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1957-08-26 第26回国会 衆議院 商工委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年八月二十六日(月曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 島村 一郎君 理事 西村 直己君    理事 長谷川四郎君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    青木  正君       内田 常雄君    大島 秀一君       川野 芳滿君    神田  博君       佐々木秀世君    椎名悦三郎君       堀川 恭平君    南  好雄君       伊藤卯四郎君    佐竹 新市君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  委員外出席者         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         通商産業政務次         官       白浜 仁吉君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局次長) 中山 賀博君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         参  考  人         (日本綿糸布輸         出組合専務理         事)      小杉  眞君         参  考  人         (株式会社岩倉         組取締役)   大友 養七君         参  考  人         (株式会社野沢         組代表取締役) 大柴龜太郎君         参  考  人         (燕洋食器工業         協同組合理事         長)      中野壽一郎君         参  考  人         (東部製線鋲螺         工業協同組合理         事長)     根岸 和一君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月十日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  山崎始男君が議長指名委員選任された。 同月二十二日  委員村上勇辞任につき、その補欠として渡海  元三郎君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員鹿野彦吉君渡海元三郎君及び福井順一君  辞任につき、その補欠として宇田耕一君、神田  博君及び内田常雄君が議長指名委員選任  された。 同月二十五日  委員鈴木周次郎辞任につき、その補欠として  村上勇君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員村上勇辞任につき、その補欠として簡牛  凡夫君が議長指名委員選任された。 同日  委員簡牛凡夫君辞任につき、その補欠として村  上勇君が議長指名委員選任された。 八月一日  委員小笠公韶君辞任につき、その補欠として長  谷川四郎君が議長指名委員選任された。 同月八日  委員田中利勝辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長指名委員選任された。 同月九日  委員村上勇辞任につき、その補欠として有馬  英治君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員有馬英治君、田中彰治君及び中垣國男君辞  任につき、その補欠として堀川恭平君、大島秀  一君及び青木正君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員青木正君、大島秀一君及び堀川恭平辞任  につき、その補欠として中垣國男君、田中彰治  君及び有馬英治君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  理事小笠公韶君及び鹿野彦吉君委員辞任につき、  その補欠として長谷川四郎君及び島村一郎君が  理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事互選  対米輸出に関する件     —————————————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮りいたします。去る七月二十三日理事鹿野彦吉君が、去る一日理事小笠公韶君が、それぞれ委員辞任せられましたため、現在理事が欠員となっております。その補欠選任は、先例により委員長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、それでは島村一郎君及び長谷川四郎君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 福田篤泰

    福田委員長 この際お諮りいたします。本日、対米輸出に関する問題について、参考人として、日本綿糸布輸出組合専務理事小杉眞君、株式会社岩倉組取締役大友養七君、株式会社野沢組代表取締役大柴亀太郎君、燕洋食器工業協同組合理事長中野壽一郎君、東部製線鋲螺工業協同組合理事長根岸和一君、以上五君の出頭を求め意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  この際通商産業大臣並びに通商産業政務次官より、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。通商産業大臣前尾繁三郎君。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先般の内閣改造におきまして、文字通り、はからずも私が通商産業行政を担当いたすことになりました。  皆さん御存じ通り、はなはだ微力のものであります上に、従来は大蔵省に勤めておりましたり、また国会に出ましてからも、ほとんど大蔵省関係行政につきましては、全くのしろうとございます。  御承知のように、大蔵省は金の面の行政をやっておるのでありますが、通産行政は、物の面なり、事業の面から、実情に即して積み上げていって、金の面との均衡をとっていくということが一番肝心であり、それが職務であると考えておるのでありますが、それにつきましては、いろいろ具体的な事情に通じていなければなりませんにもかかわらず、私はそういう知識を持ち合せません。今後いろいろ皆さんの御指導によりまして、大過のない行政をやって参りたい、かように考えておる次第であります。  しかも、時あたかも非常にむずかしい事態にさしかかっております。御承知のような国際収支の悪化に伴いましし、いわゆる総合緊急対策というようは、かなりきつい政策をとらざるを得ない実情になっております。この際といたしましては、何と申しましても、国際収支の改善ということが、われわれに課せられた課題でありますので、通産行政も、あくまでそれに即応していかなければならぬと思っておるのであります。  ただ、今後の日本の将来を考えます場合には、輸出の振興ということは、当然わが国地理的運命からして、うまずたゆまず努めていかなければならぬ事柄でありまして、またこの際は、国際収支のために、いわゆる設備投資の問題につきましても、一応繰り延べるということでいかなければなりませんが、これが二年、三年後の貿易競争に禍根を残すというようなことがあってはなりません。それらの問題もうまく調和させながら、将来の輸出の拡大ができるように持っていきますことは、非常にむずかしい問題でありまして、私の微力でなし得ないところでありますが、ぜひともいろいろ皆さんのお教えに従って、この問題の解決に最善の努力をいたしたいと考えておる次第であります。  一々ごあいさつ申し上げなければなりませんのでありましたが、はなはだおくれまして、この機会皆さんの今後の御支援と御鞭撻をお願い申し上げまして、ごあいさつにかえる次第であります。
  7. 福田篤泰

  8. 白浜仁吉

    白浜説明員 私は白浜であります。  ただいま大臣からお話がありましたが、私こそ全くのしろうとであります。今後皆様方の御支援と御鞭撻によりまして、私の職を果していきたいと考えておるのであります。  今後は、大臣の命を奉じ、また幸いに同僚の小笠君が、御承知通り非常に練達な方でありますので、こうした皆様方の総合したお力添えによりまして、私も一生懸命勉強したいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
  9. 福田篤泰

  10. 小笠公韶

    小笠説明員 今度通商産業省に御厄介になることになりました。これまで当委員会理事として、皆様方から格別の御指導と御誘掖を賜わっておったのでありますが、今度は場所を変えまして、攻められる方の立場に立ったようでございますが、すでに長らくの間のおつき合いによってわかっております通り浅学非才でございます。守備もあまり上手でないかと思うのでありますが、皆様方格別の御友情を一つのたよりとして、努力を続けて参りたいと考えております。何分よろしく御指導、お引き回しをお願い申し上げまして、ごあいさつにかえます。     —————————————
  11. 福田篤泰

    福田委員長 それでは対米貿易に関し調査を進めます。  まず政府当局より最近の対米貿易現状並びにその見通しについて説明を求めます。前尾通商産業大臣
  12. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 委員長からの御指名でありますので、それでは私から最近の米国における対日輸入制限の問題につきまして、概略を御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、わが国の対米輸出は、昭和三十年以来非常に増大をして参りました。昨年は五億四千三百万ドルであったと思いますが、いずれにいたしましても、アメリカとの貿易関係輸出の約二割一分を占めております。また輸入の三割三分を占めているというような関係でありまして、実に貿易におきましては、アメリカが一番重要な地位を占めているわけであります。  ところが、そのアメリカにおきまして、最近輸入制限運動日本品制限運動というのが漸次強まって参りまして、連邦議会におきまして、各種輸入制限法案が提出されるような状況であります。詳しく申し上げますと、一つは、一般的な輸入制限法案というようなものが提出され、また輸出入統制法案というようなもの——これはもちろん日本だけを対象といたしたものではありませんが、そういうような法案が出されているばかりでなしに、個別的な合板輸入制限法案木ネジ輸入制限法案紙製帽子関税項目変更法案、さらにまたダンピング防止法改正法案というようなものも出ているのであります。さらに最近におきましては、互恵通商協定によるエスケープクローズ援用というのが、洋食器だとか洋傘骨あるいは体温計などに、またそれ以前にもいろいろなものが拠出されておるというような状況でありますし、まだほかにも、国防の事由による輸入制限だとか、あるいは州議会日本繊維販売表示法というものが出されたり何かいたしておるのであります。  こういうような日本品輸入制限運動が盛んになりました原因は、わが国から最近輸出されます繊維品雑貨食品木材製品など、いろいろ米国内の関係生産業者と競合いたしております。その業者中小企業者でありまして、また米国内の好況にもかかわりませず、取り残されておる産業部門であるというような関係が、日本品の最近の輸入がふえて参りますのと相まちまして、しかも、御承知のように来年の選挙、さらにまた互恵通商協定法の延長をめぐりまして、いわゆる保護貿易主義者の活発な活動となってきておるのであります。これらが原因でありますので、今後さらに激化するおそれがあるのではないか、こういうので憂慮いたしておるのであります。  政府といたしましては、従来からいろいろ米国内の動向につきまして、できるだけ実情を把握いたしまして、またアメリカの国民の啓蒙ということに努めて参っておるのであります。御承知のように、また先ほども申し上げましたように、アメリカとの日本貿易というものは、実に日本におきましては重大な比率を占めておりますばかりではなしに、現在におきましては、日本輸入がはるかにこえておるのであります。また世界的に申しましても、いわゆるドル不足に、アメリカ以外の国が悩んでおります状況であります。また自由主義貿易をとっておるアメリカとして、こういう事態は決して感心したことではありません。その点は、わが国といたしましても、今後の両国の友好関係を考えましても、ぜひとも打開して、ほんとうの日本に対する認識を深めていく必要がありますので、政府といたしましても、いろいろ努力をいたしておるのであります。また啓蒙宣伝につきましても、ニューヨークサンフランシスコにおきます米国専門PRエージェントを使いまして、日本商品日本産業についてのパンフレットを配布したり、新聞や雑誌に広告したり、定例の新聞記者会見の報道、ラジオ、テレビの放送などを行いまして、極力日本立場を知らしめるというような方法をとっておるのであります。また将来におきましては、日本商品輸出が、米国産業にどういうふうに影響を与えておるかというようなことを、専門調査機関調査をさせて、今後の輸入制限運動の事前の予防的措置をとりたい、かように考えておるのであります。またいろいろニューヨークサンフランシスコ貿易あっせん事業をやっておりますが、そういうような機会もとらえまして、またニューヨーク国際見本市の参加の際にも、こういうような点について啓蒙運動をやっていきたい、かように考えておるのであります。  しかし、その反面におきまして、わが国輸出につきましても、いろいろ考えて、アメリカ業者をあまり刺激するということは考えものであります。それに対する輸出品目につきまして、できるだけ自主的規制指導いたしていきまして、必要があります場合には、輸出入取引法輸出貿易管理令あるいは中小企業安定法などの運用をいたしまして、アウトサイダーにも同様な規制を及ぼすというようなことも考えております。また事実やっておるのであります。もちろん、その際に考えなければなりませんことは、あまり必要以上の規制をやるということにつきましては、十分注意することが必要だと思っております。  さらに、今後につきましても、十分日本業者に、アメリカのいろいろな事情についての啓蒙をし、そうして秩序のある取引をやっていくということについて、万全の措置をとりたいと思っております。最近業者の方々におきましても、その対策について、いろいろ研究されておるようであります。日米合同委員会というようなことも提唱されております。ただ、この問題につきましては、よほど上手にやりませんと、アメリカ独占禁止法との関係もありますので、その点も十分考慮して、業者同士ということにつきましては、いろいろ事情を知ったり、あるいはできるだけ有効に話し合うということはいいといたしましても、自主的な規制をやるというようなことにつきましては、注意をいたしませんと、先ほど申しましたように、独占禁止法にひっかかるというようなことがありますので、その施行につきましては、慎重に検討しながら、有効にそういうものを利用していくということを指導いたして参りたいと考えております。  いろいろ、申し上げることはあるかもわかりませんが、一応最近の事情なり、私の考えだけを申し上げまして、御参考に供した次第であります。
  13. 福田篤泰

