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1957-04-26 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十六日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 稲富 稜人君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    植村 武一君       椎名  隆君    中馬 辰猪君       永山 忠則君    本名  武君       村松 久義君    阿部 五郎君       赤路 友藏君    足鹿  覺君       伊瀬幸太郎君    石田 宥全君       楯 兼次郎君    中村 英男君  出席国務大臣         農 林 大 臣 井出一太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君  委員外出席者         公正取引委員会         委員      芦野  弘君         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      松田 寿郎君         農林事務官         (畜産局飼料課         長)      森   博君         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      保坂 信男君         農林事務官         (蚕系局繭糸課         長)      古西 一郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月二十六日  委員大野市郎君及び山田長司君辞任につき、そ  の補欠として植村武一君及び穗積七郎君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  生糸製造設備臨時措置法案内閣提出第七八  号)  蚕糸業法の一部を改正する法律案内閣提出第  九五号)  牛乳集荷及び酪農振興対策に関する件     —————————————
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。  生糸製造設備臨時措置法案及び蚕糸業法の一部を改正する法律案一括議題といたし、審査を進めます。  まず二案について補足説明を聴取することにいたします。須賀蚕糸局長
  3. 須賀賢二

    須賀政府委員 私から、今回御審議をお願いいたしておりまする二法案につきまして、補足をいたしまして簡単に御説明を申し上げたいと思います。  初めに蚕糸業法の一部改正法律案について申し上げます。現在の蚕糸業法は、相当古い法律になっておりまして、これを最近の状況にかんがみましていろいろ手直しをして参らなければならない部分が出て参っておるわけでございます。従いまして、われわれといたしましては相当以前からその内容につきまして検討を進めて参ったのでございまするが、何分にもいろいろ問題の数も多うございまするし、またそれらの問題につきまして、蚕繭処理問題一つを取り上げてみましても、他の独禁法あるいは農協法等にいろいろ関連のある問題でありまするので、相当慎重な検討を要するわけでございます。従いまして、今回はそれらの問題を総ぐるみいたしまして、適当な機関で事前に十分検討審議を願うことが必要であると考えたわけでございます。さような趣旨で蚕糸業振興審議会を設けたいと考えまして、その設置に必要な根拠規定蚕糸業法の中に置きたい、それが今回の蚕糸業法改正の要点でございます。  お手元蚕糸業の概況と今後の重点施策という題名の資料が差し上げてございますが、これの六ページ以下に蚕糸業振興審議会設置の構想を書いてございます。これでごらんをいただきたいと思うのでございますが、この審議会で御検討いただきたいと考えておりまする問題は、ここに並べましたように、生糸輸出振興対策、これは単に生糸だけではなく、生糸を加工いたしまして輸出をいたしまする部面につきましても、さらに積極的な施策を講じて参りたいという問題を含んでおるわけでございます。それから繭の増産対策、それから蚕糸技術指導強化対策蚕糸関係技術指導につきましては、一般農事と系列を別にいたしまして、現在指導系統を置いておるわけでございますが、これがいろいろな事情によりまして、必ずしも安定充実をいたしました姿になっておらないのでございます。それらの点も十分検討いたしまして整理をして参りたい。それから製糸業合理化対策、これはあとで申し上げまする法律に伴っていろいろな問題が出てくるわけでございます。これらの問題を今回設置いたしまする審議会におきまして十分御検討をいただきたいと考えておるわけでございます。  それから次に生糸製造設備臨時措置法につきまして補足的に申し上げますと、これはお手元資料の十一ページ以下に述べてございまするが、現在の製糸業実態は、以前にも御説明申し上げましたように、産繭量に対しまして設備が相当過剰になっております。はなはだ経営不振の状況を続けておるわけでございます。これをどのように処置して参るかということが数年来の懸案であったわけでございますが、どうしてもこの機会製糸業合理化という問題に取り組まねばならないという情勢になって参りましたので、今回法案の形において御審議をお願いいたしておるわけでございます。かいつまんで申し上げますと、現在の製糸業機械製糸国用製糸、玉糸と三つの業態があるのでございますが、その業態のそれぞれの分野におきまして必要なる整備を進めて参るわけでございます。繭の処理量におきましても、大部分を占めておりまする機械製糸につきましては、現在の設備数の大体三割を目標といたしまして処理をいたしまして、その残りの設備によりまして集中的に生産をいたしまして、能率を上げ、また経営を改善して参るという方向考えておるわけでございます。  なおこの法律建前として申し上げておきたいと考えますことは、この法律はあくまでも、業界が自主的な計画によりまして企業整備をするという問題に取り組みます場合に、それを合法的に実施することができるようにいたしますために必要な法律的裏づけをするという建前をとっておるわけでございまして、政府の側から幾ら幾ら整理をするというようなことを一方的に指示いたすような考え方では立案をいたしておらないのでございます。こういう設備処理共同行為によってやりますことは、現在の独占禁止法等建前からいたしまして合法的にできないのでございまするが、それを合法化いたしますことがこの法律のねらいでありまして、業界自体整理の必要を痛感いたしまして問題を出しておるわけでございまするから、それを実施して参りますにつきまして必要な法律的裏づけをするという建前考えておるわけでございます。  なお実際の整理やり方等につきましては、過般来われわれと業界ともいろいろ具体的に打ち合せをいたしておるわけでございまして、御審議過程におきまして現在考えておりまする点はそれぞれ具体的に十分御説明申し上げたいと考えております。
  4. 小枝一雄

    小枝委員長 次に質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。中村英男君。中村委員にお願いいたしますが、大臣は後ほどまた予算委員会その他へ出席の予定がありますので、大臣に対する質疑を先にお願いいたします。
  5. 中村英男

    中村(英)委員 私は今提案説明されましこ二法案の各論の質問をする前に、これはぜひ大臣質問というよりは所見を伺いたいと思うのですが、ことに大臣農業方面権威者ですし、長野県でして、実際に蚕糸のことは非常に権威者だと思うし、ことに今度は大臣次官蚕糸業の非常に権威者が下られたのですから、おららく養蚕農民製糸家大臣次官施策については相当期待を持っておると思うのです。私どもこうやって農林委員会でいろいろ農業問題を審議しますが、蚕糸業日本農村における大きなウエートを持っているにもかかわらず、私寡聞ですが、あまり農林委員会蚕糸業を論議されたような経過が今までないと思うんです。そういう意味合いできょうは大臣に抱負といいますか所懐というか、それを十分お聞きしたいし、私どももそういう全体的な蚕糸業発達振興について十分申し述べたいと思います。  御承知のように蚕糸業は、日本資本主義発達過程の中では輸出産業大宗として大きなウエートを持っており、農村においても私どもの子供のときには農村における余剰労働力を吸収する唯一の換金産業だったのです。今日、ことに戦後の農村においては、タバコその他の換金作物にだいぶ押されてきて、今では斜陽産業だと言われておる非常に情ない事態に追い込められております。そういうわけで、ことに最近は国内の需要がふえ、あるいは輸出も、生糸は減ったようですが、織物はだいぶん伸びておるにもかかわらず、中共あたり生糸に押されて、製糸業者も非常に気にしておるようです。そういうことを背景にして今度の二法案を出されたと思うのですが、それもくるめて、大臣専門家ですしみんなが期待しておるのですから、所懐一つ述べていただきたいと思います。
  6. 井出一太郎

    井出国務大臣 中村委員から、私が生糸専門家であるという御発言をいただきましたが、私の郷里は養蚕国ではございますけれども、私自身として決しておっしゃるほどこれに対する専門知識を持っておるわけではございません。ただ、ごく常識的に、一般的に申し上げますならば、ただいま御指摘のようないろんな観点から、蚕糸業現状というものは憂慮せられる旧態でございます。過去において輸出大宗としての非常にはなやかな時代を持ちましただけに、ただいまの蚕糸業あり方というものは、過去を知る者として感慨無量なるものを覚えるのでございます。一体こういう形でついに蚕糸業斜陽産業たるの運命をしのばなければならぬのかという課題に対しましては、われわれとしては、ぜひともこれをはね返して参らなければならないという気持を持っておるわけでございます。世界で消費せられます繊維の中で、絹の占めます地位というものは、数量的に言えばおそらく一%にも及ばないということでございましょうが、いやしくも身につける衣服という以上は、単に実用という面ばかりでなく、一つの嗜好と申しますか、奢侈ということは少し穏当でないかもしれませんが、とにかくよりよいものを身につけたい、こういう人間の欲望は、文明の度合いが進めば進むほど強くなるという観点から考えますならば、私は、絹というものに対する世界的な魅力というものは決して失われておらないと考えるわけでございます。従いまして、それがためにはいかなる対策が必要になってくるかということでございまして、中村さんに釈迦に説法のようなことを申し上げるのも恐縮でありますが、戦時中あるいは戦後しばらくの間を通じて、絹というものが世界から姿を消したといえば言い過ぎるかもしれませんが、とにかく十何年かにわたって絹というものは知られなかった。特に欧米の若い女性などが絹のいい糸質を十分認識いたしますならば、市場の拡大の余地はあろう、本年度の予算でニューヨークにシルクセンターを設けるのもその一翼とお考えをいただいてよろしかろうと思うのであります。そういう意味で、海外に対してますますこれの宣伝をしなければならぬと思うのであります、ただいま仰せられました、ロー・シルクとしてよりも織物が近ごろよけい出ておるということでございますが、これもその通りでございまして、さらにこれを一歩進めますならば、染織というような面をもっと大きく取り上げまして、たとえばデザイン等にも思いを及ぼしまして、同じ目方の絹がより高い付加価値を加えるような方向に持っていくのも一つ考え一方であると思うのでございます。そういった海外市場の開拓の問題を考えますときに、競争者としてここに中共生糸というものが現われて参ります。これに対抗いたしますためには、日本絹自身あり方をも振り返ってみなければなりません。たとえば、近ごろよく言われるラウジネスの問題をどうするかというふうなことも検討しなければならぬと思うのでございます。さらにそれにも増して大きな問題は、価格の点における競争ということでございますが、それにはやはりいかにして生産費を引き下げ、そして国際競争に耐え得る条件を作り出すかということに相なるのでありまして、そのための施策といたしましては、やはり養蚕における反当収繭量をどうやって向上させるかという指導の問題にもなると思うのでございます。養蚕行程においてはそういうことが言えましょうし、また今度製糸行程に相なりますと、今回提出いたしておりますこの法案にも盛られておりますように、非常に過剰なる設備を背負っている現状においてはなかなか生産費を引き下げることが困難である。といたしますならば、これに対して合理的な調整を行うことも生産費を引き下げるための一助になろうかと思うのでありまして、それやこれやの方策を講ずることによって糸価をできるだけ安く仕上げて、それが国内養蚕家を圧迫するとかあるいはその他製造過程における賃金を切り下げるというふうなことでなくして、もっと合理的な対策を用いまして絹の生産費を引き下げる努力をしなければならない、このように考える次第でございます。  きわめて常識的なことを大ざっぱに申し上げたわけでございますが、なお御質問に応じてお答えしたいと思っております。
  7. 中村英男

    中村(英)委員 これは大臣のおっしゃる通りと思います。日本輸出産業としての生糸が、将来、過去におけるはなばなしさを取り戻すというか、そういうことのためにはいろいろ問題があろうと思いますが、やはり大臣のおっしゃったように、製糸コストというか、冗費を省き、繭と設備のバランスを保っていくことが当然必要です。今度の法案が出されたということは、そういう意味では非常に時期に適しておる、むしろおそかった、こういうように思います。しかし、ここで業界が一番危惧しておる、また将来日本蚕糸業としては大きく考えなければならぬ問題は、中共生糸欧州あるいはアメリカヘの進出だと思うのです。これを一体どう日本蚕糸業界が扱うかという問題があろうと思うのです。これは幸いに中共との国交回復ということがすでに政治的な議題にも今日なっております。私どもの党では早急に中共との国交を回復して、そうして中共の建設にも協力し、あるいは日本産業興隆にも援助して、お互いにしていこうという、そういう方針は持っておりますけれども、今のあなたの方の自由民主党の立場はいささかそれとは違っておると思うのです。しかしお互いの国の産業興隆という点においては、両党は幾分考え方は違っても、こういう生糸問題一つ取り上げてみても、このまま中共生糸進出を敵対祝してやるということが得策か。あるいは積極的に日本技術というものを——これは、日本技術はおそらく中共より進んでおると思うのです。これをやはり中共に提供し、そうして相互に優秀な生糸を作って欧州なりアメリカに向けていくという意味では、生産者としての共通な立場をもっていくという、そういうことが私は必要だと思うのです。そういうことと、今あげられましたいわゆるアイドル・コスト、あるいはアンバランスを解消するという方法をあわせ行わないと、やはり日本輸出というものは伸びていかない。ただそういうセンター工作っていろいろ宣伝をしても、やっぱりそういう伸びていかないものがあろうと思うのです。これは私は、日本生糸が、今日まで日本資本主義発展のもとで大宗であった、それに甘んじて、今日までそういう温室の中におり過ぎたと思うのです。そういうことのために、端的な言葉をもって言えば、そういう安い賃金で、そうして繭を安くたたいて、それによって輸出を高めていったという、そういう惰性に甘んじておったことが、今日私は斜陽産業といわれるということになったと思うのです。もちろんこれは化繊の発達したこともあるでしょう。そういうことのために、繭と設備とのアンバランスも起きてきたと思うのです。戦前は私もいろいろ若いときにはしたものですが、戦後の状態を見ると、農村において、タバコのごときは直ちに金になる。しかし養蚕は植えて三年か四年しないと養蚕はできないし、従って農家現金収入の道がないというので、タバコに比較しては反当収入は低いですけれども、それでも地域によっては非常に大きな魅力があるいわゆる空間利用の事業ですから、それをやっぱり政府なり県が十分援助して——今日まできたにしても、その援助の仕方が足りぬから戦前養蚕のレベルまで、計画を立ててもなかなかいきにくい面があると思うのです。そういう意味合いで、私は政府の今日とっておる施策というものが非常に手ぬるかった。そういう意味合いで、両法案を出されたことはおそきに失したけれども、私は賛意を表しております。けれどもそのやり方についてはこれからいろいろ考えてみなければならぬと思いますが、先ほど言いました中共生糸進出について日本蚕糸業界はどういう態度をもって臨むべきかということについて、一つ大臣から御所見を承わりたい。
  8. 井出一太郎

