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1957-05-31 第26回国会 衆議院 商工委員会中小企業に関する小委員会 第1号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    本小委員昭和三十二年二月二十二日(金曜日) 委員長指名で次の通り選任された。       阿左美廣治君    内田 常雄君       大倉 三郎君    鹿野 彦吉君       川野 芳滿君    菅  太郎君       佐々木秀世君    島村 一郎君       首藤 新八君    西村 直己君       福井 順一君    前田 正男君       南  好雄君    森山 欽司君       加藤 清二君    田中 武夫君       田中 利勝君    中崎  敏君       永井勝次郎君    松平 忠久君       水谷長三郎君 同日  加藤清二君が委員長指名で小委員長選任さ  れた。 —————————————————————    会 議 昭和三十二年五月三十一日(金曜日)     午前十時四十分開議  出席小委員    小委員長 加藤 清二君       阿左美廣治君    笹本 一雄君       鈴木 善幸君    田村  元君       平野 三郎君    森山 欽司君       山下 春江君    河野  密君       中崎  敏君    帆足  計君       穗積 七郎君  小委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         調整課長)   吉田 仁風君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         下請取引監査         官)      澤田 雄二君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         通商産業事務         官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務         官         (中小企業庁振         興部長)    今井 善衞君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    川瀬 健治君         労働事務官   勝野  弘君         労働事務官   横山 照久君         参  考  人         (全日本中小企         業協議会委員         長)      五藤 齊三君         参  考  人         (日本百貨店協         会専務理事)  能勢 昌雄君         参  考  人         (全日本小売商         団体連盟理事         長)      高橋 貞治君         参  考  人         (名古屋市市議         会議員)    下平 一一君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会組織         部長)     勝部 欣一君         参  考  人         (日本石炭協会         生産部次長)  長堀 壯三君         参  考  人         (全国繊維産業         労働組合同盟法         制部長)    間宮重一郎君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月八日  小委員森山欽司君同月二日委員辞任につき、そ  の補欠として山手滿男君が委員長指名小委  員に選任された。 同日  田中武夫君同月五日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 同日  川野芳滿君同月六日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 五月二十七日  佐々木秀世君三月八日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員補欠選任された。 同日  阿左美廣治君三月九日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員補欠選任された。 同日  小委員山手滿男君三月九日委員辞任につき、そ  の補欠として森山欽司君が委員長指名小委  員に選任された。 同日  福井順一君三月十二日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員補欠選任された。 同日  中崎敏君三月十五日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 同日  大倉三郎君三月二十六日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員補欠選任された。 同日  前田正男君四月九日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 同日  永井勝次郎君四月十日委員辞任につき、  委員長指名で小委員補欠選任された。 同日  川野芳滿君及び菅太郎君四月二十七日委員辞任  につき、委員長指名で小委員補欠選任された。 同日  田中利勝君同月七日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 同日  島村一郎君同月十七日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員補欠選任された。 五月三十一日  小委員大倉三郎君及び佐々木秀世君同月二十八  日委員辞任につき、その補欠として田村元君及  び山下春江君が委員長指名で小委員選任さ  れた。 同日  小委員内田常雄君、菅太郎君及び永井勝次郎君  同日委員辞任につき、その補欠として鈴木善幸  君、平野三郎君及び河野密君が委員長指名で  小委員選任された。 同日  小委員鹿野彦吉君及び松平忠久君同日辞任につ  き、その補欠として笹本一雄君及び穗積七郎君  が委員長指名で小委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小売商業振興対策並びに下請代金支払遅延等防  止対策に関する問題について参考人より意見聴  取     —————————————
  2. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 これより会議を開きます。  本日は小売商業振興対策並びに下請代金支払い遅延等防止対策調査のため、関係各界の代表七名の方々参考人として御出席をわずらわし、種々御意見を承わることにいたします。御出席参考人は、全日本中小企業協議会委員長藤齊三君、日本百貨店協会理事長能勢昌雄君、全日本小売商団体連盟理事長高橋貞治君、名古屋市会議員下平二君、日本生活協同組合連合会組織部長勝部欣一君、日本石炭協会生産部次長長堀壯三君、全国繊維産業労働組合同盟法制部長間宮重一郎君、以上の方々であります。  この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人方々は御多用中のところ、本委員会に御出席下さいましたことを厚く御礼申し上げます。本日は小売商業振興対策はいかにあるべきか、また下請代金支払い遅延等防止対策はいかにあるべきかということを中心に、御出席参考人より御意見を伺うのでありますが、御承知通り、さきの国会におきましては、中小企業対策の一環として、政府から提出されましたところの小売商業特別措置法案、社会党から提出されました商業調整法案産業分野の確保に関する法律案百貨店法の一部を改正する法律案並び下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案が、本院において審査を終了するに至らず、継続審査とすることになり、また参議院におきましても、御承知中小企業団体法案が、審査を終了するに至らず継続審査となりましたので、本日は本院において継続審査案件となったこれら五法律案そのものについて賛否の御意見を伺う趣旨ではありませんが、一応このこともあわせて念頭に置いていただきまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見を承わることができまするならば、他日のわれわれの審議参考ともなろうかと存じます。  なお参考人の御意見開陳の時間は、一人おおむね十分ないし十五分以内にお願いすることとし、その順序は勝手ながら小委員長におまかせ願いたいと存じます。御意見発表の後小委員の側から種々質疑もあろうかと存じまするので、お含みの上お願いをいたします。  それでは最初に五藤参考人より、下請代金支払遅延等防止法施行状況並びにそれにかんがみ、これに関する御意見があればお聞かせ願いたいと存じます。
  3. 五藤参考人(五藤齊三)

    ○五藤参考人 下請代金支払遅延等防止法施行を見ました結果、一般下請代金支払い状況はだんだんと改善の方向に向っておりますことは、国会先生方の御努力のたまものと厚く感謝を申し上げる次第であります。ただこれが、この法律によって所期の目的を達したかというと、御承知のように日本経済発展過程において、昨年におきましては神武以来の好景気といううたい文句がうたわれましたようなふうに、一般経済界の好況に恵まれて、さしも多年にわたって下請代金問題が紛糾をいたしましたことも、だんだん雪解けのような状態に、トラブルが減少いたしていることは事実でございます。ただ、その現況におきましても、御承知通り中小企業は大企業に比べますと、常に日の当らない地位に置かれていることが多いのでありまして、大企業神武以来の好景気をうたわれている中にも、中小企業はわずかにその余恵をちょっぴりとこうむっているという程度が、よく実情に現われているのであります。  一般的に申しますと、数年前のような代金のたな上げ、あるいははなはだしい遅払い、俗に台風手形とかお産手形と申しましたように、七カ月も十ヵ月も延べ払いをせられましたようなことは、さすがに最近はなくなったように見えるのでございます。ただ、それでもやはり毎月の納品がその月に締め切られまして、翌月の一定の支払い時期に支払いを完了せられるという例は比較的少いのでございまして中には七割くらいが繰り越されるという企業すらまだあるようでございます。半分くらい現金払いを受けて、あとは三カ月、四カ月の手形をもらうという程度が比較的いい方でございまして、手形はくれないが現金も全額をくれない。半分くらいくれる。あるいは三割くらいしかくれない。それをあとあとへと延べ払いをせられる。千繰り万繰りと申しますか、どこまでたっても受け取り残高が残っていく、しかも徐々にそれが増大をする傾向すらある、こういったような状況現状においても相当にあるのでございます。あとの御質問の時間に、その実例を示せという御意向でありますれば、若干調査もいたして参りましたので、その実例も申し上げたいと存じますが、一般中小企業支払いはよくなったと申しましても、まだまだ十分でないということが実情でございます。と申しますことは、この下請代金支払遅延等防止法運用については、いろいろ難点があるように思われるのでございます。たとえば第七条に規定せられておりまする、勧告を出していただきたいような案件に対しましても、公取当局においては、なかなかそれをお出しになりにくいというのが実情のようでございます。と申しますことは、法律上の規定によるならば、はっきりした条件のもとにこの勧告が行われねばならぬということであるのは当然だとは思いますが、実は大企業中小企業関係は、多年の習慣上、どういたしましても親企業の方に相当の力の重圧がありまして、常に下請企業は受け身の態勢でありますので、かなり不当な取扱いを受けましても、それをあからさまに提訴をするといったようなことをとかくはばかりがちであります。勧告をしてもらいたいような案件に対しましても、できるならば自分の方の名前を出すことを差し控えたい、あるいは金額等についてはっきりした状態を発表してもらいたくない、そういったような気持が常に下請の面にあるのでございます。と申しますことは、代金を支払ってもらうということの一つ前に、注文をなるべく多くもらわなければ——下請企業というものは親企業にオール依存をいたしておりますので、注文を減らされるということが非常に苦痛である。まして親企業下請企業関係を断たれるということは全く致命的な苦痛である。