  14. 中山賀博

    中山説明員 日米貿易現状並びに日本商品に対するアメリカ輸入制限問題の現状につきまして、事務的に御報告いたします。  日本アメリカ貿易に関しまして、輸出面におきましては、米国は一九四八年以来、常に仕向地国中第一位を占めておりまして、最近ではわが国輸出総額の二〇%以上になっております。特に一九五五年以降の増加は急激でございまして、一九五六年には五億四千三百万ドルで、実に一九五四年実績の二倍に達しておりますし、本年一月−六月の計算では二億五千九百万ドルとなっております。  品目別に見ますと、わが国輸出のおもなるものは、繊維雑貨食品等消費財大半を占めております。これら商品は、主として中小企業で生産され、かつ対米依存度のきわめて大きいものでございますが、米国競合産業も、ほとんど弱小な中小企業であるため、日本品の進出の与える影響は少くないものと思われます。  一方米国からの輸入につきましては、戦前戦後を通じて、輸入国中第一位でありまして、特に戦後におきましては、各種の借款が多いことでもあり、また中国初め東ア市場の喪失と相待ちまして、全輸入の九〇%以上を占めた時期もございましたが、最近では、その全輸入量に占める比率は約三〇%となっております。輸入品目といたしましては、石油、くず鉄、鉄鉱石、機械、綿花、羊毛、小麦、大麦と、わが国経済に不可欠なものが大半を占めている現状であります。  日米輸出入バランスは、絶えずわが方の大幅な入超でございまして、最近はやや改善されましたけれども、輸出輸入比率は、大体彼我の間は一対二の関係になっております。他方米国対外貿易に占める日本貿易地位は、著しく低いものがございます。一九五六年の統計によりますと、対日輸出は、全体の輸出量の四・七%、対日輸入は全体の四・四%を占めております。  かようにいたしまして、わが国の対米輸出は、近年飛躍的に増加して参りましたが、これにつれまして、今、大臣から御説明がありましたように、米国内の競合する産業を中心に、対日輸入制限運動が、漸次激しくなっている実情でございます。  この対日輸入制限運動のやり方といたしましては、いろいろなカテゴリーに分れるものということができます。第一は、連邦議会におきまして、何らかの制限立法をしようとするものでございまして、たとえば、去る一月十四日に提出されましたH・ランハム以下十六議員の提案にかかる一般的輸入制限法案のごときはこれでございます。これは対象特別品目に限定しませんで、国内商品に占める輸入品の割合の変動によって輸入価格を測定し、数量的割当または関税割当を設定しようとするものでございます。  そのほかに、一月三日に提出されました輸出入統制法案、これは現行輸出統制法を改正しまして、輸入品目にも及ぼし、商務長官が必要と認めた場合には輸入統制も行い得る権限を与えようとするものでございます。  その一般的な統制法案のほかに、個別的な商品輸入制限法案がございます。合板輸入制限法案は、すでに去る三月十三日、三月十四日、米国上下両院に提出されましたもので、同じ趣旨のものが、すでに十数件提出されております。輸入量を前年の米国消費の一五%に制限し、うち九五%を一九五二年、五三年、五四年の実績により各国に割り当てようとするもので、これが成立いたしますれば、わが合板輸出量は、昭和三十一年実績の約五分の一となるおそれがございます。そのほかに、木ネジ輸入制限法案紙帽子関税項目変更法案等が、個別的な商品輸入制限法案としてあげられております。  さらに、現行ダンピング防止法を改正いたしまして、ダンピング調査の開始、公聴会開催等を義務づけるとともに、国内産業損害を与えなくても、公正価格を下回っておればダンピングと決定し得るという、ダンピング判定を容易ならしめんとする改正法案が考慮され、去る二月二十日に提出されております。現行ダンピング法では、米国の財務省による調査が行われますれば、税関の関税評価の差しとめとなり、調査の結果、ダンピングであり、かつ国内産業損害を与えるときに、ダンピング課税を行い得ることになっておりますが、この点につきまして、ダンピング判定を容易ならしめんとするものでございます。わが国商品といたしましては、今日までにミシン、合板冷凍マグロマグロカン諸等調査を受けましたが、いずれもダンピングの事実なしとの判定がございました。  次に、互恵通商法によるエスケープクローズ援用の問題がございます。輸入により損害をこうむり、またはこうむるおそれあるときは、関税委員会調査を請求し、調査の結果必要があると認めるときは、関税引き上げないし輸入割当大統領勧告できる趣旨でございます。そして大統領は、勧告がありましてから六十日以内に、これを受理するかあるいは否決するか、自己の判断を決定し、決定を下す建前になっております。現在関税委員会に提訴されておりますものは、第一番としまして洋食器でございまして、これは四月十八日関税委員会調査を開始いたしまして、公聴会は七月十六日に開きました。申請内容関税譲許を撤回することと数量制限をすることでございます。現在洋食器関税率は一律には申せませんが、大体一七%から一九%で、これは一九四八年ガット交渉で、アメリカ側は引き下げることを同意したものでございますが、これを引き下げ以前の二五ないし四〇%に戻し、かつ数量制限をしようとするものでございます。  それから、同じくエスケープクローズ援用いたしまして問題になっておりますものに洋傘骨がございます。これは四月二十五日に関税委員会調査を開始いたしまして、公聴会は七月三十日に開かれました。申請内容は、関税譲許の撤回及び数量制限でございます。関税率は、ガット関税交渉によって六〇%から三〇%に引き下げられましたが、これを元に戻し、さらに数量制限をしようとするものでございます。  それから、同じくエスケープクローズ援用して問題になっておりますのは体温計でございまして、これは五月二十九日に調査を開始いたしまして、七月四日の公聴会で問題が取り上げられることになっております。申請内容関税引き上げでございまして、関税率は、ガット関税交渉により、五〇%から二五%に引き下げられましたが、これを元に戻そうとするものであります。  今日までにこのエスケープクローズ関係で、絹スカーフ毛織手袋合板木ネジ麻ダオル地別珍綿ブラウスまくらカバー、ギンガム、それから紙製帽子についても、この調査が行われまして、このうち絹スカーフ木ネジ麻タオル地別珍の四つにつきましては、関税引き上げ勧告関税委員会から行われましたが、しかし麻タオル地を除きましては、大統領は拒否いたした経緯がございます。  以上が、大体エスケープクローズに基く輸入制限運動の大要でございますが、このほかにも、国防上の理由こよる輸入制限の動きがございます。つまり互恵通商法の第七条により、国防長官は過度の輸入国防上の安全を脅かすと認められる場合は、調査を行い、理由ありと認めたときは、大統領勧告を行う建前になっております。現在、毛織物につきましては、昨年の十月以降関税割当が行われておりますが、米国業界では、これに対しまして、これを手ぬるしとして、絶対的な数量制限を要望する声が強く、この国防上の理由ということで輸入制限をはかろうとし、米国国防動員局はこれを取り上げて、本年の六月三日に公聴会を行いました。しかしわが国からの毛織物輸出は、他の諸国、たとえば英国に比して比較的少く、全体の四・九%にとどまっております。  そのほか、最後に州議会における差別的立法の問題であります。これは昨年の三月にサウス・カロライナ、四月にアラバマ州で、日本製品販売表示法が成立しまして、これがその他の各州——ミシシッピーとか、ルイジアナとか、ジョージア、コネチカット州で、これを模倣する空気がありましたが、これらの各州では、今日までのところ、不成立となっております。これに関しまして、わが方は、日米通商航海条約の違反として抗議を出しておりまして、米国政府の善処を希望いたしておる次第でございます。  以上、対米貿易現状日本品に対する輸入制限現状につきまして御説明申し上げました。
  15. 福田篤泰

    福田委員長 次に、先ほど決定いたしました参考人各位より、それぞれ各業界における最近の対米輸出実情と、これに対する御意見を聴取することにいたします。  それでは参考人各位より順次御発言を願うことにいたしますが、御発言の時間は、一人おおむね十五分以内にお願いすることとし、その順序は、勝手ながら委員長におまかせ願いたいと存じます。なお御意見御開陳の後、委員の側から質疑があろうと存じますが、お含みの上お願い申し上げます。  それでは最初に小杉参考人にお願いいたします。
  16. 小杉眞

    小杉参考人 日本綿糸布輸組合専務理事の小杉でございます。ただいま委員長からの御指名によりまして、日本の綿製品のアメリカ向けの輸出について、アメリカ側輸入制限を行おうとするいろいろの動きがございますので、それの推移について、あらまし申し上げます。  まず第一に、一九五四年十二月、昭和二十九年の十二月に、アメリカ政府は、日本に対して、いわゆるガットの加入に関連して、綿製品の輸入税率を引き下げるということについての各種業界関係者の意見を聴取するために公聴会を開催いたしまして、その席上、アメリカの紡績協会を代表する人々が、初めて、アメリカへの日本の綿製品の輸入について、輸入税率を引き下げることは、産業界に打撃を与えるという趣旨で、反対の意見が述べられました。これがアメリカの紡績業界ないし綿製品の業界が、日本からの綿製品の輸入に対して否定的な態度を公式に表明した第一であります。  そういたしまして、一九五五年、昭和三十年の七月にアメリカの議会では、アメリカ輸入する綿製品がアメリカの綿製品業界にいかなる影響を与えるかという実情調査を行うべしという、調査を実施するための決議を行いました。これが綿製品に関する限り、最近におけるアメリカの議会において制限的な動きを示しました第一着手でございます。  その次に、同年の十二月すなわち昭和三十年十二月に、先ほど申し上げましたアメリカの紡績業界は、アメリカの農事調整法の第二十二条を発動いたしまして、外国からの綿製品の輸入数量を制限すべしという要請をいたしました。これはアメリカ国内の農業関係産業を保護するために、アメリカ政府は必要に応じて外国からの農産物あるいはそれの製品の輸入を制限することができるという権限を大統領に与えておりますので、それに基く行政権の発動を申請したわけであります。すでにアメリカ政府は、エジプト綿の輸入について 一年に八万俵に制限するということをこの二十二条に基いて行なっているわけであります。それと同様趣旨において、アメリカの農産物の価格維持政策を維持し保護するためには、外国の綿製品の輸入も制限する必要があるという趣旨申請を行なったわけであります。それに続きまして一九五六年、すなわち三十一年の一月から三月にかけまして、アメリカの議会においてま、日本からの綿製品輸入を制限するということを趣旨にした各種法案が提出されました。大体三月ぐらいまでに法案の提出が出そろったわけであります。それに並行いたしまして、ただいま中山次長からもいろいろ御説明がありましたように、日本に対して関税率の引下げ、ガット関係関税譲許を行なった結果、日本の綿製品の輸入がふえて、その結果またアメリカ業界に打撃を与えると認める場合には、大統領関税委員会に提訴をいたしまして、税率の引上げあるいは数量の制限ができるという、いわゆるエスケープクローズというものがありますが、そのエスケープクローズを発動して数量制限あるいは税率の引上げを要請したいという提訴が、まず第一に別珍、それからブラウス、それからピロー・ケース——まくらおおいです。それから最後にギンガムというようなものがそれぞれの業界から申請がございました。  大体、そこまでのところで、それに対する日本側の対策の概要を申し上げますと、すでに一九五四年の秋ぐらいから、日本の綿製品のアメリカ向けの輸出がややふえるという傾向にありました。特にいわゆる金巾の一種、それからブラウスなどについては、割合数量のふえ方が多いというので、一九五五年、つまり昭和三十年には綿布の業界といたしましては、別珍とギンガムについて一定の品質上の規格を設けまして、その規格以下のものはアメリカ向けに輸出することができないという、数量あるいは組織——組織というのはコンストラクション、織物の組織についてある一定の制限をすることによって、間接的に輸出数量の総体的な制限をしようということを行なったわけであります。  続きまして、同じく昭和三十年の秋に、業界から四人の者がアメリカに参りまして、アメリカ業界あるいは国務省その他の人たちと会いまして、アメリカ業界が、日本の綿製品の輸入について制限的な態度に出る真意は、一体どこにあるかという実情調査いたしまして、帰国後、その報告に基きまして、一九五六年すなわち昭和三十一年の一月から総体的に一定の数量に制限ずる、アメリカ向けの綿布の輸出については、一億五千万ヤードに制限するという自主的な数量調整をやる必要があるということになりまして、一月からそういう数量調整を実施したわけであります。  すでに日本側は自主的な数量調整を行なっていたのではありますけれども、アメリカの議会あるいは業界における制限的な動きというものが非常に強いので、日本輸出制限が昭和三十二年、本年も続いて行われるということについて、その方針はどうであるかという照会がありました。それに対して、日本側の業界としては、翌年、すなわち今日になりますと今年でありますが、今年も引き続き三十一年と同様の数量調整を自主的に行うということを明らかにしたわけであります。  しかし、そういうことによっても、なお業界の動きあるいは議会の制限的な動きというものは緩和するに至りませんで、三十一年、すなわち昨年の七、八月のころには、単独の繊維品輸入を制限するという形で新しい法律を作るのは、なかなかむずかしいということを見通しまして、いわゆる国家安全保障法の修正案、そういうようなもののライダーとして、日本の綿製品を制限しようという動きになったわけであります。それは幸いにして僅少な差をもって否決いたされまして、すなわち新しい立法措置によって日本の綿製品の輸入が制限せられるということは、危うく免れたわけでありますけれども、その年の八月、大統領の選挙に当りまして、共和党、民主党がそれぞれ党大会を開いて、その際に、党の綱領に、繊維品輸入について、それぞれ両党は保護貿易主義の観点から適当な措置をとるという項目を入れようとする動きが非常に盛んになったわけであります。その関係で、日本業界といたしましては、昨年の九月、関係の人たちで輸出会議を開いて、今後の方針をいろいろ研究した結果、今日行なっている輸出数量調整措置を今後五カ年間継続して行う、そういう方針をきめてアメリカ側に通告すると同時に、自主的な数量調整をするに当っては、日本側としてはでき得る限りアメリカ業界の意向をしんしゃくしながらやるということをも明らかにしたわけであります。  先ほども申し上げましたように、エスケープクローズを発動いたしまして、関税率の引き上げあるいは輸入数量の制限を、関税委員会申請していたその申請に対しましては、それぞれ秋にいよいよ委員会としての結論が出る時期になったのでありますけれども、幸いにして日本側としては五カ年間継続して自主調整を行うということが明らかにされたために、ギンガムについては提訴が取り下げられまして、またまくらカバーについては、関税委員会自体が、日本からのまくらカバー輸入によって、アメリカまくらカバーの製造業界は打撃を受けていることはないという結論を出すことによってこれも制限的な結論が出ることは免れたわけであります。  しかるところ、別珍につきましては、関税委員会自体が、日本側の別珍輸入アメリカ別珍産業に多太な打撃を与えるものという認定をいたしまして、大統領に対して現行輸入税率の改正案を提示いたしました。当時、五カ年継続する日本の自主的な調整の具体約なこまかい内容について、いろいろな説明を求められ、日本側として、これに対して説明をするということが行われていた最中でございますので、大統領は、その関税委員会勧告を留保いたしまして、本年の初めに至って、アメリカ業界もようやく日本側が本年以降五カ年間継続して行おうとする数量調整の自主的な調整の内容について、ほぼ真意がわかったというか、真意を了解したという事実がありましたので、大統領としては、関税委員会勧告を拒否いたしまして、結局今日までのところは、アメリカ業界の動きは非常に活発ではありましたけれども、幸いにして新しい法律を作るあるいは既存の法律を修正して、法律の力によって日本の綿製品の輸入を制限しようとすることは、一応免れたのであります。  それから、先ほど申し上げましたエスケープクローズを発動して税率を上げるということについても、綿製品に関しては一応は免れております。これは日本側が昭和三十一年から数量的に自主的の調整をするということを明らかにし、かつその際に当っては、アメリカ業界の要望を、日本側としてでき得る限り取り入れるという態度に出ている結果、一応そういう緩和した状態になっているものと考えられるわけでございます。しかし本年に入りましては、先ほど中山次長からお話がありましたように、アメリカの議会では、綿製品あるいは何々という単独の商品輸入についてでなく、輸入一般について、たとえば賃金の水準の安い属からの輸入に対しては特別の法律をもって数量を制限しようという、一般的な数量の制限の動きが非常に強いのであります。  それから目下品質表示法という繊維品の品質を表示する、たとえば綿製品であれば綿、羊毛製品であればウールということを商品に表示するという法律が今通りかかっておりますが、それに際して原産地を併記させる、そういうことによって、消費者は商品を買う場合に、どこの国の製品であるかということを明らかにすることによって、間接的に輸入を制限するといいますか、そういう考え方もあるようであります。  特に来年は互恵通商協定法という自由貿易主義の原則に立ってできている通商貿易についての法律、これはいわゆるガットを成立させております根本的な法律になっておるわけでありますが、これの期限が来年に切れますので、それの再延長を認めるかいなかということに関連して、アメリカの議会では再び自由貿易主義による委員の方々と、国内産業を保護しようとする立場の方々との間に、非常に激しい論争が行われてくるものと思われるわけであります。従ってわれわれといたしましては、すでに申し上げましたエスケープクローズを発動することについての公聴会に際しましては、日本側の業界の真意といいますか、すなわち日本アメリカへの輸出ということは、アメリカ産業に打撃を与えるものでない、少くとも最近のアメリカ繊維業界の苦境の原因は、日本の綿製品の輸出の結果ではない。日本としてはアメリカから非常にたくさんの綿——年々大体五、六十万俵に上る綿を輸入しておる。それに対して、日本から輸出される綿製品の量は、綿に換算いたしまして、いわゆる反物の一次製品は七万俵、シャツでございますとか、そういう二次製品を入れましても、十五万俵程度であるということを説明して、日本輸出アメリカ業界に打撃を与えておるのではない、アメリカの苦境の原因はほかにあるということを明らかにするように努めておるわけでありますが、本年も引き続いて、アメリカの世論を形成する各種の有力な人、あるいは団体あるいはアメリカの国会議員、さらに一般綿製品消費者に対して、同様の趣旨を、なるべく露骨でなく、間接的に認識してもらうようにいろいろと努力する必要があることを認めて、すでにさようなことを始めております。  大体事柄の推移あるいはそれまでにとりました日本業界対策の大要は、そういうことでございますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、来年は互恵通商協定法の延長をめぐって、いろいろ再び繊維品といわず、日本製品輸入について、制限すべしという議論が強くなるということを予想いたしまして、それに対応して、日本側の立場をそれぞれの人に理解せしめるようにいたしたいと存じます。  まあ大体そんなことでございます。
  17. 福田篤泰

