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1957-03-27 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十七日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 稲富 稜人君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    石坂  繁君       大石 武一君    大野 市郎君       川村善八郎君    木村 文男君       草野一郎平君    椎名  隆君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       永山 忠則君    八田 貞義君       原  捨思君    松浦 東介君       松野 頼三君    村松 久義君       阿部 五郎君    伊瀬幸太郎君       石田 宥全君    小川 豊明君       久保田 豊君    中村 英男君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席政府委員         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         林野庁長官   石谷 憲男君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      立川 宗保君         農林事務官         (農地局管理部         農地課長)   小林 誠一君         農林事務官         (農地局管理部         入植営農課長) 安藤文一郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月二十七日  委員川俣清音君及び日野吉夫辞任につき、そ  の補欠として中村英男君及び小川豊明君が議長  の指名で委員に選任された。 同日  理事中村時雄辞任につき、その補欠として稲  富稜人君理事に当選した。     ————————————— 三月二十六日  町村合併に伴う国有林野払下げ促進に関する請  願(徳田與吉郎紹介)(第二四三九号)  野生鳥獣の保護及び捕獲に関する法律案に関す  る請願赤松勇紹介)(第二四四〇号)  農業災害補償制度公営化に関する請願安藤覺  君紹介)(第二四八二号)  韓国抑留船員救済等に関する請願有馬輝武  君紹介)(第二五二三号)  米の統制撤廃反対に関する請願有馬輝武君紹  介)(第二五二四号)  農業振興のため特別奨励金交付制度創設に関す  る請願坂田道太紹介)(第二五二五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件    理事の互選  特定多目的ダム法案について建設委員会に連  合審査会開会申入れに関する件  森林法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇六号)(予)  開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣  提出第七号)  開拓営農振興臨時措置法案内閣提出第八三  号)     —————————————
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。  去る十八日予備審査のため内閣から送付され、本委員会に付託されました内閣提出森林法の一部を改正する法律案議題とし、審査に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、まず本案趣旨について政府説明を求めることにいたします。石谷政府委員
  4. 石谷憲男

    石谷政府委員 森林法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  現行森林法は、戦時中及び戦後の乱伐による百十五万町歩造林未済地と三十万町歩にも及んだ荒廃地造林を推進するとともに著しい過伐状態にあった民有林施業規正によりまして、森林復興をはかり、かつ、その生産力の保続培養と国土の保全を進めるため、昭和二十六年第十国会において旧森林法にかわって制定せられたものでありますが、その後現在までにおける実施状況を見ますと、森林計画制度整備によりいわゆる植伐の均衡をはかるための指導や規正が漸次効果を表わして参りましたことと、公共事業費による造林治山事業あるいは林道—特に奥地林道開設事業助成などによりまして、造林未済地の解消も本年度末までには大略完了するにいたり、山林復興の第一階程の目標はほぼ所期通りに達し得たのでありますが、今後は、林産物の需要増加に対応して、さらに一そう森林資源の保続培養とその生産力の増大に努力を続けなければならないと考えられる次第であります。  ところで森林伐採状況につきましては、毎年の生長量に比較しますと相当の過伐が行われているのでありますが、これを現在蓄積との相関関係によって考えますと、針葉樹に対する需要は今後とも引き続き相当に強いものと考えられます反面、広葉樹につきましては、薪炭需要が近年頭打ちとなっている等の関係から見まして、将来とも資源的にはさほど案ずる必要はないように考えられるのであります。  このように資源及び需給の関係並びに現在まで伐採許可に対する申請状況等から判断いたしまして、針葉樹は従来通り幼壮齢林伐採規制を存続する必要があると考えられるのでありますが、普通林広葉樹につきましては、この際伐採許可対象から除外して事前届出制に改めても支障がないと考えられますし、また反面そのことによって林種転換を主体とする造林事業の推進を容易にすることができるとも考えられるのであります。またこの措置に伴い生じます事務上の余力を利用いたしまして、許可回数現行の年二回から四回まで増加いたしまして、森林所有者の便宜をはかり、伐採許可制度の運用の円滑を期したいのであります。  なお、わが国森林面積の約一五%に当り、森林蓄積の約一〇%を占める公有林が、林政を進めて参ります上にきわめて重要であり明治以来しばしば特別施策対象となったことはいまさら申し上げるまでもありませんが、戦後の市町村財政窮乏等からいたしまして、概して言えば、一般私有林に比べまして現在の立木蓄積が少く生産力が著しく劣っているのであります。かかる状況を放置しておきますことは、森林資源を活用する面からも、市町村基本財産の造成という観点からしても好ましくありませんので、この際その経営振興をはかるために適切な森林経営計画を定めて施業を行うよう積極的に指導する必要があると考えるのであります。すなわち公有林特に市町村有林につきましては、自主的に経営計画作成するよう指導奨励し、都道府県知事認定を受けた経営計画に従って施業を行う場合には、それが森林実施計画において特に定める一定の限度範囲内において伐採せられる限り伐採許可制度をとらず、事前届出によって足りることとし、その経営計画作成に当っては、現在における市町村財政事情及び技術能力等から見まして、市町村有林及び財産有林につきましては、その申出に基いて、都道府県知事が必要な調査資料を措供し、かつ、助言や勧告を行うようにすることといたしたいのであります。  さらに林業技術普及によって林業経営合理化を促進し、農山村民経済振興と、森林資源の保続培養をはかって参りますために、林業技術改良指導がきわめて重要であることは申すまでもありませんが、従来林業技術普及員の従事しておりました林業技術普及員に関する事務及び林業経営指導員の従事しておりました森林実施計画実行確保に関する事務をあわせて能率的に運営いたしますためには、これら両者を統合して一貫性を持たせるとともに、その資質の向上をはかることにあると思うのでありますが、このためにはこれらの任用資格要件を明確にする必要があると思うのであります。  以上の理由によりまして、森林法所要改正をいたすこととしたのでありますが、以下その内容を要約して申し上げます。  第一に、普通林広葉樹につきましては、従来許可制でありました適正伐期齢級未満立木についてもその許可制度を廃止して、事前届出制に改めることであります。  第二に、立木伐採につきまして許可申請ができる回数が、従来は二月及び六月の二回でありましたのを、三月、六月、九月及び十二月の四回に改めることであります。  第三に、公有林特に市町村有林につきましては、その経営振興をはかるために適切な経営計画を立てるよう措置し、特に都道府県知事認定を受けた経営計画に従って施業を行う公有林につきましては、立木伐採についての別ワクの許容限度を設け、その許容限度範囲内において立木伐採する場合には伐採許可を要しないこととするとともに、都道府県知事は、経営計画作成に関し所要援助を行うこととすることであります。  第四に、制限林立木について伐採許可を受けた者が、伐採に関する施業要件に違反して伐採した場合、都道府県知事は、その許可を取り消すことができるようにすることであります。  第五に、林業技術普及員及び林業経営指導員名称林業専門技術員及び林業改良指導員に改めるとともに、その事務内容を明確にし、あわせて任用資格を定めることであります。  以上が森林法の一部を改正する法律案趣旨でございます。
  5. 小枝一雄

