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1957-05-14 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十四日(火曜日)    午前十時四十八分 開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 稲富 稜人君    理事 芳賀  貢君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       椎名  隆君    鈴木 善幸君       綱島 正興君    永山 忠則君       原  捨思君    赤路 友藏君       足鹿  覺君    石田 宥全君       石山 權作君    栗原 俊夫君       楯 兼次郎君    中村 英男君  出席政府委員         公正取引委員         会委員長    横田 正俊君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         調整課長)   吉田 仁風君         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      保坂 信男君         農林事務官         (蚕糸局繭糸課         長)      古西 一郎君         農 業 技 官         (蚕糸局蚕課         長)      小林 明隆君         専  門  員 岩隈  博君     ―――――――――――――  五月十四日   委員細田綱吉君辞任につき、その補欠として   鈴木義男君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  請願審査小委員会設置に関する件  生糸製造設備臨時措置法案内閣提出第七八  号)  蚕糸業法の一部を改正する法律案内閣提出第  九五号)     ―――――――――――――
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。  生糸製造設備臨時措置法案及び蚕糸業法の一部を改正する法律案一括議題といたし、審査を進めます。質疑布続行いたします。中村英男君。
  3. 中村英男

    中村(英)委員 この前の委員会大臣一つ所見を伺ったのですが、この機会に検定所の問題についてお伺いしたいのです。繭の検定繭価関係がありますので、二、三お伺いいたしてみたいと思います一体繭の検定所は県営しておるところとそうでないところとあろうと思うのでありますが、全国的にどういうふうになっておりますか。全部県営で検定しておりますか。
  4. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭の検定所は全部府県で設置をいたしております。
  5. 中村英男

    中村(英)委員 検定所は県で経営しておるそうですが、これは製糸業者がら年に何ぼか費用ととって経営をやっておるのですか。
  6. 須賀賢二

    須賀政府委員 検定所経費は、国で若干補助をいたします分を除きましては全部県費でまかなっておりまして、製糸業者から直接金を出しておるということは、私は承知いたしておりません。
  7. 中村英男

    中村(英)委員 繭の検定所は一年中繭の検定をしておるんじゃない、休んでいるときがあろうと思うのですが、そういう休んでいる時期、検定期間以外に、そういう設備をそのまま休ましておくのか、それとも検定所自体製糸をやっておるのかどうか。
  8. 須賀賢二

    須賀政府委員 検定所は、ただいま御質問にありましたように、検定を行います時期は繭が出回ります期間に集中をいたしまするので、それ以外の期間検定仕事それ自体といたしましては仕事はないわけでございます。しかし技術労務者等相当かかえておりまする関係上、その技術保存等関係もありまして、検定仕事のありません時期につきましては、休閑利用という建前で繭を買い入れまして、製糸をいたしております。これは県の財政を通じまして、県費で繭を購入いたしまして、それを加工、糸をひきまして、それを販売いたしまして、そうしてまた収入に繰り入れております。
  9. 中村英男

    中村(英)委員 県費で繭を買って製糸をして、そうして検定所経営をやっておるわけですね。ところでいわゆる営業製糸家から繭を分譲してもらってやったりしておるところはないですか。
  10. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭の実際の入手につきましては、繭の出回り期に県当局等でいろいろあっせんをいたしまして、製糸工場等入荷をいたしましたものを繭検定所あとで譲り受けまして、製糸をいたしておりまする場合はございます。しかしこの場合におきましても、それぞれ基準になっておりまする価格によりまして繭の分譲を受けておるわけでございます。それは実際の繭出回り期における繭の入荷配分技術的な関係でさようなことをいたして弟るわけでございます。
  11. 中村英男

    中村(英)委員 それから営業製糸へらの委託製糸をしておりませんか。
  12. 須賀賢二

    須賀政府委員 以前には営業製糸から委託を受けて製糸をしたような例もあるようでございまするが、検定所生産者繭需要者との中に入りまして、最も公正な立場業務をやって参らなければなりません建前上、現在では先ほど申し上げましたように、繭を買い取りまして、それを加工したものを販売するという建前休閑利用をいたすように指導をいたしております。
  13. 中村英男

    中村(英)委員 検定所検定したまのについて検定証書というものを発行するわけですが、これが私問題だろうと思うのです。これが妥当であるかどうかということはなかなか判定しにくいものです。ことに生糸量歩合は書いてあるが、くず物の量も書いてないとかいうことで、養蚕家は実際問題として非常に不安に思っておるわけです。大臣は長野県ですからそういう事情がわかると思ってこの前聞いたのですが、大臣も御承知ないような御答弁でしたから、私も深くは言わなかったのですが、実際問題としてそういう証書についての信憑性というか、そういうものに対して農民は非常に不安げ思っておることは事実です。一つそういう点、何ら不安がない、こういうように思われますか。
  14. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭の検定につきましては、現在農家生産をいたしまして出回ります繭の全量につきまして強制検定をいたしておるわけであります。従いまして、その検定の結果等につきましては、繭生産者需要者ともに非常に関心の度が高いわけであります。また繭の検定歩合がわずかでも変りますと、実際に現われて参ります繭の値段というものは、それ自体の単価が非常に高いものでございますから、影響も大きいわけでございますので、われわれといたしましては、検定の公正を維持いたしますことにつきましてはいろいろ細心の注意を払っておるわけでございまして、現在の検定の実際の業務運営につきまして、一応私どもとしては適正が維持できておるものと考えます。
  15. 中村英男

    中村(英)委員 繭の出荷期になると、自動車検定所職員が繭の出荷の奨励に出て歩くわけですが、そういうふうな費用は一体どこから出ておるのかということも、これはやはり農民の繭の価格に対して不安に思うゆえんだろうと思うのです。そういうふうな点もあなたのところでは、職員自動車に乗って繭の出荷督励に歩いている費用は、一体どこが出しておるのかということをお調べになったことがありますか。
  16. 須賀賢二

    須賀政府委員 個々の経費につきまして全部私の方で調べておるわけではないのでございますけれども検定所予算の編成その他につきましては、検定所検定業務を営むに必要な経費は一応見てあるわけでございまして、実際には県費負担等相当額に上っておりますので、繭の生産額の少い県につきましては、検定所を維持いたしますためにいろいろ苦労もあるのでございまするが、今のような諸経費につきましても、一応現在県の協力を得まして県費で支弁をいたしておるわけであります。
  17. 中村英男

    中村(英)委員 いろいろ御答弁いただいたんですが、実際検定所運営実態については、農民もそう詳しく知っていないのです。ですから、自動車に乗って出荷督励に出かける費用、あるいは休閑期営業製糸委託を受けて製糸をしておることや、あれやこれやで実際に製糸業者から相当費用を出して、寄付金を受けて検定所運営をやっておるのじゃないかというような疑いを実際持っておるのです。そういうことのために、繭価をきめる場合、あるいは証書をつける場合に、そういうことについての不信が相当あると思うのです。ですから、これはやはり今の検定所運営というものとか、あるいは証書の発行の仕方を相当私は研究される必要があるじゃないか、今の実態では農民があまり信用していない。そういう点は一つ十分研究されて、もう少し農民が信頼するような証書を発行してもらいたいというのか実は私の質問した趣旨なのですから、今後そういう点も注意していただきたいと思います。
  18. 須賀賢二

    須賀政府委員 御指摘のありましたように、生産者繭需要者との中間にありまして仕事をいたしております関係上、十分注意をしてやらせておるのでございますが、いささかでもそのような疑惑があるようでありますと非常に困るのでございまして、われわれといたしましては、なお一そう注意をいたしまして現場の方にも督励をいたしたいと考えております。
  19. 中村英男

    中村(英)委員 蚕糸業法改正はもう少し大幅の改正案を期待しておったのですが、ほんとうの一部で、審議会を作るという改正ですが、この審議会設置する理由、これは非常に大ざっぱな質問ですが、一つ局長から御説明願いたい。
  20. 須賀賢二

    須賀政府委員 蚕糸業法改正につきましては、われわれといたしましてもいろいろな角度から十分検討をいたしたわけでございます。しかしながら先般も申し上げましたように、長年にわたりまして積み上げられました行政でありますので、それを最近のいろいろな新しい情勢とうまく食い合せまして、法の改正を行いますにつきましてはなお相当の研究と工夫を必要とするわけでございます。従いましてわれわれとしては、われわれが事務的に検討をいたすだけでは不十分であるという感じを非常に強く持っておるわけでございまして、審議会のような形によりまして各方面の御意見を総合的に取り入れまして成案を得たい。特に蚕糸関係につきましては、関連業界の中で議論をきれておる場合が非常に多いのでございまして、相当広い視野からいろいろな示唆なり助言を受けるというようなことが従来比較的少いように私は感じておるわけでございます。さような点もございますので、審議会設置いたしまして引き続き検討いたした結果によりまして成案を得たいと考えております。
  21. 中村英男

    中村(英)委員 委員を三十名にしておられますが、三十名にされた理由はどういうことですか。
  22. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいまも申し上げましたように、できるだけ広く各界の御意見を取り入れて参りたいと考えまして、今回の審議会につきましては委員の数も他の委員会等に比べましてやや多い目にお願いしておるわけでございます。
  23. 中村英男

    中村(英)委員 委員任命関係はどう考えておりますか。
  24. 須賀賢二

    須賀政府委員 審議会の具体的な構成につきましては、目下それぞれのところと打ち合せをいたしておりまして、具体的に申し上げますのはただいま私からは差し控えたいと考えますが、大体の考え方といたしましては、三十人のうちで製糸養蚕、いわゆる直接の業界を代表いたします学識経験者を約十名程度考えております。それからこの審議会設置を立案する過程におきまして国会の方とも非公式に御連絡申し上げました結果、国会の方からも御参加をいただけるような御意向も承わっておりますので、もしそのようになるのでございましたら国会の方の御協力もいただきたいと考えております。その残りの分を関連業界、一般の経済人あるいは言論関係その他広い範囲からお願いいたしたいと考えております。
  25. 小枝一雄

  26. 石田宥全

    石田(宥)委員 今度設けられる審議会は、蚕糸業全般にわたっての広範な問題を審議されるようでありますが、従来ありました繭糸価格安定審議会はそのまま存置されるのか。あるいは今度の新しく設けられる審議会の中に新しい部門的なものとして存置されるのか。吸収されるのか。
  27. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭糸価格安定審議会繭糸価格安定法運営に伴いまして、それに必要なる事項を諮問いたす審議会として現在設けてあるわけでございます。今回蚕糸業振興審議会設置考えます場合に、繭糸価格安定審議会との関係もいろいろ検討をいたしたのでございますが、繭糸価格安定審議会審議をしていただいておりますのは、生糸最高最低価格、繭の支持価格をきめるに必要な最低繭価の問題を審議をしてもらっているわけであります。従いまして内容も非常に専門的になって参っておりますので、安定審議会繭糸価格安定法の運用上の機関といたしまして、これは現在の法に基く審議会として存置をいたしまして、さらに広い角度から蚕糸業振興の基本的な問題を検討審議をいただくという建前をもちまして振興審議会を新たに設置する。従いまして審議会は二本立にして参るように考えております。
  28. 石田宥全

    石田(宥)委員 公取委員長が見えておりますのでそれにお尋ねしたいと思いますが、その前にちょっと一般的な点でもう少し局長から伺っておきたいと思います。昭和二十六年に五カ年計画が樹立されまして、そこで一応の振興対策が立てられて数字も決定を見ておったわけでありますが、その中で桑園関係は二十三万町歩計画が十九万三千町歩にしか及んでおらない。産繭額は三千六百万貫が二千九百万貫にしか達しない。製糸設備においては六万九千百四十台の計画が、免許台数で六万二千二百七十四台、そのほかにやみと称せられるものが約五千五百台程度、こういう数字が発表されておるわけでありますが、こういうふうにアンパランスになった一番大きな点はどういう点にあったとお考えになっておりますか。
  29. 須賀賢二

