運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-05-14 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十四日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       淺香 忠雄君    大平 正芳君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    古川 丈吉君       坊  秀男君    前田房之助君       山本 勝市君    石野 久男君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      山際 正道君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 五月十一日  委員山手滿男辞任につき、その補欠として森  山欽司君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として西  村彰一君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員山村新治郎君辞任につき、その補欠として  正力松太郎君が議長指名で、委員に選任され  た。     ――――――――――――― 五月十三日  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一三八号)(参議院送付) 同月十一日  相互銀行法の一部改正に関する請願(川崎末五  郎君紹介)(第三〇五〇号)  鹿屋市に国民金融公庫支所設置に関する請願(  二階堂進紹介)(第三〇五一号)  同(二階三進君紹介)(第三一〇九号)  国家公務員共済組合及び公共企業体共済組合に  関する特例制定に関する請願石村英雄君紹  介)(第三〇六七号)  特許権譲渡及び分権に対する課税撤廃に関する  請願黒金泰美紹介)(第三〇七九号) の審査を本委員会に付託された。 五月十一日  石炭手当免税等に関する陳情書  (第九二四号)  駐留軍撤退後の同量施設物払下げに関する陳情  書(第九二七号)  揮発油税率引上げ反対に関する陳情書  (第九三七号)  運動具に対する物品税撤廃に関する陳情書  (第九三八号)  手形交換所特殊法人制度化に関する陳情書  (第九三九号)  日本輸出入銀行金融に関する陳情書  (第九四一号)  国民金融公庫北海道融資資金わく拡大に関する  陳情書(第九四二  号)  国民金融公庫貸付金わく拡大に関する陳情書  (第九七八号)  特許権譲渡等に対する課税撤廃に関する陳情書  (第九九七号)  国民金融公庫金沢支所に対する資金配分額拡  大に関する陳情書  (第一〇一二号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四六号)  酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第一四五号)  中小企業資産評価特例に関する法律案(  内閣提出第七六号)  準備預金制度に関する法律案内閣提出第一二  四号)     ―――――――――――――
  2. 山本勝市

    山本委員長 これより会議を開きます。  参考人の招致の件についてお諮りを申し上げますが、御承知のように、さきに準備預金制度に関する法律案について意見を聴取するために、日本銀行総裁山際正道君を参考人として、去る十日の委員会出席を求めておりましたが、都合によって委員会が開けませんでしたので、あらためて本日の委員会参考人として出席を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。     —————————————
  4. 山本勝市

    山本委員長 次に、造幣局特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際お諮りを申し上げます。本法律案につきましては、質疑及び討論通告がございませんので、直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。これより採決をいたします。お諮りをいたします。本法律案原案通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって本法律案全会一致をもって、原案通り可決いたしました。     —————————————
  7. 山本勝市

    山本委員長 次に、中小企業資産評価特例に関する法律案議題として、質疑を続行いたします。  質疑はございませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 山本勝市

    山本委員長 なければ、本法律、案に対する質疑は終了することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認め費す。よって本法律案に対する質疑は終了いたしました。  この際御報告をいたします。本法律案に対しましては、春日一幸君外三十九名提出修正案が、委員長手元まで提出されておりますので、これを印刷して皆さんのお手元に配付しておきさしたが、この際修正案提出者より、趣旨説明を聴取いたします。春日一幸君。
  10. 春日一幸

    春日委員 ただいま議題となっております中小企業資産評価特例に関する法律案に対する修正案提案理由説明を申し上げます。  修正案の案文につきましては、お手元に配付してありますので、便宜朗読を省略いたします。  今回の特例で、中小企業経営改善に資するところ多いというのでありますが、現在の中小企業特殊性にかんがみて、また従前の再評価における特例等を考慮いたしまして、次のように修正をいたさんとするものであります。  一、今回の再評価税率百分の二とあるを百分の一・五とする。  二、再評価税納付方法二カ年均分納付とあるを三年間均分納付とする。  三、再評価の申告について、法人の場合の最終期限を一カ月延長する。  四、固定資産課税標準の基礎となるべき価格は、地方税法規定にかかわらず、三年間の再評価を行う前の価格とすること等であります。  以上が修正案趣旨及び内容でありますが、何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。
  11. 山本勝市

    山本委員長 以上をもちまして趣旨説明は終りました。  この際申し上げます。国会法第五十七条の三の規定によりますと、委員会は、法律案に対する修正で予算を伴うものについては、内閣に対して意見を述べる機会を与えなければならないことになっておりますので、内閣において御意見がございますならば、お述べ願いたいと存じます。
  12. 足立篤郎

    足立政府委員 本法律案によります資産評価税率につきましては、政府といたしましては、過去において行いました資産評価の場合における税率との権衡及び中小企業実情等十分に考慮いたしまして、政府原案に示されております二%の税率は、政府としては最低の税率を選んだつもりでございます。従いまてし、ただいま御提案になりました修正案による税率修正につきましては、政府としては直ちに賛成をいたしかねるのでございますが、最近における中小企業実情等も考慮されまして、特別なる対策としての修正でございますので、政府としてもやむを得ざるものと考える次第でございます。
  13. 山本勝市

    山本委員長 内閣意見は以上の通りであります。これより討論に入りますが、討論通告が別段ありませんので、直ちに採決に入るに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。これより採決いたします。初めに本法律案に対する春日一幸君外三十九名提出修正案について採決をいたします。  本修正案を可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって本修正案は可決いたしました。  次いで、ただいま議決いたしました修正案修正部分を除く原案について採決をいたします。これを可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって本法律案全会一致をもって修正可決をいたしました。     —————————————
  17. 山本勝市

    山本委員長 次に、酒税保全及び酒数業組合等に関する法律の一部を改正する法律案議題として質疑を続行いたします。奧村又十郎君。
  18. 奧村又十郎

    奧村委員 私はただいま提案酒類業団体法改正案について、先日来の質問のうち、まだ政府側の御答弁のないのもありますし、また御答弁のはっきりしていないのもありますから、おもな点についてごく簡潔にお尋ねをいたしたい、かように考えます。  今回の酒団法改正案の要点としては、従来この法律のおもな目的であった酒税確保という目的のほかに、業界の安定というものを強く取り上げたのでありまして、これは別途衆議院で審議されました中小企業団体法の、審議とからみ、また中小企業団体法を必要とされる現在の日本の社会、経済、その他の情勢とからんで、この改正案はねらいとされておる、こういうことであります。しかし中小企業団体法と比べてみると、やはり酒税確保その他酒類業界の特殊の事情のために、せっかく業界安定をねらいとしておりながら、その目的が十分達成されようとは思わぬ。この点が先日来の質疑の一番大きな疑念のあったところでありますので、これの締めくくりの意味で、重ねて簡潔にお尋ねしたいと思うのであります。つまり業界の安定、しかも中小企業者の団結によるところの業界自主統制をやらすということが目的であるならば、もう少し強い規定がほしかった。たとえば中小企業団体法の方では、自主統制承認申請した場合、政府は二カ月以内に決定をしなければならぬ、いわゆる自動承認規定がありすが、酒団法にはこれがない。それからいわゆる組合団体交渉と申しますか、組合協定規定がないということ。それからいわゆるアウトサイダーに対する強制加入はないということも問題であります。そこでこれらの問題については、これは中小企業団体法のような規定は盛れないのだ、こういう政府の御答弁であった。なぜ盛れないか、つまり酒類業団体の方は、生産者却売業者小売業者段階業者を包含しておるから、ただたとえば小売段階だけ、あるいは卸段階だけの自主統制規定というものは、簡単にこれを承認することはできない、従って二カ月という期限は置けない。また単に小売業者だけのいわゆる団体協約というものも認めることはできないもしそれをやれば、生産者卸業者関係が非常に困ることが起る。こういうことで、事情はわかるが、しかしそれじゃこれをはずしたならば、一体自主統制というものは果してできるか、骨抜きにされておるうらみがある。そこが先日来疑問の点だったが、それじゃどういう方法があるかというと、実は私にも確信がない。こういうことになって、議論結論を得ぬままに今日に至った。だから結論を得られないということで速記録に残して、このまま法案を通すより方法がなかろう、こう思うのでありますが、しかし、ここにはっきり申し上げておきたいことがある。つまりたとえば小売酒販の方で、みそ、しょうゆなどは、中小企業団体法に基いて、いわゆる団体協約その他のことをやっていった場合、そのときに初めて酒団法というものは、小売酒販業界安定のためには力のないものだということに必ず気づくに違いないと思う。いよいよこれを自主統制をしようという場合には、これはほんとうには業者のためにはならぬ、隘路だらけだということに必ず気づくに狂いない。そうした場合に、政府はこれをどう運出してくれるか、こういうことであります。そこで酒税確保ということと業界の安定ということが矛盾して、おる、これを考えに置かにゃいかぬ。酒税確保ということが中心になれば、直接の納税責任者生産者であります。間接には卸業者小売業者として酒類業団体酒税確保ということになれば、まず生産者利害を守り、次に卸、小売というふうな感じを受けやすい。これを解決するのには、やはりどうしても団体協約、あるいは場合によっては期限付決定というものを何か工夫して入れなければ、この生産者、卸、小売段階相剋摩擦を自主的に解決する方法というものは、この規定の中に入らぬじゃないかというふうに思います。そこで、これらの規定は、どうもお尋ねしても水かけ論になりますから、現在直ちに発動をしなければならぬほど事態か窮迫しておるものとは思わぬかどうか。つまり今直ちに発動しなければならぬと考えておられぬから、こういうなまはんかな規定になるのか、現在はまだいわゆる正常取引運動でやっていけるというお考えであるからこういう規定になったのか、それをお尋ねしたい。
  19. 原純夫

    原政府委員 現在までにこの法律によります規制は始まっております。御案内の通り、しょうちゅう合成酒については、毎月の出荷を規制しておる。それから一般にこの取引条件でございますが、不当な招待等のことがないようにという規制はやっております。今後も業態に応じてやって参りますが、従いまして、現在全般的にこの法律が発動するということではないが、一部においては相当進んだ規制をいたしておるというのが実情で、今後においても、実情規制を必要といたしますならば、その際この法律による規制が発動するということができるのではないかと思っております。
  20. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは、たとえば小売段階で、特に乱売競争が激しくて、小売酒販の力からは、自主統制規定をきめて認可申請が出た、ところが小売と卸、あるいは生産岩と卸、小売、これはどうしたって利害が相反します。小売幾らの数量を幾らで仕入れたいという協定を申し出る、卸は幾らでなければ売らぬ、こういう協定を申し出れば、どうしても生産、卸、小売段階はお互いに立場が相対立しておりますから、話が調和できないのです。そこで小売段階だけが申請をしてきた場合、卸、生産の方は申請をしなくとも、小売段階だけで認可申請することがあるのか、あるいは必ず生産、卸、小売と三者の大体の協定結ぱなければ認可はできないのか、その方針はいかがですか。
  21. 原純夫

    原政府委員 事柄によりまして、小売だけで申請する事柄もあろうと思います。そしてそれが小売だけにとどまらず、卸、生産者にも影響のある事柄であるという場合もあろうと思います。そういう場合の処置といたしましては、先日も申し上げましたように、通常の業種でありますれば別ですが、小売規格の六割以上という税金をしょってやっていただいておる事業でありますから、やはりそういう際に、卸、生産者との関係の調整をはかるということはわれわれとしては当然の務めであると思います。従いまして、そういう点に十分注意をいたしまして、申請に対しそういう点を含んで善処をいたしたい。ただし、これは三層の意見が一致するのでなければ動かないというのでなくて、やはりある意味では、それぞれ三層矛盾があるといいますか、相対立した利益がちるわけであります。それを最後に踏み切るという意味においては、三層それぞれにおいて、また役所側においても踏み切らざるを得ないという場合は、こうしなければいかぬと思います。ただしそれも、対立的なものを根本とした考え方でなくて、やはり全体的な調和をとって働いていくということをやっぱり奥に持って考えませんと、大へんなことになると思いますので、そういう全体の調和を含みながら、しかし必要な場合には踏み切りをせざるを得ない、大へん抽象的でありますか、そう考えております。
  22. 奧村又十郎

    奧村委員 これについていろいろお尋ねしたいが、これは、お尋ねしても適切な御答弁を得るということは困難であろうと思いますから、これはこの程度でやめておきます。  次に清酒に対する生産統制について、現行法との関係をお尋ねします。現在清酒に対しては、非常に厳重な生産統制が行われておる。また一方、酒類業団体法によって自主統制を行うことができるし、またもっと自主統制を強化するために今回の法律改正が行われた。ところが、現在行われておる清酒生産統制は、この酒類業団体法に基いてはいない。これは先日の御答弁で明らかであります。この統制根拠は、食料管理法にあると言われる。しかしアルコールの制限については、これは法的な根拠は薄い。これも先日の御答弁で明らかであります。そこで、そういう状態は清酒だけであろ、ビールその他においては、生産統制は行われていない。そこでもっと酒類の需給が乱れてきた場合に、いつまでも清酒だけを政府生産統制にゆだねておくのか。また食管法がなくなって、米の統制がはずれた場合、一体どの法律によって政府統制というものを維持していくのか、この点がこの法案に重大な関係を持つと思う。そこで食管法が変って、米の統制がはずれた場合には、私は、酒類業団体法による自主統制清酒統制をしていかなければならぬと思うが、政府はどう考えておられますか。現在の酒団法以外に別途法律根拠を作って、政府統制を維持しなければならぬと考えておるかどうか、これを明確にお答え願いたい。
  23. 原純夫

    原政府委員 米の統制がはずれます際というのは、この食糧のみならず、酒類業についても非常に大きな前提の転換でありますから、どういう事態になるか、実はその場合には、いろいろな問題が起るだろうと思います。従いまして、その場合起ります事態十分考慮に入れて結論は出したいと思いますが、ただいま一応私の考えといたしましては、そういう際に、この酒団法以外に根拠を持って統制をやるということは行き過ぎではなかろうか。やはりそういう際には、業界の不安というものが激化をしてくるんじゃないか、そういうような前提で、酒団法の系列でやる。ただ、今お願いしております条文だけでそういう際に十分であるかどうかという点については、なお相当な疑問があります。そういう点については、十分今後とも研究いたしまして、そういう際に遺憾のないようにという考えは持っておりますが、大体そんなような方向考えて参りたいと思っております。
  24. 奧村又十郎

    奧村委員 ただいまの御答弁によると、米の統制がはずれた場合でも、清酒統制は、この酒団法規定だけではいけないんだ、別途統制考えておるというふうに受け取れる、そうじゃないのですか。米の統制がはずれた場合は、この酒類業団体法による自主統制一本に考えておられますか、重ねて伺いたい。
  25. 原純夫

    原政府委員 ただいまのは非常に複雑な問題ですから、これを百パーセントお約束せいと言ってもできませんが、大体そういうふうに考えているということをただいま申したのであります。
  26. 奧村又十郎

