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1957-04-17 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十七日(水曜日)     午後二時四十九分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 田口長治郎君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大野 市郎君    木村 文男君       椎名  隆君    綱島 正興君       永山 忠則君    原  捨思君       本名  武君    村松 久義君       阿部 五郎君    赤路 友藏君       足鹿  覺君    伊瀬幸太郎君       井谷 正吉君    石田 宥全君       川俣 清音君    中村 英男君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席政府委員         林野庁長官   石谷 憲男君  委員外出席者         農林事務官         (林野庁林政部         課長)     家治 清一君         農 林 技 官         (林野庁指導部         計画課長)   山崎  斉君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月十七日  委員石山權作君及び川俣清音君辞任につき、そ  の補欠として井谷正吉君及び足鹿覺君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約  の批准について承認を求めるの件について外務  委員会連合審査会申入れに関する件  森林法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇六号)(参議院送付)     —————————————
  2. 小枝一雄

    ○小枝委員長 これより会議を開きます。  森林法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑に入ります。質疑の通告がありますのに、これを許します。芳賀覚君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 林野庁長官お尋ねしま今回のこの森林法改正でありますが、見方によっては改悪とも考えられる節が幾多あるのですが、なぜこういうような改正をしなければならぬかという点に対して、まずお尋ねいたします。特に今までの森林法考え方は、森林計画に基いて幼齢林伐採をのる程度制限するということが一つの柱にもなっておったのですが、今回の場合には広葉樹幼齢樹伐採制限とか禁止を廃止してしまうというようなとが改正一つになっておりますが、こういう点に対する当局考え方に具体的に御説明願いたい。
  4. 石谷憲男

    石谷政府委員 昭和二十六年の第十国会におきまして森林法の大改正をいたしまして、現行法律が制定されたわけでございますが、その中におきましては針葉樹広葉樹ともにある一定の年齢以下のものにつきましては、そり伐採について許可制度をとるというふうにいたしておりまして、その場合に用材林及び薪炭林別に、さらにまた針葉樹及び広葉樹別にそれぞれの伐採許容限度の範囲内において許可を受けて伐採する、こういう仕組みをとってきたわけでございます。新しいこの計画制度に基きまして現行森林計画編成を二十七年からやって参ったわけでございますが、たまたま昭和三十一年は五カ年計画による編成を一巡し得た最終年度でございまして、この機会に過去五カ年間にわたります計画に基くこれらの仕事の実施の結果についていろいろと判断をいたしたわけでございます。そこでこの資料の中にも差し上げておるわけでございますが、大ざっぱに申し上げますと、針葉樹につきましては依然として幼壮齢樹に対する伐採強制客観情勢が非常に強いにもかかわりませず、広葉樹につきましては、用材を含めまして、特に薪材でございますが、大体伐採許容限度に対しまして許可申請数量というものが非常に内輪である。大ざっぱの数字で申し上げますると、針葉樹の場合におきましては、全体の許容限度に対しまして許可申請数量はおおむね七〇%以上という状況でありますにもかかわりませず、広葉樹に対しましては大体四〇%程度ということでございまするし、また全国二千九十六の森林区について見ましても、各森林ごと許容限度を超過いたしまして伐採許可申請のありました森林区の比率というものは、広葉樹用材林の場合におきまして一七%、それから薪炭林の場合におきましてはわずか六%、こういうような状況も実ははっきりわかって参ったわけでございます。許可制度をとりますとかなり煩瑣な手続を必要とするわけであります。しかも用材林薪炭林別に大別いたしますと、許可申請数量は大体年間十五万件ずつあるわけでございます。このほかにある一定年度以上に達しますと、これがいずれも届出制度をとる対象森林になわけでありますが、届出によって伐採しておりますものの届出件数もおおむね四十万件をこえるというような状況でございますので、むしろ重点の低いものに対しましては、非常に煩項手続を要しますところの許可制度からはずして参る。そして一方重点のますます高まっております針葉樹伐採制限制度運用を適切にはかって参りたい、こういうことが実は趣旨でございます。今申し上げましたのは、過去五カ年間にわたりまして実施した結果にかんがみてのことを申し上げたわけでございますが、一方におきまして広葉樹におきましては、御承知のように近年用材といたしましての広葉樹利用というもりが次第に進んではおりますけれども、その進み方の伸びは非常に緩慢なものであります。一方薪炭林消費でございますが、これは戦前の昭和五年ないし十年あたりにおいては一年間一価二千万石程度薪炭林伐採が行われておりましたのに対して近年は八千万石を下回るというような状況で、しかも目下横ばい状況でございますので、大消費都市等における薪炭消費の今後の趨勢から判断いたしますと、これは漸減をするということに相なります。従いまして薪炭林として伐採されますところの広葉樹伐採量は、大体現在程度のもので横ばいをするというふうに考うべきであります。従ってこのいわゆる消費傾向からいたします需要増大に対応する伐採促進といったようなことにつきましては、さしたる心配はないと考えまして、伐採許可制度対象からはずしまして届出制度の方に移行せしめ、そこで浮いて参ると申しますか、出て参りまする事務余力を用いまして、いやが上にも重要性を増して参ります針葉樹に対する伐採制限制度運用完璧を期して参りたい。従いまして従来二月、六月の二回しか許可の受付をいたさなかったものを、年間三月、六月、九月、十二月の四回に届出をいたしましてこの制度運用完璧を期して参りたいと考えてこの提案をしたわけであります。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの説明によりますと、今後の針葉樹広葉樹に対する森林行政の方針としては、広葉樹漸減して針葉樹がそれに入れかわっていくという考え方の上に立つという意向なんでしょうか。
  6. 石谷憲男

    石谷政府委員 将来の木材需給趨勢から判断すると、かなり急激に増大か予想されるということになるわけでのりますが、これに対しまして可能な限り木材供給力国内需給度を引き上げて参ろうといたしますと、天然生林伐採いたしましたあとには、針葉樹用材林をもって仕立てがえをして参る必要があるように思うわけであります。従いましてそのような要請からいたしますと天然生広葉樹林はある段階までは次第に減りまして、人工植栽による針葉樹林にとってかわるということが言い得ると思います。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合に一つ考え方としては、国内における需要増大が結局適齢伐期に達しない幼齢林を、広葉樹に限っては伐採せざるを得ないという需要に対応するためにこういう制限緩和をやるのではないかという考えも持たれるわけですが、そういう点はいかがですか。
  8. 石谷憲男

    石谷政府委員 決してそのような意図をもって始めたわけではないのでございまして、全体として非常に逼迫していることのために、なかんずく針葉樹資源が非常に減って参りまして、針葉樹の毎年の伐採漸減しているということのために広葉樹資源に対する利用促進をされているという事実はございます。しかしながらその肩がわりたるや非常に緩慢なものでありまして、こういう措置をいたすことによりまして広葉樹伐採が急激に進むというようなことは全然あり得ないと考えているわけでございます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 この改正を行なった場合、広葉樹用材価格等に対する影響は不可避なものだと考えます。こういう改正を行なったことによって価格面に対する影響はやはり出てくるのではないでしょうか。
  10. 石谷憲男

    石谷政府委員 その問題についてでございますが、先ほども説明申し上げましたように、全国二千以上の森林区という、いわゆる現実伐採許可制度運用をいたしております単位についてでございまするが、用材林の場合におきましては、広葉樹について一七%、薪炭林の場合におきましてはわずかに六%というような、いわば一方において八三%、一方において九四%の森林区は、こういった制度がありましても、いわゆる許容し得る限度を越えまして伐採許可申請があったという現実にはないわけでありますから、そういう意味ではほとんど影響がないというふうに判断をいたしましても差しつかえがないと考えておるわけであります。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は結局広葉樹に対しても、たとえば伐調資金制度なんかがあって、これは特に災害のときなどにも出てくる問題ですが、やはり災害等によって農家の経済がアンバランスになるような場合においては、当然所有山林立木を切ってやるということになるのですが、今まで一つ制限規定というものがあって、資金融通等の裏づけも持ってやってきたのですが、今度これはもう切ってもかまわないのだということになると、山林業者の経済的な事情によって、まだ切るべきでないというような木がどんどん切られてしまうような場合が出てくる。この伐採跡地というものは、必ずしも今長官が言われているように、針葉樹とかそういう好ましい林相に転換されていくということにはならぬと思います。余儀なく伐採した跡地は、場合によっては放置されるという事態も出てくると思うのですが、こういう点に対して今回の改正では何ら配慮を加えておらぬというふうに見られるわけですが、その点はいかがですか。
  12. 石谷憲男

