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1957-03-08 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月八日(金曜日)    午前十時五十五分開義  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       淺香 忠雄君    遠藤 三郎君       大平 正芳君    奥村又十郎君       加藤 高藏君    小西 寅松君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    坊  秀男君       有馬 輝武君    井上 良二君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       横山 利秋君    石野 久男君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   渡邊嘉久造君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 三月六日  委員久野忠治君及び松岡松平辞任につき、そ  の補欠として中村寅太君及び川町芳滿君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員川野芳滿君及び中村寅太辞任につき、そ  の補欠として松岡松平君及び久野忠治君が議長  の指名委員に選任された。 同月七日  委員田原春次辞任につき、その補欠として横  路節雄君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月七日  租税特別措置法案内閣提出第四八号)  揮発油税法案内閣提出第七二号)  公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する  法律案内閣提出第九三号) 同月六日  資産評価税免除に関する請願外一件(阿左  美廣治紹介)(第一八八一号)  引揚者の在外財産補償に関する請願下平正一  君紹介)(第一八八三号)  生糸課税反対に関する請願下平正一紹介)  (第一八八四号)  在外資産補償問題解決促進に関する請願堤康  次郎君紹介)(第一八八五号)  鹿屋市に国民金融公庫支所設置に関する請願  (二階堂進紹介)(第一八八六号)  所得税基礎控除額引上げ等に関する請願(横  山利秋紹介)(第一八八七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  とん税法案内閣提出第一五号)  特別とん税法案内閣提出第一六号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一九号)  トランプ類税法案内閣提出第四五号)  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  関税定率法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第五七号)  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び  脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの  間の条約の実施に伴う所得税法特例等に関す  る法律案内閣提出第六一号)  中小企業資産評価特例に関する法律案  (内閣提出第七六号)  租税特別措置法案内閣提出第四八号)  揮発油税法案内閣提出第七二号)  地方道路税法の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号)  公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する  法律案内閣提出第九三号)     ―――――――――――――
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。  昨七日当委員会審査を付託されました内閣提出にかかる租税特別措置法案揮発油税法案地方道路税法の一部を改正する法律案及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の四法律案一括議題として審査に入ります。まず政府側より順次提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官足立篤郎君。
  3. 足立篤郎

    足立政府委員 ただいま議題となりました租税特別措置法案外法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  まず租税特別措置法案について申し上げます。  現在の税制では、貯蓄奨励内部留保促進輸出奨励設備近代化促進等各種政策的配慮に基いて多くの特例が設けられているのでありますが、最近におけるわが国経済発展には目ざましいものがあり、これらの制度が創設された当事とはかなり情勢が変化しているのでありまして、最近の経済情勢に照らして、これらの特別措置を全面的に再検討する必要があると認められるのであります。現在、これら特別措置は、主要なもののみで約三十項目に及びこれによる租税減収額は毎年度一千億円をこえると見込まれるのでありまして、一般納税者が重い租税負担していることとも考え合せて、各措置の緩急の度合いに応じて、この際できるだけこれを整理縮小する方針をとると同時に、貯蓄奨励輸出促進設備近代化等、今日重要な経済施策につきましては、必要に応じてその内容の充実をはかることといたしました。  法案内容について申し上げますと、第一に、貯蓄奨励のために、今後二年間長期預貯金等利子所得非課税、その他の利子所得課税軽減及び配当所得に対する源泉徴収税率軽減措置をとることといたしております。すなわち、利子所得非課税現行措置は、本年三月末をもってその適用期限が切れることとなっているのでありますが、昭和三十四年三月三十一日までに預け入れられた一年以上の長期預貯金等利子所得につきましては、同日までに支払われるもの及び同日後でも預け入れの後三年以内に支払われるものには、所得税を課さないこととし、同一までに支払われるその他の預貯金等利子所得についても、百分の十の税率により、他の所得と分離して課税することとしております。また、配当所得に対する源泉徴収税率も、今後二年間現行通り百分の十の軽減税率を適用することとしているのでありまして、別途御審議を願っております所得税法の一部を改正する法律案における生命保険料控除限度額の引き上げと相待って、今後貯蓄が順調に伸長し、安定した経済発展に資することが期待されるのであります。  第二に、輸出促進するために、現行輸出所得特別控除制度につきまして、その適用期限昭和三十四年末まで二年間延長し、プラントの範囲を拡大することといたしております。  第三に、設備合理化近代化促進するため、現在の特別償却制度を充実合理化し、特に鉱業及び法人の営む造林業につきましては、その特殊性に応じた償却を認めることといたしております。  一方、増資新株配当に対する法人税免除増資登記登録税税率軽減概算所得控除配当控除額の五%割増しの制度等は、冒頭に申し上げました趣旨に従ってこれを廃止することといたしております。  また、価格変動準備金につきましては、その毎期の繰入限度額を二割引き下げるとともに、欠損を生じてまで積み立てをすることができないことといたしておりますが、制度改正の際新限度額をこえる既往の積立額については、一時に益金として課税せず、漸次これをとりくずして課税することといたしております。いわゆる交際費課税につきましては、損金に算入される限度をおおむね二割程度引き下げて、なお二年間これを存続することといたしております。  以上のほか、航空機乗客に対する通行税軽減措置を一年間延長し、協同組合課税を適正化し、外航船等の旅客の飲用に供する酒類に対しては酒税を免除する等、制度整備合理化を行うほか、法文の全体をわかりやすく書き改めることとしているのであります。  以上申し上げました措置による増減収は、所得税法法人税法等規定されている租税上の各種特別措置改正による分と合せて、初年度には増収約二百三十五億円、減収約三十五億円、差引増収約二百億円となり、平年度には増収約四百億円、減収約五十一億円、差引増収約三百五十五億円と見込まれるのであります。  次に、揮発油税法案及び地方道路税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  まず、揮発油税法案について御説明申し上げます。  この法案は、最近における揮発油製造及び取引状況並びに道路整備財源確保の必要に顧み、揮発油に対する揮発油税税率を引き上げるとともに、実情に即するよう諸規定整備をはかるため、揮発油税法の全部を改正しようとするものであります。  以下改正内容につきましてその大要を申し上げます。  まず第一に、税率を一キロリットルにつき現行の一万一千円から四千八百円引き上げて一万五千八百円とすることといたしました。これにより、約百二十八億円の増収となる見込みであります。  第二に、現行揮発油税法では、製造場から引き取りの際課税を受け、そのつど納税する制度となっておりますが、これを他の間接税と同様に、製造場から移出した月の翌月末日に一括納税する制度に改めて手続簡素化をはかることといたしました。  第三に、この移出課税制度への切りかえに伴いまして、製造場から移出したときの徴収猶予は納期後二ヵ月以内とし、また未納税移出課税済み揮発油製造場への戻し入れ等取扱いにつきまして、他の間接税に準じて所要規定を設けることとしております。  第四に、税率引上げに伴いまして、改正法施行日である昭和三十二年四月一日現在に、製造場及び保税地域以外の場所で、合計五キロリットル以上の揮発油を所持する製造者または販売業者に対して、一キロリットルにつき四千八百円の税率手持品課税を行うこととしております。  第五に、揮発油税道路整備財源に充当されている現状にかんがみ、新たに工業川の揮発油のうち石油化学工業の原料に用いられる揮発油、及びゴムの溶剤等に用いられる揮発油についても、航空機用揮発油と同様に一定の手続のもとに免税措置を講ずることとし、このため揮発油税法の附則で租税特別措置法の一部を改正することといたしております。  次に、地方道路税法の一部を改正する法律案について御説明いたします。  この法律案は、揮発油税法改正に対応して、揮発油に対する地方道路税税率を引き上げるとともに、揮発油税法全文改正に伴う諸規定整備をはかるため、地方道路税法の一部を改正しようとするものであります。  以下改正内容につきまして、その大要を申し上げます。  まず第一に、税率を一キロリットルにつき現行の二千円から一千七百円引き上げ三千七百円とすることといたしました。これにより、約四十五億円の増収が見込まれております。  第二に、揮発油税法における移出課税制度採用等改正に伴い、所要改正を行うとともに、手持品課税については、揮発油税にあわせて、一キロリットルにつき一千七百円の税率地方道路税を徴収することとし、また、石油化学工業用等の、工業揮発油につきましても、揮発油税免税措置にあわせて、地方道路税を免税することといたしております。  最後に、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  政府は、前国会健康保険法等の一部を改正する法律案提案し、引き続き今国会で御審議を願っているのでありますが、これに伴いまして、公共企業体職員等共済組合法につきましても健康保険法と同様の改正を行い、あわせて、長期給付に関する規定整備することといたしまして、この法律案提案いたしました次第であります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、今回の健康保険法改正におきまして、療養の給付についての一部負担制度改正されることとなっておりますので、公共企業体共済組合につきましてもこれと同様に一部負担制度改正いたそうとするものであります。ただし、これによって余裕財源が生じた場合は組合管掌健康保険に準じて、一部負担金の払い戻しその他の措置を行うことができることといたしております。  このほか、保険医療機関に関する規定不正受給者等に関する規定等につきましても、それぞれ健康保険法改正に準じて所要改正をいたすことといたしております。  第二に、公共企業体職員等共済組合法におきましては、長期給付について、従来の恩給国家公務員共済組合法による長期給付とを原則的に統合して新年金制度を創設いたしましたが、その経過措置に関する現行法規定のうちに、恩給法における取扱いとはやや異なる取扱いをいたしておるものがありましたので、恩給法との関係等を考慮してこの際修正を加えることといたしました。さらに、従来の恩給のうち増加恩給につきましては、これを受ける権利を有する者の恩給公務員期間は、組合員期間に算入しないこととしておりますが、この措置により受給者が不利となる場合もありますので、本人が希望する場合におきましては、増加恩給を受ける権利を消滅させ、その恩給公務員期間組合員期間に算入して、受給者の利益をはかることといたしました。  なお、その他長期給付に関する規定等について、現行法施行後における運営の状況等にかんがみ、所要改正を行うことといたしました。  以上租税特別措置法案外法律案につきまして、その提案理由を申し上げました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成を賜わらんことをお願いいたす次第でございます。
  4. 山本幸一

    山本委員長 これにて提案理由説明は終りました。  これら四法律案のうち、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案に対する質疑は、後日に譲ることにいたしまして、所得税法の一部を改正する法律案税関係法律案を追加して一括議題とし、質疑を続行することにいたします。
  5. 神田大作

    神田(大)委員 議事進行について。大蔵委員会で、特に重要な税三法が上程されておるときに、与党りょうりょうたる出席のもとにこの重要法案審議するというようなことは、はなはだもって遺憾であるから、この際与党の反省を求めてから議事を進めてもらいたい。
  6. 山本幸一

    山本委員長 委員長から申し上げますが、ただいまの神田君の御発言はごもっともだと思います。そこで、ぜひ一つ与党諸君にも御協力願うようにし、質疑は、理事会の打ち合せがございますので続行するようにいたします。御了承願います。
  7. 春日一幸

    春日委員 今神田君の言った通り、今予算委員会においてとかくの問題があって、こういう委員会における審議のあり方についても、いろいろ党の要求等があるのです。けれども、税法三案が、国民生活に直結する重要議案であるとして、われわれは与党理事諸君の懇請をいれ、さらに政府等要望等も尊重して、ごらんなさい、社会党は全部出てきている。ところが与党はどうですか。二十五人の委員のうちで、来ておられるのは五分の一にも満たない。こういうようなことで、一体こういう重要議案審議ができるかどうか。ですから、今神田君が動議を提出いたしましたけれども、このことは、ただ単なる委員長からの注意の喚起だけで済ますべきものではないと思う。この際、本日はこれをもって散会されるか、あるいは急遽委員を動員されるか、何らかの措置を講じていただくのでなければ審議を続行することはできないと思います。委員長においてさらに再考の上、善処されんことを要望いたします。
  8. 山本幸一

    山本委員長 神田君の御発言春日君の御発言はごもっともなんで、そこではなはだ恐縮ですが、与党の方から漸次御出席を御協力いただくようにいたしまして、先ほどの申し合せ通り続行いたしたいと思います。  それでは、質疑通告順にお願いいたします。有馬輝武君。
  9. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私はせんだっての委員会におきまして、会社概況報告書様式の問題につきまして、国税庁が計画しておるところの報告書内容につきまして大臣の見解をお伺いいたしたのでありまするが、その際の答弁によりますると、質問検査権に基いて強制するものではなくして、任意に基くものである、また志場課長が言明したような罰則は適用する考えはない、 さらに毎月行わせるというようなこともないというような諸点について言明があったのであります。そこで現在国税庁長官として考えておられるその様式概要について、この際お伺いいたしておきたいと存じます。
  10. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 最初の概況説明君につきましては、現在私の方で最後の検討を加えております。考え方といたしましては、先日大臣が御答弁申し上げましたように、質問検査権に基いて云々ということはわれわれの方としては考えておりません。従いまして、概況説明書を御提出願いますのは、われわれの方としましては、納税者方々にやはり調査に御協力願いたいという点に重点があるわけでございまして、納税者方々の方で、どうもちょっとこれはできないという意味で御提出がございませんでも、質問に応じあるいは検査に応じなかったという意味において罰則を適用するというようなことは毛頭考えておりません。その点は大臣がお答え申し上げた通りであります。  現在われわれの方で検討しております点につきまして御質問がございましたので、お答えいたしますと、現在におきましても、概況説明書といったようなものは、実は納税者の御協力を得まして御提出を願っておりますが、今度その概況説明書形式を変えていこうというのが、今度の概況報告書の主たる問題であります。それで、従来の概況説明書に比べまして多少内容が変り、書く欄もふえる面もございますので、全部の法人につきましてこれを御提出願うというのは、ちょっと無理な場合も多いのじゃないだろうかというふうなことが懸念されますので、とりあえず一応われわれの方といたしましては、取引高が七百万円以上の方々については、今度の新しい概況説明書において変えた形式で御報告をお願いしたらどうかというふうに考えておりまして、大体税務署所管法人の半分ちょっとくらいが該当になるんじゃないかというふうに思っております。どういうことかという点につきましては、一応様式がございますが、まず事業内容について、たとえばどういう業種を営んでおるか、あるいは主として取り扱っておる商品はどういう商品であるか、それから仕入れの場合におきまして、主としてどういう仕入れの方法をとっておるか、たとえば問屋から買っておるかとか、あるいは現金買いしておるかとかいうことについてまず一応お聞きしたい。それから経営規模の問題でございますが、資本金が幾ら、これは大体わかっておるのですが、事業場として物品販売業でありますれば、どの程度の売場があるか、従業員の数はどの程度であるか、それからどんな施設を持っておるか、あるいは役員の方はどんな方であるかといったような点、それから帳簿につきまして、備えつけておる帳簿は一体どういう帳簿を備えつけていらっしゃるかという点、これらの帳簿の点につきましても、一々お書き願うのはめんどうなものですから、一応羅列しておきまして、いわゆるまるチョンでやる。それからその期の営業成績概況という点も一応書いていただきたい。それから売り上げ、仕入れ商品管理状況を書いていただきたい。それから現金、預金の管理方式はどんなことになっておるかという点、市中の資金の状況、月別の入金、出金、在庫、営業費そんなような関係を書いていただきたい。それから経営分析比率と申しますと非常にやかましくなりますが、いろんな科目の顕著な増減関係、その理由がどうであるかという点を書いていただきたい。項目はかなりございますが、われわれの考え方といたしましては、納税者の方で、その幾つかの項目につきまして必ずしも全部埋め切れない場合におきましては、埋め切れないものは埋め切れないままで御提出願ってもけっこうであります。われわれの方としましては、この間もちょっと申し上げたのではないかと思いますが、いずれ調査の段階におきましては、いろいろ御質問申し上げる事項でございますから、できればあらかじめ書いていただきたいのですが、ちょっとこれはめんどうでできない、あるいは計算もできないというような事項は、ブランクのままで御提出願っても別に差しつかえないわけでありまして、そういうような意味におきまして、そうひどく納税者に御迷惑をかけないようにできるだけ努力しながら、同時にできる限りにおいての御協力をお願いしたい、こういう意味概況説明書提出をお願いして参りたい、かように存じております。
  11. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今、御答弁の中で最後の方の内容でございますが、この点につきましては、せんだっての委員会で、役員はどんな方であるかとか、非常に抽象的に御説明がございました。この点に対しましても、せんだって私質問いたしまして、寝屋の中の模様まで報告させるのかということを質問いたしまして、黒金委員から注意をお受けいたしたのですが、やはりそういった、予想は当然立ち得るのであります。で、今必ずしも全部埋めなくてもよろしい。ブランクのままでもよろしいという御説明でございましたけれども、問題は、これが実際に運営される際に、善良なる納税者は、やはりそういったものが列記してあると、当然記入しなければならないというふうに受け取れるのが私は普通ではないかと思うのであります。それで、せんだっての委員会におきましても、この点に関するプレス活動をどのように計画されておられるかという点を御質問したのでございますが、指導される際にはやはりはっきりと、埋めなくてもいいんだというような点については、懇切丁寧な御説明があってしかるべきであるということと、それから具体的にどのようなプレス活動を計画しておられるか、この点をお伺いいたしておきたいと存じます。
  12. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 概況説明書を御提出願います会社は、先ほども申し上げましたように一応限定されております。従いまして私の方といたしましては、概況説明書の要旨を御送付する機会に、ここで申し上げたような事項について会社の方で、どうしても非常に手数がかかるなりいろいろな理由で埋め切れない事項は、埋め切れないままでもけっこうでございますということは、どうせこれを御提出願いたいとお願い申し上げる書面がつくわけでございますから、そのときその書面の中へはっきりうたって、誤解のないようにして参りたい、かように考えております。  それから一般的なプレス活動といった面のことでございますが、その点につきましては、業者の方の団体その他の方にお集まり願って、いろいろ御説明申し上げる機会などもございますので、そういう機会において今の点ははっきり申し上げるということで、いずれ概況説明書のかなり詳しい御説明はしてあるつもりでございますが、実は詳しい御説明をしたために、概況説明書がまた非常にごたごたしたような様子にもなっておりますから、口頭でよく御説明申し上げる機会があろうと思いますが、そういう機会にも、今申し上げましたことははっきりさせたい、かように存じております。
  13. 山本幸一