    須賀政府委員 戦後蚕糸復興計画を立てたのでございまするが、結果から見ますると、いろいろな点におきまして当時見通しが十分でなかった結果になっておるわけでございます。ただいま御指摘もございましたように、設備だけが急速に復元をして、繭の生産がこれに伴わなかったという結果になっておるわけでございまするが、繭の生産がこれに伴わなかったのは、戦後の農業生産事情が、申し上げるまでもないことでありまするが、食糧関係その他で桑園面積を多くさくことができなかったというようなことで、桑園が、われわれが意図したような面積にならなかったわけでございます。一方生糸の方の実際の需要も、当初復元計画考えました当時とかなり結果において食い違っておりまして、復元をいたしますときには、ちょうど占領軍指導下にあったわけでございまするが、占領軍指導政府考え方といろいろつき合せまして計画考えたように私は聞いております。その際にやはりくつ下用として相当生糸消費されるものと見込まれておったようであります。ところが実際にふたをあけてみますると、くつ下用としての生糸消費はほとんど皆無に近い、実際の消費は全部織物用としての生糸を要求しておるということであったわけであります。しかも量的にも考えたほどの数量に達しない。従いまして実際の需要裏づけがないものでございまするから、繭の生産の方もそれほどの早さをもってふえてこないという結果になったわけでございます。一方設備の方は当時くつ下用の糸を引くことを考慮に入れまして、設備台数を計算いたしたのでございます。それが結果においては織物用の糸を引く。くつ下用の糸と織物用の糸を引くのでは実際の能力の違い等相当ございます。織物用の糸を引くとくつ下用の糸を引く場合よりも能率が上るわけでございます。これらがいろいろからみ合いまして設備の方が相対的に過剰になったというような結果になっておるようであります。
  30. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいまの御答弁によって明らかになりましたように、輸出関係見込み違いをしたということだと思うのです。要するに輸出国内需要との関係が戦前とは情勢が変ってきた。ことに高繊度のものが非常に少くなって低繊度のものの方がむしろ国内需要には好まれる、こういう点から考えまして今後の蚕糸というものの見通しの点ですが、化学繊維が非常な発達を遂げて参りまして、あるいはまた一方中共糸相当技術の面や品種の面等に改善が加えられて、そういう点から考えると、日本蚕糸業の将来について一抹の不安を覚えるわけでありますが、将来国内需要は別といたしまして、輸出関係においてどのような見通しを持っておられますか承わりたい。
  31. 須賀賢二

    須賀政府委員 日本生糸輸出に対する将来の見通しでございますが、いろいろ化繊その他の発達によりまして生糸の将来の需要は減退をするのではないかというような御意見もときどきわれわれも拝聴いたしておるのでございます。しかし実際にアメリカなりヨーロッパあたり需要傾向を各方面から聞いてみますと、量的に急速に大きく伸ばすということにつきましては、現実の問題としてそう急速には参らないと申し上げざるを得ないのでございますが、現在よりも減るという見通しは少くともない、それから逆に徐徐にふえていくという見通しを私どもは持っておるわけでございます。それの裏づけとなりますのは、特に近年の傾向がら見ましても、こういう高級繊維でございますので、やはり生活水準と申しますか消費水準が上るに伴ってその割合で徐々にふえていくというような性格を持っておるのでございます。現実アメリカあたり生糸を扱っております人々の考え等を聞いてみましても、そういうふうな考え方でございます。しかしながらこれはそういう実需の裏づけを持っておるにいたしましても、ただ漫然と今までと同じような生糸を引いておってそういう傾向に伸びていくかということになりますと、私どもは必ずしもそれでは十分じゃない。いろいろ新しい生糸消費傾向に合せまして、技術的にも品質の面からもいろいろ工夫をいたしまして、向うの要求する需要に合わすような努力をいろいろやりましてふやしていくというふうにいたきなければならないと考えております。
  32. 石田宥全

    石田(宥)委員 今後の蚕糸業一体輸出関係国内需要とを、どっちを中心にして将来の発展策をお考えなんですか。
  33. 須賀賢二

    須賀政府委員 日本蚕糸業は申し上げるまでもなく輸出を重点に置きまして発達をして参りました産業でありますし、また相当量輸出を確保いたしますことによって蚕糸関係のいろいろな行政的な裏づけもそれぞれの理由が成り立つわけでございます。従いましてわれわれといたしましては、現在の輸出内需割合が、輸出一に対して内需二というような昔の姿を逆転したような格好になっておりますことは非常に遺憾に考えておるのでございます。輸出を今後できるだけ総合的な方途を講じまして伸ばしていくということが基本の考え方でございます。しかしながら一面内需の面につきましても、蚕糸全体の量的な拡大を考えます場合には、内需裏づけを無視しては現実産業全体として成り立ちませんので、内需につきましても輸出と相伴って伸ばして参りたい、さように考えておるわけでございます。
  34. 石田宥全

    石田(宥)委員 内需も無視しないけれども輸出中心に伸ばしていきたいということでありますが、輸出産業としては、原料も国内でできる、加工国内でできる、こういう点からいって、非常にこの外貨との関連においては重要な産業一つだと思うのです。三十年度の計数では、八千五百万ドル程度外貨獲得に役立っておるという実情なんでありますが、蚕糸業というものは、やはり昔から輸出中心にかなり積極的な保護政策が行われて、大きな役割を果してきたと思うのです。ところが最近の状況を見まするに、いろいろな険路があるにもかかわらず、ほとんど放任状態にあるように見受けられる。これはやはりもっと政府としては、積極的に輸出産業として保護育成をされなければならない産業であると思うのです。先ほど御答弁の中にあった桑園面積が思うように伸びなかった、反当収量は伸びておるけれども面積の点において全くその計画と期待に反したものであった、こういうことでありますが、これが食糧事情との関係がありまして、従来の食糧事情のもとにおきましては、あるいは困難な事情があったかもしれませんけれども、最近におきまして、これは少してこ入れしてやれば、相当面積においても拡張の余地があると考えられる。  ことにこの畑作地帯等におきましては、換金作物としてはこれくらい安定性のある有利な産業はない。労力の関係からいいましても、あらゆる点から見てこれは相当重要な産業一つでありますが、これについては、ここ数年来のような放任的な措置では、将来期待できないと思うので、この点については、一つもっと積極的な対策を要望してやまないわけであります。今度審議会を作られるということは、要するにそういう問題を総合しての対策であろうと存じまするが、もっと思い切った積極策を要望してやみません。  次に私は公取委員長にちょっとお伺いしたいのでありますが、ただいまお聞きのように、最近製糸設備が非常に過剰になって、そこから起る過当競争によって、いろいろな弊害が起っておる。今回この生糸製造設備臨時措置法案という法案によりまして、製糸業者組合申し出によって過剰設備を買い上げ、廃棄あるいは格納その他の方法によって処理するという方針がきまったわけです。買収価格残存価格による、それから買収設備はスクラップとして処分する、しかし申し出の数が目標に達しないときには、組合員に割り当てて強制的に処理することができる、こういうことをきめておるわけであります。それで組合員申し出の数が目標に達しないときは、組合員に割り当てて強制的に処理することができるというこの一項が私は問題だと思うのであります。政府では三十二年度予算設備処理について五千万円を計上する、それからあと不足分は、少くともそれと司等程度組合負担によって、残存設備処理をする、こういうことになっておるわけであります。この点について公取で出されている年次報告、三十年度の分ですけれども、最近いただいたのでありますが、要するに、相当設備があればそこに競争が起る、競争が起るから養蚕農家の方としては幾らか高く売ることができる。ところが設備整理縮少いたしますると競争がなくなる、競争がなくなって参りますると、どうしても繭の値段は抑制をされる、こういうことになりますが、その場合に今申しましたような点で、組合強制をするということであります。これはこの年次報告の中にこういうことを書いているんです。「中央卸売市場法のごとく卸売人合併営業譲受等に関する主務大臣のみの認可とか、従来見られなかったような新しい傾向が見られた。しかもこれら類似の経済法令の出現は今後ますます増大する傾向が予測され、当委員会は今後においても私的独占禁止法の理念である自由競争促進立場に立って、これに対処する方針である。」こういうふうにこういう問題についての方針を確認をしておられるわけでありますが、今申しましたような事情で、この法案同意をされました理由一つ伺っておきたいと思うのであります。
  35. 横田正俊

    横田政府委員 この種の設備制限は、今御指摘がございましたように、いろいろな弊害を伴うおそれがないではないのでございます。しかしながら前に繊維工業設備臨時措置法というのが御承知のようにできておりまして、今回の生糸関係はその先例に大体ならってできておるように考えられます。このいずれにしてもこの種の設備制限につきましてはその行き過ぎのないようにという趣旨から、この法律の十二条第二項においていわゆる農林大臣制限規定認可をする際に一定の条件がございまして、「過剰設備処理するため必要な最少限度」をこえないということが設けてございます。この認可については公取委員会同意をするということにもなっておりますので、今申されましたような弊害の出ないように、農林大臣公取とでよく連絡をして、必要以上の制限がなされないように配慮をして参りたいと考えております。   〔委員長退席吉川(久)委員代理   着席〕
  36. 石田宥全

    石田(宥)委員 必要以上の整理がなされないようにということでありますが、今回のこの法案における政府考え方はおよそ設備の三割を目標にしておるようです。今の稼働の状況は五四%程度ということになっておりますから、三割を整理して八〇%ということになりますが、その現在の状況のもとにおいて三割程度整理をすることが妥当である。そうしてまた八〇%の操業を妥当であるとお考えになる根拠はどういうところにあるのですか。
  37. 須賀賢二

    須賀政府委員 どの程度整理をいたすのが適当であるかということにつきましては、最終的には蚕糸業振興審議会に、処理規程の認可をいたします場合に政府から諮問いたしまして、その段階で最終的にはきまるわけでございます。従いまして、この法案の実際の運営の過程におきまして十分検討される問題でございますが、一応私どもが現在の製糸関係の操業の状況その他から判断をして考えておりますのは、お手元の資料にもありますように、現在の繭生産額に対しまして現在の設備をもっていたしますと、大体平均いたしまして五割強くらいの操業率にしかなっておらないわけでございます。これをいわゆる機械製糸と申します輸出生糸を重点にしてひいております面の分野におきまして、三割程度整理をいたし、その他の分野におきまして若干の整理をいたしますと、大体操業率が繭が三千四百万貫程度生産裏づけのあります段階において八割程度の操業率になるわけでございまして、他の製造業その他とも比較をいたしましても、大体この程度の操業率に持っていけば、一応企業として安定をするという目安がつくのではないか、さように考えるわけでございます。
  38. 石田宥全

    石田(宥)委員 製糸業はそれで一応の安定を見ることができるかもしれませんが、それによって先ほど申し上げたように、養蚕農家の利益というものは著しく阻害される結果になると思うのです。ことに今申し上げた強制的にやるという問題については、これは過怠金でありますから、どの程度考えになっておるか存じませんけれども、これはわずかのものだと思うのです。過怠金というのはどの程度にお考えになっておるか、これを局長にお聞きしたい。
  39. 須賀賢二

    須賀政府委員 過怠金をどの程度にとるかという問題は、実際に処理組合を作りまして、処理組合の機関で業者間におきまして十分相談をいたしました結果によりましてきまるものでございます。従いまして、私どもの方で今具体的に過怠金を幾らくらいにするかというところまで実はまだきめておりませんので、この点は御了解願いたいと思います。
  40. 石田宥全

    石田(宥)委員 その金額をはっきりおきめにならないというわけじゃないでしょう。大体これを準備されるには、すでに政令も準備されておるということでありますが、局長考えではどの程度にお考えになっておるのですか。
  41. 須賀賢二

    須賀政府委員 これは通産の繊維設備整理等の例も参考にいたしまして考えたいと思っておりますが、これは先ほども申し上げましたように処理組合できめますので、政府として現在幾らぐらいに考えておるということは申し上げかねますので、その点御了解いただきたいと思います。
  42. 石田宥全