    奧村委員 これは、ビール、しょうちゅう、その他すべて自主統制にまかされておるのに、清酒だけ別途政府統制にいつまでもしておくということは、いけないと思うのだが、私は、ただいまの御答弁によって了永いたしました。  それでは免許の問題をお尋ねしておきます。これも先日来議論のあったところでありますが、私は決して無理な理川をこねておるつもりはありません。大蔵省の免許せられることは、必ず正しいという建前でしょうが、しかし必ず正しいということを一体どのようにして第三者に納得させるかという問題があるから、それは業界にも一応諮問をかけ、これを法律規定してもらいたい、こういうことで、理論的根拠は確かにあると私は思う。というのは、この酒団法の精神を生かすために必要なことである。そこで、私はごく直截簡明に一例を申し上げたい。これほど業者のために自主統制の思いやりのある規定を作られようとしておられるが、この改正案によっても、政府業者自主統制をたたきこわそうと思えば何でもない。というのは、先日のあのビール免許を見ればわかる。宝ビール免許をおろして、そうして百円ビールを売らせれば、これは既存の業者が、いかなる協定を結んでも、政府の新規の許可によって統制はすべて見ない。せっかく……。委員長、やめますか。
  27. 山本勝市

    山本委員長 続けて下さい。   〔「採決々々」と呼ぶ者あり〕
  28. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは、私はあとでいたします。
  29. 山本勝市

    山本委員長 他に御質疑がないようでありますので、御質疑はこの程度で終了して御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 山本勝市

    山本委員長 御異議なし認めます。  これより討論に入るのでありますが、討論通告がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。これより採決いたします。お諮りいたします。本法律案原案通り可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって本法律上案全会一致をもって原案通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、先例によって委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  34. 山本勝市

    山本委員長 次に、準備預金制度に関する法律案議題といたします。本日は、本法律案審査のため、参考人として日本銀行総裁山際正道君の出席を求めております。参考人の方には、大へんお忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。  それでは質疑通告がございますので、通告順にこれを訂します。春日一幸君。
  35. 春日一幸

    春日委員 日銀総裁に伺いますが、今回の第一次、第二次にわたる公定歩合の引き上げ中心とするさまざまな金融抑圧政策によりまして、経済界には大きな衝撃を与えておると存ずるのであります。たとえば設備投資抑圧され、さらには商社金融が制限され、特にまた輸入金融についても大幅の条件が付されておる模様であります。こういうような大筋への金融抑圧市中金融機関に与える影響は甚大でありまして、かく市中銀行は、次第に選別融資方向に向ってだんだんとその方針を強化しつつある様子でありまして、そのしわは、中小企業全般に対しても大きな重圧となって現われておるのであります。かくて、各地方におきましては、商社の倒産、破産は相次いでおり、連鎖反応を受けて、中小企業は大きく破産をし、まさにゼネラル・パニック寸前の気配がないわけではないのであります。  そこで、日銀総裁は、現在の金融情勢を何と見ておるか、すなわち、こういうような事態は何ら憂うべき内容を含んでいないと考えておるか、現状に対する日銀総裁の見解並びに将来への見通しについて、まずお伺いをいたします。
  36. 山際正道

    山際参考人 ただいま御指摘のごとく、本年に入りましてから、三月に第一回、しかして五月に入りまして第二回と、引き続き公定割引歩合引き上げをいたしました。この根本の原因は、その際、私はできるだけ周知に努めたつもりでございますが、要するに、本年に入りまして国際収支の状況が思わしくない情勢を続けておるのでございます。日本経済界は、御承知通り、一両年来好調を続けて参っておるのでありますけれども、日本経済の健全な発展の根拠には、国際収支の均衡が保持せら、れその健全さが維持されるということが基本前提であるべきことは申すまでもないと思うのであります。さような場合において、国際収支の動向が思わしくないということは、これまことに金融政策といたしましては、基本的にものを考えねばならぬ段階にきておるという判断をいたすわけでございます。そのもとは、御承知通り、輸出も引き続き好調を保ってはおりますけれそも、何分にも輸入がさらにそれを上回って増大しつつある、その結果として、国際収支が逆調となり、外資が減少しつつあるということに相なっておるわけでございます。  しからば、何ゆえに輸出の増大を上回ってさらに輸入が継続されつつあるかという点でございますが、いろいろこれを研究いたしますと、われわれの判断といたしましては、相続く投資需要の増大というのが基本になりまして、各種の原材料物資の輸入が非常に増大して参っておるということに帰着いたすと思うのであります。もちろんわが国の経済の基盤を拡大し、その設備等を合理化し、近代化し、かくて雇用も増大をして、経済の繁栄を続けるということはまことに望ましいことでありまして、われわれのこいねがうところの基本はそこにあるのでありますけれども、これが行き過ぎますと、俗にいう元も子もなくなると申しましょうか、基本を破壊する、かくては、一時、表面的には非常な経済の発展が持続されておるような形をとりましても、いつかはそれは根本から破壊されて、国民が非常に苦しむという事態考えられるわけでございます。そこで、われわれといたしましては、できるだけこの経済活動の活況を継続的に、適度に長く維持するということを政策の基本に置くべきではないか、かように考えるわけでございます。かような見地からいたしますと、投資需要——投資需要と申しますれば、設備投資もございますし、またいわゆる在庫投資もございますが、これらが国民の蓄積の範囲を越えて、あまり急激に増大をいたしますことは、今申し上げました経済の基盤を危うくするという考え方でございますので、これを金融政策の面からいたしますと、適度に調節を加うべき段階にきておる、かように判断をいたしたわけでございます。  しかして、三月二十日に実行いたしました第一回の公定歩合の場合は、御承知通り日本の金利水準は、国際的に見ましてすでにもう相当高い水準にあるのでございます。相なるべくは、金利の水準をさらにさらに高くするという方法によらずして、しこうして金融の調節が、今申し上げましたように、国民の蓄積にかない、国際収支の均衡を回復するという線で実行できますならば、それは一番望ましいことであると考えますが、第一回、すなわち三月の公定歩合の改訂は、主として正常金融と申しますか、健全金融と申しますか、金融機関を直接の対象といたしまして、ただいま申し上げました国民蓄積の範囲において設備投資需要、在庫投資需要等に応じまして、その貸し出しを調節をするという主として健全金融の要望をもとにいたしまして、その趣旨において公定歩合の改訂をいたし、金融のあり方の正常化をはかったわけであります。その結果いわゆる健全金融の線を守られまして、蓄積の範囲において貸し出しが実行せられ、かく金融が調節されて参りますならば、勢いそれが企業界にも反映をいたしまして、適度の水準に経済の発展の速度並びにその規模が維持されるもの、かように期待をいたしたわけであります。しかるところ、その後の情勢を見ますと、第一回にとりました措置だけでは、その後の情勢は十分改善の徴候を見せて参っておりません。すなわち国際収支を改善いたしたいという金融面からの効果も、それほど十分には現われておらず、自然その背後にある、先ほど申し上げました投資需要等も十分には調節されていない。かくては、金融機関を主たる対象として考えました、健全金融を要望する第一回しの措置だけでは不十分と考えましたので、そこで今回は、金融機関はもとより、企業界並びに一般国民の方々に対しましても事情を訴えまして、投資の過度の行き過ぎを適当のところに調節をして、長く経済の活況を維持するという見地から、この引き上げ措置を講じた次第でございます。  むろんその結果といたしましては、金融は引き締めに転じまして、ただいま御指摘のごとく、設備拡張、あるいは商社金融、あるいは輸入金融等について、その引き締めの影響が漸次現れて参っておりますことは、その通り考えます。そうなりますと、自然、これまたただいまご指摘のごとく、市中銀行におきましても、いわゆる選別融資と申しましょうか、隘路産業、新規産業、その他国民経済の基幹となるべき方面に対する融資はこれを優先的に考えまして、俗にいう不急不要、先へ繰り延べ得る部分につきましては、なるべくそれをあと回しにし、また規模の過大なるものにつきましては、これを適度に圧縮をするという措置を漸次とって参っておると思うのであります。  ただいまのお話によりますれば、その結果が勢い中小企業への金融上の圧迫となりつつあるのではないかというお話でございますが、この点は、私ども金融の引き締め措置をとります場合に最も戒心をいたしておる点でございます。私は、むろん中小企業は、産業構造上日本経済の最も重要なる部分を占めておるものと考えておりまするし、また大企業等におきましても、ひっきょう健全なる中小企業の基盤の上に、相ともに大企業も存立しておるということを漸次自覚をいたして参っておると信ずるものでございます。自然中小企業の、あるいは技術上の指導であるとか、経営上の指導であるとか、それらの点につきましても、大企業等においても自然理解を増しつつある傾向を私は認めておるわけでございますか、何分にも中小企業と申しましてもきわめてその種類も多く、またその内容につきましても千差万別でございます。少くとも健全なる経営、そしてまた十分技術向上等に努力を続けつつある中小企業に対しましては、私は金融上におきましても、中小企業なるがゆえに金融がついてこないという状況は、まずなくて済んでおるのではないか。これを統計上に見ましても、各種金融機関の貸し出しの数字上、さようなものに対する金融は引当伸びておりますし、またそれを土台に、大企業等もまたその成績を上げておるわけでございますから、さような健全なる経営、優秀なる技術を持つ中小企業に対しましては、これはますます相当のの金融がついて参っておるのじゃなしかというのであります。何分にも今申し上げました通り中小企業はその内容において千差万別であり、またその種類もはなはだ多いのでございますから、すべてのものがうまく金融がついておるということにつきましては、それはそこまでは申し上げかねるかと考えますが、しかし御承知通り中小企業につきましては、特にこれを専門とする政府金融機関も種々あることでございまするし、あるいは普通銀行等、もしくは信用金庫その他中小金融機関の金融上の対象となり得るもの、また特殊の政府中小金融機関の対象となり得るものにつきましては、相当これは金融が進みつつあるものと考えておるわけでございますが、ひとりこの問題は、申し上げるまでもなく、単に金融上の問題のみにとどまりませんで、各般の施策が相待ってこの中小企業が振興せられ、その基盤の上に経済一般が栄えるという状態こそ望ましいのでありまして、各般の総合施策が要望せられる次第と思うのでございます。かかる金融引き締め措置が漸次連鎖反応的に影響を及ぼして、あるいは将来に大きな蹉跌を経済界が起すのではなかろうかという御懸念でございますが、私は現在の段階におきましては、むしろさような事態を避けまする意味において、今日この措置をとることが必要であったと思うのでございます。所期のごとくこの効果が浸透いたしまするならば、私は大きな災いを見ることなく、むしろ経済界を健全にその景況を持続し得るもの、かように考えておるわけでございます。  今後の見通しはどうかというお尋ねでございますが、むろんこれらの経済上の問題は、単に国内情勢のみで決定せらるべきものでもなく、日本のごとく対外経済情勢に作用せられやすい脆弱な経済の上におきましては、その対外経済関係も種々考慮する必要があろうかと思うのでございますけれども、私は全体として判断をいたしますると、これこそわれわれが今後この判断を十分に突き詰めて、いかに努力をするかということに将来の見通しがかかると思うのでございます。もしわれわれが真にこの現在日本経済が置かれておる立場を十分に認識をいたし、これを十分納得いたしまして、企業家も今の旺盛な投資需要を経済力に合うところの段階において、あるいはこれを縮小し、繰り延べをする。また消費者大衆におきましても、現在推進をいたしつつ去りまする国民貯蓄推進の運動にこぞって参加せられまして、少しでも蓄積を多くする。かような蓄積を増加し、また経済拡大の歩を適度にその限度に調節していくということに成功をおさめまするならば、私は日本経済の将来は明るいと思うのでありますし、またわれわれは努力によってこれを明るくせねばならぬ、かように考えておるのでございます。なかなか現在だけの措置、または現在現われておりまする状況だけで、もう前途は安心だとは私は申し切れぬと思います。むろんこれは努力を要することではございまするけれども、長い日本経済の安定的な発展のために、この際われわれは一たび全局にもう一ぺん目を注ぎ変えまして、そうして協力をいたしまして、この経済の適度の調節による永続的な繁栄ということを、一致いたしまして努力いたすべきものと考えておる次第でございます。
  37. 山本勝市

    山本委員長 この際私から申し上げますが、御承知のように、今質疑者が三人ございます。そこで、日銀総裁の方から私の方へ申し出がございしましたのは、きょう午後から日銀政策委員会を開くので、従って午前中にぜひ帰れるようにしてもらいたい、こういう申し出がございますので、質疑者の方も、できるだけそういう時間的な関係に沿っていただけるようにお願いいたしたいと存じますし、なお御答弁の総裁の方も、あなたからの申し出でございますので、あなた自身が、一つそういうつもりをもって願わぬと時間がかかるので、その意味で、どうか三人の方にお願いいたします。
  38. 春日一幸

    春日委員 申し上げるまでもなく、国会はとにかく国権の最高機関なんです。従いまして、政策委員会、政策委員会といって、しょっちゅうそんなことを言っておられるけれども、政策委委員なんかいつでも開かれる。これは重要な問題だから、時間をかけて、そちらの方を延ばして、こちらの方をやってもらわなければいかぬ。そんなはかなことはありません。私も委員長の要望がありますので、できるだけ簡潔に質問をいたしまするが、今回の公定歩合の影響、その効果、これは三、四カ月先でないと私はわからぬと思う。あなたが期待されるように、これによってわが国の金融が正常状態を取り戻してくるか、あるいはまた設備投資商社金融輸入金融抑圧、それからそのしわ寄せが中小企業に来たるごとによって、だんだんとパニックを生じてきている。そうして、金融はあるいは健全になるかもしれないけれども、そのかわり企業そのものに大きな破綻か生ずることになるかどうか。これは三カ月か二カ月たってみれば、はっきり現実の事柄となって証明されるであろうと考えます。日経新聞か報道しておるところによりますと、あなたか日銀総裁になられて、あなたの政策のためかどうかわからぬか、いずれにしても、繊維関係中心とするところの商社破産というものは大へんなものです。問屋関係が二月は三十八軒、三月は五十三軒、そういうようなことで、次々と中小企業に対しても大きな連鎖反応を起しておる。さらにこれが第二次の公定歩合の引上げによって、私は愛知県でありますけれども、一宮なんか、一日に二軒も三軒もぶっつぶれておる。それから発行された手形は、ことごとく不渡り手形になっておるというので、何十軒となくその傘下にあるところの中小企業か、いずれもお手上げをいたしておる。それが大きな不安となって、手形はもはや受け取らぬということで、ほとんど開店休業のような状態になってきている。ことごとくこれは、あなたの金融政策のよってしからしむるところでありますが、その結果どうなるかということは別問題といたしましても、そこで私はあなたに伺うが、現在のこの金融情勢は正常な状態であると考えるかどうか。第一次の公定歩合が三月二十日に引き上げられましたときには、これは別に警戒を要すべき状態ではない、こういう工合に述べられておりました。ところが、それでは何らの効果ももたらし得なかったので、今回第二次の引き上げが行われた。従来の楽観論と警戒論とがこもごもあった中において、これはもはや警戒を要すべき段階にあるという、こういう結論がつけられたのではないかと考えるが、現在こういうような金融引き締めによって現われておるいろいろな結果については、日銀当局においては、十分その調査は行き届いておると思う。脱在の金融情勢は警戒を要すべき段階にあると思うかどうか、この点について日銀総裁の所見を伺います。
  39. 山際正道

