○大
來政府委員 ただいまございます
現行の
経済自立五カ年
計画は、一昨年の十二月に
閣議決定になっておりまして、その大きな要点といたしましては、大体
昭和二十九年度を基準にいたしまして、三十五年度までに
日本の
経済規模が
年率五%で
拡大するというような基本的な
数字の上に立っておったわけでございます。そのような
数字に基きまして、各種の工業
生産なり、あるいは
エネルギー、
輸送力の
需要、
貿易の
規模等もいろいろはじかれておるわけでございますが、その根幹となります
経済の
拡大率が、二年間に非常に
予想を上回ったということになりまして、三十年度、三十一年度はそれぞれ一割をこえる
経済規模の
拡大があったわけでありまして、そういたしますと、現在ございます五カ年
計画の四年分を二年で達成しつつあるということになりまして、すでに
計画目標のいろいろな
数字が実際上使い得ないというような
状況が出て参りまして、やはりこの新しい
情勢に基いて、
改訂ないしは新
計画を作る必要があるということになっておるわけでございます。なおまた今の
経済計画の
方法論等につきましても、戦後いろいろ
経済計画が作られましたのですが、
日本の
政府が正式に承認した
計画というのは、現在あります五カ年
計画だけでございます。
計画作成の
技術というような点、
方法論という点などにつきましても、まだいろいろ
研究の余地がございますので、そういう点も、今回の
改訂の際にできるだけ諸
外国の経験とか、その後の
研究結果を取り入れて、
方法論的にも、より一歩進んだものにしていきたいということになっておるわけでございます。それで今の
実績と
目標の
関係でございますが、
国民総生産が大体国の
経済規模を示すと見ていいかと思うのでありますが、現在の
計画では、
昭和三十五年度に、
昭和二十九年度に止べて三割三分六厘、三三・六%
伸びるという
予想にしておりましたが、この三十二年度の
経済計画によりますと、これが三十二年度で一二七・九ということにもなりまして、
あと三十三年、三十四年、三十五年、三年分でわずかに六ポイント足らずしか残らない。
つまり三十三年度以降年に二%以下の
伸びでも
目標に到達してしまうということで、
予定より早く
伸びて参りました。
鉱工業生産につきましては、三十五年度の
目標が一五三・七になっておりますが、三十一年度、これは明日で終りますが、三十一年度の
予想が一三六・一、それから三十二年度の
目標が一五三・一でありますから、もう三十二年度に
鉱工業生産水準が、今の五年
計画の三十五年度の
目標にまさに到達してしまいます。そういうふうに
経済の実際の
発展の方が
計画水準に考えられておりましたよりも非常にすみやかであったのであります。もちろん私
どもも、このような過去二年のような
経済の
拡大率というものが、そのままずっと将来続き得るかということについては、非常に疑問を持っておるわけでありまして、たとえば、
昭和二十九年度
あたりは、この
鉱工業生産の対前年度
拡大率がわずかに三・三%であったのであります。実は現在の五カ年
計画が作られましたときは、そういう二十九年度のデータが一番新しいものでありましたので、二十九年度の
数字が
基礎になっておったのであります。二十九年度の
日本の
経済の
拡大率は三・二%であります。その前の数年間は一割前後の
拡大があったのでありますが、二十九年度にはだいぶ下って参りまして、その辺で今後の
経済の
成長率は戦後一応
回復段階は終ったから、それほど急速にはいくまいということが当時常識的になっておったようであります。それから
日本の
戦前の三十年間ばかりの平均的な
経済の
成長率、
拡大率が四・二%
程度。これは一橋の
先生方の
研究な
どもあるわけでありますが、その
程度でありますし、諸
外国の例を見ましても、大体三%くらいのところが多いのであります。第二次大戦後は
世界各国ともやや
経済の
拡大率が高まってきておりますが、それでもまあ四%くらいというのが普通であります。
ドイツあたりは
年率一割くらいの
発展率になっておりますが、そういうふうな諸
外国の例及び
日本の過去の長い
実績などからして当時おそらくこの五%という
数字がとられたと思うのでありますが、当時はこの五%の
拡大率でも少し楽観に過ぎはしないかという批評が
新聞雑誌等にも相当出ておったわけでございますが、まあ皮肉と申しますか、そういう
計画ができました直後から
経済が急激な
拡大を示すようになって参りまして、ただいま申しましたような、
予定の二倍の
実績になっております。しかしこの点で従来の
計画に
一つの見落しと申しますか、
考慮を十分されておらなかった点があると思うのでありまして、これは
経済の
拡大を考えて参ります際に、
