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勝部参考人 ただいま御紹介いただきました
日本生活協同組合連合会の
勝部でございます。特に皆様から御指摘がございましたように、生活協同組合の物品供給事業が今問題になっておる、そういう点を中心にいたしまして、現在の
中小企業振興の問題につきましての、私
ども生活協同組合の立場からの御者見もつけ加えて申し上げさしていただきたいと存じます。
前提としまして現在
中小企業ということが一がいにいわれておりますが、その内容が非常にいろいろな階層を含んでおりまして、その中には工業、加工業の面もあり、あるいは
商業、サービス業の面もある。しかも最近はいわゆる系列化が進んで参りまして、その系列化の中で、
中小企業の中においても非常な較差が現われているということが
一般的な
傾向ではないか、そのようにわれわれは考えております。その系列化の中で、特に工業、加工業の面でいろいろな保護的な
措置というものがその系列化されたものには加えられている。しかし系列化に入れないいわゆる日の当らない零細
企業には、全然いわゆる
下請代金の
支払いもおくれるし、さまざまな面で不利益を大
企業側からこうむっている。それがいわゆる
中小企業、特に工業、加工業の面で非常に困っている
実情ではないか、そのように考えております。さらに
商業、サービス業の面におきましては、いわゆる
百貨店あるいは小売市場あるいはチェーン、そういうものの伸展、これもやはり大きな資本、そういうものとの系列的な
関係、その上に乗りました
商業、それとその上に乗らない
商業、その間に非常に大きな較差が現われてきている。特に私
どもが日常生活をしておりまして身近に感じますことは、いわゆるボーダー・ライン階層に属する人が、失業から、とに
かく退職金をなげうってまでも店を開かなければならない、そういうことに追い込まれている。あるいはいわゆる社会保障制度を当然受くべき、あるいは老齢年金などを受くべき、そういう年寄り、おじいさん、おばあさんが、結局今の世の中の
傾向よりして、どうしても自分で食っていかなくちゃならない。それでなけなしの金で駄菓子屋を開く、そういう人が実際は一番困っている。すなわちわれわれ勤労者の仲間が一番困っている。そしてけっこう系列化の中に加わっているそういう商店は、金融の面においても十分に金融も受けているし、あるいは税の面においても非常にうまい工合に税をのがれている面があります。結局、零細なそういうボーダー・ライン階層以下の、いわゆる生業というような人には金融はますますいかなくなっておりますし、さらに税金の面においても、そういう人が一番苛烈に取り立てられておる。それが現在のいわゆる
中小企業というものの中における実態でないか、そのようにわれわれは考えております。ですから、
中小企業が過当競争で非常に困っておるということを言われますけれ
ども、その困っているのはそういう生業、なりわいの、生きんがための業だけである、そういう層だけであるという点がわれわれの主張したい点であります。しかもそういう一応
商売ができるということさえもできない転落層、いわゆる日雇い労働者あるいは要保護世帯というものがさらに何百万とあるということ、そういう人から見れば、
商売ができるということだけでも非常にうらやましいことである、そのように感じているわけでございます。そういう大きな根本的な矛盾というものが現在の
中小企業の問題として現われているのではないか、そのように私
どもは考えております。さらに、そういう矛盾をはらみながらも、片方におきましてオートメーションが進みまして、それがもちろん工業の面におきましては非常に進んでおります。さらに農村の面においても進んでおります。そうすると、そこにおきましては、いわゆる雇用の問題というものが、特にわれわれの主張からいいますれば、これは労働時間の短縮ということによって雇用量を減らされるということは当然避けるということに主張いたしたい点でございますけれ
ども、それが雇用を減らすという
傾向になっておりまして、それがいわゆる第三次産業人口の
商業、サービス業に非常に流れ込んできている。それがまた大きく失業問題と関連を持ちまして問題になっているということを御指摘申し上げたいと思うわけでございます。
さらに、オートメーションが進みますにつれて、特に
商業面におきましては、これを大量販売しなければいわゆる近代的な
要求というものについていけない、そこで、大量販売あるいは商品の優良商品化、いわゆるレッテル化が進められております。そこにおきまして、いわゆる大量販売をやるがためのいろいろな直売店、あるいは系列化した商店、そういうものがそのオートメーションをする工場の系列の中に入りまして、それがますます栄えていく
