○小山
参考人 私は、全
日本塩業総連の小山でございます。最近の
塩業の対策の問題につきまして
意見を述べさせていただく前に、専売行政と
塩業者、労働者との
関係がどういうものであるかという点について、一言申し上げたいと思います。
御
承知のように、
塩業労働者は、その雇用
関係、それから個々具体的な労働条件というふうな点の取りきめにつきましては、各雇い主と対でやっておるのであります。そこで、面接的に専売行政なり
塩業政策なりが、右から左へすぐに響くという
関係にはないのでありますが、しかし間接と申しましても、その間接の度合いというのは、ほとんど直接的といって差しつかえないような状態に非常に重要な
関係を持っておるわけであります。たとえば、先年来実施いたしました
流下式転換によりまして、全国の
塩業労働者の約五分の四に
相当する一万数千名の従業員が失業したのであります。これは、やはり
塩業政策がそのような方向に進められました結果として、そういう労働者の失業というふうな非常に重要な問題がそこに起ってきたわけであります。なお塩の
収納価格をどういうふうにするかというようなことは、やはりわれわれの日常の賃金、またはその他の労働条件に非常に敏感に響いてくるのであります。そこでわれわれといたしましては、一般産業における労働者、そしてその上にしかれる
政策なり、または官庁の指導とかいうふうなものとは、専売
企業下の
塩業においては全然その性格が違うのでありまして、
塩業の
企業体は、全然自主的な経営とか
企業運営というものは、これは
塩業企業体じゃないのでありまして、その自主性は
相当に専売行政、専売
政策によって拘束を受けておるという特珠な条件下にあるので、従ってわれわれ
塩業労働者は、
塩業政策または
塩業行政、これに非常に深い密接な関連を持っておるという
立場にあることをまず申し上げたいと思います。
そこで、今般のような、
国内塩業対策に重要な画期的な改革を何か
公社の方ではお
考えのようでありますが、この重要な改革を実際に行おうというようなことになりますれば、やはりわれわれの大部分、または何人かというふうに、その
相当数の人が、
塩田が
整理されるということになりますれば、失業という問題がそこに起ってくる、さらに
塩価がどういうふうに具体的に
決定されるかという
方法につきましては、それが直ちにわれわれの賃金に影響してくるというふうな非常に重要な問題でありますので、こういう問題について、非常に密接な関連があるのでありますから、単に
塩業者のみでなしに、
専売当局とされましては、こういうふうな大きな転換を必要とするような重要
政策の
決定につきましては、われわれ
塩業労働者にも何とか
意見を求めて、そしてその
意見をも参酌しておやりになるというふうな配慮があってしかるべきではないかというふうに私は
考えます。この点、今般の大きな転換に際しましても、正式には、われわれにはこういうふうなことはもちろん通知をしていただけませんし、また御相談にもあずかっておりません。いわゆるわれわれとしては、漏れ聞きうかがい知ったというふうなことで、事の重大に驚いて、
公社に真相をただしに行ったというふうな状態でありまして、この点、非常に遺憾にたえないのであります。将来そういうふうな点について、もし
公社が
塩業労働者の
立場を十分認識されまして、
政策と行政、要するに塩に対する
政策と行政がわれわれとどういう深い関連があるかという点を省察されまして、将来、われわれの
意見を
政策行政の上に反映していただくような方向をとっていただくならば、非常にいいと
考えるのであります。
それから最近
公社の塩の
生産が非常に上昇いたしましてその結果、
国内食料塩を
自給する以上の塩ができ、なおかつ販売
価格を
据え置きというふうな
関係から、今まで安い外国塩をある程度のパーセンテージ混和しましてそしてそれのプールの
価格構成で売っておったが、その
価格を据え置いて、その大部分を割高な
国内塩でまかなうということによって非常に大きな
赤字ができて、そこでその
赤字処理の方策といたしまして、
生産対策というふうなものを打ち出しておられるようであります。
われわれがこの
公社の今般の
生産対策を
塩業関係の一員として見まして、どういうふうに
考えておるかという点について申し上げますと、
国内塩業が
流下式転換によりまして非常に
増産されてきた、そして当初の
目標であります
食料塩自給というものを完全に達成する
見込みがついてきたということ、このこと自体は、非常に歓迎されなければならないことじゃないかと
考えます。しかし一面、国際市場
価格との比較において、著しく
