較いたしまして特別割引の必要性において決して劣らない、というよりもむしろまさっている種バレイショについて特別割引を廃止しようとする国鉄当局の方針は、私どもの理解することのできないところであります。特に種バレイショは農家の購買する再生産資材であって、運賃の値上げは直ちに農家の負担増となり、農業政策上きわめて妥当を欠くものと思われるのでありますが、これに対する国鉄並びに政府当局の所見をまずお伺いいたしたい。
  182. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。この問題はただいま先生からお話がございました通り、いろいろいきさつがありました問題でございますので、多少長くなりますが数項目に分けまして御説明させていただきます。まず第一にバレイショの運賃でございます。これは御説の通り私の方で運んでおります数千の物資を分けました十五の等級のうちの一番下の二十三級という等級に属しております。米その他と同等に取り扱っておるわけであります。ただしさらにそれに対しまして特に農家その他の関係の生活必需品の程度が非常に高いというような意味もございまして、さらにそれに一三%の割引をいたしておるわけでありまして、これは昭和二十八年以来今日まで実施いたしておるわけであります。過般の運賃の改訂をお願いいたしました際に、これらの点がいろいろ問題になりまして、私どもといたしましては、こういう特殊割引、個々別々の割引よりも全般的な賃率の問題としてこれを解決いたしたいと考えておりましたが、時間その他の関係上それが不可能でございましたために、一応現在実施しております特殊割引は残すという建前で考えてみたのでございます。さらにそれに、かてて加えまして、実はこの運賃は、私どもの言葉でございますが、遠距離逓減と申しまして、遠距離に参りますほど非常に割安になっておるわけでございますが、そのために非常に船運賃との競合その他を来たしまして、さなきだに逼迫いたしております貨物輸送を一そう逼迫させているというようなこともございまして、ある程度遠距離逓減の調節をいたしたいと考えたのでありまして、六百キロ以上の逓減率を多少修正するようにいたしたわけであります。ところがそれが非常に一般物資特に農林水産物資に対する影響が大きいという結果に相なりましたために、先ほど申しました現行の割引をさらに強化する。品目におきましては、当時やっておりましたのは、件数といたしまして七十九件ございましたが、それを百四十五件に、ほとんど倍に件数を増加いたしました。さらに運賃の割引率といたしましては、六百キロ以上のものを一%以上六%まで割引の率を強化いたしまして、農林水産物資に対する影響を極力少くするという方策をとったわけでございます。たとえばそのふえた物資といたしましては、その当時で毛割引いたしておりましたものをさらに範囲を拡大いたしましたが、これは主として北海道向けのものでございますが、するめ、焼きちくわ、農機具、花むしろというようなものにつきましては、北海道向けのものの割引をする。あるいは下級塩干魚、豆類、バレイショ澱粉というようなものにつきましても、割引の範囲を拡張したのであります。さらに現在の割引しておりますものよりも品目をいろいろふやしまして、たとえば福神づけ、しょうゆ、あるいはカンショ澱粉、切りぼしカンショ等の二十数品目を増加いたしまして、結局七十四件のものを百四十九件に増加いたしました。これによって三億三千万円程度の私どもの運賃負担を重くしたようなことになっておるわけでありますが、そのほかにさらに水産関係といたしましても、従来のいろいろ御要望でございました東北、北海道方面と九州方面とのバランスをとる意味におきまして、東北、北海道方面の負担を相当軽減いたしました。そのような措置をとりまして、農林水産関係につきましては非常に大幅な割引をいたしまして、一応運賃改正の御了承を得たわけでありますが、その際に今申しました通り、建前といたしましては遠距離逓減の修正をさらに修正する。すなわち日本の地形から申しまして、どうしても遠距離逓減の輸送というものはやむを得ないのだ、そのために今後の割引というものは遠距離逓減をあまり急激に修正しないという方面の割引で進むべきではないかというようなお話などもございましたために、今までのいろいろ物資別の割引を遠距離掃滅の修正に対する割引、すなわち端的に申しますれば遠距離割引に置きかえてしまったわけでございます。従いましてただいまお話のものにつきましては、種バレイショにつきましては一三%はそのまま残してございますが、七%は物資別の割引ということでこの際廃止して参りたいと考えております。  さらに北海道関係についてただいまお話がありますので申し上げますが、北海道関係につきましては、当初私の方は青函の航路の方のキロ程をただいまお話の通り四百五十キロのものを三百五十キロに修正いたす考えでございましたが、それをさらに三百キロまで短縮しろというお話のために三百キロに短縮いたしました。