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1957-03-08 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月八日(金曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 笹山茂太郎君 理事 白浜 仁吉君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 中村 時雄君 理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       石坂  繁君    川村善八郎君       木村 文男君    椎名  隆君       鈴木周次郎君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       永山 忠則君    夏堀源三郎君       原  捨思君    松浦 東介君       村松 久義君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    伊瀬幸太郎君       石田 宥全君    楯 兼次郎君       中村 英男君    日野 吉夫君       山田 長司君    久保田 豊君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君  委員外出席者         公正取引委員会         委員      蘆野  弘君         総理府事務官         (公正取引委員         会審査部長)  竹中喜満太君         総理府事務官         (公正取引委員         会審査部第一審         査長)    三代川敏三郎君         総理府事務官  後藤 英輔君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部農         業協同組合課         長)      大和田啓気君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月八日  委員赤澤正道君、大石武一君及び石山權作君辞  任につき、その補欠として鈴木周次郎君、夏堀  源三郎君及び淡谷悠藏君が議長の指名委員に  選任された。 同日  委員鈴木周次郎君及び夏堀源三郎君辞任につき、  その補欠として赤澤正道君及び大石武一君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酪農振興並びに牛乳取引に関する件     —————————————
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。念のため申し上げておきますが、本日の公正取引委員会側の御出席は、横田委員長蘆野委員坂根事務局長竹中審査部長であります。  酪農に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 質疑に入る前にお尋ねしますが、当委員会公取委員側から、ただいま委員長から御報告があった以外に後藤審査官出席さしてもらいたいということを要求してあったのですが、まだ見えておらぬようですが、これはどういう事情ですか。
  4. 小枝一雄

    小枝委員長 芳賀委員に申し上げますが、ただいま連絡がとれたそうでありまして、やがて出席があるようですから適宜質疑を進めて下さい。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 第一に質問したい点は資料の問題でありますが、先般当委員会を通じて、正式に公取委員会側資料の要求をしたわけでありますが、そのうち、雪印乳業ほか三者に対する審決監査についての盧野委員談話と、それから青森県の三八地区に対する審判開始決定書の写しと、それから北海道釧路国の浜中村茶内農協に対する勧告書資料として提出されましたが、もう一つ一月の三十日に公取委員会後藤事務官をして行わしめた三八地区独禁法違反事実に対する談話内容というものが提出されておらぬのであります。これはぜひとも提出してもらいたいのですが、提出できない理由があれば公取委員長から御説明願いたいと思います。
  6. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまの新聞記事でございますが、新聞そのものはございませんが、それを写しまして提出することにいたします。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 さっそく配付願いたいと思います。  順序を追うてお尋ねします。第一点は、昨年も当委員会において独禁法違反の問題を取り上げたことがあるのでありますが、その当時私は横田公取委員長並び農林省当局に対して、農林関係として常に酪農問題、なかんずく乳の集荷に当って、何か農林省公取の間において見解のそごを来たしておる点が非常に多いので、こういう点に対しては好ましい事態ではないので、できる限り当事者側において善意な態度で調整をはかって、禍根を絶つようにしてもらいたいということを要望しておりましたし、これに対しましては、横田公取委員長もその趣旨に沿って善処するというような答弁を行なっておるのでありますが、その後まだあとを絶たぬように思うのであります。公取委員会並び農林省当局においては、特に酪農問題を中心に置いて両当局見解食い違いとか、あるいはそれがたとえば独禁法であるとか、酪農振興法であるとか農協法であるとか、そういう法律の上に立脚した見解違い等がある場合においては、どういうような点でこれを調整することに努力してきたか、その努力の跡を一つ表明してもらいたいわけであります。
  8. 横田正俊

    横田政府委員 前回、ただいまおっしゃいましたように、乳の問題につきまして、農林省公正取引委員会と、できるだけ協調してやっていきたいということを、確かに私から申し上げました。その後もその方針で私どもとしてはやっておるつもりでございます。特に最近の問題になっております三八地区の問題にいたしましても、その後に取り上げました北海道浜中の問題にいたしましても、これは一々農林省の方と御連絡をいたしまして、公取といたしましては処理をいたしておるのでありまして、ただ問題に対します農林省立場公取立場は、こちらは独禁法施行機関でございますし、農林省の方は農業政策的な見解からいろいろな立場があるわけでございますから、そういう観点で若干の食い違いが出てくる場合もございますが、しかし私どもといたしましては、できる限りの連絡をし、農林省意見を聞きながら仕事をしておるのであります。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで具体的にお尋ねしますが、私の聞いておるのは、公取委員会はその行動する領域というものは、当然この法律の根拠の上に立っているわけですね。やはり法律限界の中において行われておるということは当然なんです。しかし独禁法がすべてわが国の経済秩序を破壊するとか、法秩序の上の最優先の地位にあるということにはなっておらぬと私は思うのです。一方協同組合法であるとか、それから酪農振興法もこれはやはり法律独自の力というものを持っているし、その限界というものもおのずから示されておるのですからして、お尋ねしたいところは、三つ法律相互間において何か相いれない点があるのかどうか。その点は横田委員長立場からどういうように考えておりますか。
  10. 横田正俊

    横田政府委員 協同組合法酪農振興法もその制定の当時におきまして、当時の独占禁止法と非常に調整の問題がございまして、相当研究されてできました法律でございます。農業協同組合法につきましてはもちろんでございますが、酪振法につきましても二十九年にこれが制定されまする際は、農林省公正取引委員会といろいろ折衝をいたしまして現在の形になっておるのでございまして、この点につきましては、公正取引委員会国会に対する二十九年度の年次報告の中で、簡単ではございまするが、御報告を申し上げておるわけでございます。少し長くなりますが、その一節を読ましていただきますと、この法律、要するに「私的独占禁止法の見地から、問題となったのは、酪農業施設新設承認制と、生乳業取引についての行政庁又は事業者団体干渉方法であったが、前者」すなわち承認制でございますが、「前者については、当初許可制であったものが承認制に改められ、後者」、すなわちなま乳の取引の問題ですが、「後者についても、原案では、各都道府県牛乳取引委員会を設置し、価格の決定等に干渉しうることとされていたが、これも単に契約文書化と、都道府県知事に対する届出義務を課することに改められたので、私的独占禁止法に直接抵触する点もなくなったが、酪農事業施設承認制によって少数者独占されることのないよう、また取引契約が不当に排他的、拘束的条件を含むものとならないよう、必要な調整を行なった。」という御報告を申し上げておるのでございます。要するに、この法律制定の際には独占禁止法に抵触しない範囲内においてこの法律運用、ことになま乳の取引につきましてはそういう抵触のないように運用されるということが、この法律制定されます際の前提になっておるわけでございます、その後のいろいろな事件の処理につきましても、われわれといたしましてはこの基本線に沿ってやっておるのでございまするし、また農林当局も私の知っております範囲におきましては、この酪農のいろいろな取引関係につきまして、もし独禁法に抵触するものがあれば公正取引委員会でどんどんやってもらってけっこうだというふうに言っておられるのでございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 農業協同組合法等は当然独禁法適用除外ということになっておるのですが、そういうことになっておってもなおかつ独禁法の側から見た場合、協同組合法の条文の中に何か摩擦するような点がありますか。
  12. 横田正俊

    横田政府委員 協同組合法独禁法適用除外に一応なっておりますが、この適用除外には限界がございまして、御承知のように、独禁法の二十四条というのが適用除外を規定しておるものでございますが、それには限界がございまして、いわゆる不公正な取引方法を用いる場合は、いかに協同組合でも独禁法上これを取り上げるということになっておるわけでございます。従いまして、先般来ときどき出て参ります問題は、やはり今申しましたような面に関係のあることが多いわけでございます。そして協同組合法自体の中に独禁法に抵触しがちな問題が特にあるというふうには私は考えておりません。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、ただいま私が求めたその三つ法律の間において、農林当局として調整にどういうような努力をしたか、それからもう一つは、最近たまたま起る問題というのは、ほとんど農業協同組合あるいは協同組合が実施する企業団体等がこの独禁法違反の指摘を受けておる事例が非常に多いのです。ですから、そういう点はやはり農林当局としてもいろいろ苦慮されておると思うのですが、そういう点に対して農林当局から一通りの御説明を願いたいと思います。
  14. 谷垣專一

    谷垣政府委員 ただいま芳賀さんからのお話の点につきまして、ことに北海道の問題、また青森酪農地区の指定に関する問題等につきましては、積極的に公取委員会の方に連絡をとりまして、そのつど事情を申し上げて参っておるわけであります。また北海道に関しましても、三八の問題に関しましても、それぞれの当事者あるいは関係県の方にもそれらの連絡いたしましたあとにおきましても連絡をいたしまして、その間の円滑な運用をいたして参っておるわけであります。たまたま青森問題等につきまして問題が生じておりますが、これらにつきましても数回にわたって御連絡を申し上げ、これらの御意見も十分に向うに申し上げてきておる次第でございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 公取農林省もどっちも誠意をもって話し合いをして問題の処理に当ることができるということであれば、こういう問題は起る以前に何とか片づけることができないですか。
  16. 谷垣專一

    谷垣政府委員 たとえば青森の問題に関しましては、公取の方と御連絡いたしまして、公取の方で疑念に思っておられるような点を若干うかがい知る程度お話を承わっておりまして、それにつきまして私たちの方でも当事者についていろいろと実情を調査して参ったわけでございます。ただ酪振法でいたしております問題のあり方と公取の方でやっておられます権限と申しますか、問題との間には、おのずから法律的にもこれは差異がございましょう。それらの点につきましての決定とおのおのの分野での判断が、これはお話しいたしましても残されておると存じます。それらのことも十分に考慮いたしました末でそれぞれの処置をいたして参ったわけであります。また浜中等における北海道の問題につきましては、これはむしろ事後に私たちの方には現地からの連絡があったような次第でございます。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 横田さんにお伺いしますが、委員長としては非常に誠意をもって、とにかくたびたびあなたは委員会に呼び出されるので、なかなか御苦労なことですが、来るたびに善処するとか努力するということを表明されておるわけです。それが委員長だけの範囲にとどまっておって、下の方に浸透していないのじゃないですか。特に委員ではなくて職員のところまで委員会意思が浸透していないように考えられる節が非常にあるのですが、職員指導監督委員長において行うものであるか、また別の系統があってやっておるのか、そう点を参考までにお伺いします。
  18. 横田正俊

    横田政府委員 公取事務局職員監督は、究極的にはもちろん私にございますが、中間の職員といたしましては事務局長がございまして、ただいま問題になっておりますものの担当は審査部というところでございますが、審査部部長もおりますし、その下がちょうど課に相当する三室に分れておりまして、そこにおのおの審査官を何名ずつか配属しておる、こういう形でございまして、ほかの行政庁と同じように、やはり段階的になっておるわけでございます。しかしこの審査仕事につきましては、単に私が口先だけで農林省と協力するというふうに申し上げおるのではないのでございまして、現実審査に当っております職員も、相当範囲誠意をもちまして農林省連絡をいたしておると私は考えております。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 私ども委員長並びに委員諸君は、もちろん国会承認を得てそれぞれ任命されておるので、全く信頼に足る人物だと考えております。しかし事務局職員の場合は、われわれ全く関知し得ない人たちがその職にあるのでありまして、そこまで信頼できるかどうかということは明確でないわけです。ただ委員長を通じて私たちはその言葉を信頼しておるのであって、職員に対する浸透というものは、やはり委員長責任においてやるべきものであるというふうに考えられますが、その点はいかがですか。
  20. 横田正俊

    横田政府委員 その通りでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 具体的な問題は順を追ってお伺いしますが、第一に蘆野委員にお伺いしたいのであります。昨年十一月七日に「雪印乳業ほか三者に対する審決監査について」という談話蘆野委員発表されたのです。その談話北海道の各市町村一円に配布されておるのです。これは公取委員会として鷹野委員談話なるものを印刷されて、積極的に配布されたものであるか、その点はいかがですか。
  22. 蘆野弘

    蘆野説明員 ただいまの御質問は、この談話公取自身北海道の各地に全部ばらまいたかということでありますか。——そういうことは積極的にはいたしておりませんです。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 こういうように印刷してあるものが大きく出ておるわけです。これは公取委員会として能動的に配ったものではなくて、第三者的な者あるいは問題に直接関係のある乳業会社等が、この談話を利用して散布したというふうに解釈していいのですか。
  24. 蘆野弘

    蘆野説明員 ただいま申し上げました通り公取としては、当時たしか道庁内にある新聞記者に対して、この談話を私自身発表したというように記憶しております。しかし当時私の見た限りでは、北海道新聞社ではあまり全文を書いたようなものはありませんでしたが、談話をたしか新聞記者には配付したと思います。それがその先どういうふうにだれが方々へそういう複写を作ってまかれたかは全然知りません。私そういう事実も初めて承わったものでありますし、こちらでそういう措置をとったことはございません。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの答弁によると、新聞記者談話発表したけれども、その談話内容全文新聞には掲載されておらなかったというのですが、その新聞がそれほど関心を持っておらぬのに、北海道一円にこういう蘆野談話がいろいろな形で配布されているのです。これは何らかの意図を持った者が配布したということになると思う。もう一つ重大関心を巻き起すような発表形式があったのではないかと考えるのですが。そういう点は何か意識的に談話を通じて強調された点はないのですか。
  26. 蘆野弘

    蘆野説明員 どういう御趣意かわかりませんが、こういうような談話発表する通常形式である代表的の新聞記者クラブというところで発表いたしました。もちろん発表したことについては責任はございますが、それがどう取り扱われるか、これを指図してどうこうしたというようなことは一切いたしておりません。ごく通常発表形式発表して私どもの方はそれでおしまいでございます。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 内容について二、三お尋ねしておきますが、この蘆野談話内容にこういう個所がある。「現地酪農民の間に乳業会社競争による酪農民利益確保という思想が浸透し、実際においても乳業会社競争ということによって、酪農民自己経済的地位を高めつつあることは非常に喜ばしい限りである。酪農民は自由にその牛乳販売先を選択し得るのであるが、反面牛乳販売を行う際には農協等を通して行うことが好ましいのであるから、従って牛乳取引は具体的には酪農民牛乳販売先会社を自主的に選択して農協等販売委託を行うことになるであろう。それゆえに農協は正当な理由なくこれら酪農意思を無視して、かかる販売委託の申し出を拒否すべきではない。」ということを言われておるのです。これは表面から見るといかにももっともなことになっているのですが、これがいつも問題になるところです。協同組合販売事業根底をなす考え方と非常に違うわけです。こういう点が、私先ほど委員長にお尋ねしたのですが、協同組合法に基くところの組合員一つ経済行為販売行為生産物販売する場合の行為の基本的な原則蘆野談話考え方表面上は変りがないようでありますが、底流をなすものは非常に違っているというような感じ方を受けるのです。ですからこれが非常に関心を呼んで、影響するところが大であるというので北海道一円に配付されたのではないかと思いますが、この点に対して蘆野さんのお考えをもう少し具体的に敷衍してもらいたいわけであります。
  28. 蘆野弘

    蘆野説明員 表面まことにもっともらしいことが書いてあると御賛辞をいただきましたけれども、私の真意もその通りでございまして、表面にこういう言葉を用いているがほかの意味を持っているというようなことは毛頭ございません。それでわざわざ方々へ配ったのではないかという仰せでございますが、これもただいま申し上げた通り、特に積極的に宣伝するというようなことはいたしておりません。それから御質問趣意は、一応表面上は間違っておらぬが、こういうことでは実際の農協動き方として困るのではないかということではないかと思うのでございます。自由競争とか何とかいうことをうたっておりますが、私どもそう非常に極端なことは考えておりません。やはりなるべく共同した方が農民利益であるし、農協法趣意もそこにあるのではないか、売り先をどこにするとしても、乳はすべて協同組合を通じて売った方がいいだろう、必ず売らなければならぬ義務があるという趣意ではございませんが、その方が農民利益でもあろうし、また農業協同組合趣意でもあろうということをここに特に申したわけであります。また相当広い地域にわたって、一社だけの独占ということにこれがずっと固定してしまうことは果して酪農民利益になるのであろうか、やはりある程度競争もあった方がいいんじゃないだろうかという程度のつもりでおります。それが協同組合の規定の趣意でもあろうし、また農民利益でもあろうと存じておるわけであります。それだけが私の談話意味でございますから、そう御了承願いたいと思います。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 この蘆野さんの談話によると、協同組合組合員自己の生産した生産物販売する場合、販売先を指定して協同組合に委託することがいかにも本則のように述べておられるのです。組合法によるところの組合員自身が生産する農畜産物というのは、単に牛乳に限られておるわけじゃないのです。米麦にしても雑穀にしてもすべて組合員がみずから生産するものを販売するわけですから、そういう場合に販売先を指定して委託しなければならぬとか、またそれが望ましいということになると、協同組合の運営上からいっても非常に重大な問題点が出てくるわけです。この前の国会においてもしばしば横田委員長に御出席願って論点としたのですが、協同組合組合員相互共同行為というものは、販売の面においては無条件委託販売ということが一つの望ましい方式になっておるわけです。しかも組合員はその約束を理解し、承知して、任意の上に立って協同組合に加入しているわけです。協同組合販売に対する望ましい姿は、組合員の指定する販売先農協が沿って販売をやらなければならぬということになると、根底からくつがえされるような事態が出てくるわけです。これは今日出た問題ではないのです。当委員会においてしばしば論議された問題なんですが、たまたま蘆野さんの談話内容は、結果的にこういう点を強調したようなことになっておるので、私たちはこれを重視するわけです。原則として、協同組合組合員個々意思に従って販売先を指定されて販売事業をやるべきであるかどうか、この点の見解をもう少し明確にしておいてもらいたいと思うわけです。
  30. 蘆野弘

