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1957-05-20 第26回国会 衆議院 大蔵委員会税制に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員昭和三十二年二月十五日(金曜日)委 員長指名で次の通り選任された。  税制に関する小委員       淺香 忠雄君    吉川 久衛君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       坊  秀男君    前田房之助君       山手 満男君    井上 良二君       竹谷源太郎君    平岡忠次郎君 同日前田房之助君が委員長指名で小委員長に選 任された。     —————————————     会 議 昭和三十二年五月二十日(月曜日)     午前十一時二十六分開議  出席小委員       吉川 久衛君    小山 長規君       山本 勝市君    久保田鶴松君       竹谷源太郎君    横山 利秋君  小委員外出席者         議     員 石村 英雄君         大蔵省事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (主税局税制         第一課長)   塩崎  潤君         大蔵事務官         (国税庁直税部          法人税課長) 志場喜徳郎君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 五月十八日  前田房之助君同日委員辞任につき、委員長の指  名で小委員補欠選任された。 同日  前田房之助君が委員長指名で小委員長補欠  選任された。 同月二十日  小委員淺香忠雄君三月三十一日委員辞任につき  、その補欠として小山長規君が委員長指名で  小委員に選任された。 同日  吉川久衛君四月二十七日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員補欠選任された。 同日  小委員杉浦武雄君四月二十三日委員辞任につき  、その補欠として山本勝市君が委員長指名で  小委員に選任された。 同日  小委員井上良二君三月八日委員辞任につき、そ  の補欠として久保田鶴松君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員平岡忠次郎君同日辞任につき、その補欠  として横山利秋君が委員長指名で小委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件(相続税問題等)     —————————————
  2. 前田房之助

    ○前田小委員長 これより大蔵委員会税制に関する小委員会を開会いたします。  本日は、相続税の問題につきまして調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。山本勝市君。
  3. 山本勝市

    山本(勝)小委員 国会が終った早々で、お疲れのところ皆さんまことに恐縮でありますが、かねて私は、予算委員会におきましても若干の質問を申し上げたのでありますが、今日相続税法日本の実態にそぐわぬ点があって、税金をとる方の側でも、また納める方の側でも、非常に困っておるということは、これは争いのない事実だと思うのであります。これは一、二年前のことでありますけれども、ある税務署長から、何とか相続税法を変えてほしい、このままでは実際徴税に当っておる自分たちとしても矛盾に耐えられないというふうな、深刻な陳情を私は受けたのであります。税務署長からそういう種類の陳情を受けるということは、ほかには私は一回も例がないのであります。だんだん当ってみますと、たとえば農村におきましては、御案内通り自作農を維持するということが、戦前戦後にわたっての一貫した方針であって、自作農経営の安定のためには、各種措置をいたして参っておるのであります。ところが税法の上におきましては、そういった農業が、言葉は適当でないかもしれませんけれども一つの家産のような、あるいは家業として相続されておる、これは一般的な事実であります。戦前はもちろん、戦後といえども変りはありません。ところが家業相続した場合に、相続税法では、そういう家業相続するという考え方みじんも入っておらぬのでありまして、黙ってほっておけば、その農家財産は、被相続人が死んだとたんに多くの子供やその他の相続人に分散してしまう。そこで、これを分散させないというためには、その相続権を放棄するというふうな手続をとらねばならぬわけでありますが、実際は家業として相続されておるために、これが権利を放棄するということが一般の形になっておりますけれども、放棄すれば、今度は相続税が非常にたくさんかかる。五十万円という基礎控除がありましても、今日の農業は、農機具やらその他の実情を見ますと、五十万円なんというものはすぐ突破してしまうのであります。ところが現金がなかなかない。埼玉の私どもの選挙区は、全国の農村でも比較的余裕のある方だと思いますけれども、それでも、大部分分納をしておるわけです。分納でありますから、当然利息を支払わなければならぬ。その利息を免除する方法税制の上では全然ない。こういうのでありまして、分納すらもうまくいかぬというところから、一昨年でありましたか、この委員会ではありませんけれども、農林、委員会審議をしまして相続税その他の支払いに窮した場合、その田畑を一売らなければ相続税が払えないというふうな場面に当った場合は、そういうことをさせないために、国として安い金利の、年五分で、たしか五カ年間措置の二十カ年賦で相続税を支払うというような制度までも作っておるのです。それも、最初の原案は十五年ということでありましたけれども委員会ではさらに五年を追加して、二十年間に払う、そういう非常に親切な方法までとっておるのは、一に自作農経営を分散させないで、安定させていこうという趣意から出てきておるわけです。これは一例であります。ところが相続税法は、そういうことはみじん考えないで、相続と同時に分散してしまう。分散させないためには権利を放棄しなければならぬ。権利を放棄すれば税はたくさんかかる。税をのがれようとして、分散していないにかかわらず、たくさんの子供や兄弟に分散した形をとって税をのがれておる村もあります。しかしそういうのは一種の脱税でありますから、実際上はわからなくて済みましても、そういうことをやった結果は、いつかはどこかへ出てくる。どうもそういうことが税務署としても非常に困る、こういう点のようであります。内藤友明君でありましたか、内藤君の方では、こういう合法的な方法があって、これは税務署でも認めて、非合法ではないと言っておるというようなことを、内藤君から聞いたのでありますか、詳しくは研究しておりませんけれども内藤君の説明では、何でも小さな子供相続をさして——相続贈与か、どちらか知りませんが、やって、そしてそれから借金をして、その借金養育費で落していく、十二、三年の養育費で落していけば、これが払ったことになって相続税も払わないで、しかも非合法にならないでいけるのだということを聞きました。これも、法律の盲点はそこにあるかもしれませんが、好ましい方法ではない。これは、代議士の諸君でもいろいろ当ってみますとみんながそのことは私と同じ考えで、何とかしなければならぬということを言っておりますし、またいろいろ農家について、私は実は部落会を開いて、一週間ばかり各部落を歩いてみましたが、どこへ行きましても、その話を持ち出すと、みんなが非常に目の色を変えて、何とかしてほしいということを言っておるのであります。それが大きな問題にならないで今日まできておるのは、結局ほかの税と違って、一生に一度は必ず来ることでございますけれども、しかし一度来るだけのことであり、しかもそれは、みな一緒相続の事実は起らない。ですから、そこにたまたまぶつかったときに、一人々々が泣いていくという事実であるために、これが大きく取り上げられていないのでありまして、その証拠に、こちらから問題を出したが最後、みな飛びついて訴えてくるのであります。先般の税制改革に当っても、私はおそらく税制調査会でも、これは問題になったことだと思うのであります。どこまで深く掘り下げられたか知りませんが、結果は、今回の税制改革では、少しもその点は触れないできております。触れないだけではなしに、今回の予算を見ますと、昨年に比べて、農家の場合でいいますと、農家の耕地の評価額が、昨年よりもことしは評価基準が上って参りまして、このまま参りますと、すでにこれまでの税制で困っておる上に、さらにその評価基準が引き上げられたという関係から、その弊害がさらに加わってくることになると思うのであります。ですから、これは一朝一夕にすぐ右から左に変えるということはできませんし、すべきことでもないですけれども、しかしこのまま置くべき問題じゃない、実際一人々々泣いておることは間違いないのであります。税率書自身も、現場におられた方に聞かれればわかりますが、その矛盾というか、不公平というか、取扱いに困っておることも事実で、御承知のはずであります。主税局の方では、かねがね研究もしておられるということであります。今回は時間もありませんから、問題点として、将来の方向はどういうふうに行ったらよかろうかというようなことを一緒研究していく意味で、ざっくばらんに、こういうふうにすればこういう点に障害がある、しかしそうかといって、ごうすればこういう点に障害がある。また現実に対してもどういうふうに見ておられるか、結局は現状がいいというのか、いやそうは思わぬというのか、その辺も打ち解けた研究会のつもりで審議を進めていただきたい。
  4. 原純夫