私どもといたしましてはそのかわり北海道なるがゆえの割引といたしましてやはり二十数品目をやっておりましたが、その割引をこの際ぜひ廃止させていただきたいというお話をいたしたのでありますが、それは存置しろというようなお話のために存置いたしたのでございまして、ただいま先生のお話の中にございました七%と五十キロと見合いになったというようなことはその経過においてはないのでございまして、その間において種々お話はございましたが、個々の物資についてよりも北海道発の農林物資全体というお話でお話を承わったように私は記憶しておるわけでございます。さらにその関係上北海道につきましては、先ほど申しました通り二千三百キロ以上につきましては一分だけの割引の強化をすることにいたしまして、遠距離の割引につきまして内地のものと北海道のものとの歩調を合せたということに相なっておるわけでございます。従いまして私どもでいただいております運賃を申しますと、私どもの方では輸送いたしましたトン数とキロ数をかけ合せまして、いわゆるトンキロ当りの運賃ということを申しておりますが、トンキロ当りの運賃で申しますと、バレイショは大体一円四、五十銭、米が二円三十五銭になっておりますが、バレイショのキロ当り運賃は食用バレイショで一円五十七銭、種バレイショで一円四十八銭で、一円五十銭内外のトンキロ当りの運賃ということになっております。こういう関係上私どもの方としましては、種バレイショといたしまして一番大きな問題はやはり輸送の問題でございますが、十月以降三カ月の間に十七万トンの輸送を北海道から内地向けにいたさなければならないということになりますので、さなきだに小さい青函連絡船の輸送力を種バレイショは非常に余分にとるわけであります。従いましてその時期になりますとあるいは木材を押え、あるいは場合によっては魚を押えても種バレイショ等の輸送をしなければならないということからいたしまして、私の方といたしましては計画輸送に非常に重点を置きまして、北海道を出たものは、先生お話の通り鹿児島に着くものにつきましても実は急送品と申しまして五分の割増しをいただくべきものを割増しもいただきませんで、実際上の輸送措置といたしまして大量の貨物の輸送の万全を期すという意味におきまして輸送上も実は格段の措置を講じて今までもやって参りましたし、また今後もやって参りたいというふうに考えておる次第でございます。  最後に災害地問題でありますが、御質問が出なかったので恐縮でございますが、長崎県、熊本県、愛知県等に対する災害地向けのこういう救恤物資ということになりますれば、私の方は無賃輸送の手配を講じておりまするし、また罹災者向けのものでございますれば、なお三カ月間五割引の運賃割引をいたしているわけであります。
  183. 石坂繁

    石坂委員 ただいまるる御答弁がありましたが、その中では他の物資との関係を論ぜられたのでありますけれども、私は北海道産の種バレイショの特割廃止の点は一向に納得できないのであります。特に先ほど一言いたしましたように、この種バレイショは購入する農家の再生産資材としてきわめて重要なものであります。ことにこの購入農家は今回の七・二六災害を受けた長崎熊本佐賀方面にかなり多数に上っておりまして、われわれはそれらの罹災農家の再生産のために、この種バレイショの問題は特に重要視しておるのであります。仄聞するところによりますれば、昨三十一年の九月、三十一年度の特別割引を実施するに当りまして、国鉄営業局長から農林省経済局長にあてまして、種バレイショの運賃割引についてという通知が発せられて私も控えを持っておるのであります。その中で国鉄側は、この特別割引の措置は三十一年度限りである、三十二年度以降は根本的に再検討すると述べておるのであります。国鉄側はこの文書を根拠といたしまして、特別割引の三十二年度以降の廃止を主張いたしておられるようでありますが、この文書の意味は廃止の通告であると解すべきものであるかどうか。もししかりといたしますならば、これを受け取った農林省は、三十二年度以降の運賃改訂に当りましていかなる方針をもってこれに臨み、かついかなる措置を講じて参られたのであるか、この点につきましては、やや農林省といたしましては怠慢のそしりを免れないのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、両方の所見いかん、これを伺います。
