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1957-04-09 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月九日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 床次 徳二君    理事 福井 順一君 理事 保科善四郎君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君       大坪 保雄君    大村 清一君       薄田 美朝君    辻  政信君       眞崎 勝次君    町村 金五君       粟山  博君    淡谷 悠藏君       井堀 繁雄君    稻村 隆一君       中村 高一君    西村 力弥君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 加賀 正雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 榮一君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  渋谷 直蔵君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 四月五日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として下  川儀太郎君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員有馬輝武辞任につき、その補欠として赤  路友藏君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員赤路友藏君及び片島港君辞任につき、その  補欠として井堀繁雄君及び稻村隆一君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月八日  旧軍人関係恩給加算制復元に関する陳情書外  十二件  (第七一二号)  同外二十八件  (第七四五号)  同外二十四件  (第七八六号)  一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正  する法律案反対等に関する陳情書  (第七一三号)  建国記念日制定に関する陳情書  (第七一五号)  紀元節復活に関する陳情書外十一件  (  第七一六号)  同  (第七二七号)  同  (第七四二号)  旧海軍特務士官及び准士官処遇改善に関する  陳情書(第七三九  号)  伊良潮水道水中機器設置中止に関する陳情書  (第七四〇号)  停止中の旧軍人既裁定者恩給支給に関する陳  情書  (第七四三号)  看護職に対する新給与表是正に関する陳情書外  十一件  (第七四四号)  恩給額調整に関する陳情書  (第七八七号)  地域給制度是正に関する陳情書  (第七八九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  雇用審議会設置法案内閣提出第二八号)(参  議院送付)     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議開きます。  雇用審議会設置法案議題とし、これより質疑に入ります。井堀繁雄君。
  3. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいま議題に供されておりまする雇用審議会設置法案についてでありますが、この法案は、従来総理府にすでに設置されておりまする失業対策審議会を改組するという説明でございますが、私どもとしては、従来の失業対策審議会が、きわめて実際に適合した制度ではないかというふうに考えておったわけであります。  これをことさらに雇用審議会に改組されるにはそれぞれ確固たる根拠があると思うのですが、ただいままでの提案理由説明によりますと、どうも納得しがたい点がございますので、まずこの点を明らかにしていただきたいと思います。一体失業対策審議会雇用審議会との相違はどこにあるかをできるだけ詳細に御説明願いたい。
  4. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 井堀委員のお問いでございますが、従来失業対策審議会というものがございましたが、これは主として失業対策に重点を置いておりますことは言うまでもないところであります。今度保守党内閣が、現内閣のみならず、前内閣におきましても、雇用量増大して完全雇用にもっていくという方針を持っておりましたが、現内閣は一そうそのことを強く提唱いたしておるのでございます。これについては企業経済拡大による雇用量増大ということが前提条件にはなるのでございますが、それだけでは完全雇用の道に持っていくことはできない。それの諸種研究及び審議が必要である。たとえば雇用量増大だけでは労働市場における完全雇用の実施を見ることができないことは、老齢者が御存じのように、二百万人もある、あるいは十八才から十四才までの幼齢人たちが四百七十万人もある。これらの人たち社会保障の面においてどういう方法にしたならば養うことができるか。またこれを社会保障によって養うことができるならば、約六百万人というものが雇用市場から、労働市場から去っていきますから、新しい雇用量がそこに増してくることは当然であります。そういうような諸種の問題を検討して、雇用量増大の基本であるべき産業経済企業拡大というようなこととともに並行していくためには、そういうことがまず大事であると思うのです。それは今社会保障の面だけを申し上げましたけれども、そのほかにおきましても諸種の問題がここで審議せられまして、実際の問題岳どうやったらよろしいかということを解決していかなければならない。それについては雇用わが国における具体的な内容、今申しました老齢者及び幼齢者の問題あるいは職業訓練の強化、刷新、またはオートメーションと雇用関係というような問題がこういうところで審議されなければならないということを考えております。さらにこの機構内容については、委員三十人になっておりまして、前とは同数でありますが、その内容において新たに中小企業代表者婦人関係の人、地方団体関係者等を選任いたしまして、従来片寄っておったものを、今問題になっておるところの中小企業婦人、少年あるいは地方団体という方面からも、総合的に委員を選択いたしまして、漏れのないような世論が反映されるようにいたしたいと思っておる次第でございます。専門委員におきましても、従来より二十人増加せられたのでありますから、各界各層権威者専門委員に選択いたしまして、徹底せるところの審議をいたしたい、かように存じております。  事務の組織におきましても、総理府に定員二名の増加を行いまして、労働省からもそれぞれ送りたいと思っておる次第でございます。  いろいろ申し上げたのでありますが、大略今申し上げましたような内容が必要でありますから、従来の失業対策審議会だけでは不十分でありまして、わが党の政策を具現する一つ審議機関でございますから、われわれはこれを提案して皆様の御協賛によって成立させたいと思っておる次第でございます。
  5. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、従来の失業対策審議会では失業対策が主で、雇用全体の問題にわたって検討するということはどうも十分でないうらみがある。ここには完全雇用という言葉を使っておりますが、今の御説明の中でも、完全雇用という言葉をお使いになっております。なるほど第一条の「完全雇用の達成を目標として」ということでありますならば、従来の失業対策審議会とはこの点では非常に相違するものと思うのです。そこで、私は今の御説明ではどうも納得できませんが、もう一つ、ここにあります完全雇用という考え方について、できるだけ具体的に御説明を伺ってみたいと思います。
  6. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 この間も参議院の予算委員会で、完全雇用定義とは何ぞやということについてお答えいたしましたが、まずそれから申し上げてみたいと思います。完全雇用については、一定定義はございませんけれども社会通念上、失業者最小限度摩擦的失業者範囲にとどめるということが第一であります。現に就業しておる者は、安定的な職業についておる状態であると称して差しつかえないと思います。安定とは、生活、あるいはその他精神上の安定をいっております。また公的機関完全雇用定義——釈迦に説法ですから、申し上げることはどうも恐縮ですけどれも、お問いでございますから申し上げますが、国際連合社会経済理事会定義は、完全雇用とは、失業が、当然認めらるべき摩擦的、季節的要因の影響によるものを最小限度として、その限度を越えない状態である。また国際労働機構定義は、完全雇用とは、失業している人々の割合が小さく、また失業の大多数はわずかな短期間だけの失業をしているということであります。米国の一九四六年の雇用法の定義は、完全雇用とは、失業者最小限度摩擦的失業範囲内にとどめるものとして、現に就業しておる者が安定した就業状態にあり、かつその能力に応じた所得を得ていることができるような状態である、こういうふうに定義いたしておりますが、ここらがやっぱり完全雇用のとるべき道である、すなわち安定する職業について、それが生活上、精神上安定している状態である、私どもはかように思うのであります。従いまして、この域にいくまで政府としては努力しなければならない、かように思っておる次第でございます。
  7. 井堀繁雄

