○井出国務大臣 先般当
委員会においてあらましの経過の報告を申し上げましたが、ただいま芳賀
委員の御質問に基きまして、あらためて大要を申し上げたいと思います。
日ソ漁業委員会は、二月の十四日に第一回の
会議を開いたのでありますが、自来会を重ねること二十数回に及んでおるかと思います。北西太平洋におけるサケ、マス
漁業その他の問題について審議を続けて参ったわけでありますが、そのうち最も重要な問題は、一九五七年度における総
漁獲量について、当初わが方からは十六万五千トンという
数字を要求いたしたのでございます。先方は、昨年のモスクワにおける
交渉においてすでに決定を見ておるのだという論拠から、凶年は八万トン、豊漁年には十万トン、こういう
数字を固執をいたし、わが方はこれを反駁する等いたしまして、
委員会は激しい論争の応酬を続けたわけでございます。その間私といたしましては、しばしば
ソ連のクータレフ代表と折衝を重ねて、これが打開をはかって参ったわけでございますが、三月十五日に至りまして岸外務大臣をわずらわし、テボシャン
ソ連大使を招致いたしまして、本件の解決について大局的な見地から配慮してもらいたいんだ、こういう要請をいたしたのであります。三月二十一日に至りまして、先方は一九五七年度の総
漁獲量は例外措置として十二万トンまで認めると同時に、オホーツク海におけるサケ、マス
漁獲は将来は全く中止されるべく、さらに本年度はこれを著しく削減をすることを条件とする、こういう旨の回答を寄せて参ったわけであります。しかしわが方といたしましては、右の二条件に同意をするわけには参りませんので、その後も
双方の代表間において
交渉を継続いたしました。四月二日に岸外務大臣はさらに再度テボシャン大使を招致いたしまして、この例外措置としての表現を変更すること、それからオホーツク海においては将来全く中止されるべくとかあるいは著しく削減するとかいうことの撤回を求め、当方としては自主的にオホーツク海における
出漁を二船団、
漁獲量を一万三千トン、こういうことを申し入れましたところ、同大使は四月四日に至りまして、わが方の要請に同意をする、並びにオホーツク海におけるサケ、マス
漁獲は将来全く中止されるべく、本年度は著しく削減をするというこの条件については本年は論議をしないということに同意をする旨の回答を寄せて参ったわけであります。よって同日右の
了解に基きまして、私はクータレフ代表とさらに細目の折衝を行いました。四日深更に及び実質的な合意が成り立ちまして、六日の午前に議事録に両国
委員の署名をするということに相なった次第でございます。
なお右
委員会においてはそのほかに決定された問題がございますので、それを申し上げますと、第一にベニザケの
資源保護と
漁業規制の問題でございます。北緯五十二度以北、東経百七十度二十五分以西のカムチャッカ半島の東方海域においてサケマス
漁業をする場合、一九五七年においては七月二十日以降これを停止するということにいたしまして、特にこれはベニザケの保護を目的といたしたわけでございます。一九五八年以降においては、この問題は
委員会でさらに再検討をするということに相なっております。
第二点としては、子ニシンの混獲許容限度の問題でありますが、一
漁船一航海について尾数にして全
漁獲量の一〇%をこえない範囲とする、もし一〇%をこえましたときには当該
漁船による当該場所における
操業は中止されるか、または大きな網目の漁具にこれを変えなければならないという取りきめでございます。
第三は、雌ガニ、子ガニの混獲許容限度及びカニ網の設置についての問題でございますが、これはカニ網一反当り
平均一尾、オリュートルの
区域においては〇・五尾、この
程度をこえない混獲率とするということでございまして、
漁獲が停止される混獲限度というものは今後共同調査によってこれが決定せられることになっております。カニ網の配列の長さは千七百メートル以内、配列間の間隔は百メートル以上、配列の線の間の距離は二百五十メートル以上とする。これがカニに関する問題でございます。
次に距岸四十海里のサケ・マス禁漁
区域についての問題でございますが、科学的
資料に基いて一九五八年の
会議においてこれは再検討することといたしまして、一九五七年においては北緯四十八度
以南の
区域については距岸二十海里、これ以外の
区域については従来と同様四十海里の禁漁
区域を設けるという暫定的取りきめをいたしたのであります。
第五点としまして、科学的調査の調整の問題でございますが、科学的調査研究の
基本方針を定め、一九五七年度の共同調査計画をきめたのでございます。なお
漁業資源及び
漁業規制についての研究に関する経験を相互に交換するために一九五七年には
漁業使節団の交換を実現するよう両締約国に対して
委員会から勧告することに相なりました。
第六に、統計その他
資料の交換に関する問題でございますが、両国が
委員会に提出する統計及び
資料の範囲と内容とを調整いたしましてこれを決定する。大体このような次第でございました。以上をもってお答えといたします。