    小枝委員長 本案に対する質疑は後日行うことといたします。     —————————————
  6. 小枝一雄

    小枝委員長 これより開拓融資保証法の一部を改正する法律案及び開拓営農振興臨時措置法案一括議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 開拓営農振興法について政府にお尋ねします。  この法案趣旨は、題目開拓営農振興法ということでまことにけっこうでありますし、特に戦後十年たった開拓の歴史を考えてみたときに、     〔委員長退席田口委員長代理着席〕 おそらくこの法律案が今までの開拓行政一つの決算書的な意義を持っておるというふうに私は考えるわけでありますが、しかしつぶさに内容を検討いたしますと、われわれの期待した意味における開拓営農振興法というよりも、ただ災害等によって資金の借り受けを行なった開拓者に対して、融資条件緩和をやるというようなことにだけ重点が置かれておるようにしか考えられないわけでありますが、こういうことではわざわざ開拓営農振興法なる法律を出すまでの大きな意義はないように考えられるわけですが、どういうわけで題目内容の非常にちぐはぐなような法案が出されたかという点に対して、安田局長から御説明を願います。
  8. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓営農振興法は、必ずしも重点的に芳賀委員内容を把握せられました通りではございませんで、第一段には法案名称に即しまするように、開拓者としてすでに入植された方が共同して開拓農協中心にしまして、みずから振興計画を立てられましたきのを、農林省、大蔵省知事金融機関援助をする建前を明確にとろうというのが第一点でございまして、この意味をさらに敷衍いたしますると、開拓計画設定から入植営農助成に至りますまで、従来は国、県が設定をいたしまして指導いたしまして、やや一方的に開拓営農を進めていただくということに建前がなっておるのでありますが、入植農家営農振興をはかりますことを建前といたしておりますから、各個人の営農開拓者営農改善計画を取りまとめて、これを基礎にして共同組織によりまして、自主的に計画を立てられるものをもとにしまして助成をしようということが非常なねらいの違いでございます。その中には、計画の立て方でございますが、開墾建設工事開墾作業営農資金家畜の導入その他積極的なる営農振興計画を立てていただきまして、それを過般も御説明しましたように、公共事業的な経費としては全額補助をもちまして、一億四千万円三十二年度でも計上いたしまして、資金といたしましては、開拓者会計に八億五千万円計上いたしまして、三十二年度としての裏打ちはしようと思っておるのであります。かつまた五カ年計画をもちまして、すでに入植せられたお方が、入植当時に予想しておりました営農段階以上に到達をせしめよう、そのために、あらためて第二段の援助措置を、入植当時はそれを予定しておりませんでしたものを行なって、積極的な営農振興をはかろうといたしておるところでございます。なおこれに伴いまして、今までの開拓農家の負債の状況が重荷になりまして営農振興をはばんでいることがあるのでございますので、振興計画の中においては積極的な営農振興資金調達のほかに、旧債の償還について条件緩和をするという、そういう条項も計画の中に立てていただこうと思っておるわけであります。これがいわば消極的な営農経済の安定に資するようにというつもりでございまして、これに対しましては、従来の天災法条件緩和をするものに加えまして、今回芳賀委員もただいま御指摘になりましたように、金利条件天災法のすでに借り受けた条件のままに償還期限を倍ぐらい、すなわち十年以内に延長することを予定いたしまして法案を具し、予算予定しておるのであります。そのうち特に政府対象とするものは債務がはっきりしておりまして、また政府が従来援助をしておりました天災融資のものが第一でございます。第二には開拓者会計融資をしておりました基本営農資金と申しますか、それに家畜資金、最近の不振開拓地営農振興資金につきましても、振興計画内の計画が、まことに条件を融和すべきものであるということになりますれば、これを適当に償還猶予等の処置を講ずることになっておりまして、これは開拓者資金融通法の方でやろうと思っておるわけであります。しかし振興計画の中には、本法によりまして計画の中に入れてもらうつもりであります。そのほかに入植当時にまず開拓者資金を受けられた場合に、その後脱落者等がありますと、組合開拓者間において連帯債務になっておりますので、国の債権勘定に従いまして、いかにもそれが無理である場合にはさらに十年の償還延期をできるような手続をとろう、これは開拓者資金の場合の、きわめて償還能力がない、弁済が不可能であるというような場合の適用であります。さらに離脱者を追いかけていきまして、債務償還を期待しておるという猶予期間がこの債権管理法で十年でございますが、その十年の間は他の連帯債務者から債務の履行を要求いたさない措置でございますがその後に至りましてはこれを免除してしまう、そういうこともやろうと思っておるわけでございます。大蔵省とも話をいたして解決しておるのでございます。その他開拓者入植をされまして、土地売り渡しをまず土地開墾計画によって受けられる、それから営農が確立する予定の時期、それに近い適当な時期に成功検査をいたしますが、おのずから農地法に従いまして、これは売り渡し後五年になっておるわけでございますが、これを三年延ばしまして、八年の中で成功していただくように特例を置こう、この八年の意味は、開墾作業等につきまして補助制度がございますが、この規定がございませんと、予定の五年のうちに完成をいたしておりませんと、自作農に精進する適当なお方と見ないで、補助を今後打ち切りまして場合によるとその後三年の間に政府土地を買い戻すという規定が発動されるのであります。そこでせっかく営農に精進する見込みがあり、またりっぱな自作農になっていただきたい、こういうように思っておりまするやさき、立地条件とか気象の条件とか、その他やむを得ない条件で、土地配分して以後五年を経過した、こういう方々に対しまして、そのまま打ち切るのは適当でございませんので、今後の営農振興計画その他につきまして、ただいま申し上げましたような援助措置をさらに講じて、成功していただくために法律改正をしたいと思うのであります。同様のことで、耕土培養法炭カル、溶燐等に対しまする補助金についても、補助の金額がおのずからきまっておりまするから、これはたしか昭和二十七年から法律が施行になったと思いますが、それから八年となっておりますので、三年延長して十一年にしたい、こういうふうでございまして、御指摘のように債務の一部の緩和ばかりでなしに、積極的なる営農振興の自主的な計画を立てていただくことと、債務条件緩和も、天災法のみならず開拓者資金についても、当初入植する際に連帯保証で借りられた資金についても条件緩和をしよう、その他上記の目的を達成しまするために必要だと思われる農地法耕土培養法改正をお願いしたい、こういうことでございます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 今までの開拓のやり方は、やはり国の開拓行政に基いて、そして建設工事であるとかあるいは開拓経営営農類型に基いて安定するような指導を上の方から行なってきたのです。結果的にはその通り行かなくて幾多の矛盾とが欠陥が現われてきておる。ですからそれはやはり一部は政府の重大な施策上の責任ということもいえると思う。ところが今度の場合には下から盛り上げて振興計画を立てた場合ということになってきておるわけなんですが、今までの政府開拓行政を通じての不手ぎわに対する責任というものはどこで一体けじめをつけていくつもりですか。
  10. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓者のりっぱな成功ということを所期しまして、政府補助制度融資制度、また計画を立てまして、道路水路等をつけてやる、また電気施設や小学校、保健施設等についても適当な補助制度をもってやろう、営農指導員等も置いて営農整備をする、こういう制度のもとに出発しましたが、大体これは二十五年、特に二十七年度以降からそういう制度がだんだんと整備して参りましたので、それ以前は当時の社会情勢に応じまして、引揚者あるいは戦災者生活安定を開拓地でやっていただこう、また当時の食糧危機に応じまして、食糧の自給あるいは増産をはかっていただごう、こういうような沿革もございますので、またこれに応じまして客観的に二十五年以降、特に二十七年以降については離農者も少く、比較的計画通り営農振興が進んでおりますので、その戦後の初期の開拓者について、政府措置が今から見れば足らなかったところ、それからその後におきましても、天災その他でやむを得ない条件で、開拓者の責めに帰すべからざることで、営農予定のごとく進んでいないもの、こういうものの入植当時に営農類型を定められておりますものを、ある程度手直ししまして、その目標本法に基く目標としまして、そこまでを政府責任を持って援助を申し上げよう、こういたしておるのでございますから、この法案施策を講じようとすることについて責任を感じているわけであります。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで問題になるのは、昨年あたりは非常にやかましく言われておりましたが、不振地区の問題、特に不振組合中心とした不振地区の再建といいますか、そういう問題は、やはりこの振興法の中に取り入れてあるわけですか。
  12. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 不振地区と申しますのは、従来は予算面でやっておりましたが、すでに二年間一年度において二百数十戸ずつ営農診断をいたしておりまして、いかにも不振地区だと定めるところであります。これはさらに三十二年度まで診断を続けることになりますが、地区としまして約一千地区ございます。その地区は当然振興計画を立てていただくところの地区でございまして、なおこの法律営農振興をはかっていただこう、その一つのよりどころとして開拓営農振興組合を興して入っていただこうとするところは、十五万五千のうちで約七割ぐらいを対象にいたしておりますから、当然その中に入る、こういうことでございます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでこの振興計画を立てる一番の基礎は何ですか。
  14. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 振興計画を立てます一番の基礎は、精神的には開拓者の人としての基礎であります。計画事項としては、既入植地地区計画終戦後間もなくの間の場合のように立っていないところは立てることが基礎であります。当然計画を立てて入植させるべきでありますが、すでに立っているところは、地区計画に応じまして、開墾道路水路等国がなすべきことがその計画通りまだ行われていないかどうかということが基礎でございます。ほんとは開拓者耕地営農とかいうものの進捗度というものにつきましては、地区計画等に従いまして土地配分が行われた際に、配分開墾予定面積について予期の進度を達成しているかどうか、こういうことが基礎になりますが、経済全体の条件としましては、現在あります営農類型に到達しているかいないか、そういうところが計画立案基礎になります。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 今言われた、この建設工事の進まぬものはそれを整備するという話もありましたが、これは入植一つ基礎条件をまず国の責任整備してやるべきのが今おくれているんで、これは何も振興計画基礎じゃないと思うのです。精神的の問題も言われたが、これはだれでも入植して開拓者として一日も早く自立しなければならぬというそういう意欲は初めから持っておるわけです。いろいろな客観的な条件が具備しなかったり、あるいは条件の悪いところに入植している関係で、人間の意思とか努力とか意欲だけでは何ともならぬことになって現在の段階に置かれておるところがあります。ですからやはり政府は最初に方策をきめて、そして営農類型というものを立てて、それに基いてやれば大丈夫だといってやらしたところが、その通りいかなかったということになるから、やはり振興計画を立てるという場合においては、現地に最も即応した営農類型というものをそこから確立するということが一番大事だと思うのです。しかし、それはやはり自主的な考え方だけではできないと思うのです。先般の同僚の石田委員の質問の中にも、安田局長は、今後営農類型改訂する必要に迫られておるというようなことを言われましたが、この際営農振興計画を立てるとすれば、それは先般言われたところの営農類型というものが、各地帯別とかそれから現在における農業経済情勢に最も即応した営農類型というものが、政府責任において、あるいは現地開拓者諸君自主性に基いて、それがやはり渾然一体となったような営農類型の確立というものが、まずどうしても必要じゃないかと思うのでありますが、これはもうすでに用意されておると私どもは考えておるのですが、その点はいかがですか。
  16. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 営農類型一般的な改訂は研究中でありまして、かなり成案に近いものに近づいておりますが、従来営農類型政府補助助成の機運にもなっておりますし、同時にこれはまたもともと開拓者営農が進んで営農生活が安定した場合の姿として設定しているわけでございますが、三十二年度あたりを目途にいたしまして成案を得まして、三十三年度以降についてこれが実現をいたしますように努力をするつもりであることをこの前も申し上げました。しかし、これは原則といたしまして、これから入植される方々に対して適用すべきものと思うのであります。ところが、本法対象といたしておりますのは、現在の営農類型基礎にしながら終戦後今日まで入植して営農にいそしんでいただいた場合におきまして、所期営農が進まない、生活水準が低い、こういう場合に対して特別の振興をさらに繰り返して政府責任を感ずる範囲において行う、こういうものでございますので、その根本は、既入植者方々土地配分がすでに済んでしまっておるわけですから、営農類型基礎が、まず耕地面積にある。その他営農の形と農業収入生活水準の大体の基準の押え方であるといたしますと、第一の耕地面積のところで、ある程度の手直しはやるつもりでございますが、営農類型一般的改訂というのはなかなかむずかしい、適用しにくいわけであります。開拓地はみな開拓者配分されておりますから。そこで、既入植者のお方々に対しましては、政府の手持ちの土地で利用し得るものならばそれを使って、その分について営農類型改訂されるのは本法に基く安定の目標として適用したいと思う。また離脱者が出られた場合は、その土地を利用するという範囲においてはけっこうだと思うのであります。しかし、それ以上はなかなかむずかしい問題ですから、防風林とか付帯林等は新しく積極的につけ得るところはつけるように、足りないところはつけ得るようにしたり、道路、水路をつけるとか、手直しとしては完成するようにしたいと思いますが、おもには営農の高度化の方をねらわざるを得ない。そうしまして、農業の収入を上げていただく、こういうところになると思うのであります。ただ、面積についてただいま申し上げましたが、いわんやその耕地がある立地条件に至りますと、営農類型を抽象的に変えましても既入植者の場合にはすぐ適用になるわけじゃありませんから、やはり二つは分けて考えざるを得ない、こういうふうに思っておるわけです。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 根本的には営農類型を改善するというところに基礎を置かなければこれから入植させる者に対しては間違いのないような営農類型を用いるということでなくて、とにかく今まで苦労した結果が、営農類型が妥当性を欠いておったということがわかったのでしょう。だから、根本的に立ち直るという場合においては、営農類型に対する検討の上に立って今後どういう形で営農を再出発させたならば恒久的な安定ができるかというその確固たるものが備わらなければ、ただ何だかんだ言ったところが、今までの借金の条件緩和ぐらいにしかならないと思うのですよ。局長の言わんとするところは、営農類型改訂して、それに基いて入植地の再配分であるとかいろいろな問題が付随してくる場合においては、当然これは政府責任において再び助成措置とかいろいろな施策を講じなければならぬ、そういうことは現在の実情からとにかくできがたいから、今までの分に対しては現在までの間違ったたよりにならない営農類型のもとにおいて、創意工夫をこらして何とかやっていくようにしてもらいたいということでしょうが、こういうような程度では、この振興法ができて、これをやってみたところで大したことはないと思うのですが、自信がありますか。
  18. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 第一は、営農類型を根本的に変えて、それを基礎にして既入植者開拓営農振興もはからなければならないのじゃないかということでございますが、本法案提出しました場合においても、さらにその基本となっております政府側の開拓地に対する期待とその援助ということにつきましては、考え方としては差はないと思います。これを既入植地について既入植農家営農が予期通り進んでいないといってどう適用するかについては、将来の入植農家に対して考えるべき、営農類型改訂とはおのずから土地条件その他入植段階等が違いますから、多少別個にならなくちゃいかぬ。しかし改訂すべき営農類型を頭に入れて、現在の営農類型よりもねらいはさらにいい条件にしまして、しかも現在の営農類型までに到達していない人についてこれを適用して援助しよう、こういうことであります。  それから第二は自信があるかないかでございますが、むずかしい営農を、平坦部もありますが、主として山手において行なっていらっしゃる方が多いのでございますので、開拓者団体等ともよくお打ち合せをいたしまして、また地方庁、農地事務局の関係官等の意見もよく聞きまして、主としては天災法資金緩和に当りまして、その他の政府資金償還猶予等をはかりまして、一方その程度の営農類型の高度化を促進すること、特に道路等が十分ついておらぬところを、十割補助で二度目に工事をいたしますれば、大体所期の目的は達成できる、こういうように聞いておりますから、私どもも省内で研究しましたこととあわせまして、一応それでよかろう、こういうふうに思っております。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 私が繰り返して言っているところは、今までも不振地区経営診断をやってきた結果というものが出ておるのです。ですから不振地区等における経営診断の結果が明らかになった場合には、やはりそれが今後のこれらの営農振興法の対象になる地域の振興計画基礎にならなければいけないと思うのですが、局長の答弁ではなかなかそこに結びつきがないのです。  もう一点は、この法律が今日上程されるに至るまでの間、たとえば昨年の秋あたり、鳩山内閣の末期において考えられた方向というものは、営農類型への改善を基礎にした振興計画を立て、そうして開拓者の恒久的な安定施策を講ずるというところに明確な目的があったのですが、今度出た法案では、営農類型の改善を基礎とするというその点が、非常に消極退嬰的になってしまったので、それは大きな問題だと思うのです。なぜ一番基礎になり、先行しなければならぬねらいとか目的というものが、この法案から非常に影を薄らいでおるかという点が、自信があってこういうことにされたのかどうかということを私は聞いておるわけです。
  20. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 私の聞き間違いがあったようでありますが、第一段の経営診断の結果を法律基礎にしておるか、また運営の基礎にしておるか、この法律に基く計画なり政府援助基礎にするか、こういうことはその通りでございまして、経営診断を二年やり、さらに今後一年ほどは同一方式で、一線の不振地区は全部経営診断が済むわけでございまして、その地区については、経営診断をいたしました結果を基礎にして振興計画を立てるのであります。過去二年の診断の結果をとらえまして、振興計画法案に付しましたように、計画事項はそういうふうにしたらどうだろう、それから予算政府融資につきましては、先日も御説明申し上げまして、先ほども若干触れましたように、その事項について予算融資措置を講じておるのでございまして、経営診断は三十二年までに終りますが、それに基いて三十二年度から五カ年は少くともこの法律援助していきたい、こう考えております。  第二点の、鳩山内閣の終りごろの論議としまして、既開拓地の立て直しにおいて、営農類型改訂を考えようじゃないか、こういうことがありましたことについては、その意味では営農類型改訂をして、既入植者の分については制限的にしかならないので、三十三年度以降の新規入植者に適用したいと思うほどの営農類型改訂はできませんが、既入植者既入植地についての改訂できる事項は極力営農類型改訂をはかりたい、そういうふうに思っているわけです。そこで何が一番できるかというと、配分した耕地面積は、既入植地については比較的改訂がむずかしい。そこで有畜化とか寒冷地対策とかいうものを中心にした営農の高度化、有畜化が第一であります。その他援助を打ち切らるべきところを続けなければならぬということが第二であります。特に今まで営農が不振でありますところは、その開拓地立地条件として悪い。特に生産物の販売、購入物の購買というものについて、経済立地が特に悪い。交通立地が特に悪い。従いまして、開拓道路等においてもさらに追加の特別措置を講じよう、こういうように思っておるのであります。なお改訂する営農類型というのは、本法についてどうだということになりますと、従来全国を五つの類型に分けておりましたものを、この経営診断の結果その他を参考にしまして、七類型くらいに改訂しまして、そうしてやっていごうと思っておりますので、その地方地方の事情に応じまして、類型も二つくらいふやして、従来の適用類型あるいは高度の改訂をした類型をその分は適用したいと思っておりますので、そういう意味では、既開拓地においては、可能な、大体最高限度に近い類型を持ちたい。しかし将来に向っての根本的営農類型改訂とはちょっと違う、こういうように思います。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、営農類型を最大にそこへ適用させるという努力をするという場合には、やはり国の具体的な約束というものがこの法律の中に現われなければうまくいかないじゃないですか。まあ借金政策の問題は相当述べてあるが、ただしいて探せば、第六条に、振興計画の達成に資するために、国及び都道府県は必要な援助に努めるとばく然とうたっているが、もう少しここらあたりは、単に必要な援助に努めるというようななまぬるいことでなくて、具体的に国はどういうことをやるということを、当然ここで明らかにする必要があるわけです。これはどうしてわざわざこういうようにばく然としたのです。
  22. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓地振興計画達成のための国の援助は、一番根幹は、何と申しましても予算政府融資だろうと思うのです。積極的振興においても消極的な負債整理においても、ともに予算融資が要るのであります。しかもこれは政府援助するのが第一、次は都道府県、あるいはある場合は金融機関等と思いますが、国の予算及び政府融資措置でございますから、将来にわたって計数まであげて、事項も明確に全部を網羅的に指定して、五カ年間ないしはそれに近いものを示してしまうということは、性質上、国会の審議権とか、そういうものとの関係もあり、国の予算の立て方もあり、三十三年度以降の財政計画をどれだけ見通すかというむずかしいことになりますから、少くとも三十二年度の予算政府融資に示しました過般来ほとんど網羅的に御説明をしております事項に対する措置、これは少くとも五年以上をこえる予算政府資金との計画を合せて一本として見ていただきたい、こう思うのであります。  なお三十三年度に予定するようなことを五年間そのまま五倍して予定するのは、私ども不本意でございまして、振興計画が出てきたり、経営診断をしましたりすることに応じて、目標を既開拓農家営農の安定、生活の安定というところに置きまして、必要な限りは、なお三十二年度は初年度でございますから、それより補足追加をいたした施策を講じたいと思いますので、そういう意味で第六条を書いておるわけであります。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 局長、今までの予算が出ているというのは、この法律が出る前、振興法以前の予算なので、わざわざこういう振興法というものを出すのですから、この法律の約束する必要な援助に努めるというものは何であるかということは、あらかじめ用意されておると思う。こまごましたことは言わぬでもいいのです。この振興計画に基いて国が援助するという事柄は具体的に—精神的なことはいいですよ。やろうと思ったができなかったといえば、それでしょうがないですからね。具体的に何と何をやるんだということは、当然この法律を出す以上は用意されておると思うのです。その点を少し中身のある点を聞かしてもらいたいと思います。
  24. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 三十二年度の既開拓地に対して使用せられる予定予算は、公共事業費におきましても、非公共事業費におきましても、本法提出予定しながら編成をいたしました。従来あった措置も中に入っておりますが、新規もございます。そこで内容的に事項を申し上げますと、政府援助措置というのは、非公共関係を申し上げますと、この特別振興法に基いて災害資金条件緩和をいたして参りますための利子補給費補助金、これだけでは千四百万円余でございますが、さらにその基礎になります天災法に基く融資条件政府援助、これが一億六千万円ありますが、その分であります。また土地配分是正は制約的だと私は申し上げましたが、これは既開拓地であるから制約的であるだけでございまして、しかし行いたいと思いますので、その費用の交付金を約三百万円計上いたしておるわけであります。さらに、この法律を適用し、振興計画を立てていただく振興対策の調査費として、百七十万円を計上いたしておるわけであります。また振興計画の重点として、従来の類型では、西日本等は乳牛等を導入する措置をとらないことに営農類型がなっておりましたが、国有の牛を貸付するという方式によりましては、全国にわたって乳牛三千頭、和牛二千頭、さらに開拓者資金の運用によりまして、西日本にも乳牛を入れることにしまして、さらに畜力化をはかる意味におきまして役牛三千四百頭、馬一千頭、乳牛六千頭を政府貸付外で政府開拓者資金融資して導入しよう、こういう計画でございます。  それから運転資金が要りますから、中央開拓融資保証協会の出資を三千万円いたしまして、肥料、飼料等あるいは種苗等の営農資金の確保をはかることによりまして、さらに本年度以降は五カ年計画をもちまして緬羊、豚、鶏の積極的な導入をはかるようにいたしております。また公共事業といたしましては、すでに地区計画上に基いた建設工事が途中で一応やめになったりしておりましたので、そういう計画がなくて入植せられておるところには、これを放置いたしますると、つかない、またついても補助事業になるというおそれがありますので、最初からの開墾建設事業と同じように扱うために、十割補助道路その他の工事を行おう。     〔田口委員長代理退席、委員長着席〕 これは特に新開拓地中心にして、既入植地区に当てはめて行おう。それを約一億計上いたしておりますが、さらにこれに応じまして、開墾作業が進んでおらぬところについて、開墾作業費の補助入植施設補助、耕土培養補助が、その法案提出いたしませんならば打ち切りになるところを、打ち切りせずにやろう。そういうことが対象事項であります。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 今局長の言われたのは、開拓営農振興組合に対して国があらかじめ用意してある必要な援助内容ですか。この第六条に、開拓営農振興組合に対して国及び都道府県は必要な援助に努めるということをうたっているのですが、今説明されたのは、この開拓営農振興組合に対してこういう特別な措置をやるということなんですか。
  26. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 事項と予算を便宜あわせて申し上げましたが、営農振興計画は今申し上げましたような事項を、よくわかるように、施策を講じやすいように立てていただく、そういうことを事項として申し上げたのであります。もう一つは今申しました予算資金範囲内で、振興組合とか振興地区だけでそれを使うのではございませんが、大部分それに使うようにしたい、こういうふうに思っております。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、私の聞いているのは、わざわざ営農振興組合の指定を行うのでしょう。ですからその組合振興計画を立てる、そして知事の承認を得て政府もそれを認めるという場合には、その振興組合振興計画に対して必要な援助に努めるということになっておるのだからして、それは振興組合が認められる適切な振興計画を、今局長の言われたようないろんな問題に対して、具体的に五カ年計画とか十カ年計画とか立てる。そうすると、その計画に沿った必要な助成であるとか融資であるとか、特別な面に対する国の具体的な財政等を通じた援助を必ず行う、そういう意味なんですか。
  28. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 知事の承認を受けました振興計画につきましては、三十二年度はただいま申しましたような予算資金によりまして、三十三年度以降は三十二年度に応じまする予算は少くとも確保いたしまして、それ以上のものを期待しながら、経営診断に基いたものを参考にしたりしまして、その他それに基かなくても、本法に基いた振興計画が出て参りまして、知事が承認したような事項については助成しようというわけでございます。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、これは達成するに必要な措置を講ずることになるわけですね。
  30. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 予算資金を伴う措置を講ずることもありますし、この立案の過程から私が考えておりますことは、計画を適正に立てることそのものも都道府県なんかは援助したい、農地事務局は援助したい、こういう意味であります。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 もちろん計画を立てるまでの指導とか助長はする必要がありますけれども、立てた計画に対してそれを達成させるような国の責任における措置というものは、どうしてもこれに伴なってくると思うのです。それをただばく然と助けることに努力するということではなくて、必要な措置を講ずるなら講ずるということを明確にしておく方がいいんじゃないですか。その方が政府としても本腰を入れてやれるのではないですか。見殺しにするんだか助けるんだかわからぬようなことをわざわざ第六条にうたう必要はないと思うのですがね。
  32. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 第六条はそういう趣旨になっておると思います。三条、四条に規定する助成措置は具体的に講ずる、その他でも振興計画の達成に必要なことはよく審査もしなくちゃいけませんし、本省が講じ得ると思われるものとの打ち合せは要しまするけれども、振興計画が妥当だと認めた場合は、必ず計画達成に必要な援助に努めよう、この両方をともに書いたわけであります。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもそれがはっきりしないのです。局長として明らかに言明できなければ農林大臣を出席させて明確にしてもよいと思うのです。ここが大事なところだ。借金政策以外にこの法律のどこをたよったらいいのですか。成功検査とか耕土培養とか、そういう利益を享受する面の年限の延長は若干うたってあるけれども、これが一番根本的な問題ではないと思うのです。やはり第六条をここにうたっている以上は、天災法等による借金の条件緩和以外に、振興計画のもとになる今後の営農安定を築くためのいろんな計画現地組合から出てきますから、それはもちろん開拓者諸君意欲によってやってもらう面もたくさんあるけれども、それにてこ入れが行われなければなかなか期待に沿うものに到達できないと思うのです。国の責任において振興計画が達成できるような必要な措置を講ずることを法律に明記しない限り、これをやらんとするならば何も営農振興法なんというものを仰々しくうたう必要はないのです。意のあるところがあればここで明確にされたらどうですか。
  34. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 特に申し上げることはございません。既開拓者で、すでに皆さん御承知の通り政府がどのくらい援助するかを約束して入りまして、所定の年限を経過したものもあり、それに近づこうとしている年限の人もございますが、所期の目的の営農段階まで到達していない人につきまして、前の国と開拓者との間の約束以上にさらに追加をしようというものであります。政府責任があるからさらに本法によって助成を追加して行いたい、こういうものであります。もともと本来は、弱い意味—言葉の語弊があるといけませんけれども、従来の補助助成あるいは建設工事のつけ方によってそれ以上の措置を講じなくとも営農が成り立つものだというルールをまだ破っておりませんから、その意味におきまして、内容は、弱い意味でございませんが、本法案の各条において措置するもののほかは農林省が責任を持って振興計画を達成するための予算資金、技術等の援助をしたい、こういうのがすらっとしているだろう、こう思っておるのであります。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 ではこの点は問題点として保留しておいて、次に進みます。  次に、営農振興組合の指定を受ける割合、全体の開拓者のうちのどの程度がこの営農振興組合としての指定を受けることになるのですか。
  36. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 先ほども申し上げましたように、開拓地区の七割であります。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 結局現在の農協法に基く開拓農業協同組合は大部分この営農振興組合ということになるわけですか。
  38. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 北海道などは開拓農協としておりませんが、大部分は開拓農協であります。開拓者が組織する農協で、組合員みずからが進んで営農計画、改善計画を立てて、その上組合組合員のため及び自分の組合のために振興計画を立てるものを開拓農協振興組合と言うのであります。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、振興組合に指定された場合、その組合の構成分子たる個々の開拓者でこの法律の適用を受けなくてもよい人もその中に入れるわけですか。もう完全に自立したものも、自立できなくてこの法律の適用を受けなくてはならぬ人も、その地区における開拓協同組合が総体から見るとやはりこの法律の適用が必要であるということで組合指定をやるわけですか。
  40. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その振興組合となるべき開拓農協にはこの法律の適用を受けない開拓者もいる場合がございます。しかし、組合は、組合員の半分または二十人から組合振興計画を立てよという申し出を受けたときは、組合がその人たちのために立てますことと、そのために組合がどういう事業をしようかということもあります。それからその地区一般的に関係のある、受益する道路みたいなものがあります。そういうものについても計画を立ててよい、それが振興計画であります。だから農協法だけではだめだろうと思います。この法律に基いて開拓農協には特別な職能が与えられる、そういうようにしているわけであります。個々の施策で個人に対して講ぜられます措置は農協を通じますが、個人に対して講ぜられるのでありまして、そのために各組合員の営農改善計画をまず立てて、それに基いて組合振興計画を立て、振興計画知事の承認を得て当初の計画と変って立てられましたら、またそれに応じて組合員の営農改善計画も変えて立てておく、こういう建前でございます。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもその辺がおかしいじゃないですか。もともと開拓農協という農協法に定められた団体だけの責任でこういう期待したような効果が上るというふうに局長は考えているのですか。
  42. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 ちょっと御質問の御趣旨がわかりませんが、開拓者に対しましては、従来開拓者資金を供給する場合におきましても、炭カル助成をいたします場合におきましても、融資保証法の営農資金がいく場合におきましても、天災法融資をする場合におきましても、開拓農協を通じて個人の開拓者に対する施策を講じておりますから、開拓関係の特殊性と申しますか、それが従来においてもそうなっておりますので一般の農協とは、農協法に基いておりますが、ちょっと違う機能を、運営において果しておると思います。そういう意味で、これが一番よく目的を達すると思っておるのであります。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねしたいのは、この開拓農協に対して、開拓者はどのくらいの年月拘束を受けるのですか。古い人は十年たったのですが、これは今後どのくらい開拓者としての拘束を受けるのですか。これは死ぬまでですか。そういう点はどうなんですか。
  44. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 国が予算政府融資において施策を講ずる間を—入植者は大体農家でありますけれども、開拓者開拓農家と思っておるわけであります。開拓農家は、同時に、何も開拓という字がつかなくても農家でございますが、開拓対策を講ずる間の農家が本来開拓農家だ、こういうことだと思います。施策に応じた名称、取扱いだと思います。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 現地におけるいろいろな事例をあげると、開拓組合農業協同組合としての経済的な行為というものを行えるかというと、なかなかこれはそこまでいっておらぬところが多いと思うのですよ。そして、ほとんどは開拓組合組合員であると同時に、一般農協の組合員にもなっている。いわゆる二重加入のような形で協同組合に対するつながりを持っているわけですね。これは一面開拓者にとってはやはり大きな負担になると思うのです。開拓協同組合だけでは完全な協同の経済行為が行えないから、もう一つその地域におけるところの普通の農業協同組合に加入して、そうしてその行為の充足をするということになっておるので、こういうことがいつまでも続く場合においては、やはり開拓農協としても完全な組合経営はできないと思いますし、それから組合員の側から見ると、二重加入ということに対するいろいろな不便とか負担の過重というものがあるのですよ。ですからやはりこの辺を明確にしておく必要があると思うのです。そういうことに対してはどういうお考えを持っておりますか。
  46. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 将来の問題は、政府等から開拓者なるがゆえに特別の施策を講ぜられることがなくなりました場合、本来ならば農地法に基く成功検査を経て、成功したと認定を受けたとき以降は、一般の農家であるべきだ。それは農協について言いますれば、むしろ三重加入をやめた方がいいのだというのを基本の方針といたしたいと思います。しかしながら終戦後の歴史と施策の取扱い上、ちょうど農協の下の方の実行組合のようなものでありますけれども、そういう意味も一面あろうと思いますが、特に農協法に基く開拓農協を設けまして、その地区では経済団体の仕事をするほかに、生産協同組合の機能もある程度は果しておりますが、また政府施策を講ずる手段として、開拓者の希望もありまして、開拓者の集団が行う開拓農協開拓者の代理としまして営農資金を受ける、開拓者資金を受ける、補助金を続いて受ける。また信用保証協会へ共同出資を開拓者農協でやっておる。こういう実態がございますから、従来の開拓者の共同した事業、また政府がそれに応じて施策を講ずるとき、その共同事業を通じて行なっておりましたことを踏襲しませんと、本法に関しましては混乱が起きますから、本法に関しましての適用上は開拓農協を使うのがいい、こう思っております。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 今局長は、一応開拓者としての段階を終った人たちの二重加入はやめた方がいい、こういうことを原則にして指導しておるというようなことを言われましたが、そういう卒業生がどんどん出ていくということは非常にいいのです。その人たちは開拓組合から出て、そうして一般の農協に入るということになると、現実の問題としては、力の弱い、まだ卒業ができない人たちだけが残るということになるわけですね。そういう場合にはやはり協同組合法等に基く自主的な経済組織としての行動というものが、今よりもまだ弱体化する。ですからその場合にはやはり単なる農協としての経済活動だけでは十分なことができないのですから、そういう場合にはやはり行政的な強い、何か支柱がそこに加わるということになる方が非常にいいじゃないかと思うのですね。そうして不振の開拓や何かもだんだん自立できるようなことに押し上げていけば、期待していたような時期が必ずくると思うのですが、今のように一本立ちができて、既存農家よりも相当りっぱにやっていけるような人も、やはり開拓者であると名乗って、いつまでもいつまでもそういう拘束のもとに置かれておるということも、これは全く変だと思うのですね。ですからその辺のけじめというものをやはりつける必要があると思うのですが、いかがですか。
  48. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓者に対して政府がいかなる援助措置を講ずるかというのは、その施策ごとにきめることでありまして、それも原則として年限を限っております。従って年限を延ばすには本法のような措置法律案提出も必要だ、それを計画を立ててやるときには、特に法律案を設けてやるのが適当であるとこう思っておりますが、開拓農協も農協であります。一般の農協ももちろん同一の農協法に基いておりまして、加入、脱退は自由でありますし—ということは、政府措置は国が民意を聞いて、開拓者の意見をよく聞いてきめるべきことでありますが、組合のことは開拓者も他の農家も自分で考えられることだと思います。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 加入、脱退が任意だといっても、借金が山のようにたまって脱退、加入もしょうがないような状態において、加入、脱退が自由だというのは変じゃないですか。全国で七割以上も振興法対象にしなければならぬというところまできているのですからね。そのためにこの振興法が必要なんでしょう。そして振興法のねらいの一つとしては、とにかく開拓者が今までの借金を返せるようなことになればいいのですか。
  50. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 それだからこそ本法の適用に当りましては、言いかえますと、営農不振な方々入植以降開拓農協として共同して苦労をしてこられた場合、負債や補助の受け方も共同して開拓農協によってやるのがよろしい、こう申し上げておるのであります。その必要がない個人々々の方は、政府が強制するわけにいきませんから、農協法に基く開拓農協によってやる方がいいと思う。しかし開拓の現状からいたしますると、なお開拓農協を作られまして、政府施策対象開拓農協を通じてやるのが適当な段階だと思っております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているねらいは、この機会に開拓農協もあわせて強化させるというような考えが果してあるかどうかということを疑問だから聞いておるのです。
  52. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農業協同組合は、開拓農協でありましても、日本農業生産力発展とともに、組合員のためにまず第一にあるものでありますから、農協法に基くもの同士の組織でありましても、系列がどういうようになるか、第一種であるか第二種であるか、個人については二重加入がいいかどうか、そういう問題とは別にしまして、例が悪いかもしれませんが、たとい解散をする段階がありましても解散時までは開拓農協はどんどんりっぱなものになるのが望ましい、こう思っております。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでこの法案内容ですが、開拓者の現在の負債の中でこの振興法対象になる天災融資関係の分は大体四〇%くらいというふうに聞いています。が、その程度ですか。
  54. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 天災法融資は四十三億円くらいであります。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 その分だけがこういう条件緩和ができれば、あとの分は心配なくやれるわけなんですね。