    福田委員長 次に大友参考人にお願いいたします。
  18. 大友養七

    大友参考人 大友でございます。委員長から十五分以内というのでありますが、十五分以内でおさまるかどうか、できるだけ端折りながら申し上げます。  日本合板が生産されましたのは、五十年前でございまして、本年はちょうど五十年祭に当るので、大々的な記念祭を催すことになっております。  そういうことで、相当長いのではございますが、対米輸出の方は比較的近年でございまして、逐年増加の一途をたどってきておるということで、一九五一年すなわち昭和二十六年にはわずか千二百万平方フィートでございますが、それが一九五六年すなわち昭和三十一年では五億五千四百万平方フィートになっております。すなわち一九五一年を一〇〇としますれば四六六八%という躍進ぶりをたどってきたのであります。  それで、アメリカの方から見た合板輸入状態は、一九五二年には、日本が千七百万平方フィートであるのに対し、第一位のカナダは五千七百万平方フィート、それが翌年の一九五三年には、日本が一躍してトップを切り、一億六百万ということになり、カナダは五千万ということでございます。さらに一九五四年には日本が二億八千九百万と躍進したのに対して、二番目に落ちましたカナダは七千一百万、こういうような状態で今日まで輸出の増進を続けてきておるというのが、日本合板状況でございます。それでは、一体どうしてこの日本合板のみが、こういうような躍進を続けてきておるのかといいますと、アメリカにおける合板需要の中心は、何といっても住宅建築であります。日本合板輸出が非常に少かった一九五〇年におきましても、住宅建築は千四百万戸ありました。その後も毎年百万戸を割らないにもかかわらず、日本合板のみが需要増加を見たというのは、つまりドアの構成が違ってきたのであります。皆様ごらんの通り、その辺にあるドアは、大体パネル・ドアというのでございますが、その後の流行というのがフラッシュ・ドア、と申しますのは、薄い合板を二枚で中の桟を包んでいく、障子の上に合板を二枚重ねる、これが非常な流行になってきました。日本人というのは、非常に器用な国民でありますから、薄いものを作ります。これが流行にマッチしたから、日本合板の需要が増加したということで、言いかえれば、これはアメリカにおける新しい需要であります。われわれはアメリカにおける新しい需要を開拓したのであります。従いまして、カナダと日本との位置が逆転したと申しましたが、それはカナダその他の輸出国の犠牲において日本輸出が前進したのではなくて、新しい需要を開拓したために日本輸出が伸びたのだ。従って、アメリカ合板の製造業者としましても、この新しい需要によって何ら損害は受けていないということが実情なのでございます。  そのような状態において、日本合板輸出というものは躍進に躍進を続けてきたのでありまして、本年一月から六月までの米国向けの輸出を見ましても、六カ月で三億三千六百万平方フィートで、依然好調を持続しておるのでありますが、アメリカにおきましても近年金利が高く金融が引き締っており、住宅には金の回りが悪いというようなことで、住宅の建築がスロー・ダウンいたしまして、ただいまのところ、アメリカ向けの市況は若干弱含みという状態になっておるのであります。  かように、日本合板 特にドアに使います合板が急激に伸びましたので、一九五四年九月に、米国硬太合板協会という、これはアメリカの製造業者の団体でございますが、これが関税委員会関税引き上げ申請しました。一九五五年三月に公聴会が開かれたのでございますが、やはり協会としても向うの輸入業者と協力して、全力を傾到して、さらに外務省を中心とします方々並びに政府の方々の非常な御指導によりまして、この公聴会におきましては、日本合板アメリカ産業に打撃を与えてないのだ、こういうことで、私がただいま申し上げましたような理由のもとに、六名の関税委員全員一致でもって申請を却下した、こういう事情になっておるのであります。  次いで、五五年の七月と思いますが、向うの製造業者は財務省に、今度はダンピングの疑いがあるから調査してくれということで要求されて、その間、財務省の役人がこちらに参りまして、三カ月くらい調査したのであります。これもダンピングの事実なしということの言明が一九五五年十二月に下されたということになっております。われわれは一応小康を得たという考えでありましたが、われわれもこの情勢は楽観すべき状態でないということでございまして、その後も引き紳きましていろいろと、エスケープクローズの条項によってもいかぬ、ダンピングはいかぬ、そうしたら一体どうしたらいいのかということで、向う側といたしましては、特に製造家の委員会をワシントンに結成して、そこでいろいろと構想を練っていたのでありますが、本年の二月の十一日でございましたか、いわゆるメンヒスで大会を開きました。その大会で立法による輸入制限ということに決定をしたのであります。その一番着手として現われましたのがトルソン議員の包括法案でございますが、これは包括法案じゃ——ということで、今度は合板単独の制限法案が提出されました。これは上院におきましてはサーモンド外二十一名の賛成議員でございます。マッカーシーが死にましたので二十一名となっておりますが、それが法案について賛成いたしました。同時に下院におきましては、サィクス議員が引き続いて、ほかに二十四名の議員が二十四通の法案、つまり合計で二十五通の法案が出される、こういうことになっておりまして、その法案内容は、中山次長から先ほどお話があったようですから省略いたします。  議員の方には、かようにして働きかけて落々として立法面の方は進行しておりますが、さらに国内の一般に対しましては、特に労働者団体なんかに合板輸入の脅威だとか、あるいは外国輸入合板に関する話とかいうようなポスター、あるいはパンフレットを配布いたしまして、もっともらしい数字には基いておりますが、その結論的なものは非常に違った歪曲したもので、悪質な宣伝をやっているというようなことになっております。  それで、このほかに、先ほども話がありましたが、カルフォルニア州のこれはサンフランシスコの近所でありますが、パロアルトという市におきまして、日本合板を使えないようにするというような目的がありはせぬかと思われる防火建築条例というものが出されまして、これが通過し、さらにそれがカルフォルニア州の議会に防火建築条例法案というものが出されたというようなことかあり さらにまたオレゴン州のポート・ルイスと申しますか、これは陸軍の家族住宅の建築でございましたが、それに関連しまして、日本合板を使うことがバイ・アメリカン・アクトに違反するのだというような運動も起ったりして、それからそれへとわれわれの合板輸出に対していろいろな動きが向うにあったということで、今日まで来ておるのであります。  かような状態にありましたので、われわれとしましては、できるだけ向うの合板の製造業者を刺激しないように、しかしながら、アメリカという市場は非常に大きな市場であり、われわれの考え方としますと、ある意味における新市場みたいみなものだということで、向うの動きを警戒しながらも、われわれは輸出振興の線に沿うて、今日まで輸出の計画を立ててきたということでありますが、さてそれならば向うを刺激しないようにどんな手を打ったかということでありますと、それにつきましては、実は一九五五年の五月に、問題になっておりますドア合板の三、四等の品物を禁止する。それは、向う側に三、四等といったような悪いものがいきますと、自然値段の安いもので向うの製造される合板と競合するといいますか、なんといってもじゃまになるということと、われわれが長くこの市場を維持するには、品質の成果を保たなければいけないというような意味合いから、品質に関しまして、一九五五年の五月に三、四等の合板を禁止した。続いて同年の七月に価格協定をやりまして、いわゆるチェック・プライスを作りまして、値段の維持に努める、それをさらに劾果的にするため、一九五五年十一月以来、米英に対する数量規制をしておるということで、その間、いろいろと変遷はむろんございますが、ただいま申しましたように輸出振興の線とからみ合わせて、われわれは向う側の動きをチェックしたいのだ、一見矛盾したような、しかし実情に即した政策をとって、今日まできたということでございます。  それで、ただいまの数量規制の協定も、合板輸出組合としましては、九月までということになっておりますので、十月以降の数量規制をやっておりまして、実はきょうその総会を開くことになっておるのでございますが、これにつきましてはちょっとあとにしまして、今度の米国輸入制限運動に対して、われわれはどういうふうに対処しているかということをちょっと申し上げたいと思います。  そこで、先ほど中山次長からお話が出ましたように、現在上下両院に提出されております法案が通過すれば、日本合板輸出というものは、日本の生産量の一割にもならぬ、ただの五分に減ってしまうのだということは、申し上げるまでもなく日本合板産業の壊滅ということでございます。従いまして、われわれは最も利害関係のある生産業者、具体的には日本合板調整組合というものと連絡をとりながら、何とかしてこの法案をつぶしていかなければならぬ。さらにまた、一般民衆に対するカウンター・アクションをやらなければならぬということで、役所の方の御援助、御協力を得まして、猛然と立ち上って闘いを展開している、こういう状態であります。日本側としましては、生産業者が非常な重大な利害関係を持ちます。また輸出組合としましても当然でありますので、この合板調整組合と輸出組合と、この両団体をもって日本合板振興会というものを作り、その振興会は両団体から出される委員によって、委員制で仕事をし、その中に対米特別委員会というものを作りまして、向うからの情報に即応して直ちに対策を決定する、機動的な動きもできるような形にやっております。  一方、向う側でやっているのは、これはアメリカの国内問題でありますので、われわれが直接向う側の生産業者あるいは向うの政府と話し合いをするわけにいきませんで、うっかりすると、先ほど通産大臣からのお話もありましたように、アンチ・トラスト法にひっかかるということもございますので、われわれとしては、当面向うでの相手方は、われわれの利益を代表する輸入協会ということにいたしまして、さらにその輸入協会は、以前の、ただいま申し上げましたエスケープクローズに関する関税委員会に対する申請、あるいはダンピング調査、こういう場合に、われわれのロビイスト——われわれといってはいけませんが、向うのインポータンスのアソシエーションのロビイスト、それからパブリシティの代表が頼みましたシャープ・ボーガンという弁護士の事務所でありますが、その弁護士事務所に今回も依頼しているということは、今日までの経過を十分に知っているというようなわけでありますが、あくまでも表面に立つものは、向うのインポータンスのアソシエーションであり、さらにこの問題が起りましてから、向うの使用者の組合が結成された。もう一つニューヨークにありますインポータンスのアソシエーション、この三つが大体一体となってシャープ・ボーガンを委嘱し、それによって一般に対する新聞あるいはラジオ、それから議員さんに対するいろいろなロビイングということをやっておりますが、われわれとしても最も関係の深いだけに、データをこっちから出す、あるいはいろいろな経費で必要なものを出さなければならぬということで、大体三万ドル十二月までかかるということになっているので、われわれはそれに対して、やはり六割ぐらいはコントリビュート、寄与しなければならぬとか、あるいは多少上回ることになるのじゃないか、こういうことでやっている次第でございます。  今日まで向う側のそういう大衆に対する呼びかけあるいは議員に対する呼びかけに対して、同じようにわれわれの利益代表者も向う側でやっておりますが、今日までの経過としましては、だんだんわれわれの方に有利に展開しつつある。もっとも議会の問題につきましては、先ほど来お話があったようでありますが、ことしはどうせ会期も少いことだし問題にならぬ。来年になれば、互恵通商協定法の延長という問題もあり、さらに向うの中間選挙の問題もあり、そういった場合のやはり選挙区に対する公約の意味も持つと考えられますので、来年に問題が持ち越された。来年こそはこれが決戦の年ではあるまいかというふうに考えておりますので、その心がまえを持って、対米の輸入制限に対処していきたいということでございます。  さて、先ほど申し上げました十月から来年三月までの数量の輸出規制でございますが、輸入制限の問題もありますので、やはり日本からはこれだけしか輸出はしないのだということを打ち出す必要がありますので、従来ワク外といいますか、数量規制の外にあったものも全部入れて、そして日本からはこれしか出ないのだという線を打ち出すような形において、十月以降の数量規制の案ができ上り、本日総会でそれをきめたいと思っております。  時間がどうかと思いましたので、だいぶ急ぎまして恐縮でございました。
  19. 福田篤泰

    福田委員長 次に大柴参考人にお願いいたします。
  20. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 対米問題に対するいろいろな問題は、新聞やいろいろなところで聞いておるのです。参考人意見は、一体政府に対して、今日の段階において何をわれわれは求めるのであるかということの、そのポイントだけを具体的に言ってもらったらはっきりわかる。それが聞きたい。自分の貿易上のうんちくは述べなくていいのです。しかしポイントだけを商工委員会ではっきり言ってもらって、そして政府はどう手を打たれるか、国会はどうしなければならないか、こういうことを中心に話してもらいたい。
  21. 福田篤泰

    福田委員長 佐竹委員発言がありましたけれども、ごもっともと思いますので、政府に対する要望その他を簡潔にお願いします。
  22. 大柴龜太郎

    ○大柴参考人 私は、今までの方とはだいぶん立場が違いますから、違ったことで申し上げます。  私は、雑貨輸出組合のお世話をしておりますので、雑貨業界立場から、ざっくばらんに申し上げます。なぜ雑賀をアメリカ輸入の制限をするという問題が起るかといいますと、これは向うの雑貨の業種の人がもうからなくなったから、日本のやつをとめればもっともうかるだろう、少くとも多少は減ったやつがもう少し回復するだろう、ここがほんとうの原因なのです。そこで向うの輸入業者に対しまして、大体皆さん新聞で御承知でしょうが、ことしの二月ごろ大統領が記者会見のときに、日本のものを買わなくなると、日本を共産圏に追いやってしまうから、日本のものは買わなければならぬ、こう言われておる。アメリカ政府は、日本雑貨が入ってきても、大した金額でもないから痛痒を感じないし、またこんな小さな金額で事をかまえることは、決して好んでいないと思っております。しかし、向うの小さな商売をやっている人になりますと、これは死活問題になってくる。そういう一つの背景があるわけです。  しかし、それでは日本雑貨業者はどうかといいますと、私どもの組合に関係あるものが三十幾つ、実際は、こまかに分けると数百種に上る。そして対米問題の経過は、結局、今参考人の方が申し上げましたように、実際の経路は同じことなんです。けれども、雑貨は非常に数が多い。数が多いけれども、一つにまとめると相当の金額になる。昨年度の輸出統計を見ましても、雑貨日本の総輸出の一割をこえているのです。それは造船だとか綿布だとかいう大きなものを含めても、雑貨というものは、まとまれば一割をこえている。けれども、アメリカとのけんかになりますと、一つ一つになると、綿布なんかは三役のけんかですが、われわれは十両だとか、三段目だとか、序の口だとかわからないような小さなけんかになってしまう。それで、雑貨業者というものは金がありませんから、一つにまとまって政府にお願いしたいこともございます。  ところで、雑貨の状態として、こまかいことは申し上げませんけれども、日本雑貨はヨーロッパの雑貨と異なる特殊性というものがある。ヨーロッパの雑貨アメリカへ入ってきますのは、自分のところで売れるものがいくわけです。だからアメリカから雑貨の注文がきても、自分のところのものを少しよけいこしらえればいい。しかも、ヨーロッパの雑貨というものは、大体において機械でこしらえている。ところが、日本雑貨はそれと非常に違い、ヨーロッパが機械でこしらえているところを、われわれは手でこしらえている。要するに労力をもってこしらえている。日本雑貨が何でアメリカへいくかというと、労力の部分の多いものが売れているので、もし日本雑貨が全部オートメーション化されて機械でできるのだったら、アメリカへいきはしない。要するに、われわれは労力を売っているかわりに、その人間の数というものは非常に多い。現在日本雑貨をやっているところを見ましても、北海道はありませんけれども、九州から中国、北陸、東北は秋田県くらいまでずっといっておって、はなはだしいのは一日百円の内職でやっている。こういう零細なものが集まって二億何千万ドルというものが出ている。もちろん、中には相当大きい業者もありますけれども、概して申しますと、われわれが労力をアメリカへ売るという状態です。  それで、私どもも、雑貨がこれからアメリカで問題が起るのを、どうしてとめるかということをいろいろ考えまして、先ほど通産大臣のおっしゃった、日米合同会議というようなものも考えるのですけれども、これはいろいろな事情でやはりうまくいかないのじゃないか。あまり表ざたにならないでわれわれの利益を保護していただきたいということは、雑貨ばかりでなく、日本の対米輸出全体の希望です。そこで、一つアメリカでりっぱな弁護士を雇っていただきたい。こういう個々のケースが起りますと、実際においては国が半分費用を出し、あとは業者が半分出すというのが今日の実情です。しかし、輸出貿易振興ということが政府建前であり、それがほんとうにわれわれ大衆が職業を得る、生きる道ならば、何も業界の少しはかりの金を集めなくても、政府において、こういうところにこそ大きな輸出振興を打ち出していただきたいと思います。弁護士と申し上げましたのは、少し具体的過きますけれども、これを政府として雇うことは問題が起るでしょうが、ジェトロを通すとか、相当高級な弁護士、向うのセネター等の有力な人とでも対等に話のできる弁護士を何とかして雇っていただきたい。そういうことに対して、議員の皆様方に予算措置において御賛成を得たいというのが、われわれ業界のお願いなんです。ここに大きな弁護士がありましても、実際はその下に個々のケースを扱う弁護士も必要です。それは今まで通りわれわれも業界から寄与することを、少しもいとわないのでありますけれども、こまかいことはやめまして、そういうお願いをしたいということだけにとどめたいと思います。  これで私の意見を終ります。
  23. 福田篤泰