    石谷政府委員 ただいま伐調資金の問題がございましたが、大体近年十八億三、四千万円という程度でございますが、そのうちの一%程度のものが、いわゆる広葉樹薪炭林許可になりましたものに対する融資の割合でございます。従いまして残りの九九%というものは、全部針葉樹幼壮齢林に対する伐採抑制肩がわりとしての融資というようにお考えいただきましてけっこうではないか、かように考えておるわけであります。  それから広葉樹伐採いたしました跡は、用材林薪炭林ともに、私ども考えまするように針葉樹用材林になかなかなっていかぬではないかというような問題がいろいろあるわけでございますが、これに対しましては、私どもといたしましては昭和三十一年度、昨年度をもちまして終戦直後に累積いたしておりました百十五万町歩の、いわゆる造林未済地というものの造林が一応完了いたしたということに相なりましたので、三十二年度からは、いわゆる林種の転換とか樹種林相の改良といったようなことを取り上げまして、先ほど申しましたいわゆる広葉樹天然生林を切りました跡地には、針葉樹造林地化をはかっていく。このことのためにはどうしても伐採前の許可等が、普通の再造林の場合とは違いましてかさむわけでございますので、昭和三十年度の予算におきましては、補助単価等についてもこの引き上げをはかりまして、広葉樹伐採跡地針葉樹造林地化というものを大幅に取り上げて参る。そういたしまして、昭和三十五年度の末におきましては、民有造林地現在四百六十万町歩のものを、六百万町歩の規模にまで拡大して参りたい、かような考え方で実は進めておるわけであります。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 地方によっては必ずしも針葉樹一辺倒ということでなくて、やはり広葉樹中心にした、そういう植林経営というものが成り立たぬということではないと思う。そうして回転率等考えた場合においても、やはり広葉樹樹種改善等によって、広葉樹林相を十分仕立てて、そうして回転率を早めるというようなことにすれば、あながち採算の上からいっても、それが針葉樹と比較して非常に劣悪なものであるということはいえないのじゃないかというふうにも考えるわけです。ですから今後の指導というものを、単に広葉樹適齢期以前の伐採を無制限にやってもいいのだというような一つの行政的な態度というものは、与える影響が、予期しないところまで拡大発展していくおそれがないとも限らないと思うのです。ですから、こういう点は林野当局としても十分細心な注意等を払っていく必要があると思うのであって、この一角が崩れた場合には、次にはやはり針葉樹の伐期に対しても、制限緩和をしなければならぬというような事態がこないともいえないと思うのです。そういう点は十分確信があるのですか。
  14. 石谷憲男

    石谷政府委員 むしろ私どもといたしましては、やはり針葉樹広葉樹と比べました場合に、針葉樹につきましては、五年前にこういった制度をとるようになりました当時の状況より、さらに一そう悪化している。しかも昨今の需要趨勢をいろいろと判断いたしますと、依然として針葉樹に対する要請が非常に大きい。そういうことからいたしますと、針葉樹伐採に対する伐採制限制度というものの運営をできるだけ適切化することによりまして、これを中心にこの制度運用をはかって参りたい。そのためには、比較的その必要性の薄くなっている広葉樹については取りはずしまして、そうしてこれらに伴う事務能力の捻出をはかってやって参る、こういうふうな考え方に立っているわけであります。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 この改正が、たとえば地方森林組合事業等に及ぼす影響というものは、どういうことになりますか。
  16. 石谷憲男

    石谷政府委員 森林組合事業と申しますのは、現在森林計画制度実施に伴う森林組合協力関係、いわゆる森林実施計画実行確保についての協力関係でございます。これらの点につきましては、従来と何も変りがございません。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、いわゆる広葉樹の場合でも、これはパルプ原料になっている面も相当あると思う。ですから、今度適齢伐期の制限をはずすということになれば、これはパルプ資源として非常に伐採の速度を早めるというような事態が起きてくると思うのですが、いかがですか。しかもそれが、価格が非常にたたかれるという傾向の中において過伐されていくということにならぬでしょうか。
  18. 石谷憲男

    石谷政府委員 一応広葉樹という場合におきましては、いわゆる薪炭林として農家周辺地域に相当広く存在している森林と、それから広葉樹用材林というものは、いずれも各奥地にのみ残っているものと、こういうようなふうに大きく分けられるわけでございますが、奥地にありますいわゆる広葉樹用材林というようなものにつきましては、この制限を撤廃することによりまして、急激に伐採が伸びて参るというような客観的な条件にはないわけでございます。ただこれが撤廃されることによりまして、広葉樹伐採促進ということにはある程度相なるものだということは、私ども予期をいたしているわけでございますが、そういうことによる新しい伐採跡地につきましては、条件のいいところは、いずれも針葉樹造林地化をはかって参るということに相なるので、針葉樹造林地化促進する意味からいいますと、私ども必ずしも広葉樹伐採制限を取り除く意味を過小評価してはいない、かように考えております。   〔委員長退席笹山委員長代理着席
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、伐採許可対象を、今まで一年二回のものを四回にするということですが、やはり森林伐採の場合には、計画性を持ってやっていくということが非常に望ましいことであって、そういう計画の上に立った伐採をするという場合においては、従前通り年二回なら二回で事足りると思うのです。それをわざわざ四回まで許可するということになると、この面も非常に手続上とか計画上からいってむしろ煩瑣になって、場合によっては思いつきですぐ伐採を始めるということにならぬとも限らぬ。ですから一貫した計画性を持たして許可をするという場合においては、むしろ年二回なら二回ということでやった方がいいんじゃないかと思われるのですが、いかがですか。
  20. 石谷憲男

    石谷政府委員 この辺の問題でございますが、要するに資源漸減をしておる、これに合せましていわゆる伐採の許容し得る限度というものもかなり低い、こういう状況下伐採許可申請をして参るのであります。そこでその扱いが適当でありませんと、いわゆる無届け伐採と申しまするかやみ伐採が行われてくる、こういう情勢を助長するということに相なろうかと思うわけであります。御承知のように民有林の場合におきましては、森林所有者がみずから伐出をいたしまして、ある程度製品化されたものをそれぞれの製造業者に売り渡していくというような扱いはほとんどないわけでございまして、森林所有者はあくまでも立木のままで伐出業者あるいは製造業者に売るということの方が多いわけです。従いましてこれはいずれも事前に立木手当をいたしました業者自分のものとして伐採許可申請をする、こういうことに相なりますると、年二回だというと年二回しかそういうチャンスがない、こういうことになるわけでございます。ところが必ずしもそう手元裕福な業者ばかりではございませんし、かなり零細な業者もそれぞれ立木手当をして参るということになりますと、立木手当をいたしましても実際伐採に着手するまでの間、すなわちこの間には許可というものが要るわけでございます。かりに相当長い期間を置くということになりますると、非常に苦痛を与えて参るということに相なろうかとも考えまするし、そういうことが次第にやみ、伐採に追いやるといったような情勢を作り上げまして、この制度運用がそういうことからくずれて参るということは防がなければならない。そこで広葉樹に対しまする伐採許可制度をはずしましたその余力をもって従来の二回を四回にいたしまして、実情に合うように取り計らって参る、こういうことにいたしたい、かように考えておるわけであります。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 立木伐採の場合、単に伐採だけということじゃないのですね。しかも計画的に伐採をしていくということは、すなわち伐採跡地に対しては植栽をしていく、その事業が付随していかなければならぬのです。植樹する場合には春とか秋とかいう季節しかないですね。だからそういう意味において今日まで伐採許可というものを年二回に置いているという意味も、一方においては植伐がちょうど適宜な計画の線に沿って行われるというねらいも一つはあるのじゃないかというふうに考えられるのです。やはり伐採することと同時に、それ以上に伐採跡地に対して植栽をするとか樹種の更新とか改善をやっていくという意欲が働いていかなければ、森林行政というものはだんだん後退するのではないかというふうに考えられるので、単に伐採する業者の便宜をはかるということだけで、伐採跡地に植樹するということをとかく軽視するような傾向許可方式というものは好ましくないというふうに考えられるのですが、その点はいかがですか。
  22. 石谷憲男