長期的に
日本の
経済が年何パーセントと大きくなっていくかという、いわゆる
トレンドといいますか、
趨勢と申しますか、そういうものがあるわけでありますが、そういう
趨勢の
拡大率の上にサイクル、
景気循環、
景気変動の
アップ・
アンド・
ダウン、上下が加わって参ります。
トレンドとしはずっと上向きになって参りますが、そこに
景気変動の
アップ・
アンド・
ダウンが加わって、それが合わさった形で
経済の
拡大率が示される。ちょうど今から考えますと、
昭和二十九年度という年は
トレンドの上に
景気の
ダウン・
カーブが重なって
成長率が三・二%というようなことになったのじゃないかと思うのであります。これが
イギリスなどの場合になりますと、
トレンドとしての
経済の
拡大率が低くなっておりますから、
景気の
ダウンがくるときには絶対的に
経済の
規模が幾分小さくなる、
鉱工業生産が対前年よりも下るというような例もあるわけでありますが、
日本の場合にはやはり
トレンドとしての
上昇率が高いために、
景気が下りましてもある
程度経済規模は
拡大する。しかしその
拡大率がだいぶ下ってくる、低くなるということではないかと思うのであります。それから二十九年度のそのような
情勢から、最近のように
上昇に向って参りまして、これが
日本経済の
長期的な
拡大率の上に、
景気の
谷底から山の上に上る間の
計算が加わって参ります。それが結局年一割というような
拡大率になっておるのじゃないか。従って
長期的な
トレンドとしましては、やはりこの中間に考えていかなければならないように見られるわけでございまして、私
どもとしましては、先ほどとりあえず七%
モデル作業というものをやったわけでございまして、お手元にごく簡単な刷りものがお配りしてございますが、この趣旨は今申しましたように、
長期的な戦後の
経済の動向を見ますと、どうも五%という
見通しは低過ぎたようである。しかし現在の一割というのもどうも高過ぎる。それから諸
外国の例とかあるいは戦後の
日本経済にとって特殊な
条件等いろいろ考えてみまして、今後の五年間を考える場合に、この七%
程度のところを
トレンド、
趨勢として見るのがほぼ妥当じゃないだろうかというような
一つの推測なんでありますが、これはこの
計画改訂の
作業のための
一つの
モデル作業ということで呼んでおるわけでございますが、まず
経済の
拡大率を
見当をつけまして、それから
生産なり
貿易規模をはじくという
作業を暮れから正月にかけてやったわけでございます。これは
一つはちょうど昨年の暮れに、
電気の
長期計画をどうしても
改訂しなければならないという
情勢になっておりまして、これは
電源開発促進法の
関係もございまして、
政府が
長期の
計画を決定して、それに基いて毎年の
着工規模をきめていく、
電源開発株式会社の
開発については
開発地点までもきめていくというような法律上の義務づけがございますので、従来の
電源開発計画ではどうも急激な
需用増加に応じ得ない、相当
着工地点を追加しなければならないというような
関係から、
計画改訂の必要に迫られたわけでございます。それで
経済計画全体としてはまだ
改訂に至っておりませんが、まずそういう
電源の
関係から考えて、
電力の
長期計画の
改訂を
電源開発調整審議会に昨年出しましたわけでありますが、そういう
電源の
計画を作ります場合にも、一応の
経済規模の
見通しがなければ
電力の
需用がはじき出せないのであります。ところが現在ございます
経済計画は、先ほど申しましたような
事情で使えなくなってきているということで、何らかの手がかりが必要であるというような
意味もございまして、七%
モデルというのはそういう
電力計画の
基礎にも一応用いられたわけでございます。
なおそのほか
国鉄の
修正五カ年
計画、これはやはり
鉄道輸送力の逼迫、
輸送需要の急増というものがございまして、これに対処していくためには、従来の
経済五カ年
計画に基いた
国鉄の
計画ではどうも間に合わない、もう少し大きな
計画にする必要があるということになって参ったわけでありまして、この
鉄道の
輸送要請の
長期的な
見通しを
改訂するという必要も出て参りました。これも
経済規模をはじきませんと
鉄道の
輸送の
需要がどのくらいあるかということが出て参りませんので、われわれの方でこの七%
モデルというものを
国鉄の
改訂五カ年
計画の
基礎として一応使うということになったわけでございます。
そういった
意味で七%
モデルという
作業をやったわけでありますが、この七%と一口に申しますが、実は諸
外国の例から見て非常に高い
経済の
拡大率でありまして、七%で年々
拡大していきますと、大体十年で