  184. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 石坂委員から御指摘のように、北海道から内地の各都府県に供給されている数量は今百二十万俵になっておりまして、全国の総供給量は百九十万俵でありますから六割以上の割合を示しております。一方バレイショ作における優良種イモの使用が不可欠の現状でありますし、しかもその増殖率が低い点から、バレイショ栽培における種苗の費用は二%という他の作物に比してきわめて高い割合になっております。でありますから北海道から全国に供給する種バレイショにつきましては、内地におけるバレイショ作の安定上できる限り安く供給されることが望ましいことは申すまでもありません。そこで一三%の割引された上になお昨年七%割引をしてあったのでありますが、これにつきましては協定等もありましたが、さらに七%の引き下げにつきまして、しばしば運輸当局とも交渉している次第であります。この七%引き下げをしないということになりますと、先ほど石坂委員からもお話がありましたが、愛媛、鹿児島等においては二七%、福岡においては二六%高くなる。すなわち違距離逓減の一六%よりも値上げ率が高くなるような結果になりますので、この点はぜひ運輸省としても考慮されたいということで、再三交渉しておりますが、なおこの交渉を継続中であります。種イモの出荷期といいますか、出る期間までに何とかそういう方向へ話し合いをしたいとせっかく交渉中でありますが、今結論を申し上げる段階ではありません。
  185. 石坂繁

    石坂委員 この問題に関する農林大臣のこれまでの御努力は、はなはだ多とするものであります。この特別割引の問題は、国鉄運賃法第十八条によりまして、国鉄の意思によって決定される問題ではありますが、国鉄を監督しておる運輸大臣の決意いかんにかかるものであります。しかるに本日運輸大臣が、所用のためとはいいながら、欠席されておることははなはだいかんでありますが、この問題の結末いかんは、内地の農家、特に東京以西、四国、九州の畑作農家にとりましては重大なる関係があるのであります。この点は農林大臣もとくと御承知のところであります。従いまして、すみやかに決定する必要がありますが、現在本問題が決定いたしませんために、売りつけも買付もできないような状態であります。九月早々から植付をせねばならないのが、植付がおくれる心配があるのであります。そういたしますれば、バレイショの減産は必至であるというようなゆゆしき結果になることがおそれられますので、先ほど農林大臣のお言葉もありましたが、早急にこの問題を決定いたされまして、おそくとも九月の一日ごろまでには処置されるように要望にたえない次第でありますが、農林大臣はさらに運輸大臣と折衝せられまして、このすみやかなる決定を下さるべき必要があろうと思うが、農林大臣はもちろんそうお考えのことであろうと思いますけれども、念のために伺っておきます。
  186. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局にも交渉させますが、私といたしましても運輸大臣と話し合いをつけていきたい、こう考えております。
  187. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま石坂委員から、種バレイショ等の運賃問題のお話がありましたが、全くその通りでありまして、特に畑地農作物あるいは原始産業であるところの農林水産物資は、単位重量、あるいは単位容量においては非常に価格が低廉でありまして、今回の運賃値上げ等においては、輸送費の占めるコストというものは非常に増大しておるのは、御承知の通りであります。しかも東京あるいは大阪がその消費地を形成するような関係があって、その消費地から遠隔な北海道とかあるいは九州から、こういう農林水産物資を輸送する場合においては、非常に不利益をこうむることは否定できないわけです。それは決して消費者負担ではなくして、運賃の値上りは結局逆算されて、生産者の手取りの減少、あるいは種イモ等の場合においては、種イモを購入して生産する、いわゆる中間段階にある農家の所得の減少ということになっておりますので、農業政策の上から見ても、農林水産物資の輸送運賃に対する特段の措置ということに対しては、特に担当の農林大臣政府部内においても十分な発言をされて善処されんことを、この際期待しておく次第であります。  第九点にお尋ねしたい点は、これは食管制度の改善の問題でありますが、本日は時間の関係で、食管制度一つ取り上げても、これは一日くらいかかる問題でありますので、この際要約いたしまして特にお尋ねしたい点は、消費者米価に対する政府態度農林大臣所見は現在いかようであるかという点をお尋ねします。特に先般七月五日の閣議決定によりますと、政府としてはすみやかに消費者米価の改訂を行なって、現在十キロ七百九十円を十キロ八百五十円程度に改訂して実施するということが、七月五日の閣議決定事項になっておるようでもありますし、最近の新聞報道等を見ても赤城農林大臣の姿話として、おそくとも十月一日ころから消費者米価の改訂いわゆる値上げを行いたいというような意向も伝えられておりますので、この点に対する大臣のお考えをお聞きしたいのであります。
