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1957-02-15 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十五日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 福井 順一君    理事 保科善四郎君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    小金 義照君       北 れい吉君    田村  元君       船田  中君    眞崎 勝次君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    木原津與志君       下川儀太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (教育局長事務         取扱)     都村新次郎君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件     —————————————
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  国の防衛に関する件のうち、自衛隊員強打車による死亡事件砲弾持ち出し事件、誘導兵器問題及び東富士演演習場事件等について質疑の通告があります。この際順次これを許します。大坪保雄君。
  3. 大坪保雄

    大坪委員 私は去る二月六日に広島県下における陸上自衛隊行軍演習の際に発生いたしました隊員死亡事故について、まず第一にお尋ねいたしたいと思います。  この問題はすでに発生以来十日になります今日まで、一日といえども新聞紙上にこの問題に関する記事の出ない日はないくらいに世上の論議をまき起しております。私どもきわめて遺憾な事件だと思うのでありますが、ただ私は、こういう事件の起った原因、環境というものを十分検討して、将来再びかかる不祥事件が起らないように、防衛庁及び自衛隊関係者においても戒心をしてもらわなければならぬのであるが、同時に、今日この問題が毎日のごとく新聞紙上においても記事が絶えないというふうに重視されております事柄の性質というものについて考えてみまして、これの善後措置というものについてはきわめて真剣に、とらわれることなく検討を加えていかなければならぬ、かように考えます。そして、私の気持としては、この問題が非常にやかましく論議されるのは、申すまでもなく、行軍演習中に二人の死亡者を出したという不祥事はあるけれども、そのことが自衛隊の中に起ったという事柄であること、自衛隊というものが今日国民の非常なる注視の的になっておる、申せば一挙手一投足ともいうべきものが国民の深い関心事になっている。しこうして私どもの考えからいたしますれば、今日国際情勢自衛隊というものはどうしてもなければならぬし、またそれは精強なものであってほしいし、精強なものであってほしいということになれば、自衛隊の質が向上されておるものでなければならぬと思います。従ってその質の向上については、これはもちろん行軍力を養うという点からすれば、その方面の訓練等もずいぶん盛んにしなければならぬ、ある程度無理だと思われるような行軍訓練もそれはいたさなければならぬ、技術の練摩もいたさなければならぬのでありますが、同時に隊員たることを希望する国民の中の希望者に、自衛隊というものに対するいささかの危惧でも起させ、熱情を失わしめるというようなことになってはいけないというように考えることと、この問題はもちろん自衛隊ないし自衛隊員だけの問題ではないのでありますから、国民全般のこの問題に関する関心を弱めさせる、ないし自衛隊に対する信頼を失わしめる、あるいは自衛隊の内部の実情について危惧の念を持たしめるというようなことになっては相ならぬと考えますので、そういう見地から事態を究明する、そして間違いのない善後措置を講じてもらうという気持で御質問申し上げたいと思うのであります。きのう池田議員質問に対して長官は、自衛隊国民の中にとけ込んで、国民に祝しまれ愛される自衛隊でありたいということを希望し念願し、そういうことを部内にも示していると言われました。私はその長官自衛隊に対するお気持は非常にけっこうだと思います。その気持次長以下の幹部諸公も十分一つ含んでもらいまして、そういうことで本日は、先刻申し上げましたように、事態真相をきわめて、間違いない善後措置を講じてもらいたい、国会国会としてそれに協力いたさなければならぬいう気持から、私は質問を申し上げるのでありますから、どうか虚心たんかいに、ほんとうに内輪に相談するというぐらいな気持で御答弁を願いたいと存じます。  そこでまず、新聞紙上並びに衆議院の本会議における長官の御答弁等もあって、一応のことは私どもにわかっているようでありますけれどもほんとうの当時の状況、その真相というものはまだ明らかではございません。この点は必ずしも長官からでなくていいわけでありますが、当時の状況がどうであったか、このことを一応御説明願いたいと思います。
  4. 小滝彬

