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1957-03-30 第26回国会 衆議院 商工委員会日本経済の総合的基本施策に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員昭和三十二年二月二十二日(金曜日) 委員長指名で次の通り選任された。       菅  太郎君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    島村 一郎君       田中 角榮君    福井 順一君       村上  勇君    横井 太郎君       佐々木良作君    佐竹 新市君       田中 武夫君    帆足  計君 同日  笹本一雄君が委員長指名で小委員長に選任さ  れた。     —————————————    会 議 昭和三十二年三月三十日(土曜日)     午前十一時一分開議  出席小委員    小委員長 笹本 一雄君       大倉 三郎君    齋藤 憲三君       村上  勇君    田中 武夫君       帆足  計君  出席政府委員         経済企画政務次         官       井村 徳二君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   酒井 俊彦君         総理府事務官         (経済企画庁計          画部長)   大來佐武郎君  小委員外出席者         議     員 永井勝次郎君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房企画課長)磯野 太郎君         総理府事務官         (経済企画庁計         画部調整官   太田 亮一君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月八日  佐竹新市君及び田中武夫君同月五日委員辞任に  つき、委員長指名で小委員に補欠選任され  た。 同月三十日  佐竹新市君同月二十五日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。 同日  小委員福井順一君同月十二日委員辞任につき、  その補欠として大倉三郎君が委員長指名で小  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済計画に関する件     —————————————
  2. 笹本一雄

    笹本委員長 これより会議を開きます。  さきの本委員会における宇田経済企画庁長官の御説明の中に、わが国経済はここ一両年予想以上の進展を遂げ、従来の経済自立五カ年計画は実情に即しないようになったので、できる限りすみやかに計画改訂を行うつもりである旨の説明があったのでありますが、この際、政府より昭和三十二年度経済計画と関連しつつ、これらの作業方針等について、その後の経過の大要を承わりたいと存じます。  この際お諮りをいたしておきますが、小委員外商工委員の御発言の要求がある際は、小委員長において随時これを許可することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 笹本一雄

    笹本委員長 御異議ないものと認め、さよう取り計らいます。それでは井村政務次官
  4. 井村徳二

    井村政府委員 大臣がこちらへ出るということでけさまで待っておったのでありますが、閣議が開かれましたので、そこへ出ましてはなはだ遺憾でありますけれども、後ほど出てこられるかと思います。その間政府委員としての考え方を大來部長から申し上げます。
  5. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ただいまございます現行経済自立五カ年計画は、一昨年の十二月に閣議決定になっておりまして、その大きな要点といたしましては、大体昭和二十九年度を基準にいたしまして、三十五年度までに日本経済規模年率五%で拡大するというような基本的な数字の上に立っておったわけでございます。そのような数字に基きまして、各種の工業生産なり、あるいはエネルギー輸送力需要貿易規模等もいろいろはじかれておるわけでございますが、その根幹となります経済拡大率が、二年間に非常に予想を上回ったということになりまして、三十年度、三十一年度はそれぞれ一割をこえる経済規模拡大があったわけでありまして、そういたしますと、現在ございます五カ年計画の四年分を二年で達成しつつあるということになりまして、すでに計画目標のいろいろな数字が実際上使い得ないというような状況が出て参りまして、やはりこの新しい情勢に基いて、改訂ないしは新計画を作る必要があるということになっておるわけでございます。なおまた今の経済計画方法論等につきましても、戦後いろいろ経済計画が作られましたのですが、日本政府が正式に承認した計画というのは、現在あります五カ年計画だけでございます。計画作成技術というような点、方法論という点などにつきましても、まだいろいろ研究の余地がございますので、そういう点も、今回の改訂の際にできるだけ諸外国の経験とか、その後の研究結果を取り入れて、方法論的にも、より一歩進んだものにしていきたいということになっておるわけでございます。それで今の実績目標関係でございますが、国民総生産が大体国の経済規模を示すと見ていいかと思うのでありますが、現在の計画では、昭和三十五年度に、昭和二十九年度に止べて三割三分六厘、三三・六%伸びるという予想にしておりましたが、この三十二年度の経済計画によりますと、これが三十二年度で一二七・九ということにもなりまして、あと三十三年、三十四年、三十五年、三年分でわずかに六ポイント足らずしか残らない。つまり三十三年度以降年に二%以下の伸びでも目標に到達してしまうということで、予定より早く伸びて参りました。