こういうふうに考えますので、常に親企業に対して、遠慮がちでなければ、安全を保っていかれないという気持が働くわけでございます。事実これらの事実をあからさまに要求をいたしましたために、非常に巧妙な手段で関係を断たれたという実情等も間々あるようでございまして、こういう点から具体的な事案を提訴することが困難なことから、そういうことのために法律的勧告を出されるということが、実際上の必要に対しまして非常に少いという現状ではなかろうかと思うのであります。これを何らかの方法でさらに効果的に勧告が行われますように、あるいは勧告を行うたと同様な効果の発揮ができますような、法律的あるいは行政措置的な措置を御研究願いたいと思うのであります。  なお第四桑中の、特に第二項の代金支払い遅延については、その基準を明確にすることが望ましいと思います。明確にすることによって正しい支払い慣例を養成していくことができるようになると思うのであります。これらの点に関しましても、今国会継続審議に終りました団体法の中の団交権の問題でありますが、これは下請関係においてはことに必要であると思う次第でございます。下請組合を結成いたしましてその公正な要求団体交渉によって認めてもらい、調停機関の設置を法律的にしていただきたいと考えるのであります。また中小企業庁におかれましても、法律改正以前におきましても行政指導によりましてこれらの問題点を積極的に改善せられますように指導的に御努力が願いたいと思うのでございます。  なお会社更正法問題等にも関連する点があると思いますが、会社更正法の第三十五条の、裁判所がする監督行政庁との協議につきましても、中小企業庁並びに公取監督行政庁に準じて法定協議機関とせられますようにこの更正法改正をしていただきたいと存じます。企業庁並びに公取裁判所更正法運用に当りまして関心を持って下請企業者が不当に不利益をこうむることのないように積極的に動いていただきたいと存ずる次第でございます。なお百十九条に下請代金を入れて、これを共益債権に認められるように改正していただきまして、この下請代金支払遅延防止法とともに補完の実を上げたいと考えるのでございます。  これらの点を総合的に考えまして、下請代金先取特権に関する法律を制定するように御研究が願いたいと存ずる次第であります。  大体以上申し上げまして大要を尽したつもりでありますが、個々の実情に対しましては幾つかの実例を調べて参っておるのでございますから、あとで御質問をいただきまするならば、これらについてお答え申し上げたいと存じます。  以上で大要を終ります。
  4. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 質問あとで一括行うことにいたしまして、次に能勢参考人より、百貨店法施行状況にかんがみ、小売商業との関係においての御意見を伺います。能勢参考人
  5. 能勢参考人(能勢昌雄)

    能勢参考人 御紹介にあずかりました能勢でございます。御指名によって小売商業振興の策についてということでございますので、そういうことから百貨店法施行後の状況等について申し上げたいと思います。  私は、小売商業伸展策ということに触れますと、どうも百貨店法実施のときにその百貨店法に反対して参りまして述べましたことと同じようなことになるのでございますから、ごく簡単に申しますが、さりとて現在すでに実施されております百貨店法批判する気持は持っておりませんので、誤解のないようにお願いいたします。  商業と申しますものは、申すまでもなく毎日動いておる状態でございまして、これを静的なものとして一つ規制を加えるということはなかなかむずかしい問題があろうかと思うのでございます。結論的に申しますと、私ども絶えず独立商業者百貨店というものは決して相対立するものでない。従って対立させるようないろいろな法律に対しては好ましくないということを申して参りましたが、やはり商売は御承知通り最後消費者がどこで何を買うかという決定によって繁盛するかしないかということに相なるわけでございます。小売商にしても百貨店にしても消費者が買ってくれなければ仕方がないので、その買ってもらうということはとうてい法律ではきめることができないのでございます。従いまして百貨店にしても、独立商業者にしても、ひとしく小売商でございますが、小売商が第一義的に考えなければならぬことは、どうして消費者のごひいきになるかという点に帰着すると考えるのであります。しかし、実際私どもが聞いておるところによりますと、独立商業者の方面にはある程度の御困難があるということを聞いておりますので、百貨店法によって、その困難の小売商競争相手の一部である百貨店をある程度規制して、小売中小商業者事業活動の機会を与える。しかしながら消費者に多大の不便を与えないという建前で先年の百貨店法実施されたわけでございますが、私どもはあくまでも法律はありといたしましても、今後の商業発展、ことに中小商業者発展は、その指導啓発ということが一番肝心ではないかと考えるのでございます。商業相談所が都道府県あるいは会議所その他私のものにもたくさんございますが、もっとこれを拡充して、ほんとうに商売を始めるときから、どこでどういう商品をどのくらいの資力を持って始めることが適当であるかないかというところまでさかのぼって相談をされて、そうして出発されるということがいいんじゃないかと考えるのでございます。実際中小商業者のうちで困っておられると申しましてもなかなかその調査は困難で、御当局におきましても今後予算をとって大いに調査をされるということでございますが、果してそれが商業者にまですぐに及んでくるかどうか、なかなかむずかしい問題だと思います。私どもの方から見ますと、独立商業者のうちにもりっぱに経営をしていらっしゃるところもたくさんあるのでございます。また百貨店のうちにも柄は大きいが必ずしもりっぱな経営をしていないものもあるのでございます。今日の場合におきまして問題になっております独立中小商業者の面におきましては、特にこの指導啓発ということを強くやっていただく必要があると思うのであります。百貨店法が昨年の六月十六日に実施されまして、私は一番中小商業者に対して役立ったと思いますことは、失礼な申し分でありますけれども中小商業者の方の反省であると思います。もちろん百貨店側反省もございますが、特にその対象になっている中小商業者が、法律をきめてもすぐに中小商業者がよくなるものじゃないということにお気づきになりまして——前からお気づきになっておったのでありましょうが格段の御注意が向けられまして、いろいろと消費者の動向を調査し、あるいは御自身の中小商業者のあり方についての社会的批判研究し、またこれに応じまして、新聞紙等中小商業者のために日々の紙面をさいて、これに非常に力を合せていられるのでございます。私どもはこの傾向が非常に強くなりまして、これは中小商業者のために指導啓発の点から見ましても非常に有益なことであろうかと考えているのでございます。  そういう際におきまして、先ほど委員長もちょっとお触れになりましたが、従来の百貨店法はどういうふうになっておるか、そして果して中小商業者のために役に立っておるかという問題でございますが、今申しましたような中小商業者の自覚を促すというような点については間接的には非常に役に立っておると思います。しかし百貨店法自体と申しますものは百貨店に対する規制でございまして、皆さん御承知通り百貨店の新増設あるいはその他の事業活動の大きなワクにおける考え方その他につきまして、いろいろと各条におきまして百貨店規制が行われておるのでございます。今回御審議になっております百貨店法改正の案につきましては、各条についてまだ十分の研究はしておりませんが、私どもの考えますところは、第一番に申しましたように百貨店のみならず商業というものはその活動が日常動いておるために、その活動を追っかけ追っかけ規制していくということはなかなかむずかしい問題じゃないかと考えるのでございます。先般の百貨店法相当幅のある、そしてモラルの面まで含んだ法律であるということはその事実を証拠立てていると思うのでありますが、実施後一年、その間におきまして私ども百貨店はその法律に準拠いたしまして十分注意をして動いているつもりでございます。先般の改正法の御提案の理由の説明の中には相当きびしい御批判がございましたけれども、まず百貨店法実施当時に着工されておりました建物につきましては、当時国会の御審議におきましても、すでに着工しているものについてはこれはやむを得ないだろうというような御意見を私どもは強く感じたのでございます。しかしながらそれも中小商業者に与える影響が多い場合にはある程度のチェックをするということを伺っておったのでございますが、一たび法律実施されまして、そうして建築中のものを御審議になりました結果を見ますと、ほとんど特別のもの以外は中小商業者のために影響ありという観点からいたしまして、相当の割合が削られているのであります。私どもはよほど特別の場合でなければ削られないと思っておりましたのが、多くの場合において何割かの縮小を御結論になりまして、われわれの方から改めた申請を出して許可になっているというわけでございます。せんだっての議事録を見ますと、ほとんどどんどん許して、百貨店保護法のような感じがあるというお話が出ておりましたが、これは多少事情が違うのじゃないかと考えるのであります。さらにまたその新しいものについては、十三件でございますか十五件でございますか、ちょっと忘れましたが、許可しているじゃないかということでございますが、これも実例について調べますと、ほとんどそれ全部が法律によりますところの売場移動の届出の廃止の方をごらんにならないで、かえって新しく作る方の面をごらんになったことで、実際におきましてはその全部を通じましてほとんど売場面積というものは拡張されていないのでございます。  かくのごとく百貨店法実施によりまして売場規制というものは厳粛に行われて、百貨店審議会、さらにその審議を受けて通産御当局の御処置というものはわれわれにとってはかなりきびしいものと考えておるのであります。また法律の中にございます地方百貨店特例と申しますごときも、中元あるいは歳暮等の一時的なワクにおきましてはある程度の御理解を得ておりまして御許可を得ておりますが、条例の特例というものの御判断もなかなかきびしいので、全百貨店の中でほとんどないと申してもいいほど営業時間等につきましての特例は認められないのであります。  かくのごとく私どもから考えますと、百貨店にとりましては相当きびしい法律で、そして御当局もこの法律趣旨を体して、われわれから申せばそれほど中小企業にこれが影響あるだろうかというような点がありましても、やはり審議会も厳粛にこの問題をお取り上げになりまして、相当きびしい御判断のもとに活動あるいは存在というものが規制されているのでございます。ただその活動の面につきましても、今回御上程になりました法律案の中にはいろいろ項目をあげて、こういうことをしてはいかぬ、ああいうことをしてはいかぬという条項があるように拝承いたしておりますが、これは実態につきまして私どももよく調査いたしますが、御当局におかれましてもよく御調査を願いたいと思います。その中にはすでに百貨店において行なってないものもございます。また法務省あるいは公正取引委員会その他の所管庁におきましてこういう方法ならばよろしいという御許可を得てやっておりますので、百貨店が無軌道にやっておるということもないのであります。最も問題になっております月賦販売のごときも百貨店自体がやっておる月賦販売というものはほとんどないといっていいくらいで、ある月賦販売をやっております会社が勧誘しまして百貨店がそれに加入しております。しかしこれは百貨店ばかりでなく一般小売商もひとしくこれに参加しておられますので、かかることは消費者にとりまして、小売商はやっていいが百貨店はやっていいものであるかどうかということは、多くの問題が残るのじゃないかと私どもは考えておるのであります。これは一、二の例でございますが、とにかく実施後まだようやく一年ならずして百貨店の方もこの法律について相当厳粛に考えてやっております。また法律実施なさいます御当局においても、われわれの方から見ればむしろきびし過ぎるかと思うほどこの法律施行しておる際に、またさらにいろいろの点につきまして補充されるということは、商業の混乱を来たしましてますますむずかしい問題がそこに生まれてくるのではないかと考えるのであります。百貨店事業活動につきましては、主として不公正なものを取り締るということで公正取引委員会が御管轄になっておりますが、これに対しましても、公正取引委員会ははなはだ手ぬるい、何をしているかというようなお声もあろうかと思います。あるいはまた、そういう点を加味して今回の改正案等も出たのではないかと思いますが、私どもは絶えず公正取引委員会から、こういう点についての調査をせよ、ああいう点についての調査を出せという御命令によりまして、いろいろの点について調査報告をしておるのでございます。