内地塩が割高であるということも事実であります。従いまして、専売制度のもとに、国の保護助成にある程度の依存をいたしまして
国内塩業を今やっておるこの現状においては、やはりこれを手放しで進めていって下さいというわけには参らないと思うのでありまして、やはりそこに
生産コスト、あるいは
生産計画というようなものを中心に、将来の
塩業政策をどういうふうにするかということを再検討する必要が生じてきたということは、当然の成り行きとしてわれわれも異存はないのであります。しかし、今般
公社がお
考えになっておりますその案は、手段と
方法において、どうも私ら
関係者といたしまして納得しかねる点があるのであります。と申しますのは、今般の大改革を余儀なくされ、また必要とされるような結果をもたらしたその経緯並びに原因等を掘り下げて
考えてみますと、そこに専売行政の不手際と申しますか、過去における場当り的なものが積り積ってここに大切開手術を必要とするような事態になったのだということを、われわれは強調せざるを得ないのであります。その具体的な例といたしましては、
流下式転換をお始めになるときでも、これを
一つの
希望によってやるというふうなことを当時から盛んにおっしゃっておったのですが、しかし
希望によってやっていく、こういうふうなもので出発したものが、結果においては、これを強制するような傾向になっておるのです。といいますのは、
流下式に転換をしなければ将来結局
塩業から脱落していかなければならぬというふうな施策をとっておるのですから、これは
希望といいましても、ほんとの
希望ではなしに、そこにはその方向にどうでも行きなさい、行かなければいけないというふうな条件を備えておいて、その上に
希望だ
希望だというようなことをおっしゃっておるのですから、これは非常に工合の悪いことである。その結果といたしまして、
流下式転換の度合いというようなものが不揃いになりまして、各
企業間の
企業状態のバランスがとれなくなるというふうな状態が随所に現われてくる。それから当時
流下式転換をいたしまして、その後さらに
海水直煮とか、錦海湾の開発とかいうふうなことを逐次おやりになったのですが、この当時われわれといたしましては、将来そういうふうなことをやって塩が非常に余ってくるという状態が必ずあるでしょう、そういうふうな場合に、過去においてありましたような収納停止とか、または
塩田の
整理とかいうようなことがその結果として現われたのでは非常に因るのです。そこで、こういうふうな点についてはどういうふうにお
考えかというふうな点を、ここ二、三年来私らとしてはやったわけです。ところが当時
公社の最高責任者でございます三井部長は、それにつきましては、絶対に収納停止とか、または
塩田の
整理とかいうふうなことは
考えないというようなことをはっきり明言されておる。ところが最近になれば、そういうふうなことはどうもあまりあてにならないような状態になってきた。それで、そういうふうな
流下式転換を進めるに当りましても、需給
計画を立てる上にも、
公社としては、もう少し
流下式というふうな大転換をやるのですから、さらに各種各様な状態において
流下式の試験を徹底的に、試験機関があるのですからこれをおやりになって、それを民間に普及して、そういうふうな結果に基いて需給の
計画をお立てになれば、今般みたいなこともなかった。ところが、私は山口県におりますので、三田尻試験場の付近にはしょっちゅう行くのでありますが、
公社の機関といたしまして大々的に経営して、そういうふうなものを真剣にお取り上げになったような
あとを私はあまり見ないのであります。坂出等の分場でおやりになったということは聞いておりますが、しかし、それも期間的には、そう長期にわたったものでもなし、要するにその点の検討が足らなかったことが、結局結果として非常な手違いを生じたのではないか、こういうふうな経緯によって、今般の
塩業政策の転換を余儀なくされるような状態になったのでありますから、
公社といたしましては、やはり積極的にみずからそういう過去の手違い、または誤謬というふうなものを十分お
考えになって、今般のように、何か
塩業者またはその労働者というふうな
関係者の犠牲によってその場を切り抜けようというようなお
考えだけでなく——そういうものが大部分で、今度の対策をお
考えになっておるようでありますが、われわれとしては、それに非常に不満なのであります。
そこで、
公社が今度の
生産対策として出されておりますものの最大のねらいは、
先ほどから申し上げます
通り、
塩専売会計の
赤字解消でありまして、その具体的な手段として、一般的な
生産の抑制と弱小非
能率企業の
整理——結局
塩田整理をお
考えになっておる。