    石田(宥)委員 次にアウトサイダーの規制命令の問題ですが、本法案過剰設備処理組合が自主的に行うことを建前としておるということを今おっしゃったわけですが、大部分の養蚕業者はそれぞれの組合に加入しております。そうしてその規定に基いて過剰設備処理を行なっておる場合に、非組合員の事業活動が本法の目的達成上に著しい障害となっておる場合で、一定の条件を備えておるとき、その組合または連合会の申し出により農林大臣は、蚕糸業振興審議会意見を聞いてその事業区分に属する生糸製造業若のすべてに対し組合設備処理規程に従うことを命ずることができることとしておる。しかもこの命令の違反に対しては三十万円の罰金刑を課する、こういうことになっておるわけでありますが、私はこの点で公取委員長にお伺いしたいことは、こういうふうに組合から組合員に対し調整命令を発することができる、また大臣は、一定の条件が整ったと認めた場合においては、これに命令を発し、命令に従わない場合には三十万円の罰金刑を課する、こういうふうに規制されて参りますと、今度はそれぞれの組合におきまして繭取引の強制に関していわゆる共同行為というようなことが考えられる。いわゆる地盤協定というものが考えられるわけです。現に戦前においてはかなり強硬な措置がとられておったわけであります。今申しましたような二点からいたしまして、それに準拠して県が条例等を設けまして、そうして大きな製糸資本のもとに一定の地域内の地盤協定が考えられておるようであります。そういたしますと、そういう地盤協定の上に立って組合が自主的にこれを決定する、あるいは県の養連と製糸家の間に協定をつけたということに表面上はなるかもしれないけれども、実際面におきましては、先般参考人の意見を聞いてもわかる通り、今の養蚕組合というものは、市町村の組合においても、あるいは県養連の場合においても、果して養蚕農家の利益を代表すろような機関であるかどうか、こういったところに非常に大きな問題がある。市町村の養蚕組合技術指導員はほとんど製糸家によって給料その他がまかなわれておる。いわゆる指導費というようなものは反当り二十円ないし三十円というように、製糸資本家が市町村の技術指導員の給料をまかなっておる。県の養連もほとんどと言っていいくらい製糸資本家のかいらい化しておる。そういう場合に、さらに今申し上げたように、こういう調整規程に基いて県条例というようなものが作られて参りますと、養蚕農家の利益を代表し、その利益を保護していくところの機関が、事実上ほとんどなくなってしまう。もっと具体的に申しますと、やはり蚕種の面においても一定の制限を受ける。その会社が、自分が目標としているたとえば輸出糸なら輸出糸というものに合致するような品種を選んで持ってくる、その他の蚕種は購入きせない、掃き立てを許さない。そうすると、今は以前と違いまして、養蚕農家専業で年がら年じゅう養蚕だけやって生計を営んでいるというような農家は非常に少い。大部分が女手で副業的にやる。そういう場合に非常に高度な技術を持っていないと、今申し上げたような高度の糸をひくための品種を強制されては違蚕が続出するような場合が非常に多いのです。そういう場合には、もっと繊度の太い、多少粗悪なものでも違蚕の少いものを養蚕農家は歓迎する。ところが今申し上げたようにがんじがらめで、国は国の法令で押え、県は県条例で押え、養蚕団体はいずれも養蚕農家の利益を代表し得ない。   〔吉川(久)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで現に全国至るところに起っておりますが、蚕種は自分の技術や自分の設備やそういうものにちょうど適合するような品種を選ぼうとするけれども、これを許さない、そういう品種を強制されてしまう。その結果起る問題は、製糸資本家としてはなるほどそれで非常に好都合であるかもしれぬけれども養蚕農家はそれがためにしばしば違蚕を起す、こういうことになる。あるいは蚕種の量にいたしましても、今は粒数でありますけれども、二万粒だと称しておきながら、製糸資本家か蚕繭がよけいほしいということになりますと、実は三万粒入れてこれで二万粒だということになる。二万粒のつもりで桑園計画などを立てておきますと、実は三万粒入っておって、それがために桑の計画が狂ってしまって、買い桑をたくさんしなければならぬ。それが一軒だけならいいけれども、部落全体、村全体、一地方全体ということになりますと、桑飢饉が起って、養蚕はよくできたけれども、桑の代金のためにかえって不採算になる、こういうような事態が起る。これはかつてあったことであり、今でもやはりそういう方向に向いていくのでありまして、そういうことになって参りますと、ここで私的独占禁止法からこれを除外されるということの及ぼす影響は非常に大きい。そういう点について、その及ぼす影響がよく検討されてこの問題を公取では取り扱っていただきませんと、非常な弊害を及ぼすと思うのでありますが、そういう結果までよく御検討になっておられますか、どうですか。
  43. 横田正俊

    横田政府委員 この法律は、要するに設備処理だけが対象でございまして、ただいまお話がございましたような地盤協定でございますとか、あるいは製糸家が、経済上すぐれておりますその地位を乱用いたしまして関係業者の方へいろいろな不当な条件を押しつけるというような問題は、これは全然別な問題でございます。もちろんそれに関連して出てくる問題でもございましょうが、別な問題でありまして、その問題になりますと、独占禁止法は別に適用除外になっておらないのでございますから、私は今申し上げましたようなその実態はよく把握はいたしておりませんけれども、常にそういう点にも意を用いて、公取のなすべき仕事を今後やっていきたいと考えております。
  44. 石田宥全

    石田(宥)委員 もちろんこの法案設備整理でありますが、それと関連して、この競争を緩和すると申しますか、、設備整理されて競争の面を押えていきますれば、勢いそこへいくことになるのです。だからこれがやはり基本の問題です。そこでやはりその及ぼすところの影響というものを考えないでこの法案を作るというこ…とは軽率じゃないか、こういうことです。  それからもう一つの点で、それじゃその次に起ってくる養蚕農家製糸資本家との関係でありますが、さっき私は具体的に相当述べたわけでありますが、そのような事実は今現に起っておる事実なんです。そこで昨年にいたしましても一昨年にいたしましても、これは新潟県内において数個所に数回起っておる問題なんです。これはそういう事態が明らかになって、一郡ないし数郡がある甲なら甲という製糸資本家の地域になった。そうしてその製糸資本家が自分本位に、養蚕農家の利益というものは顧みることなしに、いろいろな具体的な措置をやってきた場合に、公取としては、これを私的独占禁止法建前で一体処理されるかどうか。これは現に起っておる問題です。蚕種の選定にいたしましても、卵量の問題は別にまたありますけれども、これは現にやはり起っておる問題なんです。  それからあわせて局長に伺いたいのですが、県条例で蚕種の取扱いについては厳重な規定があるわけです。そこで蚕種としては、蚕種の販売その他についての別な規則で押えられておるが、卵は制限をされるが、それが孵化して卵から飛び出したものを蚕種として取り扱うのか、これは蚕として取り扱うのか、これはあわせて一つ局長からも伺っておきたい。
  45. 横田正俊

    横田政府委員 今御指摘のような問題につきましては、実は私も多少耳にしておりますが、この点につきましてはよく事務当局と相談をいたしまして、もしこれに独禁法違反の疑いがございますればもちろん調査をいたしたいと思います。
  46. 須賀賢二

    須賀政府委員 蟻蚕のうちは種として取り扱っております。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 それじゃ一度桑につけたものは蚕ということになりますか。桑をつけた、つけないによって区別されるのですか。
  48. 須賀賢二

    須賀政府委員 桑を食わせますと、これは蚕になります。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうしますと、蟻蚕で桑をつけたものの持ち運び、売買というものは、蚕種の持ち運びや売買、そういうものには合まれない、こういうことと理解してよろしいですか。
  50. 須賀賢二

    須賀政府委員 飼育の形態で桑を食わすようになりますれば蚕でございますが、持ち運ぴます間の維持保存のための程度に給桑したものは蟻蚕として扱っておる実情だと思います。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 蟻蚕保存のためという考え方の限界ですね。実はなぜこんなことを聞くかというと、私どもの県では、やはり県条例があって、なかなか適当な自分の好きな蚕種を好きなところから買ってこれないのです。それは処罰されるのです。そこで種としてでなしに、蚕として持ってくるほかない、こういうことを考えておるのです。現にそれで問題を起しておるから伺っておるのです。そういうことで、種であるか蚕であるか、その限界は、今後こういう法律が出て取締りが強化されて参りますると、ますます大きな問題になると思いますので伺っておるわけであります。われわれ願わくば、そういうような脱法行為的なことをやるのでなしに、やはり原々蚕種は政府の責任においてこれを作る、そして原蚕種も相当厳重な規制のもとに作られて、糸の十四中を引くか二十一中を引くかということによって、養蚕農家の希望がある程度いれられるような状態でなければならないと思うのですが、今のような法案ができますると、それと関連いたしまして、やはり今申しまするような事態に追い込まれるおそれがある。そこでこれを伺っておるわけです。願わくばそういうことでなしに、もう少し養蚕農家の自主性を認め、養蚕農家の選択権を認められるように、局長としては配慮されたいと思うわけです。
  52. 須賀賢二

    須賀政府委員 種の行政につきましては、ただいまいろいろ御指摘を受けましたような問題があるわけでございまして、われわれといたしましても、過般来蚕糸業法改正の問題とからみ合せまして、いろいろ検討はいたしておるわけでございます。要は農家の自主性を尊重しながら、できるだけ統一したいい品種のものが買われるようにいたしたいということが究極のねらいでございまするが、実際の場面ではいろいろ問題が出てくるわけでございまして、今後の蚕種関係の面につきましても、今度お願いいたしまする振興審議会一つの大きな題目であるというふうに私は考えております。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に卵量の問題ですが、卵量が種不足のときには、二万粒と称しながら一割程度は減らしてこれを配付する。また繭をよけいほしいときには、一割、二割増量して出すというような措置が今まで行われておりますが、これに対してはどういう方法で、どういう機関がこれの取締りまたは指導をやられるのですか。
  54. 須賀賢二

    須賀政府委員 種の正量取引につきましては、ここ数年来、私ども特にこの点に力を入れまして取締りをいたしておるのでございます。実際にレッテルに表示されておりますものと中身の量とが違いますと、飼育した結果いろいろそごを来たしまして、蚕作の安定に非常な弊害を来たしているわけでございますので、実際私どもが取り締っておるやり方は、現実農家の手元にまで配られております種を採取して参りまして、その粒数の調査をサンプルによってやっております。その結果、違反のあった者につきましては、これは取締りの根拠は蚕糸業法にあるわけでございますので、取締り当局をわずらわすこともできるわけでございますが、現在は、その種を製造した責任者を私の方で招致いたしまして、いろいろ事情を聞くとともに、その責任者に最終的には責任を負ってもらいまして、内部で適当な処置をとってもらっているわけでございます。これは非常にやかましくやっておりますので、昨年あたりからは非常に取締りの効果を上げてきております。
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して公取委員長須賀局長に、今の私的独占禁止法関連して二、三お尋ねをしたいと思うのです。今審議中の生糸製造設備臨時措置法案とうらはらの関係になるのではないかと思われる、昭和三十二年繭の需給調整実施要綱というものを、当局では持っておられるように聞いておりますが、何かそういったものをお考えになっておりますか。
  56. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭の県外移出入が相当混乱をいたしておりまして、これを何とか調整の方法を考えることにつきましては、数年来の問題でございますが、実際にその具体的な方途を研究してみますと、いろいろ問題があるわけでございまして、私どもといたしましても、それぞれ生産者需要者の間において、実際のやり方として取り上げることが可能であり、しかも現行法の建前と食い違わないような方法を作ることにつきましては、非常にむずかしい問題でありますので、現場の、たとえば主要生産県等の関係者と、それぞれ研究、討議はいたしておりますが、現在の蚕糸局の段階におきましては、こういう方法ならば、何とかそこの道がやっていけるというところまで、実は練り上げたものがない状態でございます。
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 私の承知するところによりますと、昭和三十二年繭の需給調整実施要綱案なるものが、現在一応まとまっているように承知しているのであります。その内容は、第一方針でありまして、第二を措置として、今局長が述べられたような、繭の移出入の多い都府県について調整を行う、また必要によってはその他の都府県間における調整もやるということを骨子として計画が立てられているように思うのです。その措置の七の一に、「繭の買入者は、既に締結した繭の売買契約(予約を合む)の対象となっている繭を除き、契約の相手方以外の者からはその相手方の属する都府県内において生産された繭を購入しないこと。」次に七の2として、「1の契約の不履行の場合は予め定めた違約金を支払うこと。」こういう二つの重大な規定が行われんとしているように承知するのであります。一方においては生糸製造設備臨時措置法によってかま数の制限が行われ、競争が緩和される、一方においては国が都道府県と連絡をとって、今述べたような方針で対処される、こういうことになりますと、いわゆる独禁法に規定しておる不当な取引制限あるいは不公正な取引方法に該当する疑いが多分に私は出てくると思うのです。その目的はわからぬものではありませんが、一方においてはかま数を制限する、いわゆる買手を少くする、一方においては売り手に対して制限を加えていくような指導を行うということは、これは明らかに私的独占禁止法の第一条の第一段の規定に抵触する可能性が私は強いと見ておるのであります。これは前に商工委員会にかかっておりました当時、私的独占禁止法改正の際に、蚕糸業法第十五条の二の点について、私は横田さんにこの点でいろいろとお尋ねをした記憶を持っておるのでありますが、あのときは一応十五条二の規定はああいうふうな状態になって今日に至っておるのでありますが、今また製糸設備制限法が本委員会にかけられ、また一面においては、まだまとまった案ではないようでありますけれども、その裏づけとして繭の需給調整に名をかりて、著しく不当に取引を制限するような傾向が見られることは、私ども非常に遺憾に思いますが、公正取引委員長は、こういった点についてただ単にこの臨時措置法案の中に、この私的独占禁止法の除外規定も設けられてありまして、表向きからいえば、その通りでありましょうが、今述べたように、他にまたこの法律裏づけになるような幾多の指導方針やいろいろな方法でもって繭の取引に不公正な取引を結果としては生ずるような指導が行われる場合、これは独禁法の立場からいかようにお考えになりますか。
  58. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまの実施要領でありますか、要綱でありますか、これは私の方の事務当局の方にはあるいは御連絡があったかもしれませんが、私自身としては、まだ拝見をいたしておりませんので、よくその内容を拝見しまして検討いたしたいと思います。かりに役所の方のいろいろな指図によってある取引が行われましても、それがやはり独占禁止法上の問題に抵触いたします場合は、私どもとしましてそれを等閑視するわけにはいかないわけでありまして、ただいまの要綱がノういう法律上の根拠に基きまして出氏れようとしておりますか、あるいはその内容はどうであるかということにつきまして、これからよく検討をいたしたいと考えております。
  59. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいま御指摘のありましたような問題もございまするし、またこれは生産者需要者との合意の上に成り立つ行き方でございまするので、実際にこういうことが行われる裏づけがあるかどうかというようなところもわれわれとして十分判断をしなければいけない問題でございます。従ってこれは私どもの内部で一つ考え方の素案として考えているという程度の段階にありますことと、一応現場の方の感じも県並びに関係者を通じて聞いてみているというような程度の扱いになっておりますことを申し上げておきます。
  60. 足鹿覺

