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松岡(松)
委員 通産大臣にお尋ねいたしたいのですが、今問題となっております
東北電力及び
北陸電力の
電力料金の
値上げにつきまして、まず私は
北陸電力のことについてお尋ねいたしたいと思います。
大臣はこの
料金の
値上げについて、今ほど
局長からお話がありましたが、
腹案を持っておられる。その
腹案というものを私
どもが詳しくまだ伺わないのですが、大体私
どもの把握したところによると、
基本的申請と大体
根本的には変ってない、ただ
特別電力において少し調節しただけのものである、
根本的には変ってない。そこでおそらく
通産省当局は、
北陸地方、すなわち
富山県、
石川県、
福井県の
電力事情について、おそらく実態の
調査が不行き届きの点があるのではないか、こう思われる点があるので、一応
県民の
要望がありますので、この
事情について質問を申し上げる前提として一応御
説明申し上げたいと思います。
現在
富山県で、
発電いたしております
水力の総
出力は、
通産省当局でも御存じの
通り九十二万二千キロです。このうち
北陸電力が売電いたしておりますのが三十八万八千キロ、
関西電力が五十二万二千キロ、
自家発電は一万二千キロであります。そういたしますと、
北陸電力は
富山県の総
出力の四二%を占めている。
関西電力は五六・五%を占めており、
自家発電は一・三%である。この
実情をお考え願いたい。もともとこの水は
富山県で発生しているものであります。これが
発電のために
県民が多大なる犠牲を払っていることは、これはもうおわかりのことであります。しかして
関西電力は
黒部水系及び
庄川水系から
発電する合計五十二万二千キロの
電力を
富山県を素
通りして
関西へ持っていっております。これが問題の
所在点なのであります。
自分の県で
発電するものが五割五分も他県へ持ち出されている。
県民の相いれない感情というのはここにあるのであります。これは
根本的には九
電力会社をお作りになったときに、
実情調査に対する十分な
検討が足らない結果、この問題が起ってきている。それはおそらく今後においてもいつまでもいつまでも続く問題だろうと思う。そこで
北陸電力側では今回
値上げ申請をしておりますが、
根本のものは何か。
需用が
増加してきたために
関西電力から
融通を受けなければまかないがつかなくなった。九億
キロワット・アワーの
電力の
融通を受けている、こう言っております。ところが
実情を見ますと、私この表で
説明いたしますからよくごらん願いたい。五十二万二千キロの
発電をしてこれを送っておりますが、しからば九億
キロワット・アワーの
電力を
関西から逆送しておるのでありますか。
現実に逆送することができません。
関西で
火力を起して
関西で使っているのであります。要するに五十二万二千キロの
水力の中から、
愛本の
変電所と小牧の
変電所において
北陸の線に結線してこれを
供給しておるのであります。これを換算いたしますと十五万キロワットを
現実に
供給するわけなんです。
富山県で起った
電力を
富山県で十五万キロを
融通して、それを九億
キロワット・アワーに換算して、
火力の
料金キロ当り四円五十二銭を請求しているところに問題があるのであります。だれがこれを納得できるのでありますか。
自分の県で
出力した
電力が全部
関西へ持っていかれて、そうしてその中から十五万キロというものを
北陸電力に
融通しておる。その
融通しておる金が
水力で請求されないで、実に驚くべき
火力の四円五十二銭の
料金によって換算せられたものをまた
北陸電力が承認しておるというところに矛盾がある。
北陸電力は
電気会社として
公共性というものの
認識が足りない。
関西電力も
認識が足りないのです。その
地方の水をもとに
発電している
電力を、その県に一キロも売らないで持っていくというのは、これは国の機構であり、
電力体系でありますから、今ここで議論するところではありませんが、禍根がそこにある。しかしながらすでに
関西電力、
北陸電力、
富山県
高辻知事時代に三者が協定して、電源復元問題にからんで大いに協力するという協定ができておるのであります。これは何を意味するものでありますか。この五十二万二千キロ、この中の
愛本において三万キロという県営の