鉱工業生産につきましては、三十五年度の目標が一五三・七になっておりますが、三十一年度、これは明日で終りますが、三十一年度の予想が一三六・一、それから三十二年度の目標が一五三・一でありますから、もう三十二年度に鉱工業生産水準が、今の五年計画の三十五年度の目標にまさに到達してしまいます。そういうふうに経済の実際の発展の方が計画水準に考えられておりましたよりも非常にすみやかであったのであります。もちろん私どもも、このような過去二年のような経済拡大率というものが、そのままずっと将来続き得るかということについては、非常に疑問を持っておるわけでありまして、たとえば、昭和二十九年度あたりは、この鉱工業生産の対前年度拡大率がわずかに三・三%であったのであります。実は現在の五カ年計画が作られましたときは、そういう二十九年度のデータが一番新しいものでありましたので、二十九年度の数字基礎になっておったのであります。二十九年度の日本経済拡大率は三・二%であります。その前の数年間は一割前後の拡大があったのでありますが、二十九年度にはだいぶ下って参りまして、その辺で今後の経済成長率は戦後一応回復段階は終ったから、それほど急速にはいくまいということが当時常識的になっておったようであります。それから日本戦前の三十年間ばかりの平均的な経済成長率拡大率が四・二%程度。これは一橋の先生方研究どもあるわけでありますが、その程度でありますし、諸外国の例を見ましても、大体三%くらいのところが多いのであります。第二次大戦後は世界各国ともやや経済拡大率が高まってきておりますが、それでもまあ四%くらいというのが普通であります。ドイツあたり年率一割くらいの発展率になっておりますが、そういうふうな諸外国の例及び日本の過去の長い実績などからして当時おそらくこの五%という数字がとられたと思うのでありますが、当時はこの五%の拡大率でも少し楽観に過ぎはしないかという批評が新聞雑誌等にも相当出ておったわけでございますが、まあ皮肉と申しますか、そういう計画ができました直後から経済が急激な拡大を示すようになって参りまして、ただいま申しましたような、予定の二倍の実績になっております。しかしこの点で従来の計画一つの見落しと申しますか、考慮を十分されておらなかった点があると思うのでありまして、これは経済拡大を考えて参ります際に、長期的に日本経済が年何パーセントと大きくなっていくかという、いわゆるトレンドといいますか、趨勢と申しますか、そういうものがあるわけでありますが、そういう趨勢拡大率の上にサイクル、景気循環景気変動アップアンドダウン、上下が加わって参ります。トレンドとしはずっと上向きになって参りますが、そこに景気変動アップアンドダウンが加わって、それが合わさった形で経済拡大率が示される。ちょうど今から考えますと、昭和二十九年度という年はトレンドの上に景気ダウンカーブが重なって成長率が三・二%というようなことになったのじゃないかと思うのであります。これがイギリスなどの場合になりますと、トレンドとしての経済拡大率が低くなっておりますから、景気ダウンがくるときには絶対的に経済規模が幾分小さくなる、鉱工業生産が対前年よりも下るというような例もあるわけでありますが、日本の場合にはやはりトレンドとしての上昇率が高いために、景気が下りましてもある程度経済規模拡大する。しかしその拡大率がだいぶ下ってくる、低くなるということではないかと思うのであります。それから二十九年度のそのような情勢から、最近のように上昇に向って参りまして、これが日本経済長期的な拡大率の上に、景気谷底から山の上に上る間の計算が加わって参ります。それが結局年一割というような拡大率になっておるのじゃないか。従って長期的なトレンドとしましては、やはりこの中間に考えていかなければならないように見られるわけでございまして、私どもとしましては、先ほどとりあえず七%モデル作業というものをやったわけでございまして、お手元にごく簡単な刷りものがお配りしてございますが、この趣旨は今申しましたように、長期的な戦後の経済の動向を見ますと、どうも五%という見通しは低過ぎたようである。しかし現在の一割というのもどうも高過ぎる。それから諸外国の例とかあるいは戦後の日本経済にとって特殊な条件等いろいろ考えてみまして、今後の五年間を考える場合に、この七%程度のところをトレンド趨勢として見るのがほぼ妥当じゃないだろうかというような一つの推測なんでありますが、これはこの計画改訂作業のための一つモデル作業ということで呼んでおるわけでございますが、まず経済拡大率見当をつけまして、それから生産なり貿易規模をはじくという作業を暮れから正月にかけてやったわけでございます。これは一つはちょうど昨年の暮れに、電気長期計画をどうしても改訂しなければならないという情勢になっておりまして、これは電源開発促進法関係もございまして、政府長期計画を決定して、それに基いて毎年の着工規模をきめていく、電源開発株式会社開発については開発地点までもきめていくというような法律上の義務づけがございますので、従来の電源開発計画ではどうも急激な需用増加に応じ得ない、相当着工地点を追加しなければならないというような関係から、計画改訂の必要に迫られたわけでございます。それで経済計画全体としてはまだ改訂に至っておりませんが、まずそういう電源関係から考えて、電力長期計画改訂電源開発調整審議会に昨年出しましたわけでありますが、そういう電源計画を作ります場合にも、一応の経済規模見通しがなければ電力需用がはじき出せないのであります。ところが現在ございます経済計画は、先ほど申しましたような事情で使えなくなってきているということで、何らかの手がかりが必要であるというような意味もございまして、七%モデルというのはそういう電力計画基礎にも一応用いられたわけでございます。  なおそのほか国鉄修正五カ年計画、これはやはり鉄道輸送力の逼迫、輸送需要の急増というものがございまして、これに対処していくためには、従来の経済五カ年計画に基いた国鉄計画ではどうも間に合わない、もう少し大きな計画にする必要があるということになって参ったわけでありまして、この鉄道輸送要請長期的な見通し改訂するという必要も出て参りました。