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1957-04-26 第26回国会 衆議院 地方行政委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十六日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 門司  亮君    理事 亀山 孝一君 理事 永田 亮一君    理事 山中 貞則君 理事 吉田 重延君    理事 川村 継義君       青木  正君    大坪 保雄君       唐澤 俊樹君    川崎末五郎君       木崎 茂男君    纐纈 彌三君       櫻内 義雄君    古井 喜實君       眞崎 勝次君    渡邊 良夫君       井手 以誠君    今村  等君       大矢 省三君    加賀田 進君       北山 愛郎君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         国家消防本部長 鈴木 琢二君         総理府事務官         (国家消防本部         総務課長)   横山 和夫君         自治政務次官  加藤 精三君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      藤井 貞夫君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      小林與三次君          総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奥野 誠亮君  委員外出席者         参  考  人         (徳島県知事) 原 菊太郎君         参  考  人         (佐賀県知事) 鍋島 直紹君         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 四月二十六日  委員小澤佐重喜君、纐纈彌三君、渡海元三郎君  及び淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  大坪保雄君、田中龍夫君、眞崎勝次君及び井手  以誠君議長指名委員に選任された。 同日  委員大坪保雄君及び眞崎勝次辞任につき、そ  の補欠として小澤佐重喜君及び渡海元三郎君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部  を改正する法律案内閣提出第一二三号)  国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する  法律案内閣提出第一三九号)  国有資産所在市町村交付金及び納付金に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第一四  〇号)  地方財政に関する問題について参考人より実情  聴取  警察に関する件     —————————————
  2. 門司亮

    門司委員長 これより会議を開きます。  国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律案並びに国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。質疑通告がございますので、これを許します。永田君。
  3. 永田亮一

    永田委員 この助成交付金につきましては、いずれ本日採決されると思うのでありますが、その採決の前に一言だけ自治庁当局に対して念を押しておきたいと思うのであります。  それは申すまでもなく、この固定資産税というものは、今の市町村普通税の中では半分近くを占める非常に重大な収入源になっておるのでありますが、それが駐留軍がおるとか自衛隊がおるとかいうことで課税ができないという状態であり、さらにそういうところはそういう施設があるためにかえって金がかかる。こういう二毛の不利益を受けておるわけであります。当然そういうところには、固定資産税にかわるべきと申しますか、固定資産税そのものとしてその税額は納めらるべきものだと判断をしておるわけであります。しかるに今度政府から出されておりますその金額を見てみますと、ことしは五億円、来年十億円とまことに金額が少いと思われるのであります。最初自治庁の方から要求されておった三十二億円はともかくといたしまして、どう考えてもこの金額が過少であると思われるのでありますが、将来自治庁といたしまして、この予算増額ということに努力をしてもらえるのかどうか。この点をまず一番初めにお伺いしたいと思います。
  4. 加藤精三

    加藤(精)政府委員 永田委員よりの御意思表示の趣きは、まことにごもっともなことと存じますので、政府の方としても極力これが十分な財源になりまするように努力いたしたいと考えております。
  5. 永田亮一

    永田委員 それからもう一つ、聞くところによりますと、その助成交付金の内訳が、何か八割は機械的に町村に行き渡る、あとの二割が相談によって調達庁などの意向を加えて町村に行き渡るということを附いておるのでありまするが、その間の事情を少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  6. 奥野誠亮

    奥野政府委員 お話ございましたように、八割程度のものは価格に按分して交付する等、固定資産税に即した配分にいたしたいと考えております。ただ市町村財政事情考えました場合百に、火薬庫があった場合には消防施設の面において相当の経費を必要とするとか、あるいは飛行場のありますために、大型の自動車が出入りいたしまして道路をいためる等の問題がございますので、こういう部分について算定されました金額につきましては、五割増しをするとか三割増しをするとか、こういうような方式をきめたいと考えております。二割といいますのも、全く出まかせに配分するのではなしに、こういう点を考慮いたしまして、五割増し、三割増しというふうな、やはり機械的な配分を行いたい、かように考えているわけでございます。
  7. 永田亮一

    永田委員 それがいろいろ、たとえば陳情だとかあるいは政治的な圧力とか、そういうようなことによって、配分に手心を加えられるような心配がないか。そういうことになると、交付手続などが非常に煩瑣になりますので、そういうことが行われないような方法を何か考えておられるか、もう一度お聞きしたい。
  8. 加藤精三

    加藤(精)政府委員 もともと今回の国有提供施設等助成交付金は、これは財政法律でございますので、財政上の理由がなければそうした調整はいたしません。調整そのものも、どこまでも財政上の理由で、ともかく市町村の出費が要るとかなんとか、そういうような種類のものという意味でやるだけであります。しかも特別交付税配付基準のようなれっきとした数字的な基準を設けて実施いたしておりますので、御心配のないように処理できると考えます。
  9. 永田亮一

    永田委員 よくわかりましたが、その財政事情考えてということで、これは全体ではありませんけれども、ある助成交付金を受ける団体の中で、不交付団体財政一構が豊かなんだから、これにはやらなくてもいいんじゃないか、交付団体の方へそれを回すべきじゃないかというような意見があるようでありまするが、これについて自治庁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  10. 加藤精三

    加藤(精)政府委員 その点につきましては、もともと今度の国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律は、固定資産税渕源とするところの財政補給制度でございますので、そういう面から見ますと、固定資産税そのもの物税でございまして、物税の欠陥を充足するという立場がございますので、もちろん交付団体、不交付団体によって区別すべき理由はないのでございますが、法律の表面にもうたっておりますように、財政事情も勘案するという今回の趣旨でございますので、その点につきましては、実施に当りまして十分考究いたしまして決定いたしたい、大きくは交付団体、不交付団体の区別をしないことになりますのでございますが、なお御趣旨のあるところも勘案いたしまして善処いたしたいと思っております。
  11. 永田亮一

    永田委員 それからこの前奥野さんにちょっと伺ったのですが、国連軍のいたところ、たとえば呉のようなところですが、こういうところが何もないということではまことにお気の毒なので、これに対してどういうふうに考えておられるかと言ったところが、奥野さんは、何か考えようということでありましたが、具体的にどういうふうにお考えになっておるのか、ちょっとだめを押しておきたいと思います。
  12. 加藤精三

    加藤(精)政府委員 たとえば呉のようなところは、国連軍は退去いたしましてもなお若干米軍基地がありますので、それを基準といたしまして、これに先ほど申しました特殊事情によって増額をいたしまして、できるだけ地元の困らないように特別な——財政上の困難をする立場にあるわけであります、から、そういうところに対しては特に配意して、助成交付金法律による交付金交付いたしたい、そういうふうに考えております。
  13. 永田亮一

    永田委員 もう一点だけ。駐留軍のいたところが、いろいろ非課税にされておるものがあるのでありまするが、たとえば電気ガス税であるとか遊興飲食税、その他、すべてそういうものが非課税にされておるために、その自治団体が非常に収入が減って困る。これを普通の団体のように課税できるようにしてくれないかという希望があるのでありまするが、これはほかのいろいろの国際的な条約とか協定とかによって制約を受けるのではないかとも思われるのでありまするが、こういう点をお考えになったことがございますか、一つ御答弁願います。
  14. 加藤精三

    加藤(精)政府委員 現在の法律では安保条約による行政協定関係上課税できないものだと考えておるのでございますが、国内法的にも、行政財産には課税しないというようなこととの均衡もあると考えております。十分考究させていただきたいと思います。
  15. 門司亮

    門司委員長 他に御質疑ございませんでしょうか。——他に御質疑かありませんようでしたら、両案に対する質疑はこれで終了したことにいたして差しつかえございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 門司亮

    門司委員長 御異議ないものと認めます。  それではこれより国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律案討論に付したいと思います。討論通告がありますのでこれを許します。川村君。
  17. 川村継義

    川村(継)委員 私は社会党を代表いたしまして、ただいまの提案になっております国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律案について若干の意見を申し述べまして、賛成意見を表したいと思います。ごく簡単に申し上げたいと存ずるのであります。  この法律案が今国会提案されたということは、長い間の懸案を解決することでありまして、われわれも大へん喜びに思っておるわけであります。申すまでもなく、第二十四国会において、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律制定を見まして、地方税制度の上において大きな変革があったときに当然この法案に盛られておりますような国有資産等についての問題を解決すべきであったのでありますけれども、それがその当時に解決を見ることができなくて、今日に至ったわけであります。これの必要なことは今さら私がここで申し上げる必要もございません。それなるがゆえに、さきの第二十四国会においては衆議院でも附帯決議をもって、その必要なることを決定いたされておりますし、昨年の十二月には地方制度調査会においてもすでに答申を見ておるのであります。それが今回この法律として提出されたことにつきましては、先ほど申し上げましたように大へんいいことだと思うのであります。  ただこの法案成立に伴いまして支出されるところの金額が、本年度は五億円、こうなっておりますが、これについてはこの委員会でもたびたび論議されましたように決してそれは満足な助成金ではございません。すなわち自治庁がこの案を立案いたしました当座において該当するところの資産評価を見積ったときに接収されておる資産分として評価いたしましたのは、二千上五百十五億あったはずであります。自衛隊関係が四百三十九億あったはずであります。そこで大体推定されるところの交付額として、三十二億円を必要とすると、こういうことで考えておったようであります。それがだんだん縮小されまして、ついに今日この五億円という金が出てきたわけでありまして、この当時の資産評価から考えましても、これが非常に不満足な助成金であるということは歴然といたしておりますので、この金額をこれに見合うように今後増額する必要がある。こう思うのであります。政府の答弁によりますと、来年度は十億自出そうということでありますが、その金額が決してまた満足なものではありませんけれども、五億円が十億円になるというように極力努力されることを望んでやまないものであります。  それから次に問題となりますのは配付の問題でありますが、この助成金配付するに当っていろいろ問題が起って来ようかと思います。ただいまも永田委員から御質疑がありましたような問題点等を含んでおると思いますので、これが配分に当っては決して不明朗な結果にならないように、十分それぞれの基準を設けて、市町村立場に立って配分されるように願いたいものであります。  それから、この法律案国有提供施設等所在市町村助成交付金となっておりますけれども、当初この法律案自治庁としてはいわゆる二十四国会成立いたしまして国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部改正として出したい、こういう意図があったようであります。この委員会において、国務大臣、自治庁長官もあるいはこの法律案の附則として、これをもっていきたいということは、たびたび答弁いたしております。ところがいろいろ大蔵省との間に折衝がなされた結果、ついにこのような別個の法律として出てきておるのでありまして、これについてはいろいろ今後委員会においてもその理由自治庁説明いたしました。しかし何と申しましても、これを提供されておるところの国有施設あるいはその資産等についての助成交付金と名を変えておりますけれども、やはりこれは早急に国有資産等所在市町村交付金対象に加えるように法律の一本化をはかって、そうしてその受けるところの市町村の側から考えると、それぞれ安定した見通しが立って、市町村財政運営あるいは国からの交付金が受けられるように考えてやることが当然ではないか、こういうことを考えるわけであります。そういう点を今後、自治庁とされましてはぜひとも努力願って、何かしら不安定なままにしておかないというように考えていただくことを、強く望むものであります。  私簡単ではありますけれども一、二の意見を申し述べまして、この提案賛成いたしたいと思うのであります。
  18. 門司亮

    門司委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律案採決いたします、本案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  19. 門司亮

    門司委員長 起立総員。よって本案原案の通り可決いたしました。  ただいま可決いたしました国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律案につきまして、委員長のもとに花山孝一君より附帯決議を付すべしとの動議提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。亀山孝一君。
  20. 亀山孝一

    亀山委員 ただいま議決されました国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律案につきまして、左の附帯決議を付すべしとの動議提出いたします。案を朗読いたします。    附帯決議   本法施行に当り、政府は特に左の諸点に留意し、その運営の適正を期すべきである。   一、本法助成交付金は、本来、当該資産に対する固定資産税に代るべき性格のものであることにかんがみ、本法施行に必要なる政令の制定及びその運用に際しては、関係市町村財政の安定に寄与することを主眼とし、交付手続等の煩瑣にならないよう十分考慮すること。   一、交付金総額として、政府予定する金額は過少であるから、少くとも当該資産に対する固定資産税相当額に達するよう、予算増額に努めること。   一、本法による助成交付金制度は、可及的すみやかに国有資産等所在市町村交付金及び納付金制度によつて措置するよう改めること。   右決議する。  本案は自由民主党及び日本社会党共同提案でございます。その理由は先ほど川村委員賛成討論にもございましたし、またただいままでの委員会におきまして、質疑応答によって十分意を尽しておりますので、特に申し上げません。何とぞ御賛成あらんことを希望申し上げます。
  21. 門司亮

    門司委員長 ただいまの亀山君の動議に対しまして質疑はございませんか。別に御質疑がなければ亀山提出動議について採決をいたしたいと思います。本動議について御賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  22. 門司亮

    門司委員長 起立総員。よって亀山提出動議のごとく、本案に対し附帯決議を付すべきものと決しました。     —————————————
  23. 門司亮

    門司委員長 次に国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正、する法律案討論に付したいと思います。  別に討論通告もございませんので、直ちに採決いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 門司亮

    門司委員長 異議なきものと認めまして、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案を直ちに採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  25. 門司亮

    門司委員長 起立総員。よって本案原案の通り可決いたしました。     —————————————
  26. 門司亮

    門司委員長 次に消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案議題として審査を進めます。  この際、警察及び消防に関する小委員長より小委員会における審査経過並びに結果について御報告をしたいとの申し出がございますので、これを許します。警察及び消防に関する小委員長唐澤君。
  27. 唐澤俊樹

    唐澤委員 ただいま議題となりました件について、私から小委員会の審議の経過及び結果をきわめて簡単に御報告申し上げます。  警察及び消防に関する小委員は、去る二月十九日の本委員会の決定に、基き、同月二十八日十一名の小委員指名があり、小委員長には渡海元三郎君が指名されましたが、その後渡海君の委員辞任に伴い、四月二日私が小委員長に選任せられました。  小委員会は四月十二日及び十九日の両日、会議を開き、政府関係当局出席を求めまして、本委員会に付託されておりまする消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案を中心とし、広く現下の消防事情  に対処して、消防力を強化充実する方策、特に火災保険事業消防との関係及び消防施設税可否等について検討し、さらに近時はなはだしく火災の頻発する状況にかんがみ、予防消防上早急にとるべき措置等についても意見を交換したのであります。  消防火災保険事業との関係につきましては、大蔵省担当官より保険事業の趨勢、日本損害保険協会消防への協力状況公営保険及び消防施設税利害等について聴取したのでありますが、大蔵当局意向としては、火災保険公営消防施設税に反対であります。その理由とするところは、保険は民営を本則とし、公営は再保険による危険分散の点について不利があるとし、また消防施設財源を得るために火災保険手業に課税することは、施設強化によって得られる公衆の利益につき保険加入者のみに負担がかかることとなり、これは公平の原則に反し、保険性格としては、かかる税負担よりも保険料率の引き下げの方向に指導すべきだというにあります。  日本損害保険協会事業につきましては、一そう消防の期待に沿うために、消防当局がこれに参与し得るよう大蔵当局協力が要望されました。また予防消防の徹底については、都市計画の立案、建築許可電気関係施設の設置及び管理等、全般にわたり消防行政に一段と科学性を導入することの必要が論ぜられましたが、特に近時火災の頻発する折柄、早急に官民組織をあげて警戒態勢を強化すべしと叫ばれ、当局に対し注意を喚起するところがあったことを申し添えます。  改正法律案につきましては、本案は、さきに第二十四回国会において本法成立いたしました際、本委員会の行なった附帯決議趣旨に沿い、非常勤の水防団員等公務災害補償責任についても、これを共済基金対象とし、本法適用するように法律改正しようとするものでありますから、何らの異議なく、全員一致本案成立を希望したのであります。  簡単ながら、以上御報告申し上げます。(拍手)
  28. 門司亮

    門司委員長 本案並びにただいまの小委員長報告に対しまして御質疑はございませんか。
  29. 北山愛郎

    北山委員 あるいは小委員会お話があったかもしれませんが、この昨年成立を見ました共済基金法適用状況について、どれくらいの消防団員がこの基金加入をしておるのか、この実施状況について簡単に説明をしていただきたい。
  30. 横山和夫

    横山政府委員 お答え申し上げます。昨日現在におきまして加入を見ております市町村数は、これは契約を結び、同時に掛金を納めておるのでありますが、市町村数は千五百二でございます。うち市が二百五十八、町村が千二百四十四でございます。掛金納入総額は約二千八百四十四万円でございます。この状況は、加入市町村の全市町村に対します比率におきまして約三九%程度になるかと思います。なお加入市町村人口が全人口に対する比率は約五一%であります。これは前後いたしますが、人口関係では約四千五百万余り加入になっております。それから団員数は約六十八万四千人ばかりでございまして、この団員に対します加入比率は約三六%強になるかと思います。大体以上のような状況であります。  なお支出いたしております。関係は、現在までに死者一名分と負傷者六名に対する療養補償関係でありまして、トータルにしまして約五十一万四千円ばかりを支払いいたしておるという状況でございます。
  31. 北山愛郎

    北山委員 ただいまの御説明でありますと、将来全地域にわたってこの共済基金法がさらに全市適用を見る、加入を見るということに期待して差しつかえない、こういうふうに了解するのですが、さらに三十一年度におきまして国の補助予算というものが、予定としてはたしか四千万円あったわけですが、実際にどの程度補助金を三十一年度にこの基金に出したか、これをお伺いしておきたい。
  32. 鈴木琢二

    鈴木(琢)政府委員 三十一年度の国庫補助が当初四千万円を予定して計画を進めたのでございますが、三十一年度の事業開始がいろいろ準備の都合上遺憾ながら少しおくれましたことと、そのために各県の市町村の一部事務組合で、従来行なっておった共済事業がある程度進行しておりましたために、いわば基金との契約によって共済掛金を出すということになると、二重負担になるというような事態も出て参りまして、加入が割合に少かった、その上にさらに御承知のように昨年来特別そういった傷害の起るような大災害、ことに水害等が非常に少かったために、先ほども総務課長から御報告申し上げましたように死傷者が非常に少かった。そのためにその方面からの刺激も非常に少かったという関係で、三十一年度は非常に加入予定よりも少かったわけでございます。それで最初国庫補助四千万円と予定いたしたのでございますが、それらの経過からいろいろ大蔵省との折衝もございまして、結局一千万円の国庫補助ということに過般の三十一年度の第二次補正予算において決議がされまして、三十一年度におきましては一千万円を受け入れた次第でございます。
  33. 門司亮

    門司委員長 他に御質疑はございませんか。——それでは質疑のないものと認めまして、本案に対する質疑を終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 門司亮

    門司委員長 御異議のないものと認めしまして、本案に対する質疑は終了いたしました。  次に本案討論に付したいと思います。別に討論通告もございませんので、直ちに採決いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 門司亮

    門司委員長 異議のないものと認めまして直ちに採決いたします。消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案原案の通り可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  36. 門司亮

    門司委員長 起立総員。よって本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  なおこの際お諮りいたします。ただいま可決いたしました三案の議決に伴う委員会報告書の作成並びに提出手続等につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御野儀ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 門司亮