    足鹿委員 私の質問しておりまする三十二年繭の需給調整実施要綱というものについては、まだ部内におけるほんの検討の段階だ、こういうふうに御答弁になっておるようでありますが、私の承知するところでは、相当成文化しているようです。そうしますと、この三十二年産繭の問題については、これからやろうというふうに解釈してよろしいのでありますか。その際に私が今指摘したような点については、公正取引委員長においても十分検討するということでありますが、私は他の同僚委員から生糸製造設備臨時措置法案の各条項について詳しくお尋ねがありましたから、重複を避けて省略いたしますが、第四章雑則の中に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外の三十一条の一号に「不公正な取引方法を用いるとき、又は組合組合員若しくは連合会の会員に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにするとき。」は、この第四章の適用除外の規定から除くということになっておるのであります。かく法で規定しておきながら、事実上においてはこの第一号に抵触する疑いのあるような指導方針を立てられることについては、今後十分当局に警告をし、そういうことのないことを私はこの際局長から御言明を願いたいと思うのです。もしこの法案が、どのような形式かは知りませんが、かりに成立を見たときに、一方においてはかま数の制限が行われ、一方においてはその府県においてほとんど一つの会社にその繭の供給が制約される、こういうことになりますと、私的独占禁止法の不公正取引の場合の一定の取引分野の問題につきましても、必ずとれは抵触が起きてくると思うのです。いろいろな面から見て私はその危倶を非常に深めておりますので、この点についても局長の御所信を承わりたい。局長のみならずこれは養蚕業者の利害に及ぶきわめて大きな問題でありまするので、大臣等の御出席を求めても私はその所信を承わっておきたいと思うのであります。従来蚕糸局の今までの指導をずっと見ておりますと、常にこういうことが行われがちであり、須賀さんの御就任後においては、まだ私具体的な事情は存じておりませんが、今私の関知しているところでは、こういう実施要綱が三十二年の繭の需給調整という名目で行われんとしている、またその要綱によりますと、「昭和三十年五月二十七日付三〇蚕局第三三二号蚕糸局長通達の7原料繭の購入量調整及びこの実施要綱の一に準じ、都府県内における業種別並びに業者別の繭の需給調整をなすものとする。」ということを規定し、都道府県における需給調整の方向を明らかにしております。ですから局長が、これはまだなまのものであって、全然そういうことのないようにしたいというようなことをおっしゃるが、相当具体的な成文化したものがあるんです。そういうふうな態度では私どもはこの生糸製造設備臨時措置法案についても、もっともっと審議をしなければならないことになると思います。どのようにあなた方がお急ぎになっても、こういうふうな裏づけ指導要綱が一方にあることを秘して、そしてうやむやのうちに処理されるというようなことは、私どもは容認できません。実際に今私が指摘しておる点について、全く蚕糸局長立場において同感である、そのようなことのないことをこの際御言明願えるかどうか、その点を伺っておきたいのです。
  61. 須賀賢二

    須賀政府委員 今足鹿先生のお手元にございます要綱につきましては、私は当初から非常に慎重な取扱いをいたしておりまして、独禁法との関係も非常に検討する余地が残っておりまするし、また現実にこういう形において主要生産県との間の繭の流通秩序というものが安定をしていくかどうかという見通しにつきましても、われわれとして特に非常に慎重な判断をしなければいけないと思います。従いまして私は蚕糸、特に蚕繭処理に対する問題の考え方といたしまして、現実の場面におきましては独占禁止法との関係につきまして非常に微妙な問題が出てくるわけでございますが、合法的に独禁法除外を認められておりまするワクを越えまして、行政指導によってやらせるというような考え方はいたしておらないわけでございます。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この機会に公取委員長にちょっとお尋ねしておきます。これは第三条の設備処理組合のところの中段から以降ですが、「全体として原料繭の供給事情からみて過剰であると認められる場合における当該過剰分に見合う生糸製造設備処理を行うため、」と出ておるのですが、この「当該過剰分に見合う生糸製造設備処理」ということは当然今日の製造設備の稼働率は大体五〇%ということになっておるのですから、それから見ますと残余の五〇%は過剰施設であるということも一応言えるわけです。そういた七ますと設備処理規程を組合において立てる場合においては、この処理規程の根拠となるものは過剰設備が根拠になるのでありまして、その場合にはやはり過剰になっておる五〇%の限度内においてそういう計画が立てられると思うわけでありますが、これは実に重大な点であると思うわけです。ですから公取立場からこれをごらんになった場合において、現在の稼働率から見て過剰分になった全部がいわゆる設備整理の対象になるがごとき印象を与えるこの条文に対しては、よほど慎重を期する必要があると思うのですが、この点に対する公取委員長の見解はいかがですか。
  63. 横田正俊

    横田政府委員 その第三条は大体は組合の目的と申しますか、そういう観点から書かれておるものと了解いたしますが、結局問題は組合ができまして、その設備処理規程を設定いたしまする際に、どれだけのものを過剰と見るかという設定の場合の十二条の要件の判断の仕方ということが問題になるのではないかと思います。公取といたしましても、一応先ほど蚕糸局長から申し上げましたように、いろいろなデータを一応承わっておりますが、具体的に設定をいたしまする場合に、この十二条の要件に照らしまして、ことに先ほどちょっと触れましたように、処理するため必要な最小限度を越えているかどうかという点に十分に注意をいたしまして、この設定に対する認可についての公取同意をいたして参りたいと存じております。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題は組合設備処理規程を設定して、それに対して農林大臣認可あるいは不認可の態度に出るわけですが、しかし組合がまず処理規程を作る場合の根拠になるのは、この「当該過剰分に見合う生糸製造設備処理」ということになりますと、やはり操業率から見て過剰分全部を処理規程の対象にするということは、法律の上から見れば、それを対象にするということは何ら不合理ではないと思うのですね。そういう過剰分全部に対しての処理規程を作るような場合においては、これはやはりあと法律十二条の規定等においても、こういう各号に該当する場合は認可しないということがあるから差しつかえないようなものでありますけれども、その処理規程を作る場合の根拠となる「当該過剰分に見合う設備処理」ということになりますと、ここに幾らかの抑圧を加えておいた方がむしろいいのではないかというふうにも考えられるわけです。特に慎重を要すると思うのですが、そういう点に対しては公取委員長は疑点がないとお考えですか。
  65. 横田正俊

    横田政府委員 私どもの方としては、十二条の方に主として重点を置いて考えておりまして、あまりこの三条の規定については意見も申し上げていなかったと思いますが、御指摘のような御心配がございますれば、やはりある程度の言葉を入れるなりすることも一つの方法になると思います。大体十二条のところで一応は縛られておるように私は考えます。
  66. 栗原俊夫

    ○栗原委員 足鹿委員質問関連して二、三お尋ねしたいと思います。先ほど蚕繭処理の問題について足鹿委員からお尋ねがあったわけですが、蚕糸業法の十五条の二ができたときに、私は群馬県の出身でありますが、群馬県ではどえらいことが起ったわけです。というのは繭の仲買いを業とする製糸業者に対して仲買いをするな、眠り口銭をやるから仲買いをするな、繭の取引をするな、こういうことを強要した。一方国用を扱う座繰玉糸業者に対しては、調整繭をやるからお前たちは繭を買うな、こういうことを強要した。そこでかく申す私が提訴人になって公取委員会に独禁法違反の提訴をいたしました。まさに独禁法違反であるという判決を昭和三十年四月二十日に下したことは、これは公取委員長も御承知の通りだと思う。ところがそのあとどういうことを蚕糸局並びにこれに連なる県の蚕糸課がやっておるかというと、それには穴があったからだ、従って仲買い業者というものが任意組合でやっておるから、意思の決定というものがうまくできなかった。従ってこれを法的な組合にすればそういうものでなくなるというような指導をしてみたり、あるいはまた逆に玉糸業者に対しては、相対で調整繭をやるからというような話し合いをするところに問題があるから、繭の需給については県がその調整に当ってあっせんをするのだ、こういう形をとれば法に触れないというようなことを行政指導して、あたかも独禁法違反を合法的に行政指導する、こういう事実がはっきり現われておるのです。そこで私は公取委員長さんにお伺いしたいのですが、繭糸業者というものは繭を仲買いをすることを業として免許を受けておるはずなんですが、こういう人たちに、たといこの人たちが法的な組合を作って、そうしていわゆる眠りロ銭をとろうという意思決定をしたとしても、実際繭の売買をせずして、一貫目について十五円なら十五円という眠り口銭をとって、本来の繭売買というものをやめて、そうして繭の収買について独占をさせるような方向へ進んでいくことが許さるべきものかどうか、あるいはまた実際において繭の需給のあっせんを県がするんだと言っておりますが、実際においては相対でやっております。名目がどこまでも県のあっせんという名目であって、県にそれほど実際において経済的なあっせんができるはずがないのです。こういうことをぬけぬけやっている、こういうやり方が果して独禁法の精神に合致するかどうか、この点について一つ明確にお答えを願いたいのです。
  67. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど申し上げましたように、行政庁が間に入りましていろいろな指導等をなさいましても、法律上のちゃんとした規定に基きません場合は、それに基いて行われますいろいろな事業者の行う行為につきましては、独禁法が全面的に適用があるわけでございます。ただいま御指摘のような問題がどういう形で現実に行われておりますか、私はつまびらかにしておりません。そういう関係に立ちます以上は、問題がございますればもちろん公正取引委員会として取り上げなければならぬと考えます。また組合の眠り口銭の問題は独禁法上どういうふうになって参りますか。これも検討をいたさなければなりませんが、法律に基きまする組合の形によって行われる行為も、全面的に独禁法が適用除外になるわけではございませんで、やはりそこには一応ワクをはずれた行為がございますれば、やはり独禁法上の問題になると思います。
  68. 栗原俊夫

    ○栗原委員 昭和三十年の四月二十日にそういう事態が起って、当時私は本会議農林大臣の河野一郎氏に質疑をしたわけですが、そのあとそういうような応急措置をして、しかも同じ目的を達成するような行政指導をやったことはありませんか。この点蚕糸局長一つお尋ねします。
  69. 須賀賢二

    須賀政府委員 私どもの方といたしましても、蚕繭処理をできるだけ秩序立てて参りたいという根本の考え方でいろいろやっておるわけでございまするが、御指摘のように、独禁法との関係につきましては、いろいろ困難な問題がありまするので、その点につきましては十分注意をいたしながらやっておるつもりでございます。
  70. 栗原俊夫

    ○栗原委員 次にいま一点、これは独禁法そのものに関連があるかどうかわかりませんが、公正なる取引という観点に立って取引委員長にお尋ねするのですが、御承知の通り養蚕の農業協同組合は、専属利用契約を末端農民と結んでおります。ところがこの専属利用契約を結んで販売を一手に委任された農協並びにこれの上層段階である県の段階は、需要団体との取引に当って掛目の協定をするわけです。ところがその養蚕農民の代表であるべき売手の側に立つ養連がどういう立場にあるかというと、技術指導費という名目のもとに一貫匁について二十円ないし四十円の金を製糸側からもらっているのですよ。売る相手から一貫目について二十円ないし四十円金をもらっているのです。人の品物を扱ってそれを売る相手から金をもらって取引をやっているのです。こういうことは独禁法の立場とは別かもしれませんけれども、取引の公正ということを考えていく立場に立って、委員長はこれは正しいこととお考えでしょうか。好ましいとお考えですか。その点明確にしていただきたいと思います。
  71. 横田正俊

    横田政府委員 農協の方にどういう名目でそういう金が入って参りますか、その間の事情につきまして、私自身よく存じませんので、研究いたしました上でないとお答えができませんが、これら農協の幹部と申しますか、仕事をしておる人々が、組合員立場よりもむしろ取引の相手の立場に立って物を考えるというような、いわゆる農協精神に反するような関係からそういうことがもし出てきておるといたしますれば、これはきわめて好ましくないことでございます。これは独禁法上の問題と申しまするよりも、むしろ協同組合そのものの問題になろうかと思います。ただいま申しましたような事実をまだはっきり存じておりませんので、よく研究さしていただきたいと思います。
  72. 栗原俊夫