公社はこの
生産対策の第五項に、「弱小
生産業者の優良
企業者への統合を奨励する」というようなことを書いてありますが、このこと自体、われわれは
関係者の一員でありますが、何をどういうふうにされるか、具体的なことは全然わからないような表現になっております。
あとで御説明を聞いてみますと、結局
公社案の第五項というのは、
生産量を一ヘクタール当り二百トンに
制限してあるのでありますが、弱小
企業体が、私のところはどうも引き合わないからやめたいという場合に、その製造権の売買を事
業者同士において一めるということらしいのです。そして、その売買によって得た代償によって弱小
企業は
整理をし、それから
企業の廃業をして下さい、買った方は、
工業塩と金川塩との
価格差において権利売買に要した経費をまかないなさいというお
考えのようです。このことは、結局食用塩を二百トンに
制限すること、それから
企業別の
生産コストの著しい格差を無視いたしまして、七五%のバルク・ライン方式によって一本建の方式を強行することによりまして、弱小
企業はどうしても手を上げなければならないような条件をここに作り上げる。そして
工業塩と食料用塩の用途別の
価格差を大幅にする。そういうことによって、ここにそういう塩製造権売買の条件を売手と買手の双方から作り上げる。そして、しかもこれは将来
収納価格引き下げの度合いをどういうふうにしていくか。それから食料用、
工業用の塩の
価格差をどう操作するかというふうなことによりまして、
企業の
整理を、
公社の貧打と犠牲なしに、民間同士の取引において自由に操作できるという実に巧妙きわまる名案と私は
考えるのであります。そこで、もちろん将来に対する塩の需給見通し、それから
国内塩業に対する将来の
生産コストの引き下げの強い要請というふうな、こういう一連の行政のもとにおいては、
塩業としてすでにバルク・ライン方式のもとに
赤字経営を余儀なくされております弱小
企業、これはやはりジリ貧的に自滅を待っていくというふうなむごたらしい
方法よりも、まだ幾らか余力の残っておるときに積極的に
整理をして、そうして次の生きる対策を
考えていただくということの方が実際上親切である。ジリ貧的にバルク・ライン方式の
価格政策一本で押えていって、優勝劣敗を求めていくというふうな
考え方については、われわれとしてはどうしても同意はできないのであります。従って、そういうふうなことになりますれば、弱小
企業体におります労働者はいつも戦々きょうきょうとして、いつ
企業が崩壊するかわからないというふうな不安定な状態——
塩業者ももちろんそうだと思いますが、われわれの一番重大な問題である失業という問題がここにはついて回るのでありまして、われわれとしては、非常にこの点を重視せざるを得ないのであります。
その次に
公社でお
考えになっておるのは、一応
塩田整理を、対象
塩田の面積を六百ヘクタールというふうにお
考えになっておるようなんですが、そのうち入浜
塩田は約半分くらいと
考えております。そうすると、
あとの三百ヘクタールくらいは、その大部分が
流下式というふうなことになるのですが、もしこの
流下式ということでありますれば、これは非常に多額の国家資金を中心とする大きな投資をしているわけです。そして
流下式転換に伴いまして、われわれの仲間である
塩業労働者が、五人のうち四人の割合で大量に失業しているわけです。そういう大きな犠牲を払って、そうしてせっかく転換したのです。そのしたものが、完成すると同時に、今度はもう
整理を必要とする。そして、それがしかも
公社の積極的な
塩業行政の指導のもとにおいて行われた結果であるというふうなことは、これは何としても割り切れないことなんです。
それから現在
収納価格決定方式として、七五%のバルク・ライン方式というものを御採用になっておるようなんですが、これがずっと継続され、さらに将来塩の製造権の売買というふうなものが認められるというふうなことになりますれば、これはもう
塩業も一般の産業と同じような、いわゆる自由競争の自然淘汰というところに追い込まれるわけでありますが、このことは、結局過去には
塩田の廃止または用途の変更というふうなことを厳重に
制限をし、また
流下式転換に、
希望とはおっしゃっておりますが、実際は半ば強制的なような積極的な奨励をしてきた、そうしたいわば官製
事業が、一夜のうちに一般的な優勝劣敗の場面に追い込まれるということは、これは非常に官の横暴といいますか、無責任きわまることじゃないかという、ふうにわれわれは
考えるのであります。さらに
公社案は、
塩田整理に当り
希望によってというふうにおっしゃっておるのですが、過去の専売行政をずっと見て参りますれば、