  188. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 米の価格につきましては、生産者にはやはり所得補償方式といいますか、生産費を償うような方向にぜひしていきたい、また消費者につきましては、これは家計上から見て、できるだけ安くしたいというような考え方でありますが、しかし全面的にそればかりを考えますというと、差額が非常に大きくなって、食管会計の経理上も非常に困難を来すような状態になりますので、その赤字の幅は極力狭めていきたい、一般会計で負担すべきものは一般会計で負担するようにしたいし、また消費者の方で幾分負担してもらわなければならぬものは、消費者の方にも負担してもらうというような考え方を持っておるのであります。閣議決定もありますので、今のところ私もその閣議決定の線に沿うて方法をとっていきたい、かように考えております。ただ、まだ豊凶の時期とか一般物価の動向というようなこともありますので、今すぐ手を打つというわけでもありません。閣議決定の線を守っていきたい、こういう考えを持っております。
  189. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点について、いまだに政府部内においては、完全な閣僚間の意見の一致を見ておらぬというふうにも承知しておる。特に経済企画庁長官の河野一郎氏のごときは、この際消費者米価を値上げすべきでないというような意見を持っておるようにも承知しておるわけです。そういたしますと、七月五日の閣議決定なるものは、最終的なものでないというふうにも判断できるわけでありますが、今後この方針というものが場合によっては変更になることもあり得るというふうに考えて差しつかえございませんか。
  190. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この問題につきましては閣議決定後私が就任いたしましてからも、閣議等において議題とか話題になったことがありません。でありますから、この方針は別に変っておらないというふうに御了承願って差しつかえないかと思います。いろいろ伝えられるところはありますが、そう意見の違った議論というようなことが出たことはありませんし、また実際問題として議題とか話題にもなっておりません。でありますので、閣議決定は閣議決定の線というふうに私どもは考えております。
  191. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際農林大臣に申し上げておきたい点は、今回の政府の食管制度の一部改正等の態度を見ますと、農林省自体の自主性の上に立った食管制度の改正でないという点であります。これは前国会等におきましても問題になったのでありますが、臨時食管制度の調査会というものを設けて、この調査会の結論を尊重するというような建前をとって、全く農林省自身の自主性を失った形の中で、今回の食管制度の改正のごときものが進められたということは、これは私どもから見て非常に無責任な、遺憾にたえない点であります。ですからこれらの点に対しましては、赤城農林大臣としてはやはり農林当局の責任において、自主性の上に立って、一方においては農民の地位を守り、一方においては国民生活全体の視野から正確な判断を進めるというような、そういう態度はやはりどうしても必要であると考えております。今後の運用等についても、その点だけは十分銘記されて処理されるべきであると思いますが、いかがですか。
  192. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 臨時食糧管理調査会も七月で機能を終っております。この答申につきましても、非常に参考になる点もありますから、これは非常に参考にしなければならぬと思っております。さりとて農林省として、あるいは農林大臣として自主性を失っていくということはとるべき態度でありませんから、食管制度の改正につきましては、もちろん農林大臣とし農林省として自主性を保ちながら、また聞くべき意見は聞きながらこの運用を改めるなり進めていきたい、こう考えております。
