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1957-03-13 第26回国会 衆議院 地方行政委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十三日(水曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長代理 理事 中井徳次郎君    理事 亀山 孝一君 理事 永田 亮一君    理事 吉田 重延君 理事 川村 継義君       青木  正君    川崎末五郎君       木崎 茂男君    櫻内 義雄君       徳田與吉郎君    丹羽 兵助君       福井 順一君    古井 喜實君       渡邊 良夫君    伊藤卯四郎君       大矢 省三君    加賀田 進君       北山 愛郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         自治政務次官  加藤 精三君         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奥野 誠亮君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 三月十二日  委員福井順一辞任につき、その補欠として渡  海元三郎君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員渡海元三郎辞任につき、その補欠として  福井順一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四六号)     —————————————
  2. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 これより会議を開きます。本日は委員長が御都合がありまして、私が委員長の職務を行います。  地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきましては、先般田中国務大臣より提案趣旨説明を聴取いたしましたが、本日は奥野税務部長よりその補足説明を求めることにいたします。奥野政府委員
  3. 奥野誠亮

    奥野政府委員 地方税法の一部を改正する法律案要網を提出いたしておりますので、その要綱に基きまして説明さしていただきたいと思います。  その一は住民税に関する事項でございまして、(1)が「所得税減税に伴い自動的に生ずる住民税減収をできるだけ回避するため、住民税所得割標準税率昭和三十三年度百分の二十六、昭和三十四年度以降百分の二十八に、市町村民税制限税率昭和三十三年度百分の二十二、昭和三十四年度以降百分の二十四に調整するものとすること。」としていることでございます。所得税について大幅な減税が行われます関係上、第一方式標準税率等をそのままに据え置きますと、平年度二百十六億円の減収を生ずることになるわけであります。地方財政状況が積極的に減税を大幅に行いますことを許しませんために、これを補てんしなければならない。補てんするにつきましては、他の財源をもって埋めるという考え方もあるわけでありますけれども、何といいましても住民税というものが自治団体の税の基本をなすものだという考え方からいたしますと、住民税のウエートをあまり引き下げることは適当ではない、こういう考え方を持っておったわけであります。同時にまた臨時税制調査会等におきましていろいろ論議を重ねられました結果、二七・八%程度まで調整することが適当ではないかというような考え方が答申にも現われて参っておりますので、その線に沿いまして標準税率を二八%に調整することにいたしたわけであります。しかしながら、それによりましてもなお相当な減収が生ずるわけでありますけれども、所得税減税精神からいいまして、やむを得ないというふうに考えております。  なお後段の「この場合において道府県民税所得割の額及び市町村民税所得割の額に当該所得割課税標準となる所得税額を加えた額が課税所得金額の百分の八十に相当する額をこえることとなるときは、道府県民税所得割の額と市町村民税所得割の額が当該課税所得金額の百分の八十の額に相当する額から所得税額を控除した額に相当する額となるように、それぞれの額をあん分減額するもの」としようといたしております。要するに所得課税でありますところの国税所得税道府県民税所得割市町村民税所得割の三つの合計が、課税所得金額の八割を越えるようなことにはならないようにしておこう、こういう趣旨であります。現行法によりますと、所得税累進税率限界が六五%であります。なお住民税が合わせまして所得税額の二一%であります。所得税額の二一%でありますから、最大のところでは、所得税最大の六五%に二一%を乗じました所得に対しては一三・六五%ということになります。所得に対する一三・六五%という住民税の率と、所得税限界税率の六五%を加えますと、七八・六五%ということになるわけであります。現行制度で行きました場合には、最大七八・六五%まで所得課税が行われることになっております。ところが今回の改正では、所得税限界税率を七〇%に引き上げることにいたしておるわけであります。さらに住民税が二八%まで引き上げられる。七〇%にこの二八%を乗じますと、課税所得金額に対しましては、住民税において一九・六%まで課税されることがあり得るということになるわけであります。これに所得税の七〇%を加えますと、八九・六%になって参るわけであります。そこで累進税率を強化いたしましても、なお二〇%程度のものは個人所得として留保しておくべきではないだろうか、こう考えられますので、そこで現在の七八・六五%というものを基礎にいたしまして、八割は越えないようにしよう、八割を越える場合には両住民税を按分減額しよう、こういう規定を設けようとしているわけでございます。  その(2)は「市町村民税所得割課税所得金額又は課税所得金額から所得税額を控除した金額課税標準として課する場合における税率は、次表上欄に定める金額区分及び当該区分ごと金額に応じて順次適用されるべき同表下欄に定める率に準じて、当該市町村条例で定めるものとすること。」であります。第二方式、第三方式につきましても、市町村としてよるべき基準法律の上で明らかにしておきたいと、かように考えているわけであります。現在でも条例準則というようなものを示しているわけでありますけれども、条例準則というような程度では、市町村の議会において審議します場合に、なおそのようなものが明らかにはわからないわけであります。そこで法律によってそのことをよくわからせて、どの程度負担が適当であるかという判断の基準を与えておこう、こう考えているわけであります。しかしながらこのような率で強く課税するという考え方は持っていないわけでありますので、表現といたしましても、これらの金額区分や率に準じて市町村条例で定めるんだ、こういう表現をいたしているわけであります。所得段階を刻むのにどのような刻み方をすることが適当であるかということについて、いろいろ考え方があるわけでありますが、一応所得税の場合におきまする段階区分に従ってこの刻みを定めているわけであります。  (3)は「前項の課税標準金額段階区分及び率は、昭和三十二年度及び昭和三十三年度においては、それぞれ次表のとおりとすること。」ということにして、経過的な措置規定しているわけであります。これらをごらんいただきますとわかりますように、三十二年度税率よりも三十三年度の方が下っているわけであります。さらに平年度の方が一そう下って参っているわけでありまして、このことが、第一課税方式におきまして標準税率を引き上げているけれども、課税標準そのものが大幅に下っているものだから、実質的には減税になっていくんだということが了解していただけると思うのであります。参考に夫婦及び子二人の給与所得者のところで五十万円の段階を調べていきますと、改正案では、初年度で二千九百三十五円の税負担軽減、平年度では三千八百十三円の税負担軽減になるわけでありまして、軽減割合が、初年度では二六・六%、平年度では三四・六%になっております。これらの数字は冊子にしてお配りしております改正関係の計数の中に加えておりますので、御承知いただきたいと思います。  (4)が「前二項によって所得割を課する場合においては、現行のとおり、当該市町村税率によって算定した所得割の額が、課税標準額の、それぞれ第  二課税方式にあっては百分の七・五、第三課税方式にあっては百分の十五の額に相当する額をこえることとなるときは、それぞれこれに相当する額とすること。」、最高課税額制限現行法に従って残しておきたいというふうに考えております。ただ所得段階ごとについての制限税率は従来と同じように規定はいたさない。やはり第二課税方式、第三百課税方式精神であります幅広い課税方式はそのまま残しておきたいというふうに考えておるわけでございます。  (5)は、「総所得金額から基礎控除のみを控除した金額又は当該金額から所得税額を控除した金額課税標準として市町村民税所得割を課する場合においては、市町村条例の定めるところによって扶養親族の数に応ずる税額控除を行うものとすること。」であります。現行法では扶養親族の数に応ずる税額控除をすることが、必ずしも法にうたわれておりませんために、ただし書きによる課税方式をとっておる場合には、扶養親族の多い、生活費のよけいかかる人たちが結果的にはかえって負担が多いというようなことになりますので、ただし書きを使う場合でも扶養親族の数に応ずる税額控除はやらなければならぬのだということをうたっておきたい、かように考えております。その金額条例の決定にゆだねた方が、市町村状況も区々でありますので穏当ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  (6)は、「給与支払報告書提出期限までに提出されなかったこと、その他特別の事情がある場合においては、市町村長は五月三十一日後においても特別徴収税額通知することができるものとし、その通知のあった場合においては、特別徴収義務者はその通知のあった日の属する月の翌月から翌年の三月まで毎月当該特別徴収税額月割額を徴収して市町村に納入しなければならないものとすること。」とすることであります。五月三十一日後に特別徴収税額通知を余儀なくされる場合もあり得るわけでありますので、その場合においてはその通知の翌月からの月割で徴収するのだということをはっきりさせておきたいと考えておるのでございます。  第二の事業税に関する事項であります。  その(1)は「中小企業法人事業税負担軽減するため、所得課税標準とする事業を行う一般法人についてその標準税率を次のように引き下げること。」であります。所得のうち年五十万円以下の金額現行の百分の十を百分の八にし、所得のうち年五十万円をこえ年百万円以下の金額現行の百分の十二を百分の十にすることでありまして、その他は現行のままに据え置くわけであります。利益を上げております法人、いわゆる利益法人のうちの八割ぐらいまでは年所得は百万円までのものでございます。従いましてこの税率軽減というものはほとんど全部の法人適用になるというような表現もできるのではないだろうかというふうに考えております。  その(2)は、「個人商工業者事業税負担軽減を図り、あわせて業種間の事業税負担の不均衡を是正するため、第一種事業を行う者の課税所得のうち年五十万円(基礎控除前の所得年六十二万円)以下の金額については、その標準税率を自分の六(現行一律に百分の八)に引き下げること。」にいたしておるわけであります。個人商工業者の場合におきましても基礎控除前の所得年六十二万円をこえるような人ということになって参りますと、全体では三%にもならないのではないだろうかというふうに見込まれるのでございましてやはりほとんど全部の人たちにつきまして同様二%の負担軽減になるのではなかろうかというふうに思っておるのでございます。なおまた戦前商工業に対しまする租税負担としては営業税があったわけでございますが、国税営業税地方税営業税付加税あるいは都市計画税制、そういうものを合せました負担と現在の事業税負担を比べて参りますと、年所得三百三十万円ぐらいから下の人は全部戦前よりも下って参ってきておると考えております。事業税につきましても戦前よりもむしろ軽減されるようにこの改正の結果なって参るわけでございます。  その(3)は、「パス事業との間における負担均衡を図るため、地方鉄道事業及び軌道事業課税標準所得現行収入金額)に改めるものとすること。」でございまして、その結果ほとんど大部分の鉄、軌道につきましては税負担軽減されるということになり、平年度で五億円ぐらいの減収になるわけでございます。  その(4)は「公衆浴場を第三種事業とするものとすること。」でありまして、クリーニング業事業場と同じように第三種事業にしろという御意見が従来から強かったわけでございますが、公衆浴場の性格にかんがみまして、そのような措置をとることにしたわけでございます。ただ特殊な温泉がございますので、そういう浴場は従来通り第一種事業に残しておくことにいたしておるわけでございます。そういう浴場におきましては料金割合に高く取られているようでございます。  第三は娯楽施設利用税に関する事項でありまして、その(1)は「スケート場を法定の課税対象施設の範囲から除くもの」でございます。スケート大衆化されたスポーツになってきておる関係から、従来の御意見に徴しまして、除外することにいたしておるわけでございます。  その(2)は「ゴルフ場利用に対する課税については、条例の定めるところにより、ゴルフ場利用日ごと定額により課税することができるものとし、その標準税率を一人一日につき二百円と法定する」ことにいたしております。ゴルフ場経営の仕方が、入会しようとします場合には株を持ったり、あるいは入会金を払ったり、また入ってからにおきましても年会員の定めがありましたり、あるいは入場料には会員、非会員区分があるとか、いろいろ相違がございますので、現在のような利用料金の五割課税ということでは、どうしても課税標準の把握に適正を欠きまして、不均衡を招来するわけでございます。そこで一人一日につき二百円というような定額課税をすることができるようにいたしたいわけでございます。現在の実績でいきますと、九ホール以上のゴルフ場を全部平均して計算をいたしますと九十八円くらいにしかなっていないわけであります。しかし利用料金と目されるようなものを合計いたしまして利用者の員数で除して参りますと、百九十九円というような数字が得られますので、ここで二百円と法定いたしたわけであります。  四は遊興飲食税に関する事項であります。その(1)は「旅館における一人一泊の料金が八百円以下である宿泊及びこれに伴う飲食に対しては、遊興飲食税を課することができないものとすること。なお、基礎控除額は、現行の五百円を据え置くものとすること。」であります。標準料金が五百円以下であるというような旅館がやはり全体の半分くらいあるようでございますが、さらに標準料金が八百円以下の旅館というものを調べて参りますと、八二・三%にも及んでおるわけであります。そういうようなところで宿泊する、ほんとうの大衆宿泊については課税をしないように持っていった方がよろしいのではないか、こういう与え方から免税点制度を新たに設けまして、八百円以下については課税をしない。そのかわり残った部分については一律課税をいたしたい。その結果は若干負担のふえる面があっても、その負担程度というものがまあがまんしてもらえるものであればやむを得ないのではないだろうか、こういう考え方遊興飲食税改正案を立案いたしておるわけであります。要するに遊興飲食税減税しようという建前から改正案を作っているわけではございませんで、遊興飲食税の今の税務行政をぜひ合理化したい、また負担均衡をはかりたいという見地からこの改正を行なっているわけでございますので、真の大衆につきましては、あるいは三%なり五%なりの税金なら、負担してもらって負担してもらえないことはないのじゃないだろうか、こういうふうに考えられるものがありましても思い切って課税からはずしてしまう。そのかわり多少、十円ないし二十円税金がふえる部分が出てくるけれども、しかし全体の合理化のためにはがまんしてもらえないだろうかと思われるような部分につきましては、若干租税負担がふえるものもあえて押し切って、このような改正をいたしたいという考え方に立っておる点を御了承願いたいのでございます。  その(2)は「飲食店喫茶店その他これらに類する場所及び旅館における一人一回の料金が三百円以下である飲食及びその他の利用行為に対しては、遊興飲食税を課することができないものとすること。」であります。旅館の場合と同じように免税点をさらに引き上げまして、真の大衆負担は避けるようにいたしたいと考えておるわけでございます。  その(3)は「あらかじめ提供品目ごと料金を支払う飲食については、一品価格が百五十円以下のものに対しては遊興飲食税を課することができないものとし、標準税率は、百分の十とすること。」であります。免税点の引き上げの程度がちょうど五割でございますので、一品価格につきましても五割を引き上げまして百五十円といたしたい、かように考えておるわけであります。そのかわり税率は、現行の五%を一〇%に改正いたしたいわけであります。  その(4)は「飲食店喫茶店その他これらに類する場所における飲食及びその他の利用行為で一人一同の料金が三百円をこえ五百円以下のものであっても、三百円をこえるものについては、公給領収証を交付するものとすること。」であります。普通飲食の場合は五百円以下の部分について、公給領収証を交付する必要がない、そこが非常に不公平だということで、他の方面からいろいろ非難されておったわけであります。また非難にももっともな点がございますので、免税点を上げる機会に全面適用改正をしたい。しかしながら実際問題として三百円をこえるような人が、ときたまにしかその店には現われないというようなところにまで一律に公給領収証制度を強制することは適当でありませんので、そういう部分につきましては政令で、除外規定が設けられることになっておるわけであります。  その(5)は「課税客体ごと標準税率区分を次により単一化すること。」でありまして、芸者その他これに類する者の花代も、料理店、貸席、カフエーバーその他当該道府県条例で定めるこれらに類する場所における遊興飲食またはその他の利用行為料金と同じように百分の十五に税率を単一化いたしたい、かように考えておるわけでございます。法文の上では「芸者その他これに類する者」と書いてありますが、これに類する者ということになりますと、実態からいいまして料理店遊芸仲居でありますとか、あるいはカフエー、キャバレー、バー等におきますところの女給、こういう者も一緒に考えるのがむしろ至当ではなかろうか、こういうふうにも思われるわけであります。ところがそういう人たちにつきましては、芸者の場合のように時間ぎめの花代制度がありませんで、指名料が幾らであるとか、あるいはまた消資金額の二割を料金に加算して、そういう意味サービス代として徴収するとか、いろいろなやり方が行われておるわけでございます。いわゆる花代の形で料金を徴収しておりませんので、自然また4の項の中にも入っていないわけでございます。