    井堀委員 今完全雇用に対する考え方が、国際労働機関などで使われておりまする用語、特に前の石橋内閣総理大臣ケインズ研究者であるとわれわれ聞いておりますが、このケインズ定義を用いておるのではないかというような感じが今の御答弁でいたしました。この点をもう少しはっきりいたしまして、今あなたは摩擦的失業という言葉をお使いになった。摩擦的失業という言葉は、たしかケインズ定義に発するのではないかと思うのであります。私も摩擦的失業というものがどういう内容のものであるかということは、学問的には研究したことはございません。しかし常識的に理解いたしますのには、季節的にどうしても雇用の完全が期せられない、あるいは労働移動などが自然環境その他の条件で不可能な場合、あるいは現代経済制度のもとにおいては労働の基礎をなす生産財あるいは設備などの雇用との調和がとれぬといったような、今日のいわば自由主義経済資本主義経済のもとにおける不可避的な事実があるわけでありまして、こういう問題を乗り越えて、すなわちそういう諸問題も克服して雇用を完全の姿に置こうという完全雇用というとり方があるわけであります。この内閣が五つの誓いの言葉の中で、完全雇用という言葉を使っておるわけであります。専門家の間には、たとえば今いう経済学者の間で完全雇用という定義を論議する場合と、今のように社会通念に訴えていく場合とは、ニュアンスが非常に違うので、こういったものは非常に大事なことでありますから、まずこの点から明らかにしておきたいと思います。専門的な論議の前に、一般国民完全雇用という言葉をどういうように受け取っておるか、このことが大切だと思いまして、これは前回予算委員会で、政府予算編成に当って、完全雇用というものをどういうように考え予算と取り組んだかということを大蔵大臣にお尋ねしたら、大蔵大臣答弁は、なかなか要領のいい答弁をしております。速記があります。「国民各層にわたりましてできるだけ職場をふやしていく、こういうことでございます。」なかなか要領のいい答弁をしております。この考えは、今あなたの御答弁になったものよりは、はるかに広い考えであります。すべての国民階層就職機会を与える。雇用関係でなくてもいいでしょう。これは国民一般がこういうふうに受け取っておるんじゃないかと思います。今日本雇用の問題は、あなたも言及されましたように、専門家の間で定義されるような雇用問題と現実との開きというものは、極端な開きを生じておるわけであります。学問をせんじ詰めるともっと近くなってくるかもしれませんが、こういう点で政府考え方をもっと明確にしてもらっておかないと——しかも法律に公然と完全雇用という言葉を使用されるわけであります。何もこの内閣永久政権ではございません。どういう政党によって次の政権が生まれるかもしれません。完全雇用という言葉考え方相違がありましては、この法律はえらいものになって参ります。これはどうしても明確にしなければなりません。ことに大蔵大臣予算委員会答弁された、政府完全雇用に対する考え方でこの法案がもしできておるとすれば、われわれもそのつもりで受け取っていかなければなりません。そういう意味でお尋ねしておるわけであります。今言う大蔵大臣考え方とあなたのお考え方は、同じ政府の閣僚ですから相違はないと思うのですが、もう一度この点あとの質問を続ける意味ではっきりいたしておきたいと思います。
  8. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今お読みになられました大蔵大臣の御答弁は、私ども考えているところと違っていないと思います。なお先ほども申しましたように、就業を希望する者が安定する職業につくということ、これは大蔵大臣考えも同じような意味であると思います。でありますから、精神上、物質上、安定する状態のもとに就業希望者が過ごすことができるという状態にまで持っていくことが、私は完全雇用考えであると思います。それで、そういうことは潜在失業者が多かったりあるいは完全失業者が多かったりするんではできませんから、そういう状態が全就業希望者に与えられることを望んでおる次第であります。
  9. 井堀繁雄

    井堀委員 池田さんの完全雇用に対する答弁は常識的な答弁というふうに私は一応解しておるのであります。しかしこの場合、法律完全雇用という用語を用いた以上は、こういうばく然たる考え方では、われわれはこの法案審議することは不可能だと思うんです。やはり考え方というものは明確にしていただいて、そうしてわれわれはそのよしあしを判断するというのでなければならぬと思いますので、池田大蔵大臣のおっしゃるような考え方であるとするならば、これはなかなか重大な問題がある。しかし一方では、この同じ国会でそう答弁しておる以上、違うならまた違うように、もっとわかりやすく、はっきりしなければならぬ。この完全雇用というのは、池田さんがああ言っているような表現の仕方があるなら、定義があるなら、これは法律の中に新しい言葉として定義を書くべきだと思います。響いてないからやむを得ませんから、質問の形で政府考え方や明確に記録に残しておきたいと思います。そういう意味一つどもにわかりやすく御説明願いたい。
  10. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 先ほど大蔵大臣の、お読みになりました速記録がその通りであるならば、私はやはりそれはわれわれの解釈と変っていないと思うのです。そこで、なるほど日本法律の中に完全雇用という文字を今度の雇用審議会設置法案において初めて使ったことは、われわれは提案する当時から存じております。そこで先ほど申しましたような内容において、これを定義づけるべきであるというふうに考えておったものでありますから、先ほど読み上げて、われわれの定義を発表した次第であります。
  11. 井堀繁雄

    井堀委員 一向要領を得ませんが、もう一ぺんそれじゃ読んで下さい。これは大事なことですから、記録にはっきり残しておきたい。完全雇用とはこういう考え方だということをはっきりもう一度……。
  12. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 何べんもおさらいさせられますが、完全雇用については一定定義は今のところない、しかしながら社会通念上は失業者最小限度摩擦的失業範囲内にとどまるものとして、現に就業しておる者は安定的な職業についている状態であると称して差しつかえないと思っております。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたは定義ではなくて社会通念だと言う。社会通念なんてありませんよ、完全雇用に対する社会通念なんてありましょうか。これは非常に重大なことなので、私はこういう法案についてはいろいろな問題があると思うのですが、二つ考え方がこの際問題になると思う。一つは、言うまでもなく日本の憲法にも、また職業安定法の中にも明示してありますように、国民は勤労の義務を一面持ちますかわりに、すべての労働機会を与えるという、日本の国のあり方を規定しておるわけであります。そういう意味では池田さんの答弁は私は符合すると思う。ところが今あなたの御説明によりますと、新しい言葉をまた一つお硬いになりましたが、今まで日本法律用語の中で、摩擦的失業という言葉はございません。あるかもしれませんが、私の図書館を通じて調べたところによりますと、摩擦的失業というものはありません。またこういう新しい言葉法律の中の定義として出されたわけですが、摩擦的失業というものを一体どういうように定義したらよろしいか。
  14. 江下孝