経済規模が倍になるわけでありますから、非常に高い率であります。果してこれが相当
長期にわたって続き得るか、しかも
戦前は大体平均して四%強だ、なぜ戦後このような高い
成長率が想定されるか。戦後十年くらいはこの戦争で破壊された
経済が急速に立ち直る
段階でございますから、
割合に大きな
比率で
拡大することが考えられるわけでありますが、一応もう戦後ではないということになってきております現在から先五年間、七%考えるということがどうであろうかということもあるわけであります。
これはまだはっきり証明されたわけじゃないのですが、私
どもの観察からいたしますと、
戦前に比べて
日本経済に二つ三つ違った点が出てきておるのであります。その
一つは
世界的な
現象でもございますが、
景気変動というものが戦後の
経済では
割合少くなってきている。もちろん先ほど申しましたように
景気の動揺がございますけれ
ども、
戦前の
昭和五、六年の大
不況とか、そういったような非常に激しい
不況というものがどうやら避けられてきている。これは
世界的にもそうなって参りまして、
不況が間に入りますと
長期的に見てその間は大量の
失業ができて
経済の
伸びがとまりますので、
長期的な
経済の拡人率は低くなる。これが
割合に谷が浅いと長く見た
拡大率が高くなるという
現象がございます。
それから特に
日本的な
原因といたしまして、しかもこれはある
程度一時的な
原因でありますが、
労働力の
増加状況がややアブノーマルな
状況にございまして御
承知のように
日本の
人口増加というのは従来非常に心配されておったのでありますが、急激な
日本の
人口増加の
段階はだんだん
終末期に近づいてきているようでありまして、今後の
人口増加はこれまでに比べて非常に緩慢になって参ります。そうしますと今までよりは
人口の
伸びが非常に低くなって参るわけであります。一方
労働力の
伸びはこれまでにない高い率になっております。これは過去における高い
出生率と、それから現在、戦後起っております
死亡率の急激な低下、年寄りが長い
間労働力としてとどまる、こういう両方の
原因が重なりまして、非常に急激な
労働力人口の
増加が起っておる。御
承知のように、現在の五カ年
計画も、二十九年度から三十五年度に至る六年間に
人口は五・五%、
つまり年にして一%弱しか
伸びませんが、
労働力人口は一二%、
つまり年に二%ずつふえる、総
人口の
伸びに比べて二倍の
勢いで
労働力人口、
つまり職業を持ななければならない
人口がふえて参るというような
事情にあるわけでございます。これが今後十二、三年たちますと、現在の低下した
出生率の結果が現われて参りまして、
労働力の
伸びも急激に落ちて参るわけでありますが、終戦直後のベビー・ブームで、非常に
出生率の高かった時代もありましてこの十二、三年間は
労働力人口の
伸びが非常に高い。この
労働力人口の
伸びが非常に高いということは、一面からいえば
失業という問題にもなるわけでありますが、しかし、他面から見ますと、人が、ことに働き手がふえるということは、何らかの形で
生産的なあるいは
所得を生み出す事業をふやす結果になってくるし、
経済の
拡大を押し上げるというような結果になるんじゃないか、
戦前は
労働力人口の
増加が一%余りであったのが二%になっておるというのが、やはりここ当分の間の
経済拡大率を高める結果になるんじゃないか、こういうふうに観察しておるわけであります。
第三の
事情といたしましては、
軍事費の問題があるかと思うのであります。これもいろいろ議論があると思いますけれ
ども、
戦前は大体ならして
国民所得を七%前後
軍事関係に使っておった。これが戦後は、最近の
数字でも、
防衛関係の支出が二%以下になっております。その
関係で五%くらいの節約が行われる。これが全部
生産的な
投資に向けられているとは言えないと思うのでありますが、しかし相当な
部分が
発電所なり工場なりの建設に向けられるということになりますと、これは、
経済の方の
計算で、
資本係数というようなものから見まして、もしも三%
投資がふえれば、年の
経済の
拡大率は一%前後上るというような
計算にもなって参りますので、その
防衛関係で五%くらい
国民所得に対する
割合で減っておるということが、また戦後の
経済の
拡大率を高める
一つの
原因になっておるんじゃないか。これが逆に
イギリスあたりでは、九%も
軍事関係に使っており、
国際収支、
資本蓄積、
経済拡大に非常に苦しい負担になっておるということは、
イギリスの
大蔵大臣などが最近も演説をしておるわけであります。
日本や
ドイツは、その点は逆な
現象が起っておると言えるかと思うのであります。
そのほか、
世界的な
技術革新、
