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1957-03-15 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十五日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 中村 時雄君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大石 武一君    大野 市郎君       川村善八郎君    木村 文男君       椎名  隆君    鈴木 善幸君       竹内 俊吉君    中馬 辰猪君       綱島 正興君    永山 忠則君       八田 貞義君    原  捨思君       松浦 東介君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    伊瀬幸太郎君       楯 兼次郎君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (振興局長)  大坪 藤市君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君  委員外出席者         公正取引委員会         委員      蘆野  弘君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局審査部         長)      竹中喜満太君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局審査部         第一審査長) 三代川敏三郎君         総理府事務官  後藤 英輔君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      河野 恒雄君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部農         業協同組合課         長)      大和田啓気君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月十五日  委員松野頼三君及び川俣清音君辞任につき、そ  の補欠として竹内俊吉君及び中村時雄君が議長  の指名で委員に選任された。 同日  中村時雄君が理事に補欠当選した。     ————————————— 三月十五日  湿田単作地域農業改良促進法の一部を改正する  法律案青木正君外五名提出衆法第一四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  湿田単作地域農業改良促進法の一部を改正する  法律案青木正君外五名提出衆法第一四号)  酪農振興並びに牛乳取引に関する件     —————————————
  2. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 これより会議を開きます。  先ほど付託になりました、青木正君外五名提出湿田単作地域農業改良促進法の一部を改正する法律案議題といたし、審査に入りたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 御異議なしと認めます。それでは本案趣旨について提出者説明を求めます。青木正君。
  4. 青木正

    青木正君 ただいま議題となりました湿田単作地域農業改良促進法の一部を改正する法律案に関しまして提案理由を御説明申し上げます。  この法律湿田単作地域と申しますのは、常時排水不良であるために農地としての利用率が低く農業生産力が劣っているいわゆる低位生産地域でありまして、関東を始め各地方に広範に分布しております。  そこで、これらの地域農業改良促進をはかるため、昭和二十七年十二月、本法制定を見た次第でありまして、本法施行以来昭和三十一年まで、農業改良計画に基きまして、団体営灌漑排水で約三万八千町歩、暗渠排水、区画整理客土等耕地整備事業で約三万六千町歩、小団地開発事業で五百町歩に及ぶ事業を完成し、相当の実績をあげて参りましたものの、その進捗率は全体計画から見ますると、およそその五分の一にすぎないのでありまして、今後なおなすべき事業が多々残されておるといわざるを得ない実情であります。  由来これらの地域は、比較的気象条件に恵まれ、土地条件整備に伴う経済効果は著しく、わが国経済自立の達成上きわめて重要な地位を占めるものであり、また新農村建設の上からも本地域農業改良促進するの要、ますます大いなる事情にかんがみまして、この際本法有効期限をさらに四カ年延長いたしまして、各般の関係事業をますます促進し、本法制定の所期の目的を達成するようにいたしたいと存じます。  以上が本法案を提出した理由でございます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  5. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 それでは次に質疑に入ります。質疑はありませんか。——質疑がなければ、本案は予算を伴う法律案でありますので、この際国会法規定によりまして、内閣に対し意見を述べる機会を与えることにいたします。八木政務次官
  6. 八木一郎

    八木政府委員 ただいまの法案につきましては、御提案趣旨を尊重いたしまして、誠意をもって当りたいと思います。
  7. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 次に討論に入ります。  討論はありませんか。——なければ採決いたします。  本案に賛成の諸君起立を求めます。   〔総員起立
  8. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお本案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 御異議なしと認めまして、さよう決定いたしました。     —————————————
  10. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 次に酪農に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。淡谷委員
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まず公取委員長に御質問いたします。私から言うまでもなく公正取引委員会なるものは非常に大きな権限を与えられておることは事実でありまして、特に委員長は天皇が認証するというような大事な厳粛なる地位についておる方であります。そういたしますと、この委員会方向いかんは、一つ権力を握ったものの行動として、日本国民生活に重大な影響を及ぼすことは論をまたない。ところが今回起っております三八酪農地帯における私的独占禁止法違反審判開始について、主としてその調査並びにいろいろな発言は、あなたの監督される事務官諸君によって行われておりますが、この事務官の言うことがたまたま前回の委員会で問題になりましたとき、地方行政の批判、むしろ非難をあえてなし、特に農林行政については国の施策と激突するといったようなことがはっきり言われておる。あなたは前会これに対して、そういうことはないと思うというような御答弁でございましたが実際この発言をなされた三代川事務官にこの席上で問いただしました場合、はっきりそう思うという答弁を言っておられる。私はこの問題は将来の日本酪農行政に重大な影響があるものとして、もしも委員長自体もこの事務官と同じような考えを持たれておるとするならば、私は委員長自体酪農行政並びに私的独占の上に考えられていることをこの際はっきりここで検討し、批判する必要があると確信しております。またあなたの部下の事務官が、あなたの考えておられるような方向と逆な方面に走っておられるならば、この際、あなたは断固たる態度をもってこれを粛正する義務があると私は考えます。従って、私はこの問題はこの席上でじっくり検討いたしまして、少くとも一つ権力機関である公正取引委員会が誤まった方向農民を迷わせないように、この際徹底的に究明する必要をまず感ずるものであります。いろいろな御用もございましょうけれども、じっくり落ちついて、ぜひ委員会審議をお聞き下さい。同時にまたあなたのはっきりした態度も表明されるように、あとでまた御質問申し上げます。  そこでまず三代川事務官にお尋ねしますが、あなたは先般この委員会で、農林省農林政策の上で非常なそごを来たし、あるいはあなたの考えとは違った点があるような発言をなされておりまするが、具体的に言ってどういう点が最も違っておるか、御答弁願いたいと思います。
  12. 三代川敏三郎

    三代川説明員 私、先般はいろいろ思い過し思い違いがございまして、穏当でない、適当でないことを申し上げましたように存じまするので、その点をここでおわびさしていただきます。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それではあなたは、自由民主党の政務調査会農林部会において発言された全体をここで否定いたしますか。もうこれは間違っておったから取り消すというのでございますか、その点はどうですか。
  14. 三代川敏三郎

    三代川説明員 私の思い過し思い違いでございました。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういたしますと、青森県の県の行政の失敗から雪印に穴埋めをさせるかわりに、農民からは経済的にしぼり取れということであると言って青森県政を侮辱し、批判するような御言動はお取り消し願いたい。同時に、農林行政については農林省と激突をしているのではないかということを、これまたお取り消しになりますか。
  16. 三代川敏三郎

    三代川説明員 取り消しさしていただきます。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたがそうはっきりこの席上でお取り消しになるならば、私はあえて追及いたしませんが、そういたしますと今度の審判開始も、こうした間違った事務官認識によって行われたのであるという一点は、委員長どうお考えになっておりますか。
  18. 横田正俊

    横田政府委員 これは内部のことを申し上げていかがかと思っておりますが、この事件の一番中心になりまして調査をいたしましたのは後藤事務官伊従事務官でございました。三代川事務官はその上司で、もちろんこれも審査に当ってはおりまするが、一番詳しく調べましたのは、先ほど申しました二名でございます。そのような関係で、多少ある席で申しましたことが行き過ぎであったり、落度もあったと思いますが、この審判開始の基礎となりました事実の調査には、間違いはないと私は考えております。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 三代川事務官がすでにこの発言を取り消された以上、私は勢い質問を委員長自体の御認識に向けざるを得なくなって参りましたが、一体日本酪農が従来思わしくいかず、このために酪農振興法決定されたのでございまするが、この思わしくいかない原因というのは、日本農業零細性に起因することは言うまでもございません。従って酪農振興法なるものはこの零細性をなくして、もっと大きな規模において酪農民にその仕事を進めさせようという構想から出ておりまするが、この酪農振興法私的独占禁止法とは何ら抵触し、あるいは矛盾しないものであるかどうか、委員長のはっきりした考えを伺いたい。
  20. 横田正俊

    横田政府委員 日本酪農政策をどういう形にしたならば、一番日本のためになるかというような基本的な問題につきましては私は十分な見識を持っておりませんが、しかしこの酪農振興法ができまする際に公正取引委員会農林省でいろいろ検討いたしましたようでございますが、この際は、この酪農振興法のねらっておりますることも独占禁止法考えておりますることとは抵触をしない、またその抵触しない形において酪農振興をはかる、こういうことで発足いたしたように考えております。先ほど申しましたように、果してそれが日本のために最も正しい、よい形であるかというような点は、これは酪農政策としてもう少し十分に検討する余地があるのではないかと思いまするが、そういう趣旨ででき上っているように私は心得ております。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 酪農振興法のどの点が将来検討を要するか、もっと具体的にお考えを聞かせていただきたい。今度の問題なども、酪農振興法によって農林省がとった態度と、県がとった態度と、あなたの方の委員会態度との間にこの問題の焦点が集められておるようでございますから、実際お仕事を進められていく上において、酪農振興法のどの点が将来検討を要する問題であるか、お考えがございましたらはっきりお示しを願いたい。
  22. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど申しますように、私は酪農振興、あるいは酪農政策そのものについて格別の研究もいたしませんし、特別な意見を持っておりませんので、これはむしろ農林行政担当農林省でお考えになることでございます。私は今、どういう点がいけないから改訂を要するというようなことを申し上げたわけではないので、もし検討する余地があればよく考えていただきたい、こう申したわけであります。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 酪農振興法集約酪農地区決定いたしまして、この集約酪農地区には中心工場を設定することができるようになっておりますが、この集約酪農地帯という一帯の地域の中に中心工場一つである場合に、これは私的独占禁止法と抵触いたしますか。
  24. 横田正俊

    横田政府委員 これは別に抵触いやしません。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういたしますと今度の審判開始決定書に基いて考えられますことは、この中心工場集乳をする場合に、農民に対して何らか協同組合あるいは県等強制力を加えたという点にこの審判開始理由があったというふうにとって差しつかえございませんか。
  26. 横田正俊

    横田政府委員 大体そうでございます。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで、この中心工場決定いたしましたのは青森県でありますが、この中心工場決定するに当りましては、先ほど委員会にも陳情がございましたが、三八地区酪農民大半がみずからの意思をもって決定したのだ、こう言っております。ここに食い違いがある。そこであなた方の審判決定書の中にあります通り協同組合が牛を貸し付けするに当って、その乳を納入すべきことを協定したと言っておりまするが、一体中金等が資金を貸し付ける場合に、条件として子牛の返還を求め、あるいはその牛からしぼった乳の共同納入決定することを条件とするということは独禁法と抵触いたしますか。
  28. 横田正俊

    横田政府委員 これはこの前の北海道雪印中金事件で、それについての公取考え方は出ておると思いますが、そのこと自体は必ずしもいわゆる債権確保範囲内におきまして、そういう一種のひもをつけることは別に差しつかえないのでございますが、いかなる場合にもその乳を必ず特定会社に出さなければならぬというような拘束をつけることになりますと、その点はやはり問題になってくると思います。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 特定会社というようなことを言っておられますが、これは農協等自分たちの乳を納入する中心工場というものをきめまして、この中心工場に対して、農協組合員諸君のとった乳はこれを一括して納入するということ自体があなたの言う抵触する案件であるかどうか。この点はどうでございますか。
  30. 横田正俊

    横田政府委員 協同組合に出すこと自体は別に問題ではないと思います。結局最後の特定会社に出すというような点まで拘束して参りますと、そこに問題があるというふうに申し上げたのであります。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はその点に大へん矛盾があると思う。農協に乳を納入することは抵触しない。農協の販売あるいは購買の自由につきましては、購買委託あるいは、無条件委託共同納入を前提にするのが最近の動きでございます。その場合に農協無条件に納入させました乳を、農協によってこれを一つ中心工場に持ち込むことは抵触するのですか。
  32. 横田正俊

    横田政府委員 問題はやはりその無条件委託という問題にさかのぼるかと思いますが、御承知のように現在の農協法自体無条件委託強制はできないという建前になっておりまするから、それをしないということによっていろいろな拘束を加えるということになりますれば、その面におきましてやはり独占禁止法の問題が生ずるというふうに考えております。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点は、この前の北海道の問題でも芳賀委員から究明された点でございますが、私は公正取引委員会諸君は、失礼でございますが、委員長初め農協の発足の理由等について、どうも十分な御認識がないと私は思う。一体私的独占禁止法という法律は、大資本資本力による集中自由競争であろうが、あるいは他の方法を用いようが、資本の力をもって事業を独占しようという大資本を押えるための法律であると思う。こうした個人並びに小数の株主による独占資本と、協同組合そのもの資本構成とははっきり違っておるという点を委員長認識されておりますか。
  34. 横田正俊

    横田政府委員 株式会社組織事業体協同組合の違いは、私もよく認識しておるつもりでございます。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、かりに日本農村協同組合の系統的な一つ事業に統一され、協同組合組織によって大半がその中におさめられた場合、これは私的独占禁止法には触れないものと私は認識いたしますが、その点はどうでございますか。
  36. 横田正俊

    横田政府委員 それはそのことだけでどうということはもちろんないと思います。御承知のように、協同組合法の形によります事業者の活動というものは、無制限に独占禁止法適用は除外されているのではなくて、これは御承知のように独禁法の二十四条に規定がございまして、やはりある範囲においては、独占禁止法適用される場合が規定されております。従いまして、今抽象的にお話しになりましてお答えしにくいのでございますが、具体的にいろいろな場合が出て参りますと、やはりそこに独占禁止法の問題が残されておるというふうに理解しております。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この問題は明確にしておきたいと思いますので、二十四条は大へん長いのですが、二十四条のどの部分が委員長の引かれた点であるか、御指示を願いたい。
  38. 横田正俊

    横田政府委員 第一項のただし書きをごらんいただきますと、不公正な取引方法を用いる場合または一定取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げる、この場合には協同組合といえども適用除外にはならないのでございます。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 このことは協同組合組織が普通に行われているならば私は起り得る事態ではないと考える。たとえば無条件委託の問題なども委員長は問題にされておりまするけれども、組合員意思組合当事者を信頼いたしまして、無条件で委託するということを自主的に決定した場合は、むろん公正取引委員会の方とは何のひっかかりも生じないと思いますが、その点はどうでございますか。
  40. 横田正俊

    横田政府委員 もちろん問題はございません。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それで、この組合意思決定であります。この意思決定の最高の形は総会で行われる。総会少数意見があった場合にさらにこれを審議しまして、この少数意見が否決されました場合は、組合員意思が一本にまとめられたというふうにわれわれは理解してこれまで参ったのでございますが、総会意思決定多数決をとりまして、その多数決によってなされた場合でも、あなたはこれは強制であるとお考えになりますか。
  42. 横田正俊

    横田政府委員 これはむしろ農協法自体の問題にもなるかと思いますが、無条件委託を決議いたしました場合にも、やはりそれを強制するということはできないのではないかと考えております。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点に大へん食い違いがあると思う。農業協同組合決定したことに対して、協同組合員が従わない場合は、脱退の自由も認められている。脱退して別に運動するのはかまいませんけれども、組合員組合決定に服しなかった場合に、組合規定によりましてさまざまの制約を受けるのは、団体行動としては当然でございますが、それが幾ら意思決定しましても、少数組合員がまるで従わなければ、従わないという態度をあなたの方で公正と考えているのか。小さいことでございますが大へん大事なことです。われわれは国会少数派である。うんと議論しまして本会議において否決された場合は、われわれは従う義務が生じてくる。国民全体が従う。私はこの民主主義原則はやはり組合運動の場合に貫かれなければならない原則だと思う。組合で何と決定しようとも、われわれは不服なんだからこの決定には従わないというような一体協同組合法の解釈がございますか。
  44. 横田正俊

    横田政府委員 私の申し方が不十分でございましたかと思いますが、いわゆる農協法共同施設利用に関しましては、それを強制してはならない、従いましてその範囲におきましてその決議に拘束されるものではないというふうに私は考えております。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この場合、設備を使ってはならないという拘束を与えてはならないという規定でしょう。設備を使えという拘束ではなくて、設備の使用を拒んではならないという規定ではございませんか。そう私は了解しますが、どうですか。協同組合法を見て下さい。拒否することができないという規定だと思う。
  46. 横田正俊

    横田政府委員 ちょっと私の申し方が悪かったと思いますが、むしろ問題は、農業協同組合法十九条の一項から参ってきていると思いますが、施設の一部をみずから利用すべき旨の契約を締結されました場合に、その契約の締結は組合員任意としてある、この点を私は申し上げたわけであります。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 組合員任意とするということは当然な話なんですが、しかしその場合、問題があまりよそへそれますと混乱いたしますから一点に集約いたしますが、中心工場の指定をし、そして集約酪農法に基いて牛等貸付されている、その貸付条件としてその中心工場に乳を入れるのであるという条件がついていること自体は、それに承諾を与えて牛の貸付を受けた農民意思強制するものではないと思うが、牛は借りるが、乳は納めない、こんな勝手なことが許されますか。
  48. 横田正俊

    横田政府委員 それは先ほども申し上げましたように、結局場合によりまして違ってくるのではないかと思います。その点は前の北海道のあれの審決の中にその趣旨が現われていると思いますが、一応そういう拘束は、自体が悪いというふうに私どもは考えているわけであります。場合によりますと拘束はいけないというふうに考えます。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはあなたの方の審判開始がなされておりますので、いろいろこの審判の手続中に出てくると思いますが、あなた並びにこの事件に当りました後藤事務官等が、北海道の問題にも関連いたしまして、非常にこの点あいまいにとられている。ある場合には抵触する、ある場合には抵触しない、こんな不安定な状態であなた方の頭から割り出してやられたのでは、今後集約酪農事業の円満なる進展は望めない。現にあなた方の審判開始によって地元の農家に非常に大きな混乱を与え、この事業の遂行を妨げておるのであります。従っておそらくあなたの御意思されるのは、一つ中心工場に乳を納めるに当っても組合員の自由任意契約によってなされるのはいいけれども、何か不当な手段がとられておるからいけないというふうに私は考えますが、その点はどうでございますか。
  50. 横田正俊

    横田政府委員 全くその通りであります。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで問題を返しますが、一般金融機関等が金を貸す場合、あるいは土地担保に取り、牛などを担保に取る場合もある。そうした場合に、この牛の飼育や管理をある一定団体にやれということを命じた場合、これがやはり広範にわたるとあなた方は一般金融機関も全部取り締りますか。
  52. 横田正俊

    横田政府委員 その程度で果して問題になるかどうかわかりませんが、金を貸します際に、作った品物をどこへ出せというようないろいろなひもをつけます場合は、それが債権回収の必要以上に出る場合が往々にして出て参るわけでございます。そうなって参りますと、これはやはり問題になり得るわけでございます。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そんなことはおかしいです。債権以上にひもをつけるなんてことはめったにありません。債権以上にたくさんのものを取られるくらいなら、百姓は何も借金しない。ただ広範にわたって行われる普通の銀行の貸付金なども、そういう農家の動産、不動産を実際において統制した場合、これは一体協同組合等と同じようにあなたはお考えになっておるのですか、どうなんです。
  54. 横田正俊

    横田政府委員 担保を取ること並びにその担保確保をはかるということは、これは当然債権者としてしていいことでございます。その範囲においては何も問題はないと思います。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 協同組合が国から牛の貸付を受けて、その貸付を受けた牛を各組合員に貸し付けて、その償還をはかるために、一つ集乳計画を立てる。牛の貸付を受けようとする者は、この集乳計画に従えということは、担保よりももっと安い担保じゃないか。なぜそれが問題になるのですか。それをさえ否定したならば、一体何で債権を保証するか。組合は責任を持って貸し付けた牛の代金回収を何によって担保しますか。
  56. 横田正俊

    横田政府委員 従って担保を毀滅する、あるいは債権に害を与えるような行為はもちろんいけません。その点は先ほどから申し上げておりますように、その債権確保範囲におきましては、もちろん拘束されてしかるべきだと考えております。しかし具体的の場合に、それが果して債権確保の必要以上に出ておるか、あるいはその範囲にとどまっておるかということは、個々のケース、ケースできまることであろうと考えます。
  57. 淡谷悠藏