その結果非常な不均衡ができておるわけでございまして、今申し上げました者の方が、むしろ人数としてははるかに多いわけでございますが、それらにつきまして花代式課税をやろうとすることは、経営形態について税の面から変更を強要するということにもなって参るわけでございまして、とうていできる問題でないと思うのであります。たまたま現在の芸者その他これに類する者の花代式料金をとっておる者についてだけ三割課税を行なっております関係上、あるいは第二検番ができますとか、あるいは経営形態を変えていくとかいうことによって、ここへ来ておるものがたくさん生じて参ってきております。そういうようなことから考えますと、むしろ全消費金額を一括して抑えまして、そうして一五%という単一の税率適用していった方が、さしあたりは減収を生ずるだろうけれども、将来に当っては適切な課税を行えるようになって増収が期待できるのではないか、こういう考え方を持ちましてこのような改正をいたしたいと考えたわけであります。  なお御参考までに申し上げますと、戦前芸者の数が八万くらいあったわけでございますが、逐年減って参りまして、現在では二万五千人くらいになっておるわけでございます。それではそういう関係の者が減ったかといいますと、むしろ全体といたしましては非常にふえておると思われるのでありまして、形が変ってきておるということでございます。(ハ)の「旅館における宿泊及びこれらに伴う飲食料金」につきましては、一人一泊の料金が千円をこえる場合、また(ニ)の普通飲食の場合の一人一回の料金が五百円をこえる場合には一〇%であり、それ以下の場合には五%というふうな二段階税率になっておるわけでありますが、二段階税率にしておる結果、店によってはこれらの五%の適用を受ける店と、先ほど申しました料理店等におきます一五%の税率適用を受ける店との間で、むしろどちらにおける飲食に多くの負担を求めたらよろしいかということについて、逆の場合もたくさんありまして、場末の小料理店と、東京会館とか帝国ホテルとかいうところと比べて参りますと、金額によって五%から一五%までの開きというものが必ずしも適正でないという感じさえも持たれるわけであります。そこでなるべく両者税率の幅を小さくしたい。そうすると一〇%、一五%というふうになってくると思うのでありましてそのかわりに今まで五%の適用を受けていた部分で真に大衆的なものは課税からはずしてしまう、こういう考え方をとりたいと考えております。  第五は、固定資産税に関する事項でありまして、その(1)は「外航船舶に対する固定資産税課税標準価格の六分の一に相当する額に引き下げることとし、これに伴い、外航船舶以外の船舶に対する固定資産税課税標準価格の三分の二に相当する額に引き下げること。」にいたしておるわけであります。外航船舶につきましては、外国税制わが国税制とが違っております関係上、固定資産税外航船舶課税をしていない国との間におきましては、わが国競争力に若干劣るものが出て参ってきておりますので、そういう意味において外航船舶に対する固定資産税負担をやめてもらいたいというような意見もいろいろあるわけであります。しかしこのこと自体にも問題がございますので、この際従来の負担をさらに半減したい。しかし港湾所在市町村としては困って参りますので、特別とん税を設けまして、外国船舶にも特別に税負担をしてもらいまして、その収入額は全額を開港所在市町村に譲与する制度を設けることによって、その補てんをいたしたいというように考えておるわけであります。  その(2)は「大規模償却資産に対する市町村課税限度額を次のように改めるものとすること。」でありまして、この部分と、それから(3)の「大規模償却資産に対する市町村課税額を保障するため定められる前年度基準財政需要額に対する割合は、現行の百分の百二十を百分の百三十に引き上げること。」この両者を合せまして、両者ともにこの制度を設けましたときの経過措置として、比較的に市町村課税額を広げておったのをそのまま恒久化いたしまして、市町村実態に沿うように課税の額を広げたい、かように考えておるわけであります。  その(4)は「新たに建設された工場及び発電所の用に供する償却資産で大規模償却資産に該当することとなるものに対する所在市町村課税限度額については、当該市町村基準財政収入見込額当該市町村の前年度基準財政需要額の、それぞれ当該償却資産に対して固定資産税が課されることとなる最初の年度及び第二年度にあっては一分の百八十、第三年度及び第四年度にあっては百分の百六十、第五年度にあっては百分の百四十の額に達するまでに増額するものとすること。この場合において、一の納税義務者が当該大規模の償却資産とそれ以外の償却資産とを所有するときは、両者区分し、当該大規模償却資産についてのみ適用するものとすること。」であります。現在は特に限られたものについてだけ、こういう建設当初の経過的な市町村課税限度額の拡張をやっておるわけでありますが、それを全体的に広げまして、こういうものが新設された当座は、市町村としての財政需要も多いわけでありますので、その実態に即するように改めることを考えておるわけであります。  その(5)は「自治庁長官又は道府県知事の評価に係る固定資産で、納税義務者の申告遅延等のため、当該固定資産の価格等の通知が遅延する場合においては、市町村は、前年度固定資産税課税標準額を仮に課税標準として算定した額の二分の一の範囲内で当該年度分の固定資産税を仮に徴収することができるものとし、自治庁長官又は都道府県知事から価格等の通知が行われた場合においては、その通知が行われた日以後に到来する納期において、税額の調整を行うことができるものとすること。」であります。発電関係の施設でありますとか、あるいはまた鉄道、軌道の施設でありますとか、あるいは船舶でありますとかいうものでありまして、自治庁長官が評価をして関係市町村に価額を配分するわけでありますが、申告がおくれる等の結果から配分のおくれることもございますので、そういう場合には、前年度の額を基礎にしてかりに徴収しておける制度を設けておきたいと考えているわけであります。もとよりこれにつきましては、納税義務者からは、もしその額が高いとかいう場合には、異議の申し立てができるような道も開いているわけであります。  第六は、電気ガス税に関する事項であります。  その(1)は「水銀鉱、石綿及び可燃性天然ガスの掘採又はマグネシウム地金、焼成りん肥及び焼成りん肥にりん酸液を作用させた肥料の製造のために使用する電気に対しては、電気ガス税を課さないものとすること。」であります。その後に製法が発展してきて、現在では電気ガス税が課税されないことになっているものと全く同性質のものができてきたというような場合、あるいはまた従来は外国からの輸入にもっぱらたよっておった、しかし新しい産業が日本に起って、それが製造される、しかも原価の中に電気料金が多量を占めるというような場合は、従来の方針にのっとりまして非課税とすることが妥当だと思われますので、非常にしぼった範囲でありますが、この程度のものを非課税範囲に加えたいと考えているわけであります。  その(2)は「漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合及び水産加工業協同組合連合会並びにこれらの法人以外の法人又は個人で、その所有する製氷設備に係る製氷能力の合計が政令で定める基準に満たないものが設置する製氷工場において製造する氷を、もっぱら漁船その他政令で定める場所における水産物の保存に供している場合には、当該工場において直接氷の製造に使用する電気に対しては、電気ガス税を課さないものとすること。」であります。従来、氷を作る場合には多量の電気が消費されるということから、全体的に製氷に使用します電気を非課税にすべきだ、こういう議論があったわけであります。しかしながら、氷にはむしろ消費財的な性格が多分にあるわけでございますので、そのような改正にも踏み切り得なかったわけでありますが、特に漁民において使用されております氷は、生産財的な性格が多分にございますので、漁民保護という見地にしぼって製氷に使われますところの氷を非課税にしたい。従ってまた、そのような保証のないような部分については、かりに漁船に使われるような氷でありましても、それに使われる電気を非課税としないという考え方をとっているわけであります。そこで漁業協同組合の関係製氷工場のほかには、中小の製氷工場を加える程度にとどめているわけでございます。  その(3)は「漁業協同組合等が前項の工場に併置する冷蔵倉庫でもっぱら水産物の冷蔵又は凍結の用に供するものにおいて、直接水産物の冷蔵又は凍結に使用する電気に対しては、電気ガス税を課さないものとすること。」であります。これも今申し上げましたことと同じ趣旨であります。  第七は、木材引取税にに関する事項でありまして、「価格課税標準として課する場合における標準税率を百分の四、制限税率を百分の五に引き下げること。」であります。現在、木材引取税におきましては、市町村間において課税状況が非常に区々であり、負担も非常に不均衡になっているというような非難があるわけでございます。そこで、自治庁から課税をいたします場合の基礎になりますような価格を示して指導に当っているわけでありますが、なお徹底いたしておりませんので、この際いろいろな意見をも考え合せまして、税率を引き下げる。しかしながら、税率を引き下げましても、むしろ適正な課税を行うことによって減収はなるべく避けられるであろうというふうな程度にとどめておきたい、こういう考え方を持っているわけであります。どちらかといいますと、木材引取税の適正化を期する意味において税率を引き下げたいと考えているわけであります。  第八は入湯税に関する事項でありまして「入湯税を環境衛生施設、その他観光施設の整備に要する費用に充てるための目的税とすること。」であります。総額におきましても三億円程度のものでございまして、どちらかといいますと温泉浴場での入湯でございまして、当然遊興飲食税の対象にもなっているかと思われます。従って遊興飲食税の対象にし、さらに入湯税の対象にして、両者を普通税にそのまま続けていくということは多少問題がございます上、また鉱泉浴場所在の市町村につきましては、特殊な財政需要があるわけでございますので、入湯税はそういう面に向ける財源として定めるようにいたしたい、かように考えているわけでございます。従いまして、地方交付税を計算します場合の基準財政収入額には、入湯税は入ってこないわけになります。地方交付税を交付されておったような団体におきましては、基準財政収入額に入っておった入湯税分だけは地方交付税が増額される、こういう結果にもなるわけでございますので、自然入湯税は環境衛生施設その他の方面に積極的に充てていくことが可能になるだろうというふうに存じておるのであります。  第九は軽油引取税に関する事項であります。その(1)は「特約業者又は元売業者が軽油を使用して軽油以外の自動車の内燃機関の用に供することができると認められる炭化水素油を製造する場合における軽油の使用については、軽油引取税のみなす課税ができるものとすること。」であります。現在では、軽油と他の油とをまぜ合せまして、その結果軽油の規格からはずれます場合には、使用した軽油にも軽油引取税を課さないことにしているわけでありますが、そのような結果から、若干軽油の規格をはずすような努力をして自動車に使うというようなことも見受けられるように思われますので、そういう場合には、その使った軽油についてはやはり軽油引取税は課せられるのだ、こういうように改めたいのであります。  その(2)は「税率を二キロリットルにつき九千円に引き上げること。」でございます。揮発油課税につきまして別途五割に相当する税率引き上げが行われようとしているわけでございますので、それに並行してこの程度税率改正いたしたいと考えているわけであります。  第十は、その他者税目を通じて規定の整備を要する事項でございまして、また事務的な問題でございます。  その(1)は総則に関するものでありまして「過納又は誤納に係る地方団体の徴収金を還付する場合における還付加算金の日数の計算の終期は、還付のため支出を決定した日であることを明確にすること。」であります。国税徴収法の取扱いと同じようにしております。  その(2)の住民税に関する事項の一は「道府県民税及び市町村民税所得割額の端数計算については、それぞれの税額について十円未満の端数金額を切り捨てるものとし、また市町村民税所得割額を課税標準として道府県民税所得割額を算定する場合おいては、市町村民税所得割額をそのまま用いるものとすること。」であります。いずれも地方団体の意見に徴して端数計算のやり方を改めたいというふうに考えたわけでございます。その二は「法人法人税法第二十六条の四の規定によって欠損金の繰戻による法人税領の還付を受けた場合においては、還付された法人税額を五年間を限って法人税制課税標準となる法人税額から控除するものとすること。」であります。現在でもこの趣旨制度は設けておるわけでありますが、やり方が繰り戻しにかかる欠損金を繰り越してかりに算定した法人税額を基準として法人税割を計算することにしてあるのでございます。しかし法人税につきましても、二段階税率が定められておりまして、この方式ではなかなかむずかしい複雑な計算が起って参りますので、簡素化いたすように改めたわけであります。その三は「法人税割の分割基準については、事業税における場合と取扱を同じくするため、従業者の定義を明確にし、法人が解散し、又は合併した場合の清算所得に係る法人税割の分割基準である従弐者の数は、解散の百又は被合併法人の合併の日の属する事業年度に属する各月の末日現在における数位をそれぞれ合計したものとすること。」でありまして、事業税法人税割との取扱いを合せたいと考えているわけであります。  (3)は事業税に関するものであります。その一は「地方税法の施行時において事務所又は事業所を設けないで事業を行う外国法人であっても、事務所または事業所に準ずるもので政令で定める場所がある場合においては、事業税を課する旨を明確にすること。」であります。損害保険事業等を行なっております外国法人が、日本には事務所または事業所はない、ただ代理店を設けてやらせておる、そういう場合には事業税課税できるかどうか疑問がございますので、課税できるのだということを明確にしようとしておるわけでございます。  その二は「鉱物の掘採事業と精練事業とを一貫して行う者の事業税課税標準となる所得の算定については、所得区分計算ができる場合は、その方法について道府県知事の承認を受け、区分計算を行うことができるものとすること。また、この区分計算の方法によることとした者が、その方法を変更する場合においても、承認を要するものとすること。というのでありまして、区分計算ができるのに一定の按分方式を強制することは適当ではございませんので、このように改めたいわけであります。  その三は「事業税課税される場合で、法人税が課税されない場合においては、道府県知事の調査による更正または決定をすることができる旨を明確にすること。」であります。  (4)は不動産取得税に関するものでありまして、「住宅を新築した等により、土地の取得等に対する既納の不動産取得税と還付することとなる場合の還付加算金の日数計算の始期は、納税者が還付の申請をした日から起算して十日を経過した日とすること。」であります。規定が欠けておりますので、このように明確な規定を設けたいと考えておるわけであります。  (5)は遊興飲食税に関する事項でありまして、その一は「遊興飲食税特別徴収義務者が、客から料金を徴収せず、または通常の料金に比較して著しく低い料金を徴収して、遊興飲食宿泊等をさせた場合においては、その特別徴収義務者に対し、その行為者が、当該場所における当該行為について通常支払うべき料金を支払ったものとみなして算定した遊興飲食税を課することができるものとすること。」であります、株式組織の旅館等におきましては、配当金を交付しないかわりに優待券等を交付している向きがございます。無料の優待券をもって宿泊をする。その場合には遊興飲食税が徴収できないので、旅館相互間において不均衡が生じてくる、こういう問題がございますので、そういう場合には遊興飲食税課税できるようにいたしておきたい、かように考えておる次第でございます。  その二は「遊興飲食税特別徴収義務者が、料金及び遊興飲食税の全部又は一部を受け取ることができなかったことにより、道府県が既に納入されている遊興飲食税に相当する額を還付する場合において当該特別徴収義務者に未納の税金があるときは、これに充当することができるものとすること。」であります。  (6)は固定資産税でございまして「固定資産税額が条例で定める額に満たない少額のものについては、一の納期においてその全額を徴収することができるものとすること。」であります。住民税につきまして均等割だけを納付する人については、一期に徴収することができるのだという規定を置いておりまする考え方に合せまして、このような規定を置いて、税務行政を多少とも簡素化したいと考えておるわけであります。  (7)は軽油引取税でありまして、「軽油の引取が行われた後、販売契約の解除によって、その引取に係る軽油を返還した場合において、軽油引取税を還付することとなるときの還付加算金の品数計算の始期は、特別徴収義務者が還付の申請をした日から起算して十日を経過した日とすること。」これも規定を欠いておりますので、明確にしておきたいと考えておるわけであります。  (8)は都市計画税で、「都市計画税を固定資産税と合せて収納する場合においては、それぞれの税額について十円米満の端数金額を切り捨てるものとすること。」であります。  (9)は、法人税の改正に準じて行うものでありまして、その一は、「法人税が課されることとなる法人でない社団また財団で、代表者または管理人の定めのあるものについては、法人税割を課税するものとすること。」であります。  その二は中業税につきまして、「輸出水産業組合を法第七十二条の三十二節四項の特別法人に追加するとともに、漁業生産組合及び生産森林組合で、当該組合の事業に従事する総合員に対し、給料、貸金、賞与等の給与を支給するものは、特別法人から除外して普通法人として課税標準の特例を受ける法人の範囲から除外するものとすること。従ってまた、法第七十三条の十八第三項の課税標準の特例を受ける法人の範囲から除外するものとすること。」であります。  また「人格のない社団等に対しては、法人として収益事業から生ずる所得に対し、事業税課税するものとすること。」としてあります。  (10)は、その他の問題でありまして、「娯楽施設利用税遊興飲食税又は軽油引取税について、保金のための担保または徴収猶予に係る担保を徴した場合においては、当該担保に係る抵当権の取得等についての登録税を免除するものとすること。」として、この法律の付則で登録税法を改めることにいたしておるのでございます。  以上であります。
  4. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 これより地方税法の一部を改正する法律案の質疑に入ります。大臣は今参議院の予算審議の方に出ておられます。間もなく見えると思います。質疑の通告がありまするので、順次これを許します。永田亮一君。
  5. 永田亮一