それにつきましては、大体におきましてだんだんよい方に向いておるということを御報告を受けているのでございます。なお今後もそういう調査、御勧告等は続いてわれわれの方もそれに御協力を申し上げて軌道に乗せたいと思いますが、それは一本の線を出して、いつも私どもが申すことでございますが、正しいか正しくないかということははなはだむずかしい問題でございます。ただ一例を申し上げますならば、これも方々で私ども申すことでございますが、百貨店が問屋をいじめて値段を負けさせるということでございます。果していじめるということと仕入れがきびしいということの間にどれだけの差異があるか、これはなかなかわからない問題でございます。商人の常といたしまして、この商品をこの値段に負からぬか、負からなければ、この商品は君のところ一軒でこさえているわけではない、ほかで買うからというのは通例のことでございます。それを無理に力をもって押えつけて、言うことを聞かなければ取引しないのだというふうに裏から解釈されることは、果して正しいことでございましょうか。またかようにきびしい仕入れをするということは、やはり消費者にいい物を安くお渡ししたいという考えから、われわれは絶えずきびしい仕入れをしているわけでございます。しかし一歩誤まって、公正取引委員会の御注意がございますように、はなはだしく行き過ぎをして、取引先を圧力をもって従わせるというような事態が起りましたならば、これはいけないのでございますが、足らぬところはさらに法律等に直して、果して実際はてきぱきといけるものかどうか。私は二面商業振興の方におきましては、先ほど申しましたように、中小企業者の方で特に啓発の点につきまして御自覚を願い、また国はその方面の助力をされ、さらにまた別の法律で租税なり、金融なり、現在いろいろと御配慮を願っているように、それを助長され、そうして一面競争者関係にある百貨店であるとか、あるいは購買会であるとか、あるいは消費生活協同組合であるとかの仕事等につきまして、行き過ぎがあるならばこれを時と所によって調整してやっていかれる方がよいので、現在の百貨店法はいましばらくその実施の内容を御検討願い、またわれわれ百貨店業者としましても、十分その意のあるところをくみ、またわれわれはその法律の真意をくんで進みたい、こう考えておるのでございます。  さらにまた、今お話がございました団体法というようなものにつきましては、審議されております過程におきましても、商業者といたしましては、百貨店その他大企業の連中ともいろいろ打ち合せをしてやりましたのでございますが、これは反対しているというよりは、慎重御審議が願いたいということでございます。と申しますのは、他の面につきましてはともかく百貨店につきまして申すならば、百貨店は御承知通り、実に凡百の商品を扱っております。かりに団体交渉にいたしましても、調整規程にいたしましても、各方面からいろいろの規制がくるということは、百貨店の機能を相当混乱に陥らせる場合もあるのでございます。そういう点につきまして、団体規制をする、あるいは調整規程を最終的に国家でおきめになるにおきましても、そのきめ方、あるいはその段階におきまして消費者に影響があるかないか、また関連事業でございますわれわれの百貨店事業の正常なる発達にも影響があるかないかというようなことを、よほど御研究願うような段階を慎重に御審議願いたいと思うのであります。さらにまた業種別の指定等を願いまして、どの業種が不況になって、これを安定させなければならぬかというようなことも私どもは必要かと思いますが、あの条文にございます商工組合の中の地域的な商店街組合というものにつきましては、私どもは多大の疑問を持っております。一つの商店街が不況に陥っているという状態はどういうときをさすのか、私どもにははなはだむずかしいのでございます。ただ何となくその地域が百貨店そのほか大きな商業のために圧迫されて不況であるということのために、いろいろな種類の団体交渉を持ち込まれ、われわれは誠意をもってこれに応じるということになりましても、その結論はこれまた相当一つの業種における申し合せ以上に消費者にも影響があろうかと考えるのでございます。こういう点につきましては、私ども団体法が要らぬとか要るとかいう問題でなく、もし必要ならばいわゆる合理化に伴う組織が必要である、さらにまたその組合に与える権能が必要であるということならば、絶えず皆さん方も国会においてもおっしゃっておられます関連事業に著しい影響を与え、消費者にも著しい影響を与える、そうしてそのワクの中で、国の産業の中の一つとして中小企業をいかに育成するかというためには、どういう団体法を作り、それに与える権能が必要であるかということにつきましては、今後私どももさらに一そう研究して、場合によりましては書面なりまた他の団体とも連携をとりまして意見を申し述べたいと思うのでございます。はなはだ不十分でございますけれども、与えられた時間が超過いたしましたので、一応この辺で終ることにいたします。
  6. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 次に高橋参考人より小売商業の立場から小売商業振興対策全般の問題について御意見を伺います。全日本小売商団体連盟理事高橋貞治君。
  7. 高橋参考人(高橋貞治)

    高橋参考人 ただいま御紹介をいただきました全日商連の高橋でございます。お尋ねのございました小売商振興対策につきまして、全日商連の立場を代表して意見を述べさせていただきます。私ども小売商は末端配給機関として常に消費者とじかに接しておりますために、消費者に対する奉仕またはサービスという点については、他の産業よりもより直接的であり、日夜努力しておるところであります。また合理化された配給機構こそ消費者に対する最高のサービスであるということもよく存じておるのでありまするが、現在の小売業界の実情は合理化しようともなし得ない大きな障害があるのであり、また個別企業ワク内ではどうしても解決し得ない経済的、社会的な問題にぶつかっているのでございます。日本の小売部門の特徴につきましては、従来零細性と過剰性が指摘されておりましたが、私どもは第一に小売部門の占める全産業での比重が相当に大きいこと、第二にいわゆる過剰性の存在する中で、大部分の極端な零細経営と高度に発達し合理化された大企業百貨店が並存し、しかも大企業百貨店による市場の独占化が急速に進行するにもかかわらず、零細な小売商店の数は転廃業をはるかにこえる新規開業によって、年々増加の一途をたどっておるところにあるのではないかと考えております。何ゆえふえるのか、何ゆえ大企業に圧迫されても減らないのか、この点にこそ小売商問題の基本的問題があるのではないかと存じます。小売部門に年々流れ込んでいる人口の大半は失業者であり、定年退職者などであり、また今日では月給取の副業として内職がわりに小売商を始めたり、農漁村、工場からはみ出た過剰人口は、店舗を持たない行商人として間接的に小売部門に流入しているのであります。しかも今日他産業からはみ出した過剰人口の引き受け場所として小売部門に期待する考えを公然と経済企画庁等は公表しているのであり、こうした小売部門を日本経済発展のためのいわば犠牲産業として考え、その上にあらゆる産業政策が組み立てられている以上、小売商の過剰性はますます激しくならざるを得ないのではないかと存じます。また大企業の進出、圧迫にもかかわらず、倒産、破産の少いのは、小売商経営企業としてではなく、なりわいとして行われていることの現われでありまして、小売部門の非近代的性格から営業を破産から救っているのであります。小売業界のこの零細性は、他の産業分野からはみ出された過剰人口がわずかな元手をもって小売業界に流入し得る重要な条件ともなっているのであり、また大規模小売業者の市場独占化を容易ならしめている理由ともなっているのであります。私ども小売部門の近代化、合理化のためには、この二つの問題を根本的に解決すべきであると考えておりまするが、昨年十二月の中小企業振興審議会の答申は、他の対症療法的な対策とあわせて、基本的問題の解決に向って一歩を踏み出すものとして大いに期待をかけていたのであります。  まず第一に登録制の問題であります。登録制をしくことに対しましては、それが制限登録に移行する危険があるという論がございますが、先ほども申し上げたごとく、私どもは業者の過剰を困窮の原因と考えているのではなく、他の社会的、経済的条件の結果として過剰となっているという認識に立っているのでありまするから、単純に新規開業を抑制することによってこの問題が解決すると思っていないのであります。登録制はただいままでいろいろ申し上げたような小売業界の実態をより明確にするための唯一の効果のある方法であると存じている次第であります。実態の把握なくしてどうして有効な行政を行うことができるでありましょうか。  次に生産者または卸商の小売行為についてでありまするが、このことは現実の問題といたしまして小売市場を相当撹乱しているのでありまして、小売商といたしましては何らかの解決策を講じていただきたいと存じております。もちろんこのことは生産業あるいは小売商は小売を兼業すべきでないというふうに画一的に考えているのではないのでありまして、生産業が二次製品にまで手を出し、商品を直接に購買会などに売るというような行き過ぎや、卸価格で小売行為を行うなどの規制をしていただきたいのであります。生協、購買会がきわめて大きな社会問題化してしまったのでありまするが、全日商連はこの問題について、大企業経営政策の一環として、採算を度外した購買会の問題と、生協または労組の福祉対策活動一つとして行われている物品購入のあっせんに関する活動等とは区別して考えるべきであると存じております。独立採算の原則に立つ限り安く売ろうといっても切り詰めることのできない経費率の限界があるのでありまして、米子等の例を見ましても、中規模小売店の合理化された経営ならば対抗し得る余地があるのであります。しかし購買会等は現在何ら規制の法規がないのでありますから、これは厳重に規制し、とりわけ独立採算制を実施せしめることや市街地への店舗の進出規制等は、直ちに実行すべきであると存じます。生活協同組合、労組の福祉活動について、これらの活動によって全消費物資が配給し得るものではないし、また生協といえどもそういうのは考えていないのでありましょう。現在の小売部門が非合理的である点は、私ども自身認めるところであり、ただ問題は個別経営ワクではいかんともなし得ない社会的な原因があるのであり、それだけにこれを無視して圧迫することによって事業を伸ばそうとするならば、ちょうど大規模小売業が一般小売商を圧迫し、市場を奪って伸びるごとく、生協という名の商業資本は一般小売商を圧迫することとなるでありましょう。私どもは生協の理念を否定するものではありませんが、生協の企業化は規制すべきであると存じます。なお労組の福祉対策活動については、労組の立場から地元小売商に対して意見を言うことは、小売商人として反省のかてともいたしたいと思いますが、物品販売にまで手をつけられることについては一考あってしかるべきであろうと存じます。  以上の点を総合いたしまして、ただいま衆議院において継続審議になっております小売商業特別措置法案商業調整法案に対しまして私どもの要望を申し上げたいと存じます。  両案は小売商にあらざるものの小売行為によって、小売商活動分野が狭められることを防ごうという精神においては一致しておるのではないかと存じますので、ぜひとも一本のものとして成立させていただきたいと存じます。生産者、卸商等の小売行為については、行政上実態の把握がむずかしいと思われますが、小売商がそれらの生産者、卸商と交渉いたす際の基準を明らかにしておく意味からも、何分かの規定はしていただきたいのであります。また市場の規制許可制としていただきたい考えであります。購買会については今日まで法規制がなかったのでありますから、独立採算制をとらしめ、これに対する会社等からの寄金は当然課税対象とするなど、員外利用の制限を含め十分な規制をしていただきたいと存じます。生協の員外販売の制限は当然であると思います。また政府案におきまするあっせんの規定、社会党案におきまする商業調整審議会の構想は、いずれも小売商にとりまして、また商業問題の紛糾解決に上りどころを与えるものと存じます。  本問題につきまして最後に一言つけ加えさせていただきたいことは、以上の点はすべて小売商の問題の対症療法であり、根治のためにはどうしても犠牲産業という考え方を改めていただく必要があると存じます。その意味から小売商の実態把握はどうしても必要なことでありまして、その意見から小売商の全面無制限登録、少くとも地域、業種を指定した登録の実施をつけ加えていただきたいと存じます。  次に百貨店法の問題でございますが、昭和二十九年十二月、公正取引委員会から百貨店業に対する特殊指定が出され、三十一年六月百貨店法施行されましたが、私どもはいずれもその実際的効果から見まして不満足を表明せずにはおられないのであります。