これも経済規模をはじきませんと鉄道輸送需要がどのくらいあるかということが出て参りませんので、われわれの方でこの七%モデルというものを国鉄改訂五カ年計画基礎として一応使うということになったわけでございます。  そういった意味で七%モデルという作業をやったわけでありますが、この七%と一口に申しますが、実は諸外国の例から見て非常に高い経済拡大率でありまして、七%で年々拡大していきますと、大体十年で経済規模が倍になるわけでありますから、非常に高い率であります。果してこれが相当長期にわたって続き得るか、しかも戦前は大体平均して四%強だ、なぜ戦後このような高い成長率が想定されるか。戦後十年くらいはこの戦争で破壊された経済が急速に立ち直る段階でございますから、割合に大きな比率拡大することが考えられるわけでありますが、一応もう戦後ではないということになってきております現在から先五年間、七%考えるということがどうであろうかということもあるわけであります。  これはまだはっきり証明されたわけじゃないのですが、私どもの観察からいたしますと、戦前に比べて日本経済に二つ三つ違った点が出てきておるのであります。その一つ世界的な現象でもございますが、景気変動というものが戦後の経済では割合少くなってきている。もちろん先ほど申しましたように景気の動揺がございますけれども戦前昭和五、六年の大不況とか、そういったような非常に激しい不況というものがどうやら避けられてきている。これは世界的にもそうなって参りまして、不況が間に入りますと長期的に見てその間は大量の失業ができて経済伸びがとまりますので、長期的な経済の拡人率は低くなる。これが割合に谷が浅いと長く見た拡大率が高くなるという現象がございます。  それから特に日本的な原因といたしまして、しかもこれはある程度一時的な原因でありますが、労働力増加状況がややアブノーマルな状況にございまして御承知のように日本人口増加というのは従来非常に心配されておったのでありますが、急激な日本人口増加段階はだんだん終末期に近づいてきているようでありまして、今後の人口増加はこれまでに比べて非常に緩慢になって参ります。そうしますと今までよりは人口伸びが非常に低くなって参るわけであります。一方労働力伸びはこれまでにない高い率になっております。これは過去における高い出生率と、それから現在、戦後起っております死亡率の急激な低下、年寄りが長い間労働力としてとどまる、こういう両方の原因が重なりまして、非常に急激な労働力人口増加が起っておる。御承知のように、現在の五カ年計画も、二十九年度から三十五年度に至る六年間に人口は五・五%、つまり年にして一%弱しか伸びませんが、労働力人口は一二%、つまり年に二%ずつふえる、総人口伸びに比べて二倍の勢い労働力人口つまり職業を持ななければならない人口がふえて参るというような事情にあるわけでございます。これが今後十二、三年たちますと、現在の低下した出生率の結果が現われて参りまして、労働力伸びも急激に落ちて参るわけでありますが、終戦直後のベビー・ブームで、非常に出生率の高かった時代もありましてこの十二、三年間は労働力人口伸びが非常に高い。この労働力人口伸びが非常に高いということは、一面からいえば失業という問題にもなるわけでありますが、しかし、他面から見ますと、人が、ことに働き手がふえるということは、何らかの形で生産的なあるいは所得を生み出す事業をふやす結果になってくるし、経済拡大を押し上げるというような結果になるんじゃないか、戦前労働力人口増加が一%余りであったのが二%になっておるというのが、やはりここ当分の間の経済拡大率を高める結果になるんじゃないか、こういうふうに観察しておるわけであります。  第三の事情といたしましては、軍事費の問題があるかと思うのであります。これもいろいろ議論があると思いますけれども戦前は大体ならして国民所得を七%前後軍事関係に使っておった。これが戦後は、最近の数字でも、防衛関係の支出が二%以下になっております。その関係で五%くらいの節約が行われる。これが全部生産的な投資に向けられているとは言えないと思うのでありますが、しかし相当な部分発電所なり工場なりの建設に向けられるということになりますと、これは、経済の方の計算で、資本係数というようなものから見まして、もしも三%投資がふえれば、年の経済拡大率は一%前後上るというような計算にもなって参りますので、その防衛関係で五%くらい国民所得に対する割合で減っておるということが、また戦後の経済拡大率を高める一つ原因になっておるんじゃないか。これが逆にイギリスあたりでは、九%も軍事関係に使っており、国際収支資本蓄積経済拡大に非常に苦しい負担になっておるということは、イギリス大蔵大臣などが最近も演説をしておるわけであります。日本ドイツは、その点は逆な現象が起っておると言えるかと思うのであります。  そのほか、世界的な技術革新投資がかなり高いレベルで継続しておるということやら、ともかくいろいろな問題点がございますが、世界貿易は比較的順調に拡大しておりまして、過去五年間をとっても年率六%弱くらいの勢い世界貿易規模拡大しておる。戦前のように、非常に貿易を制限して、お互いに貿易規模を縮めるというようなことが戦後は行われなくなって、とにかくいろいろ問題はございますけれども、全般的に見て拡大均衡でいこうということが各国政策になっております。その結果として、世界貿易も年に五、六%拡大しておる。日本のように貿易に依存する国は、世界貿易拡大傾向を持続すれば、国内経済拡大についても非常に有利な影響がある。いろいろな点がありまして、こういう点が従来まだ十分考慮されておらなかったきらいもあったかと思うのでありますが、そういういろいろな点を考えまして、七%前後の成長率をしばらく見てもいいではなかろうか。十二、三年先になりますと、先ほど申しましたような事情からいって、この成長率はある程度下ってくる可能性はあると思います。