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高橋(晋)
参考人 私は先ほど
松永理事長が話された例の
原木設備総合対策委員会の一人でありまして、これに画策した
関係上、私もこの基本方針を強く押すものであります。それでまず
設備はどんどんふえていく、
原木が足りなくなるというので、
永井先生のおっしゃるように一体どこで
解決するかといえば、さっきの
理事長の言われた第一の策は、やはり
木材の利用
合理化にある。利用
合理化と、ばく然と申し上げても、皆さんの頭にぴんと来ないかもしれませんが、たとえば今薪炭を、
林野庁の発表でも
年間七千万石使っているようです。そうするとこの七千万石を石油とか都市ガスとか、練炭、豆炭というようなもので置きかえていけば、一体どれだけ置きかえられるかといえば、これは相当の量が置きかえられると思います。現に前の
戦争直後に
わが国の自動車、トラックがみなガスまきで走っていた。このガスまきを林総協の方で非常に
努力して石油をそっちの方へ回してもらってやったところが、年に千万石、二千万石と減ったという事実があるのです。ですからこの薪炭だけを
合理化するにしてもすでに何千万石というものが回り得るということは確かだと思う。そのほか
廃材等の利用、あるいは
木材でなくてもいいようなものはなるべく倹約してもらうというようにして
合理化していけば、さっき言われた
年間一千万石の
合理化というようなことは不可能でないと思う。それから第二はやはり
広葉樹の利用でございます。これは
パルプ会社は、先ほど申しましたように、今みな
クラフトであるとかあるいはセミ・ケミカルとか、こういうものにかわって盛んに
広葉樹を使おうとしております。しかしこれは卑近な例で、私どもの
会社の石巻の
工場はサルファイト法の
工場でありますが、ここでもかつては
針葉樹ばかり使っておりましたが、ことしは四割の
広葉樹を使ってそれで上質紙をすけるようになっております。現在では
日本の製紙
会社のかまは大体サルファイト法がまだ多いのです。ところがこのサルファイト法のかまにおいても、新聞紙は仕方がないとしてその他のものならば、四割
程度の
広葉樹は使用可能であるということが私の
工場でも実験済みですから言えるのじゃないかと思うのです。そうしますと
広葉樹を使うということはこれは全く可能であるし、ここに
森林資源の
パルプ原料の逃げ場が
一つあるのだということがわかります。
それから次は
輸入材であります。これはやっぱり何としても
輸入しなければならない。現に
日本の製紙
工場では戦前かつては樺太から大量に
針葉樹を入れていたのですが、これはやはりわれわれとしても
針葉樹のあるところから
針葉樹を持ってくることはいたし方ないのであります。それでその
森林資源はやはりソ連、
アメリカ、アラスカ、こういうところであります。これは一体何が高いのかといいますと、FOB
価格はさほど高くないと思うのです。ことしの
ソ連材の
価格なんかもどうしてもFOB
価格が
日本の二倍、三倍もするわけじゃないのでございます。ただその間の船賃が高い。だからこの輸送の船賃ということを詰めてもっともっと合理的に安くやろうということにすれば、今石当り千五百円、千六百円の赤松に比べて決して高いものでなくて入ってくるということは言えると思うのです。それでこの
輸入材もまた可能であるのじゃないか、ここにもやっぱりもう
一つ逃げ道があるわけです。
最後に、これは国としてぜひ縦貫道路なり何なり道路網を
設置していただいて、眠っている奥地の
森林を
開発していただきたい。腐って決して成長していないような
森林を大いに
開発して、そこで新しい
造林をやって
成長量をふやしてもらいたい。私は短期的に五年、十年の間にはやはりこういう
対策よりほか逃げ道はないと思います。そうしてこれをやると同時に、
木材を使用する工業は
長期の
対策として先ほど
理事長から言われた
造林を本気になってやってもらいたい。
造林は全く短伐期の
成長量の旺盛な
造林、いわゆる優良樹種を育成してやっていく近代的な
造林でなければならないと思うのです。しかしこれは不可能ではないと思う。たとえば簡単な例でありますがポプラの例をとってみますと、ポプラは年に二メートルぐらい伸びますが、一年に一本伸びたやつから穂をとれば大体十本とれる。そうすると年に十倍ずつ伸びるのですから十の二乗、三乗となりまして、その苗木を育成するのはそう年月がかからぬでも
日本には優良なポプラの苗木ができる。そのできた苗木を今度は農家に配付しまして、そして農家に育成させる。これは先生方が旅行なさればどこの農家でも必ず余地があるものです。家の裏でもあるし、あるいは山のすそのようなところは大体ほったらかして草ぼうぼうにしておるわけです。それから
日本には農業のために堆肥を作ると称して、あるいは家畜飼料と称してずいぶん広い草刈場を持っておりますが、これは草の集約利用あるいは品種の改良、あるいは馬がだんだん減って牛になってきますれば当然あんなにたくさん要らないはずです。かりに今一県をとりましてそこに百万人の人口がいる県があるとします。これが五人が一家族としますと二十万戸の戸数のものがあるわけです。それでこの二十万戸の半分を対象にしまして十万戸といたしまして、これにかりに十本のポプラを毎年植えていってもらうということにしますと、十万戸でありますから百万本のポプラが植わるわけであります。そうするとこれがかりに十年たちますと、大体私の推察ではイタリアの文献なんかから見ますと一本が大体一石にはなるのじゃないか、こういう推定を持っております。そうしていけば年々一県で百万石の
広葉樹ができるわけで、非常に海抜の高いところに追い上げられた
森林をもう一ぺん平地に引き戻して非常に肥えた土地に短期の非常に早い
広葉樹の育成ができる、こういうのが私の
考えたつまらない
一つの例でございますが、こういうふうに
考えていけばまだまだやりようがあるのではないかと思うので、こういうふうなことを
長期的に
考えてその
資源の培養に努める、そして短期的な
解決と相待って今後紙
パルプの
原料対策を進めていかなければならない。これにはいろいろネックがありますから、国がそれに対して指導し援助し補助するような
政策をとっていただきたい、こう思うわけであります。