運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-23 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十三日(土曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 福井 順一君    理事 保科善四郎君 理事 石橋 政嗣君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    薄田 美朝君       田中 龍夫君    田村  元君       辻  政信君    藤枝 泉介君       眞崎 勝次君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    木原津與志君       西村 力弥君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 三月二十二日  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇九号) の審査を本委員会に付託された。 同 日  旧軍人関係恩給加算制復元に関する陳情書  (第五五六号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する陳情書外  一件(第  六四六号)  首都圏整備審議会地方団体代表参加に関する  陳情書  (第六〇九号)  金鵄勲章年金復活に関する陳情書外一件  (  第六一六号)  同外四件  (第六四三号)  紀元節復活に関する陳情書外百十九件  (第六二五号)  同外二十三件  (第六五一号)  小松飛行場ジェット基地化反対に関する陳情  書外一件  (第六三九  号)  旧海軍特務士官及び准士官処遇改善に関する  陳情書  (第六四四号)  恩給法附則の一部改正に関する陳情書  (第六四  七号)  寒冷地関係給与改訂に関する陳情書  (第六四九号)  傷病恩給及び年金の増額に関する陳情書外三十  二件  (第六五〇号)  観光事業振興に関する陳情書  (第六八四号)  愛媛県内観光事業振興等に関する陳情書  (第六八五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。  この際防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。小滝国務大臣
  3. 小滝彬

    小滝国務大臣 昨日政府委員答弁いたしました点が不正確でございましたので、この際釈明させていただきたいと思います。防衛庁設置法提案理由説明中、「技術研究所部外からの委託を受け、技術的調査研究考案、設計、試作及び試験を行うことができることとする必要を認め、その事務支障のない限りこれを行い得ることとし、所要の規定を整備することといたしております。」と申し上げましたが、右のうち考案を行うという点は、石橋委員御指摘の通り、誤まりでありましたので、この点は訂正いたしておきます。
  4. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私昨日この問題を提起いたしましたときにも、率直に誤まりをお認めになるものと考えまして、そうして事務的なことだけれどもと話したのです。ところがこれをごまかそうとするような態度に出られる。これはお役人の本性かどうか知りませんけれども、答弁に当ってそういうふうな態度でやられるので、いつも質疑がスムースに進行しないということを私特に申し上げておきたいと思うのです。考えようによっては提案理由と提出されておる法案の内容とが違うということは、かりに字句的な問題であろうとも、軽々に見のがすことのできない問題だという考え方もあるわけなのですから、今後も十分に注意していただきたいと思います。
  5. 相川勝六

  6. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 先般私たちの仲間の下川君が総理に、渡米をせられた場合にどのようなことをお考えになって行かれるのかという御質問を申し上げたわけでありますが、その際のいろいろな答弁の中で、私たちがまだ釈然といたしません点を一、二伺いたいと思います。  まず第一に伺いたいと思いますことは、行政協定の中に定められております防衛分担金の問題であります。防衛分担金行政協定の二十五条のうちに年額一億五千五百万ドルに相当する額の日本国通貨というふうに定められておるのであります。これについてその後アリソン・重光の会談の中から一般漸減方式というものが定められて参りました。しかしこの一億五千五百万ドルをそのままにフィックスしておいて、その後に一般漸減方式によって漸減していく、こういうやり方にははなはだ疑問があるわけであります。私たちはむしろ一億五千五百万ドルそれ自身をもっと理論的に話し合っていただいて、漸減する方法を考えていただく必要があるのではないか、こう考えておるわけであります。漸減方式をとります前にその基礎総理にもっとお考えをいただけないものか、こう考えておるわけでありますが、この点についてお考えはいかがでしょう。
  7. 岸信介

    岸国務大臣 政府としては、御承知のように昨年の五月、日米両国間におきまして分担金削減一般方式というものをきめたわけであります。その前提としては一応二十五条の規定基礎して、漸減方式をとっていくという方式を合議しまして、本年第一年度としましてそれを実行しておるわけでありますが、今日のところ私はこの方式をとって漸減を行なっていくことが適当であろうと考えております。もっとも行政協定全体につきましてはいろいろな点から検討すべきものがあることは私も認めておりますけれども、一応分担金の問題についてはさよう考えております。
  8. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 行政協定全体について考慮すべきものがあるとおっしゃるわけですが、その考慮すべき最もはなはだしいものの一つではないか、こう私たち考えておるのです。御存じのように防衛分担金日本だけがとっておる制度ではありません。フィリピンでもあるいはヨーロッパでもこれに類似の制度がございます。こうした一般的な防衛分担金制度の中に定められた原則というものは、駐留軍の基本的な経費、すなわちアメリカ軍軍人の俸給とか、飛行機とか大砲とか軍艦とか、こういう装備、そうした基本的な経費は当然米軍が負担をする、これに付随するいわゆる設備とか、その土地の労働力を必要とするとかいう付随的な経費、これを派生的な経費と呼んでおりますが、派生的な経費については、駐留軍を置く国と、駐留軍を置かれる国とが折半してこれを負担する、こういうのが世界じゅうの原則だと思います。この防衛分担金一億五千五百万ドルを定めましたときも、池田大蔵大臣あるいは岡崎外務大臣がこの原則を御説明になったのでありまして、これは速記録にも残っております。すなわち、派生的な経費を折半する、これが原則であります。諸外国規定を見ますと、折半するという形に明瞭になっておりますが、日本の場合には、折半した金額を、その当時計算をしてみると一億五千五百万ドルになる、だからその金額をここにうたったんだ、こういうことになっておるのでありまして、原則は諸外国とも変りないわけであります。駐留軍はその後非常に減少いたしております。相当おられた駐留軍が、前回の船田防衛庁長官の御説明によっても、三万前後に下ってしまいました。陸上軍は三万、空軍が五万、海軍が六千七百という御説明であったと思います。その後また第一騎兵旅団が撤退をしていかれる、こういう形でありまして、駐留している米軍の数は、著しく減少をいたしております。もしそうだとするならば、基本的な経費、これも減少しておりましょうし、派生的な経費、これも減少をしておるはずであります。ところが、一億五千五百万ドルというものは、その基礎が失われたにもかかわらず、依然として行政協定の中にその数額をとどめて、これで日本を縛っていくという形になるのであります。そういう点で、一億五千五百万ドルというものは非常に不合理である。払わなくてもよいものを日本は払っているのではないか、こういう形にならざるを得ないのであります。従って、理論的に十分に話し合えば向うも説得せられ得るであろう部分について、なお御努力を繰り返される意思がおありなのかどうか、これを伺いたいと思うわけであります。
  9. 岸信介

