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1957-02-20 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 福井 順一君 理事 保科善四郎君    理事 山本 粂吉君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       北 れい吉君    田中 龍夫君       船田  中君    眞崎 勝次君       粟山  博君   茜ヶ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    木原津與志君       下川儀太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣官房長官 田中 榮一君         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  庁         (警察庁刊事部         長)      中川 董治君         総理府事務官         (調達庁長官) 今井  久君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         防衛庁参事官         (補備局長)  小山 雄二君         検     事         (刊事局長)  井本 臺吉君         外務政務次官  井上 清一君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 二月十九日  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二九号)  雇用審議会設置法案内閣提出第二八号(予) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二九号)  雇用審議会設置法案内閣提出第二八号)(  予)  国の防衛に関する件     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案議題とし、これより審査に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。井上外務政務次官。     ―――――――――――――
  3. 井上清一

    井上(清)政府委員 外務省設置法の一部を改正する法律案提案理由及び内容説明いたします。  まず提案理由説明いたします。  今般の改正は、外務省機構について次の二つのことを行おうとするものであります。  第一は、外務省本省において欧米局廃止し、アメリカ局及び欧米局設置することであります。第二は、在外公館一つとして、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部設置することであります。  まず欧米局廃止並びにアメリカ局及び欧亜局設置につき御説明申し上げます。  外務省において地域別の政務を担当する局といたしましては、戦前はアジア局アメリカ局及び欧亜局の三局、また、時期によってはこのほかに南洋局もありましたが、現在はアジア局欧米局二つだけでありまして、欧米局欧州米州アフリカ中近東大洋州というはなはだ広い地域を一局で担当することとなっておりますが、これは現在の機構が作られましたのはサンフランシスコ平和条約ができたころのことでありまして、当時はいわゆる東欧閥諸国との国交回復はいまだ全然予想が立たず、またわが国外交活動全体といたしましても、いわば回復期にありまして、全面的な働きをなすに至っていなかった等の理由によったものであります。しかるに以来五年有余を経過して事情も大きく変化いたしました。国際政治における地位を着々と向上してきましたわが国は、このたびの国際連合加盟によりさらに大きく一歩を踏み出し、他面懸案のソ連を初めポーランド、チェッコスロバキア等東欧諸国との国交も相次いで回復し、ここにわが国外交は質的にも量的にも、五年前に比べ面目を一新するに至った次第であります。かかるときに際しまして、従来のごとく欧州米州中近東アフリカ大洋州の全地域を合せて一つの局で担当するのでは、これらの地域に対する外交活動に万全を期することは不可能でありますので、わが国にとり重要な関係を有するソ連、最近新しい動きを見せている東欧諸国、また国際政局に近来とみに重要性を加えている中近東諸国等を含む欧亜地域は、独立の一局に担当せしめることとし、このため現在の欧米局アメリカ局欧亜局二つに分けることとしたい所存であります。  次に在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部設置について説明いたします。  ジュネーヴには、国連欧州事務局を初め、国際労働機関世界保健機関国際電気通信連合世界気象機関等国連専門機関や、ガット、赤十字その他多くの国際機関があり、またこの都市の特殊性にかんがみ、常時ひんぱんに各種の重要な国際会議が開かれております。現在ジュネーヴにはわが方の在外公館としては、総領事館が置かれていますが、右のような事情のもとにあって、同総領事館が処理しております事務は、従来すでに領事事務の範囲を越え国際機関ないし国際会議に関する外交事務が大半を占めている実情であります。今後は、わが国国際連合加盟に伴い、わが方の国際機関関係事務はますます増大し、かつ、重要度を加えることが予想されますので、世界主要国はすべてジュネーヴ外交機関とし政府代表部を置いていることにもかんがみまして、わが国といたしましても、在ジュユネーヴ国際機関日本政府代表部法律設置することといたしたい所存であります。  以上が本法律案提案理由説明であります。  次に本法律案内容説明をいたします。  まず欧米局廃止並びにアメリカ局及び欧亜局設置につきましては、外務省設置法第五条に、本省内部部局として欧米局にかえてアメリカ局及び欧亜局を設け、同時に第九条の欧米局所掌事務に関する規定アメリカ局所掌事務に関する規定に改め、また、新たに第九条の二といたしまして欧亜局所掌事務規定いたしました。  次に在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部設置につきましては、まず第二十二条第二順に在外公館一つとして同代表部設置規定し、次に第二十四条第四項においてその位置を定め、最後に第二十五条第二項において同代表部の長を特命全権公使とする旨を規定することとした次第であります。  以上をもちまして本法律案提案理由及び内容概要説明を終ります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あらんことをお願いいたします。     ―――――――――――――
  4. 相川勝六

    相川委員長 次に労働省設置法の一部を改正する法律案議題とし、これより審議に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。松浦国務大臣。     ―――――――――――――
  5. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ただいま議題となりました労働省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  労働行政におきましては、省内部局を通じ総合調整を要する事項が少くないのでありますが、特に最近は経済政策社会政策等との関連で総合的角度から検討を要する事項が増大し、従って省内部局にわたり調整を要する事項も量的質的に増大いたして参りましたので、他のほとんどの省に官房長が置かれている例にも徴し、今回労働省においても官房長をおきたとい存ずるものであります。  以上が今回この改正案提案した理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことを特にお願い申し上げる次第であります。     ―――――――――――――
  6. 相川勝六

    相川委員長 次に雇用審議会設置法案議題とし、これより審査に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。田中内閣官房長官。     ―――――――――――――
  7. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま議題となりました雇用審議会設置法案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  最近におきましては、経済規模の著しい拡大に伴いまして、雇用状態も相当に改善されてきているのでありますが、労働人口就業内容あるいは日雇労働市場等、なお改善の度の薄い面も見られるのでありまして、今後における生産年齢人口著増をあわせ考えますと、雇用問題の解決は、今日及び将来にわたってなおきわめて困難な問題であると認められるのであります。  政府は、諸施策目標一つとして完全雇用達成を掲げ、この問題の解決に努めているであります。しかしながら、雇用に関する問題は関連するところきわめて多く、総合的な見地から検討すべき問題であり、また政府の諸施策雇用状態に影響の及ぶ施策も広範囲にわたるのであります。従って、政府雇用に関する問題点を的確に把握し、完全雇用達成目標に向って諸施策を運営して参りますためには、各方面の有識者の意見を徴していくことがきわめて必要であると考えるのであります。  以上のような事情にかんがみまして、政府は、雇用及び失業に関する重要事項審議する諮問機関として、従来総理府設置せられておりました失業対策審議会を改組強化し、ここに雇用審議会設置することといたした次第であります。  次に、法律案概要を申し上げます。  第一条は、この法律の目的及び審議会設置規定し、第二条は、審議会所掌事務規定したものでありまして、審議会は、雇用構造その他雇用及び失業状態に関する事項雇用状態改善のための施策に関する事項失業対策に関する事項、その他雇用及び失業に関する重要な事項について調査審議し、これらの事項に関し、内閣総理大臣または関係大臣諮問に応じ、かつ、所要意見を述べ、または報告する旨を規定しております。  第三条から第七条までは、審議会の組織に関する規定でありまして、まず委員は、三十人以内とし、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命し、任期は二年といたしました。次に、審議会会長及び副会長各一人を置き、委員の互選によりこれを定めることとし、また専門委員三十人以内、幹事二十人以内を置くこととしました。さらに、第八条では、審議会に部会を置くことができる言及びその構成について規定いたしております。  第九条では、審議会はその所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出等必要な協力を求めることができる旨を規定し、第十条は、審議会の庶務は、内閣総理大臣官房において処理する旨を規定し、第十一条は、この法律規定したほか、審議会に関し必要な事項については、政令で定める旨の委任規定であります。  なお、付則におきまして、この法律は、昭和三十二年四月一日から施行すること及び総理府設置法第十五条第一項の表中失業対策審議会の項を雇用審議会に改めることを規定いたしました。  以上が、この法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。     ―――――――――――――
  8. 相川勝六

    相川委員長 次に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両法案一括議題とし、これより審査に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。小滝防衛庁長官。     ―――――――――――――
  9. 小滝彬

    小滝国務大臣 防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明申し上げます。  最初防衛庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げたいと存じます。  政府は、現下の情勢に対処し、わが国の国力と国情に応じて防衛力を整備する必要があることを認め、防衛庁職員定員を八千四百九十八人増加することといたしました。すなわち、現在の定員二十一万五千三人を二十二万三千五百一人に改めようとするものでございます。この八千四百九十八人の増加分のうち、六千九百二十三人が自衛官で、残りの千五百七十五人が自衛官以外の職員でございます。自衛官増加分は、千四百三十人が海上自衛官、五千四百九十一人が航空自衛官でありまして、海上自衛官にあっては、新造されまたは米国政府から引き渡される予定の艦艇の就役及び航空部隊整備充実等のため必要となる要員であり、航空自衛官にあっては、航空集団司令部新設、二航空団増設等のため必要な要員であります。  第二に、技術研究所が部外からの委託を受け、技術的調査研究、考案、設計、試作及び試験を行うことができることとする必要を認め、その事務支障のない限りこれを行い得ることとし、所要規定を整備することといたしております。  次に自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一に、海上自衛隊乗艦訓練のため練習隊群新設するとともに、警戒隊群廃止してこれを自衛艦隊編成から除くこととして、その編成を改めるほか、航空防衛力整備増強のため、航空自衛隊に二航空団を基幹とする航空集団新設するとともに、二航空団を増設する等のことを規定いたしております。  なお、航空集団新設に伴い、長官は、必要があると認める場合には、航空集団司令補給処長または病院長指揮監督させることができることとする等所要改正をいたしたのであります。  第二に、防衛出動または治安出動を命ぜられた場合または海上における警備行動災害派遣訓練その他の事由により必要がある場合には、特別の部隊編成することができることとなっておりますが、今回さらにこれらの場合において、特別の部隊新設するまでの措置をとることなく、所要部隊をその隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に置くことができることとし、事態に即応した自衛隊の一体的かつ能率的運用をはかることといたしております。なお、この措置により、特別に編成される部隊または同一指揮官の下に置かれる部隊陸上自衛隊部隊海上自衛隊部隊または航空自衛隊部隊のいずれか二以上からなる場合、その部隊に対して行う長官指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、長官の定めるところによることとしております。  第三に、当分の間、自衛隊任務遂行支障を生じない限度で、自衛隊以外においては、その養成または教育訓練を行う施設がないと認められる一定の技術者養成または教育訓練委託を受けて、これを実施することができることとして、所要規定をいたしております。  以上画法案提案理由及びその内容概要を申し上げた次第でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  10. 相川勝六

    相川委員長 ただいま提案理由説明を聴取いたしました五法律案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  11. 相川勝六

    相川委員長 次に、国の防衛に関する件のうち、特に自衛隊員強行軍による死亡事件及び東富士演習場事件等について質疑の通告があります。これを許します。下川儀太郎君。
  12. 下川儀太郎

    下川委員 私の質問しようとする問題は、昨年九月東富士演習場においてアメリカ兵の農夫に対する殺人未遂事件に関することでありますが、その件の調査方をお願いしたので、その報告をまずお聞きしたいと思います。
  13. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 当委員会におかれまして、昨年来富士演習場において米兵発射による日本人側被害事故があったのではないかという御指摘がございました。実は私どもそれまでそうした事実のあることをうかつにして承知をいたしておらなかったのであります、これは全く第一線の中央に対する報告の懶怠と申しますか、そういう点まことに遺憾に思うのでございます。  さっそく実情を調査いたしてみたのでございますが、その概要を申し上げますと、事故発生をいたしましたのは昨年の九月七日午前六時ごろと思われるのでございます。場所は静岡御殿場のいわゆる富士キャンプ演習場内でございます。被害者御殿場市の農業根上きぬえさんと申される方で、三十一才の方でございます。被害発生いたしました当時の状況は、被害者根上さんが近所の御婦人三省と一緒に、何日午前五時ごろから同演習場内にたま拾いに出かけられました。先ほど申します通り、午前六時ごろ、当時演習中の米兵発射をいたしまして、そのたま根上さんに当ったのでございます。発射しました米兵位置と、負傷されました根上さんのおりました地点との距離は、およそ十五、六間ないし二十間くらい、こういうふうになっておるのでございます。被害者根上さんの供述されるところによりますと、最初一発発射されたので、驚いて逃げるような格好をしておりましたところ、続いて第二発目が発射されまして、それが横腹に命中をして倒れた、こういうふうになっておりますが、被疑者米兵の方の供述によりますと、一発しか撃っておらない、そういうことでございます。そこで根上さんが倒れられましたので、米兵の方も驚き、さっそく米軍衛生兵等がかけつけまして応急手当をしまして、同行の婦人たちとともに根上さんを御殿場市内高木外科病院に送り届けまして、そこで手当を受けられたのでございます。レントゲン検査の結果、上腹部に小銃の薬莢が盲貫しておるという事実が判明いたしたのでございます。そして切開手術の結果摘出しまして、治療に約四週間を要した、こういうことに相なっておるのでございます。  当時警察といたしましては、被害者根上さんの方からは何ら届出もなかったのでございますが、病院の方でそういう手当をした関係上、病院の力から自発的に警察の方に連絡がありまして、警察では初めてそうした事故のあったことを承知いたした、こういうことになっておるのでありまして、自来警察ではこれが捜査に着手をいたしました。日本人側被害者並び目撃者関係者の方々の供述をいただきまして捜査を続行すると同時に、米軍側関係につきましては、米軍捜査当局捜査を依頼して参ったのでございます。演習中の事故であり、公務上のものであるというふうに米軍側では申しておるのでございますが、日本側としましては、それに十分納得のいくだけ捜査資料提供を受けなければ、軽々に結論を出すべきものでないということで、事件発生以来数回にわたり折衝をいたし、捜査の十分な資料を整備いたしまして事件の処理をいたしたい、こういうことで今日に至っておるのでございます。  昨年九月の事件発生以来、今日まで五カ月以上も経過しているのに、いまだに事件拾収がついておらないのは怠慢ではないかというそしりは、確かに受けなければならぬと思うのであります。この点につきましてはまことに申しわけないと思うのでありますが、今日ただいま静岡警察本部並びに現地御殿場警察署においては、事件の早急なる解決のために、おくればせながら最善を尽くしておる状況でございます。
  14. 下川儀太郎