    ○永田委員 このたびの地方税法の一部を改正する法律案につきましては、先日田中大臣からその趣旨説明を伺いまして、また本日奥野部長から詳細に御説明を伺いまして、大体において今度の税法の改正案はおおむね妥当であると思われるのであります。特に地方制度調査会あるいは臨時税制調査会の答申を非常に尊重されておりますし、また田中大臣も言われたように、このたびの改正負担均衡化とかあるいは合理化という点に、非常に注意を払われておることにつきましては敬意を表する次第であります。ただ二、三私疑問に思う点もありますし、わからない点もありますのでお尋ねをいたしたいと思います。  まず一番初めは住民税の問題でありますが、住民税所得割負担均衡化による減収の補てんの問題であります。第二方式あるいは第三方式を採用している中小の都市が財政力が非常に弱い。第一方式をとっておる大都市に比べて底力がないということは事実でありますが、この第二、第三課税方式をとっておる中小都市がこのたびの改正によって、非常に減収になると思うのであります。大臣が言われた均衡化という点からいいますと、第二、第三の場合に比べて、第一との割合が二、三倍にもなるという、そういう差があるということでありまするが、そういう負担均衡化ということの点からいえば大へんけっこうなのでありますが、実際の問題として中小都市が非常に困っておる。中小都市のこの困窮ぶりに対して自治庁はこれを放置しておく考えかどうか、この点をよく伺いたいのであります。
  6. 奥野誠亮

