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1957-03-05 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月五日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 藤枝 泉介君    理事 横錢 重吉君       淺香 忠雄君    大平 正芳君       奧村又十郎君    加藤 高蔵君       吉川 久衛君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    古川 丈吉君       坊  秀男君    前田房之助君       山木 勝市君    有馬 輝武君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   渡邊喜久造君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月二日  委員山手滿男君辞任につき、その補欠として森  山欽司君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月一日  国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案  (内閣提出第六四号) 同月四日  地方道路税法の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号)  特定多目的ダム建設工事特別会計法案内閣提  出第七四号)  特定土地改良工事特別会計法案内閣提出第七  五号)  中小企業資産評価特例に関する法律案(  内閣提出第七六号)  国際学会等への加入に伴う分担金債務負担に  関する法律案内閣提出第七七号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  税関支署設置に関し承認を求めるの件(内閣  提出承認第三号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  とん税法案内閣提出第一五号)  特別とん税法案内閣提出第一六号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一九号)  トランプ類税法案内閣提出第四五号)  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  関税定率法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第五七号)  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び  脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの  間の条約の実施に伴う所得税法特例等に関す  る法律案内閣提出第六一号)  国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案  (内閣提出第六四号)  地方道路税法の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号)  特定多目的ダム建設工事特別会計法案内閣提  出第七四号)  特定土地改良工事特別会計法案内閣提出第七  五号)  中小企業資産評価特例に関する法律案(  内閣提出第七六号)  国際学会等への加入に伴う分担金債務負担に  関する法律案内閣提出第七七号)     —————————————
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。  この際御報告をいたします。当委員会において予備審査中の、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支所設置に関し承認を求めるの件につきましては、昨四口参議院において可決せられ、同日本院に送付せられ、当委員会に付託となりましたから、御報告をいたしておきます。     —————————————
  3. 山本幸一

    山本委員長 次に、去る一日当委員会審査を付託されました、内閣提出上にかかわる国の庁舎等使用調整等に関する特別描画法案、及び昨四日付託されました特定多目的ダム建設工事特別会計法案特定土地改良工事特別会計法案中小企業資産評価特例に関する法律案国際学会等への加入に伴う分担金債務負担に関する法律案の四法律案との合計五法律案一括議題として審査に入ります。  まず政府側より順次提案理由説明を聴取いたします。足立政務次官
  4. 足立篤郎

    足立政府委員 ただいま議題となりました国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案外法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  まず国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案について申し上げます。  行政財産のうち、国の事務もしくは事業または企業の用に供している庁舎その他の建物、その付帯施設及びこれらの敷地のうちには、必ずしも適正かつ効率的に使用されていないものがあり、ことに平面的に散在して市街地の発展を阻害しているものが少くない現状であります。従いまして、これらの庁舎等につき使用調整を行なって、その使用方法を一そう合理的なものとする必要があり、さらに、庁舎等のうち特定建築物耐火構造高層建築物立体化し、またはその位置を移転して、これらによって不用となる庁舎等住宅敷地その他に活用をはかり、もって公務の能率の向上と公衆の利便の増進に資することは目下の急務であると考えられます。このような事情にかんがみ、ここに本法律案提出いたした次第であります。  以下、本法律案の概略を御説明申し上げます。  まず第一に、大蔵大臣は、毎会計年度末現在において各省各庁の長が作成する庁舎等使用現況及び見込みに関する報告書により国有庁舎等使用現況を常に把握することとし、またこの報告書により国の庁舎等について使用調整を行うことが必要であると認めるときは、庁舎等使用調整に関する計画を定めて各省各庁の長に通知することといたしております。すなわち、大蔵大臣は、この計画に基いて各省各庁の長に対し、庁舎等の所管がえ、所属がえその他必要な措置を求めることができることといたしているのであります。  第二に、大蔵大臣は、特定庁舎等にかかわる建築物立体化して耐火構造高層建築物とし、または主として住宅敷地を提供するためその位置を移転し、これらに伴って不用となる庁舎等処分するとともに、このために必要とされる庁舎等を取得する計画を定めることといたしております。なお、この計画特定庁舎等特殊整備計回と呼んでおりますが、この計画により建築すべき建物等位置規模構造等に関しては建設大臣が別に計画を定め、さきに申し述べました特殊整備計画とあわせて閣議決定を求めるものといたしております。  第三に、庁舎等立体化しまたは位置を移転する計画実施によって不用となる庁舎等処分収入は、当該計画によって必要となる庁舎等を取得するための経費財源に充てなければならないことといたしております。なお、この資金経理のために別途国有財産特殊整理資金特別会計法案提出いたしてございます。  第四に、使用調整及び官庁建物立体化計画案を作成するについて民間有識者の意見を十分尊重し、かつ関係官庁間の協議を円滑に行うことが必要であると思われますので、大蔵大臣が定める前述の諸計画に関する重要事項について、大蔵大臣の諮問に応ずるため、各省各庁の職員及び学識経験者から成る庁舎等調整審議会を大蔵省に設置することとし、所要の規定を設けております。  次に、特定多目的ダム建設工事特別会計法案につきまして御説明申し上げます。  従来、国が直轄で行ういわゆる多目的ダム建設工事に関する経理につきましては、その事業のうち発電、上水道等用水確保目的とする事業分については、受託工事として歳入歳出外で取り扱い、また、治水、農業効果等目的とする公共事業分については、全額国費をもって支弁し、地方公共団体負担分は、別途国の歳入として収納する等、予算経理事業施行に改善を必要とされる点があったのであります。  政府におきましては、以上の取扱いから生ずる欠陥を是正し、事業の促進をはかることをねらいといたしま、して、昭和三十二年度から、多目的ダム建設その他の管理につきましては、別途提案して御審議をお願いしております特定多目的ダム法案により河川法特例を設けることといたしますとともに、この建設工事等に関する経理につきましては、これを一般会計区分して行うことが適当であると考え、特定多目的ダム建設工事特別会計を新たに設置、することといたしまして、この法律案提案いたしました次第であります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、この会計におきまして処理いたしますのは、特定多目的ダム法規定する多目的ダム建設工事及びその工事により建設した施設で、多目的ダムに属すべきものの建設工事完成前における災害復旧工事に関する経理でありまして、完成いたしました後の多目的ダムの維持、修繕、災害復旧等管理に関する経理は、この会計では処理しないことといたしております。なお、北海道の区域で行われる多目的ダム建設工事等に関する経理についても、この会計対象から除外しております。  第二に、この会計におきましては、一般会計からの繰入金都府県負担金及びその利子地方公共団体負担金納付特例に関する法律規定により納付された地方債証券償還金及び利子ダム使用権設定予定者負担金建設大臣が徴収する受益者負担金借入金並びに付属雑収入をもってその歳入とし、多目的ダム建設工事に要する費用事務取扱い費借入金償還金及び利子ダム使用権設定予定者負担金還付金並び付属諸費をもってその歳出として経理することといたしております。  第三に、この会計におきましては、この会計設置趣旨にかんがみまして、その歳入歳出及び資産負債整理並びに予算配付等工事別等区分に従って行うことといたしております。  第四に、この会計におきましては、多目的ダム建設工事に関する費用のうち都府県負担金に相当するものの財源に充てるため、必要があるときは、国会議決を経た金額限度として、この会計負担工事別等区分に従って借入金をすることができることといたしておりますとともに、その借入金のうち、その年度内に借り入れをしなかった金額があるときは、その額を限度として、かつ、歳出予算繰越額財源として必要な金額範囲内で、翌年度において借り入れをすることができることといたしております。  第五に、その他この会計設置及び運営等に関して必要な技術的事項規定いたしております。  なお、この会計設置に伴う経過措置といたしまして、この法律施行の際、一般会計において建設大臣直轄施行しております特定ダム建設工事に関する経理を、この法律施行の日以後は、この会計で行うことといたしますとともに、これらの工事にかかわる資産及び負債をこの会計に帰属させることといたしております。  次に、特定土地改良工事特別会計法案につきまして御説明申し上げます。  政府は、今国会に、別途土地改良法の一部を改正する法律案提案して御審議を願っているのでありますが、同法案規定するところによりまして、国が施行する灌漑排水施設建設工事、埋立または干拓工事及び灌漑排水施設建設工事により建設した施設で国が管理するものの災害復旧工事並びにこれらの工事施行上密接な関連のある工事で国が委託に基き施行するものに関する経理につきましては、これを一般会計区分して行うことが適当でありますので、特定土地改良工事特別会計を新たに設置することといたしまして、この法律案提案いたしました次第であります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一にこの会計におきましては、土地改良工事に要する費用で、国庫負担するものにつき一般会計からする繰入金土地改良工事に要する費用にかかわる負担金及びその利息、都道府県がその負担金地方債証券納付した場合におけるその地方債証券償還金及び利子受託工事にかかわる納付金借入金埋め立てまたは干拓工事によって生じた用地売払代金及び貸付料並び付属雑収入をもってその歳入とし、土地改良工事に要する費用受託工事に要しする費用借入金償還金及び利子埋め立てまたは干拓工事によって生じた用地で売り払うものの管理及び処分のために直接要する費用一般会計への繰入金並びに付属諸費をもってその歳出とすることといたしております。  第二に、この会計におきましては、この会計設置趣旨にかんがみまして、その歳入歳出及び資産負債整理並びに予算配賦等工事別区分に従って行うことといたしております。  第三に、この会計においては、土地改良工事に要する費用国庫負担するものを除いたもの並びに埋め立てまたは干拓工事によって生じた用地管理及び処分のため直接要する費用につきましては、予算をもって国会議決を経た限度額範囲内でこの会計負担において借入金をすることができることといたしております。なお、その限度額のうち借入をしなかった金額がありますときは、翌年度において、その限度内で借入金をすることができることといたしております。また、支払い上現金に不足があるときは、国庫余裕金の繰りかえ使用をすることができることといたしております。  第四に、他会計への繰入金に関する事項であります。すなわち、土地改良工事一般会計負担において行なっていたものが、特定土地改良工事として、この会計において継続して行われることとなった場合におきましては、継続して行うこととなる前の工事にかかわる負担金の額並びに用地売払代金及び貸付料の一部を、受託工事の場合におきましては、その工事にかかわる納付金の一部を一般会計に繰り入れることといたしております。  以上申し述べましたほか、この会計予算及び決算の作成及び提出予備費使用剰余金の処理、余裕金預託等この会計経理に関しまして必要な事項について規定いたしているのであります。  次に、中小企業資産評価特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  企業減価償却を適正化し、その資本充実をはかるために、昭和二十五年に資産評価法が制定されて以来、三回にわたって企業資産評価実施が認められ、一定規模以上の会社については、昭和二十九年に企業資本充実のための資産評価等特別措置法が制定されて減価償却資産の再評価が強制されたのでありますが、中小企業につきましては、その収益状況等関係から、今まで資産評価を十分行うことができなかった実情にかんがみ、今回もう一度再評価を行う機会を与えて、その減価償却を適正化し、経理健全化をはかり、もって中小企業の健全な発達に資することを目的として、ここに、この法律案提出することといたした次第であります。  次に、この法律案概要を申し上げます。まず、この法律に基いて荷評価を行うことができる者の範囲は、企業資本充実のための資産評価等特別措置法によって再評価を強制された会社以外の法人及び個人で、第三次再評価において減価償却資産の再評価限度額の八〇%以上の再評価を行わなかった者といたしております。また、今回の再評価対象となる資産は、基準日から再評価日まで引き続き有していた減価償却資産とし、基準日は、第三次再評価と同じ昭和二十八年一月一日といたしました。  再評価日につきましては、法人の場合には昭和三十二年中に開始する事業年度開始の日現在において、個人の場合には昭和三十二年一月一日現在において再評価を行うことができることといたしました。また再評価限度額は、第三次再評価限度額より昭和二十八年一月一日から昭和三十一年十二月主十一日までの償却額を控除した額とすることにいたしております。  再評価税につきましては、本来その税率は再評価差額の六%が原則なのでありますが、さきに再評価を強制いたしました際に一定の要件のもとに再評価税の減免の措置を講じた経緯及び中小企業負担軽減等を配慮いたしまして、今回は特に二%といたしました。またその納付方法につきましては、二年間に均分納付することとし、延納、繰り上げ徴収等の制度を採用しない等、納付方法簡素化をはかることといたしております。  さらに再評価申告は、法人の場合には、再評価日を含む事業年度分法人税確定申告期限と同日までとして、その最終期限昭和三十三年五月三十一日とし、個人の場合には昭和三十三年一月十六日から同年三月十五日までといたしております。なおその他再評価に関する経理につきましては、おおむね第三次再評価の例によることといたしております。  最後に、国際学会等への加入に伴う分担金債務負担に関する法律案について御説明申し上げます。  御承知のように、国が債務負担するには、憲法第八十五条の規定によりまして、国会議決に基くことを必要とするのでありますが、国の債務負担についての国会議決形式といたしましては、法律または歳出予算によるもののほか、財政法第十五条に規定する国庫債務負担行為によるものがあるのであります。しかしながら、この財政法第十五条の規定に基く国庫債務負担行為形式による場合には、同法第二十六条の規定によりまして、事項ごとにその必要な理由行為をなす年度及び債務負担限度額を明らかにしなければならないことになっておりますので、その債務負担限度額が明らかでないときは、この国庫債務負担行為形式によることができないのであります。しかしながら、ある種の国際学会その他これに類する国際団体規約には、当該団体加入する場合において、当該団体加入する年度以降一定年度間、当該団体が定める当該団体経費をその構成員において分担すべきことを規定しているものがあり、かつ、加入の際その分担金の額が定められていない場合がありますので、このような場合には、債務負担限度額をきめることができず、従って、財政法第十五条の国庫債務負担行為形式によっては、これら国際団体加入することにより、分担金債務負担けることができないのであります。そこで、政府は、今回、国際学会その他これに類する国際団体加入する場合において、その規約が前に述べた内容を規定するものであり、かつ、加入の際、その分担すべき金額が定められていないときは、あらかじめ、閣議決定を経て、その規約に従い、当該団体加入することにより、当該団体が定めることとなる当該団体経費分担金にかかわる債務負担することができることといたしたいと存じまして、この法律案提出した次第であります。  以上国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案外法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成を賜わらんことをお願い申し上げます。
  5. 山本幸一

