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1957-09-11 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月十一日(水曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 淺香 忠雄君 理事 有馬 英治君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       足立 篤郎君    大平 正芳君       奧村又十郎君    加藤 高蔵君       川野 芳満君    吉川 久衛君       杉浦 武雄君    内藤 友明君       中山 榮一君    古川 丈吉君       山手 滿男君    山本 勝市君       有馬 輝武君    井上 良二君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  委員外出席者         検     事         (民事局参事官)吉田  昂君         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    稲益  繁君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  酒井 俊彦君         国税庁長官   渡邊喜久造君         大蔵事務官         (東京国税局         長)      篠川 正次君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件     ―――――――――――――
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。委員長から皆さんにお断わりをいたしますが、ただいま理事諸君ともいろいろ相談をいたしまして、御了承をいただいたわけですけれども大蔵大臣の本日の日程は、正午から手の引けぬ所用がございますので、十二時十分まで質疑をやっていただいて、そこで二時まで休憩いたしまして、二時から出席をする、こう大蔵大臣は申しておりますので、そういう点を御了承願いたいと存じます。それでは、税制に関する件及び金融に関する件等について、調査を進めます。本日は、まず大蔵大臣より、明三十二年度予算編成大綱につきまして、説明を聴取いたしたいと思います。一萬田大蔵大臣
  3. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 昨日の閣議で、三十三年度の予算に関します基本的な考え方が決定いたしました。それにつきまして若干御報告を申し上げます。  今度のこの予算に関する基本構想は、政府といたしましてさきにきめました三十三年度の経済の見通し並びに三十三年度の経済運営に関する基本的な考え方、これに即しまして、三十三年度の予算に関して、基本的にこういう考えを持っていくのだということを明らかにしたわけであります。その骨子は、申すまでもありませんが、ひとり今後の日本経済運営に関しまして、予算とか、あるいは財政とかいうものだけではないのでありまして、総合的施策をきわめて合理的に、かつ適切に運営していく、そういう前提に立ちまして、今後の予算というものはどういうふうに持っていかなくてはならぬか、こういうふうに考えたわけであります。さらにまた、その基本になるのは、何としても今日の日本経済を安定させる、言いかえれば国際収支が非常に悪化しておることは御承知の通りでありますので、これを三十三年度におきまして、輸出を三十一億五千万ドル、黒字二億ドル、こういうふうなところにどうしても持っていく必要があるのであります。これを実現するためには、どうしても先ほど申しました総合施策運営して、消費を抑制していく、これは絶対に必要になると思います。これが基本であります。  この基本構想に基いて、それではもう少し具体的にはどういうふうにするかという点におきまして、三十三年度には相当の歳入考えられるのでありますが、歳出の増加というものは、厳にこれを抑制しなければならぬ、これは今申しました観点からであります。またこれがためには、既定の経費に徹底的に検討を加える、そして、ここに財源を見出したい。また新規の経費については、きわめて重点的なものに限るようにしたい、こういう構想であります。そうして、この結果歳入においし余裕を生じます。それを期待しておるのでありますが、その余裕は、今後の景気調整の資源として措置をする、これが構想のおもな点であります。  〔委員長退席平岡委員長代理着席財政投融資については、昭和三十二年度の実行額でいく。なお、これは経済実態と非常に直接の関係があるので、経済の推移を十分考えて、弾力的に運営をしよう。地方の財政については、国の財政と同じ基調でいきたい。  これが昨日きまりました三十三年度予算に関する基本的な構想であります。一応御報告を申し上げます。
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長代理 有馬君の緊急質問を許します。有馬君。
  5. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は、一般労働情勢につきましては、石田労働大臣からお伺いすべきでありますが、本日は、大蔵大臣から、大蔵省職員に対して正しい労使慣行を打ち立てるために、とのような態度で臨んでおられるか、この点についてお伺いしたいと思うのであります。大蔵省職員は、人数が非常に少い。その中で困難な徴税事務その他に当っているのでありますから、少くともその生活の安定なり何なりというものに対しては、あたたかい思いやりがなければならないと思います。そういった意味で、大蔵大臣国税庁長官努力しておられると思うのでありますが、具体的に、たとえば国家公務員であるから、言うところの団交権なり何なりというものについて、現在の法律では制約がありますけれども、実質的に職員立場を考慮して、どのような態度で今私が申し上げましたような点について臨んでおられるか、この基本的な立場を最初にお伺いしたいと存じます。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵省職員についてのお尋ねでありますが、私どもは、少くとも大蔵省職員は、みんな同僚でありまして、ともに手を取って国政の運営を円滑にしていく、同時にまた、そういうふうな気持になるためには、職員のいろいろな経済的条件も、できるだけ守ってあげよう、またよくしてあげようという努力をいたしているわけであります。それがためには、具体的には、私はできるだけ職員とも機会あるごとにお会いをして、それらの要請もよく聞いているつもりであります。
  7. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 その点については、その大蔵大臣考え方が、一般的に各関係庁に徹底いたしておりますか。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は徹底いたしていると確信いたしております。
  9. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それでは、具体的にお伺いいたしますが、たとえば東京国税局におけるつい最近の例をあげて、お尋ねいたしたいと存じます。  組合が六月十二日、七月二日、七月九日、七月十七日、七月三十日、八月一日、八月十三日に、おもに今度の新給与の切りかえについて交渉を持ちたいということを局長申し入れております。これに対しまして七月二日、七月三十日、八月一日、八月十三日といった日には、局長は全然会っていない。しかも人事課長その他に、なぜ会えないかということをお伺いすると、局長都合が悪いんだということだけで、どうして都合が悪いのか、またいつ会えるのかも言わない。今度の新給与体系については、前の国会におきましてもいろいろ問題がありました。それについて、職員としては、自分たち生活の場であるこの問題に対して、真摯な態度で、少しでもいい結果を生み出そう、格付けになる前に、自分たち意見も申し上げたい。今大蔵大臣から言われたように、大臣としても、職員意見はよく聞きたいという気持があるのであるから、せっかく意見を述べようとしても、こういったことで一方的に拒否している。これで、ほんとう大蔵大臣が言われるような、労使慣行が正常な運営ができるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  10. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 私は、国税庁長官といたしまして、今大蔵大臣のおっしゃったような趣旨において、各国税局において組合交渉申し入れがありましたとき、できるだけそれに応じて話し合いをするという方針を、やかましく言っております。ただわれわれの方の経験から申しましても、組合の方から申し込んで参ります日時、たとえば、きょう言ってきてあした交渉を持ちたい、こう言われましても、われわれの方には、いろいろやはりスケジュールもございますから、従って、組合が申し込んだ日時においてすぐに交渉が持たれる、これは、必ずしもそうならぬ場合があろうと思っております。しかし、一応われわれの方としては、組合申し入れを受けるというのも 局長あるいは、長官といたしましての大きな仕事の一つであるということに考えておりまして、できるだけ組合と話し合って、両者の意思の合致した日時においてこれと話し合いを進める、こういうようなことは、やってきておるつもりでございまして、東京国税局におきましても、今非常に具体的にお話になりましたが、そのいつの日時申し出に対して、いつどういうふうに処理したということを、私はここで申し上げる用意は持っておりませんが、方針といたしましては、必ずしも組合の言ってきた日時そのまますぐに、それによって履行できると、こういう保証はできませんが、その日にできなければその翌日、あるいはその翌々日といった期日において、お互いに話し合いを進めていく、こういうようなことは、やかましく言っておりますし、相当実行されておると思っております。
  11. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今せっかくの長官の御答弁で、大臣長官もそういった態度を持っておられる、しかも趣旨は、徹底させておるつもりだというお話であって、これは、当然そうあってしかるべきだと思うのです。   〔平岡委員長代理退席委員長着席〕 にもかかわらず、東京国税局において、今申し上げたような態度に出る、しかもその交渉態度たるや、こういった問題については当局がきめるのであるから、きまるまでは黙っておれ、これは話し合いではないのです。おまけに八月の二十一日には、五名に及ぶ馘首、停職が三十三名、戒告が三十五名、訓告が三十五名というような形で、春闘に対する処分が行われておる。こういったごとでは、少くとも正しい労使慣行が打ち立てられるとはとても考えられない。これは、全部の役所でありますから、東京国税局というだけではありませんけれども、しかしながら、具体的に現われたところのこの東京国税局長態度というものは、せっかくの大臣長官意向というものを無視したものであるか、一方的に曲解したものであるか、こういったことをほうっておいて、ほんとう意味で、今お二人から答弁いただいたような、その趣旨でもって職員の身分の安定というものがはかれるかどうか、これは私が結論を申すまでもないと思うのであります。やはりここらへんについて、せっかくのお志であるならば、それが十分徹底するような形というものを作り上げていただきたい、なお八月の十六日に、この問題に対する交渉を持つ前に、集会がありまして、そのときの当局態度というものは、係長以上にはみんな動員令をかけて、就業時間以前に屋根に上らせたり、もうあちこちから、まるで本職の警官も顔負けするような形で、写真をとったり、メモをつけたりしておる。これは就業時間以前であります。そうして、もしこういったことがこの戒告なり訓告なりの基礎資料になるとするならば、国税庁職員は、二十四時間中上司に監視されておるのと同じである。これでは、とても今おっしゃったような意味での正しい労使話し合いというものはでき得ない、こう思うのでございます。これは、せっかくの一萬田さん、長官の以降を無視した東京国税局局長責任でありますので、せっかくの皆さん方気持を踏みにじった局長から、答弁をいただきたいと思います。
  12. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 東京国税局長が御答弁すると思いますが、その前に、一言だけ申し上げさしていただきたいと存じます。組合申し出に対しまして、われわれの方としましては、先ほど申しましたような態度で進めておりますし、そこに正しい組合との労使慣行というものを作りたいと、われわれは努力しております。処分の問題は、これは、大部分が東京国税局以外の局においてなされたものでありまして、これは、あるいは局長の方から御答弁をすることが適当と思いますが、遺憾ながら、過般の国税労組の動きにおきまして、たとえばピケを張りまして職員出勤を阻止する、あるいは時間内の職場大会を開く、そういったようなことがございまして、公務員法にやはり抵触するという事実が出ましたものですから、非常に私の方としましては遺憾でありますが、やはり処分をせざるを得なかったわけであります。  なお十六日の問題でございますが、これは、東京国税局長からいずれ答弁していただきたいと思いますが、私が報告を受けておるところによりますと、その日、東京国税労組出勤時間にピケを張りまして、そうして職員出勤を阻止する、こういったような話が入りましたので、従いまして、われわれの方としましては、これもやむを得ず、それに対する対策というものを講ぜざるを得なかったわけでありまして、また事実、それはそういった姿において一応事態が出まして、いろいろ説得に努めましたが、それが解除になりませんものですから、警察の方の御厄介になりまして、問題を解決せざるを得なかった、こういったような次第で、やはりこれは、われわれどもとしましては、そういう場合は、そういう場合の措置をとらざるを得なかったのじゃないか、こういうふうに思っております。いずれ詳細につきましては、国税局長の方から答弁をいたします。
  13. 篠川正次

    篠川説明員 ただいま有馬先生からの組合との交渉につきましては、お説の通り趣旨で、またただいま大臣長官から述べられました趣旨を体してやっております。実際を申し上げますと、交渉の場合には、組合の方で正式に書面で、その日時と議題について申し出があります。それに対しまして、私の方は必ずしもその日時がその通りにならぬ場合もありますが、これを拒否したという例はございません。ただ、先ほどお話しのございました八月十三日の場合におきましては、これは、当日組合が各地において時間内職場大会を開催したわけであります。その開催について交渉を持ちたいというふうなお話でございましたので、私としましては、さきに、非合法な、そういった違法な職場大会を開催して、そのことについて交渉を持つといいましても、私としましては、交渉に応ずるわけにはいかないということでお断わりしたわけであります。それ以外の通常の給与の切りかえの問題、あるいはその他一般待遇改善の問題につきましては、全部組合といろいろ折衝しております。ただ、折衝に当りましては、何しろ東京局長の限りできめ得る問題というものは非常にせまい範囲なものでございますので、相当の問題につきましては、これはもう少し調査研究してみなければお答えできないというような、特に給与の切りかえ等の問題につきましては、いろいろそういう問題が多いわけでありまして、七月中における給与の切りかえの交渉において、私から確たる御答弁ができなかったということは、私としても大へん遺憾に存ずるわけでございますけれども、そういう次第でございますので、どうか御了承をお願いしたいと思います。
  14. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 約束の時間があって、あとのあれがごさいますので、簡単に申し上げますが、今御答弁になったような態度でしていただければ、問題はないわけであります。今後ぜひそういった態度組合との折衝にも臨んでいただくし、大蔵大臣並びに長官意向を体して、よくそこら辺を間違いのないようにしていただきたいと存じます。ただ具体的に申し上げますならば、今権限が少いというようなお話でございましたけれども、これは組合お話を伺いますと、あなたは、お前たちには交渉権限はないんだ、意見参考として聞くけれども、全部こっちできめちゃうんだからというようなことで臨まれる。そうして、たとえば八月十六日に支給された新給与体系によるところの俸給の問題についても、支給するまでそういった態度で臨まれて、あとは、決定したんだから、お前たち容喙すべきじゃないというような態度で臨んでおる。こういったことであれば、私は、せっかく大臣のおっしゃった趣旨を体しておるものとは思えない。また八月十六日に、私はあなたに面会を三回ほどお願いいたしましたが、一方的にこれも拒否されました。どういう理由で会えないのかということをお伺いいたしましたところ、こういった事態があったときはということ、問題はこういった事態があり、組合紛争を起そうとするときに、私たちは、これは与野党を問わず、とにかく紛争を未然に解決する努力をする責任があると思う。そういった態度の中からも、私はあなたが大臣意思を体しているとは、ちっとも考えられない。そうして一方的に時間外に、先ほど申し上げましたけれども写真をとったり何かすれば、これは人間は感情の動物だ、幾ら冷静に考えていても、そういった態度で出られれば、ほんとうに真剣になってこの困難な徴税業務、その他の業務をあなたの片腕としてみんながやっていこうとする気持が出るか出ないか、これははっきりしておるところだ。やはり今後は十分気をつけられて、今おっしゃったような意味で、ほんとう困苦欠乏に耐えて、困難な業務に少い人数で当っておる職員気持を体して、大蔵大臣長官気持を体して、やはり下部職員に対しては、親切な態度をもって臨んでもらいたい。今あなたの御答弁になったような、そういった態度でぜひ今後も臨んでいただきたい、このことを要望いたしまして、私の質問は終ります、
  15. 山本幸一

    山本委員長 次に、大平君より発言を求められておりますので、これを許します。大平正芳君。
  16. 大平正芳

    大平委員 大臣には、あとから野党の諸君の御質問がありましょうけれども、私どもとして、若干気にかかることを二、三聞いてみたいと思います。  きのう閣議決定に相なりました基本構想というものを拝見いたしまして、いろいろ感ずるところがあるるのでございますが、しかし、この実態議論につきましては、特に物価とか雇用とか輸出輸入なんかどのように構想として背後に描かれれておるか、そのあたりのことは、本日は私は開きません。これから、われわれもまた大いに討議を重ねなければならぬ問題だと思うわけでございますが、本日は、私は特に財政制度の問題といたしまして、ここに現われておる構想を盛り込む容器としての財政制度の問題について、大臣がどのようにお考えになっておるのか、一、二伺ってみたいと思うのであります。  これを拝見いたしますと、いろいろございますが、まず大いにつましい予算にしよう、歳入余剰が出た場合には、その節減に努め、その余剰財源財源余裕は、将来の景気調整財源にするのだ、こういうことが非常に目立って読めるわけでございます。基本構想といたしましてそういうことをお考えになるのは、私は非常に賛成なのでございますが、われわれが外貨危機を経験いたしまして、財政収支均衡であり、金融は蓄積の範囲内におきまして貸付をするのだという健全金融の原則をとりましても、なお国際収支が赤字になり得る場合があるのだということを、身をもって体験したわけでございまするが、そういう意味合いで、大いに内需を規制していく。財源余裕がございますれば、それをフリーズしておこうという考え方自体は、よく了解がつくのでございますが、しかし、この財源余裕を一体どこに保留しておこうとされるのか、この文面では明らかでないわけでございます。巷聞伝えられておるように、外為に入れて調節するといたしましても、輸出がふえて、黒字をねらっておるわけでございますから、外為に入れておいても、使い道がないのじゃないか、産投に入れるのだと言われましても、産投の方は、財政投融資は、本年度の実行額範囲内に置くのだということになっておりまして、この金は、一体どういうところに置いておくのがいいのかということにつきまして、制度的に若干われわれは考えなければならぬのじゃないかと思うわけでございます。今度の外貨危機を経験いたしまして私どもが気にかかるのは、たとえば制度の問題といたしまして、外貨政府に集中されておるということのために、この危機を激成したのじゃないかというようなことを考えるわけでございますが、たとえば、外貨政府に集中されておるから、外貨のポジションというものは、民間のものははかり知ることができない。奥御殿の非常に奥深く、だれかがわかっておるのだけれども一般国民は、外貨がどういう状況にあるのかということについてはわかっていない。輸入の許可があれば、どんどん輸入をしたらいいのだということになるのも無理はないと思うのでございまして、外貨政府集中というような制度が、今度の外貨危機激成に相当私は大きな役割を果しておるのじゃなかろうかと思うわけでございますが、そういう問題につきましては、案外巷間にも議論がない。従って、財政論議におきましても、非常に実態論議が多過ぎて、制度論議があまりないわけで、そういう点、非常にわれわれ遺憾としておるのでございますが、そういう観点から、一体余裕財源というものを制度的にどこに始末しておくのが健全な財政運営する上においていいか、おそらくこういう構想を編まれた政府といたしましては、そういうなんかの考え方がありまして、いや、それはこうするのだという構想がおありだろうと思うのでございますが、まずその点を、一つ大臣に伺っておきたいと思います。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 余裕となりました財源をどういうふうに景気調整ため措置するかという具体的のことについては、これは、私はいろいろあると思います。具体的には、さらに政府においても、また党とも十分相談をしてきめたい、かように考えておるのでありますが、まあやはり産投というものも一つ考えに入れております。その他インベントリー的なことも考えております。また中小企業対策というようなことについても考える余地があるかとも考えております。そのほか、いろいろインベトリー的に考え措置はあり得ると思います。そういう気持をもって今後十分具体的に検討を加えていきたいと考えております。
  18. 大平正芳

    大平委員 そういうことではなかなかうまくいかぬと思うのです。と申しますのは、今年の一兆千三百七十四億という予算が、積極予算であるとか、いろいろいろな論議がありましたが、自然増収が二千億も見込まれるというときに、今年の構想みたいに、余裕財源始末するのだ。始末する場所が制度的にあれば、私は千億減税、千億積極施策なんということはやらなくても、財源始末をする方法はあったと思うのです。国債少い国ですから、国債を償還すると申しましても限度がある。何か財政制度の上で、こういう事態の場合に、余裕財源をどこに始末しておけば効果的に始末がつくか、ふらふらの状態にあると、やはり民主政治でありますから、こういう日本政治のやり方を考えますと、どうしても使いたがるのです。また使いたがるような制度になっているのですから、何かほんとう余裕財源始末いたしまして、有効需要を押えて、バランスを何としても回復するという考えがありますれば、制度的にやはりそれだけの用意がなければならぬと思うのでございますが、今から考慮してみるということでございます。それもけっこうでございますから、何か財政制度の上で慎重な配慮がないと、なかなか実効が上らぬのじゃないか。やはり今までやってきたようなことに堕する危険があるのじゃないかと思いますので、その点は大蔵当局政府当局におきまして、十分真剣に御考慮いただきまして、制度的なセット・アップを確立していただきたいと思うわけであります。今具体的な構想がないようでございますから、この点は課題として、真剣に勉強していただきたいと思います。  その次に、やはり制度の問題として、この文面から読み取れるところは、ちょっと言葉が違った表現になっておりますが、既定経費を節減するのだ、新規の歳出は重点的にやるのだ、厳正にやるのだということになっておりますが、既定経費というこの書き方は、どういう考え方なんでしょうか。これは、毎年言っておることはなんでして、やはり人口の増加、学童の増加等に伴う当然増は、観念としては既定経費に入っておるわけでございますが、そういう在来の観念でいう既定経費にまで入り込んで、もう一ぺん洗い直すという構想なんでしょうか、そのあたり、一体どういうお気持でいるのでしょうか。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 既定経費の再検討につきましては、これは私、あらゆる面について今度は見たい。これは、実際作業をさせてみないとわかりませんが、とかく従来やっておったことは、そのままになって、予算が積み重なってくるというような傾向は、往々私はある思う。ところが、情勢の変化に応じて、もうそういうことはやめてもいいというもので、なおやめきれないものがある。言いかえれば、政策が転喚されるといいますか、従来の政策で、こういうことはやっておったが、それよりはこっちに向けた方がいいというにかかわらず、従来のものをそのままやってきているというのがあるんじゃないかと思います。そういうふうな見地からも考え直す。それから物価の問題ですが、相当物価も違った事情に、昨年以降はあろうかと思います。そういう点も勘案する。それから、その他普通の意味におきまして、いわゆる経費について検討を加えて、これはもう少し減した方がいいとか、あるいはやめた方がいいというものもあるだろう、そんな意味合いであります。
  20. 大平正芳

    大平委員 在来の予算の査定の上におきましては、大臣がおっしゃったようなことは、みな考慮しているわけですね。私の申しますのは、そうでないのです。既定経費も洗って、そうしてできるだけ節減しようということは、年々歳々これはきまり文句なんでございますが、既定経費につきましては、各省庁大へんな抵抗力があるわけでございまして、大蔵省としても、なかなかこれは始末に困る問題であろうと思うのでありますが、この既定経費を節減するのだという新しい非常な野、心的な意図を起した以上は、やはり実効をおきめるようにやらなければならぬ。やるためには、何がやはり制度の問題といいますか、単なる予算査定現場におけるやりとりというようなところでは、これはなかなか始末がつかぬ問題だと思う。もう少し財政当局としては、こういう基準で、こういう構想で、こういう方法で既定経費については新しい光を投じて、もう一ぺん根こそぎやり直すのだという何かかまえがないといけないんじゃないか。例年のように、こういうことはみな言うことなんですけれども、なかなか実効が上らない。膨大なビューロークラシーの圧力のもとに、やはり実のところ大して経済効果のない経費が相当眠っているんじゃないかと思います。そういうものを剔抉するためには、何か大きなかまえが要るんじゃないだろうかということを、あなたの立場としても考えておかぬと、おざなりになるんじゃないかと思う。そういう点につきまして、こういう非常に悲壮な構想を打ち出された以上、それを一体バックアップするかまえがおありなのかどうか、その一端でもお示し願いたいと思います。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま申し上げたことは、例年やっている当然なことだ、それはそうも言えると思います。ただ、それを今回は特に厳重に考えていこうというのが一つありますが、なおそのほかにも、今後具体的な政策を考えていく上において、既定経費の節減になるようなこともあり得ると思うのですが、今私、そういうことについて触れるのは、まだ時期が早いだろうと思う。今後党その他政府関係とも相談をいたしまして――ひとり大蔵省でやり得ることでないのでありますから、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  22. 大平正芳