    奥野政府委員 お話のように、住民税負担均衡化をはかる措置をとっております結果、従来住民税負担を特に過重にしておりました市町村におきましては多額の減収を生ずるわけでありまして、私どもの見込みでは四十八、九億円に上るのではないかというふうに思っております。この四十八、九億円に上る減収というものは、御指摘になりましたような弱小の市町村に限られた減収でありますので、それらの市町村に与える影響は甚大なものがあろうと思うのであります。また甚大なものがありますために、多年住民税負担均衡化をやかましく当委員会においても御指摘を受けまして、なおあえてとり得なかった問題でもあったわけでございます。幸いにして三十二年度におきましては、地方財源全体として千億円程度の強化ができる。従いましてまた個々の町村につきましても補償される財源の程度が従来よりもかなり拡張されて参っているわけでございます。そういう好機とも言えるわけでございますので、その機会に積極的に住民税負担均衡化に手をつけたい、かように考えたわけでございます。しかしながら、従来から地方交付税を計算いたします場合には、第一課税方式によって市町村民税所得割の額を算定して参ったわけでございます。第二方式、第三方式によってそれよりも増収を得ております団体は、一種の含み財産といいましょうか、地方交付税で計算されておる以外に別な財源があったわけでございます。従いまして、均衡化の措置をとりましても、その団体では、実際は減収になるのでありますけれども、地方交付税の計算上は減収になってこないのであります。従来と同じように第一方式で算定されて参るわけでありますから、基準財政収入額には変りはない、しかし現実には住民税所得割は減って参るわけであります。従いましてその団体に補償される財源が多くなるわけでありますから、ある程度それによってもカバーされるわけでありますけれども、それだけでは私たちとしてもほうっておけないだろう、こう考えているわけでございます。そこで二年ないし三年間にわたりまして経過的な措置として、そういうような団体につきましてだけ特別な財源補てんの措置を講じたいと考えております。その措置としましては、やはり特別交付税をそれぞれの団体に充当していくという行き方よりほかはないのじゃなかろうかというふうに存じておるわけであります。大体の運営の仕方としましては、三十二年度において住民税個人所得割の額が基準財政収入額として算定されて参ります。第一方式の場合でも二割の超過課税の道があるわけでありますから、たとえばこれの一・二倍の額を基礎にいたしまして、これよりも三十一年度の現実の所得割の額が多かった場合は、その差額が住民税負担均衡化によって減収になってくる範囲のものだろうと考えられるわけであります。従いまして、たとえば三十二年度基準財政収入額から逆算をいたしました所得割の額の二倍を超えるような住民税を三十一年度に課しておったとしました場合、こえる部分は全額特別交付税で補てんをする、あるいはまた一・五倍をこえておった場合は、こえておった分の半分を特別交付税で補てんをする、こういうようなやり方をしまして、激減緩和の措置を講じたい、またこの関係減収補てんにつきましては、相当多額の特別交付税を充てていくべきだろうというふうに存じておるわけであります。
  7. 永田亮一

    ○永田委員 今の御説明を承わりまして特別交付税でそれがまかなえるのであれば非常にけっこうでありまするが、中小都市におきましては、田中大臣が御説明になった中では、自然増収で大体やっていけるのではないかというような御説明があったわけであります。しかしこういう自然増収などにあまり期待をかけておりますと、大都市とは共なりまして、中小都市は自然増収というものはほとんどないのではないか、こういう点を特に御留意願いたいと思うのであります。なお中小都市などの希望としては、調整するまで一年待ってくれないかというような希望もありますが、こういう一年待つというような考えはございませんか。
  8. 奥野誠亮

    奥野政府委員 住民税所得割は第一方式をお考えいただきましても、三十二年より三十三年は若干軽減されます。三十三年よりも三十四年がさらに若干軽減されます。そういたしますと、かりに一年待ちまして三十三年から行うとしますと、減収程度が一挙に今よりももっと大きくなるわけであります。非常な激減を来たすわけでございます。そういう意味におきましては、私たちとしては順次軽減していくわけでありますから第二方式、第三方式のところが三十二年度において軽減しなければならない、三十三年度においてはもう一段の軽減を予定しているわけであります。従いましてやはり順次軽減をしていくという趣旨においては、三十二年度からよるべき基準を示していくことが順当だろうと考えております。それと同時に、三十二年度は、先ほども申し上げましたように、地方財政全体としては千億円に上る追加財源の得られる際でございますので、こういう減収の生ずるような措置をとります場合には、一つのチャンスじゃなかろうかというふうにも考えておるわけでございます。
  9. 永田亮一

    ○永田委員 この減収補てんについて、中小都市からの希望として、もう一つたばこ消費税を増率してこれに見合せてほしいという意見がありまするが、たばこ消費税を増率するというようなお考えがありますかどうか。
  10. 奥野誠亮

    奥野政府委員 地方財源を増加したいという意味においては大へんけっこうなことでございますが、たばこ消費税をふやすことは、結果においては国の財源を譲り受ける、専売益金を減額して、たばこ消費税に振り向けるということにせざるを得ないのじゃないだろうかというふうに考えられるわけであります。そうしますと、国と地方との間におきます財源調整を現状でいいと考えるかどうか、こういう問題になってくると思うのであります。その点につきましては、住民税につきましての税率調整は完全な減収補てんではございませんで、結果的にはかなりの減税も行なっておるということになっておるわけでございます。また地方交付税の繰り入れ割合を二六%に引き上げておるわけでございますけれども、これにつきましても機械的な調整をすれば二八%になるという問題もあるわけでございます。しかしながら幸いにして、地方税にも増収があるわけでございますので、三十二年度は一応これを試みまして、三十三年度における地方税の増収がどういう姿になるだろうか、そういうことも見きわめました上で、国と地方との間の財源調整あるいは地方財源所要額全体としての調達方法というものを検討したい、かように考えておるわけでございます。
  11. 永田亮一