特殊指定では、せっかく返品問題、手伝い店員問題等百貨店の不当な競争能力の源泉をついておるのでありますが、委託販売を放任するという抜け道を許したために、全く指定の効果は有名無実と申しましても過言でない状況なのであります。このことは指定を出す当時には、全日商連の前身であります百貨店対策連盟から再三意見書を公取に提出してございます。この点の補強は特殊指定の追加か、または百貨店法改正によるか、いずれかによりまして実現していただきたいところなのでございます。また百貨店法施行一歳にいたしまして、その不十分な点が明らかになっておるところであると存じます。百貨店法は閉店時間の制限を除いては、何ら百貨店の横暴な営業を規制する内容を持たず、結果的には百貨店法を機会に、一挙に少くとも二十年から三十年分の増新築を促進してしまったということにもなりかねません。実に百貨店法付則第九条をたてに取って、昨年六月十六日現在、基礎工事はおろか、シートパイル打ち込み工事すら始めていなかったようなものまで、全部許可をとってしまいその許可面積の合計は全国で三十万三千八百四十六平方メートルという膨大なものなのであります。不許可とした面積についても、わざわざ百貨店の床面積の定義を旧百貨店法の解釈とも、二十九年の公取委の特殊指定とも異なる定義を下して、実質的には百貨店の営業と不可分の食堂、貸店舗、展示会場などを床面積からはずしたために・わずか削除された部分も多少普通より大きな食堂でも作れば痛痒を感じないということになっているのであります。最近では堂々と形式的に別会社として小規模支店を郊外ターミナルに作るごとき脱法行為すら行われているにもかかわらず、いまだに第九条の勧告すら発動されていないのであります。別会社の問題は、これを放置いたしますならば、将来必ずや日本版スーパー・マーケットとして小売市場を席巻することになるでありましょう。その他百貨店の日本信販チケットの利用等、百貨店の営業行為の行き過ぎに対する規制は第九条の勧告に一切がゆだねられているのでありますが、これはすみやかにより効果のある具体的規制法律の条文として追加していただきたいと思います。わずかに現行法の規制の対象となっている面積の規制については、前述の通り百貨店にとってほとんど痛痒を感ぜしめない結果となっているのでございまして、私ども小売商の保護を明記した初めての立法措置である百貨店法を既存の百貨店の保護立法に終らせることなく、不備の点を補強し、実情に適した有効な規制のなし得る百貨店法改正していただきたいと存ずる次第であります。  大へん長時間を費しましたが、これで私の公述を終りたいと存じます。
  8. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 次に下平参考人より、現在問題となっております小売市場の登録制の問題あるいは小売市場の新設等の許可制の問題等を中心に伺いたいと存じます。名古屋市議会議員下平一一君。
  9. 下平参考人(下平一一)

    ○下平参考人 私は現在名古屋市議会議員の職にありますかたわら、名古屋市小売市場の連合会の顧問をいたしておりますので、その立場からただいま御諮問にあずかりました諸点につきまして、所見の一端を御披瀝申し上げまして御参考に供したいと存ずるのであります。  平素中小企業に対しましては、格別の深い御理解をいただきまして、ことに去る国会におきましては、いわゆる中小企業三法の御審議に一方ならぬお力尽しをいただきましたことは私ども感謝にたえないところであります。遺憾ながら会期切れのために、せっかくの御努力にもかかわらず法の成立を見なかったのでありますが、幸い継続審議として閉会中にもかかわりませず、本日このように小委員会を御開催いただいて、私ども意見をお聞き取り願うという御熱意に対しましては深い敬意を表しますとともに、御配意のもと民意に基く修正を経て、よりよい法の成立を見ますように格段の御尽力をお願い申し上げたいと存ずる次第であります。  さて私が関係いたしております小売市場と申しますのは、御用聞きの発達いたしております東京都のごときにおきましては、きわめてわずかな存在にすきないかと存じますが、大阪、名古屋、神戸、横浜、京都並びにその周辺都市などにおきましては、食料品を主体とし、日用雑貨を付随せしめて市民の日常生活必需品を販売する集団店舗でありまして、いわゆる小市民の生活は欠くべからざる存在となっているのであります。従いまして、それぞれの市当局におきましては、公設市場を設けまして、民営市場の範たらしめるべく格段の努力を払って参りました。民営各市場もまた競って公設市場に劣らない力をその経営に注いで参ったのであります。この両々相待っての結果は、市場の使命であるよりよい品物をより多くより低廉に提供するという状態を如実に示して参りました。私ども名古屋市に例をとりましても、ようやく市場が市民の台所という観念が市場商人に徹しまするとともに、市民各位もその真価を認められて、業態いささか安定したかに見られたのであります。  ところが、比較的小資本をもって開業できます利点を持つために、戦後日を経るに従い、市場を開設する者が急激に増加いたして参りまして、名古屋市のごときは昭和二十八年末現在百二十七市場でございましたが、昭和三十一年末におきましては実に二百六十市場と、二倍以上の激増を見ているのであります。これは戦前最盛期、昭和十二年に比しまして二・六倍の数を示しているのであります。しからばこれが顧客層であります人口世帯の増加率はどうなっているかと見ますと、昭和十二年を一〇〇といたしまして、昭和二十八年には一〇六、昭和三十一年には一二〇と、昭和十二年に比しまして今日現在わずか二割の増加にすぎない人口世帯に対しまして、市場は前にも申し上げましたごとく二.六倍の増加と相なっているのでありまして、今日ただいまにおきましても市内の各地に市場建設ののみ音が響いている現実なのであります。おそらく議員の皆さんは、そんなにできては共倒れになるではないか、共倒れになることを承知してそういうばかげたことをやる者があるかと奇異の感をお抱きになることと存ずるのでありますが、事実は決してそうではないのであります。御承知通り戦災を受けまして市内各所にはあき地が相当ございます。この地主は容易な利用方法を考えております。小さな建築業者はこれに着目いたしまして、市場の建設を勧めて回っているのであります。地主と建築業者の間にほぼ了解が成り立ちますと、このあき地へ持っていきまして何々市場建設用地という木柱と、市場出店者募集という看板と、二つを立てますればこれで市場はできるのであります。出店希望者は五万円ないし七万円程度の権利金を出しまして出店の資格をとります。権利金を受け取りました地主は、出店希望者が予定数に達しますと、その権利金によりまして建築にかかるのでありますが、建具の要らない、柱と屋根だけの建物でありますから、きわめて安価にでき上るのであります。言いかえますれば出店者の権利金だけで建物ができるのであります。かつての市場経営者は名実ともに市場によって収益をもくろみ、市場主として経験と抱負を持って出店者を指導したものであります。しかるに最近の市場建設者の大部分はかような実情でありますから、市場の経営自体を本来の目的としないと言っても差しつかえない状況なのでありまして、極言いたしますれば市場として成功するかいなかは別問題なのであります。むしろはやらなくなって出店者の新陳代謝がひんぱんに行われることは、そのつど何がしかの権利金をもうけることに相なりますので、歓迎しているとさえ申せましょう。経営成り立たず、市場閉鎖に至りましても、地主は建物だけをぬれ手にあわで獲得したことになるのでありますから、損をしないのであります。かつての市場業者に見られなかったきわめて悪質的傾向でありますが、ただいまのところこれを防止する何らの法的措置がないのであります。建築基準法と消防法に合致する限りにおきましては、これに認可を与えて建築を認めていかなければならないことに相なっているのであります。これには何らかの法的な措置を講じていただく必要があろうかと存ずるのであります。  いずれにいたしましてもこれら乱立の結果は、勢いお客の争奪戦に走らざるを得ない結果を招来いたしまして、通常商戦の常道をもってしてはその市場は落伍することに相なるのであります。元来商戦の正常なあり方は、その販売する商品の質と価格と商人の誠意とによって争われるべきであるにもかかわらず、かつ大部分の市場商人はそのことを十分知っておりましても、やむなく異常なサービスによって客をつかもうとするのであります。たとえば春の花見、秋のタケ狩り、夏の海水浴、正月の観劇等、応接にいとまのない招待合戦を展開いたしまして、はなはだしきに至ってはバスを走らせて客をつかみに回るというような状況さえ出て参ったのであります。そのために必然的に宣伝費がきわめて多額に上りましてそのしわ寄せが好むと好まざるとにかかわらず商品に向けられることになって参るのであります。  さきにも申しましたごとく、小売市場の中心点は日常の食生活、ことに蔬菜、鮮魚など、生鮮食料品の販売が主体をなしておりまするが、ただいま申しました過当競争のために、見てくれのよい質の下ったものを仕入れて採算を合わそうとする傾向を生じ、将来あるいは悪質品を販売するのではないかとさえ案じられるようになって参ったのであります。これは市民の食生活にとりましてもゆゆしき大事だと存ずるのであります。かかる観点から、さきに名古屋市議会におきましては、満場一致をもって市場乱立防止に関する決議を行い、政府並びに国会に対しまして、意見書を提出しましたことは御了承いただいておることと存じますが、五大市といたしましても各市長連盟をもちまして、同様なお願いを申しているのであります。また市場商人といたしましても、みずからの商権擁護に由来することはもとより否定できないと存じますが、かような愚を繰り返して市場本来の使命を忘れることは、市場の自滅であると真剣に考えて参っておるのでありまして、戦前の市場は市当局の監督下に、最も公正な小売店としての自由と誇りを持って営業いたしておったのでありますが、この体験を持つ商人は、官公署の指図を受けることなく自主的にその習慣を持続していくことによって、市場商人としての喜びを感じつつあったのであります。しかるにただいま申し上げましたような乱立の実情は、最もはなはだしきところにおいては市電の一停留所区間に五カ市場も軒を連ねるという現実でありますために、ついに結束してこれが対策を講じる必要に迫られ、去る昭和二十八年七月、名古屋に小売市場連合会を結成し、共同売り出し等による連合政策をもちまして、その協定に基く不当な競争を避けるように行動をいたして参ったのであります。ところがこの方法は、その後雨後のタケノコのごとくに設立せられまする新市場によって、むざんに打ちくだかれまして、現在ただいま再び混乱状態を現出しているのでございます。この実態はひとり名古屋のみにとどまらず、神戸、大阪、横浜、京都並びにその周辺部において、同様な憂いを持っておりますので、相ともに府県市当局に善処方を要望し続けておったのでありまするが、昨年に至りまして、さらに強力な運動をすべきであると痛感をいたしまして、これらの都市による市場総連合会を結成し、衆参両院、政府要路に対しまして、請願を申し上げた次第でございます。幸い非常な御理解をいただいて、小売商振興法案なるものが上程されたと漏れ承わりまして、感謝いたしておりましたところ、その内容に修正を加えられ、ただいまにおきましては、小売商業特別措置法案としてお手元で御審議いただいておると承知いたしているのであります。  そこで以上の実情をお含みおき願いました上で、その立場からこの法案に基き触れさせていただきたいと存ずるのでありまするが、私が存じまする法案にして誤まりなくんば、その第四条において市場の登録を命じ、第五条において登録の基準を示されておると解して差しつかえないかと存じます。ところがこれではまことに隔靴掻痒の感を深くするのであります。すなわち逆に第五条において定められた基準に合致する限りにおきましては、すべて登録が許されるのでありますから、今日市場の乱立を抑制する結果を招来することは不可能ではないかと存ずるのであります。たとい第六条によって政令が強化されましても、第五条に確定された基準の範囲は動かし得ないと存じますので、これらの法の効果は、私どもの希求いたしておりますものとははるかに遠いと申しても差しつかえなかろうかと存じます。  この際あえてお願い申し上げたいと存じますことは、百尺竿頭一歩を進めて、市場設置の許可制を御制定いただきたいということであります。さきに小売商業調整法案として立案されたと承わりますそれには、まことに明確にこのことを書かれていまして、すなわち第八条において許可制を明確に規定し、その第二項におきまして「前項の指定は、一般消費者の数に対し小売市場の数が相当の比率を占めている一定の地域について、その地域において小売市場の数が増加するおそれがあり、かつ、小売市場の小売商経営の安定を図るためには、小売市場の配置を適正化し、一つの小売市場の小売商と他の小売市場の小売商との過当な競争を排除することが必要と認められる場合に行う。」