    原説明員 ただいま山本委員からお話しのありました事柄には、非常にこの問題の深い点をおつかみ司になった点、またいろいろ考え方について示唆に富んだ点が多分にございます。私どもも、相続税制度並びにその実際の運用につきましては、現在の税に関する諸般の問題の中で、相当大きな問題の部分があると実は考えております。そして、先般の臨時税制調査会検討の際におきましても、これの検討を一応願ったわけでありますけれども、何分お話しのように、非常に問題が複雑な関連を持ちますことと、それから単純に控除税率というあたりの話だけではなくて、税法の全般的な性格を変えるかどうかというような問題もからんでおりますので、調査会答申の中におきましては、いろいろな問題点をあげられまして、これについて将来なお研究するようにということで、結論は留保になっております。そこで、本日はお話しのように、私どもも実は今回の税制改正相当手を取られましたので、だんだん資料を整備し、これから考えを練って参ろうという段階でございますので、一つには調査会答申の中にあります、相続税関係部分を御紹介申し上げて、この中に、ただいまおっしゃいましたような点について問題点を整理してございますから、それを読み上げて、それについて若干注釈を申し上げ、なお相続税贈与税関係資料として基礎的なものを三表用意してございます。なお必要に応じ、詳細なものがお入り用でありますれば用意いたしますが、こういう中から、また今の数字的な関連をおつかみ願うというようなものを用意いたしましたので、これについて御説明を申し上げて参ります。  まず調査会答申の抜粋でありますが、お手元の文書を読みながら申し上げて参ります。第一〇相続税とありまして「現行制度の概要と沿革」というのが最初に書いてございます。「現行相続税は、相続税贈与税との二つの税からなり、相続遺贈又は贈与により財産を無償で取得した場合に、その収得した財産価額に応じて課税される。すなわち、(1)相続税は、相続人相続包括遺贈等により、被相続人遺産取得したときに課されるもので、相続財産から債務の金額等控除した後の価額から、五〇万円の基礎控除を行い、累進税率を適用して課税される。」累進税率は三ページのところに書いてございます。「相続人が被相続人配偶者であるときは、基礎控除前の価額から、その二分の一に相当する額を配偶者控除として控除され、」これは御案内通り相続というものは世帯から世帯への財産の移転の際にかけるので、配偶者に行く場合は横に参る、感覚的に言いますれば、時間的に横に参るということから、そういう点を主として考えて、二分の一という配偶者控除を設けてあります。「また、相続人が十八才未満の者であれば、十八才に達するまでの年数に応じ、年二万円に相当する額の未成年者控除が認められる。更に、十年以内に二回以上相続があると、相続税負担を緩和する相次相続控除制度が設けられている。」一年について二割という割合であります。それから(2)として「贈与税は、財産贈与を受けたときに課税されるもので、その年中に贈与を受けた財産を合計し、その合計額から一〇万円の基礎控除を行い、累進税率を適用して課税される。」この贈与税税率相続税税率に比べてやや高目であります。それも右の表に出ております。「この贈与税は、親から子へ財産贈与されると、将来相続税の破税の機会が失われることを考慮し、主として相続税補完税として設けられたものである。」ただし、親から子でありませんでも、シャウプ以来所得課税的な線を中心考えておりますので、そうでない贈与にもかかることになっております。」このように、現行相続税制度は、財産取得者ごとに、相続財産又は受贈財産価額を計算し、これに累進税率を適用して課税するいわゆる「所得課税方式」を採用している。わが国の相続税制は、以前は、被相続人遺産総額課税標準とする「遺産課税方式」を採用していたが、昭和二十五年の税制改正により、初めてこの取得課税方式がとり入れられた。しかし、昭和二十五年改正直後の相続税制では、贈与税制度はなく、相続税だけが課されることとなっていた。当時の相続税は、人が一生の間に相続贈与等によって取得した財産に対して、累積的に、累進税率により課税するものであった。」もう一生の取得を全部累積していきまして、基礎控除もその累積額について一生の基礎控除というものを考えて、それをこえる分は、だんだん累積して税率が上って参るということになっておったわけです。「しかし、一生の期間を通ずる累積課税は、実行上きわめて困難であったので、昭和二十八年の改正により、取得課税方式基本をくずすことなく、相続税贈与税の二本建の現行税制が授けられた。」そして税率は下記の通りに現在なっております。ただいまお話がありましたように、二十五年前は明治三十八年相続税制度が創設されまして以来、日本相続税はまず遺産課税方式取得課税的な角度が若干入った形の遺産課税方式ということになっておりまして、遺産の額によって税率を適用していく。ただし、その取得する人が被相続人との間に持っております親疎の関係によって、親しければ親しいほど税率が低いという形、その意味取得者のというものが組み入れられた形の若干取得課税においの入った遺産課税方式というふうになっております。それが二十五年に珍しいほど純粋な取得課税方式、しかも一生を通じて計算するということになっておりましたのが、それじゃとても執行上やれないということ、また納税者の方もなかなか大へんであるということで、二十八年に、取得課税方式であるが、相続税贈与税の二本建にするということになっております。そこでそういう中にいろいろな問題のとらえ方がございます。ただいま山本委員のとらえられたようなとらえ方もございますが、一応ここに問題の所在として出ておりますものを御説明申して参ります。  「相続税には各種の問題があるが、中でも、現行取得課税方式が適正に実施されていないため、実際の相続税負担が公平を欠いているという批判、及び最近の資産の状況に照らして控除税率に再検討を加えるべしという意見は、特に注目を要する。」このほかにも問題はいろいろあるわけでございますが、大きな点はこの二点であります。第一の問題について「現行取得課税方式では、相続税は、相続により相続人の得た所得に対する特別の所得税であるとみられる。」この辺は所得税という名前で呼ばれるのがよろしいのか、あるいは財産取得税というふうに呼ぶのがよろしいか、いろいろ人によって考えがあると思います。「この考えに基き、相続税の額は、相続人ごとに、その取得した相続財産の額を課税標準として累進的に定められる。したがって、相続税総額は、相続人が一人の場合に最も大きく、相続財産が多数の相続人によって分割されればされるほど、少額となる。これに対し、いわゆる遺産課税方式では、相続税は、遺産に対して課されるとみられる。相続税課税標準としては、通常遺産総額がとられ、遺産が一人の相続人によって相続されようと、多数の相続人によって分割して相続されようと、相続税総額は同額であるのを通常とする。ところで、取得課税方式は、その適正な執行が困難であり、そのため負担の不公平が生じているから、むしろ遺産課税に復帰すべきであるとの主張がある。その主張根拠は、次のとおりである。」その第一としてあげておりますのが「現行取得課税方式では、遺産分割が行われると相続税の額が少くなるので、実際には遺産分割が行われないのに、相続税課税上だけ分割が行われたかのように装うという弊害が生ずる。この場合、不動産等分割の困難な資産を有するものは、資産分割を装うことも困難であるのに対し、法人形態の企業をとる事業者等は、株式の分割等により遺産分割を仮装しやすく、一般有価証券預金等については、更に遺産分割を仮装することが容易である。このような仮装がなされると、実情に即した適切な課税を行うことが困難となり、相続税は、法律上の表面的操作により、その負担が回避されることとなる。この点、遺産課税方式をとれば、これらの不合理は解消する。」(2)として、「取得課税方式は、税務執行上も繁雑な面が多い。たとえば、遺産分割相続後数年を経て行われる場合が多いが、課税されたところと異なった遺産分割が行われても、これに応じて相続税課税を修正することは、実際上きわめて困難である。遺産課税方式をとれば、税務執行簡素化され、申告の正確と調査の充実を期することができよう。」この分割が行われない場合に、未分割の場合には、課税をいつまでも待っているわけにいきませんから、相続税法五十五条というので、未分割遺産については法定相続分によって分割されたという前提で一応課税してよろしい。後に変ったら変ってきたようにそれを調整するようにという規定があるのでありますが、あとでの調整というのは、なかなか実際上言うべくして行われがたい。そういうことになりますと、そういう件数が多ければ多いほど相続税課税丁案の処理は一回で済まないで、何年も何年もあとから追っかけていかなければならぬ。実際上なかなかできないというようなことで、あまりよくそれが動いておりません。やはり初めで勝負をつけるというにおいがかなり強いように思います。  そこで調査会検討結論、ここのところにただいまの遺産課税方式主張に対して、現行制度長所というものが対照的に書いてあります。「遺産課税方式には、その固有の理論があり、相続税は、被相続人の一生を通ずる税負担を清算する機能を持つ等の説明もなされている。上に述べた実際上の根拠と、これら理論的根拠とをあわせて、この際遺産課税方式に復帰すべしとの主張にも耳を傾ける値うちがある。世界の主要各国がほとんどすべて遺産課税方式をとっているのも何らかの理由があるからであろう。」大体アメリカ、イギリスははっきり遺産課税方式であります。それからドイツ、フランスは、日本の古い時代のような遺産課税方式であるが、やはり取得者の被相続人との関係によって税率なり控除なりを調整するという方式でやっております。