    淡谷委員 こういう問題を深く突っ込みますのも、私はこの私的独占禁止法及び公正取引の法律というものは、私的独占を禁止するにあると思うからです。今日日本酪農が独占であるという認定をされるのは、一体どれくらいの範囲にわたるものであるか。端的に言うならば、近代的な設備を持って近代的な事業を行うという工場が一体何頭の牛を所有し、どれくらいの広さの土地を必要とするのか、この限度に対する御認識はございますか。ある事業においては狭いものもあるでしょう、ある事業においてはかなり広いものでも独占禁止法に触れない場合もある。日本酪農というものは従来の零細性を打ち破ってもっと大きな経営範囲を持とうという目的に立っておるのでございますが、一つの県の一区域などにその独占の形が行われたとしても、今日の酪農の実績においてはこれを独占と断定するには早過ぎる。一体委員長はこの酪農の独占という形式が具体的にどれくらいのものをさすのか、はっきり基準を示していただきたい。これは国の集約酪農の構想自体にも大きな影響を持つものと思いますので、その点の認識を伺いたい。
  58. 横田正俊

    横田政府委員 公取としてはかって酪農あるいは協同組合を独占で取り上げたことはございません。これは何かのお間違いであろうと思います。  それからなお独占が形成される範囲ということは、これは場合々々によって非常に違っておりまして、いわゆる一定取引分野というものをどういうふうに見ますか、今問題になっております三八地区で、いわゆる集乳面におきまして一体どの範囲のものを一定取引分野と見るかということは、なかなかむずかしい問題でございまして、これはおそらく今度の事件一つの争点にもなろうかと思いますが、その場合々々によってきまる問題でございまして、どれだけの範囲のものがなるかということは、これはちょっと抽象的には申し上げかねると思います。
  59. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は何も抽象的にあなたから伺おうとは思っていない。少くとも農林省集約酪農というものを始めるに当っては、こうした見解があるはずなのです。これは私農林省の方に御答弁を求めますが、一体農林省としては現在の酪農事業が、一つ中心工場をめぐってどれくらいの規模に行われることが適当であり、公正であると考えておられるか、この際はっきり私は伺いたい。
  60. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 集約酪農地域地域の大きさについての点でございますが、これは酪振法に基きまする政令によりまして、その大要を示してございます。夏一日少くとも百五十石程度の乳が二時間工程によって集まる地域、それは中心工場に集まる、そういう大きさを大体のめどといたしておりますが、それは一般なめどになりまして、実際のその地域々々の事情によりましていろいろ問題が違ってこようかと思います。大体そういう考え方でいきますと、約五千頭程度の乳牛が飼養されていなければならないかと存じます。さようにいたしまして、その地域の中におきまするえさの自給率が八〇%に到達し得る見込みのある地域、こういうことに相なると思います。従いましてそれらは畑地あるいは水田、さらに草地を利用できますところの牧野等、それらの立地条件というものの算定の必要が生じてくると存じます。で、三八地域の実情を申し上げますと、これは御存じの通り八戸市と三戸郡全体十二カ町村にわたっておるわけでございまして、土地面積の大きさは十五万五千町歩、総農家戸数が約一万九千戸、詳しく申し上げれば一万八千七百七十一戸でございます。水田が七千二百七十五町歩、畑地が一万三千五百二十六町歩、草地の面積が現在利用いたしておりますものが一万町歩利用可能と推定されるものが一万八千町歩、現在乳牛を飼っておりまする農家戸数が千二百六戸、頭数が千六百七十九頭、これが計画当時の頭数でございます。頭数その他農家戸数については、若干の異動があることは御承知おき願いたいと思います。これを五カ年計画で完成いたしまして大体五千頭に伸ばしたい、かように考えるわけでございます。そういたしますと、この計算通りに参りますと、これが完成したときには百九十五石程度一日の集乳量が出るのじゃないか、こういうような計画に相なっております。なおこれは、現在の私たちの考えではそのような考え方でおりまするが、この交通の状況の変化あるいは交通いたしまするいろいろな、たとえば冷蔵車等の発達がございます。そういうようなものが出てきまして、いろいろ状況に変化があることは現在でも考えられることでございますが、今のところの私たちの状況の地区の設定といたしましては、上述いたしましたような基本的な考え方で出発いたしております。
  61. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは現在の農家の常識から申しますと、相当広い地域と多数の牛を包含する範囲である。従ってここに中心工場を設定するというのは、これらの農家がとった乳を遅滞なく引き取らせ、かつこれを最も有利に販売するという目的を持ち、一定計画を持った中心工場であり、施設を完備した中心工場であります。同時にこれはたくさんのしぼった乳を消化できるようなかなり大規模なものを設定しなければならない。またそれに対する酪農民の乳の供給も断続せず、不断に続けられなければならないといったような一連の計画に沿ったのが中心工場の設定であると私は了解しておりますが、その点はどうでありますか。
  62. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 その通りでございます。
  63. 淡谷悠藏

    淡谷委員 現在の青森県の三八地帯には農業協同組合施設としてそれらの使命を果し得るような工場が現存しておったかどうか、この点はどうでございますか。
  64. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 この設定をいたしまする当時におきまして、農業協同組合によりまするところの工場というものはなかったと記憶いたしております。
  65. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは公取委員長に伺いたいのですが、特定の工場を指定すること自体が、公正取引委員会の見るところでは独禁法に抵触するのかしないのか。中心工場協同組合施設以外に指定することが独禁法にひっかかりますか。
  66. 横田正俊

    横田政府委員 これは先般芳賀委員にもお答えいたしましたが、中心工場を指定すること自体は何も問題はないというふうに考えております。
  67. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それではこの中心工場を設定するに当って青森県のとられた態度独禁法に抵触する点がございますか。
  68. 横田正俊

    横田政府委員 青森自体独禁法の対象になりませんので、この点はこの前申し上げました独禁法外のことであります。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 牛の飼育をやろう、搾乳をしようとする協同組合中心とした動きがありましたが、この協同組合自体行動独禁法に抵触する点がございましたか。
  70. 横田正俊

    横田政府委員 これは具体的に、詳しいことは忘れましたが、要するにあの審判開始趣旨は、雪印といわゆる事業者である団体あるいはその役員等がいろいろなことをやりまして、酪農の自由な活動を抑制するという点が問題にされておるわけでございます。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 調査に当った後藤事務官にお伺いいたします。これは的確にいって協同組合のある者とこの中心工場に指定された雪印乳業との間に、何か不明朗な取引関係が生じておったかどうか。あなたの調査された結果をお聞きしたい。これは審判に差しつかえない程度でお話しを願いたい。
  72. 後藤英輔

    後藤説明員 雪印農業協同組合あるいはその連合会との間に何らか不明朗な関係があったということではございませんので、その間にいろいろな話し合いをいたしまして、雪印乳業が中心工場になるという前提のもとに話し合いが進められておったという事実だけを言っておるのであります。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 協同組合が適当な中心工場としての施設を持たない場合、当然これは他の乳業会社その他の資本との間に話し合いの進むのは当然であって、かなり大きな資本を出した工場が中心工場になる場合は一つの話し合いもなくこれをきめるなんてべらぼうなことは現実的には行われるはずがないと思いますが、その話し合いの内容に不当なものあるいは不明朗なもの、あるいはその他いろいろな独禁法にひっかかるような事件があったのですか。
  74. 後藤英輔

    後藤説明員 その話し合いの内容それ自体独禁法に触れるということではございませんで、その間のいろいろな経過のうちにそういう事実が積み重なりまして、全体としての雪印乳業の行為については独禁法に触れる点があるのではないかというのがただいまのところの結論でございまして、これについていろいろ御意見はあるようでございまするが、審判廷で十分御意見を承わって私ども最終的な意見を出したい、審査官としてそういうように思っております。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この前に県会議員の諸君が集まって、われわれ国会議員も呼ばれて第二会館の会議室であなたの話を伺ったときは、これは黒と思うという意見を発表しておられた。この問題は黒と思うというあなたの発表は一体どういう根拠に基いたのですか。その開始決定をしたあと、一事務官がこれを予測しあるいはこれに対して中間発表するような事態ではないと私は考えるが、あの際のあなたの言明は一体どこからきておりますか。
  76. 後藤英輔

    後藤説明員 青森県の県会議員の方がお見えになりまして、青森県の県会の有志としてこの問題について理解を深めたいために公取のできる範囲において説明をしていただけないだろうかという話がございまして、委員長及び委員会のお許しを得て私が審査部長と一緒に参り、青森県の国会議員並びに県会議員のいらっしやる席上においてお話しいたしました。その内容は、審査部長から概略のお話がありまして、私はただ審判開始決定書に記載してありますような内容の事実についてだけお話し申しましたので、その際に私が黒とか白とかいうことは当然申すべきでもなく、また申すこともできない立場にありまして、審査部長もそのようなことはその当時は申しておられなかったのでありまして、私は自分で黒ということをその当時申したということは何ら記憶ございません。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はあなたより年をとっておりますから物忘れがひどいのかもしれませんが、物忘れをする年寄りの私が覚えておって、若いあなたが忘れるというのはおかしい。聞いたのは私一人でありません。しかも東奥日報とう新聞に、あなたはこの前蘆野談話と同じように、この問題の将来を予見するようなことを書いておった。あの新聞の記事をあなたは御承知でありましょうか。
  78. 後藤英輔

    後藤説明員 東奥日報の記事については、先日の委員会でもって芳賀委員の御質問に対してその当時の状況は御説明申しましたが、重ねて御説明いたします。私が東奥日報の記者にお話しいたしましたのは、公正取引委員会の機能なかんずく審査部の機能というのは、経済の活動を引っぱっていくとか、あるいは行政官庁の行為を指導するとかいうような機能はないのだという意味のことを申したのでございます。新聞の記事もそういう内容でございまして、その点につきまして実は二月の初め、一日か二日ごろでございましたか、雪印会社の方がお見えになりまして、私の新聞記事は大へん不穏当だということで大へん強く抗議いたされました。私もあらためてその新聞記事を見たのでございますが、その内容は先ほど申したような内容でございますので、その点をいろいろと御説明いたしました。その際に会社の方も大体御了解になってお帰りになりました。その後三、四日いたしまして、その会社の方が近くへ来られたということでもって審査部長のところへお見えになりまして、実は先日のことについて大へん強い言葉で言ったけれども、よくわかった、決してそういう意味のことを言ったものではないからということをお話しに来られまして、そのまま帰って行かれました。そのことにつきましては、私は関係されておる方は御理解願っておられることと思っております。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは横田委員長にしっかりお聞きおきを願いたいのですが、今度の問題になりました三八の酪農に関する審判開始決定は、第二条第五項及び同法第三条の前段に抵触するといったような決定書の内容のようでございますが、これは私に言わせますと、裏づける事実に根拠がない。またこれを否定しておる面も相当あります。しかしこれは審決を待っての話でありますから、慎重なる審判をやっていただきたいのですが、ただその前に北海道の問題にせよ青森県の問題にせよ、あるいは蘆野談話として、後藤談話として中間発表されておる。これは一体何を意味するかということについて横田委員長に十分なるお考えを願いたいと思う。はっきり申しますと、明治あるいは雪印の乳業資本の競合にあることは見えておる。私はどっちにもつきません。ただこの乳業資本のどっちを選ぶかは協同組合の自由意思にまかせ、またこれを許可する農林省意思にまかせればよろしい。これは農林省がある乳業資本の肩を持ち、公取がある乳業資本の肩を持つような印象を与えるだけで、日本農村に与える影響が非常に大きいと思う。何も発表しなくてもよいものを、ことさらにこういう談話を発表しますと、これは大へんな混乱を招くのでありまして、事実後藤さん、あなたの発表をめぐって、地元ではこの争いが一そう大きくなってしまっている。あなたはその新聞記事に対して一回でも取り消しを要求しましたか。これは後藤さんに伺いたい。間違ったことを報道された場合に、あなたはこの間違いを訂正するように申し入れましたか。
  80. 後藤英輔

    後藤説明員 東奥日報に出ております記事の内容は、私が先ほど申し上げましたように、公正取引委員会、特に審査部の機能はそういうものであるということを申し上げたつもりでございまして、大体その記事の内容もそのような内容だと思われましたので、私は別にあの記事につきまして、取り消しを要求するとかいうふうなことは考えておりませんでした。
  81. 淡谷悠藏

    淡谷委員 中間で御意見を発表されるのもよろしいが、これが競合しておる二つの資本家の争いをますます大きく浮び上らせまして、そのためにまとまるものもまとまらず、また振興すべき事業振興しない結果を招来しておるのは事実なんです。今後もこういうような場合に、誤解を招くような、影響を与えるようなことをやはりあなたはやられる、こういうお考えですか。
  82. 後藤英輔

    後藤説明員 私の東奥日報に出ました記事がそのように利用され、あるいはまた悪用されたといたしますれば、これは私としてそのようなことを考えてやったわけではございませんので、はなはだ遺憾であると思います。と同時に、あの記事は実は私が発表したのではございませんで、私が農林省に行って話をしたのを、農林省で聞いたからといって、一両日後になって参って、聞かれた事実でございまして、実は私から進んで発表したというものではございません。
  83. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は第一あんな話を新聞に出されて黙って見ているということは納得できない。これは大きいのですよ。公正取引委員会というのは、さっきもお話しいたしました通り日本独占資本資本力にものを言わせまして、国民生活を圧迫したり、経済に混乱を与えたりするものを押えるための非常に大きな任務をになっておられる。やるべきことはたくさんあるじゃないですか。それをやらないで今やっと芽を出しかけた、しかも国がこれを行おうとしております集約酪農方向に混乱を与えるような、こずき回しをやっておるひまは私はないと思う。しかもあなた方の発表なりをたてにしまて、こうした集約酪農事業の進展を拒む、あるいはこれを自分たちの方に取ろうとするような資本の競合があるわけです。私は、以来こういう発表はいたしませんということを、あなたからも蘆野さんからもこの席上ではっきり御言明を願いたい。
  84. 横田正俊

    横田政府委員 実は先般の委員会におきまして、公取の職員の言動につき、いろいろ御注意がございまして、その後役所に帰りまして、いろいろ記事等を詳細に調査をいたしまして、中には先般問題にされましたように、行き過ぎの言動もあるように思われまして、さっそくあの日、ここから帰りましてから、特に委員長室に関係事務官に集まってもらいまして、私から今後言動を十分に注意するようにということを審査部長立ち会いの上で厳格に申し渡しをいたしました。なお新聞記事等は大体において、事実の間違っておると思われるものが多いのでございますが、中に、たとえば農業協同組合の全国の中央会の、御承知の機関紙がございまして、この中に先般も問題になりました公取の職員が何かある特定会社から利益の供与を受けておるかのごとき記事がございました。これは一片の地方紙の記事と違いまして、いやしくも全国農業協同組合中央会の機関紙として発行されております農業協同組合という、この中の一つの論説の中にそういうような趣旨の記事がございましたので、これはいかに何でも見のがすわけに参りませんので、中央会の幹部の方においでを願いまして、厳重に申し入れをいたしまして、その次の号で明らかに取消しをしていただきました。こういうような事実もございますが、要するに今後私を初め公取事務官といたしましては言動を十分に慎しみまして、他からの誤解等のないようにいたしたいと考えております。
  85. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたは協同組合の中央の機関紙の記事でもそんなに気になさる。これよりも地方にあってはもっと広く大きな範囲にわたってまかれているのが、地方新聞の持っている形なんであります。のみならず、さっき三代川事務官は取り消された。取り消されたのですが、天下の大公党である自由民主党の政務調査会農林部会——取り消さなければならないような青森県の県政を侮辱したり、農林行政との激突を来たしているといったような記事、しかもこの中心工場は二つにして、一つ雪印一つは明治にした方がいいといったような積極的な意見、こういうような意見を吐いたことが一片の取り消しで済むと思いますか。これはおそらく、与党でありますから、自由民主党の諸君はおとなしくしていると思いますけれども、こんな行き過ぎをされるということは、取消しだけで済むと思われますか、あなたのお考えを聞きたい。
  86. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど本人が思い違いであると申しまして、先般厳格に注意はいたしました。今後につきましても監督を十分にいたすつもりでございます。
  87. 淡谷悠藏

    淡谷委員 少くとも公正取引委員会の、しかも審判に当る衝にある者が思い違いでありましたとか、行き過ぎでありましたとかで済む事態と思いますか。責任とは一体どこにあるのです。あなたは協同組合の機関紙の記事に大へんに憤りを覚えた。しかし、しいて疑われるような言動が随所に発表された場合、あなたは、あなたの部下がそういう関係があるのかないのか、徹底的に調べてものを言いましたか。果たして特殊の乳業資本等からひもがついているのかいないのか、あなたは部下を十分調べてみましたか。見てごらんなさい。まきに官庁の綱紀が紊乱して枚挙にいとまないところの汚職事件が出ているじゃありませんか。私は経済界において公正取引委員会というものは裁判所の地位にあるものだと思う。ここに不正がかりにあったとすれば、これは裁判官の不正と同じように重大なる問題をはらむのである。そういうような新聞記事によって、あなたは部下をいろいろ調査されましたか。
  88. 横田正俊

    横田政府委員 その点につきましては、先ほども申し上げましたが、大体新聞記事の内容は間違いでありまして、この点は特に個々の事務官について調査いたしました結果、そういう事実はないというふうにはっきり言い切っております。これは特に私どもの信頼する事務官の言でございますので、私といたしましては、それを信頼をいたしまして、ただ先ほど申しましたような誤解を受けるおそれのあるようなことにつきましては、今後厳に注意をするようにというふうに申したわけでございます。
  89. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律は重大な影響を経済界に与えるものでありまするので、公正取引委員会等の手続もかたく規定されてありますが、この第三十八条に「委員長委員・職員の意見公表の禁止」として「委員長委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。」ということが規定されておる。それを発表した。発表したのがこの自由民主党の政務調査会の記事であります。本人はこの前にはこの発表したことを認めておる。きょうは思い違いであったから取り消すと言っておる。意見を発表し、しかも思い違い意見をあえて公表したような責任は、この第三十八条を適用しますか。
  90. 横田正俊

    横田政府委員 これは問題の内容によりまして当然に考えなければならぬことでございますけれども、ただいまの具体的な場合につきましては、私といたしまして厳格に注意をいたしましたので、これ以上の手続をとるつもりはございません。
  91. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はそういう委員長態度は見のがすことはできません。この内容はこの前からたびたびここで言っておるんじゃないですか。しかも公正取引委員会の権限を逸脱した意見発表なんです。「青森県下における集乳の独占権を雪印に与えるということであった。」これは県の行政方向だというのです。「このことは県行政の失態を雪印に穴うめをさせる代りに農民からは経済的にしぼりとれということであった。」青森県政雪印の肩を持っている。雪印を通して青森県の農民をしぼり取る行政であるというふうに断定している。知事が大へん怒っておるそうです。怒るのは当然です。もしうそだというならば、これに対してどう考えておるか、呼びましょうか。これが一点、あとは農林省の政策との激突だ。同じ国家の中の二つの機関が、しかも強権を持った公正取引委員会というこの機構が、農林省農林行政と激突を来たしておる。これは軽々しく見過ごせる段階ではない。しかも中心工場の設置に当っては、公正取引委員会自体決定した雪印乳業の中心工場に対して三八地区は明治というようになるのがよいと思うとはっきり言っているんですよ。これくらいの逸脱をし、しかもそれが思い違いでございましたと言うので取り消しをしておるのに対して、この適用ができなかったら何に一体適用するのですか。何もないじゃないですか。もっとはっきりしたあなたのお考えを聞きたい。
  92. 横田正俊