公社はどうしてもそういうふうにする以外に道がないような
方法、こういう方向に専売行政を仕向けていって、
塩業者の不本意な
希望の表明を待ちまして、その表明された仕方なしの
希望を、結局自由な任意の
希望というふうにすりかえるというふうなことが、過去においてなされたわけなんです。今般の対策にあげてあります
希望という点についても、こういうふうな
考え方の
希望ということは、これは非常に行政上工合の悪いことだというふうに私らは
考えるのであります。結局この
生産対策自体は、
公社の現在までの場当り的な
塩業政策、そして将来に対する需給
計画上の大きな見通しの誤まりとかいうふうなもの、いわゆる
公社の行政責任に帰せらるべきような原因によって今度のような一大改革を余儀なくされる、その事態収拾、そのほとんどを民間同士の間でもって、その犠牲によって収拾しようというものであるというふうに断言してはばからないのであります。
次に、
公社の
収納価格引き下げ案について見ますと、合理化に伴う
生産コストの低下に従いまして、逐次
収納価格の引き下げを進めるということは、こういう
塩価政策の原則からいって、われわれとしても全然異論はないのであります。しかし現在の
収納価格の
決定方式、七五%バルク・ライン方式では、結局各
企業別の
生産条件の格差が非常に著しいのであります。たとえば原始的な揚げ浜、入浜
塩田と平かま、そうかと思いますと、近代化された真空式煎熬と
流下式塩田、あるいは
海水直煮というふうな、
生産様式におきましても非常に原子的なものから近代化されたもの、それからこれに伴いまして、
生産の量にいたしましても、ヘクタール当り百トン未満から二百七、八十トン、
企業によりましては三百トンというふうなものをとっておるのです。こういう大きな上限と下限のある、
企業別格差の非常に著しい、こういう状況のもとにおいて一律的なバルク・ライン方式でもって
価格決定をするということでは、結局弱小
企業と優秀
企業というふうなものの
企業格差をますます拡大していく、そして結局は、拡大された
企業格差の結果、専売行政はますます多くの矛盾をはらんだ行政しかできなくなってしまうというふうな結果が、次から次に起ってくるのじゃないかというふうに
考えます。しかもこういう各
企業の、たとえば弱小
企業の場面におきましても、この
企業が現在弱小といわれるそのことは、各
企業者のみの責任でなしに、やはり立地条件、それから天災、過去における専売行政のいろいろの経過というふうなものが結集されてこういうふうになっておるのでありまして、結局
収納価格の
決定は、単純なその場面における
生産コストということだけでは
決定できない非常に複雑な要素があるのじゃないか。そこで、それらのいろいろな要素を
収納価格の中で調整していくか、あるいは別途に措置をしていくかというふうなことは、手段は別でありますが、しかし
収納価格の
決定に当りましては、やはりこういう事情を総合的に考慮して
決定されなければならぬというふうに私らは
考えるのであります。
それから
収納価格の
決定は、この算定あるいは推定に当りましての要件をどう
考えるかということによりまして、結論として出てきます数字が非常に違ってくるのでありますが、この点、たとえば現状といたしまして社会水準に比較したら非常に大きな隔たりのある
塩業の労働条件——今われわれの
塩業労働者の労働条件は、私のところの組織の
調査によりますと、職員、それから煎熬
工場、
流下式というふうなところの全従業員を含めまして、平均約一万四千円でございます。この一万四千円といいますのは、どういうふうな条件のもとに一万四千円かと申しますと、大体月に平均二十九日稼働し、月のうちに時間外労働を約十八時間から十九時間いたしております。そして労働者の平均年令は三十四才、平均扶養家族数は二・七人、そういう条件のもとにおいて一万四千だ。しかしわれわれの令国
塩業労連の傘下にまだ入っておらない、内海地方以外の地域に散布いたします小
規模企業におきましては、とうていこの水準にないことは明らかでありまして、ずっと悪い条件にあると思います。
そこで、こういう低い労働条件の現状を、これでもってもういいというふうにお
考えになるか、少くとも公益専売と銘打たれました、国民の生活上必須の物資であるところの塩を作る労働者が、世間並みの待遇もしてもらえなくて、一生そこでそういう待遇にくぎづけされるような運命に縦かれるということは、何かわれわれの非常な犠牲によって公益が成り立っておるということになるわけでありまして、結局公益専売の本旨ではないと思うのであります。少くともここで直接