イタリアでは遺産に対する課税と、それから遺産取得者の側からとらえる課税と両方合せて一本だという課税制度になっております。概して遺産課税的なにおいが、特に日本との比較においてははるかに多いというのが現在の実情であります。それから六として、「しかし、現行取得課税方式には捨てがたい長所もあり、次の諸点を理由として、この方式を続けるべきであるという考え方も強い。」(1)として「取得課税方式では、相続財産取得者、すなわち相続人が、被相続人配偶者であるか、未成年者であるか等、人的要件を考慮して課税を行うことができるから、負担の公平が期せられ、合理的である。」この点は古い二十五年前のやり方考えますれば、必ずしもできないことでもありませんが、一応現行法ではかなりこういう面の手当てが親切にできておると思っております。それから(2)として、「取得課税方式では、相続財産を多くの者に分割しようという傾向を招き、また少数の者に相続させると高い相続税が課されるので、富の公平な分配を期することができる。」シャウプ調査団が特にこの(2)の点を重視したように思います。財産少数の者に集中しないようにするには、やはり取得ベースで幾ら取得したか、その大きさによって税の重さをきめていくということをかなり強く考えたように思います。それから(3)の「遺産課税方式に改めたとしても、各相続人の納める税額を決定するため、各相続人相続により受けた利益に応じて相続税総額をあん分する必要があり、手続簡素化にはさして役立たない。」これは考えようで、これ以上に深刻ないろんな問題があり、これは一応の議論でありましょう。(4)で、「今再び遺産課税方式に復帰することは、相続税性格に鑑み、朝令暮改のそしりを免れない。」先ほど申しました、他に税率控除を調整するというのではなくて、税法の仕組み、ワクを全然取りかえるということになりますから、慎重にやらなければならぬという議論、これらの議論があるわけであります。  そこで、最後の七といいますのは、「現行取得課税方式遺産課税方式に改めるべきかどうかという問題は、相続税基本に関する問題であり、相続税性格からみて、かるがるしく断定を下すことは適当でない。また、控除及び税率の問題も、この相続税制基本関連して同時に解決さるべきであろう。当調査会は、時間の関係審議を尽すことができなかったので、この問題については結論を留保し、今後の研究に期待することとしたい。」  こういうふうに言うておられます。つまり現行のような取得課税方式の線でいくか、あるいは遺産課税方式の線でいくか、あるいは両者の何らかの調和をはかるかという点は、非常に複雑な問題がある。税制制度の総体のワクに関するだけに、慎重に研究するようにということで、われわれもそうせにゃいかぬと思いまして、昨日終りました通常国会でかなりな税制改正をお願いし、御承認願ったわけでありますが、この問題については、引き続いて何らか委員会のようなものを設けて、学識経験者に十分研究していただくというようなことをせにやいかぬのじゃないかと思っております。私どもとしても、なお十分研究して参りたいと考えているわけであります。  あとは必要に応じまして、取得課税長所短所遺産課税長所短所ということについて、なおお尋ねがあり、あるいは御意見、がありますれば、申し上げさしていただく。率直に申しまして、取得課税にも長所はあるのであります。が、一番決定的に困るのは、だれが幾ら取得したかということの真実がなかなかつかまえにくい。どうとでも言うことによってどうでもなってしまうということになりますと、税法に書いてあることは非常にいい、よけい集中すればよけいかかるということで、これはいいという議論ができても、実際の税負担がきわめて悪意的になり、それが税務官署側の恣意だけではなくて、納税者性格なり、やり方なりによっても、非常に浮動的な、きまりのきちっとしない税額になるというところが一番の問題であろうと思います。そこが、実際に分割がどう行われたかということがはっきり正確に表現されるような仕組みが考えられれば、取得課税というものの長所が十分生きるのではないか。ただいまお話しのいろいろな点も、そういうようなところが中心議論が起るのではないか。実質的には長子相続だから、そうだというと重くかかるという点は、二十五年前の旧法時代でも、大体それでいったわけです。ですからその問題としては、控除税率がどうかという問題になる。ところが一方で、そのわきに、実際は長子相続でありながら、たくさんの人に分けたというようなことを装うことによって税額が低くなるという事態があるとしますと、そこに、実質は同じなのに、課税がいつも公平でないというようなところから、つまり運用上のといいますか、実際上の納税者やり方、それから税務官署のやり方によって結論が変ってくるというところに、問題の焦点がきているのではなかろうかというふうに考えます。従いまして、それらの執行面の問題も考慮に入れながら、これを考えて参りたい。われわれとしては、現状が決して万全であるというふうには思っておりません。シャウプのときも、かなり勧告の筋には問題があると思っておったのでありますが、ああいう際で、取得課税ということも大きく切りかえられ考え直すという際には、相当慎重に研究するという考え方で、率直に言えば、かなり現状に問題が多い。何らか手入れが要るという気持が、相当部内でも強うございます。ただ部内でも、いろいろな意見があるということをこの際申し上げておきます。  そこで次に、資料の方に参りまして、資料説明を申し上げます。第一表は、今わかっております一番新しい年度である昭和三十年の相続税及び贈与税課税状況であります。相続税は人員が三万九千六百六十四人、その財産価額が四百七十六億円余り、それから債務控除をし、配偶者控除をし、それから未成年者控除をして課税価格が三百七十億であります。それに相続開始前二年以内の贈与財産価額がある。これを加えまして三百七十四億。それから基礎控除を百九十八億引いて、課税価格が百七十六億、その税額が三十四億。それから贈与税は、相続開始前二年以内の贈与財産価額にくるめますが、同時にそれでできました税額から、払ってある贈与税額相当額を控除いたします。それが三千五百万円、それから相次相続控除が三千万円、その他の税額控除をいたしまして、三十三億八千九百万ということになっております。  贈与税の方は控除が簡単でありますから、途中の数字がだいぶ抜けて、十万八千余りについて二百五十六億の財産控除、それから基礎控除百八億を引いて百四十七億の課税価格、税額は二十六億ということになっております。御参考までに相続の死亡件数に対する割合を申し上げますと、最近では死亡件数が大体年七十万くらいであります。このうち赤ん坊や小さい子供は、大体財産を持っていない。一応四十才以上の人がどのくらいあるか、死ぬのがどのくらいと申しますと、五十万であります。従いまして、それに対して三万九千人。これは相続人の方でありますから、被相続人は大体これを一・三で割っていただくとよい、約三万人。四十才以上の百死亡五十万のうち、三万人の分について相続税がかかるというのが、大体の見当でございます。  次の二の表の課税財産価額の種類別表でございます。これは昭和九年、十六年、三十年と区分けいたしまして、保税財産価額の中身を比較しております。左に実数、右にパーセンテージ、百分比を入れてございます。実数では九年の九億二千四百万が、三十年は四百七十六億ということになります。約五十倍前後になっております。百分比では、一々はごらん願うとして、顕者に変っておりますところは、田畑宅地では、田畑よりも宅地のウエートがふえてきておる。これは田畑に対するいろいろな小作料の統制、それから農地価格につきましても、やはり統制的な色彩が強く残っておるというようなことが影響しておると思います。宅地の方がウエートがふえてきておる。四番目の築造物が、前に比べてウエートがだいぶふえてきております。だいぶ戦後回復しておりますし、これらの評価の問題もあるかもしれませんが、ウエートが大体五割程度伸びてきております。  その次では、有価証券出資、通貨預金、この辺が戦前に比べてだいぶ比率が落ちておる。これは、預金でもまだ戦前に通しない、自己資本の蓄積が少いということがいわれるのとうらはらで、当然なことであります。あとこまかいところは大したことはございません。ただ農産物、その他で一括して九・九%、約一〇%というのが、戦前では約二%ぐらいしかなかったというのが顕著な場合であります。ただ果樹等の動産で戦前課税になっておりましたものがただいま課税になるということで、ベースが違いますので、そういう状況というふうに御了解願いたいと思います。  それから第三表の現行相続税負担額調、これは左に遺産総額を置きましてこれが単独相続の場合、複数相続の場合、単独相続でも配偶者でない場合、配偶者の単独相続、それから配偶者子供が何人かあるという場合というように分けて計算したものであります。この計算については、皆様御存じの通りであります。たとえば千万円の遺産で、配偶者以外の単独相続ですと、三割ちょっと上かかる。配偶者の場合には、これが一割二分ばかりになる。配偶者子供というようになりますと、子供一人の場合は約二割、二人の場合は一割五分、三人の場合は一割二分、四人が一割というようなことが出ております。備考にありますように、各相続人取得の割合については、民法の法定相続によって計算してあります。なおこれは未成年者ではないものとして計算してありますから、子供未成年者であれば、さらにこれよりも負担が下るということになって参ります。一応提出申し上げました印刷物についての御説明を終ります。  先ほど申しましたように、今後十分この問題は何らかはっきりした解決をつけなければならぬという気持で、せっかくお教えを願いたいと存じます。
  5. 山本勝市