  56. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 より大きな負債の第一位のものは約百二十数億の開拓者資金です。これは三分六厘五毛という長期均等償還の特殊の政府資金でありまして、その負債があること自身が悪いことであると必ずしも一言えないのであります。むしろ基本的に入植をし、営農基礎を作り、営農振興をはかるために生産手段を整えたり、入植当面の生活資金に充てるようにできておるのでありまして、そのうちで当該年次の償還がむずかしいというものについては、政府資金でありますから、国の債権管理法に基いたり、その前には開拓者資金融通法に基いて融資条件緩和ができますから、それはそっちの方でやろう、そうすると百二十数億と四十三億との二種類の政府援助をしながら供給しました資金については施策を法的に講ずることになる、こういうことになります。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 むしろ天災融資法は、災害が累年のように重なって来れば借りかえ措置等なんかができてそういうことが行われてきておるのです。それで現在もう償還が不能になっているのは、思うように災害が回ってこなくてどうしても今度は返さなければならぬという時期に当面しておるものがあると思う。そういうものは、ほんとうに今後開拓営農振興をさせるという場合は、これはどこまでもついて回って重荷になると思うのです。だからこの分だけは何とか片づければあとやっていけるとすれば、こういう形でなくて、もう少し積極的に国が引き取って跡始未をした方がいいのではないのですか。
  58. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 供給しました資金は、政府が利子補給や損失補償をしました資金で、営農振興をはかって、りっぱな開拓農家として相当見込みのある方に対して講ずる措置でございますから、そういう能力がないと断定しましたり、今後なくなるであろうとして整理するのは適当ではないと思います。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 これは今まで天災融資法に基いて、たとえば三年とか四年融資が行われておって、それが返済できないということなんでしょう。だから天災融資法に関する限りは、その年限の間において返せない分は、やはり天災融資法の中だけでは解決がつかない、そういう場合には、これは天災融資法と内容は同じようなものです。名前は違い、償還年限なんかが幾分違うだけであって、その根本的な考え方は、天災融資法と何ら異なっていない。ですから天災融資を借りてやったけれども、いろいろな理由で返せないことが相当ある、この場合の跡始未はどういうことでやるかということになれば、やはり順序としては当然国の資金でこれを引き取るということにするのが当然だと思うのです。再び今までと同じように、系統資金に肩がわりをさせて、同じような系列の中において、国と都道府県が利子補給や損失補償をやるということになると、天災融資法の条件緩和をやったってちっとも変らない。わざわざこの法律にこの分だけ持ち込んでやるという意義はないと思いますが、いかがですか。
  60. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 天災法との差につきましては、天災法は、営農資金を、災害を受けたときの次の年の収穫期をねらいまして、短期の融通資金と申しますか、経営資材の購入資金を供給するものでございます。それの借りかえをするという場合がありますが、それは同種の災害が連続して起きましたような場合に措置を講ずるのが原則だと思います。一回の災害のために減収がありまして、その次の営農資金に差しつかえる資金を融通するものでございますから、短期に貸し付けて借りかえをするときも、風水害なら風水害、凍霜害なら凍霜害の連続災害のような場合に延期するのが建前だと思います。しかしこれは開拓者がそういう資金も借り入れて債務が重なっておるという実情をとらえまして、特に最近開拓者は、開拓立地の関係からいきましても災害による負債がふえておる、そういうことが営農振興をはばむ理由になる、荷が重くなっておる。それを緩和すれば本来の営農振興予定通りやれまして営農類型なり目標まで到達し得るものが、おくれておるから、これを軽くしまして、自分でも払えたり天災法だけでもよろしいというところまで援助しよう、こういうふうなものであります。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことじゃないのです。それならば、昨年の国会で開拓者資金融通法の一部改正をやったわけですが、あの改正のねらいの中には、たとえば二十八年とか二十九年の災害を受けて災害融資法の借り入れを行なって、それの返還が困難であるというような分につきましては、それを開拓者資金融通法の方に受け入れるというような改正までやっておるのでしょう。ですからそういうことが行われておる場合においては、何も今までと同じような中金の系統融資に依存して、天災法と全く同じような形でこの貸付を行わなければならぬという理由はないのですよ。ですから系統資金で一応の目的が達せられた、その残額、償還ができないような事情にあるものを、どういうよふにして有利にそれを処理してやるかという場合に当っては、当然これは国の責任において国の資金措置の中において解決してやるべきだと思うのです。考え方が非常に間違っていると思うのです。
  62. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 遺憾ながら間違っていることが芳賀委員のただいまの御発言の中に一つありまして、昨年問題になって天災に伴う天災法融資をしましたときに、開拓者につけました条件は、ただいまお話になりましたようではございません。しかし天災法によって借りた資金はございますから、簡単に申しますと開拓者の負担を天災法による資金の年々の償還においては半分にしよう、償還期を倍にしようということでございます。これが中金資金によっておるもので対策を講ずるのは適当でないのじゃないかという御意見がありますが、国の財政資金限度がございまするから、中金資金を活用しまして政府の利子補給と損失補償の援助をさらに本法でつけ加えることができますれば、預金部資金等を使いませんで、あるいは政府出資と預金部資金とをかみ合せて使うような、政府資金に依存しませんでやった方が、開拓者全体の積極的な営農振興をはかる資金であるところの開拓者資金、すなわち内容を申し上げますと—、申し上げる要もないかと思いますが、入植した場合の基本営農資金、それからさらに不振開拓農家に対する追加の営農資金、それから家畜を導入しまする中期資金、これも従来潤沢でなし、今後の見通しもそう楽ではありませんから、これは天災資金条件緩和に使うのを避けまして、積極的に営農振興させるための資金の方へ活用したいものでありますから、そこで天災法融資はそのままにして本法に基いて延期をする、年々の負担を半分にする、その方が賢明な策だと思います。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 それはまだそれ以上賢命な策というのはあるのですよ。たとえば開拓者資金融通法に三分五厘の二十カ年償還の道もあるのです。だから据え置く期間を相当置いて全く長期な形でなしくずしをするというようなことにして、しかも資金源は政府資金によるというようなことの方がむしろいいと思うのです。いろいろな資金措置の道を系列だけふやしてやるということでなくて、もう払えないというようなもに類するものは、やはり政府資金でこれを引き取るというようなことが最終的には一番妥当な策だと考えるのです。しかもこの法律によると、天災法と同じように国及び地方公共団体に利子の一部あるいは損失補償も背負わせるのでしょう。この開拓行政というものは何も地方公共団体の責任において失敗が生じたり、あるいは営農類型の欠陥が生じたということにはならぬのですよ。どういうわけでたとえばこの営農振興法に基く資金措置の場合に天災法と同じように地元に義務負担行為をさせる必要があるかという点に対しては、どういう見解を持っているのですか。
  64. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 第一のことでございますが、天災法資金は短期資金をもともと借りておるのでございますから、開拓者資金融通法という法律があって、それに乗りかわれば二十年をこえる償還期限で三分六厘五毛——今三分五厘とおっしゃいましたが、三分六厘五毛でございます。それで長く延ばしてやれるじゃないかというのは、それを使えばそういう道もあるということでございますが、本来の資金が長期に固定したり、長期に償還させるべきような、土地でありますとか基本的な農具でありますとか、そういった入植者が最初原則として必要な用意を持っておられぬような場合に、農家を創設していく最初の基本資金を供給して、返してもらうのだけれども、まあいわば最低の荷が軽くて、その上に立って営農が進められる、こういう資金の性質が違うと思うのであります。だから適用すれば長く年々償還は非常に少くなるじゃないか、十年がさらに二十年になるじゃないか、二分の一が四分の一になるじゃないか、こういう御議論であると思うのでありますが、整理をしてさらに営農を進めていく、おくれておる営農を進めていく上において、重荷になっておるのは短期資金でございますから、短期資金をその経済の実情に応じて長期的に十年にしますれば、二十年という資金に直す要はない。本来そうすべきものではない。そこまであまやかす必要はないと思う。またそうする措置は短期資金として借りたものに対して二十年間も延ばすということは、非常に開拓営農に悲観的であって、それくらいならやはり開拓者をしてやめさせるようなことが伴うのではないかと思うわけであります。そういう措置は適当でないと思います。だから開拓者資金融通法には政府資金政府出資とを極力増加すべきでありますが、方法があれば——他に方法があるということでなしに、資金をどれだけとって供給し得るかでありますから、私どもの現状におきましては、いわば国の今の現状におきましては、私どもの見るところ、さらに現状より増加しても、負債整理資金でなしに生産資金の増加の方に回すのが大体実情だろうと思っております。資金の性質と営農段階とむやみに長く延ばすことがいいことではないということと、生産資金を別途開拓者資金で活用したい。さらに加えますと天災法では五分五厘資金というのもございまして、開拓者資金は有利である。それはしいて遠慮することはないと思うのです。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 あり方だけの問題でないと思うのです。それならば何のために振興計画を立てて、営農振興をやるためにその一つ条件として借金の条件緩和をやるのでしょう。これは何も別途のことではないのです。これから営農を自立するための一番前面の障害になっておるというのが、今までの累増された負債、これがもう重荷になって動きがとれないのですよ。このおもしを取り除いてやらなければ、今後開拓者は自立ということは絶対不可能なんですよ。それではやはり生産資金でないという、そういうばかなことはないでしょう。現地の状態がどうなっておるかということは、あなたはわからないのですか。今たとえば開拓者融資保証で、短期の営農の基本資金を返す場合、これがなかなか返せない。その場合には天災融資法に基く資金とか、比較的中長期の、資金融通法に基くそういう資金等を借りて、毎年々々の短期債務というものは返済しておるわけです。だからその短期の資金はいかにも償還が順調にいっているように見えるけれども、この災害資金であるとか、中期以上の資金の返済というものは、借りかえ等の措置が行われて、いかにも処理されたように表面は見えるかもしれないけれども、実際には、たとえば災害資金にしても、昭和二十八年以来の開拓関係の災害資金が現実の問題としてどの程度償還されておるかということをあなたは知らないでしょう。ほとんど返っていないじゃないですか。そういう中においてただ単にこの災害資金だけを、若干の条件緩和をしてやれば、それであとは正常に生産面の資金が還流して、そうして開拓者の今後の自立の方向に進むことができるというようなことは、これは全く甘い考え方だと思うのです。今までの累増したこの負債をたな上げ——徹底的にいえばたな上げのような形をとって、これからは営農類型の改善等を基礎にしてやっていけば、災害等がない場合においては、何とか人間的な生活ができるだろうという希望を与えるためにこういう法律が出たのでしょう。そうじゃないですか。
  66. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 御趣旨がよくわかりませんが、開拓は、畜産等も含めての農業生産行為をしまして生活を営んでいただいて、過去に負債があれば、負債も払っていただく。政府資金で導入されたような負債は簡単に棒引きするものではないし、開拓者もそれを免除してもらうことが本意ではないと思う。さてそれで借りた負債が償還できるかどうかは、むしろ生産の方を振興させて、それから生み出される所得でもちまして払わなければなりませんので、それをその営農進度ににらみ合せまして、天災法資金は、二十年の償還期限資金としての借りかえなどをしないで、十年以内で償還し得る営農振興がはかられなければならぬ、またそうすべきなんです。そう思っておりますので、天災法による負債の処理は、年々の負担を緩和して、早く五年以内で生産所得の増加をはかることがいい。資金の性質もそうなんです。一つ開拓者資金にいろいろな使命を負わせまして、天災法にかわるべき資金の返済資金と、生産増強の方の資金家畜資金と、いろいろな性質を負わせるのはよろしくないと思います。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 局長は私の質問がわからぬというのは、あなたはあまり長々と答弁をし過ぎるから、こちらの質問の要旨がわからないのですよ。資金の系列が違う、使命が違うというようなことは一応表面はわかるけれども、それならあなたは自分の財布を幾つ持っておられる。どこからどういう借金をしてもやはり一軒の経済力の締めくくりというものは一本になっているのですよ。それが天災融資法であっても、開拓者資金融通法から来た借金であっても、個々の農家の負債がどういうふうになっているということは、固めて幾らになっているということにしかすぎないのです。だからさっき私が聞いたのは、天災融資法の場合にしても現実には償還できない実態になっているのです。だから災害が繰り返してあれば、その機会に古い分は借りかえをしていく。災害がなければ、だんだん行き詰まって何ともならぬようなことになってきて、こういう法律が必要になってきているわけです。特にはなはだしい例をいいますと、北海道のごときは、変な話ですが、すでに災害がなければもうやっていけないのです。正常な天候によって普通の収穫をとった場合において、果してそれで安定した開拓営農ができるかというと、それができないところまで来ているのです。災害があるから、災害を理由にしていろいろな資金を借り入れたり、延期措置を講ずることによって、今日開拓者組合経営であるとか、あるいは一般農業協同組合経営というものが、何とか切り抜いていくというのが実情なんです。あなたはそういうことがわからないのですよ。私がそういう一番重大問題になっている点を質問しても趣旨がわかりませんということを言っているけれども、実情というものはそこまで来ているのですよ。もうそれほど行き詰まっている。この内容を検討した場合においては、今までと同じような、天災融資法と何ら異ならないこの資金措置というものを新しく作っても、結果的には大きな期待をかけることはできないのではないかということを、繰り返して私はあなたにわかるように指摘して言っているわけです。ですから、こういうような実情まで到達した場合においては、これは国の政治力が強い場合においては、こういう返せない借金というものは国の責任で引き取ってやって、あとはもう経営改善等を完全にやって、間違いのないようにやってもらいたいという強力な指導をするなら、それは話はわかるけれども、何だかんだ理屈をつけて、これは性格や使命が違うんだから、政府資金に切りかえるわけにはいかぬとか、そういうことで根本的な解決というものは、これはやってみたって絶対できないのですよ。だからこの際抜本的に、天災融資法で借りた分はあなたが言うように天災融資法の範疇においての役割はその資金は果しているのだから、その返済不能の分は、むしろ政府資金の方でこれを引き取って、そうしてもっと楽な返済のできるような計画とか条件の中で払えるようにしてやるのが当然ではないか、それにしても開拓者資金融通法という法律が現存しているのだから、その法律の中にむしろ負債整理的なものを一つ加えて、そうして処理すれば必ずこれはできるんですよ現在農林漁業金融公庫法の中においても、自作農維持創設特別法に基いてやはり資金措置が新しく一昨年から講ぜられているわけです。これだってやはり全体の七五%ぐらいは、自作農創設でなくて維持のために、自作を維持することができないのでそれを維持するために、毎年巨額な長期資金を融通しているというような、そういう道までもあるじゃないですか。それをあなたは使命が違うとか系列が違うとかいって、こういう大して期待にも沿わないような法律を出してきたが、何もこれは固執する必要はない。この程度で私の質問の趣旨がわかりますか。
  68. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 芳賀委員の言われる主張に基いて、開拓者資金に乗りかえたりする道があるじゃないかということの御意見は、私は最初からよくわかっているのであります。また農家が一たん金を借りれば皆同じ負債じゃないかということにつきましては、その意味でそういう面もありましょう。しかしあわせてどういう金を借りた、また政府から見ると、どういう目的でどういう資金を貸したということもよく考えなくてはならないので、しからばどういう態度でこの開拓農家の負債に対処するかということになりますと、私どもは芳賀委員の説とは違いまして、開拓者天災法に基く借入金をこの法案で出しましたような条件にいたしますれば、払い得る営農振興される。またそういう営農振興してそれを払うようにしたい。できるであろうということと、したい、こういうことで、芳賀先生と意見が違うということであります。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、これはあなたがいくら強弁されても、これはやはり系統資金に依存した変形した天災融資法なんですよ。こういう系列の融資一つ生まれた、そうしてまた不幸にして天災がその地域に生じた場合においては天災融資法に基く資金を導入しなければならないでしょう。それがまた返せない場合においては、この資金措置を受けるということになって、この天災融資法とこの振興に基く融資関係というものはそういう一つの悪循環みたいなものが出てくる。これだけが開拓者の借金の全部であればいいけれども、今局長が言ったように、全体の四〇%以内でしょう。しかもこれは全国を平均してみた場合にはその程度であって、地域によっては非常に偏在しておると思うわけなんです。そのようなことでほんとうに営農振興させるという場合においては、残余の各種の資金政府関係資金もあるし、あるいは個人間の貸借による返済できない借金も相当あると思うのです。それらの資金というものは、この天災融資法だけがこういう形で条件緩和さえしてやれば、あとの残った全部の負債というものは、計画的に順調に返還できるという見通しが立っておるのですか。
  70. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 結論を簡単に申しますと、天災融資資金をこの法律のように年々の償還を半分にする。利率等は同様に、一番膨大な開拓者資金を特別会計から農家に貸しておりますものは、負債があってもそう悪い性質のものではない。そうしてそれは二十年の年賦償還ですからそう荷が重くはない。どうしても重いところに対しては、それによって償還猶予を講じます。しかも離脱者やその他がありまして、連帯、債務関係で荷が重いときには国の債権管理法を適用しまして猶予をしたり、免除をしてしまう。こげつきをとってしまうということであります。その三つの措置を講じますれば開拓者は成り立つ。今後既入植者は五年を目途にそれをやれば成り立つ。と同時に成り立たせる制度の方が国の施策としてはよろしい、こういうように思います。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員 開拓者資金融通法に基く分は、そういうことで条件緩和を逐次やってやる、あるいは最後には切り捨てをやるということで、それは一応わかります。それ以外の債務はどうするのですか。
  72. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 それ以外の債務は各種いろいろなものがありまして、厳密な意味ではどういう金利のどういう性質の借入金があるかは開拓者団体を通じましてもまだ明確には把握しにくいのであります。しかしほぼわかります。むしろ金利がないのが多いものもありますし、間々非常に高利なものもあります。これは債権者と債務者との間で、まず第一段には自主的に片づけてもらって、天災資金をこの法案によるような条件緩和をしたり、開拓者資金を必要な場合はただいま申し上げましたように、条件緩和または免除をいたしますと、その後債務開拓者の工夫とともに重荷にならないようになる、こう思っております。
  73. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう明確な政府の中、長期資金等の分だけの問題ではなくて、全体の開拓者の現存しておる負債の処理をどうしてやるかということが、あわせてこの振興法の中でうたわれていなければ、これは仏作って魂入れずということになるのです。なぜ天災融資法だけにとどめたかという点が非常に理解に苦しむわけであります。むしろその表面に現われていないいろいろな負債に対して、安心のできるような償還計画があわせて講ぜられるということでなければ意義をなさないと思います。その点に対しては全く触れていないのですから、こういうりっぱな題目を掲げた振興法の中へ必ずこれは一つ入れるべきなんです。それをどういう形であなたは処理するつもりか、その点を明らかにしてもらいたい。
  74. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 再三の御質問でありますが、開墾進度を含めた有畜化をはかりましたり、一部類型を変更しましたりして、はかっていただけると思います。またみそもくそもいろいろなものを、すでに負債があるからといって整理するのは、特に免除してしまうのはよくはないと思います。開拓者の実情は自作農として精進してりっぱな農家となろうとしておる人については、個人債務の整理を今直ちに負債整理しなくてもよいではないか、あわせまして個人債務条件がいろいろありまして、場合によりましては、債務の有無に関しましてもいろいろ問題が生じましょうから、法案を具して政府が一定の援助を行うことを明確にして整理するのが適当ではないか、こういうふうに思っております。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 安田さんは去年の臨時国会において、この開拓者の負債処理に対しては非常によい発言をしているのです。ところが今言ったようなこととまるで違うりっぱな発言をしているのですが、それはもうあなたは忘れたかもしれないけれども、開拓者の負債に関して、あなたはいつも長くしゃべっているから全部読むわけにはいかぬが、こういうことをあなたは言っておるわけです。「負債整理を要するようなことは、整理といいましても、条件緩和と言う方がよいかもしれませんが、今後は個人借りあるいは親から借りても兄弟から借りても適当な営農資金生活資金でない資金を借りておるもの、過去の負債の償還金及び金利が過大になり過ぎているものをねらいまして、今般の恒久対策以外に、さらに引き続きまして適当な金利の資金に切りかえまして、その利子補給を行うべきであると考えているのであります。」こういうことをあなたは去年の臨時国会で農地局長として明らかに言っているのですよ。この意味するものは、単に天災融資法だけを条件緩和対象にしてやるということではなくて、やはり一番重圧になっておる、明確さを欠いた各種の系列以外の開拓者の負債に対しても、やはりそれは一つの系列の中へそれを入れて、そうして低金利で長期の返済のできるような、そういう融資方針に切りかえなければならぬ、そういうことを実現させなければならぬということをあなたは農地局長として前国会で言っておられるので、われわれはそれを期待しておったわけです。たまたまその当時もこの開拓者営農振興法が立案の過程にあったときです。今度は出てくると、案に相違して天災融資法だけを対象とするということを言っておられる、またそれ以外の分に対しては、開拓者を甘やかせるからそういうあまり甘やかせるようなやり方はとるべきでないように言っておるけれども、これは非常に思想が混迷しておるというか、あなたは今度の考え方の方が信念的に正しいのか、前国会に言われたことの方が、ほんとうに開拓者の負債というものを十分に認識して措置を講じなければならぬという考え方の上に立つでいるのか。その点を明らかにしてもらいたい。
  76. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 今回は法律案で明文をもって施策を講ずる、立案に当りましての案を具したのでありまして、先般は今回の案を考える過程において考えておったことを申し上げたのです。そういう考えをもって研究して成案を得たいという意味でございまして、それをそのまま農地局長政府の案として法律案を出すということを申し上げたつもりはなしのであります。  なお個人債務等において必要であることが明確になって、それが悪用されないと申しますか、悪用というのは言葉が悪いのでありまするが、一定の施策を講ずる段階で講じ得るという場合には、そのことを考慮するという考えは、一般的に考える場合には当然あります。私は今でもそういう場合にはそういう措置を講ずべきだという考えを持っておりますが、五年計画をもちまして不振開拓者の—開拓地区の開拓者中心にしまして、営農進度がおしなべて六九%という七割の人に対しまして、一般に不振開拓者と今まで言いましたものを一千地区にわたって経営診断をしてやって参りたいと思っております場合には、目下のところは必要ではない、むしろ弊害があるかもしれない、こう思っておるわけであります。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 ではあなたのほんとうの考え方というものは、どういう機会にどういう方法で具体的にやるつもりですか。この法律じゃうまくないとすれば、この次にまた何かの法律を出すのですか。開拓者資金融通法はあれは生産面だけの資金だから、負債整理的なものは筋が通らないのだということになると、何かまた開拓者負債整理法案でもお出しになる考えですか。
  78. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そういう必要がある段階となりましたならば、この法律だけでは足りないかと思いますが、ここ五カ年はそういう特別立法をしない方がいいのじゃないか、それは開拓者に希望を持たせて、積極的に営農振興していい農家になってもらって、生産基盤も営農も固めて、現在の負債整理も条件緩和をはかっていけばいけるのであろう、それがまた開拓政策上も開拓者に対しても最もいいところだ、こ思っております。
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 局長は開拓者に希望を持たすと言うけれども、あなたはどういうふうに考えるのですか。借金は必ず返さなければならぬということをのみ込ますことが希望を持たすことになるのか、できるだけ条件緩和して、今後開拓者としてこれで営農が成り立つという基礎条件を与えることが希望を持たすことになるのか、どっちなんです。
  80. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 既開拓者については、現在の種類別の負債については、その種類別の負債についてただいままでに申し上げましたような条件さえ緩和をしますれば、営農が成り立って所期の目的の営農状態になる、そして事実的な自作農になるという認識が一そうはっきりしまして、その限りの措置規定によって講ぜられる、こういうことが最も穏健で妥当な希望になると思います。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたの考えでいくと、借金だけは返せるような形がとれるかもしれないが、今後の再生産を持続することはできないのですよ。一方では天災融資法で借りている、今度の振興法の金も借りている、短期資金もなかなか払えぬところまで借りているし、中、長期資金も借りて満度になっている。今まで借りたものをどうしたら払えるかということにあなたは非常に研究工夫をこらしているけれども、これから後の拡大再生産とか再生産をやっていく場合の資金措置というものは、こういう考え方では何も発展ができないのですよ。それをどこで講じていくかということも考えてやらなければいかないのじゃないですか。
  82. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 繰り返しての御質問でありますが、今までに御説明を申し上げました通りでございます。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかく開拓者の大部分の今の収益の状態からは、借金を返すということはなかなか不可能なんです。単に開拓行政の中だけでこれの根本的な解決をすることはできないと思うのです。たとえば東北地帯の営農の形を見ても、大豆等を中心にして栽培している開拓農家が非常に多いと思うのですよ。昨年やっとその国内大豆の価格を安定させるために農産物価格安定法にそれを入れた。一方においては今の政府の考え方としては、輸入大豆はAA制の方式をことにして、また国内産の大豆価格を圧迫するということが出ているのですが、物だけとれるようになれば、それで借金を返せるということには絶対にならないですよ。そういうことを全然考えずに、条件を少し緩和してやれば借金だけは返せる開拓者になるだろうということではなくて、借金を返しながらさらに再生産がやれるような、そういう強力な積極的な計画指導というものはこの法案の中にはあまり現われていない。それを徹底的にやる場合には、やはりいろいろな系統から流れてくるところの償還不能の資金措置相当固めて、どういうふうにして条件緩和をしてやるとか、あるいは系統以外の個人的な債務に対する条件緩和等をどうしてやるかというようなことを、やはり振興組合を通じて明確にする必要があると思うのですが、そういう点に対する配慮が十分行われておらないというふうにわれわれは考えるわけです。それに間違いないですね。
  84. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 芳賀先生が芳賀先生の考え方と方法によってやろうと思われることは私は了解できますが、農産物の価格政策は価格政策、大豆等で例を言えば、農産物価格安定法の今後の運用よろしきを得て、開拓地の方も考慮して、他の農家から出てくる大豆とか農産物の価格政策を適正にし、また肥料その他の資材につきましてもその対策をもって行うべきことでありまして、開拓者に固有に、現在の状況所期営農進捗度がおくれているのを進めて、場合によると従来予定しておった開拓者固有の施策、たとえば補助金とかあるいは進行検査の時期とか、そういうものを打ち切られると、本来の趣旨に反しますから、固有の開拓者に対する施策というようなことだけをここでまとめる方法によりたいというのでこれは方法論の差でございまして御了承願いたいと思います。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 次に具体的な問題として、本法による資金措置が行われた場合の利子と損失補償の点ですが、先ほどもちょっと御質問をしたのですが、その地域の都道府県等に対して利子並びに損失補償をさせなければならぬという、その考え方をもう少し具体的に説明願います。
  86. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 天災法に基きまして経営資金を供給しているというような場合と同様でございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 何も言わないで同様だと言ったってわからぬですよ。天災融資法は融資法で提案者は説明しているのですよ。あなたはこの法律案を作ったのですから、同様だと言ったってどの点が同様だか、その点をもう少し明らかにしてもらいたい。
  88. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農林省としてやっておりまして、政府全体として提案しておりますから、経済局長が担当局長として御説明したり、御質問にお答えしましたりしていることと同じでございます。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 経済局長はまだ何も言っていないのですよ。同様だというのならあなたに聞けば天災融資法の方もわかるということになるのですが、まだ経済局長から聞いておらぬから、農林省を代表して一つ説明願いたい。なぜこの法律に基いて地方公共団体に金利並びに損失補償させなければならぬか。
  90. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓者入植されまして営農を始められるような段階にありました場合には、地方公共団体のやるべき事務としても適当なものがございまして、国が補助する事務相当部分を負担しましたり、あるいは本来地方事務として助成をする建前を、都道府県に向って国が補助をする、こういうように適当なる事項があると思います。地方事務の性質があるからだと思います。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 これは地方事務ではないでしょう。天災融資法に基く資金の返済ができない場合には、今まではやはり天災融資法に基いて損失補償等が行われるわけです。それを今度はこの法律に引き取った場合には、これはもう天災法と全然切り離れてしまったわけでしょう。しかも今日まで開拓行政というものは国の責任で行なってきたのです。ですからその劣悪な条件の中に開拓者入植さして、そして政府指導が間違っておってうまくいかなかった、借金も返せなくなった、そういう場合に、こういう法律がやっとできたのにもかかわらず、その地元の公共団体にこの法律の利子まで背負わすというような、そういう義務負担行為をしているというような根拠というものはないと思うのです。これはやはり国の責任において利子補給とか損失補償をやるのが当然だと思うのです。
  92. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 一つ内容の問題、一つは国の法律でどう規定するかという形式及び内容の問題になりまして、もともと天災法資金は、都道府県が利子補給をどうするかということに対しまして国が補助をする、こういう建前でありますから、これを踏襲しました。成案ができれば、この国の法律によって、そういう内容に基いて国の事務になる、こういうことだと思うのです。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 それは何も理論的な説明にならぬのです。あなたは筋を通したような答弁をするのですけれども、もっと何か重大な理由があるのじゃないですか。どういうわけで地方公共団体がこの法律に基いて利子負担をしなければならぬかということなんです。政府の不手ぎわな開拓行政の跡始末をする法律を作った場合に、その地元の公共体がこの法律の命に従って利子補給とか損失補償をしなければならぬという明確な理由がないのですよ。何のために政府責任でこれらのことをやらないのか。
  94. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 これは法律がない場合をまず第一に仮定しますと、開拓者営農段階、あるいは経営上の指導、あるいは経済上の保護につきまして、地方公共団体が助成をするという仕事は地方の固有の事務としてやって差しつかえないし、あると思います。それを受け取りまして、天災法においても本法においても、そのほかにさらに国が義務を負うて都道府県を補助するとみずから規制するのもけっこうだと思います。みずから規制した法律ができますと、国の義務に加えましてそれが国の法律に基く国の事務になると思います。国の事務の中に、本来固有の地方事務として行うことが、コントロールと申しますか法律に基く規定事項の中に入るのは差しつかえないと思います。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 これは何も地方公共団体として行う本来の義務じゃないですよ。政府がこういうものを作って、法文の中に地方公共団体が負担しなければならぬということをうたったから初めて義務負担行為らしいものが生ずるのでしょう。今まではこういう義務というものは何もないじゃないですか。何のためにこういう悪例を作るような、しかも国の開拓行政が不手ぎわだったということをあなたは冒頭から認められるのですからね。その跡始末をしなければならぬために法律ができたのでしょう、その跡始末の巻き添えを地方公共団体が食わなければならぬということはどこにも根拠がないじゃないですか。国の不手ぎわで開拓行政がうまくいかなかった。それで、今日まで開拓者にも地方公共団体にも国はいろいろな意味においてそういう迷惑をかけておるのです。それを是正するための法案を出す場合に、最後まで地方公共団体にこういうような理由のわからぬ負担をさせぬければならぬという根拠は、明確でないですよ。これは間違った考え方から出発したのだろうと思うのです。素直に是正されるならばいいかと思いますが、何のために地方公共団体にこの利子負担をさせなければならぬかということは、もう少し明確にしなければいかぬじゃないですか。これは、こうやった方がいいということを自治庁とも相談したのですか、いかがですか。
  96. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 御質問の向きは明確になることが必要だと思いますが、県内の県民にとりまして受益もあるというような事業につきましては、国が手を伸ばさない場合は、本来は地方自治法に基きますと、地方の事務であるというふうにできておると思います。その中に、地方の事務でないという極端な場合をいいますと、外国と条約を結ぶとかその他のことがありましょうが、それを除いてはすべて地方の事務である、こういう建前を今の日本の憲法と法律はとっておると思います。しかし、その際でも、国の法律を整えまして、その法律によって行おうとする場合は、その事務法律ができた場合に国の事務になると思います。そこで、国の法律の作り方になりますが、国の施策として開拓行政を行っておるものが多いのでございますけれども、一般受益のため、と、必ずしもだれが受益するかを明確にし得ないような場合は、十割補助なり国が経費負担をしておる。必ずしもそういわなくてもいいというものは補助事業として行なっておるものがあると思いますが、この必要な経営資金を入手する場合に、地方公共団体が負担するという地方事務と認められるものが本来ある場合に、その行為を地方公共団体がした場合に、国はそれを県に対して援助をする、そういう法律を国の法律として国の事務とすることはできると思います。そういうことに基いておると思います。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうのは安田さん、理由にならぬですよ。何のために地方公共団体にこういう法律を作って義務負担行為をさすのかということを私は聞いておるわけなんです。この天災法の返せない借金を振興法に引き取ってやるということは、地方公共団体にどういう利益をもたらすのです。
  98. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 受益と申しましたのは、開拓者の方を申し上げたのでありますが、県は受益する地方公共団体であります。この法律の以前に実体として地方自治法もあり、地方公共団体の性質もありまして、県に対してこの法律で強制するのではありませんで、県が金融機関との契約により、県の意思によって開拓営農振興組合に対して資金を貸し付けるというようなときに、利子補給、損失補償を行なった場合には、政府が都道府県に対して補助をしようということをやりたい、そういう国の法律を作りたい、こういうことで御理解願えませんか。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたの言う言葉はわかりますが、この本旨というものがわからないのです。地方公共団体が何のために義務負担行為をしなければならぬかということなんです。安田さん、天災融資法とは違うのですよ。天災融資法というものは、不可抗力の災害によって期待した収入が全く上らぬという場合に、その天災融資法に基いて営農資金を貸し出す、それに対しては国と都道府県が利子補給等の責に任ずるけれども、これは地方財政法等に基いても災害復旧とかそれに伴う経費等に対しては、あるいは特別交付税の支給の道も開けておる。こういう負債整理みたいな性格の法律を出した場合に、地方公共団体がこういうような責任を負わなければならぬという根拠は何も現在まではないのです。こういう全くの悪法を作って、そういう面に対しては地方公共団体の負担を今まで以上に重加するということは、これはよほど慎重に考えなければならぬ点だと思うし、先ほどもこういう点に対しては自治庁等との相談はどうなったかということを聞いても、まだあなたは答弁しておらぬ。
  100. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 まだ答弁していませんことは、これからお答えしようと思っておったのですが、地方自治庁とは相談いたしまして、これで法律にもかない、適当であろうということであります。地方公共団体は、その地方団体の区域である道とか県とかいう中の道民、県民の福利厚生をはかり、その産業に関する事務は、広く本来は地方の事務である、それは地方自治法の示すところである。ところが国で法律を制定した場合は、その限りにおいて国の事務として出てくる、そういうふうになっておるのが日本の地方自治、それから中央政府というものの見方であることは憲法からきておると思います。本来の地方事務の中でありましても、国の事務となり得ることを、いかなる負担を両者でするかということは、きめようで法律をもってすればできることであります。しかし本来は地方の県民の福利をはかりまして、産業振興をする、負債整理といえども、開拓者営農振興法の中に入れておるものは、ひとしく民生とか、産業政策だとか、そういうことになります。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたからそういう法律上の講義を聞くために貴重な委員会の時間を費しておるのじゃないですよ。開拓者営農振興法を審議するために質問しているわけです。政府の不手ぎわによって開拓行政がうまくいかないから、その跡始末をするためにこの法律をお出しになったのでしょう。その場合、何のために地方公共団体が政府と同列の立場に立って利子補給とか損失補償までしなければならぬかということなんです。その点だけです。
  102. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 中央政府である国の不手ぎわばかりで開拓の現状がこうだというところから出発しておりませんものですから、芳賀委員と私どもとが違った見解になるのじゃなかろうかと思います。自然災害の点でやむを得なかった点がありましたり、開拓者の中には努力が足りない場合もありまして、努力を十分にして下さるならばいいのですが、現に国の助成によりまして、県が開拓入植から営農生活まで指導して助成しておりますものの不手ぎわもあったと思います。国がやるべきことをやらなかった点もありますので、本来県民の民生安定、産業振興のための施策等、都道府県に講じてもらうことになっておりますものを国としても援助しよう、こういう建前であります。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員 全国の開拓者の七〇%以上がこの対象になるというのでしょう。一割や二割がそうだという場合には、国以外の不手ぎわとも言えるけれども、大部分がうまくいっておらぬというのは、やはり今日までの政府開拓行政の大きな不手ぎわですよ。だから何も地方公共団体に責任を転嫁する必要はないじゃないですか。こういうことをやると、開拓者を受け入れた地域の地方公共団体が、今後開拓行政に協力するという意欲を非常に減殺すると思うんです。だからもっと責任を負うのなら負うということを明確にする必要があるのですよ。大体今までの政府の農政に対する方向を見ると、補助金を整理して融資に切りかえるという政策が最近とられているでしょう。それは零細な補助金というものは末端に対して十分な効果を与えないような点が非常に多いからして、それを合理化するためにむしろ融資政策に切りかえて、そのかわり融資については低利長期の有利な条件のもとに農業政策を金融面で進めていく。ですから低利長期の金融措置を講ずるということは、その条件を作ること自体が、やはり国の責任において利子補給とか損失補償をやるとか、あるいは国の資金をそこへ投入するということをやらなければ、補助金をやめて融資にするということにならぬじゃないですか。補助金は毎年々々ぶった切って、融資の場合には地方公共団体にもその半分の責任を持たせる。こういうなまぬるいけちな考えを持っておるからして、わが国の農政というものは後退していくのでしょう。それはあなたがいつも言っていることじゃないですか。だからこの際そういう点を明らかにして、これはやはり国の責任において条件緩和をやるのだということを法律の中に明確にうたうべきだと思う。それくらいのことがわからなければしようがないじゃないですか。
  104. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 わかる、わからぬの問題じゃなしに、事態を認定して、そういう見解でどういう方法によろうかという問題だと思うのです。もう一つの問題として、責任があるから法案なり予算措置なり政府融資なりすべきでないか、過去の実績に対して責任があるということは、責任が全くないとは言いません。相当重要に考えまして、反省しまして、さらに将来に向ってどうしたらいいかという責任を感ずるから本案を提案申し上げておるのでありまして、それとまた別に、法案の有無を問わず、融資関係のことでありますが、融資に対する補助事業としまして、都道府県が開拓者の民生安定をはかり産業を振興する、こういうことは本来都道府県の行うべき事務にも属しておりますので、その両者をかみ合せて、国も都道府県を援助する。その場合に都道府県は開拓者融資について利子補給や損失補償をする補助事業を行う。こういうことは従来からも行われ、他に例もあり、今回だけが出した悪例ではございませんので、私どもとしてはこれでそう悪いことはないと思うので、御了承願いたいのであります。
  105. 芳賀貢