    井出国務大臣 対中共の問題は、現在二つの中国があり、台湾政権というものを日本としては認めておるというふうな立場から申しまして、今にわかに一切の桎梏が取り払われて、経済的に技術的にもろもろの交流が直ちに行われるとは期待しがたい面もございますけれども事絹に関します限りは、これはやっぱり今日では東洋の特産物という観点から見ますときに、将来の方向としては中村委員の御指摘のようなところまで考えなければいけまいかとも思うのでございます。従いまして、日本生糸産業あるいは蚕糸政策あり方にいたしましても、戦前とはよほど頭の切りかえをしなければいけない時期になっておるやに思うのであります。たとえば戦前は婦人の靴下に向けられる。こういうことを中心に問題を考えましたから、そこでは繊度の問題とか糸の質が均一でなければならぬというふうな問題が中心であったようでございます。けれども今日は、むしろそういう用途ではなくて、織物なり何なり新しい分野を開拓しなければならぬのでございます。たとえば技術面なんかにしましても、もう少し現実にマッチしたやり方をする必要があろうと思うのでございます。過去、非常にはなやかであった産業だけに、生糸に対しては、たとえば試験場の規模でありますとか、あるいは蚕糸を取り締るというふうな形から、ほかの農産物に比べましてかなり手の込んだ、行き届いた行政措置が行われておると思うのでございます。けれどもその試験研究などにしましても、ただ遺伝学的な非常に微に入り細をうがった研究というふうなものだけでいいのかどうか、そこらも頭の切りかえが必要になるのではないかと思うのであります。現在国の施策として、予算の面など以前から見ると非常に減ってはおりましょうけれども、しかし何としてもこの繭なり生糸なりが、日本農業経済構造の中に占めておる地歩というものは、決して僅少ではございません。ことに平坦部から山岡部へ移るような地帯におきましては、これは何をおいてもほかのものではかえがたい立地条件の好適性を占めておるという場所もございます。あるいはこれが労働の面においても、成年男子に頼らずして相当な労働報酬を得ることができるような性質を持っておりますがゆえに、やはり場所によりましてはこれが他の何にもかえがたいようなウエートを持っている場所が多い。さような次第でありまして、現状はなるほど非常に停滞ぎみ産業という形ではございますが、しかしまあこのところ年々繭の産額も着実にふえてきておるように、私は看取いたしておるのでございまして、国の施策も、この辺に十分な関心を持って当って参りたい所存でございます。
  9. 中村英男

    中村(英)委員 この第一ページの表で見ると、桑園の面積、養蚕農家は、大臣は着実に伸びておると言うが、私はどうもあまり着実に伸びていない、少し低迷ぎみだと思うのです。しかしそれはそれとして、今蚕糸試験場の問題が出ましたが、これは長野県でありますからその辺詳しいことでしょうから、私この機会大臣にちょっとお伺いしておきたいのですが、繭の検定の問題ですね。これが今日、繭の問題に非常にいろいろ関連がございますので、この機会に伺うのですが、今のような検定方式で一体よろしいかどうか。これは実は検査の信憑性はだれも証明することはできません。ですからこれはあなたの方でも、やはり県によって検定の仕方によって非常に違うと思うのです、これは養蚕農家にとってもきわめて重大なことです。今のような検定方式でよろしいかどうか、そういう点をお伺いしたい。
  10. 井出一太郎

    井出国務大臣 検定の問題はここ数年いろいろ意見のあったところでございまして、私も長野県のみならず、各府県からこれを改正せよ、あるいは撤廃したらどうか、こういう陳情にも接したことがございます。けれどもこれは長い歴史と伝統がございまするし、またこの制度があることによりまして、取引の面なども利便を受けておるという点は否定できないと思うのであります。ただいま農林省の方針としては、現状を特に変更するというふうには考えておりませんが、しかしそういう要望のあることは承知をしておりますので、これらの面についても今後の検討に待ちたい、このように考えております。
  11. 中村英男

    中村(英)委員 もう一つお伺いをしておきたいのですが、製糸業者養蚕団体関係ですね。これは御承知のように戦後、県によったら独立して養連を作っております。また県によったら、農業協同組合総合経営の中に含まれておる県もあるわけです、ところが養連という一つ団体ですね、農業協同組合総合経営から離れて養蚕団体連合会を作っておる、これと今の製糸来者との関連が、タバコ耕作組合専売局との関係のように、養蚕農民から言うと少し問題があるわけです。少しというよりは非常に問題があるのですね、ことに養蚕団体貫当り三十四円二十七銭の繭価から費用を出して、この費用養連の経費をやっておるという実態のあるものです。従って養蚕団体が実際に養蚕農民立場に立って、そうして製糸業者と対等な立場繭価の協定をするかどうか、そういう場合に非常に問題があるものです。そういう点で今のような養蚕団体製糸業者関係でよろしいか、あるいは総合的な農業協同組合の中に養蚕団体があってそういう姿で製糸業者と州提携して蚕糸業発展をはかるということがよろしいか、そういう点を大臣はどうお考えになっておりますか、一つ伺いたい。
  12. 井出一太郎

    井出国務大臣 養蚕組合と申しますか、この団体あり方が単一か総合かということで相当期間議論があり、若干のトラブル等もあったことは御承知通りでございます。今それは別といたしまして、製糸業者養蚕団体との間に、これは完全に利害が対立をしておるんだという見方をすべきか、あるいはもっと総合的にながめて、それぞれの立場で相協力をすべきかというような問題はあろうかと思うのでございますが、現状においては、ただいま御指摘のような何がしかの金を繭貫当りに振り当てて、製糸の側から養蚕団体へ交付をされておるというのが現状でございます。それによって養蚕団体活動費の一部がまかなわれる、あるいは技術員などの給与の補給にも相なっておるという形は、私はこれは改善の余地があろうと思うのでございまして、現状が決して好ましい状態ではない、かように考えるわけであります。ただ現実的にはそれぞれ長い間のしきたりなどもございまして、今にわかにドラスティックにこれを切りかえるということは困難かとも思います。将来の方向としてはもっと養蚕家自身が力を貯え、養蚕団体というものが実力をつけて参りますれば、そういう問題が解消するような方向へ行くだろう、そういう期待もし、また国の指導方向もさようにあらねばならない、こう考えております。
  13. 中村英男

    中村(英)委員 大臣予算委員会へおいでになるようですから、大臣への質問はこれくらいにして後ほどお伺いすることにして、他の質問をいたしたいと思います。  局長にお伺いしたいのですが、蚕糸業法あるいは今度の生糸製造設備臨時措置法案、この両案が出される前に、いわゆる日本蚕糸業に対する建議といいますか、献策といいますか、製糸業者並びに養蚕団体から同様な趣旨の建議がなされておるはずだと思うのです。これらの建議について、その中から選択されて二つの法案が出たと思いますが、一つ詳しく、どういう建議が双方の団体からされてきたかということを説明願いたいと思います。
  14. 須賀賢二

    須賀政府委員 今回御審議をお願いいたします形にまとまりますまでの経過につきまして、簡単に申し上げたいと思います。  蚕糸振興の具体的な対策につきましては、業界方面でも問題を真剣に検討いたしておりまして、いろいろの考え方がわれわれの方に提示されたのでございまするが、その中で特に大きい問題といたしまして私ども研究をいたしましたのは、大体の考え方といたしまして、特に繭の流通面につきまして、相当統制的色彩の強い方法を取り入れて参るというような考え方が出ておるわけでございます。構想として出ましたものを申し上げますと、あるいは繭の一元集荷をいたしますために、産繭処理の公社のようなものを作って、そこで一元的に繭を集めまして需要家に配分するといったような考え方、また生産者の側におきましては、現在大部分は農協系統によって集荷をいたしておるのでございますが、一部そのルートからはずれて売買をされるものがありますために、全体の繭処理の秩序が混乱をするというような事実にかんがみまして、農協の集荷機能を法律的裏づけによりまして強化をするといったような考え方もいろいろ考慮されておるのでございます。しかしこれらの問題はいずれも現在の経済法規一般にとられておりまする建前とはかなり大きな差があるわけでありますので、繭の流通秩序の確立というような観点からだけいたしますと、確かにその効果は期待されるような考え方ではありまするけれども、それを具体的な問題として取り上げるには、よほど慎重な考え方をして参らなければならない。特に現在の経済法規一般の建前との調整につきまして、十分な検討を加えなければならならぬというふうに考えて参ったわけであります。従いまして今回蚕糸業法を改正いたしますにつきましては、立案の過程におきましては、ただいま私が申し上げましたような蚕繭処理の秩序立というような問題も途中では、一応かなり具体的に考えまして、関係の方法ともある程度交渉はいたしたのでありますけれども、どうしても最終的にきめますにつきましては、事柄があまりにも重大でありまして、いささか研究が足りないと申しますか、未熟のきらいも免れないという感じが強く残るわけでございます。さような観点からいたしまして、これらの問題もさらに掘り下げて検討いたしますために、審議会等の御審議もわずらわしたい、さように考えておるわけであります。
  15. 小枝一雄

    小枝委員長 この際中村委員にお願いいたしますが、実は大臣の時間の都合もございまして、他に大臣に対する質疑があるようでございますから、暫時お待ちを願います。吉川久衛君。
  16. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 大臣にお尋ねするここのみにとどめて、その他は近日中に近県の蚕糸県の実情を調査した上で局長にはお尋ねをいたしたいと思います。大臣から今中村委員の御質問に対してのお答えの蚕糸業の振興の基本方束を伺ったのでございますが、まことに抽象的で具体性がございません。そういうことでございますから、今ごろこの蚕糸業法の一部改正法律案というのがここに上程されるに至ったのではないかと思いますが、しかも蚕糸業法の一部改正法案審議会設置するということにとどまっておるのでございますが、蚕糸業の問題については、農林省では特に一局を設けて蚕糸業の盛大な時分と同じ機構をもってこの対策に当っておられるにもかかわらず、今ごろ一体審議会を設けようというようなきわめて緩慢な蚕糸業対策については、私は納得ができないのでございますが、どういうことで今ごろこういう法案を出されるのでございましょうか、ここまで参りましたら、抜本的な蚕糸業法の改正案が提案されてしかるべしと考えるのでございますが、この辺の経緯を伺いたいと思います。
  17. 井出一太郎

    井出国務大臣 蚕糸業法の改正をもっと抜本的にすべきである、こういう御意見でございますように受け取りました。これは最近蚕糸業停滞ぎみからいたしまして、つとにそういうふうな声はわれわれも耳にしておったのでございますが、この蚕糸業法というものはかなり古い法律であって、あるいは現状に即さない面も確かにあろうかと思うのでありますが、とりあえず今回は審議会を設けることによりまして、その審議会の機構を通じまして、諸般の問題の御検討をいただき、十分に慎重を期して事に当りたいと考えておるわけであります。蚕糸局がありながら今ごろおそきに失したではないか、こう言われまするけれども、また一方今からでもおそくはないという考え方もございます。今後十分御意見等をお聞かせをいただいて、抜本的な改正の方向検討を試みたい、こう考えます。
  18. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は蚕糸局は今日まで何をしていたのかと、その熱意を疑わざるを得ないほどに感ずるのでございます。ことに繭処理の調整問題といいますか、繭の取引の混乱状態は毎年繰り返されているのでございますが、これらに対して何らの対策を示しておりません。また蚕糸業とかその他一般の農業というものは、これは特に日本現状からいたしますれば、先ほど斜陽産業というお話もございましたけれども、急にこれを廃止して他に転換するというわけにはいかないような現実でございますので、相当程度の保護政策をとらなければならないと思うのでございますが、そういうような点について非常に欠けるところがございます。しかし長い間検討機会があったのでございますが、その機会をじんぜん過ごしまして、そうして具体的な対策が樹立されなかったということはまことに遺憾にたえません。しかも今度もしこの法案が通ればできるでありましょうところの蚕糸業振興審議会におきまして、生糸及び絹製品の輸出の振興方策いかんとか、あるいは繭の能率的な増産対策いかんとか、あるいは蚕糸技術指導の体系の整備をどうするかとか、繭処理の調整をどうするかとかいうような問題を、その審議会でできるだけ早い機会に結論を得るような審議をしようというのでございまして、今からでもおそくないどころではない、もうこんなことは数年前にやっておかなければならないことなんです。もっとも大臣は御就任になりましてまた日が浅いのでございますから、あなたを責めては、はなはだお気の毒ではございますが、それだけにこれはもう少しわが国の蚕糸業というものに対して熱意を傾けていただきたいと思うのでございます。本日本案の問題について大臣が初めて堅頭から御出席になつたというところを見ますると、この法案通過のために御熱意があるのではないかと私は善意に解釈をいたしておりますが、今後ただいまのこの審議会審議する内容等についても、十分一つ事務当局にも検当さして、すみやかに案ぐらいは用意をされなければならないと思うのでございますが、それについての大臣所見を伺っておきます。
  19. 井出一太郎

    井出国務大臣 ただいまの吉川さんの御発言は私どもに対する特段の御鞭撻をいただいたというふうに了解をするものでございます。なるほど今までの蚕糸政策というものは緩慢に過ぎたのではないかという点、私はこれを決して否定するものではございません。しかしながら、たとえば繭糸価格安定法のごとき、これは各位の御協力によって成立をいたしました法律でございますが、これが価格安定の面におきましては他の農産物に比べて一番効果を発揮しておる現状ではなかろうか、かようにも考えまするし、その他もろもろの施策をいたして参りましたつもりで、おしかりをいただく面もありましょうが、従来蚕糸対策としていろいろな努力をして参ったことをもお認めを願いたいと思うのであります。  今回この二法案の提出に当りましては、長い間役所も考え、また業界の統一した御要望にも沿うたわけでございまして、ぜひ委員各位の御協力によりまして、すみやかにこの二法案が成立いたしまするようにお願いを申し上げる次第でございます。
  20. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 今後審議されるといわれております問題の中で、中村委員も触れられましたけれども、この蚕糸業、ことに養蚕業の技術指導体系の整備の問題でございますが、年々の予算の編成期においていつも繰り返される問題でございますが、この技術指導体系の整備強化の問題は、審議会で結論を得られない前に三十三年度の予算編成ともなれば、また同じようなことが繰り返されると思うのでございます。これは養蚕業振興のためには非常に大きなウエートを持っている問題でございますが、この点について大臣はどういうようにお考えになっておられますか。  それから、蚕糸業の振興は、繭の取引の正常化とか安定というような問題に関連をいたしますし、輸出の振興にはもちろん関連を持って参りますけれども、どうも政府考えておりますところによりますと、何か製糸設備整理とか、整備とかいうようなことに急にして、そして生産繭のコストを下げ、あるいは反当の生産量の増強をはかるというようなことにつきましては、まことに低調なんでございますが、こういう点についてはどういうようにお考えでございますか。
  21. 井出一太郎

    井出国務大臣 養蚕技術指導員の国庫助成費用が毎回予算策定の際に問題になって、そのつど御心配をわずらわしましたことは大へん遺憾でございます。これは当然一刻も早く安定したこういう費目が自動的に予算の中に盛られるような方向に向って努力をしたいと考えているわけであります。  また繭の反当生産量の増加という問題に対しましては、従来たとえば稚蚕の共同飼育の奨励を強化する、そういう面における予算措置を確保する、こういうふうなこともやって参りましたし、あるいは老朽桑園を淘汰いたしまして、これを新植して苗の問題を解決する、こういうふうな努力を払っても参りました。また連年凍霜害に見舞われるというような宿命を持っているこの産業に対しまして、凍霜害対策の充実に力を入れるというふうなもろもろの施策を講じて参ったわけでございまして、決してこの反当生産量の増強ということを等閑に付しておったわけではございません。さような次第でございます。
  22. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 大臣のおっしゃる通り、一応予算の面には形ばかり掲げているのでございますが、それはお題目だけで内容がなっておりません。一つあなたの就任中に、この問題は自動的に予算が盛られるような基礎を確立していただきたいと思います。審議会にもろもろの問題をこれからかけようといわれているのにもかかわらず、この製糸設備の問題だけが法案としてここに顔を出しておりますが、これはどういうわけでございますか。
  23. 井出一太郎

