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1957-09-03 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月三日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 保科善四郎君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大村 清一君    北 れい吉君       田村  元君    辻  政信君       眞崎 勝次君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    島上善五郎君       西村 力弥君  出席国務大臣         国 務 大 臣 津島 壽一君  委員外出席者         法制局長官   林  修三君         人事院総裁   淺井  清君         人事院事務官         (事務総局給与         局長)     瀧本 忠男君         総理府総務長官 今松 治郎君         調達庁長官   上村健太郎君         防衛政務次官  小山 長規君         防衛庁事務次官 今井  久君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  山本 幸男君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         大蔵事務官         (管財局国有財         産第二課長)  市瀬 泰蔵君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件  公務員給与に関する件     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議開きます。  本日は午前中に公務員給与に関する件について質疑を行うことといたします。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最初人事院総裁お尋ねいたしたいわけでございますが、七月十六日に一般職職員給与に関するそれぞれの報告及び勧告が出されたわけであります。結論的に申し上げまして、私どもはこの報告なり勧告なりは、妥当性を欠いておるのじゃないか、言葉をかえて申し上げますと、当然行うべきベースアップをやらないで、そのかわりに期末手当の若干の引き上げあるいは通勤手当の新たなる支給というような問題にすりかえておるのではないかというような印象を非常に強く受けるわけであります。そういう観点から報告内容お尋ねして参りたいわけでございます。  まず最初に今度の勧告に当っていろいろとられました資料いわゆる統計“そういうものの中で昨年と異なって、三公社現業職員あるいは地方公務員との関連性といったようなものについて、何ら触れておらないというのは一体いかなる理由であるか、その点からまずお伺いいたしたいと思うのです。
  4. 淺井清

    淺井説明員 お答えを申し上げます。公務員法によりますれば、人事院といたしましては、比較いたすべきものは、第一には民間賃金、第二には生計費、かようになっておりますので、これまで常にその方針をとっておったのでございます。昨年三公社現業等に触れましたのは、むしろそれは例外でございまして、大体これまでは触れたことはないのでございます。それは三公社現業給与人事院が所管いたしておりませんので、新しい資料もございません。昨年触れましたのは、大蔵省において三公社現業資料を持っておりましたので、それを利用いたした、こういうわけでございます。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 公務員法によれば、俸給表は、生計費民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、こうあるわけです。今総裁がおっしゃったのは、生計費民間における賃金だけをあげておるのでございますが、明らかに「その他人事院の決定する適当な事情」という言葉が述べられておる。この中に三公社現業あるいは地方公務員といったように、特に国家公務員一般職職員給与に関する法律適用職員と密接な関係にあるこういう職員も、当然こういうふうな「適当な事情」というものの中に含まれて私はやるべきだと思う。そう言うと、あなたは昨年のやつが特異だとおっしゃいますけれども、私は昨年が特例ではない、昨年が当然なすべきことをやったのだ、こういうようにしか考えられません。それではことしは三公社現業なり地方公務員なりの給与実態というものを参考にすることが適当でなかったという歴然たる事実でもあれば別でございますが、そのところはいかがですか。適当な事情がないとお認めになったわけですか。
  6. 淺井清

    淺井説明員 ただいま御指摘ように、人事院の定めるその他の要素というようなことがございますから、もちろん三公社現業民間企業等比較いたしましてもよろしゅうございます。それは御説の通りでございます。しかしながら、従来人事院といたしまして主となっておりますのは、民間賃金生計費でございますから、それによりましたのでございます。  それから本年は昨年利用いたしまして以来の新しい三公社現業給与実態を調査した資料がございませんものですから、そこでこれを省いたわけでございます。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 資料があったかないかということの前に、三公社現業給与あるいは地方公務員職員給与というようなものを、勘案することが適当な事情にあるかないか、人事院としてはその点についてどういう観点を下したかということをまずお伺いしておるわけです。
  8. 淺井清

    淺井説明員 三公社現業等に関する給与法の中には、国家公務員給与を考慮いたしと向うの方には書いてあるのでございます。しかしながら国家公務員法それ自体には、それは正確にそう書いてないのでございますから、従来通り人事院といたしましては、まず民間賃金、それから生計費、これでやって参りたい方針でございますが、ただいま御指摘ように、その他の要素ということもございますので、場合によっては三公社現業等給与参考にすることは、もとより差しつかえないと考えております。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 三公社現業職員の方には、公務員給与というものを勘案することがうたわれておる。公務員給与の方にはそれがうたわれておらぬとおっしゃる。地方公務員の場合も大体同様だと思います。大体条例で定めることになっておりますが、国家公務員に準ずるという形のものが、多少なりともニュアンスは違いますでしょうが、条例の中で生かされておるよう考えておる。そうすると三公社現業の側、地方公務員の側なりが公務員というものを絶えず参考にしておったということは、それほど密接な関係にあるということを意味しておるわけです。そうすると国家公務員の方には、条文に書いていないからというようなことをおっしゃいますが、これは私は理屈は通らないと思う。それほど密接な関係にあるものを除外するということの方が私は異例だと思う。よくこういうその他とか適当な事情とかいうようなことで述べた条文は、いろいろな法律にあちこちあります。これは二の次ぎ三の次ぎということを意味しないので、非常に広範なものを含めて、そして現わす場合にこういう表現が使われるのじゃないかと思う。何といっても国家公務員給与を定めるときには、民間賃金実態を把握することも、あるいは生計費の推移を見ることも絶対必要であるけれども、しかしそれと変らない程度に、あるいはそれ以上に三公社現業あるいは地方公務員なり、やや関係の深い、こういうところの給与実態を把握することの方が、非常に重要じゃないかと思うのです。それから私何度もお尋ねしておるように、人事院の決定する適当な事情として、なぜこれを適当なものと認めなかったのか。そこのところを明確にお答えを願いたい。
  10. 淺井清

    淺井説明員 人事院といたしましては、さいぜんからお答え申し上げましたように、あくまでも民間賃金生計費、これでやって参つたのでございますから、その方針によったばかりでありまして、ことさらに三公社現業地方公務員給与を今年に限って目をつぶったというよう考えは毛頭持っておりません。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 六十四条に書いてある生計費民間における賃金、それだけでやったとおっしゃいますが、もう一つ要素として書かれている「その他人事院の決定する適当な事情」というものは、今回の勧告に当ってはなかった、この二つだけでけっこうだ、こういう結論を下した理由をお伺いしているわけなんです。
  12. 淺井清

    淺井説明員 この第三の要素と申しまするのは非常に広うございまして、現に昨年、一昨年等の勧告におきましては、一般経済事情等をこの第三の要素として掲げたのでございます。しかしながら今回は、何といっても主になっておりますものが民間賃金生計費でございまするから、それによって判断を下したわけでございます。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、この三つ要素を重要な順番に並べているとかそういう問題ではないと思うのです。この三つはどうしたって取り上げていかなければならぬものだと思うのです。生計費民間における賃金と、もう一つ何か重要な、人事院の決定する適当な資料、この三つは並行的に重要さを持ったものじゃないかと思うわけなんです。二つだけで事足れりというようなことは理屈が通らないのじゃないですか。大体受ける側の政府としても国会としても、昨年は地方公務員なり公共企業体職員なりの給与との比較の上に立って勧告をする、ことしは民間賃金生計費二つだけにして、三公社なり五現業なりは全然対象から除外するというふうに絶えず根拠が変っていくということになると、人事院権威というものについてもいきさか疑問を持つようなことになりはせぬかと思うのです。これはあとで総務長官が来られたらお伺いしたいと思うのですが、そういうおそれはございませんか。
  14. 淺井清

    淺井説明員 御批判はおそれ入るのでございますけれども人事院といたしましても、やはり明示されているものが主になっていることは法律建前上やむを得ないと思いますので、民間賃金生計費というものをどうしてもまず第一に考えなければならぬ。またその方針で過去ずっと、人事院創立以来やって参ったのでございますが、第三の要素人事院がそのときどきにおいて適当に決定すればよい、かよう方針でやって参った。この点はだんだんと御批判もございましたが、私ども考え方はさようでございまして、決して本年度に限り、三公社現業地方公務員給与は知らないというよう態度をとったわけではございません。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは三公社現業職員あるいは地方公務員給与というものは、国家公務員給与を決定する場合は当然参考にしなければならぬ重要な要素になるということを人事院はお認めになりますか。
  16. 淺井清

    淺井説明員 私は必ずしもさように感じておりません。これは国家公務員法と三公社現業給与法の相違であろうと存じております。きいぜん申しましたように、三公社現業給与法におきましては、国家公務員給与を考慮し云々の言葉がございますから、向うの方できめる場合は当然考慮の範囲になろうかと存じますけれども人事院といたしましては、必ずしもそれは比較しなければならぬ、かようには考えておりません。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私はその考え方は非常におかしいと思う。現に五現業職員というものは国家公務員である。三公社職員といえどもかつては国家公務員であった人たちである。そういう関係にある人たち給与を必ずしも参考にしなくもよろしいというふうなことは私は独断ではないかと思うのです。先ほど御説明のあったように、資料というものは収集する点において非常に困難な条件があった、だからわれわれは当然参考にしたかったけれどもどうにもならなかったというならば一応筋が通ると思いますが、そういう表現の仕方では納得できません。いかがですか。
  18. 淺井清

    淺井説明員 もとより昨年の場合は、三公社現業につきましては大蔵省地方公務員につきましては自治庁、これの統計がございましたからそれを利用いたしました。その後の実態調査はございませんから、仰せのごとく今回勧告をいたします場合にその最近の資料がなかったということも事実でございます。しかしながらこれは技術的な問題でございまして、お言葉を返すようでございますけれども人事院の立場といたしましては、やはり国家公務員給与民間賃金生計費、これを主にして参るのが建前であろうと考えております。
  19. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 納得参りません。一つの例をあげましょう。それは特別手当でございます。昨年の勧告におきましては、特別手当の項の勧告におきまして、「五現業職員および三公社職員との給与均衡を図るため、毎年三月に俸給扶養手当および勤務地手当の月額の合計額の〇・一五月分に相当する。特別手当支給する。」と期末手当の新たな支給勧告なさっている。今年は全くこの点には触れないで、今度は民間です。「民間における給与方式改善についてみるのに、比較的」――これはベースアップをしない理由でありますが、「比較的小規模の事業所においてはベースアップによるものも増加しているが、大体の基調としては昨年度と同様である。」こういうよう報告の中では、このよう民間実態というものから、関連の上に立って、「毎年十二月に支給する期末手当を〇・一五月分増額するものとする。」昨年は三公社現業との比較だけでいわゆる〇・一五の勧告を行い、今年は民間との比較だけで〇・一五の勧告を行う、こういうことでは受け取る側の政府にしてもわれわれ国会にしてもおかしいと思う。去年は三公社現業均衡をとり、今年は民間均衡をとる、こんなことで権威のある勧告だと言えますか。
  20. 淺井清

    淺井説明員 ごもっともな点でございますが、昨年さように申しましたのは、当時三公社現業国家公務員との特別手当に非常な開きが出てきた、さよう観点に立っておるのでありまして、今年度はさような正確な資料は持ちませんがその点はよほど改善せられておると考えておるので、今年はもっぱら民間との比較をとったわけでございます。
  21. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総裁はちょっと自分でもおかしいとお思いにならないかと思うのです。ことしはしっかりした資料を持たぬけれどもということをおっしゃっている。資料を持たずにおって勝手に推測しておられる。それで権威があると言われますが、昨年は勧告するだけのしっかりした資料があったから勧告した、ことしはしっかりした資料がないということを前提にされて、そして独断的にまあまあいいところへいっているという想定のもとに全然はぶいてしまう、そういうところに権威がないと先ほどから言っているわけなんです。矛盾を感じられませんか。
  22. 淺井清

    淺井説明員 まことにごもっともなお尋ねでありまするけれども資料がある、ないと申しまするのは、ちゃんと精密に権威づけられた統計がないということを申しておるわけでございまして、もちろん大体の推定はいたしておるつもりでございますが、国会においてここで幾ら高いんだ、幾ら低いんだとはっきり申し上げるだけのものはない、しかしわれわれとして判断いたしまする場合は大体の推定はつく、こういう意味でございます。
  23. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 国会なり政府なりに勧告する際に、あるいは報告する際に、自信を持てるよう資料がないという前提の上に立ってあなたは、ことしはもう大体改善されているから比較する必要はないというふうに飛躍されてしまっている。そんなに報告する自信もないよう情報程度に基いて、なぜそういう自信のある独断が下されるのですか。
  24. 淺井清

    淺井説明員 これは独断ではございません。人事院内部におきましては、三公社現業地方公務員等給与についても絶えず研究はいたしております。しかしながら昨年勧告の書面に表わしましたものは、これは総理府指定統計なりまた大蔵省実態調査なりはっきりと国会または内閣に言い得るところの資料を持ったからでございます。ただいまそれならばさようにはっきりした統計がないのになぜ改善されたと言い得るかと申されましたが、実は昨年とことしとの態度が違っておると御追及になりましたので、人事院内部におきまする大体の推定を申し上げたにとどまるのでございます。
  25. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 五現業公社職員給与国家公務員給与との関連性認めるけれども、それほど重要な要素にはならぬ問題であるとおっしゃっておられるのですよ。それなのに、それじゃ重要な要素にならないほどの関係にしかない両者の関係基礎にして、昨年の勧告を行なったことに矛盾をお感じになられませんか。
  26. 淺井清

    淺井説明員 昨年の勧告におきましては、あの当時の状態において、三公社現業あるいは地方公務員等給与国家公務員給与とだんだん均衡を失するのではないかというよう考えを持ちましたので、あのよう勧告いたしたわけでございますが、その後の状態において国家公務員給与改善をいたされておりますので、今年はそれに触れなかった次第であります。
  27. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 非常におかしいと思うのです。その一語です、何と答弁されましても。三公社現業職員国家公務員との給与は、その勧告報告基礎にする資料にするほど重要性はない、こうおっしゃっておられる。それなのに昨年の勧告は三公社現業職員との給与均衡をはかることだけを目的にして勧告している。私は昨年の態度が当然だと思うのですよ。三公社現業職員との均衡をはからなくちゃならないということについて昨年、勧告している。これが私は正しい態度だと思う。ことしになったらその必要性が欠けてくるというのは、あなたはもう大体均衡がとれたからだとおっしゃるけれども、これは独断ですよ。とれたらとれたという資料をなぜここに述べてから、そのとれたということを実証されないのですか。全然触れてないから私は問題にしているわけです。
  28. 淺井清

    淺井説明員 昨年におきましても、三公社現業もしくは地方公務員との比較において人事院勧告をいたしておるわけではないのでございます。これはあくまでも参考として述べたわけでございまして、ことに三公社現業につきましては、一般公務員よりも高いと思われるるという程度表現しかしておらないのでございまして、もしも私どもの意見を率直に申し上げきせていただけるならば、昨年度におきましても、はっきりした比較基礎となっておりまするものは、あの勧告においても民間賃金生計費であろうと思います。
  29. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その点はべース・アップという形、給与改善という形の中では明確にそういうことは出ております。しかし期末手当勧告においては明確に三公社現業職員との均衡だけをうたっております。これはベースアップ給与改善の問題についてはあまり自信のあるようなことを言っておらぬから昨年も変っておらぬ、それは逃げ口上ですよ。期末手当であろうと給与一つ要素に間違いない。その三公社現業期末手当というものをとり出してきて、国家公務員期末手当というものとの不均衡というものから増額勧告をしているということは、明らかに三公社現業職員との関連性の深きというものをお認めになっているんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  30. 淺井清

    淺井説明員 その点は御説のように、特別手当が三公社現業一般公務員との間に相当開きがあるものと認められましたので、さように申した次第でございます。
  31. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 昨年はこの点においてもあるいはかりに相当上回っているものと思われるという表現を使われようとも、三公社現業職員給与というものはこの勧告基礎になる報告の中で十分述べておられる。ことしはこれが全然触れておらない、これはだれも疑問を持ちます。先ほど昨年は総理府指定統計なりあるいは大蔵省実態調査なりがあったからだ――ことしはこういうことは総理府大蔵省もやっておられないのですか。
  32. 淺井清

    淺井説明員 その後やっておらないと思います。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 公共企業体の例でありますが、争議行為が行われる場合に、争いが起きた場合に仲裁委員会とか調停委員会とかいうものが持たれるわけです。この人たちは相当自信のある資料の上に立って調停案を出すとか仲裁案を出すとかいうようなことを行なっていると思う。めくらめっぽう実態も把握せずにそういうことをやっているとは思わないのでありますが、この点こういう委員会あたりとの関係においてしっかりした資料をとるというようなことは不可能なんですか。
  34. 淺井清

    淺井説明員 公共企業体等委員会のことについては私は批判を避けますけれども、これは人事院と全然連絡がございません。また人事院からこの委員会に対して資料を求めたことはないと思います。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大体その求めないのがおかしいですよ。そんなに資料がほしいとお考えになるならば、どこに行ってでも資料をとるべきですよ。しかも一番正確に近い資料を持っているだろうと思われるところに申し入れもしないということになると、私は人事院の誠意を疑いたくなります。努力すべきですよ。人事院態度というものはいつもそうなんですけれども民間賃金実態把握が容易である。ところが三公社とか五現業とかいわゆる政府関係機関あるいは政府機関というようなところになると、全く遠慮して手が出ない。一体これはどういうことですか。われわれ国民の常識からいけば全く逆ですよ。民間にはいわゆるお役人風を吹かして、おれたちはきちっと調べるんだ、しかし同じ仲間になると遠慮があって、セクトがあって、資料一つ満足にもらえないんだ。こんな理屈は天下どこへ行っても通りません。
  36. 淺井清

    淺井説明員 最初お尋ねでありますけれども、この三公社現業団体交渉基礎にしてそれを仲裁するなり調停するなりという形をとっているわけでございます。この人事院勧告はきような事実を前提といたしておりません。ですからそれは資料と申しましてもおのずからそこに違いがあるだろうと思います。  それから三公社現業給与実態をなぜ人事院は調べないのかと申しますが、これは給与調査権に関する公務員法の規定が向うの方ははずされているものですから、人事院といたしましてはこれを職権をもって調査することができないのが現状でございます。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういうことをおっしゃるなら、民間実態調査にしても同じですよ。別に法律上明らかな権限に基いてお調べになっておるわけではない。そこのところの関連性は私は少しも変らないと思う。  そこで問題になるんですが、いみじくも参議院の内閣委員会におきまして瀧本給与局長がこういうことを述べておられる。「人事院がある程度入手した資料で、政府側期末勤勉手当増額勧告したのでありますが、そのときの資料のごときは四方八方から袋だたきになっておるという事実がございます。」こういうことを言っている。昨年五現業公社職員給与との均衡をはかるために〇・一五の増額勧告をやった。その資料がインチキきわまるといって袋だたきにあっている。これにこりてことしはやめた、こういうことなら理解できますが、そういうことなんですか。
  38. 瀧本忠男

    瀧本説明員 私に関することが出ましたので、釈明きせていただきます。今お読みになりましたのは、〇・一五を勧告いたす前の話でございます。〇・一五を昨年勧告いたしましたときには、主として五現業でございます。三公社国家公務員でございませんので、多少性格が違うということで主として一般職でありまする五現業を中心にいたしました。しかも五現業におきましては業績手当がございまするが、この業績手当というものは一般職仕事範囲には仕事の性質上ないのでございます。従いまして六月と十二月に支給されまする部分につきましては、これはまず一般職国家公務員期末勤勉手当に相当するものとみなしてもまずまず差しつかえないだろうというようなことから、その間の差額を出してみると〇・一五になるということで、昨年は〇・一五を出したのであります。ことしはそれでは三公社現業のことを全然注意していないかということでありまするが、先ほど総裁から申し上げましたように、あくまで一般職公務員給与を定めまするときの原則は、民間給与生計費であります。第三の要素といたしまして、人事院が適当と考える条件、決定いたす条件というのがございまするが、これは民間給与並びに生計費を補足するための資料、そういうよう考えるべきであろう、人事院ではそういうふうに考えておるのであります。従いまして、ことしは勧告基礎民間給与及び生計費になっておりまするけれども、そうしてことしの期末手当〇・一五を勧告いたしておりまするが、これは数字の基礎といたしましては、民間給与基礎を置いております。しかしわれわれといたしましては、やはり三公社現業にも相当の注意を払っておるのでありまして、たとえば昭和三十年の六月及び十二月に、三公社現業におきまして一般職より平均においてどれくらい多く出ておるであろうというようなことも、いろいろ調査いたしております。それによりますると、〇・〇八月分から〇・一月分くらい多く三公社現業の方が出ておるというようなことも、調査の結果知っておるのであります。また本年の六月には三公社現業の平均は〇・八月分出ております。一般職には〇・七五月分出ておるのであります。この間には〇・〇五月分の差もあるというようなことも承知いたしております。民間とのバランスで〇・一五勧告いたしたのでありますけれども、この程度のことをやるならば、実質的に三公社現業ともバランスがとれるという見当もつけておる次第でございます。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 御弁解なさっておられるようでございますが、この参議院の速記録には明らかに、「去年でございましたか、人事院がある程度入手した資料で、政府側期末勤勉手当増額勧告したのでありますが、そのときの資料のごときは四方八方から袋だたきになっておるという事実がございます。」と、はっきりおっしゃっているのですよ。私はこれがほんとうのところじゃないかと思う。三公社現業資料なんかをうかつに取ってくると袋だたきにあう。これでいんねんをつけられる。ところが民間のところでしたら、不思議に日本ではお役所に文句を言うところはない。どんなインチキをやっておっても、民間から袋だたきにあうことはお役所ではないでしょう。だから安住の地にあぐらをかいている、こういうふうにしか私には理解できない。今給与局長は、いや一応三公社現業の方も調べているのだ、〇・〇八から〇・一くらいの差のあることもわかっているのだとおっしゃっているが、調べておると言いながら、報告にも勧告にも全然触れ切れないというのが、やはり本音じゃないかと思うのですが、いかがですか。  それから総裁お尋ねしたいのですが、今給与局長から、生計費民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮してというのは、生計費民間における賃金というものが主であって、そうしてその他人事院の決定する適当な事情というのはこれを補充する意味だ、こういうふうなことをおっしゃっておりますが、これは私は並列していると思う。適当な事情がないと見れば、それは二つだけで済むでしょうが、適当なものがあると見れば、やはり同様の効果を私はここに働かしていいのではないかと思う。法律で明記しない、例示しないということは、幅を非常に狭くしてはいかぬという考え方から、通常その他というようなことがいわれるわけなのだ。これは一つの例をお話しいたしましょう。昨年でしたか、憲法調査会設置法の審議をやりましたときに非常に問題になった。これは法制局長官にきていただいてもけっこうです。そのときにわれわれは、内閣に憲法に関する提案権、発議権、そういうものは一切ないという断定を下した。そうしたら政府の方ではあると言う。法制局長官もあると言う。あるなら法文上どこにあるのだと言ったら、その他だと言う。こんなばかばかしいことがありますか。憲法といえば国の基本法です。すべての法律に優先するものです。当然この中に含まれているとするならば、内閣提出の憲法、法律案、予算その他の議案、こういかなければならぬじゃないか。憲法をその他の中にほうり込んでいくというような、そういう不見識な法律解釈がどこにあるかと言ったら、いや、それはその他の中に憲法は入るのだ、明らかにこういうことを言っておられた。その他の中に憲法まで入るというのです。そういうふうな前例からいっても、私は人事院が適当な事情ありと認めた場合には、当然この生計費なり民間における賃金と同等のものとしての、何と申しますか、実証力を持つと思うのですよ。これは補充的な意味しかないのだ、主たるものはやはり生計費民間における賃金だというようなのは、私は納得いたしませんが、その点両方お答え願います。
  40. 淺井清

    淺井説明員 ただいま御引用の、憲法はその他の中に入るということに、もしも石橋さんが御反対でございますならば、国家公務員法の規定の解釈におきましても、三公社現業がその他の中には入りかねると思います。もしもそれが同様のものだとお考えでございますれば、そこでわれわれといたしましては、ただいま給与局長から申しました通りに、やはり公務員法建前といたしましては、民間賃金生計費がまず主であろうと考え、これを、補足ということは言葉の問題でございますけれども、その他の要素は、考えるべきときには人事院の判断において考える、こういう方針を従来からとってきたわけでございますが、これは法律の解釈の問題でございまして、これ以上お答えの余地はないように思います。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今反駁されたつもりでしょうが、おかしいですよ。私は憲法をこの中に入れることは反対です。しかしながら内閣提出のその他の議案というものが、前に書いてある法律案、予算、そういうものと同じく提出する権限を政府が持っていることは認めているわけです。私が言っているのは、憲法をその他に入れるとするならば、当然法律の先にはっきり明記すべきじゃないと言っている。しかし政府はその必要がないへその他の中に憲法でも入るのだと、政府法制局長官もそういう答弁をなさっている。そうすると政府考え方というものは一貫しないじゃないか。政府が明らかにその他の中に憲法のような重要なものも入るという解釈を下しておるならば、この公務員法でも同様な解釈を下してこなければ一貫したものがないじゃないか、私はこういうお尋ねをしているわけです。
  42. 淺井清

    淺井説明員 お言葉を返すようでございますけれども、およそ法律で明示をいたします場合には、まず大体重要なものをあげその他に及ぶというのが、これが一般のならいだろうと思っております。そこで公務員法におきましても、やはり民間賃金生計費と、こう一番よるべきところのものを出しまして、その他人事院の定める要素、こういうふうになりますので、人事院の解釈は必ずしも間違っていないと考えております。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういう解釈でしたら、明らかに法制局長官との見解と異なると私は思いますが、いかがですか。
  44. 淺井清

    淺井説明員 憲法の問題につきましては、私は何もこの席上で、説明員として発言の権限がございませんので、それと比較の話については、御答弁をいたしかねます。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、これは法律解釈の問題として非常に大切だと思いますので、法制局長官一つ出席方をお願いいたします。  それでは、今給与局長も、三公社現業職員給与実態も一応把握しているのだ、書いてはおらぬけれども把握しているのだとおっしゃっておられますが、この三公社現業給与公務員給与との関係を、お調べになっている範囲で御説明方をお願いいたします。
  46. 瀧本忠男

    瀧本説明員 私が申し上げましたのは、期末手当勤勉手当に関する限りのお話を申し上げたのであります。昨年の勧告におきましても、先ほど総裁から申し上げましたように、本俸たるべきものをどういうふうにしたらよろしいかという判断は、これは昨年も民間給与だけによっておるのであります。それで先ほど総裁からも申し上げましたように、それでは一体三公社現業との関係というものは、比較してみるとどうなっているであろうかということを、参考程度に見るということをいたしたのでありまして、その限りにおいて報告に述べておるのであります。先ほど御指摘ように、三公社現業について期末勤勉手当をそこだけによって勧告しておるではないかというお話でありましたが、これは先ほど総裁から申し上げましたように、やはり人事院としては民間を中心に考えるべきものであるけれども、昨年は特殊の事情がありまして、三公社現業というものの期末手当に関する部分だけを比較の対象にいたしたのであります。今年は期末勤勉手当をやはり常道である民間との比較というところに戻しまして、そして考えて、なお別にわれわれの入手し得ました範囲資料によりまして三公社現業との比較をしてみても大体妥当であろう、このように申しておるのであります。  それでは三公社現業俸給たるべき部分の実態がどうなっておるかということにつきましては、先ほど総裁から申し上げましたように、この詳細なる調査というものは、昨年利用いたしました、今から言えば一昨年前の資料しかないのであります。従いまして本年利用するといたしましても、その資料しかございません。従いましてその後の状況につきましては、三公社現業において、その後どういうふうに昇給されたかというところに着目するよりいたし方ないのでありますけれども、この点に関しましては、大体団体交渉の結果等も一部出ておりますが、見ておりますると、国家公務員と似たり寄ったりの水準の引き上げがあったように思っておりますので、それに関する限り昨年の状況と国家公務員並びに三公社現業との関係はあまり違っていないのではなかろうか、このよう考えます。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 三公社現業職員団体交渉給与を決定するわけなんです。これはある意味においてはそれだけ職員が満足できる手段が残されているということですね。一般公務員の場合にはその団体交渉権毛剥奪されて、そのかわり人事院というものが作られているということからいけば、団体交渉権のかわりなんです。そうすると団体交渉権を持ち、しかも身分的に一番近似しておる三公社現業職員というもの、この給与というものを重点的に考慮していくということが、公務員に満足感を与える道であるというふうにはお考えになりませんか。、
  48. 淺井清

    淺井説明員 私どもといたしましては、決して御意見に反するよう考え方は持っておりません。その点についても十分考慮をいたしております。しかしながら公務員法に示されておる勧告は、やはり民間賃金生計費、かようなことになっておるのでございますから、私どもとしてはそれによらざるを得ない状態でございます。
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今度の勧告に当っては、三公社現業職員給与は一切タブーだというふうな感じを受けるわけなんです。すべて生計費だ、民間賃金だと、そちらの方にお逃げになるようでございますが、その民間賃金との対比にしてもどうも納得いかない。なぜかと申しますと、民間賃金は三月現在でこれを把握されておる。それに対して公務員給与については、四・五%上るであろう、すなわち今度の給与改善の行われる四月一日以降を基準にして比較されておる。これは単に三月三十一日と四月一日、一日の差にしても重大な意義を持っているわけなんです。片一方は三月現在で民間賃金を調べる。肝心の公務員給与は今度上るであろう四月以降の賃金資料にとって、そしてこれを対比して、そして勧告基礎にしておる。こういうことは私は納得いかないと思うのですが、この点はいかがですか。
  50. 淺井清

    淺井説明員 まことにごもっともなお尋ねでございまするが、それは今回の給与改善は四月一日にきかのぼって適用されるということになっております。まことに一日の違いでも差はあると仰せられればそれまでのものでございますが、大体の基準といたしましては、それで差しつかえなかろう、かよう考えた次第でございます。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういう考え方はおかしいんじゃないですか。今度の給与改善基礎になった勧告というのは、昨年の七月十六日ですね。七月十六日の勧告基礎になって、実施されたのがことしの四月一日ということになる。そうしますと、この間ほとんど十カ月程度の時期的なズレというものがあるわけなんです。昨年この給与改善をなすべきであるという勧告をなされたときのいわゆる民間公務員給与との賃金実態は、大体較差として一一%あった。それを水準差とかあるいは膨張数、それを勘案して、六・二%に縮められて、そして六・二%程度の較差を縮めるべきであるという勧告をなさった。それが十カ月後に実施されたわけでしょう。そうしますと、その間民間賃金というものはとまっておるわけではありませんですよ。にもかかわらず、昨年の三月からことしの三月までの上昇率というものはそのままとっておいて、六・二というものはあとでこの考慮の中に入れていくというやり方は、このズレというものを無視してかかっているということになりませんか。
  52. 淺井清

    淺井説明員 その点は報告の中にも書きましたが、民間も上っておりまするが国家公務員も上っておるのでありまして、その差はほぼ同様であると考えております。それはこの報告最初の部分に書いておったつもりでございます。
  53. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 上昇率は大体四・五ということは認めます。ところが昨年一一%、いろいろ操作をやって六・二%の差があったものが、そのまま四・五ずつ上昇していったら、この較差は広がっていきませんか、いかがです。
  54. 瀧本忠男