    大平委員 その点も、あわせて課題として御勉強を願い、御努力もわずらわしたいと思うのでございます。つまり、実態の問題も非常に大事でございますが、財政制度全体で、やはりそういった措置をどうするかについて、少し新しい感覚で対処しないといけないんじゃないかということを感じるわけでございまして、私どもも、もとより勉強してみたいと思いますけれども政府側におきましても、そういう角度から出た問題をお忘れにならないように御注意願いたいと思います。  制度の問題が出たついでに、先ほど私がちょっと申し上げましたが、実は私も、こうすればいいという確信が自分の胸中にまだわかないのでございますけれども、しかし、外貨政府に集中しておるということのために、民間がいわばめくらに置かれたということで、非常に突然危機が現前してきたということは、みんなが経験しておることでございますが、一体外貨政府集中ということが、そういう欠陥があるにかかわらず、なおこれを政府としては堅持していかなくてはならぬ、またこういう理由で堅持しなければならぬのだという、何か積極的な考えがあるのでございましょうか。一体外貨政府集中というものは、このまま置いておいていいのか悪いのかということについて、政府考えたことがあるのでございましょうか。この積極財政から経済規模の拡大、そういったつまり現象面、実態面の議論ばかり危機論議に行われまして、何か背後にある制度の問題というのは、案外みんなが閑却しておるのじゃないかと思います。だから、その点は私ども、どういうメリットがあっても、こういうメリットがあるから、これは堅持しなければいかぬのだという鮮明な政府の見解を聞いておかなければ、ちょっと判断に迷うわけでありますが、大臣は、その点、どういうふうにお考えになっておりますか。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 仰せのように、外貨の使用ということについて、民間の方にこれを保有させておけば、当然に円資金と関連をしまして、外貨がなければ金融が当然に締まるという形において、これは、私はその方が、今回の場合には効果が多いと思います。しかし、政府が持つようになりましたのは、やはり為替管理をする人がどうしても要るからという意味で、これは政府が管理する。外貨が非常にふえてきまして、管理ということがだんだん薄らぐにつれまして、民間の方にこれを移す。このことは、日本銀行に過去数年間徐々にやはり外貨を持たすようにしました。多分五億ドルくらいまであったと思いますが、そういうふうに持たしておる。しかし、全部為替管理をやめるのは時期が早い。それなら、その間政府が持っておったらよかろう、こういうふうな考え方であります。私としては、なるべく外貨の保有がふえる、この辺でいいというときに、日本銀行に持たせる。そして日本銀行が、輸入がふえて、輸入ために民間から円を持ってきて、外貨を売ってくれというなら売って上げる、そうすると、それだけ円が収縮する、それだけ経済活動が国内的には押えられていく。こういう形を自動的にとるのが、私は適当と思うのであります。従来あまり外貨の手持ちが少く、かつまた全然民間の手に移してしまうまでには、それは外貨の保有が十分でなかったという点にあると思います。今回のように、特にこういうふうに減少しますれば、やはり好むと好まざるとにかかわらず、為替管理というものは、相当厳重にしなくてはならない。そういう意味から、政府に集中して政府で管理していく、これが適当であろうと考えております。
  24. 大平正芳

    大平委員 私の言葉が少し足りませんでしたが、しかし政府集中に伴うて、経済実態に即して、そういう制度を弾力的に運営するという点が、むしろポイントであると思いますが、為替管理をやっている以上は、政府に集中するという基本の原則はおっしゃる通りだと思いますが、しかし政府のごく一部だけしか、外貨のポジションがわかっていない。おそらく大蔵省でも、一、二のお方がわかっておって、ほかの者はあまりわかっていない。いわんや銀行、商社の窓口に至りますと、よく承知していない。輸入許可をやることにつきましても、それ自体もう自動的な仕事になっちゃって、外貨のポジションと直接に血の通った認識を持ってやっているのかというと、そうでもないというように、ばらばらになっておったところに、今日の危機の原因の一つが伏在しておったんじゃなかろうか。従って為替政策、外貨政策をやる場合は、もう少しみんなの頭にポジションの認識を入れておいて、毎日のビジネスに、それを頭においてやるだけの用意がないと、またこんなことになるのではなかろうか。よくよく今度でこりましたから、みんな相当コーシャスにはなってきていると思いますけれども、私どもの認識不足かもしれませんけれども、今までどうもその点が、少し認識が甘過ぎたんじゃないか。あるいは親がかり、もたれ気味、政府によりかかってしまって盲目的に取引をやるというような慣行があったから、こんなことになったんじゃないかと思います。従って今の為替管理制度の運用におきまして、経済運営実態に即して、この運営上改善すべきところが多々あるのではなかろうかと思いますが、大臣は、そういった点について、一体お考えをめぐらされて、何かこういう点を手当してみたいという御構想があるのかどうか、伺っておきたい。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 経済の動きに対して適切な政策を事前にとる、これが一番大事でありまして、今回の日本経済の推移につきまして、今お話しの為替政策も、むろん私は関係があると思いますが、それよりも、もう少し広く今後経済はいろいろと変化する、その変化する状態は、何らかの指標になって常に現われてくる。従ってそういう経済の変化が敏速に現われるような仕組みを考えて、同時に一つの現象が現われたら、それに対して機動的に適切な施策を立てていく、あるいは制度の運用をはかっていく、こういうふうに考えていけばいいんじゃないか。たとえば輸入がふえてくる、外貨が減るという状況は、経済活動が非常に伸びつつある。それは一体どういうふうなところからくるか。これをそのとき判断して、これ投資景気というふうなことで、しかもそれがブーム的症状になるとすれば、直ちに国内的な景気抑制の政策を打ち出していく。すべてのことがそういうふうにいくようにしたい。従って、私はそういうふうな景気観測といいますか、それをなるべく確実に把握するような制度考えていきたい。これが下手をすると、それを信頼し過ぎる結果、あやまちがあっても悪いのでありますが、今のところは、そういう制度が確かにあまりにも不完全じゃないか、こういうふうに考えております。そういう点は、経済企画庁とも相談をいたしてやっていきたい、かように考えております。
  26. 大平正芳

    大平委員 実態論議は、いろいろな機会にやらなければならぬと思いますが、私がきょう特に強調いたしましたのは、財政制度の問題といたしまして、制度的に忘れられたような問題が多々あるのではないか――私が指摘した以外にもあるのではなかろうかと思いますので、事務当局を督励いたしまして、そういった点は十分検討して、水も漏らさぬようなかまえで予算編成に臨まないと、実態論議だけやっておったんじゃ、ぼろぼろこぼれちまうという危険性がございますから、こういう課題をきょう大臣に差し上げておきますから、十分研究いただいて、遺漏のないようなかまえをお願いいたしたいと思います。私のきょうの制度問題の質問は、この程度にいたしておきます。
  27. 山本幸一

    山本委員長 それでは、先ほどお約束申し上げたように、午後二時から再開することにいたしたいと存じますが、大臣はお約束通り、向うの約束もこれから守ってもらうつもりですから、私の方の約束も守りたいと思います。これをもって退出を了承いたしたいと思います。  なお、今理財局長を呼んでおりますので、はなはだ恐縮ですが、すぐ参りますので、例の五千円札の問題で、井上委員から緊急の発言がございますから、ちょっとお待ち願いたいと存じます。  それでは引き続いて質疑に移ります。井上良二君。
  28. 井上良二

    ○井上委員 最近新聞で報ずるところによりますと、五千円札を近く発行する、そのことについて、日銀政策委員会の方で一応了解を得たから、いよいよこの十月一日から発行するという方針をきめたということでありますが、本委員会は、さき政府が一万円札を発行するという計画のありますときに、これが国民に与えます影響及びわが国通貨価値に対するいろいろの諸問題が輻湊いたしておりますので、できるだけ一万円札のようなものは出さずにおくことが必要でないかということを、警告的に議論をしたことがあります。そこで、このたび政府が五千円札を発行するに至りました経済的、財政的、金融的事情を一応御説明願いたい。
  29. 正示啓次郎

    ○正示説明員 お答え申し上げます。かねて政府におきましては、五千円あるいは一万円のいわゆる高額紙幣を発行することにつきまして準備を進めて参ったことは、御承知の通りであります。これに対しまして、ただいま井上委員からの御質問のような御議論もあったことは、承知いたしておるのであります。今日経済全体の状況といたしまして、相当取引高、あるいは流通高、その他高額紙幣を必要とすることについては、かねて申し上げたことを繰り返す必要はないと思うのであります。問題は、今日の金融情勢が、果してこれを発行するのに適当な情勢にあるかどうかという点であろうかと思うのでありますが、この点は、ご承知の通り、先般来外貨事情に基きます強力な引き締め措置が講ぜられまして、今日は、いわば全体として非常に引き締った形勢にあることは、御承知の通りでございます。この状況というものは、当分これを続けて参る必要があることは、内外の情勢にかんがみまして、当然かと思うのであります。大体そういうことを背景といたしまして、かねがねわれわれの方で計画を進めておりました高額紙幣につきましては、これを発行するのに適当であるという、先ほどお話しのような政策委員会の判断もあったわけでございまして、この判断等を考慮に入れまして、大蔵省におきましては、大体十月一日にまず五千円札を発行することを目途といたしまして、事務的な準備を進めておるような次第であります。
  30. 井上良二

    ○井上委員 御存じの通り、数年前に千円札が発行されまして、千円札の発行以来は、大体お互いの、取引の限度が、千円を土台にするような状況になってきておる。今大蔵大臣の来年度予算に対する基本構想を伺ったのでございますが、この基本構想は、本年度の予算構想とは全く異なります別個の構想をお持ちであります。すなわち、本年度の予算構想は、積極的に財政規模を拡大して、産業経済を発展拡大していく方向へ持っていくという立場をとった。ところが来年度はそうではない、来年度は、できるだけ既定経費を削減し、さらに新規計画は極力これを押える、またその他重要な財政投融資等にも制限を加える、別な言葉で言いますと、デフレ政策をとろうとしておる。そういう国の財政の方向と、五千円札、さらに一万札を発行しました場合の通貨に対する国民の信頼感というものは、ギャップが生じてきやしないか。これは、御存じの通り、先般フランスも五千フラン、一万フランの札が発行されておりますが、そのフランスの紙幣価値というものは、一体どういう状況になっておるか。最近フランスは、御存じの通りフラン貨切下げをやろうとして、すでにその準備は進めておるということがいわれておる。そういう外国の事例をわれわれが見まして、この五千円札というものは、将来わが国の通貨価値に重大な一つの問題を投げかける、こういう考え方をわれわれは持つのであります。そういう意味から、政府の来年の財政方針と通貨のいわゆる膨張拡大を、この五千円札の発行で何とかカバーしようという考え方は、通貨価値自身に対する国民の信頼性というものを、非常に喪失する危険が起ってきやしないか、この点に対してどう考えられるか、それを伺いたいと思います。
  31. 正示啓次郎

    ○正示説明員 ただいまの御意見でございますが、これは、私どもは、今日の情勢の判断から申しまして、先ほどお答え申し上げましたように、いわば高額紙幣の発行のためには、非常に条件はよろしいという判断をいたしております。ただいまお述べの御趣旨は、かりにインフレ気がまえでございまして、通賃の価値、従ってまた物価が非常に騰貴するような場合、通貨価値に対する国民の不安がだんだん醸成されるような場合におきましては、まことに仰せの通り、高額紙幣を出すということは、それだけそういう不安に対していわば油を注ぐようなことにもなりかねないという御趣旨は、私もよく了解いたします。フランスにおきまして、あるいはそういうふうな事例があったかとも存ぜられるのでございますが、今日の情勢は、先ほども申し、またただいま井上委員も御指摘のように、相当引き締った情勢というものを続けて参る、こういうことは、内外の一致したところであろうと思うのでありまして、こういうときにこそ、まさに通貨価値に対する国民の信頼というものは、高くなっておるときでございますから、一方におきまして、先ほど申し上げたような、客観的な必要性のあるものでございますから、そういう不安を醸成するおそれのないときという意味におきまして、私どもは、今日はまさにこういうものを出しましても、通貨に対する信頼度は高まり、また一方におきましては、国民の強力な貯蓄意欲というものを育成するような施策と相待ちまして、通貨に対する信頼はますます高まっていく、また高めていかなければならない、こういうふうな考えをもちまして、政府としての方針を決定いたしたような次第でございます。
  32. 井上良二

    ○井上委員 もう一点、御存じの通り政府は本年の財政の見通しを誤まった。国際収支においてしかり、非常な混乱をわが国の経済に与えておることは否定できません。国際収支は、非常な赤字になろうとしている。これの改善には、少くとも来年度上半期を必要とするであろうということがいわれている。かりに、本年度末に国際収支がとんとんになりましても、この間に失われに外貨の取り返しには、ここ数件を要するであろうということがいわれている。そういうわが国の国際収支の赤字の現状から、いわゆる通貨価値に対する国民の信頼度合いを、一そう高めなければならない、そうして貯蓄を増強して、金利を下げていくというやり方を何としてもこの際とらなければならぬ、そうして資本蓄積をどんどんやらなければならぬ。そういうときに、それと相反するような感じを与えます五千円札、一万円札というものが発行されるということは、私ども、そういう諸情勢から判断をして、どうも妥当な時期にあらず――あなたの方では妥当な時期だというが、わしの方は、少くとも国際収支が改善され、黒字になり、またその間政府の施策が健全化の方向をとられて、財政金融とも正常な、均衡のとれる財政になったときに、通貨価値に対する国民の信頼というものが初めて現われていくのであって、今日はまだその段階にあらず、かように私ども情勢判断をしておる。これは、私どもの勉強が足らぬといえば足らぬかもしれませんが、私ども政治感覚的にそう見る。そういう状況に対して、あなた方の方ではどう考えているか。この点について御答弁を願いしたい。
  33. 正示啓次郎

    ○正示説明員 重ねての一御指摘でございますが、大体人後の金融情勢等につきましては、大臣その他からお話しがあったと思うのでありますが、やはり根本は、仰せの通り国際貸借が松本になって日本の全体の経済の情勢が非常に変っていくことは、御指摘の通りに存じます。従いまして、金融が今後緩和されていくということは、これは外貨の面におきまして、外貨収支が黒字に転ずるときであり、黒字がふえていくに伴って、金融は全体として緩和されていくのであるという御趣旨においては、私どもそのように考えます。しかしながら、それがすなわち通貨に対する信頼と同じことを意味するかというふうなことになりますれば、これは、むしろ私は、今日非常な引き締め政策をとっているときでありますが、国民の通貨に対する信頼感が、それによって非常に動揺しているというふうな判断は成り立たないのではないか。また今日こそ、国民の通貨に対する信頼感をますます高める施策をとらなければならぬということは、同感でございますが、こういうときは、先ほど仰せのように、金融が緩和をして、すなわち国際貸借が黒字になって、金融がだんだん緩和していくときとどちらが高額紙幣を出すに適当なときであるかということに、かかってくると思うのでありますが、これは、前の情勢等をお考えになりまして、いわば相当インフレ的な気がまえが生じたときに高額紙幣を出すということよりは、今日のような情勢がむしろ適当ではないか、こういう判断をいたしておるわけでございます。
  34. 山本幸一

    山本委員長 ちょっと、私から一言先に尋ねておきますが、正示さん、一万円紙幣はいつごろ発行するのですか。
  35. 正示啓次郎

    ○正示説明員 まだ実は、時期をはっきりきめておりませんが、大体の考えといたしましては、まず五千円札を出しまして、これに対するいろいろの反響等をよく見まして、一万円札については、なおその上で決定いたしたい。
  36. 山本幸一

    山本委員長 現に印刷にかかっているという話ですが、どのくらいかかっているのですか。
  37. 正示啓次郎

    ○正示説明員 印刷は、一万円札もすでに相当の手持ちもございます。五千円札は、大体四百億くらいございまして、一万円札も若干それより上回る程度のものがございます。これは、印刷はいたしておりますけれども、その発行の時期については、先ほど申し上げたようにしたいと思います。
  38. 山本幸一

    山本委員長 そこで、この際私から特にお尋ねしておきたいのですが、いろいろ今井上君との間で質疑応答があったが、いずれも両方とも、それぞれ理由があろうと思うのです。けれども、端的に申し上げて、今政府か物価引き下げに努力しておるときに、かえってそれに阻害を与えるような高額紙幣の発行ということは、相当議論があるともいわれておるのです。そこで私は、その議論は別にして、一応国会でも、これは相当問題になっているのですから、発行されるときには、新聞等に発表される前に、事前にやはり国会で、委員諸君にその点をつぶさに報告して、協議してやられるような襟度をあなた方はお持ちかどうか、それをお聞きしたい。
  39. 正示啓次郎

    ○正示説明員 お答え申し上げますが、実は私、御承知のように新米でございまして、本件につきましては、たびたび井上委員からもお話しのように、この委員会におきましては、突っ込んだ御議論があったように拝承いたしております。大体におきまして、去年の暮れあたりも、出すというふうな準備が現に進められておったように承知をいたしておるのでありますが、なお諸般の情勢で延ばしておったように聞いております。また先例といたしまして、先ほど井上委員のお述べの千円札につきましても、発行のとき、事前にいろいろ御議論があったようでありますが、発行の方は政府にまかすということで、お認めをいただいたように承知をいたしております。今回も、大体そういうふうなきわめて事務的な事柄ではないかというような判断をいたしたのでありますが、しかしながら、今委員長のせっかくの御意見もございましたように、今後におきましては、こういう点についても十分注意をいたしまして、国会の方ともいろいろ御意見を伺ってやることは、これは当然かと思います。大体そういうふうに考えております。
  40. 淺香忠雄

    ○淺香委員 正示局長に……。私は与党の議員であるのに、こういう質問をすることは少しおかしいかわかりませんが、私は、与党の議員であっても、非常に重大な問題だと思うのです。これは、与党であるから、あなた方のやられることを、ただうのみにしていかなければならぬ立場のものではないと思う。井上委員の言われたこと、これは非常にもっともな話です。また委員長の言われるところも、実にわれわれの言わんとするところを言われたが、早々としてこういう発表をされたということは、これは、大臣もそれをすでに承認され、閣議でも了承されたのですか、この点、どうなのですか。
  41. 正示啓次郎

    ○正示説明員 五千円札を十月から出すということは、いわば既定の方針のように私承知いたしております。それで、今回発行手続は、きわめて事務的でありまして、もとより大蔵大臣は御決裁になるのでありますが、閣議にかける筋合いのものではないのでありまして、日本銀行と大蔵省との間におきまして、事務的な打ち合せをしますれば出し得るものでございます。法律的その他の関係は、そういうふうになっております。ただ先ほど委員長が御指摘のように、これをこういう時期に出すことについて、いろいろ委員会においても御議論のあったことでのり、御意見のあることであるから、そういう意見を十分聞いてやるような、たしか襟度というお言葉をお硬いになりましたが、そのくらいの心がけを持ったらどうかという御意見に対しましては、私は、そういう心がけを持って今後処していくのが、やはり適当じゃないか、こういうふうな判断をいたしておるのであります。
  42. 淺香忠雄

    ○淺香委員 最後の決裁は大臣がやられるのですね。そこで、こういうことは、大臣が承認されたのですか。
  43. 正示啓次郎

    ○正示説明員 大蔵省の内部の手続は、大体終了いたしております。
  44. 淺香忠雄

    ○淺香委員 くどいようですが、大臣はこれをすでに承知をして、決裁をされたと解釈して差しつかえございませんか。
  45. 正示啓次郎

    ○正示説明員 決裁が完了しているかどうか、私は、大体御異議がないように拝承いたしておりますが、決裁は、御承知のように文書による手続でございます。それが済んだかどうか、私ははっきり覚えておりませんが、大体において、御異議はないというふうに御了解いただいていいと思います。
  46. 淺香忠雄

    ○淺香委員 これは、なるほどあなた方の権限内でやれる問題ですけれども、しかし、先ほどここへ大臣が現われて、来年度の予算編成の基本方針を述べられましたが、相当な決意を持って、インフレを避け、消費の抑制をはかっていかなければならぬということをるる述べておられたが、その大臣がこれを出すということについての――結果はどうしてもインフレ傾向が現われると思うのですが、極端に言うならば、出さなければならぬ理由が一体どこにあるか、私どもは、そう思うのです。これは、党の機関に諮ったとも私は聞いておりません。従って、与党の議員からこういう発言は、非常に穏当を欠くかわからぬが、私は大蔵委員としても、個人浅春としても、これは絶対今のところ反対です。その点は、今後なお党との連絡も、また党との相談も十分された上でなければ、軽々にこういうものをやられるということに対しては、一つ慎重にお考え願いたいことを、あわせて私はお願いをしておきます。
  47. 春日一幸

    ○春日委員 これは重大な問題だと思うのです。われわれは、今回こういうような問題の調査を兼ねて、ずっと諸外国の実情を調べて参ったのですが、アメリカの財政規模をもってしても、百ドル紙幣以上のものはない。イギリスは、これまた日本と同じように、千円以上のものはない。マルクしかり。フランスは、井上氏の調査によると、五十フラン紙幣はあったと言うが、私は一万フラン紙幣は見なかったのだけれども、そういうような高額紙幣を発行した国の財政がいかなる結末をつけたかは、すでに御承知の通りだと思います。今日平価を切り下げて、すでに破綻に瀕している状態です。今浅香君が言われたのは、いかなる必要に基くかということだが、これは、もっぱら金融機関が、その事務経費を節減したいという陳情が、かねて強く寄せられてきているということであって、今日千円紙幣によって、わが国の貨幣の流通は何ら障害を来たしていない。今日通貨価値が非常に高まりつつある。そのことは、デフレ傾向と相待って、そういう状態にあるとあなたは断定されているけれども、そもそも通過の形式というものは、一つのパーマネントのものである、今日のデフレ的な傾向ということは、これはオケージョナルなものである。少し学のあるところを見せたいと思うのだが……。(笑声)そこで、このデフレ的傾向といえども、これが果してどの程度、またどの期間こういう状態が続くかということは、これは全く一がいには断定しがたい。財政見通しなんか、政府の見通しが何であったかは、本年度の財政投融資予算規模とか、その実績がどうなったかを見れば、これは明らかな通りである。六百億円も繰り延べなければ何ともならないような、ちゃらんぽらんなことをやっている。いわんや今日貴殿たちが立てておられるところのデフレ、インフレ、ディスインフレ等に対する見通しも、これまた何人も信用するものはない。従いまして、この際あなた方がとられる施策は、あなた方自体の見通しとか知識とかいうものが、きわめて権威の微弱なものであり、何人も傾倒したいということ、のみならず、そのような方針をとっていけば、朝令暮改せざるを得ないということは、ここ数カ年間における貴殿たちのとってこられた実績を顧みれば、よく判断のつくところだと思う。いわんや今日、米が上ろうとしており、私鉄の運賃が上ろうとしておる。デフレ的傾向に対する、さらにそれに逆行するところの施策の萌芽が、いろいろな方向において芽を出しつつある。だから、一たんこれがインフレ的傾向にならないにしても、これが好況的傾向になった場合、高額紙幣の発行によって、もたらす影響というものは、フランスが現実に身をもって、証明しておるように、それはおそるべきイレフンヘの一つの要素たり得るものです。これは、われわれ財政学者の中においては、定説になっておる(笑声)。そういう意味合いも、かねて特に本委員会におけるこの問題の取扱いを考えてみれば、経過ということは、結果に到達する段階における一つの重要な問題点である。メイン・ポイントである。いいですか。われわれは、この問題について、先国会においてそういうことを議題に供し、あらゆる角度から検討して、政府に対して警告的に、高額紙幣を発行すべからざる理由をあげて、そしてその論議を尽しておる。政府も、さればこそ本委員会における論議を重視して、本日までそのことをあえてなさなかった。ところが、貴殿が局長になるや、たちまちにしてこの委員会に何ら諮ることなくして――私は新聞を読み落しておったのですが、ところが井上委員の発言によって、私は実にがく然としたわけです。そこで、実際この問題は、今の淺香君の質問によって明らかにされたことは、大臣はいまだ決裁していないということだが、幸い今からでもおそくはない。そういう意味で、これは一つ委員長に私は強く申し述べたいんだが、千円札で実際国民生活の、あるいは経済生活がはなはだ支障を来たしておるということであるならば、これは別個の問題である。けれども、現在千円札でその流通は何ら支障の出るところはない。ただ銀行が金を数える手数がかかる。手数がかかったって、幾らでももうかるんだから、うんとかけたらよろしい。そうして、いずれにしてもインフレ的傾向を断じて阻止するために、あらゆる施策が尽しこらされ、これが蓄積されていかなければならぬと思うのです。私は、逆行するような施策は、断じてこれは許すべきでない。後刻大蔵大臣も出てこられるが、しかし議題は他にあるので、その機会に論じるかどうかは別として、これは、本委員会が現在まで論じておったところであるし、さらにフランスの実例、財政破綻、平価の切り下げ、それからアメリカの規模をもってしても百ドル紙幣以上、三万六千円以上のものはない。イギリスは一千円以上のものはない。マルクにおいてもしかり。ブラジル、アルゼンチンというようなところもみな大きなものはない。われわれは世界をくまなく見てきた。こういう立場から、この問題は断じて再議に及ばれるように、一つ委員長において適切な措置を講ぜられたい。なお正示理財局長は、実際私が今妙な表現を用いたので、軽く扱われるかもしれないけれども、そうじゃない。フランスなどの実例、アメリカ、イギリス等の経済状態、またわれわれは、ドイツ中央銀行総裁のウイルヘルム・フォッケ氏とは、実に長時間にわたって通貨価値について論じてきた。そういうこともあるので、小生の意見をよく聞かれて、さらに検討されることを強く要望して、私の質問を終ります。
  48. 山本幸一

