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1957-05-09 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月九日(木曜日)     午後一時二十九分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 稲富 稜人君    理事 芳賀  貢君       木村 文男君    草野一郎平君       鈴木 善幸君    永山 忠則君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    村松 久義君       赤路 友藏君    足鹿  覺君       石田 宥全君    栗原 俊夫君       田中 利勝君    中村 英男君  出席政府委員         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君  委員外出席者         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      保坂 信男君         農林事務官         (蚕糸局繭糸課         長)      古西 一郎君         農 林 技 官         (蚕糸局蚕業課         長)      小林 明隆君         参  考  人         (全国養蚕農業         協同組合連合会         会長)     北原 金平君         参  考  人         (全国製糸協会         会長)     高田 利七君         参  考  人         (全国国用製糸         協会会長) 茂手木良兵衛君         参  考  人         (熊ヶ谷蚕糸株         式会社社長)  栗原 公司君         参  考  人         (埼玉繭検定         所所長)    石井 栄蔵君         参  考  人         (全国蚕糸労働         組合連合会書記         長)      丸岡 芳治君         参  考  人         (加茂蚕糸販売         農業協同組合連         合会会長)   木下  信君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 五月七日  委員田中利勝辞任につき、その補欠として中  村時雄君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員阿部五郎君、伊瀬幸太郎君及び中村時雄君  辞任につき、その補欠として田中利勝君、石山  權作君及び栗原俊夫君が議長指名委員に選  任された。 本日の会議に付した案件  生糸製造設備臨時措置法案内閣提出第七八  号)について、参考人より意見聴取     —————————————
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。  本日は生糸製造設備臨時法案について参考人各位より意見を聴取いたしたいと存じます。本日御出席参考人は、北原金平全国養蚕農業協同組合連合会会長高田利七日本製糸協会長茂手木良兵衛全国国用製糸協会会長栗原公司熊谷蚕糸株式会社社長石井栄蔵埼玉繭検定所所長丸岡芳治全国蚕糸労働組合連合会書記長木下信加茂蚕糸販売農業協同組合連合会会長、以上七名であります。  参考人各位には御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席下さいましたことを厚くお礼申し上げます。  御承知通り本案生糸製造業現状にかんがみ、過剰な生糸製造設備処理を円滑に行うための処置を定めて、その合理化を促進しようとするものでありますが、本案の種々の問題点につきまして、この際参考人各位それぞれの立場から、専門的な御意見を承わりたいと存じます。なお勝手ながら時間の都合によりまして、参考人の御発言は一人およそ十五分程度にお述べ願うことにいたしたいと存じます。それではまず高田参考人にお願いいたします。
  3. 高田利七

    高田参考人 このたび製糸設備制限臨時措置法について、われわれに関係する法案として御審議いただく段階に至りましたことを厚くお礼申し上げます、  私どものものの考え方といたしまして、蚕糸業が特に最近ここ数年来斜陽産業として斜陽性を世間からも指摘されておるわけであります。私どもとしましても、ある意味においてはこれは是認せざるを得ない現状になっていると思います。これを打破していくためには非常な困難もございます。私どもは、蚕糸業というものが輸出産業としての重大な使命と、それからわれわれが携わっております業界の企業の経営安定性、それを切望する立場から申し上げましても、何としてもこの問題は解決していかなくちゃならぬと存じます。ところがこの問題を解決します考え方といたしましては、生糸にたりましてから後の商取引部門における機構の改革とか、改正とかいうものが相当重要な考え方立場をとるものだと存じますが、その生産段階におままして、私ども産繭処理のこの形態機構というものを是正するということの重要性を痛感しております。それと並行いたしまして、同時に製糸設備原料とのアンバランス関係におきまして、製糸業界内部におきましてこれを調整することの必要性ということを痛感いたしまして、この二点につきまして数年来業界内部論義を戦わし、研究もいたして参ったわけでありますが、その意味におきまして関係方々から、かつては蚕糸公社案だとか、あるいはいろいろな名案を示唆していただき、われわれ時にその考え方についても実現希望したこともございます。最近の段階に至りまして、特に昨年の八月の末以来、具体的に産繭処理形態是正という点と製糸設備処理ということによりまして、製糸業内部に含まれているところのアイドル・コスト是正、その方途、この二つの点にしぼりまして研究をして参ったわけでございます。その前者の分につきましてまた具体的な案も立て、それぞれに御批判もいただきつつ希望もして参ったわけでございますが、このたびこの蚕糸業法の一部改正という形におきまして、衆知を集めて審議会においてこの産繭処理の問題とか、蚕糸業の根本問題というものをよく研究してやろうという御趣旨のもとに、蚕糸業法の一部改正という件について皆様方で御審議をいただいているように承知しておりますので、その意味におきましてはまことにありがたいと存じますが、その点につきましてはすみやかにその線が実現して、根本策が樹立されますようにこの機会にお願いするわけでございます。  そこで私ども考え方の二本の柱のその一本としての製糸設備処理という問題につきましては、私ども業界内部といたしましては、考え方といたしましては、業者の中でそれぞれの立場があるにもせよ、全部この考え方の推進ということに意見が一致して、これの実現方というものを希望しておる現状でございます。ただこれは業界自身がやることであるとは申しながら、共同行為によってなすところにその施策効果も出て参りますので、その共同行為が今の独禁法の関係その他で許されません点を、この法案によってその道を開いていただくということにおすがりしなければならないという結論からいいまして、この法案実現につきましては、私ども業界内部は一致して切望している次第でございます。この法案実現ができましたあかつきにおきまして、これの実施の仕方というものにつきましては、今日の段階におきましては、業界内部ではいろいろフリー・トーキングの形におきまして話し合いはいたしておりますが、まだ決定的な結論という点をこの場合御披露する段階にまでは至っておりません。現段階におきましては、業界内部といたしまして、考え方でほぼ決定的に一致しておりまするところは、われわれの設備免許かま数に対して総免許かま数の三割というものを目途とし、またかま数においては一万五千かま整理するのが妥当である、こういう考え方と、それを実施する仕方におきましては、比較的設備の大きい業者もあれば中小と称される業者立場もあり、それがお互いに立場をよく理解し合って、その立場を考慮した案を作り出そうじゃないかというその気持につきましては、現段階では十分一致しておる次第でございます。それのこまかい実施方策というものにつきましては、またいろいろ考え方もございますが、相助け合ってこの施策実現を円滑にやっていこうじゃないかという気持におきましては、比較的規模の大きい業者も、また規模の小さい業者もよく理解し合って推進するということに一致しておりますので、幸いにしてこの法案実現していただきますれば、順調にこの法案趣旨に沿って業界整理というものができていきまして、従って現在業界が当面いたしております原料獲得についての過当競争による生産コスト高だとか、あるいは不必要な原料入費増高というような問題を解決しつつ、輸出産業としての使命をよりよく達成できるようになっていけるものだと信じております。従いまして、業界内部の一致した希望といたしまして、この法案実現について御配慮をお願いいたしたくお願いする次第であります。
  4. 小枝一雄

    小枝委員長 次に茂手木参考人にお願いいたします。
  5. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 国用製糸協会といたしましては、過日、本委員会の諸先生方に、国用製糸協会の非常に膨大化いたしておりますいわゆる無認可無免許がま等整理に対しまして、各個にお伺いいたしましてお願いがいたしてあるのであります。この点と国用生糸定期市場上場二つの面を、国用製糸協会としては本委員会の諸先生にお願いしたいと存じます。これに関連いたしまして、ただいま日本製糸協会の方からお願いいたしました本日の法案に対しましての私たち考え方といたしましては、もちろん製糸業界整理をいたさなければいかぬという場合に、われわれのいわゆるやみがまをそのままに放置するという考えはないのでありまして、われわれのやみがまもただいま高田さんのおっしゃった通り非常に多くなっておりますので、繭の値段と製造されました生糸値段と同じような、ほとんどその間に工賃を見ないというような悲惨な状態に陥っておりまして、全国業者約一千ありますが、この業者がまことに悲境に沈湎しておりまして、このままこれを放置することがあるとすれば、われわれついに壊滅の段階に陥らなければならぬと思うのでありまして、ひいては蚕糸業全体に大いなる暗影を投ずるという考え方で、ただいまの無認可無免許がま整理、それから国用生糸上場の問題とかね合せまして、ただいまの製糸協会からお願いいたしております今回の整理に対しましては、業界こぞって満幅の同意をいたしておるのであります。この製糸協会の方の今度の法案で出ております問題が完成することによって、私の方の、いわゆる国用製糸協会やみがま整理が非常にしやすくなる、従ってただいままでの状況のもとにおかれまして製糸設備原料の不均衡をこれによって匡救することができると考えております。  さらにまた国用生糸上場の問題でありますが、この問題は、私の方の分野は五かまぐらいから、たくさんの製糸経営しておりますのは五十かまでありまして、平均数はおそらく十七かまぐらいの業者であります。いわゆる弱小業者でありますが、この弱小業者が使用しております工女などは四十、五十の老人でありまして、ほかに行くところのない人を使っております。従ってこれらの人たち失業に追い込むことがもしありとすれば、社会不安もここに生じてくるだろうと考えておりますので、これを整理いたしましても差しつかえないようにいたさんければならぬと思いますが、ただいま表に出ているのは約一万五千かまであります。一万五千かまのうち稼働しているのは、その七割ぐらいでありますので、ただいま国用製糸協会として案を立てているのは七割だけ残存いたしまして三割だげ整理いたしたいと考えておるのであります。この整理によって失業者が出て参らぬということが実態であります。この問題は各県についてそれぞれ違った角度ではありますが季節的に営業をいたしている面があるし、あるいは製糸設備を今度整理されるのではないかというような考え方から、にわかに工場設備を増加した向きが非常に多いのでありまして、私の方の整理によって失業者はほとんど出て参らないというのが実際であります。従いまして、私の方の整理をいたすにも、ただいま上程されておりますところの法案が通過されることは非常に好ましいことでありますので、各先生方においても、ぜひこの点を御了察願いまして、この法案の通過されるよう希望いたしておるものであります。一言私の方の業界から考え考え方を申し上げます。
  6. 小枝一雄

    小枝委員長 次に栗原参考人にお願いいたします。
  7. 栗原公司

    栗原参考人 私は輸出玉糸業者でありますし、また輸出玉糸団体の役員といたしまして玉糸の面から考えたこの措置法に対する考え方を申し上げたいと思います。私たち団体におきましては、すでに昭和二十八年のときに玉糸の戦後の輸出増加ぶり、これと比較いたしまして、原料面から見たところの設備急増を何とか合法的に押えなければ、品位低下を来たしまして海外の信頼を傷つけるということを憂慮いたして、その当時すでに設備の合法的な制限方法といたしまして、現在この措置法と関連して考えられておりますところの調整組合設立等を各関係の上司に対して陳情等を重ねてきたのであります。ようやく機が熟しまして今日に至りまして、こういった製糸設備制限を、繭の需給のアンバランス調整をいたしまして、輸出増進をはかろうという目的から行われることは、むしろ時期がおそきに失しておると考えておる次第でありまして、特に昭和三十一年度におきましては、玉糸海外輸出の数字を見ますと、昭和二十六年の一万六千俵をはるかに上回りまして一万七千五百俵に近い、金額にいたしましても三十二億に近い外貨を獲得しておるというような状況にもかかわらず、その主原料であります玉繭の生産は年々低下の傾向をたどりまして、海外からの要望にこたえることは、設備急増と反比例しまして品位低下を来たしておる次第であります。従いまして玉糸業界といたしましても、この設備臨時措置法という法案によるのみならず、原料面におきましても、あるいは蚕糸業界全般から見ました輸出助長策——内地で売った方が輸出をするよりも業者利益になるという、輸出増進に反比例しておるような施策は、一日も早く訂正していただきたい。調整組合設立もようやく軌道に乗りました今日、蚕糸業法の一部改正審議会設立法案とこの措置法の通過ということは、業界にとりまして急を要する問題だろうと考えておるのであります。全般的な問題に関しましては、すでに高田さん並びに茂手木さん等からいろいろ御克明がありました通り、私ども玉糸業者といたしましても、根本的の設備制限を合法的に行う法案を作ってもらって、すみやかに製糸経営の安定をはかっていただきまして、ひいてはもう一歩進みました抜本的の施策審議会設立によって十分審議をし、実施していただきまして、輸出助長、いわゆる製糸業者玉糸であろうと機械製糸であろうと製糸業者自体海外輸出する糸をひかなければ、内地で売ったのでは損になる、海外へ売った方が利益になるというような、根本的な施策を講じていただきたいというふうに考えております。時間もあまりないようですので、以上をもって意見を終ります。
  8. 小枝一雄

    小枝委員長 次に石井参考人にお願いします。
  9. 石井栄蔵

    石井参考人 私は県の一技術者でありまして、業界の問題については一向にうといのであります。私の立場売買業者中間に立ちまして、繭質の調査をいたしまして、売買業者取引が公正に行われる資料を提供すると同時に、養蚕農家に対しましていかにすれば繭質を改善し得るか、また蚕品種改良をやり得るかというような資料を提供するのが私ども立場であります。従いまして、前段に申し上げました取引の公正ということにつきましては、多少の関心を持つのでありますが、現在の蚕繭処理状況下にありましては、往々にして、先ほどどなたか参考人も言われましたが、過当な競争も行われるあるいはまれには繭代金の遅配も行われておるというようなことも聞いておるのでありますが、今回のこの施策によりまして業界の整備ができまして、養蚕農民が安心して養蚕をやり得る、また業者方々におきましても安んじて事業に専念し得るような立場になるということを考えまして、ぜひこの法案が成立するように格段の御配慮をお願いしたいのであります。
  10. 小枝一雄

    小枝委員長 次に丸岡参考人にお願いします。
  11. 丸岡芳治

    丸岡参考人 全蚕労連の一員としまして御報告さしていただきます。  全蚕労連といたしましては昨年の三一月現在の繭取引あるいは生糸取引等矛盾の多い業界を根本的に改革するために、業界団体に対しまして蚕糸振興会議を提唱いたしましたが、遺憾ながら全団体の御賛成を得るところまで参りませず、とりあえず一年間製糸協会との間で蚕糸振興会議を持って抜本的な方策につきましていろいろ検討を重ねて参りました。先ほど高田参考人の方からも御報告がございましたように、われわれの方で検討いたしました方策としては四点でございますが、その中で大きな柱としましては二点でありまして、そのうち最も重要な点として繭流通合理化を掲げたわけでございます。その細部につきましては先ほど御報告がありましたので省略いたしますが、何と申しましても繭流通合理化が現在の段階ではかられなければ蚕糸業の抜本的な方策は得られない。そのためには繭調整公社設立を強く要望したわけでございますが、現在の段階におきましては本日プリントにもいただいておりますような内容で、本国会に蚕糸振興審議会が上程される運びになっておるわけでございます。この繭調整の問題が完全に解決されるならば、設備制限の問題は実施しなくても、結果的には遊休がま発生によるところの設備制限状態が起きるわけでございます。われわれの方といたしましても、現在、産繭量三千万貫というものは遺憾ながら増産が飛躍的に期待し得ないこと。さらにまた現在年々五、六ずつの工場閉鎖を見て、雇用が断ち切られる状態が各所に起っておるということを見まして、設備制限の問題につきましても、われわれの立場として、将来問題はいろいろあるにしても、この際原料設備のバランスをはかるということに賛成したわけでございますが、われわれの立場といたしましては、やはり繭流通合理化ができることと、さらにまた設備制限の問題につきましては、製糸業内の各団体設備制限が合理的な線でもって決定されること。そしてまた将来におきましてやみ座繰の発生その他の問題に適切な措置がなされなければ制限効果は期待し得ない。そういうふうな問題が今後発足するところの振興審議会の中で十分取り上げられ、施策に移されることを希望しておるわけでございます。実際面におきまして雇用問題が発生するという懸念が各界から起きておるようでございます。設備制限の三割という線はただいまお聞きしたわけでございますが、将来この問題が具体化されました場合に、われわれの方としまして女子労働者については、これは一様なる制限措置がとられた場合には自然退所という形で吸収できるわけでございますが、地域におきまして統合あるいは閉鎖というような事態が生じました場合には、各県内の業者におきましてこれを合理的に吸収する措置を講じていただきたいということを考えております。また男子職員につきましては、これまた合理的な配置転換その他によりまして、何とか雇用問題についての犠牲を最小限に食いとめる措置を講じていただきたい。将来にわたって製系協会その他と話を進めていきたいというふうに考えております。そのような点がございまして、将来に繭調整問題蚕繭処理の問題あるいは設備等についてもやみ座繰の発生防止、あるいは他の団体との基本的には同等の設備制限措置がとられるということを強く要望いたしまして、現在の段階における蚕糸振興対策の一環として、われわれとしては、不本意な点もあるのでありますが、必要やむを得ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  12. 小枝一雄