    下川委員 そこでまずはっきりさしておかなければならぬことは、これが単なる事故ではない、殺意から生じたいわゆる殺人未遂事件ということであります。私も現地に行きまして、被害者である御本人根上さんと会って、いろいろと聞いて参りました。すると、そのときの状態というものが、これは相馬ケ原事件と全く同一でございます。しかも本人たまを拾いに行った、そこで一発食らったのであります。逃げようとしてその前方を見ると、アメリカ兵黒人兵――アメリカ兵だけが銃を擬して、ねらい撃ちしようとしておる。そこで、これはうしろ向き逃げたのではなくて、真正面でたじろぎながら、恐怖しながら、一歩、二歩と下っていった。ですから正面から、そのたじろいで去っていく方をねらい撃ちしている。まさか撃つまいという気もしたので、逃げもしなかったけれども、十五メートル以内に下ってくると、そのねらい撃ちのたまが突如発して、そうして本人は人事不省に陥ったというふうに陳述しております。そうなると、これは単なる事故ではない。結局ねらい撃ちした、それからたじろいでうしろへ下っていく前方から、はっきり見きわめて撃ったということでございますから、これは明らかに殺人の意図を持った殺人未遂事件であるというふうに解しているのでございますが、当局側はその点どのようにお考えでございましようか。
  15. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 被疑者米兵供述によりますと、当時演習中である、前方仮想敵が現われたので、(笑声)これをねらい撃ちしたのである、こういうふうに申しております。その辺のところは、先ほど申し上げました通り、わが日本側警察としてはまだ十分納得がいきませんので、いろいろ詳細な捜査資料提供を要求いたしておるのであります。  なおまた問題の米兵が、自分自身の銃でなくして、そばにおりました同僚の兵の銃を借りて発射をしておる、こういうことがわかっておるのでございますが、その同僚の銃の銃口にから薬莢が詰めてあったということを、事件を起しました被疑者たる米兵が認識しておったかどうかというような点も、事件解決のために一つのポイントになろうかと思うので、そういう点も目下十分究明をいたしておるのであります。およそ通常の場合には、銃の先にから薬莢が差し込んであるということは、まずあり得ないのでありまして、そうしたものではなしに、ただ単に空砲を発射するつもりで本人が引き金を引いた、たまたま不幸にして銃口にから薬莢が詰めてあったために、それが発射したということでありますならば、本人には殺意はもとよりのこと、傷害を与える意思もなかった、単なる事故であるということもあり得るのであります。従いましてそういった点を十分に究明した上でなければ、軽々殺意をもって発射したものというふうにきめつけるわけには参らない、かように考えておるのであります。
  16. 下川儀太郎

    下川委員 しかし被害者本人自身がそのように申し述べておるのに、当局側が先方の言うことのみを聞いている、これは非常に不見識であると思います。やはり日本人立場に立って、日本人を守るという立場に立っての見解が私はほしいわけです。いかがでしよう。
  17. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど来申し上げます通り米軍側の申しておることがそのまま正しいというふうに受け取っておらないのでありまして、われわれは納得いかないのでさらに捜査を続行し、納得のいくまで必要な資料を収拾したいということで努力をいたしておるのであります。
  18. 下川儀太郎

    下川委員 それから当時の情勢といたしまして、夜間演習が行われておったので、夜間演習が終ったころを見計らってたま拾いに行ったと申しております。約六時ごろでございましょうか、そうするとちょうど演習が終っておった、というと、公務中でないということが認定できるわけです。そうなると、当然公務中でないという推定があるならば、裁判権はこちらにあるわけです。なぜそれを主張し、同時に徹底的に向うを追及するという立場に出なかったかということもまた疑惑を持つわけなんです。その点いかがでしょう。
  19. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 お説の通り公務中でないならば第一次的に日本側裁判権のあることは、その通りでございます。そこで日本側としましては、その点を明確にするためにいろいろ必要な資料提供を求めておるのでございます。  たとえば、当日の演習実施計画がどういうものであったか、従って何時から何時まで、どういう態様の演習がなされておったのであるかということをまず明らかにすることによって、事故発生しましたその時間における米兵行動が、まさしく演習中の行動の一環であったかどうかということがはっきりするわけでありますので、そうした点を究明いたしておるのでございます。その結果、公務中でないということがはっきりいたしますならば、もとより日本側が第一次的に裁判権を当然持つことになるのでございます。米軍側では当初公務中の行為であるというようなことを言っておりますが、われわれはそれをそのまま受け取りがたいので、その点を明らかにするためにいろいろ必要な資料提供を求めておる、こういうことでございます。
  20. 下川儀太郎

    下川委員 先方に資料提供を求めるといっても、当時CIDの捜査官から一回しかその捜査状況に関する報告がなかったということです。その状況報告を読んでみますとまことに心外しごくで、逆の立場報告をしておる。  これは当時御殿場の署長に、文書ではなくして口頭をもって、捜査官が来て報告した書類でございますが、それを読みますと、犯罪捜査官に被疑者供述した内容として、九月七日にノース・キャンプC2地区演習場でざんごう内において、自分はコーポルとともに射撃訓練をしていたが、前方二十五ヤードないし三十ヤードくらいに軍の作業服を着用した者が見たので仮想敵と思い、コーポルの持っていたMIの銃を持って空砲を発射した。するとジョンソン軍曹がだれかけがをしたと大門で叫びながら飛び出したので、私はその場に行ってみると、そこには日本人の女が倒れており、体の左の方から血が出ており、看護兵が来て包帯をして手当をしてつれて行った。自分はから薬莢を入れて撃った覚えはない。またMIの銃の先にグリネード装置があるので、その中にから薬莢が入っていたかどうか知らない。こういうふうなことを述べています。  まことにうそっぱちな証言でございまして、この証言を見て参りますと、全然から薬莢が入っていないとか、そういう点がありますが、これはもう当日の病院における摘出手術においてはっきりわかっておる。あるいはまた仮想敵と言っておりますが、仮想敵といっても、やはり先ほど申し上げた通り前方にはっきりとエプロンをした婦人が立っておる、しかも明らかなその姿の前に対してねらい打ちをしておる。そういう実証がございまするので、当然これは事実無根の証言をしておることが明らかになっております。ですからこういう捜査をする場合においては、やはり公務執行中であるかどうか、あるいは実質的に商うの証言が全然うそっぱちのものであるかということを推定しての捜査の進行を、なぜしなかったかという点を非常に考えるのであります。いかがでございましょうか。
  21. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど来申し上げます通り捜査が遅々として進んでいないことは事実でございます。その点はまことに遺憾に思っております。いろいろ現地実情を聞いてみますと、現地においては数回にわたって督促をいたしておるのでございますが、その間に相手方米側捜査官の異動、係官が更迭したというようなこともありまして、その間円滑なる事務の遂行に支障を来たしたというような点もあったようでございます。また一つには、被害者根上さんが当時禁止区域の演習場の中に入ってたま拾いをした。そのためにけがをしたのは、本来入るべすらざるところに入ったのだから、自分の方にも手落ちがあるというような多少ひけ目を感じておられた。不幸中の幸いといいますか、数週同程度のけがで済んだのであるから、これ以上事をあまり表ざたにしたくないという気持があったというふうなこと、それが勢い警察捜査当局の力にも心理的に影響して、あまり派手に捜査を進めるというわけじゃありませんが、隠密の間に捜査を続行して、いくというような点に多少心理的に影響しておるというようなことも考えられるのであります。いずれにしましても、先ほど来しばしば申し上げた通り、この程度の事件でそう難解でない問題であるにもかかわらず、必要以上の長い日数を要して、いまだ最終的な結論に達しておらないということは、はなはだ遺憾であるのであります。私どもこの事件のありましたことをつい先刻承知いたしたような次第でございますが、そこで現地の方には鋭意督促をいたしまして、今からでもおそくない、すみやかに事件解決をはかるべく最善を尽すように指導督励いたしておる状況であります。
  22. 下川儀太郎

    下川委員 この事件に関しまして、九月十九日の午後一時から日米連絡協議会が持たれております。その席上には富士調達事務所長佐々木達郎氏、御殿場署長斎藤宣男氏等が臨席しておりましたが、この席上、富士キャンプ司令官エングル・ブライト中佐はこういうことを言っております。立ち入り禁止を無視して入る者は処罰する、アメリカ軍の演習支障を来たす者は撃つ権利は持っておる、こういうことを言っております。撃ってもいいということは、殺してもいいということであります。こんな暴言を吐かれて日本政府は黙っておられるのか。これが人道主義を唱えるアメリカ軍の司令官の言葉だと思うと、実に心外です。こういう雰囲気の中に育てられていく米兵が、演習場その他において殺傷をする、いろいろな暴力をふるうということは、あり得るこでございます。一体こういうアメリカ軍の訓練方法、あるいは司令官が、たとい演習場たま拾いに来ても支障を来たすから撃ってもいい、殺してもいいというような言動を吐くということは、これは人道無視もはなはだしい、人権無視もはなはだしいと思う。相馬ケ原事件もやはり全く同じ兵隊の日本人蔑視の感覚からきた、日本を侮辱した、植民地化した、その考え方から発した現われが、こうした不祥事件になったのだと私は考える。従いまして当局は今こそきぜんたる態度をとらなければならない。向うに対していわゆる奴隷的な考え方、あるいは妥協的な考え方、そういう態度で今度の問題を取り扱うと、これはもう自後いろいろと出てきます。従来でも数百件あるいは数千件に上るそういう殺傷事件があったと思いまするが、たま拾いを禁止区域の中に入ってする、そういうひけ目を感じた上で届け出なかった。あるいはまた補償も要求しておりません。しかしやはりこういう問題は、この際法を守る日本政府のきぜんたる態度をもって、徹底的に追究しなければ跡を断たないと私は思います。その点に対して当局はどのようにお考えでしよう。
  23. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 全くお説の通りでございます。この東富士の事件の結末が今日までじんぜん延引いたしておりますことは、まことに遺憾にたえないのでございます。今からでもおそくない、速急にこれが解決のために最善を尽すように現地を指導督励いたしておりますことは、先ほど申し上げた通りでございます。今後この種の事件が相次いで起るというようなことは好ましいことでありません、またそうひんぱんに起るとは考えませんが、もし不幸にして類似の事件が起りましたような場合には、日本側捜査当局としましては、きぜんたる態度をもいてこれら事件の処理に当ることは申すまでもないことでありますと同時に、今後そうした不祥事件を起すことがないように、関係各方面ともそれぞれ最善の注意を払いまして、工夫をこらし、努力いたしていくことが肝要ではないか、かように存じております。
  24. 下川儀太郎

    下川委員 しかしこうした重大な事件が約半年間も放任されておった。これは一体どこに起因するのでしょうか。
  25. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどもお答えいたしました通り被害者根上さんが禁止区域である演習場内に入っておったということにひけ目を感ずると申しますか、そうした点を取り上げられることが好ましくないというようなことからして、この事件を表ざたにすることをあまり好んでいなかったやに見受けられる。そうしたことが捜査当局にも心理的に反映をいたしまして、捜査が多少鈍ると申しますか、表面化さないように隠密の間に捜査を続けていくというふうな配慮をしたのではないかと考えられる。また先ほど申しました通り捜査の過程において米軍捜査係官が更迭をしたということによって多少事務にも支障を来たした、こういうこともあったように思います。いずれにしましても、事件発生以来半年になんなんとする今日まで、最終的結論に到達しておらないということは、しばしば申し上げます通り、まことに遺憾に存ずるのでございます。今後そうしたことのないように十分第一線を督励いたしたい、かように存じております。
  26. 下川儀太郎

    下川委員 そして現在は一回も犯罪通報というものが警察側に来ておらないのですが、この点もまたわれわれ非常に不思議だと思います。これも単に今度の問題だけでなく、従来の共同捜査によった犯罪事件、そういったものが一回も警察側には届いておらない。これは一体どういうわけでありましょう。
  27. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 従来この種の事件について犯罪通報が一回も来ていないというようなことはございません。
  28. 下川儀太郎

    下川委員 来ておらないそうです。これは御殿場署長に会って聞いて参りましたが、どういうわけで来ないのでしょうか。
  29. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 御殿場署長が犯罪通報が来ていないというのは、本件事件についていろいろ両捜査当局において真実の発見に努めておるのですけれども、真実発見の段階におきまして、米軍側が犯罪と思量してこれを通告するかどうかということについて、しはしば御殿場署は督促しておるのです。その督促に基いての犯罪通報が来ていない、こういうことを現地の署長が言っているのだろうと思うのです。それ以外の事件につきましては、犯罪であるということが発覚しました場合には相互に通報する。犯罪と思量できない、たとえば流れだまで人が死んだ場合には犯罪と思量できませんから、こういった場合におきましてはそれぞれ通告がない、こういう実情を申しておるのではないかと思うのであります。当該御殿場著管内におきまして、過去においていろいろ事件もあり、演習場以外には犯罪もあったかと思うのでありますが、これにからまる事件につきましては比較的事故がありまして、たとえば流れだま等によって事故が起った場合には犯罪と思量できませんので、それぞれ犯罪通報がなかった、こう理解できますので、そのことを申したのではないかと思うのであります。
  30. 下川儀太郎

    下川委員 そうではなくて犯罪の通報なんですよ。いわゆる犯罪の共同捜査の場合において、向うにこちら側が資料をやる、それに対して向うからいろいろ通報が来るのですが、その通報が全然ないそうです。一回も来ていないそうです。その点一つお伺いしたいのです。
  31. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 この御殿場に限りませず、全国の各警察におきまして、日米関係事件、すなわち両国に競合する裁判権のある事件等につきましては、犯罪通報等を相互にやっておるのであります。これは御殿場署に限らず全国的に通報をやっておりまして、われわれは統計等も常に持っておりますので、間違いなく日米町方が通報をやっておることは事実でございます。御殿場署においてその通報がなかったという点につきましては、当該事件を中心のことだと思いますが、それ以外の御殿場署における実情等につきましては、お話もございますので、さらに調査してみたいと思うのでありますが、全国的に申しますと、犯罪通報の点につきましては円滑に行われておる、こういうことを申して差しつかえないと思うのであります。当該御殿場にかかる事件につきまして何か特別の事情があるという点を御指摘でございますので、さらに研究してみたいと思います。全国の事情を申し上げましてお答えといたしたいと思います。
  32. 下川儀太郎

    下川委員 全然ないということははっきり申しておりました。その点一つ御注意申し上げておきます。  そして現在なお捜査中であると言っておられますが、しかし捜査の対象であるところのアメリカ兵が現在日本におりません。一体どうして捜査するのか、その点をお伺いしたいと思います。
  33. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 われわれ犯罪を捜査するにあたりましては、関係人がおるとかおらないとかいうことは、それほど重要なことではないのでありまして、真実発見のためには関係人の取調べ捜査もいろいろいたしたのでありますが、当時米軍関係者におきましてある程度本人の取調べも行われておりますので、そういった点等をつき合せて真実発見ができると思うのであります。ただし状況によりましては、本人のおるところその他において照会が行われて、必要によっては本人がこっちへ出てくる機会等もとっていただく、そういった点は相互の連絡によって可能でございますので、そういう――この点以外にも相当多いのでございますが、ことに米軍関係者は移動が激しゅうございまして、われわれといたしましてはいろいろ苦心をいたしておるのでありますが、関係当局の照復等によって真実の発見に努めておるような状況でありますので関係人がいないので直ちに捜査ができないということにはならないと思います。
  34. 下川儀太郎

    下川委員 加害者を逃がしておいて、日本政府の方をごまかしてうやむやにするのは、いつも向うの手だと思います。そういう点で本件事件も、アメリカ政府に送還を要求して徹底的に追究しなければならぬと思います。これは単なる御殿場事件ではない。全国に散在するたくさんの事件がありますので、それを最初事件として追及の手をゆるめてはいけないと思います。当局としてもアメリカ側に加害者本人の返還を迫って、真相を十分突き詰める決意があるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  35. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 これは当時御殿場署におきまして被害者及び関係人等から供述書もとっております。それから米軍関係者につきまして向うの捜査当局において捜査に当っております。そういった状況等によって、御指摘の通り電話照復等が行われたことも事実でございます。そういった点をさらに突き進めて関係人の状況を把握いたしたい、こういう努力を引き続き努めておりますので、そういう努力の一環として、いろいろ追及いたしまして真実を確認していくという努力を絶対続けて参るべきものだと思っております。
  36. 下川儀太郎