    ○栗原委員 いずれにいたしましても、あとからこれはしっかり一つ調査もしていただきたいと思うのですが、そのように一方においては蚕糸業法第十五条の二で繭を独占する、しかも一方からはそういう工合に金をもらっている、いろいろな条件があるわけです。従って先般参考人にここで公述をしてもらったときに、私は農民代表である養連からは、この法案はいろいろな条件を合んでいるかもしらぬけれども、現在のあり方は原料が設備に対して少い、いわゆる売手市場だ、これを制限することによって買手市場に変っていく一つ法案なんだ、もちろんそのほかにもいろいろ条件はありましょうけれども、そういう法案なんだ、従って純農民立場に立てば、少くともこの法案に賛成せられるはずはない、そう考えられる人たちも賛成を唱えておる、こういうところにこの法案の問題点があるわけです。十五条の責任でしばり切れなかったものを、今度は設備制限することによって売手市場を買手市場に変えていこうという背景のもとにこの法案が論ぜられるように私どもには考えられる。こういうことを一応考えながら、一つ公正取引委員長としてのこの法、案のあり方について、法文が順序よく書いてあるからこれでよいんだという立場でなくて、独占を禁止するという立場に立って、しかもいろいろな積み上りの上に蚕糸業法の十五条の二でしばり切れなければ、今度は設備でしばって市場転換をするのだというような一つの背景の中で、果して公正な取引というものが確保できるかどうか、こういう観点についての御感想を一つ述べていただきたい、こう思います。
  73. 横田正俊

    横田政府委員 この法案の背後と申しますか、それをめぐりまして、御指摘のようにいろいろな問題があるように考えられます。公正取引委員会といたしましては、独禁法の線から、それらのものについては慎重に研究いたしたいと思います。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 横田委員長にいま一点お尋ねをしておきますが、昭和三十年五月二十七日、農林省蚕糸局長昭和三十年産の繭処理指導方針というものを各県知事に流しておる、その第七項の原料繭の購入量調整というところに、数項にわたって独禁法に抵触するおそれが多いから繭の売買契約締結後において、都道府県があっせんまたは指導によって繭需要者間の不均衡を調整するように、という趣旨のことが記載されております。その点については公正取引委員会とよく事前に打合せをしてやったんだ、こういう当局のお話でありますが、その内容と私が先ほど例にあげましたものの内容とは著しく異なっておるのです。これは普通常識的ないわゆる教範指導要綱というような性質のもののように一応は見られますが、今私が問題にしておりますものについては、第二の措置というところにおいては、農林省が各都府県から移出入計画を業者別、蚕期別に区分して報告を聴取し、その報告に基いて需給調整を達成するために必要な売買契約を締結するように農林省が勧告することを規定しておる。しかもその勧告においては売買契約による繭の価格についても干渉し、「生産地の属する都府県の協定掛目に別に定める乾燥諸費の額を加算した額(繭の引渡工場最寄駅渡価格)とし、乾繭検定成績により算出するものとする。」、かくのごときは明らかに価格に対する干渉です。自由なる取引に対して一つ制限を農林省当局はやろうとしておることであります。いわゆる公正かつ自由な競争を促進するというのが私的独占禁止法の第一条の規定によって明確である。にもかかわらず各都府県別に需給調整に名をかりて事実上においては価格の決定をし、あるいはある特定の契約をした者以外からは絶対にその府県においては購入させない。契約を不履行をしたときには違約金を払うように指導するということは、事業活動の不当な拘束をすることであり、公正かつ自由な競争を促進する趣旨のものではないと私は思う。明らかに製糸業者立場に立って、一般の養蚕農民の公正なる自由な競争によって販売しようという者に対して拘束を加えていく方針であります。そう解釈せざるを得ない。こういう重大なものが次から次と裏で行われる。ここに蚕糸局の指導方針の点で常にわれわれが疑問を抱く点があるのであります。表向きは一応あなたの方と打ち合せをしておるでありましょうが、これが地方末端にいきますと、必ず力関係において養蚕農民はその養蚕組合が弱体であるし、また今栗原委員指摘をきれましたように、これは製糸業者と特殊な関係を持っておる。そういう点で一般の総合農業協同組合などとはおよそ性質の違った力関係において明らかに劣性の弱者の立場に立っておる。従って公正な取引を行おうとしても、力の関係において公正な売買契約等が行われるはずはないのです。公正取引委員会として農民立場をよく守っていくことが私は独禁法の精神だろうと思うし、また蚕糸局もそういう方針をとられることが公正な態度であろうと思う。ところがことごとにこういうふうに需給調整というようなことに名をかりてこういうことをやられる。そういうことを検討されること自体が私は誤りだと思う。いわんや一方において製糸設備制限する一つの重大な法案が出て、蚕糸政策については、少くとも今の資本主義社会においては逆政策がとられつつある。そういったときに裏面において繭の需給調整が今私が述べたよりな方向にいったときには・明らかに私的独占禁止法に抵触する可能性が多分にあると思います。そういう点について、価格を勧告したりあるいは契約の相手方以外の者からはその相手方の属する都府県内において生産された繭は購入しないというような方針、契約不履行のときには違約金を取れというような需給調整の指導方針は、独占禁止法の建前からいっていかように横田委員長はお考えになりますか。その点を伺っておきたい。
  75. 横田正俊

    横田政府委員 三十年の先ほど御指摘になりました通牒でございますが、それについてはおそらく私どもの方にも農林省から御相談があったというように記憶いたしておりますが、今回のこの問題につきましてもおそらく御連絡はあることと思います。なるほど今御指摘のような点は確かに問題があろうかと思いますので、その案が実施になります前に十分に農林省と御相談いたしたいと考えております。
  76. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点横田さんにお尋ねします。大体公正取引委員会は、現在の日本の繭の流通状況について購繭競争が非常に激しいと判断をしておられますか。その点の基本的な御認識はどういう御認識に立っておられますか。三十年においてはすでにこういう点について了解を与えられているとすると、現在は購繭競争が激化しているという段階に立ってものを判断しておられますか。その点はいかがでしょう。
  77. 横田正俊

    横田政府委員 その点も、実は私といたしましては、最近の情報につきましてはなはだ不勉強でございまして、はっきり申し上げることはできないのでございますが、事務局におきましては、常にこの繭の問題につきましては特に注意をして心していると存じますので、その事務局の調べましたところに基きまして今後適切に処置をいたして参りたいと思います。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 蚕糸局長にいま一応お尋ねしておきます。横田委員長は今述べられたような御見解でありますが、先刻私が指摘しましたものがなければこれを差し上げて御検討願ってもよいのですが、ほんとうにどういう方針でもって三十二年の繭の需給調整方針を樹立されようとしておるのか。あるならある、ないならないとはっきりしてもらいたい。繭の生産の過程に入っておるわけでありますから、そういうのんきなことも言っておられますまい。大体調整々々ということに名をかりて、独禁法すれすれの指導を行政官庁がすること自体に問題があると思います。その点については、従来の蚕糸局が長い伝統の上に立って、製糸業者立場に立って、間接的にではありますけれども要望に沿われるような運営が行われておるのではないかと私は常に考えているものであります。この際は少くともこういう画期的な製糸設備制限を行うという二年間の時限立法ではあるけれども、そういう画期的なものをやろうとする段階にあって、表からも裏からも、結果において養蚕業者を締め上げていくようなやり方は反省を願いたいと思います。昭和三十二年度における繭の需給調整について、ただいままでの私ども公正取引委員長との質疑応答を通じて、あなた方はどのようにお考えになっておられますか。
  79. 須賀賢二

    須賀政府委員 昭和三十二年の蚕繭処理につきましては、現在私の方でとっております基本的な考え方は、昭和三十年五月二十七日付の通牒に準拠をいたしてやって参ることでございます。それにつけ加えまして今御指摘を受けておりますような考え方が取り入れられるかどうかということについていろいろ事務的に検討をいたしたのでございます。公正取引委員会の方とも非公式には連絡をいたしておるのでございますが、いろいろ問題が多いわけでございまして、私といたしましても、その辺のところが十分掘り下げられた結果によりまして、最終的にこの問題に関する態度をきめたいということで進んで参ってきておったわけでございます。現実見通しといたしましては、本年度の蚕繭処理につきましてこのような考え方を当てはめるということは、おそらく困難だと考えておるわけでございます。三十二年の繭処理は、従来の指導通牒のワクの範疇を越えては措置できないことになるように私は考えております。
  80. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に、それでは局長にもう一ぺんだめを詰めますが、この昭和三十二年繭の需給調整実施要綱というものは局長は関知しない。そうすると、こういったような構想については、だれが、どの課が、どういう目的を持ってお考えになっておるのか、その事実もお知りにならぬのでありますか。少くともこうした相当まとまったものがわれわれの手にでも入るくらいでありますから、ある程度進んでおるものと認定せざるを得ない。この前も、第十五条の二の改正のときに、蚕糸局が、まだ国会を独禁法改正が通過しておらない一カ月くらい前に、すでに指導通牒を出しておる。それを私は問題にしていろいろと当局の反省を求めたことがあるのです。まだ国会を通過もしておらない独禁法の緩和規定を、緩和するものと想像して、すでに通牒を出しておった事実がかつてあるのです。こういったことをすでにもう都道府県あたりに内示をしておられるような事実はないか。また今後そういうことのないよう、従来の方針を踏襲していく以外に、価格の決定について勧告をしたり、あるいは独占禁止法に抵触すると思われるような、ある一つの取引分野を一つの買手に規定をし、繭がほしい者はその者から譲ってもらうというような、行き過ぎた指導をしないということの御言明ができますかどうか。従来の蚕糸局のいろいろな経過を見て、くどいようでありますが、その点を明確にしておいていただきたいです。
  81. 須賀賢二

    須賀政府委員 三十二年産繭の処理方針につきましては、局内で両三回検討いたしております。その検討方針といたしましては、これによって業界及び主要生産府県の、こういう考え方に対する意向を一応打診をしてみたらどうかということで、外回りとは連絡をとっておるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、最終的にこれをどうするかということにつきましては、あらためて局として方針を決定する、それまでには局としての成案ということではもちろんないのだというような態度で、十分相手方にも、局の考え方及び方針の扱い方についての建前を説明しながら扱ってきておるわけでありまして、局でこういうふうにことしはやるのだというふうなことがもし流れておりましたならば、今私が申し上げましたようになっておるということを御了解いただきたいのでございます。  それから今後の蚕繭処理に対する問題でございますが、蚕価協定の場合にもありましたように、私どもといたしましては、独禁法と抵触するような問題が起きて参ります場合は、法的な手段によりましてその問題を解決いたしました上で、必要な措置はとって参りたいという考え方を堅持しておる次第であります。
  82. 足鹿覺

    足鹿委員 やめようと思ったのですが、どうも局長答弁を聞いてもう一つお尋ねをしておきたいのです。私の質問に対して、三十年の五月二十七日の要綱でことしもいきたいのだということを、たった今あなたは言われた。そしてその直後に、今の御答弁を聞きますと、私が今問題にしております三十二年繭の需給調整実施要綱というものについては、局内で二、三回検討した、各都道府県に示して、こういうことでやりたいと思うがどうか、こういう過程にあるのだという御答弁であります。そうしますと、あなたは一応結論としては三十年の五月二十七日の要綱に準じていくんだと言いながら、一方においては都道府県の希望がこうであったから、また新しくこういう方針をやるということになりますと、、ただいまも横田委員長は、私の示した点については、価格の勧告をするとか、あるいは一都道府県内においては、契約した相手方以外の者からは繭を購入きせない、またあらかじめ定めた違約金を取るというようなことについては、多分に独禁法に対して疑義がある、十分検討しなければならぬということを現に今おっしゃった。そうしますとあなたの御答弁を、今まで相当の時間をかけて質疑応答したことを、どれを信じていいのか私どもはわかりません。こういうことでは、とうていこういう重大な一いわゆる法律にも何にもない規定を、あなた方の行政方針として、ほとんど法律以上の、違約金を取るとか、あるいは公正に、自由に価格の協定が行わるべきものを、原料繭に対して運賃を加算し、それに大体繭の検定成績を見てきめろというようなことを言っている。そうすると、これは一つの臨時立法でありますが、この法律が通った後において、この運用に私ども安心することができません。法律がなくても、需給調整に名をかりて、今言ったような考え方をあなた方が現に持っておられる。とするならば、暫定法にしろ、これだけの画期的な一つ法律が出るということになりますと、その運営については、ほんとうに農民立場に立って考えたときに、私どもは非常に心配です。そういう点について局長は、今まであなたから私に御答弁になった点で、どの点を三十二年の繭の需給調整実施要綱でやるのか、あるいは三十年の五月二十七日付の要綱に基いてやるのか、もっとはっきりしていただきたい。今の御答弁ではさっぱりわからなくなった。
  83. 須賀賢二