    蘆野説明員 農協組合員生産物販売のことでございますが、ただいま雑穀とか米麦とかそういうようなものについてお話でありました。物によってこれは大へん事情が違うではないかと思うのでありまして、雑穀とか米麦は一年のうちある時期に一ぺんに出る。これを個々に一々皆指定してやるということは実際上できもしないし、あるいはまた無理であろうと思う。そういうものと牛乳のように一年中毎日少しずつずっと出ていくものとは性質が違うので、私の談話はむろん牛乳について申したつもりでありまして、またおそらくそういうふうにとられておると思います。特に一般のことまで当時私がかれこれ申すべきわけもないのでありまして、そういうふうに解釈されていると思います。それから、生産物販売無条件委託がよいというお話、あるいはほかのものについてはそういうことがよいのかもしれません。私ども事情は存じませんが、牛乳でも農民無条件委託でかまわぬ、またそうした方がよいと思えばむろん無条件委託がいかぬという問題はございませんで、もし万一農民独自の希望があるならば組合の方はその希望に従ってやるべきである、特に牛乳についてそうであるという趣意であります。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 芳賀委員質問に関連しまして若干蘆野さんに確めておきたいことがあるのです。今引用されましたあなたの談話の中に「乳業会社競争による酪農民利益確保という思想が滲透し、実際においても乳業会社競争ということによって、酪農民自己経済的地位を高めつつあることは非常に喜ばしい限りである。」こう言っておられる。この発表酪農民自己経済的地位を高めておる現実が喜ばしいというのであるか、乳業会社競争による酪農民利益確保という思想現地農民の間に浸透しているという基本的な傾向が喜ばしいのであるか、この点についてのあなたの見解をはっきりしてもらいたい。
  32. 蘆野弘

    蘆野説明員 そういう思想もだんだん浸透していると申しますか、一般的に了解されつつあるしその結果、果してどの程度までそれが行われてどのくらいまで利益が向上しているかというところまでは詳しく確めておりませんが、やはり印象的に現実農民利益を受けている面もあると思っております。また、そういうことがだんだん理解されていることは農民地位の向上のために喜ばしいことである、こういう趣旨でございます。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなた方、公取委員長初め委員方々の任務はあくまでも私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律に基いて、この法律の第一章総則の第一条「この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」この大目的をはずれた行為であってはならないということを確言いたします。その場合にこの公正取引法の範囲を越えまして農林省の持っておりますところの農政の上に、あるいは基本的な経済行動の上に、あなた方の私心が一点はさまったならばこれはおそるべき堕落であると私は思う。あなたはこの酪農振興の上にはっきり乳業会社競争による農民利益ということを考えておられる。それならば、現実において乳業資本というものが自由競争によってどのような勢いを助長し、どのような事態になっておるか、あなたのはっきりした御認識を伺いたい。これは単に北海道青森とは申しません。日本全国を通じまして、はっきり言うならば明治、森永、雪印という三つの大乳業資本が自由競争の結果どのような事態を引き起しておるか、これはあなた方の立場からはっきり御認識を伺いたい。
  34. 蘆野弘

    蘆野説明員 ただいまのは御質問でございますか。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 質問です。おわかりになりませんか。——あなたはこの蘆野談話なるものによって、乳業会社競争による酪農民利益確保が浸透しつつあることを喜ばしい限りであると確言された。それならば基本的な線において乳業会社という乳業資本が、あなたの喜ばしい限りであるという自由競争を行なって、日本全国的に見てこの自由競争がいかなる傾向を示し、どのような状態になっており、また日本国民の健全なる経済発達の上から見て、いかなる欠点やあるいはまた憂うべき傾向が存在し始めておるか、その点をあなたの認識に基いて伺いたいのです。どこでもこの乳業会社自由競争というものが喜ばしい現象を呈しておりますか、これはどうです。
  36. 蘆野弘

    蘆野説明員 ただいま淡谷委員独禁法の条文を御引用になりました通り独禁法では自由競争ということが経済下に行われるということを目的といたしておりますが、同時にまたそれは公正なる競争ということを強調しておるのでございまして、乳業会社競争、それはわれわれは喜ばしいことと思っております。しかしながら同時にその競争が今度不公正な競争というところまで参りますと、これまた独禁法は決してそれまで認めておるのではございませんで、乳業会社にいたしましても健全なる競争は大いに行われることをわれわれは望んでおりますが、これが不公正なというところまでいきましたときには、これまた独禁法違反でありまして、そういう事実がありますればわれわれはまたそれに基いて競争を公正な範囲にとどめるように取り締らなければならないのでございまして、そういう事実があれば、いつでもわれわれは審査を開始して、それを制御するようにすべきものであると思っております。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういう事実があればいつでもその審査に応ずるというのでありますが、その言葉から私はそういう事実がないという逆の断定を受け取るのであります。それならば一体、どっちが勝つかどっちが負けるかといった資本による競争の最後の結末はつかないのでしょうか。競争というのは争いでしょう、争いである限りはどっちかの資本が他の資本よりも強大なることを欲しております。その場合に大資本が中小資本を圧迫して資本による独占形態を現出するのは経済の当然の姿であり、自由競争の行きつく先であると思う。あなたはこの自由競争を認めておられまして、乳業資本がいわゆる公正な競争によって一方は太り一方は減る、その場合にどの点のバランスにあなたの公正なる取引という観念を置かれるか。
  38. 蘆野弘

    蘆野説明員 公正競争と不公正競争をどの点にバランスを見出すかという御質問と承わったのでありますが、これも原則独禁法に一々規定しております。不公正なる競争というものはやっぱり法律にずっと並べておりまして、あるいは公取法律に基いて指定するということになるのであります。これに該当するのが不公正なる競争である、該当しないときは一応公正なる競争である、こういうことに法律でなっておるのであります。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっき私が申し上げました通り、あなた方がこの法律に基いたことはわかるのです。ただし自由なる資本の競争によって農民利益確保し得るということは、これはあなた方の経済に対する認定であります。あなたは資本の自由競争によって独占的な形態を起さざる限りはこれを放任するというお考えのようである。それならば自由なる競争によってある一方の資本が強大になり、一方の資本が弱小になった場合、将来独占の危険性あるものとして自由競争の大資本を取り締るお考えはお持ちですか。それともこの法律に触れていないという観点であれば、資本による独占がどのように発展してもそれは放任されるか、これはいかがです。
  40. 蘆野弘

    蘆野説明員 資本による競争とおっしゃいますが、独禁法は資本とか経営のよしあし、いわゆる企業の能率とか、そういうことの競争はなるべく行われるのがいいという考えであります。しかしいわゆる大資本というようなものが将来独占というようなことを期待し、まあ独占にいかなくとも他の事業者、競争者を不当に排除するというようなおそれのある場合は、大体不公正な競争方法ということが法律にきめられており、あるいは指定をされておりまして、不公正競争方法の範囲にわたらないことであるならばまず、今おっしゃるような、ただ資本の力にものを言わせて弱小資本を圧倒する、大資本が独占するというようなことにはならないように法律はできておるというふうに心得ております。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その法律は何条であるかはっきりお聞かせ願いたい。私は現在の資本の自由競争を制限しておるような法律条文をわきまえませんが、一体何条に規定してあるのですか。
  42. 蘆野弘

    蘆野説明員 それは公正な競争方法という第二条が定義でございますが、その定義の第六項に「不公正な競争方法とは」という項があるのでありますが、それに一から七くらいまでずっと不公正競争方法のワクが規定してございます。そのワクに基いてもう少し具体的に公取が指定する、こういうことになっておりまして、その指定されたものが昭和二十八年の公正取引委員会告示第十一号で、そのワクに基いて不公正取引方法がずっと列挙されておりまして、一からたしか十一か十二までずっと並んでおるのであります、
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その範囲のものでしたら私も十分読んでおります。しかしあなたの指摘されました第二条の第七項一、二、三、四、五までにわたる、つまりあなたの言う資本を拘束する力というのは、一体資本を拘束するだけの力がありますか。たとえば大会社が乳価の競争をしまして、農民利益を与えるような形で一時的に高い値段で牛乳を買う、その場合にどうせ赤字を出すのは覚悟でやるのですから、資本の大きい方が資本の少いものより必ず長期間にわたって犠牲的な購入ができます。これは一体不当な行為ですか、正しい行為ですか。現在では牛乳の価格は統制されておりません。その場合に資本のあるにまかせて、犠牲を覚悟で、相手の業者がたえられなくなるまで高い競争乳価をもってする行動というのは、あなた方の公正取引の審判に値しますか、値しませんか。
  44. 蘆野弘

    蘆野説明員 あるいは委員長からお答え申した方がいいかと思いますが、私の考えを申し上げます。ただいまお引きになりましたたとえば資本の大なる乳業者が、ある競争者を排除するためにある特定の場所だけで特に高い値段でもって牛乳を買うということは、ただいま申しました一般指定の第二号でありましたか第三号でありましたか、いわゆる不当な値段で一この場合でありますと買うのでありますが——というのに該当いたしまして、不公正取引一つになります。また不当に高いか安いかということは、水かけ論になるおそれがありますが、差別的な価格でもって牛乳を買うということも、これはもう少しはっきりいたすのでありますが、これも不公正の競争でございまして、そういう事実があれば、不公正の競争としてわれわれは取り締らなければならないことになります。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点を、今度の具体的な問題についての重要な一点でございますから、さらに確かめておきたい。同じ地域において同じ条件にある会社が、他の会社よりも高い価格でもって買うだけではあなたの取締りの対象にならないらしいのです。不当な高い値段というのですが、この不当であるか、不当でない自由価格であるか、一体この区別をあなたはどこでおつけになるか。二円高ければ不当、一円高ければ不当じゃない、その具体的な基準がありますか。
  46. 蘆野弘

    蘆野説明員 そこに不当なる差別価格とか不当ということが書いてございますが、これは差別価格は原則的にいけないのであります。不当なというふうに特に断わっておりますのは、何か正当な理由がある、たとえば大量買えば多少手数が省けるから少し値段を出していいとか、小量ならあれであるとか、あるいは取引の条件が違うとか、そういう正当な理由があって差別するのは差しつかえないのであるというだけの趣旨でありまして、一円がいいか二円がいいかという意味ではございません。不当な安い値段という場合にはそうでありますが、差別価格の場合には差別価格自体がいけないのであります。ただしそれがただいま申しましたような正当な理由があれば、それはいわゆる不当な差別価格ではない、こういう法の趣意と思います。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 質問が重複しておりますからあとでゆっくりお聞きしたいと思いますが、ただ、今の点でもう少しあなた自身矛盾に気がついてもらいたいと思うのです。協同組合というのは資本力の乏しい農民が大きな資本の圧迫、農産物価格等の独占的な傾向に対して、一つの組織した抵抗である。このことをあなたにはっきり考えてもらいたい。一般株式会社その他の個人資本と協同組合は系統的に違っております。あなたは資本の性格にはっきりした差別を置いて審判されておるのか、あるいは協同組合によると、個人資本によるとを問わず、これは資本行為として全然差別をもうけていないのか、これは将来の協同組合の運動上、特に日本の農政上非常に重要な問題を含むものであり、芳賀委員質問もその点に集中されると思いますから、その基本的な線を特にあなたに確かめておきたい。
  48. 蘆野弘

    蘆野説明員 協同組合趣意はまさに仰せの通りに、多数の資本力の乏しい小規模の企業者に団結して大資本の業者に対抗する力を与えるためにこういう制度が特に認められているのでありまして、そのために先ほど横田委員長から申しました通り協同組合法の適法な行為は一般の会社とかなんとかに当てはめる独禁法からは除外ということになっているわけでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどの点ですが、これは非常に大事な点ですからもう一回確かめておきますが、あなたの談話で強調している、「牛乳取引は具体的には酪農民牛乳販売先会社を自主的に選択して農協等販売委託を行うことになるであろう。」かくあらねばならぬということで将来の行き方を示しているわけですね。一体この点がなぜ北海道全道に、あなたの意思でもないにかかわらず、流布されているかというと、ここを取り上げているのですよ。今までの協同組合販売共同行為というものは行き過ぎもあるし、間違った点もあるし、特に生乳の取引問題にはなおさら行き過ぎがあるから、公取がこういうことを言っているのだからして、何も協同組合は共同集荷をして共同販売をしなければならぬというのではないのだという一つの足がかりにこれがなっているのです。あなたの意思にそむいているかもしれぬが、現地においてはこれを唯一のたよりにして宣伝されているということをあなたはお気づきになっておりませんか。
  50. 蘆野弘

    蘆野説明員 私の談話がどれほどまで反響を起して、どのくらい波及しておるかということは、実は別に調査もしておりませんし、聞いてもいなかったのでありまして、実はただいま承わったわけなんでありますが、私は別にある地域で雪印なら雪印にみんなが出荷をしてそれに満足しておる、そこへもっていってわざわざそれはいけないんだ、ほかへも競争さしてやれ、こういうことをけしかけたり煽動したりするつもりはちっともございません。ただある地域で現実に、雪印では満足しない、むしろほかの会社に出したい、それも一人二人ではなく、相当の部分の組合員があるのに、それを押えるつもりから、それは好ましくない、農民がほんとうに自発的に他の乳業会社を出荷先として選択したいというような希望があるのを押えるということは、協同組合運動の趣旨でもある幸い、またそういう場合にはむしろ日中である方が、乳業会社の間にも競争になって結局農民利益にもなるだろう、こういう趣意でございまして、決して一カ所に出しているのがいけないんだ、何でもかんでもそれに競争しろ、こういうことを煽動するような趣意では毛頭ございませんから、一つ御了解を願いたいと思います。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は今後の協同組合の運動上問題点があると思うので、私は繰り返して言っているのです。もちろん委員長及び蘆野さん初め四名の委員各位は、国会の同意を得て委員になっていることは言うまでもないし、しかも委員に選ばれる条件としては、わが国の経済、法律に通ずるということが一つの前提条件になっているわけですね。ですからそういう意味では権威者です。だから公取委員として判断され、行動される場合においては、ただ単に独禁法だけをわきまえていることが法律を理解していることにはならないと思う。協同組合関係ある部面に対しては、協同組合法なるものの精神とか、本質を理解されているということが委員としての適格条件であると私は考えるわけです。ですからかりそめにも私は協同組合関係のことはよく知りませんとかいうようなことが述べられるとすれば、それはわれわれとしては非常に遺憾な点なんです。それで問題は、協同組合の事業というものは、組合員の共同の行為なんですから、共同の行為を行うという原則の上に立った場合、たとえば一つの単位協同組合が八百人とか千人の組合員を持っている。これらの組合員が、自己の生産する農産物を一人々々が、いや自分はどこの雑穀屋にこれを何円で売りたいんだが、一つやってくれとか、どの会社にこの牛乳を一升たとえば四十円なら四十円で売りたいからやってくれとか、毎日生産される鶏卵をどの問屋に自分は一個何円で売りたいからやってくれとか、あるいは毎日々々とれ、毎日処分しなければならない青果物等を、たとえば東京の神田市場のどこの店に売ってくれとか、そういうことを一々取り上げて、その組合員意思に従って販売事業をやるということが原則であるとすれば、これは大きな間違いでないかと私は思う。しかもあなたはそういうことになるであろうということを指向したような談話発表しているわけです。ですから公取の一委員としての蘆野さんの談話というものは、善意な軽い気持の発表であったかもしれぬけれども、この影響するところは実に大きいということを私は指摘しなければならぬと思うのです。こういうようないろいろな情勢をあなたが判断された場合においてやはりこの談話は適当なものであったか。しかも単なる酪農民という解釈の場合には、協合組合に入っている酪農民もあるし、入っておらぬ酪農民もあるけれども酪農民であって、しかも協同組合組合員であるという場合とは趣きが若干違うと思うわけです。大部分の酪農民農業協同組合に自主的に、自己意思によって加入しているわけですから、そういう点に対してこの際委員長の御意見もあわせてお伺いしたいのです。
  52. 横田正俊