    江下政府委員 摩擦的失業という言葉意味でございますが、正常な経済の発展の過程におきましても、いろいろな理由によって一時的経済的な失業者が存在することは当然考えられることです。どういう場合かと申しますと、たとえば新規商業の勃興あるいはある種の既存産業拡大による雇用増大があります反面において他の種の産業が衰退する、他の種の産業雇用が減退する、あるいはまた同一産業内におきましても、ある企業拡大いたしまして雇用増大いたします反面、他の企業で衰退ないし消滅して雇用が減少してくる、こういう場合もございます。また労働者がある職業から他の職業へ、またある地域から他の地域移動する場合、就職までにある期間を要する場合があるわけでございます。それで、これらの産業の大きな変動あるいは同一産業内の変動労働者移動ということからいたしまして、一時的にどうしても失業しておるという状態の者が相当存在することは避けられないということでございます。これを摩擦的失業という言葉で実は呼んでおる、こういうことでございます。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 言葉使い方でやかましく言うようで恐縮でございますが、これは基本的な事柄に関連を持ってきますので伺うのです。  ところで、今のお話を伺っておりますと、どうも経済辞典などに出てくるケインズ定義を拝借しておるような気がしてなりません。ケインズは御案内のように、三つの失業定義づけて、一つは自発的な失業、他の一つは今あげられた摩擦的失業、そして第三に非自発的失業、こういう言葉を使って、その第三の非自発的な失業を解消することをもって完全雇用、こういう定義を実は下しておるようであります。  こういう定義をここで拝借してやるということであれば、これはまた一つ考え方です、いい悪いはまた議論があるとしても。そうではなくて労働大臣の今の御答弁では社会通念をと、こうおっしゃって、社会通念に対する説明を一生懸命して下さっているわけですが、私どもはまだ勉強が足りぬかもしれませんが、そういう社会通念を耳にしたことはございません。三十何年労働問題をやっておりますけれども完全雇用に対する社会通念というものを耳にしたことはございません。むしろ社会通念の中には、完全雇用といったら一人の失業者もない、働く能力を持ち働く意思を持っておる者はすべて就職できる姿を完全雇用と理解しておる者もある、私はこれが一番多いと思う。今言うケインズのような定義を理解して、その上に立って完全雇用を常識にまで成長せしめておるような社会ではないと私は思う。これは見解の違いだといえばそれだけのことですが、しかし長い間日本労働界のいろいろな問題を取り扱っておりますから、どういうものをずっと積み上げて社会通念というふうにされておるか。これははっきりさせておきませんとえらいことになります。だからさっき私があげた、社会通念というのは働く能力を持ち働く意思を持っておる者に仕事を与えるというふうに解釈して——池田さんもそう解釈して御答弁されておるわけです。  池田さんは最初に前置きをしておられるが、一ぺん念のために去る三月二日の予算委員会答弁なのです。完全雇用というのは一体どういう内容のものであるか、政府のこれに対する見解を伺いたいという質問をしたのです。これに対して第一に答弁されたのは、——いろいろ前に置いておりますが前は略します。「お尋ねの完全雇用の問題につきましては、いろいろの考え方があると思います。わが国におきまして完全失業者、」——ここでは不完全失業者という言葉を使っております。「不完全失業者、こういうふうに二つに分けられております」これは社会通念を言っているのでしょう。「完全雇用とはいわゆる完全失業者の問題だけを意味するのか、あるいは潜在失業者の問題を意味しておるのか、いろいろとりようがございますが、いずれにいたしましてもお話通り、おのおのその職場を持ってもらうということがわれわれの目標でございます。そして今回の予算につきまして、完全雇用に近づく方法として」云々とずっと述べております。そでこれだけでは要領を得ませんから、なお重ねて、一体完全雇用というお考え方を簡単にお答え願えませんかという質問を繰り返したのです。それに対して、「ただいま申し上げましたように、国民各層にわたりまして、できるだけ職場をふやしていく、こういうことでございます。」この点はまとまったのです。これはやはり社会通念一つむきしておると私は思う。   〔委員長退席山本(正)委員長代理着席〕 今労働大臣は、そう速記に出ておれば、私の考えもそれと同じです、こうおっしゃった。それできめてしまうならそれでけっこうです。その一つ考え方、定め方をこの池田大蔵大臣考え方でおきめになりますか。それとも、先ほど答弁を伺っておりますと、非常に違った御答弁だと私は思う。なお、決して言質をとってどうこうというのではありません。大事なことですから、考え方を明確にして下さい。
  16. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それは先ほどから申し上げましたように、今お読みになったことと私の言ったこととはそう違わないと思うのであります。私は生活上においても安定しており、精神上においても安定しておるという状態就業希望者にあまねく与えたい、それが完全雇用考え方だ、こう言っているのです。あまり違わないと私は思うのであります。  もう一つは、この機会に申し上げておかなければならぬと思いますが、先般私はドイツイギリスに行ったのです。そのときまだドイツは東の方からどんどんと人が入ってきまして、労力の足らぬところを補っておったものですから、そう悲鳴を上げていなかったのですが、今企業が非常にふえておる。それで日本からも五百人やることにきめたのですが、この間六十人行って、送っていった人が帰ってきました。よその国から労力を雇い入れなければならないという状況においても、労働人口の一%とか二%の範囲内においてはやはり失業者はあるのですね。それで失業保険が成立しておるのです。イギリスにおきましても失業保険がもちろん昔から成立しておりまして、就業希望者というか労働人口の二%ないし二%半までくらいは失業者があっても、それは完全雇用というふうに言っております。わが国におきましても、今転業可能の二百二十万ないし三百万というものは吸収していくべきものである、こういうふうに思いますが、現在六、七十万というものは、他の国の現状から言うならば、やはり失業者がそれくらいあっても完全雇用と言い得る考え方に持っていかなければならぬじゃないか。そのものが、今の完全失業のところにおる人々が新しい企業ができましても直ちに転用されて普通の能力を発揮し得るかどうかということも、一つの問題になっております。でございますから、やはり私はイギリスドイツ現状において行われておるような社会通念日本においても自然に生れてくるであろう、労働人口が全部就職するということは不可能であろう、こういうふうに思っておりますから、世界でいろいろの例がありますように、労働人口の二%ないし二%半ぐらいまでのものが失業状態にありましても、その域までは完全雇用といえるのだろう、かように思っております。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたはいろいろ答弁をしておられますが、そういうお考えであれば、あるいは池田さんのようなお考えであれば、従来の失業対策審議会で私はかっこうなものではないか、この内容を見てみますと、あなたはさっき多少内容が違うようなことを言っておられたが、それは大同小異です。第一条の名称を変えたというのが何といっても一番大きな変り方で、あとは、三十人の審議会のメンバーをどうするかということは、これは政府の任免するところですから、どう変ってみたところで大したことはない。条文を当ってみますとほかに何も変ってないと私どもは思う。ただせめて変ったと思えば、先ほど答弁の中にもありましたように、失業対策では響きが悪い。完全雇用、何かみんなに希望を与えるような積極的な雇用対策を行えるような響きを与えることは、私は確かに失業対策というより雇用対策といった方が広い感じを与える。しかし私はやはり真実を偽わるようなやり方はいけないと思う。あなたは社会通念とさっきからしきりに言われておるけれども、まだその社会通念は、あなたの認めるように日本には完全雇用というものに対する社会通念というものはそんなに成長していない。これからの問題だと思う。ことに私どもがこういうことを重視いたしますのは、現在の日本雇用状態というものは、あまりにも悲惨です。あまりに混乱から立ち上がることの困難さを承知しておるからなのです。これを解決するということは大きな政治問題であることもいうまでもないのです。よほど力を入れなければ、よほどの努力をしなければこの問題は解決することはむずかしいということもよく承知しておる。こういう問題と取り組むときに、看板さえ塗り変えれば何か明るい希望が持てるようなやり方は、実際からいうと危ないと思う。こんなものはやはり困難だということを国民にも感じさせ、それからこれと取り組む人はなおさらなのです。一方には今までの失業対策雇用対策に変ったから、九百万から一千万に近い不完全労働というものが、潜在失業というものがただちに救われるのではないかという希望を国民はつなぐと思う。ことにこの内閣は五つの誓いの中で、完全雇用ということを——これはその演説の中で完全雇用という言葉を使う程度であればかまわぬですが、これを法律用語に用いる場合にはよほど考えるべき事柄だと思う。どうしても私は納得ができない。今までの失業対策審議会で、この中にも書いてありますように、失業対策審議会失業問題だけを解決するのではなくて、雇用問題を重要な課題に掲げて、雇用問題の解決の過程において失業対策をそれぞれ処理するというふうに私はかなりよくできた条文で成り立っておると思う。今度はただ上へもってきて、失業という言葉を削って、完全雇用という言葉を乗っけたというだけなのです。それで今伺ってみると実質的には何らの変りばえのない、むしろもっといいますれば、ケインズ定義などを引っぱり出してきて、完全雇用という社会通念を逆にくずすようなことになるおそれがあると私は思う。いかがですか。これは昔のままの失業対策審議会ではだめなのですか。その点もう少し納得のできるような説明をしていただきたい。
  18. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今いろいろ御指摘でございますが、響きが悪いとか失業完全雇用を引きかえただけではないかというような御指摘があるのでありますけれども、最初から申し上げておりますように、失業対策審議会ではわれわれの意図する完全雇用の問題をそこまで審議して持っていくということは困難であるということを自覚いたしまして、われわれの保守党内閣目標とする完全雇用の域に持っていくためにはこうした審議機関がどうしても必要であるという信念のもとにこれを提案いたしておるのでありまして、目標を掲げただけで、その目標ですでに完全雇用ができるというようなものではございません。この完全雇用審議会において今後日本完全雇用をするためにはどういう方向にすべてのものを持っていかなければならないかということが十分検討されて、そこで立てられた指針のもとにわれわれは産業経済並びに社会保障その他百般にわたって施策を行なっていきたいという一つの指針をここから出す考えでありますから、そうお話になったような安易な考えで、またそのことを糊塗するようなことでやったものではありません。これでなければわが国完全雇用はとうていできないという一つの指針をここから出すバロメーターであります。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 非常にけっこうな御決意を表明なさいまして、私どもも大いにそういうお考え方を実行に移していただきたいと思う一人であります。そこでなお念のために伺っておきますが、先ほど来何回か繰り返しておりますけれども一向に明確な御答弁がいただけないで困っておるわけですが、今あなたの述べられた、すなわちただ単に雇用対策の問題は現われてきた失業者を解消するといったようなものではない、抜本的に雇用の問題を改めていきたいというお考えのようであります。そういたしますとさっきから言っておりますように、これは御案内の通りこの審議会のメンバーはどういう者が出てくるか知りませんけれども、学識経験者を網羅することになるでありましょう。その学識経験者は全く自由な立場において雇用の問題について研究をし、調査をし、内閣に答申されていくでありましょう。またそれは尊重しなければならぬことになるわけであります。問題はその審議会の性格をこれできめるわけなんですからね。それで聞いているわけなんです。今あなたのおっしゃられるような性格であれば、きっとここに網羅される学識経験者はそういう御趣旨に沿うような方向づけで検討されていくということになるわけでありますから、非常にくどいようですけれども、今あなたが述べられたその決意は申すまでもなくただ単に失業問題を解決するのではない、すべての働く能力と働く意思を持っておる者に対して仕事を与えるような雇用対象を作り上げるのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 その通りでございます。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 それでより明確になりましたが、しかし今までとかく雇用のいろいろな雑音が入ってきたようでありまして、私の聞き方も多少雑音を入れて聞いているかもしれません。たとえば摩擦失業者なんという言葉が出てきますと、その性格が濁ってきます。そういう今までの御答弁、私の質問の中で出たものは雑音として、今確認をいたしましたように政府はすべての働く能力を持つ国民全体に雇用機会を与える、そういう目標のためにこういう審議会を設置した、こういうことが明らかになりました。  そこで次にお尋ねいたしますが、そういたしますとこういうことが起ってくるのです。政府の他の政策は、特に基本的な経済政策は、自由主義経済を貫いておいでになる、自由主義経済を一方で政策に盛り込み、それを実現していこうとすれば、どうしても労働の需要と供給の問題に対しては、これはここでいう摩擦的失業という言葉ではありませんが、そこには摩擦が起ると思う。こういう問題をこの委員会は解決するための立案もできるわけであります。この問題は非常に重要だと思うのです。今のあなたの御答弁によりますと、そういったものに対しても献策してくることになりますから、この委員会は非常に大がかりな委員会です。ですから今までの失業対策審議会の答申とは本質的に異なったものが出てくるかどうか、先のことですが、しかし出し得るということになるわけであります。もっと私の意見を言った方が答弁していただく上にいいと思う。二大政党を指向する場合にいろいろな政策上の違いがありますが、基本的な違いが一番よく目立つものは経済政策です。一方は自由主義経済、一方は計画経済資本主義経済に対する社会主義経済といういき方をしておりますが、学問的にはどうでもいい、現実にこういう呉なった二大政党がある。一方では二大政党の正常な議会運営を育てていくということもこの内閣の大きなねらいになっておるわけであります。その場合にわれわれがこれを審議する場合に——この法律は続いていきますからね。この内閣がこれに諮問する場合と今の社会党がこれに諮問する場合と、おのずから変ったニュアンスが出てくることは当然なのです。ことにこの問題はただ単にニュアンスではなくて基本的なものがあるわけなのです。自由主義経済一般政策の中で盛り上げていこうとすれば、どうしてもこの雇用の問題というものは昔と違って組織労働が前提になっております。未組織労働でも法の精神からいえばそれぞれの影響を受けることになりますが、組織労働の場合におきましては、御案内のように、その組織と経営者との間の協約によって雇用条件が取りきめられるという近代的な建前が日本にも貫かれているわけです。こういう場合における失業問題を中心にして、完全雇用を理想にして、そういうものを解決していくということなら私はやり方はあると思う。しかしそうでなく、最初から完全雇用を目的にして、そういう問題をどう処理していくかという実際上の問題に対する答申を、この委員会が与えるということになると、私は非常な問題にぶつかると思う。もし良心的にこのメンバーが政府の諮問に答えていこうとすれば……。こういう点に考え方をお使いになったかどうか、もしそういうものに対してお考えがあるなら、そういう場合にはどうなされるかというようなことをお考えだろうと思うので、一つ伺っておきたい。
  22. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 この委員会経済計画を立てるところではもちろんありません。しかし経済計画と完全雇用というものは切り離すことのできないものでありますから、経済企画庁が経済計画を立てる場合に、このところで審議検討せられました内容は、経済企画庁の計画を立てる資料として提案すべきものであると思います。それらの資料を経済企画庁は日本全体の経済計画を立てる上に十分考慮に入れて、ここの調査資料というものは完全雇用の方向にいける内容を持っておりますから、それに合せるような経済計画を立てていくべきである、やはりそれだけの調査研究が全うされなければならないと思っております。  もう一点、先ほどお話のありました経済企画庁の経済計画をここで立てるんだという考えは私は持っておりません。やはり経済企画庁の資料を作成するところであると考えております。
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 前に戻ってお聞きしておきますが、失業対策審議会総理府設置法第十五条の総理府の付属機関として設置されております。この場合もやっぱり付属機関として同様に設置されるというふうにもとれますが、もっと権威あるものになされるお考えでしょうか。技術的な問題ですが、この点伺っておきます。
  24. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 局長から答弁いたします。
  25. 江下孝