    小滝国務大臣 大坪さんのおっしゃいました点まことにもっともでございまして、そのような気持で進んでいきたいと思います。今なるべく詳細に国民の皆様にわかっていただくように実情をここで報告しろということでございましたから、私から申しまするよりもかえって人事局長から微細にわたって説明させた方がけっこうだろうと思いまするので、人事局長の発言をお許し願いたいと存じます。
  5. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 指名によりまして私から今回の事件の概要につきまして御説明を申し上げたいと存じます。  今回行われました演習は、自衛隊管区隊が車両編成化しておりますことに伴いまして、隊の徒歩行進能力を強化いたしまして、強靱なる持久力を養成することを目的として行いましたる演習一つでございます。演習計画いたしました根拠は、陸上自衛隊部隊等における訓練に関する訓令及びこれに基く達に大体の輪郭を示してあるのでございます。  この計画によりますると、今回の演習は、まず新隊員が入りまして当初行いまする共通基本訓練、入隊後約二カ月間やりまするが、この共通基本訓練において一日約二十キロの行進の後に露営動作実施するという訓練を終り、さらにその次にまた一カ月半の間本技基本訓練というものを行います。この本技基本訓練におきましては、徒歩行進一日三十二キロの後に露営ができるということを目標とした訓練でございます。この訓練を終りましてさらに部隊訓練、その部隊訓練分隊訓練小隊訓練中隊訓練大隊訓練、さらに最後野外機動訓練というものを実施しておりまして、この野外機動訓練におきましては、相当長距離徒歩訓練目標とした徒歩訓練をやっておるのであります。この三段階訓練を経ました後に、三段階訓練を経た隊員に対する補備訓練段階における訓練一つでございます今回の演習計画は、先ほど申し上げました陸上自衛隊部隊等における訓練に関する訓令及びこれに基く達に基きまして、昭和三十一年度の教育訓練実施に関する陸上自衛隊一般命令、これは昨年の一月十九日に出しておりますが、この命令及びそれに基く陸上幕僚長指示に基きまして具体的に計画をしております。  この計画の、第三菅区の今回の事件に関する計画の内容を申し上げますると、広島県の原村演習場付近七十七キロの行程徒歩行進競技でございます。装備等の重量は約三十キログラム、第三菅区の管轄下にありまする各普通科連隊から一個大隊ずつ選抜いたしまして行なっております。この各普通科連隊からの選抜予選によりまして決定することにしておりまして、その予選をもちまして管区の今回の行進競技予備訓練にする趣旨で計画を立てております。  こういう計画を立てまするに至りました経緯について申し上げますると、第三管区、この第三管区におきまして昭和三十年度のこの種の訓練といたしまして、三十年の十月の末から十一月の初めにかけまして管下の各連隊が滋賀県の饗庭野演習場における野営実施訓練の際におきまして、饗庭野から比叡山に至りまする七十二キロメートルの徒歩行通競技を三十年の十月の末から十一月の初めにかけて実施しております。この経験をもととして、今回の計画を立てたものでございます。昨年度のこの演習におきましては、第三管区管轄下にありまする全普通科大隊約二千九百名が参加しておりまして、問題のありました第七普通科連隊もこれに参加しておるのであります。その状況小雨の中を行なっております。この場合二千九百人の参加者のうらから落伍者二十六人を出しております。ただしこの落伍者はいずれも自後の訓練には支障を生じない程度のものでございました。  今回の計画は、本来ならば第三期の昨年の秋にやる予定でありましたが、第三管区陸上幕僚長の検閲を受けました等の関係によりまして、だんだんおくれまして、第四期の一月以降の特殊訓練として実施したものでございます。そうして場所も厰舎の利用の可能な、そうして天候の比較的安定をいたしておりまする広島県加茂郡原村演習場付近といたしました。先ほど申し上げましたように、各連隊からの選抜大隊によって行うことにしたのでございます。この演習審判基準として考えておりましたことは、行進をいたしまする大隊の規律の維持がどうであるかということ、大隊参加率大隊行進速度大隊行進における落伍率というようなものを基準といたしまして審判をするということにいたして、おります。この計画を実行するに当りまして、第三管区といたしましては、現地を反復細密に調査をいたしておりまして、夜間行進に備えまして道路を補修し、石灰等によりまして標識を設ける等危険の防止に注意をいたしております。それから先ほど申し上げましたごとく、今回の行進に至る岡谷連隊において予選をやっておりまして、その予選をもちまして予行演習としておるのでございます。この予行演習を行いますることによりまして、逐次隊員の体力を増進し、不適格者を除くという意図をもって行なっております。事前隊員の健康の調査につきましても、三十一年の十一月に全隊員定期健康調査をやっております。それから第七連隊について申してみますると、一月の二十一日に予行の後の訓練救護調査をいたしております。さらに一月の二十九日にはこの競技会参加をすることの適当でないと自分で申し出ました者につきまして、医官診断を受けさしておりまして、第七連隊におきましては二十四名受診をいたし、そのうち十五名を不適格と判定をいたしております。一月の三十日には大隊長が医官とともに各大隊の巡視をいたしまして、その際に問診及び視診をやりまして、不適格者を除く方法を講じております。さらに管区といたしましては、演習場の七十七キロの行程中二カ所に救護所を設置をいたしまして、救護所にはそれぞれ医官一名、救護員六名の七名を配置し、ジープ一両及び救急車二両を配置し、さらに三個大隊参加したわけでございますが、各大隊後尾には収容班を配置いたしております。この収容班医官一名救護員二名からなっておりまして、ジープ一両と救急車一両をもって大隊後尾を追随いたしております。さらに加給食につきましての配慮といたしまして、二月の五日から六日にかけて実施いたしたのでありまするが、夕食時に氷砂糖及び大福もち二個を配給し、二十三時三十分ごろにあたたかい牛乳一本とあんパン三個を配給する考慮をいたしております。そこでいよいよ演習実施状況でございまするが、二月の五日の天候は午前中薄曇りでございました。午後二時ごろから小雨になりました。夜間は雨でありまして、ときどき風やや強く、屋外で寒気を感ずる程度でございました。温度は七度から八度でございました。二月の六日は午前中小雨が降り続きました。やや寒い状況でございます。午後は降ったりやんだりの状況でございました。明け方の気温は七度から八度、これが十時ごろから六度に下っております。雨量は五日、六日を通じまして合計約二十ミリぐらいというふうに報告せられております。行進開始時におきましては、路面は雨にぬれておりましたが、水たまりの生ずるような状況ではなかったようでございます。ただし行進経路の一部の戸坂峠付近及び苗代、本郷間におきましては、若干ぬかるみを呈する部分があった状況でございました。統裁部におきましては、この演習開始前に当初予定しておりました経路の一部を変更しております。それは標高八百メートルの野路山通る予定でありましたものを平坦路経路を変更いたしております。これは雨の状況等を考慮しての配慮でございました。それから管理支援要員休憩点に先行させまして、採暖及び喫食の準備をいたしております。さらに行進を始めるに当りましては事故防止につきましてこまかい指示をいたしております。申しておりますることは、事故を出しては元も子もないことである。絶対に無理をしてはいけない。各人の状態、装具を再点検し、身体の不調なものは排除しておけ。危険な個所につきましては特に注意せよ。自己の部隊能力に合せて行進をし、そのペースを守り、他の部隊に牽制されてはいけない。速度にとらわれるな。おそくとも堅実で最後まで団結を維持し、せいせいと歩くようにしなければいけないということを注意しておるのでございます。  行進状況は、三個連隊のうち、第十五普通科連隊最初出発をしております。出発時間は原村廠舎を十六時三十五分に出発いたしまして、この連隊は一名の落後者もなく翌日の十二時二十四分に原村目標地点帰着しております。その所要時間は十九時間四十九分であります。参加者は三百三人でございます。第二陣として出発をいたしましたのが、第八普通科連隊大隊でございます。この部隊は十七時五十九分に原村廠舎出発点を出ておりまして、翌日の十三時三十七分に目標地点帰着をいたしております。この所要時間は十九時間三十八分でございました。この部隊参加者は二百五十一名、そのうち十名が落後をいたしております。問題の第七普通科連隊は、一番最後部隊といたしまして、十九時三十一分に出発点を出ておりまして、翌日の十三時四十三分に目標地点帰着をいたしております。この所要時間は十八時間十二分であります。参加人員は二百三十三名でございます。そのうち四名の落後者を出しております。出発雨量を増しまして、雨が少し激しくなりまして、その行進の途中におきましては約半分ぐらいの水越、安登というところにおきまして降雨が最も激しかった状況でございます。演習統裁部におきましては、これ以上雨が激化いたしますれば岡郷付近——約四分の三の行程のところでございますが、岡郷付近行進を打ち切る方針を立てまして、そこから目標地点までの輸送の準備を進めたようでございます。しかし、夜が明けましてから、雨が小降りになりましたので、計画通り到着した状況であります。部隊到着後直らに集結をいたしまして、身体薄弱の者を点検し、十一人を救護所に収容いたしております。その十一人のうち、現地の病院に残っております者は一名でございまして、この者は虫垂炎で国立西条療養所に収容せられております。あとの十名は全部原隊に復帰いたしました。この行進競技におきましては、優勝は、一番最初に出まして一番行進時間の長かった第十五連隊でございます。  次に、問題の先頭三曹及び岸上士長死亡に至るまでの状況について御説明を申し上げます。千頭君は、十一月の身体検査当時には異状がございませんでした。十一月以降今度の演習参加いたしますまで、三回の予行演習をやっておりますが、いずれも無事行進に加わり、何ら事故なくこの三回の予行演習を終っております。五日の夕方出発地点を出ましてから、六日の午前三時三十分ごろ、行程のまん中辺でございます宮原付近を通過中、右足全体が重く、足が前に出ないということを小隊長申し出ましたので、小隊長がこれをジーフに乗車をいたさせまして、足をもむように本人に言っております。それから四時から四時二十分の間、この部隊朝食をいたしております。その朝食の当時は、千頭三曹は皆と一緒に朝食を済ませておりまして、朝食後は元気を回復したからと申しまして、部隊に帰り、歩行を続けておりますが、途中数回ジープに乗ったのであります。ジープに乗ったりおりたりしまして、行進を続けまして、全行程の約三分の二に当ります中畑付近——ちょうどこのときは歩いておりまして、疲労を増しまして、同僚の者から歩行が困難のようであるからということで、隊長同僚隊員うしろから押して助けてやれということを命じております。それからさらに少し進みまして、岡郷というところが一つ統制点——統制点と申しますのは、演習行程中に六カ所の地点を設けまして、その地点を歩いて通らない者は落後ということになっておるのであります。その同郷の統制点を、同僚援助によりまして歩行して通りましてから、再びジープに乗っております。その次の統制点樋詰というところでありますが、この樋詰統制点も、同僚の介添えを受けまして通過いたしておりまして、十一時ごろにジープ乗車をいたしました。その後、樋詰北方一キロメートル付近で急に容態が変じまして、救護員応急処置をいたしますとともに、後尾に追随しております医官にこれを急報いたしました。医官がかけつけまして、連続強心剤の注射をいたしますとともに、事態が重大であると見まして、急救車に乗せまして、西条国立療養所に輸送する途中、十一時二十五分、西条字田口道路上におきまして、車中、急性心臓衰弱死亡したということに相なっております。  岸上士長の方は、これも十一月の身体検査当時は異状はございませんでした。一月以降予行演習をこの連隊は三回やっておりますが、岸上君は初めの二回予行演習には参加をいたしておりません。最後予行演習には参加いたしておりまするが、これは途中約四キロほどジープに乗ったようでございます。今回の演習につきましては部隊と同じく十九時三十一分に出発いたしておりますが、千頭君よりもややおそく、約午前四時四十分ごろ、川尻付近の川岸の道を通行中、道路の左側で石につまづきまして前によろめいて転倒いたし、行進速度がおくれがちになりましたので、小隊長はこれをジープに乗せました。その後ジープに乗せまして行進をいたしましたが、川尻以後の統制点安登というところの統制点岡郷というところの統制点樋詰というところの統制点、いずれも同僚援助によりまして歩行して通っております。十時五十五分から十一時三十分までの昼食時には——樋詰統制点を過ぎまして約一キロぐらいのところでございますが、これはほかの隊員と同じように昼食をいたしておりまするほか、鶏卵二個をそこで食べております。その食事が終りましてから、さらにジープ乗車いたしまして行進を続けました。最後統制点でありまする中郷というところでも、同僚援助を受けまして歩いて通りました。十二時二十分ごろ再びジープ乗車いたしましたまま、目的地に午後一時四十三分に到着をいたしております。ここにおきましておりるときには同僚に抱かれてジープをおりたような状況でございまするが、この状態をそこにおりました次官が見まして、心配して少し異状だと見て診断いたしましたところが、これは重態であるということで、直ちに救護所に収容いたしまして手当を加え、西条国立療養所に送付の処置をとりましたが、広島県の八本松町の原村廠舎内の救護所におきまして、十四時十分に急性心臓麻痺によって死亡いたしたのであります。  なお、この事件に関連をいたしまして、いわゆる暴行事件について私ども調査をいたしております。このような行進でございますので、疲労いたしました者を元気づけるために、文字通り叱咤激励した様子は十分に考えられるのでございまするが、この叱咤激励の度が越えて若干無理をかけたのではないかというふうな事項も見受けられまして、厳重に現在調査中でございます。現在までに私ども調査の対象となりましたものは十一件ございます。十一件のうちで二件は、幹部が青竹を持ちまして隊員にしっかりしろといって、ヘルメットの上をたたいておるという事実は明瞭でございます。その他の九件につきましては、目撃者その他の言によりまして調査を進めておりまするが、ただいままでのところ、まだ確定的にこうだと申し上げるまでの段階に至っておりません。最後に行きました調査員が本日帰京いたしますので、その帰京後の報告を聞きました上で、すみやかに真相を究明いたしたいと思っておる状況でございます。
  6. 大坪保雄

    大坪委員 大体の状況はわかりました。演習実施は、事前準備も相当注意深くなされておったらしいこともわかりました。しかし、準備がなされたにもかかわらず、行軍演習の途中以降において、その準備が無視されておったのではないかと思われるような点もなきにしもあらずという感じを受けるわけであります。  そこで、二、三点順次お尋ねしてみたいと思うのでありますが、二人の死者を出しましたのはきわめて遺憾でありましたが、これは同じ中隊であったかということが一点。  それから、この二人の死者のほかに、故障者と見るべきものほどのくらいの数であったかという点、それから二人の人は——先刻の人事局長の御説明によりますと、健康状態に自信がなくて健康診断申し出た者が二十何名もある。そのうちで、健康診断の結果、参加を許した者と、参加を許さなかった者があったのでありますが、事前健康診断をこの二人は申し出をしたことはなかったかどうか、その点。それからこの演習計画はいつどこで樹立されたか。自衛隊のどの段階で樹立されたか。計画作成にはどういう人々参加されたか。それらの点を一応承わっておきたいと思います。
  7. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 まず第一点のお尋ねでございますが、千頭三曹は第七普通科連隊第二大隊第四中隊であります。岸上君はその大隊重火器中隊でありまして、中隊が違います。事前検診申し出は二人ともなかったように私承知いたしております。計画は第三管区におきまして作成をいたしておるのでございます。
  8. 大坪保雄