生産に携わる労働者に対して、世間並み以上ということは申しませんが、世間並みの労働条件が十分与えられるような、そういう要件のもとに
塩価を算定していただきたい。
なおそれは、結局
企業利潤の問題でもあると思いますが、やはり
企業利潤が上らないということでありましたら、われわれの条件も従ってそれに付随するわけでありまして、これは
塩業労働条件、
企業利潤、両方の問題であります。
なおわれわれの現在の労働条件が、一般に比較して非常に大きな懸隔を持っているということも
一つですが、さらにほかの原因は、資本の
効率というものが、
塩業は資本の回転がほかに比べて非常に低いのでありまして、そういう低い資本の
効率、かつ他に転用のならないような施設投資といいますか、
塩業の施設だけは、ほかに持っていってもだれも買手もないというような投資でございまして、こういうふうなものに対して非常に莫大な投資をされているのです。しかも一方、
先ほども
お話しがありましたように、
イオン交換樹脂とか、冷凍
製塩とか、その他斬新な製法が次から次に出てくるということになりますと、さらにこの上の大革命的な変革があるのではないかと非常に懸念されるのであります。これらに対応するために、
塩業者が早く現在の投下資本を回収して、そうして次の時代に即応できるような態勢を作りたいと
考えることは、無理からぬ話だと思う。われわれもそういうことを
考えていただいて、そうして
収納価格をきめていただかないと、結局そのしわ寄せは、われわれの上にくるということになりますので、その点は、決してわれわれに無
関係の問題でないというふうに
考えます。
なお
塩業は、御
承知のように全部が海岸線でございます。しかも台風の比較的多い地方にたくさん
塩業がありますので、台風災害というふうなものが何年に一回かほとんど統計的にくるというふうな状態にある。ところがこれらに対する
企業負担というものが、
収納価格の中でもってほんとうにどういうふうに認められているか、これらも、やはり一回台風災害を受けると、当分の間はその
企業はよう立ち直らない。その結果は、われわれの労働条件というふうなものにしわ寄せされざるを得ない、これが普通なんです。そこで、こういうふうなことも十分お
考えになっていただきたいと思います。
こういうふうな点につきまして、納得のいく要件を一応検討していただきましてそうしてこれを総合する——結局、それじゃ納得のいく
塩価はどうしてきめるかということになりますれば、やはり
収納価格の
決定のルールを民主的にする、これ以外にいろいろありましても、やはり結局それが民主的な
方法によって
決定されるのだというルールが確立されれば、それで解決される、その結果は、最上の結果だというふうに認めざるを得ないのでありまして、結局
塩価に対する問題の帰結は、
塩価決定ルールの民主化で、民主的な
塩価決定ルールを早くおとりいただきたいというふうに
考える。それで、
専売公社も、この点につきましては、前国会に
収納価格審議会の法案を提出したのでございますが、不幸にして審議未了に終った。そこで、今度の国会においてこれが成立を期しているというふうに承わっておりますので、今般の
収納価格の
決定に当りましても、精神においては、もうそういうことは
公社はお
考えになっているのですから、この法案提出の内容の趣旨に従って、その手続をこの際とっていただく、そうして現在出しておられる
公社の原案というものにこだわらずに、新しい観点から、
一つ納得のいく
塩価の再検討をしていただきたいというふうに
考えます。
それから、以上のような
公社の案をいろいろ——これはわれわれが僭越な試案を出しておりますが、しかし、これは、われわれ決して
公社のお
考えになっていることを批判するだけをもって能事終れりとするのではなくて、結局今まで非常に不安定でありまして、また近い将来にこういうふうな大改革をもう一回余儀なくされるというようなことが起っては困りますので、この際抜本的な対策を立てていただく、そのためには、
塩業関係者はこぞってお互いに
意見を謙虚に聞き合う、そういう真剣な態度でもって、将来の
塩業政策をはっきりしたものにしていただきたいという
考え方が、われわれをしてこういうふうな
専売公社の案につきまして批判をいたさせているわけであります。この点を御
了承願いたいと思います。
次に、それではわれわれ
塩業関係の一員といたしまして、どういう
塩業対策をこの際打ち立てていくことを
希望しているのかというふうな点について、ちょっと申し上げたいと思います。まずその第一は、
塩業政策を確立していただきたいということでございます。これは、去る
昭和二十五年の三月に閣議
決定を見ております
国内塩業対策というものがありますが、その内容は、食料用塩の
