○助川
委員 去る五月三日及び四日の両早朝、東北、関東、甲信越等の各地方に発生した降霜による農作物の被害状況の調査のため、福島、宮城の両県に、自由民主党から私と村松
委員が、そして日本社会党からは、日野
委員と
田中利勝委員がそれぞれ派遣されましたので、この際両党を
代表いたしまして、現地調査の状況を御報告させていただき、今後の対策樹立のための資に供したいと存じます。
調査期間は十一日から十三日までの三日間でありますが、報告の
方法といたしましては、最初調査の順路に従い、その都度調査見聞いたしましたことを申し上げ、最後に今回の災害の特殊性、要望事項等を総括的に御報告することといたします。
まず私
どもは十一日福島県に向う途中、車中で栃木県農務部長その他
関係者より、栃木県下における被害状況の報告と陳情を受けたのであります。栃木県における今回の被害は、全県的に見ると昨年ほどではないが、局部的には昨年を上回るものであり、被害地区は県北部が特に激甚で、次いで県中部にも
相当の被害があるとのことであります。被害作物は、桑樹、果樹、麦類、タバコ、苗しろ、茶等が主であり、その被害額は、十一日現在で約二億二千万円と推定されており、今後なお増加の見込みのことであります。車窓からも、黒変した桑園、麦等の被害の一部を望見することができました。県の要望事項として陳情された事項は、営農資金の貸し出し、共済金の早期支払い、樹勢回復用肥料代、病虫害防除用農楽代の
助成等でありますが、大体あとで申し上げます、福島、宮城等と同じでありますので、最後に一括申し上げることといたします。栃木県の状況を聴取しながら、われわれ一行は白河市に到着、福島県経済部長、
農林省福島統計調査事務所長より、県下の被害状況の概略について説明を聴取した後、白河地方凍
霜害対策協議会の
代表者から、白河地区の被害状況の陳情を受けました。要望事項として、特に本年も肥料代、農薬代、果樹園の防除用燃料代の
助成等を強く要望されました。次いで大沼果樹試験地に向い、カキ、桃及ナシ等の被害を見たのであります。ここは県の試験地であるだけに、ある程度経済を度外視して、重油、古タイヤ等の燃焼により予防
措置にも万全を期したようでありますが、何分氷点下四度から五度にも気温が降下し、しかも零時から六時にまで及ぶ長時間の低温のため、全く
処置の
方法がなかったようでありまして、重油燃焼の周囲ですら、すべて凍死している惨状でした。何らの効果もなかったのであります。かかる
状態でありますから、一般の果樹園においても
相当の予防対策を講じたにもかかわらず、自然の威力の前には抗すべくもなく、その被害はきわめて大なるものがありました。
次いで滑津稚蚕共同飼育所において、繭蚕共同飼育桑園の被害状況を調査したところ、一町八反に及ぶ同桑園は全く黒変、手の施しようもなく、丹精の結果りっぱな模範的桑園として管理されている枝条が一方から切り捨てられている。ところで、昨年は蚕児の病気で春蚕を行えなかったのに引き続いての被害で、
指導員、組合長以下ぼう然自失の姿でした。後、棚倉町役場において被害状況の報告と陳情を受けました。当地方は養蚕、果樹及び苗しろの被害が大きく、共済金の早期支払いを特に強く要望されました。
棚倉町から野木沢に至り、石川地方の被害状況と陳情を聴取しましたが、ここでは、営農資金の借りかえ、所得税の減免等を切望されました。次いで鏡石村において岩瀬地方の状況を聴取しましたが、養蚕地帯であるだけに、黒変した桑園の中でぼう然自失、ただ
政府の差し伸べる手を待つ被害
農民の
代表者の気の毒な姿に接し、われわれ一行は一日も早くあたたかい施策を講ずべきとの
決意を新たにしたのであります。鏡石をあとに、途中、桑園、果樹、菜種、麦等の被害状況を見ながら郡山市に到着、第一日目の日程を終了しました。