    横田政府委員 この蘆野委員談話が今のお話によりますと、非常な問題を起しているというような御趣旨でございますが、この談話を藤野委員発表いたしました気持は、先ほど本人から申し上げている通りでございまして、ことにここには相当注意をいたしまして委託販売あった場合に、農協は正当の理由なくこれら酪農民意思を無視して委託販売の申し出を拒否すべきではない、今お示しのような突拍子もないことを言いましても、これはもちろん組合としてはそんなものに従うことはないと思います。それだけの用意をしてこの談話がなされているのでありまして、もしこれを故意に何らかのものが自分の利益に利用するというようなことがございましても、これは私どもといたしまして全く迷惑千万でございまして、当委員会といたしましては、決してそういう趣旨ではないことを御了承いただきたいと思います。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 私は審決を行なった一つの事案が、そのいかように処理されておるかということを見るのが監督の使命だと思うのです。ですからその監査の結果というものは、現状に対してどうであるということを正確に判断すべきであって、たとえば今後かくあらなければならぬ、協同組合販売事業はこうあらなければならぬというようなことをこの監査の中において指し示すというようなことは、やはり逸脱ではないかと思いますが、いかがでしょうか、この点に対しては委員会並びに農林省からも一つ見解をお聞きしたいと思うのです。果して協同組合販売事栗というものは、組合員個々意思に基いて販売先をきめて、あるいは値段をきめて、条件を示されて扱うのが本筋であるか。これは今後非常に重大な問題だと思うのです。こういう問題が解明されない限り、やはり絶えず問題が次々に提起されてくると思うから、この点に対する明確な態度の御表明を願いたい。
  54. 横田正俊

    横田政府委員 この雪印の外三者に対する審決につきましては、審決をいたしました当時私の名前で談話発表いたしております。これは御承知だろうと存じますが、大体蘆野委員が申されましたことは多少それと言い方が違っておる面がございますが、大体私の名前で発表されましたものと趣旨を同じくしておりますので、特に審決で示されておりますること以外に、それをさらにどうしようというような趣旨でこの談話がなされたものではないと私は考えております。  なお、ただいま御指摘もございましたように、この審決の結果につきましては、私ども責任を持っておりますので、今後もこの審決の結果がどういうことになるかにつきましては監査を続けて参りたいと考えております。
  55. 谷垣專一

    谷垣政府委員 この蘆野さんの談話が適当であるかどうかということにつきましての農林省としての意見を申し上げるのはいささか差し控えたいと思いますが、個々農民が主張を出します場合に、個々農民が自主的な判断をするということ自体は、決して否定すべきことではない、正しいことだと思います。ただミルクというような商品の特性と申しますか。毎日乳をしぼりまして、それを乳業のところに持っていかなければならぬ、そういう特別の性格があるのであります。従いましてやはりこれらの場合におきましては一定の期間、一定した供給のできますような約束が乳業の施設を持っておりますものと、農民との間になければならぬと思います。そこで私たちの方としましては、それを協同組合等が共同して出してやるように、一種の団体契約的なことでまとめて出すことが適当であるというような行政指導をしておる、かようなことでございます。乳業会社自体の競争がいい、悪いということ自体は、現在の場合競争があるのはそれを否定するわけにいかないのでありますが、そういうように乳が集まります必要度等から考えまして、酪振法でいっておりますように、工場をきめたところに対して組合が団体的な協約をしてものを集める、こういうこともまた必要であろうかと思います。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 私は何も牛乳だけどうだということを聞いておるわけじゃないのです。たまたま蘆野委員談話なるものは、これは協同組合販売事業のあり方について、かくあらねばならぬということを指向しているのですよ。もう一回読みますと、「従って牛乳取引は具体的には酪農民牛乳販売先会社を自主的に選択して農協等販売委託行うことになるであろう。」ということを言っておるのです。だから農林省に聞きたいことは、協同組合販売事業のあり方というものは、こういう形でなければならぬものかどうかということなのです。ですから本質的なことを聞いているのですよ。谷垣さんのように、牛の乳をどうすればいいなどということではなくて、協同組合販売事業、いわゆる組合員が共同の経済行為をやる場合のあり方というものは、どれが本筋かということを聞いておるのです。経済局長の担当ですから、局長に一つ……。
  57. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 その本質は、意思を同じくする人が自由に寄って共同の利益を守っていこう、こういうのであります。その事業の中の物を売る一つ行為として組合に委託する場合、どういうふうなやり方でやるかというのは、法律自体からはいかような形でもできると思います。しかし具体的にどうすることが一番便利であるか、あるいはどうすることが最もポピュラーであるか、こういう問題になって出てくるのじゃないかと思います。これは一つ協同組合の運動方式として出てくると思います。その場合には組合のそれぞれの機関にかけまして、どうしてやったら一番いいかということをきめることになってきます。従って普通の場合であれば、総会とかあるいは評議員会等で、この物はこうして売ろう、この物はこうして売ろうということが、それぞれの物資についてきまってくるのではないか、こういうふうに思います。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の関係がありますから、この点でただ蘆野さんにお伺いしておきたいことは、私の指摘している、この点はどうでしょうか。ちょっと逸脱のように私は考えるのですがね。どう思うのですか。蘆野委員としては、あくまでもこの程度のことは談話発表やっても当然であるとお考えであるかどうか。参考までに一つ……。
  59. 蘆野弘

    蘆野説明員 先ほども申し上げたと、思いますが、協同組合の本質と申しますか、趣意というものは、私がその談話発表した通りのものであろうと思うのであります。先ほども申し上げたつもりでございますが、あんまり極端なようなことまでを私は決して考えておるのじゃございませんで、ただいま例にお引きになりました通り、てんでんばらばらに一人々々が値段と売り先の指定をして、それを一々協同組合が取り上げなければならぬとか、あるいはそうすることが便宜であるというようなことを考えておるのではございません。それでは第一共同という利益一つもなくなってくるのでありまして、共同ということが農民利益であるということは、農林省の各局長の御意見も大体同じだろうし、私もそれはちっとも違っておりません。またこれが反対に、極端にこれを拘束して、何でも一本にしてしまうということはいけないじゃないか。組合員希望して、それが相当もっともな理由があるといって売り先を指定する場合には、組合の方の経営者としても、それはやってやるべきことじゃないか。その程度趣意をここに申し上げました。特にさっき横田委員長が指摘いたしました通り組合は正当な理由がないのに、これを拒否してはならぬというように、十分用心をして談話発表いたしたつもりでありまして、ただいま例にお引きになったような、非常に極端なことまでを私が考えているというふうにとる人があるならば、それは誤解でありますが、実は私は農民諸君はそんなふうに誤解はしておらぬだろう、するはずはないという自信を持って、この談話発表いたしております。
  60. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ちょっとこの機会に公取関係で伺っておきたいのです。ただいまの議論と同じことなんですが、養蚕組合の場合、昔大製糸資本との間に特約組合というものがあった。最近またそれの準備が進んでおります。これが一つ組合と製糸資本との間に契約ができますと、蚕種はその会社の指定した蚕種、肥料もその指定した肥料、それから桑苗も指定した桑苗、これがほとんど半強制的に販売される。従って繭はその会社に出さなければならない。こういう形のものが最近また準備が進められているわけです。こういう場合に、やはり公取でこれを独禁法違反として取り上げられるかどうか、見解を承わっておきたい。
  61. 横田正俊

    横田政府委員 はなはだ申しわけございませんが、どういうことが起っておりますか、もう少し具体的にお示しをいただきませんと、何ともお答えができないのでございますが、適当な機会に私どもの方へその内容をお示しいただきますれば、調査をしてお答えいたします。
  62. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは具体的に申し上げますが、たとえば新潟県の養蚕連が、ある製糸会社と契約を結ぶ。そういたしますと、その契約を締結した製糸資本が指定した蚕種以外のものは掃き立てを許さない。ほかの方から蚕種を購入いたしますと、それは契約違反であるということで、つまり県の養蚕連との契約を履行しないということで、そういう場合においては、県でまた規定を作って、これの取り締りをしているという事実があるのです。桑苗の場合も、あるいは肥料の場合も、かつては片倉製糸などは全部それをやったわけですが、今またそういう方向に準備が進んでいるのです。そういうふうに具体的に出た場合に、やはり契約をした養蚕農民は、きわめて不利な蚕種であるものを、やむを得ず掃き立てせざるを得ない。掃き立てをしないで、他の自分の技術あるいは施設に適合するような蚕種を掃き立てようとした場合、県の規則違反であるということで、現に取締りを受けている者もある。そういうふうに具体的になった場合、一体どういうふうにお考えになるか。これは一つ経済局長の方からも伺っておきたい。
  63. 横田正俊

    横田政府委員 ただいま伺いました事実の範囲内で一応考えられますことは、先ほど蘆野委員が申しましたように、不公正な取引方法というのがございまして、取引をいたします際に、繭の生産者でございますか、そちらに向いましていろいろ拘束的な条件をつけるということが、やはり独占禁止法上の違反になり得るのでございます。この具体的な場合が、果してその不公正な取引方法の、いわゆる拘束条件つきの取引というようなことになるかどうか、これももう少しよく検討しなければならぬと思いますが、大体そういう筋の事柄のように思います。
  64. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私の方の組合の方の関係からいえば、十条第一項十一号の団体協約の締結というようなところで一つは出てくるのではないかと思います。一つは、私よくわからぬのですが、議論になっているところで何しますと、製糸会社の方でどういう種類の糸を引くか、それによって蚕種をどうきめるか。しかし同じ蚕種ならばほかから買ってもいいじゃないかという議論が一つ出てくるのであります。それが果して同じ品種といいますか、同じような種類の種がほかでできるのかできないか、この問題が出てくると思います。その二つのものじゃないかと思います。一つの方は純技術的な問題でありますから、これは蚕糸局の方でもっと正確にお答えできるのではないかと思います。あとの団体協約の問題は、団体協約としてやはり適当であるかどうかということを組合意思をはかってきめなければならない。すぐ独禁法の問題まで発展する要素があるのかどうかという問題は、私ども直接詳しく調べておりませんから、もう少し研究してみたいと思います。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 後藤さんは来ていますか。先ほど委員長も申されましたが、一月三十日に公取委員会が雪印は独禁法に違反したような意味新聞談話発表しておるわけです。これは後藤審査官が自分の意思でやったものであるか、あるいは委員長の命を受けてやったものであるか、その点をお伺いしたいのと、まだ資料が配付されておりませんが、間に合わないとすればその談話内容をそちらで読み上げてもらっても差しつかえありません。
  66. 後藤英輔

    後藤説明員 きょうお呼び出しを知りませんので、御質問によりましてお答え申し上げます。先ほどの御質問の、一月三十日の新聞記事の中に私の談話というものが出ておりますが、お手元にないようですから、私の談話の点を読み上げます。「われわれの仕事は曲った道を歩いているものを真直に歩かせようということである。われわれの結論が出されたのちに農林省で三八地区の指定を行ったというが、われわれの結論を地区の指定とからませるかどうかは農林省のやることで、われわれの関知するところではない。」こういうふうに出ておりますが、実は私もこの新聞内容がどういうことを言っているのかよくわかりません。ことに後半のところにはどういう意味のことを書かれたのか私もわかりませんが、記憶をたどってみますと、公正取引委員会では、一月二十五日に三八の問題を検討して、独禁法上問題があるという結論になった。このことを農林省連絡せよという委員会の御命令で私が農林省に参りました。その点を農林省酪農課長並びに酪農課の方に申し上げました。そのことを東奥日報の記者の人が知って私のところに参りまして、公正取引委員会農林省を指導しているのか、あるいはまた農林省が指導できるのかどうかというふな意味のことを聞かれたことは記憶しております。それに対して、私ども公正取引委員会、ことに審査部といたしましては、そういうふうに他の行政官庁を指導するとか、事業者の事業活動をああせい、こうせいと指示する権限はないのです。私どもは行政なり事業者の事業活動なりが自由に自発的に動いていく形を後からつかず離れずの形でついていきまして、その間独禁法上少しはずれておる点があれば、これはこういうふうに直すべきではないかというふうなことをするのが公取の機能であるということを申したことは記憶しておりますけれども、それ以外の点につきましては、私は記憶ございません。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 まだほかにあるでしょう。談話の前に前提になったものがあるでしょう。
  68. 後藤英輔

    後藤説明員 この前提となりました事実の点ですが、これは私記憶ございません。はっきりこのように申したのか、あるいはまたその新聞記者の方が、農林省に私が委員会の命を受けてお話ししたことを聞かれて、こういうふうに書かれたのか、その点は記憶ございませんし、またこういうふうなことを私は申しておらないと思っております。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 では横田委員長にお尋ねしますが、ただいま後藤説明員のお話によると、一月二十五日の委員会で三八集約酪農地区指定の申請の基礎になる雪印乳業行為独禁法違反の事実があるとの結論を出して、その旨農林省に対して通告したということがありますね。それで独禁法違反であるという結論を出したにもかかわらず、そのあと農林省が三八地区の指定を行なったけれども、その農林省の態度に対しては関知するところでないと書いてあるが、これは了承できがたいという意味だと思う。二十五日に農林省に対してそういう通告をなされれたわけなのですね。
  70. 横田正俊

    横田政府委員 私の記憶では、たしか二十五日のもう少し二、三日前の委員会で、この事件は雪印乳業独禁法違反ということで審判を開始すべきであるという結論を出したように記憶しております。これは委員会の議事録がずっとございますから、それを見ますればはっきりいたします。従ってその委員会審判開始決定書を作って最近の委員会にかけようということで、今、後藤事務官が申した一月二十五日というのは、その審判開始決定書の案をきめた日でございます。それでこの三八の問題については、農林省の方に青森県の知事からの指定の申請の問題がからんでおりまして、前から農林省とば密接に連絡しておりました関係もございますので、参考のために農林省の方に、公取はこういう結論を出したということを連絡した方がよかろうということで、後藤事務官はその連絡に当った次第でございます。なお、通告はいたしましたが、たしか二月二日でございますか、指定がなされて、開始決定の方は、ちょうど任期を満了されて再任までちょっとの間の置かれた委員もおられましたような関係で、日付は二月八日になっておりますが、開始決定することを決定いたしましたが一月二十五日でございます。なお農林省に通告したにかかわらず、農林省が二月二日でございますか、決定をしたことをどう思うかというような御趣旨でもあろうかと思いますが、この点は実はあの事件の見方でございますが、審査部で審判開始をいたしますまでの間に調べました事実といたしまして、われわれは雪印が中心となりまして県その他の団ました事柄が、結局雪印の独禁法違反につながっておる、こういった認定のもとに開始をいたしたわけでございますが、農林省としましては、この指定をする前提となるわれわれの指摘いたしましたような違反事実は結局大勢には影響はない、やはり雪印を指定するということは、多少そこに作為的なものがあるにしても、基本的にはやはり雪印を指定すべきである、こういう農林省酪農法上の立場から二月二日に指定されたものと考えております。言いかえますれば、私ども独禁法違反として取り上げておりますることと、農林省の今回の指定とは直接のつながりと申しますか、多少明色がずれておるというふうに私は考えておる次第でございます。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員 農林省にお尋ねしますが、ただいま横田委員長お話によっても、二十五日付農林省に対して三八集約地区の指定申請を雪印に行なっておるけれども、雪印は独禁法違反ということになるのだ、そういう結論が一応出たということを、農林省地区指定する前にこれを通告したわけですね。それは正式な通告として受け取られたのかどうか。やはりこれを配慮の中に入れて二月二日に地区指定をやられたものであるかどうか、その点の経緯をお尋ねしたいわけです。
  72. 谷垣專一

    谷垣政府委員 本件につきましては、むしろ農林省の方からも積極的に随時連絡をいたしております。御存じのように昭和三十一年度におきまする集約酪農地域の指定というのは、その大部分のものを、たしか九月だったと思いますが、昨年の九月に終っております。問題のかなり錯雑した形のものを残しまして、慎重に検討して参ったわけでありますが、その間におきまして随時公取委員会の方には、この三八地域の問題も含めまして連絡をいたしておったわけであります。そこでいろいろと経過がございましたが、私の記憶では、一月二十五日に私たちの方から酪農課長をして連絡させまして、公取委員会の方に来ていただきまして、従来いろいろと公取見解等をお聞きしておりましたものに対して農林省が検討をし、その結論的なものとして、こういうふうに農林省は指定をしたいと思っておるということを申し上げたはずであります。さようにいたしまして、その時にいろいろと議論があったかと思いますが、その日でありましたか翌日でありましたか、ちょっと記憶ははっきりいたしませんが、先ほどのことは公取委員会として審決を開始したいという意思をはっきり申し上げたのであるということを、念のためということで電話連絡が担当課長の方からあったように報告を受けております。そういう形におきまして、私の方としましては一月二十五日に最終的な農林省としての態度を決定いたしまして、その後手続上の問題つまり官報等の告示の問題がございまして、事務を進めた結果二月二日の官報に告示をする、こういう順序に相なっております。
  73. 小枝一雄

  74. 夏堀源三郎

    夏堀委員 日本経済の全体から申し上げますれば、日本経済は自由経済をもって本日の繁栄を見ている、統制経済を排除していると私は考えております。ただ、ただいま審議中の酪農の問題については、零細農民をいかにして育成しようか、そういう問題からこの酪振法という法律ができたのではないか、こう解釈しているわけであります。しかしこれに対して先ほどお述べがあったように、商業資本を全然排除して組合の資本によってのみ集荷するということは果してどうか、それが生産者の利益になるかどうか。結局先ほど社会党諸君のいろいろ御論議もありましたが、競争ということはいいか悪かというここです。競争ということによってすべての経済の発達を来たす場合もある、しかし強力な経済力をもって圧迫することはよくない、それによって法律を作ってこれを防止すると言うことも可能であります。今度の場合、酪振法という法律を作った場合に、公取の諸君と農林省の諸君と、どの程度の話し合いをしてこれを発動させたか、これに対しての今までの経過を簡単に承わりたいと思います。
  75. 横田正俊