    ○永田委員 大体わかりました。次は遊興飲食税について少しお伺いしたいと思いますが、今度の遊興飲食税については、いろいろ問題がたくさんあると思うのでありまするが、私など考えてみまして、よい点がたくさんありまするが、しかしどうも不都合だと思われる点も二、三あるのであります。その中でまず第一に考えられることは、大衆飲食の問題であります。三百円まで免税点を引き上げられたということにつきましては、これは大へんけっこうであります。私どもも大賛成であります。ただ三百円から五百円までの、今まで五%であったものを一〇%に引き上げた。この点に問題があると思うのであります。政府は減税ということを公約しておるときに、たといわずかではあるかもしれませんが、大衆飲食の面において増税をするということははなはだ遺憾であると思うのであります。たとえば私などがすし屋に行って食事をしてみますと、特別の銀座あたりの高いすし屋は別としましても、普通のすし屋で飯を食うと、大体百五十円か二百円くらいじゃないかと思うのですが、お銚子を一本飲んでつまみ物をちょっと出してもらうとすると、どうも三百円をこえるのじゃないかと思うのです。ちょっと気軽に入って、お銚子一本飲んで、三百円をこえるということになりますると、その部分では、今まで五%しか税金をとられなかったのに、増税になる、倍になるということは、どうも納得がいかないのであります。この点は私はせっかくの政府の御提案でありまするが、三百円から五百円までの税率を今まで通りに五%に直していただきたいと思うのでありまするが、この点について御意見を伺います。
  12. 加藤精三

    ○加藤(精)政府委員 どうもただいま永田委員からの御質問で、地方税減税というようなことを政府が表面に政策としているように承わりましたのでありますが、個々の税について、たとえば中小企業の事業税負担軽減のような工合に、個々の税についてはそれぞれ措置したものもございますけれども、一般的に地方税減税ということの趣旨は政策として打ち出したわけではございませんで、大体それよりも地方財政を堅実にするとかあるいは行政水準の確保とかいう点を今回は政策としているようなものであるということに私は理解しているのでございます。しかしながら一千億の所得税減税に伴って、その政策との調和上住民税におきまして減税措置をとったことはもちろんございます。はなはだ回りくどいようなことを申しますが、今回の遊興飲食税減税ということを標榜してやったのではございませんで、どこまでも課税の公平とか課税技術の方法の問題とかの改善をはかった趣旨と理解いたしておりますので、まあわれわれ貧乏な大衆の出入りするところは、飲食店にいたしましても喫茶店にいたしましても、すし屋にいたしましても、また旅館宿泊でもほとんどが免税になっておるようなわけでございまして、それ以上の分は消費高に応じてなるべく税率を統一して、そして遊興飲食税全体の徴収額においては市町村団体、都道府県団体の収入のあまり低下にならぬようにという含みで改正しているわけでございますので、そういうふうに御了承いただきたいと思います。
  13. 永田亮一

    ○永田委員 今の三百円から五百円までを五%に据え置いていただきたいということについては特に御研究を願いたいと思います。  それからきのうも問題になっておりましたが、三百円以上のものに対して今度強制的に公給領収証を出さなければならないということについては、実際の面においてかなりむずかしいのではないかと思われます。昨日も同僚の福井君がいろいろ言っておりましたが、大衆飲食の中にはおやじと奥さんと娘さんぐらいでやっておるようなところもありまして、豚カツをあげたり、すしを握ったり、そういうことをやりながら家族だけでやっておるところが、うどん屋なんかでもそうでありまするが、そういうところが多いと思うのです。そういうところで領収証を書けといってもなかなかむずかしいのではないか。領収証の形式そのものがちょっと複雑でありましてこれを書き入れるのにはやはり研究を要するのであります。普通のおやじさんにすぐ書けといっても、ちょっと書きにくい点があると思います。しかも人数がわずかでやっておる大衆飲食で一々公給領収証を書くということは、実際には困難ではないかと思うのであります。大衆飲食の方からのいろいろの陳情を聞いておりましても、この点はまだあまり強く言ってこないのでありまするが、よく領収証というものを知らないから言ってこないのじゃないかと思うのです。私はこれをもし実施した場合に大衆飲食の諸君が非常に困って、この次の機会までに非常に大きな運動として領収証廃止の運動を起して来はしないかという心配があるのであります。それで、この領収証を出すということが悪いとは申しませんけれども、こういう小さな店にむずかしい領収証を書かせるのではなくしてもう少し何か非常に簡単なものでやっていけるような措置をとられたらどうか、この点について御説明を伺いたいと思います。
  14. 奥野誠亮

    奥野政府委員 現在領収証の様式を示しております中には十一種類を規定いたしております。そのいずれか便利な方法をやればよろしいと思うのであります。伝票を使っている店がございますが、その場合にはその伝票様式のものも一つの型として示しておりますので、それをお使いになればいいのじゃないかというふうに存じております。なお、領収証を簡単にするばかりではなしに、先ほどちょっと申し上げましたように、時たま三百円をこえる飲食がある程度だというような店もかなり多くはないだろうかというふうに思っておりますので、そういう場合には領収証制度はそういう店には適用しないというふうにいたしたいと考えるわけでございます。そういう意味で第百二十九条の第三項は要するに領収証制度適用しない店をあげておるわけでありますけれども、その中に、「政令で定める飲食店喫茶店その他これらに類する場所における飲食その他の利用行為」というものを加える予定をいたしております。そしてその範囲は政府で明確にいたしたいというふうに考えておるわけであります。御趣旨の線に沿って運用して参る考え方をいたしております点を御了承願いたいと思います。
  15. 永田亮一

    ○永田委員 それから旅館の問題についてちょっとお伺いいたしますが、今度の住民税改正の中で、もう一つ私がふに落ちない、困ると思う点は、旅館の八百円から千円までの増税になる分であります。八百円まで免税点を引き上げられたということは非常にけっこうであります。しかし八百円から千円までは今までの五%が一〇%に上る。この点に問題があるのでありまして今日普通われわれが考えてみまして、千円くらいで泊めてくれる宿屋、晩飯を食って朝飯を食って千円で泊るというところは決してぜいたくではない。むしろ中以下のところじゃないかと思うのです。私もこの間ちょっと郷里の方の旅館で泊ってみたのですが、千円以下というのはほとんどないのです。さっき奥野君は旅館の八百円以下が八十何%もあるというお話だったのですが、ちょっとこれはおかしいと思うのです。八百円以下で泊るところが八十何%もある、これは旅館の数からいうと、あるいは相当あるかもしれませんけれども、泊る人の数からいうと、これはごく少いのではないかと思うのです。八百円から千円までのところに泊る人は決して大金持であったりぜいたくをするわけじゃないので、八百円から千円くらいで泊る人はごく  一般の、むしろ中流以下の庶民階級じゃないかと思います。そういう連中が泊ってかりに九百円というような宿泊料を払う場合に、今までよりも倍も税金を取られる。この点は先ほどの大衆飲食の三百円から五百円までと同じような関係で、やはりもう一度考え直してもらったらどうか。今まで通りに千円までは五分に据え置く、こういうお考えはないかどうか、一つ伺いたいと思います。
  16. 奥野誠亮