    岸国務大臣 飛鳥田君も御承知通り、本年度における日本分担金の総額は、二百九十六億に減額をいたしております。実際のわが方の分担しておる額というものは、実情に即してずっと漸減して参っておりますし、また今後の漸減方式も一応定めておるわけであります。従って、お話の点は、この行政協定を作りました当時に、そういう原則のもとに数額をきめて、約五百五十数億になるものをドルできめたものであると思います。実際上の何から申しますと、そういうふうに漸減しておるのでありますから、その点においては、実際上の問題の支障はないのでありますけれども、今全体を検討する場合におきましては、そういう実情に適合しておらないような点は、これを実情に合うように是正することは当然であろう、かように考えております。
  10. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今三百億に減り、二百九十六億に減った、こういうお話でありますが、これは減っておらないわけであります。今申し上げましたように、行政協定による分担金は、駐留する米軍派生的な経費の半分を支払うということであります。それを、どこをどうお考え回しになったか私存じませんが、日本の軍隊をふやせば、日本防衛努力を増すならば、その半分を削ってあげよう。全然概念が違うでしょう。全然違ったものを持ってきてひっかけていくというやり方はおかしいんじゃないか。日本自衛隊費用をそれだけふやせば、その半分は防衛分担金を削ってあげよう、こういうのであります。防衛分担金を削るか削らないかということは、駐留している米軍派生的経費が多いか少いかという問題にしかすぎない。ところが何にも関係のない防衛庁費用をふやせば、ふやした分の半分だけ減らしてあげるというのであります。これでは減ったうちに入らないわけです。今年四億防衛分担金が減りました。それは自衛隊予算が八億ふえたからである。八億ふやして四億減らしてもらったのですから、減ったうちに入りません。もしこの方式をとって参りますならば、一体幾らに自衛隊経費がふえたときに防衛分担金がゼロになるか。あと六百億近くふえなければ、防衛分担金はゼロにならぬはずであります。あと六百億ふやして防衛分担金をゼロになさるおつもりなのかどうか。こんなばかげたことを、おそらく聡明な総理はお認めにはならぬだろうと思う。さらにこの防衛分担金を減らすについては、自衛隊費用をふやせばその半分減らしてやるということは、間接アメリカから自衛隊費用をふやすことを強制されているという結果になりはしませんでしょうか。強制という言葉法律上使います場合に、直接強制間接強制という言葉を使いますが、一種間接強制ではないでしょうか。自衛隊予算をふやしていくということが、国民意思でふえていくのならば話はわかります。しかしアメリカ間接強制によって、防衛分担金などというわけもわからないものから逆に締め上げられて、自衛隊費用をふやしていくというようなやり方を、総理はお認めになるでしょうか。私はこういう一般漸減方式という方式について非常に疑問を持たざるを得ない、むしろ国辱物だ、こう思っているわけであります。いかがでしょうか。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 大体日本安全保障を確保するために、日米共同防衛の形でいく、そうして日本は国力に応じて自衛力を増加していく、この自衛力が増加されるにつれましてアメリカ駐留というものを減じて参る、こういう基礎に大体日本防衛については立っているのであります。従いまして観念上、今飛鳥田君の言われるような、今きめているところの漸減方式と、いわゆる原則である派生的費用の半分を持つということとの間には、必然的の、観念的の関係はないかもしれませんけれども、実際問題として年々派生費用がどれだけであって、それの半分はどれだけであるということを折衝しまして、従来いわゆる防衛分担金減額の問題について、予算編成と関連して問題がいつもあったのでありますけれども、一応今申した、日本防衛力の漸増につれてアメリカ駐留を減じていくという根本に立っている限りにおきまして、日本防衛費の増される額の半分を大体減額していくという方式が、いろいろな観点から論議されて私はきまったものと承知いたしております。従って観念的に言えば、飛鳥田君のおっしゃるような批判もできるだろうと思いますが、実際問題としては、私はこの方式で、せっかく両国の間に合意のできたものでありますから、今後もやっていき、情勢が変れば、さらにわれわれは考え直していくということが適当である、かように考えております。
  12. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 理論的には僕の申し上げた通りだが、現実にはどうも仕方がないからこういう方式でやっていくというお話でありますが、まず第一に筋を立てるのが岸構想というものの本質だというふうに私は伺っております。やはり筋は立てていただかなければ、国民は納得できないのではないか。一体それでは現実的な問題として、ことし四億減ります。来年度どのくらい減るか知りませんが、来年また何億か減る。約三百億の防衛分担金は何年後に減るのです。ある悪口を言う人は、七十年先でなければ減らないだろう、こう言っておるわけであります。一体防衛費あと六百億おふやしになるおつもりかどうか、これを承わりたいと思います。防衛費を六百億ふやさない限りは、あなたの御説明によれば、防衛分担金はゼロにならぬわけです。防衛分担金がゼロになることをお望みになるのか、あるいは六百億防衛費をふやすことを望まないのか、どうなんでしょう。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本安全保障を確保するために、米軍駐留認めており、また日米共同防衛体制を持続するという限りにおきましては、ある程度の分担金はやむを得ないものであって、われわれ自身の力で日本安全保障が確保され、そうして米軍駐留をなくすというときに、初めて防衛分担金というものがなくなると思うのであります。今の方式でいけばどうなるかという御議論につきましては、今の方式がされておる限り、約六百億に近いところの防衛費がふえない限りにおいては分担金は減らないということは、算術的にきわめて明瞭なことでございます。しかしその前提として、日本安全保障のための防衛がどういう方式でどういう形ででき上るかという基礎がはっきり立てられ、また実現されるということが根本でありまして、われわれの力でわれわれの国の防衛ができるというだけに防衛力が充実して駐留軍がいなくなるというときにおいては、分担金はなくなる、こういう考えでございます。
  14. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 日本防衛日本が十分にやり得ないうちは米軍駐留もまたやむを得ない、従って防衛分担金の存在もまた一種必要悪としてやむを得ないことだ、自分はそのために日本防衛をどうするかということを十分考える、こういうお話がありましたが、そのことを今回渡米をせられて、日本防衛体制についてアメリカと十分に話し合って、一つの結論を出していらっしゃるおつもりなのか。もしそういうおつもりがないとするならば、現実にこういう行政協定の中に含まれている幾つかの矛盾あるいはわれわれの側に立って非常に不利益だと思われるものの解消のために、個別的に努力をしてこられるのか、いずれなんでしょうか。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 私の訪米目的に関しましては、従来しばしば御質問もございまして、いろいろな機会に私が答弁をいたしておるのでありますが、私の方もまたアメリカの方におきましても、瞬間的に長い期間の折衝のひまは私はないと思います。私はこの際日米関係基礎、それは国際情勢の判断にも非常な関連を持っておることでございますが、そういう国際情勢一般並びに日米関係の現在及び将来の基礎について、両国首脳部の間に忌憚のない話し合いをして、私が外交方針で述べているように、日米の提携の基礎を固めていくということが、訪米の一番大きな目的であります。従って各般の問題に触れることは当然でございますが、個々具体的の問題の条約や協定改正とかあるいは変更とかいうような点を具体的に交渉するという意図は持っておりません。
  16. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よくわかりました。もしそうだとするならば、まず原則的に話し合いをなさる場合に、必ず米国側日本SEATO機構への参加を求めるのではないかという感じがいたします。これは仮定の問題ではなくして、現実にも出てくるであろう事実だと思うのです。さらに東南アジアに対する日本の役割、こういう問題についても、そういう大きな原則論の中で向うから提案をせられてくるであろうと想像をせざるを得ないわけであります。もしその原則的なお話し合いの中で、SEATO機構日本参加をしないか、このような申し入れがありました場合、あるいは東南アジアに対する日本防衛上の寄与、こういうものの程度を求められました場合に、どのような御答弁をなさるおつもりでしょうか。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 私は、それは仮定の問題でありますけれども、SEATOに加入するという意図は持っておりません。またわれわれは世界の平和、ひいてアジアの平和ということに対して常に念願しておりますけれども、いわゆる武力でこれの平和を増進するというような積極的な考え方は、私自身としては持っておりません。世界の平和及び東アの平和につきましては、何よりも平和外交の推進によってこれが実現をはかるのがわれわれの考え基礎でございまして、われわれの防衛ということは自国の自衛を全うするという趣旨でございますから、その点につきましては私の考えは一貫していると思います。
  18. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 また防衛分担金の話に戻りますが、防衛分担金の支払いを日本がいたしました場合に、当然これは派生的な経費の折半でありますから、米軍側防衛分担金もあるわけであります。ところが先般来鳩山内閣の時代に、私は米軍側防衛分担金支出について日本政府が正確に把握しているかどうかということをずいぶん御質問申し上げましたが、てんからわからないというのが実情であったようであります。せっかく経理規定その他が日米合同委員会でできていながらも、それを把握する努力をしていない実情であります。おそらくその状況は今においても変るまいと思います。もしそうだといたしますと、日本防衛努力認められて防衛分担金を削減してもらった、今年度は四億でありますが、四億削減してもらったという場合に、それと見合うアメリカ側防衛分担金支出を正確にとらえておりませんと、これはまけてもらったうちにならないと思うのであります。四億日本の方が減る、アメリカ防衛分担金もそれにつれて四億、あるいはもっと十五億も二十億も実質上は減っておるとすれば、自衛隊費用を増しただけ日本はよけいな支出をした結果に終ってしまうわけでありまして、一体政府アメリカ側防衛分担金支出について正確に把握をしておるんですか。もし把握をしておるとするならば、向うのとこちらのを比べてみてでなければ、自衛隊の襲用をふやした半分だけまけてもらうということは、まけてもらうことにならないと思うのであります。これは総理にはちょっとこまか過ぎる御質問かもしれませんが、しかし重要なことだと思いますので、申し上げておきます。
  19. 小滝彬

    小滝国務大臣 労務費については、調達庁運転資金で支払って、そのあとリームバースしてもらいますから、これはわかりますが、事務費等その他直接向うで支払っておるものについては、これは私の主管外でありますけれども、大蔵省の方で全部詳細に把握することは困難だろうと思います。しかしその点はまた後刻さらに詳細に調べまして、御必要ならばわかっているところを申し述べます。
  20. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう時間がありませんので、他の問題に移ります。昨年であったかと思いますが、海上自衛隊自衛力を増強いたしますためには、艦船その他の建造を継続的に行わなければならない。ところが今は造船ブームであって、どこの造船所も非常に満員である。従って単価その他が安い自衛隊の船は、なかなかおいそれと引き受けてくれないし、また引き受けてもらっても、これに対して精密な注文を出していくこともなかなかむずかしい。そういう点から考えてみて、いわゆる旧工廠的な設備を作るというお話がだいぶ持ち上っておったように伺われるのであります。もし軍工廠のようなものをお作りになるとするならばこれは防衛庁だけの一存でもできますまいと私は考えます。当然これは閣議にかかってくることと思いますが、もしそういう議論が出て参りました場合に、岸総理はこれについて御賛成になるお考えなのかどうか。軍工廠を復活させるつもりかどうか。これは経済的ないろいろな意義があると思いますが、概括的にお答えをいただきたいと思います。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 私はいまだかつてそういう話を聞いておりませんので、そういう問題が出てくれば、当然閣議で十分に審議した上において決定をしなければなりませんけれども、今まで全然聞いておらないことでございますので、ちょっとお答えすることを差し控えたいと思います。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今度城外調達で、アメリカから駆逐艦を二隻もらうというような事態も出てくるようであります。もしそういう状況が出て参るといたしますならば、その駆逐艦に関する秘密、こういうものも非常に問題になってくるであろうと考えるのであります。こういう秘密その他の問題について、工廠的なものを作ってやるならば、部外秘密が漏れない、秘密を守るのに便利だというような考え方も当然起ってくるであろうと、私は想像いたします。そうした点から考えて参りますと、最近また工廠的な設備を作るということが、必ず具体的な議論となって現われてくるだろうと考えますし、もしそうでないとするならば、秘密保護立法のようなものを別途お考えになるよりほかに仕方がないのではないかというふうにも考えられるわけであります。こういう点も一つ考え合せをいただいて、なおかつ工廠的な設備を作るおつもりがあるかないか、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 専門的なことを私詳しく承知いたしませんけれども、いろいろな造船所そのものも、艦船建造につきましても、そういう御心配のような秘密は――むしろ艦船に設置せらるべき装備部分については、そういう非常に秘密な点もあるかと思いますが、造船所そのものについては御懸念のような点も、ちょっと私には想像できないのでありますが、一般造船能力、それから造船設備日本造船業の将来というようなものとにらみ合して、もしもそういう問題が提起されれば考究しなければならぬのでありまして、簡単に、秘密を要するから直ちに軍工廠みたいな造船設備を別に作らなければならぬというふうには、私は今すぐには考えないのであります。
  24. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 終ります。
  25. 相川勝六

