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1957-03-01 第26回国会 衆議院 逓信委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月一日(金曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 松井 政吉君    理事 小泉 純也君 理事 竹内 俊吉君   理事 橋本登美三郎君 理事 廣瀬 正雄君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 松前 重義君    理事 森本  靖君       川崎末五郎君    上林山榮吉君       齋藤 憲三君    椎熊 三郎君       濱地 文平君    粟山  博君       佐々木更三君    原   茂君  出席政府委員         郵政政務次官  伊東 岩男君         郵政事務官         (電波監理局         長)      濱田 成徳君  委員外出席者         参  考  人         (日本民間放送         連盟理事)   金子 秀三君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    小松  繁君         参  考  人         (東京大学教         授)      千葉雄次郎君         専  門  員 吉田 弘苗君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  電波監理及び放送に関する件     ―――――――――――――
  2. 松井政吉

    松井委員長 これより会議を開きます。  本日は電波監理及び放送に関する件について、参考人より意見を聴取いたします。  まず参考人の方々に一言委員会を代表してごあいさついたします。参考人皆様には御多忙中にもかかわらず本委員会のために御出席をいただき、まことにありがとうございました。どうぞ本委員会のために皆さんの忌憚のない御意見を十分御開陳願いたいと存じます。御参考までに本日の議事の要領を簡単に申し上げますと、まず電波監理及び放送に関する件中、テレビジョンチャンネルプランテレビジョンによる教育放送FM放送カラーテレビジョンその他電波及び放送に関する当面の諸問題等について、参考人皆様より順次各十五分程度の予定で御意見の開陳を願い、次に各委員の質疑によって随時皆さんの御意見を聴取することになっております。それでは順次御意見を承わります。千葉参考人
  3. 千葉雄次郎

    千葉参考人 最初日本放送政策の問題についてちょっと考えてみまして、ここに項目に上っております点について私の意見を述べたいと存じます。わが国放送政策は、御承知放送法の第一条に大方針が掲げられております。それによりますれば三つ原則国民最大限放送が普及されてその効用をもたらすようにするということ、それから放送不偏不党、真実及び自律を保障することによって、表現の自由を確保する、また放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義発達に資する、こういう原則によって、放送公共福祉に適合するようにこれを規律するというのが、この放送法の趣旨である。そしてその放送が健全な発達をしていくようにする。わが国放送というものは、あくまでも公共福祉に適合するようにこれを規律していかなくちゃならぬ、これは申すまでもないことでありますが、この種の放送というのは、もともと公共利益に非常に関係の深いものを使い、また使わせるについては、あくまでも公共的立場から考えていかなくちゃならぬというようなことは当然であると思うのです。御承知のようにアメリカでも放送についてはFCC、連邦通信委員会がこれを規律しておりますが、これの方針でもやはり公共利益公共の便宜、公共の必要という三つ基準によって放送事業者をきめていき、電波割当をきめるというやり方をしておる。このアメリカにおける三つ基準というのは、あらゆる公共事業を通じての原則であると私承知しております。いやしくも公共事業に携わるものを選ぶというような場合には、やはりこういったような原則が適用せられる。わが国において放送法によって規律されるところの放送事業者というものをきめていく、まず電波割当をきめるという場合においても、あくまでもこういった公共利益立場公共福祉立場、こういう見方を離れることはできないというふうに考えられるわけなのです。今問題になっておりますテレビジョンチャンネルプラン、この割当基準は昨年できまして、今回改正が問題になつておりますが、この基準をきめるに際してもどういう観点からこれを見ていかなければならないかというと、やはりあくまでも公共利益立場公共福祉立場、この観点を離れることはできないと思うのでございます。  このテレビチャンネルプランについてはさきに決定した基準がございます。この基準もむろん公共福祉立場からきめられておるものでありますが、今回それを十一チャンネルにして、これをどう割り当てるかという問題が起ってきておる。その際考えなくちゃならぬ問題は、この際チャンネルを多くすることが果して公共利益に合致することであるかどうか、これをやはり虚心たんかいに考えていかなければならないのじゃないかというふうに考えます。むろん放送法第一条に言っておりますように、放送国民最大限に普及される、そしてその効用をもたらす、それは第一の原則でございまして、これは現にある放送基準においてもそのことがうたってあります。でありますから、その限りにおいて最大限に普及されるようにこの割当基準を用いるチャンネルがさらに使えるようになれば、そういう最大限に使えるようなやり方を考える、これは当然でございます。しかしすでに幾つかの放送局が認められておるところに、さらにこれをふやすというような場合においては、これをふやすことが公共利益であるかどうか、あるいはふやすことによってよりよくなるのか、より悪くなるのか、これははなはだ率直なことを申しますと、テレビのようなメディアにおいては、ふやすことによって悪くなる場合も十分考え得るのでございます。それで.ありますから、虚心たんかいに現にあるものをさらにこのまま向上させることがいいのではないか、さらに向上させるためにはチャンネルをむしろふやさない方がいいのではないか、あるいはまたふやした方がよりよくするということの保証があるかどうか、その種の問題をこのチャンネル割当については特に考えなければならぬのではないか。これをことに大都市――御承知のように現に東京ではテレビ放送三つございます。こういうように非常に数もすでに多くなっており、複数になっておるテレビチャンネルをさらにふやすという場合に、これは真剣に考えなくちゃならぬ。率直に申しますと、テレビ番組内容というものは決して満足すべき状態にはないと私は考えております。これはテレビの非常に発達しておりますアメリカにおいても、テレビ内容が非常に悪いというこがしばしば識者の問題になっておる。わが国においてもテレビ内容向上ということは、われわれ教育に携わっておる者としてはこれは決してゆるがせにすることのできない問題だと思っておるのです。そういう観点からしますと、この際テレビ内容チャンネルをふやすことによって、果してよくすることに貢献し得るかどうかということは、非常に真創に考えなくちゃならぬ。ひょっとするとこれは悪くなるのではないか。もしそのような懸念があるという場合には、やはりこれは何らかの手段をもってこれを規制することが必要ではないか。ただ単にチャンネルをふやすことが可能になったというだけですぐその種のことをやっていいか、割当をしていいかどうか、これは問題ではないかというふうに考えます。この種の公共的な事業においては、単にテレビばかりでなしに、たとえばほかの交通機関の場合にしても、当局許可認可の要るものについては、やはりそれを許可することによって公共福祉が増大するかどうかということが一つ基準になるわけです。先ほど言ったアメリカのパブリック・インタレスト、パブリック・コンヴィニアンス、パブリック・ネセシティ、これらの点からそれらは考慮しなくちゃならぬ。自動車を通すことのできる道路があるからといって、何本も競願自動車を許可しないというのは、そういった考慮があるからだと思うのです。あるいはまたタクシーは幾らでも現に作られる、しかしタクシー台数を制限するというのも、いたずらにタクシー台数をふやしたらこれは公共福祉に適合するかどうかというと、より弊害の方が多くなると考える場合には当然規制を受ける。放送のような場合においても、これは特に言論に関することでありますから、放送内容当局規制が及ぶというようなことは十分警戒しなければならないのでございますが、しかし国家の放送政策、つまり公共福祉を増進していくという建前からして、これがマイナスの面が現われることのないように、新しいチャンネルを利用し得る場合においてもこれを規制することを考慮しなければならぬのは、当然なことではないかというふうに思うのです。つまりこのチャンネルを多くすることができるという場合においても、それが文化向上に役立つかどうか、ひょっとしては文化の堕落に拍車するおそれはないであろうかどうかということ、それからわが国の場合もう一つ考えなければならないのは、経済的な問題でございます。  わが国の経済というものは、最近非常に好景気ではございますが、アメリカとはとうてい比較にならない。実力からいえばおそらくイギリス以上であるとも言えないと思うのでございます。イギリスでは御承知のように、商業テレビというのは一地区において一つでございます。プログラム会社幾つかございますが、ロンドンで見ることのできるテレビというのはBBC公共テレビと、それからITAの傘下にあるテレビプログラム二つと思います。一つはウィークデーのもの、一つは日曜を引き受けているもの。でありますからBBC番組のほかには一つということになっておる。しかもこういった商業テレビBBC内容を競ってはおるのですが、内容を競うことによってよくなるというだけの保証がない。ひょっとすると、これは広告代によってまかなっていくので、悪くなるかもしれぬ。その場合に、質が悪くなるのを防ぐために、政府は御承知のようにたしか十万ポンドを補助することができるように法律できめられております。こういった事情を考えますと、わが国においては東京において現に商業テレビ二つ、大阪において一つ、その他の大都市にもある、これはりっぱにやっておられるわけでありますが、しかし今後この種のものがどんどんふえていって、そうして広告のみにたよって、さらに内容のより以上の改善を期し得るかどうかというと、これはかなり慎重に考慮されなければならぬ問題であると思うのでございます。そういうわけで私はこの第一のテレビチャンネルプランについては、一体現在以上にチャンネルを多くすることが、ことに大都市等において多くすることが公共福祉に適合するかどうかということについては、きわめて慎重な考慮をしなければならないものというふうに考えております。  それから第二のテレビジョンによる教育放送の問題でございますが、これはつまり使い得るチャンネルをいかにふやすかという問題になるだろうと思うのです。放送機能として考えられることに、BBCのチャーターにうたっているところによりますと、放送機能というものは娯楽報道及び教育三つであるというようにいっております。おそらく現代においてこの重要なるマス・コミュニケーションメディア機能として、この三つはどれを欠いてもいけないものと思うのです。やはりこの三つ機能十分均衡のとれた使い方をしていくべきものと私は考えておるのであります。今申し述べましたチャンネルをふやすことによって、文化向上に寄与するかどうかという問題は、主として娯楽番組などが競争によってよくなるかどうかという問題でございますが、さらにこれだけの重要なコミュニケーション媒体というものを娯楽だけに使う手はない。それによって教育をもっと普及させる、国民教養をもっと高めるのに役立たせる、そういう道具としてこれを使うということは、この種の非常に便利な媒体使い方として当然なことであると思うのであります。現にテレビジョンにおいて教育番組がないわけではございません。しかしもっと教育的な使い方ができる。ことに放送の中でも、テレビジョンはある意味からいうと、いわゆる視聴覚教育には最も適したメロディアである。であるからこれをもっと教育方面に使うべきであるという意見は、アメリカその他において教育関係の学者がしばしば説いているところであります。そうしますと、現在の制度でそういった教育放送をやる要求に十分沿い得るかどうかということがまた問題になるのでございますが、この割当基準案においても、教育についてははなはだ関心を示しておりまして、この第六項の改正案で「学術、技芸、職能教育等もっぱら教育的効果目的とする放送を行う局の設置を必要かつ適当とする場合においては、その実施を可能にするごとく考慮する。」という一項がございます。これはテレビ使い方としては当然考慮さるべきものだというふうに考えるのでございます。ただしかしこれは、巷間伝えられるところ――私のところなどにもいろいろ書類が参りますが、それらを見ますと、商業的基礎において教育放送実施しようという計画もあるやに承知しております。実はアメリカあたりの実例を見ますと、商業的基礎において教育放送をする、あるいは教育番組のみを主とした放送局を作るということは、少し無理ではないか。少しどころではない、私は非常に無理ではないかというふうに考えております。教育というものは非常に大事である。わが国放送制度では、放送協会という公共的企業体があって、聴視者から聴視料を取ってやっておる。あるいはこれをこういう公共機関にやらしてはどうかということも考えられるわけであります。テレビ放送というものはかなり費用がかかる。それをまかなうにはわずかの広告料程度ではまかなえないとすれば、やはりNHKのような機関で、聴視料を取っておるところに、義務としてその種の教育放送をやらせる、これは私は一つの案ではないかと思うのです、その場合に考えられますことは、教育というものは当然不偏不党でなければならぬ。その場合、NHKにそういうものをやらすということは、いわゆる官僚統制的番組といったようなものになるおそれはないか。ちょいちょいそういう声も聞かれるようであります。私はこの問題は放送法改正の問題と引っからんでくると思っております。実は私は昨年放送法改正の議がありましたときに、この改正審議会委員になって多数意見に反対いたしました。この多数意見並びに当局の試案に反対いたしました理由も、その種の改正によって、現にある放送法第一条の原則による目的を達成することができない。放送法第一条の目的が傷つけられるおそれがあるということを考えまして、私はこれに賛成することができなかったのであります。今日本放送協会のような公共企業体にその種の教育放送のようなものを義務としてやらせるということにしますと、ますます公共企業体事業というものは不偏不党のものでなくちゃならぬという保障がなければならないわけであります。私は現にある放送協会というものが、一部で伝えられるように官僚の支配するところとは考えておりません。放送法にうたっている通り放送不偏不党自律というものはこれによって確保されていると考える。そういう現にあるこの日本放送協会の性格を変えることなくしてこういうことをやり得るならば、私は民間商業的企業体でこの種のものを行う場合よりも、はるかに公共利益に適合しているというふうに考えております。  そのほかFM放送カラーテレビジョンなどについての調査項目があげられておりますが、この点については私技術的の専門家でございませんので、さしあたり申し上げることもないので、ちょうど時間も過ぎたようでございますから、最初二つの点だけについて私の所見を申し述べさせていただきました。(拍手)
  4. 松井政吉