    山際参考人 私は、簡潔にお答えをいたしますが、放置すれば警戎を要する段階まで参っておると思うのであります。従って、これを金融措置によりまして、その国民経済上思わしからざる事態の発生を本然に防止したいというのが、根本考え方でございます。
  40. 春日一幸

    春日委員 そうすると、日銀総裁に伺いますが、本年の二月四日本会議における池田大蔵大臣の財政淡説によりますと、こういうことを述べられておる。「ここ両三年来の健全化政策によって、経済は安定し、通貨価値に対する国民の信頼が高まって、金融機関の預貯金は順調に増大し、金利水準は低下し、金融の正常化は大いに進みました。今後も、健全な財政と相待って金融もまた正常な基調を維持すべきものと存じます。」こう述べておる。これは本年二月四日の大蔵大臣の金融財政の見通しである。この見通し通りであると思うか、あるいはこの見通しは誤まっておると思うか、御答弁を願います。
  41. 山際正道

    山際参考人 私の判断に関する限り、大蔵大臣のお述べになりましたところは、何ら事態の推移に応じて手をこまぬいてなすところなくして経過しても、なおかつ憂うるに足らぬという御趣旨ではなかろうと拝聴いたしたのであります。すなわち、変化を生ずることがありがちな経済界において、その変化に応じて適時に適策をとっていけばこそ、金融は正常もしくは健全な状態を持続し得るもの、かような解釈のもとに、その御演説を承わっておった次第であります。
  42. 春日一幸

    春日委員 そんなことは当りまえのことです。見通しというものは、相当長期間の将来にわたって見通しを立てて、それを正常な状態で今まで通りのやり方でやっていって心配がないというのが見通しなんです。二カ月や三カ月にこういうような異常事態か発生して、第一次の公定歩合の引き上げを行い、それで足らずして一カ月半もたたないで第二次の策を打ってくる、これは異常手段じゃありませんか。なおほっておけば警戒を要するという状態である。警戒を要すべき状態か二カ月先、三カ月先に発生するということがわかっておったならば、少くとも正常な基調を維持すべきものと考えるというような、こんな演説はできるはずはないと思う。  さらに私は申し上げるのでありますが、さらにそれに言葉をついで、大臣がこういうふうに述べておられる。「今日、輸入増大の傾向が見られ、また、経済拡大とともに、その傾向は今後も続くものと予想されるのでありますが、この輸入増大がやがて輸出の加となるものである限り、何らこれを憂うるには及ばない」と言っておられる。従って今後の政策は、今までいろいろやってきたこの政策に対して補完的な措置を講じて、そうして隘路産業——たとえば電力だとか、その他の険路産業、こういうものの均衡をならしていくところに、経済政策の重点が置かれておるということが、この秘説の全般からにじみ出るところの印象ですよ。警戒を要すべきところがあるから、金融政策上いろいろな措置を講じなければならぬというようなことは、ここに何にもうたってない。しかし、これは大蔵大臣にあとで伺うといたしまして当然あなたは日銀総裁として適切なる金融政策を行うということが、あなたの本来の任務です。  しからば私は伺うのでありますか、三月十九日に第一次公定歩合を引き上げるとき、今日第二次の引き上げをしなければならなかったというような、こういう事態を何ら予測することができなかったかどうか。なぜそのときやらなかったか、その事情を御説明願います。
  43. 山際正道

    山際参考人 ただいまお尋ねの点は、先ほどもちょっと私としては触れたつもりでございますが、元来が日本の金利は、非常な荷い水準にあるのでございます。相なるべくは、これ以上それを高くすることによって、そうして金融調整の目的を達するということ、それもむろんでございますが、それよりもむしろ健全金融の線を強化する、簡単に申しますれば、蓄積の範囲において金融機関が貸し出しを実行していくという線を守ってもらいたい。そういたしますれば、自然企業の行き過ぎ等も是正される結果になりますので、まず、そこから手始めに行うべきである。しかして、それが効果をおさめまするならば、それ以上さらに金融措置を講ずるというようなことは、なるべく避けたいというのが当時の私の心境でございました。
  44. 春日一幸

    春日委員 あなたの政策は、どんな政策でも、あなたが打った限りにおいては、それは効果の奏する政策を講じてもらわなければ困る。ためしに、トライアルにやってもらっては迷惑千万です。私はあなたにお伺いをするのでありますが、あなたの三月十九日の日銀総裁談、それから五月七日の日銀総裁談を読んでみると、これは全然首尾一貫していない。その証拠が相反してる。申し上げまするが、三月十九日のときの日銀総裁談は、こういうことを言っておる。これは物価騰貴、国際収支の悪化、設備投資の動向に警戒信号を出す意味で、今回の政策を行なったわけではないと言っておる。ところが五月七日にくると、同じ日銀総裁は、今度の措置は、積極的な警告であると言っておる。それから今度の金利政策について、こういうことを言っておられる。三月十九日のときは、今度の措置が直ちに市中金利に影響を及ぼすとは考えられないと言っておる。ところが五月七日には、今回の公定歩合の引き上げについて、市中貸し出し金利も上るものと予想しておると言っておる。これは、とにかく三月十九日と五月七日と一カ月半もたっていないと思うのだが、そのときに、あなたが警戒を発する必要があるかどうか、これは予見できなかったですか。それから市中金利を上げなければならないかどうか、その三月十九日において、五月七日の状態か予見できなかったか。あなたは大きな調査機関も持っておって、各支店においては大きな情報機関を持っておられる。全く重い責任のある地位にあるのだが、一カ月半の見通しもあなたには立たなかったのですか、その点の御説明を願いたい。
  45. 山際正道

    山際参考人 第一回の措置の趣旨は、先ほど申し上げました通りでございます。しからば、その当時第二回のような状態か間もなくやってくるであろうということが予想できなかったかというお尋ねでございました。私は、極力第一回の措置によって、第二回の措置を要するような事態を発生させたくない、また努力いかん、効果いかんによりましては、そんなことをせずにいき得るものと実は考えておったのであります。ところが、その後の情勢は非常に帳雑な情勢であると思います。現に御承知のように、俗にいう楽観論、悲観論というものが交錯をしておる、あるいは輸入によって増大いたしました在席は、輸出にはね返るか、あるいは国内消費に向うか等、いろいろな議論があったわけでございまして、その点を的確に将来を見通すということは、当時の情勢においては非常にむずかしかったと思うのでございます。少くとも私といたしましては、第二回のような措置を必要としないような事態を、第一回の措置において実現したいというつもりでいたしたわけでございます。
  46. 春日一幸

    春日委員 第一回の措置が失敗であった、判断を誤まった、見通しは誤まっておった。従ってこれに追い打ちをかけて、補完のために第二段の措置を講じたということでありますけれども、そういう日銀総裁の誤まてる判断の結果、わが国の経済に対してどういう犠牲をもたらしてきたかということについて、十分御判断を願わなければならぬと思う。責任を感じてもらいたいと思う。ただいまあなたの御説明の中にも、中小企業に対しては、業種がたくさんにわたるし、その構造、規模が複雑多岐にわたるので、なかなか一体には措置しかねるというようなことだが、しかしまあ全体にはうまくいっておるというような意味の御答弁がございました。事実は全くその逆であります。あなたは、当然東京手形交換所の手形の不渡り件数がどういう状態であるかは御調査になっておると思うが、四月末の東京手形交換所の不渡り件数は、わが国において手形交換が始まって以来の最悪のレコードを示しておる。五万三千何百通という、そういう大きな数を出しておるのです。この手形の額面の平均が、十何万円という小額手形である。これを推測すれば、ことごとく中小企業者が発行した手形が、こういう不渡り件数となって現われておる、おそるべき恐慌の前夜を思わせるものがあるのです。私は一昨日日曜で現地へ帰って、中小企業金融、経営の状態をいろいろ聞いたのだが、毎日のごとくにつぶれていって、まるで恐慌状態です。受け取ってきた手形は銀行が割らない。たまたま、お話ししたように、金融の引き締めのために選別融資となって、そうして信用度の高きものから、重点度の高きものから漸次これを低きに及ぼしていくので、中小企業にことごとくしわが寄せられて、ちょっと待ってくれということになって、手形も割ってくれない、結局お手上げの状態になっておる。それだから、そういうような状態かあらかじめあなたの方で予測されなければならぬではありませんか。金融財政事情の、昨年の八月十三日、あなたの方の調査局長の関根君がものした問題点等によれば、もうすでに昨年の八月ごろからそういう状態はあるんだということの問題点を指摘しておるんですよ。だから、この関根報告等に徴しても、あなたは日銀総裁、国立銀行の責任者たる立く場において、昨年の九月、十月、少くとも十二月ごろに何らかの策をとるべきであったと私は考えるわけなんです。あなたは金融と財政というものについて、どういう見解を今おとりになっておりますか。金融と財政は一体であるべきか、あるいはかってドッジ氏が警告を発したと同じように、金融の独自性、財政は財政の独自性、これを完全に分離、独立した形において連帯さるべきであるという説をとるか、あるいは金融、財政一体の形でこれをやっていくべきであると考えるか、あなたの御所見をこの際伺っておきます。
  47. 山際正道

    山際参考人 わが国は、御承知のごとく通貨制度といたしまして、管理通貨制度を採用いたしております。その運営に関しましては、むろん金融面は自主、独立性を保持しながら、金融政策を中央銀行として実施すべきことは当然でありまするけれども、同時にまた円の対外価値等の問題に関しまして、金融政策が財政上の問題と全然無関係に動いてよろしいということでも、日本経済はうまくいかぬと思うのであります。従いまし、て、お互いに、金融は十分その健全性を自主的に保持すると同時に、財政もまた健全でなくてはならぬ。かくして両々協調の結果、わが国の管理通貨制度は円滑に運用し得るもの、さように私は考えておるのでございます。
  48. 春日一幸

    春日委員 それは、結局はそういう杉にはなるでありましょうけれども、その事柄のよしあしは別として、日銀に日銀政策委員会というものが特に設けられておるという点に重点を置いて、金融というものが財政に追随をして行われていった方がよいか、あるいは二十四年の新制度、金融と財政との分離の確立、こういうような立場において、金融はそのつどそのつどの情勢において、適正、的確な措置を機動的に打っていく。時には財政方針と相反する場合があったって、これはやむを得ない。金融を健全化していくためには、日銀の政策、使命、任務というものはまた別個のものがある。そういう意味で、これは当然相協調してやっていかなければならないけれども、時には財政政策と相反したところの金融政策をとらなければならぬ場合もあり得ると考えるし、そうしてその日銀の使命、性格から考えて、かつは日銀政策委員会の構成の実態から考えて、私はそういうような政策を時にはとらねばならぬ場合があると考えるが、この点に対して総裁の見解はいかがでありますか。
  49. 山際正道

    山際参考人 私は、先ほど申し上げました通り金融はどこまでも独立、自主の判断に基いて、その本来与えられました使命を遂行すべきものと考えます。同時にまた、今申し上げました通り、財政面とも、今日の通貨制度のもとにおいて、十分なる協調を保つべき地位にあることも考えております。もし、しからば、その両者が矛盾する場合はどうかということでありますが、むろん日銀にその職を奉じ、責任を持つ者といたしましては、日銀本来の判断に基きまして行動すべきことは当然と考えております。
  50. 春日一幸

    春日委員 これは新聞の報道でありまするから、正確ではないかもしれませんけれども、第一次公定歩合が引き上げられた三月二十日でありましたか、そのときは大体日銀自体は、金融政策上その責任と権威において、二厘かあるいは三厘引き上げなければならぬという線を出された。ところが大蔵当局が、それはいかぬ、この間演説したばかりで今ここにこういうように金利をを引き上げる政策はよろしくないということで、大蔵省から圧力がかかって、日銀はそういう必要を認めつつも、これに屈服をして、ああいう中間的な、効力を奏しないところの第一次の引き上げを行なったというようなことが新聞なんかに——それは責任のないものではありますが、報道されておるが、その間の経緯はいかがでございますか、差しつかえなければ述べておいていただきたい。
  51. 山際正道

    山際参考人 私は、先ほども申し上げました態度において、終局的には日本銀行の最高の責任者として、独自の判断をどこまでも押し通す信念を持っております。しかしながら決定に関しましては、私は広く世間の各種の論説に耳を傾けまして、その独断、独走に走ることは避けねばならぬと慎しんでおります。ただいま御指摘の点につきましては、私は何ら政府当局の指図なり、その権成に屈したことはございません。どこまでも最終的に私自身の判断によりまして実行いたしましたことをはっきり申し上げます。
  52. 春日一幸

    春日委員 いずれにしても、池田さんが大臣になられて、あなたが日銀の総裁になってから、世の中がだいぶひどくなってきた。この点の責任は、両者で均等に一応感じてもらわなければならぬと思う。  そこで質問を進めまするが、今回の措置を高金利政策と見ることは語弊があるとあなたは述べられておる。ところが、結局公定歩合の引き上げによりまして、市中金利はこれに追随した、直結して上げられたという形をとっておる。これが高金利政策でなくて何でありますか。わが国の金利は、現にあなたが御指摘になりましたように、国際水準より上回っておる。現在でも上回っておる。それが今度の第一次、第二次によってさらに上回ってきておる。この産業経済に及ぼす影響は重大でありましょう。その結果国内消費物価を高める。輸出の面では、結局これは輸出の障害となることは、私は経済の必然であると思う。この点、総裁はどういうふうに理解されておりますか。こういう高金利政策が二、三カ月で正常化されて、再びこれが切り下げられれば問題はないけれども、そんなに容易には運ばないと思う。半ば長期にわたってこの超高金利政策が持続される限り、やはり国内の物価水準を高めてきて、そうして生産コストを高め、輸出の障害になることは必然のことである。総裁はこれに対してどういう見解を持っておりますか。
  53. 山際正道

    山際参考人 私は金利を引き上げましたが、それに伴いまして、市中の貸し出し金利、俗にいう短期金利がこれに追随して、それが過大な在庫投資等を抑制する手段として役立つことを期待いたしておるのでございます。御指摘の高金利政策とこれを呼びますのには、何も日本の金利を非常に高い水準に置いて、相当期間にわたって維持することを適当とする判断でやっておる考えではございませんので、むろんすみやかにその金利が世界の水準に近づくことを祈念いたしておるわけでございます。しかし、今日それではいつになったらそうなるかとお尋ねがございますると、それは、私は今後の判断に待たなければ何とも申し上げかねるということをお答えいたさざるを得ないのであります。極力私は、今回の金利引き上げとして実現をいたしました趣旨に従いまして、一日も早くその効果が表われて参りまするように、一そう今後も努力を続けたいと思っておるわけであります。
  54. 春日一幸