  26. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総理にお伺いしたいと思うのでありますが、まず最初に、いわゆる死の行軍問題に関連してお尋ねしてみたいと思います。この事件は非常に世論の注視を受けたわけでございますが、内容といたしましても重大な意義を持っておったわけであります。特にこの当事者の処分というようなものをどのようにするかということによって、今後の自衛隊の指針をも定める、そういう意味合いも私は含んでおったように考えております。防衛庁がこの調査を非常に急ぎまして、約一ヵ月間で処分を発表したことは妥当だ、このように私どもは存じますが、その処分内容を検討いたしますときに、必ずしも妥当だとは言えない面があるような気がするわけであります。当初三月九日でしたか、読売新聞が、どういう経緯を経て出したのか知りませんけれども、処分の案を発表した。それを見ましたときには大体首肯できたのでございますが、その後正式の決定を見たときに、この線からはずれて、何かゆがめられたものが出てきたような感じを私は受けてるのであります。この点についてぜひ総理に、この処分を妥当と思うか、こういう処分で今後の自衛隊があなた方のお望みになるようにすくすくと成長すると見るかどうか、自信があるかということをお伺いいたしたいと思うのであります。  新聞その他では、この処分をめぐりまして、旧軍人出身者と文官出身者の対立という形で扱っております。私はそういう扱い方をすれば、建設的な批判が出てこないかと思いますので、一応避けます。しかしこの処分をめぐりまして、一つは、軍隊の特殊性を強調することよって、激しい訓練ということも必要なんだ、この際処分を行うということになると、幹部が自信を失う、影響するところ非常に甚大であるから、責任の当事者を処分するというようなことに重点を置くのではなくして、処分を行うとするならば、訓練計画の立案者に重点を置いた処分をすべきであるという意見が、一方にはあったかのように聞いております。これに対するに片方では、もちろん訓練計画の立案者に責任がないとは言わないけれども、しかし青竹を振ったり、ロープで縛ったりするような事件、これはそれとは直接に関係がない。派生的に起きた事件である。しかもこの行軍に関してのみ起きたとは考えられない面もある。過去においてそういうことが行われたかもしれない。そういうことを考えた場合に、やはり当面の実施部隊の責任者というものに対する処罰が重点でなくてはならないというような意見もあったかと思うのであります。とにかく最初表に出ました処分案というようなものは、けんか両成敗というような形ではありますまいけれども、とにかく計画の立案者の最高責任者である総監、それから実施部隊の責任者である大隊長二人が免官になる、その他関連する者は停職といったような処分案が出ておったようでございますが、最後には総監の方は免官にならないで転勤で済んだ。ここに私どうも納得いかないものがあるわけです。特に先ほど申し上げたように、片方において実施部隊の責任者に過重な処分を行えば、今後規律維持の面、訓練強化の面等で非常に支障を来たすというような意見をなす者も相当あるようでございます。そういう中で現在防衛庁がとられたような処分によって、果して今後誤まりなく進み得るものかどうか、確信のほどを、防衛庁長官を指揮監督する立場にある総理の見解としてお述べ願いたいと思います。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 今回の事件は、私はまことに遺憾のきわみでございまして、自衛隊の将来のあり方、また現在やっておる教育訓練のやり方等につきまして十分に反省をして、そうして将来の自衛隊のあり方をきめなければならない。今お話通り、一方において自衛隊が身を挺して祖国の安全保障に当るという上から申しますと、もちろん精神的にも肉体的にも強固なものを作り上げていかなければならぬし、またこういう団体でございますから、規律と団結の点におきましても非常に考えなければならぬ。各般の事情を考えて、しかも明るい、国民がこれに対して信頼のおけるような自衛隊を作り上げていくという見地から、今回の事件の処分につきましては、直接防衛庁におきましても、いろいろな点からこれが考究され、また討議をされたことも私もよく承知をいたしております。私もこの処分につきましては、その経緯と内容とを十分検討いたしまして、この処分によって将来の自衛隊のあり方をきめるのに最も適当な処分であるという見地に立って、私自身がこの処分案の最後の決定をいたしたわけでありまして、これがきまります途中においていろいろ議論のありましたことも、これも当然であります。またその議論を集約してこれだけの結論を出しまして、これによって私は先ほど申し上げているような将来の自衛隊のあり方について、十分に一つ責任をとって参りたい、かように考えております。
  28. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 十分に私納得できないわけでございます。私も先ほど申し上げました二つの見解を並べてみました場合に、この実施部隊の責任者、大隊長といったような人に処罰の重点が向けられるのは当然だと思います。しかしながら事実この大隊におきましては、幹部といわゆる隊員との間に何か意思の疎通を欠くような面もあったというようなことも報告されておるわけであります。これはかねがね幹部のいわゆる訓練その他の指導方針に行き過ぎ、誤まりといったようなものが私はあったと思います。従ってその現われがこういう犠牲者を出したわけですから、相当強い態度処分に臨むことは当然だと思うのでございますけれども、過去においてもあったという想定もされるということを考えた場合に、なおさらのこと、私は部下がそういった誤まったことをしたことに対する幹部の責任だけは明確にする必要があると思う。計画立案がどうだ、こうだとか総監が、そのときおったとかおらぬとかいうふうな問題ではないと思う。少くとも自分の輩下にある大隊長がそういう誤まった指導方針のもとに隊員の教育訓練を行なったというようなことであるならば、やはり私は創生期にある自衛隊の指針を明確にするために、特にうわさされておる対立というようなものを押える意味におきましても、総監が自分の責任としてみずから率先して進退を明らかにするという態度がなくてはならないような気がするわけです。それを盛大な送別の式に送られて、転勤というような形で責任をあいまいにすることがあってはならないような気がするわけでございますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 今私がお答えを申し上げましたように、私はこの問題をきわめて重大な事件として慎重に検討をいたしました結論として、あの処分を適当と認めてこれを決裁したわけでございまして、もちろんこういう問題でありますからいろいろな御批判もありましょうし、御意見もあろうかと思いますけれども、私自身は今回の問題に関しましてはあらゆる点からこの問題を検討した結論でございまして、先ほどお答え申し上げた通りでございます。
  30. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これはうわさでございますが、聞くところによりますと、金山総監はいずれどこかの知事に立候補するのだ、今処分などをされたのでは経歴にきずがつくから――立候補のためか何か知りませんが、そのうち適当な機会に自発的にやめたような形をとらせるのだというふうなうわさすら流れておるわけであります。単なるうわさでありましょうとも、もしそういうことが流布されて、あなた方が最も懸念される隊の士気といったようなものに影響がないとは私は考えられません、先ほどから申し上げているように、訓練がある程度強化されるということは必要かもしれません。特に現在の自衛隊が機械化されて、それに伴って脚力というようなものがどうも弱くなっておるので、そのためにもこういった過酷な訓練が必要だということは首肯できます。だからといって、この訓練が行き過ぎてもいい、倒れて後やむという言葉で称賛されるような訓練が行われていいとは、私はどうしても考えられない。かつて日本の皇軍はなやかなりしころ、民主主義の軍隊なんというものは役に立たないじゃないか、アメリカの兵隊なんというのはチューインガムをしょっちゅう口にくわえて、チョコレートをなめているのだというふうな宣伝が盛んになされておった。そういう民主主義の軍隊に対する批判から、反動的に訓練が強化されるというような傾向が出てきてはならない。少くとも地方という言葉で表現されておったように、自衛隊というものとそれ以外のものとを画然と分けるような、自衛隊一つの特殊部落になるような、かつての軍隊のような存在になってはならない。一般社会で通用する常識がこの自衛隊の中でも通用しなくてはならないという信念をわれわれは持っておるわけでございますから、そういう立場からいっても、あのようなむちゃくちゃな、青竹やロープといったような小遊具が象徴しておるところのそういう訓練を行なった者に対して、厳重なる処分が行われるのは当然でありますけれども、先ほども申し上げたように、少くともそれらを今まで見過してきた責任者、そういうことを行わせた最高の責任者というのは、自衛隊を愛すれば愛するほどもっと毅然たる態度で、この際進退を明らかにすることが至当であるというふうに考えておるわけであります。その点十分に私考えていただきたいのでございますが、防衛庁長官も各部隊長を集めまして何か訓辞をなさっておるようであります。それも必要でございましょう。しかしより具体的な形でこうい端う事故が再発しないような手を着々と打っていかなければならないのではないか。そういう面で今度は私長官にお尋ねいたしたいわけでございますけれども、こういうふうな事故が絶対に今後起きないようにするだけの具体的な手を考えておられるのかどうか。それはいろいろ方法はございましょう。たとえば演習だけを切り離して考えた場合には、この間とられたような教育方式のものをやらないとか、あるいは健康管理を厳重にやるとかいうことも一つの問題でありましょうし、なお精神的な面でもいろいろありましょう。そういう指導の仕方について、一つの貴重な経験としてこれを基礎に何らかのものが生み出されてきつつあるかどうか、そのところを一つ明確にお話し願いたいと思います。
  31. 小滝彬