    山本(勝)小委員 御説明でだいぶわかってきたのですが、税制調査会の場合に、自作農というものを維持し、経営を安定させていくというようなこととか、あるいは零細企業者の経営を安定させるというようなことが国家の基本的な方針となって、そのためにはかなり憲法上疑義があってもなおかつ行わなければならぬというように、国家の非常な政策の重点が置かれておるわけですけれども、そういう政策を実現していく場合に、相続税というものがそれにどうマッチするかというふうな点は考えにあまりなかったんじゃないかと思うのですが、今後研究されるとしたら、実際に即してやられないと、税法理論が通っても、実際そういう非常に基本的なものが、それによって今度は帳消しにされる。自作農を安定さしていくというためには、経営規模があまり零細になってはいかぬ。しかし、税法の上からいって当然零細になってくる。零細にならぬとすれば、今度は負担に耐えられないような税がかかってくる。要するに、そういう経営を維持し安定さすのにかかわらず、相続の機会に、その営業を持続する上に欠くべからきる財産財産税をかける。今までは取得で、特別な所得税だという考え方のようでありますけれども、もらう方からいえば所得税でありましょうけれども、しかし自作農というものの経営を安定さす、あるいは零細企業者を何とか安定させねばいかぬという建前から見ると、どうもしろうと考えとしても、官業の必要なものに財産税をかけて、物を売らなければどうにもならないという実情は、どうしても考える必要がある。重ねて申しますが、そういう自作農の維持安定、あるいは零細企業の維持安定、これは自転車屋とか、それからうどん屋とか、そば屋というものも実際は家業になっておる。実態がそうなっておる。しかも、それは、国の政策としても安定さしていくという方針をとっておるのですから、そこに障害があるのじゃないかという点を、検討の大きなポイントにしてほしい。これは一つ希望を申し上げておきます。  それからもう一つは、財産税というものが国民の富の分配ということに大きく影響することは事実である。従ってこの問題点の(2)ですが、富の公平な分配を期する上に現在の制度がいいのだというようなことを書いてありますが、これは財産税全体として考えたら、確かに富の分配ということと大いに関係があると思います。しかし、それはやはり一千万以上ぐらいの大きな財産取得する場合のことであって、かりに自作農の維持とか、あるいは零細企業の経営の安定とかいうことを抜きにしましても、こまかいところは大した問題じゃないのです。  そこで知りたいのは、今の三十何億という税としては、ほかの税に比べてあまり税収の多いものじゃないのですが、その中で、一体どのくらいを日本の終戦後の自作農程度の者の払う相続税が占めておるのか、あるいは零細な商工業者が払っておるものが占めておるのか、これは、予算委員会ではちょっとそういうのはむずかしくてわからぬという説明もありましたけれども、もし、それが三十何億の中で、わずか十億やそれ以下のような数では、いろいろなほかの点に支障があるとすれば、むしろ全部そんなものは削ってしまうということも考えていいのじゃないか、そのくらいのものなら、そんなに富の公平だの何だのということも——大体全体の徴収した相続税の中で、全国の農家とか、あるいはごく零細な中小企業者の相続税というものは、どのくらいを占めておるか、こまかいことはわからないにしても、およそのことはわかりませんか。
  6. 原純夫