一般に国民生活程度が高くなって参りますと、世界的に見ましても経済の年々の拡大率はだんだんゆるくなるという傾向が見られますし、将来二十年、三十年、この七%ということはもちろん考えられないと思いますが、さしあたりの今後の五年間についてはこの数字に近いところが見られるんじゃないか。もちろんこれは一応大まかな見当でありまして、今度の計画改訂に当りましてはもう少し内訳から検討して参りたい。特に一次産業と二次産業、三次産業つまり農業関係鉱工業関係、それからサービス部面、これを分けてそれぞれの成長率というものを過去の実績その他から検討とていき、それを全部合せてみて検討を始めていかなければならぬと考えておるわけでありますが、大きな骨組みといたしましては今申し上げましたような点等を考えておるわけであります。  それから先ほど七%モデル輸送力の問題と電気の問題を申し上げたのでありますが、輸送力につきましては、一応経済規模に対して日本のいろいろな輸送機関、おもなものは国鉄自動車、内航船舶、こういうものの総合計のトン・キロ、輸送の重量だけではありませんで、輸送距離をかけましたトン・キロというものを輸送力として見るわけでありますが、これによって大体国民総生産に比例しておるという関係が見られるわけであります。大体カーブをかいてみますと、直線になります。そういうところから将来の国民総生産規模をまず想定して、それから七%含んでみていくわけでありますが、それに対しまして総輸送トン・キロというものをはじきまして一方におきまして鉄道、道路あるいは船、こういうものも長期的な輸送の分け前の比率変化がございます。だんだん鉄道比重が少しずつ減ってきて、自動車輸送比重がふえるというようなことがございまして、そういう点から過去の実績や諸外国の例を参照しまして、おもな輸送機関について総輸送量を振り分けてみる、そういう形で国鉄輸送量をはじいてみましたところが、大体経済規模七%拡大に対応する国鉄輸送力伸びは、年率四・五%くらいになる、今の五カ年計画ではこれを二・六%に見ております、どうも小さ過ぎる、大体四・五%くらいを見ていいのじゃないか。これももちろんことし一年見れば八%伸びておりますし、短期的に見ると非常に変動があるわけでありますが、先ほど申しましたように、これには景気変動の要因が加わっておると見るべきだと思います。国鉄輸送力の問題、対前年の増加で見ますと、マイナスの年もあるのでありまして、たとえば昭和二十七年は前年に比べてマイナス五・八%、二十八年はプラス四・三%、二十九年はマイナス二・一%、三十年はプラス二・六%というふうに、鉄道輸送力も年によって相当浮き沈みがございます。現在年に八%くらい伸びておるから、将来ずっと五年間八%くらいで伸びるということは考えられないわけであります。ことに鉄道から自動車への輸送転換もあるというようなことで、長期に見て四・五%というように見ておるわけであります。  それからエネルギーの方につきましては、これは電力石炭、石油等総合して一応見ていかなければならないわけでありますが、この点につきましてもいろいろな見方がございまして、鉱工業生産伸び電力事情伸びとの関係が比例するかどうか。これなども外国の例を見ますと、鉱工業生産がかりに一割伸びますと、電力需用は一割以上伸びるという例が多いのでございまして、これはドイツでもイギリスでもフランスでも大体そういう関係になっておりますが、過去の五年間ばかりの日本実績を見ますと、この割合が六割くらいになっている、つまり鉱工業生産が一割伸びた場合に電力需用は六%くらい伸びるというような関係になっておったのでありますが、これがこの一両年の間に非常に近づいて参りまして、従来のそういう関係が使えなくなって参りまして鉱工業生産伸び電力需用伸びがほぼ近くなって参ります。たとえば昭和三十一年度は鉱工業生産戦前に比べて二一%伸びておるわけでありますが、電力需用は一八%、ほぼ近いところの伸びを示しております。これでいろいろ検討した結果、将来五年間について、電気は大体平均して九・五%、三十一年度の一八%がその中に入っておりますので、それを除けばあと四年間は年率八%くらいになるわけであります。そのような伸びを考えて現在の電力五カ年計画はできておるわけであります。それに基いて電源としては五年間に八百四十万キロの水火力開発するという現行計画になっております。これは秋までに経済五カ年計画の変改が一応でき上りまして、それに基いたエネルギー見通しが固まって参った場合に、もし今の電気の五年計画とだいぶ食い違って参りますれば、電力計画をそれに応じて直すということになると思いますが、大体この改訂の方向を考慮に入れてやっておりますので、そう大きな電力計画修正ということにはならないかと考えております。  それから他のエネルギーにつきましても非常に問題がありまして、大体今後のエネルギー問題としましては、従来は国内石炭を増産するとか水力資源開発するとかいうことで、ほぼ国内エネルギー資源でまかなってきたのでありますが、今後は、大体において経済規模拡大に伴って増加いたしますエネルギー需要増加分は、ほとんど輸入エネルギーによらなければならない。それは石炭である場合もありましょうし、石油である場合あるいは原子核燃料である場合もありますが、いずれにしても国内エネルギー資源というものは天井に近づいておる。今後の需要増加分に対しては大部分輸入エネルギーによらなければならぬということになって参りますので、エネルギー政策の面でも従来より相当考え方を変えていかなければならない面が出て参るかと思います。このエネルギーの問題あるいは先ほどの人口問題なども、五年という期間ではそういう本質的な変化、いわば量から質への変化というものがはっきり出て参りませんので、今度の計画改訂の際には、できればもう少し長い、十年なり十五年についての見通しもあわせて行なっていきたいというふうに考えておるわけでございます。そのほか鉄鋼原料などという海外の資源に仰がなければならない面も相当長期的な見通しを必要とするので、これらもあわせて今後検討していきたいというふうに思っておるわけであります。  