  193. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この食管制度の問題に対しては、私ども社会党の立場において、先般御決定になった生産者米価の一万三千円の問題にしても、今回意図されておる消費者米価値上げの問題に対しても、これは反対であるという趣旨を明らかにして、今後また機会あるごとにこの問題に対しては政府の所信をただしたいと思います。このことを申し上げておきます。  その次にお尋ねしたいのは、これは第十点になりますけれども、農林予算の今後の確保の問題であります。これは冒頭にも大臣にお尋ねしたわけでありますが、参考までに申し上げますと、昭和二十八年から三十一年までの間の四カ年における国の予算総額はおおよそ一兆円であります。その一兆円予算の中において、昭和二十八年度は農林関係予算の総額は一千七百十九億円、総予算に対する農林関係予算の比率は一六・五%であります。二十九年度は農林関係予算が一千百十八億でありまして、比率は一一・二%。昭和三十年度は農林関係予算は九百六十二億円で、比率は九・五%。三十一年度は農林関係予算が八百七十七億円で、比率は八・四%であります。昭和三十二年度は御承知の通り一兆一千二百七十四億の予算でありますが、農林関係の予算は約九百億円でありまして、比率は七・九%程度であります。このことをもって考えますと、岸内閣の現状の中においても農政軽視の現われというものは決して否定することができませんし、また先般の改造というものは岸体制を作り上げたということに形式的にはなっておりますが、そういうことから見まして、今後の新政策、特に農林関係政策に対しては、赤城農林大臣の新しい構想が盛られると考えるわけであります。特に三十三年度の予算編成の時期も迫って参っておりますので、この中においてやはり岸内閣の中における農林行政の占める地位をいかように前進させるかということは、これは与党であると野党であるとを問わず、注目すべき問題であるというふうに考えられるわけでありますが、既往はとにかくといたしまして、大臣就任今後における予算獲得あるいは農政の推進等に対しましては、どの程度の熱意と自信を持っておられるかということをこの際お尋ねしておきたいのであります。
  194. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 二十八年度が最高で、二十九年度以降から今御指摘の数字のように予算が減っておりますことは、私どもとしてもまことに残念であります。しかし今いろいろ統計などを見ましても、農山漁村民所得あるいは消費水準が上ったとはいいますが、二十六年ごろから現在の状況を見ますと、ほかとの比例から見まして上昇率がびっこになってきて、むしろ上昇の度が低くなっているという現状であります。でありますから、二十八年度等におきましては、特に災害とか食糧価格差補給金というような予算もありまして、特に予算も多かったようであります。しかし全体として減っていることは事実でありますが、こういう三十二年度に際会しておりますので、今芳賀委員の御指摘のように、私の考えているような農政を行なっていくのには、何といたしましても予算や財政等の裏づけがなければ、これはから念仏みたいになるのであります。そういうことでありますから、岸内閣における農政のあり方、地位というものにつきましても私は強くこれを推し進めて、そうして委員各位の御協力にもよって農林水産政策を推し進めていく、そのためにはその裏づけとなる予算あるいは財政の面についても相当決意をもって獲得するといいますか、裏づけをさせたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  195. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの大臣の御答弁によると、率直な見解の表明がありましたが、この点は今後われわれとしては期待を持って、その推移を見せてもらいたいと思うわけであります。特に今農林大臣が言われたように、農業と他産業との所得のアンバランスというものは、一年々々顕著になって参るわけでありますが、そういう形の中においても、特に農家所得を分析した場合においては、純粋の農業収入よりもむしろ農外収入に対する所得の依存度というものが非常に増加しておる。たとえば昭和二十二年には専業農家が五五・五%、兼業農家が四四・五%程度でありましたが、昭和三十年には専業農家が約三五%になり、兼業農家が六五%というふうな変遷を示しておるわけであります。このことは、一方においては日本の農業の零細化と、また農業人口の増大を示しておるわけでありまして、これは根本的には大きな問題であると思いますが、こういうような現状の中に立って農政が後退するということは非常に遺憾でありますので、十分の御注意を願いたいと思うわけであります。  最後の十一番にお伺いしたい点は、特に漁業問題の中でも沿岸漁業の対策でありますが、農林大臣は水産業関係についてはそれほど関係しておられないように見受けられますので、就任早々でありますが、漁業関係の諸問題等に対してのお考えがあれば、この際聞かしてもらいたいと思います。