    大坪委員 その二人のほかに故障者がまだあったかどうかという点と、第三管区計画を樹立したのでしょうが、それにはどういう階級人々が参画したか。この計画は無理じゃないかという感じがわれわれにはするのです。三十キロもの重い、完全装備とでもいうべきものを持って、七十七キロというと、われわれ古い者には約二十里だ。その道を一気呵成行軍する。これは少し無理じゃないか。天候のかげん、道路状況等もございますが、重装備をして七十七キロもの長距離一気呵成に歩くということ自体が無理じゃないかという感じをわれわれはさせられる。たとえば実際の戦闘という場合には、そういう長行率を必要とすることがあるだろうと思います。しかしその場合には、おそらく装備は軽いだろうと思う。そういう点に無理があったのじゃないかという感じを受けるのであるが、この演習計画を策定されたのはどういう階級であって、その中にはこの演習計画に対して異論を申し述べた者はなかったか。もしわかっておればその点を一つ
  9. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 先ほど御説明の中で申し上げましたが、落後者は第十五連隊はゼロでございます。第八連隊が十名、第七連隊が四名でございます。しかしそのうち、到着後におきまして救護所に収容いたしました者は十一名でございます。十一名のうち一名だけがいまだに入院をいたしておりますが、あとの十名はそれぞれ原隊に復帰しておるのでございます。  それからもう一つ御参考までに申し上げておきたいと思いまするが、問題の第七普通科連隊は、今回の原村行進にいたりますまでに、先ほど申し上げましたように三回の予行演習をやっております。第一回は、昨年の十一月二十六日に、晴天の状況でありましたが、三十六キロの行進をやっております。落後者はございません。第二回は、三十一年の十二用二十四日から二十五日にかけまして、七十七キロの徒歩行進をやっております。この場合も状況は晴天でありました。落後者はございません。第三回は、三十二年の一月十七日に六十五・六キロの徒歩行進実施しております。天候は晴天でございました。この場合も落後者はないという報告を受けております。計画作成は、筋三管区総監部の責任でありまして、第三管区総監部の第三部を中心といたしまして、関係の者が相寄り協議の上原案を作成し、総監が最後の責任を持ってこれをおきめになるという次第でございます。この間におきまして、この演習が無理であるかどうかというふうなことにつきまして、意見があったかどうかということでございまするが、この点については何も聞いておりません。
  10. 大坪保雄

    大坪委員 もう一点、その演習計画の中には、途中の状況によっては予定を変更するとかあるいは中止をするとかいうような計画はなかったか。
  11. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今回の場合におきましても、演習統裁部におきましては、予定のコースを一部変更しております。また雨がさらに激しくなれば、途中で演習を打ち切りまして、車で帰着点まで運ぶというふうなことを考えておったのでございまして、そういうことは当然に考えられておるべきことでございます。
  12. 大坪保雄

    大坪委員 そこで、長官に御意見を伺ってみたいと思います。われわれは精鋭なる自衛隊であってほしい、国民の期待にほんとうに沿えるような行動、活動のできる自衛隊であってほしいと思いますから、かような国土防衛の重任を負っている自衛隊のごときものは、その精鋭の度を増すために相当の訓練を、常人から見れば無理だと思うような訓練をやってもらうということ、これはやむを得ないことであるし、また国民の期待だと思うのです。しかしながらそれは度をはずしてはいけないと思う。度をはずせば今回のような不祥事が起るわけであります。そこで私どもが見ておりますと、三十キロの重装備で七十七キロもの長距離一気呵成行軍する。道路天候状況等も刻々に変ってくることもあるだろうと思いますが、このこと自体が非常に無理じゃないかと思うけれども、今人事局長の御説明では、過去三回にわたって実地の演習をした後に、大体確信を持ってやったと言われるから、これは一つの練習であるからそれもよかろうと思います。ただ問題は競争の形をとったという点にあるのであります。しかも落後者が一人でもあれば減点になる、こういう点に私は問題があるのではないかと思います。たとえば先刻の人事局長説明の中には、救急車準備もあった、収容班準備しておった、ジープもずいぶんあったようであります。それから事故防止については、きわめてこまかい注意も出した、こう申されている。そういう点は事前の措置としてよかったと思うのです。しかしそれが現実に無視されている。なぜかというと、これは競争の形をとったからではないかと思うのでありますが、そこに私はこの演習自体に無理があったのではないか、総体に考えて無理があったのではないかという感じを持つのであります。現に新聞紙の伝うるところによりますと、金山第三管区総監もこの点を取り上げて、どうも無理であったように思うということをはっきり言っている。その点について、自衛隊の最高指揮官としての長官として、こういう計画は、特に競技をやらせるというような事柄による演習のやり方、これは無理ではなかったかと思うのであるが、そういう点についてどういうようにお考えになるか。今後もこういう競技のやり方で演習を続けていくことが、効果が上るからやるつもりであるか、そこのところを伺っておきたいと思います。
  13. 小滝彬

    小滝国務大臣 先ほど人事局長説明いたしました通り、計画あるいはその実施の方法というようなものについては、すでに調査を完了いたしているわけでございます。ただ個々の報ぜられるような事故については、もっと究明しなければならない点もありますので、その点は最終的なことは申し上げられませんし、またそれとこの計画というものも全然関係がないわけでもございませんので、それではどういう最終的な結論を持っているかということは、今の個々の事故も最終的に調べて一体として考えなければならぬと思っております。ただ御指摘のように、計画に無理がなかったか、ことに競技の方法をとったのはよくなかったのではないかというようなお話でございますが、実は私の今の気持といたしましては、その点は同様に感じておるものでございます。昨年もああいう平坦なところでなしに山を越してやった。そして距離もほとんど同じで競技の形でやられたけれども、何らの事故も起さずに行われたので、これを計画いたしました者としては、無理のないものであると思ったのでありましょうが、結果から見まして、またいろいろな状況から判断いたしまして、そこに妥当性を欠いたものがあったのではなかろうかと思いまするし、もう一つは、昨年は秋行われましたけれども、今回は非常に気温の低い時期に行われたので、それが——私は詳細な医学的な点はわかりませんけれども、やはり心臓などに影響するところが気温の高いときよりも大きい。しかも雨のときに実施せられたというようなことで、計画の方も、またその実施についても、その場に臨んだときの判断において、もう少し実情に応じて変更する余地があったのではなかろうかというように考えておりまするが、最終的なことはさらに一体をなして全部の事実を総合いたしまして判断して考えていきたいと存じます。
  14. 大坪保雄

    大坪委員 その点は将来のいろいろの訓練方法の例にもなるわけだから、十分慎重に御検討願いたいと思います。計画がどんなによくても、実行のできないような何か違ったファクターがあれば全然むだなことになる。これが今回の重大な原因になっておると思う。これは責任追及の問題が後に出てきて、それに関連して参りますから、私どもは相当究明しなければならぬと思うのであります。それから、りっぱに自衛隊の信用を保持して、これに対する国民の信頼を維持していくという建前から、どうしても無視できませんことは、今人事局長からも一応御説明がありましたけれども、新聞紙の報ずるところによりますと、これは鼓舞激励するためだろうと思うけれども、靴でけったとか青竹でなぐったとかいうようなことが、いかにも残虐行為のごとく書かれておる。そして新聞紙等に掲げているところでは、旧陸軍式のものに返らんとするというような言葉で述べられておる。旧陸軍式と申しますのは、旧陸軍にはいいところも悪いところもいろいろあったと思うのでありますけれども、新聞に書いてあります旧陸軍式というのは、兵隊の人権が相当無視されたのだという点だろうと思うのです。これは陸軍が精強なる陸軍でありたいという熱望の結果でありましょうし、そして当時の徴兵制度、当時の憲法の建前の結果でもありましょうが、上官が下官の生殺与奪の権を握っているというような環境下であった。従って上命下従の関係が非常に厳格であって、しかもこれが一般社会から隔離されたところで強硬に推し進められた。そこに相当人命軽視といいますか、人権じゅうりんがあって、事故も相当起ったと思う。これが今日敗戦後、新憲法になってから後の国民の最もきらう点になった。そういうものへ今の自衛隊が返りつつあるのではないか。またそう返っているのではないかというのが国民の大きな危惧だろうと思う。もし昔の陸軍時代にあったといわれているような、靴でけったり青竹でなぐったりというようなことが行われておったということであると、これは私ども相当問題になるだろうと思う。そこでまず靴でけったり青竹でなぐったりした事実があると思うが、それは一体傷害を及ぼす程度であったか、またこの点についてまだほんとう真相は明らかになっていないそうであるが、この究相を究明するについて長官の決意というようなものを伺っておきたいと思います。
  15. 小滝彬

    小滝国務大臣 御説の通り、国民によく信頼してもらうような自衛隊でなければなりませんし、また自衛隊自身の立場から見ましても、なるべくりっぱな志願兵に出てもらわなければならない。そういう不法な行為を上官がするというようなことではとうてい信頼することはできないのでありますから、これを契機といたしまして十分本庁の方からもいろいろ指示を与えております。もっと詳細な訓令もしなければなりませんが、とにかくこの問題は、まず本件をいかに厳粛な気持で処理していくかということが第一段だろうと存じます。今後の再発を防ぐための具体的ないろいろの処置も必要でありますが、少くともこれだけ国民からの注意を浴びました本件を最も厳正に調査いたしまして、その調査の結果に基いて公正な判断を下して、必要に応じては厳重な処罰もしなければならない、これがまず第一段階だろうと思います。そのために、これまでも検察庁とも連絡をとりまして、司法警察官の性格を持っております警務隊において調査をいたしておりますが、特に陸幕の本部からも警務隊長その他必要な人員を派遣いたしまして、最も厳正にこれを調査して、その上で法規に従って処分をし、またその結果に応じては検察当局の方とも連絡いたしまして、検察当局の処置をお願いするという方法で進みたいと考えております。
  16. 大坪保雄

    大坪委員 どうか一つ十分な御究明を願いたいと思います。  そこで次にお伺いいたしたいと思いますことは、去る十二日の読売、その他の夕刊に——これは九日の予算委員会の際にも小瀧長官は責任者の処分を考慮しておるということを言われておりますが、十二日の夕刊には、何か閣議で責任者を処罰するという申し合せみたいなものがなされたというような報道がされておる。これは計画に無理があり、ないしは実行上無理があったということで、死亡者二人を出しておるという事実がありますから、責任者究明という問題があろうかと思います。そこで責任者の処置という点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  17. 小滝彬

    小滝国務大臣 先ほども申し上げましたように、今までのところはっきりとわかっておるものは、この計画とその実施ぶりというようなものでありまして、その部隊において、もちろん激励の目的でありますけれども、個々の隊員に対して上の者がどういうやり方をしたか、それが普通の限度を越えたというようには私どもも判断いたしておりますが、さらにこれをよく究明いたしませんと、それぞれの人の人権にも関することでありますので、一そうよく糾明いたしまして、その結果に基いて一体をなして判断しなければならないと思うのであります。個々の問題あるいはその実施方法のことを、今御指摘になりましたように、あまりに競争意識を出させ過ぎたということによるとすれば、そこにも関連を持つわけでありますから、私は個々の事実をよく掘り下げて糾明させて、そうしてこの計画実施ぶり、個々の事故というものを一体として判断を下して必要なる処置をいたす、こういう段階を経なければなりませんので、さらに警務隊の方の調査を待ちまして、間違いのない、公正な、しかも妥当な、厳粛な処置をいたしたい、こういう気持でおる次第でございます。
  18. 大坪保雄

    大坪委員 きわめて抽象的にお述べになったお気持というのはわからぬわけではありません。しかし従来のいろいろの例によりますと、私はだれにどういう責任があるかということをここで軽々に申し上げるわけではありません。あるいは行政監督上の責任もありましょうし、場合によれば二人の者が死んでおりますから、刑法上の過失致死というような責任もあるいは出てくるかもしれない。私はそれをここで申しませんが、こういう問題の将来の根絶を期待するためには、やはり責任をとるものははっきりとる、これは国会の内部においても私ども反省しなければならない問題ですが、最近信賞必罰というものが各界において全部欠けておる。これが事態を常に混迷というか、そういうものに追いやって、再びも三たびも繰り返して不祥な事態を起させておる原因をなしておると思うのでありますが、どうかただいまお述べになりました長官の御決意を、どこかで具体化するというおつもりで御処置を願いたいと思います。これは自衛隊法七条で、総理大臣以下命令系統がはっきりしております。その指揮命令ないし指揮監督に服する行動の部隊、上命下従のきわめて厳格な部隊でありますから、自然命令を下し、計画作成した方面にもただすべき責任は残るのではないかという感じがいたすのであります。どうかこの点は国民自衛隊に対する信頼を保持し、自衛隊員自衛隊に対する熱情と自信とを失わしめないという高い見地から、私ははっきりしたものをお出し願いたいと思います。  これは希望でありますが、続いてお尋ねいたしたいと思います。これは新聞記事でありますから、実際はどの程度のものかわかりませんけれども、それによりますと、この問題の取扱い方について隊内にいろいろの意見がある。たとえばいわゆる上官の暴行事件というものについても、これを認める認めないの意見があったり、これに対する批判もいろいろ持ち上ったりしております。それはあり得ると思うのですが、そういうことは大した問題ではないと思います。ただ新聞の記事に内紛が原因か、複雑な隊内事情というようなことを掲げて、ある新聞のごときは「以上のような状態から当局では隊内のもの(たとえば除隊者)が隊員を操っているのではないかとみて背後関係調査を行なっているが、すでに昨年八月除隊したSなどが線上に浮かび事件は他の面にも波及するのではないかと当局ではみている。」こういう記事があるのです。何かこういう事柄があったかどうか、これは私は隊内規律の問題のみならず、自衛隊の今後の行動を考えて、防諜という関係からしても非常に重大な事柄じゃないか。これは単なる新聞の報道にすぎないものであるのか、そういう事柄に似た事実があったかどうか、長官でなければ、おわかりになる関係者でもけっこうであります。
  19. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お尋ねの点でございますが、根本的に考えまして、自衛隊のような団体生活をしておるものでございますから、上官下官及び隊員相互の間において、ほんとうに愛情をもとにいたしました信頼と協力という精神が支配をしておりますれば、私はこういう事態は起きなかったであろうと思うのでございます。その点につきまして、当該の中隊につきましては、相当複雑な事情があるのではないかということは考えられますけれども、今どこにどういうふうな内紛があるかということは承知をいたしておりません。また背後者があるということも新聞記事で承知はしておりますけれども、私にはまだそういう報告は参っておりません。
  20. 大坪保雄

    大坪委員 その点も一つ今後十分究明をしておいていただきたいと思います。  それからこれはこまかいことのようでありますが、将来責任者の処分の問題とも関連してくるわけですから伺っておきたいと思います。それは不幸なくなられた二人の隊員に対しては、新聞紙上等では上官がこれを敢闘精神として賞揚したということもある。特進されておるようですが、その事実、そしてそれの理由。単なる儀礼的なものであるか、霊を慰めるというようなものであるか、ほんとうに敢闘精神として全自衛隊員にその範として示すべき理由があってのことであったのか、ということであります。
  21. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 第二のお尋ねの点でございますが、現在の自衛隊法の施行規則によりまして、「公務上の負傷又は疾病に因り死亡し又は不具廃疾となった者」につきましては一階級または二階級上位の階級に昇任させることができるという規定がございます。この規定に基きまして、千頭岸上の二人をそれぞれ一階級昇任させたという事実はございます。  敢闘精神をたたえるという点、これは私どもも当該者からも話を聞きましたけれども、決して死に至るまでのことをよろしいとする意味ではないのであります。自衛隊法に規定してありますごとく、自衛隊隊員は、服務の本旨といたしまして、「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもって専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを期するものとする」、こうあります。この条項に照らしまして二人の行為に対しまして敬意を表したものであるように承知いたしております。
  22. 大坪保雄

    大坪委員 わかりました。そこで大体の事情は明らかになりましたから、問題は最初私が申しましたように、今後自衛隊をどういうふうに運営していくべきであるか、これに対しては国民との関係、特に将来自衛隊を希望する青少年に対する関係及びその父兄とならるべき人々との関係等を考慮いたして、善後措置は講じていただかなければならないと思うわけであります。私どもが心配しますのは、非常に不幸な事態でありまして、二人に対しては深く弔意を表するわけでありますが、このことのために先刻申しましたように、国民一般が自衛隊に対する疑惑、不信の念を持つようなことがあってはならない。非常に意気込んで自衛隊参加して、国民の少数のものではあるけれども国民にかわって国を守る、場合によれば災害救助法によって公共のために働きたいという念願を持っておる青少年たちに、士気を阻喪せしめてはならない、さらに現在の自衛隊の上下の隊員諸君の訓練等に対する精神力を萎縮せしめてはならない、そういうことを私は心配するわけであります。そういう点を一つよく——これはもう私どもからかれこれ申し上げるまでもなく、長官初め幹部諸公は十分御了得の上で善後措置を考究されておると思うのでありますが、その点について一つさらに最後の締めくくりの意味において、長官の御決意を伺っておきたいと思います。  先日の毎日新聞の十三日の夕刊でしたか、「近事片々」の欄の中にこういう記事が掲げてあります。「死の行軍事件。」——近ごろ、だれが使った文句でありますか、こういう言葉が非常にひんぱんに使われてはやりものになっておるのでありまして、死の遠足、死の海水浴、死の登山、死の行進とか、要するに生命軽視の事項がきわめて多いのであります。「死の行軍事件自衛隊幹部に教える。河よりもまずネルソン伝を読め。」——地中海海戦のまっ最中、一人の水兵が海に落ちた、ネルソンは艦隊の進行をとめて救助させた、救助艇は危うく撃沈されようとした、ネルソンに対する絶対的信望が高まった、これが強い軍隊の秘訣だ、と書いてある。私はこれは、現在の自衛隊に対する同情の、かつ自衛隊幹部に対する激励の言葉だと思います。いわゆる文化人と称せられる人々は、きわめて悲惨なる言葉を使って、暗黒、暗やみというような言葉を使ってみたり、こういうことが起るのはすでにもう幹部の心がまえがおかしいのであるし、その幹部の心がまえというものは紀元節を復活するような、そういう逆コースにつながるようなものであるというようなことまで言って、この事件をきわめて冷たく批判し、言ってみれば、国民自衛隊との間をさこうとするような意図さえあるのではないかと察せられるような言論さえある。しかしながらこういう激励の言葉もあるし、どうか一つ幹部自衛隊諸君の意気を阻喪することなく、訓練も積み、国民の期待に沿うようにしてもらいたいとわれわれは思う。そういう気持をもって、今後の事態処理という事柄についての御決意を一つ伺っておきたいと思います。
  23. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいまのお話、まことにその通りでございまして、国民の信頼をつなぎます上でも、また自衛隊の士気を向上させます上でも、特に人格の尊重、人命の尊重、基本的人権というような点につきましては、民主主義の時代であるので、その言葉に十分合うような措置をとらなければならないのであります。さっき申し上げましたように、今度の事件については最も厳粛な態度で臨み、同時に今後再発を防ぎまするために、さらに一そう詳細にわたっても訓示し、あるいは機を見て全国にまたがっておりまする各部隊の責任者を招集してでも、よくこうした趣旨を徹底させたい、この決意で臨みたいと考えておる次第でございます。
  24. 大坪保雄