    山本委員長 それでは、今春日君から大へん博学な御意見を伺いましたので、さっそく次の機会に、大臣局長と私ともいろいろ打ち合せをいたしまして、協議をする機会を作りたいと思います。     ―――――――――――――
  49. 山本幸一

    山本委員長 なおこの際お諮りをいたしますが、参考人招致の件でございます。塩業問題について、来たる十月四日参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。なお参考人の人選序につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十一分開議
  51. 山本幸一

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件等について、質疑を続行いたします。横路節雄君。
  52. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねをしますが、先ほどお話しがございました昭和三十三年度の予算基本構想についてでありますが、これの中心をなす来年度の国際収支につきまして、ことし二十八億ドルに予想されている輸出を、来年度三十一億ドルに増加させて、それで、輸入の方は三億ドル削って、三十二億ドルくらいになるのだというのが、この予算基本構想の中心になっておりますが、どういうようにして輸出が三十一億ドルに伸びるのですか。その点は、大蔵大臣はどういうような方策でおやりになるのか、まずそれを一つお尋ねしたい。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 輸出が三十一億五千万ドルという場合の輸入は、お話しのように三十二億見当、同時に三十二年度に相当な輸入が、いわゆる見越し輸入といいますか、輸入がありますので、その輸入が相当はき出されて三十三年度に役立つ、それがどういう全額になるか、これはいろいろと、要するに在庫というものの調べがなかなか困難の点もありますから、はっきり言えないのですが、おそらく私は、それが一億ドル以上は、二、三億ドルというところは考えてもいいんじゃないかと一応思っております。そうしますと、やはり輸入は三十四、五億あったと同じ効果を上げ得るのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。それにしても、輸出を三億五千万ドル三十二度よりふやすのには、どうしても国内における物資需要というものをぐっと押えなければならぬ、その可能性いかんに私はかかっておると思います。三十二年におきましては、御承知のように輸入は、はっきりしませんが、約三十六億ドル程度だと思っています。輸出は二十八億、そういうものが想定される。そうすると、いかに内需に使われておるかということがわかるのであります。従って、輸入がそう大きな相違がない、そうすると、内需を押えていけば、輸出の二十八億ドルが三十一億五千万ドルになることは、どうしてなるのか、それは、今後の国際情勢等の変化もあります、また国内の物価の推移、いろいろあります、しかし、三十一億五千万ドル輸出を可能ならしむる総合施策を強力に遂行すれば、それが実現不可能のものではない、こういうことは言い得る。私はかように存じておるわけでございます。
  54. 横路節雄

    ○横路委員 今お話しの輸入について、本年度よりも大体三億ドル程度減らしたい。これは、在庫品の問題、その他外貨の割当等で私は抑制できるだろうと思います。しかし、輸出をことしに比べて来年度三億五千万ドル増加させるというのには、ただ国内消費を押えただけで伸びるというわけにはいかぬと思います。そのためには、一体大蔵大臣としては、ソビエトとの貿易がどれくらい拡大されるというように見通しをしておるのか。それから、中国との第四次貿易協定は、まだ行き悩んでいるけれども、しかし来年度は、この日中の貿易は本年度に比べて同様に伸びる、また伸ばさなければならないと考えているのか、この点、私は、ただ単に国内の消費を押えるというばかりでなしに、これはいわゆる拡大をはかっていかなければならないと思うのだが、その点、日ソの貿易は、ことしより三億五千万ドル伸ばす中で、どういうように考えているのか。さらに日中の貿易については、一体どういうように考え、それを期待しているのか。その点について、一つ明らかにしていただきたいと思います。
  55. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十一億五千万ドルの輸出を実現するために、輸出振興の施策を強く打ち出していかなくてはならぬことは、御承知の通りであります。具体的に、たとえば日中とか、あるいは日ソにどのような貿易額を考えておるかということは、今私は資料を持ちません。これは数字ですから、通産省に十分聞いて御返事する方がいいかと思いますが、しかし、私としては、抽象的にはなりますが、やはりなるべくこれを拡大していくという方針をとっていくべきだと考えております。
  56. 横路節雄

    ○横路委員 今の大蔵大臣の御答弁は、私は非常に不満なんです。それは、なぜならば、きのう大蔵大臣から発表された、またきょう発表されました中でも、この点が、三十三年度経済運営基本態度に示されている通り国際収支は大幅に改善することにある、これが基本なんです。そこで、実際に国内の消費の抑制ばかりでなしに、積極的に貿易を、いわゆる輸出を振興しなければならぬ、そのためには、やはり何といっても日ソの貿易、それから中国との間の特に第四次貿易協定が行き悩んでいる今日、中国との貿易、あるいは総理も、日米の共同声明のあと、ワシントンでは、いわゆる中国とは往復二億ドル、こういうふうに言っている。そういうことが、おそらく閣議で討議をされた。そこで、輸入については三億ドル減らすが、輸出については、ことしは二十八億ドルを三十一億五千万ドル、こういうふうになったと思うので、ただ、いろいろありますと言われても、そのいろいろについて、ここでもう少し具体的に、私が聞いている日ソ、日中について、本年よりはどの程度の拡大を期待しておるのか、そこら辺のことはお話ししていただけると思う。期待してないのなら、期待してないでいいんですよ。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 おそらくどの程度という金額で示せというお考えかと思いますが、それは、おそらくあると思いますが、これは、私手元に持っていない、記憶にないというだけでございます。おそらく通産省や経済企画庁には、きちっとした数字があると思いますので、私からも、そちらから提示するように申しましょう。
  58. 横路節雄

    ○横路委員 これが、きのうの基本構想の中の柱なんですから。これが柱でなければ、今の御答弁でも、私はまあそうかなと思うけれども、これが柱で、あとは何も具体的にないのですから。これから私は聞きますが、この柱だけは、前に発表しているのですから、前に発表した通りとなっているのだから、その柱の三億五千万ドルが伸びるのはどうなのか、だから、大蔵大臣閣議で、実は日ソの貿易についての拡大は期待していない、日中貿易の拡大についても期待していないのだ、ただ国内消費その他でやれるのだ、こうおっしゃるならば、それは大蔵大臣の御意見として、私は聞いておきたいと思う。しかし、やはり政府としても、日ソの貿易、あるいは中国との貿易については、おそらく拡大を期待されていると思う。またそういうような方途でいくと思うのです。だから、それはどういうようにお考えになっていますか、こう聞いているのです。それは、通産大臣を呼んできて聞いてくれということは、どうも大蔵大臣ちょっとそれは……。きのう閣議で、国民全体に、三十三年度の予算基本構想はこうだ、これで大臣、あなたアメリカへ行かれるんでしょう。まさか、これで十一月一日からの臨時国会を乗り切るんだとは思わないけれども、しかしどうも、あなた方の政府の中でも、大蔵大臣のんき過ぎるなんということを言うてる人がないわけでもないんです。だから、一つここで、日ソの貿易拡大を期待してないというのだったら、してないでもいい、しているなら、している。それがどの程度かということの、ある程度のことはお話しされても――それこそわれわれは期待しているのです。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、日中その他の貿易の拡大を期待しておるということは、先ほどから言っておるんだが、その具体的数字は、今ここに持っていないから、間違ったことを言っても悪いから、念のためあとでよく見て御返答をしよう、こういうことだけであります。ただ申し上げたいのは、いかにも日ソ、日中の貿易の拡大によって、三十一億五千万ドルですか、前年に比べて三億五千万ドルの輸出の増大を考えておる、それは、私はそういうふうに思っておりません。むろん日中や日ソの貿易の拡大は希望しますが、そこに最も重点を置いて考えるというふうには、私は考えておりません。今後努力しようということであります。
  60. 横路節雄

    ○横路委員 私は、今の大蔵大臣答弁で、ちょっとふに落ちませんのは、大蔵大臣は、もちろん日ソ、日中についての貿易の拡大は期待しているが、それは、三億五千万ドルのうちで大した比重は占めてないのだ、こういうお話のようなんです。しかし、昭和三十一年度の日中の貿易は、たしか輸入が八千三百万ドル、それから輸出の方が六千七百万ドル、合計約一億五千万ドル、岸総理みずから、先般のいわゆる輸出禁止品目の拡大で、これで片道一億ドルだ、往復一億ドルになるんだ、一億ドルになれば、それだけで五千万ドルふえるんです。三億五千万ドルの中で五千万ドルが拡大していくということは、これは、やはり相当大きいですよ。その他いろいろ問題がたくさんございましょうが――だから、それは、通産省から資料を取ったらいいだろうというのであれば、委員長の方から一つ政府の方に話をして、通産省は輸出についてどういうように考えているのか、そうでなければ、われわれとしては納得できないが、大蔵大臣、これはおかしいと思うのですよ。もう一ぺん申し上げますが、これが柱なんですよ。しかし、あなたに今ここでなんぼ聞いても、数字がないというんですから――しかし、拡大は期待しているんですね。その点はどうなんですか。期待をしてないんですか、もう一ぺんそこだけ……。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、もうはっきり期待すると、何回もお答えしております。
  62. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、委員長からその点はお願いします。この点は、しかし非常に私ども意外なんです。少くとも大蔵大臣から、この点の答弁はある程度できる、こういうように考えておりましたのに、その点についての具体的な答弁がないということは、非常に遺憾です。  その次に、大成大臣にお尋ねをしたいのですが、三十三年度のいわゆる経済成長率を、三%を維持する、こういうふうにお考えのようなんですが、今年度で約七・五%ですね。それから今までの五年間は、平均大体過去において六・五%ぐらいを見通ししたのだが、その経済の成長率を三%ぐらいということにしていきますと、本年度でも、安定所に登録している失業者はすでに約六十万、経済の成長率を、ことしは七・五%だが、それを来年三%に押えれば、一体来年度新たに増加してくるところのいわゆる労働力、新たに就労したいと思う人々をどういうようにして吸収するか。去年からことし七・五%の成長を見込んで、安定所には六十万の失業者が登録されている。それを三%に、半分以下に押えれば、来年はますます失業者は拡大してくるのだが、一体その点の対策、見通しはどうなっているか、その点についてお尋ねをしたい。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お説のように、経済の成長率が落ちますから、雇用関係がある程度悪くなるだろうということは、これは、考慮のうちに当然入れておかなければならないと思います。従いまして、たとえば失業対策について、それらのことを十分考慮して今後考えていまたい、かように存じておるわけであります。
  64. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今大蔵大臣お話で、その点ははっきりしました。来年度は、経済の成長率を三%という見通しに押えたために、来年は失業者は増大をしてくる、しかし、それに対するいわゆる失業対策費その他、そういう点については考慮したいということ、その点はわかりました。  その次に、これはちょっと主税局長に聞きたいのですけれども昭和三十二年度の税の自然増収の見通しはいかがですかね。大体私ども新聞によりますと、あなたの方でお漏らしになったのかどうか、前年の七月末に比べて、大体五百億円くらいふえているようだ、このままでいくならば、三十二年度は大体、千億くらいふえるのではないか、こういうのですが、この点についての見通しはどうですか。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、私もある程度心得ていますけれども、数字にしますから、主税局長がおりますので、主税局長からお答えします。
  66. 原純夫

    ○原説明員 ただいま計数の一番新しい七月末の実績がわかっておるわけであります。これによりますと、四、五、六、七の四カ月で、昨年のその四カ月の収入に比べて、五百億ちょっとよけい入っております。五百四億よけいに入っております。よけいに入りましても、昨年の実績に比べてことしの予算が非常にふえておるということであると、よけいに入るのは当りまえだということになるわけけですが、その関係を申しますと、去年の実績とことしの予算とは、ほぼ同額、むしろことしの予算の方が二、三十億下目ですから、毎月々々去年通りの収入が入ってくれば、予算は入るということになっております。従いまして、四カ月で五百億去年よりも多く入ったというのは、その意味では、非常に調子がよろしいわけであります。ところで、これがあとの八カ月余りの間にどうなるかという問題でありますが、その時期になりますると 結論的な見通しを立てるために、非常に大きく動き得る要素が非常に多くございます。一つは、九月期の法人の決算かどうなるかという、これが今後の大きなアイテムの一つであります。それから年末のボーナスか、昨年のような景気のいいボーナスが出るかどうかというのが、もう一つ大きな問題であります。それからもう一つは、ことしのといいますか、今年度の来年の一、二、三月というものは、源泉徴収の所得税が、御案内の減税になったものがフルに影響したものが入って参ります。ところが、三十一年度のそれに対応することしの一、二、三月の収入は、旧法、つまり高い時分の負担で入ってきておりますから、その三カ月の源泉徴収の所得税は、相当大きく落ちるという要素がございます。その他数え上げますといろいろな要素がありますが、それらの中で、特に初めに申しました法人の所得の趨勢、それから年末の賞与の趨勢、これらは、まだただいまのところでは何とも確定的なことは申しがたいという状況でございますので、相当額の増収はあるであろうと思いますが、私の口から幾らになりそうだという数字は、まだ控えさせていただきたいというふうに思います。結論を得るために必要な諸元については、ただいま申し上げたようなことでございます。
  67. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今四、五、六、七の四カ月で五百四億ふえているわけですから、残りは八カ月あるわけですから、従って残り八カ月については、あるいは金融の引き締め等によって法人税が下ってくる、あるいは失業者が出てくるので、源泉徴収の所得税の方が減るとかいうことはあっても、四カ月で五百億だったのですから、残り八カ月で最低五百億を見込んで、大体一千億の自然増収という見方は、私は当代成り立つと思う。そこで大蔵大臣にお尋ねしますが、本来からいけば、ここで一千億近くの税の自然増収があるのですから、私は来年度は、前前から大蔵委員会で問題になっている低額所得者について、大幅に減税すべきだ、こういうように考えるのですが、大蔵大臣、その点、どういうようにお考えになっておられますか、お尋ねしておきます。
  68. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今の段階では、その点について考慮しておりません。今私が考えておりますことは、自然増収がある、これは将来の景気調整にとっておく。これは使わないという意味じゃありません。今日、日本経済を安定させていく道がなかなか困難であり、険しいのであります。そうして、先ほどからしばしば輸出に関連して御意見もあったように、国内的な需要をぐっと押えて、そうして輸出の振興策と相待って輸出ドライブでいく、こういうような見地からも、よほど考えなければならぬ。従いまして、一応ここでは景気調整の資金に置いて、今後内外非常にむずかしい条件を持っておる日本経済の推移を見て、あらためて私は考えていくべきだという考え方に今あります。
  69. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、三十三年度においては、問題になっている低額所得者について、政府はこれを減税する措置はないという方針のようでありますが、大蔵大臣、来年度の税は一体――これは、ほんとうは税の総額の大体の見通しをお尋ねするといいのですが、実は私も時間の制約がありまして、ほかの同僚の委員諸君質問もありますので、これだけ聞いておきますが、大体来年は、歳入については、やはり本年よりよけいの見積りをなさるしと思うのですが、そのうちで税の分は、主税局長は大体どれくらい見積られますか、大体でいいです。
  70. 原純夫

    ○原説明員 来年の税収がどうなるかということにつきましては、先ほど申しました法人税の関係がどうなるかということが、一番のポイントでございます。その他の点は、大体国民所得やら消費やらが伸びて参るということと対応して、見通しがある程度つくわけですが、法人の所得は、先ほどその点を申し上げてないのですが、景気のいいときは、仕入れたときよりも値が上っていくというようなことで、値上りによる利益が入ってくる、賃金はそう弾力的に上らないというようなことで、利益がぐっと出てくるわけです。悪いときには逆で、値が下っていく、下っていくと、値下りの損が出る、賃金の方は、また利益が減ったからといって、すぐ下るというものでもない。そういうようなわけで、悪いときには、普通の生産指数が何%落ちたということでなくて、相当大きな減になってくるわけです。これらは、非常に見込みのむずかしい点であります。かつ、客観的な事態がどんなふうに効いていくか、物価なり生産なり賃金なり、そういうものがどんなからみ合いでどう動いていくかということにかかりますので、その辺が、来年度大きなマイナス要素とし考えられる点でありますが、ただいまのところ、正直に申して、これはまだ見当がつきかねるという段階でございます。いずれにしても、本年度の実績よりもふえるということは、なかなかむずかしいのじゃなかろうかというふうに思えます。まあ勘で申せば、若干減るのではなかろうか。ただし、その辺のところも、先ほど来申しておりますような、今後かなり動きの多い条件に乗っかったファクターでございますから、情勢の推移を見まして、しかるべき時期に見当をしっかりつけたいという気持でおります。
  71. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、やはり歳入のうちの主たるものは税なんですから、とにかく歳入については、若干三十二年度よりは下回ってくるのではないか、こういう今お話でございますが、そこで、大蔵大臣にお尋ねをしたいのです。今度は、来年度の歳出の面をお尋ねしたいのですが、まずきまりきっていることは、地方交付税を一・五%-一・五%が幾らになりますか、これはたしか四百億くらいになるのですか、この地方交付税を一・五%増額することは、国会の意思でもあるし、決定でございますね。大蔵大臣、その点はどうなんですか。
  72. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 地方財政に関する点につきましては、今お話しの事柄も一つでありますが、それについては、従来のいきさつがどういうふうになっているか、たとえば前の大蔵大臣がどういうふうな御答弁をなさっておるか等を、今速記録で詳細に研究をいたしております。それと、また他面、地方財政がその後においてどういうふうな状況の変化をしてきておるか、そういうことを今つぶさに研究しておるという段階であります。
  73. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣に申し上げますが、それは、前の池田大蔵大臣がどう答弁しているかという問題ではないのです。国会の意思できまっているんです。それは、社会党と自民党の間で、本年度は交付税の税率は二五%を一%上げて二六%、それを来年度以降はもう一・五%上げて二七・五%、こういうふうに話はきまっておったのだが、与党の方の内部事情で、必ず実施するから附帯決蔽に回してもらいにい、こういうので、二六%にした場合に、附帯決議で、三十三年度からは二七・五%にしますぞ、こういう決定を見ている。だから、それは何も前の大蔵大臣意思いかんにかかわらないのです。だから、この点は明らかに増額されるわけです。私は、増額の方だけ聞くのですが、その次に増額されるものは、この間岸総理がアメリカに行かれて、アメリカとの間に了解を得て帰ってきた。日本の防衛計画、その中で現在の陸上自衛隊十六万は、来年度一万、再来年度一万、合計これを二万ふやすということを約束したのです。そこで、来年度陸上自衛隊を一万ふやすことによって、どの程度の防衛費が増額されてくるのか、その点はどうなっていますか。また増額することは約束してきたのですから、その点はどうなっていますか、お尋ねします。
  74. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういう点は、今いろいろの関係検討もしておると思いますが、私自身も検討中で、今何もそれについては申し上げることはありません。
  75. 横路節雄

    ○横路委員 一昨年の四月二十五日でしたか、十五日でしたか、衆議院の総選挙が終りましたあとで、あなたが当時のアメリカのアリソン大使との間に、防衛分担金の削減と日本の防衛費との関係において約束をした。これは、当時国会で問題になりまして、これは、決してあとあとの内閣を拘束するものではない、こういうように答弁はされたが、実際には、ずっとそのままできているわけです。ですから防衛庁費、それからいわゆる施設提供費、それの半分だけは防衛分担金は削減する、逆に言えば、防衛分担金を五十億減らしたら、こっちの方は百億増加する。こっちを百億増加すれば二百億、端的に言えば、こういうふうになるのですが、あなたは、防衛分担金削減に関する、一昨年の四月にあなたとアメリカのアリソン大使との間に行いました共同声明といいますか、それは、ずっと来年度の予算編成の場合でもこの方針は貫くわけですか、どうなさるわけですか。その点をお尋ねしておきたいと思います。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 防衛分担金の問題については、今お話しのようなことは、むろん私は検討中でありまして、尊重していきたいと思っておりますが、しかし、それだけで終わるかどうか、その後のいろいろな情勢の変化も加味して話し合いもしてみたい、かように考えております。
  77. 横路節雄

    ○横路委員 次に、義務教育費の国庫負担のことについて問題になっている。これは、今までは半額国庫負担ですが、初めは全額国庫負担というお話もありました。後では、これは、文部大臣等が国民全般に知らせているところだが、あなたの方の与党の政調会でも、そういう方針だが、義務教育費の国家補償という言葉で、七割五分の負担をするようにいたしたい、こういうわけで、われわれとしては、義務教育費の国庫負担金は、昭和三十三年度においては伸びると思いますが、この点はいかがですか。
  78. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今、そういう点に触れて私が答弁を申し上げるときでないし、私も用意を持っておりません。
  79. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねをしますが、今あなたは、地方交付税については何としてもふえてくる、防衛庁費については絶対ふえてくる、義務教育費の国庫負担については絶対ふえてくる、さらに国民皆保険というので、これは、あなたの方では、まさか軍事費ばかりふやすわけにはいかぬから、いわゆる国民健康保険の問題については考慮しなければならぬ。このいわゆる国庫の負担分もふえてくる。先ほど大臣からお話がありましたように、経済成長率は、ことし七・五%のものを来年三%に見込んだために、失業者は増大をしてくる。従って、失業対策費は盛らなければならぬということになると、本年度の一兆一千三百七十四億というその予算規模は、当然ふえてくると思う。この点は、一兆一千三百七十四億のワク、それ以上はふやさないというのか。今私が申し上げましたわずか三つ、四つあげても、絶対にふえてくる。そこで一兆一千三百七十四億からふえるのかどうか。私は当然ふえてくると思うが、なおふえてくるとする場合における予算規模は、どのくらいになるのか、その点、一つ大体の見通しについて大蔵大臣からお話をしていただきたい。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話しのありました具体的な事項は、みなまだきまっておりませんので、従いまして、これはみな今後の問題であります。今、それではどういうふうにふえるかということも申し上げかねます。
  81. 横路節雄

    ○横路委員 ただ大蔵大臣、一兆一千三百七十四億から減る要素はないのではないですか。私が指摘したように、減る要素はないのですから、当然ふえてくる。あなたの方で、そんなことはない、一兆一千三百七十四億だって、中を調べてみれば減る要素があるのだ、こういうふうにお話しなさるならば、そういうふうにしていただきたい。全然今のところは、そういうことについてはお答えできませんということになると、だんだん吉田さんに似てくると思う。だから、そうでなしに、やはり減る要素はないのですから、今私が申し上げたように、減る要素がなければ、ふえる万の要素だけなんですから、それなら、その通りです。こう言っていただけばいいのです。どうなんですか。
  82. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、繰り返して言っても、今後の検討に待たなくては、そういうような量的なことを今ここでかれこれと申し上げることは、できない段階であります。ただ、お話しの点は、やはりよくわかるのでありまして、予算編成が非常に困難であろう、なかなかいろいろな要素もある、よほどしっかりやらなければというような意味合いでは、それは、その通りであります。
  83. 横路節雄