    石谷政府委員 伐採をいたしましても、この伐採跡地に対しまする造林は、おおむね伐採の翌年あるいは翌々年に行われるというのが実態でございます。従いましてただいまの二月、六月の二回ぐらい、ちょうど造林の時期に当るというお話でございますが、伐採造林関係は、その年内には実施いたしませんので必ずしも直接的には関係はないわけであります。それから現行制度のもとにおきましては、もちろん国有林につきましては計画的な植伐をいたしております。公有林につきましても可能な限り計画的な植伐の実施をはかって参りたいというので、実は公有林経営計画というものも今回の法律改正で取り上げておるわけであります。一般森林につきましては、個個の所有者自分判断といたしましての計画性というものは確かにある程度はあり得ておる、かように考えておるわけでありますが、こういった計画に従ってこういうように伐採が進められ、その跡地造林はこういうふうにやらなければならぬという規制はないわけであります。いずれも指導をもってそれらのことに当って参るということでございますので、私どもといたしましては、森林ごと伐採は許容し得る限度内の伐採でありますと、その許可申請に対しましての状況によって判断をして参るということしか規制の手段はない、かように考えておるわけでございます。
  23. 山田長司

    山田委員 ただいまの問題に関連して伺います。森林法規定の中に杉、ヒノキの伐採樹齢があったと思うのです。ところが今度の町村合併促進法によりまして、何か町村赤字財政のところで申請をした場合に、これが伐採してもいいということから、樹齢に達しない杉を伐採するというふうなことが許されるかどうか、もしこれが許されるものとすれば、森林法が無視される形になると思うのです。この点どうお考えですか。
  24. 石谷憲男

    石谷政府委員 これは現在の森林計画制度の建前についての問題でございますが、ただいま御質問のありましたある一定樹齢がきめられておるというのは、森林法でいわゆる適正伐期齢級と申しております樹齢でございます。それでこれらは大体地域別にまた樹種別にきめられておるわけでございまして、どこどこ県のどこの流域については杉は三十五年とか、あるいはどこどこの流域については赤松は三十年とか、こういうきめ方がされておるわけであります。そこでこの樹齢に達しますまでの樹木を伐採しようといたします場合には許可制度にかかっておるわけであります。この樹齢に達しました以降の伐採は六十日前の届出で事柄が済む、こういうように運用しておるわけでございます。従いましてこれらの伐採許可対象になりますものを伐採しようといたします場合に、ただいまの伐採許可申請が行われるわけでございますが、これは森林区という全国を二千九十六の単位に分けました単位ごとに、その年々に伐採を許し得る限度数量森林実施計画という計画で毎年きめられるように相なっております。従いましてその計画の中で示されております伐採許容限度に満つるまでの間のものにつきましては、その樹齢に達しない幼壮齢樹でありましても許可ができるということになっておりますので、許可手続をいたしまして行われておる伐採では、これはあくまでも正当な伐採だ、こういうことに相なろうかと思うのであります。
  25. 山田長司

    山田委員 私の伺っておることがよく理解されないのじゃないかと思うのですが、そういう森林法樹齢年限があっても、たとえば村が町と合併した場合には、財産を町の方に取られてしまう、そういうことから村の人たち財産区を設定して法律がどんなことであろうとかまわないということで、もちろん今の長官の御説明ですと、毎年切る地区を設定して、それで計画の線に沿わせるというような御趣旨のようですが、そんなことは無視してしまって、要するに届け出る年限規定があるにかかわらず、それから毎年暮れにはそれが申請の締め切りによって許可するかしないかというようなこともきめておるものと思われるが、町村合併で隣の町と一緒になってしまうというようなことではつまらないからというので、一切これを無視してしまって切った場合にはどうするか、こういうことです。
  26. 石谷憲男

    石谷政府委員 これは無視してということでございますから、当然伐採申請をして許可を受けない、いわゆる無届伐採、無許可伐採ということになると思うのですが、これは明らかに森林法に対する違反ということになると思います。
  27. 山田長司

    山田委員 私は、そういうことを承知しておって切ってしまった場合に、どうするか聞いているのですよ。
  28. 石谷憲男

    石谷政府委員 罰則を適用して罰するという以外にはないと思います。
  29. 山田長司

    山田委員 罰則承知しているのですよ。実は現に栃木県でそういう一つの例があるから私は伺うのですが、自分財産を切るのに法律が何だかんだいったって、そんなのは無視すると言わんばかりに伐採をしているところがある。こういう場合に罰則の適用といったって、適用の衝に当る人たちがそれを適用してないのですよ。この場合はどうする。
  30. 石谷憲男

    石谷政府委員 これは明らかに森林法の違反でありますから、罰則を適用して罰するという以外には処置のしようがないと思っております。
  31. 山田長司

    山田委員 今度の町村合併の場合でも、私の知っている範囲だけでも何カ所もある。おそらく全国では相当な数に及んでいると考えておるので、そういう場合林野庁としてはどういう罰則を適用しているか、そういう例があるかどうか。
  32. 石谷憲男

    石谷政府委員 私どもといたしましては、ある一定の年令までに達しておらないものは全然これは切ってはならないという扱いは実はいたしておらぬわけで、一応届出ということにいたしまして、市町村財産区の場合におきましても、一般の私有林と同じような扱いをいたしておりますので、ただいま御指摘のようなことが全国的にあろうとは考えておらぬわけでありますが、十分に調査をしてみたい、かように考えております。
  33. 山田長司

    山田委員 私の言うのは、そういう処罰した例があるかどうかというのですよ。そういう例がおそらくないのじゃないかと思うのです。それだから平気で規定があっても、そのことを知っている人は、どうせ何もないんだという意味で、口では言わないけれども、やっているものと思われる。全国でそういう処罰をした例があるかないか。
  34. 石谷憲男

    石谷政府委員 具体的に何年に何件あったということは判明しておりませんけれども、事実処罰をした例はございます。
  35. 山田長司

    山田委員 それを一つ内容を明らかにしてくれませんか、どういう例があったか……。
  36. 石谷憲男

    石谷政府委員 いずれ資料をもちまして明らかにいたしたいと思います。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 次に改正の第三点でありますが、地方公共団体が所有する森林に対して、森林実施計画から一般の分と切り離して扱うというようなことが改正点に載っておるわけですね。これはどういう考え方ですか。
  38. 石谷憲男

    石谷政府委員 これは現在の森林区施業計画という計画の内容からちょっと御説明申し上げなければならないと思いますが、要するに、先ほど申し上げましたようにある一定の年令に達するまでのものについては、森林区、これは全国二千九十六ございますから、一森林区の平均の民有面積は七千五百町歩、大きいもので三万町歩、小さいもので三千町歩くらいで、民有林を包括している地域でございまして、この地域ごと伐採許容限度というものをきめておるわけでございます。それについては個々の森林所有者に対して一々どういう計画的な伐採をする、その数量限度はこうだというきめ方は実はしておらない。全体としてそれだけの数量をきめまして、そうしてそれてれ伐採せんとする者が伐採許可申請いたします。森林法では、許可いたしまする場合に、許可の優先順位をきめております。たとえば間伐は主伐に優先するとか、年令の古いものは年令の若いものに優先する、それから同じ年齢の場合には径級の太いものが細いものに優先する。許可をする場合、こういう優先順位をきめて処理しておるわけでありますが、そういうことによって所有にかかわらず事柄を扱っておる、こういうやり方を現行森林法はやっておるわけであります。その場合においては公有林も一般の私有林も同じ扱いをしておるわけでありますが、一面において公有林というものは一般の私有林とはその持っている意味が違うという具体的な認識に基きまして、できるだけ自主性のある扱い計画的にやっていくような余地と方法を研究する必要があるのではないか、こう考えたわけであります。あくまでもこの公有林編成してもらおうと思っておりまする経営計画というものの実施期間と森林区施業計画実施計画の五年と合せて、そうしてこの計画の中においては植伐の場所的なことまでも具体的に取りきめて参りたい、こういうことに相なるわけでございますが、そういうことになりますと、それに基いて五年間のいわゆる伐採許容限度というものが出てくるわけであります。これはやはり一般の森林区の中に公有林とともに含まれておる一般私有林の許容限度の中のものでございますが、一応ワクとしては区分して、公有林分として与える、こういう考え方に立っておるのであります。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから森林区の実施計画の中にそれを別個なものにして許容限度を設けるということになると、公有林の性格からして、その森林区の中においてはむしろ公有林の方が理想に近いような形でその経営が行われてしかるべきである。ところがこれによると、公有林の方はむしろ許容限度を別にする、いろいろな条件を緩めるというようなことが改正の主点ではないか。もっと公有林の方をりっぱにやらなければならぬということで許容限度を別にして、それが模範的な経営が行われるようにするというねらいならわかるんです。この改正のねらいはそうではないんでしょう。公有林はさらに一段レベルを落してやれるということが改正点ではないですか。
  40. 石谷憲男