    小枝委員長 次に、北原参考人にお願いいたします。
  13. 北原金平

    北原参考人 私ども生産者側立場から考えますと、生産販売という線から考えまして、かま数整理には基本線は一つ持っておりまするが、さりながら蚕糸業現状から見まして、また私ども農民団結という角度から考えまして、結論的に申し上げまするならばいろいろの意見もございまするが、実行場面実行期、あるいはまた方法、適切なる率、何といたしましても繭値を押えるという姿の出ることは絶対に避けていかなければならないという観点に立っておりまするので、いろいろ研究する場面もまだたくさんあると思いまするが、ここまで問題が進んで参りますれば、今度生まれんとする審議会に熟議懇談して、よく業界意見をまとめ、政府当局との意見がまとまるということを前提として、私どもはこの場合この案の生まれていくことを期待するというように考えております。要約して申し上げたわけでございまするが、その点お含みの上お聞きとり願いたいと思います。
  14. 小枝一雄

    小枝委員長 次に、木下参考人にお願いいたします。
  15. 木下信

    木下参考人 私は愛知県の養蚕連会長組合製糸の代表をいたしておる者であります。私は常々、業者自立自営をすべきものだという考えのみで進んで参っております。しかし現段階蚕糸業はそれができない破目に陥っておる現状から申しますれば、残念ながら政府のこの改正案をどうしても受けなければならない段階になっておるのだと思います。従ってこの場合、この法案の成立を期していただきたい、こう存ずるのであります。しかし今後これが統制経済になったり、業者同士のつながりに水をさすような行き方になることはまずいと私は常にそう考えております。養蚕製糸、蚕種、これは同一業者なんです。この団体は常に血の通った握手をするのだ、そうして円満な発達を遂げるという行き方をしていただきたいと思います。なおかま数整理に当りましては、製糸生産費が高くなるようなかま数整理は私は反対であります。かま数整理をして合理化するんだから、合理化した結果が生産費が今までより安くなるということを主眼にした整理方法考えていただきたい、こう思うのであります。
  16. 小枝一雄

    小枝委員長 次に参考人各位に対する質疑を行います。足鹿覺君。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 七人の参考人の皆さんからいろいろと御意見を拝聴したわけであります。まことに失礼でありますが、二、三ぶしつけなお尋ねを申し上げるかもしれませんが、御答弁、御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。  最初に埼玉繭検定所長石井さんにちょっと伺いたいのですが、現在の繭検定機構については、私どもの見るところでは、相当これを是正していかなければならない部面があると見ておりますが、実務に従っておられる所長の御見解はいかがでありますか。お気つきの点があったらこの機会に御所見を承わりたい。
  18. 石井栄蔵

    石井参考人 お答えいたします。御質問の御趣旨が私の承わるところと合致するかどうかという点であります。この繭検定制度は御承知のように売買業者中間にありまして、その繭質を調べ、公正な取引の材料を提供すると同時に、蚕品種改良、あるいは飼育技術の改善というような方向へ持っていくのが一つの使命であります。往々にしてこの検定制度任意にしてはどうかというような声も承わることがあるのでありますが、こうしたことは社会的にあるいは経済的に力の強いものが、弱い立場と申しましてはいかがかと存じますが、繭質を的確に把握する機関を持たない繭の生産者に、往々にしてしわ寄せされる懸念があるということ、あるいはまた任意にしたならば今の取引状態からして、差しつかえないじゃないかというようなことも言われるかもしれませんが、ただいま申し上げましたように、売手と買手と両方が対等の資料をもって、対等の立場売買値段を折衝するという立場から考えますと、これは絶対に必要なことである、またそうしたことに相なりますと、力の強い方の示唆によりあるいはそのほかの考えによりまして、検定を忌避するというような場合もあるいは出ないこともないかと考えられるわけでありますが、そうなりますと、結果的には力の強い買手の方に有利に買いとられるというようなことができるかと存ずるのであります。従いましてこの繭の、また一面において品種の問題と飼育の問題でありますが、これは埼玉県の実情から考えましても、昭和二十年、終戦後の養蚕の成績と今日では、生糸量歩合い等におきましても大体四形前後の向上を見ておるのでありますが、こうした品種あるいは飼育という方面の改良に当りましても、それが等閑に付されて、ただ売ることにのみ専念して繭質の改善をはかる、あるいはそのほかの技術の向上ということがおくれてくるというようなことに相なりますので、検定制度のあり方というものについては、これは今日の実情でよろしいのじゃないか、かように考えております。なおまた検定の施行面にありまして、それでは現在が万全であるかということになりますると、現規定には特にこうしなくちゃならぬという点を考えておりませんけれども、社会の情勢に応じて改善されることはまた当然であろう、かように存じております。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 私のお尋ねしておる点が明瞭でなかったせいか、きわめて抽象的な御答弁になりましたので、それでは具体的に一つ伺いたいのですが、今の所長の御見解によれば、繭検定については現状でよろしいという御意見のようでありますが、全国養蚕農民は、すでに昭和二十八年第二回の全国農業協同組合の大会において次のごとき態度をとって、政府その他に向って強い要請をしておることは御存じだろうと思うのであります。それは「繭検定所を充実し、生糸量歩合の成否を容易に判断せしむるため、繭層量、屑物重等を記載するとともに選除繭の内容を明らかにし、その価値判断ができるものとすること。第二点は採点格付方法は全面改正し、容易に繭価格算定資料に用い得るよう等級差を定めるここ。」これは昭和二十八年に全国養蚕農民の要望に従って、日本の協同組合の、しかも権威ある全国大会において採択をし、これを当局に迫っておるのであります。この点について繭検定の実際をあずかっておられるあなたとしては必要を認められるかどうか、抽象的ではなしに、具体的に今私が述べた二点についてどういうふうにお考えになっておるかということをお尋ねしたい。
  20. 石井栄蔵

    石井参考人 検定証に対して繭層歩合の表示並びにその検定の際のくず物量の記載という御質問でございますが、この点につきましては、私技術者といたしまして、生糸量歩合と繭層歩合の並記ということは、そう強く取り扱わなくてもいい、生糸量歩合で十分に算定し得る、またくず物量歩合の表示でありまするが、これも生糸量歩合この関連性でありますが、その技術のり拙から生糸量歩合が多くなり、少くなるということになるわけでありますが、そうしたことにつきましては、検定を施行する面におきまして、予備煮繭と申しまして、検定にかかります前に一定量の繭を三階級に分けまして、二通りの煮繭をいたしまして、そのうっの一番条件のいいもので煮繭繰糸をいたしますので、それらの点から勘案いたしまして、繭層量歩合と生糸量歩合両者を並記する必要はないというように私は考えております。それから生糸の格づけの問題でありますが、それは今年からすでに改正されて施行されておる通りでございます。
  21. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、生糸量の歩合のみを現在は検査をしておるということでいいのだ、こういう御意見でありますが、委託した農民はあなた方検定が正確であり、妥当であるかいなかということの判断は何によって期せられるわけになりますか。問題はそこら辺に農民の現在の検定所に対する不信があると思うのです。これからまた運営上の問題についてはあとで申し上げますが、やはり糸歩だけを検定するという今のやり方に養蚕農民は満足しておらない。そこにやはりくず物の量を出し、繭層量を出すというふうにして、全体としての検定の結果をいろいろな角度から示していく、それを農民は自分の家の繭がこうだったというのでなるほどと納得がいくんじゃないですか。ただ糸歩だけを出していっていいというあなたの御意見の根拠は至って明白でないと私は思うのです。その点いかがですか。
  22. 石井栄蔵

    石井参考人 糸歩だけといっても、検定はほかの項目がたくさんあるわけでありますが、繭層量歩合の問題は主として糸歩に関連がありますので申し上げたのでありますが、これはお説の通り繭層量歩合イコール生糸量歩合プラスくず物量ということに一応はなるわけであります。私ども技術者といたしましての考えは、ただいま申し上げたようなわけでありますが、なおそうしたことにつきましての研究も農林省の方とも連絡していたしておるわけであります。またそれらの点につきまして、私は今日の段階において生糸量歩合を表示すれば足りるというふうに考えておりますが、この点につきまし、今日御意見のありましたことを蚕糸当局にも要望申し上げてみたい、かように考えます。
  23. 足鹿覺

    足鹿委員 私はあまりこまかいことと参考人に尋問的にお尋ねする意思はないですけれども、二、三ぶしつけですがお尋ねをいたしますから、簡潔に御答弁願いたいと思う。繭検定所の運営は、はたから見てもあまりすっきりとはいたしません。たとえば製糸業者から相当寄付金を受けておられる、また繭の検定の終った後において営業製糸に委託製糸をやっておる、また製糸から原料を分譲してもらっておる。あらゆる角度から見て現在の繭検定所が、業者でもない、農民の立場にも立たない厳正公平に繭の検定の仕事に従事しておるとわれわれは信じておるが、実際素朴な農民の気持からいきますと、今述べたような業者から寄付金を受けたり、あるいは原料繭の供給を受けたり、あるいは操業が終った後においてま営業製糸委託を受けて業務をやるということには、予算上のいろいろな点で同情すべき余地はあると思いますが、少くとも今言ったような検定証の記載事項等については農民の判断できないような検定組織になっており、また運営の面からいっても、今私か述べたような運営面になっておる。これで果して農民の信をつなぐことができるかどうか、私どもはその点に多大の疑問を持っておるのでありますが、第一線の検定所長として、以下の点について一つお答え願いたい。あなたの検定所では製糸業者から寄付を受けておりますか、受けておれば年間どの程度寄付を受けておりますか。また繭検定所の検定機関以外の設備の利用はどうしてやっておりますが、以上の二点です。
  24. 石井栄蔵

    石井参考人 お答えします。製糸業者から寄付を受けておるという点でありますが、私のところでは直接には製本業者から寄付を受けておりません。大日本蚕糸会の中に繭検定運営協議会というのがあるのですが、そちらの方から年間大体十万円程度の寄付を受けております。なお検定機関以外のことでありますが、私のところでは県に製糸業者繭調整委員会がございまして、その調整委員会に必要数量の繭を一括申し込みまして、その委員会の裁定に従って繭を取り入れております。なお県によりましては委託製糸をやっておるところもあるように聞いております。それぞれ県の実情によって違おうと思いますが、私のところではただいま申し上げましたように原料繭調整委員会というものがありまして、そこに一括希望数量を申し込んで、そこから配当を受けておるような状態になっております。
  25. 足鹿覺

    足鹿委員 ところによっては、検定機関以外の設備の利用については営業製糸の委託を受けてやっておるところもあるように聞いておりますが、そうするとあなたのところでは委託ではなくして、あなたのところが原料繭の供給を受けて、検定所自体として一つの操業をやっておる、こういうふうに解釈していいんですか。
  26. 石井栄蔵

    石井参考人 そうです。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 次に伺いたいのでありますが、私ども最近の現地はよく存じておりませんが、かつては現地もよく知っておりましたし、産地の中心におりましたから若干心得ておりますが、最近はどういうふうになっておるか、繭の運搬中の荷いたみの点ですね、それを検定の上にどう表わすようになっておりますか、あなたのところでは実際どういうふうにしておやりになっておりますか、それを伺いたい。
  28. 石井栄蔵

    石井参考人 私のところでは大部分の養蚕農協が、検定繭を、その日にその人が持って参ります。またごく遠隔の地では出張所を設けまして、そこで検定繭の受付、搬送をいたしております。また郡によりましては乗用車等を用いて検定繭の運搬をやっておるところもあります。ただいま御質問の、輸送中の問題についてどういうふうにしておるかということでありますが、輸送中の品質の低下ということは私ども判定する資料がございませんので、そのままの成績でやっております。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 そのままでやっているというお話でありますから、それをそのまま受け取っておきますが、場所によっては、所長ですからよく御存じでしょうが、いろいろなことをやる。繭の大小を調べるというような名目でもって繭をうんと回転をさせる、あるいは鉄板の上で大きな衝撃を与えて、荷いたみと同じような姿においてやるのだ、こういうやり方をやっているようなところもあるように聞くのです。最近のことかどうか知りませんが、そういう話も聞いているのです。あなたのところはそういうことをやっておられないということでありますから、それはけっこうだと思いますが、現在の私どもの耳にする繭検定のやり方については、今私が二、三指摘したような事項によって判断されても、養蚕業者利益になるか、あるいは結果的には業者の片棒をかついでいるのではないかというふうな疑念を持つに足るような事態が随所にある。私はこれを改めていかなければいけないという考え方に立っているものの一人でありますが、そういった点では現状でよろしいというお考えであります。  さらにもう一つ現状でいいかどうかという点についてお尋ねをいたしますが、現在の繭の検定のやり方はどこまでも産地主義に立っている。そこで甲の県の養蚕家が乾繭をするのにいわゆる乾繭設備を利用しようと思うけれども、その県に設備がない。そこで乙の県に行って乾繭に処理して、そこで検定を申し込んでも検定に応じないような産地主義がとられている。仕方がないから、またもとの自分の甲の県に戻ってそこの検定所に頼まなければ繭の検定ができない。これを裏からひっくり返してみると、とにかくその産地の製糸業者が監視している前でないと実際上においては検定が受けられない、他府県では受けられないというような見方にも、思えば思えないこともないのです。こういうような点は産地主義を改めて、どこの養蚕業者がどこの繭の検定所に頼んでも、同じ一つの検定方針で行うわけでありますから、差しつかえないと私どもは思う。何も手数をかけてまたもとの産地に持っていくというようなことはないと思うのです。そういうような点においても、現在の繭の検定、乾繭の検定が産地主義によっていることは明らかに不合理だと思うのです。この点についても所長の御意見を伺っておきたいのでありますが、これはやはり所長の御意見としては、前段述べられたように妥当だとお考えになっておりますか、その点いかがですか。
  30. 石井栄蔵

    石井参考人 生産地の繭の検定所で検定をするということになっているのはお説の通りであります。そうした場合が、隣接府県とのいわゆる県境の地方に一応起り得ることは考えられます。また県境の地帯で一つの買手が両方にまたがっている地盤を持っている場合も考えられるわけであります。もう一つはただいま申されました乾繭の場合に起り得るということであります。県境の場合に、甲の県で生産して、乙の県の人が買うのだ、しかも乙の県の方が検定所が近いというような場合には、これは乙の検定所へ持っていった方が便利であるというようなことも考えられます。また同一買方が県境の場合において両方の県に検定を請求しなければならぬというような不便な場合も考えられます。また乾繭の場合にありましては、生産地へ持ってきて検定を受けるのが一応不便であることはおっしゃる通りであります。がしかし、繭が他県へ行って乾燥されました場合には、検定所といたしましてはその実態を把握することが非常に困難であります。また総括的に見まして、どこの検定所へ持っていっても検定を行い得るというようなことに相なりますと、検定所の計画性というものが非常に立てにくくなる。従って予算編成等にありましても非常にやりにくくなるということで、一面お説の通り非常に不合理なような点もありますけれども、検定所の計画性というような点から考えまして、これもやむを得ない措置ではないか、かように私は考えております。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 検定問題で時間をみんな使っても、他の参考人もおられますし、検定問題はどうも私と意見が異なっているようでありますので、これ以上議論をすることを避けて、検定問題はこの程度で打ち切ります。  北原さんに一つ伺いたい。全蚕糸労連にも伺いたいのですが、今度の蚕糸業法の一部改正については、私どもも今後の日本の蚕糸業のあり方について根的本によく検討し、必要な対策をそれぞれ講ずることの緊急迫られていることはよくわかります。がしかし、その一環である製糸設備制限を行う案が、審議会の設置法案と一緒に出てくるというところに問題があるように思うのです。私ども参考人に期待しておりました点は、蚕繭処理の方式について相当御議論が拝聴できるものだと思っておった。ところが皆さん方の御意見を聞いておりますと、ほんとうに労働者である立場とはいえ、農民と同じような立場に立つ人、あるいは養蚕家のただ一つの全国組織である全養連、特にあなた方二人からは、少くとも生産養蚕農民人たち、あるいは働く農民の立場に立ってこの政府案に対する鋭い批判もあろうし、またいろいろ突っ込んだ御意見があるものだと思っておった。ところが与えられた十五分の時間もほとんど使わない、二分か三分か五分程度でほとんどこの案には賛成であるというような御念見で、私どもは全く意外に思いました。これはわれわれから見れば、あなた方はあらかじめすべて何か一本の支柱によってささえられ、それによってある意見の統一を期せられ、そして出席をしておられるのではないかとすら疑わざるを得なかった。しかし別にそういう事態もないと思いますが……。  そこで私は北原さんに伺いたいのでありますが、今度の製糸設備制限をめぐっての問題は、大資本と小資本との問題というふうに業界やあなた方はややもすればお考えになっておるようでありますが、そうではなくして、私どもの見るところでは、製糸業者対農民、すなわち売手と買手との関係に立ってこの法案を見ていかなければならぬのではないかと思うのです。すなわち農民の場合は売手なんです。あくまでも売手なんです。でありますから業者が多かろうが少かろうが、そういうことにとって、農民は別にとやかく考えるわけはない。農民の立場に立てば、一人でも買手の多い方がいいのです。何もこれを整理することに対して、農民側が積極的に賛成する理由はない。製糸関係の他の参考人の人々が賛成をされるということは、ある程度その仕事の立場上、いろいろそろばんの上に立ち、将来を見越してお考えになることでありますからやむを得ないとしても、全蚕糸労連や全養連が、この案に無条件に賛成しておられるように見えるのは、私どもは納得がいきません。養蚕農民はほんとうにこれを歓迎しておるのですか。歓迎をしておるというなら、どういう理由と根拠に立って歓迎をしておるのでありますか。それを少しあなたの御所信を伺いたい。
  32. 北原金平