    横田政府委員 農林部会でございますか、委員会でございますか、そこの記事の内容には相当間違いがあるということでございまして、この点はもう少し具体的にあるいは調査いたさなければならぬと思いますが、少くとも間違いが非常に多いというふうに聞いております。従いまして、私といたしましては、現段階におきましてこれ以上の何か措置をするということは全然考えておりません。
  93. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この三代川事務官の言明あるいは後藤事務官の言明が社会に与えた影響、経済界に与えた影響というものは相当大きいのです。委員長は部下を思うのが当然でありますから、非常に心配しておられるでしょうが、事態の進展によって委員長自体の様々な問題にまで進展していくだろうと私は思うのです。この審判に当ってもその点私は厳重にやってもらいたいと思う。特にあなたに申し上げておきたいのは、協同組合の運動というのは、あくまでも独占資本に対する反抗運動であり、抵抗運動のことを言っておるのです。ほっておきますと、資本の自由競争が必ず強大になり、資本の独占をもたらすから、これを押えるために、協同組合が零細な農民資本を集めて、国策を通して育成されておる。この二つの資本構成をはっきり頭に置いて私はいろいろな行動をしてもらいたいということを言ったんです。それから現在集約酪農等の形に現われた日本酪農の将来について、相当の広範囲にわたる系統ある経済行動を必要とする、もう放任、放窓な自由経済の形では今の日本農村は立っていけない、そうした計画的な農林行政の進め方があなた方のいわゆる独占資本に見られるならば、これはとうてい酪農は立っていけないと思うのです。この二つの点は十分に勘案をしてもらいたい。さらにこうした特殊なる農民運動をしております協同組合が、事業を伸展する上において、あるいは融資をし、さまざまの購買事業を行い、販売事業を行う場合に、組合という一組織体として、この組織体の中に反対して行動するようなものを残しておきましては、組織体とは言えない。もし組合総会決定にどうしても服しがたいものがあれば、脱退、加入の自由が認められておるわけですから、脱退してもいいでしょうが、多数決をもってきめた方向に背くものを支援するような方法公正取引委員会等がやられるならば、私は日本協同組合運動の破壊であると思う。そういう点において私は、間違いとは言われましたけれども、三代川事務官などは農林行政の上に激突を来たしておると言っておるが、具体的にあなた方の今までの行動日本農林行政を激突させるような行動をあえてしておるのです。私ははっきり申し上げますが、意見は取り消されたが、これからのあなた方の行動が真に日本農林行政を助長するような方向で、正しい意味での私的独占を禁止するかどうか、あるいは本日取り消されましたさまざまの言動は、今後どういうふうに発展していくか、あなた方の行動を厳重に見守って参りたい。本委員会におきまして同僚委員からもいろいろと言われましたが、明らかにあなたの酪農の当面の情勢に対する認識協同組合の運動あるいは系統融資の形における把握が大へん乏しいと思う。こんな乏しい把握、こんな間違った認識で、しかも軽々しくいろいろなことを発表して、あとで取り消さねばならないような行動をする者がこの審判の第一線に立つということは、非常な危険を伴う。私はその点についても委員長の十分なる反省と善処を要望いたしまして質問を打ち切ります。
  94. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 木村文男君。
  95. 木村文男

    ○木村(文)委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━。   〔「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり〕
  96. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 ちょっとその点について私から申し上げます。ただいま木村委員発言の前に、横田政府委員の方から、十二時から約束がありまして、どうしてもこの委員会におることができないということについて了解を求めに参りました。そこで私はそれはやむを得ない、しかし委員の関連質問等がありますれば、またあとでおいでを願う、こういうふうに横田委員長と話をしたのでありまして、その後において木村委員発言があったわけでありますが、そういうことですから、木村委員はそういうことを前提としないで一つ論議をしてもらいたいと思います。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 議事進行。本日酪農問題に対して公正取引委員会諸君に当委員会に出席を求めて、現在調査を進めておるわけであります。その場合、われわれが理事会において必要と認めた政府委員説明員の出席を求めておるわけなのです。それにかかわらず委員長から発言を許してもらって、直ちに━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━というのは全く異例なことなのです。もし何らかの理由によってかかる事態が必要であるとすれば、これは当然前例にもよりまして、暫時休憩するとか、理事会を開いてそこで━━━━━━━━━━━━━━━━━を求めなければならぬような理由を明らかにして、それから議事を進めるべきであって、最初から━━━━━━━━━━━━━━━━━━とかいうことは、今後の委員会の運営上まことに重大問題であるというふうに考えるわけであります。これに対してはもちろん委員長においても適切なる判断を下して、議事進行されんことをお願いいたします。委員長の御意見を伺います。
  98. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 ただいまこの問題について芳賀委員から議事進行について発言がありましたが、先ほど私から申し上げましたように、横田委員長の方から十二時からほかに約束がありますので、そちらに参らなければならぬという申し出がありました。私は、委員長には今のところほかに御用がなければそういうふうに取り計らっていいというふうに申し上げた次第でございます。従って木村委員のさっきの発言は、私として取り上げたわけではありませんからさように御了解願いたいと思います。そういうことで進めたいと思いますが、皆さんいかがでしょうか。
  99. 木村文男

    ○木村(文)委員 今個人的に話し合ってはいけないということを、山田君ですか、だれかから申し出があったのでありますが、今委員長が私のところにきたのは、今農林委員長に対して言った通りのことを私にも了解を求めにきたたけです。しかし━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ということは、決して拒否したのでも何でもなくて、今淡谷委員からの質問によって、公取関係事務官あるいは審査長、これらの人に対するお話がありましたので、私はそれらの人に対して公正なる答弁を求めたいために、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━御発言を願いたいという立場から、━━━━━━━━━━━━━━━━━という発言をいたしたわけでございます。どうか一つ御了承を願いたいと思います。
  100. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 木村さんに申し上げます。あなたの申し出については、事実委員長もおりませんから、そういうことを別に皆さんにお諮りするというようなことはしなくてもいいじゃないですか。(「議事進行」「正式に取り消せ」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し)
  101. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 それでは暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後零時四十六分開議
  102. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほど横田委員長についての木村君の発言に対しまして、同君よりこれを取り消す旨の申出がなされておりますので、この点につきましては、先例によりまして、委員長においてしかるべく取計いますから、御了承願いたいと思います。  それでは先ほどに引き続き質疑を許します。木村君。
  103. 木村文男

    ○木村(文)委員 今当委員会で問題になっているこの集約酪農の問題がここまで大きな問題になるとは私どもも考えさせられなかったのでありますが、日を追うてますます大きな問題化してきていることは、酪農振興法趣旨から申しましても、日本酪農のために非常に寒心にたえないところでございます。そこで、この問題を明確にいたしまして、この道に精進している生産者諸君が安んじてこの業務につくことができるようにしたいというのが私の念願とするところでございます。そこで、今まで問題にされております点について、公取において最も関係の深い後藤事務官、三代川審査長あるいは竹中審査部長、これらの方々にまず第一にお尋ねしておきたいと思うのでありますが、とかく役勤めをしております方々は、上司の前を考え答弁する場合なきにしもあらずということを私みずから過去において体験しておりますので、この際、この道のために審査官としてあるいはまた担当事務官としてほんとうに信念に徹した御態度によって、私のこれからお尋ねすることについて真剣率直に、身を挺してまでも是なるところは是として、いかなる圧迫を受けましても、いかなる攻撃を受けましても、信を貫くというお気持から御答弁をしていただくことを特に前もって切望する次第でございます。  そこでまず第一に私は後藤事務官にお尋ねしたいのでありますが、青森県の酪農業約地域指定とからんで、雪印乳業株式会社に対して、私的独禁法違反として審判に付されている、こういうことでございまするが、あなたはこの問題について現地に出向いて、実地に調査したことがあるかないかということを第一点としてお伺いをしておきたいのであります。
  104. 後藤英輔

    後藤説明員 昨年の十一月に本件について地元の生産者の一部の方から申告がございまして、公取委員会として調べに参れということでございましたので、十一月の初めごろだと思いますが、現地に行って審査に当りました。
  105. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいまの御答弁によって後藤事務官が上司の命令によって現地に出向いての調査をしたというお話でございますから、今問題になっておるこのおもなる条項についてお尋ね申し上げたいのであります。  その第一点として、青森県の畜産振興株式会社という県策会社がございまするが、この会社雪印乳業の間に買収云々のことがあったことを、あなたが御存じになっておられますか。
  106. 後藤英輔

    後藤説明員 それは審判開始決定書に記載してございます通り雪印乳業が畜産振興を昨年の六月一日付をもって買収したという事実ははっきりしております。
  107. 木村文男

    ○木村(文)委員 後藤事務官調査によると、この県策会社である振興会社雪印乳業との間に買収が成立しておるというお答えでございまするが、後藤事務官が実際に調査に参りまして、県策会社である振興会社雪印乳業との間に買収が行われるに際して、地域的な指定の問題について、また中心工場を設置する問題についての関連性があったと調査の上でお考えになられましたかどうか。
  108. 後藤英輔

    後藤説明員 畜産振興雪印乳業が買収したときに、いろいろとその間に取りかわされました文書並びにその前後のいろいろな証拠をもちまして、私どもとしては、審判開始決定書に書いてあるように、雪印乳業が畜産振興の譲渡を受ける際に、青森県の酪農について特別な地位に立つものであるという意味のことが了解されておった、このように判断して、現在のところそういう趣旨審判に臨んでおります。これについては被審人側の代理人からも異議その他の申し出がございますので、私どもとしても十分その点について検討をいたしたいと思っております。
  109. 木村文男

    ○木村(文)委員 次に青森県と雪印乳業との間において、昭和三十一年五月二十九日付をもって、この買収に際して集酪地域中心工場指定方の覚書が取りかわされておるということを私は聞いておりますが、あなたの調査によっては、それが事実であったかどうかということを承わっておきたいのであります。
  110. 後藤英輔

    後藤説明員 審判開始決定書にも書いてございます通りに、昨年の五月二十九日付をもってそういう覚書が交換されております。
  111. 木村文男

    ○木村(文)委員 その覚書の内容はどういうものであったか、それをあなたの調査された範囲内においてお答えを願いたいと思います。
  112. 後藤英輔

    後藤説明員 その点につきましても審判開始決定書に記載してございます通りに、雪印は畜産振興の固定資産及び営業権を譲り受け、それ以外に流動資産の一部を受け継ぐ旨の覚書が雪印と畜産振興との間にかわされておりまして、同日付をもって青森県との間に、雪印乳業は青森県内の全販連及び畜産振興事業を承継し、青森酪農の発展に協力し、他方青森県は雪印乳業が青森県における中心事業体として機能を発揮するよう協力し、同社を集約酪農地域中心工場に指定方を申請すること等を約したと私の方で理解しております覚書が入っております。
  113. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいまのお答えによりますると、公取の方で指定のために努力する覚書であったと解しているというようなお答えでございますが、その覚書の内容それ自体をあなたはごらんになったことがありますか。
  114. 後藤英輔

    後藤説明員 その覚書の写しを私ども現在持っております。その内容についてそのように解していると今私が申しましたのは、それはその他のいろいろな証拠と合せて、現在私の方でそのような趣旨のものと解しているということでございまして、これは審判開始決定書に書いておる通りでございます。
  115. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいまその他の証拠と照らし合せてそう考えた、それと符合するというようなお話でございましたが、その他の証拠というのはどういうような証拠であったか、その証拠をお話し願いたいと思います。
  116. 後藤英輔

    後藤説明員 証拠の内容を一々申し上げるわけには参らないのでございますけれども、それに関係されました方のいろいろな供述、それから関係されました機関等におけるいろいろな文章等から判断いたしまして、私どもとしましてはそのように判断しておる、こういうことでございます。
  117. 木村文男

    ○木村(文)委員 後藤事務官、あなたは役人としてのお立場から、委員長のいないところで、しかも公人としてのあなたに、しかも権威のある当委員会において、しかも私冒頭で申し上げたように、ほんとうに信をかけての御答弁を願いたいということは、これは酪農振興行政の上において間違いを生じてはいけないから、最も神聖にして侵すべからざる審判官としての立場において御発表願いたいために、こうしてお答えを求めているのでありますから、この際その他の証拠によってあなたが判断をされたそのその他の証拠こそ、私は今ここであなたが正式にあなたの信念に基いて御発表なさることが、先ほどからいろいろの問題が起きていることを解明することができるゆえんだと私は信ずるのであります。そうでなければ、先ほど淡谷委員からあなたの方の上司があれだけ詰め寄られて、当委員会において、私はむしろお気の毒だと感ずるまでに答弁を求められておる。この際あなたは、その、その他の証拠に基いて、私はこういう信念によって、調査を命ぜられてやったのだということを明確にお答えを願えれば、私は初めて横田委員長も、あなた方に対するああいうような、行き過ぎがあったなんというような答弁はなくして過ぎたのではないかと考えられるのでありますから、この際その他の証拠という問題について、一々具体的に御開陳を願いたいと思うのであります。
  118. 後藤英輔

    後藤説明員 その点につきましては、ただいま被審人であります雪印の代理人の方との間に審判手続が進められておりまして、いずれ来週か再来週くらいになりまして、一応事務手続が終りましてから、立証という段階に入りまして、具体的にこの事実についてはこういう証拠に基いて私どもは記載した、判断いたしましたという証拠を提出することになっておりまして、私どもといたしましては、それまでの間におきましては、供述調書の内容を供述者以外の方に対してお出しするわけにいかないような状況にありますので、もしもこの際その点までも申し述べよということでございますれば、これは委員会に一応お諮りしまして、相手方の——やっぱり利害に関係する問題でございますから、そういたしませんと、これはいくら信念を持ってこの際申すと申しましても、私としては相手方の利害に関係する、代理人の防御の範囲の問題になりますので、お答えできないのではないか、そう思っております。
  119. 木村文男

    ○木村(文)委員 それでは後藤事務官に私は申し上げたいのでありますが、先ほど淡谷委員からの質問に、行き過ぎであるということを委員長が言うてある。またあなた方のだれかが——私はその席におらないのでありますが、行き過ぎであるというような、釈明的な言を吐かれたとの御発言があったやに私は聞えたのでありますが、そのように、あなた方の御答弁なり御発表なりの上に行き過ぎがあったとあなた方御自身が自認なさる点があるのでありますか、どうか。
  120. 三代川敏三郎

    三代川説明員 その点私は、先ほど淡谷先生の御質問に対しましてお答えいたしましたそのときに、私の思い違いで適当でないことを申し上げた点を、取り消させていただきます。
  121. 木村文男

    ○木村(文)委員 それではその程度で了承いたします。  それでは次に後藤事務官にお尋ねしたいのでありますが、三十一年の八月二十九日、農協の三八協議会の席上において、雪印を三八地区中心工場として指定することにしようという決議ですか、話し合いですか、そういうことがあったと私は聞いておるのでありますが、その事実が実際にあったかどうかということをお尋ね申し上げたい。
  122. 後藤英輔

    後藤説明員 三十一年八月二十九日に、農業協同組合三八協議の例会におきまして、雪印乳業を中心工場にしようというような話し合いが行われたということは、事実でございます。
  123. 木村文男

    ○木村(文)委員 その話し合いなり決議なりが行われたという事実があるというお話でございますが、その実際の内容、経緯について、あなたが御調査なされたそうでありますから、その経緯について、一つ詳細に御開陳を願いたい。
  124. 後藤英輔

    後藤説明員 これは審判開始決定書に書いてございますが、三八地区の市町村農業組合を単位として、その連絡機関であります農業協同組合三八協議会の例会が、八月二十九日八戸市で開かれましたが、その席上、議長でありました山内亮という方が、当日酪農問題の議題が全然上っておらなかったにもかかわらず、議事の途中、急に雪印乳業の役員の方が来ているからその話を聞こうではないかということを提案されまして、雪印の役員の方の説明をいろいろ聴取した後に、急にその席で、三八集約酪農地域中心工場として雪印を指定してもらうように申請しようではないかということを決議しようということを、提案いたしました。ところが組合長の方は、本日そういう議題があることを全然知らないでこられた方ばかりでありましたために、また農業協同組合組合長は、三八地区におきましては農協といたましては、酪農に直接関係してないところが非常に多かったため、急にそういう問題が出てもわからない方が多く、そのためにいろいろな発言がございまして、県が大体方針をきめているのだから、県の方針を確認すればよいのではないかとかいうふうな、いろいろな議論も出ましたけれども、大体においてその席上で急に雪印乳業支持ということが決定されかかったのでありますが、一名信連の理事をされている組合長が、突然こういうことをこの席上できめるのはよろしくないから、もっと慎重に検討すべきではないかということを言われました。その結果十四名の実行委員を作ってさらに検討するということになったわけであります。つまり第一回の協議会において雪印乳業支持をきめようということをしたのでありますけれども、その決定はその際にはなされなかった。次回へ持ち越されたというのが当日の事情であった。そう理解しております。
  125. 木村文男

    ○木村(文)委員 次にもう一点伺っておきたいと思いますが、雪印乳業支持の陳情書の署名の強要または雪印との取引を強制されたといったようなことは、あなたの調査によると事実どういうような工合にされておったか。実際個々にわたってあなたが御調査になられたように私は聞かされておるのでありますが、個々にわたって調査されたのであれば、どういう事実があったか。それを今ここで明らかにしていただきたいと思います。
  126. 後藤英輔

    後藤説明員 私どもの方に対する独禁法違反の疑いがあるという生産者の方の申告には、かなり具体的ないろいろな事実がたくさんあげてございました。私ども審査官といたしまして、これは当然のことでございますが、申告のあった事実はすべて疑ってかかるべきであるというつもりでおりますが、その事実は全部一応なかったものという前提をもちまして、できる限り個々の農協あるいはまたその生産者の人に会いましていろいろ事実を調査いたしました。その結果審判開始決定書に書いてございますように、三八協議会の事務局長、信連の八戸支所長、農協中央会の八戸支所長の方々が、三八協議会においては雪印乳業を支持するという決定があったということを理由にいたしまして、雪印乳業支持の陳情書を個々の農協に持っていきまして、これに署名してくれ、上部の機関できまったのであるから署名してくれということを言って回ると同時に、その際明治乳業支持の陳情書というものが前に地元の生産者から出ておりましたので、署名した者に対してはそれの取り消しをするという印刷された文書、両方を持って九月十日から約三日ほど管内の農協を回った事実が認められたものでございます。たとえば審判開始決定書に書いてございます通り、舘農業協同組合というところは、農業協同組合整備特別措置法によって再建整備のワクに上りかかっておったのでありますが、これに対しては、上部系統である協議会の決定に従わないとそのワクからはずされるという旨を言ったために、組合長は一晩中寝られなかった。そうして翌日組合長は、前に組合員の意向として明治を中心工場にしてもらいたいという陳情書に署名しておったけれども、そういうふうな上部系統団体決定を受けておるので、これに従わなければ数百万の再建整備資金が借りられなくなるからということを述べて、あらためて雪印乳業の支持の陳情書に署名した。また田部村農業協同組合というところにおきましては、組合長の承認を得ているからということを言って組合員にその文書に署名させておった。ところが組合長はそれについては全然知っておらなかった。こういう事実もございまして、その幾つかの事例は審判開始決定書においても記載し、これは審判廷においてなお証拠をもって主張するつもりでおります。
  127. 木村文男

    ○木村(文)委員 もう一点お尋ねしたいのでありますが、私の聞いております範囲内におきましては、県が雪印を支持しないものに対しては乳牛の貸付や助成、こういったものを取り消されるというようなことを漏らしたというように流されておるのでありますが、そういうような事実が実際あったかどうか。
  128. 後藤英輔

    後藤説明員 その点につきましては、県の方から、これは十和田集約酪農地域も三八集約酪農地域についても両方でございますが、市町村長及び農業協同組合長から、管内で生産する生乳は全量県の指示する中心工場に出荷きせる旨の誓約文書をとっております。これは三八集約酪農地域の指定のあった前にも三八地区の生産者、農業協同組香及び市町村長からとっておる、こういう事実も認められます。それから県が酪農振興のために乳牛を貸付する際にも、やはり生乳は雪印乳業に出荷するということが条件になっておりまして、雪印乳業以外に出荷するものは県の貸付牛は借りられないのだ、そのように生産者の方は考えておった、こういう事実もあります。その点も審判開始決定書に記載して審判廷で証拠をもって主張するつもりでございます。
  129. 木村文男