    原説明員 農家で幾らということになりますと ちょっと正確な何がわかりませんが、課税価格の階級別に、百万円以下の課税価格の相続人が何人いて、その分の税額が何だ。百万円をこえて二百万円までの相続人取得者がどのくらいいて、その分の税額が幾ら、こういう形での数字を申し上げれば、その下の方の二百万なり三百万なり、その辺のところまで……。(山本(勝)委員 「課税価格二百万円以下くらいのところです」と呼ぶ)二百万以下までの取得者についてみますと、税額では、やはり四八%になります。相続税額が……。(山本(勝)委員 「十二、三億ですね」と呼ぶ)そうですね、十六、七億になります。これは相続税三十四億の中でございます。昭和三十年の数字でございます。  なお、農業資産が全体でどのくらいあるかということは、先ほど申し上げました二の表の中で、田畑が約二割、それに他の項目で宅地、立竹木、果樹、農産物というようなところが入ってくるわけでございます。それらを今正確に集計したものを持っておりませんが、やはりおそらく三割ぐらいになるのじゃないかというふうに思います。
  7. 山本勝市

    山本(勝)小委員 その点将来研究されるときに、こういう点も私は研究してもらいたいと思うのですが、田畑の方が割合に少くて、宅地の方が多いというような話でありました。農村の宅地と都市の宅地というものは、性質が違うと思う。農家の宅地というのは、農地に付属したものです。実際の耕作地から離れられぬものである。その耕作地というものは、自由に売買できないような建前になっておる。従って農地の宅地というのは、売るということを予想しないものです。それは、売る場合もあり得るでしょう。百姓をやめて、売って、よそへ行くという場合もあり得るでしょうけれども、原則としては、農家の宅地というのは、農地にくっついたもので、売るという場合を予想しない。そこで、こまかな問題になってきますけれども農家の宅地の再評価ということは必要のないものである。農家の宅地を再評価して、現実の問題として方々に起っている例を申しますと、非常なアンバランスを生じてき、はせぬかと思うのは、公用徴収ですね、堤防を広げるとか、道路を広げるとかいったときに、そこにあった農家の宅地が引っかかって、そこを買収される。しかし耕地から離れることができないものですから、その近所にまた宅地を造成して、そこへ移ったという場合に、今大蔵省の方針では、これまでの賃貸価格の三千何倍とかいうようなことで評価しておった。ところが、実際は二十万とか二十五万とかで買収されたら、それだけは価値が上ったのだから、再評価税として百分の六をかける、こういうことになっております。それがもしおくれたら、利子も取るということになって、方々で起っていることです。実際むずかしい問題になっておるのは、余分なことですけれども、建設省が、宅地を買収するときに、これは手取りの金だ、税金はかからぬのだというような説明をして調印しておる。それが後になって、なるほど譲与所得税はかからぬということになっておるけれども、再評価税はかかるのだ、取らぬという方法はないのだということで、事実上非常にもめている場合が多いと思うけれども、そのときにどうして再評価税を取るのかというと、やはりそれだけ価値が上ったのだ、そして将来売る場合にはそれだけ高く売れるのだから、こういう説明をされるのです。その場合に、私は先ほど申した通り農家の宅地というものは、売った場合に高く売れるというけれども、そういう場合があり得るというだけのことであって、事実上耕地にくっついたもので、耕地が自由な売買もできない。制度もそうなっておるし、事実また売るなんということは全然予想していない。そうすると、ただ帳面ずらの上で上ったというだけで、その再評価税というものを払うのが、ただ建設省にだまされたということ以外に考えられない。それからその上に、しかもそういうたまたまひっかかったところは再評価をしておるから再評価税も払い、再評価されたことになる。今度はそれが相続にぶつかってくる。すると、そういうところにぶっからぬ境、ほかのところは再評価していないものですから、従来の賃貸価格の、今年は三千六百倍ですが、これまでは三千百倍ということで相続しておる。一方はそれから十倍も十五倍も高い価格で相続するということで、相続税の上にも非常なアンバランスが現実に生じてくるのです。そのことも、再評価税を払う者の心配の種になってくるようです。これは、相続税直後の問題ではないけれども、それに関連した問題として、農家の宅地についての考え方、再評価税をかけるという場合の方針も検討してもらわぬと、単に再評価税を払うか払わぬかだけの問題ではなしに、将来相続税の問題にひっかかってくる。これは、現実に私がその問題に二つ三つひっかかって、とうとう裁判所まで持ち出したような事件があるのです。これは、参考になることがありましたら承わりたいし、そうでなければ別に御答弁は求めません。将来研究のポイントに入れてほしいということです。  それからもう一つ、こういう考え方はないですか。遺産相続の場合起ってくることかもしれぬが、たとえばイタリアのムソリーニの時代に、今はどうなっているか知りませんが、親が子供相続させるということは、他人にやる場合とは違う。この中でも、今の相続税というものが、無価で、取得した者にかけるという建前になっていますが、親から子供がもらう場合というのは、わけがわからぬ他人からもらったとか、あるいは全然行き来していなかったところから、たまたまそれが外国におって死んで、来たとかいうふうな場合と、そうではなしに、同じ家にずっと住んでいて相続する場合とは違うという考え方一つ立ちます。つまり親のものは子のもの、子のものは親のものということは——夫婦もそういう関係がありましょうが、これは私は必ずしも封建時代だけのものでなくて、外国でも、妻の特有財産だとか子供の特有財産だとかいうものが、争いが起ったときの用意として、法律上規定はありましても、実際の生活は、いずれの国に行っても、親が自分の子と一緒に暮して、それでこれはお前の茶わんであるのだ、お前にやったのは無償でやったのだとか、無償でもらったのだとかという、そんなことは実際問題としてありはしない。その実際は、親子一緒に住んで、同じ釜のめしを食っておるのは、それはいわば共産的な——言葉はおかしいが、それは無償で受けたんだ、だから税金を払うのがあたりまえだ、こういう考え方は、私は多少考える余地があると思う。親と子というものは切っても切れぬもので、十カ月間自分の身体にくっついておったし、また腹から離れても、子供が死ねば、親はもう自分が死んだような気になるので、それを親が死んだとたんに、悲憺にくれておるときに、無償でもらったんだからというので、税務署がやってきて、庭の木から鶏まで検査して持っていくなどということは、どうも実際にそぐわぬ。現実の家庭生活というものは、そういう一体的なものであり持続的なものである。断絶を許さぬ。それは富の分配ということは考えなければならぬから、そこで、大きな相続は私は将来一代限りにしてしまって、たとえば五百万とか一千万とかいうもの以上は相続をさせないで、全部国のものにして、それに対して褒賞制というものをしいて、そうして本人の蓄積の努力を将来も持たせるように、たとえば何千万円という相続税を納めた人には勲一等をやるとか、あるいは一年に一回は無料で伊勢参りに連れていくとか、それは一種の功績ですから——金として蓄積するからたまっていくのですから、ためようのない無形の褒賞制をしいて、これは一代限りにした方がいい。そうでないと、何代も続いていって、めかけの三人も四人も置いてて、ゴルフばかりやっておっても財産は減らぬということで、子孫のためにもよくないから、それは一代限りでもいいと思う。だから、相続税そのものに反対するのではなく、むしろそういう少し極端な考えは持っておるのです。しかし、小さな家業として営々としてやっている者が、親が長くわずらって、その間自分が働いて、ごちそうを食べさしたり、あるいは医者にかけたりして来て、そうして死んだとたんに、今度は、これは無償でもろうたのだからというので相続税をかけられる。それなら親に飲ました薬代なんかは書いて出したらいいじゃないかということは、実際上できるものではない。何しろ実体が非常に間違っておる。その実体を税制によって改革していくんだという理想なら、これは一つ考え方。しかしながら、実体そのものをさらに続けていこうという政策を、安定した経営を持続さしていこうという方針を一方でやっておりながら、税制でこれをぶちこわしていくということは——これは、私きょう一日で何もかも申し上げるつもりはないのですからね。しかしきょうの出席者はあまりおりませんけれども、これは実際一人々々にかかるものですからそのままになっておるのでありまして、一つの府県が一ぺんに相続税がかかってくるということだったら、とても黙っていません。ですから、これを変えることは朝令暮改の何があるから、現行制度がいいなんということを第四項に書いているのですけれども、これはそうじゃなしに、早く変えた方がいいので、非常におそいのです。これは、おそらく私の議論が間違っておるという人は、一人もなかろうと思うのです。そういう点も、実態にいかにそぐわぬか、その実態が改むべき実態か、むしろ持続すべき実態かということを検討して、持続すべきものであれは、その障害は除く、しかも金額としてことしは三十億をこえていますけれども、私に陳情した某税務署長は、わずか三十億だからこんな税は全部なくしてくれという陳情です。めんどうさ、不公平や何かからいうと、この税はもうなくしてしまった方がいいというないしょ話すらするぐらいに、徴税する税務署長が言っておる。納める人は泣いておるということも、よく一つ原さんのみ込んで、この現行制度がいいなんという理論はどれ一つ見ても空漠たるもので、実際を知らぬような議論です。三だの四だのというのは、取ってつけたような議論です。富の公平な分配などというのは、実際大きなところが蓄積していて、遊んでおっても食えるような場合のことを考えるべきだ。こんなものは取ってつけた議論です。時間もないから、私はあまり多くは言いません。
  8. 原純夫