    横田政府委員 本日最初の御質問の際に芳賀委員にお答えしたのでございますが、この三八の問題につきましては、かなりわれわれといたしましては、農林省と十分に連絡をいたしまして、こちらの考えておりますることも申し上げ、農林省考え方もかなりよく聞きまして処理をいたしておるのでございます。具体的のいつ幾日というようなことは、先ほど申しました最後の段階におきまする日付等ははっきりいたしておりませんが、その前におきましても逐次連絡をいたして、この事件は相当慎重に扱ったつもりであります。
  76. 夏堀源三郎

    夏堀委員 私どもお伺いしたことは、この法律を作ったときに、こういう問題を十分にあなた方が御研究になったかどうかということです。その後の経過については、いろいろ問題もあったのでございますからお話し合いになったのでしょう。しかしそこに、この問題がここまでこじれてきたことはどういうわけであるか。であるから最初の酪振法という法律を作った際に、なぜ無関心であったかということをお伺いしておるのであります。
  77. 横田正俊

    横田政府委員 その点も先ほど酪振法公正取引委員会仕事独禁法との関係について御質疑がございまして、私といたしまして、当時法案の作成につきましては農林省から公取へいろいろ協議がございまして、その際こちらの意見もいろいろ申し上げまして、案もだいぶ変ってきているように聞いております。先ほど二十九年度の私ども委員会国会に対する報告の一部を読み上げさせていただいたのでございますが、その趣旨を簡単に申し上げますと、要するに酪振法独占禁止法に抵触しない範囲においてこれを施行していく、ことに牛乳取引等につきましては、拘束的な取引等がありました場合には、もちろんこれは独占禁止法上の問題になるという趣旨のもとにおきまして、特に独占禁止法の適用を除外するというような措置は何もとらずに酪振法はできているわけでございます。
  78. 夏堀源三郎

    夏堀委員 ただいまのお説で公取の違反事項、これには抵触しないということで出発した、こういうことであります。しかしこれは実際に今の問題は抵触しておる、こういうことに解釈しておりますが、どこが一体抵触しているのか、そしていわゆる違反として取り上げた事項について簡単に御説明願いたいと思います。
  79. 横田正俊

    横田政府委員 これは開始決定書にいろいろこまかに書いてございますが、要するに雪印が昭和三十年春ごろからだったと思いますが、青森の方へ進出して参りまして、青森県との了解のもとに当時存在しておりました県策会社その他いろいろな乳業会社の施設を順次譲り受けまして、結局現在におきましては集乳量七〇%という、森永の関係のものを除きますと、ほとんどその全部といっていいほどのものを集中いたしておるわけでございますが、その間におきまして、青森県あるいは県のいろいろな農業団体、ことにその役員と雪印の間に、非常に密接な連絡がございまして、雪印以外のものに乳を出しますものに対しては金を貸さないとか、その他いろいろな作為的なことが行われました結果、先ほど申しましたような雪印の青森県における集乳上の地位ができ上っておる、これが独占禁止法におきます違反、こういうふうにわれわれは認定いたしまして、この事件を取り上げておる次第でございます。
  80. 夏堀源三郎

    夏堀委員 法律農民の生活、経済を向上させることを主眼として出発しなければならない、そういうことから考えますると、この問題は今御説明のありました通り、いわゆる県の上層部あるいは組合の幹部、そうして生産者等の多数の意見が合わなかったということを聞いております。なぜ合わなかったかというのは、先ほどいろいろ組合経営の話もありましたけれども、価格が違うというのは一体どういうものか、これを掘り下げて研究してみますると、たとえば金利とかそういう面においてだいぶ違ってくるのであるから、運営の上において多少高く買うことも決して悪いことじゃない。結局合理的経営という線で競争でいくことはやむを得ないと私どもは考えておるのでございます。その点を農民が感じて、農民利益のために活動してくれる会社を希望するという線が出てきたのじゃないか、生産者の意思と一部組合部の意思とだいぶ食い違っておるということも聞いております。また会議の方法も全然変な会議をやっておるということも聞いております。また青森県には畜産振興会や県策会社がありましたが、この株の譲渡の際もいろいろ条件がついてきめたということも聞いております。そういうことを前提としてもし行われたとしたならば、農民利益を犠牲にして何か策動的にやったといって農民の連中はくどいております。この点に対してその通りであればはなはだ遺憾なことであると私は考えるものであります。あなたの方の御調査になった結果はその通りであるのかどうか。それを独禁法に該当するから取り上げたのであるとすれば、これは相当大きい問題であります。結局申し上げました通り農民利益のために特に青森県のような冷害地帯は、酪農によって生きていかなければならぬので、酪農によって将来の生活を求めなければならぬ、それを何のために将来のある酪農を一会社に限定して行わせなければならぬのであるか、これをみな農民の連中が言っておるのであります。その点に対して私の言うことは、農民の心情を申し上げておるのでありますから、これは一会社の利益がどうということではございません。農民の直接の声でありますので、その当時あなた方のお調べになった調査がその通りであれば、これは問題にすべきものである、こう考えるものでありますが、その点に対して御調査の結果はどういう見解でありますか。
  81. 横田正俊

    横田政府委員 大体ただいままでの調査の結果は御指摘のような面が見られますので、審判開始をいたしまして、この公開の審判廷におきまして、その間の事情をはっきりいたしたいというのが、われわれが審判を開くことに決定いたしました理由でございます。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 夏堀さんに私は関連を許したのですが、これは私と何も関連がないようでありますので、委員長においても関連質問の場合には関連を逸脱しないように御注意を願います。  そこで、私のさっきお尋ねしたのは、公取委員会が二月八日に審判開始決定を公表する以前に、一月の二十五日に農林当局に対して正式通告を行なったということなんでありますが、これはこういう結論を出したのであるから、この三八地区地区指定をやる場合には、公取委員会意思を十分尊重して地区の指定を行うべきである、そういう明らかな意図を持って農林省に通告されたというふうに理解するわけです。しかもその際一係官であるところの後藤何がしという担当官がこれに関連して談話発表しておる。公取委員会はこういう結論を出したんだけれども、これに対して農林省がいかなる査定を行うかということはこれは注目に値する、関心に値する、ちょっと殺し文句のようなことを談話発表しているのですが、こういうことは公取委員長意思に沿って後藤何がし君かわかりませんが、担当官が言ったものであるかどうか、この点は委員長として責任のある御答弁を願いたいのです。
  83. 横田正俊

    横田政府委員 農林省連絡いたしました趣旨は、先ほどから繰り返し申しておりますように、この事件につきましては終始密接なる連絡をとっておりまして、いわば中途の段階におきまする結論に達しましたので、そのことを通じて農林省の方の資料にいたす趣旨でございました。ただ先ほどからちょっとございましたように、これによって農林省の指定そのものを妨げるとか、あるいはそれに影響を及ぼすというようなことはもちろん委員会としては考えておらなかったのでございます。先ほどの後藤事務官の談なるものも、その内容は本人が先ほど申しました通りでありまして、大した私は意義もないことであり、また大体われわれが考えております通り、この指定をやるかやらないか、農林省の政策的な見地から独自の立場できめられるべきことであるということは、これはわれわれがみなそういうふうに考えておったことでございまして、後藤氏もその趣旨を、もし言ったとしますればその趣旨で述べたものと考えております。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、二十五日に農林省に正式通告をされた機会に、後藤君が発表した談話というものは、委員長意思を体して行なったものであるかどうかということを聞いておるのです。
  85. 横田正俊

    横田政府委員 談話発表をしろというようなことは申したことはもちろんございません。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 この未確定の事案の取扱いの過程においては、やはり委員会としては相当慎重な度態を保つということは、これは委員長あるいは委員にしても職員にしても、それは順守しなければならぬ規定だと思うのですが、いかがですか。
  87. 横田正俊

    横田政府委員 これは程度問題ではございますが、おっしゃった通りでございます。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 しかも公取事務局職員採用の場合も、その経歴の中に、検察官をやったか、あるいはまた弁護士を行なった経験のある者の中から採用するという特定の要素も含まっている。だから、当りまえのしろうとやあんちゃんのような気分で軽々しくこういう問題を取り扱い、しかも委員会の正式決定農林省にもたらすという使命を帯びて使いした者が、何ら委員長意思あるいは委員会意思でない談話発表等をあわせてやるということは、私は非常に重大な点であると思います。委員長は、これは軽い気持でやったのだから大したことはないと言うが、果してこれはそんな軽いものでしょうか。今までの前例としても、委員会一つ意思決定を外部とか連絡官庁等に通告する場合においては、こういう談話発表という形式が必要になっておるかどうか、その点もあわせて御説明を願いたいと思います。
  89. 横田正俊

    横田政府委員 大体今までの公取の扱いといたしましては、審判開始をいたしますと、これは当然にその次の段階といたしまして、公開の審判廷におきまして審判が始まるわけでございますから、これは公けになったわけでございます。その開始決定をいたしました際に、これは事案によりまするが、関係新聞記者を集めまして——御承知のように開始決定書はまことにかた苦しい言葉法律的に書いてございますので、その趣旨を敷衍いたしましたようなことを発表するのが通例のやり方でございます。これも実は二十五日にもうすでに審判開始を決定いたしまして、なるほど事実上書面が送達されましたのは八日ではございますが、もはやこの段階で公取の態度はきまったわけでございます。従ってこれを農林省にも連絡をするというような関係でございますので、これは審査をなお継続しておりまするその中間におきまして、こういう事実があるとかないとかいうことを発表いたしたとしますれば、まことに不謹慎でもあり、あるいは法律違反ということになりますが、この場合につきましては、ただいま申しましたような経過で推移して参りました関係もございますので、先ほど後藤事務官本人が申しました程度のことを申しましても、これは別にけしからぬことであるというふうには私は考えておりません。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 横田さん、私の聞いているのは、この公取の正式の態度を、たとえば農林省なら農林省に通告する、その通告をもたらしたのが後藤事務官であるとすれば、そのことのために使いしているのですから、このついでにいかなる談話発表しても大したことでないというのはちょっと不謹慎じゃないですか。委員長がそういう態度ですから、事務局職員は適当なことをやるのですよ。あなたは善人だということはわれわれ認めておるけれども、しかしその部下であるところの事務局職員がどういう意向で行動しているかということは、常に監督を厳重にしなければいかぬと思うのですよ。しかもこういう問題の取扱いは、一方に違反事実があるということは、それと競合する他の一方にやはり有利な条件とか地歩を与える結果が生まれることが一応察知できるのです。ですから私はこういう問題の取扱いは、あくまでも慎重を期さなければならぬということが一番大事だと思うのですよ。結果が出ない前に、これは黒だとか白だとか、そういう先入観を持って、しかもそれをこういう新聞等の機関を通じて他に印象を与えるということは、問題の処理に当ってもこれは非常に不公平な扱いが生じやすいと思うのですよ。ですからこういう点に対しては、内容が大したことでないから何を言ってもかまわぬということではないと思うのです。というのは、独禁法の三十八条の規定というものは何のためにわざわざうたってあるのです。その点はいかがですか。
  91. 横田正俊

    横田政府委員 この独占禁止法に基きます公正取引委員会仕事は、審査の面から見ますと検察庁、審判の面から見ますと裁判所と非常に似た性格を持っております。そのゆえに準司法機関というようなことも言われているわけでございます。こういう機関でございますれば、やはり三十八条のような規定をもちまして、公開されます前にそういう調査をしているとか、しておらぬとか、内容はどうであるとかいうことを漏らしますことは、ちょうど検察庁が調べております際に、その内容を外部に漏らすことが不謹慎であるのと同じでございまして、その趣旨において三十八条はできているというふうに理解しておりますが、この具体的問題につきましては、先ほどから申し上げますように、後藤事務官が申しましたということになっております事柄はきわめて軽微なことでございまして、これを取り立ててとやかく言うことはないと私は考えております。  なお審判開始はそういう事実が一応あるという認定のもとにいたしまして、それがあるかないかはこれからの話でございます。公開の審判廷におきましては、すべての参考人は宣誓の上で厳重に取り調べることになっておりますので、そういう資料に基きまして最後の決定がなされるわけでございます。従いまして審判開始だけで運命がきまってしまうというものでは全然ないのでございます。ことにこの事件につきましては、雪印側は用意万端整えまして、私のきわめて尊敬しております弁護士の田中治彦という人が代理人についておりますので、さだめしこの審判廷におきましては、雪印の言い分を十分に主張し、十分に立証してくれることと思っております。それらの審査官の方から出します資料等をよく調べまして、公正な立場で結論を下すというのがわれわれ委員会の職務だと考えております。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 わざわざこの三十八条に「委員長委員及び公正取引委員会職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。」と明記されているのですよ。「但し、この法律に規定する場合又はこの法律に関する研究の結果を発表する場合は、この限りでない。」というただし書きはあるけれども、とにかく委員長とか委員とか、委員会職員は、事件に関する事実の有無とか法令の適用について、これがどうなるとかいうことを外部に発表してはならぬということがちゃんと規定されているではないですか。こういうことがわからぬ者が職員になっていることは不適格であるし、そういう職員がいるかいないかということは委員長として厳重に監督しなければならぬし、もしかりそめにそういう事実があったとすれば、厳重にその処置をつけんければならぬと思いますが、あなたはこの程度ならいいとか、この程度ならかまわぬとかいう温情味におぼれているからけじめがつかぬと思うのですが、いかがですか、この三十八条というのは空文ですか。
  93. 横田正俊

    横田政府委員 三十八条は大事な条文でございまして、私はよく守られていると考えております。後藤事務官の言いましたことは、先ほど読み上げましたことでもおわかりになりますように、公取の職務はこういうものであるということを言っているのが主でございまして、直接事件の内容についてかれこれ言っているものではないと私は理解いたします。
  94. 淡谷悠藏

    淡谷委員 関連して。あなたの部下の中に三代川事務官というのがおりますが、この三代川事務官が、二月二十一日の午後一時に参議院第十四控室の自由民主党の政務調査会農林部会の審議に際して、「青森県下における集乳の独占権を雪印に与えるということであった、このことは県行政の失態を雪印に穴うめをさせる代りに農民からは経済的にしぼりとれということであった。」こういうことを言っているのです。同時にその会に出席されておった夏堀委員の、県知事が一番推進していたのは雪印を指定することである、このような県の不法行為公取の調査ではどうですかと問うたところが、公取職員の方が公取の調査と全く合致している、こういうことを言っている。これはあなたの方の審判を開始する以前の話であります。それを少くとも一県の行政を——農民をしぼり取るものであるとか、あるいは意図があって知事、県行政の失態を雪印に穴埋めをさせて、そして農民をしぼるのだ、こういうことを公取の事務官が言うということはどういうことですか。これも行き過ぎではありませんか。
  95. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまお話しの日はいつでございますか。
  96. 淡谷悠藏

    淡谷委員 二月二十一日午後一時です。
  97. 横田正俊

    横田政府委員 二月八日に審判は開始されておりまして……。
  98. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それは審判が開始されたあとかもしれませんが、そのあとであっても、こういう放言をあえてするということは正しいですか。
  99. 横田正俊

    横田政府委員 それは審判開始決定の趣旨を申し上げたものであろうと思います。
  100. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは伺いましょう。青森県が不当な行為をし、県行政の始末を雪印に穴埋めをさせて、そして農民からしぼり取るということであるならば、なぜ審判の相手を青森県にしないのか、雪印が悪い前にこんな失態をさせている県行政が悪い、それならなぜ県を相手にあなたは審判を開始しないのですか。
  101. 横田正俊

    横田政府委員 独禁法では事業者だけが審理できまして、残念なことに県を審理することはできないのであります。
  102. 淡谷悠藏

    淡谷委員 公取職員が県政を批判する、これが第一おかしい。あなたはこういうふうな三代川事務官の放言を弁護されるのですか。これでいいのですか、その見解はどうです。
  103. 横田正俊

    横田政府委員 独禁法を通じましていろいろ批判する場合はあり得ると思います。具体的にどういう言葉を使いましたか、私ははっきりは存じませんけれども、明らかにこの開始決定を通じましていろいろ申し上げたにすぎないというふうに私は考えております。
  104. 淡谷悠藏

    淡谷委員 公取委員会というものは、県の行政に対して監査することができるのですか。県行政の失態を雪印に穴埋めさせると言っている。それでは公取委員会というものは、県行政に対しても査察を加えるのですか。それが何の関係があるのです。
  105. 横田正俊

    横田政府委員 公取といたしましては、先ほど申しましたように、独禁法を通じまして県のやり方を批判するということはあり得ると思います。
  106. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その委員長の言われることが確認されるならば、追って私はこれについて追及いたします。きょうは本題をはずれますから申しません。
  107. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、やはり新聞発表でありますが、二月十日の朝日新聞青森版に対して、公取委員会の話という形式で、三八地区独禁法違反の問題の委員会見解を表明されたと聞いておりますが、御存じありませんか。
  108. 横田正俊

