○春日
委員 一
萬田大蔵大臣は、このたび八カ月ぶりにこの
大蔵大臣の席に復されました。わが国の海外
収支の逆調を克服することのために、さきの
池田大蔵大臣が非常な決意でもってこの
金融引き締めの総合対策を講じておりましたそのさなかに、この
大臣の更迭を見たということは、われわれの政治常識をもってすれば、これははなはだ奇妙なことと
考えているわけであります。しかしながら、貴下が今回この席を得られたということの功罪は、一に今後の貴下の
政策のいかんにかかっていると思う。従いまして、私たちは冷厳な気持でもって、貴下を鞭撻しなければならないときは鞭撻し、もし誤まったことがあれば、限りなくこれを打擲して、そうしてわが国の健全なる
経済の発展のためにともに協力したいと
考えている次第であります。しかしながら、今
内藤君や横銭君の御
質問に対してお答えしている
ところをもってすれば、これはことごとく何となくひょうたんなまず式というか、抽象論議の域を出ていない、理論的な御意見を述べおられる。演説会や座談会なら大体この程度までお答えになるかもしれないけれども、本
委員会は、
国民に対して当面している具体的な
政策、特にまた
金融梗塞の非常に深刻悪化しているこのときに、適切な手を打ってもらうことのために大きな期待もしておりますし、それだけの責任を負うている。従いまして、久濶に開かれたこの
委員会においては、あなたの今までなされた
答弁の範囲内をもってしては、これはとうてい満足すべきものではなく、われわれもまたその職責が果しがたいと思うのであります。
こういう
意味から、さらに
一つ具体的に、特に当面している大きな問題は
金融の問題であり、これはかってのあなたのホーム・グランドの問題であるし、さきにあなたは、二年有余にわたって
大蔵大臣としてこの問題を取り扱われているから、就任早々とはいえ、あなたに抱負経綸のないはずはない。従いまして、私はこれからあなたに御
質問する
事柄について、具体的にかつ的確に御
答弁をお願いしたいと存ずるのであります。
そこで
質問の中に入りますが、いわゆる
外貨危機を克服することのための総合対策、これが一応効果を現わし始めつつあるのではないかと思われているわけであります。すなわち
経済企画庁の調査によりますと、本年最高の卸売
物価水準は、四月であったが、これに比較すると、今日においては
物価も大体六・七%、これはかって予想した以上の値下りである。それから鉱工業の生産水準も次第に下ってきている。それから
企業家間における
投資意欲というものもだんだんと控え目の傾向が現われてきた。さらにまた重要なことは、先ほども
横錢君の
質問に答えられたが、この
輸入信用状の設定が大体二億一千万ドルとなって、
輸出のものとほぼ
とんとんになってきておる。これはもとより
とんとんをもって最終
目標とするものではないけれども、これは期待した効果が次第に現われてきておることの実証です。それからこういう
ような
情勢をもってすれば、大体この十一月ごろには、対外
収支は
輸出輸入ともに
とんとんになってきて、それを契機として、だんだんと好調の方向へ向っていくのではないかと思われてきておる。すなわち
金融引き締めの施策は、だんだんとその効果を示しつつあって、その
目的はやや達し得たのではないかと
考えられるのであります。しかる
ところ、一方
経済界の実情はどうであるか。これは
大臣も詳細にお調べ願っておるであろうが、この
金融引き締めの結果、その
影響が次第に各方面に浸透してきた。特に会社の金繰りは惨たんたるものであって、この七月末においては特にひどい。不渡り手形は、七月中には六万六百十三枚、これはわが国における手形交換所開設以来の最悪のレコードです。そうしてその倒産が、さきには繊維商社の倒産に一番顕著にその徴候が現われておったが、やはり、景気の消長が繊維から漸次他の業種に及んできて、今日食品業界、薬品業界、その他ゴム製品等にずっと倒産が現われてきておる。特に
黒字倒産という
ような、異常な金繰りから来る
ところの不自然な倒産もあちらこちらに現われてきておる。しかも五月、六月ごろのあり方は、もっぱら中小
企業にその倒産がはなはだしかったのでありますが、今日では二千万円ないし五千万円のキャピタルの、いわゆる中堅事業体においてもそういう倒産が続出しておることは、
大臣もよく御
承知の通りであります。こういう
ような新しい
情勢に対処しては、すなわち集約して申しますれば、
金融引き締めの効果は逐次現われつつある。その結果
経済界においては、さ
ような現象というものは、そのままほうっておくならば、いわゆる
横錢君の御指摘の
ように、わが国の
経済におそるべき破綻のときが襲来しないとは断じがたい。こういう
ようなときには、やはりこの状況に即した
ところの、きめのこまかい、ケース・バイ・ケースと申しましょうか、一律の
金融引き締めの方針ではなくして、さらに一歩進んで、専門的な、デリケートな
一つの
金融施策というものが、専門的に技術的に講じられなければならない
段階に到達しておると思うが、これらの事態に対して、一
萬田さんはどういう
ようなお
考えをお持ちになっておるか。やはり講じなければならないとするならば、あなたが講ぜんとする
ところの具体的な施策は何であるか。現実に、申し上げました通り、一方においては
経済界が混乱しておりて、手形の不渡りが続出して、中堅事業家に対しても、そういう
ような
黒字倒産の問題が現実に現われてきておる。何らかの手を打たなければならぬ、打たんとする手は何であるか、これを
一つ御
答弁を願いたいと思います。