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瀧本政府委員 人事院がやります民間
給与調査は、例年同じことをやっておりますが、調査対象の
事業場の規模は五十人以上の
事業場でございます。ただ五十人以上ということがこの際どれだけの意味を持つかということをつけ加えて御説明申し上げますと、人事院の職種別民間
給与調査というのは、いわゆるキー・ポジションの比較をやっております。たとえば経理係の
職員でありまするならば、それの職務の内容と責任の
程度は、国における係員の場合はどの
程度であり、また係長ならばどの
程度であるということをいろいろ分析いたしまして、職務内容を限定いたし、そうして民間において五十人以上の
事業場で経理
職員がおりますならば、それを調べてみて、たとえば係長の
段階に相当するか、あるいは係員の
段階に相当するかを対比して、比較することが適当であるというものを比較するという
方法であります。そういう
方法によってやると、どういうことになるかと申しますと、経理
職員であるとか、人事係、人事課長、総務課長、こういった職種は
公務員も民間も同様でありますので、これは調査が可能なわけであります。ところで
公務員においては、経理あるいは人事係の
職員はそのほかの
職員と
給与上非常に違っておるかといえば、そういうことはないのであります。民間においてもやはり
一つの体系の中にはバランスがあるわけでありますから、そういうものを手がかりとして民間と
公務員を比較する、こういうやり方が従来の人事院のやり方でございます。昨年も同様のことをやっておるわけであります。そのようにして比較いたしますならば、キー・ポジションの比較においては、係長であろうと、課長補佐の
段階であろうと、課長以上の
段階であろうと、おおむね一一%違う、こういうことを申しておるのであります。従前はこういう調査だけを
基礎にして人事院が民間と
給与を比較する際の判断にいたしたのでありますが、昨年はいろいろの統計
資料を利用することができましたので、またほかの
方法もやってみたのであります。先ほど申しましたように大蔵省で三公社五
現業及び
一般職の実態調査が
昭和三十年一月現在で行われております。これは各個人別あるいは学歴別、勤続年数別、あるいは年令別というようなことで詳細な
資料がとり得るような調査が行われております。多少その経験年数、あるいは学歴、年令の区分
段階は違いますが、やはり労働省におきまして民間の職種別
給与調査を行なっておられます。われわれは別にただいま申し上げました人事院独自の調査のほかに、大蔵省の
一般職職員の実態調査、それから労働省の民間職種別調査、この二つから先ほど三公社五
現業のところで触れましたように、いわゆる
公務員と民間とを標準化するというやり方で公務の中の
一般行政職、すなわち俸給表土特殊の優遇
措置を受けていない部分、特別俸給表の適用を受けていない、または調整額の適用を受けていないというグループをとりまして、同様の比較をやってみますと、民間と
公務員とは一一%違うということが出て参ったのであります。一一%ということはそういう意味で申したのでございます。しかしながら
公務員の中におきましては、たとえば警察
職員、税務
職員、あるいは教育
職員、そのほか海事関係
職員というような方々は、いわゆる特別俸給表の適用を受けておりますが、
一般俸給表の適用を受けている
職員よりも高い水準の
給与を受けているのであります。今かりにこのような高い処遇の
給与を受けておりまする
職員の
平均給与額というものを、同様な
方法によりまして
一般職と比べてみますると、相当
程度高いのであります。従いまして
一般行政職は民間に比べまして一一%低いのでありますけれ
ども、
公務員の中におきまして三十六万のうち約四割に当ります高い処遇を受けている
職員がいるわけでございますから、そういう
職員との総
平均を見てみますと、
公務員全体の
平均というものは民間に比べまして六%
程度低いのではなかろうか、このような結論に達したわけであります。六%
公務員の水準を上げまするならば、全体としましては
公務員と民間とのバランスがとれる、このように
考えたわけであります。問題は行政職の個々のものを見て参りますると、民間と比べまして、やはり格差が残るではないかという問題がございます。しかし
公務員の中においては待遇の問題で高い
職員もおりますから、そういった問題は今後じっくりと
公務員の中の再配分の問題として
考える余地が残るのではなかろうか。いろいろ民間と比較する
方法はございましょうが、全体として
平均がとれるということは一応の
考え方ではなかろうか、このような
考え方によりまして昨年の判断はいたしているわけであります。
上昇率について申し上げますならば、
公務員におきましては新しく入ってくる者が五%前後、退職していく者が五%前後ということになっております。従いましていわゆるターン・オーバーは非常に幅が狭いのであります。しかるに民間の総
平均について見ますると、離職していきます者も、新しく入って参ります者も、おおむね二〇%の動きがある。この新しく入ってくる者というのはおおむね
給与の低い人々でありますが、そういう人々が多く入って参りますと、全体の
平均ベースというものは下るのであります。また
給与の高い人が退職する
傾向が多いのでございますが、やはり
給与の高い人が抜けていけば、それだけ
給与水準は下るということでありまして毎月勤労統計あたりのいわゆる総
平均いうものだけを見まして、これを
公務員の総
平均と比較してみましても、なかなか的確な比較になっておらないのであります。従いましてそういうことは単なる参考
程度にしか見られないのでありますが、この
公務員の場合に、
年度間に五彩前後の転退職並びに新規採用もございますが、そういうことをいろいろ織りまぜておおむね五%前後の水準の上昇があるわけでございます。民間におきましても二〇%前後のものが出たり入ったりいたしますので、長期でどれくらい上っておるかということはそういう
要素を取り去ってみなければわからない。すなわち水準の上昇だけでは単に両者がどれだけ上ったかということはなかなかわからない、このように
考えております。