    奥野政府委員 先ほど政務次官からも御説明がございましたが、政務次官のお話の点につきまして、さらにこまかい点を補足さしていただきたいと思います。  今度改正するに当りまして考えました基本的な点は、租税負担合理化するとともに、税金徴収事務の簡素化を徹底することでございます。積極的に減税をするとかいうようなことよりも、租税負担合理化するとともに、税金徴収事務の簡素化を徹底したいというねらいでございます。といいますのは、現在は店によりまして適用すべき税率に差等を設けておるわけでございます。同じように飲食をします店でありましても、婦女の接待を伴うような料理店等におきまする行為については、一五%の税率を使う。普通の飲食店におきましては、税率は五百円前であれば五%であり、それをこえれば全体について一〇%である、こういうようにいたしておるわけであります。しかしながら場末の小料理店と、都心にありますところの普通飲食店の設備の整ったところと比べてみますと、片方は一五%の税率を使い、他方では五%の税率を使う。その間に三倍の開きがあります。これはどうも実際問題としてなかなか納得してもらいにくい問題でございます。同時にまた料理店旅館との関係におきましても、同じような問題が起っておるのでありまして、料理店で会食行為をすれば一五%の税率適用になる。ところが旅館でありましても、女中さんがたくさんいたりしまして、料理店とそうかわりないような普通旅館もずいぶん数は多いわけであります。そこで会食行為をすれば、五百円までで済ませれば五%、かりに一人分が五百円をこえましても一〇%、こういう問題になって参るのでありますので、料理店における会食行為がどんどん旅館に流れてきている、こういうこともあるわけでございます。考え方の基本を言いますと、婦女の接待を伴うような店だとか、それの伴わないような店だとか、なるほど抽象的には区分できますが、業態の実際に即して見ていきますと、なかなか区分ができない。むしろ逆の税率の使い方をした方がよろしいじゃないか、こういうふうに思われる面もたくさんあるわけでございます。そうしますと、業者でも言うておりますように、単に消費金額だけで税率区分をしたらどうだろうか。たとえば、千円以下であれば五%だ、千円をこえれば一〇%である、こういうような考え方もできるわけでありますが、しかし国民感情からいたしますと、どうしても婦女の接待を伴うような店は、同じ金額でも多少税率が違うべきじゃないかと思われるわけでございます。なかなか区分のできにくい面も多いわけでございますので、税率に差は設ける。税率の差は設けるが、できる限り少くしていかなければならない、こういう考え方に私たちとしても到達いたして参ったわけでございます。そうしますと、現在の五%、一〇%、一五%、三〇%という、こういう四つの税率区分、これの下をはずし上をはずす、こういう考え方。そうしますと一〇%と一五%という二本建の税率になるわけであります。婦女の接待を伴う店であれば一五%一本だ。そうでない店は一〇%一本だ。そうしますと、一〇%の税率一本にする結果は、税負担がふえる面が出て参ります。そこで思い切って免税点を引き上げて税率を上げる結果、あまりきつい負担になるならば、そういうところは全部課税からはずしてしまおうじゃないか、そういうふうな考え方で、普通飲食店でありますれば、三百円までは課税をしない、旅館であれば八百円までは課税しない、そのかわりに御指摘になりましたように、普通飲食の場合には三百円をこえ五百円まで、八百円をこえ千円までの課税負担はふえることとなって参るのであります。しかしその十円ないし二十円ふえる。この十円ないし二十円ふえたということで遊興飲食税全体を合理化するのだ。遊興飲食税全体を合理化する場合に、そこに若干高くなるところが出て参るけれども、しかしそれも十円ないし十五円なら、全体の立場からがまんをしてもらえないだろうか、こういうふうに考えたわけであります。しかもまた、免税点を上げて参ります結果は、旅館につきましては、私先ほど数字を申し上げましたが、標準料金の定めがある旅館については、標準料金が八百円までになっておる、こういう店をとらえていきますと、全体の旅館数の八二・三%になっておるわけでございます。もちろん標準料金が八百円でありましても、九百円、千円の宿泊客もございましょうから、その店全部が課税のうるさい問題からはずれるわけじゃございません。しかしながら、それから傾向を判断していただけるように、非常に数の多い店は、この税金のわずらわしいという問題からはずれていけるだろう、こういうふうに考えたのであります。そうしますと、限られた店において遊興飲食税徴収の事務をやってもらえるわけでありますから、そこでは適正な課税をしてもらえるんじゃないだろうか。また十円ないし二十円の負担のふえる面もございますが、それは、結局お客さんたちに負担をしてもらうわけ・であって、三百円をこえる飲食でありますとか、八百円をこえる宿泊をされる人についてだけ負担をしてもらうわけでありますから、そこはがまんをしてもらえるんじゃないだろうか。旅館なり飲食店なりに負担してもらうんじゃなく、お客さんにそれだけよけい負担してもらうわけであります。もちろん財政の状況を考えますならば、普通飲食店の免税点を五百円に上げ、宿泊者の免税点を千円に持っていく、こうなれば、おそらくどこにも文句はないだろうと思いますけれども、しかしながら、遊興飲食税について優先的に減税措置をとることが、この際としていいか悪いかということになりますと、やはり全体としての額はあまり減らさないようにしていかなければならないじゃないかと思われるわけであります。またこのことを旅館について申し上げますると、泊まる客が、千円までの料金であれば、五百円を基礎控除して五%の税率、千円をこえると、五百円の基礎控除をして一〇%の税率、晩の会食行為で芸者が出てくれば、その飲食料金に一五%の税率、さらに芸者花代に三〇%の税率、全く複雑でわからない。実際税金徴収には業者としては困っておられるわけでございます。困っておるということより以上に、税金を実際に負担する消費者にもわからないわけでございます。役人が税金を徴収するのでありましたならば、消費者がわからないにしても、消費者を説得してかかることができます。説明してかかることができます。しかしながら、業者に税金を徴収してもらうのでありますから、最初から消費者が納得ずくでおってくれなければ、なかなか徴収しにくいと思うのであります。そうしますと、消費者が納得してくれているという税率になりますと、やはり一本税率だと思います。普通飲食店であれば一〇%一本、料理店であれば一五%一本だ、こういうような税率の単一化が必要であろうと考えるわけであります。また税率を単一化することによりまして税金の徴収も割合にやりやすくなるわけであります。広く適切に課税もしていける。その結果、また全体として負担均衡も確保されることになるんじゃないか、こういうわけであります。全体としての合理化のために、一部若干永田さんの御指摘になりましたような点も出てくるわけでありますが、全体として考えまして、その程度はがまんしてもらえるところではなかろうかと思っておるわけであります。しかしながら、なお財政状況もよくなり、経済状況もよくなりました場合には、免税点を引き上げていくことは、この際においては問題となってくるだろうと存じておるわけであります。
  17. 永田亮一

    ○永田委員 税率の簡素化ということは、けっこうでありますけれども、ただここに出されておるのは、無理やりに簡素合理化したように思うのです。実情をあまりにも考えないで、とにかく簡素化している感じがするのです。たとえば、旅館で八百五十円で泊まったと仮定しますると、一割取られると八十五円取られる。そうすると、旅館の手取りは七百六十五円になるわけですね。そうすると、八百円で泊まった方は、まるまる旅館が八百円もらう。八百五十円取りましたら、かえって手取りは少くなってしまう。こういう矛盾も境のところでは起るわけであります。そうなると、私思うのに、八百円から千円までの宿泊料というものは結果的にはなくなってしまうだろうと思うのです。無理に簡素合理化して一割にそろえてしまった結果は、おそらく旅館の身になって考えてみますると、九百円なんという半ばの値段で泊めることはやめてしまって八百円に下げるか、あるいは千円に上げてしまうか、こういうことになって、机の上でお考えになられた簡素合理化ということが、実際は意味がない、こういう結果になりはしないかと思うのですが、いかがですか。
  18. 奥野誠亮

    奥野政府委員 御指摘になりました八百五十円の段階でとらえますと、八百五十円から五百円を基礎控除します。残りました三百五十円に対しまして一割の税金でありますから、三十五円ということになるわけであります。免税点をあまり多くしますと、ゼロから急に税負担になりますところの差が大きくなりますので、この点も考慮しなければならないわけであります。八百円になると、三十円の税金をとるかとらないかという境になってくると思うのでありますが、八百円をこえますと、八百円余りから五百円を引きました三百円余りに一割、三十円余りこういうことになるわけでありまして、その程度ですとあまり無理がないのじゃないか、こう思っておるわけであります。なお先ほど、旅館について標準料金八百円以下のところが全体としてどれだけあるかということを申し上げたわけでありますが、私たちがいろいろ調査したところによりますと、現在は五百円以下のものは課税していないわけであります。五百円をこえる宿泊者のうちで、五百円から八百円までの者がどれくらいあるかということを調べてみますと、五二・六%くらいじゃなかろうかと思っております。やはり非常にたくさんの人が遊興飲食税負担からはずれていることは事実でございます。店によりまして八百円前後の店もずいぶんあるわけでございますけれども、また全部が千円をこえるものばかりだというような旅館もあるわけでありまして、こういうところに泊る人たちを中心に税を負担してもらうことが、税務行政合理化していく一つのやり方ではないかと考えておりますことを御了解願いたいと思います。
  19. 永田亮一

    ○永田委員 その点はこの程度でとどめますが、大臣一つ、八百円から千円までを現在通りに五%に据え置くということについて御留意を願いたいと思います。  それからもう一つ私不合理に思うことは、実はこの間の日曜日に、私家族連れで宝塚の温泉に行きまして、晩に泊ったのですが、昼行ってそこで親子どんぶりを食った。そうすると、コーヒー一杯、親子どんぶり一つというようなものに対して一五%の税金がかかってくる。なぜこういうことになるのだと言って私がいろいろ問い詰めたところが、そこの旅館のおやじは旅館の組合長でありまして、なかなかよく知っているんですが、何か書類を持ってきて見せた。それは場所課税規定であります。それを見ると、昭和三十年九月何品品とかに自治庁通達がきているわけです。考えてみると、三十年九月というのは私が政務次官をしていたときで、あまり言うとやぶへびになると思って、いいかげんであまり追及しなかったのですけれども、しかし遊興を伴ったわけでもなんでもない。家族連れで行って昼飯を食ったんです。ところがそこに自治庁の通達で場所課税によって——私は泊ったのは旅館には違いないが、料理屋並みの税金、一割五分取られた。これはどう考えてみても私はいまだに残念です。(笑声)これはどういうわけなんですか。場所課税というものは、旅館に違いないのに料理屋としての料金をとるのか、これは全国こういうことをみなやっているんですか、ちょっと伺います。
  20. 奥野誠亮

    奥野政府委員 たとえば新橋や赤坂でも、別に芸者を呼ばないで会食する場合もたくさんあるだろうと思うのでございますが、そういう場所でありますと、一五%の税率適用する、こういうことで場所区分しておるわけでございますので、御指摘になりました旅館は、実態を知りませんのでよくわかりませんが、普通旅館でありますれば、そこで飲食行為が行われますと、五百円以内であれば五%、五百円をこえれば一〇%の税率適用になるわけであります。しかしどうも今のようなことでございますと、普通旅館であり、同時に料理店を兼業しているということではなかろうかと思います。料理店ということで芸者も入っておる店ではなかろうかと思われるのであります。そうしますと、宿泊行為につきましては普通旅館として料金計算が行われ、遊興飲食税の対象になっていると思うのであります。しかし料理店としての場所における利用の仕方でありますと、その部分については一五%の税率適用になる、こういうことになろうかと思います。でありますから、実際問題として、永田さんが非常に疑問に思われたくらいに、場所によって、税率の差をあまり大きくしておりますと、どうも均衡を欠いてしまうわけであります。そういう意味においては、開きがあっても五%くらいというような、今のわれわれの案の一〇%、一五%くらいがよろしいのじゃないかという感じもいたすわけでございます。
  21. 永田亮一

    ○永田委員 私は遊興したんじゃないのです。遊興を伴っていないのに一五%とられてしまったわけですが、遊興を伴うということはどういうことなんですか。
  22. 奥野誠亮

    奥野政府委員 今の税法の建前は、場所によって税率に差を設けることにしているわけでございます。その場所区分します場合には、通常そこでは婦女の接待が行われるようなところ、そういうことで限定しているわけでございます。従いまして、通常婦女の接待を伴うような場所でありましても、先ほど申し上げましたように、新橋における料率においては常に芸者を呼ぶかというと、そうでもないわけでありまして、普通の会食行為もたくさん行われているわけであります。それを一々芸者が入っておった、入っていないということで区分しようと思っても、実際問題としてそれはわからないのじゃないかと思うのであります。そこで場所によって税率適用区分するのだ、こういう建前をとっているわけであります。
  23. 永田亮一

    ○永田委員 宝塚では、その晩ふしぎに思ったから、そこら辺の旅館のおやじに来てもらったのです。それで聞いてみたところが、みなそうなんです。どこの旅館でも昼間飯を食うと全部一五%とられる。つまり旅館と料理屋と両方の鑑札をとっているのだろうと思うのですが、しかしわれわれが家族を連れていった分も料理屋として税金をとるということは どう考えても私は不合理だと思う。これは県の方で何かそういうことをきめているのかもしれませんけれども、もし全国こういうふうに子供を連れていった分までも遊興を伴うというようなことで税金をとるのだったら、これはさっそく通達をやり直して、そういうことのないようにしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  24. 奥野誠亮