    下川委員 同時に被害者の陳述その他を照し合せて、この事件殺人未遂として起訴する用意があるかどうか、その点もお伺いしたい。
  37. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 刑事事件の本質は、真実を発見するのが建前でございますので、真実発見の資料には確かに被害者供述も有力な資料でございます。その他関係者供述も有力な資料でございます。その他発射当時の状況等を示すことも重要な要求でございますが、いろいろな角度から真実を発見していく建前でございますので、初めから殺人ときめ込むとか、初めから過失ときめ込むとか、初めから事故だときめ込むということでなしにほんとうに、真実の発見に努めるという努力に邁進するのが正しい行き方であると考えますので、その努力の遂行を、当時もやった事実もございますので、それにつけ加えての努力を続けて参りたいと思いますが、直ちに本件事件殺人事件であると思量する十分な証拠は現在ございません。
  38. 下川儀太郎

    下川委員 しかし被害者及びその傍観者たち、その周囲の情勢等から、これも殺人未遂ということは明らかになっておる。ただ加害者があまりにもでたらめな陳述をしておる。しかも加害者は単にそれだけの犯罪を犯しただけではない。もっと他にたくさんの犯罪がございます。一つの犯罪といたしまして、昨年十二月、御殿場の若宮の時計店から女時計二個を窃盗しておる。この事件も一件書類を送検してあるのでございますが、ことしの一月十八日ですか、検事局から呼び出しをかけた、そうすると本人はいなくなってしまった。しかしもしその際に米兵を捕縛するなり、あるいは取調べ中に今度の農婦の殺人未遂事件を追及しておったならば、適切な捜査ができたと思う。これは窃盗事件でございますから、裁判権はこちらにある。あるいは捜査権一切はこちらにある。ですからその際なぜこちらでつかんで徹底的に糾明しなかったか。いわゆる警察の落度と申しますか、あるいは現地警察官がなれ合いで逃がしたと見られても差しつかえないと思うのです。ともかく捕縛するチャンスは与えられておる。あるいは窃盗犯といえども十分できる。捕えてきて他の一件を追及することもできる、その際になぜ徹底的にやらなかったか、非常に私遺憾と思うのでありますが、その点どのようにお考えでしょうか。
  39. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 御指摘のように、本件につきまして別に窃盗被疑事件がございます。窃盗被疑事件捜査につきましては、当該事件の窃盗罪を証明するに足る資料を添えましてそれぞれ送検の処置をいたしておるのでありますしその窃盗罪事件のときに、本件事件もあわせて捜査すべきじゃないかもこういうお説のように拝聴いたしたのでありますが、本件事件をそのときにも捜査するというのも一つの方法でございますけれども、当該事件についてはすでに供述等もございまして、その供述を何回繰り返しても同じことでございますので、そういう供述が相当な理由があるかどうかという面を他の町から把握して、その真実を発見する方がより合理的であるという理解のもとに、現地において捜査を進めておったのでございます。
  40. 木原津與志

    ○木原委員 関連して。先ほどの中川刑事部長の御答弁の中で私の納得のいかない点がある。あなたは刑事捜査をするのは翼突発見することだということでごまかされておる。というのは、加害者の兵隊も日本におらなくなり、またアメリカ軍からこの捜査内容についても全然通報がきておらない。こういう場合に、一体あなた方はどうしてその事件の真実の発見ができるのですか。元来あなた方は真実発見をする資格はないのです。真実発見は裁判官がやるのであります。あなた方は捜査官として、どういう事実に基いてどういう証拠があるか、その事実を立証するにはどの証拠によって立証するかということ、すなわち証拠資料を収集することがあなた方の任務じゃないか。あなた方には真実発見の任務はない。アメリカ軍から何も資料提供はない、加害者は加害後アメリカの方にもう帰してしまっておる。こういう場合に、あなた方が一体に基いてこの事実についての資料を収集できますか。まるで怠慢じゃないですか。それでもなおあなた方が資料の収集に万全を期することができるというならば、その期することのできるという根拠を今一回答えて下さい。
  41. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 お説のように、真実の発見はそれぞれ裁判所において行うのであります。ところが、裁判所で行われる以前において、捜査官といたしましては、真実を発見するに足る資料、すなわち証拠を収集する。証拠を収集するという心がけの要点は、真実を発見するために必要な証拠を収集する、こういう角度で各地の捜査官は努力いたすのであります。従って裁判官も確かに翼突発見のための裁判が行われることを期待されるでありましょうけれども、その前提となります捜査官も真実発見のために必要な証拠収集に努力する、こういうことでありますので、捜査官が真実発見のために捜査活動をするというのは、私の独断ではなくて、刑事訴訟法に定めるところに基いての私の説明でございますので、この点御了解いただきたいと思います。  それから、本件について真実発見に努めておるところの内容でございますが、御案内の通り、どちらが第一次裁判権を行使するかということはその状況によることでありますけれども、いずれにしても、日米両当局の裁判権の競合する事件でございます。裁判権が競合する事件については、行政協定十七条の第六項の定めによって、日米両捜査当局が協力して真実発見をする、こういう説明に相なっております。その規定に基いて、われわれ日本の捜査官においても、米国側の捜査官においても、相互協力のもとに関係者供述を初めとする各種の証拠を収集して、それを集積いたしまして、それぞれ最後には裁判が行われる、こういう手段を尽すのが建前でございます。日米両捜査当局が相互協力いたしまして、向うは向うの供述を聞き、当方の捜査官は被害者、その他関係人の供述を聞く、こういう点はすでに完了いたしておるのであります。向うが聞いた部分についてまだ不備の点、もっとお聞きしたい点がございますので、さらにそれをしばしば督促いたしております。そういう督促をいたし、相互協力して本件事件の真実発見の形に持っていく、こういう努力を続けている次第であります。
  42. 木原津與志

    ○木原委員 日米共同してやっておるという御答弁でありますが、先ほどから何回も言いますように、アメリカ側からは、これについて犯罪態様の説明も何らの資料の送付も行なっておらない。しかも、一番肝心な犯罪の主体である身柄はアメリカ本国に送り帰してしまっておる。この二点をもってしても、アメリカ側に誠意をもってこの事件捜査して結論をつけようという意思が全然ないことが明らかじゃございませんか。真実発見のためにはあえて加害者の存在は大した問題ではないということではありましょう。しかし何としても最後のきめ手は加害者本人にあるのです。加害者本人を無視して、犯罪の捜査なり裁判の真実が打ち出せますか。こういうときに、相手方は証拠収集についても何ら誠意を示さない、そうして身柄さえアメリカに追い帰してしまっておるということになれば、これは合同捜査の一方が証拠隠滅の挙に出ておるという態度が明らかであります。そういう態度であるにかかわらず、あなた方が合同捜査ということを名目に、昨年の九月から今日まで捜査をほったらかしておいて、国会で問題になってからあわてて事実の調査をするというような怠慢な態度を保持しておられながら、なおかっこの事件の真実をつきとめ得るかどうかということについては、私ども多大の疑いなり、あるいは不信なりを持たざるを得ない。だから、私どもはこの点についてのあなた方の率直な真摯な態度を要求したいのです。いかがですか。
  43. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 お説のように、率直、真摯にこの事件の処理に当りたいと思うのでありますが、向うの捜査当局がその当時においても被疑者を取り調べたことは事実でございます。その取り調べた内容等につきましては、御殿場署長に電話等によって連絡があったことも事実でございます。そういった関係をさらに詳しく知りたいとわが捜査当局は考えまして、向うに督促いたしております。確かに被疑者その他が手元におる方が捜査に便利であるということはお税の通りでありますが、部隊の移動等によって動きました場合においても、向うの捜査当局においてもそれぞれ照復を重ねまして、さらにわが捜査当局と共同態勢をとる、こういう態度をいつもおとりになっておられますので、今回の事件も、向うの捜査当局はわが捜査当局に協力されるものである、こういう理解のもとに協力をするのでありまして、その協力を裏切るようなことは万々あるまいと考えております。
  44. 下川儀太郎

    下川委員 ただいまの言ですが、これは捜査中々々々と言って今日まで一回も向うから報告がないそうです。これは御殿場警察署長に三日ほど前に会って参りましたけれども、全く向うは不誠意きわまるということも署長は話しておりました。また向うが捜査捜査中ということで隠蔽してしまうということもあるのでございますが、一体それをどのように処理するのでございますか。
  45. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 繰り返し申しておりますように、いろいろそういった点について向うに照復をいたしておるのでありますが、だんだんその照復に基いて向う側の回答があるものと期待するのでありますが、その期待は大体裏切らないで実行されるものという前提でいろいろ捜査いたしておりますので、そうそう疑ったら切りがないので、相互信頼のもとに事を処理して参る、こういうことで捜査を続けて参りたいと思います。
  46. 下川儀太郎

    下川委員 そういってもすでに半年たっております。半年たってもなお向うから通報がない。何らの返事がない。それでもなおかつ向うを信頼して待っておりますか。
  47. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 私先ほど来たびたびお答えの際に申し上げましたが、今日までこの事件解決にじんぜん日を過したことはまことに遺憾であります。その間率直に申しまして捜査の緩慢であったということは認めなければならぬと思うのであります。しかし今日われわれがこうしてこの事件の実態を把握いたしました以上、第一線を十分督励いたしまして、今からでもおそくない、最善を尽しまして、早急な解決のために万全を尽したい、かように申し上げておるのでございまして、しばらくお時間を拝借いたしたい、かように思うのであります。
  48. 下川儀太郎

    下川委員 それから公安委委員長が御出席だから申し上げますが、先ほど申し上げました富士キャンプ司令官のエングル・ブライト氏が、立ち入り禁止を無視して入った者は処罰する、アメリカ軍の演習支障来たす者は撃つ権利があるといったことを言っておりますが、これはもってのほかで、国情を無視した実に人権無視の言辞だと思うが、それを政府の名をもって取り消しを要求していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  49. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 ただいまの問題でありますが、司令官がどういう意味で言いましたか、私その言葉は初耳であります。さっそく地元に照会してどういう意味で言ったか確かめた上、適当な措置をとりたいと存じます。
  50. 下川儀太郎

    下川委員 この言質は富士調達事務所長の佐々木達郎氏も聞いておりますし、それから御殿場署長の斎藤宣男氏も聞いております。私は二、三日前に聞いて参りました。これはうそでないと思いますが、よく調査の上その点を一つ取り消しを要求していただきたいと思います。
  51. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 よく調査します。
  52. 下川儀太郎

    下川委員 それからこの点に関する公安委員長の所見を伺いたいと思います。
  53. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 ただいままでの質問及び答弁の内容を伺っておりまして大体全貌がわかったのでありますが、最後に長官が言いました通りいやしくも事件が私どもの目に入りました以上は、最善の努力を払って事実を把握し厳正に法の執行をするという覚悟であります。この点だけを申し上げておきたいと存じます。
  54. 下川儀太郎

    下川委員 本問題は単なる一婦人に対する殺人未遂事件ではなく、アメリカ軍の日本人に対する蔑視感から生まれた事件であります、今後の日米関係にも世論とともに重大な反響を生ずるものと思いますので、従って本問題は徹底的に真相を究明していただきたいと思うのであります。同時に本委員会としても実情調査をお願いいたしたい、同時に当局側といたしましても実地調査をいたし、相馬ヶ原事件と同様に日本の憲法を守り、日本人の権威にかけて正しい処断をしていただきたいと存じますが、関係各位の決意を伺いたいと思います。
  55. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど来たびたび申し上げます通り、私どもこの遺憾な事件の処理につきまして、今日まで捜査が緩慢でありましたことをここで率直に認めると同時に、これについてただいまより即刻これが解決のために最善を尽す気持を持っておりますことを申し上げまして、御了承を得たいと思います。
  56. 下川儀太郎

    下川委員 本問題は現地調査を待って再質問をする予定でありますが、この程度で私の質問を終りたいと思います。
  57. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 関連して。ただいま下川委員からいろいろとついておられましたが、この東富士の問題が半年以前に相当徹底的に捜査され究明されておったならば、あの相馬ヶ原事件のようなものはおそらく起らなかったであろう。その点でこの半年の遅滞ということは日本にとっても非常に不幸な事件をもたらしたのであって、その責任ははっきりしておかなければならぬと思います。特に両事件ともに捜査陣営が発表する前に国会の追及に会いまして、やっとそれが問題になったというような共通の性質を持っておる。初めは流弾等による単なる事故として見ておりましたが、これを探ってみますと容易ならぬ犯罪を含んでおる。よしんば流弾による事故でありましても変死であります。変死体ならばその変死が果して殺人であったか、あるいは本人の過失であったか十分に究明する義務が警察にもあると思います。その点まことに遺憾に思います。この間調達庁から出されました資料を拝見いたしますと、この行政協定の十八条に関係する事件というものが非常な数に上っております。二十七年以来四万一千六百二十一件であります、この中で交通事故が二万八千四百十六件、航空が五百八十八件、海上が三百五件、その他というのが実に一万二千三百十二件あります、この一括してその他で片づけられておりますものの中に、相馬ヶ原あるいは東富士の問題のような容易ならぬ事件がないとは断言できないと思います。調達庁はその点をどの程度まで調べられておるのか、この際はっきり御答弁願いたいと思います。
  58. 今井久

    ○今井政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。調達庁といたしましては、行政協定十八条の補償の義務については、被害者から申請がございまして、その申請をば調査いたしまして、その状況によって米軍と交渉して金額の決定をいたしておるような次第でございます。従って被害者から申請の必要上書類が出て参りまして、その数がお手元に差し上げてあります申請書受理件数ということに相なっておるのであります。調達庁は御承知のごとく警察のように綱の目のごとくに職員の配置ができておりませんで、主要なる演習場、射撃場等に調達事務所を設けております。それらの地元におきましては、市町村役場が中心になりまして付近の方々で協議会等ができておりまして、その協議会と調達事務所とが常に密接な連絡をとりまして、事故発生しましたような場合には、これこれのことで補償ができるのだということを平素から十分徹底するように努めておる次第でございます。しかしながら事柄によりましては、それらのことが調達庁まで上って参らないような場合もございます、私どもの方で受理いたしております内容につきましては書類も整っておりますので、ただいま御指摘のありましたような点についても、内容は十分わかっておる次第でございます。
  59. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 発生件数が四万一千六百二十一件ですが、その中で申請書を受理いたしましたのがわずかに一万二千百六十六件であり、これが補償を受けましたのはさらに下回っておる。そうしますと、事件発生の大半というものは申請を受理されず、いわんやその補償については全然顧みられなかったという件数が多いと認識してかまいませんか。
  60. 今井久