    北原参考人 何ゆえに養蚕者代表がかま数整理、いわゆる消費を少くする面に賛成かという理由をという御質問のように聞いております。もちろんおっしゃる通りの感度でこの問題当らなければならない。従いましてこの問題にはそれで当っておるつもりでございます。  そこで私どもは、蚕糸業現状から見て、何とかしなければならぬ、いわゆる中共糸に対するにしても、現状の態勢でいいのかという点を考えますと、全面的にこの場合蚕糸業の建て直しをしなければならない。そこから出てきた線によって、すべてのものをそれに沿った態勢に整えていくという考え方のもとに、諸先生方にもお願いし、政府にもこれを要求して参ったのでございます。従いましてかま数整理とか、他の問題も新体制による再検討によって整えていくという感度をもって、一応小さな摩擦は避けて大局論に全力を上げて参ってきた。一面製糸業界の方では、それもさることながら、さしあたりかま数整理というようなことも御主張なさっておったわけでございます。私どもは一本立で歩き、製糸家はいわば二本立で歩いたという姿であったのですが、最終の政府との懇談の結果、その必要性はよく認めるから一部改正をして権威ある審議会を作って、そこで再検討するということに集約をされましたので、私どもからいうと、志が違ってきた結果に追い込まれて現在おるわけでございます。従いまして、何ゆえにかま数整理に賛成するかと、端的におっしゃるのはよくわかりますが、生産者立場から消費の場面の縮小されることは絶対に反対していかなければならぬ、また反対もしてきておる。しかしながら、私ども立場から見て、農民運動の立場から見て、団結を強固にする、それからお互いが共同行為を行なって対者と対等の立場に立とうという感度から見ますと、あの繭の混乱からくる需要者のあり方から見て、端的にいうならば、抜き買いという線が出てくる。そうしますと、私どもの精神運動の足らない点は認めざるを得ないが、やはりそれに応じていって私どもの団結が弱くなっていくという線もある。だからあの線を適正にしなければならぬという考え方はそこから出てきておるということを御了承願いたいと思います。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 今の北原さんのお立場は、養蚕農民立場に立っておるのかちょっと疑わしい。蚕糸業全体の立場からいった場合は、養蚕農民であろうと製糸業者であろうとあるいは輸出業者であろうと、問題は日本の繭が品質が向上して、その生産コストが下って、そして中共その他の競争相手と太刀打ちができるような日本の蚕糸業の再建というところにあるわけで、私ども決してその基本の大目的を忘れたわけではないのです。そこへ達していく過程において、従来の日本の蚕糸政策というものは常に農民の方に軽く、製糸あるいは輸出対策に常に重きを加えて今日まできておった傾向は否定できないと思うのです。たとえば今無免許がまを三割整理した結果、買手市場がそれだけ少くなる。その結果農民は売手の立場に立って不利な立場になるということは一応原則的に言い得ると思います。それが一点。いま一点は、ではこれを整理した後における姿はどうかというと、無免許がま整理の対象になるのは小さな業者がほとんどその対象になる。そして残るのは大製糸業者本位になっていくということは結果として明らかです。そうなった場合に、現在の大製糸業者生産コスト整理されようとしておる人々の製糸生産コストを調べてみた場合には、明らかに大製糸の方が高いのです。日本の輸出生糸の中で玉糸や座繰りが大きな地位を占めておるという点は、一方においてこういう面から私はうなずけるのではないかと思うのです。日本の蚕糸業を今後どうあらしめるかということは、どういうふうにして生産コストを下げるか、下げるには繭の生産費を下げるとともに加工賃をどういうふうに圧縮していくかということが今後の蚕糸業発展の基本施策です。ところが政府考えておるただいまの制限を行なっていった場合にどういう結果が起きるかといえば、結局においては生産コストの高いものが残り、生産コストの低いものが整理されることになる。そうすれば日本全体の蚕糸業自体は高い生糸生産することに向って進むということになり、その結果が輸出に好影響を及ぼすなどということは考えられません。だからこういう重大な法案を出す場合は、社会主義的な統制経済を主張する社会党が出す場合には、ある程度これに関連した一連の施策が出て参りますからこれは納得がいきますが、自由主義を原則とする現在の政府なり与党の人々がこういう整理案のみをぽつんと切って出して、今後の対策は審議会でゆっくりやりましょうということでは、農民にのみ重きを加えず、また整理される業者や労働者に負担がかかっていって、結局大産業資本が製糸業界に君臨していくという結果に拍車を加えていく以外の何ものもないじゃないですか。そういうことに養蚕農民がなぜ賛成しなければならぬのですか、私はそれを聞きたいのです。北原さんのお話にあった日本の蚕糸業全体をどういうふうによくしていくかという観点に立ってわれわれはいつも議論しておるつもりですから、その点については基本的には相違はありません。少くとも今の蚕糸業現状という感度に立てば、これを承認せざるを得ないという御心境については、どうも私が今述べたような理由によって私どもは納得することができないわけです。その点をもう一度伺いたい。
  34. 北原金平

    北原参考人 何ゆえ賛成するのだという御質問だと思いますが、農民的立場に立って業者に対抗していくという感度から考えれば団結よりほかにない。団結を強固にしていくことを考えてその方向に常に努力していかなければならないという基本線を持っております立場から繭の流通場面を見るときに、私どもの精神運動の足らないことは認めざるを得ないが、その線に食い込まれて抜き買いの姿が現われていることは現実であります。ここを何とか調整いたしたい。それにはやはりあの場面を適正化していくことが最も妥当ではないかという考え方をしておる。従いまして先ほども簡単過ぎたというおしかりを受けたわけでありますが。審議会が何としても公正なる動きをすることを前提として、審議会にたよって、この場合整理することが妥当であるという考え方をしておる。ただ無条件に賛成でき得ない立場にあることは、足鹿議員さんの言われる通りであります。そのジレンマに陥っている現状が今の姿でございます。ただ団体を強固にしたいという一線を持っておる。審議会でなお研究をして参っていきたい。意見も述べていきたい。もちろんうぬぼれかもしれませんが、養蚕者のだれかが代表者として選定を願えるということを前提ともいたしております。これは未知数のことを予測しておるかもしれませんけれども、ほんとうに業者間あるいは政府方々の御意見をして、適正なる方法によって抜き買いとかいうような流通場面を適正にしたいという線を持っているので、端的にいえば、現段階では賛成という立場になっておる。蚕糸業現状を見ていると、かたかなで書いた蚕糸業法を基調としておってはだめだ。なおまたそれが適確に守られておるか。またそれを政府自体が監督指導しておるという線から見ても非常な疑義があるこのときでありますので、抜本的に蚕糸業法を立て直さなければいけないのではないかという線で一路邁進した。同じ私どもの要求の中に、要求という言葉は強過ぎるかもしれませんが、強くお願いしておった線から見ますれば、審議会という条項もうたってありますが、そのときの審議会と今回の審議会とは、私どもは非常に性格の違ったものに見ておる。根本法律ができてそれを円滑に運行できる方向に持っていくのには審議会が必要であるという意味において、私どもの要求の中に審議会という言葉が出ておりますが、懇談の結果、抜本策は審議会で立てるということを政府が態度をきめて、それ以上は押しも寄せもしないという線が出てきてここに至っておる。もちろん根本法ができれば、その線に沿ってあらゆる場面をその態勢に作るということであって、かま数整理だけ取り上げて論議されるという段階に対しては、方法としても遺憾ながら賛成ができないという態度を堅持して参った。従って政府審議会一本に集約されたというこの線から追い込まれてきたから、今申し上げるような言明を申し上げておる。やらないということもあまり極端過ぎはしないかということで申し上げておる。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 私ばかりなにしてもあれですから、もう一点お尋ねを申し上げて他の同僚議員に譲りたいと思いますが、現在繭糸価格安定審議会というものがあるわけですね、その上に、今度蚕糸業法改正によって、またもう一つ審議会ができようとしておる。今までの繭糸価格安定審議会の運営の状況等を見ておりますと、まず輸出価格から流通経費と製糸生産経費を控除して、残ったものが繭価格という形をいつもとっておられる。これは原則論ですからこれ以上申し上げませんが、念のため申し上げておきますと、やはり繭の生産費プラス加工賃プラス流通経費イコール輸出生糸価格、こういう方式をどうして打ち出していくかというお互いの善意の結集が、今後なされない限り、業界やあるいは一部輸出業者やその他生糸製造に関係のある面のみを合理化しようというようなそういう方法によって、日本の蚕糸業が発展する見込みは私はないと思います。農民が協力せずして、養蚕農民を結果においてはいためるような政策をとって、果して長続きする恒久的な蚕糸業の振興策と言えるでしょうか。これを今後どう是正していくかということには、養蚕家もまた生糸の製造に当っている労働者も、お互いが同じ一つの考えに基いて対策を立て、今後やっていかない限りには、私は究極においては日本の蚕糸業はこの窮境を打開できないと思う。そうした一つの善意の上に築かれたところに、どうしてもうまくいかぬのだ、日本の経済的、社会的諸条件がどうしても対外生糸との競争に劣るんだ、こういうことになったときに初めて国家の援助とか、あるいは国家がこれに対していろいろと分けの立場から、あるいは日本の輸出産業の援助の立場から、大きな国策の立場から施策をやっていくということにおいて、不利な日本の蚕糸業も、国の援助と相待って初めてそこに明るい道が開けていくものではないかと思う。私どももそう性急な論者じゃありません。一朝一夕にして日本の蚕糸業界が立ち直るなどというような考えは全然持っておりません。長い努力と深い忍耐によって築き上げられて最終的に目的を達していくごとくらいは知っております。でありますから、いわゆる当面繭の買手市場を競争を少くしていこう。そうすることが今後の蚕糸業の発展だ、運営については審議会にまかせるからよろしい、こういうその場面のみを見た対策であってはならぬと私は思う。少くとも製糸業界がそういう考え方に立つのは、一つの業界の感覚から見てやむを得ないと思います。しかし養蚕業者を代表されるあなた方の立場としては、絶対にそういう態度は許されないと思います。やはりあくまでも是は是として所信を述べられ、その過程においてやむを得ない一つの妥結に到達するということは、私は否定するものじゃありません。しかしあまりにも安易な妥結にあなた方は陥っておるのじゃないですか。半ば業界立場に立ったような妥結の仕方をしておられるんじゃないかと疑わざるを得ないのであります。そういう点について、最後にお尋ねをして私の質疑を終りたいと思いますが、本年の最低繭価と水引きの問題につきましても、いまだにこれが妥結をしておらぬ。まあ少々延びてもいいということに一応なっております。しかし五月の半ばを過ぎて、もうそろそろ——新繭が出始める段階にはまだ遠いようでありますけれども、すでに五月の半ばを過ぎておる今日になっても、いまだにこの問題が解決しないということは、一体どこにその原因があるかということを考えてみても、審議会の答申ができないからいまだにこれが膠着状態になっておるというふうに私どもは聞いております。そうした具体的な問題に対しても、もっと養蚕農民立場が強く主張され、そしてその立場に立ってこの問題が紛糾しておるならば、私どもはある程度了解もいたすのでありますが、その他の理由によって今日のような状態になっておるということになりますと、私どもは了承することができません。事ほどさように、従来の審議会も私どもの見たところによっては、これは全体としての総合的な仕事を果したということも一面言えますが、結局においては、最近業界の一部には、物価にスライドして繭価をきめるという意見等も出ておりますが、私どもはあくまでも生産費主義というものは貫かなければならぬものだと思っております。そういう点も審議会の構成運営、そういうような面から見て、常に審議会の結果はむしろ養蚕農民を圧迫するような結果にのみなっておる。従って今度の蚕糸業法改正によって振興審議会がかりにできたとしても、私どもはそれのみに多くを期待することはできません。この審議会の構成、運営等を考えて、よくよくこの問題に対しては慎重な態度をとらない限りは、目的達成は困難だと思う。かえって養蚕農民を圧迫し、それを苦しめるような結果になりかねまじき形勢を私どもは心配しておるのです。そういう点について、北原さんは全養連の立場から、業界の向うを張った意味でもないでしょうが、養蚕農民立場から参加することを自負しておるということをおっしゃいましたが、今までの審議会の運営から見て、今後蚕糸業振興審議会ができた場合において、どういうふうにしたならばほんとうの目的を達成するにふさわしいような審議会になるか、その審議会の構成と運営について、最後に、どういうふうにあなたはお考えになっておりますか、このかま数整理については、政府といろいろ話し合った結果こういう妥結になることはやむを得なかったというお話でありますが、しからば今度の審議会に対するところのあなたの構想と抱負そういうものは一体どこにありますか。私は審議会ができたからといって直ちによくなるとは思いません。思いませんが、やはり何らかの機関がなくては物事は推進できませんから、私どもはこの審議会に対しては、その構成と運営を誤まらない限り一歩前進のために役立つではないか、その辺に期待しておるわけでありまして、そういう点では、従来の繭糸価格安定審議会のような構成や運営になるのならば、私どもはこれまた賛意を表しがたい。しかしできない当初からやたらに文句をつけるということはよろしくないし、どうしても一歩前進させたいから、その構成と運営の点について今後どうあらしめたいかということが、私は養蚕農民立場に立って、審議の重点になってくると思うのです。  最後に、全蚕糸労連の丸岡さんに、蚕糸業に働いておる労働者の代表としてその審議会の構成、運営等について御所見がありましたら承わりまして、私の質疑を終ります。
  36. 北原金平

    北原参考人 農民代表といたしましてのあり方ということについて努力が足らないじゃないかという御意見と拝承いたします。過去の審議会の運行という場面を例にとってのお話でありまして、これも結果から見ますとおっしゃる通りになっておるわけでございます。養蚕者代表が審議会に提出されるいわゆる参考案に対して、決して易々諾々として承服しておったわけではない、昨年のごときは非常に乱暴な歩き方でありましたが、今前段にお話がありましたように、あくまで農産物は生産費を基調として、その採算を割らない公正な価格によってその価格をきめたい、またきめるべきだというこの方針を堅持しまして、常に努力を続けておるわけでございます。それで昨年あたりは非常に乱暴なと言われるような姿をとって主張いたしたのでございますが、遺憾ながら今お話のように、構成に注意せよとなると、どういう構成ならばいいのかというところへ話が参りますが、大勢のおもむくところという結果になっておる。ことに今年の最低価格がまだきまらなんでおる。これは私どもが主張をしております、検定からいわゆる減粍量を引いたものを基調としての商談に入る、あるいはそ次の段階に入るという形式は、私どもが長年叫んできて、取り得る姿でない、あくまで生産費の中へ入れてそして同じ答えが出るのだからそうすべきだという、主張を本年の審議会にもいたしたのであります。けれども、そこで最後の話になりますが、大勢とし、また最高最低というものの——ここが人がよ過ぎるかもしれませんが、響きというものは、外国貿易に非常な関係を持つという一環を考えますと、そこだけはあの機会にきめることがよいじゃないかという線が出まして、一応吉田蚕糸会長さんが、水引問題に対しては注意をして何とか解決をするという条件のもとに、一応最高最低をきめたような実情でございます。従いまして、最低をきめるこの方式については長年叫んでおって現に製糸協会から了解を得られないでおる。この姿を政府が取り入れることは一体どういうものか、政治的に考えても議論があるということを考えて主張はしておりますが、社会の実情がそこにあるからという政府の一応の考え方のもとにあの形式を出された、絶対承服のでき得ない姿に立っておる。従いまして、水引問題をこの機会に解決してしまいたいということで、不本意ながらも一緒にきめるべきものを一歩譲ったのが実態でございます。  しからばこれを解決し得るか。私ども考えさせれば、一定の繭価の標準を出す、そして水引をしてまた生産費を引くという姿は私どもが承服できないということは長年叫んできておるわけでございますが、相手方のあることでございまして、また私どもが、実取引の姿において何とか解決をするからおだやかにという一応内線を持っておるというところから、一応検定の取引の姿もおだやかにいっておりますが、これがどうしても中央で解決がつかぬとするならば、また一段階転換せざるを得ない。努力してこの姿は取り除かなければならぬという考え方を持っております。それから、審議会の姿に対して、今まで見ておるのに圧縮されておるじゃないか、おっしゃる通り私も思います。いかに努力をいたしましても、点数が二十点のうち五点であります。それから消費需要者の関係に置かれておりますので、なかなか養蚕者の意見が適当であるという主張をして通らないという現状である。そういうことを体験しながら審議会にたよるとは何だ、こうおっしゃる。その通りだと思いますが、それは先ほども申し上げました通り審議会養蚕者代表が当然入れらるべきものと考えておる。従いまして、そこを強く主張をして話し合いで全力を尽してお互いに自分たち意見を通すことに努力をするという方向をとっておりまする関係上、一昨年は審議会に対しても、いわば暴力といいますか乱暴な処置をとったけれども、時と場合によればそれもとらざるを得ないと思いますが、とにかく話し合いで問題を処理していきたいという考えを持っておりますると、その線に沿って歩いておりますると、この形式によって一応目的を達したい、それではその不安がないのかとまた御質問をされますと、どうも不安はあると申さざるを得ないと思います。しかしまあ話し合いでいくという線でいく以上心にあってもこういう行動をとらざるを得ないのじゃないかと考えております。よろしく御了承願いたいと思います。
  37. 丸岡芳治