    石谷政府委員 これはやはり目標と公有林の現在置かれている実態との間の問題が同時にここに出てくると思うわけですが、当然公有林というものは地方の公共の福祉のために経営されなければならぬ。少くとも市町村の基本財産として帰納するというような特別の役割が与えられております。従って一般私有林とはその森林の持つ社会経済的な意味が違う、こういうことに相なるわけでございます。ところが現状は一般の民有林に比べて荒廃しておる。私どもとしては一般民有林と現在の国有林のいわば中間的な存在のようなものとして、毎年の植伐計画というものを基幹計画として、国あるいは都道府県がこれを作り上げるということについては非常に無理があるというように考えておるにかかわりませず、公有林に対しましては五年計画で切るべき場所、その後に造林すべき場所、樹種、方法というふうなものまで具体的に規定する、こういうことを実は経営計画として取り上げているわけでございます。その範囲のものとしてお考えいただきますならば、今までの一般民有林として扱って参りました計画制度の中におけるものよりも、公有林については計画内容はよほど具体的に相なって参るわけでありまして、従ってこれはやはり国有林経営計画のようなものに多少近づくという方向でございます。といいながら別ワクの許容限度の範囲内においては毎年々々の許可ではありません。要するに許可制度対象から除くわけでございますから、極端なことを申しますると、五年分の許容限度を一年に切るというだけの余地、裁量というものまでも与えられておる。こういうことではむしろ引き下げになるではないか、現在のものよりも程度を落すことになるのじゃないかということでありまするが、これは公有林というものが持っているそれぞれの意義に基いて市町村当局の自主的な判断によって善処すべき段階ではないか。従って一ぺんに切ればあとの四年は全然切れないということでございます。そこで五年分というワクではきちっと押えられておるわけでございます。それ以外に出るということには相ならぬと考えております。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 公有林に対する政府の行政的な態度は非常に緩慢過ぎる点もあると思う。たとえば国有林民有林公有林単位当りの蓄積あるいは生長量等を比較しても、公有林が一番下の水準に置かれておる。特にまた国有林野の整備法とか町村合併に伴う国有林野の払い下げ等の措置を講じても、とにかくそれがほとんど地方公共団体の財政窮迫を埋めるために無計画伐採されるということを黙認しておるような形に現在なっております。ですからそういうことであれば、単に地方財政の困窮を国有林の払い下げによってカバーするというようなことで、国有林を払い下げるということはやはり問題になると思う。そういうことであればやはり別の角度で地方財政に対する国の責任ある措置が必要であって、そのために国有林を払い下げて適当にやってくれというようなことは避けなければならぬのじゃないか。ですからこういうような点から考えた場合において、むしろ公有林に対する取扱いとか政府の行政的な態度を、今までよりも高めるようなところに方向を持っていかないと、森林の中における一つの大きな基本的なものがそういう点から崩壊するような危険が絶対ないとはいえないと思う。この点は今回の改正の中においても大事な点であるというふうに考えられますので、今後公有林に対する林野当局の行政的な態度をこの際明確にしてもらいたいのです。
  42. 石谷憲男

    石谷政府委員 御説のように確かに公有林の現状は、一般の民有林並びに国有林に対しまして非常に荒廃の度か激しいということは私どももよく存じておるわけであります。三百五十万町歩の全公有林野の中において、非常に荒廃の進んでおるところが決して少くないのであります。この点につきましては林野庁当局といたしましても、現在公有林野調査会というものを設けて、いかなる施策をどのように打ち立てて進めていかなければならないかということを中心に研究をしておるような状況でございまして、今後農山村の振興対策をとって参る上におきまして、公有林野の持つ経済的な意義は次第に高まってきつつあるという現状からいたしまして、私どもといたしましても、今後林野の施策の最重点項目の一つとしてこれを取り上げていく、かように考えておるわけであります。  それからただいま国有林野を市町村の当面の窮迫した財政緩和のためにその売り払いを通じて役立たしておるということのお話があったのでありますが、私どもといたしましては必ずしもそのような運営をいたしておるつもりではございません、要するに、国有林野整備臨時措置法なりあるいは町村合併促進法及び新市町村建設促進法等によって、国有林野を売り払い、また現に売り払っておるわけでありますが、このようなものについては延納の特約が認められておるわけでありまして、そういう場合に多くの市町村は売り払いました森林を担保にいたして延納の特約をしておるというような状況でございます。従いまして売り渡したものがすぐさま思う存分に切られてしまうということではないわけでありまして、自分のものになった部分について、ただいまの森林法制限の範囲内において所定の手続を経て切られておるものについてはあくまでも適法なものではないか、かように考えておるわけであります。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 次に林業技術普及員及び林業経営指導員に対する規定改正が行われるわけでありますが、これは単に名称を改めるという程度ですか、実質的にはどの程度の期待が持てるか、その点はいかがですか。
  44. 石谷憲男

    石谷政府委員 現在の実態に合せて名称を改めますと同時に、任用資格等について法的な規制を与えて運用いたして参りたい、こういうことだけでございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 今年度の林野関係の予算の中でも、林木の品種の改良ということが一つの特色に取り上げられておるのですが、今度の森林法改正とこれはやはり大きな関係を持つものだと考えられるのですが、こういう点の実施に対しては、具体的にどういう方向でやっていくかという点を聞きたいと思うのです。
  46. 石谷憲男