  196. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 水産関係は非常に大きな問題から、小さいといいますか、零細な漁民の問題まで含めて多岐にわたっておるようでありますので、まだ十分なる対策の結論には達しておりませんけれども、沿岸漁業等につきましては沿岸漁場の振興をはかりたい、水産増殖とか浅海漁場の改良あるいは水質汚濁の防止等を積極的に推進していきたい、こういうことを考えております。あるいはまた沿岸漁民の保護と資源維持のための漁業調整の適切な実施とあわせて一そう漁場の集約的総合利用、漁業経営の多角化、なお漁業技術の改良普及などを促進したい。その他いろいろありますが、特に今までとかわって新しい政策というものも持っておりませんが、今まで行われていた政策の中で足らなかったもの、また力を入れるべきもの、こういうものをよく勘案して政策を進めていきたい、こう考えております。
  197. 小枝一雄

  198. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま芳賀君からの質問の際にもあったように、まだ大臣も就任されてから日も浅いし、十分水産問題については御検討がいっていない。従って水産行政の全般の問題については、いずれ機会を見てまた御質問を申し上げることにいたします。ただ見のがすことのできない重要な問題が一点ありますので、この点ちょっと大臣にお尋ねしてみたいと思います。昨日の各社の新聞に出ておるところで御承知と思いますが、中共の今回発表されました禁漁区設定の問題、これについて政府態度を昨日発表されております。これ、大臣御承知ですか。
  199. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 けさ私は福島から帰ってきましたので、新聞は見ておりませんが、外務大臣から一応経過は聞いております。
  200. 赤路友藏

    赤路委員 これが発表されたときにちようど御不在であったと言えば、これ以上お話し申し上げることは御無理かと思う。しかし事は非常に簡単ではないのです。この新聞発表を見てみますと、中国側からの通知は、まだ日中漁業協議会に到達していない。従って今回の中共側措置の内容は、なお不明確であるため云々と言っております。だから中共側の正式な日中漁業協議会に対する通知内容というものがわからないわけであります。わからないなりで、三項目ですかにわたって政府の意見を発表しておられる。この内容は御承知かと思いますが、読んでみますと、非常に変な印象を受けるのです。この内容によりますと、民間協定は、それは勝手な行為であって、政府は関知しないところである。こういうことがある。従って、わが国の基本的立場はこれによって影響されるものではない。要するに、民間の勝手な話し合いであるから、政府はこれに拘束されないのだ、こういうことなんです。これは、現在の日中漁業協定というものが民間協定であるから、政府の立場としては一応了とする。ただ、しかしながら、私の申しますように、まだその内容が明確ではないのです。その内容が明確ではないにもかかわらず、こういう発表をするということは、あまりにも軽率ではないか、これをもし漁業の主管大臣たるあなたが御承知にならない、あるいはそれを事前に連絡を受けて、そうしてこれを承認されたとすると、これは私は問題だと思う。だから私はこの点をお尋ねした。十分御検討もないと思いますが、この日中漁業協定の従来のいきさつあるいは現在の実態、こういうようなものを理解した上でやった行為であるとは私は考えられない。大臣は本日、本委員会所見を述べられました。この所見は、農林、漁業通じての御所見であります。もちろん具体的なものはございません。抽象的ではありますが、経営者としての安定性を確保せしめるということ、それから生産性を向上するということ、これはもう当然のことだと思います。けっこうなことであります。この問題は、現実の、今なされておる漁業の状態から推した場合、軽々しく取り扱うべきではないと私は思う。悪くいたしますと、大臣のお述べになった構想が根底からくずれてくる危険性がはらまれております。何かもしおわかりであれば——おわかりでなければこれ以上申し上げませんが、おわかりであれば一言御所見を承わっておきたい。