    ○木村(文)委員 先ほど淡谷委員から、青森県の県会議員またわれわれ県選出の国会議員が三十二年二月四日に公取後藤事務官、それからそこにおられる方、二人がお見えになられまして、その席上において、後藤事務官がこの事件は黒であるというようなことを言ったというように発言されておりますが、ここに県選出の、私と席を同じゅうしておる竹内代議士も、そのときは出ておったのであります。私は耳はつんぼでないはずでありますが、後藤事務官がそんなことを言ったということを実は聞かないのであります。聞き漏れであったかどうか、それはわかりませんけれども、少くとも私は聞かない。竹内代議士は聞いたかどうかわかりませんが、私は聞かないのであります。そのとき同席しておった部長さんが聞いたかどうか、念のために伺っておきたいのであります。
  130. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 私一緒におりまして後藤君が本件は黒だというようなことを言ったとは全然聞きもいたしませんし、そういうことを公取の職員が言うべき筋合いのものではないと考えております。
  131. 木村文男

    ○木村(文)委員 私どもも聞かない。今は幸いに竹内代議士がここにおりますから、私はむしろこの際竹内代議士に発言を求めて、そうして少くとも厳正公平に審判の任に当らなければならぬその後藤事務官が、そういうことをかりに言うたとすれば、これは私どもとしても許しがたいことでありますので、事農林界においてきわめて重大なる問題化しておる最中でありますので、この際私のあとの質問を継続する意味からしても、委員長から竹内代議士に発言を求めて、この点について一応はっきりさしておいていただきたいと思うのであります。
  132. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 時間がおそくなりましたから、またあとで引き続いてやりますから簡単に願います。
  133. 竹内俊吉

    竹内委員 ただいま木村委員から御発言になりました点は、私も同席しておりましたがさようなことは聞いておりません。  ついでに一点だけきわめて常識的なことを畜産局長にお聞きしておきたいのでありますが、十和田地区酪農振興計画は、私の承知しておるところによると、大体昭和三十三年までに乳牛七千頭をもって、その乳量は大体百三十石から百五十石、こういうふうに聞いておるのであります。そういたしますとそこに中心工場一つあっても、これは大体農林省計画されておる規模の中心工場たり得るものだとわれわれは常識的に考えておるわけであります。さらに三八地区において新たに指定を受けました地区計画も、先ほど畜産局長から御発言がありました内容について見ますると、大体それに似たり寄ったりであって、ここにまた中心工場一つあってもこれまた大体適正規模の工場たり得るもの、こう了解しておるわけであります。青森県の酪農振興方針は大体その方針にのっとって現に進みつつあるのであって、昭和三十三年一ぱいにはその線にいきたいという目標のもとに進んでおるわけであります。この点はおそらく農林省においても計画を立てられたところでありますから、さように考えていることだろうと思うのであります。そこでこの両地区一つ中心工場に持っていくということは、われわれ常識的に考えると、そういう中心工場の規模がそれぞれその地区においてやがては農林書が計画されている線に達する——今は達しておりませんが、やがては達するとすれば、あとは生産農家の利益のために、両地区とも単一の中心工場であるよりも、二つの工場があってお互いが競争をして、生産農家にサービスをするという形の方がどう考えても常識的にはいいのだ、こういう考えが浮かんでくるわけであります。それについて今度農林省は三八地区にも十和田地区と同様な雪印を指定された。その行政措置については、法的にはこれはもちろん違法のあるはずがございません。あるはずがないが、行政処分というものは法的には確かに違法がなくとも、一帯の地域社会によくマッチした行政処分のみ行われておるかというと、必ずしもそうではない例がたくさんあります。そういう点から考えて現にここで淡谷委員木村委員その他からいろいろ御発言がありました通り、宙地においてはまた生産農家の間にも双方を支持して相抗争している事実がありまして、こういう点をあわせ考えますならば、この際生産農家の利益のために、いわゆる独占的な形であるよりも競争的な形において健全なる競争を、皆さんが監督するという立場で事を運ばれることがきわめて常識的であり、また生産農家にとっても親切なやり方として、やがては酪農振興法の精神を生かすゆえんだ、こう思うわけでありますが、その点農林省は指定後の現地の情勢並びに国会に現われたいろいろな審議の状態から、今日ただいまどういう心境にあるか、所信のほどを伺っておきたい。
  134. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 お尋ねの趣旨は十和田の中心工場と三八地域中心工場というものを同一の会社にしないで、十和的の中心工場に属しておるものと三八の中心工場に属するものとを異なった会社にして両方で競争させた方がいいのではないかという御質問のように考えます。この問題は確かに重要な点であると思います。各地域あるいはそれぞれ隣接いたしております地域等につきまして、たとえば福島のごときものは森永がやっておる、こういうようにいろいろその地帯によってその事情が違っておりますが、やはり本件を指定いたしまする場合に地元の方からの御指摘もございます。また私たちといたしましても当然十和田の中心工場を雪にするならば三八はほかの会社にした方がいいじゃないかということにつきまして検討を重ねましたけれどいも、この法律規定いたしておりまするその地域におきまする各農協、あるは町村長あるいは乳業者等々の意見の結果に徴し、あるいは県当局の意見に徴し、また私たちの立場から判定をいたしまして、本件につきましては大多数の者が賛成をいたしております雪を中心工場にすることが妥当であるという結論に達したのであります。  それから現在こういう事情になっておって畜産当局としてはどういう心境かという御質問でございます。まことに残念に存じております。もちろん各地区ともにいろいろと問題がございます。また乳業者あるいはその他それに付属する企業におきまして問題の起きることはままございます。従いましてそれらの問題につきまして、そのことが円満にその地域の建設をやっていきます上に支障のないように進むことを私たちは強く期待をいたしておるわけであります。ただ本件に関しましては、確かに今非常に問題になってはおりますけれども、やはりこれは三八の地域について雪を指定いたしましたこと、そのことについて間違いがあったというふうには私どもは考えておりません。計画に盛っておりますような、あるいは計画策定当時に示されておる地方関係諸君の熱意にあるがごとく、この三八地域酪農地域の建設は一日も早く計画通りに進むことを期待いたしております。現状このように混乱いたしております点につきましては、はなはだ遺憾に思っております。
  135. 竹内俊吉

    竹内委員 関連質問でありますから簡単に、こういう行政処分されたことでありますから、これは間違いだとは局長は申されないでしょう。ところがまた公取が今審査を進めておって、いかなる結論を出すかということは全然別の問題でありますが、とにかくそういう大多数の者が一応支持しておるという過程においてはいろいろな問題たり得ることがあったという事実は否定できない。そこで公取がいかような審決を出すかは今後の問題でありますが、そこでお聞きいたしたいのは、農林省当局としては公取の審決は——もちろん公取行政の指導をする機関でもありませんから、全然別途なものではあるが、公取の審決いかんによっては考えざるを得ないだろうという行政的な良心というか良識というか、また地元の生産者の状態からすると、あなたは大多数というけれども、その数はそう違いがないのであります。われわれそう認識をしておるのであります。でありますからそういう点で公取の審決のいかんによっては考えざるを得ないだろうという御心境であるものかどうか、それはどうあろうともわれわれは間違いはないのだからこれでいいのだという一点張りなのか、その点が一つ。  もう一つはこの委員会においてもそういうニュアンスが現われておったと思うが、雪印農業資本だ、その相手というか、今対抗できる立場におる明治乳業は商業資本だという考え方が相当強いように聞くわけであります。そこでお尋ねしたいのでありますが、雪印乳業の資本構成といいますか、それがあなたのお手元でわかりますならばここで一つ説明願いたい。その二点だけです。
  136. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 公取委員会の結論いかんによって畜産局としては今回の指定に関して何らか態度を変更することを考えておるか、こういう御質問の点についてお答えをいたします。審決は現在進行中であります。この通り相当な騒ぎのある現状でございます。従いまして審決の結果がどう出るかということはそのときにおいて態度決定すべきである、今私がここで態度をどうこうということを申し上げることは当を得ていないと思います。私たちは審決が開始されるという状況、また公取がそのような疑いを持っておられるということを十分承知をいたしまして今日のごとく指定をいたしました。  もう一点の雪印資本構成の問題でございますが、これは詳しいことは私今ここへ資料を持っておりませんので存じません。六割が農民資本という言い方をしておる方もあります。あるいは四割五、六分程度が純粋なもので、あとは協同組合でない個人の農民という表現をしておる方もあります。それらの点につきましてはもう少し資料を調べてお答えをさせていただきたいと思います。
  137. 木村文男

    ○木村(文)委員 午前中の私のお尋ねは時間の関係もございますので、これで大体終らせていただきまして、また午後に続行させていただきますが、午前中のお尋ねとしての最後に伺いたいのでありますが、今日までの経過すなわち農林当局が三十二年の二月二日付をもって指定の告示をされるまでの間に、いろいろの経過をたどっていると思いまするが、その間において先般芳賀委員の当農林委員会における畜産局長に対しての質問の際、局長は答えていわく、いろいろとその間に公取とも連絡をとりましたというお答えをしておられたのであります。そこで後藤事務官に伺いますが、あなたの審判官としての立場において調査に当った結果について、また何らかのこういうような酪農の点に影響のないような行政措置をとってもらいたいという気持から逐次農林当局に対しての連絡折衝をされたかどうか、この点を一つはっきりと伺っておきたいのであります。
  138. 後藤英輔

    後藤説明員 私ども本件を審査して参りまして、その後結果を委員会に御報告いたしましたのが、多分昨年十二月過ぎだったかと思いますけれども、それ以降農林省にどういうふうなことをしていただきたいという意図をもってではございませんですが、農林省において三八地区の申請を取り上げておられるという段階でありましたので、すべて私どもの取り上げている事件につきまして、関係官庁の行政に関連のあるところはすべてそうでありますが、それと同じようにこの問題につきましても、実はこちらの方から農林省の方にいろいろと経過あるいは委員会の事項なりを、これは全部委員会の承認を得まして御連絡して参りましたので、おそらく六、七回私の方から農林省に参り、また農林省の方からも見えていただきまして、十分なる連絡をとっておったそう思っております。
  139. 木村文男

    ○木村(文)委員 どうしても竹中部長に御質問しなければいけないのですが、今の後藤事務官のお答えによりますと、どうするというようなことは考えないでやった、こういうお話でありましたが、二月四日のわれわれ県選出の国会議員との会合の席上において、できるだけ酪農振興のために行政の上に円満な面を持ちたいというようなお考えのもとに、農林当局に対しても積極的にいろいろとお話し合いをいたしました、こういうようにあのとき私は聞かされたのであります。私自身が今この発言をしておるのも、あのときのあなたのお気持と同じ、ことさらわれわれが地元のものでありますから、特に青森県のこれからの酪農振興のためにも、極力このような騒ぎをさせたくないと先ほど竹内代議士が言われたような趣旨にのっとって、今後も私どもは進みたいと考えておるがゆえに、特にあなたがあの発言をされたことはどういうようにして農林当局に対して折衝せられたか、その点を伺いたいことと、あわせて後藤事務官の話によりますと、中金がこの契約をされる場合において、県策会社の買収に対して中金が大きな役割をしているというようなお話があったのでありますが、この点について、一つ公的な立場においてお答えを願いたいと思うのであります。
  140. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 先ほど後藤事務官からお答えいたしましたように、私ども青森県の集約酪農地域の問題に関連しまして審査をして参りましたその段階で、委員会から命を受けまして後藤君が農林省といろいろ話をしたのでございます。しかしながらこの集約酪農地域の指定ということは農林省の権限でありまして、私たちのとやかく申すべき筋合いのものではございませんので、私どもといたしましては、申告がありました事実につきまして調べましたところが、こういうことがあったということを農林省に話をし、農林省がそういう点をおわかりかどうかというようなことでございます。
  141. 笹山茂太郎

    笹山委員長代理 それではここで休憩しまして、午後は二時半から会議を再開いたします。    午後一時四十一分休憩      ————◇—————    午後三時十九分開議
  142. 助川良平

    ○助川委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  酪農に関する件について質疑を続行いたします。木村文男君。
  143. 木村文男

    ○木村(文)委員 午前中における私の公取の方々に対しての質問の際に、その冒頭において申し上げた通り、この問題のために、酪振法に基くほんとうの酪農振興の面から考えますと、非常なる影響を受け、そして直接最もその被害をこうむっているのはこれは生産者の諸君であると私は思うのであります。しかも今回の、この当委員会に取り上げられておる問題は、私の地元の問題でありまして、それだけに青森県の酪農振興のために、ほんとうに寒心にたえないのであります。従って何とかしてこれを生産者の諸君が安んじてその業に服することができるように、そういう立場に立って、私はこの問題をほんとうに明らかにしたい。不明朗な点がある場合においては、あくまでもこれを究明して、そうして明るい酪農振興の道をとらせたいというのが、私の質問の眼目であります。その見地に立って、午前中、公取の方々に対しての質問を続けたのでありますが、なお二、三残っている点がございますので、続けて質問をいたしたいと思います。その一つは、先ほどの質問において、竹中審査部長に対して、中金がこの問題に関連性を持っているのではないかということを私は答弁を求めたのでありますが、それに対する答弁がなかったように思うのであります。その点について、重ねて竹中審査部長にお尋ねしたいのであります。
  144. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 その問題は後藤事務官から答弁いたさせます。
  145. 後藤英輔

    後藤説明員 その点につきましては、審判開始決定書にも記載してございます通り、全販連の工場を雪印乳業が買収するということになりますについては、農林中金は全販連の大口の債権者である立場から、また雪印乳業に対しても主要銀行である立場から、その間のあっせんには農林中金も関係しておられるということは事実でございます。審判開始決定書にも書いてございます。
  146. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいまの公取後藤事務官の御答弁によりまして、中金が関係の深いということが明らかにされたわけでありますが、それでは伝えられている通りの、いわゆる財政的な融資、こういうような面だろうと思いますが、どれくらいの額がどういう方面に出されているか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  147. 後藤英輔

    後藤説明員 その点につきましては、私どもとしては直接関係ないと思いまして、実は調査を十分いたしておりませんのでございます。審判廷において、もしもその点が必要とあれば正確な数字を調べなくてはならないかとも思っておりますけれども、一応現在のところでは、そのような必要はなかろうと考えて調べておりません。従って数字も現在用意しておりません。
  148. 木村文男

    ○木村(文)委員 実はこの問題は、次に私が質問せんとしております畜産局長に対する質疑の際に、きわめて関連性を持つのであります。法によって官報に指定の告示が二月二日に出ております。そういうようなことにもきわめて関連を持つのでありまして、そうなりますと、私からあなたにさらに一歩進めてお尋ねしなければならなくなるわけでありますが、あなたは二月四日、先ほど淡谷委員からも御発言がありましたように、青森県の県会議員とわれわれ地元選出の国会議員との話し合いの席上において、確かにある程度の融資的なことの増額についてお話があったように私は記憶しておるのでありますが、その当時発表されたこと程度でもよろしゅうございますから、今ここで正式に御答弁を願っておきたいのであります。
  149. 後藤英輔

    後藤説明員 青森県の県会議員の方がお見えになった席に、その点につきまして私が数字を申したかどうか、確かな記憶はございませんが、もしその当時申しましたといたしますれば、雪印乳業に対する農林中金の融資は約四十億ほどあるということを申したかもしれないと思います。そう思っております。確かな数字ではありません。
  150. 木村文男

    ○木村(文)委員 もう一点伺いたいのでありますが、私の調べたところによりますと、この契約をする際に、中金が主としてあっせんの労をとられているように聞かされておりますが、それは事実でございますか。   〔助川委員長代理退席、委員長着席〕
  151. 後藤英輔

    後藤説明員 農林中金もあっせん者の一人としておられ、畜産振興雪印譲渡の覚書の際にも確かに農林中金の青森支所長が立会人としてやっていた、このように記憶しております。
  152. 木村文男

    ○木村(文)委員 公取に対する私の質疑は一応この程度でとどめておきます。  次に農林当局に対してお尋ねいたしたいと思います。まず第一点として畜産局長にお伺いしたいのでありますが、あなたは午前中の私の質問に対する公取の方々の御答弁によりますと、行政的な処置に出られる前に、すでに六・七回にわたって農林当局と折衝をしたということを私に答弁されております。あなたはこれを聞いて是認せられますかどうか。
  153. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 六、七回という点につきましては私は確実な記憶はございませんが、数回にわたりまして私たちの方からも積極的に御連絡をいたしております。
  154. 木村文男

    ○木村(文)委員 六、七回という記憶はないそうでありますが、いずれにしても連絡折衝があったことはお認め下さったようであります。もしかりにそれが事実とするならば、畜産局長は、この行政的な措置をする前に、もっと慎重な態度をとるべきであった。迷惑をこうむっているのは青森県であります。非常なる迷惑をこうむっている。県会においてもこれが問題になる。のみならず生産者がどれほど不安な気持で——酪農振興の恩恵をこうむるべきであったのに、逆に不安な気持でその酪農の経営に当らなければならぬという結果になってしまった。あなたは先ほど竹内代議士の質問に答えていわく、行政的な処置としては何も手落ちはない、こういう答弁をされております。されておりますが、私はこの騒ぎに至ったそれ自体振興法の趣旨に沿うてない姿であると思う。法的な意味においては落度がないとしても、行政の運営の立場からいって落度なしとは言えないと思う。  そこで私のこの考えを持つまでに至った第一点を固めるためにあなたにお尋ねしたいのは、公取の方から数回にわたってあなたに折衝し、あなたのただいまのお答えによりますと、またあなた御自身が公取に対しても折衝を積極的にやりました、こういう場合において、青森県の県内における酪農運営の面において何かしら問題が起きているということをつかみ得ませんでしたかどうか、これを伺いたい。
  155. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 酪農地域の指定につきましては、全国的に、三十一年度の指定は昨年の九月に指定をいたしました。そこで問題の残っておりまする諸地域、当然三八地域も中に入っているわけでありますが、それらの地域に関しましては慎重に検討を要する必要を認めましたので、自来これを慎重に検討を続けて参ったわけであります。その間いろいろと県の事情あるいは公取の方への連絡、あるいは県の農民各位からのいろいろの陳情その他がございまして、そこで三十一年度におきまする指定は早くやれという県からの要望が非常に強かったのであります。しかしいろいろと問題もございますので、慎重に検討いたしまして、年の明けました三十二年の二月二日に官報に告示をいたした、かような順序でございます。
  156. 木村文男

    ○木村(文)委員 あなたのただいまのお答えは、法にのっとって、しかも事情を慎重に考えた、こういうことですが、実質においては、当農林委員会まで問題化されて持ってこなければならない結果になってしまった。そこで私は今あなたに聞いている。それではあなたに公取の方から折衝連絡といいますか、そのとった内容はどういうものでございましたか、これを一つ詳細に明らかにしてもらいたい。
  157. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 公取の方は十一月に現地へ御調査に行っております。その前にその地方酪農の一部の組合の広沢安平さんという方の名義で意見書が十月に出ているように聞いております。そういう事実がございますし、また公取の方からも御連絡もございますので、私の方といたしましては、それぞれの県の方へ公取が出向かれていろいろと調べておられるそれらの一件の書類を、県なり関係者の方からいただきまして検討いたし、あるいは地元の方から公取委員会の方に対しましての意見の具申書の内容等も拝聴いたしまして、それぞれの事実につきまして当方におきましても調査をいたしたわけでございます。
  158. 木村文男

    ○木村(文)委員 調査をされたというただいまのお答えでございますが、調査方法はどういうようにやりましたか。
  159. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 関係書類を調べ、あるいは関係者の方々のお話をお聞きいたしました。
  160. 木村文男