    原説明員 大へん示唆に富んだお話が数々ございまして、十分それらの点を考慮いたしまして慎重に研究させていただきます。いろいろ再評価の問題、その他複雑な面のある問題もございますので、それらについては、なお後刻いろいろ申し上げられるかと思います。
  9. 前田房之助

    ○前田小委員長 横山利秋君。
  10. 横山利秋

    横山委員 私も今の問題についてはいろいろ質問したいし、意見も持っておるわけですが、きょうはお休みでありますから、また次回に回しまして、ついでに志場さんに、少し再近の税制の納税上問題となっていことについてお伺いしたいと思います。  それは、この間私が選挙区へ帰りましたら、納税者の方が五、六十人集まって、何かとにかく大蔵委員をやっておるものに来いということで行きましたら、今度法人の事業概況説明書ができて、それをやれ、こういうわけだが、わしらにはとてもじゃないが、やれぬ。そうして見せてもらったのが、こういう二枚つづりの実に膨大な調査の要求であります。私はそんなことを知らぬと言うたら、これは零細な法人にとっては大へんなことであって、とてもじゃないが、できぬというので、こもごも意見の開陳がありました。もちろん税務の行政を的確に行い、所得を正確に把握する関係上、資料の必要なことは税務署としても当然ではありましょうが、少し度が過ぎてやしないかと私は感じられてならぬのです。私も役所の出でありますから、官庁におったものの立場として、一つ資料を作るとなると、あれやこれやと考えて、そうしてあれも調べ、これも調査を求めておくという習慣があることはわかることなんですが、やはりその調査というものが、ともすれば度を越えて、ほんとうはあってもなくてもいい、まああるにこしたことはないということまで行う悪例というものがずいぶん多いわけです。今度の事業概況説明書は、ややそれにふさわしいものではないか、従来の五業種から十三業種に広げて、そうしてこれだけ膨大なことを、おそらくこれは全国でおやりになっておると思うのでありますが、納税者にとっては大へんな仕事を押しつけられたものだと、私はほとほと感心をするような気がするわけですが、どうしてもこれをやらざるを得ないという理由はどんなことであったのか、それをまずお伺いをいたしたいと思います。
  11. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 私は、事業概況説明書につきましては、今回の大蔵委員会で御査問がありまして、国税庁長官からいろいろ趣旨の説明があったはずでございまして、くだくだしく重複することもいかがかと思いますが、結局簡単にせんじますと、現在税務署所管の法人数は、全国で約五土方近い数であります。税務署の法人税係員の数は、係長、課長を入れまして、定員で約五千弱でございます。一人当り内部事務等を配慮をいたしますと、年間百五、六十件の法人を受け持つということになっておるわけです。従いまして、どうしても全部につきまして実地に調査するということはとうてい不可能なわけでありまして、しかも申告納税の建前から申しますと、賦課課税のときと違いまして、申告面から検討して不合理があるというものだけに実地調査をしぼっていくということは当然なことだと思うのでありますが、それと今の事務量の点から申しまして、実績から見ますと、年間を通じまして、実調率とわれわれ言っておりますが、実地に調査に行く法人の割合は、全法人の約五割程度にとどまっておるわけであります。そうなって参りますと、申告が出て参りました際に、この法人は実地調査に行くべきか、あるいは机上で処理いたしまして実地調査に行かないで済ますということをやるべきか、いずれに属せしむべきかということは最も重要な問題があるわけであります。税務官吏は、職掌柄といいましょうか、何だか調べたい、自分で実地に行って見てみたいという欲望は持っておるわけでありまするが、それを押えるといいますか、踏み切ることが必要でありますから、そうなりました際に、単なる法人税の申告書、それから勘定科目の内訳説明書というふうな付属書類のみではなかなか踏み切りがつきかねる、つい行ってみたくなるということで、実は机上調査と申しましても、何らかの形でその店に臨んでいくというふうな状態もよく起っておる次第であります。そういたしますと、納税者の方々も、実地に来られるということも実際めんどうが多くなりまするし、われわれの方といたしましても、真に実地調査すべき法人についての調査の日数が不足してくるというふうな悪循環のようなことになるわけであります。従いまして、何らかの意味におきまして、申告がほんとうにこれはいいじゃないか、安心して申告できる、机上処理ということに踏み切れるじゃないかというふうな判断を一方において可能にするためには、やはり申告書の内容がおおむねいいじゃないかということを説明するようなデータがほしいじゃないか、また納税者にとりましても、これは、こうこうこういうことでやっておる、従ってうちの申告は是認さるべきものであるということを一言税務署に申したい、説明したいということも当然考えられることだと思うのであります。さような点からいたしまして、若手押しつけがましい議論じゃないかといわれるかもしれませんが、納税者にとっても、実地調査というものはなるべく避けたいわけでありまして、申告の機会にそういうものを説明して、自分が誠実にやっておるならば調査は省略してもちいたいという考えもあるでしょうし、われわれの方も、その点で利害といってはおかしいですが、要請することと合う点もあるじゃないかということで、今回の事業概況説明書を、詳しくすると申しましょうか、整備したという基本的な理由だろう、こいううふうに考えております。
  12. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、私も税務署職員が大へんな仕事を少い人数でやっておるということはわかるのですが、その税務署の能力の不足を補うために、納税者に対してこの負担を持ってもらうというしわ寄せされた結果になると思うのです。それじゃ納税者がこの負担を、実際問題としてできるかどうかについてお考えになっておられることと思います。私がその前提として聞きたいのは、これは強制力を持っておるのかどうかという点が第一点。第二番目には、これを出さなかった、ないしは出さなかったというよりも出せなかった、事務能力を持っていなかった、こういうところは一体、どうなるのか。第三番目に、税務署の一部の意見では、もしおわかりにならなければ私どもが行って十分手をとって教えます、こう言うそうでありますが、そのことが何か非常にすごみをきかせておるというような印象を納税者に与えておるのですが、そういう点について国税庁の真意は——納税がそういう不安におびえておる、仕事量もふえる、できなかったらすごみをきかされるという不安におびえているのだが、この点についての国税庁の真意はどういうものであるか、これをお伺いいたします。
  13. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 まず強制力の点でありますが、これも渡辺長官から御答弁がございましたように、法的に強制するという建前では毛頭ございません。あくまでも申告納税の建前からいたしまして、なるほど何がしかの時間的負担というふうなものもかかるかと思いますけれども、お互いに税務に協力し合う、自分たちの会費を納め合うというつもりで御協力願いたいという趣旨から申し上げておるのであります。それは概況書をお出し願うというときに、申告書を同封してお送りいたしますが、その際われわれの通達でも、特にその点を付言したのでありまして、これは、お出しいただかなければそれはけっこうであります、全部が全部埋まらないという場合も、もちろん埋まるだけでけっこうであるということを特に付記した文言を添えて、送りなさいということを年じゅう言っております。  その次に、出せなかった場合、あるいは一部しか書かなかった場合どうなるのだろうか、何か特に悪いのじゃないかというふうに思われて、先入観を持たれて調査がきつくなる、疑われるということになりはしないかという不安感の問題でありまするが、この点は、私どもといたしましては、たびたび国税局を集めて会議をいたしました。またいろいろほかの税に関する雑誌、新聞というふうなところからも聞かれたりいたしますけれども、決してそういうことはないということであります。われわれは、どちらかと申しますと、もちろんすべての人が出していただきたいという希望がありますが、出せないには出せぬ理由があるわけでありまして、出したからといって、全部が全部実地調査を省略していいということにもなりませんでしょう、また出せないからといって、それが全部何か不正なところがあるのじゃないかというふうにもならないと思います。そこは、出した出さなかったという形式的な面では、実質的な判断というものが出てこないわけでありまして、その理由がそれぞれ合理的であればいいわけであります。従いまして、出さなかった場合におきましても、もちろんわれわれの方としましては督促といいましょうか、もう一ぺん出してもらえないでしょうかということをお願いすることはありましょうけれども、もしそうでない場合におきましては、今度は申告書だけで検討いたしまして、そうして同じ業種の他の法人との比較とか、その店舗の今までの状態とか、さようなことからいろいろ勘案しまして、これは申告でいいのじゃないかと思われるところはそれでいいはずであります。しかしそれから見ても若干不安があるし、不合理といいますか、違う点があるし、また概況書が出てきてないために、どうしてほかと違うのだろうか、われわれの見ておるところは違うところがあるのだろうかという判断が伴いますときには、実地調査をしなければならぬのではあるまいかという判断の原因になるわけであります。さようなわけでありまして、決して出した出さなかったという、あるいは一部しか書けなかったということの形式的基準によりまして、実質的な良否の判断をするということにはならない、こういうふうに考えております。
  14. 横山利秋

    横山委員 この納税者資料に関する義務というのは、法律上定められて、これを提出しなければならぬという義務のあるものと、それから今の事業概況報告書のように、義務のないものがあると思うのですが、この辺は、国税庁としてもはっきり区別をされる必要があろうかと思うのであります。ところが、実際運営上になると、税務署が出してくれと言われただけでびくんとする。これが遺憾ながら今日の実情であります。従ってお伺いしたいのは、法律納税者が出さなければならぬ義務のある資料は何であるかということ、それからそれ以外にはもう納税者の任意であって、その任意について、税務署は直接にしろ間接にしろ、何らの強制力を持たない、これはあくまで相互の理解の問題であるという点を、明確にこの際される必要があると思うのでありますが、その点はいかがですか。
  15. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 その御議論には全然異存はございません。ただ提出しなければならない書類の範囲というものは、法人税法の諸法令、施行令まで含めまして定められておるところでありまして、これはその法律関係で——そのPRの問題は別といたしまして、はっきりわかっております。ただわからないのは質問検査権で、これは今質問検査権を法律に基いて行使しておるのか、あるいはそうでないのか、これは法律の質問検査権の条項を読んだだけでは、具体的に求められているものがそれに当るかどうかということはわからないのでありまして、それにつきましては、今のものはこれこれ、これはこうであるということを明らかにすべきじゃないかということも、御質問の中に含まれておると思います。実際店舗に臨みましたり、あるいは税務署に来ていただきましたりして、あるいは電話でお聞きすることもありましょうが、内容につきまして、この申告の数字はこうであろうか、ああであろうかというふうなことをお開きするというのは、これは質問検査と納税者の方も当然お考えになると思うのであります。そのほかに一般的に、今申しましたような概況説明書を出してくれと言われる。これが果してうちだけに聞かれたのではない、一般的にそのものが申告書とともに入ってきた場合に、法令から見れば、申告書の付属書類でないことはわかっている、しかし質問検査権も行使されておるかどうかはわからないという問題になります。従って、全般的に見まして、今やっておるのが、あるいはこうこうするのが質問検査権の範囲になるかどうかということを周知させることは、なかなか不可能かと思うのでありますが、ほかにいろいろ、あまり複雑なようなこともいたしておりませんので、ただいまの概況書につきましては、これは質問検査権ではありません、任意提出で御協力願いますということを明らかにするような前文も使い、またそういうことを書いた書類を申告書発送の際に同封することによりまして、ただいまの御質問に対するPRといいますか、それにつきましては必要にして十分ではなかろうか、これを一般的に分けまして、これはこれ、あれはこれこれというふうにすることは、不可能の面もありますし、また不必要な面もあるのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  16. 横山利秋