    春日委員 それは今後に待たなければわからぬというようなことなら、これは市中のだれでも言うようなことなんです。日銀総裁というものは、ある程度の見通しを立てて、そして少くとも国会における所管でありまする大蔵委員会の御答弁としては、私の質問に対してやはり責任ある見通しを立てて御答弁を願わなければなりません。私のお伺いをいたしておるのは、現在ですらもすでに高金利である、国際水準に比べて日本の金利は高いのだ。第一次、第二次のこの公定歩合の引き上げを通じて、市中金利はさらに高くなった。二厘高くなりました。その結果、高金利政策がもたらす影響は、結局産業経済影響をそのままもたらしてくる。すなわち、生産コストを高めて、その結果は輸出の障害となり、そして消費物価の値上りとなって現われてくる。そういうことは、結局金融は健全となるかもしれないけれども、国内においては消費水準が高くなって、輸出がとまってくろ、減ってくる、こういう結果になりはしないか。そういうことの心配はないか。あるいはあるならば、あなたとしては、当然何らかの対策がなければならぬ。それを述べていただきたいと言っておる。やってみなければわからぬというような、そんなばかなことはない。そんなことは次郎さん、太郎さんでも言えることだ、何も日銀総裁に尋ねることはない。御答弁願いたい。
  55. 山際正道

    山際参考人 私は、ただいま春日委員のお懸念になるような事態を招来させないために、今回の措置をとったものでございます。私は、むろんこれに関連をいたしまして、今後の事態の推移によく注視をいたしまして、そして適時には適策を講じていく必要があれば、これを実行するということによって、輸出の競争力も、むしろこれが経済基盤の確立、国際収支の均衡回復という見地から促進をせられ、また自然日本経済も、高い水準においてその繁栄が持続されるということを願っておるのでございます。私は、今後この線に沿って最大の努力をするということを申し上げておる次第でございまして、私は、努力なくしてこの事態が達成できるとは考えておりません。
  56. 春日一幸

    春日委員 あなたは、努力をされると言われておるが、その努力がもしも効果を奏しない場合、私どもが指摘しておる、心配しておるがごとく、物価水準を高め、輸出の障害となる、そういうような結果をもたらす場合もあり得ると考えるが、御答弁願いたい。
  57. 山際正道

    山際参考人 私は繰り返し申し上げまする通り、さような事態は、ここで手をこまねき何らなすところなくして過ごせば懸念されますがゆえに、いろいろと手を打っておるわけでございます。極力与えられた機能の範囲内おきまして、その現われてくる現象に応じた手を打ちまして、終局においては輸出を増進し、国際収支を安定し、結局日本経済の安定的発展を持続するということに努力をするということを申し上げておるわけでございます。
  58. 春日一幸

    春日委員 質問を先に進めますが、そういたしますと、公定歩合は長期金利と直接つながりを持たぬので、公社債の金利が上ることは期待しないとあなたは述べられております。そういたしますと、三十二年度の政府の財政投融資資金計画では、公募債及び借入金といたしまして、総額八百四十五億が予定されておるわけであります。北海道東北開発公庫から住宅公団、道路公団、国際航空、国有次道、電電公社、地方債、これを含めて八百四十五億円になっておるわけなんです。これはことごとく市中金融に依存をいたそうといたしておる。ところが、今回の公定歩合の引き上げで、市中金利は上るけれども、公社債の金利などは、長期金利は一切手を触れない。これは大蔵省の御方針のようでもあり、またあなたも、総裁談話の中でこれを述べられておる。そうだといたしますると、短期金利は上っております。ところが短期金利と長期金利とのふつり合で、結局この公社債の売れ行きは極度に鈍ってくるということは、水が低きに流れると同じ原理なんです。従いまして、とうてい三十二年度の財政投融資計画は遂行不能になるのではないかと私はおそれる。八百四十五億というものが消化できないのではないか。一般市中金融は梗塞されておる。梗塞されておる金融の範囲内において、貸し出し金利は上っておる。そこへ長期の低利の公社債を買えと言ったところが、これは銀行が買えない。一つは資金源がないし、一つはそろばんが合わないから買わない。消化不能になった場合は、結局財政投融資計画を変更しなければならないのではないかと私たちは心配するが、これは後ほど大成大臣にもお伺いをいたしたいと思うが、あなたに、日銀総裁としてお伺いをいたしたいことは、長期金利には手を触れないでおいて、そうして八百四十五億を年度内に消化できるという確信をあなたは打つか、この点を伺います。
  59. 山際正道

    山際参考人 第二回の措置をとりましたときに、私が新聞社の方々に申しましたことは、私は、なるべく長期の資金の低利に融通されるような事態を保持したい、またそれが自然に行えるような事態を一日も早く招来したいがゆえに、いわゆる高金利の様態を望んではいないということを表明いたしたわけでございます。しからばお尋ねの点は、お前はそれで行けると思うかというお尋ねだと思いますが、私は極力その線に努力を傾けるつもりでございます。むろん日本経済は、昨年と今年とを御比較になりますとおわかりのように、何と申しますか、底が浅いと申しますか、短期間に非常に変化をいたしました。でありまするから、なかなか確定的なことを申し上げることはむずかしいと思いまするけれども、それは、またわれわれの努力いかんにもかかっておると考えるのであります。極力私は、金利は引き上げないで済むような方向に持っていきたいと考えております。もしそれが、さような情勢にうまく参りませんければ、それはお尋ねのようなことにも相なりましょうけれども、私は、ただいまの場合、新聞社に申しましたような線で極力努力を続けて参るつもりでございます。
  60. 春日一幸

    春日委員 むろんあなたに大いに努力をしていただかなければならないし、いい結果の得られることを、国民の一人として、私は期待するものであることは間違いありませんが、これは、皮肉に申し上げるわけではないけれども、あなたの見通しは、ことごとく正確であるとは断じがたい。そうしてあなたの政策というものは、ことごとく奏効したかどうか、これは結果に徴して明らかである。こういう意味で、あなたが本日この長期性の金融に対して、あくまでも今までの金利というもので、低金利政策をとっていくということであるならば、私は、結局そういうものは消化できないんじゃないか。消化できなければ、この大きな社会政策の根幹になっておる住宅政策、道路政策、あるいは交通政策、特に地方財政、その他北海道、東北の開発計画、こういうような政策に大きな障害を来たすんではないか、よってもって実行予算なんかを組まなければならないんじゃないか、臨時国会も開かなければならなくなるんじゃないか。私は影響するところが非常に大きいと思うのです。非常に心配しておる。一方において輸入金融の抑制、それから設備投資の抑制、中小企業金融の抑制、さまざまな抑制が行われておる。そうして金はない。そうしてこういう政府関係、公団関係の公社債を買おうと思えば、利子は安い、こういうことになって、こんなものは売れるはずがない、消化されるはずがない。そうすると、財政資金源の調達は不可能に陥る。従って、政策を実行することはできなくなる、私はこのことを心配しておる。だから、私は金融の総帥であられるあなたの見解、あなたの見通しを、不安があるなら不安があるということを正直に述べておかれぬと、われわれ国会はその判断を誤まるのです。だから長期金融も、これが消化できないというのならば、これは、あなたがこの際上げるべきだという説をなすべきです。上げなくても消化できるという確信があるなら、あなたはその方針をとって、そうして責任を持ってそれを消化させなければならぬのだが、重要な段階にあると思うので、もう一回あなたの責任に満ちた御答弁を願いたいと思います。
  61. 山際正道

    山際参考人 ただいまのお尋ねの点は、私は決して楽観はいたしておりません。しかし繰り返して申し上げます通り、比較的高くない金利においてすべての計画が遂行できる状態を作りたいということに、最大の努力を払うっもりでございますけれども、それはおっしやる通り、なかなか容易ならざる努力であります。お前、百パーセント成功の確信があるかとお尋ねになりましても、なかなかお答えしにくい。というのは、申し上げます通り経済状態はいろいろな情勢に関連をいたします。国民の貯蓄がどうなるか、海外の情勢がどうなるか、物価の情勢がどうであるか、いろいろ複雑な現象がございまして、見通しとしては、そこに幾多の困難な問題があると考えますので、はっきりした見通しを、この際確言をもって申し上げることはむしろ困難なことだと考えますが、私といたしましては、できるだけ当初申し上げました線において、最大の努力を傾けて進めていきたい、かように現在は考えておるのでございます。
  62. 春日一幸

    春日委員 非党に重大な御見解の表明がありました。国会は日銀総裁のただいまの御見解の表明によって、十分対策を講じなければならぬと私は考えます。その問題はそれといたしまして、さらにあなたの御見解を伺いたいことは、三十二年度の上期の外貨予算です。これは経済企画庁長官、宇田とんとん大臣の本会議における、その他委員会における御答弁等によります。と、大体輸出と輸入はとんとんだということを言っておられた。ところが現状において、さらに近い将来におけるその見通しは、必ずしもこれはとんとんにいきそうもございません。予想に反して輸入がふえ、輸出は減っておる、伸びておりません。赤字は大きく現われて参っております。そこで、外貨予算というものは修正しなければならぬ段階ではないかと思うが、あなたの御見解はいかがでありますか。
  63. 山際正道

    山際参考人 最近の国際収支情勢、なかんずくその改善のために相当な金融措置を必要としなければならぬ事態から判断いたしますと、政府が当初示されました、ただいま御指摘の外貨予算の点は、あの通り実現いたしますることは、率直に申しまして、非常に困難が多いと思います。輸出の点におきましても、よほどみんなが一生懸命努力をして輸出を続ける必要はございますし、また輸入につきましても、今とっております措置が極力その効果を発揮いたしますように努力はいたしておりますけれども、非常な困難が伴うであろうということは予想するにかたくないと思います。
  64. 春日一幸

    春日委員 今回の金融措置は、結局外貨関係において、手持ち外貨がはなはだしい勢いで減っておる、これを阻止するための特別措置というところに重点か置かれておる、焦点がそこに向けられておると考えるわけであります。そういたしますれば、この三十二年度の上期の外貨予算というものは、あなたのその政策とは明らかに本店を来たしておる。だとすれば、あなたはその責任において、これは政府並びに関係先に対して、外貨予算の修正のための発議をされる必要があると思う。その点、あなたの善処を要望しておきます。  それからもう一つあなたにお伺いいたしたいことは、この輸入を抑制すれば、関連産業に大きな衝撃を与えてきはしないか。これは先にもお尋ねしたのでありますが、私は、その点についていろいろ重要物資の在庫保有量を調査してみました。すなわち昭和三十一年の二月と昭和三十二年の二月とを石炭、鉄鋼、原油、銑鉄、綿糸、パルプについて調べてみました。そうして現在の在庫保有量が昨年同期をはるかに上回っておれば、抑制しても、関連産業に影響も与えず、あるいは希少物資の物価の変動も来たすことはないと考えるが、二月現在における対照調査によりますると、石炭では昨年の二月は二百八万トン、本年の二月には二百二十八万トンで、わずかしかふえてはいない。鉄鋼では昨年が一万六千トン、本年においては三万九千トン。原油は昨年の四十九万トンに比べて本年は五十万トンで、これも昨年よりわずかしかふえていない。銑鉄なんかは、昨年二月が九万トン、本年の二月は九万八千トンで、これも同じくらいの保有しかない。パルプなんかは、昨年の二月は三千六百三十二万トンであったのが、本年の二月は二千九百一万トンしかない。これは逆に減っておる。私は当然日銀で御調査になっておると思うが、外国から輸入しなければならないところの基礎物資、こういうようなものについて輸入を抑制をすれば、結局これは希少物資として、需要供給のアンバランスから必ず値段が上ってくると思う。そうしてまた国内の関連産業に対しても、重大な影響を与えると思うが、現実にあなたの御判断で、輸入抑制ということはなし得ると思うか。すなわちわが国の経済に破綻を生ずることを回避しつつ、輸出を阻害せず、かつは国内産業を破綻に陥れずして、そういう基礎物資を中心とするところの輸入物資の抑制措置が講じ得ると考えるか、その点のお見通しを述べられたい。
  65. 山際正道

    山際参考人 現状の判断に基づきますれば、現在の輸入の増大は、主として先ほど来申し上げておりまする各種の建設投資等のための輸入が相当な部分を占めておると思う。そこで私は、産業規模の拡大、新産業の建設計画等を、先ほど来申し上げております経済力の増大に見合う程度に押えていきまするならば、これが自然輸入の過度の増大を防ぎ得て、相当国際収支の均衡回復に役立つと思うのでございます。輸入自体をとらえまして直接に金融上の措置を講じますことは、確かにお尋のような逆効果を生ずるおそれもありまするので、私どもといたしましては、金融全般の措置において引き締めて参ることが、かえって均衡を保ちながらその目的を達し得るゆえんと考えましたので、今回の措置におきましても、その線において実行をいたした次第でございます。
  66. 春日一幸

    春日委員 次は、日銀手持ちの外貨の現状とその見通し、これをお述べ願いたい。
  67. 山際正道

    山際参考人 日銀手持ちの外貨につきましては、国際収支の変化に伴いまして、一部これを政府に売り渡しましたことは新聞紙上でごらんのことと思います。御承知のごとく、外貨は全体といたしまして政府が今管理をいたしておられます。私どもといたしましては、これ以上日本銀行の外貨が減りませんように御操作を願いたいということを、極力政府に申し上げておりますと同時に、幸いにして外貨増加の情勢に相なりますならば、優先的に日本銀行の保有外貨の回復について、政府に特段の御配慮を願いたいということをしばしば申し上げておる次第でございます。
  68. 春日一幸

    春日委員 日銀の保有額は、今まで五億ドルであったと記憶いたしておるのでありますが、ところが今回政府に七千五百万ドルでありましたか、とにかく売られた。従いまして、現在日銀の手持ち外貨は四億二千五百万ドル、非常に減少しておる。それで、現在の日銀の保有外貨というものは、管理通貨の裏づけとなるものであって、私はある一定限度というものはこれを持っておらなければ、これを持っておらなければ、これは日銀ばかりではなく、国自体の対外信用に大きな影響を与えてくるのではないかと考えます。従いまして、今まで五億ドルを持っておられたのだが、これが減ってくる、さらにどんどんと輸入が抑圧できなくて、輸出が伸びなくて、外貨勘定がだんだんと悪くなってくれば、政府がどうしても売れ売れと言ってくる、政府はまた手持ち外貨がなければ、これはいろいろな為替決済その他について事欠いてくるでありましょう。外為特別会計の運営に大きな支障を来たしてくると思う。そうすると、あなたのところに外貨を売れと言ってくるに相違ない。そうすると、あなたは、五億ドルに回復したいと考えておるけれども、現在の輸出入の趨向では、これを私はにわかに頽勢が挽回できるとは考えられない。そうすると、もっと売ってくれとあなたのところに言ってくる。あなたには売らざるを得ない、売らなければ外為の特別会計は事欠いて、これは貿易上重大な支障を生じてくると思う。一体その点の見通しはいかがでありますか。今後あなたのところに売ってくれと言ってきたらどうされますか。
  69. 山際正道

    山際参考人 御承知のように、現在の通貨制度から申しますと、金本位制度とは違いますので、直接に保有外貨が日本銀行の発券と結びついておるわけではございませんけれども、しかしながら、中央銀行の持っておる保有外貨が漸次減少するということは、御指摘の通り思わしくない状態を招来いたしますことは、これはもう明らかであると思うのであります。で、われわれといたしましては、極力この日銀の保有する外貨に手をつけることなく、政府の為替政策が円滑に実行できることをしばしば希望いたしておるわけでございますが、将来、もし不幸にしてもっと売ってくれといった場合にどうするかというお尋ねでございますけれども、これは、私はその場合の諸般の情勢を勘案いたしました上で決定いたさなければならぬかと考えております。   〔委員長退席、平岡委員長代理着席〕
  70. 春日一幸