    大坪委員 いわゆる死の行軍事件についての私の質問は、この程度で終りたいと思います。
  25. 保科善四郎

    ○保科委員 ちょっと関連して。今の大坪委員質問なり御意見なり、非常に感銘をしておるものでありますが、私、四十二年間軍隊生活をやり、三回の大戦争に従事し、今もって私が、軍隊として、自衛隊として最も必要と思うのは良識の養成であると思う。良識のない軍隊は決して強い軍隊にはならないのです。昔から良民良兵といって、良兵たる者はやはり良民である。この点で、今度の事件を通して、良識の存在を若干疑うような点が非常に多いと思う。私はこの点で非常に心配をいたしておるのでありますが、どうしても国民の信頼をほんとうに回復して、今長官が言われるような、国民から愛される、ほんとうに信頼される軍隊になるには、良識をもって軍隊を作らぬといかぬ、自衛隊を作らぬといかぬと思います。結局私は何回かやりまして感じたことは、兵卒の大言壮語する連中というものはいくさに最も弱い連中です。ほんとうに従順によくこつこつと働いておる兵隊は、最も強かったということを、これは過去の経験によって私は自分でそういうことを実感しているのですから、何とぞ良識のある自衛隊をお作りになるように、さらに一そうの御注意をお願いいたしたいと思います。ことに軍紀の根本は、やはり人格です。そのことを特に私はこの事件に関連をいたしまして、私の経験上から私の意見を申し上げておく次第です。
  26. 大坪保雄

    大坪委員 引き続きまして、これは私が新聞記事で見たのであって実情はよくわかりませんが、去る十一日の朝日新聞だったと思いますし、その後十二日の朝日の夕刊等にも出ておりますが、北海道部隊で起きた事柄のようでありますけれども自衛隊員部隊から砲弾を持ち出して、それを古物商に売りに行った。売りに行って売却の途中で、砲弾の一つが爆発して重傷者二名を出したという記事であります。これは、いろいろ今日自衛隊にお気の毒な事件が起っている最中にまたしても起ってきたので、まことにどうもお気の毒にたえないのでありますが、しかしやはりうんだらつぶさなければいかぬ、またうみかかったものはうまさなければいかぬ、こういう時期がちょうど自衛隊についてももし必要であれば、その反省の時期でもなかろうかと思いますからお尋ねいたしたいと思う。この新聞記事の事実があるかどうか、あったとすればその事実のわかっているだけを詳細に一つ説明を願いたい、十二日の夕刊には常習的に売り渡しておったということまで書いてある。そういう事柄についてまでも一つ説明を願いたいと思う。
  27. 小山雄二

    ○小山政府委員 北海道でたまを持ち出した、これは実は持ち出したのではないのでございますが、そういう事件があったことは事実でございます。その事実を申し上げますと、真駒内に第一陸曹教育隊というのがございまして、これが射撃訓練のために東千歳のロケットの射場に参りまして、その近所に露営をいたして、訓練をいたしておったわけでございますが、その部隊に所属します渡辺という一士が二月の八日に、射撃が済みましたあとで標的その他の資材を回収に参りました際に、その付近の人がたまを拾っていくのに会いました。ところが渡辺一上が参りましたので、驚いてそれを捨てて逃げたわけでございますが、渡辺一士はそのたまをトラックの工具箱の中に入れまして、一日置きまして二月十日に、水を受領するために任務に出た際に、その途中任務に違反しましてそれを古物商に持って参りまして光り渡そうといたしたわけでございます。その際に二発目が、不発弾でありましたので落したために爆発いたしまして、店員二人が負傷したわけでありまして、この本人は直ちに警察に逮捕されまして、目下取調べを受けておるのでありますが、常習的にやっておったということではないのでございます。その隊自身のたまの出納その他は確実でございまして、一発の何もないわけでございますが、こういう困った事故を起しましたことばはなはだ遺憾に存じておるわけであります。詳細は御祭で取調べ中でございまして、取調べの結果によりまして、刑事的な措置はいたされることに相なるかと存じます。
  28. 大坪保雄

    大坪委員 そうすると、持ち出したのではないということですね。それを売りに行ったということは、間違いのない事実ですね。これはやはり軍紀が非常に弛緩しているということの結果から出てくるものではないかと思います。その点について、長官はどういうようにお考えになっておりますか。これに対する長官の御意見を承わりたいと思います。
  29. 小滝彬

    小滝国務大臣 このような事件が起りまして、非常に恐縮いたしておるのでございますが、一斑をもって全豹をはかっていただくのもいかがかと思いますけれども、少くともこういう事件が起りました以上、一そう自衛隊員を引き締めて、こういうことの再発することのないようにと存じまして、私就任早々でありましたが、さっそくこの事実を各隊に知らせて、こういうことは絶対に全国どこにも起らないようにしろということを幕僚長にも申して、この事実を参考書類にまとめて全国に手配いたしたのであります。今説明いたしましたけれども、これは決して常習的にやっておるというようなものでもないので、不発弾があると、実は隊の方でそれは処理するということになっておるけれども、この際は何でも吹雪で延期になっておった。ところが、そういう場合にはとかく近所の人が持っていって古物屋に売るというような事実もこれまであったようでありまして、この渡辺一士というのは運転手でありますが、それを見て制止して隊の方に返そうとしたのを、ついでき心でこういうことをしたということのようでございます。こういうことの絶対にないように、今後十分注意いたさせたいと考えております。
  30. 大坪保雄

    大坪委員 全国的に指示されたと仰せられたので、北海道以外にもこういう事柄はいまだかつて起っていなかったかどうか、この点を伺いたい。なお、今長官のお話でございますと、不発弾を隊で処理しているけれども、吹雪のためにできなかった、これを近所の人が売りに持ち出すことが従来あったようだというようなことでありますが、不発弾処理の状況は、そんなに近所の人が寄ってきているようなところでなされるのであるか。これはやはり非常に危険物でありますから、その保管ということはきわめて大切で大事なことだと思います。そういう保管の責任はどういうことになっておるのか。相馬ケ原演習場のように、米軍が撃ったたまが不発弾で、そこに遺棄されておる、それを一般民衆が拾うというのとはだいぶ事柄が違うようであります。その辺の真相をもう少し詳しくお述べ願いたいと思います。
  31. 小山雄二

    ○小山政府委員 自衛隊が射撃演習をいたします際には、各管区混成団に不発弾等の処理部隊がございますが、そういう射撃はしょっちゅうやるものではございませんから、その予定日にあらかじめそれに連絡いたしまして、その部隊が待機いたしまして、不発弾が発生しました際には、直ちにこれを処理することにいたしております。ただ、本件の場合はたまたま処理する際に非常に吹雪になりまして、その処理ができませんために、一日延ばしたわけでございます。その近所の人が拾いましたたまがそのたまであるかどうか、ちょっとはっきりしないのでございますが、そのときの実情からいたしますと、おそらくその不発弾だと考えられます。吹雪のために延ばした間に盗まれたという格好になっておるのでございます。普通の場合には、原則としては直ちに処理いたしまして、そういうことのないような処置をすることになっておるわけでございます。不発弾は特に危険でございますが、撃ちがらその他につきまして少し発見がおくれたり、回収がおくれたりする間に、付近の人に盗まれるという事故は、ほかの例でもたまたまあるのでございます。不発弾は特に危険なものでございますので、そういうことのないように制度も作り、またその実施も厳格に処置するような指示をいたしておりまして、一般の場合には正確に処置するようにいたしておる次第でございます。
  32. 大坪保雄

    大坪委員 この二月十二日の朝日新聞の夕刊によりますと、自衛隊北部方面総監部という意味でしょうが、「同部では昨年夏同演習場でタマ拾いが二人不発弾で死んだとき、北海道警察札幌方面本部からの問合せに対し、廃弾は無主物であると回答したため、警察側は、その後タマ拾いに集って来る民衆を窃盗で捕まえることができなかった。」というようなことが書いてあります。そこで思い出すのは、今回のいわゆる相馬ケ原演習場事件であります。昔の陸軍は、たまを撃った場合にはケース、薬莢を一つ一つ拾って片づけたものだそうです。従って、いわゆるたま拾いという者はなかった。ところが、アメリカはきわめて物量豊富の国であるせいであるかどうか、不発弾にしても薬莢にしてもほったらかしである。そこにたま拾いという現象が起ってきた、そこでああいう不祥事が起ったわけであります。この点は私ども日本側も非常に自粛しなければならぬと思っておるが、今の自衛隊は、薬莢、撃ちがら、不発弾というものを、この新聞記事によると無主物であるという回答をしたというのですが、そういう取扱いをしておられるかどうか、もしそうであれば、やはり相馬ケ原演習場と同じように、たま拾い民衆というものが相当あるだろうと思います。これは演習も妨げますが、また非常に危険でもある。そこでお尋ねいたしているわけでありますが、要するにケース、薬莢はほったらかしにする、ないし不発弾はほったらかしにして、無主物として放置されているかどうか、その点をお伺いしておきたい。
  33. 小山雄二