    横山委員 わかりました。この事業概況説明書については、これは質問検査権によるものでも、法令によるものでもない、任意の相互理解の問題である、全部が全部書かなくてもよろしいのであって、書いてないことについて強制力を用いる気持もないという点については理解をいたしました。ただ、私がさらにそれ以上に心配をいたしますのは、第一にこの内容が実に膨大にわたっておるのでありますが、これほどまで詳細にしなければわからないものだろうか、あなたの方の仕事ができないものであろうかという点であります。これは、納税者に非常に負担がかかるという意味と、それから税務職員自体としても、この一枚に書いてある内容を一つ一つこれが正確であり、妥当であるかということを調べるだけでも、税務職員の事務量というものは大へんなことではないかと考えられるわけでありまして、この資料の内容をきめるときに、不必要なものはなるべく省く。双方ともに迷惑になるのであって、空欄であれば、またそこで何かついてみたいという気持も、税務職員の中には起ると見るのが人情であります。従って、このような膨大な資料を何とかさらに簡単化をして、どうしても一応備えつけておくとしたならば、また記入させるとしたならば必要不可欠なものだけに納税者の協力を願ったらどうか、どうしてそれができなかったのだろうかということを私は疑問に感ずるのです。それが第一。  それから第二番目には、納税者側から見ると、これをせっかく努力して書いてみても、結局納税者が任意に書いたものである。税務署はこれを信用してくれないであろう。従って、一ころあなたと私との門に論争のあった青色申告の今の状況に対する認識と相待って、どんなに書いたところで、この納税者はどうもあやしいと見たら、こんなものはたなに上げてしまって、いきなり原始的な調査をやるのではないか、結局書いてみても、実際のいざという場合には、こんなものはほうっておいてやるのではないかという問題が一つあります。  それからもう一つ納税者の心配は、これを書くと、またその中から、さっき言ったように、ここが空欄だ、ここはおかしいというわけで、これからまた一つ穴をほじくっていって、不必要なところへ税務署がどんどん来るのではないかという心配であります。この心配は、納税者側から見れば、納税者というものはごまかすものだとか、納税者というのは少しでも税金が安くなればいいのだというふうに税務署が感じておって、その立場で議論をされたならば、これはどんなに書いたところで信用してくれないという感じを持っておるのです。こういうような点について、この概況説明書に対するあなたの方の理解と運用の仕方についてただしておきたいと思います。
  17. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 お答えいたしますが、まずそれをお考え願います場合に、実情として頭にとどめておいていただきたいと思いますことは、御承知の通り税務署の担当官は大体二年くらいで転々と転勤をしていきます。しかも先ほど申しましたように、毎年実地に調査をする法人の数は、全法人の約五割程度でございます。しかもその中には、二年引き続き実地調査をするものも一部あろうかと思いますので、それらを考えますと、自分がその署に勤務しております際に、実際に法人のところに参りまして、この法人はあそこにあるこうこういう事務所で、この程度の規模で、こうなっているということを、全然経験がないという状態のもとにおきまして調査をするという段階になっておるということを、まずお考えにとどめておいていただきたいと思うのであります。納税者の方といたしましては、自分が何年何十年か店舗を張っておりますので、もちろんおわかりでありますが、税務署調査をする担当官から見ますと、そういう実情であります。しかも実調率が五割でありますので、地域分担あるいは業種別に分担するということでなしに、いわゆる指令方式と申しまして、幹部から、お前は今月はこの法人とこの法人を調査しろ、あるいはこの法人の準備調査をしろと、こう示されるわけでありまして、あらかじめ自分がどの法人を持っているということはないわけであります。その意味から申しますと、税務署の担当官というものは、何らその店がわからないという状態のもとにおきまして、申告書を見て調査に行くという状態にあるわけであります。従いまして、もちろんわれわれといたしましては、御指摘のように、この様式、項目をできるだけ簡素にするということは大いに考えるつもりであります。これも、議題になりましてから何回か会議をやりましたのですが、初め国税局の立場からすれば、少しこまかいものということを言っておったのでありますが、約一年余りの間いろいろ私どもの方で検討いたしまして、ようやくしぼってみたのがこれであります。ただ、よしあしの問題はありまするが、われわれとして遺憾といたしますことは、四ページになっておりますが、実は右の方の回答欄だけの項目にいたしますると、これは大体半分になるはずであります。と申しますことは、左の方で質問事項を相当こまかく書いてあります。それで非常に分量がふえておるということ、それから答えの方の分におきまして類型的な答えの場合が想像されるという面におきましては、〇×式ということで、できるだけ鉛筆をもって書き込む労を避けたいという配慮から、答えを並べまして、この中の当るものにまるをつけていただくというフォームを取り入れております。さようなわけで、もしもこの答えの部面のスペースを、さらに必要なことを書くということで〇×式をやめるということになりますと、実質的には減ってくると思うのでありますが、さような考慮をいたしましたために、一見鬼面人を驚かすというふうな感を与えておるということにおきましては、私も感じておりますが、これはさような配慮から出たのでありまして、御了承願いたいのであります。  次に内容でございますが、これは決して税法との関連税法解釈の問題、そういうふうなむずかしいことを内容としては尋ねておるつもりはございません。経営者といたしまして、一体うちで何人使っているのだ、どういう支店があり、どういう店舗があるのだ、税金の管理はどうしておる、帳簿はだれがつけてどうしておる、一番損した品物は何であるとか、こういうふうなことは、経営者といたしましては、税法のことはあまり詳しくないという方がおられましても、自分が商売を張っておる限りにおきましては、たとえば税理士さんとかいうような専門家の意見を待たなくても、おわかりになっていることじゃなかろうかというふうに感じたのであります。従いまして、もちろん第四ページにありますような資金繰りというものにつきましては、あるいは十分でないからわからぬという方もあるかと思いまするけれども、少くとも一面、二面、あるいは三面におきましては、そういうふうに特に膨大な帳簿を繰ってみて、足したり引いたり割ったりして初めて答えがわかるというふうなことは非常に少くしておるつもりであります。とともに、税務官吏が調査に行きました場合でも、当然まず帳簿を見る場合に、そういうところから質問に入っていくわけでありまして、あらかじめ書面でお聞きしておることでありまして、実は私は、二、三知っている店舗の人に頼んで、一ぺん書いてみて下さい、どれくらいでできるであろうかということで、モデルとしてやってみたことがございます。しかも、これはさしあたり売上げ年間七百万円以上の法人にしておりますので、大部分青色申告でございまするし、その例によりますると、大体二時間程度で書ける。ただ第四面の資金繰りにつきましては、これは少し時間がかかるかもしれない。ここでこういうことを申してはどうかと思いますが、しかも資金繰りというものには、なかなかふだんのやりくり算段のようなことがあからさまに出てくるわけでありまして、つじつまの合ってないのをつじつまを合せようとして考え込むと、これは何日もかかるかもしれないけれども、要するにありのままを書くということであれば、これは比較的時間がかからないで済むようであるということも聞いておるような状態でありまして、内容につきましては、ごらんになっただけではなしに、一ぺんのみ込んでいただきました暁におきましては、私はさほど経営者といたしまして考えなければわからぬということはないというふうに考えておる次第であります。もちろん将来の研究問題といたしましてはさらにあるかもしれませんけれども、その点を申し上げておきたいと思います。それから出してもきき目があるかどうか、あるいは出したために、かえってただいまのものよりもこまかく突っ込まれる危険がないかということであります。これは、私どもといたしましても、むしろ内部的に注意はしておる点でありまして、われわれはこの制度がうまく発展して、お互いに納得のいくようなやり方ができるためには、できるだけ進んで協力していただいて、長く発展せしめたいと思っておるわけでありまして、特に各局に対する通達面では、その運営上の心がまえにつきまして入念に指示をいたしました。その際の大きな指摘事項は今おっしゃった点であります。とにかく今までは、税務調査は時間の関係もありまして、ただ帳簿をひねくり回して若干の不備を見つける、たまたまほかに材料でもあれば、それをばかに詳しく突き進んでしまう、非常に実施上不公平でありますので、われわれといたしましても、出さない場合につきましても、行った場合にはこの内容のことは必ず聞くのである、調べなければいかぬとともに、出したからといって、それだけをやかましくいって、そうでないところは全然やらぬということの不公平があってはならぬということを、やかましく指示したのでありまして、これは運営上のわれわれの配慮に待っていただきたいと思うわけであります。ただ内容が信用し得るかどうかということは、ふだんのものが全部つけてあるということだけでなしに、あくまでも申告が正当であるかどうかということであるのでありまして、われわれといたしましては、先ほど申しましたように、出してこられたから、こられないから、一部抜けておるからということによりまして、実質的な良否の判断をするということにはならないわけであります。そうして先ほど申しましたように、店舗の状況を知りませんので、やはり一応お書きになったことは、しかも外形的な点が多いのでありますから、あまり虚偽といいますか、行けばすぐわかるようなことが多いのでありますから、そういうふうな点についての積極的なうそを書かれるというようなことはないような項目じゃないかと思います。さようなわけでありますので、そういう方面につきましては、お書きになったことはまずその通りであろうという前提のもとに、それと申告との関連考えていく、こういうふうになろうかと思うわけであります。
  18. 横山利秋

    横山委員 簡単にあと一、二の点をお聞きします。この説明書を出さなくともいい人はどういう人ですか。
  19. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 われわれの方では、業種別にさらに年間の売り上げ階級別というものを内部的に作成しております。この前も渡邊長官からお答え申し上げましたように、さしあたりは年間の売り上げ金額が七百万円程度以上というものに限ってお願いするつもりであります。そういたしますと、今まで私どもが得ている資料からいたしますと、全国平均してみまして、全法人の約五〇数%の方々がお出しになるということになるのじゃないかと思います。
  20. 横山利秋

