○春日
委員 ただ税務職員に対して、本人の
申告がなされない場合とか、
申告が間違っておった場合、そういう場合だけ初めて更正
決定の権限を付与されると
法律がきめておることです。また本人が
申告をしない場合においては、
推計課税等の権限もあるのです。そこで一つよくお願いしたいことは、確定
申告を
納税者が出した後でなければ、
法律は
推計課税も更正
決定もできないのです。私は、この点に一つ問題を集約したいということ。ですから、やはり
納税者の中には、正直な方もありましょうし、中には、正直でない方も少数あるかもしれない。けれども、徴税当局があくまで
納税者は全部脱税者なりという考え方で、自主的の、せっかくこの
申告制度ができておるのに、それに対して大きな影響力を事前に与えるようなこのお知らせをとるものだから、従って
申告納税制度の本旨というものがゆがめられて、その
法律の精神、生命というものは死んでしまっておるんですよ。自分で何もやらぬでも、やがてお知らせが来るんだから、それならばお知らせが安く来たらこっちが得だ、高く来たら困ったものだが、しかしながら、そんなときにはなまじっか異議を差しばさむととんでもないしっぺ返しをされるから、まあ泣く泣くやって、うんともうけてうんと脱税して、そしてお知らせのよしあしによってそのときの運不運をきめるよりしようがない、こんな形になってきては、
法律の権威というものは根本からくずれてしまう。
だからこの際、とにもかくにも
昭和の二十二年にこの
申告納税制度に踏み切ったということは、日本における官僚制度を民主制度に変えたということで、この
申告納税制度、徴税行政の民主化、この大原則の上に立って大きな跳躍がされた。これを私は執行の面においても現実に具体化していただくのでなければ、
意味がないと思う。今日警察官も民主化されてしまった、裁判所の判事も検事も何でもない、ただ国民がこわいのは税務職員である。国家権力を集約して、
法律上の大きな権限をもって臨んでおるこの権力者が、憲法に基いて、
税法に基いて
申告納税制度、民主的納税制度に切りかえたのに、それを執行しておるものが、あらゆる機構が民主化された、すなわち警察も民主化された、官僚機構も民主化された、そしていろいろなものが民生化されたけれども、大蔵官僚の機構だけは民主化されていない。だからこの人々、実際の運営に携わるこれらの大蔵官僚の機構が
法律をじゅうりんして、そうしてこういうような影響力を与える。昔の賦課
課税制度とどこが違いますか。昔は、あなたの
所得はこれこれだと言って、代官、庄屋の昔から官僚日本の制度が賦課
課税制度であった。それと今のお知らせ制度とどこが違いますか。私はその点に触れて論述をしておるんですよ。
ですから、こういうような
法律上の疑義がある。まず第一番に、
法律論として——私は実際論はあとで申しますが、
法律論として、これは
申告納税制度の
法律の原則をこわすという重大な問題なんだから、
法律上の疑義をなからしめるということと、官僚制度が一切民主化されたこのときに、徴税制度だけが民主化されていないというこの立場から、私は憲法三十条、八十四条との関連において、この際そういう疑義があることは一切やめる意思はないか。伺うところによると、あるものはやめておると言う、他の一部のものはまだやめていないと言う。なお通達によると、将来やめると言う。それならば、この際、今こそこういうことが論議されたこの過程において、自説に拘泥することなく、釈然としてこれをやめて差しつかえないではございませんか。
あなたの方の税務運営方針の中に、これは将来やめるということを言っておるけれども、この将来というほどたよりないものはない。三十年も将来、毒百年も将来、来年も将来。だから、これは将来やめるという方針であるならば、これはもとより
法律という基準によって、そういう
法律論から国税庁で定められておる。これは本日、本年から一つやめたらどうですか。と申しますのは、本
年度はあの
予算において、八千三百億から九千四百億ですか、千二百億のとにかく実質上の増税が行われておるのだから、従ってこのお知らせ制度というものは、この
予算面における千二百億円の増税というものが、税務職員に大きな影響力を与える。そして
国民所得がふえておるのだから、一律に前
年度よりこれこれという水増し
課税がなされるというおそれなしとしない。そういう可能性が多いのです。可能性が多いときは、すなわち弊害の最も多いときである。その弊害たるや、
法律に違反しておる執行である。従ってその違反を食いとめるために、将来やめるというお考えであるならば、これをこの際本日限りおやめになるという大英断を、一つ池田さんのきぜんたる政治家的良心によって、この際踏み切っていただくの必要性ありと思うのですが、大臣にその決意ありゃなしや、御答弁願いたいと思うのであります。