    横田政府委員 全然存じておりません。
  109. 芳賀貢

    芳賀委員 それではだれか職員の方で知っておりますか。
  110. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 ただいまの件につきましては、職員の方でも全然関知しておりません。
  111. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは申し上げますが、これは二月十日の朝日新聞青森版に載っておるわけです。この中に「公正取引委員会の話」という見出しで、この三八地区独禁法違反の事案は、これは独禁法第三条の前段の違反になる。同法は事業者が他の事業活動を支配し、または排除することにより、公共の利益に反し、云々ということが書いてある。そのあとに、「この場合酪農振興計画との関連が問題になるが、県が地域指定の申請をする基礎となった事実に違反の疑いが生じたわけではあるまいから、県は委員会の裁断をまって効力を争う前に問題を検討すべきだと思う。」これは県に対する一つの反省を促しておるわけですね。「また指定した農林省もこうした問題を考えなければならないと思う。県は赤字の県策会社を背負った大株主という立場から苦しい事情があったかもしれないが、この際地方行政の主体としての立場で考え直さなければなるまい。」こういうようなことを相当具体的に説明を加えておるわけなんですが、これらの「公取委員会の話」というのは、委員会においてもあるいは事務局においても全く関知しない内容ですか。
  112. 横田正俊

    横田政府委員 全然関知しないことでございます。
  113. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、朝日新聞は、全国でも有名な新聞ですけれども、勝手に、委員会も関知しない問題を、こういうことでどんどん書くようなことはないと思う。しかもあわせて農林省酪農課の話というものがここに載っておる。どうですか、この点については、農林省酪農課では何か朝日新聞に話をしたことがありますか。内容が詳しく載っておりますが……。
  114. 谷垣專一

    谷垣政府委員 そのような具体的な話をした覚えはございません。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 公取委員会農林省も関知しないといえば、それ以上私は追及する余地がないのですが、とにかくいろいろな機会に公取委員会の考えというものが外部に漏れるということは事実ですね。こういう問題の取り扱い等に対する考え方が漏れるということは、今後開始される審判の内容とかその審決に対してもやはり客観情勢を作るという役割は確かに私は果しておると思うのですよ。この公取の扱う問題は、一方に不利益を与えるような結果が出れば、それと競合する、あるいは対抗する他方に対しては最大の利益を与えるという結論も必ず出るのです。この点はやはり委員会としては十分慎重を期しておると思うのですが、特に最近発生しておる問題は、いつもいつも、農林関係だからかもしれませんが、とにかく乳業資本同士の対抗の中に公取がみずから突入するのか、巻き込まれておるのかわからぬけれども、あえてこれに介在して、そうして委員会の存在を示しておるのかもしれませんけれども、これは奇異な現象なんですよ。私はまだまだ国内に公取委員会が取り上げる大問題というものは幾多あると思うのです。そういう大きな問題とは全然相撲にならぬから取り組まぬで、こういう小さい問題だけを取り上げてやっておる。それが不思議なことには、絶えず森永であるとか明治であるとか、乳業資本の側に公取委員会が立った態度でこの問題を扱うというところに、そこに一貫性があるのです。そういうことを総合して考えた場合に、この公取委員会職員委員会委員長意思を体しないで各地においていろいろな機会に談話やら意見形式で表明を行なっておるということに対しては、やはり委員長としての責任においての十分な監督が必要だと思うのです。しかも職員が、それがために、審判部とか、何でも担当の職に長くあれば、不可避的に業界とのつながりとなって、くされ縁がだんだん深くなると私は思うのです。こういう点はどういう形で防止しておるのですか。たとえば何カ年間同じ部門におった場合にはよそに交代させるとか、人事交流をやるとか、そういうことは方針としてやっておると思いますが、これらの酪農関係の問題を扱う事務当局職員は、何年くらいでこれを交代させておるのですか。こういう人事とか機構とか運用の問題に対しても、当委員会に対してもう少し内容を明らかにしてもらいたいと思います。
  116. 横田正俊

    横田政府委員 大事件をないがしろにしておるというおしかりをたびたび社会党の委員の方から受けまして、まことに恐縮でございますが、乳業関係につきましては、私ども考え方は、あくまでも生産者を保護するという建前から取り上げておるつもりでございますが、結果的には今御指摘のようにどうも雪印北海道バターというものが対象になりまして、私どもがいかにも偏見をもって仕事をしておるようにお考えのようでございますが、全然そういうことはないのでございまして、もちろん他の関係につきましても、同様の問題がございますれば、どんどん取り上げるつもりでございます。  なお職員の配置等の問題につきましては、公正取引委員会の内部の組織といたしまして、経済実態を調査いたします経済部と、それからただいま問題になっておりますような違反事件を審査いたします審査部と、大体二つの大きな部に分れて仕事をしておりまして、経済部と審査部の人事の交流につきましては常に意を用いておるのでございますが、仕事の性格がやや違いますために、なかなかこの人事の交流が円滑に行われておらないというのが私の率直に申し上げる点でございます。この点につきましては、今後の公正取引委員会の中の組織の改革というようなことも、実は独禁法の改正とからみましていろいろただいま考えておりますので、そういう点で今後もう少しこの人事交流等がうまくいきまして、独禁法の目的達成が有効的確に行い得るような組織にいたしたいというふうに考えております。
  117. 芳賀貢

    芳賀委員 公正取引委員会の事務職員もやはり国家公務員なのですが、たとえば同じ国家公務員の司法関係の検察官であるとか裁判官等も、一定の年限以内において任地の変更とか、そういうことが一つの方針として行われておるのです。やはり同じ部門に長く置くということは、これはどうしても経済的な問題とか、財界とか企業体等の利害関係の中にだけつながって仕事をやっておるのですから、最初は非常に清らかなものであってもだんだん沈滞とか濁りというものがくると思うのです。そういう意味から一つの方針として、たとえば二年とか三年とか限界を置いて担当部門の変更をするとか、人事の交流をやるということをあえてしないと、だんだん問題が混濁してくるのではないかと私は思うのです。これは公取委員会の存在価値の上からいっても重大な問題だと考えるわけです。私どもは昭和二十九年以来、委員会でも乳業関係の問題を扱っておるのですが、いつでも問題が出てくるのは、たとえば三代川事務官とか後藤審査官という名前が必ずつきまとってくるわけです。そうすると相当長期にわたってこれらの人たちはこの部門に居すわっておるということになっておると思うのです公取委員会の方針としてなかなかそういうことも困難だとは申しておられますが、何か支障になるような点があればここで明らかにしてもらえば、公取委員会は内閣の総理府所管にもなっておるのですから、国会においても考えなければならぬ問題だと思うのですが、こういう点に対する委員長見解をできるだけ具体的に述べていただくのがいとい思うのです。
  118. 横田正俊

    横田政府委員 一般的問題といたしまして、できるだけ人事を交流してはつらつとした仕事をしてもらうということに対しましては私も賛成でございまして、この点は先ほど申しましたように、公取の全体の機構の問題とも密接な関係がございますので、よく検討いたしたいと思いますが、特にこの問題にひっからめてどうということは私は全然考えておりません。公取全体の問題としまして人事の問題を考える、こういうふうに了解いたします。
  119. 淡谷悠藏

    淡谷委員 関連。さっき委員長の私に対する答弁は、芳賀委員質問もありましたので保留しておきましたが、非常に重大なことを言われておる。独禁法のどこの個条の適用か知りませんが、県の行政に対して公取がはっきり動くということは、非常に行政上の機構を紊乱するおそれがあります。御承知の通り最近各官庁を通じまして非常に綱紀紊乱が見られている。防衛庁、農林省等々大へんに紊乱している。それはみな首長は大臣であれ委員長であれ、あなたのようなりっぱな人格の人でありますが、今芳賀委員から指摘されましたように、長い間にはその仕事関係上どうしても意識的にあるいは無意識的にくされ縁ができるということは免れない。これはあくまでも糾弾すべきでありますけれども、一方各省間にあるいは委員会と他の省との間に政治的な激突を来たしているということは、日本の行政上大へん重大なことであります。特に三代川事務官は、最近心ならずも農林行政と激突している実情であるということを放言しております。公取委員会の事務官が農林省と農林行政について意見が激突しているというに至っては、もはや審査の対象は青森県を離れて農林省自体にある。あなたは農林省のこの三八酪農地帯における工場指定についても、あるいは県がこれを申請したことに対しても、十分糾弾する熱意を持っておられる。県に対しても農林省に対しても、公取委員会としてはっきり独禁法違反として糾明するだけの覚悟をもってさっきの御答弁をされたのかどうか、確認しておきたい。
  120. 横田正俊

    横田政府委員 独禁法はもっぱら事業者を対象といたしますものでございまして、農林省に対してどうというようなことは全然考えてみたこともありませんし、この連絡公取といたしましては非常に控え目にやっているわけでございます。相当の注意を払いつつ連絡している次第でございます。
  121. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それはあなたの答弁と違います。あなたはさっき委員会を通して行政批判もできる、してもいいと言った。しかもあなたの部下の事務官がはっきり農林行政と激突していると言っておりますが、農林行政と激突しておってあなたの職にたえますか。この国家行政内における矛盾の姿をどう言い開くつもりか。こんな矛盾をし激突をしたままで公取の職務の執行ができますか。あなたの部下がこういう放言をされたことをあなたはよしとされますか。あなたの部下が半公けの席上で国の農林行政と激突していると言ったこの放言を当然であるとあなたは認定されるかどうか、はっきり伺っておきたい。
  122. 横田正俊

    横田政府委員 その席でどういう言葉が使われましたか存じませんが、先ほどから申し上げておりますように、この審判開始の趣旨をいろいろ御説明申し上げたのだろうと思います。私はそれに尽きるものというふうに考えております。
  123. 淡谷悠藏

    淡谷委員 三代川事務官の出席も私は要望いたしますが、あなたはどういうことを言われたかわからないと申しますが、もしかりに私が入手しておる資料通り、三代川事務官が農林行政の上で大きな激突を来たしておると言ったという事実がほんとうであるとしたら、あなたはどうなさいますか。そういうことがあり得べからざることであるか、放言してもよろしいのか、どっちです。あなたはさっき農林行政に対する批判は当然であると言わんばかりだったが、農林省の農林行政に対して激突をしておるという放言も、これまた当然でありますか。
  124. 横田正俊

    横田政府委員 激突しておるという意味でございますが、もしそういうことを申しましたとすれば、本人がどういう趣旨で申しましたか、それをよく確かめた上でないとお答えできません。
  125. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは私質問の通告もありまするから、これはここで打ち切っておきますが、三代川事務官の出席を要望いたします。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどの三十八条の委員並びに職員意見公表の禁止規定に関達して、職員が調査をやる場合において、違反事実の対象になった企業体と利害関係のある企業体等から、利益とか便益の供与を受けるということは、これは適法ですか。
  127. 横田正俊

    横田政府委員 これは適法かどうかというようなことよりも、もう少し根本にさかのぼりまして、はなはだ不謹慎なことだと思います。
  128. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで私は一つの事例を提供しますが、横田委員長の判断を願いたい。昨年北海道において雪印とかいろいろな関係の違反事実があって調査に行かれたのですが、そのとき公取委員会の三代川課長と後藤事務官北海道の調査に行ったわけです。その帰りに、七月三十日に、札幌の産業会館におきまして記者会見を行なって、事件に対する公取委の調査事実と、これに対する意見発表をしておる。そのときたまたま新聞記者が、現地調査で森永のジープに乗ったことについて、それはどうであるか——これは森永と雪印との競合した地区内においていろいろな問題が出て、そうして違反事実があるということを指摘したのは、やはり森永等に出荷しておる立場の人が指摘しておる。去年はちょうど雪印とか北海道バターが被審人の立場に置かれたのですから、それと利害関係を持っている側はやはり森永だったと私は思うのです。ですから新聞記者質問は、当然その現地調査に来た役人が、森永のジープに乗ったり、宿屋のあっせんをしてもらうということ等についての質問をしたわけです。こういうことは好ましいことですか。
  129. 横田正俊

    横田政府委員 そういうことはあり得べからざることだと考えます。
  130. 芳賀貢

    芳賀委員 あり得べからざることが現にあったのです。しかもそれを是認しておるわけです。そうしてその答弁はこういうことを言っておる、森永のジープを使ったことは事実だけれども、しかしこれには借用料を払ったから差しつかえないのだというようなことを言っておるわけなんですが、私は、意見発表さえも禁止されておるという公取職員が、実際その問題を調査に行ったときに、利害関係のある会社の車などの提供を受けたりということで調査した場合には、違反事実の内容の調査というものが、反対側の会社から意見の提供とか具体的な事実の材料の提供だけを集める結果になると思うのです。この行為が違反であるという事実の調査が、それと利害関係を持っておるもう一つの会社とか企業体が提供する資料だけを集めてきて、これが違反であるということをでっち上げることに往々にしてなると思うのです。ですからこういうことが全くの事実であるという場合においては、監督の任にある委員長としてはどういうような取り扱いをされますか。
  131. 横田正俊

    横田政府委員 それは私としまして全く初耳でございますが、そういうことはあり得べからざることでもございまするし、かりにありましても、これは厳重に注意を与えましても、今後そういうことのないようにもちろんいたすつもりでございます。しかしそういうことは私といたしましてはとうてい考えられないことでございます。
  132. 芳賀貢

    芳賀委員 幸いにして後藤君がおられるので、これらの点に対する事実はいかがでしょうか。
  133. 後藤英輔

    後藤説明員 先ほどの、調査の際にジープを借りたということにつきまして、私どもが二十九年の調査に遠軽に参りましたときに、初めの予定では遠軽でもってバスその他を使って調査に回るというつもりでおりましたところ、遠軽に行ってみますと、北海道は非常に広いところでありまして、しかも交通不便でありますために、バスを使うということがほとんど不可能でありました。そこでもって自動車その他何かないものかと思いまして農協に話をいたしました。農協の車を使いたいということで、農協の車を使ったのであります。そのときに農協は、実は自分の車を持っておらなくて、その車が森永の車であったということでございます。そのときに私どもはちゃんと借用料として金を払いまして、ちゃんとその借用証も実は持って帰っておりまして、その点につきまして後日問題がありましたので、直ちに委員会の方に、当時の事情としましてやむを得ず車を借りました、このような手続をいたしましたというふうに報告いたしまして、一切資料委員会の方に提出しております。
  134. 芳賀貢

    芳賀委員 私はこの点を何もここで追及する考えはありませんが、先ほど横田委員長が言われた通り、こういうあり得べからざる事実が発見されたような場合においては、これは委員長責任において最善の処理をされて、その結果をたとえば当委員会等においても適当な時期に御報告願いたいわけであります。
  135. 小枝一雄

    小枝委員長 それでは暫時休憩いたしまして、午後再開をいたしますが、いずれ放送によって御連絡申し上げます。  ではこれで休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  136. 小枝一雄

    小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  酪農に関する件につき質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 まず委員長にお願いしますが、実はこれは非常に公取見解農林省立場というものは、微妙なものがその間にあるので、できるならばこういう大事な問題のときは、農林大臣みずからが出席してその衝に当るというくらいの考えが必要だと思うのです。大臣も忙しいかもしれませんが、委員長から大臣に速急に当委員会出席するようお計らいを願いたいと思います。  それでは午前に引き続き横田さんにお尋ねします。独禁法三十八条の規定で委員職員意見の公開禁止の規定の解釈なんですが、先ほどの委員長の御答弁によりますと、違反事案に対する審判開始が決定された後には、委員及び職員意見発表をしても、それは差しつかえないというような御見解のように私は聞いたのですが、その点はいかがですか。
  138. 横田正俊

    横田政府委員 その事件に関しまして審判開始決定の趣旨を説明すると申しますか、その趣旨を述べるという範囲においては差しつかえないというふうに考えます。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は解釈のしようによっては非常に微妙なものを持つと思うのです。これを明確にするために、やはり審決等を通じてそうして意見の発展を行うということならばわかるのですが、審判開始ということは、何もそれは結論が出たということでもないし、その結論がどうなるかということは、審判開始というものでは将来の結果というものは予見されない段階ですからして、その問題の解明が全く予見できない過程において、意見を公表してもよいということにはならぬと思うのですが、いかがですか。
  140. 横田正俊