    松井委員長 次に小松参考人にお願いいたします。
  5. 小松繁

    小松参考人 本日は当委員会におかれまして電波監理及び放送に関する件、特にテレビジョン放送のあり方、テレビジョン・チヤンネル・プランなどの諸問題の御調査に当りまして、私ども日本放送協会意見を申し述べる機会をお与え下さいましたことを厚く御礼申し上げます。  御承知のようにラジオ放送及びテレビジョン放送は、国民の毎日の生活に不可欠な文化財として、一国の文化水準向上のために大きな役割を果しており、特にわが国基幹放送としてNHKの責任は、いよいよ重かつ大であることを痛感いたしております。このためNHKといたしましては、わが国唯一公共放送として、常に十二分に国民の負託にこたえ、その重要な責務を完全に遂行するため、またわが国放送が世界の放送の進展に一歩たりとも、おくれることのないよう、常に最大の努力を続けて参りました。ただいま当委員会において御審議をいただいておりますNHK昭和三十二年度収支予算等にその一端を計上しておりますラジオにおける第三放送構想も、またテレビジョンによる第二放送構想も、あるいはまた昨年十二月から開始しましたカラーテレビジョン放送実験も、いずれもこのような絶えず前進を続ける歩みの一つにほかならないのであります。  以下これらにつきまして、当協会考え方一端を述べさせていただきたいと存じます。NHK公共放送としてさきに述べましたように国民大衆要望にこたえ、わが国文化水準向上に資するよう、番組編成に当りましては報道教養教育社会芸能等部門にわたって調和ある編成を行い、これら各部門番組が有機的に一体として国民福祉に寄与するよう努力いたしております。そのためラジオにおきましては、第一放送網と並んで第二放送網を開設し、第一放送においては広く国民一般要望を満たす普遍性のある番組放送し、第二放送においては教育教養番組中心とし、小、中、高校生を対象とした学校放送勤労青少年のための特別講座、高度の教養番組芸術的番組、長時間を要する番組など特定対象向け、あるいは特別番組放送することを方針といたしております。特に第二放送におきましては、イギリスBBCで行なっております第三放送のような、聴取率は、かりに低くとも真にわが国文化水準を高めるに役立つような高度の教養芸能番組編成に努め、昨年来シリーズとして放送いたしております特別教養番組は広く各方面の支持を受け、計画的にこれを聴取するつどいさえ生まれているほどであり、このような教育教養番組充実には今後とも特に意を用いて参りたいと考えております。そのためラジオにおいては、さらにBBCと同じように第三放送の新しい全国放送網を作りたいと考えております。  またFM放送については、わが国においては未開拓の分野でありますが、これに対する国民の期待も非常に高まりつつあり、HNKとしてもこれを開拓していくことは当然の責務であると考えますので、研究の段階を一歩進めて、実験放送を行うこととし、ただいま当委員会に提出しております予算においては、そのために必要な経費を約二千万円ほど計上しております。また中波の第三放送が周波数の事情によって実施がどうしても不可能な場合は、この超短波によるFM放送によってこれを行いたいと考えております。  次にテレビジョン放送におきましては、現在一日約八時間近くの番組放送いたしておりますが、さらに第二放送網を建設することにより、広く国民要望にこたえて参りたいと考えております。考えまするに、テレビジョン放送発展はきわめて顕著でありまして、同時に将来の発展性もまことに期待すべきものがございますので、その社会に果す役割もまた限りなく大きいものがあると確信いたしております。その日進月歩の姿を見ますとき、HNKとしてはできる限り近い将来においてラジオと並んで国民生活の中にくまなく普及するために、テレビジョン全国ネットワークを一日も早く完成しなければならないと考えております。またテレビジョン放送の将来のあるべき姿を考えますとき、HNKとしては国民の多種多様の要望を満たし、公共放送の使命を達成するためには、第一、第二放送二つ放送網が不可欠であると考える次第であります。すなわちテレビジョンラジオ違つて、他の仕事のかたわらこれを見るというこがむずかしく、受信者の見やすい時間はラジオ以上に限られております。しかもこの限られた時間は、大多数の受信者にとって聴視好適時間なのであります。従つてテレビジョンにおいて受信者の多種多様な要望にこたえることは、単に現在の一つ放送網の中で放送時間を延長するだけでは非常に困難であります。このような制約をなくし、国民一般対象とした番組充実をはかるとともに、あわせて教育番組の飛躍的な拡充をはかるためには、二つ放送網がぜひとも必要であると考えております。  テレビジョンによる第二放送においては、教育教養番組中心とし、昼間は学校放送に重点を置き、夜間は勤労青少年一般社会人向けの体系的な教育放送を行う計画でありますが、これらの番組編成に当っては、ラジオにおいては十分な成果を期待しがたい自然科学分野あるいは職業教育産業技術教育等分野を積極的に取り上げまして、これらの面でも新生面を開きたいと考えております。  このようなNHK教育放送に対する考え方は、ラジオテレビジョンを通じて一貫しておりまして、テレビジョン放送における教育番組拡充の意図も、視聴覚教育の上にテレビジョン放送の特質を遺憾なく発揮するためにほかならないのであります。そこでラジオ第二放送網全国的な完備によりまして学校放送の今日の基盤が築かれたのと同じく、テレビジョンにおいても二つ全国放送網を持つことが、教育放送を十二分に行うためにぜひとも必要であると考えその拡充方針について、かねてから検討を進めて参ったのであります。特に昨年六月新会長の就任を見まして以来、HNKの当然進むべき道として、ラジオにおける第三放送とあわせてテレビジョンによる第二放送具体的構想について検討審議を行なって参ったような次第でありまして、過日当委員会において、その概略につきましては来年度収支予算審議に当り、永田会長から御説明申し上げました通りであります。  NHK教育番組編成するに当りましては、多くのすぐれた特色を発揮することができるのでありまして、商業放送によっては期待できない成果を確保することができるのであります。すなわちNHK放送法によるわが国唯一公共放送としまして、第一には教育テレビジョン番組編成に当り、あくまでも中立公正、不偏不党立場を堅持し、計画的にかつ安定した放送を行うことができるのであります。教育放送が真に成果を上げるためには、一貫した番組編成方針のもとに長期にわたつて定時放送を続けることが何より肝要であり、一時的な思いつきや、広告その他の目的のために教育放送を利用するのでは、正しい教育放送の実を上げることは期待できません。教育放送実施が、公共福祉の増進に寄与することを唯一目的とする公共放送によって行われるべきであるということは、諸外国の事例から見ても容易に首肯できるところでありまして、この点NHK公共放送として教育テレビジョン放送実施するに最もふさわしい企業体であるといえると考えているわけでございます。しかもこれらの番組は、NHK全国放送網によって全国的に素材を集めて編成することができますし、また教育地域差をなくし、機会均等をはかる上に大いに役立つものと信じております。なおこれらの番組聴視については、NHK全国放送局を通じまして、学校における計画的利用を促進する一方、公民館における集団聴視等をはかることによって、一そうの成果を上げることができるものと確信しております。  さらにNHKのすぐれた経験と技術はあげて教育放送に生かし得ることはもちろんでありますが、NHKの既存のラジオテレビジョンの施設を共用することによりまして、最小の経費ですみやかに教育テレビジョン全国に普及することができるのであります。NHKの第二放送計画を取り進めるに当っては、演奏所、送信所、鉄塔、機械など、テレビジョン第二放送に共用することができるものが非常に多く、他の企業体が新たにテレビジョン放送を行う場合に比べて、きわめて少い経費で必要な施設を建設することができます。また運用に当って、番組編成や人員配置の面でも共用による合理化をはかることができるので、単に建設費の面ばかりでなく、運用費の点においても大幅な節減が期待できますし、受信者に対する負担も最小限度にとどめることができるのであります。このようにNHKは、テレビジョンにおいて第二放送を始めることによりまして、テレビジョン放送の特色を最大限に発揮し、単に教育の新しい分野の開拓と発展に寄与するばかりでなく、広くわが国教育文化向上のために大きな役割を果すことができるのであります。  NHKは以上申し述べましたような公共テレビジョン放送のあり方及びそれに基く計画に立ちまして、先般政府当局から発表されましたテレビジョンチャンネルプランを慎重に検討いたしまするに、先ほど来申し述べましたような公共放送の使命達成という点からは、すこぶる遺憾なものであると考えます。今回のテレビジョン・チヤンネル・プラン政府当局としては最終的な割当であると説明されているようでありますが、それだけにテレビジョンの将来の発展を考え、公共放送の使命をあわせ考えますとき、NHK国民要望にこたえ、文化水準向上をはかるためには、テレビジョンチャンネルプランの策定に当りまして、NHKラジオと同じくテレビジョン放送においても二つ全国放送網を開設し得るようにすることを、その基本方針とすべきであると考えております。特に国民の負担を最小限度にとどめ、すみやかに第一、第二の両放送網全国普及をはかるためには、現在のテレビジョン放送と同じように、電波の性質上最もテレビジョン放送に適している超短波(VHF)を使いまして、これによって送信面、受信面ともに大幅な経費の節減をはかることが望ましいものと考えております。なお政府原案によれば、割当方針は特に教育目的とする放送局について別個の取扱いをしておりますが、放送による表現の自由を確保する現行法の建前を遵守すれば、免許された後の教育放送局が、たとえばかりにその放送番組編成において一般の商業放送と全く差異を見出せなくなったとしましても、政府がこれを規制することは許されないのではないかと考えます。従いましてこのように放送内容基準として教育放送局という法令に根拠のない放送局を設け、これについて特殊な扱い方を考えるような割当方針には、懸念を抱かざるを得ないわけでございます。これらの点から勘案いたしますときに、今日すでにNHK放送法によって設立されております以上、現行法の建前のもとにおいては、教育放送は、ラジオと同じようにテレビジョンにおいてもNHKにより行うことが最も適当であると確信いたしておる次第でございます。  最後にカラーテレビジョン放送について申し上げます。テレビジョン放送の将来の発展の形がカラーテレビジョン放送にあることは明らかなところでございます。今日すでにアメリカにおいては次第にカラーテレビジョン放送の普及を見つつありますが、ヨーロッパ諸国においても盛んに実験や試験放送が行われている状況であります。また来年はCCIRのテレビジョン部会が開かれ、標準方式についての討議が行われると聞いております。このような世界の趨勢におくれることのないよう、当NHKは早くからカラーテレビジョン放送の研究を行い、基礎的研究を一応完了いたしましたので、昨年十二月標準方式に関する資料を得ることを目的といたしまして、実験局を技術研究所に開設し、現在種種の実験を行なっておるのでございます。またこれとともにカラーテレビジョン.カメラやカラー・フィルム送像装置、あるいはカラーテレビジョン受信機、特に受像用ブラウン管の研究などを行い、将来のカラーテレビジョン放送実験に当っては、すべて国産機器を使用して何らの支障がないような形にしたいと考えまして努力いたしておるのでございます。しかしながらわが国においてはようやく白黒テレビジョン放送の普及が軌道に乗ったばかりでありますし、またカラーテレビジョン放送分野におきましては、受信用ブラウン管を初め、国産化のために未解決な部分もありますので、今日直ちにこれを行うことは相当むずかしいものがございます。さらにアメリカなどでも、放送局側において従来以上に経費がかかることはもちろんでありますが、受信機の値段も非常に高く、カラーテレビジョンの普及は必ずしもすみやかでない模様であります。これらの点を勘案いたしますときに、わが国においてカラーテレビジョンを本格的に実施するまでには、まだ前途にいろいろの困難があると考えまして、NHKとしてはこれらの困難を排除するための努力を現在続けておる次第であります。  以上、テレビジョン放送中心に当面の諸問題について私どもの意見を申し述べさしていただきましたが、なお説明にいろいろ不十分な点があろうかとも思われますので、皆様方の御質問によりお答え申し上げたいと存じます。
  6. 松井政吉