    門司委員長 御異議ないものと認めまして、さよう取り計らうことにいたします。ちょっと速記を止めて。     〔速記中止〕
  38. 門司亮

    門司委員長 それでは速記を始めて下さい。     —————————————
  39. 門司亮

    門司委員長 それでは次に、地方財政に関する件につきまして調査を進めたいと思います。  本日は地方財政の実情につきまして徳島県知事原菊太郎氏並びに佐賀県知事鍋島直紹氏の両参考人より説明を聴取することになっております。両参考人に対しましては御多用中のところ御出席いただきまして、委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。なお時間等の都合もございますので、参考人の御発言の時間は大体御一名十五分ぐらいにしていただきまして、お願いをいたしたいと思います。また発言の順序につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。ではこれより佐賀県知事鍋島直紹氏より県財政の実情について御説明を承わることといたします。鍋島参考人
  40. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 佐賀県知事の鍋島でございます。簡単に県財政につきまして御説明を申し上げます。なおお手元に数字的な資料がございますので、御参考にお願いを申し上げたいと思います。  第一点におきまして本県の財政規模は大よそ約八十億前後を常に毎年の規模といたしております。そのうちの県税の収入は約十億でございます。次に昭和二十二年以来の推移から見ますと、昭和三十二年当初六千五百万円前後の財政規模でございましたのが現在約八十億円になっております。百二十三倍となっておりますが、全国の都道府県の増加割合に比べますと非常に少いのでりまして、全国は二百七十五倍前後になるように、資料によって考えております。  第二におきまして決算状況でございますが、これは詳しくは第二表に出ております。昭和二十八年度から実質上の赤字を示してきたのでございますが、その内在的な実情におきましては、二十五年ないし二十六年前後から五千万円あるいは六千万円という赤字の実態になっております。その以後におきまして、御承知の通り災害あるいは給与改訂のベース・アップまたは公債償還費の累増等におきまして二十九年におきまして約八億五千万円、単年度にいいますと約三億を上回る赤字になったのでございます。そこで二十九年度前後からこれの節減計画あるいは自主的な再建計画を立てており、さらに再建特別措置法によって今日に及んでおるのであります。  第三点におきましては赤字の実態について申し上げます。当初赤字が出だしましたところの二十七、八年、その前後におきましては地方財政の放漫ということが非常に叫ばれ、一面におきまして私たちは政府に対しまして強い財政措置を要望するという赤字の責任論がいろいろあったのでございますが、今日におきましてその実態を明らかにいたしますときに、やはりお互いにいろいろな点はございましてもまことに制度からきたところの根本原因というものも大きな要素をなしておるということも明らかになったのではないかと思います。本県の場合におきまして、第三表におきまして、昭和二十六十から七、八、九の約四ヵ年、当初の一般財源、すなわち県税と地方交付税を合せましたものをおもにいたします一般財源が二十六年二十三億、二十九年二十七億、約四億の増を示しておりますのに対しまして、消費的経費のみの歳出におきまして、——消費的経費の内容は御承知の通り人件費、あるいは公債償還費あるいは物件費等でございますが、それのみにおきまして、実は片方の増が約四億あるのに対しまして九億万千万、すなわちその差五億五千万前後のいわゆる赤字を出してきておるのであります。その内容は公債償還費の増、あるいは人件豊の、特にベース・アップによりますところの増、あるいは災害復旧費によりますところのやむを得ざる経費というものを中心といたしておりまして、どうしてもここに収支合わないような状態となっております。二十九年の単年度のみを見ましても、一般財源が二十七億前後に対しまして今申しました消費的経費のみの一般財源が二十八億を上回るというように事業の面、いわゆる投資的経費の面に使います一般財源というものはすでに赤字であって、不足を来たすというまことに困った実情になったのであります。勢いこれを自治庁にお願い申し上げまして、公債費にたよらざるを得ないという形になりまして、公債費の増加を来たし、事業をやるためにその公債費の量がふえますと、必然的に公債償還費がふえてくるという、いわゆる悪循環的な状況になったのでございまして、この点につきましてはまことにやむを得ない点が実はあったかとも考えられます。特に今申し上げましたように、こうなりました原因につきましては、やはりどうしても財政収入財政支出に追っつかないという点でありまして、そのおもな原因は、ベース・アップ等によります人件費の増、地方のいわゆる公債償還費の増、あるいは災害あるいは義務的経費の増というものがおもな原因であるというふうに考えられると存じます。  そこでこれに対しまする県といたしましての再建計画を、実は二十九年度から実行をいたしてきております。二十九年度におきまして約二億円余の節約をはかるためにあらゆる方途を講じたのであります。とともに一面機構改革に着手をいたしたのでございます。しかしながら二十九年におきまして、新同等にも報道せられましたように、まだ機運が熟さず、またこれに対しまする一般的な世論の裏づけも割合に乏しかったせいによりまして、六月の県議会におきましてはついに乱闘県会といわれるようなことになり、になりまして、ようやく再度、九月に至りまして一部の節減案を通過させることができたのであります。しかしながら機構改革につきましてはついに両度とも審議未了に終りまして、翌年度へ見送らざるを得ないという状態になりました。昭和三十年度におきましてこの資金繰り、いわゆる資金繰作にとても困って参りましたので、まだ再建特別措置法も国会においていはいろ御審議がされておったころでございましたが、自主的な再建計画を立てまして、そうして基本的に第一点の人件費におきまして全国の都市府県水準というものを一応にらみ合せまして、それを尺度にいたしまして人件費の面で知事部局三百一名、警察二十七名、教職員四百八名、合せまして七百三十数名の人員整理を二ヵ年において行うということでいたしましたし、従って実は給与の面におきまして、昇給昇格の費用も乏しく、ついに今まで前例のないところの六・六・九・十二というような昇給の受給権を放棄してもらうという状態になったのであります。その他特別職等の減俸も、もちろんいたしております。なお事業費の面におきましては、公共事業におきまして二十九年度の七〇%、県の単独事業あるいは補助金交付金等の事業費におきまして二十九年度の五〇%、いわゆる五割という極端な節減計画を立て、さらに一般行政費におきましても、一割の天引きというようなことも行いましたし、行政機構の面におきまして、従来知事室というのがございまして、一室七部三十三課という県庁の機構を持っておりましたが、それを単純な五部二十六課に減らしたのでございます。なお出先を十個所ほど減らし、地方事務所をなくしましたとともに、調べてみましたら県に百五十前後の委員会、審議会等が、あるいは政令により、あるいは法律により、あるいは条例により、または任意にございましたうちから、約四十数個の委員会を廃止いたしまして、機構を単純化いたしたのであります。この程度のことをやりましても、単年度において二億円前後しか、実は一般財源において節約できないというような状態になったのであります。これが昭和三十年度の実態でございましたが、続いて再建特別措置法が出ましたので、直ちにこの法の適用を受けるために、自治庁と交渉を開始いたしまして、昭和三十一年三月三十一日付で、一応の御承認を得たのでございます。このときの実態におきましては、県税収入十億に対しまして、すでに十億をオーバーいたしますところの赤字となっておりまして、全く資金操作に困難をきわめました。大蔵省に参って、お百度を踏んでも、あるいはその他の面におきます資金の操作に困りまして、ついに俸給の支払いも滞り、さらに困りましたのは、事業資金に対しますところの業者に対する支払いがどうしてもでき得ない。俸給をストップいたしましても、業者に対する支払いができないという実態になりまして、ある場合におきましては、四月に支払うべきものを七月ないし八月にようやく支払いができたというようなところにまで至ったのであります。そこで、再建計画の交渉を開始いたしまして、一応軌道に乗せるべく努力をいたしてきたのでございます。その法律によります財政再建計画は、四表ないし五表の参考資料にございますが、そのうちから、おもな三、四点につきまして、簡単に特殊の点を御説明申し上げます。  以上のような財政実態でございますので、第一点といたしまして、本県の再建計画は十一ヵ年という、ほとんど類例のない長い再建計画になっておることであります。  第二点は、やむなく涙をのんで増税を断行しておることであります。それは県民税の均等割を操作いたしまして、増徴をいたしておることであります。次に不動産取得税の増徴をいたしておることであります。さらに犬税の新設をいたしておることでございます。これが一ヵ年の収入約五千万円というふうに見込んでおるのでありまして、県税収入十億に対しまして、約五分の五千万円のいわゆる増税を行なっておるということであります。  第三点におきましては、農村県でありますので、三十年度、五百二十円前後の高等学校の授業料でございましたものを、三十一年六百円、三十二年六百五十円というふうに、高等学校の授業料を上げておることであります。今日、六百五十円以上に上げるという気持は、計画には載っておりませんが、そこまで来ておるのであります。  第四点といたしまして、人員整理でございますが、自主的再建計画で前年度に立てました約七百三十六名から、さらに県庁職員において約二百名前後、警察職員におきまして十七名、教職員におきましてさらに二百名というものを三十六年度末まで欠員不補充という方途によりまして、人員整理を行う計画に実はなっておるのであります。  第五点といたしまして、事業の面におきましては、実は御承知の通り政令によりまして、指定事業は二十七年度、二十八年度、二十九年度の七五%に圧縮をいたしました。九億前後の指定事業を従来行なってきたのでございますが、これによりまして一挙に六億前後しか行えないというような状態になりまして、実は昨年度約三億の認証がありました公共事業を、ついに返上いたすというような状態にな、ておるのであります。こういったほかに、指定事業外の事業におきましては、まことに極端でございまして、前年度ないし前々年度の半分ないし半分以下になっております。県営独事業におきましては、見るも哀れな状態になっておると私は考えております。  第六点といたしまして、こういった節減を一方にやり、一面において交付税によるところの収入を算定いたしましても、以上のような状態でどうしても収支がとれません。十一ヵ年に延ばしても収支がとれませんので、昭和三十七年度から四十年度にわたりまして十二億円の借りかえ債を行う、いわゆる借金を借りかえていくという方途を、特に自治庁あるいは大蔵省にお願いを申し上げまして、この十二億円の借りかえ債をやることによって、十一ヵ年の再建計画ができるというような形になっておる次第でございます。この計画はまことに苦しい計画であり、強いものでございますが、当時の状況におきましては、資金繰りその他の面から見まして、まことにやむを得ない点があったと考えております。  次いで五番目の再建計画実施状況でございますが、この点におきましては、三十一年度におきまして計画より約四千八百万円——三十年度、三十一年度の決算の見込みをいたしますと、計画内において約五千万円前後の赤字減で一応財政が進んでいく、計画そのものは、一応そのワクの中に入っているということがいえると思います。三十二年度、ただいま当初でございますが、それにおきましては、約七十億前後の再建計画に基いた当初予算を、その範囲内において組んでおります。しかし今後ベース・アップでございますとか、あるいはいろいろな点がございますが、根本的に自然増収は三十二年度ほとんど見込まれません。千億減税によるはね返り等を考慮いたしますと、全く農村県である私の県におきましては、自然増収が見込まれない、むしろ減収すら見込まれるというような状態になって、やはり苦しい道を歩くのではないかというふうに考えております。  次に今後の問題について二、三申し上げまして、時間も参りましたので御報告を終りたいと思いますが、第一点におきまして教育職員の人件費の問題でございます。御承知の通り約八千人前後おりましたところの中小高の教職員の中におきまして、昭和三十年度自主的再建におきまして、二年間で四百八名を減らす、さらに再建法によりまして約二百名前後を三十六年度までに欠員不補充によって縮減するというような計画になっておるのでありますけれども、その計画実態がいろいろな実情の面から、ここに非常な困難を来たしまして、組合はもちろん、あるいはPTAあるいは県議会等におきましていろいろな問題を起し、さらに政治問題というような点にまで来たのであります。昭和三十一年度末におきましては、どうしても未整理人員が二百五十九名実は計画によりますとあったのでございますが、これは中途におきまして三十二名、三十一年度三月年度末におきまして二百三十数名、大体その整理は終りましたが、その整理後の実態におきましてはまことにやむを得ない点があり、すなわち結核職員が多いとか、あるいは事務職員、養護職員が沿革的に県費をもってまかなわれておるというような点、あるいは高等学校における実業コースの多いことによる職員の配置等によりまして、この計画が非常に無理であり、困難を起すおそれがございましたので、教育委員会との交渉の結果、約百二十名さらに新たに配置することによって、ただいま自治庁の方にこの計画の変更をお願いいたしておるのが今日の実情であります。巷間いろいろな点がございますけれども、こういった教職員の整理の面におきましては年度末のみでありまして、途中において欠員を補充するということはでき得ない実情等もありまして、いろんな問題をここに起してきておるのでございまして、実は私非常に心配をいたしておる次第でございます。  次に事業関係におきましては、御承知の通り指定事業の面で昭和二十七、八、九の七五%という公共事業のワクがはめられましたが、まことにみじめなものでございます。全国平均が、三十一年度において前年度等から見て一〇〇%以上に行っております現在において、再建団体の私の県の面におきましては七五%ないし八〇%に及ばないということが、後進県の点からも、実際上河川あるいは海岸のいろんな提防、あるいは道路を維持する面におきまして、かえって退化するのではないかとすら考えるような次第で、心配をいたしておるのであります。  第三点に公債の対策でございますが、十億の県税収入に対しまして、二十九年が一億、三十年四億五千、三十二年七億、三十四年八億と、すでに八、九〇%に至る公債償還をいたさなければならないのであります。ここに借りかえ債の必要もあったのでありますが、幾ら借りかえをいたしましても、結局はお返しをしなければならない。そこでどうしても根本的に公債対策——公債償還費に対しまする重圧から何とかしていただくということが、地方財政の、特に私の県のような財政窮乏県に対しまする一つの大きな問題ではないかと思うのであります。  以上大体におきまして県財政の実態等を申し上げましたが、今後の面におきまして、やはり人件費の膨張を防いでいくためには、一面において新陳代謝を行わなければなりませんし、一面においては職員全体の安定を来たす方途を講じなければならない。そういう血は、やはり今日国会において御審議せられておる停年制等も十分御考慮いただきたいということをお願い申し上げたいと思います。  以上でございます。県政の中の七〇%ないし八〇%は国家施策でございます。義務教育にいたしましても、警察行政にいたしましても、土木行政にいたしましても、衛生行政にいたしましても、すべて国家施策が、七、八〇%であります。その面から見て、財政窮乏しておるゆえに六〇%や七〇%という事業をやることが、果して国家の恩恵が均等にいくために正しいかどうか、自分の勤めております県民のそうした実態を考えますときに、何とか地方財政をよくすることによって国家施策の恩恵を均等にいたしたいと私は念願いたし、特にお願いを申し上げるのであります。  さらに知事は公選であります。公選知事の生命は、ある面におきましては、県の単独事業の実行でございます。国家施策外における公選知事の生命は、どこまでも単独事業面において財政実態に応じて自分の公約を果すということも一つだろうと思います。ところがこのような実態におきまして、私はほとんど県単独事業を行っておりません。涙が出るほど残念でございますけれども、公約は果せない実情にあるのでございます。そういう面におきまして、どうか一つ公選知事の公約の一部でも果せるだけの県単独小業ができ得るように御考慮いただければ幸いであるというふうに考える次第でございまして、この点がいわゆる行政水準の維持あるいは全国的な地方財政の均等化の問題につながるものであるというふうに考えております。  以上簡単でございますが申し上げまして、御参考に供したいと思います。
  41. 門司亮

    門司委員長 それでは次に徳島県知事原菊太郎氏にお願いを申し上げます。原参考人
  42. 原菊太郎

    ○原参考人 徳島県知事の原菊太郎でございます。ありがとうございます。私の方から皆さんにお配りしたパンフレットに大体記載をいたしてありますが、私の頭に映ってくるところの概念と申しましょうか、多少このパンフレットに違うている数字もあるいはあるかもしれません。それでしたら、この印刷の方によっていただきたいと思うのですが、大体徳島県は御承知の通りの農業県であります。農家の方からは県の方へ収入がほとんど入りませんで、農家のためには道路もこしらえなければならず、河川の改修も要りますし、海岸の防備も要りますし、すべてのことがほとんど農家のためにいたしまして、入るところはほとんどないような——町村とか国家とかは取っておりますが、県には入らないというような状態にあることも、大きな一つの農業県が赤字を製造するのに適している原因だろうと思います。さらに徳島県は新潟県とともに日本でも最も右名な地すべり地帯でありまして、この地すべりは緩慢なる災害とも申すべきものでありますが、災害の扱いを受けることができませんので、約二〇%くらいの起債は、これに基くものと私は考えます。それから吉野川並びに那賀川という大きな川が流れておりますが、那賀川は利根川以上の川であります。利根川はこれを数県が持ち合せて災害を分けているわけですが、徳島県の吉野川、つまり四国三郎と申す大川は、その上流だけを高知県と愛媛県とが持っておりまして、洪水部面はほとんど徳島県がやっております。それで河川に橋梁をかけるにしても、非常にたくさんな金が要りますし、また国道以外のところにつきましては、県単でやらねばならぬ。潜水橋のようなものをたくさんかける必要があります。それからこの表の十四の現在の起債額は、私が知事になりました三十年のときには七億円くらいしか県収入はありませんが、発電の起債を除外いたしまして六十九億ほどの負債がありまして、全国平均を一〇〇として徳島県は一六〇の起債額がありました。七億円くらいの県収に対しまして、ただいま償還に要るのは八億円ないし九億円になっております。それから徳島県の位置が、台風の参りますときに最も被害の大きいような方向に向いておりまして、南の方からくる台風には比較的心配が少いのですが、東の方からくる台風は吉野川に沿うてやってきまして、非常な被害を受けております。被害を受けて国が援助して下さるのですが、それだけでは足らないような災害がたくさんありまして困っております。前知事の後を継いで私が知事になりますときに、負担力を考えないで、全国でも最もたくさん仕事をやっておるということについて、不快な念を持っておりましたが、知事になりまして、なぜそれをやったかということを考えますと、これをやらなかったら、被害がさらに大きくなって、どうもこうもならぬという状態でありましたので、前任者が過当とも思えるような公共事業をお願いしてやったというのも、起債の額が上ったわけなんでございます。  また教育費に対しましては、全国一の定時制高等学校の数と収容人員があるということを誇りにしておりましたが、これが非常な赤字の製造元になりました。また警察としても相当たくさんな赤字が出るようになっております。それから、農業県でありますために、農業改良普及員の、手当にしても、国が出して下さるくらい県が追い足しに出さねば補給がつかぬというような状態でありまして、私がただいま赤字解消の対策を立ててやっております。  少し皮をむいて話をさしていただきましたら、その当時、五、六億円の赤字の起債をいただくために将来に向っては、あるいはこういうようなことは行われぬであろうと思われるほど公共事業を圧縮してつじつまを合せて、しかもそれが十五年もかかるというような状態であります。これほど公共専業を圧縮いたしましたならば、いずれ徳島県は人並みについていけない県になるという心配がありましたが、背に腹はかえられず、こういうような案を立てて参った次第なんでございます。幸い三十一年度は単年度の赤字をこしらえないでやって参ることができましたが、今後三十二年から先になりますと、非常に困難でありまして、県単の事業はもちろん、義務的な事業にいしたましても、相当赤字をもって支弁せねばならぬというような実情にあります。日本において最低の赤字をやっておる県に対しては、他の赤字県と切り離して、ぜひともいろいろな面から特別のお取り扱いを願わなかったら、とうていいけないというような実情にある次雄でございます。それで、パンフレットに書いてある順序によってお話を申し上げることにいたします。  「財政再建計画の概要とその問題点」というパンフレットの第一から申し上げます。  まず赤字の実態でありますが、財政再建法適用前の赤字でありますが、二十九年度は歳入決算額が八十二億四千三百万円、歳出が八十六億九千九百万円、差引四億五千五百万円の赤字であります。事業繰り越し充当一般財源が二億七千万円でありまして、実質的な赤字はこれを合計したものの七億二千五百万円になっております。それから三十年度に至りましては、歳出がさらにふえました。これは前年度のいろいろな無理がたたってそうなっているのであります。それで十二億二千五百万円の実質赤字になりました。  赤字の内容としては、昭和二十九年度は教育関係で二億三百万円、元利償還金に二億九千二百万円、警察費に一千三百万円、それから国補及び委託職員設置に伴う超過負担金が四千百万円の不足を来たしております。それから二十八年度までの赤字は二億三千六百万円、それから予算を節約いたしましたので六千百万円差し引きますと、七億二千五百万円が二十九年度の赤字のしりであります。昭和三十年度に入りまして、二十八年庭までの赤字は二億三千六百万円、二十九年度の単年度の赤字は四億八千九百万円、教育関係で一億八千九百万円、元利償還金が三億二千九百万円、警察費が三千百万円、予算の節約が四千九百万円でありまして、通算十二億二千五百万円の赤字になっております。そしてこの前の二十九年度に書いてあります国補及び委託職員設置に伴う超過負担金に対しましては、税収の自然増加がありまして、四千二百万円程度の超過負担金は消えましたわけであります。  それから2の財政再建法適用後の赤字の推移はどうかと申しますと、昭和二十九年度までの赤字の七億二千五百万円のうち再建債として五億九千万円の借り入れができましたので、一億三千五百万円に減少いたしました。昭和三十年度の単年度の赤字の五億円を加えると、財政再建法適用後の赤字は六億三千五百万円となっております。昭和三十一年度は、単年度赤字は三億一千万円を予想しておりましたが、幸いわずかですが、黒字になり得ました。特別交付税増額が九千八百万円、県税の増収が三千二百万円、県有林を切りまして、それを赤字補填に入れましたのが二千八百万円、譲与税の増加が三百万円、普通交付税の調整分を解除していただきまして、七百万円、借換債が一億四千万円、合計三億一千万円、右のように昭和三十一年度の単年度の収支については、県独自の努力はむろんのことでありますが、国の財政改善の措置によりまして、辛うでし均衡を保つことができました。しかしながら依然として昭和三十年度の単年度赤字と、昭和二十九年度の再建債の対象外となった赤字は合わせて人偏三千五百万円というものは将来の負担となっております。ここでわれわれの希望いたしたいのは、二十九年度までの赤字はお世話になることができましたが、三十年度の赤字はお世話になることができなかったのは、日本でもそういうのが少いためだったでしょうが、私の方としては、何とかこれに対して等しいようなお取り扱いを願いたい。なぜなれば、地すべりの問題とか、大きな河川があるというようなことで、相当な違いがありまするので、人口とかあるいは面積とかいうもの以外に、これはぜひとも御考慮をお願いしたい要望であります。  それから第二の財政再建計画の内容でありますが、次の表によりますと、一般職員が昭和三十年度と三十一年度が四百二十六人、昭和三十三年度には三百四十六人を減す予定になっております。事実におきまして三十年度には八百三、四十人の人員を減らしましたのですが、いろいろ技術者その他に対しまして入れる必要があって、差引四百二十六名の減になっております。三百四十六名の三十三年度のものは、もちろんまだ実行しておりませんが、これは確実にやるつもりでおります。それから臨時職員につきましては、三十年度に二百三十七名を減じまして、それから二十一年度には六名、警察職員は、三十一年度には五名減しました。それから昭和三十二年度には二十一名を減すことができました。徳島県は警察職員に対しまして、最初の要望が少かったために四国でも最も少い定員にせられて、それはやむを得ず警官でないような意味におきまして雇い入れて、これの給与も県から出しておったのでありますが、それを今度少し改正をして下さいました。それから教育職員中、義務教育教員については児童生徒数に比例して教員を一増減することといたし、高等学校の職員については全日制は現行通り、定時制の学校は学校の統廃合によりまして、三十年度の定員三百三十五人を三十正年度までに百九十七人整理し、最終定員を百三十八人とする予定でおります。少しくこの定時制の高等学校の数を説明いたしますと、以前は定時制の高等学校は五十二校ありました。これを三十一年度に三十六校にし、三十二年度に十校を減し、三十三年度には六校を減しまして、最終には二十校とする予定であります。これも相当の無理がありますが、やむを得ざる財政上の要望でやったのであります。  それから昇給延伸でありますが、昭和三十年度及び三十一年庭にわたり三ヵ月ないしは九ヵ月の延伸を実施いたしました。しかしこれをいつまでもやるということはとうていできないもので、現状に早く復したいと考えております。  それから機構の改革ですが、昭和三十一年の四月一日に地方事務所を廃止いたしまして、新たに財務、福祉、耕地の各事務所を設置し、さらに出納の厳正を期するために、県下九ヵ所に出納室を設けました。  それから昭和三十二年四月一日に教育出張所を廃止いたしまして教育委員会事務局に吸収いたしました。  増税でありますが、徴収を強化するのが一番と思いまして、これに全力を注いでおります。昭和三十年度には、前年度及び過年度の分が九三・四%、滞納分は、二十五年以降でありまするが二六・六%、平均八一・七%であります。三十一年度は八七%、三十二年度は八九%に行っております。  それから自動車取得税を新設いたしまして、これは法定外の普通税でありますが、昭和三十二年度以降自動車の取得に関して課税いたしまして、税率は、取得価格の百分の三、税額は二千万円ということになっております。  それから公共事業費の縮小でありまするが、これは二十七年度に十九億八千万円、二十八年度には二十億九千万円、二十九年度には二十億九千万円、三十年度からはだいぶ下りまして十九億八千四百万円、三十一年度には十三億九千百万円、三十二年度には十一億二千六百万円。しかし、三十二年度の十一億二千六百万円というのは、これではとうてい何ともできないので、三十一年度相当分を復活をしなくてはならぬわけになっております。内訳は、指定事業と指定外の事業とになっておりますが、この表でごらん下さるように、指定事業においてずっと減りまして、そうしてやむを得ざる状態におりますので、指定外の事業はそれほどまで減すことができぬ現状におりします。昭和三十年度は、事業費は一億三百万円返納いたしまして、昭和三十一年度は、指定事業については、国で定められましたワクと三十一年度発生の緊急治山、緊急砂防等四千七百万円、及び指定外事業については三十年度のおおむね六〇%を施行しております。  高等学校の授業料、入学金の引き上げ、授業料につきましては、三十二年度より、全日制は六百円を六百五十円に、定時制は三百円を三百五十円に、それぞれ引き上げまして、入学金につきましては、昭和三十二年度より、全金日制は百円を五百円に、定時制は百円を三百円に、それぞれ引き上げます。  宿日直料の単価引き下げ。宿日直料二百円を、三十一年七月一日以降、日直百八十円、宿直百五十円に引き下げました。  超過勤務手当。一般職員については昭和三十一年度以降、本俸の一・五%し、警察職員は四%としております。  それから起債充当率の引き下げ。一般公共事業は、従前八五%程度の充当率でありましたが、昭和三十一年度より三〇%に引き下げました。単独事業においては、従来六千万円程度の起債をつけておりましたが、三十一年度よりは一千万円に引き下げられたのであります。ほとんどこれでは仕事ができなくなっております。  物件費の引き下げは、昭和三十年度は五億六千七百万円、三十一年度は五億八百万円、昭和三十二年度は四億九千百万円ということになっております。以上の再建整備の案によりましても、今後の県財政上の問題点として、財政の構造上公債費のために一般財源が不足いたしまして、義務費支出すらできなくなることになっております。公債費については現債額の内容、起債現在高の分析、それから現債額の一般財源に占める割合、これは表をこしらえてありますので、ごらんいただきたいと思います。最低の行政水準を維持するためには、公債費対策を解決する必要がどこまでもあります。  公共事業費については、本県の事業量が他の類似県に比較すると若干多いわけでありましたが、公共事業の必要量は、人口あるいは面積に必ずしも比例せず、まして財政力に比例して存在してはいないために、本県の場合は、公債費累増の形において最大の赤字の原因となっておるのであります。元来財政運営財政力、財政規模に応じて執行することが当然ではありますが、災害復旧事業災害復旧事業に準ずるような公共事業については、必ずしも財政力のみを基準事業を執行することはできない現状であることは遺憾であります。従って国の財政調整の機能によりまして、従来の赤字並びに公債費に対する問題と今後の事業量について、特に御考慮をわずらわしたい、こう思っております。  次に、パンフレットで「本県の立地条件が特に他の財政類似団体に比し多くの事業を必要とする理由」というのを差し上げてあります。あと申し上げるのを省略いたしまして、それを見ていただきたいと思います。  はなはだ簡単で要を得なかったと思いますが、よろしくお願いいたします。
  43. 門司亮