    芳賀委員 これは了承できないですよ。こういう法律を作ると、単にこれは開拓関係だけにこういう金融措置が新たに講じられて、これに対して地方公共団体は利子補給をするのが当りまえだということになれば、これはひとり開拓者関係だけじゃないと思うんです。既存農家にしてもあるいは中小の企業者にしても、とにかく自己の善意な努力をしても負債が償還できないいうような場合には、当然国の配慮によっていろいろな法律措置を講じてやるという場合に、すべて地方公共団体がそれらの金融措置に対して、利子補給とか損失補償をするのが当りまえだというような思想をここで確立するようなことになると、これは実にゆゆしい問題だと思うのです。あなたは軽い気持で農地局長だけの考えから、このぐらいのことをやるのは当然だと言っても、波及するところは実に重大だと思うのですが、そういうことは気がつかぬですか。
  106. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そう思わぬか思わぬかと言われても、そういうことでもよろしいという法律解釈、そういうお考えもあるが、政府案として提案をいたしました法律案の考え方もありまして、私どもはこの法案内容のように考えますと申し上げるよりほかに方法はないと思います。
  107. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことであれば農地局長責任の限界というものはおのずから明らかなんです。あとは当面の責任者の農林大臣に出席してもらわなければならぬと思う。今までの答弁は農林省としての主体的な立場に立った答弁としてはなっておらぬと思う。大蔵省あたりがあなたの口をかりてそういう答弁をするならこれは別です。そういうような考え方に立って今後の農政が展開されるとすれば、これは実に憂慮すべき事態になると思うのです。そういう主体性のない、責任を持って農民を保護することのできないような農林省なら、これはむしろ大蔵省の農林水産局くらいにしておいた方がいいと思う。  委員長に申し上げますが、この程度以外は農林大臣あるいはどうしても自治庁長官の出席を願わなければなりませんから、午後の会議において農林大臣並びに自治庁長官の出席を願って審議を進めたいと思います。
  108. 小枝一雄