    福田委員長 次に中野参考人にお願いいたします。
  24. 中野壽一郎

    ○中野参考人 ただいま委員の方から御注意がありましたように、営業の内容は、委員の方のお手元に差し上げてありますので、あらためて詳しく申し上げませんで一なるべく結論から申し上げたいと思います。  本日、私どもがこの商工委員会に呼ばれましたということは、将来とも日本輸出雑貨の重要性が認められたということだと思うのであります。私の町は、新潟県燕市の、人口が三万五千しかない小都市でありますが、毎月の重要産業洋食器の生産額は四億五千万近くございます。そのうち輸出が八五%、その八五%のうち、北米合衆国へ出ますのが七五%であります。少くとも一カ月二億数千万円は、北米合衆国へ出ておるのでありまして、これが最近アメリカからの輸入制限あるいは関税の引き上げというような衝撃を受けたということは、アメリカ立場になってみますると、最近の燕からの輸出が急激に増加したことに原因すると思います。二十八年には、燕市の洋食器の全部の輸出額が五億でありましたが、二十九年には八億になり、三十年には二十億になり、三十一年には三十億になっておるのであります。そういう工合に、増加率が偉大な数字になりましたために、アメリカ業者十二社が相寄りまして、ことしの四月十一日に、関税委員会に対しまして提訴したのであります。それで七月十六日から公聴会が開かれて、この問題を取り上げていろいろ問題があったのでありますが、私ども業者としましても、弁護士を通産省あるいは外務省の方へお願いして依頼し、これに応訴したのであります。遺憾ながら私どもの方では、業者がそこへ出るというわけにもいきませす、ただ弁護士あるいはアメリカ業者に依頼して応訴したのでありますが、まだ結論は出ておりません。  また私ども業界としましても、一応この辺で輸出調整をやった方がいいということで、昨年から輸出組合の設立を主務省に向って請願しておりましたが、ようやく、皮肉にも七月十六日が公聴会でありましたのに、七月十五日に輸出調整組合が許可になりました。目下その運営を業者寄りまして協議中であります。必ずやこの調整組合をうまく運営して、アメリカの刺激をなるべく少くしまして今後の輸出に貢献したいと思うのであります。  御承知のように、洋食器は、全世界どこでも使わないところはないという、最も恵まれた商品でありますので、私どもも、今後の輸出に対してあらゆる努力をしていきたいと思います。しかし、われわれいなかの業者の力でありますから、その力には限度がございます。どうしても政府皆さんのお力をかりまして、政治交渉にしていただくよりほかにないと思うのであります。幸いに、きのうの朝日新聞に出ておりますが「日米間の誤解防ごう」という岸首相の談話にもありますように「日本は対米輸出の約二倍の品を米国から買っているのに、米国内の各種団体はなぜ日本商品の販売を制限しようとするのか」ということを岸首相は言っております。これはまことに私どもの言わんとするところを言っておられるのでありますから、どうかその意をくまれまして、政府の御当局は、極力目下問題になっております雑貨輸入制限の問題を解決していただきたいと思います。  私どもの町は、先ほど申し上げましたように、わずか三万五千の人口のうち、一万五千がこの洋食器に携わっておるのでありまして、全くの零細企業であります。もし一朝にしてこれがアメリカの言うような制限あるいは関税の引き上げを受けましたときには、ほとんど全町こぞって壊滅に瀕するのでありまして、特に洋食器は、日本全国のほとんど一〇〇%と言って差しつかえないほど燕に集中しているのであります。そういう特殊な産業でありますので、特にこの席をかりまして、皆さんの御支援を願いたいと思います。  簡単でございますが……。
  25. 福田篤泰

    福田委員長 次に根岸参考人にお願いいたします。
  26. 根岸和一

    根岸参考人 根岸でございます。私は鉄木ネジ製造業の業界のことを御説明いたしたいと思います。  鉄木ネジと言いましても、御存じない方もあると思いますが、ちょうつがい等をとめるくぎよりもっと緊密な結合を要する場合に使うネジくぎでございます。完全に中小企業ないし零細工業でございまして、業者数も全国約百社くらい、生産額も非常に少くて、二千七百万グロスくらい、金額にして八億円ないし十億円程度の非常に小さい産業でございます。そのうち輸出額はこの二年間約九百万グロス、すなわち生産額の約三三%、また対米輸出は年間五百万グロスくらい、ですから輸出額中に占める対米輸出の割合は約五五%でございます。  アメリカ輸入制限運動は、今まで関税委員会の提訴が四回、それからただいま議会へ出ております輸入制限法は、昨年でしたかボックス委員会というアメリカの議会の中の委員会エスケープクローズ大統領の権限を少くするという陳情を出して、この五回ございます。関税委員会に対する提訴は、一九五一年及び五二年の分は、割合に簡略におさまりましたが、一九五四年の第三回の調査では、関税委員会の決定は三対三というタイでございまして、これは大統領の拒否によって危うく制限の実施を免かれた次第でございます。一九五五年には非常に輸出がまた伸びまして、前年の約三倍くらいに伸びましたのですが、さらにまた新しく提訴が出されまして、われわれはこれについては制限実施を非常におそれたのでありますが、幸いにしてこれは取り下げられました。以上が大体今まで米国業者が行いました日本の鉄木ネジに対する輸入制限運動であります。  これに対して、われわれは、急激な増加、それから米国の消費量等勘案しまして、とうていこのままでは輸入制限の実施は免れないと判断いたしまして、昨年、私外三名がアメリカに参りまして、ちょうど同様な条件のもとにある西欧の業者と情報の交換をいたしますとともに、どうやったらアメリカのいろいろな輸入制限を防げるかということを研究して参りました。その後業界にはかりまして、いろいろ対策を講じましたが、結局今年の八月一日から年間四百五十万グロス、これは昨年の実績の大体一割減でありますが、この制限をとりあえず一年間実施することにいたしました。この方法については、われわれの業界は、申し上げましたように非常に小さいので、輸出組合を作るほどの単位のものでもなし、非常にやり方がむずかしかったのでありますが、通産省といろいろ御相談申し上げて、御指導を受けました結果、輸出業者については輸出貿易管理令による制限、それからやはりこの制限に非常な利害関係がある生産業者については輸出入取引法に基く製造業者協定、これによって実施をいたすことになりました。  アメリカへの輸出量を四百五十万に定めました根拠は、関税委員会調査資料等を調べますと、大体アメリカの年間消費量が約六千万グロスでございます。そうしますと制限を受ける輸入限度量がおよそ一五%ということを聞いておりましたので、ぎりぎり一ぱいに考えまして九百万グロス、それからこれは日本だけでなく、欧州も関係がございますので、欧州の分を大体今までの実績と比べまして四百五十万グロスと押えまして、私どもでは欧州とは関係なく独自に四百五十万グロスで制限する、こういうことをきめたわけでございます。  なお欧州の方のことと独立にやるということは、欧州がその間に勝手に自分の方の輸出をふやすのじゃないかという心配もございますが、それについても、昨年いろいろ向うの状況を聞きましたところ、ヨーロッパには約七、八カ国で約五十年間の歴史を有するユニオンがございまして、すでに前から価格統制、数量統制等を自主的に行なっておるということを聞きましたので、もし万一欧州が規制を実施しない場合は、日本もまた独自の行動をとるという建前をもって、日本だけで規制をすることにしたのでございます。  それで、それではこの規制によってどうかということになりますが、われわれ業界の判断でこの程度に規制をしておれば、おそらく今後木ネジに対して個別的に輸入制限運動が起ることはないだろうという見通しでありますし、もし万一あっても、その場合には関税委員会等において、当然こちらが有利に立ち回れるという観測をしております。  それから、今まで言われた参考人たちとは違いまして、非常に困難なことがございますのは、非常に業者が小さいために、こういう大きなことを、国内の意見調整をするのに、非常に苦労したということが一つございます。そのほか輸出入取引法とか管理令は、主たる対象貿易商に置いております。これは製造業者側から見ます場合には、この法律を運用していろいろな規制業務をするときに、やや困難を感ずるのであります。輸出業者はいろいろな品物を扱いまして、木ネジごときものは、その取引額のうちのごく一部分しか占めませんので、大して利害関係はないのですが、製造業者はこれを作って売って、それを生業としておるので、非常に輸入制限等に対する利害の度が敏感であります。しかるに、法律では、大体輸出商というものを建前にしていろいろなことが規定してございます。製造業者がやれることは、ただ輸出入取引法に基く製造業者協定が、改正によってできるようになった、この程度でございます。  なお、私ども特に意見ということは、今までとにかくやりおおせまして、どうやらうまくいくという見通しがついた上では、大して申し上げることもございませんが、特に申し上げますと、一般的な商品輸入制限ということは、われわれ個別産業のものではできませんので、この法案の阻止については、万全の措置を講じていただきたいと思います。  なおもう一つは、アメリカは非常な関税上の譲許をされて、輸出できるようになったのでありますが、まだまだ出るべくして出ない地域がほかの国にございます。たとえば、主として英連邦関係のオーストラリアとかインドとかパキスタンとかいうところは、当然地理的条件からいっても、輸出されていいところでありますが、ほとんど輸出実績はございません。この点についても、差別関税の存在を思わせますので、なるべく下げるような御努力をお願いしたいと思います。  さらにもう一つは、向うのアメリカ等で文句を言うのは、輸入量の増減ということと同時に、日本価格が不必要に安いということでございます。これは今日の日本の中小業者現状では、ちょっとわれわれ自身では手の出しようのないような状況で、もっと高く売れるということがわかりながらも、国内の業者の競争によって安く出ているという状況なんです。これをどうやったらいいかという具体的な提案に対しては、私は意見ございませんが、何か積極的に、利益を得て外国へ出せるものは、もっと高く売れるような方法を強力に進める必要があると思います。この金が非常に貴重で、大事な利益になって日本に入ってくる金でありますから、この点を特に御勘考願いたいと思います。  以上でございます。
  27. 福田篤泰

    福田委員長 以上で各参考人の御意見の開陳は一応終ります。質疑に入ります。通告があります。順次これを許します。大島秀一君。
  28. 大島秀一

    大島委員 ただいま政府の当局側から御説明がありましたが、大体了承いたしたのであります。ただ、私は、ただいま御説明の中に、輸入制限法案あるいはダンピング防止法案そうした問題、その他これを解決するために、アメリカ国民に対して啓蒙宣伝を重視しておるというようなことに対しましては、一応政府御当局の御苦心のほどは了とするのでありますが、私は、ただいまの通産大臣並びに通産御当局の説明だけでは、どうしても何か具体的なものを受けることができない。いま一つは、これに対する見通しが一体どのようなことになるのかどうか。これは、最も業者の人たちが関心を持っておる問題であろうし、またわれわれといたしましても、今後輸出貿易を盛んにしなければならぬということが国策の重要な問題であるという観点に立つと、政府はどうしてもこの問題を明確にしなければならない必要があるじゃないか、かように考えるわけであります。その意味におきまして、なかなか今の国際情勢は困難でありますから、この具体策と申しましても、かなり困難であろうと思いますが、でき得る限りの御説明をお願いしたいと思うのであります。特に私は、この種品目の、たくさん問題になっておるのがありますが、そのうちの一つ、たとえば燕洋食器の問題一つを取り上げてみましても、これはこのままに推移するときは、重大な問題を引き起すおそれがあるのであります。ということは、ただいまもどなたかおっしゃったようですが、この工業は、大体機械工業でなく手工業であります。でありますから、これが消長は大きな失業対策とも相なるのであります。かような内容を持っておるといたしますと、これは単に国策に沿うたところの重要な問題であるというだけでなく、失業対策という現在の日本のこの面における点からも、十分に考えなければならないというようにわれわれは考えておるのであります。さような意味におきまして、どうぞ一つしっかりとした御見解をお願いしたい。  いま一つは、先ほどどなたかおっししゃったのですが、このような問題を解決するのに、弁護士を業者が雇っておるというようにもちょっと今聞いたのですが、これなども、従来ならばそんな形でもそれは差しつかえなかったと思う。ところが、現在のように、非常に国際収支を改善しなければならないという重要なときに当ったとするならば、これは国策として輸出産業を非常に助成しなければならない段階にあるのじゃないか。そのようなときに、そうした弁護人というものが、事ほどさように重要な地位を占めるとするならば、これに対するはっきりとした態度を政府がとっても、決して差しつかえないじゃないかというようにも考えられますが、この点につきましても御見解をお願いいたしたいと思います。
  29. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまの大島さんの御質問に対してお答え申し上げる点は、第一には、従来極力政府啓蒙宣伝をやっておるが、具体的にははっきりしない、こういうことであります。通産省では、いろいろ資料も持っております。しかし、私はそれを決して十分であると申し上げたのではないので、今後私は、今までの行き方では足りないので、もっとやらなければならないというふうに考えておるのであります。  また輸出入制限法とか、あるいはダンピング防止法案等の今後の見通しいかんということでありますが、私は一般的なこういう制限ということは、アメリカの有識者——先ほど来われわれの主張しておりますように、アメリカに対する輸出は、むしろ日本が倍額にもなっておるというような客観情勢から考えましても、こういうものは通るとは考えておりません。そういうものが通っては大へんでありますから、万全の策を講じたい、かように考えておる次第であります。  また洋食器の問題につきましては、仰せのように非常に重要な輸出品だと考えております。ことに日本輸出の特色は、六割ぐらいが中小企業者輸出でありますので、この方面に対しては、十分私も重要性を痛感いたしておる次第であります。  また弁護士の費用等につきましては、従来も必要にして妥当でありましたら、別に惜しんでおるわけでもないと思っておりますが、私個人といたしましても、決してこういうものは惜しむべきものであるとは考えておりません。今後とも、必要で、しかも妥当でありましたら、惜しまずに使っていきたい、かように考えておりますが、ただ民間人としてやるべき筋合いのものであります場合には、政府が特別なことをやっておるということは、かえって逆効果になる場合もありますので、その点は注意して参りたい、かように考えております。
  30. 福田篤泰