    門司委員長 この際、両参考人の御説明に対しまして質疑がございましたら、これを許すことにいたします。川村君。
  44. 川村継義

    川村(継)委員 ただいま徳島、佐賀両県知事から、県の財政状況についていろいろこまかに御説明いただきまして、大へんありがたく存じます。佐賀、徳島の両県におかれて、それぞれ責任者でございます知事さん方が、財政運営上非常に御苦心をなさっているということはかねがね承わっておりますが、ただいま事こまかにお聞かせいただきまして、特にその感を深くするわけであります。同県ともに、機構改革であるとか、あるいは人員整理、あるいは人件費の圧縮、あるいは増税政策、事業の縮小等、あまり好ましくないような政策がここにとられて、財政再建に非常に御苦心をなさっているということを承わって、われわれといたしましてもいろいろと考究してみなければならぬということを強く思うわけであります。それにつきまして、私はいろいろお聞き申し上げたいこともあると思いますけれども、そう時間もいただけませんので、一、二の点をお聞かせおきいただきいと存じます。  まず初めに佐賀の鍋島知事さんにお聞き申し上げたいと存じますが、昭和三十年度の決算を拝見いたしますと、佐賀県におきましては、歳入が七十三億三百万程度、歳出が八十三億一千一百万、結局十億七百万というような差が出ております。これは佐賀県の二十九年度の決算の歳出、歳入の差額の二億五千五百万に比べますと、実に七億五千三百万の大きな増加になっている。三十年度の決算において、二十九年度に比べて七億五千三百万も増加したということは、どのような原因があったのでござごましょうか。その点を第一にお聞かせいただきたいのでございます。それから、三十一年度の決算はまだおそらく出ておりませんから、はっきりした数字はおわかりでないと存じますけれども、三十一年度決算の見通しといたしまして、この歳出、歳入のバランスというのは一体どのような形になって出てくるのか、まずその辺のところをわかっている範囲でお聞かせいただきたいと存じます。
  45. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ただいまの御質問の第一点の三十年度決算でございますが、三十年度におきまして、実際に再建計画を立てまして、当初予想しておりました三億前後の赤字を約二億ちょっとに縮めたわけでございます。従って三十一年度に入ります場合、その以前に実は八億前後の赤字が出ておりたわけでありまして、それを累積して参りますと、三十年度決算におきまして十億七百万円というような形になるわけでございまして、三十年度のみで七億というのが出たわけではございません。決算は昭和三十八年度からずっと累積して参りました、正確な数字はちょっと忘れましたが、約八億前後出ておりましたのが、三十年度決算の一億が加わって十億になったと考えております。第二点の三十一年度決算の見込みは、三十年度におきまして再建債もいただきまして、たな上げをしていただいたわけでございます。それが約七億七千万あったのでございますが、それによって資金繰りが非常によくついて参りまして、現在遅配とか欠配とか事業資金の支払いには困難を来たしておりません。三十年度の決算を単年度で申し上げますと、実は自治庁にいろいろ御交渉を申し上げまして、借りがえ債の措置を幾分かいただくことに実はなっております。この借りかえ債を六千万ないし八千万——いただく額によりまして動いてくるかと思いますが、借りかえ債が八千万も参りますれば、単年度決算におきましては大体とんとんないし黒字、借りかえ債の額いかんによりますと数千万円の赤字というようなことになるのでありまして、再建計画上におきましては、完全にそのワク内においてやって参っております。ただし前からの赤字を打っておりますので、それが約十億前後あるわけでございます。
  46. 川村継義

    川村(継)委員 その次に、御所見を承わることになるかもしれませんが、実は私たち地方財政状況というのを政府からいただいております。これをちょっとひもといてみまして、都道府県別及び五大都市別歳出経費別の決算状況を見てみますと、次のようなことが言えるようでございます。つまり佐賀県の三十年度の歳出経費別の決算状況は、消費的経費が四十六億八千八百万円で、その構成比は五六・四%になっております。投資的経費は二十七億三千二百万円で、その構成比は三二・九%を示しております。それはいろいろ内訳はあるわけでありますが……。なお徳風県の場合でも、その消費的経費と投資的経費の別を構成比について見てみますと、徳島県の場合は、消費的経費の構成費が五一・五%、投資的経費の構成費が三七・四%となっております。これを他と人口のみで比べるわけに参りませんが、たとえば同じような人口段階にあるところの高知であるとか、香川であるとか、島根であるとか、山梨であるとか、福井であるとか、石川であるとか、富山であるとか、こういうような県と比べて参りますと、この消費的経費と投資的経費の構成というのは佐賀県及び徳島県を見ますと割合バランスがとれておるように思うのであります。特にこの投資的経費の中を調べて参りますると四〇%以上を持っておるものは和歌山、三重、福井という三県しかありません。それから三〇%以上の投資的経費を持っておるのが十一県出ております。あとは全部二〇%以下であります。ところが佐賀県及び徳島県はこの三〇%以上の十一県の中に、しかも高い場所において地位を占めておる。それから消費的経費の構成を見ましても、ほとんどが六〇%以上でございまして、五九%以下というのはわずかに十県しかない。その十県のうちに徳島県も佐賀県も入っているわけです。そういたしますと、この三十年度の経費別内訳の構成を見ますと、ほかの県に比べて私はバランスがうまく行っているのじゃないか、こういうふうに分析するわけでございますが、この点はいかがでございましょうか、お考えをお聞かせ願いたいと存じます。  それから今の消費的経費の中に人件費というものがありますが、この人件費というのが問題になるのでありまして、今知事さん御両名からのお話の中に、非常に人件費の圧縮ということについては御苦心をなさっておるようでございます。ところがこの三十年度の経費別決算状況の中から今の消費的経費の中に人件費を探って参りますと、この人件費を割合に少く三〇%に出しておる県は四県ありまして、その下から五番目に、佐賀県が四一・二%という人件費の構成になっている。ところがほかの県はみな四八%とかあるいは五〇%あるいは六〇%とかいう高い人件費の構成を示しておる。徳島県は三七%の人件費の構成になっておりますが、こうなりますと、何も徳島や佐賀県が非常によその県に比べて膨大なる人件費を負担支出しておるとは思われない。この点についてもお考えをお聞かせいただきたい。そこで私はこういう他県の状況をずっと比べて参りますと、佐賀県知事さんは人件費等について非常に苦心なさっておられるようでありますけれども、他の県に比べてみると何も佐賀県の人件費が高いことで不当呼ばわりをされるような状況ではないのじゃないか、そういう財政構造になっていない、こういうように考えるわけでございますが、御所見がございましたらお聞かせ願いたいと存じます。
  47. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ただいまの第一点でありますが、投資的経費の面におきましてパーセンテージが割合品高いということでございます。この点につきましては実は特殊事情が私はあるかと考えております。その第一点は、例年災害が非常に多くありまして、災害が投資的経費に実は入ってくるのであります。従って災害復旧費の増というものが一般的な事業とは別ワクの特殊なことでありまして、それが常に台風の襲来あるいは水害等により二十八年あるいは二十九年、三十年と続いておりますので非常に多くなっておる。あるいはさらに本県は特に国家の代行干拓事業を現在二千数百町歩やっておりますが、それに数億の金をまるまる国家からいただいて県費は必要ございませんが、県の予算を通していたしております。従ってそういった方面におきましての投貸的経費が、パーセンテージの面におきましては、そういう形において現われておるのではないかというふうに考えます。  第二点の人件費の面でございます。現段階におきまして私はただいま御指摘のございました通り、不当に人件費を負担しておるというふうには考えておりません。単価の面におきまして国家公務員と、本県の公務員の平均給与等の実態調査等から見ましても、ほとんど差はございません。一部においてちょっと高い点があったのでございますが、現在においては中学校、小学校等におきまして多少低いのではないかというふうに考えております。従いまして現段階において、私は人件費の面をより多く不当に支出しておるというふうには全然考えていないのであります。ただ全面的に財政収入の面から考えていきます場合、先ほど申し上げましたように公債償還費に相当額を取られ、しかも一般財源が乏しいという形になりますと、どうしてもそこに赤字を最小限度に押えるために、事業費の面にもあるいは人件費の面にもあるいは物件費の面にも需要の面においても、やむを得ずしわ寄せされてくるという苦しみを味わっておるというような現段階であります。
  48. 川村継義

    川村(継)委員 ありがとうございます。  私、お尋ねをいたしております途中でございますが、加藤政務次官か財政部長からちょっとお聞きしたいと思うのですが、今私が申し上げておるような消費的経費と投資的経費の支出の構造を見て、今のようなことをちょっと知事さんにお聞きをしたわけであります。もしも再建団体である徳島や佐賀県に向って再建を指導しておる場合に、消費的経費が多過ぎるとか、人件費が高過ぎるとかいうようなことで指導の手を加えているということになると、これはちょっと行き過ぎ場じゃないか、考え違いをしているのじゃないかということを、私ちょっとこの表を見て思ったわけですからお聞きしたわけですが、もう一つ政務次官あるいは財政部長にお開きしたいのは、この表を見て参りますと、今の消費的経費のうちで北海道からずっと東北、関東にかけては消費的経費の支出の構成は七〇%か六〇%になっておる。それから反対に投資的経費は二五%とか二〇%とかいうような低い率を示しておる。北海道、東北、関東というこちらの方は、大体消費的経費が非常にたくさん占めており、そして投資的貸費は少い。ところが九州、四国、近畿というのは逆になっておる。投資的経費の支出が高くなって、さきに佐賀県の方にもお尋ねしたように、消費的経費は非常に少くなっておる。これは私はおもしろい現象だと見るのです。これは今知事さんからお答えがありましたお言葉の中に、結局九州あるいは四国、近畿というものは、災害関係の復旧に要する費用というのが、年々要るからとういうような結果になるのじゃないか、こう思うのですが、この辺の意見について一つこの際お聞かせおき願いたいと思います。
  49. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 今お話の通り、東北と南の方の関係は、災害の分が一つの原因だろうと思います。それからもう一つは、東北の方は寒冷地手当とか薪炭手当とか石炭手当とか、寒冷地関係の手当あるいは消耗品費、光熱料というのが南より相当多くなっておりまして、そういうことが大勢としていえるようにわれわれも考えております。
  50. 川村継義

    川村(継)委員 要するにこの年々の都道府県の決算状況を見ていって、今のような状況が大体出て参りますから、やはり九州とかあるいは四国とか近畿とか、年々台風等の災害を受けやすいこれら府県に対しては、地方団体に対しては、別途の考え方で臨まなければ、この財政再建は非常に困難じゃないかというような問題点が残ると私は考えるのであります。  大へん失礼でございますけれども、もう一つ知事さんにお伺いいたしたいと存じます。私は非常に御苦心なさっていることはわかりますけれども、今のような全国の決算の構造から見て参りますと、そういう私が概略申し上げたような結果が見受けられるわけでございますから、やはりお苦しいこともございましょうけれども、両知事としましては、人件費の問題については、この上とも十分御配属を願わなければ、皆様方が御心配なさっておるところの行政水準の低下というようなものに、いよいよ大きな拍車をかけていくのじゃないかということを心配するわけであります。お聞きしますと、先ほど鍋島知事の方から御説明がありましたこの後の問題点の中にもありましたように、教職員の整理問題等で、今回好ましくない事態が起きているということでございます。鍋島知事は前には県の教育委員長をなさった御経験もございますし、現在知事としてこの佐賀県の諸問題に非常な御苦心をしておられるわけでございますが、佐賀県の教育の水準というものは一体どのような状況にあるのか。あれだけ問題を引き起すような強硬な整理をなさらねばやっていけないのか。このいただきました表を見て参りますと、整理の表の中でも、計画と、実際今教育委員会が行おうとしておる整理の人数というのは、相当開きがあるようでありますが、こういう点は一体どうなっておるのか。それから他県に比べて何か先生方の数が多いようなことが言われておりますけれども、一体それは他県に比べて多いということは悪いのか、そういう点がはっきりしなければ、ただたとえば事務職員が多過ぎるからといって、あるいは看護の先生が多過ぎるからといって、これをばっさりばっさり整理するなどということは、非常に問題が残ろうと思うわけであります。この点について一つ知事のお考えをお聞かせおき願いたいと思います。
  51. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 教職員の整理問題につきまして、計画につきましては先ほど申し上げた通りでございます。全般的に見まして、この計画を作っていきます基礎資料——いわゆる再建団体は全部でございますが、法によって計画自治庁と交渉して参ります場合もっともなことだと考えますが、やはり同様な類似県の平均といいましょうか、同様な人口あるいは財政構造といったような形におきます類似県というような数県をピック・アップされ、その中から一応ベースを置いての交渉になり、これから多いものは少くし、あるいは少い場合においては多少つけ加えて、その水準に合わしていくというような基本的な方途が実はとられてきておるのであります。なおそういった統計を中心にして参ります場合におきましては、やはり文部省のなす五月一日現在百でありますが、それによりますところの教育統計というようなものが、やはり数字的な根拠をなしてくるのであります。ところが品目体の場合におきましてこれを考えていきます場合、沿革的な面でございまして、義務教育におきまする事務職員あるいは養護職員というようなものは、ある県におきましては、市町村が大半を負担しておられる果も沿革的にございます。私の県の場合におきましては、ほとんど県費をもって支弁して——ほとんどというより全員というような形において支弁をしてきております。そういたしますと、統計に出てくる場合にまことに差が出てくるのであります。そういった特殊な事情、または結核にかかって休養中の先生方等が相当多い、当初考えて、おったものより多いというような点、また高等学校の場合におきますと、実業学校の面におきまして、同じ農業学校でありましても、林科があり畜産がある、あるいは畜産の中にまたいろいろ分れるというコースの関係があり、あるいは農場が多いとかいう実際上におきます特殊の事態がここに出てくるので、その際におきまして、やはり一定の規格でこれを考えることができない人員というものが出てくると私は考えておるのであります。そういう点を私たちの立場から申しますと、教育委員会の実態との関連におきまして、財政の面と教育委員会の必要性というものあるいはその実態というものを考慮いしたまして、実は考えてきたわけでございますが、すでに御承知の通り、三十一年度におきまして、計画から見て二百五十名前後の計画オーバーを来たしておったのであります。これにつきまして自治庁と数次にわたる交渉をいたしまして、三十一年度は二百五十名前後のものはそのまま計画変更によってこれのお許しを願いまして、そのまま推移して参りました。しかして三十二年度、本年度当初におきましては、予算計画通り組んでおりますけれども、今のような実態の面から見まして、教育委員会の強い御要望と、それから私自身の財源的な見方というものとの調節をとり、さらに一般的な教育関係者の世論、これは組合のみならず、PTAそのほかのあるいは地方教育委員会の御会合品等の世論、そういったものを参酌いたしまして、実は、正確な配置人員を私は知りませんが、学級増は別にしまして、百二十名前後の人員をすでに今日配置をいたしておるのであります。従って、この点につきましては私の責任でございますけれども、自治庁に対しましての計画変更をお願いを申し上げるつもりでありますし、自治庁もその審議の交渉に応ずることを言われておるのであります。こういう点におきまして、やはり人件費の問題に関連をいたしまして、乏しい財源ではございますけれども、私自身といたしましては、何とか一つこの水準を保って参りたい、どうしても保って参ることが、本県実態の教育の面から見まして、必要があるというふうに考えておるのであります。従いまして、そういった面におきまする百二十名前後の点も、今後の問題に実は残されておるのでございますけれども、これ以上の無理はとうていできないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  52. 川村継義

    川村(継)委員 かねがね御苦心いただいていることは、万々お聞きいたしておりまして、いろいろ御苦心が多いことだろうと存じます。しかし佐賀県におきましても徳島県におきましても、そういうような財政上のただそれだけで、非常に御苦心はあろうと思いますけれども、あるいは教育費とかあるいは人件費に大きくしわが寄り、それに圧迫が加わり過ぎるということがあっては、両県の教育を考えたり、あるいは公務員の生活等を思うと、非常に憂慮にたえない問題がやはりあるわけであります。特に先ほど私が申し上げましたように、おうちの県は投資的経費とかあるいは消費的経費の構成から見まして、他県に比べて非常に大きなアンバランスになっておるということは決して見受けられませんので、この点はやはり、ぜひともわれわれといたしましても、さらに再考をお願いしたいと思うのでございます。  それから自治庁がいろいろ計画等についても指導をすると思いますけれども、その場合に、ここにも書いてございますように、百二十名を増加することをお願いするというようなことではございませんで、こういう百二十名とか、あるいは百名とかいう増員については、自治庁としてとやかく言うのではなくて、やはり財政全般についていろいろ指導するという考え方があっていいのじゃないかと思うわけでありますが、こういう点につきましては、知事さんとしてぜひとも十分自治庁折衝していただきたいとお願いをいたすわけであります。  それからもう一点でございますが、近く県庁職員あるいは教育職員について、どうせベース改訂をやらなければならない。今度給与改訂が行われるわけでございますが、一体これについての見通しは、いかがでございましょうか。これは両県知事さんから、一つ簡単でよろしゅうございますから、見通しのほどをお開かせ願いたいと思うのでございます。
  53. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ベース改訂は、国家公務員に準じて私はやるつもりでおります。
  54. 原菊太郎

    ○原参考人 うすうす聞いておるところの金額から見ると、一億三、四千万円、あれをやられましたら、私の力でも不足すると思うのでございます。そうして私の方はぜひともやりたいわけなのです。赤字県だから、お前らはしんぼうせい、あるいは昇給を延伸するというのは、自分の心に問うて不愉快千万なことなんです。それだけの財政の措置を考えていただきたいと思うのです。今のような調子で赤字を解消ができましても、奇形児の県ができると思います。これについては自治庁の方なり、また議員側の方なりにいろいろ御配慮をお願い申し上げて、人並みの公共事業とか、教育とかいうようなものはやる、また人に対するの待遇はひとしくやっていただきたい。不足しておるところは、何とか特に勤勉してやってもらうということで補うて御救済をお願いしたい、こう考えておる次第でございます。
  55. 川村継義