そんなことがおもな点でありますが、もう一つ雇用の問題で先ほどちょっと触れましたように、ここ十二、三年は雇用問題が非常に苦しいときでありますが、雇用の数字を今の計画ではいわゆる労働力率というようなものを使って計算して、つまり人口の中から十四才以上の生産年令人口を出しまして、この生産年令人口労働力率をかけまして、働かなければならない人間の数を出す、労働力人口を出すという形をとっているのでありますが、これはいわゆるコルム方式と言われ、アメリカの経済学者コルムが一九六〇年のアメリカ経済の予測をとった際に使った方式であります。いわゆる国民所得計算からいく代表的な行き方なのでありますが、どうも日本労働力を考えます場合に、必ずしもそういう行き方でいかない。日本の場合には雇用状態が欧米のように均質でない、完全な就業状態にある者もありますが、家族労働者のように非常に短期間働くとか、あるいは非常に低い収入の者もいる。いわゆる半分雇用みたいな、いわゆる不完全就業と申しますか、そういう人口がかなりありますので、やはり欧米のように雇用がほぼ完全な状態にある国の計算方法そのままでは少し工合の悪い点もあるというので、今雇用問題の扱い方をいろいろ検討中であります。学者先生方の御意見なども伺いまして、またいろいろ専門家が集まって約一年間雇用問題、日本労働力事情についての検討を続けて参ったわけでありますが、大体今の日本の雇用の考え方といたしましては、小学校、中学校、高等学校、大学の新卒を雇用に吸収するということと、現在転業可能な潜在失業者ないし不完全就業者を何カ年かの期限でだんだんと吸収していく、こういうことが日本的な意味の雇用の目標になりはしないかという考えで作業を準備しております。そういった場合に経済成長率がどの程度であればどの程度の雇用が吸収できるかということも検討しているわけであります。たびたび大臣からもお話がありましたように、年率七%程度拡大して参りますと、十二、三年くらいの見当で現在考えられます転業可能の潜在失業者を一応吸収するような形になるというふうに見ているわけでございます。そういう雇用の面の問題を考慮に入れまして大体改訂作業を進めて参りまして、今年の八月ごろには——九月になるかもしれませんが、一応の改訂案を作り上げるという予定作業の準備をやっているわけでございます。  もう一つ日本長期計画で非常に問題になる点は、海外の経済市場、特に日本貿易国際収支の面であります。過去において計画実績に非常に食い違いができました大きな原因貿易面にあるわけでございまして、過去三年間に日本貿易輸出が二倍にふえた。これは世界各国に類例のない拡大テンポであります。この中には先ほど来申しました景気上昇の要因とそれから経済の継続的なトレンドとしての拡大ともう一つ貿易面についてはまだ戦後の段階を十分に脱しておらないので、いわゆる戦後回復の段階、この三つの要因が加わって過去三年間に輸出が倍になるというような拡大が起ったのではないかと見ているわけでございますが、日本貿易戦前におきまして昭和十年ごろの実績世界の輸出貿易の大体五%を占めておりました。二十分の一、世界の輸出貿易総額に対する日本の輸出額の割合でありますが、それは五%ぐらいであったのでありすす。三十一年度あたりは相当貿易規模拡大しておりますが、まだ世界の輸出貿易額の三%くらいでありまして、この点の割合がまだ低い。けれどもそういうことでかなり急速な回復が起ってきたと見てよろしいかと思うのであります。この貿易の額をどう見るか、それからそれを計画の中にどう取り入れるかということは、実はわれわれとしても非常にむずかしい問題と考えておるのでありますが、これにはいろいろ考え方がございまして、一つの行き方は、先ほど申しましたようなことで、日本経済規模拡大をまず想定いたしまして、その経済規模から見て、輸入依存度と申しますか、どのくらいの輸入が必要かという検討をはじいてみる。これは一方におきまして長期的な国民所得ないし国民総生産に対する輸入額の割合というようなものをいろいろ数字を出して見ますと同時に、一方おもな物資につきましていわゆる積み上げ計算をしてみる。食糧が幾ら要る。鉄鉱石が幾ら要る。石油が幾ら要るというような検討経済機構の方からはじいてみまして、その合計をとってみるというような両面から一応当ってみるわけでございますが、ともかくも経済規模の想定、それに基いた輸入需要の想定、その輸入を可能ならしめるための輸出規模というような計算方法がございます。これは従来のやり方でもあるわけであります。  もう一つの方法といたしましては、オランダの中央計画局が採用しておる計画方式、これは逆にオランダの主要な貿易相手国を選びまして、その相手国の経済拡大率を想定いたします。その相手国の輸入依存度から将来の輸入額をはじいてみる。そのうちのオランダの占める割合というものを大体想定いたしまして、これを合計いたしまして将来のオランダの輸出可能額というものをはじいてくる。この輸出可能額から逆に経済規模拡大率をはじいてくるというような、外から内に向って計算するようなやり方であります。日本もこの貿易規模によって経済規模が相当支配をされますので、このオランダ方式的な考え方も確かに必要だと思うのでございます。ただ貿易に対する依存度が、一般に考えられておりますほどには日本は高くないのでありまして、オランダの場合は国民所得の大体半分が輸出に依存しておる。日本の場合にはこの比率が一五、六%でございまして、イギリスあたりは二割くらいになるわけでございますが、オランダに比べればまだ国内要因というものは相当ウエートがある。輸出なり貿易依存度というものが一割五分程度、もちろん質的にはこれが食糧と工業原料が大部分でありますから、非常に重要な意味を持っておりますが、しかしこういう角度から攻めていく方法、このオランダのようなやり方は、少し日本の場合には行き過ぎのように考えられますので、今回はオランダのようなやり方を、つまり先ほどの輸入需要をはじいた上で輸出規模を出す。