    石谷政府委員 特に本年度から林木の品種の改良事業、林木の育種事業を取り上げましたのは、先ほども説明申し上げまして、ちょっと触れておるのでありますが、従来のいわゆる伐跡地造林促進は大体去る三十一年度をもって一段落をなしたわけでございまして、今後造林の目標としては、可能な限り国内の林産物の需給度を引き上げて参るということを目標として造林推進の計画を立てて参る、かように私ども考えておるわけであります。用材だけについて考えてみても、昭和三十年度末における年間用材消費量は一応一億四千五百万石といわれておるわけであります。これらのものは相当急速度に伸びておる。昭和三十五年度末におきましては、大体現在の一億四千五百万石が一億六千四百万石くらいになる。こういうような需要の推定も実はされておるわけであります。非常に長い将来についての需給趨勢を見通しますことについてはいろいろ問題はあろうかと思いますが、私ども造林奨励をいたして参る場合におきましては、一応の試みといたしましてやはり三十年、三十五年先の木材消費趨勢をも検討してみる必要がある。こういう意味合いの検討の結果によりますと、約四十年後の昭和七十年くらいになりますと、現在の大体倍量の用材消費するというような見通しも立つわけであります。二億七、八千万石くらいな消費があるというような見通しもつくわけでございまして、ただいま申し上げましたように、国内の需給度を可能な限り高めるということで一現在民有、国有を合せまして約五百六十万町歩造林地というものがあるわけでございますが、自然的な条件にかない、さらに将来、用材に対する需給がきわめて逼迫するという前提に立って、一応経済的にも成立するというふうに考えられまする造林企画の対象林地というものは、私どもの調査によりますると大約一千一百万町歩でございます。現在の造林地の約倍量ということでございます。そこでそこまで達成いたしました場合におきまして、一体どれだけの生産というものが国内的に期待できるかといいますると、素材換算いたしまして二億二千万石程度弱ということでありまして、さきに申し上げましたそのときの事情が、かりに二億八千万石といたしますと、やはり六千万石ぐらいな需給のギャップを生ずる、こういうことになるわけでございまして、一応これらのギャップというものを埋めるという場合に、今の情勢から外材に対する依存というものをどの程度考えたらよろしいかということでございまするが、さまざまな事情をあわせて考えますると、年間一千万石以上の外材輸入を期待するということはなかなか困難だということになりますると、どうしても従来のように量的な拡大ということを中心にしてやって参る造林事業の推進の仕方だけではなかなかつじつまが合いかねる。どうしても質的にいいものを取り上げまして、林地事業の回転速度というものを上げて参る、こういうことに相ならなければならない、こういうことから育種事業、林木の品質改良事業というものを取り上げた、こういう経緯でございます。ことしはほんの端緒でございまして、きわめて不十分なものでございまするが、一応私どものこの事業推進の目標といたしましては、全国を七つの地区に区分いたしまして、それぞれの地区の代表的な個所に一カ所ずつの国営の育種場を設けたい、かように考えておるわけでありまして、この育種場におきましてはいわゆる交雑育種等の方法によりまして新品種の作出を考えて参るということと同時に、外国樹種の導入の試験あるいは適用の試験というようなものをいたしまして、できるだけ適用範囲の広い優良な外国樹種というものをそこで選抜いたして参る、そうして親木になるものをそこで養成をして参る、こういうことを考えております。あわせまして各都道府県におおむね一カ所ずつ原種苗畑というものを作りましてそこで国営の育種場で増植されましたものをさらに増植をして参る、こういうふうな仕事をやって参りたい、かように考えておるわけでございまするが、ただ林木のように、長いこと天然のままに放置されておりまして、そういったような手を全然経ておらないものにつきましては、交雑育種という問題からとっかかって参ります前に、現在あるものの中から品種の優良なものを選びまして、精英樹と申しておりまするが、そういうものを中心にしてあるいはさし木、継ぎ木というような方法によってその個体の形質をそのまま継承させながら増植をしていくというような方法も実はあるわけでありまして、各都道府県ごとに設けようと考えておりまする原種苗畑におきましては、選抜されました精英樹を中心にしてこれらの増植をはかって参る、こういうふうな仕事をとりあえず取り上げておるわけでありまして、本年度の予算におきましても一応現在の林業種苗法によりまして母樹林が制定されておりますが、これらの母樹林にかわるに採種林の指定というものをやって参りたい、これは大体二万町歩ずつ五カ年計画で十万町歩というものを予定をいたしておるわけであります。それから精英樹の選抜を実施して参り、これらのものを親木といたしまして増植するために必要な若干の施設をして参るということでやっておるわけでございますが、これは国有林事業と一般の民有林造林事業等を並行的に進めまして、両者が有無相通じながらこの仕事の完成を期して参りたいという考え方でございまして、七カ所の国営育種場の中で国有林事業特別会計で大体三カ所程度を予定し、一般会計で大体四カ所程度を予定しておるということでございまして、本年度といたしましては国有林事業特別会計で北海道地内に一カ所と、茨城県の水戸郊外の笠原という地区に一カ所、それから一般会計予算におきまして熊本県下に一カ所、これらの育種場の整備を予定をしておるわけであります。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう大事な点が今回の改正の中にはっきり現われてこなければいかぬと思うのです。とにかく農業生産の中でも林業の問題は一朝一夕にどうするというわけにはいかぬと思うのです。長期の計画性と一貫性の上に立たなければやはり林業の政策とか行政はやっていけないと思うのです。ですから単に広葉樹を無制限に、適齢期を問わなくて切りたい場合には全部切ってもかまわないというような思想の上に立って法律改正する場合においては、やはり広葉樹の天然林なんかが相当多いと思うのですがそういうものを制限緩和して伐採させるということは、林木の品質改良とか成長度の高いものに転換させるのだという大目的の上に立ってこの広葉樹伐採制限を緩和するということであればこれはまだ話がわかるのですが、そういううらはらなものが何もなくて、ただ広葉樹の場合においては自由に切って山を丸裸にしてもかまわぬのだというような、そういう印象を一般に与えるという危険が非常に多いと思うのです。現在の国内における用材の需給の状況からいっても、どうしても成長度が需要に追いついていかないということは長官が言われた通りなのですから、やはり天然林を人工林に転換するとかいうような林相の転換とか、品種改良とか、あるいは林木の育成に対する高度の技術をそこに注ぐというようなことがやはり森林法なら森林法改正の中に明確になって、これが改正点であるというようなことであれば、われわれとしても全面的にそれを支持することができるのですが、今回の改正はそういう点が非常に抽象化されておって非常に不明確で、むしろ林業政策の後退でないかという批判がどうしてもこの中から感じられるわけなのです。そういう危険が多分にあるのです。ですから私はもう少し現在における林野の近代化された行政構想というものをこの際長官が明らかにされて、この審議を促進すべきでないかというふうに考えられるので、こういう点に対してはもう少し具体的な考え方を述べてもらった方がいいのじゃないかと思います。
  48. 石谷憲男

    石谷政府委員 私の方といたしましては、ただ単に広葉樹に対しまする伐採制限を取りはずしましてあとは野放しにする、こういうような意味では全然ないわけでございまして、やはり実態的に申しまして過去五年はあるいは短かいということに相なるかと思いますが、現にやって参りました仕事の実態にかんがみまして、さらに広葉樹利用というものを裏づけておりまする消費の流れを見きわめまして、一応そういうところのものははずしても実害はない、むしろそこで生み出される余力をかって一番問題のある針葉樹伐採制限運用に当って参りたい、こういうことなのでございます。そういうことで発足いたしまする広葉樹に対しまする制限制度の取りはずしでございますが、そのことのもたらす意味と申しますか、ただいま申し上げましたように将来は、広葉樹天然生林伐採いたしましたのちに新しく針葉樹の幼材稚林を作り上げて参るということが、いわば将来の需要増大に備える一番手近な有力な方法だ、かように考えて一千百万町歩造林地の確保ということを最終目標といたしまして、一応三十一年度から仕事をやっておるわけでございますが、なかなかそこまで追いつかぬという問題につきまして、品種の改良事業等を取り上げて参るということを申し上げ竹わけであります。そこで当然そういうふうにいたしまして新しく造林地がされる対象、さらにすでに造林地がされたものが繰り返し伐採されまして、再造林をされる対象というものに対しましては、いずれもこれはできるだけ諸害に対して抵抗性の強い、しかも成長の早い樹種を入れて参りたい、品種を入れて参りたい、かようなふうに考えておるわけでございますが、   〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕  もう一点の問題といたしまして考えなければならぬことは、いわゆる林種転換とか林相改良とかいう仕事は、従来天然林であったものを切りまして人工で植栽して参るということでございます。しかもこれらの事業の行われまする環境も、比較的不便な地域に、しかもある程度まとまって行われるということになるわけでございますので、従いましてこれらの造林事業というものをやって参りまする場合に、従来の植林の問題と多少技術的に困難を伴うようなことに相なって参るということが一点と、それから相当まとまった面積、地域というものが同時に造林地化されるということになりますると、いわゆる自力増林ということだけでは、その跡地造林がなかなか進みかねるということのために、やはり新しく造林事業計画推進のための資金の確保をはかって参る必要が出て参る、私どもかように考えておるわけでございまするが、かりにこれらのものにつきまして民間の資金導入というものを計画して参るということにいたしますると、あくまでもこれはできるだけ短伐期に有利なものの生産が行えるということになりませんと、資金導入のきっかけすら得られない。このためには、ただいま御説明申し上げましたような資金導入というようなことが非常に効果を持ってくるのじゃないか。こういうところに問題を集約いたしまして今後の造林推進をはかって参りたい、かように考えておるわけでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 私どもは、この森林法に対しては非常に社会性の高い、公益行政を持った法律であるという認識の上に立って、やはり森林法中心にして今後の森林行政を進めていくべきだという考え方に立っておるのです。ですから、これがいささかでも改悪と見られるような方向に向くことは、これはあくまでも避けなければいかぬと考えて、この点を強調しているわけなのですが、もう一つは今後の改正によって、たとえば広葉樹伐採が非常に無計画、無制限に行われるとしても、これはもう一つ森林法との関係ではありませんが林道ですね、法律改正だけやって広葉樹は切ってもかまわぬということになっても、奥地における開発というものは林道開発というものが進んでいかなければ、奥地林は老齢期に達しても伐採はできない。それで里山というような手近なところだけが、非常に用木が伐採されるというアンバランスの傾向がどうしても出てくると思うのですね。ですから、やはり一面林道開発とかそういう問題も積極的に進めていかなければ、この法律だけ改正してこれでうまくいくということには絶対ならないと思うのです。本年度の林道関係の公共事業費等を見ても、それほどこの広葉樹の伐期を早めてそうして樹種転換をやるというような、そういうねらいを持った意味の林道開発ということは何ら考えられておらぬようにしか見えないのですが、その点はいかがですか。
  50. 石谷憲男