    ○木村(文)委員 あなたは、公取審判にまで付さなければならぬ事件であるとまで考えて、取り上げた問題が、しかも六、七回にわたってあなたに連絡折衝し、あなた御自身も公取に対して積極的な折衝をいたしましたとお答えしている通り、それぐらい重大化するところの道をたどっていることがおわかりにならなかったかどうか。
  161. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 指定地域の問題等を議論いたします場合、そこの乳業者の間に競争があることは間々ございます。さようにいたしまして、また農民の方々からもそれぞれ今まで縁故のあった方を応援する意味において、あるいはまた県全体の立場において、また農民の立場において、いろいろと御陳情があるのが常でございます。そのようなことで、いろいろとそういう事情はほかの地域につきましてもお聞きするわけでございますが、もちろんこの案件におきましては、公取委員会等が取り上げられておりますので、そういう意味におきまして問題があるのはよく存じておりました。
  162. 木村文男

    ○木村(文)委員 その場合にあなたは書類と陳情者の意見とだけ聞いて処置せられたというようにとられるのでありますが、ここまで問題化するということを考えてみた場合、あなたが現地に調査官を派遣する意思を持たなかった理由を私はただしたい。
  163. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 ただいま書類と陳情者の御陳情によってという御意見でございますが、先ほど申し上げました通り関係者の意見を聞いているのであります。単に陳情書と書類だけで調べたわけではございません。  それから現地に人を派するかどうかという問題でございますが、本件に関しましては人を派しておりません。これはその当時の状況を判断いたしまして、関係者のお話を承われば十分であるという認定が一つと、当時いろいろと問題がございましたが、そこへその調査の人間を派遣することの当否の問題を考えまして、これは関係者の諸君あるいは県の諸君等の意見によりまして判定をいたした次第でございます。
  164. 木村文男

    ○木村(文)委員 結局そこが手落ちになるところの第一点になる。あなたはそう考えませんか。ということは、公取が神聖なる審判の立場における現地調査に基いてあなたに折衝したのです。またあなたもその公取のことをある程度考させられる点があったからこそ、あなた自身が先ほど用いておった言葉の通り、積極的なる折衝をいたしましたと答弁しておられますが、そうなってくると、ほんとうに陳情者の意見、書類、あるいは県当局の意見、これらのことを調査したほかに、行政的な処置に出る前に、慎重の上にも慎重を重ねてその運営の衝に当るのが、あなたの立場だと私は考えます。それなのにあなたのただいまの答弁では、派遣しなくてもよいと考えたから係の調査官を派遣しなかったと、こう答弁することは、その理由のいかに薄弱であるかということです。これはここにおられる皆さんのだれもが、これだけ大きな問題であるのに、しかも公取が取り上げてあなたに数回にわたって折衝している。それはあなた御自身も認めて、さらに公取にも折衝してべすいる。調査もした。なお手を尽きは、係の調査官を派遣するのが、それがほんとうの行政の運営の衝に当る責任者としての道だと思うが、なおまだそれが必要でないと考えておるかどうか。
  165. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 質問の要点は、事と性質によります。もちろん、たとえば雪印のこの審決の決定書に書いてありますように、全販を買収した行為、あるいは県の畜産振興株式会社を買収した行為、これらが独占禁止法の違反になるのだ、こういう点の調査等は、これは私は必ずしも現地へ行く必要はないと思います。それから、その他いろいろの事項が上げつらって書いてあるわけでありますが、その諸点につきましても、現地につきましてその場所へ行って調べるのがいいのか、あるいは関係者の意見を聞きまして、それによって書類等も見て判定するのがよいか、これは事と次第によると思います。本件につきましては、私の方はそれまでの必要を認めなかったと先ほど来申し上げております。
  166. 木村文男

    ○木村(文)委員 これは水かけ論になってしまいますが、認めないと言えばそれまでの話ですけれども、結果においてはその方法一つあったことは事実だと思う。あるいはそのことによって、あなたの行政的な処置が、ここまでに紛糾をしないで、争いのような姿にならないで、われわれの議決したこの酪振法の趣意が、あるいは円滑に行われることができたのかもしれない。私はそれを遺憾に思う。ですからこうやってあなたに、係官をなぜ派遣しなかったかということを追及しているのであります。そして今なおそれが落度でないと思っているかどうかということを尋ねているのです。現実の問題としては、あなたのとった処置に欠けている点があったことは間違いなかったと私は思いますが、なおこの事実をもってしても、あなたはそれを考えさせられませんか。
  167. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、事とその性質によると思います。酪農地域の指定をいたします際に、今公取の方で指摘をされておりましたような案件につきまして、また個々の事例で御指摘になっている点がございますが、それらのことを、私たちが地域指定の判定をいたす場合、それがどの程度の意味合いを持っているか、重要性を持っているかということによって、現地へ人を出すことにまでなるかどうかということになると思います。事の性質であろうかと思います。従って先ほど来申し上げておりますように、地域指定をいたします場合、現地の調査をいたす場合もあればいたさない場合もございます。本件に関しましては、それほどの必要を私は認めなかったのでございます。この前の委員会でも申し上げておきましたように、これらの事実一つ一つにつきまして——いずれこれは審決においてはっきりされることでございましょうが、それらの中には、私たちの調査によりまして、そういう事実がなかったと思われるものもあります。またそういうことがあったといたしましても、その事実が、結論として、全体の意見をくつがえすに足らないという結論を持っているものもございます。あるいは、事実の認定ができなかったようなものもございます。それらのものをすべて総合判断いたしまして、さようにいたしまして、その地域酪農振興のためには、どのようにすればいいかという立場から結論を出したわけでありまして、当時県当局はもちろんでございますが、この両派に属しておられた方ともどもに、すべて地域指定の一日も早からんことを期待いたされておったのであります。私たちが調べた状況によりましても、大多数の方が中心工場としての雪印を認めておられたのであります。会議その他の議事録等も、私たちは取り寄せて読んでおるのでありますが、そういう事情のもとにこれを指定しないということは、どの方面から見ましてもかえって間違いを生ずる、こういう観点から、現在県が持って参りました計画を認めて地域指定をいたした、かようなわけであります。
  168. 木村文男

    ○木村(文)委員 今あなたは、大多数の者が雪印を支持しておった、こう言いますが、私はどっちをどうということでなしに、こういう紛糾をなくしたい、酪農振興法趣旨に従って、円満なる運営に資したい、こういう考えから申し上げている。ところであなたのとった処置は、その酪振法の運営の面において欠けるところが、ここに現実の問題として現われてきた。しかしあなたは、なお御自分のとった処置が是なりとしておられますが、それでは私は具体的にこれをあなたに指摘していきたいと思います。  そこで一番先にあなたに伺いたいことは、法と通達と通牒との効力の問題、これをあなたは行政官として、しかもそれを執行するに当ってどういうように考えておられるか、これをまず伺っておきたい。
  169. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 法と通達(木村(文)委員「通牒」と呼ぶ)との関係という御質問と思います。法律の運用をいたしまして、こちらの方から指導いたします場合に、通牒を出します。
  170. 木村文男

    ○木村(文)委員 今あなたのお答えによりますと、それじゃ一つ矛盾が出てきた。あなたは午前中の質問に対してこう答えている。法に照してわれわれはやったのであります。ですから間違いはございません。こう言っているが、今あなたは指導を加えると、こう言っている。あなたはこの処置をとるまでには指導を加えていない。たとえば、あなたは陳情者の意見を聞いた、書類も調べた、陳情書も見た、あるいは公取にも折衝をし、公取からも折衝を受けたと言うけれども、現地がそこまで騒いでいるのに対して、あなたは指導を加えていない。この事実もなお認めませんかどうか。
  171. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 先ほどの御質問は、法と通牒との関係であったのでお答えをいたしました。本件に関しましての指導云々の問題とは関係なしにお答えをいたしたのでございます。
  172. 木村文男

    ○木村(文)委員 私は本件に関係のないことは聞かないのです。酪農振興法の運営の面において、振興法と通牒だけであなたはすべてを処理しようとしているのかどうか、その面を私は聞きたい、これが一点と、いま一つは通牒と法の効力の問題を聞いた。なぜ聞いたかというと、実を申し上げると、あなた方農林当局が出している通牒は、指定の問題にからんで振興法に反して出ているのです。ですから私は今念のためにその効力の問題をあなたに聞いてみたわけであります。ところがあなたは、法の運営の面に当って、通牒を出して指導を加える場合がある、それだけを答えたのであって、そのときに指導ということが出たから、このあと私があなたに尋ねていく面において必要が生じてくるから、今関連的に一つただしておいたわけであります。あなたの先ほどの法と通牒の効力の問題に対する答弁では、私は満足ができないから重ねて伺いますが、法と通牒の効力の問題を明確にしてもらいたい。
  173. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 法律を運用いたします場合に、通牒で運用いたしますのが普通でございます。それから本件に関しまして通牒だけでやっていったかというお話でありますが、関係者を呼んだり県の当局者を呼びまして、口頭でいろいろ話もいたしております。
  174. 木村文男

    ○木村(文)委員 私は法と通牒の効力を聞いておるのです。法の趣旨にない、どう解釈しても生まれてこない通牒はあり得ないと思う。私も役人をやってわかっているのです。それからはずれた通牒を出したら、これは違法行為なんです。その点を私は聞いておる。
  175. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 通牒というものは法律に基いて出すものでございましょうし、法律が必ずしもなくとも、行政行為をいたします一つのやり方として出す場合もございましょう。法律に基いて出すべき通牒が法律に違反しておりますれば、それは通牒が間違っておるということになりましょう。
  176. 木村文男

    ○木村(文)委員 それではこういうことを一つ具体的に聞きましょう。一地区一工場は酪振法のどの条項に明記されていて、あなた方はそれを指定あるいは処置しておりますか、それを伺いたい。私の質問は、振興法では地域の指定はできるのでしょう、できるが一地域だけをしなければならぬという規則はどこにありますか。この振興法にはないのです。ですからおそらくあなた方は通牒によって出したものと思われる。ですから一地域だけを指定しなければならなくなったということは、この振興法のどこに明記されているか、それを伺いたい。
  177. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 一地域という御質問でございますが、一工場という意味でございましょうか。
  178. 木村文男

    ○木村(文)委員 一地区一工場というような指定をするに当って、その一地区一工場ということが酪振法のどこに書かれてあるかということです。
  179. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御質問の趣旨は、酪振法に基きまする地域を指定いたしまして、中心工場一つという意味の御質問だろうと思いますが、その意味でお答えをいたします。この法律の条文には中心工場一つであるという表現はございません。これは法律の中の条文で地域指定の基準等を施行令に譲っておるのでございますが、施行令の第三条にその趣旨をうたっておるのでございます。なお地域指定をいたしまして、中心工場というものは大体一つというふうにいたしておりますが、これはほかの工場に対します乳の集荷等を否定しておるということではございません。
  180. 木村文男

    ○木村(文)委員 それからもう一つ、一工場の一日の乳量百五十石を集めるという、そういう地域選定の標準といいますか、そういうことがあるとあなたは答えておられますが、それも一体振興法のどこにありますか、あるいは省令のどこにありますか、一つ教えてもらいたい。
  181. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 施行令の第三条にうたっておりまする基準といたしましては、御指摘の通りに百五十石以上の生乳を原料として製造する施設の操業に適する条件云々という表現になっております。で、この条文そのものから中心工場は必ず一つでなければならぬというそのものずばりが出てくるわけではございません。ただこの条文をうたっております精神あるいは酪振法全体を通じます精神というものから考えまして、私たちの指導といたしましては中心工場一つ、また従来中心工場が二つあるという例はないのであります。これは御存じの通りに酪振法のこの国会でお認めを願いました当時の提案理由にもうたってありますように、現在の日本の乳を扱っております施設が、経営規模が小さくて効率が悪い。それからもう一つは乳牛の飼養密度というものが非常に疎でありまして、そのための集乳の経費あるいはまた指導等の関係におきまして不利である、こういう状態がございますので、それを是正することがやはり酪振法の一つの目標になっておるのでございます。そういう観点から、百五十石と申しますと、やはりどうしましても乳牛が五千頭近くなければだめなわけでありますが、そういう観点からこの地域を指定いたしまする場合に、できるだけ早くそういう事態ができることを考えますると、やはり中心工場一つということにならざるを得ないのであります。たとえて申しますと、三八地域の現在の乳牛の飼養頭数はまだ二千頭になっていなかったのでございます。これを五年間の計画で五千頭程度まで持ってこようとするのでありますから、これは相当な努力を要することだと思います。そういうような意味合いからいって私たちは中心工場というものは一つという方針を立てておるわけであります。
  182. 木村文男

    ○木村(文)委員 それはこの酪振法の十二条にこういうことが書いてある。酪農事業施設が著しく過剰にならないときは都道府県知事はこれを許可しなければならない、こうあるんです。これで見ると、地域内の公正な面から見て自由な競争をさせて、生産者にほんとうに少しでも利益があるように持っていくのがこの法の建前だと私は考えるが、あなたはどう考えますか。
  183. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 十二条の条文でございますが、これはこの条文にございますように、新たに設置しようとするものは都道府県知事の承認を受けなければならないという文句がございまして、その第二項に「都道府県知事は、前項の承認の申請が左に掲げる要件に適合していると認めるときは、同項の承認をしなければならない。」さようにして今御指摘の通りの当該酪農事業施設が著しく過剰とならないこと、こういうことが書いてあるわけであります。もちろんこれは既存の施設ではございません。新しい施設考えた場合の問題でございます。しかも知事の承認を受なければならないと申しておりますることは、別の意味から申しますれば、施設の過剰ということがあってはならないということを一つの前提にしておるのではないかと思います。ただ、今御指摘の通りに、それによって新しく出ようとするものをむやみに押えてはいけない。むやみに押えないためには、その施設が著しく過剰とならないときには承認しなさい、こういうふうにいっておるのでありまして、あくまでこれは過剰にならない場合のことをいったおる、かように存じております。
  184. 木村文男

    ○木村(文)委員 そうすると、具体的に申し上げると、今問題になっている青森県の場合は、あなたは過剰になるといってとった処置でありますか。もしそうだとするならば、たとえば三八地域における酪農計画と十和田地区における酪農計画とを対象にしてみてのあなたの計画を聞かしてもらいたい。
  185. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 先ほどのお話は、中心工場のお話であったと思います。この施設という言葉には中心工場ももちろん含まれておりましょうけれども、いろいろな施設が入っておるわけであります。たとえば集乳施設でもこれは施設ございます。先ほど申しましたように、中心工場を定めて、そこに近代的な組織でそして乳をうんと集めて生産を進めていくということは、加工過程におけるコストを安くする上においても、また集乳における経費を安くする上においても酪農振興のために必要な措置であろうかと考えております。ただ中心工場の問題と今先生の方で御指摘になっております農業施設の問題は、一部は入っておりますが、一部はまだ入ってない問題もあろうかと思います。
  186. 木村文男

    ○木村(文)委員 そうなってくると具体的にさらにお尋ねしますが、現在青森県であなたの今おっしゃったそういうような計画に基いて施設中心にして酪農振興していくという場合において、現在の一社の中心工場の指定は、実際の面においては生産者の利益になっているとあなたは考えてやった措置だと思いますが、現在の乳価の面からいってほんとうに生産者のためになっているかどうか、あなたは調査したことがあります。
  187. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 特に乳価の面から本件について調査したことは私はございません。施設の問題として考えておるわけでございます。乳価の問題は時に応じて変る問題でございまして、施設の問題等はなかなかそういうわけには参りません。乳価は、御承知通り、夏乳価と冬乳価とでは違います。年によっても違います。
  188. 木村文男

    ○木村(文)委員 私の伺っているのは、そういう施設あるいは中心工場、こういうようなものの距離とか、青森県のように地域の面から非常に不便な、ことに雪の関係、こういうような面からその影響が乳価の上にある。それはあなたは実際調査しないというお話でありますからおわかりにならないと思うが、現にある会社の乳価と別の会社の乳価とに非常な開きが生じている地域がある。これは現実の問題です。私はそういう面から、一社だけの指定が是なりかどうかというところまで問題はさかのぼっていく。私は生産者というものを考えて論じておるのでありますから、酪振法の趣旨からいったならば、生産者の育成、保護、あるいは日本酪農を全面的に振興させようというのがねらいだろうと思う。そういう面から見たならば、乳価にそういった価格差があるような状態では、理想とは言えないと私は思う。それを是正するためにも、一社だけを指定して、ことに不便な地域であればなおさらのこと、そういう面から見ても、あなたの今回とった処置は妥当でないと考えるのです。それに対する見解を聞かしてもらいたい。
  189. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 今御指摘の点は非常に大切な点だと平生から考えております。乳価の問題は確かに会社により、工場により差別がいろいろあるようでございます。見ておりますと、乳業各会社競争というものは大体においてまず乳価競争になって出てくると思います。政策乳価と申しますか、進出していくときには高い値段で出ていくのが一般的であるかと思います。これはそのときの状況によってやはり違う問題でございますが、要はその価格が安定したものでなければならぬと思います。従来とも農産物等の問題、特に乳の問題について考えてみますと、大体一部価格を高く出しまして、農民としては有利なものですから、そちらについていくわけでございますが、さてそこについていきますと、あとでがさっと値下げをされる、せっかく共販的な態勢でやってきましたものが、それでくずれていく。こういうことをかなり繰り返しておるのであります。そういうようなことでは酪農の長い目から見ますと、非常に弊害がある。先生の御指摘の通り、そういうことのないようにやらなければならぬと考えます。  そこで酪振法あるいは酪振法に基く政令にもそれがうたってございます。私たちが指定をいたしまする一つの基準を示されておりますが、その中に、「その区域内で生産される生乳について、農業協同組合又は農業協同組合連合会が共同して集乳することが確実であること。」こういうことを政令によりまして規定されておるわけであります。そういうような形において各乳価のいろいろと段落があったり、あるいはまたそれがあとでくずれたりするものをできるだけ一つ救っていかなければならないという考え方から、こういうような一つの基準が出ておるのだと思っております。またこの法令の中にもありますが、集乳いたしましたものを集乳業者に納めます場合に、当事者は文書契約契約の状況を明瞭にしておかなければならないというような条文があります。これもあとでえてしますと乳価の変動というものが力のよしあしで上ったり下ったりする関係がございますので、一定期間そういう文書をもちまして確実な形を持たせたい、かようなことでこの条文があるのだと存じておりまするが、そういうような状況でございますので、確かに乳価の問題に対しましては、それが確実に安定した価格であることが望ましいと考えております。なお本件につきましては、それでは二社でやらせた方がいいじゃないかという問題があるかと思います。中心工場の問題につきましては先ほど申し上げました通りに、一つの工場でいっていただきたいというふうに指導いたしております。現在三八地域にありまする明治そのものの工場をそれでは否定しておるわけでは決してないのでありまして、これはおのずからやはり正当な競争はあるものと考えております。
  190. 木村文男

    ○木村(文)委員 今あなたのお答えによってわかります通り、あなた自身は生産者の乳価を守りたい、安定した乳価を持続させたいというねらいであるようでありますが、実際面において生産者の生産する牛乳の価格が、あなた方の指定処分というこのためにしわ寄せがいっているということが現われた場合において、私は問題が生ずると思う。ですから酪振法の趣旨からいったら、私は現在あなたのおっしゃっていること、それに沿うためにあなたのとった処分は妥当ではなかったと申し上げたいのであります。それは先ほど私が指摘したように、実際問題として一つ中心工場の指定によって価格差が生じている。これだけはどうしてもあなたに認めてもらわなければならぬ。もしかりに私が言うていることが違うとするならば、現地に係官を派遣して再調査する必要があると思うが、その意思がございますか。
  191. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 現地の状況が今どうなっておるか明確には私存じておりませんけれども、おそらく明治の方が若干乳価が一円ないし二円高いのではなかろうかと思います。これにはいろいろな理由があろうかと思います。政策乳価である場合もありましょうし、あるいは現在あそこで扱っておりますのは市乳が多いと思います。市乳と原料乳の場合は市乳の方が高いのは当然であろうかと思います。そういう問題もそれはあろうと思います。しかし問題は、その乳価の問題もさりながら、その乳価が安定して、牛乳が過剰になりました場合においても、一定の価格を維持してもらいたい。そういう一つの安全感なり信頼感、こういうことがおそらく農民のほんとうの気持であろうかと思います。競争の場合に乳価をつり上げて進んで参りますのは、これは一般の常識でありまして、どの地域でも集乳合戦の場合は乳価問題として形が出てくる。要はそういうものがあとひっくり返らないで長く続くかどうか。農民がそういうものに対して安定感を持って信頼できるかどうか、こういうことであろうかと思います。今の御質問と少し違うかもしれませんが、大多数の農民意思表示としては、中心工場に雪を指定しておることは、やはりそういう意味の一つの現われではないかと考えるのであります。現状におきます八戸の乳価は、あるいは明治が若干高いかもしれません。
  192. 木村文男