    ○今井政府委員 お答え申し上げます。事故発生いたしました中で、被害者と加害者というものとの間に和解その他で話がつきまして、もう申請をしないというものは私どもの方へ申請として出て参らないのでございます。そうでなくして、申請として私の方に出て参りましたものにつきましての数字は、先ほど申し上げました申請書受理件数ということに相なっておる次第でございます。
  61. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この発生件数の四万一千六百二十一件というのは、あなたの方で調べましたものと警察側で調べましたものと合っておるかどうか警察庁に御答弁願いたい。
  62. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま調達庁の方から御配付になりました資料は、事故関係の数でございますが、私どもの方の警察におきましては、犯罪関係を調べておるわけですが、犯罪関係事故のすべてが犯罪ではもちろんないのでございまして、事故のうちで犯罪というのは、それぞれ刑法その他特別法に定める犯罪でございますが、その犯罪関係で申しますと、全国的に三十一年で申しますならば、刑法犯は三千六百四十三件、特別法犯が三千九百一件、こういう状況でございますので、合計いたしますと六、七千に近い件数が犯罪関係である、こういうことが言えようと思います。犯罪関係以外は事故でございますので、調達庁の方の資料に基いてわれわれは認識しておるわけであります。
  63. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その警察関係資料を御提出願いたいと思います。さらに一点確かめておきたいのですが、この調達庁関係の四万一千六百二十一件の中に、さっき申し上げました相馬ヶ原あるいは東富士のような類型のものが何件くらい入っておるか。お調べになっておるなら承わりたい。
  64. 今井久

    ○今井政府委員 今御指摘の点につきましては、私今資料を持っておりません。おそらくそういうような事件というものはあまりないじゃないかと思いますが、調査いたしましてお答えいたします。
  65. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 資料がないというのでございますから、私はこれ以上追及しませんが、警察側の方には、やはり二十七年度にさかのぼりまして、捜査の対象になりました件数と、調達庁の方には、その他という千二百以上に及ぶ件数の内訳を一応分けまして、これはお出しを願いたいと思います。あなた方が漫然と打ち捨てておいた事件が東富士あるいは相馬ヶ原のような大事件になっておりますので、この点をさらに検討してみたいと思います、資料をいただきました上で質問を続けます。
  66. 相川勝六

  67. 木原津與志

    ○木原委員 米軍日本人射殺事件につきまして一瞬大事なことは、これを捜査し裁判をするについて、日本側捜査権も裁判権もないということが一番問額であり悲劇の種になっておると思う。犯罪があった場合に、加害者を逮捕し、そうしていろいろな調べができ、そうして日本の裁判所が無条件に裁判を行うということこなりますれば、これほど事はめんどうな問額にならなかったろうと思うのでありますが、今日まで数々の事件につきましてごたごたしておるのは、裁判権が日本にない、あるいは捜査権がないということに私は帰着するんだと思う。そこでこの際防衛庁長官並びに大久保国務大臣も臨席されておられますから、この問題の将来に対する解決のために格別の御努力を願いたいと思うのであります。日米安全保障条約並びに行政協定におきまして、日本側に第一次裁判権のあることについて規定をいたしておりますが、それについては、被害者日本人であり、さらに米軍において公務執行外の場合においては第一次裁判権が日本にあるんだということを規定してございます。ところがこれについていつも問題になるのは、当該米兵の犯行が公務中か公務外かということでいつも問題になっておる。そこで日本側とアメリカ側において、当該行為が公務外だ、公務中だというて紛争が起る。その結果この問題を解決しなければならないということになるのでありますが、そこで問題は何が公務中か、何が公務外であるかということについての日本側とアメリカ側との見解がいつも一致しておらない。そこで公務中ということにつきましては、さきに日本側の最高裁判所で、公務中については、公務執行過程における場合が公務中であって、それ以外のことは公務外だ。それに対してアメリカ側では、勤務時間中の行為は全部公務中だ、こういうような解釈をとって、現在まで対立して参っておる。相馬ケ原事件にいたしましても、現に公務中か公務外かということで問題になっておる。そこでこの公務中と公務外ということで対立した場合は、結局これが解釈は、日米合同委員会においてその決定をするということになっておるそうでございますが、もし日米合同委員会においてこれが解決できない、話し合いができないという場合には、一体その後の経過はどうなるのか、ちょっとここのところを両大臣から御説明願いたい。
  68. 小滝彬

    小滝国務大臣 御指摘のように、公務中、公務外のことは非常に問題になります。御承知のように外国における軍隊の地位につきましては、国際法上にも御承知のように原則がありまして、それにのっとってできたのが今の行政協定であり、北大西洋条約諸国もこういう条約を用いておるのございます。今御指摘の最後の点について私は申し上げますならば、なるほど二十六条によりまして今回委員会で話し合をする、しかしどうしても片づかない際はこれは当然両国間の問題でありますから、外交上の正式の機関を通じまして、先方の政府に申し入れる、これが最後の解決の方法でございます。
  69. 木原津與志

    ○木原委員 裁判権がどこの国にあるか、占領と被占領あるいは駐留と被駐留という形の中で、裁判権が被駐留国、たとえば具体的の場合は日本にあるかないかということは、その国が独立しておるかどうかということのシンボルだと私どもは考えておる。従って裁判権の有無ということが独立国であるかどうかということについての資格の問題、適格の問題にからんで非常に重要だと思うのです。今言うように、公務中の行為でないということになれば、これは当然日本に裁判権があるということになるのでございます。そうしてまた具体的な事犯についての日本の法解釈の最高機関である最高裁判所が、公務中というのは公務執行の過程における行為のみだという最高解釈をしておるのでございますから、これは駐留軍にしても、駐留しておる国の最高機関の決定であるから、当然その国に敬意を表する意味におきましても、この解釈に服従すべきであると思うのでありますが、この点について防衛庁長官はどういう考え方をしておられますか。
  70. 小滝彬

    小滝国務大臣 私はあなたのような法律家でもありませんし、ここに法律家がおりますが、私はこういうように解釈します。主権の属人主義、属地主、義といろいろ申されますが、少くとも国際法の原則におきましても、外交官であるとか部隊をなした軍隊の特殊の地位というものが認められており、しかもここに条約上の根拠もあっておりますから、こういう問題を基本的になくそうとする場合には軍隊がいないということが一番望ましいのでありますが、その際において、なるほど日本に関します限り、最高裁の考え方というものは最も尊重されなければならないわけでありますが、しかしそれかといって、こうした条約の基礎のもとにおいて特殊な地位を認められておる。しかもそれがただ単に安保条約に基く両国間というのではなしに、国際法の原則に基いて作られましたこういう法的地位を持っておるものについて、どうしても見解が異なっておるならば、やはり最高裁の意向というもの、考え方をよくアメリカに通報して、そうしてそこに法の衝突がないようにする、こういう措置をとらなければならないのであろうと考えます。
  71. 木原津與志

    ○木原委員 大臣の考え方は非常に貴重な考え方だと思うのでございますが、この相馬ヶ原の事件のありましたときに、その直後であったと思いますが、公務中であるかどうか、公務外であるかということにつきましていろいろ議論のありました際に、日本の外務省欧米局長の解説の中で、これは私新聞紙で拝見したのですが、演習中は一日中が公務中だというような、アメリカ軍の言うことと全く同じ解釈を日本の外務省の局長、責任者が言っておられるのを私は読んだのであります。非常に遺憾だと思う。日本人の法解釈を規律する、最高の規範となる最高裁がそういうようなことを言っておらない。公務中というのは公務執行の過程における行為だけだというように解釈しておるのに、その解釈に一応準拠しなければならない日本の外務省当局が、その解釈によらないでアメリカの解釈と同じく、勤務時間中、演習中は一日全部が公務中だというふうな解釈をしておられるのを見まして、非常に遺憾にたえない。防衛庁はそういうような解釈をしておられないと思いますが、参考までに公務中と公務外についての防衛庁当局の御見解をここで明らかにしていただきたいと思います。
  72. 小滝彬

    小滝国務大臣 公務中についての最高の解釈は裁判所にまかせておりますので、私はそういう最終的なことを申し上げる資格のない人間だろうと考えます。しかし千葉欧米局長が言ったとおっしゃいますことはこういうことだろうと思います。公務執行の過程におけるということになりますと、やはり今あなたのおっしゃる勤務時間中というのと大体合致する点もあり、そして五時になって部隊を離れて、部隊長の指揮を離れまして、どこかへ出てお酒を飲んでいるようなときは公務執行中でない。勤務時間中においては原則として常に指揮官がおりまして、休憩中においても指揮官が責任を持っておるもその意味においては、私は千葉君が申したとおっしゃいますことと最高裁の御意向――私は直接聞いたことはございませんが、今おっしゃる意向との間には必ずしも基本的な矛盾はないものではなかろうか、こういうように解釈いたします。
  73. 木原津與志

    ○木原委員 参考までにこの公務執行の過程におけるという判例が出た事犯を御説明申し上げます。これはMPがパトロール中に、勤務時間中に日本人の家に入り込んで、そして婦人を強姦した事件なんです。これにつきまして、アメリカ側ではこれはパトロール中だから勤務時間中だ、だから当然公務中だ、こういって盛んに被告人の方を弁護し、主張したのにたいして、最高裁判所の方でアメリカ側の主張を排斥して、今私が言いましたような判例、判決ということになったんです。そういうような場合は、たとい勤務のパトロール中であろうとも公務中だということをいって、はっきり判決をしておるのでございますから、今後のわれわれの米軍に対する態度というものは、一貫してこの主張を貫くべきじゃないかと思うのであります。もしそうだとするならば相馬ヶ原のこの事件の際も、法務当局がはっきり公務外の行為だという認定をしておるのでございますから、これは身柄の引き渡し並びに裁判権の行使につきましてわれわれとしましては、日本側としましては、あなた方は強力な確信を持って当らなければならぬと思うのでございます。この点についての御見解をお聞きしたい。
  74. 小滝彬

    小滝国務大臣 その仕事は外務省の主管しております合同委員会の仕事でございますけれども、私も閣僚の一人として申しますならば、日本の方であくまでもそれが正しいということになれば、そういうところに結論が参りましたならば、外務当局は、合同委員会を主管しております省といたしましては、そのような努力をしなければならないであろうと思いますし、またすべきであろうと考えます。
  75. 木原津與志

    ○木原委員 この相馬ヶ原の事件についての裁判管轄についてどういう結論が出ますか、日米合間委員会で決定されることでございますが、どうもその主管者である外務省の見解が、今言ったようにアメリカ側の解釈に近い解釈をとっておられる関係上、私は日米合同委員会での刑事裁判権の問題については非常に悲観的な見方をしておるのでございます。防衛庁外務省の方と相談なさって、この裁判権の問題について強い主張をなさる確信を持っておられるかどうか、その点を伺いたい。
  76. 小滝彬

    小滝国務大臣 私が答弁する必要はないかもしれませんが、申し上げます。  私は欧米局長が言ったことを何も弁護しょうとして申し上げるのじゃありませんけれども、アメリカ側は従来こういうことを考えておったんでというような説明の過程において、御指摘のようなことを申し上げたかもしれません。しかしこの合同委員会におきましては、もちろんその下に分科会と申しますものがあって、日本側法律的見解を十分に述べる人も列席するわけであります。最終的には欧米局長が日本側の代表者ということになっておりますけれども、そういう方面で十分日本側の見解を主張すべきであり、私もせっかく御指摘でございますから、外交関係を長い間取り扱った者といたしまして、向うへ注意を喚起しておきたいと考えます。
  77. 木原津與志

    ○木原委員 そこで最後に防衛庁長官及び関係のある大久保国務大臣に御要望申し上げたい。先ほどから申しましたように、刑事裁判権がこの国にあるかなりかということは独立と非常に重要な関係があるのです、そこでどうしてもこの刑事裁判権の問題を解決しなければならぬと思うのであります。条約にそういうような規定がありますからいたし方はありませんが、この点は条約改正に待つことといたしますけれども、ただ公務中か公務外かによって裁判権があるかないかということがきまるので、これはあえて条約の改正を必要といたしません。行政協定の改正を必要といたしません、お互いの日米両国の話し合いによって解決する問題でございます。そこで日本側においては、すでに最高裁判所の機関において、公務中か公務外かということについての解釈基準がはっきりいたしておるのでございますから、この解釈をあなた方きぜんとしてとられて米軍の方と折衝されて、米軍納得させていただきたい。少くとも日本側においてこの基準に基いて公務外の米軍の行為だという認定をしたならば、当然無条件に日本に裁判権をまかせる、ひいては捜査権もまかせる、どうかあなた方の任期中にこの問題を解決していただきたい。あなたも衆望をになって防衛庁官になられたのです。この裁判権の問題一つでもあなたがあなたの任期中にアメリカと交渉をして解決をされるならば、あなたのこれ以上の仕事はないと思う。この問題と取り組んで一つ裁判権の問題を解決してほしいと思います。
  78. 相川勝六

    相川委員長 午後二時より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十三分開議
  79. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木原津與志君
  80. 木原津與志

    ○木原委員 午前中に引き続き質問を継続させていただきます。これから私が質問しようと思うことは、防衛庁における昨年度購入したGCAの問題、それから相馬ヶ原事件に関連いたしましてのたま拾いの問題、こういったものについて質問したいと思うのでございますが、その前にちょっと、くどいようでございますが、大臣に所見をもう一回披瀝していただきたいと思うのでございます。というのは、過ぐる十四日の大臣と石橋委員との応答の中で、原爆を日本に持ち込むことはどうかという問題について応答がありました、その際石橋委員の問いに対する大臣の答えが、どこかにあいまいな点が伏在しておるような形であったと思うのです。当日の朝日新聞の夕刊では、この大臣の答弁をそのままとえらまして、「原爆保持は情勢次第」という見出しで、朝日新聞がこの問題を取り上げておる。親日の新聞では、岸臨時首相代理の答弁を掲載しておりますが、その答弁の中では、原子爆弾、原子兵器というものは、現在はもちろんのこと、将来にわたっても日本に持ち込むということはないという、はっきりした答弁をしたということが記載してある。そうすると、同じ内閣の閣僚であるお二方が、片一方の臨時首相代理の地位にある人が、将来にわたっても絶対に国内に原子兵器を入れないということを言っておられるのに対して、防衛庁当面の責任者であられる防衛庁長官は、原爆保持は情勢次第で、あるいは持ち込むことがあるかもしれないというようなニュアンスを残した答弁をされておる。そこに何か原子兵器の導入の問題について、閣僚間に意見ないしはこれを持ち込むことについでの政治的な確信に非常に動揺があるのじゃないかというような懸念が一部国民の間にもあると見えまして、さっそく私の方に、この点について総理大臣代理は将来持ち込まないと言うし、防衛庁長官情勢次第によってはどうなるかわからぬ、今はっきり言えない、こういうふうな二人違った答弁をしておるが、この点はどうなのかという、私自身に対する問いもあったのであります。そこで私は別に大臣の言葉じりをとらえて、あえてこれを追及するという趣旨ではないのでございますが、はなはだくどいようでございますが、国民の一番心配しておる問題でございますから、いま一応この原子兵器国内持ち込みの問題につきまして、当面の担当大臣であられる小滝長官の明快なる答弁を要求いたしまして、そうして国民のこの点についての疑惑を明らかにしたいと思うのでございます。そこで大臣はもう発言の内容をお忘れになってると思いますから、当日の速記の大原の答弁をちょっと読んでみますと、   〇石橋(政)委員 どうもわかりません、結局今はそういう緊迫した状態でないから、だから持ってこなくてもいいのだ、もし緊迫してきたら、しからばアメリカが原子兵器を日本に持ち込もうと、沖繩に持ってこようと、第七艦隊が搭載しようとそれはやむを得ないのだ、こういうお考えですか。  ○小滝国務大臣 そのときの情勢によることでありまするから、今は何とも申し上げかねます。  こういう答弁をなされておる。これが朝日新聞なんかで原爆持ち込みは情勢次第だというような見出しになって報道された点だろうと思うのであります。そこでくどいようでございますが、この原子兵器を国内に持ち込むということについて、現在及び将来、どういう態度に出られるか、いま一回大臣の明快なるお答えを得たいと思います。
  81. 小滝彬