    井出国務大臣 審議会には蚕糸対策全般にわたってもろもろの問題を御審議いただくつもりでおりますが、まず当面その第一着手といたしまして製糸設備の調整の問題を取り上げる、かように御了解をいただきたい次第であります。
  24. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 審議会十分検討をしてそれからいろいろの項目についての結論が出ましたら、それを法的にあるいは予算的に措置をしていくということでなければならないと思うのでございますが、特にこの問題だけが審議会会議を経ないでも出てくるということでございますので、その他の問題も同時に出すくらいの御熱意が傾けられてしかるべきであったのではなかろうかと私は思うのでございます。はなはだその点はその他の問題に比して——蚕糸局とは言うばかりでありまして、これもまたお題目と同じで、内容が十分でないために手が回らなくてこういうことになったのだと私は解釈をいたしておりますが、もしそうであるとするならば、もう少し蚕糸局を充実に力を入れるというふうなもろもろの整理法案のような形に出してくるべきであったと思うのです。こういう点については、これ以上は議論でございますから申し上げませんが、ただここで私ども非常に心配になりますのは、この製糸設備整理がどういう工合に行われるかということを私たちは一番心配しているのです。これは法律の面には出て参りませんので、あるいは政府当局から御答弁いたすにはむずかしかろうと思いますが、お差しつかえのない程度でお漏らしいただければ審議の上に非常に参考になると思いますが、いかがでしょう。
  25. 井出一太郎

    井出国務大臣 この整理の具体的な方針はどのようにするかという点につきましては、事こまかにはいずれ政府委員より申し上げることになると思いますが、この実施計画審議会にお諮りをいたしまして十分議を練っていただくつもりでございます。  御承知のように製糸業現状というものは、大企業という形を持っておる面もありますとともに、中小企業という形のものが非常に多いわけであります。でありますから、これを扱うのに当りましては、中小企業の立場を十分に尊重をして行なって参りたい、かように考える次第でありまして、きょうのところはその程度のことで御了解を得たいと思います。
  26. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 実はこの整理の必要を感じていることは、これはもう万人ひとしく認めているところでございます。そこで、その整理の仕方については審議会審議をしてもらう、こういうことでございますので、これはよくわかります。私もさように考えますので、まず蚕糸業法の一部改正法律案を通過させて、審議会を作って審議会十分検討をして結論を得たならば、その結論に従って、一つその結論を盛ったところの製糸設備整理法案を国会に提出すべきであると私は考えているのでございますが、それを急いで上程しなければならなくなった理由を伺いたいと思います。
  27. 井出一太郎

    井出国務大臣 吉川委員の言われますような考えの方もあろうと思いますが、われわれといたしましては、これは同時並行的に考えておるのでございまして、今回三十二年度の予算におきましても、これに対する経費を計上しておるのでありまして、法律といたしましてはただいまの国会において両法案ともぜひお通しをいただきたい、かように考える次第でございます。そうして、これを実施するにあたりましては、審議会で十分に議を練りました上で実施に着手しよう、こういう腹がまえでおるわけでございます。
  28. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 まあ大臣としては今のところそれ以上お答えはできないでございましょうから、それ以上追及はいたしませんが、このやり方につきましては、大製糸偏重にはならないのだ、一人一票で平等に取り扱うからそういうことにはならないのだというような御意見もあろうと思いますが、一人一票という制度はある意味においてはこれはお座敷芸でございまして、いざとなるとなかなかそうは参らない、それに対する対策は十分考えておかなければならないと思います。  それからまた、この整理をいたしましてから後、政府の御努力、業界の努力あるいは生産農家の努力によりまして、今後生糸の値段が上って参りまして、蚕糸業が好況を呈するというほどのことはなかろうと思いますけれども、ある程度この努力の結果が現われて参りましたときに、また整理された設備かあちらこちら盛んに出てくる、表向きは出てこなくともやみの設備が生まれてくるというような問題ついては、一体政府はどういうような措置をとられるのか、今日までの座繰等のやみの問題についての農林省の対策は、まことにもう見るにたえない軟弱態勢でございまして、この点は私ども非常に憂慮するのでございますが、そういう対策はどういうように今からお考えになっておるのか、お考えがありましたら伺っておきたいと思います。瀬戸内海の小型の底びき綱の整理の結果等を顧みますと、この種の整理がただ五千万なり一億なりの金をまいたというだけで、またもとに戻って、全く何らの効果を現わさなかったというような過去を顧みますときに、この取り扱いについては私は十分慎重でなければならなぬと思うのでございますが、この点についての政府の御所見を伺います。
  29. 井出一太郎

    井出国務大臣 他の業界に関しましてはあるいはそういうこともあったかと思いますが、現在繭の産額と既設の設備との間には非常に著しいアンバランスがあるわけでございます。従いまして、私の考えでは、今回の整理によって今後もう一ぺん芽を吹き返すというようなことはまずなかろう、こう存じまするし、そこは業界においても調整組合を作って相互に監視をし合うということになりまするので、さような御懸念はまずなかろう、こう考えます。
  30. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それは大臣、大へんな発言です。これが芽を吹くことがないようならばやめてしまった方がいい。芽を吹かせるために各種の施策をこれからやろうというのでございますから、今のは大臣としてもちょっと言い過ぎじゃないかと思います。  ただ私が心配するのは、これは二年の期限があるのです。そうしてそれからあと、私はすばらしい芽が吹き出すとは思いませんが、まあ努力の結果がある程度現われてくると思います。そうなったときにやみのものがまた出てくるのじゃないかという心配がございます。それからそのあとを一体どうするのかという対策がきわめて重要な問題でございますから、これは今大臣から答弁は求めませんが、十分一つ考えに置いていただきたいと思います。  最後に私は、輸出の振興問題について伺ってみたいのでございます。私はアメリカへ行って痛感したのでございますが、農林省の多久島が使い込んだくらいの金で宣伝をやっているんですね。こんなことではあの広いアメリカで何にもならないですよ。やらない方がいいくらいです。ですから、やるのならもっと徹底的にやらなければならないのですが、その点はどういうようにお考えですか。私は、アメリカに限らず、消費国の資本を入れて、日本と合弁で織物工場を持って、消費国の需要を増進させるような宣伝を、彼らにも一端をになわせてやらせるというような仕組みを持っていったならば輸出も振興すると思うのです。これは大臣の岳父もかねてから主張されていたところでございますが、この点については農林省としてどういうふうにお考えでございましょうか。
  31. 井出一太郎

    井出国務大臣 海外における消費促進の運動は、今回のシルクセンター設置をもって一歩前進であると御認識をいただきたいと存じます。また今お示しになった吉川さんの御構想も一つ考え方と思いますので、十分尊重して研究してみたいと考えております。
  32. 吉川久衛

    ○吉川委員 前後いたしましたが、先ほど私、業界から、製糸設備の過剰分の整理については、ぜひともすみやかにやってくれという陳情をいただいているのでございます。大中企業の皆さんは非常に御熱意があるのですが、小企業、零細企業からのお声というものを私はまだ聞いていないのです。こういう問題については審議会審議されるというのでございまして、審議会の責任はきわめて重大になってくるわけですが、こういう点についても農林省としては今から十分、どういうような取扱いにしたならば最も公正にいくか——大企業は自分だけで整備する力があるのですから、大企業はむしろ遠慮して、設備は大いに背負い込みましょう、しかし政府の助成は私どもは辞退するというような線の出てくることが一番好ましいと思います。とにかく大臣は局長をして業界の面との調整を積極的にやらしめて、正しい見通しをもって臨まれる必要があるのじゃないかと思いますので、老婆心ながら、念のために申し上げて、私の大臣に対する質疑を終ることにいたします。
  33. 小枝一雄

    小枝委員長 芳賀貢君。
  34. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねします。予算法案関係ですが、今国会においてすでに設備制限による国の補助金を五千万円計上して、成立している。ところが、法案はきょうやっと審議に入っただけである。しかもわれわれの察知しているところによりますと、政府与党の自民党の内部においても、両法案の取扱いに対して必ずしも意見が一致しているというようには考えられないのであります。政府と与党の間においてそういう関係に置かれたこの法案は、会期幾ばくもないのですから、そういう場合に農林大臣としてはどのような態度で審議に臨まれるか、その心構えを聞かせていただきたい。
  35. 井出一太郎

    井出国務大臣 予算が通過したあと追っかけて法案が出たというその遅延いたしましたことはまことに相済まないと存じておりますが、今言われました与党と政府との調整というふうな問題は、十分すでに話し合いがついておりますので、その点は、政府と与党の間は一体であるとお考えをいただきたいと思います。おくれましたことはまことに遺憾でありますが、社会党のお立場からぜひ御理解をいただきまして、本案の成立が相かないますよう特にお願いを申し上げるわけであります。
  36. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでお尋ねしたい。この蚕糸業改正案の中に蚕糸業振興審議会設置するとありますが、この審議会設置されて、審議会の意見を尊重して具体的な設備整理に対する当局の施策を進めていくということになると、まず蚕糸業法の改正が行われ、審議会の構成ができて、政府審議会に諮問されて、その意見を聞いてそれによってやるということになると、一方この設備整理法案審議等について相当のずれが出ると思うのです。私どもは、具体的にどういう意図をもってどういうふうに整理が行われるか、あるいは整理の基準等がどうであるかということを明らかにしてもらわなければ、この法案審議を進めるわけにいかぬのであります。ところが大臣説明のように、おおむね蚕糸業法の改正が行われた後振興審議会の議を徴してということになると、設備整理法案審議を今ここでやっても、審議会の答申によってまた左右されるということにもなりますので、これは相当慎重を要し、また考慮を要すると考えますが、その点はいかがですか。
  37. 井出一太郎

    井出国務大臣 先ほど吉川委員の御質問にもお答えいたしましたが、この二法要というものは、時間的にこれを考えるとあるいは芳賀委員の言われるような点も出てくると思います。しかしながら、審議会に諮問を申し上げる前に政府の腹がまえは固めて、当委員会で御審議を願う過程において、ある程度、具体的な問題を御説明申し上げたいと考えております。
  38. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、吉備会は結局最初から有名無実なものにするのですか。農林大臣審議会は最初から骨抜きの名目的なものだけを蚕糸業法の改正ではやっておくわけですね。実質的には設備整理法律審議の中でこの方針が明確になって、国会等の意向が明らかになった場合には、その意思によってやるということになるでしょう。ところが審議会というのはあとで出るのです。尊重するといっても尊重する意思は最初からないでしょう。その点どうですか。
  39. 井出一太郎

    井出国務大臣 時間的には若干前後いたしますけれども、まず政府考えている方向と申しましょうか、国会において御説明いたしますることは、同時に審議会においても御承認を得られるであろう、こういう期待を持っておるわけでございます。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 井出さん、この審議会は議決機関でなく、ただ意見を徴する諮問あるいは建議機関ですから、事を行う前に一応意見を聞くとかしておかないと、あとから聞いてもしようがないのですよ。だからこの設備整理の場合には、政府方針としてはどういう具体的な措置を、設備整理の中で三割なら三割やるか。その場合には、先ほど吉川委員も言われたように、一律に三割削減ということには当然いかぬと思いますので、やはり弱い企業を保護しながらそれを育成する形の中において三割なら三割の設備整理をやるということになれば、当然政府の責任において具体的な整理基準等をお示しになることになると思うわけです。ですからその具体性を持った方針は、通例からいうと審議会をわざわざ設けるという場合においては、やはり審議会の意見を聞くというようなことが経過的には行われてしかるべきであるというようにわれわれは考えるわけであります。ですから同時に両法案を御提出になったということにおいて、やはり時間的なずれはどうしても出てくることは避けがたいと思われます。ですからわが国の蚕糸業あるいは蚕糸行政が近代化されて、国際的な視野の上に立った運営が行われるようにするために審議会に相当大きな期待を置くとすれば、順序としては、まず蚕糸業法の改正が行われて、審議会等の運営が活発に行われるということが前提になって、しかる後に今の余剰施設の整理を行うということの方が筋としてはいいのじゃないかというような判断も行われるわけですが、そういう点に対して先ほども自民党の吉川委員からもそのような趣旨の質問が行われたのですが、この点は大臣の明確なる御判断とか御意思があると思いますので、この際率直にお述べになった方がいいのじゃないかと思います。
  41. 井出一太郎

    井出国務大臣 時間的な順序というふうなものを設けるといたしまするならば、ただいま御指摘のようなことも言われると思いまするが、われわれといたしましては、この機会に二つの問題を切り離さずに処理していただいて、その間審議会の御意見を十分伺いつつ、しかる後にこの整理の問題に当りたいと考えております。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 予算委員会の都合があるそうですから、あとは保留しておきます。
  43. 阿部五郎

    ○阿部委員 資料を要求いたしたいと思います。設備整理法案審議するについては、この法案のねらいが製糸業者の繭買い入れの費用を節減することにあるように思われるのですが、それについては製糸業の種目ごとに繭原料を買い入れる、原料入手のための経費がどれくらいかかっておるか、総生産費におけるその割合がどうかということを考えなければならぬと思いますので、その資料一つ願いたい。これが一つであります。  それから設備整理するのでありますが、その設備現状がどうなっておるか。ただいまいただいた資料だけではちょっとわかりかねる点がありますので、世間でよくいわれておるやみ設備が相当たくさんあると聞いておりますが、その現状並びに許可を受けておる設備と、実際に操業されておる設備と、おのおのその状態、それを業種別に調べて御提出願いたいと思います。
  44. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいま御要求のありました資料については、至急ととのえて差し出すようにいたしますが、実はやみ設備については政府自身で調べたものはございませんので、業界で調べたものがありますから、それで一つごらんをいただきたいと思います。
  45. 阿部五郎

    ○阿部委員 それは政府が調べて、つかんでおって、それをほっておくというわけにいかぬでしょうから、政府自身が調べておるとは言えぬでしょうが、業界の調べておるものでよろしゅうございますから、政府はそれを信憑しておるかどうか、なるべく政府が信頼を置けるものとして出していただきたい。  それから生糸生産費でありますが、生産費中に占める原料入手のための費用を、ほかの部門の生産興の構成要素との間の比率で見なければわかりませんから、それで生産費を労賃とか原料とかその他の間接費とか詳細に区別をして、特にその中の原料入手のための費用を業種別に明確にしていただきたい。
  46. 小枝一雄

    小枝委員長 それでは残余の質疑は後日続行することといたします。  午後は一時から再開することとし、午前の会議はこの程度で暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後三時十八分開議
  47. 小枝一雄

    小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  青森県における三八地区等における牛乳集荷の問題について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  48. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますが、この問題を審議するに当って、特に横田公取委員長及び農林大臣出席を昨日から求めておるわけですが、両者の出席がないようでありますが、どういう理由であるかお尋ねいたします。
  49. 小枝一雄

    小枝委員長 ただいま芳賀委員からお尋ねがありましたから申し上げますが、公取委員長は病気静養中で、ちょっと床を離れるわけにいかぬようでありますから欠席、農林大臣はちょうどただいま食糧に関する調査に出席いたしまして、いろいろこれについて説明中で、ただいまのところ手が引けないので、もう間もなく政務次官がかわって出席することになっております。さよう御了承願います。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは重ねてお尋ねします。芦野委員が御出席のようでありますが、芦野委員は、委員長が病気による事故で出席できないので、委員長にかわってという意味で御出席なんですか。
  51. 芦野弘