    丸岡参考人 全国蚕糸労連といたしましては、現在の安定審議会に歴年改選期の前にわれわれ労働者代表を加えるように政府並びに各団体に要請をして参りましたが、遺憾ながらその実現を見ずに今日に来ております。今度国会で上程されております蚕糸振興審議会につきましても同様発足の場合は労働者代表を入れるように蚕糸局その他に要請をしております。われわれといたしまして、糸価安定法が公布されてから糸価の安定という点についてはいろいろな効果があったということは認めてはおりますけれども、さらにこれを発展さすべきであり、またわれわれ全国蚕糸労連として考えておりますのは蚕糸公社なんでございますが、一歩これに近ずく努力をこの審議会なり蚕糸振興会議の中に持ち込んで計画化していくことに努力していきたいと考えております。  なおこの時間をお借りしまして先ほど足鹿委員の方から申されました労働者としての立場の問題でございますが、お説の通りこの法案ぽっきりが今日上程されるとなれば、われわれ労働者として絶対的な反対行動をとるということは当然でございますが、全国蚕糸労連といたしましては、過去一カ年間蚕糸振興会議の中でいろいろと討議を重ね、さらにまた本年度予算に五千万円計上され、来年度と合せて一億、そういう中における制限問題の実行効果というものは多少減殺をされておる。そうしてまたそれに対処する具体的な対策についていろいろ検討した結果、三月四日の執行委員会の決定に基いて、先ほど申し上げたようにいろいろな面で不本意ではあるけれども現状は蚕糸振興の一歩としてやむを得ないのじゃないかという考えを持っておるわけでございます。
  38. 小枝一雄

    小枝委員長 芳賀委員
  39. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほどの参考人各位の御意見があまりに短か過ぎたというようなことがあるかもしれませんが、十分了承できがたいような点もありましたので、いささか御質問申し上げます。  最初に全養連の会長さんにお尋ねしますが、きょう皆さんにお集まり願ったのは、単に生糸の製造施設に対する制限措置法案だけの御意見ではなくて、あわせて蚕糸業法改正も当委員会でやることになっておる。ですからこの二法案に対して、できるだけ具体的な、参考になる御意見を伺いたかったのでありますが、遺憾ながら蚕糸業法に対する改正問題に対する活発な御意見がなかったことは、まことにわれわれとして遺憾であります。  そこで全養連にお尋ねしたい点は、全養連から先般蚕糸業法改正に対する建議なるものが出されておりますが、これはただ思いつきで、根拠がなく出したのではなくて、やはり全養連としての権威の上に立ってかかる法改正の建議をしたのだと思うのですが、これらの点に対しましては、今回の蚕糸乗法改正の中には、全養連の期待する改正というものはほとんど行われていない。たとえば審議会の設置等に対しましても、政府改正案の内容と全養連の考えておられる内容というものは、全く違うわけですから、そういう点に対しても、もう少し全養連の会長立場において、具体的な、明快な御意見があれば聞かしてもらいたい。
  40. 北原金平

    北原参考人 経過を一応申し上げたいと思います。先ほども申し上げましたが、蚕糸業法改正に対する要請ということで諸先生方にもお願いし、それから政府とも懇談を重ねて、直ちにこの法の改正をやってもらいたいということで進んで参ったのであります。最後に懇談の結果、また陳情の結果、心持もわかるし、政府自体もこのままでいいとは考えておらぬ、事重大であるから、審議会というものを作って、その意思を織り込んで成案を得るように審議会を運行しようという意思表示がございまして、審議会に集約されてしまった、いわば追い込まれてしまったというのが実情でございます。従いまして、私ども今日考えておりますことは今も一部改正の問題に言及されておらぬじゃないか、こういうお話でございますが、そう申されればまことに申しわけがないのでございますが、これは審議会を、法を改正してどうしても作っていただく、さもなければ直接取り上げて現状打破の抜本方策改正に向っていただく。懇談、陳情の結果その意思もくんで審議会を作って、それから成案を得ていくという政府の態度でございましたので、やむを得ずその線に沿っておる。従いまして蚕糸業法一部改正の方向は、これはすぐにでも成立をさせるように、ぜひお骨折りを願いたい。  かま数整理の問題は、先ほど来申し上げましたような立場に立って、直ちに成立をお願いしたい。最後に政府当局の局長さんを通じて懇談を重ねた段階は、私どもの主張といたしましては、一部改正を先決すべきである。そしてそれまで政府がおっしゃるならば、並行すべきではない。審議会のできる法律を一部改正して、その上に立って、その性格によって改正していってもいいじゃないかという線も強く持っておったわけでございますが、話し合いの結果、言うならば並行して出すことには異議ありというところまでの意思表示と、懇談をしてみたのですが取り入れられなかった。一応内容を申し上げておきます。最後まで努力をしてみたけれども政府の態度がそうである以上やむを得ない。それじゃ何ゆえに賛成するのかということは、先ほど来申し上げましたように、取引の姿を正常化することによって、農民団体の強化をはかっていきたいという線からであります。従いまして、今日まで政府当局あるいは先生方にお願いしてきたことを放棄はしておらない。この要請に盛られておることは、審議会によって生かしていただきたい、また生かしていただくようにお骨折りを願いたい、かように考えております。
  41. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私が言うまでもなく、蚕糸業法というものは、これはやはり蚕糸産業全体の基本法ですから、法案がたまたま二つ並んだからというて、やはり基本をなす法律の方が大事ですよ。しかも政府改正しようと意図している機会ですから、こういう機会にこそ、皆さん方の従来持っておられる考え方というものを、やはり改正の中で十分織り込ませるというようなことで建議をなさったと思うのですが、きょうの御意見を聞くと、大勢のおもむくところやむを得なかったというようなことでありますが、やはりわれわれとしては、皆さん方の御意見を聞いて、それを審議の参考にして、改正をする場合においては、中身のある改正をやりたいというふうに考えているわけであります。私はこの全養連の建議というものを見て、非常に内容も積極的にうたってあるので、いいというふうに考えたのですよ。しかしその建議を、あなたの方は自信を失って、やむを得ぬということであれは、どうもたよりないのです。特に全養連の建議の中には、審議会を設置することはもちろんでありまするが、そのほか蚕種の関係の原々蚕種、原蚕種の管理制度の確立の問題であるとか、蚕業指導体系の確立の問題であるとか、あるいは蚕繭の流通規制の確立の問題であるとか、生糸輸出振興の問題等もこれに触れているわけです。ですから、こういうことがやはり蚕糸産業全体の基本法である蚕糸業法の中に明確化されていくということが、一番期待に沿ったことじゃないかと思うわけでありますが、そういう点に対してはどう考えておりますか。
  42. 北原金平

    北原参考人 まことにお情けのある御質問をいただき、恐縮に存じます。あまり問題の見切り方が早過ぎたのじゃないかということを考えるわけでありますが、この主張、お願いに対しては、何ら変っておりません。ただ政府がどうしても、そういう一部改正のいろいろの問題は、権威ある審議会を作って、審議会で抜本塞源的に生み出すんだという線を強く打ち出されましたので、それにお頼りした。従って審議会の運営のときに、この問題を強く打ち出して、そして成案を得べく努力したいというように、端的に腹を言えば考えてしまったのです。しからば、そこまで追い詰められてしまうまでの姿の中に、おっしゃるように先生方にもお願いをし、また政府にも、一部改正のときにこれを織り込んでということも懇談しているわけでございますが、審議会々々々と追い込まれてしまって、それではいたし方がない、この場合は一路審議会の成立を目ざして、そして審議会によって成案を得ていきたいという方向へいったのでありまして、今まで考えていたこと、またお配りしてあります考え方というものにおいては変っておりません。ただ蚕糸業法改正するときにという強さといいますか、まあ機会を次に送ってしまったという姿になっておるのであります。その点お含みの上でよろしく……。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特にこの建議の中で、振興審議会の設置の問題、その性格等を具体的に述べてありますが、全養連の考え方によると、審議会の構想というものを、蚕糸の長期需給計画の樹立、その年次の蚕種、繭、生糸生産並びに需給調整計画の樹立、その年の蚕種の業者別の製造並びに販売基準割当、その年の繭の業者別の基準数の割当、その年の蚕種並びに繭の価格の基、準を設定する、生糸の需要増進の方途を策定する、その他蚕糸振興に必要な事項、こういうようなことを委員会の性格、任務として求めておるわけなんですが、御承知通り政府の提案しておる改正案の内容である審議会の性格というものは、こういう力強いものを持っていないのです。単に農林大臣の諮問に答えるとか、または審議会自身が建議するということはできるわけなんですが、非常に消極的な受動的な立場の上に立った審議会というものにしか見えないので、私どもから見ると、政府考え審議会というものは、ないよりはましですけれども、それほど大した支えになるようなものになるかどうかという戸とを非常に危惧しているのです。こういう点では全養連の審議会に対する期待と相当ほど遠いものがあるように考えるのですが、北原さんのお考えは、現在の政府の出しておる審議会の性格とかそういう内容的なものに、大体不本意ながら御満足ということですか。
  44. 北原金平

    北原参考人 ただいま審議会の性格についてお話があったのですが、私どもの要請書をごらん下さると、また私どもが今日まで主張しお願いしてきた点は、抜本策ができて、根本法律ができた上に立つ審議会、年々運行する意味審議会、それから今回政府が私どもと懇談の結果、こういう審議会を作るといった審議会は、その抜本策を作るための審議会、もちろんその審議会がある以上、抜本策ができてしまえば、今私どもの要求しておるような線へ運行を持っていっていただけるものと思いまするが、非常に性格を私どもは違って解釈しておるということは足鹿さんにお答え申し上げ、また言うたように、私ども政府当局とあるいは関係者の方々と懇談して、今回の一部改正をいたしまして作る審議会は、常時行うこともさることながら、年中行平をこういうふうにきわめていくことはさることながら、私どもが要求してきた現状蚕糸業を立て直す意味において、また円満に持っていく意味において、その根本を作る審議会を作るということでございまするので、了承を得て、そういう審議会を作ってやる、ただすぐ手をつけて政府当局はこれを作るべきであるという主張であるのを、その意思をよく体得して、そして審議会でそれをやるのだという御説明でございまするので、やむを得ずその線に沿っておる。従いまして今まで私どもがお願いをしてきておる審議会とは、私どもに言わせれば非常な相違があって、重大な使命を持っていただく審議会だというふうに解釈をして、もしか議員の皆さま方の研究の結果がそういう性格を持っておらぬ審議会であるというならば、私どもはいわゆる抜本策を生み出す審議会の性格でないというように皆さんの研究の結果がなったとすれば、私どもは態度を一変せざるを得ないという段階に追い込まれております。私どもの心持をくんで抜本策を立てる審議会だというから、まあやむを得ぬだろう、政府がその態度をとる以上はやむを得ぬだろう。今前段にうたってある審議会は、その抜本策ができて、常時円満に運行していく審議会である。だから私どもは同じ審議会といいましても、解釈を違えておる。従いまして、くどいようでありまするが、もしか今度一部改正によって生まれる審議会が、ただ単に日常運行に対して円満に行くとか、進展していくとかいう程度しか権限がないとするならば、私ども考え方を変えなければならぬ。私どもの要求していることを審議会でよく練ってやるというから、一応私どもはうなずかざるを得なかった。皆様の御研究と私どもの話し合いの感じがもし違っておるとするならば、これも私承わって、きょうここででも態度を変えなければならない。私どもは今まで接触してきた場面が、端的に言うならば、君たちの言うことを審議会研究するのだから、これでやろうじゃないかとおっしゃるから、そうかねと言った。皆さんの御研究がそうでないとすれば、私どもは今でも態度を変えなければならぬ場面に追い込まれておるということを御了承願いたいのであります。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねいたしたいのは、先ほども北原さんから言われましたが、当初の全養連としての考え方は、製造設備制限の問題に対しては、蚕糸業法改正と両方出ておる。順序としては、審議会が設置されて、その審議会にはもちろん業者代表あるいは養蚕農家の代表とか、学識経験者がみな加わるのですから、そこで慎重に今後の製糸設備の整備をどういうふうにしたらば合理化できるかというような点、これは単に業界だけの問題でなくて、やはり原料生産養蚕農民とそれを加工する業者の間における相関性の上に立って最も好ましいというような結論が出なければうまくないのですから、その場というものはやはり今後設置される審議会が最適の場だと思うのです。そうなると、同時発足ということよりも、まず蚕糸業法改正が行われて、審議会の設置が行われて、審議会に対して政府が製造施設の合理化あるいは整理をいかにしたらいいかという諮問を発するわけですね。その場合に皆さんが衆知を集めてりっぱな結論を出して、そして政府に示して、政府はそれを尊重して、設備整理等に対する積極的な行動に移るというような段階の方がむしろいいというふうに最初はお考えになったわけですね。
  46. 北原金平

    北原参考人 先ほど足鹿議員さんからもそうしたような御質問がございまして、最後に審議会でという一部改正で、それからわれわれの要求をそこで練ってこしらえていくために機関を作るのだというところへ集約されてしまった。その段階から考え、また私どもが日常この抜本策の問題に対して一本立で皆様にお願いし、あるいは政府にお願いして、早く抜本策の生まれるよう一路進んだ。その間においての業界の動きというようなものは、でき得るならばストップさしておくことが常道なんです。しかしそうばかりは世の中はいかないので、日製協はどうしてもかま数整理ということを考えなければならぬ。これも今の製糸業段階から考えまして、一応おっしゃることもわかりますという線でその方向へ努力をしてきた。その考え方から申し上げれば、先ほども申し上げましたように、並行して出すことは順序が違いはしないかといわざるを得ない。しかし政府にも立場のあることだから、私どもは順序とすれば一部改正が先で、その他のことはやはりかま数整理といわず、あるいはまた水引きの問題も入るでしょう。そういう矛盾あるいは摩擦に対して新体制を整えるということが順序だと考おてりえます。考えておることは考えております。しかしそれではその主張ばかりを進めるときに、業界における姿、摩擦というようなことを考えまするときには弱いじゃないか。先ほども農民代表としては弱いぞという激励のお言葉をいただいたが、現実の場面に入るとジレンマに陥っていく。まあ一応これも認めていく。ただしそれも根拠のない話じゃない。取引を円滑にし繭の流通を正しいものに持っていくという線の考え方に反対することはできぬ。ことに農民団体の団結を強固にしていくという線を考えるときには、これも考えなければならぬ線でもございまするので、二段的の処置として、結果においては同じに現われておりますが、製糸整理においては二段整理においてこの問題に対処しておるということを御了承願いたいと思います。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に日本製糸協会高田さんと国用製糸茂手木さんにお伺いいたしますが、今回の製糸設備に対する政府整理の基準は、これは一律削減ではありませんが、全体の施設に対して三割程度の削減をやるというのがその目標なんです。内容はいろいろ基準は違うと思うのです。その場合現在の設備能力に対して操業率はどの程度になっているかということは、これはそれぞれの企業の大小とか力関係によって違うと思うのですが、大まかにいって機械製糸と座繰製糸の場合において、施設の能力に対して操業率というものは現在どのくらいになっているかという点をお伺いしたい。
  48. 高田利七

    高田参考人 これは計算の出し方によって、また見方によって非常に違いますが、ごく概括的に私どもがこれを見て理解している範囲におきましては、こういう意味においてお察しを願いたいと思います。現在あります設備をフルに動かしまして繭を消費いたしますと、大まかにものを申し上げますが、一台当り八百五十貫から八百六十貫くらい消費能力がある。ところが現在、現在といいましても一年前の状態、それしか計数を今つかんでおりませんが、一年前の状態で約三千万貫前後の繭を消費する、こういうふうに見ました場合に、一かま当りの割り振りが大体四百四十五貫から四百五十貫くらい、大まかにこう見ております。結局ごく大まかに見ますと能力の半分、そうしますと、これが操業率ということになりますと五〇%くらいだ、これがアイドル・コストの原因になっておる、こう理解しております。
  49. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 国用製糸協会の方で考えますと、ただいま工場で遊閑設備になっておるのが三割くらい、それから操業期間は大体七カ月半で、あとは休んでおるのが実態でありますが、各種の名目をもってその月の消費日数が二十日以下に落ちているのであります。かようの状態でたくさんのお金をかけた設備が眠っておるということは、われわれ業者としては耐え切れないのであります。この原因がやはり繭高に存するのでありまして、私の方は中小企業ではなくて全くの弱小企業者でありますし、労働者であります。従いまして五かまかまぐらいの連中は御自分がボイラー・マンになりセールス・マンになりしておるのでありまして、その家族の奥さん方が再繰をするとかあるいは娘さんがあるとその娘さんが繰糸しておるというような動きでありますので、労働問題にもあまり大きな波紋を投じておらないのが実情でありますが、大体はやはりこの通算からすれば、私の方は三百五十貫ぐらいであります。その三百五十貫の繭で今の台数は一万五千かまありますので、これを除すれば、製糸協会の方では五〇%でありましょうが、私の方は資本力その他においても劣等でありますので、さらに低下いたしておりますので、製糸協会よりは、一割ぐらい多く遊休設備になって参るのが実情であります。私の方へ参議院議員の方々、衆議院議員の吉川さんなどもおいでになってよく工場をごらん下さいましたのでおわかりのことだと思っております。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今度の整理は、かまを単位にしておる。しかしかまといっても機械製糸の場合と座繰製糸の場合の一かまあたりの単位生産能力というものが私は非常に違うと思う。同じ機械製糸の場合にも、自動繰糸機、とか多条機とかいろいろあるのですが、そういう大きな近代的な企業の一かま生産力と、非常に原始的な座繰の生産力というものは同じ単位の一かまといっても、その生産力というものは非常に違うと思うのですが、大別してどの程度の差があるもんですか。
  51. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 私の方のかまの能力から申しますれば、一日の生産量が糸にいたしまして四百匁と考えております。そういたしますとこれを自動繰糸機などに比べると、約十分の一になるのではないかと考えております。多条機の二十条繰糸機から見ると、二分の一ないし三分の一になるのではないかと考えております。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  52. 高田利七