その輸出規模をチェックする意味でオランダのような計算方法にもうちょっと工夫を加えた方法を使ってみようかということになるわけでございます。大体貿易規模といたしましてはそのお配りしました資料にございますように、輸出が昭和三十五年度で三十六億五千万ドル、年率一一・三%の拡大、輸出が四十二億七千万ドル、年率一三・二%の拡大というようなところで、その他のものを入れてほぼ国際収支がバランスするというような見当になっております。これはもちろん先ほど来申し上げましたように七%モデル作業という試算でございまして、計画改訂数字はこれよりまた変って参ると思うのでありますが、大体そんな見当貿易規模、これはいわゆる為替ベースの数字でございますが、規模を考えております。従来の五年計画は三十五年度におきまして輸出がたしか二十六億六千万ドル、輸入が二十五億八千万ドル、大体二十六億ドル前後の輸出入を考えておったのでありますが、それに比べまして非常に大きな貿易規模になっております。これは一つには日本経済規模が非常に伸びてきた。経済規模自体が大きくなってきたということと、輸入依存度と申しますか、国民総生産なり国民所得に対する輸入額の割合が今の計画では少し低く見過ぎておったんじゃないか。これはなかなか見定めがたい問題なんでございますが、つまり経済規模拡大していく場合に、それに比例した輸入需要が起るのか、比例以上の輸入の拡大が起るかという問題になりますが、これはいろいろ実績検討したりしておりますが、どうも戦後の日本の場合には経済規模拡大に比例する以上に輸入需要がふえる可能性がある。それは先ほどちょっと申し上げましたエネルギーの問題にしましても、従来は国内エネルギー資源で大体まかなっていたのでありますが、今後は大部分石油なり石炭なりの輸入でまかなっていかなければならぬ。鉄鉱石にいたしましても、国内の鉄鉱石資源はもう全然不足でございまして、今後の鉄鋼増産の全部について輸入の鉄鉱石なりスクラップに依存しなければならぬというような面、そういうふうに経済規模拡大いたして参りますと日本の場合にはどうも外からまるっきり入れなければならない。全然外の輸入原料に依存しなければならないというような工業が相当ふえて参るというような事情もあるわけでありますが、他面におきまして繊維関係の原料輸入、特に綿花、羊毛につきましては、これは比較的ふえない。国内の人造繊維の発達によりまして割合ふえないわけであります。食糧も割合ふえない。これは人口増加率が先ほど申しましたように非常に低くなって参ったことと、食生活がだんだん高度化しますと、主食の消費の割合が減ってくるというようなこともございまして、食糧及び繊維原料の輸入は経済規模拡大しても割合伸びないのではないか。工業原料の方は経済規模拡大の率以上に伸びていく、この二つの情勢がからみ合っておるわけでありますが、やはりふえる方の要因の方がやや強いと見られるわけでありまして、そういう関係からいわゆる輸入依存度というものを現在の五年計画よりも高く見る必要があるのではないか。それでこの輸入依存度を戦前に比べてみますと、実は大分下っておるわけでありまして、これは非常に意外なことなんでありますが、戦後の日本経済貿易に対する依存度が戦前よりだいぶ低くなっております。国民総生産、GNPに対する輸入額の割合戦前は大体一割八分——これは植民地、朝鮮、台湾も入れてでありますが、一割八分ないし二割程度であったのであります。現在はこの比率が一三、四%、二、三年前では一一%というようなところになっておるわけでございます。この現象のおもな原因は今の繊維原料の輸入が非常に減っているということと、食糧が経済規模拡大割合にあまりふえていない。そのほかパルプ原料の自給度が非常に高くなっておる、幾つかの特殊な原因があります。また、満州大豆を肥料に使うかわりに、国内の合成によってできた硫安が使われるようになったとかいろいろな原因がございますが、戦前に比べれば戦後の日本経済貿易依存度は減っております。しかしこれは、先ほど来申しましたような事情からいたしまして、少しずつ上っていく傾向を見なければならない。そうしますと貿易規模も、比較的大きく見る必要が出てくるわけであります。ここらも、今度の計画改訂作業検討を加えて参りたいと考えておるところであります。  それから申し落しましたが、この計画の性格と申しますか、経済計画というものが戦後あちこちで行われておりまして、共産圏諸国はもちろん計画経済で非常に厳重な計画を立てておりますが、いわゆる資本主義諸国といわれる国々も、何らかの意味経済計画ないし長期見通しというものを持つようになって参りました。これは、一つには経済のいろいろな現象に関する研究が進んできて、やや長期見通しを立て得るようになった、それから経済政策のやり方が、そのときどきのその場しのぎではなくて、長期見通しに基いてなるべく経済成長率を高めるように意識的な政策を講じなければならぬという自覚が、各国政府なり経済学者の間にも出てきたというような原因があると思うのであります。日本経済計画は、大体今のところでは自由経済を基調にしておりますので、予測と計画とがある程度まじり合ったようなものになっておると思うのであります。今までの計画では、おもな鉱工業生産の品目などが一様に計画目標として上っておるのですが、これもこれまでの経験から見まして、今後計画改訂いたします場合にはやはり重点的な部面で、国の経済発展に対して非常に決定的な影響のある分野というようなものについてはある程度計画性を発揮させていく、しかし経済伸びに従って自然に伸びていくような部面については、計画目標というものを掲げること自体がややおかしいのじゃないか。まあ今度の新しい計画につきましては、たとえばエネルギー部門、輸送力の面、あるいは鉄なども入ってくるかと思いますが、こういう経済全般のワクになるような、あるいは土台石になるような部門、しかも相当多額の資金を必要として長期計画をもってあらかじめ段取りをつけなければうまくいかない、国がかなりの責任をいろいろな形で持っておるというような分野については、ある程度具体的な計画性をつけていく。