    ○横路委員 いや、大蔵大臣、この点はもう少し質問しますが、そこで、政府の方の方針は、できるだけ予算の規模はあまり拡大しないようにしたい、こういうことだと思う。しかし、主税局長の言うように、来年の税の増収は伸びがないのだ、ことしよりも減るのだ、歳入規模は減るのだということになってくると――そういう答弁をしたのですから、歳入規模は減るのだ、歳入規模は少し小さくなります。税の自然増収はないのです。減るのです。その場合に、私が今指摘したように、交付税の問題、防衛費の問題、国民皆保険による社会保障費の問題、それから失業対策の問題、それから義務教育の国庫負担の問題となると、ふえてくる。ふえてくれば、歳入については、去年よりも少いのだということになれば、ほかのものを切らなければならぬ。それは、一体どこを切るのか、ちょっと主税局長の話と合わなくなる。主税局長の減るという方は、やはり大蔵大臣も、歳入については、去年よりもちょっと規模は小さくなる、こういうふうにお思いですか。その点は、どうですか。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十三年度の歳入については、もう少し情勢を見なくては、いろいろ言っても、それは私は仮の意見であると思います。少くとも九月の決算とか、あるいはまた三月決算が一番よくわかるのでありますが、そこまで待てないにしても、相当な情勢を見たい。その点について、先ほどから専門的に扱っておる主税局長が言っておる答弁は、私もあれでいいと思います。
  85. 横路節雄

    ○横路委員 次に、大蔵大臣にお尋ねしますが、当然、そういう歳入についてはある程度減ってくるのではないか、だから、当然歳入をもととして歳出をきめてくることになるだろうと思う。その場合に、国内の消費はできるだけ抑制する、輸出は伸ばすのだ、こういうふうに言っていますが、消費者米価は、十月一日から値上げなさるわけですね。この点は、どうきまりましたでしょうか。十月一日から値上げなさるでしょう。その点は、大蔵大臣どうですか。
  86. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 消費者米価につきましては、ここでいろいろ事情を申し上げるまでもありませんが、諸般の事情から見まして、農林大臣考えておる米価を上げようということには、私も賛成であります。
  87. 横路節雄

    ○横路委員 今お話しのように、大蔵大臣は、ここではっきりと、農林大臣考えている十月一日からの消費者米価の値上げは賛成だ、そうなると、私鉄の運賃も上るわけですね。一つずつお聞きして恐縮ですが、その点は、大蔵大臣いかがですか。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、運輸大臣が主管で、おそらく運輸大臣は、まだきめてないでございましょう。ですから、これは、私から答弁するわけにいきません。
  89. 横路節雄

    ○横路委員 私が今大蔵大臣にそのことをお尋ねしているのは、来年度は、国内の消費を押え、消費節約をやるのだ、そうして物価はできるだけ安定させたい、できるだけ下げたい、そういうことは、前にもお話があった。これは、物価が上るのですよ。しかも、一番大事なことは、勤労者の賃金は、何をもととして上げていくかというと、主食をもとにして上げていく。主食が大きな割合を占めておる今日の生計費の中で、当然賃上げ闘争が起きてくる。また秋から年末にかけて起きてくる。それは、一面は政府責任になりますよ、消費者米価を上げてくるのですから。だから、もしも政府の方で、この際勤労者の諸君の賃金引き上げは好ましくない、こういう考え方であるならば、それに対応して、当然消費者米価の値上げは抑制しなければならぬ。これは逆ですよ。賃金と主食との関係、消費者米価の値上げの問題は、大蔵大臣はどうお考えになっていますか。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 多分に議論になる点もあると思います。あると思いますが、私は、三十二年度の米価の生産者価格、それから豊作の状況、それから米価を上げた場合における生活費に及ぼす影響等々から勘案をいたしまして、しかも、これについては、専門家が非常に議をこらして結論を得たことでもあるのでありまして、私はそういうふうな見地から、米価を上げてもいい、こういうふうに考える。特に生活費へ及ぼす影響は、米価をあの程度上げることにおいて、そう大きな影響はない、こういうふうな考え方をいたしております。
  91. 横路節雄

    ○横路委員 その点は、大蔵大臣、全く意見がわれわれと違うのです。あなたは、消費者米価を上げても、一般の物価に及ぼさないと言うが、これは重大な誤まりです。消費者米価を上げれば、一般物価に及ぼして、それが、結局勤労者の賃上げの要素になってくるのです。だから、再び勤労者の諸君が、米価の引き上げに伴って、十月以降、また年末闘争で新しい賃金を要求することは、これは当然起ってきます。これは政府責任ですよ。  次に、もう時間もありませんから、一つだけお尋ねしますが、大蔵大臣、いわゆる財政投融資の問題です。財政投融資の問題は、政府も、本年と同じように押えたいと言う。しかし、本年と同じように押えたいというが、第四次余剰農産物協定をおやりになる。それで百億程度のものは出てくる。あるいは簡易保険、郵便貯金のいわゆる自然増加の問題など、いろいろありまして、今財政投融資の問題を、ことしと同じように押えてくれば、来年この余裕金が大体八百億ないし一千億くらい出るのではないか、こう言っている。この点は、財政投融資は、やはりことしと同じように押えるわけですか、その場合における余裕金の扱いはどうするのか、その点についてお尋ねしたい。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日の日本経済の状況は、私から申すまでもないのでありますが、たとえば、ここに原資があるから、その原資を使ってやっていいというような状況ではないのでありまして、むしろ投資景気というものが行き過ぎて、経済自体の成長が伸び過ぎておるのでありますから、これを押え、そして経済の内部に生ずる不均衡を是正して、安定な経済に持っていくということが一番大事なんでありますから、そういう意味におきまして、原資がかりにありましても、大体私どもの見るところでは、三十二年度並みの財政投融資でよいという結論になっておるのであります。原資が残ったらどうするか。これは残り工合にもよりますが、これはまた適切な処置を考えてみたい。要するに財政投融資につきましては、私はあまりこだわっておりません。これは、経済は生きものでありますから、あるいはまた、日本経済が国際的な影響を受けることも非常に大きいのですから、刻々にも、と言えば悪いですが、変化をしていくのであります。従って、その情勢を常に見きわめつつ、財政投融資考えていこう、こういうふうに弾力的に考えておるわけでありますから、その点も、一つあまりに窮屈にお考えなさらぬように願います。
  93. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣、最後にお尋ねしますが、実は、国の財政資金については、これを一五%程度削減といいますか、繰り並べといいますか、押えたわけです。それは、まあそれなりで一つの効果がありましょうが、問題は民間資金ですね。民間資金については、政府の方で、いわゆる公定歩合の引き上げその他でやってきたわけですが、昭和三十年の大蔵委員会で、当時は自由党の諸君から、この大蔵委員会にも、いわゆる資金委員会というものを一つ設けたらどうか、そういうことで、この民間資金が思い思い勝手にやっている点を、ある程度規制したらどうか、こういう意見も出ている。これは、私は当時自由党の諸君にしては珍しいことだ、こういうように考えておったわけです。そこで、来年度の民間資金の点については、ただ単に、国が財政資金投資計画を立てるばかりでなしに、この際民間資金についても、やはり一元的な計画のもとに規制できるように、一つ委員会を作っておやりになることが、私は妥当だと思うのですが、そういう点は、大蔵大臣、どうお思いになりますか。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点については、私は見解を異にいたしております。そういうお考えも、むろん私は尊重いたします。成り立つ場合もあると思います。しかし、私はその説をとりません。むしろ今後におきましては、要するに景気現象に対して、いろいろな施策や制度が敏活に総合的に動いていく、その現象が起った場合に、それを見過ごさずに、ずっと経済政策が維持されていく、私はそういうふうな構想考えておりますから、従いまして、来年度におきましては、景気現象をなるべく正確に把握するようにする。それに基いてもろもろの既存の制度が、それぞれの立場において、それに適応するような施策を迅速にとる、こういうふうな行き方が適当と、今考えております。
  95. 横路節雄

    ○横路委員 実は、この間官房長官にお会いしまして、われわれ希望を申し上げたわけです。それは、十一月一日から予定されている臨時国会では、やはり予算大綱を明確に示してもらいたい。予算大綱を示す場合には、歳入の見通し、歳出の見通し、予算規模等についてもある程度のものを示して、それによる政府の新しい政策の発表と相待って、国会で十分論議してもらいたい、こういうふうに私の方から申し上げましたところが、官房長官は、その通りです、政府としては、十一月一日からの臨時国会では、予算規模については、当然ある程度きめたものは発表をして、その上に、新しい政策とあわせて論議をしたい。こう言っておりますから、十一月一日に予定されている臨時国会では、きょうのような答弁でなしに、予算規模についてはどれだけ、歳入の見通しはどれだけ、こういう点は、ぜひ一つ明らかにしてもらいと思います。  以上で終ります。
  96. 山本幸一

    山本委員長 引き続いて、井上良二君の質問を許します。
  97. 井上良二

    ○井上委員 大蔵大臣に、来年度予算基本構想に関連して二、三お伺いいたします。午前中に大蔵大臣から、明年度の予算基本構想について伺ったが、これは、自由民主党の政策の上から打ち出された法本構想ですか、それとは別に、大蔵大臣自身の基本構想ですか、いずれですか。それをまず伺いたい。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、政府基本構想であります。むろん党とも連絡はとっております。
  99. 井上良二

    ○井上委員 政府は、今年の春の通常国会に本年度の予算を提案しましてこの予算の編成方針を、大蔵大臣財政演説として国民に訴えたのであります。その本年度予算の編成の基本的なものの考え方は、二十八年に国際収支が非常に赤字になった、その結果から、非常にインフレ傾向が高まってきた、これに対処するのには、少くとも健全財政でいかなければならぬということから、二十九年以来、いわゆる一兆円予算を堅持して、そうして国民の通貨価値に対する信頼を高め、また預貯金の増強をはかり、金融の円滑化をはかって、経済の正常化に全力を注いできた。その結果、やっとわが国も経済的に自立態勢ができた、そこで、さらにきょうから明日へ、ことしから来年へと、国民生活の向上とわが国経済の規模の拡大にも、一そうの積極政策をとる必要がある、こういうものの考え方に立って、今年度の予算は、御存じの通り非常な財政経済ともに積極政策を打ち出したのであります。そうして、その内容とするところは、御存じの通り財政投融資約三千二百億というものを予定して、三十一年度の投融資に比べますならば、約六百億を増すところの大幅な引き上げをやって、そうして投資景気をあおったのであります。ところが、これが直ちに国際収支に響いて参って、年末に十四億五千万ドルありました外貨は、氷が溶けるがごとくどんどん減って参って、五月末には、すでに国際通貨基金から借金をしなければならぬような事態になった。この事態から、大幅に今度は百八十度の方向転換をいたしました。今まで財政投融資による投資景気をあおったその責任は、一体だれが負うのか。逆に、今度はちょうど前年度よりもふえました約六百億を繰り延べするということを要求して、これに伴って、金融の引き締めを強行してきた。この結果、あらゆる産業に非常な混乱と金融難が襲って、特に中小企業は、このために非常な経済的な打撃を受けてきておる。そういう事態を一向政治的に責任を負わずに、今度は、来年度の予算の編成に対する基本構想を聞くと、ことしの予算編成の構想とは全く違った、相反するデフレ的な構想をお立てになっておる。同じ政党内閣として、かようなことが一体許されましょうか。一体、そういうことでいいとお考えになっていましょうか。この点、一体大蔵大臣財政当局責任者として、どうお考えでありますか、この点を、一つ明確に御説明を願いたいと思います。
  100. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日本経済輸出を中心とする好況から、当然の推移として投資景気に向ってきた、その限りにおいて、これは経済の推移として当然なことでありまして、悪いことではないのであります。ただ問題は、その投資景気がどういうふうないわゆる行き過ぎになるかならぬかという問題に、一つはあるのであります。日本経済考えます場合に、特に日本の場合においては、産業構造の変化をいたしております。たとえば、鉄鋼、石油というようなものを特に需要する新興産業も、今日起っておる。そういう関係から、ある程度の投資が伸びていく。また同時に、たとえば石油というようなものの輸入がふえていく、こういう点も、私は恕さるべき点もあると思います。しかし、景気現象の把握についているいろ見解もありましょうが、今から考えて、若干遺憾の点もあったことは、もうこれは率直に認めていいと思います。ただ問題は、外貨が非常に減ったということが問題であるのではなくて、これを、このまま今日の事態よりさらにそういう状態を押し進めていけば、これは、経済活動にマッチする物資が手に入らない。その結果、物価騰貴を招来してインフレになる、輸出もとまる、経済の崩壊になる、こういうところにあるのでありまして、問題は、むろん景気現象の把握において、時間的に若干の遅速を生じた結果、もう少しゆるやかにやるべきことが、急なカーブになるという点は認めねばなりませんが、しかしここで切りかえて、さらにまた輸出に転向せしむることができれば、またそれを必ずやる決意でありまするが、それができれば、私は、若干のここに紆余曲折はありましたが、まあそういう大げさに必ずしも取り扱わなくてもよかろう、かように存ずるわけであります。
  101. 井上良二

    ○井上委員 私ども社会党は、本年度の春の通常国会におきまして、いわゆる世界経済の好況の波に乗った日本経済は、非常な発展を遂げてきておりますし、また国の財政収入も非常にふえてきておるが、この好況の波を安易に考えずに、今もうかるからといって、それを片っ端から使ってしまうということではなしに、やはりいずれ来るべき不況対策に、この好況による増収は蓄積することの方がいいのではないか、こういう意見を述べたのでありますけれども、これは、当時のあの勢いのいい積極論の前に、耳を傾けてもらうことができない。しかし、社会党の主張しましたことは、今日現実にそれが裏づけされておるわけであります。そこで、この際政府に、大蔵大臣に伺いますが、大蔵大臣みずから、投資景気の問題については相当行き過ぎがあったということは、率直に認めました。問題は、政府が投資景気をあおることによって、財政投融資がそれぞれ重要産業に融資されておるのであります。その途中で、約一五%ですか、これは繰り延べる、使っちゃならぬ、こういうことで引き締めをやりまして、使わさない。そうしますと、一体、繰り延べはいつになったらゆるめるのですか、いつになったら使わすのですか。もうこの投融資計画は、一五%削減でやらさないのですか、六百億はもう使わさないのですか、本年度は、これはもう見込みはないのですか、この点はどうなんですか。それを一つ明確にしていただきたい。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一五%の投融資を削減してもいいというのであれば、削減を願った方が、私はいいと思います。しかし、繰り延べであるとすれば、削減は困難であります。しかし、繰り延べは諸般の情勢からやむを得ぬからやるということで、繰り延べをしてもらうので、今繰り延べを要請しておるのでありますが、それなら、またいつからその繰り延べを実行していいようにするかといえば、これは、経済の今後の推移を見なくてはなりません。日本経済の不均衡が是正されて、安定の姿を早く取り戻せば、早くまたやってよろしい。また、今おくれておるところは、今後の日本経済状態いかんでは、スピード・アップして、総体の年度計画内にはおさめることも、たとえば三カ年計画であるならば、今はスローしておりますけれども、先において、日本経済の情勢ではまたスピード・アップして、やはり三カ年には済ます、こういうことも可能である。いつからそれができるか、まだまだほんとうを申しまして、一五%ほんとうにスロー・ダウンを今実施をしようというので、着手したというときであります。もう少し時間を待たないと、いつごろからそれをやってよろしいかということは、答弁いたしかねる。実を申しまして、一五%をやれと言っても、お話しのように、やりかけたことでありますので、なかなかむずかしい。またものによっては、すでに九〇%もできておるのもある。いや、今着工早々のものもある。いろいろ相違もありますので、それを総じて一五%やる決意はしておりますが、なかなか実行がおくれがちである。これは、しかし今督励して実行さしております。そういう段階にあることをご了承願います。すみやかにその態勢において実行させて、そして早く着工できるように返してあげたい、かように念じておるわけであります。
  103. 井上良二

    ○井上委員 問題は、今大蔵大臣お話しの通り政府の本年度予算の編成、これの成立、それに伴う財政投融資の計画、実施ということによって、それぞれ各産業分野とも資金を注ぎ込んで、具体的に投資は始まっておるのであります。ものができ上らぬうちに、政府の見込み違い、政府の大きな方針の食い違いから中止しよう、こういうことになっておる。そうすると、今まで投資しました金は、そのまま何ら生産力の拡大の実績をあげずして、そのまま昼寝をすることになる。投資したものが、そのまま何の役にも立たずに、凍結されることになってしまう。これが、年度末までに大体国際収支もトントンになっていく。また景気の見通しもこうだ、だから、年度末になれば、繰り延べた分は順次貸し付けるようにする。また金融も、それを見込んで大体緩和していくという一つのめどを明らかにしてやりませんと、現実に投資したものが、そのまま凍結されて、何ら経済効果を発揮しない状態になっていくじゃありませんか。大蔵大臣は、一体将来、それを早く完成するような必要な資金を出してやりたい、そういうお気持はわかりますが、それはいつですか。それを明らかにしてやらぬと、政府の政策によって、どんどん事業を拡大して生産力を増大しろということで、仕事にかかったが、見込みが違ったから待て、これから資金は出さぬのだ、こうストップをかけられて、しかもその中途半端なままで放ったらかされて、あとの資金は出てこない。建ちかかった工場は腐って、中途半端な機械は動かない、こういうことになっておるのですが、そんなむちゃなことはありまへんで。こういうことは、早く見通しをつけて、方針を立ててやらなければいかぬと思うんです。だから、今年度は一五%は削減して、もうだめだ、来年度の予算を大体立ててみて、来年度の財政投融資計画を立ててみて、そのペースに乗るか乗らぬかということをきめなければ、ここでは返事ができない、こういうならこういうふうにはっきりしておれば、また方法も何とかつくであろうし、いかぬならいかぬで、また方針もたてましょう。繰り延べるということだけでは、いつになったら出してくれるのか、いつになったら金融はゆるめるのだ、こういうことを当該者は待っているはずです。あなたは最高責任者ですから、その点だけははっきりしてやらぬと、腹を減らしてひょろひょろしてどうにもこうにもならぬ状態でおりますから、一つ、この点は明確にしてもらいたいと思います。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決してむちゃにやっているわけではない。実情はこういうふうになっています。例を申しますと、たとえば鉄鋼なら鉄鋼、これは基幹産業ではありますが、やはり今日の増強で、大きな設備をいたしておりますから、その設備を、先般から話し合いをして、一応多分一一%程度でありますが、そういう程度繰り延べるということは、もはややむを得ない。これは、原則的に、総体で一一%程度はよかろう。しかし、それを実行するについては、業者の間でいろいろと形態が違いますから、業者の中で話し合って、業者全体として平均一一%になるようにすればいいからというふうにして、実情に即するようにして、結果が一一%になるような措置をとらしている。それはやってもらう。それは、財政投融資の一五%を繰り延べると同じ全体の一つの数字でありますから、それをやってもらう。これを、極力実行に移してもらうようにしております。その線が確立した上で、また個々の製鉄会社とよく相談して、その後における物の生産、資金の関係はどういうふうになっているかということをよく聞きまして、そう無理のないようにという措置で、各会社については、よく今後の見通しもついていると私は思います。決して一五%あるいは一一%を打ち切る、あとはわからぬぞというようなことはやっておりませぬ。具体的に相談をして進めております。
  105. 井上良二

    ○井上委員 そうすると、政府の方向転換によりまして最も影響を受けておりますのは、繊維産業であります。   〔委員長退席平岡委員長代理着席〕 繊維産業が一番ひどい打撃を受けているんじゃないかと思う。これらは、相当大きな滞貨をかかえて、非常な難儀をしているわけであります。これらのものは、今政府の政策の打ち出し方を見て、ひよりを見ている段階にあるのではないかと思う。従って、現実には、支払い手形を漸次繰り延べていくというやり方はとられておりますが、破滅は、そう大きくきておりませんけれども、しかし、漸次年度末に近づくに従いまして、この影響は大きくなってくると思います。そうなりました場合に、大蔵大臣は、この年度末金融に対して、相当ゆるめるという考え方は持っておりませんか。
  106. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 年度末に向って特に金融をゆるめる、いわゆる世上にいう手直し論をするという考えは持っておりません。ただ、しかし年末なら年末には特殊の事情がありますから、そういう意味におきまして、年末をうまく切り抜けていくようにする、これは当然考えております。大体におきまして、金融の引締めの基本態度は変えません。変えませんが、しかし無理のない点は十分考えていく。
  107. 井上良二

    ○井上委員 次に伺いますが、八月末で、国際収支の現状はどうなっておりますか。それを、一つ事務当局でいいですから、はっきり御説明願いたい。
  108. 稲益繁

    稲益説明員 八月末の国際収支という意味は、外貨の持ち高は、前回この委員会で御報告いたしましたのが、五月末の十億ドルまででありますが、その後、六月末で八億七千八百万ドル、七月末が八億八千四百万ドル、八月末はまだ未集計でありまして、暫定数字では、若干これから減少しておるという程度しかわかっておりません。
  109. 井上良二

    ○井上委員 その八億七千万ドルの内訳ですね。たとえば朝鮮、インドネシア、南米等の焦げつきですね。それから外国銀行に対する長期定期預金というものは、入っておりますか。
  110. 稲益繁

    稲益説明員 お話しの焦げつきと申しますか、直ちに使用不可能なオープン・アカウントの債権でございますか、これは入っております。
  111. 井上良二

    ○井上委員 何ぼ入っておるのですか。
  112. 稲益繁

    稲益説明員 約二億七千万ドル程度入っております。それから外国銀行に対する長期とおっしゃいます意味が、どういう意味かちょっと判明いたしませんが……。
  113. 井上良二

    ○井上委員 直ちに使えない長期定期預金というのですか、長期に預けてある金は幾らですか。
  114. 稲益繁

    稲益説明員 そういうものはございません。
  115. 井上良二

    ○井上委員 これを引いたあとは、全部使えるのですか。
  116. 稲益繁

    稲益説明員 一応使えることになっております。
  117. 井上良二

    ○井上委員 次に、大蔵大臣に伺いますが、大蔵大臣が明年度の予算編成の基本構想をお立てになります場合に、一番重大な問題は、日本を取り巻く世界の景気がどう動くか。世界の経済がどう動くか、こういう見通しが立てられておると思います。本年度の予算編成の場合における財政演説では、大蔵大臣は、世界の経済は今からさらによくなっていく、景気は決して悪くならぬ、なお続くであろう、上昇するであろう、こういう一つの見通しを発表されております。ところが、その後のいろいろな状況は、そうでもない、特に日本経済は、このために非常な問題を起している。だから、大蔵大臣が来年の予算編成の基本構想を立てます上において、本年度下半期から来年へかけての世界景気の見通しは、本年の予算編成当時のようなものの考え方で見通しを立てておるのか、いかなる見通しを立てておるのか、その見通しによって、国民所得はどう動いていくというのか、大体本年度と国民所得はあまり変りはないというのか。それとも下るというのか、ここらを明確にしていただきたいと思います。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 来年度の世界経済がどうなっていくか、これは容易ならぬ事柄で、なかなか今私が、三十三年度の経済はこうなるぞと言うてみても、これは、おそらく井上さんも、ああそうかというわけにいかぬだろうと思う。それほど実は非常にむずかしい、複雑です。これは私が申すまでもない。三十三年度の世界経済を、国会等でこうだと予言し得る人は、私はよほど勇気といいますか、どう言うか知りませんけれども、これは、よほどの人でないとやれません。やれませんが、しかし大勢的に考えた場合に、世界の経済というものは、たとえば日本の例をとってみると、二十八年のデフレ政策から二十九年に推移していった、ああいうことはありません。いわゆる世界経済は、好景気にだんだん上向いていくという状況は、私は期待できぬと思う。むしろ世界の経済は、どちらかというと下向いておる。そして、個々の国々の経済が、非常に困難を増すと考えておる。言いかえれば、今日の世界の経済が必ずしも悪いとは思わぬですが、ほうっておけば、みなインフレになるおそれがあるような方面が多い。そこで、一生懸命になってみんながインフレにならぬように押えておるところに、非常に景気が悪い、またはいわゆるデフレ政策をとる、こういうところにあるのですから、私は、今言うたように、ごく大観すると、世界の経済は、むしろ二十八、九年に比べれば、ずっと悪くなってきていると考えればよろしい。そうして、国際経済の競争は、ますます激しくなる、こういうふうな想定のもとで考えております。
  119. 井上良二