投資がかなり高いレベルで継続しておるということやら、ともかくいろいろな
問題点がございますが、
世界の
貿易は比較的順調に
拡大しておりまして、過去五年間をとっても
年率六%弱くらいの
勢いで
世界の
貿易の
規模が
拡大しておる。
戦前のように、非常に
貿易を制限して、お互いに
貿易の
規模を縮めるというようなことが戦後は行われなくなって、とにかくいろいろ問題はございますけれ
ども、全般的に見て
拡大均衡でいこうということが
各国の
政策になっております。その結果として、
世界貿易も年に五、六%
拡大しておる。
日本のように
貿易に依存する国は、
世界の
貿易が
拡大の
傾向を持続すれば、
国内経済の
拡大についても非常に有利な影響がある。いろいろな点がありまして、こういう点が従来まだ十分
考慮されておらなかったきらいもあったかと思うのでありますが、そういういろいろな点を考えまして、七%前後の
成長率をしばらく見てもいいではなかろうか。十二、三年先になりますと、先ほど申しましたような
事情からいって、この
成長率はある
程度下ってくる
可能性はあると思います。一般に
国民の
生活程度が高くなって参りますと、
世界的に見ましても
経済の年々の
拡大率はだんだんゆるくなるという
傾向が見られますし、将来二十年、三十年、この七%ということはもちろん考えられないと思いますが、さし
あたりの今後の五年間についてはこの
数字に近いところが見られるんじゃないか。もちろんこれは一応大まかな
見当でありまして、今度の
計画改訂に当りましてはもう少し内訳から
検討して参りたい。特に一次
産業と二次
産業、三次
産業、
つまり農業関係と
鉱工業関係、それから
サービス部面、これを分けてそれぞれの
成長率というものを過去の
実績その他から
検討とていき、それを全部合せてみて
検討を始めていかなければならぬと考えておるわけでありますが、大きな骨組みといたしましては今申し上げましたような
点等を考えておるわけであります。
それから先ほど七%
モデルで
輸送力の問題と
電気の問題を申し上げたのでありますが、
輸送力につきましては、一応
経済規模に対して
日本のいろいろな
輸送機関、おもなものは
国鉄と
自動車、内
航船舶、こういうものの総合計の
トン・キロ、
輸送の重量だけではありませんで、
輸送距離をかけました
トン・キロというものを
輸送力として見るわけでありますが、これによって大体
国民総生産に比例しておるという
関係が見られるわけであります。大体
カーブをかいてみますと、直線になります。そういうところから将来の
国民総生産の
規模をまず想定して、それから七%含んでみていくわけでありますが、それに対しまして総
輸送トン・キロというものをはじきまして一方におきまして
鉄道、道路あるいは船、こういうものも
長期的な
輸送の分け前の
比率の
変化がございます。だんだん
鉄道の
比重が少しずつ減ってきて、
自動車輸送の
比重がふえるというようなことがございまして、そういう点から過去の
実績や諸
外国の例を参照しまして、おもな
輸送機関について総
輸送量を振り分けてみる、そういう形で
国鉄の
輸送量をはじいてみましたところが、大体
経済規模七%
拡大に対応する
国鉄の
輸送力の
伸びは、
年率四・五%くらいになる、今の五カ年
計画ではこれを二・六%に見ております、どうも小さ過ぎる、大体四・五%くらいを見ていいのじゃないか。これももちろんことし一年見れば八%
伸びておりますし、短期的に見ると非常に
変動があるわけでありますが、先ほど申しましたように、これには
景気変動の要因が加わっておると見るべきだと思います。
国鉄輸送力の問題、対前年の
増加で見ますと、
マイナスの年もあるのでありまして、たとえば
昭和二十七年は前年に比べて
マイナス五・八%、二十八年は
プラス四・三%、二十九年は
マイナス二・一%、三十年は
プラス二・六%というふうに、
鉄道の
輸送力も年によって
相当浮き沈みがございます。現在年に八%くらい
伸びておるから、将来ずっと五年間八%くらいで
伸びるということは考えられないわけであります。ことに
鉄道から
自動車への
輸送転換もあるというようなことで、
長期に見て四・五%というように見ておるわけであります。
それから
エネルギーの方につきましては、これは
電力、
石炭、石油等総合して一応見ていかなければならないわけでありますが、この点につきましてもいろいろな見方がございまして、
鉱工業の
生産の
伸びと
電力事情の
伸びとの
関係が比例するかどうか。これな
ども諸
外国の例を見ますと、
鉱工業生産がかりに一割
伸びますと、
電力需用は一割以上
伸びるという例が多いのでございまして、これは
ドイツでも
イギリスでもフランスでも大体そういう