    山本委員長 これにて提案理由説明は終りました。これら五法律案のうち、中小企業資産評価特例に関する法律案以外の四法律案に対する質疑は、後日に譲ることといたしまして、所得税法の一部を改正する法律案税関係法律案を追加して一括議題とし、質疑を続行することといたします。横山利秋君。
  6. 横山利秋

    横山委員 この間資料提出をお願いしておきましたら、本日出て参りましたが、ここに法人企業個人企業との負担比較表なるものが出てきましたが、私がお願いしたのは、公平論に立って、それぞれ法人で問題になっておりました比較を出していただきたいと言ったわけですが、特に給与所得者とその他との比較についてお願いをしておいたのですが、これは一体出るのですか、出ないのですか。
  7. 原純夫

    原政府委員 給与所得者とその他の所得者との負担比較につきましては、いろいろな比較方法があるわけでありますが、制度的に、所得が、たとえば三十万、五十万、百万というような段階を設けて、それに対して所得税あるいは地方税等がどうかかるかこいうような比較もございますが、問題は、そこでは、やはり給与所得と他の所得との申告程度、また税務署の方の課税上の調査の程度ということに大きくかかってくるわけであります。簡単に言いますれば、税制自体としては、完全に申告される、完全に所得がわかるという場合には、事業の方が相当重いような形になっておりますけれども、実際に給与事業との間にいろいろいわれますのは、一番端的なのは、地方税住民税課税の際に、軒並みの権衡をはたでごらんになると、どうも給与所得者が重いというようなことをいわれる点にあるわけであります。それは、つまり今申した申告度合い、また課税度合いに大きくかかっている問題でありますので、そうなりますと、不均衡の問題というのは、納税者の側からいえば、給与所得者以外の事業所得者がどれだけ正しく申告しておられるか、また税務署がどれだけ正しくつかんでいるかという問題になるわけで、これはもう資料出しようがないということになるわけであります。  そこで、本日お手元に差し上げましたもののうち、それをある意味で、側面からごらんいただくような意味で、十六ページと十七ページに二つの表を掲げてございます。十六ページの表は、給与農業、それからその他の事業というふうに分けまして、日本じゅう所得者の数、これは大体この推計でわかっておりますので、その所得者の数のうち、納税者になっている人が何人あり、何%あるかというのを、二十四年当時から最近までの数字をずっと掲げております。この間にいろいろ変遷がある。それから十七ページの表は、国民所得の統計において、給与農業農業以外の事業というような分類ができております。その国民所得推計自体にもいろいろ問題はありますが、それと課税になっております所得者所得額所得税額というものを出しまして、その間の関係を見るというのが十七ページの表であります。ごらんになりますと、いずれも給与所得者納税者数割合、あるいは税額割合の落ちてき方が、この八年間ずっと落ちてきておりますけれども、他の事業の場合に比べて少いというようなことが出ております。これには、営業者法人成りすると給与の方がふえるという事情もありますし、その他いろいろ事情はありますが、一応そういう側面的な見方の資料として提出したのであります。もし税法上正確に所得がとらえられたとして、負担がどうなるかということはいつでも提出してよろしゅうございますが、これはもう法律的な面で皆さんすでに御承知のことであるので、省略したわけであります。実際の把握がどうかということになって、これが何割しか把握できてないということを申すことはとてもできない。できるくらいならば、もうすでにその辺のバランスがとれるように、税務行政もまた納税者申告もできておるわけでありますが、これはとてもそこまではできっこありませんので、本日は側面的な資料二表をこれに用意したということでございます。
  8. 横山利秋

    横山委員 御親切な答弁ですけれども、今税金が高いということと不公平だということの二面性の中で、高いということについてはいろいろと方法がある。けれども、不公平を直すということについて、今のあなたのお話だと、少くとも給与所得者とその他との均衡については手のつけようがない、こういうようなことに落ちついてしまうわけであります。しかも、そこが感覚的には一番不公平だとあなたは言っておられるような気もする。またここに出ておる十六ページと十七ページの資料を見ますと、かりに十七ページの資料を取り上げてみても、二十四年をそれぞれ一〇〇として、三十二年においては、給与所得が三三・三、農業所得に至ってはわずか五・六、農業を除く事業所得においては一三・八、こういうふうな数字になっておるわけです。十六ページを見ても、やはりそれを裏づけするようなことになっているわけです。こういう客観的というか、くつを隔てて足をかくような資料が、あなたの方として一応この公平論を考えるときにまず基礎に立つ資料だとすれば、これに基いた法律というものが、やはりある程度出てこなければならぬと思う。それから税法上の比較論をやれば、給与所得者が安いことはわかり切っておるわけですが、実際上の問題になれば、給与所得者が高いこともわかり切っておる。その公平論をどういうふうに調節をなさろうとするのか、今回出されておりますこの所得税法案の中で、どういうふうにそれが生かされておるのか。中間答申では、明らかにこれを指摘してやるべきだというておったわけです。今度の政府が出した所得税法案では、理屈は多少あるようですけれども、答申よりもさらに退歩したとも言い得られるわけです。従って、この給与者に対する公平を今回は解決したと思っておるのか、まだ解決していないと思っておるのか、解決していないとするならば、なぜそれは解決し得ないのか、それをまずお伺いしたい。
  9. 原純夫

    原政府委員 ただいまのお尋ねについて、まず法律で処置するという事項といたしましても、一番大きな点は、やはり所得税法律の定める負担が、実際の所得の感覚からいうて現在では非常に重い、これはもう常識であります。その重いのを直して、なるほどこれならという感覚に近づけるようにするということ、これが一番大きな点だと思います。その点を尋ねて、今回は特に控除も引き上げますが、税率面に相当思い切った改正をしようという趣旨が入っております。それが一つ。  それから第二といたしましては、やはり何と申しましても、この課税が適正に行われるためには、申告がよくならなければならないわけでありますが、一方で、各般の所得資料充実しなければならぬという面があります。そういう意味で、年来問題となっておりました預かり株の配当資料を出していただくということ等、資料の面で規定の整備をするというようなことをいたしておる点が、ただいまの点にまっすぐにお答え申す点だと思いますが、この問題は、法律がどう書かれるということだけでは解決せぬのは御存じの通りで、一方に申告納税制度というものが納税者の間にじっくりとしみ込んで、納税者申告が正しく出るということが大事であり、同時にまた、税務行政の面の調査がだんだん適正になってくるという努力が必要だと思います。この後段の法律に基いて実際に申告し、あるいは調査するという面の努力なり、また改善なりというものは非常に困難なものでありますが、ここにまた日本の税をよくしていく一番のポイントがあるのじゃないかというふうに思います。その面の改善は、関係の方々が日夜鋭意努力をしておられるわけでありますが、これは、そう一瞬にして直るというものではございませんので、だんだんと直して参る、だんだんと改善していくということであろうと思います。税法の面では、そういう改善がよりよく行われるように、ただいま申しましたような負担を合理化し、納得できるような負担にする。そしてまたいろいろな資料面でも、所得の調査ができやすいようにするということ、特に負担を合理化するという点は、操り返して申しますれば、今回の税法改正の実に大きな、もう八、九〇%を占める問題であり、そして実際面における申告がよくなり、また調査が適実になるために非常に大きな力になるものと思って、私どもこれに大きな意味を持たせておるような次第でございます。
  10. 横山利秋

    横山委員 いろいろ質問があるのですが、一つ手間を避けて簡単に答弁をしてもらいたいと思います。  あなたのお話によると、第一に税率控除を引き上げた、こうおっしゃるのだけれども、それは私の言う公平論の質問の回答にはなりません。それから徴収の適正を期する、つまり一〇〇%申告をしていない人を一〇〇%申告さして、そういった漏れを防いで適正にすれば公平になる。これは、日にちはかかるけれども、そういうふうにやっていく、こうおっしゃるけれども、私は、それは百年河清を待つものだと思う。今の税法では、取れば勤労者の方が安いのにきまっておるのに、実際は勤労者の方が高い。そこで、今日給与所得控除というものが置かれて、実際上公平をはかっている。この理論はあなたも御納得なさると思うのですが、もしその理論に立てば、シャウプ勧告以来の大改正というべき今日、あなたが今そこはかとなく言っておられるように、まだ不公平があるというのならば、なぜ今やらないのかということを私は今聞いておるのです。脱税があるからこの脱税を、漏れがあるからこの漏れを一〇〇%取るということがあなたのお考えだとするならば、例を申しては恐縮だけれども、たとえば芸者の花代です。これは今問題になっています。脱税があるからきちんと取るのでなくて、脱税があるからこれを下げてきちんと取る、こういう思想でしょう。そうすると、一体きちんと取られておる人たちは、百年これは下らないという議論になる、それではいかぬではないか。やっぱり実際上、最終における徴収の結果を見て、税というものは適正にせざるを得ないのが今日の段階ではないか、私はこういう考えです。従って、今動労所得控除をこのシャウプ勧告以来の大改正のときに私はいささかもなぶらないで、この政府案には出ておるけれども、公平論という点についてはいささかもなぶらないでこのまま済ましてしまって、今度どういう時期に、どういう情勢のもとだったら二〇%というものが上げられるかということを考えますと、今日をおいてほかにないと思う。なぜそれが今日できないのかということをお伺いしている。
  11. 原純夫

    原政府委員 給与所得控除がなぜあるかということについて、横山委員は把握がアンバランスだからという点を特に強調されますが、給与所得控除の焦点としては、もちろんそれもありましょう、しかし把握がアンバランスだからという制度は、非常にお粗末な制度なのであります。われわれもそれはあると思いますが、同時に、給与所得には事業所得で行われている経費控除が行われない。所得の性質から考えて、ある程度経費控除的な考えが必要だろうということ、あるいは給与所得のいわば担税力といいますか一独立してないというようなことも考えて、この制度があると思いますが、かりに焦点を把握がアンバランスであるというところにしぼってみましても、それだから給与所得控除を引き上げるという方向で大いに税法を直していくということは、私どもは非常に危険な方向だと思います。と申しますのは、それに対照される事業所得者の把握が十分でない、申告も十分でないということが事業所得者の間において公平に十分でないならば、おっしゃる通り、給与所得控除を上げることによって、結論としての負担は公平であるというここになると思いますけれども、決してそういう保障はないのであります。事業所得の中でも、申告を十分にされる方もあるし、非常に抜けている方もある。税務官吏も、人の財布の中を的確に調べるということはなかなかむずかしいことでありますから、結論において、事業者の中で一律に何割かこの所得が抜けているということではなくて、正直な人は十分申告しておる。ずるい人は逃げるというようなことになって、そこに相当大きなアンバランスがあるということを、残念ながら私ども認めざるを得ないと思います。所得が二割、三割違いましても、かりにもう四、五割も違ってくるならばなおさらでありますが、その税負担たるや非常に大きな開きになるのであります。この辺は、やはり何としても申告を十分にしていただくと同時に、税務官吏の調査もほぼ的に近いものに近づくということが、何といっても税を正しいものにする一番大事な点だというふうに思います。そうすると、安易に把握が他の所得よりも多いからというて給与所得控除を広げていくということは、非常に大きな不公平を一方でそのままにしておきながら、大ざっぱな方法で、全体としてはこれでいいじゃないかというようなことになるのですが、私とも、その方向はにわかにとれないと思います。一方で今の税率控除の度合いを考えますと、非常に重い。そこにとても納税者に納得いただくにはむずかしいという面もあるので、この際大幅に税率を中心にして軽減をいたして、これで十分申告していただく、また調査に当っても、そういう担税の実態がもっともなものになれば、税務官吏の調査も十分適実に行い得るようにだんだんなっていく。やはり百年河清を待つと言われますけれども、それが百年河清を待つでできないというならば、日本には所得税はりっぱなものはできないということだと思います。われわれは、その道を一本どうしても通してやっていきたいと思う次第であります。
  12. 横山利秋

    横山委員 税法だけで議論をしますと、あなたの言うような議論になろうかと思うのです。しかし、あなたも実際納税者の立場、実際出す立場になって、最終的な出すときの公平論ということをお考えにならなければうそであります。百年先にはきちんとなるから、それまでしんぼうしてくれと言われたって、今日の納税者に対しては、それは説得するわけにはいきません。もしあなたの言うようなことであるならば、重ねて言うけれども、脱税があるからトランプ税を半分にする、あるいは脱税があるから花代を半分にする、こういうような議論というものは絶対に今日生まれてこないと私は思う。税の公平論から言うならば、トランプなんか千円よりも二千円取るべきであるという議論を私は主張いたしたいのですが、またそれをやるならば、物品税のほかの面にも私は大いに議論があると思います。これは、今あなたの所信として、この大きな現実を政治として見のがすわけには参りますまい。こう考えて参りますと、今この税について国民の関心が非常に高いときに、しかも減税が一千億行われるという余裕があるときに、今やらずしてどうして国民を説得することができるかと私は思うわけです。重ねて聞きますが、あなたは、一体最終的における公平論というものを尊重なさるのかなさらないかということを、私はもう一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  13. 原純夫

    原政府委員 私は、税から公平が忘れられたらば、もう税はあり得ないと思います。これは、もう絶対のものだと思います。ただそのやり方は、先ほども申しましたように、やはり納税者申告税務署の調査と、この面で心棒が通るのでなければ、最後の公平はあり得ない。従って、税法においてもこれを守るように、できるだけ力を尽すという考え方であります。
  14. 横山利秋

    横山委員 それではあなたは、今の給与所得者の二〇%というものが、最終的な末端における不公平は存在しておると見られるわけですか。
  15. 原純夫

    原政府委員 よく地方税、住民税について言われますときは、非常に極端なケースを言われますので、たとえば、この肥料商はわずか五十万しか納めいてない。それで倉が三つもあるというようなことを指摘されますので、そういうような実際に不公平が現実にあるということは、認めざるを得ないと思います。ただ総体として、どの程度のアンバランスになっているかということになりますとなかなかむずかしい。やはりまだアンバランスがありそうに私は思います。そこで、今回の改正で、そういうものをかなり大きくアンバランスがないようにしたいというつもりでいたしておるわけであります。
  16. 横山利秋

    横山委員 原さんは非常に正直なお方だと私は思っておるのです。たしかあなただと思ったのだけれども、あなたが主税局長になって全国をずっと回られて、そしてここへお帰りになって一番最初に言われたことを、私は今でも記憶しております。あなたは、給与所得者とその他の所得者の不公平というものをあらゆる地方で聞いてきた、こうおっしゃったわけです。このことが、一体この改正法案の中へそのものずばりで盛られていると、まさかあなたはおっしゃらないだろうと思う。それを一体なぜできないのか、なぜこの法案に盛られていなかったのか、これから一体どうするのかと私は聞いておるのです。これからの問題について、あなたは申告所得者をきちんととって、そうして百年かかっても公平にすると言っておるのだけれども、それはできません、実際問題としては。そういうことであったならば、渡邊さんもかってそういうことをおっしゃったけれども、こんなに問題が発展してくるようなことはあるまい。従って、これから一体どういうようにする気だと言うと、あなたは、こういうような資料しかできぬと言う。実際に現場に行って抽出調査なり、あるいは現実的な調査ということはむずかしいとおっしゃる。そうすると、この問題は科学的な検討というものは大蔵省ではどうもやりそうもない、またできそうもないと思うが、こうなりますと、一体この問題はどういうふうにこれから解決しようとするのか、さっぱりわからぬわけです。ここを具体的に建設的にお答えを願いたいのです。もう一ぺん重ねて言っておきますけれども、漏れておるものをきちんととる、そこで解決するということは、これは実際問題としては不可能です。税制のある限りにおいては不可能です。そういうことは、現存しておるという事実に基いて税法をきめざるを得ないのではないか、またそれが今政府与党が進まんとしておる道ではないか、その立場に立つならば、二〇%は上げるべきではないか、現実論でやらなければならぬのではないか、こう言っておるのです。
  17. 原純夫

    原政府委員 私は、これは百年河清を待つとは思っておりません。一生懸命やれば、そう遠くない将来できると思います。それほど日本は所得税制を持てない国であるとは思いません。そう一両年ではできないかもしらぬけれども、がんばってやれば、とにかくわれわれの目の黒いうちにはそれがしつかりしたものになると思います。そう思っております。
  18. 横山利秋

    横山委員 がんばってやればというような、そういう抽象的な言葉ではだめだと言うのです。どういうふうにそれをやるかという具体的な方法を聞いているのです。
  19. 原純夫

    原政府委員 これは、やはり納税者に正しい申告をしていただく、これが一番大事であります。これはだんだん経済状態もよくなり、いわば衣食足るということになりますれば、社会の倫理というものがだんだんよくなるだろう、同時に税務署の調査については、これを科学的に厳密にやるということは年来続けております。これがまた年を追うて改善して参る。両面からただいま努力が進んでおるわけでありますから、その成果を将来にわたって強く期待したいと思っております。
  20. 横山利秋

    横山委員 やはりあまり具体的なお話でないように思うのです。(発言する者多し)、委員長、少し場内の静ひつを保ってもらいたい。私は非常に紳士でありますから、おとなしくやっておるのでありますが、与党の方がやかましくてだめであります。  それで、原さんに私は言いたいのでありますが、そういうようなことでは、私は納得するわけにいかぬのであります。あなたも、抽象的ではあるけれども、不公平というものを認めて、その解決をしなければならぬと思っておるのだが、しかし将来徐々に段階を追うてやると言うておっても、実際問題としては、あなたの答弁では、実現困難だと私は思うのであります。今一番いいときではないか、しかも中間答申に出ておったではないか、しかもこの審議過程における勤労所得者階層に対する熱意というものは非常に高かったのにかかわらず、なぜそれが行われないか、これらの問題については、こまかいことについても放擲されておるばかりであります。一例をかりに申し上げてみますけれども、たとえば食事代七百円というものは、何年のことでありましたか、放置されておるばかり、交通費の面についても放置されておるばかり、この際こういう交通費や食事代の七百円という数字についても、他のバランスを考えて上げる気持があるのかないのか、これを一つ伺いたい。   〔「与党の方がうるさくて仕方がない」と呼ぶ者あり〕
  21. 山本幸一

    山本委員長 与野党とも一つ静粛に願います。
  22. 原純夫

    原政府委員 研究はいたしておりまするが、なかなか給与所得者の中にも、そういう現物給与につきましては、現物給与を受け得る給与所得者と受け得ない給与所得者とあるわけであります。そういうようなことから、なかなかその関係費用の値段まで、何割上ったからどうというように必ずしも言えない場面もございます。十分研究はいたしております。
  23. 横山利秋

    横山委員 その金額は何年にきまったのですか。
  24. 原純夫

    原政府委員 あれをきめましたのは二十六年の一月……。少し後だと思いますから、二十六、七年だったと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 二十六年以降、これらの単価の数字で上っていないものは一体何ですか。
  26. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 国税庁の通達の関係もございまして、法律の問題でなしに、われわれの方で扱っておる問題もございますので、便宜私からお答えいたします。現物給与関係の六百円の数字は、今主税局長の申されます通り、二十六年にきめております。それから定期の関係は、昨年一応現在のような姿に変えておるわけであります。
  27. 横山利秋

    横山委員 大臣が見えましたから、簡単にします。昨年変えたというのは、七百円の数字を直したのですか。
  28. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 昨年まで、定期券の現物給与としてわれわれの方がしいて課税しなくてもよろしいといった考え方をとっておりましたのが、五百円だと思います。これは昨年横山さんから、たしかいろいろお話があったかと思いますが、電車の料金も上ったのだから、従来の姿ではおかしいじゃないかというお話もございまして、国税庁も研究して六百円に上げた、そういうわけでございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 それは、電車の値段が上ったから上げたという自動的な計算にすぎないのです。そう考えてみますと、二十六年以来七百円並びに五百円という基礎単価というものは、上っていない。私は、そのほかの基礎控除の問題で上らなかったものがあるかという質問をしたのですが、今のお話では、上らなかったものはほとんどないのであります。あらゆる基礎控除も、また今回税率も飛躍的に改善されておるのにかかわらず、これらの問題について全く放置されておる現状についてどう思うか、こういうふうに聞いたのです。あなたは、これは恩恵を受けておる給与者とそうでない給与者とがあるからとおっしゃるけれども、こういう理論でいくならば、万般の税制すべてこの理論と関係があると言わなければなりません。従って、この際これらの放置されておる七百円の数字についても、あなたの言うように二五%にし得ないとするならば、せめて一歩を進めて、千円なり、千二百円なりにする気持はないのか、そういう一片の善政をしく気持はないのか、これを最後にお伺いいたしたいと思います。
  30. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 結局、こういう問題だと思います。所得が全部つかまっている前提に立って考えていくべきかどうかという問題なんですが、事業所得の問題について主税局長からるる御説明しましたが、実は私そばで聞いておりまして、われわれの方にその責任があるわけでございまして、汗顔の至りにたえないような気持で小さくなっていたのです。結局事業所得課税などにおきまして、税務署の調査といいますか、あるいは納税者の方にまじめな申告を出していただく意味のわれわれの啓蒙的な努力といいますか、その辺がまだ非常に至らない面がございますので、今いろいろ御議論になったような実質的な意味においての、最終的な決定においての不公平があるのじゃないか。われわれとしては、そういった点については、従来も努力して参りましたし、今後とも努力して参りたい。ことに今度の税制改正によりましては、相当税率も下るわけでございますから、こんな機会においてさらに一段と考えて参りたい。まず所得を正確につかんで、そこに全体として公平が期せられる、こういったわけになって参ります。従って、給与所得の場合においての今のお話でございますが、これもやかましく正確につかむという建前からいえば、現物給与も全部所得の中に入っていかなければならぬ、こういう問題になってくるわけでございますが、あまりこまかいものまでもおっかけるのもどうだろうかということで、現在のような制度になっているわけでございます。従って、その程度で非常に少いということが特に言えるかどうかということは、われわれの方でとつくり考えてみたいと思っております。と申しますのは、給与所得春の中で、そうした現物給与を受ける人と受けない人とがあるわけでございますので、この金額をいたずらに上げると、その間においてさらに不公平ができ、いろいろな面でぶつかる面がございますので、その場だけの問題として、これを引き上げる方がいいかどうかという点については、かなり研究すべき余地があるのじゃないか。従って、この場でそれを引き上げるということをお約束するつもりはございません。ただいろいろの角度から検討してみたいと考えております。
  31. 横山利秋

    横山委員 あなたの言うようなことをすれば、先ほど言ったように、すベての税法が同じ問題にぶつかると私は思う。  大臣が見えたから、一つだけ本筋に戻してお伺いいたします。私が今までくどく質問をしておったことは、第一点として、給与所得控除を取り上げておったわけです。給与所得者とほかの所得者との不公平というものは、今回の場合取り上げられてないということを力説をして、原さんもそれを納得をして、将来にかけてこれは公平を期したい、しかしその公平を期するやり方は、申告所得者をきちんと百パーセントとることによって公平になる、そのためには、時間がかかるけれども待ってもらいたい、こういう答弁でありました。私の言うのは、税法のある限りにおいては、実際問題としては、それではならぬのだということを例をあげて御説明をしたわけです。そこで、議論が少し水かけ論になってきたわけです。少くとも今日千億の減税を行い、しかもその中で公平ということを最も中心として考えたものでありとせば、また調査会の答申もそれを力説しているものとするならば、朝鮮事変前までは、確かあなたがやっていらしたころまでの間は、勤労所得控除は二五%であったわけです。それが一五%になり、今二〇%であります。しかし二五%という前例はあったわけです。従って、私は多くを言うわけではない。せめて昔に返したらどうか、しかもその返すべき論拠は、政府、与党も、また野党の人々もやはり共通性があるわけです。今こそこれをやりおおすのに最も適当なる時期ではないかと言っているのです。税の徴収の上で納税者の理解を得るという立場においては、シャウプ勧告以来の大減税をするという今の時期こそ一番適当ではないか、百尺竿頭一歩を進めるべきときではないかと言っている。あなたの方の言い分は、もうしばらく待ってくれと言われるが、しばらく待ってくれではない、それでは百年河清を待つにひとしい。そこで私が例としてあげたのは、交通費の七百円なり、現物給与の七百円というものが二十六年から放置されているのだが、そういうものも少しでも千円なり千三百円に引き上げる気持はないのか、そんなことはほんとうにたやすいことではないかということで、給与所得者全般について質問もし、同時に具体的なものもあげて、あなたの方の善処を要望いたしているのですから、一つ大臣の誠意ある御答弁を伺いたいと思います。
  32. 池田勇人

    ○池田国務大臣 従来から論議される重要な問題でございます。勤労所得事業所得の不均衡、これは住民税その他で、地方の方で大体所得の状況がわかる方々のところで、特にその議論が多いのでございます。従って税法の建前から申し上げますると、従来からある程度の控除をいたしておりました。これは、勤労所得は担税力が少くて、事業所得の方が担税力が多いという説明もありましたが、その陰には、ある程度所得の把握という問題もあったと思いますが、表面的には、担税力で説明いたしておったのであります。その状況が、シャウプ勧告のときには二五%までやったというお話でありますが、昔は、われわれが税務署長をやっていた三十年くらい前は、これは六千円までは二割五分、六千円から一万二千円までは一割控除という状況であったのであります。控除についていろいろ問題がございましたが、シャウプ勧告のころにおきましては、事業所得の把握が非常にむずかしいという点もございまして、二五に一時的になったかと思います。一方やはり把握の問題でございますから、事業所得の把握がだんだんよくできるようになったということから一五に相なり、最近では二〇に相なったのであります。しかもその二〇が四十万円程度のもので頭打ちというふうな関係があったのでございますが、これを八十万円程度までにいたしまして、だんだん広げてはいるのでございます。従いまして、片一方では事業所得と勤労所得との権衡を考えながら、また片一方では、事業所得の把握について苛斂誅求があってはいけませんが、できるだけ正確な所得を見出していって、不均衡ありとせばそれを是正することが本筋ではないかと思います。これはやはり税収の関係があるのでございますから、片一方を非常に考えますと、今度は全体の税率をかげんしなければならぬように相なりまするので、今しばらく——主税局長国税庁長官がどういうお答えをしたかわかりませんが、本筋といたしましては、まず事業所得の正確な把握に努めることが第一であり、またいろいろな事情を考えまして、担税力の点から控除の点を考慮していく、こういうことであろうと思います。今不均衡だからすぐ片一方の控除を多くせよということは、結論としてはまだ早いのではないかと思います。
  33. 横山利秋

    横山委員 あなたも部下と同じような答弁をされておるのですけれども、昔のことを言うならば、たしか百円までくらいは、税金が給与者もかからなかったでございましょう。大体当今でいいますと、四十万から四十二万円ぐらいまで税金がかからなかった、当時の水準で言うならば、そんなところでなければならぬと思うのです。今は圧倒的に給与者が税金を払っておる。きょう提出された資料を見ましても、まさに政府もそれを認めておるわけです。今問題になりましたのは、税法上とそれから実際の徴税の結果としての公平論、いずれをとるかという議論の中で、原さんの、やはり結果としての公平論ということにある程度考慮を置かなければならぬ、こういうふうな答弁でありまして、もしそうであるとするならば、今そういう不公平が存在する、それを将来において直すというならば、今の不公平を今解決をして、将来もし申告がきちんとなるようになったならば、そのときにまた落していく、こういうふうにならなければ、それぞれのときにおける公平ということが大事であります。五年たったら公平になる、十年たったら公平になるからそれまで待ってくれという理論は、現実の問題として世間様に私は通用しないと思う。従って今日の不公平をいかにするか、今日最終における不公平をどういうふうにするかということが現実の政策でなければならぬと思う。あなたもいつまでも大臣になっていらっしゃる気持もないのでありましょうから、今大蔵大臣として、今日の不公平をどうするかということについて、十年待ってくれということでは、私は理屈に合わぬと思いますが、いかがでありましょうか。
  34. 池田勇人

    ○池田国務大臣 建前としては、不公平になっていなくて、十分税法規定によって取っておると私は思うのであります。この前の委員会では、なかなか取り過ぎておる、むちゃをしておるというようなおしかりを受けたのでございまするけれども、もしほんとうに取っておるとすれば、私は権衡が保たれておる、つり合いがあると思っておるのであります。国税庁長官が取っていないと言えば別でございまするけれども、建前としては、取り過ぎをいたしてはいけませんが、所得税法に従って取っている、こういう前提に立っての議論でございます。十分取っていないということになれば別でございます。
  35. 横山利秋

    横山委員 所得税法についてまだいろいろと質問があるわけでありますが、大臣の時間が短かいので、一応私の質問を途中で打ち切っておきます。
  36. 山本幸一

    山本委員長 春日君の質問の前に、ちょっと私から申し上げますが、予算委員会といろいろ折衝した結果、正一時にはどうしても大臣をよこせ、こういう予算委員会の強い要求でありますので、はなはだ申しわけございませんが、一時十分前までを目途に質疑をおやりいただきたいと思います。春日一幸君。
  37. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、委員長のせっかくのお言葉でありますから、協力いたしたいと思いますが、御答弁の方も一つ協力を願いたいと思います。ただいまの横山君に対する質疑応答を聞いておりますと、あまりに言葉の端にとらわれ過ぎて、錯綜いたしまして、問題の核心がぼけてしまっており、何が何だかわからぬという形になっております。従いまして、一つ私も協力いたしますから、事務当局も問題の核心の的確なところをそれないように、まずもって要求いたします。  そこで問題は、過ぐる金曜日でありましたか、お知らせ制度の可否について、さらにまたその法律の基準について質問をいたしました。しかるところ大臣は、しばらく大蔵省を離れておったから、実情がいかがであるかはわかっていないという御答弁であり、主税局長、また就任早々で徴税方法の詳細にわたっては心得てはいないという、きわめて無責任きわまる答弁でありました。従って、実情、法律の根拠その他についての御調査を願って、本日これについての御答弁を伺うことに相なっておったのであります。そこで、このお知らせ制度なるものを行なっておる法律の基準は一体何であるか、まずこの点から大臣の御答弁を願いたいと存じます。
  38. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通り所得税法によりまして、税務官吏は納税者所得を調べ得ることに相なっておるのでありまり。従いまして、この法律によって調べ得るのでございまするが、何分にも非常に数多い納税者と、これにマッチするだけの人員その他がございませんので、従来は全部の納税者の帳簿を実地に検査することなしに、税務署の見込むところで決定の通知を出しておったのでございます。そうなりますと、かなり異議の申し立てその他非常にいざこざが起りまして、更正決定その他大へんな手数がかかる状況に相なっておったのであります。こういう実際の面を見まして、税務行政上の一つの措置といたしましてお知らせ制度をしたがいいかどうか、前もって税務署の考え方を納税者に御通知申し上げて、もしそれについて御納得が行くならばそれによって申告を願うし、また御納得が行かない場合におきましては税務署とお話しになる、こういう制度を設けたらどうかというので、納税者のあるところによっては、どうでございましょう、御意見いかがでございましょうということを聞いたのだそうでございます。しかるところ、お知らせ制度をやってくれという人もありますし、それはごめんこうむるという人もあったそうでございます。そこで税務署の方では、どうしようかということを協議の結果、税務署によってやるところもありますし、やらぬところもあります。またやる税務署におきましても、青色申告は別でございますが、青色申告でない方々に対して、全部には出さずに、ある程度従来の申告の状況を見て出しておる、こういう実情だそうでございます。従いまして、お知らせ制度自体は所得税法規定に基く、いわゆる職権によるものではございませんで、税務署の調査という行政上の手続の一端としてやっておると聞いておるのであります。
  39. 春日一幸

    ○春日委員 一つ問題を明らかにいたしたいと存ずるのでありますが、まずその大前提となるものは、すなわちわが国の租税制度は、言うまでもなく租税法定主義の上に立っておりまして、憲法第三十条の規定は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」憲法第八十四条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」こういうことになっておるのでありまして、法律以外の執行はしてはならない。国家は、徴税機関に対して法律に違反をしての徴収、それから法律に定めていないところの徴収方法、こういうことは厳に戒めておるのでございまして、さまつな事柄といえども、すべて立法事項にしておる、この点は一つ明確に御理解を願っておかなければならぬと存ずるのであります。しかるところただいまの大臣の答弁によりますると、このお知らせ制度というものは、明らかに法律にはよらないでやっておる。そしてその御答弁のニュアンスをさぐって参りますると、これは税務職員に付与されておるところの調査質問権ですか、何かそういうようなものに関連をして、そういうような知らせをすることもあえて法律違反ではないような御答弁でありましたけれども、私どももこういう問題を取り上げる場合において、いろいろな関係法律関係条項をいろいろと研究してみたのでありまするが、なるほど税務署員に対しては、そういうような推計調査、推計課税と申しますか、そういうような権限も付与されておる様子でありまして、また調査権限も、事前調査、また事後調査、いろいろあるようであります。これは確定申告を契機といたしまして、この二つに分れておるのでありますが、こういう法律税務署員に徴税上の権限として付与しておる調査質問権に関連をいたしまして、そしてなおかつ推計課税もなし得る権限等もいろいろと考えましても、これは明らかに確定申告を行なった後でなければ——あらゆるこれらの付与されておる権限を大幅に解釈をしても、納税者申告した後でなければ、そういうような、要するに所得額の査定権、決定権を持つところの税務署長が、そういうようなお知らせを発し得るという法的根拠はありません。これは明らかに法律に違反をしておる事柄であろうと思います。ただいま大臣の御答弁の中にも、納税者に対して諮問を発した、ある者は賛成の意を表し、ある者は反対の意思表示が行われておると害われまして、それは時期的にもいろいろと条件があったでございましょうけれども、明らかに法律に違反をしておる事柄なんでありますから、これはこの際、全面的に廃止される意思はないか。すでに全国において、そういうような通達をもし発しておるものがありとするならば、その税務署が発したお知らせというものは、法律上、また行政上、何らの権威のないものであるから、従って、納税者はそういうようなものに拘泥するところなく、あくまでも申告納税制度の法律に準拠して自主的な申告を行なってもらうべきものであるという、大臣の一つ明確な意思をこの委員会を通じて明らかにされるの意思はないのですか。この際重ねて御答弁を望みます。
  40. 池田勇人

    ○池田国務大臣 法律的な解釈は、春日さんのおっしゃる通りでございます。納税申告制度でございますから、申告をいたしまして、そして決定調査するのでございます。従いまして、ただいま申し上げましたように、法律規定に基く権限ではございません。ただ税務の執行上、そうした方がお互いに便利ではないかというふうなことで、税務行政の一端としてやっておるのであります。これは、何もこれを通知いたしましたからといって、拘束力も何もない。それに向って、お知せをそのままにされても、怠慢とか、いろいろな点はないのでありまして、私は、これは実情に沿って将来の更正決定、あるいはいざこざをなくする方法として、まあまあ認め得るのではないか、これはやらなければならぬと私は考えておりません。やってもいいし、やらなくてもいいし、納税者の気の済むようにしたらいいじゃないか、お互いに話し合って、そして親切にやっていく方法としてやるのならば、一つの方法ではないかと考えておるのであります。私は、今まで御質問がありましてから、係の者から聞いたのは以上のような状況でありまして、決して全国的にやっておる制度でもございませんし、また一つの税務署においても、青色申告以外の全部の人に出しておる制度でもないようでございます。こういう実際の面の利害得失につきましては、国税庁長官からお答えすることにいたしますが、法律的には、法律規定の何条によってやるという分ではないということは、春日さんと同じ意見であります。
  41. 春日一幸

    ○春日委員 池田さんという人は、人間的に非常に毅然たるところがあって、そして責任を重んずるの士だ。吉田さんが野にあれば、ただ一人でも野についていくという、なかなか人間的に見上げた人だ。こういうふうに遠いところからおぼろの敬意を払っておる。この際、一つ大臣の英断をもって、是は是とし、非は非とし、物事を割り切って処理してもらいたい。大臣がこれをなさなければ他になす人はいないという立場において、これから限られた時間において、お互いにその問題解決のために一つ論じ合っていきたいと思うのです。私の主たる論点は、便宜的なる行政上の措置によって法律の原則がゆがめられておること、さらに百尺竿頭百歩私が退いて、現実にそういう弊害がないとしても、そういうゆがめられるの心配をなしとはしないのです。なぜかならば、税務署が、あなたの所得はこれこれですと言っておるのです。しかも税務署は、要するに課税権を持っておる。あるいは国家権力を持っておる。そういうものが、あなたの所得はこれこれです、こういう通達を公文書をもって言ってきたからには、その納税者としては、時に零細なる業者としては、その力関係において脅かされる。これは必ず脅かされて、せっかく税務署が言うてきたのに、過小申告をするならば、あとでどんな仕打ちをされるかもしれない、わずかな違いなら、これは泣き泣き判を押すべきだということで、苛斂誅求になってくるおそれなしとはしないと思う。私の申し上げておることについて、問題を一つ一つ制約して、お互いの理解に達したいと思うのでありますが、あなたのこういうようなやり方は、すなわち、この申告納税制度の法律の原則をゆがめるの心配はごうまつもないと考えるか、あるいは少しでも心配があるかどうか、まずこの点を正直に御答弁が願いたいと思います。
  42. 池田勇人

    ○池田国務大臣 簡単にお答えいたしまするが、法律上は拘束力はございません。しかし心理的な問題になりますると、各人各様でございましょう。従いまして、もっと忠実なやり方とすれば、一応の見込みでございまするから、何もとらわれる必要はありません、こういうことを語尾に書けば、それが少くなるんじゃないか。それから赤日さんは、おびえる方ばかりをおっしゃいますが、やはり数多い納税者の中では、実は帳面も何もつけなかったり、あるいは収支計算もしないし、売り上げだけくらいを書いているくらいのところもあり、千差万別なのでございます。そのときに、税務署の見込みは大体このくらいでございますと言ったときに、ああそうだったかと言って、そのくらいあるんだろうという場合もあるのでございますから、私は一がいにこの制度がいかぬというわけではないんじゃないか。そういう心理的に非常に威圧を感ずるようなことを防ぐためには、またお知らせの方法もあるんじゃないかと思います。
  43. 春日一幸

    ○春日委員 まあ何から言うていいか、問題が非常に多いのですが、一つこの辺からいきましょうか。たとえば、あなたは今こうおっしゃった。心理的に相手に畏怖の念を与えて、心理的な影響を悪くする心配ありとするならば、お知らせのあとに大きく、これは私たちがこう考えるだけであって、何ら拘束力を持つものではありません。従って、あなたの所得額は、このお知らせがどうであろうと自主的に自由に申告して下さい、こういう工合に書けばそれでいい、こういうふうにおっしゃっておる。私はそれは同感であります。なれば、そういうおやりになるべきことをなぜおやりにならぬか、私は、本日資料として届けて下すったものを読んでみますと、こういうふうになっておる。これは国税庁が国民に対して御注意として与えた文書でありますが、「申告に当っての御注意」、それから、その「申告と調査と更正決定について」こういうところでアンダー・ラインが引いてありますが、そこでこういうことが書いてある。「ただ事業所得者など一部の納税者のかたがたについては、念のためあらかじめ所得金額を調査し、場合によっては確定申告書の提出期限前に税務署からみた所得金額を御参考までにお知らせしたり、又税務署にお出でをいただいて御相談をすることがあります。しかし、この調査額は、税務署からみたものでありますから、もし税務署から示された額が御自分の計算した所得金額と違っているときは、」ここからが問題です。ここまでは大体大臣の御答弁とあまり隔たった表現ではありませんが、その次は、「税務署の調査額の計算の基礎をお尋ねになるなり、また御自分の計算の方法を御説明になるなど十分お話し合いのうえ、お互に納得のいく申告をして下さい。」問題はここに含まれておると思うのであります。すなわちあなたがおっしゃったような全然拘束力を持たないような、そんなものならば、何もそれに基いて税務署へ行って計算の基礎をお尋ねするほどの義務を負わしめ、あるいはみずからそれに対して反論を立てる義務を負わしめる、こういうようなことであっては、これは大臣の御答弁をそのままここに表現した御注意とは言えないでありましょう。お知らせが来たからには、とにかく自主的な申告ができない。あの文書をそのままに国民がこれを理解けるならば、それを持って税務署へ行って、一体どういうわけでこういう税金がかけられなければならないかと言って質問せなければならぬ。相手の言うことが納得ができなければ、自分は、いやかくかくの次第によってこんなお知らせというものについて申告することはできませんと、相手との間で非常に困難なる交渉をせなければならぬ。その義務を負わしめておる。この通達は大臣の御答弁と全然違うではありませんか。全然拘束力を持たない白紙のものではないのであって、自分で説明をするか、相手の説明を聞くか、それだけの義務を持たして、ここに縛りつけておる。これを何とお考えになりましょうか。適切な通達であるとお考えになるかどうか、御答弁を願いたい。
  44. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それは今ここにございますが、初めて見たのですけれども、これは拘束しておるものと読むべきでございましょうか。「税務署の調査額の計算の基礎をお尋ねになるなり、また御自分の計算の方法を御説明になるなど十分お話し合いのうえ、お互に納得のいく申告をして下さい。」これは私は拘束力のあるものとは思いません。そこで、もしそこがそうなるとすれば、私は、ここで決して都合のつかないのに税務署へ出て下さいとか、あるいはあなたの方で説明しなければならぬという意味ではないということは国会を通じて申し上げて、拘束力のないということを言明いたします。
  45. 春日一幸

    ○春日委員 これは、大臣、私が申し上げたいことは、法律もしくは法律の基準によるところの政令、そういうものでなければ、国民は税金については何らの義務を負わない。これは憲法八十四条がぴしゃっときめておるのです。憲法違反のことをやっちゃいけないのですよ。そうしてあなたの関係者が、部下がそういうことをやったとするならば、それはすみやかに改めなければいけません。部下のやった責任は大臣の責任になるのですよ。私だって若いころなかなか文学をやった男で、日本語の解釈については日本における屈指の権威者であります。(笑声)実際問題としてこの文章から受けるところの理解が、納税者に対して拘束力を持つものか持たないものか、私のこの日本語の解釈からいうと、そういう感じでは絶対受け入れられません。この通達を受け取ったからには、すなわちお知らせが来たからには、うっちゃっておいては大へんだ。文句のある人は言いなさい。文句の言い方とは何であるか。税務署に行ってその担当官に対して、この御説明を受けて、そうしてそれで自分が納得がいかなければ、なおかつ反論を戦わして、その納得のいく手続を踏むのでなければ、お知らせというものは捨てておいちゃいかぬ、こういうことも明らかにここにうたわれておるのですよ。さらに法律の基本論として申し上げたいことは、わが国の納税制度は、要するに話し合い納税制度ではありませんよ。これは申告納税制度なんです。話し合う必要なんか何もないのです。自分が申告をする、自分が確信を持って自主的な申告を行なって、それが脱税であったり間違っておったならば、法律は徴税機関に対して、後日更正決定の権限を付与しておる。そういう法律の権限によって執行せなければならぬのであって、更正決定が煩瑣であり、実情に沿わないならば、法律事項としてその法律の改廃修正を行わなければならぬ。法律をそのままにしておいて法律によらざる執行をして、あなたの言われるところによると、申告納税制度と昔の賦課課税制度ですか、その中間の納得のいく納税制度なんて、話し合い納税制度、そんなばかばかしい納税制度というものを国はきめておりませんよ。大臣は徴税の大きな責任を負われるから、便宜的にいろいろな方策はとらなければならないが、その方策なるものは、法律に、違反をしてはならないし、法律の精神をゆがめない程度のものでなければならないし、それだとしても、憲法第八十四条の規定によって徴税は法定主義です。法律によらなければ何事もこれをなすことができない。昔の代官や庄屋さんは、えいっと口先、筆先でどんなことでも書けたのだが、昭和二十二年に賦課課税制度から申告納税制度に変ってきたという歴史的事実を何と見るか、その点を一つ御答弁願いたい。  それからもう一つ重ねてお伺いをするが、このお知らせ制度は、ある税務署ではやっておるし、ある税務署ではやっていない、このような徴税の執行のあり方を大臣は正当な徴税行政のあり方と考えるか。国民の前に法律は平等でなければならぬことはだれしも知っておることであるが、徴税行政は国民の財産権に重大な影響を与えるだけに、特に慎重を期せられなければならぬ。ある税務署ではお知らせをやってそういうような影響力を与える。そうして国民に対して、弱い零細業者たちに対して恐怖の念を抱かしめておる。ある税務署においてはそれをやっていない、法律の前に平等ではないではありませんか。こういう執行のあり方を是正する意思はないか、この二つの問題について大臣の御答弁を願いたい。
  46. 池田勇人

    ○池田国務大臣 春日さんのおっしゃる通りに、ただいまは申告納税制度でございます。その意味は、ここにも書いてあるのでございます。これは、税務行政上の便宜主義によりまして、一応納税者の方にお知らせした方がいいと申される方もおありなのでございます。またそれは、心理的に強圧感を覚えて、正当な申告納税の意思を阻害する、こういう方もおありでございましょう。従いまして、書き方についてはいろいろございますが、しんはそこであるのでございます。申告納税制度をこわす気持でやっておるのではございません。あくまで納税の便宜、申告の便宜をはかる予備手段であるのであります。こういう意味からして、取扱いが全国税務署によって区々になっておると思います。これはやらなければならぬとか、あるいは全部やめるかというような問題では私はないと考えておるのでございます。あくまで軽く実はこの問題を考えておるのであります。従いまして、お知らせが参りましてもこれにとらわれる必要はございません。税務署においでになるならぬ、説明なさるなさらぬは御自由でございます。こういうことは、私ははっきり申し上げられると思います。
  47. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、この印刷物はずいぶん国費を乱費したものだが、国税庁から国民に対する布告のようなものだ。お互い説明になるなどお話し合いの上としてあるが、お話し合いの上お互いに納得のいく申告をして下さるのもよし、またそのようなお手続の煩瑣にたえない方はその必要はない、自主的に御申告下さるのも自由、こういう工合に書き直して、あらためて通達を発せられる意思はないか、渡邊国税庁長官、何と考えるか。
  48. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 この印刷物はすでに配付しておりまして、一応仕事が進んでおりますので、印刷物をこの際どうこうするというのは、事実上の問題として困難と思いますが、今大臣が答弁されました趣旨のことを全国的に周知せしめるような手段をとることは、考えていいと思います。
  49. 春日一幸

    ○春日委員 ただ税務職員に対して、本人の申告がなされない場合とか、申告が間違っておった場合、そういう場合だけ初めて更正決定の権限を付与されると法律がきめておることです。また本人が申告をしない場合においては、推計課税等の権限もあるのです。そこで一つよくお願いしたいことは、確定申告納税者が出した後でなければ、法律推計課税も更正決定もできないのです。私は、この点に一つ問題を集約したいということ。ですから、やはり納税者の中には、正直な方もありましょうし、中には、正直でない方も少数あるかもしれない。けれども、徴税当局があくまで納税者は全部脱税者なりという考え方で、自主的の、せっかくこの申告制度ができておるのに、それに対して大きな影響力を事前に与えるようなこのお知らせをとるものだから、従って申告納税制度の本旨というものがゆがめられて、その法律の精神、生命というものは死んでしまっておるんですよ。自分で何もやらぬでも、やがてお知らせが来るんだから、それならばお知らせが安く来たらこっちが得だ、高く来たら困ったものだが、しかしながら、そんなときにはなまじっか異議を差しばさむととんでもないしっぺ返しをされるから、まあ泣く泣くやって、うんともうけてうんと脱税して、そしてお知らせのよしあしによってそのときの運不運をきめるよりしようがない、こんな形になってきては、法律の権威というものは根本からくずれてしまう。  だからこの際、とにもかくにも昭和の二十二年にこの申告納税制度に踏み切ったということは、日本における官僚制度を民主制度に変えたということで、この申告納税制度、徴税行政の民主化、この大原則の上に立って大きな跳躍がされた。これを私は執行の面においても現実に具体化していただくのでなければ、意味がないと思う。今日警察官も民主化されてしまった、裁判所の判事も検事も何でもない、ただ国民がこわいのは税務職員である。国家権力を集約して、法律上の大きな権限をもって臨んでおるこの権力者が、憲法に基いて、税法に基いて申告納税制度、民主的納税制度に切りかえたのに、それを執行しておるものが、あらゆる機構が民主化された、すなわち警察も民主化された、官僚機構も民主化された、そしていろいろなものが民生化されたけれども、大蔵官僚の機構だけは民主化されていない。だからこの人々、実際の運営に携わるこれらの大蔵官僚の機構が法律をじゅうりんして、そうしてこういうような影響力を与える。昔の賦課課税制度とどこが違いますか。昔は、あなたの所得はこれこれだと言って、代官、庄屋の昔から官僚日本の制度が賦課課税制度であった。それと今のお知らせ制度とどこが違いますか。私はその点に触れて論述をしておるんですよ。  ですから、こういうような法律上の疑義がある。まず第一番に、法律論として——私は実際論はあとで申しますが、法律論として、これは申告納税制度の法律の原則をこわすという重大な問題なんだから、法律上の疑義をなからしめるということと、官僚制度が一切民主化されたこのときに、徴税制度だけが民主化されていないというこの立場から、私は憲法三十条、八十四条との関連において、この際そういう疑義があることは一切やめる意思はないか。伺うところによると、あるものはやめておると言う、他の一部のものはまだやめていないと言う。なお通達によると、将来やめると言う。それならば、この際、今こそこういうことが論議されたこの過程において、自説に拘泥することなく、釈然としてこれをやめて差しつかえないではございませんか。  あなたの方の税務運営方針の中に、これは将来やめるということを言っておるけれども、この将来というほどたよりないものはない。三十年も将来、毒百年も将来、来年も将来。だから、これは将来やめるという方針であるならば、これはもとより法律という基準によって、そういう法律論から国税庁で定められておる。これは本日、本年から一つやめたらどうですか。と申しますのは、本年度はあの予算において、八千三百億から九千四百億ですか、千二百億のとにかく実質上の増税が行われておるのだから、従ってこのお知らせ制度というものは、この予算面における千二百億円の増税というものが、税務職員に大きな影響力を与える。そして国民所得がふえておるのだから、一律に前年度よりこれこれという水増し課税がなされるというおそれなしとしない。そういう可能性が多いのです。可能性が多いときは、すなわち弊害の最も多いときである。その弊害たるや、法律に違反しておる執行である。従ってその違反を食いとめるために、将来やめるというお考えであるならば、これをこの際本日限りおやめになるという大英断を、一つ池田さんのきぜんたる政治家的良心によって、この際踏み切っていただくの必要性ありと思うのですが、大臣にその決意ありゃなしや、御答弁願いたいと思うのであります。
  50. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お知らせ制度に対しまする私の考え方は、春日さん、おわかりいただいたと思います。ただいま申し上げましたように、これは強制でも何でもない、単にわれわれは、正確な申告をしていただくために、事前にいかようにも御相談に応じますという気持でおったのでございます。従いまして、ただいまここで申し上げましたごとく、何ら拘束力はないし、都合のつかない人はおいでいただく必要もございません。これははっきり申し上げて、御了解をいただきたいと思います。また国税庁長官によれば、このお知らせ制度をしたのは、納税者の大体二割程度だそうでございます。八割まではいっておりません。従いまして、こういうお知らせをした方々に対しましては、ここでのあなたの御質問に対する私の気持を結論的に通知して、そして今の一われわれが望んでいない悪い結果が起らないようにいたしたいと思います。  それから、この問題について、私は四、五日前から初めて聞いてやっておるのでございますが、三十年とか三百年ではなしに、今回の様子を見まして考えた上で、悪ければ、これは来年からやめてよろしゅうございます。別に法律違反とか、あるいは納税者に迷惑をかけるというようなことは、絶対にあってはいかぬことでございますから、将来厚い機会に、やめるべきものならやめてしまいます。また改善をして、こういうふうにやってくれというような御意見があれば、またそれにもよりますが、このお知らせ制度につきましては、私の趣旨はおわかりいただきたいと思います。
  51. 春日一幸

    ○春日委員 私は断じて納得をいたしません。とにかく私たちは、この問題について三年ばかり前に渡邊国税庁長官と——かつて主税局長のときにであるが、論議を交えたことがございます。これは法律の根拠を持たないものだから、その当時において、三年くらい前においては、なお法律というものの知識が納税者に十分理解されていないので、そのトレーニングというか、そういうふうな時間的なスペースをも考えて、早期にこれをやめるという方向に向いておるのだという工合に理解して、われわれも、法律の基準によらざるこういう執行がされないように、すみやかにやめられるように言ってきた。その日からすでに三年もたった今日、いまだにそのことがやめられないということはありません。今日、納税者は税の負担に耐えかねて、徴税の法律がどういう関係になっておるかということは、組合やいろいろな指導を通じてだんだんと知ってきました。現実に青色申告の普及も、そのデータが二〇%から今では六〇%にふえておるかと思うが、いずれにしても、そういう工合にふえてきておるのですよ。今こそ英断をもってやめるべきなんです。何か疑義があるなら言って下さい。
  52. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 春日委員のおっしゃるように、私が主税局長当時から、この問題についていろいろ御論議がありました。先ほども大臣が申し上げましたが、われわれといたしましても、このやり方についていろいろ署におきましてもやってはいますが、やらない方がいいというところはやらない。そのような意味におきまして、当時春日委員がこの問題を初めて取り上げになったときに比べますと、お知らせをお出しする対象なんかも、かなり実はぐっと滅ってきているわけです。しかしわれわれとしましても、現状をもってこれでいいのだというふうにはまだ思っておりません。大体春日委員のおっしゃっておる方向に向って漸次これを改善といいますか、あるいは整備といいますか、どちらの方がいいか、われわれはもう少し研究したいと思いますが、考えて参りたい、かように考えております。
  53. 春日一幸

    ○春日委員 私は、ただいま大臣に対しても申し上げました通り、本年度はこの租税収入予算額がとにかく千二百億円ふえた。だから、千二百億円予算上ふえておるから、その末端徴税機関がこれだけの租税収入予算額に見合っただけの徴収をしなければならぬということは、やはりそれだけの心理的影響が与えられてくるのです。そうしてそれだけのものが現にふえてきているのです。私は調べて言っておるのです。現に昨年五十万の人はことし七十万、七十万の人は八十五万というふうにふえてきておるから、納税者にそういう水増し課税、水増し申告が行われておるから、事態容易ならざるものとして、ここにその不退転の決意をもって質問を行なっておる。だから、機械的に本年度においてこれをやらなければならぬということは、本年度において法律によらざるところの苛敬謙求、法律によらざる執行がなされる弊害が非常に顕著なものがあるという、こういう想定の上に立って私はここに論議を行なっておるのであります。従いまして、私は三年前に渡邊さんと話をしたときは、これは疑義があることだから早くおやめなさい、しかしながら実際の納税者の知識も、納税知識というものも十分でないから、やはりそのためには、エデュケーションのしかるべき期間も必要であろう、啓蒙宣伝を大いに試みて、そうして早期にこれを取りやめなさいと言って、その論議を一応ペンディングとして本日に至っておるのです。ですから、三ヵ年間経過した本日においてこれをなさなければ、今をおいて他にはないと思うのです。そういう意味で、第一に法律に基準がないからこれをやめるということ、もう一つ、私は実態論として申し上げたいのです。実態論の弊害がまことに大きいのです。と申しますのは、これはなるほど効率調査といいますか、基準調査といいますか、むろん税務署がさまざまな調査を行なって、そうして業種、業態、地域における大体の所得の標準率を調べられておる、従ってお知らせがそういうような標準率から推計をして発行されておる。私は大臣にお伺いしたいのだが、これは公正に見て、その立場を離れて、公正に客観的に判断すれば、その基準なるものは、ぴしゃっと当てはまるようなものはどこにありましょうか。あまりに商売というものは複雑多岐です、経費がたくさんかかる人かからない人、商売の上手な人、下手な人、それから取引先においては、貸し倒れができたりできなかったり、複雑多岐なのです。実際これはあまりに条件が多過ぎる、条件が多過ぎる中で、一つの基準をもってぐっと当てはめていけば、そんなものは的中するものは千のうち一つか二つしかない、現実の問題として一つもないかもしれない。そういうようにお知らせがぼっといって、それにことごとく判を押したとしたならば、一つの面においては過小の人もあるし、一つのものについては過大のものがある、いずれにしても、これは合わないということです。税法は、所得のあるものについて課税するのだから、あるものについては、その基準なるものは一つの基準である、目安である、目安ではありますが、それはことごとく条件が多過ぎるのです。従って、その個々の納税者に対する所得額を的確に公正に把握するとは断じがたい、把握し得ない。従いまして、ある者について過大であり、ある者については過小である、これはことごとく税法の違反である。それを税務署が、その責任の半分を背負う形になってくるのですよ。だから、私は法律的根拠に基いてこれはいけない、法律違反の執行であるし、これはこれとして別の問題としても、実際の面において、現実の面でも適切妥当なものではない、あるものには少な過ぎる、あるものには多過ぎるというようなお知らせをして、お知らせをするものが所得類の査定権、決定権を持っておる税務署長である限り、そういう所得のある者に課税をする、そういう者に脱税してもよろしい、過小申告が行われたものについては、脱税をした者に、査定権を持つ者がこれだけでよろしいというのだから、そんなものは脱税に対する脅迫です。責任の一半を国税庁が負わざるを得ないのです。だから、法律論として実態論としてもこれはいけないことですよ。池田さん、いけないことはやめようじゃありませんか。お互いに立場を離れてやめませんか。この際踏み切ってください。
  54. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま表をいただいて見ますというと、お知らせ制度を執行いたしましての経過を見ますと、三、四年前は、納税者の約七〇%ないし八〇%お知らせをいたしておったようでございます。昨年は納税者の三五%に相なっております。今年は二〇%にそれが縮まっております。これは、春日さんが多年大いに議論をなすった結果でこういうように現われてきたと思うのであります。従いまして、今年の問題はもうすでにこういうふうに、誤解はある程度持たれるかもわかりませんが、この問題につきましては、ここではっきり申し上げましたように、これにつきまして何らとらわれる必要はありません。御都合が悪ければおいでにならなくてもいいし、またおいでになっても、説明を十分しなければしなくてもいい、こういうことで、今年は一たん出したものでございますから、これでいっていただきたい。ただし、出しましたところにつきましては、今のここの質疑応答によります考え方を通知いたしておきます。そうして、来年からどうするかという問題につきましては、一、二日一つ私ももっと詳しく、あなたのおっしゃることはよくわかりますが、国税当局の者の意向ももう少し実地に聞いてみまして、この次の機会に、私が出られれば出ます。また出られなければ、国税庁長官からはっきり来年のことをお答えすることにいたしまして、きょうはこれで一つごめんをこうむってはいかがでございましょうか。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 今税法関係法律案が十幾つも出ておりますよ。あなた方が、与党から審議の促進方の申し入れがわが党に対してありますけれども、やはりこれは魚心と水心というものがあるのです。私たちの政党が不公正な要求をすれば、これは問題は重大でありますから、何も協力してもらわぬでもいいけれども、協力できる事柄については、釈然と割り切って協力するのでなければ、十五日に議了せよとかなんとか言ったところで、わが党にまたわが党の立場があって、現実の問題としてなかなかお申し込みの通りには参りかねる。一つぐらいは、何か言うことを聞いて下さいよ。物事は相談ごとでしょう、それで私が申し上げたいことは、私は、ただ形式論を言っておるだけではない、ただ形式論だけなら、後日また論ずる機会が現実にあります。ただ実際に被害が生じておること、その被害が、法律によらずして国民に対して不当な被害を与えておる、こんなことをわれわれが黙っておれますか。今までは、予算上における所得税というものは、特に私は申告所得税について言っておりますが、そんな大きな飛躍的なことがなかった。けれども本年度は、とにかく相当国民所得がふえておる。こういうここで、現実に水増しが多いのです、実際水増しが多いのです。大臣がある程度協力なされば、われわれはまた協力するにやぶさかではない。だから、今出してしまったものは仕方がない、私も不可能なことを言ったって、架空の論議になりますから、問題の解決のために論議を先に進めますが、一つ大蔵大臣名でもって渡邊国税庁長官ではいけません。大蔵大臣名をもってそういうお知らせを発しております国税局長に対して、このお知らせについては、法律上かつ実質上疑義がある、従って、これについては今大臣がみずからその見解を述べられた極暑に基いて、拘束力を持たざるよう、すなわちそのお知らせ額よりも下回った自主的の申告があった場合といえども、それに対して更正決定をなさざるよう厳重にそれを通達なさるの意思はないかどうか、そうして、その弊害をとにかくこの際未然に防ぎこの際早急にこれを防ぐ。なぜかというと、本年度国民所得がふえて、来年度は基礎控除、扶養控除、それから課税率の修三等でいろいろな変化があったから、制度上の減税になっても実質上の増税になる、こういう立場で、この三月十五日から一ヵ月間において問題の処理をしなければならぬから、私はこのように執拗にこういう立場を固執しておるのです。そこで、大蔵大臣から国税局長に対して、本日の論議の趣旨を十分尊重されて、早急に厳重なる通達をなされる意思はないかどうか。なされるならば、一応当面おさまるものとして私は質問を打ち切りますが、なければ私はあるまで言います。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、私は決してこのお知らせというものが拘束力を持ったり、あるいは心理的に悪影響を及ぼすようなことがあってはならないという考えでございますので、ただいまこの国会で論議いたしましたことは、国民に対して申し上げると同じことに取り扱っておりますが、あるいは数多い中で徹底しないかもわかりませんから、今お話しのように、実は、大蔵大臣は国税局長に直接の監督権限はないのです。それで、国税庁長官に私は通達を出しまして、国税庁長官から各国税局長に依命通牒をすることにいたします。そして今のお話の中で、お知らせ通達したものについては更正決定ができないのだというふうなお話がございました。そこで、国税庁長官がぶつぶつ言っておったのですが、お知らせいたしましても、更正決定は法の命ずるところによっていたします。これは一つ御了承願いたいと思います。とにかくお知らせの趣旨につきましては、ここで口頭ではいけませんので、さっそく文書で国税庁長官に出すことにいたしますから、御了承願いたいと思います。  それから来年の問題につきましては、やはりとくと一日相談いたしまして、翌日お答えすることにいたします。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 大臣の良心に期待し、強く当局に善処を要望いたしまして、私の質問津終ます。     —————————————
  58. 山本幸一

    山本委員長 この際申し上げますが、公聴会開会承認要求の件についてお諮りをいたしたいと存じます。当委員会に付託されております歳入法案中、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の二法律案につきまして、来たる十三日午前十時より公聴会を開いて意見を聴取いたしたいと存じますが、議長に対する公聴会開会承認要求の手続及び議長の承認があったときの公聴会開会に関する公示、公述人の選定等の手続等につきましては、すべて委員長に御任願いたいと存じますが、これについて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後は二時から開くことにいたしますが、なおその間に本会議がございますので、本会議等の関係がございましたときには、本会議後に再開することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会するに至らなかった〕