    小滝国務大臣 総理も申されました通り、これは世間の非常な注意を引きいろいろ皆様に御関心もあり、われわれも再びかかる遺憾なことが起らないようにという考えから、この前の日曜もひざを突き合せて私のほんとうの気持をわかってもらおうというので、地方から総監その他に集まってもらいました。そしてそれにつきましては、とにかく良識のある部隊を作るというので末端までこの趣旨を徹底してもらうという措置を講じますると同時に、教育の方針につきましても、さらに詳細に内局において検討させまして、ささいに過ぎる程度までも十分なる注意を与えるように、また従来もいろいろ地方の方でこういう事件に関連して注意を喚起しておきましたけれども、さらに詳細なる規定も設けさせるように、目下検討中でございます。なおまたこの組織の面につきましても、たとえばこの委員会でもかつて問題になりましたが、医官とかあるいは救護の措置というような点も十分組織の面からも検討しなければなりませんし、精神教育、あらゆる面からこれを是正すると申しまするか、よくするように努めたい。一方的にただ紙切れとかあるいは趣旨を話して徹底させるというだけでなしに、そういう方針だけでなしに、全般的にほんとうに国民の信頼を受けるような自衛隊にするための努力を続けて、こうしたことが再発しないように最善の措置を講じたいと考えております。
  32. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 少くとも私は、民主主義という立場の上に立つ以上、人権の尊重、人命の尊重というものが一審の基盤にならなければならないと思う。その点で確かに今おっしゃっておられるように、抽象的に訓辞をしたりして済む問題ではございません。私はこの死の行軍に現われた人命軽視の現われは、これがほかの場合にもどうも出てきておるような気がしてしようがない。たとえば一つの例をお話し申し上げますと、最近これは示談が成立いたしましたから、あえて私は言うのでありますが、神奈川県の平塚で自衛隊のトラックが二人の病院の事務長と事務員をひき殺した事件がございます。私関係局長に当時の事情もいろいろお話しし、報告も受けたのでございますがこのときなども現に片っ方の事務長などは数十分間脈があるのに放置されておった、ひき殺した隊員は何らの救急措置も講じておらない、こういう具体的な例がございます。またその後この遺族に対して一片の弔慰すら示しておらない。運転した隊員がこの犠牲者の家に弔慰に行ったということもないし、責任者が行ったということもない。単に病院葬にだれかがちょっと顔を出しただけで、実際に自宅で行われた葬式には自衛隊関係者は何人も顔を出さない。しかも補償手続を行う段階に当っては、一応防衛庁には基準というものがあるからこれで不満でございましたら訴訟なり何なりどうぞやって下さい、こういう高圧的な態度で手続に参画しておる。これで非常に遺族が憤慨して、われわれは家族を失って、金銭の問題ではないけれども、こういう不誠意きわまる自衛隊に対しては何ぼでも金を要求してやるんだというふうなことまで言っておったのであります。私はこのような自衛隊の隊員が民間人をひき殺したというような事件のときに現われるように、その中にも人命尊重という精神が脈打ってないような気がしてならない。よく聞いてみますと、補償手続などはどうも遺族の家の関係からほかの部隊に移管した、それでどうも誠意が現われなかったのではなかろうかという説明があった。これなどは小さな問題のようでございますけれども、決してそうではありません。少くとも誠意をもって最後まで遺族の世話をしようと思えば、当該部隊が最後まで当るべきだ。そういう一見こまかいように見えるけれども大切な問題がたくさんある。私はこういう問題につきましても、あくまでも人命を尊重するという大精神にのっとって、そうして遺族の気持を幾らかでもやわらげる、そういう気持が自衛隊になければ、あらゆる面に大きな影響を持ってくると思うのでございますが、この点長官いかがですか。私は総理もこういうことに関心を持っていただくために一緒におるときにお伺いしたわけでございます。
  33. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいま御指摘の事件は私承知いたしておりませんが、私が就任いたしまして以来、実は残念ながらこういう事件も続いて起りましたので、その点については私いつも申しておりますことは、愛せられる、信頼せられる自衛隊にならなければならぬ、さっそく見舞とかそういう手は尽すように、また法規の命ずるところがございますので勝手なことはできませんけれども、見舞金、弔慰金、そういうような形ではできるだけのことをするように、皆に申し渡しておるのでございます。またこの事件が起りました際の私の声明書をお読み下すったと思いますが、あくまで人権、人命の尊重を基礎としてやらなければならぬということもはっきりとうたって、その趣旨は各末端の部隊にも徹底するように努力をたしておるのでありまして、今御指摘のような取り計らいをいたしましたとすれば、はなはだ遺憾でございますので、絶対にこういうことのないように十分指導していきたいと考えております。
  34. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 確かにいわゆる内局といわれるところまで上ってくると誠意が認められる点があるわけなのです。しかし私が言っているのは末端の部隊なのです。この部隊において少くとも人命尊重という精神が隊員の胸のすみずみにまでしみ渡っておったならば、このような事件の際にもそれがにじみ出てくる。そういうことがない限り、幾らここでお題目を並べても次々と事件が起ってくるであろうし、かつてのいわゆる日本軍が各地で実に暴虐な犯罪行為を犯したというような二の舞をしないとは限らない。それだけに私は大切な問題であるから、何度精神訓話をされるよりも、そういうようなところまでにじみ出てくるような教育をするためにはどうあらねばならぬかということを、もっと研究されて指導していかなければならぬのではないか、このように考えて申し上げているわけでございます。  なお話を次に移しますが、今後の自衛隊のあり方の中でわれわれが懸念するものの一つ自衛隊の政治活動があります。これは先日も淡谷委員から若干指摘されておりました。あちらこちらでこれがまた現われ始めておる。どうもあらゆる面でかつての軍、そういうものへ励行していくような傾向が出てくるのじゃないかしこの政治活動というようなものにもそれが私言えるのじゃないかと思う、そこで一つ例をあげてお尋ねいたしたいわけでございますけれども、非常に微妙な問題でございます。御承知通り自衛隊が政治滑動をすることはできません。しかしその限界というもので非常に問題があるの、で、私提起してみたいと思うのですが、現在保守党と革新政党との政策の中で根本的に相いれないものがこの軍備の問題です、緒川保守党の諸君は何軍備を主張されておる。これに伴うところの憲法改正も必要だと言っておられる。われわれは再軍備を否定しておる、憲法も現行憲法を擁護する立場をとっておる、そうしますと、根本的に違ったこの二つの政策の間に立って、自衛隊が再軍備を賛美する方向に持っていくということがもしあったなら、これは明らかに政治活動だ、このように考えておりますが、この点、いかがお考えでございましょうか。
  35. 小滝彬

    小滝国務大臣 この前もこの委員会でも御指摘がございましたが、部隊長あたりで十分な政治知識、特に選挙に関する知識が不十分であったために誤解を招くようなことがあったことも私承知いたしております。この点も同じことを申すようですけれども、こういう点はこの前の日曜にも書面を私どもすでに出しております。しかしよく下に徹底せしめるようにというので各地の総監その他集まりました者に、趣旨の徹底方を要請しておいたような次第でございまして、御指摘のように政治活動に入るということは、もちろん自衛隊法にも触れることでありますから、今後も機会あるごとに注意いたしたいと思いますが、私が就任いたしましてからも、文書においても口頭においても、あらゆる機会において、今お述べになりました点は末端へ徹底方努力をいたしておる次第でございます。
  36. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 自衛隊法施行令の第八十六条にいろいろ並べてあります。政治的目的の定義が書いてある中に、「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること。」とある。これは明らかに政治的目的に属するということが定義されておる。そこで私は具体的な例をあげた。一つは、再軍備をしなければいかぬ、再軍備反対などということはもってのほかだというようなことを幹部の責任のある立場で言っていいのかという問題、それに付随して、中東あるいはハンガリー等における国連の措置というものも批判をいたしております。そういうことが自衛隊において許される政治活動の中に入るかと、私は具体的にお尋ねいたしているわけです。
  37. 小滝彬

    小滝国務大臣 政治活動と申しますると、自衛隊法にも出ておりますように、特定の政治的な意図を持ってやることであります、しかし個々の人が自分の意見を述べるということは、その地位を利用してどうかするというようなときは、今御指摘の条項に触れるかもしれませんが、そういうことでなしに、個人の意見を述べるということは私は差しつかえないと思います。
  38. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 禁止されておる場合として、次の八十七条に政治的行為の定義もあわせて述べられておる。たとえば十一項「集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。」、十二項「政治的目的を有する文掛又は図画を国の庁舎、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他政治的目的のために国の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。」、十三項「政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、又は多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し、又は編集すること。」、こういうふうに具体的に定義づけられておる。私が先ほど指摘したようなことがこれに該当して行われたような場合にはどうだ、こうお尋ねいたしておるわけです。
  39. 小滝彬

    小滝国務大臣 私からも先ほど申し上げましたように、政治的な目的を持って今おっしゃったような行動が行われる、この二つが合体して行われるというようなことは、もちろん政治活動の中に入るでありましょうから、それは当然取り締らなければならない筋のもので、今後こういうことのないようにいたさなければならないと考えます。
  40. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私はここに「ながさき」という機関紙を持っております。これは発行所は自衛隊長崎地方連絡部であります。ときたまたま長崎県下で大村の市長選挙というものが行われました。そのときに立候補者の一人である現大村市長の大村純毅氏、これは旧軍人出身です。この人の写真を掲げ、経歴を述べ、そして各部隊にこれを配布している。しかもこの裏側に論説を載せている。その論説の中に、私が先ほど申し上げたようなことが、具体的に述べられているわけでございます。全部朗読すれば一番いいのですが、時間がありませんから、要点だけ申し上げますと、こういうことです。「世界の平和維持の機構である国際連合といえども、大国の武力行使によって作為された既成事実に対しては極めて無力であり、例え何等かの手を打つとしても早急の間には合わず、見殺しにせねばならないことを教えたのであった。これを要するに、横暴な大国がまだ横車を押している二十世紀の現代においては、九千万の生命を擁する日本民族だけが、手ばなして無防備を自讃し、民族の平和と独立と幸福を他国任せにするほどお目出たくあってはならないのである。強国の侵略と弾圧に対しては国を挙げて抗戦が続けられ、国際連合が紛争解決に乗り出してくる時期まで、少くとも一カ月間は地球から消えてなくならないだけの軍備と抗戦意思が必要なことを教えてくれたのである。」こういうようなことをるると書いている。これが機関紙ですよ、私は重大だと思う。各地で地方選挙が行われている。革新的な候補者も出ている。そういう時期を選んで特定の候補者の写真や経歴を掲げ、その機関紙を配布するのみならず掲示板にも掲げる。その裏に政策に対する批判、革新政党に対する批判まで堂々と載せている。こういうようなことが看過されるならば、偉大なる影響力を自衛隊の中で持ってくる。これほど極端な政治的な行為はない。今長官もお認めになったが、こういう問題も今にして二葉のうちからつみとっておかなければ、再び自衛隊が政治に関与し、政治を動かそうとする野望に燃えていかないとの保証にはならない。こういう信念に基いて政治的に自分たちの影響力を持っていこうという努力を各地でやらないという保証はない。私はこういう問題は、先ほどの死の行進と同じように、今のうちにどんどん芽をつんでいく必要があると思うのでございますが、いかがですか。これは総理からも特に御答弁を願いたいと思う。
  41. 小滝彬