    横田政府委員 審判開始というものの趣旨をよく理解していただけば、そういう誤解はないと思うのでございます。何か審判開始をいたしますこと自体ですべてのものが片づいてしまうというようなお考えでございますと、そこにちょっと行き過ぎではないかというような御疑念が出ると思いますが、そもそも独占禁止法の審判開始というのは、一応そういう事実が調査の結果あるということで開始をいたしますので、最後の結論は先ほども申しましたように、審判を経て出るわけでございますから、審判開始をしました趣旨を説明するということはごうも差しつかえないと考えております。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 それは審判開始された問題の問題点だけを説明する程度であれば、これは差しつかえないと思うのです。それ以外の点に対して意見というものはいけないわけです。しかも審決をやる場合には委員個々見解によって、それぞれ別の意見とか結果を発表するのじゃないと思うのです。委員長及び委員五名によって構成された委員会において、この審決が行われるのですから、この審決に対してはやはり委員の連帯責任というものはもちろんあると思うのです。ただ少数意見を付せということにはなっておりますが、そういうことになっておるにもかかわらず、審判開始がきまれば委員であっても、職員であっても、個々立場から意見を述べてもいいということには絶対にならないと思うのです。述べれるというのは委員長が今言われたように、こういう問題を審判開始するのだという、全く事務的な分野における説明くらいのことにとどまって、見通しがどうなるか、これがこうなった場合には罰則がどうなるということはやはりいけないのじゃないですか。
  142. 横田正俊

    横田政府委員 結局その審判開始の趣旨につきましていろいろ述べますことは、これは許されてよいところだと思いますが、それより以上に進みまして、今仰せられましたように、その先先のことまで述べますことは行き過ぎだと思います。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 資料として御配付になりました三八地区の問題なのですが、これは自分たちも十分検討しておるわけではありませんし、審判が開始されるいうだけでその内容に深く立ち入るという考えは全くないのでありますが、ただこの内容を見ると酪農振興法との間においてやはり根本的な見解が違っておるような節があるのですね。結局いろいろな問題点がありますけれども、とにかく雪印乳業が三八地区の指定を受けたこと自身も、独禁法に違おるのであります。それでこの際この酪農振興法の条章に基いて、こういう点がどうかという問題点一つ指摘したいと私は思うのですが、公取委員長といたしましては、酪農振興法の第二章の集約酪農地域の指定の関係条章に対して、どのような判断をもって、この三八地区の違反事件というものを取り扱われるか、その点を伺いたい。
  144. 横田正俊

    横田政府委員 これはけさほども申し上げましたが、私どもが取り上げております趣旨は、指定を受けますまでの過程におきまして、雪印だけではございませんが、雪印が他のものと一緒になりまして、他の乳業者に生産者が乳を出さないように、非常な工作をいろいろいたしました。その点を問題にしておるのでございます。集約酪農地帯の指定そのものだけを取り上げて、それを違反というふうには言っておらないつもりでございます。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 しかしいろいろな経過を述べてはいるけれども、結果的には、雪印が三八地区の高度集約地区の基幹工場としての指定を受けて、この地域計画の中における指定工場になったこと自身もやはりいけないというように、これは明らかに表明されておると思うのですが、そうなりますと、酪農振興法の第三条以下の各条項にわたる問題点というものは、やはりこういう法律がそもそも存在しておること自身が、独禁法から見れば変ではないかということになると思うのです。これはやはり農林大臣あるいは都道府県知事等の責任において、この集約地区の指定を行うということになっておるので、結果的には集約地区の指定を行なったということは、農林大臣の権限においてやったことになるのではないかと思いますが、いかがですか。
  146. 横田正俊

    横田政府委員 結局独占禁止法上の独占というのは、事業者がいろいろ工作をいたしましてそういう状態を持ち来たす、そのこと自体が問題になるのでありまして、たとえば農林大臣がこの酪振法に基きまして指定をいたしました結果、かりにそこにいろいろな制約が出て参るといたしましても、それは結局酪農振興法に基く農林大臣の権限としてやったことでございまして、そういうこと自体をとやかく公取として言う筋合いはないというふうに考えております。もっとも農林省見解によりましても、この指定をいたしましても、別にそれによって、ことさら他の雪印以外の乳業でに牛乳を出すことを何か他の方法で制約するということになりますれば、これはもちろん独禁法違反の問題になるのでございますが、指定そのものから当然に出て参ります結果は、これはどうも取り上げて独禁法違反ということは言えないのじゃないかと思います。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかくどの集約地域においてもその地域の計画というものがあって、この地域内の基幹工場はどの会社にやらすということは、一応計画として県の方から出てくるわけですね。それを出すのはいけないのですか。計画の中へ工場施設とか何かを、どこの会社に指定すべきだということを県知事が農林大臣に出すことは、これは独禁法の違反になりますか。また農林省がそういう書類を地方の県知事に出せということも違反になりますか。
  148. 横田正俊

    横田政府委員 それらの酪農振興法に基きまする知事なり政府機関のやりますことは、これはもちろんそのこと自体が独禁法違反というような問題にはなり得ないというふうに考えております。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう手続上のことは何も問題にならない。指定を行うこともかまわぬ、指定されて、そこで指定された特定の会社が工場施設を行なってもかまわない。しかしその結果として当然考えられることは、その地域内における、たとえば小さい地域であってもその地域内におけるその工場を中心とした、極端にいえば独占会社といいますか、その工場を中心にして、百五十石というものが理想の収量であるとすれば、その限度に達するまでの一つの発展と合理化によって集約化によって、その工場を中心にして、それが六〇%か七〇%の牛乳が集まってくるという必然的な傾向というものはやはりこれは独占ということになるのですか。小地域における独占ということになるとお考えですか。
  150. 横田正俊

    横田政府委員 これは先ほども申しましたように、この法律の権限に基きます行政処分の結果、そういう形になるわけでございまして、たとえば雪印が中心工場に指定されましても、これは何も雪印が他の事業者を排除して、雪印自身が排除してやっておるということにはならないわけでございますから、その点だけを取り上げますればもちろん問題はないと思います。
  151. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもよくわからぬのですが、指定を受けた工場に生乳がどんどん集まってきて、それが七〇%あるいは八〇%になる場合もある。そういうものは独占としての排除はしないということになると、これは酪農振興法に基くところの地域指定、それからその地域における指定された特定会社の工場設置というもの、そういう小さい地域における発展というものは独占にならぬということは、これは明らかなんですね。
  152. 横田正俊

    横田政府委員 そうでございます。ただしただいま自然に集まってくるというお話でございましたが、たとえば今後とも、雪印あるいはその他の事業者がいろいろな手を用いまして、自然に集まるのでなく、いろいろな手段をもって生乳を集めるというようなことになりますと、その面におきましてやはり困る問題が起ってくるわけであります。
  153. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも複雑ですね。表面から受け取ると、別にそれは独禁法違反でないというのでしょう。しかし乳の集まり方によって問題があるということになると、その集まり方の変化というものは、これは一つはやはり自由な競争の中において、その有利な方へ売るとか、高い方へ売るということによって、工場別に集乳量の変化というものは、当然これは起き得る事態なんですよ。それをわれわれは問題にしているのではないのですよ。ただ特別の地域内においてある会社が相当量の牛乳を集荷したということまでも、今度はこれがその地域における独占であるというような狭い解釈で、一つ一つ問題を取り上げていけば、これは高度集約地区内における一地域一工場というようなことは、そもそもそれ自体がもう独禁法違反になるということになりますので、そういう点に問題があれば、やはり公取委員会としても事前に農林省と十分に打ち合せをするか、あるいはまた、先ほど横田委員長も言われた通り、この酪農振興法なるものが生まれるときに、公取見解を十分明らかにして、未然にこれを処理しておくということが一番望ましいのではないかというように考えられるわけです。今の委員長お話を聞いていると、たとえば雪印乳業が今まであるいは全販の施設とかあるいは株を取得したとか、あるいは県策会社の株を取得してだんだん企業形態を拡大していったというところに問題がもしあるとすれば、それらの手段というものは、やはり株の取得とかそういうことによって企業の拡大等が行われていくと思うが、そういう場合には、独禁法にも示された通り、株の取得等に対しては、やはり委員会に届出をするとか承認を求めるという当然法的な手続というものが必要になってくる。こういう点に対してはこの審判開始の内容にはそういうことは不当であるということは全然触れておらないのでありますが、たとえば県策会社であるとか全販等の既往の乳業施設に対する株の取得等に対しての違法はなかったかどうか、その点はいかがですか。
  154. 横田正俊

    横田政府委員 これは御承知のように、独禁法に営業の譲り受け、合併、株式保有等につきましては、届出制度あるいは事前届出制度がとられておりまして、この雪印の問題につきましても、中には無届けでやりましたものも確かあったかと思いますが、一応公取の方にわかっておるわけでございまして、その段階で特にこれを占独というようなことが取り上げておるわけではございません。結局問題はその先にいろいろの工作が行われておりまして、そのところに一番問題があるというふうに見ておるわけでございます。
  155. 芳賀貢

    芳賀委員 その工作というのは横田さん何ですか。世の中には一つの目的を獲的するために運動というものが行われる。たとえば予算を獲得する場合の運動とか、それから一つの会社を設立するためにそれをうまくやるための運動だとか、そういう運動に類するものは独禁法上から見るとすべて謀略とか一つの意図をもってこれを合議して行なったとか、そういうことになるのですか。通常言うところの運動ですね。     〔委員長退席、助川委員長代理着席〕
  156. 横田正俊

    横田政府委員 ある程度の運動はこれはもちろん当然に行い得るわけでございますが、これはやはり限度がございまして、結局独禁法に触れるような方法でいろいろやりまする場合は、これはもちろん独禁法の制約にひっかかるわけでございます。この点はけさほど蘆野委員から、ことに不正な取引方法についていろいろ申し上げたと思いますが、やはりそういう方法には制限がございます。
  157. 芳賀貢

    芳賀委員 運動の問題は切りがありませんが、酪農振興法の第三条三項に、「都道府県知事は、前項の酪農振興計画を定め、又は変更しようとするときは、省令で定める手続に従い、その区域内にある市町村、農業協同組合及び農業協同組合連合会並びにその区域内において乳業を行う者の意見を聞かなければならない。」ということが規定されておるのです。ですからこの地域指定をやる場合の酪農振興計画を都道府県知事が出す場合にも、知事一個の独断的な考え方によってこの計画書を出すことはできないのであります。必ず事前に、その地域内の協同組合長であるとか、あるいは町村長であるとか、関係の乳業者であるとか、それらの一番利害を有する団体や機関の代表の意見を十分徴して、それを基礎にして計画を立てるということになっておるのですね。どのような会社が運動とかその限界を越えるような行為をしても、やはりこの法に定められたところの手続とか、一つの過程を通じてこれが出てくるという場合においては、そのこと自身が適法に行われるかどうかということを十分調査する必要があると思うのでありますが、この三八地区のそういう手続に対しましては、青森県においてはそういう末端の関係機関等の代表の意見等が十分反映したかどうか、こういう点はやはり公取委員会としても問題点であると思うのですが、その調査の結果はどういうふうになっておりますか。
  158. 横田正俊

    横田政府委員 これは相当詳細に、この審判開始決定にただいまおっしゃいましたような指定の前提となるいろいろな手続に関して、一応こちらの認定いたしましたことを述べておるわけでございますが、おっしゃる通り一応形式的な手続はとられておるようでございますが、その間にやはりあまり民主的でないようなやり方が介在しておるというようなことが一応の認定になっておるわけでございまして、結局指定の前提となりまするいろいろな事実、その事実を作り上げまするところにいろいろ問題がある、ここにこの事件の核心があるのでございます。
  159. 芳賀貢

    芳賀委員 さらに横田委員長は指定地域内における独占化ということはこれはそれほど問題でない、それを指摘しておらぬということを言っていますが、この決定書を見ると、「青森県東部の酪農地域は一つの独立した集乳地域を成しておるので、」ということが一つうたってありますが、青森県東部の酪農地域と、それから三八地区という地域は何らかの関係があるのですか。
  160. 横田正俊

    横田政府委員 これは三八地区を含めましたいわゆる酪農が、はなはだ青森県は貧弱なようでございますが、一応三八地区を含めまして、青森としては酪農はどうやら行われておるという地域をさしておるわけであります。
  161. 芳賀貢

    芳賀委員 ですからこの地域は「独立した集乳地域を成しているので、上記雪印乳業行為は、同地域における集乳事業の分野において他の事業者の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、云々ということがある。だから雪印がこの地域内において指定を受けて工場施設を持つということ自体も、独禁法に触れるということは明らかにうたってあるのです、この書類を見ますと。委員長はそうじゃないと言っていますがどうなんですか。これはあなたの方から出された書類なんですが、その過程において問題があったということを言われましたが、今後の事態を見ても、雪印という会社が、この指定を受けたことによって今後生ずる事態というものは、その地域におる独占化になると思う。だから結果的にはやはり指定を受けたこと自身もいけないんだということに、明らかにこれを記載してあるんじゃないですか。
  162. 横田正俊

    横田政府委員 先ほどから繰り返して申しておりますように、指定そのことから出て参りまするいろいろな独占地位というものを直接取り上げておるわけではございませんで、あるいは審判開始決定のこの文句が多少不正確であるかもしれませんが、先ほどから申しております通り、その前提となりますいろいろな一連の行為が違反の対象というふうに考えております。
  163. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、午前中に同僚の淡谷委員からもお話がありましたが、この決定書を見ると、むしろ問題は青森当局——県知事でありますか、県当局とかあるいはこれに介在して三八地区酪農協議会という一つ協同組合を集めたところの組織体がありますが、これらの行為というものに対しては全然この決定書は触れておらぬのですか、問題の中心はむしろそっちの方にもあるんじゃないですか。委員長はどう考えますか。
  164. 横田正俊

    横田政府委員 もちろんこれはどの範囲のものをいわゆる独占禁止法違反事件として取り上げますかということは事件々々によりまして、非常にむずかしい点でございますが、これはもちろん雪印それから特に三八協議会あるいはその団体も被審人として取り上げようと思えば取り上げ得ることかと思います。しかし問題は結局雪印が問題でございまして、いわば一番問題の多い関係の深い雪印を対象にすればよいのではないかということで、雪印だけを被審人にいたしておるわけでございます。
  165. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、結局この目的は、雪印がこの三八地区から抹殺されればこの問題の成果というものは上るわけなんですね、委員長お話を聞くと。そういう目的でこの審判が開始されるわけなんですか。
  166. 横田正俊

    横田政府委員 これは、雪印が今までやりましたいろんなそういう行為を今後させないようにするというのがこの審判の主たるねらいでございますが、しかしさて具体的にこの事件についてどの範囲のいわゆる違法状態の排除のためにどれだけのことを命じたらよいかということは、これはいずれ審判によりましていろんな事実がはっきりいたしました上の問題でございまして、ただいまここでどういうふうにと申し上げることは、ちょっと、これこそ先走った意見の開陳になりまして申し上げられませんが、今後の審判の結果によることでございまして、また雪印をただ排除することを目的とするというような単純なものにお考えいただかない方がいいんじゃないかと思います。
  167. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、これは仮定になるかもしれませんが、もし雪印がこの地区から指定を取り消されるとか、除外されるという事態になれば、それにかわる好ましい工場というのは一体どの乳業会社なんですか。これは当然お考えの中にあると思います。
  168. 横田正俊

    横田政府委員 これはむしろ農林省のお考えになることでございまして、私の方は指定そのものをとやかく言っておるわけじゃございませんから、農林省が、どうもよく考えてみたら雪印はおもしろくないとお考えになればおかえになることでございましょうし、あるいは二つあってもいいとお考えになれば、二つ置かれてもいいことでありましょうし、これはむしろ私どもの考えることではないように思います。
  169. 芳賀貢

    芳賀委員 これは横田さんは知らぬかもしれぬが。公取見解というのは実は述べられているのですよ。午前中淡谷委員からも指摘された。こういうことを言うのは好ましくないのですが、自民党の政調会の農林部会ですか、そこへ公取の三代川審査長とか後藤君が出席したときに意見を述べたということを淡谷さんが指摘されましたが、そのときの会議の席上、やはり公取見解として、雪印の独占というものはこれから始まろうとしているのであって、十和田地区は雪印、三八地区は明治というふうになるのがよいと思うということをあなたの事務局は明瞭に言っているのですがね。そういうことになると、これは明らかに目的を持ってこの問題を取り上げて、そうして雪印なら雪印という会社が独禁法違反であるということになって、それがこの地区に指定を受けることはその地域の独占をたくましくする、好ましくないということで抹殺された場合においては、当然もう一つ乳業会社であるところのいわゆる明治系統の会社がその地位にかわるということになるのですよ、ですから、十和田地区は従来通り雪印、三八地区は明治というふうにするのがよいと思うということを、やはり意見として述べてあるのですね。これはやはり私は今回の審判開始に至ったその一つの目的であるというふうに考えて差しつかえないと思いますが、委員長におかれてはこの点はいかように思っておりますか。
  170. 横田正俊

    横田政府委員 先ほどから繰り返して申しますように、委員会といたしまして開始決定をいたしました趣旨は、雪印の行き過ぎた行為の排除ということだけでございまして、その結果がどういうことになりますか、ことに集約酪農地帯の指定並びに中心工場の指定というようなことは、もちろん農林省の方でやられることでございまして、われわれがとやかく言うことではないというふうに考えております。
  171. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長はそれを知らぬとしても、もしあなたのところの事務局職員が、ある会議の席上においてこういうことを述べたということが明白になった場合には、委員長としてはどういうような処置をとられますか。
  172. 横田正俊