    春日委員 私の持ち時間がありませんので、最後に一つだけ、中小企業金融政策について伺いたい。これは、何か日銀として手を打ってもらわなければ困ると思うのです。総裁も、あらかじめその概況については把握しておられる様子でありますけれども、そのなまなましい実態については、感じが鈍いのではないかと思う。現実に商社金融抑圧されるものだから、結局そのしわが零細業者に寄っていくわけなのである。ただいま申し上げました通り、東京手形交換所などでは、手形交換の歴史が始まって以来の最悪のレコードを示しておる。これは手形の額面から推測いたしまして、ことごとくか中小企業に対する大きな重正となって、そのしわを寄せられているということの実証になっていると思う。そこで、今金融機関というものは、結局好むと好まざるとにかかわらず、金融ベースに立ってこれを判断すれば、勢い重点度高きものからだんだんと行う選別融資に走らざるを得ない。そうすれば、中小企業というものは、金融梗塞が非常にひどくなってくると思う。何かこれに対して手を打つにあらざれば、わが国の産業経済の原動力であるとか、本体であるとかあなたは言われたか、それがつぶれていってしまう。金融ひとり健全であって、経済は破綻する、これでは何にもならぬ。金融の本来の使命は、経済に奉仕するものでなければならぬ、産業に奉仕するところの任務を持っておる。奉仕するサーヴァントが健全であって、あるじであるところの企業が破綻したら、これは何にもならないでしょう。ですから、私は、東京における、あるいは大阪における手形交換所の不渡り件数というものからくるところのいろいろの影響、実態をさらによく調査されて、中小企業の破綻を救済することのために、産業政策として特別措置が講ぜられなければならぬと思う。金融政策というものだけが独走すれば、金融は健生であるかもしれぬが、企業がこわれてしまっては何にもなりません。あなたは、何か手をお打ちになる必要をお感じにならないか、その点についてお伺いをいたします。
  71. 山際正道

    山際参考人 わが国の経済問題のうちで、長く以前から最も解決困難な問題として指摘されておりまする中小企業の問題、これにつきましては、われわれといたしましても最も深い関心を払っておる問題でございます。事いやしくも金融の面においてこれを解決し得る部分につきましては、極力これを実現することに、従来も努めて参りましたが、今後一そう邁進いたしたいと思います。何分にも前段申し上げました通り中小企業全体の問題は、単に金融措置のみによって全面的に解決し得るものでもないと思います。各般の施策が相待ちましてこの問題が健全に解決されていきますることにつきまして、われわれも許される限度においての最大の協力を惜しまない考えでおります。
  72. 春日一幸

    春日委員 金融政策だけで解決はつかぬと言われますけれども、中小企業政策の根幹となるものは、金融と税制なのですよ。有効需要増大のための諸般の政策も、むろんこれに関連をして重要な要素にはなるでありましょうが、しかし中小企業政策の根幹となる本筋は、何といっても金融と税制であろうと思う。従って、今度のあなたの措置によって、直接あなたはそういうことを考えてはおられなかったかもしれない、あるいはそういう事態が発生することを予測されておったかどうかは知らないけれども、現実に中小企業というものに、わが国に手形交換所が始まって以来のおそるべき不渡りが激増しておる。中小企業が手形を不渡りすることは自殺現象なのです。倒産、破産意味しておる。そういうのが現実にあるのだから、これは関連政策として、他の政策に待つべきであるというような責任回避のことを述べられるのではなく、日銀政策を通じて、国立銀行の総裁の責任において、中小企業の破綻を救済するための臨時特別の緊急の施策が講ぜられる必要があると私は思う。他の政策によってなさるべきであるというようなことではなく、今日の中小企業破綻の原因は、第一番には直接的には、第一次、第二次にわたる公定歩合の引き上げ、市中金利の高騰、金融資金源の梗塞、これはことごとく日銀政策にその淵源を発しておるのです。あなたの責任においてこれは救済せられなければなりません。何も施策がないということはないでありましょう。お述べを願います。
  73. 山際正道

    山際参考人 日本銀行の最大の使命といたしておりまするところは、通貨の価値を安定維持せしめて、国民経済全般を安定的に発展せしめる基礎を確立することにあることは、御承知通り考えております。しかしてその基礎の上に立って各般の金融が動いて参ります上において、ただいま御指摘の中小企業がわが国の経済上占める地位にかんがみまして、最大限の努力を払うべきことは、これまた異存はございません。私も事ある機会に各種金融機関に対しまして、中小企業金融について最大限に利便をはかるべきことを力説いたしております。が、御承知通り金融機関でありまする限りは、やはりそこに一定の限度がございます。限度を越えての中小企業の救済という問題に関しましては、私は、それはおのずから政府機関なり、その他各種の他の措置が総合せられるにあらざれば、容易に解決し得ざるものと考えておりますけれども、事金融に関する限りは、私は最大の努力をこれに注ぎたいと考えを持っております。
  74. 春日一幸

    春日委員 私は、重ねて要望をいたしたいのでありまするが、とにもかくにも、今日中小企業が随所において破綻をいたしております直接の原因は、今回のあなたの金融特別措置によるものである。これはいなむことはできません。そこで、私はあなたに要望いたしたいのでありまするが、もとより金融政策だけで中小企業問題かことごとく解決できるとは何人も考えません。けれども、この金融措置によって中小企業そのものが、弱き者がことごとくしわ寄せを受けるというこの事態は、やはり回避をせなければならぬ事柄であると思うのであります。そういう意味で、現在中小企業の各企業体が、それぞれ依存の金融機関とそれぞれのワクを持っておりましょう。そのワクが減ってきておるからこういう形になるのです。すなわち、これは中小企業に対して不当にしわが寄っておる。この現実を緩和するためにも、救済するためにも、これは、やはり各金融機関がそれぞれの中小企業と既庄において設定いたしておりました金融総ワクを、今回の措置によって割ることのないように、何らかの要請、あるいは指令とでもいいましようか、効果ある影響力を与えるために適切な措置を講ずる意思はありませんか、お伺いをいたします。
  75. 山際正道

    山際参考人 私は、ただいまも申し上げました通り、機会あるごとに他の銀行に対し、あるいは他の組合金融組織その他に対し、また支店長会議等におきましても、中小企業中小企業なるがゆえに不当にその金融の道が梗塞されるということは絶対にあってはならぬ、ここはその重要性にかんがみまして、十分にその措置をはかるようにということを力説いたしております。重ねてその点は今後一そう注意をいたしたいと考えております。しかし、事の全体的解決に関しましても、何分にも、すでに御承知通りの各種総合施策を必要とする問題でありますので、よくそれらとも協調いたしまして事に当りたい考えでございます。
  76. 春日一幸

    春日委員 いろいろとまだ伺いたいことがありますが、私の時間も終りましたので……。  そこで、ただいまの日銀総裁の御見解によりますと、本年度の財政投融資計画については、総裁として確信が持てない、なおこの外貨予算については、これを実施することは重大な困難があるのではないかと、まことに重大な御発言がございました。私どもは、日銀総裁のこの御発言について、特に再検討を加えまして、後日あらためて御質問をいたしたいと思います。私の質問を終ります。
  77. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 次に石村英雄君。
  78. 石村英雄

    石村委員 日銀総裁にお尋ねいたしますが、ただいま春日委員の質問で大体のお考えはわかりましたが、まず第一にお尋ねすることは、日本銀行金融政策というものは、これが日本経済に及ぼす影響が非常なものがあるということは言うまでもありませんが、しかし日本銀行金融政策は、質的な点を配慮してやるということよりも、量的な政策ということが主眼にならざるを得ないのじゃないか、少くとも結果において。もちろん中小企業とかなんとかいう特殊な産業に対して、日本銀行としても金融梗塞が起らないように配慮はせられるでしょうが、結果においては、一般的に言えば、そういう質的な面よりも量的な政策を主眼に置いておやりになるより手がないんじゃないか、こう考えるのですが、いかがでございましょうか。
  79. 山際正道

    山際参考人 大体の議論としては、お尋ねの通りでございますが、ただ大きな分類から申しますと、たとえば公定歩合の立て方にいたしましても、輸出の金融については、特殊の取扱いを認める、あるいは農業手形の取扱いについては、特殊の取扱いを認める、そういうような意味の質的の差はございますけれども、大体は個々の産業について、一々日本銀行が関与することは好ましくないと考えます。むしろ量的と申しますか、あるいはまた金利の作用と申しますか、さような一般的な措置において一般的な金融情勢の調整をする、こういうことが本来の使命であると考えております。
  80. 石村英雄

    石村委員 金融政策の根本は、ドラスチックなことをやらずに済むようにやるべきだ、こう考えるのですが、今までの歴史を見ましても、とかくドラスチックに陥らざるを得ない、こう思うのです。このことは、先ほど総裁は総裁の考えとして、大蔵省とか政府とかに左右されないで、自分の独立の判断でやる、こうおっしゃいましたが、今までの歴史を見ましても、決してそのようになっておりません。もちろん今日では、日銀政策委員会がありまして政策は決定し、またこれに送っておる大蔵省の代表も議決権がないわけですから、独立の判断でやられておると形式的には言えると思うのですが、結果をわれわれがながめてみますと、必ずしも独立の判断ともいかないのじゃないか、政府の意向というものが大きく反映しておるのじゃないか、こう考えるわけです。たとえば朝鮮戦争が起ったときの日本銀行のとった政策と、これを外国の、西ドイツの中央銀行がとった政策とを比べてみますと、西ドイツなんかの中央銀行は、日本銀行のとった態度よりもはるかに、少くとも効果は別として、思い切った描出を朝鮮戦争が起った直後においてとっておるのですが、日本銀行はあまりにも袖手傍観と申しますか、拱手傍観と申しますか、そういううらみがなかったではない、こう考えるのです。従って、私はこの日銀の政策委員にしろ何にしろ、こういう日本銀行金融政策をおやりになる場合に、もう少し政府の意向に対して独立に判断して、手が敏速に打てるように、そうした制度を考える必要があるのではないか。もちろん形式的な制度では、日銀政策委員会が、さっき申しましたように独立いたしております。しかし結果においてはそうも考えられない。  そこで、先ほど春日委員の質問の中にもありましたが、現在の管理通貨制度というものに対して、昔のような正貨準備というようなわけにはいかないでございましょうが、今日の外貨を政府に集中するという制度を日本銀行に移して、日本銀行がかつて正貨準備を公表しておりましたように、日本銀行に集中せられた外貨準備を毎日公表する、そういうやり方も一つの方法ではないかと考えるわけです。もちろんこのことのいい悪いとか、いろいろ意見はあると思いますが、一つの方策として、政府のいろいろなほしいままなやり方に対して、一般の外部の者もそれが批判をすることのできるように、そうした制度も一つの方法じゃないかと考えるのですが、総裁の御意見はいかがでありますか。
  81. 山際正道

    山際参考人 将来のわが国の理想的な金融機構ないし金融制度といたしましては、私は、今お示しになりましたような行き万が望ましいと考えております。しかしながら現状におきましては、為替管理法によりまして、外貨に関することは一切政府の管理に属しておりますし、そうしてまたその内容につきましては、各般の貿易政策、その他行政の政策がその為替管理政策に織り込まれて運用されておる実情でございます。直ちにこれを、今例示されましたような状態に切りかえるということにつきましては、非常に問題か多いと考えますし、私は、それは慎重に考慮を要する点であろうと考えます。将来のわれわれが金融の正常化を目ざす方向といたしまして、御指摘の点は大いに参考にすべきものと考えます。
  82. 石村英雄

    石村委員 時間もだいぶ経過しましたが、この二月十三日の委員会で、私が、日銀総代のあなたの御意見として、これは新聞談話で、あるいは責任は持てないことかもしれませんが、実行予算を組むべきだというような御意見か新聞に出ておりましたので、そのことを引用して大蔵大臣に質問いたしましたところ、池田さんは、実行予算を組む必要はない、考えはない、こういう御答弁でございました。われわれが今度の予算を審議するときに問題にいたしましたのは、一応税収が多くて、二千億も自然増収になるというので、政府の言う一千億減税、一千億施策ということは、財政的には可能かもしれない、しかしながら、金融実情が、自然な形でこれに応じてやることは不可能ではないかという趣旨のことをわれわれは考え、大蔵大臣にも質問したのですが、実行予算についても、またその他の施策についても、大蔵大臣からは何らの御意見がなかったわけでありますが、現状は、われわれがおそれておったことになってきたと思います。金融が自然のままにこれについていけないことになって、日銀の公定歩合も再度にわたって引き上げなければならぬ、こういうことになったと思うのですが、日銀総裁として、やはり本年度三十二年の予算について、あるいは財政投融資を含めました予算について、実行予算を組むべきであるというかっての御意見、これは新聞談話の程度で、あるいは間違いかもしれませんが、そういう御意見を今日においてはさらに強力にお持ちではないか、こう想像するわけですが、いかがでございますか。
  83. 山際正道

    山際参考人 私は技術的な意味において、実行予算を組むべきだと、実はそこまで申したことはなかったつもりであります。ただ何分にも、均衡のとれた予算ではございますが、大きさが大きうございます。その実際の実施、運用に当りましては、よく民間の事情を調査願いまして、民間の各和の需給関係が逼迫しておるような状況の際に、さらにその部分に、また隘路をふさぐというようなことのないように、機宜の措置をとっていただきたいという希望は申し述べましたのでございます。その点は今でも変りなく考えております。
  84. 石村英雄

    石村委員 先ほど政府と日銀との金融政策の独立性のことで、ちょっと管理通貨制度に対する外貨の問題を申しましたが、総裁としてこれに対する積極的な御発言がなかったわけです。先ほども総裁がおっしゃいましたように、自分の気持としては、政府の政策に左右されずに、独自の判断でおやりになるということは、当然のことだと思いますが、少くとも制度的には、世間ではそうではないと判断しておる。また歴史をながめてみましても、どうも日本銀行の政策というものは、できたとき以来政府によって左右されておる、こう世間は判断しておるわけですが、そうしたことを阻止する、少くとも世間も信用するように、日本銀行の政策は政府のほしいままな政策に左右されないということがはっきりわかるような、制度的な改正をされることを何かお考えになっていらっしゃるか、この点をお尋ねいたします。
  85. 山際正道

    山際参考人 ただいまの日本銀行政府との関連に関する問題でございまするが、私は先ほど来申し上げました通り日本銀行といたしましては、法律規定する建前に従い、独自の判断と責任において実行をいたすべきものとどこまでも考えております。ただここに注意いたすべきことは、その施策が国民経済上非常に重大な影響を持つ関係考えまして、各方面の意向を十分にしんしゃくし、これをそしゃくし、そして判断をあやまらないように努めるということは、ぜひ必要なことと私は考えます。その限度において政府のお考えなり、その他各方面、財界なり評論界、その他の考えを十分取り入れて考えるということは、必要なことと考えております。
  86. 石村英雄