    福田委員長 佐竹新市君。
  31. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 ただいま各業者の方々から、非常にわれわれの参考になる意見をいただいたのですが、根本問題は、私は前尾通産大臣よりも、むしろ岸総理大臣の御出席を願って、御質問した方がいいかと思うのです。私の質問します点は、あるいはお答えがむずかしい点があるかと思いますが、とにかく日本という国は、アメリカに占領されて、占領が解除になって、アメリカとの間にいわゆる講和条約が結ぼれ、安全保障条約、行政協定、この一連のものによって、むしろ従属的な立場に置かれておる。このことは、日本貿易という問題に対しては、全く自由な立場においてやられるということに、ある意味においてアメリカに従属しておる関係上、われわれから見ると制約されておる、かように考える。中共貿易にしてしかり、東南アジア貿易にしてしかり、すべての問題に制約されておる。この制約されておる国に対して、あまりにも日本の国情を知りながら、じりじりと真綿で首を絞めるような絞め方をしておる。政府は、これに対して、岸総理大臣アメリカに行かれましたけれどもが、一体対米輸出の見通しの問題はどうなるのであろうか、こういうことは、今年じゃない、二、三年前からいろいろな問題があるが、そういうことに対する具体的な問題を一つも持ってお帰りにならぬ。非常に何かぼうっとしたような、いわゆる共同声明というようなものでつかみどころがない。今一人々々の参考人意見を聞きますれば、非常に重大な問題になっておる。特に中小企業の、いわゆる雑貨、これらの問題を聞いてみますと、非常に重要な問題である。そこで、岸さんにかわって、前尾通産大臣は、いろいろアメリカに対して折衝もし、アメリカ大使を通じてやっておられるか、あるいは本国に対して藤山さんも行かれるということですが、そういうことにおいて、対米輸出に対する見通しに対して、抽象的でなく具体的に、あなたはどういうように政府としておやりになるお考えか、まずこれを第一番にお聞きしたい。
  32. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 アメリカに対する根本的な考え方は、私は、現在別にアメリカに従属的な行き方をやっておるとは考えないのです。あくまで独立で、日本の主張を堂々と通すべきである、かように考えております。ただ、具体的にどういうことだということは、これは一つ一つ商品についてどうこうというような問題ではなしに、大きな方針とすれば、方向は、今後極力相互の理解を深め、輸出につきましても、今後拡大していくということで了解されておる問題でありますし、それ以上の具体的な個々の問題ということになりますと、それは今後に一つ一つの問題として解決していくべきだと思っております。個別的な産業につきまして、現在論議になっておりますものは、アメリカにおける、ごく小部分というと語弊があるかもわかりませんが、同種の業者が、国内で圧迫を受けております点から、いろいろな関税委員会に対する提訴というようなことが行われております。これは大きな見地からいいますと、全く当らぬ批判でありまして、それに対しては十分われわれも啓蒙していくという態度で打開していくより仕方がないのであります。またそれについては、われわれとしましても十分善処していきたい、かように考えております。  あるいは、御質問のお答えにならぬかと思いますが、しかし、それ以上の問題は、具体的に今後お示ししていくべきことでありまして、根本方針としては、そういうことでお答えする以外にはお答えの仕方がないのじゃないか、かように考えるのであります。
  33. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私が通産大臣に聞かんとしたところの具体的な問題がはっきり言えない。ということは、事対米関係に関する限りにおいては、外交上の問題と非常に密接な関係がありますので、通産大臣としてははっきりしたことは言われない、かように私は考える。しかし、私は、あくまでも安全保障条約、行政協定等によって、日本が従属的な立場に置かれておる、完全な独立でない、こういうことに対して、日本貿易の面に関しては迷惑をこうむっておる点が多いということを申し上げましたが、まあこれは意見の相違でございましょう。通産大臣はそうではないという御意見です。  それなら、私、多少はずれますかしれませんけれども、一つお尋ねしてみたい。今、一番問題になっておりますのは、中共の見本市の問題で、近くあなたの党では、池田正之輔君以下何名かの人が中共に行かれます。わが党でも一人行くという。まだ私は会っておりませんけれども、しかしこの指紋問題というのは、今度は中共との貿易上の問題において大きい問題になる。しかし、これらの人たちが行かれて、政治的に解決ができる見通しがあるということを、総理大臣新聞に発表されております。この指紋問題は、何だ日本の品物を中共へ出すのに、指紋なんかにこだわっておる必要はないじゃないか、そんなものはやらなくたっていいじゃないかといえば、それまでのものなんですね。しかし、安全保障条約、行政協定、日本の軍事基地、アメリカの軍機の秘密漏洩、これら一連に関係して、指紋問題の解決がやはりなかなかつかない、かように私は考える。法務省、外務省がなかなか結論をよう出さないのはそこなんだ。こんなものは、日本が完全な独立国だったら、何で指紋問題なんか考える必要がある。平和国家じゃないか。どんなスパイが入るというのか。平和国家にスパイは必要じゃない。わが国の憲法は、軍備を持たれぬ、無武装、戦争をしないというのが基本なんだ。そうした点を考えてみれば、何で指紋にこだわらなければならぬかということだが、しかし指紋問題は、今一番中共問題について大きな貿易上の問題点です。アメリカに品物が制限されてくる。そうなれば、東南アジア、中共へも発展していかなければならぬ。地理的に一番近いところだ。そうして輸出を伸ばさなければならぬ。こういうときに、指紋問題がひっかかっておるというようなことを考えてみますと、これは通産大臣、どう考えるか。外務大臣でもない、法務大臣でもない、総理大臣でもないが、政治的に解決するというなら、指紋問題をどういうふうに解決されるか、ここで一つ貿易立場でどういう考えを持っておるか、御答弁願いたい。
  34. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 指紋問題、ことに中共貿易全般にわたりまして、これは何もアメリカ関係のある問題ではない、私はあくまでも日本の法律問題として取り扱うべきだと思います。従って、現在日本にあります法律をいかに運用するかということによって、十分打開の道はあると思いますし、純粋に経済的に貿易を考えていきますなら、それによって十分打開し得る、かように考えております。
  35. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 通産大臣、それでは答弁にならぬ。貿易は大事である。品物を出すというのですね、それは周恩来も言っているし、毛沢東も言っておる。問題は、日本で一体なぜ指紋問題をこだわるか。これは従属的な関係があると私は考えるが、あなたは指紋問題をどうして具体的に解決するか。岸さんも、政治的に解決されると言う。最も重要な、法務大臣よりも外務大臣よりも一番重要な、貿易問題に関係しておる担当大臣のあなたに御相談があったに違いない。政治的にはどう解決するか、それを具体的に言って下さい。何かあるのだったら——従属的な国ではないという言葉を取り消してもらわなければ、私はどこまでもあなたに追及する。御答弁願いたい。
  36. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 指紋問題にこだわるというのは、向うがこだわっておるんじゃないかと思います。われわれとしまして、特別に指紋を厳重にやろうという意味ではないので、むしろ行政上の運用でできることは、あくまでもやっていこうということでありますし、そのことは、貿易そのものとそんなに関係の深いものであるとは、私は考えていないのであります。これは冷静に考えて、純経済的な見地に立って、相互理解を深めて解決すべきものだ、かように考えております。
  37. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 知り過ぎたことを、お互いに政府のくろうとが突っ込むのはいかぬのですが、あなた、そういう逃げ方をされるから、私は重ねて質問するのです。そんな、経済問題と指紋問題、貿易問題が関係がない、こういうふうに言われると、われわれは商工委員として、どうしてもあなたに食い下らなければならぬことになる。というのは、全然関係がないものなら、あなた、指紋なんかとらなくてもいいじゃないか。何か関係がある。あるからとらなくちゃいかぬ。とらなければならない事情がある。これは私がさっきも申し上げましたように、アメリカに対して、もう少し強腰を持って、議会なり政府当局に対して——アメリカという国は、政府や議会よりも、むしろ業界に力がある。世界における資本主義の王国ですから、これらが政治的に強い力を持って働いてきたら、アイゼンハワーも、何年かすれば改選になる、今度落ちるかもしれない。日本の岸さんも同じように、社会党が多数をとるかもわからない。そういうように、向うでは財界が力を握っておる。このものに対して通産大臣——藤山さんがアメリカへ行かれるそうですが、政府当局や議会よりも、むしろこれらの実業界の諸君に日本立場というものを十分に説明をして、日本はこういう立場に置かれておるんだ、このことにおいて、アメリカが、いわゆる極東における扇のかなめだ、フィリピンと台湾と沖繩と日本、朝鮮の李承晩——これは大したものじゃない。日本がそのかなめだ、軍事的において日本に基地を求め、日本に協力を求めておるのだ、日本は対共産圏に対する強い力を持っておるのだ。それだけの役割をしておる日本に対して、そんなけちな政治をなぜするのか。アメリカの資本主義は、日本によって維持されておる。こういうようなことを、アメリカに行ってやる人は日本にはおらぬのですか。前尾通産大臣、あなたはそこまで財界を説得する力はないのですか。
  38. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 指紋問題は、あくまで日本の問題であり、日本の自衛のために考えるべき問題である。これは別にアメリカからどうこう言われたからやっているわけでも何でもないのであります。しかし日本立場を大いにアメリカに了解させるということはけっこうなことであります。当然やるべきことでありますし、また現に外務大臣もおいでになって、岸さんもさきにおいでになって、いろいろと日本立場説明しておられるのであります。おっしゃる通りに、今後日本立場や、いくべき道について、はっきりと了解させるということは必要だと思います。またやらなければなりません。
  39. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 今までの通産大臣は、神武景気というよろなことを、国民に向って放送されたくらいなときであり、輸出の伸びもよかった。外貨の手持ちもあった。しかし、あなたは不幸なときに通産大臣になられた。一番底をついている。輸出の伸びは、私はそう楽観しない。中共から今度東南アジアにいくときには、華僑というのは、蒋介石側ではなくて毛沢東側なんです。この華僑が、東南アジアにおける一番経済的な力を握っておる。中共の指紋問題を、そういう簡単な考え方で割り切ろうとされたら、もう少し大きな問題にあなたはぶつかるでしょう。臨時国会でも聞いたら、あなたはたたき伏せられるような状態になると思う、そういうことでなかなか開かぬのでしょうが。  余談はさておいて、私は通産大臣に最後に一つお尋ねいたします。大体今日の日本の国内の不況は、何かというと、輸出が伸びないことである。中共、東南アジア、アメリカの問題は、それでいいでしょうが、中近東に対する輸出の伸びということに対して、前の水田通産大臣は、非常に楽観的にこの委員会で私の質問に対して答えられた。前尾通産大臣はどのように考えておられるか。
  40. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 現在非常に不況であるという点は、必ずしも輸出の伸びというよりも、逆に輸入が多過ぎるという点で、それに対する対策をやっております関係から起っておるのであります。現在は輸出が伸びてはおりませんが、減ってはおらぬという強みはあるわけであります。しかし、今後において輸出を拡大しなければ、日本の経済は立ち直れないということは御同感であります。  中近東その他につきましては 私も決して楽観をいたしておりません。というのは、相手はもうドル不足で困っておる。保有外貨がありません。それになおかつ輸出を伸ばしていかなければならぬということは、非常に困難であります。また、今までは、日本輸出繊維品が主体でありました。今後におきましては、やっぱり重化学工業品を持っていかなければならぬと考えておるのであります。しかし現在におきましては、一つは国内の需要がかなり旺盛でありますために、また昨年来価格が上って参りまして、必ずしも割安ではないというような点もあります。従って、今後の施策いかんによりましては、ただいまお話のように飛躍的に伸ばすということはできないにしましても、一歩々々よくしていくということで考えましたら、必ずしも悲観すべきものではない、かように考えております。  また中共に対しましても、やはり中共にも保有外貨が少いというような点があります。社会党の諸君のおっしゃるように、飛躍的な数字は、われわれは望み得ない。これはやはり一歩々々適切な商品を持っていく。あるいは第四次協定で、同類物資の交換の原則というものをできるだけやめ、そして着実な方法で輸出を伸ばしていくという以外に方法はないと思います。
  41. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 あまりこまかい質問をしても、わかり切っていることですし、暑いから質問をしませんが、通産大臣の考えておられる底には、一連の岸さんの考えておられるようなものが流れている。それはいわゆる反共政策なんです。そういうものの基本的な上に立って物事を考えていたならば、日本貿易というものはどうしても伸びない。社会党が考えている云々と言われるが、中国の現在の経済状態五カ年計画からさらに五カ年計画を続けていこうとする国家の、外貨の保有がどうであるかということは、私も中国に十年ばかりおったからよく知っている。しかし遠いアメリカよりも、近い中共から東南アジアに向って飛躍的発展をしなければならないにもかかわらず、わずかな指紋問題だけで一国の毛沢東なり、あるいは総理大臣日本に対して非常に反日的な発言をされる事態なんです。だから、通産大臣としては、東南アジア、中共というものを重大視しながら、対米的に強い腰で交渉される、こういうところに、日本貿易を伸張するところの政府のやるべき根本的な問題があると思う。言いかえるならば、昨日も三大新聞が放送で座談会をやっておったが、あげて言うことは何かというと、日本政府が自主独立的な国家であるというならば、今少し気概のある考え方を持って、国民にも自信を持ってやり、アメリカに対してもやってもらいたいということでした。ということは、今日日本の置かれている立場が、好むと好まざるとにかかわらず、そうしなければならぬということになる。きょうは、総理大臣も外務大臣もおられませんし、通産大臣は就任早々でございますが、そういう点に全力をあげて、名通産大臣として貿易の伸張をやってもらうように、あなたに期待をかけまして私の質問を終ります。
  42. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまのお話の気持は、私も十分わかります。そういう気持はわれわれも持っております。しかし、具体的に指紋問題ということになりますと、これはまた別個な観点から考えなければなりません。しかし、東南アジアの貿易に大いに重点を置くということは変りありません。またアメリカに対して自主独立の立場をとるということも、変りありません。
  43. 福田篤泰