    小滝国務大臣 私の答弁が今おっしゃいましたような印象を与えたとすれば、はなはだ遺憾でございまして、私の趣旨はその前に申し述べたところでわかっていただけたかと思っておったのでございますが、今御指摘のような点がありましたならば、ここでさらに明確にいたしておきたいと存じます。  日本の区域と申しまするか、日本の政府の方で原水爆あるいは原子弾頭を持ち込まないということは、はっきりとした方針でございまして、その点はその前にも申し述べておるのであります。アメリカはアメリカにおける作戦計画はあるかもしれぬが、少くとも日本に関する限りは、先ほどから何べんも申し上げている通りそういう場合には必ず相談を受ける。しかもその際にはこれを断わるということも申し上げておるわけなんです。いろいろ仮定の質問が盛んに出ましたので、仮定の質問には答えられないなんという失礼なことを申し上げては悪いと思いまして明言を避けたのですが、今お読み上げになったところでも、第七艦隊がどうのとか、沖繩はどうのという言葉が出ておったと思いますが、要するに日本に関する限りは絶対に断わるということは岸臨時首相代理も申し上げておりますし、私もその考えであまりす。だから私はその際の説明にも、行き過ぎたかもしれませんが、私の承知している限りでは、防衛力の不十分なところで、かりにもたった一つでも原子弾頭というものが来たら、どうもあそこにはそういいものがあるように見えるというので奇襲の対象になる。それについてはここにたくさん軍事専門家もいられるので、私が申し上げるのはおかしいけれども、しかし報復力というものを十分に待たないところが、原子戦の対象になるようなことをしては絶対にいかぬ。それはかえって防衛を危うくするようなものだと思う、私はしろうとかもしれないが、少くともそういうような見地からしても、原水爆を日本に持ってくるようなことはよろしくないということを、私の考え方の一端を申し述べる意味でも述べたのでありまして、おそらく速記にも載っておると存じます。そういうわけでありまして、私は作戦につきましては、かりにそういう原水爆戦争というものが起った場合、あるいはある特定の国とある相手方になる国との間に、不幸にしてそういうことがあったとすれば、極東地域においても双方がそういう武器を用いることがあるかもしれぬ、それは今から何とも言えぬということを申し上げたのであります。日本政府としての考え方は、これは岸外務大臣も始終申し述べておりますし、私も――誤解を招いたようでありますが、あれば仮定の問題でいろいろ質問を受けました際にはっきりさしているつもりでございまして、今ここで再び繰り返しますことは、日本といたしましては、日本の地域に関する限りはそういうことは絶対に認めないという方針にはかわりないのであります。
  82. 木原津與志

    ○木原委員 よくわかました、防衛庁長官の発言の趣旨は、日本に関する限り現在及び将来にわたって原子兵器を国内に持ち込む、あるいは日本がこれを持つ、米軍に待たせるというようなことはないという確信を披瀝されたものと確認いたします。  そこで次にいま一点お尋ねいたしますが、大臣はやはり石橋君との問答の中で、憲法の解釈上防御的な兵器、こういうものはわが国自衛隊でも持ってよろしいという考えでおられるということをしばしばおっしゃいまして、それで何が攻撃か、何が防衛かということで盛んにやりとりがあったと思うのであります。そのやりとりの模様について、私はここでむしかえすわけではございません。ただ一点だけ大臣にただしておきたいことは、御承知のように、日本の憲法では戦力を保持しない、戦力ということがもう一番の大原則になっておるのでありまして、陸海空その他の戦力はこれを絶対に保持しないということになっておる。そういたしますと、戦力というのは攻撃的な兵器を持つことで、防御的な兵器を持つことは戦力にはならないのか、これは将来の原子装備の問題についても非常に重要なことだと思いますが、特にこの点について大臣の明確な御答弁を要求いたします。
  83. 小滝彬

    小滝国務大臣 私法律的にはどういうように申し上げていいかわかりませんが、従来の解釈では、戦力とは近代戦を遂行し得るような総合的な力をいうのだというような解釈をとられておりますが、私がこの前申し上げましたのは、そういう言葉を離れまして、この憲法の命じておるところは国際紛争解決の手段として武力を行使しない、その権利は放棄するのだ、従って戦争というような格好において、中立国なんかにいろいろな権利を要求することになるような、交戦権というものも否定するという趣旨で書かれているものと了解いたしておるのであります。でありますから、その憲法以前と申しますか、国民固有の権利であるところの自衛権を完全に否定するものではない、完全に否定するどころか、少くとも自衛権というものは当然のことであって、自衛権のための最小限度の実力行使というものはこれを否定するものではない、こういう立場に立ってこの憲法を解釈いたしております。でありますから、自衛のための国力に応じ国情に応じた最小限度の防衛手段は持ち得るものである、こういう解釈のもとに、私は攻撃的な武器を持つというようなこと、つまり外国に侵略の脅威を与えるようなものは持ってはならないが、最小限度の自衛力、各国家の固有の権利である自衛権を守るための必要最小限度の武器は持ち得るものであるという解釈をいたしておる次第でございます。
  84. 木原津與志

    ○木原委員 自衛力のあることはわれわれも認めるのであります。ところがこの自衛力の中の戦力に至る自衛力、いわゆる自衛のための実力行使ということも、それが戦力となって発動する場合には、明らかに憲法の規定としてわれわれはそれを放棄しておるものと考える。その点についての御見解を伺いたい。
  85. 小滝彬

    小滝国務大臣 私の申し上げますような最小限度の自衛手段というものが、あなたのおっしゃいます戦力に解釈されると仮定いたしますならば、私の方の議論はその程度の戦力は持てるだろうということになるわけであります。しかし私は戦力についてあなたと見解が違いますから、私の申しておるものは自衛力、自衛のための手段である、こういう解釈であります。
  86. 木原津與志

    ○木原委員 ただいま自衛のための手段と言われましたが、その自衛のための手段という範囲を憲法が規定してあるのじゃないでしょうか。その範囲も戦力というようなものまで持つということをわれわれは憲法で、放棄しておる、われわれはこう考える。そこであなたは憲法上防衛のための兵器ならばこれを持つことも違反ではないという立場に立っておられますが、かりにそれが自衛力だといたしまして、そういう防衛兵器を無制限にずっと持っていい、持っていいということでどんどんと毎年これが膨脹しまして、防衛力に使う兵器だけが拡大していき、自衛隊のそれに伴う人間の数もふえていくということになれば、その防衛兵器を持ったという状態は、憲法で禁止しておる戦力ということになると当然結論づけられると思いますが、その点について御見解はいかがですか。
  87. 小滝彬

    小滝国務大臣 私は防衛を目的としておるものだからいかなるものを持ってもいいというような解釈はしておりません。それが近代戦を実行し得るような非常に大きなものになるということは、やはり憲法第九条の趣旨に反するものだと思います。その点は私同感であります。ただしかし、その限度は在来の近代の防衛には役立たないようなものだけを持って、それ以上のものがここに言う戦力になるから、それは持ってはいけないというのではなくして、攻撃的に見えるようなもの、またよその国へ侵略の脅威を与えるようなもの、いわゆる国際紛争解決の手段にも供し得るような近代戦力を持つことは、憲法の趣旨にも反するし、この条項に反するものである。従って必要最小限度の武器、必要最小限度の部隊にとどめるべきものである、こういう考えを持っておりまして、これが私の憲法と日本の防衛力の限度についての与え方でございます。
  88. 木原津與志

    ○木原委員 防衛力と防御兵器との関係、戦力との関係は大体明らかにされたようでございます。  そこでもう一点だけお伺いいたしますが、今度防衛庁でアメリカに供与を要請されました誘導兵器、これは研究用ということをおっしゃいましたがこれを研究した結果、より優秀なものがこちらの方ででき上った、そしていつでもこれに原子弾頭その他をつければ原子兵器となるというようなものもでき上ったとき、もともと誘導兵器というのは原子力を予定して使われるところの兵器でございますから、こういうものが将来日本にもできた場合に、自衛隊で将来の段階において保持して使われるというお考えは持っておられるかどうか。
  89. 小滝彬

    小滝国務大臣 原子弾頭等を絶対に用いないということはこれまで申し上げた通りであります。ただわれわれの考えております誘導兵器には原子弾頭もつけ得るのじゃないか、今後そういうことをやりはしないかというような御懸念ではなかろうかと思いますが、この前に私から国会へ発表いたしました種類のものを一つ一つとってみましても、オネスト・ジョン以外は絶対にそういうものをつけるようなことになっていないそうであります。これは私の方の専門家で調べたのであって、これはあくまで原子弾頭用のものではない。またオネスト・ジョンの方は、何としても近い二十キロ程度を行くものであって、それにそういうものをつける必要はない、こういう関係でありまして、日本でこれを研究いたしまする以上、日本の政府の最高方針を体して技術研究所でも研究いたすものでありますし、かつまた先ほどから申し上げますように、本来日本が考えておるような誘導兵器は、原子弾頭用のものでないということでありますから、そういうことはないし、また政府の方針といたしましてそういうものを使わせようということを考えておるものではございません。
  90. 木原津與志

    ○木原委員 大体わかりました、そこでこの誘導兵器の購入の問題ですが、この点については長官の在任中のことでありませんでしたから、今後の処置について大臣の所見を伺っておくわけです。  誘導兵器の供与を防衛庁の力からアメリカに申し入れたのは、聞くところによれば昨年の八月ごろだということです。ところがこの誘導兵器についてアメリカに要請したということは、国会も知らなければ国民も全然知らない。国民も国会も知らない間に、防衛庁はひとり先走ってアメリカに要請しておる。日本の国会と国民は今年の一月のアメリカの国防総省の発表によって初めてそういうようなことを知ったわけです。そこでびっくりして国会でもこの問題を防衛当局にただした。そしてただされて初めてそういうような供与の請求をしたという事実がわかった。しかもこれは単なる防御用のものだ、こういうような御答弁があったわけです。しかしこれは私が議論いたしましても議論のための議論になるかもしれませんから、これが誘導兵器が原子兵器かということについては問答をいたしませんが、少くとも今日軍事専門家の常識として誘導兵器が原子兵器の一つの範疇に入るということはもう一般にいわれておる。国民もそういうふうに考えて非常に不安がっておる。こういうようなものを日本が扱っておると、今は一応原子兵器の持ち込みということをアメリカに拒否しておるが、原子兵器の研究ということをよい口実にして、やがてアメリカから日本にこういうものが持ち込まれた場合に、日本はいやだということができなくなる。そうなってくればだんだん深みにはまって、最後にはなしくずしのように日本が原爆の基地となり、日本の自衛隊が原子兵器を持つような状態にまでいくのじゃないかということで非常に心配しておる。国民も心配しておるし国会も心配しておるのです。戦前の日本の軍隊が、国会にも国民にも国の防御、安全というようなことについて何も知らせないで、ただ軍事力だけが独走して、そうした結果ああいう大きな責任のある戦争を引き起して、ああいった敗戦という状態になった。ですから今後の日本は、この軍事力の独走ということを一番慎しまなければならないと思うのであります。防衛庁が国民にも国会にも知らせないで、こういうものを独断で供与を求めるというような態度は、今後の日本の防衛上にも好ましいことではないと思うのであります。今の日本の自衛隊海上、航空兵力、こういうものがさか立ちしても、この近代の戦争で国を守るというようなことはできない。日本の安全を保障するためには、防衛庁が守るのではなくて、全国民が一体となって守るのである、それについては、どうしてこの国を守るかということを国民も自衛隊も国会も一緒になって考えて対処しなければならない問題なんです。だからこういうような原子兵器に類するようなものは将来の拡大の意味もありますから、こういうような問題を処理する場合においては、事前に防衛庁としては国民にもその概要を知らせ、どういう目的でこういうものを供与を受けるかというようなことも知らせ、そうして議会にも相談をしてこういうことを処理されるのが、私は今後の防衛上非常に大切なことだと思うのでございますが、これに対する大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  91. 小滝彬

    小滝国務大臣 私も就任後さっそく、国民の皆さんから理解せられ信頼をせられる自衛隊にならなければならないということを第一声に申したのでございまして、その信念は今も変っておりません。できるだけ皆様の御理解を得ようと考えまして、いろいろ新聞などにも出ておりまするから、予算委員会において、私どもが希望している誘導弾の種類も公けに申し上げた次第でありまして、仰せのような気持で今後進んでいこうと存じます。なおこれまでの経緯について、私は特に弁護がましいことを申し上げたくはありませんが、国会に対しましてはもう昭和二十九年から誘導弾の研究をするということはお諮りいたしまして、予算も認めていただいておるはずでございまするし、昨年以来スイスのエリコン社のエリコン誘導弾を買い入れて研究しようということも、議会の力にお話いたしまして、その予算もつけていただいておるのであります。またこうした兵器をアメリカに要求したということも、当時は国会が開いておらなくて、国会へは申し上げなかったかもしれませんが、大体の趣旨は防衛庁の当局者から新聞の方々に申し上げたはずでございます。ただはっきりきまったものでもございませんし、こういう希望を持っておるという程度であり、また向うの方の考えもありまするので、あるいは皆様からごらんになりましたら、こそっとやっているように見えたかもしれませんが、私は過去のことは過去のことといたしまして、できるだけ皆さんにわかっていただいて、そうして皆様の御支持のもとに、日本の安全を守っていきたいという気持で進みたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
  92. 木原津與志

    ○木原委員 大臣の所見を伺いまして大体了解できます。そこでこれからお聞きしたいのはGCAの購入の問題をお聞きするのでございますが、これも大臣就任前のことでございまして、あなたに責任を追究するということはちょっとしのびない感もあるのでありますけれども、一応あなたにも心がけていただいてこういうことについての将来の方針もきめていただきたいと思う。御承知のように、防衛庁というのは数年前から、むだづかいをするというのでやかましく国民からさんざんたたかれておる国家機関であるということは、大臣ももう就任のときから覚悟して就任されたものと思うのですが、むだづかいの点について、一例をあげて関係者のこれに対する釈明を得たいと思うのでございます。飛行機を地上に着陸させるレーダーの一種だそうでございますが、GCAを防衛庁でアメリカから購入をして、その購入したGCAが昨年の六月に横浜着で来たというが、そのいう事実があったかどうか、その点お尋ねします。
  93. 北島武雄

    ○北島政府委員 事実でございます。
  94. 木原津與志

    ○木原委員 昨年の六月横浜へ着いてこれを受け取られた防衛庁では検収をされましたか。聞くところによればこの着いたGCAは予備部品が不足しておったし、またこのGCAの構成品である無線機が七台も不良であった。そこで修理をしたけれどもなかなか直らぬで、やっとことしになってどうやら使えるようなしろものになった品物だというようなことを、新聞記事なんかでも報道しておりますが、そういう事実はありましたか。
  95. 北島武雄

