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1957-02-19 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十九日(火曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 福井 順一君    理事 保科善四郎君 理事 山本 正一君    理事 石橋 政嗣君 理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    北 れい吉君       床次 徳二君    眞崎 勝次君       粟山  博君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    木原津與志君       下川儀太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁長官) 今井  久君         防衛政務次官  高橋  等君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 二月十九日  委員横井太郎君辞任につき、その補欠として田  中龍夫君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十八日  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号) 同月十五日  紀元節復活に関する請願外百三十一件(纐纈彌  三君紹介)(第八四四号)  同外二件(大島秀一紹介)(第八四五号)  同外五十五件(廣瀬正雄紹介)(第八四六  号)  同外三十一件(大島秀一紹介)(第九二二  号)  同外百四十件(纐纈彌三君紹介)(第九二三  号)  同外四十一件(坂田道太紹介)(第九二四  号)  同外六十九件(田中久雄紹介)(第九二五  号)  新井市内水上外地区寒冷地手当引上げの請  願(塚田十一郎紹介)(第八四七号)  清里村の寒冷地手当引上げ請願塚田十一郎  君紹介)(第八四八号)  板倉村の寒冷地手当引上げ請願外一件(塚田  十一郎紹介)(第八四九号)  大子町の地域給引上げ等に関する請願塚原俊  郎君紹介)(第八五〇号)  下郷町の寒冷地手当引上げ請願外一件(平田  ヒデ君紹介)(第八五一号)  元満州国等日本人公務員恩給法適用に関す  る請願佐伯宗義紹介)(第八五二号)  同(高瀬傳君外一名紹介)(第八五三号)  同(塚原俊郎紹介)(第八五四号)  同(福永健司紹介)(第八五五号)  同(堀内一雄紹介)(第八五六号)  傷病恩給増額に関する請願外十件(安藤覺君紹  介)(第八五七号)  同(石村英雄紹介)(第八五八号)  同(山口シヅエ紹介)(第八五九号)  同(徳田與吉郎紹介)(第九一九号)  同(眞鍋儀十君紹介)(第九二〇号)  傷病恩給受給者家族加給に関する請願石村  英雄紹介)(第八六〇号)  同外一件(今澄勇紹介)(第八六一号)  同(岡本隆一紹介)(第八六二号)  同(井谷正吉紹介)(第八六三号)  同外九件(小金義照紹介)(第八六四号)  同(野原覺紹介)(第九二一号)  看護職に対する人事院勧告俸給表是正に関す  る請願山下榮二紹介)(第八六五号)  同(山崎始男紹介)(第八六六号)  旧海軍特務士官及び准士官恩給是正に関する  請願高村坂彦君紹介)(第九一七号)  金鵄勲章年金復活に関する請願高村坂彦君紹  介)(第九一八号)  上川村の寒冷地手当引上げ請願三宅正一君  紹介)(第九四八号)  旧片貝町及び六日市村横渡地区寒冷地手当引  上げの請願三宅正一紹介)(第九四九号) 同月十六日  紀元節復活に関する請願大島秀一紹介)(  第九六八号)  同(小川半次紹介)(第一〇〇一号)  同外五十件(前田正男紹介)(第一〇〇二号)  同外五百四十二件(纐纈彌三君紹介)(第一〇  三一号)  同外七十二件(前田正男紹介)(第一〇三二  号)  元外地鉄道職員に関する恩給法等特例制定に  関する請願外一件(森三樹二君紹介)(第九六  九号)  元満州国等日本人公務員恩給法適用に関す  る請願足鹿覺紹介)(第九七〇号)  同(野田卯一紹介)(第一〇〇六号)  元満鉄社員恩給法適用等に関する請願(井上  良二君紹介)(第九七一号)  同(菊地養輔君紹介)(第九七二号)  同外二件(佐々木更三君紹介)(第九七三号)  同(田原春次紹介)(第九七四号)  同(愛知揆一君紹介)(第一〇〇三号)  金鵄勲章年金復活に関する請願堂森芳夫君紹  介)(第九七五号)  看護職に対する人事院勧告俸給表是正に関す  る請願野原覺紹介)(第九七六号)  同(小川半次紹介)(第一〇三七号)  旧海軍特務士官及び准士官恩給是正に関する  請願福田昌子紹介)(第九七七号)  同(山崎巖紹介)(第一〇三三号)  傷病恩給増額に関する請願北澤直吉紹介)  (第一〇〇四号)  同(小川半次紹介)(第一〇三四号)  同(堀川恭平紹介)(第一〇三五号)  退職公務員恩給に関する請願西村彰一君紹  介)(第一〇〇五号)  同(山崎巖紹介)(第一〇四一号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する請願(保  科善四郎紹介)(第一〇〇七号)  同(臼井莊一君紹介)(第一〇三八号)  同(大村清一紹介)(第一〇三九号)  同(高橋等紹介)(第一〇四〇号)  寒冷地手当支給額改訂等に関する請願櫻井奎  夫君紹介)(第一〇〇八号)  新潟県下の寒冷地手当引上げ請願櫻井奎夫  君紹介)(第一〇〇九号)  寒冷地関係給与改訂に関する請願櫻井奎夫  君紹介)(第一〇一〇号)  寒冷地手当及び地域給等制度存続に関する請  願(櫻井奎夫君紹介)(第一〇一一号)  糸魚川市内下早川西海地区寒冷地手当引上  げの請願櫻井奎夫君紹介)(第一〇一二号)  新井市内水上外地区寒冷地手当  引上げ請願櫻井奎夫君紹介)(第一〇一三  号)  傷病恩給受給者家族加給に関する請願堀川  恭平紹介)(第一〇三六号)  自動車庁設置に関する請願宇都宮徳馬君紹  介)(第一〇七六号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  この際御報告を申し上げます。昨十八日、内閣より外務省設置法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案の三法律案が提出せられ、当委員会審査を付託せられました。御報告いたします。  なお、これらの法律案審査に入りまする時期等につきましては、後刻理事会を開いて御協議申し上げたいと存じます。  これより国の防衛に関する件のうち、特に自衛隊強行軍による死亡事件、誘導兵器問題及び東富士演習場事件等について、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 先回の委員会でお尋ね申し上げて、まだ未解決の数々の点があったわけでございます。それをここで確認さしていただいて質問を終りたいと思います。  この前の委員会で、特に広島原村演習場における自衛隊のとうとい隊員の二名の死について、実態調査にまだ事欠く点があったように伺いました。ことに現地調査隊員報告に基いてさらに具体的に説明したいということでございましたけれども、その点私たちの方では隊員の声としていろいろなものを資料として集めておるのでございまするが、当局被害を受けた隊員調査にやや軟弱な点があって、責任者側の方に好意的な調査をしたように見られてならなかったのであります。この点、昨夜も庁議をお開きになられて現地報告を御確認されたと聞いておるのでございまするが、この委員会で御説明された以後においての新しい事実判明等がございましたら、まず御報告を願いたいと思います。
  4. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この前申し上げました以後のことにつきまして御説明をいたしたいと思います。  前回委員会におきまして、私どもの方で調査対象となっておるものが十一件あると申し上げました。その後さらに調査を続けました結果、その十一件の中には目撃者が違いますけれども、同じ事件を別々の目撃者が別々の事件として取り上げておったようなものもあったのでございます。結局その十一件が九件になりました。しかし前回委員会の当時はまだ問題にならなかった事件も出て参りましたので、現在調査対象となっておりまするものは十件でございます。この十件につきまして慎重な調査をいたしております。あの委員会の最後にも申し上げましたが、調査員を派遣し、さらにまたその後警務隊長以下六名の警務官を派遣いたしまして調査を続けたのでございます。この十件の内容につきましても、私は昨日警務隊長その他調査に当りました者から直接に念入りに、根掘り葉掘り聞いたのでございますけれども、非常にデリケートな点が多うございました。全部の問題につきまして今ここでどうだという結論を出しにくいような点も相当ありますることは、御了解願いたいと思うのでございます。  この十件は、一つは、川本士長が某幹部にけられたという事件でございまするが、これもただいままでの調査のところでは、けったというふうに断定はなかなかできないと私は考えております。ただ、やはりけったというふうに、外から見まするとそう見られるに近いような事実はどうもあったのではないかというのが、私の現在のところの判断でございます。  その次に、同じく川本士長が某幹部ほおをなぐられたという点でございまするが、これも精細に調査をいたしております。この件につきましては、なぐられたという表現が必ずしも適切かどうかということにつきましては、まだ私は断定ができないと思いまするけれども、肩をたたくとかほおをさするとかいう程度のことはあったように思います。(「さすったのか」と呼ぶ者あり、笑声)もちろん、これはお笑いになりますけれども、眠けを催しておる者を元気をつけるためにやることは、私は考えられると思います。こういう事実はあったように思います。  それからヘルメットをたたいたという件。この件につきましては、これもやはり激励の意味でつえで本人をたたくと申しますか、こづくと申しますか、そのような事実は明白であります。しかしヘルメットかどうかという点になりますと、最初の供述と少し違ってきておりますので、どこをどういうふうに突いたかという点はさらに調査を続けたいと思います。  その次は千頭三曹につきまして、胸ぐらをとってゆすぶってほおをたたいたという申し出が一つあるのでございますが、これもやはり元気をつけさせる意味をもちましてなぐったという表現が適切かどうかは別といたしまして、それに近いような事実は私はあるように判定をいたしております。  それからいま一件、別の個所でやはり千頭三曹のほおをたたいたという問題がございますが、これはどうもただいまのところでは両方の供述が非常に違っておりまするので、判定に苦しんでおる状況でございます。  その次に千頭三曹の右のももを某幹部がけったという件でございまするが、これも私はけったという事実はないように思います。ただ千頭君が倒れておりまするのを引き起す際に、片方の手を持って引き上げ、片方の足を千頭君の足のところへ入れてゆすぶるようにして引き起したという供述になっております。この点の状況は今少し精細に、客観的な状況、さらに目撃者件等を固めて判定を下すようにしたいと思います。  それから延原士長につきましてうしろから突いたという件でございまするが、これは事実があるように思います。幹部延原君をうしろから強く押したということはあるように思います。  山口士長事件につきましてヘルメットをたたいたという件でございまするが、これもヘルメットに手をかけて、しっかりしろ、だれだと言って回したという事実はあります。この点までは私は確認できると思います。  衣笠一士の関係でございまするが、この点につきましては非常に調査が食い違っております。これは青竹でたたいたというのでありますが、調査の結果が食い違っておりまして、私はまだどうだという心証を得るところまで参っておりません。  大橋三曹をほおをたたいたという事実がございますが、これは本人を激励する意味でたたいたという事実はあるように思います。今までの実検はそういう状況になっております。
  5. 受田新吉

    受田委員 私は今回の事件被害を受けた皆さんと、それから暴行を加えたと見られる方々との間の見解の相違の幾つかの個所を指摘せざるを得ないと思うのでありまするが、それは現地隊員録音を聞いた中にもこういうのがあったわけです。ある幹部、すなわち被害を加えた幹部が、隊員を楽にしたいと自分は思ってやったことである、だから事件を作り上げるために何かの謀略があるのではないかというような逆襲をしておられる声も聞いておるのでございまするが、こうした隊員の中に上官に反抗する、隊員の紀律を乱すというような形に見られて、そうした動きというようなものをお調べの途中で見出されましたかどうですか。
  6. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 私はそういう事実は聞いておりません。
  7. 受田新吉

    受田委員 なぐられたとか、あるいはうしろから突かれたとか、こういう御発言をしておられる方々の声と、それから非常に厳格な隊の規律を謳歌する方々の声、その方々の中には自衛隊の訓練を礼讃すると同時に、隊長のやさしい親心というようなものを盛んにほめたたえる声も聞いておるのでございますが、その双方についてきわめて慎重な取調べをされたことになりますか。
  8. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 調査やり方につきましては、私はそういう点も考慮に入れまして公平、公平と申しますか、最も適切な調査をしておると思います。ただこれは言うまでもないことでございますが、一人の人間について見ますると、いいという評価をする者と悪いという評価をする者とが、これは当然あり得るわけでございます。そういう空気は隊の中にもあるように思います。
  9. 受田新吉

    受田委員 私はこうしたことをこまかくお聞きするのははなはだ忍びないのであるし、なくなられた二人の尊い生命に対してはまことに申しわけない気持がするのでございますけれども、事実隊員の声の中に倒れているのを足げにされていたとか、あるいはほおをぶんなぐられたのだとかいうはっきりした声があることにおきましては、これは自分から上官にあとからひどく叱責されるとか昇進に影響するとかいう心配も抜きにして、正しい声を吐きたいという率直な気持の現われだと私は思うのでありますが、局長さんがお調べになられたところでは、そうした率直な声を吐く隊員の心の奥に何か不純なものがあるとお考えになった向きがございますか。
  10. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 私も隊員及び幹部双方録音などを聞きました。聞いた限りにおきましての私の感じは、隊員は少しも言うことにちゅうちょしていないように思います。ただしかしだんだんと調査の回数を重ねて参っておりますると、隊員の方も幹部の方もだんだんと微妙な点において供述が変ってきておる点は、これは私は若干あるように思います。これはしかし上から強制をしたというふうなことでありますると非常な問題であると思いまするが、本人が、事実の認識についての初めの証言がどうも確かでなかったというようなことであるのか、あるいはほかの者に迷惑を及ぼしてはいけないというような考慮も全然なかったとは言えないと思います。故意に上の者が圧力をかけて証書を変えさせたというふうなことはないように思います。今ごろの若い諸君は昔と違いましてそういう点は非常にはっきりものを言うと思います。
  11. 受田新吉