傾向にある。そうしてその系列に入れないものは、前代近的な商法を行なっている商店というものはますます疲弊していく以外はない。そういう新しい流通機構における大きな変革というものがここに現われておりまして、そこで私
ども消費者は、実際にそういう流通機構というものにつきまして非常に矛盾が大きく現われているということを日常の生活で毎日体験をしているわけでございます。そういう根本的な大きな問題が、現在いわゆる
中小企業問題という工合に一ぺんにひっくるまれて、いい者もあるいは非常に困っている者も全部一緒である、そのように印象づけられて宣伝されていることに、大きな矛盾とそれは誤まりであるということを私たちは指摘したいわけでございます。
さらにその点につきまして、特に、
中小企業団体の組織に関する
法律あるいは環境衛生法というものが、いわゆる過当競争を抑圧し少くするというために立案されたわけでございますけれ
ども、そういう大きな矛盾をはらんでいる流通機構あるいは
中小企業の中におきまして、もし
中小企業の
方々だけにいわゆる強制加入、あるいは環境衛生におきましても連合会は強制加入、そういう強権を持ってのカルテル行為を行いますならば、その矛盾のしわ寄せというものは一体どこにくるであろうか、すなわちそれは
消費者に転嫁される。あるいは
消費者でなくしても、いわゆる先ほど申し上げましたなりわいの零細業者に今度は大きくしわ寄せされてきて、そういう人はまたさらに要保護世帯に転落しなければならない。そういうことをわれわれとしては現実に感じるのでございます。従って私
どもがああいう強権的なカルテル法案に反対しました理由は、そういう根本的な対策というものをまず先にして、そして
あとで考えなければ、しわ寄せをする層というものが、かえって救わんとする層であるということを考えたからでございます。
さらに、いわゆる労働組合と同様な
団体交渉、団結権というものを
中小企業者にも認めるのだという宣伝が
一般的にはされまして、そしてこの問題が進められておったわけでございますけれ
ども、もしもこの法案が通ったとするならば、労働組合に対しましても、同じく強制加入を認めなければならない。あるいは私
ども消費生活協同組合に対しましても、たとえばその町の二分の二の
消費者が加入していれば、
あとの三分の一は強制加入である。あるいは消費生活協同組合にも同様な
団体交渉権を与える、そういうことがなければ、結局中間的な
中小企業者の方だけが、いわゆる過当競争を抑圧するというその名のもとだけに、そういう強権を与えられるということは、非常な大きな不公平を招くものである、そのように考えております。
以上のような理由をもちまして、この現在の
中小企業の問題というものは、実は大きな社会問題のことからくるものでありまして、その問題のためには、先ほど申し上げましたようにやはり社会保障の充実の問題、あるいは完全雇用の問題、そういうものの根本的解決がなされない場合には、どのようにしてもこの問題を解決することはできないのではないか、私
どもはそのように考えておるわけでございます。
さらに、生活協同組合がきわめて今度の
団体法の
審議等におきましても、あるいは環境衛生法の
審議におきましても問題になっておりますけれ
ども、われわれとしましては、なぜ生活協同組合がそのように大きな問題にされるのかということに対しまして、非常にその理解に苦しんでおります。生活協同組合は終戦直後は一時好調でありましたけれ
ども、その後非常に困難な条件に立ち至りました。最近やっと
消費者の自覚、あるいは勤労大衆の実質賃金向上の意欲の強い
要求、あるいは強いバックの上に、やっと自分の足で、どこからも援助をもらわずに自分の足で立ってきたものでございます。現在全国に実際に
活動しているものは約一千二百組合でございまして、その総事業高は三十一年度におきまして二百八十億
程度でございます。これを
一般の
小売商の小売総額と比べますならば、おそらく一%以下、大体〇・八%
程度の現有勢力でございます。御
承知の
通りヨーロッパ等の国におきましては非常に生活協同組合は
発展しております。
発展していると申し上げましても、イギリスにおきましては総小売の一二・七%でございます。あるいはスエーデンにおきましても一四%
程度でございます。従って
消費者が自主的に団結し、いわゆる共有財産といいますか、自分たちの共同事業、あるいは集団所有の業態として
発展していますものの、やはり
一つのおのずからの限度というものは、先ほど