    松井委員長 次に金子参考人にお願いいたします。
  7. 金子秀三

    ○金子参考人 近来新聞その他で御承知通りに、電波の問題が国民の関心を非常に集めておる際でございまして、私ども一般放送事業者放送事業に関する意見をいろいろお聞き下さることは、まことによい機会であると存じ、厚くお礼を申し上げる次第でございます。私はこれから日本民間放送連盟の理事として意見を申し上げるわけでございますが、NHKさんと違いまして、民間放送連盟と申しますのは会員四十一社が集まって作っておる団体でございます。従って私の申し上げることの中に、会員全部が納得しておるものばかりとも言いがたいものがあるかもわかりませんが、それは私個人の責任において申し上げたこととして御了察をお願い申し上げたいと存じます。先般私ども拝見さしていただきましたテレビジョンチャンネルプランは、大体におきまして私どもがかねて希望しておりましたような割当案でございまして、当局の御苦心につきましては敬意を表する次第でございます。またそれに付随いたしまして、一部修正されました基本方針につきまして、われわれの意見も先般電波審議会の懇議会におきまして連盟会長の足立さんから申し述べられたのでありますが、かような点につきまして、ここで貴重な時間をさいていただいて同じことを繰り返しますことはどうかと存じますので、もし必要でございましたならばあとで資料として提出することにして、本日は省かしていただきたいと存じます。ただこのチャンネルプランも、全面的にこれがわれわれにとって都合のよいものばかりとも言いがたいのでございます。全国あまねくテレビジョン放送が行き渡るためには、NHKの優先的な配慮が相当強く現われており、六年間の民放業者といたしましていささか不満を感じないわけにいかないのでございます。その基本方針中の特定勢力の排除ということにつきましては、私どもも深く考えるわけでございますが、そういった点につきましては、またあとで御質問がございましたら意見を述べさしていただきたいと思います。しかし大体におきましてチャンネルプラン割当なるものは、大へんけっこうなものでございます。どうかこれに基きまして一日も早くチャンネルプランを御決定になり、全国民がほんとうに待ちこがれております免許を一日も早くお与え下さいますよう、切に御当局にお願いいたしたいと考えているわけでございます。この免許につきまして、日本民間放送連盟といたしましては、六カ年一般放送事業者としてラジオをやっているものを優先的に御審議願いたいと先般来強く要望しており、またラジオテレビの兼営をやることが最も望ましいということをいろいろな材料から申し上げていわるけでありますが、この点につきまして少しばかり時間をいただいて申し述べさしていただきたいと考えるわけであります。  その前に申し上げておきますが、日本民間放送連盟の会員は、大体におきましてその地域社会を代表するものでございます。われわれ一般事業者というものは、特定の株式会社でございますけれども、この株式会社はとにかくその地域社会をあらゆる層において代表しておるもので、一株式会社の利益のためでなく、ある意味におきましてその地域社会を代表してお願い申し上げているのであります。われわれは特定の勢力あるいは大きな財力、あるいは他の専門の業を持っておる方が、かたわらの事業あるいはその本業をより多角的に経営する意図において、公共福祉に奉仕しなければならない放送事業をやろうとされることを一番おそれているのであります。われわれはその地域社会のあらゆる方々を糾合して、大体行政区画に従って生まれているものでありますから、さような意味においてラジオテレビの兼営業者にこの割当の優先的な配慮を願っているわけで、決してでき上っております株式会社の利益のためにのみお願いしておるのではなくて、その背後には、そういうような大きな地域社会の構成があるということをお考え願いたいと思うわけであります。  その兼営の理由でありますが、るると申しますと時間も大へんかかりますので、きわめて抽象的に申し上げさせていただきますが、要するにテレビジョンというものは、もちろんラジオとは違うものでありますけれども、これは大体電波という同じ根から育ったところの同種のマス・メディアである。従って放送というものから見まするならばこれは一体のものである。この考え方をもとといたしまして、われわれは何度も申し上げておりますように、民間放送事業者テレビの周波数の優先的な割当をお願いしておるというわけでございます。その理由は、テレビジョンは今申しました通りラジオ発達した必然的な形態でございます。従ってわれわれは当初から、ラジオをいたしました六年前から、どうせわれわれはテレビジョンをやるべきだということを予想していろいろ考えておったということもその理由であります。またわれわれのその後の約六年間にわたります経験、及び放送事業というものが、先ほど千葉先生からお話がありましたように、公共福祉に適合する事業であるということにつきまして、いろいろ実際は悩みその他を持っておるわけでございますけれども、その放送公共性についての認識とその実際的な経験を私どもは持っておるがゆえに、これがテレビジョンをやるということが最もふさわしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。つまりこういう意味においてわれわれは経営者として適格性を持っているのではないか。また兼営によって企業が合理的に経営されるのでございます。これはラジオ東京においても、先般郵政省その他に出されました兼営の実際的なレポートがございますが、これをお読み下されば、よくその実際的なレポートとして御参考になるかと存ずる次第でありますが、合理的な経営がなされまして、それはひいては結局一般の聴視者利益になっておるのでございます。また大都市において複数のテレビ局がこのチャンネルプランによってもしできるといたしますならば、いろいろできるわけでございますけれども、そのような場合においても、各局がそれぞれ特色のある番組編成して、聴視者各層の要望にこたえる強い決意を持っておるのみならず、日本民間放送連盟といたしましても、総力をあげてこの限られたチャンネルを最も効率的に活用したいという考えを持っておるわけでございます。また資金の効率的な運用という意味におきましても、日本の経済の実情からかんがみまして、兼営が最も経済的なやり方ではないかというふうにわれわれは信じております。さらに一般放送会社は、テレビ兼営なくしてはその存立を危うくするようなおそれもあるのでございまして、これはあとでもし御質問でもございましたならば、ラジオ会社がテレビを持たない場合にはどういうようなことになるであろうかというようなことについては、また申し上げるだけの資料を持って参りましたのでお答え申し上げたいと思います。要するに民間放送というものは、六年前に当局の御英断によって日本に生まれたわけでありますが、その放送の性格の一貫性を固持して、有終の美をなしていただくことは、民放がその線に健全に正しく育つということでございまして、こういったような点におきまして、われわれのラジオ及びテレビの兼営ということが、いかにわれわれの会社の運命を支配するのみならず、ひいてはそのうしろにある地域社会及び一般聴視者利益につながっておるかということを十分お考えを願いまして、そしてラジオテレビ兼営のわれわれの悲願をお認め願いたいものと存じておるわけでございます。  さて、その兼営をお願い申し上げておりますところのわれわれ一般放送事業者の問題といたしまして、最近の審議会において教育放送の問題がクローズ・アップされて参ったような次第であります。私どもはこの点について非常な関心を持たざるを得ないわけでございます。結論から先に申し上げますならば、教育放送のようなものは、今直ちに全国教育放送局を作ることは、電波の不足しておる今日においては時期尚早であるけれども、教育放送番組NHKさんとわれわれ一般放送業者とを問わず、これを作り上げることについては全面的に賛成である。そういう点でわれわれはこの教育放送の問題について、一昨日来各方面意見左申し上げておるようなわけでございますので、その点をここで申し上げさせていただきます。このたび当局の策定されたテレビジョン放送用周波数割当の基本方針におきまして、総合的番組放送のほかに、もっぱら教育的効果目的とする番組放送局を設置する構想を明らかにされましたが、その趣旨は、テレビジョン教育的効果を期待し、今後教育番組充実をはかるものであると考えられ、まことに時宜を得た方針として、われわれのひとしく賛意を表するところでございます。その基本方針につきまして、先般の電波監理審議会におかれましては、審議の重点を教育放送に向けられまして、これをめぐっていろいろの慎重な御研究が行われておるようでございますが、われわれはこの教育放送に関する基本方針につきましては、今申し上げました通り非常に関心を持っておりますがゆえに、この際われわれの総意をここで申し上げてみたい、こう考えて意見書を提出したようなわけであります。すなわち、当局が基本方針において意図せられますところの教育放送を今後大いに実施する必要性については、全く同感である。各民間放送局においても放送公共性に関するきびしい反省と、教育放送の重要性に関する深い認識のもとに、今後一そう教養番組充実拡充に率先して努力をするかたい決意を持っております。また、この方法におきまして、チャンネルの不足しておる現在におきまして、最も実現可能であり、かつまた効果的な具体的な方針といたしましては、民間放送各社が自局においてそれぞれの地域に適合する教育教養番組をあとう限り多く編成、製作して、総合番組の重要な一部として放送することである。また東京においては、やや周波数の余裕もあるやに見受けられますので、そのチャンネルの一部をもって民営の教育テレビ局を一局設置して、専門局としての機能を十分発揮せしめることがよいのではないかと思います。この東京民間教育放送局を一局作ることは、番組編成に必要であるところの人的、物的諸条件に東京は恵まれておるのでございまして、よい番組を作ることができるのでございます。またそういう特殊の教育放送局の経営を可能とするところの経済的、社会的諸条件が整っておるのもまず東京でございますので、そのような意味において、東京に民営の教育放送局が一局できることは、われわれ地方のものにとりましては非常に都合がよろしいのみならず、この会社がりっぱにやっていけるのではないかという考えを持っております。と申しますのは、地方の民間放送各社では、この教育放送に協力をいたしまして、これを一種の番組製作機関としてその役割を果させることにいたしますならば、ここにおいて相当の収入を得ることもできるし、また地方各社は教育番組充実する意味において、その目的を達成することができる、このように考えておるわけでございます。このような方法におきまして、当局の意図せられましたところの諸種の目的も十分に達せられるとともに、国民の期待にこたえるものと考えておるのであります。従って各地の特殊事情、また教育番組製作上の不便等にかんがみましても、東京以外の地域にテレビ教育専門局を設置する必要はないのではないかと考えております。将来の恒久的な方策につきましては、こういう方面のわれわれが今申しましたような効果的な運営をはかりながら、今後の実績を検討いたしまして、将来はいずれUHF実施可能の時期もございましょうから、これによりまして全国に拡張することが、慎重にしてかつ最善の措置であるというふうに申したわけであります。  日本放送協会におかれましては、ただいま小松さんからるる御説明がございましたように、その存立形態と本来の使命にかんがみまして、教育放送には特に重点を置かれるようでございますので、これを現在の放送の中で早急かつ大幅に実施されますならば、そしてそれを全国中継されますならば、現在朝のうちあるいは午後はあいておるわけでございますが、こういうあき時間をフルにお使いになりますならば、これによってまた大いに教育効果というものは上るのではないか、このように考えられるのでございます。もしこの際民営というものは非常に危ないというようなお考えがありまして、ここにNKKでもなくかつまた民営でもないような組織による教育放送局というものをお考えになりますならば、これは相当の資金を要することになるわけでございまして、そういったようなものは結局国家がこれを負担しなければならぬというようなことになるのではないかと思うのであります。現在の日本教育の実情から見ますならば、さような貴重な予算というものはもっともっと急を要するところの二部教育の廃止であるとか、教科書の無料配付であるというような面に使うべきでございまして、こういったような第三の組織を持つということは、そういう金を集めることもまことに困難でありましょうし、政府が補助されるならば、今申しましたようなことに教育にはもっと優先すべき問題もございますし、私は適当ではないのではないか、このように考えております。要するに教育放送の面におきましてはNHKとわれわれ一般放送事業者とが相協力をいたしまして、おのおのその使命とするところの分野を明確にしながら、両々相待って番組内容をよくするということによって、教育効果というものは発揮できるのじゃないか、このように存じておるような次第であります。  さらにFMの問題でございますが、これはすでに民間放送からもたくさんの申請を出しておるわけでございますが、その理由といたしますところは、ただいま申し上げましたことにも関連をいたしておりますが、私どもはやはり公共福祉というものの絶対条件のワクの中におきまして、商業主義に立脚せざるを得ないのでございます。また健全にして正しい商業主義というものは、日本の経済及び文化発展に寄与するところまことに大きいと思うのであります。広告を出す、広告というものは一面の弊害があるかもしれませんけれども、広告そのものが広告を出す者と同時に、見る人に対していかに大きな利益、知識というものを啓発しているか、はかり知れないものがあるのでございます。従いましてわれわれは正しい商業主義、健全な商業主義の上に立脚しながら、しかも公共福祉を増進するという大きなワクの中において日夜努力しておるわけでございますが、この点につきましては実際上の問題といたしまして、いろいろと困難な問題がわれわれにあるのでございます。過去六年間におけるところの私どもの苦労というものは、この公共福祉と健全なる商業主義というものをいかに調整し、いかに克服するかということが、われわれの努力の結晶であったと申しても差しつかえがないのでありますが、しかしもしFM放送というものをすぐ当局において基本方針をお示し下さいまして、おやりになるというようになりますならば、ぜひともこれを許していただきまして、私どもはNHKのような第二放送を持っておりません。従いましてこのFMによりまして、これは申請書の中にもそのことが各局ともうたって為るようでございますが、FMによりまして社会教養の面に非常に意を用いて、そうして足らざるところを補っていきたい。そしてFMによって要るいろいろの費用は、中波の放送事業を正しく伸ばすことによりまして、この費用をカバーしていく、このように考えましてFM放送のすみやかな実現を希望するわけであります。また今申しましたこの教育放送問題等もFM――これは見ることはできないかもわかりませんけれども、FMをもっと有効に使いますことによりまして、現在の周波数の下足しておるテレビジョンによらずとも、教育効果を上げる方法というものはいろいろあるのではないかと思うのでございます。受像機の少い現在の段階において、いわゆる教育放送実施するとすれば、まずFMこそその最も適当な方法ではないか、このように考えておるわけであります。  次にカラーテレビジョンの問題でございますが、これはNHKさんにおいてはすでに実験放送をやっておりますが、商業放送、一般放送事業者といたしましてスポンサーを相手に持っておる状態のものといたしましては、カラーこそわれわれの最も望むところの形でございます。色がつきますことによりまして、広告媒体の価値は数段と飛躍するのでありますから、私どもは万難を排してカラーの基本方針が示されましたならば、カラーに移って参りたいと考えておるようなわけでありますので、できる限りすみやかにカラーに対するところの基本方針を、当局においてもお示し下さることを私どもは申しておるような次第であります。  いろいろ多岐にわたりまして申し上げましたが、後ほどまた御質問によりましてお答え申し上げたいと存ずるわけでございますが、要するにわれわれといたしましては教育放送番組というものにつきましては、現在のわれわれは一生懸命努力をし、かつまたNHKさんにもその番組をうんと盛ってもらえば、現段階においては一応これで満足といえるのではないだろうか。ただしこのためには人的かつ物的に恵まれておるところの東京にやや周波数の余裕があるやに見えるので、ここにおいて専門的な教育番組の製作をするところの民営のものが生まれる。その民営のものはできるならば先ほど由しましたようにラジオテレビの兼営局にするということが最も望ましいのではないか。と申しまする理由は、先ほどるる申しました通りでございますが、ことに教育テレビ局のごときは先ほども御指摘になりましたように、そうたくさんのスポンサーがっくとも考えられない面がございますので、兼営局でございますならば、その間の経営の合理的な方法によりまして、困難なる教育放送局の採算が可能であるのではないかと思いますのがその理由の一つでございます。かような意味で何とぞ今度のチャンネルプランはなるべく早く御決定下さいまして、一日も早く現在非常な関心を持っておりますところの免許を早くいただきますようにお願いを申し上げたい、このように思うわけでございます。これが長引きますことは、いろいろな意味におきまして利益よりも弊害の方が多いのではないかと思いますので、何とぞできる限り御当局におかれても割当を早く済ませていただきたい、かように切望する次第であります。
  8. 松井政吉

    松井委員長 これにて一応各参考人意見の発表は終りました。次に委員諸君より御質疑がありますので、順次これを許します。なお千葉参考人はお急ぎのようでありまして、大体十二時ごろまでということでありますので、まず千葉参考人に対する質疑があれば先に承わります。橋本登美三郎君。
  9. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 千葉さんに簡単に一、二のことについてお尋ねいたします。千葉さんの公述の大前提に放送法の建前からと申されておりました。そこで放送法第一条の「放送公共福祉に適合するように規律し、」これが大前提ですが、先生がごらんになって放送法のこの福祉に適合するように規律するという、その規律が全面的に行われておるようにお考えになりましょうか。その点についての学者としての御意見を伺いたい。
  10. 千葉雄次郎

    千葉参考人 放送法第一条の「公共福祉に適合するように規律し、」とある規律というのが、表現の自由との関係はどうだろうかということが考えられるのですが、表現の自由というものは、無制限の自由ではない。表現の自由を確保するのを原則として「公共福祉に適合するように規律し、」というふうにいっておるのでございますから、私はこの放送法の建前でむろん差しつかえないと存じております。しからば公共福祉に適合するようにすべて規律されておるかどうかということでございますが、今表現の自由との関連からいいますと、規律というのは何でもかんでも政府の意図するようにワクヘはめ込むというふうに考えられてはならないと私は思うのです。やはりこの種のものについてはミニマムのコントロール、ワクをはずれた乱用、憲法にいっておる自由の乱用というような場合に、やはり法的に規律する、最小限度の拘束を加えていくということは必要でございますが、それ以上にわたって政府の意図するように放送を持っていこうといったようなところまで規律するということを考えるということになりますと、とかく表現の自由との抵触というか、そごする問題が起ってきがちなんでございます。そういうわけで私はやはり大きなワクで、乱用しない程度において政府が見ている。そして放送不偏不党のものとして、真実及び事実を保証するといったような内容のもの、そういうものができるというふうに、大きなワクでこの放送法が縛っておるというふうに私は考えるのです。そういうふうに見て参りますと、言論機関においてちょっとした行き過ぎ、イレギュラリティと申しますか、そういうものが何でもそうでありますが、あやまちはありがちなんです。そういうものを世論の力によって絶えず押えていくことができる。日本放送協会についても、数年前に問題を起しておりますが、それではこの放送法の規定によって縛っておる、規律しておる、これでは足りないかというと、あの問題は一度起っただけで、もうそういう問題は起していない。これは十分世論の圧力、そのほかの圧力によってNHKの行動そのものも規律されておる。けっこうこの法律のワクの中の行動をしておるわけなんです。私はそういう意味で放送法第一条にうたっておる公共福祉に適合するような規律というのは、その程度の意味だというふうに解釈いたしております。  それから私ただいま特に公共福祉あるいは公共利益というものをまっ先に申し上げましたのは、放送基準割当等について、この種の会合の席上などで、とかくスペシャル・インタレストーパブリック・インタレストではないスペシャル・インタレストの発言というものがかなり重視される傾きがある。それで私は国家の放送政策としてはあくまでパブリックのインタレストを中心として事を処理していくべきだという考えを持っておるのです。それで私は特に公共福祉公共利益ということを最初に申し上げたわけです。ただいま民間放送連盟の方からラジオとの兼業の問題がございました。まことにその通りであると私も思うのです。これはテレビ発達すればするほど、ラジオ事業というものは大きな影響を受けます。テレビ発達によって一番大きな影響を受けるのはラジオであるかもしれませんが、映画産業も影響を受ける。現に映画産業が束になって申請をしているやの新聞記事を見たのでありますが、これは率直にこの影響のただならぬことを示していると思うのです。それから古いマス・メディアでありますところの新聞事業、これも民間放送というものが広告にたよる以上、当然これは大きな影響を受ける。つまりテレビ産業発達のあおりを食って非常な影響を受けるのです。これが一つは各地力、小さな都会などにおいて新聞事業をやっている方々が、放送事業に手をお出しになる大きな動機になっておると思うのです。そういうわけでスペシャル・インタレストの方から物事を解釈していこうとすると、これはなかなかやっかいなんで、いわば動きがとれなくなるおそれがあるということを感じますので、やはり全体の利益立場、これは行政当局が案を立案される場合に、全体の利益立場からお考えになるのは当然のことなんでありまして、また今回の案も、そういう立脚点からお立てになったことと思うのでありますが、現実に割当を行われる際には、あくまでその原則を押していただきたいというのが、私今日出席して申し上げたいところであります。
  11. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 千葉先生のお話はよくわかるのです。私のお聞きしようと思うのはそれにも関連しておりますが、実はただいまの公共福祉に適合するように規律するというのは、具体的に言うと、一つ放送国民最大限に普及されること、それから今申されたような表現の自由、健全な民主主義発達、これがあるのですが、一と二はかなり放送法において具体的に指示せられておりまして、たとえばラジオ・コードというものが具体的に示されておる。第三の健全な民主主義発達ということになると、どうも放送法の中には具体的に提示されていないということを感ずるのと、千葉先生が公述で申されたように、現在の制度のままで十分な教育放送の効果を上げることは困難じゃないか、こうおっしゃられた。もう一つは商業べースにおいて教育放送公共番組を主とする放送局を経営するということも非常に困難ではないか、こういうような重要な二点があるのですが、この重要な二点は、第三の健全な民主主義発達といもうのに関連してのお話と思いますが、そういうことでありますと、今おつしゃられたような教育放送の効果を上げることは、現在の制度のままでは、単にチャンネルプランをふやしただけでは意味がないのではないか。また商業べースで教育番組を主とするような放送局を設置するということは、アメリカの例から見ても非常に困難ではなかろうか、こういうような御意見が先ほどの主たる御意見のようです。それで私は先ほど申し述べました健全な民主主義発達に関連してのお話のように解釈したものですから、最初に規律ということを申し上げたのです。そこで私も具体的な研究はしていませんが、アメリカでは現在数十の教育放送局を持っております。これは主として商業べースではないようでありますが、アメリカのように商業べースの高いところでも、商業べースでやることは非常に困難であるということから見まして、日本でもなかなか容易じゃないということは考えられます。しかもその数十の教育放送局から放送されるテレビジョンが視聴せられるパーセンテージは――私の数字が間違っていたら当局から御訂正を願いたいのでありますが、全体の約二%にすぎない、こういうような数字のように聞いております。そうなりますと、これは当局のいわゆる根本基準の問題ですが、当局が学術、技芸、職能教育などもっぱら教育的効果目的とする放送を行う局の設置を必要かつ適当とする場合において、こういうことをなぜ当局が考えられたかというのには二つ原因があろうと思う。すなわちテレビジョンというマス・コミュニケーション媒体を通じて、これを学校教育なりあるいは産業講座なり、こういったものに一つ積極的に考えるべきじゃないかというのが一つの理由、もう一つは現在の日本テレビ事業というもの、NHK、民放を問わず、教育的な効果のあるべきマス・コミュニケーションのこのテレビジョンが、そういう方面に利用せられておらない、のみならず、現実の日本におけるテレビ番組はあまり感心したものではない、従ってこうした教育放送を主とするテレビジョン局を許可することによって他の従来行われておる、あるいは将来行われるであろうところのテレビジョン番組というものを側面的に向上せしめよう、こういう二つの意図があるのではないかと思うのです。以上のことにつきまして千葉先生の御意見を承わりたいと思います。
  12. 千葉雄次郎