    受田委員 そうしてその詳細な御調査の結果、この事件業務上の過失致死に当るおそれもあるという判断を下されましたか、いかがでございましょう。
  12. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この点はなかなか重要な問題であると私は思います。で業務上の過失とかなんとかということになりますと、事は司法事件になるわけであります。私どもはここで今軽々にどうだこうだということはこれは差し控えたいと思います。司法当局と慎重に打ち合せの上で考慮すべきものは考慮するというふうにいたしたいと思います。
  13. 受田新吉

    受田委員 高橋防衛政務次官は、日曜日に福山にお帰りになられて、次官になられた直後の、すなわちにしきを着てふるさとにお帰りあそばしたその談話の中で、こういうことが報道されました。今回の事件は、これは幹部責任は認める、しかし刑事責任はないのだ、そうしてまた幹部処分についてはできるだけこれを寛大に取り扱いたいという御発言をされたと報道されておるのでありまするが、これは間違いでございましょうか。もし間違いでなければ、どういう根拠から御発言になったかをお聞かせ願いたいと思います。
  14. 高橋等

    高橋(等)政府委員 受田さんに私から伺っては恐縮でございますが、その記事は一体何新聞に出ておりましたでしょうか。私はその翌朝のあらゆる記事を実は読んでおりますが、そんな記事が出ておるとは思っておりませんもんですから、何新聞が書いておりましたでしょうか。
  15. 受田新吉

    受田委員 NHKの日曜日の晩、午後十時のニュースで明らかにあなたの談話として報道されました。
  16. 高橋等

    高橋(等)政府委員 全然事実無根でございます。この問題につきまして調査はどういうように進んでおるか、いつごろ結末がつき、調査がはっきりするかという質問は、問題が広島県下で起っただけに記者諸君から質問を受けました。福山のすべての記者団と会見をいたしたわけでございます。それで今慎重に調査をいたしておるので、調査自体についてはできるだけ早く結論を出して、世間の疑惑を解く方法を講じておるのだ、こういう話はいたしております。それから処分をするのかどうかという話があったわけです。それでこれは真相を調査した上、もしここに自衛隊の計画その他演習の上において間違いが起っておるものと考えれば、これは調査処分ということをやらなければならぬが、これも急いでやらなければならぬ。しかし処分というものは、いわゆる表面的に表われた報道その他を基礎にするのではなしに、とにかく実態をつかんだ上で間違わない方法を打ち出していかなければならないのだ、こういう発言はもちろんいたしております。これは当然のことだと思うのですが、ただいまのNHKの放送は実に迷惑千万、こういう発言をいたすほど私はもうろくはいたしておりません。
  17. 受田新吉

    受田委員 さすがに防衛庁政務次官としての見識を持った御答弁であります。あなたにそうした間違いがなかったとするならば、報道の取材に多少の手違いがあったかとも思うのでございまするが、そこはさらに私は厳重に調査いたしまして、それをあなたに再質問することをお許し願いたいと思います。私は今回の事件の取り扱いに当りまして、自衛隊内部警務官という職制がある。この警務官は、いわば昔の憲兵に当る職務と了解をしてよろしいかどうか、これもお伺い申し上げます。
  18. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 警務官制度は、自衛隊法の九十六条に規定してございまして、「自衛官のうち、部内秩序維持職務に専従する者は、政令で定めるところにより、左の各号に掲げる犯罪については、政令で定めるものを除き、刑事訴訟法規定による司法警察職員として職務を行う。」ということでありまして、三号ほど書いてございます。この規定に明らかな通り特別司法警察職員でありまして、昔の憲兵というものとの関係におきましては、部内秩序維持に当り犯罪捜査するという点につきましては同じでございまするけれども、これ以上の権限は持っておらないのでございます。昔の憲兵一般司法警察職員といたしまして、警察官が現場におらない場合には警察官職務を行うというふうな規定になっておったことは御承知の通りでございます。そういうふうな規定はございません。
  19. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、今回の事件処理に当って、警務官職権規定の中にありまする「警務官等は、法第九十六条第一項各号に掲げる犯罪捜査するに当っては、警察官海上保安官その他の司法警察職員と密接な連絡を保たなければならない。」というこの規定によるこれらの連絡という点についてはいかようにお取扱いになられたのでございますか、お尋ね申し上げます。
  20. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 警務官は九十六条に掲げてありまする事項につきまして司法警察職員としての権限を持っておるわけでございますが、しかしこの規定は昔と違いまして、一般警察官吏自衛隊隊員に対して職権を及ぼすことを妨げるものではないのでございます。私どもはその仕事やり方につきまして警察協定を結んでおりまして、大きく申しあげますると、自衛隊施設内で行われました事件につきましては、原則として警務官がやる、自衛隊施設外に起りましたるところの事件につきましては、原則として警察官がやる、大ざっぱに申しますと――こまかい点はございますけれども、そういうふうな協定仕事を分担して参っておるのでございます。今回の事件につきましては、私は司法警察関係事項といたしましては、刑事訴訟法によりまして特別司法警察職員検事一般的な指揮を受けることになっておりますから、その方の系統でこの事件処理を進めていきたいと思っております。
  21. 受田新吉

    受田委員 検事指揮を受ける、現に指揮を受けておられますか。
  22. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 検察庁の方には連絡はいたしております。
  23. 受田新吉

    受田委員 連絡をされただけで、まだ指揮を受けるには至っておられませんか。
  24. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 まだ受けたということは聞いておりません。
  25. 受田新吉

    受田委員 この事件捜査に当って、法務大臣は前衛隊の特殊の立場もあるということを考え発言もあったようでございまするが、それは警務官等が置いてあることも、私たちとしては一応了承しまするけれども一般刑法対象として考えられる刑事事犯ということになるならば、警察権の発動に何らちゅうちょすべきではないと思うのでありますが、河かそこに検察側手心か行われるのではないかと不安を抱いておるのであります。いかがでありましょう。
  26. 井本臺吉

    井本政府委員 刑事事件が起きますれば、自衛隊の方であるとあるいは外部の方であるとを問わず、検察庁といたしましては全然同じ立場で公平にやるつもりでありまして、何ら手心を加えるつもりはございません。
  27. 受田新吉

    受田委員 そうすると、今回の事件に対しましては、法務難局としてはどの程度これに介入をされておりますか。
  28. 井本臺吉

    井本政府委員 逐次状況の御報告を受けておりまするが、現地神戸地方検察庁が所管の地方検察庁でございますので、神戸地方検察庁が伊丹の自衛隊方々からいろいろ事情の報告を受けまして、それに対する適切なる検察を行いたいというように考えております。
  29. 受田新吉

    受田委員 刑事局長は、この事件適用法規を、刑法上の例の、百十一条に掲げられてある業務上の過失致死として取調べ対象とするというお考えはお持ちではないですか。
  30. 井本臺吉

    井本政府委員 いわゆる事件を立てて二百十一条違反なりというところまでまだいっておりませんが、逐次事案の状況報告を受けまして、もしさような嫌疑がありますれば、刑法の、百十一条の業務過失致死罪として事件を立てるということもあり得ると考えます。
  31. 受田新吉

    受田委員 そういう検討の段階であるとお聞きしましたので、これ以上私はこの問題については追及をしないことにいたしますが、今自衛隊内部にある警務官、それと、一般警察官との、犯罪捜査の重要な職務について、今回の事件を契機として何かそこに不円滑性を持つとか、あるいは当然これは改めなければならないとかいうようなことをお考えになられなかったか、この問題について防衛庁と法務省両方から答弁をいただきたいと思います。
  32. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 警務官制度ができましてからそれほどの期間がたっておりませんので、われわれといたしましても、今後この制度を運用するにつきましてなおいろいろと工夫改善を加えていかなければならない点は多々あると思います。ただいまのところ警察との仕事やり方につきまして、特にこの点をこう改めたいというふうなことは考えておりません。
  33. 井本臺吉

    井本政府委員 自衛隊法の九十六条以下の警務官も、司法警察官もしくは司法巡査として検事指揮を受けるということになっておりますので、現在のところこの事件調査もしくは捜査をする上におきまして、別に不都合でありたという点は何ら見当っておりません。
  34. 受田新吉

    受田委員 検事指揮を受けるという点においては何ら不都合はないということでございまするが、取調べに当って、警務官というこれを担当する職員が自衛隊内部におるということにおいて――一般警察官の介入に限界線もあるわけですが、一般警察官の介入が思うにまかせないという欠陥は、職制の上でやむを得ないとお考えになられますか。
  35. 井本臺吉

    井本政府委員 自衛隊警務官が適切に職務を執行しないという条件がありますれば、場合によってはこれは一般警察官の職域に及ぶわけでございますので、それを使用するということも考えられるわけであります。現在のところそのような不都合な事態は見当っておりませんし、一応警務官が誠実に職務を執行しておるという状況考えますので、私どもは今この点につきましては不都合な点は何ら考えておらないのであります。
  36. 受田新吉

    受田委員 この問題はすでに自衛隊内部で適当な検討を加えられて、ある程度結論にも到達し、さらにこれから詳細な調査をするということでございますが、私はこの取調べ防衛庁内部で行われるのみで、何かそこに秘密的な取調べが行われるようなおそれもあると思うわけです。むしろこれを堂々と庁外の一般警察官の介入、できれば検事指揮を受けるという段階をもっと早めて、防衛庁内部に何か秘密の取調べが行われているような印象を与えないように、これを指導する必要はないかと思うのでありますが、井本刑事局長いかがお考えでございますか。
  37. 井本臺吉

    井本政府委員 現在内部で何か糊塗するような印象を与えているというような点は、私は考えていないのでございますが、さような疑いが多少でもございますれば、これは積極的に検察庁として捜査に乗り出すということも当然考えられるのでございます。
  38. 受田新吉

    受田委員 上官、部下の関係で、親心も手伝いまして、情において忍びない取調べも行われるおそれがあると思うのです。これは取り調べられたという対象にもなっておる人でありますが、隊員の中には、こういうことも言いたいが昇進に影響する、あるいは上官に気がねだというような心が手伝っていることを率直に述べている隊員がおるのです。私は部隊内部における警務官が、ある程度の情において忍びない観点から、その取調べに公平を欠くおそれが多分にあると思うのでありまして、こういう問題は公平な立場で取り調べ得る警察官の介入を必要とする事件ではないかと思うのですが、局長いかがお考えでございましょうか。
  39. 井本臺吉

    井本政府委員 お話のような上官に対する気がねというようなこともないとは言えませんが、さような点は十分私どもも注意して、事案の真相を確かめまして、さような心配があって事実の真相がつかめないというようなことがございますれば、また別途の方法考えることも十分できることでございますので、さような点は、私どもといたしましても、いろいろな観点から検討いたしまして、遺憾のないようにいたしたいと思っております。
  40. 受田新吉

    受田委員 それではいま一つ、これに関連する質問をもって終りたいと思うのでありますが、警務官という防衛庁内部の職種にある人は、特別の警察事務に関係した法規的な研究等もやっておると私は思います。思いますけれども、その職員は都内の他の職員との間における同じ防衛庁内部の職員という観点から、先ほど私が申し上げたような点において、いささか情に負けるおそれもあると思うし、あるいは防衛庁幹部の命令で警務に当っていくことにもなると思いますので、防衛庁の首脳部の見解が強く響いて、取調べにおいて防衛庁の方針に合致するような形についにゆがめられるようなおそれなきにしもあらずと思うのでありますけれども、この点、警務官の特殊の任務を私は心得ておりますけれども、その警務官の任免権が防衛庁の首脳部にあるという段階においては、どうしてもそうしたゆがんだ結論に導かれるおそれありと断定することに反駁ができますか、どうですか。
  41. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 警務官の任命は、もとより長官またはその長官の委任を受けた者がやることになっておりますけれども、しかし警務官はわれわれの組織、編成から申しますと、陸上について申し上げますと、独立の警務隊がそれぞれの管区方面へ中隊を出しておる。その中隊がまたおもな駐屯地に分隊を出しておるような格好になっておりまして、ある程度管区総監方面総監の指揮を受けますけれども職務執行におきましては、中央につながるような格好になっております。防衛庁の最高の首脳部につきまして御信頼がなければ別でありますけれども、そうでなければ私は心配ないと思います。
  42. 受田新吉

    受田委員 警務官といえども人でありまして、防衛庁の首脳部につながりがある立場からは昇進も考えたい、手柄も立てたいと思いましょうけれども、そこには防衛庁の首脳部の方針にのっとった取調べを受けることによって昇進の道も開ける。そうした多少その職務の執行に当ってゆがめられる線が出ると私は思うのであります。ここに防衛庁の長官につながる同じ防衛庁職員である、自衛隊の職員であるという点に、一つの大きな問題があると思う。そこを法務当局として、そうした情に押される、同一指揮命令系統に属する関係からの取調べ手心が加えられるというおそれがあることを勘案されまして法務省がそういう危険を絶対に起させないような措置を講ずる必要があると思う。それでお尋ねしたいのです。
  43. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 一言私から私の気持を申し上げておいた方が事態がはっきりするだろうと存じます。私はこれまでも再三この事件は天下の視聴を集めた、非常に悲しむべき事項であるから、最も厳正な立場で臨まなければならぬ。それには警務隊長もみずから向うに出かけていくようにというので、本部からも六人も派遣いたしました。私の気持は十分わかっていてくれるはずでございます。私はもしこの事件において世間の納得しないような取調べ方法をとるとか、その処断の方法をとるということになれば、それが原因になりまして、自衛隊に対する国民の信頼感というものはますます薄らぐわけでありますから、考え方によりましては、普通の検察官の場合以上に、最も厳粛な態度で臨ませたいということを考えておるのでありまして、この点は十分警務隊においても了解しておるはずごございます。
  44. 受田新吉

    受田委員 大臣の御答弁でさらにお尋ねをしなければならないのですが、大臣はこの事件処理に当っては、できるだけ防衛庁内部で意見をまとめて、われわれ政治的な責任者の発言によって国会で御納得をいただけるように願いたい。従って証人の喚問などはしなくてもいいように、われわれの方で調べて、そういうことのないようにわれわれはしたいということを、先手を打って御答弁になっておる。私はそこにまた一つ危険があると思うのです。すなわち自衛隊部内で何とか意見をまとめて、これを国会などに持ち出して証人の声を聞くというようなことにならぬようにしたい。そのお気持はわかるのでございますが、取調べに当っても、そうしたお気持が自然に現われるおそれはないかという心配を私はしておる。むしろこの際率直にこの隊員の声を、聞くべきところにおいては十分に聞かせ、そうしてまた指揮者の立場方々の声も聞かせ、警務官の声も聞かしていただくというようなところで、自由に開放させた気持自衛隊の率直なあり方をお示しいただく方が賢明ではないかと思うのでございますが、長官いかがお考えでございますか。
  45. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私どもがこうした問題について責任を持っておりますし、かつまたこういう場所に出て皆さんにお話申し上げますのには、私どもが取りまとめて申し上げた方が――何も内容を変えるのではなしに、取りまとめて申し上げた方が、皆さんのためにも御便宜であろうし、時間もそれによって節約もできますので、私どもが向うに調べに行った者のことをよく聞きまして、そうしてそれをよくそしゃくして、皆さんの理解の最もよくいくようにお話ししようという気持でございまして、取りまとめて、それを歪曲してわれわれに都合のいいようなことをするという意味ではございません。昨晩も私自身も直接隊長からもいろいろ聞いておりますので、それをまとめまして、人事局長をして報告いたさせた次第でございます。
  46. 受田新吉

    受田委員 私はこの事件は国民が非常に注目したというところに取扱いを特に公平にお願いしたい理由があるのです。特に自衛隊内部は、油断すると秘密主義に陥り、秘密保護法等も近く提出して御審議を得たい気持があるということを、昨年も船田さんが仰せられた。あなたもその気持は持っておるが、本国会ははっきりしないというようなお気持があるようでありまして、国民から遊離した自衛隊となることは、われわれははなはだ残念なのです。私は自衛隊に反対する立場には立っておりましても、現にある自衛隊が国民から信頼を失って、日本に現実にある特定の機関が総すかんを食っておるということは、はなはだ遺憾であると思いますので、あたたかい親心を持って私は現にある自衛隊に誤まりがないようにという気持もあるわけです。そういうことを十分お含みを願いまして、いま一つお答え願いたいのですが、自衛隊法の施行規則の服務規律の五十七条にある、隊員の遵守事項の中の、部下の隊員を虐待してはならないというこの規定に今回の事件は違反するのではないかと思うのでありまするが、いかがでございましょうか。
  47. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 隊員の服務遵守事項につきましては私どもも常々非常に注意をして参っております。皆の中隊でも部下を虐待していいということはなかったのであります。ありまするけれども、事実問題として直空地帯でありまするとか、一般の道徳の適用されない地域であるというようなことが事実として言われておる。これはこの事項通り、ほんとうにわれわれの部隊の内部が明朗でなければならないのだ、こう思っておりましてその点は特に厳重に注意いたしております。今までのところそれほどの事件もないように思っておりましてこのままでいきまするならば、私は明朗な自衛隊ができ上ると実は喜んでおったのでございます。今回の事件につきましても、元気をつける意味でなぐったとか、あるいは危ないところを危ないよといってぱっと突き飛ばしたというようなことはあるようでありまするけれども、しかしそれが直ちに部下の虐待になるかどうかというようなことは、客観的な状況をよく調査してみませんと一がいに私は断定できないと思います。ただ残念に思いますることは、この前の委員会でも申し上げましたが、こういうふうなことが暴行として一部の隊員に受け取られるような事実は、これは私ははなはだ遺憾だと思います、私事を申し上げて恐縮でありまするが、私学校で運動部などにおりましたときはもっと激しい激励を受けたことを覚えておりまして、先輩から非常に強くばり雑言を浴びせられ、またなぐられたこともありましたが、決して私どもはこれを暴行だとか虐待だというふうに受け取ったことはございません。そういうことはお互いの信頼感が伴わなければならないのでありまして、こういうことが隊といたしましても非常に重要なことだと思います。こういう点につきましてはさらに強く注意をいたしまして、隊の運営の万全を期したいと思っております。
  48. 受田新吉

    受田委員 私は虐待ということに当ることは責任者の考え方でなくして、結果的にそういうものが生まれたと断定せざるを得ない。それはなぜかというておるのだ、ということになるならばその客観的判断というものはだれがするかということになるわけです。従って虐待ということは、疲労して死亡者も出るほどの猛訓練をやった行軍計画そのものが非常に厳重過ぎたというようなことが、結果的には虐待になったのではありませんか、いかがでしょうか。
  49. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 計画そのものが虐待を生んだかどうかということもこれはなかなかむずかしい問題でございます。ただ一つ一つの事実をつかまえてみますると、今のように突き飛ばしたということがありましても、その突き飛ばしたのがどういう条件のもとで突き飛ばしたのか。向うから車が来るから危ないからといってぱっと突き飛ばした、これは虐待ということにはならないと思います。従って先ほど申し上げましたような事件につきましても、そういうふうな客観的条件が背景となるような事情をよくよく調査してみたいと思っております。
  50. 受田新吉

    受田委員 隊員の中に二名の死亡者が出たということは、隊員がもうすでに自分の体力の限界を越えて行動したことになるわけなんです。それを青竹で激励をし、また腕を持って大いに叱咤したというような弁解では解決のできない問題だと思うのですが、自衛隊員が死をもってするまでの行軍をあえてしたというときに、その隊員の体力においても精神力においてももう限界を逸脱しているという判断は一体だれがするのか。本人から申し立てるように指導するのか、あるいは隊長責任を持って判断するのか、そういうところの限界というようなこともお伺いして、この虐待論を解決願いたいと思うのです。
  51. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 大体今まで申し上げましたようなところで御了解を願いたいと思うのでありますが、二人の者が死んだということは、これはもう非常に明白な事実でございまして、これを死に至らしめる間におきまして、どういうふうな経過をたどって死亡に至ったかということは、これはこの前の委員会のときに詳細に申し上げました。その間において今言ったような事実がありましても、それがほんとうにその死につながるものかどうかという点、その直接の原因をなしているかどうかという点は、これは非常にむずかしい事実の認定の問題がございますので、ここでその点につきまして虐待があったかどうかということは申し上げかねるのでございます。
  52. 受田新吉

    受田委員 私この隊員の死の問題については、あとに飛鳥田委員からも現地の声を伝えてくれると思いますのでこれでおきますが、この前の委員会で私がお尋ね申し上げた北海道の自衛隊の死の事件を一つきょうはお答えを願うようにお願いをしてあります。私この際北海道の自衛隊事件の要点を申し上げまするならば、これは幾つも一部に報道されてはおるのでありますけれども、昨年の八月十一日に自衛隊北部方面隊の真駒内の部隊で、自己体力の認識を目標とした体力訓練と称されたマラソン競争で、二百名の動員隊員のうちで一名がついにゴール間もなく死亡するという事件が起った。これは当時死因が日射病と診断をされていたようでございまするが、しかし解剖をいたしました結果は心臓が衰えておったことがわかったと伝えられております。これは自衛隊ではこういう事件がどういうふうに解釈されておるか、責任者はどういうふうに処断されておるのか、あるいはここにはっきり解剖の結果と書いてございますが、解剖ということをこうした事件のときには必ずやることになっておるのかどうか、これをお答え願いたいと思うのであります。
  53. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 私の方の調査でわかっておりまするところを申し上げたいと思います。昭和三十一年八月十一日北海道の真駒内駐屯地の陸上自衛隊第一陸曹教育隊第二教育中隊が体育訓練を実施したのでございます。その際陸士長松田忍君が豊平町真駒内陸上自衛隊第一陸曹教育隊本部付近の道路上において日射病のため死亡いたしました。この状況は次の通りであります。  すなわち松田士長所属の中隊は週間訓練予定表に基きまして、約一万メートルの体験かけ足を実施いたしました。当日午後一時三十五分松田士長は準備連動を実施いたしました後、陸曹候補生二百九十八名とともに真駒内駐屯地内訓練所を出発いたしました。途中予定経路に沿って疾走しておりましたが、七千メートル付近からは五人の落後者が出ております。松田士長は終点まで約三百メートルの真駒内陸上自衛隊第一陸曹教育隊本部付近に差しかかりましたとき突然倒れましたので、直ちに抱き起し、木陰に横臥させて応急手当をするとともに、部隊医務室において医官の手当を行いましたが、経過が悪化いたしましたので豊平町所在の陸上自衛隊札幌地区病院に収容いたしましたが、同日午後二時三十分、日射病による急性心臓麻痺により死亡したのがこの状況でございます。この体験かけ足は、陸曹候補生に自分の体力を認識させることを目的としてやったものでございまして、広島県の事件とは違いまして、競技として実施したものではございません、松田君の死亡につきましては、北海道地区病院におきまして解剖の結果は日射病による急性心臓衰弱であるということであったのでございます。この事件につきましては当時北海道の方面総監部の方におきまして、責任者につきまして厳重に調査をしたようでございましたが、責任者の処分なしという判定に到達しております。
  54. 受田新吉

    受田委員 今の事犯でありまするが、これは一人死亡すると同時に四人卒倒したという情報も伝えられております。同時にこの松田士長をいかに優遇されたか。今回と同じような優遇措置をとられておるのか、あるいはまた解剖をされたということでございまするが、こうして特に不審を抱かれるような死亡をされた場合には、自衛隊内部では常に解剖をしておられるのであるか、また合わせて広島事件もこれに関連することでありますのでお答え願いたいと思います。
  55. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいま五名落後者が出たと申しましたが、これは松田士長を含んでおりまするから、その他の落後者は四名でございます。解剖の件につきましては、死因を明瞭にする必要のあるものにつきましては解剖をいたしております。実は今回の広島の原村の事件につきましても、部隊側といたしましては解剖を希望したのでございまするが、遺族の方でこれを拒否せられまして、解剖しなかったのでございます。またこの松田上長は死亡によりまして、この前原村の件につきまして申し上げましたと同様、公務中のゆえをもちまして三等陸曹に昇任いたしております。
  56. 受田新吉

    受田委員 これで質問を終ります。
  57. 相川勝六

  58. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の受田君の話の続きの原村の事件ですが、もし解剖をして死因が他にあるかもしれないような実情がありますときには、かりに遺族の反対があったとしても、遺族に十分納得していただいた上で、この点について十分究明すべきではなかったか。たとえばけられたという話がありますが、あなたのさっきのお話でありますと、抱き起すときに足が触ったかもしれない、こういうお話でありますが、もし解剖をして解剖所見が明確であれば、当然そのけられた部分には腫脹がありあるいは内出血があるわけで明確になるわけであります。そういう事実を明確にしておくだけの義務が隊にあったのではないか、こう私どもは思うのでありますが、その点はどうでしょう。
  59. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今、私どもがいわゆる暴行かどうかというふうな点を調査しておりまする段階になって考えますると、私は解剖した方がよかったと思います。しかしながら当時の状況におきましては、医官が診断いたします際には、そういうふうな状況については医官は詳細知らなかったわけです。変死ということにも認識をしなかったのだろうと思うのでございまして、遺族に対して一応申し入ればいたしましたけれども、遺族の方でこれは困る、こうおっしゃったので解剖しなかった、私の方で故意に解剖をしなかったのではないということについては、これは御了解願いたいと思います。
  60. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 隊の医官たちがそういう点について認識が足りなかった、こういうお話ですが、しかしこれは明らかに変死です。通常の死亡ではないはずです。明らかに変死である以上は、医師の義務として、その点を明確にしておくだけの義務が医師としてはあるはずです。これを気がつかなかったという御説明でありますが、それでは国民は納得しない。もし気がつかなかったという程度であるならば、何のため、にそのお二方の遺骸を西条町で火葬せずして、広島の紫雲館という火葬場へ持ってきてひそかに焼いたのか。しかもこれは話でありますが、持ってこられた引率将校は、急いで焼いてくれ、二時間以内に焼いてくれ、こういう注文を出されたそうであります。何でそんなに急ぐのだと聞き返しますと、いや、その理由は聞いてくれるな、こういう答弁であったと言われておるのであります。察するところ、六日に死亡をせられて七日に新聞その他によって問題が拡大いたして参りましたために、八日にあわてて火葬に付した、こういうことではないかと私たちは想像するのであります。もし気がつかないで解剖しなかったという、それほど単純な事件であるならば、こんなに急いで別のところへ持って行って、しかも急いで焼却してしまう必要がどこにあったか、こう私たちは疑わざるを得ないのであります。この点について御返答をいただきたいと思います。
  61. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 遺体は二月六日西条町の慶徳寺に安置をしたのでありますが、岸上士長の方の遺族が二月七日午前七時過ぎ到着されまして、故人と対面をされ、遺骨の引き取りを急がれましたので八日に火葬することといたしまして、遺族が火葬の許可申請をされております。千頭三曹の方の遺族の方は七日の午後六時四十五分に西条町に到着をされたのでありますが、岸上士長の遺族の方で遺骨の引き取りを急がれましたので、これも同時に火葬にすることにしたのでございます。火葬場を広島の方に移した件につきましては、手元に資料がございませんので、その間の事情は後ほど調べましてお答えいたしたいと思います。
  62. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いずれにせよ、この問題について解剖をしなかったという事実は非常に手落ちがあると思います。こうした点で、今後こういうあやまちのないように十分御注意をいただきたいと思います。これは井本刑事局長もおいでになりますので、お聞きをいただければ明確ですが、どんな事件でも、いささかの疑いがあります場合には、通常解剖に付するのが当然であります。これが常識であります。後々に死因に争いの出てこないように処置しておくということは、非常に重要なことだと思います。  次に誘導兵器の問題について石橋さんがお伺いをいたしましたことで大略はわかりましたが、部分的な点でわかりかねる点がありますので、一、三補足的に御質問させていただきます。誘導兵器をアメリカから供与せられて、これを研究するのだ、こういうお話でありますが、その研究の体制は一体でき上っておるのかどうか、この点についてまず伺いたいと思います。
  63. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 誘導兵器の研究を始めましたのは昭和二十九年でありまして、それ以来できるだけその研究の方も充実さすことにいたしまして、今年も新しく四人増員いたしまして、四十人程度の陣容を持つことにいたしております。また設備等につきましても、技術研究所の方でだんだん拡充いたしまして、この誘導弾の研究に力を入れておるのであります。特に今年の秋ごろ着くことになっておりますスイスのエリコン社のエリコン誘導弾についても、すでに手配をいたしておるのであります。御参考までに申し上げまするならば、誘導兵器関係におきまして昭和二十九年には五百十万円ばかりの予算を取っておったのでありますが、三十年にはこれが七百五万円という程度に進んでおります。さらに三十一年度には、これは先ほど申しましたエリコン誘導弾の購入費、これが半額支払いで一億七千万円くらいになると思いますが、これを含めまして三億二千四百十九万円とい、ことになっております。三十二年度にはさらに残りの半額の購入費を払わなければなりませんが、これも大体一億七千万円程度の額に上ります。それを入れまして三億七千五百八十五万円、これが予算面から申します受け入れ体制でございます。今後果していつ、どれだけサンプルを取り得るか知りませんが、参りましてもすぐ大きな施設を要するというのではなく、それを解体していろいろ研究するというようなことでありますから、そうしたのが今後参りましても、一応の研究の体制は整っておるというように申して差しつかえないかと存じます。
  64. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 誘導弾を受け入れても、これについての研究の体制は整っている、今こうおっしゃったのでありますが、防衛庁の中には誘導飛翔体研究委員会というのがあるやに伺っております。しかもこれは増原さんが委員長だと伺っておるのでありますが、これはその受け入れのための研究委員会でしょうか。
  65. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 これは前のことで、詳しいことはあるいは増原君から答えてもらった方がいいかもしれませんけれども、私の承知しております限りでは、昭和二十九年に、最近における傾向から見て、新式の兵器もだんだん出てくるので、防衛体制を整える上には誘導弾の研究が必要であるという考え方から委員会を作りまして、その委員長と申しますか、まとめ役は次長がいたしてきた、こういう状況のようでございます。
  66. 増原恵吉

    ○増原政府委員 補足をいたします。誘導飛翔体研究委員会を作りましたのは、当時の状態としては、わが方でサンプルをどこかから買うなりもらうなりするということももちろん頭にありましたが、日本で研究して、しかるべき誘導弾を作ろうということで始めたわけでございます。今長官から申されましたように、各部門の技術者その他使用者がいろいろ入りますので、全体のまとめ役として次長が委員長になっておるわけであります。この誘導弾を最初に買いますのは、御説明がありましたように、エリコンのものを買うことにいたしまして、三十一年度にその予算を取りました。そうして三十年度にもアメリカに対しては、若干の誘導弾を研究開発用にもらいたいという要望を、他のいろいろなものを要望します中に入れて要望をしたのであります。これに対しては音さたなかったわけであります。三十一年度にさらにほかのいろいろな要望事項と一緒に、先般御説明をしましたような誘導弾を研究開発用に要望をいたした、こういう経過に相なっております。
  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと今後研究をいたして参ります中心は、この誘導飛翔体研究委員会、あるいはGM委員会と申しますか、これが中心をなしてやっていくということでありますか。
  68. 増原恵吉

    ○増原政府委員 基本的な計画、方向というふうなものはこの誘導飛翔体研究委員会にかけてきめまして、具体的な研究をいたしますのは、技術研究所の第八部を中心にやるわけでございます。
  69. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 伝えるところによりますと、防衛庁から公表せられた計画によりますと、無線誘導弾について五カ年計画を作られておる、こういうお話でありますが、この五カ年計画に基いていつこの誘導弾を正式化する予定であるのか、これを伺いたい。
  70. 小山雄二

    ○小山政府委員 先ほど次長が申されましたように、誘導飛翔体研究委員会、これは誘導弾の研究全般の計画を立て、あるいはその実施を促進するという建前のものでございまして、これを中心といたしまして長期的な計画をいろいろ論議しております。ただ、ただいまのところその委員会として、並びに防衛庁といたしましてまだはっきりした長期計画というものは持っておりません。ただ大ざっぱなところは先般も申しあげましたが、防衛力整備計画の終ります昭和三十五年度までに空対空の誘導弾といたしましては、米国のスパロー級のものをまず試作してみたい。それから地対空の誘導弾といたしましては、ナイキ級のものを試作してみたいというくらいの大ざっぱな目標をもちまして、毎年予算その他の積算をいたしまして要求し、査定を受け、これを実行して参りたい、こういう段階でございます。
  71. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと誘導弾の長期研究計画というものは、先ごろあなたの方でおきめになりました装備改善に関する技術研究五カ年計画の一環をなすものかどうか、これを伺いたいと思います。
  72. 小山雄二

    ○小山政府委員 装備研究五カ年計画というものも実はまだきまったものはないのでございます。研究開発というものは、御存じの通り、非常にロング・ランで考えてやらなければいかぬことでありますので、私どもといたしましては長期の研究計画――これはある意味からいいますと、今防衛庁で試案として持っております防衛力整備計画よりももっともっと長い長期計画を持ちたいわけであります。従ってこの実施に当ります技術研究所を中心といたしまして、いろいろな検討をいたしておりますが、防衛庁としてまとまったものは、これもないのであります。ただこういうものを考えます際には、もちろん誘導弾関係のものもその一環として入って参ります。誘導弾関係だけについて言いますと、これを特に重視いたしまして、特別の研究、委員会を作っておりますので、全体の研究の長期計画よりも誘導弾の研究計画の方が多少見当がはっきりして参っておる、こういう関係に相なるわけであります。
  73. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではもとへ戻りますが、このGM委員会で討論をせられ、そうしていろいろの構想をお持ちだと思いますが、現在までに到達をいたしました一応の結論委員長から御説明いただきたいと思います。
  74. 増原恵吉

    ○増原政府委員 誘導弾についての結論ということでございましたが、これは技術的な問題で適当に説明をいたしますことはなかなか困難でありますが、誘導飛翔体としては飛翔体全体の力学的な研究の問題、それから推進薬の問題――大体火薬を使いますが、推進薬のいろいろの研究の問題、それからかじをとります方面の問題、それから誘導をさせますVTヒューズといいますか、そういう誘導関係の問題、そのほかございますようですが、そういうものについてどういうものを大体どういう構想で考えて、どういうところに試作を頼むかというふうなことを具体的にはきめまして、そうして適当な関係の方面に試作を依頼する、研究を依頼するものもございます。そういうふうなことを委員会として基本的な方向をきめまして、大体目標は三十五年度に一応試作の段階に、空対空あるいは地対空のものができるという目標を掲げて進んでおる、こういうことでございます。
  75. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 御質問を申し上げますと、大体いまだに結論が出ていない、そういう長期計画を持ちたい、だがしかし現在は持つに至っていない、こういう御説明がいつでも出てくるのでありますが、しかし現実に装備をあなた方がなすっていらっしゃる上に当って、この問題はそういつまでも結論を出さずにほうっておくことのできる問題ではない。現に防衛六カ年計画の策定についても、昨秋重光さんがアメリカに渡られて、たしか第十何次かの修正案をアメリカに提案せられているはずであります。しかもそれについてまたその後幾つかの疑問が部内で起っているという話も聞いております。その部内における幾つかの意見の対立を仄聞いたしますと、今まで六カ年計画の中で、防衛の中心点を高速度戦闘機に置く、そして今すでに供与せられておるF86DをF86Jにかえていく、こういうような考え方に対して、高速戦闘機一辺倒の計画については疑問がある、費用がかかるばかりでなく効率が非常に弱い。従ってむしろ中心をGMに置くべきではないか、無線誘導弾にその中心を置いていくべきだという意見が台頭しているという話を伺うのであります。高速度戦闘機に重点を置くか、GMに重点を置くかということは、おそらく防衛体制の根本的な問題であろうと思います。こういう根本的な問題を一年も二年もなおざりにして置くということは、非常に重大な過失だと私は言ってもいいと思います。こういう問題をもし右するか左するかを決定する場合には、当然技術研究の長期計画、あるいは誘導飛しょう体研究委員会、こういうものにおいて早急に結論を出さるべき責任があると思う。ところが受け入れだけはアメリカから受け入れて、これから先はどうなるかわかりませんというのでは、どこに一体装備の重点を置いていかれるのか、はなはだ問題があいまいにならざるを得ないのであります。少くとも非常な多額のお金をこの自衛隊に現在つぎ込んでいる段階において、中心の定まらない、右に行くのか左に行くのかわからないような、そういう態度で国民が一体納得するとお考えになっているのかどうか、こういうことを中心に御説明をいただきたいと思います。
  76. 増原恵吉

    ○増原政府委員 ただいまの御質問は、主として防空についての方針であると承わりましたが、現在防空についての方針といたしまして、部内にもとより論議をいたします際に異論、意見が出ることは当然でございますが、防衛庁としてその方向が定まっていないということはございません。防空につきましては、現在いろいろ世界のそういう方面の状況考え合せ、また日本の憲法及びその憲法に基く自衛、防衛の、政府として持っております基本方針に基きまして、防空についてはやはり戦闘機、誘導弾と両建でいくということが方針でございまして、戦闘機はもうやめてしまって誘導弾だけでいいという方向の結論は持っておりません。もとよりこの問題は兵器の進歩発達に伴いまして、常に研究を続けていくべきものでありまして、もちろん現在持っておりまする考え方が不変のものではない性質のものでございます。戦闘機につきましては、現在現実に持っておりまするのはF86Fでありまするが、これは全天候のF86Dをさらにつけ加えて持つというのが方針でございます。そうしてこのDはまだ供与を受けておりませんが、これは国産ということがなかなかむずかしい見通しでありまして、でき上ったものを供与を受けるという形で米国側には要請をいたしておるのであります。この戦闘機は、さらに次の段階の、いわゆるF100クラスの段階のものに進むべきではないかということを研究いたしまして、その点についての研究と論議を今いたしておるところでございます。大体F86の次の段階としては、F100の段階を戦闘機としてはやはり装備すべきであろうということは結論として申し上げられるのでありまするが、F100のどのものを持つか、100を持つか、102を持つか、104を持つかということについて今せっかく資料を集めて検討をいたしておる段階であります。そうしてこの戦闘機と並行して、誘導弾を持ちまして、これによって防空の全きを期する、そういう考え方を持っておるわけでございます。
  77. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、誘導弾及び高速度飛行機を両建で持っていくということになりますならば、まず技術研究の目途、そのプログラムというものは重要になって参ります。一体それではいつあなた方は技術研究のプログラムを確定できるのか。新聞等によりますと、技術研究五カ年計画というような呼称がしばしば出て参ります。しかもこれを確定して同庁ではおそくも八月末までには庁議に諮った上、決定をするというようなことすら新聞報道せられておる状態であります。一体いつ技術研究のプログラムができ上るのか、こういう点を伺いたいと思います。
  78. 増原恵吉

    ○増原政府委員 技術研究の計画としては、なるべく早く、できるだけ確定したものを持ちたいということは、関係者一同で心がけをし勉強をいたしております。ただこの誘導弾というようなことをとって考えますと、これに要します経費の問題と技術的な問題ともにらみ合いまして、技術的な問題の中には、研究員としての人の問題も、施設の問題も、もちろん入るわけであります。そういうものをにらみ合せまして、なるべく早くほぼ確定と申しますか、われわれとしては一応このものというものを作りたい意向で勉強をいたしております。なるべく早い機会に作りたいと思いまするが、ただいままだいつということを申し上げる段階に至っておりません。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 当然技術研究のプログラムをきめていくといたしますならば、今の御説のように、費用の問題、資金の問題、こういう問題が出てこざるを得ないと私たちも想像します。ところが現在の段階で、日本の独自の予算だけでこの問題をあなた方が解決していくだろうと想像することも不可能であります。当然誘導弾その他について、MWDPの適用を、あなた方はアメリカに申請せらるるだろう、こう私たち考えるのでありますが、MWDPについて、アメリカ側と交渉せられたことがあるのかないのか、あるとすれば、いつごろ、どういう交渉をして、どういう話し合いになっておるのか、その経過を御説明いただきたいと思います。
  80. 増原恵吉

    ○増原政府委員 相互武器開発援助計画につきまして、昨年秋、米国側から相互武器開発援助計画に基いて、日本側と話し合いをする用意があるという申し入れを受けまして、わが方としても相互武器開発援助計画を適当に実施することができれば好都合であるということで、これについて話し合いをするということについて、閣僚懇談会の了解を得まして、話し合いを始めておる段階でございます。この話し合いは、一般的な取りきめと申しまするか、相互武器開発援助計画について、日本と米国とが合意をするという一般的なものと、どういう計画、どういうプロジェクトを持っておるか、何かいいアイデアがありませんと具体的には進行できないので、どういう具体的なアイデアがあるかということについて、技術研究所を中心に研究をいたしている、今そういう段階でございます。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 大体第一回目の、今お話のあったような、アメリカ側からの提案があったのは三十年六月だというふうに私たちは伺っております。これはたしか杉原長官時代だと思います。その後三十一年の七月十日に十二アイテムについて、あなた方がアメリカに申請をせられた。そして三十二年の二月に三種目について米軍からの同意があった、こういうふうに、日順を追っていきますとたどれるわけでありますが、一体その間にアメリカ側の申し出に関して変更があったのかどうか。私たちの知り得た情報によりますと、資金の供与は最初の申し出のときには行わないような話であった。ところがその後の申し出に関しては、資金の供与まで行われるというような形に変ってきておるように伺っておりますが、こういう点なんかどうなんでしょうか。
  82. 増原恵吉

    ○増原政府委員 新聞にはときどきこれに関する記事が載っておりまするが、これはいろんな方面から話を聞かれた新聞社の方で、取りまとめをされたというふうなものが多いのであります。私どもの方から発表したというふうなものは、割合に少いのであります。資金につきましては、――資金ということが適当でありまするか、大体の考え方は研究開発に要する経費をおおよそ半々ぐらいまでは米国で負担をして援助をすることが可能な見込みであるという言い方を、向うの方としては口頭をもっていたしております。十億円要するものであれば、日本側で大体半額の五億円は持ってもらわなければいけない、あと半額程度は援助をし得ると考えるという程度であります。まだ具体的にどのものについてどれだけという話し合いには至っておりません。
  83. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは非常に重要な問題でありまして、もしMWDPの適用を受けるとするならば、供与せられた兵器、その兵器の研究によって新しくできた兵器、こういうものについて日米が共同使用する、こういうような形になると思います。またそれだけの資金を供与せられることによって、でき上った新兵器を使うのでありますから、日本の自衛隊に対してアメリカの及ぼしてくる干渉、影響、こういうものも無視すべからざるものだと思います。従ってこのMWDPの適用を受けるということについては、当然国会にはかった上でなさるべきものだ、こう私たち考えるのでありますが、一体国会にこの問題を諮った上でおきめになるおつもりかどうか、この点を伺いたいと思います。
  84. 増原恵吉

    ○増原政府委員 今申されましたところは、少しニュアンスの違いが私どもは感ぜられまするが、MWDPで開発をしまして、新しい有効な兵器が日本でできましたときには、それを米国側にも使わせるということは、一応義務として負わなければならぬことになる見込みであります。しかしそれを日本で使うものについて、特別の関与、干渉をするということはない見込みであります。しかしながらそうした重要な問題であり、基本的な問題については、政府がきめましたあと、国会の承認を得てやるという方向で考え方を進めております。
  85. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 国会に提出してその承認を得て行うお考えだというお話は、よくわかりました。それならば、なぜ今まで幾つかの内交渉を行い、しかも今度は、当然無線誘導弾の供与を受ける以上は、そこにいかざるを得ないようなステップを無断で踏んでいかれるのですか。既成事実を作っていって、最後のどたんばにいって提案をせられるといったところで、もう身動きのつかない問題であります。そういう点について、三十年六月から本年に至るまでいろいろ交渉をせられ、しかも十二アイテムについて申請をせられるということは、もうすでに既成事実を作っていくということであります。そのうち三つが許されたということでありますが、十二項目を申請するということで、現実に結んだのと同様な効果を発生しているのじゃないでしょうか。もしお説のように国会で諮った上でその点を定めるというならば、事前になぜそういうことをなさらないか。
  86. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 いろいろ向うへ申請いたしますのは、皆様の御承認を得て作りました相互防衛援助協定に基く供与品を要求するわけでありますから、決してその基本的な取りきめ――国会で承認せられました基本的協定がないわけではございません。またこれは提供せられるということになりましても、今御指摘のMWDPの協定を作るということになればともかく、ただかりにもらうということになれば、その点においても法律的には何も差しつかえないものと思います。ただしかし今後の条約を作る場合に、前もって交渉の段階について一々報告しなければならないかどうかということにつきましては、これは相手もあることでありますし、果してこっち側としても、ほんとうにくれる気持になるかならないかもわからない、いろいろその間には紆余曲折もありましょうし、また国際関係につきましては、一方が無断でいろいろなことを発表するということは、普通の国際慣例にも反するわけでありまして、まだそういう段階に至っておらないというように御承知を願いたいと存じます。先ほどから増原次長も申し述べておりますように、口頭でこれは可能かもしれないという程度のことを言ってきているわけでありまして、これがいよいよ具体的に条文化するという可能性が出て参りますれば、あるいは必要に応じまして――従ってMSAの協定をいたします際には、でき上る前にも一応御報告は申し上げたのであります。しかし御承認を受けますのは、あくまでも両国間の相互の話し合いのできたはっきりした協定文について承認を受けるということにならなければ、はっきりしたその基礎になる書きものがないわけでございますから、その点は決して隠してどうするということではなくして、普通の国際慣行によって取り計らいをしていく。しかも申し入れをしたということは、そこの根拠になる条約もあり、また皆様の御承認も受けておるところのものであるという次第でございます。
  87. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 根拠になる条約があるというお話しでありますが、十二項目については、MWDPの適用を受けたいと言ってアメリカに申し入れをせられたのではないのですか。この点についてはっきりしていただきたいと思います。
  88. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 これを研究開発をするという面に使うということになれば、結局そういう協定も必要になるかもしれませんが、日本といたしまして、こういう協定をしようということを申し入れたのではなくして、ディフェンシヴ・リストの中にこういうアイテムも含ませたというのが実情でございます。
  89. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうもはっきりしないのですが、MWDPの適用を受けたいとして申請なさったのじゃないのですね。その点はっきりしていただきたい。
  90. 増原恵吉

    ○増原政府委員 ちょっとその間十分まだ長官に説明をしていない事項がありましたので私から補足させていただきます。今新聞紙に出ておるところの、お述べになりました若干のものを向うへ申し出たというのは、これは相互武器開発援助計画を話しをしてきめるという段階において、わが方にこれを適用すべき何らの着想がなければこれは問題にならないので、われわれとしても、そういう話し合いを進める段階で、そういう一般協定を結べば具体的にそういうものは向うとしてもいい着想であるから援助をしてもいいという、援助の可能性があるというふうなものがなければ話を進める価値があるまいということで、われわれとしてこういう構想を、一応もし協定を結ぶならば具体的な問題として取り上げればどうかという考え方を持っておるが、どう思うかという意味で向うに示唆したわけであります。それが九項目ばかりありまするが、それについてこれもはっきり承認をしたとか何とかということでありませんが、そのうち二、三のものについては向うとしても、何といいますか、フェーバラブルに考え得るというふうなことは申してきておるのでございます。まだ話し合いの初めの段階であるというふうに御了承願いたいと思います。
  91. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、そのうち三構想がアメリカによって選ばれ、これに対して資金援助をする旨アメリカから政府に通告があったというのは、これはあやまちですね。
  92. 増原恵吉

    ○増原政府委員 それは誤まりでございます。
  93. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その点はよくわかりましたが、一体一つの条約なり協定なりあるいは契約なりを結びます場合に、その最も内容をなすところの品物を提示して申し出をする、あるいはこれに対してあなたのお話のように、フェーバラブルに考えるという話があったというようなやりとりをすれば、実際は、これは既成事実じゃないでしょうか。私がどこかへタバコを買いに行って、お金はあとで、いつ払うかということは別にして、ともかく品物だけもらいましょう、それ下さい、こういう申し出をすれば、現実にはすでにその協定を結んでしまう、こういうことを意味するのであって、あらためて国会に出してから国会の承認を得るなどというのは形式だけの問題になってしまうのじゃないでしょうか、こう私は思うのであります。勝手にどんどん現在の防衛庁が具体的な事実を進めていって、最後のどたん場へいってしょうがない、こういうことで押しつけてくるのが今までのやり方であった、こう私は思うのであります。ここにもそういう非常に大きな欠陥が出て来てきている。そういう意味で今後MWDPの取り結び、こういう問題については、もっとどしどし国会へ報告をして現実の事態を説明していただかなければ、国会の承認を得るという先ほどのきれいなお言葉を現実行為が裏切っていくのじゃないか、こう私は考えるのであります。この点についてはっきりお約束をしていただけますか。
  94. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 法律家の飛鳥田さんに私がこういうことを申し上げるのは、はなはだ失礼かと思いまするが、憲法の七十三条にも、内閣は次の事務を行うということが書いてあって、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」とあります。この「事前に」と申しますのは、批准交換がある前という意味でありまして、締結する前でないことは、もう私が申し上げるのは釈迦に説法と存じますが、私は今のお話は、おそらく政治的な問題と法律的な問題を多少混同せられたお話ではなかろうかと思います。政治的にはなるほど非常に重大なる問題については、国民を代表せられる皆様方に随時いろいろ報告することが必要かもしれません。しかし今おっしゃるように、法律論から申しまするならば、これは条約の締結ということになりますれば、調印いたしましても、それは効力を発生するものではない。その国の憲法の手続によらなければ条約というものは効力を発生しないのであります。批准をせられまして初めて条約が成立する。だからその前に必ず国会へ申し出まして、国会で過半数を得られない場合は、もちろんその条約は成立しないのであります。実際国際関係におきましても、議会で承認を得ない場合は、何年も実際の効果は上らないという例もあるのであります。この意味において、あくまでこの憲法の規定通り批准する前に必ず国会に御相談申し上げ、御承認を受けるための手続をとりますということは約束申し上げます。
  95. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 別に私はあなたと議論するつもりはありませんが、先ほどから僕は法律論は一つもやってないつもりです。従ってそのためにこそ最初の質問で増原さんに国会に諮る意思があるのかということを伺っておいて、それからいろいろな事実を伺ったつもりであります。国会に当然諮る、こういうお話でありますから、諮るのならば、あらかじめ既成事実を作ってどしどし事を進めていって、そして抜き差しならぬところへ行ってからお出しになるというのは政治的にいかがかと思う、こういうことを私は申し上げておるわけであります。そしてMWDPだけの問題じゃなしに、全体として防衛庁のいつでもやられる手口だ、私はこう思っておりますので申し上げたわけであります。  それじゃ一つ同様なことで伺いましょう。昨秋重光さんがアメリカに行かれて、防衛計画をアメリカにお示しになりました。さらにまた増原さんがアメリカに行かれて具体的な防衛の問題についてお話し合いになった、こういうことでありますが、それは防衛六カ年計画の第何次案をお示しになったのか伺いたいと思います。
  96. 増原恵吉

    ○増原政府委員 私は今度向うに参りましてからは、防衛計画というものについての話はいたしておりません、その前、七月終りから八月にかけて要請をいたしました要請書の中に盛りましたもののうち、比較的重要と思われるようなものについて供与の実現方を要請をしたということでございます。
  97. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 重光さんはどうです。
  98. 増原恵吉

    ○増原政府委員 重光さんのおいでになりましたとき、防衛庁から当時の大臣が外務大臣にお渡しをしましたものは、三十五年度において陸上約十八万、海上約十二万四千、航空約千三百機という案を、重光さんに防衛庁試案として大臣からお渡しになりました。
  99. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今重光さんがアメリカに持って行かれたというものは、防衛六カ年計画の詳細なものではないにしても、最終到達目標であったことに何人も争いないと思います。この点について防衛庁試案だとおっしゃるのですが、試案であろうが試案でなかろうが、少くとも一国の外務大臣が他国に出かけて行ってこれを示すならば、これは試案だとかりに唱えてみたところで通らない事実であります。向う側としては一応それを正式のものとして受け取らざるを得ないでありましょう。ところが現実には国防会議は七月に出発いたしておりまして、こうした長期国防計画というものは、国防会議にかけて決定をすべきものだということになっているはずであります。ところが七月に出発した国防会議が、秋に重光さんがアメリカに出かけて行って試案を提出する、このことについて何もタッチしていない。一体国防会議というものをあなた方は無視するつもりなのかどうか。あなた方は、国防会議というものが現実にありながら、陰で試案々々と唱えてアメリカに提示をし――外国に提示するのですから、仲間同士で見せ合うのとは違いますよ。これは重大な意味を持ってくると私は思います。国防会議ができていながら、試案々々と称して勝手なものをアメリカに提示し、承認を得、そういう承認の上に立っていろいろな兵器の供与方を増原さんが今度懇請をせられる、こういう順序になるのでありますが、防衛庁やり方はいつでもこうじゃないだろうか。先ほども申し上げたように、既成事実を先に作っていって、あとから抜き差しならないものに変えていく、その例として今一つ申し上げたわけですが、これはどういう関係になっておりますか。
  100. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 飛鳥田さんのお話、少し誤解の点があると思いますが、重光さんは去年の夏はモスクワの方に行っておりまして、おととしアメリカに行ったわけであります。国防会議法は昨年できておりますので、この事実は一応御了解おき願いたいと存じます。こういう国防計画、ことに長期にわたる防衛計画というものは、もちろん国防会議もできたのでありますから、それにかけて、そしてその承認を受けるということになっておりますが、重光さんが行かれましたときにはそういうものもないし、はっきりはきまっておらないけれども、向うの参考までに日本側の努力目標をお話したという程度で、向うが承認したとかしないとかいうものではなかったというふうに了解する次第でございます。
  101. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 重光さんの行かれた年月日について、私誤解があったかもしれませんが、ではともかく防衛庁方々は、アメリカ軍に対して、アメリカ政府に対して防衛計画の試案を御説明になったことはいまだかつてないわけですね。
  102. 増原恵吉

    ○増原政府委員 提示したとかなんとかいうやかましいことはあれですが、約十八万とか約十二万四千とか約千三百機というようなことは、話の間に申しておることはございます。これは防衛庁試案ということで……。
  103. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 結局防衛庁試案としてお話し合いになっておれば、これは当然先ほど私が申し上げたのと同じ結論になると思います。一体それでは国防会議ができているにもかかわらず、これに対して資料を提出したり大体の構想を出したりして、国防会議にかけたことがあるのですか。
  104. 増原恵吉

    ○増原政府委員 御承知のように国防会議は、先般岸総理大臣代理がお話になったと思いますが、法律ができましてから二回行われまして、一回はこれからの運営その他の基本的な問題をきめられたようであります。二回目は昭和三十二年度の防衛庁の整備計画についてお話があったように承わっております。現在国防会議では事務局でいろいろと資料を集めて検討をする、資料はわれわれの方からも提出をするという段階でございまして、国防会議をこれから開いてきめていくということは、先般岸総理大臣代理からお話があったところでございます。
  105. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 第一次六カ年計画の終りはもう昭和三十五年です。そんなスピードで進んでいったのでは、国防会議はおそらく国防六カ年計画についてノー・タッチで終ってしまうだろう、こう考えざるを得ないわけです。一体国防会議の作業をどの程度に進めていくつもりか、いつごろその計画を策定し決定をせられるつもりか、これは一つ大臣に伺っておきたいと思います。今のままで参りますと、三十五年になってもまだできない、こういう形が出てしまいますよ。
  106. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 御心配下さいました点まことにごもっともだと考えます。ただ、ざっくばらんに申し上げまして、あの会議ができましてから、鳩山内閣から今の石橋内閣になりましたりいたしまして、最終的なものができなかったことは遺憾であります。しかし、今増原次長も申しましたように、せっかく事務当局でも準備とたしております。私も就任早々毎日議会の方へ出ておりまして、そうした取り計らいをする時間が十分ないのを遺憾に思っておりますが、できるだけすみやかな機会にこれを国防会議にかけまして、あらゆる角度から検討いたしまして、この計画を国防会議承認のほんとうに正式なものにいたしたいというふうに考えております。
  107. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは、いつまでと言えと申し上げてもおっしゃれないでしょう。だがしかし、国防会議にかけていく過程の中で、国民もまたその構想について討論の機会を得るわけでありますから、従ってその点については、今までのようになしくずしにぐずぐずやりながらいつの間にかでき上ってしまったというような形をとらないようにお願いしたいと思います。  それでは、もう時間もありませんので最後に一つ伺っておしまいにしたいと思いますが、先般石橋君の質問に対して、原子爆弾あるいは原子力部隊は日本に駐屯させないということをはっきり御言明になったわけでありますが、もしそれなら、国民の誤解を解くために、行政協定のその部分を改正して、原子力部隊あるいは原子爆弾は入れないということに、部分的な改正をアメリカに申し入れる意思があるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  108. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 この行政協定並びにその基本になる安保条約をどうするかということにつきましては、岸臨時首相代理もしばしば申し上げておりまするように、私どもはあれが欠点のない非常にりっぱなものであるというようには考えておりません。しかしながらこれは日本としてもその改訂に乗り出すからにはいろいろ準備態勢も整えなければならないし、いろいろ国際情勢も考えなければならないので、いつどうするかということは今まだ申し上げられない段階であります。しかし、飛鳥田さんのおっしゃるのは、その基本的な問題から離れて、行政協定の条文を読んでみても、たとえば二十六条ももう少しきちんとしたらいいじゃないかとか、あるいは施設区域の問題ももう少し明確にしたらいいじゃないかとか、いろいろ御意見があるだろうと思います。私も個人的にはそういう批判を全然持っていないわけではないので、長々これを取り扱って参った者といたしまして、これを実際に適用いたしまする場合の不便がないわけでもありません。でありまするから、今おっしゃいまするような点は、それはあそこに入れたらはっきりするだろうということは考えられますけれども、幸いにしてすでに米国側とも話して、必ず日本側へは相談するのだということになっておりまするし、わが方においてはこうした持ち込みは絶対に認めないという態度をとっておりまするから、今ただそれだけをシングル・アウトして改訂をしようとする必要はなかろうかと考えております。
  109. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この点について、アメリカの大統領アイゼンハワー氏の新聞記者会見の模様を読みますと、持ち込めば持ち込み得るのだ、原子力部隊もあるいは原水爆も持ち込もうとするならば法律上あるいは条約上の障害はないのだ、だがしかし、政治的な問題として今は持ち込むつもりはない、こういうような説明をせられているやに拝聴します。すなわち先般予算委員会において川上貫一さんからも同様な質問があったと存じますが、今の行政協定、安保条約等を見て参りますると、法律的にこれを持ち込み得ないという明確なる論拠はないわけです。ただ政治的な問題、日本の国民感情というものを考えて、アメリカが今は幾らかちゅうちょをしているという程度にしかすぎない。従っていかに岸さんやあなたが持ち込ませない、こう断言をせられても、この点について法律上、あるいは条約上国民は疑義を持たざるを得ないわけです。従って国民の疑義を一掃するために、せめてこの部分だけでも改訂したらどうか、この部分だけでも改訂を申し入れたらどうか、こう考えてお伺いをしたわけでありますが、改訂の申し入れをする意思なしということですか。
  110. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 この問題はもちろん非常に重要でありまするから、すでに先方も日本の了解なしにはやらないであろうし、日本の方はこういう意思を持っておるということも向うも承知しておりますから、とりあえずの措置としてはこれでとにかく日米間には了解があるというように御承知願って差しつかえないと存じます。この部分だけを安保条約の実施に関するこの細目規定意味を持っておる行政協定に入れるということが、条約技術の面でも至当なことであるかどうかということについては考えなければならぬ問題があると存じます。私どももすでに申し上げております通り、できるだけ日本の態勢も整えてこの条約をそのうちには検討して適当な措置をとりたいという考えを持っておるのでありまするから、この行政協定だけを引っぱり出してやるより、もっと基本的な考えをよく練っていかなければならない、これは考慮の余地もあると存じまするので、私は現在のところはその行政協定細目取りきめのような意味を持つ行政協定によるよりも、むしろこうした了解によった方がより効果的であるように考えておる次第であります。
  111. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最後に、今了解というお話でありますが、この了解というものが一体どこまでわれわれは信じていけるのかどうか。通常のことでありますならば了解でけっこうです。ところが原水爆を日本に持ってくる、あるいは原子力部隊を日本に派兵してくるということは、日本の国民全般の安危に関する問題であります。従ってこれは民族の問題である、こう言っていいと思いますが、そういう重大な問題について、単なる了解というだけであなた方はほんとうに安心していけるのかどうか。しかもこの了解というものは世界の趨勢に逆らっている。申し上げるまでもないことでありますが、アメリカは最近その戦略体制を変えまして、イギリスとの間に原子力部隊を駐屯せしめる、あるいは誘導弾について原子弾頭をつける、こういう問題、このことについて精密なる協定ができ上ったといわれる。またフランスにも原子力部隊の駐屯、イタリアにも原子力部隊の駐屯、こういう形で今までのソ連包囲態勢から違った形をとりつつある。この問題についてはあまりくどくど御説明は申し上げません。そういう世界の趨勢の中で日本だけがそれに抵抗をするわけです。持ってきちゃいけません、こういうふうに抵抗をするわけです。世界の趨勢にのっとった中での了解ならば、まだ私たちはこれを信じてもよろしいかもしれない。だがしかし世界の流れに対して、アメリカの世界指導の流れに対して逆らっているこの日本、日本の政府、こういうものについて単なる了解ということだけでやっていけるかどうか。今御説明によりますと、行政協定のその部分を改正するというつもりはないということでありますので、それではもう一ぺん伺いますが、行政協定の改正ということではなしに、日本に原子力部隊あるいは原水爆を持ち込まない、こういうようなことについてアメリカと交換公文を取りかわすなり、あるいはもう少し具体的な別個の協定を取りかわすなり、こういうことをなさる意思があるかどうか、これを伺っておきたいと思います。そういう具体的なことをしていただきませんと、今申し上げました世界の大勢の中の事実でありますので、国民は安心していかないだろう、こう考えます。
  112. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 今御指摘の点は、もちろん私の担当いたしております事務にも重大関係がありまするけれども、これを主管しておりまするのは外務大臣であります。外務大臣はどういうようにお考えになるかしれませんが、私の承知しております限りにおいては、そういう必要は目下のところないという、そういう御見解のように存じます。ただ世界の趨勢に抵抗するような日本の立場だから、特にむずかしいだろうという御指摘でございますけれども、結局共同防衛の目的を達成いたしますのには、それぞれの国民が真に協力し合っていくという立場が堅持されない限りは、幾ら精鋭な武器も役に立たない。しかも日本は水爆に非常に苦しまされた体験を持った国民でありまするから、日本国民から反撃を受けるような措置を黙ってするというようなことはあり得ない。万が一そういうことがありましても、何も日本に必ずしもそういう基地をしなければならないというわけでもないでございましょうから、私どもは重々そういうことはないものと確信いたしております。
  113. 粟山博

    ○粟山委員 関連して。私は国民は非常な鋭い神経を持って見守っておるこの原水爆の問題については、政府もしばしば声明しておられるように、非常な慎重を要するものと考えます。従ってこの国際情勢ということを今飛鳥田委員から言われますが、私が当局に伺いたいことは、昨今の国際情勢の緊迫はかかって近東にありと、私はかように思います。日本とソ連との関係は平和条約の達成によって今や大使の交換も行われ、漁業問題もおくればせながら進捗を示しておるというような関係からいたしまして、当局は果してこの国際情勢の中における日本の立場についてどういうような御見解を持っておるか、それを伺っておきたい。
  114. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 国際情勢は多少雪どけの方向にあるということを外務大臣も申しておりました。なるほど国際連合の努力というものもあるでありましょうし、日本の国の関係をとりましても、従来法律的には戦争状態にあった国との間にも国交が開ける、またそうした開けたところを活用いたしまして、できるだけその平和外交を推進していかなければならないということは当然であります。しかしながら国際情勢はただ日本とソ連の関係というようなものではなくして、この両陣営と申しますか、東西の両陣営というものがあって、その両陣営の対立関係によって支配せられるところも多いのでありまして、また昨年中のできごとを見ましても、これは形式的には地域的な問題ではあったけれども、ハンガリーの問題であるとか、あるいは中近東の問題などを考えてみましても、やはりその奥に両陣営の対立というものがひそんでおるのではなかろうかと考えます。この意味におきましてなるほどいろいろ一時的の情勢の変化もあるかもしれませんが、それじゃ絶対にこれから恒久平和に向っておるのだという断定は、現在のところまだ下し得ないのではなかろうか、こういうように考えられる次第でございまして、私どもはもちろん平和のために今後努力しなければならない、防衛庁といたしましては日本の独立と平和を守り、また安全を維持するということを目的としておるものでありまするが、この目的達成は、ただ単に防衛庁自衛隊を持っておるということだけで達成できるものではなくして、その大前提は、何としても国際関係をよくして、それに努力しなければならないと考えますので、私どももその点に最善の努力をいたしたいと考えておるものでございます。
  115. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もう時間もあれですから、午後にやらしていただきたいと思います。
  116. 相川勝六

    相川委員長 それでは午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時十七分開議
  117. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の防衛に関する件のうち、特に相馬ケ原演習事件について質疑の通告があります。これを許します。茜ケ久保重光君。
  118. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 相馬ケ原事件は、いよいよ検察庁事件が送られましたが、これに付随した、私は特にきょうはなくなられた坂井なかさんの補償と申しますか、賠償と申しますか、こういった点について政府の御所見とこれに対する対策を伺いたいと思うのであります。  その前に一言お尋ねしたいのでありますが、御承知のように相馬ケ原演習場が行政協定の第二条第一項の指定を受けてないということが判明して参ったわけでありますが、このいわゆる指定保留になっておった原因等については、先般ちょっとお伺いしましたが、その後この二条一項の指定のなかったことに対する事後処置を何か政府においてとられましたかどうか。あるいはまた何かこれに対する処置をするようなお考えがあるのかどうか。この点を伺いたいと思うのであります。
  119. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 大体この話は、岸外務大臣からもお話しいたしたと思いますが、話し合いのつかない問題、すなわち民有地が中へ入っておる場合、その際に円満に話し合って、その提供をするということについて解決がつかない、それに非常に時間がかかるというような場合、ないしは大体これは使わないだろうから、むしろこれを正式のものとするより、早く解除してもらうということを急いだ方が、関係者の方にも御都合がいいというようなものについて、解決のできておらないものがあるということは、御承知の通りでございます。二十ばかりあると思います。ただしかし実際問題といたしましては、この行政協定の手続によって提供しない場合においても、補償などは払う仕組みになっておりまするので、その方法でこれまでやってきたわけです。しかしこれでやりますと、刑事特別法などにいわれるところの区域の中に入らない心配もありまするし、なるべくはっきりさした方が都合がいい。それが正当のやり方でありまするから、こうした点についても、今後はできるだけ岡崎・ラスク交換公文等によるものでなしに、正式な手続を経た第二条にいう区域に入れるように努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  120. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私どもがこういった点を指摘しまして、政府でもいろいろ問題があるようでありますが、問題は決して私どもがあわてて二条一項の指定をしていただきたいというのじゃないのであります。これはむしろ今まで五年間もほうっておいたわけでありますが、たまたま今回の事件を通じてそういったことがはっきり明るみに出たわけであります。事件を契機に当演習場の実態をいろいろ調査してみますと、やはり問題が相当あるのであります。たとえば県有林の払い下げ問題とか、あるいは使用していない演習地の旧民有地の払い下げ問題とか、いろいろ問題が残っておるわけです。特にたま拾いという、まことに日本人として遺憾な行為をあえてしなくちゃならぬという陰に、もちろん全演習場の解放がわれわれの希望であるし、そういった要請をしなければなりませんけれども、実際問題としてはなかなかそうはいかぬという今日の情勢から、せめて県有林の払い下げ、ないしは未使用旧民有地の払い下げ、こういった問題があり、さらに今回の事件を通じて地元でもそういう意向が大きくなってきている。できればたま拾いをやめて正業によって生きていきたいという意欲が出てきているのであります。従って政府においては、私が先ほど言うように、この事件を通じて明らかになった未指定の地区であるから、今後またこういう問題が起きては困るというので、あわてて指定を急いでいただくことよりも、むしろ現状においてそういった民間の希望を何とか少しでも入れていく、ということは、岸外務大臣もおっしゃるように、できるだけ解放したいということですから、その趣旨に沿って、あわてて指定するのではなくて、今のまま置いて、できるだけ関係村民の期待に沿うような努力をしてもらえる用意があるかどうか、一つこの点を重ねてお伺いをしたいと思います。
  121. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 今までアメリカ側が使っておりました土地もできるだけ返してもらうようにする努力は、これまでも継続しておるのであります。最初のころに比べまして非常に件数も減って参りまして、現在では五百二十八件、これは小さなせんたく屋、駐車場なども含んでおるのであります。最初戦争が終了しましたときに二千八百もあったのが、ここまで減ってきておるわけであります。それではこの場所について果して交渉して返してもらえるかどうかということになりますと、従来の交渉の経過から考えて、相当困難があるのではなかろうかと思います。しかし今度こういう事件も起ったので、一つそういう意味でも、もう少し広い利用し得る土地を与えたならば、こういうことが起らないでも済むかもしれぬという意味においては、交渉してみる必要があるというふうに考えております。また同時に、これは調達庁長官にも話したことでありまするが、調達庁としては従来そういう方法考えておるようです。もちろん他に補償の方法があればけっこうですが、われわれとしても法規の命ずるところに従って支払いをしなければならぬ。そうなると、薬莢拾いで相当もうかっているものを全部償うだけのものが出せるとか、そういう取り計らいは、実際問題としてむずかしいのですが、何か関係町村で話し合いをして、危険のないようにして、それは先がけをしようとする人はそういうことはのまれないでしょうけれども演習が済んだあとで、平穏に入っていって取るというようなことは、これは米軍側としても差しつかえないことでしょうし、それにはまず何としても地元の人が話し合って、そういう気持になっていただくことが第一前提であります。その点調達庁としても努力してもらわなければならぬということを、つい最近も申したような次第でありまして、できるだけそうした意向をくんで善処いたしたいと考えております。
  122. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 先般の現地におけるアメリカ軍当局と群馬県並びに前橋調達事務所の諸君の集まったときに、アメリカ軍当局が、とにかく今までは薬莢その他を捨てておいたのだけれども、今度はアメリカ軍の所有権を主張して、窃盗罪等を適用しなくてはならぬというようなことを、ちょっと談話で発表した事実がある。これはとんでもない話でありまして、今度の事件が流弾かその他の事故で起ったのならばわかりますが、これはどんな場合でも、ねらい打ちで殺すならばどこへ行ったって殺せる。そんなことを言って、一方的に入ったことが悪いというのでは困るのであります。これはおそらくそのときのその場だけの言葉だと私は聞いております。従いまして私どもはたま拾いは絶対に不賛成でありますけれども、現実の相馬ケ原の諸君の生活の実態は、もうすでにたま拾いは経済生活の大部分を占めておる今日、これは私どもとしてもやめさせるわけにはいかない。従って今大臣もおっしゃったように、その方法はいろいろありましょうが 一応あの演習場がアメリカ軍の演習場として使われる限りにおいては、やはりあの薬莢その他のものによる生活の便法が当然考えられますので、この点については私ども地元としていろいろその面における御協力をしたいと思っております。と同時に、たま拾いという現象は、日本人的な考え方からも非常に不幸な事態でありますから、こういったことをだんだんなくするような努力が必要だと思います。そこで先ほど申しましたように、あれは七百万坪というまことに膨大な地域でありまして、その中には大砲による実弾射撃の場合でも、なお不必要なところが現地にあるのであります。そういったところは私どもは付近の農民にこれを再払い下げと申しますか、耕作を一つするようなことを考えたらどうか。また現に私ども調べたところによると、今日十五町あまりというものを作っておる。これは基地内に作っておる。これは厳密にいえば非常に不法でありますが、しかし現実にはたま拾いがいかぬと同じように、十五町あまりの土地を使っておる。これは何ら演習に差しつかえないことになっておる。さらにその他にも相当のものがありますので、これは現地と調達庁その他の関係者は、現地でそれぞれの立場から一つ御相談をいただいて、ぜひたま拾いをしなくても済むような生活の道をあの基地を中心に考えてもらうようにお願いしたい。それには私ども御協力を申し上げるに決してやぶさかでない。できるだけそういったことで事件の終末が付近の住民の不幸な状態において解決するのでなくて、事件を契機に、アメリカ軍もとにかくこういった事件を再び起さないようなことを考えると同時に、付近の住民もことごとくがむしろ幸いな結果をもたらす解決としたい、かように考えるのであります。どうか一つ、これはむしろ要望に近くなりますけれども、やはり一応小滝国務大臣のこれに対するお考えを政府を代表して申し述べていただきたい、こう思うわけです。
  123. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 こういうことが再発しないようにしようという気持は、私どもも持っておるところであり、米国側も持っておるところだろうと思います。それをあるいは今加害者と目せられる兵隊が悪かったにしても、指揮官からいえば、なるべくなら入ってもらわないようにする。また薬莢なども向うで取りまとめて、そういう不慮の惨禍のないようにしようという気持も一応わかることであります。しかし同時に、現地の実情からいえば、これが実際考え方によっては既得権のように思って、経済生活に貢献しておったという事実も全然無視するものではございません。でありまするから、今御指摘のように、現地でよく話し合いをして、できるだけの措置をとらなければならぬと思います。ただ一時使っておらないからそれを解放したらという、われわれの気持はもちろんございまするが、向うとしては、こういう事件も起ったのだから、なおさらこれをきちんと固めて、相当な地域をとっておかぬと、またどういう思いがけぬことが起らぬとも限らないというような警戒心も起るでありましょうから、この点はよく調達庁の方とも話しまして、現地の代表者の方にもよく様子を承わりまして、できるだけのことをいたしたいと考えております。
  124. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私どももその点については御協力をいたしますから、ぜひ政府当局も十分な用意とさらにアメリカ軍への強い要請とをされまして、この問題解決が付近住民に生活上その池の上において幸福をもたらすという解決の方向に御努力を願いたいと思うのであります。  そこで質問の要点を変えまして、今まで全然触れませんでした、いわゆる坂井なかさんのなくなられたことに対する、何と申しますか、私は補償という言葉を使いたくないのでありますが、この事件に対して、政府当局はいかようなことをお考えになっておるか。私がいろいろ申し上げる前に、おそらく今までにも坂井なかさんの死に対する償いの方法等についてお考え置きのことと存じますので、一応政府側のこれに対する今までのお考えなり、あるいは何か事務的にお運びなら、その間の状況を今井長官から伺いたい。
  125. 今井久

    ○今井政府委員 ただいまの御質疑の点について私からお答えいたします。今般の坂井なかさんのなくなられたことにつきましては、まことにお気の毒な御事情でございます。当時調達庁といたしましても、さっそく実情を調査いたしますとともに、前橋調達事務所長に命じまして、弔意その他の手段を講じた次第でございます。坂井なかさんの御家庭は、御夫婦のほかに六人のお子さんがあるのでございまして、御主人は村会議員をなさっておいでになります。先般も申し上げたかと存じますが、駐留軍の違法行為によりますところの被害に対しましては、行政協定の第十八条に根拠がございまして、もしそれが公務に基因するものでありますならば、日本政府がこれに対して補償をいたします。もしこれが公務外の事故でございますならば、米軍がこれに対して補償するという建前になっておる次第でございます。そしてこの公務執行中の場合につきましては、行政協定に伴う民事特別法という法律がございまして、これに基きまして補償いたしておるのでありますが、補償の基準につきましては、講和発効後脚もなく閣議決定をもちましてこの基準をきめておりまして、手続を進めておりましたが、その後諸般の状況を見まして、この基準をさらに上げる必要があるというふうに認めまして、米軍ともしばしば折衝を重ねましたる結果、昨年の十月二日以降今日の支給基準をきめることができまして、それによりまして昨年の十月二日以降の事故につきましては、この標準のもとに補償をいたしておるような次第でございます。坂井なかさんの今般の事故につきましても、さっそく御家庭の状況その他を見まして、この補償基準によりますと、御遺族に対するところの補償と、それから葬祭料というものがこれに該当いたしますので、私どもといたしまして、先般来問題になっておりますところの公務であるか公務外であるかということの決定を見ました場合には、さっそくそれぞれの手続によってこれを進めることができるように、当時さっそく、これらの米軍の主管庁であります座間の賠償部にも連結をいたしまして、それぞれ用意をしておる次第でございます。私どもといたしましては、この支給基準によりますと、すべて回収というものが基礎にたっておりますので、でき得る限り坂井なかさんのために有利に取り計らうことのできるように努力いたしたいという考えでおります。またこれがわれわれの方で決定を見ました場合には、公務であるか公務でないかということは別問題といたしまして、米軍に対して強力にこれを折衝するという考えできておる次第でございます。
  126. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 調達庁長官としての御答弁はそれ以上期待はできないと思うのでありますが、私は今回の事件をずっと取り扱って参りまして、私はこれは普通の、いわゆる、駐留軍の兵士ないしはその雇用人による事件と同一視し得るものじゃないじゃないか、こう思うのであります。あるいは録音放送等でお聞きかと思いますが、なかさんの御主人である坂井秋吉さんも、こうおっしゃっている。私はもちろん家内が、食うためとはいえ演習場内に立ち入ってたま拾いをしたことは、まことに自分としても決して愉快な気持でないけれども、四つを一番下にした六人の子供が、一瞬にして親をなくし、しかも再び、自分の母親がこの世の中に現われぬ、さらに自分も最愛の妻を、とにかく自分の意思でなくしてこういう目にあわされて、何と言って表現していいかわからぬ、このことは私は何億の金を積まれても、私の気持も済むものでないし、あるいはおそらく子供たちも金でお母さんの死を償えるとは思わぬだろう、私としてはこれは何といっても口に尽せぬ気持でありますということをおっしゃっているのであります。これは私は今回の坂井なかさんだけでなくして、こういうことによってなくなられた多くの遺族の心理と存じます。しかし特に坂井なかさんの場合には、やはりこれはアメリカ軍が何と抗弁しようとも、私はこれは射殺であるということに間違いないと思う。しかもたま拾いをしているということのよしあしは別としても、自分の妻が、日本を占領しているような状態にあるアメリカ兵に撃ち殺されたというようなことは、私はやはり残された坂井秋吉さん並びに六人の子供さんのこの心情には、永久にぬぐうことのできない大きな打撃を与えたでありましょうし、またこのことは全国民に大きなショックと、いわゆるアメリカ軍に対する非常な強い感情を持ってきたと思うのであります。そのことはその後のいろいろな状態を見てわかるのであります。そうなりますと、私はこの案件は、あの演習場が行政協定第二条第一項の指定があるなしにかかわらず、とにかく普通の駐留軍の事案、いわゆる行政協定の十八条にいう事案とは同一に取り扱うべき内容ではない、こういうように思うのであります。補償ということではない。私は一日本人がアメリカの兵隊に射殺されたというこの事態をはっきり見つめて、事務的な、今まで皆さんが取り扱ったいわゆる十八条による補償と同一視して処理すべきでないと思う。おそらく私は全国民もこの問題の跡始末をどう政府がするか注視をしておると思う。私はこういう点で、政府はただ単に今調達庁長官がおっしゃった行政協定十八条の規定に基いた事務的な処理だけで済むとは考えられぬ。そのことは、石橋内閣総理大臣が多額の見舞金を出しておられる。いまだかつてこんなことはございません。いわゆる駐留軍の事故によってなくなった日本人は何方とあります。その中で内閣総理大臣がわざわざ使者をよこしてその霊前に見舞金をささげたことはございません。今度が初めてです。このこと自体が、私は、今度の問題がいわゆる国民的な気持と申しましょうか、日本の民族的な一つのスケールにおいて問題になっている証左だと思うのであります。従いまして、繰り返すようでありますが、この問題の処理というものは、ただ単なる十八条の事務的な処理だけでは片づかぬように思うのだが、一つこの点に対する小滝国務大臣の政府を代表しての御所見を承わりたいと思うのであります。
  127. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私ども気持としてはまことにお気の毒にたえないわけでありまして、その意味で総理からも御霊前に御見舞をささげられたことと考えます。これは今おっしゃったお気持を否定するものではございませんが、ただしかし法律的に申しますと、この行政協定はちょうどヨーロッパにおける北大西洋条約機構に入っておる諸国における米軍の地位に関する協定と同じようなものでありまして、それが規定するところは、施設内の規定だけではなく、それに接近するところのいろいろな通信機関とかあるいは交通のことも書いてありまするし、またこの十七条の刑事裁判権の問題も、その軍隊に関して起ったところの規定でありまして、それが行政協定による区域であると岡崎・ラスク協定による区域であるとによって何らの差別がないということは一応申し上げておかなければならない点だと存じます。それからまたこの十七条に関連して十八条の賠償の規定というものは、これは米軍の作為または不作為によって生じた行為に関するものでありまして、その中にはもちろん不法行為も含まれておるのであります。かりに――私は今警察当局あるいは検察庁がどういうように見ておられるか最終的な見解はまだ存じませんが、かりにそれが非常に不法行為であるといたしましても、それだからといってこの行政協定第十八条の規定を排除するものではないというように、法律的には考えておるものでございます。政治的に申しまするならば、なるべく日本の方も自衛力を漸増いたしまして、こういう米軍の駐留が必要のないようにするという努力をいたさなければなりませんし、またこの事件が非常に新聞等に報道せられ、あるいは国会でも問題になりまして国民感情に与えた影響も多大なるものがあると存じまするし、そうした面につきましては、今後そういうことが再発することのないように、政府としても最前の努力をいたさなければならぬと考えます。しかし今の補償というような点につきましては、私どもは皆様の御承認を得てできましたこの法規の命ずるところにより、また内閣できめました基準というようなものを全然無視した特別な措置はとり得ないのではなかろうか、しかしその範囲内において最善を尽したいということは、先ほど調達庁長官が申し上げた通りでございます。
  128. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 事故の起った場所の行政協定規定のあるなしは私も問題にいたしません。しかし問題のポイントは、やはり不法行為ということ、いわゆる作為、不作為にかかわらず、日本人をアメリカ兵が射殺をしたという点にあると思うのであります。もしこの点が、ただ単に日収の一千倍ということで解決されますならば、アメリカ兵が日本人を殺しても――それはアメリカ側のいろいろな制裁もありましょう。しかし今まで私の感じた限りにおいては、アメリカ兵が相当むちゃくちゃなことをしても、その兵隊がアメリカ内地に送還されたり、どういうふうに処分されたかを、ほとんど日本の国民は知らずに過ぎております。まことに残念であります。そうなりますと、何万という日本駐留のアメリカの兵隊がピストルで日本人を打ち殺しても、これは死んだ者が一日に何千円という給料を取る者なら何百万という補償もありましょうが、普通の婦人ならば日収がないというので、最低二十万か三十万で済んでしまう。それでは日本人の生命が二十万か三十万の金を出せば済むという結論が出ると思う。またそういった風潮があったと思う。今度の事件の起った底に、今まで長い間アメリカ駐留軍が犯したもろもろの不法行為が、今言ったように当人はいつの間にかアメリカに帰ってどうなったかわからないという状態、しかも多くの事犯がやみからやみに葬られて、アメリカ人は日本人をどんなにしてもかまわぬのだという底流がなかったとは否定できないと思う。たまたま今度の問題は、私が最初にこの問題の究明に当ったので、ここまで世論が起って参りましたけれども、この案件も私どもが知らずにおったら、これはやはり普通の事故死として、坂井なかさんは、いわゆるたま拾いに行ってアメリカのたまに当って死んだということで片づいてしまった問題かもしれない。  そこで私が言いたいのは、もちろん規定もあり、いろいろな基準もありましょうけれども、アメリカ兵が日本人を射殺しているというこの明らかな事実に徴して、そのことがただ単なる行政協定十八条の規則だけで処理していいかどうか。先ほども申しましたように、全国民が非常に注目しておる。一坂井なかさんの死ではあるけれども、今度の問題は大きな波紋を描いている。こういった中で、ただ単なる補償ではなしに、私に言わせれば十八条のこの規定とは関係なく、民事関係によるところの損害賠償を要求すべきではないかと思う。そこで政府としては、この行政協定の十八条の条文に拘泥なく、そういった面でアメリカに強く要請をされて――先ほどの御主人である坂井秋吉さんの言葉をかりるまでもなく、とても物質的なことで償いはできぬ、賠償金の多少では償いはできませんけれども、せめてこういった問題を、政府が責任を持って、誠意を持って御解決なされることが、死んだ坂井なかさんの霊に対する一つの償いであり、さらに全国民に対しての政府としての責任を明らかにされるゆえんではないか、かように思うのであります。  そこで今、今井長官並びに小滝国務大臣の御答弁のように、この案件の処理を行政協定規定によって処理しなければならぬということではなく、一歩出て、これを射殺したというこの具体的な事実をはっきりさせて、いわゆる損害賠償という形で、人命軽視、人権無視のこの事案を、この際今までのいろいろな事案とはさらに百尺竿頭一歩を進めていただいて、そういう面を処理していかれる御意思はないか。あくまでもこの行政協定のきめられた規定の準則以外には解決の方法はないのか、この点を一つ明らかにしていただきたい、こう思うのであります。
  129. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 これはかりに向うが裁判権を持ちましても、それがうやむやにされるのではなく、こちらの照会に応じて向うから通知してくることになっております。私の承知しておりますところでは、人命に関することはアメリカでも非常に重要視いたしまするので、アメリカの軍法会議と申しまするか、軍の裁判は日本の場合よりもきついとても軽くないというふうに承知いたしております。  なお支払いの基準なんかの問題を申しましたが、これは、これを受ける人がそれを承知するということを前提としておりまして、この十八条の、たとえば第五項の(d)を読みましても、「請求の完全な弁済として支払が行われたのではない限り、合衆国軍隊の構成員又は被用者に対する訴を受理する日本国の裁判所の裁判権に影響を及ぼすものではない」というようになっておりまして、当然この損害賠償を要求することができるのであります。アメリカ側の場合におきましても、アメリカの方でかりに裁判権を持つとすれば、調達庁の方はむしろ仲へ立ってあっせんをする役でありますが、その裁判を請求する権利を妨げるものではございませんし、また日本の場合におきましても、結局調達庁の査定の方で承知しようとおっしゃる場合には、その額を支払ってあとでその相当分をアメリカ側から要求して日本側へ払わせるのですが、しかしそれに不服の場合は当然この損害賠償の請求を法廷に出されることはできる次第でございます。
  130. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 そのことはわかっておるわけであります。ただ具体的な事件として、私も幾つかこんな事件を扱っておりますが、アメリカが承知をいたしませんと、損害賠償の裁判をしましても解決が容易じゃございません。これは調達庁長官よく御承知と思う。それは二月や三月で解決しません。長くなれば二年も三年もかかる。そうなりますと、こういう被害を受けた諸君が裁判を起して、そういった裁判をする過程において、果して実際できるかどうか。これはおわかりのようにできないのでございます。従って多くの者がそういう規定はありましても、その規定の恩典に浴せないのが現状であります。しかもおしまいには、相手はアメリカだからというのであきらめも出ましょうし、そしておしまいにはくたびれてそれで済んでしまう。従って私が期待するのは、そういう条文の御説明じゃなくて、この案件に対して政府としていろいろなことに拘泥しないで、政府自身がアメリカに当然要求して、今あなたもおっしゃるように、アメリカは人権尊重の国であります。人命尊重の国であります。人権尊重を口に唱え人命尊重を世界に宣明したアメリカ人がその人権を無視しておるのです。人命を無視しておるのです。白昼公然と射殺をしておる。このことが私は問題だというのです。従って私がたびたび申し上げるのは、そういう事実であるから、日本政府としては、この際断固としてそういう具体的な事実の上に立脚してアメリカ政府に対して、いわゆる久保山さんですか、ビキニの灰をかぶってなくなられた方と同じには論じませんけれども、あれはやはり政治的な一つの補償であります。私はこういった意味で、これほど国民世論をわかしておるこの事件に対して、政府がただ単に行政協定規定だけによるのでなくて、国民的な世論を背景に政治的な折衝をして、今言った損害賠償という形を打ち出す努力と熱意を持つこと、それ自身の方が、今度の問題の解決、しかも国民が納得する解決じゃないか。たとい裁判がどのようになりましょうとも、そういうように思うのですが、そういった熱意と努力をする意思が政府にはないのかどうか。この点はやはり調達庁の担当国務大臣としての小滝さんの責任だと思うのでありますが、どうかあまり事務的なことに拘泥せずに、私は決してあなたの答弁に対して言葉じりをとらえて申しません。私はこの問題をそのような方向にぜひ解決してほしいという、ただ単に社会党の議員という立場を離れて、日本人の良心と申しますか、民族的良心の上からお尋ねしているので、一つ小滝国務大臣も、そういった見地からお答え願えれば大へん仕合せだと思うのであります。
  131. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほど調達庁長官も申しましたように、われわれとしては、できるだけこの家庭の事情も考慮いたしまして、有利に解決できるように最善の努力をいたしたいと考えております。
  132. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 今日はこれ以上申しません。ただここで小滝国務大臣並びに今井長官に、私の今申しましたことがおわかりと思いますから、ここで私は御明答を要求しませんが、どうか一つ持ち帰っていただいて、今私が申し上げたような点を十二分にお含み願って、庁内においての御相談あるいは政府としてのやはり御相談をしていただいて、決して急ぎませんから、私の先ほど申しました国民的な感情も十二分にお含みの上御協議なすって、次の機会にそういったことに対するお答えを要請するし、私どももまたこれに対していろいろ現地の意向等もさらにくみ入れましてお話を申し上げたい、かように存じますので、一応今日はこの程度で打ち切っておきまして、政府の善処方を御要望申し上げて私の今日の質問を終ります。
  133. 相川勝六

    相川委員長 次会は明二十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後二時五十九分散会