    瀧本説明員 今のお尋ねは、比例論で言えばそういうことになろうかと思います。しかしわれわれは昨年六・六%ないし七%程度の較差があるということを申しまして、それが今年の四月一日以降に改善されたわけでございます。昨年の間におきまして公務においては、おおむねこの報告にも出しておりまするように五%程度、これは公務に新しく採用された者また退職した者等がございまするけれども、この平均は四・五ないし六になっておるのでありまするけれども、そのようにして上っております。民間においても上っております。大体昨年一カ年間の水準の上り方は同様であろうということは言っておるのであります。また別途穴年度の報告におきましては、昨年そういうふうにして比較する基礎となりました民簡の比較、標準職種というものをとりまして、昨年と今年の間においてどれだけ上っておるかということを見ておるのであります。これは昇給等を含まない額でございまするから、そういたしますると、それが二・八%上った、昨年も六・二、六・六ないし七%差があるということを言って、現実には六・二%上ったのでありまするから、昨年も多少残っておるのであります。従いまして今年度における的確なる差というものはおおむね三%前後であろう、ここではっきりその結論を申しておる次第であります。
  55. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その特定のポジションをとらまえて比較したその問題はわかるのです。ところが私が言ったのはそれではない。先ほど十カ月と言ったのは間違いで、一年です。明らかに昨年の勧告は一昨年の三月から昨年の三月までの上昇率を基礎にしてやっておられるわけですから、一年間のズレがある。そうすると昨年の勧告で明らかにされておりますように、昨年三月現在において民間公務員との給与の較差というものが一一%、操作をして六・二%あった。その後の上昇率というものはそれぞれ四・五だと幾ら言っても、すでにこれだけの大きな開きがあったものがそれぞれ四・五上昇しても同じだということは言えませんよ。相当の開きが出てくる。一年間に現に公務員給与改善が一年間時期がずれたということによって、そういう矛盾は明確に出てきておるじゃありませんか。その点はお認めにならないのですか。   〔委員長退席、保科委員長代理着   席〕
  56. 淺井清

    淺井説明員 その点はこの報告にも書きましたように、この六・二%の差というものは、大体今回実施いたしました給与改善において解消するということを申しておるのでございます。しかしながら現在民間公務員との差というものは二・八%、約三%あるということも認めておるのでございます。しかしながら人事院といたしましては、その程度の較差に対してベースアップ勧告をする必要はあるまい、かように断定したわけでございます。
  57. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 的確に私がお尋ねしているところをお答え願いたいと思うのですが、この勧告の実施がまる一年間ずれたことによって、昨年の三月から本年の三月までの公務員の上昇率も大体四・五、民間の上昇率も大体四・五、だから同じだ、「両者の給与の上昇は同程度であったといえる。」という表現はこれはインチキじゃないかと言っているのです。結局昨年の三月に一一%ないし操作をしても六・二%の較差があったものが、その較差をそのままにして四・五ずつ上昇したって依然として較差はあるはずなんです。「総体的には両者の給与の上昇は同程度であったといえる。」という表現はインチキじゃないか、こういうお尋ねをしているのです。
  58. 瀧本忠男

    瀧本説明員 その数字だけに着目して石橋委員ような計算をされますれば、確かに差は増すことになるのであります。ところが民間におけるいわゆる出入りでございまするが、新しく採用した者また退職した者等の率は公務とも必ずしも合っていない。従って平均的に見ました水準の上昇は両者がおおむね同等であるといたしましても、それを固定した形で見るならば、すなわち退職もなし新採用もなしという形で見るならばどうなっておるであろうか、こういう問題は、退職率、新入率等を十分的確に把握しませんとなかなか結論が出ないのであります。そういうことまではわれわれの権限でなかなかなし得ないのであります。今のような御計算をされれば確かにそうなるのでありますけれども、しかしその数字はそこにも言って諮りまするように、大体同程度であるという非常に概括的な観察のことを申しておるのでありまして、先ほども私が申しましたように、それでは現実に本年の三月現在において民間と公務とがどれだけ違っておるか、これが要するに石橋委員の御指摘になっておる問題に端的に答えることになるのでありますが、それは私が先ほど申しましたように、いわゆるキイ・ポジションを昨年と同様にとりまして、これに公務の人員、ウエートをかけまして、昨年と同様の計算をやってみるならば、――これは行政職だけを見れば別でありまするけれども、水準差があるもの、号俸調整等のあるものもありますかち、全体平均してみまするとこれが二・八%程度である、こういうことになっておるのであります。先ほども申しましたように、昨年やはりあれでかっきりバランスがとれたわけではございません。六・二%上昇いたしましてもなおかつ公務の方に多少残りがあったのでありまするが、それを合せますると大体三%、これが的確なる官民の今年三月における差、こういうことになるのであります。
  59. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いろいろな条件を総合して判断したところをお尋ねしているわけじゃないのです。私はこの報告書の中に盛られておる資料について一つ一つお伺いしておるわけです。今私がお伺いしておるのは、報告の2の民間給与実態公務員給与との比較、これのうちの(1)についてのみお尋ねしているわけなんです。この数字のとり方が表現その他において妥当性を欠いているのじゃないかということを私はお尋ねしておるわけなんです。個々の資料の積み重ねが総体的な判断になると思うのですよ。私はこの一つ要素についてお尋ねしているわけなんです。明らかに較差のあったまま四・五%上昇している。ところがそれについて「上昇は同程度であったといえる。」これはやや断定的な表現ですよ。あなたがおっしゃっておられるように大体とかそんなことじゃないのです。しかもその前提としてさっきもおっしゃっておりますが、「職員構成や移動率に若干の差があるとしても、」ということは断わりに入れております。入れておりますが、これは的確に把握していない、民間においてどれだけの移動率があったか退職者があったかあるいは新規採用があったか、公務員においてどうだったかということははっきりした資料は持っておらない。ただ修飾語として形容詞として上に乗っけておいて、そしてここで「同程度であったといえる。」という断定の仕方をするのは独断じゃないかというお尋ねをしておるわけなんです。
  60. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただ同程度ということだけもし言ったのであれば、これは独断であろうかと思いますが、その前に「総体的には両者の給与の上昇は同程度でありたといえる。」こういうことを申しておるのでありまして、われわれの方としても概括的にこれを見るならば、民間給与水準の上り方も(公務の給与水準の上り方も、同程度であったと概括的にはいえる、このようなことをここでは申しておるわけであります。
  61. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その総体的にということを生かすためには、職員構成や移動率をはっきり把握しなければいけないと思うのですが、そうじゃないのですか。職員の移動があった、退職者がどれだけ出た、新規採用者がどれだけあった、そういうふうなことが明確に把握されて初めてその総体的にという言葉が生きてくるのじゃないですか。その点いかがですか。
  62. 瀧本忠男

    瀧本説明員 的確に申しますればおっしゃる通りでございます。しかし毎月勤労統計等に出て参ります数字は、これは退職する者があり新しく入ってくる者があり、そういう数字が出て参るのでありまして、これを一々分析した表まではついておらないのであります。われわれは大体の見当としましてはこの公務においては新入退職がおおむね五%前後ではなかろうかと思っておりますし、われわれの方の資料国家公務員の特別調査等において大体把握しております。民間の方はそれを相当上回っておるということはわかっておりますが、詳細には十分にわかりません。
  63. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今三公社現業職員との比較についてはお尋ねすればこれは何にもない、民間賃金との比較についてお尋ねすれば、今言ったような私に言わせればやや欺瞞的な面もある。それからもう一つ大切なことは地方公務員との比較の問題、今総裁は、民間給与は三月現在で押えて、公務員給与は四月一日以降で押えて、そうして両方比較しておるのは無理じゃないかと言ったら、公務員の場合は四月一日から明らかに法律改正が行われて遡及実施されたんだ、既定の事実だとおっしゃったが、それならば地方公務員は既定の事実ですよ。これはもう岸内閣として地方公務員国家公務員と同等に扱うということを明確に言っておられます。そこに問題はありませんか。昨年の報告の中に「自治庁の昭和三十年十二月十三日および昭和三十一年一月二十日の堀方公務員給与実態調査結果中間公表によれば、地方公務員の平均俸給月額は一般職公務員のそれに比して相当高くなっている。」こう述べておられます。地方公務員国家公務員との賃金較差というものは相当違うということを昨年お認めになっておられる。今年は一緒に上るのですよ。おそらく上昇率からいえば私は地方公務員の方が上回るのじゃないかと思う。長崎県のような再建団体でも六・二じゃありません。前年度と本年度を比較すれば七・何ぼ上昇するはずです。しかし最低押えまして政府が保証しておる同等の六・二上ったとしても、昨年これだけ明らかに較差があったものはさらに較差というものが大きくなって参りませんか。こんな要素を全然見落しておるというのは私は故意にやったのじゃないかと思うのですがいかがですか。
  64. 淺井清

    淺井説明員 決して故意にやったわけではないのでありまして、地方公務員の中には公共団体によって非常に高いところもむろんあるのであります。ただいまお読みになりました資料は全体の平均について申したことでありまして、今年度地方公務員について触れませんでしたことは、さいぜんからるる申し述べましたような三公社現業について触れなかったと同じことでございます。
  65. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういうことじゃまともな政府ならほんとに納得がいかぬと言うだろうと思う。ここで皆さん聞いておられても納得がいかぬと思います。去年は明らかに地方公務員自治庁給与実態調査に基いて国家公務員一般職職員給与と相当の開きがあることを断定しておる。ことしは何も触れておらない。実際調べてみたらどうだと言えば、みんなが常識的に知っておる、国家公務員と同等以上の上昇が四月一日以降において行われておる、まだ準備の終ってないところも相当ありますけれども、これは政府がはっきり、地方公務員についても六・二の上昇について保障するという断言を、関係大臣がこの間の国会で答弁されている。相当開きがあるときに、同じ上昇率で上昇をしたにしても、この較差は免れませんよ。これは一つも縮まらない。こういう大切な要素に何ら触れない、これは故意としか私は考えられませんが、自治庁ではもう統計はとっておらないのですか。
  66. 淺井清

    淺井説明員 その後の統計は私はとっておらないと思っております。ことに今回の国家公務員給与改善に伴うものは、ただいま地方公共団体においては進行中であろうと思いますので、ただいまのところ、これは自治庁でもわからないのじゃないかと思います。   〔保科委員長代理退席、委員長着   席〕
  67. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は三公社現業職員給与民間給与、あるいは地方公務員給与という、重要な三つのものとの比較の上に立っていろいろお尋ねしたわけですが、何一つ私として納得のいくところはございません。私は非常に信憑性の欠ける報告じゃないかというよう考えるわけなんです。今度の勧告の中では、当然国家公務員ベース改訂、べース・アップというものについて明確な勧告がなされるべきであった、それを何らかの意図でしないで済ますために、いろいろな操作をこの報告資料統計の中で織り込まれていったというふうにしか私は考えられないのです。しかし幾ら言っても、今言った以上のことを言うことはお苦しい立場にあると思いますので、これ以上は言いませんが、とにかくそういうふうな根拠の上に立った勧告というものは全くおかしいと思う。結局当然ベースアップをすべき時期にありながら、これをやらないで、期末手当の〇・一五の増額とか、あるいは通勤手当支給というような問題にすりかえてしまっているという結論しか私は出ないと思う。  ところで、その通勤手当にいたしましても、突如としてこういうものが出てきたというところに私としては納得がいかない点がございます。というのは、人事院国家公務員法に基いて指向しておる給与体系というものは何ですか、これは職階給であります。昨年の勧告というものも、この方向に向って進むためにどうしても整備をしなくちゃならぬ、簡素化をしなくちゃならぬということを、口がすっぱくなるほどおっしゃつておる。それなのに、いたずらに体系を複雑にするこの通勤手当というような新たな要素をぽっとまた一つ出してきた。首尾一貫しておらないじゃありませんか、この点はどういうふうにお考えでございますか。
  68. 淺井清

    淺井説明員 最初お尋ねでございますが、人事院は今回ベースアップをすべきところを、顧みて他を言うよう勧告をした、こういうお問いでございますが、きようなことは全然考えておりません。この勧告に信憑性がないと仰せられますけれども人事院といたしましては十分にその点を考えて、責任をもって勧告いたしたつもりでございます。  それから通勤手当が突如として出てきたのは、昨年の簡素化の線と違うじゃないかと仰せられましたが、この通勤手当というものは、人事院としては従来から注目をいたしておりましたものでございまして、今回突如としてこれを出したというものではないのでございます。
  69. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 通勤手当というのは、民間ではずっと前から支給されておるわけなんです。だから私は突如としてという表現を使ったのです。しかしそれを主に質問をしたのではございません。いわゆる人事院国家公務員法に基いて指向しておる給与体系というものと、この通勤手当の新設というものとの間には、矛盾がございませんかという質問をいたしておるわけであります。
  70. 淺井清

    淺井説明員 私どもとしては、これは矛盾はないと考えております。職階制云々のお言葉がございましたが、どういたしましても給与体系を本俸一本にまとめて、職務と責任によって支給するというような体系にはならないのでございまして、扶養手当でございますとか、特殊勤務手当でございますとか、きような手当というものは、やはり簡素化するとかしないかの問題は別といたしまして、ある程度は必要であろうと思っております。またその方が実は職階制をうまく運用し得ることにもなるのでございますから、その意味において決して矛盾はいたしていないと考えております。
  71. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それではその点は総務長官に引き続いてお尋ねするといたしまして、もう少しこの通勤手当の内容についてお伺いいたしたいと思うわけでございます。六百円以内の範囲内において支給するのだということを述べておりますが、具体的にはどういう案を持っておられるわけですか。
  72. 瀧本忠男

    瀧本説明員 通勤手当の問題につきましては、これは報告にも申しておりますように、国家公務員につきましては、おおむね約十三億円ということを申しております。このときはある想定に基きまして考えておるわけでございます。大まかなところを申しますと、これは民間でもやはり最高制限ということをしておる例が非常に多いのでありますから、公務の場合におきましても、最高額を月額六百円程度に押えたいということを考えております。それからまたいかなるところに居住いたしましても、その勤務先と距離がないということは、構内に官舎がある場合等を除きますれば、ないのでありまして、おおむね通常歩く距離が二キロ程度というのが普通であろうか、このよう考えておりますので、二キロ未満の通勤者には、これはいかなる方法によって、たとえば歩きましても自転車でもまたは有料の交通機関を利用いたしましてもこれは出す必要がない、このよう考えております。有料の交通機関を利用いたします者に対しましては、大体一カ月定期よりも六カ月定期の方が安いのでありますが、三等、それから国鉄と私鉄とを比べますと国鉄の方が安いのであります。同じ距離を参りますときに、二つ以上交通機関があるという場合には、なるべく国鉄の方を標準にする、ない場合にはいたし方がない、このようにいたしまして月当りの額を計算いたしましたところ、大体の基準はこの程度であろう。二キロ以上の自転車通勤者等も含めますが、これに対しましてもこれとのバランスである程度考える必要があるのではないか、このようなことを考えております。
  73. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 二キロ以上の遠隔地から通勤しておる人に支給するということになりますと、おのずから最低の額というものもきまってくると思いますが、それはどの程度でございますか。それから六百円の範囲ということになりますと、京浜線で言えば大森程度であるというようなことを参議院でおっしゃっておられたようでありますが、現在の東京都内の住宅事情その他考えた、場合に、そういう近距離でまかなえるものであるかどうか、その点についてもちょっとお尋ねしてみたいと思います。
  74. 瀧本忠男

    瀧本説明員 最低の支給額は月額二百円程度になるのではなかろうかというふうに考えております。  それから御指摘ように六百円という範囲でどれだけ通勤できるかというところをとってみますと、先ほど御指摘になりましたようなところになるわけでありますけれども、これはやはり交通いたします場合に、非常に遠距離から来る方とそれからまた比較的近い方もございますが、そこはやはりある程度バランスをとった方がよかろうじゃないかということと、それから交通機関利用の度合が、公務の方が民間よりも多いのではなかろうかというようなことを勘案いたしまして、できればなるべく広く交通手当の支給が行き渡るようにした方がよろしい、その間にあまり差等もできるだけなければよろしい。しかし実態は交通機関を利用するのでありますから、その実情に応ずる必要があるのでありまして、そういう意味におきまして六百円一この六百円という数字は、民間の方で調べてみましても、最高制限額を置いておりますところの平均が六百三十円という程度になっておりますし、また国税庁あたりで税金を免除いたします限度額というのが六百円ということにもなっておりますので、彼此勘案いたしまして、六百円という程度にしたらいかがなものであろうということを一応考えておる次第であります。
  75. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総裁お尋ねしますが、この通勤手当というのは、いろいろな資料その他から見ていつから支給すれば最も妥当だ、その点いかがお考えですか。
  76. 淺井清

    淺井説明員 これは人事院がしばしば勧告で申しておりますように、またその末文にも書いておりますように、われわれといたしましてはなるべくすみやかにこれを実施していただきたい。これは通勤手当といわず期末手当といわず同じでございます。ただ期末手当といたしましては、十二月に支給すべき期末手当と申しておりますので、今年十二月に支給していただきたい、かよう考えております。通勤手当におきましても、これはなるべくすみやかに支給していただきたい、かよう考えておりますが、これは御承知のように、法律の改正と予算を伴うことでございますから、政府でどのようにお考えになるか、問題はそこにあろうと思います。  なおちょっとついでにつけ加えますが、ただいま給与局長から申し上げました通勤手当の内容についての話は、人事院勧告をいたします基礎となる人事院の案を申し上げたにすぎないのでございますから、内閣においてどのようにおきめになるか、これはまた別問題であろうかと思います。  一
  77. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 受田委員からもいろいろたくさんお尋ねしなければならぬので、時間がありませんから急ぎますが、総務長官がお見えになったのでお伺いいたします。実は今の私の質疑毛総務長官によく聞いておいていただきたかった。おそらくあれを聞けば人事院勧告はいかぬ、やはりべース・アップをやるべきじゃないかというお考えを持ちはせぬかと思うのですが、とにかく一応こういう勧告が出されました。それで岸内閣としては、石田労相が再三申しておるように、調停あるいは仲裁あるいは勧告、こういうようなものは完全に実施していくのだということを繰り返し述べておられますから、当然政府としての結論は明確に出ておると思うのですが、この勧告についてどのよう態度を決定されましたか。それから同時に勧告されております石炭手当、薪炭手当の引き上げについての勧告は、勧告通り全面的に実施されたものであるかどうか、この二点をまずお伺いいたします。
  78. 今松治郎

    ○今松説明員 私先般総務長官を拝命いたしました今松でございます。今石橋さんのお尋ねでありますが、私は実は言いわけをするようでまことに恐縮なんですが、給与公務員担当は労働大臣が担当いたしております。私がこれを引き継ぎましてから半月ばかりでございまして、ここで皆さんに御満足のいくような御答弁ができないと思いますが、その点はしばらく時間をかしていただくようにあらかじめ御了承願いたいと思います。  人事院から七月十六日に期末手当の問題、それから通勤手当の問題を勧告されております。その後事務当局といたしましては、期末手当の問題は政府の方でも人事院勧告は基本的に尊重していく、こういう立場のもとに検討をいたしておりますが、通勤手当の問題は初めての問題でございますし、これをどういう工合な角度から受け入れるか、また財政措置はどうするか、こういうことを並行して今検討しておる最中でございまして、はなはだ遺憾ですがまだ結論が出ておりません。この問題につきましてはなるべく早い機会に政府としての結論を出してお答えをいたしたい、こういうよう考えておりますので、御了承を願いたいと思います。それから先般実施いたしました石炭手当、薪炭手当の問題は、人事院勧告通り全面的にこれを受け入れて実施いたしております。
  79. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 もう先に長官お断りになっておるので何とも言えないのですが、満足な答弁はできないことを御了承願いたい、これは八月十二日でしたか開かれました参議院の内閣委員会でも同じようなことを言っておられる。そうのんべんだらりとやっていただいては困ると思うのですが、特に予算との関係が今おっしゃったようにあるわけなんです。期末手当支給に関しては大体勧告通りやりたい、これが人事院の計算では十一億円ということですが、通勤手当の方は十三億円、これにいろいろほかに関係して予算を伴う面も出てくるわけでございましょうが、実施するとすれば当然これは予算の補正を必要とするというふうにわれわれ理解しておるわけですが、この点はいかがですか。
  80. 今松治郎

    ○今松説明員 まだその辺までの検討がいっておりませんが、金額が相当多額に上りますと既定予算ではやりくりがつかないのではないか、こういうよう考えております。
  81. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いつまでも就任したばかりだからとかいうようなことで言いのがれをなさらないで、もっと早くスピード・アップしていただきたいと思います。  それからもう一つお尋ねいたしますが、八月十八日の新聞に出ておるのですけれども、今松総務長官が故郷に錦をかざって帰られる途中に、大阪の宿屋でお話をなさっております。私は放言じゃないと思いますが、この中で公務員制度の改正を急ぐということをおっしゃっておる。「占領下に出来た公務員制度はいまの国情にそわない面が多いので、早急に改正することになろう。主な改正点は一般職と特別職の差を明確にし、職階制を簡素化する。」いろいろ書いておるのでございますが、一体どういうところが実情に沿わないので、どういう改正をするのか、もう少し自信のあるところを御説明願いたいと思います。肝心なことをお尋ねすると、就任早々でどうもとおっしゃるけれども、就任早々に勇ましいことをちゃんとおっしゃっておるのです。自信満々じゃありませんか。もう少しこの大切な公務員制度の改正について、今私が尋ねた点に明確なお答えを願いたいと思います。
  82. 今松治郎

    ○今松説明員 新聞記事で私が非常に勇ましいことを申したようなお話でございますが、そういうような勇ましいことは私は申さぬつもりでおりますけれども、これはまあ新聞記事に出ておるのだから言ったのだろうとおっしゃれば、水かけ論になります。そういうような問題が問題点になっておるのだ、こういうことを私は言ったつもりでございます。
  83. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、近々にあなたが在任中に公務員制度に改正を加えるべく、何らかの形で作業を進めなければいかぬというようなお考えを持っておるのですか。その点はいかがですか。
  84. 今松治郎

    ○今松説明員 まだ政府方針としてそうきまったわけではありませんが、もはや公務員制度調査会からも昨年の秋答申が出ておることでございますから、できるだけ成案を早めて政府方針存きめまして、それから一つお諮りをしたい、こういうふうに考えております。
  85. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その公務員制度調査会の答申の中にもうたわれておりますし、あなたの談話の中にもその点出ておるようでございますが、給与の簡素化という問題が述べられておるわけなんです。その面と、先ほど通勤手当の方で何かおしぶりのようでございましたが、そういう態度関連性がございますか。
  86. 今松治郎

    ○今松説明員 その点は関連はないと思います。
  87. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは受田委員に質問を早く譲りたいと思いますので、簡単にお尋ねいたしますが、この間の国会におきまして給与法の審議をいたしました際に、衆議院の内閣委員会におきまして満場一致でいろんな附帯決議を付しております。ところがこの附帯決議がなかなか実際においては実施されておらない。具体的な例をあげればたくさんございますが、時間がございませんので、私は必要があればあとでやるといたしまして、とにかく各省の組合から、実施されておらないという資料が参っております。この点は、一体その付帯決議をないがしろにするつもりか。そんなことはないと思いますが、これを完全実施しないような事態に対して、人事院はどういう断固たる処置をとる考えがあるのか、完全にこれを実施きせる自信があるのかどうか、その自信のほどをお尋ねいたしたいと思います。
  88. 淺井清

    淺井説明員 人事院といたしましては、国会両院の付帯決議は最も尊重するという態度で臨んでおりまして、私どももその点は十分に気をつけてやったり、またやりつつあるつもりでございます。これだけを私から申し上げまして、具体的には給与局長から申し上げることにいたします。
  89. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総務長官にもお尋ねしておきますが、国会で満場一致で確認されました附帯決議というものは、あくまで尊重するという態度を、この就任早々に当って一つ明確にここでお答え願っておきたいと思います。
  90. 今松治郎

    ○今松説明員 そういうよう考え方で進んでいきたいと思います。
  91. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、あとで法制局長官が来たらまたするとして、ちょっとお譲りいたします。
  92. 相川勝六

    相川委員長 受田新吉君。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 私ごく簡単に、ただいまの石橋委員の質問に関連し、また新しい問題を提供してお尋ねをしたいと思います。  総裁及び局長から先ほど以来、去る七月十六日の人事院勧告及び報告に関する御説明があったのでございますが、私はここで特に指摘して解明をしていただきたい点があるのであります。それは、今回のこの勧告及び報告の中身を拝見してみますと、生計費及び民間給与を基準にして公務員給与の現状をつぶさに報告しておられる中に、初任給の一項があります。特に、生計費の調査をされた標準生計費調査の中に、東京における成年独身男子の標準生計費を七千二百三十円と踏んでおられる。これはちょうど、高等学校を卒業して試験採用をした初任給月額の東京都における実収入と匹敵するものであるということが掲げてあります。これは新制高校を出て試験採用をした者が六千三百円で、去る二十六国会でわれわれが国民代表としてこれを通過せしめた、それを基準にしておいでになるのでございますが、このことは国会の修正によって三百円増額された部分でございまして、国会の修正がなかったとしたならば、この標準生計費によるところの成年独身男子の給与というものは、当然引き上げなければならないという勧告をされるべき筋のものであったかどうかでございます。
  94. 淺井清

    淺井説明員 お説まことにごもっともと存じております。しかしながら、昨年の勧告におきましては、人事院はいわゆるベースアップ方式をとらない、調整方式をとったことは御承知の通りでございますから、初任給を上げますれば全部の号俸を上げなければならぬ、かよう考えましたので据え置きにいたしたわけでございます。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 そういたしますと、この初任給の部分が国会で二百円ないし三百円引き上げられた、このことによって他のそれより上の給与をもらっている人々は当然、あなたのお説の給与改善で言うならば六・二%の引き上げになっている部分――初任級が是正された部分については一〇%こえていると思うのでございますが、この一〇%こえたものに見習ってそれから上も引き上げるのが、人事院勧告をされる場合には当然の措置とお思いになりませんでしょうか。
  96. 淺井清

    淺井説明員 これは給与曲線に関する給与政策の問題でございますが、人事院といたしましては、今回国会において成立いたしました給与法給与曲線で大体よいかと思っております。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 給与曲線を基準にしての御答弁でございますが、昨年の勧告とことしの勧告比較いたしまして、国会で修正した部分は、人事院考えた当初の基準よりも四%ないし五%初任給において高い級に置かれた、しからば、それから上にある給与を受ける人人は、初任給を改正された立場からは、実収入において待遇改善をその部分だけせられないという結果になっていることを御了承願えるでしょうか。いわゆる中だるみを起すという現象がこの部分から発生するとお考えではございませんでしょうか。
  98. 淺井清

    淺井説明員 人事院勧告がどのようにございましょうとも、国会でかよう給与法が成立いたしました以上は、われわれは尊重いたしましてその通りに実施いたすほかはないと思うのでございますが、国会におきましては、決して全部をお上げになったのではなくて、御脂摘の初任級のところだけお上げになっておるわけでございますから、われわれといたしましてはこの給与曲線をもってよろしいかと思います。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 国会で修正がなかりせば当然この部分の給与改善について勧告をする、すなわち標準生計費の立場からは、成年独身男子、試験採用の高校卒業者というものを、当然初任給改善をすべきであるという勧告をする運命になっていたかどうかということです。
  100. 淺井清

    淺井説明員 昨年の勧告から今年の勧告までは一年を経過いたしておりますが、初任給を上げませんでしたのは、昨年の勧告における問題でございますから、それはまた別問題だろうと思います。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの方としてはことし国会で修正をされなかったならば、標準生計費観点から見たならば、東京都における成年独身男子の場合七千二百三十円という数字は、私は出ないと思うのです。この数字に足りない部分を勧告することになったとお思いになりますか。
  102. 淺井清

    淺井説明員 これは仮定の問題でございますから、ここに正式にお答えいたしませんが、あるいはさようになったかもしれぬ。それは私どもとしては、すでに国会で修正いたされておりますから、そのままにいたしたわけでございます。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 ここに私、政治的なかけ引きというものに順応される人事院の本質がひそんでおると思うのです。たまたま国会が直していてくれたから非常に助かったので、直してくれなかったら当然この部分は勧告しなければならぬのだという結果になっておる。かようになりますと、仮定の上という問題でなくして、人事院は常にそのときの政治情勢に順応するところの勧告報告をする、国民の納得する立場での勧告でなくして、そのときの政府方針とか、そのときの国会の動きによって適当に融通のつくような措置がされるという危険が私はあると思うのです。これが次の問題として発生するのでございますが、民間給与とかあるいは標準生計費、その他の人事院認める諸般の事情というものの中に、あなたは先ほど、三公社現業とかあるいは地方公務員給与とかいうものも考える場合もあるし、考えない場合もあるのだという御発言がありました。人事院認めるその他の事情ということになりますと、これは人事院に対して非常に強大な権限が与えられることになる。従って、人事院はそのときの政治情勢、経済情勢によって人事院の立場を適当に調整されるというおそれが出てくると思うのです。大体人事院勧告すべき筋合いは、公務員法給与法に規定されているように、きちんとした基準が掲げられておる。従って、民間給与その他の事情が変更された場合、定められた五%以上の変更がされた場合には、当然勧告すべき責任があるにかかわらず、時の国際情勢、政治情勢あるいは政治問題等と考えてこれを適当に調整されるとしたならば、人事院の独立性というものに私は非常な危険があると思う。人事院が判断されるその他の事情というものの中に、時の政府の圧力とか、あるいは政党間のいろいろな行きがかりとかいうものを考慮されて、すでに過去においても勧告を遠慮されたり、あるいは時期的に非常に融通のつくような措置をされたりしているということを私たちよく知っておるのでございますが、依然としてそういう危険のある考え方勧告をされるということは私は許されないと思う。結果的に人事院は、その他人事院が適当と認めるという事情の中に、政治的な判断とか、あるいは各政党間のいろいろな行きがかりとかいうものを重視し過ぎて、本来の勧告権の使命を失うようなことになりはしないか。ことに私非常に心配していることは、その時の政府がある経済政策において緊縮政策をとりたいというような場合に勧告を遠慮する、また両党間における非常ないがみ合いの関係から国会の紛争期を避ける、こういうような政治的なあり方というものをあなたは絶対にとってはならぬという基本的な考え方を持っておられましょうか。
  104. 淺井清

    淺井説明員 それはお言葉までもないことでございまして、実は非常にその点なお疑いでございますけれども人事院創設以来、私としてはいまだかつてきようなことはないのでございます。ただ人事院は計算機械ではないのでございますから、その他人事院の適当と考え要素を加えるということは、公務員法にも許されておるところでございます。ただその要素の中にただいま受田さんの仰せられた政党云々あるいは政治情勢云々、さようなこどは過去において考えたこともございませんし、今後もさようなことはないと確信いたしております。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 過去においてもない、今後もないということでございますが、過去において国会の開会直後に勧告をされたり、あるいは深夜において勧告をされたり、こういうようなちょっと想像のつかないようなできごとがあったことを御記憶でございましょうか。
  106. 淺井清

    淺井説明員 私はちょっと記憶いたしておりませんが、深夜に勧告をいたしたことはないつもりでございます。これは官庁の業務の時間内にやっておるのでございます。それから国会の閉会後になりましたことは、それは勧告の準備その他によって閉会後になったことも、もちろんあるように思います。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 これは総裁よく御存じでありまするから、私追及申し上げませんが、人事院は非常に融通のつくようなことを何回もされているのです。それは国民がよく知っていることです。従って今回の三十二年七月の勧告を拝見しましてもちょうど標準生計費に見合うような、こうした初任給是正がされていたので助かった、これが出ていなかったら助からないんだというような、危ない橋渡りをされるよう勧告ではいけないと思う。筋を通して常にその時の政治情勢に支配されず、人事院のすっきりした観点から勧告をせられる、そうしてこれを採用するかどうかはその時の政府であり、その時の国会がやるのであって、一々人事院認める適当の事情というものにあまりウエートを置かれて判断をされるということは、人事院の独立性を失うと思うのですが、私はその点につきまして政府とか国会とかいうものが、人事院勧告を適当に処理するという原則だけはあなたに御承知願わなければならぬと思うのです。
  108. 淺井清