    千葉参考人 ただいま放送法第一条の第三項についてのお話でございましたが、戦後できた法律についてはすべて健全な民主主義発達に資するという根本方針があることは疑いない点だと私は存じております。この問題の教育放送を現行法に手をつけずにやれるかどうか、これは基準案でもこのままでやれるとお考えになったのか、あるいは基準案を実行するに際しても多少放送法に触れる点があるのか、私そういう技術的な点は詳しく存じませんが、去年当局で御発表になった放送法改正に関する試案の中に、一般放送事業者の求めに応じて協会放送をするために作った放送番組及びその素材を利用に供すること、こういうことは放送法改正しなければできないわけですが、また協会に対しても、協会の公的使命を番組の面において充実させるための措置として、現行法の放送番組の編集準則を改めて、協会放送番組の編集について教育放送などを充実するように努力しなければならないことを明示追加する、この二項目が入っておるわけであります。こういった考えと、今度の基準案の考えとを考えてみますと、去年お考えになった放送法改正のような方針教育放送テレビにもっと充実させる方法はないかということを考えますと、私はこれはやはりNHK中心にして、そういう民間では金がかかってやれない、あるいはスポンサーがつきにくい教育番組NHKで作らして、自分のところでもそれをやらす、あるいは地方のテレビ局でそういうものを欲するところあるいは必要とするところへ流すということも可能なのではないかというふうに考えるのです。これは先ほど皆さんもおっしゃいましたように、教育のみを専門とする放送局というものは成り立つかどうか。先ほど東京では民間各社が支援すればできるかのごときお話でございましたが、これもほんとうにいいものというと、テレビはおそろしく金がかかるのですね。その金を果してまかなえるかどうか、これは株式会社でやりますとやはり株主に対する責任がございますから、損ばかりするわけにいかない。そうするとはっきりそれでもうけることができるか、もうけないまでも損しないで経営できるかというと、なかなかむずかしいと思うのです。それよりは私はやはり聴視料を取っている放送協会をしてこの仕事をやらしたらどうかというふうに考えるのです。その点今橋本委員がおっしゃいましたように、テレビ学校等にもっと積極的に使わなくちゃならぬ、あるいはまた現在でも教育に利用されていないということは全くその通りで、私どもできるだけこの教育の面にこれを使っていった方がいい。ことにまたある面の教育からいいますと、テレビというのは打ってつけなんです。これだけのりっばな機械技術の進歩、科学技術の進歩の結果を教育に利用しないのは、全くもったいない話なんです。ですからこれは放送法改正する必要があれば、私はその面で改正していただいた方がいいと思うのです。テレビというものは娯楽、しかも低俗な娯楽だけになりがちですから、単に娯楽だけでなしに、なるべく教育に使えるようにお考え願えたらけっこうだというふうに私ども考えております。
  13. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 もう一点お聞きいたします。現憲法というか民主主義立場から、教育機会均等ということがだいぶ重大視されます。そこでその面から見て、もし現在教育テレビ局としての波長を考えることになりますと、せんだつて示されましたいわゆるNHKと民放とを並立せしめた上においての余裕のあるチャンネルというのは、東京、大阪、名古屋、福岡、岡山、関門の大体六カ所だけです。これはあとの参考人の話で全国にそういう放送局を設ける必要はないということがありますから、別ですが、そこでこの教育機会均等という点から見ると、全国テレビジョンが設置せられて、NHKと民放とでそういうようなテレビ局において作った番組をやってもらう、もしくはやらせる、こういう建前があって初めて教育機会均等が出てくると思う。そこで二つの問題があるのですが、先ほどのように教育放送のキー・ステーションを、民放でもあるいは第三者の放送体でもいいですが、東京に作る、そうしてその番組を各局で使ってもらう、こういうことで機会均等ができるわけです。先ほど来千葉先生がおっしゃったように、果して現在の制度のもとにおいて、そういうものがだんだん経営上困難になれば、やらなくても、現在の放送法ではこれを取り消す措置がない。そうなりますと、少くとも現在の制度のいわゆる放送法の建前のもとにおいては、当局なり国民の一般が希望するような教育的効果を積極的に上げることができなくなりはしないか、そこで私はやはりこの放送法改正というものが、もし政府が考えているような教育的効果を上げることを現実に考えるならば、必要になってきはしないか、こういうことを考えるわけです。  もう一つそれに関連しまして、私の個人的な意見ですが、NHKでも民放でもそうですが、NHKでも午前中に、たとえば小学校が始まるのは午前九時ですから、二時間ぐらいの時間を持っております。午後には約四時間ぐらいがあいている。民放でも同様に、朝やっている局もありますが、昼間のうちに数時間、すなわち学校が行われている時間にはテレビはほとんどやっておりません。そういうところに積極的に教育番組を組む、こういう考え方教育テレビを作る前にあってしかるべきだと私は思うのです。しかしそれにしても自主的にやる方法と、放送法の上に教育番組版というものを作るべきである、こういう二つの方法がありますが、もし自主的にやる以外に、義務的に、法律的にこれを拘束することになれば、当然放送法改正がその意味で必要になるのですが、教育放送番組を組むべしというような規定を設けることは、放送法の建前から見て、あるいは憲法の諸条章から見て矛盾があるかないか、そういう点、その法律的解釈についての御意見を伺っておきたいと思います。
  14. 千葉雄次郎

    千葉参考人 この教育放送を、はっきり各放送局番組に入れさせようということは、おそらく現行法ではできないと思います。それでもしもそういうことにしなければならぬというと、少くとも最小限度に、去年当局でお考えになった放送法改正、ああいったような方向の放送法改正が必要ではないかと思うのです。しかしあれだけでも、おそらく不十分であろうということは考えられる。たとえば地方のテレビ局で相当繁盛している局がある。これへ教育放送を入れさせようとする。午前八時から午後十時半までは、全部スポンサーのついたアチャラカ番組がある。その方がもうかる。そういうような場合に――これは現実の放送局について申し上げておるわけではありません。ただ私が架室のことで申し上げるのですが、そういう場合に、とかく教育放送を必要とする時間に、それを入れてもらえないということが起り得るのです。これは現にアメリカでも、この種のケースはたくさんある。そうしますと、それまでも規制しようということになると、一日のうちの放送時間を何時間、それだけでも足りなくて、何時から何時の間に何時間入れろというようなことも言わなくちゃならぬということが起ってくるのです。そこまでいきますと、これはやはり放送番組内容に対する干渉ではないか、これは憲法のいわゆる言論自由との関係でどうであろうかという問題が、必ず起ってくるわけなのです。そういうわけで私は、これはなかなかむずかしい問題だと思うのです。アメリカでも、いわゆる自主番組のパーセンテージをきめることすらなかなかできないわけですが、それはそういうところから来ているのです。わが国の場合はアメリカと多少事情も違いますが、いわゆる民間商業放送局にその種の基準というか、ワクをはめて、それを実行させるということはかなりむずかしいし、それをやると、そのためにもうからなくなった局ができるというような問題も起り得るわけなのです。非常に私は困難ではないかと思う。ただ公共放送の場合にその種のことができないかというと、これは私はできると思うのです。公共放送の場合に、これは先ほどの、去年の改正案にもございますけれども、教育放送充実するようにしろというので、その基準は大体このくらいにしろというようなことで、これは法的にやるか、話し合いでやるか、いろいろやり方はあるでしょうが、公共放送の場合には私はそれはできると思うのです。ただこれをテレビ局全部についてやることを法的に規制し得るかどうかということは、私はかなり問題じゃないかと思います。
  15. 松井政吉

    松井委員長 松前重義君。
  16. 松前重義

    ○松前委員 千葉さんに簡単に一つ伺ってみたいと思います。時間をお急ぎのようでありますから、できるだけ私の意見をここにお話をして、それに対する御意見を伺いたいと思います。問題は二つありますけれども、まず第一は、金子さんのるる力説されましたいわゆるラジオテレビの兼営の問題であります。ラジオの経営の経験をテレビの経営の方に生かしていく、こういうことにおいて経済的に、またいろいろな点において都合がよろしいということで、兼営を非常に強力に主張されたのであります。あるいはその面から見れば、そういうことであるかもしれません。しかしながら地方に行ってみますと、その地方で一つの新聞社がある、その新聞社がラジオを経営している、そうしてまたその新聞社がテレビを経営する、そうしてその地方は、大体地方的な大新聞としては一つしかない、こういうところが日本には方々にございます。そういうときにもしもこれが一つの新聞、一つラジオ一つテレビ、これを全部合せて独裁的に経営されたと仮定しますと、完全な言論の独裁の態勢をここに作り出すことになります。この現象は現実に見えておりまして、地方において非常にへんばなプログラム編成をやる、ことに政治的にへんばなプログラム編成をやっているところが非常に多い。従ってこういうところにテレビまでも許さしたのでは、これはまるで言論の独裁として、いわゆる憲法にありますところの言論の自由を抑圧する態勢を、政治的にかもすおそれがあると私どもは思うのであります。免許の基本方針と申しますか、郵政省で作りましたその方針の中にうたってある懸念されるところの面は、ラジオとそうして新聞と、さらにここにテレビとの兼営をできるだけ排除したいという意向というものは、私はそこにあるのじゃないかと思う。その方針はよろしいと思うのであります。先ほど千葉さんの御意見の中にも、どうもその辺のところは、私どもと同じような意見のように察知されたのでありますけれども、この点につきまして――東京や大阪、名古屋あるいは福岡などでは、このような現象はないようであります。ないようでありますが、その他の地域においてこれが現存しているというこの事実の上に立ちまして、日本における言論の自由を守るためにどういう体系がよろしいか。私の意見としては、テレビは別なものに許さなければもう言論のはけ口がない、こう思うのでありますけれども、この点まず第一の問題としてお答えを願いたいと思います。  ついででありますから、時間を省きます上において次の問題をお尋ねしたい。先ほど来橋本さんから御質問がありました教育テレビの問題です。千葉先生のお話では、あまりチャンネルをふやせば、今のような下劣な放送が――私はあえて下劣と言いたい。下劣なテレビ放送がただふえるだけであって、かえって公共利益にならないのじゃないか、極端な言葉をもって言えば、こういうふうな御意見であろうと思いました。私も同じような感じを持つものであります。教育テレビなるものをNHKにやらせろという問題、これまた私も大賛成でありまして、そうでなければならないと思います。しからばこのチャンネルをふやすということそのものは全然この際やらないで、教育テレビだけをNHKにやらせようとお考えになっておられるのか、多少ふえるであろうところのチャンネルは免許しないままに放置しようというのであるのか。一ぺん発表した以上、アリがたかるように今言ってきておるようでありますから、そのままにしておくのもなかなか困難だという政治的な情勢になるのではないかと思うのであります。この点について具体的には一体どういうお考えをお持ちか、これを伺いたいと思うのであります。以上二点につきまして、一つ簡単に御所見をお伺いいたします。
  17. 千葉雄次郎

    千葉参考人 最初の御質問のテレビ局兼営の問題でございますが、これはこの基準案にも特定勢力云々のところでにおわされておるようにローカル・モノポリーといいますか、言論機関の地方的独占という形ができることは、おっしゃるように私も好ましくないと存じております。現にこの種のものが日本のどこにあるかということは、私詳しく存じませんが、アメリカあたりでもこの問題が非常にやかましいことは御承知通りであります。FCCの放送局認可の場合にも、表向きははっきりそういう規則を掲げてはおりませんが、地方的な独占の認可によって成立するおそれがある場合には、これを許さない方針をとっております。業界ではしばしばこれを問題にしておるようでありますが、大体これを許さない。許さないと言いながら新聞社関係放送局などはかなりふえてきております。しかしテレビ局、ラジオ局、朝夕刊新聞等がただ一人の経営者によって行われておるというのは、厳重に抑制しておるように思います。わが国において新聞の事情は多少違いますが、地域によってはほとんどマス・コミュニケーションの地域独占を形成するおそれのあるところもあるように思うのです。言論の自由を確保するという民主主義原則から申しますと、やはりこの種の形のものができ上ることは好ましくない。従ってそういう点については兼営が得策であるとかなんとかいうだけの考慮で考えられてはならないのじゃないかと私も考えております。  それから第二の、教育テレビとの関連において今あるチャンネルをどうしようというのかという御質問でございますが、先ほど来私が公共福祉などということを申し上げたのは、それに関連して申し上げたわけなので、できれば十分時間をかけて研究されて、最もいい裁断をなさるべきだと思います。ところが現実においては非常な混乱があり、時日がたてばたつほどこの混乱が目に見えてくるような気がするのです。そうしますと先ほども御意見がございましたように、なるべく早い機会にこの問題にピリオドを打つことも必要かと存じます。その一つの目安は、先ほどからお話もございますように、いろいろ特殊な利害関係からの御意見一これはむろん参考にするなと申し上げるのではありませんが、そういう方向においてはこれは解決できないのじゃないか。やはり全体を見渡して、まず日本放送政策はかくあるべしという方針が定まって、その力針から全体のために断を下すということでおやりにならなければ、もう引っ込みがつかなくなるのではないかという気がするのです。そういう意味で、全体の立場から見て、東京ではどれをやるか、そして一つやるか二つやるかということからおきめになるのがいい。私は率直に申し上げれば、商業放送では教育関係のものは無理だと存じますので、その点で、一つの波を確保しておくならば東京一つということになります。それで私は全体の立場から見て、それをできるだけ早くおきめになるのがこの際としては最上の策ではないかと存じております。
  18. 松前重義

    ○松前委員 明確に御答弁いただいてありがとうございました。第二の教育テレビの問題ですけれども、私はこういうふうに考えるのです。もし東京二つチャンネルが許されるとして、そのまま放置するならば、おそらく今までのテレビ放送と同じような性格のものがまた二つできる、そうして、こういうことを言っては悪いのですが、公共福祉にあらずして資本家の福祉になり、そのえさになるおそれが多分にあると思うのです。であるならば、一つは取っておけということが可能であるならば別問題といたしまして、民間において教育放送のようなものをあえてやろうとする篤志家が、損得は別問題として、経営その他に自信があるというならば、さらでだに低きへ流れようとするテレビ放送の現状に対して、多少の清涼剤を与えてやるというくらいの考慮をもって、一般の今までと同じ放送内容を持ったものに許すよりも、そちらの方に許して、一歩でも教育的な公共性の方向に近からしめるやり方がいいのではなかろうか。これは東京だけの問題ではありません。全国的に教育放送民間放送においてやることは、経営その他の問題はやってみなくてはわからぬことでありますが、そういう考え方当局が持たれることに対しては非常に替意を表し、また今まで激励をいたして参った次第であります。今までの下劣と言うとなんでありますが、低俗なことがたくさん出てきたテレビ放送に取られるよりも、そっちにやらせて、もし経営がうまくいかなければまた政府が何らかの方法を講ずる必要があるではないか。たとえば仁科さんが社長で科学研究所というのができたことがあります。ところが株式会社ではどうしても経営が成り立ちませんので、株式会社科学研究所法案なるものを提案いたしまして、政府からそれに対して一億円の補助金を出すことを決定した。本年は一億二千万円か三千万円にふえます。どうしてもその理想の達成ができなければ、株式会社に対してそういう法律によってあとからでも始末ができるのであります。やる場合はかくあれかしと思う方向に免許をすべきではなかろうか、こういうふうに思うのであります。映画会社とかなんとかいうようなものもほしいのでありましょうけれども、それはどっちみち今までの放送と五十歩百歩であって、免許を与えれば結局金もうけをするのがそれだけふえると言うと怒るかもしれませんが、多くなるだけと解釈いたしております。ですから、一歩でも前進するようにこの際免許を下しておくことが必要ではないだろうか。そうして将来どうも経営が不振で、どうしてもいかぬというならば、私はこれは法律案を出して、政府はこれの救済策を補助金なり何なり出して講ずべきではないか。これがほんとうの政治的な立場ではないかと思うのでありますが、どういうふうにお考えであるか、ちょっと伺います。
  19. 千葉雄次郎