    ○木村(文)委員 あなたは今いろいろなお答えの中に、雪印を指定することは大多数の者の支持であるとおっしゃっておりますが、これは実際調査すると、決してあなたの考えておるような現実の状況ではないということを私は申し上げたい。そこに今紛糾しておる問題が生まれておるわけです。そこにまた価格差の問題も出てくるわけです。ですから私は、大多数の者が雪印を支持しておるということをあなたが言うこと自体がおかしいと思う。書類の上で調査をするとか、そういうようなことだけでこの問題を解決しておるところに、あなたの今のような一方的な答弁が生まれてくるのだと思う。そうではなく、何とかして乳価の安定を策し、生産者自体が安定感を持って生活できるような態勢に持っていくのが酪振法の趣旨だと思う。また行政官としてそういうような措置に出なければならないものだと思う。そういうことからすれば、あなたの今回とった処置は、一方的な処置であって、現地に係官も派遣しないで、もっと慎重な調査をしないで、大多数の支持だ、こう断定してとったところに今回の二月二日の告示として現われた結果になっておるのではないかということを憂うるがゆえに、現実の問題を指摘して、そしてお考えを願いたい、こう申し上げておるのであります。
  193. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 非常にお叱りを受けて恐縮なのでありますが、先ほど私の申し方が少し足りなかったかと思います。この法律規定しておる県の方から申請書を出します際に、地域内の町村長、豊協長、農協連合会会長あるいは乳業者というものの意見を聞かなければならぬことに相なっております。さようなことをいたしました結果が、大多数の者が雪印中心工場といたすことに賛成をいたし、それから県の畜産審議会、名前が少し違うかもしれませんが、というものがあるそうでございます。このメンバー等も聞きましたが、そこでやはり同様の結論になっております。これはもちろん後者の場合は法律が何も予定はいたしておりません、おりませんがそういう話を県から聞いております。それから県当局の地方団体としての判断も、そういうことを言っておるのであります。そのような観点から——もちろん一部の方々からも反対陳情がございました。私も受けたのでありますが、今のような事実から、私は農民の大多数は雪を中心工場とするこの計画に賛成しておるというふうに考えたのでありまして、先ほど私が農民の大多数の者が雪を中心工場とすることに賛成しておると簡単に言って、はなはだ言葉が足りませんでした。そういう事情から、私どもの方で判定をいたしたのであります。先ほど少し説明が足りませんで、恐縮でありました。そういうような事情に相なっております。
  194. 木村文男

    ○木村(文)委員 それではあなたに新しいことを一つお聞きしたいのですが、あなたはこの問題にきわめて関係が深いと先ほど後藤事務官答弁にもございました通り、県策会社といわれている振興会社というものがあるということをおわかりになっておりますますか。
  195. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 県策会社といいますか、青森畜産振興株式会社という名前であったかと思いますが、そういうものが雪印の方に買収合併されたということを存じております。
  196. 木村文男

    ○木村(文)委員 その振興会社が、内容がどうなっているかということをあなたはおわかりになっておりますか。
  197. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 大体のことは存じております。
  198. 木村文男

    ○木村(文)委員 どういうような内容になっておるか、その大体のことを、知っている範囲内のことをあなたはここでお答えを願いたい。
  199. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 これはすでに雪に合併されたもので、今その会社はないと思いますが、それでこれを合併するときに何か問題があったという公取の方の御懸念があったようでありますが、この会社雪印に合併されたことを存じております。
  200. 木村文男

    ○木村(文)委員 私はなぜこれをここまで聞くかというと、あなたは県の申請、県の話、こう言うのです。処分するまでには県の意見を聞いた、こう言うのです。いいですか、それが、その意見を聞いた県がこう言ったからこの指定をした、こう言いのがれをしているから、この会社のことを私はあなたに伺わなければならなくなるのです。これは私は当委員会では申し上げないつもりであったのですが、またあなたにこのことについてはお聞きもしたくなかったのでありますが、あなたがどなたの質問に対しても県の意見を聞いた、また雪印に対して大多数から支持があったというような答弁をしますために、私はこのことをあなたにお尋ねしなければならなくなるわけであります。この会社の内容というのは県が出資している会社でありまして、従ってその内容は、当時においては財政的に非常に窮迫しておったわけであります。そこで県が雪印に対してこれを買収の挙に出たこともここにある、そうみなされているわけであります。それがまた県会の問題にもなっているわけであります。こういうような問題のさなかにある際に、あなたが県の意見だけを聞き、あるいはまたそのほかに大多数の者が支持している、その意見を聞いた、こう言うのでありますけれども、公取関係者の答弁にも明らかな通り、全く作為的な行為が多々見受けられていることは、あなた御自身もおそらく折衝の上においてよくおわかりになっていることと思う。そうすると県の意見も県策会社の経営不振、その買収のこととからんで何らかのことがあったのではないか、行政的な処分をする段階に至るまでの間に、ことさら慎重にあなたは処分の道を歩まなければならなかったのではないかと私は思いますために、今この質問をしたのであります。そこであなたがこの処分をするまでに、そういうような行政的な面に現われてくる前に、内面的なそういうようなことも大体わかっておりましたと今答弁されたのでありますが、わかっておってでも、なお適当であると思ってやったということに今なお考えておるのでありますか。
  201. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 畜産振興を雪が買収しましたことが私的独占禁止法に引っかかるという疑いで審決を始めようとされているわけでありますが、これはおそらくその審決の結果が明瞭にしてくれるであろうと思います。従いまして私の口から、そのことの是非を申し上げる段階でないと思います。そういう合併があったということ、またそういうことが審決の対象になっているということを私は存じております。そういう事実は存じておりますけれども、この地域指定をいたして中心工場に雪をいたしますことに私たちが決定いたしますのに際して、十分そういうことも考えた上、決定をいたしたわけでございます。先ほど申されましたその決定自体が間違っておるかおらぬかという御質問のようでありますが、私どもの方としましては、間違っておるとは思っておりません。
  202. 木村文男

    ○木村(文)委員 あなたのそういったような指定の結果によって、県の意見を聞いて指定されたその結果によって、生産者の乳価の上にしわ寄せがいっているということを私は先ほども指摘したのです。そこでこの指定という問題が非常に問題になってくるのであります。事実においてそういう結果になっておる。それは県の今の知事がその県策会社の経営の失敗であるということを私は言うのではない。これは今失敗したんではない、もうすでに前知事において失敗しているのです。今の知事には何の責任のないことである。でありますから県がこれを雪印に売却するに当って、そういうような政治的な配慮が、この県策会社の失敗の結果買収に至るまでの経緯の中に織り込まれているということを、私は見のがすことはできないと思う。何といっても法的には、あなたがおっしゃる通りこれは酪振法には抵触しないかもしれないけれども、先ほど竹内代議士があなたに質問したときのように私もそう思います。思いますが、先ほど私が行政的な指導の面の問題についてあなたに言った通り、指導面からいってそういう事実をあなたはわかっておりながら、その挙に軽々しく出たということそれ自体が、私は行政官としてのとるべき道ではなかったのじゃないかと思いますが、百歩譲って法の建前から間違いがないとしても、もしかりに今度の審判が黒と決定したとする、その場合にここまで私があなたに具体的なことをいろいろ申し上げ、結局のところはわれわれが期待して議決をいたしました酪振法の運営の面において、農林省が間違った処置をとったためにそのしわ寄せが、生産者の福利をはかるべき法律が逆用されているということを私は指摘せざるを得ないのです。あなたはもしかりに黒と出た場合にこれを取り消すところの用意があるかどうか。ここまできたら、あなたもこれだけの事実を指摘し、あなた自身がこの買収の経過について、しかもその県策会社である振興会社の内容を把握している、こうおっしゃるのでありますから、黒と出た場合のあなたの所見をただしておきたい。
  203. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 県当局の意見を聞いたのが悪いというお話でございますが、法律に基きまして県の方から振興計画の申請書が出て参ります。それでありますから県の意見を聞くのは当然だと思います。それからなお黒となった場合どうこうというお話でございますが、これは審決が今行われようとしておる、あるいは行われかけておる問題でございまして、それはそのときのことにいたしたいと思います。今私は何も考えておりません。
  204. 木村文男

    ○木村(文)委員 私はあなたの良識的なことを求めたのでありますが、遺憾ながらまだあなたが酪振法の法的な根拠を振りかざして、あなた自身の良心をまだしまっておるように思われるのでありますが、私としては、行政官としてのあなたに対して期待はずれの思いがするのであります。その結果青森県の生産者の諸君が非常なる迷惑をしていることを再認識してしてもらいたいと思う。  もう一つはあなたが先ほど大多数の者、また町村長、協同組合長の意見を聞いたと言うけれども、公取諸君の御答弁によりますと、いろいろそこに作為的な行為が行われているということはもう明々白々なんです。あなたは部下の係官も派遣していないし、片方は審判という重い規制的な役目を持って現地に乗り込んで、しかも毎戸に当って、個人的にあるいは団体的にもみな調査をしている。それによってあなたに連絡折衝をしているわけであります。あなたはこういうような県策会社の買収の政治的な配慮があっただろうと思われるだけに、そういう面に直面しながらなお係官を派遣しないで県当局の意見だけを参考にし、またいろいろの作為的な経過が町村長の諸君にもしかりにあるとするならば——かりにないとしても、そういうことが公取から言われたから、あなたは振興法という趣旨にのっとって最も正しい、最もよい結果を生み出すためにも、係官を派遣すべきだったと思う。それでもなお必要でないと突っぱるのでありますか。それをもう一ぺんただしておきたいと思います。あなたはさっき県策会社であるということを認めたのです。内容を知っていると言ったのですだから私は聞きたい。
  205. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 私的独占禁止法に違反するかどうか、これは公取委員会の審決の結果明瞭になることと思います。おしかりを受けましたが、この三八地区の指定につきまして、もしも地元の農民諸君に迷惑をかけることがあれば非常に残念に思います。酪振法に考えておりまするがごとく、酪農地域を確定をされておるのでありますから、その計画に基いて地元の酪農が盛んになることを期待しております。
  206. 木村文男

    ○木村(文)委員 それではもう一つ指摘しますよ。あなたが法的な、いわゆる行政処分を決定するまでの間にはそういう経過があったと思いますが、これは事実そうであったかどうか、違う点があったら違うと私に教えていただきたい。第一点は、昭和三十年の一月六日付で三戸郡北部と上北郡南部の大部分であるはずでありますが、第一回の申請をした。その申請に対して三十年の十二月十日付であなたの方では指定しておる。それがその後三十一年の四月十八日付で今度は雪印乳業の三本木工場を同地区中心工場とすることに、これまた三十一年四月一日付でこれが指定されておる。こういうような変遷があったかどうか、私の調べではそうなっておりますが、その事実があったかどうか、こりいう変遷があったかどうかはっきりさしていただきたい。
  207. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 十和田地区の問題についてのお話であろうかと思いますが、年月その他に関しましては精細に調べまして後ほどお答えいたしたいと思います。
  208. 木村文男

    ○木村(文)委員 それではこの際委員長にお願いしたいのでありますが、この問題に関して農林当局の指定に至るまでの一切の経過についての資料を、委員長を通して農林当局に要求しておきたいと思います。
  209. 小枝一雄

    ○小枝委員長 木村委員のただいま御要求になりました資料につきましては、農林当局においてしかるべく取ら扱われんことを要求しておきます。
  210. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 十和田集約地域のお話であったかと思いますが、三十年の十二月十日に十和田集約酪農地域の指定告示をいたしております。それから三十一年の四月六日付をもちまして県知事の方から計画変更が出ておりまして、五月二十一日付で計画変更を承認いたしております。  それから一番初めに言われました昭和三十年一月の点につきまして、はなはだ恐縮でございますがちょっと聞き漏らしましたので……。
  211. 小枝一雄

    ○小枝委員長 木村委員に申し上げますが、本日委員会が終了いたしましたら、来週の日程について理事会を開くことにしておりますので、また発言の機会を作りますから、もう十分間ぐらいで本日は終っていただきたいと思います。
  212. 木村文男

    ○木村(文)委員 今の、畜産局長の聞き漏らした点を申し上げますが、私の要求した資料によってもわかると思いますので、その資料によって承知したいと思います。きょうは委員長から与えられた時間があと十分でありますので、先を急いで申し上げます。  昭和三十一年の七月に至って、農林省が明治と雪印がともに中心工場の指定要望をしているので、この中心工場を具体的に示すように県に指示していますが、その指示をしたことは事実であるかどうか。それをまず第一点に承わっておきたい。
  213. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 七月というお話でございますが、私の方では六月十四日付で、中心工場に対しまする計画決定を県に照会いたしております。
  214. 木村文男

    ○木村(文)委員 今私があなたに尋ねたような趣旨に基いてやっていますか。
  215. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 これはこの前も申し上げましたが、県の方から出ておりますそれまでの計画書には、中心工場の担当者に関しまする明確な規定がございません。工場経営担当者が未定のままに県から申請書が出て参っておりまして、従いまして一体中心工場をだれにどういうふうにやるつもりだ、こういうことを六月十四日付に照会を発したわけでございます。
  216. 木村文男

    ○木村(文)委員 実は私の聞くところによると、泥仕合というか、こういうような争いがどれほど地方に大きく響いているかということが、ときには計画変更によっては現われてき、ときにはあなたの方から指示をしなければならぬような状況によって現われてき、こういうような経過をたどっておるわけです。あなた御自身は局長の立場にあって、下の方の人が実際に衝に当っておるからよくはおわかりにならないようである。今の御答弁によってもよくおわかりになっていないように思われる。それくらいあなた御自身がおわかりにならないようなことが、地方においてはもっと問題になって争いの種になっておるわけです。その迷惑をこうむっておるのは生産者なんだ。私はこういうことを指摘して、実はまだまだ時間も許されるならば、私はこれくらい調査してある。それを一々あなたにこまかい点まで指摘して申し上げることはできるのでありますけれども、与えられた時間が十分しかないので、これはいずれまた詳細に機会を見て希尋ねすることにいたしますが、これだけ大きな問題になっておるのであり申すから、あなた御自身も今の審判を下される前に、慎重にもう一ぺん再検討を加えてみる必要が——むしろ私は行政的な処置の上に立って再検討を加える必要があると思う。あなたに言わせると、大多数のものが雪印を支持しているとかというような御答弁が出るようでありますけれども、私の言うのは、要は価格の面において、まず第一に生産者が益することになればいい。はっきり言うと、明治のある場所と雪印のある場所は、あなたの要望するような価格が維持されてある。けれども全然明治のないところにおいての雪印の価格というものは実に低い。たとえば一升で言うならば、片方明治は四十七円五十銭、片方は四十円前後といったような価格差がある。こういう事実をあなたは何と見るか。これは一体だれが損するのか、私はここをあなたの良識に訴えたいのです。振興法を執行しているところのあなたに訴えたい。われわれは、明治であろうと雪印であろうと競争さしても、生産者自体の生活の上において得になる安定感を満たせるような乳価がここに生まれてくればいつでもこれに賛成するのです。おわかりになりませんか。ですからその見地に立って、私はこういう事実をこの委員会においてあなたに指摘して、そうしてあなたに訴えようとしているのです。それを一方的な行政的な処置だけに出ようとする。たとえば町村長の大多数はそうであったとか、それにもあなたが折衝された——重ね重ね言うておるいわゆる公取諸君のあなたに折衝したことによっても、あなたが一考すべき性質のものであったと思う。それを県策会社を前の知事が失敗したために、県策会社の処置のために政治的な配慮を加えられないとだれが一体考えられますか。あなただって長い間現職にあって、それくらいのことがおわかりにならないでどうしますか。その犠牲になるのは生産者自体なんです。あなたがかわいがらなければならぬのは生産者なんです。県自体をかわいがるよりも、あなたがあずかっておるところの振興法というものによって生産者を守ることなんです。それがあなたの使命なんです。それを忘れたところの判断を下して、厳正にして聖なる審判という大きな一つの職を持っている人たちの調査によるその進言も聞かないということで、一体どうして監督者としてのあなたの立場を維持することができるか、私はそれを責めたい。どうかその点をお考えになられて、きょうは一たんこの質問を留保しておきますが、再びあなたにお尋ねする機会をとりたいと思いますから、それまでの間に、今度こそよく関係書類を一切自分の手元で調査して、係官を何回でも現地に派遣しても調査するというような考え方を持って生産者を守る立場に立っていただきたいと思いますが、その御意思があるかどうかを確かめておきたいと思います。
  217. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 申し上げておきます。先ほど三十一年の六月十四日付で中心工場に対しまする計画について照会を発しました。それまで県の計画書には中心工場の担当者につきまして明確な規定はございません。六月の終りになりまして、副知事さんの名前で中心工場の経営担当者は地元農民の総意によって決定したいという趣旨の回答が参っております。その後八月になったかと思いまするが、県の方から、中心工場は二つではいかぬのか、こういうような御質問があったことを覚えております。知事さんも見えまして、中心工場は二つにはならぬのか、こういうお話がございました。これは従来申し述べましたようなお話がございました。これは従来申しておりましたようなお話をいたしまして、中心工場一つにしぼっていただきたい、かように申し上げておるのであります。そういうようなことで、県の方からは十一月一日付で知事名で中心工場雪印を担当させるという計画書が参っております。それに基きまして二月五日に指定をした、こういうような順序に相なっております。
  218. 木村文男

    ○木村(文)委員 今の考え一つ……。
  219. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 全く御趣旨通りでありまして、一日も早く酪農が盛んになり、酪農民が安心して酪農振興のために精進できて、農業経営が安定することを期待いたしております。
  220. 小枝一雄

    ○小枝委員長 芳賀委員
  221. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、本日は公取横田委員長並びに事務当局の事務局長が出席しておりませんので、公正取引委員会を代表した答弁、あるいは事務当局の答弁というものを期待することはおそらくできないと思うのです。それで、この点に対しましては適当な時期を見てもう一度出席を求められるということを前提といたしまして、事務的な点を二、三点お尋ねします。  第一点は、審査部長にお尋ねすればわかると思いますが、現在問題になっておるところの三八集約酪農地区というのは何ヵ村ぐらいがその区域になっておるか、その区域内にいわゆる公取でいうところの酪農民というもの、酪農家の戸数はおおよそどのくらいあるか。これを現地の調査に行かれた木村委員のお話を聞いても、十分なる調査を個々に当って行われたというので、この地区内における正確な酪農者の戸数とか、その実態をお示し願いたいわけであります。
  222. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 三八地区酪農家の戸数は総農家数一万九千に対しまして約一千二百でございます。酪農家の率は六・三%です。
  223. 芳賀貢

    芳賀委員 それからこの地域内における市町村の名前ですね、同村と何町がなっておりますか。
  224. 後藤英輔

    後藤説明員 戸来、倉石、五戸、川内、市川、上長苗代、豊崎、浅田、野沢、田子、上郷、斗川、向、平良崎、留崎、北川、名久井、地引、田部、中沢、館、是川、島守、八戸市、大館、階上、これはあるいは町村合併などありまして若干違う点があるかもしれませんけれども、地図によって作ったものでございます。
  225. 芳賀貢