    奥野政府委員 お考えの点につきましては、私も全く同感でございます。ただ御指摘になりました店は、よく承知しませんが、おそらく旅館業法の許可をとると同時に、風俗営業取締法の許可をとっているのだろうと思います。そうして永田さんのような利用の仕方もあるでございましょうが、おそらく芸者もしょっちゅう入って、そこでいわゆる遊興行為といいましょうか、そういう飲食行為も普通一般に行われているのじゃないだろうか。宝塚という土地柄からそういう想像をしてもいけないかもしれませんが、温泉地帯においてはそういうことがずいぶんあるわけでありますので、またそういう扱いをしませんと、料理一本で行っているところと、旅舘という看板を掲げているけれども芸者はどんどん入っているじゃないかというところとの間に均衡を欠いてしまいますので、原則として、風俗営業取締法の許可を受けて旅館であっても芸者が入っているということになりますと、やはり一五%の税率宿泊以外の分については認めざるを得ないのじゃないか、こう思うのであります。しかしお説はよくわかりますので、できるだけ厳密に区分して取扱うような指導は今後もいたして参りたいと思います。
  25. 永田亮一

    ○永田委員 それは遊興をしたらいいのですよ。芸者が来て一緒に食ったら私も喜んで……(笑声)喜んででもありませんが、当然払うと思うのです。これはどう考えてもおかしいので、もう一ぺんよく考えていただきたい。  それからみんな温泉マークがついているですな。あそこへアベックで来てちょっと休憩とかいうのがある。これは遊興を伴うのですか。遊興じゃないとすれば、普通の泊りの税金で取るのですか。
  26. 奥野誠亮

    奥野政府委員 税法を適用します場合には、別にさかさクラゲがついているかついていないかという区分は、あまりいたさないわけでありますが、普通旅館として経営したおる場合には、旅館について適用されます税率がそのまま当てはめられて参ります。従いまして、宿泊でありますと八百円までは免税ですが、そうでありませんと、今回三百円までは免税だということにいたしているわけでありまして、それ以上であれば一〇%ということになっております。格好は旅館でありましても、風俗常業取締法の適用を受けまして、そちらの方の許可を受けて、そしてそこに多少のサービスの行われているような場所でございますと、一五%の税率適用になる、こういうことになるわけでございます。
  27. 永田亮一

    ○永田委員 これはちょっと私見ですが、温泉マークの問題は、このごろ神宮外苑の近くにそういうのがたくさんあって、えらい問題になっているようです。それで文教委員会などでもずいぶん取り上げておるようですが、これは税金をよけい取ったらどうかと思うのです。というのは、温泉マークをつけているが一温泉でも何でもない、東京のまん中で温泉が出るわけがないのだから、うそをついているわけです。温泉マークというのは虚偽の表示をしておるわけです。温泉マークは見ても目ざわりですし、どうも頽廃的な気分を起させる。これに対して税金をかける温泉マーク税というのはどうですか。
  28. 奥野誠亮

    奥野政府委員 広告税で、そういうところに特に高い税率適用するというような方法もあり得ると思います。
  29. 永田亮一

    ○永田委員 それでは次の問題に移りますが、今度は旅館のサービスに対する税金の問題です。きのうもちょっと参考人の方が申しておりましたが、女中さんが来てふとんを敷いたりあげたりしてくれる、あるいは掃除をする、それから飯を食うときに運んでくる、こういうようなサービスに対してまで税金が賦課されるということになっておるわけであります。そういうものに対する税金というのは、私はどうもふに落ちないのですが、その点御説明願いたい。
  30. 奥野誠亮

    奥野政府委員 お話しのように、税法では、何らの名義をもってするを問わず、利用者負担になるような額全体を課税標準にするということにいたしておるわけであります。サービス料の問題になりますと、業態によってきまり方が非常に違うようであります。芸者花代にしましても一つのサービス料でありましょう。また旅館における女中さんへの心づけ、これは全体の一〇%をサービス料として客の方から積極的にもらうということもありましょう。その実態についてどこで線を引くかということは非常にむずかしい問題ではなかろうかと思うのであります。同時にまた、なるほどそれは女中さんへの心づけとしていくものかもしれないけれども、業者から請求されるものであればそれが経費であることには違いがないじゃないか、それにはいろいろな経費があるだろう、ふとん代もあれば、女中さんへのチップ代もあるだろう、お客の支払う料金によって担税力を測定するというような見地から考えていきました場合には、必ずしもサービス料というものは絶対に入れてはおかしいという理由にはならぬだろうと私たちは思っております。ただ、しいて言いますれば、任意に支払えば税の対象にならないし、一方的に徴収されれば税の対象になる、それには割り切れない問題がありましょうし、そういう問題が旅館経営においては一番多いだろう、こういうふうに存じておるわけであります。
  31. 永田亮一

    ○永田委員 それからもう一つは、旅館のみなし課税の問題です。さっき一番最後に御説明がありましたが、私の方の選挙区には西宮がある。それで、甲子園で、高等学校の野球とか、いろいろやるわけです。そうすると、学生だからというので特別に割引をするわけです。朝昼晩と、何百カロリーだか忘れたけれども、飯を食わせて、六百円とか六百五十円とかで泊める。従ってこれはぎりぎり一ぱいなんです。損はしてないかもしれないけれども、ほとんどもうけがない。ところが、あとになって、これは普通に金を取れば、千円なら千円のサービスをしているとみなして税金を取る、こういうことになると、せっかく学生を泊めて一生懸命にサービスをしたはずの旅館が、あとでみなし課税でぽかっと取られるということはまことにかわいそうでもあり、不都合だと思うのです。こういう点について何かお考えがありますか。
  32. 奥野誠亮

    奥野政府委員 今お話しになりましたようなものについて、みなし課税をするような意思は毛頭ございません。またそういうように運営を誤まってくれても困るわけでございますので、みなし課税をいたします場合は政令で規定をいたしたいと考えております。法文の上では、政令で規定する場合に限ってみなし課税ができるのだ、こういうふうにいたしてあるわけでございます。こういうふうな規定を置きましたのは、群馬県の水上にかの沢館という旅館がありまして、ここの宿泊者の半数以上は株主に対する無料優待券による宿泊であります。それだから課税標準になる料金はない、従って遊興飲食税を納めないのであります。そうなりますと、ほかの旅館との間に非常な不均衡が生じてしまいまして、やはり一つの税の穴にもなっておるわけであります。こういうような事例に遭遇いたしましたので、あのような規定を置いておるわけであります。運営の点につきましては、御指摘のような点にならないように留意いたしたいと思います。
  33. 永田亮一

    ○永田委員 そういうのはよいのです。私は西宮へ行ったらそういう陳情を受けたわけです。去年野球のとき、特別に、ちっとももうけないで泊めたのか、今西宮の税務署から非常に催促を受けておる、そういうことで今ごたごたして係争しておるらしいのです。そういう問題がありますので——これは西宮だけじゃないかと思いますけれども、特にスポーツ団体なんかの学生を泊めたりした場合は、特別に割引したものを認めてやるようにしていただきたいと思います。  それからきのうもちょっと聞いておったのですが、もうこのごろはあまりないかもしれませんけれども、肉を持ち込んだり、あるいは酒を持ち込んだりして、旅館で自分で持ってきたものを食う、そのときに自分で持ってきたものに税金をかけられるというのはどうもふに落ちぬという、お客さんの心理として見ますれば、自分のものにまた税金をとられるという気分がするのじゃないかと思うのです。きのう旅館の連中が言っておったのをここで聞いておると、加工したことに対して税金をつけてくれろということを言っておったように思うのです。たとえば肉を持ち込んできた場合には、その肉に対してでなくして、加工した加工賃に対して税金をつける、酒を持ってくれば酒をおかんをする、その加工したことに税金をつけて、みなし課税とみなす、こういう点はどうですか。
  34. 奥野誠亮

    奥野政府委員 全くお説のように私たちは考えておるのでありまして、地方税法等に関する取扱いについての運営、通達につきましては、真に持ち込みにかかるものを加工して提供する場合は、その加工料等が課税標準となるのだ、こういう趣旨をうたってあるのでございます。そのような方向に指導して参ってきているわけであります。法文は持ち込み品について課税をすることができるという規定を置いております。その趣旨は、華美な旅館、あるいは料理店に行きまして、そこから酒屋さんに電話をかけて酒を持ってこさせる、これも形式的には持ち込みであるはずであります。そういうような脱法的行為を防ぐために課税をすることができるという規定を置いてあります。ほんとうの持ち込みにつきましては、これは加工料が課税標準にはなりましょうが、それ以外は課税標準にならないように、今後もなお強く指導して参りたいと思っております。
  35. 永田亮一

    ○永田委員 それからもう一つ奥野さんに伺いたい。風俗常業、これの定義がよくわからない。たとえばおでん屋なんかに行って、そこの娘さんが出てきてお酌をしてくれる、そのときに、台の向うから手を出してお酌をした場合には、これは風俗営業じゃないが、台のこっちへ回ってきて、自分のそばへ来て、お酌をした場合には風俗営業だ、こういうようなことをいなかでちょっと聞いたのですが、そういうような区別があるのですか。
  36. 奥野誠亮

    奥野政府委員 風俗営業取締法は警察の所管になっておるわけでございます。旅館とか普通飲食店のような問題は厚生省の所管であり、保健所の所管だ、こういうことになっておるわけでございます。どちらかといいますと、風俗営業取締法の関係の警察では、あまりその対象からはずれてくることは好まないというような心理があるのじゃないか、そういう心配を私としては持っております。しかしどの法律に基いて許可をとっておるか、一五%適用税率の店であるか、一〇%適用税率の店であるかということをなるべく考慮したい、こういう考え方を持っておりますので、昨年でありましたか、一昨年でありましたか、警察庁と相談をいたしまして、末端においては府県の税務当局と警察当局とが相談し合いながらその辺の区分を一つ直すようにしようという話し合いをいたしたことがございます。その以前は自治体警察がありまして、市町村の取扱いによって自治体警察の考え方によって非常に乱れておったわけであります。同じ県内におきましても取扱いが非常に区々になっております。それを是正したいという気持は警察庁にもあったわけであります。そういう意味でいろいろ話し合いをしておりますが、私どもの考え方としては、卑近な例でいえばカウンター向うのサービスの店については普通の飲食店だ、そういう扱いをしていきたい。少くとも税の面におきましてはそういう方針をとっていきたい、かように考え、またそういう指示もして参っておるわけであります。
  37. 永田亮一