自給度を向上する、当時における達成
目標が七十五万トンというようなことでありまして、結局当時は四、五十万トンしかとれてなかったので、さらに
自給度の向上、
増産しろということであります。そこで、その線に沿いまして
政策が進められまして、最近に至って、
流下式転換を中心といたします大転換で、この数年後には食料用塩の完全
自給というそれ以上のものができるというようになって参ったのであります。この限りにおいては、結局
増産し、絶対量を確保していくという面につきましては、
塩業行政は非常に大きな成果を上げたというふうに
考えて差しつかえないと思います。しかし一方最近におきましては、国際
情勢がやや安定いたしまして、なお国際間の貿易が活発化するとともに、国際市場
価格との対比における
内地塩の
関係というものが、一般の関心と批判を仰ぐようになったわけでありますが、その結果といたしまして、
内地塩は非常に高い、従ってそういう高い不経済なものを作る必要はない、外国から買えばいいじゃないか、
内地塩業はやる必要はないのだというような御議論も公然と論ぜられるというような状態でありまして、このために
専売公社を初めといたし、
塩業関係者は、一応
政府の閣議において確立されました
政策に基きまして、国民生活上の必須の重要物資を作って、そしてその
生産に従事しているわけであります。しかしその
生産を続けることは、悪いことでもしているというふうに卑屈な態度に陥らざるを得ないというのが、偽わらざる
塩業関係者全部の心境ではないかと思います。そこで、このことは非常に心外でありまして、この際そういう状況にありますので、あらためて
国内塩業対策を再検討していただきまして国際市場
価格との対比におけるただ単純経済の
立場のみにおいて
国内塩業を否定していくのかどうか、あるいは現状としてはある程度の割高、それに伴う必要な保護と助成ということはある程度認めることを前掛といたしましても、やはり国策として
国内の
塩業は維持をし、その発展をはかっていかなければならぬというふうにするか、この場合に、
国内の
塩業の
生産の限度をどこに置くかというようなことについて
専売公社の案を見ますと、その点につきましては、
全量自給及び
ソーダ工業の一部
自給という
計画を立てておられますが、これがさらにはっきりした国の
政策として、りっぱに再確立されることを
希望するものであります。
そこで
生産対策といたしましては、
国内の
生産目標を当面食料用塩の確保、
国内資源の活用、
国内産業の育成というような見地に立ちまして、食料用塩の
全量を
国内塩業でまかなうということに
国内塩の
生産目標を置くことが必要ではないかというふうに
考えます。現状といたしまして、
国内塩を
ソーダ工業用の原料に振り向けることが、
価格とか品質の面において無理が伴いますので、
ソーダ工業用原料としての
国内塩の供給は、一般の
塩業政策と
国内塩業政策と分離いたしまして、将来
海水の
総合利用工業に対する
研究を促進して、その発展に応じて別途に考慮していくというふうにやることが、一番適切ではないかと
考えます。
なお、非
能率企業あるいは過剰設備につきましては、この際
塩業政策の将来づけの方向と、それから将来の需給見通しというふうなものを慎重に勘案いたしまして、必要の限度において一定の基準を設け、
公社の責任において適正な補償措置を前提として、この際積極的に
整理を行う。
整理を行うということは、われわれとしても望ましくないのでございます。しかし、現在のようにすでに非常に中腰の姿勢であって、しかもこのままの現状で進みますならば、やがてジリ貧的な自滅以外にはないという条件下に置かれておる
企業にとりましては、またそこに働いておりますわれわれの友だち、仲間にとりましては、やはりジリ貧的に自滅するのを待つのではなしに、将来にもう望みがないということでありますれば、何とかここで転換をはかりたい、またはかれるようにしむけていただきたいというふうに
考えます。そこで、必要な限度における
整理ということは、好ましくはありませんが、しかし、これはやむを得ないと
考えます。なお
昭和三十二年度中に
生産開始に至らない
新規製塩の設備は、もう現在の設備で過剰だといわれておりますので、この際一切を吸収いたしまして、その善後の措置については
公社の責任によってやっていただきたいと思います。
なお、これに関連をいたしまして、錦海湾の
塩田は、まだようやく堤防の基礎をやっておる状況のように聞いております。しかも、あの錦海湾
塩田が一般の
塩業と比較して、全然別途な斬新な、将来飛躍的な発展性を期待できる新規の設備でありましたならば、これをどんどん進める意義は大きいのでありますが、すでに現在ある