と、過当競争の排除にあることを明らかにしまするとともに、その第十条に、これに基く許可の基準といたしまして、「都道府県知事は、第八条第一項の許可の申請に係る小売市場の設置の場所が小売市場の小売商経営の安定上配置の適正を欠くと認めるときは、同項の許可を与えないことができる。」「2前項の設置の場所の配置の基準は、一般消費者の利益を不当に害するものであってはならない。」という形に御制定せられておるのであります。もとより私どもは公正な市場商人あるいは市場主によって市場が設立されようとすることをゆえなくして拒もうとするものでは断じてありません。要は適正な配置の上に立って市場の経営が商人、消費者相ともに益するところが大であると信ずるがゆえにお願いしているのでありまして、設置場所の配置基準は一般消費者の利益を不当に害するものであってはならぬとするただいまのこの許可の基準の一項目はまさにわが意を得たところと存ずるのであります。  要するに小売商業調整法なるものの原案第三章は、小売市場の一連のこの条項、これは私どもが当面いたしておりまする市場の実態をそのまま把握せられた上の立案としまして御立案の計画に対しましては深い敬意を表する次第であります。何とぞ委員各位におかれましては、いま一度小売商業調整法として立案せられましたこの原案を御参照下さいまして、私どもの意のあるところを御了察賜わりたいと存ずるのであります。  このほど御決定になりました理境衛生関係業者に対する例の法律は、やはり同様の意味から市場において牛鮮食料品を販売する者にとって大きく関心を寄せているところでありまして、直接市民の食生活を預かる者として、当然定められた法の順守はもちろん、進んでよりよい施設の充実など安全度の高揚に努めなければならないと存じておりますが、それにつけてもそのような営業のなし得る余裕を持たせていただきたい。いたずらに競争のために東奔西走するがごときは決してとるべきではないと考えているのでございます。なお先ほど申し上げました原案につきましては、憲法違反であるかのごとき論議があったかのように承わっておりまするが、先年御英断をもって百貨店法を制定せられ、中小商業者の擁護に意を用いられております事実に徴しましても、市民生活に安定を与え、一般商店街の脅威を除き、かつは市場の過当競争を防止することは公共の福祉の上に立った当然あるべき法の姿であると私どもは信じているのでございます。  主婦連などにおきましては、若干御反対もあるようでありますが、名古屋などにおきましては、町の奥さん方と懇談いたしまして、私どもの考え方に御共感をいただいておればこそ、前申しましたごとく市議会におきましても満場一致の意見も生まれまして、事あるごとにしゃくしをかついでちまたをお歩きになる奥さん方は元来市場を御利用になっていない階層の方々であり、小売市場の顧客はおうちで内職をしておられるような寸暇も惜しい勤労者の奥さん方などであることをあわせて御理解いただきたいのであります。  最後に小売商業特別措置法案の第四条に、指定都市における知事の権限をその市長に付与されております項は、まことに実情に適した立案と存ずるのでありまして、関連する事項がほとんど市長の権限にゆだねられております現実にかんがみ、小売商業調整法案のごとく修正いただきます際にも、この点はあわせて御配慮のほどをお願い申し上げる次第でございます。  浅学な私に所見を述べる機会をお与え下さいましたことを厚くお礼を申し上げ、長時間にわたりました非礼をおわびいたしますとともに、何とぞ意をおくみとり下さいますようにお願い申し上げまして、終らせていただきます。
  10. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 次に勝部参考人より、現在問題になっておりまする生協の供給事業等を中心に御意見を伺いたいと思います。日本生活協同組合連合会組織部長勝部欣一君。
  11. 勝部参考人(勝部欣一)

    勝部参考人 ただいま御紹介いただきました日本生活協同組合連合会の勝部でございます。特に皆様から御指摘がございましたように、生活協同組合の物品供給事業が今問題になっておる、そういう点を中心にいたしまして、現在の中小企業振興の問題につきましての、私ども生活協同組合の立場からの御者見もつけ加えて申し上げさしていただきたいと存じます。  前提としまして現在中小企業ということが一がいにいわれておりますが、その内容が非常にいろいろな階層を含んでおりまして、その中には工業、加工業の面もあり、あるいは商業、サービス業の面もある。しかも最近はいわゆる系列化が進んで参りまして、その系列化の中で、中小企業の中においても非常な較差が現われているということが一般的な傾向ではないか、そのようにわれわれは考えております。その系列化の中で、特に工業、加工業の面でいろいろな保護的な措置というものがその系列化されたものには加えられている。しかし系列化に入れないいわゆる日の当らない零細企業には、全然いわゆる下請代金支払いもおくれるし、さまざまな面で不利益を大企業側からこうむっている。それがいわゆる中小企業、特に工業、加工業の面で非常に困っている実情ではないか、そのように考えております。さらに商業、サービス業の面におきましては、いわゆる百貨店あるいは小売市場あるいはチェーン、そういうものの伸展、これもやはり大きな資本、そういうものとの系列的な関係、その上に乗りました商業、それとその上に乗らない商業、その間に非常に大きな較差が現われてきている。特に私どもが日常生活をしておりまして身近に感じますことは、いわゆるボーダー・ライン階層に属する人が、失業から、とにかく退職金をなげうってまでも店を開かなければならない、そういうことに追い込まれている。あるいはいわゆる社会保障制度を当然受くべき、あるいは老齢年金などを受くべき、そういう年寄り、おじいさん、おばあさんが、結局今の世の中の傾向よりして、どうしても自分で食っていかなくちゃならない。それでなけなしの金で駄菓子屋を開く、そういう人が実際は一番困っている。すなわちわれわれ勤労者の仲間が一番困っている。そしてけっこう系列化の中に加わっているそういう商店は、金融の面においても十分に金融も受けているし、あるいは税の面においても非常にうまい工合に税をのがれている面があります。結局、零細なそういうボーダー・ライン階層以下の、いわゆる生業というような人には金融はますますいかなくなっておりますし、さらに税金の面においても、そういう人が一番苛烈に取り立てられておる。それが現在のいわゆる中小企業というものの中における実態でないか、そのようにわれわれは考えております。ですから、中小企業が過当競争で非常に困っておるということを言われますけれども、その困っているのはそういう生業、なりわいの、生きんがための業だけである、そういう層だけであるという点がわれわれの主張したい点であります。しかもそういう一応商売ができるということさえもできない転落層、いわゆる日雇い労働者あるいは要保護世帯というものがさらに何百万とあるということ、そういう人から見れば、商売ができるということだけでも非常にうらやましいことである、そのように感じているわけでございます。そういう大きな根本的な矛盾というものが現在の中小企業の問題として現われているのではないか、そのように私どもは考えております。さらに、そういう矛盾をはらみながらも、片方におきましてオートメーションが進みまして、それがもちろん工業の面におきましては非常に進んでおります。さらに農村の面においても進んでおります。そうすると、そこにおきましては、いわゆる雇用の問題というものが、特にわれわれの主張からいいますれば、これは労働時間の短縮ということによって雇用量を減らされるということは当然避けるということに主張いたしたい点でございますけれども、それが雇用を減らすという傾向になっておりまして、それがいわゆる第三次産業人口の商業、サービス業に非常に流れ込んできている。それがまた大きく失業問題と関連を持ちまして問題になっているということを御指摘申し上げたいと思うわけでございます。  さらに、オートメーションが進みますにつれて、特に商業面におきましては、これを大量販売しなければいわゆる近代的な要求というものについていけない、そこで、大量販売あるいは商品の優良商品化、いわゆるレッテル化が進められております。そこにおきまして、いわゆる大量販売をやるがためのいろいろな直売店、あるいは系列化した商店、そういうものがそのオートメーションをする工場の系列の中に入りまして、それがますます栄えていく傾向にある。そうしてその系列に入れないものは、前代近的な商法を行なっている商店というものはますます疲弊していく以外はない。そういう新しい流通機構における大きな変革というものがここに現われておりまして、そこで私ども消費者は、実際にそういう流通機構というものにつきまして非常に矛盾が大きく現われているということを日常の生活で毎日体験をしているわけでございます。そういう根本的な大きな問題が、現在いわゆる中小企業問題という工合に一ぺんにひっくるまれて、いい者もあるいは非常に困っている者も全部一緒である、そのように印象づけられて宣伝されていることに、大きな矛盾とそれは誤まりであるということを私たちは指摘したいわけでございます。  さらにその点につきまして、特に、中小企業団体の組織に関する法律あるいは環境衛生法というものが、いわゆる過当競争を抑圧し少くするというために立案されたわけでございますけれども、そういう大きな矛盾をはらんでいる流通機構あるいは中小企業の中におきまして、もし中小企業方々だけにいわゆる強制加入、あるいは環境衛生におきましても連合会は強制加入、そういう強権を持ってのカルテル行為を行いますならば、その矛盾のしわ寄せというものは一体どこにくるであろうか、すなわちそれは消費者に転嫁される。あるいは消費者でなくしても、いわゆる先ほど申し上げましたなりわいの零細業者に今度は大きくしわ寄せされてきて、そういう人はまたさらに要保護世帯に転落しなければならない。そういうことをわれわれとしては現実に感じるのでございます。従って私どもがああいう強権的なカルテル法案に反対しました理由は、そういう根本的な対策というものをまず先にして、そしてあとで考えなければ、しわ寄せをする層というものが、かえって救わんとする層であるということを考えたからでございます。  さらに、いわゆる労働組合と同様な団体交渉、団結権というものを中小企業者にも認めるのだという宣伝が一般的にはされまして、そしてこの問題が進められておったわけでございますけれども、もしもこの法案が通ったとするならば、労働組合に対しましても、同じく強制加入を認めなければならない。あるいは私ども消費生活協同組合に対しましても、たとえばその町の二分の二の消費者が加入していれば、あとの三分の一は強制加入である。あるいは消費生活協同組合にも同様な団体交渉権を与える、そういうことがなければ、結局中間的な中小企業者の方だけが、いわゆる過当競争を抑圧するというその名のもとだけに、そういう強権を与えられるということは、非常な大きな不公平を招くものである、そのように考えております。  以上のような理由をもちまして、この現在の中小企業の問題というものは、実は大きな社会問題のことからくるものでありまして、その問題のためには、先ほど申し上げましたようにやはり社会保障の充実の問題、あるいは完全雇用の問題、そういうものの根本的解決がなされない場合には、どのようにしてもこの問題を解決することはできないのではないか、私どもはそのように考えておるわけでございます。  さらに、生活協同組合がきわめて今度の団体法審議等におきましても、あるいは環境衛生法の審議におきましても問題になっておりますけれども、われわれとしましては、なぜ生活協同組合がそのように大きな問題にされるのかということに対しまして、非常にその理解に苦しんでおります。生活協同組合は終戦直後は一時好調でありましたけれども、その後非常に困難な条件に立ち至りました。最近やっと消費者の自覚、あるいは勤労大衆の実質賃金向上の意欲の強い要求、あるいは強いバックの上に、やっと自分の足で、どこからも援助をもらわずに自分の足で立ってきたものでございます。現在全国に実際に活動しているものは約一千二百組合でございまして、その総事業高は三十一年度におきまして二百八十億程度でございます。これを一般小売商の小売総額と比べますならば、おそらく一%以下、大体〇・八%程度の現有勢力でございます。御承知通りヨーロッパ等の国におきましては非常に生活協同組合は発展しております。発展していると申し上げましても、イギリスにおきましては総小売の一二・七%でございます。あるいはスエーデンにおきましても一四%程度でございます。