    石谷政府委員 過去五カ年の実績をとってみましても、相当程度に林道の開設を見まして、いわゆる既開発の森林状態に相なったものもあるわけでありますが、お説のようにまだまだ奥地開発の林道施設というものについて非常に不十分なものがあるということは、私どもも全くその通りであると考えておるわけであります。しかも現在の、一応林道事業の予算要求をいたします場合の一つの手がかりは、現在以上に過伐度が進まないというところに一応の目標を置きまして予算要求をいたしておるわけでございますが、それにもかかわりませずなかなかそのことすら達成し得ておらない。逐年既開発林に対する伐採の依存度というものが非常に大きくなっている、いわゆる過伐の促進ということを結果するようなことしか指向されておらないということは、非常に問題があろうかと思うわけでございます。そこで一体林道がまずつくことによりましてその奥地が開発されるということと、あわせましてその奥地が開発されるような情勢というものが出て参ることによって林道が開設されるというような意味合いにおきまして、これらの関係はうらはらに相なろうかと思うわけでありますが、私どもといたしましては、広葉樹伐採制限制度を取りはずすということによりまして、先ほども説明申し上げましたように、決して急速に伐採が進行して、荒れ山ばかりができるということではございませんけれども、そういうことによりまして現実意味のなかった煩瑣な手続が省かれることによりまして、広葉樹用材林が若干でも伸びるということはむしろ林道施設のようなものが早目に開設される契機に相なるのじゃないか、こういうような若干の期待すら持っているわけであります。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 林道の問題ですが、昨年森林開発公団ができたんですが、発足当時は見返り円資金に依存して公団経営をやっていくということでありましたが、現在は政府の方針も、余剰農産物の受け入れに対する国民的な不評の前に第三次協定は中止するということになっているので、見返り円資金依存の公団というものはそれぞれ方針を改めなければならぬような事態に立ち至っているわけですが、森林開発公団の場合はその後どういうような事業の進展というか、推移をたどっているかという点を、この機会に説明してもらいたいと思うのです。特に愛知用水公団のごときは、大きな国費を使って全く何をやっているかわからぬというようなことになっているわけです。ですからこの機会に、森林開発公団というものが果して所期の期待とか、目標に向って進行しておるかどうか、その点はいかがですか。
  52. 石谷憲男

    石谷政府委員 概要御説明を申し上げたいと思います。昨年の七月十六日に設立をされましてから、直ちに早期事業着手の目標のもとに機構の整備なり、あるいは人員の配置、公団の事業運営をして参りますために必要な諸規定等の取りそろえというようなことを鋭意やったわけでございますが、その結果といたしまして本所を東京都に設け、さらに支所を奈良及び徳島に設けまして、林野庁並びに関係都道府県の優秀な要員を優先これに配置いたしまして事業実施態勢を整備して参った、こういうような状況でございます。一方これらのこととともに、事業の着工のために必要な準備を進めたのでございまするが、何といいましても計画路線につきましての設計を進めて参る必要があるということと、もう一つはこの事業の成否を決しまするいわゆる受益者各個の賦課金、こういうものを公正妥当に算出いたしまするためには、受益地域の画定をする必要がある、同時に受益地内の森林の現況を正確に把握する必要があるということで、こういう仕事はあわせてやって参ったわけでございます。同時にやはり工事に着工いたしまする前に、受益者の負担すべきものにつきましては十分に了解を求めて、慎重な上にも慎重を期する必要がある、かように考えましてやって参ったわけでございまするが、目下の状況といたしましては、明年度予算で昨年の十一月に着工いたしたものを手始めに、本年の三月の末で計画路線二十二路線の中の二十一路線の着工を終えたわけでございます。それらの関係につきまして一応二十二路線全流域を合せまして八十一・四キロ、これが三十一年度の当初の事業計画であったわけでございますが、これに対しまして二十一路線七十九・二キロ計画に対しましては九二%の着工率という状況に相なっておるわけでございまして、これらのものは早いものは五月、おそいものにつきましても大体本年の十月には完工する。引き続きまして大体一路線を二年計画でやっておるわけでございますが、三十二年度計画事業に引き続きまして実施に着手をいたす、こういう状況でございまして、一応職員の関係につきましても、この公団法の審議のときにいろいろと御説明を申し上げました計画人員百二十名、ちょうどそれに見合う百二十名の要員を本所並びに支所に配置いたしまして、事業指導並びに実行に当っておるわけでございます。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 開発公団の内容に対してはまた別の機会にいろいろお尋ねしたいと思いますが、次に先ほど長官から、この国内用材の需給関係から見てどうしても相当量外材に依存しなければならぬけれども、しかし今の実情から言うと一千万石程度ですか、それ以上のものを輸入することは困難であるという話がありましたが、この際日ソの国交が正常化したということを機会にして、ソ連とわが国との間における木材関係の交渉というものはどういうことに現在なっておるか。また将来どうしようというふうにお考えになっておるかという点をお聞きしたいのです。これは歴史的ないろいろな経緯もありますし、特に戦前わが国の領土であった樺太の南半分は特にパルプ用材の給源地であったという歴史も持っておったわけですから、日ソ国交の回復に伴ってこれは単に漁業問題に重点を置くということだけではいけないと思うのです。この際そういう林業の関係における日ソの国交回復に伴った問題の処理等に対しましては、長官はどういうふうにお考えになっておるか。
  54. 石谷憲男

    石谷政府委員 一応一千万石前後というのが現在並びに将来にわたっての外材への依存度であろうと申し上げたわけでありますが、その中のほとんど八割というものが南洋材でございます。残りがいわゆるソ連材、米材、カナダ材というようになっておるわけでございますが、最近の船運賃等の関係によって、米材は昭和三十一年度におきましては大体六十万石程度という予定でございます。ソ連材の問題でございますが、何といいましても国内において現在需給の逼迫しておりますものは、針葉樹でございます。また現在の国内木材に対する各産業の消費構造と申しますか、そういうものからいたしましても、ほとんど九割近くは針葉樹でございます。そこでこれらの給源というものをできるだけ手近な地域に求めるといたしますと、ソ連サガレン地域以外にはないということでございますし、またソ連側といたしましても、これを他地域に出すということになりますと、日本ほど有利な市場はないということに相なろうかと思うわけでございます。そこで昨三十一年度におきましては年間約二十二、三万石、前年の三十年度におきましてはたしか七、八万石程度入ったわけでございまして、二十九年度に八千石ばかり見本輸入いたしまして、それを契機に多少入っておる、こういう状況でございます。  そこでこれに対して一体どのような期待を持つかということですが、私どもといたしましては入れ得る限り多く入れたい、こういうふうに実は考えておるわけでございまして、ちょうどたまたま昭和三十、三十一の両年度にわたりまして北海道の風害木を内地に移入したわけでございます。大体二百六十万石の資材を約十七の消費市場に移入したわけでございますが、このことによりましてソ連材がかなり大量に逐次入って参ります場合の受け入れ態勢と申しますか、実はでき上っておるわけでございまして、三十二年度あたりは少くとも六、七十万石のソ連材輸入を期待したいというのが私どもの本意でございます。ところが御承知のように、現在のソ連地域の積出港はずっと北に寄った地方のマゴ、ラザレフという二つの港があるだけでありまして、これらの港を相手にいたしまして取引をいたすということになりますと、船の就航し得ます期間が年間百十日というような非常に短い期間に制約されるということが一つの問題であります。おそらく海洋いかだ等を併用いたしまして満度にやるといたしましても、この二港の開設では年間百万石以上はとうてい期待し得ないというのが現状であろう。従いまして今後この問題を取り上げまして、ソ連地域からの木材輸入を考えて参るためには、新しい事業地区創設とあわせまして積出港をずっと南の方に設定をしてもらうことが、輸入量の増大考えます場合の不可欠の要件であるというふうに考えております。戦前にはそのような方面の取引の実績も実はあったわけであります。私どもといたしましては、何と言いましても相当大量な針葉樹について需給に大きなギャップがあるという現状でもございますので、御指摘のように奥地開発の問題も十分に進みかねておる現状に照らしましても、ソ連材の輸入につきましては極力これを要請いたしたいと考えておるわけであります。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 漁業関係の問題は日ソ間において非常に緊密化されて発展しておりますけれども、林業関係は依然として停頓しているわけです。昨年は河野農林大臣がもっぱら漁業問題を中心に折衝したり、今年においても漁業問題を中心にして五十数日をこれに費しているわけです。ですから漁業問題の次の比重としては、林業の問題が相当大きな比重を持つものだと考えるわけです。この点に対してはいずれ井出農林大臣の出席を求めて——井出さんは魚よりも林業関係ですから、抱負のほどを私は聞きたいと思っておるのですが、やはり林野庁長官も水産庁長官に劣らぬくらいの見識を持っておると思いますから、国際的な脚光をあびてこの外材問題に対してはもう少し画期的な新しい機軸を開拓するというような大きな構想の上に立った施策を打ち出すべき時期だと思うのです。国内における受け入れ態勢ができておるとすればなおさらでありますから、この点に対しては特に今後の日ソ友好の中において、林業問題の発展というものが国民的な期待の一つでもあると考えられるので、この点に対しては特にこの機会に私は意見を申し上げておきます。  もう一つは十五号台風によるところの風倒木処理がおそらく今年度で終ることになっておると思うのです。それで風倒木の処理の実施の経過と、どの程度の進度でこれが処理されたかという点、風倒木の処理が一段落ついた場合においては、わが国の木材価格というものは、風倒木がもう処理されたということによって相当の変動がくるのじゃないかというふうな不安も一部にはあるわけですから、この点に対する長官説明をお願いします。
  56. 石谷憲男