    石村委員 もちろん日本銀行が独走するということは、できないでありましょうし、また政府の政策というものを全然無視するということも不可能であろうと思いますけれども、今までの歴史を見ると、そうではくなて、たとえば昨年来の日本銀行と大蔵省との関係を見ましても、世間では、日本銀行と大蔵省は考え方が全く対立しておる、こう判断しておる。第一、昨年の五月ごろまでの金融緩慢というものを、大蔵省は、むしろさらに六月以降も秋にかけて進めようとしておる。日本銀行は、これに対して警戒的な態度をとっていらっしゃった。これはむしろ日本銀行金融情勢の判断が、少くとも今日の結果から見ても正しかったと言わざるを得ないのではないか。昨年の五月ころまでの金融緩慢というものは、金融の正常化ではなくて、むしろ異常な現象であったとわれわれは判断いたしますが、これに対する適切な措置を日本銀行考えながら、とり得なかったということは、やはり金融の独立という問題に関連してくると思います。またにさっき申しました朝鮮戦争後の問題いたしましても、あの昭和二十八年から九年にかけての金融の異常なデフレ政策というものは、朝鮮戦争勃発当時に日本銀行は適切な措置を講じなかった結果、ああいうドラスチックなことをやらざるを得なかったのじゃないか。もちろん判断が誤まっておったといえばそれまでですが、その誤まった判断に基く政策をとらざるを得なかったということは、やはり政府の政策が大きく影響したのではないか、こう考えるわけでございます。  そこで、先ほども外貨の日本銀行への集中、外貨の準備の毎日の公表というふうなことを、一つの考え方として申したわけです。ただ日本銀行は、政策委員会が独立しておるからこれで独立だとは、われわれも考えませんし、総裁の立場としても、いやその通りとはあるいは言えないかもしれませんが、少くとも日本の通貨制度なり何なり、中央銀行に対する制度なりについて考慮の余地は、相当あるのではないかとわれわれは考えるわけです。総裁としてもう少し率直に具体的御意見、あるいは試案程度で差しつかえないと思いますが、それをお示し願いたいと思います。
  87. 山際正道

    山際参考人 ただいま御指摘の問題は、制度自体の問題とあわせて、運用の問題とからみ合いまして、なかなか過去の事例においてもむずかしい問題をはらんだ点と思います。たまたま御承知のように、今金融制度調査会が開かれておりまして、金融制度に関する全般的な問題がいろいろ研究、論議をされておるのでございます。その中におきまして、日本銀行法律についても、この際全面的に研究し、改正考えるということの問題も日程に上っております。それらの問題の中におきましても、御指摘の問題は、やはり中心的な問題の一つだろうと考えます。私ども部内におきましても、いろいろ研究を進めておりますけれども、実はその調査会の研究と並行いたしまして、ただいまはっきりした意見を申し上げまする段階までに研究が進んでおりまんので、しばらくそれは後日にお許せし願いたいと思います。
  88. 石村英雄

    石村委員 今度政府が出しておりまする準備制度の点について、ちょっとお尋ねいたします。政府は一〇%以内という準備率を考えておるようですが、具体的に何%とするかということは、この法律が通過しましても、日銀政策委員会の判断で適当におきめになると思うわけです。ただこういう通貨制度、通貨政策からいえば、この準備率を設定するということは当然な措置といえると思います。しかしながら、日本のように市中銀行が直接日本銀行に行って、いつでも金を借りておる、こういう状況のもとでこの準備率を定めましても、準備率を一〇%なら一〇%にせられてみましても、それで足りなくなれば、必ず市中銀行は、日本銀行の貸し出しを仰ぐということになるのではないかと思うのです。従って、もちろん金利もつくわけですから、ある程度の制肘は加えられるでございましょうが、準備率を定めた意義というものは、はなはだ効果が薄いのではないか、こうわれわれは判断するわけです。この点について、日本銀行総裁としてのお考えをお聞きしたい。
  89. 山際正道

    山際参考人 現在御者議を願っております準備預金制度の問題につきましては、御指摘の通り、中央銀行がその機能として持つべき重要なる制度の一つとして指摘をされたわけでございます。欧米各国の中央銀行、いずれも公定歩合政策、それから公開市場政策と相並んで、この準備預金制度による政策の道を持っておるわけでございます。中央銀行の機能を完璧にいたしまするためには、ぜひともこの際私は、この制度をお認め願いたいということを念願いたすものでございます。今御指摘のございました点は、現在でも市中銀行日本銀行にかけ込んで、高い金利を払ってでも金を借りてこようという際にこの準備預金制度を作っても、それほど効果はないのではないかという御疑問によるのではないかと拝承いたしたのでございます。公定歩合制度と準備預金制度と併存いたしておりますのは、その両者が相当違った機能を持つという面から、各国ともその制度を採用いたしておるのでございます。申すまでもなく準備預金制度は、取引を持ちます銀行等に一律に及ぼしますものでございます。また貸し出しの方は、特殊の一部の銀行が、必要に応じ、その金繰り上日本銀行資金の供給を仰ぐという場合に、同じく金融を引き締め、同じく金融をゆるめますにつきましても、その場合その場合、その他原因のいかんによりまして、いずれによるべきかということがおのずから違ってくると思うのでございます。その意味におきまして、私はこの場合におきましても、制度として準備預金制度日本銀行が持つということは、その機能を完璧ならしめる意味におきまして必要なことと考えておるわけでございます。
  90. 石村英雄

    石村委員 もちろん制度として全然無意味だとは、われわれも考えませんが、ただ準備預金を定めるという制度以外に、もっと他の方法を講ずべきではないか、こういう点をわれわれは考えておるわけです。たとえば日本では、何かといえば公開市場だとか、オープン・マーケット・オペレーションだとかなんとか申しますが、果して公開市場があるかないか、公社債にいたしましても、これに対する市場らしいものがあるとは考えられません。すべて日本銀行が公債の貰い上げをする、売り払いをするといっても、必ず直接個々の銀行とおやりになるのではないかと思うのです。それと、市中銀行日本銀行の金を借りるという場合に、適格担保を持ってくれは、日本銀行として、ある程度の指導はなさるでございましょうが、これを拒否することはできないのではないかと考えるのですが、この点いかがでございますか。
  91. 山際正道

    山際参考人 今日の情勢のもとにおいて、この法律をお認めになりました場合に、直ちに何%かの準備を積ませるということはいいか悪いか、これはなかなか容易ならぬ判断を要するところと思うのであります。公定歩合の問題にいたしましても、果して適格担保を持ってくる銀行には、その額のいかんにかかわらず、どんどん貸していいかどうか、これも窓口指導の限度の問題とも関連いたしまするけれども、やはりそこに微妙な限界があろうかと思います。同時にまた、御指摘の通り、公開市場政策は、わが国では市場こそ形の上において整いましたけれども、まだ実効は遺憾ながら十分上っておりません。従いまして私といたしましては、とにかく手だてをそろえまして、実情に応じたそれぞれの運用をしたい。なかんずく、順序から申しますると、公定歩合政策は現在実行いたしておりまするけれども、公開市場政策のごときは、もっともっと市場の育成に努力を払うということが必要だろうと思います。それは、私も今後十分日本銀行として力をいたすべき点だと考えまするし、あわせてまた事態が準備預金による調整の発動を必要とすることになりますれば、直ちにそれを用いるということで、準備預金制度をお作り願って、それに重点を置いていこうという考えはございません。さらに考うべきこともございまするし、またそれより元に実行せらるべきこともございましょうが、それぞれ情勢のいかんに即し、場合に応じて、それぞれの政策を使い分けていきたい、かような意味考えておるわけでございます。
  92. 石村英雄

    石村委員 先ほど適切な統制という庶でお尋ねいたしましたが、中小企業等に対する金融政策は、これは、主眼をやはり政府金融機関に仰がざるを得ないのではないか、こうわれわれは判断いたしますが、日銀総裁としては、その点についてどうお考えですか。
  93. 山際正道

    山際参考人 私は、中小企業と申しましても、先ほど来申し上げておりまする通り、非常に健全なものが多く、また中小企業がその企業の効果を達成する上において、岐も適正な規模にある業種も多かろうと思うのであります。常時注意をいたしまして、銀行の貸し出し等を分析いたしておりまするか、金融の対象として、いわゆる金融ベースに乗り得るものにつきましては、中小企業の方面に対しましても、相当銀行等は融資をいたしておると思うのでありまするし、また相なるべくは、中小企融の問題は、金融ベースにおいて十分解決を見ていくというのが、理想的の姿であろうと思うのであります。ただ実際の問題といたしまして、現在のいわゆる中小企業金融の問題といたしましては、なかなか通常の金融機関でこなし得る分で十分とは申せません。自然そこに、政府の財政資金等による特殊中小企業金融機関が必要であるという場面が多いと考えておるわけでございます。今後の方針といたしましては、できるだけは通常の金融機関におきましても、ますますこの方面へ力を注いでもらうように指導いたしたいと考えております。
  94. 石村英雄

    石村委員 もちろん市中銀行も、中小企業金融をやめてしまえというふうな意見が出てくるとは思いません。市中銀行にしろ、また政府機関にいたしましても、金融ベースに乗らないものをやるということもないと思う。政府機関だからといって、慈善機関じゃないわけですから、やはり健全な中小企業でなければ、政府機関といえども貸し出しはできないと思う。ただ市中銀行は、金融が梗塞してくれば、大企業と中小企業を相手にした場合に、結果において大企業の方に非常に重点を置かざるを得ない。こういうことに対しては、やはり政府機関をもっと大きくいたしましてその補いをつけるということを考えなければ、市中銀行中小企業に対する金融を十分にしろと言ってみたところで、実行は不可能ではないかと思います。もちろんその際、全然中小企業に対する金融はなくなるということは考えませんか、梗塞により金融の幅が非常に狭められる率が、中小企業の方は大きくて、大企業の方が少いということにならざるを得ないのではないかと思う。従って、日本銀行が政策的に中小企業に対して特殊な措置を講じろと言ってみたとことで、これはできないことであって、これを補うには、やはり現在の政府機関の資金量をこういうときにこそもっと飛躍的に増大して、これを補完しなければならないのではないか、こうわれわれは考えるわけです。総裁として積極的なこの点に対する御意見はありませんか。
  95. 山際正道

    山際参考人 お話しのように、中小企業金融の解決のために、政府が直接されておる各種金融機関の活動に待つべき分野は、相当多いと考えます。その意味において、財政資金等による資力の充実については、私も非常に必要だと考えております。現在政府においても、その配意は行われておるものと実は了解をしておるような次第でございます。普通の金融機関におきましても、今後は、極力中小なるがゆえに金融が十分つかぬというようなことがございませんように、これを指導していくということもあわせて実行していきたいと考えております。
  96. 山本勝市

    山本委員長 横錢重吉君。
  97. 横錢重吉

    横錢委員 外貨の破綻に対して、日銀が公定歩合を引き上げてこの対策をとる、こういうような情勢になって、今各委員からこの点に対する質問が行われたわけですが、この問題の一つとしては、わが国の設備投資が盛んに行われた、このために金融が活発に動いたのである、こういうようなことがいわれておるのであります。しからば日銀の見方として、設備投資に使われた金額は一体どの程度のものが出ておるのか、これに対する数字的な押え方をされておるかどうか。
  98. 山際正道

    山際参考人 問題の点につきましては、日本銀行といたしましても、各銀行の貸し出しの内容をいろいろ調査いたしております。設備投資に向けられた金額も算出をいたしております。ただいまちょっと資料を求めておりまするが、その点はやっておりまするので、後刻御報告を申し上げたいと思います。
  99. 横錢重吉

    横錢委員 それでは、数字はあとから承わることにしまして、この設備投資の行き過ぎということが一応今日の段階ではいわれておるようであるが、しかしこの二、三年の間に行われた論としては、日本の機械、日本の産業の設備というものは、戦争によるところの非常な立ちおくれを、各外国に比較して、しておる、従って戦後十年たった今日においては、相当大規模の思い切った設備更新を行わなかったならば追いつくことができない、この設備更新をすることが今日の日本の産業を救うところの唯一の道である、こういうふうな論が各所に横行しておったはずだと思うのです。これには一面の真理もあるし、事実日本の産業設備というものは、立ちおくれておった。従って、これが軌を一にしてどしどし行われたということには、やはり相当の理由があったと思う。そこで、今日外貨事情の悪化に伴って、いきなりこの面の金融引き締めを行なった場合に、この設備が中途半端で中止になった場合、このもたらす影響というものは、かえって悪い方面に日本の輸出を押えることになりはしないか、こう考えるのですが、こういう面に対してはどういう配慮を行なっておりますか。
  100. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの趣旨は、まことごもっともと考えます。私も、欧米競争国に比べますれば、技術の点において、設備の合理化、近代化等の点において、非常に日本の産業が立ちおくれておるということについて、将来の日本の輸出について非常な懸念を持つものでございます。その意味において、機械設備を合理化し、新しい技術を導入して国際競争力を十分に保持し得るように立て直すことは、現在まことに必要なことであろうと考えます。この意味における投資につきましては、われわれはむしろ積極的に助長し得るような立場に立つべきだと考えております。ただ事態は、遺憾ながら直ちに輸出にそれが向うにあらずして、国内消費に向き、もしくは外貨の獲得に貢献しないような結果に終るような改備投資、これは不急不要の設備もその中に含まれましょうが、あるいは輸出産業を中心といたしますれば、過剰り設備その他があまりにも続出いたしますならば、これはいたずらに外貨にしわを寄せて、そうして輸出には貢献しない結果に相なるわけでございます。私は、これが必ず輸出に戻ってくるような産業の建説につきましては、これは今日といえども十分伸ばすべきものと考えておりますが、しからざるものにつきましては、いましばらくその計画を縮小し、もしくは延期し、また新規の計画は、しばらく見送るといったような措置が講じらるべきものであろうと実は考えておりまして、その情勢を、容易ならしめる意味において、いろいろ措置をとりましたわけでございます。
  101. 横錢重吉

    横錢委員 日本の今日の段階において、設備の更新ということは非常に必要である。しかしながら、その反面にまた無統制な過当なる競争が行われて、どの程度の設備が日本において必要だということの計画がなされずに、各社々々がいたずらに設備更新を行なっておるという点もここにあるのではないか、こう考えておる。それとともに、そういうような現況を来たせる事由というものは、やはり銀行の側にもあるのではないか。今日の市中銀行の多くが、系統産業に集中的に金を流し得る体制になっておる。大きな銀行がたくさんあるけれども、その銀行は、いずれも系統的なものであって、自分の系統の産業に対して集中的に金を流し得る、この体制というものが設備更新を盛んに行わしておる理由ではないか。そこに金融の社会性というももが失われてしまって、これは財閥の一つの窓口に今日の銀行が化しておるというところに、この弊害か現われておるのではないか、こういうふうに見るのだが、この点に関してはどう見られるわけですか。
  102. 山際正道

