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1957-03-19 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午後零時二十六分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       淺香 忠雄君    一萬田尚登君       大平 正芳君    奧村又十郎君       川島正次郎君    吉川 久衛君       小西 寅松君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       夏堀源三郎君    古川 丈吉君       坊  秀男君    前田房之助君       森山 欽司君    山本 勝市君       有馬 輝武君    井上 良二君       石野 久男君    石村 英雄君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    竹谷源太郎君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   渡邊喜久造君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 三月十八日  委員有馬輝武君及び井上良二辞任につき、そ  の補欠として井手以誠君及び古屋貞雄君が議長  の指名委員に選任された。 同月十九日  委員遠藤三郎君、井手以誠君及び古屋貞雄君辞  任につき、その補欠として一萬田尚登君、有馬  輝武君及び井上良二君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員萬田尚登辞任につき、その補欠として  遠藤三郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十八日  国家公務員等退職手当暫定措置法等の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇五号)(予) 同日  国家公務員等の旅費に関する法律の一部改正に  関する請願(有馬輝武紹介)(第二一九二  号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第二一九三号) の審査を本委員会に付託された。 三月十五日  揮発油税率引上げ反対等に関する陳情書外六件  (第四五〇号)  同外六件  (第四八八  号)  同  (第五三九号)  引揚者在外資産補償法制定に関する陳情書  (第四五三号)  在外資産補償に関する陳情書外二件  (第  四五四号)  税制改正に関する陳情書  (第四五五号)  同  (第四八七号)  同(第五三  七号)  手形等に対する印紙税の据置きに関する陳情書  (第四五六号)  貸金業者団体指導等に関する陳情書  (第四五八号)  高金利利用者に対する法律適用に関する陳情書  (第四五九号)  財界人複利取得自粛に関する陳情書  (第四六〇号)  地方道路譲与税率引上げ等に関する陳情書  (第四八九号)  金融調整に関する陳情書  (第四九  七号)  不動産銀行の運営に関する陳情書  (第四九八号)  歳末及び中元資金貸出の取扱いに関する陳情書  (第四九九号)  原糸課税反対に関する陳情書  (第五〇〇号)  生糸課税反対に関す  る陳情書外一件  (第五〇一号)  同(第五  四〇号)  印紙税引上げ反対に関する陳情書外一件  (第五〇二  号)  機械漉和紙物品税課税反対に関する陳情書  (第五〇三号)  同外一件  (第五四一号)  百円硬貨鋳造反対に関する陳情書  (第五〇  四号)  生命保険会社代表社員駐在制設置等に関する  陳情書  (第五〇六号)  火災保険代理店保護に関する陳情書  (第五〇七号)  生命保険契約失効の復活に関する陳情書  (第五〇八号)  国民金融公庫資金増額に関する陳情書外二件  (第五二  四号)  公社債利子所得に対する免税措置に関する陳情  書  (第五三五号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国家公務員等退職手当暫定措置法等  の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇五号)(予)  所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一四号)  租税特別措置法案内閣提出第四八  号)     ―――――――――――――
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。  昨十八日、予備審査のため参議院より本院に送付され、当委員会予備付託となりました国家公務員等退職手当暫定措置法等の一部を改正する法律案議題として審査に入ります。まず政府側より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官足立篤郎君。
  3. 足立篤郎

    足立政府委員 ただいま議題となりました国家公務員等退職手当暫定措置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  勤続期間二十五年以上で退職する国家公務員等に対し、整理退職の場合と同じ割増率退職手当を支給するとともに、日本専売公社及び日本電信電話公社役員国家公務員等退職手当暫定措置法適用から除外するためにこの法律案提出した次第でございます。  次に、その改正の要点を御説明いたします。  第一点は、二十五年以上勤続した国家公務員等退職手当についてであります。  現行国家公務員等退職手当暫定措置法によりますと、退職手当最高率は、定員の減少または組織の改廃その他これらに準ずる事由により過員または廃職を生ずることにより退職した者に対してのみ適用されることとなっておりますが、今般諸般の情勢を考慮いたしまして、勤続期間二十五年以上にわたる長期勤続者が退職する場合等にも整理退職の場合と同率の退職手当を支給することができることといたしました。  第二点は、日本専売公社及び日本電信電話公社役員を本法の適用から除外しようとするものであります。  昨年、日本国有鉄道法の一部改正法が施行せられ、同公社役員は、国家公務員等退職手当暫定措置法適用から除外せられ、その者に対する退職手当につきましては、運輸大臣の承認を受けて公社が定めることとなりました。  日本専売公社及び日本電信電話公社役員に対する退職手当につきましても、日本国有鉄道の例にならい、国家公務員等退職手当暫定措置法からこれを適用除外することといたし、あわせて日本専売公社法及び日本電信電話公社法の一部について必要な改正を加えることといたしました。  以上がこの法律案提出理由及びその概要でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  4. 山本幸一

    山本委員長 これにて提案理由説明は終りました。  本法律案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 山本幸一

    山本委員長 次に、内閣提出にかかわる所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法案の三法律案一括議題として、質疑を続行いたします。横山利秋君。
  6. 横山利秋

    横山委員 先般来問題になっておりました人格のない社団または財団に関して、あらためて総括的な質問をし、同時に先般来理事会で問題になりました疑点を公けに確認いたしたいと思います。  もう一度お伺いしますけれども、人格のない社団及び財団というものを、政府としてはどういうふうに定義をしておられるか、それをまずお伺いしておきます。
  7. 原純夫

    原政府委員 人格のない社団財団といいますのは、世の中個人あり法人あり、その他において個人でもない、また法律法人格を与えられてもおらないが、団体というような言葉で呼ぶのも一つの呼び方だろうと思います。実際に世の中に何々会であるとか、何々協会であるとかいうようなことで団体がございます。それが事柄そのものの性質に従って社団的なものであり、財団的なものである場合があるわけであります。それらを人格のない社団または財団と呼び、また場合によって、法人でない社団または財団と呼んでおります。この際ちょっとお断わりしておきますが、所得税法の方は、正誤で「法人でない社団又は財団」というふうに直さしていただいております。そういう形で言葉を統一いたしておるような次第でございます。
  8. 横山利秋

    横山委員 「法人でない社団又は財団」というふうな訂正なされているのですが、結局あなたの説明によれば、法人でもない、個人でもない、その両方でもないものを総括して、人格なき社団ないし財団というふうにきめることに本来的な問題がありはしないか。黒でもない白でもないものをすべて適用するといわないで、一体それは何だ、青色だとか、黄色だとかというふうに定義をして、その青なり黄なりに対して課税をするということが本来的なものではないか。なぜにそれが行われないのか、またそれは将来行う気持はないのか、それをお伺いいたします。
  9. 原純夫

    原政府委員 ただいま申しましたように、団体であります。社団的なものと財団的なものとがあるので「社団又は財団」こう申しておるので、団体であります。ですから、団体である、ただしそれが形式的な法人格を取得していない団体であるということで御了承を願いたいと思います。
  10. 横山利秋

    横山委員 やはり同じことだと思うのです。法人でない団体であるといっても、それは何だ。でないものは何かという、何かということが定義をされずに、でないものをきめることに問題がありはしないか、その法人でないものはどういうものだということをきめる必要がありはしないかと言っているのです。また将来きめる意思があるのかないのかということを聞いておるのです。これらの人格なき社団及び財団について、それぞれ各項に規定がございますけれども、それらの諸法の中にあります規定というものは、必ずしも統一がされていないのです。ここで税法でのみ統一することに問題がありはしないか、私はこう思うわけであります。従って、私はこの法案それ自体に根本的な異見を持っておるわけでありますが、少くともこの法律をきめるに当って、将来やはりこのままでいくのか、何か諸法の間に統一的な見解をもたらす必要がありはしないか、こう言っておるのでありますが、あなたは全然そういうことは考えないようでありますが、重ねて伺います。
  11. 原純夫

    原政府委員 おっしゃる通り、この問題は日本法律秩序の上で非常に複雑な問題であり、かつ体系的に重要な問題であると思います。私単純に、団体であると申しましたが、その団体の実態にしても、またその外延と申しますか、どこと境をどう接するかという問題にしても、いろいろ議論があってきたところでありますし、今後もいろいろな議論があるところであろうと思います。そういう点について、公法、私法を通じてこういうものをどう位置づけていくかという点については、なお今後その位置づけ等について十分議論を洗練していく必要があることは、私ども痛感いたしております。その辺は、今後なお十分努力いたしたいと考えております。
  12. 横山利秋

    横山委員 この社団及び財団は、権利能力がないわけですね。そこが今度の問題でもあるわけです。権利能力がない社団に対して課税をするというところに問題があると思います。その持っている財産なり、あるいはいろいろなものの所有権というものは、だれに帰属しているかわからないのであります。たとえば差し押えをするとすれば、一体だれのものを差し押えをすることになるのでしょうか。代表者管理者の定めがあっても、それはついているその人のものではなく、団体のだれかがかりになっているのにすぎないのであって、それは団体全部の個人共有物でもありますから、それを税法上かりに差し押えをするとしたならば、一体どういうふうなことになって参りますか。だれのものをとるということになりますか。
  13. 原純夫

    原政府委員 改正法の附則の二十二項にその関係のことがしたためてございます。国税徴収法の一部を改正いたしまして、その中に、第四条ノ七ノ二というのを設ける、そうしてそれの第四項に「社団等国税滞納シタル場合二於テハ当該社団等ニ属スル財産ニ就キ滞納処分執行スルコトヲ得」というふうにしていただきたいと思っております。つまりただいま御疑問の点については、社団等に属する財産について滞納処分ができるようにいたしたい。社団等に属する財産が何であるかということは、実体判断の問題であります。社団等に属する財産を判定して、それについて、その前に申告があり、申告に基いて納税がある、また督促で納まるという段階があり得ることはもちろんであります。その先、執行の面ではこういう現定を用意いたしております。
  14. 横山利秋

    横山委員 しかし、それは財団所有権があるというふうにみなしたところで、その所有権というものの帰属は、実体的に不明瞭であって、正確に言うならば、そこに所属しておる人々の共有的なものである。その人々が、かってにとるのはけしからぬといって、憲法をたてにとって、この法律に対して無効の訴訟を起したら一体どういうことになりますか。
  15. 原純夫

    原政府委員 当該社団等財産であるということは、執行するわれわれの側で保証する責任がございますが、それには、たとえば人格なき社団申告に際して、その収益事業に属する経理は、その他の部分の経理と分別してやってほしい、そうしてそれについていろいろな財務諸表を出してほしい、出さなければならないということになっております。従いまして、人格なき社団は、所得申告に当りまして、財産関係についても付属の資料として出して参るわけであります。自分は——というのは人格なき社団でありますが、うちの会はこういう財産を持っているということを届けてくるわけであります。そういうものをもとにして所得申告され、また税務の調査も行われるということになりますれば、これは人格なき社団のものであるというものが、ある程度といいますか、相当程度確認し得ることに相なります。その他、そういう申告書ないしそれに付帯する書類によらないでも、人格なき社団のものであるということを証明し得る財産はあろうと思います。それは、すべてそういうような諸般事情から人格なき社団のものであるという判定がつきますれば、お願いいたしておりますただいまの国税徴収法第四条ノ七ノ二に新たに入ります規定によって、どうしても任意に納めないという場合には、執行し得るというふうに考えておる次第でございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 ある学者の説によりますと、権利能力なき社団の成立する場合を見ると、大体二つに分つことができるとして、一つは、設立者意思により任意的に権利能力なき社団を成立せしめる場合、二つは、設立者意思にかかわらず、法定要件を満たすことができないため、権利能力なき社団の生ずる場合と、法律権利能力を取得せしめることを得ない種類の社団であるがために、かかる社団を生ずる場合とに大別することができる、こういうふうに分けておるのであります。ところがこの中の後者の分をかりに検討してみますと、あとで御質問をいたしますけれども、たとえば各種学校学校法人の問題を例にとって調べてみましたら、七千くらいの各種学校のうちで、五百五十くらいしか法人になっていないというのであります。今日も、この人格なき社団ないしは財団が先般三十万ないし四十万くらいあると言われておるのでありますが、その中で、どう法人になろうとしても、今の法定要件がむずかしいために、あるいはいろいろな政治的な事情のために、なろうと思ってもなれないというものがあるわけです。そういうふうに頭からワクを作っておいて、そして今度人格なき社団ないしは財団がこの法律案によって圧力を受けるということについては、多少私は、税法適用する場合においても考えなければならぬことではないかと思う。従って、この際法律権利能力を取得せしめる法定要件を緩和して、そうして法人になりたいというものに対して道を開いてやる必要がありはしないか、こう考えるのでありますが、いかがでありますか。
  17. 原純夫

    原政府委員 非常に法秩序の重要な部面に関する問題でありますから、また事柄の筋から申しまして、私が政府を代表してどうという答弁のできない問題であると思います。おっしゃる通り営利といいますか、事業を営むものは会社等になれる。ところが民法のいわゆる三十四条の法人格は、公益目的のものでなくてはいけない。従って営利でもない、しかし公益でもないというものについて法人格がとれないという事態になっているのは、おっしゃる通りであります。そこで、そういうようなことから、人格なき社団というものができてくるというような面もあろうかと思います。そういうものについて、何らか法人格をとれるようにするということにしてはどうかという御意見でありますが、これは、私のお答え申す限りの外のことでありまするし、また個人的な意見を申すというのも不穏当なことでありますから、十分研究させていただきたいと思います。私は、そういうような気分が個人的にはいたしますけれども、非常に大きな問題でありますので、ただいまのところは、それができないということから、またその他の事情からいろいろ人格なき社団ができている。その中には、われわれが問題にしようとするようなものは、おおむね会社になったらどうなんだろうと思うようなものがほとんどなのでありますが、その他に、おっしゃるような分野があることは確かであります。その点については、先ほど冒頭に言われた人格なき社団財団についての概念規定、あるいは法制をどうするか、非常に大きな問題につながる問題でありますから、御指摘を十分覚えておりまして、今後関係の方と一緒に研究して参りたいと思います。
  18. 横山利秋

    横山委員 確かにあなたのおっしゃるように、この問題に重大な関連を持っていますけれども、あなたの答弁を求めるのは無理なような気がいたしまけれども、私は、ここに考えてもらいたい重要な点があると思うのです。税法というものが、ほかの基礎法関連なく現実社会現象を追って次から次へと法律が定められ、規定が定められておる今日、しかも各般にわたって税法の中の基本原則というものが、どこにも現われてないわけです。また税法各間において、基本原則にも共通のものは私はあまり見当らないように思うのです。言うならば、租税基本法というものがあってしかるべきではないかと思うわけであります。妙なことを言い出したようでありますが、私は特にそういうことを思うのです。たとえば租税法定主義原則なり、あるいは個人課税原則なり、いろいろ税法にはそれぞれの原則がある。その原則が、法律の中にあまり現われていないで、ほかの文句を借りてその原則がにじみ出ておるというのに今日はすぎないのではないかと私は思う。そのために、税法各間においても原則が侵されるという場合があって、例外が原則になっておるような場合も方々に見えるのであります。私が言う租税基本法というようなものが定められておるならば、これが民法なり商法なりとの関連というものを常に私は考えると思う。今大蔵省なりあるいは国税庁が実際に行われております仕事は、現実社会現象現実所得、それを追うのにきゅうきゅうと言っては失礼かもしれませんが、きゅうきゅうとして、そうして民法なり商法なりとの関連というものを置きっぱなしにしたまま税法が進んでおる、こういう感じがするわけであります。従ってこの問題についても、人格なき社団ないしは財団についても、本来的なことを言うならば、私の言うような民法なり、あるいは商法なり、関連諸法規との関連性において、同時改正立場においてやるべきではないか。もちろん学者の中には、それらの法律と相離れて税法学は存在し、税法基本理念民法商法立場を変えてあるべきだという議論をする人はあります。ありますけれども、税法がそれらの法律と全然観念を変えて先行するということは、私は慎むべきことではないか、こう思うわけです。抽象的ではありますが、その意味において、あなたに質問しても多少無理かもしれませんけれども、税法が先行している、現実の事象を追い過ぎる、他の諸法との関連性というものを考慮しないで、大蔵省だけが先行しておるということについてどうお考えになるでしょうか。
  19. 原純夫

    原政府委員 租税について共通法といいますか、基本法ということの必要については、われわれもよくそういう議論をいたします。そういう問題があると思います。ただ本件の人格なき社団財団に関しまする問題は、後段で言われましたように、租税基本法の問題の前に、いわば一般法ですね、租税を特殊の法規として一般民法商法分野におけるかまえがどの程度できているかという問題、おっしゃる通りであると思います。御存じの通り民事訴訟法では、これに当事者能力を与えるとか、あるいは独占禁止法、あるいは金融関係諸法その他の法規で、取締りの対象としてこれを法律上取り上げるというものがだいぶあるというようなことになっております。そのほか税法では、相続税法でこういうものに対する贈与に関する規定が入っているというようなこと、今回またこういうようなものについての所得課税規定が入るというようなことで、これが先ばしり過ぎるという意味でのお尋ねでございますが、私ども率直に申し上げますと、先ばしっておりますのは、現実事態が非常に走ばしっておるというふうに考えます。お話しの民法商法一般規定は、まさか営利事業をやるのに、人格のない社団でやることはあるまいというようなことでずっときておるのが、近ごろだんだんそういうものが出てきた。そこで、おっしゃる通り、問題はやはりそういう一般法の問題になると思います。その意味で、先ほど申し上げました通り、その面の問題としてじっくり取り上げなければならぬということは痛感いたしていますが、その間税の面においては、しばしば申しますように、これはほうっておけないという見地から、今回お願いいたしておりますような、明瞭に継続的に収益を得るというようなものについては課税しようということで、法律の格好においては、おっしゃる通り税一般法より先に出ることになると思います。しかし、その前に事実が先に出ているものに対しては手当しなければならぬ。その場合に、一般法から直してかかるのが非常にオーソドックスな行き方だろうというお考えもあると思います。しかし、こういうものは裏の世の中の移り変りということから考えて、ここだけは手当しなければならぬというものが先に出ましても、そのときその必要が特に緊切であり必要であるならば、お認め願うということにつかざるを得ないんじゃないかというふうな気持で今回お願いいたしておるわけであります。
  20. 横山利秋

    横山委員 あなたのおっしゃることは、政府全体の立場に立てば、税金を取る、取る方だけは先行しますよ。それから保護育成、発展のようなものについては、しばらくほうっておくということなんです。そういうことは、国民の側から見ればはなはだけしからぬ問題だということになると思うのです。国民にとっては、親切な方も不親切な方も同時にやらなければ話は合いません。しかし、これは根本的な問題でもありますから、租税基本法の問題とも関連して一つ十分に御検討を願いたいし、私どもとしても、さらに将来へ問題を発展させて参りたいと思います。  次は、人格なき社団ないしは財団が三、四十万あるというのですけれども、それらの諸団体は、青年団からPTAから婦人会から政党から各種労働組合から、あるいは教会の問題から万般にわたっていますけれども、その万般の人人は、自分組織人格なき社団ないしは財団であるということすらも今日知らないのであります。名前がそうであるということも全然知らないその人等に、ここにいきなり国会がこの法案を採決して四月一日から実施しようとしておるのであります。大体の税法ならば、新聞に載り、ラジオで聞けば、おれのところは今度税金がこのくらい上る、ないしは下るということに気がつくでありましょう。しかし青年団が、PTAが、政党が、労働組合が、新聞を見ても税務署から言ってきても、なおかつおれのところには関係がない、この法律適用されないということになるのは火を見るよりも明らかであります。しかもその三、四十万の人たちに所得申告義務が発生するのであります。しかりといたしますならば、税務署から申告をしないということで、場合によっては無申告加算も出て参る。そういう申告義務が四月一日から一斉に三、四十万の人々に発生するという重大な問題について、先般来私は指摘し続けてきたのでありますが、法律上それらに対して申告の義務があるというふうにあなたらとしては片づけるつもりでありましょうか。またその人々は、申告の義務が一斉に知る知らぬを問わず発生したと見るべきでありましょうか。また申告をしないという問題に対しましても、刑罰がそのままなまに適用されるのでありましょうか。きわめて重大な問題でありますから、御答弁をお願いいたします。
  21. 原純夫

    原政府委員 今回の改正案では、人格のない社団等収益事業を営む場合には、税務官署に必要事項を届け出ることを要します。また毎事業年度、その収益事業所得に対する法人税を申告納税することといたしております。そこで、収益事業の範囲については、別途御提出いたしました資料の通り取り扱う方針でありまして、その趣旨の周知徹底に遺憾なきを期するつもりでありますが、さしあたりは、収益事業を営むと認められる人格のない社団等に対しては、税務署の方から積極的に通知をいたしまして、その届出を待って課税を行うということにいたしたいと存じます。なお収益事業を営むかどうかの判定に当りましては、いたずらに広く網を張るという態度でなく、これはどうしても課税せねばおかしいというものに限って課税事業に該当する旨の通知をする方針でありまして、このため国税庁及び国税局で統一調整をはかりながら円滑な運営をはかるつもりであります。すなわち当初は、具体的なケースについて国税局において全体的に調整をとり、その後においても、異例のものについては一々局の指示を仰がしめる等、税務当局の恣意に流れないよう慎重を期するつもりであります。
  22. 横山利秋

    横山委員 お話しによれば、税務署は積極的に人格なき社団ないしは財団に対して御通知をなさるということが第一点。第二点が、ほんとうにおかしいと思われるものだけにやる。第三番目は、統一的に調整をして、末端の税務署が勝手なことをやらないようにする、こういうお話でありますが、第一点と第二点とはどういう関連を持つのでありますか。つまり、この三つの点を総合しておっしゃることはこういうことでありますか、たとえば、税務署が勝手にやらないで、局並びに本庁との打ち合せの結果おかしいと思われるものを選んで、そのおかしいと思われるものに対してのみ税務署から通知がいく。あなたは上からおっしゃったのですが、下から言えば、そういうことになるのでありますか、そういう意味ですか。
  23. 原純夫

    原政府委員 調べはやはりまず税務署がやるわけであります。税務署がやりますについては、もちろんいろんな会議を事前に行なって、こういう趣旨でこの制度ができたん、だから、こういう趣旨で選びなさいということを申して、それで税務署が具体ケースをずっと当って参る。そしてそれらについて通知を出す前に、当初においては、やはり局の段階で全体的な調整をはかる。はかる際の気持は、人格のない社団であれば全部かかるんだとか、あるいは収益事業も広く解釈するというような態度でなくて、これはかけなくてはいかぬというような角度からしぼった気持でやって参る。もちろんそれをやって参ります間に、だんだんそれらの認定についての基準というものが具体的に出て参ると思います。そういうものに期待しながら、当初は、そういう慎重な態度で、範囲をあまり広げ過ぎない角度でやって参る運用上でいえば、腰がまえというものを第二点は示したものでございます。
  24. 横山利秋

    横山委員 一体、この人格なき社団ないし財団に対して、租税収入は来年度はどのくらい見ていらっしゃるのですか。
  25. 原純夫

    原政府委員 これは、そう大きな額ではないと思っております。まず十億の位には上らないだろうと思っております。
  26. 横山利秋

    横山委員 十億というのは、どういう基準で推定されたのですか。
  27. 原純夫

    原政府委員 実はただいまのところは、さきに申し上げましたように、実質課税原則によって、個人課税ができるというものについてはやっておりますが、そうでないものについては——そうでないというか、その辺に相当疑問があって、十分な調査ができないというようなことから、いろいろ資料を集めております中に、何百万というような剰余がありそうだ、あるいは千万台の剰余がありそうだというものがありますけれども、これについて確実に幾らかということは、調べてないのでありますから言えないが、事柄のオーダーが百万、千万のオーダー——千万台のは少いのですけれども、若干あるということになるとそれらがずっと集まって参りまして税額として幾らになるかと聞かれた場合に、まあ億の単位に上るのじゃなかろうか。が、十億台には上らないのじゃないかという程度にしかお答えできないので、ただいま十億の単位には上らないというふうに申し上げたわけであります。
  28. 横山利秋

    横山委員 お話を承われば、十億というのは全くめっそうで、根拠のない数字のようでありますが、一つこの問題については、少くとも租税収入ということを頭に入れないで、最小限やむを得ないもの、こういうふうな範囲でやるのがやむを得ない最終の問題だと思うのでありますが、先般来、零細な収益事業を追及しようということは毛頭考えておりません、こういうお話がございましたが、あなたのおっしゃる零細な収益事業とは、一体どういう範囲のことを言っておられるのでありますか。たとえば、私が承わりたいのは、婦人会とか、あるいはPTAだとか、あるいは同窓会だとか、あるいはは何かの後援会だとか、全くたくさんのものがあるわけでありますが、零細な収益事業とは一体どういう点を言うておられるのですか。
  29. 原純夫

    原政府委員 私は、零細ということでは特に強く申したつもりはないと思います。もちろん零細なものまであさるつもりはないわけですが、こういうものには、先ほど申しましたように、営利ではないが公益でないというものがいろいろあるわけです。そういうようなもので、たまにバザーをやるとか、たまにコンサートをやるというようなことまであさるつもりはないという意味で申したわけで、かりに事業をやる人が、会社を作らない、小さい事業だけれども、人格なき社団というようなことでいたすというような場合には、やはり零細だからどうという問題ではないと思うのであります。一般の税であまりこまかいものはつつかぬというのは、一般的なこととしては言えますが、零細とはどの程度にいくかというようなギリギリした形においてお答え申し上げるような意味においては、零細ならばどうしようというようなことは別段私は考えておりません。
  30. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、あなたの言う先ほどの三項目にわたる御答弁の、広い網をかけはしない、おかしいと思われるものだけに限定をしてやりたいという意味が少しぼけてくると思うのです。少くとも私の言う下部末端における婦人会組織なり、あるいは町内会組織なり、あるいは後援会なり、労働組合なり、こういうものについてかけないとか、あるいは零細な収益事業にかけないとか、そういうようなリミットがなければ、どんなにあなたがさっき言った三項目をお示しになったところで、税務署の恣意にまかせる結果になると思うのでありますが、私は、この問題についてあなたが先般政令案を用意したというので拝見をいたしましたら、その政令案要綱というものは、言うならば非常にずさんなもので、これはかけない、これはかける、こういう例示的なものでありました。全般的な統一的な政令案というものはまだ出ておらないのでありますが、この政令案というものはいつ出るのですか。同時にもう一つ伺いたいことは、政令というものは、また通達というものは、やはり骨を作ることはできようけれども、血を流すことはできないのであります。どういう気持でこの人格なき社団ないし財団法律案というものはできたか、国会における政府並びに与野党の質問の精神というものはどういうものであるかということを流すことはできないのであります。それを流すといたしましたならば、政令案の中に、抽象的ではあるけれども、零細なものにはかけないとか、あるいはかかる性質のものにはかけないとか、そういうような気持がやはり抽象的であってもうたわれなければ、仏作って魂を入れないことになると思う。お尋ねしたい点は、政令案はいつこの委員会へ出てくるものであるか、またその政令案の中に私の言った血潮というものが盛られるものであるかどうか、それを伺いたい。
  31. 原純夫

    原政府委員 政令案は来週早々くらいにはお目にかけられると思います。その際書きたいと思っておりますことは、先般資料で差し上げましたように、継続して事業場を設けて収益事業を行うというものが核心になって、そしてその収益事業について、それはこういうものだということに相なると思います。その際、政令に、あるいはこれは通達問題でもあるわけでありますが、零細なものはかけないということは、私はうたい込むつもりはございません。それは、やはり所得税にしろ——法人税で控除というのは、税の性質からおかしいですけれども、控除制度というようなことではっきりすべき問題であって、それは本法で所得に応じて機関が適正に盛られておれば、政令事項として零細なものはうたい込むべきではないと思います。それは運用上の、実際上の心がまえとして一般にそういうことがいわれ、考えなきゃならぬということでありますが、特に零細な事業人格なき社団事業をやったらどうかということは、お考えがどうか知りませんが、そういうような場合に、零細だからはずすという気は、それは私はこの政令で書くべき問題ではないと思います。それをはずすならば、所得税法、今度は法人税法でありますが、法人税法でそういうことははずせということならばはずすということであって、それは人格なき社団であろうと会社であろうがかまわぬ問題であると思います。
  32. 横山利秋

    横山委員 わかりました。かりに百歩譲って政令案に書くべきではないとしたら、運用上において実施されるつもりであるかどうか。私が重ねて聞くゆえんのものは、あなたは確かにそういうはっきりした言葉はおっしゃってはいませんが、あなたの言葉の節々にそういう点を感得したし、現に参議院において塩崎さんがその言葉を議事録に載せておるわけであります。私は法律に書く、政令で書くを問わないで、この人格なき社団ないし財団の運用上の問題として、塩崎課長が明言をした問題であるし、あなたがたびたび委員会において言明したその精神そのものであると理解をしたからお伺いしたのでありますが、法律政令にこだわらずに御答弁を願いたい。
  33. 原純夫

    原政府委員 通達で、あるいはその他の会議における指示等によっては、この収益事業の範囲については、極力きめのこまかいことを流さなければいかぬと思います。その場合の問題として、私どもとしてこういうことは言いたいと思います。問題は、収益事業に当るかどうかの判定であります。人格なさ社団の実体が概して営利をやるものでないが公益法人にもなれないというふうな種類のものでありますから、事業をやるとしましても、たまたまPTAがバザーを何回かやるという式のものが多いと思います。そういうようなものについて神経をとがらして、何回以上やれば継続してやるものだ、あるいはこういうものは継続して事業場を持つものだという、そのニュアンスの判定に酷なことがあってはいかないというような意味においてならば、言葉は零細なものをはずすという言葉にはならぬと思いますが、あまり苛酷な態度でそれを判定してはならぬということは、私ども言いたいと思います。ただスケールが零細であればはずせということを言いますのは、私は控えたいと思います。やはりその御趣旨は、今申したようなニュアンスの非常にある問題、つまり収益事業と判定するかどうかについてニュアンスのある問題について、判定の境目は十分慎重に、かつ穏健と申しますか、穏当にやるようにというふうなことは私は申したい。また塩崎君あたりが言いましたことも、そういう趣旨で言ったのではなかろうか。逆に収益事業ということは、非常にはっきりしておるものだが、額が一定額以下ならばよろしいということになれば、これは税務において非常に恣意的に、今度は法人所得になるわけですから、法人税法の一定額以下のものははずすということになりかねない。それはよくない。御趣旨は、あくまでも収益事業であるかどうかの判定について苛酷にならないようにいたすという線で生かして参りたいと思います。
  34. 横山利秋

    横山委員 ちょっと私もうっかりしておったのでお伺いしますが、人格なき社団ないし財団課税をいたしますと、税率はどういうことになるわけですか。公益法人収益事業をやった場合には三〇%の非課税、あとの七〇%に課税されるわけですね。それと同じようなことになるわけですか。
  35. 原純夫

    原政府委員 その点については、四〇%課税というふうに思っております。かつ、ただいまお話しの三割までは所得の中から公益目的損金として寄付できるという規定を働かせないというつもりであります。通常の事業年度においてはそういうこと、あと清算年度に入りますれば、通常の事業年度といいますか、通常の所得にかけるというような行き方です。  趣旨を申し上げます。四〇%といたしますのは、いろいろなものがあるわけです。これは今申したように、公益法人とは言い切れない。公益的なものなら公益法人になれるわけです。つまりここは、公益的でないものも、若干公益的だが公益法人格をもらえないというのもありましょう。逆に非常に営利的なものもあります。こういう雑居地帯でございまして、そこに公益法人と同じ税率を適用し、かつ寄付についても同様なことをやるというのは、やはりよろしくない場合ができる。それでは酷になる場合があるじゃないかということに対しては、そういう場合は、公益法人としてなれる場合だから、公益法人格をおとりいただきたいというつもりから、このお願いしております案は、四割の課税、そして寄付金の限度額は通常の限度、所得の百分の二・五と資本の千分の二・五との平均の通常の限度しか損金経理の寄付は認めないという案になっております。
  36. 横山利秋

    横山委員 この点は原さん、ちょっと酷ですね。確かに三、四十万の中には、本来的に収益を目的としておるところの、あなたの話による日本放送協会のようなものがあるかもしれない。しかし、圧倒的多数は公益的なものでしょう。しかも公益法人になろうとしてもなれない。認可の基準中がある。ないしはPTAや婦人会のようなもので、収益があったところで、金は学校の机を直したり、あるいは学校のカーテンを買ったりするものが圧倒的に多いわけです。それを千編一律に三〇%の非課税の基準を設けないというのは、これはいささか私は当を得ないと思うのですが、その点はあなたの方として再考慮される必要がありはせぬか。どうしてこれができないのか。そこに区分を設けて、基準を設けて、公益法人と同じような基準を適用できるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  37. 原純夫

    原政府委員 先ほど申しましたように、ここは雑居地帯でございまして、中にれっきとした収益事業そのものをやっているというのがある。しかもわれわれが今回お願いしております趣旨は、そういうものが近ごろだいぶふえる勢いにあるわけですし、そこが中心になってお願いしているわけです。PTAだとかなんだとかいうのは、これがりっぱな売店を持って商売すれば別ですけれども、そういうものについては、そういうことのないのに収益事業と判定するというような気持ちは毛頭ないわけです。そうしますと、やはり問題のウェートとして、相当収益的なものを考えるということにならざるを得ない。かたがた公益目的のために使うというのであれば、公益法人の認可の準則というのは、おっしゃる通りありますけれども、そうひどく制限的なものだとは私ども感じておりません。そういうようなことから、もっと突っ込んでいえば、先ほどお触れになった一般法の問題で、人格なき社団財団で現在あるものについて、これは営利的なものは会社にしなさいというふうにするか、あるいは雑居地帯の法人格を作るか、あるいはその雑居地帯でなくて別な法人格を作るか、そこには収益性によって分けるというようなこともいろいろ考えられると思いますが、ただいまのところ、それは税法が先ばしりするからだと言われるかもしれませんが、私どもとしては、そこにおいて一本の原則でいかざるを得ないような実情であります。実際にどれが公益目的だということを判定するのも実際上とてもできないというふうに思いますので、ただいま申したようなことにいたしております。  なお、先ほど法律でお願いしていると申しましたが、寄付金の関係は、一般の所得金額、資本金額に対する比率自体は政令にゆだねられておりますが、そのことはありますが、あとは政令事項になっておりますから、ただいま申し上げたようなことを政令できめたい。その際、資本金額がない団体である場合が多いと思いますから、そういうものについての調整などはなお研究の余地はあると思っております。それを補足いたしておきます。
  38. 横山利秋

    横山委員 それでは私は納得しません。少くとも今日まで無税だったのが、四月一日からいきなりネコもしゃくしも四〇%ということは、これはお考えにならなければならぬ。収益のみに専念し、そうしてあなたの言うように、法律の網をくぐっていわゆる脱税的な立場にあったというのならば、これは一番譲ってもやむを得ないかもしれないけれども、その中には、公益的なものであって、そうして法人格が取得できないものがある。それはあなたも認められるだろうと思うが、それじゃ法人になったらどうだという、そのなったらどうだという議論だが、先ほどから言うように、認可基準があってなかなかしない。大蔵省自体が七千の学校に対して五百五十しか認可していないじゃありませんか。しかもその三、四十万ある中では、収益が、全く通俗的な意味収益というものでなくて、子供のためのものとか、あるいは婦人会の同好組織にそういうようなものがあるのです。現にあるものをあなたが認めておって、収益に全く専念しているのと、今まで無税だったものを一律に四月一日から四〇%にやるという、そのものの考え方がおかしいと思う。このところはむずかしくないじゃありませんか。あなたの方も税の専門家がそろっておられるのだから、そこにワクをつけ型をつけて、これはこうこうというふうに整理するのが何がむずかしいのでありますか。これはもう一ぺん御勘考なさるべき問題ではないかと思う。かりに一〇%の税率が二〇%になるとか一五%になるとしたところが、ずいぶん国会では議論が沸くのであります。私はこの法案には本質的に反対ですけれども、かりに与党の皆さんや政府がどうしても通すというのであれば、最小限度の譲歩というか、そういう意味において、あなたの方も慎重に御検討を願っているのでありますが、一律に四〇%をかけるのだ、公益法人における非課税適用は一切しないのだということは、実態にそぐわない議論だと思うのですが、もう一ぺん御勘考なさる用意はありませんか。
  39. 原純夫

    原政府委員 今般の問題が、いかにも収益事業そのものだというようなことがだんだん目につくようになったということから起っていることでありますから、かりにこれを三割の特別税率でやっておきますと、いわばそういう人たちに合法的な脱税の機会を残しておくようなものだと思います。やはり四割というものをそういうものにかけるのが公平の原則からいって当然だと思います。しからば逆に、公益目的のものについてどうかということですが、私どもは、公益目的のものであれば、公益法人をもらえるもらえないという点は、そうきつくないと見ております。  お話の各種学校については、なるほど五千あまりのものは個人でやっておりますが、これは、実体が個人だから法人として認可しないということであって、その辺の認可のかげんというものは、決して不当に押えておるということはないのじゃなかろうかと思います。ただしその点は、先ほども申しました通り、むしろ一般法の方で第三の範疇を設けて、その中で雑居地帯にするか、あるいは営利と区分して別にするかという問題もからんで大きな問題ですから、なお研究はいたしていきますが、今回お願いしております趣旨から申しまして、これを四割にしておきませんと、これは合法的脱税の穴を作っておくようなものだと思いますので、今回はこれでお願いしたい、こう思っております。
  40. 横山利秋

    横山委員 私は納得できません。あなたの言い方をもってするならば、これは刑法を引用するわけではないけれども、疑わしきは罰せずというのが刑法の根本理念です。あなたの方は、疑わしきものは課税するというのがあなたの方の理論です。これは私は絶対に納得できません。少くとも、あなたも認められておるように、三、四十万の人格なき社団ないし財団がある、その三、四十万のものをネコもしゃくしも全部収益事業とみなしてやる、そして得た収益というものがどういうところに使われようと、それは勝手である、それが文句があったら一つ公益法人になってくれ、公益法人になるのはそうむずかしくないと言うのだけれども、それはあなたの御勉強は違います。あなたも、先ほど、公益法人になるという点につきましては、私の方の所管でないからと言って逃げました。税が真に納税者の納得を得るためには、やはり税をとる立場からいって、所管のそれぞれのところで検討してもらって、それと相合せて税法改正案というものが同時に提案をされなければならぬ、これは私の根本理念です。しかし、今ここに法律案が出ておる。この法律案が通らんとするその直前において、なおかつ私がこれだけはということは、少くとも三、四十万の人格なき社団ないし財団をネコもしゃくしも一本からげにして、みんなこれを四〇%にする、製品の品質、形状、寸法を問わない、こういうことはいかがかと思うのです。これは、一体あなたの方の政令なり、あるいは通達の中において修正できないものであるか、運用が不可能なものであるか、それは絶対にできないものであるか、私はそうではないと思うのであります。その点はいかがですか。
  41. 原純夫

    原政府委員 御趣旨はわかるのです。御趣旨はわかるのですが、一つには、公益法人になる道があるということと、かりにそこに若干の困難があるとして、それでは、この中で公益的なものとそうでないものとを分けろということになりました場合のその困難は、先日来収益事業がどうだ、どれが収益事業だということについていろいろ御議論がありました以上の困難さが出てくるわけです。これは、シャウプのときにもそういう問題があって、公益性を大蔵大臣が判定して、公益性のないものにかけろというような意見もあったわけでございますが、それはとても税務ではできない、まあだれが考えてもできなかろう、税務ではむずかしかろうということになってやめたような経緯もあります。お話しのように、将来検討すべき点はあると思いますけれども、実際上人格なき社団または財団の中で、公益的であるものとそうでないものとを分けるということは、実行上非常にむずかしい、むしろ不可能に近いと思います。そして今回やろうとしていることは、継続して事業場を設けて、そうして収益事業を行うものにかけるのでありますから、これはもうこういうことでお願いしてよろしいのではないかと思っている次第であります。
  42. 横山利秋

    横山委員 それは、あなたはそうおっしゃるけれども、公益法人の認可基準というものが現にあるでしょう。この公益法人の認可基準というものをとらえて、それに準じたようなもので、その三、四十万のものを区別しようと思えばできるはずです。あなたも固執しないで、これまでもめた法案でありますから、もう少し善意な立場で御検討なされば、私はできるはずだと思う。できないというふうに言ってしまって、これがわからぬもの、疑わしきものはみんな課税する、みんな四〇%だ、中には気の毒なものがあるけれども、分けようがないからしんぼうしてくれ、あなたの言い方はこういう言い方ですよ。それじゃあなた納税者の立場というものはあるものじゃありませんよ。私は、本来今の三〇%、七〇%のこの区別をもう少し上げたらどうかと思っている。三〇%を五〇%ぐらいに上げて、公益法人が本来的な使命を達成するようにすべきときではあると思いますが、それはそれとして、少くとも今日課税をするに当って、十ぱ一からげで四〇%というのは、私は断じて納得ができません。ところが、お約束で、大臣がお見えになりましたので、奧村委員の御質問があるそうでありますから、一たん私はこれで中断いたしますけれども、この点については、奧村委員質問中止に一つ——うしろを向いて、うしろで私の質問に、そうだ、そうだというようにうなずいたり、あるいは満足して笑っている人もあるようでありますから、もう一ぺん慎重に御検討なさって、公益法人の認可基準が現にあり、それはその現にあるものを準用してできないはずはないのでありますから、もう一ぺん御勘考を願うことにして、私の質問を一たん中断いたします。
  43. 山本幸一

    山本委員長 それでは、横山君の質疑中でありますが、先ほど申し上げましたように、大臣が出席いたしましたし、本会議が二時半に開かれて予算が上程されることになっておりますので、その間御昼食等で生理的な御要求もございましょうけれども、大臣に対する質疑を行います。奧村又十郎君。
  44. 奧村又十郎

    ○奧村委員 本日、本委員会でこれから議決しようといたします税法法案は、本年度予算案とともに、この国会での最重要法案であります。そこで、この三法案政府が御提案になるについて、わが党の党内事情もあって、政府の方針について十分知ることができなかったので、この際、ぜひ大蔵大臣に、今回の税法案の立案に対する真意を承わりたい、かように存じておりましたところ、本日は、補正予算を本院で議決するときであり、参議院では、また来年度の予算を審議中であり、非常に多忙なところ大臣にお越しをいただき、また委員長初め理事諸君には、いろいろやりくりをせられて、私に質疑の機会を与えられたことはまことにありがたいと思います。そこでは私は、納税思想と税務執行の問題、それからインフレと減税との関係、物品税、利子所得、名義貸し、大体これらの政策的な問題について、大蔵大臣の所信を伺っておきたいと思うのであります。  まず、国民の納税思想が最近非常に低下してきた。残念ながら、戦後一般に国民の公共的義務観念がはなはだ低下しておりますが、中でも特に国民の納税思想は、かってないまでの低下混乱を来たした。戦後十二年、国民経済はようやく安定発展に向いつつあり、経済秩序も回復して参りましたが、納税道徳はまだまだゆるんでおります。従って、税制にも乱れがあり、企業経理も紊乱し、税務執行状況、国税地方税を通じてはなはだ混乱しておることは遺憾のきわみであります。これは、私だけが申し上げるのではなく、世間の偽わらぬ声でございます。また前に内閣以来、内閣が税制改正について諮問をしておられます臨時税制調査会の今回の改正案についての答申にも、結びの言葉に、この納税思想の低下について強く強調しておることは、大臣も御承知の通りであります。そこで、政府はこの際所得税を大減税し、それとともに、納税思想を高揚し、納税者の協力を求めようとしておるのでありますが、しかしわれわれがここで特に掘り下げて考えねばならぬことは、なぜ納税思想が今日ここまで低下してきたかというその原因であります。それは戦前、戦後のインフレなど、経済秩序の乱れや、敗戦による道義心の低下にも原因がありましょう。しかしわれわれは、ただ納税者のみを責めるのは当らぬ、むしろ今までもこの席で申し上げましたが、今日までの歴代の政府当局、並びに税法審議に携わるわれわれ国会議員側にも重大なるあやまちがあり、責任があることを反省しなければならぬと思います。戦後十年の間、池田さんも大蔵省主税局長時代から大蔵省の次官、大蔵大臣、今回また大蔵大臣の重任を帯びられるまで、今日の税制に関する中枢に池田さんは位しておられたのであります。かく申し上げる私も戦後の国会以来、途中中断しておりますが、大体において税法審議に携わってきたのであります。その十余年の税制の足取りを振り返ってみると、財産税や取引高税の改廃は古いことといたしましても、途中シャウプ勧告による大改正を初めとして、税制を建て直してみたりくずしてみたり、ほとんど毎年のように税法を大幅に改変し、まるで朝令暮改、しかもその改変の方針がいつもぐらぐら変って首尾一貫していない。占領下の特殊事情もあることとは思いますが、これでは納税者が税法を理解することができるわけがない。理解しかけたときはまた税法が変っておる、この反省が第一点。もう一つは、このようにいじくり回した税法ですから、国税も地方税も複雑にして煩瑣、わかりにくいことおびただしい。毎年税法の簡素合理化が声を大にして叫ばれながら、できてくる税法はその反対にますます複雑でわかりにくい。実は私は過去一ヵ月間、他の雑務一切を捨てて今回の税法各案文に目を通そうと努力してきたのであります。私は頭は悪いのでありますが、それぞれ所得税から租税特別措置法、地方税法とからみ合いまして、一度や二度読んだところでとうてい頭に入らぬ、このよいな状態であります。私ども担当の大蔵委員としてこのようなことでありますから、こんな状態で税法審議をするということは、まことに遺憾に存ずるのであります。そこで当委員会で先日も問題になったのでありますが、利子所得の免税について、国税は免税となるが地方税は一体どうなるか、この問題で審議いたしましたところ、自治庁の税務部長がここへ出て参りまして、あるいは法制局の長官がここに見えまして、法文を読んでみると、確かに地方税では利子所得課税されることになっておる、これを課税しないという規定がどこにもない、そこで結局法制局長官も、ただただおそれいるだけで、結局はほかの条文を類推するのだというようなあいまいな答弁であった。これは一例であります。このように、日本税法の最高責任者でここに集まっても解釈がはっきりしないというようなことでありまするから、納税者に税法がわかるわけがない。特に最近賦課課税の制度も申告納税制度に変った。そこで申告納税制度では、納税者みずからが税法をよく理解し納得し、みずからみずからの所得を計算して申告する、こういう建前になっておりますが、このような税法を納税者に押しつけて、そうして納税者の心からの協力を求めるということは、これは無理と申すもので、この際まず政府、国会がこの点を反省しなければならぬと思うのでありますが、大蔵大臣の所信を伺いたいと思うのであります。
  45. 池田勇人

    ○池田国務大臣 問題は多岐になっておるようでございまするが、要約いたしますると、納税思想の低下という問題が第一、私は奧村委員がお考えになるように非常に低下したとは思いません。やはり国民は、おのおのその立場立場で御協力願っておると考えておるのであります。また税務当局といたしましても、税法の命ずるところによって適実な課税をするように努力して参っておるのであります。従いまして、最近の申告納税制度は、施行当初に比べましてよほどよくいっていると私は考えておるのであります。  次の、税法が複雑で非常にわかりにくい、これはお説の通りでございます、従来からそういう非難があるのでございます。われわれといたしましても、できるだけ簡素にいたしたいと思いまするが、何分にも負担の公平の原則を守りながら、経済施策に適応して税自体のあり方をできるだけ国民経済、国民生活にマッチさせていこうとする場合におきましては、やむを得ぬことであるのであります。しかし方針といたしましては、常にこれを簡素化するよう努力いたして参っておる次第でありまして、今後におきましても、簡素化の方針は堅持していきたいと考えておるのであります。   〔委員長退席、平岡委員長代理着席〕
  46. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大臣の御答弁は、大臣のお立場としては、これはごもっともな御答弁と思います。しかし大臣が特に諮問された臨時税制調査会で、その結論に一番大きく強く書いてあるので、私が強調しておる次第であります。そこで納税がうまくいっておると言われますが、先日来その点はずいぶんここで議論しておったのであります。主税御当局も、その点はかなり認めておられる。時間の関係で端折って参りたいと思いますが、それでははっきり申し上げるならば、この給与所得と給与所得以外の所得との課税の実態を考えれば、これは一目瞭然であります。現にその資料を主税局からお出しになっておられる。給与所得は、昭和二十四年の当時と比べて、あまり成績が劣っておるとは思わぬが、その他の所得については非常に減って、給与所得とその他の所得との課税所得の把握のアンバランスというものは、これはおおい隠すことができない。また現にそういうアンバランスのために、そういう所得税額を基準にして地方税を課税する場合に、いわゆる月給取りの方々があまり税金が重くなって、その他の方々とのつり合いがとれぬので、市町村当局が課税するのに非常に困惑しておるということは、これは大蔵大臣もよく御存じの通りのことであります。  そこで、次に私は議論を進めまして、こういう状態の理由として、その次に私は税法の不公平、それから税務執行能力の低下、それからくるところの不公平、この問題も、反省しなければならぬと思うのであります。たびたび議論が出ておりますが、利子所得に対する免税とか、配当所得に対する非常な優遇とかいろいろなこと、これは大蔵大臣としては、貯蓄増強のためにはやむを得ないという御答弁でありまするけれども、しかしその御答弁国民感情が納得するものではない。この納得しないところに真の納税協力はあり得ない。これは議論になりますから、私はそういう感じを持っておるので申し上げておくのであります。それから税務の執行であります。果してこれが適切に行われておるかどうか。これは先ほども申し上げたように、給与所得とその他の所得とのアンバランス、納税者の納税思想も低下したが、やはり税務執行能力も低下したから、結果としてこういうことが起っておる、かように私は考えるのであります。それだけではない、地方税においても、たとえば遊興飲食税などのごとき、都会においてまともに遊興飲食税というものを納めておる者は一体どのくらいあるか、これは業者自身が言うておる。今回芸者の花代をまた半減さした。その理由は、結局厳密に税がかけられないから、やむを得ず課税の実態からして、むしろ半減した方が税収はふえるのだ、こういうまことに何と申しますか、税務の執行能力の低下を法律にしわ寄せした、こういう感じを持たされておるのであります。この税務執行能力の低下は一体どこに原因があるか。私は、五万の税務職員の決して怠慢や無能力にあるものではないというように感じるのであります。大蔵官僚ほど上から下への命令系統のしっかり確立した官僚はない。またそれでこそ税法が公平に執行されるものであると思う。しかしその上に立たれた方方が、果して五万の税務官吏の方々を、国家財政確立のために十分に働かしておられるかどうか。これも先日問題になったんでありますが、名義貸しの問題について、東京国税局の一税務署の方が、朝日新聞に投書を出しておられる。それを読んでみると、税務職員の第一線にあるわれわれは、所得税法規定をまじめに執行しようとして、住み込みの店員の食事代や学生のアルバイトの賃金までも情を押えて課税している。法律は公平であり、税務は公平であると高言してきたが、しかし今回のように、大口の所得が、証券会社の名義貸しという口実によって大口に脱税されて、それがそのままになっておるということ、これを聞いて自分は冷や汗をかいた、こういうことを申しております。このような状態では、税務官吏が末端で真剣に働けば働くほど弱い者いじめになる、こういう気持になるのは当然であります。これらのことについても、先日来この委員会でいろいろ国税庁長官に御質問いたしました。法律規定はありながら、実際その規定通り執行しようとしておられない。こういうことを考えるので、このようなことでは、これは真の公平な納税執行はできない、かように存ずるのであります。また少しこれは時間が長うなりますから、要約して申し上げていきます。と申しますのは、一つ一つ申し上げたんでは時間がかかりますから、先日来の審議ともからみ合わして申し上げておきます。  最近、青色申告の成績が非常に悪くなってきた。なぜ悪くなってきたか。白色申告と青色申告とのアンバランスがやはり除かれない。青色申告を始めたときはどう言うた、青色申告した方が得ですよ、こう言って勧めた。しかし白色申告所得の把握にいかぬから、やっぱり青色申告しておる方が損がいくということで、青色申告の方法を利用して脱税をはかるということになってきた。このようなことでは、どんなことやったってもう公平な税は取れぬということになるのであります。そこで、納税者の心理としては、だれしも税金は少いほどいい。しかし、みんな公平に納めるなら自分もしんぼうしよう、こういう心理です。従って、もし脱税するものがあれば、これは税務当局がびしびしやってくれるだろうという気持があればこそ、公平な納税が行われる。そこでまじめな納税者をふやすには、脱税は税務当局がしっかり押えるということが前提でなければならぬと思うのであります。こう考えてみますると、名義貸しの問題、その他いろいろまだまだ政府が公平な納税執行をやっておるとは言えないのであります。特に池田さんは、日本の税務執行を、あるいは税務行政を双肩にになわれるようなお方でありますから、こういう状態をいかに改革していかれるか、この点を一つお尋ねいたしたいと思うのであります。
  47. 池田勇人

    ○池田国務大臣 青色申告の問題でございまするが施行しましてだいぶ時間もたちまして、相当の人がこれに入っておられるのであります。われわれは、青色申告をなさる方々に対しましてできるだけの措置をとり、またなさらない方も、青色申告をなさるようにしむけていきたいと考えておるのであります。  第二の名義貸しの問題でございまするが、敗戦後の経済界の復興に当りまして、いろいろな事情があったと思うのでありまするが、相当名義貸しで課税漏れのものもあることに気がつきましたので、今回こういう措置をとりまして、それによって税の、脱税その他の不均衡が起らないように今後処置していこうといたしておるのであります。何分にもまだどれだけ名義貸しがあるか、また名義貸しの階層がどういうふうになっておるか、こういうものにつきまして十分な調査ができておりませんが、私はこういう曲げられた状態にあるということはよくないと考えまして、今後名義貸しの問題につきましても、明るみへ出しまして、課税の公平を期していきたいと考えております。
  48. 奧村又十郎

    ○奧村委員 かかる問題に十分な御答弁を求めても無理でありますから、次に移りたいと思います。  次は、シャウプ勧告による税制改正以来の日本の税制の推移を振り返って、今後の税制をいかに確立するかということについて大臣の所信を承わりたいと思います。たしか池田大蔵大臣は、昭和二十五年のシャウプ勧告による税制の大改正のときの大蔵大臣でもあられたと思いますので、その間過去六年余りの推移を振り返って、私はまことに興味あるものを感ずるのであります。申すまでもなく、シャウプの勧告は、税の公平理論に徹底した、あくまで合理主義によって組み立てられておった。従って、理詰めに動くよりもむしろ感情的に動きやすい日本国民性や政治経済の実態には、シャウプ勧告はあまりに理想論に走り過ぎてふさわしくなかった、これはだれしも認めておったと思うのであります。しかし当時の事情からして、占領下でもあり、再建日本の財政の基盤として、いろいろ考慮の上池田大蔵大臣はこれを断行なさったはずであります。そこでシャウプ博士も、日本におけるシャウプの税制は、これは初めから完全実施はできないであろうが、もし国民にやり抜くだけの決心さえあるならば、年々よくなって、数年後には、世界でも最優秀の租税制度となろうといっておった、これは御承知の通りであります。ところがそれからあとの状況はどうか。振り返ってみると、年々よくなるどころか、初めは徹底した公平な税制であったのが、年ごとに法律改正をして、公平が一角ずつくずれて参ったことは御承知の通り。最初の問題は、株式の譲渡所得の免税によって、世界でも最も徹底したといわれる法人擬制説による建前というものは根底からくずれてしまった。あるいは山森所得の分離課税、あるいは一時所得その他の特例措置、あるいは利子所得の分離課税または配当所得の特例、だんだん変って参りました。これらはすべて一つ一つ公平の理論がくずれてきております。そうして今回の臨時税制調査会の答申も参酌しての所得税の大減税、これはまたいわゆるシャウプ税制の根本をくつがえすものである。シャウプ税制そのものを私は何も固執するものじゃないが、シャウプ税制とは根本が変るものである。また地方税の建前も年ごとに変って乱脈になってきた。従いまして今回の改正考えましても、所得税に重点を置いて、総合して累進課税をするという、このシャウプ税制の一番中心にあるべきものの累進を軽減するのでありますから、今回の改正で、まずシャウプ税制というものは根底からなくなった。日本の税制というものは、新たなものができたというふうに私は考えるのであります。そこでその経過を考えてみると、なぜここまで税制がくずれてきたか。政府がこの税制をあくまでも堅持して、完全なものにしていこうという熱意が足らなかった、これであろうと思う。第一に、たとえば株式の譲渡所得などにしても、取引所やあるいは証券会社から調査をとるという法律になっておったのに、それを執行しなかった。どうせ調査がとれぬのだから法律改正せいということで、昭和二十八年に改正してしまったというふうなことで、政府にその熱意がなかった。また国会でもこれを改正した。政府、国会ともそのような態度でありますから、いかに法律を作ってみたところで、実質は動かぬ、そういうことであります。このようなことでは税制の確立はとても望めぬ。当の池田大蔵大臣のこれらのことについての所見を伺っておきたいと思います。
  49. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はシャウプ博士といろいろ税制のことで話をいたしましたが、大学の教授であるだけ、そしてまたついておった人もみな助教授でございまして、理論的にはなかなかいいようなところもございまするが実際的にはかなりむずかしいところもあるのであります。私はそのときに、ある程度日本の実情に合わないところははずそうといたしましたが、これはディレクティブというべき、より食いをしてはいかぬというふうなことがございまして、全部をのんだわけでございまいす。いろいろ税務執行上におきまして、非常にむずかしい場合もありますときには、実際に沿うようにしていくことが、私は税法あるいは税務行政としても、ある程度踏んでいかなければならぬ問題だと思うのであります。そのときどきの情勢によりまして経済が円滑に運行するような方法をとることが、私は一つの税の執行としても考えなければならぬものと思うのであります。しかし、あくまで本筋の公平の原則は保っていかなければなりません。従いまして、その間の調整をはかりつつ税制改正をしてきたのでございます。
  50. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、次いで納税秩序と国民道義の関連を、これもまた意見にわたることですが、大事なことですから申し上げたいと思います。  ただいまの憲法でいきますと、国民の国に対する最大の義務は税であります。税によって国民が国をもり立てていこう、従って税の秩序を確立するということが国民の国家意識を高め、また道義を確立するもとである。道義が頽廃すれば納税思想も頽廃する。しかし税の秩序が乱れれば、これまた道義もすたれる、この相関性をよほど考えて税の秩序を確立していかなければならぬ、かように考える。そこで臨時税制調査会の答申案の中には、利子所得を分離課税する特例は、税の公平上よくない、しかし一気に改善しようとしても無理であるから、徐々に改善しよう、それがためには、ここ二年間は、分離課税ではあるが、一〇%の課税をしよう、つまり将来はやはり総合して累進という公平の原則を貫こうという考えをもって答申しておる。従って、大蔵大臣がもし税の公平を堅持していこうとされるならば、現在は急にはできないが、将来は利子所得もこのようにするというふうな、税法の確立のための御熱意を示されるべきであると思ったのであります。利子所得一つのたとえでありますが、このように、今後こういうふうに税の公平を確立していくという御信念のほどがこの税法にうかがえぬ、この点いかがにお考えですか。   〔平岡委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 池田勇人

    ○池田国務大臣 税の公平ばかりで税制は考えられません。これは公平を維持しながら、そのときどきの経済事情を加味していくことが本筋だと思うのであります。もちろん私も、過去三十年間税務の方に携わりまして、不労所得、すなわち利子所得あるいは資産所得のようなものにつきましては、総合して累進税率を課税すべきだという議論は、過去二十五年間第一の主張者であったのであります。しかし日本の今の経済の状況を見ますと、やはり単に経済基盤の強化、経済力の充実ということを考えますと、私は、将来はもちろん公平の原則の上に立って総合することが適当だと思いますが、現実の問題といたしましては、やはりしばらく分離課税がいいと思うのであります。そうして分離課税をいたしましても、なお今の経済界、金融界の状況から申しまして、二年ほどは、一年以上の預貯金に対しましては免税するということが至当じゃないかと考えております。
  52. 奧村又十郎

    ○奧村委員 利子所得の問題については、後ほどまた触れたいと思います。もちろん税の制度は、単に公平の原則だけではいかぬのだ、いろいろの経済政策もある、こういうお話ですが、私が申し上げたのは、税の公平を確立するその大蔵大臣の御熱意のほどが、この税法案に見出せぬ、こういう意味であります。しかしこれは議論にわたりますから、重ねての答弁は求めないことにいたします。  次に、私はインフレと減税ということについてお尋ねいたしたいと思うのであります。この国会の予算審議の最重点は、インフレについての議論であったと私は思うのであります。大蔵大臣は、現在の日本の経済はインフレではないと言っておられる。しかし日銀の卸売物価指数が、去年の二月と比べて生産財で九・七%、消費財で四・三%、平均六%余りすでに上昇しておる。経済が発展したとはいえ、まだまだ底の浅い日本経済で、電力が足らぬ、鉄鋼が足らぬ、運賃が上る、米価は一応据え置きましたけれども、その上ある程度の設備投資はどうしても進めねばならぬとすれば、インフレの下地があることは申すまでもないと思うのであります。現在インフレが目に見えていないから、インフレ対策をないがしろにするということは当らぬと思うのであります。そこで大蔵大臣は、昭和三十二年度の予算は、予算からインフレが進むようなことはしないと言っておられる。しかし半面、その予算でインフレをこのように抑制するという積極的な所信はうかがえなかったように思うのであります。そこで私は、インフレと減税との関係をきわめておきたいと思うのであります。なぜなら、インフレというものは、目に見えて進むようになったころには——たとえば国会であろうと、インフレ論議というものはよほど慎重にしなければならぬ。今のうちに一つ大蔵大臣のお考えを聞いておきたいと思うのであります。そこで、一体国の財政金融政策で、インフレ抑制のための強力なる施策はどんなものがあるでしょうか。大蔵大臣の言われる健全均衡財政、健全金融、このくらいの程度に考えられますが、一体どういう方法があるのでしょうか、お尋ねいたします。
  53. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算作成時期におきましては、各国におきましても、インフレ、デフレ論が横行するのであります。今年のように積極政策をとりましたときに、インフレ、デフレ論が出ることは当然だと思いまするが、財政がインフレ的であるかどうかということは、第一番は、公債政策その他借金政策をやっている財政はインフレ的でございます。そうして超均衡予算、すなわち歳入よりも歳出を少くする、そうして民間資金を吸収して政府にため置く、これがデフレ予算でございます。今回の予算は、そういう一般会計におきまして、歳入歳出が合っておりまするから、これで私は、インフレでもない、デフレでもない、中立予算だと言っておるのであります。
  54. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでよくわかりましたが、今の御答弁にもあるように、健全財政を堅持すれば、財政の面からインフレは進めるようなことはしない、しかしインフレを抑制しようという場合の積極的な財政の力ということについては、今デフレ予算のお言葉もありましたが、これには、やはり私は租税制度の確立というものが避けられぬと思うのであります。そのインフレと租税政策ということに入ります前に、もう一つ私はお尋ね申し上げることがあると思うのであります。一体大蔵大臣は、健全金融ということを言われた、つまり金融機関に対する預貯金の増加する範囲内で貸し出しを押える、これは健全金融でこれを確保していくならば、インフレは起らぬ。これは、私はまことにごもっともと思うのであります。しかし、それは具体的にいったら、果してそれはどのように実行していけるかどうか、この点を突っ込んで一つお尋ねいたしたいと思うのであります。最近の金詰まりはもう非常なもので、日銀の貸し出しは、昨年の二月の二百億余りが現在二千四百億、話によりますと、日銀貸し出しは四千五百億までいくだろうという一般のうわさであります。一体これを押える方法があるのでしょうか。あるいはまた近ごろ金融繁忙で、コールが一週間ほど前から日歩三銭四厘の相場が立っておる。三銭四厘の利子というものは、やみ金融の利子で、まるきり正気のさたでなかろう、こんな高い金利でありますならば、しかもこれは非常に安全でありまするからして、地方の安い金利の金がどんどん中央に集まって、コールに放出される。従って地方の安い金利の、特に中小金融などがそれがためにも逼迫している。このように見てくると、今の金融の状態というものは、普通ではない。そこで池田大蔵大臣は、現在でもそのようであるが、もっと金融が逼迫していった場合、日銀の貸し出しを一体押える方法が具体的にあるのですか。それがもしできるならば、健全金融というお言葉も納得できるけれども、現在の法規上からいけば、通貨の発行限度を日銀が引き上げるならば、何ぼでも貸し出しはふえる。そういう状態でおってただ健全金融を言われても、それでは、大蔵大臣の希望するお気持というだけで国民は納得できるものではない、その点を一つお尋ねしておきたいと思うのであります。
  55. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政が中立で均衡いたしております。従って、インフレ、デフレの問題は主として金融にかかってくるのであります。私は、金融におきましても、預金の増加の範囲内で貸し出しをまかなっていく、こうすれば、金の面におきましてはインフレ、デフレの問題はなくなってくるのであります。しこうしてただいま日本銀行の貸し出しが二千数百億円、あるいは三千億になんなんといたしておりまするが、この原因は、昨年度と比べまして、三十一年度におきましては政府の引き揚げ超過が非常に多くなっている。大体三十一年度では千七、八百億円、あるいは二千億円に引き揚げ超過がなるのであります。三十年度はどうだったか、逆に二千七、八百億円の散布超過、それが今年は引き揚げ超過千七、八百億円、こういうふうになりまして、今季節的に金融の繁忙を来たしておるのであります。昨年の散布超過に比べまして、三十一年度の引き揚げ超過は、一つ租税の自然増収がございました。一つは、各特別会計の引き揚げ超過があります。たとえば電電公社では三百億円余の余裕金が出ております。国鉄では百五十億円予算よりもたくさん入っております。そういう金をずっと政府に預かってきておる。これが合計で六百五十億ばかりございます。租税の方が、一般会計の散布超過の予定の分を逆に七百二十億くらいの引き揚げ超過、あるいは米が、二千三百五十万石が二千八百万石入りましたために、五百五、六十億円の散布超過になりましたけれども、外米の輸入が減りましたので、三百三十億円の散布超過でございますが、外為特別会計で六百億の引き揚げ超過になる、こういう関係がありまして、年度を通じて、去年よりは逆に千七、八百億円の引き揚げ超過でございますから、差引四千五、六百億円のギャップが出ておるわけであります。こういうことでございますので、お話しの通りに金利が、ことにコール・レートが高くなっておるのでございます。これは一時的の現象で、だんだんためていかなければならぬ。われわれといたしましては、政府に入り過ぎました自然増収分を、また特別会計の方の収入増加の分を、努めて民間に流すというふうな方法をとりまして、昨日までで五百億円政府から買いオペをやっております。また今月中にもなお二百億円やろう。こういうふうにいたしておるのでありますが、今度予算が執行になりまして、三十二年度の予算で従来にもまして早急に予算執行やっていくようにすれば、四月はもちろん非常に散布超過になりますが、五月、六月の引き揚げ超過も非常に緩和できるのじゃないか、こういう考え方で、金融と財政とを一体としていろいろ措置を講ずるようにいたしておるのであります。もちろん、日本銀行におきまして貸し出し抑制をしようとすればできないことはございません。しかし、今の原因がそういう事情でありますので、ここで手のひらを返すように日銀が強力に引き締めるのだ、強い措置を講ずるのだということはまだ早いのではないか、ある程度の地ならしは必要でございましょう。しかし、原因がよくわかっておりますので、その原因を解消するように努めて、そうして金融が健全化されるよう、大蔵省並びに日銀は常に金融業者を指導していかなければならぬと思っておるのであります。
  56. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこで、私が特にお尋ねしたいことは、今度の所得税減税について、特に税率軽減に重点をおかれたが、これはインフレ対策とは逆行するものではないか、この点であります。所得税の総合累進課税は、国民経済の景気調節を有効に行うものであるということは、シャウプさんがシャウプ勧告に基いて非常に力を入れていただいたので、私はなるほどもっともな話であると思うのであります。つまりインフレが進むということになれば、国民各人の名目所得がふえる、それには所得がふえるから、累進で課税額が急激にふえるから、そのふえた余剰購買力を吸収してインフレを押える。またデフレになれば、それに反して、課税が急に減って国庫収入が減るから、財政の面からは、追加購買力を注入することによってデフレを調節する。従って、この所得税の総合累進課税というものは、インフレ抑制に非常に有効なものである、私はそのように思う。現にこの所得税に重点を置いたアメリカにおきまして、池田大蔵大臣も御承知の通り、昨年から減税を計画しておるが、インフレ気がまえを懸念いたしまして、アイク大統領が、去年もことしも減税を中止したことは、御承知の通りであります。また日本でも、昭和二十三年、二十四年、二十五年の、あの戦後のしょうけつをきわめたインフレを押えたのは、一体どういう方法で押えたのか。当時大蔵大臣であった池田さんが、一番よく知っておられる。そのドッジ方式、九原則の中核は何であったか。それまでにも、たとえば財産税とかいろんな税の方法、あるいは通貨の切りかえとかをやってみたが、強力なインフレ対策ができなかった。ドッジの九原則、つまり税でもって強力に浮動購買力を吸収し、そして一部はインベントリー・ファイナンスにして、いわば国の手で強制貯蓄を行うことによって、あのさしものインフレを収束さしたことを思うと、この所得税の累進課税というものは、これはインフレの気がまえのときには減税すべきでない、これだけ考えれば、私はそのように思う。それはアメリカと日本とは、財政の国民所得に対するワクの度合いも違います。またドッジさんの来た時分とは、日本の経済も変りましたが、しかし筋道はその通りであります。池田大蔵大臣は、この点についてどうお考えになりますか。
  57. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昭和二十三、四、五年のときのワクと、今のわが国の経済は、よほど違って参っております。私はあのインフレを押えるために、何と申しますか、心を鬼にして、毀誉褒貶を考えずにやった。しかし今の状態は、国民の努力によりまして経済が非常に伸びて参り、基盤もある程度できて参りました。こういうときには、非常に重い、世界で類例のないような税金は、これを減税するのがほんとうでございます。そうしなければ、政治のうま味というものはありません。インフレをおそれるあまりに、いろんな無理な施策をそのまま置いておくということは、私は政治でないと思うのであります。これは、財政理論から言いますと、学問上の理論から言いますと、減税をすればインフレになる、そうして増税をすればデフレになるということは言えましょう、しかし、これは前提条件がある、もし減税をしたものが民間にそれだけ流れて、そしてそれが貯蓄に向ってくれば、これが再生産に向ってくるのであります。だから私は、昭和二十三年、二十四年、二十五年と相当強くやって参りました。そしてインベントリー・ファイナンス等で超均衡予算でいったわけなんであります。それでインフレがとまりました。その後において、私は国民生活水準を上げなければいかぬというので、昭和二十五年並びに二十七年には、一千億円の減税をやった。しかしそのときには、神武以来の減税とは人は言わなかった。なぜ言わぬかといったら、それは物価が上っているから、当然減税しなければならない。今回千数十億円の減税をして、神武以来、仁徳以来の減税だと、私は言いませんけれども、人がそう言うゆえんのものは、物価が安定したときに減税をするから、それだけふところ工合がよくなった。国民のふところ工合をよくして、それが貯蓄に向って、銀行預金がふえ、郵便貯金がふえて、これが国家経済の再生産に向う、これを私は予定して言っておるのであります。私が大蔵大臣になった当時、すなわち今から三、四ヵ月前におきまして、減税をうんとするとインフレになるという議論が起るということは、新聞記者に申しました。しかし今しさいにわが国の経済状況を見、貯蓄の状況を見ていきますると、消費性向というものは非常にいい、昭和二十六、七年ころは、所得の九五%を消費しておりました。しかし最近におきましては、平均で所得の八八%を消費して、一二%は貯蓄に向っておる。毎年の消費性向というものは、だんだん貯蓄に向っています。すなわち昭和三十一年度におきましても、貯蓄目標は九千四百億円であった。それが一兆二千億円になんなんとする貯蓄を国民はして下さっておる。ことに限界消費性向と申しまして、所得がふえた場合において、そのふえた所得がどれだけ貯蓄に向けられるかという調査によりますと、最近では所得の少い人の、ふえた所得に対する貯蓄性向はまだまだ十分ではございませんが、中産階級あるいは大所得者の方の所得の増加部分は、大半貯蓄に向っておるのであります。私はこういう情勢を見まして、この際一千億の所得税の減税をいたしましても、その消費に向うことはないし、これが国家の再生産の元手になってくれば、雪だるま式に日本の経済がよくなることを予想して、その確信を持って減税をしておる次第でございます。
  58. 奧村又十郎

    ○奧村委員 池田大蔵大臣は、日本税金が世界一重いというようなことを、しごく簡単に言うておるが、その言葉自体、少し検討しなければいかぬと思います。これは、国民所得に対する財政のワク、これで税が重いか軽いかわかると思うのでありますが、御承知の通り国民所得に対して、アメリカは国税、地方税を含めてたしか二七%か二八%。これは昨年、一昨年の統計です。それから西ドイツでは、国税地方税含めて国民所得に対する税の割合、つまり財政の割合は三二%。これは私最近調べた。日本は地方税を含めても、財政の割合は一九%。そこでそう簡単に税が重いと言われるお言葉は、歳出を切り詰めていこう、その中には社会保障なども含まれるが、ただ歳出を切り詰めるだけが大蔵大臣のお仕事じゃなかろう。やはり私は、社会保障を進めるためには、ある程度税というものは確立し、またある程度の税はしんぼうしてもらわなければいかぬと思う。しかし、これは議論になりますからやめておきまして、今度はもう一つ、今度の所得税減税について、課税最低限を引き上げるのと、それから税率を軽減することについて、税率軽減に重点を置き過ぎた。これは、社会党の諸君からも、先日来ずいぶん議論があったが、私は別の立場から、このことは痛切に感じるのであります。その理由は三つある。と申しますのは、まず第一に、政府はよく昭和十五年と比べられますが、その昭和十五年と比べて、肝心の根本が今日は変っておる。つまり課税所得の捕捉がすでに変っておる。というのは、昭和十五年のときは、利子所得の、こんな世界に類のないような免税というようなことはなかった。山林所得の特別措置、あるいは株式配当に対する措置、譲渡所得課税、あるいは合算課税の問題。この合算課税は、今回資産所得について一部これは改めておられますが、全体としては、あの戦前の合算課税というものを根本から改めておられる。従って、高額所得者は、ただこれだけ比べても、戦前に比べれば非常に有利になっておる。その有利になっておるところへ、この税率の軽減でありますから、これは高額所得者に恩恵が行き過ぎておるということが言えるわけであります。その次に、今回の改正では勤労所得の控除、これは年収四十万円以上の人の控除、しかし一体年収四十万円以上の人というのは、納税者の中で何%おられるか、この問題、それから生命保険料の控除のもう一つの引き上げ、これもやはり高額所得者のための恩恵でありましょう。低額所得者のための恩恵としては、概算控除があるが、これは廃止したから、低額所得者の方はむしろ増税になる、こういうことであります。  時間の関係で要約していきますが、最後にもっと大事な問題がある。これは一つ大蔵大臣、主税局長、よく聞いておいていただきたい。私は、たびたびこの委員会議論したのですが、税額に対する減税の割合だけでは、これは大蔵省の一方的な御都合主義の説明であります。よくそこを考えて下さい。納税者は、低額所得者ほど所得に対する税額は少い、たとえて言いますと、一千万円の所得者は大体五割、半分の五百万円に税がかかる、ところが五十万円以下の所得者は、わずか一割以下の税がかかる。そうすると、一割の税に対する軽減額と五割の税に対する軽減額と同じ割合でいけば、これは高額所得者がうんと軽減される。つまり数字でもって言ってもわかるように、かりに五十万円の一割の五万円、その五万円の一割の税額を軽減したなら、税の軽減はわずかに五千円でしょう。ところが一千万円の納税者の税額五百万円の一割軽減なら、五十万円です。それから考えれば、この前社会党の諸君がいわゆる手取り額で説明をなされたことは、まことに傾聴すべき議論でありまして、この前も大蔵省は、こういう誤まりを犯した。税額に対する割合を出されるならば、せめて手取り額に対する割合をお出しになって、公平に審議を進められるべきであると思うのであります。この点御意見を承わっておきたいと思います。
  59. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国民の税負担を、国民所得と比べる見方もございます。私もずっと昔はそういう見方をしたことでございまするが、実際は、たとえば百万円の所得のある人がどのくらい負担をしておるかということが、実際の負担になるわけでございます。たとえば金持ばかりのところであれば、同じ税率でも非常に税負担が高くなります。貧乏人ばかりの国であれば、所得のような累進税率を使う税金におきましては、非常に低くなるのであります。ですから、国民所得に対する税割合ということばかりでは議論できません。やはり各階級の負担するものがどうなっておるかということを見ることも、非常に必要なことであるのであります。私は、そういう点を勘案しまして、外国のそれに比べて今までの日本の累進税率は高過ぎたというふうに考えておるのであります。  それから手取りの問題もありまするが、私は、原則はやはり軽減の割合でいくのが本筋だと思います。それは、参考意見としてそういうことを考えることも必要でございましょう。万般の施策は講じなければなりませが、私が、今回税制改正に当りまして最も注意を払った点は、減税割合の点であるのであります。
  60. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではもう時間も経過いたしましたから、あと利子所得に対する免税、物品税その他の問題を簡単にお尋ねいたして、私の質疑を終りたいと思います。利子所得の免税につきましては、実は、私はかって二年ほど前に、大蔵委員会で一萬田大蔵大臣とずいぶん議論を繰り返した。今回はそれと同様どころか、それ以上の議論を繰り返さなければならぬのは、まことに残念であります。というのは、要するにいろいろ経済政策などの事情があろうが、税法はそれではあまりに不公平になるということであります。近ごろ毎日新聞が「税金にっぽん」という特集物を出しております。あるいは脱税とか、いろいろな書物や発表が出ておりますが、それらのものを読みますと、要するに今の税法や税務執行はお金持ちや豊かな人を優遇して脱税を見のがしたりして、少さな貧乏人いじめの苛斂誅求ではないかということであります。私は、これをよく読んでみまして、なるほどと思うことがいろいろある。決して私は、社会主義を奉ずるものではありません。社会党の諸君とは立場が違いますけれども、しかし税というものは、犠牲の少いものから順次税をとっていく、この公平原則をはずしたならば、税というものの基本が失われる。この意味で、利子所得の免税というものは致命傷である、かように存ずるのであります。なぜならば、これらの利子所得や配当所得、そういうものの所得を持つ者は、大体高額所得者です。そこで、一方に高額所得者の減税をやりながら、一方また利子免税をやる、二重にも三重にも高額所得者が有利な立場に立つ、こういうことで、いかにも不公平である、今後税制の確立に致命傷になる、かように私は考えるのであります。大体、大蔵大臣の御答弁はもう想像がついておりますし、私の申し上げることも、言いたいことは言うたし……。(笑声)それで、大蔵大臣は、貯蓄増強という御答弁をなさるでしょうが、納税者が果して腹の底からそれで納得するか。しかも、今日の申告納税の制度では、今の税務行政の能力では、納得しない納税者から一体税金がとれますか。それを考えれば、そうやすやすとこの公平原則を破ってはならぬ、かように思うのであります。さればこそ臨時税制調査会でも、せめて最低一〇%の課税をすべきである、かようなことを答申したにもかかわらず、政府はこれをとらなかった。いかにも残念に存ずるのであります。  そこで、今度は角度を変えてお尋ねいたしますが、大蔵大臣は、利子所得の免税は貯蓄の増強のためなのだ、これをしいていえば、インフレを抑制するためなのだ、こういうことを言っておる。しかし貯蓄増強やインフレ対策ならば、税の公平を乱すよりももっと先にしなければならぬことがあるのじゃないでしょうか。何と申しましても、インフレ対策は通貨価値を安定させることでしょう。すでに日銀の卸売物価指数は、去年の二月と比べて、平均して六%上っておる。そうすれば、預貯金して六分の利子がついても、物価が六%上れば、利子だけはパーになるでしょう。戦後惨たんたるインフレの洗礼を受けた日本国民が、インフレ気がまえということになれば、いかに政府が笛や太鼓で貯蓄を奨励しても、その肝心なことがなかったならば、貯蓄は進まぬ。このことを、果して大蔵大臣は真剣にお考えになったであろうかどうか。それをお考えになるならば、累進課税のこの所得税の減税については、もう少しお考え願わなければならぬ。一方においてインフレ対策のために利子所得を免税して、一方に高額所得者の減税をやってインフレを進めるということになろうかと思うので、ここに私は非常な矛盾を感ずるのであります。  それからもう一つ、あれほど非常な犠牲を払って貯蓄増強をされておられのに、それで集まった金は一体どうなっておるのか。銀行はともあれとして、信用金庫、相互銀行、あるいは信用協同組合というものについては、近ごろいろいろ不正事件を聞いておる。またそういう資金が一体どのように使われておるか。金融機関の中には、不要不急の建物を建てたり、いろいろなことをやっておる。そういう問題をもっときわめて、あるいはまた免税のかわりに、一方補助金でも出すとかなんとか工夫をなされて、それらの工夫全部をやったが、なおかつ足りないというときに、最後に利子所得免税に持っていくべきで、今回の処置は、まことに不当であると私は考えるのでありますが、池田大蔵大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  61. 池田勇人

    ○池田国務大臣 物価の値上りが、世界経済情勢の変化によりまして、昭和二十八年以来横ばいであったのが、昨年の夏ごろから幾分上りかけたことは承知いたしております。しかし、そういうことは一時的の問題でございます。またそういうことも頭に入れまして、この際貯蓄の奨励が必要である、こう考えてやったのであります。いろいろな万般事情を全部考慮の上、適当として措置いたしたのであります。二十万円までの預金は免税しておるのであります。そうすると、五十万円の分を二十万円ずつ二日半にしたならば、これまた免税になるのであります。そういう手数をやることが経済上どうかと考えますので、この際そういうような措置をとったのであります。物価の上昇、その他物価と貯蓄との関係につきましては、十分考慮を払ったつもりでございます。
  62. 山本幸一

    山本委員長 奧村君、まだ発言ございましょうけれども、はなはだ恐縮ですが、御承知のように本会議のベルが鳴っております。従って、午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後は本会議散会後に再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後二時三十一分休憩      ————◇—————    午後三時五十六分開議
  63. 山本幸一

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法案の三法律案一括議題として質疑を続行いたします。横山君。
  64. 横山利秋

    横山委員 午前中の質問に引き続いて、先ほどの問題について質問をいたします。  人格のない社団及び財団に対して、これを公益法人の非課税の範囲、つまり三〇%の限度を適用せずに、一律に四〇%の税率を課すること、このことは、実際適用ではそうはならないでありましょうけれども、ネコもしゃくしも三、四十万に全部四〇%かけるということは、内容的に考えるといささか酷ではないか。しかも、ことしはゼロであったわけです。ゼロから直ちに四〇%ということは、どう考えても酷ではないかという質問であったわけです。あなたはそれに対して、純収益事業とそれから公益的なものとをやっていく、その分けようがないという答弁でした。私は、そうではなかろう、これは公益法人の認可基準もあることであるから、それを援用して分けられるではないかというところで終ったわけであります。  私はさらに、かりにあなたのベースに立って考えても、よくここで、人格なき社団のうちで、これとこれとこれだけはかけざるを得ないのではないかという議論が出る、そういうかけろというものだけを四〇%にする。それ以外はそうじゃない、三〇%の適用範囲にすることは可能じゃないかという気がしてならぬのです。これは法律政令規定を作る専門家のあなたの方でできぬはずはない。ことに最近税制が非常に緻密になってきて、朝から問題になっているすべての問題が、重箱のすみっこを突っつくようなやり方であなたの方でおやりになっておる。これは、これまで問題になったことばかりでありますから、こういうことができないはずはない。私の言う認可基準をもとにして作ろうと思えば作れるのではないか、これは一体原さんどうなんですか。
  65. 原純夫

    原政府委員 午前中申し上げましたのは、まずそういう認可基準の、人格のない社団または財団公益目的を持つというものは、確かにそうなれば公益法人になれるはずだということを一応申し上げたわけです。いろいろ準則はあるようでありますが、公益法人にそれでもなれないというものは、公益性の判定においてかなり低い、もちろん公益性というものも、ある法人は百パーセントあって、もうその他はゼロだということはないですから、ニュアンスの問題はありましょうけれども、やはりそこではっきりと段がつくというふうに思うのです。しかし一歩譲って、公益法人格をもらえないものについても、公的性質が若干あるかないかという議論はありましょう。ありましょうが、しいてそれを公益的なものと判定して三割の特別税率、また三割の損金算入の寄付限度というものを認めるのは、本質から言うても疑問があるし、また税務行政の上でそれを区分しろとなると、これは非常に困難で不可能に近い、こういうことを申し上げたわけでございます。まあ朝方と同じことを繰り返すようなことになりまするが、私どもとしては、やはりこの際一本の税率で、そうして寄付金の問題も、通常の法人並みにやらしていただくということが適当なのではなかろうか。もちろん四割の税率といいましても、こういうものは、総所得が大きいというものよりも、割合に小さいものが多かろうと思いますので、御存じのように、今回改正を御提案申し上げている百万円までであれば三割五分という税率になるということでございますから、あわせてそれを申し上げます。
  66. 横山利秋

    横山委員 三割五分にしろ、ゼロから三割五分、ゼロから四割というのですから——私は質問もなるべく簡単にしてくれという要望もございますし、これは水かけ論に終る可能性がありますから、要望だけ強く申し上げておきたい。ゼロから三割五分、ゼロから四割というものは、いかにその人格なき法人ないしは人格なき社団及び財団が過去にどういうことであろうとおそるべき増税で、それによってその社団ないし財団に及ぼす影響というものは、はかり知れざるものがあると思う。朝からあなたと私との討論で、全面的にそう網を広げることはしない。まあこれとこれだけはやむを得ないと思ってもらうとおっしゃるんだが、税率及び税額の面からも考えてもらって、四〇%ないしは三五%の課税が一挙に来年度かかるようなものについてのみ限定されて適用するなら適用するというふうにでもしませんと、税額、税率の面からでも非常な問題が起るだろうと思います。その面についての原さんの所見を一つ最後的に承わりたいと思います。
  67. 原純夫

    原政府委員 確かに今までかからなかったものがかかるというのは、非常な変化でございますけれども、しかしその議論で申し上げましたように、実はその点はかなりいろいろな見方がありますので、実態が収益企業をやっているのですから、みな収益企業をやっている人が税を納めていれば、納めていただかなければならぬというような気持もあるわけで、そういうようなことから考えますと、確かに非常な変化ではありますが、これは非常な変化で、非常に酷だといこうとじゃなくて、それで普通のことになるという面もありますので、ただ今まで、法律がそこまでできていなかったというようなことがあったにしろ、かからなかった法人がある、そういうものの扱いについて、先般来、綱を打ってやるということなしに、まずこれを確実に納めてもらわなければならぬというものから、だんだんと判定していくということを申し上げているわけで、丁寧にという御趣旨は、私ども十分くんでいたすつもりでありますが、税率なりその他の面については、一般法人並みということは、先ほど来申しましたようなわけですので、一つここで御承認いただきたい。丁寧にやるということは、くれぐれもけさも御質問に対してお答えしましたようなわけで、丁寧にいたしますから、一つどうぞよろしく……。
  68. 石村英雄

    ○石村委員 関連してちょっとお尋ねしますが、今度の人格なき社団の問題は、われわれにもはっきりしなくて、さっぱりわからないので一つの例をお尋ねしますが、一般の人が団体を作って会費を納める。そうしてその会費によって音楽家だとか劇団等を呼んできて演劇を鑑賞する、あるいは音楽を聞く、その経費は会費の中から出す、こういうやり方をする場合に、これはきちんと会費通りに必ず劇団の費用がカバーできるとは限りませんし、ときには余ることもある、ときには足りないこともある。それも一年たった大蔵省で判断する決算期に、かりに会費の一時的な残余が生れたとき、これは収益事業として課税されることになるのですか。会員以外の一般の者を観劇あるいは演奏会に入れて、別に入場料を取っておるというのならば区別も困難かもしれませんが、会員に限ってそれをやるというときには、どういうことになりますか。
  69. 原純夫

    原政府委員 会費を取って、そうして演劇を見せる、あるいは音楽会を聞かせる、場合によって、ものを月々配るというようなこともあると思いますが、演劇だの音楽だのに限っていいますれば、その会が興行として音楽会あるいは演劇会を見せるのであれば、その会は演劇興行業をやっているそれの代金を会費というかっこうで取っているということになります。それから、他の独立に行われる興行に入場する入場券を随時それであっせんするということになりますると、入場券の販売業ということになりますか、あるいはあっせんみたいな仕事になると思いますが、いずれにしましても、それが興行、音楽会なり演劇会なりの興行に入る入場料をまとめて取るということであれば、その収入をもって収入として、それから仕入れた切符代、あるいは興行の費用というものを支出として損益を計算するということになると思います。そこで期間の終りに、この会費はまだこの分で見せてやる分があとにあるのだというような場合の繰り延べ経理の問題がからんでくると思います。この辺は実際の具体的な事情によるものでありますから、抽象的にどうと申し上げるわけに参らないと思います。通常の商売の場合でもそういうことがあり得る。大体やはり対応する債務があるものは、それを立てるという筋が一応考えられますけれども、具体的なケースについて、その辺は適切に妥当に判断すべきことだと思っております。
  70. 石村英雄

    ○石村委員 どうも私の聞いた意味がはっきりのみ込めないのか、それとも私の受け取り方が悪いのか知りませんが、これは別に興行主がおってその興行をやらせる、こういう意味ではなくて、会員自身が集まって興行主から雇ってきてやる演劇家を雇う、あるいは音楽家を雇ってきて奏演してもらうということなんです。それが興行業になるということは、どういうわけなんですか。会員自身が自分でやることを——別に一般の興行家なら、それは俳優を頼んできてやらして、そうして利益をあげるという目的を当然持っておるでしょうが、この場合は、全然利益をあげるという考えを持っておるわけではないわけなんです。もちろん所得税法あるいは法人税法は。営利という観念は入れていないかもしれませんが、この場合純然たる会員が、会員自身の行為、行事としてやるというときに、他の一般の、実は営利を目的としている営利的な収益事業と同様に扱うということは、これはやはり納得しないのじゃないかと思います。これは、横山君なんかの質問もやはりそこにあるのじゃないかと思いますが、私もその点はふに落ちない。純然たるその行為によってもうけよう、会員から会費を取ってもうけようという考えでやっておるというなら、これは興行業になってもいいのですが。そういう意思は全然ない。一人で聞くわけにはいかない、なかなか演奏家を雇うわけにもいかない、連れてくるわけにもいかないから、一つみんなで、今度はいい音楽家が来たから、あれをこの地にも来てもらってやってもらおうじゃないかというので、純然たる経費をお互いで負担するという考えでやる。それが一般の興行家の行為と同様に扱われるということでは。お互い納得できかねる問題をはらんでくるのじゃないか。それでも、やはりそれは興行家のやる興行と同じことである。たとえばデパートなんかが友の会というものを作って、会費を取って自分のうちの商品を売るというなら、これは商品を売るという一つ営利目的を持っておりますが、これは一体どういうのですか。
  71. 原純夫

    原政府委員 ちょうど今お話が出ました他の例で言えば、毎月千円ずつ払い込みなさい、そうするとぴったり千円のものといかぬかもしれぬけれども、毎月なりあるいは三月に一回なり瀬戸物をしかるべく見計らって送りましょうというような会もあるようでございます。その場合、そういう物品販売業は当然収益事業だというふうに石村先生も言われるわけですが、演劇興行業も、やる仲間の人がもうけるもうけないということは別にして、それが収益事業であるかどうかというのは、同様な観点で判断しなければならぬと思うのです。やる人がもうけるつもりがないから、それは収益事業でないということは、これは法を適正に施行するゆえんにならない。そういうことでありますれば、もう一般の法人税、所得税の所得においても、そういう問題があるわけです。薄利多売と申しますか、もうけないでもやろうという人もあるかもしれません。それは、やっぱりもうからないというだけの話であって、収益事業であるということは変りない。その演劇興行をやります場合に、それが事業になるかどうかについて、継続して事業場を設けて云々ということで判定する必要はありますが、その判定で、それは収益事業であると見られれば、それはやられる方々がもうけるつもりでないということは非常にけっこうなことでありますけれども、そのゆえに、それで収益事業からはずれるということにはならない。それは収益がゼロであるということにおいて税がかからないということになりますので、そういう場合は、税もおそらくかからぬことになるとは思いますが、それだからもう収益事業でないので、申告も要らないというようにはならない。そういうふうにいたしますと、非常に法律適用が、事業をやります方の主観によって動いてしまうというようなことになって、これは所得税法法人税法を通じまして、それではいけないということで、客観的な判断によってやることになっておりまするし、今回の場合も、そうお願いいたしたいと思っておる次第でございます。
  72. 石村英雄

    ○石村委員 どうも原さんの御答弁は、はっきりわからないのですが、薄利多売とかなんとかいうことは、これはいろいろあるでしょうが、それは結局もうけるためにやってることで、これは売る人と買う人が別個の人なんです。その売る人の判断で、今損をしてもこの次にもうかるという意味でやることもあるでしょう。あるいはうんと最初にもうけるという考えでやる人もあるかもしれませんが、これは売る人と買う人が全然別個なんです。今私が例として出したのは、会員自身がやることなんです。これは別個の人格があるものではない。もちろんそれが集団しておるから、これは別個だといえば別個でしょうが、実体は、この場合こそ別個ではないと思う。あなた方、法人税で擬制説なんというものをお出しになる方からいうと、全くおかしな話だと思う。これは会員自身がやる。他の、別個の興行家がおる場合とは違うわけなんです。その会員がやる演劇に連れてくる興行家がおるとすれば、その興行家がその会員の団体に演劇を見せる場合の契約による収益は、これは興行家としての収益事業には間違いないと思うのですが、その会自体は、会員と別個のものではないというときに、薄利多売だとかなんとかいう観念がその中に入ってくることは全然ないと思う。その点を私は問題にしてお尋ねしておるわけなのです。原さんの御答弁は、一応別個の、売り買いの対立した関係において収益があるとかないとかいう意味のことを入れての御答弁と思う。そうでない場合を私は聞いておるわけです。
  73. 原純夫

    原政府委員 何々会というものがありまして、会費も取って、そうしてりっぱな音楽家が来たからその人を頼んできて聞かせようという場合は、やはりその会がその場合人格なき社団なり財団なりであるかどうかという問題ですが、一応あるとすれば、その会が音楽家を呼んでくる、そうしてどこかのステージを借りて聞かせる、そうして会員が会費を払いますのは、その対価であるという場合があると思います。そういうような場合として申し上げましたので、やはりそれは——会員と会が境のない、そういう対立関係にないのだというふうなこと、これは気持の問題としてはわかりますが、やはり事業をだれがやるか、そしてそこに収益があるかないかという問題として、また法律行為の当事者がだれであるかというような問題としては、そういう場合は、やはり会が興行をやって、そうして会員が会費という格好で対価を払って見るということになるのではなかろうかと思います。お話しのようなことでいいますと、消費生活協同組合というものは、御存じの通り収益課税しているわけでありますけれども、これも考えようによっては、組合員は会員だということになって、そこに対立関係がないのだ、これは、気分の問題としてはわかりますけれども、法律行為ははっきりある。そうして事業をやっているのは、やはり協同組合であるというようにしておるのと同様、この会も演劇行為を業としてやっておれば、それは収益事業ではなかろうか、業としてやっておるかどうかについての判定が要ることは、先ほど来るる申し上げておる通りでありますが、やっておる限りは、やはり収益事業とみなければならぬのではないかというふうに思う次第であります。
  74. 石村英雄

    ○石村委員 どうも合点いかないのです。これは、かりに私が自分のうちに手品師を呼んできて手品を見る、そうして経費が千円と思っておったが八百円で済んだ、二百円私のもうけになるわけです。これは収益事業になりますか、そんな場合はどうなりますか。
  75. 原純夫

    原政府委員 それは、もう石村さんが自分でやっておられることで、二人以内なのですから問題ないと思います。お話の場合は、やはり会がやるのですから、会に人格なき社団であるという地位があるという前提でのお話でですから、やはりちょっと違うんじゃなかろうかと思います。
  76. 横山利秋

    横山委員 ほんとうに政府側によく考えてもらいたいのですが、この法案は、みんなが脱税のしっぺ返しだと思っているのです。どうも聞けば聞くほどやはりいろいろな矛盾が出てくる。しかしこの委員会で、私ども反対的な立場でありながらも、若干の矛盾が、修正をここにつけておるこの瞬間にもあるのですが、この実施はほんとうによほど厳格に、しかも狭くやってもらわぬと、もう非常に問題が起ると思うのです。私はこれだけ質問したのですから、何か事がありましたら、第一発、最初起きたときは、必ず直ちに取り上げるつもりでおります。そして将来やはり適正にあなたの方にもお考えを願わなければならぬと思います。いずれにしても最後に御要望したいのは、政令が出てから、もう一ぺんここでもう少し議論をさせてもらおうと思いますが、この法案の実施方については、特に慎重を期してもらって、先ほどあなたのおっしゃった三項目の適正を期し、また一方、なるたけなら法人の方がいいのじゃないかというあなたの方の法人の認可基準を、立場は違っても政府機関として関係のところへ言うてもらって、そうして両々相まって円滑な運営を期する、こういうふうにしてもらうことを私は要望しておきたいと思う。  時間がございませんから、次の問題を簡単に要点を言って、御質問をいたします。その意味で具体例をあげましょう。合算所得の問題であります。これは、少し立場は違っていますけれども、お聞きを願います。私は工場に勤務し、十年間給与所得者として今日に及んでおります。たまたま本年七月二十八日突然更正を受けましたところ、母の経営にかかる農業所得金を私のものとして合算すると言われました。私はいまだかつてこの所得ある母を、扶養親族として所得税法第八条の控除をしたことはありません。私が母を農業所得者としていることは、所得税法第三条の二及び同基本通達百五十九の二に該当し、農業所得者として次の諸点を具備しているからであります。一、農業経営上実質的支配者であること。二、農業経営上重要な取引先である掛塚農業協同組合の正組合員であり、出資者であり、取引名義人であります。三、また農業委員会管理耕作、台帳耕作人であります。四、静岡県農業共済組合員であります。五、耕地地主との賃貸借契約者であります。六、ここが問題でありますが、「私名義の土地は、昭和二十二年三月家督相続によって先代より名義変更したもので、旧憲法時代の残滓であって、所有権こそあっても、ただ単なる名義人であって、実質的に私は農業経営に関与したこともなく、手伝いすらできません。」こういうケースなのであります。つまり本人がその土地の名義人であります。しかし実質上は全部母がやっており、取引もすべて母がやっておる。このケースが先般ここで議論になりまして、与党からも、商業経営者も同じような問題があるという議論になり、理事会の問題になり、最終的に私が質問をすることになったのであります。私の質問の要点は二つありますが、一つは、こういう今読み上げたようなケースが、政務次官の地元である静岡県に三十件もある。行政的なこの問題について、基本通運ありといえども、かかる問題を税務署がいろいろやったために異議申請をして、国税協議団の方にかかっておりますが、こういうことを次から次へとやっておるということはいかがであるか。従って税務運営上、これらのケースについて、現在の基本通達のもとにおいても考えらるべき問題ではないか。私は所得税法三条の二によって、これは合算すべきではないという考えに立っておるのでありますが、この具体的なケースについてどう思うかということが一つ。  第二番目は、これを基礎にして基本通達を調べてみましたところ、この合算、正確に言えば、所得者の判定については、きわめて厳重な制限がされておるのであります。勤労所得と勤労所得、たとえば夫婦共かせぎの場合においては、明確に個人課税にされております。しかし勤労と全く同じような性格を持っております農業所得、それから商業所得でも、零細企業においては勤労の部分が非常に強いのであります。そういう事業所得についても、勤労所得と同種のような方向に基本通達を緩和すべきではないかということが、私の質問の第二番目であります。  以上、お話もわかっておる次第でありますから、明瞭に一つ答弁をお願いいたします。
  77. 原純夫

    原政府委員 農業所得がだれの所得であるかという判定の問題は、非常にむずかしい問題でございます。私ども常々心を悩ましておるところであります。  ただいまお読み上げの具体的なケースについてどうかということについては、十分調べました上でお答えしたいと思います。ただいまお読み上げになりましたけれども、それ以外の事情もいろいろある、それらを総合判断せねばならぬ問題でありますから、具体的にそれを調べました上で——まあ気分はよくわかりました。調ました上で申し上げたいと思います。  それから、これについての通達面についての御要望でございますが、ただいまの通達では、いろいろな条件が書いてありまして、それらが並列的にいずれも存することを要するというような書き方に大体なっております。ところが、たとえば今の場合のように名義が違うということ、しかし一方にお母さんと子供である、まあ主人とその奥さんという場合とはまたニュアンスが違うという問題もございます。それらにつきまして、通達面で、実情によりよく合うようにするために工夫が必要なのではないかということは、私ども考えております。従って、その面での研究を至急いたしまして善処いたしたい。同時に、なお運用面でのお話も若干ありましたが、かりに通達がこう出たという場合に、その通達通りに全国の行政が生かされるというようなことについては、これは判定問題でございますから、言葉が非常にむずかしい、非常な苦心が要るわけありますが、その面で一段と工夫を払い努力をして、統一した線で不公平のないようにするというのが御要望の一つの点だと思いますので、その点もあわせて十分誠意をもって善処いたしたいと思う次第であります。
  78. 横山利秋

    横山委員 気分はわかるという言葉ですが、今私が読み上げただけでも、与野党を通じて全く同感だ、おれの方の選挙区でもこういうことがあるという話で一ぱいであります私は、何もこれがわれわれの選挙区だからとか、人の選挙区だからとかいうことでなくして、今読み上げたこの文章を——これは私はきわめて正確に書いてあると思うのです。たとえば取引先であるとか正組合員であるとか、耕作人であるとか、賃貸借契約者であるとか、これはごまかしょうのない問題であります。こういう実質上お母さんがやっておる問題子供が名義だけだという問題、これ自身あなたがここで判断ができないはずはないと思います。気分はわかるという問題でありません。私が読み上げたこれが事実だとしたならばどうだということを、私は質問いたしておるわけであります。もちろん質問の第一点は、これはどうだということと同時に、この種の問題が非常に多いということ、これは農業ばかりでなく、商業一般にもあるものであるが、全国的に今非常な問題になっているから、現在の基本通達のもとにおいても、これはあなたの方として善処さるべき問題であるし、同時に基本通達を、この際もう少し厳格な条件を緩和する必要がありはしないか、こういうことを言っておるのでありますから、もう一ぺん恐縮ながら、一つ正確に返事をしていただきたい。
  79. 原純夫

    原政府委員 現在の通達そのもので、ただいまお読みになりましたケースを、母の農業所得は母のものだというふうに読めというお話でございますが、その点については、相当研究いたしませんと、そうだという答えは必ずしも出ないのであります。現在の通達資産の名義は、資産の所有権、賃貸借権、それから事業の名義その他を並列的に要求するような形に一応なっておりますので、私今の通達の解釈としては、そうそう読めと言われますと、それはにわかにはできがたい。それは気持はわかる。そこで、やはり通達をどうするかという問題になる。それは、至急誠意をもって研究して善処いたしましょう、こう申し上げているわけであります。また具体的な事例につきましては、やはりそこに現われないいろいろな事情もあるわけでありまして、それらを十分承知した上で申し上げないといけない。今お読みになった限りで言えば、今の通達の範囲ですぐに当るかどうかという点は、なお研究してみないと申し上げられないので、そう申し上げたわけですから、御了承願います。
  80. 横山利秋

    横山委員 簡単にもう一ぺん整理して申し上げますが、基本通達は緩和する、そして、この具体例については、研究して善処をする、こういうことですか。
  81. 原純夫

    原政府委員 その通りであります。
  82. 横山利秋

    横山委員 それではそれは終ります。  その次に、同じく合算課税の問題で、贈与税との関連はどうなりますか。二百万円以上合算をするわけですね、夫婦で資産所得がある場合には。奥さんがだんなさんから土地建物をもらった場合には贈与税を払っておるわけですね。ところが贈与税を払って自分のものにしておっても、今回の合算課税法案は、名実ともに奥さんのものであっても一緒にして税金を合算をする、こういうわけですね。それでは、奥さんは最初だんなさんからもらうときに税金を払って、わたしのものだということになってしまっているものに、それをだんなさんのものだと見ることに矛盾がありはしないか、簡単に言うとそういうことです。
  83. 原純夫

    原政府委員 初めに、先ほど緩和すると申しましたのは、実情に合うように緩和するということでございますから、誤解のないように。(「実情とは何だ」と呼ぶ者あり)妥当なるように緩和するということであります。これはおわかりと思いますから……。  それからただいまの御質問の点でございますが、なるほどそういう議論もあろうと思います。しかし私どもは、贈与税の問題と所得課税の問題は、こういうふうに別に考えております。それは、贈与税はいわば相続税の補完税と申しますか、前取りのような税であります。そこで、贈与税を払えば所得税はいいではないかということにはならないので、贈与税を払えば相続税はいいではないかということになる。確かにそれは、妻が贈与税を払っておけば、それについて、夫が死んだ場合に相続税は取らない、しかし所得税は、年々の所得について、その所得の実態に照らして、担税力に合うように取るのが所得課税の一番大事な点である。そうすると、生計を一にする親族で、かつ今度はだいぶしぼったわけでありますが、その範囲内のものについては、一体として担税力を考える方がよろしいというふうに考えてお願いしておるわけです。私ども、一応そういうようにお考えになる考え方があると思います。私どもとしては、そこに矛盾はないというふうに考えております。
  84. 横山利秋

    横山委員 これも水かけ論になるので触れたくないのですが、少くともおやじさんから奥さんが資産をもらって、贈与税がかかって、贈与税を払って、名実ともに奥さんのものとして、奥さんがそれによって収入を得ておる。それをだんなさんのものだというふうにきめてかかる。それは税法上矛盾がないというあなたのお言葉には、どうしても矛盾がありますよ。それは、やっぱり税法上の理屈を連ねたって、世間的に常識上通りませんよ。少くとも贈与税を払ったものについては合算をしない。贈与税を払って奥さんが資産所得所得したものについては、これは合算をしないというのが正当じゃありませんか。
  85. 原純夫

    原政府委員 私どもがこの改正でお願いしておるのは、主人のものとして課税するとお願いしておるのではないのであります。やはり奥さんのものとして課税をするのです。ただ担税力は、その場合に、一緒にして計算して税率適用をやる方が担税力に合うということで、税率適用を分離の場合と違うようにやりたいということをお願いしておるので、あくまでもそれは奥さんのものであり、奥さんに課税するということなんでございますから、そういう意味から、ただいまの点にはお答えできるのではなかろうかと思います。
  86. 横山利秋

    横山委員 それはまあ水かけ論になりましょう。  最後に、各種学校の問題について、法人税に関連して二つだけお伺いします。これは誤解もあるようでありますが、非常に各種学校が心配をいたしておりますから、法人税について一つ明確に答えてもらいたいのです。  一つは、全国七千の各種学校法人組織の学校に対して、特別措置法施行規則二十一条の規定によって大蔵大臣に承認申請をしても、今五百五十しか承認が得られていない。承認が得られなかった場合において、高率の贈与税が賦課されて、そのために各種学校法人というものは致命的な打撃を受ける。しかも今度あなたの方から何か指示が出て、過去にさかのぼって、この贈与税について学校法人に重大なる打撃を与えた通達が出ておる、こういうのです。もう一つの問題は、法人の学校に対して、今までは収益事業にだけ所得税を課されておったのだが、来年度からばかにあなたの方が手を広げて、その範囲を非常に拡大し、実質上収入事業どころではなく、学校そのものにまで課税をする、そういうようなことがあるというので、各種学校総連合が文部省にお百度参りをしたり、あなたの方まで行ったり、あるいは与野党議員を回って、これは各種学校の重大なる問題だと言って、行っておるのです。もしわれわれが聞いておる通りのことであるといたしますならば、今日まで文部省がこれらの学校を法人化させようとし、健全な発展をさせようとしてきたことが全く画餅に帰することなんです。これも人格なき社団のような理論にやはり問題があると思うのですけれども、重箱のすみっこを突っついて、各種学校がもうけておるのだということを先入主として、あなたの方がこんなことをおやりになっておるのではないかと思うので、この二点について、一つそういう疑念を払拭するためにお答えを願いたいと思います。
  87. 原純夫

    原政府委員 第一の点は、お願いしております租税特別措置法の新しい方の第四十条で、国または地方公共団体に対しての贈与、これは贈与がなかったものとみなす。それから民法三十四条の、法人その他公益を目的とする事業を営む法人に対する贈与または遺贈で大蔵大臣の承認を受けたものについても、また同様とするという点についてであろうと思います。これは、従来からその制度があったと思いますが、今回改正をお願いいたしております要点は、承認の際に、それが公けに帰するものである、つまり公けのものになるのだということを確保いたしますために、たとえば理事者にある程度以上同族の人が入っておるということは、やはり個人的なものであるからそれは困る。それからその運営について、いわばパブリックな評議員会のようなものを設けてあるというような条件も必要だろう。それから、あとで解散した場合に、財産の帰属が公けのものになるようにというような条件も必要だろう。一々覚えておりませんが、そういうような条件を念査して、この法律に盛られた公けのものにいくという場合には贈与税をかけず、また一方では、譲渡所得税もかからないことになっておりますが、そういう優遇を与えるための条件をはっきり念査することにしております。それが何年かたってその条件が失われる、つまり公けのものになると思ったのが、結局あとで定款を変えてしまって、同族的なものにしてしまうとかいうようなことになりますと、われわれがこの法律で負託された意義は、つまり公けのものになることを確保しなければならぬということだろうと思うので、今回お願いをいたしておりますのは、そういう条件がなくなった場合には承認を取り消すことができる。取り消したらそのとき贈与税、譲渡所得税をかけることができるというふうにいたしたいというととであります。これは、そうでなくちゃならぬと思ってお願いしておるわけです、そこで、ただいまのさかのぼるという問題は、おそらくこの改正法の施行前に承認のありましたものについても、その承認の取り消しが行われて、それについて課税があるというようなことがあってはという御心配ではなかろうかと思います。その他、お話しがありましたような何らか通達を出したということはございませんので、おそらくその点の御心配だろうと思いますが、その点の御心配はありません。附則の中で、この承認の取り消しによって課税するという規定は、この改正法の施行後行われた承認についてのみこれを適用するということになっておりますから、その点でしたら、御心配ないと思います。  それから第二点は、各種学校等でいろいろ言っておられるというのは、この五条は、公益法人収益事業の範囲は、政令で定めるということになっておりますが、その政令で定めておりますものが、今二十八ございますが、これに三、三追加をいたしたいという考え方が私どもにございます。おそらくその点だろうと思います。その点は、具体的に問題になっております場合は、各種学校の中で、技芸教授業というものがあるのです。お花の先生、お茶の先生、あるいは料理の先生というようなものがあります。こういうような者がそういう技芸教授業をやっているわけですが、個人でやれば所得税がかかる、各種学校といいますか、公益法人になればかからないということは、いかにもおかしい、税の公平を保つゆえんでないというふうに考えたわけです。つい数日前に、ごらんになったと思いますが、「特殊法人公益の名で脱税、税メンもお手上げ」という見出しでありますのが、ちょうどその顕著な例でありますが、お花のお師匠さんの場合、これが法人になっているようなわけであります。そういう場合は、やはりかけなければいけないだろうという意味で、業種を追加しようと思っておりますので、この辺は御同感いただけるのではないかと思います。
  88. 横山利秋

    横山委員 人格なきでもそうですし、これでもそうですけれども、あなたの方は特殊な問題を取り上げて、これが脱税されるからというので、全般を議論されるような気がしてならぬのです。この問題でも、そういう気分がいたします。私は特にあなたにお願いをしておきたいのは、今度の各種学校に対する措置が、各種学校が今日まで非常に努力をし、文部省もこれを育成してきた方途を、税の部面から打撃を与えて、つまらない紛争を起さないように、やるにいたしましても、ほんとうの特殊な例についてのみ、やらざるを得ないならばやって、今日まで政府が、特に文部省が育成してきました方途を、あなたの方で勝手に特殊な例を引いて乱さないようにお願いをいたしておきたいと思います。  時間がございませんから、この点、また具体的に取り上げるといたしまして、私の質問をこれで終ることにいたします。
  89. 山本幸一

    山本委員長 神田大作君。
  90. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、この前時間がなかったので、きょうは農業所得の問題についてお聞きを申し上げたいと思います。  過般閣議決定になりましたところの、農業所得収益に対しましては、農林統計調査機関の作成したところの反当収量を尊重するという閣議決定に対して、この前国税庁長官は、尊重しておるというようなことでございますけれども、実際面において調査いたしますると、この作報事務所の統計とあなたたちが徴税のためにとる収量とは、非常に食い違っておる。ほとんど食い違っておる。食い違っておらないのは、少し長野県にありますけれども、全部が作物統計事務所の方の収量の方が少くて、あなたの方が多い、こういう現象であります。口では尊重するといっておりますけれども、実際に尊重しておらない実態に対して、どうお思いになりますか、お答え願いたい。
  91. 金子一平

    ○金子説明員 お答え申し上げます。御承知のように農林統計、つまり作報の方の作り方は、各地の抽出検査をやりまして、総収穫量は、結局郡なり県なりでまとめたものを、だんだん下の町村の方へ流していって町村の収穫量をきめる、こういった格好になっております。それで、結論的には合致しなければいかぬのでありますが、一方また税務署の方でやっておりますのは、台帳面積一反歩当りの収穫量をつかんでおります。農林統計の方は実反歩一反、すなわち三百歩一反の収穫量を出しておりますので、若干そこに食い連いがある、かようなことでございます。決して農林統計を全然尊重してないというようなことはございません。やはり作報を尊重しながら、こちらの調べました坪刈りによる結果ともにらみ合せて標準率を作る、かようなことに相なっております。
  92. 神田大作

    ○神田(大)委員 農林省の権威のある調査がほとんど下回って、税務署の調査しておるのが全部上回る。あなたたちは収量の坪刈りとか、いろいろ言われますけれども、そういう反収を見ることは専門家ではない。農林省がやはり専門的な立場に立ってやっておるのです。閣議決定の一番重要な問題は、反当り収量によるところの税金の取り立てというようなことに昨年変更になっております。石当りの税金の取り方ならば問題はなかったのでありますけれども、そのために、農家の所得税というものは急激に上ってくる、あなたたちが税金をとるために、いわゆる抽出検査によって税金がとれるような、そういう収量の調査をすることを押えるために閣議決定はしてある。そういう意味合いにおいて、あなたたちの調査しておるところの収量と、農林省の調査した収量において、ほとんどあなたたちの方が多い。しかもそれを正しいとしてやっておることは、少くとも閣議決定を尊重しておらないと私は思う。実際においてそういう事実が現われておるのであるから、これはあなたがいかに尊重するといっても、尊重しておらない。今後こういうことに対しまして、あなたたちは、専門的な立場に立つところの、権威ある調査をしておるこの農林省の調査を尊重すべきであると思うのですが、その点をお尋ねいたします。
  93. 金子一平

    ○金子説明員 お答え申し上げます。一昨年からでございますか、初めて石当りから反当りに切りかえたような状況でございまして、その間税務署の方も調査疎漏の点もあり、あるいは御迷惑をかけた点が多々あろうかと思いますが、今後は、一つ極力努力をいたしまして、円滑な、適正な課税のできるようにやっていきたい。なお作報の統計につきましては、十分尊重して参りたいと考えております。
  94. 神田大作

    ○神田(大)委員 いま一つ、この問題に関連いたしまして、あなたたちのいわゆる生産費の調査であります。この生産費というものは、非常に農業必要経費を低く見ておる。私の調査した税務署の調査によりますと、反当六千三百十八円というような経費が出ておる。実際問題として、農林省のやっておる作物統計事務所の調査によりますと、これが九千五百七十八円になっておりまして、大体三千二百円ぐらいの違いがある。この農林省の統計のみならず、農業団体の調査した統計によりましても、これが大体九千八百円ぐらいになっておりまして、いずれにいたしましても、必要経費において三千円からの開きがある。収量においては、私の調査したところによりますと二石三斗、あなたたちが調査したのは二石一斗と、三斗の開きがある。必要経費において三千円からの開きがありますと、農家は一反歩に対して五千円よけいに税金の対象にされておるのです。この点について、必要経費はあなたたちはどういうふうな基準によって調査されておりますか、お答え願いたい。
  95. 金子一平

    ○金子説明員 ただいま御質問の経費の見方でございますが、私どもの方といたしましては、各地の中庸の農家数戸につきまして、これは収穫の力も同様でございますが、経費につきましても、公租公課はどうか、肥料の方はどうか、用人費はどうかということでこまかい調査をいたしまして、それを集計いたしました中庸のものを、その町村なら町村の標準率に織り込んでおるわけでありまして、ただいまお話しの農林統計との相違は、これはなるほど御指摘のようにございます。しかし、これは税法上経費と見られるものと見られないものとで若干の食い違いがございます。あるいはまた肥料等について、理想計算と申しますか、かくあるべき数字というようなものを、あるいは農林省の方ではじき出しているものも若干ございまして、そういった食い違いも出て参っておるというようなわけでございます。また私どもの税務署の経費の方には、特別経費と申しまして、標準率に織り込んでいない、たとえば大農機具を使っておる地帯におきましては、その特別の償却費でございますとか、農耕牛馬費でありますとか、特別の用人費がかかるときは、そういった特別の用人費とか、そういったものは別ワクにいたしております関係で、おそらく今御指摘のような違いが出たのだろうと思いますが、極力私どもといたしましては、真実の経費の姿をつかんで、より実際のものに近い経費を算出していきたい、かように存じております。
  96. 神田大作

    ○神田(大)委員 農林省の統計調査に出ている必要経費のうち、あなた方が必要経費と見なかった経費は、一体何と何と何ですか。
  97. 金子一平

    ○金子説明員 今の御要望の数字は、ただいま手元に持って参っておりませんが、あとから御参考に……。
  98. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、少くとも農林省の調査した必要経費をどうして課税の上において経費として見ないのかという点で、どうも疑問を持つ。この問題は、あなたが資料を提出すると言うなら、あとでやりましょう。  それで、大きな問題は償却の問題です。あなた方は償却費を四百十六円に大体見ておる。四百十六円というのが、私の調査した税務署のものです。この大農機具の償却費を、七百九十八円と農林省では見ておる。それから雇い入れの費用を、あなた方は五百八十円と見ておりますが、農林省の統計調査では、九百二十五円に見ておる。同じ政府の機関でありながら、農林省の統計とあなた方が見積っておる必要経費というものは、こういうふうに違ってきている。これが二十円、三十円、あるいは五、六十円違っているなら話はわかるけれども、少くとも倍近く違っておるということは、農民は納得しない。こういう調査について、少くともあなた方は、専門家が調査したところの、しかもこういうふうにして天下に発表しておるところの統計調査部の資料を全然かまわない、税金をとるために勝手な調査をして徴税強化をしておるということについては、私は納得しない、このことについて答弁を願いたい。
  99. 金子一平

    ○金子説明員 ただいま御指摘の償却費の問題でございますが、ただいま手元に数字を持って参っておりませんので、正確なことはお答えいたしかねますが、税務署の方は、取得原価でおそらくやっておると思います。それから農林省の方は、再評価の額でやっている。そういった違いが案外現われているのではないかというふうに考えております。また用人費につきましては、年雇いのものは別に見ております。税務署の方では、標準率の外に見ております。それで、税務署の標準率で見ております用人費と申しますのは、臨時雇いの分でございます。これが入っておるわけなのでございますが、おそらくそういった点から、農林統計と私どもの方の標準率との違いが出てきておると思いますので、御指摘の点、あとでよく十分検討してみたいと思います。
  100. 神田大作

    ○神田(大)委員 一つの問題点だけは出たわけです。あなたたちは、償却費の場合に取得原価で見ておる。たとえば農機具というものは、一年、二年でもってこわれるものではない。十年も、ときによっては十五年も使う。あるいは家屋にいたしましても、十年も二十年も三十年も五十年も持つ。それを非常に貨幣価値の変った今日、十年も前に買った価格でもってこれを償却するというのでは、これはてんで帳じりが合わないのは当然です。農民が現実において、たとえば脱穀機を五千円で買わなければならない、前にはこれが五百円くらいで買えた。あなたたちは、五百円でもって償却費を見ておるのだから、たとえばこれを十年で償却すると、五十円しか償却費を見ていない。実際においては五千円しておるものとすれば、これは五百円の償却費ということになる。そういうところに大きな狂いが出る。農民はおとなしいから黙って、しようがない、税金をとられると泣き言を言っているだけにすぎないけれども、こういうようなところに課税の不公平というものが起きてきているのではなろうか、この点について御答弁を願いたい。
  101. 金子一平

    ○金子説明員 ただいまお話しの農業用の固定資産は、やはり短かいものは五年から、長いものは十年、十二年というようなことになっております。そこら辺の点につきましても、農林省の方も同じような耐用年数ではいっておると思いますが、なお食い違いの点につきましては十分検討いたしまして、円滑な運営ができますように努力いたしていきたい、かように考えます。
  102. 神田大作

    ○神田(大)委員 努力じゃなしに、いわゆる取得原価でもって今日償却費を見ておるというような、ばかなことでは困る。これは時価でもって償却をやらなければ、農機具を来年買う場合には償却費で買えない。これは、私は矛盾しておると思うのですが、そういう点についても、一つ是正してもらうようにお願いいたします。
  103. 金子一平

    ○金子説明員 所得税法上では、やはり再評価いたしましたものについては別でございますが、そうでないものは、取得原価で計算をする、こういう建前になっておりますので、御了承願います。
  104. 神田大作

    ○神田(大)委員 再評価をしろといっておりますけれども、再評価の手続というものが、まことに複雑といいますか、めんどうくさいといいますか、農民なんかはなかなかできない問題であります。これは申請を出さなければ認めていない、いわゆる再評価申請というものを出すわけです。こういうことは農民にはなかなかできないのです。これは、税務署でもって坪刈りまでやって税金をとるほどの御親切があるなら、農民の農機具の時価くらいは、今幾らするぐらいのことはわかるのですか、この時価の再評価の申請をしなくても、現実の価格でもってちゃんと見てやるべきが当然なんです。そういう再評価の申請をしないからやらぬというような、そういう不親切なやり方は僕はまずいと思う。これは、少くともほかの徴税の場合は、一々そういう再評価というものをさせて、償却費を見ておるかもわからないが、農民のように毎日々々勤労にいそしんでおる者に、そんなめんどうくさいことをいっても、とても再評価の申請なんかできっこない。そういう点において現実的に徴税すべきで、これはそういうことじゃなしに、時価でもって償却費を出すようにしてもらいたい。
  105. 金子一平

    ○金子説明員 ただいまの点は、どうも法律的になかなかむずかしいと思います。それから実行上も、私どもの方で必ずしもそこまで十分手が行き届くかどうか問題であろうと思いますが、経費の見方等につきましては、漸次私どもは実情に即するように改善をいたして参っておりますし、なお今後とも、そういった点につきまして一段の努力をしていきたい、かように考えておりますので、御了承願います。
  106. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、きょうはここで、長官はおりませんが、政務次官がおるから政務次官に聞きたい。この問題は、全国の農民が非常に問題にしておることですから、あなたも農政通ですから、こういう問題はよく聞いておるだろうと思まいすので、この問題について、あなたから言明をお願いします。われわれはかま一丁、噴霧器一台、一々再評価申請を出すというようなことはなかなかできないのです。こういう問題については、今の時価というものがわかっておるのですから、税務署は、再評価の現在の時価というものも基準を出して——その土地の生活費の基準を出したり、あるいは収量の基準を出したりしておるのだから、この再評価の基準を出して、不当な不利益をこうむるような農民の所得税に対しまして善処してもらいたい、こういう意味合いにおきまして、政務次官としてこの問題をどうお考えになるか、あなたも農林関係に長くおったのですから、この問題はとくとおわかりだと思いますから、御言明を願いたいと思います。
  107. 足立篤郎

    足立政府委員 神田委員のお尋ねでございますが、私も農村に住み、農林関係の仕事をやって参りました人間で、おっしゃる御趣意はよくわかるのでございます。ただ大蔵委員の皆様方すでに御承知の通り、現在の法律の建前が、やはり今お尋ねのような場合には、資産再評価の手続を経まして、再評価に関する若干の税も支払って、これを税法上公認されまして、初めて償却につきましても特例を認められるという建前……。(「それは事務次官の答弁だ」と呼び、その他発言する者あり)ちょっと聞いて下さい。そういう建前になっておりますことは、大蔵委員の皆様方が御承知の通でございます。そこで、今お尋ねの点につきましては、比較的手数の長いもの、十年以上のものでありますれば、農業用の固定資産の耐用年数表にございますが、いずれも価格も高い、しっかりとしたものでございますので、こういうものにつきましては、やはり農業用であるからといって特別扱いをいたしまして、税法の建前をここでくずしてしまうということになりますと、他に及ぼす結果も考えられるのであります。従って、こういう問題につきましては、私は思いつきでございますが、農業協同組合等があっせんをし、資産再評価の手続等をとりまして、簡便の処置で——これは個人々々の農家にやれといいましても、とうていできるものではないと思います。従って、こういうふうな方法で資産再評価の手続をされるというようなことが、最も税法の建前を尊重しながら、実情に合う方法ではないかというふうに私は感じておるわけであります。  なお御指摘のありました耐用年数の期間の短かい、こまかなもの等の扱いにつきましては、なるほど私どもも、これは再考すべき問題ではないかというふうに考えておるわけでございまして、今お尋ねの点につきましては、全般として十分研究をし、将来善処をするように努力をいたしたいと考えております。
  108. 神田大作

    ○神田(大)委員 再評価の問題については、必要経費というものは、私が先ほど質疑いたしました通り、四百十六円です。農林省では七百九十八円というような償却費で、これだけ違うのです。この四百十六円というような償却費の基準を出したのは、大蔵省のあなたたちです。あなたたちがこれを出した、農民が出したのではない。これだけとにかく低いということが十分わかっていながら——農家の必要経費というものが、償却費が低いのを承知しながらこういう基準を出した。これはあなたたちに責任があるのです。これをわかっていながら、わからないふりをして農民に過重な所得税をかけていたということになる。だから、政務次官は善処するといいますが、これは法律にあるからどうにもならぬといいますけれども、これは徴税手続においても、事務においても、あなたたちが農家に対して非常に不親切であり、しかもこういう明らかに違っておるものを公然と認めて、しかもあなたたちが基準として出しておるところに私は問題があると思う。だから、政務次官は善処するというのだから、この問題についてもっとはっきりした答弁をお願いします。農民の立場に立ってどうすべきかということについて……。
  109. 足立篤郎

    足立政府委員 私は、本日ここで神田委員議論をする気はありませんが、私が資産再評価の建前というものをくずしてはならないと申し上げたのは、たとえばこの表にもあります通り、電動機のごときもの、これは一般の中小企業はみな使っておるのです。同じものを、農家にあるがゆえに、何らの手続を経ずに再評価を当然認めろといわれても、それは無理ではないですかということを申し上げたのです。従って、それには何か簡便な方法で、農協あたりのあっせんで、もちろん申告個人々々がしますけれども、一々農家がそういう手続等も煩瑣でできませんし、法律もわからない農家が多いわけですから、そういうことを親切に言って、処置したらどうか、なおこまかな問題については、おっしゃる御趣旨はよくわかりますから、今後十分研究いたしまして善処いたしたいということをお答え申し上げたわけであります。
  110. 神田大作

    ○神田(大)委員 この問題については、農家の自主的な申告をするといったところで、農家の自主的申告というものは、なかなか容易なことではないのです。こういう点については、今後大蔵省において、あなたたちが御指示を出しているのですから、あなたたちは半分しか見ていない。八百円からの償却費がかかるにかかわらず、四百円の償却費しか見ていないのです。基準を皆さんが出している、農家が出しているのではない、大蔵省が出している。この基準、ここに私は問題があると思う。こういうことを知らぬふりをしていたのでは、課税の不公平になるのです。これを、だから適正な償却をするために、どういう方法をとったらいいかということは、あなたたちはやはり税金をとるばかりが能ではありません。適正な課税をして、農家が税金に対して喜んで納められるような指導をするのが徴税官吏の一つの務めなのです。こういう点において私は善処してもらいたい。  それから次にいま一点だけお尋ねしますが、神武以来の景気、仁徳以来の減税というようなことはいわれていますけれども、この神武以来の景気ということについては、農村において非常な迷惑をこうむっておる。ある税務署の税務吏員が農村のあるところに行って、ことしは神武以来景気がいいのだから、お前のところの税金は去年よりも安くては承知できない、去年よりも景気がいいわけだといって、去年よりも低く申告をしましたものは認めない。何回も来て、去年までならがまんするけれども、神武以来の景気なんだから、とにかく去年より景気がいいわけだといって、再三にわたって何回も調査に行って、納得しないという事実がある。これは、まことに都会の大会社が神武以来の景気でもって喜んでおる反面、農村地帯における神武景気に対する被害の顕著な現われだと思う。こういう点について、あなたたちはどういう考えを持っておるか、また税務署に対しまして、あなたたちは、神武以来の景気で去年よりも景気がいいのだから、税金をよけいとれ、割当も、農村地帯の税務署によけい水増し割当をして、税金をうんととらせるような指導をしているのかどうか、私はそうだろうと思うのでありますが、そういう神武景気というものは、農村に大きな被害を及ぼしているという点についての、あなた方の見解と、あなたたちの農村地帯の税務署に対する割当という問題について御答弁願います。
  111. 金子一平

    ○金子説明員 お答え申し上げます。最近水増し課税とか割当課税というようなことは、実際にはもうやっていないはずでございます。私どもの方の指導といたしましても、絶対にそういうことはやってはいかぬと言っております。結局、所得のあるところに、その実態に即して所得をつかまえろ、こう言っているので、かりに今年は神武景気と申しましても、所得のふえる人もあるし減る人も出るのは当然でございまして、その個々の実態に即して個別的に、具体的に課税していくのか税務行政の一番いいやり方だと思って、さように指導しているわけでございますが、御指摘のような、はなはだ説明の足りない調査員も間々おろうかと思いますが、今後こういった点については、十分戒めていきたいというふうに考えております。  それから先ほど償却の点で、ちょっとまだ十分御説明申し上げなかった点があると思うのでありますが、大農具の償却は別に見ております。これは標準率の中に入っておりませんので、重ねて御説明申し上げておきたいと思うのであります。
  112. 神田大作

    ○神田(大)委員 今の御答弁によりますと、税務署に割当がしてないというようなお話でございますが、この問題は、私は割当というほどの強い意味ではなくとも少くともお前の税務署では、大体ことしは所得税は幾ら徴収しろというような、大体のワクというようなものをあなたたちは示しておると思う。そういうことはないと言ったところで、あるにきまっておる。(笑声)ないということならば、資料を持ってきて……。(発言する者多し)それで、農村は去年よりもよけいにとるのだというような税務官吏の、そういう心理的な問題について、農村地帯の景気が果していいか悪いか、あるいは都市と農村とのことしの景気のいい悪いというようなことを十分勘案して、少くとも税務署の人たちが、徴税の強化をされるようなことのないように、十分注意をしてもらいたい。今年はこの神武以来の景気だ、仁徳以来の減税だというのに対しまして、徴税の技術といいますか、徴税の方法といいますか、そういう方法については、私はたくさん疑義を持っておりますから、質問を後刻に留保いたしまして、本日は一応終ることにいたします。
  113. 山本幸一

    山本委員長 他に御質疑はございませんか。なければ、三法律案に対する質疑はこれをもって終了することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって三法律案に対する質疑は終局いたしました。  この際御報告いたします。法人税法の一部を改正する法律案に対し、小山長規君外三十九名提出の修正案が委員長の手元まで提出されております。この際、提出者より趣旨の説明を聴取することにいたします。小山長規君。
  115. 小山長規

    ○小山(長)委員 法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、お手元に配付してございますから、これをごらん願いたいのでありますが第一条に一項を加える改正規定中の「かつ、収益事業」というものの下にカッコをしまして、「(継続して事業場を設けてなすものに限る。以下同じ。)」を加えるわけであります。  理由といたしましては、しばしば委員会において問題がありましたように、この収益事業について、一時の収益事業も継続的なものもさすものかというような意味の疑義がありましたので、その疑義を明確にするためにいたしたのであります。御了承をお願いいたします。
  116. 山本幸一

    山本委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終了いたしました。  これより三法律案及び法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案を一括して討論に付します。有馬輝武君。
  117. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法案に対しまして、きわめて簡単に骨子だけを述べまして、反対の討論をいたさんとするものであります。  この三法律案に対する反対理由を明らかにする際、まず申し述べなければならないことは、政府は一千億減税を呼号いたしておりまするけれども、租税体系を論ずるに当って、その前提となる国民所得の把握に対する政府考え方について、一言せざるを得ないのであります。かつて昭和三十年度の予算補正が行われます際に、百億前後の修正要求に対しまして、自然増収がさほど見込まれないというようなことで、反対されたことは記憶に新しいのでありまするけれども、その後この大蔵省考え方と大きく食い違いができまして、千億の増収があったことは明らかであります。このような見込み違いが本年度再びないという断言はできないのであります。政府は、昭和三十二年度の租税の自然増収を二千億と見ておりまするが、これは昨年十一月の所得の増加を基礎とするものであって、その後も続いております順調な経済規模の拡大、国民所得の増加を考慮いたしますならば、せんだっても公述人の高木教授が言われておりましたけれども、約二千五百億をこえるのではないかということさえいわれておるのであります。政府は、その出発点において、すでにこのような大きな誤算を犯しておるのであります。  さらに所得税法法人税法の内容を検討いたしますと、直接税の大幅減税をうたい、さらに負担の公平、合理化をうたっておりまするが、特に低額所得者の負担の軽減をはかったということを言あげしておるのでありまするけれども、実はその内容を検討いたしますと、これは羊頭狗肉もはなはだしいものといわざるを得ないのであります。  まず第一に、この所得税法案は、一千万人の納税者のうち、わずか六%の五十万円以上の高額所得者に重点を置いた減税である。法人税法もまた所得五十万から百万円までの所得の企業者に対する減税であって、断じて低額のものに対する減税ではないのであります。年収三十六万円の所得のものが年間八千五百円の減税であるのに対して、五百万円のものは八十二万円の減税であります。これを一万円当りの減税率にしてみますと、前者は一万円につき二百三十七円、後者は一万円につき千六百四十円、同じ一万円でも、高額所得者は七倍の減税の恩典に浴しているような実態であります。従って運賃値上げ、予想されるところの消費者米価の値上げ等、消費物価が一%以上も上昇すると、低額所得者に対する減税の効果というものは完全に失われてしまうのであります。納税してない低所得者六千万人は、減税に無縁であるばかりでなく、この恩典がなくして、物価上昇の被害だけをこうむるような状況に追い込まれて参るのであります。  第二に、人格なき社団財団に対する税金攻勢でありますが、これは、ただいま小山委員から修正案がありましたような形で、ようやくいささか救われるようになって参りましたけれども、やはりこの点についても、多くの問題点を残しておるのであります。  第三に、資産所得の世帯合算課税の制度を創設しようとしておることであります。名実ともに家族のものの資産であっても、その世帯主のものであるというような形に税法ではきめてしまいまして、これは所得税法第三条の二、実質課税原則を無視するもはなはだしいものといわざるを得ないのであります。  第四に、重要物産の免税制度の不徹底な改正であります。この免税制度によりまして、たとえば昭和三十年度の二回の決算で、資本金一億以上の大法人二百五十社は、合計百二十二億の所得が免税されておるのであります。そうしてこの改正案では、条件を設けて、総額六十億の免税額を、初年度はわずか十五億ばかり削減しようとするものでありますけれども、このような大資本に奉仕し、低所得層に対してそのしわよせを行う制度については、早急にその措置が行われなければならないのは当然であります。  次に、租税特別措置法案について申し上げます。政府は、わが国経済の最近の目ざましい発展に照らして、この特別措置に対する全面的な再検討の要を認めて、しかも臨時税制調査会も、その廃止もしくは根本的な是正を希望しているにもかかわらず、貯蓄の奨励、輸出の振興、設備の近代化に名をかりまして、利子所得の免税、配当所得に対する源泉徴収税率の軽減、これらの措置の二年間の延長、特別償却制度の範囲の拡大はもとより、価格変動準備金、交際費課税制度の微温的な改正など、大資本優遇措置の温存と恒久化をはかった今回の措置は、断じてわれわれの容認できないところであります。  今少しく具体的に申し上げますならば、まず第一に、この改廃による税の増徴が過小に過ぎるということであります。すなわち三十二年度においてわずか二百億円、これを平年度化いたしましても三百五十億にすぎないのであります。しかもその中で最も多く斧鉞を加えられたのは、農家、商店などにとって七十九億円の増税を意味する概算所得控除の廃止であったり、協同組合関係免税措置に対するきびしい制約であって、ただ大衆に対してだけは念入りな措置が講ぜられておる、こう断ぜざるを得ないのであります。  第二に、免税見込み総額の算定の基礎が過小に過ぎることであります。政府は、三十二年度見込み免税総額を一千五十一億円に見ておりますけれども、少くとも実体は千五百億をこえておるものと見なければなりません。  第三に、租税制度上例外的な時限立法たるべきものとして、当初は三年間に限る、こういう趣旨のもとに出発したこの特別措置が、さらに二ヵ年延長され、しかも改廃規模が予想外に小範囲にとどまって不徹底なものであり、この偏向減税の措置が恒久的なものといたしまして、将来長く残される端緒を本年度の措置によって作ったと言っても過言ではないのであります。  第四に、租税負担の公平をはかるための整理合理化が、この措置によって骨抜きにされたことであります。一方に勤労者は、同じ標準家族で年収二十七万円をこえると課税されるのに、配当所得者は、百四十九万円の不労所得があっても無税だというような大きな矛盾を露呈いたしております。  第五に、重要物産に対する免税は、今回の改廃で一応石炭や金属の一部が除かれ、施設関係でも一定の限度が規定されたのでありますけれども、一方では、特別償却の拡充、または全額損金算入というような税法改正によりまして、むしろ今までより大企業を優遇する措置が助長されておるのであります。重要物産免税制度の改正によりまして、十四億円の増徴を予定しながら、これにかわる特別償却の拡充で十五億円の減収を見込んでおるのであります。  以上今回の改正の実態は、依然として大企業、大法人を利益し、かつ利子生活者、配当所得者等の不労所得者の擁護をもって貫かれておるのであります。たとい国民が一時的に一千億の減税ということに幻惑されたといたしましても、このような実態が把握されましたときに、その欺瞞性について激しい憤りを爆発させるであろうことは、あまりにも明らかであります。  最後に当りまして、政府はわが党の主張をいれて、この低額の所得者に対して減税の恩恵がくまなく行き渡るような措置を講じられんことを強く要望いたしまして、反対討論といたします。(拍手)
  118. 山本幸一

    山本委員長 以上をもちまして、討論は終結をいたしました。  これより採決に入ります。まず法人税法の一部を改正する法律案について採決をいたします。  初めに、本法律案に対する小山長規君外三十九名提出の修正案について採決をいたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  119. 山本幸一

    山本委員長 起立総員。よって本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正案の修正部分を除いた原案について採決をいたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  120. 山本幸一

    山本委員長 起立多数。よって本法律案は修正議決せられました。  次に、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法案の両法律案について採決をいたします。両法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  121. 山本幸一

    山本委員長 起立多数。よって両法律案は原案の通り可決いたしました。  この際お諮りを申し上げます。ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、先例によって委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  本日はこの程度にいたしまして、明日は定刻より開会いたします。散会いたします。    午後五時三十三分散会