高橋参考人が述べられるまでもなくわれわれは感じております。結局その他の部分の
方々はやはり
小売商であります。すなわち集団所有の形体において営利を目的としないもの、そういうものの事業の限界というものはやはりおのずからあるということ、それからさらにいわゆる個人所有によります個人商店のいいところというものも当然あるわけでございます。従って諸外国の例に見ますごとく、そういう
消費者の自主的な事業、それからいわゆる
小売商の事業というものがそこに並存して、お互いにいかにして
消費者の利益になるかということを、ライバルとして正しく競争していくということが、私
どもの一番の任務であろう、そのように存じております。米子で非常にいろいろな問題が出されたようでございますけれ
ども、あすこにおきまして今年の一月二十四日に
小売商の全国のゼミナールがございました。そのときにおきまして、最終的にこの場合は米子の商店が眠っていたから悪いんだということがはっきり結論づけられまして、生協が伸びるのは当りまえである。そのようにあの四百人のゼミナールにおいてはっきりと結論が出されましたのが、
日本経済新聞にちゃんと記載されまして、全国に知らされております。そのように私たちは決して
商業者を全部つぶしてしまうという考えは毛頭ないということを断言してはばからない。すなわち
商業者が眠っていて
消費者に正しい奉仕をしていないものには、
消費者は当然自衛手段としてそういう生活協同組合を作り、そういう
商業者に対して目ざめてもらうということを私たちは心から希望しているものでございます。その過程におきまして、今回政府におかれましては、
小売商業特別措置法案を
国会に提出されまして、衆議院におきまして
継続審議にされているわけでございますが、この
小売商業特別
措置法という法案を見ますと、その名前だけにおきましては、これは何か
小売商に対する特別な
措置がなされるんだという工合に印象を受けるのでございますけれ
ども、その内容を見ました場合におきましては、これはかえって購買会、生協、
小売商規制法、そのように明確に書いていただいた方がよい
法律であると私たちは考えております。
すなわち前の
中小企業振興審議会の答申等において政府が出されている案によりますと、いわゆる登録制の問題、あるいはその他営業時間の制限の問題、そういうものが出されておったにもかかわらず、そういう
小売商の問題というものは全部払拭されまして、単に購買会、生協、小売市場だけにつきましての法文しか載っていないということは、私
どもは全く奇異の感じに打たれております。特にこの法案の第二条及び第三条によりまして、消費生活協同組合に対しまして、員外利用の
規制の規定を明らかにされようとしております。この生活協同組合法によりましては、すでにその他のいろいろな厚生省から通達等によりまして、生活協同組合法自身は員外利用を原則的には禁止しております。しかしながらこの点につきまして、他の同種の非営利法人でございます農業協同組合あるいは水産業協同組合、あるいは営利法人でありますところの
中小企業等協同組合及び現在
継続審議になっております
中小企業団体の組織に関する
法律に基く商工組合、これはいずれも二割の員外利用を
法律で認めております。何ゆえに生活協同組合だけが員外利用を禁止されなければならないか、この点は生活協同組合に組合員が入ります場合に、組合をまず利用してみて、そうしてそれがいいというので入るというのが、
一般の普通の常識でございます。従いまして、いわゆる自己
発展の原則上、私
どもはこの生協法が制定されました後も、再三にわたりまして、先ほど述べました各種協同組合等と同等の員外利用というものを当然われわれは認められるべきである、そのように主張してきたわけでございます。それが、今度は厚生省の行政監督だけでは不十分である、従って通産省もこれに入り、その他各省もこれに入って、生協の員外利用を全く
規制していこうという工合にこの法案では出ておりますけれ
ども、こういうことはわれわれの立場からは絶対に承服できない点でございます。もとより員外利用の問題につきましては、生活協同組合の運営、いわゆる組合員の相互扶助の建前からいいますれば、当然無制限にやるということはできないことでございます。すなわち、これはもし員外利用を無制限にやっておるならば、組合員の中から、組合員以外にも同様に利用させるものならば、出資をするなんということはごめんである、そのように言ってくるのでございます。従いまして私
どもは、もちろん員外利用が多い組合があるのも事実でございますが、それらの組合に対しましては、生協の内部問題としまして、員外利用をなくすためのあらゆる強力な