    小枝委員長 出席を要求しておきます。  それでは午前中の質疑はこの程度にとどめまして、暫時休憩いたします。午後は二時から再開いたします。     午後一時十三分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  109. 小枝一雄

    小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  開拓融資保証法の一部を改正する法律案及び開拓営農振興臨時措置法案議題といたし、質疑を続けます。  八田貞義君。
  110. 八田貞義

    ○八田委員 法案内容の審議に入る前に、いろいろな開墾地の実態の問題について二、三質問いたしたいと思います。  今までの質問によって明らかになりましたように、全国の開拓地のほとんどが不作でございまして、収穫皆無、長年の借金のためにあえいでいる者が多いということが明らかにされております。北海道の旭川地方の開拓地の小学校では、全校六十二人のうち約半数が毎日弁当なしで通学をしているというようなことがいわれております。また山梨県東山梨郡三富村の大平開拓地では、いまだ一戸当り十万円の借金を抱えている。地域的に見ると、こういうように非常な不振状態にあるのであります。それで開拓地入植した戸数を、三十一年度はわかっておらぬと思いますが、三十年度において北海道と内地に分けてお知らせ願いたいと思います。
  111. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 三十一年二月一日現在で、内地は十二万七千百戸、北海道は二万七千八百戸。
  112. 八田貞義

    ○八田委員 そのうち農業所得で年間の家計をやっていける戸数をお知らせ願います。
  113. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農業所得で年間の家計費をまかなえる戸数は、かりに七〇%と押えますと、その押え方も問題でありましょうが、七〇%以上まかなえるものは全国で四万七千三百九十五という調査がございまして、七〇%以下がその他でございます。
  114. 八田貞義

    ○八田委員 パーセントでお示し願ったのですが、こまかい数字はお持ちでございますね。それはまたお知らせ願いたいと思います。そうしますと、今のパーセントでお示しを願ったのは北海道と内地と分けられておったのですが、内地の方は東北を中心としての数字でございますか。
  115. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 ただいまの四万七千三百九十五のうち、北海道が六千三百四十二戸で、内地が四万一千五十三戸であります。
  116. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、北海道は大体二十分の一くらいでございますか。
  117. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 二割をちょっとこえる数字でございます。
  118. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、内地の方の東北はどのくらいでございますか。
  119. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 内地全体では三割余でございますが、東北も大体同じ率と考えております。
  120. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、概算しまして二割くらいが農業所得をもって生活していける、こういうふうなことでございますか。
  121. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 これは狭い意味農業所得を申し上げましたので、開拓地は御承知のように薪炭その他兼業収入がございまして、一部には労賃収入を得ておる。その開拓農家の所得でまかなっておるものは、かねて申し上げましたように、三割ぐらいはあるものと思っております。東北のうち、青森県なんかでは、立地条件が悪くて、入植農家四千戸と思いますが、四千戸のうち、ある期間出かせぎに行ったり、生活保護を受けておる方が二百三十八戸ばかりございます。そういう特殊の地帯もありますが、これらの申し上げましたことで、経済状況を御判断願いたいと存じます。
  122. 八田貞義

    ○八田委員 大体の数字でお示し願ったように、入植者の家計状況と申しますか、経済状況は非常に悪い。大部分は収支が償わないで赤字経営に悩んでおる、こういうふうな数字になるわけでございます。そこで、開拓地に入る場合に、農機具や家畜購入とか共同施設などの営農資金として、現在どれくらいお与えになっておるのですか。金額をお知らせ願いたい。
  123. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 入植されるときは、当初まず基本資金といたしまして全国平均十七万八千円を、三カ年にわたって、開拓者資金として、三分六厘五毛の低利のものを供給します。上北などは二十万円、根釧などは二十二万円が限度でございます。
  124. 八田貞義

    ○八田委員 今の平均の入植時の営農資金が十七万八千、詳しくは十七万七千七百九十二円ですか、この数字を出された基本をお示し願いたい。
  125. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 今では常識になっております営農類型に応じまして、その生産手段を与えるようになっておるわけでございますが、係の方から御説明させるごとにいたします。
  126. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 ただいまの十七万七千八百円の基礎でございますが、これにつきましてはただいま局長から話がございましたように、営農類型というものがございまして、これによりまして五カ年間に一応の営農を完成しようという目標を立てまして、それに従いまして家畜とか農機具とかいろいろの所要資金がどのくらい要るかということを計算いたしまして、その所要資金額の一部を融資するということで、地帯別に分けまして出しておるわけでございますが、それを平均いたしましたのが全国、平均で十七万七千八百円、こういうことになっております。
  127. 八田貞義

    ○八田委員 この十七万七千八百円ですか、この数は第一次類型を基本としての数字でございますか。たとえば第一次の営農類型は、簡単に言うならば三年たてば黒字になるというような計算からやられたものと私は了解しておるのです。その十七万七千八百円という数字は、第二次の昭和二十七年に作られた営農類型から計算された基本数字ではないと私は了解しておるのですが、これは第一次営農類型から計算された数字でございますか。
  128. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 二十二年に立案して額をきめましたのを、二十六年に変更しましたので、そのときの基礎によりましてその差異を合せまして、営農資金のほかに中期資金を追加することにいたしまして、さらにその開墾補助金とかそういうものは別にやるということになっております。
  129. 八田貞義

    ○八田委員 私はそれがあなたの答弁でははっきりしないのですが、第一次の営農類型の六万四千円に対して物価指数の変動値を乗じた—その物価指数の変動値は大体二・七七八、これをかけて、現在の十七万七千八百円というものができた、こういうように了解しておるのですが、その点いかがですか。
  130. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その通りでございます。
  131. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、第二次営農類型改訂によりますと、この入植営農資金というのは四十六万二千九百円となっておりますが、これは半分に満たないわけなんですね。こういうようなことで、実際に入植資金として十分に活用されておるか。活用できないのです。実際は二十三年に立てられた営農類型というのは、五年たてば黒字になるというような考えからやられたものと私は了解しておるのですが、ところがその第二次改訂によるところの営農資金としては四十六万二千九百円、半分です。この点いかがですか。
  132. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 当初の六万数千円にさっき申されております倍率をかけると、資金は十七万八千円になりますので、その農家の営農資金総体を類型が形成される五年後でありますと、四十六万なんぼになると考えます。その間に農協や信用保証協会等の資金が加わって、合計でそのぐらいいく、こういうことであります。
  133. 八田貞義

    ○八田委員 先ほど申しました第二次改訂によるところの入植営農資金の半額であるということはお認めになりますね。
  134. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その半額を最初の三年に政府資金そのものとして供給するので、その他は別の資金で供給する、こういうことでございます。
  135. 八田貞義

    ○八田委員 実際の開墾費はどういうふうに見積っておられますか、実際に開墾するために使う費用でございます。今こういうふうな実際の入植営農資金というものが第二次改訂の半額に足りない営農資金を与えた、ところが北海道で開墾する場合あるいは東北地方で開墾する場合に要する実際の経費はどのくらいとお考えになっておりますか、調査の成績をお示し願いたい。
  136. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 この類型を提供しまするのは手開墾でございまして、入植後開墾に関しましては自家労力でやっていただくことにしまして、予定配分面積のうちの耕作用の面積でございますが、その八割について四割強の補助金をさらに加えてやっております。
  137. 八田貞義

    ○八田委員 そのパーセンテージでなくて、実際の数字をあげてお示し願いたいと思うのです。
  138. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開墾作業費は八〇%までにつきまして補助率四割五分をもちまして十三万円であります。
  139. 八田貞義

    ○八田委員 十三万円という数字はどこから出たのですか。
  140. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 内地の二町五反を開墾する事業費総体としまして二十八万九千四百八十七円を基礎にいたしまして、その面積の八割に補助率の四割五分をかけまして十三万二百六十九円、こういう想定でございます。
  141. 八田貞義

    ○八田委員 私は実際の開墾費がどういうふうになるかということを言っているのでございまして、たとえば入植営農資金として十七万七千八百円を与えておる。実際は北海道と内地に分けてみた場合、金額にしてみると—数字がおわかりにならないとすればこちらの方で申し上げたいのですが、北海道では大体七十四万六千円ばかりかかる。内地では二十八万二千円から五十九万六千円ほどかかる。こういう数字になってくるわけでございます。この数字から申しますると、必要経費というよりもはるかに少い金しか与えていない。あとはみな自分で工面してやらなければならぬというような状態になっているわけですが、そこで今の入植時の営農資金の立て方が実際の数字から見ましてもはなはだ問題点がございます。私をして言わしむればまことに非科学的な基礎の上に立っての施策である、こういうふうに言わざるを得ないのであります。その結果は経営資金の過小算定となり、あるいは穀菽一辺倒というものが開墾地の営農方針となり、そうして一般の不振状態が招かれる、こういう結果になってくると思うのであります。そこでさらにもう一つ申し上げたいのは、家畜導入のやり方を一体どういうふうにしてやられておったか。家畜導入のやり方について二つお知らせ願いたい。
  142. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 関係課長をして説明させることにお許しを得たいと思います。
  143. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 従来の家畜の導入にきましては、先ほど局長から答弁がございましたように、基本営農資金が十七万七千八百円というものがございますが、これの中には実は家畜の購入資金まで含まれておる計算になっておったわけでございます。ところがそれでは到底家畜の購入まではまかない切れない、こういう事情がはっきりいたしましたので、二十七年度から中期資金といたしまして開拓者資金融通特別会計から役牛、役馬あるいは乳牛の購入資金というものがつきまして、それぞれ無畜農家につきましては一頭入れるような措置をとって、逐次有畜農家を作るということで取り進めておるわけでございます。
  144. 八田貞義

    ○八田委員 実際にやられている状況—方針は私もわかっておるのです、実際今までやられてきた方法なのです。私が調べたところをちょっと申し上げます。間違いがあれば御訂正願いたいと思いますが、七町歩を開墾する北海道の入植者に対しましては耕馬が初年度は二戸に一頭、次年度に一戸に一頭、内地の場合は四町歩の場合で初年度は四戸に一頭、六年後に初めて一戸に一頭の割合で手に入る、こういうふうに実際はなっておるのですが、これに間違いありませんか。
  145. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 間違いありません。
  146. 八田貞義

    ○八田委員 こういうような家畜導入のやり方でもって、既墾地と違って労働力がずっと多くかかる開拓地で、このような開拓費では土質の改良は非常にむずかしいと私は考えるのですが、この点についてどうお考えになりますか。
  147. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農地の経営と土質その他立地条件並びに家畜の頭数は、二十七年にそのくらいで営農類型として予期した諸収入が得られるということで今日まで続いておりますが、さらに最近の天候の状況とか気象の状況とか営農進度の観点からしましても、従来の手開墾の方式ではそれに家畜を役牛または乳牛として導入する方針では改訂を遠からず要するものとして研究をいたしております。
  148. 八田貞義

    ○八田委員 今までの開墾の実態調査の数字から見ますと、いろいろと経営不振の面が考えられて参りますが、今までの開拓政策の中心をなすものは米麦であります。いろいろな成績を見ましても、その経済効果というものは米麦の生産量によって査定されているようであります。そうして建設事業の人員も米換でもって、人員がきめられている。これが果して今後の開拓方針として正しいかどうかということを考えてみる必要があると思う。特に開墾地の大部分は畑作地帯であります。畑作の開拓地では五〇%以上の畜産収入がなければ生計が立っていかないのだ、こういうことがいわれている。そこで一体こういった畑作地帯を大部分開墾地として預かっている開拓入植者に対して、畜産の収入を五〇%以上に上げていくということは、今後とも非常に大切な問題と思うのであります。そこでこの数字の基本となるものとして、東北では一体畜産収入が農業収入に占める割合が何%、関東では何%でもって農業所得をまかなえるか。内地と北海道とを比べてみた場合に、一体畜産収入というものが内地では何%か、今までの実績をお知らせ願いたい。
  149. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 大体現行類型の一町歩から始まって五町歩の北海道に至る五類型の作付面積と、役畜をどう見るか、乳牛と豚をどう見るか、目標農業粗収入をどのくらいに見ているか、現状はまたどうであるかということが一覧してわかるように印刷してお答え申し上げます。またそれに応じまして畜産収入をどう見るか、現在どうであるかも同様に文書をもってお答え申し上げます。
  150. 八田貞義

    ○八田委員 正確な数字はあとで出していただくことにいたしまして、そこで第一次、第二次と営農類型改訂されて参ったのでありますが、この第一次、第二次の営農類型を拝見いたしましても、完成時の経営安定度については非常に不明確でございます。たとえば第一次営農類型では三年たてばすぐに黒字になる。こういうことで計画が立てられてきているようでございます。第二次では五年たてば黒字になる。しかしそういうようなことは机上プランで、そこででき上りましたものは完成時の経営安定度ということについては非常に不明確になっているわけです。こういったことにつきまして、今後実際に即しない営農類型改訂される、第三次改訂をお考えになっているかどうか、これをお知らせ願いたい。
  151. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 詳しいことは、今申し上げましたように文書でお答えいたしますから、できる限り簡潔に内容を申し上げますと、現行類型はその内容をあまりはっきりしてないということでございますが、そういう面も残っているかと思いますが、こういうことで決定しております。一町二反歩の耕地面積の型のところでは、作付は三町三反歩、これは作付率の関係でございますが、役牛は三分の一、三戸に一頭、豚一頭、鶏を入れる。そうして畜産収入を入れた農業粗収入が二十二万七千六百円。二町歩、二町五反歩、三町歩、四町歩、六町歩、七町歩、八町歩、十町歩と、東北を経て北海道の方へ行くに従って、経営規模がそういうふうに拡大しますが、役牛その地中家畜、鶏等を省略いたしまして粗収入で申しますと、二十四万五千円、二十六万四百三十円、三十万五千七百円、三十二万九千九百円、八町歩で四十万円、十町歩で五十万円、こういうことで目標を出しているのでありまして、これはどういうところに基礎があるかと申しますと、その付近の既存の農家の中堅層で現にやっておらる姿、それを基礎に描いたわけでございます。
  152. 八田貞義