    高田参考人 この点につきましては、またこれ例によって見方と前提がいろいろ違うのですが、特に御理解願いたいのは、自動繰糸機なんかの場合に、非常に繰り匁が上っている。こういうふうに普通言われるのですが、これは繰糸工一人当りの繰り匁の数字を見て非常な高い数字が出て、その数字と比べて十倍だあるいは八倍だというふうに言われておるのでございますが、これを一台当りの繰糸量というものの上で見ますと、今年の現状というものはちょっとわかりかねます。今までの二十八年、二十九年、三十年ずっと経過がございますが、だんだんこういう機械が進歩して参りますので、能率も上っておりますが、しかしそういうもので想像いたしますと、また機械によっても非常に程度が違う、非常に程度が違うといっても一台当りの計算で割り算をいたしますと、そんなにひどい違いがなさそうなんです。結局、結論を申し上げます。私どもは自動機で一台当りとしてみますと、現在では三百五、六十匁、あるいはそれに増しても十匁かそこらくらいの程度だ。それから多条機についてみますと、これは三百四、五十匁、こういうふうに思っております。これも割り算の仕方によりまして、同じ機械二台を一人の女工さんが引いている、そういう場合の計算の出し方はどうだという、そういう前提、これをこまかく分解してもっともだと理解していただけるようには、それは申し上げられますが、総括して申しますと、多条機という方では、大体三百四十匁前後という繰糸能力、それから普通機の方ですと、三十一年度の計数を調べてみますと、一応三百十二匁とありますが、大体これも三百十匁から三百二十匁くらいの間だろう、こう考えております。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、操業率は大体五〇%から五五%になっておるということですが、しかし現在持っておる施設の中には、それを分析するともう老朽化して使用にたえないものとか、あるいはやはり企業の近代化というような合理化の上からいっても設備転換を行うことによって、新しい設備ができたことによって、それ以前の設備は不要になったものとか、そういうものが私はあると思いますし、また輸出向きとか、国内向きによっても糸の太さ等も違うと思うのですが、やはり今の需要にこたえるにはもう用をなさないというような施設も中にはあるんじゃないかと思うのですが、そういう老朽とか使用価値を持っておらぬとか、そういうものはやはりこの中から差し引けば、操業率というものはもう少し上るのではないですか、いかがですか。
  54. 高田利七

    高田参考人 一応おっしゃっているお言葉では、まさにそういうふうな機械もかなりあるかのように常識的には考えられます。ところが茂手木さんの方の御関係設備の中にはかなり簡単な機械、機械製糸の場合に比べて簡単な機械がかなりある。しかもその機械で作った糸は外国へ出してロット・セールというようなものを作りますのには不適当でありますけれども、これを国内で、純国用に使います糸としては、つまり座繰生糸といっているもの、そういうものもかなり用途がありまして売れていっているわけです。さればこそ座繰製糸生糸が最近の段階において大いに市場を広められているわけです。そこで御質問にお答えするわけですが、老朽でもうどうにもならぬものも一台で勘定しているのだろう、そういうほんとうに使えないものという意味の機械というものは——製糸設備というものは本来単純なものです。かなり古くなりましても、それから単純な機械設備でありましても、使おうと思えば使えるのです。むしろ申しました設備の中には、設備がなくて権利だけが残っているというそういうもの、名前があるけれども物体がない、こういうのが多少あると思います。しかし一応設備がありますものは今輸出生糸を作るのには向かないが、国用向きの生糸を作る。少し格の低い生糸を作るという意味でならばけっこう役に立つ、こういうもので今御質問になりましたような意味でのかま数が相当あるのではないかという御質問に対しましては、私はそんなにないんじゃないか、こう思うのであります。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、三割整理がもし行われる場合は、従来の吸収されておった労働力の削減ということになるわけですが、しかし現状は必ずしも労働力三割削減ということでなくて、もうすでに遊休になって働いておらぬという機械に対しては、これはその機械に付随する労働力というのはもう整理されておるのじゃないですか。そういう関係はどうですか。設備と労働力との関係ですね。設備は遊休が相当あるけれども、労働力というものは整理されて、労働の生産性の面からいえば相当一〇〇%に近い生産性になっておるということも考えられるのですが。
  56. 高田利七

    高田参考人 結局おっしゃっています意味は、労働者——つまり現在動いているかまではないかま、結局休んでいるかまがかなりあるのじゃないか、こうおっしゃっていることだと思います。その意味ではこれは正確な数字は申し上げられませんが、大体六千かまくらいあるだろう、こう見当をつけております。従ってその分につきましては、これを整理いたしましても労働問題は全然起きない、こういうことであります。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点に対しては全糸労連の丸岡さんに聞いた方がむしろいいと思うのですが、この内容は大体どういうようになっていますか。
  58. 丸岡芳治

    丸岡参考人 今高田参考人の申されたように、六千かまないというのは、全然かまが遊んでいるのじゃなくて、いわゆるほんとうですと二百かまの工場で二百人働いているのは繰糸工場では普通の状態なわけです。ところが二百かまの工場で百人の繰糸工、つまり一人で二かまを持っているような工場、そういうふうな経営方々でなされておって、結局それは百かま削ったとしても、いわゆる百人の繰糸工は整理しなくても仕事をやっていけるわけでございます。そういうふうなかまが大体六千かま程度あるのじゃないかというふうに考えております。それで三割という仮定的な数字が出されたわけでございますが、三割といいますと、一万五千かまということに一応なってくるわけです。その場合の六千かまとの差額については問題が出て参りますが、三割という数字については私たちの方としてはいろいろ先日からも予算の中において示されたように、もう少し下回るのじゃないかというふうな見通しを持っております。ただ問題としましては、そういった労務問題が生じました場合には二通りの出方がくると思うのです。かりに三割と仮定をいたしましても、中小企業におきましてもどこの工場も三割ずつ、会社も三割ずつ切っていく場合には、そういうふうな遊休かまにより三割増しているところは全然影響がないわけです。そうしてまた男子の職員層につきましては、ほとんどが管理的な立場に立っておりますので、三割人間を減らしても管理するところの立場の人がそのまま三割減るということには通じないわけなんです。そういう意味においてそういう形での制限というものが三割なり二割なり行われても、現在の六千かまの遊休設備等の関連で職場における雇用問題はそういう形ではさして大きくはならないのじゃないか。ただもう一つの場合、すなわち地域におきましていわゆるそういう制限を何と申しますか、利用と申しますか、そういう時期に乗じて工場を廃止するとか、あるいは金融の選別融資によるところの統合とか、あるいはまた片倉、郡是等の大企業におきますところのいわゆる集中生産による工場閉鎖とか、そういうふうな第二番目の事態というものが起きました場合には、私たちとしても労働問題について影響のある場面がくるのじゃないか。ただその場合におきましては、御承知のように八割が女子労働一着でありますので、女子労働者につきましては大体平均勤続年数がわれわれの傘下におきましても三年ちょっとになっております。そういう新陳代謝を利用して合理的な配置転換ができると思いますし、特に問題になりますのは、そういった場合における職員層の問題ですが、これは各企業なり、その地域における共同化、統合を通じて解消していかなければならぬというように考えております。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に茂手木さんにお尋ねしたいのですが、今度の整理の場合、中小というより零細的な座繰製糸に対する圧迫というものはどのくらいくるかということもやはり問題になってくると思うのですが、先ほどの御意見によると、大体心配のないような見通しの上に立っておられるようですが、これは実際はそう安易なものではないと思うのです。それで国用製糸立場から見た場合に、整理の内容とか運用によってはいろいろ違うと思うけれども、とにかくこういうような施設整理が法律に名をかりて行われるというような場合においては、現状はそうでないとしても、将来に及ぼす影響とか推移というものは相当大事な点もあるだろうと思うのですが、そういうような問題に対するお考えというものがもう少し具体的にあればお聞きしたい。
  60. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 お答えいたします。私のところの整理についての組合の考え方は、弱小企業者に対してはほとんど手をつけないという考えであります。従って五かま以内の方々にはそのまま、それより上の方にいくに従って約三割整理しようと考えておりますが、この三割整理は上の方の、かま数をたくさん持って家業をしております方々にはきつくいたして、下の方の弱小企業に属する人々は社会問題も出て参りましょうし、しますので、十分の考慮を払って、ただいま実はこちらへ私の方の整理の原案を先生方に差し上げてあるのでありますが、この点でごらんになればよくおわかりでありましょうが、今申し上げるように私の県一の長野県でもでありますが、今のところ操糸する女工は操糸をきらっております。サナギくさいような変な工場へ行くことは実は労働者は非常にきらっておりますし、従って女工を集めることが非常な困難を感じておりまして、このたびの整理に関しまして業者が労働問題を惹起するようなことのないということは前段申し上げたと同じでありまして、私の県で考えてみましても、工女を得ることが非常に困難であります。さらにもっといい神武以来の景気でありますので、別な工場で働くという考え方を持っておりますので、全く工女を得ることが困難であります。この状態でありますので労働問題のごときは起り得ない。今申し上げるように、小さな業者が家族の労働によって生活をするという立場が私のところの国用製糸協会に属する人々の生活状況でもあるし、事業の経営の実態でありますので、この点は私は自分がみずから陣頭に立っておりますのでよくわかっております次第であります。この点も私労働問題は起き得ないと考えます。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお尋ねしたのは、その問題には関連はあるけれども、それよりも、今回の整理機会にして、企業内容が非常に違うのですからね、機械製糸と座繰製糸というものは……。ですからその整理をやって、過度の競争を排除するということによって小企業の安定性というものはある程度期待できるかもしれぬけれども、今後やはりこの座繰製糸というものを、こういり農村における家内工業的なものを温存、保護していく必要があるとする場合においては、今度の設備整理だけのこの問題では解決できないと思うのですよ。これだけで徹底的にやるとすれば、やはり企業整理をもっと大きく行なって、原料生産にしわ寄せをしなければ弱い製糸企業というものは成り立たぬという事態になりますから、そういうことはもとより好むところではないわけなのですから、やはり大きな資本の大企業に対して座繰機業というのはどういうふうにしたら保護され、また維持されて温存されていくかという、そういう根本的な問題に対して御意見があればこの際聞かしていただきたい。
  62. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 実はこの問題は、私たち業界輸出を主といたしまする業者からは敵視されているのが実情であります。けれども、ともにある程度まではわれわれの業体を温存育成せねばならぬ役目を私たちの双肩にになっておるのでありまして、今のように病的な経営を継続するならば、われわれ自身の内部から崩壊いたすという憂いがありますので、すっきりとした形で、われわれの業者の数を減らすのでなくして、業者設備の方を縮めて参って合理的な経営をいたすという考えでありますので、この点は数の問題でなくして、業の確実性を考えている。従ってわれわれの生産するところの国用生糸に対しても、市場操作の方へ、定期市場へこれを売りつなぐことのできるようにいたしたいという考えであります。かようにいたしまして、繭を二千貫なり三千貫なり仕入れました小さな業者が、仕入れた直後に非常な生糸の値下りがある。これがためについえますので、市場を設置していただいて、これによって売りつないで参って、安定せる基盤の上に業を営ませて、これを漸次現状生産とにらみ合せて大きな方向で設備を進めていかなければならぬのでありまして、今日の状態では、かようにいたして、自分が飛ばんと欲せばしばらくかがもうという格好でありますので、この点は業者の数は減っておりませんし、工女の方の労働問題も起きませんし、——このままではどうにもなりません。倒壊の一歩手前というか、戸を閉めた業者もあります。かような状態に置くことは蚕糸業全体の方から見て非常に欠陥になりますので、私は蚕糸業全体を通覧すると同時に、業者の要望によりましてこのたびの設備制限はいたしております。従いまして各県の会長方及び各県の役員諸君はよくこの点を了解しておりますので、しばらくおのれの勢いを温存するための整理である、こう考えております。この点申し上げておきます。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がないのであまり詳しくお尋ねできませんが、ただ小さい企業の場合、どれだけでも削られるということは非常に痛いのです。むしろ方向としてはやはり小さい企業が統合されたり合併するというふうに、大きな近代的な方向へ持っていかなければ、コストの軽減も合理化もできないというのが一つの原則的なものなのですから、そういう形の中で逆に絞られて、そこで少しがまんすれば将来は力がつくということにはなかなかならぬと思う。ですから、そういう弱小企業の場合には、それぞれの小さい企業の中においての実力発揮というのはできないのですから、一つの方法としては、たとえば共同化の方法であるとか、あるいは生産者との協力とか直結の中における製糸企業ということが具体的な問題になると思うのです。製糸企業というのは単純な産業ですから、そういうことも具体的に考えられぬことはないと思うのですが、それらの点に対しては、これは組合関係参考人がおられましたら……。
  64. 木下信

    木下参考人 私の考え方は、基本的には生糸の代金を分析してみると、養蚕が七割五分ないし八割、製糸に負うところが二割ないし二割五分、ところが生糸製造販売の経営自体は製糸家がやっておる。製糸家は二割五分の仕事をするのに危険負担は十割する。そこに経営の危機がある。組合製糸は十割の仕事をするので安定度が高い。私はもとは個人であり、株式会社であり、今は組合製糸になっております。組合製糸になってみて、これくらい合理的な、経営のいいものはない。個人、株式会社を通じて実に合理的である。従って組合生糸考え方は、どうしたら繭が高くなるか、どうしたら糸を安く売れるか、これが組合製糸考え方なんです。従ってどんな場合にでもそれのみ考えておる。その行き方で、養蚕者八割、製糸の従業員二割、これが経営するのだという考え方で参っております。これがほんとうに完全に握手をしていったときには、非常な力が出てくる。それからむだがさらになくなる。矛盾がなくなる。あるいは社会党の視野から見ても、実に合理的な分配ができる。あるいは自由主義の中からいきましても、理論的に一番合理的な経営ができる。実際私の四十年の経験から見まして、個人、株式、協同組合連合会、これを比べたときに雲泥の差であります。私は、株式会社の製糸でも、何とか心持がほんとうの血のつながりを持った養蚕製糸でありたいと思う。私は全養連とか全国生糸協会とか、いろいろの役員会の模様を承わっておりますが、何となくそこに敵対的な含みがある。これは実に残念だと思う。蚕糸業として同一業者で、いわば人間の中の夫婦と同じだと思うのです。これが仲人に始終お世話になるような夫婦ではよくない。夫婦は間においてほんとうに円満な血のつながりを持ち、そうしてすくすく伸びていくのだ、こういう家庭はますます繁栄するのだと思うのです。労働組合もそうであります。過去の労働組合は戦っておりました。ところがただいまは変って参りまして、私のところのトヨダ自動車工場は、今は労使はさらに戦っておりません。経営の繁栄なくして労働者の生活向上なしを理想としておるので、労働委員長は、会社幹部との話し合いをするのは実に愉快だ、目的が常に一致しておって愉快だという新聞に折り畳みをよこしました。過去の労働組合は常に闘争をやっておりまして、委員長が板ばさみになって苦しみ抜いた。現在の委員長は、会員に向っても、会社幹部と話し合いをするときにも、きわめて愉快に過ごしておる。残念なことに、その他の労働組合には、戦争反対を主張する労働組合でありながら、まだ戦争用語など用いておることは残念だ。労働委員長が挙母の新聞にはさんでよこしておる。私は県養蚕連の役員として、どうしたら製糸家に繭を安く供給できるか、これに向って進むべきだと思います。どうしたら繭が高く売れるか、これは生産者使命でないと思うのです。しかし需要供給には相場がある。いかに繭を一貫目千円で作っても、足らぬものは足らぬ、千五百円になればそれが利潤になる。少くとも業者の幹部たるものは、相手方をいかにして喜ばせるか——お客のない産業は滅びる。蚕糸業経営の安定をだれがしておるか。会社の社長でもなければ従業員でもない。糸を買ってくれるお客さんが安定させてくれるのだと私は思います。お客なくして生産面は成り立ちません。それにはどの団体もお客本位で向うべきものだ、それにはお互いに相争っておってはならない。またその中間にいろいろな統制だなんというむだをすることではならない。養蚕連製糸家が全く心から一致して、そうして相手方のために、ひいては機屋のために、米国消費者のためにうんとサービスをする、それによって消費はどんどんふえてくる、繭はふえても、常に行くところは川の流れるごとく流れており、停滞するということはあり得ない。私その行き方を主眼としてやって参ったのであります。現在組合を創立してから八年になります。その考え方でいくと、今の高い高いと称せられる繭代金を払って、なお一貫目百八、九十円の利潤が出て参り、当期の決算でも、一貫目百九十円の事業配当を役員会をを今開いておったわけであります。まあ養蚕製糸は夫婦のようなもので、これが仲人を入れたり、がちゃがちゃするというような根性ではだめだ、消費者に向ってサービスをする、これが業者の心がけだと思います。従って法律のごやっかいになるということは、私大きらいだ。政府から金をいただくことは、それ以上税金を差し上げなければならぬ。一億いただきますと、一億三千万円の税金が要るのです。徴収するのに費用が要るのです。配るにも費用が要る。運動すれば運動費が要る。これは実に情ないと思う。どこまでも自主独立でいくべきだ、ほんとうに業者は相携えていくべきだと思います。しかし残念ながら、今愛知県の業者においてはつぶれた人の方が多いのです。ここまできますと、こういう政府の御援助を仰ぐということは、この場合いたし方がない。好むことではないが、やむを得ずこれに賛成する。しかし今後の蚕糸業対策は、少くとも心の中からすっきりした——悪い心では繁栄はないと思います。他に依存したりいろいろなことをするようではだめだと思います。横着むすこがみずから生き抜く気持ができたところで親がやるならば栄える。ただ親におんぶしておるやつに幾ら金をやったって何にもならぬ、これと同じだと思います。少くとも政治というものは、国民がみずから生きようという気持——出すべきところ、応援すべきところはするのだが、みずから生きようという気持に徹した政治のあり方でなければならぬ、こう存ずるのであります。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いろいろお聞かせ願ったのですが、そこで北原さんにお尋ねいたします。組合生糸というものは全然伸びないのですね。あり方としてはそうなければならぬという説は多いのですが、現実の問題としては、組合生糸というのは全然発展もしておらぬし、伸びていかないのです。それでこれはやはり大きな原因がなければならぬと思うのですが、私は先年吉川委員のところの龍水社ですか、あそこを見たことがあるのですが、こういうような単純な機械産業というものは、協同組合のシステムで発展できないということはないと思うのです。これがそういうことになっておらぬというのは、どこに原因があるか、これは全養連、養蚕者の団体立場から見ればよくわかると思うのですが、その点を北原さんにちょっとお伺いしたいと思います。
  66. 北原金平