    石谷政府委員 北海道地域の風倒木の処理状況でございまするが、すでに先生方も御承知の通り、大体私どもが当初から処理し得られるというふうに考えておりましたものは、国有林におきましては約六千万石という数字であったわけでございまして、この数字に基きまして、最初は二十九年度発生いたしました年の計画によりますると、大体三十一年度までの三カ年間に二・四・四という割合でこれを処理するというように考えたのでございまするが、その後の調査の結果によりまして、一地域にかなり多くの風害木が発生しておるという状態が明らかになって参りましたので、その後この計画を変更いたしまして、三十二年度に至る四ケ年計画でこれを処理するということにいたしたわけでございます。そこで、いわゆる風倒れいたしておりますものを伐出いたしまして、これを売り払う、あるいは貯材をする、内地の市場に持ってきてこれを処置する、こういうふうないわゆる直接的な仕事につきましては、昭和三十一年度をもちまして全量の約八一%が進捗をする、こういう状況まで実はきておるわけでございまして、残りの一九%というのが昭和三十二年度の処理材として持ち越されておる、こういう状況でございます。おおむね数量的に申しますると、用材薪材合せまして未処理材は立木石数で約千百万石でございます。北海道内七十六営林署の管内に風倒被害があったわけでございまするが、これが一応三十一年度末でうち七十署分は片づきまして、あとの六署というものについてただいま申し上げました全量の一九%の処理を三十二年度中に実施をする、こういうことでございます。と同時に、一応整理いたしましたあとには末木枝条があるわけでございまして、これらのものの二次利用というものも考えまして、これも三十一年度で一応完全に終るというような状況で進捗をいたしておるわけでございます。ただいま申し上げたのでございまするが、これらの処理を適切にやって参りまするためには、やはり道内に滞留いたすものを極力少くいたさければならなぬというような見地からいたしまして、道内の長期貯材の態勢を確立いたしますることとあわせまして、道外にこれを持ち出して内地の市場に売り払うということをいたしたわけでございまするが、一応三十年度、三十一年度におきまして約六百万石の道内過剰材があったわけでございまして、このうち二百六十万石につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、道外にこれを持ち出しまして、処理をいたしたわけでございます。残りのものが道内の各地に陸上あるいは水上貯材をいたしまして、適当に必要量を売り払っておる、こういうやり方をいたしたわけでございます。  以上が直接的の問題でございまするが、その後の状況といたしましては、御承知の通り三十年、三十一年度の両年度にわたりまして、地上散布あるいは空中散布等の方法によりまして害虫防除の事業をやったにもかかわりませず、立木のまま無被害木が虫害にやられるというような状況も最近は出ておりまして、冬期間にそういうものの処置をいたす必要があるということで、昭和三十年度の冬に現在あります約百八十万石の全量を伐出いたす、こういうことで事業をやっておるようなわけでございます。  それからあわせまして一番問題になりましたこの風害跡地の火災の問題でございますが、風倒の翌年度の昭和三十年度におきましては、まことに好都合に山火皆無という新記録を作ったのでございますが、三十一年度におきましては約二十五件でございます。六百二十町歩くらいの地域に二千万円程度の被害があったのでございますが、本年度は各地に山火事が発生いたしておるわけでございますが、幸いに現在までのところ北海道地域はまだ異常乾燥の状況ではない、時期的にそうでない関係もあると思いますが、火災の発生を児ないような状況でございます。  それからこれは大体跡地をどうするかという問題でございますが、二十五万町歩の風倒跡地につきまして、三十一年度からこれらのいわゆる造林計画実施に移しておるわけでございまして、そのうちの四割に相当いたします十万町歩人工植栽で、残りの六割は天然更新補整と申しますか、天然更新の助長作業をやることによりましてやって参りたいということで、人工造林によりまするものにつきましては三十一年度からの六カ年計画、それから天然更新によりまするものは三十一年度からの四カ年計画で完了するということでやっておるわけでございます。三十一年度におきましては五千町歩の人工造林と二万町歩の天然更新による更新の完了をいたそうという状況でございまして、三十二年度におきましては二万町歩の人工造林と四万町歩の天然更新による造林というものを進めて参るということでやっておるわけでございます。  このことによりまして、木材価格にどういう動きがあったかということでございますが、北海道地域状況だけをごく簡単に申し上げますと、風害直前は内地の市況が非常に低調でございましたにもかかわらず、北海道はややかたい調子の状況が続いておったわけであります。いわゆる若干の供給不足という状況が続いておったわけでございますが、あの風倒によりまして非常に混乱を生じまして、たちまちにして約二割くらいの木材価格の下落があったわけであります。これが昭和三十年度の下期に入りまして次第に調子を取り戻してきたわけであります。それが約一年問いわゆる横ばい状態が続いたわけでありますが、昭和三十一年の下期からは全体的な経済界の好況の波に乗りまして、次第に強くなって参りまして、価格はほとんど風害前の状態にまで復帰するということで、従いまして、こういったような環境の中で処理を進めましたので、道内外の風害木の整理事業を通じましての影響は比較的少かった、これによりまして倒産したような業者は非常に少うございましたし、結果といたしましては、国内に新しく北海道材の市場ができたというようなことで今日に至っておるという状況でございます。従いまして、この整理が完全に終了いたしましたあとにおきまして相当異常な価格の変動というようなことがあり得るようには私ども考えていないのでございまして、大量のものがございましたけれども、内地市場に出したり、あるいは道内に備蓄しながら自然にこれを出していくというようなやり方をしておりますので、そのような意味合いの大きな影響はないもの、かように期待をいたしておるわけであります。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 次に昨年の冷害対策の一環として、被害農家に対する自家用薪炭材の売り払い、あるいは営業用薪炭材の掘り払いを国有林の中から行われたわけであります。その点に対しては、実は昨年の前国会のときにも当委員会において取り上げた問題ですが、いつの場合にも被害農家に対する自家用薪炭材等の一括払い下げをやる代金の価格業者に対する払い下げ代金よりも高価であるというところに非常に現地における問題があるのです、それで昨年私どもは林野庁に所見をただしたときにおいては、この不合理は規定改正によって是正するというような当時答弁があったんですが、いまだにその改正のあとが見られないように思うのです。ただこの取扱いは、業者に売り渡す場合においては一応企業利益を見て、それを控除して払い下げをする、それから自家用の場合においては企業利益というものを見ないということによって価格差ができると思うのですが、とにかく災害を受けた農民等に対する地方公共団体等を通じて一括払い下げをやる場合における、しかも国有林立木の払い下げ代金が、営利を目的にする業者の場合よりも高いということはどうしても不合理だと思う。この点の是正というものはやはり当然行うべきものだというふうに考えるんですが、いまだにその規定改正等がやれないということはどこにその原因があるか、この機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  58. 石谷憲男