    ○芦野説明員 委員長にかわってできるだけお答えいたします。
  52. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは独禁法三十三条二項の、委員長が事故があって出席できないという場合の、委員長にかわる芦野委員というふうに承知して差しつかえないわけですね。
  53. 芦野弘

    ○芦野説明員 それはどう御解釈下さってもいいのですが、政府委員の代理ということは認められないと思いますから、説明員でもって委員長のかわりに申し上げるということで、委員長が自分で答えた通りとおとり下さっても差しつかえないと思います。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では公取にお尋ねしますが、当委員会においては、先般来数度にわたって酪農問題と独禁法との関連について審議を進めて参ったわけであります。そして先般の当委員会においては、青森県の三八地区の問題等についていろいろ事情を聴取したわけでありますが、その際、いろんな問題を調査する場合、公取職員諸君に、独禁法の第三十八条の規定に抵触するがごとき行動が間々見受けられたのは非常に遺憾であるので、今後この点に対しては法の規定に基いて厳重に粛正するべきであるというような意見も各委員から述べられておるわけであります。  もう一点は、同じ部門に長くとどまっておると濁りが出てくるようなおそれもあると思うので、清新な気分が常に流れるように、公取部内における人事の異動とか交流ということに対しても、横田委員長より誠意をもって努力するという言明が行われておるのであります。この二点について現在どのように善処せられておるか、お尋ねします。
  55. 芦野弘

    ○芦野説明員 その間以来の委員会でだんだん御指摘がございました公取職員の三十八条違反の疑いありという報道は、単なる新聞等の誤報であったと思います。しかし、そのうち若干行き過ぎたある審査官のあったことについては、ここでも御指摘がございまして、その結果、取り調べさしていただきましたことは御承知通りであります。それから内部的にも委員及びその監督の他位にある審査部長から、今後そういうことのないよう一そう注意するように十分訓戒を与えたということは委員長も申し上げた通りであります。  それから人事の交流につきましては、何分小さな機構でございますので、外部との交流ということは実際上、多少はございますが活発にはできない状態なので、内部限りでぐるぐるまわすより手がないのであります。しかしそれでできる限りはやっておりまして、最近も相当大規模に内部の所属がえをいたしたようなわけであります。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい。三八地区の問題になっております雪印乳業株式会社が審判開始決定を受けているわけであります。審判開始以降公取が独自な立場で審判される態度は尊重しますが、当委員会で問題になった点は、なぜ雪印乳業が被審人としての地位に置かれなければならないかということであります。これに対して公取委員会として問題と数点あげておるわけであります。たとえば三八地区を高度集約酪農地区として農林省が指定した経緯等は公取委員会においてもその事情を十分了解されていると思うのでございます。また、この雪印乳業が三八地区あるいは十部落地域内において私般独占の傾向がだんだん強くなっているというようなことを言われておりますが、その場合には必ず他の競争相手の企業を圧迫しているという現実の事例が必ずそこから生れてこなければならぬと思うのであります。雪印乳業が集乳区域を拡大することによってどの会社が極端に圧迫を受けているか、あるいは現在までの実績がそれによって低下しているという事例が必ずこれに付随しなければならぬと思うのでありますが、そういう事例等に対して公取委員会でどういうような調査が行われておるかお伺いいたします。
  57. 芦野弘

    ○芦野説明員 今年二月審判開始に至るまでの状況は、要点をずっと審判関始決定書に羅列してございましてお読み下さったことと思いますが、その後はまだあらためて調査いたしておりません。今度いよいよ審判の手続に入りますと、その後の状態についてもまた事前調査を進めることになると思います。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 審判開始の当時、独禁法違反としてこれを指摘する場合は、たとえば雪印乳業が三八地区とか十部落地域内において私般独占の傾向がだんだん強くなっているということは、他の既存の会社の実績を極端に圧迫したり非除しているという事例があったからと思うのです。この場合競争相手の企業ということになると、おそらく明治乳業等がその位置にあると思うのでありますが、明治乳業の集乳量が雪印乳業がこの地区に進出したことによってどの程度圧迫を受けて減少したかということは重要であると考えられるわけです。この点は今まで具体的にお尋ねしておりませんでしたので、補足的にお尋ねするわけです。
  59. 芦野弘

    ○芦野説明員 審判決定までに、ただいまお話になりましたような十和田酪農地域、三八集約酪農地域では、別にほかの競争業者の集乳量が減ったというふうには観察いたしておりません。十部落に進出してきて七〇%でありました集乳するに至ったという点だけ認定しておりまして、どの会社がどう減ったということは必ずしも審判開始の要件ではないので、開始決定書には書いてございません。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはおかしいじゃありませんか。一方の集乳量が極端にふえたという場合、そこに競争する企業があれば、もう一つの企業の集乳量がそれに反比例して極端に減るという現象か必ず出なければ、雪印乳業が七〇%以上の集乳量の確保をやっておるという指摘ができないと思うのですが、どうですか。
  61. 芦野弘

    ○芦野説明員 雪印は、御承知通り全販連の持っておる処理工場を全部買収いたしまして、その後また他の二、三の小さな原乳処理場を買収いたしまして、それらの買収された企業者の集乳はゼロになったわけであります。そりほか東北乳業に出しておったのを雪印の方へやった例も若干あると思いますが、かんじんな点は、現在は七〇%、三〇%でありましょうが、将来は目印が中心工場に指定されて、集乳上非常な便宜を持つ。その反面競争者でのる明治乳業の工場は種々な制約を受けて、今後集乳量が全体として増加いたしますときに、一方はどんどん増加するが、片方は現状維持にとどまる、こうなるおそれが非常に多い。そのときには、今の割合はもっとふえるということが一つの重大な点であると思うのでありまして、現在までにあるいは東北乳業も、ほかの小さな工場に従来いっておったのが、そっちにいって、あるいは若干ふえておるというようなこともあるかもしれませんが、とにかく問題は、雪印がどんどんふえてきた、それから片方明治の方は現状に押えられるというところに問題の重点があると思うのであります。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 高度集約の地域内における主管工場の地位を持った企業は、それは集乳上やはり有利な地位に置かれておるということ、これは当初からわかっておるわけですね。酪農振興法ができて、それが実施される場合においては、そういう現象が起きるということは、これは法律審議のときから予見されておる事柄です。ですから、これを否定するようなことになれば、高度集約地区における工場建設の指定とかなんとかいうことは、全く根拠あるいは意義を失うということになるわけなんですが、今の芦野さんの御発言は、従来見なかった新しい発言のように聞えるわけですね。高度集約地域内において指定された主管工場が集乳量をだんだんふやしていくということは好ましくないということになると、一地域内において一工場が中心になるというこの運営の根本原則というものは全く否定されてしまうということになると思うのです。しかし、それだからといって、他のその地域内にある既存の工場を抹殺するというほど強い強権こいうものは持っておらぬということも、すでに御承知通りであります。ですから、この関係において一方の中心工場が、その地域内における酪農が振興されて、生産乳量がふえて、中心工場に主として流れ込んでいくということは、これは順調なる推移であるというふうにわれわれには感ぜられるわけですが、その結果が独禁法違反であるということになると、これは農林省が中心になって行なっておるところの高度集約地域の指定、あるいはこの運用というものは、それ自体が独禁法違反であるということになると思うのでありますが、この点は芦野さんの理解の若干の間違いではないかと思うのですが、いかがですか。
  63. 芦野弘

    ○芦野説明員 私もさっきちょっと申し上げました通り、われわれはどこまでも青森県東部酪農地域全体として見て、これの全体が独占的になることが問題であると申しておるのでありまして、一つの集約酪農地域内それぞれにおいて、中心工場に指定されたものが便宜な立場に立って、競争者は多少不利である。どうしてもいわゆる中心工場の方が発展しやすい。これはまさに集約酪農法のねらうところでありまして、そのこと自体を否定しているのではありません。そういう一地域内においてはそれが自然になるのを免れないでしょうし、またそれでいいのだろうと思います。ただこれを県全体といったようなもっと広い地域、数地域にわたって、一つの会社が独占になるということは好ましくない、こういうことであります。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 酪農振興法から見た場合は、何も法律は一定の会社というものに頭の中へ入れて指定とか何とかをやるわけじゃないのですね。ですから結果的にある会社が指定になったとしますね。それは最初からもう特定の会社を農林省が選んで、念頭に置いて、工場指定等に対する決定を行なったということにはならないと思う。ですから、法令等の措置等に基いて、何らそこに手違いなく地域指定、工場指定が行われた場合においては、これは独禁法としても何ともしようがないじゃないですか。それがけしからぬということになると、むしろ独禁法自体の運用の中であなた方が特定会社の利益擁護をやるということにむしろなってくると思うわけてありますか、公取委員会としては、その地域における特定の会社をやはり特別に援助したり支援しなければならぬという方針を持っておられるわけですか。
  65. 芦野弘

    ○芦野説明員 公取が特定の会社の利益を保護する、擁護するとか、そういう考えを持って事務を運営するということは決してありません。どこまでも雪印が青森県全体の乳業の独占を企てて、いろいろな行為をした、それがたまたま独占禁止法の独占してはならないということに触れるという、調査の結果、一つの結論になったということでございます。今お話の通り、農林省が正常なる手続で何ら手違いなく指定されたということであれば、そのことが結果的に独占的になっても、それをかれこれ申すわけではないのでございまして、どこまでも雪印乳業はそういうふうにいろいろしむけて、そういう情勢を作り出すために、あるいは不公正な競争を行なってそういうふうにしたということを問題にしているのであります。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、この審判決定書の中でも指摘されておりますが、地域内の酪農民の意思を無視して、地域内の酪農民が雪印乳業を支持しておるがごとき状態を不自然に醸成して、かくあらしめたというような意味指摘もありますが、先般の当委員会に、三八集約酪農地域の酪農民の生産者代表が来られまして、当委員会において陳情を行なったわけでありますが、そのときわれわれはその陳情書なるものをもらったわけであります。それによりますと、この三八地域内における酪農家の戸数は千四百七十二戸ということになっておりまして、この総数は、公取の方で調査された数とそれほど大きな開きはないと思うのです。ただ問題は、この千四百七十二戸のうち千二百三十八戸の酪農民の諸君が、それぞれ村ごとに署名捺印して、われわれはこの三八集約地区内において雪印乳業が中心工場となって指定されたことに対してはこれを歓迎し了承しておるという意味の陳情書になっておるのです。そういたますと、全体の八四%の諸君が署名して、それぞれの意思をみずから表明しておるというようなこの事実に対しましては、公取委員会としてどういう角度からこれをながめておられるかお尋ねしたいと思います。
  67. 芦野弘

    ○芦野説明員 われわれが審判を開始するまでに至りました経路においては、酪農民自身の意思に反し雪印乳業支持の署名をしたり何かした、こういう事例もあるということでございまして、これに対する反対の主張もいろいろあるだろうと思います。これはこれから審判手続で、公開の席で雪印側からもいろいろ証人を出し、証拠書類を出して十分に立証する機会があるわけでございまして、これをなおとくとそういう公明な手続で調査した上でわれわれ最終的の結論を出すことになるわけでございます。おそらくそういう陳情書というようなものも、雪印側から審判の経過において提出されることになるのだろうと思います。事実のそういう詳細な点についてどっちがどっちだということは、これから公明な審判手続でもって決定されることになるわけでございます。
  68. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今後の審判手続に対する公明さに対しては、私ども全面的に信頼しているわけですが、ただこういう違反事案をおきめになるまでには、審判が開始されてからその事実と全く実情が異なるというような事態にならぬような的確な公正な調査がどうしても必要じゃないかと思うのです。これは問題を提訴したり何かする人があるから、公取としてはこれを取り上げざるを得ないのでありますが、しかし調査に臨む場合はあくまでも公正な態度で諸般の調査をされると思うのでありまして、その場合にはむろん現地の酪農民の意思がどこにあるかということの確認が一番大事な調査事項になると思うわけであります。しかもこの陳情書ほ、この問題が取り上げられて、しかも審判開始決定がなされたあとで、現地の酪農民の諸君がこういうような署名をされた陳情書をわざわざ議会まで付ってこられて、その実情を述べておるということを見ても、これが単に作柄的にでき上った陳情書であるというふうにはわれわれとしては考えられないのであります。ですから違反事実があるというような現地の酪農民の意思が歪曲されておるというようなことを取り上げて論断しようとする態度の中に、われわれとしては了承できない点が多々あるということを指摘しなければならぬわけであります。最近酪農問題等については、どうしてもそういう傾向が強いと私は思うのです。公取の場合は、単に酪農問題などは日本の経済、産業構造の中から見ればささたる問題であると思いますけれども、こういう弱い原始産業の面において、農民の意思を無視したりあるいは協同組合の立場をことさらに弱めるような意図を現地における公取の調査の態度というものは、十分反省する余地があると思いますが、そういう点に対しては反省を行なったことがありますかどうですか。
  69. 芦野弘

    ○芦野説明員 仰せあるまでもなく、審査に対してはでき得る限り公正な態度でやるということが委員会それから実際審査に当る者の平常の心がけでございまして、その調査の結果が不幸にして芳賀委員のお調べになった結果と違っておるということでありますれば、これはただいまも申し上げましたような審判手続においてなお一そう深く掘り下げて、公けの席で宣誓した証人の証言等に基いて、審判前に疑いをかけたことが果して正しかったかどうかということを、今度は委員会みずからが審判することになるのでございます。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この三八問題はまだ審結までいっておりませんので、その過程において私の意見だけ強く主張することは特に避けますが、ただこれに関連して、こういう既成事例があるということをし申上げたいのであります。これは芦野委員も御承知通り、北海道の浜中村の主畜農業協同組合に、やはり独禁法違反の疑いが起きまして、そして勧告を受けて、それを応諾したものですから審結ということになった、それはいいのであります。違反事実を指摘されて勧告を受けてみずからそれを認めて勧告に服した、是認したのですから結審になるのは当然であります。しかしそのあとでおそらく公取委員会に書類が送られていると思うのであります。それは勧告書内容中認定事項の相違点並びに勧告受諾の理由という書面が公取委員会の方に出ていると思うのですが、御存じですか。
  71. 芦野弘

    ○芦野説明員 承知しております。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この中で私は非常に不審にたえないことなんですが、勧告を受諾した理由というのをよく読んでみると、審結に承服しがたいようなことを理由の中で述べているわけなんです。これは全く異奇なことなんです。勧告されたことを応諾しながら、あとでそれに承服できないような数点の理由をあげて、書類にして出してきているわけですが、こういう点はおそらく北海道の僻廠の地にある小さな農業協同組合ですから、公取委員会の持つ性格であるとか独禁法の内容を十分熟知しておらないので、何かそういう勧告文なんか行けば、これは大へんなことであるということで、とにかく異議の申し立てとか正当な理由を申し述べる権利を放棄してしまって、とにかく一応応諾すればあとはそうおそろしくないだろうからということでうのみにしたけれども、しかしその指摘事項が現実と異なっているということは、これまでも無視することができないということで、理由書の形で反駁してきているのだと思いますが、この受諾理由書等を見て、芦野さんも御不審にお思いになった点がありませんかどうか。
  73. 芦野弘