    北原参考人 何ゆえに組合製糸が伸びないか、全養連会長に問うということでおりますが、実は私も今お話のあった龍水社を農民的感度に立って奮闘しておる一人でございます。要は、養蚕農民のためにという感度から考えておりますので、組合製糸をやりながら養連の会長をしておる矛盾はないのだという感度で、形式が違う、片方は繭で処理する、その上の一段階加えて製糸をして養蚕農民に働く、段階は違うがねらいは同じだという意味において微力を尽しておる私でございます。知っていて私にお尋ねであったかどうかそれは知りませんが、製糸という場面だけを考えますると、これは一つの事業でございます。従いまして下手、上手、ときに失敗もあるということも、事業である以上否定でき得ない、年々歳々上成績を得るということも、事業の成績のパーセンテージから見ましても、あるパーセンテージは伸びないという線も、これも否定できない。ことに農民的感度に立っての組織でございます。戦前の姿と戦後のただいまの姿とは。パーセンテージでいくと、そもそも日本の繭が減りましたので、組合製糸も。パーセンテージは大体同じでございますが、一割二分という数字は戦前も戦後も同じくこれは伸びないじゃないか、こうおっしゃる、農民の方々の心持ち、またそれの行為の共同実行という線から出てきての線でございます。農民心理から見ますると、年々歳々必ず繭で売るよりは加工して売ることの方がよいということをこいねがう一面、事業は事業でありまするので、ときに失敗もある、しかし過去の数字は、私も先代を受けまして四十年の数字を見ておりますが、私一代からも約三十年の数字を見ておる。だが繭で売るよりもいい、統計的に出ておる、だからやるべきであるというその方針が何ゆえに伸びないかということでありますが、一つの事業でございます。農民心理に満足を与えないという点が一つある。ところが今申し上げました通り、年々歳々必ずうまくいくかということを考えると、この姿が出たときに何で仕事を続けるかというと、いわゆる農民精神運動によって一応長い統計で見れば必ずよいものである、従いまして精神運動てその線を貫いていかなければならぬ、経済で損したものを精神運動でやっていかなければならぬ、この理解を養蚕農民に求めることが非常に困難である。それから農家の方々考え方が断片的といいますか近視眼的といいますか、そういう長い実績を持ちながらも、目前の利にとらわれるという線があって、この組合製糸設立になかなか理解せないという線が主な線ではないかと思います。そういうふうに考えて見ますると、やはり組合製系の責任者に適正な人を得なければいかぬという結論になる。そういう線から見ると、農家を中心とする農民協同運動の線から見ても、適正な人を得ることがなかなか困難であるということも一つの理由になると思います。さて伸びない理由とおっしゃられると非常に、御答弁申し上げるのに、そういう研究も常にしておるのでありまするが、それを芟除していくという姿はなかなか困難な線である、一つの事業でございますので、ときに失敗もある。農家は連続的の優位の立場考える、それからお互いの農民運動の感度から考えまして、また法の精神から見て、らち外の人が委嘱はできても建前として農民代表がこれを運行するという点から見ると、人を得るという線がなかなか困難な線ではないか、このように考えております。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお尋ねしておるのは、設備整理に伴って、現在は養蚕農民立場から見れば、大体売手市場というような形になっておるわけですね、それが今度逆転するような形になると、これは農家の側から見ると重大な点だ。しかし一方輸出産業であるという点から考えて、これは国内だけの奨励で事足りるというわけじゃないのです。やはり国際的な競争力を合理化の中から強めるというところにも大きなねらいがあったわけですからして、それならば生産農民にしわ寄せをしないで、この設備合理化というものは、むしろ労働者の賃金の面とか、あるいは繭価格の面にもプラスになって、なお輸出産業としても力強いものになるというような、そういう基礎的な条件を、これをやるとすればそういうものを確立する必要がどうしてもあると思うのですが、そのうちのどこかに欠けた点があると、やはり犠牲を受ける面というものは当然出てくる。ですからやはり弱い企業の設備整理ということは、将来の影響というものは非常に大きい場合が予想されるわけですから、そういう場合にはやはり生産者と製造面における協力とか、そういう関係というものはだんだん必要になってくるのじゃないかというふうに、当然これは考えられるわけです。特に輸出産業の場合には、やはり中共の製糸企業というものが対象になると思うのですが、現在の中国の産業構造とかあるいは方針というものは、やはりずっと変っておりますから、そういうものと対応できるような企業の形を、しかも中小企業の弱小企業の場合にはどうするかということは、単に設備だけを整理して過度の競争を防げばいいということだけでは済まないと思うのです。ですからそういう点に対するやはり基本的な、各関係者の代表各位から自信のあるような考えを聞かしてもらわぬと、こうばく然として整理だけすればいい、国が五千万出して、同業者が五千万出し合ってやるというだけでは大した効果は上らぬのじゃないかというふうに考えられるのですが、この点に対して製糸協会あるいは全養連等の具体的な御意見があればお伺いしたいのです。  それからもう一つ、これは特に高田さんあるいは丸岡さんにお伺いしたいのですが、この繊維産業の中で特に製糸関係は、比較してみると非常に賃金が低いのです。これは生糸産業は農林省の所管だから安いということじゃないのですが……。ですからそういう非常に隔たりがあり過ぎるような状態というものは、今回の整理案等によってどの程度是正されるか。そういう点に対しても第二点としてお尋ねをしたいのです。
  68. 丸岡芳治

    丸岡参考人 あとの賃金の問題でございますが、御指摘の通り昭和二十二、三年ごろまでは綿紡と製糸の賃金格差は九二%から九五%程度の格差を持っておりました。それが三百六十円の単一為替レートの設定以来非常に差がついて参りまして、現在では綿紡の約六〇%程度の賃金、全蚕労連の傘下の女子平均賃金は約二百十五円が平均になっております。全蚕労連未加盟の機械製糸女子労働者の平均賃金がそれよりもさらに十円ほど安い、これらはやはり原因するところは、戦後における農村の政策と加工貿易を主体とするところの貿易政策との板ばさみを受けて製糸の加工生産費全体が圧縮されておる、そこに持って参りまして、設備というもののアンバランスによるところの過当競争がさらに拍車をかけておるというふうに考えております。われわれとしましては、繭価につきましては正当なる繭価を支払うべきだ、そうしてそれらの過当競争なりからくるところの要らない費用については、これをやはりわれわれは賃金として要求していきたいというふうに考えております。  なお、その前段で申されましたことについて、全蚕労連としましては、やはり現在の化繊との競合あるいは中共生糸との競合に対しまして、コスト的に日本生糸が対抗していかなければ、近い将来において米中国交回復等がございました場合には、たちまち国際場裡において敗北を喫するのではないか。そういう面における設備の近代化を含めた、十分対抗できるような近代設備に変える必要がある。設備制限の問題につきましては、これはアンバランスによるところの過当競争が防げるだけでございまして、さらに大きなところの問題としましては、いわゆる繭調整の問題、A県はB県から買い、B県はA県から買っておるというような地盤的な不合理、あるいは繭価決定の現在の不合理等を是正するような措置がとられなければいけないと思っております。  きょう電報には生糸製造設備臨時措置法参考人として出てこいということでありましたので、当初の意見としては振興審議会の方には触れなかったわけでございますが、決して振興審議会で満足しておるわけじゃございません。さらに将来においてこれらの抜本方策ができることを、全蚕労連としては切に要望しております。
  69. 北原金平

    北原参考人 蚕糸業の抜本策々々々というが、どういうことを考えておるかというように受け取るわけでございまして、御承知のように現在の姿は糸値が高過ぎるという姿になっておる。どうしてもこの糸値を安くしなければならない。このように反面に考えてみますれば、製糸業者が非常に苦難な道を歩いておる。しからば養蚕農民が満足しておるか、他の農産物に比べて必ずしも満足しておらないという姿であります。従いまして、国策の見地に立ちましても、お互いが生きていくという見地に立ちましても、容易ならざることでございます。反面外貨獲得の線から見ますと、三分の二が内地需要だということで、私は幻惑という言葉を使いますが、幻惑されておりまして、輸出関係を調べてみますと、やせてもかれても第四位を占めておる、国家的に見ても非常な重要産業であると信じておる。従いまして、また中共糸の動きを見まするときに、国家統制によって仕事をしておる、いわゆる中共の業者間における力プラス政府の力が加わっているのだ。そこで日本の方程式も、同じ姿では現われておるが、プラス政府の力という線において薄いのではないかという見方をしておって、もう少し政府も力を入れてほしいという希望を持っておりまするが、政府におたよりすることはするとして、まず自分たちがこの複雑多岐な形において、先ほど木下さんからもお話がありましたが、昔ながらの考え方を根本的に改めなければいかぬのじゃないか。養蚕者も高く売るという考え方は一応是正すべきではないか。また製糸家の方々も安く買うという姿は是正すべきじゃないか。個々の取引は公正なる価格という限界を置いて、むしろ安く売る、高く買うという逆なコースに行くならば、そこに非常にうるわしい姿が出てくるのではないか。第一に心持の切りかえだということを一応考えております。そういうように考えまして、それでは養蚕者の立場から考え製糸家の立場から考えて、コストを下げて優良品を作っていくという道がないのか、こういうように考えると、私はあると申し上げざるを得ない。養蚕者も国家的に見ても繭を増す道はある。あえて国家的に見て、食糧事情から見て、たんぼをふやすという方向ではなくとも、一反歩当り十六貫ないし十七貫の反当収穫を増す方法が現にある。この方向へ養蚕農民われわれが努力するならば、繭そのものの生産費は下げ得る。現に山梨県の反当り産繭額から見ましても、特例といたしましても、一部反当五十貫というような実例もある。お互いの近くにも、お互いの持つ平均よりも高い例があるのであります。だからお互いの努力いかんによりますればそこにいける。製糸場面考えてもそういうことは考えられる。従いまして、養蚕の前途あるいは蚕糸業の前途というものは、社会では斜陽産業だ、どうだこうだというけどれも、国家的に見ても必要であり、それから農家経営角度から考えても必要である。従いましてそういう言葉を使われることは心外だ、また使ってはいかぬのじゃないか。方法はあるというこの考え方に立ちまして、先般来いろいろと御配慮を願っておりまするように、まず何といたしましても種、これを繭が製糸過程を通るというこの前提に立つ現状から見て、それから種の統一といいますか、よいとか悪いとかいうことはしばらく別として、第一段階として種の統一及び種から出てくる種を養蚕が受け入れまして、それを混淆しないように飼育いたしまして、同じ種から同じ形式で出たものを同じ繭の姿へ持っていくという方向への動きが一応大事であるということを考えますると、かつてお願いを申し上げましたように、種の統一ということを考える。それにはどうしても管理制度という、これは自由経済を原則としておる立場から見ると非常に疑義があると思いまするが、さりながらここまで日本の蚕糸業が追い込まれたからには、暫定処置としてやむを得ない姿としても一応相当の管理統制という言葉を使って悪いというならば、秩序立てるという意味において、種の秩序立てる道を一つ法律で編み出していただく。それから私ども養連の立場に立ちますと、何としても増産しなければならぬ。そして同じものを作らなければ製糸原料価値として薄いのだという段階から考えますると、品質優良のものを増産という立場から考えますると、養蚕農民自体といたしましてやらなければならぬことは、土、桑を作って、その上に今の種を飼っていくという線から考えますると、その効果を現わしまするには、大衆養蚕農民に接する場面から見て、指導する場面から見て、先に立っておる村の者が飛び歩いておるわけにもいかない。どうしても指導ということが出てくる。そうするにはどうしても技術員というものがなくちゃならぬ。この技術員というものが非常に力を得て、力を持って養蚕家に接触しなければならないわけでございますので、この指導態勢ということをどうしてもお考えを願わなければならぬ。そうして技術員の給料というようなものは原則的にはいわゆる受益者負担、養蚕者の負担でなければならぬ。もっと言えば養連の運行費は養蚕団体の負担でなければなりませんが、現在は過去の伝統もあり、慣習もあって、そこまで行っておりませんが、そうした線も打ち破っていかなければならぬ。とにかくこの場合どうしても技術員の拡充、身分安定という面をお考え願って織り込んでいただかなければならない。そうすることによって統一されたよいものがたくさんできてくるという線を考える。そこで今まさに法律に出てきておりますところの……(芳賀委員北原さん、養蚕の方だけを……」と呼ぶ)流通面を考えなければならぬ。これは先ほど来の繭の売買形態といいますかを考えていただかなければならぬ。何といっても輸出生糸へ持っていかなければいけませんが、実情は国内で売れば製糸家はもうかるという段階である。この線も何としても輸出を引くことの方が、もうかるような姿にもっていっていただけば、輸出が盛んになるのじゃないかと考えておる。こういうことを運行するためには、今までちりぢりばらばらであったから、そこで審議会というものを作って、一年じゅうの行事をきめていったらどうかというのが、審議会の生まれてきた理由であります。そこで審議会を作って年中行事をきめていくということを、法律に編み込んでいただきたいということがねらいでございます。  えらい駄弁を弄して恐縮でございます。
  70. 高田利七