    ○井上委員 そうしますと、問題は、私はただいまあなたに、明確にここで国際経済の動向について判断を下せというのではなしに、ただ、今お話通り、大体世界経済は下向きになっておる、決して上向きでないということは、言い得られると思うのです。そういう一つの見通しの上に立って、来年度のわが国の予算、わが国の経済というものが考えられるでありましょうが、そこで問題は、ここで大蔵大臣が特に主張いたしております、国際収支の改善の問題ですね。これは、さいぜん横路君も質問をしておりましたが、黒字を約一億ドル見込んでいる、こういう見通しでありますが、そういう、世界経済が悪くなっていくという一つの大ざっぱな見通しを立てておるときに、日本輸出が非常に伸びるということは、私は容易ならぬことじゃないかと思う。そういう現状において黒字が出るという、そういう楽観的なことができ得るでしょうか。もう少し、これは大切なことでありますから、御説明を願いたい。大蔵大臣の、国際収支黒字が出てくるという見通しですね、国際通貨基金から一億二千五百万ドル借りておりますが、それを払わなければなりません。払うた後に、さらにわが国の国際収支黒字が出てくるという、そのおもな要素、こういうものが貿易的にぐんぐん伸びる、輸入はどういうものを削減するという点を、もう少し具体的に御説明願いたい。   〔平岡委員長代理退席委員長着席
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 品種別にどういうものが輸出が伸び、輸入はどういうものを減らすといいますか、減ってくる、そういうことを、今私はここで申し上げる資料を持っておりません。がしかし、ただ私は、今の段階で申し上げたいことは、三十一億五千万ドルというものをかりに日本経済が実現し得ないとすれば、日本経済は、どうしても三十二年度に比べて縮小になる。そうすると、ここに非常な雇用の問題も生じてくる。そこで、三十一億五千万ドルの輸出は、私に言わせれば、絶体絶命というと言葉が悪いかしれぬが、日本としてはぜひとも実現をさせにゃいかぬ。実現のためあらゆる努力を払わなければならぬということであります。従いまして、それがゆえに、予算においてもこれに即応して、きびしいといいますか、できるだけ歳出を抑制いたしまする予算を組まざるを得ない。同時に、民間の一般の消費を節約して、貯蓄に持っていく、こういうふうな態勢を強くとらざるを得ません。そういう態勢ができますれば、そう世界の経済が下向き下向きと言っても、私は、世界の経済がそう悪い状態ではない。ただ、インフレ的な傾向が強いものですから、各国とはいわないが、国際収支の悪い国が相当多くある。従って、やはり国際収支改善の施策を強くとっておりますから、競争は激しくなる、それだけ、今言うたような国内の需要を押えるとともに、輸出振興の策をとる、そうしていけば、最近の輸出の年々の伸びから見まして、三億五千万ドルの増、言いかえれば三十一億五千万ドル年間として輸出が可能でないということは言えない、これはできるだろう。従って、今後の諸施策と国民一般努力いかんにやはりかかる、そういうふうに申し上げるほかありません。従いまして、政府としても、そういうことを可能ならしむる諸施策を今後具体的に、タイミングにとっていく、こういうことが必要であろうと考えております。
  121. 井上良二

    ○井上委員 もう一つ重要な点は、さいぜん横路君が質問をしておりましたように、どうも私どもも、今の財政金融等の情勢、それから世界経済の動向というようなものから判断をしまして、まだ相当時間がありますけれども、来年度の予算というものは、相当緊縮的な予算が組まれねばいかぬという見通しを立てざるを得ない。しかし、実際的な要求は、いろいろな要求が非常に強くなってきておる。そして、また国民所得も、それほど大きく期待はできない。従って、国の歳入源も、そんなに大きく伸びるとは考えられなしという実情のもとにおいて、来年度の予算財政余裕金が相当考えられておるようでありますが、もし余裕金が出た場合は、それはまた次年度に繰り越して今後の経済に備える、こういう考え方で、それはけっこうでありますが、来年度の予算余裕金が出る、相当増収があるという見通しが立てられましょうか、この点についてお伺いいたします。
  122. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、ごく率直に申しましてある程度の余裕金は出ますと思います。同時にまた、できるだけ余裕金を出すような予算の編成を必要といたしておると考えております。
  123. 井上良二

    ○井上委員 そうすると、先ほどの横路君の質問とは、ちょっと違ってきますね。私ども、現実に来年の景気はよくならぬ、どっちかといえば、世界経済は悪くなる、輸出も、そう大きく期待することはできない、国際収支黒字を予想することは、よほど努力しないと無理だ。そういう情勢の中において、国内においての国民所得も、そう大きく上昇するとは考えられない。反対に、国に対する財政需要はどんどん高まっておるんです。さきに横路君があげて参りましたような、のがれることのでき得ない人件費を中心にする予算増が揮えておるわけですね。これは、経営費としてのがれることができないんですよ。だから、そういうものを見積っていきますと、財政的な余裕歳入面で出てくるということは、ちょっと考えられぬじゃないか。もし財政余裕があるというのなら、これらの需要を十分満たしてやることが必要になってくるのではないか。これは、何も余分に新規の要求でも何でもない、人口増や、わが国の経済の発展の度合いに応じて、やむにやまれぬ自然増として、これは起ってくる問題でありますから、これを否定することはできないんですよ。財政当局において、当然その予算規模は、その面ではふえてこなければならぬと思う。それを押えようと思ったって、押え切れないのではないかということになるのですが、そういうものは、大蔵大臣のお考え方では、みな切ってしまう予定ですか。たとえば、教育費の増額の問題、いわゆる児童がどんどんふえてくる、学校を建てなければならぬ、教員もふやさなければならぬ、これは必然の問題です。あるいは社会保障費にしましても、軍人恩給費の増額にいたしましても、これは必然の問題です。そういうものを切るというつもりですか。切るなら、それは財政余裕は出るかもしれぬが、切ることはできないのです。その点は、どうでございますか。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 歳入増の点について景気の情勢から見て、それほどないだろうという御意見、これも、私は御意見として拝聴いたしておきますが、その点は、今後の推移を見ないと何とも申し上げかねますから、これは、意見の相違になりますから、いいとも悪いとも私は申しません。ただ、今お話しのあった当然増といいますか、歳出の当然増、当然それだけは、たとえば学童がふえて教室も要るだろう、先生もふえるというようなもの、これは、私は切るにも切れません。これは、私はやむを得ないといいますか、認めるのが当然だと思っております。ただ、それをもほんとうに当然増になるもの、当然増の範囲を逸脱してはいかぬのですけれども、当然増はこれは認めていく、こういう考え方、決して切ることはいたしません。
  125. 井上良二

    ○井上委員 最後に伺っておきたいのですが、さき大蔵大臣は、横路君の質問に対して、歳入余裕金が生じた場合は、これを減税に充てるということはしない、従って、来年は減税はやらない、はっきりいえば、そう承われるのでありますが、御存じの通り、所得税は、五人家族で本年から年収二十七万円までは免税になる、問題は、年収二十七万円以下の低額所得者、これらの人々は、減税の恩典というものにはほとんどあずかることはできません。減税にならぬ。ただ問題は、御存じの通り、たばこでありますとか、あるいは酒でありますとか、あるいは砂糖でありますとか、こういう生活必需品にかかっておる間接税というものに対して相当政府検討を要する時代がきている、私はこう考えますが、大蔵大臣は、来年は直接税は別として、間接税に対してどんな考え方をお持ちでありますか、この点を伺いたい。
  126. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まだ税をどうするかという点に、今具体的に、私はこう考えておるということを申し上げる段階と考えておりません。なお先ほどの、三十三年度には減税はせぬということをきめているというようなお話ですが、そういうことでもないのです。今は、まだその点に触れないということだけでありまして、とりあえず、余剰が生ずれば、今の段階では、これを景気調整というような形において、実質の歳出に立てずに、保留しておくがよろしい、そうして、経済の今後の推移を見て、さらに考える。ちょうどなんの逆と考えて下さればけっこうと思います。予算を組んだが、その後の経済の景気が非常に悪くなったというので、実行予算を組むことがある、あれのあべこべと考えて、経済の方から今先に悪くなっているのだから、それに対応して予算を組むが、その経済がまたどういうふうに今後推移するか、よく見きわめて考える、こういうふうにお考えを願いたいと思います。
  127. 井上良二

    ○井上委員 最後に、この点だけだめを押しておきたいのですが、大蔵大臣は、本年度じゅうに国際収支が改善されずに、いわゆる投資力というものが相当減却して、金融が正常化されない限りは、財政投融資は、この年度内にはちょっと許すことはできない、これが一つ。それから、金融も、ものによっては、実情に合うような潤滑的な役割を果すようにさすけれども、いわゆる手直し的な金融の緩和は、この際考えてない、こういうことは、明確に御答弁を願ったように思いますが、それで差しつかえありませんか。これは、今後のわが国の経済の動向に非常に重大な問題でありますから、明確にしておきたいと思います。
  128. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のお話は、一にかかって今後の日本経済の推移にありますが、日本経済が今言われたような二点を許すといいますか、たとえば、金融を緩和するのも不適当、そこまで日本経済が安定していない、均衡が回復していないという限りにおいては、手直しとか、金融をゆるめることは考えておりません。
  129. 山本幸一

    山本委員長 大蔵大臣の約束は四時までですが、まだ七、八分ありますので、発言を許します。横錢君。
  130. 横錢重吉

    横錢委員 今、明年度の予算で、減税をしない方針だ、こういうふうに聞かされているのですが、これは、予算の規模の関係からそう考えておるのでありますか。あるいは、税の性質から見て、減税の必要なしと考えておるのですか、この点はどうなんですか。
  131. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、明年度の税のことについて、ほんとに考えておりません。白紙なんです。それは、今の段階では、余剰が生じました場合に、先ほどから繰り返して申しますように、景気調整ため財源としてとっておく、これが一番よろしい。それで、その財源は、何も目的なしにとっておくのではなくて景気の調整にあるのでありますから、今後日本経済の推移によりまして、それをさらに処理していく、こういうふうに考えておるわけであります。
  132. 横錢重吉

    横錢委員 そうしますと、まだ税を減らすとか、あるいはふやすとか、そういうふうなことを考える段階じゃない、まだそこまでいじらずに、予算の規模を考えておるときなのではないか。それが、早くも来年度は減税はしないというようなことを打ち出したということは、今日の税の問題に対して真剣に考えておる者からすると、いかにも尚早な感じで、あるいは税に対する粗雑な考え方を持っておるものだ、こういう印象を与えられる。従って、この点は、税制調査会がどういうような考え方を持っておるのか、あるいは答申を出したのか、この点については聞いておりませんけれども、もっと国会方面でも、あるいはまた国民大多数の要望としても、あらゆる税にわたっての再検討を望んでおるのです。そういうようなことについて一顧も与えずに、来年度は減税はしないのだ、こういうような過酷な考え方大蔵大臣として示されたということは、少し不用意きわまるのじゃないか、こういう感じを持つのです。しからば、この問題については、まだ減税するともしないとも、もう少し構想をまとめてからだ、こういうふうに了承しておっていいのですか。
  133. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、三十三年度の税収がどうなるかもまだ――先ほどから、いや相当あろうという人もあるし、また井上さんのように、そんなことはないぞと言われる方があるように、まだなかなかつかめないのです。ある程度のことは考える、もう少し時間がたったら考える。同時に、日本経済が今後どういうふうに――総合施策を実行して、これに順応してどういうふうに向いていくか、これも考えていかなければならぬ。そういうものがだんだんはっきり起きてくるでしょう。それまでは、初めからいろいろなことをやるのは適当でない、こういうのを見て考えようということであります。
  134. 横錢重吉

    横錢委員 それならば、新聞発表で出された減税しないというような考え方は、まだ固まっていない、減税しないともするとも、どっちにもまだ腹はきめていない、こういうようなことでよろしいのですね。
  135. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 新聞発表については、実は、私も何か新聞に大きな字で出ておりまして、これは、やはりまずいと思いました。これは、減税するならする、せぬならせぬときまったらいいですけれども、そういうものがきまらないうちに国民の前に出ますと、税というものは非常に関心が深いですから、悪い影響を与えるから、かえって困ったなと私も思ったのですが、あれは、新聞に出なかったと同様にお考え下さってけっこうです。
  136. 横路節雄

    ○横路委員 関連。大蔵大臣横錢君に対する答弁と、私に対する答弁とは全く違う。先ほど私から主税局長に聞いて、四、五、六、七の四カ月で大体五百四億と言われた。ですから、最低に見積っても、本年度は一千億の税の自然増収があることは、だれが見ても明らかです。そこで、来年は、今年度の所得税法の改正のときにいろいろ問題になった低額所得者について、当然これは減税すべきだというと、あなたは、そういうものは考えていない。これは、減税しないというとことだ、先ほどは減税しないとおっしゃったのですよ。今度は、どうお考えになったか、横錢君に対するお答えで、減税するともしないとも、これからの情勢を見てやるのだと言われる。あなたは、外部的に発表した場合の影響もいろいろ考慮されて、言い直されたのではないかと思いますが、先ほどあなたは、私に減税しないと言った。それを、今になって、あれから一時間もたたないのに、おかしいですよ。その点はどうなんです。減税するならするでいいんですよ、することを国民は期待しているんだから。いかがです。
  137. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、おそらく言葉の取り方ではありませんか。考えていない――私は先ほどから、触れていないといったように思いますが、要するに、考えるとかせぬとかいうのではない。そのことは考えていないということですから、もしもそういうふうにおとりになれば、私は、今ここで、修正をします。それは、言葉の争いと申しますか、私は、そういう意味ではないということをはっきり言っておきますから、あなたもさよう御了承願います。
  138. 横路節雄

    ○横路委員 それならば、今あらためて訂正する、こういうのであれば、私もすなおに聞きますが、先ほどは、減税しますかと聞いたら、減税はしないとはっきり言った。それは、影響なかなか甚大だと思っておった。それを、今横錢君の質問に対して、それは訂正しますと言われる。それでは、あらためてお聞きしますが、減税については考慮しているわけですか。現に大蔵大臣、あなたは御承知だと思うが、この十一月一日からの臨時国会に、あなたの方では、輸出振興に関するいわゆる税の軽減についてお出しになるのでしょう。政府の方では、今度の臨時国会に出すわずか二つか三つの案件の中の一つだと言っている。そこで、今年はやらなかったのですからなんですけれども、来年度は、低額所得者に対する税の軽減についてはもっとやるべきだ、だから、そういう意味で、あなたは減税について考慮さるべきでないか、こう言ったんですが、ここでもう一ぺん考慮しましょうならしましょうと、こういうふうに言ってもらいたい。どちらにでも受け取れるような答えは、それは、そういうことでなしに、一つお互いに大蔵委員会は所管の委員会なんですから、はっきりとその点については考慮をしますとか、そういうものは考慮をできないとか、言った方がやっぱりいいですね。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや、私は、ほんとうに内輪のつもりで申しておるので、ほんとう言って今そういうことをはっきり言えるときでないのです。まだ言えない、それだけなんです。だから、今は触れていない、こういうことなんです。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと関連して。大臣、それは抽象的な言葉を言われるけれども、ここ二、三回の大蔵委員会を通じて、あるいは政府と野党との間を通じて、大臣が税に関して言われたことは、もう二、三にとどまらぬのですよ。臨時国会では、輸出振興の税法改正案を出す、これが第一に公式に言われておる。それから第二番目に一言われてれるのは、先般の大蔵委員会で、大蔵委員会の決講は尊重する。これは、間接税の問題をやると言われたことですよ。第三番目に、今あなたは、横路さんの質問に答えて、低額所得者の減税はしない、こう言われる。だから、あなたが抽象的にあちらから言われ、こちらから言われているんだけれども、あなたの構想というものは、ある程度明らかになってきたわけなんです。しかしながら、こっちを答え、あっちを答えでなくして、そういう骨格が一つ一つできておるなら、この辺で、あなたも税に対する全体的な構想というものを明らかにさるべき段階に私はあると思うのです。なるほどあなたは、調査会に諮問をしておられる。しかし、その調査会は何をしているかというと、相続税だけやっているんじゃありませんか。最近において、この間の大蔵委員会の質問及び回答にこたえて、間接税をおやりになるというような話です。従って、調査会は税全般の構想をやっていないのですよ。だから、大蔵大臣が今税全般の構想を答えるべき客観的、主観的妥当性があるのです。あなたが今答えられないというはずはない。これらの経過をたどって、率直明快に、新年度の税についてのあなたの構想を答えるべきなんです。今私は何も考えておらぬとか、きまっておらぬとか、そういう逃げ口上は、私は許されぬと思うのです。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今税全体について構想を述べ得る時期でない、こういうふうに考える。これから先はあるとお考えになっても、これはもう議論になりまして、尽きませんね。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 議論になっていけませんというのですけれども、(「尽きませんだよ」と呼ぶ者あり)当大蔵委員会で、質疑応答をするのであるけれども、ここで与党の意見を聞き、野党の意見を聞き、大臣がそれに答えて、みずからの意見を明らかにし、そうして質疑応答で意見を開陳して、国政をやるべきところなんです。意見の相違なりと言うて答えぬとか、そういうようなことは、大臣として軽々しく言葉にする立場ではないと思うのです。関連でありますから、簡単にいたします。けれども、あなたにお伺いをしたいのは、大体一萬田さんは、税についての答弁は親切でない、常にそうですよ。それは、あなたは経歴が日銀から出ていらっしゃるから、あるいは税についての御経験がないからだとお察し申し上げるのですけれども大臣としての構想というものは、お持ちになければならぬ。だから、政策的減税中心に、貯蓄減税ですか、住宅減税ですか、あるいはそれが進んで職場減税ですか、その方向をあなたは見ておられるようだが、それは、新聞にも何回も何回も出ている。今あなたが、わしはそんなことは考えておらぬとか、知らぬとかいうことは、国会を軽視する格好になるのであります。ですから、私どもは、まず第一に政策的減税よりも、本質的な減税についてお考えを願われた方がいいのではないか、こういう野党の立場なんです。  第二番目に、野党の立場は、低額所得者の減税をやったらどうか。この前のは高額所得者だ、低額所得者の減税をしたらどうか。こういう意見を出しておる。それをあなたは、意見の相違だということではいけませんぞ。私どもは、納税者の代表であり、国民の代表として言っておるのであります。われわれを通じて、国民及び納税者が納得するような政府立場というものを、明らかになさる必要があるのです。それを、あなたは親切に言わなければだめですよ。意見の相違だとか、言うべき段階ではないとか、そういうことではいけない。重ねてあなたの答弁を要求します。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の、私が税について不得手というお話、これはつつしんで承わっておきまして、いろいろとお教えを受けて、今後勉強いたします。これだけは申しておきます。ただ、同時に大蔵大臣という大きな責任を持っておりまして、そう何でもかんでも無責任には言えない。自分の言うたことについては、十分な責任をとらなければならぬ。従って、やはりただ議論をすればいい、何でも言えばいいというわけにいかないので、言い得ない時期があることを、どうぞ御了承をいただきたい。
  144. 山本幸一

    山本委員長 はなはだ恐縮ですが、約束の時間が過ぎておりますから、簡単にお願いしたいと思います。平岡君。
  145. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 税金のことは、大蔵大臣はあまり得手でないということなんで、私の質問は、金融の問題につきまして少しお伺いしたいのです。  大臣は、近くIMFの総会に出られますが、日本の為替市場といったらおかしいですが、わが国には、パックドァー・エクスチェンジ・レートがあります。三百六十円、一ドルではございません。これは現実の問題であります。今回のIMFでは、IMFのきめているところの各国の通貨の対米ドル比価、これが一応問題になりそうなんです。たとえば、フランスのフランがもう少し低くきめられるとか、あるいは西独のマルクが強過ぎるから、これを引き上げる可能性があるとか、そういう議論がなされております。そこで、日本の円につきましても、そうした基準が変るというような見通しとか、情報とかがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  146. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私は、御質問の点については、何も見通しを持っておりません。今度はアメリカに行って、ヨーロッパ諸国の方々ともいろいろと面談する機会も持ちまして、そういう方面についての自分の知識を広くしてきたい、かように考えております。
  147. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、ちょっと方面を変えますが、近ごろ、あなたがある週刊誌に、昔の財政問題につきまして御発表になっておるのを読みました。それであなたは、ドイツのシヤハトに敬服をされた、こういうことも承知いたしました。私どもは今回のヨーロッパの旅行におきまして、七月の四日に、当のシヤハトと大論争をしておるウイルヘルム・フォッケ、つまりドイツ連邦銀行総裁に会って参りました。シヤハトのことはひとまずおきますが、ウイルヘルム・フォッケに対しまして、私どもは四点ほどの質問を提示いたしましたが、ここでは、関連のある一点だけの質問の要旨を申し上げ、フォッケの答えを、御参考までにあなたに聞いてもらって、それから、あらためてちょっと質問をしたいと思うのです。  まずウィルヘルム・フォッケに聞きましたことの一点は、各国につきまして、財政金融一体論の立場で行くところと、財政と全史は別個だというところと、二つのカテゴリーがあり、日本の場合は、大体前者のカテゴリーに入ると思うのです。後者の典型的なのがドイツなのです。そこで、これのよしあしについて講評せられたい、こういう質問を発しました。ところで、あなた方の閣議によるきのうの決定は、三十三年度の予算については、その第一の目標を、国際収支の改善に置くということ、このために、財政金融の総合的運営によってこれを達成する、国内需要等を押えて輸出の伸張をはかる、こういうふうにきめております。財政金融の総合的運営によりということですから、これは池田さん同様に、やはり財政金融一体論の日本の伝統的立場は、このままに置いておくという印象を受けます。ところがドイツの場合におきましては、財政金融はおのずから別個の使命があるのだという所信に立って、金融当局であるウィルヘルム・フォッケは、対照的にこれを運営して参っているのです。それで私どもが先ほどの質問を呈しますと、彼はこう答えました。ドイツは、一九四八年に貨幣改革をやった、そのときにマルクを十分の一に引き下げた、(ただしこれは不動産はそのままでした。)そのときに、ドイツの十一州の各州に州の中央銀行を置いて、それを統轄するために、フランクフルトのもとのライヒス・バンクのところにバンク・ドイッチャーレンダー(BDL)、すなわち連邦銀行を置きまして、自分がその総裁になった、私自身は、第一次世界大戦後におけるドイツのマルクの大下落の経験に徴して、まず何よりもドイツのマルク価値維持を至上命令と考えた、そこで、こういう立場から見ますと、各政党が政権を担当して、その政党の政策、綱領による施策を行うため、当然予算を立て、財政軍営もいたしますと、政党がやる限りにおいては、大体において、この財政運営は膨脹的傾向をとることは間違いないのだ、つまり選挙民に迎合するとは言わぬまでも、どうしても財政は拡充し、膨脹しがちなものである、これが通貨の価値を下げる、ところが先ほど申す通り、ドイツのマルクの価値維持こそ一番大切な国家的な使命である、いわばそれは恒久的な一つの使命であり、課題であるのだ、そういう永久的な通貨価値維持に対して、テンポラリーな、オケージョナルな政府財政政策の影響はやはり受けきせることはよくない、そういう意味で、財政金融は全然別個な建前に立って、チェック・アンド・バランスの建前を貫くべきだと思っておる、だから、そういう方策を九カ年やってきて、ドイツは幸いにして成功した、ですから、私に関する限りは、なお財政金融一体論はとらざるところで、別個な立場においてこれを運営するという方策を貫く、こういう回答です。これは日本の場合と対照的な見識であるし、その成果というものは、これは、御承知の通りドイツ側に上っているような気がするのです。そうしますと、今回、政府が三十三年度におきまして大いに意気込んで輸出を増加し、日本国際収支のバランスの改善を進めると言っていますが、こうした目的は、財政金融を根本的に制度上区別するよう、これを改めることなしには、どうも本物にならぬような気がするのです。こういう点から、私どもがわずかにあなた方に希望をつなぐ点は、項目のうちの、節減によって生ずる財源余裕は景気の調整の財源に充てるという項目なんです。しかし、このことも単なる円資金だけの問題では意味が薄いのです。日本経済の場合において言えば、貿易に依存する程度が非常に大きいのですから、保有外貨の問題と国内の円の問題は、円貨の価値維持という点からいけば、これはもう密接不可離な立場に立っております。こういう点から、余裕金を景気調整財源とするという問題につきましても、たとえて言いますならば、今まで円の管理は日銀かやっておる、ところが外貨については、運営は日銀にやらしているけれども、所管事項としては政府が握っておる、こういう点に相当問題もあろうと思うのです。もし制度的な是正を考えるならば、こうした点で、円貨と保有外貨と密着させる一つ制度ということも当然考えられてこなければならぬ。ここまで踏み込まなければ、本物にならぬと思うのです。どうも三十一億五千万ドルという輸出を漫然期待しているというのは、ばかに楽観的のように私どもには思われます。財政金融の分割、こういう点が制度的にもっときびしくならなければ、余裕金の景気変動調節も有効には行われず、日本国際収支の建て直しはむずかしいと思うのです。こういう点につきまして、御所見をお伺いしたいのであります。
  148. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 簡単にお答えしますが、原則として、外貨はむろん相当の蓄積量ということも考えなければなりますまいが、円資金を日本銀行に持たせて、そうして円で一元化する。たとえば外貨をほしい人は、常に円を持ってきて日本銀行から買い取る。日本銀行はそれだけ円が収縮する、通貨が収縮する、発行高が収縮する、そういうふうに持っていくのが一番いいと思うのです。しかし、従来それにもかかわらず外為会計を政府が持っておりましたのは、これは、為替管理という点が非常に強くて、外貨が非常に貴重で、予算も編成しなければならぬ、外貨予算も組まなければならぬ、これは通産行政とも非常に密接な関係を持っておるというような関係から、為替管理というところが強く出ている結果、ああいう形になっていると心得ているのでありまして、従来でも、外貨が相当たまったのに応じまして、私が日本銀行におったときもあったと思いますが、徐々に日本銀行に外貨を売ってあげる、日本銀行の保有に持っていく、こういう方向はとっておった。ただ、これが今回なくなったからまた日本銀行から買い戻した、こういうことになっておる次第であります。
  149. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと、景気調整財源余裕金を使うということは、ぼんやりそういう打ち出し方だけですと、他の財政需要に食われてなくなってしまうと思うのです。ですから、これを制度化するお考えがあるかどうかということです。たとえば、景気調整の特別会計というようなものを設けまして、これの支出対象は必ずインベントリーだけに限定する。たとえば外為証券とか米穀証券とか、そうしたインベントリー・ファイナンスだけにそれを使っていく、こういうようなことを制度的に確立せぬ限りは、財政需要に食われるということは間違いないと思うのです。こういう点は、あなたが閣議で、余裕金を景気調整財源にするということを打ち出したのだから、これを竿頭一歩を進めまして、制度化する必要があると思うのでありますが、この点につきましての御構想がありましたら、お示しいただきたいと思います。
  150. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、今後の歳入歳出の関係で、常に歳入が超過になるような形に考えられるかどうか。制度化する以上は、恒久的、合理的にそういうことがなし得るのだというのでないといかぬと思います。しかし、まあ検討してみたいと思います。
  151. 山本幸一