    芳賀委員 それからこの審判開始決定書にある東部酪農地区というのは、今御指摘になった地域と全く違うんですか。東部酪農地区というのはどこからどの辺までがこの地域になっておりますか。青森県の東部の酪農地域は独立した地域だと思いますが、どの範囲の市町村がこれに入っておりますか。
  226. 後藤英輔

    後藤説明員 三八地域、それから下北郡、上北郡、東津軽郡、青森市、大体こういうふうな青森県の東部における既存酪農地帯、かように考えております。
  227. 芳賀貢

    芳賀委員 三戸、下北、上北、東津軽、青森市だけですか。
  228. 後藤英輔

    後藤説明員 さようでございます。
  229. 芳賀貢

    芳賀委員 蘆野委員にお尋ねしますが、蘆野委員にはたびたび来てもらって大へん御苦労と考えておりますが、また来てもらうのは気の毒でありますから本日お伺いします。  実は先日当委員会に出席されたときにも、主として蘆野委員北海道独禁法違反の監査に行かれたときの談話の内容につきまして、そのうち特に農業協同組合の販売事業等に対する根本的なあり方というようなものに触れられた意見がその中にありますので、このことは私どもが考えた場合においては、何といたしましても蘆野談話というものは、協同組合の今後の販売事業、特に共販事業等に対する根本的な思想と相いれないものがあるとしか考えられないわけであります。特に私どもが重視する点は、この酪農振興法等にも示されておりますけれども、牛乳の取引形態は、原則としては協同組合組織を通じての共同販売方式が一番望ましいあり方であって、酪農民の団結と組織化によってみずからの酪農民としての経済的な地位を守り得るものであるという判断の上に立って、今日まで特に生乳の共販運動が全国的に展開され、着々とその実をあげておることは公取委員会としても認めておることだと思います。特に横田委員長は、この点に対しては全く同じ見解であることを当委員会等において披瀝しておるわけです。ですから、先日は蘆野さんが突然御出席になってこの質問にお答えになったので、唐突だったものですから十分深い配慮の上に立った答弁はできなかったかもしれませんが、その後何日か時間が経過しておりますし、私はあくまでもこの談話の形式の中におけるこの部分は、やはり表現の誤まりでないかというふうにしか考えられませんので、もう一度この点に対する蘆野委員の御見解を承わりたいのであります。
  230. 蘆野弘

    蘆野説明員 大へんに思いやりのある御質問で、ありがたく拝聴いたしました。いかにも仰せの通り、私こういうところへ出つけませんで、先日は唐突であったので、さだめし答弁もお聞き苦しく、内容もまたあるいは不十分であったかと思います。まだ速記録を見る機会がございませんが、実はいろいろ反省しておったのでございまして、ただいま御指摘の点もいろいろに考えておりまして、なお当時の談話も読み返して考えてみたわけでございます。ただいまのお話は、農民の生産物は農協一団となって、農協という組織を通じて販売するのが農民のための利益であると考えるがどうかという御趣意だったと思います。そして横田委員長もそれはその通りであるという趣意をお答え申し上げたと承知しておりますが、私もその点は全く同感でございまして、この談話のうちにも、「反面牛乳販売を行う際には農協等を通して行うことが好ましいのであるから、」とこうはっきり申しておるのでございまして、そこまでの点については先生ともちっとも考えの違う点はないのじゃないかと存ずるのであります。
  231. 芳賀貢

    芳賀委員 まさにその通りなんですが、ただ問題はその次からなんです。「従って牛乳取引は具体的には酪農民が牛乳販売先会社を自主的に選択して農協等に販売委託を行うことになるであろう。」この点なんです。この点はどうでしょう。
  232. 蘆野弘

    蘆野説明員 ごもっともでございまして、「具体的には酪農民が牛乳販売先会社を自主的に選択して農協等に販売委託を行うことになるであろう。」この表現はあるいは御心配になるように多少誤解を受けるおそれがあるかもしれないということを、読み返してみて私もいささか感ずるのでございますが、よく読んでいただきますればそういう誤解はないと思うのでありまして、何か必ず農協を通ずるのであるが、必ず二つの会社、あるいは二つ以上の会社に常に売るのが望ましいというふうにあるいはとられるかもしれませんが、そういう趣意では毛頭ございませんで、現実に適当な出荷先が一つしかないというような場合、これはもとよりそれで差しつかえないのでございまして、何でもかんでも常に相手に競争さして選択しなければならぬ、こういうような趣意ではないのであります。しかしたまたまそういう選択の機会がある場合に、それを一方だけに長きにわたって固定させてしまって、この農協はこの会社というふうにきめてしまうことは、農協のためにもまた農民のためにも決して利益でないのではないか、相手が競争してくる場合には、これに対してどっちでも有利な、これも決して短期的に目先の乳価だけとかなんとかいう見地ではなくて、安定した取引という関係すべてを考えまして、どっちが有利であるかということを農協が判断して、適当に選ぶ余地を残しておく方が有利ではないか、こういう考ええでございます。また農協の立法の規定もそういう趣意でできているように私は了解しているのでございます。
  233. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの蘆野委員意見によると、この販売方針は具体的に分析すると、取引先を組合員が指定して、その組合員の自由な意思等に基いて協同組香がその後の販売行為をしなければならぬということになるわけですね。そうすると、その組合員意思と指定する先は牛乳の場合にも必ずしも同一価格とか同一会社ということにならぬ場合もあるわけです。そうするといわゆる共同行為ということになると、やはり共同計算というような形がどうしても生まれてくることになるわけです。共同計算ということになるとやはりプールして生産しなければならぬということにも条件がなってくるわけです。その点はお認めになりますか。
  234. 蘆野弘

    蘆野説明員 農協の運営のごくこまかい実際の点は、不幸にして私存じないのでございますが、こういうことは現にあちこちに行われていることだと思いまして、そういう形にすること、つまり一つ農協の一部の組合員は一方の会社に出荷を希望してその通りされ、他の一部はもう一つ別の会社に出荷するというようなことが実行されておって、何ら支障なく円満に行っているというふうに了解しておりますが、あるいに間違っておりますでしょうか。
  235. 芳賀貢

    芳賀委員 通例考えられることは、とにかく組合員が単位協同組合——末端の農協に生産物を持っていくというところまでが組合員と法人である組合との間の一つの取引の第一段階なんですね。組合に出荷されたものを今度はさらに需要者に売り渡す場合には、これは組合員個々の意思がそこに直通するという形ではなくて、協同組合という法人の意思によって需要者に農産物を売り渡すということになるのが私は正しいと思うわけです。あなたの御意見によると、あくまでも末端の需要者のところまでも組合員意思が現物とともに行かなければうまくないのだということになる、これはやはり協同組合の販売事業の運営上大事な点だと思う。もちろん今までも販売方式の中には、たとえば買い取り販売といって、その日その日の時価によって協同組合組合員から農産物等を買い取る方式もありますし、また指値販売といって、たとえば品物が幾らの価格に到達した場合においてはそこで清算してくれ、そういう方式もありますけれども、おおむねの今日の協同組合としての販売のシステムは、共同計算の形によって一カ年間とか、あるいは三カ月とか、六カ月とか、その期間の中において、また毎日々々の間において価格の変動が非常に激しいものもあるわけです。ですから最高の値段で売る人はいいわけでありますが、不運にして最低の値段とか、あるいは出回り期に出荷する場合においては、一年中で一番安い値段で売らなければならぬ、しかもそういうことを余儀なくされる組合員は、品物を持ちこたえて高い値段になる時期を待つことができない、いわゆる協同組合組合員の中でも一番経済力の弱い人たちが一番不利な条件の中で売らなければならぬという事態が出てくるので、それを危険分散とか、あるいは平均化するために、三ヵ月間協同組合がたとえば一つの農産物を売っていく、それを期間内において平均化した共同計算の形をとって、そして組合員に対しては清算する、こういう方式がやはり今日の近代的な協同組合の販売事業としては一番望ましい形だということになって、もちろん農林省としてもそういう方向に指導しておりますし、協同組合自身としてもかかる自覚の上に立って、あるいは販売事業にしても購買事業にしても行なっているというのが今日の状態であります。ですからこの点をいかにしたならば八百人とか一千人の組合員ができ得るだけ同一の優遇された条件の中で自己の生産物を処理することができるかというところまで意識を持っていかなければならぬと思うのです。ところがあなたの見解によると、まず組合員が販売先をきめて、そしてそれを協同組合に指定することが一番望ましい形だというところに根本的な問題の相違点があるわけなんです。それで協同組合の今後の運営の基本的なものはこうでなければならぬという思想が公取委員会の中に底流をなしておって、この思想の上に立っていろいろな事件を判断したり、あるいは審決する場合においては、根本の思想が違っている場合においては、結果が大きく違って現われてくることは否定することができないのであります。ですからこの点はわずかな行間の中にうたわれている言葉でありますけれども、私どもとしてはあくまでもこれが公取委員会全体の協同組合の経済行為に対する考え方であるかどうかということを明確にしてもらわなければいけないのであります。本日は委員長がおられませんので、特に談話を発表された蘆野委員の見解を私は尋ねているわけでありますが、この点は非常に大事な点だと思うのであります。認識を改める余地がないものであればそれもまたそれまででありますけれども、協同組合を十分理解するとか、農業関係の諸問題の中に不幸にして独禁法に抵触するような事案が出て、それを取り扱われる場合の基本的な態度というものが、私は大事なものであるというふうに考えられますので、この点に対してはもう一度見解をお伺いしたいのであります。
  236. 蘆野弘

    蘆野説明員 いろいろ農業組合の実際の運営について御教示いただきまして得るところがすこぶる多かった次第でございます。今農民の生産物を農業協同組合を通じて販売するいろいろな方式についてお話がございましていかにもそうであろうと存ずるのでありますが、これは生産物の種類によってもずいぶん違うことであろうと思うのであります。季節的に出回るもの、それから相場の上り下りが時期的に変化の激しいもの、あるいは品質がいろいろ等級のあるもの、いろいろ場合によって農協がどういうふうな販売方法を用いることが、一番利益であるかということがきまってくるわけなんだろうと存じます。牛乳は御承知通り大体品質は一応斉一なものでありまして、従って建値というものもその期間においては一定しておる。それからまた雑穀等と違いまして、毎日少しずつ出てくる。また同時にこれは集乳というような一定設備が要るといったような性質のものでありまして、雑穀辺とはだいぶ違う面があるかと思うのであります。しかしながら根本的にわけは同じで、要するに組合が相手の出荷先に対して、どうすれば共同的に最大の利益をもって売ることができるかという点においては根本のわけは同じであると思いますが、現われ方は商品の性質が違うためにおのずから違ってくるのだろうと思います。ここに談話として申しましたのは、まさにこの牛乳のことだけでございまして、先ほど申し上げました通りに、何でもかんでも相手に競争を常にさせろ、しなければならぬという趣意では毛頭ございませんで、そういう機会がある場合に、また出荷先がいろいろありましても、一つ組合員こぞって一つの出荷先で満足しておるということならば最もけっこうであります。しかしながらまたそこに意見の違いがありまして、ある者は甲よりも乙を選ぶ、他の者は乙よりも甲に出荷することを利益とするといった場合には、そのくらいに分れても農民の団結による利益は決してそこなわれないで、最も有利に行われ、協同組合の利益はこのために必ずしも阻害されないと思うというのがこの趣意でございます。そんな場合はちょっと牛乳については考えられませんが、組合員が個々別々、てんでんばらばらに、甲乙丙丁とおのおの勝手次第な出荷先を指定して、そこへやるというようなことは、これは第一法律上できる、できないというようなことでなしに、農民協同組合という形で共同するという利益がないのでありますから、こういうことはもう明らかに不利益でありまして、法律上いいとか悪いという問題ではなしに、協同組合の本来の趣旨自体に反することでありまして、こういう態度に出ることはいわば協同組合運動の自殺でありまして、そういったような非現実的なことを私どもはねらっているのでも何でもありません。ごく実際的に考えまして、この場合におけるような、ある地域において二つの出荷先があって、これがお互いにサービスを競い、乳価を競って農民に満足を与えるようなサービスをしているというような場合には、おのおの組合員の心に従って二つくらいの出荷先に出荷するということにしても、決して協同組合の本来の趣旨に反するものではない、またそういう場合にはそうした方がむしろ利益の場合もあるだろう、こういうくらいな考えでございます。  それから、先日来しきりに何か公取協同組合の精神をよく理解しないで、協同組合の発達を妨げるようなことをとかくするというお話でございますが、けさほども委員長がちょっと触れましたが、われわれは決して協同組合自身を独占であるとかなんとかいうことで取り締ったという例はないのでありまして、いずれもむしろ大きな資本家がいろいろ協同組合を束縛したり利用したりして、独占的な行為をし、その利益をはかる、こういう場合を追及しているのでありまして、決して協同組合自身を相手に——最近ちょっと違った例がありますが、今までやってきたことは主としてそういうことでありまして、決してわれわれが協同組合に対する理解が十分であるというような自負をもって申し上げることもできませんけれども、協同組合の精神というものは、これは別にほかの委員まで代表してあれこれ申し上げる権限はありませんが、日常接触しておりまして、決してそういうことは各委員ともない。委員長がそういうことのないことは、みずから今朝も申し上げた通りでありまして、その点は御心配いただかなくてもいいのじゃないかと存じております。
  237. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで問題を少し変えてお尋ねしますが、たとえば一つ協同組合の中で、組合員意思が二つある。一つは甲という乳業会社に四十円で乳を売りたいという人が七〇%くらいある。あと三〇%は乙という会社に四十二円で出したいというような場面が非常に多いのです。そういう場合には協同組合としても、組合員中にそういう傾向があるのですから、二つの工場に対して、その集乳量の七割、三割を協同組合意思によって生乳を提供する。しかし値段が永久的でなく、その場その場によって一円や二円の甲乙があったりする場合もあるわけです。それを協同組合はその乳代を平均化して、その組合員に対しては同一の価格で清算する。こういう清算の方法というものは蘆野さんの談話の中から解釈する場合には、どういうことになるのですか。
  238. 蘆野弘

    蘆野説明員 これはもし各委託者、つまり組合員が委託するについてそういった方法をとることが有利であると皆が一致して、そういう出荷方法と申しますか、そういう売り方でやるというならむろん差しつかえないのではないかと思っております。
  239. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうやり方がいわゆる共同計算ですね。一応一元的に集乳して二つ以上の販売先に売り渡して、その代金は売り先の値段が多少違っておっても、あるいは時期によって違っておっても、それを平均化して組合員に対しては同一の価格で清算するいわゆる共同計算の販売方式ですが、これはいいわけですね。望ましいのですか。
  240. 蘆野弘

    蘆野説明員 望ましいかどうかということは、経済的な意味でそれが適当かどうかということは、そのつどの問題で一がいには申し上げられませんが、そういった形、つまり組合員無条件に委託販売をして、協同組合の幹部が非常な手腕家で、どこへでも一番いいところに適当に売り、その利益は無条件委託した人々に公平に均霑させるといった場面があれば、これは協同組合の販売方法としてはよほど進んだ有利なものではないかと存じます。その組合員無条件で委託する以上は法律上むろん差しつかえございません。
  241. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう形を酪農振興法の精神はいろいろな形で指導したり敷衍しているわけです。それが非常に高度の新しい進んだ方式であることをお認めになるならば、この蘆野談話は間違っている。どの会社に何円で売ってくれということを指定して販売行為をやるのは望ましいということは、時代的に見れば旧時代的なあるいは原始的な協同組合以前の行為にすぎぬと私は思うわけです。ここに私は公取委員会酪農問題等に対処する態度の違いがあると思います。事例をあげて申し上げますと、農林省は昨年の六月十三日付で、農林省畜産局長名による「集約酪農地域における共同集乳組織整備及び乳業の合理化について」という文書を流しております。私の持っているのは北海道知事あてでありますが、おそらくこれは集約地域のある関係県知事にいっていると思いますが、公取委員会としても、特に乳業問題に関心を持っておりますからして、そういう文書が出ているということは認識されていると思いますが、いかがですか。
  242. 蘆野弘

    蘆野説明員 ただいま御指摘の文書は、ついうっかりしておりましてまだ見ておらないので、これに対する意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  243. 芳賀貢

    芳賀委員 審査部長見ていますか。
  244. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 これは農林省畜産局長名で出してありますけれども、公取とは全然打ち合せてないそうでございまして、公取といたしましても一応刷りまして今度の事件の参考資料の中に入っておりますが、これについてどうこうという意見はまだきめておりません。
  245. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているのは、何も国の行政をやるのに一々公取に相談したり許可を得なければならぬというのではないのですよ。しかしこういうものをつづってあるけれども見ておらぬというのは変ではないか。たとえば農業政策とか畜産行政とかいうものが、今日政府の方針に基いて、あるいは国会意思に基いて、どのような形で実施されているかというその形というか、流れというものは、公取委員会においても勉強しておかなければわからないと思う。どうですか。こんなものを何も知らぬでもいいですが、ただ独禁法の上にあぐらをかいていばっておることがいいという考えであればこれは別ですよ。しかし国の経済にしても行政にしても流れていく方向というものは年々刻々に変るし、またいろいろな法律とかそういうものも出たり消えたりしていくわけですが、しかし一貫した農業政策の中における畜産行政やあるいは酪農業の振興のためのあり方とか、時の政府の方針というものはどこにあるということは、やはり認識しておる必要があると思いますが、蘆野さん、いかがですか。
  246. 蘆野弘

    蘆野説明員 まさに仰せの通りでございまして、ふだんからできるだけそういうふうには努めておりますが、公正取引委員会の性質といたしましては、いろいろな活動の部面がありまして、一種の基本的な調査というような、別に事件関係なしにいろいろな経済界の実情を調査するとかいったような面もございますが、何と申しましても公取の活動の本職はある違反事件が起ってそれに関連してほかの行政官庁がどういう施設をしておるかとか、どういう方針であるかとかいうことをその関連の範囲においてそのつど調査をするという建前になっておるので、網羅的に各省の動きを一々すべて把握しておるということはちょっと現在の体制では望み得ないことなんじゃないかと思いますが、事件の処理に当りましては、むろんそこに流れておるところの根本的の政策とか方向とか方針とかいうものは、十分にできるだけ広く調べた上で、それの上に立脚して事案の処理をいたすことにいたしております。
  247. 芳賀貢