    千葉参考人 ただいま私の述べました論旨を非常に御激励して下さるかのような御意見と承わりまして、私としては非常にうれしく存ずるわけですが、事実その種のいいものをやっていきたいものに認可されることは非常に望ましいことと思うのですが、現行法上これを縛る手がないということになります。それでやはりこれは認可するときの当局の判断にまかせなければならぬ。またあくまでそれでは最初の主張通りいいものをやって、刀折れ矢尽きて政府の援助を仰がなければならぬということになった場合、政府がそれでは乗り出してやるか、これはいろいろ問題は起ると思いますけれども、万人が認めて、なるほどあれなら政府が補助を出すのに値する。たとえばイギリステレビジョン法できまっておるように、いいもののために金を出すということが事前にきまっていて、ただ経営のまずさを政府の補助金で穴埋めするというようなことにならずにやれるものなら、これはけっこうと思うのですが、その辺のかね合いということになりますと、これは政治家の方々の御判断によることと思うのでありますが、ほんとうにいいものが、現在あるものと質的にも違うというくらいにいいものができて、それに対する何らかの措置が必要だということになれば、あるいは国会でその種の法的の手当をお考えになることもけっこうかと存じます。
  20. 森本靖

    ○森本委員 私もいろいろお聞きしたいと思いますが、非常に時間がありませんので二つだけ千葉先生にお聞きしたいと思います。今の教育放送の問題でありますが、テレビ教育放送がこれだけ論議されて、これだけ混乱したような形になっておるのは、郵政省が発表したチャンネルプランの第三項の三、このような煮たような焼いたような何やらわからぬようなチャンネルプランを発表したことに、一番大きな原因があるのじゃないかというふうに私は考えておるわけです。今までに非常に意見が出ましたが、私も千葉先生がおっしゃられるように、純粋に教育放送を行うとするならば、これはNHKにやらすのが当然妥当な方向だというふうに考えるわけであります。ただそういうふうになった場合において、放送法の第七条の、日本放送協会はあまねく全国国民に対してサービスをしなければならぬということとの食い違いをどうするか。これが日本電波割当からいいますと、どうしても全国的にできない。しかし先ほど橋本委員も言っておりましたが、キーステーションというような局を東京に作って、それな各地方局が利用するならばできるではないかという御意見もありましたけれども、しかしそういうふうに行なっても、見る力では必ずしもそれが公平に見られるとは解釈できないわけであります。私自身も教育放送という問題について、そこをどう解釈をつけたらいいかということを非常に苦慮しておるところであります。千葉先生も先ほど来その結論めいたことは全然おっしゃられておらないわけですが、この教育放送の問題をどういうふうに結論をつけていったらいいかということを、きわめて有識なる千葉先生の方から率直な結論をお聞きしたいのが私たちの本日のこの会の目的であります。先ほど来、現在の民間放送ではない、さらにNHKではないというもので、損得を度外視して純粋の教育放送をやりたいものがあるならば、やらしてもよろしいではないかという御意見もあります。しかしそれに対しては、現行法においては、かりに許可を得たといたしましても、それが将来そのまま純粋にいくとは限らないのであります。さらにこれが経営能力という点におきますると非常に疑問も出てくる。そういうことになって参りますと、その方法もわれわれとしては非常に危倶をいたしますし、またその特定のものについての政府の補助という問題についても、非常に危倶せられる面も出てくるわけであります。そうなつて参りますと、まず純粋に教育放送ということを考えるならば、NHK公共放送としてやらすことが一番妥当である、こういうことが考えられるわけでありますが、それでは一体日本の今日の十一の波の割当において、どういうふうに解決をつけていったらよいか。これは純粋に技術的な問題でありますので、なかなか解決がつかないと思いますが、もともと私は今日の日本の国の放送行政というものが、国力からすれば、あまりにもぜいたくきわまるものであると考えている一員であります。確かにこれ以上のテレビチャンネルがふえることがいいか悪いかという点から考えていくと、場合によっては悪いことの方が多いのではないかというふうにも考えておる一員であります。そこで、これは千葉先生もなかなかおっしゃりにくいと思いますけれども、先生としても一応の自分としての結論をお持ちであろうと思いますので、このチャンネルプランの三項の三における教育放送というものについて、理想論でなく、現在のチャンネルプランの波の割当と、さらに現在の状況を現実的に見た場合に、今どう解決づけていったらよいのか、先生の該博な知識によるところの結論を具体的にお示し願いたい、こう考えておるわけであります。
  21. 千葉雄次郎

    千葉参考人 ただいまおっしゃいましたように、放送法第七条で日本放送協会目的ははっきりうたっておりますが、実はラジオについては長い間独占で、この目的にうたっておるようなことが、すでに実現できておったわけであります。そこへ付加的に一般事業者がつけられて、従来からの放送体系の中心はそのまま維持されてきておったと思います。この点については各方面からのいろいろな批判があることも事実でございまが、私は日本放送の体系としては、これがよいと信じております。ところがテレビの際には、最初からNHKテレビ民間テレビ二つほとんど同時に並立してやってきておる。この割当基準案なども、先ほどお話がありましたように、NHK優先なるかのごとき表現もございますが、ラジオの場合のように、既成事実というものがNHKにはない。そこでただいまお話のような問題にぶつかるのだと思う。これがもしもラジオの場合のように最初からはっきりとあまねく全国において受信できるような放送を行う、これはNHKにやらすのだという太い線がはっきりきまって加って、なおかつ余裕のある場合には民間テレビにも許すのだということになっておったならば、割合にやりよかったと思う。ところが昨年の基準案でも、主要な都市においては復教のものを認める、できる場合には複数主義でいこうということになって、今になってみますと、ラジオ二つ放送番組、第一放送、第二放送を出すように、テレビにおいて第一テレビ、第二テレビをNHRが持つということは、なかなかむずかしい状態になっているようでございます。私技術的なことはよく存じませんが大体そういうことである。それで今になってそれではどうやったらいいかということになると、すっきりとラジオにおける第一放送、第二放送というような工合にはいかないと思うのでありますが、しかし教育に重点を置いた番組NHKにやらすということになれば、やはりそれを何らかの形において全国的に教育番組も流れるように、そしてまた必要な娯楽番組も流れるようなやり方、こういうものを考えていかなければならぬと思うのです。それで私昨年当局が出されました放送法改正の第一条にありますよその一般事業者の求めに応じて協会がその品物を作ってやる、つまり同じ放送事業をやっている方々でありますから、両者の関係をもう少し円滑に有無相通ずるようなやり方で、そして公共利益に適合するような方法はないだろうか、そういったようなことを私実は考えておるのでございまして、どうもそれ以上にそれでは具体的にどうやるのだとおっしゃいますと、私も専門家でございませんのでよくわからないのでございます。
  22. 森本靖

    ○森本委員 結論としては教育放送原則的には放送協会全国的にやらせた方がいいという御意見でありますが、ただこれを技術的に見た場合にそれができないので、われわれとしては非常に苦慮しておるわけであります。しかしこの問題については時間がありませんので、他日また本委員会でもいろいろ論議されると思いますのでここではやめますが、もう一点だけ伺つておきたいことがございます。それは過日この委員会でも私の方から質問をいたしまして若干問題になりましたが、今のテレビ放送における――民間放送でありましてもNHKでありましても映画を放送する場合に、これが映画会社から放送をボイコットされたような格好になっておりまして、実際に放送される映画は、アメリカ映画でありますと何年か前のボロボロの映画である、日本の映画でありますと三年たっていなければ出さない、こういうことで今日テレビ放送における映画は非常に古いものを放送しております。ところがNHK公共事業としてあまねく国民にこれを見せなければならぬといって聴視料を三百円も取ってやっておる。ところがその映画たるや何年も前のボロボロの映画を見せている。これは全く国民を愚弄しておるものではないか。映画会社がくれないからやむを得ません、こういう質疑応答もあっわけでありますが、それに関連をいたしまして今後テレビが、カラーテレビ、白黒テレビにおきましも全国的にこれが拡充せられますと、これが映画に影響してくるということは当然であります。しかし映画会社としてもこれは将来スクリーンとかあるいはその他を研究してこれに対抗し、別途の方向で考えていくべきではないかというふうにわれわれは考えております。ところが私もまだ正式の情報は聞いておりませんけれども、過般の新聞にも映画会社が競ってテレビ競願を行なった、こういう記事が出ておるわけでありますが、この問題についての一つ先生の御意見をこの際お聞かせを願いたいと思うわけであります。
  23. 千葉雄次郎

    千葉参考人 テレビの映画事業に及ぼす影響は、先ほど私ちょっと触れたように、将来ますます影響があるであろうということは考えられる。それで業者の方でも御承知のようにワイドスクリーンなどで対抗策を講じておるようでありますが、これはどうも国家的にどう規制できるかというても、なかなかむずかしい問題ではないかと思うのです。それからまたそういったような影響あるがゆえに、映画の方で公共放送にもいいフィルムを売らないという問題、これはかなりどこでもある。それからまた実況放送なんかもギャランティーを高くして禁止的にやるとか、いろいろな自分のところの不利な影響が多くなればなるだけ、こういう問題が起ることはやむを得ないのではなかろうかと思うのであります。それを法的に規制できるかといっても、現在ではいわゆる契約自由でございますから、いやだという契約をやらすわけにもどうもいかないのではないかというふうに考えております。これは両方で頭を使って、公共に最もよくサービスできる方法が考えられればむろん望ましいことでございますけれども、現状においてどうしたらよいという案は実は私は浮かばないのでございます。
  24. 松井政吉

    松井委員長 竹内君。
  25. 竹内俊吉

    ○竹内委員 時間がないようでありますから、一点だけ千葉先生に伺っておきたいのですが、先ほど来のお述べになったこと、並びに質疑応答でお述べになった点を総合いたしますと、大体教育テレビ商業テレビの基礎においてやることは無理だろう。現実問題としては公共放送であるNHKにやらすことが適当だ、こういう御意見のように拝聴いたしました。その商業テレビの基礎でやることは無理だということの理由は、主として経営が困難だろう、うまくいかない。従って番組作成その他にもそれが影響していい教育テレビにはならない懸念が多いからこれは無理だろう、こういう御意見のように拝聴いたしました。そして教育というものの本質から考えて、商業テレビにやらすことは無理だ、こういう意味であるように拝聴したのでありますが、教育の本質から考えての教育テレビのあり方について、いま少しく具体的なことを伺いたいと思うのです。ここで私の意見をちょっと加えますと、教育テレビの問題は教育の本質から考えてこれはNHK一本で画一的なことをやるよりも、もしできるならばバラエティのある方が教育の本質にかなうものだ、こういう意見を持っておるのであります。長くなりますからそれだけ申し上げて御意見を拝聴したい。
  26. 千葉雄次郎

    千葉参考人 ただいま商業テレビ教育番組をやることが経営上無理ではないかという理由をおっしゃいましたが、その通りで、私が当面考えておりますのは、商業テレビ局で教育番組をやるということは無理ではないか、こういうことなんです。しかしその裏にはやはりそういう無理な商業教育テレビ局を作った場合には、番組内容にその無理が及んでくる、つまり番組内容が悪くなるということも当然考えておるわけでございます。たとえばスポンサーがないので、好ましくないスポンサーを持たなければならない。それで多少内容を曲げなければならないというようなことが起ったらどうだろうかということも考えると、そういった懸念がもしもあるならば、そうでなしに一般聴視料でまかなうことの力が、まず安全ではないかということを私は考えております。私立のテレビでやることが番組として望ましくないかどうかということになりますと、ただいまの御意見は私も同じで、それはけっこうなんです。いわゆる学校におきましても私立学校というものがある。これは文部大臣の認可が要りますけれども、そういうりっぱな経営をできる人だということで、そしてこれは私立学校についてはいろいろ法的な制約がございます。そういうものにのっとって私立学校を運営していくという場合には、これは官立学校だけしかないよりも――NHKは官立ではございませんけれども、そういう一つ企業体でやるよりもそういった全然独立の機関がやる、そこに特色が出るということは、私はけっこうなことだと思っております。ただしかしそれを、私立学校の場合には、これは正規の授業料を取って経営するということができますけれども、商業テレビの場合は、授業料といったものと性質の違う財源で経営しなければならぬというところに、かなり問題があるのじやないかと私は思っているわけです。
  27. 松前重義

    ○松前委員 先ほどお話がありましたNHK教育テレビをやらして、その番組を一般に流してやるといった御構想を承わりましたが、これは実際問題としては今の放送法によっては不可能なことであります。それは料金を取っては売れないわけです。ただでやることはできる。そこのところは民間放送にすぐ流すという前提の上には立たないような感じがいたしますが、考え方の前提としてちょっと……。
  28. 千葉雄次郎

    千葉参考人 その点は改正をしなければできないわけです。
  29. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 それではNHKの代表並びに民間の金子さんにお伺いいたします。特に小松会長さんに聞きたいのですが、教育放送という言葉を使っておりますが、教育放送なるものの内容をどういうふうにお考えになっておりましょうか。政府の基本方針の中では芸能まで入っておるようですが、教育放送学校教育番組社会教育番組、産業教育番組中心としたものと考えておるのですが、教育放送というものはどの程度の範囲をお考えになっておるのですか。
  30. 小松繁

    小松参考人 私先ほどの公述に申し上げましたように、学校放送並びに一般社会人に対しての講座、それから職業についておる青少年に対する講座、そうしたものが教育的な番組というふうに考えております。なおそのほかには一般家庭の主婦に対する講座というふうなものももちろん含んでおりますが、総括的に申し上げまして、これは御質問外になるかもしれませんが、社会教養的な番組と区別して教育放送と申し上げております。先ほど来申し述べました教育放送という中には社会教養的な番組も含めて、総括的な意味において教育放送というふうに広く考えて意見を申し上げたつもりでございます。
  31. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 公述の中に第三放送ということをだいぶ強調しておられたのですが、第三放送教育放送との関連、別個のものか、それとも第三放送教育放送を含んでいるのか、その点について伺いたい。
  32. 小松繁

    小松参考人 第三放送として申し上げましたことは、一応現段階におきましては――ラジオに関しましての第三放送でございますが、これは先ほどの公述にも幾らか具体的な内容を申し上げましたが、教育放送番組の立て方とは全然別個に第三放送プログラムというものを考えておるわけでございます。BBCがちょうどやっておりますような非常に高度の文化内容を持ちました番組、またもちろんそういう性格のもとに時間に縛られない非常に長時間を要るすような番組、ほかの番組との関連性を時間的に考えないでやれるような特殊な番組というものを考えておるわけでございます。
  33. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 そうしますと第一放送、第二放送、第三放送教育放送と、この四つのもののように承わりますが、そうすると現行の第一放送、第二放送、これは中波放送ですが、それとテレビジョンの一波とこの三つを持っているわけです。その中で教育放送番組をお組みになる――現在全然組んでおらぬわけではありませんが、もっと番組の数をふやして、一応教育放送番組と見られるようなものを組むお考えがあるかどうか。
  34. 小松繁

    小松参考人 ただいまの御質問は、テレビジョン番組のことのように解釈いたしましたが、もちろんラジオにおきましては、第一放送においては一般大衆的、第二放送においては主として教養番組ということに考えております。これと同じように、テレビジョンにおきましては、第一放送においては一般家庭対象というふうに、将来におきましては整理したい。第二放送においては主として教養番組に主力を置おります。ただし第二放送がかりに始まるといたしましても、ラジオの第二放送が始まったときと同じように、ある大都市から順次時間的に申しまして全国的に普及していくだろうと思いますので、最初の出発におきましては、特定地区だけに第二放送があるという特殊な時期におきましては、番組の組み力には、今申し上げました大精神は変りはないといたしましても、特殊な考え方を幾らか織り込まなければならぬのではないかというふうに考えております。
  35. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 ちょっと私の言葉が不足しておりまして誤解があったようですが、現在中波でもって第二放送では学校教育放送などをやっておりますが、テレビジョンではほとんどやっていないのです。現在の許されたテレビジョンの波の中で一これは千葉さんにもちょっと言ったのですが、午前九時から放送して二時間の余裕があり、午後は五時間くらいの空白があるわけですが、そういう時間を利用して学校講座なり産業講座なり社会講座なりをやるお考えが現在のテレビにおいてあるかどうか。
  36. 小松繁