    ○芦野説明員 独禁法で規定しております勧告手続、それから勧告を応諾したときはその勧告通りの審結をするという規定に基いてやったわけでありますが、これは異常な圧迫を加えるとか威圧を加えるとかして、いやおうなしに応諾させたということは決してございません。また浜中というところはずいぶん遠隔なところでございますけれども、この農業協同組合の組合長は二瓶さんとおっしゃる北海道バターの常務理事も兼ねていらっしゃる方で、始終東京都にも出てこられる。決して公取が言うから御無理ごもっともで、何もわからず判を押すといったような方でございませんで、この方ともともとにお話をいたしましたが、いろいろこまかい事実の点については、必ずしも承服しておられない点もあったようでございました。しかしながら大筋において違反の点はあったので、またすでに自発的にその違反の点は是正する手続もとっておられる、こういうふうな状況でありますから、これをしいてこまかい点まで争って長い審判手続ということをするよりは、実際上の困ることはないのでありますから、勧告に応諾した方が自分らも利益だろう、こう判断されて応諾されたものと存じております。なおあとからいろいろあの点は違うとかこの点が違うとか指摘されて上申書をいただいたので拝見しておりますが、これによって審決の結論を変えなければならぬというふうな重大な事項はなかったように思っておるのでありまして、こういうものを出されたことは必ずしもこれによって審決をどうしてくれとかいうことでなくて、これはいろいろ面目上もありましょうし、体面等もありまして、あるいは公取を啓発しておこう、こういう極意もあったかもしれません。そういったような動機でこういうものを出されてきたとわれわれはこれを拝見した。今後の事件の処置については多少参考にもなる、こういったような意味のある文章としてそのように取り扱っております。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その当時公取が圧迫を加えたがどうかということは私は知りませんが、ただ問題は、勧告の中にもあった法の適用の二でありますが、組合から脱退することを勧告してしいるが、これは事業者団体から特定の事業に著しく不利益を与えるものであっていずれも私的独占禁止法の違反であるということ主文にうたってあるのですか、これも応諾しているです。浜中組合は応諾したあとそういう事実は無根であるということを上申の方にうたってあるのです。しかも私の持っておる資料によると、脱退とかあるいは除名を行うということを相手方に通告したり、意思表示したといわれた組合員が、そういうことを言われた事実はありませんということを、この書面によって明らかにしておるわけなのですが、どうもこういうことになると浜中農協も何のために勧告を応諾したかもわかりませんし、こういうことはやはり公取委員会の機能としてその任務というものを、末端のたとえば協同組合関係のものはよく知っておらないのじゃないかと思うのです。とにもかくにもめんどうになるとうるさいから、別に応諾したからといってそれほど大したことになるわけでもないし、ここらで一応応諾書だけ出しておくということになることは、公取委員会の方から見ると遺憾のことだと思うのです。やはりその立場というものを十分明らかにさせて、そうして審決を下すということが一番望ましいことであると思うのですが、こういう点に対しては芦野委員はどう申えていますか。除名を通告されたものはそういうことをされた覚えはないという意思表示をしている事例がここにあるのですがね。
  75. 芦野弘

    ○芦野説明員 浜中農協は、これも一応短かい時間でありましたが、現地へ行って調査をいたしました。その結果勧告書に書いてあるような事実の認定をしたわけでございまして、応諾されるについても、そういう事実はなかったというような指摘はなかったと思うのです。それで当時は勧告書の事実も認めて、法律の適用を認めて応諾されるという決心をされたのだと思うのでありましてもし事実がなかったのならば、これは将来はそういうことをしてはいかぬぞという意味のことにこの審決はなると思いますが、これはそういり事実がなかったといって争われることはむろん浜中農協の方の自由でありまして、われわれとしてそれを妨げるとか無理押しに応諾させるというようなことはいたしません。全く自由な判断でしていただいたのでありまして、その方が結局自分の方の利益であるということを判断して応諾されれば、われわれはそれを認めて審決するほか仕方がないのでありまして、また事実それで差しつかえないのだろうと思います。その方が真の利益にもなるのだろうと思います。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではお尋ねいたしますが、個々に十数名の組合員に対して脱退勧告をしたというその事実に対しては、公取としては、その組合員個々にわたってそういう脱退勧告を受けたかどうかという個々の問題に対しては、これは当然調査されていると思うのです。
  77. 芦野弘

    ○芦野説明員 一応調査はいたしまして、勧告書にそういう事実の認定をいたしたわけであります。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと私の手元にある調査で、そういう除名勧告は受けておりませんと述べておる十数名の組合員諸君は、公取の方には除名の通告とか勧告を受けましたということを、明確に個々の立場において意思表示をしておるその根拠をお持ちになっておるわけですね。
  79. 芦野弘

    ○芦野説明員 それと同じ人たちかどうかわかりませんが、そういう受けたという事例があったということを、当時の調査の結果われわれは認定したわけであります。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではこれは後日の参考になりますから、おそらくこの部落の名前とか除名を受けた組合員の数というのは符合しておるのですから、そういうことになりますと、おそらく問題になった組合員の個々もそう違いはないと思います。それでもし可能であるとすれば——そういう個々の組合員が私は除名や脱退の勧告を受けましたという、そういった調査資料というものが公取委員会に現在あるとすれば、それが可能であれば資料として後日お見せを願いたいと思うのですが、いかがですか。
  81. 芦野弘

    ○芦野説明員 果して御指摘のような資料があるかどうか、今ちょっと覚えておりませんが、調査いたします。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは同じじゃないですか。たとえば姉別の部落でありますとか、それらの組合員が協同組合から除名の勧告を受けたということを本人たちが申し述べたり、調査の場合にそういうふうに答えたからして、公取としてはこれが独禁法違反の事実であるということを指摘しておるのだからして、その調査の基礎というものは除名、脱退の勧告を受けた個々の組合員の調査の上に立たなければそういうことが行われたかどうかは明確でないと思うのです。それはあるはずだと思うのですが、そういうものがなくて、ただばく然として北海道のほんの一部をにらんで、除名勧告をしたろうというようなことで勧告書を出されたのでないですか。
  83. 芦野弘

    ○芦野説明員 私が申し上げたのは、果してどういう形であるか、今、すぐはっきり覚えてはおりませんが、さきにも申し上げました通り、東京でもって見当でやったのじゃなくて、現地へ人が行って調べたわけでありまして、そのときに何人かの人たちからそういう除名、脱退の勧告を受けたという供述調書はとってあるわけであります。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますがこれは今後の参考になりますので、適当な機会でよいですから、もしそれらの資料委員会に提出することが可能な問題であるとすれば、委員長を通じて公取に資料の要求をしていただきたいと思います。  次にお尋ねしたい点は、今言った問題は非常に具体的な事例なんです。そういうことがあり得ないことがあとで上申書の形で出てくるというのは、われわれとしても了承できがたいようなことなんですが、目下こういう事例が現存しておるということは事実なんです。ですから、これらの事態から考えた場合においても、酪農問題をめぐって公取委員会の特に協同組合の無条件委託、共同計算、共同販売の形式による共同経済行為等に対する認識が十分持たれておらないと、不当に協同組合の経営者に不安を与えたり、恐怖を与えたり、当然主張すべきことも主張できないというようなところへ追い込むようなことにならないとも限らない。公取委員会の方では、十分親心をもってやっているからそういう心配はないと思っておられても、相手方はその通りに受け取らない場合もあると思う。これはやはり起因するところ、農協法とか独禁法に対する、その法の精神の把握が足らなかったり、あるいは政府部内における農業政策、酪農行政に対する方針が公取委員会の方に十分理解されておらぬというような場合に、こういうような遺憾な事態が間々起きるのではないかというふうに考えられますが、芦野さんもちょいちょい委員会に出席されて、この酪農問題とか農業協同組合等の問題に対しては、相当今までと違った角度からお気づきになった点が数点あるのではないかと私は考えておるのでありますが、この前の委員会からだいぶ日もたっておりますし、またそういう意味でお気づきになった点があれば、この機会に述べていただきたい。
  85. 芦野弘

    ○芦野説明員 この間から酪農の問題、それからことに協同組合の問題、集荷販売の問題についていろいろ御意見を伺わしていただきまして、また私の考えもいろいろな角度から十分に述べさしていただきましたので、もう大体おわかりではないかと思うのでございますが、無条件委託というようなこと、あるいは共同集荷というようなことについては、この前も私の所信を申し上げまして、それをいまさら繰り返すこともございませんし、またあれがいけなかったと改めるものも、今のところではないようなのが実情でございます。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最近における国内のいろいろな情勢は、現在の独禁法そのものの立場というものが、やはり相当変貌させなければならぬというような客観的な事態が起きているのではないかと私は考えるのです。今国会においても、いろいろな法案が付託されておりますが、商工委員会に今付託されて審議中の中小企業の団体法の問題にしても、あるいは近く提案を予想される水産物関係輸出に関する法案にしても、あるいは当委員会に付託になっております生糸製造施設の整理の問題にしても、現在の独禁法の立場からは好ましくないような事態が、やはり一つの必然性をもって独禁法の除外あるいは独禁法そのものの改正という方に動いているということは、これは否定できない事実であります。そういう形の中において、日本経済の中において協同組合の置かれた立場とか、あるいは協同組合に賦課された任務とか、そういうものを十分理解して、これをやはり助長育成するという方向に公取委員会の認識も向いていかなければいけないのではないかと私ども考えているわけですが、そういう点に対しましてはどう思っておられますか。
  87. 芦野弘

    ○芦野説明員 現在の独禁法が改正の必要がありはしないか、また最近の情勢が改正を要するような方に向っているということでございますが、確かに改正の必要は認めるということは、委員長もほかの委員会で言明いたしておりまして、われわれもその方向に向って準備をいたしております。それから最近出ます独禁法の適用除外を定めたいろいろな法案につきましても、これは何と申しましても、独禁法はごく大ざっぱな原則的なことを規定しているのでありますから、個々の場合については、それではどうしても困るという点が出てくるのはやむを得ないのであります。この二、三年出ましたいろいろな適用除外法は大体において限時法でありまして、政府がある施策をする、予算もついて施策をする上に、それに伴って独禁法の適用を一時そこだけ除外しないとどうしても困るといったようなことからして、ごく部分的に局地的に適用除外しているというような例が相当多いようでございます。しかしながら独禁法の原則そのものについても改正しなければならぬかという問題は確かにあることは事実でございまして、われわれもその用意を始めております。それから特に協同組合の適用除外でございますが、これについては先般もいろいろ述べさしていただきましたけれども、協同組合の適用除外というものは、決して独禁法の精神を排するのではなくして、むしろ独禁法の公正な自由競争という趣旨を一そう徹底させるために、特に農業であるとか、漁業であるとか、あるいは中小企業であるとかいうものを特に団結して、大きな企業と対等の位置に立つことができて、かえってその方が公正な自由競争が活発に行われる基盤ができる、こういう目的のために適用除外しているのだというふうに考えております。協同組合の協同精神ということについては、だんだんお話も承わりまして、私ももとよりその大事なことはよく理解しているつもりでございます。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は問題として申し上げたいのは、今の一項です。たとえばもろもろの法律の改正とか、独禁法それ自体の改正とか、一連の動きの中において、あくまでも大資本、大企業の私的独占とか支配というものは排除するというのは変りないけれども、しかしその大企業、独占的な大資本の中小企業等に対する支配に対抗するためには、やはり零細な企業とかあるいは個人が団結して、共同の力で自己防衛をしながら大資本、大企業の独占支配に対抗して競争しなければならぬというような時代になってきているわけです。ですから同じ過当な競争を防止するという場合においても、それは弱い企業者間におけるところの競争というものをある程度抑制することによって大資本の独占的な支配に対抗するための力をその中につけるということは、どうしても必要になってきていると思うのです。そういう方向に、いろいろな関係業種等についても法の改正等が行われるということに動いていると考えられる。ですからそういうことを一つの問題として考えた場合には、今日置かれた協同組合の、協同組合法に基く農民の共同の経済的な行為というものは、これは当然今以上の内容を充実させることが最も必要でないかと考えられるわけです。ところが公取委員会の解釈というものは、現在の加入脱退の任意とか、一人一票というような、そういう民主的な原則の上に立った協同組合の運営それ自体に対しても、いかにもそれが不当な行き過ぎをやる場合があるというような、そういう非難を行なっているわけです。それは私がいつも言うように、昨年の芦野さんの談話の中にもその片鱗というものがうかかわれるわけです。これは実に看過することのできない事態であると思いますので、この点に対して、やはり公取委員会として芦野さん個人というよりも、むしろ公取委員会として協同組合の本質が何ものであるかということに対する十分なる理解というものは、どうしても必要なことになってくるのではないかと思うわけです。公取委員会の場合には、特に農協法の十九条の二項の専属利用契約に従わなくてもよいというように解釈をされるような点がありますので、それを公取委員会の方では強調して、協同組合の総会の議決であるとか、あるいは専属利用契約、端的に言えば無条件委託共同計算方式の農産物の販売に対しても、自分の意思というものはあくまでも通せる、組合員個々の意思というものに従って、協同組合は販売事業をやらねばならぬというような意味にとれる表現をしておるということは、重大問題であるというふうにわれわれは今日においても指摘できるのであります。ですからこの点はやはり公取委員会としても、農協法の精神とか、運営の内容というものを十分勉強してもらわぬと困ると思うのです。そういう点はくどいようですが、あなたは委員長のかわりで御出席になっておるのでありますから、公取委員長立場に立ったようなお考えで、もう一度農協法に対する、しかも専属利用契約を中心にしたこれらの問題点に対する理解の点を表明してもらいたいのであります。
  89. 芦野弘