    ○八田委員 この法律で、「営農基礎が不安定な開拓者が協同して自主的にその営農の改善を図ろう」こういうことがこの法の第一条に書いてございますが、この営農基礎が不安定ということの判定基準になるようなものをお示し願いたい。
  153. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 営農基礎の不安定な開拓者というのは、主として農業生産の基礎条件が整理されていない、それから災害等の理由で多額の負債を背負っておりまして、入植後五年を過ぎて十年近くになっても開墾率が進まないで経営生活が安定していないものというつもりでございまして、それを農林省令の基準といたしまして、この前申し上げましたように経営規模別の農業粗収入で押えてみたいと思っておりますが、先ほども営農類型で申し上げましたところによりまして、現行は五類型でありますが、これを法でねらいますところにも応じまして七類型にいたしまして、経営規模の順に申し上げますと、一町二反類型は二十三万円以下の粗収入である場合は不安定である。一町二反歩から二町歩までは二十五万、二町歩から二町五反歩二十七万円、二町五反歩から三町歩三十万円、三町歩から四町歩までは三十五万円、四町歩から八町歩までは四十四万円、八町歩以上は五十万円、そのそれぞれの金額以下のものは営農類型から見ても経営診断から見ても不安定の基準としていいだろうと、一応案を議しております。あわせて農家の負債のことも考えたいと思っておりますので、その基準は、農家の年間の負債の償還金が農業粗収入の一割以上あれば、開拓農業経営として見まして、負債能力と負債の償還するもとである粗収入から見まして、そのくらいの、バランスがとれているであろう、こういうふうに見ております。
  154. 八田貞義

    ○八田委員 それからやはり第一条に「開拓地における農業の健全な発展」ということをうたってありますが、農業の健全な発展ということ、これについて、この法には主として災害地に対する借りかえ資金の供給とか利子補給、あるいは損失の補償、こういったものによって農業の健全な発展を期そうというふうにこの法案趣旨を了解するのでありますが、果してこれだけでもって今後の開拓政策として完全であるかどうか、もちろん完全という言葉はいろいろ意味しますが、これだけの方法によって今後の開拓政策を強力に進めていって成功するかどうか、農業の健全な発展はこういった資金面の融通だけでよろしいかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。
  155. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農業の健全な発展をしていただいて、健全な経営になるというのは、適当なる規模の土地を持ちまして、その土地の耕作による利用とその土地をまた活用しまして、家畜その他の生産手段も入れまして、自分の労力を農畜産業に投入しまして、消化を適当にいたしまして、生活水準も著しく低くはないという形だろうと思いますが、今回御提案申し上げておりまする法律案は、既入植者に対しまして営農類型へはせめて到達をしていただきたい。それも期間は五カ年間を目途にしていただきたい。そのためには法律事項として書いた方が最も適当であるという事項を書いて規定をしたいと思っておるのでありまして、さらにこのほかに開拓者資金融通法並びにその機関でありまする開拓者資金特別会計あるいは国の債権管理法、あるいは予算補助そのもの——しいて法律の根拠を要しません予算融資等の措置はそれによりまして、おのおの、たとえば建設工事によりましては、開墾建設の予算措置とその農林省あるいは県によりまする代行工事、そういうものを通じましてやっていくものだと思います。
  156. 八田貞義

    ○八田委員 ただいまのお答えによりますると、主として財政上の問題だけが取り上げられてお答えになっておるようでありますが、健全な農業の発展というのは財政上の措置だけではなくて、実際に開墾に当っておる人々の健康状態ということがやはり主眼になるものと思うのであります。実際今まで一体どういうような方法で入植者を開拓地に移入されておるか。入植者の選定基準というものがおありになると思うのでありますが、選定基準について一つおっしゃっていただきたいと思います。
  157. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 入植者の選定は、県に置いてありまする開拓審議会の議を経ましてきまるのでございますが、まず第一は、開拓地に入って自作農に精進する気持があるかどうか、健康であるかどうか、農業技術があればなおよろしいが、これから入植して営農技術を覚えてもやれる体格並びに精神を持っておるか、並びにその家族構成が大体の営農類型を考えながら入植をしていただくことに適当であるかどうかという状況、そういうようなことなんであります。
  158. 八田貞義

    ○八田委員 地方にまかせられてそういった入植者の選定をされておるわけでありますが、たとえば開拓地の選定基準というものはやはりその地方でもってきめていく、こういうことになっておるのですか。
  159. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 これは農地法に基いてきめてありまして、気温、傾斜士、土壌の土性であるとか、土層と申しますか、表土の厚さでありますとか、砂れきがどのくらい混入して、大きな石がたくさん入っていないかとかいう割合でありますとか、それから気象条件等告示で定めてあります。
  160. 八田貞義

    ○八田委員 今開拓地の選定基準をお示し願ったのですが、終戦後はそういった開拓地の選定基準というものはなかったのじゃないでしょうか。これはいつごろそういうふうな基準のもとにやられておるのですか。
  161. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 国がこれを明確にしたのは二十四年でございますが、終戦直後は御承知のような社会的な状況でございましたので、開拓について、また入植について内務省もあっせんしたものもありますれば、農林省がやりましたものもあり、営団がタッチしたものもありますが、先に人が入ってあとで地区計画が立つとか、適地条件に合わないというより、すれすれのところであるとか、ある条項がちょっと欠除しておるとか、そういうことのあるものが二十四年以前にあるわけであります。
  162. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、こういった開拓地の選定基準に適合した場所とか、あるいは選定基準に従って入植された人々のいる開墾地をパイロット・ファームというのですか、それをパイロット・ファームというならば、一体現在パイロット・ファームはどれくらい設定されておるのですか。それをお知らせ願います。
  163. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農林省において特殊の意味をもってパイロット・ファームにしておりますのは、機械開発公団の創設をいたしまして、今御者見をいただき、私が御説明または解答を申し上げておるような方式の類型と入植営農の仕方をするものでない機械開墾の地域について行なっておりますところの農家をパイロット的だと申しておるのであります。機械開墾のことであります。
  164. 八田貞義

    ○八田委員 今まで開拓地の衛生状況を見ますと、ほとんど立地条件に対する選定基準というものが守られていないのです。また入植者を見ますと、大部分は農業未経験者というような者が多い、しかも終戦後緊急対策として大面積取得方式というものにかわりまして、どんどん入植されていった、これを一般に緊急入植者と言っておるのですが、その後二十四年になって初めて開拓地の選定基準が出てきたわけです。ところが今日は開拓地においてほとんどやられておる方法は土質の改良事業が主となってきております。そこで今日開拓地には置き去りを食っておる緊急開拓者というものが相当あるわけです。この人々は生活保護費をもらって初めて生活できるというような人が多いわけであります。そこで局長は、現在この開拓地入植された人々の衛生状況というものを、どのような基準でつかまれておるかどうか。実際に入植しっぱなしでなしに、入植された人々がどのような生活状態で開墾に当っておるか、衣、食、住、労働、こういう面から見まして、今までの開拓地衛生と申しますか、こういったものに対して果して正しく健康配置がなされておるかどうかということについて御調査になったかどうか、お知らせ願いたいと思います。
  165. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農林省の補助をもちまして、開拓地には営農指導員のほかに保健婦を置き、保健所も置きまして、かたがたまた小学校、中学校の分校の校舎の援助もいたしましたり、嘱託医を設けるように続けて参っておりますが、それについての、官庁補助事業に伴う客観的な報告等はございますが、まだ全開拓地域及び開拓者についての衛生統計は持っておりません。今後努力しようと思っております。それから生活内容からしまして、経営診断を過去二年、約七百戸についてやってみましたところによりますと、不振地区においては、特に衛生状況また食生活状況、係数で表わせばエンゲル係数となりましょう、あわせて生活水準が粗収入の状況から反映して縮小されておりますが、開拓者についで付近の中堅の農家層から見ると、七割以下程度の状況にあると思っております。
  166. 八田貞義

    ○八田委員 実際の開拓地の衛生状態というものは、最低をいっているといえば最低です。もちろん最低と申しましても基準があるわけでありまするが、根釧原野の別海村における開拓地の実際の状況を総合的に調査いたしてみますと、衛生状態についてはまことに寒心にたえない。別海村は一つのパイロット・ファームとして建設される意図のもとに、相当世界銀行から金を借りておやりになっているというように聞いておりますが、一体その点はどうでしょう。
  167. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 機械開発公団によりまして世界銀行の資金を借りまして、機械開墾をする機械を購入しまして、入植農家また地元の開拓者につきまして、委託を受けて機械開墾をいたします事業につきましては、すでに御承知の通りだと思いますが、世界銀行の借款を受けることになっております。それはすでに調印が済みまして、数日前から資金が具体的に借りられる段階になりました。
  168. 八田貞義

    ○八田委員 今後開拓地衛生をどういうふうにして進めていかれるか、御方針があればお伺いいたしておきたい。
  169. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 専門的な担当をいたしております厚生省ともよく相談しまして、今後の措置は研究すべきだと思いますが、開拓地は多くは米麦をねらわない生産で、陸稲、豆類、麦、雑穀、それに家畜というものを今まででも貧弱であるがねらって参りましたので、これをさらに経営振興いたしますと、蛋白また動物的蛋白の供給源を自分で持つことにもなります。まず食糧・栄養の見地からは、エンゲル係数をもっと下げるように、食糧内容が蛋白、脂肪—蛋白は植物及び動物ともにふえるように持っていきまして、食糧以外の衛生設備と申しましては、高冷地で環境そのものが衛生的な所が多いのですけれども、人の生活の態様からいきますると、衛生的な処理が住居・台所、便所、その他家畜のいる所等において十分でございませんので、逐次健全な農家になると同時に、その面も改善されるように努力いたしていきたいと思います。
  170. 八田貞義

    ○八田委員 厚生省と連絡して衛生対策をきめる、食改善もやっていくのだ、こういう御方針でございますが、実際に開拓地における経済状況は、先ほどお示しいたしましたように、自分の家庭の衛生費に回す金などは全然ないんですね。さらにまた厚生省の協力を得るとなれば保健所の衛生指導になりましょうが、保健所というものは過去の人口数から割り出してきて置いているわけです。ですからこれからどんどん開拓地入植されて人口数がふえていきますと、保健所の数をふやしていかなければならぬのです。ところが今日の保健所設置法によりますると、そういうふうに簡単にいかない。現在開拓地における医療施設というものはほとんどございません。病気をすれば常備薬や売薬をもってなおす。医者にかかるときはもうおそくて死んでしまう、こういう状態になっているのです。なおただいま食改善のお話がありましたが、住宅なんかも、馬小屋の方が大部分を占めておりまして、人間の住む所の方が非常に狭い、実際に住宅を見ますと。このような開拓地衛生対策でもって今後開拓地振興ができるだろうか。この法案を見ますると財政上の問題についてはいろいろ書いてございますが、衛生対策については何ら盛られていない。これではほんとうの開拓地営農振興にはならぬと私は思うのであります。ただいま方針だけのお示しを願いましたが、現状ではもう開拓地営農振興のためには衛生費を出す必要があるわけです。農林省としてただ単に厚生省だけの力にたよってやろうと思いましても、保健所の活動はある程度期待されても医師の配置は全然望めません。こういう点につきまして、今後農林省として開拓地の医療施設はどうあるべきかということについてのお考えがあってしかるべきであります。現在どういうふうにしたならば、今医療施設に悩んでおる開拓地入植者の希望をかなえさせることができるか、こういうことについて何かお考えがあればお知らせ願いたいと思うのであります。
  171. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 三十二年度に具体的に考え、かつ実行もできる、こういうことについては取り立てて申し上げるものは遺憾ながらございません。従来からの継続の保健婦の設置と診療所の設置・嘱託医制度を継続して、従来よりは弱めないでやっていこうということになっておりますが、開拓地においては、特に入植から健全な安定した農家に育てられるまでの産業経済政策等十分でなく、やむを得ずまたよそで手が抜かれるから、積極的に生産と生活とを一体に見まして小学校から中学の分校程度までは農林省でお世話申し上げましたり、有線電話の設置等を考えたりしておるわけであります。だんだん開拓地の社会の発展とともに、開拓地でない古い山村の農家でも同じだと思いますが、特に新しい開拓地で人が住む社会ということでございますから、将来は漸次行政としても分化して、衛生は厚生省、住宅は住宅関係当局、文教は文教当局の方へ早く引き移って、一層力が尽される方が私は望ましいと思っております。
  172. 八田貞義

    ○八田委員 将来はそういった分業が望ましい形態でございますけれども、現在緊急な状態があるわけですね。もうどうしても医療施設というものを持たなければこれからやっていけない。将来はだんだんそういったふうに文教は文教、厚生は厚生、開墾は農林省、こういうふうに分けて将来は考えられるでしょうが、現在はこの不振状態にある開拓地の衛生を改良していかなければ成功は望めないという実態にあるわけです。ですからどうかこの面につきまして、ただ単に人間を入れるのではなくて、やはり健康状態、衣、食、住、労に対するところの健康配置というものをやはり開拓営農計画の中に入れておく必要があると思います。そうしませんと、ただ単に人間を入れっぱなしにしておいたのでは、人間の生活に対するところのほんとの筋金が入っていないわけでありますので、この点農林省として十分にお考え願うことにいたしまして、私の質問は終ります。
  173. 小枝一雄

  174. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、開拓営農の基本的問題につきましては、すでに同僚委員からお尋ねいたしておりますので、ただこれが運営に対しまして一点だけ具体的な問題について農林省及び政府の意向を承わりたい、かように思いまして、お尋ねをするわけでございますが、その具体的な問題をお尋ねいたします前に、最初に一つ局長に承わりたいと思いますのは、開拓ということはいかなることであるか、開拓というものに対する定義を承わりたい。
  175. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 一般には開拓というのは、人が人工を加えて生活上、産業上に地球の一部を利用いたしまして、人間の用に供し得るようにすることだと思いますが、私どもが具体的にこの委員会でお取り上げ願って論議しておることとしては、他の労働者によったり、工業技術によりましたりして開拓をすることでありませんで、農地になっていない土地、この土地は未墾地の場合も新規造成の場合もありますが、その土地を利用して耕作してもらう。また耕種ばかりでなしに、畜産その他広い意味農業として利用しまして、農業的なる経営を営む世帯を創設する。特に林業による開拓とか漁業による開拓を一応除いて御意見を承わり、意見を申し上げておる。こういうことであります。
  176. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは具体的に承わりたいと思いますが、すでに未墾地でございません既墾地、現在拓植しておる土地、この既耕地にこれを造成して人を入れることは果して開拓であるかどうか、この点を伺いたい。
  177. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓の問題が政府施策の上においてどうか、こういうことになりますと、さらに、その政府施策である対象としての開拓は、多少意味をつけ加えられてくることがあると思います。本来は、既耕地土地改良の施設とか営農改善の施設とか品種改良の施設とかを設けたり、いわんや助成をしたり国費負担でやったりする場合は、既耕地についてそれを行うのは開拓とは言わないのでありますが、農地法によりまして特に例外を認めまして、未墾地を開拓するための施策を講ずる事業をする予算なり資金を投下する、こういう場合に大半がまた主眼が、新規に農地を開き造成するということを維持しながら、既耕地をこの中へ取り入れまして、全体を開拓措置開拓政策、こういうふうに適用してやることはできると思います。(「わからない」と呼ぶ者あり)それは農地法上のあわせ買収、既耕地をあわせ買収して開拓地扱いして措置を講ずる、こういう場合は、それ全体は建設事業のやり方においても開拓として扱うことがございます。農地法でもそうであります。
  178. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま開拓に対する基本的な問題はわかりましたので、さらに具体的な問題をお尋ねしたいと思います。これは先般農林省には話しておりますので、資料はそこにあると思うのでありますが、具体的に千葉県の佐原地区の八筋川沿岸の開拓地の問題でございますが、農林省はこの問題をどの程度に御承知であるか承わりたいと思うんです。
  179. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 千葉県の佐原市、香取郡の神崎町を含む地区のいわゆる佐原地区としましては、建設工事としましては農林省が国営として採択いたして行なっておりますが、県をして代行せしめておりますので、そういう意味で存じております。まだ完成をしておりません継続中の地区であります。その地区につきまして二百三十五町歩四反ばかりのうち百町歩ばかりが既墾地で、あわせ買収を政府がいたしまして、開拓地にして土地配分を一応終り、一部入植せしめましたが、土地の売却はまだ全部できません。一部使用を入植者にさせておる状況については、買収は二十五年三月及び七月、十六戸の入植農家に二十九町四反を売り渡したのが三十年十一月であります。自余のことはなお経緯及び実態の調査を再確認する意味で過去に行われた事実を調査中であります。その意味において存じております。
  180. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの佐原地区の問題でありますが、もちろん農林省として承知しておられるのは県を通して書面の上でだろうと思うので、おそらく実地は御存じないと思います。その点実地をどのくらい農林省は把握してありますか、承わりたい。
  181. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 たとえて申しますと、佐原地区土地配分の売却及び一時使用の地割りの図面等については、その面積とか地割り状況とか見ておりますが、何という人がどの地割りしたところに入っておるか、また現にどれだけ耕作しておるか、それから地区計画に当って既入植で売渡した地区はどういう沿革をもってやるかは県がやりましたので、目下調査中でございます。
  182. 稲富稜人

    ○稲富委員 実はこの地方は公簿面は原野も相当あるようになっておるやに聞いておりますが、実際はほとんど大半が既耕地なんです。この既耕地開拓事業としてやられたことに実にわれわれは納得のいかない点がある。何がために土地改良事業としてこれをやらなかったか。おそらく現地の状態を知っているならば、土地改良事業としてやられただろうと思う。ところがたまたま公簿面に原野というような点があったがために、これを利用して国の補助をたくさんとるために開拓事業としてこれをやった。こういう点が非常にあるのでありますが、私はその原地をつぶさに見て承知しております。この点農林省としては、そういうような実情を承知であるかどうかということを実は承わっておるわけなんであります。私その現地を見たのでありますが、既耕地に砂を上げて、わざわざ既耕地を未墾地にしてそれを開墾している、これをもって開拓事業だという、われわれが納得のいかない点はそこにあるわけだ。それで私は冒頭開拓に対する定義を承わったのでありますが、そういうように既墾地を未墾地にして開拓するのも開拓事業だというふうに考えているかどうか。この点を私ははっきり承わりたいと思うわけなんです。
  183. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その実態について正確な意見を直ちにと言われましても、十分に申し上げられないかと思いますが、開拓建設工事を国でいたしまして、県が代行いたします限りにおいては、その事業を採択するときにはよく調べてありまして、そのときの採択の状況では二百三十五町歩余のうち国の費用において開墾建設工事を行う場合に、既耕地を入れて百町歩を行うのはやっていいこととして判定してやったことを過去にさかのぼって調査せしめて知っております。  ただ稻富先生の今御指摘になりましたのは、工事採択に当ってそういうようにしてもいいと申しましたのは、意味が違うようでございまして、佐原地区は一部沼沢地と申しますか、水が浸っておって湛水地で、芦なんかが生えておりましたのが、工事の進捗に伴って干上りまして、今では農耕用の土地になっておる部分が大いにありますので、最近の状況で判断して、採択した時期にさかのぼって御判断下さらぬと間違いがある点もあるように思います。私はよくわかりませんけれども……。
  184. 稲富稜人