    横山委員 先般の議論とさらに重ねて私が質問するゆえんのものは、今のあなたのお話でその全貌はわかりましたし、あなた方の立場もわからないではないのですが、納税者から見ると非常に困ったものだという感じが強いのであります。今まででも、税務署資料の提出を求めてもなかなか集まらない、せいぜい半分ぐらいじゃないかといわれておるときに、このような膨大な資料の提出を求められる。そして実際論としては、出さない人に対しては、どうも実地調査なり何なりが行われるのじゃないかという懸念が全国にみなぎっておるわけであります。しかし実際問題として、もうお出しになったのでありますから、その運営上について特に今後配慮願っておきたい点を二、三申し上げておきたいと思います。  第一は、今のあなたのお話を聞いておって考えられることは、このくらいなことは、経営者としては常識として当然知っていなければならぬことじゃないか、こういう前提のもとにやっておられるような気がするのです。これを立案された税務署及び国税庁、それを運営される税務職員は専門家でありますから、このくらいなことはという感じがするのは理解できないことではない。しかし納税者側は、帳面についても、自分がやっている人も、率直に言ってそう正確にすべてを把握しているわけではない。自分がやらない人は、担当者ほど会計上の税務の問題について深い知識を持っておるわけではない。そうなりますと、中小企業は、帳簿のあり方についてそう完全無欠ではない。そういう前提で、いろいろ資料の提出について考えてもらわなければならぬと思う。従って、今後この説明書をさらに再検討される機会がありましたら、ちまたの納税者の声をよく聞いて下さって、できる限り不必要なことを削除して、必要やむを得ざるものだけにするように考えてもらいたい。  その次は、今御答弁の中にありましたが、これはあくまでも任意なものである。従って出さないからといってそれに対して——極端な話をしますと、報復手段なり、一つ一つ実地調査をするというようなことのないようにしてもらいたい。  それから出したものについても、納税者というものはこういうものだときめてかかって、出したがゆえによけいに迷惑を受けることのないようにしていただかなければならぬと思います。  以上の諸点について概括的な御返事を承わりたいと同時に、最後に、簡単に、この間の税制改正に伴って、青色申告が、特に法人について志場さんの方の考え方が、運営上一歩前進するのではないかという懸念がちまたにあります。それは、青色の取り消しをやるのではないかという話が去年以来ございました。今度の法律改正で、納税者に青色の取り消しをしたからといって急激なショックを与えることのないように若干なったのでありますが、税務署が青色の取り消しを、特に法人については、ことしからどんどんやるのではないかという声がちまたの心配になっております。その点について、今度の改正がどういう影響を及ぼすか、あなたの方としてどういう運営をされようとしておるか、この二点を最後にお伺いいたしまして、私の質問を終ります。
  21. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 前段の概況説明書につきましての内容と三つの御要望、すなわち改正の際には納税者の声といいますか、そういうものをよく聞いて考えてもらいたい、それから出さないからといってあらかじめ差別待遇をする、報復手段を講ずるというようなことのないように、第三点といたしまして、出したものについては、かえってますます細部まで渡ってこまかくなるというような実質上の不公平がないように、この三点につきましては、先ほど来御答弁している通りの気持を持っておりまして、われわれとしましても、そのように運営して参りたいと思っております。  それから、後段の青色申告の、取り消しの問題でございます。今回の法律改正で、各種の準備金につきましては、取り消された場合におきましても、十年間の繰り戻しということがなくなりまして、そのまま置いておきますので、これはその面から申しますと、今までよりも条件がゆるくなる、負担の面から言いますと、納税者には不利にならなかった、有利になるということでありまするが、これと相関連して、法人の青色申告の取り消しがむやみやたらに行われるというふうなことになりはしないかという御懸念だと思います。われわれといたしましては、実はああいうふうな改正が行われましたことについては、実質的に内容を見まして、法律の規定の面から申しますと、取り消しをしなければ他との権衡上非常に不公平になるという場合におきまして、しかし、かたがた利益金繰り戻しという問題がありますために、なかなか取り消しも思うようにまかせない。他のことを考えてちゅうちょするというふうな実情があったことは確かであります。しかしながら、これはどっちかと申しますと、調査課所管の法人のような、つまりそういった準備金といったものの金額が相当大きな金額として余ってきておるという場合がおもだと思います。しかしその場合におきましても、しかもその金額も大きいし、かたがた取り消されるという理由が実質的にあるというからには、相当調査の際における、いわゆる増差所得というものもあるはずであります。またそれに対しては重加算税といったような問題もある。これらを総合いたしますと、相当程度の重い負担になるということが実情でありまして、これは主として調査課所管の法人になるのではないか。従いまして、調査課所管の法人についての青色申告の取り消しということについては、もちろん相当帳簿がしっかりしておるという面もあり、大きな法人であるということもありまするが、きわめて少いのであります。一方税務署の方におきましては、実は準備金の積み立て状況というものも、これはよくいわれますように、あまり活発でもございません。従いまして、大きな金額が余っておりまして、それがためにちゅうちょせざるを得ないという点は比較的少いと思っております。従いまして、従来でも年間約八千件程度の青色申告の取り消しが税務署所管の法人につきましてはございました。そこでわれわれといたしましては、今回の改正によりまして、この負担の面ということの考慮はあまりしないで、税法の意図しておるような正確な青色申告が行われるように、税法の規定に従った取り消しというものも、厳正に行われるような方向に資するものとは考えておりまするけれども税務署所管の法人につきましては、そういうふうな負担の面からするちゅうちょということは、実情としてはあまりなかったということをあわせて考えますると、私は考え方としては、青色申告の取り消しというものが厳正に行われる可能性が出るような改正になったと思いますけれども、実際問題として、税務署所管の法人について、青色申告をそれだから取り消しが何倍にもはなはだしくなるというふうには思っておりません。ただ考え方といたしましては、そういうふうな改正とあわせまして、すっきりした考え方を持つという方にはいくと思っております。とともに、青色申告というものは、やたらに調査が困難で、思う通り所得が出ないから何でもかんでも取り消せということでは毛頭ございません。これは、やはりこの帳簿書類が事実と比較いたしまして真実ではない、この帳簿書類の全体がその記帳の不実なことを想定するに足りるような、そういう事実がなければできないということは、これは法律が要求するところであります。従いまして、その判断はあくまでも適正厳正に行うべきでありまして、なるほど考えますと、税務署所管の法人、これは全法人の九割九分はそうでございますが、それにつきまして、青色申告の取り消しが飛躍的に件数として出てくるということは、考え方がはっきりしたからといって、そういう結集になるということではない、こういうふうに考えておる次第であります。
  22. 横山利秋

    横山委員 非常に回りくどい御答弁ですが、要すれば、運営上今までよりも青色申告の取り消しが多くなるようなことにはならないであろう、こういうことだと了承をするわけです。ただ志場さんが言っておられる前提は、帳面が完全であること、完全でないものについては厳正にしたいことというふうなことは、前提が少し間違っていやせぬかと思うのです。特に中小企業の帳簿、あるいは仕事の面等で、税務署がほんとうに満足だというような帳面、その他運営がなされておるというところはほとんど私はないのではないかと思います。これはごまかしているとか、どうとかということでなくして、それが中小企業の実態ではないか、その実態に根を据えてお考えをしていただきませんと、苛斂誅求という結果になるわけです。ですから、あなたの言う、青色申告の取り消しは厳正にするということと、運営上はそうめちゃなことにはならないということに、法理上と運営上の矛盾をあなたは繰り返し回りくどく言っておられるのですが、問題は、納税者の納得が得られるかどうかということが納税の根本的な問題でありますから、その点について、今回の改正が青色の取り消しを激発するようなことについては、避けてもらわなければならぬ、こういうふうに強く要望いたしたいのであります。志場さんも、一つその点のところを簡明率直に御答弁願いたい。
  23. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 なかなかむずかしい問題でございまして、私は現在程度の青色申告の取り消し件数に、引き続きそうなるであろうというふうには必ずしも思っておりません。考え方といたしまいしては、今回の改正の機会ありまして、税法本来のと申しますか、青色申告を育成するということの考え方として、あるいは税法上の問題として、することができるようになるだろうということを申し上げたのでありまして、その結果がどうなりますか、これはまたその解釈なり考え方とは別個の問題であろう、こう思ったのであります。ただ私どもの方は、中小法人について帳簿記帳が、専門的な立場から見て必ずしも十分に行われるということは期待できないという事情ももちろん承知しておるわけであります。さような意味におきまして、一々取り消しにすぐ結びつけるということは毛頭考えておりません。できるだけその誤まりを是正していかせるということで済むことは当然でありまするが、ただしかし、実質的に悪意を持ちまして、相当程度の金額なり割合に達するような脱漏をはかっておるというものにつきましては、私は、今後は負担の面ということを考えないで、これはいかにも不公平じゃないか、ほっておけないという程度の判断のものについて、厳正な取り消しが行われ得る基盤ができた、こういうふうに申し上げておる次第であります。
  24. 前田房之助

    ○前田小委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会