    ○芦野説明員 御承知通り公正取引委員会というものは合議体になっているのでございまして、委員会の各委員のみんなの考えはどうかという御質問でありますと、これはたとい委員長でありましても、簡単にはお答えできないことじゃないかと思うわけでございます。昨年の札幌におきますところの私の談話というものは、もとより私がいたしたのでありますが、しかし必ずしも芦野の個人の私見だけを述べたというわけではございません。大体公正取引委員会の各委員とも、こういうふうに考えているだろうというつもりで外部に向って発表したわけでございます。十九条二項でありますか、専属利用契約に関する規定、これはいろいろ問題であろうと思いまして、あるいは委員の中にはまだ多少違った考えを持っておる者もあるかもしれません。実はあらためてこの問題を委員会として取り上げたことは近ごろないのでありますが、御趣旨はよくわかりまして、芳賀委員初め、あの規定について疑問を持っておられると申しますか、協同組合の精神からいえばそう重きをおくべきではないといった御意見のように承わったのでございますが、こういう御意見のあることはよく伝えまして、実際問題に当りまして、あの問題を委員会が検討するというようなときには、御趣旨のあるところはよく伝えるようにいたしたいと思います。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 とにかく公取委員会の農協法に対する解釈は、十九条のしかも二項のただし書き的なものを大きく取り上げて、いつも協同組合に接するということになると、協同組合に対して十分なる理解を持って加入しておる組合員は心配はないのですが、千人、二千人の組合員の場合には、農協法に対する十分の理解が欠けている場合があってもやむを得ないのです。今の農民の置かれた社会的あるいは知的水準から見た場合には、たまたま協同組合の、たとえば共同の行為の中で一つの制約を受けるというようなことに対しては、必ずしも十分な満足をしておらぬ人もあるかもしれぬけれども、ああいうものをたてにして、これがあるから協同組合の総会の議決とか、あるいは役員会の決定であるとか、そういう全体の共同行為を行うという意思決定に沿わなくてもかまわないんだというようなことが強調された場合においては、協同組合の団結とかあるいは組合の組織自体の弱体化ということは免れないと思うのです。ですからこの点に対しては、公取委員会としては十分勉強してもらわなければいかぬと思うのです。公取委員会と農林省の見解が違うからしょうがないというようなことで、これは放置できない問題であると思うのです。やはり公取委員会においても、それぞれの国内における法律、個々の精神とか、その指向するものは何であるということに対する理解とか把握が十分でなければ、公取としての十全の活動はできないと私は考えておるわけであります。ですからこういう点に対しましては、やはり公取委員会としては農林省の事務当局間において連絡を緊密にしてもらうことも当然でありますが、しかし行政の大筋の面においては、少くとも農林大臣とか公取委員長等が必要に応じては話し合い等をされて、そうして間違いのないような事態を常に続けてもらうということにしなければ、この問題は不必要な方に発展するおそれが多分にあると思うのでありますが、これらの問題が取り上げられるたびに、私どもとしては、農林省あるいは公取の間においても、十分に独禁法と農協法あるいは酪振法との間における意見の調整とか、理解の度合いを深むべきであるということを指摘しておるのでありますが、たとえば今日まで農林大臣あるいは公取委員長等の間において、これらの問題の取扱いに対して、十分腹を割ったような話し合いをしたことがあるかどうか、その点はいかがですか。
  91. 芦野弘

    ○芦野説明員 農協法の解釈について委員長と農林大臣と何か話し合ったことがあるかということであれば、そういう事例は私の知っている限りないようでございます。実際上の扱いにつきましては、この間の三八の問題についても、ここでたびたびみなから御説明申し上げたように、農林省の当局の方とはきわめて緊密に連絡をいたしておるということはかねてから申し上げた通りでございます。抽象的に法律の意義、解釈等について意見を交換したとかいうことは従来ないようでありまして、これは法律の改正問題というようなことでも起れば、当然農林省の方たちと委員会の方と十分御相談しなければならないことであります。その他現実の問題について、そのつど農林省の当局と御連絡はしております。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 さらに乳価の問題に対して前回御出席になったときの委員会でも私が申し上げたのですが、昨年農林省の畜産局長の通達で、高度集約地域内における生乳の処理とか、販売あるいは乳代の精算に対しては、こういうふうにしていくことが望ましいというような通牒が出ているのですが、その場合に、一つの事例として、高度集約地域内において二つ以上の工場があった場合に、協同組合を通じて生乳が販売される場合においては、売り渡しの会社あるいは工場が異なっておっても、組合に対する乳代の精算というものはいわゆるプール計算の形、共同精算の形で代金の精算をすることが一番望ましい、こういう意味の通達がなされておるわけでありますが、これはやはり地方の関係組合あるいは地方の行政機関等においても、そういう趣旨を尊重してやっておるところが非常に多いのじゃないですか。こういう事実は、公取の立場から見た場合にどういうふうに御解釈になりますか。
  93. 芦野弘

    ○芦野説明員 畜産局長の通達ございますが、私どもも通達を一応拝見しておりますけれども、別に通達自体が独占禁止法に反しているようなことがあるようには思いません。もちろん畜産局長通達を出されまするについては、独禁法なり協同組合法なりその他の法律に違反したような通達を出されるはずはないのでありまして、ただいまのお話も、共同計算にすることが望ましい、そういうことができればけっこうである、こういう意味に私は解しておるのでありまして、私拝見しまして、特に通達自体が法律に違反した点があるとは感じませんが、かりに字句の上から、あるいはそういったような解釈ができる余地があるような字句が用いられておっても、これはどこまでも法律の範囲内で、通達が法律に違反したり逸脱することはあり得ないのであるからして、そういう意味に解すべきであろうと思うのであります。今御指摘のくだりもそういった意味で、それならばむろん差しつかえない、これを何も強制的にぜひそうしろというふうには私は読んでおらないのであります。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は畜産局長の通達が独禁法上どうかという、そういう心配を持っておるのではないのですよ。あの通牒というものは、すなわち今日の協同組合を通じての販売事業の望ましい形を、行政的に指示しているにすぎないのです。ああいう形が一番望ましいのです。ですからそういうことを御理解になっておればいいのですね。農林省の行政方針としての、協同組合の販売事業のあり方というものの望ましい姿というものは、やはりたとえば工場が二つ以上あっても、あるいはそれ以外の農産物の販売先が二つ以上あっても、共同販売をやる場合においては、やはり組合員に対しては共同計算の形で生産物の販売代金も支払うことを望ましい形として、これは協同組合運動の中でも一つの旗じるしとして、今日まで協同組合陣営の関係者は努力してきておるのです。そういう点はやはりすなおに公取委員会としても理解され、その趣旨を妨害しないような立場に立っていろいろな問題を処理されていくべきであるというふうに考えられるわけですが、遺憾ながら今日までとられた公取の協同組合あるいはこれにつながる問題の処理というものは、必ずしもその線に沿っていないのであります。ですから私は、そういう行政的な指導とか措置というものを、公取の立場において十分理解されておったかどうかということをむしろ質問したかったのであります。芦野さんは若干私の発言を違ってとられたかもしれませんが、実はそういう意味質問したのです。
  95. 芦野弘

    ○芦野説明員 農林省の通達のような御趣意は、この前もここで私申し上げたかと思うのでありますが、ある組合なら組合の、組合員の意思が非常によく合致して、そういうふうに円満に行われるということなら、これは一番けっこうなことであり、望ましい姿であるということは認めて、そのことを農林省の通達も強調なすったのだろうと思います。その点は、ただ法律に違反しているとか逸脱してないというばかりでなく、進んで、けっこうな御方針だろうと私も思っております。ただ、特別な事情があっても、何でもぜひそうしなければならないのだとなると、これはまた別問題でございまして、同一の組合員が出荷先を異にするというと非常に不利であるとかあるいは平和が乱れるとか、もんちゃくが起るとか、必ずしもそういうものではないだろうと思うのです。御承知でもありましょうが、訓子府という地方、これは先年農林中金事件のときに問題のあったところでありまして、あそこは従来組合員全部が雪印にやっておった。そのうちに森永の方へ出すものが出てきた。それで、それをまた雪印の方が妨害したというので、われわれの方で取り上げまして、これは独禁法違反である、そういうことをしてはいけないという審決をした結果、一時今度は全部、反対に森永の方へ出すようにしようとしたところが、やはりそれではおさまらない。結局従来通りに雪印に出したいものは雪印に出し、森永の方に出したいものは森永に出す、こういうことになって初めて協同組合の平和が保たれ、実現してきた、こういったような事例が最近もあるのでありまして、それをしいて片方にしてしまう、しなければならぬということにするとかえっていけないのではないか、また専属利用契約をみんながしないということを認めたからといって、むやみに理由もないのにてんでに勝手なところに出すということには必ずしもならないのじゃないか、こうなってくるとだんだん意見の違いのようになって参りますが、私の方は従来の監察の結果はそういうふうに見て、あの条文もそういうふうに解して、あの十九条はお説の通りまさにただし書き的のものでございまして、表か裏かと申しますれば、どっちかといえば裏の方、主役かわき役かといえばわき役的な条文でありますが、しかし決してそのために軽視しているとかどうとかいう問題ではなくて、これがほんとうに、かえって基礎のある協同組合を発達させる一つの大事な規定だというふうに、これは芦野一人の考えでございますが、そう芦野は考えておりますから、このことをつけ加えて申し上げておきます。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 協同組合の運営の中で、共同販売なら共同販売のやり方に行き過ぎが絶対にないということもないわけであります。ままある場合もあるけれども、それは悪意に基く経営者の行き過ぎである場合が多いわけであります。そういうちょっとした事例をつかまえると、鬼の首でもとったように、すぐこれは独禁法違反だというふうにしてたたくということが、たとえば先ほどの浜中農協の事例でも出ている。だからこの点は芦野さんのような公明な立場で問題を理解して処理される場合はいいのでありますけれども、しかし公取委員会の構成の中に百パーセントが、あなたのような立場で協同組合を理解したり、酪農を理解したりして問題の処理に当っているわけではないと私は考えておりますので、あなたを通じて、今後起きるであろう事態に対しても、やはり十分反省したりあるいは慎重を期しながら、的確な国民に信頼されるような公取としての運営をしてもらいたいので、具体的な事例を指摘してお尋ねしているわけです。職員全体についてそういう理解の度合いは最近相当高まっていると思いますが、どうですか。
  97. 芦野弘

    ○芦野説明員 公取の委員としても職員としても、今御心配になるような思い違いの点は私は万ないと存じております。
  98. 小枝一雄

    小枝委員長 この際助川良平君より、酪農振興対策と私的独占禁止法の運用に関する件について決議をいたしたい旨の申し出があります。これを許します。助川君。
  99. 助川良平

    ○助川委員 本委員会におきまして、数次にわたり慎重審議をいたして参りました酪農振興対策と私的独占禁止法の運用に関しまして、きわめて重大な問題点が明白になされたかと考えられるわけでございます。そういった点にかんがみまして、この際酪農振興対策と私的独占禁止法の運用に関する件について決議をいたしたいと考えまして動議を提出いたします。案文を朗読いたします。    酪農振興対策と私的独占禁止法の運用に関する件   わが国の酪農を合理的な基盤の上に急速に普及発達せしめ、もって農業経営の確立を促進するためには、牛乳生産の集約化と農業協合組合、同連合会による共同集乳組織の整備を図ることが肝要である。   しかるに、青森県三八集約酪農地域の指定の経過をめぐり私的独禁法第二条及び第三条に違反する事実ありとして公正取引委員会の審判が開始せられるに至った経緯については、農協法及び酪農振興法に対する公正取引委員会側の理解不充分に起因するところ少からずと認められ、酪農振興対策の遂行上基本的な障碍となるおそれがある。   よって、この事態を収拾するため、左記の措置を講ずべきである。     記  (一)公正取引委員長は、農協法及び酪農振興法の精神に則り、私的独禁法の運用に当ること。  (二)十一月七日公正取引委員会芦野委員が「雪印乳業ほか三者に対する審決監査について」行った談話中、酪農民による牛乳の農協無条件委託販売を否定した如き箇所については、誤解を一掃するように是正すること。  右決議する。    昭和三十二年四月二十六日       衆議院農林水産委員会  以上であります。提案の趣旨につきましては、今日までの委員会の審議の中でそれぞれ各委員が明白に御理解いただいておることでございますので省略いたします。
  100. 小枝一雄

    小枝委員長 お諮りいたします。ただいま助川君より提案されました酪農振興対策と私的独占禁止法の運用に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  ただいまの決議に対する公正取引委員会所見を求めます。芦野委員
  102. 芦野弘

    ○芦野説明員 先日来ここの席におきまして横田委員長初め芦野、それから各事務官、審査官等出まして、御質疑に答えまして公正取引委員会立場なり所見なりをるる御説明申し上げまして、われわれはどこまでも現在の協同組合法、酪振法等の精神は十分理解しておるつもりでございましたが、あるいはわれわれの説明が不十分でありましたか、あるいはなおわれわれの思慮に足りない点があるのでありますか、こういうふうな公正取引委員会の審判が開始せられるに至った経緯について、農協法及び酪農振興法に対する公正取引委員会側の理解不十分に基因するところが少からず認められる、しかもそのために酪農振興対策の遂行上基本的な障害となるおそれがあるというふうな御決議を得ましたことは非常に遺憾でございまして、私ども説明の不十分であったこと、あるいは私どものまだ考えの足りなかった点を十分反省しなければならないと存ずるのであります。  そこでこの決議の各事項につきまして、第一の「公正取引委員長は、農協法及び酪農振興法の精神に則り、私的独禁法の運用に当ること。」ということは、御決議があるまでもなく、ひとり独占禁止法ばかりではなく、各関係法規の精神は十分に尊重して独占禁止法の運用に当ることは申すまでもございません。しかしながら農業協同組合法、酪振法、独占禁止法自体についても、われわれの考えがすべて最終的に正しいという自信を持ってはやりましたが、審判の手続にもし不服があれば、裁判所に訴えて、高等裁判所に特別にてきておりますところの五人の練達な判事をもって組織された特別法廷でもって、公正取引委員会の解釈が果して正しいかどうかということは判断されるのであります。さらにそれに不服であれば上告の道も一定の場合には開かれておりまして、終局的には最高裁判所でもってわれわれの解釈が正しかったかどうか、われわれの理解が十分であったか、不十分であったか審判される制度になっております。このことを一に関連して御参考までに申し上げておきます。
  103. 小枝一雄

    小枝委員長 なお本決議の政府への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  酪農振興対策について質疑を続行いたします。植村武一君。
  105. 植村武一