翌十二日宿舎を出発し、三春町の地方事務所に至り、田村郡下の被害状況を聴取したのでありますが、当地方は海抜二百ないし四百メートルの準高原地帯であり、農業経営にも特異性があり、以前は、わが国屈指の養蚕地帯であったのでありますが、その後作付の転換を行い、現在、養蚕は春蚕が主で、夏秋蚕はやめてタバコの栽培を行なっておるので、今回のごとく春蚕が皆無にもひとしい被害を受けることとなると、養蚕は年間ほとんど断念せざるを得ないのであり、
農家経済に及ぼす影響は至大となるのであります。従って
農民の苦悩のほ
ども深刻であり、対策についてもきわめて真剣であり、一般的要望事項のほか、自作農資金を中心とした融資、農業所得税の減免
措置、失業対策事業のワクの拡大等特別に要望されました。
次いで今回の被害の中も本特に激甚な地方である白沢村、小沢町、川俣町、月館町等において被害調査を行い、
農民から切実なる訴えを聞いたのであります。そして福島市に至り、知事公舎において、県農業
会議議長、副知事等より、県全体としての被害状況と県としての要望事項を聴取いたしました。
今回の福島県の被害は県下全般にわたっており、その被害額は昨年をはるかに上回っており、掃き立てを目前に控えた全楽園の約九〇%に及ぶ一万三千二百余町歩は黒変し、春蚕の減収見込みは六十余万貫、その金額は約十億円と見込まれております。二十八年の大凍
霜害をはるかに上回り、二十八年の共済全概算払いは約九千万円であったが、現在の被害調査から見ると約一億八千千を上回ると見られるほどであります。この際特に要望されました点は、作物統計における被害統計の数字と被害
農家の被害の実際についてであります。桑園の中に幾ばくかの桑葉が見受けられるとしても、これは経済的には
農家の経営に入り得ないものであって、統計数字よりも
農家の経済的被害が、さらに上回るもののあることを
指摘されたわけであります。また、満開直後のナシ、リンゴ、桃を初めその他果樹類に対しても、その被害額は全果樹面積の約三八%、二千二百余町歩、被害金額は目下のところ約三億六千余万円と推定され、さらに一般農作物の被害を合せると、被害総額は実に二十数億円の巨額と見込まれており、麦類の被害は、今後さらに増加が見込まれておるため被害金額はさらにふえる見込みであります。これら農作物の現金収入の源を断たれたことは、今後の営農に一大暗影を投じております。被害地域は全県にわたっておりますが、特に安達、田村、石川、岩瀬、東白川、安積、西白川、相馬の諸郡下の被害が最も激しく、伊達、信夫の両郡がこれに次いでおり、さらに会津、浜
通りに及んでいます。
県の要望事項については一括後述することといたし、知事公舎をあとに、信夫郡下の果樹、
桑園等の現地調査を行い、県立園芸試験場に参り、スプリンクラー、すなわち散水装置による氷結防霜法を見学いたしました。昨年の凍
霜害のとき、恒久予防対策として
助成を受け、重油燃焼の発煙法による防霜
方法とともに、恒久対策として、試験研究を行なっておるのでありますが、スプリンクラーによる防霜法とは、端的に申しますと、
霜害を水で制せよということであり、凍害を起すような低温になってきたら散水して水をかけると、水は凍結するが、水をかけ続けると、潜熱により零度以下にはならず、作物体温を保てるから、作物の凍害は防げることになる。散水は作物についている氷が解け始めるまで続けるわけであります。この
方法はドイツで詳しく実験が行われ、すでに実用化されておるとのことで、ある種の作物の栽培北限は氷結防霜によって北に伸びて、今まで凍
霜害のため栽培できなかった地方まで作れるようになったとのことで、また早害の場合には、灌水の用にも役立つわけであるが、わが国ではようやく試験研究の緒についたばかりであり、試験研究のデータもなくて、また
設備類の点等よりの経済的の問題もあるが、連年、いわば年中行事のように繰り返されておる凍
霜害に対する、恒久対策の一環として、発煙による防除法等とともに、これらの研究を積極的に奨励し、その早期確立をはかるべきとの感を深くいたしました。