    淺井説明員 それはしごく御同感に存じております。われわれは決して政治情勢に支配されて勧告をしたとかしないとかいうことはないのでございます。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 今回の通勤費手当についてもこれに関連した問題が起ると思います。通勤手当は今ごろになって民間で新たに作られたものではございません。これはすでに長期にわたって他の給与に準じた実物弁償のような立場で支給されている。従って今回新たに突如として頭をもたげたということに対して疑義が抱かれることは当然のことだと思うのです。人事院としてこの通勤手当というものを歴史的に見て、今回突如として出さなければならなかった事情を御説明願いたいのです。
  110. 淺井清

    淺井説明員 突如と仰せられますけれども、決して突如ではないのです。もし受田さんの仰せられますことを突き詰めますれば、人事院が新たなる手当を創設いたしたときはいつでも突如になるという結果に相なります。人事院といたしましては、通勤手当につきましては従来十分研究をいたしておりますので、今回初めて出したのでございますが、その突如という一これはお気持の問題でありまするけれども、決してべース・アップをしないから突如として通勤手当にすりかえられたというお疑いがもしあるならば、それはそうでないということをはっきり申し上げたいと思います。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 通勤手当というものは民間においても、また政府関係機関等においても長く支給されている。今ことさらに昨年、一昨年にできたものではございません。従って人事院として実物弁償の立場からお考えになるとするならば、とっくにこの問題は処理されていなければならなかったと思うのです。このたび突如として出たという印象を受けることは、人事院の措置が一今年提案されたものが過去において提案されておらなければならなかったということを指摘しているのでございますが、この点はすでにこの通勤手当制度を相当以前から勧告すべき性質のものではなかったかという御反省はないでしょうか。
  112. 淺井清

    淺井説明員 ごもっともでございますが、この通勤手当と申しまするものは、支給の方法その内容等におきまして、いろいろ技術的に考うべき問題があるように思います。なるほど民間におきましては突如としてこれをやっているのではございません。従来からやっているのでございますが、今回人事院といたしましてもこの問題を研究の末出したわけでございまして、決して突如という意味ではございません。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 民間ではまだ住宅手当を支給しているところも相当残っております。通勤手当及び住宅手当というものは、民間における実物支給の手当としては唇歯相輔するという形のものであると思うのでございますが、この点はいかようにお考えでございますか。
  114. 瀧本忠男

    瀧本説明員 住宅手当の問題でございますが、給与総額の中において占めまするパーセンテージあたりから見ますと、通勤費は一・五%ないし一・七%程度になっておるのでございます。住宅手当の方になりますと、〇・〇五%ぐらいに当るのではなかろうか、このようにわれわれは考えております。それで住宅問題の方も、おっしゃるように、ちょっと問題でございますけれども民間においてこの問題を処理しております割合というのは非常に程度が低いのでございます。そこに比べますると、通勤手当の方が相当普遍化しておる。出しておる事業所も、民間事業所のおおむね六五%になっておるというようなことでございまするので、われわれといたしましては、この際通勤手当を問題にいたしたわけでございます。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 初任給に返って参りますが、新制高校を率業して試験採用による独身成年男子という基準は、それ以下の試験採用でない者あるいは新制中学卒業者の立場というものを無視したことになると思うのです。大体独身成年で十八才で一人前の暮しができる基準が出されておるとするならば、試験に合格しようとすまいと、また学歴が新制中学卒業であろうと新制高校卒業であろうと差別はあり得ない、かように思うのですが、御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  116. 淺井清

    淺井説明員 公務員は今後初級職公務員試験に合格いたしませんと公務員に採用しないのでございます。そういう意味におきまして、初級職試験合格者というところをとりますことは意味があるように思います。また現に採用いたしておりまする職員におきましては、中卒程度の方も多いのでございますけれども、やはり基準といたしましては、一応今後におきまして公務員採用の基準になっておりまする初級職試験合格の十八才というところを目標にいたすことが適当であろう、このよう考えます。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 初任給の部門は民間給与比較して相当高い基準に置かれてきたと人事院は過去においてはしばしばおっしゃっておりました。ところが今回給与改善がされた結果ほとんど違いがないところまできておるようです。今民間給与において最低賃金制をどうしようかという声が非常に強くなっておる。労働省も今度企業別あるいは産業別いずれの方式をとるか知りませんけれども、協定方式によるところの最低賃金制というものを法制化しようと用意されておるようです。そういういろいろな事情考えたときに、俸給表の中に少くとも五千三百円というような低位の数字が出るということについてはわれわれは何か釈然としないものを感ずるのでございますが、いかがお考えでございましょうか。
  118. 瀧本忠男

    瀧本説明員 この俸給表の中にただいま仰せのような数字が出ております。これは年令の非常に低い職員等に適用される場合がございますけれども、そういう方々につきまして、かりに非常に高額の給与を保障するというようなことは実態に即応いたきないのじゃなかろうか、ことに公務員におきましては生計費考える場合に、従来人事院は大体十八才者のところを目標にしておる次第でございますし、今後公務員となりまする者はおおむね十八才以上の者が多いのでございますから、そういう意味におきまして、公務員の場合は標準生計費こそ考えるべき問題であろう、このよう考えております。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 標準生計費を中心にこれから考えていきたいということでございますが、民間賃金というものが最低賃金制をしかれる場合に、少くとも私たちが予定していることは、たとい自由民主党の政府であろうとも六千円以下のものを考えることはあり得ない。そして総評は八千円を言い、社会党も八千円案を一応出しておる。そういう考え方からいうならば、独立した生活を営む者が、人事院の算定基礎とされた標準生計費のいろいろな基準というものには非常な疑義がありますけれども、とにかく六千二、三百円という線を一応出しておられる以上は、それから下の俸給表というものを考えるということは、これは現実の問題としてはなはだ矛盾した問題だと思うのでございまするが、もう一度御答弁願います。
  120. 淺井清

    淺井説明員 お尋ねでございますが、これは従来からも標準のとり方が何級何号のところをとるというわけでございます。この標準生計費と申しまするものは、これはいわゆる公務員法による生計費に該当するものでありまして、これと最低賃金制云々とは別問題だろうと考えております。もし最低賃金制というものが実現いたしますれば、これは国家公務員のみならず、官民全部にやるべき問題だろうと思いますので、さようになりました場合には、これはまた別問題だろうと思います。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 次の通常国会には自由民主党政府よりいかなる形かの最低賃金制度なるものが法制化されることは、私は確定的だろうと思います。労働大臣も言明しておることだし、政府部内にもそのための特別な機関ができておる。そうしますと、民間給与にいかなる方式かの最低賃金制が確立された場合に、これを基準にして国家公務員に初任給その他に最低賃金制を考慮して、同時に俸給表に手心を加える時期が来るとお考えでございますね。
  122. 淺井清

    淺井説明員 最低賃金制がどのような形になって現われてくるか、今日の段階ではわかりません。しかし最低賃金制と申します以上は、それ以下の賃金はないよう考えておりますから、そのときはまた別問題だろうと思っております。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つこれに関連する問題で、初任給と最高俸給表との較差の問題です。これは現在五千三百円と最高七万二千円という数字が上と下とに示されておるのでございますが、この較差をだんだんと広げる方向にいくのが人事院としては正しいと思うか、一あるいはこれを圧縮して下を引き上げて、上を押えるという方向をとるように努力しようとするのか、人事院の大きな方針をお聞かせ願いたいと思います。
  124. 瀧本忠男

    瀧本説明員 人事院は、先ほどから問題に出ておりますように、公務員の、給与をきめます場合には、民間とのバランスということを第一番の主眼としてきめるわけでございます。従いまして、上下較差等も意識的にこれを広げるということではないのでございます。民間との対比によりまして、これに合せていくということになろうかと思うのであります。ただ公務員の場合には標準生計費の問題がございますので、これを計算してみて、ただ民間給与をそのまま移してくるというよりは別の要素がちょっと入って参りますので、標準生計費の問題がこの上下較差に影響あるがという場合はあろうかと思います。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 公務員給与民間給与というものを、いずれを先にするか、あとにするかという問題は、これは国の政策としても大事な問題だろうと思います。人事院はきしあたり国家公務員法給与法に基く民間給与とかあるいは生計費を中心にして考える方法をとっておられる。しかし国家公務員の場合は、これは法律で規定されて給与が決定されるのでございますから、民間よう団体交渉などでやるのと立場が違っておる。従って国家公務員給与を決定する方式は、やがて民間にも大きな影響を及ぼすことになる。民間給与というものは国家公務員を模範にする場合力起る、これは間違いがないのです。大体民間の会社というものは、給与専門の職員がたくさんいるわけではない。従って人事院ような膨大なる人員をかかえて、専門的な頭脳を持った人が科学的な算定基礎に基いて調査をされるものと比較したならば、民間の方はどうしても人事院のやり方に知恵を一つ借りようということになると思うのです。従って民間給与を基準に人事院公務員給与を決定されるというように見えますけれども、結果的に見たら国家公務員給与が他のあらゆる民間会社とか、その他の諸団体あるいは公社、公団等の職員に至るまで影響することをお考えではございませんでしょうか。
  126. 淺井清

    淺井説明員 お説の通り国は最大の雇い主でございまして、このような大きな会社は民間にはないわけでございます。ですからお説のような点もございますが、私はちょっと違うところがあると思います。民間給与というものは、その会社の収益によってまかない得るものでございます。国家公務員給与は、納税者たる国民の負担に帰するわけでございますから、その辺の給与のきめ方は多少違うところがあるのじゃないかと思います。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 もちろんそうした要素が入ってくることは当然です。国家公務員というものは、国がこれを雇うて生産事業をやっているわけじゃない。ただ消費部門だけを受け持っている国家公務員給与を支払うのが国の責任なんです。従って生産会社のような形で独立採算制を考えるわけにいかない。けれどもここで考えなければならぬのは、民間給与というものの立て方というものが、団体交渉だけできまることでなくして国家公務員という非常に大きな機関によって、その給与を決定されたものがある程度の標準にされるということになる。従って民間給与国家公務員給与は、互いにみがき合いをして公正を期するという方向に自然に成り至るものだと私は思うのです。この点については総裁いかがでございましょう。
  128. 淺井清

    淺井説明員 お説は必ずしも反対をいたしませんが、われわれの立場から申しますと、民間給与よりは国家公務員給与の方が常に低いのが現状でございます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 民間給与をリードする国家公務員給与でなくして、民間に引きずられるのが国家公務員給与だ、かように答弁を了解してよろしゅうございますか。
  130. 淺井清

    淺井説明員 引きずられるとかなんとかいう問題じゃないのでございます。民間給与を考慮して国家公務員給与が定められるという公務員法建前を申し述べただけでございます。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 生計費の立て方というものについて、これはまたいろいろな方法があ右と思うのですが、現在とっておられる人事院生計費の計算方法、あるいは標準生計費の計算の仕方、マーケット・パスケット方式の採用の仕方、こういうものについて検討を加える必要はないとお考えでございましょうか。
  132. 淺井清

    淺井説明員 いろいろその点はやり方があると思いますが、人事院といたしましては、例のマーケット・バスケット方式を多年とって参りまして、その改善もいたしましたが、われわれとしては大体あの線でよろしいのではないかと考えております。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 人事院の調査されるところの民間事業所の人員の基礎が三十人とか五十人とかいうような、いわゆる中の層にあるものを対象にしておられる。それ以下の層のものはわれわれとしても基準にすべきじゃないと思いますが、もう少し百人とか二百人とか、いわゆる中の上以上の企業とかいうものを私たち民間給与としては十分考慮する基準にすべきだと思うのですけれどもいかがでございましょうか。
  134. 淺井清

    淺井説明員 お尋ねの点につきましては、全く相反する御意見が双方にあるように思っております。一方から申しますれば、国のような大きな雇い主はないのでございますから、そんな何十人とかいうような、小さな中小企業の従業員の給与比較すべきではない。もっと大きなところから比較しなくてはいかぬという御説もございます。また公務員給与が納税者たる国民全体の負担で成り立っておるという点から申しますれば、大きなところばかりと比較しないで、中小企業の従業員の給与はどうなんだ、こういう御説もございます。そういういろいろな御説がございますので、人事院といたしましてはまず五十人以上、この辺でいいのではないかというので従来その標準をとっておる次第でございます。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 中小企業の給与というものははなはだ不安定です。そうしてこれらは家内工業とか零細工業という関係から、全く独裁的な給与がきめられているところが多いわけです。これは基準にならぬ。ちゃんとした給与体系が生まれて少くともこれは民間給与としては筋の通ったものと認められるということになるならば、少くとも百人以上の従業員を擁する中企業くらいを基準にしなければ、私は正確な数字は出ないと思う。総裁としては中小企業というものの給与実態というものが非常に調査が困難であり、またその給与のきめ方がはなはだ独裁的であるということをお考えでございましょうか。
  136. 淺井清

    淺井説明員 御説の通りいろいろその点は問題もございましょうけれども、やはりわれわれとしては公務員給与は、納税者たる全部の国民の負担であるという立場を忘れられないのでございますから、あまり大きなへ何千人もあるような大会社の給与だけと比較することはどうかと考えております。われわれといたしましては、人事院勧告が納税者たる国民の納得を得るようにということは、これはどうしても重大な要件だと考えております。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 中小企業、家内工業に至るまでその給与の決定がはなはだ独裁的になりがちな、こういうものが大企業にどんどん引きずられて、その給与の適正を期する方向へ持っていくような政策は必要だと思うのです。中小企業などは放任して、そうして大企業だけを栄えきせるような政治の方式が今とられている。従ってせめて国家公務員給与ような、少くとも給与の標準をきめる機関においては、中小企業、零細企業とかいう人々の非常に苦しい給与実態を包含する形だけでなくして、その人々の給与を適正化きせるような、引きずっていくような方向へ国家公務員給与の背景となる諸調査も置かれなければならぬ。私はそういう意味で、現在の悲惨などん底にあえいでいる中小企業の給与実態をそのまま参考にしようという人事院のあり方については、一つ十分考慮の余地があると思うのです。私総裁と見解が違うかもしれませんが、この問題は最低賃金制にも関係してくる問題でございまして、中小企業の苦しい経営とその給与実態というものを、これを参考にして、これを入れて公務員給与を算定の基礎にするということには一つの問題があると思います。お答え願います。
  138. 淺井清

    淺井説明員 ごもっともでございまするけれども、われわれといたしましてはへ人事院勧告によって中小企業のみじめな給与を引き上げよう、そこまでの政治的な意図はないのでございます。われわれは民間給与比較いたしまして、一般職公務員給与のことを考えればよいかと思っております。ただ、受田さんのだんだんの御説明でございまするが、まず五十人以上という点ならば、大体それでよろしいのではないかと考えております。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、総裁の御見解とされましては五十人くらいのところと現になっておる。ところが三十人という部門もある。さらに十人というような非常に少いところへまで実際の精密な調査をするならば、むしろそこまで引き下げるという形があなたの論法をもってすれば適切ではないか。調査が非常に困難という実情がございましょうけれども実態に即した形じゃございませんか、あなたの論法から言わしむれば……いかがでございましょう。
  140. 淺井清

    淺井説明員 私の申し上げましたことは、さいぜん申し上げましたように、二つの非常に相反する見解がある。そこで大体のところ五十人くらいがよいというのでございまして、これを三十人、十人に下げようというよう考え方は持っておりません。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 これはまあ計算の仕方にもなるし、実際の計算をする場合の困難さというものにも関係するのでございますが、私は今後国家公務員給与というものが、国のあらゆる給与の基準になる性格のものであることを考えますと、もう一つは、その給与のきめ方が法律で規定されるという厳重なワクがあることを考えますると、人事院とされましては、その給与勧告をされる重責にある立場からへ少くとも国家公務員給与というものは、日本の政治のあり方に十分先行するような方法をとっていただかなければならぬ。従って最低の生活を守ろうという国の最低賃金制の法制化という方向を今たどろうとしているとき、あるいは職階制というものは、現在の段階では非常に実施が困難であるということを身をもって体験している人事院とされては、いたずらに等級制をどんどん進めるよりは、むしろ生活を保障して、健康で文化的な暮しができるよう給与体系を先に作ってから後に、そういう問題を考えるとかいう方法をとられて、最低の賃金を引き上げて、俸給表におきましても、上の方を押えて下を上げる努力を今後も続けるべき性質のものではないかと私は思うのです。最低賃金制を民間の方へまかして、国家公務員の場合はそれが何とかなった後にどうかしようというよう考え方ではなくして、常にそうした給与政策を人事院として検討されるという努力が必要ではございませんか。
  142. 淺井清

    淺井説明員 だんだんと御意見として承わっておくのでありますけれども人事院といたしましては、現在は国家公務員法認められた権限によって勧告をいたすほかはないのでございます。これは民間賃金生計費、それによって勧告をいたすわけでございます。上下の較差につきましては、われわれは決してただいまの較差が開きすぎているとは思っておりません。これは民間比較いたしまして大体妥当なものであろうかと思っております。ただ、受田さんの仰せられましたように、この国家公務員給与をどうかすることによってほかを引っぱっていくというような、きよう考え方人事院にはございません。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 人事院が適当と見られているその他の事情という中に、民間給与が最低賃金制をしこうという方向にあることを、これに取り入れられておるかどうか、一つお答え願います。
  144. 淺井清

    淺井説明員 最低賃金制の問題はまだきまっていないのでございますから、これがどのようになるかは、私はわからないのでございます。その他の事情ということは、読んで字のごとくでございます。将来最低賃金制が実施されましたならば、これはまた違ったことになろうかと思います。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 私はその問題は一応おきまして、次に人事院の機構の問題、並びに今回の改正案に伴う附帯決議の問題についてお答えを願いたいと思いますから、総務長官及び人事院総裁おのおのお答えを願いたいと思います。私は今回のこの給与法の改正に伴うて人事院の機構改革が論議され、二十六国会にもこれに関連する法律案が出された、こういういきさつを考えたときに、政府としては、先ほど石橋委員の尋ねられた、公務員制度の根本的な改正をしようという意図を知ることができるのです。今松総務長官は、初めて今回総理府総務長官になられたのでございますが、一次の通常国会政府公務員制度改正案を出すという声明がこの委員会でされていることを御承知でございましょうか。
  146. 今松治郎

    ○今松説明員 この委員会でそういう声明がなされておることをまだ実は存じておりません。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 あなたが先ほど石橋委員の質問に答えられて、自分の言うたことは、そういう声もあるということを言うたのであるというようお答えがあったのでございますが、すでに政府は次期通常国会公務員制度改正案を提出する準備をし、出すであろうということをこの委員会で声明されておるのです。それでその内容についてはまだつまびらかにしておりません。しかしながら、次期通常国会にこの法案を出されるということになるならば、今ある程度の成案が出ていないようでは、これは通常国会に間に合いません。どういう程度のこの公務員制度の改正に対する構想がおありなのでございましょうか、構想だけを伺わしていただきたい。
  148. 今松治郎

    ○今松説明員 率直に申し上げますが、私が引き継ぎを受けました中には、そういうような成案というものの引き継ぎはないのでございます。しかし公務員制度の改正法律案を検討いたしておることは、事務当局の方でありますが、まだ成案の域に達しておらぬ、それが実情でございます。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 成案の域に達していない、まだ揺籃の混とんの中にあるということのようでございます。しかしながらその公務員制度の改革の基準になるものが公務員制度調査会の答申にあることは、御承知でございましょう。その中でどういうものを取り上げるというくらいのあらましの考え方というものはきまっておると思うのです。これはいかがですか。
  150. 今松治郎

    ○今松説明員 公務員法の一部改正法律案というのが前国会に出されまして今継続審議になっております。あの問題は引き続いて御審議を願いたいと思っておりますが、その前に、公務員制度全般にわたる成案を得ました場合には、あれを引っ込めて新しいものを出す、こういうふうな方向と御承知願います。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、第一段階は、この前出した国家公務員法の改正案を一応出すという形式をおとりになるわけですね。
  152. 今松治郎

    ○今松説明員 そうではないのでありまして、通常国会までに公務員法の全面的の改正の法律案を出すことができなければ、今継続審議になっている分をまず先に審議していただきたい、こういうふうな考えでおります。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 そうしたら全面的な改正案は出し得ない場合の話ですね。そうすると非常な大がかりの改正案を今用意されているわけですね。そうしますと、今ある程度の構想くらいはできておらなければ、とてもまだ成案を得るのには期間的に容易でないと思うのですが、いかがでしょう。
  154. 今松治郎

    ○今松説明員 実情はさようでございます。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 政府が非常に大がかりな公務員制度の根本的な改革大法案をお出しになるという今の前提を御説明になったのでございますが、それが出し得ないときに、この前の法案をもう一ぺん出すのだということになりますと、いずれにしても非常にきびしい法案が出されるということは、もうはっきり今のあなたの声明で了解できたのです。  ところが、ここで一つお尋ねしたいのですが、今あなたの配下に公務員制度調査室というのがあるのです。この調査室は人員が十八人しかおらぬ。この十八人の人員で大がかりの法案をお出しになる可能性がございますか。
  156. 今松治郎

    ○今松説明員 現在の公務員制度調査、室の人員はお説の通りであります。今のところ増員を考えましてもなかなか困難でありますので、十八名の人間が一致協力して最善を尽している、こういう次第でございます。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 今公務員給与のバランスの問題についていろいろ論議されているのですが、各省間にまたがる給与というものは非常な不均衡がある。人事院の方におきましても、今級別定数と関連して新しい等級への格付をいろいろ指導しておられるのではございますが、各省がかってなことを言うてくるので、その決定承認を与えるのに非常に苦心しておられる、こういう実情なんです。そういう意味からいっても、各省の職員給与のアンバランスを是正する立場から、今公務員制度調査室が、一般職や特別職にわたるまで広く給与実態を調べてその不均衡を是正しようとするならば、十八人という職員で間に合いますか。
  158. 今松治郎

    ○今松説明員 非常に足りないと思いますが、しかし今のところいたし方がないので、そこで最善を尽している次第でございます。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 その、前国会に出されたものをもう一度お出しになる中には、人事院を廃止するという法案がそのままの形で出ておりますか。
  160. 今松治郎

    ○今松説明員 今受田さんのお話の法律案は、今継続審議になっております。まだひっ込めておりませんから、あの法案のままで御審議を願うことになっております。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 人事院を廃止するという御意見は依然として強く残っておる、こういうことになると思うのでございますが、同時に政府は人事局を置いて、国の公務員の人事を一手にひん握って、政治的な権力を振おうということに結果的にはなると思うのです。これはあなたの配下にある公務員制度調査室が、そういう形の準備をする調査室であるとするならば、私ははなはだ心きびしい機関だと思うのです。むしろ現在日本の置かれておるいろいろな国民の声あるいは経済的な事情というものを考えて、無理のない政治をするというところにあなたの使命があると思うのです。従って膨大な公務員制度の根本的改革というものをなさろうとする、あるいは人事院を廃止されようというそういう考え方をちょっと遠慮されて、むしろ各省間のそうした給与の不均衡等を是正して、公平な立場で職務に精励できるような方向へ公務員を引っぱっていく方が適切、妥当ではないかと思うのですが、今あなたのお考えを是正する用意はございませんですか。
  162. 今松治郎

    ○今松説明員 人事院を廃止するとおっしゃいますが、今出ている法律案を私拝見いたしますと、廃止ではな、い、改組のような工合に思います。それで今お話のような問題につきましては、私も非常に同感でありますから、その点については、しばらく検討さしていただきたいと思います。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 今私が指摘したことには同感だということを感ぜられて、再検討したいという非常に幅のある御発言がありました。この前出された法案では、人事院というものはなくなるのです。国家人事委員会という新しい全く変った性格のものができてくるのです。そういうものは都合によってはまた検討して漸進主義でいくということも考えてもいいという、非常に幅のあるお言葉をいただいて、あなたの御人格に深い敬意を表します。私はとにかくこういうことを考える。この前の法案の審査のときに、大山公務員制度調査室長は、汗だくで疲労こんぱいその極に達して、まさに倒れんとしたのです。それほど苦労しておられます。それほどこの問題はややこしく重大なのです。従ってもう少し国民の声のあるところあるいは日本の経済の事情、政治情勢というものを適切に判断されて、あまり極端な権力濫用主義の法制改革にはならぬよう一つ御努力をお願いしたい。私は今松長官のお答えに非常な敬意を払うとともに、あなたが閣内において十分――あなたは国務大臣をもって当られる重大な責務につかれたのですから、その歴史的なページを開かれたところのお仕事関係一つがんばってもらいたい。  それでもう一つ、ここに総裁と御一緒にお答え願いたいことがあるのです。この前出された人事院勧告政府としてはどういうふうに実施せられようとするか、十二月を基準にしての実施を人事院考えておられるのでございますが、それを待つまでもなく、通勤手当ようなものは即時でも施行される用意があるやに聞いたことが私はあります。この取扱いについて政府はどういう用意をされているかを御答弁願いたいのです。
  164. 今松治郎

    ○今松説明員 七月十六日の人事院勧告につきましては、先ほど石橋さんの御質問にもお答えしましたように、期末手当の問題はこれはできるだけ受け入れたい、こういうことでだいぶ進めております。一方の通勤手当の問題は、御承知のようにこれは初めての制度でありまして、私も心持ちとしては、これはぜひ受け入れてあげたいという気持で一ぱいでございますし、また総理大臣もたびたび人事院勧告はこれは尊重していきたい、こういうことも言っておられますが、これは財政措置が伴いまして、この問題をむげに退けるわけにもいきませんので、今大蔵省方面にその検討を依頼して十分検討中でございます。この二つの問題とも法律の改正を要しますので、直ちにこれを行うことはできませんが、早ければ臨時国会ですが、通常国会に提出したいという目途で今やっております。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 この前の国会給与法の改正案を通過せしめる際に、附帯決議としてわれわれが意思表示をした規定があります。その中に旅費法が従来の実績をこわされるような形になってきたわけです。これは当然下級者の二等運賃をもらっていた人に、三等運賃を支給するような規定になっておる部分について、是正すべきだという附帯決議をわれわれ付しておいたのですが、これは法律改正でなければできないのか、行政的措置でこの附帯決議の精神を生かす道があるのか、政府側の御見解を明らかに願いたい。
  166. 今松治郎

    ○今松説明員 ただいまめ問題、私は実は初めて承わりますが、聞くところによりますと大蔵省の所管であります。一ぺん大蔵省の方にあなたの御質問の旨を伝えまして、また何らかの方法でお答えしたいと思います。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 これはやはり給与に準じたものと見られるものでございますから、この委員会で取り扱った案件は、少くとも給与担当国務大臣として、一括今までやってこられたいきさつもあるのですから、新総務長官において一つあわせ確答が願えるように、今後何か閣内において話をつけていただけませんか。できましょうか。
  168. 今松治郎

    ○今松説明員 一応大蔵大臣と相談をしたいと思います。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ附帯決議の中で重大な問題は、この新しい等級への格づけに対して、ずいぶん公正を期するようにという大きな線があったわけでございますが、実際の取扱いにおいて、各省の要求に公正におこたえになることが困難であるという事情人事院にありましたか。たとえば各省があまりに膨大な数字を持ち込み、あるいはそれぞれの省の特性があまり濃厚過ぎて、実際はこれを承認をするのには困難を来たしたような事態があったのかどうか、こういう等級への格づけに対する人事院の措置について御見解を明らかに願いたい。
  170. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただいまの等級別定数の問題でございますが、これは七月三十一日、人事院といたしましては一応の等級別定数を設定したわけでございますが、この等級別定数を設定いたします場合につきましては、各省と十分相談してやったのでありますが、各省の要求はどうしても自然の成り行きとして、上級の等級別定数の要求が非常に多いのでございます。われわれは等級別定数を設定いたす場合につきましては、給与法改正に伴います予算ということが一応の目安になっおりますし、またあの法律審議の経過において、内閣側から出されました代表官職例というようなものが非常に目安になるわけであります。従いまして人事院といたしましては代表官職というものを人事院規則で定めまして、しかしながらこの国会において御討議の際に出て参りました附帯決議等もございますので、そういう附帯決議の線を入れるとどうなるかというような線も入れまして、実は等級別定数を設定いたしのでございます。しかし法律案通過後、七月三十一日までの期間は非常に短かかった。またこれから出て参りました資料等におきましても、十分われわれが納得して、これの研究を遂げるというほどのものもなかったところもあるのでございます。また御承知のようにこの国会におきまして御審議の経過におきまして、政府提出法律案の行政職俸給表一と二が合体されました結果、あの当時の政府提出法律案の行政職の(二)、すなわち地方出先機関に適用せられまする俸給表の一部が行政職俸給表の(一)に入ってしまったというよう事情もございまして、六等級辺におきましてはこの取扱いに非常に苦慮いたしのでございまするが、われわれは七月三十一日までにどうしても格づけしませんと給与の支払いができないという事情もございますので、一応やりました。しかしながら、問題の残っておるところが相当ございますので、これを各省にもよくお話いたしたのでございますが、なお資料等の提出不十分の上ころ、また人事院として十分研究の尽されていないところ等につきましては、十月ごろにもう一度調整をやる――これは三十三年度の等級別定数を設定することを目途に作業を進めるのでございますが、その一部を事前に実施するという形で、事実上一応今度きめました等級別定数の調整をやろう、かよう考えております。今までのところにおきましても、等級別定数の設定はおおむね附帯決議の線を満たしておると思いますけれども、われわれは等級別定数を設定するまでで、具体的にその範囲でいかに格づけすべきかということは各省の任命権者がおやりになる。その間に多少情理もございますので、それらの事情も十分検討した上でこの調整をいたしたい、そして等級別定数の補正をいたす、かよう考えでございます。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 御説明で、人事院の努力しておられる過程を了承したわけでございますけれども、実際に今お取り扱いになっておられる各省の要求に対して人事院の承認された数字というものは、各省庁を満足させていないものが相当あるわけなんです。まだ発令もしていない省庁もあるようです。こういうように実施期をはるかに過ぎてまだ発令もできないほどこの問題にこじれがあるということは、非常な問題だと思うのでございますが、新等級への格づけに当って、それぞれの省の特性を生かして、たとえば専門職という立場にある人々――所長とか課長とかあるいは課長補佐とかいう職務と同等の仕事をしておられる専門職の人々に対して、それぞれの省庁で独特の名称を持っているところもあるわけでございますが、そういう名称の統一とか、あるいは今度の級別定数決定の際における格づけの取扱いとかいうものについて何かはっきりした線を打ち出しておかないと、禍根があとに残ると思うのです。従って十級を全部新しい四等級へ格づけしたところもあれば、またこれを分散きしたところもあるというような例が幾つもあるわけでございます。人事院としてはこういう各省の要求のうちで筋の通ったものは、その名称の変更とかあるいはその坂扱いの仕方について非常な融通性を持たせるとかいうことによって、従来の給与の実績というものも職務の立場も両方生かすような方法でこの際この禍根を絶つ対策をとられてはどうでしょう。
  172. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただいまお話がありましたように、われわれとしてもやりたいと思っております。先ほどいまだ格づけの終っておらぬ省庁もあるというお話でありますが、われわれの調べておりますところによりますと、大部分の省庁が格づけを一応終っております。まだ二、三残っているところもございます。またただいま仰せのようなところもございますので、その省庁の実態に即応いたしまして――附帯決議にはおおむね個人の属性に着目して給与の取扱いをしろという線があると思いますので、そういう線を調和いたしまして今後調整に当って十分注意いたしてやりたいと思います。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 お昼を過ぎて相当な時間になりましたのでこれで質問を終りたいと思いますが、十月是正で今申しました属人的要素な考慮するというお取扱いになれますか。
  174. 瀧本忠男

    瀧本説明員 重ねて申し上げますが、各省庁の特性を考えまして、表面的な職務の段階だけでなしに、専門的官職でございますればそういうことも十分考慮し、あわせて属人性ということも考慮して考えたいと思っております。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 最後に自治庁に一言……。
  176. 相川勝六