  201. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどの新聞発表は、申し上げました通り、私けさ帰ってきまして存じませんが、これは政府で発表したのでないと思います。実はきょう閣議がありまして——閣議の内容を話すのはどうかと思うのですが、外務大臣と話し合いました。外務大臣からも話がありまして、中共の東支那海底引き区域の禁止といいますか、それについては、ラジオ放送があっただけで、向うから正式に通知や何か受けたわけではない。それに対してどういう措置をとるかということにつきまして、日中漁業協議会を呼んでいろいろ相談をしておるところである。その結果は、向うから通知を受けておるわけでもないし、放送だけなんだから、こちらからどうこう言う筋合いのものではない。ただ自分の方としては、公海自由の原則ということだけは、そういう問題のあるなしにかかわらず、考え方としては持っておるが、それ以上何も向うへ抗議することはないので、情勢といいますか、これからの出方を見ているところで、何らこれに対して今どうこうという措置はとっておらぬ、こういうことでありますから、その発表は、どうも政府発表ではないんじゃないかという気がいたします。私はよく調べておりませんが、そういう段階のことだけは承知しておりますので、その承知しておることだけを今申し述べておきます。
  202. 赤路友藏

    赤路委員 正式発表でないだろうということですが、これは各社とも全部出ておる。しかも日本政府態度を表明すと前のところでうたわれている。かりにもこういう重要なことは閣議で決定して発表すべきことだと思う。今大臣のおっしゃるように、まだ正式な通知を日中漁業協議会が受け取っていない、内容の検討もしていない、こういうことなんですね。そうした内容の検討もしないで、どういう内容かわからない、単にラジオ放送があったということだけでこういうような軽率な発表をするということは慎しむべきではないか、こういうことを私は申し上げておるわけであります。この新聞を読んでみますと、中共の措置はけしからぬという一言に尽きます。内容をよく検討して、政府態度としてこれを出すならいい、しかもこの一九五五年六月に第一回の民間協定がなされたときのその後の経過、これを十分腹の中に入れてやられなければならぬ。もっと私をして率直に言わしむるならば、民間協定ができたという立場の上に立って、政府は何ら手を打っていない、あぐらをかいている。しかも本年三十二年度の第三次協定は、双方ともに代表を出すことなく、一片の文書でもってこれが永続されている。東海、黄海は日本の漁業の三大漁場の一つなのです、日本の漁業にとっては大きな生命なのです。しかもこの協定前は拿捕事件が起って、業者が非常な不安の念で漁業をやっている、全体の収獲量は少い。ところが漁業協定をやってから歴年水揚げ高は上ってきている、安心して安定操業をしている、こういう段階にあるわけです。もし今ここでこういうことを内容も不明確であるにもかかわらず出すということは、これはあくまでも政府政府の意思において、民間協定なるものは勝手な話し合いだから知らないのだといってやることになれば、過去において行われた民間協定というものはまるで砕けてしまい、もう一度大へんな事態が起ってくる、そうなってきたら責任は一体どこが持ちますか。私はこれを出すときに大臣がおいでにならなかった、またそういう詳しい話も外務省から連絡は受けなかったということであればこれ以上申し上げません。ただほっと考えるような簡単な問題ではない、悪くしますと第四次協定に大きな影響を持ってくるのです。これを心配しますがゆえに私はこの一点だけを大臣にお話し申し上げたい。私は確かに外務省が閣議にかけないでもってこういうような発表をしたということになれば軽率もはなはだしいと思う。それだけではない、最も利害関係の深い所管大臣を無視したやり方、なめたやり方だ。こういうことでは、漁業問題については最近は国際的な関連が非常に深くなってきております、また沿岸漁業の振興をやるといたしましても、もう日本の漁業というものは国際漁業で生きていくということが一つの大きな方向だと思う、それだけに所管大臣を無視した、またあるいは閣議にも出さないで外務省が勝手にこういうことを出すということは、私は大きな誤まりだと思いますから、ぜひ大臣からこれに対しては外務省に厳重な注意をしていただきたい。外務省の考えている意図というものはわかります、これに対してわれわれは絶対に反対するものではない、公海自由の原則というものはあくまでも守られていかなければならぬ、これはわかります。しかしものには順序がある。内容が明確でない、単に放送されたものだけをとって、かりにも軽々しくこういうものを出すということは大へんなことである。これは大臣からよく一つ外務省の方に御忠告を願っておきたい。あらためてはっきり内容がわかったら、そのときは初めて政府態度を明確にしていただきたい。ただその場合においても再び東海、黄海における漁業が不安定な状態で、かつての協定前の混乱した状態に陥らないようにこの御考慮だけは払っていただかなければならぬ、こういうふうに思います。別段御答弁を求めことはないと思いますので御答弁は求めません。ただ要望だけいたしておきます。