  44. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 本日は、対米輸出に関する問題に対しまして、参考人から、現在の実情に対して、いろいろ発言をいただき、非常に参考にはなりましたが、政府といたしますと、現在の国際収支のバランスの関係から、どうしてもこれは輸入を制限し、輸出を振興する政策をとらざるを得ない。それに付随しまして、金融引き締めということもやむを得ないのではないかと考えますが、ただ、私は、現在の金融引き締めによりまして、滞貨金融はしない、手形の割引もワクを縮少する、新規貸し出しはしない、こういうような対策から、現在非常に物価は下っておる。そういうようなことになりまして、輸出も相当滞貨をしておるのではないか。こういうようなことから考えてみますと、今後国内のあらゆる物価が下りますれば、やはり相手国もすべて経済的に考えますので、日本の物価が安くなれば、日本輸出価格も下るのだということになりまして、かえって相手国に不安を与えるのではないか、こういうように考えますので、そういうような場合になりますと、結局アメリカ輸入制限を再びしなければならぬとか、日本の物価が安くて、安く輸出されては、日本の物価に対して業者は非常に不安を抱く、アメリカ業者が非常にこれをおそれるというようなことから、むしろ日本輸出を制限するというようなことに、なお強くなるのではないか、こういうふうに考えますが、業者としてそういうような御懸念はあるかないかということに対しまして、小杉さんに一つお伺いをいたします。
  45. 小杉眞

    小杉参考人 綿製品のうち一次製品につきましては、本年度は一億一千三百万ヤードに制限をする、実際はアメリカの市況が非常に悪いので、おそらく一億一千三百万という数字は、輸出することが不可能だろうと考えますが、しかし、現在の生産過剰あるいは金融引き締め両方の関係繊維品の相場は下っているということのために、アメリカ輸入制限がさらに激しくなるということについては、私どもは、今のところ、現実の輸出取引はそういう向うの新しい制限運動を刺激するほどの安い値段の取引はまだ行われておらないのでございまして、その点については、まださほどの不安を感じておりません。二次製品、つまりシャツとかブラウスとか、そういうようなものについては、おもなものについてはやはり同じように数量的のワクがございますから、価格そのものが安いにしても、量的には限度があるということを、向うの業界はよく知っておりますし、二次製品の一部は、実際問題としてほとんどワクに達しておりますから、これもそういう関係で本年はさして心配は要らないのじゃないかという気もいたします。しかし、ことしの秋、国内の繊維品の相場あるいは金融引き締めの成り行きいかんによっては、御懸念のようなことが起って、そのために新しい刺激を与えるということも考えられないこともないのですけれども、今のところまだ差し辿った不安を私どもは感じておりません。
  46. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 綿製品に対しては、目先のところ、そういうような不安はない、こういうようなお考えのようでありますが、根岸さんに一つお伺いいたします。
  47. 根岸和一

    根岸参考人 木ネジについては、先ほど申し上げました四百五十万クロスの輸出規制をしている間は、新しい個別的な制限運動は起らないと予想いたします。
  48. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 きわめて業界は楽観のようでございますが、私どもはそう考えておらないのです。やはり国内の物価が下って、輸出価格が下りますれば、大量に輸出ができるということも、一応これは理論的には申し上げて差しつかえないと思うのであります。先ほど根岸さんのおっしゃるには、なるべく高く売って利益をよけい得たい、こういうような御意見もあったのでありますが、私もこれはきわめて同感であって、ただ輸出の量を出すというのが目的ではなくして、やはりドルをかせぐというのが目的でありますので、損をして多量の輸出をいたすということは、国策に反することになると思うのでありまして、私の心配することは、現在のこの金融事情からいいますと、国内の物価は下げざるを得ない。金融的には、やはりこれは処理をしなければならないというようなことになりますれば、必ず物価は下ります。そういたしますれば、国内の物価は下ったが輸出価格は下らぬということは、経済は、これは世界的になりますので、そうは認めないと思う。そういうようなことから考えてみますれば、ある程度は物価の維持をしなかったら、輸出価格も維持することはできないのではないか、こういうふうに考える。現に繊維関係にいたしましても、北陸方面の輸出商社との系列産業の人たちも、六月まではキャッシュで工賃をみんなもらっておりますけれども、七月からは手形である、手形でなければ業者に支払いができない。その手形をもらいましても、割り引きができない、新規の銀行との取引がないというようなことから、業者はただいま困っておる。そうして工賃は下げられる、量も減らされるというようなことから考えてみますと、これは輸出価格も当然安くなる。安くなるということは、輸出を振興する一助にもなるのでありますが、しかし、不安を与えるということになるのではないか。むしろ、アメリカ業者を、日本業者がつぶすことになるのではないか。こういうことを考えてみますと、価格にも限度があると思うのですが、そういうような御心配は、実際にないのでありましょうか、どなたかにあらためてお伺いいたします。
  49. 小室恒夫

    ○小室説明員 繊維品を例にとってのお話でありますから、私から申し上げます。ただいま御指摘のように、北陸等において主として産しております人絹織物あるいはスフ織物、主として化繊関係につきましては、引き締め以前から国際価格に比較いたしまして非常に安い価格であったものが、さらに金融引き締めの追い打ちというか、重圧がかかって参りまして、生産過剰の底流ももちろん手伝いまして非常に安い価格になった。そのために輸出価格影響を受ける、また契約自体の成立が困難になる、あるいは従来できておった高値の契約が取り消される、そういうような好ましくない事態がはっきり生じております。綿製品については、まださっき小杉参考人が述べられたように、それだけの影響は考えておりません。化繊の方は、相当重大な事態になっております。私どもとして生産調節をやり、操短をやり、あるいは人絹織物自体についても、九月一日から二割にしぼるというような方法で行政指導をしておるわけであります。また金融について、御指摘のようなことがあります。これはまたいろいろと金融引き締めに伴う適応態勢ができておらないというようなこともあるわけでありまして今の混乱した事態が、そのまま続くというようには考えておりませんが、一時的には好ましくない事態も生じております。私どもも、関係当局、金融方面も含めて、十分連絡をとって、輸出振興の態勢を崩さないようにして参りたい、こう考えております。
  50. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 本日は対米輸出に関する問題でございますから、あまり他に触れたくないのですが、しかし、経済は関連をいたすのでありまして、やはり輸出を振興するにいたしましても、国内の態勢を整えなければ、輸出の振興もはかれないと思うのでありまして、小笠通産政務次官にお尋ねいたしますが、政府といたしまして現在とっておる政策は、当然の政策とわれわれも信じております。これはまあ国際収支のバランスを一応調整する上においては、金融引き締めもやむを得ない、あらゆる業者もまた忍ばねばならぬ、こういうことは重々承知しておりますが、しかしあまり過度に過ぎますと、業者現状維持ができ得ないと思います。事情により、場合により、結果においては多少は今後考慮をするというようなお考えが政府においてありますか、一つ通産政務次官からお答えを願いたいと思います。
  51. 小笠公韶

    小笠説明員 経済は生きものであります。従いまして、ただいまの政策の基調は、国際収支の改善、経済の安定という大目的に向って、諸般の施策をいたしておるのでありますが、今申し上げましたように、経済は生きものでありますので、時と場合によりまして、所要の機動的な手を打つことは当然だと思うのであります。このことは、いわゆる金融引き締めの手直しという議論ではございません。   〔委員長退席、小平(久)委員長代   理着席〕 まず産業が生きていく経済の上台をつちかっていくという方向に全力を尽していきたい、こう考えております。
  52. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 松平忠久君。
  53. 松平忠久

    ○松平委員 大臣がいませんので、根本的なことは次の機会に譲りまして、参考人の方にちょっとお伺いしたいと思うのですが、参考人の方は、今までのお話の中で、たとえば綿糸の関係合板関係その他の業界で、いろいろ自主的に自粛制限等の方法を講じたり、あるいは業界で向うの業界と渡りをつけてロビイスト等に対する働きかけをしているということでありますが、そういうことを業界がする場合に、日本政府とどの程度の話し合いでやっておるか、また日本の国会とどの程度お話し合いができて、そういうことができておるかということについて、参考人の方の綿糸布、合板、並びにびょう、雑貨関係者からお聞きしたいのです。国会の中の商工委員会もしくは外務委員会等と、あなた方は今までどの程度接触してそういう自主的なことをおやりになったかどうかということを、この際お聞きしたいと思います。
  54. 小杉眞

    小杉参考人 ただいま御質問がありましたが、われわれの綿製品の業界で自主的に調整をいたしましたのは、昭和三十年まず第一にギンガム、別珍の品質、規格について、一定限度以上のものに限って対米輸出をしていこうという業界の自主調整をやったのが第一回であります。  それから政府との連絡の方法は、輸出会議というものがございましてその輸出会議は、業界の者、それから政府関係の方々で構成されておるわけでございますが、輸出会議の決議によりましてこれを行なっております。   〔小平(久)委員長代理退席、委員   長着席〕 国会と私どもの業界との直接の、正式の連絡はございませんが、政府との関係はそういうことになっております。  それからロビイストと申しますか、いろいろのPR活動につきましては、事実上通産省あるいは外務省のそれぞれの担当の方々といろいろ連絡をして、重複をしないように内容その他についても十分連絡をとってやっております。
  55. 大友養七

    大友参考人 われわれのやっております規制は、輸出入取引法にのっとっておりますので、われわれ自体としては、外務委員会にも商工委員会にも連絡はございませんが、しかし議会で決定されたものによってやっておるのだと考えております。一々の具体的な問題に関しましては、監督官庁——通産省あるいは農林省、外務省に随時御連絡申し上げ、御指導をいただいております。例のロビイストの問題でございますが、この問題につきましては、向うの輸入業界の方々と十分緊密な連絡をとりながら、向うの方でこれがいいだろうというロビイストをこちらでも検討し、また外務省の方にも御相談申し上げて決定しているということであります。
  56. 大柴龜太郎

    ○大柴参考人 雑貨業界は、小さいものですから、問題が起るたびに、通産省の軽工業局の御指導を受けまして適当に処理しておりますけれども、向うの方では、大使館の一部、実際に言うと、ジェトロの人なんかが多少の話し合いをして下さいます。そこで私がさっき申し上げたのは、そういう事前の工作ができるとか、事前に話し合いができるとかいうような、ほんものの弁護士と申し上げたのは少し語弊があるかもしれませんけれども、そういうわれわれの利益代表を一人アメリカに置いていただきたいということが念願であります。向うのロビイストなんかは連結もありませんし、またこちらでも、役所以外に、議員方面には今までは何も連絡はありません。
  57. 根岸和一

    根岸参考人 私の方の業界は、接触を保っておるのは通産省の重工業局の、重工業品輸出課でございます。それから外務省の経済第三課、アメリカでヨーロッパの業者と話をしたのは、全然予定にのっておりませんけれども、先方からその機会に申し出を受けたのであります。国会には今まで何も連絡ございません。
  58. 松平忠久

    ○松平委員 政府にお尋ねしますが、そういう会議に出る係官というのは、どういう程度の知識のある人が出るのですか。つまり業者の自主的な統制をしようかしまいか、これはどの程度にきめようか、あるいはどういう方向にしようかということは、おそらく業者にとっては致命的な大きな問題だろうと思うのです。そういう場合に政府の係官なる者は、一体どの程度の知識のある人たちであり、どの程度のランクの人がここに出るのか、これを通産省と外務省にお聞きしたい。
  59. 中山賀博

    中山説明員 お答え申し上げます。これは商品によって、必ずしも一様ではございませんが、しかし、一般的に、問題が起りまして、たとえば、公聴会とか、あるいはその他の差し迫った問題の解決に当る場合と、それから一般的な問題として、米国市場の開拓、それから日本商品の宣伝あるいはPRという問題と若干分けて考えればよろしいかと存じます。通産省といたしましては、たとえば、綿製品の問題等が起りましたときには、できるだけ係官の派遣を希望いたしておりますけれども、何分にも旅費その他の制約がございますので、現地に通産省から出向しております大使館員、並びにまた現地の業界代表者、あるいはまたニューヨークにあります日本商工会議所、さらにはジェトロの係官等が相寄りまして、そうしていろいろ緊急対策を講ずることになっております。  それからジェトロの一般的な市場対策は、PRのみについて申しますと、昨年は約六千万円程度の予算をいただきまして——これは米国という市場から見ますと、まことに少額でございますが、これによって一般的な啓蒙宣伝を行なったようなわけでございまして、来年度におきましては、もう少しジェトロその他の機関を通じまして、こういう一般的な啓蒙、またそういう危険のある商品等につきましては啓蒙あるいはこれに対する警戒措置等につきましても、ジェトロの活動を活発化していきたいというように考えております。
  60. 牛場信彦

    牛場説明員 外務省といたしましても、この問題は非常に重大視しておりまして、在外公館から、常時最も的確な情報を取るように努力いたしております。そして輸出体制確立の会議などには、もちろん責任の課長、それから場合によりましては局長も出まして、海外の情報を誤まりなく伝えるようにいたしておる次第でございます。  それからアメリカ自体におきましても、もちろん在外公館、大使を初めといたしまして総領事、領事も、この問題の重要性はよく心得ておりまして、その活動のきわめて重要な部分は、この問題のためにさかれておるということは申し上げられると思います。
  61. 松平忠久

    ○松平委員 先ほどの大友さんの御発言の中に、非常に声が小さくてよくわからなかったのですが、ロビイストに対してですか、六割程度コントリビュートするという御発言があったわけであります。この六割程度の金をだれかに運動費として出すというような意味なのかどうか、それはどういうことなのですか、ちょっとその点をお尋ねいたしたい。
  62. 大友養七

    大友参考人 それはあくまでも向うの国内問題でありますので、われわれの利益を代表しておるところの向うの日本品輸入業者の協会がございますので、これが中心になってアメリカの製造業者のPRに対して反対PRをやる。それにはロビイストを頼みましてロビイにも備える、また雑誌、新聞、ラジオ等にも広告する意味におけるパブリシティーのいろいろな経費がかかる、その経費が十二月まで大体三万ドルはかかる、こういうことを言っております。その三万ドル心かるものを全額向うが負担するわけにいきませんし、また日本の製造業者並びに輸出業者として重大な利害関係がありますので、その向うで三万ドルかかるというものに対して六割あるいは若干上回った金額を日本側としてコントリビュートしていく、こういうことであります。
  63. 松平忠久

    ○松平委員 非常にデリケートなことにわたりますので、その点の質問はここでやめまして、政府に対してちょっと質問したい。これに関連する質問ですが、大臣はいませんが、政務次官は、岸さんがこの間アメリカへ行ったときに——その前からこういう問題がアメリカとあったわけですけれども、目的の一つは、アメリカにおける日貨排斥といいますか、この運動の是正、運動をやめさせる、こういうことが一つあったと思うのですが、どういう話をしてきたか。あなたは直接あるいは間接にでもお聞きになったことがあるかどうか、それをまずお聞かせ願いたい。
  64. 小笠公韶

    小笠説明員 岸総理の訪米に当りまして、アメリカにおける日本品輸入制限一般につきましては、日本の置かれている経済情勢等の説明をいたし、向うの考慮を求めたということは聞いておりますが、具体的にどういう商品をどうというふうな話はまだ聞いておりません。申し上げるまでもなく、アメリカ日本との貿易の拡大につきましては、いろいろ曲折はあるにいたしましても、相互の経済的な立場というものを十分に理解することが大前提であります。従いまして、そういう趣旨においてお話をしてこられたものと承知いたしておるのであります。
  65. 松平忠久