    小滝国務大臣 私もその話を前に聞いたことがございます。これは長崎県においては各市長順次に紹介する。地方の方と解け合った部隊を作ろうという趣旨で、市長さんの経歴などをいろいろ紹介することになっておりまして、詳細はあるいは人事局長から御説明申し上げてもよろしいかと思いますが、そういう関係でちょうど選挙の前後でありましたか、そういうように誤解を受けたということはこれは遺憾でありますけれども、少くともそういうように順次やっておったのであって、そういう特定の政治的意図を持ってこういうものは配布されたというのではないように承知しております。しかしさき申しましたように、そういう意図を持ってそういうことをするということについては、注意をしますけれども、今の実情については必要があれば人事局長からその事情を申し述べさせたいと思います。
  42. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この写真の問題は後日またゆっくりお伺いしますが、私が重点を置いてお話申し上げているのはそうではありません、政策的な問題です。先ほど長官もお認めになったように、自衛隊には限界がある。私は自衛隊はこの限界を超えているというふうに考えるが、これについて総理はいかようにお考えになるか、今のうちにこういうものは芽をつんでおくというお考えはないかということをお尋ねしているのです。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊が政治に関与していかぬという原則は、私は自衛隊の本質からよほど厳重に考えなければならない問題であると思います。従って自衛隊にも非常に詳細な規定が出ております。石橋君もお認めになるように一方われわれは民主政治を完成し、民主主義というある程度の――われわれはこの民主政治のもとに、自衛隊といえども研究や、あるいは思想の自由というものも、もちろん民主主義の自衛隊においては確保されなければならぬことは言うを待ちません。要するに、そこの分岐点に立つのであって、一歩誤まれば自衛隊が政治に関与し、政治的行動になるというおそれも多分にあると思うのであります。具体的の問題に関しましては十分法律的に検討する必要がありますが、それにいたしましても、自衛隊がいかなる意味においても政治に関与してはならぬということは、これまた日本民主政治の健全な発展の上から言いましても、ぜひとも確保しなければならない大きな原則でありますから、そこの分岐点につきましてもよく検討して行き過ぎのないようにしなければならぬ、かように考えております。
  44. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先ほど申し上げましたように、近く解放も行われるでありましょう。そうすると自民党と社会党の政策の中で最も根本的な相違点を示すものが、この軍備に関する問題なんです。これに対して今私が読み上げたようなことが首肯される、肯定されるとするならば、全国の自衛隊が一斉にこういうことを始める。そうしますと何党を支持しろ、だれ候補者を支持しろ、そういうふうなことを言わないまでも、明らかにこれは行手を示すことになるじゃありませんか。これが現在の二大政党下において、自衛隊法で禁止しておる政治活動の中に入らないというような理屈は、私は成り立たないと思う。もしそういうことを言うならば、明らかに自衛隊は保守党の私兵となる、こう断言してもいいんじゃないか、その点総理の明確なお答えを願わなければ、私は党に帰って十分に対策を立ててもらわなくちゃならない、このように考えております。果してこういうことが許されるでありましょうか。私は時間をかすまでもなく、総理が明快にお答え願える問題じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、ことにそういう意見の発表が選挙運動と関連してやられるという場合におきましては、石橋君の言われるように、明らかな政治活動としてとめなければならぬと思います。ただ今の、単純に考えて、自衛隊の人々といえどもいろいろな思想の自由は持ち、また言論の自由もやはり政治活動にならない限りにおいては許されておるものだ、これの調和をどの点にとるかという問題であろうと私は思うのです。私は、あくまでも自衛隊の政治活動については厳に取り締まらなければなりませんから、その行き過ぎや、あるいはその問題が選挙運動に関連してそういう意見が述べられるということが、今石橋君の言われるように政治活動として明確になるというような場合におきましては、これは取り締まらなければならぬこと言うを待たない。ただ今申す通り自衛隊も民主主義の自衛隊であり、民主主義の憲法下における自衛隊として考えてみると、やはり言論の自由やそれから思想の自由ということも。ある程度許されなければならない問題であって、それとの調和の問題でありますから、私のお答えがきわめて明瞭でないようにお響きになりますが、そこの点については、私としては、一面において自衛隊が政治に関与してはならないというこの原則をいやしくも曲げるような事態を起さないように十分一つ考えて参りたい、かように考えております。
  46. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 もちろん総理が言っていることは私も十分にわかる。だからこそ法の中で明確に定義づけられておる。一つは、どういう手段で、どういう方法で、どういうところでなされるかということが具体的に述べられておる。一方では、どういうことを言っちゃいかぬか、政治的目的というのはどういうことだということが述べられておる。現に政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、またはこれに反することはいかぬと明文があるわけなんです。そしてまたどのような手段でやっちゃいけないのかということについても明文がある。私が今申し上げておることはいずれにも該当する。これは機関紙です。そういたしますと、おのずからこれは違法の行為であるという結論が導き出されると私は思うのでございますが、この点に限ってのみ一つの御答弁を願いたい。
  47. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 ただいまの石橋委員のお尋ねでございますが、特定の政策に方向を与えるということの解釈いかんにかかると思います。防衛庁設置法及び自衛隊法によりまして、国として防衛をするために侵略があった場合に、現に防衛するために自衛隊を設置するということは、国の政策としてきめられておるのでありますが、このこと自体影響を与えるということに直接なるかどうかということにつきましては、今お尋ねになりました新聞をよく読みまして検討してみたいと思います。
  48. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは時間もございませんから、私は党にも報告いたしまして、党においてもこれを正式に取り上げてもらいたいと思っております。とにかく先ほどから申し上げておるように、最近政治的な介入問題が非常に多い。こういうことについては、総理は先ほど御答弁になっておるように厳に取り締まっていただきたい。そうしなければ、再び誤まるのだということを強調して、本日のところは、私は次の質問に移ります。  先ほど飛鳥田委員への御答弁の中で触れられておりましたが、いずれ近い機会に総理アメリカにお出向きになるようであります。そうすると総理の方から提起するか、あるいはアメリカ側から提起されるか、これは別といたしまして、とにかく日米の間におけるいわゆる防衛の問題というものがやはり一番大きな問題として話題に供せられてくるだろう、このように考えておるわけです。そこで一体岸内閣というものがこの防衛について根本的なものを持っておるのか、その点についてどうも私不審を持っておりますのでお尋ねしたいと思うのでございますが、これまた話のきっかけを作る意味において「中央公論」の三月号に出ております岸さんが外務大臣時代の座談会の内容をちょっと読んでみます。これにはこういうことが言われております。「防衛問題については、実は日本防衛の基本方針というものが明確でないのがいかんいまのわが国の防衛が安保条約などで日米共同防衛の形になっていることは事実なんだから、その範囲内において相談すべきことは相談していき、条約上の取決めは果していかなければならぬが、日本防衛そのものはわれわれの責任において自主的にやるべきものだと思う。だから私は今度の予算についても、年々やっているような防衛折衝を、外務大臣がこちらの駐在の大使との間で話をして、日本側はこう主張している、向うはこうだ、それをいろいろ折衝してまとめていこうというやり方はすべきでないと考えている。それは一方において日本国民防衛に対する熱意や信頼を失わせ、他方アメリカがいやがる日本に無理にやらせているという印象を与え、日米双方のためにならない。一面からいえば、軍事顧問も日本にきているのだし、また広大な西太平洋における平和維持の考え方の一環として日本防衛していかねばならぬ問題もあるから、そういう問題とにらみ合せて、いわゆる基本方針としてきまっている漸増方針を、どういうテンポでどういうふうにやっていくのがいいかということを、十分事前に話合い、そして日本の国有とにらみ合せて自分できめ、その上でアメリカの方へよく説明して了承を求めるというだけでいいのであって、いわゆる防衛折衝というものはすべきでないというのが、私の防衛問題に対する処理の方針なんです。大体そういうふうにいっておりますが、これをつらぬこうと思っております。」こう岸さんはおっしゃっておられる。私はこれなりにもっともだと感じております。今外務大臣からさらに総理になられたあなたが、アメリカに行く前にこのような考えを依然として持ち続けておられるのかどうかということをまずお尋ねしておきたい。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 今お読みになりましたのは、私が座談会では述べたことでございますが、私の防衛に対する基本の考え方として今もそういう考えを持っております。
  50. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこで問題があるわけです。私もこの通りだと思う。保守党の立場で考えた場合もこの通りだと思う。しからばまたあなたがアメリカに行くについて、この基本的なものが日本にはないじゃありませんか。あなたが向うに行かれる前に、防衛計画なり国防基本方針とかいうものをきちんと立てておいでになるのですか。それでなければ、一昨年でしたか、重光さんが行ったときと同じように、何のために行ったのか、共同声明などを発表したって一つとしてそれは実を結ばない。せいぜい防衛分担金の分担の問題一つだけで、あとは全く空文になってしまうという結果になると思うのでございますが、しからばあなたがアメリカに行かれるまでに、こういう基本的なものについて明確な態度を出していかれる考えであるかどうか、それを承わりたいと思います。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 国防会議において長期防衛計画を立てることになっておりまして、昨年末以来国防会議及びその関係において、この日本防衛計画についての基礎をなすべき長期防衛計画については検討を続けて行なっております。私は国防会議の議長といたしましても、できるだけすみやかにこれが結論を出したいということでせっかく研究中でございます。今日必ずいつまでにこれができるということをはっきり明言することはできませんけれども私としては極力日本の国防の根本に関する考え方、計画というものをつかんでアメリカに行きたいという気持でございます。
  52. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 自衛隊は発足以来すでに数年、少くとも日本防衛に当るという任務を持って出発している。ところが明確な国防の基本方針もない、防衛計画もきまっておらない、こういうばかなことではアメリカに行ってもまともな話ができっこない。あなたがこの座談会でおっしゃる通りなんです。外務大臣として非常に軽い気持で、傍観者的な立場で述べられたかどうか知りませんけれども、今はとにかく一国の総理で最高の責任者です。国防の基本方針も持たない、防衛計画の大綱も定まらない、そういう自衛隊を持っておることに対して、あなたは責任をお感じになりませんか、その点をお伺いいたします。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、国防会議が設置されましてから、その根本の問題については真剣にこれが検討を行なっておるのであります。私は、やっぱりその根本がはっきりきまって、日本防衛その他の努力につきましても、目標が明確になることでありますし、ぜひ急いでそれを立てさせたい、かように考えております。
  54. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 国防会議も発足以来すでに八カ月を経過している。その間に国防基本方針一つ確立できない、そういうだらしないことでどういたしますか。防衛計画の面につきましても、あなたはただいま長期防衛計画をなるべく早く作るのだとおっしゃいますけれども、その長期防衛計画は何年度を起点とするのでございますか、それじゃそこからお伺いいたしましょう。何年度から長期防衛計画を策定されようとなさるのですか。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 一応第一次の計画としては、三十五年を目標にした計画を検討いたしております。
  56. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それがいわゆる防衛庁の六カ年計画試案なるものでございましょう。三十年度から出発して三十五年まで、六カ年計画とえらそうなことを言っているけれども、すでに半分はもう過ぎてしまっているじゃありませんか。そのような防衛計画を今からお作りになって、将来に向ってはもうあと三年しかない。長期計画も立たないままに、長期計画を作るんだ作るんだと言いながら三年はすでに経過してしまっている。この点についての矛盾をお感じにならないか、こうお尋ねしているのです。現に三十二年度の予算編成に当りましても、この防衛計画談案なるものに基いて私は予算編成が行われていると思う。本物の防衛計画じゃない、試案なる名のもとに、防衛庁が作って、国防会議にもかけないもの場をずるずると実践に移してきている。そういうことについて国防会議を急いで作った、その国防会議の重大性を盛んに誇張された保守党の責任者としてあなたは矛盾をお感じにならないか。そしてまたそのようなことでは再度アメリカへ行っても腰を据えた交渉、話し合いなどというものはできないのではないか、こういうお尋ねをいたしておるわけであります。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 日本防衛計画につきましては、防衛庁はもちろん防衛庁一つの案を持っております。それはちょうど防衛のみならず産業についても、それずれの主管官庁で一応の案を持っており、その案が年々の予算の編成の基礎になるわけでありますが、防衛の問題は特に重大な問題でございますから、国防会議を設けて、ここにおいてさらに検討して、一防衛庁の試案ということではなくして、国の一つ防衛計画であり防衛方針であるということを明確にする意味において、国防会議が設けられたことは御承知通りであります。事きわめて重大でありますので検討はいたしております。真剣に検討はいたしておりますが、いまだ結論まで至っておらないというのが現状でありますけれども、私はそれをさらに急いで結論を出して明確にするということにいたしたいと思っておるわけであります。
  58. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 実はそれでもおそいのでございます。とにかくアメリカに行くことが大体きまっている、そういたしますと、ここにおのずから限界というものができてこようかと思うのです、向うへ行ってもまともな話をしようと思えば、どうしてもそれまでにきちんとしたものを作っておかなければ、あなたが座談会でもおっしゃっておられたような矛盾を、再び繰り返すことになるのではないか、従って渡米までに国防会議にかけて、ちゃんとした案を持って、そして向う話し合いをするお考えであるかどうかをお尋ねしているわけであります。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、私はできるだけそれを急いで、渡米するまでに一つ防衛計画についてのはっきりした方針を持って参りたい、かように考えております。
  60. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 さらにお尋ねいたしたいのでございますが、まだ質問者がございますので、一応私のきょうの質問はこれで終らせていただきたいと思います。
  61. 相川勝六