    山際参考人 私は率直に申し上げまして、銀行間にも過当競争かあると考えます。その結果が、あるいは金融緩慢時における貸し出し競争となり、ひいて今日にその結果が及んでおるとも考えるものでございます。そこで私は、金融機関に対しましては、極力この段階においては競争をやめて、協力の態勢に入るようにということを要請いたしております。たとえば、今御指摘のありましたような問題につきましも、相なるべくは一つ協調融資の態度において、ある銀行がある特殊のものを独占するというような行き方では、おのずから限度もございますし、また場合によりましては、資金がむだに使われるということもあり得るわけでありますから、そこで、名銀行がその公共的使命に十分立ち返りまして、協調的に、もっと資金を効率的に運用するようにという要請をいたしております。つまりただいま御指摘になりましたような、過当競争の結果として、特殊なものにのみ資金が集中するという弊害は、今後も極力是正して参りたいと考えております。
  103. 横錢重吉

    横錢委員 今御答弁の是正ということは、これは日銀総裁の要望、あるいは日銀のやりくり、そういうことで是正し得るところのものであるか、あるいはまた是正し得ないものであるか。この点に関して今御意見を承わっておるのでありまするが、おそらく現在のような好況の波に乗っておるときにおいて行われている競争は、日銀の単なる要望程度のもので抑えられないのではないかというふうに思う。この間には何らかの立法措置か、あるいはまた強い制限か、こういう規制措置が行われない限り困難なのではないか、こういうふうに考えておるのですが、この点はいかがですか。
  104. 山際正道

    山際参考人 御指摘の点に関しましては、私は銀行の指導君たちの良識に信頼をつないでおります。全国銀行協会におきましても、すでに自主規制委員会を設けまして、不急不要投融資の元正に努力を自発的にいたしておりまするし、また資金審査委員会を設けまして、国策的に重要な事業に対する融資の充実に関しまして相談をいたしております。この両委員会の機能によりまして、私はその効果を着々上げて参ると思います。むろんその間におきましては、われわれもその席につらなりまして、なるべくそれが各社の競争ということによって弱められるようなことのないように、常時勧告をしながら進んでおりますので、私は現在の段階においては、この成果に期待する方が、にわかにここに各種の法的統制その他を行いますよりも実際上効果が多く、かつ円滑に参ろう、こう考えておる次第であります。  なお先ほどお尋ねの、全国銀行がどれだけの設備資金を新規に貸し付けたかという数字でございますが、統計によりますと、昭和三十年中は、全国銀行で千七百四十八億円を貸し出しました。これに対しまして、昨年三十一年は、二千九百八十七億円実にその増加は千二百三十九億円になっております。  なお最近の統計では、本年に入りまして、一、二月両月で五百八十七億円の設備資金を貸し付けております。
  105. 横錢重吉

    横錢委員 先ほど輸入超過の問題についての御意見を拝聴したのでありますが、日銀は、これに対してはユーザンスを作って便宜を与えている。従って輸入に対しては相当大なる関心と規制とを行なっていると思うのですが、再輸出を伴わないところの輸入がいたずらにこれまた多過ぎておるのである。たとえば、日本の中においても十分生産されるところのジュースのようなものの輸入であるとか、あるいはまた、最近においてはコカコーラまで輸入を決定した、こういうふうに聞くのであります。こういうような再輸出を伴わないようなものに対して、なお便宜を与えてまでも輸入を行わせているということは、一体どういうふうに考えますか。
  106. 山際正道

    山際参考人 輸入に関するユーザンスの問題は、直接には、内容的には日本銀行は関与いたしておりません。むしろ輸入品目等に関する貿易行政と申しまするか、通産省の政策がこれを決定いたしておる次第でございます。私の方といたしましては、輸入金融全体として、これを締めるかゆるめるかということを扱っておりますものでございます。その意味におきましては、間接になっておりますることを御了承願いたいと思います。
  107. 横錢重吉

    横錢委員 通産省がこれを行なっていることはわかっておるのです。ただそういうような問題に対して、日銀としては一体どういう考え方を持っておるか。こういうふうに外貨事情が悪くなってきたときに、なおかつ再輸出を伴わないような、国内における不要な消耗の行われるものの輸入に対して相当の便益を与えておる。その便益を与えておるのはやはり日銀のユーザンスじゃないか。こういうことに対してどう考えておるか。個々の決定という問題は通産省かやるのであるけれども、日銀としての考え方、これに対してはどういう要望を持っておるかということを聞きたいのです。
  108. 山際正道

    山際参考人 私が先ほど申し上げました通り、不急不要方面に対する融資については、中央銀行といたしまして、極力これを抑制するようにやっておりますわけでございます。ただいま御指摘のございました輸入備品に対するユーザンスの問題は、別にあれは品目が指定されておったと思いますので、通産省の方におきましても、さようなものに対しては、ユーザンスの利用をお認めになっておらぬかと了解をいたしております。日本銀行といたしましても、むろんそのようなものにつきましては、金融上の便益をはかる考えはございません。
  109. 横錢重吉

    横錢委員 先ほど御答弁をいただいた設備投資に使われた三十年中の千七百四十八億、三十一年度が二千九百八十七億、こういう膨大な、しかも急激に増加した設備投資というものは、一体どういう方面に使われているのか、その分類ができておられるのかどうか。
  110. 山際正道

    山際参考人 それも取り調べておりますから、後刻御報告申し上げます。
  111. 横錢重吉

    横錢委員 それでは次の問題について伺いますが、公定歩合の引き上げをやって、日銀が大きく金融面でクローズ・アップをしておるわけですが、こういうような場合において、日銀の占める比重というものは非常に大きなものがあるわけであります。そこで、各方面において資産の再評価等がどしどし行われて、戦前の態勢から戦後の態勢にみな変ってきておる。ところが日銀においては、資産評価等も行われていないのではないか。たとえば、資本金にしても現在一億円である。日本の銀行は、すでに五十億をこえるものが四行もできておる今日、中央銀行の資本金が一億であるということは、これは過小にすぎはしないか。あるいはまたその一億の資本金でありながら、業務用の不動産は二十二億も持っておる。こういうような非常なアンバランスの上に立ったものを持って運営しておるということ、こういう方面に対してはどうお考えになりますか。
  112. 山際正道

    山際参考人 日本銀行の資本の問題に関しましては、実は民間企業におけるがごとき意味においての再評価というものは必要がないように考えておりまするために、いまだその措置に及んでおりません。資本金がまたわずかな金額でありますということも、日本銀行の機能は、日本経済全体を、その資本と申しますか、信用を基礎として働く仕組みになっておりまするために、資本金の金額というものに重きを置いておりませんような次第でございます。私は現在の場合は、特にその点につきましては、ここでにわかに改める必要もなかろうかと実は考えております。いずれ金融制度調査会におきましても、それぞれそれらの問題については研究が進むだろうと思いますが、その際の問題に譲りたいと考えております。
  113. 横錢重吉

    横錢委員 それは総裁の弁として、少しく中央銀行としての安定の上にあぐらをかき過ぎておるのではないか。今日の各方面の態勢というものは、戦前の態勢から戦後の態勢へ、しかも戦後においてもどしどしと衣がえをしており、現状に即する態勢を常にとっておる。その中において、日銀だけがひとり昔の銭を単位とした時代のままで、今日、円を単位とした金融に移っておる。こういう態勢は果してどうかと思う。しかも、日銀の株券のみがひとり千八百円の高値を呼んでおるということ自体も、非常に不健全な数字の上に立っていると私は思う。これは現実に売買されているということはあるいはないのかもしれないが、しかしながら千八百円の高値というりこと自体が非常に飛び離れておる。こういうようなことに対しても考えなければならぬ問題がある。  それからまた、外貨のドル不足等の問題について騒がれておる。これは、日銀が管理通貨を建前としておるから、金の準備というものは必要はないのだ、こういうふうな意見の上に立っていると思う。しかしながら、やはり国際的な信用の上にも、あるいは国内的な信用の上にも、ある程度の金の保有ということは日銀として心がくべきことじゃないかと思う。ところが今日の三十一年度の報告によると、日銀の金の保有はわずかに四億四千七百万円しかない。これは非常に過小に過ぎはせぬか。それから日銀のこの価格自体は、一体いつのときの価格であるか。これは、今日、国際的な価格が四百五円しておるときに、それに換算したときの価格であるのか、あるいは百日とか百五十円とかいう昔の価格のままであるのか、この点についても承わっておきたい。
  114. 山際正道

    山際参考人 日本銀行におきましては、再評価の問題は、先ほど申し上げましたような意味で見送られておるのでございます。日本銀行保有金の評価につきましても、一グラム三円四十五銭という旧評価において評価が続けられておるのでございます。これは先ほども申し上げました通り、今後の日本銀行改正の場合においてどういう措置をとるか、またそれによって生じます評価益をどう処分するか、こういう問題とあわせまして御検討を願う段階になろうかと考えております。
  115. 横錢重吉

    横錢委員 これは驚くべき怠慢をしておると思う。今日の金の価格というものは、国際的に統一をされておる。しかも、そこに現われてくる四億四千七百万というものは、どこに対しても同じ効果を持たなければならぬものです。日銀だけの報告を見ておると、これは四億四千七百万だけのものしかない。しかし内容を見てみると、実に三円四十五銭という、安いときの価格のままで直されていない。そういうことになると、実際の価格というものは、何十倍、何百倍に相当するところの金額であるということになってくる。こういうふうな改正をなぜやらないのか。これは当然やるべきものを今日まで怠っておったのである。日銀法の改正ということをやっておらない。ここにやはり原因があるのであって、これは早急に改正をし、内容を改めるべきであろうと思うのです。  もう一つ言うならば、資本金一億のうち、五五%の五千五百万が政府の保有であるということが日銀法で定められておる。ところが五五%を上回って持っておるのです。これは明らかに日銀法に対して違反をしておる。これは政府の発行しておる報告の中に出ておる。日銀は中央銀行である、国立銀行であるから、そのやっておることは全部是なんだ、こういう考え方をとっておるのは非常に危険である。これは、やはり現在の情勢にあわせて運用されなければならないものであると思うのです。この点に関しても要望しておきたい。  さらにまた、もう一つ御要望申し上げておきたいのは、きょうも日銀の政策委員会が開かれるそうであるが、巷間伝えられるところでは、日銀の政策委員会が日銀の理事の仕事までとってしまっておる。日銀の理事の任務と政策委員会の任務とは、当然大きく違うはずである。ところが政策委員会がどしどしとくちばしを入れてきて、理事の仕事までも口を出してきて、これをとってしまっておる。理事がやりようがないから、下を圧迫してきておる、こういうふうなことが私は事実かどうか知らない。しかしながら、そういうふうなことを間々方々で聞きました。この点は真相を聞くのではなしに、総裁に対してそういううわさも相当にあるということを申し上げて、善処を求めたいと思います。
  116. 山際正道

    山際参考人 たびたび申し上げております通り、資本の問題、再評価の問題、その他各般の問題を含めまして、現在金融調査会において研究、論議が進められておるのでございまして、御提出の問題は、その調査会においていろいろ研究を進められることと考えております。
  117. 石野久男

    ○石野委員 私はさっき質問のありました春日委員、その他の委員の質問に関連いたしまして、二、三総裁にお尋ねします。  昨年来神武景気といわれておるが、その間に実際にわれわれの受ける感じでは、神武景気というのは大企業や大資本に集中をして、小さいところに及んでない。ところが今度第一次、第二次の公定歩合の引き上げという、こういう形の中で金融の引き締めを強行していきますと、これは各委員も言っておりますように、端的にしわ寄せされてくるのは中小企業であります。そういう意味から、この公定歩合の引き上げというものは、大企業と中小企業との間の隔たりを正そう強化していく、そうして、そのために日本経済の実態は相当大きな混乱を生じつつあると見ております。またそのことは、すでに総裁もお認めになっておるようでございます。こういう事情は、結果的にもちと、昨年の神武景気以来、この公定歩合の引き上げというものと関連して、大資本、大企業を育成し、それへのすべてのものの集中化を促進するという成果をここで上げておるのじゃないか、私はそういうふうに考えますが、総裁はそれに対してどういうふうにお考えになるか、御所見を承わりたい。
  118. 山際正道

    山際参考人 私は、日本のいろいろな産業構造からいたしまして、大企業といえども、中小企業との関連なしには成立していないように思うのであります。従って、俗にいう日の当る産業におきましては、大企業とともに、中小企業もまた相当潤ってきておる。しかし日の当らざる方面においては、大企業もまた中小企業とともに、十分な繁栄は維持できない、こういうようなでこぼこと申しますか、不均衡があるように思うのであります。そこで、全体といたしまして私が考えておりますことは、大企業といえども、中小企業といえども、大なるがゆえに、あるいは中小なるがゆえに、金融がつかぬということがあってはならぬと思うのです。問題は健全な経営が行われております限りは、大企業も中小企業金融がついていく、こういう態勢に置かるべきだと思うのであります。私は、そういう方向へ極力かじをとっていきたいと考えております。だれが言い出しましたか、神武景気という言葉がございますけれども、私は、必ずしもこれは一般普遍に各界を通じてあったとは考えません。いわゆる日の当るところの産業と当らざるところの産業の区別は、相当あったものと実は考えておるのであります。常に金融の基本が健全なりやいなやという基準において考えていきたい、こう考えております。
  119. 石野久男

    ○石野委員 日の当らない産業は、すべて今の総裁のお話によると、不健全であるということが主たる原因であり、こういうふうに見てよろしいわけですか。
  120. 山際正道

    山際参考人 私は必ずしもそう思いません。つまり内外経済の変動が、相当隆昌かつ健全でありました経営を非常な困難な地位に追い込むということもあり得ると考えます。たとえば、今日は繊維産業の方が振わぬといわれておれりますけれども、昨年来、御承知のように非常な増設がございまして、自然それでなかなか景気が行き渡っていがないという事情もあるわけでございまして、私は、やはり内外経済の変遷ということと相当密接な関連を打つものと考えております。
  121. 石野久男

    ○石野委員 これらの問題は、内外経済の変遷ときわめて密接な関係を持っておる、それは確かにその通りだと思うのです。それで、そういうような産業分野に対して、この第一次、第二次り公定歩合の引き上げというものは、こういうようにして救済の施策として影響をもたらしていくであろうか、また総裁は金融の総元締めとして、そういう問題をどのようにお考えになって今度の公定歩合の引き上げをなされたか、それについての御所見を承わりたい。
  122. 山際正道

    山際参考人 先ほども申し上げました通り日本銀行金融政策は、いわば個々の企業というよりは金融全般、量的と申しましにうか、そういう立場において操作をいたしておるわけでございます。むろん大きな分類におきましては、先ほど申し上げました通り、今回の公定歩合の引き上げに関しましても、輸出の部分は利息を上げない、また農業手形に関するものは据え置きをするといったような配慮はいたしておるのでございますけれども、個々の企業にまで立ち入っていたすことはいかがかと考えておりまするし、それは直接その衝に当っておりまする金融機関の配慮に待つところが多いと考えます。直接金融の衝に当っておりまする金融機関におきましても、私は極力この経済の変動が企業に大きな打撃を与えるというのではなく、事前になるべく円滑に、事態の推移に適合させるように進めて参りたいということを考えておるわけでございます。
  123. 石野久男