    相川委員長 まだ見えておりません。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 それでは午後に留保しておきます。
  178. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは先ほど途中から出た問題で、立法技術あるいは法律解釈の問題になるかと思いますので、法制局長官にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。それは昨年の憲法調査会法案審議の際問題になったことでありますが、社会党の飛鳥田委員がいわゆる憲法改正案の提案権の問題について長官にお尋ねをしたことがございます。そのときに飛鳥田委員は1法文を読み上げますと、内閣法第五条の問題であったのですが、「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会報告する。」と規定されている。こういった場合「その他」というのはやや内容軽微なものを合ませるのかという論法でお伺いいたしたわけですが、それに対して長官は、そうじゃない、事の軽重は問わないんだ、ただ通常あり得べからざることか、予期せざるような事態か、いずれか発生することもある、そういうような予期できるかできないかという問題があるので「その他」というものを使うのであって、事の軽重は問わない、従って国の基本法たる憲法の改正案などというものもこの「その他」の中でいいんだ、内閣に憲法改正案の提案権があるんだ、こういうお話でございました。ところが、今さっきから国家公務員法六十四条の解釈について人事院総裁にお伺いしておるわけでございますが、この場合長官は憲法調査会法案審議の際に述べられたことと異なる解釈を下しておられるようなんです。それは何かというと、六十四条の、「俸給表は、生計費民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、」とあるこの「その他」という場合には、結局、例示してあるものは重要だけれども、「その他」というのはそんな重要性を持たぬ軽微なものだ――飛鳥田委員の論拠となったような解釈を人事院は持っていられるようなんで、ここのところをお伺いするわけなんですが、どうですか。
  179. 林修三

    ○林説明員 私は別に基本的な矛盾はないと思っておるわけでございまして、内閣にも憲法改正議案の提案権があるかどうかという議論は昨年この委員会で申しましたからここで繰り返しませんが、内閣法第五条の関係だけを申し上げますれば、今お読み上げになりました通りに、条文は「法律案、予算その他の議案」を提案できると書いてあるわけでございます。これは文理的に申せば議案という言葉に疑点があるわけでございます。法律案、予算というものは議案という言葉の例示になっております。「その他の」ということで例示になっております。従って議案であれば内閣は提案ができるということになるわけであります。そこでなぜ憲法改正案というような重要なものをここに掲げなかったかという御疑問が当然出ると思いますが、これは立案の当時においては、そう始終起るものではない、めったに起るものではないという意味で、例示の方に入れず「その他の」という方に含ました、こういうことを御答弁申し上げたと私は記憶しております。「その他」という言葉は議案の例示でございますから、あくまでそれに入り得るということを申したのでございます。それで国家公務員法六十四条二項の問題でございますが、これも今お読み上げになりました通りに、給与の決定の条件として生計費民間給与その他人事院の決定する適当な事情、こうなっている。「その他」というのは、これは文字通りそのほかという意味でございまして、事情は何でもこれは入り得ると私は思います。ただ人事院が適当と認め事情人事院が御決定になりました適当な事情をしんしゃくする、その取捨選択の権限は人事院にあるわけでございます。人事院総裁が「その他」の項は大体補足的なものあるいは従たるものであると言われました趣旨は、これは給与の決定条件としてはあくまで生計費あるいは民間給与というものがおもな決定の因子である。その他のものは実際上補足的なものである、あるいは従的なものである、そういう御趣旨で私は言われたものだろうと思います。文理からいえば「その他」というものは文字通りそのほかという意味でありますから、何でもいかなる事情でも入り得ると思います。ただそれは人事院が取捨する権限を持っておる、かようなことだと思うわけであります。その点別に私は基本的な矛盾はないと思います。
  180. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 内閣法の場合でもその他の議案というものを出す出きぬという採択の権限を持っているのは内閣自体なんです。私は条件は変らないと思う。飛鳥田委員が「何々その他の議案とか、その他の問題とかいう場合には、この「その他」ということの中にはきわめて軽微なものを含ませるというのが常識です。」こういうきめつけ方をされたわけです。そのときにそれに対してあなたは、そうではない、「あくまで前のは例示でありまして、「その他」というのは、これだけにとどまっておらないことは明らかであります。」こういうふうに事の軽重という問題については何ら関係ないということをおっしゃっているわけなんです。今度の公務員法の場合も適当な事情として取捨選択する権限は人事院にありましょうけれども、たとえて申し上げますと、昨年も生計費民間賃金だけではなしに、三公社現業給与あるいは地方公務員給与というものを適当な事情として条件の中に取り上げている。ことしはそれをのけているということは理屈に合わないのじゃないか。この法文からいっても、当然昨年も適当な事情として取り上げられたものであれば、ことしも適当な事情として、かりにそれが均衡を失していないなら失してないでもいいです、一応対比してみる責任があるのではないか、こういうような伺い方をしているわけなんですが、その点両方の解釈の点において矛盾があるように思いますけれども、いかがですか。
  181. 林修三

    ○林説明員 先ほどの内閣法の問題でございますが、私昨年申し上げました通りに、「その他の」というのはあくまで例示であります。例示する場合に、例示の仕方としておもなものを先に掲げて、軽微なものは「その他」で包括する場合もございます。それから経常的な問題を例示に掲げて、臨時的な問題を「その他」で包括する場合もございます。これは立法の仕方としてはいろいろあるわけでございます。しかしどちらを通じましても「その他の」というのはあくまで例示でありますから、憲法改正の議案が議案である以上はここに入り得るんだ、かような趣旨で私はお答えしたわけでございます。  あとの国家公務員法の方でございますが、これは実は人事院の方からお答え願うのが適当かと思いますが、その他そこに考慮に入れるべき条件として何を入れるかという問題は、これは人事院の決定する適当な事情ということになっておりますから、人事院といたしましては適当な事情であれば何でも考慮に入れ得るわけであります。ただその年々によって適当な事情を取捨選択する権限は人事院が持っているわけであります。人事院がことしそういうことを考える必要はない、こう考えられたのだろうと私は思います。別に条文の解釈としては矛盾はないと思っております。
  182. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは私は内閣法第五条だけに限ってお尋ねいたしますが、「その他」とかりに法律に書いてあろうとも、「その他」の中には例示してあるものよりももっと重要なものすら含まれる、たとえば憲法のようなものですね。飛鳥田さんの論法でいけば、憲法のような国の基本法というようなものについては一番まっ先に持っていくべきだ。憲法改正案、法律案、予算案その他とこう書くのが至当じゃないか、こう言った。ところがそれをあなたは否定されている。その他でけっこうだと言っている。だから「その他」というふうに法文で述べられておる場合でも、「その他」だから必ず軽微だというようなことはいえないということは現在でも断言できますね。
  183. 林修三

    ○林説明員 これは主として立法技術の問題になるわけでございまして、先ほど申し上げました通り、いろいろの問題があります場合に、「その他の」ということで全部を列記しないで、ある範囲のものを「その他」ということでくくりまして前のものを例示するということは立法技術上よくやることでございます。その場合に例示にいかなるものをあげるかということは、これまた立法技術上いろいろ考えなければならないことでございますが、今おっしゃいました通りに、最も重要な問題をあげて、比較的軽微なものを「その他」でくくる場合もございます。しかし平生起る問題をそこに掲げて、めったに起らない問題は例示しないで、その他でくくる場合もある。立法技術としては両方ある。内閣法の場合はあとの場合と申したわけでございます。「その他の」という言葉は、文理的にいえば、あくまで例示を意味するわけであります。憲法改正の議案が議案でなければそこに入りません。議案である以上はそこに入ってくる。なぜ例示しなかったかとおっしゃれば、これは臨時的なものである。めったに起らないものをここに書くのは適当でない、そういう配慮からであろうというようお答えしたと思っております。
  184. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 立法技術の面で統一されていない、両方あるんだということになると、これは人事院総裁と私との論議になるわけだ。私どもは、昨年人事院がお認めになった三公社現業職員国家公務員関係地方公務員国家公務員関係、これは昨年とことしと何ら関係に相違はございません。何ら変遷ございません。法律的にもその他いろいろな事情からいってかりに公務員給与と三公社現業職員あるいは地方公務員職員給与とが均衡を失しておらないならおらないという情勢はあろうとも、国家公務員と三公社現業国家公務員地方公務員との関係、この面においては何ら変化がなかったと思うのですが、その点いかがですか。
  185. 淺井清

    淺井説明員 その前に、法理論になるようでございまするけれども、一体法律の中に例示をいたしまする場合に、重要なものを例示し、しからざるものを「その他」の中に合める、こういう場合と、しばしば起ることを例示いたし、まれに起ることを「その他」の中に含める場合と、こう二つあるというのがわれわれの見解であろうかと思っております。法制局長官内閣法の場合は後者であると申しておるのでありまして、私は前者であると申しておるわけであります。これはその法律建前によって申すより仕方がないと思っております。これは法理論と申しまするか立法技術の問題でございます。  それから昨年三公社現業地方公務員比較したのにかかわらず、ことしはなぜ比較しないかと申しますのは、まず手近な技術的な問題から申しますれば、今年は比較すべき適当な、正確な資料を入手することができなかったという技術的な問題もございまするが、人事院といたしましては三公社現業地方公務員比較いたしますることは例外であって、やはり民間企業と比較するのが第一であるという従来の建前に返ってやっていくんだ。昨年比較いたした場合も、それは参考にいたしたのみでありまして、実際のキイ・ポイントと申すのは民間給与国家公務員給与との比較差だ、かようにきいぜんからしばしばお答えを申しているわけであります。
  186. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この間の国会におきまして、松浦給与担当大臣に、三公社現業職員公務員関係をお伺いしているんですが、その答弁として大臣はこういうことを言っております。「三公社現業の方々に声明いたしましたように、仲裁裁定が行われましたならば誠意を持ってこれを尊重するという建前政府はとっておりますので、どういう数字が現われますか知りませんけれども、これは誠意を持って尊重する。その場合にさらに従来よりも較差のはなはだしくなったというような場合、あるいは民間給与との間において官公労の方が低くなったというような場合には、将来とも人事院がさらにいろいろと御調査の上に政府勧告されることと思いますから、それは尊重いたしたいと思っております。」受け入れ側の政府はちゃんと三公社現業との較差が開くかもしれぬ、それは人事院が調査して、そしてその結果に基いて勧告するだろうと待っているのに、肝心な人事院の方は最初からのけてしまう、こういうことではちょっとおかしいのじゃないかと思いますが、私としてはどうしても納得いきません。この点さらに、昨年がなぜそれでは例外であったのか、昨年は勘案したのか、例外だという理由はどこにあるのか、もう少し説明して下さい。
  187. 淺井清

    淺井説明員 この点はすでにしばしば申し述べましたが、だんだん三公社現業との較差が開いているものとの判断に立ちまして、昨年はこれに論及をいたしました。しかし昨年といえども対象となっているものは、やはり民間給与との比較でございます。これによって人事院勧告いたしておるのでありまして、もちろん特別手当のことはこれは例外でございまするが、それ以外につきましては、ただ参考として申したのにすぎないのでございますから、本年度におきましては、本来の建前にかえって民間給与との比較をやった、それ以上はちょっとお答えをいたしかねます。
  188. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 時間がありませんから結論だけ申し上げますが、私は例外というよう言葉は当てはまらないと思う。結局、先ほど受田委員もおっしゃっているように、あまりにもいろいろと政治的な考慮その他を人事院が払い過ぎる。中立性をみずからそこないつつある。これは人事院の存廃論とからんでいるかどうか知りません。しかしあまりにも自主性がなさ過ぎる。権威がなき過ぎる。公務員の期待するものと大きな開きがあるというような感じしか持てない。昨年も民間との比較とおっしゃったけれども、しかしその中でも、はっきり地方公務員との比較は、相当開いているということも言っておる。三公社現業との開き認めている。しかも特別手当のごときは、完全に三公社現業との均衡を保つことだけをうたって〇・一五の増額勧告している。非常に重要な要素を三公社現業職員公務員関係というものは持ってきている。昨年の場合は……。ことしはそれには一片だに触れておらない。私が自主性がない、勧告の妥当でない理由というのは、そういうところにもあるということを申しているのです。  時間がありませんから、以上で終ります。
  189. 相川勝六

    相川委員長 午後二時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時十九分開議
  190. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  午後は国の防衛に関する件について質疑を行います。この際防衛政務次官より発言を求められておりますのでこれを許します。小山政務次官。
  191. 小山長規

    小山(長)説明員 小山でございます。今度防衛庁の政務次官を拝命いたしたのでありますが、内閣委員会の皆様方にはあらゆる面においていろいろ御厄介に相なります。よろしくお願い申し上げますとともに、防衛庁に関しましていろいろな御連絡等がございましたならば、私の方にお申しつけをお願いいたしたいと思います。
  192. 相川勝六

    相川委員 これより質疑を許します。稻村隆一君。
  193. 稻村隆一

    ○稻村委員 防衛庁長官に御質問申し上げたいのですが、首相渡米の際の日米共同声明によれば、日米合同委員会を新たに設置することになったわけです。出席する者は日本側外務大臣、防衛庁長官、米側は大使、極東軍司令官ということになっております。そこで在日米軍の配備及び使用について協議することになっておりますが、米側から軍機保護法のようなものを制定してくれということを必然に要求されると思うのですが、その点いかがでしょうか。
  194. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この日米安保委員会は第一回の会合を開いたばかりでございます。その機会において、何らそういった問題に触れたことはございません。そういった問題が出るということは、今のところはまだ何ら意思表示はございません。従って現状においてはこうであるということを申し上げるわけでございます。
  195. 稻村隆一

    ○稻村委員 七月三十日の毎日新聞その他によれば、七月二十九日の長官出席の自衛隊幹部会で、新たに軍機保護法のようなものを通常国会に提出することに決定した、こういうことが出ておりましたが、これはどうなんですか。
  196. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。ただいまの新聞記事は私はまだ見ておりません。どういう内容であったか、ただいまの仰せによれば、幹部会において長官が訓示または……(稻村委員「長官出席の自衛隊幹部会」と呼ぶ)それは七月二十九日にあったものと思います。その機会においては、機密保護法に関したことは、私としては一言も触れたことはございません。
  197. 稻村隆一

    ○稻村委員 岸首相はきのう、いずれ軍機保護法のようなものを提出しなければならない、こういうふうなことを申されたようですが、長官の考えはいかがです。
  198. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。防衛庁の立場から申しますと、防衛上必要な程度においての機密保護法というものの必要を感じておるのでございます。しかしながら、この問題はその及ぼすところが相当大きい問題でございまして、検討は続けておりますが、まだ最終結論には達しておりません。この点においては、昨日総理のお答えの中にあったと同様な見解を持っております。
  199. 稻村隆一

    ○稻村委員 近い機会にいつかは提出するという意向ですか、いかがなんでしょう。きのう総理もそういうふうな御答弁のようでしたが……。
  200. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。昨日の総理の答弁は、近い機会に提出するということをはっきり言ったように私は記憶いたしません。これは速記録についてごらん願いたいと思います。しかしその必要はある。しかしながらこの問題は政治上においても相当重大であるから十分検討いたしたい、こういうような意味であったと承知しております。
  201. 稻村隆一

    ○稻村委員 わかりました。  そこで私から申し上げたいのですが、現憲法では言論の自由その他基本的人権は、法律をもっては制限できな政府の人々はいろいろ憲法を軽視するいことになっております。どうも今の傾向がある。憲法を軽視したら、これは重大な問題なんですが、そういうことを考慮して提出の時期をはっきり言えないのですか。憲法を改正しなければ、改正した後でなければ軍機保護法は提出できないとしうお考えですか、どうですか。
  202. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいま慎重考慮中であるという意味は、機密保護法が憲法に違反するのであるかどうかという点にあるわけではございません。御承知のように、昭和二十九年にすでに秘密保護法が制定されておるわけであります。米国との間の軍事援助法に基く資材等に関した秘密保護法というものは、もうすでに制定実施されておるわけでございます。これは必ずしも憲法違反であるというようには私ども考えておりません。内容いかんということにかかる問題だと思っております。
  203. 稻村隆一

    ○稻村委員 この軍旗保護法というようなものは、言論を制限するようになるのだから憲法違反ですよ。基本的人権を制限するのたから。ストライキ禁止なんかでも実はほんとうは憲法違反なんです。だけれども公共の福祉云々ということによって公務員のストライキは禁止する、こういうことを言っておる。現憲法に違反してないと言っておる。しかしこれは一つの三百代言的理論なんです。ところが軍機保護法になると公務員のストライキとだいぶ違うと思うので、これは明瞭に憲法からいって基本的人権を制限することになるのです。憲法に違反するのです。だから現憲法のあるうちは、軍機保護法というような言論の自由を制限するものは出せないはずなんです。そのくらいなことは大臣わかるでしょう。だからして政治上その他を考慮して出さないということは、憲法上の問題を考慮しておられるだろうと思うのだ。もし憲法上の問題を考慮されないで、憲法違反でない、軍機保護法も憲法違反でない、出せるというふうなことを考えておるならば、これは全くあなた方明治憲法時代に育った人が、人民主権の憲法の何たるかを知らないで、そうしてこれを無視して行動しようとしておるのだと私は思うのだ。これはできません。憲法を改正しなければできないでしょう。そうじゃないですか。これは絶対です。その点どういうお考えですか。
  204. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。ただいまの御所見とくと検討いたします。その内容いかんということにもかかるかと思います。今日まですでに実行されておる秘密保護法においても、公共の福祉ということのためにああいう法律が制定されたものだと思っております。従ってただいまの御所見は御所見としてよく拝聴いたしておきます。
  205. 稻村隆一

    ○稻村委員 これ以上私は申しませんが、いつごろ出すくらいなことは言えないことはないでしょう。近いうちに出すのですか。それとも憲法を改正してからですか。いつかわからないのですか、まだはっきりしていないのですか、当分は出す意向はないのですな、この点を承わっておきたい。
  206. 津島壽一

    ○津島国務大臣 重ねて申しますが、この問題は重大であるから慎重に検討中である。いつ提出するかということそれ自体も検討中の問題でございます。
  207. 稻村隆一

    ○稻村委員 これはこのくらいにしておきたいと思いますが、あと簡単に二、三のことについてお聞きしたいと思っております。  アメリカ軍の撤退によって三カ年計画で自衛隊全体の強化をはかることになっておるようです。大体来年度の自衛隊の増強の予算はどのくらいでしょう。
  208. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。防衛整備計画に基いてただいま防衛庁では来年度の整備計画について検討し、一応の内定したものはございます。しかしながらこれは予算も関連を持つものでございます。その意味においてはまださらに検討を加える必要があると思うのでございます。しかしただいままでに検討した結果として、予算の要求そのものではございませんが、いわゆる業務計画というもので関係部局において検討を遂げておるものでございます。その概要を数字でございますから、メモについてちょっと申し上げます。  先ほど申しました趣旨におけるいわゆる三十三年度の業務計画でございます。陸につきましては自衛隊員を一万人増加したい。その内容と申しますか、編成でございますが、混成団を一、空挺団を一、これは新設でございます。特科大隊を一増加する。なお地区施設隊五を増置したい、こういう編成でございます。  次に海上自衛隊でございますが、これにつきましては警備艦千八百トン型を二隻、また駆潜艇四百三十トン型二隻、掃海艇、これも中型でございますが四隻、最後に救命艇四隻を建造したいという計画を持っております。なお船につきましては、現在保有いたしておりますLSSL、これは警備艦でございますが、アメリカから借り入れておるものでございます。四十五隻ございますが、そのうちの二十二隻は来年の二月に返還したい。一月に返還の期限が来るわけでございます。なお二十二隻以外の残余については、一年ないし二年の期限の延長、また警備艦のうちのPF型十八隻、これについてはさらに数年間の期間の延長を交渉したい、こういうのが艦船に関するものでございます。  最後に航空自衛隊の関係であります。航空自衛隊につきましては、航空総司令部のもとに北部、中部の方面隊司令部というものを設ける、なお西部には司令所というものを設ける、こういう計画でございます。これと同時に独立航空隊を二つ設けるというのでございます。なおこまかい点を申しますと、新隊員の教育のために教育隊というものを設ける以外に、各種専門的の業務に従事する者を養成するために、業務学校というものを設ける、こういうことにいたしております。これは隊の関係でございます。  そこで航空機の保有の問題でございますが、三十三年度末においては既定計画に基くものとあわせて、大体九百七十機ないし八十機を保有する予定になるというのでございます。  大体以上によって御了承願います。
  209. 稻村隆一

    ○稻村委員 予算はどのくらいの金になるのですか。
  210. 津島壽一

    ○津島国務大臣 予算についてはこれから防衛庁としてむこれらの計画実行に対する経費の算定をいたすことになっておりまして、今月末ころにならないと計数そのものは十分的確なるめどがつかぬと思います。しかしいずれにしましても国力、国情に応じて予算の計数を算出するという建前をもって、十分なる考慮を加えて、妥当なる予算要求をいたしたい、こう考えている次第でございます。
  211. 稻村隆一

    ○稻村委員 アメリカ地上軍が帰ると、防衛分担金は減るはずですね。それはどのくらいですか。それから減った分は倍額にして自衛隊で使うことになっているのだが、その点はどうなっていますか、この二点についてお聞きしたいと思います。
  212. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。防衛分担金の算出の方式は、昨年五月決定したものを本年度にも適用しておるわけでございます。これはもう御承知の通りでございます。米地上軍がどの程度この年度に撤退するかということについての具体的の計数はまだ出ておらぬわけでございます。そこで防衛分担金というものをどの程度に上げるか、これは予算編成のときに具体的な交渉に入る問題でございまして、今日までのところこの問題について米側とは全然話し合っておりません。従って従来の方式がいいか、また米軍の撤退の時期、人数等によっては何らか適当なる新しい方式を作るのがいいかという問題がおのずから出てくると思います。いずれにいたしましても、 こういった時代においてわが方といたしましては十分検討を加えて誤まりなきを期したい、こう存じておる次第で、今日の場合こうやるのだという具体的のことを申し上げるのはまだちょっと時期が早いかと思います。どうぞ御了承願います。
  213. 相川勝六

    相川委員長 辻政信君。
  214. 辻政信

    ○辻委員 防衛庁長官にお伺いいたします。御新任間もないことでありますから、こまかい数字がございましたら、それは関係幕僚に答弁さしていただいてけっこうでございますから、根本問題は長官からお答えを願いたいと思います。  きのうの内閣委員会におきまして、私は総理大臣にお伺いしたのは、八月十六日の参議院において、核兵器を持たなくて負けても仕方がないということを一国の総理大臣が言明されておる。これは大へんな言明でありまして、あなたは防衛庁長官としてその総理の言明というものが自衛隊を統率される上において、ことに自衛隊の士気を維持される上において非常にお困りだろうと思いますが、その点について率直な御意見を承わりたいのであります。
  215. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問でございますが、参議院の内閣委員会において、岸総理が質問応答の経過において、核兵器は持たぬ、持たないために負けても仕方がないといったような発言があったように私も記憶するのでございます。しかしその部分だけをとって、全体の問題を見ないということもいかがかと存ずる。総理は国防会議を作られ、また国防会議において防衛計画を立てられて、また米国にわざわざお出かけになって、あれだけ日本の自衛隊の自主性というか、防衛の自主性を強調されておるわけです。これは私は自衛隊にとっては非常に大きな士気を上げておるものと思うのでございます。防衛庁長官といたしましては、そういった片言隻句がどうであるということを論ずる場合でないと思っております。私は新任以来自衛隊に対してこういう重大な局面であるから大いに士気を鼓舞して防衛の責任を全うして、誤まりなきを期してくれということを随時随所に申しております。私はそう  いった意味において、これらのために自衛隊の士気がどうだということは、今まで接触した部面においては、何らそういったような印象を受けたことはございません。この点はどうぞ御安心願いたいと思います。
  216. 辻政信

    ○辻委員 スイスのエリコン会社から誘導弾をお買い求めになって、御研究なさるはずでありますが、あのスイスから買ってこられる誘導弾というものは、一体どういう武器で、何を目的にして御研究になるのですか。
  217. 津島壽一

    ○津島国務大臣 スイスから買い求めます誘導兵器は、エリコンということになっております。これは近く到着するという予定でございます。誘導兵器の研究ということは、いわゆる技研においても、今日はもう誘導兵器部という部も置きまして、過去何年かにわたって非常に研究いたしております。従って、そういった現物そのものが来なくても、非常に研究は進捗しておるように私は見ておるのでございます。しかしながら、何分にも実際のものについてこれを解体し、あらゆる方面からこれを検討していくというようなことは必要であろうという意味から、このエリコン――これには非常にむずかしい機密的な点がないように承わっています。私はこのことをきめたときの当事者ではございませんから、その後の報告によってそう承知しておるわけでございます。これはわが方の誘導兵器の研究において、私は大きなプラスになるものだと思っておるわけです。  何を目的にするかという、軍事専門家であられる辻先生の御質問の意味がどこにあるかということは、なかなか捕捉しがたいので、あるいは専門家からこういう点であるということをお答えした方が適当であると思うのでございます。
  218. 辻政信

    ○辻委員 敵が核兵器を装備した、いわゆる原子力を持った誘導弾で日本を侵す場合に、これを防ぐのはやはり原子力を持った地上からの誘導弾以外にないと私は信じております。そういう意味におきまして、防衛庁も誘導弾の研究に着手なさったんだろうと思うのであります。そうすると、研究するということは持つことを前提としての研究である。核兵器は一切持たないという総理大臣の言明であるならば、なぜエリコンから核兵器を持つことを建前としたものを買ってきて研究なさる必要があるのか。それに相当な金をお使いになっておる。この矛盾はございませんか。
  219. 津島壽一

    ○津島国務大臣 専門家でないものでございますから、お答えにおいてあるいは不十分だったら、補足的に担当官からお答えいたさせます。このエリコンの研究は、地上から空中に対する襲撃、攻撃を防御するという目的であります。エリコン自体が核兵器かどうかという問題は、これは誘導兵器であって、これにいわゆる原子弾頭というか、そういったような核兵器を装備することの必要ない防御兵器でございます。その意味において、核兵器は持ち込まないとか使用しないとかいう方針と、ニリコンの研究とが矛盾するかどうかということは、この兵器の効用がどういうものであるかということにかかると思います。その意味においては、従来総理がたびたび御発言になりました方針矛盾することなく、この兵器の研究ができ得るものと私は思っておるのでございます。
  220. 辻政信

    ○辻委員 私どもが心配しておるのは、直接防衛で一番危険なのはいわゆる原子力による、核兵器による攻撃であります。直接防衛をやろうという自衛隊が、相手が核兵器を持って侵略してくる場合に、こちらは核兵器を持たずに対抗できるとあなたはお考えになりますか。
  221. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。これはいわゆる戦略の問題でございます。これは全体に通じて原水爆といったようなものもございます。そういうものに共通した問題であろうと思うのでございますが、日本の防衛というものは自衛体制、国を守る体制である。しかして、同時に、今日は自分の国を自分一国で守るという体制は、いかなる国もないと思います一。そこに国連の集団保障であるとか、また現在においては日米安全保障という体制もあるわけです。でありますから、いかなる国も、そういったことを考慮に入れて、国力の許す範囲において最善を尽すという以外に私は方法がないと思うのです。原水爆があるから日本はすぐ原水爆、またもっといいものが出るというようなことで一々これをやっていくということは、国力が許されず、また国民の意思はそこにないと私は思うのでございます。従って、用兵作戦の上において最小限度に必要あり、またいわゆる集団安全保障体制がここにどの程度考えられるかということも考慮すべき問題であろうと思うのでございます。
  222. 辻政信

    ○辻委員 日本の自衛隊は核兵器は持たない。核の侵略のあった場合には、日米共同防衛で、アメリカが核兵器をもって防いでくれるものと了解してよろしゅうございますか。
  223. 津島壽一

    ○津島国務大臣 まず第一に、自分の国は自分で守るという精神を持たなくちゃなりません。その意味においては、われわれは極力今の自分の防衛体制によって守っていく。その情勢によってこれがどういうことになるか、その個々の場合に起ることだろうと思っております。
  224. 辻政信

    ○辻委員 鉄砲だまが飛んでくるのは刀じゃ防ぐわけにいかない。だから、日本は刀しか持っていないなら、鉄砲を持ってきたのには鉄砲を持って防いでもらうということになる。日米共同防衛という建前から申しますれば、核兵器の直接侵略に対しては、日本の自衛隊は持たぬのですから、持っているアメリカが守ってくれるという保証がない限り、あなたは国を守るという責任を果せないはずであります。それかおありかどうかと聞いている、端的に……。
  225. 津島壽一

    ○津島国務大臣 そういった緊急の事態が起こった場合に、日本は自分の防備について最善を尽す。それ以上のことはそのときの事情、国際情勢によるものである、こういうことになるかと思うのであります。これはすべての国の共通的なことであろうと思うのでございます。
  226. 辻政信

    ○辻委員 そういう事件が起ってから考えたんではいけないんですね。国の一防衛というものは、起る前から、お互いに計画し協調しておかぬというと、ほんとうの間に合わないわけであります。そこで国防基本方針の第四項に、国際連合が十分その機能を果すまでは、日米安保条約を基調として日本の防衛に当るというわけですが、兵器の面においても兵力量の面におきましても、アメリカとの軍事協定というものがない限り、われわれとしては安心して防衛をあなたにおまかせすることはできないはずです。その点について、昨日の委員会で、防衛協定はないとおっしゃっている。防衛協定はない、起ったら相談するんだということで、あなたは防衛の最高責任者としてやっていけるとお考えになるかどうか。
  227. 津島壽一

    ○津島国務大臣 昨日、日米間に防衛の協定があるかという御質問に対して、総理のそういったものはないという趣旨は、形式上の協定という、そういったまとまった形においてのものはないんだ、こういう趣旨にとどまっておると思います。しかしながら、日米間には、そういったことに対処する場合については、ふだん密接なる連絡はあるわけであります。それが協定という形であるかどうかということは、これは総理が言ったように、そういった形にはなっておらぬ、こう私は承知いたしておる次第でございます。
  228. 辻政信

    ○辻委員 書いたものはないが、実質的には顧問団その他を通じて了解はできておると、了解してよろしゅうございますか。
  229. 津島壽一

    ○津島国務大臣 幕僚間においてそういった話し合いはしょっちゅうやっておる、こういう趣旨でございます。
  230. 辻政信

    ○辻委員 岸さんが持っていかれた兵力量、陸上十八万、海上十二万四千、空中は千三百機、この防衛目標はアメリカの国防当局は歓迎したと、共同声明に載っておるのですね。歓迎したということは、アメリカの極東戦略にマッチしておる、だから歓迎されたんだと思う。そういうことから言えば、協定はないなんということは、これは国会をごまかすものだ。協定がなくして目標が立つ道理はありません。ほんとうにあるのかないのか。また口約束とかあるいは幕僚相互の以心伝心でそういう格好ができたということは無責任きわまると思う。こういう重大問題に対してそれで責任が負えるかどうか、私はこれはあるのが当然だと思う。発表できないならできないとおっしゃってけっこうです。あるかないかということは、ないとは言わきない。ないということは非常識である、無責任である。発表するせぬは別問題である。
  231. 津島壽一

    ○津島国務大臣 私はそういう協定のあることは承知いたしておりません。
  232. 辻政信

    ○辻委員 書いたものはないが、お互いに以心伝心でつき合っておるからある、了解があると先ほど述べられております。それもないのですか。
  233. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは日米安保条約等の規定から了解し得るところだと思うのです。協定が別個にあるか、こうおっしゃれば、そういうものはございません、こう言うほかはないわけでございます。
  234. 辻政信

    ○辻委員 形式的に書いたものはないが、実質的に了解はある、これでいいんですね。
  235. 津島壽一

    ○津島国務大臣 そういった了解はあるものと私は信じております。
  236. 辻政信

    ○辻委員 あるのが当然であります。なかったら無責任きわまる。そこで次の問題は、陸上十八万、海上十二万四千トン、航空千三百機というものは、数年前から言い古された言葉なんでありますが、これはその了解に基いてできた兵力量であるかどうか。それとも日本が独自の意見で修正できるものであるか、この点いかがですか。
  237. 津島壽一

    ○津島国務大臣 こめ防衛整備計画は、日本側で防衛会議において自主的に作定したものでございます。これの内容、いわゆる最終目標を岸総理が米国に持って行った、こういう事実はございます。これを先方は歓迎した、こういうことに相なっておるわけでございます。
  238. 辻政信

    ○辻委員 そうすると、自主的にきめたのならば、変更する必要があった場合には、アメリカの了解を得ずに自主的にその目標を変更してよろしゅうございますか。
  239. 津島壽一

    ○津島国務大臣 事態の重大な変化があった場合は、この整備計画も変更することがあることは、おのずから含まれておるわけであります。その場合に、まず先にアメリカの了解をとりつけるかどうかという問題であります。これもやはり自主的にきめるべき問題である。しかしながら、これはまだそういった事態が起ったわけではないのでありまして、そういうような含みを持って絶対に変えられないということは、あの防衛計画の中にはないと思います。
  240. 辻政信

    ○辻委員 アメリカの了解を得る前にまず党の了解を得てもらいたいと私は思う。実はあの目標については党内に異論がある。それをほとんどやらずにアメリカの了解ということは私は解せない。あくまで自主的に独立的にやるならば、ほんとうに日本の国情に合うた防衛をやらなければならぬのですが、私は現在の整備目標を見て非常に残念に思うことがあるのです。それはせんだってあなたの方から資料を出させたのですから、御存じでしょうが、アメリカの五八会計年度における陸海空の予算の配分を参考のために申し上げてみますと、陸軍が九十一億三千百万ドル、海軍が百三億九千四百万ドル、空軍は百四十七億七千二百万ドル、こうなっておる。空軍は陸軍の二倍近くまで充実しておるわけです。これに対してイギリスはどうか。イギリスの予算は、陸軍は四億四千五百万ポンド、海軍は三億一千六百万ポンド、空軍は五億六百万ポンド、これも陸海よりも空がはるかに充実されておる。その他近代防衛を持っておる国はどこの国を見ましてもみな大体そういう方向をたどっておるときに、日本の防衛予算を見ますと、これは三十二年度の実行見込み額でありますが、陸上が五百五十六億、海上が二…百九十九億、航空が三百三十四億、こういうふうになっておるわけです。近代的な自主的な防衛というものは、どこの国を見ましても、陸海をきいて空に重点がいっているときに、日本だけが陸に重点を向けて十七万を十八万にふやさなければならぬ客観的な条件は何もないと私は思う。それよりもあなたが就任なさってお願いしたいことは、この空軍のひんぱんとして起って参ります航空事故の根本か検討いたしますと、経費の不足であります。設備の不良、給与の不良、その他、これを今年あなたの手で是正をしていただきたい。これが防衛庁の業務計画の優先第一じゃなかろうかと思う。これだけにどのくらいの予算がいるのか、それはほんとうに出せるのか、もしその余裕がないのに陸上を一万ふやすことによって経常費だけでも五十億円くらいふえるのですが、今十七万を十八万にしなければならぬという条件はない。しかし航空事故をなくするということ、これは明日の人命に影響している焦眉の問題なんです。そういうことから考えて、あえてあなたが来年度の業務計画で陸上を一万ふやさなければならぬという根拠があるならばお聞かせ願いたい。あるいはこれを十七万にするとアメリカにしかられるからできないというならできないとはっきり言ってもらいたい。
  241. 津島壽一

    ○津島国務大臣 防衛整備計画は御承知のように何年というか、長い期間かかって慎重に検討した結果でございます。現在の状況においてこの基本計画を変えるということは考えておりません。  そこで問題は、ただいまのように年次の関係において陸をどうするとか、海をどうするとか――空を含んででございましょうが、今の御所見の中の航空事故の防止といった問題は、私としては最も重大視している問題でございます。ですから、この陸の増員はこれを捨てていいじゃないかという直接の因果関係はどうもわからぬのであります。航空事故の防止ということにつきましては、私は就任以来非常に重点を置いて参りました。従って七月、八月にかけて長い間事故の原因を徹底的に調査し、それによっていかなる対策が必要かという問題もしきいに検討いたしました。このためには来年度予算においては相当重点を置いていきたいという考えを持っております。そういう意味において今後の予算要求の検討をいたしたいという考えでおります。その点においては全く御同感でございます。
  242. 辻政信

    ○辻委員 そうすると予算のワクが締められてあまりふえないというときには、陸をふやすというのと航空事故撲滅対策と、その予算の取扱いはどっちを優先的におやりなさるつもりか、両方とも出る場合は別です、出ない場合はどうです。
  243. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この問題はしばらく時をかしていただきたいのです。まだそういった基本計画が出てきたばかりでありまして、今の問題は予算技術の問題もあると思います。今こうやるというところは、実は私どもまだ予算の計数を見ておりませんので、しばらくこの問題に対するお答えは時をいただきたいと思います。
  244. 辻政信

    ○辻委員 それではしばらく待つことにしまして、やや具体的な問題をお伺いしますから、これは幕僚でけっこうでございますが、聞いておいていただきたい。私は昨年ジェット機に乗ってみまして、東京から九州を往復したのですが、長官はお年寄りですから乗って下さいとは言いませんが、それだけに乗った者の体験は一つ謹聴していただきたいと思うのであります。  ジェット機の故障が起った一番大きな原因はどこにあるだろうかということを検討いたしますと、どうしても飛行場の設備が悪い、T33もしくはF86で滑走路の長さはどのくらいあったらいいとお考えになるか。
  245. 加藤陽三

    ○加藤説明員 約九千フィートと考えております。
  246. 辻政信

    ○辻委員 ところで専門家が検閲をした結果を私ちょっと聞いたのですが、一万フィートほしいというのです。あなたは九千フィートと言われるが、そこにそれだけの差が出てくるのです。学問的にいえば九千フィートでいいのだが、未熟な者が離着陸しますとどうしても滑走路に一割の余裕がほしいがそれができていない。もう一つはできますならば浜松あたりには不測の場合を考えていわゆる滑走路と同じような長きを持った誘導路がほしいが、これもできておらない。もう一つは舗装がまずい。芝生がないためにプロペラにほこりがつきまして、エンジンに入りまして、これが命数を短縮すると同時に事故を起す原因になっておる。そこであの滑走路の舗装をよくしろ、芝年を植えろ、そうして延長を十分とって安心をして飛べるようにしてくれということを私は昨年からくどく言っておりますが、それが少しも予算面に現われておらないように思いますから、どうぞことしの予算では新長官はその点に特に重点を置いてもらいたい。  その次にやや具体的になってなんですが、予算編成の前に言うておかぬと出てからでは何にもなりませんので、御参考までに申し上げておきますが、航空加俸、あの苦しみ、一番きたない話ですが、一度乗ってくると尿が血のように赤くなる。そうして三時間たって、あそこのジョンソン基地におりて参りますと、腰がふらふらになってすわりたくなる。そのくらい強度の疲労を隊員に課しておるのです。私のからだではとても連続やれません。ところがそれに対して航空加俸はどうだ。現、在は本俸の五〇%となっておりますが、それに税金がかけられて四〇%程度になっておる。これはどうか。それから航空団司令、同副司令、防衛部長、こういう者にはほとんどない。四十をこした指揮官が先頭で飛んでおる。そうして若い者の士気を維持しなければならぬのに、その指揮官には航空加俸というものは――これは日雇いのようにたしか日額で割り当てられておるようであります。こういうことはどうだ。それから航空加食はどうだ。私が昨年飛んだときには一日百二十円ですよ。百二十円で三食、津島さん食ってごらんなきい、どんなものが食えるか。そうしてあれだけの激動をやるのです。そこでどうしてもいかぬというので、ようやく二百七円に上げてもらったが、これで事足れりとしてはいけません。少くともこれらの人に三千五百カロリーくらいのものをやるためには最小限どう見ても二百五十円くらい要る。これはぜいたくではありません。石炭をたかぬで汽車を走らせることはできません。そういうことも本気になって防衛庁の内局においては大蔵省と折衝なきらなければどうしてもいけない。  それから死んだ場合の遺族補償というものを考えてごらんなきい。これは死んだ者はだれでも同じじゃないかと言われるかもしれませんが、ジェット機の操縦というものは、万全を期してしかも事故の起る仕事で、ほかの仕事にはないのです。これを考えてみますと、恩給年限に達してなくても、恩給といいますか扶助料というものをもらえるような措置をとることは、遺族に対しての長官としての心づかいではないかと思います。昔はどうかといいますと、少尉の月給が八十円のときになくなった者に対しては一万円です。今のベースでいうと大体四、五百万円であります。階級の差にかかわらずこれだけのものがやられておったが、現在ではなくなると千日分の日当が遺族にやられておるだけなんであります。こういうことも階級を区別しないで、階級を超越して航空事故で殉職した者に対しては少くとも昔に劣らぬあたたかい気持で一つ手当を考えてもらいたい。  それから基地の中に居住しておる者が現在は一人当り二坪という宿舎であります。極端にいいますと築城のあの居住設備なんというものは捕虜収容所みたいなものです。寝台がぎっしり詰まつておって、そうしてトタンのバラックに住んでおる。夏は百度を越すが扇風機一つない。冬は寒いが石炭あるいは木炭の支給が足りない。ふろへもろくに入れない。こういうことであの激動をやらされておる。あの実情を私は見てきたから言うのですが、こういうことを根本的にやらないで、ただ口先だけで士気を上げる、上げろと言ってもやれる道理はない。あなたは経済人です。あれだけ苦労している者に対して、どうか長官はほんとうに自分のむすこをジェット機に乗せているような気持で、あの人たちのめんどうを見、遺族のめんどうを見、また若い者を疲らせぬように親心を持っていただきたい。これだけは今度は一つ文句を言わせぬように徹底的に予算をおとりになることをお願いしておきます。  それから営外者に対する改善にしましても、これはひどい。朝早く出て夜おそく帰るのに、自転車に乗って、くたくたになって操縦士が一里、二里離れたところに通っておる。あれに対して一台の専用バスを出すことができないか、それさえ講じられていない。官舎はどうか、官舎は果して優先的に当てがわれておるかどうか。旅費はどうだ、旅費は家内を連れて転任することができない。一回だけはできても二回目はできない。そこで少い給料のうちから自腹を切って女房子供を連れていって、六畳の民家を借りておる。その家族が毎朝外へ出て、お父さんが乗っているジェット機を見ながら拝んでおる。こういう状況でどうしてあなた命がけで重労働をやれるとお考えになるか。そういうことが幾多あるにかかわらず実行しようとしない。この前の長官にもやかましく言ったが、実行されておりません。私は津島長官はその点については最も有力な閣僚だと思います。どうかあなたのむすこをあの自衛隊に入れておるのだというお気持でやっていただきたい。彼らは給与のことは一言も言いません。私が回ったときも増してくれということは一言も言っていない。ただ私がこの目で見てきてかわいそうだから増してくれと言っておる。これを真剣に取り上げなかったら、幾ら千三百機増したところでろくなものができる道理がない。窓口を広げるよりも奥行を広げなさい。飛行機の機数は練習するに足る機数でたくさんなんです。人間を作ることが航空自衛隊の充実の根本原因です。その点を一つ画期的に責任を持って解決していただかなければならぬと思いますが、いかがですか。
  247. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいま辻委員からいろいろ適切な示唆をいただきました。私も最近浜松に参りまして所在部隊の現状を視察いたしました。ただいまおっしゃった点についてはまことに共感するものがあるのであります。就任以来この航空事故防止のためのいろいろな施策のうち特に操縦士の環境待遇といった問題については非常に関心を持ち、心を痛めておるわけでございます。今後の施策において十分にその気持を現わすように努めたいと思いますので御了承願います。
  248. 相川勝六

    相川委員長 ちょっと委員長として……。ただいまの辻委員の御意見には私も満幅の賛成でございます。委員長も先般浜松の航空隊を見まして、全く辻委員の言われることに非常な賛成でございます。委員長からも一つ今の辻委員の希望を大臣が実現するために満幅の努力を傾けられんことを要望いたします。
  249. 辻政信

    ○辻委員 これは私一個の意見ではございません。社会党の諸君もこの点については異存がないはずであります。作る作らぬの問題ではないのであります。内閣委員長みずから言っておるのですから、今度の予算でそれが出ていなかったら、与党も通さないだろう、それだけの決意を持っておりますから、この点はどうか……。今日まで国会では言葉限りでは言うが、速記録を見てその通り実行していない。どの国会でも同じことをしゃべらなければならぬ。そういうことがないように特にお願いしたいと思います。  次は津島きんの専門の事項に入って防衛生産の問題でございますが、F100とF104といずれを整備するかということで、現在アメリカに視察団をやっていらっしゃいますが、視察団の報告を聞いて御決心なさるのだろうと思うのでありますが、率直にごらんになりまして、あなたはどちらがいいとお考えになっておりますか。これを選ぶには一体どういう原則で選ぶべきかということです。
  250. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。ただいま私が専門の方だということでございましたが、、実は航空機の性能とか製造の部面については、今まで十分な知識もないのでございます。しかしこの問題は将来の航空自衛隊のあり方、また大きく言えば日本の防備ということに重大な関係があると思うのです。今日まで利害の検討、その機種の性能をあらゆる角度から十分調査研究をしたわけでございます。しかしながら事柄が重大であるだけに慎重を要する。しかしながら慎重であるからといって、これをあまりおくらすわけにはいかぬという問題に面しているわけでございます。そこでF104の問題でございますが、これはアメリカにおいてもまだ量産の階梯には入っていないということです。でありますからこの研究は実地についてとくと調査するといったその正確なる資料と申しますか、それによって判断するということでなければこれは比較の問題でありますから……。そこで防衛庁といたしましては、過日数名の調査団を送ったわけです。おそらく今月の中旬以降、二十日ごろには帰るだろうと思います。それらの報告と調査の結果を十分検討いたして、そうして決定をいたしたい、こういう段階であります。
  251. 辻政信

    ○辻委員 私今原則的に考えますと、F100というやつは速度はおそいが行動半径が広い。そうして攻撃力を持っておる。だから日本がいわゆる攻勢防御的な防衛体制を整えるならばこの方がいい。そうじゃなしに、純然たる狭義の国防で、入ってくるものを撃墜するという消極的な防衛体制をとるならば、スピードが早くて行動半径は小さくてもいいF104というものが至当になってくるわけなんだ。日本の防衛の根本からいいますとF104だと思います。F100では、音速の一・五では、相手のスピードの早いやつには追いつけない。F104は最大が二・五くらい出る。そうすれば予想されるものの速度に劣らないからして、日本の近海に来ても急スピードで飛びつくことができる。だから飛んでいってたたくのか、迎えて撃つのかということを考えれば、日本は当然迎えて撃つ立場にあります。遠くのものをたたく必要はない。そういう原則論からいったらF104がいい。ことにこの問題について一つ御注意を促しておきたいことは、日本の兵器メーカーがその中に介在しておるという点です。F100は御承知の通り三菱、F104は川崎、この連中がアメリカのメーカーと手をつないで、そうして自分の会社の利益のために、その機種を選ばそうとする動きがありますから、この動きに防衛庁長官は断じて左右されないで、良心的な意味でこの機種の選定をやってもらいたい。F104はなるほど今は多少の故障があり、研究の途上にあるかもわからぬが、およそ予想されるジェット機では最優秀なものであるとアメリカも認めておるわけ一であります。こういうものをとらない限り、アメリカがすでに二流品として捨てようとするF100に飛びつくようなことがあったら、こにれは三菱を肥やすだけになる。日本のためにならない。この機種の選定には断じて兵器メーカーの利害や策動に動かされぬというしっかりした信念を持って動いていただきたい。念のために申し上げておきます。いかがでございますか。
  252. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御意見のあるところ十分了承いたします。
  253. 辻政信

    ○辻委員 次は海軍のP2V、あれは相当高いものであります。四十数機整備されるそうですが、あれを国内で自給するのがいいか、あるいはアメリカから買ってくるのがいいか、この問題についての御方針は、新聞によりますと国内自給体制に御決定になったようでありますが、それに間違いございませんか。
  254. 津島壽一

    ○津島国務大臣 P2Vの問題につきましては、これは対潜哨戒機としては最も必要なものでございます。これを国産にするかまたは海外から買うかという問題は、今日まで非常に慎重に検討されたのでございます。この問題はわが国の防衛生産、航空事業のそれとも関連を持っておるわけでございます。今日までの研究においては、こういった大翼な航空機、しかして航空界全体にとっても、こういった製作可能なものについては、これは経費、資金の関係も考慮に入れなくちゃならぬものでございましょうが、でき得るならば国産にいたしたい、こういう考えを私は持っております。ただしこの問題は防衛庁限りで決定すべき問題ではないのでございまして、御承知のように国防会議においてもすでにこれが課題とされたといったような経過があることを承わっております。でありますから、この問題はあらゆるそういった資料、可否一生産のいわゆるうまくいくかどうかといったようなことをそろえて、これは一つ国防会議に十分な検討をお願いをいたしたい、こういうふうな考えを持っておるわけでございます。
  255. 辻政信

    ○辻委員 私個人の考えを申し上げて失礼でありますが、私はあれは四十機や六十機では、せっかく日本の工場をそれに間に合うように整備をしてみたところで、これは将来の商業ベースに乗らない。そうなると、民間企業じゃ無理がある。国が補助をしなければならぬということを考えますと、それだけのむだな金を工場に使って四十機や六十機、そんなものを作っただけではだめだから、これはアメリカから安く半分値くらいにたたいて買ってきた方がいい。その方がよほどりこうだと思う。防衛生産といったらなんでもかでも作るのだと思ったら間違いだと思う。この間実はトルコを旅行してきましたが、トルコヘ行って感心したことがあるのです。それはあのおくれたトルコから進歩した西ドイツが兵器、弾薬類を五億ドル輸入しておるのですね。その原因はどういうわけだと聞きますと、ドイツは大砲や戦車やあるいは今出ておるような兵器というものは、今度の戦争に役に立たぬ。こんなものは消耗品であり、練習用具だ。だから外国から安いものを買ってきた方がいい。自分の国の費用はそういうむだなものに使わない。将来現われるであろう科学兵器、誘導弾、こういうものの研究と新兵器の整備に全力をあげて、そうして外国が作って使い古した兵器なんというものは、むだな金を使って工場を作っても役に立たぬから、これをできるだけコストをたたいて外国から買った方がいいのだ、トルコから五億ドル買っているという事実、この事実を見て日本の防衛庁においてよくお考え下さいませんと、単に兵器メーカーを保護するだけになって、作ったものは何ら日本の防衛に役に立たない。逆に国が大きな補助をしなければならない。こんなことでは国民に対して申しわけない。その防衛生産の根本方針をぜひともお考えになっていただきたい。この点は津島さんはよくおわかりだと思うのです。それについての長官の御見解をただしたいと思う。
  256. 津島壽一

    ○津島国務大臣 冒頭にも申し上げましたように、この問題は可否、適否の問題が相当あるわけでございます。御意見のようなことも承わっております。でありますから、これは慎重に考えたい。しかしながらこのいわゆる防衛生産といったような大きな問題も、これは防衛担当者としては、何もかも外国からみないわゆる装備、機器を買うのだという建前では、これは当面の問題に陥り過ぎるという観点もまた一方あるわけでございます。で、先ほど申し上げましたように、この問題は重大であり、国防会議においても検討され、まだ決定を見ないものであるから、そういったあらゆる利害を十分調査しに結果についてさらに国防会議において御検討を願いたい。こういうので、御高見のあるところは十分よくわかりましたから、十分私の考えの中へ入れるわけです。これはそういったいろいろな観点があることだけはあらかじめ御承知を願いたい。こう思います。
  257. 辻政信

    ○辻委員 次は燃料国策について、現在自衛隊が持っておる燃料のストックはどのくらいありますか。
  258. 小山雄二

    小山(雄)説明員 重油類のストックが一番多いのでございます。それから特車、自動車のガソリン類、ジェット機燃料はほとんど右から左に使っておる状態であります。重酒類で平時の約一年分、ガソリン類で約四カ月分ぐらいです。
  259. 辻政信

    ○辻委員 日本全体から見ますと、それよりもはるかにレベルが低いので、現在日本の国内に持っております油類の総計は大体六十万トンです。六十万トンというのは、一年に大体千二百万トン使う現状におきましては、せいぜい二週間分、多くて二十日分です。これが国全体の燃料の状態です。しかもその大部分は中東の油田から買ってきている。あそこにシリア事件からアラビアに戦乱が拡大して、そうして米英の石油会社がとても日本に出す余力がなくなると、日本は五十万の自衛隊を持っておっても、石油エネルギーが二週間分しかないから、二週間で日本全体の工業も防衛関係も半身不随になる、こういう重大な欠陥を持っている。これをだれが一体検討しておりますか。どこでも検討しておらない。でありますから、昨年でございましたか、防衛庁へ行きましてそのことをやかましく言ったのです。そうすると、具体的な問題を一つ紹介いたしますと、徳山に海軍が持っておった燃料廠があります。精油所があります。あの徳山は今稼働しておりますが、あの隣に大原という貯油所がある。これは海軍が貯油施設を持っておって、当時百万トン持っておった。それが国有財産になっておる。利権屋が払い下げを受けようと思って非常に暗中策動しております。各種の会社からそれに対して防衛庁へ問い合せがあったら、あなたの前任長官のときに、防衛庁は公文で、こんなものは防衛庁は考えておらぬ、どうやってもいいというようなあやふやな回答を出したために、大蔵省では、国有財産を払い下げしよう、通産省がある商社にそれを安く売ってしまおう、こういう問題が起っておるのであります。これは防衛庁、日本全体のためにぜひともあの国有財産は確保して、そこを油をためる業者ならばどの商社でもいい、油に関係のあるものには貸してやる。断じて払い下げてはいけないと思いますが、いかがでございますか。
  260. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御指摘の徳山の燃料廠と申しますか、あの跡――大原ですか、はなはだ不敏で、まだその事柄について十分私は聞いておらぬので、今の御質問に対して、こうやるとか、どうしないとかいうことは、ちょっと内容をよく承知しておりません。
  261. 辻政信

    ○辻委員 これは重大問題で、われわれ国防部会を開いて、そこにおられる幕僚諸君は皆聞いておるはずです。こういう問題を新長官に申し送りしない。だから燃料国策に対して防衛庁は熱意がないと私は言う。燃料問題を確保せずにどこに防衛があるかという点なんです。しかも海軍が持っておった国有財産を何とか会社に払い下げしようというようなことは、断じて国としてやるべきじゃないと思います。至急一つ今までの経緯を調べ願いまして、国策の見地から善処してもらいたいと思います。
  262. 津島壽一

    ○津島国務大臣 承知いたしました。
  263. 辻政信

    ○辻委員 次は、衛生問題。衛生の内容がゼロに近い、定員の三割しか軍隊の医者が充足されておりません。人の子供を預かって育てていくその自衛隊において、病気になったときにめんどうを見てやる医者が定員の三割しかいない、七割は欠員になっている、この原因はどこにあるかということを三年前から私はこの国会で言っているが、本気で取り上げない。その一例を申し上げましょう。浜松の航空自衛隊に事故が続出しております。浜松のあの隊には人間がたしか四千五百名くらいいるはずです。そこに軍医と称する人が四名いる。そのうちの二名は隊長で、行政事務に没頭しておって、ほんとうに四千五百名の健康診断をやるのは二人しかいない。そうすると、四人でやるとしても、一日に一人で百二十名以上の人の健康診断をやらなければならぬ。二人でやったら二百名以上やらなければならぬ。そしてこの本人がどういう病気があるか、どこに欠陥があるか、一人の人が二百名の健康診断をやらなければならない。これは浜松自衛隊に限ったことじゃございません。全国の自衛隊をごらんなきい。衛生官の定員が三〇%しか充足されておらない。そうして衛生業務に最大の欠点があるということを言っておるが、内局には衛生局を作ろうとしない。衛生課と資材課でそれをやっている。編成からいっても、制度からいっても非常な欠陥がそこにある。だから死の行軍ができたり、無理なことが出てくる。そういうことは軽々に考えられない問題ですから、この衛生機関の充足、養成というものには格段の御注意を払っていただきたい。これについて私は一つの私案がある。それは採用するときに、その人の技量、学歴等を考えて、少尉に採用せずに、技術者としていきなり少佐に採用する。そういう制度はアメリカにあるのです。新聞記者がいきなり大佐になる。日本ではそうでない。大学教授でも二等兵だ、あるいは少尉にしかなれなかった。その技能、その経歴に応じて初任給を少佐にしてやる。そうすれば町の開業医よりもそう見劣りしない給与でやれる。そういうことをなぜお考えにならないか。あるいは技術加俸をやる。町医者にみな流れているが、自衛隊のお医者さんはまっぴらごめんだ。もちろん今委託学生をやっておりますが、あのひよっこが巣立ちするまでに少しギャップがあるわけです。このギャップを満たすためには特別の制度をお考えにならないと、衛生方面においてまだまだ不祥事件ができますぞということを最後に念を押しまして、私の質問を終ります。
  264. 相川勝六

    相川委員長 淡谷悠藏君。
  265. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 防衛庁長官にお伺いしたいのですが、航空自衛隊のいろいろな計画があるようですが、特に私は日本海海岸における航空自衛隊の基地設定の御方針を具体的にお伺いしたい。またその自衛隊でジェット機を保有するものの具体的な基地の場所などもお伺いしたいと思います。
  266. 加藤陽三

    ○加藤説明員 日本海方面におきましてジェット機を保有してしる飛行基地と申しますと、ただいまのところございません。
  267. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は長官にお願いしたいのですが、今後ジェット機を保有させて基地にいたしたいといったような場所がありますか。なければないでよろしい。
  268. 津島壽一

    ○津島国務大臣 日本海沿岸というこでございますが、ただいまのところでは美保、小松というようなところが考えられているわけでございます。大体そういうところです。
  269. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 実は美保のことなんですが、昨年まで美保の航空自衛隊の滑走路を延長するという計画がありました。地元の反対にあいまして、その後どうなりましたか、実は音をひそめているようでありますが、その当時、公有水面の埋め立てをして滑走路を延ばすという案と、陸地に沿ってこれを延ばすという案と、二案あるいは三案あったかに承わっておりますが、現在でもこの計画は続けておられますか、あるいは放棄されましたか、具体的にお話を願いたい。
  270. 山下武利

    ○山下説明員 美保に航空基地を持ちたいという希望は持っていろいろ地元と交渉いたしておるわけでございます。滑走路の具体的な問題につきまして、まだ的確な計画を持っておるわけではござしません。
  271. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最近この美保の米軍の通信施設をかなり大規模に拡張しようということが話し出されまして、すでに呉調達局から地先にさまざまな工作が行われております。地図で見ますと、私昨年あるいはことしの春、防衛庁で見せていただいた建設計画と米軍の通信施設とが、明らかに重複して計画されておる形がございます。この点は何か調達庁の方から防衛庁の方に申し入れがあったかどうかお伺いしたい。
  272. 上村健太郎

    ○上村説明員 私どもの方は米軍との相談によりまして、通信施設の拡充計冨をやっております防衛庁の飛行場三の関係につきましては、十分協調いたしております。
  273. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは米軍の通信施設の拡張の計画、それが一体どういうふうに日本の国防上意義を持っておるものか、そういう国防上の問題について、防衛庁と米軍との間に何らか打ち合せがあったかどうか、詳しくお話を願いたいと思います。
  274. 上村健太郎

    ○上村説明員 米軍が申し出ておりますのは、海外との通信連絡に必要な送受信施設及び航空機の航行誘導上必要なホーマン・ピーコン施設あるいはタカンと申します施設がございます。また遠距離を航行いたします船舶、航空機に対して位置を示すローラー施設、その他防空上必要な電探装置、また各施設を連絡いたします超短波、極超短波無線中継所というような各種各様のものがございまして、共同防衛上調達庁としては必要なものと認めておる次第でございます。
  275. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 米海軍少将のイルズ・H・ハーバートから施設小委員長あての文書によりますと、全施設の西側地区に将来一つの滑走路を拡張予定であるが、本要求には除外してある、とこういうふうに書かれてある。この滑走路というのは、通信施設とどういう関係があるのかお聞きになりましたか。これは公文書でございますから……。
  276. 上村健太郎

    ○上村説明員 滑走路につきましては、おそらく防衛庁において整備いたしまするものを、米軍において連絡飛行場として使用したいという程度考えであろうと思います。
  277. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは重大な問題でございます。一体隣接した二つの地域、米国の軍事施設と日本の自衛隊の施設とがジョイント・ユースされている例はたびたびございますが、拡張そのもの自体がせり合う状態こなったらこれはどう解釈したらいいのか。岸総理は昨日、将来米軍の施設は自衛隊の方で全面的に受け取る用意があるようなお話でありましたが、今から両方一緒になって、防衛庁と調達庁がそれぞれに交代で拡張されるようであっては、一貫した計画とは思えない。この点はどうでありますか。防衛庁長官にお願いしたい。
  278. 津島壽一

    ○津島国務大臣 昨日の岸総理の答弁についてお話がございましたが、それに関連してお答え申し上げたいと思います。米軍の撤退に伴なって不要となる施設等は、その受け入れについて目下いろいろ話し合っております。しかしながらこれらの施設を返還するということと相まって、絶対必要なものは、あるものはこれに新施設が要るというものもあるだろう、こういうことを岸総理は答弁されたと思うのでございます。その意味において用途、目的の違ったもので、調達庁に施設提供といった形式で、先方から持ち出されるものはあり得るわけでございます。その意味において一方において返還し、またある意味において必要なものが、一方において提供を希望してくるということは、これまたあり得るわけでございます。そういった意味において、今の通信の問題等も、これはその一つの事例であろうかと思います。
  279. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 話は実はもっと具体的なんです。さっき防衛庁の係の方のおっしゃるのには、まだ自衛隊の滑走路の拡張計画は捨てていないという。この拡張計画と米軍が要求しております拡張地域とは相交錯しておるのであります。そうしますと一方に許しますと片方の拡張はできない。自衛隊の拡張をやろうと思うと米軍の通信施設の拡張ができない。こういう現実に今矛盾が起っておるのですが、これは何か米軍と防衛庁あるいは調達庁との間に具体的な打ち合せがあったかどうか承わりたい。
  280. 津島壽一

    ○津島国務大臣 私の承知しておるところでは、美保基地の今の滑走路のあるところと通信部隊というか、駐留軍の施設のところとでは、近いけれども全然別なものだということに承知しております。駐留軍の設営に関しては、調達庁にくるわけであります。一方の方は防衛庁の問題でございます。これは全然別個の問題でございまして、違った用途また場所においての設営である、こう承知しております。
  281. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そこでさっきの米軍のイルズ・Hハーパート少将からの文書にかえるのですが、これにははっきり全施設の西側地区に、将来一つの滑走路を要求するとしてある。これが調達庁の方からの御答弁では、自衛隊のそれじゃないかと言われますが、その辺はどうなんです、もっとはっきりしてもらいたい。地元民にとっては全耕地を失うほどの大問題なんです。もう千余戸にわたる農民が土地を奪われ、生業を離れるといったら大問題です。それが一体どうなるやら、防衛庁もはっきりしない、調達庁もわからぬ、こんな形でどんどん話を進められたのでは、非常に国民が迷惑いたします。その点はどうなっておりますか。
  282. 上村健太郎

    ○上村説明員 私まだ米軍からの飛行場要求について存じておりません。しかし美保の飛行場は、自衛隊において主として使用するものだと思います。従いまして米軍が使うにいたしましても、単に連絡飛行場として共同使用する程度であろうと存じております。
  283. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうもその御答弁には納得できない。施設小委員会長あての文書を調達庁のあなたの方で見ていないと言われるが、何によって一体接収の話を今度始められたか、これは公文書なんです。
  284. 上村健太郎

    ○上村説明員 ただいま聞きましたところによりますと、米軍側からの滑走路拡張の要求は撤回されておるようであります。
  285. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今呉の調達局から、現地美保の関係農民に具体的に話し合いが進められておりますが、これは調達庁本庁では知っておりますか。
  286. 上村健太郎

    ○上村説明員 当然承知しております。
  287. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうすると、こういう話し合いは鳥取県の県知塩に対してなさるべきものであると思うのでありますが、だれを相手に話し合いを進めておりますか。
  288. 上村健太郎

    ○上村説明員 鳥取県知事と地元の境港市長でございます。
  289. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 鳥取の知事と、境港市の市議会が全会一致をもってこの拡張計画には反対であるという決議をしておりまするが、これは御承知でしょうか。
  290. 上村健太郎

    ○上村説明員 承知しておりますが、境港市会の方はその決議を取り消しておるように聞いております。
  291. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういうずさんな御調査で話を進められたのでは大へん話が違います。取り消ししおりません。しか一も今まで反対しておった境港市の市長が市会議員を集めまして、協議会と称して秘密投票を行い、その秘密投票の結果を開票しないで市長だけが見ているのであります。そしてその方針がきまったというので、だれにも公開しないこの秘密投票の結果に基いて、千百戸以上の農民に対して話し合いの場を作ろうと言っているのが今の段階なんです。呉の調達局から何と言ってきているか知りませんが、私は先日行って参りまして現地で詳しく調べてきたのです。一体、拡張が適当であるという決定をなされる前に、米軍の要求だけではなくて、現地の農家について実態をお確かめになりましたか。現地の農家が今日までどのくらいの迷惑をこうむっておるか。――土地を失うことによってほとんど全部の農家がその生業を離れて、どこかに離散しなければならないという状態をお確かめになりましたか。
  292. 上村健太郎

    ○上村説明員 先ほど申し上げましたのはちょっと間違いがごいますので訂正さしていただきます。境港の市議会の特別委員会で審議されておるようでございます。地元民につきましては直接話し合いを進めたい所存であります。
  293. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは事態が紛糾いたしますると第二の砂川のようなことを引き起します。昨日も岸総理からはっきりこの基地設定については国民の世論を重大に取り上げるという言明があったが、その国民の世論を全うに受け取らずに、ただ米軍の要求だからとにかくこれを渡そうというよう態度はこの際お捨てになった方がいいと思うのですが、一方農民自体のいろいろな意思についてお確かめになりましたか。
  294. 上村健太郎

    ○上村説明員 農民につきましてはこれからの問題になると思います。
  295. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大蔵省の管財局の方がおいでになっておりますから伺いたいのですが、この土地は戦争中に各農民からどういう手続で海軍が取り上げたか、この点の御説明を願いたい。
  296. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 ただいまの美保の飛行場の拡張該当地域は民有地でございまして、戦争中海軍が買収したとかいうような地区は少し離れたところであります。
  297. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私の質問が足りなかったようですからあらためて補足質問いたしますが、現在拡張しようというところではなくして、現在自衛隊が使っている土地並びに米軍がP地区もしくはA地区と称して使用している土地の国が所有するまでに至った経過を御説明願いたいのであります。
  298. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 ただいま御質問の土地について申し上げますと、問題の拡張区域地よりも南東の方にあります海岸寄りの場所でございますが、全体といたしまして約三十万坪ほどありました元の逓信省所管の飛行場地域でございます。この地区につきましては、約十五万坪米子市から寄付をいただき、それから逓信省その他旧陸軍省で買収をしました国有地が七万八千坪ございます。
  299. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも御調査が少々違っているように思います。私の調べましたところでは、戦前における耕地の総面積は申浜、余子、渡を通じまして九百九十五町二反であります。このうち三百五十三町七反というものが旧日本海軍に接収された面積で、二百十一町八反がその後農林省から払い下げを受けた面積であります。海軍が接収した場合は総動員法を適用しているのであります。この点あなたのおっしゃることと陸軍と海軍ほど違っておりますが、どっちが正しいでしょうか。私もただ調べただけで正確にはわかりませんが、あなたの方の御答弁を願いたい。
  300. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 御質問になりました地区と私がただいまお答えしましたところと少し場所も違っているのではないかと思いますが、地名は何とおっしゃられますか。
  301. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 中浜、余子、渡という部落であります。第一回は昭和二十七年度、第二回も同じく、第三回は三十年度に米駐留軍に接収された耕地になっておりまして、これがなお五十七町二反歩あります。現在のままでも三分の一はほとんど自衛隊と米軍によって使用されている。この点私はお聞きしたい。
  302. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 私が先ほどお答えいたしましたところは全く場所を間違えていて申しわけありません。御指摘の地点は終戦後昭和二十七年に自作農創設特別会計の方へ所管をかえまして農地となっている地区だと思いますが、この点は農林省の方で所管しており、それと提供の関係で調達庁と関係しております。
  303. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もう少しお聞きしたいのです。この土地は昭和十四年に海軍に接収されております。海軍が接収したものは農林省に行くはずがないのです。農林省に渡すまでには戦争中という大きな時期を経過している。この間は一体どう管理されておりますか。
  304. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 旧海軍の所管しておりました財産は、終戦後大蔵省が引き継ぎを受けまして、普通財産となったのでありますが、その土地を、自作農創設特別措置法によりまして、農地として転用する場合には一たん農林省に所管を移しまして、そして農林省から各農民の方に売り払いをする、こういう手続をとったのでございます。
  305. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 一部は農林省に返りましても、大部分はそのまま自衛隊の方で使うようになっておりまするが、前に作っておった農民に返さずに・自衛隊の方に演習地として引き渡された前後のいききつをお聞きしたい。
  306. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 ただいまの御質問で、自衛隊が使っているとおっしゃいましたのは、米軍に提供して、その後自衛隊が現在使っているという状態につきまして御質問があったものと思います。旧海軍の所管財産でございましても、大蔵省で戦後引き継ぎまして、その後米軍に提供する必要があるときは大蔵省所管の普通財産としてそのまま提供しております。
  307. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は管財局の国有財産の管理方法について非常に遺憾の点を表明せざるを得ないのであります。さっき辻委員もお話がありました通り、工場などと土地とは違いますから、当然戦争中の犠牲で取り上げられた土地は、農民なり地元民なりに返還すべきが至当だと思うのです。それを漫然と管財局が持っておって、それを国の使用もしくは米軍の使用には無条件で譲り渡すが、地元民の要求に対してはいろいろの口実をかまえてなかなか手放さぬというような事例が各所に見られる。これは本日の問題とは関係ありませんから申し上げませんが、全国各地に見られる。聞きますと、管財局は大へんに手不足で事務的に早急の措置ができないということを言っておるようでありますが、そんなに手不足なんでありますか。たった一例を申し上げますが、同じく滑走路拡張の対象になっております千葉県の木更津は、海軍が飛行機を飛ばしておった時代に売り渡した土地の登記が現在までもできない。金は払われる、土地は今米軍が使っておる。その売り渡した農民が今まで名義人になっておりますから税金をとられて、この税金の総額が土地代よりも高くなったという事例があった。これは決算委員会で追及された結果あなたの方で税金は返すということを言われておる。こんな例はいろいろ見られます。この美保基地における土地の問題なども非常に土地に困っておる農民ですから、すみやかに終戦当時地元民に返すべきが至当だったと思いますが、その点はどうですか。
  308. 市瀬泰蔵

    ○市瀬説明員 ただいま国有財産の管理について御質問がありましたが、終戦直後膨大な旧軍の財産を引き継ぎました当時は相当の混乱がございまして、非常に手ぎわの悪かったことは認めざるを得ませんが、漸次整備されて参りまして、ただいまでは国有財産の管理に手薄のゆえにこれをおろそかにすることのないように期しております。  もう一点御質問のありました戦争中あるいは戦前、軍の買収した土地はもとの所有者に返すべきであるという御指摘でありますけれども、現在の国有財産法においては、特に買い戻し条件とかいうものがついておりません限り、国有財産法に定められました原則に従って管理し処分しなければならないことになっておりますので、現実に処分いたしますときに、当時の実情は考慮いたしますけれども、すぐそのまま直ちに旧所有者に売り渡すというケースには必ずしもならないじゃないか。公共用の目的に国有財産を活用しようとする場合はその方に使用させるということがあるのであります。
  309. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ここの土地はさっきも申し上げております通り、大へんに土地の人々にとって重要な土地なんです。これを全面的に米軍の通信設備あるいは自衛隊の基地に使用されては生活が根本的にくつがえされてしまう。千何百戸というような多数の国民の生活を転覆してまでも作らなければならないほどこの米軍の通信設備が大事なものか。あるいは自衛隊のここに設定する基地の国防上の意義が大きなものであるか。これは一つ詳しく防衛庁並びに調達庁が米軍から話された内容をおあかしを願いたい。これは非常な抵抗をしている。それを押し切って呉の調達局の局長がじかに市長に会って深夜ひそかに相談してまでも納得を得ようとあせっておるのはどのように重大な国防上の意義があるのか。日米共同防衛の線から何らか防衛庁にもお話があったと思うが、その内容をはっきりとお聞きしたいのであります。
  310. 上村健太郎

    ○上村説明員 今回の通信施設について拡充をするために要しまする土地は非常にわずかでございまして、ただその通信施設の鉄柱を建てますために立ち入って調査いたしましたり、あるいは維持管理をいたします上において、立ち入りを必要とするということから立ち入り調査を要請した区域が七十二万坪ございます。ただ今後そのうち使用する坪数は鉄塔一本について四フィート平方。従いまして大体農耕できなくなりまする土地の坪数は合せて約二百坪であります。  また第一のお尋ねの日本の防衛上必要かどうかというお話でございますが、私どもはある程度詳細に聞いております。しかし通信施設の内容については、米軍側との打ち合せによりまして、秘密事項になっておりますので、私政府委員としましてここで申し上げる自由を持ちませんのでよろしく。
  311. 山下武利

    ○山下説明員 先ほど防衛庁長官からお答えいたしましたように、米軍の通信施設として予定されておる土地は、防衛庁が防衛庁として考えておりまする土地とは無関係のことであります。  (淡谷委員「美保の飛行場はどうですか」と呼ぶ)現在美保の飛行場は米軍に提供中の財産でございます。行政協定第三条によりまして米軍の了解を得まして共同使用をいたしておる土地でございます。この土地は今お話のありました通信施設とは全く無関係の土地でございます。
  312. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 美保の基地は米軍とジョイント・ユースになっておりますか、間違いありませんか、もう一ぺん確めておきます。
  313. 上村健太郎

    ○上村説明員 共同使用になっております。
  314. 辻政信

    ○辻委員 今のに関連して基地問題について申し上げておきます。航空自衛隊で事故が続発している。この原因は現在持っている飛行場の設備がだめなんです、滑走路が短い、通信施設がまずい、救難施設ができておらない。まるでなっておらぬ状態にしておきながら、また数の上で美保とか小松とかふやそうという考え方が間違っている。それは図上の防衛計画でやっているからそうなるんです。日本海に一つもない。図上計画でなく、現在の問題は、今持っておられる浜松、干歳、松島、鹿屋、小月、築城、こういうところの既設の飛行場にたっぷり滑走路をとって、それに十分な施設を施すことに重点を向けて人間を養成しておけばいい。間口を広げて、碁でも打つように、ここに一石足らぬから打つというようなことをやって不十分な飛行場を作ったら、また墜落のジェット機数を増すことになる。断じて私は美保と小松を増すことは不同意だ。現段階においてはそれよりもなすことは、現在持っているあなたの基地を事故を起さぬように金をかけて整備することであります。図上戦術ではない。それについて長官のはっきりしたお答えをお伺いいたします。
  315. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今の日本海方面の航空基地として考慮しているものは何であるか、こういう御質問が先ほどもありました。その点について美保、小松という二つが考慮される、こういうことを言ったわけです。現に美保については共同使用中でございます。小松につきましては、そういうものも考慮しておるという段階でありまして、いまだその実地の調査もしたこともないわけであります。そういう状態でございます。つきましては、ただいまの御所見は私として十分承わっておきます。
  316. 辻政信

    ○辻委員 まだきまらないことに考慮をするなんということを言うから、地元に不安を持たせる。ほんとうの腹を持たずに言うから……。ほんとうに必要があるなら、反対があっても押し切ってやるべきです。十年間アメリカが日本の国防を担当しており、そうして必要な基地は北海道から九州までちゃんと押えている。また自衛隊の専用飛行場もできておるので、数をふやすということをお考えにならないで、現在のものを十分にして、人間を殺さずに養成するというところにほんとうの考えを置いてもらいたい。将来とるかもしれぬというようなことを飛ばすから、地元において誤解を生じておる。そういうことを軽はずみに言うべきじゃないと考える。現在何をしておるか、浜松すら十分な滑走路を持っておらぬじゃないか。だから事故が起るのです。滑走路を十分にし事故を起きぬようにすることが、長官の新しい、現実に即したものの考え方だろう。幕僚どもの図上戦術というもので、ここに一つほしい、ここに一つほしい、そういうようなことにあなたは動かされてはいけない。現状をよく注意して、はっきりした態度をとってもらいたい。
  317. 相川勝六

    相川委員長 淡谷君、だいぶ時間がたちましたから簡潔に願います。
  318. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 きのうから待っていた質問ですから、もうしばらくお許し願います。
  319. 相川勝六

    相川委員長 簡潔に願います。
  320. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今の調達庁長官のお話で、私は一そう不安を感ずるのです。さっき自衛隊の関係の方は、滑走路を延長したいという意思は変ってないという答弁なのです。今聞きますと、米軍との共同使用であって、米軍の接収地に入って使っておる。そうしますと、あなたのおっしゃるのとはやや違うかもしれませんが、今米軍が新規に予定面積として立ち入りを要請しておりますのが百八十六町九反であります。もちろん鉄柱を立てるのは少いでしょう。けれどもこの大きな土地を測量して、しかも公文書によって、西側に将来は滑走路をほしいのだといったような要求があると、内容はどうなろうと米軍の接収、すなわち自衛隊の滑走路拡張だと考えるのは当然なのであります。しかもあなたはどのよう報告を受けておるか知りませんけれども、現地における使用の実態と現在の米軍の言っておることはまるで食い違っておる。前のP地区、A地区等にも鉄柱は立っています。鉄柱は立っておっても、ふだんはその下を自由に耕作してもよろしいという約束があったのです。中にはやっておるところもある。しかしこのやっておるところに対してだんだん圧迫を加えまして、現在では糞尿を散布してはいかぬということまで干渉してきておる。農道は閉鎖します。朝鮮事変が起ると黙って爆弾を積み上げます。だから結局鉄柱の立ったところだけを使って、あとは自由に耕作をさせるといっても、一ぺん経験した地元の農民は承諾しないのであります。こういう点を長官は一体知っておりますか。
  321. 上村健太郎

    ○上村説明員 そういう事実があったかどうか、私は存じておりません。
  322. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 なかったら、私はもっと突き詰めて御調査願いたい。特に呉の調達局の方から、一反歩の買上価格を二十七万円あるいは三十八万円もしくは、これは調達局独自ではありませんが、中に入っている人が農民に対して、一反歩五十万円出してもよろしいというようなことを言っておる。これは一体調達庁の方針ですか、それとも呉調達局あたりが、勝手に現地でそんなことを言いふらして、反対気勢をくじくために言っているのかはっきりさせてもらいたい。
  323. 上村健太郎

    ○上村説明員 今御指摘になりましたのは、A地区だと思うのでございますが、A地区におきます耕地の買収費は二十七万円でございまして、五十万円その他の話は、私どもの方の役所からは出ておらないと存じております。
  324. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 一体現在の調達庁関係の補償要綱に基くというと、一反歩どれくらいまで買えるのですか。
  325. 上村健太郎

    ○上村説明員 申し上げまでもなく、場所によって非常に違うのでございまして、一番高く買いましたのが約五十万円近くのところがあったようでございます。
  326. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今のあなたの御答弁でだいぶ食違いが生じてきたのですが、立ち入り調査をしようという百八十六町九反歩は、全部二十七万円の価格で買い取るつもりでございますか、それともその間に、鉄柱の立つ部分だけを買い取るつもりなんですか、どっちです。
  327. 上村健太郎

    ○上村説明員 鉄柱の立つ部分だけでございまして、その他に立ち入りをいたしますについて農耕の妨げがあったり、あるいは農業上の制限を加えましたりすることがありとしますれば、その補償をいたすつもりであります。
  328. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 地元では、その点が大へん誤解されているのです。また実際は、あの鉄柱の立った下で耕作はできません。一反歩二十七万円というと大きい金に思われますけれども、その間にどんどん鉄柱を立てられたら、とうてい耕地にならない。こういう具体的な問題をもう少しあなた方の方で精密に御調査になって、地元の農民の言うことももっと虚心担懐にお聞きにならなければ、あそこは必ずまた不祥事を起します。特にあなたは、きっき米軍の使用目的については、事機密で言えないと言っておりますが、日米共同声明と称して堂々と新聞に発表しているのです。あなたに秘密なものが呉の調達局では秘密じゃないですか。これはどういうわけなんです。
  329. 上村健太郎

    ○上村説明員 呉の調達局におきまして、どういうことを話しているかは存じませんが、先ほど申し上げました程度以上のことは、米軍との間の秘密事項の扱いになっております。地元との関係につきましては、よく地元の方々の御意見を伺いまして善処いたしたいと思います。
  330. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 委員長の御注意もありますから、私は質問を切り上げますけれども、現在の状態は、決してあなたがこちらで見られているような、平穏無事にみな賛成しているという形ではございません。非常な無理をして、しかも知事が反対ならば、知事を差しおいて境港市の市長と直接に話をしたところで、それは何も法的な根拠にはならないじゃありませんか。こんな無理までもして切り崩しをして反対じゃない態勢を作りましても、決して円満にいくものじゃない。国防に名前をかりまして、いたずらに国民を不安に落し、反感をそそるよう態度はやめてもらいたい。きのう岸総理は、日本の国防については、もっと国民が納得するまで徹底的に話し合うと言った。その話し合いの仕方が非常にあいまいであったり、ごまかしがあったりしては、とうてい納得されるものじゃない。その場合に納得しないといって、例の強制収用のだんびらを振りかざすならば、名前は国防に似ておりますけれども、国防の根本を危うくする重大な原因となると思う。この点は一つ慎重にお考えになって、今の基地拡張にしても十分に御調査願って善処されたい。特にジョイント・ユースに関しましては、再々私委員会で申し上げておりますが、補償の対象も、補償の調査も非常にあいまいになります。現にそのそばには駅がありまして、駅のシグナルさえ高く立てられないよう状態です。電車よりも低いシグナルというようなものはない。そんな危険を冒してまでも飛行場を作っている。こういう実態一つ十分確かめまして、地元の反対するのは、決して根拠がなく、ただやっているんじゃない、こういう点に対する一段の御認識をお願いしたいと思います。
  331. 相川勝六

  332. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 きょうは防衛庁長官にごく概括的なことを伺っておきたいと思います。時間もありませんし、今後いろいろなこまかい問題を伺いますのについて、概括的な御所見を伺っておくということで進めたいと思います。  一番最初に伺いたいと思いますことは、これが本日伺う中心点でありますが、岸総理が訪米をせられます前後から急に自主防衛という言葉が使われて参りました。今までの防衛体制も自主的なものだというお話でありましたが、特に岸総理渡米前後から自主防衛、自主防衛とあたかも何か違ったものであるように御説明がありますので、一つ本日はこの自主ということ、このことの説明を公式に伺っておきたい、こう思います。まずその点から御説明をいただきたい。
  333. 津島壽一

    ○津島国務大臣 自主防衛あるいは自主的に決定するという自主の意味はいろいろな解釈があると思います。私の承知いたしておるところにおいては、全体の情勢を考慮し、また国力、国情というものを十分に検討して、わが国の防衛計画はわが国においてこれを立てていく、こういうのがその中心的の目標であり観念である、こういう意味でございます。
  334. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 わが国の防衛計画を自主的に立てていくのがその意味だ・こうおっしゃるわけですが、そういたしますと、今までの防衛計画というものはわが国で立ててなかったんだ、こういうふうに解釈をせざるを得なくなって参りますが、この点について今までも再々私たちは、わが国で立てているのじゃないだろう、こういうことを申しますと、いいえ、そんなことはありません、絶対に私たちは自分たちの足で立っております、こういう御説明でありました。今のお話をお伺いますと、ちっともかわりはありません。体どこに違いがあるのでしょうか。
  335. 津島壽一

    ○津島国務大臣 言葉は、従来は絶対に自主的でなかったとかというような趣旨ではありません。今回の国防会議において立てられたその案は、多年研究された防衛庁の試案に基いて、わが国として防衛会議において自主的に決定した、こういう意味において長期の計画がここに立った。しかもそれは国防会議において自己の防衛というものはこの程度にやる、こういうことがきまったという意味においては自主的である。従来は全然自主的でなかった、どっかの国で立ててもらった、そういったような大きな変化がここに一挙に起った、こういう趣旨ではございません。
  336. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 国防会議を新しく作り、この国防会議の議を経て立てた計画であるから、その意味で自主防衛だ、こういうふうにおっしゃるのならば、新しい国防会議という機関が動き出したという意味で私たちも理解ができます。だがしかし自主という言葉をお使いになる限りは、もっと積極的なものがあっていいのじゃないか。もしそうでなければ、今までのよう防衛体制に比べて自主、自主と盛んに強調をせられる具体的な根拠がなくなってしまうだろう、こう思いまして、私たちはもっと深い意味におつしゃっておるのだと解釈をいたしておりました。だがしかし今伺ってみて、この自主という言葉はそんなに強い意味ではない、国防会議の議を経たという意味にしか使っていないんだ、こういうお話ならば私にもよくわかります。だが一体、それではもっと掘り下げて考えてみて、あたかも自主防衛という言葉を使うことによって、日本が自分自身の実力で一切のものをまかなっていけるような印象を与えることについて、やはりある種の責任をお感じにならないかどうか、この点を伺いたいと思うわけです。日本のあなた方の立てている防衛というものが日本一国で十分にできるものでない、こういうことは歴然たる事実だろうと思います。それにもかかわらず、あたかも日本の実力でやれるかのごとき印象を国民に与え、そしてそのことでたよりにならない安堵感を与えていくというやり方について、こういう言葉を使うことの政治的ないい悪いを一つお聞かせいただきたいと思います。
  337. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。自主防衛あるいは盲主的、こういう言葉が直ちに諸外国の協力を求めないで単独に自分ひとりでやるという趣旨に使われておるのではないのであります。今日の段階において防衛を整備していく上において、これが協力ということは国際的に当然に起る問題でございます。しかしながら計画そのものを立てるに当っては、自己の判断によってこの程度のものが必要であるという計画を立てる、こういうことでございまして、その計画自体は全部自己の経費においてまかない、他の協力を求めない、そういったような趣旨ではこの言葉を解釈するということは妥当でない、こう思うのでございます。
  338. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 よくわかります。御説はよくわかりますので、あなた方のおっしゃる自主防衛という言葉と、アメリカの世界戦略の展開として世界中に占めて参りまする具体的な作業と申しますか、作戦と申しますか、そういうものの一環として日本の自衛隊が役割を果していくということは矛盾をしない、こういう意味にとってよろしゅうございますか。
  339. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは世界全体に見ましても、あるいはNATO、SEATO、これらの国は各自にその国防の案を立てて、これが実行に当っておるわけであります。ただし防衛関係においての作戦上のいろいろな連絡なり協議あるいはこれを一体となってやるといったようなことは、これは各自の自主を害したものだと、そういったような意味にこの自主という言葉が用いられるとは思わぬのでございます。
  340. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 だんだんはっきりいたして参ります。自主防衛の自主という言葉と、アメリカの世界戦略の一環として日本の自衛隊が行動をするということとは矛盾をしない、すなわちみずかちの意思によって、みずからの自主的な判断によってアメリカの世界戦略の一環をになうのであるから矛盾をしない、こういう意味に了解ができます。そこで、それでは自主的に選んで、アメリカの世界戦略の一環として行動をするという立場をとるのなら、ば、世界の今原爆を保有していない諸国、こういうものがアメリカの世界戦略の中でどういう役割を果させられつつあるかをあなたは御存じでしょうか、これを伺いたいと思います。
  341. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまのお言葉の中に、アメリカの世界戦略の一環としての防衛、こういうような意味のことがございました。その意味は十分了解ができなかったのでありまするが、わが国の防衛計画はわが国土を守るために必要なるところの防備計画、整備計画を立てていこうというので、これがアメリカの世界戦略の一環であるんだ、こう断言して防衛をやる、こういうのが先に立っておるわけではないのでございます。その意味においてわが国のは自己防衛のために必要なる程度また国力に応じた程度の整備計画を立てていこう、こういうのが主眼の点でございます。
  342. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 アメリカの世界戦略の一環をになうということが主であるかわが国の防衛ということにストレスを置いて考えるかというようなことは言葉の問題でして、現実にはアメリカのアジアにおける世界戦略の展開の中に日本の防衛力がみずからの地位を定める、こういうことを通じてあなたのおっしゃる日本の国土の防衛を試みよう、こうあなた方はなすっていらっしゃるのだ、これは客観的な事実だと私は思うのですが、この点もう一度恐縮ですがお答えをいただきましょう。
  343. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの考え方は、これはそういったよう考え方もあると思います。私はそうであるという趣旨で日本の防衛ができておる、こういう考え方はいたしておらぬわけでございます。
  344. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 総理大臣とあなたの間にだいぶ食い違いがあるように思うのです。総理大臣は迫りくる国際共産主義の脅威に対して、自由主義国家群の中に投じてその中の一パートを受け持ちつつこれに対抗していきたい、こういうふうにこの間述べられたと私は思います。それを軍事的に翻訳して言ってみますならば、今私が申し上げたような形になるはずであります。ところがあなたはそうじゃないとおっしゃる。そういたしますと、岸総理の考えておられる構想とあなたの考えておられる構想とは何か矛盾するがごとく一致するがごとく非常にあいまいになってしまうのであります。この点をもう一度明確にお話をいただきましょう。
  345. 津島壽一

    ○津島国務大臣 アメリカの世界戦略の一環としての任務を果すというその表現の問題だろうと思うのです。日米の軍事上の協力体制、これは岸総理の言ったことと私は何ら矛盾するところはないと思う。要は表現の問題であって、日本は自由国家群に入って世界の平和を維持しよう、この観念において立っている、その上に防衛ということもあり得るわけでございます。でありますから表現の問題であって、岸総理の言ったことと私が今言ったこととには何ら懸隔あるいは差異がない、こういうように御了解願っておきます。
  346. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私も言葉の問題にあんまりこだわるつもりじゃありません。ただ先ほどもあなたがおっしゃるように日米間に軍事協定があるか、そういう具体的な文書にしたものはありません。だがしかし幕僚相互の間に十分この点については話し合っているはずだ、こう言っておられるわけであります。それが文書になっているかいないかは別として、アメリカ軍と日本軍との間におのおのの受け持つべきパート、そういう話し合いがほぼつきつつあるあるいはついている、こう考えてよろしいわけだと思います。もしそうだとすれば、アメリカは全世界にわたって自己の戦略的な展開をしておるわけだ。その戦略的な展開のこのアジアにおける日本の部分としての話し合いとしてアメリカがいたしておりますことも明らかでありますし、またそのことを承知してあなたの幕僚たちも話し合っておることは当然だと思います。世界のいろいろな諸情勢から離れて、地球の中にアメリカと日本しかない、こういう態度で軍事的な協力の話し合いなどというものはあり得ないじゃありませんか。これは私は言葉の問題ではなくして現実の事実の問題だと思います。そういう意味で、あなた方はアメリカの世界戦略の展開の一部分を受け持っておるという表現が何か日本の自主性をそこなわれるかのごとき印象をあなた方の方でお持ちになって、そういうことを承認し、そうして社会党にそういう点を宣伝されるのがいやだという気持でいやにその点を神経質にお考えになっていらっしゃるが、事実は事実としてはっきりおっしゃっていただいていいんだろうと思う。少くともそうした意味で軍事協定あるいは軍事協定に至らぬまでもお互いの作戦について話し合っておる、こうおっしゃる以上は、自由主義諸国家群の戦略展開の中に入ってその一部分を受け持っておるんだ、こういうことに争いはないはずなんですが、いかがでしょうか。
  347. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この問題はただいまお答え申し上げた通りで大体御了承願いたいと思います。
  348. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 一体アメリカが世界の原爆を保有していない諸国、すなわち日本とかヨーロッパにおけるNATO軍に参加をしている諸国、こういう国国を現実にはどのよう考えどのように扱っているかということをあなたはきっと御存じだろうと思います。現に数年前にNATO軍が原爆使用ということを前提にして大演習を展開いたしました。その結果西ドイツとかフランスとかイタリアとかこういう国々の世界戦略における地位というものはおのずから定まって参りました。このことについてある評論家はこういう国々をトラップ・ワイヤーにたとえる、すなわちわなとして地上に張る針金のようなものにたとえて説明をいたしております。すなわち局地戦が起る、あるいは侵略事象が起ってくる、こういうような場合に侵略国がどの程度までやる心持なのか、そういうものを測定する国として、測定する道具としてそこの国の地上軍を使う、そして場合によるならばその国に原水爆を集中せしめてしまい、こちらから逆に反撃をしていく道具に使う、言葉は悪うございますが、意味をつかんでいただきたいと思います。そういう道具に使おう、こういうような形でヨーロッパの諸国あるいは日本、こういうものの地位が世界戦略上定められつつあるというようなこともきっと御存じだろうと思います。日本もまたそうした運命を背負わされようとし、そのことのために自衛隊を作らせられている、あるいは作っている、こう言ってもよろしゅうございます。そういう状態にあるということをあなたは御存じでしょうかどうか、そしてまたそういう評論のありますことについてあなたはどうお考えになっていらっしゃるか、こういうことを伺わしていただきたい。
  349. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。NATOその他の軍事同盟、こういったものの趣旨がどうであるか、また評論家の意見はどうであるか、こういうことでございますが、ただいまの御所見なり引用については十分参考にいたします。日本の場合につきましては、これは自分の国はどうしても自分で防衛よう、こういう立場が基本的なものでございます。でありますから、あるいは先ほどお話のあったような原爆基地とかあるいは核兵器の持ち込みによって、そういったような軍事体制を作ろうという事例は、私は特殊のものであろう、こう見ている次第でございます。
  350. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではこういう方面から伺いましょう。この前岸さんがアメリカに行かれましたときに、日本の防衛についてアメリカ政府と話し合いをした。そのときに、現段階においてもし日本が侵略をせられるというような事態が起った場合には、日本の防衛力のがんばれる期間は三カ月だ、こういうことについて意見が一致した、こういうお話でありますが、そのことの真偽はいかがでしょう。
  351. 津島壽一

    ○津島国務大臣 万一侵略を受けた場合に、現在の防衛力によってどの程度に、あるいはどのくらいの期間防御し得るかという問題について、岸総理が三カ月であるという話があったというのですが、私はどういう機会にそういったようなお話をなされたか、まだ実はよく知っておらない。いずれにしましても、わが国の現在の防衛力をまた今後かりに増強いたしましても、侵略の程度、その力いかんによって、おのずからこれは変る問題だと思うのでございます。しかし、そういった場合において、今日の世界平和維持のために、侵略された国家に対しては、国際連合の安全保障の制度というものは当然機能を発揮するものだと思うのです。そういったことが前提になって国防の計画というものを立てていかなければ、日本の国力、国情に沿うことができないだろうと思うのでございます。何カ月に限ってとかいうことは、個々の具体的の場合に考えられることであって、時を異にし、今後の防衛計画の整備とともに、その期間がどうなるかということは、これは一がいに判断できないだろうと思うのでございます。でありますから、御引用の点は実は十分承知いたしませんから、私としては今申しましたようお答えをするほかはないと思うのでございます。
  352. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 岸さん訪米の話の中に三カ月という話が出なかった、こういう御説明はそれでけっこうです。今お話の中に出て参りました、日本が侵略を受けるような場合には国連軍の発動があるだろう、国連による保護というものが考えられるだろう、そうして、そのことを考えて国防計画を立てていくのだ、こういうお話でありました。それではその点について伺いますが、国連軍の援助、あるいは国連による何がしかの措置があるまで、その期間をどのくらいにお考えになり、何カ月日本を守っていけるという自信がおありですか。これは現にあなたの率いておられる軍隊の問題ですから、御存じだろうと思います。
  353. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまのは仮定の点が多いと思います。どの程度の侵略が行われるかということによって期間は非常に違うと思います。その前提がきまらぬで一カ月しか持たないとか二カ月しか持たないとか、あるいはそういったような集団安全保障の力による防衛の協力というものがどの程度にくるかという問題、これは一に具体的のその事態に応じた問題であろうと思うのでございます。しかしながら全体として今日の防衛の実力においてはそうあまり長くないということだけは抽象的に言えるだろうということが、私は適当であろうと思うのでございます。
  354. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 あまり長くないというお話ですが、それは幾つかの段階に分けてお答えをいただければけっこうであります。いわゆる全面戦争にも匹敵する全力を傾けた日本への攻撃、こういう場合もありましょうし、部分的に、一部分に侵略を加えてくるという形も想像できます。   〔委員長退席、保科委員長代理着席〕 そういう幾つかの段階を当然防衛庁では想定して現実にその策定をなすっていらっしゃる、こういうことを私たちは聞いております。その幾つかの段階に分けて防衛庁のお考えになっておるものを御説明いただければけっこうです。
  355. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ちょっとお答えの前に一言申し上げることが適当だと思うのです。わが国の自衛力の整備を早くやりたいという趣旨は、これはどうしても平和を維持したい外交政策と非常な関連を持っておる。その点は間違いのないよう一つ御了承願いたいと思うのです。  しかしてただいまお話の事態を、あるいは全面戦争、あるいは極地戦争、こういうように、いろいろ考えられる場合に応じてどういうことが起るかということを考えることは、幕僚当局としては当然の任務だろうと私は思うのです。しかし幕僚当局がこういう案を持っておるということを、こういった場合に申し上げるのは、防衛の責任者としてはどうかと思います。研究は十分遂げておるということで一つ御了承願いたいと思います。
  356. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 こういうところで説明するのは不適当だというお話ですが、今後早く防衛力を整備していきたいとあなた方がおっしゃる。そういうものの予算を審議し、これを可決するということはこの場合だと思うのです。ところがその議会にそれが発表できない。まあ何でもいいから信頼してまかしておきなきい、こういう態度では私たちはとうていその十分なる審議をすることはできないはずです。むしろそれはここでこそはっきりおっしゃって、そうしてそれだからこそこうしなければいけないのだ、あるいはこうすべきだと思う、こういう御意見をつけ加えらるべきじゃないだろうか、こう私は思います。今の日本の自衛隊の段階でこの程度のことを秘密になさるなどということは児戯に類しておると私は思います。どうぞもう一度一つお答えをいただきたい。
  357. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ちょっと私の言葉が足りなかったと思いますが、たとえば陸上部隊を十七万にする、あるいは最終目標としての十八万、あるいは航空機の千三百機、こういった計画の具体的なものについて、これだけあればこれだけの防備というか、あるいは船でいえば護送であるとか沿岸の防備とかいうものができるだろうということは言えるだろう。しかし作戦用兵の部分になると個々の場合によって違うのであって、これはケースが非常に多いと思います。この点については申し上げることは差し控えた方がいいじゃないか。今の防衛計画の上に現われたるそういった装備、人数あるいは機体の数、こういったものに対する所要はどういうわけであるかというその説明は、当然国会の十分なる御検討を願い、また説明することが必要であろう。先ほど私の申し上げたのはこれとは全然別で、作戦用兵の場合についての話である、こういう趣旨であります。どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  358. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうもこの話はいつまでもいってもきっと行き違いでしょう。従って私もその点についてくどくは伺いませんが、それじゃ日本の今持っております海上自衛隊は、どの範囲の護送をすることができるのでしょうか。もっと具体的にという御答弁がきっとあると存じますので、日本とサイパンとの間を十分に護送していくことができるかどうか、これを伺わしていただきます。
  359. 加藤陽三

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。もし不幸にいたしまして侵略のごとき事態が起りました場合には、海上自衛隊といたしましては港湾の警備、内航及び外航の護衛ということを考えておるのでございます。その場合におきまして現有勢力をもってどの程度の護衛ができるかということは、これまたどの程度の船団を護衛することになるかということと関連をいたしまして、非常にむずかしい問題でございます。場合によりましてはサイパンまでやるということになるかもしれないし、場合によっては小笠原あるいは琉球、硫黄島というところになるかもしれません。具体的な問題としてこれを説明することは非常にむずかしいということを御了承願いたいと思います。
  360. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この問題もきっと水かけ論でしょうが、そうすると日本の海上自衛隊は沿岸を警備するということを主力に構成されているのでしょうか。それともたとえばサイパンとかあるいはグアムとかあるいはフィリピンとか、そういうところにまで船団を護送するということを中心に考えておられるのか。あるいは沿岸警備を主力にし、そうした船団護送を副次的に行うつもりであられるのか、こういう点はお答えをいただけると思います。
  361. 加藤陽三

    ○加藤説明員 海上自衛隊の任務といたしましては、港湾の防備、内航及び外航の護衛、それからもしそういう事態が起りました場合においては、一応攻撃を阻止するということを任務として持っております。どの辺に主力を置くかということは、これまた非常にむずかしい問題でございます。たとえば護衛用に作りました警備艦もほかの用にも使えるのでございますから、その場その場の状況に応じまして使用方法を変えなければならぬ。いかなる場合においても護衛に重点を置くのだ、あるいはいかなる場合においても港湾の防備に重点を置くのだということは一がいに申し上げられないのであります。
  362. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 およそ一つの軍隊を作っていく場合には、その軍隊を使うべき主目標というものは当然あるべきだろう、こう私は思います。そしてあらゆる事態に使えるというような大海軍を今の日本が持ち得るはずはないわけです。従ってあなた方が効率的に海上自衛隊を作っていこうとせられる限り、当然その目標を設定しなければならぬ。そうして作らなければむだ使いになってしまうわけです。そこで私は、沿岸の警備に主力を置いて考えていかれるのか、船団護送というような点に主力を置いて考えていかれるのか、この両者いずれかによって軍隊の編成、装備、そういう点も相当違って参りますし、また先ほどお話のありました対潜哨戒機の必要性、こういった問題も出てくるのだろう、こう思うのであります。ところがどっちにも使えるようにとか、あるいはそのときになってみなければわからぬということで、海軍の編成というものをやられたのではたまらない、こんな感じがいたしますがどうでしょう。
  363. 加藤陽三

    ○加藤説明員 いずれに重点を置いてというお話でございましたので、そういうふうな話になったのでありまして、海上自衛隊といたしましては外航及び内航護衛並びに掃海についてその一部を担当すると同時に、主要港湾、海峡の防備をやるということを主目標にして、整備計画を立てておるわけでございます。
  364. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今伺いましたように、向うから侵略があった場合にこれを守る。しかしその守り得る期間は長官のおっしゃるようにごく短期間である。その短期間に国連軍なりあるいは国連の何らかの措置を待たなければならない、こういうふうにおっしゃる。同時にまた内航、外航の警備、こういうふうに海上自衛隊の問題について説明はされますが、サイパンに船団を持っていくことにすら、自信を持ってできますというお答えをなさらない、こういうことがはっきりいたして参りました。もしそうだとすれば、日本の自衛隊というものは当然どこかのひきしの中に入らなければならない。入ってその一役割を果すということ以外にはないということをあなた方が現にお認めになっていることだろう、こう私は思うわけです。それを私たちは先ほど冒頭に、アメリカの世界戦略の一部分を受け持つという形でみずからを生かしていくというあなた方のお考えだろう、こう伺いましたところ、あくまでも自主的ということを強調される。そこで私は少し回り道でしたが、そういうことを幾つか伺ってみたわけです。また元に戻ります。日本の自衛隊はアメリカの世界戦略の一環として、その一部分の役割をにない、そのことによってあなた方のいわゆる日本の本土防衛ということを考えておられるのではありませんか、こういうふうに伺うわけですが、いかがでしょうか。
  365. 加藤陽三

    ○加藤説明員 これは長官からお話がございましたごとく、自衛隊といたしましてはあくまでもわが国の防衛の任に当る、ただしかし、もし万一侵略等の場合がございましたときにおきまして、その態様等によりましていろいろの場合が想定できるわけでございます。建前といたしましては、国防の基本方針にうたってございます通り、将来は国際連合の国連警察軍の有効なる活動に期待をするということになっておるのでございますが、その国連警察軍が有効に機能を果すまでは現在の米国との保障体制を活用するのだというのが建前でございます。これを米国の世界戦略に入っておるとかどうとかいうことは、いろいろ見方がございましょう。しかし日本といたしましてはあくまでもわが国の防衛のためにやる、足らざる場合においては――足らざる場合と申しますのは語弊がございます。国際連合憲章の五十一条には、武力行使がありました場合におきましては、国連の安全保障理事会で有効な措置をとるまでの自衛を認めておるわけでございます。その間の役割を果すのが私は自衛隊であろうと思うのでございますが、その国際連合の警察軍の有効な活動が期待できるまでの間は、現在の米国との保障体制を維持していくということになっておるのでございます。いろいろな御批判はございましょうけれども、私どもは今のよう考えで自衛隊を運用しているわけでございます。
  366. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いろいろなお考えはございましょうけれどもという形で、現実の結果を肯定せざるを得ない御答弁であったように私は思います。そこで日米の安全保障体制、こういう言葉で今御説明になりましたが、アメリカ軍が日本から撤退をしていく、これは現在は主として地上軍でありますが、地上軍が日本から撤退をしていく、こういう場合に当然撤退米地上軍は日本の自衛隊に対して任務の引き継ぎをやっていくわけだろう、こう私は思います。その任務の引き継ぎに関してどのような相談が行われているのか、そのことについて御説明をい九だきたい。
  367. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。アメリカ陸上戦闘部隊の撤退に伴い、その返還する施設等の引き継ぎ、こういった問題は、日米安保委員会においても大体の話し合いはいたしました。具体的に問題として、防衛庁と先方の軍と話を進めているわけでございます。まだ十分具体化してないものもあり、これには相当の時間を要するものと思っております。原則として、返還したる施設で自衛隊で利用し得るものはなるべくこれを利用したい、こういう考え方のもとにこの問題を処理しておる、こういう状態でございます。
  368. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 話が少し行き違っておるように思うのですが、私は別に施設の問題を伺ったつもりではありませんでした。あるいは言葉が足りなかったかもしれません。むしろ私は、アメリカが日本に地上軍を存在せしめた、その任務、役割、そういうものを日本の自衛隊に肩がわりして撤退していくんだろう、こういうふうに考えまして、その間のいろいろな作戦的な打ち合せをおやりになったかどうか、こういうことを伺ったわけです。
  369. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたしますが、アメリカ地上部隊の撤退に伴って、自衛隊としてどういった防衛上の任務を引き継ぐか、こういうことであったのでございます。これはわが自衛隊といたしましては、いわゆる陸上自衛隊に関する限り、一定の方針のもとにおいて配置の案を持っておるわけでございます。これを実行し、最善を尽して防衛の任に当る、こういうことでありまして、この間に一応いろんな打ち合せをして、こういうことをやろうということについての打ち合せは、今日までのところはいたしておりません。
  370. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 こういうことを伺ったのは、先ほど辻委員からも質問がありましたように、日本の自衛隊の編成の中で、世界の武器あるいはその他の発達の段階から見て、陸上軍を一万名も増員するというようなことは少し時代おくれじゃないだろうか、こういう印象は、すべての国民といってよろしいほど、持っておるのだと思います。ところがここで一万名を増員して、混成団を一つ、空挺隊を一つ、特科隊を一つ、地域施設大隊を五つ、こういうふうに増大したいという希望を持たれているということが、先ほどのお話にありました。こういうあなた方の御希望ういうものは、日米話し合った上で、撤退をしていく米陸上軍の任務引き継ぎの一つとして、こういうことをやっておられるのではないかというふうに私は考えて、このことをお伺いしたわけでありますが、どうでしょうか。
  371. 津島壽一

    ○津島国務大臣 先ほど申しましたように、このわが国の防衛整備計画は、三十五年度にわたって陸上自衛隊の人員を十八万人にする、こういう基本の方針がきまっておるわけです。   〔保科委員長代理退席、委員長着席〕 その中においての実行の第一段階として、まず一万名増員したいという考え方をわれわれは持っておるわけでございます。この一万名の増員部隊は、必要があるかないかということについては、これは一万名だけの問題じゃございません。十八万名にするという案、これは何年かかって、あらゆる場合を想定し、最小限度においてこれが必要である、こういう計画のもとに決定を見ておるものでございます。これについてはいろんな意見もあることと思いますが、基本方針としてきまったこの計画を実行する、こういう段階に参って、われわれはまず一万名の増員をしたい、こういうわけでございます。
  372. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 アメリカの地上軍はともかく帰っていきまして、日本の自衛隊がこれにかわる、こういう形になって参りましたことは事実であります。そこで一体、日本の自衛隊の装備の状況その他をアジアの各国の状況に比べてみますと、非常に違いが出てきております。アメリカは、韓国に対しては休戦協定を破棄いたしまして、原子力支援部隊を送り込みました。あるいは台湾には、マタドールその他の原子兵器を持ち込みました。沖縄にも原子力部隊が存在する、こういうふうに聞いております。こうなって参りますと、日本に対しても当然そういった装備を要求してくると考えられるわけであります。きのうもちょっと、岸さんに伺いましたときに申し上げましたけれども、アメリカの大体の態度としては、その国の軍隊に原子兵器を装備させるか、それでなければ、その国にアメリカの原子力支援部隊を送るか、どっちかの方向でやってきているというのが世界の現実だと思いますが、私の想像では、日本の場合には原子力支援部隊を持ってくるのではないか、そうして数年のうちには、日本の自衛隊に原子兵器を装備させるという方向を打ち出してくるのではないか、こう考えるわけであります。現にあなた方も、そういうものに対応するかのごとく、ナイキその他をMDAPに基いて供与を求めている。これはもちろん実験用の兵器だとおっしゃるかもしれませんが、実験用ということは、将来これを装備するということを前提にして実験用の供与を求めるわけでありますから、いずれにせよ、あなた方がこういったものをMDAPに基いてアメリカに供与を要求されておるという事実を考えましても、将来のことがわかるような気がするのであります。アジアの諸態勢から考え、そして今アメリカが世界中にとりつつあるところの態度考えて、日本にそうした要求がやって参りましたときにも、あなた方はそのことを絶対に拒否できるのかどうか、これはくどいようでありますが、もう一度伺いたいと思います。
  373. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は、委員会等においてもたびたび、政府特に総理に向ってお尋ねがあった点でございます。私は、岸総理のこの問題に対する答弁その通りに信じております。内容はもうすでに御承知でございますから、ただこのことだけを申し上げます。
  374. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 少し話が横道にそれますが、韓国の地理的な状況、それの持っております戦略的な意味、こういうものを考えて参りますと、これは日本の前衛基地、こういうふうに受け取れると思うのであります。韓国と日本、これは決して離れて問題を考えることのできない関係にあると私は考えます。この点について、韓国にすでに休戦協定を破棄してまで原子力部隊を持ってくる、こういう態度をアメリカがとっておりますことについて、日本の防衛庁長官としてのあなたはどうお考えになるか。
  375. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの韓国の場合ですが、どういう御質問の趣旨かわかりませんでしたが、休戦協定を破棄しても核兵器を導入して韓国に防衛をやらしておる、こういうような趣旨だったのでございましょうか、ちょっとその点聞き取れなかったのでありますが、どういう趣旨でございましたか。
  376. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 韓国に原子兵器を持ってくるということは、韓国と日本とが離して考えることのできない地理的な関係にありますので、それの日本に与える影響はどういう結果になるだろう、こういうことです。
  377. 津島壽一

    ○津島国務大臣 韓国の防衛については、韓国の大統領初め政府、軍事当局の見解に基いて私は決定しておるものだと思うのであります。この方式なりやり方がいかなる影響があるかという点がどういった意味の影響であるか、もし今現実の問題としていろいろ質問応答を重ねておる核兵器の導入であるとか、そういった問題の影響はどうかということでありましたら、日本は、先ほども申し上げました岸総理の政府としての方針というものが何ら影響を受ける次第のものではない、こう申し上げるよりほかはございません。
  378. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 沖縄に原子力部隊が来ておるということについてあなたはどうお考えになりますか。
  379. 津島壽一

    ○津島国務大臣 沖縄にどういったような兵器が装備されておるかということにつきましては、いろいろ新聞報道その他において書かれておるのは見たことがございます。しかし果してどういう状態であるかということは、具体的の事実を私はまだ承知しておらぬわけであります。
  380. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 アメリカはアジアにおいてアラスカに一つと沖縄に一つ、この二つの大きな軍事基地を持っておるわけであります。そしてこのアラスカと沖縄をつなぐものとして日本の地位を考えているようであります。もしアジアの防衛ということを考えるというような事態になりますならば、沖縄が中心になりますことも明らかであろうと思います。日本を防衛するとあなたはおっしゃるわけですが、沖縄の問題と離れて日本だけを防衛するということは私はできないだろうと思う。もしそうだとすれば、沖縄にどのような装備が施され、どのような設備があり、どのような部隊がいるかということは、日米安全保障の立場に立ってもあなたは当然知る義務があるし、また向うに対して、それを教えて下さいと言う権利もあるはずです。沖縄における諸状態を知らずして日本を守り得るとあなたはお考えになるのかどうか、この点を伺いましょう。
  381. 津島壽一

    ○津島国務大臣 私として今日まで具体的に沖縄の防備においてそういったような兵器というものがどうあるかということは、まだ正確なる情報を持っておらぬわけでございます。しかし、それがために日本の防衛の責任も全うすることができないというように私は考えておりません。
  382. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 安保委員会でこの点について議題にすることができますか。
  383. 津島壽一

    ○津島国務大臣 安保委員会の議題として掲げられている点は、米国の日本における軍隊の配置及び使用について、その他安保条約に関連して生ずる問題ということに相なると思うのでございます。それで軍の配置、使用という関係から申し上げますれば、日本におけるアメリカの軍というのがいわゆる話し合いの議題になっているわけです。たとえばアメリカのヨーロッパにおける配置はどうかということについてこれは正式の議題にするかどうかということについては問題がある。ただ情報としてどうであるという問題は別だろうと思います。
  384. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 安保委員会を設定いたしました第一の目的は、不平等条約の改定、こういうことを岸さんがアメリカに持っていき、それを目指してやっていくのだということが第一の目的であったろうと思います。そして日本国民が小笠原、沖縄を返してもらいたいという強い要望を持っていることは承知している。一ぺんにはできないから、それを具体的に一歩々々とっていく手段として安保委員会を作ったのだ、こういうふうに総理の御説明があったように私は記憶しておりますが、もし沖縄におけるそういういろいろな問題を少しも議論することができない安保委員会なら、岸さんの御説明とは全然矛盾してしまうのではないでしょうか。こういうふうに考えられるわけです。問題をしぼって伺います。沖縄や小笠原は日本ではないのですか、これが第一です。第二は、沖縄や小笠原の問題を解決することを終局の目的として安保委員会が設定せられたのだとするならば、当然沖縄の今問題になっておりますようなことについても議題にすることができるはずだと思いますが、いかがでしょうか。
  385. 津島壽一

    ○津島国務大臣 非常にこまかい御質問ですが、議題というのは、両国の共同声明にありますように、日本における米軍の配置及び使用ということでございます。この場合における日本とは何ぞやということになりますると、おそらく琉球は含んでないものであろうと思います。駐留軍という意味だと思います。そこで問題は、極東地域における軍事情勢、またどういったような配置になっているかというようなことは、これは議題という、いわゆる狭義の、共同声明に盛られた審議すべき事項といった意味ではなく、全体の情勢、付近の情勢がどうあるかということについては、これは情報の交換として話し合うということは、日米共同体制をきわめて緊密にするという上において必要ある事項である、またそれは可能なことであると思うのでございます。
  386. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと沖縄、小笠原等における米軍の配置、装備、こういう問題についても議題にするかどうかは知らないが、当然安保委員会の中で話し合っていくつもりだ、こうおっしゃるわけですか。
  387. 津島壽一

    ○津島国務大臣 話し合い、情報を得る機会はあると思います。いつやるかとか、そういったような問題は議題の順序もございますから……。
  388. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそういう話し合いをなすっていかれた場合に、沖縄に原子力部隊があるということが判明をいたしましたら――これは来ておりますことは周知の事実でありますが、これに対して日本に原水爆の存在を許さないという岸総理の一貫した指導原理はどういうふうに適用されていくのでしょうか。
  389. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は、そういった情報がはっきりした時分にお答えするのが適当だろうと思います。
  390. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしはっきりしたらこれに対して何がしかの態度をおとりになるものと私は考えてよろしゅうございましょうか。
  391. 津島壽一

    ○津島国務大臣 その問題はそういった場合において検討した上でお答えする、こういうことにしたいと思います。
  392. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 日本に原子力の持ち込みは許さない、あるいは日本の自衛隊に原子力の装備をしない、日本はあくまでも、負けてもそういった核兵器を使わないでいくのだ、こういう一貫した態度をおとりになっていらっしゃいますが、この態度は沖縄、小笠原、こういうところにまで十分に及ばなければほとんど無意味なものじゃないでしょうか。いかに日本の国内にそういうものがないと言ってみましたところで、沖縄に現実に存在しておったのでは世界はこれを認めてくれはしません。またそれは日本の――またきっとあなたの方からあいまいだというお話があるかもしれませんが、日本に対して空よりする侵略、こういう問題が行われました場合にも、沖縄を中心にした戦いになるであろうことはほぼ明確であります。そうだといたしますならば、日本の防衛という点について日本を考えるという場合において沖縄を除外して考えるのはおろかだと思います。その中心点に原子力部隊があり、その他があるということにはっきりした態度が示されないということは、いかに岸総理が日本のこの四つの島の中で力んでみましたところで、何ら世界に説得力のない、無意味な、しりのしまりのない言明にすぎないと私は考えますが、いかがでしょうか。
  393. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は、先ほど私が答弁した通りで御了承を願っておきます。
  394. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もうこういう議論をしていきましてもきりがありません。あとの方の関係もありますから取りやめますが、最近ICBMがソ連において実験に成功した、こういう報道があり、これについて船田さんがこれは世界の情勢に影響を及ぼさないものだろうか、こういう質問を岸総理にいたしましたところ、大勢に影響ない、こういうお話でありました。しかし軍事に関する専門的なあなたの目から見て、ICBMのソ連による実験成功という問題は、相当世界の軍事情勢に影響があるものとお考えになるのか、あるいは岸さんと同じように全然影響力のないものだ、こういうふうにお考えになるのか、これを伺いたいと思います。
  395. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ソ連のICBMの実験の成果、これについては実は私どもの入手した情報では、まだ正確なるデータと申しますか、そういったものがはっきりいたしません。しかしながらこれは兵器の関係では大きな影響を持つであろうことは想像にかたくないのでございます。これに対処して自由国家群と申しますか、アメリカ、英国その他においてもいろいろと手段を講じておるというのが実情だろうと思います。そこでその結果どういうことになるか、まあ専門家のお話を聞きましても、こういった兵器が実用に供されるまで、または量産をなし得るといった時代にいくのには非常にほど遠いのではないかという意見も承わっておるのでございます。しかしそれよりも当面日本の防衛計画上にどういうような影響があるかという点になりますと、これは私は現状においては国防会議の決定した防衛整備計画というものを実現していく、こういう方針を変える必要は認めておらないのでございます。これだけのことを申し上げておきます。
  396. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお説のように、これは相当影響があるものだということについてはだれも異論がないと思うのですが、この場合にアメリカとしては、ソ連のそういう実験が成功をしたという事実に基いてこれに対する対応策を考えなければならないことは当然だろうと思います。そこでそうしたICBMに対抗いたしますためには、当然中距離弾道兵器と申しますか、IRBMとそれからジェット機の基地をソ連の周辺に強化する、こういう方策をとらざるを得ないであろう、こう私は考えます。もしそうだといたしますならば、アジアにおいて日本などはその好適なところであろう、こう考えられるのでありまして、アメリカが日本の空軍基地を強化する、いわゆるジェット機の基地を強化するということと並行してIRBMの基地を日本に設定させてくれ、こういう要求を持って参りますこともほぼ想像できるところであります。こうした場合に、あなた方はどういう態度をおとりになるのか、この点をもう一度伺わせておいていただきます。
  397. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今の今後の推移についてはおそらくいろいろな点から判断された御推測だろうと思うのでございますが、これが直接日本にどうくるかということについては私は現状と変ったものがないだろう、こういう考えを持っております。従って今のようなそれぞれの点についてこうするといった意見をここに申し上げることは差し控えたいと存じます。
  398. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最後に一つ伺いたいと思いますが、これは小さなことですが、アメリカに供与を要求されました誘導兵器、そのうちのナイキということが出ておりましたが、これはナイキの一型でしょうか、二型でしょうか、これは大臣でなくてけっこうです。
  399. 小山雄二

    小山(雄)説明員 先般、昨年でございましたが、要求しましたのはナイキ一型でございます。
  400. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 けっこうです。
  401. 相川勝六

    相川委員長 西村力弥君。大体十五分程度に願います。
  402. 西村力弥

    ○西村(力)委員 最初に自衛隊では世界の軍事情勢を分析していろいろその対策を研究しておられると思うのですが、そういう軍事情勢の情報というものの入手方法、それはどういう方法をとっておられるか、それをお聞かせ願いたい。
  403. 加藤陽三

    ○加藤説明員 これは防衛庁としては大へん大事な仕事でありまして、あらゆる可能な方法をもって入手しております。
  404. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ただいまの答弁は少しわれわれを侮辱しておるような工合の印象を受ける。あらゆる可能な方法をもって入手する、それだけでもって国会の答弁は至れりとあなた方はお思いでございますか。そういう答弁はちょっと受け取りかねる。もう一度御答弁を願いたい。
  405. 加藤陽三

    ○加藤説明員 言葉が過ぎたかと思いますが、公刊の資料その他によりまして調査いたしますことはもちろん、またその他あらゆる可能な方法をもって調査をいたしておるわけであります。
  406. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ただいまは言葉が少しプラスになりましたけれども、内容的に何ら変らない。そういうことを私はお聞きしておるのではない。国会でいろいろ具体的に問題を研究する場合においてそういう答弁で審議ができますか。これは委員長はどうお考えですか。なおまた防衛庁長官は国会議員の立場を持っておられる方としてただいまの答弁に対してどうお考えになるか、委員長と長官とお二人の見解をお示し願いたい。
  407. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。直接防衛庁の機関としてはワシントンその他の地域に駐在武官がおるわけであります。その他幕僚方面においては情報収集の機構を持っております。これは機関でございます。どういった方面から情報を集めるか、こういうことになりますと、これは相当最近は軍事に関した情報の機関も海外等にあるようであります。私どもの専門ではありませんが、そこらの刊行物、その他あらゆる面から情報を収集しておる、こういう状況でございます。
  408. 西村力弥

    ○西村(力)委員 長官に対して私がお答え願ったのは、先ほどの加藤防衛局長の答弁を国会の答弁としてあなたは認められるか、こういうことをお聞きしたのです。御無理なさって専門外にわたるようなことをあなたに御答弁願おう、こういうわけではないのです。ただいまの御答弁でそれは確かに不足だ、こういう工合にお考えになられて具体的にある程度お答えになったんだろう、こう受け取りますが、防衛局長に、ただいま大臣がせっかくそういう工合に具体的に話を進められたのですから、先ほどのような答弁でなく、なお一段と長官の答弁にプラスをする具体的な御説明が願いたい。
  409. 加藤陽三

    ○加藤説明員 軍事情報の集め方につきましては、先ほども長官の御答弁にございましたごとく、各種の軍事関係資料を盛っております公刊物等につきましては、これは可能な限り集めております。在外公館からの報告もわれわれの参考にいたします。そのほかに特に軍事に関して特別の知識を持っておるというふうに認められる方々からの情報も集めます。その他合法的にしかも許され得る可能な範囲で情報の収集に努力しておるのでございまして、どういうソースから、さらに具体的にどういうふうな集め方をしておるかということは、一つ御容赦願いたいと思います。そのことが頭にありましたので先ほどのような答弁になったのであります。
  410. 西村力弥

    ○西村(力)委員 御容赦を願うというそういうことは道義的に言われるのか法的に言われるのかどちらでしょう。
  411. 加藤陽三

    ○加藤説明員 一般的に申しまして、情報の集め方につきましてはそのことを口外することによりまして、次のの情報を集めることがむずかしくなる場合がございますので、国会の御審議もございましょうけれども委員の方々の御良識に訴えましてその辺で御容赦を願いたい、こういう意味でございます。
  412. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そのいろいろな情報収集のニュース・ソースといいますか、そういうものの一番大きなよりどころはどこですか。一番効果的だというか最も重視されているというふうなところはどこですか。
  413. 加藤陽三

    ○加藤説明員 各種の情報の集め方がございますけれども、やはり情報というやつは信用できるものも信用できないようなものもあるのでございまして、ある場合にはこの方の情報が正しいと思う場合もございますし、ある場合にはこっちの方の情報が正しい場合もございます。その当時のわれわれの受け取りました情報によりまして、総合的に判断をいたしまして決定する以外にないよう考えております。
  414. 西村力弥

    ○西村(力)委員 個々の情報については、その信憑性の判断はこれは当然なさるでしょう。しかしながらそういう情報が一番よけいに来る、しかもそれが一番信頼性がある、こう認めてそこのところに力を入れているところが確かにあると思う。それはないはずはないと思う。合法的な刊行物なんといったってそれはどうにもならないことじゃないか。それほど現在の情報収集は世界的に甘いものじゃありませんでしょう。あるいはまたアメリカに駐在の武官がある、こういいまするけれども、そういう人が自力で集めるような情報なんというものはおそらく大したことはない。そこらはそう考えられる。ですから、もっとやはりちょっと言いにくいと言われる方向の方がむしろ重視されている、こういう工合になるのじゃないだろうか、それは確かにそうだろう。それに基いて新旧とりまぜた軍事知識をもっていろいろと判断をなさっていらっしゃるのじゃないか、こう思うのです。一体そこの重点はどこに置かれるか。今言われたことは合法的な刊行物とかあるいは軍事専門家の意見、あるいはアメリカの駐在武官の情報、こういうことを言われたが、この三つも、これはほんとうの情報の出場所ではない。こんなところからくる情報なんというものはこれはつまらないものであるとぼくは思う。そのほかという、その他というところを、午前中もだいぶその他では論議になったのですが、そういうところがむしろ大事なところではないだろうかと思う。その他はどういうところです。
  415. 加藤陽三

    ○加藤説明員 そのその他が実は困るのでございまして、まあ公刊の刊行物とか防衛駐在官の報告とか、これらのものも相当価値がございます。しかしこれを裏づけるものがやはり大事なのでございまして、その裏づけるものにその他のものを使う場合が多いわけでございます。どちらが大事か、そちらの方が重点じゃないかとおっしゃいますけれども、必ずしもそうも言えない場合もございます。そちらの方でなるほどわれわれの知らなかった、非常に貴重なことが得られるということもございますが、そうでない場合もありますので、どっちが重点かというお尋ねは非常に私ども答弁に苦しむのでございます。
  416. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その他はどうしてもこの次から情報がストップすると困るからあとは勘弁してくれ、こういうことになるのですか。それでは先ほどから飛鳥田委員から自主防衛の問題が出ておりまするが、やはりそこにも一つの自主防衛言葉のごまかしがある。私たちはそう言わざるを得ないわけなんです。  それじゃ次にきょう大臣はスタンプ大将をお迎えに行かれたそうですが、あすはその御大を迎えての日米の安保委員会ですか、これがあるわけですが、この安保委員会は昨日の委員会においても相当重要性を持ち、また日本国民の相当の期待にこたえる機関であるがごとき答弁がございました。それであすその会議に長官が出られる場合にどういう議題を提出せられるか、この前はマッカーサー大使なんかとやあやあと握手をされたよう状態じゃなかったかと思うのですが、今度はやはり第二回であるし、また向うから最高責任者が来ることになるわけなんですから、こちらとしても向うの出方、あるいはこちらの出方、そういうものに対しては十分なる準備がおありのことと思う。あすの安保委員会に何を持ち出されるか、それを一つお聞かせを願いたい。
  417. 津島壽一

    ○津島国務大臣 明日は第二回の日米安保委員会開催の予定でございます。時刻は午前十時ということになっております。ただいまの御質問中に、きょう私がスタンプ司令官に会っただろうというお話がございましたが、実は今朝来閣議また当委員会のためにまだお目にかかる機会を得ません。  第二には、明日の議題ともいうべきものは何であるかという御質問であったように思いますが、実はきょう午後外務省側とも十分私は打ち合せをしたいと思っております。きょうはまだ午前午後にわたってその機会を得なかったわけでございまして、ただいまこういうことについて話し合う、協議するということは、まだ私としては確定しておりません。きよう御承知願います。
  418. 西村力弥

    ○西村(力)委員 長官がスタンプ代表と会われることは、きのう何か理事会の話があったとかということを耳に入れておりますのでそういうことを申し上げたわけでして、それが誤まりであれば、その通り私の思い違いでありましたが……。
  419. 相川勝六

    相川委員長 なるべく簡潔にお願いいたします。
  420. 西村力弥

    ○西村(力)委員 あすそういう準備不足のような形で出られることは、私たちは非常に意外に思うわけなんです。あすの安保委員会に対しては、岸総理の渡米の大きな成果と宣伝せられ、またきのう来の委員会における岸総理の答弁、そういう点からいって、この委員会において討議されることをかくあれと願い、あるいはまた漠然とでも期待を大きくしておる、これは国民の偽わらない気持ではないだろうかと思う。それに対して、今もってこちら側から何を出すか、あるいは向う側はどういう工合に出るかという分析、そういうようなことも何らなさらずに出られるというようなことは、われわれとしては非常に裏切られたような、意外な感じがするわけなんです。そういう感じで今の御答弁をお聞きしたのですが、先方の出方、あるいはこちらの提案しようとする一最後的に外務省と打ち合せができていないにしても、そういう予定の問題がおありでしたら、この席でお知らせを願いたいと思う。
  421. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。あしたの議題は何にするかという具体的な決定は、まだ私は承知しておらぬということを申し上げたのでございます。しかし私の答弁に多少足りないところがあったと思いますから申し上げますが、何らの準備もなしに会議に臨むのではないかというような点がもしおありであれば、そういう趣旨ではございませんで、日米安保委員会設立以来、あらゆる問題について内部的には十分検討をしております。その意味においては準備はあると申し上げても差しつかえない問題でございまして、まだ何をやるかということを確定してないということは、何ら用意がないという趣旨にはどうぞお取りにならないように願いたい。明日の協議の具体的な項目は何であるかということについては、まだ私は確定したものをここに持っておらぬという趣旨でございます。
  422. 西村力弥

    ○西村(力)委員 あすの議題は、正確にはきまらぬでしょうが、しからばそういう議題はどういう方法できめられるものか、双方で事前に予備会議ようなものを持っておるのか、あるいはその席になってから双方で議題を出し合って協議した結果、議題をまとめて話し合いに入るという工合になるのか、いかがなんですか。
  423. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまのは、日米安保委員会の事務の運びのやり方はどうかということに帰するようでございますが、これはあの機構発表の際の声明といいますか、発表文にもありますように、大体外務大臣が主宰して、また外務省と日本にいるアメリカ大使館というものがよく連絡するということになっているわけでございます。私自身としては委員でありますが、希望は外務省に申し上げたことはございます。またその話し合いの経過においての報告もあるわけですが、そういった事務一般のことは、外務省、日本の米国大使館当局、こういうものがいろいろ打ち合せをするということで、これも会議の直前まできまらぬこともいろいろあると思います。そういう趣旨でございます。
  424. 西村力弥

    ○西村(力)委員 正式な議題がきまらない、外務省との打ち合せができてないといたしましても、防衛庁側としてもやはりこの委員会に付すべき案件というものについては寄り寄り協議せられて、もう相当の結論を得られていると思う。そういう点についてはどういう結論を今出されているか。きしあたってまずこれを防衛庁としてはあの委員会で協議するのだ、こういうことがあるはずでございます。それはどういうことでございますか、お聞かせを願いたい。
  425. 津島壽一

    ○津島国務大臣 たびたび申し上げまして恐縮ですが、具体的にこの問題をどう取り扱うかということは、あしたの会議については、私は今晩あるいはこの委員会終了後に具体的に打ち合せたい、こう思っております。問題はいろいろあると思いますが、他の問題との関係でこれを先にやったらいいだろうというようないろいろな意見もあるかと思いますので、今この機会に、これをやろうと思うというようなことは、そのいろいろの協議の結果を待ってきめたいと思うのでございます。そういうふうな手続になっておりますので、どうぞ……。
  426. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私の言葉が足りませんでしたが、今申したのは、あすかけるものを防衛庁は何を考えているのかというんじゃなくて、この委員会が持たれた限り、その委員会において協議したい、こう結論づけている防衛庁側の案件があるだろうと思います。それをお示し願いたい、こう申し上げているので、あすかけるか、かけないかということを問題外にして……。
  427. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御質問の趣旨はよくわかりました。防衛庁として当面の問題となっているのは、アメリカ陸上部隊の撤退という問題でございます。この問題につきましては、前回の会議においてもいろいろ意見を交換し、協議したのでございます。まだその問題が全面的に処理されたという段階ではございません。これが一番当面の問題でございます。
  428. 西村力弥

    ○西村(力)委員 アメリカ軍撤退に伴う問題といいますと、その基地の返還あるいは労務者の対策、そういうふうなことだとするならば、これは調達庁関係が主になる。防衛庁が米軍撤退に関する問題を協議したいという限りにおいては、そういう問題とはちょっと違うんじゃないですか。それは調達庁担当の関係になるんじゃないか。だからそれはアメリカ軍撤退に伴って防衛庁でぜひ協議したいという問題は、労務者の問題なんかと違った別なものだろうと思う。それは私ちょっと予測はつきますけれども、はっきりしませんので、米軍陸上部隊撤退に伴う防衛庁側として協議しなければならない問題、それを具体的に詳しく申していただけばどういうことなんですか。
  429. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの撤退の関係は調達庁の関係のことではないかと思うわけであります。これはそれに非常に関係の深いことであります。そういう撤退と設営等について今後の利用という問題になりますと、これは防衛庁の大きな関係でございます。現に共同使用している部分もある。また今後自衛隊の整備計画に伴って必要とするものもございましょう。これは調達庁としてはどこにこれを使用きせるかという問題は、やはり権限外の問題でございまして、そういう意味において防衛庁は重大な関係がある、こういう趣旨でございます。
  430. 西村力弥

    ○西村(力)委員 米軍が帰られたあとの基地を自衛隊が使うかどうかという問題は、お帰りになる米側と協議しなければならぬということはないのじゃないか。それが国有地であれば政府の間において相談する、民有地であれば再度それを買うなり貸付なりする交渉に移す、そういうことであって、これは協議会にかけらるべきものではないのじゃないか。施設返還に伴う自衛隊使用を可とするかどうかという問題はちょっと関係がない。共同使用、米軍が使用するのを共同で使用きしてもらう、こういう姿であれば協議も必要ですけれども、撤退されたあとの基地というものは、無条件で返還してもらえばそれでいい。あとの使用は国内問題ということになるのじゃございませんか。今の御答弁ちょっと了解しかねるのですが。
  431. 津島壽一

    ○津島国務大臣 設営等の返還の時期、その他は今後の計画に重大な関係があるわけです。そういう意味においてはその時期また方法その他はいろいろ協議してやる。先方でいえば配置の問題と関係しているわけであります。これは返ったものはみなどっかに適当の処分をするという簡単な問題じゃなく、時期の問題に関係が深い。時期によっては労務関係も非常な影響があるわけです。どうかさように御了承下さい。
  432. 相川勝六

    相川委員長 西村君に御注意しますが、予定の時間も来ましたし、あとの質問者もありますから、六時までですから、きまった通りにやってもらいます。
  433. 西村力弥

    ○西村(力)委員 今のお答え、その通り受けましても、そうしますと、ほんとうに事務的な問題にとどまるような工合に聞える。安保委員会というものが、そういう事務的なものだけに重点が置かれるということになれば、非常に裏切られたような感じを持ちます。その点はそれで打ち切りましょう。  次にこれは少し具体的なこまい問題になりますが、茨城県に百里原という軍事基地がある。そこの開拓農業協同組合が共同所有地を持っておった。それで防衛庁が売買契約を結んだ。その開拓農協が総会を開いて、売却を総会の決議として決定したことにも、いろいろごまかし的なものがありまするが、もっと皆さん方に聞いていただかなければならぬ問題は、そこの農地はまだ成功検査が終っただけであって、農林大臣の許可を受けなければ、その農地を他に転用することがてきない、こういうことになっておるのです。それをその農地転用の許可が出る前に、東京建設部ですか、関東建設部ですか、そこで農林大臣の許可が出る前に売買契約を調印しておる。これが国家の公務員でない私的な場合においては、そういうことなんかもある程度許されると思うのですが、国の公務員がそういう法にはっきりと規定されておる、農林大臣の許可を受けなければ転用できないというそういう条文を知ってか知らずか、とにかくそれに反して売買契約を結んだということは、重大なる責任上の問題であると私は思う。最も法律に忠実でなければならない公務員が、そういうことを平気でやるということはなかなか許しがたいことではないかと思うのです。この事情については十分お知りかどうか、当然知っていらっしゃると思うのですが、その処置はどうなされるか、私たちはそういう法に反した契約は無効であるということを考える。そしてまたそういう法を無視してやるよう公務員には、相当の処断がされなければならないのじゃないかと思うのです。その点について担当者の御意見を確答願いたい。
  434. 小山雄二

    小山(雄)説明員 お説のように農地法七十三条にあります農地売買につきましては、農林大臣の許可を必要とするわけであります。許可がなければ転用できないわけであります。今回いたしました契約は当然その許可があることを前提として、効力を生ずるという条件ずきの契約でございます。後に許可を得て効力を発生したと考えております。この解釈につきましては、農林省当局とも十分了解を得ておるつもりでございます。
  435. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ただいまの答弁がその通りであれば、まだよほど了とするところもあるのですが、あとになってつけ加えたところがある。許可を得たならばこの契約の効力は発するという、こういう契約条項にはなっていないはずです。農林省とも十分連絡されたというが、私が農林省に先に連絡して、農林省の農地局がその書類を調査して非常に憤慨した。私は地検に行きまして契約書を一つ私のところに出して見せていただくことを要求しましたけれども、本庁の方と連絡した結果、それは見せられないということであって、から戻りしました。それは見る方はどうかといったら、先方の契約書――相互に持っておる乙なら乙、あそこの組合長の持っておる書類によって知ることができた。その点はそういう工合に書類を出してもらいたいと思う。  最後に加藤防衛局長に那珂湊の爆撃方式、あれを専門的に教えてくれと言ったのですが、御研究ができましたかどうか、一つお答えを願いたい。
  436. 加藤陽三

    ○加藤説明員 昨日はつい連絡ができませんで、本日の朝役所に参りまして、担当の者を探したのでございますが、つかまりませんでまことに申しわけありませんでした。
  437. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは後日また……。
  438. 相川勝六

  439. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは時間がおそくなりましたから、簡潔に二、三の問題を伺いたいと思います。  先ほど同僚議員の飛鳥田君から、ソ連のいわゆるICBMの実験成功の問題について聞きましたが、まだ何ら情報を得ていない、こういうような御答弁でしたが、私は防衛庁当局としてはきわめて無責任なのんき過ぎる答弁だと思う。ソ連の発表については、いろいろ政治的なものがあるという解釈をしたり、実際よりは誇大に宣伝的なものを含んでおるという解釈をしたりする側のものもありますけれども、しかし大体世界の識者の見るところは、まるっ切りないことを言っておるのではなかろう。ある程度成功したんであろう、成功したことは事実であろう、こう見ておるのが一般の常識であると思う。日本は、もうしばしば岸総理大臣が答弁しておるように、いわゆる自由民主主義陣営、アメリカ側の陣営に立っておる。世界は今日米ソが大きく対立しており、その対立しておるアメリカ側に立っておる日本としては、ソ連の武器の発達あるいは軍事情勢というものに無関心でおれないはずなんです。新聞に発表されたこともまだよく承知していないなどということでは、私はあまりに無責任過ぎると思う。新聞に発表される前から相当の情報をつかんでおるのが当然だと思う。私はあのような答弁では満足できない。そこでさらにつけ加えて聞きますが、伝えられるところによると、ソ連ではすでに数年前にいわゆる中距離弾道弾の実験に成功して、今日すでに量産の時代に入っておるということだが、この問題をも含めてもう少し責任のあるしっかりした答弁を伺いたいと思う。
  440. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答え申し上げます。先ほど私の飛鳥田委員に対する答弁があるいは多少足りなかったかと思います。私はICBMの実験が行われたことを新聞でも見ないと申し上げたつもりではないのです。のみならず、防衛庁といたしましてはこの問題に非常に関心を持って、長い間研究を続けてきておるわけでございます。今回タス通信によって伝えられる実験の内容は、あるいはその距離において、またその他のデータにおいてはっきりしたものが出ておらぬのでございます。成功したという意味だけだったのであります。軍事専門家からいえば、あの情報では十分なる内容を把握することができないというのでございます。これはその後あらゆる面から検討を加えておりまするが、仰せのようにソ連においてIRBMというものの実験に成功したというような情報も出ております。今回の分が果して量産可能であるか。今日まで伝えられたるいろんな情報からいえば、おそらくこれが実現を見るのは一九六〇年であろうというのが、各方面の軍事専門家等の推測であったわけでございます。それが急に今回の発表となった。しかしてその内容が、軍事上の観点からいって最も知りたい事実というものは発表にない、こういうのが事実でございます。そこで、先ほども御質問にあって、あるいは不完全なことであったかと思いますが、この影響がどうであるかという問題についても慎重に検討をいたしておる次第でございます。
  441. 島上善五郎

    ○島上委員 それではアメリカについて伺います。これも伝えられるところで私どもには的確にわかりませんが、アメリカにおいてもいわゆるIRBMはすでに実験に成功した、あるいは量’産に着手したとも伝えられておる。またソ連の実験成功発表後にアメリカもそれに近いような発表をしておるのであります。アメリカについては、日本はきわめて密接な関係を持っておるし、先ほど情報をどうして入手するかといった際の話にもございましたが、日本はアメリカについてもっと的確なものを承知しておるはずだと思いますので、その点を伺います。
  442. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。アメリカ側においても、御承知のように中距離BMの実験は相当の成果をあげられたという事実のようでございます。アメリカの場合について特殊の情報があるかという御質問であったと思いまするが、私の関する限りはまだ具体的なこまかい情報を得ておりません。
  443. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの御答弁からも判断されるのですが、IRBM、いわゆる中距離弾道弾は米ソ両国において実験に成功し、量産にあるいは着手したのではないか、こう想像されますし、また長距離弾道弾も実験に成功したと発表しておりますことが全く根拠のない虚構の宣伝である、こういうのであれば別でありますが、相当根拠のあるものだとするならば、これまた遠からず――遠からずといっても三年か五年かそうこれは簡単に即断はできないと思いますが、いずれは量産されて兵器として実際に使用される時期がくるものと予想しなければならぬと思います。これは決して夢でも空想でもないと思います。そういうことを考えますならば、中距離弾道弾を双方が持っておるというだけでも今までの戦略態勢に次第に大きな変化を来たすものと思いますが、長距離弾道弾の実験に成功したということになれば特に米ソ両陣営の戦略態勢に当然大きな変化を来たすもの、こう考えております。先ほど長官からは軍事的に専門家でないからという御答弁でしたが、この点について防衛庁の中でこういう方面の特に専門家の御答弁を伺いたい。
  444. 津島壽一

    ○津島国務大臣 専門家が今日出席しておりませんので、他の機会に詳細な答弁をさすことにいたします。大体私だけの観点、これはいろいろな影響があると思います。こういったものが両陣営にだんだんできるということは、世界平和のためにまことに悲しむべきことだと思うのです。こういったものが将来実際に使用されるという段階はどうしても防止しなければならぬ、こう思うのでございます。が、そういった問題は別といたしまして、こういったものができ上るといっても、そのために戦争であるとかあるいは在来兵器、陸海装備による防衛が全然なくなるものだという断言はできないものだと思っております。これだけのことをちょっとつけ加えておきます。  今お話の点は専門家からまた御説明することにいたします。
  445. 島上善五郎

    ○島上委員 専門家から承わりたかったのですが、やむを得ません。きょうの朝日は、ソ連のICBMの成功によって西欧側の陣営ではこれに追いつくまで、ICBMが完成するまでの間核兵器の基地を強化するであろう、またIRBMの基地を作るであろう、これはヨーロッパ並びに極東にその基地を強化するであろう、こういうふうに報じております。私どもも当然そうではないかと予想いたします。そうなりりますと、やはり日本にも関連性がある。今日の日本のアメリカとの共同防衛体制あるいは自主防衛体制にも当然何らかの影響を及ぼしてくるものと思いますが、その点についてはどのようにお考えですか。
  446. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問はたびたびお答えしたところで御了解下きるものと思いまするが、日本を爆繋基地にするというような転換がここに起るという影響が、そういった方面に現われるということは全然考えておりません。
  447. 島上善五郎

    ○島上委員 それではこれはさっき武飛鳥田君が質問したものと思いますが、私は少し違う意味で伺います。たとえば今新聞で報道しておるように、アメリカがいわゆるIRBM、中距離弾道弾を現に持っておる。そしてソ連に追いつき、追い越すまでその基地を方々に作る。極東にもヨーロッパにも作る。日本にも設けたい、こういうことになりましたならば、これは岸総理が昨日あれほどはっきり言ったのですから、はっきり拒否すると思いますが、実は先ほど辻委員に対してお答えになった言葉で少しあいまいなところがあったので、心配ですから、もう一ぺん確認の意味ではっきりと伺っておきたい。というのは、先ほど辻委員の質問に対して、日本は核兵器を持たない。しかし相手が核兵器を持って侵入してくる、そうなれば黙って手を上げて負けるしかないわけだが、そのときはアメリカの核兵器の使用によって対抗するのか、アメリカの核兵器の使用を許すのか、こういう意味の質問に対して、そのときはそのときの事情によって云々と、こういう少くとも岸総理が核兵器を日本に持ち込んだり、日本が使用したりすることは絶対にしない、はっきりと拒否する、こうはっきりと言われた言葉矛盾するようなあいまいな御答弁でした。そこで今言った中距離弾道弾の基地をアメリカが日本に設けようとした場合に、これもはっきりと拒否なさる御方針かどうか。
  448. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの最後の御質問の通りでございます。先ほど申しましたのは、日米協力体制において防備の完璧を期するということを言ったのでありまして、即これが原爆基地または核兵器を日本に持ち込むことを肯定した、こういう趣旨ではなかったつもりでございます。
  449. 島上善五郎

    ○島上委員 今お持ちの日本の防衛計画は、昭和三十五年を目標としておることは昨日来の御答弁によってはっきりしておりますが、これは仮定ではありまするけれども、全く予想されない仮定ではないので、もし長距離弾道弾の量産の時代に入って、兵器として実際に使用される時期が昭和三十五年までに、あるいは昭和三十五年以前に、来年あたり来ないということは断言できませんので、そういう事態になりましたならば、今までのようなのんびりした計画ではならぬのではないかというふうにお考えになると思いますが、それでもやはり従来通り方針を変更なさらないつもりですか。
  450. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この問題は将来の推移を見て決定的な意見を出すべきものだと思っております。今日における見通しとしては、今日きめた防衛整備体制というものを完遂する、こういう方針で進みたい、こういう考えでございます。
  451. 島上善五郎

    ○島上委員 それから防衛庁長官にぜひ伺っておきたいんですが、防衛ということについてはいろいろ解釈があるわけです。かっていわゆる兵学者が攻撃は最良の防御なりという言葉を使ったことがあります。日本を防御するには日本の波打ちぎわでは防御は困難である。特に兵器が発達した今日ではそういうふうに考えられる。そこでいわゆる急迫不正の侵略が行われる事態からでは議論の余地はありませんが、行われる危険性が非常にある、こう判断される場合には、先制攻撃を加えることも防御、いわゆる自衛の範囲に属するかどうか、伺っておきたいと思います。
  452. 津島壽一

    ○津島国務大臣 わが国の防衛方針は、直接間接の侵略に対して自分を守るというのが本旨でございます。また治安問題もございますが、これはしばらくおきます。この趣旨が具体的にどう現われるかということの問題のようでございます。しかしながらあくまでも国を守るという趣旨に徹して最善を尽すということにあると思います。いわゆる先制攻撃がいいかどうかという戦略上の問題もありましょうゆしかしながらあくまでもいわゆる自国を防衛する、こういう立場に立って、そこは常識的に判断ができる問題だと思うのでございます。
  453. 島上善五郎

    ○島上委員 常識的に判断できるとおっしゃいましたけれども、これは非常にむずかしい問題でもあるし、また果して防衛であるか侵略であるかということを決する分れ道にもなると思うのです。敵が来てから波打ちぎわで防衛する、あるいは敵の飛行機が核兵器を積んできてから日本の上空で防衛するということはきわめて至難な問題である。これは常識で判断できる。  そこで私が聞きたいのは、急迫不正の侵略がかりに行われるような危険性が濃厚である、あるいはその寸前である、こう判断される場合には、向うが飛んでくる前にこっちが先に行ってやっつける、そういうことも防衛であるかということを伺っておるんです。
  454. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今の仮説の御質問は非常に微妙だと思います。これはこういう場合にはこうすべきだという断定をここにはっきり申し上げることは困難だろうと思うのです。国際連合憲章においても、これは侵略であるか防衛であるかという問題について規定もあるのでございます。それでこれらの国際連合憲章の趣旨に沿うというところによってやるのが適当だろうと思うのでございます。
  455. 島上善五郎

    ○島上委員 はっきりしたお答えができなければまたの機会にいたします。  それでは岸さんがアメリカヘ参りました際に、共同宣言の中に、きのうも引用されましたが、極東に脅威と緊張の存する限りは沖縄や小笠原を持続する、こういう意味のことがございますが、その極東に脅威と緊張が存するという判断は、この文章からすれば、アメリカがするものと私は私なりに解釈しておりますが、しかしアメリカは日本を守ってやろう、お前の方はまだ守る力を持っていないから、おれの方の力を貸してやろう、こう言っておるのでありますから、極東に脅威と緊張が存在するという判断は日本がするのがほんとうではないか。日本の判断で、こちらに脅威も緊張もありません、あるいは緊迫した状態にあるということは、日本がみずから判断すべきではないかと思いますが、この共同宣言の意味は、共同宣言をそれなりに読みますと、どうもアメリカが一方的に勝手に判断するということになるのではないかという解釈もできるわけですが、どのようにお考えですか。
  456. 津島壽一

    ○津島国務大臣 あの共同声明はアイゼンハワーと岸総理との間に、非常に率直なる意見を相当長時間にわたって交換した結果共同に声明したものでございまして、アメリカの発表でもない、また日本単独の声明でもないのでございます。その意味において、そういう情勢がどうであるかということは、これは相互に十分な検討を遂げ、相互いに意見を交換した上で決定をすべきもので、アメリカの判断が絶対だということにわれわれは解釈いたしておりません。
  457. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは脅威と緊張という内容について伺いますが、きのうの総理大臣の御答弁によりますと、脅威と緊張というのは国際共産主義の脅威緊張、こういうよう言葉を使いましたが、そうしますと脅威と緊張ということは、共産主義の思想の脅威あるいは思想の侵入ということも含んでおるかどうか。
  458. 津島壽一

    ○津島国務大臣 単純なる思想が危険であるかどうかという問題は、これは論議の問題になると思います。しかしながらそういう思想を持った国とも国交を回復し、友好関係を結ぶという現状でございまするから、今日の国際関係は、単純に思想を思想として脅威だという段階ではないと思います。しかしながらその思想から出てくるところの国際関係のいろいろな変化、あるいは衝突、いろいろな問題は、これは警戒を要すべきものであり、世界の情勢に緊張を与えるものだと思うのでございます。その観点から先ほど御引用になった共同声明の趣旨が出てきたものだ、こう考えております。
  459. 島上善五郎

    ○島上委員 御承知のように、日本の憲法では思想、信条の自由が保障されているわけであります。日本国民が何主義を信奉しようと自由であります。従って私はある思想が非常に力を得て入ってきたということで、この思想に対して武力をもって防遏するとか防衛するということは、これはもちろんあり得ないことだと思いまするが、しかし昨日来の答弁を聞きますと、そういうふうな広い意味にも受け取れるような答弁だった。ある思想が当然そこから武力侵入が伴う、あるいは反乱行動が伴うというものではないと思う。このごろは共産主義でもいろいろの国によって行き方が違いまして、中国のように穏歩漸進主義などといって、日本の社会党よりももっと穏やかではないかと思われる節きえある。だから共産主義だからその共産主義には当然武力や内乱、暴動行為が伴うものだというふうに私どもは解釈いたしませんが、その点長官はどのようにお考えになっておりますか。
  460. 津島壽一

    ○津島国務大臣 先ほどの私の答弁は思想に対してどうこうという問題でないのであって、前国会の友好条約の締結、承認をごらんになってもわかる通り、共産主義圏の諸国とも最近国交を回復したところが多いのであります。そういう意味で申し上げたつもりで、その申し上げたことがただいまの御質問に対する答弁になっておるかと思いますから、どうか御了承願います。
  461. 相川勝六

    相川委員長 どうでありしょうよか、時間もないようでありますから…。
  462. 島上善五郎

    ○島上委員 もうちょっとと簡単に二つだけ……。この極東における脅威と緊張に関連して、蒋介石が絶えず大陸の反攻あるいは逆上陸作戦ということを呼号している。私どもの承知している範囲では、蒋介石はそれを非常に重要な戦略と申しますか、政策と申しますか、と考えているように思われる。また韓国の李承晩は武力北進統一と言っておる。おれは武力で北を統一するのだ、機会があれば北を武力でもって統一するのだ、こういうことを呼号しているように承知している。この台湾の蒋介石の大陸反攻の行動、あるいは李承晩の武力北進統一といったような行動が現実に現われるとしますれば、それがかえってアジアにおける脅威と緊張を増大するという結果にも、そういう種をまくことにもなると私は思うのです。日本は国際間の協調によって、アジアの平和を保とうということを欲しているわけですから、この蒋介石の大陸反攻、李承晩の武力北進統一ということを行動に移すような場合には、これに対して直接にせよ間接にせよ支持するようなことはなかろうと思いますが、いかがですか。
  463. 津島壽一

    ○津島国務大臣 中華民国政府方針、また韓国政府方針、いろいろ打ち出しているのでございます。しかしいかなる方針を立てるかという問題は、私はその国の自由であろうと思うのです。ただ、一たんその方針が武力に訴えられて――もし政治的の目的がそこにあるとすれば、それは好ましくないことだ。これは国連憲章の上においても現われているし、日本憲法の精神もそこにあると思うのであります。そういった意味で、どういった場合にどうするかという具体的な問題ではございませんが、一般的な方針としては、どうしても平和を保ってもらいたい、私はこういうことを念願するほかないのでございます。
  464. 島上善五郎

    ○島上委員 それじゃ最後に簡単に一つだけ伺いますが、これは違う問題です。新聞の伝えるところによりますれば、自衛隊の募集成績が最近はなはだ芳ばしくない、こういうことを伝えられている。その芳ばしくない理由が一体どこにあるのか、それからそれに対して防衛庁ではどういうような対策を持って対処するかということを伺いたいのです。それに関連して、これはきのうの新聞ですが、短かいからちょっと参考までに読みます。「自衛官の募集には、どこでも手を焼いているが、とうとう「適齢者名簿を作り、かたっぱしから応募をすすめよう」というところが現われた。陸上自衛隊富山地方連絡部がそれで、富山県ではかねてから自衛官の応募成績が悪く、昨年などは全国でビリから三番目。そこで来る二十日にしめ切られる本年度第二次募集には、まず県下各市町村に適齢者の名簿を作ってもらい、これを県または同連絡部に備えておいて、個別的募集をやろうというわけ。もっとも県の方では「この名簿を作るためには戸籍調査をやらなければならないし、また戦前の徴兵制度を思わせるような適齢者名簿を作ることは、行過ぎにならないか」と心配して、あまり乗り気でないようだ。」こういうふうになっておりますが、こういうことも対策の一つとしてお考えになっているかどうか、またお考えになっていないとすれば、こういうことは行き過ぎであるとお考えかどうか。
  465. 門叶宗雄

    ○門叶説明員 私から便宜お答え申し上げます。三十二年度の自衛官の応募成績は、今もお話がございました通り、必ずしも前年度と比較いたしまして好成績とは考えられません。ただいま第一次の一回、二回の募集を終ったところでございまして、一回と二回を通じますと、大体一万一千八百名の募集に対しまして、応募者が五万一千二百六十八名、四・三倍という状況に相なっております。これはいろいろな影響があろうかと思いますが、一面最近における経済界の好況というようなものもあろうかと考えております。これが対策といたしましては、われわれの広報活動をもう少ししっかりやりまして、十分自衛隊の現在の状況を周知徹底させるという方法を講じて参りたいと考えております。現在その方向に向っ努て力を傾倒いたしておる次第であります。  最後にお尋ねになりました富山県の実情につきましては、私まだ承知いたしておりませんので、事実を十分調査いたしまして善処いたしたいと思います。
  466. 島上善五郎

    ○島上委員 承知していないそうでございますが、新聞に出ておりまするから、私はまんざらないことではないと思います。そういうような適齢者名簿を作って片っ端から応募を勧めるというようなことは、私は行き過ぎだと思う。これは長官いかがお考えですか。これで終ります。
  467. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今の事実は官房長が話したように私は承知しておりません。しかしあまり行き過ぎたことはやりたくない。やはりこれは自衛隊の任務というものに非常な重要性を理解して、そして一般の国民の方が協力していただいて、この募集の成績を上げるということにわれわれは努力しなければならぬ、こう思っておる次第でございます。
  468. 相川勝六

    相川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は追って公報をもって御通知することといたします。  なお明日開会する予定の委員会はこれを、取りやめることといたしましたので、御了承願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十二分散会