    高田参考人 簡単に申し上げます。が、考え方趣旨は初めに申し上げました通りであります。  その前にちょっと一言私の感じを申し上げます。ここで設備制限をすると、たちまち繭の需要が減るのだ。それで繭が安く買いたたかれることになる。当然養蚕家の不利になるのじゃないかという意味での考え方、お話がございました。私どもについては、それについての考え方はこういうふうに見ております。要するに、今三十万俵分の繭なら繭を消化するにつきましては、現在の設備では設備が多過ぎて、そこにアイドル・コストがうんと含まれておるのだ。これを制限するだけで、この二十万俵分の原料を消化する力、それ以上に設備制限いたしますと、繭を買いたたくという形になって参ります。その点については限界を心得なくちゃいかぬと思っております。私どもが今考えておりますこの線というものは、まだアイドル・コストを非常に含んでおる。そのアイドル・コストをこれでセーブするのだ。そのことによりまして、製糸経営の安定の一助にするのだ。これはあくまで一助でして、初めに申し上げましたように、根本策を樹立していただかなければ、根本的に解決しないのだ。それなら根本策を先にやったらいいじゃないか。何といっても根本が一等根本だからというような意味で議論されますと、一応言葉としてはそういうことなんですが、今の製糸業というものが置かれている状態は、根本策が一朝にしてできるものでもなし、また根本策はそれだけ慎重に検討されなくちゃならぬと思いますが、製糸業の今の実態は、すでに閉鎖工場だって四十四工場もございます。かなりのかま数も動いておりません。先ほど製糸賃金の水準が低い、まことに経営者としては恥かしいことでありますが、それほどに収益が上って  いない。上っていないどころじゃない。実際大部分の——例外はたくさんありましょうが、大部分の製糸業自体としては、ここ数年間収益らしい収益は上っていない。配当もろくにしていない。およそ自由経済において他人資本の上に基礎を置いて経営をする以上、市場の平均水準くらいの配当ができませんことには、企業として成り立たないのは当然のことです。実際は製糸会社でここ数年間御検討願ったらわかりますように、恥かしながら、他の産業の兼営事業とかいうようなもので上げりました収益で、糊塗しておるのが精一ぱいでして、無配のところが大部分です。こういう製糸産業から資本がどんどん逃げていくのは当然のことであります。従って近ごろの傾向としましては、資本らしい資本は何とかしてこの製糸業から足を洗いたいということで、ほかの産業の方に手を伸ばしていくという形が、現実に出てきております。ところがそれでいいのかという問題ですが、この生糸の将来性というものにつきましては、私どもは単なる感情的な愛着というだけでなしに、実際に施策よろしきを得れば、将来性はある。こう考えもし、期待もするわけですが、輸出産業としての使命を果す上においては、資本はどんどん逃げるだけ逃げろというような施策であってはならないと考えます。従ってここにまず生糸総原価の引き下げという面から見まして、アイドル・コストをセーブするということを製糸経営安定の一助としてわれわれ考えておる。しかもこれに今からすぐ手をつけましても、この法案の内容にもありますように、完成するのに二年もかかり、跡始末もまた二年もかかるというようなことで早く手をつけませんと、現在製糸業者が繭を買っても、繭代も払っていないというような実例もかなりございます。それほどまでに追い込まれている製糸業でございますので、製糸業界内部の問題として、この設備制限ということをここで急いで取り上げなくちゃならない、そこまで問題が追い込まれた、こういうことなんです。先ほどからのお言葉の中に、そういう意味製糸設備制限という問題ばかりやっていれば弱小の業者というものは、なお不利なところに追い込まれるじゃないか、あるいはシナ糸も出てくる、そういうものとの対抗の上から見て、ものをどう考えているかという御質問もございましたが、製糸、特に私ども機械製糸の範囲で大部分考えておりますが、それにもせよ、やはり性格は二つに分けて考えていただく必要があると思うのです。輸出産業の対象として、同時にその使命を持っている部分としての製糸業あるいは蚕糸業と、中小企業と申しますか、国内の消費繊維原料として、また同時に重要なる労力をあてがう場としての製糸産業あるいは蚕糸業、その二つの性格があると思うのでございます。われわれ、輸出産業としても大事であると同時に、労働力の吸収の場としての蚕糸業、特に製糸業というものの意義も同時に考えなくちゃならぬと思いますが、輸出製糸あるいは輸出生糸としての使命という意味から申しますと、これはできるだけ近代化して、そうして生産効率を上げて総原価を下げて、そうして品質の改善も同時に——需要者はアメリカが大部分でありますが、アメリカの需要、すなわち均一性のある多量の生糸取引希望するわけです。先ほどもちょっとロット・セールと申しましたが、今まで五俵、十俵が取引の単位であったのが、だんだんと五十俵、百俵単位というふうに取引されて、均一性のある生糸をあちらの能率の上る機械にかけていく、こうふうになっていく。そのお客の要望に沿えるような生糸が、しかもシナ糸と競争しつつ輸出されていくというふうにねらわなくちゃならぬと思います。ところが今度は輸出ということになりますと、商取引場面になりますが、シナ糸の場合は、聞くところによりますと、国家貿易というふうな形をとっておるようでございます。そうしますと、あちらのああいう機構で国家貿易でやられる生糸取引と、日本の資本主義経済のもとに各自が自由に競争しつつ輸出をする、こういう日本の貿易の制度でこれと競争してどうして打ち勝っていくかという点につきましては、大いに工夫を要するところで、ここにはまた新しいといいますか、相当工夫の要る取引機構といいますか、そういうものを打ち出していかなくちゃ、シナ糸との貿易上の競争ということが非常に困難であろうと思います。その点につきましては、私個人としては一つの考え方を持っておりますが、今すぐに申し上げるのは適当でないと思いますし、これはやはり業界のよく検討された総意の上に立って考え方をまとめて、また皆さん方の御援助を得なければならぬ場面になると思いますが、今日の段階では、初めに申しましたように、生産段階の対策といたしましては、考え方としては根本策、その根本策審議会で学識経験者も入れて、ゆっくりという意味でありますまいが、慎重に検討をしよう、こういう建前につきましては、はなはだ回りくどいような感じでありますが、それでもこの際これを取り上げてやっていただくようにそのことをお願い申し上げる。しかしそれだけにたよっていられるほどに今の製糸業界状態が安易な状態でないという立場から、この設備制限のことをお願い申し上げている次第であります。
  71. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体わかるわけですが、結局輸出産業としての今後の生糸産業のあり方は、何としてもやはり企業努力というものが一番大事ですからね。そしてコストの引き下げを行なって、国際競争にたえ得るような力を培養してもらわなければならぬのですが、単に整理とかあるいはコストの引き下げということが前面に出てしまうと、とかく今度は原料価格の引き下げとか、賃金の引き下げとか、そういうところにしわ寄せがどうしてもいくのです、不可避的に。ですから今度の整理というものは、絶対にそういうところに影響がない、設備の近代化とか合理化によるコストの引き下げというものは、むしろ今までよりも原料の価格面とかあるいは労働者の待遇改善の面においても、現在よりもむしろプラスになる面があるというような、そういうことが立証されぬと、審議を進める場合においても、何も利点がないじゃないかということに当然なるのです。ですから、お伺いしたいことは、そういうことに対して、この設備整理を契機にして、生産者原料価格面とかあるいは低賃金だといわれている労働者に対する改善の面に貢献する点が果して出てくるかどうかということを、特に高田さんあたりから聞かしてもらいたい。その点はどうですか。
  72. 高田利七

    高田参考人 ごもっともでございます。私どもがアイドル・コスト整理しまして得ましたその力は、あげて設備の近代化と合理化という線に持って参りまして、そのことが生糸の総原価の引き下げになり、競争力を増すことになり、同時にそれが製糸経営の安定を来たすゆえんになり、それは必然的に労働賃金の改善の力になると思うのでございます。現在ではまことに賃金水準の引き上げの必要とその熱意をいかに持ちましても、あまりに余力がなさ過ぎるということを、この面からできる限り打ち出して参りたい、またある程度打ち出せるものだと信じているわけでございます。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に茂手木さんに一点お尋ねします。これはあなたのなわ張りになると思うのですが、いわゆる無免許のかま、俗称やみがまといわれているそうでございますが、やみ座繰の場合は、私の手元にある資料によると、八百十一人で七千八百五十台ということになっている、正規のかまは、それ以外に正規の業者で許可のないかまを持っているのが四百五十人で約三千二百台、全くの無免許が三百二十六人で二千二百台ということになっておるのです。ですから今度の場合は、やはりこれを全く放置しておいてはいかぬのではないかという声もだいぶあるのですが、それはもう既成事実的なことになっちゃって、やみといったって、それほどこれは不正とかけしからぬというほどのものでは、現在はないのです。一つの看板であるということさえもいえるのですから、この場合この座繰の整理とか何とかやる場合においては、やはりこれらも一つの問題として取り上げられてくると思うのですが、今度の整理をやる場合には、やはり業者間の自主的な調整組合というものができて、そうしてこの方針を貫いていくためには、そのアウトサイダー規制命令等が出せることになるわけです。そういう場合にはむしろ茂手木さんの関係の面にいろいろな苦労とか混乱が起るような事態もないとはいえないわけなんですが、この点に対してはどういうような具体的なお考えを持っておるか、その点はいかがですか。
  74. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 ただいまやみ座繰のお話が出ましたが、やみ座繰に大体三つの系統があるのであります。一つは戦争当時、不要といいますか、不急設備を持っている小さな製糸家を整備いたしまして、そのころから二百五十円かなんぼ払って整理した。業者はそれに賛意を表して整理された、普通の今の高田さんの製糸協会に属すべき人人があるのです。その人々が戦後何もほかにしょうがない。あのときは不急設備だから、整理に応じたが、今日になると自分の熟練した仕事だからこれに帰りたいというのでやられた方。それからもう一つは、府県知事が認可しております蚕糸業法によるところのいわゆる足踏みという業者がある。この足踏み業者が次第に近代化の設備を設置いたしまして、そうして機械繰業をした。もう一つは全然根底のない——蚕糸業というものは非常にいいのだという考え方で飛び込んだ、全然無認可、無免許の連中があるのでありまして、歴史的の伝統もなし、何もないので、これが一番やみの悪質でありまして、それでない、かつての製糸業者が復元を意図して作ったのと、府県知事の認可を基礎として業務を営んだものとありまして、この三つの段階にやみ座繰が分れております。もう一つは、今芳賀さんのおっしゃったように、三つなら三つ免許がまがあって、十なら十回す。そうすると七つだけは全然影も形もないものを回しているという業者、こういうふうになっているのがありまして、これをどう整備するかということは、各県においてこれを考うべきであるという考え方ではありますが、大体の方針は、お配りしておる全国協会の方針によって整備をいたさぬければならぬ、かようにいたして業者の轍鮒の救を救わねばならぬというのが現在の考え方でありまして、業者もこれには納得をいたしておるのであります。全然アウトサイダーの連中は、政治勢力を利用して反抗する面もあると思うのでありますが、かようにいたして業界をもし混乱に陥れるするならば、今の蚕糸業の根本問題であるかま数が非常に混乱の状態に陥って参りますので、この点はよく皆さんに申し上げておいたのでありますが、業者の中には、憲法十二条、十三条の営業の自由を主張する方もあるのでありますが、また一面において、蚕糸業輸出を主眼とする産業でありますので、私は二十三条の公共の福祉に暗影を投ずるような問題があってはならぬという考え方を皆さんと相談申し上げておりますので、これは各県の首脳部がひとしく承認しているものでありまして、かようにいたして今の混乱状態から全部の蚕糸業を正常のすっきりした形に戻したい、こういう観念でありまして、その間労働問題も起きるだろうし、そうしてまた業者それ自身の要望もありましょうし、そういう問題で私の方の繭がまの整理に対する考え方は、実は昭和二十九年に寺内蚕糸局長の際に、この整理問題が一度国会の委員会に上ったのでありますが、その際寺内さんは、当分の間今まで整備は見合せだと言ってさっさと退却なさったのであります。そのときの業者の分布状態は、やみがまをしておるものの九五%以上でありましょうか、それは農林省の整理に賛意を表しておった。あと長野県に十二、三人あったのでありますが、この陳情によってくつがえったのであります。そういう歴史的の問題でありまするので、その際整理ができなかったために、——その際は大体四千かまくらいのやみがあったと思います。そこで、それが整備できないで、これは何をやっても差しつかえない、蚕糸業法違反であろうが何であろうが差しつかえないというので、とうとうたる勢いで、今の七千五、六百かまのやみになったのであります。これは業界としては遺憾しごくだと考えております。
  75. 栗原俊夫

    栗原委員 時間もだいぶ切迫して参りましたので、ごく数点だけをお尋ねいたしたいと思います。先ほど来参考人の皆さんのお話を聞いておりまして、日本の蚕糸業の振興が輸出増進にかかっておる、こういうことは全く同感でございますが、輸出の振興は、先ほど来皆さんの御意見の中にもありました通り、いろいろ条件があると思います。まず値段が国際価格でなければならぬ。これに関連して製糸過程における合理化も必要でありましょうし、また技術的には設備の改善も必要でしょうし、また原料繭の安価であることも必要であると思うのです。今度の蚕糸業界のこういう行き詰まりで、これを打開するのに製糸設備を改善して、何とか合理化する、こういう法律案が私は出てくるものと思っておったところが、出てきたのは、現在の製造設備処理してそして輸出増進をはかろう、こういうことです。今の設備を減らしてコストを安くしよう、これは勢い、先ほど来アイドル・コストを切るのだ、こういう言い方をしておりますけれども、最も端的に言えば、やはり原料繭を安く買おうという意図が多分に含まれた法案だと私は思う。これはいま一つ裏を返して考えますと、先年蚕糸業法の十五条の二を設定して、蚕繭処理方法でいろいろ苦労してきた。私は群馬県の出身で、その十五条の二をいろいろやってみて、要するに繭糸業者に眠り口銭をくれて買うなと言い、国用業者には調整繭をやるから買うなと言って、これは独禁法違反になる、あの訴えの提訴人は私です。そうして独占禁止法に違反するとはっきり判定が下りました。その後蚕繭処理がどうもうまくいかぬ、何とか蚕繭処理を一応繭安に持っていく手段としてはこれ以外にないというのが、今度の設備制限となって出てきた、私はこう理解しておる。そういう観点に立ってお尋ねするわけです。従ってそういう行き方は、今確かに設備が多くて原料繭が少い。従って繭に関する限りは売手市場だ。これを設備制限によって買手市場に変えていこう、こういう意図が歴然たる法案だと、こう私は思う。こういう観点に立って北原さんにお伺いしたいのですが、少くとも養蚕農民立場に立てば、売手市場を買手市場に変えていこうという意図が歴然と見える。これは北原さんと私の見解の相違ということになるかもしれませんけれども北原さんが製糸家の立場から言えば、日本の全蚕糸業立場に立って云々という主張もこれはありましょうけれども養蚕農民の代表としての立場に立って、そうした売手市場が買手市場に変えられようとするこの法案に対して賛成という答えは、どうも私は納得がいかぬのですけれども、これはいかがですか。
  76. 北原金平

    北原参考人 臨時措置かま数整理の問題が繭価に影響がある、ことに今の売手市場が買手市場になるという線が濃厚に看取されるから、養連がそれに賛成することは納得いかないじゃないか、おかしいじゃないかというように承わるわけでございますが、これは先ほど来申し上げましたように、繭の取引のあの姿から見、現状実行場面を見るときに、私ども団体強化をしていかなければならぬという線がくずさ而てくる。私どもの精神運動の足りない点はこれは十分認めなければならぬが、さりながら現状から見て、私どもの共販体制、そうしてわれわれが団結によって会社に対等の地位に立とうとしておる線が、くずれてくることも一つ否定できない。それが主なる原因でございます。それからその結果が繭値に及ぼす、また安くなるという心配はないのかというお尋ねは、これはあると申し上げなければならないと思います。従いまして養連の今申し上げておることは、実は最後にもう一度発言を求めて意思表示をしておきたいと思ったわけでございますが、蚕糸業法改正による審議会において、ほんとうにそうした姿の現われない方法、時期を審議していただくということを前提として、この場合賛成しておく、無条件賛成ではないのだ、そこに今後努力していく余地を求めていきたいということは、先般来申し上げておる通りでございます。これをいわゆる三割が適正であるかどうかということについては、まだ私ども研究をしておりませんが、世間が言う、あるいは製糸協会のおっしゃることを一応聞き流しておる姿であって、私どもの念願することは、見ようによっては非常に危険性のある案である。またここだけを論ずることは、先ほど来高田さんも言い、私どももそう考えておるのだが、現状を緩和する一つの手段としてはなるが、根本策の問題をどうしても立てなければならない。その線が確立すれば、当然この問題も取り上げられて論議研究すべきだというのが、私ども考え方の立て方である。しかしその問題がここまで進んで参れば、今申し上げましたような審議会の議を経ていくということを前提として、賛成だということを申し上げておるわけでございます。この点もそういうわけでございますから、先生方もよろしくお願いいたします。
  77. 栗原俊夫

    栗原委員 それでは続けてお伺いしますけれども、先ほど来同じことを御答弁なさっておるのですが、審議会ができて、審議会蚕糸業全般の施策考えた中から、いろいろな一こまとしてこれが出てきた、こういうことなら、また賛否も別になろうと思いますが、まだ審議会ができるかできないか、並行して出てきておる。従って農民の立場からすれば、まず審議会を作って、審議会の中からこういうものが出てくるかどうかということをあらためて審議すべきであって、それまでは賛成ができぬ。条件つきで賛成ということが、果して末端の農民の意思である、どうかということは——私は農民の中を歩いております。今回の凍霜害でも全部歩いてきて、こういうことをやるのだ、こういうことになるのだけれども、どうだと聞くと、末端農民は全部反対しております。その末端農民の反対が農協を通じ県段階を通じ全国段階へくると、条件付だけれども賛成という答えになっておる。これは重大問題で、形の変った問題が伏在するような疑惑を農民は持ちますよ。それでなくてさえ全購連でああいう問題が起って、県の段階とか国の段階はおれたちのほんとうの代表じゃないのだと考えておるときに、末端の農民がその内容を知って反対の声があるときに、それは政治的な考え方からすれば賛成という答えとなるかもしれません。しかしそれは政治的な考え方であって、養蚕農民立場に立ってここにおいて御意見を発表するとなれば、反対という声がたとい一人でも、農民としては反対だけれども政治的な総合の中からはこれができ上ったのだ、こういう形になっていかなければ農民は承知せぬと思うのですけれども、農民の代表としのて北原さんいかがでしょう。
  78. 北原金平