    川村(継)委員 佐賀県でも徳島県でも、お聞きしますと三十年ごろから県庁職員や学校職員は、ほとんど昇給昇格についても、ストップあるいは延伸という方法がとられておるわけであります。これは他県に比べると、非常に低いところにある。今度そのまま給与改訂ということで国家公務員に準じて切りかえられましても、その開きが他県の職員に比べると非常に大きくなる。この点について、どういうふうにお考えなすっておられますか。私はやはり国家公務員並みの水準に直してでも、切りかえていただきたいと思うのでございますが、もしもその辺について、そういうふうにしてやるという御決意がございましたら、お聞かせいただきたい。  それからいま一つ、佐賀の鍋島知事さんにお伺いいたしたいと存じますことは、先ほどちょっと触れましたようなことが、今度おうちの県でいろいろ問題が起きておる。これはいろいろございましょうけれども、残念なことでございます。佐賀県の教育を考えるならば、あのままほっておくわけにいかぬと思いますが、何かこれについて知事としてどうかして手を打ってやりたい、考えてみたいというような御考案でもございましょうか。あの問題をわれわれといたしましては、知事の力でできるだけ円満におさめていただきたい、こういうことを思うわけでございます。この財政状況をお聞かせいただきましたのに加えて、その点もお聞かせいただければ大へんありがたいと存ずるわけでございます。
  56. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ベース改訂の問題でございますが、これは御承知の通り国家公務員等の実態調査が出ております。従って昭和三十年度におきましては、六・六・九・十二という、いわゆる、権利放棄の措置によって昇給昇格を行い、三十一年度は三・三・六・九という形におきまして昇給昇格を行なっております。再建計画の中には、実はそのときの財源次第ということになっておりまして、昇給昇格財源というものはございません。しかし今回のベース改訂におきまして、ベース改訂分の財源そのものはございましても、おそらくそれを是正していくだけのことは、地方財政計画そのほかの中に、実はまだ見当がついていないわけでございます。これは結論的に政府の方でいかなる配分をしていただきますか、あるいは再建団体に対します給与の均衡という形から見るところのいわゆる財源配分交付税と申しますか、あるいは特別交付税と申しますか、そういう点にかかってくるわけでありまして、私は、ただいま徳島の知事さんが言われましたように、やはりこの点は財源次第とはいいながら、できるだけ均等にやるというふうに措置をいたしたいと考えております。  第二の点であります教職員の問題につきまして、現在私の県にまことにいろいろな問題が起きておりますことにつきまして、県政全般という見地から見まして、私は実は心配をいたしておるのであります。ただ、平は御承知の通り法律解釈そのものの問題というようなところにくるわけでございまして、今日ただいま私がどうこうというようなことをしていく段階、かつまた手を打つべき時期と申しますか、チャンスと申しますか、あるいは権限と申しますか、そういう点に実はないわけでございます。ただ県政全般、あるいは教育も含めました県政の一つ計画と申しますか、そういう面から私は私の考えによって行動をして参りたいというふうに思っております。
  57. 川村継義

    川村(継)委員 今の点につきましては、これ以上知事さんにいろいろお尋ねすることは失礼かと思いますので、差し控えたいと存じますが、要するにだんだんいろいろとお聞かせいただきまして大へんありがたく存じます。特に両県の再建団体としての計画遂行、あるいは財政を健全化するについては、ずいぶん大きな問題があるわけでございますが、われわれがちょっと資料等によって見ましても、特に公債費の問題等はずいぶん大きな問題だと思います。これは全地方団体の問題でございますが、両県にとっては特に大きな問題のようでございます。元利償還の増加しておる額だけが昭和二十九年と三十年と比べて参りましても、その税収入に対する別合一が、徳島県では七五%をこえておる、佐賀県でも五〇%をこえておると非常に大きな負担でございます。従って国としても公債費の問題を何とかしなければ、おそらく皆さん方の財政再建の苦心にこたえられない、こういうことを深く思うわけであります。特に佐賀県の計画表をちょっと見せていただきましても、最も問題になるところの災害復旧というような計画については、後年度においては全然考えられておらないようでございまして、一応表の上では十一年間の計画ができておりますけれども、佐賀県は災害復旧関係のものが、今のところこの表の中に全然見込まれていないということは、実をいうと、りっぱな計画じゃない。災害というものは必ず襲うものでございますから、こういう突発的な経費というものが必ずでてくる、こういうことを考えると、今後いろいろ御苦心が多いと思います。国会で処置すべきものは処置して参らねばなりませんけれども、いろいろ御苦心の中に御努力をお願い申し上げたいと存ずるのであります。いろいろお聞きしたいことがたくさんございますけれども、他の委員の方もございましょうから、私これで終ります。いろいろお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
  58. 門司亮

  59. 亀山孝一

    亀山委員 本日は佐賀県知事及び徳島県知事より非常に詳細にわたる地方財政、ことに府県財政の問題についてお話を伺いまして、非常に参考に相なりました。  そこで二、三点お伺いしたいと思います。これは佐賀県知事及び徳島県知事お二方にお願いしたいのでありますが、今同僚川村委員からもいろいろ御質問申し上げましたように、地方財政ことに再建団体であられる両県を担当しておられるお二方としては、これをいかに打開するかということに対しては非常に御苦心と思いますが、公債償還の問題及び地方交付税の問題に対して、どういうような御希望がありますか、簡単に両知事よりお伺いしたいと思うのでございます。
  60. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ただいまの根本問題は先ほど来申し上げておりましたように、公債償還費の累増であると考えております。公債償還費は御承知の通りすでに県税収入十億に対しまして三十四、五年度には八億をこえるようになって参るのであります。そうしてそれがならされたとしても六億ないし七億ということで、ぽんと全部を政府への借金返しに使わなければならぬというような状態になりまして、根本的にこの、再建団体の再建に対する意欲が減ずるという基本的な問題になると思っております。従ってこれの償還費に対します法律なり、あるいは財政需要額に繰り入れて交付税で回ってくる形をとっていただくなり、何らかの方法によってこの公債償還に対します再建団体の重圧から救っていただくことを、まず第一にお願い申し上げなければならないと思います。特に今日政府に対する借金返しといいましょうか、公債償還をしておりますが、その中の内容から見ますと、かつてベース・アップの際におきまして、国の法律によって公務員は給与費が上りました。その際に実は財源が与えられなくして、地方債で与えられた点もございます。あるいは基本的な公共事業といったような国家施策によってやらなければならぬ点に御承知の通り一般財源がないために、地元負担分を政府からお借りしたというのも入っておるのであります。あるいは義務教育の点もございます。あるいは国家施策といたしますところの失業対策をやるために、政府からお借りした地方債がございます。それのいわゆる返還、償還という形において今日再建団体に重圧を来たしておる次第でございますので、何とか一つ、今申し上げましたような別途法律によるところの元利補給の措置でございますか、あるいは地方財政需要額の中に正確に繰り入れていただきまして、そしてこれを交付税として回していただくか、何とかこの救済の方途を特にお願い申し上げたいと考えております。  地方交付税の点におきましては、これは全国知事会議もその通りでございますが、地方交付税に転換いたしました当初の基本的な考え方として、減税の場合におきましては、その率を上げて減税分を救っていただくというような基本的な態度があったかと思います。そういたします場合におきまして、現行は一%上って二六%になっておりますが、少くともそれを二八・二%でございますか、そういう形においてやっていただきますことが私は至当であろう、しかも税収の自然増が他の都道府県におきましてはあるいは五億、あるいは千億、あるいは十数億、二十億というふうに見込まれる場合、本県のように現在詳細に調査いたしまして、県税の自然増が千億減税のはね返りと相殺いたしますと、逆に五百万円ないし千万円減るというようなこの農村県の実態にございます場合におきましては、交付税の率を上げていただく、それによって交付税から回していただいて、この財源の不均衡を是正していただくというふうに、私はお願い申し上げたいと思っております。
  61. 原菊太郎

    ○原参考人 お答えを申し上げます。今度の減税によりまして、私どものような農業県は八千万ないし九千万円の減少の影響を受けております。それから利子補給に対しまして、三十二年度はやって下さったのですが、それで打ち切りになりそうですが、私の方としては持続しておやりを願いたい。それから昇給停止をやっておりましたものを復元いたしますと、すぐ千万円、そこにもまた不足が出まして、今度昇給します。と、約二億円ほどの金が不足になるわけでございます。私の方の起債のうち、どうしても災害と認むべきものを、緩慢なる災害という意味において見て下さらぬというような従来のことが相当重圧になっておりますので、どうしても今日徳島県のような、あるいは佐賀のことは十分存じませんが、佐賀とか鹿児島とかいうようなところに対しては特殊な治療法をやっていただかぬと、ひとしくかぜを引いたのでも、ひどいかぜと簡単なのとありまして、何とかこれを御調査下されまして、自然に基いて無理のないところは何とか応分の処置をとっていただいて、人並みの施設ができていくようにさせていただかぬと、また次の赤字をこしらえる素因を作ると思います。よろしくお願い申し上げます。
  62. 亀山孝一

    亀山委員 次にお伺いしたいと思いますことは、先ほど鍋島佐賀県知事もお触れになりましたが、地方公務員の停年制の問題であります。御案内のように、地方公務員の停年制は二回継続審議となりまして、現在この委員会で審議中でございまいます。この地方公務員の停年につきまして、先ほどこれを期待するというお言葉がありましたが、当委員会の審議におきましても、やはり関越となりましたことは、国家公務員に停年制がないのに地方公務員に停、年制を設けることがどうであるかということ、及びこれを無条件に地方団体の条例にまかせるということはどうであるか、あるいは年令制限をこれに加えて、たとえば五十五才以上とするというようなことも論議され、また単純労務者である地方公務員に対してはある程度しんしゃく規定が要るのではないかというような意見もありまして、まだ本委員会でいろいろ審議中でありますが、この出題につきまして両知事さんから一つはっきりした御所見を伺いたいと思います。
  63. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 地方公務員の停年制につきまして先ほどちょっと申し上げたのでございますが、国家公務員との関連におきましては、私たちの立場から言いますと、国家公務員も地方公務員も同等に取扱っていただきたいと考える次第でございます。なおこれは私の県以外のことに出るかと思いますが、停年制を置くといたしまして、無条件に各都道府県の条例にまかせられることになりますと、私ども再建団体とは、特にそういった面でいろいろな財政的な面から、でこぼこが生じまして、地方公務員自体にある程度凹凸が生じ、あるいは停年にしておやめになる条件についても凹凸を生ずるというふうになりますので、これはどうしてもやはり国家におかれて一応の法律による基準というものがあるべきであろうと考えておるのであります。今日これは現状自体の基本的な問題でないかもわかりませんけれども、すでに申し上げましたように、数度にわたり人員整理が行われております。現在五十五才にした場合口におきまして、私の県等におきまして、おそらくそれに該当せられる方はほとんどない。あと一、二年は、教職員にいたしましても、県庁職員にいたしましても、おそらく停年に触れるというようなことはないのじゃないかと実は考えるようなくらいにやめておいでになるのでありますが、やはり基本的な問題といたしましては、五十五才というような一応の基準が出ておりますが、そういった停年制があって、そして定員がきっちりきまって、安心して公務に従事せられ、そして将来を考えながら進まれる、しかも新陳代謝ができていくというふうに考えていかなければならないというふうに、私は考えるのでございます。教育職員等におきましても、佐賀におきましては百五十名、二百名の学芸大学を出られる方が、現段階におきまして、三百名前後と思いますが、就職できずしておいでになる。そういったことが起らないように、一面において学芸大学の募集、卒業という点も考えなければなりませんけれども、やはりスムーズにそういうものが新陳代謝せられていくという面から見まして、私としましては停年制の実施ということが、地方財政の人件費をもある程度安定をさしていくのではないかというふうに考える次第でございます。なお労務者の一方におきまして、ある程度のしんしゃく規定というのは、あるいは医者でありますとか、その他多くの特殊なことが、実は県内の施策の中にございます。そういうことはそういうこととして別途考慮すべきであろうというふうに考えます。
  64. 原菊太郎

    ○原参考人 お答え申し上げます。佐賀県知事の言われたことと、詳細な部分におきましても同じ意見を持っておる次第であります。
  65. 亀山孝一

    亀山委員 最後にお伺いしたいと思いますが、今両県知事とも停年制の問題につきまして、これを条件つきで賛成するというようなお言葉がありましたが、一般には各団体の長があるいは関係議会の人たちがこれを希望するのであって、いわゆる少壮の人たちは、今御心配のような清新な気分を入れるということにあまり心から賛成していないというようなうわさがわれわれの耳に入るのであります。その点は両県知事は知事としての御希望でありますけれども、この適用を受ける、あるいは受くべき人々の空気というものを、世論というものを、もしもおわかりでございますれば、簡単にお答え願いたいと思います。
  66. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 停年制につきましての世論ということは、現在それぞれの立場において反対せられておる者もございますし、率直に申し上げますと、反対せられている議論が強く出て、賛成せられておる議論というものがこのごろ沈んでおるというのが現実じゃないかと思います。とともに停年制の問題に対しましては、年齢あるいは運営の方法によって、十分その点の理解がいきますならば、現段階においての、特に佐賀県の場合におきましては、そういったスムーズな形においてある年限を安定していくということの方に賛成される方が多いのではないかと思います。
  67. 原菊太郎

    ○原参考人 お話のように、現在職をやっておる人たちは、あまり歓迎しないと思います。しかしそんなことを心配しておれぬと思います。やはり清新の気を入れまして沈滞状態を一掃したいという考えであります。それと、これ以外の問題にわたりますが、学芸大学その他で、採用してくれるのがきまっておるような卒業生を出しておるのに対しまして、何とかほんとうに教育に適した人のみを置きまして、それ以外の人は入り用がないと思いましたら、他の大学の方に入ることができるように御措置願ったら非常に心安くいけると考えております。
  68. 門司亮

  69. 井手以誠

    井手委員 私は赤字県出身の者でございますので、赤字の実態についてはある程度承知いたしておりますが、なお赤字の実情を明らかにする上において二、三点お尋ねをいたしたいのであります。  佐賀県も徳島県も増税と首切りと事業の打ち切りなどで再建をやられておるようでありまするが、そのうちで人件費の点について第一にお尋ねいたしますが、これは特に佐賀県にお尋ねをいたします。  佐賀県については、先刻同僚議員からお尋ねがありましたように、三十一年度末において教職員の整理が行われて非常に問題になっておりますが、佐賀も徳島も同様に、三十年度に比べて再建期間中に一千名をこえる整理が予定されておるのであります。そのうちで佐賀県の教職員の整理は、今後は、今日までのような強制的な整理があるかないか、この点をお尋ねいたしたいのであります。表によりますと、大体自然減耗でまかなえるようではありますけれども、一部では今後なお整理があるんではないかという不安もありますので、事務職員まで加えた今後の整理の見通しをお尋ねいたしたいと思います。
  70. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 教職員の人事管理は教育委員会にございますので、私から申し上げるということの点につきましては多少問題があろうかと思いますけれども、財政の面からこれを考えていきます場合におきまして、私は大体それを行いますといたしましても、欠員不補充と申しますか、そういういろいろな操作によって行われる点で、十分計画通りいく、といたしましても、いけるのではないかというふうに考える次第でございます。
  71. 井手以誠

    井手委員 所管は教育委員会でありましても、財政の面から整理が行われておりますので、特にお尋ねいたしておるのであります。これは横道になりますが、自治庁にお尋ねいたします。今佐賀県知事のお答えにもありましたように、今後は自然減耗、欠員不補充でいけるという見通しのようであります。そういう再建計画も出されておるようでありますが、これは自治庁においても御了承になっておりますか。
  72. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 自治庁といたしましては、計画に無理があればもちろん直さなければいけませんが、そうでない計画が円滑に行われることを期待しておるのでございまして、それが今お話のように、自然減耗等の措置によって行われることは、一番望ましいことでございまして、そういうことを希望いたしておるわけでございます。
  73. 井手以誠

    井手委員 希望とか何とかでなくて、お尋ねいたしておりますのは、自然減耗、定員不補充でやれるという佐賀県の財政計画を、自治庁は御了承になっておりますかということでございます。
  74. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 再建計画は当然自治庁が承認いたしておるわけであります。
  75. 井手以誠

    井手委員 次いでお尋ねいたしますが、先刻川村委員からもお尋ねがありましたが、災害常習地帯における災害復旧費が、この再建計画にはほとんど載っていないのであります。これは佐賀県も徳島県も同様であります。もし災害が起きました場合には、地元負担や単独事業におきまして、全額起債なさるおつもりでありますのか、また起債したいと思っても、その見通しがありますかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  76. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 災害の際におきまして、自治庁とお打ち合せいたしておりますのは、そのときにおいては、災害復旧費を、自治庁財源的な面は十分見るというようなことに原則的になっております。災害の中で公共災害、すなわち国庫補助がつく場合におきましては、今日までの段階におきましてわれわれが提出いたしましたその通りのものを御承認を受け、かつまたそれに伴う起債もついております。ただこの際一言申し上げておきたいと思いますのは、そういう国庫補助がつく災害のほかに、どうしてもそれを防止するためにあるいは災害に対しまする県単独にやらなければならない問題が実は出てくるのであります。これは災害が大きければ大きいほど、あるいは災害の種類によってそれぞれ違いますけれども、国庫補助に乗らないのでございますけれども、そのつど県自体でやらなければならぬ。この点どうしても一般財源、いわゆる交付税かあるいは県税収入かの面から支出をしなければならない。そういたしますと、それの出どころは特別交付税以外に、ございません。そういう点特に自治庁の方にお願いを申し上げて、その点において一つできるだけ計画変更と財源の付与をお願いいたしたいと私は考えておる次第であります。
  77. 井手以誠

    井手委員 再建計画書によりますと、佐賀も徳島もともに二、三年のうちには従来数億に上っておりました単独事業費が一億円を割るようになっておるのであります。佐賀県では三十三年度からはわずかに四千万円、これでは砂利も敷けないじゃないかと思うのでございますが、その苦しい実情を簡単に一つ両県知事から承わりたいのであります。
  78. 原菊太郎

    ○原参考人 徳島県もおっしゃられたように予算に入っておりません。発生いたしましたときには自治庁の方と相談をいたしまして何とか解決をつけたいという考えでおります。砂利の方は、砂利でやっていけると考えております。(笑声)
  79. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 道路の問題でございますが、私の方は実は道路維持修繕費といたしまして、土木部の要求によれば一億近く要ると申しますが、現在五千万円以下にしぼっております。この点、道路維持修繕費の面におきましては相当滞りがちで、天下の悪道路だといわれる不評をとっておる次第でございます。なお、県の単独事業の面におきましては、たとえば民生事業にいたしましてもやはり他県に比べて特に、率直に申し上げますと、福岡県と県を境にしておる、福岡県の方が財政がいいというような点になりますと、福岡県に三ヵ村に一ヵ所でも保育所が建てば、県といたしましては五ヵ村に一ヵ所でも保育所を建ててあげたいという気持に燃えるのでございますけれども、そういった面、どうしても財政のないため、やはり十ヵ村に一カ所というふうになりがちでございます。先ほど申し上げましたように県の単独事業はやはり私は公選知事のある面におきまする一つの生命であり、公約を果すべき最もポイントになるべき問題であると思いますので、財政が許すならば、あるいは今後の交付税の配分なりあるいは特別交付税配分なり、その他の面におきまして一つ単独事業をでき得るように、かつ幾分かでもわれわれの希望が——幾分かでもというのはどうも謙遜した話でございますが、少くともそういった面で満足できるように、一つ交付税の配分等で御考慮願いたいことを私は熱望しておきます。
  80. 井手以誠

    井手委員 その点で重ねてお尋ねをいたしますが、徳島県の知事さんにも特にお聞きを願いたいのは、道路修繕であるとかあるいは民生事業であるとか多くの単独事業、これに要する財源が再建計画によりますると佐賀県は明年度から四千万円、徳島県においてはわずかに三千万円、これでは砂利も満足に敷けないという状態であろうと思うのであります。こういう事情では私はとても県政などをやっていけるものではないと思うのです。佐賀県知事お話によりますと年間一億円を要する道路の修理に、あなたは何とかやっていけるとおっしゃいましたけれども、あなたの方も道路の修理、砂利代に年間一億円ぐらい要るでありましょう。それは単独事業のごとく一部でございますが、そういう億の費用を要する単独専業が、砂利代の一部にも達しないような単独事業の費用ではどうにもならぬと私は思います。そこで、実情はわかっておりますからこれ以上聞きませんが、自治庁財政部長もその点は御承知で、御承認になっておりますか。今後再建計画が終るまで数ヵ年これでもやむを得ないとお考えでございますか。一つ参考にお聞きしたいと思います。
  81. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 今お話の通り、この再建計画の中身を見ますと、そういう事業が本年度において非常に激減いたしております。これはその当時の財政の見通しで全くやむを得ずして作ったものでありましょうが、こういう形でやっていけるものだとは私も考えておりません。これは当然その後の財政事情の全般的の措置、税の伸びその他の状況考えて実情に合うように改訂していかざるを得ない。そうしなければとても県の行政をやっていけるものだとは私は考えておりません。
  82. 井手以誠

    井手委員 もう一点お尋ねをいたしますが、たとえば佐賀県におきましては再建期間中になお二十四億円の起債を要するという見通しのようであります。そうなりますと、この再建計画が終りましてもなお多くの公債が残ると私は思いますので、佐賀県におきましては昭和三十七年度以降において、御岳県におきましては昭和四十年度以降におきまして、ただいま申しましたような非常に苦しい財政状態が五年も十年も二十年も続くのではないかと私は考えますが、いかがでございますか。
  83. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 このままに参りますと、ただいま御指摘の点が、相当あとでやはり重圧になって残って参ります。ただ公債費はこれを全然なくすという原則ではないと私は考えます。やはりいろいろな災害もございますし、特殊な事業もございますので、ある限度における公債償還費が残ってくるということは、私は地方団体として当然あるべき姿であると思います。従って、現在まだ十分の処理ができておりませんけれども、また御審議中であると伺っておりますが、この公債費に対する一つの対策を立てていただくことによって、この三十四億円もやはり減って参ります。そういたしますと基本的な再建計画もさらに強固なものになっていくのではないかというふうに私は思っておる次第であります。
  84. 井手以誠