    ○松平委員 その程度のことは、新聞でもわれわれ承知をしているわけですが、その訪問後七月の終りから八月にかけて、再びアメリカの議会においていろいろな日本品に対する制限の動きがあるということは、きわめて皮肉であると私は思う。この岸総理の訪米に当って、包括的な日本の希望というものを、向うに申し述べてきたことは述べてきただろうと思うが、それに基いてこれをローアー・レベルに移して現在折衝が行われているかどうかということを、外務省からお聞かせ願いたい。
  66. 牛場信彦

    牛場説明員 総理の御訪米のときのお話は、私も間接にだけ伺ったのでありますが、非常にこの問題は強調されまして、向う側としても十分これに対して理解を示したということを伺っております。ただ問題は、松平先生もよく御存じの通り、この話は、政府の間だけでは、実は解決しない問題でありまして、私ども始終アメリカ政府とはきわめて緊密に話し合っておるのであります。そうして、ことに国務省などは、ほとんど全幅的にわが方の立場を了解してくれておるのでありますけれども、問題の起ってくるのは、実はそこじゃないのでありまして、アメリカ業界であり、またその業界と縁の深い国会の方面ということであります。そこで、ただいまローアー・レベルというお話もございましたが、これはもう常時やっておるのであります。大使館の活動が、先ほど申しましたが、非常にその大きな部分が、この問題に費されておると思いますし、私どもは東京で、米大使館と始終連絡しております。ただ、それだけではなかなかこの問題は解決しない、もっと大きな意味の業界あるいはアメリカ議会方面に対する働きかけが必要である。それが先ほどから問題になっておりますPR運動であり、いわゆるロビイングということになると思うのであります。これにつきましてはやり方がいろいろあるわけでありまして、外務省といたしましては、これは日本側が先に立って直接向う側に働きかけるという格好は、ある場合には反作用を起す危険もありますので、注意しなければならないと思っております。一番いい方法は、やはりアメリカの内部に日本側の味方を作り、その人たちを通じて、だんだんアメリカ側の空気の改善をはかっていくということでないかと思うのであります。それにつきまして、もちろんある程度予算も必要であります。ただ金の出し方につきましても、日本政府が向う側の人に金を出しておるというようなことが表面に出ますと、これはその活動自体が非常に効果を失ってしまうわけであります。何とかやはりもっと目立たない方法でもってやらなければならない。それから、日本業界アメリカ業界との共同作業と申しますか、連絡と申しますか、これも非常に必要でありますけれども、一方数量の協定をやりましたときに、価格の協定ということになりますと、たちまちアメリカの独禁法の問題になるわけでありまして、現にそういう問題が一部では起って困っておるようなところもございます。そこで、いろいろこれはむずかしいことがあるのであります。しかし、そうだからといって、一日も放置は許されないのでありますから、私ども現に全力をあげてやっておりますし、また今後、来年の予算の編成等に当りましても、ぜひともこの問題を考慮に入れてやらなければならぬと思っておる次第であります。
  67. 松平忠久

    ○松平委員 この問題は、ただ単に政府を相手にしては、とうてい解決できぬということは、これはもうわかり切ったことであって、ことにアメリカのような、国内の政治の構成のああいう制度のもとにおいては、あらゆる方法を講じなければならぬけれども、私は日本側にその点についての一つの欠点があると思うのです。こういうことは、皆さんもよく御承知のように、綿製品等から、逐次ほかの製品にまで今日は及んでおる。それも、今お開きすれば、また新聞等の報道によれば、急激に六倍も七倍ものものが一年にさっと出る、こういうような状況であって、その点について、日本側にもかなり過当競争もあり、また相手の市場というものをあまり見きわめずして、めくら貿易というか、めくら生産をやっておる。こういうことで、われわれの方にもかなりの欠点があると思うのです。こういうふうに、先方にもあり、こちらにも欠点があるということから起っておる現象であるから、その両方を解決していかなければならぬわけでありますが、要は、やはり一つの計画性というものを経済に持たせなければならない。業界の方々も、むろんそのおつもりだろうと思うのですが、この計画性を持たせるということは、その前提として正確なる認識、資料、情報というものを持たなければならぬということだと思うのです。すなわち、それは、業界政府ともどもに、十分なる資料を得て、それによって、どういうような生産をし、どういう貿易をやっていくかということがなければ、次から次へと今後こういう問題がほかの品目にわたって発生していくのではなかろうかと思うのです。そこで、アメリカ側における諸般のこれらの経済の実態を把握するための資料または情報というものを、どこかでまとめて、それを業界に流し、また業界からのものも政府は握ってやっていく。つまり、アメリカの、たとえば農産物におけるプライス・コントロールのようなやり方を、全部の品目についてやっていかなければだめだと私は思う。一体、政府はそういうことを現在までやってきているかどうか。もちろん、これは先ほど牛場君も言われたように、向うの政府だけを相手にしてやったのではとてもだめだ、ロビイストその他を通じてPRやいろいろなことをやらなければならぬということはその通りであるけれども、しからば、わが方においても、どこかが中心になって、そういうことを総合的に実施させていく体制というものが、仕組みとして国内になければならぬと思うのです。それを、今日まで各自勝手に、ばらばらにやってきているのではなかろうかと思います。業界業界会議があるけれども、その会議に出席場をするのは、およそ大して知識もない、ランクも低い係官程度じゃないかと思う。局課長あるいは次官というような責任のある人が、あなた方の自主的調整をやるという会議に出席しているのではなかろうと思う。そういう工合に個々ばらばらにやっておるような結集が、今日ますます深刻になってきていると思うのですが、政府において、どこかそういう一つの中心機関というものがあって、そこで全部の情報がわかり、それをすぐさま業界に流して、業界はそれに対して態勢をとる、こういうようなやり方をするお考えがあるかどうか、現にどの程度やっているのか、聞かせてもらいたい。
  68. 小笠公韶

    小笠説明員 アメリカにおきまする日本に対しますいろいろな問題の一つ原因がわが方にあることも、御指摘の通りだと思うのであります。そういうふうな事情でありますので、日本側におきます情報のキャッチ、それに基いて輸出の自制というようなことを考えて参らなければなりませんが、現在、私は、まずアメリカで問題になっておる商品をこれまで考えて参りますと、アメリカにおいて過去の産業にならんとする産業あるいは中小企業と競合関係にある製品に、もっぱら問題が指摘されておるように思うのであります。従いまして、情報の収集等に当りましても、彼我の産業関係というものを一つ十分に頭に置いて、考えて参らなければならぬというふうに実は考えております。その例は、アメリカにおきます日本趣味あるいは東洋趣味的な動きに対しまして、日本の手工芸品は、非常にたくさん出ております。しかも反撃を食っておらないというふうな例等から考えてみましても、業種、業態の相互の関係を把握しなければならぬと考えておるのであります。こういうふうな立場に立ちまして、情報の収集に当っておるのは、申すまでもなく大使館であります。あるいは領事館でございます。国内におきまして、わが方の側といたしましては、いわゆる外交官を通じて集まる情報のほかに、海外貿易調査所でありますか、ジェトロが、政府の活動を補完する意味において主要の都市に置かれて、それから情報を東京の本部に流しておるのであります。これらの両方の資料が現在集まっておる材料だと言い得ると思います。  そこで今松平委員の御指摘のような点から申しますと、それらの間に統一的な一つの分析あるいは利用というような点が、はかられておるかということになりますと、私は必ずしもそうじゃないと思います。広く複雑な産業活動の彼我の情勢を、常に十分把握しておかなければ、貿易の、特に輸出の振興はむずかしいのでありますが、これに対応する仕組みというものは、まだ十分でありません。これはぜひとも改善して参らなければならぬと思うのであります。特に、最近のような情勢になりますと、事取引に関する場合が多いのでありまして、商社筋の得た情報等が、うまく早く入るような仕組みも考えなければならぬと思っております。今申し上げましたような状況でありますので、今後できるだけそういう情報の収集、これが効率的運営等について、努力をして参ることにいたしたいと考えております。
  69. 松平忠久

    ○松平委員 不十分だけれども、これでやめます。委員長にお願いしたいと思うのでありますが、今業界の人に話を聞くと、自主的な調整をいろいろやっておるけれども、国会には全然このことを相談せぬ、政府の係官と相談してやっておるように思う。私は、こんなことでできるわけはないと思う。アメリカの連中は、選挙区のためにいろいろやっておるだろうと思うけれども、中には国策のために業界を率いてやっていくような傾向があると思うのです。そこで、国会におけるいろいろな活動というものも、十分に業界の人に認識をしてもらうと同時に、アメリカがそういうやり方をやっているのだから、アメリカに対しては、アメリカ国内のああいう制度に対すると同じような、対照的な意味で相当日本の国会が、この問題について動かなければならぬだろう、政府だけではとても解決できる問題ではない、私はこういうふうに思うのです。その点で、こういう問題は、問題があるごとに取り上げてもらうと同時に、業界の方にも、そういう趣旨をもっと徹底させる必要がある、こういうふうに思いまして、それを希望して、やめます。
  70. 福田篤泰

    福田委員長 加藤清二君。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時計が一時十分をさしておりますので、皆さんもお疲れでございましょうし、私簡単に御質問をいたしますから、お答えも簡単でけっこうでございます。  第一番にお尋ねをしたいことは、御承知通り、ただいま業界が非常に不況に追い込まれております。特に公定歩合の引き上げ、保証料の引き上げ等から、糸へんの商社に大きな倒産の波が打ち寄せております。九州のあらしは目に見えまするし、東海地方のあらしも、すぐ目に見えまするから、騒ぎが大きくなり、手当がすぐ行われておりますが、この商社の倒産につきましては、目に見えない関係上、目に見えるような手当がほとんど行われておらないのでございます。このことは、やがてアメリカ貿易にも大きな関係がありますので、お尋ねをいたしたいと存じまするが、大臣はおりませんけれども、幸い頭の明敏な、頭でいえば知恵伊豆守か村正の切れ味を持っていらっしゃる小笠次官がいらっしゃいますので、主として小笠次官にお尋ねしたいと存じます。  第一に、この公定歩合の引き上げだとかあるいは保証料の引き上げ等が行われた原因は、外貨事情が悪うなったのだ、こういうことからのようでございます。ところが去年、と申しますよりも、ことしの国会が始まりましたころに審議いたしました折は、十五億程度の外貨があった。それがいつの間にやら、だんだん減っていって、七億ドル近くになった。しかもその焦げつきを差し引きますと五億程度しかない、だからこういう手を打つのだ、まあこういうことでございます。一体、先ほどの大臣の答弁によりますと、輸出が伸びなかったのじゃなくして、買い過ぎたんだ、こういうお話でございますが、何を買ったらそれほど減りたのでございますか。外貨事情がこんなに悪くなった原因、この点を次官に、簡単でよろしゅうございますから、お尋ねいたします。
  72. 小笠公韶

    小笠説明員 金融引き締めをするに至りました理由は、御指摘の通りでございます。そこで、輸入が増加したので、何をたくさん買ったのがそれの原因であるかということになりますと、いろいろございましょう。輸出に伴います原材料の手当もございましょうが、統計に現われましたところの主要なものといたしましては、いわゆる鉄——鉄鋼製品、くず鉄等、いわゆる国内の設備投資の盛んなことに基きましてふえましたものが目立って多くなっておる、こういう状態であります。
  73. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 お答えの通りでございまして、三十二年度の四月から六月まで、三十一年度の十月から十二月までを比較してみますと、食糧では一四七%、繊維材料では一八一%、石油では一四七%、くず鉄のごときは二〇七%と、輸入の伸びかそのようになっているようでございます。ここで、私不思議に思うことがあるのです。こういう物を買ったということは、政府がたっぷり予算を組んで、拡大均衡だ、神武景気だというて、景気のよさをあおり立てるものですから、それでついつい買う気になるんですよ。これらのものは、みなほとんどが、勝手に買えるとはいうものの、許可品目なんだ。ついこの間、たっぷり予算、たっぷり予算、こう言うてつけておきながら、それから半年たつやたたずのうちにもう引き締めるという話。だからこそ、この間の外貨の審議の折に、われわれは、これじゃいけないじゃないかということを再三申し上げたはずなんです。それが半年たつやたたずのうちに、急にこういうことをやられて、しかもそれが、この鉄鋼なり繊維材料なり食糧なりというものを買い過ぎて、それで外貨事情が悪うなったんだというならば、業界にぶつけていけば、そのものが悪いのだ、あるいは政策が悪いのだ。ところが、しわ寄せがどこべ来ておるかというと、それを多く買い込んだ、つまり罪を作った主体の相手でなくして、別の中小企業の糸べんの商社にしわ寄せが一番最初に来ておる。人の犯した罪を引っかぶっておるというのですがね。国会じゃこういうことがはやるかもしれません。人が汚職やったおかげで——私一度も汚職やったことがないんですが、二年間に三べんも首切られたんですから、国会ではこういうことがはやるかもしれませんが、業界では罪のない者におっかぶせていく政策は、あまりいい方法じゃないと思います。幸い新聞記者さんがいらっしゃいませんようでございますので、ここらあたりで、頭のいいところでほんとうの話をしていただきたいのです。次官さんはどう考えていらっしゃいますか。
  74. 小笠公韶

    小笠説明員 非常にむずかしい御質問であります。就任まだ日が浅いので、どういう経過であったか存じませんが、現在与えられたる環境に応じまして、できるだけ摩擦の少いように努力いたしたいと思います。
  75. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さすが頭のいい人だから、うまく逃げられたわけなんですがね。就任間もないというても、もう就任せぬ先から、次官以上に、次官以上というよりも、むしろきょう見えた大臣さんよりも、はるかに詳しいし、頭もいいし、これは自他ともに許しておるところなんで、あなたが御存じないはずないし、こういう問題について、あなたが答弁できないはずはない。それをお逃げになることは、何ぞ言えない理由がどこかにあるからの話なんです。言えないものを、ここで暑い中を無理して言ってちょうだいといっても、これは始まりませんから、いずれ後ほど承わることにいたします。  それでは、買い過ぎた品目は大体わかりましたが、買い過ぎた品目がわかりますと、大体買った相手国というのもわかっておるはずでございます。一番多く買った国は、一体どこか……。それは一体どこでございますか。
  76. 小笠公韶

    小笠説明員 お答えいたします。鉄鋼、鉄くず等につきましては、アメリカから一番多く買っております。油につきましては、中近東というようなことでございます。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 原綿も、その仲間のようでございます。主としてアメリカが多いようでございます。日本の経済が破壊するほど、アメリカからいろいろ品物をたくさん買っているというやさきに、アメリカでは、日本のものは買わない買わないという制限法を作るというのです。これにも何やら矛盾があるような気がいたしまするが、これでもよろしゅうございますか、この点も一つ……。
  78. 小笠公韶