    相川委員長 西村君。
  62. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は最初に、今回の法案に直接関係はないかと考えられますけれども、またとりようによっては、私のいやがらせの発言というふうにお考えになる危惧もあるのでございますが、素朴な国民の声として総理も聞いてもらいたいと思うのです。それは総理はかつての太平洋戦争における責任に対して深く反省しておられる、こう率直に申されておられます。この反省を私は素朴な国民の声を聞いてもう一段と進めていただきたい。それはどういうことかといいますと、国民の相当の部分はこう言っております。戦争責任者のある人は絞首刑にせられて再び帰らない。ある人は冷たい牢獄の中で死んだ。また今もって牢獄の中に呻吟しつつある人がある。そういうことを考える場合において、総理国民としての権利を復活せられて、選挙権と被選挙権を持っておるのだから、代議士に当選されるのも当然のことでありましょう。問題はないでしょう、ただ、しかし今回一国の最高責任者となった場合、同じ戦争責任者であった人々がそういうような事情にあることから考えてみましても、この際いさぎよく国会を解散して、国民の審判を受けて、そうして総理の座にしっかりとすわるのが当然ではないか、これが素朴なる国民の声なんです。ところが解散は一向やる気配を示されない、そうしてある場合などにおいては、しいて岸色ということを言うならば、年内に解散をしないというところが石橋色と違うところだろう、こんな工合に冗談めかしておっしゃっておられますが、それではちょっと反省というものの決定的なものを国民は了解できないのじゃないかと思うのです。そこは一国の最高責任者となられた今となっては、率直に国民の審判を受けてこの席に立って、日本の国の方向と国民の運命というものを間違いなきようにしようという考え方に立たれることが望ましいしこういう道義的な立場からいって総理の率直なるお考えをお聞かせ願いたいと思う、
  63. 岸信介

    岸国務大臣 私に対する国民の間のいろいろな批判や国民の気持につきましては、私は今日謙虚な気持でこれらの声には耳を傾けておるつもりでございます。ただ解散の問題につきましては、しばしば私がお答えを申し上げておるように、これは国政の運営から申しましてきわめて重大なことでございまして、これが国民生活やあるいは国民経済に及ぼすところの影響もきわめて重大であるという一面も十分考慮して、政治の運営に当っていかなければならない、かように考えております。もちろん世論に対しては、われわれはこれに聴従していくのが民主政治の根本であると思います。今日のいろいろな私に対する国民の批判につきましても、私は、先ほど申しておるように、十分謙虚な気持で反省をいたしておりますが、しかし今日の情勢から見まして、国民の多数が解散を要望しておるとは私は現在のところは考えておらないのであります。そういう意味におきまして、しばしばお答え申し上げておる通り、今日私は解散の意思はないということを明瞭に申し上げておる次第であります。
  64. 西村力弥

    ○西村(力)委員 どこまでも解散の問題についてはあとに残される、こういうお考えでありますが、私たちから見ますと、国民生活その他の混乱ということを考えて解散を引き延ばすという考えよりも、なお一段と進めた国民の十分なる了解、信任は何によって得られるかということになりますと、やはりこの際総理は解散に訴えるべきが当然ではないか。これは民主主義のルールとして選挙に訴えるということが国民の信任に関係する問題であると思いますので、さように私は申したのでございますが、この点は今私が代弁をした国民の声を十分に考えられまして、近い機会に、御自分の将来を打開するといいますか、はっきりと国民のこの気持にこたえるような方向をとられることを特に望んでやまないのであります。  次に、太平洋戦争における反省を十分になされておることはわれわれも承知しておりますが、この太平洋戦争において日本国の行なった行為が侵略的行為であるか自衛的行為であるかという問題については、いろいろ考え方があるようにも聞いておりますけれども戦争に対する強い反省をなされておる総理は、日本としてのあの戦争行為がそのいずれに属するのであるか、どういう考えを持っていらっしゃるのか、それを私はお聞きしたいと思います。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 太平洋戦争の起りました諸般の原因や事情というものは、史家によって十分冷静に批判されるべきことであると考えております。ただいかなる意味においても、日本がああいう戦争に再び巻き込まれないように、それがたとい自衛であろうが、侵略であろうが、そのときの人々がどう考えておったであろうが、再び日本の国がまた日本民族がそういうことに引き込まれることのないということを政治の眼目として、今後あらゆる面において努力しなければならぬと思っております。少くともわれわれが憲法でいう自衛権というものは、やはり憲法九条においても、なお国は急迫不正の侵害に対しては自分の国を守り、自分の民族を守るところの自衛の権利行使ということを禁止しておるものではない、これは一般の解釈として承認されておるところと思いますが、その意味における自衛という意味と、太平洋戦争が自衛であったか侵略であったかという意味の自衛とは、私は意味が非常に違うと思います、私としては、私自身が当時の責任者の一人でありました関係上、その当時の日本を取り巻いておったところの国際情勢の諸一般の事情を回想してみまして、これは第三者がこの点について批判を下すのが適当であろうが、私はいかなる意味においても、今申し上げたように日本を再び戦争に巻き込むことのないようにということを考えております。またわれわれの考えておる自衛権というものも、そういう意味においての意味でありまして、従っていわゆる広い意味における自衛のための戦争とかいうような意味においては考えておらないということを御了承願いたいと思います。
  66. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうしますと、太平洋戦争でいう自衛というものは、しいていえば広義の解釈には入るけれども、現在の憲法から見てあれは自衛の戦争には入らない、こういう御解釈のようにお聞きしたのでございますが、それでよろしゅうございますか。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 憲法九条にいっている自衛権あるいは自衛権に基いて自衛隊を作っておるその自衛ということは、非常に狭義なものであって、われわれが、急迫不正の催告を阻止し、これを排除するという意味における力の行使を、われわれは憲法九条の自衛権の発動として考えておるのであります。太平洋戦争というような非常に広範な意味におけるところの戦争行為自体を考えておるものではないということを申し上げたわけであります。
  68. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうしますと、現在岸総理は憲法改正の先鋒を承わって、今までも努力せられて参りました。これからもやられると申しておるわけでありますが、現在の憲法第九条は、太平洋戦争のようなものを自衛というものと意味した範囲において行うということになりますと、これを改正すると、やはり日本の将来そういう戦争観というものが、太平洋戦争、そういうものまで進み得る、そういうところまで持っていかなければならない、はっきりさようにあなたは憲法九条の改正の方向というものを考えておられるかどうか、
  69. 岸信介

    岸国務大臣 私はこの憲法問題につきましては、従来もまた今日も自主憲法制定論者の一人でございます。それは現行憲法が制定された当時の事情と今日の事情というものを考てみまして、われわれはわれわれの民族の運命を決する憲法を、われわれの手において、われわれの自由意思の採択によって決定をしたいという見地から、いろいろな点について、根本的には今申しました自主憲法を持ちたいというのが私の考えでございます。現行憲法におけるところの平和主義やあるいは民主主義、基本的人権を尊重する主義のごとき基礎的な考えにつきましては、私はどうもこれを変更するような意味においての自主憲法論者ではないのであります。従ってどの規定をどういうふうに変えるかという問題につきましては、従来も具体的な意見は私は公けの席において申し上げることを差し控えておるのであります。これは十分一つ権威ある憲法調査会において全面的に検討されて、その結論によって村民のこれを支持するかどうかを問うて、現行憲法の規定によって改正をすべきものであるならば、改正が行われるものであることは言うを待たないのであります。いかなる意味におきましても憲法九条の問題につきましても、私の考えにおきましては、今申しましたような基本的な考え方の上に立って、現行のあの九条の規定を見るときにおいて、私どもはある程度のこれの修正あるいは改正ということが当然議論の対象となる、かように考えております。
  70. 西村力弥

