○谷垣
政府委員 今
植村先生のお尋ねの点は私は非常に大切な点だと思うのでありますが、おそらく御
指摘になっておる点は大都市近郊で、従いまして小さい面積のところで乳牛を専門にやっておる形、市乳をやっておるところにおける問題が御不安なのではないかと思います。
日本の中で、単に北海道だけではございませんが、そういう大都市で市乳地域としては非常に恵まれ、そのかわり都市近郊であるために土地は非常に狭いというものだけでなく、かなり広い土地を持ち、広い草地を持ち、そしてそれを高度に耕やしますれば、十分にえさの給源が開拓されるところが非常に多いと思っておるのであります。たとえて申しますれば、もし一反歩の畑地から三千貫の牧草がとれるといたしますれば
——このことはそうむずかしいことではないのでありますが、そうすると年間十六、七石程度乳を出しておりまする牛がおそらく百二、三十日は十分に飼えるでありましょう。牧草あるいは青刈り等の栄養分の高いものを、しかも一番養分の多い成長期に取りまして、それを牛に与えていくこういう従来の実取り農業とは根本的に変った新しい方法を
考えますと、
日本では山地で草を取るということにとどまりませず、相当に酪農を進めていく道が多いと思っております。事実またそのような形において
発展しておるところが非常に多いのであります。ただし、おそらく先生の御
指摘になっておられると思います都市近郊、ことに関西等の非常に面積の狭い、しかも乳牛を何頭か飼っておるというような地帯はいささか例を異にすると思いますが、そういうところは、先ほどお話のように、乳を得るための一種の機械という形において牛を搾取して、そして乳を出さしておる。これも確かに経済道具でありますので、十分それはそれなりの意義はあると思っております。そういうところではもちろん購買飼料というものに依存せざるを得ないのでありますが、えさは
海外の相場等に影響されるところが非常に多いので、できるだけそういう外からの経済変動を受けましても堅実にやっていけるような
経営を私たちとしては奨励せざるを得ないのでございます。もちろん飼料需給安定法等の制度がございまして、そういう近郊地帯の購買飼料に非常に多く依存しておるところに対しても、安定した形において安い飼料を出さなければならないことになりますが、経済原則というものもございますので、そういうところよりももっと余裕のあるところで、牛を
農家経営の中に確実に入れ込んだ
経営が望ましいのではないかと思います。しかし、事は経済問題でございますから、乳をしぼる機械と
考えて、そうして乳をしぼり尽して早く死んでもいい、その間に、高いえさでも乳が市乳で高いですから、それがペイすればいい、こういう
考え方も
考え方として成り立つと思います。
それからもう
一つ、このように非常に
生産が伸びて、もしも過剰になれば一種の恐慌
状態がくるのじゃないか。それは、私もその
通りだと思います。しかしそれがどのような程度にくるかということと、その広さがどうであるかということは、長期の見通しの問題とは少し違うのではないかと
考えております。先ほど申し上げましたように、これだけの
生産をいたしましても、たとえば学校給食の問題にいたしましても、これは外国からの膨大な脱脂粉乳によってまかなわれており、ほとんど
日本の脱脂粉乳は使われていないので、この方に残された利用
分野がございます。そういうものを
考えますと、
日本の乳の
生産は、それが相当程度
海外と
競争して
競争し得る合理的な形において
発展していきますならば、それほど私は心配する必要はないと
考えております、ただ短期間の成長
過程の若干のずれが非常に大きな問題となってくることは御
指摘の
通り、あります。これに対する
対策いかんということですが、これは私たちまだ現在結論を得ておりません端的に申しますれば、これが一番よいという方法を得ておりません、ただ、乳はあのような性質のものでございますから、これをどう保管していくかという非常にむずかしい問題が実はございます。乳で一番保存しやすい形といいますれば、おそらく脱脂粉乳とバターということになろうと思います。しかし、脱脂粉乳とバターといえ
ども、これを数年保管をすると非常なロスが生じます、あるいは過剰で乳価が下れば乳牛の値段が下るであろうから、牛そのものを飼ったらどうかという議論もあるかもしれままん。それも
一つの方法として
考えられると思います。しかしなら、まだこれが確実によいという成案は得ていないのであります。そういうふうにいくまでにいろいろな手か残っておるのではないか。たとえばまだ
生産費調査すら満足すべきものを私たちは得ていない。
生産費調査をもちろん数年やっております。しかし、いろいろ
状況の違います全国の農業地域全体にこれを及ぼすためには、もう少し拡大をいたさなければならぬ、そのような
観点から、今年度お認め願いました
予算で、
生産費調査の方式を拡大いたし、あるいは乳の
生産五の予察を今後三カ月ごとにいたしたいと
考えております。そうしてこの数量を
関係者に公開いたしまして若干の自主的な判断の材料にいたさせたいと
考えておるのであります。さらに、まだわずかな円でありますが、この数年続けております施設を今年は若干変更いたし、バター及び脱脂粉乳が過剰になりました場合、学女給心あるいは結核等の患者に対する特別な販売という形で一般
市場から切り離したところに放出して、その価格差の若干を国から補助するようにいたしたいと
考えておるわけであります。そういう形の民間の
一つの組織による一種の自主的な調整作用というものが、従って現在目前の問題として
考えられるかと存じております。