従って消費者が自主的に団結し、いわゆる共有財産といいますか、自分たちの共同事業、あるいは集団所有の業態として発展していますものの、やはり一つのおのずからの限度というものは、先ほど高橋参考人が述べられるまでもなくわれわれは感じております。結局その他の部分の方々はやはり小売商であります。すなわち集団所有の形体において営利を目的としないもの、そういうものの事業の限界というものはやはりおのずからあるということ、それからさらにいわゆる個人所有によります個人商店のいいところというものも当然あるわけでございます。従って諸外国の例に見ますごとく、そういう消費者の自主的な事業、それからいわゆる小売商の事業というものがそこに並存して、お互いにいかにして消費者の利益になるかということを、ライバルとして正しく競争していくということが、私どもの一番の任務であろう、そのように存じております。米子で非常にいろいろな問題が出されたようでございますけれども、あすこにおきまして今年の一月二十四日に小売商の全国のゼミナールがございました。そのときにおきまして、最終的にこの場合は米子の商店が眠っていたから悪いんだということがはっきり結論づけられまして、生協が伸びるのは当りまえである。そのようにあの四百人のゼミナールにおいてはっきりと結論が出されましたのが、日本経済新聞にちゃんと記載されまして、全国に知らされております。そのように私たちは決して商業者を全部つぶしてしまうという考えは毛頭ないということを断言してはばからない。すなわち商業者が眠っていて消費者に正しい奉仕をしていないものには、消費者は当然自衛手段としてそういう生活協同組合を作り、そういう商業者に対して目ざめてもらうということを私たちは心から希望しているものでございます。その過程におきまして、今回政府におかれましては、小売商業特別措置法案国会に提出されまして、衆議院におきまして継続審議にされているわけでございますが、この小売商業特別措置法という法案を見ますと、その名前だけにおきましては、これは何か小売商に対する特別な措置がなされるんだという工合に印象を受けるのでございますけれども、その内容を見ました場合におきましては、これはかえって購買会、生協、小売商規制法、そのように明確に書いていただいた方がよい法律であると私たちは考えております。  すなわち前の中小企業振興審議会の答申等において政府が出されている案によりますと、いわゆる登録制の問題、あるいはその他営業時間の制限の問題、そういうものが出されておったにもかかわらず、そういう小売商の問題というものは全部払拭されまして、単に購買会、生協、小売市場だけにつきましての法文しか載っていないということは、私どもは全く奇異の感じに打たれております。特にこの法案の第二条及び第三条によりまして、消費生活協同組合に対しまして、員外利用の規制の規定を明らかにされようとしております。この生活協同組合法によりましては、すでにその他のいろいろな厚生省から通達等によりまして、生活協同組合法自身は員外利用を原則的には禁止しております。しかしながらこの点につきまして、他の同種の非営利法人でございます農業協同組合あるいは水産業協同組合、あるいは営利法人でありますところの中小企業等協同組合及び現在継続審議になっております中小企業団体の組織に関する法律に基く商工組合、これはいずれも二割の員外利用を法律で認めております。何ゆえに生活協同組合だけが員外利用を禁止されなければならないか、この点は生活協同組合に組合員が入ります場合に、組合をまず利用してみて、そうしてそれがいいというので入るというのが、一般の普通の常識でございます。従いまして、いわゆる自己発展の原則上、私どもはこの生協法が制定されました後も、再三にわたりまして、先ほど述べました各種協同組合等と同等の員外利用というものを当然われわれは認められるべきである、そのように主張してきたわけでございます。それが、今度は厚生省の行政監督だけでは不十分である、従って通産省もこれに入り、その他各省もこれに入って、生協の員外利用を全く規制していこうという工合にこの法案では出ておりますけれども、こういうことはわれわれの立場からは絶対に承服できない点でございます。もとより員外利用の問題につきましては、生活協同組合の運営、いわゆる組合員の相互扶助の建前からいいますれば、当然無制限にやるということはできないことでございます。すなわち、これはもし員外利用を無制限にやっておるならば、組合員の中から、組合員以外にも同様に利用させるものならば、出資をするなんということはごめんである、そのように言ってくるのでございます。従いまして私どもは、もちろん員外利用が多い組合があるのも事実でございますが、それらの組合に対しましては、生協の内部問題としまして、員外利用をなくすためのあらゆる強力な措置をとれという工合に指導しております。そうしてその効果は最近着々と上りつつあると私は考えております。しかも私どもが員外利用を二割くらいは必ず認めてもらいたいということの主張点は、農協は農村地帯でありまして、ほとんど員外利用の必要はないはずであります。ところが生協は市街地であります。そこで、市街地におきましては非常に人口の異動の激しいことは、皆さんよく御承知通りでございます。組合員の異動もはげしい、新しく転居する人もある、そういう点で、生協の員外利用を規制され、全然ゼロにされてしまう、あるいは、どのような措置によってやられるかは存じませんけれども、いろいろな摘発行為によって、あるいは生協をただ罰するという名だけとりたいためにやる場合も起ってくるわけでございます。組合員以外の人が故意に利用して、そうして売ったというので、摘発された事例が、従来からもしばしばあるわけでございます。そういうような点におきまして、こういう規制がなされますことは、われわれは絶対に承服できないというわけでございます。  さらにこの法案の規定におきまして、三条の二号によりまして、組合員が組合の事業利用に当って、組合員であることを示す証を提示することを命ぜられております。組合員が毎日組合を利用する際に、常に組合員証を携帯していなければならない、これは配給時代ならばともかく、現在では全く日常生活上不自然でございます。特に第三条の第三号におきまして、通帳あるいは伝票というものによらなければ、組合を全く利用できないという命令を知事から受けるわけでございますが、これは生協の基本原則でありますところの現金主義というものに全く逆行するものであります。特に生協は最近意識的に、組合員の生活指導のために、通帳制、伝票制というものを排除しつつございます。そうしてやはり現金中心にやらなければいけないということを指導しております。これはチケットその他クーポン等がはんらんしておりまして、そのチケット、クーポンの弊害というものが、いわゆる一般勤労者の生活を非常に圧迫しておる事実があるわけでございます。特に職域等におきましてそういう実情がございまして、いわゆるサラリーマンが家へ月給袋を持って帰るときには、伝票だけしか入っていないという事実が非常に多くなりまして、そのために家庭争議を起している例は、全国的に山ほどあるという事実を認識していただきたいと存ずるわけでございます。そういうために私ども生活協同組合におきましては、生活指導上強い啓蒙宣伝といたしまして、特に炭鉱等におきましては、いわゆる山札で買っていた、そういう長い間の弊害、すなわち米を食っていたものを、パンを食えというような、そういう強い変革でございますが、それを現金主義に改めるよう非常に強い啓蒙宣伝を行なってきたのであります。これは政府が現に指導しておられます新生活運動あるいは貯蓄奨励という線に沿って、われわれは運動しておるつもりでございますが、こういう現金主義を、この通帳、伝票制を全部とれということによって全く否定しようという工合にされる、これは現在政府のとっておられる政策とあまりにも矛盾するところがはなはだしいのではないかと考えられるわけでございます。  全般を通じまして、こういう規定が、しかも都道府県知事が必要と認めた場合という、きわめてあいまいな条件のもとに発動されるのでございまして、私どもは、ただ生協はけしからぬ、生協をつぶそうという、そういう人が故意にこの法律を利用しまして、いろいろな摘発行為を行なって、そうして都道府県の知事がその圧力によって発動されるという事実が起らないということは断言できないのでございます。そういう意味におきまして私どもは、この小売商業特別措置法というものは、私どもの生活協同組合を根本的に否定するものである、かように考えまして、こういう法律審議につきましては、どうぞ私ども意見が十分に反映されて御審議いただきますように切望する次第でございます。  以上、非常に時間を超過しまして失礼申し上げましたけれども、生活協同組合の運動に対しまして、いろいろと、あちらこちらから反発が出ておりますけれども、私どもはそういう趣旨に基いて運動をしておるものでございまして、消費者一般要求というものが、生協が問題になればなるほど生活協同組合に対する期待が同時に高まっているということもまた、否定されない事実でございます。そういうような意味におきまして、どうか委員長におかれましては、私どもの生活協同組合の理念というものを十分におくみ取りいただいて、諸法案の審議につきまして慎重に御配慮いただきたい、そのように切望申し上げて意見の開陳にかえる次第でございます。
  12. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 次に長堀参考人より購買会事業等を中心として御意見をお述べ願います。日本石炭協会生産部次長、長堀壯三君。
  13. 長堀参考人(長堀壯三)

    ○長堀参考人 御紹介にあずかりました日本石炭協会の長堀でございます。購買会の観点から意見を述べよという御指名でございまするが、購買会という問題に対する認識が一般に非常に薄いんじゃないかというふうに考えますので、私はまず購買会の中でも飛び抜けて大きな組織と力を持っておる炭鉱購買会の特殊事情について御認識をいただくために、これを述べさせていただきたいと思うのであります。  炭鉱購買会と申しましても、もちろん炭鉱だけではなく、金属鉱山も全く同じ特殊事情にございます。なお一般の大工場等で非常な寒村とか僻地に設けられた工場で、それが中心になって町になり、都市になったというような会社ないし工場、事業場の購買会、こういったものは、程度の差こそあれ、炭鉱購買会と同じような事情にあるということをお含み願いたいと思います。言葉をかえて言いますならば、これらの炭鉱購買会は最も大きくて、購買会の中心をなしているといいますか、購買会というものを把握されるという上に、見のがすことのできない大きな分野を占めているところでありまして、その点、一つ十分御認識をいただきたい次第でございます。  委員の皆様にお配りしました資料について、これから御説明申し上げたいと思います。  御承知通り、炭鉱はほとんどすべてが、高所、僻陬の地に事業所を設けます関係上、創業当初、原則として住宅とか浴場、学校、病院、その他従業員の集団生活に必要な一通りの施設を整備するのが建前でございます。炭鉱購買会はこの一環として設けられたものであって、従いまして炭鉱のあるところには、必ず購買会があるわけでございます。それでこの購買会というか、物品配給所というか、供給所というか、こういったものの機関がなければ、炭鉱の操業というものは、一日たりとも維持できない次第でございまして、これは従業員の福利施設というような第二義的の意味のみでなく、不可欠の操業上の事業施設として設けられたものであります。これが一般工場あるいは大きな会社の事務所、役所の事務所等にあるいわゆる購買会とは根本的に異なっている点でございます。それから炭鉱の町におきます地元の産業者は、炭鉱が始まってそのあとで、すなわち購買会がすでにできたあとで、炭鉱目当てに開業をして、炭鉱と共存共栄の実を上げつつ、今日の炭鉱町あるいは炭鉱都市を形成したものであります。彼ら小売商のサービスは、主として購買会が取り扱っている品目以外の品物に重点が置かれまして、炭鉱従業員の消費生活を豊かにして参ったことは事実でございます。その取扱い品目は、しかしながら一部はどうしても炭鉱購買会が取り扱っている品目と一致するので、この意味で競合があると思われます。しかし今申し上げました通り、炭鉱の町においては、ほかの場合と異なりまして、購買会が新たに設けられたことによって、小売商業を苦境に追い込むという事態が生じたのでは決してなくて、商業者あとから競争者の立場に立ったのでございます。すなわち彼らが購買会取扱いの品目と同じ品目を取り扱う場合は、当然初めから購買会と競争の立場に立つということは、わかり切ったことだったのでございます。  もちろん品物によりましては最初購買会が取り扱っていなくて、町方の小売商が取り扱っていた品目を、新たに購買会が取り扱うようになったという事態もございます。