    横田政府委員 これは述べようにもよるかと思いますが、あるいはいろいろな感想を述べるというようなことはあるのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、どういう趣旨で述べましたか、述べました内容、述べました場合の空気、いろいろな諸般の事情から考えませんと、何ともお答えできません。
  173. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は横田委員長、はっきりしておいてもらわぬと困るですよ。あなたは先ほどは三十八条の規定の解釈では、この審判開始がきまった場合は、審決が行われるまでの間というものは、この審判開始の趣旨の説明範囲内においての意見発表はできても、それ以外の発表はいけないのだと明確にしているではないですか。その場合にたとえばこの地区は今度は明治さんはいいとか、あるいは先ほど淡谷委員が述べられた通り青森県の県政はなっておらぬとか、あるいは農林省の畜産行政と対決するとか、こういうことは審判決定の趣旨の説明とはほど遠いと思うのですが、どうですか。それもやはりその分野に入るのですか。ここは委員長はっきり言ってもらわないと困るのですよ。公取委員長としてのあなたは重大な職責にあるのですからね。
  174. 横田正俊

    横田政府委員 先ほどから申しますように、どういう場所でいつどういう状態におきましてどういう内容のことを言いましたかということによってきまることでございまして、実は私自身その席でどういうことが述べられたか、詳細なことを存じておりません。何ともお答えのしようがないと思います。
  175. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、この審議の進行上、公取委員長がこの問題が明らかでないということを言っておりますから、委員長において、私は後刻これを資料としてあなたに提供しますから、この内容等に対しては十分横田委員長責任において、いつどういう会合の場所でだれがどういうことを言うたかということを明確にして処理すべきものであるというふうに考える。  それからもう一点、私が特定の意図を持っておったのではないかということを指摘したい点は、これははっきりした日にちをここで申し上げることは控えますが、青森県知事が公取委員会へたまたま出頭しまして、そのときあなたの委員会の事務当局と話し合いをした場合に、雪印の指定を取り下げればこの問題の追及は取りやめるのだということを知事に指示したことがあるのです。これは果して委員長意思を体してそういう意向を青森県知事に伝えたものであるかどうか、その点はいかがですか。
  176. 横田正俊

    横田政府委員 知事が公取へ見えたことは後に報告を受けておりますが、その内容の詳しいことはもちろん存じませんし、私どもとしましてその申請を取り下げろというようなことを申す筋でもございませんし、そのことは申してございません。
  177. 芳賀貢

    芳賀委員 そうするとその横田委員長意思に反したことが常にこの事務当局において行われているのですよ。全くあなたの信頼を裏切った行為が事務職員の中に行われておるということは、私は本日は重ね重ね注意しておかなければならない。こういう状態の中においては、委員長委員諸君がいかに厳正公平な態度で、この独禁法によってわが国の経済的な一つの正しい秩序を守ろうとしても、これは守ることができないのです。しかも審判決定とかこういう問題の一つの取り上げをする仕事というものは、委員長委員がやるのじゃないでしょう。これはたとえば事務当局において違反事実を指摘する者があればやれということも法に載っておりますから、そういう指摘があった場合においては、委員会としては注意しなければならぬということも法律は命じておるわけです。ですからこういう問題を提起される場合は、一つの反対の立場にあるような側から常に問題が提起されるということはあり得る事実なのです。その真実が何であるかということの探求とか究明というものは相当慎重を期さないと、うのみにそれを取り上げて、これが違反事実であるということになると、相当大きなそごを来たしたり、食い違いが必ず生ずると私は思うのです。そういうことは委員長としては常に部下に対して戒めておると思うのですが、それが徹底されぬということは、委員長の権威の上からいっても残念なことと思いますが、委員長はどうお考えになりますか。
  178. 横田正俊

    横田政府委員 御指摘の通り審査事件と申しますものは、先ほどの例はあまり適切ではございませんが、検事の取調べと同じようなことになっておりますので、委員会といたしましては申告がありまして、それをいよいよ正式の事件として取り上げます際には——と申しますのは、もう少し具体的に申しますと、強制権限をもって調査を始めます段階に入ります際には、必ず委員会にそれまでの事件の報告をいたしますとともに、審査官の指定ということを一々いたします。その指定のあった者が初めて強制権をもって調べることができる、こういう一つの手続を定めておりまして、この事件につきましても、たしかこれは三八地区の明治側に乳を出しております生産側が告発をして参りまして、それに基きまして事務局で取り上げ、その結果によりまして先ほど申しました委員会の許可を得まして、審査官としての活動を始めております。従いましてこの審査の結果につきましては、もちろん委員会自身が命じたことでもございまするし、責任はもちろん委員会にあるのでございます。
  179. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで今度は農林省当局にお尋ねしますが、今取り上げた問題は、青森県の三八地区の集約地区指定の問題にからんでおるわけです。午前中の質疑の中において畜産局長に伺っても、この地区の指定については、やはり独禁法違反のような問題が介在しておるということを一応承知されておるのであって、しかもあえて雪印を指定するという計画に対しての地区指定の承認を与えたということになるのですが、漫然として、ただ書類さえ出てくればそれで認めてやるという態度でもなかったと思うのですが、そういう経緯等を承知しておりながら、最終的には二月二日に指定を行なったことに対して、もう少し詳しく自信のある説明を願いたいと思うわけであります。
  180. 谷垣專一

    谷垣政府委員 それでは申し上げます。三八地区の集約酪農地域の申請書が県から提出されましたのは三十年の十二月でございます。この中には、中心工場に関しましては、中心工場は八戸市の尻内付近に設けるということが書いてあるのみで、どこどこの何会社が担当するという表現はありません。もちろんこれは三十年十二月のことであります。それから三十一年度に入りまして、ほかの集酪地域の件と同時にこれらの地域に関しましても検討を開始したわけでございますが、中心工場に関しましての決定なり記載なりがございませんので、たしか六月くらいであったかと思いますが、中心工場はどういうふうにするのだということを私の方から伺っております。畜産局長名をもって照会をいたしております。同じくそれに関しまして当時青森の知事さんの職務代理でありました副知事さんの名前をもちまして、中心工場の担当者は地元農民の総意を聞いてきめたいというような旨の回答がございまして、具体的には名前がなかった状況でございました。そういうようにいたしまして、その間係官が参りましたり、その他いろいろな経過がございまして、県の方からたとえば二つ工場はできないのかというような点につきましても御意見があったと記憶いたしております。これに対しましては、私たちの方で従来三八以外の酪農地域に関しましても二工場を中心工場にすることは例がございませんし、また酪農地域の指定の考え方からいたしまして一工場が中心工場ということに相なりますので、その旨を申し上げておったような状況でございます。そういう状況で進んでおったのでありますが、三八のそういう状況が結着するまで待てませんので、そのほかの地域指定は大体九月に地域指定をいたして、三八及びその他数地区に関しては問題を残しましてその後の検討に譲ったわけであります。その間県の方から連絡がございまして、九月中旬だったと記憶いたしておりますが、県の方で八戸地域内の町村長、農協組合長あるいは連合会の代表者等を集められましていろいろ御意見を戦わされた模様でございます。これに関しましては大多数が雪印乳業を支持したという報告を受け取っております。それから十月八日になりまして、県の方では県の条例によって設置されたものでございますが、県の畜産振興審議会というものがあるようでございます。これは学識経験者あるいは県会議員等の方をもって構成されているように報告を受けておりますが、これに県が諮問をいたしておりまして、その諮問の結果、この審議会では全員で賛成を得た旨の連絡を私たちは受けております。雪印を中心工場にいたしますことにそういうあれをした報告を受けております。そういうような経過に基きまして、県当局は十月二十四日付で知事名の文書をもちまして、この三八地域内の全市町村長、全部の農協長及びそこで乳業の施設を経営いたしておりまする乳業者全員に意見を徴しております。     〔助川委員長代理退席、委員長着席〕 この結果明治乳業そのほか二つの農協を除きまして、その他の諸君が全部三八地域において雪印の施設を中心工場とする旨の賛成の同意を得ております。そのような結果として、県は中心工場の計画として雪印の施設を充てることにいたしまして、そうしてその書類を十一月一日付で、従来提出いたしておりましたところの計画の変更申請書という形において農林省に提出しておるのでございます。この間主として明治の方へ乳を出荷しておられる諸君たちが私の方にもお見えになりまして、いろいろと明治を中心工場にしてもらいたい旨の申し入れも数回ございました。また公正取引委員会の方にそのことに関して連絡をとった旨の報告も受け取ったと記憶いたしております。  こういうような事情になっておりましたので、農林省の方としては慎重を期しまして、数回公正取引委員会の事務当局の方とも連絡をいたしておったわけであります。その間において、もちろん事件の内容等におきまして、これが公正取引委員会意見であるというようなはっきりした意味合いにおいて承知はできなかったのでありますが、お話し合いをいたしまして、いろいろと問題にしておられる諸点を察知することができましたので、それらの諸点、あるいはこの公正取引委員会の方に対して、反対の立場から出された書類等の写しを拝見いたしまして、それらの問題について私たちの方として検討いたしたわけでございます。これは一つ一つの問題につきまして申し上げるのはいささか煩にわたると存じますが、それらの諸点を検討いたしました。たとえば系統の農協が雪印支持を強要するというか末端農協に対して圧迫を加えたような事実が指摘されておりまするが、そのようなことがあったかどうか。あるいは有畜農家創設事業による乳牛の導入に当りまして、生産される牛乳の出荷先に関して誓約書を徴したような事実、あるいはそれによって出荷先を指定したような事実がありやなしやというような問題につきまして、その他いろいろと指摘されておったような問題について、関係者を呼び、あるいは県当局からの弁明を求めるという形において調査をいたしたのであります。  それらの一々について、ときには事実の確認ができなかったものもございます。あるいはそういう事実はないという趣旨の陳述を受けておるものもございます。それらのものを一つ一つ検討いたしまして、さようにいたしました結論として、これはよしんばそれらの明確にされておらない事実が後ほど明確にされて、指摘されておるがごとく不公正な事実があるものにおいてあったといたしましても——これはあったと断言するわけじゃないのですが、かりにあったといたしましても、そういうことを前提にして考えましても、先ほど示されましたような全体の県の総意というものをくつがえすに足るほどのものではないという結論に達したわけであります。  またこの間にこの問題に反対をされておる側の人たちの陳情もだいぶあったわけでありますが、その立場方々にいたしましても、さらに県当局の御意思にしましても、あるいは雪印の方を是なりとしておられる諸君の側の方にいたしましても、いずれの側に立つ方もすべて、早く指定をしてくれということの御要望が非常に強かったのであります。そのようなこと、あるいは大多数のものがそういうふうに中心工場に関しまして雪印を指定すべきであるという意思表示をしておる事実、さらには現実の問題といたしまして、その地域におきます現実としての集乳の実績が、雪印が大体六割五分から七割くらい、明治の側が二割五分ないし三割くらいの程度の実情からも判定し、またこれを指定せずに一年延ばした場合における状況、その逆の場合の状況もいろいろと勘案をいたしまして、その結論としまして今申しましたような、この地域の中心工場として雪印を持ってきたところの県の計画というものは妥当であるという結論に達したのであります。このような事情をその間におきましても私たちの考えまする点をいろいろと公取委員会方々にも御連絡をしながら最後の結論といたしまして上司の決裁を得てこの地域を二月二日に公示をいたした、これはほかの地域とともどもにそのようにいたしたわけでございますが、そのようなことに相なっております。
  181. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま畜産局長説明によって、農林省当局でとられた経緯等に対しては大体承知したわけですが、ちょうど横田委員長も隣にすわっておられるので、農林省はどういう判断と取扱いに基いて指定を行なったかということは、あなたもそこで聞かれたと思うのです。今局長の方から、ときどき公取委員会の方とも連絡をしてというような言葉が二、三出ておるのですが、常に横田さんが言っている通り、やはり農林当局公取との間において事務的あるいは有機的な連絡とか調整をとるという気持で相互間でこれを進めていけば、こういう事態というものは未然に防げるのではないかというふうな感じを私は受けたのですが、どうですか委員長公取というものは何も問題を引き起すためにできたのではないし、私はいつも言っている通り、大きな問題に取り組むことに対しては国民も全部支持するのですが、何かというと弱い者いじめをやるようなことは、事前にこれを防ぐとか指導的な方法でそういうことが起きないようにするという指導的な役割というものは、公取委員会の性格の中にはみじんもないものでしょうか、いかがですか。
  182. 横田正俊

    横田政府委員 公取仕事といたしましては、大体違反があったものをあとから取り上げるという形にはなっておりますが、実際問題といたしましては、みすみす違反が行われたということを見てほっておくことはないのでございますので、あいにくこの事件は、訴えて参りましたのがいつでございますか、私詳細に存じませんけれども、もっと早くいろんなこういう事態が私の方で把握できましたならば、もう少しスムースに問題が片づいたんではないかというふうに私は考えております。従いましてこの種の事案のみならず、特にいろんな産業行政といろいろからみました問題につきましては、公取といたしましてはたびたび申し上げておるのでございますが、できるだけの連絡を保ちまして、国全体のやり方といたしまして問題がスムーズにいくようにいたしたい、これが私の強い念願でございます。
  183. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお伺いしたい点は、酪農問題等が起きるたびに、公取見解としては、現地酪農民の意向を無視したとか、農民意思を抑圧したとか、そういうことが一つの事由になっておるのですが、この現地の利害関係者の意思の反映というものは、どのような形で表明されるのが一番適当でありますか。たとえば組織体においては協同組合等を通じて、その一つの人格を持った組織を通じて表明される場合が、やはり農民意思の反映になるのか、全くそういうものから拘束されない自由人の立場で雑然と会合して、そこで意思決定を行なったということの方が正しい反映であるか。反映するとかしないとかいう度合というものは、百パーセントが賛成とか反対ということにならなければ、正しい反映ということにならないのか。七〇%賛成したけれども、三〇%の人は頑強に反対したからして、これは七〇%の多数の意見を採用したことは間違いであるということになるのか、いろんな事例があると思うのですが、正しい利害関係者の意思の反映というものは、どういうような形で表明されることが正しいか、その点をお伺いしたい。
  184. 横田正俊

    横田政府委員 正常の状態でございますれば、御指摘のようにこういう一つの組織がございまして、その組織において民主的な手段で総体の意思決定して、そのルートを通じまして外部に意見発表される。またその意見は尊重すべきものであるというふうに考えております。ただしよく申されまするように、いわゆる少数意見の尊重というようなことは、もちろん非常に重要なことでもございまするし、これは組合なりそういう共同体の現実のあり方と非常につながっておる問題でございますが、一般的な方式と申しますものは、今御指摘の通りであろうと考えます。
  185. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなると、たとえば協同組合において意思決定したというような場合には、これはやはり法令、定款等に基いて、法人格を持った機関ですからして、そういう場合、たとえば総会においてその事業年度の販売方針をきめるとか、系統外会社にあるいは出資するとか、そういうことは一切総会できめるわけです。しかし総会というのはやはり今言われたように民主的にやるわけですから必ずしも百パーセント賛成という事態ばかり起きないですね。そういう場合にはやはり民主主義のルールに従って多数決によって方向をきめるということになるわけですが、しかしその場合においても少数者意見をあくまでも抹殺してもいいということにならぬと思いますが、しかしそれらの機関とか関係者の意見を公的に徴するという場合には、やはり町村であるとかあるいは協同組合であるとか、あるいは審議会であるとかあるいはいろんな代表者であるとか、そういう人を公的に会合させ、そこで述べられた意見の大半がこうすべきであるというような結論に帰した場合においては、それがやはり一つ意見の反映といいますか、そういうことに私はなると思うのです。少数者が反対したから、これが抑圧になったとか、これはけしからぬということになると、独禁法というのは絶えず少数者立場だけを守らなければならぬというような、これは極端な例だけれども、そういうことになると思うのです。だからこういう判断に当っても、やはり現地の判断を正しく反映さす表明の方法とか形態というものは、かくあるべきだということは明確にしておく方が間違いがないと思うのです。やはり今度の審判開始の内容は、そこにひっかかりとか足場を作って問題を築き上げているように私には考えられるのですが、そういう点に対しては今後委員会の運営上いかにお考えになっておりますか。
  186. 横田正俊

    横田政府委員 そういう共同体の全体の意見聴取の方法として、そういう正式の会合を持ち、それで多数決できめるということがいわゆる民主主義のルールであることは、もう私から申すまでもないと思います。原則としてそれがよろしいやり方というふうに考えますが、御説のように日本のこういう共同体の民主主義というものは必ずしも徹底しておりませんように私は考えます。そのところにいろいろ問題があるわけで、やはり問題は、形式ではなく実質にあると思います。しかし一般的に申しまして、その形が望ましい、そういう形によって意思が表明されるということが原則であることは申すまでもないことだと思います。
  187. 芳賀貢