  203. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は先ほどまで大臣に質問した諸点は、これはもっぱら社会党の質問状に基いた質問であります。これらの諸点に対しては、内容等に対して十分なる答弁を得られない問題もありましたけれども、きょうは時間の関係でこの程度で保留して、いずれまた機会を見て大臣から具体的な率直な答弁を得たいと思うのです。  最後に一点お尋ねしたいのは、これは移民問題であります。実は昨年私ども五名は赤城さんを団長として特に中南米の移民の事情あるいは農業事情等の調査を行なって参ったのでありますが、今後の日本経済発展はもちろん、貿易の振興が中心であったことは言うまでもありませんが、それとともに今後の企業進出あるいは技術移民であるとか農業移民が大いに海外に発展する機会というものは、これはすみやかでなければならぬと思うのです。特に私どもは中南米諸国を回って、たとえばイタリアのごときは非常に積極的な移民政策を今日まで採用しておるというような諸事情も認識して参りましたので、新任された農林大臣においても、この移民政策等に対してはことさらの関心を持たれておると考えるのであります。それで今後の農林施策の一環として、この農業の移民あるいは特に日中間における農業の技術交流等の問題も当面した重大な課題となって参ると考えられますので、この検討についても大臣の構想等があれば今日でもよろしいし、また後日でもそれはけっこうでありますが、お聞かせいただきたい。この質問を最後にしてきょうは終りたいと思います。
  204. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本の農家の次三男対策からいいましても、あるいは経済外交の面で日本人が相当移民しておるということがその土地の購買力やあるいは日本品の需要を多くするというような点から見ても、これは非常に必要なことだと思います。ただちょいちょい最近問題になっておりますのが、いい人を出さないというようなことであってはいけないのではないか、芳賀委員も御承知の通り、向うでいい人なら幾らでも歓迎するということでありますから、そういう点を注意しながらこの移民問題も進んでいきたい、政策の上にも取り上げていきたい、こう考えております。     —————————————
  205. 小枝一雄

    小枝委員長 ただいま調査いたしております種バレイショの運賃割引に関する件について、自民党、社会党両党を代表して芳賀委員より決議いたしたい旨の申し出がありますので、この際これを許します。芳賀貢君。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私はこの際自民党、社会党を代表いたしまして、先ほど同僚石坂委員から質疑がありました種バレイショの運賃割引に関する件について決議を行いたいと思います。まずその案文を朗読いたします。   国鉄貨物運賃の改訂に伴い、種馬鈴薯に対する運賃特別割引を廃止するやに伝えられるのであるが、もし、しかりとすれば種馬鈴薯の運賃負担の増嵩は二十数パーセントに上り、他の物資との均衡を失するのみならず、畑作農家の経営を著しく圧迫することとなる。   よつて、政府は、種馬鈴薯が農業生産上において占める重要性と特殊性にかんがみ、従来の通り特別割引制度を継続実施し、もって、いも類価格の安定と再生産の確保にいかんなきを期すべきである。  この提案の趣旨に対しましては先ほどの質疑に尽きておるわけでありますが、今回の国鉄運賃の改訂に伴いまして、特に農林水産物資の価格面に占める運賃のコストの増加というものは決して軽視することができないのであります。特に種バレイショの場合におきましては、内地府県におけるバレイショの増産を確保するためには、どうしても北海道を原産地としたところの種子の更新を、毎年継続的に将来もこれを持続しなければ、一定量の増産を確保することができないというような特殊性のもとにおかれておりますので、農業生産の向上、あるいは農家経済の安定の上から見ましても、特に種バレイショの運賃に対しましては、従来採用された運賃の特別割引制度をぜひとも維持すべきである、継続すべきであるということが提案の趣旨であります。
  207. 小枝一雄

    小枝委員長 ただいま芳賀君より提案されました種バレイショの運賃割引に関する件、を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお本決議の政府への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。あとの日程については、追って公報にて御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十二分散会