    小松参考人 現在放送いたしております七時間数十分の番組の時間の中には、午前十一時からの二十分の学校放送と、午後一時からの二十三分の学校放送番組を組んで実施いたしております。これは全国約一千の学校が現実に受像機を据えましてテレビジョンを教室で利用しております。なお先ほども申し上げました家庭向けあるいは青少年向けの職業講座なんかも含めまして、現在の教育放送と申しますのは約二時間でございます。
  37. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 現在やっているから、午前中の十一時五十分前の時間と午後一時三十分からの時間はあまりやる意思を持っていない、こういう意味ですか。
  38. 小松繁

    小松参考人 これからの問題といたしましては、現在当委員会にも、来年度の事業計画予算にも出してありますが、時間的には経費の関係上、あまり子供の時間を増加するということは、非常に制限を受けておるのが実情でございます。従いまして番組内容におきまして、たとえば子供の時間などにはもっと科学的、教育的な番組に重点を置き、現在でもゴールデン・アワーにおきましてはスペシャル・エベントなどをやりまして、教養番組をかなりやっておりますが、来年度におきましてはその比率をもっと高くしたいというふうに考えておるわけでございます。
  39. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 金子さんにお伺いしますが、先ほど来のお話の中で、民間教育放送局、テレビ放送局を東京にキー・ステーションとして設けて地方に番組を流すのが便宜である――便宜的にはその通りだと思いますが、アメリカの例ばかりが例ではありませんけれども、アメリカのような比較的受像機も手に入りやすく普及率も大きい、かつまたテレビジョン局も大きいところでも、教育テレビ局の番組のスイッチをひねる時間は、一般の放送局に比してわずか二%だというのですが、そういうやり方でやった方がいいか、私の個人の意見ですが、教育番組というものを民間放送局や一般のテレビジョン放送局でも一時間か二時間やる、そういう考えの力がかえって教育的効果を上げる、こういうふうに私は考えるのですが、その点についての御意見を伺いたいと思います。
  40. 金子秀三

    ○金子参考人 ただいまの御意見でございますが、われわれ一般放送事業者といたしましては、すでに意見書に申し述べておりますように、われわれのテレビジョン放送番組内容におきましても、従来の世上のきびしい批判もございますし、われわれもまたいろいろ反省を重ねまして、こういう点についてはさらに重点を置くということを申しております通り、自局それぞれその特殊の地域にふさわしい教育教養番組充実することに力を注ぐことは申すまでもないのでありますが、しかしその教育放送番組内容たるや、いろいろお考えによって違っておるようにもわれわれは聞くのでありまして、当局のいわゆる教育放送番組の実際的な内容はどういうものであるか、詳しいことを私もよく存じませんが、かりに普通いわれておりますような産業教育や成人教育も含めたようなものでありますならば、われわれは自局の製作のもので十分これをやり得ると思います。と同時に、東京にそういう民営の教育テレビ局ができましたならば、その人あるいはその他の関係でさらにいい番組ができるに違いないのでありまして、そういうものと協力をいたしまして、各局とも――時間的にこれを縛られるということはあるいは実際上困難であるかもしれませんけれども、しかしわれわれはこの重大な問題については十分な反省を持っておるわけでありますから、そういう問題につきまして時間的にもこれをお互いに話し合いをしまして、みな納得の上で教育の特定局が東京で作りました番組をもらい、そしてそれを放送するということは、一つのいい実際的な案ではないかと思って、両々相待って教育的な効果を上げるべきものであると考えております。
  41. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 実は学校教育事業は、学校教育法によりますと、教育委員会の認可を経てやることになるのですがね。そうしますと東京のキー・ステーションで作ったものを全国にそのまま流すということは、実際問題として非常にむずかしいのじゃないか。現在民間テレビ局にしても、技術的に何時間もスペースがあいておるのですけれども、大体テレビジョン局が教育委員会の所在地にできましょうから、そことタイ・アップしてやることになるのだろうと思うのです。ですからキー・ステーションで作った番組をそのまま全国の一般放送会社にやらせることは、法律的にもむずかしいのじゃないかと私は思うのですがね。ただ社会教育、成人教育程度教養番組であれば、東京で作った番組が使える。しかしながら製鉄に関するような番組ですと、必ずしも東京では――ほかの方が可能である。こういうことになるので、むしろキー・ステーションを東京で持つということが一般のテレビジョン局にそういうものを組ませるという便宜にはならぬのじゃなかろうか。それよりは、法律を改正してもけっこうですが、自主的に各テレビジョン局が、民放といわずNHKといわず、これが一つ教育番組を組むという決心をしたらどうだろうか。ないならばいいが時間があいている。あいているにかかわらず、なぜその時間に教育番組NHKも民放も組めないのかという感じを私は持つのです。もちろんこれは経営上の問題――先ほどNHKでは予算がないから、一日四十分しか学校放送の時間がないということで、予算がないのはやむを得ませんけれども、しかし私はNHKの場合は他の娯楽番組を犠牲にしても、今国民要望しておる学校教育なりそういう産業講座なりは組むべきじゃないかと思う。民放にしても一応事業税等は免除せられて、完全なる保護じゃありませんが、許可制によって育成せられている。そういう関係から、あえて法律改正を待つまでもなく、自主的に現在各局ともやっておられ、あなたのところでも近く、やられるわけですが、その場合に一時間、二時間の教育番組が組めないのか、そういうことによって無理にスイッチをひねらなくても、そのまま娯楽番組から教育番組を聞くことができる、その方が教育的には、また国民的には効果があるのではなかろうか、こう考えているのですが、この点に対するあなたの御見解を伺いたい。
  42. 金子秀三

    ○金子参考人 橋本委員の御質問、まことに適切でございます。私も原則的にはそうじゃないかと思います。今度チャンネルプラン割当表を見ましたときに、この修正案の中に教育テレビ放送がうたってありましたが、われわれ一般放送事業者におきましては、現在では時期尚早である、われわれ自体がきびしい反省のもとに教養番組をふやすことによって、またNHKさんが当然おやりになるべき教養番組の増加によって、一応これが果せるのではないかと思っておったわけでありますが、どうしても教育放送が必要であるという御意見が出て参りまして、それによって割当計画もいろいろ変更があるやに承わりましたものですから、それならば全国にそういった教育放送局、いろいろな問題がある教育放送局を作るということは、周波数の現状から見ましても、いろいろの事情から見ましても適当でないから、幸い東京には民営としてもやっていける自信のある申請者がわれわれの会員の中からも出ておりますので、そういう人たちが良心的にやってできるものであるならば、できるだけそういうものにやらせる、ただし今御指摘になりましたように教育委員会の認可を得てやらなければならぬものでありますし、また新しい教育法の精神に照らしましても、画一的な教科書的番組全国一つのワクにはまつて流れることは、当然地方の教育委員会において問題になると思いますので、これはそういった純粋な教科書的教育番組、たとえば学校放送のごときものでありますならば、当然そういう話し合いをする広場を東京に持ちまして、民放各社及び教育テレビ専門局、並びに地方の教育委員会の意向を反映いたしまして、その番組を流すことに協力したいと考えております。ただし今橋本委員が御指摘になりましたごとく、私も詳しいことは存じませんけれども、アメリカにおきますところの教育専門局の聴視率というものは、きわめて低いものと私どもも承知しております。しかるにアメリカにおきましても、一般商業放送会社が教養教育番組を組んでいるところがございます。サンフランシスコにありますところのウエスティングハウスの放送局のごときは、相当大幅な学校放送をしておりますけれども、それは専門にカリフォルニア大学がやっております教育放送聴視率に数倍する聴視率をあげております。アメリカのそういう人たちの話を聞きますと、一般商業放送会社の番組の中にそういうものをはさみ込む方が、むしろテレビジョンを見る人が非常に多いということを聞いておりますので、現在のように周波数の不足な今日におきましては、とりあえず東京に熱心なそういう教育放送専門局を作りたい。りっぱにやってみせるという方がおりますから、これに協力することにして、われわれの商業放送番組の中にこれを入れることによって効果を上げることが、当面のここしばらくの間の最も適切な方法だ、このように考えております。
  43. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 最後に一つ、私はこう考えているのですが、教育放送局というのは、先ほどちょっとお話があったように、大学が教育テレビ局を持つことは、私はいいと思います。アメリカのように数十波あって、そういうように大学がテレビ教育局を持つというのであれば、専門の教育局があってもいいと思います。しかし日本のように非常に数少いところで、一般テレビジョン局と教育テレビ局というものを、たといNHKであろうと民間であろうと持つということは、非常に無理がありはしないか。そういうことからして、それよりもより多く国民に訴えられるものは、今あなたからもお話があったように、一般の局が教育番組を組むということの方が、数倍の効果を上げておる。その効果の上がるような方法をこの際考えることによって、他のテレビジョン番組の、いわゆる文化向上もはかれる、かつまたテレビジョンの波の融通もきく、こういうことになりはしないかという意味で、いわゆる現在の日本のような少い波においては、特に限って教育テレビだとか一般局だとかいうふうに区別すべきものじゃないと思う。こういうように私個人的な意見として考えておりますが、これについてNHK並びに民放当局意見を伺いたい。
  44. 金子秀三

    ○金子参考人 私個人といたしましては、橋本委員のおっしゃる通り、全面的にそう考えます。もしも当局及び世論によりまして、できるならば東京一局にとどめていただきたいと考えておるわけであります。他の周波数のない今日、かつまた教育という非常に大きな問題では、未解決の問題もいろいろある今日の状態においては、われわれ民間放送局NHKと相待って、特色のある、そのローカルに適応した教育教養番組を良心的に作ることによって、一応これを解決するということにつきましては、全く橋本委員の今の御意見と私も同様に存じます。ただ東京にあと二波あって、それがまた現在のテレビ局と同じようなものを出したのでは、あまりに波がもったいないではないかというお話もありますし、また会員中には、ぜひこういうものをやりたい、またやや周波数に余裕があるように思うからこれをやりたい、採算については十分自信があるから、決して御迷惑はかけないし、また免許をとつたからといって、その内容が移行して当初の目的に反するようなこともしない、というふうなお話も十分承わっておりますので、それならば東京一局にとどめて行うということは、まあ世論もその方面の支持者もあるやに考えますので、私どももそのように考えておる次第であります。
  45. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 UHFの問題については、今まで意見が出ておりませんから、これについてお聞きしたいのですが、このバンドは目下研究中ですが、実際上アメリカでは実施しておるようであります。その成果について私は具体的には聞いておりませんが、もちろんこれは使える波だそうです。このUHFのバンドをとるということになれば、少くとも日本でも七十波くらいとれるようであります。こういう問題が次の問題としてあるわけですが、これについてNHK当局では、何か御研究なり、あるいはこういうものが将来利用される場合においてのお考えなりがありますか。あったら一つお聞かせを願いたい。
  46. 小松繁

    小松参考人 ただいま橋本さんのおっしゃったような波をとる余地があるということについては、われわれも十分考えておりますし、また将来テレビジョンが非常に発展したときの姿を考えますと、現在のVHF帯の中でかりにもっと工夫いたしまして、チャンネルが幾らかふえることがあり得たといたしましても、きわめて知れた、わずかのチャンネルでございます。従いまして、UHFは単にテレビジョン放送に使うだけでなく、その他の、たとえば放送事業におきましては通信連絡装置、あるいは中継装置その他いろいろのところに利用できるということを考えまして、かなり前から研究いたしておりましたが、先ほども申し上げましたように、カラーテレビジョン実験放送を現在行なっている波長は、UHF帯の波長でございます。従いましてしばしば研究所から、放送と同じ形において電波を出しまして、放送会館等において受信いたしております実験放送の成績から見ましても、現在十分実用になるということは、もう明瞭になっております。ただこれを直ちに放送に使うということにつきまして一応考えなければならぬことは、日本の通信機メーカーの生産態勢が、工業化されるところまではまだ十分進んでおらないこと、それからもう一つは、何といいましてもそれに使う各部品が非常に高価になりますので、現在のVHF帯の波を使うよりも、機械はやや高価になるということが欠点かと考えます。従いまして、私どもは先ほど申し上げました第二放送実施するという場合になりますと、VHFの割当全国的に希望するわけでございますが、これは先ほどの公述にも申し述べましたように、放送局側の経費の節約、また受信者がその受信をする設備の経費の減額から見まして、ぜひ双方の利益のために、VHFを原則として割り当てていただきたいという希望を持っているわけでありますが、UHF帯を使う政策は、今日考えてもいい問題ではないかというふうに考えているわけでございます。
  47. 松井政吉

    松井委員長 松前重義君。
  48. 松前重義

    ○松前委員 金子さんに一言お尋ねいたします。先ほどラジオテレビの兼業の御主張がありましたが、私が先ほど千葉さんに御質問申し上げましたように、地方によって非常に独裁的な形になる可能性が濃厚です。地方の名前は申しません。あなたの福岡などではそういうことはありませんし、東京あたりでもないのですが、単数のところはその可能性が非常にある。従ってそういう言論の独裁のような姿における認可は、断じてわれわれはいかぬと思っておりますが、あなたはこれに対してどういう御意見をお持ちであるか、承わりたいと思います。
  49. 金子秀三

    ○金子参考人 郵政省のお示しになりましたものには特定勢力とありまして、特定勢力の詳しい具体的な内容は存じませんが、具体的に今一番問題になっておりますのは、新聞社と放送会社の関係ではないかと思うのでございます。新聞の社長をしている者が民放をかたわら経営し、それがさらにテレビジョンという大きなマス・コミの機関を手に入れて、そうして不幸にしてその社長が非常に政治的あるいは思想的に偏向を示した場合には、とんでもない結果になるのじゃないかという御指摘でありまして、そういう点の抽象論といたしましては、まことにその通りであります。私も新聞社の出身でございますし、私の属しておりますラジオ九州は、毎日新聞社が非常に大きな株を持っているのでありますが、しかし実際問題といたしましては――特例は存じませんが、一般的に申しまして、現在新聞社が実際に放送会社の番組面に干渉し、あるいは人事に干渉し、あるいは経理に干渉するというようなことは、少くとも私の聞き及びます範囲内においては、ないように思うのであります。むしろ特定勢力云々ということと、ラジオテレビ兼営ということとは問題が違うのでありまして、われわれは特定勢力の弊害というものをよく存じております。放送会社がラジオテレビを兼営するというのは、たとえば新聞社の場合におきましては、これは自由企業ございまして、一般の公序良俗に反せざる限り、現在新聞紙法というものもないわけでありますから、どのような言論をしても自由でありますけれども、われわれ放送会社は免許事業でございまして、そこに公共福祉に寄与しなければならない大きなワクがはまっておるわけでございまして、おのずから新聞と放送会社というものは性格が違うと私どもは解釈しております。実際問題といたしまして、過去六年間におきまして、私は毎日新聞社から番組内容あるいは言論のあり方、あるいは人事、経理等について干渉を受けたこともございませんし、毎日新聞社の利益のために放送事業を利用した覚えはただの一度もございませんでした。従ってそういうことはございませんけれども、本来はこれは全く切り離すべき性質のものであると私は、これは個人の意見でありますが、深く信じております。そして免許事業であるところの一般放送事業者ラジオテレビを兼営して、その地域社会において公共福祉のために尽すのがほんとうだ、このように考えておるのでありまして、松前さんの最初の前提の、新聞社、放送会社というものを切り離すことにつきましては、私どもは全面的にもう少しはっきりした形において切り離されても差しつかえないと思うのでありますが、われわれが兼営をやりたいと申しますことは、あくまで放送会社がその地域社会の良心的な集合体であるところの一般放送事業会社であるということから兼営をさしていただきたい、こういうふうに申しておるのであります。
  50. 松前重義