    植村委員 先ほど来いろいろ酪農問題について質疑が行われておりますが、私はわが国の酪農が確固たる基盤の上に立っていないことをまことに遺憾とするのであります。わが国酪農の脆弱性という点を指摘して、今後の畜産行政、酪農行政について政府の善処を求めたいと思います。  戦後わが国の農業経営に取り入れられた畜産、しかもその文庫の中で最も大きく取り入れられた酪農そのこと自体はまことにけっこうだと思いますが、乳牛を飼育し牛乳を生産するということになりますと、わが国の国土狭小なる点、草資源の少ない点等からいって、当然北海道を除いては濃厚飼料に依存しなければならぬのが現実であります。さらにまた生産された牛乳を販売する面においては、先ほど来いろいろお話がありましたように、数個の大資本、大企業に依存しているというのが現実なのであります。先ほど来独禁法違反とか違反でないかという論議が出るのも、大メーカー依存の日本酪農のあり方を如実に物語っております。そういうことから見ると、牛乳を生産する面においてもきわめて脆弱なものであり、その生産された牛乳を販売するという面においてもきわめて不安定なものである、こういうことが私は言えると思うのでありますが、こういう点に対して私はきょうは大臣に御出席いただいて、大臣から一つ考え方を承わりたいと思っていたのですが、お見えにならぬようでありますから次官並びに局長から、そういう問題に対する将来の対策をどうなさるかということについてお伺いをいたしたいと思います。
  106. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 酷農政策の基本的な問題についての御質問でございますが、御指摘になっておりますように、酪農をやります場合その飼料をどうするかという問題と、それの販売がどうあるかという問題、これは酪農がどういう形で農家経営の中に結びついておるかということとともに非常に重要な基本的な問題であろうと存じております。御指摘のように、この酪農の基本になります飼料の問題は、私はその立地条件によって種々異なる、若干の差が生ずると存じますけれども、基本的にはやはりその飼料をできるだけ自給度の高い形において——言いかえますと、自家生産あるいは自家採取できますような形における圃場を有しておって、そのことが乳牛の摂取になり、そして生産物を出す。あるいはそれから出ます糞尿がまた堆肥その他の形になりましてその土地に還元されていく、こういう形におきますところの農家経営がより拡大していく形ができ上りますれば、それが酪農といたしましては最も望ましい形であろうかと思います。ただし、これは一般論でございまして、都市近郊、従いまして市乳地帯に非常に近接しているようなところで、果して飼料の自給率というものを、遠いそういう余地の広い地帯と同様に見ることがいいかどうか、こういり問題はおのずから問題が分れてくるかと思います。一がいにこれを議論するわけには参りませんけれども、やはりそこは市乳地圏としましては一つの経済的立地といたしまして、十分な白面率は持たなくとも、かなりの濃厚飼料をやって、そしてまた購入飼料にたよる依存度を高くして、そして市乳を出していく、こういう形に相なることかと思います。ただしそういう場合におきましては、やはり牛のしぼり過ぎ、牛自身の個体の健康の問題等がございますので、早死にをし、あるいはまた牛自体が弱ってくることは当然でございますので、適切な育成地帯、あるいは適切な休養地帯というものと連絡をつけながらの政策が望ましいかと存じております。特に乳牛を飼います場合においては、購買飼料の問題も非常に重要な問題であろうかと存じます。従いまして現在このえさの対策といたしましては、従来から飼料需給安定法という形におきまして国内のえさの価格をできるだけ安定したものにしていきたい、こういうことで努力をいたしておるのでありますが、この中でことに昨年来問題のありました糟糠類、ふすまの問題につきましても、これは一つ十分なる対策が必要かと考えております。  それから乳の販売の問題でございますが、これはいろいろ今御議論が出ておりましたように、市乳として販売するものと、乳製品としての原料乳として渡しますものと、若干その間に差が生じることかと存じますけれども、やはりその間の流通過程におけるいろいろな経費の節減、あるいは工場施設の中における経費の節減等々を通じまして、より豊富な生産されました乳及び乳製品が安価にかつ大量に需要者に向けられる方法が望ましいと存じております。従来酪農対策一つといたしましてやっておりまする酪振法のものの見方といたしましては、現在の日本の酪農というものの一つの欠陥は、乳牛を飼いまする農家の飼養密度が粗である。であるから、これを一定程度の密度に高める必要がある。一定程度の密度に高めなければ、当然乳を持って参りすまる工場の施設その他が非常に弱小なものになって、そのことが少々の景気変動にすぐに倒れる一つの理由でもあれば、生産コストが割高につく一つの理由でもある。従って、飼養密度を高めると同時に、その中心になる工場等には新式の近代的な工場をできるだけ持ってこさせる、そういう形において、乳あるいは乳製品の格価を安くしていく、かような考え方に立って施策を打ち出して参っておるのであります。今後の対策といたしましては、やはり何と申しましてもえさの面、従って、いわゆる牧草あるいは青刈り作物等、飼料作物の形における飼料給源の拡大、また糟糠類、海外のふすま等に期待するものが——日本の食生活として、粉食よりも米食が主要な食糧になっている現状から見まして、単にふすまにだけおもにたよるという方法は不十分であろうと思いますので、さらに残されました。パルプ資源、パルプ廃液の飼料化、あるいはアルコール廃液の飼料化、さらには尿素の飼料としての利用、こういう新しい部面におきまする飼料資源の拡大を考えていく必要があろうかと思っております。また乳製品等の問題につきましては、現在やっていこうとしておりますところの生産量の予察精度を高くし、あるいは生産費の調査をもっと的確にするというような形を保ちつつ、新しい飼料増加の方法をとっていく必要がある。かような考えで現在酪農の方向考えておる次第でございます。
  107. 植村武一

    植村委員 御承知通り今牛乳はまた消費の面においては上り坂であります、だからこそ先ほど来論議されておったような独禁法違反だとか違反じゃないというようなことが起ってくるのであります。私は日本の酪農というものが万一生産過剰になった場合に、これは非常に大きな問題が起ってくると思います。酪農振興ということは、御承知通り政府で融資してやるから乳牛を飼え、こういうことで農家はその政府施策によって牛を飼っておる。もし牛乳の生産が過剰になって牛乳の価格が激落してくる、こういうような場合は勢い乳牛の価格も暴落するでありましょうが、そのときに農家としては大きな損害をこうむることになる。私は常にそれを心配している。こういう点に対して政府としてはどういうような将来の見通しを持ち、将来に対してどのような対策をお立てになろうとするか、これを一つ伺っておきたい。
  108. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 昨年は約六百十五万石程度の生産乳を記録しております。今年はおそらく七百万石をこすでありましょう。私たちはこれをこの数年の間に一千万石程度には達するようにいたしたい、かように考えておるわけであります。日本でどの程度に酪農を持っていくかということは、一千万石程度の生産、これはこの間の五カ年計画ではそういう計画であったのですが、非常に確実に生産が伸びております。これはまた将来長い目で見る生産計画を立てていかねばならぬと思っております。これは現在のところでは生産も順調であれば消費も順調に伸びておると思っております。ただある程度長い目で見た見通しの問題はいいのでありまするが、こういうふうに非常に激しく急ピッチで伸びて参りまする場合には、生産と需要の増との間に若干のひずみが生じることも予想しなければならぬ。早い例が、二十九年の秋の乳価あるいは生産乳というようなもの、あれはおそらく二、三十万石の生産量をこなすことができなくてあのような状態になったと思います。それから比べますと生産も消費も非常に拡大されて現在きておると思います。生産を伸ばすと同時に、それだけのものが消費者の口にわたって国内で消費されまするためには、やはり他の品物に比べて安価であるということが必要になろうと思います。ミルクに関しましては、従前から比較いたしますれば、乳価は相対的にずいぶん下っておると私たちは考えております。そのことがやはり消費の増大を来たしておる一つの特徴になっておると思うのであります。今後ますます増産されるものは消費者には割安に、生産者農家の諸君には安定した、しかも農家経営を十分に拡充していくに足る乳価が保証されることが望ましいのであります。従いましてそのような観点から、片面にはより確実な生産の態勢、換言いたしますれば従来の副業的な乳業から、より農家経営の中に入り込みましたえさの自給率の高い、クッションの十分に持てる底力のある形における酪農経営ということが必要であろうと思いますし、また流通過程におけるいろいろの点における改善、工場における改善、あるいは市乳でありますれば市販いたしますそれぞれの機関における経費の節減、こういうようなものが必要であろうと思います。また需要の拡大ということもあろうかと思います。たとえて申しますれば、チーズの需要のごときは非常な勢いで現在伸びておる、また一時顧みられなかった脱脂粉乳のごときものがこれまた非常な勢いで需要増をいたしておるというふうに、それぞれの分野におきまする需要を増加する方途、これがやはり講ずべきことであろうと考えております。そういうような形でこれを持っていきたい、かように存じておるわけであります。
  109. 植村武一

    植村委員 局長の今のお話一応私はうなずけるのでありますが、ところが現実に農家でやっておる酪農のあり方を見てみますと、あなたの理想とされる経営とはだいぶ隔たりがある。これを具体的に言いますと、あなたのお話の中にあったように乳牛というものはやはり草を主体として飼わなければならぬ、これが畜産のありかたです。ところがこれは日本の耕地の関係、今やかましく草資源の利用とか草地改良とか言っておりますが、これは私はおそらく遅々として進まぬと思う。もっと手っとり早く乳をより多く生産さそうとするならば、これは濃厚飼料をどんどんやったらいい。今北海道を除いた全国の酪農というもののあり方は、乳牛を一つの機械と見ておる、その機械をできるだけ多くフルに動かして多くの牛乳を生産して利益を上げよう、こういう考え方なんです。私はこれは邪道だと思う。邪道だけれども、いろいろな条件に制約されてそうせざるを得ないのであります。ここに問題があるあなたが牛乳をより安くしなければならぬ、この理想はその通りです。しかしながら現在の経営あり方でどうして乳をより安く生産できますか、私は不可能だと思う。そういう点にあなた方の考えていらっしゃる理想と現実との間にだいぶ隔たりがある、こういうことを私は申し上げる。もちろん需要の拡大、一千万石まで気づかいないというようなお見通しでありますが、もしこれ万一この見通しが間違って、牛乳の消費の面において狂いがきた、これはいやおうなしに非常に大きな酪農恐慌が起ってくると思いますが、こういうことから考えて、飼料需給安定法というような法律のように、生産物たる牛乳の需給安定法というような法律まで今からお考えになっておく必要はないか、こう私は常に考えておるのでありますが、そういう点に対するお考え一つ伺いたい。
  110. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 今植村先生のお尋ねの点は私は非常に大切な点だと思うのでありますが、おそらく御指摘になっておる点は大都市近郊で、従いまして小さい面積のところで乳牛を専門にやっておる形、市乳をやっておるところにおける問題が御不安なのではないかと思います。日本の中で、単に北海道だけではございませんが、そういう大都市で市乳地域としては非常に恵まれ、そのかわり都市近郊であるために土地は非常に狭いというものだけでなく、かなり広い土地を持ち、広い草地を持ち、そしてそれを高度に耕やしますれば、十分にえさの給源が開拓されるところが非常に多いと思っておるのであります。たとえて申しますれば、もし一反歩の畑地から三千貫の牧草がとれるといたしますれば——このことはそうむずかしいことではないのでありますが、そうすると年間十六、七石程度乳を出しておりまする牛がおそらく百二、三十日は十分に飼えるでありましょう。牧草あるいは青刈り等の栄養分の高いものを、しかも一番養分の多い成長期に取りまして、それを牛に与えていくこういう従来の実取り農業とは根本的に変った新しい方法を考えますと、日本では山地で草を取るということにとどまりませず、相当に酪農を進めていく道が多いと思っております。事実またそのような形において発展しておるところが非常に多いのであります。ただし、おそらく先生の御指摘になっておられると思います都市近郊、ことに関西等の非常に面積の狭い、しかも乳牛を何頭か飼っておるというような地帯はいささか例を異にすると思いますが、そういうところは、先ほどお話のように、乳を得るための一種の機械という形において牛を搾取して、そして乳を出さしておる。これも確かに経済道具でありますので、十分それはそれなりの意義はあると思っております。そういうところではもちろん購買飼料というものに依存せざるを得ないのでありますが、えさは海外の相場等に影響されるところが非常に多いので、できるだけそういう外からの経済変動を受けましても堅実にやっていけるような経営を私たちとしては奨励せざるを得ないのでございます。もちろん飼料需給安定法等の制度がございまして、そういう近郊地帯の購買飼料に非常に多く依存しておるところに対しても、安定した形において安い飼料を出さなければならないことになりますが、経済原則というものもございますので、そういうところよりももっと余裕のあるところで、牛を農家経営の中に確実に入れ込んだ経営が望ましいのではないかと思います。しかし、事は経済問題でございますから、乳をしぼる機械と考えて、そうして乳をしぼり尽して早く死んでもいい、その間に、高いえさでも乳が市乳で高いですから、それがペイすればいい、こういう考え方考え方として成り立つと思います。  それからもう一つ、このように非常に生産が伸びて、もしも過剰になれば一種の恐慌状態がくるのじゃないか。それは、私もその通りだと思います。しかしそれがどのような程度にくるかということと、その広さがどうであるかということは、長期の見通しの問題とは少し違うのではないかと考えております。先ほど申し上げましたように、これだけの生産をいたしましても、たとえば学校給食の問題にいたしましても、これは外国からの膨大な脱脂粉乳によってまかなわれており、ほとんど日本の脱脂粉乳は使われていないので、この方に残された利用分野がございます。そういうものを考えますと、日本の乳の生産は、それが相当程度海外競争して競争し得る合理的な形において発展していきますならば、それほど私は心配する必要はないと考えております、ただ短期間の成長過程の若干のずれが非常に大きな問題となってくることは御指摘通り、あります。これに対する対策いかんということですが、これは私たちまだ現在結論を得ておりません端的に申しますれば、これが一番よいという方法を得ておりません、ただ、乳はあのような性質のものでございますから、これをどう保管していくかという非常にむずかしい問題が実はございます。乳で一番保存しやすい形といいますれば、おそらく脱脂粉乳とバターということになろうと思います。しかし、脱脂粉乳とバターといえども、これを数年保管をすると非常なロスが生じます、あるいは過剰で乳価が下れば乳牛の値段が下るであろうから、牛そのものを飼ったらどうかという議論もあるかもしれままん。それも一つの方法として考えられると思います。しかしなら、まだこれが確実によいという成案は得ていないのであります。そういうふうにいくまでにいろいろな手か残っておるのではないか。たとえばまだ生産費調査すら満足すべきものを私たちは得ていない。生産費調査をもちろん数年やっております。しかし、いろいろ状況の違います全国の農業地域全体にこれを及ぼすためには、もう少し拡大をいたさなければならぬ、そのような観点から、今年度お認め願いました予算で、生産費調査の方式を拡大いたし、あるいは乳の生産五の予察を今後三カ月ごとにいたしたいと考えております。そうしてこの数量を関係者に公開いたしまして若干の自主的な判断の材料にいたさせたいと考えておるのであります。さらに、まだわずかな円でありますが、この数年続けております施設を今年は若干変更いたし、バター及び脱脂粉乳が過剰になりました場合、学女給心あるいは結核等の患者に対する特別な販売という形で一般市場から切り離したところに放出して、その価格差の若干を国から補助するようにいたしたいと考えておるわけであります。そういう形の民間の一つの組織による一種の自主的な調整作用というものが、従って現在目前の問題として考えられるかと存じております。
  111. 植村武一

    植村委員 今の局長の都市周辺の酪農地帯においては私の言うようなことなんだが、全体としてはそうじゃないというようなお話だったと思いますが、それは私は、局長としては実際ものを見ていらっしゃる程度が低いと思う。私は牛を飼っておるのです。その道の専門家なんです。従ってこれに対しては少くとも専門的な知識を持っておる。この目で全国の酪農地帯を見て、こうじゃだめだ。これではどうしても濃厚飼料に依存しなければならぬ。酪農振興ということは、酪農振興法と飼料需給安定法とこの二つによって少くとも現在はささえなければならぬ。将来あなたのような理想の域に達したら話は別だ。しかしさしあたりはこの二つの法律でささえられなければならぬのだが、そのうちの酪振法は別として飼料需給安定法はフルに活用されておりましょうか。この点に対して一つ実情を御説明願いたい。
  112. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 飼料需給安定法の問題でございまするが、これは私たちとしては、できるだけの努力を払ってその運営に当っておるつもりでございます。今年度は大体海外から輸入百二十億程度のものを考えておりまして、価格差損として約七億程度のものを予定いたしております。
  113. 植村武一

    植村委員 具体的にこれから承わっていきますが、一例をふすまにとります。ふすまの適正価格はどのくらいに抑えていらっしゃいますか。
  114. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 現在大体六百五十円程度のものを一種の安定したもの、こういうふうに考えております。
  115. 植村武一

    植村委員 それではふすまの時価はどのくらいしておると思いますか。
  116. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御存じかと思いますが、現在七百八十円あるいは七百九十円と相場はしております。
  117. 植村武一