他面におきまして食品工業とか、あるいは繊維なども大体そうでありますが、需要があれば自由に伸びていくというような分野について、しかもその部門が国民経済全体をひどく左右するというようなことにはならない部面については大体予測にとどめる。まあこれは予測いたしませんと、全体の国民所得なりあるいは鉱工業生産の水準をはじくことはできませんから、数字は一応ははじかなければならぬと思うのでありますが、しかしこれを計画目標としてあげることはどうか、そういう少し仕訳をしたやり方が必要ではないかというふうに思っております。  また計画改訂について、国会のいろいろな御質問の中にも、五年の計画が終らないうちにまた次の五年の計画を作ることはどういうことだというような御質問も受けるわけでございますが、これはいろいろな考え方でございまして、共産圏諸国のような場合には第一次五年計画、第二次五年計画というふうに次々と五年を積み上げていくわけでありますが、これは政府が全面的にその計画の遂行についての責任を背負っておるということもございます。しかもこういう共産圏の計画でも五年計画を四年に繰り上げた、ということは一面からいえば計画と実行とがいい方にそごしたわけでありますが、そういうこともあるわけです。そういう計画の繰り上げ遂行という形で、計画実績とのそごを調整しておるわけであります。最近の中共のように、第二次計画を作りましたが、これは実績に応じてすぐ改訂しなければならぬというような状況になっておる場合もございます。それから国によってはいわゆる移動長期計画と申しますか、五年ないし六年先の見通しなり計画を毎年作り直していくという考え方のところもあるわけでありますが、そういうアイデアを最近のアメリカの経済計画協会、これは今コルム方式のコルムが責任者になっておるわけでありますが、この協会では今のようなシフトする長期計画をアメリカ政府はやるべきだ、毎年六年先の計画を予算の作成と同時にやって議会に提出すべきだというような勧告をやっておりますが、そういうふうに長期計画の立て方につきましてはいろいろな考え方があり得るわけでございまして、日本の場合毎年というのはどうかと思われるのでありますが、二、三年実行してみて、計画実績の間にいろいろ問題点が出て参りますればさらに次の五年を延ばす、そういうふうにずらして弾力的にやっていくということが日本のような経済情勢、特に海外経済からの影響も多いわけでありますから、そういう国柄にとりましてはむしろ第一次、第二次と、五年済んだら次の五年というようなやり方をやるよりも、より実際的になるのではないか、そういうふうな見方を一応いたしておるわけで、今回の計画改訂にいたしましても大体三十三年度を初年度にした五年間ということになるのではないか、これはまだ最終的にきまっておらないわけでございますが、大体そういう予想をしておるわけでございます。  以上におきましてこの経済計画改訂問題点を申し上げました。これは実は今までは部内の作業段階でありましたが、今後は経済審議会とかあるいは各省関係当局等にもいろいろ話し合いをして、だんだんと計画を固めて参る、それで秋までには一応仕上げるという目標作業を進めていきたいと考えておるわけでございます。
  6. 笹本一雄

    笹本委員長 この際私は次の二点についてお伺いしたいのでありまするが、第一には、長期経済計画は過去長年にわたって幾度か立案改訂されてきましたが、その実施への努力は遺憾ながら閑却されがちでありました。経済を総合的に計画して運営していくには目標や方法を立てるだけではだめで、予算措置とかある、は立法 行政措置によって裏づけを行い、あくまでその実現をはからなければならないと考えるのであります。これは経済拡大のみではなく、場合によっては全般のバランスの上に部内的抑制措置が必要となる場合もあるのであります。鉄鋼とか電力とか輸送の部門などのネックは、漸次一般機械産業にも波及せんとする趨勢でありますが、これは一面、適正な経済計画に基いてバランスをとる処置に欠けた点もその一因となっていると思うのであります。かくて、何度計画が立案されても、その結果はなきにまさるような程度を出ないというようなことでは、これは非常に意味がないことで、政府はこの計画を実現するために、いかなる具体的な措置を講ずる所存でありますか。これが一点。  次には、長期経済計画はいわゆるコルム方式によって作られているが、これをさらに日本経済の実情に沿った計画に練り直して具体化の必要があると考えるのでございます。すなわち部門別計画検討、さいぜんお話しになっておった中小企業の取扱い、雇用問題の検討、国際的観点からの検討、地域計画との関連の検討、また計画促進のための諸方策等の問題を具体的に検討して、五年度の目標年率によって算出するのでなく、各年度別の具体的計画を立てる考えがあるかどうか。以上二点についてお尋ねいたします。
  7. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 第一の御質問でございますが、計画実績はなぜ食い違うかということは非常に問題でありますし、計画当局としてもいろいろ反省しなければならないと思うのでありますが、一つには、こういう経済計画長期見通しあるいは一年間の先の見通しというような仕事は、割合世界的に見ましても新しいことでございまして、大体戦後各国に始まって来たことでございまして、この正確な先の見通しが立つためには、現状及び過去についての相当しっかりしたデータができておる、それからそういう経済のいろいろな現象についての分析が相当に進んでおるということが必要だと考えられるのでございますが、日本におきまして、戦後相当こういう経済の実証的な研究なり統計の整備ということは進んで参りましたけれども、まだ遺憾ながら先を見る上についていろいろ不十分な面がございまして、私どもも現在改訂作業検討いたしておる際に、いろいろ困難な問題にぶつかっております。たとえば輸送力をはじきます場合でも、国鉄については相当詳しい統計がありますが、トラック輸送についての信頼すべき実績がほとんどないというような問題とか、そのほかいろいろな例があるわけでございます。