○
石田(宥)
委員 次にアウトサイダーの規制命令の問題ですが、本
法案は
過剰設備の
処理を
組合が自主的に行うことを
建前としておるということを今おっしゃったわけですが、大部分の
養蚕業者はそれぞれの
組合に加入しております。そうしてその規定に基いて
過剰設備の
処理を行なっておる場合に、非
組合員の事業活動が本法の目的達成上に著しい障害となっておる場合で、一定の条件を備えておるとき、その
組合または連合会の
申し出により
農林大臣は、
蚕糸業振興審議会の
意見を聞いてその事業区分に属する
生糸製造業若のすべてに対し
組合の
設備処理規程に従うことを命ずることができることとしておる。しかもこの命令の違反に対しては三十万円の罰金刑を課する、こういうことになっておるわけでありますが、私はこの点で
公取の
委員長にお伺いしたいことは、こういうふうに
組合から
組合員に対し調整命令を発することができる、また
大臣は、一定の条件が整ったと認めた場合においては、これに命令を発し、命令に従わない場合には三十万円の罰金刑を課する、こういうふうに規制されて参りますと、今度はそれぞれの
組合におきまして繭取引の
強制に関していわゆる共同行為というようなことが
考えられる。いわゆる地盤協定というものが
考えられるわけです。現に戦前においてはかなり強硬な
措置がとられておったわけであります。今申しましたような二点からいたしまして、それに準拠して県が条例等を設けまして、そうして大きな
製糸資本のもとに一定の地域内の地盤協定が
考えられておるようであります。そういたしますと、そういう地盤協定の上に立って
組合が自主的にこれを決定する、あるいは県の養連と
製糸家の間に協定をつけたということに表面上はなるかもしれないけれ
ども、実際面におきましては、先般参考人の
意見を聞いてもわかる通り、今の
養蚕組合というものは、市町村の
組合においても、あるいは県養連の場合においても、果して
養蚕農家の利益を代表すろような機関であるかどうか、こういったところに非常に大きな問題がある。市町村の
養蚕組合の
技術指導員はほとんど
製糸家によって給料その他がまかなわれておる。いわゆる
指導費というようなものは反当り二十円ないし三十円というように、
製糸資本家が市町村の
技術指導員の給料をまかなっておる。県の養連もほとんどと言っていいくらい
製糸資本家のかいらい化しておる。そういう場合に、さらに今申し上げたように、こういう調整規程に基いて県条例というようなものが作られて参りますと、
養蚕農家の利益を代表し、その利益を保護していくところの機関が、事実上ほとんどなくなってしまう。もっと具体的に申しますと、やはり蚕種の面においても一定の
制限を受ける。その会社が、自分が
目標としているたとえば
輸出糸なら
輸出糸というものに合致するような品種を選んで持ってくる、その他の蚕種は購入きせない、掃き立てを許さない。そうすると、今は以前と違いまして、
養蚕農家専業で年がら年じゅう
養蚕だけやって生計を営んでいるというような
農家は非常に少い。大部分が女手で副業的にやる。そういう場合に非常に高度な
技術を持っていないと、今申し上げたような高度の糸をひくための品種を
強制されては違蚕が続出するような場合が非常に多いのです。そういう場合には、もっと
繊度の太い、多少粗悪なものでも違蚕の少いものを
養蚕農家は歓迎する。ところが今申し上げたようにがんじがらめで、国は国の法令で押え、県は県条例で押え、
養蚕団体はいずれも
養蚕農家の利益を代表し得ない。
〔
吉川(久)
委員長代理退席、
委員長着席〕
そこで現に全国至るところに起っておりますが、蚕種は自分の
技術や自分の
設備やそういうものにちょうど適合するような品種を選ぼうとするけれ
ども、これを許さない、そういう品種を
強制されてしまう。その結果起る問題は、
製糸資本家としてはなるほどそれで非常に好都合であるかもしれぬけれ
ども、
養蚕農家はそれがためにしばしば違蚕を起す、こういうことになる。あるいは蚕種の量にいたしましても、今は粒数でありますけれ
ども、二万粒だと称しておきながら、
製糸資本家か蚕繭がよけいほしいということになりますと、実は三万粒入れてこれで二万粒だということになる。二万粒のつもりで
桑園の
計画などを立てておきますと、実は三万粒入っておって、それがために桑の
計画が狂ってしまって、買い桑をたくさんしなければならぬ。それが一軒だけならいいけれ
ども、部落全体、村全体、一地方全体ということになりますと、桑飢饉が起って、
養蚕はよくできたけれ
ども、桑の代金のためにかえって不採算になる、こういうような事態が起る。これはかつてあったことであり、今でもやはりそういう方向に向いていくのでありまして、そういうことになって参りますと、ここで
私的独占禁止法からこれを除外されるということの及ぼす影響は非常に大きい。そういう点について、その及ぼす影響がよく
検討されてこの問題を
公取では取り扱っていただきませんと、非常な
弊害を及ぼすと思うのでありますが、そういう結果までよく御
検討になっておられますか、どうですか。