    ○西村(力)委員 今の慎重な御答弁でありますが、しかしそれは私は少し卑怯な態度ではないか、こう思われるのであります。あなたは憲法第九条を中心とした憲法改正を行おうとする、こういう意思を強く持っておられる。それは国民全体が知っていることなのです。総理になられたから国民の意志によって改正する必要があるならば、こういう御答弁をなさいますけれども、それは十分に知っていることなのです。そうしますと、先ほどの論議からいいますと、あなたの現行憲法九条を改正するということは、改正したあかつきにおいては、かつての太平洋戦争と同じような規模、そういうようなところまで発展することを許容する、そこまでいくのだ、こういうことに相なるのだから、やっぱりその通りであるかどうかということを、私はその点に限ってお伺いしているわけなのでありますので、それを一つはっきりお述べ願いたいわけなのです。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほども私の信念を率直に申し上げましたが、いかなる意味においても、太平洋戦争のごとき戦争に日本が再び巻き込まれるようなことは、政治として絶対にあってはならないし、またさせない方向にすべてのものを考えていかなければならぬということを申し上げておるのでありまして、従って憲法九条の改正につきましても、そういうことを可能ならしめ、日本をそういうことの危険に追い込むような改正をしようとは考えておりません。
  72. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうしますと、憲法第九条に対しては改正意思を持っていない。今われわれは自衛隊は違憲である、かような立場をずっと継続してとっておる。ところが既成事実が次から次へ積み重ねられて、あるいは国会の論議においても、幾ら言うてもナマズ問答のような状態で、昨年は鳩山さんがたまたま失言をなされたりして問題にもなりましたけれども、一向に進展しない。こういうために今国会における違憲問題の論争は非常に少いように思っておる、しかしながらあなた方においては、自衛隊は合憲である、こういう考えを持っておられる。だからかつての太平洋戦争のような規模において、日本の軍隊が軍事行動を行うことを必要としないように考えておるとあなたがおっしゃるならば、第九条の改正というものは必要なし、こういう結論になるように私は思うが、その通りにはっきりお考えになっていらっしゃるかどうか、明確にしていただきたい、
  73. 岸信介

    岸国務大臣 憲法九条の解釈においては、西村君がおっしゃるように、自分たち自衛隊を違憲なり、こういうことを明瞭に申されておりますが、そういう議論は西村君のみならず、相当にあることをわれわれは承知いたしております。いやしくも国の自衛に当り祖国または民族が危急の場合に立って、不正急迫の侵害を受けておるという場合に、命を投げ出してまで祖国及び民族を防衛しようという立場にある自衛隊の機能そのものが、合法であるか違憲であるかというような基礎の薄弱な、そういう疑いを生ぜしめておるような憲法自身規定というものについては、十分検討してみなければならない、こう考えております。従ってそういう疑惑を生ぜしめない、基礎がきわめて明白である、こういう自衛隊組織を持ち、祖国を防衛するということは当然できることであり、またわれわれ国民としてはやっていかなければならぬことであるということが、明瞭にだれにも疑いを生ぜしめない、解釈上これは憲法違反であるとかいうような批評や非難を受けないように、明確な基礎にしておくことは、憲法の規定として大事な規定だけにこれは必要なことであろう、こういうふうに思っております。
  74. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう論議になりますと、現在自衛隊が違憲でないということそれ自体に対して、あなた方も確信がないし、確信がないままにこれをだんだん推進しておるのだ、こういう工合に聞えてくるのです。この点については、私たちはあくまでも国の安全を守る方式として、現在の憲法のいうところを忠実に守っていかなければならない、こういう立場をとっておりますので、論争をこの際避けていきたいと思います。  この際防衛庁長官にお聞きしたいのは、死の行軍の問題ですが、今の石橋委員から御指摘がありましたが、ああいう人命を無視したような強行な訓練をしなければならないということは、自衛隊の任務に関係する問題であろうと思うのですが、究極するところあの死の行軍が示す自衛隊の任務というものは、大所高所においてどういうことをもくろんでおるかということになりますと、やはり私としてはこの自衛隊は――あるいは軍事科学者が敵前上陸部隊だ、こういうような工合に言っているように、そこまではっきり訓練づけなければいかぬ、そのためにはあのような死の行軍もやむを得ないというような基本方針を定めておるのではないか、こういう疑いを持たざるを得ないわけです。これは少しうがち過ぎるという工合に御批判があるかもしれませんが、軍事科学者たちは、もう率直に、端的に、鋭敏に敵前上陣部隊である、こういうことを申しておるごとに関連して、私たちはさような感じを持たざるを得ないのですが、その点はいかがでございましょうか。
  75. 小滝彬

    小滝国務大臣 部隊として危急の際に国土を守るという任務を持っております以上、克苦難難に耐えるということを訓練する必要があるであろうと考えます。ただ過般のこの事件につきましては、必ずしも計画が万全であったというわけでもない、また事実その実施に当りましても、私ども、遺憾な点がありましたためにあの事件が生ずるに至った次第であります。敵前上陸などということを考えているわけではなくて、国土を守るということにおいて、かりに日本の本土に迫ってきたという場合におきまして、こういう普通科の部隊というものは行進もしなければならないし、そういう困難にも耐えるという適度の――もちろん人命の尊重ということは、この前も私、はっきりと声明いたしましたように、第一前提でありますが、こういう人命を危うくすることのない限度において十分なる訓練をさせなければならない、こう考えているのであります。ただし過般の事件にもかんがみまして、今御指摘のような好ましくない結果が出ないように十分留意をいたしておる次第でございます。
  76. 西村力弥

    ○西村(力)委員 総理は近く渡米される方針のようで、その目的について国会でだいぶ追及になりましたですが、日米の協力の基礎的問題を打ち割って話をする、こういうことを申された。ところがただいま石橋委員質問に対しては、日本防衛計画をなるべく具体化してそれを持っていきたい、具体的に一つ提起せられましたが、今までの答弁によりますと、単に懇談に行く、こういう工合に聞いておって、まことに遺憾に思っておったような次第でございます。  とにかく、岸総理渡米されたあと岸構想なりあるいは岸政策なるものを示されたら、私たち国民としてなかなか割り切れない気持を持つ。ですから党内事情がいかにあろうとも、総裁になられたわけでありますし、渡米を前にしてアメリカに持ち込む問題を含めた岸構想なり、岸政策なりを、この際速急に明示して、しかる後にアメリカへ渡ってもらいたい。そうでなければ、アメリカへ行ったあとこの構想が発表されましたのでは、せっかく自主的なあなたの構想であるとしても、アメリカとの講談によって、アメリカの示唆によって生まれたものだという印象はぬぐい去ることができないようになるのではないか、かように私は思うのです。ですからやはり渡米目的を――一つだけ具体的に御発表になりましたが、その具体的なものを全部含めた岸政策なるものの根本を、はっきりとこの際国民に明示していただかなければならないと私は思うわけなんです。その点に対しては総理はいかようにお考えでございますか。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 訪米の問題につきましては、私の考え方を各種の機会におきましてはっきりと申し上げて参っております。しかしさらに国民に徹底するような方法をとってその旨を明らかにしろという西村君のお考えでございますが、私は国会を通じて私の所信を明瞭ならしめておきました。なお、それが国民に十分理解され、徹底をいたすような方法もあわせてとらなければならぬということにつきましては、御意見の通り考えますので十分考えていきたいと思います。
  78. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そのことは渡米前に、岸政策の基本方針というものを、渡米目的にはっきりわかるように、含めて御発表になる、こういう工合に受け取ってよろしいのでございますか。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 私は、訪米の私の目的について先ほど来から申し上げておるのであります。政治の全面について、いろいろ岸構想とか、あるいは岸自体の考えを明らかにしろということを言われますけれども、私はこの点については、これもしばしばお答えを申し上げておる通り一つの政党内閣であり政党として多年のわれわれの政策的研究の結論に基いたものを本国会に提案をいたしておりまして、予算案その他の法案においてこれが具現することを努力いたしておるわけでありますが、これが実現した暁において、さらにまた政党として新たに前進して、いろいろな新たな政策も国民に打ち出して、そうして国民の支持のもとにこれを実現をはかっていくということは、政党内閣の性格からいえば当然であります。しかしそれがいわゆる岸個人の色彩を別に明確にするという意味ではなくして、政党政治そのものの本質から、当然私はそうしていかなければならぬと考えておりますが、そのことはさらにわが自民党として十分に研究して国民に明らかにする考えでございます。
  80. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私が聞きたいのは、渡米前にそういう点を国民に明確にするかということ。いろいろ国会の発言やなんかを総合してと言いましても国民はわかりません。なおまた、各総理あるいは総裁、そういう人々が就任せられたときには、やはり基本構想を発表されておる。それでその内閣の行く先を国民は大体承知する。ですから、私が聞きたいのは、渡米前にそういうことを明確にせられるかどうかということ、そしてまたそれを明確にされることを私は望むということを、私は質問申し上げておるわけなのであります。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 渡米目的につきましては、私は渡米前にできるだけ明瞭に、また国民が理解するようにして参りたいと思います。一般政策の問題につきましては、必ず渡米前にそうするということは、今申し上げましたように、政党の内閣として、政党政策というものとにらみ合して考えていかなければなりませんから、必ず渡米前にそういうことをするとはここでは申し上げかねるのであります。
  82. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その渡米目的を明確にせられることは大へんけっこうでございます、当然であると思うのですが、その中にやはり安保条約、行政協定の改訂の問題もはっきりと含まれるかどうか。先ほど飛鳥田委員質問の場合も、結局防衛分担金は折半であるにもかかわらず、こちらは向うの出方がどうであろうとこれこれだという工合になって、アメリカ側の負担については全然わからないというようなことも、これは結局日本駐留する兵力に対して、日本の国がそれに対して承認を与えるかどうか、協議に応ずるとか、そういうようなことが全然できないということにその原因があるんだ。であるから、あの一条をとってみても、行政協定、安保条約、そういう問題に対してはこれから相当検討をすべき問題ではないか、こういう問題もぜひこの渡米目的に加えるのが当然であると思うのですが、そういうものを含められるかどうかお開かせ願いたいと思います。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 私は具体的に安保条約をどうするとか、あるいは行政協定に触れてどうという話をするということは、従来も申し述べておりませんし、また私の意図から申しますと、しばしば申し上げているように、日米間の基本的な問題について十分に腹を割って話し合うのが目的でございまして、いろいろな問題にも触れますことは当然でございますけれども、具体的に安保条約をどうするとか、あるいは行政協定をどうするとかいうような考えは、私としては持っておらないのでありまして、全面的に日米基礎的の関係について腹を打ち割って話し合うということでございますから、いろいろな問題にも触れるだろうと思いますけれども、具体的に今何の問題と何の問題を持っていくというふうには考えておらないのであります。
  84. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そう言いますけれども、私たちが心配するのは、たとえば松村さんが東南アジアに行かれた。そうすると東南アジア国民の皆様は、砂川の問題を非常にショック的に知っておって、ああいう問題が日本にまだ厳存するのか、そういうような国との友好あるいは貿易というものをわれわれは喜んで拡大するわけには参らぬ、ということを松村さんがずいぶん聞かせられたということも私は聞いておる。それはやはり日本における不平等条約の悲劇が、日本の自立経済の障害となってきておるのです。そういうこともやはりはっきり考えていただかなければならない。  なおまた、核兵器の持ち込みに対しては、断固として拒絶する、総理はこう申されておりますけれども、条約の条文からいって、究極においては拒否する権能を持たないということになるし、またこの日本の西の方のある地点においては、山をくり抜いて、そこに原子兵器あるいは原子弾頭なるものが持ち込まれておるのではないかということが、その地元の評判としてもっぱらなんです。結局それも、この条約が全然決定的なるものを持っていないというところに、そういううわさの発生する余地があるわけなんです。であるから、そういう点からいっても私たちは、この際もっとその点に対しては強い結論、はっきりした方針をもって臨んでもらわなければならない、こう思うわけなんです。その点に関してはいかがでございましょう。
  85. 岸信介