    ○北島政府委員 本件につきまして、その経過の概要を私からまず総合的に御説明申し上げたいと思います。GCAと申しますと、ただいま先生御指摘のございましたように、グランド・コントロール・アプローチと申しまして、雨天あるいは夜間に飛行機が安全に飛行場に着陸できるように誘導する装置でございまして、本件につきましては米国の空軍がギルフラン・ブラザーズというアメリカの会社に発注いたしまして製作させておりまする最新式のかつきわめて精巧な複雑な装置でございます。本件につきまして航空自衛隊におきましては、これを浜松の飛行場に設置する必要を認めまして、大倉商事株式会社を通じまして米国のギルフラン・ブラザーズ会社から輸入されまして、これを浜松の飛行場に輸送させ、かつこれを組み立てて調整させる契約を結んだわけでございます。ただいま申しましたように、このGCAの装置は日本では初めてでございまして、米軍でも最新式のかつきわめて精巧なものでございますので、検査に当りましては米空軍の検査合格証を貼付せよという契約になっておりまして、検査に当りましては、大倉商事から提出いたしましたところのパッキング・リストと対照しながら、米空軍の発行にかかりますところの検査合格証の有無を確認いたしまして、その上で検収を行なって、それからあと大倉商事株式会社と組み立て調整契約を結ぶまして、浜松に輸送をさせる、そうして浜松でこれを組み立て調整する、こういう契約になったわけでございますが何分にも日本で初めての機械でございますので、これを下請いたしましたところの東芝会社におきまして十分なる知識がなかったわけでございまして、組み立て調整の第一回の検査の際におきまして、遺憾ながら成績が不良でございましたので、その後予備品等も補充いたしまして、完全に組み立て調整契約を履行いたしておるわけでございまして、現在では浜松の飛行場におきましてこれを支障なく運用いたしておる次第でございます。
  96. 木原津與志

    ○木原委員 これを買い受けられたそうですが、この買い受け代金は金額は幾らですか。
  97. 北島武雄

    ○北島政府委員 一億九千七百万円でございます。
  98. 木原津與志

    ○木原委員 GCAはこれをあなた方が一億九千七百万円を出して買う前に、アメリカ側から二台MSA兵器としてただでやろうという照会が公文書であって、しかもその二台はあなた方が購入する前にすでに日本に届いておったということですが、この点についてお聞きしたい。
  99. 北島武雄

    ○北島政府委員 GCAは、先ほど申しましたような性能を待つものでございますので、主要な飛行場には必ず一台ずつ必要なものでございます。そこで防衛庁で調達いたします際に、もちろん米軍から二基の供与があるということは存じておりました。それを頭に入れての調達でございます。それではなぜ調達したか、こういうことでございますが、米軍の二基と、それから自衛隊において調達した一機を合せまして、浜松の飛行場と築城の飛行場に一機ずつ、それから浜松の通信学校の教育用教材として一機、こういう予定のもとにあらかじめ総合的に計画を立てまして、一機を購入いたした次第であります。
  100. 木原津與志

    ○木原委員 アメリカからただでMSA兵器としてもらったGCAというのは、あなた方が一億九千七百万円で買われたGCAと、ほとんど同じ性能を持ったものだということですが、その点性能には差異はありませんか。
  101. 北島武雄

    ○北島政府委員 全く同一性のものでございます。
  102. 木原津與志

    ○木原委員 そこで聞かなければならないのですが、MSAでただで提供してもらったGCAは、持ってきてもすぐ使えるというように、性能もよく、くるいもなかった。ところがあなた方が一億九千七百万円も出して買うたこのGCAは、予備品が不足しておったり、あるいは無線機が不足になって使えない。修繕をした末に、浜松でことしからようやくこれを使えるようになった。こういうような次第であるといたしますれば、あなた方は購入に当って、こういうような購入の仕方で果していいか、それでいいのだというふうにお考えですか。
  103. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいまお話がございました、予備品が不足していたとか、あるいはまた通信機が不良であったというようなことは、これはまだ請負契約の完了しない前でございまして、予備品につきましては、調整の途中において消耗したものでございます。通信機の不良というのは、調整の途上におきまして、日本側の東芝の技術者によって、まだ経験がないために十分な機能を発掘することができなかったのでございます。なお米軍から供与を受けました二機につきましても、簡単にすぐ調達ができるものではありません。この点につきましては、立川に米軍技術者がおりまして、これがやはり数ヵ月かかりまして、やっと組み立て調整を終りまして、現在築城の基地と浜松の通信学校において使用することができるようになった次第であります。
  104. 木原津與志

    ○木原委員 MSA兵器としてただでアメリカから提供をされたGCAは合計何台あるか、またあなたの方でアメリカから買われたGCAは何台あるか、その点を伺いたい。
  105. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいままで米国からMDAPによって供与されたのはツー・セットでございます。防衛庁で購入いたしましたのはワン・セットでございます。
  106. 木原津與志

    ○木原委員 物を買う順序というのは、およそただでくれるというならば特に買うてもどうして使用していいのかわからぬというような状態ならば、まずただでくれたものについて性能なり使用方法なりというものをよく研究して、あとで、買うたものについても手落ちのないようにして、その上で注文をして買うというのが、私は事の順序じゃないかと思うのです。それを、ただでくれるという兵器が四台来ることになっておるのに、使うこともできないくせに、そんな一億九千七百万円というような金を出して、しかもあまり性能のよくないものを買うということに私どもは疑義があるのです。防衛庁は、御承知のように、毎年予算を使い切れないで繰り越しておる。ことしも、まだ予算の説明大臣から聞いておりませんが、この予算書で見ますと、防衛庁は大体二百億円近い金を使い余しておるということで、当然、三十二年度にも二百億円近い金が繰り越されるということを予定されておるのであります、それが今年、去年一年だけの問題でなくて、毎年々々膨大な予算を要求して、そうしてこれを使えないで翌年回しに繰り越しておるというのが、防衛庁の今日までの実態なんです。そこでややもすれば議会なり国民なりは、防衛庁は予算はたくさん要求してもらったけれども、使うのに困っておる、そうしてでたらめな使い方をやっているんだという疑いを持たれる、また疑いを持たれるだけではなくて、毎年の会計検査院の検査の結果、防衛庁はでたらめに金を使うために、必要でもないものをいたずらに買っておる、経理がずさんであるという点を指摘されておる。たとえば昨年でも、何万発かの弾薬を買うて、それを使わないでさびつかせてしまったとか、あるいは飛行機を買うたけれども、飛べないずさんな飛行機を買うておるとか、くつを十万足買うたところが、そのくつが片足しかなかった。あるいは中古エンジンを、米軍が一台七万八千円で払い下げたものを、何ぼ金があるからといって一台千二百五十万円でこれを再購入をして、そうして国民の金を湯水のごとくむだ使いをしておるというような非難を防衛庁は受けておるのです。だからあなた方が今おっしゃることを、ほんとうに必要だったから、また十分な自信のもとにこういう買い受けをしたんだということを、国民は率直に納得できない点があるのですね。この問題はこれでいいのでございますが、最後にこの問題に関連して要望をかねて大臣にお尋ねいたします。あなたはこの防衛庁大臣となられて一番最初に決意されただろうと思うのですが、世間から非難を受けておる防衛庁のでたらめなむだ使い、会計検査院から指摘されるような、あるいはそれ以外にもあるであろうと想像されるこういった膨大な予算のむだ使い、こういうことについて今後どういうふうな監督をしていかれるか。特にまた今年度は予算も去年よりも八億円からの増加になっておるようでございますが、これでもって来年度使い残しの繰越金をまた二百億も三百億も出されるつもりなのか。もし出されるつもりならば、今のうちにこの予算を減額されたらどうか。使いもせぬものを防衛庁だけが独占して余分にとるということはないと思う。だからそういう防衛庁の今後の予算の使い道についてどういう考えを持っておられるか、この点大臣から一つ御答弁を願いたい。
  107. 小滝彬

    小滝国務大臣 防衛庁も相当膨大な機構になりまして、その間におもしろくない事件が出て参ったということはまこに遺憾でございます。しかし何分にも新しい器材を取り扱うというような際には、これまでの既設の官庁などと違いまして、よう注意をしなければならぬ、またみんななれておらないので、これに対しましては今後人員の面でもまた精神的な面でも十分注意をいたしまして、こういうことが絶対に起らないように指導をいたしていきたいと考えておる次第でございます。  先ほど輸入の問題についてもお話がございましたが、こういう点ももちろんそれぞれの自衛隊員なりあるいは防衛庁の内局の当局者が、真剣に、非常に重大なる任務を負担しておるということを自覚いたしまして、仕事に精進しなければなりませんが、しかし同時にそういう組織の点についても、多少欠けておるところがありはしないかというふうにも考えられますので、今度も、今の輸入の点をとりますならば、本庁の説明の際にも申しました通り、こうした取扱いに必要な輸入課を設けるというようなやり方をし、同時にまた現地部隊の方ではそれぞれ自分の立場からいろいろ要求も出て参りますが、それに対しましてはシヴィリアンの方で、平服を着ておる方の内局の部局がよく調整をいたしまして、できるだけ厳正に査定をして、間違いのない要求を出させるようにいたしたいと考えまして、私も就任以来内局の諸君に注意を与えておる次第でございます。  なお繰り越しが非常にこれまで多かったということは御指摘の通りでございますが、これにつきましても改善しなければなりませんからして、今まで技術的に発注する場合には、前もって試験をしなければならない、しかもその際に新しい装備品であってあるいは試験をやり直さなければならぬ、あるいは図面を引くにいたしましても、何分長い訓練を経た者がおらないために、予定しておったよりもより長い期間設計に時間がかかった、あるいはまた今残念ながら一部の装備品はアメリカから供給を受けている、ところがそのアメリカからの供与品が予定しておった時期に来ないため、ほかの方のせっかく発注しようとするものもできない、たとえば艦船についてもその上に載せるところの武器はアメリカから供与されたものを使う場合、向うの生産の都合とかあるいは輸入の手続なんかの遅延によつてそれが着かないために発注がおくれる、こういうような場合もあるようでありますし、また施設を整備していきます場合にも、御承知のように、いろいろ土地の買い上げとかというようなことでごたごたもございまして、なかなか思う通りに進まない、こういうことのために、おっしゃいましたように、これまで相当な繰越金もあったようでございます。まあ実績として見ましては、私防衛庁を弁護してただ申すのではございませんが、従来よりはよほど改善をした。しかしそれにしても二百億近くの繰り越しがあるということははなはだ遺憾でございますから、今年度からはとかく繰り越しになりがちであるところの、ジェットの国産機を除いてのその他の器材費であるとか、あるいは施設の整備費であるとか、あるいはまた艦船の建造、修理というような面は、国庫債務負担行為の方に回すとか、あるいは継続費の方に回しまして、予算決算の面を見まして非常に繰り越しがあって、国民の皆様からあたかも要らないものをやたらに要求しているのじゃないかという誤解を招くことのないような措置を、講じたいと考えておる次第でございます。仰せの通り非常に貴重な国民の税による金を使っておるわけでありまするから、今後十分そういう点に注意いたしまして、できるだけそうしたことのないように最善を尽したいと考えておる次第でございます。
  108. 木原津與志

    ○木原委員 時間がないのでその点についてはまたいずれ後日に回して質疑したいと思います。  次にたま拾いの問題でございますが、米軍の日本婦人の射殺事件によりまして、米軍演習地帯に日本人が入ってやらないようにするために、その拾いに来た婦人をアメリカの兵隊が故意に、おもしろ半分とでもいいますか、射殺をする、こういう問題で世論が非常に沸いております。そこでこの問題につきましては、もうすでに数週間にわたって十分質疑がされておるようでございますから、私はこの内容なり実態なりについてお尋ねすることはやめます。ただ一点だけ防衛庁に、その他法務省の方も出席しておられればお尋ねしておきたいと思うのですが、今までたま拾いというのは一応禁止はしてあったかもしれませんが、演習場に入って演習の済んだあと、あるいは何かの機会に日本人が入ってこれを拾うという行為は黙認されておったように思うのでございます。ところが相馬ヶ原の事件後だと私は思うのでございますが、アメリカ側で、米軍演習に使った薬莢、空砲といったようなものの所有権は米軍にあるのだということを声明しておるという記事を見たのでございますが、これは真実であるかどうかお尋ねしたい。
  109. 今井久

    ○今井政府委員 お答え申し上げます。今の点について私どもとしてはまだ聞いておりませんです。
  110. 木原津與志

    ○木原委員 そういうようなことがあったかどうか聞いておらないということでございますが、それならば防衛庁当局では、米軍演習場で撃ってそのまま置いていった薬莢だとかあるいは空砲といったようなものは、一体どこのだれの所有だ、拾った者かアメリカ軍の所有になるものか、もしアメリカ軍の所有ならばこれを拾うとおそらく窃盗というようなことになろうし、あなたはそういうことを知らないと言っておられるが、アメリカ軍の所有のものだということになれば、このたま拾いを続けると今度アメリカ側から逆に、アメリカのものを持っていったのだからその代金を損害賠償をやれ、補償金をよこせというような問題も私は起ってくるのじゃないかと思うのです。この空砲、薬莢の処理はどういう考え方をしておられますか。
  111. 今井久

    ○今井政府委員 お答え申し上げます。この点は非常に微妙な問題じゃないかと思いますが、要するに所有権はどこだということになれば、それは米軍のものだという議論も成り立つのじゃないかと思います。しかしながこういう演習場とか射撃場というようなところにおきまして、今般相馬ヶ原であのようなまことに遺憾な事態が発生したのでございますが、私どもの方で取り扱っております各地の状況を見まますと、あるところでは米軍と当該の市町村当局と地元の方々とが話し合いまして、協定を結びまして、統制ある指揮のもとにたま拾いをしておるというようなところもあるのでございます。今後の問題といたしましては、第一にあのような不祥なる事故が再び発生しないように、被害の防止をするとともに、廃棄されましたところのたまはできるだけ地元の人たちがこれを回収することのできるような措置を講じていくということが妥当であると考えておる次第でございます。これらの具体的な措置につきましては、ただいま申し上げました通りに、すでに措置が講ぜられておる演習場もございますが、まだ講ぜられておらないところにつきましては、米軍当局と話し合いまして、できれば市町村の責任において統制ある回収ができるように措置することが適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  112. 木原津與志

    ○木原委員 この点について、米軍薬莢の所有権の問題で井本刑事局長にお尋ねしたいと思います。これは一体現在までどういうようなことで処理してきたのですか。アメリカ軍の所有物だとして処理してきたのか、あるいはもう廃棄したものだとして処理してきたのか。もし今後アメリカでもう拾わせない、撃ったたまは空砲も薬莢も全部アメリカのものだということになりますれば、このたま拾いの一件は一体どうなるのか、その点法務省の見解を述べて下さい。
  113. 井本臺吉