ないとは言えませんが、これは例外のケースであって、こういった新たな品目を取り扱う場合、必ずといってもいいくらい、炭鉱の町方の価格が、ほかの市町村に比して高いという場合、これは従業員の要望によって、炭鉱購買会が新たに品物を取り扱うということになっているのでございます。  今日においては、もちろん町方が相当発達して、購買会がなくても従業員の消費生活に必要なものは、全部町方で間に合うというような炭鉱町、炭鉱都市もあることはございます。そういったところは、それじゃ購買会が要らないじゃないか。しかし、購買会がなくなった場合、従業員に及ぼす著しい生活上の不便、こういったものはしばらくおくとしましても、炭鉱というところは非常な消費都市でございますので、いわゆる山相場と申しまして、町の物価が極端に上るのであります。こういうことになりますと、炭鉱の賃金体系には、その地元における主食以下の諸物価が混然織り込まれている関係上、山相場というものは直ちに賃金に影響するものでございまして、よく炭鉱の町は給料日には物価が上るとさえ言われておるわけでございまして、購買会がない後の事態は大へんな状態になるということは申し上げるまでもないのでございます。  それから一般商業者の方から、炭鉱購買会は極端な廉売をやっていてけしからぬというような御非難もあるようですが、それは購買会が人件費とか店舗費その他を会社の負担とするために、一般商店に比べて非常に優位に立つという点にあろうかと思いますが、しかし、今日の炭鉱購買会は、独立採算制がほとんど全部といっていいくらいしかれております。これは炭鉱の合理化というようなことからコストの低下、これが非常な至上命令というようなことになりますので、ついこうせざるを得ないわけでございます。しかも炭鉱の購買会所属の店員といいますか、従業員は、炭鉱そのものの従業員でございまして、その給料その他労働条件は全部炭鉱の職員並びに労務者並みでございます。従いまして、一般商業の従業員よりはるかにいい条件でございます。それからさらに、間接費として鉱業所とか、本社費とか、そういったものが按分賦課されますので、炭鉱購買会においては極端な廉売は行われておりませんし、また行い得ない事情にあるわけでございます。  それから今盛んに言われております員外利用という問題でございますが、炭鉱の購買会は、従業員の住宅集落というものがございまして、その中心にあるのが原則でございます。後になってその辺が繁華街になったというような特殊な例外はございましょうが、そういったところで員外利用が問題にされるほど員外利用の率が上っているというか、員外利用されているという事態はないといっていいくらいでございます。今住んでいる人がいて、買いにくる人がきまっているということで、もうみな顔なじみの従業員ばかりでございます。従いまして、われわれの方については員外利用というのはもう問題でないと考えております。なお、それにしてもわれわれは今東京、在京の大手の各社で生活物資協議会というものを組織しておりまして、それの申し合せ事項といたしまして、濃回にわたりまして自粛をしようじゃないか、少くとも小売商をいたずらに刺激させるような積極的な売らんかな主義はとらぬ方がいいだろうというかたい自粛を誓い合っているわけでございます。  それから最後に申し上げたいのは、当初申し上げましたように、炭鉱購買会は、鉱山も含めますが非常に大きいのです。これは日本商工会議所編「工場、事業場の購買会等の現状」というパンフレットがございます。二十九年の十二月に発行されたものでありますが、これは大きな購買会と目されるものだけを調べたらしいのでございますが、一般の購買会の平均の販売額というか、そういったものが、全国平均でいろいろの業種が入っておりますけれども、平均の購買会の売り上げというものは、一購買会当り三千二百万円ばかりでございます。次いで従業員一人当りの買い入れ額、つまり利用度合いというものは年間一万七千百円ということになっておりますが、炭鉱並びに金属鉱山においては、これは商工会議所の調べによると、一購買会当りの年間販売額が一億六千五百万円余り、一従業員の購入額が六万九千四百円、こういうことになっております。なおつけ加えさせていただきますが、私の方でこれは大きな炭鉱だけについて調べたものでございまして、金属鉱山を含んでおりませんが、九十一カ所の購買会について調べた最近の調査によりますと、さらに金額がふえておりまして、一購買会平均の年間販売額は一億九千八百七十万円、それから一従業員の平均年間買い入れ額が九万三千円、こういうことになっております。この事実は、いかに炭鉱の従業員の生活と購買会の結びつきが大きいかということを物語るものでありまして、前に述べました特殊事情ということの非常な結果の現われではないかというふうに考えているわけでございます。  つけ加えますが、以上述べましたように、炭鉱は設立の日から購買会があって、炭鉱人は日常生活物資を入手するのに購買会を利用しております。これは数十年来、そういったことがむしろ歴史になっております。よく言われることでありますが、炭鉱人というのは会社の設備である会社の産院で生まれ、それから会社の住宅で育ち、会社の購買会で売っているものを買って育ち、それでなくなるときには会社の設備である焼場で会社の従業員である隠亡に焼かれるということが言われているわけでございますが、全くその通りでございまして、炭鉱の従業員というものは数十年来、日用品を購入するのに中間の利益を目的とした商業者を入れなかったというのが事実でございます。こういった意味から、これを逆行しまして再び購買会を圧迫して中間に小売商等を入れるということになりますと、これには強い反対をするということは明らかなことでございまして、しかもそれが直ちに先ほど申し上げましたように、実質賃金の低下を意味する。従いまして炭鉱の経営あるいは国の炭価政策というような面にも影響が及んでくるというようなことをぜひ御認識いただきたい、こう考えております。繰り返しますが、最初申し述べましたように、これは炭鉱購買会だけでなく金属鉱山もあり、その他寒村等に設けられました大事業場、こういったものの購買会は全部この範疇に入ろうかと思います。  次に、こういった環境に置かれている人々が今度の小売商特別措置法ですか、あれを見た場合、どういうふうに感じるかということなんですが、私から申し上げればこれは必要ないんだ。反対とかなんとかではなく、問題になるのは例の第七条なんですが、そこにいろいろ禁止の措置が三つばかり並べてございますけれども、一番初めの第一号には、購買会の店舗のところに何か員外利用を禁止する旨を明示しろということが書いてございますが、これはすでにやっていることなんでありまして、それから二番目は証明書を持って買いにこさせるというような案でございますが、これはむしろ必要ない、もうみんな顔なじみなんだというのが一般でございまして、しいて繁華街等にある購買会、これも先ほど申し上げましたように繁華街に炭鉱が建てたのではなくて、購買会のあるところに大ぜい人が集まるのでその後繁華街になったというだけのことでございますけれども、こういったところは会社の命令一本で証明書を持たせるぐらいわけなくできることでありまして、法律の力を借りる必要はないと考えております。  それからさらに三号が問題なんでございまして、これは現金販売の禁止ということでございますが、先ほど生協連の勝部さんから意見の御開陳がございましたけれども、炭鉱もほぼ同じ事情でございまして、歴史的に申し上げますればもとはほとんどが通帳だったわけです。それでは労働者の生活を維持向上させるためには非常に困る、まあ重複は避けますが、そういったことで苦労しまして、現金主義にいたしたわけでございます。それを逆行されるということになりますと、これは非常に困るということを申し上げたいと思います。なおこれが通帳になりますと、これは結果においては、この法案がねらっておられるところの小売商の擁護にはならないで、むしろその逆の結果になるということを強く御認識いただきたいと思います。と申しますのは、掛売りにいたしますと、これはもう目に見えて購買会の売り上げが増すわけでございます。先ほどもお話がございました通り、ただし月給日には袋の中には金がないということになりまして、町方に落ちる金というものは激減するわけでございます。小売商を擁護する特別措置で最後のきめ手のような現金売りの禁止というのが小売商を圧迫するという逆の結果になるということは明らかなんであります。そのいい例として最近あった例を申し上げます。これは東北のある大きな炭鉱でありますが、そこにあった、ことしになっての例と聞いておりますけれども、そこの炭鉱では購買会とそれから労働者が組織しております生協と二本立になっておりまして、お互いに競争の立場にあるわけでございます。ところが労働組合の方から、購買会はいまだに現金売りをしているが相当掛売りもやっている、通帳制度もやっている、この通帳制度はどうしても労働者をそちらへ、つまり購買会の方へ取引を縛るという結果になって、生協の方で物を買う人がなくなるから、これは困るからぜひやめてもらいたい、競争もけっこうだが、同じ立場で競争しようじゃないかというような要求がございまして、通帳を廃止した例がございます。これはすなわち通帳になりますと購買会のお客がふえ、生協も含めましての町の方へ落ちる金が激減する、こういう結果になります。最後のきめ手というふうに立法者が考えておられる現金売りの禁止というのは、町方へ金を落すことを圧迫する結果になるということを御認識いただきたいと思います。賛成とか反対とかでなく、われわれはもうこれは必要としない、法律にするにはどうもあまりにささいな問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。少くとも炭鉱購買会あるいは大きな購買会についてはこの法案はもうすでにこの趣旨は実行しておるんだということで、一つお取りやめをいただきたいと思います。
  14. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 最後に間宮参考人より消費者の立場から本問題について御意見をお述べいただきます。全国繊維産業労働組合法制部長間宮重一郎君。
  15. 間宮参考人(間宮重一郎)

    ○間宮参考人 ただいま御指名にあずかりました全繊同盟の法制部長をしております間宮でございます。  私はきょうは消費者の立場から小売商業振興対策について意見を述べよ、こういう御指摘でございますが、私の肩書きの示す通り、私は労働組合の幹部をしておりますので、いささかそういう立場にもなろうかと思いますので御了承を願いたいと思います。しかしながら労働者は即消費者でございますので、その点私は消費者の立場と労働者の立場は全く共通するものである、かように信じているものでございます。  そこで、中小企業、特に小売商業振興をはからなければならないということは、私は焦眉の急務であると考えているのでございます。かような立場から考えてみますると、過ぐる第二十六国会におきまして、政府並びに社会党の方々よりこれに対する立法措置を考えられて、いろいろ審議をされておられるということにつきましては、私は消費者の一人として非常に深い関心を持っているものでございますが、私ども消費者の立場からいたしますれば、小売商業ないしただいま申し上げました中小企業振興対策を立てる場合におきまして最も重要なことは、消費者の立場になってものを考えていただきたいということでございます。先ほどどなたかの公述人から申されましたように、いかに小売商業振興しようとしても、また中小企業をいかに振興しようといたしましても、消費者並びに国民の利益に反するような対策は存在を許さないといっても過言でないと思うのでございます。  従いまして、各論に入って少し詳細に申し上げたいと思いますけれども、いたずらに百貨店を抑圧し、いたずらに生協購買会を抑圧することによって小売商業並びに中小企業振興すると考えていることは、私は間違いではなかろうかと思うのでございます。そこで私は、中小企業ないし小売商業振興をはかる場合におきましてまず考えなければならないことは、やはり大資本、大企業の不当な圧迫、これに対する適正な処置を考えなければいけないこともあると考えるのでございます。なおまた、業者間における過当な競争についても何らか調整しなければならない点があろうかと思うのでございます。しかしながらこれらの二つの問題を考えるときに、消費者の立場は、先ほど申し上げた通りでございますが、同時にそれらの仕事に携わっているところの労働者の利益を忘れてもらっては困るのでございます。昨年ないし今年に引き続いて景気は非常によかったのでございますが、先ほどの公述人の方々も申されました通りに、それは中小企業者ないし小売商業者の上にはあまり影響がなかったのでございます。非常に困窮をしているというのが現実の状況でなかろうかと思うのでございます。しかもそのしわ寄せは常にそこに働いている労働者にかかってきているのでございます。