    須賀政府委員 重ねてお答えいたします。ことしの繭の調整につきましては、昭和三十年の五月二十七日付の通牒の方針でやりたいと考えております。ただいま御指摘を受けております三十二年の繭処理方針については、検討不十分なところもいろいろありますし、あるいはより根本的には、設置せられます蚕糸業振興審議会の蚕繭処理対策審議を待って処理すべき問題であるとも考えますので、本年度はこの方針を、これ以上現地に流し、あるいはわれわれとしてこれを取り上げるという考え方は、とらないことにいたします。
  84. 五十嵐吉藏

    ○五十嵐委員 関連して横田委員長にちょっとお尋ねをしたいのですが、先ほどの栗原君の質問に対して、あなたは、この法律はその背後にいろいろな問題を含んでいる、こういう御答弁をきれた。これは公正取引委員長の御答弁としては、私はきわめて重大な発言だと思う。この法案は、これは蚕糸業全体の合理化、健全化がねらいで出した法案だ、私はこう承知している。ところが、あなたはこの法案の背後には、いろいろな問題を合んでいるという御答弁をなされた。そうすると、それを聞いておって、提案したこの法律案の背後には、不明朗な何ものかが存在しておるという印象を受けるのですが、この点に対して一体あなたはどういうふうにお考えになっておるか。私どもは全く白紙でこの問題を検討いたしておるのですから、もしそういう事実があるならば、ここで一つお示し願いたい。
  85. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど申し上げましたのは、設備処理の問題以外に、蚕糸業についてはいろんな問題があるという趣旨でございまして、この法案ができる背後に何か不明朗な問題があるという趣旨では毛頭ございません。
  86. 小枝一雄

    小枝委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩     ―――――――――――――    午後四時三十九分開議
  87. 小枝一雄

    小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。本日まで本委員会に付託になりました請願は約百七十件でありますが、以上の請願及び今後付託される請願の審査のためこの際請願審査委員会設置いたしたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認めます。つきましては本小委員の員数、小委員及び小委員長の選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、小委員及び小委員長委員長において指名の上、追って公報をもってお知らせいたします。
  90. 小枝一雄

    小枝委員長 生糸製造設備臨時措置法案及び蚕糸業法の一部を改正する法律案一括議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。栗原俊夫君。
  91. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ただいま議題となりました生糸製造設備臨時措置法案、これは蚕糸業に非常に重大な法律でございますので、蚕糸業の中の一つの大きな足場になっておる原料繭の生産、これについての政府当局の基本的な態度をまず伺っておきたいのであります。それはどういうことかと申しますと、いろいろ繊維が競合しておる中に、生糸というものは非常に苦難な道を歩んでおるわけでありますが、その原料である繭の生産について、今後増産をする立場をとっておるのか、あるいは見通しを勘案して漸次減産していこうとしておるのか、一体政府考え方はどっちなのか。繭を増産しようとしておるのか減産していこうとするのか、これを明らかにしてもらいたい。
  92. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭の増産に対する今後の考え方といたしまして、われわれはまず需要をつけますことが先決問題でございまするので、内外を通じまして生糸需要を開拓増進いたすことにいろいろ力を注いでおるわけでございます。それによりまして有効需要裏づけをもちまして、生産面につきましても増産に力を入れていただく。数字的な見通しといたしましては、例の経済六カ年計画に載っておりますものが現在数字的なよりどころになっておるのでありまするが、これによりますと、昭和三十五年におきまして三千四百五十万貫の生産目標を持っておるわけでございます。
  93. 栗原俊夫

    ○栗原委員 もちろん生産すればこれを売らなければならぬということを当然考えなければならぬし、考え方によれば売ることがまずその前提であって、売れ行きとにらんで生産考えなければならぬということは経済の常識としては当然でありますが、事養蚕に関する限り、蚕糸業に関する限り、少しく事情が違った条件を含んでおると思うのです。というのは現在長野、群馬、福島等が主要生産地になっておるわけでありますが、これらは必ずしも養蚕をすることが一番有利だから養蚕をやっておるとばかりは言えないわけです。言い方をかえれば、土地の立地条件が他に作付を転換しようとしても、し得ない立地条件を持っておる。火山灰土、軽鬆土ということで、養蚕の原料の桑のような根の深い作物でなければ作れないという特殊な事情を持っておる。こういうことを考えるときに、売れないからもうお前たちは蚕を飼うなと言うことは、政治としてはうまくない。従ってこうした特殊の立地条件のもとにある養蚕農民をどう取り扱っていくかという、基本的な立場に立って日本蚕糸業考えていただかぬとこれはとんでもない方向が出てくるのではないか、こう私は考えておるのですが、この点に関する考え方、すなわち売りに対して生産考えるのか、そうでなくて農民養蚕をやらなければならぬという宿命の上に立って、ここに相当のウエートをかけて日本養蚕業というものを考えるのかどっちなんだ、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  94. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいまお話にありましたことは、私どもは全く同じ考え方に立っておるわけでございまして、特に戦後の養蚕の立地の状況を見ますると、養蚕によって主たる収入を得るということ以外に、適当な作物転換ができないというところに集中的に生産が固まっているような状況でございます。従いましてわれわれといたしましては、、もちろん一面において需要を開拓して参るということは当然でございまするが、今主として養蚕に依存をしている農家経営をささえておりますような地帯の経営安定、さらにその向上という面に十分力を注いで参らなければならぬわけでございます。われわれの生産面に対する対策といたしましては、そういう地帯の農家に最も強く配意をして参りたい、かように考えておる次第であります。
  95. 栗原俊夫

    ○栗原委員 次にお尋ねしたいことは、繭が特殊な立地条件におけるいわば宿命的な生産物である、これを受けて生糸を製造するわけでありますが、生糸を製造する設備は、これは自由営業でなくて許可営業になっているわけですが、許可をするときに、ただ一定の要件を備えておればこれは許可しなければならないものなのか、あるいは一定の設備その他資金等々の要件があっても、需給という関係を一応考慮に入れて許可をするものなのか、この基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  96. 須賀賢二

    須賀政府委員 製糸業を免許制にいたしておりまする理由と申しますか、製糸業法が立法されたいきさつ等から見てみますると、一つは業者として十分経済的にも信頼度の置ける企業であって、原料生産者である農家にも、いろいろな面において迷惑をかけないというような事業担当者を選ぶということが一つと、全体の生産能力と申しますか、原料と設備との均衡をとったような形において製糸業全体を運用していくという、両方の立場から製糸業法が作られたわけでございます。従いまして現在は、その原料と設備関係が、今回お願いをいたしておりまするような法律をもってしても整理をしなければならぬというような段階になっておりまするので、総ワクを拡大いたしまするような免許はいたきないことにいたしておるわけであります。
  97. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そこでお伺いしたいのは、現在ある免許設備の中で、最終に免許したのは何年ごろでございますか。
  98. 須賀賢二

    須賀政府委員 最終に免許をいたしましたのは、一応現在の機械製糸にいたしますと約五万七十でございますが、五万七十台の免許をいたしましたのはもう相当以前でございます。おそらく戦後復元をいたしました二、三年のうちに、大体五万台ぐらいになったと考えております。ただその後免許を移動いたしまして経営担当者等がかわりました場合は、その譲り受けたものにつきまして新たに免許をいたしておりまするので、そういうものは最近のものもございます。しかし総ワクは拡大をしないということでやっておるわけであります。
  99. 栗原俊夫

    ○栗原委員 私の特にお聞きしようとする点は、戦後復元した数をこえて新たに免許があったかどうか、この点をお聞きしたいのですが、その点はどうですか。
  100. 須賀賢二

    須賀政府委員 戦後復元をいたしましたときに、全体の規模をきめたわけでございまして、それ以後におきまして、機械製糸につきましては総ワクを拡大するような免許はしておらないと承知いたしております。
  101. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ここは非常に重大なところなので、と思いますではなくて、ないのかあるのか、明確にして下さい。
  102. 須賀賢二

    須賀政府委員 手元に復元のときの数字がございませんので何でございますが、昭和二十六年以降機械製糸につきましては、新たに総ワクをふやしたものはございません。
  103. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そうしますと、二十六年までは復元したものが規模数字であるが、いろいろな四囲の状況をにらみつつぼつぼつながら免許はしておったと理解してよろしゅうございますか。
  104. 須賀賢二

    須賀政府委員 お答えいたします。実は当時の関係を十分承知いたしております者がただいまここにおりませんので、大体今まで私どもの聞いております範囲でお答え申し上げるわけでございますが、復元計画をきめまして、そのときにきめました総ワクの範囲で続けて参っておると考えております。
  105. 栗原俊夫

    ○栗原委員 それでは復元以降はかま数は一つもふえておらぬ、経営者が変って、名義変更の免許はあったかもしれないけれども、かま数は復元のかま数から一かまもふえておらぬ、こういうことでございますか。
  106. 須賀賢二

    須賀政府委員 なお至急私の方の係の方へ連絡いたしまして取り調べますが、復元計画以降はほとんどふえてないものと承知しております。
  107. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これほど重大な生糸製造設備整理法案を出すに当って、それくらいなことが調べてなくてこんな法案が出せたものだと実は非難したいのですよ。そういうばかげたことはない。しかし調べてないようですからその通りお聞きしますが、二十六年以降ふえていないという答弁がありましたので、二十六年以降はふえておらぬということを前提に質問を続けて参ります。二十六年の繭の生産高と今日の繭の生産高はふえておりますか、減っておりますか。もしふえておっても、減っておっても、どのくらいの伸びあるいは縮みがあるか、お話しを願います。
  108. 須賀賢二

    須賀政府委員 二十六年以降は繭は順次増産をして参りまして、昭和二十六年の繭産額は約二千五百万貫でございますが、現在は大体三千万貫前後のところでございますので、二十六年に比較いたしますと五百万貫ばかり増産をいたしております。
  109. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そこでいろいろな角度から検討して免許をしておる生糸の製造設備、しかもその後繭が減産していくということならば、その免許したかまに制限を加えるという考え方を当局が立案することもあり得ることだと思います。しかしそうして需給を見合いつつ厳重な免許をしたかまに対し、しかも一方において原料の繭自体は伸びておる状況下に、当局みずからがその免許したかま数を減していくというような法案を提出してくる。もちろんこの法案の第一条の「目的」を見ますと「もって生糸輸出の増進に資することを目的とする。」こううたってあるわけでありますが、生糸輸出増進の道はこの道ばかりではありますまい。そういう中で、繭が減産になっていないのみか、むしろふえておる。しかも今後三千四百五十万貫に繭を増産していこうという計画の中で、なぜ輸出増准の道を、免許設備制限に求めなければならないか。われわれにはどうしても理解がいかぬのであります。道はたくさんある、そしてその中でなぜこの設備制限することが最適だと、一体どういう根拠で考えたのか、あまり長い時間をかけずに、最も端的に説明していただきたいと思います。
  110. 須賀賢二

    須賀政府委員 私ども今回設傭の制限を行いますことにつきまして考えましたことを申し上げたいと思います。最近の糸の値段傾向等を見てみましても、大体系の価格は二十万から二十一万ぐらいのところでここ一、二年来動いておるわけでございます。大体その辺のところが、将来を見通してみましても糸の価格の大よその行きどころではないかと考えるわけでございます。一方繭の方は、大体昨年あたり、あるいは一昨年あたりの生産費の事情を見ましても、標準掛目等から計算いたしますと、千六百円くらいになっておるわけでございますが、繭の価格といたしましては、他の農産物の関係その他を考えましても、現在の価格水準を維持し、あるいはできればもっと原料代に製糸家が充当できるような方向へ持っていかなければならないと考えているわけでございます。従いまして、原料価格と糸の販売価格との間にはさまれております製糸自体加工販売費の合理化をはかります以外に、現在の製糸業が経済的に安定をして参るという道が見出されないわけでございますので、製糸自体の合理化によりまして、製糸業の経営を安定し、輸出方面におきましても、もっと経済的な努力を傾けることができるようにいたしたい、さように考えたのが今回の措置の大きなねらいでございます。
  111. 栗原俊夫

    ○栗原委員 一昨日ですか参考人が参りまして、現在遊んでいるかま数は大体六千がまである、これはこの法案が成立して実行できれば、少くともそうしたアイドル・コストは切って落せる、こう言っているのですが、それがどのくらいコスト高に響いておるかということについてはわかりませんので、後ほど説明してもらいたいと思いますが、どうも、輸出促進に資する、こう大上段に法律の目的は銘打っているのですが、どちらかというと、ただいま局長が言う通り、国際価格と原料繭の間にはさまれた製糸段階が苦しんでおることはわかります。それならばむしろこういう打ち出し方よりも、この法律の目的は製糸業のめんどうを見ることにあると銘打った方がはっきりすると思うのですよ。ほんとうに輸出を増進する、こういう立場ならば、技術の面とコストの面と、こういうことで、最近は繊度偏差の少い自動繰糸機もできておると聞いておりますが、こういう方向への技術転換のための設備改善という形で法案が出てくるべきだと思うわけですけれども、そういう点は十分御考慮を払った上なおかつやはりこの法案に盛った手段方法の方がよいのだ、こういう判定のもとにこの法案が出されてきたのですか、この点一つ御説明願います。
  112. 須賀賢二