    ○稲富委員 局長はあまり御存じないようでございますから、具体的に御説明申し上げますので、こういう点が妥当であるかどうかという御意見を承わりたいのです。  ただいま局長は芦が生えておるとおっしゃった。佐原の芦というものは、ここに現地小川委員もおりますが、沼地のものではないのでございます。あの地方では家の屋根を芦等でふいております。そういう関係で、戦時中人手が非常に足りないために、その土地に芦を作って、それで屋根をふいておった。こういうことで繁茂しておった。こういうために芦を植えておったのでありまして、芦が生えているから沼地だというような考え方自体、実態に即さない観察をしていると思う。  それから入植者の問題も、今申し上げますように、そこに川を作りまして、川の土を既耕地に上げて、そこを開拓して、入植せしめておる。入植せしめるために、従来耕作しておった人は、新しい入植者が入ってきたために自分の耕地入植者にとられて、耕作する田を持たないという人ができておるわけであります。こういうように開拓事業なるがゆえに、早く入植者を入れなければ金が来ないんだということで入植さしておる。しかもその入植者の中には、先刻八田委員もお尋ねしておりましたが、われわれが見て果してこれが適格者かどうか疑惑を持たれる一人がたくさんいる。あるいは市の農務課長でございますか、こういうような現職にある人が入植するとか、あるいは実際たんぼを作る経験もなかったような人が入植している。これは開墾地としなければできないという建前から、既耕地を未墾地にしてこれを開拓者と称して入れている。中には全然手もかけていない耕地入植者が開墾したと称して助成金をもらったという事実もある。しかも今まで耕地を持っておった方は、それがためにその耕地を追われて、現在耕す土地を持たないという非常に悲惨な状態に置かれておる人もあるわけです。こういうような事実を果してあなたの方は開拓事業としてお考えになっておるかどうか、この点をはっきり承わればいいわけです。
  185. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 今仰せられました事実はその通りであるかというのが第一点と、開墾建設工事というその工事の建前はどうかということと、先生のおっしゃる意味はそのあとであろうと思いますが、開拓入植せしめるための地区計画土地配分計画、その次の一時使用、売り渡し、そこへ入ってきた方々一般開拓者として取り扱うか、こういうことに分れると思います。  第一の建設工事は、あわせ買収をして開拓建設工事として国の費用で県が代行工事で事業をする場合、水路等の施設を設けます場合は、既墾地を未墾地にするわけではありませんで、水路工事のためにつぶすということはある。それは普通の一般耕地土地改良事業と同じだと思います。あそこは川のそばからの傾斜地でありまして、水路はまん中に置くのが一番妥当であるが、傾斜地であるから盛り土をしてその水路のところを一段高くするといい、そういうことについて今稻富先生のお話が出てきたかと思いますが、私が目下農地局の局内で検討して確かめておるのはそういう説明でありますから、なお詳しく調査をさせ直せております。  それから配分の点につきましては、二十七年九月県の開拓審議会において選定してあるのでありますが、最近に至りまして訴願が出まして、お話のようにあわせ買収地は旧土地所有者に還元売り渡しすべきであるということと、現在売り渡しを受けておる十六戸の中に不適格な人がおる、県の課長までを—私は県の課長であったということが直ちに不適格とは思いません。その後営農に精進してくれて自作農になってくれればいいと思いますが、やはり訴願のありました点もありまして、稻富先生の御意見もそれに照応する御意見のように思いますので、かねて手続はとってありますが、農地事務局をしても調査せしめ、本省の農地課等からも人を派遣して、なお特に千葉県に対しましては、土地の取得、入植者の選考、土地配分ということにつきまして調査をしまして、まだ売り渡しをしていないところが大部分でありますが、一部売り渡してから今日まで時間がかかっておりますので、その間の状況、理由を明確に県の意見をとりまして、これに基きまして県と打ち合せまして、配分是正を要するものがあれば配分是正をすべきものだと思います。開墾建設工事とそのこととをあわせ一緒にしないで、別に考える方が適当だという考えでございます。この場合あわせ買収しました土地は以上申し上げましたようでございますから、既耕地を買収された人が開墾建設工事のために出る場合もあり、あるいはもとの土地を失う場合もあると思います。しかしこれは必ずその地区において照応すべき、また地区内に適当な土地配分を受けねばならぬ。土地を提供して政府にあわせ買収してもらったために自分の耕作する土地がなくなってしまうということは絶対ないものでなければならぬ、そういうふうに思っております。
  186. 稲富稜人

    ○稲富委員 ところがその土地配分の場合こういう事実がある。あるAという人が自分の周囲を全部耕作しておった。ところがそこに入植者を入れてきて、その人がどこかに出ていかなければならない。どこを配分するかというと、まだ配分の場所がわからない、こういうわけで、自分の家の周囲一町何反歩を全部自分が耕作しておったのを、入植者をそこに入れてきて、そこで入植者には配分して、実際それを持っていた人は配分を受けないというようなことをやられておることは—やはり入植者と同じ配分計画を立てなければ耕作当事者は不安であると思う。全部が入植者ならそれでいいかもしれませんが、ところが既耕地入植者を入れており、その入植者に先に与えるのだから、現在田を耕しておられる人はどこを与えられるかわからないし、耕地がなくなって困っておるという状態なんです。これは事務的にも非常に間違っていると思うのですが、こういう点を開墾の振興上認むべきものであるかどうかということを考えなければならぬ。それから今局長は、これはいろいろの事情等によって考えなければならぬと言われるが、それではもしも入植者を新たに入れることによって、従来耕作しているところとその土地は変るかもしれぬけれども、耕地が非常に狭められる、要するに耕地を奪われる、こういうことを従来の耕作者がされるようなことになれば、それは入植者を入れることも絶対条件じゃないということを考えなければいけない。そういう人たちの土地を奪ってまでも入植者を入れるのか、この点ははっきりしておかなければ私は非常に不安である、この点を一つはっきり承わっておきたい。
  187. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農地法範囲におきまして、自作農である場合にはその自作地につき、また場合によっては制限的でありますが、小作地を持っている場合には小作地につきまして、その既農地を開墾建設工事のためにあわせ買収したり、未墾地について開拓計画を立てる際にあわせ買収地域を含めて開拓計画を立てて、所要の施設を講じます場合に、その既耕地の人の同意、納得を得ませんで、買収または建設工事をすることば適当でないと思います。配分計画に当りましては、あわせ買収はよく意見を聞いてやるべきものと思いますが、土地が極度に小さくなったり、土地がなくなってしまったりするようなことが、既耕地のあわせ買収のときに、もと所有し、使用しておった人に起るようなふうではいけないのであります。全体の開拓地区の土地配分もまた考えまして、むずかしいことでありますが、その両者を合致せしめて実行しなければならぬと思っております。開墾建設工事に着手したり、あわせ買収をしたりした当時は、今申しましたように、慎重にやっておらなかったような時期かと思いますが、今後においてはあわせ買収地をもって開墾建設工事を国営として採択すべきかどうかもそう軽々にいたすべきものではありませんし、あわせ買収をするのも、そう軽々にすべきものではありませんが、一たんやりましたあとは、公平なる土地配分をすべきものである。それを新規入植者とその既耕地の利用者の間にも行うとともに、既入植者の従来のことも考えまして、両方合わせねばならぬむずかしいことだと思います。
  188. 稲富稜人

    ○稲富委員 結論を知りたいのは、開墾をやるために既耕地をあわせ買収をする、これはわかります。ところがあわせ買収をされた人が、たとえば具体的に申しますと、一町歩あわせ買収されたとする、ところが開墾しに入植者が来たために、そのあわせ買収された一町の田地が少くなるようなことになると困る、こういうことが果して妥当な開墾事業であるかどうかという問題なんです。はっきり承わりたいという点はそこなんです。
  189. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 あわせ買収をせられましたその農家の人が、あわせ買収地を含む開拓地土地配分計画において他の地域でも配分を受けてもいい、またその配分の規模もそれでもいいということになれば、それでいいと思います。
  190. 稲富稜人

    ○稲富委員 私が聞いていますのは、配分される土地があわせ買収をされているのだから、あえて自分が従来買い上げられた土地をたといもらわなくても、面積において、入植者が新たに入ったがために自分の従来の既耕地よりも狭い配分を受けては困る、こういう問題が起ってくると思うのだが、そういうこともこれは開拓趣旨に合わないだろうと思う。従来の既耕地開拓のために狭められ、しかもそれが、あるいは耕地整理か何かのつぶれ地のために狭めるのはやむを得ないとしても、新たに入植者が入ってきたがために従来の既耕地が狭められるということは、これは大体開拓趣旨からいっても沿わないと思うが、これはどうかということをお聞きしているのです。
  191. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 稻富先生の御意見と同様に思います。同様に思うがゆえに、土地配分計画をその開拓地域について立てます場合は、そういうふうに配分するといいと思います。しかし万一そうでない場合があったら、そのあわせ買収された人が同意しておさまるといいと思います。それを納得されればいいと思います。
  192. 稲富稜人

    ○稲富委員 納得をすればそれはいいでしょうけれども、納得がいかない場合は、納得がいかないようなことをあえて開拓事業としてやっていいかということなのです。そこに問題があるわけなのです。それから先刻あるいはみぞを掘ったから土を上げたんだ、これは未墾地だと言っておる、こうおっしゃいましたけれども、現地はそうじゃございません。川を掘ってそうして土を上げて、土盛りをそこに上げたくらいではなくて、りっぱにそれをやっている。そしてそれを写真をとってあなた方も持ってきていると思う。そういうようなお考えで、これは未墾地でございますという、それを写真にとっている。これが未墾地としての開墾だというふうにあなたの方には出されていると思うのでありますから、相当計画的にやられていると思う。よほどこの点の実情というものを御調査なさらなければいけないと思う。私は現地を見てきまして、あまりにも気の毒な状態に置かれている。また私先刻から申し上げたのですが、一方のこれは純然たる良田なのです。これは以前一反に対して九俵くらいできておった良田なのです。なぜこれを土地改良事業としてやらなかったか。あるいは区画整理事業をやる場合、なぜ土地改良事業としてやらなかったか、なぜこれを開拓したか、聞いてみると不思議なくらいです。これは土地改良事業でやるか、開墾でやるかという問題があった。それを無理に、開墾の方が国の補助がもらえるから開墾でやったということを聞いている。そうして今申し上げましたように、開墾しなかった土地を開墾したといって判を押してくれろといって、そうして現に入植者が開墾したように擬装して助成金をもらっているという事実もある。これはお調べになればはっきりわかるはずである。こういうような開墾事業というものは、これは大体開墾事業の本質に沿わないと思う。この点から承わっておるわけでございます。この問題に対しては今調査中であって、調査されて何とかいい結論を出したい、こういう意向でございますので、私はこれ以上くどくは申し上げません。だがこういうような不都合な事実が起っているのだから、これに対しては十分検討してあやまちのないように、開墾の目的に反するような、またほんとうにこの開墾のために耕作者が土地を奪われて、農地法の精神に反するような結果にならないことが最も必要だと思う。こういう意味から、これに対するあなた方の考え方を結論だけ承わればいいわけでございます。
  193. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 目下調査中でございますが、調査が足りないところもあるようでございますので、稲富委員の御質問及び御意見を尊重しまして、それに即して調査をした上に適切な措置をとりたいと思います。
  194. 石田宥全

    石田(宥)委員 関連。今稲富委員から質問のありました問題と同じようなケースなのですが、新潟県三島郡の野積村というところです。ここはことしから開墾建設の工事をやることになって、三十一年度予算に実質的経費が計上された地区です。ここは従来漁村でありまして、この村では一戸当り平均三反歩くらいしか耕地がない。漁民かどっちが本業かわからないようなところなのです。そこで信濃川の分水が行われましてから、海岸にずっと沖積地ができて、砂寄せができてそれを従来個人々々ですでに野菜畑にしたり、いろいろ耕作をしておった。一反くらいずつ耕作をしておった。それがあわせ買収が行われて、今度は開墾建設の事業として、たんぼにする計画ができたわけなのです。ところがやはり今のお話と同じようなことで、二反か三反しか持たない漁民ですから、一反歩の土地でも非常に貴重な土地なのですね。非常に貴重な土地があわせ買収をされてしまって、そのときには必ずりっぱなたんぼにしてお前らに戻してやるのだ、こういうことで村中総がかりで夫役などをやって、その条件をよくして今日に及んだわけなのです。ところがそこの村の一部の有力者が中心になりまして入植計画を立てた。ところがここは日本でも有数な封建的な大家族主義が行われておって、何か一部の学者が問題にしているようなところなのですが、そこへ入植するという形式はとるけれども、大家族主義で次男坊などが一軒のうちにおるわけなのです。そうしてそういう形式をとって入植はするのだが、形式だけであって、実はみんなのところへ返してやるのだ、村相談でこういう話がきまって工事をやることになった。工事をやることになったが、そこへ県庁の開拓課の職員諸君が出かけていって、そういう仮装入植はまかりならぬ、そういうことはできない、こうなって問題がこんがらかってきたんです。それでこれが、今度関係者が二派に分かれで、一派とも県庁に対して一回に百人ばかりずつ、相当遠いところから押しかけておる。たまたま私、せんだって出県しておりましたときに陳情が参りまして、私も立ち会って話を聞いたのです。問題はそういうことで、むしろ県の諸君が問題を紛糾させているわけです。村の中の話し合いでは、一反歩あわせ買収を行われた人には必ず一反以上は返してやるんだ、それがために形式的には、入植はやるけれどもそれはほんの形式だけなんだ、こういうことで、それで話はおさまるはずであったのが、県の諸君は全額国庫負担による開墾建設は入植が絶対条件である、入植が形式的なものでなしに、ほんとうの入植をするのでなければ国から全額国庫負担で開墾建設の事業をやってもらうわけにはいかないのだ、こういう話を切り出したところからこの紛糾を来たしているわけであります。私はこの点だけを明らかにしてもらえばいいので、開墾建設の場合には、一般的にはもちろん入植一つ条件にしておる、一定の標準があることも承知はしておりますが、平均三反歩ぐらいしかないような、そういう漁村において水田を造成するような場合において、必ず入植というものを絶対条件にしなければならないのかどうか、増反だけでもいいんじゃないかというふうに考えるわけです。この点を取扱い上局長は一体どういうふうにお考えになっておるか、そういう特殊な条件のもとにある地域に対しても、入植というものは絶対条件なのか、あるいは絶対条件ではないのか、この点です。
  195. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 入植一つもないというのはいけないだろうと私も思います。
  196. 石田宥全

    石田(宥)委員 入植が全然ないということはいけないと思う。それならば一体どの程度まで入植をやればよろしいかということです。
  197. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 やはり二種類のものがあったら、社会常識、通念としては物が半分だと思います。
  198. 石田宥全

    石田(宥)委員 半分ですか、そういうことは法律やあるいは政令か何かに標準がきまっておるのですか、どうなんですか。
  199. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 ないと思います。開墾建設工事というふうなものでどうやろうかという、その開墾建設の解釈の社会通念からくることだと思います。今は買収をやって開墾をやることをなるべく解釈を狭めてやることになっております。
  200. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま局長の御答弁によりますと、入植者は少くとも半分だとおっしゃいますが、先刻私佐原地区のことをお尋ねしたのでありますが、ケースは同じようなケースでございます。これに対して従来の耕作者が耕地を狭められるようなことがあってはいけないという私の意見に対して、そういう趣旨で何とかしたいとおっしゃったのでありますが、佐原地区の場合、もしも半分も入植者を入れるということになりますと、従来あの地方で耕作をしておりました農民というものは、ほとんど従来の土地の半分はとられることになってくると思います。こういうような開拓事業をやるかどうかということに大きな問題があるわけであります。それではさっきの私の質問の趣旨には沿わないと思います。
  201. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開墾建設工事として採用するかどうかで判断の余地があるものは半分でなければならぬということを申し上げたのではありませんで、土地改良であるか、開墾建設であるか、両方適用し得る場合は、両方の人がおるから多い方でやっていったらよいだろうという意味で半分と申し上げたのです。代行工事を開墾建設でとる場合はどうかというのは、それは代行の最高の基準でありまして、現在は入植が十戸とか十戸以上でその面積が五町歩以上とか、そういう基準でやっております。
  202. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうしますと、先刻の佐原地区のごときは、これを開墾としてやったことに非常な間違いがあることになる、これは既耕地ですよ、当然土地改良はやれなくなる、それをわざわざそこの地方の農民たちが利益を占めるために、国の補助をたくさんもらおうと思って開拓ということに名をかりてこれを利用している。それだから今申し上げまする開拓入植者を入れなければいけない、入れれば従来の耕作者の耕地を狭められてくるというのが現在の実情です。それですからあなたのおっしゃるように、開拓というものは半分は入植をせなければいけないんだというような観点から言うならば、こういうような土地開拓事業というものは、根本から考えなくちゃいけない問題が起こってくると思う。開拓のために今まで経験のなかった人を入植させることは、長い間耕作をしておった人が耕地を奪われる、そんな開拓事業というものはあるべきじゃないと思う。この点はあなたのおっしゃったようにして、半分でなくちゃいけないということになると、そういうことが起ってくるから、非常に地方では大きな問題を起しておるわけです。今石田君の言ったような、そういう特殊の地帯というものは、この入植者に対して従来そこで耕作をしておった人の耕作に対する既得権を侵害するような入植というものは許すべきではないと私は考える。そうせぬと今言うように、農地法でせっかく土地を保証しながらこれをとられてしまう、そうして入植した者は、先刻申し上げましたように従来耕作者でなかった村の有力者のせがれであるとか、あるいは市の現職にある課長のむすこが入植しているとか、すなわち農村ボスがそこに介在してきて、そうして善良なる農民の耕作地を奪うということになってくる、こういう具体的な事実をもってお尋ねしているわけです。こういう具体的の問題のあることに対しては、ただそういうような半数でなくちゃいけないだろうというようなことではなくて、特殊の事例として考えることが必要ではないか、しかも今申し上げますように、従来の耕作者の既得権は侵害しないんだということは基本的にやらなくてはいけないと思います。この点を一つ
  203. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 ちょっと私の言いようが悪かった点があったように思いますが、灌排工事であるか、開墾工事であるかということについては、工事が区別がつかないところは、開墾なり灌排であれば、新たに開くところ、新規入植者が多いところ、こういう意味で新規入植地、未墾地の開発の方が半分以上ないと開墾工事として採択するのはおかしいだろうということを申し上げたので、それと土地配分のためにあわせ買収したり、既農家を入れて既耕地を尊重して配分しなくちゃならぬ、あわせ買収したり、工事しても農地法範囲内で耕地の既得権は尊重せねばならぬ、そういうものがこんがらがったようでございまして、あとの場合は当然に稻富先生のおっしゃる通りであります。先の場合は事業を採択した当時と今とは開墾建設事業を採択するのに研究の余地がありまして、範囲をだんだん狭めてあわせ買収などがなるべく少くあって、そうして未墾地の開拓事業とか、その結果としてできた土地なら新規入植をする人が多いところでなければ開墾建設事業としては採択しないように少し変っておるようです。それは明確な基準はまだございませんということを申し上げたわけです。
  204. 稲富稜人