    ○石野委員 私のお聞きしたいのはそういうことじゃなしに、こういう公定歩合の引き上げをなさるときに、あなたはやはり金融の元締めとして、万般の事態を配慮されたと思うのです。その万般の事態ということの中に、日の当る産業とか、日の当らない産業というものも、やはり金融の態勢として考えられるはずだと思います。そのときそういう日の当らない産業分野に対してはどういうふうに影響するか、またそれをどういうふうにしたら救済でき得るかということについての、あなたの金融政策上の考え方はどうであったかということをお聞きしているわけです。
  124. 山際正道

    山際参考人 私は、俗なたとえといたしまして、日の当るところ、当らないところという表現をいたしましたけれども、これを個々の産業分野に対しまして使い分けをいたしますことは、非常にむずかしいことでありますと同時に、果してそれが日本銀行の本来持つべき通貨政策のうちに入るかどうかということも、問題があろうと考えます。各銀行を通じまして、自然それらの配慮は相当進められると思いますので、直接日本銀行がとる金融政策の中にその点を織り込むことは、非常にむずかしいことと考えております。
  125. 石野久男

    ○石野委員 非常にむずかしいから考えてなかったというふうに理解するわけですが、そういうことでは、金融政策というものを実際にわれわれ信頼が置けないと思うのです。それより私は、先ほどあなたが言われたように、いわゆる日が当らないとか当るというのは、必ずしも小さい資本だけではありません。大きい資本もそれに巻き込まれておるものがあるのだ、こういうように言われるが、それは私も認めます。ただしかしその場合でも、こういうことは言えると思います。大きい資本といっても、それにはやはり段階があるので、日本におけるところの大資本といわれるものは、そういう日の当らない産業分野を担当しておっても、ある程度のものは維持しておるし、また自分の大黒柱を倒すようなところまで行っていないわけです。おのずからその資本の段階のある区画を境として、その日の当るものと当らないものとの影響が出ておるのだと、こう考えます。私は、やはりここでそういうような日の当らないものに対する影響は、先ほど来特に春日委員も言われておるように、この公定歩合の引き上げということからくる金融の引き締めというものによって、中小企業が非常に大きな影響を受ける、その中小企業影響を受けた部門に対して金融政策上の、あなたのいわゆる救済策というものをどういうふうに持っておるかということを重ねてお聞きしたい。前に春日委員に対して、あなたはこういうふうに答えておる、私は、できるだけ市中銀行に対しても、中小企業に対して配慮するようにということを要請しておる、けれども市中銀行は、それ自体の金融機関であるという限度において手を打つことはなかなかできない、それ以上のものは、政府等によっていろいろ手を打ってもらうより仕方がないのだということで逃げておられる。これは、別に金融施策上の問題ではないわけです。もし金融施策の上で、あなたか今日の通貨の価値を維持し、日本の産業を健全に守ろうという立場からなされたこの公定歩合の引き上げであるならば、そういう中小企業の分野が非常は大きいだけに——わが国の経済構造、産業構造の中では、中小企業の分野が非常に大きいだけに、それに対する金融施策上の何らかの考え方があってしかるべきだと思います。その点をもう一度はっきりここでお聞かせ願いたい、またこれからどうするかということを、はっきりここで示してもらいたいと思います。
  126. 山際正道

    山際参考人 公定歩合の引き上げ中小企業金融に及ぼす影響についての御質問であります。実は私しばしば申し上げておりまする通り、その中小企業の経営が健全でありまする限りは、この今回の措置によって金融の梗塞を来たすことはなかろうという判断でおむのであります。ただ、先ほども申し上げました通り中小企業と申しましても、その内容は非常に多岐に分れておりまする関係上、真の原因を総合いたしまして、この際考慮を要するとかいう場合もあり得るとは思いまするけれども、直接日本銀行金融政策において、これをそこまで救済をするという措置をとりますることは、なかなかこれは機能上むずかしいということを申し上げておるわけでございます。自然政府その他の総合施策と相待たなければ、その目的は達成しがたい、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  127. 石野久男

    ○石野委員 とにかくあなたがなされた公定歩合の引き上げというものは、事実の上で中小企業に大きな圧迫を与えておるわけであります。ところが今の所見によりますと、中小企業といえども、健全ならば決して金融上の梗塞を来たすことはないとおっしゃる。しかし実際の問題として、数年来行われておるところの金融の系列化の問題、企業の系列化、資本の系列化の問題を通じて、それ自体すでに金融の面で中小企業は手放しにされておるという状態があるはずです。この事態はあなたも知っておるはずだ。もし日銀総裁がこれを知らないというなら、きわめて認識が足りないと思います。すでにやはりそういう実情を通じて、あなた自身が打たれた日歩の引き上げというものは、実に大きな影響を与えておるわけです。それにもかかわらず、あなた自身が日銀の施策の中では救済策は出てこないというなら、そんな手を打つことができないようなあなたの状態なら、なぜそういうような事態を起すような日歩の引き上げというものをこの際やったのか。むしろそれよりも、日歩の引き上銀をやる前に、何かやらなければならなかったことがあったのではないか。あなた自身は、そういう出題について、中小企業が健全ならば金融は梗塞しないとおっしゃったけれども、それを心から信じておるのですか。実際問題として、中小企業金融面で守られておるのであるかどうか、その点について、あなたのほんとうの割ったところを聞かしてもらいたい。
  128. 山際正道

    山際参考人 たびたび申し上げておりまする通り、今町の措置は、日本経済全体としての基盤を強固ならしめる、その崩壊を招くことのないようにということを基本といたしましてとりました措置でございます。私は、中小企業金融の問題につきましては、先般来も申し上げておりまする通り、極力各種金融機関、それは通常の金融機関もございまするし、政府の特殊金融機関もございます、みんなしばしば協議し協力いたしまして、できるだけ金融がついて参るようにという措置は講じておるつもりでございます。何分にも、これも繰り返し申し上げまする通り、一がいに中小企業と申しましても、多種多様、内容多岐にわたりまするために、十分その面で解決を見ない点はございます。これは、ぜひ一つ政府初め各般の協力によりまして解決いたしたい、こんな考えでおる次第でございます。
  129. 石野久男

    ○石野委員 どうも日銀の施策の中には、中小企業に対する金融面での配慮がきわめて薄い、それにもかかわらず、中小企業の受ける影響は非常に大きいので、私は、この機会に、日銀ではもっと中小企業の方面に対する配慮をしてしかるべきではないか、そういう意味で、あなたのブレーンの中に、政策委員会の中に、もっと数多くの中小企業者意見を入れるという用意はないのかどうか、一つあなたの率直な意見を聞かしてもらいたい。
  130. 山際正道

    山際参考人 中小企業の問題につきましては、従前も十分な、私としましては努力を払っておるつもりでおります。なお今後一そうその点については、あるいは調査につきましても、あるいは施策の上におきましても配慮いたして参りたいと考えております。
  131. 石野久男

    ○石野委員 この際総裁にお聞きしたいのですが、最近非常に物価が上ってきておる。この点は総裁お認めになられるかどうか。それからこの物価が上ってきている原因はどういうところにあるのか、それを財政と金融の面から忌憚のない意見を聞かしていただきたい。
  132. 山際正道

    山際参考人 統計上各種の資料等によって、物価の情勢につきましては常時留意をいたしております。何となれば、この問題は中央銀行として最も大事な関心事だからでございます。で、今まで現われておる結果によりますると、全体として申しまするならば、大体持合状態を続けておると考えるのであります。しかしお話しのように、ややもすれば上ろうとする要素も相当考えねばならぬ、あるいは繊維その他においては、下るという要素もまた現われてくるといったように、これまたいろいろでこぼこもあるように思うのであります。常時物価の上昇につきましては注意をいたしまして、上るものについては、極力金融政策の及ぶ限りにおきましてはその騰貴を抑制し、また全体として物価の安定という線を保っていくように配慮していく考えでございます。
  133. 石野久男

    ○石野委員 これからの見通しの点で、あなたは、ここ当分物価は横ばいのままでいくというように見られるのか、それとも、われわれの予想するところでは、早晩相当急激な上昇がくるだろうと見ておるけれども、その点に対してあなたの見解を聞かしていただきたい。
  134. 山際正道

    山際参考人 私どもの見方といたしましては、日本の物価は、御承知のように、これまた何べんも繰り返して申しまするけれども、海外情勢影響されるところがはなはだ多いわけでございます。また国際収支情勢にもはなはだしく関連をいたすものでございます。それで、率直に申し上げまして、物価を上げていこうという要素も相当ございます。それらも考えまして、通貨価値安定、すなわち物価の高騰を押えるという意味においての公定歩合の引き上げでございますので、私は、今後といえども必要に応じて各種の手を打ちまして、これだけは、日本銀行の機能の許す限り、物価の騰貴を抑制するための措置をとっていきたいと考えております。
  135. 石野久男

    ○石野委員 今の必要によってはまだ手を打ちたいということの意味は、この次もまた公定歩合の引き上げを、必要によってやるということなんですか。
  136. 山際正道

    山際参考人 私は、今後の情勢は、いっときもゆるがせにせず注視を要するものと考えます。国際収支情勢、海外の情勢、国内の諸般の経済情勢等を総合的に常に判断をいたしまして、もしそれが必要でありますならば、日本銀行に与えられた各種の手は打っていくつもりでございます。単に公定歩合の引き上げばかりではございません。いろいろ機能もございますので、それを総合的に、最も効果の上りますように遅滞なく手を打ちまして、物価の安定こそはぜひとも実現させていきたいと思っております。
  137. 山本勝市

    山本委員長 御承知のように、本会議が一時四十分から始まることになっております。そこで、実は今議題になりました参考人に質問中の法律案とは違いますけれども、総裁にまた再び近近の時間に御出席を願うことはちょっとむずかしいようですから、たまたま臨時通貨について、平岡君から緊急質問をこの際ほんの一口したい、こういう御要望がございますので、委員長はこれを許します。平岡君。
  138. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ただいま委員長から申された通り、本委員会に臨時通貨法の一部改正案が上程されておりますが、百円銀貨の発行数量、規格等が、審議日程に入っております。そこで、その材質をいかにすべきかということが一課題になっておりますが、この際硬貨の材質につきまして、日銀の率直な御意見を承わりたいと思います。なお一歩進めまして、通貨論といたしましては、昔の場合ですとノミナリスト、メタリストのこういう論争がございました。今こういう問題はございません。むろん国の経済力が通貨流通の原動力でありまして、その通貨の価値維持の支柱であることは言うまでもないのであります。私はそういう素朴な争いといいましょうか、そういうところに焦点がございませんが、しかし心理的には、依然としてやはりいいものの方が、いいことは間違いがないのです。私は具体的に、たとえばアメリカの場合ですと、この一ドル、これは九〇%何の金です。これは今発行を停止されておりますけれども、やはりハーフ・ダラーにしましても、クォーターにしましても、非常に質がいいのです。それに次ぎまして、たとえばイギリスの、これは銅貨でありますが、一九〇一年の銅貨です。五十年たって、現在しかもこれは流通しておるのです。こうした点から、通貨自身の持つ価値がやはり非常に心理的に影響しまして、日本のインフレ気がまえの状況においては、特にここに百円硬貨が発行されるに当りまして、材質の点は重要視すべきであろうと私は考えております。もっと具体的には、日本の硬貨の歴史におきまして、銀のパーセンテージが七二%を落ちたことがないのです。しかし今銀行局ですか、政府の方におきましては、相当悪貨を鋳造しようというようなことでありますが、この際日銀としましては、どういう御意向を持っておるかを表明されたいと思います。
  139. 山際正道

    山際参考人 御指摘の通り、まあ今日ではメタリスト、ノミナリストの議論は相当はやっておりませんけれども、しかし感じとしましては、やはりコインについては、何と申しましても相当品格のあるようなものの方が、その価値をみんなが尊重するだろうと思うのであります。それでありますから、相なるべくは、事情許すならば、銀貨につきましては銀の含有量を多くいたしまして、いかにも銀貨らしいというものにしていただければけっこうだと思います。銀のそのための所要量等はございましょうけれども、事情が許しますならば、いかにも品格があり貴重だというような感じを持つような鋳造をお願いしたいと考えます。
  140. 山本勝市

    山本委員長 石野君が不満だそうですから、ほんの一言だけ許します。
  141. 石野久男

    ○石野委員 先ほどの総裁の御答弁の中に、日銀としては、これから後の事態の推移によって、あれこれの手を打つということを言われた。われわれの感じでは、どうしても経済の実態というものは、あまり将来性をよく見ません。従ってこういう面からは、物価の高勝などを抑えるために、あれこれの手を打たなければならぬだろうということを想像するわけです。あなた方の見解も、第一次の公定歩合の引き上げをしたときと第二次の引き上げをしたときの見解はずいぶん違っておるわけです。そういうことを考えますと、私は、やはりこれからあと必ず第三次の公定歩合の引き上げをしなければならぬような事態が出てくるだろうと思う。総裁は、その場合にあれこれの手を打つのだ、こう言って、日銀が今諸般の事情考えての打つ手というもの、これはまあわれわれも、いろいろと思い当る点はありますけれども、当面今の日本経済実情からいって、しなければならぬことということはどういうことなのか、またどういうことをあなたは期待しているのかいとうことを、この際一つお聞かせ願いたい。
  142. 山際正道

    山際参考人 将来の情勢次第でありますので、今ここで申し上げますことは非常にむずかしいのでありますけれども、要するにもしその事態が必要でありまするならば、いろいろな方法により、金融の引き締めを強化せざるを得ないという心配を持つのであります。その意味で申し上げたのであります。その方法といたしましては、あるいは銀行の日本銀行に対する依存度をもっと端的に減らさせる、足りないところは何でも日本銀行に行って借りればいい、信用の造出によって当面を糊塗しようというようなことを、一そう強力な方法で阻止するといったようなことも考えられるかと思いまするし、その他担保の制度でございますとか、いろいろな措置はあろうかと思いまするが、要するに、できれはそういう手段をとるようなことなしに、国際収支の均衝、物価の上昇の抑制等を推進していきたいと念願しておる次第であります。
  143. 山本勝市

    山本委員長 春日君の発言を許しま出す。
  144. 春日一幸

    春日委員 資料要求。ただいま本委員会に付託されておりまする金融法案を審議いたしまする必要上、次の資料を要求いたします。それは昭和二十九年のたしか二月でありましたが、公正取引委員会が集中融資、偏向融資の実積を調査いたしまして、国会の商工委員会提出いたしたことがございました。現在の金融引き締め政策を進行されていく段階におきまして、偏向融資、系列融資がいかに行われておるか、この実態をわれわれ把握することなくしては、金融関係法案の正確なる審議ができ得ないと存ずるのでございます。従いまして、少くとも十一大銀行がその自己資本の一割以上をこえて集中的偏向的に貸し出しをいたしておりまするその貸し出し対象並びにその金額、これを本委員会に御提出を願いたいと存じます。以上であります。
  145. 山本勝市

    山本委員長 委員長においても善処いたします。  午前はこの程度にとどめまして、午後は本会議散会後に再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕      ————◇—————