○平岡委員 私は、主として
租税特別措置法案につきましてお伺いいたしたいと思います。本
会議でも
質問申し上げ、御回答を賜わったのですが、的が相当はずれておったと思いますので、この機会にかいつまみまして、要点だけお伺いしたいと思います。
まず御
質問申し上げる前に、私は現在の租税自体が非常に重い、これが軽ければ租税
特別措置の余地がある、こういう点を少し掘り下げて
考えていただきたいと思うのであります。たとえばコップの中に水を入れまして、それに塩を加えていきます。ある
程度の塩は、飽和点に達するまでは溶けますが、そのあとは沈澱します。それと同様に、
税金も飽和点以上だと、溶解され切れずに沈澱を生ずると思う。これが労働界においてはストライキとなって現われ、なおまた
中小企業に発しては、自衛上の脱税となって現われます。ストライキと脱税の現象面だけをとらえてこれを論難したり、あるいはお知らせをぶっかけたりすることでは、問題の解決にならぬ、こういう認識に私
どもは立っておるのであります。そこで、この納品を余さず溶かすためには、コップの中の水を増すか、あるいは塩の分量を減らすか、この二つに尽きると思うのです。まず水を増す方の
課税は、大蔵
委員会の課題ではないようです。要するに不当に飽和点以上にいっておるところの塩の分量を減らすということ、しかもその塩の絶対量がどうしてもどこかのコップに入れなければならぬというのなら、飽和点に達してないところのコップに注ぎ込む、こういうことが私
どもの
委員会に課せられた重大な任務であろう、かように
考えます。では、現在の租
税負担がどれほど重いかということの目安としまして、十五年に基準をとるか、あるいはシャウプのように
昭和九、十、十一の三ヵ年の平均をとるか、いろいろ議論がありましょうが、私は
昭和十五年は準
戦時体制として、もう大衆収奪が始まった、こういうふうに
考えておりますので、やはりシャウプがとった
昭和十年を一応基準にしまして、現在日本の
国民の一人当りの
税負担がどんな工合になっておるかにつきまして、一応数字を示してみたいのであります。
昭和十年の国税・
地方税を含めての
国民一人当りの租
税負担額は、当時の金で二十七円です。従いまして、現在の金の値打で八千百円になると思うのです。ところが三十二年度の見込みにおきましては、一万七千百八十七円が
国民一人当りの租
税負担になることを、あなたの方の、大蔵省の資料が示しております。まさに
税負担は二倍以上に達しております。ここに飽和点を突破する結晶の問題が生じておる、こういうふうに私は思うのです。この
昭和十年度との比較論にもし異論があるとしましても、実はこの前の予算
委員会に井藤半弥教授が指摘している数字がございます。これはいわゆるエンゲル指数が正しいとか、そのことよりなお一そう正確を期するためには、次の方法があるということを指摘しております。それはどういうのかといいますと、分子を租税の額とする、分母の方は
国民所得から食費を引く、これは食わなければ死んでしまうのですから、食費の全体を
国民所得から引き去って、その額を分母として租税の額を割るのです。これで見ますと、
昭和十年におきまして一九%のものが、三十二年の見込みにおいて三四%になります。ところが、租税の総額を例の予算における
国民所得で割りますと、それは十四対十九なのです。ですから、前者の数字でいきますと八割増でありますが、後者では三割六分、ですから井藤教授の指摘する正しいとされる比較からは、十九から三十四に上りました八割増が正しい、いずれにしましても、大ざっぱに言いまして、やはり日本の戦前の平和時における水準から見まして、現在の
税金が倍になっておる、こういうふうに言えると思うのです。これは非常に大ざっぱな議論ですが、ですから、そうしたぎりぎりの重課を課せられておるときに、租税
特別措置の特定層に対する免税というものがどういう意味を持つかということに対しまして、われわれは深い関心を抱かざるを得ないのです。これはもちろん
経済政策とか、あるいは産業政策が租税の
制度によってカバーされる、こういうことの必要も私は一がいに否定はいたしません。しかし、日本の
経済がいわゆる神武景気を謳歌するまでに成長してきたのですから、この三十二年の
税制改正におきましては、せめてこの租税
特別措置の問題を根本的に
改正してほしかった、これは、単に私
どもばかりでなしに、
国民の念願であったと思うのです。ところがふたをあけてみると、これは看板とは大違いだ、こういうことになろうと思うのです。私は非常にこれを残念に
考えております。
そこで、まず具体的に
質問に入りますが、現在の租税
特別措置法による三十二年度の免税総額は、千五十一億円と出されております。これには私自身異論がありますが、一応
政府の出された
通り、千五十一億円といたします。これは
法人関係のものと個人
関係の二つのカテゴリーに分れると思いますが、ひっくるめて千五十一億、これが特定層にどのように恩典となって現われておるか、このことについて私は指摘申し上げたいのです。現在
法人の数は四十万ございまして、一億円以上のものが、三十年現在で千二百四十一社、つまり〇・三%です。ところでこの〇・三%の小さなグループが、千五十一億のうちの六〇%以上を壟断しております。こういう事態は、社会人心の上に悪影響を与える。これは、あまり知らぬから人は文句を言わないかもしれないけれ
ども、とんでもない不公平であります。もともと
特別措置ですから、不公平にできておるかもしれませんが、これは異常でございます。それから個人の
関係の最もティピカルな例は、配当
所得の
特例であります。配当
所得は、
法人経理の
段階で一〇%の源泉
課税をされているという
理由をもって、
課税総
所得を計算する際に三〇%の税額
控除を現在までなしてきたために、配当だけで食っている人は、
現行法で百二十二万円までが非
課税だ。それで世の指弾を浴びてきたのです。今度その税額
控除を三〇%から二〇%に引き下げたので、だいぶ進歩したなと思ってよく検討してみますと、あにはからんや、これは
所得税における高額
所得層に対する累進
税率の鈍化によることですが、
結論的には百四十九万円までがぬけぬけと非
課税となっておるのです。片や勤労所用得者は、今回の
改正税法をもってしても、例の標準家族において二十七万円を出れば
課税されます。不労
所得の配当
所得者は、百四十九万円まではびた一文も
税金がかからぬということです。税
制度におけるこの極端な不公平に対して、
大蔵大臣はどう御
説明をなさろうとしますか。まずその一点をお伺いします。