    ○小山政府委員 ただいまの撃ちがらもそうでありますし、不発弾はもちろんのことでございますが、決して無主物ではございません。政府の所有権に属しておるものでございます。なお、現在自衛隊で持っておりますたまはすべて供与を受けたものでございますので、しんちゅうの薬莢は回収いたしましてすべて向うに返還しております。これは供与品の返還に関する協定というのがございまして、それぞれ相談をいたしまして、返すものは返す、返さないものは返さないで処分して、その処分代は国庫に入れるという処置をいたすことになっておりますが、薬莢は全部回収して返還しております。演習弾のか品、鉄の胴体のものは、その都度米軍とまとまりましたものを打ち合せて協議いたしますが、これは大体のところはこちらにくれてしまう。従ってそれは払い下げをいたしまして、国庫の収入に入れるということにいたしております。
  34. 大坪保雄

    大坪委員 最後に御希望を申し上げておきたいと思います。今の御答弁によりますと、撃ちがらのごときものは、あるいは不発弾のごときものは決して無主物扱いはしておらぬ、政府の所有だということになりますと、この新聞記事はうそであるのか、警察がうそを言ったのか、この事態をもう少し究明しておいていただきたい。それから今回の北海道部隊のいわゆるたま持ち出し事件なる事件は、今の係官の御答弁によりますと、この新聞記事とは少し違っておるようでもある。そういたしますと、すみやかに真相——タイミングが問題である。真相を究明されて発表されたいと思います。国民に誤認、誤解をさせないようにされたい、これが私は国民の中に自衛隊の信頼をつなぐゆえんだと思うのであります。この点の御希望を強く申し上げて、私の質問を終りたいと思います。
  35. 相川勝六

    相川委員長 受田新吉君。
  36. 受田新吉

    ○受田委員 時間が迫っておりますので、簡明率直に自衛隊の死の行軍事件に関連してお尋ねいたします。  私はまずこの事件の審議をこの委員会で行い、本会議で行うにあたり、また自衛隊幹部の方々の発言をじっと聞いていると、何だか死が非常に軽く取り扱われ、そして君命重く生命軽し、あるいは海ゆかばみずくかばね、山ゆかば草むすかばねというような、かつてのわれわれにはまことに悲しかりし思い出をよみがえらすような印象を与えられてならないのであります。しかも今度の事件の処理にあたって、遺族に対してずいぶん処遇されたように当局は思っていられるようでありますが、御遺族の声をここでお伝えいたしますならば、遺族の一人千頭さんのお父さんはこう言っておられるのです。昔の軍隊のやり方と同じであって全く腹が立つ、自衛隊へやったことが親として情ない、こうおっしゃっておられる。また自衛隊隊員としてなくなられた岸上さんの奥さんは、新婚半年のまどらかな夢もまだ結び切らないという立場のお方であったにかかわらず、夫をなくされた身を伊丹の部隊葬へ運ばれたとき、あの葬儀場で無言のうちにとどめなくおえつを続けておられたということを聞いております。遺族のこのお気持は、よし靖国の家としていかに当局が強く特進を行い、隊のかがみとおっしゃろうとしても、御遺族ははっきりと自衛隊の今回の行為に対して無言の抗議をしておることをお忘れになってはならないのでございます。私はこの点におきまして、自衛隊の責任者の方々がどうお考えになっておられるか、まず結果としてもたらされたこの声をどう判断されるか、一言お伺い申し上げたいのであります。
  37. 小滝彬

    小滝国務大臣 まことに御遺族の悲しみもさぞかしと、心から御同情申し上げるものでございます。そして先ほどから御指摘の通り、こういう事件がこの自衛隊内に起ったのでありますから、その欠陥の所在がどこどこという最終的な断定はまだ下しておらないまでも、その責任者——どももまた重大なる責任を感じておりますが、その点は十分究明をいたしまして処置をとりますと同時に、また遺族の方に対しても十分法規の許す範囲内においてできるだけのことをいたさなければならないという気持で、先ほど人事局長も申し上げましたような処置をとったわけであります。議会もありましたので、私もみずから向うにおもむくことはできませんでしたけれども、弔詞を贈り、花輪を捧げまして、いささか霊を慰めるという気持を表明いたしたのでございまして、今おっしゃいましたような点は、私も十分承知をいたしておるつもりでございます。
  38. 受田新吉

    ○受田委員 私は今回の隊員の死に対しては、防衛庁当局は重大な責任を感じられなければならないと思っております。いかによしその経過に御弁解があろうとも、厳正な結果が生まれておるし、なくなられた方の御遺族がかく判断をするということはきびしい現実です。防衛庁長官、あなたは自衛隊の最高指揮官として総理大臣の指揮監督を受けられて隊員の統轄に当られるお方なんです。就任早々大へん悲しい事件が起きたとおっしゃっておられますけれども、大臣になられた当時は、突然降ってわいたような大臣の地位にしばし笑いがとまらなかったと新聞は報じておる。それほどお喜びになった直後の事件ではあっても、生命を尊重するという政治が国の基幹的な政策である以上は、隊員の二名の方のとうとい死というものは、結局防衛庁長官の責任問題にまで私は及ぶと思うのでございますが、御見解はいかがでございましょう。
  39. 小滝彬

    小滝国務大臣 私、先ほど申し上げた通りの気持でございまして、十分責任の所在を明らかにし、私自身も重大なる責任を感じておるということは先ほどの言葉で御了承願いたいと存じます。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 私はこの機会に、この死の行進に関連する幾つかの事件を簡単に時間をさいて申し述べます。すでに去る一月中旬に善通寺部隊にこれに類似する事件が起っている。最近は北海道にこれに類似する事件が起っている。また近く、伝えられるところによると、山口県の小月の自衛隊に遺髪を切り取り、つめを切り取って防衛出動に備えるために態勢を整えておると伝えられております。これら一連の動きは最近における自衛隊訓練が、何だかある目標に向って強くたくましく進軍せんとする動きに合致しているように思われてならないのでございますが、これらの事件の実態及びそうした何らか不安を抱かしめるところの古い軍国調への前進という懸念に率直な解決のかぎを与えていただきたいと思います。
  41. 小滝彬

    小滝国務大臣 今御指摘のような非常に好ましくない事件の起ったことも承知いたしておるのであります。国民から誤解されることのないように、もちろん訓練も必要でありますが、しかし同時にこうした行き過ぎたことをやらないように、これから私の力の限りを尽して、こうしたことの再発を防ぐようにいたしたいと考えております。
  42. 受田新吉

    ○受田委員 今私が申し上げた幾つかの例に対して確認されますか。
  43. 小滝彬

    小滝国務大臣 小月の部隊でつめを切らしたということは、私は練習として非常に行き過ぎておると思う。万が一にもそういう不幸なことがあれば、あるいはそういうことをしなければならないけれども、そういう髪を切るとかいうようなことは、平素から練習しなくても、いざというときにできることである。これはまた隊員の感情の上にも精神教育の上にもよろしくないと思いますので、これは確かに行き過ぎであって、是正しなければならぬと考えます。それからもう一つ善通寺のことも御指摘になりましたが、これもはなはだ不幸なできごとであったと思います。ただあの際には、前から非常なヘッド・ライトが参りまして、疲れておられたためについつまずいて倒れられて、その場所が不幸にしてがけに近いところであったために落ちられてなくなられたそうでございます。その意味でも今度の第三管区の際には、白い線を両方に引いておかないと夜また何かこういうことが起ってはならないというのでこれを立案いたしました方で——私は言いわけをするわけじゃございませんが、それを参考にしてそういうことの再発を防ぐ措置をとったそうでございますが、しかし非常な長距離に疲労を押して無理に強行することになれば、これは幾ら白い線を引いてもそういうことがあるかもしれないから、そういうことのないような処置をとりたいと考えております。
  44. 増原恵吉

    ○増原政府委員 北海道事件というのはどういうことでございますか。ちょっとお述べを願いたいのでございますが……。
  45. 受田新吉

    ○受田委員 北海道の事件は次回の委員会に詳細に資料を整えて御質問いたしますから、当局がまだ用意されておらないとすれば、あなたの方でも御調査願っておきたいと思う。  私はこの機会に、最近の自衛隊の動きに対してアメリカとの共同防衛の体制から、強制的に日本の軍隊が支配されようとする傾向のあることを恐れておる。それは昨年の十一月上旬米国の極東空軍司令官キューター氏が共同防空演習目的をもって日本の航空自衛隊演習参加をせしめ、源田空将の指揮下に日本の航空自衛隊参加して防空演習をやりたという事態に及びたいと思うのであります。  この事件は、前船田長官はこちらから進んで要請したのでなく、向うからどうかという御意見があったので、これに参加さしていただいたというお話でございましたけれども、当時極東空軍司令官キューター氏は中近東の緊迫に備えて太平洋諸地域における全米軍はすべて待機命令を出されておる、こうスポークスマンを通じて発表せられておる。そういう直後に行われたこの共同防空演習なるものには何かくさいものがあるとわれわれは断定せざるを得ない。しかもこの演習には韓国も入り、日本と韓国と米国との合体による防空演習であったとわれわれは聞いておりますが、その実相はさよう心得て間違いございませんか。
  46. 小滝彬

    小滝国務大臣 私は当時の状況を十分承知いたしませんけれども、結論から申しますればただ一つ受田さんと同感の点があります。それはイスラエルの軍隊が十月二十九日にシナイ半島に出ておりますし、三十一日に英仏が上陸するというようなニュースがあり、この演習はたしか十一月六日ごろでございますから、時期的に受田さんのおっしゃるような誤解を招くときであったので、その点は私は過去のことを批評するのじゃございませんけれども、私の気持としてはまずかったと思います。しかしながらやった人の意図というものは、年々アメリカはこういう演習をやっている。ちょうどその際に日本の航空自衛隊の方でも訓練を終了いたしましたF86が六機ばかりあったので、これはそういう催しがあればちょうどいい訓練になるという意味で一緒に訓練を行なった。しかしあくまで指揮は源田空将が行なったというのであります。  もう一つそのときのことを私、調べてみまして、あるいは手落ちじゃなかったかと思うのは、米軍側が先に発表して日本側が発表しなかったから、何か向うから強制されたかのごとき感を与えたかもしれませんが、実情は決してそうじゃなかったということであります。  韓国軍もとおっしゃいますけれども、これは向うの上空でやったので、日本の方はもともと日米間の共同防衛という建前も持っておりますから、ちょうど向うのやる機会をとらえたにすぎないものと私は思っているのであります。しかもそのとき加わりましたのも、たしかF86六機、T33が延べ一日十機程度でございまして、そう大規模なことをしたというようなものでもございませんので、この点は今申しましたように、率直に言って時期的にまずかったのではないか。これは国民感情というものも考えなければならぬ。ほんとう国民に理解してもらうには、そういう点も——ただ単に空軍は勝手なふるまいをする、陸上自衛隊の方もただその訓練というのでなしに、国民感情というようなものも考えなければならないので、そういう点であるいは遺憾な点があったかもしれませんが、その本旨とするところは、決して受田さんの御指摘のようなものではないということを申し上げたいのであります。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 この防空演習の指揮官、事実上はキューター米極東空軍司令官がレーダー基地から指揮をとったということは明々白々だと伝えられている。船田さんは、日本は日本独自に訓練をやったのであって、これは源田空将が指揮官としてやったと仰せられているようでございますけれども、事実上米軍のレーダー基地からこれらの連合演習の最高指揮が下されておったということは、まぎれもないとわれわれは断定するのでありますが、そういう形に置かれている日本の自衛隊のあり方というものに対して、長官、あなたはいかなる見解を持っておられるか。自主性を失った日本の自衛隊が、日本独特の自衛隊の性格を強く打ち出そうとして訓練等に無理が起り、ある目標に向って日本の自衛隊の体制を高めようという方向をたどらざるを得ない事態になるという心配をお持ちではないか、お伺いしたいのでございます。
  48. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいま昨年の演習の例を申されましたが、これは共通の利害を持っておる部隊が共同的にけいこをするということは、私は必ずしも排除すべきものではないと思います。ただレーダーの例をおとりになりましたが、不幸にしてまだ日本の方はそれだけレーダー設備については体制が整っておりませんから、あらかじめ話し合ってそれを利用する。これは機械的に利用するにすぎないのでありまして、そういうことをやることは現在の段階においてはやむを得ないことと存じます。しかし私どもは、御指摘のように、なるべく早く日本は最小限度の防空力を持とうということに努力をしておるのでありますから、今のような誤解を招くような組織でなしにやり得る段階に達すると思います。  今、アメリカの方に引っぱられていくおそれがないかとおっしゃいましたけれども、それはわれわれの力によって必ず日本が自主的に防空力を備えるという努力によって、よりはっきりとした体制を確立し得ると考えているのでございます。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 私は日本の自衛隊のあり方に非常な不安を抱いているわけですが、あなたはしばしば政治優先、文官優位の原則を叫ばれておるにもかかわらず、源田空将はこの演習において、他のいろいろな問題とはかわって庁議にも諮らないで、独断でこの演習参加したとも聞いているのでありますが、こういう重大な合同演習というような問題においては、当然防衛庁議を開き、首脳部の見解をただしてしかるべきものではなかったか、その実情を御報告願いたいのです
  50. 小滝彬

    小滝国務大臣 日常の訓練というものについても一々防衛庁本部に申し出るということになりますと、その機動性と申しますか、能力にも関することでありますから、日常の訓練についてはそういう取り計らいをする必要はないと思います。しかし今御指摘の場合については、私の承知しているところでは、はっきりと防衛庁長官の許可を得てやったものだということでございまして、私はもちろんそういう共同的な演習をするようなときには、私の方にそれを請訓すべきものであると思います。そうして今御指摘のように、源田空将だけでやったのではないというのが事実のようでございます。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 庁議を開いたというのではなくて、長官の許可で片づけたと今おっしゃったが、こうした外交的の問題である以上は、閣議へ諮って決定しなければならない重大な問題だと思いますが、閣議決定はしましたか。
  52. 小滝彬

    小滝国務大臣 当時のことをよく承知しております増原次長から答弁いたさせます。
  53. 増原恵吉

    ○増原政府委員 先ほど長官から申し上げましたように、この演習は米軍としては恒例的に秋のころやる演習でございます。これは去年参加をしましたが、その前はまだわが方のF86、T33というようなものが、この演習参加するまでの訓練度に達しておらなかったために、参加するという問題がありませんでしたが、昨年はちょうど今申されましたように、F86六機が訓練を終ったあとの時期に、この防空訓練が行われるということでありましたので、米軍の方からも非常にいい時期であるから一緒に参加をしたらどうだろうという申し出がありまして、これを長官に申し上げて、長官の許可を得て参加をした。参加をしましたのは申し上げたように防空部隊としてはF86が六機でございます。目標機としてT33が延べ十数機参加をしたわけでございます。そうした性質の訓練でございますので、長官長官限りとして決済をされ、これに参加を認められましたので、閣議に諮るというふうな措置はとられなかったわけでございます。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 私はそういうことを軽々しく閣議にも諮らないで独断でやられるというようなことは、この行政協定二十四条の共同防衛に進む段階としても、これはきわめて重大な欠陥だと思っておりますし、また日本の自衛隊国民の声の中に溶け込まないで、自衛隊の一部の人とアメリカの部隊と結ぶという危険も多分に包蔵されておると思うのです。こういうところに政治優先の原則をいかに叫ばれましても、長官、あなたの配下の人々は、あなたの考えとは逆な方向に制服の権限と主張をほしいままにして横暴をきわめようとしておられる。あなたを初めそこにおられる参事官の方々は、人間的にりっぱな方です。私はあなた方に深く敬意を表するものです。こうして連日国会においでになられて、庁議を開くにも支障が起るほどで、おそらく夜分にかけて御苦労をしていただいておるだろうと御同情を禁じ得ません。しかしあなた方の御苦労のいかんにかかわらず、文官優位の原則は一つ一つこわされていく。むろんあなた方御存じの通り、自衛隊の施行規則の別表の第六の中には、制服の人が、その他これに準ずる立場で、参事官になれるような道が開かれておる。旧職業軍人であった大将が防衛庁長官に擬せられるという情勢にあった、こういうところを見ますと、あなた方の御努力にかかわらず、陸上、海上、航空の自衛隊は、それぞれ独自の動きをして猛烈な訓練を行い、ある目的に向って前進しようとしておる動きが多分にあるのです。今のうちにしっかりしておらないと、あなた方が知らざる間に、あなた方の支配下にある自衛隊は、あなた方を足元から食いつぶす状態になることを私はおそれておるのです。ここをしっかりした信念で討議をしていただかないと、思わぬ結果が起ることを長官御確認していただけますか。
  55. 小滝彬

    小滝国務大臣 仰せごもっともでございますし、激励大いに感激いたしました。大いにそういうことのないように最善を尽したいと考えます。
  56. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 関連して。今の共同演習の問題ですが、増原さんのお話によると、T33が仮装敵機になって入ってくる。これをとらえて要撃する演習だった、こういうお話しですが、日本の現在のごとき航空基地あるいは敵機をとらえるレーダー網、こういうものを考えてみますと、非常に重大な問題が出てくると思います。御承知のようにレーダ一網は二十数カ所日本国内にあるそうです。これはすべて今米軍の指揮下にあるわけです。このレーダー基地でとらえた敵機はすぐどこへ通報されるかと申しますと、各戦闘機の要撃基地あるいはそれの指導をしている中心地に連絡をしてくる。この連絡は大体私たちの想像では、三沢あるいは東京のジョンソン、九州の板付と日本全国を三分割して支配している基地に連絡がくる。ここでこれが敵機なりやいなやを判定して、これに対する要撃の態勢をすぐとるはずだと思うのですが、この間に源田空将がどこにおられたかということでありますが、源田さんはたしか名古屋の第五空軍に駐屯をせられたはずです。そういたしますと、仮装敵機が入ってきてこれをとらえて要撃の命令が出るまで、おそらく名古屋の第五空軍の源田さんの手を経由する部分はないはずです。もしそういう部分があるとすれば、要撃に非常に時間がかかり、要撃の意味をなさない。こうなってくると源田空将が第五空軍に駐屯をしたとしても、それは日本軍の指揮をしておったとは言い得ない。ただお飾りであって、事後報告がこれにもたらされただけではないかと私たちは想像いたします。私は専門の軍人ではありませんから、事実について多少の想像の違いはあるかと思いますが、しかし現実においてこうした共同演習をするということは、日本の空軍の指揮権をアメリカの下に入れてしまうという結果を生じている。このことは争い得ないであろうと私は思うのです。もしこういうふうに共同演習をすれば、共同指揮とは名のみであって、実はアメリカの指揮下に日本空軍が入ってしまうという事態になる。こういう演習を毎回々々重ねていくということは、一体どういうことを意味するか、こういうことを私たちは考えてみないわけにはいきません。  そこで行政協定の二十四条を見ますと、「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ」、「直ちに協議しなければならない。」こうなっておるのであります。協議によって双方の指揮権あるいは双方の行為がきめられていくはずであります。ところが現実に空軍演習、共同演習という名のもとに、実は日本軍がアメリカ軍の指揮下に入ってしまう既成事実を着々重ねていくということは、終局的にはこの行政協定二十四条の規定を裏からひっくり返しておる、無にしてしまう。こういう行為と私たちは考えざるを得ないのであります。現場における第一線将校あるいは現場における将軍たちの考え方は、自分の指揮している軍隊についてだけの問題でありましょう。広く日本の国のあるべき姿、あるいは行政協定の問題等々についての考慮をせられないのは当然だと思います。だがしかし、それをチェックしてそういえ事態を生ぜしめないのはあなた方の責任でなければならないと私は思います。それを先ほど受田さん言われるように、長官だけの承諾でこのことをやってしまうというようなことはあまりにも軽率である。一体行政協定二十四条を無にしてしまうような、こうした既成事実を積み重ねられていく、こういう共同演習についてあなた方は今後どうお考えになるのか。日本軍の指揮権をアメリカにゆだねてしまうようなこういう共同演習を今後も考えていかれるのかどうか。もし考えていかれるとするならば、閣議にかけるなりあるいは国会にこの問題を相談なさるなりして問題を処理していかれるおつもりなのかどうか。この行政協定について私たちは党として反対をいたしておりますが、しかしこれすらもがあなた方によって裏からひっくり返されていってしまう。こういうようなやり方に対して、私たちは心から悲しまざるを得ないのであります。どうぞ今後こういう問題が出て参りましたときにどうなさるか、はっきりおっしゃっておいていただきたい。
  57. 小滝彬

    小滝国務大臣 行政協定二十四条は非常事態に対する特殊の協議事項でございまして、協議の上で共同措置をとったり、また安全保障条約第一条の目的を遂行したりする。この二つのために直ちに協議しなければならないということですから、協議をすることによってやるわけです。今のはそういう非常事態ではない。これが積み重ねられてくると、協議もしないで一方でやるんじゃないかというお気持での御質問かと思いますが、この前のときにおいても、双方が協議して、日本の航空自衛隊の方は源田空将が受け持つということになったようでありますから、決して一方的に、一方が両方に対して指揮をしたというような事実はなかったものと了解いたしております。ただしかしレーダーのことを例におあげになりましたけれども、これはいわば友邦国からの情報を利用するというような意味にも解せられるのでありまして、これは機械的に行われるものでありますからそれを利用したというにすぎないのであって、航空自衛隊に関する限り、あくまで源田空将が指揮したものでありまして、この点は一つ誤解のないようにお願いいたしますと同時に、レーダーの制度につきましても、われわれの方の技術者の養成も進み、十分準備が整いましたならば逐次日本側にこれを接収いたしまして、今飛鳥田君の御指摘のように、日本は日本としてこれを利用し、相互に利用するという必要がありまする場合には、それに対しての協定をするという措置をとるべきであろうというふうに考えております。
  58. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の問題については、事実の問題をもう少しよくあなたの部下の方に聞いていただきたいと思います。源田さんがたなざらしであったことはもう事実だと思います。それはそれといたしまして、今レーダーのお話がありましたが、レーダー基地が何カ所か日本軍のかに移管をせられるという話が出ておりますし、防衛庁の方でもその準備を整えておられるようであります。しかし日本に二十数カ所あるレーダー基地のうち、三つないし四つが日本軍に引き渡されたといたしましても、レーダー基地は、日本の中にあります全レーダー基地が総合的な行為をしなければ、全然その効果を発生いたしません。四つ日本に渡った、この四つは日本だけで勝手にやる、残った二十幾つはアメリカだけで勝手にやる、その相互の間に何の連絡もないし、たまたま事務的な連絡があったという程度では役を果さないわけです。従ってこれを一体として指揮し、これを統括していく必要が出てくるだろうと思います。そうなった場合に、一体日本軍に引き渡された幾つかのレーダー基地の指揮権はどうなるのか、こういう点について私たちは常々疑問に思っておるわけです。ただ日本の兵隊は扱うだけであって、実際はアメリカ軍の指揮下にある、こういう状況が出て参るといたしますならば、次第に日本軍はアメリカの指揮下に入っていく、こういう危倶を持っておるわけであります。そうした点で今受田さんの申し上げました共同演習問題は、非常に重要なテスト・ケースだったろうと思う。共同演習の問題においてアメリカの指揮下に入るような態勢をとるとすれば、今後レーダー基地の引き渡しを受ける問題でも、やはり強いことは言えないんじゃないか、またアメリカに指揮される状況が出るんじゃないか、こういうことを私たちはおそれておるのであります。どうか一つレーダー基地が日本に移管せられます場合に、米軍の指揮下に働くのか働かないのか、この点明確にお答えをいただきたいと思います。
  59. 小滝彬

    小滝国務大臣 最初から全部引き受けるようになりますことが望ましいことでありますが、実際問題としてはそういうことはできない。そこで日本の引き受けますものについては、もちろん日本側が必要な運用手続を作るのであります。御指摘のように、その場合にも米軍側との連絡をよくすることは必要でありましょうから、そういう点は考慮に入れて、わが方はわが方としての特定の運用手続を作るのでありまして、こちらが引き受けたレーダーサイトに関する限り、あくまで日本側の支配するものであり、日本側の運用手続によって運用せられるものでありますから、それでもって直ちに米軍側の指揮のもとに入ったということは言えない。ただ現実の問題として、なるほど中心の基地でありますから、そういうものを利用するだけであって、指揮系統におきましてはあくまでわが方のサイトはわが方にあるということになる次第であります。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 時間が迫っているので、今申し出もありましたからこれでおきますが、防衛体制につきましては今飛鳥田委員からも申して下さったので、次回の適当な機会にゆっくり御質問することにしますが、いま一つ今回の事件について、次回までにぜひ片づけておかなければならない問題は、あなた方が今まで調査された結果を拝見しますと、隊員の率直な声が出ておりません。隊員で非常に虐待を受けた人々の声は私の方では幾つかここで確認されているものがあるのであるから、それをここで報告していただきたいのです。自衛隊隊員は常に、三月の満期になったらおれはやめるんだ、あとに続く人がいなくなるだろうという不安を与えている人もあるわけです やがて自衛隊の募集に影響が起り、そこで徴兵制をしいて、強制的に壮丁を徴兵するというようなことになるおそれすらも私たちはあると思うのです。こういうことを考えると、今回の半作をいいかげんに処理することはできないわけでございますから、隊員の中に率直に述べている暴行、虐待をあえてした人々の実例、隊員のこういう声があるということをここであなたの方からお示し願うことを私は希望するのです。それができなければ、この次に私の方からなまの声をお伝えすることにいたします。十分用意はいたしてございます。  そこできょうは時間の制限で一言だけ確認しておきたいことは、憲法の基本的人権と自衛隊訓練の限界です。憲法の基本的人権を尊重して、その中で訓練を行う限界点をどこに置いているかということ、特に自衛隊訓練の遵守事項の中には、自衛隊法の施行規則の中にはっきりと服務規律につきましてうたわれておりまして、「隊員の遵守事項」の中に「隊員は、左に掲げる事項を守らなければならない。」として、「部下の隊員を虐待してはならない。」という自衛隊の大原則があるわけです。この大原則をあえて犯して、今日も新聞の写真を拝見したのでありますが、疲れ切った隊員が肩につかまって行くところを、あたかも青鬼が青竹を持ってうしろからせき立てるように控えておる写真を拝見しました。長官も拝見されたと思う。われわれこういうあさましい行軍の実態であったかと思って、まことに断腸の思いがしたのでありますが、憲法に掲げる規定を、自衛隊訓練はどの程度にこれを遵守して目的を達しようとしておるのか、という点を最後にお尋ねして終りたいと思います。
  61. 小滝彬

    小滝国務大臣 十分御趣旨を把握し得ないのでありまするが、もちろん憲法に規定されていることはすべての国民が守らなければならぬ、自衛隊が例外であろうはずはないのでありまして、基本的人権の尊重ということは当然最初の大前提であるわけであります。それを侵さない限度において、訓練は節度を越さないようにする。そして今写真のことが出ましたけれども、その趣旨としては、隊内においてなるべく落後者を出なさいようにお互いが助け合っていこう、激励し合おうという気持だったと了解いたしますけれども、それが妥当性を欠き、行き過ぎあるいは虐待と見られることが絶対にあってはなりませんので、そうした点については、あなたの言葉を借りて言えば、憲法にある基本的人権というものを十分尊重するという趣旨において行動させたいと考えております。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 航空自衛隊の中にもやはりこれに類似したようなことがありはしないか、ことしの一月だったかと思うのですが、天龍川の河口で指宿二等空佐ではないかと思いますが、殉職された方があります。接触によって墜落されたとなっておりますが、自衛隊の操縦者といえども、非常に疲労しているのをせき立てて訓練参加させるとこういう事故が起る、こういうことになれば結局死の航空というものがここに生まれるわけです。私は指宿二等空佐が殉職された原因はそこにあるのではないかという不安を最近抱いておるのでございますが、これは陸上のみならず航空にも海上にも両様のことが相次いで猛烈な訓練のもとに行われるという、生命軽視の傾向があるのではないかという不安の一例に申し上げたのでございますが、これに対しても御回答を願いまして、次回の委員会までにわれわれとしても十分防衛庁のとった措置に対する態度をきめたいと思います。
  63. 小滝彬

    小滝国務大臣 訓練しなければならない部隊におきまして、部隊長としてはその部隊能力増進ということをもちろん今度も考えなければならないわけであります。しかしながら疲労によって操縦を誤まるようになるとか、あるいはそのために死亡するというようなことは、もうすでにその訓練の必要の限界を越したものでありますから、絶対にそういうことのないようにさせたい。これを深く決意いたしまして、その方針で今後進んでいきたいと存じます。
  64. 相川勝六

    相川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十九日火曜日の午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時四十三分散会