しかるがゆえに、労働者の最低の権利を保障しているといわれますところの労働基準法の違反状況商業に携わっておる労働者に最も多いのでございます。すなわち、小売商人が最も多く労働基準法に違反しておるといっても過言でないのでございます。もちろん小売商の中には人を使っておられる方とおられない方とございますが、基準法違反はおられない方には関係のないことでございますけれども、これらの点も何らか調整をしなければいけないのではないか。たとえば小売商店の閉店時刻等はやはり立法措置によって考慮しなければならない点もあろうかと思うのでございます。  そこで私は、このように考えますときに、当面まず振興対策として考えなければならないことは、過ぐる当委員会において意見を申し上げました通りに、まず中小企業ないし小売商業の組織を確立することでございます。これによりまして、大企業あるいは過当な競争をするものに対してみずからの公正な競争を確保する措置を考えなければいけないでありましょう。またそのような公正な企業を圧迫するような第三者に団体交渉を行う道を開くことも重要であろうかと思うのでございます。なおまた、商業につきましてそれぞれ調整の措置を講じなければならないことも当然であろうと思うのでございます。いわゆる百貨店あるいは卸売あるいは小売との関係をどうするかということは、やはりそれらの間の調整をする立法措置が必要であろうかと思うのでございます。しかしながら問題はその内容にあるのではなかろうかと思うのでございます。  中小企業の組織についての御意見につきましては、先日の当委員会意見で申し上げましたので重複いたしますから避けたいと思います。そこで商業の調整をどうあらしめるかということでございますが、先ほど一般論で述べました通りに、それはあくまでも消費者の利益に共通する方法でこれを規制しなければいけないと思うのでございます。さような意味からいいまして、今回政府当局において立案されました小売商業の特別措置法案をながめてみますると、これは先ほど生協連の方から申されました通りに、までも小売商業の特別措置法案ではなしに、生協並びに購買会の規制法案ともいえるものであると思うのでございます。これは法律の名称そのものからピントはずれなものであると思うのでございます。しかもその内容におきまして、生協連や購買会を抑制することによって小売商業発展すると考えておいでになる方々は、これは私はいま少し研究をしていただかなければならないのではないかと思うのでございます。タクシーがはやるから人力車がすたるということはやむを得ないことでございます。しかし私は、小売商業といいますものは、タクシーに対する人力車のごとく市場から抹殺される性格のものではないと思うのでございます。いかに生協が発達し、いかに購買会が発達いたしましても、また百貨店がいかに発達いたしましても、小売商業の生くる道は私は残されておると思うのでございます。もちろん今日の形態における小売商業がそのままの形において存在が許されるかどうかということとは別な問題であります。私は今後の小売商業というものは、これらの新しい社会情勢に合った方向に発展をして、企業の合理化をはかり、そうしてその小売商業が生きる道をみずから開拓されていかれることが適当であろうと思うのでございます。もちろんこれに対する立法措置として、適当な立法措置を講じなければならぬことは当然でございますけれども、先ほど言いましたように、その措置が他の百貨店、生協あるいは購買会を押えることによって、これができるということではないと私は考えでおるのでございます。  なお労働組合等が行う購買会、あるいは会社、事業場がみずから行われる購買会、あるいは消費生活協同組合法によって結成されたところの協同組合、これらの商業団体または商業行為を、ことさらにこれを立法措置によって規制する必要はないと思うのであります。ましてこの政府の法案に出ておりますように、これをこのような形において規制しなければ無制限に小売商を侵害するということは、杞憂にすぎないと思うのであります。いかに会社が事業によって利益を上げておりましても、購買会の利用を第三者に無制限に開放することはとうてい考えられないのでございます。慈善団体で、どこからか余分のお金でもあればともかくといたしまして、事業団体が無制限に第三者に商品を廉価で販売するはずはないのでございます。また協同組合においてもしかりでございまして、協同組合はその組合員の利益を増進すること、これに利用させることが目的でありますので、これまた無制限にこれをやらせる道理はないのでございます。あえてこれを法律でもって規制をするということは、私は当を得ていないことではなかろうかと思うのでございます。  かような点から申し上げましたならば、私は政府より出されました小売商業特別措置法案、それと社会党から提出されました商業調整法案とを比較いたしますならば、社会党の調整法案の方が、私がただいま申し上げましたような条件におおむね合致しているやにその内容を拝見しているのでございます。ただしこの場合におきましても、勧告等について民主的な方法審議会を持つ法制になっております。また細部については政令等に委任されるようなことになっておりますが、この調整法が国会を通ったあかつきにおきましても、どうか私がただいま申し上げましたような考え方によって政令を制定され、そしてこの法律運用を行われたいと思うのでございます。  私はさような意味合いからいたしまして、このたびの中小企業振興対策につきましては、まず小売商業がみずからの力で新しい分野を開拓する方向に指導する、そういう方向に立法措置を講ずるということを中心として、せっかく審議、御検討されることを私は心からお願いいたしまして、簡単ではございますが私の意見にかえさしていただく次第でございます。
  16. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終りました。委員から質疑の要望がありますのでこれを許します。
  17. 笹本小委員(笹本一雄)

    笹本委員 質問じゃございませんが、委員長に要望しておきます。  きょうせっかく中小企業委員会を開会しまして、団体法案の問題について伺いましたが、この問題は前国会においても、御承知通り参議院で継続審議になっておりますが、あの審議においてもいろいろ意見があったので、この小委員会を開いて、なおかつ皆さんの御意見を聞くということは、非常に当を得たことであると思います。参考人方々は、忙しいときに一時になるまでおいでになられ、中小企業の問題に対していろいろ意見を聞かせてもらい、また傍聴の人もたくさん見えておりますが、どうも委員出席が少く、参考人の人たちもあるいは傍聴の人たちも、国会の商工委員はこの中小企業問題に対して勲章がないじゃないかというような感を持たれたと私は思うのであります。しかし役所の関係は、中小企業庁もあるいは関係企業局も、また委員会の専門員も調査員もみな出席していろいろ意見を聞いたので、役所関係においても専門員の方においても非常に参考になったと思うのでありますが、委員の方は、長い国会が終って今国会の報告等で帰郷している人が非常に多く、海外に行っている人も多い。それで出席が少いのでありますけれども、初めから全部速記をとっております。その速記は各議員に全部配付になると同時に、この中小企業の問題は、商工委員はみな非常に重大に思っておりますので、委員全部は、この速記を通して皆さんの御意見参考にし、なおまたそれによっていろいろ質疑の点がありましたならば、時期を見てまたそれに対する質疑もあることと思うのであります。きょうのこの委員会現状を見て、委員出席が非常に少いので、参考人及び傍聴の人たちが、その点誤解されるといけませんから、委員長からその意味を徹底してお話をしてよく了解していただくように、その点要望する次第であります。
  18. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 笹本君の御意見は、まことに当を得た御意見でございますので、御意見通り取り計らいたいと存じます。  他に御質疑もないようでございますから、本日はこの程度に……。
  19. 五藤参考人(五藤齊三)

    ○五藤参考人 はなはだ恐縮でございますが、今御発言のように、委員さんが大へん御出席が少いのであります。私は委員さんから御質疑もおありになるかと存じて、あまりにも簡単に済ませましたが、御質疑もございませんようでございますから、ちょっと補足して述べさせていただきたいと存じますが、いかがでございますか。
  20. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 どうぞ……。
  21. 五藤参考人(五藤齊三)

    ○五藤参考人 おくれました時間に、はなはだ申しわけがございませんが、ちょっと補足して申し述べさせていただきたいと存じます。  下請の問題に対しましては、先ほど私が申し上げました支払い状況のほかに、実は単価の切り下げの問題が大きく出て参っております。と申しますことは、ここで一つ実例を申し上げたいと存じますが、Hディーゼル工業会社あるいはF通信機工業会社、これなどの下請実情調査いたしますと、もう支払いの問題はほとんど問題がなくなった。ただ単価の底なしの切り下げを要求せられるのに、ほとほと困っているというようなことなんでございます。と申しますことは、御承知のように大企業分野におきましては、数年来租税特別措置法等の庇護のもとに、高性能の機械が国外からどんどん輸入せられまして、これによって設備合理化が非常に進んで参りましたその結果、この高性能の機械を使う前提といたしまして、これの試運転によって。パーツの製造の単位時間をいろいろと調査いたしました。この高性能の新しい設備による単位生産時間を基礎にとりまして、非常に設備のおくれておる下請企業の単価をこれによってほとんど強要をしておられる。こういうことで金はもらえるようになったが一向黒字が出ない。やればやるほど欠損が重なるというような状況すらも出て参っておるようであります。この点が中小企業下請問題としては大きな問題の一つだと存じます。そういうことの結果から経営の方にもいろいろ苦心をいたしまして、技術者を迎え入れるということを中止したり、従来いた技術者がたまたま辞職をいたしますと、その補充をせずに、そのかわりに中学卒業生あるいは高校卒業生というような低賃金のしろうと工を入れてなるべく賃金単価を切り下げて、それによって、一面労働強化によってこの経営難を切り抜けていこうといったような状況が非常に強く見えかけてきておるようでございます。  なお本年におきましては、中学卒業生等を入れまして短期養成によってなるべく人件費を合理的に削減して能率を上げたいという希望がありましたけれども、職安の方の紹介方針が、ほとんど大企業経営上有利な中学生を大量的に紹介をせられまして、中小企業にはほとんどこれが回ってこなかった。中学卒業生を雇いたいけれども人がないから高校卒業生をやや高い初任給で雇わざるを得ないといったようなことも多々起っておるように聞き及ぶのでございます。これらの点をあわせまして、下請企業の中の設備の近代化につきましてもいろいろと従来御配慮を願っておるのでございまするけれども、なお一段の施策上あるいは法律上御配慮を願いまして、中小企業等との行政指導等と相待ちまして、下請企業の健全な発達を庶幾いたします。日本の産業構造の中におきましては、大企業が石垣の大きな石といたしますと、下請企業はその中にはさまれておる小石の役割を持っておりまして、この小石を抜いてしまいますと石垣がくずれますように、日本の産業構造の上にどうしてもなければならない関連でありますので、下請企業が完全な発展を遂げられますように賃金支払いの問題とともに御考慮を願っておきたいと存じます。  その他支払いが依然として順調にいきません実例といたしましては、写真工業の下請等におきましては毎月の回収率が五〇%しかない。半分は翌月に繰り越されて翌月々々といく。しかも支払額の三割が百日から百四十日の手形であるというような現状も見られます。また、Kディーゼル工業のごときは回収率が毎月三三%、三分の一しかない。三分の二は翌月々々に越される。その三分の一のものが現金支払いが全然なくて、百二十日以上の手形によって支払われておる。こういったような企業もいまだに残っております。大体以上を申し上げて今後の御審議の御参考に供したいと思います。
  22. 加藤小委員長(加藤清二)

    加藤委員長 ほかに御意見ありませんか。——意見もないようでございますから、本日はこの程度にとどめます。  この際参考人に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には御多用中のところ種々有益な御意見を賜わり、本問題の調査に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。    午後一時六分散会