    ○稲富委員 参考までに申し上げておきたいのですが、佐原地区の問題は、この間農地委員にも私は会ったのでございますが、これは既墾地だと言っております。公簿面は原野となっておった、公簿面は未墾地であったけれども、実際は既墾地であったということを農地委員も言っております。そういうような事情でありますから、公簿面の未墾地として入植者をその計画通り入れるということになりますと、実際上は耕作しておった人が土地を奪われることになっておるわけです。こういう問題が起っているからお尋ねしたわけです。冒頭私がお尋ねしたように、実情に即さないでただ公簿面によってこれは未墾地が多いからということで開墾をやっておる、ここに大きな問題があるわけなんです。それでその点は今申し上げますように、その点も十分勘案して配分等は考えなければいけないと思うわけです。公簿面だけによらずして実情に即した配分計画というものをやることが妥当である、それがために半数に足らないようなことになってもこれは例外としてやむを得ないんだ、そもそもそういう当初の起りは、そういう公簿面からきているならば、こういうような考え方も必要ではないか、こういうことを申し上げるわけです。
  205. 石田宥全

    石田(宥)委員 局長にお尋ねしますが、半分ぐらいというのが社会常識だというのですが、一体開墾建設というものは、なるほど入植ということも条件一つでありましょうけれども、増反のための開墾建設というものはほとんどその意義を認めないということと一緒だと思うのですね。どうですか。
  206. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 半分ということが非常に問題になりましたけれども、もし不分明でありましたら、半分というのは取り消させていただきたいと思います。開墾工事の方でやっても土地改良事業でやってもいいときに、主たる目的に沿うて、開墾建設事業なら開墾の方が主でなければ、五割以上なければとて開墾も工事としてはいけないだろう、そういう意味で申し上げたのでありまして、増反分の開墾をどうやるかということは、その土地に即しまして未墾地が農地として開発される事業でありましたら、どう工事をとるかということでありますから、それをそれで判断すればいいと思います。
  207. 石田宥全

    石田(宥)委員 さきに申し上げるように、平均三反くらいしかないようなところへどうしても入植しなければ工事をやらない、こういう結果になっている。それは取りやめになりますかどうか。
  208. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その土地が未墾地でありまして、未墾地を開墾をする事業が適当であるかが第一でありまして、国費全額負担の工事を開墾工事としてやる場合は、実体が開墾であっても、なるべく新規入植の方が多い方が望ましいことだと思う。そうでなくちゃいかぬということではないと思う。しかしそれを例にとりますと、小さい地域の、たとえば小団地の開墾といいますと、これは五割補助の事業で、一種の開墾というものが事実あります。ところが原則としての開墾は国費負担でやりたいという方針を持っておりますから、そこでなるべく補助事業の方に引きずられないというために申し上げたのでありまして、具体的な事業採択のことを申し上げたのではありません。
  209. 石田宥全

    石田(宥)委員 その点は具体的に私は聞いているのです。抽象論ではないのです。しかもこの問題は、清野建設部長は、そういう特殊地域においては必ずしも入植というものを絶対条件としなくてもよろしい、こういうことを言っている。清野建設部長の考えと局長の考えは非常な食い違いがあるわけです。私どもはそういう小さな工事の部分的な問題は建設部長の見解でやり得る、こう実は考えておったのですが、そうすると、局長は見解が違うわけですか。
  210. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 未墾地を開拓するということを開拓事業としてとろうとする場合は、既墾地をあわせ買収してとるときに、未墾地が半分くらいあるのがほんとうだろう、そしてその場合もまた半分、それと新規入植と増反だけでどうかということもあわせ考えまして、具体的に適当なところをとるのがいいと思います。そう意見は違わぬと思います。
  211. 石田宥全

    石田(宥)委員 それはそうではないのです。私は具体的にちゃんと聞いているのですが、新潟県の寺泊町の野積部落では、明らかに既墾地というものはほんの一部分です。大部分未墾地です。それでそういう具体的な事実の上に立って、入植というものは絶対条件とはする必要がない、特殊状況のもとにおいては別に考慮してよろしい、こう言っておるんですがね。
  212. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 原則のもとに特別があるのでありまして、特殊状況は考えてもよろしい、こういうふうに思います。
  213. 石田宥全

    石田(宥)委員 大部分が未墾地であって、部分的に既墾地がある、そうして耕作反別が三反程度しかない、こういう場合は必ずしも入植しなくとも、増反開墾ということで私どもはいいのではないかと考えておるわけなんです。清野建設部長はそれでよかろう、こういうことで開墾建設課の諸君とも打ち合せをしておったようです。そういうふうに理解してよろしいですか。
  214. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 どういう事業をどの工事で採択しようかということでございまして、具体的に判断しまして清野君の言うようなことでいい場合もありますれば、あまり国費がかかりまして、未墾地が少なかったり、また増反ばかりのところは、やはり判断の一つのデータとして、絶対だめだということを申し上げてはおらないのであります。開墾工事としては主たる目的が開墾でなければならぬ。開墾は原則は新規入植を主体とし、取扱いの判断の基準は、半分以上がそうであれば望ましいけれども、そうでなければ採択できないということを私は言っておるのではございません。その地区状況とか特殊性とかではそうでなくやった方がいいという例外の場合はそうやっていいと思います。
  215. 石田宥全

    石田(宥)委員 長くなりますから、関連ですからやめますけれども、私も話に立ち会ったのですが、県庁の職員は入植ということが全額国庫の開墾建設については絶対条件であるという先入観を持ってこの問題の処理に当っておるようです。それでは解決がつかないのです。今局長の答弁で明らかになったわけですが、それは原則は原則であって、特殊的な条件のもとにおいては特別に考慮の余地はあるということなら、やはり県庁の諸君のように非常に機械的に考えておられたのでは、この問題は解決つきませんので、これは一つその趣旨を県の方へ伝えていただきたい。そうしてまた県の方からも具体的なデータをとって検討していただきたいと思います。  ほかの質問者もおりますから、私はこれで質問を終りたいと思います。
  216. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 県の方から意見を出させまして、それを判定するようにいたしたいと思います。
  217. 小川豊明

    小川(豊)委員 私は開拓融資保証法の問題でお尋ねしますが、時間もたっておりますからなるべく簡単にします。従って、答弁もできる限り簡略に願いたいと思います。  昨年の三月六日の当委員会において、開拓融資保証法の一部が改正されたときに、附帯決議がつけられておるわけです。この附帯決議の趣旨は、政府出資の増大並びに都道府県開拓融資保証協会に対する会員出資金、都道府県の出資金及び中央開拓融資保証協会に対する政府出資が総体として均衡を保つという、この二つが附帯条件としてつけられたわけです。この附帯条件に対して、大石政務次官は、この趣旨を十分尊重いたしまして、これを実現するよう、一生懸命努力いたす所存でございますと、明瞭に答えられているわけなんです。  そこで、本年の政府出資が、この附帯条件をどういうふうに盛り込まれているかということをお尋ねしたいわけです。
  218. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 今度三千万円出資いたしますと、都道府県の出資が、  一、一、二という割合ではちょっと足りないかと思いますが、地方財政再建整備をやっておる状況もありますので、大体一、一、二という割合に近くなって、開拓農家の肥料、飼料、中家畜、種苗等の営農資金が一応達成せられるようにということを目途といたしておるのであります。
  219. 小川豊明

    小川(豊)委員 これ以上質問していくと時間がかかってしまうので私はこの問題はもう触れませんが、これはあなたの今の答弁だと、私は実はまだ均衡がとれていないと思うのです。これは努めて均衡がとれるようにしてもらわなければならぬ。  そこで、一体保証倍率の実績が最高限度の六倍に達していないわけです。これは開拓者側が営農の不安定の理由によって金融ペースにまだ乗っていない証左です。従って当然だと考えるわけですが、この金融ベースに乗らない開拓者資金融資を信用保証によって円滑化しようとするのが保証協会存立の本旨なのです。政府は対県出資の足りないのを補ってかつ相当額の代位弁済にもたえ得るように出資をするよう増大してこの制度の育成強化に努むべきである、こう私は考えるのですが、御見解はどうなのですか。
  220. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 この前も他の委員の方にお答えを申しましたことと同じでございますが、現在は四・七倍弱でございます。そこで理由は二つくらいあると申し上げました。一つ開拓者がスムーズに資金の供給を受けるように信用度が高まっておらぬことが一つ、都道府県別に資金ワクを出資に応じまして割りましてそして十分に借りられたところがあるか、頭打ちがあるか、借りられないところは必ず残余が出るというかワクが残る、そういうように全国集計が出ていますから、中央において調整ワクというものでも設けまして、実情に即して初めからワクを当ててしまって、いつでも余るということをしない措置をとる、貸し出しがもっとできるところは借りられるように全国的にしたいと思います。  それから中金の方にも開拓者の実情に応じましてこの融資保証法で債務保証をするのですかち、中金が資金を貸す側であっても、同時に借りる側の事情も了解して協力をしてもらうということにしまして、借り受け側の開拓農協連につきまして、ブロックごとに、中金の人も指導的に援助的に人を配置してもらうように中金と話しておりまして、今日全国ブロック中の六、七ブロックはすでにそういう措置がとられております。そういうことによりまして、六倍はもちろんのこと、できますれば債務保証を今まで行って参りました結果の実績から見まして、六倍を若干こえてもよろしいと私は判断しますので、その努力を今後いたしたいと思っております。まだ目下のところは中金がそこまで信用事業として認識しておりませんで、六倍でとどめてくれと言っております。その間努力をし合いまして償還もよくいくようにいたしまして、六倍をこえてもいい事態を実現したいと思って努力したいと思います。
  221. 小川豊明

    小川(豊)委員 これ以上のことは議論になるからきょうはやめます。  次に、最近本制度による保証融資金の延滞及び代位弁済額が増加しつつあるように見受けられるのであります。この趨勢のまま進むと制度の機能は麻痺することも危惧されるわけです。この原因は開拓地における連年の災害、それによる生産力の低下、政府資金や災害資金償還金の累増が一つの原因である。営農不振等もまたあげられると思うのです。これは制度資金の運用等によって解決のつく問題ではなく、政府の抜本的な施策が必要になってくるのじゃないか、この政府施策制度の育成強化によって開拓者は現在の窮状から脱出する一つの足がかりが得られ、ひいては営農の安定も期せられる、こう思うわけですが、これに対する政府の見解を一つ伺いたい。
  222. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 小川委員と同一の認識をとりまして、その結果といたしまして、この法案を通過して下さいますと、法によりまして計画的に行えます。すなわち従来のように毎年度の予算、財政融資を決め、一年ごとに措置実施していくということにとどまらず、少くとも五年間は計画して入植農家の不振なものにつきこれを立ち直らせるという態勢になると思いますから、金融機関も、政府努力、また都道府県の努力と相待ちまして、金を貸しやすくなる。また、あわせて営農振興をはかって、開拓資金償還をしやすいように信用力をつけられると思います。
  223. 小川豊明

    小川(豊)委員 次に本年度の政府出資に伴う予算案の説明ですが、これを見ますと、本年度の出資の中に中小家畜の購入資金の保証を与えるようであります。ところが、本制度による保証は、やはり短期の肥料や飼料その他の営農資材の購入資金の保証を私はゆるがせにはできないと思う。そういう点から、政府はこれからの四月以降における資金需要度に対する保証をどういうふうにお考えになっておるか、この点をお聞きしたい。
  224. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 信用保証協会が行いまする業務の対象といたしましては、法令上では中小家畜はすでにその中に入っておりまして、従来これに充てる資金が乏し過ぎたのと、開拓者側から要望が多いこととから、今回は中小家畜導入資金の確保を期しまして、三十二年度は三千万円の増資をしたい、それが六倍の貸付金となって一億八千万円が活用できることになるわけであります。その他の資金といたしましては、肥料で十七億円、飼料で一億九千万円、今申しました中小家畜で一億八千万円、大体このくらいで本年度は適当かと思っておるわけであります。
  225. 小川豊明

    小川(豊)委員 それから、従来各地区の農地事務局の管理部長が保証協会の支部長を兼任しておった、ところが、これを今度廃止することになったというふうに聞いておるが事実なのかどうか。事実だとすると、その後の対策なり処置なりはあなたの方でどういうふうにおとりになりますか。
  226. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農地事務局の管理部長が中央保証協会の支部長に当る役目を兼ねておるのは適当でないので、農林省の方針といたしましては、前回の委員会で御質問のありました以前においてこれをやめさせる方針をきめました。それについては、中央保証協会と相談中でございますが、中金の援助を借りるなどしまして、管理部長がその事務をやっておりました場合でも実費の旅費等は支給しておるそうでございますが、これらを活用すれば円滑を期して監督者と実行者との責任の区分が明らかになると思います。
  227. 小川豊明

    小川(豊)委員 そうすると、事務局の管理部長は保証協会の支部長を兼ねていたが、今度中金の支所長に兼任させる、こういうことになるわけですか。
  228. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そこのところは研究中でございますが、貸す側と保証する側と保証される側とございますから、適当なものを探したいと思っておりますが、まだ成案は得ません。だから、まだ実行をいたしておりません。
  229. 小川豊明

    小川(豊)委員 そこでこの支所長の点ですが、これは運営の大きな問題になってくる。そこで事務管理部長がやらないとすればだれかやらなければならぬ。それを考えていないというのは少しうかつで、これは至急考えて対処しなければならぬものだ、こう思っております。もし中金の方にやらせるというなら、それならそれで貸す側と保証する側とで意見が出てくるでありましょうが、それじゃ中金にさせない場合には保証協会に対する予算の裏づけ等がないとこの仕事はできなくなるのじゃないか、こうも思う。従来農地事務局で当っていた開拓融資の監督の仕事は今後これをどういうふうにするかということは、今後の運営の上からいうと重大な問題だ。この点についてあなたの方で考慮中だと言われるとこれ以上何とも聞き得ないことになるのですが、これは支所に当らせるべきじゃないか。それから農地事務局がこれに関係しなくなると、保証協会から別途にあるいは駐在員の形のような人を派遣するようになる。これもまた予算を伴わなければできない。こういう場合に地方交付金との関連が出てくる。それで交付金を減額してこの費用に充てるような考え方は持っていないとは思うのですが、どういうふうに考えておりますか。
  230. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 中央保証協会がやっておりますことは中央保証協会がまず第一であります。その意見を尊重してきめたいと思っておるから研究中であるわけであります。あとの方の御質問はちょっとわかりませんでしたが……。
  231. 小川豊明

    小川(豊)委員 もちろん中央保証協会の問題だから中央保証協会がやるべきだが、中央保証協会自体がこれをやっていくについても、今まで議論はあったかもしれぬが、管理部長がやっておった、今度中金等がやるかやらぬかわからぬが、そういうふうに持っていくならば一応議論があっても何とかやっていけるかもしれぬが、そうでなく別途に管理していくようになると、どうしても予算をつけていかないとやり得なくなってくるのじゃないか。
  232. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 中央と都道府県に協会がありますから、ブロックごとに締めくくることが必要かどうか、私は疑問であると思います。農地事務局があるためにブロックで一度締めくくって都道府県にいっておるわけでありますが、そこのところは事務の仕方を変えればできるものであるしやるべきもので、また役所の者が支部長をやるべきものではない、そういう原則のもとに早急に研究をしたいと思います。
  233. 小川豊明

    小川(豊)委員 私はなおお尋ねしたいこともあるが、ほかにも御質問したい方があるので、私一人で時間をとってもいけませんから、今日はやめておきます。
  234. 阿部五郎

    ○阿部委員 農地局長にお尋ねします。開拓営農振興臨時措置法案の第五条「前条第一項の規定により補償金の交付を受けた都道府県は、」と書いありますが、これは何かお間違いじゃないでしょうか。間違いでないとすればそういう都道府県というのはどれをさすのでございますか。
  235. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 「補償金」というのは「補助金」のミスプリントのようでございます。もう一カ所ミスプリントがあるのです。前に訂正が申し出てあるようです。
  236. 阿部五郎

    ○阿部委員 委員長に伺っておきますが、この法律並びに天災融資関係について大臣が明日御出席なさるということですが、そうなっておりますか。そうなったらそれに関して一、二点伺いたいと思いますが。
  237. 小枝一雄

    小枝委員長 明日は自治庁長官だけ出席いたします。十時三十分から十一時までの間二十分だけということになっております。農林大臣は明日は出席ができかねます。
  238. 阿部五郎

    ○阿部委員 開拓並びに天災融資質疑打ち切りに至るまでに一ぺん大臣に来てもらうことができますか。
  239. 小枝一雄

    小枝委員長 今晩中に連絡をとってみます。
  240. 石田宥全

    石田(宥)委員 今の保証法の中の資金内容ですが、中央保証協会三億七千五百六十二万円の資金のうち政府出資額が二億八千万円、こうなっております。その差額の九千五百六十二万円という資金の内訳を承わりたい。どういう性質のものか。
  241. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 私から御説明いたします。九千五百六十二万円の内訳の九千五百万円は開拓融資保証法ができまして中央保証協会ができましたときに、その前にございました財団法人の日本開拓融資保証協会の基金を引き継いだものでございます。それからあとの六十二万円は地方保証協会の出資金でございます。
  242. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうしますと、開拓融資保証協会というのは一体今どういうふうになっておるのですか。
  243. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 現在出資団体として残っております。
  244. 石田宥全

    石田(宥)委員 その団体の構成員はどういうものですか。
  245. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 これは財団法人でございますので、構成員というものはございません。
  246. 石田宥全

    石田(宥)委員 聞くところによりますと、この財団法人の開拓融資保証協会というものの金は元来開拓者の出資したものである、こういうふうに聞いておるのですが、違いますか。
  247. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 これは全国の開拓者から当時出資したものでございます。
  248. 石田宥全

    石田(宥)委員 今日は午前中から開拓農民の窮状がずいぶん追及されて、しかも特別立法の措置をして救済をしなければならないという段階にありますときに、そういう開拓農民の出資したものを、表面的には何ら開拓農民と関係のないような、こういうところに取扱いをされておるということはまことに遺憾に思うのでありますが、これは解散をして開拓農民に返すなりあるいはその他開拓農民の意思に基いて処理するという措置の方法はないのですか。
  249. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 財団法人になってしまっておるものでありますから、その寄付行為に従って処置しなければいけない。社団法人と違いますから、その措置はとらない方がいいと思います。
  250. 石田宥全

    石田(宥)委員 法律上の措置についてはいろいろ問題があるかもしれませんけれども、少くとも繰り返すことはないほど答弁は明瞭なのでありますが、これは何らかの手続によって、開拓農民がもっと有意義に—もちろんこれは開拓農民に因縁のない金ではございませんけれども、少くとも中央保証協会の基金の中にそれだけの負担を農民がしていなければならないということは私は筋が通らないと思うので、これは一つ今ここですぐどうせよということは申しませんが、実情に沿うように適切な処理を考えていただきたい。
  251. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 とくと考究をいたします。
  252. 小枝一雄

    小枝委員長 残余の質疑は明日続行いたします。     —————————————
  253. 小枝一雄

    小枝委員長 この際お諮りいたします。ただいま建設委員会審査中の特定多目的ダム法案は河川総会開発事業として多目的ダムに関し事業の促進、その一元的建設及び管理をはかり、多目的ダムの効果をすみやかにかつ十分に発揮させようとするものでありまして、多目的ダムの建設に伴い農業水利等の問題とも関連がありますので、この際建設委員会に連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     —————————————     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお開会の日時につきましては、両委員長協議の上追って公報をもってお知らせいたしますので、御了承願います。     —————————————
  255. 小枝一雄

    小枝委員長 なお理事中村時雄君より理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認めます。  つきましてはその補欠委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、稲富稜人君理事に指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十四分散会