    井手委員 それではよろしゅうございます。最後に両県知事から一言承わりたいのは、佐賀県も最近非常に地すべりが起きまして困っておられるようですが、先刻徳島県知事お話によると、地すべり問題対策が赤字の大きな原因にもなっておるということを承わったのであります。簡単でけっこうでございますから、地すべり対策についての両県知事のお考えを承わりたいと思います。
  85. 原菊太郎

    ○原参考人 私の方で地すべりの対策としてボーリングをいたしまして、今後その地すべりが多くならぬようにしておりますが、地すべりによって被害を受けたり、道路の復旧とかいろいろその被害の復旧のために相当な金が要るのでございますし、それから先刻おっしゃられたように、あの計画でいけるかといったら、私もはっきりといけぬと思っております。ああいう状態を続けていくのであれば、もうとにかく地方の自治体は、私のようなところは壊滅すると思っております。借りかえでなしに、交付税とか何とかでやっていかぬと、ただ借りかえ、借りかえでやっていったところで、同じことは何百年も続くだろう、こういうふうに思っております。
  86. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 地すべりについて、徳島県知事の言われましたように、ボーリングをいたしておりますが、結局、地すべりは亀裂を生じて危険であるということになっておりますので、その工事をいたします場合に、災害復旧になりません。災害以前という形をとりますので、希望といたしましては、危険防止という意味で防災的な見地から、この工事を災害復旧並みに特別なことをしていただきたいこと。それから、それに伴います危険性のある住家の移転、退去命令を出しましても、実はそれに伴う融資なり、そういった点が今日整っておりませんので、いろいろな小策を弄してお勧めをしておる。こういう点は、一つ国におかれまして、退去命令を出せば基本的にある程度融資ができ、そしてスムーズにいけるような形を作っていただくことが、地すべりを防止する面において大切なことじゃないかと考えております。現在数ヵ所がそういった現実に直面しておりますので、申し上げておきます。
  87. 門司亮

  88. 北山愛郎

    北山委員 時間がおそくなりましたから、簡単に二、三お伺いします。  第一は警察費の問題ですが、昭和二十九年に警察制度が変って府県警察になった。この結果として、両県のみならず、全国的に府県の財政警察費のために、相当な持ち出しになっているわけなんです。平均して五千万円くらい持ち出しになっていると思うのです。それ以外の災害あるいは公債費などの重圧と相待って、二十九年度以降においては警察費の持ち出し分、団体負担分の増加が数千万円残っておると思う。この状況はどうなっておりますか。これも加えていけば、毎年数千万円ですから、二十九年、三十年、三十一年と相当な額に上るのじゃないかと思うのですが、両県の知事さんにこの関係を承わりたい。
  89. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 私の県では、警察費の県費を一般財源に直しまして、持ち出し分が四千万円ないし五千万円と考えております。
  90. 原菊太郎

    ○原参考人 過去には七、八千万円ありました。ところが、今後はないようになります。これは定員を非常に少く養成してあるためでして、是正せられることと思っております。
  91. 北山愛郎

    北山委員 定員を少くしたから是正されたというのは、ちょっと私も疑問に思うのですが、とにかく警察費への持ち出しは、これは両県のみならず、災害その他の分にかてて加えて財政負担になっていると思う。しかもこれは一般の財源から持ち出していくのですから、質的に見れば相当大きい負担になっていると思う。これを加えれば、両県とも一億数千万円に上ると思います。ただしあの警察法の改正のときには、全国知事会議は御賛成になった方だから、ある意味から言えば、自縄自縛とも言えないことはない。財政的に見ると、これは府県財政を非常に圧迫している大きな原因であると思います。  次に佐賀県の知事さんにお伺いします。たしか昭和三十年の地財再建法の審議の過程においてと思いましたが、災害の仕越し工事の持ち出し、佐賀県がやむを得ずやった分の赤字が数億円あったはずなんです。私も忘れてしまいましたが、たしか相当莫大な金額があったはずですが、その分は再建計画そのものの中で一体どういうふうに解消されてきたのか、これをお伺いしておきたい。
  92. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 私も正確な数字は記憶いたしませんが、約五億前後でございましたか、その前後の仕越し工事を断行せざるを得なかったのが昭和二十八年の災害だと思います。その後順次過年度災害につきまして国庫補助がつきまして、それをお返しいたしまして、現段階におきまして大体二十八年災が七〇%ないし七五%前後に来ておりますので、その点は一応解消せられたと思います。ただその間におきまして県または市町村等において金を先に借りておりますので、利子分とかなんとかいうことは当然負担したわけでありますが、現実の姿としては済んでおります。なお再建計画によりますと、過年度災害につきましてはその都度に応じて計画の中に乗ってきておりますので、これは順次解決をいたしていくものと思っております。
  93. 北山愛郎

    北山委員 大体両県とも赤字団体としてのチャンピオンみたいなものですが、しかし赤字を出しているのは、必ずしも徳島、佐賀両県のみではないのです。程度の差はあっても、全国的に各府県、市町村みな同じような状態ですから、その点はちっとも恥かしく思う必要はありません。ただ私どもこの再建計画を拝見しまして問題になるのは、この年次計画の中で建設的な事業とか、いわゆる行政水準の圧縮になっているという点なんです。これは問題になる点であって、この点については知事さんは非常に苦しんでおられると思うのです。特に佐賀県においては全県をあげて再建計画の変更のために一大運動を起すのだというようなことを聞いているわけであります。また佐賀県会においては全会一致で再建計画を変更してもらうようにするという決議案を可決している。再建計画というのは、おそらく徳島も同じだと思うのですが、府県行政の上において非常な制約になっている。はね返さなければならぬものです。重荷になっている。これは知事さんのみならず県民全体の気持だろうと思うのです。そこで特に三十二年度において、どういうふうにこの再建計画を変更してもらいたいか、それからまた知事さんとしてはどういうふうに努力をされるつもりであるか、これを一つ率直にお答えを願っておきたいと思います。
  94. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ただいま御指摘がございましたように、再建計画で苦しめられている県ほどそういった関心が強いと思います。県議会におきましても、あるいは一般的な県民の世論にいたしましても、再建計画に対する関心は非常に強いのでございます。特に災害等の場合には、その計画変更についての世論は大へん強うございます。私どもとしましては、今度の地方財政計画等には、地方税の自然増が数百億見込まれております。従ってある県においては十億の自然増がありますが、徳島さんや私の方は逆に千億減税のはね返りで、地方税そのものの収入は減収するというようなことで、それらのいわゆる均等化といいますか、財源の均等なる配分をお願いするというような形におきまして、現在の再建計画をどうしても一歩よき方に計画変更をお願いいたさなければならないし、またそういった見通しも国会の方のいろいろな御審議によって公債対策その他出てきておりますので、一つその裏づけをしていただきたいと考えるのであります。  それからこれは申し上げにくいことかもしれませんが、率直に申し上げますと、やはり一県知事として仕事をしておりますと、再建計画の軽微なる変更といいましょうか、全部そういう点に、事業一つ一つについてあらゆる仕事に御連絡をし、かつまた自治庁との交渉成立なり、計画変更等の承認を得なければならぬという点におきまして、率直に申し上げますと、再建計画の大づかみな点が軌道に乗っておるならば、あとの内容的な点は一つ知事のある程度財源配分等もおまかせを願いたいというふうに私は考えるのでございます。
  95. 北山愛郎

    北山委員 その問題は実は自治庁の方ヘもあわせてお伺いをしつつ、いろいろ御質問を申し上げたいのでありますが、時間がありません。ただいまのお話はまことに同感であります。たしか再建促進法審議の過程においては、政府はそのような答弁をしておりました。再建計画というのは非常に大ざっぱなものであって、そんなこまかい一々の事業について干渉するのじゃないのだというような御説明でありましたが、悲しいかな今の行政運営というものは実際にはそうなっておらぬ。一応法律が通りますと、つい老婆心が出てきてこまかい点までお世話をするというような結果になっておるのが実情で、まことにお気の毒だと私どもは思っておるのです。この点についてはいろいろ私ども責任を感じておるわけであります。  最後に佐賀県の知事さんにお伺いしておきたいのですが、やはり今問題になっておる教員の首切り、そこから起ってきておるいろいろな問題、あるいは警察が介入しておるような問題、これは法律解釈の問題だとか、あるいは刑事事件であって、あるいはまた教育委員会の問題であって知事さんの関知する限りではない、こうおっしゃいまするけれども、広い意味からすれば、その根本の根っこになるのは県の財政が発端なんです。もしも佐賀県の県財政が豊かであって、そしてうまくやっていけるならば、そういう無理なことはせぬでもよかったろうし、またあのような悲しむべき事態はなくて済んだだろうと思うのです。そういう点は、やはり私は知事さんとして相当な関心を持たなければならぬ問題だ、関心を持つと同時にまた責任も持たなければならぬ問題だと思うのです。従ってああいう事態になったことについて、何らかやはり県の行政の最高責任者として、これをああいう悲しむべき、法律解釈であるとか、あるいは刑事問題であるとか、学校に警察が踏み込んできて調べるとか、そういうふうにどんどん発展をさせないで、これを大所高所から解決されるというような努力をするお考えがあるかどうか、これを最後にお伺いしておきたい。
  96. 鍋島直紹

    ○鍋島参考人 ただいま御指摘がございました通り、この問題は、やはり県の、地方財政の窮乏に基因いたしております。根本的な問題は、やはり県の財政窮乏の点から起ってきた問題であると考えております。その意味において、私は決して関心を持たないどころか、やはり県政全般の面から見て大きな関心を持っておりますし、こういった問題が起きたことに対する責任につきましても、私は十分痛感をいたしておる次第でございます。  そこで今後の問題につきましていろいろな点があろうと思いますが、ただいま申し上げましたように、事態がさらに警察関係、いわゆる刑事の問題にまで進んでおります点、今後の問題についてまことに困難な点があろうかと思いますけれども、私は県全般という意味からそれを考えながら、最善の行動をとって参りたいと考えております。
  97. 門司亮

    門司委員長 私からこの際徳島県知事さんにお聞きしたいのですが、それはあなたの方から例の在日合衆国軍の水上機練習水域を徳島県の小松島港に設けることについて陳情書を受け取っておりますが、これについて御意見がありましたら、この際御発表願いたいと思います。
  98. 原菊太郎

    ○原参考人 小松島という港は徳島のほんとうの呑吐港でありまして、五百トン以上の船が入るのはその港をおいてほかにありませせん。そして汽船は年間に三千隻ほど出入りしております。それから機帆船は二万五、六千隻ほど出入りしておりますが、その港の品を擁して飛行機の練習場にするような計画なんでございます。ただいまは調達庁の方から向うのメモランダムを送付して参りまして、この閥から今井調達庁長官にも会いまして、大体こういうことをすることは徳島県そのものを滅ぼすもので、局部的な問題ではないので善処してもらいたいということを申し入れましたら、善処するということになりまして、呉の方から調査に来ることになったのに、きのうの電報では調査に来ないということになりましたが、おおよそ解決はついたものだろう、これは希望的観測かもしれませんが、そう思っておる次第であります。
  99. 門司亮

    門司委員長 以上をもちまして地方財政に関する参考人よりの説明聴取を終りたいと思います。  本日は、佐賀県並びに徳島県知事の御両人におきましては、県財政の実情について忌憚のない御意見及び御説明を承わりまして、地方財政に関する本委員会の調査の上に多大の参考になりましたことを、委員会を代表いたしましてこの際厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。  午前の会議はこの程度にいたしまして、午後三時まで休憩いたします。     午後二時七分休憩      ————◇—————     午後三時五十八分開議
  100. 門司亮

    門司委員長 それでは休憩前に引き続き会議を開きます。まず警察に関する件について調査を進めます。質疑通告がありますのでこれを許します。井手以誠君
  101. 井手以誠

    井手委員 私は佐賀県教職員組合に対する不当弾圧問題についてお尋ねをいたしますが、その前に法の適用にはその立法精神が一番大事だと考えておりまするので、自治庁にお伺いをいたしたいと思います。今日の地方公務員法は第九国会において成立を見ておりますが、そのときには、地方公務員から労働三法の特権を排除されたことについて多くの論議が行われておるのであります。行政部長もよく御存じであろうと考えます。当時の審議を今日会議録によって見ましても、争議行為の禁止ということと政治活動の問題については、当時この法案の審議で一番論議の対象になったのであります。私がここで繰り返して申し上げるまでもないと存じますが、その説明に当って、時の鈴木政府委員は次のようなことを申された。これは改進党の委員の質問に対して——三日改進党もこの争議行為の問題、政治的中立の問題などについては非常な関心を持たれて、地方公務員から労働三法の特権を排除することについて多くの意見が述べられておるのであります。そこで私はここに当時の鈴木政府委員の答弁を参考に申し上げておきますが、「労働関係法が排除されましても、不利益処分の審査あるいは勤務条件に関する措置の要求ということになりまして、人事委員会なり公平委員会におきまして十分職員の利益保護をはかり得る、こういふうに考えております。同時に一般的にこの懲戒とか分限等につきましての身分保障につきましても、法律なり条例によりましてそのような措置をとることができるように保障いたしまして、身分保障の全きを期しておるような次第であります。このように明確に答弁をなさっておる。すなわち労働者からいろいろな基本的権利をとったかわり、不当処分に対しましては人事委員会、公平委員会に提訴することができる。これが私は地方公務員と労働関係法との一番大事な点であろうと考えております。すなわち労働関係についていろいろな問題が起きた場合、あるいは処分を受けた場合には人事委員会あるいは公平委員会に提訴する、その審査によってきめられるというのが私は順序であろうと考えております。そうすることが、私は地方公務員から労働三法の特権を取り上げた代償であると信じております。また当局もそのように答弁をされておる。その点についての自治庁の御見解を承わりたいのであります。
  102. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 今お述べになりましたように、地方公務員につきましては国家公務員と同様に、その職責の特殊性と重大性にかんがみまして、また公務に従事をしておるという特質からいたしまして、若干の権利制限が行われておるのであります。その中の重要なものが政治的行為の制限と争議行為の禁止ということにあることにつきましてもお述べになりました通りでございます。また一面このような特殊性から、労働三法をそのままに適用をすることは適当ではないということから、労働組合一法並びに労働関係調整法は適用を排除していく、ただ労働基準法につきましては、これは国家公務員の立場とだいぶ違いまして、地方公務員の場合は地方公務員の本質に反しない限り原則的に適用をしても差しつかえがないのではないかということから、原則的な適用を認めるということにいたしておるのであります。他面このような制限がございまするけれども、地方公務員もやはりその職務を通じまして生活の資料を得るという労働に従事しておるという観点は、これは間違いのないことでございまして、その身分の保障というものは十分にやらなければならぬ、そういうような見地から、別に公務員の利益保護機関といたしまして人事委員会なり公平委員会が設定をされたといういきさつに相なっておると承知いたしております。
  103. 井手以誠

    井手委員 今お述べになりましたように、鈴木政府委員も、その末尾において、地方公務員にも適用するという形によりまして、労働三法が考えております利益の擁護というものは形は若干変って参りましたが、欠けることのないように立案をいたしておるのであります。こういうふうに答弁をなさっておるのであります。従って地方公務員法第三十七条の解釈に基いて処分されたことに対して、それは見解が違う、解釈が違うということで、不当処分に対しましては提訴ができる、その手続を今日佐賀県の教職員組合はいたしておるのであります。従ってこの解釈をめぐって人事委員会審査の結果が明らかにならない限り、佐賀県教職員組合のとった態度が当であるか、不当であるか、それは私判断できないと考えております。私はいろいろな文献なり会議録を読んで参りましたが、順序としてさようにいかなくてはならないと考えておりますが、重ねて自治庁の見解を承りたいと思います。
  104. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 不利益処分の申請が出ました場合に、それに対しまして人事委員会がどのような裁定を下すかということは、まだそれはおそらく審議中でございまして、結論が出る段階に至っておらないということは事実だろうと思います。そういう意味合いから三十七条に規定をいたしておりますいわゆる服務規律違反の事実が確定するかどうかということにつきましては、これはお話のように人事委員会の結論が出る段階においてはっきりするということは言い得ると思うのであります。ただそのことと、御承知のように任命権者がこれに該当するものとして判断をして措置するということとは、おのずから別問題でございますし、またこれは警察関係で、私からとかく申すべきことではありませんが、三十七条につきましては、地方公務員法の場合、前段につきましては実は国家公務員法と違いまして罰則がございません。単なる懲戒処分ということになっております。後段につきましては、これは罰則がかかっております。この認定をどうするかという警察権の問題、これはおのずから別問題ではないかと考えております。
  105. 井手以誠

    井手委員 行政部長の最後の答弁は別にいたしまして、人事委員会の装定と任命権者の判断とはまた別だ、これは私はわかります。しかしこの不利益処分を受けた者が、受けたままでは、先刻あなたがおっしゃったように、働く者の立場として権利が守られないということで、人事委員会に提訴ができることになっておる。いわゆる救済規定があるのであります。あなたがおっしゃるように、その人事委員会の裁定を見なくては白、黒がきまらない、その通りであります。従ってこの人事委員会の結論を待たなくては任命権者ではないほかから、とかくのことをすべきものではないと私は考えておる。それが緊急の事態であるとか、あるいは重大な社会不安を及ぼすものであるとか、こういうこととなら別でありますけれども、私は地方公務員に関する限りはこの人事委員会の裁定を待ち、その順序を踏むことが何よりも大事なことである、正しいことであると信じておりますが、重ねて行政部長の見解を承わりたいのであります。
  106. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 原則的にはそのように言い得ると思いますが、罰則規定がございます際に、これを発動するかどうかの認定ということは、これは別個の立場から考えられてしかるべきものではないか、かように考えております。
  107. 井手以誠

    井手委員 それでは多くは申し上げませんが、行政部長にもう一つ伺っておきますが、地方公務員の労働関係については、ただいままで私とあなたの間に行われました質疑応答、不利益処分に対しては人事委員会に提訴ができるし、これによって労働三法の特権を排除せられ救済の機関である人市委員会の裁定を待たなくては白黒が判断できないという、この地方公務員に対する労働関係の解釈は正しいと私は思っておりますが、いかがでございますか
  108. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 三十七条違反ということで任命権者が処分をいたしました場合に、この処分に対して、処分を受けた者から不利益処分の申請を人事委員会に出す、その場合におきましては、人事委員会の最後的な決定がございまして初めてその処分の確定性がはっきりするということは、その通りでございます。
  109. 井手以誠

    井手委員 重ねて伺いますが、地方公務員に関する問題については、地方自治を鞅掌なさっておる行政部長、自治庁としては、そういうところにいくことが——治安を乱すとか、あるいは社会不安を招くとかいう市大問題は別といたしまして、この三十七条の解釈をめぐる問題については、すべては人事委員会、あるいは公平委員会の裁定を待つということが好ましいとお考えでございますか、好ましいとお考えであれば、簡単でけっこうでございますからお答えを願いたいと思います。
  110. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 好ましいか好ましくないかという点につきましては、私としてもはっきり申し上げかねますが、要するに繰り返して申し上げておりまするように、服務規律の違反があって、これに基いて任命権者が処分をする、この処分に対して不服のある者が不利益処分の審査として人事委員会に申し立てをするという場合におき、欲しては、人事委員会の最後的な裁定、決定ということによりまして、その行政処分自体の最終的な効力というものがきまる、そういうふうに考えております。
  111. 井手以誠

    井手委員 一応それでよろしゅうございます。  そこで警察庁長官にお尋ねをいたしますが、ただいまお聞きの通り、佐賀県教組の執行部の者が不利益処分を受けたために人事委員会に提訴しておる審査の段階、その今日の段階において、相手が学校の先生であるものを、どうして十名も逮捕留置してお取り調べになっておるのか、その理由を承わりたいのであります。
  112. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 地方公務員が、行政処分を受けまして、これを不利益処分なりとして人事委員会に提訴することは、権利として認められていることは先ほど来質疑応答のあった通り、私も全く同様な意見を持っております。今回の佐賀県の場合に、行政処分を受けられた方々が人事委員会に提訴いたされておることも私ども承知をいたしております。しかし、その結果がどうなるかという、いわゆる行政庁の認定がどうなるかということと、刑事事件として警察が捜査に着手する問題とは、必ずしも関係はないと思うのであります。むろん行政庁の認定を捜査上の何らかの参考にするということは、ときと場合によってはあり得るかと思いますが、一応問題は別個のものであると思うのであります。刑事事件として取り扱うのが適当であると捜査当局において考えた場合に、これを取り扱うということはあり得ることなんであります。今回の佐賀県の場合は、まさに今申し上げましたような意味におきまして、佐賀県警察本部において事件として取り扱った次第でございます。
  113. 井手以誠

    井手委員 行政処分と刑市事件とは別個である、これはもちろん私どもも承知をいたしております。しかし第三十七条の解釈をめぐって、三十七条に親定してある争議行為の禁止の解釈をめぐって意見が対立しておる、その不利益処分に対して提訴をしておるという段階でありまするならば、これが全然審議もしてない、問題にもなってないということであれば話は別でありますが、その解釈をめぐる審査が行われておりまするときに、一方的に警察権を発動することは当を得ないと思う。もし重大な社会不安を起す、治安を乱すということでありますならば、一斉早退、一斉賜暇のそのときに行わるべきものであると思う。あるいはこれの順序を踏んで参りますならば、人事委員会が裁定を下したときに、あなたの方がいかにするかの判断を行うべきものであって、審査の途上において突如として生徒を教えなくちゃならない先生を逮捕するということは、私は軽率ではなにかと思いますが、いかがでございますか。
  114. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 お説のように人事委員会に提訴されておるのであるから、その結果がどうなるかということを待って、もしその後において刑事事件として取り扱うのが適当であるということになった場合に初めて取り扱ってはどうか、こういう御意見のように承わったのでございますが、そういう考え方も、確かに考え方として成り立つかと思うのでございます。今回の佐賀県の教員関係の方々によって、教職員組合によって行われました二月十四日から十六品にかけてのいわゆる休暇闘争というものは、従来に例がないものであると私どもは承知をいたしておるのでございます。こういうことが、地方公務員法の規定するところに果して許されるものであるかどうかという点を、現地の、象においては十分慎重に検討いたしたのでございます。その結論といたしまして、これは三十七条違反であり、従いまして地方公務員法六十一条の罰則を適用すべき事件である、こういう結論に到達をいたしたのでございまして、従いまして、はなはだ遺憾でございますが、一昨日関係者の出頭を求めまして取調べを開始をいたした、こういうことになっておるのであります。
  115. 井手以誠