    山本委員長 春日君から強い要望がありますが、ほんのわずかな時間でおやり願いたいと思います。なお、こまかい点は、法務省が来ておりますから、大蔵大臣のみについて先におやり願いたいと思います。春日一幸君。
  152. 春日一幸

    ○春日委員 それでは利息制限法に関係いたしまして、法務省、政府の見解をお伺いいたしまして、これに対する大蔵当局対策について御要望いたしたいと思うわけであります。と申しますのは、最近金融引き締め政策が強行されたことによりまして、結局金融機関の資金量が減ってきた。しかも、そのしわが中小企業に寄ってくる、そこで、中小企業者が町の金融機関からだいぶん借金をしてきているわけなんです。またもや町の金融機関が頭を持ち上げてきて、中小企業者が一生県命に金をもうけても、みなそちらに吸われてしまう。あるいは今回三百五十億の特別措置を講ぜられたけれども、その政府の血のにじむような政策資金すら、結局そちらの方面の金利に食われていってしまっておる傾向が非常に強いわけであります。それで、私が法務省にお伺いいたしたいのは、この利息制限法によりますと、すなわち金銭を目的とする消費貸借の利息、これは元本十万円未満の場合は、年二割をこえては無効である、十万以上百万未満の場合は年一割八分、それから百万をこえた場合は、年一割五分をこえたものについては無効であるといっておるわけであります。私がざっくばらんにお伺いをいたしたいのは、かりにこういうような高利貸し、あるいは町の金融機関から、こういう法定利息の割合をこえて契約をして金を借りている者が金を返さない、そうした場合に、債権者は支払い命令だとか、あるいは抵当権の執行だとか、こういうことをすることができるかどうか、この点を一つまずもってお伺いをいたしたいと存ずるのであります。
  153. 吉田昂

    ○吉田説明員 利息制限法の第一条に定める利息をこえる利息の約定をいたしましても、その部分は無効でありますから、もちろん支払い命令によって強制執行するというようなことはできないことになるのであります。
  154. 春日一幸

    ○春日委員 大体町の金融機関から実際借りるときは、二分、三分、多いときは五分、六分の金利になっておりますが、どういう契約が結んであっても、抵当権が設定してあっても、これは法律に基いて、わしはそんな利子は払わぬのだ、こういうことで突っぱっても、結局貸した方は、支払い命令をかけたり、抵当権物件を処分する、そういうことはできないことになっておると理解いたしまして差しつかえありませんか。
  155. 吉田昂

    ○吉田説明員 その通りであります。
  156. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、私は政府責任者としての大蔵大臣に御要望申し上げたいのでありますが、実は、町の諸君は、この法律が存在していることをよく知らないので、さればこそ、中小企業者諸君が、血のにじむような金を高利貸しに全く吸い上げられておる。今回、特に本委員会と政府との間の話し合いがまとまって、こういう金融き締めの折柄逆行するような措置、三百五十億円という金を中小企業に特に出しておるわけなんでございます。この出した金が、実際町においては、中小企業者がこれを高利貸しに返したり、利息に払ったりしておるわけなんです。そうすれば、せっかくの政府の施策も、これでは中小企業者のためというよりも、やはり現実には、そういうような高利貸しの結局えじきにされてしまっておる。国の施策は、本来の目的を達していないわけであります。全国の財務局なり適当な末端機関を通じて、中小企業者がそういうような不当に高い金利で借りておるような場合、そんなものは払わぬでいいのだ、こういうことを明確にして、そうして周知徹底させて、せっかく三百五十億の金を、こうやって一般的に引き締めなければならぬときにことさらに支出を認めて出しておるのだから、その金が、ほんとうに企業経営の健全な栄養として活用できるような、一つの指導的な措置を講ぜられる必要があると思うが、この点、いかがでありますか。
  157. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小企業の金融がうまくいくように、あらゆる措置をここにとっておるのですが、なお一そうとることにいたします。しかし、これはしょせん金融ですから、一般的に言っても、なかなかうまくいきませんので、各地方銀行に、あるいはその他の中小企業専門の金融機関によく指令をいたしまして、特にめんどうをよく見るように言っておるわけであります。これは、個々の地方々々の状況も違いますし、個々の場合に当って見ていくという以外に、ちょっとしようがないのではないかと思っております。何か春日さんのところで非常に名案でもありますれば、お教え願いたいと思います。
  158. 春日一幸

    ○春日委員 いや、私の言ったのとちょっと食い違っているのです。私の申し上げたのは、中小企業者は、銀行からなかなか金を借りがたいので、町の金融機関から借りておる。その金は、大体において安いもので三分、あるいは普通には五分からまたもや六分になろうとしておる。そういう金を、中小企業者は高利貸しからたくさん借りているわけです。ところが、今この利息制限法によると、こういう法定利息をこえての分の契約は、無効であるということが明確になってきておる。そこで、政府は中小企業の金融梗塞を打開するために、先般三百五十億の特別措置を講じましたね。講じたけれども、現実にその金が高利貸しの方へ流れていっておる、高利貸しの方へ扱い取られていっているのです。借りやすく借りた方へそれを返済するとか、利息に充てられて、政府から中小企業に貸した金が、企業のための栄養として完全に生きて活用されていない。この現実の事態にかんがみて、大蔵省は、末端行政機関を通じて、法定利息以上の高利貸しから借りておる利息については、そんな金利は払わぬでも差し押えされる心配もないし、抵当権を競売される心配もない、こういうことを明確にして、さきに出した三百五十億なるものが企業経営の健全なる運転資金、あるいは企業資金として活用できるように、そういう周知徹底をしてもらう御意思はないか、何らかの特別措置を講ずるの意思はないか、それを、要望しがてら、あなたの御意思を伺っておるのです。
  159. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 わかりました。一つの点は、やはり先ほど答弁したように、大蔵省としては、中小企業がそういう高利貸しに借らぬでも済むように、なるべく正規の金融機関から中小企業が金を借りられるようにしてあげるということが、私はまず第一に大切だと思います。それをまずしてあげたいと考えております。  もう一つ、今のお話は、高利貸しが貸した金の法律上から見ての処理のようですが、これは法律問題もありまして、いろいろと考えてみなくちゃならぬ点もあるかもしれません。そういう点についても、大蔵省で何かした方がいいという研究の議が成りますれば、大蔵省としてすることもやぶさかでありません。できるだけいたします。
  160. 春日一幸

    ○春日委員 了解。
  161. 山本幸一

    山本委員長 それでは大蔵大臣どうぞ。大変時間が過ぎて……。
  162. 春日一幸

    ○春日委員 それでは法務省にお伺いしますが、抵当権の執行の法的措置はできると思うのだが、結局問題は、その債務者が異議を申し立てれば、その異議の申し立ては、法律に違反する契約は全部無効という立場で、結局その異議の申し立てが成立する、こういうことになるのでありますか、その点をまず御答弁願います。
  163. 吉田昂

    ○吉田説明員 抵当権をつけますときに、抵当権の登記をするわけでございますが、利息制限法違反の利息の約定文のついている抵当権については、登記を受け付けておらない。従って利息制限法に違反した利息について、抵当権を執行するということはあり得ないのであります。
  164. 春日一幸

    ○春日委員 わかりました。支払い命令の場合も無効でありますね。それから、これは年利率二割とありますが、これはどういうことになりましょうか。たとえば一年一カ月の場合、これを二年とみなす形になるのでありますか。たとえば一カ月の場合でも、二割、一年以内という工合に見るべきか。あるいは、これを月に割りますれば一分七厘五毛になるのだが、これは一体どういうことになるのですか。一年以内、一日でも二割という工合にみなすことができますかどうか、この点を明らかにしてもらいたい。
  165. 吉田昂

    ○吉田説明員 この年二割というのは、割合を示すのであります。ですから一日についてでも、年に直して二割になりますれば、その二割の範囲内では有効、それをこえるものは無効ということになります。
  166. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、年二割ということは、月一分七厘五毛と読み変えて差しつかえありませんか。
  167. 吉田昂

    ○吉田説明員 二割の十二分の一になるわけであります。
  168. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、それぞれこれを月に割った額。かりに借りたのが月当りの契約になっておりますれば、これを、そのまま十二で割ったものが月の利息になってくる。すなわち一年以内ということとは全然別個のもの、こういう工合に理解して差しつかえありませんね。
  169. 吉田昂

    ○吉田説明員 はい、けっこうです。     ―――――――――――――
  170. 山本幸一

    山本委員長 農林大臣は、今農林委員会でまだ二、三人がすばっておるらしいので、とても予定の時間では来そうもない。そこで、農林大臣以外の人に御質問願いたいと思います。横路節雄君。
  171. 横路節雄

    ○横路委員 農林省の畜産局長にお尋ねをしたいのですが、それは、六月十日に当大蔵委員会で、大カン練乳の砂糖の免税について、乳価安定対策ができるまでこれは免税すべきである、こういうことに決議をしたのですが、その後大蔵当局では、これを七、八、九と三カ月だけ免税の措置を延長いたしまして、いよいよ来月一日から税金を取るわけです。大体年の収入がそのために十五億くらいになるであろうと思われます。そこで、農林当局としてもいろいろ乳価安定の対策検討されておると思うので、この際、一体どういうような内容で乳価安定の対策を一応おきめになっておるか。なお、この問題は前に主税局長の方から、取るものは取る、出すものは出すというようなお話もありましたから、どういうような予算の裏づけもあるのか、あわせて、これはあと主計局長並びに主税局長の方にもお尋ねをしたいと思いますので、とりあえず畜産局長の方から――来月の一日というと間がございませんし、全国の酪農民が非常に心配をしておりますので、どんなようになっておるか、一つ具体的にお話をしていただきたい。
  172. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 私たちの方といたしましては、案を立てまして、現在大蔵省の方に御協議をいたしておる段階でございますが、来年度以降におきましての対策というようなことも考えの中に入れて参りませんと、この十月以降撤廃されましたあとにおきまする状況、つまり暫定的な状況に対します対策も十分に立ちにくいと思いまして、来年度からの対策も含めまして、大蔵当局と御相談をいたしておるような情況でございます。  それで、どういうような対策かということでございますが、第一点には、現在の牛乳等の取引におきまして、基本的には、生産者と乳業者との間の取引の形を確実なものにしていくということが基本的な問題であろうと存じまして、そういう生乳取引の公正なやり方ができるような方途を講じて参りたい。従来からやっておりましたけれども、生産者団体等の共販的なやり方、あるいは団体協約というようなことを推進して参りたい。あるいは契約の安定した――長期と申しましても、せいぜい一年だと思いますが、安定した、ある程度長い期間におきまする取引契約を結ばせまして、価格でありますとか、数量におきましても、現在のように一カ月ごとに価格改訂をやっておりますような状況ではなくて、ある程度の安定を持ちましたものを文書契約等の方式で確実にやらせるようにいたしたい。   〔委員長退席横錢委員長代理着席〕 要するに生乳取引の公正なやり方というところに、まず重点を置いていく必要があろうと考えております。さようにいたしまして、そういう問題と並行いたしまして、実際問題といたしましては、それぞれの乳業者の資金繰り、あるいは団体協約、共販等の約束をいたしました乳代等の取引におきまして、乳代の遅延というような周題が起きる可能性が間々ございまして、そのために、政府あるいは乳業者、生産者団体等の出資をいたしました一つの信用保証のための基金制度を新しく作っていったらいかがであろうか、こういうような考え方を持っております。  さらに需給調整から考えまして、あるいはまた恒常的な消費の拡大をいたす上において必要な措置といたしまして、さらにまた学童等の体位の問題等を考えまして、一部を学校給食等の方に回しまして、ミルクを飲ましていく形をとって、それに対して国が助成する措置がとれないか、こういうようなものの考え方をいたしまして――もちろんそれに付随いたしまして、金融面な措置でありますとか、あるいはそれぞれの段階におきまする必要な措置でありますとかいうようなこと、さらには生産費の切り下げをいたし、あるいは末端の消費価格をできるだけ安くいたしまして、販路を拡大する必要のためのコスト低減等の努力は、別途いたさなければなりませんが、当面以上申し述べましたような点につきまして、大体の対策を立てまして、またそれに結ぶ方法として、現在の状況における緊急的な対策として、予備金支出等の方法でそれまでの対策を講ずる、こういうような考え方で、現在大蔵当局と御協議申し上げておる、かような段階でございます。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 農林省としては、今あなたからお話しのようなことで乳価の安定対策を講ずるのだと言うが、その場合に、たとえば来年度なら来年度、年間の乳量をどの程度と見るか、今年なら今年どの程度と見るか、その中で、たとえば一般の市乳に出しておる、あるいはバターだ、チーズだ、こうやっていながら、実際に過剰生産ということはないわけなんですが、一生懸命政府でも奨励しておるわけでありますけれども、実際には滞貨してきてさばけない。だから、大体年間どれくらいのものを、今あなたがお話していたようないわゆる学童給食だとか、そういう方向でやれば、大体政府考えている酪農振興という問題のその生産と、それが消費されるものとがちょうどバランスがとれるようになると考えているのか。だから、年間どの程度のものは、あなたの方で今お話しになっている学童の給食だとか、そういうことでやろうという数量、ことしならことしの生産はどんなように見通しをしているか、それが、過剰生産というと言葉が悪いが、どうしても消化できない、こういうふうに考えているのか、まずその点の見通しはどうなんですか。
  174. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 牛乳の生産と消費は、両方とも相当スピードのある伸び方をいたしておりますが、大体均衡を保ってやってきておると考えております。ただ、昨年の秋の終りくらいからことしずっとにかけまして、生産が急速に伸びてきて、対前年比約二割くらいの増産が見えておるわけでありますが、それに対しましての消費の方の伸びが、相当伸びてはおりますが、市乳の伸びが、それに相対応するだけにいっておりません。従いまして、ミルクの買付を断わるわけに参りませんから、残余のものは、乳製品という形になって残るわけであります。この数年来、大体乳製品のそれぞれの年々におきまする通常な在貨量は、年によってもちろん在貨量は違うわけでございますが、乳製品の一カ半くらいのものが、大体通常の在庫というふうに考えられます。ことしの見面しは、それが二カ月半くらい、この暦年末におきまして在貨があるのではないか、かように考えておるわけであります。従いまして、これが二十九年当時の状況と比較いたしますと、やはりこの一カ月分くらいのところが、通常の状況におけるよりも異常なものとして残っている、かように考えております。これをどういうようにさばいていくか、またことしの滞貨といいますか、そういうものの状況は、来年消費の非常な拡大をいたしましても、来年にも影響があると思います。さように考えられますので、大体そこらのところをめどとして、あとは実行上可能な程度の数字というところの見通しを立てて、大蔵当局と御折衝する、こういうことに相なるものと思います。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、ただいまのお話で、例年でもなべて一月半分くらいの乳製品は滞貨しているのだ、ところがことしになって、それが二月半分ぐらい滞貨しておる、そういうことになりますと、その一月分を何とか消化できるような方向について考慮したい、こういうわけですか。
  176. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 もちろん、これはそこまでいけばけっこうでありますが、あとの製品のさばけ工合、あるいはその他の対策の実行がどの程度可能であるか。たとえば学校給食一つ考えました場合に、それがどの程度やれるかと申しました場合、実行いたします際に、やはり実行可能であるかどうかという意味の制限がございます。準備期間その他もございます。あるいは乳製品をそれぞれさばくにいたしましても、さばき方の問題といたしまして、ある程度の限度があろうかと思います。従いまして、一カ月の余剰分を全部対策ができればけっこうでございますが、そのものをある程度可能にするくらいの程度のものが必要ではないか。具体的に申しますれば、一カ月の滞貨量というのは、大体三十六、七万石の原乳になると思います。三十六、七万石のものを全部やれればけっこうでありますが、必ずしも全部やれなくとも、この中の相当数のものが何らかのさばき方をすれば、そうしてまたあとあと対策に対します一つの安心感というものがございますれば、何とかこなしていけるのではないか、かような考え方で進んでおります。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 本年度の見通しは、年間大体七百万石ぐらいですか。一月分ということになると、約五十八万石ぐらいですか。この点は、今の三十五万石の点とはちょっと数量が違うようなんですが、その点はどうですか。
  178. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 生産量の約一割は、農家の返還いたします小牛の生産用のために使われます。あと普通の場合、四六、七%ぐらいのものが市乳に使われます。残りが乳製品という格好に相なるわけであります。本年度の状況は、少しそれが変っておりますが、そういうことで、今の乳製品の大体一カ月分くらいの数字が出る、こういうことであります。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 これは、乳価を安定させる対策である、そこで、大体農林省の方としては、今の農家経済という点から考えて、それは地域別にいろいろあろうかと思うが、一升どれくらいでやれば、いわゆる酪農家としては一応農業経営が成り立つのだというようにお考えになっておりますか、いわゆる安定価格というものは……。
  180. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 これは、御存じの通り全国各方面で数多くの農家が営農をいたしております。従いまして、どの程度のところにやるかという意味の各農家におきます生産費と申しますか、これは実は非常にバラエティがございます。私たちの方で数年来続けております農家の生産調査等では、大体五十三円ぐらいの数字が出ているのでありますが、これは、調査いたします農家の数もごく少いので、もっとそれを拡大しに形で調査をする必要があると思いまして、今年度からは、実は相当拡大した調査の方針を立ててやってきておるわけであります。たとえば東京近くの乳価でありますと、やはり現在六十六円とか五十五円とかいうことを言っておるわけでありますが、それに見合う生産をいたしておりますし、北海道のごとき場合でありますと、もっと安い価格で十分農家が経営しておる。こういうようなことで、どうも一本の価格というような形では、今のところつかまえられない状況でございます。ただし、従来の実績等から推定する方法は、これはまた一つあろうかと思いますけれども、ただ、それが適正であるかどうかという判定につきましては、まだまだ検討の余地を残している。こういうような状況で、この価格でいいという価格を現在的確に示すのには、まだ私達自信がないのであります。
  181. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど局長からお話がありましたように、実際に今農家が不安定だというのは、非常に短期の間の乳価の契約で、それから数量等についても非常に不安定である。とりわけ一番問題なのは価格である。そこで、今あなたの方で、たとえば生産者と乳業者との間に取引をする、しかも、それは団体協約で、長期にわたって安定した取引契約、その場合に、価格、数量等について公正妥当を期したいのだ、こう言う。その場合に、やはり乳価というものが一応どんな基準かということを、農林省自体としてお考えになっておかないと、農民の方が安心して契約できる長期安定の価格というものは、それは当然生産者と乳業者との間に自主的にきめればいいということになりますが、しかし、それぞれの地域は、そこへ売らなければならぬ。それが急によそへ回すといっても、そう急に簡単に回せないのですから、この点は、一つ農林当局では、今発表ができなければ、十分検討しておいてもらわなければ、農林省の施策としてはちょっとまずいのではないか、こういうように私は思うわけです。  その次に、いわゆる生産価格をできるだけ下げるようにしたい、それは非常にけっこうだと思うのです。その場合に、飼料の価格の問題等もあるのですが、今畜産当局では、飼料の問題等は一体どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  182. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 えさの問題は、非常に重要な問題と考えておりますが、まず私たち考えております問題といたしましては、えさの自給体制というものを強く推進して参りたい、こういう考え方を持っております。その地帯によって違うと思いますけれども、やはりまだ相当自給飼料の面におきまして、改善の余地もございますし、また相当なスピードで、農村の内部にそれの改善の施策が浸透してきております。でありますから、何と言いましても自給飼料の体制を確保するということが、えさ政策の根本であろうと考えております。そういうことによりまして、現在間々起きておりますところの栄養障害でありますとか、不受胎の現象は、購入飼料等の過当な使用という観点から起きますので、そういうものを直していく。また生産費の低減のためにもそれを進めていく、かように考えております。しかし、もちろんこの購入いたしますえさの問題は、何といっても非常に敏感に響くと思います。これは、現在私たちの方では、飼料需給安定法という法律の運用によりまして、不足いたしますところのえさを海外から輸入いたしまして、それでもって国内の飼料価格の高騰を冷やして参る、こういうような方式をとっておるような状況でございます。
  183. 横路節雄

    ○横路委員 今あなたから、これは新しい考え方だと思うのですが、ちょうど中小企業に対して各都道府県に信用保証協会があるように、生産者、酪農民並びにそれを取り扱う中小メーカーが主体になるのだろうと思うのだが、乳業者に対して酪農振興基金という形で政府も出資する、農民並びに業者も出資する。この場合には、大体どれくらいの規模でおやりになるというのか、それを一つ。ただ作りますと言うても、どれくらいの規模になるものか。作れば当然――都道府県の信用保証協会の場合でも、それの何倍とかいうものについては貸し出しするようになっている。それは、一体どんなような程度のことを考えていらっしゃるのか、ちょっとお尋ねしたい。
  184. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 その点は、実は今大蔵省の御当局と協議をいたしております重要ポイントの随一のところぐらいに入っておる点でありまして、どの程度のワクでそれをでかし上げるか、それを実は毎日折衝、御協議をいたしておる次第でございますが、私たちの方としましては、大体政府の出資は三分の二ぐらい持って参りたいというような考え方で進んでおります。全体のワク等の問題は、まだ折衝中でございますので、どうも明言しにくいのでありますが、相当なものをやっていただきたい、私たちの方の案といたしましては八億はいただきたい、こういうような考えであります。しかし、これは私たちの方の案で、これから大蔵御当局といろいろ御協議をしてきめなければならぬわけであります。
  185. 横路節雄