  14. 横山利秋

    横山委員 長官についでに一つお伺いしますが、この間お知らせ問題で、わが党は手分けをして今の申告実情を調べた。そうしたらこういうことが出てきました。十五日までが申告をする期限になっているのですが、例年ならば二割くらいは出ておらなければならぬものが、五分くらいしか申告が出ていない、こういう情勢が近くの東京区内でもわかったわけです。これは一体どういうことだろうということで、われわれとしては非常に考えさせられた。例年なら二割くらいの申告が出ておらなければならぬところが、わずか五分くらいしか出ておらぬということは、明らかに納税者の心理を物語る。同時にまた税務署側の立場をやっぱり物語っておると思うのでございます。もう一歩突っ込んで調べてみますと、納税者側としては、ことしは必らず基準調査なり何なりで二割増し、三割増しというものを言ってくるであろう。従って、軽々にはいつものように出せぬという心理が働いておるようであります。それからその一方税務署側としては、これも私の調査したところによりますと、税務署側の一般行政指導の中にある心理というものは、どうもことしは税務署で話し合って、大体それじゃこういうことでありましょうかということを言わないで、申告を待って、基準調査ももう何割増しという方針を貫く。そうしてそれが悪ければ更正決定だという。いい意味で言いますならばきぜんたる行為、悪い意味で申しますなら、もうこの際しっかりしなければいかぬという徴税強行主義のように見られる。それにかてて加えて、もう一つ問題になりますのは、督促状の発送の期限は去年は二十五日であったのでありますが、今年は二十三日までにおそくもやれということであるようであります。一方では非常におくれている、一方では早くやれということで、税務署の職員は、聞けば今度の日曜も二十一日の祭日も土曜も居残りを命ぜられる、こういう状況にあるようであります。私はこの実情に対して、納税者側の立場と、それから税務署の職員側の立場と両方考えるときに、ここはちょっとお考え直しを願うところがありはしないか、こういう感じがしてならないのであります。納税者の心理というものを――税務署側として、今年は千九百億、ある程度それはあなた方の方が文字で、あるいは言葉で強硬に言っておられるのではないかと思うのだけれども、自然にそういう雰囲気というものが各末端まで届いておるという感じがしてならぬのであります。長官としても、天下の情勢を洞察せられておるのでありますから、窓口の仕事のあり方について何かお考えを願う必要があるのではないかということが考えられるわけでありますが、いかがでありますか。
  15. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 横山さんのおあげになった数字は、実はちょっと私には納得いきません。私も末端の仕事につきまして、それが順調にいっているかいないかは、これは国税庁長官として当然関心を持たなければならぬ仕事でございますので、今の申告をしろというと語弊があるかもしれませんが、申告についての御相談を各税務署で受けているその現場を、実は昨日も回って参りました。昨日参りましたのは、黒田の税務署と浅草の税務署を回って参りました。黒田などというところは、これは御承知になっておると思いますが、申告納税に関する限りにおいて、主として営業庶業の関係で言えば、全国で一番納税人員の多い税務署でございます。  今年のやり方といたしまして昨年と多少変りましたのは、税務署の調査としまして、所得額が二十万といったような一つの線を考えまして、それより低い数字の出た方については、特にいわゆるお知らせといった意味の金額を申し上げることはしないで、とにかく申告を出していただきたいということだけを申し上げているわけで、それより大きな方について、先般ここで御論議のあった税務署で調べました数字を申し上げている、こういうやり方をやっております。それで青色申告もずいぶんふえて参りまして、こちらの方につきましては、別に税務署の方で幾らといったようなことはもちろん申し上げておりません。従いまして、その他の点におきましていろいろ変化はしておりますが、こちらで数字を申し上げておいで願っている方の出署の率は、ごく荒っぽくいいますれば、大体百人お知らせ申し上げますと六割見当です。それから同時にその出署してきた方の中で、第一回の出署で、それじゃ税務署の言うその数字で申告をいたしましょうといってお出し願っている方が、おいで下すった方の大体六割です。それで一応一巡済みまして、きのうきょうやっておりますところは、まあ一回税務署と話し合ってみたが、その場でどうも納税者の方としましても決断がつかぬし、税務署の方としてもいろいろ言い分がある。それじゃ一ぺん家へ帰っていろいろ自分の方の計算も仕直してみましょう、考え直してみよう、こういって出直しをお約束になった方が最近また始まっております。二回目とわれわれ言っております。そんなわけでございまして、昨年の状況と今年の状況と比較してみまして、これは申告の相談を始めた時期が、署によっては一日おくれたり何かしている点もございますが、その著しい変化の状態になっておりません。従いまして、今横山委員のおっしゃったように、非常に状況が昨年と違い悪いというのは、私としましては、少くとも私の見た限りにおいては――その他日本橋、京橋へ私はその前に参りました。これは始まったすぐあとでした。それから次長をして、山の手の方の税務署へもやっております。しかし特に東京都内について申し上げますれば、昨年の状態に比べまして、今年の状態が特に憂慮すべき状態にあるといったような点は、全然私としては考えておりません。それから千九百億というのは来年の話でして、御承知のように、ことしは相当予算で見積ったよりも大きな自然増収が出ることが予想されておることでございますから、われわれの方として今問題になっているこの申告納税について、予算が云々というようなことで苛斂誅求ということは、当然考えるべきでもありませんし、また考えてもおりません。  それから最後にお話しになりました督促状の問題ですが、これは、昨年は東京は二十四日に出しております。今年は二十四日が日曜に当るものですから、従いまして東京は二十三日を一応の目途としております。しかしそれは一応の目途でありまして、各税務署において努力して、できる限りにおいてはもちろん二十三日にやっていただきたい。しかし非常に無理ができるというならば、必ずしも二十三日にこだわるものではないのだという指導をしております。これも御参考に申し上げますと、黒田は一応二十三日に出せよう、そのためには二十一日の休みはあるいはつぶさなければならぬかもしれない、こういうことを言っております。申告をまとめる段階までは所得税の係でして、そのあと督促状の関係になりますと、徴収裸の管理係の仕事になりますが、管理係は休みはことしになってつぶした例は全然ありません。超勤も、それほど無理な超勤はやっておりません。それで、そんな意味で一日ぐらい休みをつぶそうかということを考えているようです。それから浅草は、休みはつぶさないで多少の超勤をするという程度でやろうと考えている。ただそういうことにすると、二十三日は多少無理かもしれぬ、こういうような計画を立てております。従いまして、どういうお話でございますか存じませんが、それほどわれわれの方で納税者の立場も考え、同時に税務職員の立場も考えて、ひどい労働強化になっているというふうには、私は考えておりません。
  16. 横山利秋

    横山委員 あなたのお調べになったのと私どもの調べたのとでは、だいぶ感じ方について食い違いがあるようです。けれども、私はあなたが督促状の発送の期日についてもゆとりを持っておられる、各署においても多少実情を尊重して、二十何日ということについては言わないというお話でありますから、さらに私はあなたのおっしゃる点について調べてみまして、もう一度適当な機会質問いたしたいと思います。  きょう私の質問の焦点になりますのは、いわゆる人格のない社団及び財団についてであります。この法の改正は、先般私も本会議で申し上げたのですが、非常に問題があり過ぎるということを痛感されてならぬのです。一体この法案が出なければならぬ、必然的な理由というものはどういうものであるか。ずいぶん質問したい点がたくさんございますから、簡単に一つ質疑応答を重ねたいのでありますが、この法案が出る動機となったものは何であるか、これをまずお伺いしたい。
  17. 原純夫

    ○原政府委員 人格のない社団または財団につきましての課税関係につきましては、いわばそういうものが日本の今までの法律体系の中であまり大きな地位を占めてなかったせいもあると思いますが、税法における手当が必ずしも十分でないということであります。それがだんだん実際の形が出て参って、そうしていかにもそれに手当をしないのはいかぬというような事例が多く出て参りましたので、この際手当をいたしたいということであります。どういう点で手当が今まで足らないかといいますと、一番大きな問題は、やはり法人税法規定であります。法人税法では、はっきり法人法人税を納める義務を負わすということになっております。人格のない社団、財団は確かに団体ではありますけれども、法人格がない、従って法人税は取れないということが非常にはっきりいたしております。しからばこの人格のない社団、財団が経済行為をやって収益を上げておるという場合に、これは全然課税のほかに置くというのは、いかにもおかしいということで、従来所得税の方でかけるというような扱いをした部面もございます。それらにいろいろな理論づけもあるわけでありますけれども、必ずしもさっぱりいたさないという面が多い。これはやはりはっきり手当をして、最近のようにそういう新しいものが出てきた以上、税法においてもそれの手当をする必要があるということで、この際お願いしておるわけであります。  所得税関係では、源泉徴収の義務については、私ども現行法規定の趣旨からいって、源泉徴収の義務があるとして取り扱っておりますし、また団体の所得とされるものにつきましても、場合によって個人課税をするというような扱いをした場合がございます。これは団体がどういうものであるか、組合的であるかどうかというような判定が非常にむずかしい問題であります。むしろこの際はっきりと法人とみなして課税するということにいたしたいと思いまして、法人税法の一条の二項でありますかを設けて、それを中心にして規定をする、同時に所得税の方におきましても、源泉徴収に関する義務にかかわるもの、また法人として所得税の源泉徴収を受ける面が利子、配当についてございます。これらについて規定をいたしていきたいと考えた次第でございます。
  18. 横山利秋

    横山委員 最近毎日新聞の「税金にっぽん」に出ておりますが、あれの最後の締めくくりとしておる言葉は、これは「脱税」という世にも有名な本が出て、それで国税庁及び大蔵省が答弁ができなかった、それでこれはいわぬというので、にわかにこれをやったのだ。ああいう団体から――あの団体というのは労音でしたが、そういう大衆的団体から官庁がやり込められて答弁ができなかったしっぺ返しではないかという判断を寄せておるようであります。私も諸般の状況を憶測いたしますと、多少そういうきらいがないでもないような気がする。しかしもしそうだといたしますならば、これは、税法改正するにおいて非常によからぬ法の改正の出発点だと私は思うのであります。そういう考え方でなく、本来的にこれが必要であるかどうかということを討論しなければならぬ。そういう立場であるとするならば、人格のない社団及び財団については、もう少し本格的にかまえる必要がありはせぬか、こういうことが痛感されてならぬのであります。この人格のない社団及び財団というものは、近代社会において自然発生的にできたものである。しかもその中には、法人になろうと思っても許可がされないという条件のものもある。しかもこれらの団体は、もう千波万波にわたって――私どもの所属しておる政党がそうでありましょう。それから親睦団体、平和運動団体、旧軍人団体、引揚者団体、国交回復運動団体、法人でない労働組合、それからPTA、学校同窓会、神社仏閣の氏子や信徒、主婦団体、芸能愛好家団体、それから極端な例をあげれば、愚連隊やすりの仲間やテキ屋の集団もこれに入る。ただあなたの方としては、そうばかりじゃなくて、全部入るけれども、二十八業種ですか、お考えになるのは二十八業種に限定されておるというけれども、しかしこれらの千波万波にわたる団体が一応対象の人格なき社団及び財団になることは事実であります。そういう千波万波の団体をこの法律でとらえようとすることは、私は非常にむずかしい問題ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  19. 原純夫

    ○原政府委員 まずこの改正をお願いしました動機と申しますか、契機についてのお話がございましたが、これは先ほども申し上げましたように、個人あり法人あり、そして法人以外に法人格のない団体があるということも、私も学校におる時分から習ったことではありますけれども、そういうものは、税の方でも知らぬ顔をしていてもいいというものが多かったのでありますが、だんだん最近これは放っておいてはいけないというものが出て参りました。これは何も今度だけの問題ではなくて、実は数年来私どもとしては相当問題にして研究しておったわけであります。ただいまお尋ねの質問状が来たから、しっぺ返しという考えは毛頭ございません。今回は税制調査会に一年半にわたって研究をしていただいて、じっくりこの問題も研究いたしましたことなので、ぜひこの際に実現いたしたい。実例をあげて申しますと、たとえば日本酵素研究会というのがございます。これは酵素というものを――まあ薬でございますね。やはりジアスターゼの系統か何かの非常に新しい種類のものなんだろうと思いますが、これを売る団体なんであります。これが広告といいますか、勧誘書を出しまして、売りましょう、しかしそれは会員になってくれということで、事実は売っておるのであります。千万円台の売り上げを上げておる。調査の権限がありませんから、はっきりわかりませんが、千何百万円という売り上げを上げておるという例がございます。それから近ごろ診療所で人格のない団体としてやっておられるというような事例がある、またゴルフ・クラブなんかでも、広野ゴルフ・クラブ、あるいは小金井のクラブなんというものは、法人かと思うと法人でない。いろいろそういうようなものがだんだん出て参っております。これらのものには、やはり税は公平に所得課税をするということを考えますと、私どもとしてそこに穴があってはいかぬのじゃないかというふうに考えておったわけであります。その意味から今回十分検討の上お願いいたしておるわけであります。  それから第二に課税の範囲でありますが、これはお願いいたしております法人税法改正案におきましても、五条の――五条といいますのは公益法人を中心にしましたもので、法人税をかけるけれども、それは収益事業所得についてかけるのだということになっております。この人格のない社団、財団につきましても、収益事業にかけるということに考えております。なおその場合に、お話しの通り日本の現在の法制では、人格を持とうにも持てないものが確かにございます。公益でないと公益法人になれない。それから公益でない、また純粋に私益でもないというようなもの、これが持てないようなことになっておりますので、非常に雑多なものがございます。私どもも、こういう新しい穴をふさぐという制度を設けてやります場合に、この範囲をあまり拡げて、いやしくも少しでも収益があればというようなつもりでやっては非常に世の中を騒がすことになって、私どもがただいま申しましたような、これは捨ててはおけないというのを処置するのと逆なことになりますので、収益事業の範囲につきましても、ただいま五条の法人の収益事業につきまして、法人税法施行規則一条の三でお話しの通り二十八業種きめておりますが、これらの業種に限る。かつ、たとえばPTAがバザーをやるというようなものについて、あまりこまかく立ち入るというようなことはしないように、事業場を設けて継続して収益事業を行うという場合にやるということに考えております。なお特に問題になることが多いと思いますのは、そういう団体が出版物を配付するというような場合、それが出版業に当るかどうかというような問題であろうと思いますが、そういう団体の中には、多分に一定の資格要件を有するものを会員とするもので、それらに配るのを主として考えておるというような場合があると思います。そういうような場合については、それらをしいて対象にするということをしないように、はっきりと政令にうたい込んで参りたいと考えております。要するに何でもかでも拾い込むというようなセンスでなくて、継続して事業場を設けてやっておって、これはかけなければバランスがとれないという範囲のものに限ってやっていきたいというふうに考えている次第であります。
  20. 横山利秋

    横山委員 たとえば、今日本酵素研究会を例にお出しになりましたが、私はその実情をよく知りませんが、かりにそれが膨大な利益を持っているといたしましたならば、何かの形でその利益を受けている人間があるはずでありましょう。その現実に利益を受けている特定の個人なりあるいは数人の者に対する実質課税の原則がこれに適用されて、必ずしも解決難の問題ではないのではないか、こういう感じがするのです。ところが結論的に非常に千波万波を呼ぶけれども、あまりむちゃなことはやらぬつもりだ、こうおっしゃるのですが、それじゃ、この法律自体はそういうこともすべてできるようになっているのですね。そのできるようになっているやつを行政措置によって適当にやるとおっしゃるのだが、そういう法律で全部できるようになっているものを、あなたの方の胸三寸で適当にするということ自体に、根本的な問題がありはせぬかと私は思うのです。租税法律主義の原則をここでもう一ぺん考えなければなりません。どのくらいのリミットをお持ちであるか。しかもそのリミットというものは、どういう視点において行われるのか、一体それは法律上妥当なことであるかどうかという問題が、私はあると思います。具体的な例を一つ、二つ出して聞きますけれども、学校のPTAが、学校建設のために、あるいは学校に本を寄贈するために、あるいは机を寄贈するために、月に一回映画会をやる。そうして父兄及び子供がそれを見る。それに対して、名目はともあれ、十円なり二十円なり取る。それによって金が集まった。その事務は学校の先生がやっている。その金集めの事業場らしきものが教員室になっている。こういう問題は一体どうなるのでありましょうか。それからたとえば自民党も社会党も機関紙を出している。出版物を出している。先年有名になったのに自民党の「うれうべき教科書」というのがある。私どもの方でも、また政策を浸透させるための出版物をいろいろ出す。これはもちろん党員諸君に対して啓蒙のために出すのであるけれども、その本来の目的といいますか、それは国民に政策を浸透させるためにあるのでありますから、党員以外の者に対してやはり浸透さしたい。それで十円なり二十円もらう、こういうことは一体どういうことになるのでありましょうか。私はその本来的な目的、収益の目的というものをもう一ぺん考える必要がありはしないかと思うのです。収益とは何ぞや。収益とは、俗に常識的にいえば、金を集めて自分がもうけるというところに本来的な考えを持たなければならぬ。金は確かに入ってくるけれども、その金はポケットに入れるのではなくして、より高次な本来的な目的に使われるとせば、これは税法上、入ってくるからこれを収益だと見ることに誤まりがありはしないか、こういうことを感ずるのです、それらの基本的な考え方と具体例についてあなたの御意見を伺いたいのです。
  21. 原純夫

    ○原政府委員 最後の点が一般論でありますから、それからお答えいたしたいと思います。  一応普通の商売をやっていても、その商売によって得ました利益を何か高次の目的のために使う場合は、収益自体にかけるのはどうかというお考えもあると思います。しかし私どもは、やはりそれは収益があればかけるということを原則にしていかないといけないと思います。その場合に、その収益の中から何に使うということで寄付をする、あるいはそちらに回すという場合については、はっきりと基準を設けて、たとえば法人税法でも、通常の損金に算入されます寄付金限度額のほかに、一定の公益目的のためにする寄付については、はっきりした制度を設けて損金に落すということにしております。そういう考え方でまずかけることはかける、しかし一定の目的に使う場合は別途はずすということにしなければならぬと思います。  ところで今おあげになりました二つの例、たとえば党の出版物というようなものでありますが、これは先ほど申しました特定の資格要件を有するという場合の非常に広い資格要件になると思います。私ども、政党の趣旨を宣布するために出版する出版物などまで収益事業と見る気持はありません。  それから、PTAが月に一回映画会をやる、これは入場税等の問題と、今回の法人税課税の問題と両方出てくるわけであります。入場税の方は当然かかる。場合によって免税興行が働きますかどうですか。通常にかかる法人税につきましては、私が先ほど申し上げましたのは、継続して事業所を設ける興行の場合、事業所というのはどういう観念になりますか、むずかしいのでございますが、ただいまおあげになった程度のことであるならば、私の今の気分としては課税するといわぬでもいいじゃないかという気分でやっております。なおその境目については、御心配になるのがごもっともなことでありますから、私が先ほど申し上げた点は、すでに変えたものを見ながら申し上げたわけですが、委員会の御審議の間に政令案要綱を出して、それをあわせて御審議願うことにしていただくのがよろしいだろうと思っております。
  22. 横山利秋

    横山委員 そういうふうに私が例を出して、これはどうだ、これはどうだというふうに――まだたくさん例はございますが、そういう例を出せば――日本酵素研究会というあなたの方の例を見ればもっともなような気もする。しかしながらわれわれが税金を払う方の立場からずっと例を並べてみましたら、きっとあなたはそれはそうだな、それは気の毒だなという感じを受けるに違いないと思います。ところが今政党とPTAの私の例を聞いて、それはかけぬつもりだとおっしゃる。しかしそれではなぜかけられないのかということを、今度は私は逆に質問せざるを得ないのです。なぜ政党の出版物がこの法律に該当しないのか、それはなぜかということになりますと、筋を立てて言うならばどういうことになりますか。あなたが提案理由として御説明になる筋にどうしてこれがはずれるのか、私は疑いを持たざるを得ないのです。例を申して恐縮ですが、自民党の皆さんに御了承願いたいのですが、たとえばうれうべき教科書を出す。これは党員諸君は知っているが、広く国民諸君に聞いてもらいたいという本来的な目的があるわけです。ただでお出しになることもある、しかしたくさんとなればただでは困るから買ってもらう、買ってもらった金は自民党へ入る、それがなぜあなたの言う税金をかけない対象になるのか。そういうふうに考えてみますと、私はPTAでも同じようなことが言えると思う。その線の引き方というものが非常にデリケートになって、気の毒だから、頼んだから、あるいはどうのこうのというような結果になることを私は非常におそれるのであります。しかも先ほどから例をあげる同窓会とかなんとかいうものは種々さまざまで、雑多にわたりますから、それを一々例をあげるのもいかがかと思うのでありますけれども、例をあげてずっといったら、ほんとうにかけるべきものだとあなたが確信をするものは少くなってしまうのじゃないか。そうするとこの法律というものは、出るは出るけれども、実際問題としては限られた少数のものに対してやることになるのではないか。そうすると、法律とは何ぞやということになってくるでありましょう。限られた少数のものは、では現行法律で絶対だめなのか、絶対これができないものであるかどうかということを私は考えてみるのです。これは実質課税の原則によって、どうしても不可能なものではない。実情は知りませんけれども、日本酵素研究会というものに対して、あなたが今日の税法上、これは何とも抜き差しのならないものであるというふうにお考えになるのか、これらの私の一連の質問に対して率直にお答えを願いたい。
  23. 原純夫

    ○原政府委員 まず先ほどの具体例にからんで、それじゃなぜそういうものをかけないのかという疑問が起る。逆に、つまり別の言葉で言えば、境目をどこで切るかということが非常にむずかしいということでございます。おっしゃる通りだと思います。  そこで最初に申し上げましたことをもう一度お聞きいただきたい。つまり世の中に実際に個人、法人のほかに、人格のない社団、財団がございます。これはあって実際に商売そのものをやっておる。これは事実です。その場合にこれにかけないということは、これは税の公平という見地からいって絶対にできない。これは非常に強い一つの柱であります。そこで規定としては、収益事業にかけるということに当然なりましょう。しからば収益事業とみれば何でもかけるか、そういう観念的な考え方もあるかと思います。しかし私どもは、そういうものではないと思います。やはりこれは商売そのものじゃないかということを中心にやって参りたい、それがこういう新しい制度を設ける際の当然の態度であろうと思います。従ってこれの課税の対象になる団体というものは、おっしゃる通り限られた数のものになると思います。そうよけいのものではないと思います。  そこで第二段の、しからばそういう限られた数のものにこういう改正までしてというお尋ね、また実質課税の原則を規定する条文でいけないかというお尋ねでありますが、これは、私どもはたとい限られた数であっても、やはり公平に課税するという制度ははっきり要る。それからその面では実質課税の原則を解釈いたしましても、それは法人税課税はできないと思います。はっきりと人格のない社団、財団というものがあるのであります。で、法人税法は「法人は」とこう書いてある。そうなれば法人税を納める義務はない。しからば所得税はどうかという場合に、所得税の納税義務者に人格のない社団、財団がなるか、それはならない、やはりなりません。先ほど申しました源泉徴収の関係は別でありますが、所得税自体は、やはり人格のない社団、財団が所得を得ているからといって、それはやはり実質課税にはいかない。つまり法人と個人とがあるという一応の前提で、人格のない社団、財団は無視して規定している現在の税法でありますが、世の中にそういうものがあって、そして収益事業を行なっている。そうすれば、それを入れるというのは当然だという考え方で立案したわけでございます。
  24. 横山利秋

    横山委員 あなたの言い分によると、名目は公益事業をやっておると称しているけれども、実際問題としては収益事業をやっている、そういうものが限られた中に入ると思うのです。そういうことですか。
  25. 原純夫

    ○原政府委員 必ずしも公益事業をやっているという看板は何もかけているとは限らないと思います。これは、いわば法律的にそれを団体として能力を与え、団体としていろんな当事者にするということを原則として認めてないものでありますから。いろんなのがあります。もちろん公益的のものもありますし、たとえば同窓会というようなもの、あるいは会社の課の中のグループというものでも、それは一つの人格のない社団だというようなことにもなるわけで、公益、私益はものによってであって、収益事業をやっている団体がみな公益だという看板を掲げているということはないと思います。民法三十四条で、法人格を得るためには公益目的がなくてはいけないということになっておりますから、それ以外のものはそれができない。収益をやる場合にはもちろん会社にはなり得るわけですが、それにならないで団体でやっている。そういうものは、たとえば先ほど申しました広野のゴルフ・クラブというものは、決して公益だとは言ってないだろうと思うのです。いろいろなものがあって、千差万別だろうと思います。
  26. 横山利秋

    横山委員 私の言う意味は、今第一番目の聞き方をしたのですが、公益事業を主としてやっておるという名目を掲げておっても、実際は収益事業をやっておる、そういうのはけしからぬというあなたの言い分であろうというのが一つ。もう一つの言い方は、公益事業の看板は掲げていないけれども、たとえばあなたのおっしゃる同窓会とか、あるいはほんとうの特定の会員制度による後援会なり、そういうもので名前は掲げておっても、実際は収益事業をやっている。そういうものがあなたの胸中にひらめいておって、それがいかぬと言っておるのではないか、こういうのです。逆説的に言うならば、少くとも公益事業をやり、あるいはほんとうの親睦的な、あるいは文化的な団体であって、まあ多少片手というか片足で、ときに継続的にやっているこそこそしたもの、これは当らぬのではないか、こういうことをあなたは言っているのではないかと私は聞いているのです。
  27. 原純夫

    ○原政府委員 公益事業という看板を出して、そうして実際に収益事業をやっているから、そこに臨時的にどうというようなことは、私は初めから一言も申し上げておりませんし、そういう気持は毛頭ございません。同時に、公益事業をやっておる法人でありましても、収益事業をはっきりとやっておればそれはかける、これは現に法人税法の五条でそういうふうになっております。もちろんただいまのお話の、かたわら軽微にやっておるという意味であるならば、先ほど申しました、事業場を設けて継続して行うというものに当らないことが多かろうと思います。そういう場合までしいて税をかけるつもりはない。ただ、公益事業をやっている団体ならば一切よろしいという気持はございません。はっきり収益事業であれば、やはりそれに対しては課税すべきではないかというふうに考えております。
  28. 横山利秋

    横山委員 あなたの今の御答弁によりますれば、問題はやはりあらゆるところに発生すると思うのです。さかのぼりますけれども、たとえば政党はかけないという論理については、政党が機関紙なりあるいは印刷物なるものを不特定多数のものに配布して、それによって収入がある。けれども、バランス・シートからいえば、これはもちろん赤字にきまっていますが、そういうものが対象にならないということをここであなたは言明なさるのだけれども、そういうものが対象にならずに、今私が聞いたものは大部分が対象になるというあなたの論理は、どうしても世間を納得させるわけにいかぬと私は思う。かりに政党がやっておるそういうものが対象にならないとするならば、少くともその線は上から下まで貫かれなければならぬ。われわれはここに政党を代表して聞いておる。国会で聞いおてる。そういう政党に対してかけないという言明をされる意図が那辺にあるか、私は知りませんけれども、これにかけないとするならば、もう上から下まで貫いて、ほんとうに限られた少数のものに対してやらなければならぬという論理ならわかるけれども、逆の意味の、限られた少数のものにはかけぬ、しかし大部分にはこの法律を適用する。その中で政党だけはかけぬということは、あなたがどういう脆弁を弄しましても、私は国民を納得させるわけには参らないと思う。  逆に、別な質問をいたしますけれども、それでは、今日までいろいろトラブルがあったようでありますが、今日まで、これに該当しておった諸団体については、これは全然税金をかけなかったものであるかどうか、それをお伺いいたします。
  29. 原純夫

    ○原政府委員 政党につきましては、政党だから何をやってもかけないというふうに申したんではございません。政党でもはっきりと、たとえば出版部というようなものを作って、そしてまあ通常の本と同じものを刊行されるというようなことがあれば、それは問題になると思いますが、現在現実に政党がやっておられる程度のものを判断すれば、それはかけるべきじゃないんじゃなかろうかというふうに申したわけであります。  それから、現在人格なき社団、財団についてどういう課税をやっているか。先ほどちょっと申し上げましたが、法人税は、これはかけられないからかけておりません。個人の方では――個人といいますか、所得税関係では、法人が利子、配当については源泉徴収を受ける義務があるということと、給与その他を払います場合に源泉徴収をする義務がある。これは法人も個人もあるわけですが、これは規定が「者」ということになっておりますし、法律の精神からいうと、これは義務があるとして取り扱っております。そこで、そういう人格のない社団、財団の収益事業によって得る所得について、代表者とかあるいは理事というような人たちの個人の所得であるとみなして課税することがあるかないかという問題があります。これについては、実はただいま申したようなエア・ポケットにおるものでありますから、扱いが実際問題として必ずしも統一していないというのが、正直な表現だろうと思います。場合によって、それは一種のたとえば匿名組合に類するものだ、そういう団体の名は使っておって、実質上は個人だというようなことで扱っておる例が若干はございます。そういう場合に非常に解釈に困り、また扱いもなかなか統一を期しがたいというようなことが、しばらく続いたわけでございます。今回お願いいたしております改正案が通りますれば、はっきりと法人とみなして課税する。常識的に考えてそれが一番いいやり方でないかというふうに考えてお願いしておるわけでございます。
  30. 横山利秋

    横山委員 そうすると、今まで取ってないとおっしゃるのですか。
  31. 原純夫

    ○原政府委員 人格のない社団、財団としては、その所得に対しては取っておりません。ただし、先ほど申した利子、配当を受ける場合の源泉徴収はやっております。その他の所得に対しての法人としての課税はいたしておりません。場合によって、その所得法人理事なり代表者なり個人の所得であると認定される場合に多少かけている例は、若干あると思います。
  32. 横山利秋

    横山委員 個人に対する金は取っておると言うんだが、源泉徴収の義務者は、義務者としての資格ありとして源泉徴収の義務を与えておるかどうかという点が一点。それから、あなたのおっしゃる法律の「者」というのは、今日までの定義から言うならば、これは法人ないし個人という二つを限定して言っておるのであって、この人格なき社団、及び財団がそういう法人でもない、それから個人でもないというふうに今日までは定義されておって、それがいかぬというからここに改正をするのでありますから、今まではそういう徴収義務者としての義務はないと見るのが今回の改正案の趣旨ではないか。いかがですか。
  33. 原純夫

    ○原政府委員 源泉徴収義務についての規定は、人格のない社団、財団についてもこれを適用して運用するということははっきり通達でやっております。私どもはその面では義務があると思っております。
  34. 横山利秋

    横山委員 これは通達でやっておるというんだが、法律上の解釈は、「者」とは法人及び個人であって、法律上に何ら規定のない人格なき社団ないしは財団を「者」の中に含めるという行政通達を出すことが誤まりではないか。
  35. 原純夫

    ○原政府委員 私どもは、所得税法にある徴収義務者の「者」というのは、人格のない社団、財団も含むというふうに解釈しております。従って今回の改正のうち、所得税法のその部分は、いわば宣言的な規定だと、考えてお願いしておるわけであります。
  36. 横山利秋

    横山委員 あなたの解釈を聞いているんじゃないですよ。法律上の「者」とは、法人及び個人を限定して言っておるのであって、あなたが勝手に解釈して、法律上何らの規定のない人格なき社団及び財団も行政上これは「者」に含むんだということは誤まりではないか、いかなる根拠があってそういう勝手な解釈を下したか、こう聞いておるのです。
  37. 原純夫

    ○原政府委員 たとえば診療所をやっている、これは当然医療法人か個人であろう、あるいは人格のない社団である。そこでは月給を払っています。それで源泉徴収できないということは、これはだれが考えても非常におかしな話だと思いますし、源泉徴収の規定で、給与を払う者は源泉徴収しなさいという場合には、それを当然含めていうておるというふうに私どもは解釈しております。
  38. 横山利秋

    横山委員 それは法律規定があって、その法律に基いてあなたがおやりになるならいいけれども、法律規定がないのに、あれは取るべきだということで勝手に解釈をして、勝手に法律を曲げてやってはいかぬじゃないか、原個人が、あれは給料を払っているから源泉徴収をやる義務があると勝手に解釈してはだめじゃないか、こう言って聞いておるのです。私は、この法案に賛成しがたいものであるけれども、かりにこの法案が通って、その源泉徴収をする義務あるものとして含めて、初めてあなたは行政上の解釈なり通達なりあるいは実施ができるのではないか。それ以前に、いやあれは給料を払っているらしいから、通俗的にそうなんだという解釈をすることは、もってのほかじゃありませんか。
  39. 原純夫

    ○原政府委員 現在の所得税法の第三十八条には「この法律の施行地において給与所得の支払をなす者は、」「所得税を徴収し」云々、こう書いてあるのであります。私どもは、この法律の施行地において給与所得の支払いをなす者に人格のない社団、財団は入ると思います。それは十分そう読めると思います。
  40. 横山利秋

    横山委員 しかしながら所得税法法人税法の一般論として、今日税法学者の中で共通して言われておるその「者」というのは、これは明らかに法人あるいは個人というふうに限定をして議論をしておることは事実であります。しかもあなたの方の下部において、こういう解釈をして、税金を取るべきでないという建前をとったことも事実でありましょう。そういうようなことをしておいて、今この法案審議になってから、過去においてそういう解釈をとるというふうに考えられるのは、これはいささかどうかと思うのです。過去のことが問題があるからここにこういう法律をきめるとおっしゃるならば、過去のことば法律上定めがないのであるから、また疑義があるのであるから、これはそうではなかったのだ、ここにあらためて人格なき社団ないし財団についてはこういう規定をするのでありますから、ここで源泉徴収の義務なり何なりが明確に生ずる、こういう割り切った話をしないと、過去も実はそうだったんだということだったら、これをきめる必要もなくなってくるという議論も生じてくるのです。その辺があなたの答弁はきわめてあいまいであります。重ねて一つ答弁をお願いいたします。
  41. 原純夫

    ○原政府委員 重ねて申すことになりますが、私ども「給与所得の支払をなす者」という中には、これも入ると思っております。法人税法の方は、はっきりと「左に掲げる法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。」として、これは法人であるということになっております。所得税の源泉徴収は、要するに給与所得の支払いをなす者ということでありますから、入るというふうに解釈しております。これは、今回この関係改正をお願いするからといって、にわかにそう考えるというのでなくて、もうすでに過去において出ております通達の中の一環として、そういう解釈を明らかにして運用しておるということであります。それでは当然読めるものをなぜ書くのかということでありますが、それは先ほども申しました通り、人格のない社団、財団というものにつきましては、今までの規定がきわめて不十分といいますか、個人、法人と並んで十分考え尽して規定してないものですから、やはり源泉の関係もはっきりとした方がよろしいということで、明瞭ならしめるという意味で書いたわけでございます。法人税の方ははっきり今までかけられなかった、かけられなかったものをかけるようにしたい。従って、これは今後開始する事業年度についてかけるということにいたしております。源泉徴収の方は、引き続いて徴収の義務があるというふうに考えるべきだと思います。
  42. 横山利秋

    横山委員 私は、今の答弁に納得できません。しかしあとの人が待っておりますから、次へ移ってまた別の機会にしたいと思うのでありますが、あなたの今までの答弁を総称して言うならば、政党のようなものはかけない、それから零細なすみっこをほじくるようなことはしないのだ、大筋の目に余るものをやるのだ、こういうようなお話であります。私どもが一番心配いたしますのは、ではそのリミットをどこへ置くのかということなんです。どこから、どこまでがかけられる問題であり、どこからどこまでは取ることをしないのだという問題であります。しからばその線は何によって引かれるのか。法律はあなた方にそういう非常な問題を起すことまでまかせ得られるであろうか。租税法定主義の趣旨にとって、私はきわめて重大な問題をはらんでおると思うのであります。法律のどこにあなたが言うようなことが書いてある。法律案の中のどこにあなたにそういう権限をゆだねておるか。今までの法律及び政令との関係というものは、一つの太い線を出して、その多少のでこぼこはまかす、こういう考えであります。ところがあなたの答弁を聞くと、これはみんな取るのだ、けれどもまけるやつはまけす、しかもまける基準というものは、この法律案の中に何ら明示されていないのでありますから、全くこれはあなた方の勝手ほうだいということになってしまう。少くとも法律案の中に、これこれについてはしないというふうな文章がなければいけません。あなた方に勝手な解釈をまかせて――もう全国にこれに該当すべき人格なき社団及び財団というものは膨大に上り、全く種々さまざまにわたるのであります。それを全部何の根拠もなくあなた方にまかし得るということを、国会としても考えなければならぬことだと思うのであります。鹽崎さんも参議院で、零細な人格なき社団の収益事業を追及する趣旨ではございませんと答えておる。衆参両院、同じように答えておるのでありますが、この法律案の何を根拠にしてあなた方はそういうことをなさろうとするのか、その根拠となるべき基準を何にしようとするのか、そういうことが、事実この法律をきめるに当って妥当かつ公正な考えであるかということをお伺いしたい。
  43. 原純夫

    ○原政府委員 現在の法人税法第五条に、公益法人等の課税関係が書いてございます。それには公益法人等の所得で、収益事業から生じた所得以外の所得に対しては、法人税はこれをかけない、こういうふうに書いてあります。つまり、収益事業であるならば、それから上る所得に対しては、税の上では公平にかけるというのが大原則なのであります。そこで、収益事業だけだ、収益事業といいますれば、収益事業から生じた所得ということで、おのずからそこに制限があるのでありまして、それで現在においても、収益事業の範囲については政令で定めるということで、先ほどお話しの二十八業種が上っておるわけであります。この規定の第五条の一項に人格のない社団、財団が入るということでありますれば、収益事業から生じた所得は何であるかという解釈で、私ども法律としての縛りは打っていることになると思います。それを政令によって範囲をきめる。しかし、それはてんから何でもなしにきめるのではなくて、収益事業所得ですから、それは所得課税にするということであります。その際、日本の法律の体系でまだあまりがっちりと組み込まれていないものであり、かついろいろと千差万別の事象があるわけでありますから、私どもの心がまえとして、それの規定の仕方には十分注意をいたしますと申しておるわけです。何でもなしにおまかせ願いたいというのではない、収益事業にかけるという点で、大きな線が出ておるというふうに考えておるわけでございます。
  44. 横山利秋

    横山委員 あなたの言う答弁は、私の質問と食い違っておるのです。公共事業でも収益のあるものについてはかける、これは確かに載っておる。しかし、ここにいうところの人格のない社団及び財団に対する収益事業はかける、それを百歩を譲って、かりにいいという立場に立って、そこで私が聞いておるのは、そのかける中で、あなたはここまでは負ける、ここまでは負けないということを言っておるのだけれども、その基準というものは、法律案の中に明示されておらないではないか、一切私どもにまかせてもらいたいと言っておるではないか、そういう線を引くことが、どうしてできるか。なぜ法律案の中に、こういうものについてはかけないのだという原則をうたっておかないか。勝手にあなた方が、私どもにまかせてちょうだい、悪いことはしませんからといっても、そういうことはまかせられない。何を根拠にしてそういうことを言うのか、こういうことです。
  45. 原純夫

    ○原政府委員 それは、収益事業から生じたものについてかけるということでありますから、常識的に、それは収益事業ではないじゃないかというものまではかけません。これは収益事業だというものについてはかける、それで大きな線は法律に出ております。世の中にはもろもろの業種があり、収益事業かどうかという境は、非常にニュアンスのある問題だから、それは政令できめさせていただく、しかし大きな線は法律に盛り込んである、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  46. 横山利秋

    横山委員 盛り込んでありませんよ。あなたの言う意味でも、塩崎さんの言う意味でも、零細な人格なき社団の収益事業を追及する気持は毛頭ありませんと言っておる。収益事業であっても、零細なものについては追及しませんということを、あなたも先ほどから言っておるし、塩崎さんも参議院で言っておる。そういうことの基準は、どこによってこの法律案に明示されておるかというのです。
  47. 原純夫

    ○原政府委員 それは要するに一方の極端で、あれは全然商売じゃないかというのがあるわけです。ところが一方で、あれを商売というのかというのもあるわけです。その間にいろいろなニュアンスの事態が並んでいるわけです。そこで常識的に考えて、あれは収益事業だというところで線を引こうというふうに考えているわけです。
  48. 横山利秋

    横山委員 またやはり抽象的です。常識的に考えて、あれは収益事業だというのは、それでは何であろうか。たとえば、また例を出しますけれども、さっき言ったPTAの学校の設備改善のものは、これは収益として入ってくる。入ってきて、こわした机を直し、あるいは講堂を新設する、これは広義の意味の収益事業に入るのではないか。毎年々々定期的に臨海学校を学校がやる、そうしてその積立金をして、不時の場合に、子供が病気したとかなんとかいうときに備える、これはどうか。婦人会が子供のために何か一つバザーをやろう、今月は一つ映画会をやろう、そうして子供のための保育園の寄付をする、こういうことは一体どうだろうかということになってきますと、あなたが考えておられない問題が続々発生してくる。これらの私が例示したものは、これは零細なものであって、収益であっても収益とみなさない、あなたの言い方になると、こういうことになる。正確に行うと、収益であっても収益とみなさない。しからば、収益であっても収益とみなさないという根拠は、法律案のどこにあるかということを聞いておるのです。長くなりますから、これは私は次会に譲りますけれども、次会に一つ私の本日質問をしたことに対して、具体的な政令案を出してもらいたい。  お断わりしておきますけれども、伝えられるところの政令案では、私のいう問題は解決をしてないのです。ですから、さらに御検討を願わなければならぬと思います。もし伝えられるところの政令案で、二十八業種を継続して行い、かつ事業場のあるもの、管理人の定めのあるものといったところで、これは解釈のいかんによって、では事業場らしきものを設けないで、やみブローカーのような格好でやろうと思えばやれるのですよ。代表者の定めといったところで、これも方法はある。そうなりますと、非常に問題が複雑怪奇になってくる。百歩も千歩も譲って、どうしても目に余るものがあるというならば、目に余るものだけを考えて政令案を作りなさい。政令案というものが広範にわたって、しかも抽象的な文句で、税務署がやろうと思えば、PTAであろうと、婦人会であろうと、俳優の後援会であろうと、政党人の後援会であろうと、何でもひっかけられるというふうな範囲では、私はあなた方がどういうお考えで立案されたか知りませんけれども、これは大へんな問題になると思う。従って、政令案をさらに再検討されて、どうしてもこれはいかぬという問題、多少それに問題があっても、限られたもの、限られた目に余るものだけをつかまえられるような仕組みに圧縮をしてお考えになることを、私はあなたにお勧めをして、その立場に立って出してもらいたいと思います。  それからもう一つの問題は、今いろいろお話を聞いてみますと、一番最初にあなたの口から出るのが、日本酵素研究会ですか、そういういわゆる耳に余るものが出てくる。けれども、私が列挙したようなことについては、あなたは受け身になって、いやそれはそれはという話です。少くとも大蔵省が本法案の立案に当って、どういう問題にまでこれが発展するかについて、お考えが足りないようであります。人格なき社団及び財団の実態の総合把握が、私は足りないのではないかということを痛感をするのであります。  委員長にお願いをいたしたいのでありますが、こういう把握の足りない問題について、本委員会がうかつといっては失礼でありますが、十分な議論をすることなく審議をすることは、非常な誤まりを犯すおそれがあると思うのであります。従いまして、この際、人格のない社団及び財団に関連をいたします人を一ぺん参考人として呼んでもらって、一つその実態について私はお伺いをして、大蔵省も聞いておってもらって、そしてこの審議を進めたいと考えるのであります。その点について委員長の善処をお願いいたしたいのであります。あと質問があるのでありますけれども、本日は時間があまりありませんので、次の人に譲りまして、私は一応本日は人格なき社団及び財団のみに限定して、第一次的な質問を終ることにいたします。
  49. 山本幸一

    山本委員長 横山君の御要望につきましては、次の理事会で十分検討いたして善処いたします。  引き続いて神田大作君。   〔委員長退席、平岡委員長代理着席〕
  50. 神田大作

    神田(大)委員 質問の前に、私は委員長注意を喚起し、特に自民党の諸君もよく聞いてもらいたいと思う。というのは、大臣がでこなければ次官がいて、そうしてわれわれの論議を聞いておるというのが大体の常識です。ところが、大臣がいないと次官もいない、こういう委員会はありません。一体次官というのは提案説明をするだけで、何かロボットで、印刷物を読んでいるにすぎないのか。大臣が出なければ、政務次官がちゃんと委員会出席しなければ、今後われわれは委員会を開かぬから、その点を委員長は政務次官に注意してもらいたい。政務次官がちゃんとすわっていて聞いていたときはほとんどない。けしからぬ。
  51. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 御意見に沿うよう善処いたします。質問をどうぞお続け願います。
  52. 神田大作

    神田(大)委員 私は、時間が二十分ぐらいというわけですから、簡単に御質問いたしまして、あと次の機会に譲りたいと思いますが、主として農民所得税についてお尋ね申したいと思うのです。農業事業税の額は、一体今度の予算では幾らぐらいに見積もっておられるのか、お尋ねいたします。
  53. 原純夫

    ○原政府委員 事業税というお話ですが、農業に対する所得税のことだと思います。農業に対しまする三十二年度の税金、農業所得者から入ってくる分は、総合計三十九億余りというふうに見積っております。これは、三十二年分について出る課税額のうち、三十二年度中に入るもののほか、前の三十一年、三十年というような時期の税額で、まだ納めてないというものが入ってくるというようなものも含んでのことでございますが、同時に、三十二年分で納まらないものはあとに送るから、それは入ってない。三十二年度中に三十九億余り入ってくるという見込みにいたしております。これは、前年度の額がたしか六十九億でございましたから、非常に大なき減少になるということでございます
  54. 神田大作

    神田(大)委員 予算面では、前年度六十九億というふうに計上しておりますが、実際に徴税になった額は幾らですか。
  55. 原純夫

    ○原政府委員 ただいま六十九億と申しましたのは、三十一年分の作についてできる納税義務の計算で、三十一年度の見込みとしては、先ほど申した前年度からのずれと、後年度へのずれが差し引かれてかえってふえて、七十五億ばかり予算に見ております。そのうち、三十一年分の作によって課税になる見込み額が六十九億であります。その分が幾らになるか、これは確定申告が済み、その後一部更正決定もありましょう、そういうものが済んでみないと実はわかりません。今私どもがこれだけになるつもりだというようなことを申すのは、若干どうかと思いますので、済んでからにいたしたいと思いますが、三十一年分の課税六十九億が若干減って参るというような様子のように私ども聞いております。
  56. 神田大作

    神田(大)委員 各税務署から町村長、農業協同組合長、あるいは農業委員会長等を集めてこの課税標準の割当をやっている。この割当を見ますと、去年の標準収量、収入所得よりも大体一〇%、一割程度減らしてやっている、あるいは一割五分程度減らされている。そういうことを三十年度のものと比較いたしますと、大体百億から九十五億程度が割当される。そうすると、予算面では六十九億しか計上してないのに、百億割り当てるということになると、水増し割当をやっているということになるのですが、こういう点はどう思いますか。
  57. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 課税の実態の問題のようでございますから、私からお答えしたいと思います。  今お話しのように、農業所得につきましては、昨年から反当り標準ということをやっていることは、お話しの通りです。農家の所得は、御承知の通り帳簿が完備していないとか、いろいろな関係がありますものですから、農民の方も、やはりそういうふうな方法を御希望になっているようでございますし、やむを得ざる便法として、そういうことをやっております。三十年におきましては、これは一般的な話でございますが、相当な豊作で、三十一年分の作も、平年作はこえておりますが、しかし三十年に比べますと、そこまでいかないということから、私こまかい数字を記憶しておりませんが、おそらく三十一年分の標準は、三十年に比べましてある程度下っているんじゃないかと思います。しかしその次に御注意を喚起していただきたいと思いますのは、所得がたとえば一割減りますと、そうすると、これは現在の税の制度がそうなっているわけですが、基礎控除額とか扶養控除額というのは結局同じ額でございますから、従って課税所得だけを見ると、それが人によっては半分になるとか、あるいは三分の一になるとか、かなり大幅に減るということが考えられるわけです。農民の場合におきましては、所得額全体が割合にレベルが低いものですから、従って所得額が減ったのに比べまして、税額の減りは非常に大きい。逆に所得額がふえた場合におきましては、所得額の増が一割の場合においても、税額は場合によっては倍になる、こういうことはよく起る現象であります。今われわれの方でもって計数はまだ全然できておりませんが、予算額に比べましてそう大きな違いはないんじゃないか、決して水増しとかなんとかいう問題等、御指摘を受けるような問題はないんじゃないか、かように考えております。
  58. 神田大作

    神田(大)委員 このこまかい数字については、時間がありませんから、後刻御質問申し上げますが、この点は、六十九億の予算計上をしているにかかわらず、実際われわれの調査によりますと、三十年度の収量に比較して、各税務署が関係団体に示した収量から算定すると、百億からの収入になる。この数字についてはあとでやります。  いま一つお尋ねします。去年だと思いますが、前農林大臣の河野さんと国税庁長官の間で話し合いし、それが閣議決定になったと思うのですが、農家の反収の算定については作報事務所の統計を尊重するという話し合いをしております。この線は変らないかどうか。
  59. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 作報の数字を尊重するという気持は変っておりません。しかし作報の数字自体をそのままとるということは、これは私もいろいろ聞いてみましたが、県によって納税者の中からかなり議論がある面もあるようです。従って、われわれの力といたしましては、作戦の数字を尊重する気持は変りませんが、一応税務官庁は税務官庁としての調査をいたしまして、同時に作報の数字もにらみ合せて、別途一応の数字を作っていく、これが現状でございます。
  60. 神田大作

    神田(大)委員 なるほど税をとる場合には、独自な立場からやるということも言えるかもしれませんが、全国的に作報の統計と税務署の収量の算定とが食い違っている。ほとんど税務署の算定の方が上回っている。これは一つの例でありますが、私の郷里の関係では、作戦が二石一斗六升見ておるのに、税務署では二石三斗八升、二斗からの違いを来たしている。各税務署ともこういう違いを来たしている。作報というのは、何も民間で統計を取っているのではない。少くとも政府の権威ある機関としてやっておる。しかも、これは農家が災害を受けた場合の共済金の支払いの基準になっている。税金を納めるときには、税務署が独自な立場で算定した収量の多いのを基準にして税金をとる。もらうのは少くて、出すのは多い方で出すという矛盾、これは農林省と大蔵省と違うといえばそれまででありますが、いやしくも権威ある政府機関としては、このような不統一は許されない。尊重するというのなら、相当強い意味において作報の統計を用いるべきであって、単に言葉のあやでもってそういうことを言われたのでは、はなはだ迷惑な話である。この権威ある作報の統計の数字を採用して、災害の共済金をもらう場合にも、税務署に税金を納める場合にも、同じ基準でもってやるのが至当だと思うが、この点に対する所見を伺いたい。
  61. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 今作報の数字を税務署の数字が上回る例をお出しになりましたが、県によりましては、作報の数字では納税者が全然納得いただけない。同時にわれわれの方の調査から見ましても、作報の数字より下回る方が妥当であるという場合もあります。従いまして、われわれの方としましては、やはり作報の数字をそのままとることは、課税の上からいいますとどうも適当でないのではないか、こういう点で別途調査をしております。従いまして、そういう作報の数字と大きく開くとは思いませんけれども、作報の数字をそのままとるということでやっていくことは適当でないのではないか、しかし作報の数字がそのままとれる場合においては、われわれとしてもこれによるべきである、こういうような考えを持っております。
  62. 神田大作

    神田(大)委員 作報の統計というものは非常に科学的で、しかも一つの業務として専念してやっている。そしてあらゆる方面で、一年間の統計をとるために膨大な費用をかけて国家がやっている。そういう機関の統計を無視するというようなことは、いかに大蔵省であろうとも、これはおかしいのではなかろうか、また政府機関としての権威に関すると思う。大蔵省では独自の立場でやると言われますが、あなた方の出先におるところの職員は、作報が調査するほどの科学的な知識も持っていないし、そういう余裕もないと思う。一つのたんぼを見渡して坪刈りをやるとか、あるいは抽出農家を採用するというようなことを言っておりますけれども、科学性という点においては、作報にははるかに及ばないと思う。税務署の場合には、いかにして税金をよけいにとるかということを主体にした調査であるというふうに見られる。というのは、私が先ほど申し上げましたように、ほとんどが作報の調査よりも上回っている。この点をぜひ御考慮願いたい。  いま一つ大きな矛盾があるのは、今度一千億減税、一千億施策というようなことをいって、税金は安くなるようなことを言っておりますけれども、景気のいいのは大産業だろうと思う。農民は非常な不景気を負わされている。そういうときには、農民に対する割当というものが過酷になりがちである。小さな重箱のすみをほじるようにして農民の税金をとろう、あるいは零細企業の税金をとろうとする。その一つの例は、もち米と普通の米とを、区分けをしている。なるほどもち米というのは、普通の米よりも石当り四百五十円くらい高い。そのように高く見積って税金をとるという方式をとっている。ところがもち来の収量というのは、普通の水稲よりも二割方減収になる。これを金額にしますと、二千円からの減収になる。ほんとうからいうと、もち米というのは、普通の米よりも二千円くらい低く見なければならないにもかかわらず、価格において四百五十円高いからといって、もち米に加算して税金をとっておる。こういうやり方はまことに矛盾しているやり方だと思うのですが、こまかい点を申しますと数限りがありませんから、次の機会に申しますが、そういうような非科学的なやり方をしている。この点について、あなたは独自な立場でやるということでありますけれども、それを専門にやっているところの農林省の出先機関ともっと十分連絡をとってやるべきであろうと思うのでございますが、お伺いいたしたいと思います。
  63. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 もち米の値段が一般の米よりある程度高いということで、それを配慮に入れるということは従来やっておりましたが、局によってやってない局もありましたので、全国的にこれを統一する意味において、従来やってなかったところにつきましても、そういう考え方を入れております。同時に今お話しのように、もち米は収量が少いというのなら、その少いことも当然にらみ合せながら、やはり考えに入れていく、こういうことを考えてやればいいわけでありまして、もし税務署が収穫の数量においては普通のうるち米と同じだけあげて、値段だけは加算するということがございますれば、神田委員の御指摘のように、これは税務署の行き過ぎだと言われてもやむを得ないわけでありまして、そういうことがあれば、われわれとしてはよく検討してみたいと思っております。それから作報の数字を尊重するという気持は、われわれの方としては先ほども申した通りであります。ただ現にある県などでは、作報の数字に対して非常に不信を抱いておって、納税者の方が全然作報の数字には納得せぬ。同時にわれわれの方で調べてみましても、やはりそういう数字が出てくるといったようなこともございますものですから、われわれは作報の数字を一応尊重はしますが、作報通りというわけにはなかなかいかぬようであります。ただそれにしましても、一応税務署として天下り的な課税をすると言われる非難は受けないために、協同組合等の方にもよくわれわれの数字の根拠なども御説明申し上げまして、御納得を得るという努力は続けていくつもりでおります。
  64. 神田大作

    神田(大)委員 もち米の問題ですが、これは価格の点だけしか見ていない。私の調べたところでは、収量の点は見ていない。そういう点において何か不公平な点があると思う。  それから、私は一つ資料として出してもらいたいのですが、大蔵省国税庁が見た米穀の生産高というものは、過去三ヵ年間において幾らに一体見ているのか。あなたたちの課税基準として調べておる収量の調査がもしありましたら、これはあるべきだと思うのですが、あなたはとっているのですから一つ提出してもらいたい。
  65. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 現在御承知のように、農家の中で、六百万の農家といいますか、あるいは専業農家三百万といいますか、結局予算で見ております納税人員というのは六十万足らずでございまして、いわば六百万にとっても一割、三百万にとっても二割ということでありまして、要するに村によっては非常に納税人員の数が少いわけでございます。そういうわけでございまして、全国的にこの県が何万石取れるというところから標準を作っていくというようなやり方は、現在ところによってやっておるところもありますが、私は、そういうやり方は少し古いんじゃないか、一時のように、納税人員が農家の中で半分以上を占めておるというなら、これはごもっともですが、しかし農家の中で、村によって、山間部などに行きますと、村の中で何人と数えるほどしか納税人員がない場合には、もっと簡便な調査をやるべきではないかというようなことで、署によってはそうした一般的な平均率というものを作らぬという署もございます。従いまして、全国でもって、税の方で基準としてとっている米の高が一体幾らであるかといったような数字は、実は私の方ではそれほど必要じゃないわけでして、従いまして、それが今ここに提出できるかどうかという点、特に今年だいぶやり方を変えてきておりますから、ちょっとお答えできかねますが、できれば御提出申し上げてみたいと思います。
  66. 神田大作

    神田(大)委員 これはなるほど品質算定ですから、そういうことになるかもしれません。しかし各税務署ごとに詳細な反収を見て、それに対する耕作反別を見ていくのですから、私は各税務署のあれがありますから、全国で一体米は幾らとれたか、それに対して幾ら税金をかけるかというようなことがちゃんと出ると思うわけです。これはわれわれも非常に参考になりますから、一つ大蔵省側が見た一つの統計というものを私も参考に見たいと思いますから、御提出を願いたいと思います。  次に、こまかい問題は、必要経費の問題ですが、これをやりますと時間がたちますから、次に栃木税務署の署長である木村松江氏が過般汚職事件でもって逮捕された、この点について知っておる範囲のことを御報告を願いたい。
  67. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 今御指摘になりました栃木の木村署長が収賄の嫌疑をもって前橋の検察庁に逮捕された点は、われわれといたしまして、事件の内容が真実嫌疑の濃厚なものであるかどうであるか、あるかないかにかかわらず、いろいろな意味におきまして非常に遺憾に思っております。現在におきましては、まだ起訴段階に入っておりませんから、従いまして、容疑がどういう内容のものであるかということも、まだはっきりしておりません。ただ一応推測ではありますが、木村署長が、関東信越の国税局の間税部の監視課長をしておりました当時でありますが、前橋にある酒の販売の協同組合の部長をしておる者から供応あるいは金銭の供与を受けたという嫌疑のようでございます。
  68. 神田大作

    神田(大)委員 この税務署汚職については、私はまことに遺憾なことであって、こういうことになるからこそ、いろいろと農民も疑惑を持ってくる。農民に対する課税というものは、反当収量でぴしぴしと見て、しかも作報事務所の収量よりも高く見て、もち米なんかは四百五十円高いからといって、四百五十円を加算してくるというように、こまかいところに口をつけてびしびしと取り立てる。片方においては、大きな納税者に対しましては、裏からの手によって適当に勘案ずるというようなことをやっておりますと、これはやはり徴税上支障を来たすことであろうと思う。でこの問題は、入場税の問題あるいは遊興飲食税の問題等においても、その脱税に関連するところの醜聞というようなものは、もうある程度常識的なものになっているんじゃなかろうか。入場税の問題についても、私は大きな資料を持っております。これは時間がありませんからこの次に申したいと思うけれども、こういうような徴税官吏の粛正に対しましては、今後厳重なる警告を発して、これらの悪影響を一掃するようにしてもらいたいと思う。と同時に、このような事件はほかにもあるんじゃなかろうかと思う。こういうような事件は、隠さずに、国税庁長官は、議会なり何なりに率直詳細に報告して、まだ起訴されないからわからないというようなことじゃなしに、新聞にはどんどん出ておるのであるから、詳細なることはあなたのところにはちゃんと報告が来ておるわけですから、詳細な報告をちゃんとして、そうして国民の疑惑を解くようにしなければならぬ、こういうように考える次第です。私は、この農業所得税を適正にやる、特に科学的な調査をしておるところの作報事務所の統計を尊重して、ただ口だけの尊重じゃなしに、小額所得者である農民の税負担の均衡を保つために、こういうように作報の収量よりも多く見ておるところのあなたたちのやり方に対して反省を促して、私の質問を終ります。   〔平岡委員長代理退席、横銭委員長代理着席〕
  69. 高見三郎

    ○高見委員 関連して、資料を要求します。今神田君が要求しました資料の中で、所得の問題については、全体的な米なら米についての生産量ということは無理だろうと思うが、作報が調べておる農家の必要経費と比較してみたいと思いますので、あなた方の方でお調べになった、たとえばミカン地帯、茶地帯における必要経費というものを算定になっております基礎を、三年前くらいから一つお出しを願いたいと思う。それだけ要求しておきます。
  70. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 今手元にあるかどうかよくわかりませんが、できるだけ御趣旨に沿うものがあれば出したいと思います。
  71. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 渡邊国税庁長官にお尋ねします。昭和二十九年の十二月四日、社会保険診療報酬についての課税特例制度が設けられまして、医師、歯科医師の社会保険診療報酬については所得税法法人税法の例外として百分の七十二を経費としてみなす、逆に申しますれば二八%を課税所得とすることがきめられて今日に至っております。当時この立法の趣旨は、社会保険診療報酬の一点単価が、政策単価として政府より不当に低位に定められておるので、単価が適正単価に改訂せられるまでこの特例を設けるという趣旨であったはずであります。立法の趣旨からの当然の帰結といたしまして、同じく社会保険診療を行なっている柔道整復師の場合も同様の配慮があってしかるべきだと思うのでありますが、国税庁長官はどのようにお考えになっておりますか。
  72. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 平岡委員のお話しのように、社会診療に関係しての医師、歯科医師につきまして、今言ったような特別ないわば所得率がきめられておる、これはお話しの通りであります。われわれの方の考え方といたしましては、結局あれはそうした特別な配慮に基いてなされているわけですから、従いましてやはり法律に掲げられておりますその範囲にいわば限定さるべきものであると思います。それで社会保険なるがゆえに他の業種についてもそれが類推解釈されるという意味の性格のものじゃないのじゃないだろうか。従いまして、もしそれもそういうふうに扱うべきだというならば、これは法律の問題である。こう解釈しております。
  73. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 法律そのものをしゃくし定木に読めばそうかもしれませんが、立法の趣旨は、政策単価が低位にきめられておるのだから、それが改訂されるまではこれに特例を設ける、こういうことであることには間違いないと思うのです。そうした立法の精神からの当然の帰結として、やはり柔道整復師がこの保険診療をやっておるのですから、この社会保険診療報酬分についてはやはり同様の配慮があってしかるべきと思うのです。この点についてはもう一回お尋ねします。
  74. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 平岡さんのような御意見もあるかと思いますが、同時に私の申し上げるように、一応これは特別な配慮に基いた特別な規定である。従いまして、やはりそこにはっきり業種が限定されております。これが社会保険に関する医療だとかなんとかだというような意味で、相当広く社会保険関係のものは入るのだというふうに、その業種の限定がなくて、一応解釈的にそこがまかされている場合であれば、これはお話しのような解釈も可能であろうと思いますが、いかにも法律ははっきり医師、歯科医師というふうに明記していますから、従って、それ以上類推解釈をする余地はないのじゃないか、私はこう思っております。
  75. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それではお尋ねしますが、この問題につきまして、柔道整復師側からの陳情を受けたことがあるかどうか。またこの陳情を受けてこの事案に対処すべき通達等を国税局に出したことがあるかどうか。
  76. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 柔道整復師の人たちから陳情は受けております。同時にわれわれの方としては考え得る問題としまして、結局社会保険の場合におきましては、柔道整復師の方が受けられる報酬が通常の社会保険以外の場合の報酬に比べて相当低位にきめられておる、従いまして、必要経費の方としてはそう変らないことがあるということを非常に強く主張されておりますし、われわれの方もその点は調べてみますと、そういう点もあるようでございます。従いまして、その措置法の特別な規定のいかんにかかわらず、収入金額に比べて必要経費が相当割合が大きいという事実は、これはわれわれの方として所得税法の当然の建前からして、そういう事実があればそれを尊重すべきだ、これは尊重すべきであります。その意味におきまして私の方といたしましては、一般的な通達ではございますが、柔道整復師の方々から特にそういう事実をあげて注意があり、陳情がありましたから、その点をとくと調べるようにという通達は各国税局長に出してございます。
  77. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと、やはり一般診療報酬と区別して低位に定められている社会保険診療分に対しては、これに手心を加えるべしという通達として解釈してよろしゅうございますか。
  78. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 手心を加えるべしという意味の通達とは私は思っておりません。結局要するに料金が安い、しかし必要な経費は同じである、そういうことから当然出てくる結論として、同じ百円の収入があっても、所得として残る分は社会保険の場合においては少い、その事実をはっきり頭に置いて、よく調べて一応課税をするように、こういう意味の通達でありまして、手心という意味のものとは解しておりません。
  79. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと、各国税局はあなたのその通達に基きまして、この事業に対する所得標準率を具体的に作成していると思うのです。今東京国税局の場合につきまして、もし資料がございましたら、数字がございましたらお知らせ願います。
  80. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 今はっきり記憶しておりませんが、たしかこれで間違いないと思っておりますが、一般診療の場合には所得の割合が七〇、それから社会診療の場合には四五、こういう数字であったと記憶しております。
  81. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうすると結局標準率を、社会保険診療報酬分について四五%と作ったわけだと思うのです。私は、この標準率を作ること自体が違法であるかないかは議論の余地があろうと思うけれども、私の聞く範囲では、隣の埼玉県の某税務署では、関東信越局からの示達されたものとしまして、社会保険診療報酬分について課税標準率五五%を示して、業者の団体との間にいざこざを起しておる事実がございます。こうなりますと、あなたがせんだって違法であることを認めて取りやめた「お知らせ」とこれは同断であろうと思う。この点につきましてあなたの御見解をお伺いします。
  82. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 私どもの考え方といたしましては、いわゆる標準率というのは、どこまでも標準的なものだと思っております。従いまして本来の建前からいえば、納税者の方が収入金額と必要経費をはっきりさせて、そしてそこにおのずから所得を計算して、そして自分の所得は幾らと御申告していただくべきものだと思っております。ただ数ある納税者の中には、必ずしも帳面もはっきりしない。全部がつけ切っていない、こういう方もございますから、従いまして収入金額におきましては、特に社会保険診療なんかの場合には、収入金額は割合にわかるわけですね。けれども必要経費の方がはっきりしないという場合もあるものですから、便宜そういう率を課税の実際の所得の見積りの場合のやむを得ない手段として使っているわけです。それが、現在片方で必要経費がもっと要るんだということになれば、それを明らかにしていただくことによりまして、十分その根拠に立った所得で御申告して下さってけっこうなわけです。
  83. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 柔道整復師側の言い分は、過去において医師と歯科医師の一点単価が改訂されたときに据え置かれた事実があるのです。具体的に言えば、現在都市におきまして医師歯科医師の場合は十二円五十銭、それから地方におきまして十一円五十銭、これに対しまして劣勢のまま据え置かれた柔道整復師の場合には、都市におきまして十円、それから地方におきまして九円と定められたまま今日に至っておる。そうした政策単価で一そう低位にくぎづけられておるこの柔道整復師の場合に、片や医師歯科医師の方は二八%を課税所得とされており、逆に柔道整復師側は、今あなたのおっしゃられる東京の場合四五%、それから埼玉県の某税務署の場合五五%、こういうようにきめられて、しかもこれが確定申告の前に、この申告に影響を与えるような措置業者に基準を示されるということは行き過ぎじゃないかと思うのです。これは感覚的に、柔道整復師側がどうしたって承服できないというのは当りまえだと思う。ですから、この法律そのものが、医師歯科医師に限定されるということだけを主張されて、この現実に目をおおうことは私は間違いだと思う。そこで、法改正をするしないは別として、行政的にこの不合理を是正するような一つの行き方が当然あろうと思うのです。この点につきまして、国税庁長官が将来どのように御処置なさるつもりかお伺いします。
  84. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 われわれとしましては、結局課税の公平ということが非常に大事でございますから、一点単価の従来の経緯が解決されて、医師、歯科医師につきましてもああいう法律による特別な標準率的なものがある、あれで所得率がきめられるというあの規定は、あれはやはり過渡的なものだと私は思っておりますが、ああいうことがなくなるということが一番望ましいことだと思っております。
  85. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次元の違う論議は別なんです。現実に医師歯科医師の課税標準ともいうべきものが二八%である、片や柔道整復師が同じ社会保険診療報酬に対し五五%というようなものを押しつけられておることは不合理です。ですから、こういう所得標準率を各国税局をして撤回せしむるおつもりはないかどうか。
  86. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 その点につきましては、先ほどもすでに御答弁申し上げたわけでございますが、われわれの方といたしましては、医師、歯科医師につきましては法律にはっきり規定されておりますので、これによって課税していくのはこれまた当然の話であります。同時に柔道整復師につきましては、そういう規定も入っておりませんので、従いまして、われわれが通常の所得税法の適用をする立場においてやっていく、ただしその場合におきましても、先ほど必答弁申し上げましたように、社会保険診療の場合におきましては、報酬が安い、従って必要経費の割合が大きくなるという事実、そういう事実は事実としてわれわれは正確に認識し、その上に立って課税を行なっていくという建前をとるべきだと思っております。その意味において、この間陳情を受けまして、その点をはっきり国税局に申し伝えまして、その基礎に立ってこれを行なっていけ、こういう通達をしたわけであります。
  87. 春日一幸

    春日委員 この問題は、ただいまの質疑応答を聞いておりましても、重大な問題を含んでおると思うのです。こういう社会保険診療報酬に対する限定課税の問題については、やはり公定単価の問題、それから医師、歯科医師との比較の問題、やはり柔道整復師もそれと同じような立場に立っているし、経費の算入方法については、やはり特別の配慮が加えられてしかるべきだと思います。のみならず、この法律はかつて議員立法によって行われたいきさつ等からも考えまして、特に国会側においても相当の責任があろうと考えます。ただいま平岡君の御質問に対する長官答弁も、これは、やはり政府とすればそういう御答弁が必要であろうと思うのです。関連して国会の責任もあろうと考えるから、この問題はいずれ後日理事会において、この質疑応答を資料としてさらに検討を進められたいと思います。この問題の取扱いを後日理事会において、政府側を交えてさらにその調整をはかることのために検討を加えられることを要望いたしておきます。委員長においてそのお取り計らいをお願い申し上げます。
  88. 横錢重吉

    横錢委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十八分体想      ――――◇―――――    午後二時三十四分開議
  89. 山本幸一

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案税関係十三法律案一括議題として質疑を続行いたします。横錢重吉君。
  90. 横錢重吉

    横錢委員 国税庁長官がまだ来られないので、主として主税局長質問したいと思いますが、主税局長はきょうの毎日新聞を読まれましたか。
  91. 原純夫

    ○原政府委員 「税金にっぽん」の話だと思いますが、私は注意をして、一番から十四番まで持っています。十四番は、「政界をのす無税金」、「政治献金に国税庁そっぽ」というので、これはきのうのだったと思います。きょうのはどうでしたか、ちょっと気がつきませんでした。
  92. 横錢重吉

    横錢委員 本委員会にかかっておる特別措置のもたらしておる弊害について、この「税金にっぽん」ではかなり詳細に具体的に分析をしておるのですが、局長がこれをまだ読んでいないとするならば、取り上げて示しますから、御答弁を願いたいと思うのです。  その一つの点として、東京通信工業というのがトランジスター・ラジオの部分品を作っておる。これに対して、今度新しく日立、東芝、松下というような有力電気メーカーが乗り出す。この段階にきたときに、トランジスターに対して税法上の重要物産に指定をする。指定が行われた場合には、設備を新設してから三年間は法人税免除する。これが行われた場合には、今作っておる東京通信工業というのは比較的大きくないので、大企業に太刀打ちができない。ところが、それのみでなしに、すでに製作をしておる東京通信工業では、もう前に施設をしてあるからこの恩典を受けない。それに対して、新しく乗り出すところの東芝とか、日立とか、松下とかいう方面ではこの恩典を受ける。従ってこのために非常な恐慌を受け、会社が存立の危機にまで見舞われておるという記事が出ております。こういう点について、こういうことがあり得るということを今度の措置に当っても考えられておったかどうか、この点について伺います。
  93. 原純夫

    ○原政府委員 お話しの重要物産免税につきましては、今回相当根本的に筋を立てまして、優遇を与えるにしても、それに値するものにとどめたいということで、所得税法人税法改正法案の中でお願いいたしておるわけであります。そこでただいま具体的に御指摘になりました東京通信工業が現にやり、さらに他社が始めようとするトランジスター・ラジオの製造を指定するかどうかという問題は、私はまだ聞いておりません。十分検討の上態度をきめたいと思います。一般論として今回改正をお願いしております線は、業種につきまして、それが日本の国民経済のために必要であるということと同時に、技術的あるいは市場的に採算が不安定であるという事情が存することを必要な条件といたしております。従いまして、そういうことも考えなければいけません。同時に私の記憶では、今まで重要物産免税の対象にいたしましたものは、近ごろではその必要はないというのでやめようとしておりますが、いろいろな鉱産物、あるいは肥料とか、あるいは溶剤とか、あるいは化学繊維というふうに、原料的、素材的なものをおもに扱っておるのが実情でございます。それを組み立てて、いろいろな機械を作るというところまでいくかどうかというあたりは――これは法律としては読めないことはありませんけれども、かなり大きな問題だと思います。具体的な事案につきましてよく検討いたしました上で、態度をきめたいと思います。
  94. 横錢重吉

    横錢委員 ここに指摘してあることは、かなり事実に基いて出されていると思うのです。従って、今ここで審議されている租税特別措置というものは、こういうような各会社間の競争ないしは設備投資というものを相当程度本年は抑えなくてはならないということが言われておるときに、税法をめぐって有利に立つ会社と、有利でない会社とがはっきり出てくる。しかも現実に今までやっておったものが、これによって大打撃を受けるようなことが行われているとするならば、これに対しては当然指定を取り消し、あるいは指定をしないということが行われるべきだ、こう考えますが、この点いかがですか。
  95. 原純夫

    ○原政府委員 私ただいま伺いましたばかりで、はっきり結論的なものをこの席で申し上げるのは不穏当と思いますが、感じとして、多分に慎重に検討しなければならぬなという感じがいたします。十分お話しの趣旨を覚えておきまして、指定の際に善処したいと思います。
  96. 横錢重吉

    横錢委員 毎日新聞がこれだけの内容を盛って具体的に発表しておる。この事実は、私はあることだろうと思うのです。従って、このことが事実あるとするならば、これはいろいろな思惑やあるいは政治的な力や、そういうものに屈することなく、この点について今のあなたの持っている考え方を通していただきたい。そうして、これによるところの変な税法上の汚点というものを出さないようにしていただきたいと思います。  それから問題はそれで終っているんではない。なかなかこれは含蓄のある内容ですね。その次には、さらに今度は東電の一例をあげておるのです。東電の場合には、三十一年度の利益が三十一億六千四百万円ある。これが法人としていわゆる四〇%の課税をされるならば十二億六千五百万円とられるべきである。ところが重要物産の免税によって二億三千万が引かれる。増資分が二億引かれる。それから渇水準備金に十五億引かれる。退職給与の引当てで四億引かれて合計二十三億三千万円が引かれる結果、わずかに八億三千六百万円に対して課税をされるという結果になる。その結果、実際支払うべきところの税金というものは三億三千四百万円、二六%に下っておる。これは、昨日の本会議において平岡委員がこれらの問題を取り上げて質疑をした通りでありまして、これはこの特別措置を行うということが本来の趣旨に合致していないのではないか、こう考えるのです。局長の見解を一つ承わりたい。
  97. 原純夫

    ○原政府委員 東電の三十年の十月から三十一年の三月事業年度についての数字は、お話しの通りの数字になっております。ちなみに、おっしゃるようにもろもろの特例がないとした場合の二六%。何で抜けているかというもののうちで一番大きいのは、約四七、八%が渇水準備金で抜けております。渇水準備金の考え方はどうかという問題。それからその次に大きいのが退職給与の引当金、これが一二、三%出ております。その残りがほぼ半分に分れて重要物産の免税所得と、増資配当の免税所得、こういうふうになっております。おっしゃる通り、私どももこの特別の種類の企業、あるいは特別の種類の人に優遇する特別措置というものは、公平の見地から考えますと、なるべく全部に均霑し得る恩典にいたしたいという気持がございますが、この東電の場合、恩典がない場合の二六%になっているという差につきましては、その恩典の種類について、いろいろ検討が要るんだろうと思います。渇水準備金のようなものは、電力料金が渇水の場合においても上らないように、国民経済がそれによって不当に影響を受けないようにというような意味で積まれるものでありまして、今回はあまりによけい無制限に積むということは必要なかろうというので、限度を置きますが、事柄自体としては、単に優遇のための優遇というのではなくて、そういう別の目的を持ったものであります。退職給与の引当金、これはいろいろ議論があるところでありますが、債務性の引当金だという議論もある。私どもは債務性といっても、そう一度に払うというようなことは法人の存続を前提とする限り考えられないというようなことから、先般もこの限度を半分にいたしたようなわけであります。この辺は、特別措置の中でも、当然に税なしで取っておかせなければならないものだという議論がかなりに強くあるものであります。残りの重要物産の免税、増資配当の免税というあたりは、これはそういう議論がかなり弱くなるかと思います。私ども増資配当の免税は、この一月三十一日で期限が切れましたのを、そのままにしておきまして、これはもう続けない。重要物産につきましては、現在の制度がかなりに過度な、あるいは範囲につきましても非常にマンネリズムになって、石炭だとか何だとか、あるいは通常の費用まで入っているというようなことはいけないというようなことで、相当大幅にこれを整理するというつもりでやっておりますので、そのやり方の程度、あるいは指定の関係について御意見があるかもしれませんが、方向としてはおっしゃるような方向に私ども努力しておるつもりであります。
  98. 横錢重吉

    横錢委員 重要物産を指定しておる事由、根拠、どういうふうな考え方でこういうふうにそのものを重要なりと認めて指定をして、これによって免税を行うかということですね。これが相当の理由があるだろうと思いますが、これに対してはどういうふうに考えておりますか。
  99. 原純夫

    ○原政府委員 先ほども申しましたように、日本の国民経済に必要である。そうしてほうっておいてはなかなかそういう投資が起らない、大体投資額が多い非常に大きな企業、業種に限っておりますが、そういう種類のものについて、どうしても日本の経済の段階として、そういう原料なり材料なり、物を持ちたいというふうな場合に、関係各省がいろいろ検討されまして、私どもの方に持ち込んでこられます。それをただいま申しましたような見地から検討して指定するしないというのをきめて参るわけであります。つまり国民経済に必要であるが、当面採算が非常に危ない。そうして不安定である。それで相当によけいの投資額が要るというものにつきまして、指定をしておるわけであります。従来もそういう気持でやってきておるのでありますが、なかなか従来の制度では、政令で一度指定しますと、期限がついておりませんものですから、毎年三月末に、この改正税法に付帯する政令の改正をやります際に、どうしても主管の産業官庁は、これを切ってよろしいということはなかなか言いにくいというような実際上の事情もございましたので、今回は推定のときから、国民経済のために必要ならば、そういつまでもゆうちょうなことをやっておれぬわけですから、三年なり五年なり業種に応じて期間をきめて、その間にやって下さい、やって下さる方には免税をいたしましょうということにして、かつ従来と変えて、どんなにもうけが出ても全部免税ということはできません。一定の限度ということで、固定投資額の四割に達すれば、もうその上は全部かけるというふうなことにしていこう、こういうようなことにいたしております。
  100. 横錢重吉

    横錢委員 ほっておいてはできぬとか、あるいは国民経済に必要があるとかということが指定の理由だと言われますが、これを指定していく上に少し落度があるのではないか。少くとも現在の東京電力というものは、この免税措置を受けなければならないというほどの弱い基盤には立っておらない。きょうの株価を見ても、最高の株価というものは日銀の千七百円台、それから東宝の千三百三十円、それに続いて高いのが七百五十円の東電の株です。今日の株というものは、その会社内容を端的に表わす材料として見られると思うのです。こういうふうな内容のいい会社であるからして、従って三十一年度の利益も三十一億六千四百万円というものを出しておる。こういうようなところに出す理由は全然ないのです。しかも、もしも重要物産の指定をするというならば、これは国民経済に必要だ、必要だがなかなか金が集まらぬ、やっても赤字になる、そういうものに対して一応利益が出るまでの間だけ指定をして免税措置を講じてやろうというのならば、これは一応税法上の親心として私はわかると思うのです。ところがそうじゃない。利益がたくさん出ておるところに対してこういうようなものを行わしておる。もしもこういうようなものを指定をして、免税措置を講じてその会社が利益を上げておるとするならば、その会社に対する利益配当の制限をすべきなんです。東電は一割二分ですか、これだけのものを配当しておるけれども、これは配当は何分以下でなくちゃいかぬ、あるいは配当はしてはいかぬというように、片方において何らか国の恩典を施すならば、片方において国の強い制限行為を行うべきなんです。ところが税法上の免税というものはどしどし与えて、利益がしこたま出た、この出た利益というものは幾ら配当しても差しつかえないというような、こういう片寄った税法というものは、今日重税にあえいでいる国民感情からしてはとうてい受け入れられないものである。この点に対する原主税局長の見解を承わっておきたい。
  101. 原純夫

    ○原政府委員 結論から申しますれば、おっしゃるところはしごくごもっともだと思います。私ども、一般の法人なり個人なりが相当重い税金を納めておるときでありますから、これだけ手厚い免税がありますれば、免税になる所得の大部分というものはやはり社内に留保して、そして不安があるから負けてやろうというわけでありますから、ほんとうに不安が現実に出た場合に耐えていくというふうにしていただきたいと思います。これはもう従来から、当然そういう気持でなくてはならぬというふうに考えておりまするし、そういうふうに会社にも各官庁から指導していただいておると思います。なおこの際部内で話し合いまして、そういう方向にはっきりと行政的に努力するということにつきまして、私として善処することをお約束いたします。
  102. 横錢重吉

    横錢委員 今の局長の答弁に期待いたしますが、さらに現在行われている特別措置の実施を受けている会社 その内容、減税額、そういうような具体的なものについての資料を一つお願いしたいと思います。  それからさらにつけ加えたいことは、今の東電等の場合においては、これは別の法案で多目的ダムなんか国費を投じて作り上げている、あるいはまた産業投資やその他の面からの金も融資をして応援をする。これは全く発電に要するところのダムを作って、電力会社としたならば、自分に必要なだけの機械しか据え付けない。そこでダムというものは国費で作って、出たものはどんどんと会社の利益の対象となり、その利益は自由に処分ができる、こういうような制度というものは、国民にとって非常に耐えがたいところの一部会社に対する恩典である。もしもそれだけのものがあるならば、これは当然国家的な見地から、あるいはまた霊力の社会性というものを求めて、利益配当に対する強い制限を行うべきである、こういうような見地からもあわせてこの点考えていただきたいと思うのであります。  次には、今回いうところの一千億減税が行われたとしました後に、その後の税制全般を見渡した場合には、なおどの層に税が過重であるか、どの層の税金が重いと考えておられるか、この点についての見解を承わりたい。
  103. 原純夫

    ○原政府委員 非常にむずかしい問題で、的確に申せば、それは万人万様の判断になると思います。私ども今回の改正法案におきましては、たびたび申し上げますように、控除もさることながら、税率の方に相当重点を置いて直したいと思いますゆえんは、特定の所得の段階をとって累進税率の影響を考えて参りますときわめて明白であります。一々数字を申しませんが、その際、たとえば昭和十五年における税負担、それから現在の税負担というものを貨幣価値の変動を調整して比べました数字もお耳にかけたことがございます。その際は、たしか税金がかからないところは二十七万円余りでございますが、その辺までは昭和十五年当時とほぼ同じようになっている。今回はそれが若干上のところまでかからなくなるわけでありますが、かかる人の負担は急速に当時の二倍、三倍、四倍となり、最高の倍率を示したところは、たしか八十九万円のところが四・九倍、五倍近い数字になっておったと思います。今回の改正によりましてこれが相当緩和されまするが、なお当時に比べて二倍をこえるという階層が残ります。もちろん昭和十五年の各所得階層間の負担のバランスが絶対にいいというものではございませんので、それだけで議論するつもりはございませんが、やはりかつての時期にあったという一つの指標になりまするし、またもう一つは、家計調査で、所得の階層別にどこに貯蓄が始まって、それがどう伸びていくのかというのを見ますと、これは先般差し上げました資料の線のたくさん入ったグラフで出ておりますが、課税最低限よりも若干下のところで貯蓄が始まっておる、そして、それが所得がふえるに従って絶対額はふえていくわけでありますが、所得に対する割合から言いますと、必ずしも伸びがそうよくないというような何が出ております。その辺考えまして、今般の税率中心の改正はやはり必要だという判断でやったわけであります。今後その問題を考えます場合に、どこが重いかと言われますと実は非常にお返事に困りますのは、勤労者の場合ですと大体百パーセント納税される。ところが事業所得になりますと、なかなか所得の計算もむずかしいし、また申告納税がまだまだ板についておりませんので、そこに先日も横山委員の御質問にお答えしたときのように、実際上相当のアンバランスがある。それらを税務行政の面で、また納税者にも十分お考えいただいて、公平な税が実現するようにしてやって参りまして、その上で負担の何を見るということにいたしたい。私としては、まだ今回の減税をしただけで、それでもうこれなら満点だとは思っておりません。いろいろまだ問題はあると思いますが、そういう執行面の、また納税面の問題もありますので、それらを含めてなお今後研究して参りたい。ただいまのところとしては、一応これであるバランスがとれはしないかと思っておりますけれども、その辺は、何分にも人それぞれで判断の違うところであると思いますし、なお今後十分研究して参りたいと思います。
  104. 横錢重吉

    横錢委員 ただいまの点でははっきりしませんが、これはまた大きな問題でもありますので、あとで大臣にも質問したいと思いますので、一応次に移りたいと思います。  次には、税の名称問題について伺いたいのですが、同じような税の場合に名称が異なっておる。一例をあげますと、揮発油税と砂糖消費税、この場合において、砂糖には何がゆえに消費税がつくのか、同じように消費を目的としたところのものであるが、揮発油に対しては揮発油税、税というものをとるからには、名前をつけるときに相当の理由があるだろうと思うのです。片方は揮発油税で片方は砂糖消費税、こういう考え方に対してはどういうふうに考えておられるのか、承わっておきたいと思います。
  105. 原純夫

    ○原政府委員 これもちょっと答弁に困るのでございますが、多分に沿革的なものだと思います。各税が同じ時点で起されたというのでなくて、いろいろな時期にできてずっと沿革的に発展をしてきております。明治の終りごろであったと思います、織物、砂糖というものが課税せられるようになって、そのころの何が砂糖消費税、織物消費税という形で出てきた。他の税ではそれぞれ対象の物品だけをつけて、揮発油税あるいは骨ぱい税というような形にしておるものが多いのでありますが、特に意味があって、特別な意味を持たして名称を違えたということではなくて、多分に沿革的なものだというふうに考えておるのでございます。
  106. 横錢重吉

    横錢委員 砂糖消費税の方は第三条において「砂糖類の製造者は、その製造場から移出した砂糖類の重量に応じ、砂糖消費税を納める義務がある。」というのですが、これは製造者に対して納税義務を課しておる。製造者に対して納税義務を課したのが、これが砂糖消費税なのです。片方の揮発油税の方は、「揮発油税は、製造場又は保税地域から揮発油を引き取るとき、引取人から徴収する。」消費を目的として、販売といいますか、とにかく引き取る人に対してかかる方が消費税という名前がかかっていない。製造者に対してかかる方が消費税がかかる。これは今沿革の問題と言われればあるいはそうかとも思うのですが、税をとるからには、やはり相当の理由納税者に対するところの義務、こういうふうなものがあるので、この辺のところは、沿革とすれば適当の機会に整理をする考えがあるのかないのか、この点一つ承わっておきたい。
  107. 原純夫

    ○原政府委員 引取課税か移出課税かという問題は、たとえばただいまお述べになりました砂糖は、最近移出課税にしておりますが、ついこの間まで引取課税でございました。それから今ございませんが、織物も引取課税であったのでございます。揮発油税も、現在引取課税のものを今回御提案申し上げております法案で移出課税というように直したいと考えております。実際には、引取課税というのは引き取る人というので、いわば消費の側の人が納めるというふうにちょっと読みやすいのですが、実際には製造者がみずから引き取るというような形で課税されてきておったのでございます。それらもあり、大体今後の方向は引取課税よりも移出課税ということで、製造者課税に持っていくのが大体の方向ではなかろうかというふうに考えておるような次第でございます。従いまして、引取か移出かということによってはっきり消費という名前を入れるか入れないかも従来統一されておりませんので、今お話しのように、整理のため統一するという問題もあろうかと思います。とくと検討してみたいと思いますが、率直に申し上げますと、間接税全般が非常に沿革的になっておりまして、そういう名前だけの問題だけじゃなくて、税率自体に、たびたび申し上げますように、テレビが最終価格に対して一割かかっておる、ところが砂糖をなめても四割何分かかっておるというような問題がある、それをここでぬけぬけと申すのはまことに申しわけないようなわけでありますけれども、そういうような問題を含めて、沿革だけでなく全般的に検討しなければならぬという気持は持っておりますが、名前をどうするか、それらをあわせて一つ研究さしていただきたいと思います。
  108. 横錢重吉

    横錢委員 次に、納税時期の問題について伺いたい。税によって納税の時期がある程度違っておる、これは一体いつ納めるのが適当なのか、源泉徴収の場合には、その月のものを翌月の十日までだと承知しております。それから申告の場合には、大体四月ごとに納める。それから入場税、取引所税、物品税というような場合には翌月の末になっておる。しかも物品税の二、三種の場合には型々月末までよろしい。それから砂糖の場合には翌月末である。この場合には担保を入れるというと三ヵ月の猶余が行われる。これを見た場合に、ほかから見たならば非常に源泉徴収に対して過酷な期間しかない。こう考えるのですが、この辺のところはどうしてこうなったのですか。
  109. 原純夫

    ○原政府委員 納期はそれぞれその場合の実情を考えてバランスをとってあると思っております。まず源泉関係でありますが、源泉徴収の税金は、給与なら給与を払う、その一部をとめておくわけでありますから、源泉徴収義務者のふところには今すぐ入り、すぐにでも納められるわけであります。そういう意味で、すぐに納めていただくという趣旨で、翌月十日までということにいたしておるわけであります。間接諸税の中でも、入場税あるいは間接税と申しますか、有価証券の取引関係の税でありますれば、それは取引の際にやはり取ってしまうわけでありますから、これはすぐに納めていただく。あまり期限を長くしてしまいますと、その間どこかにいってしまうというような問題もありますので、すぐに納めてもらう。所得課税になりますと、所得の計算を確定いたしますのにある程度時間をかけるということをやはり見ておかなければいかぬというのが一つ。それから源泉徴収の場合のように、払う給与の中から、もうとめておくというのじゃなくて、やはり商売というものは資金を、全部振り回しておりますから、そういうようなことも考えて、所得税ですと二ヵ月半、法人税だと二ヵ月というふうにいたしております。間接税の中で、ただいま申した入場税のようなものでないもの、つまり金がすぐに入ってこない物品税、砂糖、酒というようなものにつきましては、おおむね取引の条件、決済条件というようなものを見まして、この程度ならば納められるだろうという時期をねらって納期をきめております。そのような関係から、物品税、あるいは砂糖消費税、あるいは取引の条件が変るに従って納期、あるいはただいまおっしゃいました担保を入れて延納を認めて、その時期を動かしたというような事例が、ここ六、七年の間に二、三あると思います。いずれもあまりに決済条件が悪くなるというようなときには、何か考えなければならぬことがございますし、またその逆の場合には、納期を縮めるというようなこともございます。しかし、あまりこういうものはそうしょっちゅう変えるべき性質のものではない。大体現在の程度でバランスがとれるというふうに考えております。
  110. 横錢重吉

    横錢委員 源泉徴収の場合には、納税義務者が支払ったものから税金を受け取って、これをとめておくんだから、この期間はわずか十日間くらいでもよろしい、こういうことになると思います。ところが、これは自分が持っているべき金でなしに、もうすでに税金として出さなければならない、所有権の違う金であります。その理論をもってすれば、入場税の場合も同じなんです。これは明らかに入場料というものと入場税とは違う。これは客から取っておる。税金として客から預かった金を保管しておる。だからきょう取ったものをあしたでも納められるという根拠の上に立っているのに、この場合においては今月の月末までに取ったものは、来月の月末までに納める。つまり一ヵ月間の納税の猶予があるわけです。この猶予というのは、今あなたの答弁では、実情を考えてということなんですが、この実情を考えてというのは、この間に受け取った金を回転することによって、恩典を与えよう。これによって徴税事務に対する手数料といいますか、そういうふうな形ではないけれども、そういうふうな意味において、この間の納税時期というものを猶予しているのではないか、こういうふうに見るのだが、事実は違うのですか。
  111. 原純夫

    ○原政府委員 おっしゃるように、源泉は翌月十日、入場税は翌月末だという点は、若干違いがございまして、一緒にしたらどうだという御議論もあると思います。ただ入場税を二十日だけおそくしておりますのは、その間に振り回しをつけるという意味でおそくしているのではございませんので、むしろやはりいろんな計算の整理や何かに若干の日数を見るというのが、しいて言えば理屈かと思います。若干沿革的にそうなっておるという点もいなめないと思いますが、当月分を翌月末というのは、先ほど申しました、すぐ納めるというような趣旨に沿ってるんじゃないかという気がしておる次第でございます。
  112. 横錢重吉

    横錢委員 計算の整理のために翌月末にしているというのは、答弁としては当らない。入場税の場合には、一日一日の計算ができておる。できなければならぬはずです。一日々々の計算ができておるのだから、翌月末までの日数がなければ整理できないという論は、御答弁にならないと思う。それではこれだけ源泉所得と違った恩典を与えている理由が立たないと思う。この理由は、やはりその期間の金を、一応費金繰りが苦しいから回転をさせてやる、回転させてやることによって、入場税の高い点、あるいはまた徴税に要したところの手数料という意味、そういうふうな意味での恩典、手心を加えて翌月末というように若干おくらせておるということではないですか。
  113. 原純夫

    ○原政府委員 若干沿革も入っておりまするし、また物品税の中で、小売課税のものがございます。小売課税のものは、小売値段の二割と一割ということで取っておりますが、これなども小売指定でありますから、小売も掛があるといえばあり得るわけですが、大体掛のないようなものが多い。そういうようなものについても、翌月末ということにしております。この辺が、そういうニュアンスをしいて申し上げて主張するということではございませんが、給与を払ううちから天引きするというのと、商売で売って、売ったものの中に税金が入っているというのと、何といいますか、そういう商売しておられる方、また入場税の興行館というようなものは、いろいろ金が詰まる、それで詰まるわけじゃないですけれども――というようなことで、御要望があったりしたようなこともかつてあったということを記憶しております。決して振り回させてもうけさすというようなつもりではないですけれども、やはり人のものといっても企業から取るというようなことが、若干源泉徴収の場合とニュアンスが違うというようなところが沿革に入って、こういうようなことになっていると思います。なお十分研究いたしてみたいと思いますが、しいてこれで完全にバランスがとれるとも言い切れないと思いますが、それじゃ物品税の第一と入場税を十日にするかということになりますと、またなお十分研究してみなければいかぬと思いますので、なお研究させていただきたいと思います。
  114. 横錢重吉

    横錢委員 手数のかかるという点では、実際には各銀行、会社等の税金の計算の方が手数がかかっておる。これは、そのつど支払いの給料というものが違いますし、そのために源泉徴収に要する手間というものは、容易ならないものであります。これは入場税とは比較にならない。それだけの手間を払っておるが、しかしながらこの方面に対しては十日間しか猶予ができない。十日間といえば大体整理できる期間であるけれども、源泉の方に対して十日間で、同じ考え方の上に立ったものが翌月末だということは、やはり税法上の考え方からするならば、明らかな理由がない限りはやはり考慮すべき点ではないか、こう思うのです。それからさらにこの問題を見る場合に、同じ所得税で、源泉徴収の場合には翌月の十日に納めなければならぬ、大体毎月末にはもう引かれるわけですね。このものと四月ごとの申告所得のものとは、年に六十万の税金を納める人にあっては――さっきあなたが商売上のやり繰りをしているという答弁をなさいましたが、日歩三銭で計算した場合にも、六十万の場合には五千百円です。これは三銭で回しているというようなところはない。同じ税額であって、同じ税種であって、同じ所得であって、それが源泉徴収の所得税申告所得の場合には、六十万の場合において日歩三銭でやってもこれは五千百円違う。この五千百円というのは、期日通りに納めている方にそれだけあれを与えるのです。これは当然なんですが、年末調整とかあるいはその他の場合において、これが引かれて初めて源泉所得申告所得の税も公正な立場に立つと考えるのですが、この点はどうですか。
  115. 原純夫

    ○原政府委員 おっしゃる通り、納期が違うという点から、そういう計算をいたしますれば金利の差は出てくるというのは、おっしゃる通りであります。われわれとしても、給与所得控除というものにはいろいろな意味がありますけれども、そういう点も一つのファクターだというふうに考えております。給与所得控除にいろいろな事由がついて恐縮でありますけれども、しかし何といいますか、源泉徴収制度というものはやはり課税、徴税を公平に確実にというのが主眼点で、まあしいて言われれば、給与所得控除というものもあるというお答えになろうかと思います。
  116. 横錢重吉

    横錢委員 税金というものは、脱税をしたり、あるいはごまかしたり、あるいは滞納したり、延納したり、そういう者に対して恩典を施すべきものではなくて、期日通りにぴたりぴたりと納める者に対して恩典を施してこそ税の信用、税の信頼度というものが高まってくるんではないですか。その論からした場合、所得があった場合になるべく早く納める、ほかの方では翌月末だ、あるものにおいては三ヵ月もおくれる、またあるものにおいては四月もおくれる、こういう今月やったものを来月の十日に納める、そういうふうな確実に納めている者に対して、しかもこの金利を計算した場合には明らかにこれだけの差が出てきておる。これが出てきておるにもかかわらず、これに対して何らの措置をとらないということは、私は税の国民に対する信頼を高めるゆえんではないと思う。それだけの差が税の徴収の上から見てもある限りにおいては、何らかの措置をとるべきだ、こういうふうに考えるわけですが、この点さらに御答弁を承わりたい。
  117. 原純夫

    ○原政府委員 ただいま申しましたように、税はそれぞれ源泉徴収の場合であれば徴収したときに取る。それからある期間の所得を計算して課税するという場合は、その計算ができたところで取る。申告納税の場合は、それを予定申告で一部ずつ取って参るというようなことで、こまかく金利計算までやっておらないのでありますが、一方で給与所得については、給与所得控除というものがあって、これについては、御案内の通り昨年一五%を二〇%に上げるというようなこともいたしております。そういうようなことで、一切がっさいひっくるめて今の制度でバランスがとれているのではないかというふうにも考えておるわけですが、その点だけを一つ抜き出して金利がどうというふうに言われますれば、違うことは確かです。しかしそれらを含めて、給与所得控除も考え、全体のバランスがとれているというふうにお考えいただきたいと思うのでございます。
  118. 横錢重吉

    横錢委員 全体のバランスの上からいくと、私はとられていないと思うのです。これはあとの問題でも触れたいと思うのですが、所得の把握という点については、これは全然他の業層との間に源泉の場合には問題にならない。それほど確実にとられている。しかも納期が早い。これは国家にとっても、このくらい有力な税源というものは私はないだろうと思います。確実に、徴税費用がかからないで、しかも所得が発生するならば直ちに入ってくる。こういうふうなものは他にその例を見ないと思う。それに対して過酷な点だけをびしびし要求しておって、恩典の方になると、ほかの方の滞納の多い、あるいはまたあやまちの多い、脱税の多い、そういうような業種に対する方が国家としての恩典が加えられているということは、これは納得がいきがたいと思うのです。これは今ここで答弁を求めても無理かもわかりませんが、税の改正に当っては、十分一つ研究をして善処していただきたいと思うのです。  それから次には、所得の把握の問題に入っていきたいと思います。これは、あるいは主税局長よりも国税庁長官の方が答弁に適当ではないか、こう思うので、どちらでも一つ答弁願いたいと思います。現在所得税は、民主主義の原則によって、私はこれだけの収入がありましたという申告制度の上に立っていると思うのです。しかしながら実際では、この申告所得というのはうまくいっていないのではないか、青色の場合においても白色の場合においても、どっちもこの申告所得というものはうまくいっていないのではないか。これは、なぜその立法の考え通り、あるいはまた税務当局が期待をしておる通りに出てこなくて現在のような状況になっておるのか、この点に関して一つ御意見を聞きたいと思います。
  119. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 申告所得税につきまして、お話しのように現在全部が全部正確な申告が出ていることがないということは、私もまだそういう段階に至っていないと思っております。結局納税者の気持としましては、納税者の中にははっきり帳簿もつけていない人もいまして、正直いいますと、御自分で御自分の所得といいますか、税法の上で計算する所得がはっきりわからないと思われるような方すらあるというようなところからも一つあろうと思いますが、終戦後の経緯をずっと考えて参りますと、税の負担全体が非常に重かった。従って税法のいかんにかかわらず、何とかして税金を安くしたいといった気持の方がやはり相当多くあったということではないか。それは、何回かの減税によりましてかなり直されては参りましたが、現状においてもまだいわゆる納税観念といいますか、納税思想といいますか、その点において必ずしもすべての方が完全でないといったような問題もあろうと思っております。   〔委員長退席、平岡委員長代理着席〕  いろいろな意味におきまして、われわれの方は努力しておりますが、やはり一つは税というものに対する考え方、これは、いろいろな面で政府としても考えなければならぬ点が多々あろうと思います。金を使う方の面においても考えなければなりませんでしょうし、それから税制そのもの、あるいはいろいろな面で考えなければならぬ面があろうと思いますが、とにかく国民が民主的な政治を行なっていくその費用を負担するのだという観念で、税法にきめられた負担は出していただくのだ、こういう意味で、いわば啓蒙的なことも考えなければならぬでしょうし、同時に、必ずしも質が悪いと言っては語弊があるかもしれませんが、安心し得ない方につきましては、調査を充実させることによりまして、更正決定も場合によってはやむを得ない、こういうことによって課税の適正を期していく。しかし、これは何と申しましても、限られた税務職員をもって非常に数の多い納税者の方に対していくわけですから、そう早急に全部が全部というわけには参りません。しかし、ここ数年だんだん改善されてはきていると私は思っております。ことに今度のように税率が相当引き下げられますと、納税者としましても、負担について苦痛を感ずる度合いがかなり減ってくると思いますし、そうしますれば、いい機会でもありますので、われわれの方も大いに啓蒙的なことも考えますし、納税者としても、その気になっていただき、税務行政についても相当改善されていく余地が出てくるのじゃないか、かように考えております。
  120. 横錢重吉

    横錢委員 せっかくの申告制度を作っておっても、青色の場合においてはこれだけの指導をしておっても、実際上申告通りに税務署が認めるといいますか、これを信用するということが行われているのは約半分もないんじゃないですか。大体は、出てきたものに対して相当の意見を加えて出させる、あるいはまた調整をさせる、これをやらなければ通らない。あるいはまた税務署に来る前に税理士とか会計事務所とかいうものの厄介になって、そこで調整してくる、こういうような現状じゃないかと思うのですが、青色申告などの場合、どの程度まで実際に行われていますか。
  121. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 私今正確に数字を記憶しておりませんので、はっきりしたことは申し上げかねます。しかし青色申告制度ができまして、そうですね、二十五年に改正ができまして一二、三年の間は、青色申告納税者の数も一割ちょっとくらいでありました。数が少なかった間は正直といいますか、割に青色申告をなさった方が、まじめに申告される率は高かったように思います。しかし青色申告制度をもっと積極的に拡充させていきたい、数をふやしたいというので、かなり数を増加する方向に実はわれわれ努力いたしました。そうしますと、絶対数からいきますと、青色申告でまじめな申告をしていただく数はもちろんふえたわけですが、最近のように半分以上も青色申告であるといったような姿になって参りますと、やはりその中には、本来の青色中古の精神といいますか、意味を身につけて申告しているのでないと思われる方が相当ある。そこでわれわれの方としましては、この際はもう数をふやす方の努力はちょっと立ちどまって、と申しますは、納税者の方で青竹申告したいからというのをいかぬというのじゃございませんが、こちらの方でお勧めして青色申告をやって下さいと申し上げる手だての方は、ちょっとここで一段落して、現在青色申告をしていらっしゃる方にほんとうの、記帳の方法はもちろんですが、同時に誠実な申告をしていただくという面においての啓蒙について、われわれとしては努力して参りたい、こういうことを現在考えてやっているわけです。
  122. 横錢重吉

    横錢委員 現在青色申告をしている者はどのくらいの人数おりますか。またパーセンテージはどの程度でありますか。
  123. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 昭和三十年の数字で申し上げますと、営業関係だけでございますと、課税になった人員が約百万、そのうち青色申告者は、四十六万。それから青色申告者の中で課税になった人員が三十四万。従いまして、百万の数字と対照いたしますと、三割三分でございます。最近この数字がやや増加の傾向にあります。
  124. 横錢重吉

    横錢委員 所得申告に基いて政府がせっかく指導して作っておる青色申告の場合においても、この程度の成績で、しかも今の長官の言明によると、これ以上積極的にふやす意思がないという段階にまで来ている。だとすると、その他の白色の場合においては、一体どういうふうに税務当局が臨んでいくかという問題があるだろうと思うのです。今の税金でいくと、大体申告してくるものに対して全面的に信用してかかっていくか、あるいは全面的に疑ってかかっていくか、どっちかしかないと思う。ところが実際には出てきたものを全面的に信用して、申告所得考え方通りにそれを認めるということはなかなかできない。そこで更正決定というものがこれに備えてあるわけです。制度とすればおよそおかしな意味なんです。本来の考え方からいくならば、納税者そのものを全然信用しない。信用できがたいという考え方の上に立っている。そしてそういうような制度でもってやっていくところに――先般の質疑でお知らせ制度というものは今後全廃するというような線が出ましたが、大体は税務署がお知らせをする、あるいはまた予定通告をする、こういうような所得の把握に対しては、私の知る限りにおいては大体無理がない。税務署の査定というものは、実際上の所得よりは相当程度内輪に見られている場合が多い。にもかかわらず、これに対して税務署と申告者との間に疑わなければならぬほどの今日の現象がなぜ出てきているかというと、所得そのものではなしに、決定される税額に不服がある。この税額をもっと下げる方法を考えなければ、今日の税制上の信頼感は出てこない。そういう面から見ると、今度は地方税の方においては、芸者の花代が高過ぎる、高過ぎるからみなうそばかりが多くて、本来の三〇%のものがかからない。従ってこれをその税法通りに納めさせようという意味で半減した。こういうふうな同じ考え方からするならば、当然今度の税法の場合においては、もっともっと税率が下れば申告者の方でも正直に申告をして、喜んで納税をするというふうな気持になってくる。従って税率は下った、申告は正しく行われた、そうして上ってきた税金は従来取っておったものよりもよけい出てくる、こういう結果になるのじゃないかと思うのです。この辺について一つ見解を伺いたい。
  125. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 基本的には、私も横銭委員のおっしゃられる点は、ある意味において同感でございます。その前に、先ほどの答弁で多少誤解を招くといけませんから、一つつけ加えさせていただきますが、青色申告の数の増加に熱心になることはこの際とどまって、質の向上に努める。これは将来もずっとその方向で、これ以上ふやさぬということではないのです。その基準といたしましては、この際としては質の向上に努め、質の向上が相当できたら、今度は数の増加に努めるというようなある程度弾力性のある方向をとってみたいということをちょっとつけ加えさせていただきます。  それからお話しのように、確かに所得の金額そのものは、税務署の言う金額の通りと考えても間違いがないが、しかしそれにしてもこれだけの税金は納め切れぬという不満は、終戦直後非常に多かったが、数次の減税によりまして、かなりその点は直されて参りましたが、しかし過去何回かの減税が、主として基礎控除あるいは扶養控除の引き上げという点に重点が置かれましたために、申告所得税の一番税金を納める額の多い中堅層の方の負担は、数次の減税にもかかわらず、それほど減っていないというのが過去における何回かの減税の特色だったように思います。今回の改正は、その辺を十分頭に入れまして、税率の相当の引き下げを行なっております。従いまして、先ほどもちょっと触れましたが、今度の改正でこれでもう十分だ、これ以上減税する必要はないという意味ではございませんが、しかし今回の改正後におきましては、かなりそういった意味の無理がなくなって参りますから、申告提出につきましても、納税者としても割合に正確な申告をしていただけるような方向にいくのではないか。同時にわれわれとして期待いたしますところは、そこでさらに税収がふえてくれば第二、第三の減税が可能であるわけでありまして、従っていい意味の循環ができていくことをわれわれとしても期待しておるわけであります。
  126. 横錢重吉

    横錢委員 税務署の実際を見るときに、少数の人数で、しかも短期間に多数の人に対して所得の把握、あるいは更正決定、あるいはこれに対する苦情処理、こういうふうな問題に応じていると思う。従って今日の職員の不足や機構の状態では、私は信頼感の高まるような、いわゆる取られる税金でなしに納める税金というところまではなかなか行きがたいのではないかと思うのです。そうしてまた国家というものが税金によって運営されている以上は、われわれの血税である税金を取られたという怨嗟の的によって国家が運営されるということは、大へんな問題だと思う。われわれが喜んで納めたその税金によって国家が動いていくのだということになって、初めて私は納めるものも取るものもよい状態ができてくると思うのです。ところが今日の情勢を見てみると、こういうような今日の税務署の職員や機構ではとうていできがたいのじゃないか。また一面この青色申告等を見てみても、同じ税金を納めるのに、こういうような青と白の区別があったり、またこういうようなものをしなければなかなか税金が納められないというような状態では、まことに嘆かわしいと思うのであります。税金を納めるのに、何の技術も要らずに納められるようにしなければならぬと思うのです。今日のこの複雑な徴税機構、あるいはこれに関係するところのいろいろな制度というものは全廃をして、すっきりした考えで納められるようにしなければいかぬと思う。その面で、何といってもこれを決定するものは税率が低くなることです。税率が低くなるならば、必ず所得申告というものは正しく行われるのだ。そうすれば、また納める者も納得するだろうと思うのです。この点は、今回の減税程度ではまだまだスズメの涙ほどの減税であります。これをもっと徹底的に減税するためのいろいろな研究を当局としてはやってほしいのです。これができなかったならば、今日の税金苦というものをやわらげることはできないだろうというふうに考えておるのであります。今の御説明で納得しますが、さらにまた御意見を承わっておきたいと思います。
  127. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 横錢委員のおっしゃった御意見、実は私も非常に同感の点が多いといいますか、大部分同感であります。御承知のような程度の税務職員を擁しまして、御承知のような大きな人数の納税人員に対して調査をやっていく、それも納税者が積極的に税金を納める気で御協力願う意味でありますれば、必ずしもむずかしいとは申しませんが、税負担が重いことのゆえに、できるだけ理屈のいかんにかかわらず、所得を小さくして税金を軽くしたいという気持の方が相当数あるその納税者の方に向って、現在の人数の税務職員でもって仕事をやっていくということは困難なことでございまして、その点は横錢委員から非常に御理解あるお言葉をいただいて感謝しておりますが、と申しまして、それでは税務職員の数をふやすということになりますと、なかなかちっとやそっとふやしただけですぐできるものではありませんし、それほどまでして納税者のふところをかき回すというような印象を与えるのもいかがかと思いますので、それよりもむしろもっと基本的な根元の方で、今横錢委員のおっしゃったような意味において、できれば税負担そのものを軽くするといいますか、税法上の税率を下げることによって、ほんとうに正しい所得申告をしてもそれほどの大きな負担を感じないような姿に持っていける時期が早くくるようにということは、われわれも衷心念願しておるところであります。結局日本の経済がだんだん伸びて参りまして、国民所得もふえて参り、財政規模がそれほどふえないで済むということになって参りますと、今お話しのような点もかなり実現可能じゃないか、やはり順次いろいろな段階が必要じゃないか、それにしても今度の減税によりまして、それで十分ということはもちろんありません。しかし従来に比べますれば、かなり改善された姿のものが期待できるのじゃないか、かように考えております。
  128. 横錢重吉

    横錢委員 今度の予算で、昨年よりも千二百二億ですか、この程度の税額が増収になるわけですが、この場合の課税に対しては、頭からやはりこの程度のものは取れるだろうというような見込みの天下りといいますか、徴税技術上の考慮をやりはしないかということを非常に一般ではおそれておるわけであります。また現実に、国税ではなかったですが、他の税制機構の上で見ておると、税金が上った場合には、必ずみなげたばきで下におりてくる、一ヵ所でげたばきでおりてくると、またげたをはかす、またげたをはかすということで、三割も四割も事実上よりも多く税金がおりてきておるというようなことに当ったことがあるのですが、今度の場合にそういうことをやらないかどうか、事際上の増収に応じてこれを取るつもりであるか、見込みによるところの課税を各税務者にかけていかぬかどうか、この点について承わっておきたい。
  129. 渡邊嘉久造

    渡邊政府委員 お話しのような点は、確かに納税者の一部の方には相当御心配になっているように思います。しかし私はっきり申し上げまして、そういうことは絶対にない、いわばその裏づけ的な意味におきまして、幾つかの点を考えてみたいと思います。と申し上げますのは、今度の減税後におきまして、一般会計における税額は、お話しのように千二百一億ふえております。これのベースになっておる数字は、減税前におきましての数字なんですが、現行税法によりまして千九百二十二億の増収を見込んで、そして減税による減を差し引いて今申した千二百一億になっているわけであります。その場合におきまして、それじゃ一体どういうところにこの千九百二十二億の増収をわれわれが見積っているかということをちょっと申し上げますと、一番大きな金額といたしましては、法人税で八百三十四億、源泉の所得税において五百六十五億という数字があります。それからあと、酒の税金で百六十億、関税で八十六億、揮発油税で六十八億、物品税で五十五億、印紙収入で五十三億、まあこんなのが大きうございまして、申告所得税で一応見積っておりますのは六十三億であります。三十一年度の予算が一応六百二十七億でして、六十三億、これが実は今度の予算のベースの数字になっております。  苛斂誅求といったようなことをとかく批判されます一番対象になるものは、大体申告所得税であることは、横錢委員よく御承知の通りです。源泉の場合におきまして苛斂誅求といいましても、それはもう監査をやることも従来からやっておりますし、いろいろありますが、しかし特にここに苛斂誅求という問題があるとは思いませんし、法人税におきましても、小さな法人の場合において多少問題はありますが、大部分は大法人が中心になっておりますので、ここにもそれほど大きな問題があろうと思いませんし、他の消費税あるいは関税のようなものになりますれば、これが苛斂誅求とかなんとかいう問題にならぬことは申し上げるまでもないと思います。結局問題は、心配される対象というのは、申告所得税における六十三億とか、あるいは法人税における中小法人課税、これは数は多うございますが、税額にしますとこれの何分の一といったような数になっております。従いまして、税務当局が苛斂誅求をするとかしないとかで変る数字というのは、実は決して多くないわけでございまして、もちろんわれわれの方としまして、そういうことを頭にして、いわば下へ割当をするとかなんとかといったようなことを考えるつもりは毛頭ございませんし、そんなことをしてみたところで、この数字がそう大きく変るわけのものでもありません。結局申告所得税をできるだけ正しく出していただきたいという気持は持ち、いろんな意味で努力はいたす気持はございますが、と同時に、それがいわゆる苛斂誅求の声になって出てくるようなことは厳に戒しめなければならぬ、こういったような気持でやっておりまして、千九百億円からの自然増収をベースに一応ものを考えておりますために、そこに非常に大きな税収があるから、よほど課税上無理が出てくるのじゃないか。一応御心配はごもっともと思いますが、今言ったような点をどの税でどういうふうにわれわれが予定しているかということをしさいにごらん願いますと、苛斂誅求しているのじゃありませんと申し上げることも、決してただ通り一ぺんの言葉でないということが御理解いただけるのじゃないかと私は思います。
  130. 横錢重吉

    横錢委員 申告所得税でふえるのは六十三億だと言われるけれども、新聞で、また国会質疑応答を通じても、一千億減税ということは全国民の間にしみ通ったのですね。その結果、すべての者は、自分の税金は相当程度下るだろう、こういうような期待をばく然と持っておる。相当程度下るだろうと思っておるところに、あにはからんや、通告というものは、これは下りもしなければ、むしろどんどん上っていくということに私はなるだろうと思う。苛斂誅求を避けるということは、それは当然考慮を払わなければならないわけですが、先ほどから申しておるように、税務当局と納税者との間に信頼感というものが、今でき上っていない。片方では、これだけの所得があるという更正決定権というものを持って臨んでおる。片方では、何とかして税金をもっと安くしなければならぬ。こういうような対立をした考え方の中におる。しかもそこに一千億の大きな減税というものがふえておるから、これはもっと税金が安くなるだろうというふうに考えておると、あにはからんや、自分に来た通告というものは、一銭も安くなっていないばかりか、相当程度高くなる部分の方が多いだろう。その間に心がけといいますか、用意といいますか、これを行わずにやった場合に、必要以上の摩擦ができるのではないか、こういうふうに考えるのですが、この点は技術上の問題からして、一つよろしく善処方をお願いしたい、こう考えます。  次には、国税と地方税、地方税と地方税間の問題について、一、二点承わりたい。国費を投じてダム等をどしどし作っておる。ダムのできることはけっこうなのだが、ダムができると、これに付随するいろいろなものに対して、固定資産税等がかかってくる。固定資産税は、現在では市町村税になっておる。そうして、この固定資産税が市町村税になっておるということは、今日の各市町村間における市町村税の税収を非常に不均衡にしておる最大の理由なんです。これは、勤労者層の多い所では市民税がたくさん上る、それから農民層の所では市町村民税が上らないという欠点があります。それよりもさらに輪をかけたものでは固定資産税、特にダムのような大きなものができると、その村に一ぺんに税金が入ってくる。もちろんこういうものは都市ではなくて、山間僻地である。こういうような関係から、これは市町村間のアンバランスを生む理由なのですが、国費を投じてこういうふうなものを作っていく場合に、それがまた市町村間の不均衡の理由になるということは適当でないんではないか。従って固定資産税というものは、むしろその上の段階の道府県税程度にするのが適当なのではないか、こういうふうに私は考えておるのですが、あなた、どう考えますか。
  131. 原純夫

    ○原政府委員 地方税制の中で非常に大きな問題の一つだと思います。個人的な意見を申し上げるのは非常に何ですが、私個人的には全然同感です。そうして本件につきましては、今回も実は若干の改正が地方税法改正案に入って、御審議を願うようになっておりますが、残念ながらその改正は、ただいまお話しの方向と逆の方向でございまして、現在大規模の償却資産があります場合には、人口何万以上でありましたか、人口の程度によって違いますが、一納税者の持っておる固定資産が四億円をこえるという場合には、越える部分は府県に持っていく。ただしうんと大きな何十億という場合には、それの二割までは、たとえば五十億の固定資産がある、大きなダムでしたらそのくらいのものもあり得るかと思いますが、その場合には二割、十億を残しておく、そうして残りの四十億は府県に持っていくというような制度になっておりますが、それを持っていきます場合にも、当該市町村の財政需要がどうであるかというようなことによってまた条件をつけるというようなことが入っております。それらの点について年来議論が重ねられておりまして、私個人的な感じは、おっしゃる通りの方向で実は政府部内でいろいろ議論いたしております。今回も議論の結果、まことに残念でありますが、若干逆の方に行くというふうで、私としてはまことに忍びないような気持でおります。将来は、やはりおっしゃるような不均衡をなくして、ほんとうにバランスのとれた税収の帰属ということを考えますと、上の団体である府県の方になるべく持っていくということが私はいいのじゃないかと考えておりますが、遺憾ながら、そういうことを個人的な意見として申し上げなければならないような段階であることを御了承願います。
  132. 横錢重吉

    横錢委員 時間がないので省略いたしますが、この問題は随所にアンバランスが出て、今あなたの答弁で逆の方向に進んでいると言われるのは、私はまことに遺憾なことだと思うのです。これはなお全国的ないろいろな実情調査されて、これは地方行政の問題にもなるので、所管外であるいは適当でないかと思いますが、これは一つ税制という面からお考え願いたいと思うのです。それから同時に、今度所得税が、また税率軽減されるという場合に、一体農業所得者は改正後どのくらい納めるような格好になるか、これはきわめて僅少な人数になってしまうのではないか、こう思うのですが、これは一体どのくらいですか。
  133. 原純夫

    ○原政府委員 農業所得者は、まず三十一年の予算で見ておりますところを申し上げて、次に三十二年のを申し上げます。三十一年の予算で見ておりますところでは、農業所得者は課税になります人員が五十三万三千人、そうしてその三十一年分の農業所得に対する税額は六十九億と見ております。けさほど神田委員のお尋ねに対して申し上げましたが、この六十九億が若干減りそうに思われておりますが、さて三十二年においてはどうなるか。予算に見込んでおるところを申し上げますと、三十二年におきましては、課税になります人員は四十九万四千人というふうに若干減って参ります。三十二年分の農業所得に対します税額は三十四億ということに相なっております。年度分の徴収税額としましては、三十二年分の税額の一部が三十三年度以降に回りますし、三十一年分以前のものが入ってきますので若干違いますが、税額においては六十九億と見られておったものが三十四億と、ほぼ半減するように見られておりまして、人員は五十三万が四十九万。これは実際には、三十一年分の課税人員が五十三万より若干ふえるのではないかと思っております。
  134. 横錢重吉

    横錢委員 国民の約四〇%近いものが農業に従事しているにもかかわらず、今日の所得税法においては、所得税を納められる者が三十二年度において四十九万四千人程度にしかならないということは、これは一応所得税というものから見た場合には、やはり所得には違いないが、これはもう国税からはずして、農業は別なワクを作って地方税に回してもよいのではないか。むしろ地方税なんかに回した方が、適当な考慮というものが行い得るのではないか、こういうふうに考えるわけです。国税全体の上から見た場合に、日本のこれだけの人数が従事しているのに、これだけ少数の人しか適用にならぬということは、これは今日の所得税法が適当な法律であるのか、あるいはまた、不適当でこうなのか、あるいはまた今日の一般の所得と農業所得というものの間に差ができてきているのか、いずれにしても今日の段階から見た場合には、この点で改正を行なっていくならば、所得税からやがてはずれるだろうと思う。従って、これはむしろこういうような国税の対象とせずに、農業所得は別な地方税か何かに回して取っていく方法を講じた方が、課税の公平という点から見ても適当なのではないか、こういうふうに考えるわけです。この点の見解を一つお聞きしたい。
  135. 原純夫

    ○原政府委員 その点は、国税所得税を納めるべきところの所得のある人は所得税を納めていただく。一方で農業所得者に限らず、営業所得者でも、あるいは庶業の所得者でも、所得税を納めるべき所得がある者は納める、同時に別の面で、住民税は住民税の見地から見て公平に納めるということの方がいいのではないか。と申しますのは、農業は全然所得税をかけないということにしますと、農業にもやはり所得が相当にある人があるわけでありまして、そういう人は所得税がかからない、地方税でかけるということになりますと、他の種類の事業者は国税所得税を納めているのだから、農業所得者に対する地方税は、他の業種の所得者に対する地方税よりもこういうふうに重くするということがなければならないわけで、それはやはりよろしくない。所得税所得税で公平に取る、地方税は別に地方税で公平に取る。国税所得税において、総体の所得者の中で納税義務を持つ者をどの程度に押えるかということは非常に大きな問題でございます。ただ単に少くするというだけでもいけない面もございます。まあここのところ六、七年減税に減税を続けて、人員も非常に減ってきておりますけれども、まだ多いという説もあり、同時にやはり所得税が税の基本であり、そして国民が所得に応じて納めなければならぬという意味からもこの程度でとめろという議論もあり、そこには非常に大きな問題があることを私ども常々感じておりますが、その解決は、やはり少くなってきたから地方税に持っていけということではいけないじゃないかと私は考えておるのでございます。
  136. 横錢重吉

    横錢委員 まだ質問は残っているのですが、時間が来ましたから、一応本日はこの程度にしておきます。
  137. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十二日、火曜日午前十時三十分より開会することといたしまして、これにて散会いたします。    午後四時九分散会