    井手委員 私はそこに問題があると思う。あなたもお認めになったように、一方においては、地方公務員を守る立場から、労働三法を排除したかわりに設けられたところの人事委員会に提訴して審査中の者に対して、あなたの方は別個の立場でおやりになっておる。それはもちろん刑事事件としておやりになる場合もあるでしょう。しかし、もし人事委員会において、不利益処分を受けた佐教組の執行部の者の言い分が正しいという結果になったらどうなるのでありますか。私は先刻来申し上げておりますように、これは緊急な事態じゃございませんよ。ほんとうに重大な刑事事件と思われるならば、三・三・四の闘争をやったそのときに警察権を発動すべきである。してはならないけれども、そういう解釈であるならすべきである。一方において解釈をめぐる対立がある。それが、地方公務員法の精神に基いて、人事委員会審査中でありますならば、その結果を待つのが私は正しいことだと思う。あなたの方の、その一昨日逮捕しなくちゃならない緊急な事態とは、どういうものでありますか。
  116. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 一昨日、関係者の出頭を求めまして取調べを開始したのでございますが、先ほども申します通り、事件は二月十四日ないし十六日の事柄でございます。それ以来二ヵ月以上の時間をかけて、この問題の取扱いについては、現地の佐賀県警察本部においては慎重に検討をいたしたのでございまして、決して緊急に、軽々にこの問題を取り上げたわけではないのであります。
  117. 北山愛郎

    北山委員 関連。警察庁長官は、地公法第三十七条違反、これの違法の疑いがある、犯罪の疑いがあるというのでああいう捜査をしたんだと言われる、私は一応正しいようにも思うのでございます。しかし、違法の疑いがあれはいつでも逮捕したり強制捜査したりするものか。そういうことになれば、あっちこっちに刑事関係の違反事件が相当あるわけですから、違法の疑いというのはごろごろころがっているわけです。そういう場合に、違法の疑いがあると認めればいつでも、ああいうふうに逮捕したり強制捜査をするのか。何か基準があるのじゃないかと思うのです。何か自動的に、違法の疑いがあれば常に逮捕したりするのか、その辺を一つはっきりしてもらいたいと思うのです。
  118. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 違法の疑いがあり、ある程度証拠がございまして、これを検挙するのが相当であると考えました場合に捜査に着手するわけでございます。その捜査のいたし方といたしましては、必ずしも強制捜査が最上であるとは考えておりません。むしろ任意捜査でやるのが望ましいというふうに私は考えておるのでございます。関係者の任意出頭を求めて取調べを進めまして、それによって捜査目的が達成されるならば、これが最も望ましいのでございまして、人権尊重という見地に立ちまして考えた場合に、捜査というものは常にそうした慎重な配慮のもとになさるべきものであると思うのでありまして、私ども日ごろ第一線の者に対しましては、捜査のあり方としましては、あくまで基本的人権の保障ということを基本理念とし、その上に立って科学的合理的な捜査を進めて真実の発見に努める、こういう捜査でありたいということをかねがねお願いし、またそういうために必要な指導教養を加えておるつもりでございます。従いまして、違法の疑いがあるからといって、すべて強制捜査をする、身柄を逮捕して捜査することを原則にするということは、私は考えておらないのでございます。
  119. 北山愛郎

    北山委員 私非常に疑問に思うのですがね。犯罪の疑いがあって警察が捜査に着手するという場合においても、やはり社会的ないろんな条件であるとか、そういうものを考慮するのじゃないかと私は思うのですよ。また実際そういうふうにやってきたのじゃないか。お話のように、常に客観的にそういう条件があれば、任意なりあるいは強制的に捜査をするんだということでは、どうも納得がいかない。たとえば菅生事件のような場合に、あの戸高という人がダイナマイトを持ち運んでおるのですね、これはやはり爆発物取締規則ですか、それに違反する疑いがあるのではないか。あるいはまた脅迫文を書いているんですね。自分は投げ込まぬにしても、共謀してやっておるわけです。これは明らかに犯罪の疑いがある。なぜ検挙しないのです。なぜ捜査しないのですか。違法の疑いがあるんじゃないですか。だからある場合には捜査もしない、ある場合には強制的な捜査もするということであって、どうも私はそこに何か基準があるんじゃないかと思うのです。どういう場合には捜査をしたり、どういう場合には捜査をしなかったりするのか、何が何でも、すべての違法事件について全部やるんだということでは、あまりに不見識なお答えだと思う。そういう場合に、警察当局としていろいろ考慮する点があると思うんだが、そこの辺を一つ率直にお話し願いたい。ああいう菅生事件のような違法の疑いがある場合に、なぜ捜査しないのです。公務だから捜査しないんですか。
  120. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 犯罪の容疑が濃厚な場合に捜査をいたしておるわけでございまして、単に一片のうわさ程度で直ちに強権を発動するといったようなことは、これは慎しまなければならないのではないかと思うのでありまして、いわゆる内偵捜査と申しますか、いろいろ証拠資料の収集にひそかに努めるということはいたしますけれどもその結果につきまして容疑濃厚と見た場合に、本格的捜査に入るということに相なるわけであります。菅生事件の場合の例をお取り上げになりましたが、これはまた別の機会にいろいろお尋ねもあろうかと思いますので、今日は省略さしていただきたいと思います。
  121. 北山愛郎

    北山委員 別な機会というわけにいかぬのです。みんな関連があるんだから……。何でも違法の疑いがあればやるんだというような一般的なお答えもなさっておる。しかしながら、今の菅生事件の戸高という人も、すでに公判廷において証言しておるじゃないですか。爆発物を運んだということは明らかなんです。本人が言っている。脅迫文を書いたことも言っておる。だから、これは明らかに相当な証拠があるじゃないですか。なぜ検挙しないんです。そういうことはやらないでおいて、そういう一般的に、違法の疑いがあれば捜査をするというのでは、ほんとうのお答えになっておらぬですよ。関連があるから私はお伺いする。問題が個々別々だというならば、個々別々の事情に従って、ある場合には捜査をしたり、ある場合には捜査をしなかったりすることがあるということを、あなたが自分でお答えになっておるのと同じことなんです。だから私は、なぜ一体佐賀県の場合には捜査をし、しかも強制的に学校等について大々的な捜査をして、逮捕をして、そうして菅生事件のような場合には、犯罪の疑いがあっても捜査をしないのか。個々の場合において違うというんなら、その違う理由をはっきりしてもらいたい。そうでなければ納得ができないのです。
  122. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 佐賀県の今回の事件につきましては、先ほどもちょっと申しました通り、従来からの前例に比較いたしまして、異例のことであると思うわけであります。従来も、教職員組合の方々がいろいろな機会にいろいろの運動をされたことはありますが、おおむね成規の休暇の手続をとられて、大会その他に御参加をされる、あるいは一斉早退の戦術をおとりになる場合も、これまたやはり所定の手続をとられておやりになっているように承知をいたしておるのでございますが、今回の場合はその点が全く例のないやり方であるというふうに私どもは現地からの報告に接しておるのでございます。教職員の組合の方々が法に許された範囲において、いろいろ勤務条件の措置要求等について運動されること、これは当然のことであります。合法的な範囲においておやりになることは、われわれ警察立場では、これに関与しようという意思は毛頭ありません。中正な立場を堅持すべきものと思っております。従来もまたそうであったと思うのでありますが、目的がいかに正しいからといって、手段はいかなる手段でもよろしいというわけのものでないことは申すまでもないことでありまして、どこまでも合法のワク内において、合法な手段によって運動をしていただきたいというのがわれわれの念願でございます。今回の佐賀県の場合は不幸にしてそれが合法のワク内を逸脱している。ワク外に出ているというふうに判断せざるを得ないという結果になりまして、その関係者の取調べを開始したという結果に相なった次第であります。
  123. 北山愛郎

    北山委員 佐賀県のあの場合には非常に異例だったというのですが、あの行動が異例だったという前に、佐賀県の県当局なりあるいは教育委員会当局の措置そのものもまた異例であった。また佐賀県の置かれておるそういうことが出てきた財政事情というものも異例だったのですね。午前中の委員会において佐賀県の知事はそのことを訴えている。佐賀県は地方財政再建促進法の再建団体になっておるし、そのワクの中でやむを得ずあの大量の公務員の首切りをやっているのです。いいことだとは思っておらぬのです。また佐賀県の県民全体が挙県一致して再建計画のワクを打破しよう、再建計画を変更してもらおう、こういうふうに挙県一致の運動をやろうとしておる。この問題の根本に、そういう県の財政事情あるいはまたそれから出てきた大量の首切り、こういう問題があるのですから、佐賀県のそういう異例の措置から起ってくる異例の事態なんです。普遍の状態における普通の行動じゃないのですよ。だから私は警察当局としても、そういうものを高いところから考えて行動すべきじゃないかと思うのです。単に地方公務員法の六十一条四号のそこに罰則があるんだ、それに触れておるらしい、そうして逮捕するというだけでは私どもは納得ができないし、そういう警察であっては困ると思う。違法の疑いがあれば何でもそういう捜査をするというのなら、たとえば例の砂川事件の問題のときに、当時の新聞紙はあれほど警察を誹謗したのですよ。めちゃくちゃに、警察を暴徒のように言ったじゃないですか。なぜそういうふうな誤まった新聞の報道に対してこれを訴えないのですか。もしも新聞の方に誤まりがあるとするならば、あれは犯罪なんです。なぜ警察は黙っておるのです。誣告罪じゃないですか。そういうことはやらぬでおいて、そうして違法の疑いがあるからやるのであるということでは私は納得ができないので、やはりその間の事情は賢明なる石井長官はよく御存じであると思う。だから場合々々によって、その場合における政治的あるいは社会的な緒条件というものを考えた上で警察権を発動するということで、初めて警察の偉さがあるのです。だから私はこの佐賀県の場合にやはりああいう手段に出なければならなかったような事情はよくわからぬ。今お話があったように、やはりそういう背後にある大きな政治的な理由、県の財政問題なりそういうものを無視して、単に違法事態があるからといって行動したように思えて、行き過ぎがあったように思えていけない。その点について長官として率直にお答えが願いたいのです。ただ法律に違反したのだから、これは当りまえたというような答えでは、私は警察のために惜しむのです。いかがですか。
  124. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 佐賀県が県の財政が非常に苦しい御事情にあり、そのために教職員の方々、たしか二百五十九名ですか、定員を削減せざるを得ないというような状況に立ち至り、これは教職員にとってはきわめて重大な問題であるがために、この問題を何とか有利に解決すべくあらゆる手段方法を講じようという態度に出られたことはまことにごもっともであり、私は十分わかるのであります。しかしながらそれは先ほども申し上げた通り、あくまで合法の手段によってお願いしたいのであります。切実なる問題であり、その問題解決のためには手段を選ばないということは、法治国においては許されないことで、どこまでも合法的な手段であらゆる工夫をこらし、運動をされ、努力をされるというふうにあってほしいと思うのであります。ところが今回の佐賀県の事例の場合は、その点において遺憾な結果でございますが、合法のワクを逸脱されたいわゆる争議行為をなされたということに相なりまして、地方公務員法第三十七条の違反であり、同六十一条の罰則適用ということで警察の事件として取り上げなければならぬという結果になったのでありまして、何か背後に政治的な、圧力でもあって、特に警察がそういうふうに強い態度に出たのではないかというふうな意味のお尋ねがあったかと思いますが、そういうことは全くないのであります。警察は御承知の通り政治から中立でございます。厳正公平な態度を常にとっておるのでありまして、政府からあるいは与党からの圧力によって警察が今回の佐賀の問題を事件として取り上げたというようなことは絶対にないことを申し上げたいのであります。
  125. 井手以誠

    井手委員 背後の圧力があったとかなかったとか、そういうことは別にいたしましても、こういう問題に警察権を発動するために、私どもは警察法を作ったのではないのであります。私どもは警察法の審議のときにおりました。そこで今北山委員から指摘されました点について私は若干触れておきたいと思いますが、佐賀県の教育界はさきに四百八名という大量の首切りが行われました。続いて赤字再建のために二百五十九名の首切りが行われようとしておる、これは教育界にとっても、教育に携わる教職員としても、重大な問題であろうと思う。そのための教育の低下というものはおそれなければなりません。それを佐賀県民あげて今心配いたしておるのであります。首切られるということは路頭に迷うことである。しかも二百五十九名が四百八名に加えて首を切られる。その上に教育の低下を来たすというやり方に対して、教職員の方々が何とかしてこれを守ろうというその心情は、警察庁長官はお考えになったことがありますか、犯罪をやろうとかどうしようとかいう問題ではなくして、何とかこれを食いとめよう。かわいい子供を何とかしてある程度の教員の数で教育していこう。そうして首切りも何とか最小限度にとどめたいという熱情から、そういう運動を行なったというその態度については御理解いただけませんか。
  126. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 先ほども北山委員にお答えしました通り、その点は私も十分にわかるのでありまして、教職員の方々にとって大問題であり、これを何とか有利に解決しようという切実なる気持から、あらゆる方策を講じて問題を有利に解決しようとされる御努力、これも十分わかるのでございます。しかし目的がそういように百出しいことであるからといって、手段はいかなる手段も許されるというものではないということを、先ほど来繰り返してお答え申し上げておるのであります。どこまでもその正しい目的を速成するために合法的な手段でお願いをしたい。それが合法的な手段であるときにおいては、警察は何らこれに関与、介入するものではないということを私は繰り返し申し上げておるのでございます。
  127. 井手以誠

    井手委員 その首切り反対の運動が、たまたま第三十七条に抵触するかどうかという問題にかかってきたのであります。そのかかるかどうかという、あなたのおっしゃいました真実の発見については、現に人事委員会審査が行われておるのであります。もし人事委員会の裁定が、その処分を受けた者の主張が正しいということで、撤回されることになりますると、あなた方の真実を発見しようとする態度が間違ったことになるのであります。最初から刑事事件として起った問題ではないのです。もしあなたの方が、これは重大な問題だ、刑事事件だと思うならば、私どもは絶対にさようでないと思いますけれども、この二月十四日から三日間にわたる一斉賜暇の問題について、私は当時あなた方の意思表示があったことだと思う。もし人事委員会における裁定で、不利益処分を受けた者の提訴が認められた場合。教育委員会の処分が不当と出た場合にはどういうことになりますか、それをお伺いしたいと思います。
  128. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 行政処分と刑事処分とは全然別の問題であることは、先ほどもお答えいたした通りでございます。人事委員会に目下提訴されているその結果がどうなるか、これは私ども何とも申し上げることはできません。またかれこれ言うべき筋合いのものでもないと思います。人事委員会の認定が最終的にどうなるかということを見きわめてから、刑事事件として取調べをするのが適当じゃないかという、適当不適当の問題ということになりますれば、これは人によりましていろいろと見解の相違もあろうと思いますが、現在佐賀県警察が刑事事件として着手いたしておりますことは、少くとも適法であることは間違いはないのであります。それが適当であるか不適当であるかということになりますれば、これはまたいろいろ御議論があろうかと思うのであります。佐賀県警察といたしましては事の重大性にかんがみまして、慎重に、相当時間をかけてその結論に到達したことは先ほど申しました通りであります。二月十四日ないし十六日の事件を三ヵ月以上も経過しました今日初めて事件として着手した、検挙したということは、その間にいろいろいわゆる内偵捜査をいたしまして、ある程度の証拠資料も収集し、また法律の解釈等につきましても十分な検討を加えた結果、最後の結論に到達したものであろうと思うのであります。
  129. 井手以誠

    井手委員 三十七条の解釈をめぐってその裁定が行われようとする今日、警察が出るべきものじゃございません。それでは少し方面を変えてお尋ねをいたしますが、山口警備部長は昨日文牧委員会におきまして、佐賀県教組が反省の色を示さなかった、その後も非合法の手段に出ようとした、だからこういったことになったという御答弁があったようであります。それではどのように反省の色がなかったのか、その点を伺いたい。
  130. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 昨日の文教委員会で、非合法の措置し出ようとしたというようなことは申したかどうかちょっと私もただいまはっきりわかりませんが、そうは申していないと思います。ただ、処分が行われました後におきましても佐賀県教組は、二月十四日ないし十六日にわたって行われました事柄に対して、これはあくまでも正当な、合法的な行為であるという見地に立たれまして、県の教育委員会あるいは教育長、知事その他の方面に対しましていろいろと集団的に行動をしておられるのであります。私の申し上げましたのは、そういう趣旨のことを申し上げたのであります。非合法の行動に出ようとしたというようなことは申し上げておらなかったと思うのであります。
  131. 井手以誠

    井手委員 三十七条の解釈をめぐっての争いの場合には、それは自分のやったことは正しいとしてその主張を公けにするということは、私は当然だと思う。何も今回の逮捕の問題とは関係がないと思います。あなたの昨日の答弁を総合してみますると、ああいう事件を起して私どもは事件とは思っておりませんがあなたの方では、ああいう事件を起しておきながら、なお佐賀県の教組は反省の色を示さなかった、そのためにこういう事態になったという御答弁でありました。ただいまは長官から、今日まで二ヵ月余にわたって慎重に検討した結果、二月十四日ないし十六日までの行為は犯罪の容疑ありということで、慎重判断の結果、逮捕したのだとおっしゃいました。長官と警備部長のお答えが違っておる。おそらく昨日文教委員会でお聞きになった人は、その後反省の色がなかったからやったんだという政治的な発言があったことはみな承知いたしております。だからあのときがやがや騒いだでしょう。長官にお尋ねいたしますが、その後佐賀県教職員組合がやった行いについて、あなたの真実を発見なさろうとする今回の逮捕とは全然関係がないと私は思いますが、いかがでございますか。
  132. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 ただいま佐賀県警察が取り調べをいたしておりますのは、二月十四日から十六日における佐賀県教職員組合の方々がとられた処置についてでありまして、その後の行動についてこれを犯罪の容疑ありとして取り調べておるものではありません。
  133. 井手以誠

    井手委員 それではなぜ昨日はああいうような発言をなさったのですか。警備部長は、教組に反省の色が云々ということはどうして発言なさいましたか。
  134. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 私の申し上げたのは、佐賀県警警察としてはその後慎重に事態の推移を注視して参っておりました、そうして慎重な内偵を進めて今回検挙に着手いたしたのでありますということを申し上げました。それにつけ加えまして、まあ一般的に刑事事件を取り扱います際には、やはりいろいろな事情を考慮する必要がある場合がございますということをお答え申し上げました。
  135. 川村継義

    川村(継)委員 今の井手委員の質問に関連して一つ尋ねしたいと思います。  先ほどからお聞きしておりますと、佐賀県教組のとった問題について教育委員会が打った行政処分と、刑事問題としてとられたこのことは関係がない、こういうような答弁であります。なお長官の言葉にたびたび出て参りまする、警察としては一昨日逮捕に至るまでは慎重に審議をして、そうして行動を起したのだ、こういう言葉でありますが、長官にこの点についてもう少し具体的に表明願いたい。と申し上げますのは、佐賀県の教職員の諸君は、結局人員整理あるいは俸給の切り下げと申しますか、そういう点に関して県会が開かれる前に、自分たちの正しい要求をぜひ実現させたいという行動に出た、それだけでありまして、やったことあるいは県教組の執行部等が教職員組合の決議機関等によって決定されましたことを執行に移して集会を持ったというようなことは、これは何もそこに隠されたものは私はないと思うのです。やられたことははっきりしていると思うのです。それを、二月十四、十五、十六という日にそれが行われたそうでありますが、そのはっきりした、明白なる行動について、二ヵ月半もたってから逮捕するに至ったという、その時間的な問題、これについて長官は慎重に審議をしたというのですが、一体どういう点を、どういう問題点について審議したのか、どういう点について慎重に考察を下したのか。三十七条の解釈がそんなにひま要ったのか、この点を一つもう一回長官からお聞きしたいと思う。
  136. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 二月十四、十五、十六の三日間にわたりまして、いわゆる休暇闘争がなされたのでございますが、第一日に三割、第二日三割、第三日四割の者が休暇をとってこの大会に参加するようにという指令が県教組の執行市の方から出されて、おおむねそれに近い数字の方々が休暇を申請されました。しかしその大部分の方が許可を得られなかったまま大会に参加をせられたのでございます。この点が問題なのでありまして、有給休暇を要求することができることは、当然の権判として認められております。ただそれは正常な業務の運営に支障がある場合には、有給休暇の要求があっても他の期日にこれを与えることができるという規定のあることも御承知の通りでございます。今回の場合三割、三割、四割という、大量の先生方が休暇を一せいにとられるということは、学校授業の正常なる運営を阻害するものなりという判断のもとに、県教委なり地紋委なりあるいは校長さん方は、そうした休暇をとられることは困るということで承認を与えられなかったのでありまして、にもかかわらず承認なくして大会に、今申し上げましたような大量の方々が参加をされたということは、三十七条違反になる容疑が多分にある、こういうことになるのでございまして、それではもうそのときにすぐそんなことはわかりそうなもんだというふうにおっしゃるかもしれませんが、果してそういう指令が出て、そうしてどれだけの人々が成規の手続をとって休まれたか、そして大会に参加されたが、あるいはそうでなかったか、こういう点を十分に検討をいたしませんと、軽々に結論を出すわけには参らない。そういうことでおのずから相当に時間を要することになったのであります。と同時に、先ほど来申しますように、地方公務員法三十七条違反として事件を警察が取り上げたのは今までに例がないことでありますので、佐賀県警察といたしましては法の解釈等において、もし決まりがあってはならないということからいたしまして、そういう点についての検討にも十分に時間をかけ、現地佐賀県警察あるいは佐賀の地方検察庁等との連絡協議だけでなしに、中央の私どもの方にもいろいろ照合してくるというようなことで相当に時間を要したのでございます。
  137. 川村継義