    ○横路委員 私が主計局長にお残りをいだだきましたのは、やはりあなたがおらないと、ただ畜産局長から希望の案だけを述べられても、委員会としては、やはり税の問題等の関係がありますので、困るわけです。今お話しの酪農振興基金といいますか、ちょうど都道府県で中小企業を対象にした保証協会と同じ制度だろうと思うですが、八億ということになりますと、政府の方が三分の二ですから、約六億近い。それから生産者並びに業界の諸君の方は約二億だろうと思います。大体この程度のことは、予算上の措置としては、そうめんどうなことではないでしょうが、その点はどうでしょう。
  186. 石原周夫

    ○石原説明員 ただいま畜産局長からお答えを申し上げましたように、私どもの方は、今畜産局の考ておられます新しい案につきまして、検討いたしておるところであります。かつては、とりあえずの措置と恒久的な措置とを分けたらどうかという考え方があったのでありますが、畜産局長が申されましたように、今度は一本の案でもってこられました。私ども今それを聞きまして、今おっしゃいます基金の額にいたしましても、全体に必要な金額がどういうふうに回るんだというような点の検討をいたしておりますし、果してそういう方法が最も適切な方法であろうかということも、当然問題になりますので、そういう点の検討もいたしておるところでございまして、その検討を待ちまして結論を出したいと思います。
  187. 横路節雄

    ○横路委員 しかし、これは実際に十月一日から税金をとるわけですよ。検討といっても、きょう十一日ですから、あと二十日足らずなんです。検討に時間がかかって、なかなか容易でないと思うのですが、畜産局長、あなたの方では、乳価安定対策としてはこれを、ぜひ実現しなければならないのでしょうが、大体これは何倍ぐらい保証の予定ですか、今八億ということになると何倍になりますか、七倍ぐらいになるんですか、中小企業のための信用保証協会でも、今七倍とか八倍というものは保証しておるわけです。これはどの程度のことと考えておられますか。
  188. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 この基金は、当然に法律等が必要になりますから、どうせ来年度からの対策の発足ということに相なるかと思います。従いまして、十月すぐの問題――先ほどのお話しの筋のものは、これの方針その他がきまらなければもちろん暫定対策は立たぬと思いますけれども、そういう意味合いでいくことになるのだろうと思いますが、私たち考えております基金のあり方といたしましての保証額は、やはり五、六倍ということになるんじゃないかと思います。
  189. 横路節雄

    ○横路委員 恒久対策としては、それは今、十月一日早々でなくてもいいのだというお考えがあるかもしれませんが、しかし、中小メーカは、御承知のように本来からいえば二年前に設備をバターとかチーズとかいう方面に切りかえておかなければならなかったのだが、実際にはそれをやっていなかったので、今設備を切りかえろといっても、簡単にできない、とにかく滞貨しているわけです。その場合に、金を借りてこなければならぬが、それが今のような金融引き締めで、なかなか容易でないと思う。ですから、これは急いで発足しなければならぬのではないか。なかなかそうのんきなことを言っておられぬのではないかと思うのですが、これはどうですか。早く発足しなければだめでしょう。いかがですか。
  190. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 早く発足したいのは山山に考えておりますが、そういう制度が確実に実況し得るような体制になれば、金融もまだつくように考えられると思いますので、もちろん恒久的対策であるからゆっくりしていいという筋合いのことを申し上げているのではないのであります。現在の金融をつけるためにおきましても、そういう対策を、こういうふうにいくのだということをはっきりさせることは、早くする必要がある、かように考えております。もちろんそれ以外に金融等の、私たちのできる限りのあっせんはいたさねばならぬ、かように考えております。
  191. 横路節雄

    ○横路委員 そこで、とりあえず緊急対策として、とりわけ中小メーカーが手持ちをしている在庫品、これはどれくらいありますか。バター、チーズ、大カン練乳、どれくらいありますか。この点の滞貨の一掃というと、なかなか一掃はできないかもしれませんが、当然金利もかかりますし、それから倉庫料もかかっているわけなのですが、とりあえず滞貨をどういうように措置をなさるのか、また今どれだけ滞貨をしているのか、その点、ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  192. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 現在どれだけの滞貨があるか、ちよっと私今数字をここへ持ってきておりませんので、答えられません。失礼でございますが、御容赦を願いたいと思いますが、これの滞貨の一掃と申しますか、それに対する対策といたしましては、やはり何らかのところにそれを流していかなければならない、それが一つ。従いまして、学校等の給食や、その他の方法にこれを流していくことができれば、相当に効果があるのではないかと考えております。さらに、これを長期に保管をいたさせまする方策を立てまして、これに対して何らかの助成措置を講じていけばいかがであるか、かように考えまして、大蔵御当局に御協議を申し上げている次第であります。
  193. 横路節雄

    ○横路委員 ちょっとこれは主計局長にお尋ねしますが、今の滞貨に際して、相当これは滞貨するのではないかと思うのです。それで、そのためには金利の問題であるとか、いろいろな問題が出てくると思うのですが、これは、今どんな話し合いになっているのですか。ただ大蔵省の方に話をしているというのですが、その点です。学校の生徒に食べさせる云々という言葉はありますが、とりあえず今の滞貨しているものに対する金融上の措置はどうなるのですか。
  194. 石原周夫

    ○石原説明員 まだ農林省と御相談中でございますので、今こういうことにきまっているのだということを申し上げる段階ではありません。ただ本年度の予算に一千万円、金利倉敷の保管料の補助が載っておることは御承知だと思います。それを、今度新しく農林省で考えておられます全体の制度にどういうふうに溶け込ますかという点がございますので、それを今すぐ使うのだということを申し上げるのは過早でございますけれども予算にはそういうものが一部載っておる。それから全体の考え方を固めまして、どういうようなやり方をするか、そこら辺をこれから御相談を至急にいたしたいと思っております。
  195. 横路節雄

    ○横路委員 主計局長は、この問題については、ごく最近になってから畜産局長との間にいろいろお話があったであろうと思うのですが、ここの委員会では主税局長から、大体年間十五億くらいになるだろうと思うのですが、とにかく税金をとるものはとって、それからその安定のために出すものは出すのだ、こういうお話なのです。ですから、きっとこれで十月一日からとれば年の半分ですね。半分になるわけで、相当程度のことは――当初予算一千万という今の金利その他の問題を考えてみても、相当な金額でしなければ、今の滞貨についてのとりあえずの措置はできないと思うわけです。  その次に、畜産局長にお尋ねをしますが、これは学童に牛乳を飲ますか、あるいは粉ミルク、粉乳をやるか、そういうことで、年間余ってくるところの牛乳についてこれを処理しなければならぬ。そこで、この前も、ここで農林省の酪農課長から、学童給食をしたいという。大体どういうような規模でお考えになっておるのか。たしか全国で八百万人くらい学童給食を受けておるものがあるのですが、それを全部にやるというのか、どういうようにお考えになっておるのか、それを一つ明らかにしてもらいたい。
  196. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 学校給食の、来年度と申しますか、そういうものと、ことしすぐ始めなければならぬものとでは少し規模が違うと存じますが、通常の一種の需給の推算からいたしまして、大体市乳の消費が、生産と消費の関係で、平均よりも少いような月をにらみ、学校の学童の数等をにらんで考えますと、現在学童給食をいたしておりますものは、大体八百万人、学童が千二、三百万あると思いますが、二割少し上くらいのものににらんでいくとよいような形になると思います。わかりやすく学童数でいきますと、そういうことになるのではないかと思います。
  197. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、局長にお尋ねしますが、八百万の二割ということになりますと、百六十万ですね。百六十万にして、年どれくらいになりますか。八月の休み、日曜日は給食しないわけですが、年間平均どれくらいになりますかな、二百五十日くらいになるのですかね。二百五十日になるのか何日になるのか、私は大体二百五十日かとは思いますが、そこで、そういうものを基礎にした場合、大体年間どれくらいの牛乳がそれで消化できるのですか、どういうようにお考えになっておるのです。日にちによってずいぶん違うと思うのですね。
  198. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 これは、やはり財政の面がどうなるかによってすっかり違うと思いますけれども、現在は私たち一年通じまして考えておりますのは、百八十万くらいの学童、一応学童数で考えますと、それくらいになると思います。三割少し上になると思います。これをどうせやります場合には、学期ごとくらいの計画になると思います。今までのところ、大体二学期あるいは三学期というようなところを考えるのは適当じゃないか、そういうふうな考え方でおります。全国で考えますと、約二十万石くらいになると思います。
  199. 横路節雄

    ○横路委員 この地域はどうなるか、たとえば主として六大都市ならば、もちろん一応一般の市乳でこれは消化できていくのではないかと思うのですが、大体どういう地域にやるか。また牛乳だけですと、実際には地方においてはできない場合もある。そういう場合には、当然粉乳を使うことになると思うのですが、大体牛乳の場合に、一合当りどの程度で学校へ持ってきてもらうように考えておるか。この場合に、父兄の負担はどれくらいして、それから国ではどれくらいの補助をしようとしておるのか。その点、ちょっとお話ししていただかないと、ただ飲ませるのだ、飲ませるのだといっても、一合十五円するものを飲んでみたり、一合十二円のものを飲んでみたりということでは困るのでして、その点は、一合幾らくらいでとにかく学校に持って来られると考えておるのか、そのうちどの程度父兄が負担をするのか、そこをはっきりしなければ、これは何にも乳価の安定対策にならぬのです。ここは大蔵委員会ですから、大蔵省局長でも御遠慮なく、どうか一つ十分お考えになっておるところを明らかにしてもらわなければだめです。どうぞはっきりおっしゃって下さい。
  200. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御存じのように、乳価はところところでみな非常に違っておるのでございますし、またPTA等の負担の問題につきましても、これは地域々々によりまして非常に違いがあろうかと思います。またこれが、たとえば自分の村の小学校の子供に給食きせるのだということに相なりますれば、これはこれで、また農家の方も、それじゃ少しこういう便宜を見ようじゃないか、こういうようなことで、なかなかそこら辺はいろいろな問題がございます。そこらを事をそれぞれに分けまして、現在大蔵御当局と御相談を申し上げている現状でございます。なお先ほどの、一体生乳の供給ができないような地帯についてどう考えるかというようなお話でありますが、これは、確かに地帯別におきまして、ことに九州とか、そういうような地区におきましては、学童給食ということにミルクをやるということを考えましても、現実に市乳に対する圧迫が強くなりまして、できない地帯があろうかと思います。そういうようなところに関しましては、生乳とほとんど同じような形になって給与できまする全粉乳の供与という問題が、当然考えられてしかるべき問題だと存じます。そういうような考え方で、私たちの方としましてはいろいろと御協議を申し上げている次第でございます。
  201. 横路節雄

    ○横路委員 今の畜産局長答弁は、ちょっと遺憾ですね。どうして遺憾かというと、とにかく乳価安定対策の問題は、大体において世間で周知のことだ。それを今国会では、もう大蔵委員会は、このあと十月一日前に開くことはなかなかちょっと困難です。ここでやはりあなたの方で考てえいること、たとえば一合、まあ業界の諸君にいわせれば、一合八円なら八円には持っていける、そういう人もある。七円なら七円、それをどういうように考えているのか。おそらく今の脱脂紛乳については、学童給食の場合には、父兄は一日一円四十銭か負担しておるはずです。ですから一円四十銭は従前通りやってもらいます。しかしあれは脱脂粉乳だったのだ。今度は全粉乳だ、あるいは生乳なんだから二円なら二円負担してもらうのだ。あとの残りは、四円とか四円五十銭とか五円とかいうものは一つ国に負担してもらいますとかなんとか、そういう話をしなければ、てんで、最終の段階になっての答弁にならないわけです。ですから、大体こういう計算でいけば、今あなたのお話しの百八十万人の年二百五十日なら二百五十日で何十万石だ。これを四円なら四円、五円なら五円負担すれば、国が補助すれば、総額でこれくらいになりますとかなんとかいうことを話をしてもらわなければ、雲をつかむようなことでは、この問題はけりがつかないのです。もう少しはっきり、こういうことで大蔵省折衝していますということを――どうも隣にいるものですから、御遠慮なさるようですが、遠慮なさらないで、そのことをここで御答弁いただかなければ意味ないですよ。どうぞ一つ……。
  202. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 大体PTAの負担というものが、現在の脱脂粉乳の負担に比べまして若干多くなることは、これはやむを得ないことではないかと思っております。それは、ミルク自体の予算の問題がございますので、そういうことになると思いますが、そのほかいろいろの経費が加わると思います。農家に対しましてどの程度の価格がそれならば妥当か、こういう問題も入ってくると思います。でありますので、そこらの見当をどういうふうにいたしますか。たとえば東京近辺の農家に六円なら六円、あるいは五円なら五円の補助をするというようなことに相なると、相当な高い補助を与えねばならぬ、またいなかの場合におきますと、これはある程度相当違った助成でいけるということに相なると思います。そこらの検討を現在いたしまして、大蔵御当局といろいろ御相談を申し上げている次第でございます。
  203. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど私から言いましたように、現在脱脂粉乳について、父兄の負担は一日たしか一円四十銭くらいですから、だから、もしも父兄が負担するとしても、生乳だからといっても、あるいは全粉乳だからといっても、限度があると思います。ですから、当然あなたの方でも、大体一円四十銭なり一円五十銭負担してもらうとか、二円負担してもらうとか、二円以上はなかなかこれは容易でないと思います。そうなれば、その残りのものについて、これは乳価安定のために当然国が補助をする、こういうことになると思います。これは長い将来を考えれば、次の国家を背負う子供たちが、それによってとにかくりっぱな体格ができることは当然なんですから、ぜひそれは一つやってもらいたいが、二円以上は負担させられないですよ。父兄の負担の限度ですよ。三円でも四円でも負担してもらうというわけではないのでしょう。
  204. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 これは、父兄負担の問題はできるだけ現在の負担以上にかけない、ただし、脱脂粉乳とミルクとの違いは、それはまた別でありますが、そういう方針で進むべきものだと思います。ただし、父兄負担の能力におきましてやはり違う、地域的にも違う場合が当然生じると思いますので、そこらのことも考えあわせながらやっていかなければならぬ、かように考えております。
  205. 横路節雄

    ○横路委員 ばかにどうも畜産局長大蔵省に気がねをして、この段階にきて、まだその発表ができないということは非常に遺憾だと思います。これは大蔵委員会なんですから、他にいってはいろいろなことは発表できても、この国会においては、そのことが今の段階でいろいろやっていることが言えないということは、おかしいですよ。それは、畜産局長おかしいですよ。私たち静かにものは言っていますがね、相当これは遺憾だと思っている。だから、その点はやはりもっとはっきりしてもらわなければならぬ。  次に、今中小メーカーが手持ちしている滞貨、とりあえずはバター等の問題がありますが、これは、たとえば結核療養所の問題もありますし、いろいろあるわけで、こういう点については、これをたとえば価格を半分に引き下げて、そうして残りの引き下げた半額については、当然これは国が補助してやらなければなりませんが、そういう点はどうなんですか。あるいはまた、実際には乳児保育所といいますか、乳児院も相当ある、保育所も相当あるわけですが、そういうところに対する全粉乳についても、当然八百万の二割、約百八十万を対象にしたもののほかに、そういう点も考慮しなければならぬ。ですから、結核療養所だとか、そういったところへ今滞貨しているバター、これを低廉な価格で、結核治療の一つとしてやる意思はないのか。それから保育所とか、乳児院とか、そういうところに、全粉乳等をちょうど学童給食と同じような形で、低廉な価格でこれをやる気持がないのか。その点をお尋ねしたいと思います。
  206. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 今私どものところで考えておりますのは、そのやり方が間違いがなくやれる方法はどうだということの面からも一つ考えねばならぬと思っておりますので、原則といたしましては、学校の学童給食というところに問題の主眼を置いて、それに渡しますのは生乳を主体として、生乳でやれないところにおいては全粉乳、こういう考え方で進みたいと思います。ただことしの状況におきまするような在庫の状況で、それをはかせる必要がありまます場合には、これは先ほど御指摘のような学校以外の保育所等に関しましても、牛乳と全粉以外の乳製品につきましても、同じような条件で引き取らしていきます場合にはそれを適用していったらどうか、かように考えおります。
  207. 横路節雄

    ○横路委員 主税局長にお尋ねをしたいのですが、やはりお考えとしては、十月一日から取る、延期する考えはない。そのかわりに取るのは取るが、しかし、取った分だけは最低乳価安定のために使う。この前の大蔵委員会でも、たびたびそういう御意向お話でございましたが、その方針には変りはないのですね。
  208. 原純夫

    ○原説明員 取るものは取るということは、えらいなんでございますが、出すものは出すという筋だろうと思います。その場合に、取った額を出すということは気持の問題であって、理屈の問題ではないと私は思います。理屈の問題は、やはり国の歳出全般の中で農林行政がどれだけの地位を持ち、その中で畜産がどれだけの地位を持つというようなことでお考えになるべきことだ。ただこういう際ですから、どの程度その気持考えられるかということがあるかもしれません。その点は、せっかく部内で、主計局の方に、私の方としてはできるだけお願いしたいという気持でおりますけれども、やはり筋目は筋目として、節目でやっていただくことになるだろうと思いますが、日もありませんから、なるべく早く結論を出していただくというつもりでおります。
  209. 横路節雄

    ○横路委員 畜産局長は、学童に牛乳を飲ますのだ。今までは脱脂粉乳ですけれども、牛乳でいく、全粉乳でいく。その場合には、来年の四月一日から実施するというのでなしに、事務的に取り扱えれば、できれば十月一日からどうですか、これは年度内にはおやりになるのでしょうね。その点、一つはっきりしてもらいたい。
  210. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 私たちの方では、準備等ができますれば、早急にやって参りたいと思いますが、学校の方の都合ももちろんございましょうし、やはりやりますならば、来年の一月早々から動けるような態勢でいきたい、かように考えて協議をしておるわけであります。
  211. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今までの話で、どうも金額等については明らかでないが、大体の考え方はわれわれもわかったわけです。そこで、先ほど乳製品の保管にかかわる金利や保管料の問題はわかりますが、問題は、中小メーカーの今まで大カン練乳を主体としてやっていたところは、設備を切りかえなければならないわけですね。そうすると、その設備資金ですが、これは特別に融資するのでしょうね、この点はどういう形でおやりになるのか。これは、来年あなたが考えている次の酪農振興基金協会ですか、そういうもので補償制度ができるまではできないというのか。しかし、とりあえず困るのですから、そういうものについてどういうようになさるのか、その点を一つ伺いたい。
  212. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 設備の切りかえに必要な経費等につきましては、農業協同組合の持っておりまする乳業施設の転換は、農林漁業金融公庫等の資金をそちらに回し得るようにあっせんをしたい、かように考えておるわけでございます。それからそれ以外の中小企業の人たちのものは、やはり中小企業金融公庫の資金を回していただくように、私たちの方でも働きかけていく、かような考えでございます。
  213. 横路節雄

    ○横路委員 乳業関係は、四大メーカーとも言うし五大メーカーとも言う。そこで一番問題なのは中小メーカーなんです。そこで、とりあえずあなたの方で、今大カン練乳にたよってきて、それがさばけないで滞貨して、今後の見通しも暗い中小メーカーについてよほど考慮してもらわなければ、たとえば今あなたが言う、二割相当の百八十万の学童について生乳をやるんだということになると、これを六大都市などにやったら――六大都市は何もわざわざそれを学校にやらなくても、大体において今需給のバランスがとれていると思う。それよりも、大体中小メーカーは、大都市ではなしに中小都市なんですから、そういうところに考えていってもらわなければならぬ。この点の配慮はどうなっておりますか。
  214. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 市乳のミルク・プラントは、大体七割が中小企業、あと大きいのは三割くらいであります。従いまして、生乳の問題で学校給食をいたしました場合におきましては、やはり中小企業に関係いたすところが非常に多いと思います。もちろん東京とか大阪とかいう大きいところは、それぞれの事情もございましょうけれども、中小企業の分野における影響がそれだけ多いと考えます。
  215. 横路節雄

    ○横路委員 今のは、実際の乳牛関係処分ですな。実際に滞貨している中小メーカー等の問題、それが安定してこないと、実際に酪農民から牛乳を買う場合に、価格を落していくという心配があるので、こちらの方からお尋ねしたのですが、そこでもう一ぺん元へ戻っていって、一番問題は、生産者と乳業者との間の長期にわたる価格、数量の取引契約、団体協約の問題です。その場合に、その地域にこれが二つ以上あればいいですよ。二つ以上あれば、片っ方の方で安くたたいてきたら、どうだこっちの方で買わないか、それじゃ買おう、こうなるかもしれませんが、今のあなたの言葉で、酪農振興法で、だんだん一つの地域には一つということになっている。そこで交渉をやってみたところが、買わない。過剰になってだんだん下げてくる。酪農民は一生懸命やったが、たたかれていく、そういうことでは、農民側の立場からすれば困る。そこで農民側とすれば、先ほどあなたの言ったように、農林当局としては乳価の安定――乳価は大体この地域においてはどの程度ということを、ただ単に乳業関係だけできめるのではなしに、そういう点の配慮がないとうまくないと思う。酪農振興法では一つになっているんですから、私の方は、今四十円のものは三十八円に下げますよ、三十六円に下げますよ、いやなら買いません、こうなったらしようがないのです。今までそういう例もあるのですから。だから、そういうことのないように、過剰出荷になりますと、今度は酪農民の立場で、安定するために、どういう格好かで農林省がこれに対して考えを持たねばならぬ。その点をもう一ぺん聞いておきたい。
  216. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 ごもっともな点だと思うのでございますが、生乳取引の公正な締結履行をいたさせます方策の中で、私たちの今の酪農振興法にございます紛争が起きました後において、あっせん委員を知事が任命して、あっせんの労をとらせる、こういう制度がございます。それを改めまして、新たに酪農委員会のごときものを作っていったらどうか。酪農委員会の性格につきましては、まだ私たち十分に議を尽しておりません。これはどうせ法律事項でございますので、法律を国会にお願いいたしますまでに十分に私たち検討を加えたいと思っておりますが、これが、やはり今の取引等に関しまして、勧告をしたり、強制はもちろんできないと思いますが、勧告をし得たり、あるいは紛争が起きました場合のあっせんから一歩進んだ調停的な役割ができるように考えていったらどうか。あるいは先ほど御指摘になりました酪農振興法というものの通常で、必ずしも地域的独占を、私たちの方は特に強要したり何かしたりしておるわけじゃございませんが、それをやらなくてもやっても、地域的に一つのところしか集乳できない場所はあると思いますが、そういう場合に、そこの価格が、他の取引をいたしておりまするものと比較いたしまして、不当なような状況でございますれば、今申し上げますような酪農委員会等の性格といたしまして、それに対して一種の勧告が出せるような形のものを考えてみたらどうか、こういうふうに考えながら、酪農委員会の構想を現在練っておる状況であります。
  217. 横路節雄