    須賀政府委員 この法案の最終のねらいが輸出の増進にあるというふうに私ども考えておりまするのは、現在の製糸経営の姿を見ますると、先ほど申しましたように、製品価格と原料代との間にはさまれまして非常に安定をしておらない経営をいたしておりまするために、技術の改良にいたしましてもあるいは設備の改善にいたしましても、さらには海外の市場における需要の開拓、需要家に対するサービスというような面が非常に欠けておるわけでございまして、他繊維等のあり方と比較をいたしまして、製糸については需要家に対するサービスというものが非常に欠けているということを常に指摘をされているわけでございます。これはもちろん企業努力の足りないところも多分にあるのでございますが、今の製糸不採算というような状態に置かれておりますこともその原因の一部であると考えられるわけでございますので、法のような方法によりまして製糸経営を安定きしていくことにより、現在製糸に欠けております販売面のいろいろな工夫努力等もさらに積極的にやらせるようにいたしたい、さように考えたわけでございます。
  113. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これは少し専門的なことで申しわけないのですが、現在片倉工業あたりでやっている片倉式の自動繰糸の方法とか、あるいは郡是でもとられたコントロール・コンパスによる片倉式の自動繰糸機、こういうものでもしやったとしたら、相当合理化されて、コストも下り、技術的にも輸出にもってこいだ、こういうことで合理化ができると思うのですが、この点今日ただいまのあり方はどうなんでございますか。
  114. 須賀賢二

    須賀政府委員 もちろん製糸企業の中におきましても、いろいろ設備の内容等について見ますと、いろいろな差があるわけでございまして、自動機等を相当導入いたしております場合におきましては、輸出に適格の糸を能率よく引いていくというような格好になっているわけでございますが、ただ自動機につきましても相当の固定投資を必要とするような関係もありまして、必ずしも一般に取り入れられるわけにも参らないような実情にあるわけでございます。
  115. 栗原俊夫

    ○栗原委員 わかったようで実際はわからぬのですが、この法律制限をされるようにすると、どこで製糸家が救われるのですか、どのように救われるのですか、具体的に当局が想定しておったものをざっくばらんに言ってみて下さい。
  116. 須賀賢二

    須賀政府委員 この整備によりまして製糸家の経営の状況がどのように変って参るかという点でございますが、これはけきほども説明申し上げましたように、現在の設備と原料との関係では、稼働率が大体五二、三%のところにあるわけでございます。整備をいたしますと、繭の生産が三千四百万貫以上あることを前提といたしまして、八〇%程度の稼働率になるわけでございます。これは一台当りの操業能率が大幅に向上をして参るのでありまして、それに伴いまして設備、労働のいわゆる生産性が相当引き上げられるわけでございます。その結果加工販売費・いわゆる現在の製糸のコストが低下をすることを期待をいたしているわけでございます。
  117. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そうすると生産コストが下るという根本原因は、設備を減ずることによって一台当りの稼働日数というか、稼働量が多くなる、見方を変えると、労働者の数を減らして、そうしてコストが下っていく、こういう工合に聞えますけれども、そうなんですか。
  118. 須賀賢二

    須賀政府委員 設備台数を減らします関係から、労務者の数も、設備数が減りますと減って参るわけでございますが、この点につきましては、この設備計画検討を始めました当初から、労務者に対する影響というものを十分考えておりまして、特に製糸については九割以上が女子の労務者であります関係上、更新率も非常に高いのでございます。最近の実績をとりますと、大体年間三割くらい更新をいたしておるのでございまして、この程度整理でございますと、整理いたしましても、しばらく新規の補充を差し控えておりますことによりまして、直接首切り整理を伴わないで労務者の方は対策がとれるものと考えているわけでございます。
  119. 栗原俊夫

    ○栗原委員 それではもっと具体的な問題でお尋ねしますけれども、現在加工販売費を加えて大体五万三千円に押えているわけですね。一体これが具体的にどのくらいになるのですか、この法律を実行したら。
  120. 須賀賢二

    須賀政府委員 これは企業の規模別にも、またいろいろ操業のやり方等によりましてもいろいろな場合があるわけでございまして、一がいに申し上げられないのでございますが、大体私どもが手元の資料で試算をいたしましたところによりますと、中どころの規模のところで――中どころと申しますと、大体百八十台から九十台くらいの規模でありますが、そういう規模のところで、この整理にょります加工販売費の節減は大体一割見当に目安をつけております。しかしこれは私どもの手元におきます机上の計算でございますから、実際の経営の場合におきましてはいろいろ工夫を加えまして、さらに節減等の効果を上げるように努力するものと考えております。
  121. 栗原俊夫

    ○栗原委員 お説の通り企業別、規模別によってそれは確かに違うでありましょう。しかし私が特にここをしつこく聞いているゆえんのものは、やはりこれが繭との関係に非常に重大な影響があるわけです、掛目協定に。そこで規模別にはいろいろあるとおっしゃるけれども、農林省で掛目協定のときに普通使っている五万三千円というあの計算の出し方の方法によっては、一体どのくらい加工販売費が下るだろうか、この点をお尋ねしたいと思うのです。
  122. 須賀賢二

    須賀政府委員 農林省で五万三千円という生産費を出しておりますのは、これは現在の機械製糸の工場をサンプルで抜きまして、五十工場を抽出いたしまして計算をいたしております平均でございます。従いまして、一つの工場にそのまま当てはまります具体的な生産費というわけではないのでございますが、それらの資料をとっていろいろ私どもの方で試算をいたしました一応の目安といたしましては大体五万三千円、昨年あたりはやや低下いたしまして五万三千円すれすれくらいになっておりますが、その一割見当の節減を目安にしております。
  123. 栗原俊夫

    ○栗原委員 御説明によれば、加工費が一割下れば、下ったものは掛目協定の際に大体折半になるような姿になっていくかもしれませんけれども、こういうものが実施された場合に、具体的に繭取引に当って繭価に対する影響についてはどのようなお見通しを持っておられるのでしょうか。
  124. 須賀賢二

    須賀政府委員 整備によりまする繭価に対する影響は、もちろん私どもといたしましてもこの整備を進めまするに当りまして最も注意をして参らなければならない点でございます。先ほど申し上げましたように、整備をいたしました暁におきましてもなお操業率は八〇%程度、それから製糸家といたしましては原料繭の確保ということが経営上の最大の努力の中心でありまするので、原料繭の確保につきましては従前にも増していろいろな努力をいたすわけでございます。従いましてわれわれといたしましては、この整備のために現在の繭価水準に影響を及ぼすというような効果の現われ方はないものと考えておるのでございます。
  125. 栗原俊夫

    ○栗原委員 局長は全国的に蚕繭処理指導要領を作ってくれたり、いろいろ蚕繭処理について配慮して下さっておるわけですが、実際の繭の取引の実情というものをよく御存じですか。というのは、繭は掛目協定によって一応共販されておる。これによる値段というものは、大体ここのところ千五、六百円からその範囲を動いておる。そのほかにややこしい共販を抜けた販売もあります。あってもこれはその共販によるところの上値五、六十円からせきさか百円です。実際繭が高くなるのはそこにあるのじゃないのです。買った製糸家が、自分で買い込んだ繭を同じ仲間に高く売りつけておるという事実を御存じありませんか、どうです。
  126. 須賀賢二

    須賀政府委員 実際に生産者需要家、また需要家相互間におきまして行われておる取引でございますから、いろいろな事例ももちろんあることと存じますが、大体生産されまする繭の相当量は、一応農協の共同販売という形によりまして、それぞれの需要家に渡されるような形で動いておる建前ではございますが、お話のようにいろいろな事例が現実にありますことは、取引そのものは自由な建前の取引でございますので、御説の通りだと私も考えております。
  127. 栗原俊夫

    ○栗原委員 先般も参考人の口からいろいろ製糸立場の不況が唱えられておりますが、現実製糸でほんとうに困っておる――全般的に決して左うちわの状況とは申せませんが、困っておる中でもどういう階層が特に困っておるかということについて分析をしてみたことがございますか。あったらその概略をお知らせ願いたいと思います。
  128. 須賀賢二

    須賀政府委員 私どもの方で、一応製糸の業態別の経営の状況の参考といたしまして、最近年次の決算の状況等も見ておりまするが、私どもの方で調べました機械製糸業者数は百四十業者でございますが、このうち六十業者が黒字で、八十業者が赤字というような状況になっております。
  129. 栗原俊夫

    ○栗原委員 時間もだいぶん経過しておりますので、質問を究極に持ち込んで参りまするが、日本蚕糸業の中の大きな一つの柱である製糸部門が困っておる、こういうことであり、そういう状況の中で、この法律輸出の増進に資することを目的としておる、こううたって過剰な機械製造設備処理、こういうことを主眼に提案されておるのでありますが、やはり政府当局としては、何といっても日本蚕糸業輸出によってまかなっていかなければならぬことはわかっておるし、そういうことは結局化学繊維のように、糸に偏差のない非常に高級な糸を要求するということでデニール・コントロールをした糸を要求する、こうなればやはり漸次そうしたことを自動的に行う自動製糸に入っていかなければ、ほんとうの根本的な対策にはなるまい、私はこう考える。そこでそれは非常に努力をして発明したかもしれぬけれども日本蚕糸業を根本的に打ち立てていくという意味において、政府が緊揮一番そうした特許の買い上げ、公開というような方法等によって、日本蚕糸業の窮状というものを打開していくべきだ。もちろんそれは自動繰糸機がいいという前提に立っての論議でありますけれども、よいとするならば、政府はその特許を買い上げて、これを公開して、日本蚕糸業というものを前進さすべきだ、こう私は思うのですが、この考え方に対して当局はどのようにお考えでしょうか。
  130. 須賀賢二

    須賀政府委員 自動機につきましてもいろいろな会社のものがございまするし、また最近は比較的簡易な施設で自動繰糸の効果を上げまするようなものも研究をされまして、試験的に若干の工場等において使いまして、その結果を見ておるような状況でございます。  なおただいまその特許を政府で買い上げてというようなお話もございましたが、そういうことも将来の問題としましては十分研究を尽きなければならないと考えるのでありますけれども、われわれとして当面やっておりまするのは、自動繰糸機の機構の中で、特に要点になりまする部分につきまして、蚕糸試験場でも技術的にいろいろ研究をいたしまして、研究成果の上りましたものは、業界にもこれを利用させるようにいたしまして、できるだけ企業側の研究費の負担を軽くするように努力もいたしておるわけであります。
  131. 栗原俊夫

    ○栗原委員 輸出の増進を目的として、日本の行き詰まった蚕糸業を打開する法律とするならば、やはりそうした技術改善の面へ主力を注いで、十分そうした検討をした上でやはり根本策を樹立すべきであって、もしこのようなものが速急に必要ならば・製糸家を何とか救済するということを目的にするんだとはっきりうたって、世間を欺罔しない、こういう形で出し直すべきだと私は思うのです。実際において輸出を促進するんだということは、これはりっぱな日本蚕糸業の進むべき方向を示した改正です。しかし内容的に見れば、根本的にはまだまだ本格的にやらなければならぬことがある。そしてこの法案に盛られた内容は、実際においては当面した行き詰まっておる製糸企業をどうやって安定させるかということが主眼目であって、もちろん大きなワクでいえばそういうことが輸出にも関連をするでありましょうけれども輸出の増進に資することを目的とするという法律にしては、いささかどうも内容がちぐはぐしておるのではないか、このように考えますけれども、どうですか。非常に重大な段階でこういうことを申してはなんですが、いま少しく考え直す気持はございませんか。
  132. 須賀賢二

    須賀政府委員 もちろん私どもといたしましても、この整理の直接のねらいは、設備相当量を圧縮するということでございますが、それと相並行いたしまして、技術の改善、設備の改良ということに力を注いで参りますことは、当然のことでございます。特に最近の蚕糸生糸需要の開拓という面から見ますると、技術の改良にさらに一段といろいろな角度から工夫をしなければならないような問題が切迫をいたしておりまして、農林省の申でも技術会議等で蚕糸のそういう面には非常に力を入れてもらっておるわけでございます。たとえば包装形態等の問題にいたしましても、アメリカで交織面に生糸が使われるのを伸ばすためには、今のように昔ながらのかせでアメリカに送っておったのでは、いつまでたっても機屋さんになかなかなじめないという問題がだんだん表面に出てきつつあるわけでございます。そのような問題もできるだけ早く技術的に解決をしたいということで、いろいろ努力をいたしておるわけでございまして、この設備制限によりまして、現在の蚕糸業全体の規模につり合いのとれましたような形に手直しいたしまするのと並行いたしまして、今いろいろ私ども技術的に考えておる面の工夫努力も一段と促進をいたしまして、両々相待ちまして、期待するような効果を上げていきたい、かように考えておるわけでございます。
  133. 栗原俊夫