    芳賀委員 私も当委員会において昭和二十九年以来しばしばこれらの問題に関連して公取委員会の出席を求め、農林省も国の行政機関であるし、公取委員会としても、一面においては検察的な、一面においては裁判所的な性格を持っておるけれども、やはりこれは政府の機関なんですね。だから、そういう政府部内の機関の中において、相互において全く背反したような考え方の上に立って問題を処理するということは、これは全くわれわれが見れば考えられないことなんですよ。ですから、絶えず意思の疎通をはかって、国の行政方向を十分認識をされて、そこから逸脱した、あるいは特に独禁法上これは明らかに違反であるというものを指摘して是正させるというところに公取の任務があると思うのですよ。ところが、こういうものを全然わきまえておらぬで問題を次々に拾い上げるから、いつの場合でも公取委員会が立っておる立場は、これは端的に言うと独占資本につながる明治とか森永の側にいかにも公取委員会が立っておるような感じを受けやすいのです。特に、社会党のわれわれが公取委員会と何か違ったような立場でものを言うことも、これもまた変なんですよ。われわれはあくまでも独占資本が経済支配とかあるいは私的独占をやることに対しては反対の立場をとっているのですからね。その法律の上にあるあなた方と大体同じ戦列になければならぬのですけれども、乳業問題に対しては絶えずあなた方とわれわれの立場が別のようなところにおらぬければならぬということは、これは不思議だと思うのですよ。その理由は、こういう国の行政のあり方とか畜産行政とか酪農振興の今日行われている方向とか、実践の内容をわきまえておらぬから、いかにも独占資本の走狗になっておるのじゃないかという極論をもって批判されるような場合も、気の毒だけれどもたまたまあるわけです。私はここで明らかにしますが、この畜産局長の文書によると、「集約酪農地域における共同集乳組織整備及び乳業の合理化について」とうたってあって、これはこの機会に読んだ方がよくわかると思いますから読み上げます。「一、集約酪農地域(以下「地域」という。)内における集乳事業集乳所における事業及び乳業施設まで生乳を輸送することを含む)及び生乳等の販売は、地域一円のまたは地域全体を含む農業協同組合、若しくは農業協同組合連合会(以下「生乳共販組合」という)で行うものとする。但し生乳共販組合が、集乳地域の一部について集乳事業の一部を実情に応じて、組合員または会員たる地域内の農業協同組合に分担させることをさまたげない。二、地域内で生産された生乳等の取引に関する契約は、乳業施設渡しで生乳共販組合と乳業者との間において行うものとする。三、現に二つ以上の乳業者に生乳等を出荷している地域にあっては、地域酪農振興計画の最終年次において中心工場への出荷量が平均日量一五〇石以上(市乳地域にあっては六〇石以上)に達するよう生乳等の集出荷計画をたて、これを推進するものとする。四、地域酪農振興計画の生乳等の集出荷計画の策定及びそれを変更する必要のある場合は、酪農振興法第三条第三項及び第五条に規定する手続をとるものとする。五、生乳共販組合が二つ以上の乳業者に対し生乳等を出荷し、それぞれの乳業者との取引契約乳価(基本乳価に加算される奨励金等を含む)が異る場合は、生乳共販組合がその組合員または会員たる牛乳生産者に支払う乳価は共同計算の方法によって決定することを原則とする。六、生乳共販組合は、生乳等の取引契約の締結にあたっては全理事の同意を得ておくものとする。」こういうことになっているのですね。ですからここで集乳しておるところの共販の一つの体制というものは、やはりこれは個人であるところの組合員と乳業者の間において文書上の契約を締結するというのではなくて、生産者を代表する協同組合あるいは連合会が生産者の立場を代表して乳業会社との間において文書締結をするということでありますから、これは明らかに法人格を持った協同組合組合員の立場を代理してそうして乳業会社との間において文書契約によって乳価の決定一定の期間行なって、そしてその生乳を提供するということになると、この点はやはり蘆野委員の、組合員個々がみずから販売先の会社を指定してそうして組合はその指定に基いて牛乳を乳業会社に提供しなければならぬという点とこれは違うのです。  それからもう一つは、この生産の方式というものはその地域内において乳業会社が二つ以上あって、二つ以上の会社に牛乳を提供した場合においてその値段が違っておった場合においては、組合においてその値段を均一化して組合員に対しては共同計算を行うべきことが原則であるということもこれは示しておるわけですね。でありますから、全国の集約地域内における——地域外もそうすべきであるということになっておりますので、今日全国の農業協同組合はかかる方向に向って農林省行政的な指導またみずからの自覚によって共同販売の共同計算方式あるいは文書契約をする場合においては乳業会社に生乳を販売する意思は法人格を持ったところの協同組合自身の意思において売り先をきめるというこういう二つの根本方針に基いて行われているわけですね。ですからこれをまじめに実行したり実践している協同組合がたまたま公取の見解からいうと、これはけしからぬとか、独禁法違法とか、組合員意見を尊重しないからけしからぬとか、そういうことでまじめにやっておる協同組合が、次々に独禁法違反でやられておるというのが現実の姿なのですよ。ここまで述べればお気づきになると思うけれども、私はこれをもって蘆野談話の、私の指摘しておる内容というものは、現在国の行政の方針の中において行われておるこの酪農振興の形と、本質的に食い違っておるのではないかと言って指摘する根拠の一つは、ここにあるわけですがいかがですか。
  248. 蘆野弘

    蘆野説明員 ただいまお読み下さった書類は、実は私初めてそういうものがあることを承知したようなわけでありますからして、その内容についてかれこれ申し上げることは差し控えまして、ただ私のさきにした談話が、そういうのと食い違っていやしないかという点についてだけお答えを申し上げたいと思います。先ほどちょっと申しました通り組合員がみんな自発的に、自由意思をもって無条件委託販売をする、組合はこれを適当に売るという形は、組合にとって非常に有利な形じゃないかと思うのでございます。そういうふうに一致している組合は、非常に仕合せな組合であると考えます。しかしながらそれはどこまでも組合員の自由意思ということが前提でありまして、これはただいまもおっしゃった通りに、芳賀先生のお考えも、決して無理じいにそういうことをするのがいいという御趣意じゃないように承わったのでありますが、農民が自発的に自覚してそういった態度に出る、よくまとまる組合があれば、これも一番望ましい形であると思うのであります。私の談話は、申すまでもなく一昨年の北海道にありました事件の監査について申したのでありまして、そういった形でやっているところがほかにあったかどうかは存じませんが、しかしあるところにおいては、組合員が不幸にしてそういうふうな一致をしなくて、ある者は片っ方に出したいと言う、他の者はまた片っ方に出したいと言う場合が数例あったのであります。それを無理に押えた。これはまあ結局あとから顧みれば、一体甲の会社に出荷した者が利口であったのか、乙の会社を選んだ人が利口であったのか、長い目で見れば、あるいは非常な達見の人がわきから見ていれば、どっちが正しくてどっちが間違っておったということになるわけかもしれませんが、しかしまた必ずしもそうではなくて、まあ農協組合員の個々の都合——多少生活に余裕がある人、それとも非常に余裕がなくて早く現金の顔が見たいといった、まあ卑近な例を申せば、そういった個々の要求の違いからも、こういうことはあるのかもしれません。また私よく存じませんが、農民諸君というものは相当保守的な性質もあるもので、そういう利害関係よりは、むしろ長年の習慣であるとか、情義であるとか、そういう方に重きを置くといった人もあるし、そういうことじゃなくて、もっと割り切って実益に重きを置くといった人もあるし、こういう個々のいろいろ考えの違うというところから、めいめいで出荷先を選択するといったのが出てくるのかもわかりませんが、そういう自由意思を圧迫することは、これは独禁法の問題ではございませんで、農協法の問題ではないかと思うのであります。農協法はそういうときに、自由意思を圧迫してはいかぬというふうな規定になっているのは、決して割れている方がいいという趣意で法律ができているのじゃありませんで、できればまとまればなおいいのであるけれども、それはすべからく自発的に、全く各自のほんとうの自由意思をもってそういうことになるということが望ましいのであるが、それを無理にしてはいかぬ、こういうのが——農協法のことは専門外でありまして、非常に詳しいとは申せませんが、そういう趣意でああいう規定ができているのじゃないかと思うのであります。どうも農協に対する理解が乏しい、十分でない、また芳賀先生のお考えと違う、違うと仰せられるのでありますが、私伺っておりますと先生のおっしゃることは一々ごもっともでございまして、どうもそう根本的に私どもの考えが違っているとも思いません。あるいは表現から、ちょっとそんなふうにおとりになったのかもしれますんが、決してそうでないということは、大体おわかり願えたのじゃないかと思います。
  249. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたの言うのは、協同組合であっても、共同行為をする場合、個人が優先するということにすべてこり固まっている。ですから、同一組織内における総会意思だとか、個人に対する拘束とか、約束というものは、非常に軽視されているのです。もちろん共販をやる場合も、あるいは協同組合総会等において、販売先をどこにするとか、どういう形で販売、生産をやるとか、そういうことは協同組合総会の議案になって、総会の議決によって方針がきまる場合もあるし、またその決定理事に一任という形でも、理事が、この中でも全員の署名できめなければいかぬということになって、単に独占的に、支配的に、何でもかんでも協同組合員を強引に引っぱっていくということじゃないですよ。個々の組合員の自由意思が集結されて、その集団化された一つ意思表示というものがどこへ向うということがきまった場合においては、組合員である場合にはその拘束を受ける。全く受けなくてもいいのだということにはならぬと思うのですね。そうじゃないですか。
  250. 蘆野弘

    蘆野説明員 けさほどもその話が出たと思うのでございますが、これは事柄によるのでありまして、協同組合ばかりでありません。すべて団体行動するときは、一定の事柄は、これは総会なり何なりその団体の規約に従って、過半数なら過半数できめるわけです。事柄によれば三分の二の多数できめたものは、これに組合員たる者、会員たるものは拘束されることは当然のことでありまして、それでなければとても組合の円満な運営というもののできないことは、もとよりでございますが、今の生産物の出荷、これを委託するということは、これは法律の言葉でいう、いわゆる組合施設の専属利用契約というようなことで、これは別の規定がございまして、総会の決議でもってみなを強制することはできないというふうになっております。さっき御指摘になりました通り、私が個人の意思ということに非常に重きを置くように見えるというお話でございますが、ある意味においてはまさにそうなんで、私はやはり個人の自覚、自発的の自由というもの、これが根本であると考えていることは否定いたしませんが、これは決して個人が自発的に自覚して、そうして団体的な行動をともにする、まあ小異を捨てて大同につくということを否定する意味で個人を重んずるのじゃございませんで、個人の権利、個人の自覚ということは、これはもう根本で、一番大事なことだと思っております。それが自発的に協同組合に参加して、そして組合規定に従って多数の決議に従うということは、これは個人を尊重するということと毫も矛盾することじゃございませんで、ほんとうの個人的自覚ということが根本にあって、そうして初めて有効な団体的の活動ができるのでありまして、その点は一つ誤解ないようにお願いいたします。
  251. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、蘆野さんは農協法の第十九条の専属規定の第二項を指して、それは組合員の自由意思拘束しては相ならぬ、そこを論点にしておるわけですね。
  252. 蘆野弘

    蘆野説明員 さようでございます。あるいは私、農協法の専門でもございませんので、間違っておりましたらば訂正いたしますが、そういうふうに考えております。
  253. 芳賀貢

    芳賀委員 それが農協法の根本精神だというふうに考えておられるわけですか。第十九条の第二項ですね。むしろこれはただし書き的なものですがね。
  254. 蘆野弘

    蘆野説明員 その条文が農業協同組合の思想の典型的な現われである、こういうふうには考えておりません。こういう規定が出るのも、やはり農業協同組合の精神の一つの応用と申しますか、一つの面で、そういう面もあるんだということで、あれがすなわち農業協同組合の精神そのものずばりを現わしておるというふうには考えておりません。
  255. 芳賀貢

    芳賀委員 あれは協同組合全体の各般の経済行為に対する一つ規定じゃないのです。施設利用を拒否したりなんかしたらいかぬということですね。専属利用に従わなくても、それを理由組合施設利用を拒んではならぬということは、非常に消極的なものなんです。また知性の低い人たちに対してはこういうことで育成しなければならぬというような配慮だと思うのです。民主化の過程にある人たちに対してはこういう配慮も用いなければならぬということであって、これだけをあなた方はたてにとっておるということは、われわれも前々からわかっておるのです。これでけしからぬけしからぬということで農協の共同行為を破壊するといってはちょっと極端かもしれませんが、そこにくさびを入れることしかあなた方は能事がないんじゃないかと思うのですが、いかがですか。もし法律が改正されて、第二項がとられちゃったらどうなるのですか。
  256. 蘆野弘

    蘆野説明員 十九条の第二項に非常にわれわれが重きを置いているというふうに見えるというお話でございますが、これは農民は欲すれば自分自身で出荷先を選択できる、拘束されないという権利があるということでありまして、権利があるということは、いつでもそれをむやみに使え、こういうのがいいんだということではないと私は思うのでありまして、それを使うことが適当な場合にはこれを使うという保障があるというだけのことでございまして、自由があるからいつでもこれを存分に使え、それを使うことがいいんだということではないのでありまして、ほかの事情があってこれに該当するような行為をすることを欲する人があれば、それを押えてはならぬというだけでありまして、これを盛んに使って、なるべく一致しないのがいいんだということは、この間から毎々申し上げたと思いますが、決して考えておりません。
  257. 芳賀貢

    芳賀委員 時間がありませんから、もう一点お伺いしておきます。ただ御注意したい点は、この第十九条の第二項をあなた方はあまり強調されると、これはやはり反農協的な力がだんだん高まってくるんですよ。協同組合法の中にもこういうことがあるじゃないか、何もそうおどおどして協同組合総会拘束する規定に縛られる必要はない、お互いの自由というものはどこまでも尊重されているんだから、牛乳にしてもどこに持っていったって総会の決議なんかどうということはないというようなことで、やはり組合の内部を撹乱するような勢いに乗せられる場合も確かにあるのです。やはりお互い経済的には目先の利慾にくらむというのは当然なことなんです。目先だけが有利であればいいということにいくのが酪農民の利益のためというような、非常に甘い目先だけの宣伝を公取がやるということになると、先ほど畜産局長の言った考えと全く違うことになるのです。目先だけは非常にいいが、あとになって取り返しのつかぬようなことになる場合もあるんです。だから協同組合のあり方とか精神というものがどこにあるかということを、やはり十分に考えてもらわないと困ると思うのです。この点について、先般自民党の政調会の農民部会のときに三代川審査長が、農林省と対決するというようなことを言われたとすれば、おそらく私はこういうところに考え方の違いがあると思うんです。ですから結論を急ぎますが、蘆野談話の中の私の指摘した点、これを是正するお考えがあるか、あるいは率直に言って、この分だけを取り消して別の表現を使う御意思があるか、この点だけをお伺いしておきます。
  258. 蘆野弘

    蘆野説明員 お話の御趣意はよくわかったと存じますので、協同組合の精神というようなことについては、なお一層よく考えまして、誤まりのないようにいたしたいと思います。この談話について不穏当であるから取り消すというようなことは、私がただいま御説明申したようなことで御了解願えるのじゃないかと思って、差しあたり取り消そうというようなことは考えておりません。
  259. 中村時雄

    中村(時)委員 関連して、畜産局長にちょっとお尋ねしたい。酪農振興法の第一章、総則の目的のところに、第一条に「この法律は、酪農の合理的な発展の条件整備するための集約酪農地域の制度及び生乳等の取引の公正を図るための措置を定めることによって」云々と、こう出ているわけなんです。ここでいう公正なる取引ですね。公正なる取引といいますと、うしろに公正取引委員の方々がいらっしゃるわけですが、そこで公正なる取引ということが基本になってこの各条項というものはでき上っていると私は思う。そこでこの基本というものはすでに公正なる取引という前提に基かれてできたものと、このように解釈していいと思うのですが、いかがですか。これを第一点にちょっとお聞きしたい。
  260. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 これは、本法を作ります場合に、今朝来公取委員長が言っておられますがごとく、公取の方の法律関係も考慮されたものと思います。
  261. 中村時雄

    中村(時)委員 公取委員会法律ということはどういうことかわかりませんが、独禁法のことを言っていると思います。そこで独占禁止法の問題に関連して、この公正なる取引ということが一応あなた方の方と了解の上でこういうふうなことになっていく。すなわち公正取引委員会の取り扱っている独禁法の一部を、あなた方がすでに一つの責任の上において取り扱うという行き方になっているのじゃないかと解釈するわけです。そういう立場に立ってこの法律は作られたものだ、このように解釈しているのですが、いかがですか。
  262. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 この酪振法の公正取引をはかるため云々の措置は、酪振法で申しますと、具体的には終りの文章、契約の取引、生乳等の取引、第三章以下のものをさしておると思います。もちろんそれにつきまして、前の条文と酪振法の地域指定等の問題で協同組合等の確実な共同集乳ができることを基準の一つに定めておりまするから、従いまして先ほど芳賀委員から御指摘になりましたような通牒も、実はそういう趣旨で出しておるわけであります。
  263. 中村時雄

    中村(時)委員 これがはっきりしていないと、問題はどこまで行っても平行線になるわけです。この点が公取の方ではっきりしておれば、今言ったようにあなた方の権限以上という線が出てくるわけです。そうすれば、この行われているところの法律は正しいという見方になってきて、あなた方の考え方というものに根本的に問題が起ってくると私は思う。それに対して、公取の、委員長はいらっしゃいませんが、第三章以下といいますと、生乳の取引の問題も入ってきているわけなんです。そうするとこの問題の解決ははっきりしてくるわけなんですが、一体これに対してどういうようなお考えを持っていらっしゃるか。実は私関連ですからこれ以上のことは申し上げませんけれども、その点を慎重に御答弁願いたいと思っております。
  264. 蘆野弘

    蘆野説明員 委員長がおりませんので、ただいま蘆野個人の見解を申し上げるというふうに御了承願いたいと思います。酪振法制定については、過日委員長からもそれについて、農林省当局から連絡がありましてこれと折衝した次第を述べて、なおこのことは当時の国会にあてた年次報告書にも書いてございます。酪振法自体規定には、われわれの方が独占禁止法で禁じているような、公正取引を害するといったようなことは何もございません。酪振法自体には独占禁止法と矛盾するとかいったような点はないように了解しております。
  265. 中村時雄

    中村(時)委員 矛盾という意味じゃないです。基本的な問題を尋ねているのです。これはやっぱり農業協同組合法との関連が出てくるのです。生乳の販売の問題にいたしましてもそこに問題のデッド・ロックが出てくる。十九条におきましてもそれがあるのです。そして基本的な問題として、公正取引委員会の権限委譲というか、今言ったように酪振法の中に公正取引の問題をちゃんと取り上げているわけです。だから実際には畜産局においてその権限委譲に基いて行われたと思うのです。そういう建前に立って今までの行為というものは履行されておったと思うのですよ。あなた方がそれを認めないとすれば、独禁法の問題を中心にして取り上げてきた問題が平行線になってくる。農協法との関連も平行線になってくる。そこで実際に酪振法の第一条というものは、一応あなた方も公正なる取引として認めて、この法律というものを認めているかどうかということだけをお聞きしているのです。それ以外のことはいつかまた御質問いたしますから、その一点だけに集約しておるわけです。
  266. 蘆野弘

    蘆野説明員 仰せの通りで、認めておるのです。     —————————————
  267. 小枝一雄

    ○小枝委員長 この際お諮りいたします。委員異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、その補欠を委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 小枝一雄

    ○小枝委員長 御異議なしと認め、中村時雄君を理事に指名いたします。     —————————————
  269. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ごく簡単に、関連して一つ意見だけを申し上げておきたい。さっきから蘆野さんの御答弁を聞いておりますと、基本的には個人の権利を尊重している、自由競争を尊重するという点が明らかになっております。しかし現在の日本のような資本主義制度のもとにおきましては、自由競争というものは独占資本を助長する以外の何ものでもない。さっき木村委員から話がありましたが、ある県でやりました畜産会社がつぶれましたのも、その他の会社が不況になりましたのも、この全然拘束を加えない自由競争がお互いに滅ぼして、今のような混乱した事態を招いたことは事実であります。これに対して資本力の自由競争行政的に押えるというのがあなた方の任務なのです。その点をお考えにならないで、この酪振法あるいは農業協同組合法の基本的な線のはっきりした御認識がなくして、自由競争一本で行くならば、今回の事件はおそらく起らなかったであろうと思う。北海道の例がその通り青森県の例がその通りです。従ってこの問題は、立場を変えますと、乳業資本の名前が変っただけでありまして、やはり起ってくる。そこにあなた方の酪振法、協同組合法、あるいは独禁法に対しての遠慮のない、矛盾点は矛盾点として突き上げて、この点は一致しないからこれが矛盾がなくなるようにやっていきたいという、非常にはっきりした態度がほしいのであります。さっきの畜産局長答弁を聞きましても、酪振法によって行なった行動においては一点の誤まりはないと言っておる。あなた方が一点の誤まりなく行われたこの中心工場設定について、公取は違反であるというふうに言っておる。幾ら口の上では矛盾がないと言っても、起った事態ははっきり矛盾を起しました。もしこのままで進むならば、国家の機関が二つに別れて、おのおの一つの乳業資本を支持しながらみっともない争いをしておるような印象を与えます。私は本委員会のいろいろな論議を通じまして、こうした特定の乳業資本を守って、そのために論議しておるような言い方はいたしませんが、その点でもっと大胆になって、本来の姿に返って、農林省であれ公取委員会であれ、この三つの法律の矛盾、三つの法律がどうしてもかみ合う点、これについてなお慎重に御検討されますように心から希望いたします。
  270. 小枝一雄

    ○小枝委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会