    芳賀委員 その点はそのくらいにして、あと農林省にお尋ねしますが、高度集約の指定をする条件の中に工場指定ということが含まっておるけれども、指定した地域において、指定された工場以外のものが絶対入ってはならぬという排除規定はないわけですね。それをたまたまはき違えて、一つの地域にあくまでも一工場、あとは絶対なわ張りに侵入することはまかりならぬということではないのだけれども、そういうふうに理解してみたり、またそういう宣伝が行われるのですね。ですからこういう点は何か公取の方でも理解の足らぬ点があると思うんです。これらの点の理解の徹底に対しては、むしろ農林省の方から積極的に公取委員あるいは職員の諸君に対しても、酪農振興法というものはこういうものだということを十分説明して、相手を納得させるという努力が必要だと思うんです。公取の諸君というのは選ばれた賢明な諸君だから、十分努力して説明すればすぐわかると思うんです。それをわからさぬからして、愚にもつかぬ問題を取り上げては何だかんだとやかましく言っておるわけですが、今後この地区指定等に対しても、いわゆる一つの望ましい形は、一つの地域を作って、その中には基幹工場というものがあって、そこで牛乳の生産が高まって、理想的な地区が建設される、そのことが合理化にもなるし、また乳価のコストを下げて、国民大衆にも低廉な牛乳を提供し、一方においては酪農民の経済的な地位の向上もはかるという両面にねらいがあるのだから、そういう努力はぜひしていただかなければならぬと思います。  もう一つは、これは経済局長にお尋ねしますが、今のような農業協同組合法のこの形において公取の方から独禁法違反とかなんかでずいぶん協同組合はいじめられたりするわけですが、これを完全に守るためには、法律の中にどこか不備な点があるかどうか。あるとすれば、どういう点をもう少し改正するとか強化すれば大丈夫か。これけ協同組合の根本精神が歪曲されるようなことになると大へんですから、そういう点はいろんな問題に当面されて気づいた点もあると思うのですが、意見があればこの際聞かしてもらいたいわけであります。
  188. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御指摘のように、確かに中心工場と申しますか基幹工場と申しますか、中心工場の考え方が、どちらかと申しますと独占工場というふうに意味を取り違えられやすいことがあるかと思います。特にこの点は、私たちは中心的に運用するけれども、そのほかの工場を否定するものでは決してないのだということを実は申しておるわけでありまして、本件の経緯につきましても、相手になっております、当事者であります明治の諸君にもそのことをおいで願って申し上げておったような次第でございます。もちろんそれぞれ県当局に対しましてもことさらそのことを実は申し上げて参りましたしまた事実上っております計画にもそういうことを予定しまして、全部が全部中心工場に行くのではないということがわかるような計画を、県からも持って参っております。また明治側の立場で乳をだしておられる、明治側に立っておられる農協方々がおいでになったときにも、雪印の方の方がおいでになりましたときにも、そういう点は特に注意いたしまして御指摘してきたわけでありますが、やはり先ほど御指摘になりましたように、中心工場という考え方がほかのものを全部排除してしまうのだ、現状あるようなものも全部排除するというような感じが強く出ては相ならぬと思います。その点は公取の方に対しましても十分に御理解を持っていただけるように今後ともに努力をいたさなければならぬと思います。農民方々に対しましても、そういうことはよく連絡をいたしたいと思っております。
  189. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 現在の協同組合法は任意加入の建前をとりまして、志を同じゅうする者が組織をいたし、そして組合員経済的地位の向上をはかっていくというのが趣旨であるのであります。その目的に沿う行為であれば、組合員が相談し合って行うことについて、それが第三者に害を与えるとかあるいは組合員の個人の基本的権利を侵害するということでなければ、討議し合ってそれを実行することが一つの本質になっておる、こういうふうに考えます。一番問題になりますのはやはり共同行為の問題でありまして、共同購入、共同販売、これはいろいろな物資、いろいろな対象によって程度は違っており、またその地域々々の組合によって程度が変ってくるのはやむを得ないと思いますが、しかし目標といいますか、理想として、お互いに共同することが農民地位を向上することになるということは争えないことであろうと思います。その方法に無理があるということであれば、それはよく注意をしなければならないことである、こういうふうに考えます。戦争前いわゆる産業組合至上主義といいますか産業組合報国主義、産業組合のメンバーでなければ農民でない、こういうふうなことが一つの指導のスローガンとして掲げられたことがあるのであります。その後農業会で全戸加入し、そういう農民の共同事業の実施が必要であるという認識も非常に徹底してきておりますので、協同組合法の施行後については、一方においてはいわゆる任意加入主義をとっても、総合農協ではほとんど農村の全戸が加入する。と同時に特定の事業、特定の目的のための、いわゆる総合農協に対して特殊農協というものも、非常にふえてきておるのが実情であります。しかしある事業を相当効果的にあげるのには、その宣伝について相当徹底し、あるいは組合の中で討議をし、あるいは組合の中できめをするという必要があると思います。いつでも問題になりますのは、協同組合法の十九条の問題でありまして、一方では専属利用契約を締結することができるという規定がある。十九条の二項では、しかしそれはあくまでも組合員の任意によるのでありまして、その専属利用契約の妥結を拒んだことを理由にして、組合員組合の施設を利用することを拒んでならない、こういうふうな非常に親切な規定があるのであります。その点は、各国の立法例を見ますと、こういう例があるのもあります。戦前の産業組合法にはこういう例はなかったのであります。そこのところで組合当局なり組合理事者あるいは組合の指導者とかいうものがある程度の矛盾を感じておることは事実じゃないかと思います。これは、いわゆる農業会ができまして、農家全員加入を強調し、それが行き過ぎであったということが、この協同組合法の立案当時いろいろ議論されて、入ったという歴史的な意義があると思うのであります、そういう点につきましては今後十分考えまして、終戦後十数年を経過しまして、経済事情、農村の社会事情等がいろいろ変ってきておりますから、農業者の地位の向上のためにはこういう点についてもっと検討を要するのじゃないか、こういうふうに考えます。しかしそれはあくまでも一共同の利益確保するのであるから、第三者にどういう迷惑を及ぼしてもいいのであるということでは工合が悪いのではないか。それとの兼ね合いにおいて、こういう点についてさらに検討を加えていく必要がある、こういうふうに考えます。
  190. 芳賀貢

    芳賀委員 私一人で質問独占するのはいけませんから、きょうはこの程度にいたしますが、ここで横田委員長にも農林省当局にも申し上げておきたいことは今渡部局長も言われましたが、農業協同組合というものは、加入脱退の任意の原則、それから一人一票による発言権の平等というものがやはり確保されておるわけですね。そういう原則の上に立って組合に加入したりあるいは脱退するわけですが、しかし何としても協同組合の定款とかあるいは総会の議決の尊重ということは、尊厳を失ってしまえば団体でも何でもなくなりますから、あくまでもこの形をみんなが守ってやるということにしていかなければ、やはり農村の民主化というものはなかなか期待することができないと思います。ですから公取協同組合を問題者として取り扱う場合においても、この本来のものが何であるということをよくお考えの中に入れてもらって、決してこれは個人的な利益追求のための団体ではないし、横田さんがいつも言われる通り、弱小なる農民が共同の行為を行うことによって自分の経済的社会的の地位を守るのだというところにこの目的があるのですから、これを逸脱しない限りにおいては、公取の側においてもこれを育成するということに一つどうしても努力をしてもらわなければならぬと思います。また乳業資本間の問題を扱うとしても、形式はやはり株式会社であって何も差別はありませんけれども、その資本構成の内容が純然たる独占資本につながる企業体であるか、あるいはほとんどが農民の零細資本の集結によってできた企業体であるかというような、そういう資本の内容とか性格等もやはり一つ判断の中に入れて問題を処理する必要がどうしてもあると思うわけなのです。まだこの問題は審判開始の中途にありますから、今後の推移というものは当委員会としても十分関心を持って見守っていく必要がありますし、また今後いろいろ研究した結果、必要であれば青森県の県知事であるとかいろいろな県の関係者等も参考人として出頭をお願いするようなことになるかもしれません。いろいろきょは指摘したい点もありますが、農林大臣の御出席がありませんから一農林大臣に対する質疑は次の機会に保留して一本日は私はこの程度でとどめておきます。
  191. 小枝一雄

  192. 淡谷悠藏

    淡谷委員 午前中要求いたしました三代川審査長は出席しておりますね。私の入手しております資料が怪文書であれば私はとりけしますが、あたなは、二月二十一日の午後一時参議院の第十四控室において、自由民主党の政務調査会農林部会における審議に際しまして、いろいろ意見を述べております。今度の青森県の三八地区の集乳に関する独占禁止法上の違反の疑いについての事件について、青森県の県政を論じて、「このことは県行政の失態を雪印に穴うめをさせる代りに農民からは経済的にしぼりとれということであった。」というふうに述べられたと伝えられておりますが、これはいかがでございましょう。そう言われておりますか。
  193. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 ただいま御質問の自民党の政調会農林部会に私は出席したことがございます。そしてその席で私が御要求によりまして御説明しました言葉の詳しいところまでは覚えておりません。ただ今淡谷先生のおっしゃいましたような趣旨のことをお話したことはございますが、その通り言葉であるかどうかは記憶しておりません。
  194. 淡谷悠藏

    淡谷委員 おそらく青森県の調査も詳しくやられたと思いまするから、このたびの中心工場の問題が青森県の県行政の失態であるというあなたの御認識がどういう点に立っておったのであるか、その点を御説明願いたいと思います。
  195. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 この点は審判開始決定書の中に、畜産振興の経営困難のために県としても非常に困惑しているというふうな記載がありますので、そのことを言葉をかえましてそのように申しました。
  196. 淡谷悠藏

    淡谷委員 畜産振興を大へんな経営難に陥れたことが一つ。さらにあなたの言っている言葉に従いますと、青森県の県行政に失態があったことは認めたとしても、その穴埋めを中心工場として雪印にさせて、そのかわりに農民からは経済的にしぼり取れという方針だという批判をあなたはしておるが、これは肯定されますか。
  197. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 私はこの事件の事実を私なりに解釈しておりますが、私はそういうふうに見ております。
  198. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう一点、席上で、あなたはこの中心工場の設定の問題をめぐりまして、農林行政と激突しておる実情であるということを言っております。あなたは、やっぱり最近のあなた方の動き、公取のさまざまな動きが農林行政と激突しておるというふうにお考えになっておるか。
  199. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 私はそのときの表現は、ちょっと今おっしゃいましたようなことではなかったように思います。末端の生産者は、少くとも公取農林省が激突しておるように見ている。そしてまたこれは審判開始決定書の中にも書いてございますように、県の方の中心工場育成の方針といいますものが、中心工場にやらせるという誓約書を出させましたし、また貸付牛を貸す場合に特定の会社、それを審判開始決定書にどういうふうに書いてございましたか、中心工場と書きましたか、雪印と書きましたか、そういうふうに一つきまったところへ出さなければ貸付牛を貸してやらぬとか、種畜場の施設を利用させないとかいう県の中心工場育成のやり方がありますが、そういうふうな点をもし農林省が御承知でしたら——先ほどからの農林省お話ですと、農林省としても、そういう強制的なことまでやろうと考えていらっしゃらないということでしたら是正なさるのではないか。しかし是正なさるということも聞いておりませんので、その辺のところでどうも公取の方針と農林省の方針は心ならずしも衝突しているように思われるというふうなことを申し述べました。
  200. 淡谷悠藏

    淡谷委員 特にこの際私公取委員長にはっきり申し上げておきたいことが一つございます。私はこの問題は単なる二つの乳業資本、雪印対明治の対立競争による事件としては取り上げたくございません。これは日本の酪農振興上、公正であるべき公取委員会が意識的にあるいは無意識的に、ある一方の乳業資本の肩を持ちあるいは乗ぜられて、まるで資本競争の中に国家の機関が介入するような事態を起すことは、特に公正取引委員会の権威にかけまして慎重に御考慮願いたい。特にあなたは午前中非常に疑いを持っておられましたが、あなたのところの職員がはっきり県政批判をやっておる。穴埋めをさせて、農民を経済的にしぼり取っておる、少くともそう思っておるということを今あなたの面然で公言しておる。またあなたは農林行政の上に立って、この私的独占禁止法あるいは公取委員会法に基いて批判するならかまわないのでありまして、あなたの部下の職員が少くとも農林行政に対してはっきりした批判を持つ、しかもそれが激突をしておる、こういうふうな行き過ぎをあえてなしているということは、私は委員長として慎重に考うべき事態だと思うのであります。従って私は、これからよくこの事情についてはあなたに反省を求めると同時に、農林省に対しても、あなた方の専門であるべき農林行政が公取委員会の一職員によって批判され、しかも激突されておるということまでいわれました。半ば公然の席上においてはっきり言われておるということは、あなた方の権威のためにも、あなた方のプライドのためにも、また国家の農林行政の上からも重大事としてお取り上げを願いたいし、特に青森県の行政につきましては、少くともこういう疑いを持たれるようなことを公けの席上でやられることについては実は遺憾であります。この下で今度の問題を一致決定いたしました県会の県行政の上の批判としても、私ははっきり黒白をただしたいと思う。  三代川さんに私はあらためお尋ねしたい。あなたは、あなたの考えておる農林行政が国の農林行政と激突をしておるという識見を持っておられる。それならば一体、現在の日本の酪農が非常に進展をはばまれておる実情、たとえば青森県の酪農にしましても、ちょっと伸びそうになりますと片っ端からこれがつぶれていって、あなたの言われるいわゆる不当なる県政であった、この原因はどこに一体求められますか。公取委員会は公正であるべきはずであります。公正であるべきものは、公正なる尺度を持たなければならない。酪農に対してあなたが批判されるならば、酪農を国民の利益になるように誘導することが少くとも公正取引委員会なるものの持つほんとうの使命であるならば、あなたははっきりした酪農行政についての信念を持っているはずだ、また持っているようにいわれておる。一体青森県における酪農の失敗は、そのおもなる原因をどこに持っておるとあなたは考えておるか。
  201. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 なかなかむずかしい点でございますが、私が現在考えておりますことを申し述べさせていただきますと、私は酪農というものがますます日本において盛んにならなくてはいけないというふうに、農林省と同じに考えておりますが、酪農というものをもう少し経済として考えていかなくてはいけない、商品経済の一環として酪農を考えていかなくてはいけない、そのためには乳業者間の競争というふうなものが必要だ、そういうふうに考えております。そしてこれは、別に農林省がそういうお考えでないというふうなことではございません。私がただ、そういうふうに考えておりますということだけでございます。
  202. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私の言うのは、あなたは青森県の県行政について、特に畜産振興会社の大問題になりましたのは県当局の行政の失敗である、その跡始末が非常に不明朗なやり方をしておるということを断定されている。それならば青森県の畜産振興が、あのような事態になった根本的な原因をあなたはどう把握されてきたか。県の行政がどの点において失敗したか、この結論を出すまでには、あなた方は現地に行かれて少くとも国家の費用を使って調べられたはずだ。結論を出しておる。その調査の結果と結論との因果関係をどう結ばれておるか、はっきりお答えを願いたい。
  203. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 またあまり言って、何か行き過ぎだなんとおっしゃられますと困りますけれども申し述べさせていただきますが、この畜産振興という会社は県策会社として、経済性に徹していなかったから失敗したのだというふうに理解いたしております。
  204. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そんな抽象的な話で、私は満足いたしません。経済性に徹していなかったというのは、どういう点において徹していなかったか。特にそれが県の行政上の失敗であるというのなら、どの点が行政上の失敗であったか、はっきり言ってもらいたい。あなたは行政上の失敗と言っおる、経済面における競争の失敗だと言っていない。どこに一体行政上の失敗の原因があるのか。
  205. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 その点は審判開始決定書の中にうたってございます。——この中には詳しいことはございませんが……。
  206. 淡谷悠藏

    淡谷委員 書いてないでしょう、こちらだって読んでいますからね。
  207. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 どうも私が申しますと、ますます県行政の批判になってしまうのですが、何か青森には——私は直接行っておりませんが、私の聞いております範囲では、県策会社という性格のために、運営がなかなかむずかしかったというふうに聞いております。たとえばいろいろ役員の構成というふうなものなんかについても、動きが活発にいかないようになっておったというふうに聞いております。
  208. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体今度の独禁法違反の疑いありとして提訴した人間は、あなたも承知しておる通り広沢安平という人間であって、この人間がどこの資本と結びつき、どういう事態に陥って提訴したか、あなたは知っておりますか。
  209. 三代川敏三郎

    ○三代川説明員 存じません。
  210. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなた、それも知らない。それを知らないで、聞きますというと、青森県にもじかに行ってない。それが県当局の失態によってこのようなことをし、その穴埋めをさせようとして雪印を誘導し、しかも農民からは経済的にしぼり取れということであったという結論を下しているのは一体どういう態度であるのか。私はあなたにもっと聞きたい。私自身も知らない。日本の酪農行政に対して、一大抱負を持たれている少くとも農林省酪農行政と激突されるという公取委員方々であったなら、私は委員長以下の責任において、はっきりこの農林委員会の席上で、公取酪農振興に対する態度が正しいかどうか、農林省酪農行政に対する態度が正しいか、あるいは農林省の態度が間違っているか、これは農林委員会の権威においても明らかにしたいと思う。  この質問は、きょうやっても出し尽せませんから保留しておきます。
  211. 小枝一雄

    小枝委員長 それでは残余の審査は適当な機会に譲ることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会