関係になっておりますが、過去の五年間ばかりの
日本の
実績を見ますと、この
割合が六割くらいになっている、
つまり鉱工業生産が一割
伸びた場合に
電力需用は六%くらい
伸びるというような
関係になっておったのでありますが、これがこの一
両年の間に非常に近づいて参りまして、従来のそういう
関係が使えなくなって参りまして
鉱工業生産の
伸びと
電力需用の
伸びがほぼ近くなって参ります。たとえば
昭和三十一年度は
鉱工業生産が
戦前に比べて二一%
伸びておるわけでありますが、
電力需用は一八%、ほぼ近いところの
伸びを示しております。これでいろいろ
検討した結果、将来五年間について、
電気は大体平均して九・五%、三十一年度の一八%がその中に入っておりますので、それを除けば
あと四年間は
年率八%くらいになるわけであります。そのような
伸びを考えて現在の
電力五カ年
計画はできておるわけであります。それに基いて
電源としては五年間に八百四十万キロの
水火力を
開発するという
現行の
計画になっております。これは秋までに
経済五カ年
計画の変改が一応でき上りまして、それに基いた
エネルギーの
見通しが固まって参った場合に、もし今の
電気の五年
計画とだいぶ食い違って参りますれば、
電力の
計画をそれに応じて直すということになると思いますが、大体この
改訂の方向を
考慮に入れてやっておりますので、そう大きな
電力計画の
修正ということにはならないかと考えております。
それから他の
エネルギーにつきましても非常に問題がありまして、大体今後の
エネルギー問題としましては、従来は
国内の
石炭を増産するとか
水力資源を
開発するとかいうことで、ほぼ
国内の
エネルギー資源でまかなってきたのでありますが、今後は、大体において
経済規模の
拡大に伴って
増加いたします
エネルギー需要の
増加分は、ほとんど
輸入エネルギーによらなければならない。それは
石炭である場合もありましょうし、石油である場合あるいは
原子核燃料である場合もありますが、いずれにしても
国内の
エネルギー資源というものは天井に近づいておる。今後の
需要増加分に対しては大
部分が
輸入エネルギーによらなければならぬということになって参りますので、
エネルギー政策の面でも従来より相当
考え方を変えていかなければならない面が出て参るかと思います。この
エネルギーの問題あるいは先ほどの
人口問題な
ども、五年という期間ではそういう本質的な
変化、いわば量から質への
変化というものがはっきり出て参りませんので、今度の
計画改訂の際には、できればもう少し長い、十年なり十五年についての
見通しもあわせて行なっていきたいというふうに考えておるわけでございます。そのほか鉄鋼原料などという海外の資源に仰がなければならない面も相当
長期的な
見通しを必要とするので、これらもあわせて今後
検討していきたいというふうに思っておるわけであります。
そんなことがおもな点でありますが、もう
一つ雇用の問題で先ほどちょっと触れましたように、ここ十二、三年は雇用問題が非常に苦しいときでありますが、雇用の
数字を今の
計画ではいわゆる
労働力率というようなものを使って
計算して、
つまり総
人口の中から十四才以上の
生産年令
人口を出しまして、この
生産年令
人口に
労働力率をかけまして、働かなければならない人間の数を出す、
労働力人口を出すという形をとっているのでありますが、これはいわゆるコルム方式と言われ、アメリカの
経済学者コルムが一九六〇年のアメリカ
経済の予測をとった際に使った方式であります。いわゆる
国民所得計算からいく代表的な行き方なのでありますが、どうも
日本の
労働力を考えます場合に、必ずしもそういう行き方でいかない。
日本の場合には雇用状態が欧米のように均質でない、完全な就業状態にある者もありますが、家族労働者のように非常に短期間働くとか、あるいは非常に低い収入の者もいる。いわゆる半分雇用みたいな、いわゆる不完全就業と申しますか、そういう
人口がかなりありますので、やはり欧米のように雇用がほぼ完全な状態にある国の
計算方法そのままでは少し工合の悪い点もあるというので、今雇用問題の扱い方をいろいろ
検討中であります。学者
先生方の御意見な
ども伺いまして、またいろいろ専門家が集まって約一年間雇用問題、
日本の
労働力事情についての
検討を続けて参ったわけでありますが、大体今の
日本の雇用の
考え方といたしましては、小学校、中学校、高等学校、大学の新卒を雇用に吸収するということと、現在転業可能な潜在
失業者ないし不完全就業者を何カ年かの期限でだんだんと吸収していく、こういうことが
日本的な
意味の雇用の
目標になりはしないかという考えで
作業を準備しております。そういった場合に