    岸国務大臣 私は他の機会においても申し上げたのでありますが、日本の独立の完成また自主独立の立場から、国際的なあらゆる活動をするということを申しておるのでありまして、特に日米間の将来の提携の基礎を作りますためには、日本の自主独立の立場、日本の独立完成というこの命題を基礎にすべての話し合いを進めて参るというのが、私の考え基礎でございます。従いまして、いろいろな問題にも触れますが、常にそういう心組みでアメリカ話し合いをいたすつもりでおります。
  86. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうしますと、アメリカ側においては、この日米協力関係において、もう十分にアメリカ日本防衛に寄与しておるにかかわらず、原子兵器の持ち込みに反対するということはおかしい、日本の国はもっとそういう問題について国民を啓発すべきである、こういうことを言っておるのです。ですから、今のようなお考えで向われるとすれば、向うの意見にやはりこちらの方がはっきりと対抗するというか、向うを説得するようなことは不可能ではないか、こう思うのです。もう少しこの問題については――国民全体の関心事であり、あなたも申されておるように人類全体の問題である。しかもソ連では、この間、一月の何日か、プラウダというのでは、日本とかイランとか、そういう国々はわれわれの親しい国であるけれども、戦争を仕かける連中がわれわれに攻撃を加えたときに、そこにどういう手段をもって報復されるだろうか、それは基地を提供したものの、政府の責任である――これはおどかしかもしれませんが、そのおどかしというものも、結局、向うの軍備の状況から言いましても、これが単なるおどかしというふうには考えられない。そういうことの絶対にないように私たちはしなければというときにはまたアメリカが、おかしいではないかと、日本政府のふがいなさをむしろ嘆いておるような状況にあっては、もっとしっかりした立場でその問題に対処する準備と心がまえを持って御渡米を願わなければならないのじゃないか。向うの話を拝聴するということだけでなく、こちらからもほんとうに積極的な、真剣なる考えを持って進んでいただかなければならないと私は考えるわけなんです。一つもっとはっきりしたお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 原子爆弾や水素爆弾等核兵器の問題につきましては、日本国民が持っておる気持というものは、世界のどの国の人々が考えているよりも深刻であり、また強いものであると私は考えております。このわれわれの国民的要望、強い深刻な気持を、米英ソの国々の首脳、さらにその国民にいかにしてこれを徹底せしめるかということが、原水爆の実験禁止や、あるいは進んで使用、製造禁止等に対するわれわれの念願、悲願を十分に理解してもらうためには必要であると思うのであります。今日アメリカにおきましても、われわれがただ一片の決意がこうなっておるとか、あるいは外交的なルートでもって抗議を言うだけじゃなくて、この深刻な国民の気持というものを代表してアメリカ首脳部との間に話をするということが、この際私は非常に必要なことである、かように考えておるのであります。すべてアメリカとわれわれが話し合いをしていく上におきましても、この国民の気持というものを十分に率直に話して、そうしてお互いにそれを理解し合っていくことが真の提携の基礎にならなければならない。こういう考えからいたしまして、先ほど来申しておるように、日本の独立完成、自主独立の立場からすべての日米関係というものを一つ見直してみて、そうして今後の日米提携の基礎を作っていくというのが私の真の願いでありまして、またそれに向って私の全力をあげて努力して参りたい、かように考えておるのであります。
  88. 西村力弥

    ○西村(力)委員 時間がありませんので、私はこれで終ります。
  89. 相川勝六

    相川委員長 保科善四郎君、まことに恐縮でありますが、総理の御時間もありますから、簡潔に一つお願いします。
  90. 保科善四郎

    ○保科委員 私、総理大臣に、国防一般に関してごく簡単に所信をお伺いいたしたいと思います。その第一点は、先ほど来総理の御答弁にも現われておるのでありますが、日本は、現在の国際情勢上、また現憲法下において国家の安全を保障する上において、適当なる自衛力を持つことは必要であるという国策に基いて、今防衛力を増勢しておるわけであります。ところが、現実問題として、わが国内のいろいろなところを歩いてみましても、終戦後日本が置かれた特殊の環境からして、この防衛力の増勢ということに対する国民の関心は、非常に薄いと思います。この内閣委員会においてもしばしばこの問題が論議されるのでありますけれども、政府当局のこの防衛問題に対する態度は、国としてそうやるということがきまっておるにもかかわらず必ずしも私は積極的であるとは考えません。そういうことが国民に反映しておる。それにただいままでお話がありました通り、わが反対党がこれを否定しておるというような関係が、特にそういうことにしておると思います。  そこで私は日本自衛隊も千何百億の予算を使い、ほんとうにわれわれは日本国民に安心感を与えるようなものにこれを持っていかなくちゃならぬ、こういうことに対しては政府はすでに質をよくするという方針をきめたのですから、質をよくするためにはどういうことをしなくちゃならぬかというような具体的な方策について、私はもっと一歩を進めるべきだと思います。たとえば先ほど来お話がありました通り世界の兵器は革新的な進歩を遂げておる、こういうことに対処してこういうものを受け入れますためには、その導入の態勢もやはりわれわれとしては整えなくちゃならぬ。それには現在の機密保持法あたりではいかぬということは明瞭であります。そういうことも今回提出されようとはしないというようなことが、結局国民防衛に関する意識を向上させない、端的な一つの原因になっているのではないかと私は思うのでありますが、これらの点に関して、もっと積極的な、国民防衛意識の向上対策を講じられる御意思がないかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。
  91. 岸信介

    岸国務大臣 国の安全が保障されておる、安全であるという、安全感を国民が持っておるということが、それは言うまでもなく政治の根底であると思うのです。しこうして今日の国際情勢考えまして、われわれがわれわれの国力に応じた最低限の自衛的な防衛力を持つということは、これは憲法においても当然できることであり、またわれわれとしてはなさなければならぬことであって、これなくしては国民が、われわれは安全であるという気持がとうていできないと思うのです。しこうして現在の状況におきましては、日本一国の自力だけで、そういう国民に安全感を与えるだけの力を作り上げるということは、とうていまだできないというところに、日米共同防衛体制というものができておるのであります。このことに関しましては私は十分に国民がその必要と、またそれを完成することが国民としてなさなければならぬところであるということを理解し、そういう気持ができるようにあらゆる宣伝や啓蒙もいたしていかなければなりませんし、またさらに自衛隊そのものにつきましても、今朝来いろいろの論議がありましたように、国民がこれに安んじてそういう場合の重大な任務を託するというふうな信頼感が起るように持っていかなければならぬと思います。こういう点から見ますと、従来政府がやって参っておったことが完全であり、この通りがいいというわけにも私は参らないと思います。十分それらの点を考えまして、正しい防衛に関する国民の意識を高揚せしめることは、これは絶対に必要である、かように私は考えておりまして、あらゆる点を検討してそれの目的に沿うようにいたしたい、かように考えております。
  92. 保科善四郎

    ○保科委員 もう一つは国防会議に関する問題であります。国防会議に関しては、先ほど来ディスカッションがありましたし、大体の総理の御意向がわかりましたが、この国防会議は何も成案がなければこれを開いてはいかぬというものでもありませんし、またこの国防会議の議長であるべき総理が時々この国防会議を開きまして、大局の方針について話し合いをされ、そして必要なるものはそのつどこれを国民に知らすというようなことも――機密保持上必要以外、差しつかえのないものはこれを国民に知らすということが非常に重要なことだと私は考えておるのであります、国防会議防衛計画ができなければ開けないものだということではなく、もっと広範なものでありますから、私はもっと楽な気持で国防会議の運用をされる必要があると考える。またこの会議の構成員諸公も初めからそういうものにタッチをされて、いろいろなものを検討され、そして最後にできたものをあらゆる観点から検討されるときに、ほんとうのものが私はでき上ると思う、それができ上ってから国防会議を開いてやったのではほんとうのものにならぬと思う。そういう点に対する総理の御所見を一つ伺っておきたいと思います。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 国防会議は言うまでもなく国防に関する大綱、基本的なものをきめるところでございまして、今保科君の言われるように、ただ長期防衛計画というものだけについてある一つの成案を得て、それの審議をするということではないと私も考えております。特に長期防衛計画、いろいろな自衛隊内容のみならず、一国の均衡ということは、言う事もなくそれを裏づけるべき防衛生産の問題もございましょうし、また大局的から各種の国際情勢の分析に立って、日本防衛というものを広い視野から常に考えていく必要もあると思います。こういうような意味で、今お話のように、今後国防会議というものの運営につきましては 私どももただ長期防衛計画の一応の案ができるのを待っているというだけではなくして、国防会議には事務局もありまして、いろいろなことも研究いたしておりますので、さらにそれに基いて会議を開いて、今お話のような大局的見地から、総合的にこれを運営していくということはきわめて必要であると考えております。
  94. 保科善四郎

    ○保科委員 私の質問はこれで終ります。
  95. 相川勝六

    相川委員長 次会は明後二十五日月曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十八分散会