    ○松前委員 金子さんのところは私の議論の対象ではございませんので、御安心願いたいと思うのですが、ただ地方によって相当にこういう例があります。小さな地方紙の中には一県一紙、それがラジオを兼営しテレビを兼営した場合は、大へんなことになることは事実であります。この点については大体において御賛成のようでありますから、これ以上お尋ねすることはやめます。  その次にお尋ねしたいことがありまするけれども、その前に一言申し上げたいのは教育の問題です。皆さん非常に該博な知識をお持ちでありまして、私からこういうことを申し上げてはどうかと思うのですけれども、私は実は大学を経営し高等学校や中学校を経営しております。従って学校教育については多少認識も持っておるつもりであります。放送をやろうとするときには、東京教育委員会の認可を経なければならぬという橋本さんのお話でありましたが、そういうことはございません。学校の認可を得ておるならば、これは全国自由でありまして、そういうことは全然ございません。しかしながらこの教育テレビという金子さんの方から御提案になっておられる事柄は、そういう一年生、二年生、三年生の教育内容をそのまま通信教育としてやるというのではないと私は思う。橋本さんが二%と言われたのは、おそらくラジオによって教育されておる学生だろうと思うのです。いわゆる教育放送なるものの内客というものはそういうものでなくて、一般的な、言いかえると学術放送みたいなものではなかろうかと私は想像しております。まだ中身を拝見しておりませんからわかりませんが、たとえばラジオの機械の組み立てはどうするとか、真空管はどうだとか、いろいろ説明していくようなのをテレビで見せなければわからない、口だけで言ったのではわからないから、物を見せてやっていこう。ことに科学的な学術教育というものは、テレビによって非常に行われやすいだろうと思うのです。そういうふうな意味でありますので、そこのところを混同してやりますと、議論が非常に複雑になってくるような感じがするのであります。そういう意味から、もしも株式会社が教育放送をやろうという場合において、学校放送そのものをやろうというならば、これは断じて不可能であります。これは学校法人としての許可を受けない限り日本においてはできません。従ってそれと混同しないようなところで、この議論を運ぶべきものじゃないかと思うのです。そういう意味から、今の金子さんの東京に一局作る、それで日本中にそれを回していってプログラムの中に入れてやる、これは一つ考え方としてはよほど考えられた結論だろうと思います。もう一つは、いやそれよりもだいぶプログラムのあいた時間があるから、それに入れた方がいいではないかという意見もあります。これは討論ではありませんから、討論はしたくないのでありますが、一応御意見が出ましたから申し上げます。そこでこれを比較検討してみますると、私は自分で大学を経営したり高等学校をやってみたりしまして、非常にわれわれの教育態勢の弱きことを感じています。教育というものは非常な責任がありまして、そう簡単に教育々々といって、現在のラジオ会社あるいはテレビ編成局あたりの人たちによって教育ができると思われるのは大間違いだ、NHKもそうだと私は思います。私は学生を預かってみて、ほとんうに教育の重大性と自分自身の力の足らざることを感じ、われわれの陣容がいかに不足しておるかということを痛切に感じておるものです。そういう国民教養に関する重大な問題につきましては、これはもっと専門的な立場においてやっていかなくちゃならぬ。それが学校教育においてそうであると同時に、一般の社会教育においてはなおそうじゃないかと私は思う。そういう意味において、現在の編成局の中に適当にまぜてやるというようなことは言えば言えますけれども、私は現実にそういうことをやったときの効果というものを実はおそれるのでありまして、これはやはり専門家にやらせるべきものじゃないかと思う。そういう意味においてNHKでもしやられるとするならば、現在のような陣容の方々がその資格がないというわけではありませんけれども、そういうふうな一つの理想に向って相当なスタッフをそろえてこれにぶっかっていかなければならない、私はこういうふうに思うのです。東京民間のものを一局作るという語でありますが、これにしてももしやるとすればやはり同じようなかまえが必要である。これにつきましてどういうお考えをお持ちであるか、御両所から一つ意見を承わりたいと思います。
  51. 小松繁

    小松参考人 言葉を返すようでございますが、NHK教育放送として現在まで行なっております要領から言いまして、NHKの人間が教育をするのではなくて、日本教育関係のあらゆる層、機関が一丸となって教育放送、特に学校放送でございますが、これを進める態勢をとって私たちはやっておるわけでございます。御承知のようにもちろん部内には教育番組の専門委員会もございまして、各方面の有識者の意見が根幹になりまして、教育番組の取扱い方をきめておりますが、同時にこれを教室に移しましてこれを利用いたします場合には、全国学校放送研究連盟というのがございまして、これが全国的な組織によりまして学校放送のあり力、またこれの運び方、利用の仕方、すべての点について慎重に研究をされ、これが日々の学校放送の運営上に大きな指針となって進めておるわけでございます。そういう考え方から言いまして、もちろん直接衝に当っています担当者は勉強する必要もございます。また有能な人間を大いにそろえる必要もございますが、その人の考え方、その人の力によって教育放送を進めるのではなくて、やはりそうした経験、同時にまた責任を持って教育を担当している方々の広い組織を利用いたしまして、その人たちの大きな力のもとに、この体系をつけていきたいという仕組みでやっておるわけでございます。現在の状況から言いますと、もつとそれが広い範囲に、またりっばな人たちにたくさんそうした機関に参加していただきまして、もっとそれを積極的にまた権威づける方向に進みたい。当然教育の担当府である文部省の方とも同時に提携をいたしまして、日本政府教育方針また実際の運行要領というものと、われわれはうらはらの関係において進めておる次第であります。
  52. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 先ほど私の聞きましたのは、学校教育については教育委員会の承認を経る、こう申し上げたのですが、私間違ってないと思います。従来NHKでは学校教育の教材について承認を経ないでやっておりますか。
  53. 小松繁

    小松参考人 その点は昨年一度問題になりましたが、現在は承認を受けないでやることができるようにNHKについてはなっております。
  54. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 NHKに関しては法律でもって直したわけですが、一般の場合、学校教育放送については教育委員会の承認を経ると私は考えておるのですが、その点電波監理局長に御答弁お願いいたします。
  55. 濱田成徳

    ○濱田政府委員 私も明確に存じませんが、多分そうだろうと考えております。
  56. 金子秀三

    ○金子参考人 今松前さんからのお話の通りでございまして、教育というものはわれわれのようなしろうとがこれをいじることが危険であるということは、もちろんその通りだと思いますが、現在一般放送局がやっておる教養教育番組におきましても、われわれの局の内部だけでもってこれは教養番組だといって勝手にやっておるわけではありません。各局それぞれやり方には差異がありますけれども、その道の方方の御意見あるいはそういう会を設けて、ラジオ教養番組というものは作っておるのでございます。ただラジオにいたしましてもテレビにおきましても、聞いてもらい、見てもらわなければ何にもならぬのであります。従いましてそういう各専門家の御意見なりあるいはそのテキストなりというものをいただきまして、それをどうすればより多くの人々に聞いてもらい、見てもらえるかという演出については、大体プロデューサーがこれを担当しておるが、プロデューサーが勝手に教養番組を考えて、これを電波に流しておるのでは絶対にありません。  なお東京に考えられておる民営の教育放送会社が、どのような具体的な構想を持っておるかは私も詳しくは存じませんが、伝え聞くところによりますれば、やはりその教養番組委員に広く各界の権威者を網羅して、万遺漏なきを期するというふうに考えておられるやに聞いております。またそれを地方に流す場合には、まだこれも具体的な話し合いにはなっておりませんが、地方各社が納得してこれをもらえるような仕組みを考えておるやに聞いております。
  57. 松前重義

    ○松前委員 FM放送の問題について御意見を承わりたいのです。東京だけ考えてみてもチャンネル二つあるという話でありますが、それを先ほど来の千葉さんのような意見に従って、もうテレビはやめた、ますますプログラムが下落するだけだ、こういう前提のもとに立って考えていく場合は、当然そのチャンネルはそのままとっておくのではなくて、むしろFMあたりに回すべきじゃないだろうか。それならばたくさんの放送ができますから、テレビではない、FMにこれを回す、こういうふうに私どもは考えるのです。それでむしろそれを学校放送その他に回した方がいいのではないか。こういうふうに思うのですけれども、一体東京へあと二つテレビ局を作って、今までラジオの六年のとうとい御経験の結論として、一体これがペイしてうまくいくかどうか、何も教育だけでなくて、一般のテレビでさえもうまくいくかどうか。東京だけでなく大阪もそうでありましょうし、あるいはよそもそうでありましょうから、その辺のことを経営上の立場から一つ……。
  58. 金子秀三

    ○金子参考人 FMを一般放送事業者が希望しております大きな理由は、現在の中波の周波数が極端に不足しておりまして、私どもの放送会社でも難聴地区が相当ございますが、周波数がございませんので、その意を得ないのであります。また先ほど申しました通り、一般放送事業者が完全な商業主義の上に立つからには、どうしても時間的にあるいはその他の事情によって、今の番組の中に多くのパーセンテージをとったり、長時間放送したりすることができないものですから、さような点をFM放送によって補いたいと考えているのがおもなる申請の動機であり、理由であります。これはFM放送を申請しておる各社が、その目的というところにほとんど軌を一にするごとくそのことを書いておって、教養番組の方に重点を置くというふうに書いてあるわけであります。従ってわれわれは、でき得る限りFM放送もその基本方針を早くお示し下さって、免許を与えていただきたいと思うのであります。  なおテレビチャンネルプランにあるごとく、民放が各地にできても、それがペイするかという御質問でございますが、この点将来のことについてわれわれが今一応考えておりますことを御参考に申し上げたいと思います。結論から申しますと、現在のわれわれ関係四十何社がことごとくテレビ商業放送を始めたといたしましても、この経営は可能でありまして、もちろんその経営者に適当でない人がいればどうかわかりませんが、良心的な経営をいたしておる限り、そうたくさんの利益配当をする必要もなければ、またすべきでないのでありますから、われわれは経営は十分可能であると考えておるのであります。と申しますのは、日本における広告投下量というものは、これは先のことを考えてみますと、その点はよくわかるのでございまして、昭和三十一年度の日本における総広告料は大体七百四十五億円でございまして、そのうち新聞が大体四百五億冊、その他屋外広告、雑誌というものがございますが、ラジオが百三十億円、テレビが二十億円でありまして、三十一年度はこのような数字を示しております。この増加率を見ますと、全体の広告総量は二二%の増加を示しておる。これは国民所得がそのようにふえて参りますために、広告量がふえて参るわけでございます。その中でもラジオは三三%という大きなカーブで増加し、テレビは、開局がだんだんふえてきたためもありましょうが、実に一二二%の増加率を示しております。このように考えてみますと、昭和三十五年の国民所得をまず八兆八百八十億円くらいに落ちつくといたしますと、広告総量は千二百億円くらいになるのでありまして、現在よりもはるかにふえると見ておるのであります。でありますから、昭和四十年くらいになれば国民所得は十兆円、広告費の投下見込額は千六百億円くらいになるのではないか。しかもラジオテレビに関する評価というものは相当高いのでありますから、その点でテレビ事業というものの――ラジオは若干の影響を受けるかもしれませんが、国民所得の増大に基いてその増加率は著しい上昇カーブを描くものと考えておりますので、われわれは経営上においてはさほど不安は持っておらないのであります。ただしこの際現在の放送会社がテレビの免許を得ることができないといたしますと、なるほどテレビの増加率は非常に急激でございますが、まず直接的にラジオがその打撃を受けますために、非常に経営が苦しくなるということは当然考えられると思います。われわれが兼営をお願いする理由の一つは、そういったような、先ほどスペシャル・インタレストとおっしゃいましたが、スペシャル・インタレストにおいても、ぜひとも兼営をお願いしたいというように考えております。従って将来は経営の上におきましては、現在民放あるいは現在のチヤンネルにあります商業放送会社が全部テレビジョンをやるといたしましても、十分経営は成り立つと思います。
  59. 松前重義

    ○松前委員 与えられたチャンネルをFMに使う方を希望するのか、テレビに使う方を希望せられるのでか。
  60. 金子秀三

    ○金子参考人 現在割り当てられました七波、八波あるいはその他のものをFMに使いますよりも、現在ではテレビジョンに使うことを希望しております。
  61. 森本靖

    ○森本委員 時間がありませんので簡単にまず小松参考人に先にお伺いしたいのです。今一番問題になっております教育放送の問題ですが、先ほど来私の質問にもありましたように、原則的には日本放送協会教育放送――この教育放送内容学校放送、一般成人向きあるいは技芸放送というふうに解釈がまちまちになっておりますが、しかしそういうものを含めて教育放送NHKが行うとして、NHK全国あまねく行うということをどう解決をつけて行いたいと考えておられるのか。全国あまねく教育放送をやるについてはどうしたらいいか。その点についてお聞きしたい。
  62. 小松繁

    小松参考人 実際にわれわれが放送いたします場合に使います電波については、現在出ておりますチャンネルプランが、現段階の一つの案として出ておるわけでございます。これはいずれ近い機会に公聴会の機会も与えられるかと思いますので、実際の波の使い方については、ただいま一つ考え方にやや到達せんといたしておりますが、できるだけ慎重に検討しておる状況でございます。およその原則的なものの考え方から申し上げますと、ラジオ発展いたしましたのと同じスピードで、現在はテレビの方が発展いたしておるように考えますが、全国国民からの要望は、そのスピードではもう現在のわれわれとしてはこたえ切れないというふうなほどに、熱心な陳情が非常にたくさん参っております。また当委員会の方でも、できるだけの促進をすることを考えろという御意見が何回もあったように記憶いたしております。先般当委員会に資料としてお出しいたしました当協会テレビジョンの将来への長期計画を、こらん下さいましてもおわかりになりますように、現在は放送が始まって満四年ちょっとでございまして、五年度に入っているわけでございますが、当委員会に出しております予算の資料から申し上げましても、昭和三十二年度末においてはラジオが始ましたときよりも受信者が多くなる見込みでございます。それから先の長期計画によりますと、約十年たちました状況においては、ラジオの約倍の普及率を考えておるわけでございます。従ってそのころになりますと、大体全国的な放送網の形が整うというふうに考えているわけでございまして、そういう状況においては大体全国の各主要地区には、二つ放送電波を出すというふうに考えておるわけであります。そのときの波は、できるものならば原則的には、先ほど来申し述べましたように受信者の負担ということを最小限度にとどめる意味におきまして、VHF帯の中で考えていただきたいわけでございますが、これはいろいろとわれわれは各方面意見も聞いておりますが、VHF帯の中で民間放送も許されることでありましょうから、これは非常に困難かと存じます。そういう場合には、今からそうしたテレビジョン放送発達した姿を予想いたしまして、そのときにはいずれにいたしましてもUHF帯を利用しなければならないのでありますから、そうしたものを大体どういう方向に使おうか、およその見当でも今からつけたらどうかというふうな意見を持っておるわけでございます。二つ放送局がやがて発展した姿におきましては、二つずつ電波を出す。そのときの原則はなるべくならばVHFにしていただきたいということでございます。しかし第二放送ができ上りますとき、これがほんとうに教育的な番組に終始した第二放送網になるわけでございますが、そういうものがスタートする瞬間におきましては、やはり地区別にできていきますから、一つしか電波を持たない局におきましては、教育放送の比率を多くした番組の組み方をとっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  63. 森本靖

    ○森本委員 大体意見はわかりましたが、ただいまの御意見では、全国あまねく第一、第二を持っていくということについては、今の波では非常に困難である。ただしNHKが声を大にしていわゆる教育放送については公共的な性格からNHKにやらせろ、こういうならば、このチャンネルプラン自体についてもある程度いじくれば、若干出てくるところもあろうと考えます。しかし私は不幸にしてそういうNHK独自の考え方によるチャンネルプラン割当についてはまだ聞いておりませんが、若干出てくるにいたしましても、今日のこの波では全国的な問題については困難であるということは当然であります。そうなって参りますと、放送法第七条に基くところからくる全国あまねくということについては、聴視料を取っておる建前からいくとするならば、非常な不公平が出て参ります。そこで先ほど来橋本委員の言っておるような意見と、松前委員の言っておるような御意見が出てくるわけであります。橋本委員の言っておる御意見は、NHKにしても民間にしても、その間にはさめてやればよいじゃないか、こういう御意見も当然出てきましょうし、また松前委員のように、奇特な、採算を度外視してそういう教育放送をやるものがあれば、それにやらしてもよいじやないかという御意見も出てくるわけであります。そこで私は金子さんにお聞きをしたいわけでありますが、橋本委員が言われた点については、これは経営上は当然成り立ってくると思うわけであります。ただ教育放送そのものについて、奇特な人が損得を度外視してやって――下劣という言葉を使いましたが、そういうふうな放送よりも、もっとましな、キー・ステーションをこしらえる必要があるのではないか。それに対しては金子参考人の方では、橋本委員の御意見には賛成だけれども、東京においては一カ所キー・ステーション的なものを民間に設けてもよいじゃないか、こういう御意見も出ておったわけであります。その点を聞いておりますと、若干同じような意見でありながら違うように私は聞いておったわけであります。そこで金子さんにお聞きをしたいのでありますが、そういう場合にそれが正常な教育放送を行なってその放送局が果して採算が立っていくものであるかどうか。実際に純粋な教育放送をやった場合に、私たちは常識的に考えてもそれは採算がとれないと思う。かりに教育放送民間がやるにしても、たとえばその時間割については、ある程度の時間を娯楽放送にさいて、ある程度の時間を教育放送にれする、こういう格好にしなけば、とうてい採算がとれない、こういうふうに考えておるわけであります。かりに東京に一局そういうものを置いてもらいたいという御意見でございましたが、そういう場合にはそれが果して妥当に採算がとれるという根拠がおありになるかどうか、その点を一つお聞きしたいと思うわけであります。
  64. 金子秀三