経済成長率がどの
程度であればどの
程度の雇用が吸収できるかということも
検討しているわけであります。たびたび
大臣からもお話がありましたように、
年率七%
程度で
拡大して参りますと、十二、三年くらいの
見当で現在考えられます転業可能の潜在
失業者を一応吸収するような形になるというふうに見ているわけでございます。そういう雇用の面の問題を
考慮に入れまして大体
改訂作業を進めて参りまして、今年の八月ごろには——九月になるかもしれませんが、一応の
改訂案を作り上げるという
予定で
作業の準備をやっているわけでございます。
もう
一つ日本の
長期計画で非常に問題になる点は、海外の
経済市場、特に
日本の
貿易、
国際収支の面であります。過去において
計画と
実績に非常に食い違いができました大きな
原因も
貿易面にあるわけでございまして、過去三年間に
日本の
貿易輸出が二倍にふえた。これは
世界各国に類例のない
拡大テンポであります。この中には先ほど来申しました
景気上昇の要因とそれから
経済の継続的な
トレンドとしての
拡大ともう
一つは
貿易面についてはまだ戦後の
段階を十分に脱しておらないので、いわゆる戦後回復の
段階、この三つの要因が加わって過去三年間に輸出が倍になるというような
拡大が起ったのではないかと見ているわけでございますが、
日本の
貿易は
戦前におきまして
昭和十年ごろの
実績で
世界の輸出
貿易の大体五%を占めておりました。二十分の一、
世界の輸出
貿易総額に対する
日本の輸出額の
割合でありますが、それは五%ぐらいであったのでありすす。三十一年度
あたりは相当
貿易規模は
拡大しておりますが、まだ
世界の輸出
貿易額の三%くらいでありまして、この点の
割合がまだ低い。けれ
どもそういうことでかなり急速な回復が起ってきたと見てよろしいかと思うのであります。この
貿易の額をどう見るか、それからそれを
計画の中にどう取り入れるかということは、実はわれわれとしても非常にむずかしい問題と考えておるのでありますが、これにはいろいろ
考え方がございまして、
一つの行き方は、先ほど申しましたようなことで、
日本の
経済規模の
拡大をまず想定いたしまして、その
経済規模から見て、輸入依存度と申しますか、どのくらいの輸入が必要かという
検討をはじいてみる。これは一方におきまして
長期的な
国民所得ないし
国民総生産に対する輸入額の
割合というようなものをいろいろ
数字を出して見ますと同時に、一方おもな物資につきましていわゆる積み上げ
計算をしてみる。食糧が幾ら要る。鉄鉱石が幾ら要る。石油が幾ら要るというような
検討を
経済機構の方からはじいてみまして、その合計をとってみるというような両面から一応当ってみるわけでございますが、ともかくも
経済規模の想定、それに基いた輸入
需要の想定、その輸入を可能ならしめるための輸出
規模というような
計算方法がございます。これは従来のやり方でもあるわけであります。
もう
一つの方法といたしましては、オランダの中央
計画局が採用しておる
計画方式、これは逆にオランダの主要な
貿易相手国を選びまして、その相手国の
経済の
拡大率を想定いたします。その相手国の輸入依存度から将来の輸入額をはじいてみる。そのうちのオランダの占める
割合というものを大体想定いたしまして、これを合計いたしまして将来のオランダの輸出可能額というものをはじいてくる。この輸出可能額から逆に
経済規模の
拡大率をはじいてくるというような、外から内に向って
計算するようなやり方であります。
日本もこの
貿易規模によって
経済の
規模が相当支配をされますので、このオランダ方式的な
考え方も確かに必要だと思うのでございます。ただ
貿易に対する依存度が、一般に考えられておりますほどには
日本は高くないのでありまして、オランダの場合は
国民所得の大体半分が輸出に依存しておる。
日本の場合にはこの
比率が一五、六%でございまして、
イギリスあたりは二割くらいになるわけでございますが、オランダに比べればまだ
国内要因というものは相当ウエートがある。輸出なり
貿易依存度というものが一割五分
程度、もちろん質的にはこれが食糧と工業原料が大
部分でありますから、非常に重要な
意味を持っておりますが、しかしこういう角度から攻めていく方法、このオランダのようなやり方は、少し
日本の場合には行き過ぎのように考えられますので、今回はオランダのようなやり方を、
つまり先ほどの輸入
需要をはじいた上で輸出
規模を出す。その輸出
規模をチェックする
意味でオランダのような
計算方法にもうちょっと工夫を加えた方法を使ってみようかということになるわけでございます。大体
貿易の
規模といたしましてはそのお配りしました資料にございますように、輸出が