    北原参考人 ただいまのは農民の代表のあり方としては違うじゃないかという御意見だと思います。最後の方針のきまるその姿まで反対意思表示をしてそれからいく、これも一つの歩き方だと思います。またそれが一般にわかる歩き方だということもわかりますが、この場合その道をとらずに、向うを見越したといいますが、結局ここへ落ちつくのじゃないかという見通しをつけましたときに、今の姿でこういうことが物足りない、この点は御考慮をわずらわすという行き方も一つの歩き方だと考えております。あとの道をとっておるのでございます。その辺よろしく御了承願いたいと思います。
  79. 栗原俊夫

    栗原委員 これは見解の相違でやむを得ぬです。私は農民の一人なんですが、そういう農民団体の代表の考え方が農民団体の団結をくずしておる一番大きな誘因になっておると思うのですよ。農民の心持をそのまま表示すれば、それがそのときの情勢によって破れても農民は納得すると思うのです。要するに蚕繭処理がうまくいかないのもそこに大きな原因があるのですよ。農民だって共販でもっていくことがいいことぐらい知っておるのです。しかしその共販の過程が農民は納得いかぬ。おれたちの繭を売る前に技術指導費をもらっておる。群馬県あたりでは製糸家から一億円ももらっております。一億も製糸家からもらって、おれたちの繭が高く売れっこないという考え方に立っておるから、共販が幾らたがをかけようとしたってかからない。ここに根本原因があるのです。こういうことを改めずにただ法でもって縛っていったりそういうことをしたって、一方においてはおれは自由なんだ、先ほど言ったけれども営業の自由もあれば百姓だって自由だ、こういうことを近ごろのお百姓は言い出します。そういう上に立って、結論的にはどういう答えが出るかは別として、やはり農民の立場に立った人は農民の立場で最後まで貫いてくれる、これならほんとうにこれを心棒にしてまとまっていけるのだ、結論はいろいろの情勢でこうだったのだ、こう納得がいくと思うのです。それをいろいろ政治的な御配慮から、この方がすべてが円満にいくんだということで、農民の気持中間で少しくまるめて円満に持っていくところにむしろ農民の団結のくずれていく根本原因があり、それが蚕繭処理というものをくずしておると思うのです。もちろん農民だって一文でも高く売る方がいいですよ。しかし共販態勢から一歩抜けることは決して快くは思っていないのです。抜け売りをして高く売ったって仲間から白い目で見られることはいやだと思っているのですよ。しかしやはりほんとうに安心できぬということ、それからいま一つは先ほど言った指導費の問題等々があるので信頼ができぬ。こういう不信感が今の蚕繭処理をくずしておるのだ、私はそう考えるのですが、この点どうでしょう。非常に根本の問題に触れるのですが、蚕業指導費のあり方について、これは非常に重要問題なんですが、どんなふうにお考えでしよう。
  80. 北原金平

    北原参考人 蚕業指導費のあり方に参ついて御意見を承わったわけでございますが、あながちこの態度ばかりをとっておるわけではないのであります。先年の審議会のときの態度も今前段でおっしゃった態度をあのときはとることが妥当だと思って断じてとった。今は社会情勢をいろいろ考えた結果結論がここへどうしてもいってしまうとしたときにはいたし方がないじゃないか、むしろここでしっかり条件をつけてということが妥当だと考えたので、いつもこの態度ばかりとっておるのではないということだけを御了承をお願いいたします。
  81. 栗原俊夫

    栗原委員 次に丸岡さんにお伺いするのですが、丸岡さんの方も賛成の結論であるというお話を聞いたわけです。先ほど六千かまほど今遊休のかまがある、しかもそのかまには労働力というものは配置してない、従って六千かまだけ制限するならばこれはもう問題が起らぬと思うのですが、大体三割を目標にしてやれば一万五千かま、こういうことになるとやはり労働関係に問題が出てこようと思うのです。そういう点はきれいに割り切っての上の御賛成の御意見なのでございましょうか。
  82. 丸岡芳治

    丸岡参考人 その前に、われわれがなぜ昨年蚕糸振興会議を提唱し、製糸協会との間に振興会議を持ったかということについて一言申したいと思うのです。それは過去第七次までの賃金闘争をやって参りまして、先ほど申し上げましたように、全体産業の中から見ればほとんど最下位にひとしいような低賃金にわれわれは置かれておるわけです。そういった過表の賃金闘争の経験から見て、やはりわれわれの労働条件を引き上げる面において現在の蚕糸業の産業構造においては、もちろんわれわれと経営者の力関係ということに最終はなってくるわけですけれども、ある面においては限度があるのじゃないか。やはり蚕糸業と申しましても当面する相手方である製糸業自体が再生産条件に少しでも乗っからなければ——同一労働同一賃金の原則は第二次あっせんで増田労働大臣のとき出されながら六〇%の賃金になってきた。それがやはり一つの根本的な原因としてあるじゃないか。そういう面においていわば卵を大きくするためには鶏を大きくしなければいけないということで、蚕糸振興会議製糸協会との問に持ったわけです。そういう意味におきましては、われわれは他の労働団体なり評論家の間に批判されております。あまりにも経営者側の考え方の中に飛び込み過ぎたという批判はあったわけです。しかし振興会議を持った過程においていろいろ出された問題の中で、設備処理の問題もその中の一環として出されました。もちろん全蚕連としてはこれには当時反対をしたわけです。ただ先ほど来申し上げましたように、蚕糸振興会議の中においては蚕繭処理の問題、それから設備問題、中小企業安定法の問題、あるいは品質表示宣伝等の問題、そういうような柱として取り上げた問題の一環としてこの問題が出されまして、そしてわれわれの方としては一応端的に申し上げますと、われわれに降りかかってくるところのものは意識しながらも、この際製糸業全体がよくなるためにはやむを得ないじゃないか。昨年のちょうど今ごろ多勢金上が閉鎖しましてから現在すでに八工場が工場閉鎖、全員解散を受けておるわけです。そういうふうな年々迫りくるところの雇用の切れというものをやはりわれわれは根本的に解決をして、将来の雇用の安定と労働条件の引き上げをはからなければならない、そういう観点からこの点について認めたわけです。認めたというのはぽっきりこれだけを認めたのではなくて、第一点の蚕繭処理の問題から始まるところの一連の政策の一つとしてわれわれは認めてきました。その点においては現在出されておる結論にはわれわれは非常に不満を持っております。先ほども申し上げましたように、これには付体的条件と申しますか将来において蚕繭処理は円滑になるように、そして蚕繭処理に伴うところの冗費、原料、副費等の冗費が節約され、そしてまた地盤等の不合理によるところの冗費も節約され、そのような正当な蚕繭処理が将来できるということ、そしてまた設備処理の問題につきましても、これがさらに逆淘汰にならないように、あるいはやみ座繰が発生をしてかえって何にも効果がなかったという現象が将来起きないように、そういうことをひっくるめて非常に遺憾ではあるけれども現在の策としてはやむを得ないんじゃないかという意見を先ほど申し上げたわけなんです。なおその雇用の問題につきましては、確かに六千がま以外のものについては、あるいは問題が発生することがないとは断言できないと思うのです。しかしそれは即人員整理につながるものではなくて、合理的な配置転換あるいは県内業者における吸収などによって、そのケース、ケースについて対処していきたいと考えております。
  83. 栗原俊夫

    栗原委員 時間がありませんので、これで最後の質問にいたしますが、結局日本の蚕糸産業が求めるのは輸出増進であります。しかし国際価格の中に、製糸資本の生きる、製糸労働者の生きる、また原料生産の農民の生きる生活費の積算がないと思うのです。従って、ないものをお互いにどっちへなすりっこするかというのが、実際における日本の蚕糸業の宿命ではないかと思うのですが、こうしたものをいかにやるか。結局やはり国の財政で国是産業としての蚕糸業を救うという大きな手を打たなければ、しょせんこの問題の結論は出ない、私はこう考えておる一人なんですが、そうした大きな観点に立っていかにやるべきかということを、今度の蚕糸業法の一部改正でできる会議で早急にやる。こういう行き方もその系列の一つとしてある。こういう行き方ならばいろいろ論議できましょうが、今いきなりこれをぱっと取り出すということは少し無理だと思うのです。蚕糸業振興審議会の設置によって、急遽基本的な日本の蚕糸業のあり方を打ち立てる。それはなかなかできぬと言えばできないでしょうけれども、おそらくこれだけやるとまたほかへ必ず混乱がいくと思うのです。全体的に押さえていかぬと、一ところを押えればほかへ必ず吹き出してくる。そういう状態なんです。先が国際価格で押えられて、その中にあらゆる段階があって、生活費の積算がないのですから、押せば片一方がひつ込むにきまっているのです。これをどうやっていくかという基本的な対策を立てるのが今度の改正法の中にある振興審議会の、緊急しかも重要な任務だと思う。だからこれを無理にやらず、一日も早く蚕糸業を促進させる方向に行くべきだと思うのですが、それぞれの立場から御意見を発表していただきたいと思います。
  84. 北原金平

    北原参考人 筋道はおっしゃる通り、同感でございます。その主張も政府当局に向ってしております。ただし、全養連といたしましては、先ほど来申し上げましたような現実を見るときに、急速にそれをやっていただくことは——大臣もして下さると思いますが、一応それまでその線に沿っていくことは単協としての姿から考えてやむを得ないではないか。従って、原則としては一部改正を一分間でも先に通すべきではないかと思っておるが、政府にも立場があり、考え方がございますので、かくするという線がある。かくするとは、一しょに出すぞという方向をも承わって、その方向を変えていただけなかったならば、審議会において根本的な案をすぐ立てていただくと同時に、その問題もやはり審議会で論議、研究すべきではないか。だから、全養連の立場としては、無条件でないということは先ほど来申し上げている通りで、この現場におる苦衷を一つお察し願いたい。
  85. 高田利七

    高田参考人 同じことを申し上げることになって恐縮でありますが、製糸設備制限は実は私ども自身の問題でありまして、私ども自身がこれを打ち出して善処しなくてはならぬことなのでございます。しかしながら、自身がやるにつきまして、今度のこの法案はやれる手段を与えていただくという建前のものだ、こう考えております。従って、私ども合理化していく、コストをセーブしていく、そして購繭費のむだを省くというふうなねらいを一刻も早く打ち出さなくては立っていけないほど製糸業経営は今追い込まれておる状態でございます。これを実行しますのには二年、三年とかかりますが、われわれ自身すぐにもこれに着手さしていただきたい。それにはこの法案によってその手段を与えていただきたい。これは今の根本策を立てていただくという問題とは矛盾しないでやっていける、こう私は考えております。
  86. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 かま整理製糸業界の方でなさるという問題は、実は現在はさんたんたる状態になっておりまして、全く急を要する問題であります。理論から申すと、根本問題を先にすべきではないかとおっしゃるが、全くその通りであります。ありますけれども、これを並行してやっていただくことがきょうの蚕糸業を救っていただくことになろうと考えておりまして、この点は高田さんとほぼ同じような見解を持っております。
  87. 栗原公司

    栗原参考人 私ども玉糸立場は先ほど申し上げた通りでありますので、玉糸業界といたしましては、三年も前からこの問題は取り上げておるのであります。さらに根本施策を講じて云々ということではチャンスを失うと考えますので、審議会においてまた日にちを重ねて云々ということより、早急に必要であることを痛感しているものであります。過去の状況を申しますと、玉糸業界におきましては、先ほど茂手木参考人からも発言がありました通り、機械座繰とちょうど同じように、機械玉糸設備そのものの認可は現在いまだに地方長官にゆだねられている。さらにその中に、手回しがままたは手がまといいまして、許可制度に三種類ある。それらが終戦後の八、九年の間玉糸輸出の増長に比例するならよいけれども、それをオーバーいたしましてどんどん機械設備に転換をしている。それと逆比例いたしまして、玉糸の主原料である玉繭は毎年減産しております。品種の改良あるいは飼育改善等によりまして玉繭は減産の一途をたどっている。一方玉糸海外の消費は年々増加している。昭和二十三年度に四千俵か五千俵しか輸出しなかったものが、三十一年度には一万八千俵近く輸出しているというような実情でありますので、海外の要望にこたえるためにも、品位保持の面からも、また許可権が地方長官にあるという面からも、いまだに手がまの免許可のものが全国に千かま近くあり、それらが知らずの間に機械設備に転換しているというような面からも、この設備措置法を契約といたしまして、すっきりした姿に許可制度のあり方自体をすべき時期ではないか、こういうように考えます。
  88. 石井栄蔵

    石井参考人 私は業界とは何ら関係がございませんが、私の考えておりますところは、現在の蚕繭処理状態から見て養蚕家はほんとうに安心し切って繭を生産するということよりも、往往にして繭代の遅配、欠配があるやに聞くことがあるのでありますが、この整備のことによって、そうした製糸業界経営が多少なりとも安定して、繭代金の遅配、欠配等のないようになることを念願して、この法案に賛成したわけであります。
  89. 丸岡芳治

    丸岡参考人 蚕糸業振興審議会が発足していろいろ御検討願うと思うのですが、業界状態を見てみますと、私たちも決して繭価を安くするとか何とかいうことは考えておりません。適正な繭価、適正なわれわれの賃金、そういう点から考えますと、私たちの女工さんの能率給は平均二百円です。各人の点数によって平均二百円になるようにその中でぶんどりをしておりますが、業界全体がまさにぶんどり式の能率給のような状態を呈しているということは非常に遺憾だというふうに思っております。全体的な産業構造において、現在の蚕糸業全体が、端的に申しますと、ほかの産業から搾取されている関係産業構造の中にあるんだ。現在にわいても生糸並びに絹織物の外貨の純獲得額は五番目か六番目で、ことに米ドルの獲得額においては常に一番、二番、三番あたりを占めている。そういう状態の中で、全体の収支に貢献しながら、蚕糸業全体が非常に苦しんでいる。もちろん蚕糸業の中におけるところの今まで論議されましたことについては整備をされ、気持のいい姿に持って場いくべきであると思いますけれどもやはり将来においては国家の全体の産業政策の中から検討していただきたいということが第一点でございます。  第二点として、生糸の商品自体を考えてみますと、現在において明治年間以来のかせによる出荷というものは非常に頭打ちになっております。と申しますのは、御承知のように、一デニール当りの強度は三グラムです。ナイロンあたりは十グラム程度の強度を持っております。そういう関係で織物の機械その他の機械類がすでに高度に発達してきていまして、現在の出荷状態で両用途において絹は好まれておるけれども、機械的にシャット・アウトされているという現状はすでに国内においても福井、金沢あたりに現われております。そういう方面の改革とかあるいは繊維としての総合対策というものを考えますときに、やはり一ぺんには無理かと思いますけれども、そういう分野については通産関係の所管にすることがけっこうではないかというふうに考えております。そのような希望を申し述べさせていただきます。
  90. 木下信

    木下参考人 私は蚕糸業のすべての団体がほんとうに心の持ち方が一致して握手をすれば、すべてが解決すると思う、こう解釈しております。従って賃金のごときも紡績並みに払えることが何年たったら来るか。私は今度の企業整備でも、紡績並みの賃金を払える企業整備をすることが理想だと考えます。これは賃金ももちろんでありますが、繭代金も、現在の繭代金を引き下げずして、賃金は紡績並みになるという理想をもって進みたいと思います。これには抜本的な機械対策ということもあると思う。  私蚕糸業を営んで、あの有力なトヨタの工場を見ますと、その刺激を絶えず受ける。トヨタの労働者代表が役員との話し合いの中で、こういう機械を買ってくれ、そうすると、またたくさんこしらえるわけです。これなんです。機械は三年見ないと、トヨタの工場はがらっと変っておる、きわめて優秀な機械が入っておる。機械が八五%仕事をすれば、人間は一五%でいいんだということになりますから、人間の待遇がよくなることは当然なんです。最近鉄が八万円しているといわれている。八万円しているときに、原料も値上りしているときに、それにもかかわらずトヨタは自動車は七万五千円値下げをする、またその次に値下げをすると言っております。これは終戦後工員一人当りの能率が十五倍に上っております。残念ながら製糸業は十年前も今日も大した能率の増加はないんです。養蚕製糸とも非常に小さい。これは実に遺憾なことである。養蚕は反当収繭高をふやさずして養蚕者の生活の向上はないと思う。もし同じ貫数で繭を高く売ったならば、商品も高く売るわけですが、買うものが高くなるから、生活の向上にはなりません。生産高をふやして、その範囲内で給料をもらう、これでこそ生活向上になる。物価を高くせずして給料だけが値上りになる。二の根本原理をはき違えて、お互いに自分のことはほうっておいて、人のせいだ、われわれはこれでいいんだ、いいんだが、繭が高過ぎるから、繭を下げればいいじゃないかという製糸側の考えは排斥すべきだと思います。繭は今のままで行くんだ、それで自分を改めてなお利益を得ていくという考えの人が栄えると思います。必ずこの人は生活向上ができる人だ、私はそう考えます。いわゆる人の犠牲において自分が生きようというこじき根性は排斥すべきものであります。私は製造業者としては特にそこに徹すべきだ、こう存ずるのであります。
  91. 小枝一雄

    小枝委員長 これにて参考人に対する質疑は終了しました。  参考人各位には御多忙にもかかわらず本委員会に御出席下さって、長時間にわたり貴重な御意見をお述べ下さったことを厚くお礼を申し上げます。    本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十九分散会