    植村委員 大体八百円こえていると思います。飼料需給安定法という法律建前は、この適正価格に時価を引きつけるようにできておる法律じゃないのですか。もし私の言う通りとしたら、農林省は今日までどれだけの努力をされておるか。こういうことについて具体的に伺いたい。
  118. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 ふすまの問題については、この飼料需給安定法の考え方か、すでに御存じだと思いますけれども海外から輸入したものによって飼料の国内の相場を安定させていく、こういう考え方に相なっております。三十一年度においては大体八万二千トン程度になったと思いますが、この海外から輸入するふすまを払い下げて参ったの、あります。御存じのように、昨年の秋からふすまが急騰いたしました。昨年の夏ごろはむしろ逆であったと思います。昨年の秋ごろから相当急速な値上りをし、これに対して私たちの力では大体毎月——初めのうちは若干少なかったが、一万トン程度のものを放出して市場を冷やして参ったわけであります。ある程度のところに行って大体横ばいが続いたということもございます。  そこで果して、先ほど申しますような価格のところまで下げられるかどうかという問題でございますが、このふすまの急騰した一つの理由として、国内の製粉業者の繰業率が、二年続きの米の豊作のために非常に落ちておりました従って粉食の減少によるふすまの生産が少かったこと、これが案外私たちの見込みよりもその率が高かったように思います。それからもう一つは、スエズ問題という予想しない問題が勃発いたしました。海外の相場ももちろん高くなりましたし、それ以上にフレートが高くなった、適当な船がなかなか手に入らぬような状況がありました、その国内の問題に対してもちろんストックを持っておりましたが、次次の後続部隊を入れるためのふすまの買付等が思うようにまかせなかった点があった。そういうような事情がからみまして今のような値段を来たしているわけであります。  これは実は一定の予算の限度というものに縛られるわけであります。これを先ほど申しました一つの安定した時代における畜産物価格とふすま価格とのバランスにおいて算出いたしました先ほどの価格のところまで押えるということになりますと、国内産のふすまその他全体に対する対策として下げていかなければならぬわけであります。実は相当大きな数量が必要とあったわけであります。一面においては予算関係、もう一つは突発的な問題であったのでありますが、スエズ問題等のためにそのような状態になりました。その後極力努力を続けて、時には小麦を買うのとふすまを買うのとあまり価格が違わないような程度にまで海外のふすまを買い付けたのでありますが、思うにまかせなかった。しかし大体横ばいの状況、一応こういう現状であります。
  119. 植村武一

    植村委員 ふすまの価格は昨年の一月から七百円台を上廻っております、約六カ月前からこれは急騰してきた、それで六百五十円という局長の言われるいわゆる適正価格には、最近この両三年一度もなったことはない。
  120. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 それはおそらく相場を立てまする沖場渡しでいくか、それと卸価格でいくか、そこの違いだと思います。六百五十円のやつも、大体七百円近くいくのじゃないかと思います。
  121. 植村武一

    植村委員 それでは、現在八百円の相場をしておりますが、この相場の横ばいでふすまは進むもの、また進んでやむを得ない、こういう考え方ですか。
  122. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御存じだと思いますが、だいぶ先安の相場が出ておるようでございます。七月、八月相場が安くなるのは当然でありますが、そのころの相場等、かなり冷えた状況になっておるわけでございます。取引の先場のものもそういうふうになっておると思います。
  123. 植村武一

    植村委員 七、八月ごろになれば下るという見通しだという話ですが、下るという具体的な根拠をどこに求めていらっしゃるか。
  124. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 実は三十一年におきまするいろいろな海外の買付の状況、あるいは国内の相場等いろいろ検討いたしまして、もう少しいいやり方をやっていきたい、かような考え方から、今年度は海外の買付を早くやって参りたいと考えております。
  125. 植村武一

    植村委員 この飼料を外国から買い付けるのは、これは民間でフリーにさせておるのですね。それから買い入れたふすまを政府が買い上げて、今度はこれを放出するのには、これは特定な団体といいますか、業者といいますか、そういうものに払い下げておられるのですか。その点ちょっと具体的に話を聞きたい。
  126. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 海外のふすまを買い付けますのは、これはほかの政府が買い付けておる食糧等を扱っておりまする商社の中から、実績の高い商社を選び出して、その諸君が買い入れの担当者になっておるわけであります。もちろんふすま自体は、これは自由に入るわけでありますが、政府の買い入れますものは、そういう形になっておるわけであります。おそらく現在の国内相場と国外相場の関係で、ふすまは政府が買い入れますものしか入っていないと考えます。そういう形で買い入れておるわけであります。それからふすまを払い下げいたしまする場合には、これは実需者の団体等を選びまして、その諸君が入札をいたしまして、そしてそのものに払い下げるようにいたす、かようなやり方をやっておるのであります。
  127. 植村武一

    植村委員 私があえてこういうことを聞きますのは、何か放出する場合の相手方によって、この飼料需給安定の効果が非常に減殺されるような事実はないのかどうかということを伺いたいために、それを聞いておるのでありますが、そのお答えと同時に、今払い下げておる実需団体その他、具体的に名前を聞かしていただきたい。
  128. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 先ほどの御質問、ほかの飼料と間違っておりました。ふすまはほかに横流れする等の危険が少いと思われますので、一般の人に自由に入札をさせてやっておるわけであります。訂正いたします。
  129. 植村武一

    植村委員 ほかの人に自由に入札できるということはどういうことなんですか、ちょっとそれは意味がわからぬ。
  130. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 ほかのものという表現はいたしたかどうか好じませんが、ふすまの場合は横流れ等の心配がございません。一般の人たちにも、自由に制限いたしませず、入札によって渡している、こういうことであります。
  131. 植村武一

    植村委員 それじゃ伺いますが、私でも入札に入れるのですか。
  132. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 ふすまにつきましてはその通りであります。
  133. 植村武一

    植村委員 私の聞いておりますのは、これは入札の指名一者をきめていらっしゃいますな。私の聞いておる範囲では——これは間違いかもしれません。間違いがあったら訂正いただきたい。日鶏連、全酪連、全購連、全開連、全畜連、全豚連、日本飼料、これだけが入札の指名権を持っておる、こういうふうに聞いておるが、これはどうですか。
  134. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御質問がふすまでございましたので先ほど申し上げましたが、おそらく今のはトウモロコシとかあるいは脱脂粉乳というようにほかの飼料がございます。それらのものは、それらの実需団体に入札をさせまして払い下げをしております、ふすまは飼料以外に転用する危険がまずないと思いますので、一般の人たちに自由に入札をさせています。かような次第であります。
  135. 植村武一

    植村委員 そういうことは全国に徹底できていますか。全国の酪農業者に徹底されておりますか。と同時にまた、地方庁に対してもそれは徹底されていますか。
  136. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 こういうことはそれぞれの業界では非常に敏感に御好じてございまして、業界のそれぞれの新聞もそれを知らせておりますし、また公示等もいたしております。
  137. 植村武一

    植村委員 業界の人は知っておるかもしれないが、実需者は知らないですね。私は思うのでありますが、これはやっぱり府県庁に対して、今月はどこでどれだけのふすまの放出をする、希望者は入札にいけ、こういうようなことを教えてやってもらわないと、飼料業者だけ知っておって、実需者は何にも知りませんよ。
  138. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 県庁等にそれを知らせまして、そういう形においてこちらから指令をして一般に周知させるという方法はとっておりません。もちろん、たとえば全購連にいたしましても、あるいは全酪連にいたしましても、それぞれの生産者団体でえさを扱っておる諸君は、それは当然にそういうことをよく存じておると思います。県庁等にそれらのことを知らすというようなやり方は、これはほかの食糧一般の場合と同じ例によって行なっておりますが、県庁等に連絡をするということはとっておりません。
  139. 植村武一

    植村委員 県庁等に知らしていないというお話でありますが、私は県庁等に今後知らさなければならぬのじゃないかと申し上げておるのですが、局長のおっしゃるように知らす必要ないというお考えですか。私の言うように知らす方が飼料需給安定のために必要だ、こういうふうに考えますが、これはどうです。
  140. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 それは事と次第によろうと思いますが、今のところそういうふうな必要な事態はないと考えおります。
  141. 植村武一

    植村委員 それはどういうわけかちょっと私わからないのですがこれだけのふすまを放出して、そして適当価格まで引きずっていくのに今日まで何らの効果が上っておらない。予算のワクがきまっておるからだというようなお話もありましたが、これだけのえさを放出するというのだったら、もっと市価に響いてこなければならぬ。私はそこに何か欠陥があるのじゃないかと思うからさようなことを申し上げておるので、府県庁に知らす必要ないという根拠が何か具体的にございますか。
  142. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 ほかのものについてもそのような方法はとっておりませんし、またそれぞれの生産団体、また大きくえさを扱う諸君も当然知っておるわけであります。保管設備その他もございましょうし、そういうことに慣れたもので、しかも実需者の団体がよく承知をしておる現状でございますので、それで足りるのではないかと考えております。
  143. 植村武一

    植村委員 たとえば実需者の団体、大阪なら大阪、三重県なら三重県、奈良県なら奈良県の酪農団体、ここらの連中は何も知らない。それが私は不合理だと思う。業者は知っておるかもしれない。しかしながらそういう実需者の団体はえさがどういうふうに回っておるのか、どんなふうになるのか、これはめくらです。これでは私はよくないと思う。この点飼料という面において、もっと目をさますためにも、もっとそういう人に知らす必要があると思う。こういうことを申し上げておるのですが、これはどうですか。
  144. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 おそらく県の酪農団体の諸君もそれぞれたとえば全酪連とか、全購連とかいうような一つの組織をしておられる団体であろうと思います。もちろんそういうところからえさを求めるのではなく、ほかのえさ会社等から求められる場合もあるだろうと思います。ともかくそれぞれの下部団体でございますので、そういう必要がありますれば、それらのところとの連絡でも十分にやれることであろうかと思います。それを受けられるかどうかということについてもいろいろあろうと思いますが、これを各県に連絡してやっていくというほどの必要はない、一週間またはその程度前はやるわけでありますから、そういう形において払い下げ方法を通常の場合と同様にとっておるわけであります。これはそれぞれ連絡もございましょうから、それでやっていけるのではないかと考えております。
  145. 植村武一

    植村委員 この問題についてはさらにまた適当な機会に話し合うことにいたします。  次にもう一点伺っておきたい。飼料需給安定審議会にこういう資料をお出しになりましたね。審議会委員からこれをいただいたのです。飼料の需給のバランスの問題ですが、局長お持ちになっておれば三ページを見ていただきたい。三ページの上から二行目「搾乳牛」という欄の「一頭羽当り需要量」の内訳に粗飼料、濃厚飼料となって、粗飼料の可消化粗蛋白二百二十一キログラムとあります、そのあとの濃厚飼料の可消化粗蛋白百二十四とありますが、これを一つ目方に直したらどのくらいになりましょうか教えていただきたい。
  146. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 残念ながら私存じませんので、担当課長に説明してもらいます。——これは作成をいたしました者で十分御説明できると思っておりますが、ちょっと今時間がかかりますので何かはかにありましたら……。
  147. 植村武一

    植村委員 私は不幸にして飼料需給安定審議会委員ではありませんので、あとでこれを見せていただいて知ったのでありますが、私が審議会委員だったらこれは御返上申し上げるというところまで言いたい。というのは、昭和三十二年度飼料需要量算出基礎というものがあります。搾乳牛の一頭当りの年間需要量、可消化粗蛋白三百四十五キログラム、これは一応これでいいとします。ところがその内訳は粗飼料で二百二十一、濃厚飼料で百二十四、これは、よろしゅうございますか。粗飼料二百二十一を野草の生草として換算しますと一日十六貫になる。そうして濃厚飼料の百二十四というのがありますね。可消化粗蛋白百二十四は麦ぬかだったら一日九百匁ですふすまだったら約八百匁です。これが飼料需給のバランスの基礎なんですよ。一日に九百匁の麦ぬか、もしくは八百匁のふすまでどうして搾乳牛は飼い得ますか。一日に十六貫目の生草を一年間三百六十五日やろうたってやれません。こういう基礎をもって需給のバランスをこの通りでございますといって出しておる。これを見てみますと、濃厚飼料の供給量だけは出して、需要量はそれに合うように、粗飼料、濃厚飼料に振りかえておるだけなのです。今の酪農では搾乳牛にこれだけの濃厚飼料が要るのだ、従ってこれをどうして供給するかという考え方でなくて、国内でできる濃厚飼料と何ぼか輸入する濃厚飼料とを適当に需要量に振り当てておるだけなのです。これだけではほんとうの飼料の需給計画ではないと私は思う。これはどんなふうに思っていらっしゃいますか。
  148. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 私残念ながら詳しい説明ができませんので、少し時間をかしていただきたいと思います。私の方の局内で検討いたしまして出した数字ですので、間違いがないと思います。もちろん見通しの問題でございますから、その基礎のところの粗飼料計画がいいか悪いか、いろいろな問題があろうかと思います。しかしそれぞれの計画を積み上げましてこういう数字を出したものと思います。
  149. 植村武一

    植村委員 私はこれが間違っておると言っておるのじゃないのです。今申し上げまするように、供給する飼料の生産量と輸入量とを適当におざなりに需要量の方に持っていこうとする、ところが搾乳牛一頭にはこれだけの粗蛋白が必要なのだ、それを割り当てるためには濃厚飼料の量が少いから粗飼料にどんどん持っていく、こういうふうにして、粗飼料の方では牛が食うことができぬほどの量を割り当てて、濃厚飼料の方ではまるで小塚にでもやるくらいの量しか割り当てられていない。こういうことに対して、現在の酪農を将来伸していくという農林省の熱意が足りない点を指摘したい。濃厚飼料をどうして確保するか、どうしてもっと生産を増強さすかというようなことまで入ってこないで、ただおざなりに、これだけできるのだからこれだけ適当に割り当てたらいいということで、将来の酪農は決して振興するものではないと考えておる。それを申し上げておるのです。
  150. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 これは今先生のおっしゃいますように、輸入いたしまする数量と、国内生産されます濃厚飼料を先に出して、あとのしわ寄せを粗飼料あるいは草の方に持っていったというお話でございますが、そういうわけではございません。それはそれぞれの計画をにらみ合せまして作った計画でございます。先生も御指摘通り、日の草資源、粗飼料というものの確実な見通しをどのようにするか、これは非常に困難な問題であろうと思います。しかし私たちはできるだけの努力をいたしまして、こういう計画数字を出したわけでございます。  それから今御指摘になっておりますように、農厚飼料のこれを拡大して、飼料の方に持ち出してくるための努力もなければならぬというお話でございますが、それは全くその通りで、この計画の裏にこういう努力を私たちは考えているわけであります。
  151. 植村武一

    植村委員 もう一点だけ伺います。私の言うようなことはないとおっしゃるが、それでは一ページを一つごらん下さい。これは供給量だけははっきり数字が出ております。ところが需要量の方は数字がちっとも出ていません。ただ総計だけ出ている。総計は供給量の総計に合せているだけですよ。私はそれを申し上げている。
  152. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 その表がちょっとはっきりいたしませんので、何でございますが、これを審議会に出します場合、もちろん需要量の算定もいたし、供給量の算定もいたしまして出した数字でございます。その表に需要の数字がないというおしかりでございますが、需要の算定もいたしました上での数字でございます。
  153. 植村武一

    植村委員 これで終りますが、それは私は詭弁だと思う。この表を見られたら一目瞭然ですよ。しかしもう時間もだいぶおそくなるから、このくらいでまた適当な機会一つお話し合いをいたしましょう。ありがとうございました。
  154. 小枝一雄

    小枝委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十七分散会