以上見学を終了し、上保原を経て梁川町に至り、福島の調査を終了し、宮城県農林部次長、県議団等の案内で宮城県下の調査に移りました。まず伊具郡丸森町役場に至り、宮城県下の被害状況の概況について説明を聴取したのであります。本県も三日から四日にわたり気温は急激に降下し、県下全般にわたり降霜があり、百葉箱内において最低零下三・八度に下り、地表温度は零下六度にも降下したところもあり、局部的には薄氷が張るほどであり、桑園、果樹、苗しろ、麦類等にまれに見る被害の発生を見たのであり、被害地域は全県にわたっておりますが、伊具郡を中心とした県南の地方が最も激甚であり、次いで県北部に
相当の被害が発生したのであります。作物は桑園が最も大きく、五月十二日現在において、桑園の被害は全面積四千十五町の約八六%が被害を受け、これを皆無換算すると、全桑園の四九%が被害を受け、金額にして二億二千余万円と推定され、そのほか果樹その他の農作物の被害も約二億円見込まれており、さらに今後も増加する予定で、ほぼ
昭和二十八年の被害に匹敵するが、今回は局部的に集中しておるために、地区によっては未曽有の大被害を受けたのでありました。かかる被害に対して県としても独自の
立場において種々対策を講じておりましたが、他県と同様の事項を国に対して要望いたしておりました。県下の状況聴取後、丸森町長より地元の被害について、当地方は養蚕に依存するところ大であるため、共済金の早期支払い、営農資金の早期貸付を望切されました。丸森町から角田町に至り、ここで竹谷源太郎君、保科善四郎君が調査に加わり、被害状況の調査を行い、川崎町の宿舎に到着、地元の
代表より陳情を受けました。当地方は、地表では最低零下六度以下にも降下したため、農作物の被害は大きく、苗しろは凍結し、多大の被害を受けたため、苗しろ購入に対する
助成策を講じてもらいたい旨要望されました。
これで十二日の予定を終り、翌十三日は川崎町の桑園、果樹、苗しろ等の被害と開拓地の麦の被害の現地調査を行い、刈田郡蔵王町に至り、役場にて町長、農協会長、農業
委員会の
代表者等より陳情を受けました。当地方は果樹の栽培地帯であるため、果樹の被害に対する対策等を特に要望されました。ついで蔵王町の果樹の現地調査を行なった後、柴田郡大河原町金ケ瀬にて陳情を聴取し、仙台市に到着、県庁において県全般についての総合的なる要望を聴取いたし、続いて隣県の岩手県よりも県議会の
代表者から陳情を受けました。
以上もちまして調査の順路に従っての報告を終りますが、次に今回の被害の特徴とも考えられます点は、被害が局地的に集中いたしましたために、きわめて激甚なる被害地の発生を見た点及びかかる激甚地においては、極端な地方では実に零下六度以下にも及んだため、人力と経済の許す限りの防除を行なったにもかかわらず、被害を食いとめることができなかった点等が見のがせない事実であり、われわれ対策を立てる場合、この点に深く留意すべきであろうと考えられます。
最後に、以上の各県の調査の
過程において要望されました事項につきまして、総括的に申し上げて私の報告を終りたいと思います。
一、樹勢回復用及び再発芽促進用肥
料購入費に対する
助成。
一、病虫害防除用薬剤購入費に対す
る
助成。
一、農業共済金の早期支払い。
一、夏秋蚕種購入費に対する
助成。
一、蚕種製造
業者に対する経営資金
の融資。
一、低利営農資金並びに自作農資金
の融資並びに既融資金の償還延期
措置。
一、
霜害予防対策費に対する
助成。
一、凍
霜害対策別稚蚕共同桑園設置
助成。
一、蚕業技術員及び農業改良普及員
並びに共済事業損害評価員等に対
し災害復旧促進並びに調査のため
の特別
指導費に対する
助成。
一、転作用種子購入費に対する助
成。
一、失業対策費の増額。
一、県並びに被災市町村における地
方税の減免とそれに見合う地方交
付税交付金の増額。
一、被害
農家に対する所得税の減
免。
一、凍
霜害に対する恒久対策の早期
樹立。
一、
関連産業に対する金融
措置。
一、凍
霜害対策試験研究費の
助成。
一、凍
霜害対策に関する特別立法の
措置。
以上であります。