    ○横路委員 そこで畜産局長に要望しておきますが、やはり問題は、市乳を大いに伸びるようにしなければならぬと思うのです。そこで、そういう意味では、先ほどお話しの、これは価格の問題も関係してきますが、学童給食、これは百八十万ということになりますと、二割幾らですか。そういうことでなしに、できるだけその対象人員については拡大していくような方向をとることが、一番いいのではないか。それで、一般の市乳でできるだけ消化する。バターだとか、チーズだとか、そういう方面の滞貨は、市乳でさばけないから、やむを得ずメーカーは、バターやチーズで滞貨がふえることを百も承知でしなければならぬのですから、そういう意味で、特段に今の乳価安定の問題、それから学童給食の問題とからんで、市乳がもっと伸びるような方向に一つ考えてもらいたいと思います。それから今の乳価の問題は、これは酪農民としては重大な問題ですから、やはり農林省としては、今のお話しの酪農委員会ですか、乳価委員会ですか、これはどういうふうになるかしりませんが、ただ、これは自主的ということもないでしょうが、法的にどういう措置をなさるのか知りませんが、ある程度のこれは拘束力といいますか、そういうものによって業者の間に紛争が起きた場合においては、ある程度これが解決できるような方向でやってもらいたいし、それから主計局長は、一つこの問題については、いろいろお話もあったろうと思うのでありますが、これはぜひそういった意味で、これからの食生活の改善の問題もありますし、酪農畜産振興の問題もありますし、そういう意味で、ぜひ予算については、とりわけ主計局長から、もらうものはもらって出すものは出すというのでありますから、最低十五億は、きっと税金が入るのだろうと思うので、そのためにさらに酪農民の生活が豊かになって、税金を逆に納められるようになるわけですから、そういう点で、一つ特段に考慮してやってもらいたい。ただきょうは、もっと具体的な数字について私はここで発表いただけるのかと、そういうふうに期待をして私はお聞きしたのですが、畜産局長が、まだ交渉の段階だからという遠慮があって言わなかったのでしょうが、しかし、これはよその方の団体には、ある程度話をされている向きもあるようでございます。そういう点は、国会でもっと明確にしてもらいたかったと思うのです。しかし、ほんとうに資料があるのだから、みな言うてもいいのだけれども、あなたの立場に同情して言いませんが、これから十分一つ日本全体の酪農振興のために、酪農民のためにも、それからそれぞれ業界の振興のためにも、大いに努力してもらいたい。これは、変に大蔵省と妥協して、なまはんかな予算措置ではこの次問題になりますから、その点だけははっきり申し上げておきます。
  218. 神田大作

    ○神田(大)委員 関連して。畜産局長には、私も酪農振興でたくさん質問があるのですが、時間の関係あとにします。  国税庁長官に、時間もないようですから、十分ばかりお尋ねします。国税庁では、過般大量処分をいたしまして、首切り五名、停職三十三名、戒告三十五名、訓告三十五名、厳重注意が百八十名というような、空前絶後というような大量処分をいたしましたが、このことについては、私は当局側において大きな責任がある、当局側の責任を何ら反省せずして、片方だけでこのような苛酷な処分をしたことについて、あなたはどうお考えになっておるか、それからお尋ねします。
  219. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 お話しのような処分を過般実施せざるを得なかったことにつきましては、われわれの方も非常に遺憾に思っております。当局がどういう意味責任があるか。これは、こういうような事態になったという意味において、われわれも抽象的な問題としましては、やはり責任がないとはちっとも思っておりません。ただわれわれとしましては、結局勤務条件の問題等につきましては、組合とできるだけ話し合いもしました。それから予算の場合におきましても、三十二年度の予算等におきまして、たとえば庁舎の新営費をふやしてもらうとか、あるいは公務員住宅の問題につきましても、国税庁職員だけについて申しますと、金額では、昨年に比べて七割くらいは増加になっております。一般的には、御承知のように十億二千万円の予算が十五億になった。さらに仕事をいかにして簡素化するか、あるいは機械化するか、こういうことによって職員の手をいかにして省いていくか、過重労働にならぬように努めるか、さらに給与の問題につきましては、これは国会で御審議になった給与法の改正によって、給与の改訂がなされたわけでありますが、その前におきましても、最初の各級別の定数をどうするかといった人事院等の折衝の問題におきましては、できるだけ税務職員の待遇が改善されるように、非常に及ばずではありますが、あらゆる努力はしてきたつもりであります。ただ組合は、遺憾ながらそうしたことで満足しないといいますか、そうしたこととは別個に、あるいはピケを張り、あるいは時間内職場大会をやる、その他のことにとよって執務を妨害をするといったような事実が相当各地に行われましたので、われわれの方といたしましては、非常に遺憾でありますが、やはり公務員法違反の事実ありとすれば、それなりの処置をしなければならぬということで、過般のような措置になったわけでございます。
  220. 神田大作

    ○神田(大)委員 長官も十分御存じだろうが、税務行政が非常に複雑であって、しかも職員が非常な過重な労働をやっておるということは、これは、われわれ現地におってしばしば見ておるのでありますからして、長官はこういう点において、ほかの官庁と比較いたしましても、税務署職員が過重な仕事をしておるということは、御存じだろうと思う。特にあなたは住宅等について努力したと申されますが、なるほど努力したでしょう。しかしながら、現在におきましても、転勤されるような場合におきましても、非常な不便な状態におって、そうして勤務しておるというようなことも事実です。過般仲裁裁定によるところの勧告等もありましたけれども、これに対する仲裁裁定の完全な実施を怠って、それに対する組合の抗議、過重な労働、あるいは職場規制に対する抗議等に対しまして、税務当局はなかなか団体交渉なんかにも応じなかった、あるいはいろいろの点において、そういう組合意向を十分聞く態度をしなかった、そういう点において、なおさら組合は硬化してきたろうと私は思うのです。それで、私は過般宇都宮の税務関係をつぶさに見て参ったのでございますけれども、宇都宮税務署等におけるところの職場大会ども、なるほど時間内の職場大会であります。しかしながら、時間がわずか十分か十五分時間内に食い込んだにすぎないと私は思う。そういうような大会は、ほかの官庁等においては、日常茶飯事のように相当なされている。しかしながら、これらに対しまして、慣行上いまだ処分はしてない、時間内のそのような大会は処分をしてないと思う。ところが、こういう穏やかな職場大会に対しまして、職員よりも多いような警官を動員して、それらの組合を刺激し、職場大会が終えてからも、私服の警官を庁内に入れて、組合の活動をことさらに妨害するというようなそういう態度をとっておる。こういう点につきまして、今度のこの処分というものは、非常に過酷でもあるし、また非常識的なものであって、これを契機といたしまして、組合員が税務行政に対しましていろいろの点において支障を来たすきっかけになるんじゃなかろうかと、われわれはおそれるわけであります。こういうことに対しまして、一方的に組合だけを処分し、しかも当局側は、何らこれに対して反省をしないということに対しましては、われわれはどうしても納得するわけにいかないのでございますが、この点はどうお考えになりますか。
  221. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 私は、現在における国税職員の待遇、あるいは住宅の問題、庁舎の問題が、これでいいのだということは毛頭思っておりません。ただ三十一年に比べれば、三十二年は相当改善の方へ何歩か踏み出している、これは私は一応――あまり大きな口をきくつもりはございませんが、それははっきり言えると思います。同時に、さらに明年、明後年、こういった問題は、住宅の問題一つをとりましても、そう一度に、非常に従来不足していたものを一ぺんにそれが改善されるということは、これは予算のいろいろな拘束もございますので、なかなか無理じゃないか。ただ昨年よりはことしはよくなってきた、ことしよりはさらに来年はよくなる、来年よりはさらに再来年はよくなる、こういったような着実な改善をしていく、そして何年かたって振り返ってみますれば、これはやはりずいぶんよくなったという、こういうことを考えていくのが、地についた物の考え方じゃないか、そういうふうに私は思っております。その意味におきまして、現状で満足しているということは毛頭思っておりませんが、しかしやはり徐々に、少くともゆるやかであっても確実に改善されていくという方向に問題を持っていくべきである、その意味において、今後とも努力していくつもりでございます。  宇都宮のお話がちょっと出ましたのですが、これは、和田委員かなり現場の方でよく御承知だったと思いますが、私の方へ入った報告によりますと当時宇都宮の職員と他の税務署の職員、それからさらに税務職員以外の者総数約二百人ぐらいが署の前にピケを張りまして、署員あるいはその他の人の出入を阻止した、そして時間内の職場大会をやった、こういう事態が相当続きましたので、やむを得ずわれわれの方としては、警察の助力を求めた。一応ピケ解除がなりましたのが九時四十分、こういうふうに報告がきております。その後におきましても、なお依然署内において相当混乱した事態があったというふうに聞いております。そうしたような場合におきましては、われわれの方としましては、やはりそれなりの措置をとらざるを得ないじゃないか。他の官庁のお話になりますと、これはそれぞれの官庁がどういうふうにお考えになっているか私知りませんし、またどういう事例があり、それがどう措置されたか、一々詳しく知っておりませんが、しかし税務の場合におきましては、その仕事の性格もございますし、やはりそうした服務の関係におきましては、相当厳重な秩序が保たれなければ、税務行政というものがやっていけないのではないか、こういうふうな考え方を持っておりますものですから、かねてから、そういった点については組合諸君にも警告を発していたのですけれども、それにもかかわらず、そうした事実が起きたという場合におきましては、われわれとしては、やむを得ざる措置としまして、先ほど申したような処分がなされたわけであります。
  222. 神田大作

    ○神田(大)委員 警察を動員した現実を長官は見ておらないから、そういうような答弁をするのでありましょう。われわれは、ほかの職場大会等にも出ております。そういう場合と、税務署における職場大会を比較いたしますと、税務署の職場大会なり抗議はネコのようにおとなしい、こういうことでもって闘争ができるかと思うような、そういうような職場大会です。ところがそれに対して、あごひもをつけたところの警官隊がどっと、何ら抵抗しないのに押しかけてくるというようなことは、これはやはり当局の誘導といいますか、一つのあおりをかけるようなものだと私は思う。その後においても、何か盗難事件をでっち上げ、そうして係長が金を六百円とか盗まれたというようなことで、組合の者たち当局とが交渉している最中にそういうことを言って、そうして私服の警官が係長以上の引き出しをあけて捜査して、組合の士気といいますか、闘争意識というものが冷却するような行為もやっておるのです。これは、宇都宮ばかりでなしに、札幌におきましても、あるいはほかの地区においてもなされておるというように、われわれから見ますると、まことに計画的な仕方をしておるように見られる。こういうように、もとはといえば、仲裁裁定に対する完全な実施をしない、あるいは団体交渉によるところの職員の要求を取り上げない、あるいは話し合いに応じないというようなこと、過重な労働に対する組合側の申し分を親切に聞かない、そういうことからこういう問題が起きてきておることであって、これは組合側のみの一方的な責任ではないと思う。特に宇都宮署長のこときは、長官も御存じのように、時間中にマージャンをやって時間を空費して、あるいは女の職員につめを切らせたり、鼻毛を抜かしたり、あるいは肩をもましたりして職権を乱用している。あるいは小使さんに飯をたかしたり、おふろを沸かさしたりしておる。こういうような署側の、いわゆる時間内におけるそういう態度に対しましては、何らの処分をせずして、そうして組合側がわずかな時間、勤務時間に食い込んだからといって五名の首切りをし、二百何名かの処分をやるというようなことは、どうしても納得できない。塚越署長のごときは、あなたは組合処分をやったあと栄転さしているじゃないか。いわゆる監督官といいますか、監察官といいますか、そういうところに回している。これは、組合側は負けたんだぞ、そういういろいろ話し合いをしようというような職場の民主化運動などをやると、こういう目にあうんだぞという権力主義的な態度をもって、これを処分したあとにおいて、今度は署長を関東甲信越の方へ監察官として栄転させるというようなやり方は、われわれは民主主義の今日における官庁のやり方としては、どうしても納得できない。この点についてあなたはどうお考えになりますか。
  223. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 塚越署長のお話が出ましたから、一言申し上げておきますが、その点につきましては、前回の委員会で神田委員から同様のお話がありました。署長の方の申し分としましては、たとえば小使さんにいろいろ炊事を頼んだり風呂を頼んだというのは、塚越署長が独身で赴任をしておりましたために、結局小使さんの時間外に一応私用として頼む、そのかわり相当の報酬は払っていた、こういうことを言っております。女子職員に肩をもませた、鼻毛を抜かしたというのは、私は何ともちょっと申し上げようがございませんが、そういう事実があったのかどうかも私は知りません。それから時間内にマージャンという問題は、この前もお話ししましたように、署長の言い分としては、それはレクリエーション・タイムとして署長がそれをとったんだ、こういうことを言っております。塚越署長を宇都宮の税務署から関東信越の監督官に転動いたさせましたのは、宇都宮の署長としてそのまま置くことが、行政的に見まして適当でないというふうな考え方をしたからであります。  なおついででありますから申し上げておきますが、塚越君は、その後辞意を表明いたしまして、本人が進んでやめたいといったようなこともございましてものですから、私どもの方としましても、その意思を尊重しまして、去る九日に依願免官の手続ができております。  懲戒免職の五人とか、あるいはその他相当大量の処分がなされましたのは、これはすでに御存じの通り、ひとり宇部宮だけでそうなったというわけのものではございませんで、ほとんど全国にといいますか、大阪あるいは関東信越の管内、それから北陸の管内、北海道の旭川、あるいは九州、高松、各地に同じような型のケースが起りましたので、われわれの方としましては、それぞれのケースに応じましての処置をせざるを得なかった。そういった関係から、人数もおのずから相当の人数に至ったというわけでありまして、現在の状況としては、私はやむを得なかったものと思っております。
  224. 神田大作

    ○神田委員 私は、この問題は非常に大きな問題でありまして、労働運動上看過することのできない問題だと思います。あなたは、全国的な問題であるから首切りを五人やったとか、あるいは大量処分をやったと言っておりますが、宇都宮だけで考えてみましても、組合側で処分をされたのは、停職六カ月を筆頭として九人だと思うのです。片方では署長が、私が言ったような不当な事実があるにもかかわらず、これは単に転職させるというような態度をとっておいて、片方においては、九人も処分し、あるいは停職させるということをやっておる。これは、宇都宮だけの問題にしぼってもそういうことになる。これがいわゆる不公平な処分だということは、はっきりとわかるだろうと私は思う。こういうようにあなたたちは、現在の税務行政の能率を上げるために、職員を過重な労働に追い込み、それに対して話し合いをしようというようなことに対しまして、権力をもって弾圧する、こういうやり方であるならば、なるほど権力というものは効果をもたらすであろう。しかしながら、ほんとう職員が心の中から働こうとする意欲を阻害し、結局においては大きな能率の低下になることは、私は火を見るより明らかだろうと思うのです。こういうようなやり方に対しましては、時間もありませんから、後刻また機会をみましてあなたに、基本的な問題から、現実に行われておること等につきまして、その見解をただしたいと思います。きょうはこの程度で私の質問は終ります。
  225. 横山利秋

    ○横山委員 関連して長官に注文だけいたしておきたいと思います。  全国税の問題をずっと調べてみて痛感される点で、今私が申し上げたいことは、三つばかりございます。一つは、あなたも先ほどいろいろと待遇改善をしておるが、それと関連なく闘争をしておるということをお言いになりました。そういうことを意識しておっしゃったのかどうかしりませんけれども、現実の事態は、交渉なり話し合いというものが進んでいないという事実であります。これは、あなたの方にも言い分があるでありましょう。しかし、組合の方はまた組合の一方で、あなたの態度からいってうまく進むものではない。だから、この際一つ闘争態勢を強化して、その態勢の上に乗って話し合いをしようというふうに考えておるのかもしれません。しかしいずれにしても、けんかをするにしても、話し合いの窓口というものは、常に労働問題に関しては開かれておらなければならぬのであります。私が想像いたしますのに、その交渉の条件というものが、おそらくあなたの方にはおありではないかと思うのであります。これは、いかなる場合といえども、戦争しておっても、やはり、平和の窓口は開いておかなければならぬのであります。従って、その交渉なり話し合いということについていま少しあなたがおおらかな立場に立つことが、私は長い目で見て必要なことではないか、こういうことを感じます。  それからもう一つの問題は、まあ渡邊さんの今の組合の管理者としての目から見て、これは断固として処分をしなければならぬ、こういうふうな立場に、立っておられるような気がするわけであります。一回で済まなければ、二回、三回というふうなことをお考えになるかもしれません。それで、しからば労働問題は解決するかというと、あなたもまさかそうはお考えにならぬと思うのであります。たとえば、当時の全財組があれだけの弾圧を受けて、そうして国税局においては、労働組合が断絶をいたしましたけれども、今またこうなっておるのであります。従って、労働者というものは、弾圧で解決が永久にできるものではない、こういうことを私は体験上痛感をするわけであります。  それから今宇都宮の話が出ました。宇都宮の問題は、鼻毛を抜かせたとか、あるいは何とかかんとかという話がございましたが、火のないところに煙は立たぬという古今の名言をいつも思い出すのであります。国税庁の労働組合が、かりに今あなたが処分をしなければならぬというほどに左翼的であっても、それにはやはりそうなる温床が職場の中にあるものだ、必ずあるものだ。それが十のことを十五だと言うかもしれません。しかし、温床がなくしてそこまで広がるものではないということを私は考えるわけであります。従って、この点も、あなたの方としては窓口を開くことと、それからこの温床というものを管理者みずからが改善をする、各税務署長の民主的な管理方式というもの、考え方というものを、あなたの方として考えていただかなければならぬと思う。  それから第三番目には、一体これはどうなるのでありましょうかということです。私は、自分が国鉄の出身でありますから、国鉄に見比べて、今の同税庁における紛争考えておるわけであります。国鉄の今の紛争は、どうなるかわからぬようにみえておっても、それぞれある展望を労使双方持っている。ところが、今あなたの方は、おそらくあなたとしては二、三回弾圧を継続していけば、おとなしくなるであろうという展望らしいのでありますけれども、今の段階においても、かりに百歩譲って、処分はするけれども、こういうふうなら話ができるというあなたの方の展望を組合側に明らかにすべきではなかろうか。そうして、それによって組合との正常な関係の方向へ前進をすべきではなかろうか。今あなたの態度に見られるのは、まことにいんぎんなお話ではございますけれども、解決への展望というものはわれわれに示しておりません。また組合側も示しておりませんけれども組合側がなぜ示さないかとあなたはおっしゃるかもしれません。しかし、私は、今あなたに言っておるのであります。あなたに要求しておるのであります。また管理者としてあなたが大長官であるなら、よけいに大乗的な立場をもっと堅持しなければならぬ。渡邊さんが国税庁労働組合の前に立ちはだかって寄らば切らんというような格好を示しておるのは、まことにおとなげないと私は思うのであります。ほかの官庁がいいかげんなことをしておるとあなたはおっしゃるかもしれませんが、労働問題としては、それは解決しておるのであります。私も体験上思うのでありますが、労働問題というものは、よそさまから見て多少曲っておっても、労使の間で話し合いがつけばそれでいいのであります。あなたが、今法は守らなければいかぬとか、勤務時間は守らなければならぬとかいって、しゃくし定木にやって法を守らせる。それだけに基盤をもし置いておるとするならば、解決するものではないと思う。時間がありませんから、一方的な言い分になって、もしあなたがそれでは困る、こういうことであるならば、率直に御意見を承わりたいと思います。
  226. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 御注意いただきまして、私もいろいろ参考になることがたくさんありまして、ありがとうございました。私、御質問でございませんから、御答弁という意味では申し上げませんが、一言だけ申し上げさしていただきたいと思います。  第一の交渉の問題につきましては、私の方は、現在において交渉の窓は全然閉じておりません。従って、条件も全然ございません。従って従来、交渉の場合におきまして、もちろん議題をきめ、日時をきめ、そうして人数についてお互いの話し合いをして、そうして交渉をする、こういうことは従来ともやって参りましたし、そうして今度の段階におきましても、組合の方でそうした積極的な要求があれば、いつでもこれを受けて立つ用意をしておりました。組合の方からそういう話があって、こういう事件のあとだから、われわれの方ではやらないのだ、こういうことはやっておりません。ただ従来から、各国税局、税務署に私の方からは、一応そういうことは考えていいと言っておりますのは、たとえばピケを張る、あるいは警察の力を借りなければならなかった、そういうすぐ直後に、お互いのそうしたエキサイトした空気の中で交渉をする、これはおもしろい結果にならぬから、これはやはり落ちついた空気の中で、お互いの話し合いを進める、こういうことは言ってありますが、しかし普通に交渉を持とうというのに対しまして、これを拒否するという態度には全然出ておりません。  給与の問題につきましても、われわれの気持としましては、とにかく一応給与法が国会へ出てくる、その場合に、どういうふうにしたら、たとえば税務職の給与が有利になるか、あるいは給与法が通った後においても、今度は人事院の級別定数の問題がある、どういうふうにしたら、それが今度は具体的に税務職員の有利なことになってくるか、いわばそうした地についた点でものを考えていく面が、どうしても必要じゃないかと私は思っております。しかし遺憾ながら、全国税がわれわれの方へ持ってくる案は、われわれはとにかく一律二千円アップ以外にはだめだ、われわれはそれを要求するのだ、国税庁長官はそれを聞け、この一本調子なんです。私はあの時期において、君の方としては、そういうスローガンが出ているから、それを引っ込めるわけにはいくまい、しかし同時に、それだけの一本調子ではまずいだろうから、これは組合の案とかなんとかいう四角ばったようなものでなくてもいいから、たとえばこの給与法のこの線に沿ったら、一体組合としてはどういう意見を持っているのだ、そういうものを一ぺん見せてくれないかという話もしたこともありますが、遺憾ながら組合は、いやわれわれの方のスローガンは二千円の一律アップ以外にないのだ、こういった調子でもってわれわれの方へ交渉にぶつかってきますから、そうなれば、遺憾ながらわれわれの方としては、それは賛成できぬと言わざるを得ないわけであります。そうすると、組合の方は、それじゃ官側は誠意がない、こういうふうな断定の仕方をするのでは、私は、自分じゃ組合運動をやったことはありませんけれども、あまりに一本調子な行き方じゃないか。その結果として、時間内職場大会をやる、これじゃどうもちょっと工合が悪いのじゃないかと私は思っております。私も、決してそう一本調子な考え方を持っておりませんし、相当実質的に、とにかく国税庁のうちの職員なんですから、私としてもうちの職員という気持で、その方々の待遇が改善されることについては今後も努力します。しかしおのずからそこにいろいろな制約があります。その制約の中を縫いながら、どういうふうにしていったらそこに明るい職場ができるかということを、われわれの方としては頭に置いて考えていきたい。  それからいろいろなああいう問題が起きてくる温床が税務部内にあるのじゃないか、管理者側にあるのじゃないか。これは、私としても大いに反省すべき問題ではないかと思っております。戦争前から精励恪勤、そうして早出晩退というようなことを看板に税務職員、が実際よく働いてきた。しかし、その頭で養われた現在の署長とか、そうした人たちと、最近入ってきた人たちと、年令的にも、頭の上からもかなりギャップがあると思います。同時に、そうした昔の観念でもって職場が守られていくのじゃない、これは私もよくわかっております。従って、もっと民主的な姿において職場の空気を明るくしていかなければならぬじゃないか、これは、私も口がすくなるように言っておりますが、しかし、相当の年配のものには一時に頭の切りかえができぬというような状態で、現状はなかなか不満のある点があろうと私も思っております。しかし、それはその線に沿いながら、今後とも管理者としても反省をしていく、こういった線でやっていきたい。同時に、これが気に入らないからすぐ云々ということは、これはちょっと少し話が早過ぎるのではないかと思っております。  解決のめどが一体どういうふうになってくるか、最近におきまして、多少事態は落ちついております。しかし今度また向うが――向うといっちゃ語弊がありますが、組合側がどういうふうなまた態度に出てくるか、それによってこちらも、実は相手のある仕事ですから。しかし、私は事態が円満に解決していく方向になんとか持っていきたい。同時に、そうした組合の動きは動きといたしまして、とにかく税務の職場を明るくする、あるいは職員の待遇を改善する、あるいは仕事の負担をできるだけ軽くする、こういう面につきましては、今後とも努力をして参りたい、かように思っております。
  227. 横錢重吉

    横錢委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十月四日午前十時半より開会することとし、これにて散会いたします。     午後六時九分散会