    ○永田委員 なるべく世間一般の通念で大衆的なものと思われるようなものは、風俗営業じゃないようにしていただきたいと思います。  それから最後に一つ芸者のことで大臣に伺いたい。この前予算委員会で私伺っておったところ、あるいは社会党の成田さんでしたかの御質問に答えられて、大臣は、芸者税率を下げるということは、芸者にあらざる芸者がどんどんふえてきてしまって、ほんとうの芸者が困ってしまう、そういう不公平があるから下げるのだというお話であります。私も一応ごもっともだと思います。ただ芸者にあらざる芸者芸者のような行為をした場合には、その芸者でない芸者芸者と同じような税率でかけた方が合理的じゃないかと思うのです。これではごまかしている芸者を認めることになりはせぬか。ほんとうの芸者を助けるというよりも、もぐりの芸者をそのまま認めたという結果になると思うのですが、いかがでしょうか。
  38. 田中伊三次

    田中国務大臣 芸者論でいつも皆さんに笑われるわけでありますが、私が予算委員会で話をいたしました芸者以外の芸者というのは——御承知の通りに芸者花代に課する税金であります。行為税でございます。ところが類似行為をしておるものがある。どんなものかというと、やとなと名づけられるものですが、芸者とやとなの行為は少しも違わない。その行為をする彼女のからだを見ましても、着物の着方から帯の結び方に至るまで違わない。そしてサービスも同じことをするのです。その法律の知らない行為についてはわれわれがここで関知することではございませんが、法律の知る範囲の行為というものは全く同じ行為なんです。その同じ行為をしている一方が一割五分で、一方は三割である。これは課税均衡ということから申しますとどうも納得がいかない。それからもう一つは遊芸仲居というものがおります、あるいはキャバレーの女給というものもありますが、非常に類似したもので申しますと、やとなと芸者は同じ行為をしているものであって同じ花代で働いておるものであっても、一方は一割五分で一方は三割だ、こういう不均衡を是正するということは、今度私がしろうとでありますけれども、就任をいたしまして、在野時代に考えたことはどうも地方税というものには不均衡がある、遊興飲食税関係ばかりでなしに、事業税だって不均衡があるのです。たとえば私鉄にいたしましても地方鉄道と地方軌道というものを見ると外形の収入を基準にして、切符の売り上げに対して課税する、利益に対して課税したい、これは非常な間違いであります。不均衡です。遊興飲食税におきましてもこういう点がある。それから事業税におきましても、個人事業税、一番大事な第一種事業税、中小企業者、ことに弱小企業で保護を必要とするものは六分取らないで、二、三種は六分取っておきながら、一種だけは数が多いということで、取りやすいということで百分の八を取っておる。これはもってのほかの不均衡であります。そういう地方税全般を通じての不均衡というものを思い切り是正しよう、いやしくも不均衡がございませんという答弁が堂々とできますようにやりたいと考えまして、だれが言い出したかというと、私が言い出したことなのでありまして、責任は私にあるわけでありますが、同じ行為で一方の行為は一割五分、一方は三割という考え方はよくない。そこで今のお説のごとくに均衡をとる方法としては両方とも三割にするか、低い方を高い方に引き上げて均衡をとるという均衡のとり方がございますが、いやしくも国税においてわが党は減税政党だと自分みずからうたっておりますように、減税の方針をとることが筋でもあるし、国税は千億円をこえるような大正税を思い切って行なった、そこに財源の一切を傾けたような年に三十二年度はなるわけであります。そういうときに地方税を引き上げてつり合をとるなどということはもってのほかだ、そういう意見もございました。そこでそれはやるべきでない、下げて均衡をとれということで、しいて下げて均衡をとらしたような実情になっておるわけであります。  もう一つ、これは私自身もよく存じておることでございますが、そもそも類似行為をしているやとなというものの発祥は、大阪、京都でございます。ところがこれが税金も安いしサービスもいいしということで、全国に波及をいたしまして、このごろは非常に数多くのやとな、やとなに類似をいたしますものが東京方面にはやっておる、芸者花代が高いから芸者の売れ行きが悪いというので、わざわざ芸者の鑑札を取り消しまして、籍を抜いて組合からはずれまして、これがやとなという自分でつけた名前になって、同様の行為をしておるという数が東京ではうんとふえて参りました。こういう傾向にもかんがみまして、これを引き下げてバランスをとるということが適当であるということで、こういう改正案を御審議願っておるという事情でございます。
  39. 永田亮一

    ○永田委員 大体趣旨はよくわかりました。ただ脱法的なやとなというものがどんどんふえてくる、その場合に芸者というものが圧迫されてだんだん減ってくる、この問題について、これは昨日同僚の川村議員からも質問があったように思うのでありますが、かりにやとながどんどんふえてしまって、芸者が圧迫されて自滅してしまう、芸者というものがそのためになくなったと仮定をいたしますと、それはいいことなんですか、悪いことなんですか。
  40. 田中伊三次

    田中国務大臣 むずかしい議論でありますが、芸者が自滅をしてなくなっていくということがよいか悪いかの価値判断は、なかなかむずかしいことでございます。しかしこういう改正を行いましたものの考え方は、一体芸者という、専業といいますか、芸者専業の者、やとな専業の者というようなものが、果してこういう風俗営業をやっていくという制度がよいか悪いかということについても考えてみたのでありますが、私の考え方は、専業とする芸者、専業とするやとな、同じ一割五分のこういう類似をいたしますもの、最近ではやとなのほかに仲居というものができておりまして、これもやとな類似の行為をするわけであります。芸者類似のまた類似をするのですが、結局それは同じことをしておるものでございますから、そういうものがだんだんふえてきておりましてどこに籍があるかわからない、こういう事情のものでございますが、これは協同組合でも作らせまして、将来は芸者制度というものがだんだんとすたれていく、その結果はそれにかわるべきものとして、自主的な組合ができてくるということは、私はいいことではなかろうか。それからこれは大体専業とする必要がない商売ではなかろうか、夜とかあるいは夕方から何時間という時間を限った商売でございますから、将来を見てみますと、こういう場合も大いに賞讃をする場合があるのではなかろうか、たとえば私の家庭における妻なら妻、私の娘なら娘というものが舞を舞う、あるいはおどりをおどるということが一般の婦女の教養として習わしてある、またお茶を立てることも上手、お花もやるというような教養があります場合に、これが副業をするということはおかしいことではないのではないか。たとえば自主的組合があります場合に、アウトサイダーのメンバーとして登録しておく。すると何月何日何時何十分にどこそこのお座敷にお越しを願いたいという場合には、その、人の妻なり娘なり、未婚の娘がそこに出ていってサービスをする。月末がくると一定の勘定書を逆にもらってくる。こういうことは普通の婦女には非常に便利な副業ではなかろうか、しかしながらそういうサービス業をやらすということはおだやかでないという議論が起るかもしれませんが、おだやかでないことは何にも料理屋の座敷に限らないので、りっぱなところでもおだやかでないことは起り得るわけで、それは座敷の責任ではないわけであります。そういうふうにいたしますと、女中さんあるいは仲居あるいはサービス・ガールというものが必要な際には——一つの料亭において常に一定の人員は置いておく。しかしお客さんの多い約束のあるときに、必要な場合においては何名かを臨時に雇うという行き方が、女中についてもできるのではなかろうか、女中についても仲居についてもやとなについても、そういうふうなサービスをするということが広く行われて、そうして高級料亭と称せられるところの食事が非常に明朗な、風教上よろしい方向に向って進展をしていくことになっていくことも悪いことじゃないのではなかろうか、従って余談になりましたが、ただいまお尋ねの芸者の姿が圧迫されて消えていくということはやむを得ないことじゃなかろうか、むしろ喜ぶべき現象ではなかろうかと考えるわけでございます。しかしながら芸者というものが少くなって、何かやみのサービスをする人が多くなる結果、風教上おもしろくないような、そういう傾向が出てくる場合においては、立法の措置の上からもまた考えなければならぬのではなかろうかというふうに思うわけであります。
  41. 永田亮一

    ○永田委員 これでしまいますが、これは税法と少し離れてしまったけれども、芸者の一これは政府の方針かもしれぬけれども、つまり芸者を一つの芸術として、日本独得の歌舞伎なんかと同じように、一つのそういう文化財のようなものとしてやはり保存した方がいいんじゃないか、そういうものが全然なくなっちまうということ、これは税法の問題を別にしてやとななんかがどんどんふえてきて、圧迫されてそういうものがなくなっちまうということは、日本の芸術史からいってもどうもさびしいのではないか、政府の方針としてそういうお考えがあるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  42. 田中伊三次

    田中国務大臣 政府の方針にそういう方針が特にあるというわけではないわけでございます。ただこういうことは言えるのではないかと思います。たとえば大都会の各地におけるところの芸者の風景、特に京都の場合で申しますと、舞子のような風景が一般の観光施設の一つとして——人間的施設になりますが、観光的なふぜいとしてそういうものが存在すること、京都に行けば芸者にも会えるが、しかし舞子も見得るという観光的な一つの対象のふぜいとして、これを養っていくことが必要ではなかろうかという御意見に対しては、私は傾聴すべきものがあると考えます。しかしながらこれは特に観光地と考えられます地域において必要な事柄でございましょう。従って自然に消えていきます姿はいたし方がないとしても、自主的に一割五分の税を納めてこれを温存していってくれるところがあるといたしますと、これはまことにけっこうなことであると考えざるを得ないのでございます。
  43. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 それでは本日の会議はこの程度にします。次会は明十四日午前十時三十分より開会することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会