    石谷政府委員 国有林産物を時価よりも減額しまして売り払うことのできます場合は、法律によって非常に制約を受けているわけでありますが、異常災害等によりまして災害救助法の発動されるような場合におきましては、公共施設を緊急復旧するというようなものについては、対価の五割までの減額をして売り払うことができる、こういうことで実施するのが唯一の道でございます。従いまして、あくまでも現行法のもとにおきましては、国有林野の産物の一般売り払いの場合は、いかに相手方が被害を受けられた農民でありましても、あるいは薪炭業者でありましても、いわば相手方といたしまして売り払いの場合の価格をかげんする要素というものはないわけであります。そこで同一の人が家業用の薪炭の原料として林産物の売り払いを受けられるというような場合におきましては、その人が業としてその材料を必要とされるものは、随意契約で売り払います場合の予定価格を算定いたします場合に、当然一定の企業利益を差し引くということであります、そこでこれがかりに随意契約でなくて、指名競争入札、あるいは公入札ということになりますと、競争の結果その価格よりも高いものが現出するということもしばしばあるわけでありまして、そういう場合におきましては、予定価格の計算上差し引いております企業利益というふうなものは実態的には何も意味を持たないということになるわけであります。双方が随意契約で売り払うという場合におきましては、自家用の場合には最終消費だということで、これをもとにして加工し営業するという材料だということにならぬ関係で、なかなか現行法では引けない、こういう一つのなかなか突き破れない障壁がある。従いまして、同一人の場合でありましても、それが営業用のものとして売り払われる場合におきましては差引関係がありますが、そうでない自家用のものとして消費される場合においては差し引かない、こういうわけでありますので、特別に業者売り払いの場合に差し引いて一般のそういう方々の場合に差し引かぬというのは、こういうことからきているわけであります。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 現在の規定ではそうなっているところに問題があるんですから、これを改めればいいでしょう。絶対改正できないというものじゃないと思うのです、ですからどこをどう改めれば、そういう、一般がどうも了解に苦しむような——特に被害を受けた農民等が、地元の国有林からたとえば自家用薪炭材の払い下げを受けるという場合に、利潤追求を目的にした業者に対する売り払い代金よりも単価が高いということは、やはり現地の被害農民等は納得できないですね。国民の共有の財産である国有林の払い下げを行う場合において、営利を目的とする特定業者に対しては利潤まで見て安く払い下げをしておって、被害を受けて一年間の収入も全くとだえたというわれわれ被害者に対して売り渡しを行う場合に、業者より高いというのはどういうわけかということは、長官といえども納得のできるような説明はつかないと思うのですよ。ですからこれはやはり規定の不備とか欠陥だと思うのです、ですからこういう点は率先して改める点は改むべきだと思うのです。それが何も国の大きな損失にはならないと思うのですよ。被害を受けた国民に対して、少しでも国の配慮を浸透させるという点から見ても、これは当然改正すべき問題だと思うのです。特に国有財産の無償譲与というような法律規定等によって、大きな災害を受けた場合においては、国有林産物等を無償で与えるという規定さえも現在一方においてはあるのですから、売り払いをする場合も、業者より安くなくても業者並みくらいの有利な値段で払い下げることはできると思うが、いかがですか。
  60. 石谷憲男

    石谷政府委員 この問題は、やはり一般売り払いの対象として特別のものを扱うというところに意義があると思うわけでありまして、やはり特別な救済措置を必要とするということになりますと、別格の問題として取り上げて参らなければならぬと思います。現在の国有林産物の一般の売り払いの対象として扱って参るということからはずしまして、先ほど私が申し上げましたように、特殊なケースのものにつきましては、確かに対価を減額して売り払っておるということもあります。そういうものの中の一ケースとして事柄を考えて参るということでないと、なかなか考えにくいのではないかと思います。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 別のケースとして処理なされますか。林野庁の方で特別扱いとして、そういう点を是正するということが自信を持ってやれるとすれば、われわれはそれに期待するし、できないとすれば、国会においてそういう不合理性のものは是正するのですから、その点は長官がみずからやれるという自信があれば、それを表明してもらいたい。自分の方ではできないということであれば、またわれわれは考えなければならぬと思います。その点は、毎年災害等が起きた場合には出てくる問題ですから、この際森林法改正と合せてこの問題の結末をつけておく必要があると思う。
  62. 石谷憲男

    石谷政府委員 これは国有林産物の売り払い原則にかかってくる問題だと考えますので、私どもといたしましても、確かにおっしゃる通りそういうようなことがわからぬわけではございません。よくわかる話でございますので、極力努力はいたしたいと思いますが、なかなかむずかしい問題ではないか、かように考えます。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 長官の方でできるかどうかということを聞いておるのです。あなたがやれぬとすれば、われわれはまた考えなければいかぬのですから、率直な答弁をお願いしたいと思います。
  64. 石谷憲男

    石谷政府委員 十分に研究いたしまして御回答申します。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に一点お尋ねしますが、それは木材の高度利用の点であります。最近木材の糖化が企業化の方向に向っておるわけなんですが、これは特に林野当局としても、木材糖化の事業の企業化の問題に対しては、いろんな角度から検討を進めておると思うのですが、特に北海道開発公庫等の融資対象の中にも木材糖化事業一つ融資対象に取り上げておるようなことにもなっておるので、林野庁当局のこの木材糖化の企業化に対する見通しとか見解等をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  66. 石谷憲男

    石谷政府委員 確かに木材糖化工業というものが、将来の木材事業の上に果すべき大きな役割というものにつきましては、私どもきわめて重視しておるのであります。何といいましても今後天然生林伐採が進行して参りますと、いわゆる不良材というものが大量に出てくる。この不良材の消化対策を考えながら跡地造林事業を取り進めて参らなければならぬという現実に当面しております立場からいたしますと、当面木材の糖化工業は確かに期待すべきものがあると考えます。ただ目下のところでございますれば、すでに北海道地内におきまして、これを工業化するという前提の上に立ちましての、そういうような企画が進んでおるようにも聞いておりますが、私ども判断いたすところによりますと、まだ一般の企業化という段階は時期尚早ではないか、やはり中間的なプラントによる試験経過を一段階経た上でこれは取り上げるべきであって、その結果に基いて、林野庁といたしましても可能な範囲の助長策を講じたい、かように考えております。     —————————————
  67. 小枝一雄

    ○小枝委員長 この際お諮りいたします。ただいま外務委員会審査中の北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約は、北太平洋のオットセイの適正な猟獲方法の決定のための科学的調査の実施を主たる内容とした条約でありますが、オットセイの適正な配分、オットセイの捕獲禁止に伴うイルカ漁業の他種漁業への転換の問題等、当委員会としても重要なる関心を持つ条約でありますので、この際、外務委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 小枝一雄

    ○小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、両委員長協議の上追って公報をもってお知らせいたします。     —————————————
  69. 小枝一雄

    ○小枝委員長 細田委員
  70. 細田綱吉

    ○細田委員 当委員会でさきに全購連の小沼前専務を喚問することに決定しておるのですが、その送達ができなくてまだそのままになっておる。決算委員会の方で喚問したそうですが、決算委員会の喚問と当委員会の喚問とは立場が違い、またおのずから性質も違います。どっちにしても呼ぶことになっておって、日ソ漁業協定なんかの問題もあっておくれているので、当委員会で呼ぶなら呼ぶ、呼ばないなら呼ばないということに一つはっきり御決定願いたいと思います。
  71. 小枝一雄

    ○小枝委員長 ただいまの細田委員の御発言につきましては、ごもっともなことでございます。いずれこれは至急に理事会を開きまして、その結末について協議をいたしまして御報告を申し上げたいと思います。  なお、この際御報告を申し上げておきますが、去る十日の本委員会において、ただいま細田委員御発言の、全国購買農業協同組合連合会の事業運営の状態について、全国購買農業協同組合連合会及び全国農業協同組合中央会より参考人を招致してその意見を聴取いたしました際、全購連の小沼専務理事に対し出席の要求をいたしましたにもかかわらず出席がなかった理由について、昨日本人につき直接調査をいたしましたところ、同専務理事の申し立てによれば、当日郷里群馬県勢多郡城南村の自宅に帰省し、その後病気療養のため伊香保に滞在していたため、委員会の出席要求を全く知らず、翌日の新聞報道により初めて承知したというのであります。  同専務理事は、当日欠席をいたしたことについてはしごく恐縮をいたし、深く遺憾の意を表し、今後委員会において出席の要求があり次第、何日なりともこれに応じ、事情の説明に当る旨の確約をいたしました。  なお、その当時の病状について医師の診断書を提出して参ったことを申し添えておきます。  以上小沼専務の欠席について、前後の事情を取り調べました結果を委員各位に御報告を申し上げておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会