    川村(継)委員 長官のせっかくのお答えでありますが、私は長官の今の言葉では納得されないのです。これがよく出てくるところのやみドルの使用であるとか、ああいう汚職に関係のあるような問題をあなたたちが調べるならば、これは二ヵ月あるいは三ヵ月、いろいろ必要もあるかもしれない。しかし今までの例からいたしましても、こういうようなやった行動は明白なのであって、私は、二ヵ月半もかかって慎重にやったとこうおっしゃるのですが、その点ではそのまま納得いかないのです。やはりこれはどうも今長官が頭の中で考えてお答えになっておるように思われてしょうがない。学校の職員が有給休暇をもらうのについて、これを調べるというようなことで二ヵ月半も要するとはあなたの指揮されておる警察では、これはそんな手間はかからぬと思う。これはどうも私先ほどからあなたの答弁と山口警備部長の話を聞いておりますと、そこにある点疑惑がわいてきた。二月に三日間こういう行動が行われた。それから四月に入ってから教育委員会——これは四月のごく初めでございましょう。教育委員会が行政処分をした。ところが四月の二十四日になってあなたの庁で逮捕状を出した。これだけを考えてみても、どうも純粋に三十七条違反だとあなたたちが認定をして、これは確かに逮捕しなければならぬ、そういう目的でやられたのではないんじゃないか。何かしらやらねばならぬような格好でやらざるを得なくなって手をつけられたのではないか、こういう感じがしてしようがありません。その点は一体どうなのか。さっき山口警備部長は、教員組合に反省の実がないのでこうせざるを得なかったというようなことも言っており、昨日の文教委員会においてもはっきりそのことを答弁なさっておる。この点を考えますと、長官のおっしゃっておることは間違いであって、山口さんが漏らしておるその言葉が逮捕に至る真実じゃないかと思うのです。つまり初め警察はこの事件を刑事事件として逮捕にまでもっていこうとは考えていなかったのではないか。ところが四月に入ってから諸情勢が警察をしてかくまで手を打たなければならないようにさせたのではないか。その諸情勢とは一体何だ、ここに私は問題があると思う。そういう点を山口さんが教組に反省の実がなかったから云々という言葉で漏らしておられると思うのです。一体反省の実がなかったということは、さっき井手委員の質問に対しては、いろいろ県会方面、委員会方面、知事方面に集団的に、おれたちのやったことは正常だというのでいろいろ陳情しておる、こうおっしゃったのであります。そういうことが反省の色がない、こうおっしゃると、私はもってのほかだと思う。おれたちは三十七条違反でない、こう信じて、だから処分をされたのはどうも意に食わない、不当だ、こう言って、それを取り消そうとまで運動しているわけでしょう。その運動しておるのをつかまえて、反省がないから逮捕するとは何事ですか。反省がないからといって、そういう者を逮捕するとはもってのほかだと思う。これは行き過ぎだと思う。じゃ一体、そういうことを行政処分で受けられたら、黙って謹慎をして悪うございましたと言っておくのがいいことか、それなら逮捕しなかったか、こういうことにもなるのです。私はその点について、やはり山口さんが言っておるのが、ほんとうにあなたたちが逮捕に持っていったところの事実を告白していることだと思うし、長官がおっしゃっていることは、長官として言わざるを得ない立場でお答えになっているのではないかと思うのです。山口さん、その点について、もう少しあなたがさっきおっしゃったような点を一体的にお聞かせを願いたいと思うのです。
  138. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 どういう点でございましょうか、具体的にお示し下さい。
  139. 川村継義

    川村(継)委員 反省の色がない。とにかくその後の行動が意に食わない。それについてどういうことがあった、これこれのことがあったということを、あなたが知っておる通りをおっしゃっていただきたい。
  140. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 行政処分が行われました後に、佐賀の現地におきましていろいろの問題が起っておることは御承知のことと思います。先ほど言いましたように、人事委員会に提訴するとか、その他いろいろの法律上認められております手続によって異議の申し立てをされる、これは当然の措置であろうと思うのであります。ただあくまでも三十七条違反でないという見地から、集団的な行動をもっていろいろのことをされるというようなことを先ほど申し上げたのであります。ただ私は先ほども申し上げましたように、一つの刑事事件を措置する際には、その事件の起りました事情、いきさつなり、あるいはその後におけるいろいろの事情というものをしんしゃく、考えまして、慎重に措置をとるということは、われわれとしてやはり当然に考えていくべき事柄であろう、さように考えております。  なおつけ加えますが、先ほどから有給休暇をとって大会に参加したことは歴然たる事実であるというようにおっしゃったのでありますが、今回われわれが問題にして事件として検挙いたしましたのは、そういう有給休暇を、組合の方々から申せばとって大会に参加されたという点ではないのであります。そういうような行為を共謀したり、あおったり、そそのかしたりしたものについて、罰則がついておるわけであります。そういう共謀したり、そそのかしたりあるいはあおったりというような容疑事実があるかどうかという点について、内偵を進めておったわけであります。従ってこれには相当の時間、相当の内偵を必要としたことは御承和を願えるものと思います。
  141. 川村継義

    川村(継)委員 山口さん、今あなたの言葉の中に、行政処分があって、その後三十七条の違反じゃないというようなことで、いろいろ集会を催してやっておる。おれたちがとった態度は三十七条違反じゃない、だからして行政処分に値しない、それは不当である、だから撤回してくれというようなことで大会を開いたりなどする、そういうことで、あるいは情状酌量で逮捕しなくてもよかったかもしれないが、そういうことをやるから逮捕したということに、あなたの答弁を聞いておるとなる。これは非常におかしなことじゃないかと思うのです。自分たちがやったことの正当性を認めてもらおうと思って、最後はどうなるかわかりませんけれども、正当性を認めてもらおうと思って会合を開いた、あるいはどれだけの大会があったか知りませんが、大会を開いて、これを大衆に訴えたりすることは何も不当じゃない。それを逮捕に持っていった一つ理由として考えておられるということについては、これは納得がいかない。そうでございましょう。それをあんなことをやらなかったならば、あるいは情状酌量ということもあって逮捕しなくて済んだかもしれない、しかしそういうことをやったから逮捕したということになりますと、私が当初申し上げた疑惑というものはますます濃くならざるを得ないのです。結局佐賀県警察としては、初めはそういうことを刑事罰としてやろうとは考えていなかったのだけれども、ついにあなたがおっしゃたように、その情勢によって外部の力でやらざるを得なくなった、こういうことになってしまう。どうでしょうか。私はその点で逮捕になんて持っていかれたことについては、警察行政を預かっておられるあなたとしては大きな失態じゃないか、大きな問題だと思う。またあとでお答えになりました、いわゆる教唆、扇動したという雇いでおれたちはやったのだ、こうなりますと、さっき、長官が休暇をとった諸君が三割、三側、四割というような形でとったので、それらを調べるために非常に時間がかかったとおっしやる。一体教唆、扇動したというのは、大会を実際の実行に移したところの執行部の者でありましょう。その執行部のやったことは、組合員の総意に基く、大会決定に基いて、組合執行部は移しておる。そういうことをお調べなさるのに何も二ヵ月半もかかるということはあり得ない、もっと短時日でいいはずでしょう。そうお思いになりませんか。どうもこの問題はあなた方の御答弁を聞いておりますと、単純な、ほんとうにあなた方が逮捕に価するものだ、こう考えてやられたものじゃないという疑惑がわれわれは濃くなってくるのでありまして、警備部長の答えたように、教唆、扇動した執行部の、何人か知りませんが、五人か六人の者を、教唆したのか、あおったのか、そんなものを調べるのに一体どういうことを調べられたのですか。二ヵ月半もどういうことの必要があったのですか、あわせて御答弁願いたい。
  142. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、今回の佐賀県の一昨日の検挙事案は、決して警察部外からの何らかの圧力と申しますか、そういったことによったものではないということは、ここではっきりと重ねてお答えをいたしておきます。それでは何がゆえにそんなに時間がかかったか、警察独自の判断でやるならば、もっと早い機会にやれたんじゃないか、二ヵ月余もたった今日初めてそういう措置に出たということは、何か外部からの圧力でもあったのではないかというふうな御意見でございます。たびたび申し上げします通り、警察は決して外部の圧力によってこの問題をこういうふうに措置いたしたものではないのでございます。  なお先ほど警備部長がいろいろその後の検挙の方々の動向と申しますか、いろいろな活動について事実をありのままに申し上げたのでありまして、これが今回の検挙をするかしないかに影響しているというようなことはないのでございます。その点は私先ほど申し上げた通りでございます。
  143. 加賀田進

    ○加賀田委員 ちょっと関連して。山口さんにお尋ねしたいのですが、さいぜん答弁の中で、今刑事事件として捜査しているのは、そういう地公法の三十七条の疑いに基いて、教唆扇動しておる、そういう疑いを中心として調査しておるのだ。しかもそのことが三十七条違反であり、六十一条に抵触する、こういう説が私はあったと思うのですが、しかし私はそういう教唆扇動のみを対象として調査されて、しかもそのことが法律違反だという考え方は、法律的には間違っておると思うのです。というのは、休暇をとって大会を開いたそのことが怠業であるという、それがいわゆる三十七条違反で、しかもそれに付随して教唆扇動も同時に調査するという形であれば、法律的に私は解釈が明白だと思うのですが、その主体が法律違反でないにもかかわらず、その主体を教唆扇動した者だけを、法律違反として調査しているのだということでは、私は法律解釈としては成り立たないと思うのです。大会そのものが三十七条違反という疑いがあって、それがもし法律違反でないとするなら、法律違反でない者を教唆扇動したところで法律違反でないと思うのですが、その点どうですか。
  144. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 この点は、行政処分といわゆる罰則、刑事事件というものは別にお考えを願いたいと思うのです。三十七条は第一項の前段はそういう「同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。」と書いてある。後段で「又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」と二つ書いてある。この二つに対して行政処分としましては、前段の方が問題になってくるわけです。それから刑事罰としましては、第六十一条の四号にありますように「何人たるを商わず、第三十七条第一項前段に帆走する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」、すなわち罰則の方は教唆扇動した者についてだけ帆走があるのです。それで行政処分の方は、そういう許可なくして有給休暇をとったというような場合に適用がある。(「関連がある」と呼ぶ者あり)関連があります。従ってわれわれの主として刑事上の捜査上の対象になっておりますものは、教唆扇動というような行為をした者について、現在取調べをしておりますが、もちろんそれに関連をいたしまして、教育委員会あるいは校長さんの許可なくして有給休暇をどういうように、またどのくらいの方々が、どういう状況のもとにあえておとりになったかということも、もちろん調べております。しかし事件として立件いたしますのは、教唆、扇動の方に関係しておられる方々だけで、従って今回の佐賀県教組の問題で、ただいま検挙いたしておりますのは、佐賀県教組の中央委員の方々、あるいは書記局員の方々だけであります。
  145. 加賀田進

    ○加賀田委員 刑事事件として取調べの対象は、私は教唆扇動だと思うのです。しかし教唆扇動する主体が、行政処分を受けることが正しいかどうかということが、まず調査の中心にならなくてはならぬと思います。そこから付随してその問題を、事件を教唆扇動したかどうかということが調査されてくるのであって、行政処分もする必要はない、三十七条も違反でないというような、もし事件であるとするならこのことは教唆扇動しても、刑事事件とはならないと思うのです。これは不可分の問題であって、当面警察としての調査の中心的な問題は、教唆扇動であろうとも、この三つの問題は不可分の状態で、同町に調査を継続しなければ、刑事事件として成り立たないと思うのですが、その点はどうですか。
  146. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 先ほど申し上げましたように、事件として立件送致するという場合を考えてみますと、教唆扇動をしたことに主体を置いていくわけでありますが、その教唆扇動をした事実がどういうものであるかということは、もちろんわれわれとしても調査をいたしましてお送りするわけであります。従ってこの両方を調べるために相当長期の内偵を必要とした、こういうことを申し上げておるわけであります。
  147. 北山愛郎

    北山委員 関連。休暇をとったことが違法だということは、一体どこできめるかということです。警察権が発動したのは六十一条の第四号でしょう。そこにははっきりと「規定する違法な行為の遂行を共謀し、」と書いてある。進法ということがはっきりしていなければだめなんです。ところが違法ということは警察ではきめられないでしょう。別のところできめるのじゃないですか。その違法であるか、違法でないかということが明らかにならぬうちに、教唆扇動だけを調べるということは、おかしいじゃないかということです。その前の休暇の行動というものが、違法であるか、違法でないかということを警察で調べる権限がないでしょう。これはほかの機関で調べるよりほかない、その決定を待って違法なりときまった場合に、初めてこれに付随してそれ以外の教唆扇動も問題になるのであって、六十一条四号にひっかかるか、ひっかからないかという問題が出てくるのであって、ここに明らかに「違法な行為」と書いてある。違法ということがはっきりしなければだめなんです。あわせて関連するから、あわせてそっちの方も調べるのだということをいっても、だめです。「違法な行為」とはっきり書いてある。しかも警察には、これが違法であるか違法でないかということを調べる権限はないのです。だから、ほかの機関でその休暇の行動というものは違法で、あるということがはっきりした上で、初めてこの六十一条第四号に従って警察権の発動ができるのであって、これは明らかに「違法な行為」と書いてある。どうなんですか。
  148. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 これは罰則の規定でございます。従って違法な行為であったかどうかを最終的に判断をいたしますのは、申すまでもなく裁判所でございます。ただ事件としてこれを検挙するかどうかというような場合には、もちろん警察だけが独断をもって取り扱うよりも、慎重にいろいろと各方面とも協議をいたしてあります。その場合には検察庁とも相談をいたすこともございましょう。あるいはまた法制局の法律上の解釈をお伺いすることもございます。ただ人事委員会との関係は、たとえば人事委員会の処分を待って云々する、何々委員会の処分を待って云々するというような規定は、ほかの物合にはございますが、この場合にはないと私は思うのであります。従いましてこの罰則を運用いたしまして事件として検挙するかどうかの際に、人事委員会の最終的な御決定を待たなければいけないという解釈は出てこないものと私どもは考えております。
  149. 北山愛郎

    北山委員 これは「違法な行為」とはっきり書いておるのであって、違法だということが明らかになっている段階において、それに関連して、その他の教唆扇動ということも違法の疑いが出てくるのである。従ってやはり人事委員会という段階があるのですから、それが行動しておる隣りは、一応その行動を待った上でやるのが警察としては当然じゃないでしょうか。先ほどの説明であれば、刑事事件の方は別な教唆扇動の方だけだから切り離してやるのだ、行政処分の方は別なんだといったようなお話でしたが、やはり大きな関連があるのじゃないですか。公務員法の解釈の問題でありますから、これは自治庁の側から一体この六十一条の第四号「第三十七条第一項前段に規定する違法な行為」とはっきり書いてある、その行為が違法であるかどうかということを規定して、初めてそれに付随した教唆扇動というものが違法の疑いが出てくる、そういうふうな解釈が正しいと思うのだが、自治庁としては一体どうなのですか。
  150. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 その点は先刻井手委員の御質問に対してもお答えを申し上げましたように、あくまで服務規律といたしましての一十七条違反であるかどうかということにつきましては、これは行政処分が行われました際に、これに不服ありとして処分を受けたものが人事委員会に提訴をいたしました際には、人事委員会の最後的な裁定があって、行政処分、いわゆる懲戒処分が行われた場合は、懲戒処分としての効力が決定をするということになるわけでございます。しかしながらこの点と、いわゆる罰則の適用とは、これは繰り返し申しましたように別問題でございます。従って六十一条の規定の適用があるかどうかということは、今警備部長からもお話がございましたように、最終的には裁判所が決定すべきものであると考えております。
  151. 北山愛郎

    北山委員 しかしこの違法性については、やはり人事委員会等の一つ審査機関があるのですから、少くともそれを経由していくのが当然じゃないのですか。そうでなければ、一方では裁判所、一方では人事委員会、そういうことで、労働関係というものを人事委員会という審査機関でやるという趣旨が没却されるし、またその行動を分離して教唆扇動の方だけを刑事問題として扱うという趣旨にも反するのだから、やはり公務員法の三十七条及び六十一条の関連上から言えば、順序から言って、まず三十七条第一項の例の休暇問題が、ああいう行動が違法かどうかということが審査が進んで、その上で罰則というものが審議されるのが順序として当然じゃないか。これは裁判所の問題でございます、これは警察の問題でございますといったような、そんな解釈は、三百代言的な解釈であって、法はやはり血が通っているのですから、そういうふうな順序を経て人事委員会というものがあって、その権限が規定されておる、しかもその人事委員会が一定の権限を認められて、その範囲において、まず第一に問題を解決していく、その上で罰則とか、そういうことが起り得るのであって、やはり自治庁として公務員法を守るという立場から言っての解釈から言えば、まずもって人事委員会の方の結論を待ち、そしてまた罰則の方に関連しては、その次の段階でやるのだというような運用が、やはり法の正しい運用ではないかと思うのだが、どうでしょうか。
  152. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 そのような考え方もなり立ち得るかとも思いますが、これは司法権なり警察権なりの発動というものを抑制するならば、それぞれ立法措置をもって明確にこの案件については人事委員会の裁定があってからでないといけないとか、そういうものが必要だと思うのであります。この点については従来から御承知のように、懲戒関係の問題でもある事件について、刑事事件が起きたという場合は、旧制度におきましては懲戒は行わないで刑事事件の処理を待っていく、それまでは休職処分にするという規定があって、ある程度関連をつけておったわけであります。戦後における法制の建前というものが、行政処分と刑事処分とが別個の考え方で処理していく、従ってある事件がございました場合に、それが刑事事件に触れる、あるいは服務規律に違反するという場合には、刑事事件が他面、一応進行いたしておりましても、それとは別個に行政処分日体も行えるという建前に、実は相なっておるわけであります。こういうような建前でもございますので、この点、行政処分刑事処分とは一応別個に考えていかなければならぬ建前になっているのではないかと考えております。
  153. 加賀田進

    ○加賀田委員 それでは逆の場合をちょっとお尋ねいたしたい。もし警察の方で刑事事件として教唆扇動を取り上げていく、そうすると裁判所の方では刑事事件として成立するというような考え方を持っていても、人事委員会で、その間休暇を取って大会を開いたという行為は、現在は地公法三十七条に抵触しないのだ、違反ではないのだという結論になったときに、その教唆扇動というものは刑事事件として取り上げられるかどうかという問題が起ってくると思うのです。その点はどうなんですか。
  154. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 この点は警察関係あるいは司法権の発動の問題でございまして、私の方からとやかく言うべき筋合いではないと思いますが、この辺もあくまで行政処分と刑事処分とはやはり別個の建前になっております。
  155. 加賀田進

    ○加賀田委員 そんなばかな……。別個の立場といいながらも、実際問題としてこれは不可分の状態になってきておるのですよ。今のように三十七条に抵触しないのだ、違反じゃないのだということを人事委員会が決定する、組合がそれを承認するという形で解決して、警察の方は警察の方として教唆扇動だけを調査して、警察ではこれが刑事事件として成り立つのだというような問題が起った場合には、果してその教唆扇動というものが成り立つかどうかという問題になってくると思うのです。その点はやはり明確にしてもらわなくては、今度の場合は警察の方では教唆扇動だけを中心にして調査しておるところが主体の三十七条違反か、どうかということはまだ明確じゃない。これが明確になって初めてそれが違反だということが決定されるのです。そうして違反を教唆扇動したかどうかということが問題になってくる。これは関連性がある。だから行政処置と刑事問題とは別だ、口の上では別だと言いますけれども、頭の中では別にはできない問題だと思いますが、それは法律解釈上どう考えておるのですか。
  156. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 この点は繰り返し同じことを申し上げて恐縮でございますが、やはりあくまで行政処分の認定ということと、刑事処分の認定ということばおのずから別問題として考える建前だと思っております。
  157. 加賀田進

    ○加賀田委員 警察の方はこの点についてどうお考えです。逆の現象も起ってくるだろうし、今言ったように警察庁が先走って、結局三十七条の態度が決定されないというような場合に非常に困る場合が起ってくると思うのですが、その点に対してどう考えておるのか。
  158. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 今藤井政府委員からお答えがありましたし、私も先ほど申し上げましたが、やはり行政処分と司法処分といいますか、刑事事件としての取扱いは別個のものと思うわけです。なお先ほど申し上げましたが、何人も教唆扇動してはならないという罰則がついておりますから、私どもはそれを刑事事件として現在捜査いたしております。もちろん調査しておりますのはそれだけでなくして、そのもう一つ前の段階である多数の人々が教育委員会や校長さんが承認しないにもかかわらず、休暇をとるというて一斉に休まれて、学校の事業の正常な運営が阻害されたかどうかという点についてももちろん調べておるのであります。
  159. 北山愛郎