    ○栗原委員 いろいろお尋ねしてだんだん明らかになってきたわけですが、最後に、先般参考人の来たときにもお尋ねし、先ほど公取委員長にもお尋ねしたわけですが、やはり私たちには、この法案が最も基本的にねらうものは製糸家の今の窮状を救うことであり、その方法として蚕繭処理をどうするかということが法のねらいのように考えられてならぬのです。蚕糸業法十五条ノ二で蚕繭処理を独占化しようということに失敗したその第二の矢として、今度は設備制限して、いやでもおうでも蚕繭処理を独占化していく、こういう法のように考えられてならない。これは言い方をかえれば、農民的な立場に立った――一部ひが目かもしれませんけれども、こういうことについて農民はなかなか納得いたしません。先般の参考人の中の養蚕農民の代表である全国養連の北原さんは、いろいろ理屈をつけながら結論的には賛成だと言っておりましたけれども、末端農民はそんなものではない、こういうことをやるのだと言ったら、これはあげて全面的に反対しております。こういう養蚕農民感情を当局はこの法案とどのようにして調整なさっていく考えでございますか。
  134. 須賀賢二

    須賀政府委員 申し上げるまでもなく、私ども蚕糸局の仕事を担当しておる者といたしまして、繭生産者とそれを使用いたしまする繭需要者との両方の立場をそれぞれ扱っておるわけでございます。従いまして、今回の企業設備制限に関する問題を取り上げるに当りましても、当初から繭生産者に対する影響につきましては、十分考えて参らたつもりでおるのでございます。これからの実施の過程におきましても、実際の整理規模、それから整理を行いますいろいろな段取り等につきましても、生産者に対する影響につきまして、十二分に配慮をいたしながら進めて参りたいと考えておる次第でございます。
  135. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これは具体的な問題でありますが、私自身は、どうもこの法案自体に賛成がしかねるような気持で今審議を進めておるわけですが、これが成立した場合に、繭の処理というものが、先ほど足鹿委員からもいろいろ質疑されたような行政指導によって、独占化されていくようなことが強化されてくる、いよいよ掛目協定になって、依然として加工、販売費は五万三千円、あるいは幾らか色をつけて五万円そこそこになるかもしれませんが、そういうことではとうてい農民は納得いたしません。もしもこれが成立して実施され、るような場合には、まず制限するものは加工費のべらぼうに高いものから制限する、こういう方向がはっきり打ち出せますか、いかがですか。
  136. 須賀賢二

    須賀政府委員 加工費につきましては、私どもの方でいろいろ調査をいたしておりまする資料によりましても、必ずしも規模と生産費とが一定の相関関係を持っておるというような格好にはなっておりません。いろいろ錯雑をしたような結果になっておるのでございます。従いまして、生産費の高いものから整理をすることにするかというお尋ねでございまするが、生産費の高いものからという基準を一律に当てはめますことも、実際問題といたしまして、いろいろ技術的にも難点があるように考えますが、実際の処理計画を進めるに当りましては、もちろん生産費の不当に高いものから整理をして、全体として平均生産費が下るというような格好のところへ持って参ることが、最も望ましい仕事でございますので、実施過程におきましては、そのような要素もできる限り工夫してみたい、かように考えております。
  137. 栗原俊夫

    ○栗原委員 蚕繭処理に当って、これは先ほども、三十二年度の要綱の草案の草案みたいなものが同僚委員の手に入って、だいぶ追及がなされておりましたが、養蚕農民に対しては至れり尽せりの行政指導をするのです。こういう法案を作るときに……。輸出を増進するのだということは、糸のいろいろ技術的なものを向上すると同時に、値段を安くすることが基本でしょう“値段を安くするということは、原料繭を安くするということと、加工、販売費を安くすること、この二つの中に含まれるわけです。設備制限しようとするときは、輸出を増進することを目的とした設備制限をするならば、まず加工費の高いところから制限すると言い切れるのは当然じゃないですか。どうですか。
  138. 須賀賢二

    須賀政府委員 この設備制限によりまして、直ちに生糸の販売価格を切り下げるということにつきましては、私どもきようには考えておちないのでございまして、大体海外から見ましても、日本生糸の標準的な相場というものが一応できているわけでありますから、その相場で売って参るようにいたしたい。従いまして、加工、販売費の節約、合理化によって生み出されて参る節約分につきましては、企業自体のいろいろな面における合理化、それから先般から問題になっております、非常に製糸関係の労務者が低い賃金で働いているようなところに対しても、十分考慮してもらわなければならぬ。さらに原料面につきまして、製糸企業としてもできるだけの手当をして参るようにいたさなければならないと考えているわけであります。従って、今後整理の実施過程におきまして、できるだけ生産費の高いものが減るようにというお話でございまするが、実際の方向といたしましていそのような趣旨も十分われわれわきまえて進めて参りたいと考えております。
  139. 栗原俊夫

    ○栗原委員 最後に、いろいろ質疑応答を続けてきましたが、結論的には、この法案の第一条には、「もって生糸輸出の増進に資することを目的とする。」こうは書いてありますけれども、実際は、今行き詰まっている製糸段階の窮状を打開するのがほんとうの目的なんだ。どうしてもそうとしか受け取れませんが、そう受け取ってよろしゅうございますか。
  140. 須賀賢二

    須賀政府委員 製糸の窮状打開と申しますか、製糸業の経営の安定をはかることを目的といたしておりますが、そのこと自体は、先ほども申し上げましたように、労務者それから原料面、その他現在の蚕糸全体が苦しんでおる全体の面にわたりまして調整、合理化をして参る一つの手段として考えているわけでございまして、これで製糸だけがよくなって、あとは何らかまうところでないというような考え方で、毛頭われわれは進めておらないわけでございます。
  141. 石田宥全

    石田(宥)委員 今の栗原委員質問関連してちょっとお尋します。いろいろ質問があったのですけれども設備制限によって過当競争を緩和すると、製糸資本家が安い繭を買えることは、これははっきりしている。そこで経理の内容がよくなった分を、労働者の賃金が他の産業に比較して非常に安いから上げるということになると、これは結論的に言うと、設備整理することによって製糸資本家の得た利益分というものは、これは第一次的には労働者のベース・アップになる。農民の方から見ると、その製糸資本が破産したり倒産したりした場合の未払いというようなことについては、多少不安感がなくなるような点はあるけれども、平均して、その分だけ農家は繭を買いたたかれるという結果になることだけは明らかなことであります。この点ははっきりしていると思うのです。どうですお考えは……。
  142. 須賀賢二

    須賀政府委員 その点につきましては、さきにも申し上げましたように、この程度整理をいたしましても、繭の売手市場から買手市場に急速に様相が変るというような、大きな変化は私ども予想いたしておらないのであります。目安といたしましては、現在の繭価水準、さらに他の農産物等の関係におきまして、繭価の引き上げを必要とするような場合には、それにも製糸企業として十分ついていけるような力を製糸にもつけたい、さように考えているようなわけでございます。直接繭値がこれによって切り下げられるというような影響まで、私どもは予想いたしておらないのであります。
  143. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは僕は非常に誰弁だと思うのです。要するに競争が緩和されれば原料繭が買いたたかれる、これは常識じゃないですか。今までは競争が激しかったから抜け買いがあったり抜け売りがあったり、そういうことで買いあおる。その買いあおりをとめようというのだから値段をたたくということだけはこれは理屈じゃないですよ。実際閥題はそうなっちゃうのです。そこでそういう場合に、蚕糸局として一方的に農民の繭の買いたたきをしないようないかなる措置考えておられるか。さっき言ったように養蚕団体そのものがもう製糸家の代弁のような格好になっておるのだから、ほんとうの意味で養蚕農家の利益を代表する者は一体だれかということですね。それから今言うような不当な買いたたきが起った場合にだれがそれを擁護するか、どういうところに農民の抵抗線が引かれるか、こういう点についての具体的な対策がお示し願われないとわれわれはどうもこれに賛成しかねるのです。
  144. 須賀賢二

    須賀政府委員 繭の実際の流通は、さっきも申し上げましたように養蚕農協の共同販売の態勢でやっておるわけでございますが、いろいろ養蚕農協のあり方につきまして御批判のありますような点も多々あるのでございまして、それらの点につきましては今後われわれとしても十分指導いたしまして、改めるべきところは改めなければならないのでございまするが、いわゆる繭の需要者の方がいろいろな要請によりまして整備をいたすということになりますと、そのうらはらといたしまして農協による共同販売態勢の強化という面につきましてはなお一そう努力をいたさなければならぬわけでございます。その方向によりまして農協の共同販売態勢の整備を促進することによりまして、需要者の方との関係の均衡をつけていくように指導して参りたい、かように考えております。
  145. 石田宥全

    石田(宥)委員 さっき栗原委員指摘されたように、局長はどうも実情がわかっておらないようですね。共販態勢を強化するということは農民にとっては実におそろしいことなんです。だから議論がちょっと逆なんですね。共販態勢を強化して農民の意思が反映されないような処理がなされることをわれわれはおそれるのです。市町村の組合の役員も技術指導員も製糸家のひもつきになっておる。県養連もそういうことになっておる。もっと極端にいえば、県の蚕糸家というものは大製糸資本のかいらい化しておるのです。われわれは過去においてひどい目にあっておるのだから、いろいろな事実をわれわれは指摘することができるのです。そういう実態の申に共販態勢を強化するということは養蚕農家製糸資本に隷属させることになる。そのいう弊害を一体いかにして防止するか、そういうことについての具体策があるかどうかということなんです。
  146. 須賀賢二

    須賀政府委員 私が共販態勢を強化すると申し上げましたのは、業界の一部等で現在の農協法の専属利用契約に関しまする部分を改めまして、いわゆる法的な措置を強化して共販態勢を強化するというような趣旨で申し上げておるのではないのでございます。農協が生産農家の意思を十分尊重し、生産農家の意思に基きながら農協でまとめて有利なる売り先を選んで販売をしていく、そういう形の共販強化でございます。いわゆる法的な手段によって農協が養蚕農家を拘束することを強化することによって共販を強化するという方向では考えておらないのでございます。
  147. 石田宥全

    石田(宥)委員 その点は一つ今後の行政指導で考慮を願わなければならぬ。  それからもう一点伺っておきたいのは、平均して約三割程度整理をされますと、小さいのは百台、二百台というのがありますけれども、大きいのになるともう非常に大きな製糸家がある。そうすると結局その整理の過程を通じて大資本製糸が中小のものを整理して、同じ三割にいたしましても数千台持っておるような製糸家は三割切られても何でもない、ところがわずかしか持たないものが三割切られると非常に致命的な打撃を受けるようなことになるわけで、そういうことになっていくと、整理をした後においては一部少数の大資本製糸の独裁的な形に移行してくると思うのですが、同じ三割といってもその点について大きな製糸家と中小製糸家との関係はどういうふうに処理をされるわけですか。
  148. 須賀賢二

    須賀政府委員 実際に処理を進めます場合におきまして、大製糸と中小製糸とのそれぞれの関係につきましては十分配慮をいたしまして指導をして参るつもりでありますが、ただいまお尋ねのありました大製糸整理率と中小製糸整理率につきましては、大製糸につきましては相当大幅に整理いたしまして、中小につきましてはできる限り整理の率を小幅にするような実施計画を、私どもの方でも整理の実際の当事者とよく協議いたしまして指導して参りたいと考えております。
  149. 石田宥全

    石田(宥)委員 しかしそれは設備処理組合というものができて自主的にやるのでしょう。だからそれはあなた方の希望的観測であり、希望的な意見であって、実際はその処理組合が自主的に決定する、それをあなた方の方はどの程度に干渉するのですか。
  150. 須賀賢二

    須賀政府委員 この処理のやり方は全部処理組合処理規程の内容に盛られるわけでございます。そうして処理規程は政府認可を要することになっておりますし、またこれを認可するにつきましては公正取引委員会の同意も必要なわけでございます。従いまして処理の具体的内容につきましては、政府認可という手段によりまして十分内容を検討し、また適正でないようなものにつきましては改めて参る具体的な手段があるわけでございますので、単に行政上の指導、干渉というような程度のものではないのでございます。  それからなおこの処理組合は全部一組合員一票の議決権でございまして、何千かまと持っております大製糸につきましても議決権は一票、百台の小製糸につきましても議決権は一票でありまして、現在機械製糸が百七十七業者ございますが、これがおのおの一票の議決権を行使いたしまして処理規程をきめるようなことに相なるのでございます。従いまして、大製糸といえども議決権の面では何ら差がないような建前になっておりますので、それらの面からいきましても、中小製糸が大多数を占めております関係上、中小製糸の意思は実施過程において十分反映して参る手段が提供してあると考えております。
  151. 小枝一雄

    小枝委員長 明日は午前十時から質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十一分散会