措置をとれという工合に指導しております。そうしてその効果は最近着々と上りつつあると私は考えております。しかも私
どもが員外利用を二割くらいは必ず認めてもらいたいということの主張点は、農協は農村地帯でありまして、ほとんど員外利用の必要はないはずであります。ところが生協は市街地であります。そこで、市街地におきましては非常に人口の異動の激しいことは、皆さんよく御
承知の
通りでございます。組合員の異動もはげしい、新しく転居する人もある、そういう点で、生協の員外利用を
規制され、全然ゼロにされてしまう、あるいは、どのような
措置によってやられるかは存じませんけれ
ども、いろいろな摘発行為によって、あるいは生協をただ罰するという名だけとりたいためにやる場合も起ってくるわけでございます。組合員以外の人が故意に利用して、そうして売ったというので、摘発された事例が、従来からもしばしばあるわけでございます。そういうような点におきまして、こういう
規制がなされますことは、われわれは絶対に承服できないというわけでございます。
さらにこの法案の規定におきまして、三条の二号によりまして、組合員が組合の事業利用に当って、組合員であることを示す証を提示することを命ぜられております。組合員が毎日組合を利用する際に、常に組合員証を携帯していなければならない、これは配給時代ならばとも
かく、現在では全く日常生活上不自然でございます。特に第三条の第三号におきまして、通帳あるいは伝票というものによらなければ、組合を全く利用できないという命令を知事から受けるわけでございますが、これは生協の基本原則でありますところの
現金主義というものに全く逆行するものであります。特に生協は最近意識的に、組合員の生活指導のために、通帳制、伝票制というものを排除しつつございます。そうしてやはり
現金中心にやらなければいけないということを指導しております。これはチケットその他クーポン等がはんらんしておりまして、そのチケット、クーポンの弊害というものが、いわゆる
一般勤労者の生活を非常に圧迫しておる事実があるわけでございます。特に職域等におきましてそういう
実情がございまして、いわゆるサラリーマンが家へ月給袋を持って帰るときには、伝票だけしか入っていないという事実が非常に多くなりまして、そのために家庭争議を起している例は、全国的に山ほどあるという事実を認識していただきたいと存ずるわけでございます。そういうために私
ども生活協同組合におきましては、生活指導上強い啓蒙宣伝といたしまして、特に炭鉱等におきましては、いわゆる山札で買っていた、そういう長い間の弊害、すなわち米を食っていたものを、パンを食えというような、そういう強い変革でございますが、それを
現金主義に改めるよう非常に強い啓蒙宣伝を行なってきたのであります。これは政府が現に指導しておられます新生活運動あるいは貯蓄奨励という線に沿って、われわれは運動しておるつもりでございますが、こういう
現金主義を、この通帳、伝票制を全部とれということによって全く否定しようという工合にされる、これは現在政府のとっておられる政策とあまりにも矛盾するところがはなはだしいのではないかと考えられるわけでございます。
全般を通じまして、こういう規定が、しかも都道府県知事が必要と認めた場合という、きわめてあいまいな条件のもとに発動されるのでございまして、私
どもは、ただ生協はけしからぬ、生協をつぶそうという、そういう人が故意にこの
法律を利用しまして、いろいろな摘発行為を行なって、そうして都道府県の知事がその圧力によって発動されるという事実が起らないということは断言できないのでございます。そういう意味におきまして私
どもは、この
小売商業特別
措置法というものは、私
どもの生活協同組合を根本的に否定するものである、かように考えまして、こういう
法律の
審議につきましては、どうぞ私
どもの
意見が十分に反映されて御
審議いただきますように切望する次第でございます。
以上、非常に時間を超過しまして失礼申し上げましたけれ
ども、生活協同組合の運動に対しまして、いろいろと、あちらこちらから反発が出ておりますけれ
ども、私
どもはそういう
趣旨に基いて運動をしておるものでございまして、
消費者一般の
要求というものが、生協が問題になればなるほど生活協同組合に対する期待が同時に高まっているということもまた、否定されない事実でございます。そういうような意味におきまして、どうか
委員長におかれましては、私
どもの生活協同組合の理念というものを十分におくみ取りいただいて、諸法案の
審議につきまして慎重に御配慮いただきたい、そのように切望申し上げて
意見の開陳にかえる次第でございます。