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小林参考人 どこからスタートするかということについてでありますけれども、前に申しましたように、
木材を
ブドウ糖の
原料として処理する、前処理といいますか、その工程が経済的にものを作る場合に大きな問題になるので、その
部分について先進国で非常に進んだ
方法が、ほかの目的の、たとえば
パルプを作るためにやられておるとかあるいは
フルフラールをとるためにやられておるとかいうことがあるのであります。そういうものは設備がないと
研究しようにもできないということも言えるわけです。そのために非常に大きな金がかかる。そういう場合には、理想を言えば、たとえば
木材を作るために非常に高い温度が必要である。そうするとその高い温度を、しかも連続的に反応させて
フルフラールがとれる。しかも残ってくるものはそれを
ブドウ糖の
原料として最も適当な形にする、そういうことを兼ねた最も経済的な
方法を選ばなければならぬ。そういうことの
実験ができない。普通の小さい
装置ではさきに申し上げましたようにできないわけであります。そういうことをやるのは今からやっても決しておそくないので、もう
実験室である
程度見当のつくことはやられておるわけですけれども、それ以上は進まないところに来ておると思うのです。それからその残滓を
ブドウ糖の
原料とするということについては、
方法によって
塩酸法、
硫酸法でおのおのの持ち味が違うわけでありますから、どういう形で残滓が残るかということもおのずから変ってくるわけであります。これは前
加水分解をそういう進んだ
装置を使ってどういう
実験をやるかということとも関連するわけでありまして、
一つの
研究問題として前
加水分解が非常に重要視されるゆえんだと思います。それから残滓を
ブドウ糖にするところの過程につきましては、従来やった濃
硫酸法というものはある
程度たくさんの
硫酸を反応に必要としたのでありますが、だんだんと減すことができる、たとえばとれる
ブドウ糖と同じくらいの
硫酸でも十分反応を行うことができるという具体的な事実もあるわけであります。ただ、そういう適当な
実験装置を考案してそれを
工業化することのできる、つまり
工業化に持ち込むためには、なお基礎的な
研究が必要だという基礎的な
研究とも関連してなお
研究するというような問題もあるわけでありまして、現在それをやらなければ
工業化できないかというとそうでもなくて、従来考えていた
方法を使っても
硫酸をたくさんある
程度回収すればよろしい、また経済的な問題となればなるべくすぐ
回収した方がいいということもある。ですから基礎的な
研究はいつまでたっても必要なんでありまして、そういう基礎的な
研究をやるためにはやはりもうこの
段階にきたら基礎的な
研究をやることは要らないというわけにはいかない。
もう
一つは、経済性というものがそのときの
製品によって非常に違ってくるのでありまして、どういう
製品を作るかということによって実際に工場を作る場合に非常に有利性とか不利性とかが出てくると思う。現在のところは
ブドウ糖というものが具体的に考えられておりますけれども、あるいは将来の
製品を何にするかということをもっと適当に選ぶことによって、あるいは
パルプと同じように
木材からでなければ工合が悪いというような
製品だってあり得るかもしれません。そういう新しいものについての
研究も基礎的な分野では必要だということも十分言えるのだろうと思います。それから、
ブドウ糖を作った残りのものを、たとえば発酵法によりましていろいろな
製品にするということももちろんありますし、化学的な
方法で、たとえば糖とアンモニアのようなものをつけることによって、それを飼料に回わすことによって蛋白と同じような栄養効果を与えるような
方法についても
かなり先進国では進んでおるわけであります。そういうふうに考えれば、糖を
かなり高い価値のものにかえることも可能になるわけでありまして、そういうことについてもわが国ではまだ十分
研究がなされていないわけであります。
それから、そういう新しい
製品を対象にしていきますと、その
製品を作るために最も合理的な
方法もまたそこに新しく存在し得るのでありまして、工場の立地条件とかその工場が持っているいろいろな他の工場と違う特徴によってどういう
製品を選び、どういう
方法を選ぶのが一番経済的かということもおのずから変ってくるわけであります。ですから、基礎的な
部分の
研究は現在はもう必要はない、これからはもうその
段階ではないというふうにはそういうときが来てもある
程度言えないのではないか。特に新規
産業としてまだ机上の形もできておらないような場合には、基礎的な
研究というものはこれからますます必要だというふうにわれわれは考えております。そして、その組織の問題については、基礎的な
研究というのはたとえば大学とかそういうところは非常にやりやすいわけです。しかし、ほんとうの応用的な
研究になりますと、なかなか金もかかるし人手も
相当要るわけでありまして、そういう
研究は何か特別に国家がそういう
研究所のようなものをお作りになっておやりになることも
一つの
方法でありましょうし、あるいはまた何か適当な機関がそういうものを作られてこれを国家が補助するというようなことも必要だと思うのでありますが、
アメリカが一九五〇年ごろに行なった濃
硫酸法の
工業化試験でも、
日本の金に直して約二億円くらいな金をかけておりますけれども、結局それだけの資金を
アメリカのビューロー・オブ・マインという役所が農務省に委託して、その限りでやったので、ある
段階に到達したときにストップになった。そのためにその
研究のデータが発表してありますから、ある
程度の
参考になるわけでありますけれども、一応ものにならないでしまっている。しかしその中には非常にすぐれたやり方も入っておるのでありまして、現在のわれわれはそういうことを十分に
参考にしていくことができるわけであります。ですから結局結果論として、役に立つためにはまだ基礎的な
研究も必要でありますし、またそれをやっていくための組織というようなものも、これはやはり新しい企業で
相当リスクを伴うものであれば、民間で営利の対象としてすぐやられるというようなことは非常にむずかしいのじゃないか。そういう場合には、国家としても、こういうことが成り立つことによって、たとえば食糧不足ということも絶対的にはあるわけでありますし、
値段さえ安くなれば——この
値段が安くなるということも、工場立地によっては非常にあり得るかもしれない。たとえば
木材が高いといっても、ある限られた量の廃材というものは非常に安い
値段で集まってくるということもあり得るでしょうし、一がいにはどういう
方法がいいということは非常に言いにくい点が多いのだろうと思うので、こういう総合的なことについては、そういうことを
調査したり指導されたりするような機関とか、そういうものも存在することが非常に必要だと思うのであります。いずれにしても、たとえば、具体的に言いますと、今北海道で出されておるような計画の前
加水分解の
装置自身が非常にたくさんの金がかかる。何千万円とか億とかいうような
お金がかかるということを聞いております。また
アメリカの近くで何か完全向流の
パルプを作っているような
会社があって、その
会社で使っているような高圧の向流の反応
装置というようなものをかりに作るとすると、一億何千万という金がかかるというように聞いておりますが、そういうものを
実験装置として製作してやるというようなこと
自身が、さきの
チップの大きさとかいろいろな問題と関連して、
相当金がかかるわけでありますから、そういう
装置があればいろいろなことをやっていかれる。それが
かなりパルプというものを作る場合においても問題になるでしょうし、
糖化自身にもそういうふうに使える可能性があるわけですし、
フルフラールをとるとか、前
加水分解の工程が全体のプロセスに対して非常に経済的に大きく支配的に働く、影響を及ぼすということはあると考えられるので、そういうたくさん
お金のかかるようなことをやるためには、国家みずからやるか、国が
相当大きな援助をするのでなければ、そういうことはいつまでたってもできないということになりやせぬかと思います。