    ○金子参考人 御指摘のような憂慮はないとは申せないのでございますけれども、少くとも松前さんのおっしゃるような非常に奇特な方でなくとも、会社織組でも、世人が認めてりっぱなものであるといわれるような教育番組を出しながら一応採算がとれるということは、私は東京というこの大都会であるならば可能である、こう考えるわけであります。一たび大阪なり名古屋なり、ましてやわれわれの福岡、仙台、北海道におきましては、それこそその地方自治団体その他の何かの形の援護でもない限り、これは成り立たないと考えております。東京ならば何とかやっていかれるだろう。と申しますのは近来――従来のラジオ及びテレビのスポンサーと申しますものは、ただ自己の商品を宣伝し、その販売実績を上げる手段として、いわゆる広告主の利益において広告が出されたのでありました。そういう点におきましては世上いろいろ御批判のあるような弊害もないわけではなかったわけであります。またわれわれ放送基準を厳守いたしまして、そういうことのないようにいろいろ実際はやっておるわけでございますが、近来だんだんとこういう問題が非常に真剣に取り上げられるようになりまして、何と申しましてもスポンサーというものはただ自己の商品の宣伝、販売実績の上昇ということでなくて、日本国家におけるところのいろいろの大きな産業が国民に対して一種の報恩と申しますか、自分たちがこういう事業をやってこういう利益を得ているために、全国民が好意を持って自分の会社をながめてもらいたいというような意味においての、いわゆる通常これはPRとかなんとか申しますが、必ずしも厳密なPRではございませんが、広告それ自体が昔のような広告でないスポンサーというものがだんだんと出て参ります。ことにテレビジョンになりましてからというものは、いわゆるわれわれの方で申しますと広報広告と申しまして、化粧品とかシャボンとか薬とかいうものではない大きな生産会社などが、だんだんとそういうスポンサーになっておるのであります。そういうような方々は経営者もみなりっぱな方でありますから、おそらくその教育テレビ内容をそれぞれよく吟味されまして、その製作費の負担をされるということもあり得るのではないか。これはラジオが六年前にスタートいたしましたときに、大体の識者はとうていこれはペイしないであろうというようなことでありましたが、多少の弊害はあったかもわかりませんけれども、われわれは六年間まじめにこの放送事業をやりまして、そしてこれはNHKが非常に受信機をたくさん全国に普及して下さったおかげではありますけれども、一応のいい結果をもたらしておりますので、必ずしも現在皆さんがお考えになるよりはよい結果で、そうたくさんの利益が得られるとはとうてい考えられませんけれども、採算がとれなくて国家の補助を仰がなければならなくなるようなことなしに、今お話しになりましたような正しい教育放送をやることは、東京においては可能である。ことにこの会社は、作りました番組を地方放送局によく納得のいく方法によりましてこれを頒布するわけでありまして、われわれは料金を出しましてその番組を購入することになります。そういう収入も当然ここに考えられるわけでございます。また先ほど私が申しましたようにラジオあるいはその他の、すでにやっている方がその一部門としてテレビジョン放送をやられますならば、そのプール計算におきましては、たとい教育テレビが一応若干の欠損があるとしても、利益率が若干減りましても、ラジオ放送によりまして採算は危殆に瀕するようなことはないのじゃないかと考えますので、東京ならば申請しておられる方々は絶対に自信があるとおっしゃっておられますので、われわれもそれを信じておるのであります。
  65. 森本靖

    ○森本委員 あまり長くなりますのでなんでありますが、どうも私は今の金子さんの御意見だけでは、妙にふわっとした説明でありますので、どうも納得がいきかねるわけであります。確かに六年間、民間放送事業者事業を盛り立ててきて、今日のように隆々たる民間事業になったというラジオの面については、私はその通り解釈をしております。しかしテレビジョンについては、今後さらに広告の面について、ラジオテレビに食われていくであろうということも、これは率直な事実であります。だからテレビジョンの将来における事業界というものは、洋々たるものがあるということもはっきりしておる。そういうところまでは同一でありますけれども、しかし純粋な意味における教育放送というものをやる場合に、それは簡単に、六年ラジオがやってきたのでそれと同じようにこれが順調に経営がいくということは、私は必ずしも納得がいかないわけであります。  そこでもう一度お伺いしたいのでありますが、東京だけであるならば採算がとれる、大阪、名古屋については、あるいは北九州等については採算がとれない、こういう御説明でございますが、その点なお具体的に、どういうわけで東京一つ置いたならば採算がとれるかということについての御説明をお願いしたい、こう考えるわけであります。
  66. 金子秀三

    ○金子参考人 私が教育放送局を出願しているわけではございませんので、非常にこまかい計算をいたしたわけではございません。その点はお断わりを申し上げておきますが、地方におきましてやはり経営が困難である、東京におきましても容易ならぬ経営であるということは私どもは十分に察するのであります。しかし松前さんのおっしゃいますように非常に奇特な人でなければ許せぬというようなことでなくても、普通の民営のものでありますればできる。ことに株式会社組織でありますと、資金も集まるわけでございます。一般の財団法人でございますれば、寄付行為をいたしますれば寄付する者に税金がかかったり何かいたしますから、寄付もなかなか集まりませんし、アメリカ教育放送の実情を見ましても、大学の寄付財団などは私立大学のよほど財政豊かなところだけが教育放送をやっておる、その実情を見ましても、そういう組織では非常に金がかかりはしないか。それをしもそういうテレビジョンのために公共の金を使うということは、現在いろいろ教育予算が不足しておる今日においては適当ではない。だからやはり株式会社組織で株主の危険によって、しかも会社のきわめて良心的な経営をやっていくということで、申請されている方は大いに自信があるそうでありますから、われわれもその説明を聞きまして、一応そういうことであればわれわれの過去の経験に照らしてもやっていけないわけではないし、スポンサーの考え方も変ってきまして、そういう教養番組を広く進めることが自分の会社の国民に対する奉仕の気持からいっても、適当だ、こういうように考えているスポンサーもだんだんと出てきておりますから、東京のような非常に番組を作りやすいところで、人もその他のものも集めやすいところでならばやっていけるだろう。そうしてこの会社ができれば、地方におきましてはそれをもらった方が経費もかかりませんし、かつまた各民放がやっておりますれば普及度もそれだけ高い。東京以外は、現在の周波数の不足の状態においてはまだ必要ではない、いわば一つのテスト・ケースとして東京で民営の教育テレビジョン放送というものを作って、大方の御批判を仰ぐ、そうして万一欠点ができたならば是正の方法も考える、また非常に教育効果が上ってきたとなれば、さらに売れていくとまではいかないといたしましても、なおまた何かの周波数の差し繰りによりまして、地方にそういった教育テレビジョン放送局ができることもまたけっこうなことだ、このように存じております。現在におきましては一応東京をいわば一種のテスト・ケースとしておやりになるという方がむしろいいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  67. 森本靖

    ○森本委員 非常にお聞きしたいこともありますが、今のお答えはまだその経営の内容について――私は断わっておきますが、そういう奇特なような人の分についても、両方について同じように経営が困難だと考えております。しかしこの問題については時間がありませんのでこれで終ります。  次に、先ほど千葉さんからもお聞きをいたしましたが、例の映画の問題であります。NHKの方は当委員会にちょいちょい出てきますので意見を聞くことができますので、特にきょうは金子さんにお聞きしたいわけでありますが、今の民間テレビの映画の放送でありますが、この措置について民間放送の方々は一体どういうふうにお考えになっておるか、一つ参考までにお聞かせ願いたい。
  68. 金子秀三

    ○金子参考人 一般放送テレビ番組の中にもっと映画をふやすべきであるということでございますか。
  69. 森本靖

    ○森本委員 そういう意味ではなしに、今映画をやっておりますけれども、これが非常に古い映画でありまして、しかも今日映画会社が協定みたいなことをやっておりまして、三年前のものでなければならぬ、こういうふうになっておるわけであります。そこで将来を展望すると、映画会社というものもテレビに回るということを考えてかどうか知りませんが、今回また映画会社が別途にテレビの申請をしておる、これについてもどういう御意見であるかということと、それから今の映画会社がああいうような形において放送することを拒否しておる。これに対して今の放送界というものは、もし永久にそういうことを拒否するならば、波は国民の波でありますので、ああいうふうな映画ばかり見せておっては国民に相済まない、この際対抗してテレビ用の映画でも作る、こういうような御意見であるかどうか、その映画の点についての御意見をお聞きするわけです。
  70. 金子秀三

    ○金子参考人 現在の一般放送事業会社のテレビ番組の中の映画は、アメリカの十六ミリ映画でございまして、一般の聴視者が好んで見たがりますような日本製の劇映画等がございませんことはまことに遺憾であります。これは再三再四各放送会社と映画会社との間に話し合いをしたのでありますけれども、今御指摘のような事情かどうか詳しいことは存じませんけれども、聞くところによりますと映画館を経営しておる業者が映画製作会社を圧迫して、こういう劇映画がどんどん出るならば、場末の映画館はとても立ち行かない、われわれはそういうことをする会社のフィルムは買わないというようなことが起ってくることを懸念されて、実は映画会社の方々はテレビに映画を出したいのだとわれわれは思っておりますが、そういう営業上の理由によりまして、現在では全面的に実は拒否されておる。三年前の古いものも現在は原則として使えません。ごく特殊な契約のものでなければ使えないのでございます。どうしてもこれが解決をいたしませんければ、われわれはテレビ用の娯楽かつ教養番組のようなテレビ用の映画会社と申しますか、映画団体というものを作らなければならぬのじゃないかという考えを実は持っておるのであります。しかしアメリカにおきましてもテレビができましてしばらくの間は、映画業者とテレビ業者との間に相当きびしい対立があったことは事実でございます。また古い映画でなければテレビに出さなかったことも事実でありますが、最近テレビというものが全国にだんだんアメリカのように普及いたしますと、テレビを無視しては映画事業はある意味においては成り立たなくなってきているというような事情から、あるいは資本的に映画業者がテレビ放送会社の方に投資をいたしましたり、その他の関係で非常に密接な関係がだんだんついてきておるようでありますから、われわれは熱心に映画会社と――これは契約でありまして、どうにもいやだ、売らぬというものは、買うことはできないのでありますけれども、だんだん熱心に話し合いをいたしまして、何とか道を打開するように努力するとともに、そういったようなことは一つの時の問題ではないかというふうにも考えておるわけであります。しかしどうしても映画業者がそういうふうにテレビに映画を回してくれないとなりますれば、これは主として劇映画でございますけれども、テレビ用のテレビの時間にマッチしたフィルムをわれわれの手で作るということは、当然起るだろうと考えております。
  71. 竹内俊吉

    ○竹内委員 私電波監理局にお伺いしたいのですが、きょう東大の千葉教授並びにNHKに、民放の代表者の方に来ていただいて、当面のテレビ問題についていろいろお話をお聞きしたわけであります。お聞きの通りその主題になってありますものは教育テレビであります。そしてきょうのお話に現われたところも、NHK構想あるいははっきりは聞かなかったけれども千葉教授も何らかそういうことを意図はしておりましたし、また民放の金子さんの御構想及び同僚橋本委員の御構想と、教育テレビに関していろいろな角度から構想が述べられたわけであります。そのいずれの構想実施せんとしても、現在の放送法にそのままでは抵触するものだと考えるわけであります。と申しますのは、どの構想を取り上げたにしても、今の放送法第三条にうたわれておる番組は自由である。自主独立でなければならぬということに対して、これこれの番組実施せよという、ある条件といいますか、規制をいたすことでありますから、そういう結果にも相なると思うのでありますが、それについて電波監理局は現在の放送法そのままでも、きょうここに述べられた三つか四つの構想のうちでも、これならば現放送法でやれる、これは現放送法ではやれないというふうなことを、局長はずっとお聞きしておられますからその点を伺っておきたい。
  72. 濱田成徳

    ○濱田政府委員 教育放送の具体的な経営形態、組織等についてはいろいろな議論がございます。本日もいろいろ御意見を伺ったわけでありますが、これが現在の放送法実施可能かどうかという問題について考えてみたわけでございますが、私どもの判断では差しさわりはないだろうという考えであります。内容等について言論の自由を束縛するというようなことは何もいたしてはならない、いたさないという考えでありまして、差しさわりはない、そういうふうに考えます。ついででありますが、放送法第四十四条にありますところの日本放送協会の任務、番組編成考え方につきまして述べられておるところの、この精神を発揮するように考うべきでないかというのが基本精神であります。
  73. 竹内俊吉

    ○竹内委員 放送法第三条には「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」こうある。これはNHKに対しても一般放送事業者に対してももちろん適用するのでありますが、教育放送のきょうお述べになった構想、大体三種類ありますが、たとえば教育放送を専門にやる局を認可した場合に、何らかの条件を付さずに、つまり一般放送事業あるいはNHKの仕事として番組に条件をつけずに、行政的な措置でこれができるというお考えだろうと思うのでありますが、しかしながらこの法律の第三条の建前からすると、その行政措置というものはきわめて弱いものになります。その意図があったにしても、いわゆる教育放送の概念に沿わない放送が出ても、これを法律上取り締まることができなくなるという懸念があるわけであります。また橋本委員の御提言の中にあったところによりますと、あるいはこれに触れないのではないか、つまり番組作成局というものを作る、それを各ステイションが独自の見解から、この番組をほしいといって発注をして、それを自己のステーションの番組として取り入れる、この場合にはいいのかもしれぬと私は思うのでありますが、今の御見解、どれも触れないという御見解はもう少し説明を承わらないと、ちょっと了承しがたいのです。
  74. 濱田成徳

    ○濱田政府委員 教育放送を必ず番組に入れなければならないというようなことをするならば、それは明瞭に放送法改正をしなければならないだろうと思うのであります。しかしながら先ほど申し上げますように、自主独立に番組を考えて、そして国民の品位を高め、教養を深めるというような意味のことを自発的にやられることを希望するのがその精神でありまして、そのことは放送法第四十四条で日本放送協会に対していわれていることが、一般の民間放送についても同様に当てはめられて考えることがしかるべきではないかという考えであります。そういう考えでいきますならば、改正をしなくても日本の世論一般の要望等がこれを支持して、国民教育的効果目的とする放送が、その局の数は何局あれそれは別といたしまして、これがNHKを通じ、また一般民間放送を通じて実現するものであろうということを考えて、かような提案をした次第でございます。
  75. 竹内俊吉

    ○竹内委員 この問題はあとでまた委員会のときに伺いたいと思いますので、私の質問はこれで打ち切ります。
  76. 松井政吉

    松井委員長 他に御質疑がなければ、本日の会議はこの程度にとどめておきます。  参考人皆様には、本委員会のために、御多用中にもかかわらず長時間にわたって有益な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。本日の皆様の御意見は、今後の本委員会の審査に多大な参考になることと存じます。どうも御苦労さまでございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次会は来たる五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二分散会