    ○井本政府委員 アメリカ軍当局におきまして、明示であろうと黙示であろうとかまわないのですが、所有権を放棄するという意思表示が認められます場合には、これはアメリカ軍のものとはなりませんが、さような明示、黙示の所有権放棄の意思表示のない限り、廃弾、薬莢などはアメリカ軍の所有物であるというようにわれわれは解釈しております。実際問題といたしましては、薬莢などを日本の人が拾いに入りましても、アメリカ側でこれを別にとがめだてすることもなく、拾うままにまかしておくというような場合には、これは黙示の所有権放棄の意思表示があったというように解釈いたしまして、別に犯罪にはならないというように考えておるのでございます。しかしながらアメリカ軍側ではっきり所有権は放棄しないというようなことが見えます場合には、これを無断で持ち去ったというような場合には窃盗罪の規定を適用しまして、現に処罰した例が奈良の演習場昭和三十年に確か一件あったと思うのでございまして、そういうようなこともあり得るのでございます。要するに先ほど申し上げましたように、明示あるいは黙示に所有権を放棄したということが認められますければアメリカ軍の所有物にはならないが、その反対の場合にはアメリカ軍の所有物だというように考えております。
  114. 木原津與志

    ○木原委員 よくわかりました。そこで問題は私は非常にデリケートになると思うのです。大体防衛庁の見解も、相馬ヶ原事件のようなことをどうして防止するかということについて、防衛庁の見解として新聞で拝見しましたが、日本人が米国の演習場内に入ってたまを拾うような行為をしないこと、これよりほかにこういう忌まわしい不祥事件を防止する道はないのだいうようなことをいっておられたように思う。防衛庁の見解の通りであることが望ましいのでございますが、実情は、どこの演習場でもそれに群がってたま拾いをする人は、たま拾いをしなければ生活ができないというような人たちばかりでございます。この演習場設置のために農地を取られた農民、こういった人たちが、残されたわずかな農地だけでは食っていけない、だから幾らかの足しにもというようなことでたま拾いに出かける。出かければ、これは米軍の所有のものだから、これをとったらお前たちは窃盗になるのだ、窃盗罪で処罰をするというようなことを言われる。言われても、入ってとらなければ、たま拾いをしなければ食っていけない。こういうようなところにまことに現在の日本の社会の悲劇があると私は思うのでございます。何とかしてこれをやめさせたい。やめさせようにも生きるために仕方がない。私は先般相馬ヶ原の事件について調査をいたしましたときに聞いたのでございますが、この被害者の坂井なかさんはもともと一町五反歩の耕地を打っておった人だそうでございます。それが大正何年かに陸軍からこの土地を射撃場にするからといって強制収用をされて、残った土地は五反歩、五反歩では食っていけないから、戦争後演習場を返してもらえるかと思ったところが、そのまま米軍で引き続き使用することになったので返してもらえない。そこで五反歩の土地では、土地を耕作しても一家生活をすることができないというので、たま拾いをして何がしかの金を得ておった。たまたまそのたま拾い中に、今度のようなアメリカの心ない一兵隊のために、みずからが射殺されてしまうというようなことになったのでございます。そこでアメリカ軍所有のものだから拾ってはいけないというようなことで、このたま拾いの問題を解決するということは、現実の問題としてできない。私どもはこういうような不祥事を起す根本は、日本人が立ち入らないことだというようなことでなく、もっと根本的にはアメリカの演習場、アメリカの軍事基地を引き揚げてしまうということよりほかに、こういう悲惨な事故発生を防止することはできないのだというので、土地の人にも社会党が働きかけますが、現実にその演習場を持ったところでは、アメリカの演習場を引き揚げられて、たま拾いができなくなれば、飯が会えないから、そういう運動はしてくるな、こういうような要求もあるというのが現実でございます。そこに非常にむずかしい点があるのでございますが、聞くところによれば、そのたま拾いについても組合ができて、危険防止について何らかの対策等を講じようという動きも各地に出ておるということでございますが、このたま拾いの問題の解決について、防衛庁政府も真剣に一つこの際取り組んでいただきたいと思うのであります。今さしあたってどういうような腹案を持っておられるか、この点を関係者から答弁願いたい。
  115. 今井久

    ○今井政府委員 お答え申し上げます。今御指摘になりましたように、単にたま拾いを禁止するということだけでは、決してこの問題は解決ができない、いろいろ深刻な問題があることはお話の通りでございます。この相馬ヶ原につきましても、全体の面積は七百万町歩くらいございますが、その中で約半分民有林、公有林がございまして、これらのものにつきましては、借料を払っておりますし、また立木等につきましても損失補償をいたし、また地元の方々が立ち入りを認められております草でありますとか、あるいはまき等の採集ができないということの損失の補償等もいたしておる次第でございます。しかしながら、根本的にいろいろ考えてみますると、いろいろ考えてみなければならぬ点もあるのでございまして、先ほど申し上げました通りに、このたま拾いの問題を解決いたしますためには、やはり当該の関係市町村が中心となりまして、地元の方々と米軍当局との話し合いのもとに、適当なる案を考えていくということが、一番いいのではないか。それに基いて統制ある廃棄弾の回収措置を講ずるということが必要であるように考えておる次第でございます。相馬ヶ原につきましても、この考え方のもとに先般来群馬県当局、それから関係町村、地元の方々が集まられまして、組合等を結成して、これらの措置を講じたいということがあるようなことも聞いておる次第でございます。われわれといたしましても、全国各地にありますところのこれらの演習場につきまして、適切なる措置を講じたいというふうに考えておる次第でございます。
  116. 木原津與志

    ○木原委員 先ほどあなたは、米軍薬莢その他について、米軍の所有であるということをいわれたことは開いておらぬという御答弁でしたが、私が新聞で見たところによれば、二月十三日に米軍側の埼玉県籠原キャンプ三ヶ尻司令部のレイカス民事部長なんかも加わって、県当局と地元と会議を開いて、たま拾いの問題についていろいろ協議があったのであります。その際に米軍側から薬莢米軍の所有であるということをいわれたので、この話し合いがそのままつかないで、なお上部の機関と連絡協議をするということで、話し合いがそのままになっておるということが新聞に報道されておりますから、その薬莢破片が米軍の所有であるということを、今後米軍が固持していくということになれば、たま拾いの問題についても非常に深刻な問題が今後起ると予想されるのであります。この問題を解決しないと、今後は日本人たま拾いに来たならばどしどし射殺するぞという態度を、米軍がとるようになるかということも危惧されるのであります。だから、この点についてあなたはまだ何も報告を受けておられないようだから、この点を特に調査をされて、あとでこのいきさつについて御報告を願いたいと思います。
  117. 今井久

    ○今井政府委員 ただいま御指摘の点は、調査をいたしまして御報告いたしたいと思います。
  118. 粟山博

    ○粟山委員 私は関連して一つ伺っておきたいと思います。今、井本局長さんからのお答えに、見のがすという言葉をお使いになりましたが、アメリカの兵隊から見のがしてもらえば犯罪にならぬ。見のがさないということになれば犯罪になるというような事態がある。いろいろな制約があるでありましょうけれども、いずれにしても、日本の国内においてそういうような事態がなお存するということは、私は非常に不安だと思います。考えようによっては、事それ自体はきわめて価値の低いものであり、効用の高からざるものであります。そういう品物についてのできごとである。けれども、これをいろいろの意味から考えますと、その取扱い方において非常に重大な問題が起きるものであって、また起きたのである。相馬ヶ原の事件といい、御殿場事件といい、新聞で見て、ラジオで聞いて、これくらい最近において胸を痛めるものはなかったと思うのでございます。この事態を見ますれば、人によっては薬莢くらいのものじゃないかという。けれども、薬莢を拾うことにおいてそれが個人の生活に重大な影響があるのだということになれば、くずものは女中に小づかい銭にやれというような余裕のある家庭の人が新聞を見た場合と、それは実質において非常に違うのであります。けれども、少くともわれわれはサンフランシスコ条約といい、あるいは最近国際連合に加入した日本だということの今日の日本国民の感情からいえば、なおここにかような不安が残っておるという事態は、非常に遺憾だと思います。それでありますから、端的に申し上げますれば、ささいなものであるけれども、アメリカの指揮官の取扱い方、その解釈の仕方によってきまるというような事態に置くことは避けなければならぬ、あくまでもこれは取り去らなければならぬと思います。こういう点において、この問題はむろんのこと、この問題に似通うようなことがたくさんあるでありましょうから、どうかはっきりさしてもらいたいと思います。  それから事の起りを考えますと、防衛庁の方々に特に考えてもらいたいことは、私は数年間内閣委員をしておるのでありますが、私どもはいろいろここで国際的、国内的なめんどうな問題が起きておるが、われわれは誇りある日本国民であり、民族であるということの自党を、みずからの行為において現わすことを考えるほどに努力しておるとすれば、ここにお互いよほど考えなければならぬことは、あの欧州大戦のような大きなできごとで負けた、その負けたときに、歴史にもない、国際法にもかって経験のない無条件降伏の調印をしたのである。何とされてもいたし方がない、生命財産の与奪は彼らにまかさざるを得ない、国土はむろんのことである。しかるに幸いなるかなこの程度に済んでおる。日本がサンフランシスコ条約ないしは最近の国際連合に加入したというような現実から考えますと、よく早くここまで復活したものだと思わざるを得ませんけれども、この敗戦当時において、勝った者の誇り、負けた者の敗戦感というものは、非常に私は両方に深刻なものがあると思うのです。それがだんだん年とともに薄らいできてあるいは国際的にいろいろな事件が起きたり国際的ないろいろなサンプルを見せられたりして、今日に及んでの日本というものは、世界が大きく動いていきますように、日本の環境も大きく影響を受けておるのです。そこでほんとうにこの議場においても聞くがごとくに、独立した形におけるわれわれが、この議場におけ主張を唱えんとするならば、われわれ自体がほんとうに敗戦感、劣等感、これは払拭しなければならぬ。いろいろうこまかな点にまでわたって、私はあらゆる面においてこれを徹底させることを努めなければならぬと思う。同時にかりそめにも戦争に勝った国が、なおかつ戦争に勝った当時のおごりというものの余韻が残っているならば、これは正々堂々として、あくまでも大小を問わずこれに向って反省を与え、抗議をいたし、そしてこれを払拭せしむべき決心と覚悟が私は必要であろうと思うのであります。私はこの議事堂というものは非常に神聖なもので、そして尊い権威あるものということを信じますがゆえに、ここにおいでになって答弁せられるところの官吏の方々、また質問されるところの議員の方々の真剣なる姿にかんがみまして、大なり小なり国民は誇るべき国民としての権威と歴史と伝統の上に、新たなる歴史、新たなる伝統を作るというだけの信念のもとに、いささかなりとも疑惑があり、そこに何らかの解釈と判断を必要とする点がありますならば、徹底的にこれを洗って、真に根本的な解決をしてもらいたい。その一つとして、人によってはきわめて軽いような価値の低いもののように思われましても、人によっては非常に重大な生活問題に属するというような、こういう相馬ヶ原事件ができたことは、災いを転じて福となす意味において、十分私はその御考慮を願いたい、いわんや長官が申されるように、防衛庁は新世帯であります。新世帯でありますから、いろいろな点において困難があるということよく知っておる。私もこの席には、数年間浮気もせずに続けて来ておるので、そういう経験からいたしまして、いろいろな事件のあったことも聞きましたし、またいろいろ私は根本的に矯正しなければならぬことがたくさんあると思う。警察予備隊、保安隊、自衛隊と続けて参った増原次長のごときは、最もよくこの真相を知って、最も多くの考慮も尽され、従ってまた責任も感ぜられるところのお一人であろうと思いますから、特にあなたの経験にかんがみまして、十分私は疑惑のないような自衛隊、信頼される自衛隊の建設のために御努力あらんことを希望いたしまして、はなはだ失礼でございましたが、この時間を借用いたした次第でございます。
  119. 小滝彬

    小滝国務大臣 御注意ありがとうございました。これから一生懸命やろうと思います。
  120. 相川勝六

    相川委員長 受田新吉君。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 私は防衛庁にまだ報告が徹底していないし、まだ調査が十分でないと思うのでありますが、昨日午後三時に、浜松の航空自衛隊で、ジェット機に整備員が巻き込まれたという事件が起っております。これは考え方によりますると、きわめて重大な問題が発生する。その第一は、このジェット機は秘密兵器に属するものとして、例のMDAP関係の取りきめによる各種兵器の秘密の中に入るものかどうかという問題と、第二は、これらの兵器の取り扱いを十分考えることなくして、整備員を動かしたとしたならば、自衛隊の内部の統制ははなはだ不十分であるということが起るわけでございまするが、今申し上げました今四の事件にかんがみまして、自衛隊の兵器の取り扱いはどうなっているのか、お答えを願いたいと思うのでございます。
  122. 増原恵吉

    ○増原政府委員 昨日、浜松の基地におきまして、整備員がジェットに吸い込まれて死亡をいたしたという事件がありまして、まことに遺憾にたえません。  概況を申し上げますと、浜松の基地では、現在航空局としては、訓練をいたしまするいわゆる訓練航空団と、実際の行動をいたしまする航空団二つあるわけであります、そのほかに整備学校、通信学校等いろいろ一緒にやっておりまするが、滑走路の適当な部面で整備をいたしておるところで起った事件でございます。整備をいたしまする際は、解体、修理いろいろありまするが、それが終りまして、試運転をいたす、その段階の事故でございまするが、完全に整備が終って、全運転をするという、整備の最後の段階のときに起きた事故でございます、整備員がこの飛行機に対する始動をかけまして、そうして吸入口のある翼の横の方に立って、前方に障害その他がないことを確めて機上の整備員に合図をする。そうしますと機上の整備員としては、障害なきことのしるしを受けまして、そのときは地上の整備員を見ておるわけですが、それを受けますると、全速をかけて――そのときは約八五%程度のものをかけておったということでありますが、それをかけますると、計器類を見まするので、地上の整備員を見ることはできない。計器願を見て一生懸命やっておるうちに、非常に異常な状態を感じたので、とめてみたところ、吸い込まれて死亡しておったということでございます。その際は二機並んでおりまして、向うへ頭を向けた形でいいますと、左の方の飛行機に吸い込まれたのですが、両飛行機にそれぞれ一人の地上整備員がおって、合図をして両方でやっておった。これは相当の爆音がしますので、声などで合図をしてもわからぬような状態でありまするが、その状態で、右側の方の整備員も自分の受け持ちの飛行機に対する合図その他の状況で、横の左の力の者をそのとき見ていなかった状態であります。従いまして、機上の整備員も、どういう形で吸い込まれたかということをもちろん見ておらなかったし、右側にあった飛行機の機上の整備員も地上の整備員も、この吸い込まれた地上の整備貝の状況を目撃しておりませんので、現在その実情を、なおいろいろその場の状況判断から原因調査を鋭意いたしておりまするが、明確な原因はまだわからない状況でございます。整備員につきましては、申すまでもなく十分の教育をいたしまして、危害予防等については、よくその事実を認識せしめた上で整備に当らせるのであります。このジェットにつきましては、ことに86は吸入口が一つでありまして、相当大きい。それからジェット・エンジンのスラストも非常に大きいということでありますので、大体中心から八十五度の線に引いて二十五フィート――ということをきょう聞いたのですが、円形に書いたところは危険区域であるから、そこに入ってはならないということで、これは割合に簡単な知識で、整備員としてももちろんそういうことは十分に承知の上でやっておるのでありまするが、どういうことでそこへ踏み込んで吸い込まれたかということは、残念ながら今わかっておらないわけであります。自衛隊におきましては、航空機、砲、戦車、重砲等、いろいろの武器を使用いたしまするが、これは簡単なカービン、ライフルから始めまして、基本訓練、慣熟訓練を経まして、順を追うて、分解操作から科学的、徹底的にその操法について間違いのないよう、一般の者が扱いまするライフルなどでも、盲目で分解、結合ができるというふうな訓練をさせた上で使用させるというような配慮もいたしておるのであります。すべての武器につきまして、その用法については十分徹底をした訓練をして、事故防止には万全を期しておる所存でございまするが、この際の事故については、状況等より見まして、その原因の調査を至急、鋭意いたしたいというふうに考えております。  なお最初に御質問のありましたこのF86につきましては、いわゆる防衛秘密の区分はございませんで、そういう意味の防衛秘密ではございません。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 この航空機の取扱いについて、航空機の設備その他が日本人の体格に合うごとくに直されておるものかどうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  124. 増原恵吉