昭和三十五年度で三十六億五千万ドル、
年率一一・三%の
拡大、輸出が四十二億七千万ドル、
年率一三・二%の
拡大というようなところで、その他のものを入れてほぼ
国際収支がバランスするというような
見当になっております。これはもちろん先ほど来申し上げましたように七%
モデル作業という試算でございまして、
計画の
改訂の
数字はこれよりまた変って参ると思うのでありますが、大体そんな
見当の
貿易規模、これはいわゆる為替ベースの
数字でございますが、
規模を考えております。従来の五年
計画は三十五年度におきまして輸出がたしか二十六億六千万ドル、輸入が二十五億八千万ドル、大体二十六億ドル前後の輸出入を考えておったのでありますが、それに比べまして非常に大きな
貿易の
規模になっております。これは
一つには
日本の
経済規模が非常に
伸びてきた。
経済規模自体が大きくなってきたということと、輸入依存度と申しますか、
国民総生産なり
国民所得に対する輸入額の
割合が今の
計画では少し低く見過ぎておったんじゃないか。これはなかなか見定めがたい問題なんでございますが、
つまり経済規模が
拡大していく場合に、それに比例した輸入
需要が起るのか、比例以上の輸入の
拡大が起るかという問題になりますが、これはいろいろ
実績を
検討したりしておりますが、どうも戦後の
日本の場合には
経済規模の
拡大に比例する以上に輸入
需要がふえる
可能性がある。それは先ほどちょっと申し上げました
エネルギーの問題にしましても、従来は
国内の
エネルギー資源で大体まかなっていたのでありますが、今後は大
部分石油なり
石炭なりの輸入でまかなっていかなければならぬ。鉄鉱石にいたしましても、
国内の鉄鉱石資源はもう全然不足でございまして、今後の鉄鋼増産の全部について輸入の鉄鉱石なりスクラップに依存しなければならぬというような面、そういうふうに
経済規模が
拡大いたして参りますと
日本の場合にはどうも外からまるっきり入れなければならない。全然外の輸入原料に依存しなければならないというような工業が相当ふえて参るというような
事情もあるわけでありますが、他面におきまして繊維
関係の原料輸入、特に綿花、羊毛につきましては、これは比較的ふえない。
国内の人造繊維の発達によりまして
割合ふえないわけであります。食糧も
割合ふえない。これは
人口の
増加率が先ほど申しましたように非常に低くなって参ったことと、食生活がだんだん高度化しますと、主食の消費の
割合が減ってくるというようなこともございまして、食糧及び繊維原料の輸入は
経済規模が
拡大しても
割合伸びないのではないか。工業原料の方は
経済規模の
拡大の率以上に
伸びていく、この二つの
情勢がからみ合っておるわけでありますが、やはりふえる方の要因の方がやや強いと見られるわけでありまして、そういう
関係からいわゆる輸入依存度というものを現在の五年
計画よりも高く見る必要があるのではないか。それでこの輸入依存度を
戦前に比べてみますと、実は大分下っておるわけでありまして、これは非常に意外なことなんでありますが、戦後の
日本経済は
貿易に対する依存度が
戦前よりだいぶ低くなっております。
国民総生産、GNPに対する輸入額の
割合は
戦前は大体一割八分——これは植民地、朝鮮、台湾も入れてでありますが、一割八分ないし二割
程度であったのであります。現在はこの
比率が一三、四%、二、三年前では一一%というようなところになっておるわけでございます。この
現象のおもな
原因は今の繊維原料の輸入が非常に減っているということと、食糧が
経済規模の
拡大の
割合にあまりふえていない。そのほかパルプ原料の自給度が非常に高くなっておる、幾つかの特殊な
原因があります。また、満州大豆を肥料に使うかわりに、
国内の合成によってできた硫安が使われるようになったとかいろいろな
原因がございますが、
戦前に比べれば戦後の
日本経済の
貿易依存度は減っております。しかしこれは、先ほど来申しましたような
事情からいたしまして、少しずつ上っていく
傾向を見なければならない。そうしますと
貿易の
規模も、比較的大きく見る必要が出てくるわけであります。ここらも、今度の
計画改訂の
作業で
検討を加えて参りたいと考えておるところであります。
それから申し落しましたが、この
計画の性格と申しますか、
経済計画というものが戦後あちこちで行われておりまして、共産圏諸国はもちろん
計画経済で非常に厳重な
計画を立てておりますが、いわゆる資本主義諸国といわれる国々も、何らかの
意味の
経済計画ないし
長期の
見通しというものを持つようになって参りました。これは、
一つには
経済のいろいろな
現象に関する
研究が進んできて、やや
長期の
見通しを立て得るようになった、それから