    北山委員 この文書の読み方がちょっと疑問なのですが、六十一条に「第三十七条第一項前段に規定する違法な行為の」というので違法だということをきめ込んでおる。だから警察としては前提としてその行為が違法であるということを、まず明らかにしなければならぬでしょう。それでなければ次のあなたたちが捜査しておる行為がどうなのかわからぬのだから、そっちの方の行為の違法、これは違法であるということを前提としているのでしょうが、その前提がないのだから、一体だれが訴えてだれが裁判の手続をしたりするのですか。違法であるときめ込んでいるのでしょう。
  160. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 これは私どもはこういうように考えております。ある組合が一つの主張を持っておられる、あるいは要求を持っておられる、それを貫徹するために、その全員が三割、四割というように三日間にわたって交代で一日ずつ有給休暇を一せいにとる、そして大会を開いて要求貫徹をはかろう、そういうような場合に管理責任者である教育委員会あるいは校長先生方が、そういう行為は授業の正常な運営を阻害するおそれがあるから、やってもらっては困るということで、繰り返し繰り返し勧告し、あるいは説得されましても、なおかつ教育委員会や校長さんの承認なくして、多数の人々が一せいに休まれる、そのために学校の正常な授業の運営が阻害されるというような場合には、私どもは三十七条第一項の前段に該当するものというように解釈をいたしております。
  161. 川村継義

    川村(継)委員 ちょっと今のに関連して一言お尋ねします。山口警備部長、今のあなたの三十七条の解釈は、二月の十何日ですか、その行われたころにその解釈は成り立ったのですか、ごく最近その解釈を下されたのですか。
  162. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 あの事態が起りましたときに、私どもはこれは今までにない重大な事態であると認めまして、直ちにいろいろの事態の検討を始めました。
  163. 川村継義

    川村(継)委員 今のはちょっと何か漠然としているのですが、そういう解釈が今になってあなたたちが下されたとはちょっと思われませんね。だれが考えたってそうです。おそらく三十七条について今あなたがなさったような解釈は、その当時すでに解釈としてはあなたたちは出しておる。これは日ならずしておそらくそういう解釈は下ったと思うのです。それはそうでなければならない。それくらいの解釈を二ヵ月も三ヵ月もかかるというのは、ちょっと常識でも考えられません。  そこで先ほど私がお尋ねしましたように、それくらいのことで、そういうことをやった者をそそのかしたとか、扇動したということであれば、それはだれがやったか、どういう形でやったかというのは、あなたたちが違法と思えばその当時すぐ調べられても、何も複雑な問題というのはなかったのじゃないですか。それをそういうような解釈がちゃんと出ておるのに、二ヵ月有半もそのままにしておいて、今になってこれを逮捕という処置に出られたということについては、私は先ほどもお尋ねしたように、どうもあなたたちの処置というものは合点がいかないものがある、こういうふうにお尋ねしたのですが、その点について長官はいかがでございましょうか。
  164. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 御承知のように、ただいまの警察制度の建前といたしまして、日常こういう第一線において発生しました事件について中央の私どもが都道府県に一々指揮をする権限はないのであります。今回の佐賀県の事件につきましても、現地佐賀県の警察本部長が、執行の最高責任者としてこの事件をどう処理すべきかということを判断するのでございます。従いまして佐賀県警察本部長としましては、二月十四日ないし十六日のこの事案につきまして十分検討し、これはどうも地方公務員法第三十七条違反として刑事事件とするべきものではないだろうかという考え方をとったために、われわれの方に法の解釈について、いわゆる伺いを立ててきたと申しますか、連絡をしてきた。われわれの方はそれを受けて、これまたわれわれ警察庁の二部の者のみの見解で、法解釈はこうであるというふうに佐賀県に示すのも、これも事柄の性質上きわめて重要でありますから、もっと慎重な態度をとらざるを得ない。先ほど来申します通りこの三十七条違反として、警察が事件として取り上げたケースが今までにないわけでありますから、それだけに慎重に研究しなければならぬ。従って法務省あるいは最高検等の法解釈、見解もたださなければならぬ。こういうことで、いろいろと折衝する範囲が広くなれば、それだけ時間がかかるということはおわかりいただけると思うのでございます。従いましてその結果を佐賀県警察本部の方に連絡をとるまでには、やはりかなりな時間がかかったと私は記憶をいたしておるのでございます。  さらに、先ほど来申し上げます通り、現地においてはこの二月十四日ないし十六日の三日間の大会の模様と申しますか、どういう方々が参加をされたか、その参加の大要、つまり先ほど来お話が出ております有給休暇を申請されたが、大部分の方が許可なくして大会に参加されたといったようなことが、果してどういう実情であったかというような点を詳しく正確に把握もしなければなりませんし、またそうした争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおった者が六十一条の罰則に触れるわけでございますので、それは果してだれであったか、そしてまたどういうふうに相談をし、いわゆる共謀し、あるいはあおり、そそのかしたのであるかというようなことにつきましても、相当の内偵捜査を進めなければ、果して刑事事件として取り上げるべきであるかどうかというような最後の判断を下すわけには参らないのでございます。従いまして今申しましたようないろいろな点を十分に検討するためには相当の時間がかかるということは当然なことであるのでございまして、結論が出るまでに二ヵ月余もかかったこれはどうもおかしい、もっと早期に簡単に結論が出ておったはずだ、にもかかわらず、警察は何も手をつけないでおいて、今ごろになって検挙したということは、必ず外部からの何らかの圧力があって、警察は心ならずもそうしたの、三ろうというような御疑惑をいただいたようでございますが、それは先ほど来私がたびたびお答え申しております通り、絶対そうした外部からの、圧力によって、佐賀県警察が今回の検挙に出たことはないということだけは、重ねてお答え申し上げておきます。
  165. 井手以誠

    井手委員 どうも長官と部長の答弁を聞いておりますと、犯人を作るために解釈されておるようにばかり承わるのであります。警察法とか地方公務員法というものはそういうふうに解釈すべきものではございません。そこで私はお尋ねをいたしますが、その有給休暇を管理者の許可を受けておればどうなりますか。
  166. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 有給休暇について明瞭に管理者の許可を受けておられれば、その有給休暇をとられた行為は正当で、違法な行為ではないと思います。
  167. 井手以誠

    井手委員 正当な手続によって許可を受けたという者が、私の調査では相当あるのであります。昨日文教委員会では非常に少く言われましたけれど竹も、今日になりますと、いや当時自分は許可していなかったとかなんとかいう水かけ論も起り得るかもしれませんけれども、相当あったことを私どもは聞いております。そこで許可を正式に受けなくとも有給休暇がとれるかとれないかということについての疑惑が今日ある。その解釈をめぐっていわゆる行政処分が行われたでありましょう。私どもはこれに対してはすべきものではないと考えておりますけれども、教育長は処分を行なっておる。片一方は労働省の基本権の立場から、それは当然の権利である、慣行であるという建前で主張しておる。そういう解釈をめぐっての場合に、私は警察権を発動すべきではないということは最初から申し上げておるのであります。すでに今日になっては警察も、私の方が少し軽率であったとは申しがたいでしょうけれども、考えてごらんなさい。一方では人事委員会で、その解釈をめぐって審査が進められておるときに、何で警察権を発動する必要がありますか。どこに社会不安をもたらすような危険性がございますか。自分の方の主張が正しいといってその後も運動を続けることが、何で非難すべきものでありましょうか。先刻長官は、二ヵ月以上にわたって成規の手続が行われたかどうかについて調査を進めたとおっしゃっておる。なるほど私は肝心かなめの点はそこであろうと思います。一部の人は正常な授業に差しつかえないということで許可をした。一方では許可をしなかったという問題、それは労働の基本権という問題と、従来の慣行を加えた労働の基本権というものと、公務員の待つ性格を盛られておる地方公務員法、そこに私は重大なかなめがあろうと思います。その解釈をめぐっての争いに、どうして警察権を発動しなくちゃならぬのか。そこで私はお尋ねをいたしますが、一方では正常な授業に差しつかえないとして許可をした。あるいは片一方は意思表示をしなかった。あるいはそれは困ると言った。そういうまちまちなものを、あなた方は後段だけを強調して教唆扇動した、こういうことが成り立ちますか。
  168. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 そういう行為が前段に該当するということをお認めになれば、私は該当すると思います。
  169. 井手以誠

    井手委員 前段において認める認めぬは、人事委員会が行うべきものじゃございませんか。先刻来私が申し上げておりますように、地方公務員法を制定するときには、そういうふうに労働三法、労働者の基本的権利を排除したのは、これは公務員という性格があるけれども、人事委員会の提訴ということで救うということをはっきり申されておる。そうでありますならば、やはり前肢の解釈というものは、人事委員会の裁定に待つべきものであると考えます。私はこれは不当干渉である、かようにせざるを得ません。
  170. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 その点は先ほどから繰り返し御説明申し上げましたように、行政処分についての人“委員会の御解釈なり御決定と、司法処分、刑事事件としての取扱いとは、全く別個の建前になっておるのであります。
  171. 北山愛郎

    北山委員 いろいろ質問されましたが、先ほど私がお伺いしました、いわゆるよその犯罪被疑事件とこの関連においては、どうも長官は口を緘してお答えにならぬ。別な機会にお話しになるそうでありますが、私はつり合いということを重んじる人間でございまして、バランスがとれないと気になるのです。これは私のみならず、だれでもそうだと思うんですよ。だから警察という、非常に人の自由を束縛するような重大な権力を持っておる機関の活動としては、ある場合には活動をし、ある場合には活動しないという行動の水準というものは、やはり慎重に考えなければならぬと思うのです。だから常に違法の疑いがあれば、行動するんじゃないんですから、やはり事と次第によって行動していくことは言うまでもないところなんで、今度の場合、考えようによれば、県の財政が苦しいから二百何十名も先生方を首切るということなんです。ところが県の赤字財政というものはどこから出てきたかというと、いろいろ原因があるけれども、やはり警察法の改正ですね、昭和二十九年の警察法の改正、あの結果佐賀県は毎年五千万円ずつ県費の持ち出があるということ、これは午前中の委員会で知事さんがはっきりそう言ってるんです。五千万円というと、ちょうど二百五十人分くらいに当るんです。だから警察法の改正さえなければ、五千万円の赤字が出ない。だから二百五十人の首を切らぬでも済むわけです。ところが警察法の改正が出て、首を切り始めて、その警察官たちがむきになって学校やその他のところを捜査したり、先生方を逮捕してるというこのことはまことに皮肉な現象だと言わざるを得ない。やはり警察というものは生きた警察でなければならぬのであって、そういうような事態の全体というものをよくお考えになって行動しなければならぬと思うので、どうもこの事件は少しつり合いがとれないんじゃないか。何か政治的な意図によって警察が動かされているんじゃないか、こういう疑いを持ってしょうがない。例の砂川事件の際においても、ああいうふうな基地問題に対しては警察は介入したくないというような意思は、石井長行はたびたび申されておったんです。これはやむを得ず出動した。そうしてああいう結果になってしまった。今度の場合においてもやはり、今申し上げたような、県の財政とかいろいろなことをよくお考えになった方がいいんじゃないかと思う。なお教育行政がストップしたというようなことを言いますけれども、先生方を減らす方が、教育行政の水準低下になるんですよ。だから県の財政の結果あるいは警察法の改正のために、教育行政の水準が低下したんじゃないか。一方その方は取り締らぬでおいて、その結果出てきた公務員に対してのみだんびらを振り上げるというようなことは、どうもつり合いがとれない。だから私は良識ある警察の本部としては、やはりそういう態度に出てこの問題を処理してもらいたいと思うのですが、今後における警察庁長官のこの問題に対する態度として、こういう考慮がなされ得るかどうか、この辺のところを一つ聞いておきたい。
  172. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 佐賀県の赤字財政警察制度の改正に基因するという御意見でございますが、そうい県の財政が赤字になっておる原因が那辺にあるか、私ども寡聞にして承知いたしておりせん。警察運営に要する費用につきましては、関係自治庁等にお願いしまして、地方財政計画の策定の際に警察費を十分に計上していただくように、私どもとしては私どもなりに努力をいたしております。また国費関係として地方にやらすべきものにつきましては、これまた大蔵省とも十分折衝いたして、及ばずながら努力いたしておるつもりであります。佐賀県の赤字財政の主たる原因が、警察制度の改正の結果であるとは私は考えないのでございます。それはともかくといたしまして、先ほど北山委員の再三にわたる御指油の、違法な行為があれば警察では何でも必ず手をつけるのかどうかというような意味の御指摘でありますが、もとよりその違法の態様によりまして、事軽微であります場合にはこれを不問に付するという場合も確かにあり、またそうでなければならぬと思うのでございますが、そういう意味におきまして、今回の佐賀県の事件のみならず、今後においてもそういう点について十分慎重にやれとの仰せは、私全く同感でございます。その点は今後十分そのお気持を体し、また第一線の諸君にもそういうふうに申して指導して参りたい、かように考えております。なお今回のこの佐賀県の事件は何か警察庁については政治的な圧力があったのではないかという重ねての御指摘がございましたが、これは今までたびたびお答えしました通り、絶対にそういうことはないことを重ねて申し上げておきます。
  173. 北山愛郎

    北山委員 この問題に限らず何しろ首を切るんですからね、この節首を切られて黙っているやつはないですよ。首切りという名前の通りこれは名実ともにこの世相では首を切られては転職の機会もないので、首を切られるということはこれは死刑の宣告と同じなんです。そういうふうに同僚が数一名も首切られて黙っておるような同僚だったらこれは情ない仲間だと思うのです。そういうような心脱がそういう行動に出でしめるというようなことを考えていただけばよくわかると思うのです。警察官は今回は整理がされないでしまいました。警察官の首切りはストップになりましたけれども、警察官だって、もしも首切りになって、そして労働組合を作っておったならば、これは休暇闘争ぐらいじゃおさまらないですよ。あるいはピストルを持ってやるかもしれない。組合がないから泣き寝入りで黙って首を切られておる。しかし腹の中ではそうは思っていないと思う。そういう関係を、やはり使われる者の立場を尊重するのがいわゆる近代的な労働関係なのですから、そういうものに基いて公務員についてもいろいろな関係が規定されて、地方公務員法というりっぱな法律ができておる。だからこれは刑事事件だからということで、ひっくくればいいのだというようなことでは困るのであって、そういうことぐらいは、地方公務員法の精神は警察庁長官もよく知ってもらわなければ因る。ですから全体のあれから考えてみて、今回のことはどうも私は行き過ぎじゃないかと思うのです。菅生事件なんかは別個の機会に譲りますが、一つ慎重にお考えによって、これ以上の行き過ぎをしないように、また行き過ぎを訂正されるように要望して、私の質問を終ります。
  174. 門司亮

    門司委員長 ちょっと私から聞きたいことがあるのですが、今度の事件はいろいろ私は問題はあると思いますが、事教育に関する問題でありまして、軽率にこれを取り扱うべきではなかったと思う。従ってお聞きをしておきたいと思いますことは、今回の佐賀県事件というものが教育に関する問題でありますだけに、その影響するところは非常に大きい。ことに学童に及ぼします心理的影響というものは、私は甚大だと思う。この点を一体警察が考慮したことがあるかということです。
  175. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 現地の佐賀県警察本部が二月に発生しましたこの事件を、二ヵ月余もたった今日初めて刑事事件として取り扱う態度に出たということは、とりもなおさず先ほどから申します通りあらゆる角度からこれを慎重に取り扱わなければならぬという考え方に立ってのことであるのでございまして、いろいろ必要な内偵捜査、調査をしなければならぬということによって時間を要したことも先ほど来申し上げました通りであります。と同時に今門司委員長の御指摘のありましたように、事教育に関することであり、生徒児童の心理的影響等も十分考慮しまして、この事件の扱い方、それから扱う時期、そういう点についても十分に考慮を払わなければならぬということで、慎重に考慮したものと思うのでございます。
  176. 門司亮

    門司委員長 今考慮したものと考えるというお話でありますが、こういう教育関係のものについては、従来たとえば窃盗のような破廉恥罪のようなものでもできるだけ生徒に影響を持たせぬように、できるだけこれを世間に知らしめないように処置をするということが、私は警察の常識としては考えられるべきだと思う。いわゆる犯罪の検挙というもののよって来たる社会的影響というのに、警察官はきわめて慎重でなければならぬと私は思う。もしこのことが忘れられて、そうしてただ犯罪があるからといって何でもかんでも、社会に及ぼす影響を考えないで検挙し、これを捜査するということになりますと、ますますその考え方が悪くなると思う。と同時に一方において警察に対する信頼というものはますますなくなってくると思う。私はこの問題はただ単に佐賀県だけの問題というのでなくて、警察の将来の信頼性については非常に大きな影響を持っておると考えておったので、今のような質問をしたのでありますが、今の答弁だけでは、ただ慎重に考えたものと考えるというだけではこれは私は答弁にはならぬと思う。だれでもそう言うと思うのです。影響を考えないでやりましたとはおそらく何人も答弁はできないと思う。私の聞きたいと思いますことは、それらのことをただ警察だけの考え方だけでなくして、あるいは県の教育長なり、あるいは当該起った自治体の教育委員会なりに相談されて、そういう憂いは全然ないという見通しのうちにやられたかどうかということであります。この辺はどうなのですか。
  177. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 県の教育委員会、教育長の方には事件の検挙については事前にもちろん御相談等はいたしておりませんが、ただ直前にはこういう事情で何ヵ所捜索を実施せざるを得ませんということは御連絡をいたしました。それから捜索の時間等につきましては早朝五時四十分ごろから始めまして、生徒や児童が登校する前に、八時ごろまでには終るようにという指示を与えて捜索をいたしたということを聞いております。ただ管理者を代表して立ち合われる方が不在のために一ヵ所は九時ごろまで、一ヵ所は九時十分ごろまでかかったということであります。しかしながらこれももちろん児童や生徒の目に触れるようなこともなく、校内のある一室で書類を書きとめ、整理をしておったという状況でございます。その他今回の問題につきまして警察といたしまして一番考慮を払ったのは御指摘の点であります。この点につきましては佐賀県警察といたしましても十分に慎重な配慮のもとにいたしたものと考えております。なおこれは別の問題でありますが、婦人の先生につきましては、中央委員の一員であられますけれども、強制捜査は避けるという方針のもとに実施をいたしたように開いております。
  178. 門司亮

    門司委員長 もう一つ聞いておきたいのは、今の答弁だけでは私はわからぬのでありまして、捜査は生徒の目の前でやらなかったからどうだということでなく——これはきわめて警察的のものの考え方です。生徒はみな新聞を読みますからね。みな目が見えるのですよ。だからそういうただ一時的の現象だけで抹殺するなんということは私はできないと思う。もう佐賀県の子供でおそらく知らない者はいないと思う。うちの先生が検挙された、縛られたということを知らない者はないと思う。だからそういうことだけでは私は言いわけにはならぬと思います。  最後にもう一つ聞いておきたいと思いますことはこの三十七条の解釈ですが、三十七条の解釈は、罷業であるとかあるいは怠業であるとかいうようなことは、これは一時的現象によってこれをそう極端に解釈すべきではない。怠業というものについても私はいろいろあると思います。一人の先生の行為もありましょうし、団体の行為もむろんございましょうが、その限度というものがあって、今度の場合にこれを直ちに刑事罰にしなければならないほどの事態であったかどうかということについては、私どもかなり大きな疑問を持っております。それはなぜかといいますと、一方には行政罰がある。従ってこの種の事犯については、教育の観点からくる児童に及ぼす影響等を考慮いたして参りまするならば、よほどのことがなければこれを刑事罰にするということとは私は不適当だと思う。むしろ行政罰の推移を見ることの方が、私は正しかったのではないかというふうに考えるのでありますが、この点について当局意見を、もう一度私は聞いておきたいと思います。
  179. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 私どもは、この三十七条違反の点につきましては、先ほども申しました通り、ただ単に警察部内の独断であってはならないと思いまして、最高検とも十分打ち合せ、協議をいたしまして、今回の佐賀県の事案はこの違反に当たるという結論に到達いたしたのでございます。この点は最終的にはむろん裁判所の決定を待たなければわからないのでございますが、私ども今日まで関係当局と慎重に研究した結論として、違反になるという結論に到達をいたしたのでございます。
  180. 門司亮

    門司委員長 もう一つ最後に聞いておきたいと思いますことは、教育委員会に相談をしなかったということでありますが、そうすると、児童に及ぼす影響等に対しては、警察が独断でやった、こういうことになると私は思う。御承知のように、今日の教育委員会は公選ではありません。任命にはなっておりますが、それにいたしましても、教育行政のすべてというものは、教育委員会が責任を持っていると思う。従って、この教育委員会の責任性から考えて参りますと、教育に及ぼす影響が甚大なこういう事件については、当然教育委員会意見を求めて、しかる後に警察の行動が行われるべきだと思う。ただ単に窃盗とか傷害だとかいう犯罪ではありません。ことに教員全体に及ぼす非常に大きな問題であります。従って教育委員会意見を徴しなかったという点は、どう考えても警察の落度だと思う。もしこれが落度でないとするならば、それは警察行政に対して、どこからか何かの示唆があったのではないか、秘密に行わなければならない理由がほかにあったのじゃないか。この二つの点をこの際はっきりしておかぬと、この問題については非常に迷惑すると思う。従って、教育委員会に御相談しなかった理由を、この際もう少し明確にしておいていただきたい。
  181. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 もちろん今度の問題が、教育委員会にも重大な関係を持っておることは存じておるのであります。しかしながら、一つの事態を刑事事件として検挙するとか、しないとかいう問題は、やはり警察なら警察が独自の立場で判断をいたしてやるべきことであります。たとい教育に関する問題でありましても、これを教育委員会に事前に御相談申し上げるということは、警察行政の筋をはっきりいたす上から、避けるべきことだと思います。と同時に、先ほどからたびたびおっしゃっておられますが、外部からの圧力というようなものも、われわれとしては警察行政を進めていく上に極力避けていかなければならない。すなわち今回の措置は、事柄の性質上、検察庁方面とは密接な連絡のもとに、警察としては独自の立場から実施をいたしたのでございます。そういう意味で、教育委員会の方にも事前に御相談、御協議を申し上げることはいたしませんでしたが、ただ学校等について捜索をいたす関係もありますし、捜索をいたすということは事前には御連絡申し上げておる次第でございます。
  182. 門司亮

    門司委員長 次会は公報をもってお知らせすることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後六時五分散会