そういうふうな経済統計なりあるいはこういう計画予測に対する学問なり研究が進んでくるということが、将来より正確な予測計画をやる上に非常に必要かと思うのであります。それ以外に、やはり先ほど来の御説明で申し上げましたような、いろいろな戦後の新らしい要素についての見通しが、従来の計画では足りなかった。それからまた、戦後まだ日が浅くて十分そういう問題が意識されてなかったというような実情もあったかと思うのでございます。もちろん将来の経済の問題でございますし、ことに日本は海外要因によって影響されるところも多いのでございますから、今後といえども計画が全くその実績に合うということは相当むずかしい。しかし、少しでもそれが改訂を重ね、研究を重ねるうちに、次第によいものを作り上げていくということを、私どもとしては期待いたしておるところでございます。アメカリなどの例でも、たとえばコルムが一九五五年の経済予測を五一年ごろにやりました。これは実績と比べてみますと、驚くほど合っているのでございます。アメリカの場合には、主として国内要因で経済が動いている。従って経済のいろいろな分野についての情報分析が進んで参りますと、相当な正確さをもって先を予測することができるということの実例だと思うのでございますが、しかし日本におきましても、そういうような基礎的な面の整備も同時に並行いたしまして、計画を立てる事務当局といたしましても、さらにもっと掘り下げてよりいい計画を準備したいというふうに考えております。ただ計画実績の問題につきまして非常にはずれたという点、これは言いわけになるかもしれませんが、今の日本のような経済の基本的な体系から申しまして、生産なりあるいは投資が主として民間の企業家によって行われていく、政府はあるいはいろいろ間接的な面において経済の動きを左右する力を持っておりますけれども、しかし根本的には大体民間企業の自発的な意欲によって経済拡大が起っておる。その長期計画が、現在の政策を決定する上に一つの重要なよりどころを与えるという意味で、いろいろな役割があると思うのであります。これがより正確になれば なおその役割が高まるわけでございますが、ただ実績とはずれたからといって、その長期見通しなり計画を立てる必要性そのものを否定するということはどうか。やはりむしろこれをよりよくするということが必要なんじゃないかというふうに考える次第でございます。  第二の御質問の点につきましては、いろいろ計画について検討する余地があるわけでございまして、たとえば今おあげになりました中小企業の問題とか地域の問題あるいは社会保障的な問題をどう考えるか、いろいろな問題がございます。これもある程度やはり資料的な制約がございまして、全国一本の統計はあるけれども計画に使えるような地域的な統計というものはかなりむずかしいわけで、実績のない上に将来の数字を組み立てることができないという点が、一つ大きな制約にもなっております。それから地域の問題になりますと、たとえば工場をどこに作るかというようなことも、いろいろな条件で相当変化して参ります。全国の計画以上になかなかむずかしい面がございます。ただ地域につきましては、これは経済計画というよりもむしろ施設の計画として、ことに公共事業的なものを中心とした長期計画があるいは必要になってくるのではないか。現に北海道、東北などについては、部分的でありますが行われつつあるわけでございます。それから中小企業の問題は大体において雇用問題を中心にして考えていく、これは数字的に計画に上げるというよりも、むしろ長期政策問題になる面が多いと思うのであります。これは将来やはりこの点でもデータが非常に企業別等数字が整って参りますれば、ある程度計画の形で織り込むことも可能になるかとも思いますけれども、現段階ではなかなかそこまで行きかねておるわけでございます。  年次計画を作ってはどうかという御意見でございますが、これは今のように日本経済計画というのはかなり弾力的に考えていかざるを得ない。しかも政府がこの実行に当っての手段としては、割合限られた場面を持っておる情勢でございますので、あまり窮屈な年次計画を作るということが、果して日本における長期計画の目的に合うかどうかという点がございます。現在のやり方としましては、長期の五年後の目標を掲げまして、年次計画につきましては、毎年翌年次の計画、現在では昭和三十二年度の計画の大綱が出ておりますが、こういうふうに毎年先一年を見通す、これが予算編成の基礎その他に用いられるというようなやり方が、やはり現在の日本においては、どちらかといえば実際的なやり方ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。計画がペーパー・プランに終る、その実行が伴わないという御指摘の点につきましては、確かに問題だと思うのでございますが、この点につきましては、やはりいろいろな間接的な財政、租税政策とか金融政策、あるいは財政投融資、価格政策、その他いろいろな政策を通じて、できるだけ政府の立てた計画が実現されるように努力していく。どういう手段を用いればどういう効果があるかというような点についても、将来もっと掘り下げが必要になってくるかと思うのであります。できるだけ長期的なものの割当とか——個々の判こによって計画を動かそうというようなことは、ある意味においては、経済運営のやり方としては、かなり原始的と申しますか、経済の能率を相当害する面もあるかと思いますので、そういう方法によらないで、大きな政府計画に掲げた目標をできるだけ達成していく、こういうやり方、方法論についても今後の検討が必要だと思いますし、またそういう方向に計画を持っていく必要があると存じます。
  8. 笹本一雄

    笹本委員長 他に質疑の通告もありませんので、本日はこの程度にとどめ、次会は追って公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後零時十二分散会