○奥野
政府委員 遊興飲食税の改正は、
減税をねらったのではございませんで、
税負担を合理化して徴税を円滑ならしめていきたい。そうして将来においては、むしろ
増収を期待できるような基礎を作りたい、こういう
考え方に基いたわけであります。
戦前芸者の数は八万人くらいございました。現在では二万五千人に減っております。それでは、客席にはべりまして、接待をするような婦人が減ってきたのかといいますと、そうではございませんで、全体としては非常にふえているだろうと思うのであります。たとえて申しますと、カフェ、キャバレー、バーにおきます従業員が七万人になっております。なおまた料理店、貸席、待合におきます従業員、これは芸者とは違いまして、女中さんたちもずいぶん入っていると思いますが、十一万五千人おるわけでございます。現在課税上芸者とこれに類するものにつきましては、花代を課税標準にとりまして、三割の
税率を適用しているわけでございますが、類する者が二万八千くらいでございます。従いまして、また芸者ないしこれに類する者の二万八千人についてだけ三割という高い
税率を適用しているわけでございまして、同様な形態にあります十数万人につきましては、低い
税率を適用している、こういう実態になっておるわけでございます。なぜそうなってきたかといいますと、芸者という看板であれば高い
税率が適用される。そこで、芸者の籍を抜きまして女中に住み込む、遊芸仲居として、行為は同じようなやり方をしている、あるいはまた第二検番を作りまして、派出接待婦といいましょうか、時間ぎめで出ていくわけでありますけれども、花代形式の料金の受け取りはいたさないわけでございます。同時にまた、どちらかといいますと、和風の遊びが洋風になってきたというような言い方もできるのだろうと思うわけでございます。そうであれば、それらの面についての課税を強くすればいいじゃないか、こういうような
考え方もできるわけでありますけれども、しかしこういう面におきましては、芸者のような花代方式の料金の徴収の仕方はいたしていないわけであります。たとえていいますと、飲食の料金の二割を業者としては余分にお客からもらって、そのうちから女給その他に分配をしていくというやり方をしているところもございますし、やり方はいろいろございます。必ずしも飲食の料金と、それらのサービス料とを区分して経理しておりません。ただ税の建前からだけ営業の形式を変えろと要求することもいかがなものかと思われるのであります。そうしますと、大部分のものにつきまして、そのサービス料だけ区分して課税する方式はとらないのであります。ごく一部分のものについてだけ区分して高い
税率を適用する。その結果は、だんだんと遊芸仲居や派出接待婦の形式が出てきたりしまして、脱税努力が加わって参ってきておるのであります。また特に業態につきまして、税制上この業態についてだけ特に圧迫を加えなければならないというようなことも、私たちとしては筋が通らないと思うのであります。そこで、
税率は一様にいたしまして、そのかわり現在起っております脱税努力というものを少くしていく、また全体として把握を厳重にしていけるようにする。そうしますと、
税率は下げましても、将来におきましては業者に納得してもらって、徴税が円滑にいき、そうして
増収を期待することができるようになっていくのじゃないか、かように
考えておるわけであります。従いまして、芸者の花代に関しまする
税率を引き下げますことは、さしあたりは減収になるわけでございますが、将来としては、全体として
増収を確保できるのじゃないだろうか、こういう
考え方を持っておるわけでございます。これが一点でございます。
もう
一つは、現在遊興飲食税の
税率区分が非常に複雑になっております。たとえて申し上げますと、旅館に宿泊いたしまして、千円までの料金であれば五%、千円をこえました場合には一〇%、晩の会食行為に芸者を呼びました場合については、その飲食につきましては一五%、芸者の花代につきましては三〇%という
税率になっております。業者としてもなかなか客に納得してもらいにくい。従いまして、
税率を単一化してもらいたいという要望が強く出されておるわけでございます。役人が徴収する
税金でございますと、かなり複雑でありましても、
消費者に納得してもらうことが可能であります。しかしながら業者に
税金を徴収してもらうのでありますから、支払いますところの
消費者があらかじめわかっている姿でなければならないのじゃないだろうか、かように
考えるのであります。そうしますと、やはり
税率の単一化ということが必要じゃなかろうか、こういうことから、ある
程度免税点を引き上げながら、
税率を一〇%と一五%に簡素化をはかったわけであります。
第三には、公給領収証制度をとっておるものでございまして、芸者の花代につきましては
税率が違っておるわけであります。そうしますと、芸者の花代部分につきましてだけは料金が幾らであり、三〇%の
税率を適用した税額が幾らであるかということを書かざるを得ません。そうしますと、受け取る側で花代何本、料金が幾らであり、税額が幾ら、こういうものが残っておることを非常にいやがるようであります。その結果、芸者の花代だけは別ワクにしてくれ、こういうことになりまして、脱税したいと
考える業者の気持と一緒になってしまうわけであります。やはり公給領収書制度をとります以上は、受け取る側が受け取りやすい、こういう姿に持っていく必要もあろうかと思うのでありまして、そういう意味においては、花代というものだけを区分経理する必要のないような姿にする必要があるんじゃなかろうか、こういう
考え方も花代
税率について手をつけようとした動機であるわけでございます。その他若干、いろいろの問題があるわけでございますが、大筋は今申し上げましたような点でございます。