    江下政府委員 従来と同じ考えでございます。
  26. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、形式も同じだし内容もあまり変っていない。ただ変ったのは先ほど来論議していることである。しかしこのことはさっきもちょっとお尋ねをいたしましたように、本質的には非常に異なったものになるわけです。失業対策でいきます場合には、私は非常に柔軟性があると思う。さっき例をあげたように、それが資本主義経済の政策の上に立った失業対策を諮問しても、あるいは社会主義的な考え方の上に立って失業問題の解決を迫っても、私は答えの出し方があると思う。しかし今言う完全雇用目標にしてこの委員会が運営されるということになってくると非常に問題があるんじゃないか。各国のこういう例は私よく知りませんが、完全雇用を指標にしてこういう機関を設けているところがございましょうか。この点に対して御調査なさっているかどうか伺いたい。
  27. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 アメリカには御承知のように一九四六年の雇用法があるわけでございます。その雇用法におきましては、アメリカにおける完全雇用の達成を目標として掲げてございます。そのための機関といたしましては大統領直轄の諮問機関がありまして、三人の委員からなっております。その三人の委員の下に相当強力な事務機構を設置しております。ここでどういうような経済政策をやるならばアメリカに完全雇用が達成できるかという、例の経済報告書と呼ばれております膨大な答申を国会に提出する仕組みになっております。しかも国会におきましては上院下院を通じまして特別のそのための委員会が設置されておりまして、政府から提案されました経済報告書をこの特別委員会で慎重に審議いたしまして、それぞれの検討をする仕組みになっているのでございます。
  28. 井堀繁雄

    井堀委員 今アメリカの例をお引きになりましたが、ああいう考え方にならってこの委員会を設置したというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  29. 江下孝

    江下政府委員 アメリカが現在雇用法でやっておりますような委員会にそのままならって考えたわけではございません。一つの参考という程度で考えたわけでございます。
  30. 井堀繁雄

    井堀委員 参考になさったということでございますが、アメリカの全体を通じて流れておりますものは、まるで日本の場合と背景が異なっているのです。それから考え方相違があるということよりもっと大事なことは、あの場合にアメリカで完全雇用をやろうとすれば可能な諸条件が成熟していると見ていいのです。またあの答申などを見てもわかりますように、政策上の多少の手心を加えることによってかなりよい結果を生むことのできる具体的な提示がなされている。日本の場合におきまして、今当面して非常に重大だと思いますのは、正確な統計もないわけでございますけれども、近く出てくるでありましょう、一体働く能力とそれから働く意思を持っておる人々に、しかも職安法の目的に掲げてありますように、適材適所に就職機会を与えることが、さっきアメリカの例がございましたが非常な違い、があるのですね。だからこういうものを参考になされたのでありますから——日本の場合においても今雇用労働者の間に転職希望者が非常に多いのですから、さらに就職機会を与えることのできない潜在失業者がたくさんいるわけです。この委員会はこういう問題に対する何らかの答申を迫られてくることは言うまでもないのであります。こういう点からいきますと、アメリカの雇用法の中に考えられているものとは雲泥の違いがあるわけです。この問題はイタリアの場合でも——たとえば西ドイツとはケースが違いますが、西ドイツの場合なんか御案内のように、むしろ熟練労働が足りない、労働の需給関係を解決するためにいろいろな手を諸政策の中で打たれて、ある程度成功したものもあります。日本の場合、この審議会は、もし今あなたの御答弁のように第一条の精神を理解するならば、ただ単に雇用関係だけについて検討する委員会としては何もできないのではないか。これは内閣に置かれるから、各省から資料を提供せしめるあるいは関係者を呼び出していろいろ意見を開陳きせるとかいうことはこれに出ております。この点では従来の失業対策審議会の持つ内容と全く同じだといっていいくらいにかわりばえのないやり方でしかない。もし第一条の問題についてそう明確な主張がなされるとするならば、今当面しております雇用の問題の解決をするというのであれば、スタッフもまた事務局の構成などについてもやはり十分な内容を持ったものでなければならぬと思うのです。そういう点で、従来と同じだという点については先ほど私のお尋ねがちょっと失礼だったかもしれませんが、そういう点から考えてただ看板を塗りかえたというふうにしかとれぬ。そうでないとおっしゃるならば、もっとやはりそういう点に対する積極的な具体的な構想がこの法律の中に出てこなければならぬ、出てこないのはどういうわけでしょうか。
  31. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 先ほどこういうような雇用審議会をよその国でやっているかというお問いがあったものですから、局長以下の答弁はやっていると言ったのであって、アメリカのものを直接輸入して、日本とアメリカの経済状態が違っているものを直ちにアメリカのまねをしてやるというものでないことは御了承願ったと思うのです。今諸条件が成熟してないとおっしゃる、その通り成熟していないのです。そこで失業対策審議会というものは失業対策の問題でありますから、それは裏打ちをするならば雇用と同じようなことではあるが、そういう消極的な考え方ではだめなんだ、もっとわが党政府の政策を具現するためには、こういった積極的な完全雇用の問題に対するバロメーターがなければならない、それがこの審議会である、こういうふうにわれわれは考えております。先ほども前段に答弁いたしましたが、従来の失業対策審議会には中小企業の代表は入ってないのです。また婦人を代表する部面もないのです。あるいは地方団体の代表もないのです。ただ中央の学識経験者が集まってやっているだけであります。でありますから、われわれは今日の日本の国における完全雇用を徹底せしめるためには、何といっても潜在失業者の一番多く存在しておる場所は、中小企業、特に中小企業中の零細産業、ここに潜在失業者がありますから、これらのエキスパートの人々の意見を十分ここに反映せしめて、これらの人々完全雇用にいくためには、国としてはどういう施策をしなければならないか、あるいはこの業界においてはどういうことが要望されておるか、また業界の機構はどう改めていかなければならないかというようなことがここに審議、検討せられまして、そこで完全雇用の道にいくのには、ここから審議、検討されて案出されたエキスは、それぞれの行政、あるいは経済、あるいは産業に向って要求して、それのように行われていくならば、私は完全雇用の素地が新しく生まれてくると思いますから、そういう行き方でやっていこうと思っておるのであります。
  32. 井堀繁雄

    井堀委員 それはあなたがなんぼ一生懸命力んでみたところで、今までの失業対策審議会で答申したものでも、われわれ資料として拝見しております一号から六号までの答申の内容を見てみましても、かなりこれは重要な失業対策事項が、あるいは具体的に、あるいは他の政策との関連性において、かなり懇切な、そうしてよく徹底した内容を盛り込んであると思う。これのうちで実施段階に入ったものは、日雇い労働者の一部に対する問題、それから新卒の問題などに対して多少の動きを見せておるというくらいであって、これだけ膨大な答申が行われておりまして、ことに第五号、六号あたりに出ておりますように、他の経済政策との関連において失業対策を徹底せなければいかぬという答申、これなんかを見てみますと、これは他の委員会でも私ども政府の所信を打診しておりますが、こういう答申を一向に取り入れる形跡すら認められない。特に労働力の需給関係の調整というものがいかにむずかしいものであるかということを指摘されております。基幹産業の例が四つ、五つ出ております。たとえば製鉄のように、国内の需給関係だけではなく、貿易に支配される分量が非常に多いことを指摘しておる。貿易関係があるから自主的な対策だけでは一切の解決は困難だというような点頭で指摘しておる。この失業対策審議会においてすら、こういう広範な問題に言及され、検討されて、懇切な答申を行なっておる。こういう問題さえ政府は一向処理できない。これだけするのによくあのスタッフでやったものだと私ども感心しておる。今度はそうではなくて、広範な完全雇用を目途にして、そして当面している困難な問題にこの審議会を通して一つの解決を迫るような期待が寄せられている。これは三十人の委員をさしかえてみたところで、私はこれ以上の答申を求めることは無理ではないかと思っておる。ただこの法案を通しさえすればいいという考えでなしに、もっと真摯な考えで私はお聞きしておるのでありますから、そういうように目的を大きくされたのであれば、審議会の内容についても、もっとそれに見合うような内容をおつけになるような必要はございませんか。そしてこれに対する予算はどれくらいお見込みになっているか。
  33. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 井堀さんの手元にある答申書の六号の十四ページをお開き願いたい。この六号の十四ページの意味においてわれわれは答申を受けて立っているのです。つまり失業対策の方から読み上げますならば、「雇用失業対策を総合的に樹立し、その実施につき責任をもつ体制を確立する措置を講ずることとし、その一環として、次の事項につき調査審議すべき機構を設けること。1調査事項(1)雇用失業情勢の総合的な把握(2)産業政策、社会保障政策等各種政策の雇用失業に及ぼす影響」ということを指摘されているのです。でありますから、いろいろ御親切にお問いもあり、またいろいろうんちくを傾けられてのことに対しましては、われわれは実行に当って十分考えていきたいと思うのでありますが、こういう機関を設けまして、先ほど申しましたように、日本で一番の失業者をかかえているのは中小企業の陳容ですから、それらの人々の意見も十分聞いて、この審議会が皆さんの御協議を得ますならば、三十三年度以降に立てらるべき経済企画庁の経済計画というものの中に、われわれの雇用に対する意見を十分盛り込んでいきたい、これがまずわれわれの一番直面する問題であります。でありますから、これほど大きな対策が一号から六号まであるじゃないか、これも実行しないうちにさらにこういうものを作ったって、まず答申されたものをやったらいいじゃないかという御議論も十分りっぱな御議論であると思うのです。われわれはこれの足りない点をさらに検討して、前の答申もこの今後できる雇用審議会の答申も合せて、完全雇用の域に一日も早く到達したいというのがわれわれの考えであります。
  34. 江下孝

    江下政府委員 予算は人件費が約百万、諸経費は約二百万、合計約三百万、こういうことになっております。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 意気たるや最初から壮なるものがあってけっこうです。しかし中身はだめじゃないですか。失業対策審議会の名前をかえたんじゃないかと何回も言っている。今予算をお聞きいたしますと一体そんな小さな予算で、日本完全雇用目標にして、雇用政策全体にわたるこれだけ膨大な答申が行われたことも犠牲的な努力があったと思うのですが、内容をもっとそれに見合うものにお変えになるお考えはないかということをさっきから伺っている。抱負をそこで聞かせて下さい、抽象論でなく具体的に。
  36. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 あなたの非常に推賞される失業対策審議会は、百二十万でこれだけ大冊なものをお作りになったのですが、今度は三百万ですから、その三倍くらいありますから、どうぞ御安心願いたい。
  37. 江下孝

    江下政府委員 雇用審議会予算でございますが、実際の審議を進めていきます過程におきましては、これは内閣に設置いたしておりますので、兼務事務官等を各省から委嘱いたしまして、そうして調査等につきましても一体的に各省と行いたい、かような考えも持っております。従って予算といたしましては必ずしも多額ではございませんけれども、運用面では私どもは大きな調査その他を考えております。
  38. 井堀繁雄

    井堀委員 抽象的にはあなたの熱意はよくわかるのです。この失業対策審議会が出されたのは、やらなければこれは悪く言えば作文です。実施されなければ作文ですけれども予算を倍額にすればもっと大きなものができるかもしれません。しかし問題は実施要綱の形になって出てこなければいくまいと思う。そうしますと、これは今の御説明によりますと、各省からそれぞれスタッフを送り込んで、どういう構成でなさるか知りませんが、この法律範囲内でいきますと、この委員会が必要に応じて関係者を呼び出していろいろの意見を求めるという形しか出ていないのです。今局長の説明のようでありまするならば、これは政令に譲るのかもしれませんが、しかし従来の、何回もくどいようにお尋ねしたように、失業対策審議会のあり方というものは、総理府設置法の中で付属機関として作られて、そうして政令で今この法律に書いてあるようなことが、全く同じ意味のことが書いてある。これと同じかと聞いたら同じだとあなた方は何回も答弁されている。それ以上のものでないものに、さっきから抽象的には非常に熱意を込めて日本雇用問題を積極的に解決されようということについては私どもは敬意を表しておる。しかしそれは持ち上らぬのではないか、そういうものに対する熱意のほど——今少し出てきた、各省からスタッフを送り込むというのですが、一体そのスタッフは、このあれでいきますとどういう形でそういうスタッフが常設されるのか、書記か幹事か何かの形で常設されるだけでしょう。たとえば内閣にいろいろな付属機関のための運営の事務局があるようでありますが、いずれを見ても、こう申しては失礼ですけれども、能動的に動けるかまえになっていない。従来の失業対策審議会も、委員のいわば失業問題に対する熱意がある程度促進しておるのであって、機構自身の機能がそういう成果をあげたというふうには私はどうも受け取れない。しかし少くともこういう法律として出す以上は、この審議会自身の機構が能動的にやはりそういう仕事を持ち上げてくるということがなければならぬ。その説明が一向伺えない。そういう点に対する熱意のほどを具体的に一つお聞かせ願いたい。この法律で不十分なものは、こういう形でスタッフを集めるというなら、そのスタッフは一体これは——労働省であなた方が失業問題だけ、日雇い労働者の問題だけでもかなり大勢の人がかかったじゃないですか。失業保険の問題だけでもあれだけのスタッフがかかってなかなか思うようにいかぬじゃないか。こういう雇用の問題をしかも総括的に取り上げていこうというにはよほど大がかりな、そういう点の説明がなければならぬ。何だか熱意だけを伺っても、これは機構が大事なんですから、その点を実はさっきからくどく伺っているわけですが、こういう点には少し時間をかけてもけっこうですから、具体的に一つ……。
  39. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 事務機構の問題でありますから局長からお答いたさせます。   〔山本(正)委員長代理退席、相川委員長着席〕
  40. 江下孝

    江下政府委員 この審議会には実は事務局というものが法律上はないのでございますけれども、私ども考えでは、事実上これだけの審議会でございますので、事務局を設置したい考えでございます。従って実はこの審議会の事務局の構成というのが非常に重要な問題になっておるわけでございますが、労働省から、実は来年度予算で二名の定員をこの審議会の方に回しております。予算的にもこれは措置いたしております。それから従来総理府でこの事務関係されておった方々、さらにこれに若干の人数をふやしまして、そこで相当大きな事務局を設置したい。さらに先ほど私申し上げましたように、関係各省の課長あるいは局長クラスを、この事務局の兼務という形にいたしまして、ここで総合的に諸般の問題を審議する事務を行いたい、かように考えております。なお専門委員につきましては、先ほど質問がありましたのにお答えしましたように、従来は十名でございましたが、今度三十名に専門委員をふやす。これも相当私どもとしては動いていただけるのじゃないかと考えております。幹事にいたしましても、今回は従来の十五名を三十名ということにいたしました。なお予算的には、お話のように必ずしも多額ではございませんけれども、これら梅総合的に一つ考えまして、十分この審議会の機能が動くように努めて参る所存でございます。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 説明を伺えば伺うほど悲観的なお答えしかいただけない。これは答申案にも、労働大臣が御指摘になったように、機構の整備については抽象的にしか書いてない。もちろんこういう審議会というものは具体的に書けない。しかしその内容はきついものなんです。今までの失業対策審議会雇用審議会に変えればいいという意味じゃないことは、あなたも十分おわかりだと思う。機構を整備せよと書いてある。機構の整備についてはあなたが読み上げられた通りなんだ。調査事項に対しても大へん大きなことだ。労働省の統計部だけの協力で、一体これだけの資料が集まるかどうか、あるいは内閣統計局の今取り扱っておる統計が、ここに今希望されておるものを満足させるような資料として使えるかどうかということについては、私の経験からすれば、これは全く新しい資料を付加しながら、従来の統計資料というものを活用していくという以外にないと思います。こういう調査だけでも、私は今聞けば労働省から二人の事務官を送って事務局を構成する。各省との連絡だけでも二人でできるものではない。こういう統計資料を、調査事項を資料としてまとめるだけでも、私はかなり多くのスタッフがなければできぬことじゃないかと思う。これは労働大臣、あなたはこういう問題は答申に忠実であるということの意味のお答えだったと思う。ほんとうはもっとこういう点に対して工夫されませんと、従来の失業対策審議会よりは、こういう運営上困難を生ずるかもしれません。こういう点は十分反省される必要があると思う。私はできるだけこういう機構審議会の答申案の精神に沿うようにされることを期待しておりまして、法律の見出しだけを見て大いに期待して、中を読んでみたところが何だということになる。本来でありますなら、こういうやり方というものは実際やってごらんなさい、弊害を生みます。だからその点はよほど配慮して、予算の流用なり、あるいは機構——ただこの中でちょっと私違うと思うのは、従来第六条の規定の中で、審議会に関する「必要な事項は、会長が審議会にはかって定める。」という自主性を尊重したところはよかったけれども、これは実は何も持たぬわけで、実際はできなかった。今度の場合は政へ下に譲っております。せいぜいここで政令をこの第一条の精神に沿うように活用すれば、そこがせめてもじゃないかと思うのです。予算の問題としては、従来の倍額とか三倍なり、そういう程度では、労働大臣、これはものになりません。その点に対して熱意を込めて、せめて各省のスタッフがそういうところに専念できるよりに、各省の予算の中からそういうことがはみ出すことができるかどうかはなはだむずかしい問題があると思うのです。こういう点に対する具体的な御答弁がなければ、どうも抽象的な御答弁に対して、はてなという考え方がますます深まるわけです。いろいろお尋ねをいたしたいのでありますが、時間の予定もあるようでございますから——私のお尋ねいたさんとするところは冒頭に申し上げましたように、第一条の目的を完全雇用に置いたということは非常に重大なことだと思います。そしてこのこと自体はいろいろな問題をはらんで、現に完全雇用とは何かということについて明確な御答弁が得られなかったほど、また私どもも非常にむずかしい問題だと考えております。そういう問題を目標にして、この審議会を設置されるということは、重大なことだろうと思うのです。せっかくのこういう答申案に基いて何だか看板だけの塗りかえてお茶を濁すというようなことでなくて、このこと自体は日本雇用対策に対して障害になるようなことにならぬとも限らぬ。もっとこういう問題を、私は答申案の精神というものを深く掘り下げて、そして配慮していただきたいという点を十分お孝えをいただくように要望いたしまして、私の質問を終ります。
  42. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 井堀さんのいろいろな御注意に対しましては、実行に当って十分考慮して御期待に沿うようにいたしたいと思います。なお政令の問題についても引用されましたが、これに対しましても日本雇用の完璧を期するという意味において十分考慮いたしたいと思います。  それからもう一点は三百万円ぐらいのものではしようがないじゃないか、御説ごもっともなのでございます。けれども去年よりも、百二十万円が三百万円になったのですから……。  もう一点は今御指摘になったように、先ほどから何べんも答えた問題でございますけれども中小企業の問題なんです。これに対して毎月勤労統計というものは、御承知のように、ほとんど三十人以下のものはとれていないのです。でございますから、本年の予算において御協賛願いましたように、千六百万円、三十人以下の企業体の毎月勤労統計を集めるように心をいたしまして、また五人未満の職場における内容は、三十人未満よりももっと政府は握っておりません。それでこの完全雇用をやる場合において、何といっても五人未満の職場の完全な統計を得ることが必要でありますから、これに対しましても五百三十万円ばかり本年度の予算に計上いたしまして、この両方相まって内閣における統計調査とにらみ合せまして、これを雇用審議会審議材料といたしたいと思っている次第でございますから、先ほど来いろいろと御注意を受けました点に対しましては十分参考といたしまして、本問題の完璧に期するようにいたしたいと思う次第でございます。
  43. 相川勝六

    相川委員長 西村君。
  44. 西村力弥

    ○西村(力)委員 失業対策審議会雇用審議会に直して、強力に雇用向上をはかろうとするようでございまするが、こういう組織変更によって労働省のその雇用向上に対する発言力は一体どういうふうに強化されると考えておられるか、そういう点は労働省としては相当のものを当然持っていらっしゃると思うのです。そのことは逆に申しますると、失業対策審議会においていろいろ検討せられ、答申されたことに対して労働省が熱意を持ってこれを実現しようとする場合において、いろいろな点から障害があって労働省の希望が達せられない。政策全般からくるいろいろな障害があったと思う。そういうものを排除する場合において、こういう組織を変えることによって、どういう強力なる効果の期待ができるか、こういう点については、大臣はどう考えていられるかお尋いたしたい。
  45. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 従来の失業対策審議会であっては、先ほど井堀さんにお答えいたしたのでございますが、完全雇用を実現するためには、雇用量増大すべき企業拡大のみではできない。どうしても社会保障を加味しなければ完全雇用の域に達せられない。ことに自由経済におきましては——今日神武景気といいながら中小企業の不渡り手形が近来にない大きな数を表わしておるということを見ましても、自由経済においては経済が片寄るということも明らかでございます。でございますから、この完全雇用を実現するというためには、先ほど来申しておりますように、毎月勤労統計であるとか、あるいはその他の中小企業現状を直していかなければ完全雇用は実現できないと私は思う。従って政府の政策は、一千億施策におきましても、あるいは財政の投融資におきましても、これが中小企業の経営難というものを救う一つ方法でなければならぬ。結局経済の地ならしをするということが保守党内閣の政策でなければならぬということを考えると、やはりこういうところでどこをどう直したらいいかという政策の立つべき基本を編み出すことが、一番必要であると思いますから、ただ単に失業対策審議会ではそれほどの指針は出せないということで、かようにいたした次第であります。
  46. 西村力弥

    ○西村(力)委員 まあその通りの方向でなければ、完全な解決を見ることは不可能であるということは、私たちはわかりますが、もっと強く言いますと、なかなか現在の保守党政府において完全雇用は不可能に近いのではないか、私たちはさように考えております。それを一歩前進させるためには、ただいま大臣が申された方法をとらなければ前進は見込み得ない、こういう工合に考えるのです。ところでそういう工合に目的を策定いたしますと、委員の人選というものには相当高度な、しかも自由な立場を持たなければならないと思うのですが、学識経験者という今までの考え方、そういう考え方から人選された委員というものは、どうしてもやはり現政府の政策のワク内において問題を考える、こういう者を選ぶということが多くあった。そういう前のやり方というものを踏み越えて、委員の人選ということを相当に考えていかなければならぬじゃないかということを思うのでございますが、そういう点について積極的な、具体的な構想がありますならば、お示しを願いたいわけなんです。
  47. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 現在の失業対策審議会の中にも労働代表が五人入っております。さらに私どもは、今御指摘になりましたように、資本主義の欠点を是正するという意味においても、やはり社会主義的な面の方も入ってもらって、そこで総合的に日本経済はどうあるべきか、また完全雇用にいくためにはどうあるべきかということを、審議、検討することは最も必要であると思いますから、西村さんの意見は人選に当りまして十分に考慮をいたしたいと思います。
  48. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ところで完全雇用ということを大きくうたわれまして、いつの機会にも言われておりますが、ただいも井堀議員の御質問に対しても、言葉はいろいろ並んでおりますけれども、実態的には私たちにはどういう程度のものを完全雇用として見込んでおるかということが明瞭になってこない。それを明瞭にするために、もう少し具体的にお示しを願いたいわけなんでございますが、完全失業者が昭和三十一年度は六十四万人、こういうような数字になっておりますが、その完全失業者というものはどうなるのか、また不完全失業者潜在失業者、そういうものはどこにどう分布しておるか、どれをどのような工合に将来完全雇用完成という場合においては行なっていくか、そういうようなこと、それから幼少の労働者というもの、これを社会政策で排除していく、あるいは老齢労働力というものを社会政策で解決していく、こういうことになりまするが、大体そういうものはどのような数を持っておるか、なおまた老齢の労働力というのは現在年齢も延びてくるし、また経済事情等から労働力としてどんどんとその年令が延びていっている状況ではないかと思う。そうだろうと思うのです。それは一部統計などを見たこともありますが、その限界を大体どういうところに置いておるのか、そういう点について一つ事務的でけっこうでございますので、御答弁願いたいと思います。
  49. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 どこにどういう潜在失業者が散在しているかというようなことは、事務的に答えてもいいということですから、事務の方から答えていただくのでありますが、大略を申し上げますれば、先ほど井堀さんのときに申し上げたのですが、大体六十五歳以上の者が労働市場に約二百万——百九十数万であります。また十四歳から十八歳の労働人口の中の幼齢の者は四百七十万ぐらいであります。また昭和三十一年、三十二年の見通しにおける完全失業者は六十万であります。また転業可能の実数は二百二十万から三百万と、企画庁の方と検討して打ち合せております。その他いろいろありますが、そういう状況でありまして、この審議会はそういったものを材料にいたしまして、その他のものももちろん資料にいたしますが、完全雇用に持っていくためにはどうしなければならぬかということの施策は、この審議の検討によって順次明らかになりますから、それを経済計画なりあるいは労働政策なり行う場合に、個々の審議検討のエキスを資料として立案いたしたい、かように思っております。
  50. 西村力弥

    ○西村(力)委員 一体不完全な立場にある就業者、臨時工、そういうものがどんどんと増加していくような状況にあって、これはこの前行政組織関係の定員の関係法律審議の場合においても問題になったと思いますが、政府部内の臨時工的な者に対して、そういう熱意を持つ大臣は一体どういう立場をもってどういう発言をなされておるか、そういうことが一つの意気込みとして——こういう雇用審議会のような法案審議する場合において、私は大臣の御努力の実績を政府部内における臨時工、臨時職員、そういうものの解決のためにあなたはどういう努力をきれておるか、そういう努力を、まずみずからの位における努力をなされないで、そうして大きく出されましても、それはやはり問題が正当に受け取られかねる、こういうことになるのではないか、これは問題の本質とちょっと違う横道のような質問でありますので、大臣の御努力がありましたらそれをお示しを願いたいと思います。
  51. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 予算編成内容の問題でございますが、私の労働省におきましても約四千人の臨時雇の方がいらっしゃいます。一番多いのはたしか建設省で、一万二千くらいに、現場の着まで入れると、なっているようであります。そこでその他の省にも多少ずつありますが、一番多いのは労働省と建設省でありますので、両大臣が相談いたしまして、建設省の方は一万二千全部でなくても、たしか七千くらいだと思いましたが、それで各省の臨時の者も本給に直してくれということを大蔵大臣に強く要求しました。ところが今年はどうしてもいかぬが、三十三年の予算編成までには一つ十分検討してその数全体を見れるか見れぬかわからぬけれども、ともかく長く臨時雇いとしておられるものを本給に直すことは本年中検討いたそう、こういう言質をとっておりますから、来年は相当日の目を見れる階層が多くなると思います。また総合的に今一般民間における臨時雇が多いじゃないか。それも全くその通りでありますが、これらに対しましても日本経済の発展が、今年度は七・八に見ておりますが、そういうふうに順次経済の伸びが毎年々々伸びていくという傾向にありますならば、自然に解消するでありましょうし、また労働基準局等を督励し勧奨いたしていきたいと思っております。
  52. 西村力弥

    ○西村(力)委員 もう一言でやめますが、失業対策審議会はいろいろ答申を出したようですが、この答申を政府として尊重をして——ずっと答申の何号から何号までとありますが、それについて事務当局からお話を聞きたいのであり戻す。これは非常に長くなると思いますので、もしできるならばこの答申に対してかような個所はかような工合にして受け入れかつ実現したというような資料を配付していただきたい。  そこで今度非常に希望を大きく雇用構造全般の検討から完全失業者不完全失業者、そういうものの解消をはからんとするわけですが、そうなってくると、ただいま井堀委員が指摘せられました通り、あまりに理想が大きくてにっちもさっちもいかなくなるという状況、そういうことが予想されるわけなのです。社会保障もどうだ、何もどうだという工合にいったら、にっちもさっちもいかなくなるという私どもは懸念をするのです。そういうようににっちもさっちもいかなくなってじんぜん日を送る間に、現実の失業対策がおろそかになるということを私は憂える。だからそういう本質的な本格的な構想を立てるとともに、やはり前にやられておった失業対策審議会が直接に現実のぎりぎりの問題にぶつかったというような問題、これはやはり当然重点的にそういう全体的な構想と関連しつつも、それと切り離された形ぐらいの程度において考えていくべきじゃないか、こう考えるのです。その点に関しまする皆様方の御検討はどういう工合になっていらっしゃるかお聞かせ願いたい。
  53. 江下孝

    江下政府委員 この審議会におきましては、完全雇用の達成をはかることを目途といたしまして、諸般の雇用失業問題について調査審議をするわけであります。従って今御指摘の失業対策の問題も並行してこの審議会の中で従来と同じように検討していくつもりでおります。
  54. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それではよろしゅうございます。
  55. 相川勝六

    相川委員長 他に、質疑の通告もありませんので、これにて質疑は終了いたしました。  本法律案につきましては大卒正芳君より修正案が委員長の手元に提出されております。この際大平正芳君提出の修正案を議題とし、提出者よりその趣旨の説明を求めます。大平正芳君。
  56. 大平正芳

    ○大平委員 雇用審議会設置法案に対して修正案を御提案いたしたいと思います。  読み上げます。    雇用審議会設置法案に対する修正案  雇用審議会設置法案の一部を次のように修正する。  附則第一項中「昭和三十二年四月一日」を「公布の日」に改める。  理由は、政府原案に本法の施行期日を昭和三十二年四月一日としておりましたが、他の法案審議等の関係上不幸にして本法案審議がおくれましたので、この施行期日を公布の日に改めていただきたいということであります。右動議として御提案いたします。
  57. 相川勝六

    相川委員長 これより原案及び大卒正芳君提出の修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので直ちに採決いたします。  まず、大卒正芳君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  58. 相川勝六

    相川委員長 起立総員。よって本修正案は全会一致をもって可決せられました。  次に、ただいま議決いたしました修正案の修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  59. 相川勝六

    相川委員長 起立総員。よって本法律案は全会一致をもって修正議決いたしました。  なお、本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 相川勝六

    相川委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  次会は公報をもって御通知することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会      ————◇—————