経済政策のやり方が、そのときどきのその場しのぎではなくて、
長期の
見通しに基いてなるべく
経済の
成長率を高めるように意識的な
政策を講じなければならぬという自覚が、
各国政府なり
経済学者の間にも出てきたというような
原因があると思うのであります。
日本の
経済計画は、大体今のところでは自由
経済を基調にしておりますので、予測と
計画とがある
程度まじり合ったようなものになっておると思うのであります。今までの
計画では、おもな
鉱工業生産の品目などが一様に
計画目標として上っておるのですが、これもこれまでの経験から見まして、今後
計画を
改訂いたします場合にはやはり重点的な部面で、国の
経済の
発展に対して非常に決定的な影響のある分野というようなものについてはある
程度計画性を発揮させていく、しかし
経済の
伸びに従って自然に
伸びていくような部面については、
計画目標というものを掲げること自体がややおかしいのじゃないか。まあ今度の新しい
計画につきましては、たとえば
エネルギー部門、
輸送力の面、あるいは鉄な
ども入ってくるかと思いますが、こういう
経済全般のワクになるような、あるいは土台石になるような部門、しかも相当多額の資金を必要として
長期計画をもってあらかじめ段取りをつけなければうまくいかない、国がかなりの責任をいろいろな形で持っておるというような分野については、ある
程度具体的な
計画性をつけていく。他面におきまして食品工業とか、あるいは繊維な
ども大体そうでありますが、
需要があれば自由に
伸びていくというような分野について、しかもその部門が
国民経済全体をひどく左右するというようなことにはならない部面については大体予測にとどめる。まあこれは予測いたしませんと、全体の
国民所得なりあるいは
鉱工業生産の水準をはじくことはできませんから、
数字は一応ははじかなければならぬと思うのでありますが、しかしこれを
計画目標としてあげることはどうか、そういう少し仕訳をしたやり方が必要ではないかというふうに思っております。
また
計画改訂について、国会のいろいろな御質問の中にも、五年の
計画が終らないうちにまた次の五年の
計画を作ることはどういうことだというような御質問も受けるわけでございますが、これはいろいろな
考え方でございまして、共産圏諸国のような場合には第一次五年
計画、第二次五年
計画というふうに次々と五年を積み上げていくわけでありますが、これは
政府が全面的にその
計画の遂行についての責任を背負っておるということもございます。しかもこういう共産圏の
計画でも五年
計画を四年に繰り上げた、ということは一面からいえば
計画と実行とがいい方にそごしたわけでありますが、そういうこともあるわけです。そういう
計画の繰り上げ遂行という形で、
計画と
実績とのそごを調整しておるわけであります。最近の中共のように、第二次
計画を作りましたが、これは
実績に応じてすぐ
改訂しなければならぬというような
状況になっておる場合もございます。それから国によってはいわゆる移動
長期計画と申しますか、五年ないし六年先の
見通しなり
計画を毎年作り直していくという
考え方のところもあるわけでありますが、そういうアイデアを最近のアメリカの
経済計画協会、これは今コルム方式のコルムが責任者になっておるわけでありますが、この協会では今のようなシフトする
長期計画をアメリカ
政府はやるべきだ、毎年六年先の
計画を予算の作成と同時にやって議会に提出すべきだというような勧告をやっておりますが、そういうふうに
長期計画の立て方につきましてはいろいろな
考え方があり得るわけでございまして、
日本の場合毎年というのはどうかと思われるのでありますが、二、三年実行してみて、
計画と
実績の間にいろいろ
問題点が出て参りますればさらに次の五年を延ばす、そういうふうにずらして弾力的にやっていくということが
日本のような
経済情勢、特に海外
経済からの影響も多いわけでありますから、そういう国柄にとりましてはむしろ第一次、第二次と、五年済んだら次の五年というようなやり方をやるよりも、より実際的になるのではないか、そういうふうな見方を一応いたしておるわけで、今回の
計画改訂にいたしましても大体三十三年度を初年度にした五年間ということになるのではないか、これはまだ最終的にきまっておらないわけでございますが、大体そういう
予想をしておるわけでございます。
以上におきましてこの
経済計画の
改訂の
問題点を申し上げました。これは実は今までは部内の
作業段階でありましたが、今後は
経済審議会とかあるいは各省
関係当局等にもいろいろ話し合いをして、だんだんと
計画を固めて参る、それで秋までには一応仕上げるという
目標で
作業を進めていきたいと考えておるわけでございます。