    ○増原政府委員 F86あるいはT33というような、向うでできました制式のものをこちらに持っておるものについて、まま、説として、足が届かぬとか何とかということをいわれたこともございまするが、そういうことはございません。十分に使いこなせるように、日本人の体格に合うように若干の手直しをしたものもございまするが、現在使っておりますものは、足が届かぬとか手が届かぬとかいう、日本人の体格に合わないようなものはございません。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、この事件解決に当って一つ問題点があるのでございますが、これは秘密対象でないかということでございまするから、遠慮なくその実態調査ができると思いますが、このような事故は、これは日本では初めてであり、外国でもきわめて例が少いということを聞いておるのですけれども、これの実態をきわめるに当って隊長が隊長として、あるいはその場合における直接の担当者が担当者としての業務上必要な注意を怠って、その人が死んだとなると、これはまた重大な結果が出ると思うのです。すなわち兵器の取扱いに対する十分の注意をしなかった、それだけ強力に空気を吸い込むジェット機、この非常な危険なジェット機の取扱いを十分徹底せしめなかったうらみがあるということになると思うのでございますが、ちょうど井本刑事局長もそこにおいでになりますので、お尋ねいたしたいのでありますけれども、業務上の必要な注意を怠って起った過失致死ということになれば、当然その線で警務隊もお調べになろうし、また検察権の発動ということも考えられると思うのでございますが、軍の内部になるべくタッチしたくないという従来の一般警察立場から、これを傍観する態度で依然として臨んでおられるか、あるいは必要によっていつでも飛び込んで合同調査をするという決意を持っておられるか、お伺い申し上げたいと思います。
  126. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私はきょう突然お伺いした程度で、詳しいことは存じていないわけでございますが、おそらくF86ジェット機のことでいろいろ技術的な問題があると存じます。被害者自身に過失があってさような事態になったのか、あるいは他にさような事故を起すような加害者があったのか、かような点はかいもくわかりませんし、その当時の状況防衛庁の方からいろいろ承わりまして、その上で、果して刑法二百十一条の業務上過失致死というようなものが出てくるのかどうか検討いたしたいと考えるわけでございますが、さしあたりは技術的な問題もありますので、防衛庁側の真剣な調査、捜査というようなものに信頼して参りたいというふうに考えております。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 私は自衛隊が国民に信頼される存在としての使命に生きられることを念願しているわけです。現実においてはそういう気持を持っているわけでございますが、その自衛隊にとかくこうした事件が頻発する、また新しい兵器をどんどん取り入れるに当って、その取扱いの上の不注意から、今後もこういう第二、第三、第四という事件が起りかねまじく思うのでありますが、新兵器の取扱いに対する徹底せる注意ということを今後十分考えていただいて、万遺憾なきを期せられたい。これは私は強力に要望しておきたい。同時に、今回のこの事件はできるだけ徹底的に調査していただいて、すでに調査委員会も設けておられるそうでありますけれども、どこでこうした不幸な事態が起ったかを究明していただいて、単に自衛隊の内部でこれが蒸されることのないように、国民が安心して、今後自衛隊に入隊したい人は入隊するし、また自衛隊の発展を祈る立場の人は大いに祈るというようにあるべきだと思うのですが、この点防衛庁当局としての心がまえを伺っておきたいと思います。
  128. 増原恵吉

    ○増原政府委員 御忠告は十分拝承いたしました。私ども従来といえども事件を蒸すというようなことを考えてやったことはないわけでございますが、御忠告を承わりましてそういう疑惑を起させないように、一そう十分徹底した調査をいたします。これは私ども自身が多数の貴重な隊員を預かっている立場から言いましても、そうなければならぬことでございます。十分徹底した調査をして原因を究明し、自後かようなことの絶対に起らないように措置をいたしたいと存じます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 さらに次の機会に持ち越すことをやめて、この機会に片づけておきたい質問事項がございます、それは先般北海道の自衛隊員が、ロケット砲弾を持ち出して売却した事件については、当局から御答弁いただいたのでございますが、この事件のその後の処理状況はどうなっているのか。検察権をいかに発動されて、目下いかなる結論に到達しているか。その問題とあわせて、砲弾を持ち出すとか、あるいは今回のジェット機の事故とか、何だかそこに自衛隊は兵器の取扱いにきわめてルーズであるような印象を国民に与えておると思いのです。こうした自衛隊に対する不信の気持を抱かせるような事態を起さしめぬためにも、この事件を十分究明しなければならぬと思うのでございますが、当局の今後の兵器取扱いに対する見解をお伺い申し上げたい。二つの問題をお尋ねします。
  130. 小山雄二

    ○小山政府委員 北海道のたま事件につきましては、実情を先般申し上げましたが、その後わかっております状況を申し上げますと、本人は三月十日にこれをくず鉄として売却する目的をもってくず鉄商に参りまして、そこで爆発をして、残っておりますたまを捨てて営地に帰ったわけでございますが、営地に帰りましたところ、警察からの照会によりまして――自動車番号でわかるわけなんです。照会によりまして調査したところ、本人であることがわかり、本人がその事実を教育隊長代理の小川三佐に報告しております。とともに直ちに警察に連行されまして、警察の手で取調べ中であります。警察で取り調べている要点は、ただいまのところ、落したたまが爆発したのか。元からあったたまが爆発したのか、そこら辺がはっきりしませんので、いろいろ検証その他をやっておられるようでございます。身柄は警察にございますし、自衛隊といたしましても、防衛庁側といたしましても、警察の処置、検察庁の処置に応じまして、これは規律違反でございますし、出来心とはいいながら、売ってすぐ金にしようとしたのでございますから、そういう点からもし勤務上の制裁がその後とられることと考えられます。なお本件に関連しまして、自衛隊たまの出納には一切支障ございません。これは付近の人が拾ったたまを捨てていったのを拾って、自分が隠して売りに行ったわけです。隊自体としましては、ことに武器はもちろんでございますが、砲弾のような危険なものにつきましては、出納管理その他は厳重に注意いたしまして、誤まりのないように処置しておるつもりでございます。
  131. 井本臺吉

    ○井本政府委員 本件は刑法二百三十五条の窃盗罪などの問題が当然起きると思いますし、その観点から厳正に検察庁といたしましても処置するつもりでございます。現在どのような処置をしておるか、実は御要求がなかったものですから、関係の書類を持って参りませんので、ただいま明確なお答えができないのですが、一緒に参ったものが電話で問い合しておりますので、後ほど本人が参りましたらあらためてお答えいたしたいと思います。
  132. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ自衛隊の内部の問題として、先般大分県中津市におきまして、上官を刺殺した事件が起った。死の行軍以来相次いで自衛隊に対する批判的な問題が、ここに四つも五つも出てきたということは、われわれ非常に遺憾にたえないのでございますが、この隊の規律ということも重大なことであって、いいかげんな隊員を作るべきことをわれわれはちっとも願っておらない。すっきりした自衛隊訓練ということはもちろん考えております。しかしこうした事件が起ってみると、どうも一方で強くすればまた一方において弱くしなければならぬというようなことで、両方から自衛隊は責められると思うのです。しかしこれは過渡期に立つ自衛隊の将来のことを考えると、十分ここで真相を究明して、自衛隊のほんとうのあり方というものを国民の前にさらけ出さなければならぬ、また国民の中に自衛隊に対する正しい認識を持たせる必要があると思いますので、以上のいろいろな事件の関連において、上官刺殺事件というものを自衛隊ではどう考えておるかをお知らせいただきたいと思います。
  133. 増原恵吉

    ○増原政府委員 中津市で起きましたいわゆる刺殺事件につきましては、仰せの通りまことに遺憾のことでございます。  こまいことは省略をいたしますが、大体の経緯は、中津におりますものは教育隊でございますが、教育隊は教育その他の関係を分担する職員だけでありますので、この部隊には小倉の方から警戒のための応接隊みたいなものが出かけていっておるわけでございます。この小倉の方から派遣をされた警戒任務に当っておる部隊の一等陸士熊谷定美という者が、派遣をされておる同じ小隊の陸士長の末松久という者を刺殺したのでございます。当日、午前八時にはこの警衛隊が交代をすることになっておるのでございまして、この警衛交代に当って、そこにありましたストーブの掃除をすることになっておるのでありますが、士長の方が一士にストーブの掃除をするように言ったのであります。そこでもう一人の二十と二人でストーブの掃除をしようとしましたところ、煙突がこわれておって手間がかかりそうなので、一応掃除をあと回しにして朝食に行った。帰ってきまして、そこにありましたドライバ一をもってストーブを修理しておりますところへ、士長が来まして、まだ修理ができないか、できないなら初めからそう言えというふうにしかったのであります。それに対して一士の方は、交代までまだ時間があるからできると反撥をしたのであります。これに対して士長は、大きなことを言うなというふうにしかって、一士の顔を平手でたたいたのであります。それで士長はそこを出ていなくなったのですが、そのあとで一士の方は大分ふんまんを感じたわけでありましようが、ストーブをけとばした。そこでそこにおりました者がなだめて、二、三人でストーブを起して清掃にかかった。問題の一士も煙突を外へ持ち出して清掃をしておった。殺された方の士長はほうきを持ってやはりそこらを掃除しておったのでありますが、そこへやってきまして、その一士とまた顔があいまして、そこでほうきで一士を二、三回たたいた。それで一士の方が士長の胸ぐらをつかまえて、修理のために持っておりましたドライバ一で胸のところを刺したという概要であります。問題は現在までの調査のところでは、平素から宿怨があったとかなんとかいうことはないわけでございます、その朝交代する時間にささいな行き違いから両者口論をいたして大事に至ったというふうに、一応解釈をせられる状態でございます。士長の方は直ちに中津の南病院に入院をさせましたが、間もなく午前十時ごろ死亡をいたしたのでございます。特別に平素の教育訓練その他についてどうこうという問題は、なお詳細今調査をいたしておりまするが、現在までのところはそういうふうなことは認められず、平素の宿怨があるというふうでもございませんで、当日のささいな事柄の行き違いでこういうふうな大事に至った。加害者熊谷氏は身柄を中津拘置所に収容されまして、取り調べを受けておるのでありまするが、事を起しましたあと直ちに自己の犯したことについて深く悔悟の情を示し、まことに申しわけがないということを言っておる状態でございます。まことに遺憾なことでありまするが、現在の調査ではささいなことの行き違いから大事を起したというふうに考えておるものでございます。
  134. 受田新吉

    ○受田委員 小滝さん、私はあなの人格的なあたたかみとまた幅の広い御手腕というものには非常な期待をしておるわけでありますし、大いに御敢闘願いたいと思うのでございますが、はしなくもあなたが御就任以来、あたかも符節を合するごとくに、自衛隊の内部にかかる事件が相次いで起ったということは、非常に長官としても遺憾に思っておられるだろうと思うのです。従って私たちも国会で与野党が見解を異にする自衛隊の問題で論争することはしのびないところがございますけれども、しかしこれも国民のためであって、国民の意見を代表する国会が見解を異にする立場で互いに磨き合いをするということも、これは当然のことだと思います。  そこで願わくばこの際、自衛隊の内部に相次ぐかかるいまわしい事件を絶滅するような何かの形の、少し筋の通った長官訓令とかあるいは指示とかいうような形のもので、全体に対して民主主義を守る一線と人権尊重の一線を確保した立場で、 隊務の規律を厳正にするような意味の御注意あるいは兵器の取扱い――新兵器がどしどしやってくる現段階において、それによって人命を損傷するような形にならないように、しっかりした注意等を出されて、いわゆる軍国式の士気の鼓舞というような意味でなくして、まじめな隊の規律を立てるという意味で、一つ御指示あるいは御訓令相なるべきである、いいチャンスが来ておると私思うのでありますが、御見解はいかがでございましょう。
  135. 小滝彬

    小滝国務大臣 お説まことにごもっともでございまして、ただいま受田さんからおっしゃったような点は、私にとりましては、今後仕事をいたしていきます上の非常に激励にもなると考えまして、感謝いたすものでございます。実は私も受田さんと同様に考えまして、すでにこれまでもいろいろ歴代の長官が注意してこられたことはもちろんでございますが、特に私が就任以来不祥事を起しまして申しわけがないと考えております。この気持からいたしまして、とにかくこういう事件は今後の指導にも参考になるから調査の結果は逐次通報してやる、同時に平素から内局にいる諸君あるいは各幕僚監部の諸君に申し上げておる点は、よく徹底するように末端の方にも伝えてもらいたいというので、その措置をとってもらっておるような次第であります。  なお今、国会の方が非常に多忙をきわめておりまして、十分な機会を得ないのを残念に思っておりますけれども、できるだけ近い機会に――実は海上関係の連中には一応会いましたけれども、特に自衛隊員をたくさん持っております陸上関係の幹部連中にも集まってもらいまして、私の真情を吐露して今後のことを相談する、現地のことは何としても現地部隊の者がよく知っておりますから、相談をするとともに、私の考えておりますことが具体的に実行できるように相談をし、また私の気持を伝えてそれを徹底させていただく、こういうふうに考えておる次第であります。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 非常に誠意のある御答弁をいただいたわけですが、今、国会にしばしば出るので時間がないというお言葉もあって、われわれはなはだ恐縮しているわけですけれども、しかしこれも国民の代表機関でありますので、どうぞ御了承願いたい。私そういう自衛隊の検討をしていただくためにも、きょうは委員長以下相諮りまして、野党も協力して、来週火曜日までは皆さんに御苦労いただかないでもいいように取り扱っておりますから、(笑声)一つ楽な気持で自衛隊の新しい立場をごゆっくり御検討していただいて、来たる火曜日よりさらに磨きをかけて論争を申し上げたいと思います。(拍手)  今、井本さんに何か資料がきたのじゃありませんか。
  137. 井本臺吉

    ○井本政府委員 札幌地方検察庁の検事正から電報が入っておりますので、その結論を申し上げます。本人は、目下所轄の千歳警察署で調べておるそうでありますが、その警察署と札幌の検察庁との間で連絡しながらいかなる犯罪が成立するか、窃盗罪のほか重過失傷害罪、火薬類取締法違反などの犯罪の成否について慎重に捜査を進めておるが、結論的な段階には至っていない、しばらく日時の猶予を請うという趣旨の電報でございます。従ってこの被疑者につきましては、所轄の警察署と検察庁と緊密な連絡をとりつつ引き続き捜査をしておる状況でございます。
  138. 相川勝六

    相川委員長 次会は明後二十二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会