塩田そのものを今から新らしく作り出そうということは、何かおかしなことではないかというふうにも
考えます。しかし
海水総合利用工業ということにつきましては、
工業用の
原料塩を将来
自給していくという観点からも、これは大いに
研究を進めなければならないと
考えますので、この際錦海湾
塩田は食料用塩のワクの外といたしまして、
海水利用
工業または
鹹水による
ソーダ工業のモデル・ケースというふうな格好としてこれを利用する、このことを
公社において特別に措置していただきたい、こういうふうにしていくことがよいのではないかとわれわれは
考えております。
なお、
塩田のヘクタール当りの
生産をどう規制するかということにつきましては、この前に申し上げました非
能率企業の
整理とか、または錦海湾の措置とかいうふうなものと関連をいたしまして、あらためてその上で毎検討していくべきではないかというふうに
考えます。なお、平がま蒸気利用式、要するに旧式な煎熬方式による
製塩の品質、規格の向上を
公社はお
考えのようでありますが、この点は、非
能率企業の
整理ということをこの際
考えておりますので、それと関連をいたしまして、当分の間現状維持というふうにすることが望ましいのではないかというように
考えます。
次に、
塩価の
収納価格の対策でありますが、本年度は、現行
価格を据置にしていただきたい。明年度以降新たに設置されます
収納価格審議会においてあらためて検討していただき、合理化の促進とそれに従う
コストの低下というものに応じまして、
収納価格の引き下げを逐次進めるということは原則としていいのでありますが、しかし現況は、まだ合理化の過程にあるというようなことが言えると思うのです。それと、各
企業間の
流下式の推進の度合いが不斉一である。なおそれに関連して、弱小
企業と優良大
企業との
生産の
コストの較差が非常に大きい、また一般に比較をいたしまして、まだ
塩業労働者の労働条件というものは、非常に社会水準からかけ離れている、これらが将来改善をされなければならないという
情勢のもとにおきましては、
公社がお
考えになっている今般の引き下げ案を強行されますことは、弱小
企業または合理化途上にある
企業に与える影響が非常に大きいのであります。もちろんバルク・ライン方式をとっております
関係上、
相当の幅の利潤を見ておる
企業もあることは認めなければならないと思いますが、これは一応方式のしからしむるところでありまして、やむを得ないと思うわけであります。そこで、そういうふうな観点から、本年は一応
価格は
据え置きにしていただきたい。それで、明年度からの分につきましては、民主的な
塩価審議機関において辞儀をしていく、そしてきめていただきたいというふうに
考えます。
次に、将来に対する
塩価の対策についてでございますが、この点につきましては、
収納価格の
決定は、
塩業行政上の中心的な、一番重要な課題というふうに
考えております。しかして、これを適正に、妥当に
決定するということが、現実の問題としてはなかなかむずかしい問題なんです。そこで、困難性が一体どこに原因をするかということになりますが、やはり各
企業別の
生産コストの較差、それをもたらすところの
企業条件の不斉一ということに基因すると思います。従って、各
企業間の不均衡を是正して、たとえば極端な非
能率企業の
能率化に対する指導、あるいは助成、あるいは地域的な特殊事情、たとえば過去における災害負担が非常に累積して、重荷をしょっている
企業も全国にはたくさんあるのでありますが、そういうふうなところは、結局もうからないから施設をようしない、従って
生産が上らないということで、いわゆる悪循環に追い込まれているというような
企業も往々あるわけです。そこで、結局
企業状態の較差の非常に大きい、上限と下限との幅が大き過ぎることが
塩価政策を実行する上において一番大きな困難な問題になっておるのでありまして、この点を、
収納価格と表裏一体の
関係でもって検討して、その
決定機関といたしましては、
先ほども申し上げました、民主的な
塩価審議会において審議を経て
決定をしていかなければならない。従って、
公社案の
昭和三十六年度における一万円という
塩価は、一応努力
目標といたしましてはわれわれとしても異論はありませんが、具体的な将来の
塩価の
決定は、やはりそのつどそのときの
情勢に即しまして
決定さるべきものでありまして、あらかじめその年次
計画を立てて
価格を機械的に操作していくというふうなことは、実情に即応しないというふうに
考えるものであります。
以上私の
意見を申し述べました。