    小笠説明員 現在の日米間の貿易の比重につきましては、先ほど来お話があった通りであります。こういう輸入輸出におきまする比重の際に、わが国中小企業者の手になる製品の輸入に制限を加えるということは、私は遺憾だと思います。
  79. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 国民ひとしく次官のお答えに同感だと思います。そこで、私どもが非常に遺憾に思い、業界もこのことについて大臣その他が商工会議所等と話し合われてすこぶる遺憾の意を表していらっしゃることと存じまするが、最も私が遺憾に思うことは、それは寄らば大樹の陰でございまするか、たたかれながらもその手にすがっていくということは、これは無理からぬことだと思うのです。しかしながら、国際的に考えてみた場合、国際収支のバランスから考えてみた場合には、どう考え直して見ても、毎年々々アメリカ日本とにおいては、二億ドル以上の買い越しということが慢性的になっているということでございます。戦後十年十一年、こうなりますると、もうどうそろばんをひいき目にはじき直してみても貿易面でもって二十数億ドルの買い越し、こういうことになっておるわけでございます。そこでアメリカ国からいえば、日本は商売上からいっても、いいお得意様のはずなんです。商売は売りと買いだと大臣も先ほどおっしゃった。どの大臣もそうおっしゃる。売りと買いでいく商売で、毎年々々二億ドル買い越しだ、しかも、財産家の国が貧乏人の国を相手取ったときに、二億ドルも売り越しだというのは、これは世にも不思議な話たといわざるを得ない。経済上の七不思議とはこのことだ。そしてこれを何こか解決をしていかないことには、やかて日本が、寄らば大樹の陰で、アメリカびいきになろうなろうと思っても、なれないようになってしまうじゃないか。すでに、アメリカの識者で、てのように述べている人もある。  そこで承わりたいが、大体買い越しの原因でございますね。相手国が無理やりに買わせているのか、それとも日本の方が相手国に売ることの努力が欠けているのか。もう一度、アメリカ国が日本の方に無理やりに買わせているから、慢性的に二億ドルという賢い越しになるのか、それとも、日本アメリカに対して売るという努力が欠けているから、こういう結果になるのか、その点はいずれでございますか。
  80. 小笠公韶

    小笠説明員 アメリカから日本輸入いたしておりまする商品は、もっぱら機械類あるいは日本産業の維持上必要な原材料が主力でございます。従いまして、アメリカからの何らかの圧力によって買うというようなことは断じてございません。輸出の面につきましては、いろいろ努力をいたしておりますが、何分日本製品アメリカ市場というものを考えてみますると、日本アメリカに機械、原材料等を期待するほどの緊要性が、アメリカ市場には日本商品にないといわざるを得ないのであります。そういう事情でバランスが取りにくくなっておる、こういうのが現状だと思います。
  81. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 日本商品が、アメリカから材料を買うほど向うに売るには、向うの国情に合っていない。言いかえれば、そういう意味のお答えでございますが、それは私もある程度納得いたします。その通りです。品物の流れは、水の流れと一緒で、高いところから低いところに流れる。文化の高いところから、文化の低いところへと流れる。一部逆流する面もありますけれども、大体はそうなんです。そうなりますと、先ほどの指紋の問題をお聞きしたくなってくるのですが、しからば、一体日本の拡大均衡は、どちら向きに伸びていくのか。東南アジア、中共だということになると、中国の人為的障害であるところの指紋、これは解決しなければならないだろうし、東南アジア向けの、特にインドネシアにおけるところの賠償の問題は、早く解決してもらわなければならぬだろうし、等々と言いたいことがたくさんありまするが、これはきょうの本論から逸脱するようでございまするし、すでに同僚の議員も述べておられることでありまするから、ちょっともう少しアメリカの問題を深く掘り下げて、時間がありましたならば、私はぜひ次官以下のほんとうの腹——ちょうど折よく新聞記者がおりませんから、何を言われても新聞には出ないと思いますので……。  そこで、向うが禁止しているということはこれはもうきのう、きょうの話ではございません。アメリカ日本商品を禁止したり制限するということは、これはずっと以前からの話なんです。特に繊維や陶器に至っては、これが歴史的に続いている。そこで、禁止するところの理由を、概括的に調べてみますと——あくまで時間がないから概括的にいきますが、これは必ずしもアメリカ政府それ自体の意向じゃなさそうなんです。また日本商品を扱っているところの向うの扱い商社でもなさそうなんです。扱い商社や国民は、値段が安くて品物がよろしいということで、どちらかといえば、喜んでおる方なんです。だから、経済学者の中には、歓迎すべきであるという論まで述べている人もあるわけなんです。ところが、なぜそれがそんなに反対が起るかといえば、アメリカ国における同業者なんです。メーカーなんです。こちらから非難が起きてきている。それが国会べきて、そして国会で立法措置がとられようとしてきているわけなんです。日本商品が安い、安くてよけい入るから困ると言って、買い手のバイヤーは一そうたたくのです。陶器も繊維もそうなんです。ミシンもそうなんです。たたきまくるのです。きょう参考人のお方が大ぜい見えておるけれども、あなたの業界がどうなっておるか私はよう知りませんが、バイヤーにたたかれるものだから、やむなく泣く泣くその手にすがって、チェックがあってもフロアがあっても、政府様がそれはいかぬとおっしゃっても、ないしょで切って出すのが業者の実態なんです。中小企業の実態なんです。価段で切れなければ、やむを得ないでサービス代でカバーして、出血輸出でもあえてやらなければならぬ。自転車操業の悲しさなんです。これが実態なんです。そう考えて参りますると、この問題は業界だけにどうこうしろということは、もはや時期おくれであって、今は日本政府と向うの政府、つまり、先ほど松平さんもちょっと言われましたが、アメリカ業者から政府に向って陳情し、政府で立法措置をやろう、こういうふうに政治問題化しているのです。経済問題じゃなくて、もう政治問題化している。それで、これに対抗するに当って、日本の小さい中小企業に当らせておったならばこれは負けるにきまっている。いくら宣伝する、いくら弁護士を頼むといっても、これは限りがある。そこで、日本政府としては、もはや政治問題化している問題なんだから、これを政府で真剣に取り上げて、国と国との交渉において取り組むだけの用意があるかないか、この点について……。
  82. 小笠公韶

    小笠説明員 アメリカにおきまする立法は、御承知通り議員提案の法律が多いのであります。日本の国会とは、ちょっと違っておるのであります。そういう趣旨から、アメリカにおきまする制限法案は、関係業界に近しい議員によって法案が提出されるというのが、通常の姿でございます。アメリカ政府といたしましては、先ほど来お話もございましたが、日本立場、大局的に立った立場というものを、十分理解を願っておるはずであります。ここにアメリカ国内におきまして、行政府と立法府との立場の相違からくる意見の相違が露呈されておることは申し上げるまでもございません。であるからといって、われわれ政府におりまする者といたしまして、アメリカ政府の格段の配慮を願う努力はいたさなければなりませんが、アメリカ政府日本政府との話し合いだけでは、片づかないような状況にあるようであります。従いまして、今後の措置といたしましては、いろいろな公聴会あるいは争訟等々におきまする日本立場の鮮明は、業界のベースにおいて行うことが必要である。同時に、政府といたしましては、それに呼応して、できるだけ向うの行政府の理解を求め、善処を要望していくようにせざるを得ないのではないか、こう考えております。
  83. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのつど日本の態度をアメリカ国に対して鮮明する、こうおつしゃいますが、まことにけっこうな考え方であります。ただし、その言たるやまことによろしゅうございますが、それが果して実行に移されているかいないかということは、問題でございます。そこで、聞くところによりますと、近いうちに藤山さんがアメリカに行かれるということでございます。そのつど鮮明するという今の次官の精神からいきますると、これはもうもっけのチャンスでございます。特に、相手は外務大臣とはいうものの、外務関係、外交関係よりも、経済関係のエキスパートであるはずなんです。当代一流の経済家藤山愛一郎さんが向うに行かれる、こういうことでございますので、これに対しては、通産省としても、これこれのことだけはしてもらいたい、こういう態度だけは鮮明してもらいたい、こういう交渉だけはしてもらいたいということが、あるでございましょう。それについて、一体どのような原案をお持ちでございますか。あるいは、すでに行かれる日にちも迫っておることでございますので、すっかりもう話し合いができておることと存じます。その点はいかがでございましょう。
  84. 小笠公韶

    小笠説明員 先ほどのお答えの中で、そのときそのときに鮮明するというような言葉に御理解になったようでありますが、アメリカ行政府と日本政府とは、常に話を持って、向うの指導啓発にお願いしておる、こういうことであるのであります。問題が起って、何か特別のアクションをとるように解せられても困ります。念のために申し上げておきます。  藤山外相が近く渡米せられるに当りまして、もちろん当面の問題といたしましては、経済問題が非常に重要でございます。事務的には、藤山外相に、懸案のいわゆる日本品輸入制限に関しての日本立場というものをはっきり述べていただき、商務長官とお会いのときにも、十分な御配慮を願う用意で事務を進めておる次第であります。
  85. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その内容は一体どういうことでしたか。
  86. 小笠公韶

    小笠説明員 具体的に何商品にどうというようなことまでは、実は私は存じておりませんが、原則的に、先ほど来申し上げましたような日本商品輸入制限について交渉していただく、こういうことでお願いをいたしております。
  87. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いずれ御如才なくその他のことも御連絡済みのことと存じます。外交上の問題でありますから、交渉する前にそれが知れては困るという遠謀深慮から、頭のいい次官はおっしゃらなかったのではないかと思いますので、野党として、この際こういうことをやってもらいたいという注文があります。それだけは一つ、別に発表されたからといって、日米間に支障を来たすようなことはないでありましよう。第一は、今あなたのおっしゃいましたところの、日本商品輸入制限に関するところの緩和ですね。これを一つぜひ具体的に促進していただきたいのであります。  それから、次に、日米間のドルのいったりきたりの点を取り上げてみますると、域外買付の問題がございますね。この問題が行われる、行われるというものだから、業界としては、それじゃ無理して中共貿易なんかやらぬと、政府様のおっしゃる通りにしていこうということで、中共貿易を延ばしておるのがある。ところが、今までのところ、事実もらえた分もありますけれども、荷車をひいている犬の前にえさをぶら下げたようなもので、もうもらえるかもらえるかと思って一生懸命働く、ところが、いつまでたっても、そのえさのところには食いつけない、こういう状況がたくさんある。具体的にやれとおっしゃるなら、私は数を、だっとここで銘柄をあげて御説明申し上げたいのですが、その時間がございませんのでちょっと何ですが、この域外買付の増加の問題、それと同時に、さらに米軍の引き揚げによるところの特需の減少という問題がある。これはやがて貿易外収支の上に大きなアンバランス——過去の年と比べると、大きなアンバランスを来たすところの原因になるのではないか。現在四億ドル以上の貿易外収支で、総体のバランスをとっていた日本の外貨事情というものは、これによって相当の痛手をこうむる。そこで、これについて、ぜひ一つ為替を組むと申しましょうか、それはもう引き揚げていく人はけっこうですが、それから生ずる経済上の痛手の何か穴埋めの為替を組む必要が当然ここに生じてくるわけであります。そこで、これを一つぜひ聞きたい。その一つの材料に、もしでき得べくんば、アジアの開発基金の問題がございます。それよりも何よりも一番大事な問題は、先ほど申し上げましたところの中共貿易の問題でございます。中共貿易の増進に対するところの米国の賢明なる理解ですね。無理にどうというわけではないのですが、賢明なる理解さえあれば、必ずこれはふやしてしかるべきだ。イギリスにおける中国との貿易は、すでにどんどん行われている。これは北京の町へ行ってごらんになれば、あそこの町を走っている自動車が、一体どこの国の製品であるか、工場にある機械設備が、どこの国の製品であるかということをお調べいただけば、もう一目瞭然なんだ。メード・イン・イングランド、メード・イン・USA、メード・イン・ジャーマニー、それでもって第一次五カ年計画はできている。何がゆえに日本製品だけがいけないのか、こういうことが言いたいのです。その点をぜひ……。  と同時に、これは前々から懸案になっておりまするが、繊維事情を一層緩和しないことには——緩和というよりも、繊維輸出を振興しないことには、設備制限のみならず、操短までしなければならぬことになり、それはやがて、せっかく割り当てられたたっぷり予算の外貨を削られて、原毛においても、原綿においても、あるいは人絹糸においても、まず最低二割から三割近いところの削減をされなければならない、こういう状況に相なっているわけです。この苦衷を切々と訴えて、ほんとうに日米が経済的に友好にいくのだ、いや国交的にも友好にいくのだ、特に岸さんのおっしゃることによれば、中立じゃないのだ、べたりと向うへくっついていくのだ、こういう方針であるならば、それは窮鳥ふところに入らば猟師これを取らずで、やせた日本の武士さえそういうことをやるのですから、ましていわんや向うならば、窮鳥がふところに入れば、必ずや何らかの好転するところのきっかけがっかめるだろうと私は思うわけです。そこでインドネシアの三倉貿易ですね。これはずっと以前の国会において、ここですでに約束ができていることなんです。そこでぜひ一つこれをも促進していただけるよう……。これはあなたが、与党としては、交渉前に外交上の内容をここで表明することは、賢明のゆえに差し控えなさったでございましょうから、私の方からの注文としてこれを——まだたくさんありますが、これに要約をして申し上げたわけでございます。  要は、再三申し上げますように、寄らば大樹の陰です。決して社会党だからといって、アメリカ貿易をもうやめてしまえなんというような、そういう小児病的なことは言いません。でき得るならば、日本アメリカから買う量くらいは、向うにも買ってもらいたい。これが要点でございますので、ぜひ一つこの点について明敏な次官の御所見を承わって、きょうのところはこれでおしまい、こういうことにいたします。
  88. 小笠公韶

    小笠説明員 ただいまのお話は、加藤委員の要望ということでありまして、実は要望に対してお答えすることは適当でないと考えるのでありますが、即興的な所見をというお話でありますから、そういう意味においてお答えをいたします。  三点あげられましたが、第一点の、日本商品輸入制限の緩和の問題、私は全く同感でございまして、これに十分なる努力を重ねて参りたいと思うのであります。  第二点の、日米間のドルの交流に関連いたしまして、域外買付の促進、増加の問題であります。これももっともでありまして、現在推定一億五千万ドル見当の域外調達が行われているやに聞いておるのでありますが、これが増加するように努力いたしたいと思います。なお在日駐留軍の引き掲げに伴う特需の減少を埋めるために、何らかの為替措置を要望するということについては、にわかに替意を表しがたいと、私は思うのであります。穴があきましたところは、輸出の振興その他自力においてこれをカバーすべきものと私は考えております。  第三点の、繊維輸出、特に最近問題になっておりますのは、先ほど繊維局長からお話がありましたように、化学繊維、人絹糸、スフ系統のものでございますが、これらの輸出につきましては、何と申しましても、これら化学繊維が、輸出産業としてすでに発達いたしておるのでありますから、極力その方向に努力をして参りたい、こういうふうに考えております。
  89. 福田篤泰

    福田委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ本日はこの程度にとどめます。  参考人各位には、お暑い中を長い時間にわたりまして、種々参考意見をお述べいただき、本委員会調査に多大の参考になりましたことを、厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。    午後一時四十七分散会