発電をこれは活用をしておるのであります。そうしたならば
火力で四円五十二銭というものを大体受ける
北電も悪い、
関電もこれは悪い。
通産当局がこれをまた認めるということが、一体どういうわけであるか、問題はここにある。しかしてこれを
検討してみますと、驚くべき結果が生まれてきておるのであります。
基本的計数を見ますと
——電灯用電力から申し上げます。
東京では現在は九円五十銭であります。
中部では十円であります。
関西では十二円であります。ところが
北電では、今までは八円二十五銭で
電灯用電力を
供給しておるのであります。これを今度は十一円七十五銭に引き上げようというのであります。さらに
大口電力を調べてみますと、
東京では二円三十二銭であります。
中部では二円七十三銭であります。
関西では二円九十四銭であります。
北電においては二円七十六銭であります。それですら四十四銭というものは
東京より
北陸は高いのであります。
電力県だ
電力県だと言われておって、
東京よりははるかに高いのであります。それを今度は一挙に三円三十八銭に
値上げして参りました。しかも
特別料金と称して、
増設、
新設に対する
料金は一体どうでありましょう。五〇%
増設した場合には
キロ当り四円五十銭、一〇〇%
増設、すなわち
新設の場合には五円七銭ということになります。これは驚くべき数字であります。一体どこを突けばこういう
計算が出てくるのでありますか。
電力というものは、あらゆる
工業における
原料をなすのです。この
原料部面においてこれだけの
値上げを受けて
産業が成り立つわけがございません。
そこで私
ども実情を調べてみますと、まず
鉄鋼業については、この
北電の
申請について
計算すると、
値上げ率は五〇・四%であります。
化学肥料において四九・〇%であります。
化学工業において五一・九%であります。
紙パルプで二九・五%であります。製錬
工業において三一・四%であります。
窯業において三七・八%であります。
工業機械において二一・一%であります。平均いたしまして四四・一%になります。これだけ各
工業が
電力に支出しているものの
増加支払いをしなければなりません。それを金額に換算いたしてみますると、
鉄鋼業全体で幾らかと申しますると、百万
単位で申し上げますが、七二六、
化学肥料は五二四、
化学工業が三〇六、
紙パルプで二一五、それから
窯業で九〇、
工業機械で四九、合計いたしますと一九六八。百万
単位でありますから、これが十九億六千八百万という
増加支払いが出て参ります。このうち
日産化学という一番
大口を除いてこれは
計算したのですが、
日産化学を加えますると二十二億という
増加支払いが出て参ります。低
燐銑を作る
工場において、一トンを作るのに
電力が少くとも三千キロないし三千五百キロ要るのであります。これが三円三十八銭になりますると、
トン当り少くとも三千五、六百円の
電力の
部面において
原価計算土差が出て参ります。その上
輸送地の不利から
計算いたしますと、少くとも
トン当り五千円の不利を招くのです。貨車と競争して五千円の不利を招いて、果して銑鉄の
工業が成り立つでありましょうか。フェロシリコンにおいてもフェロマンガンにおいてもフェロクロームにおいても、みなこれは言えるのであります。これでは今後
富山県から全部
工場を閉鎖して
東京に移住して、
東京へ
工場を
新設した方がよろしい。毎月々々赤字で生産するよりは、その
工場を解体して
東京に行って
新設して、
東京でかせいだ方がいいということになるのであります。これでは
地方産業というものは壊滅してしまいます。
一体日本の
人口は
東京に集約され過ぎておる。世界の
人口の比を見ても、
東京の
人口は過大になり過ぎておる。そうすれば、結局この
産業の
地方的分布というものは、少くとも現政府の方針でなければならぬ。それは
地方の
産業を壊滅させて、
東京や大阪や名古屋に
工業を集中するがごときことをするなれば、一体
地方の住民は何によって食っていくのか。莫大なる
失業者を生み、あらゆる
産業は萎靡沈滞してしまって、
地方の
人間はどこへ行くのです。これは重大な問題であります。ところが修正案なるものを伺ってみると、驚くべし、これは一体何でありますか。私が調べてみますと、
大口電力の
基本料金において、
電力使用料金三円三十八銭において変りはないが、ただどこが変っておるかというと
——これはもし変っておったら、
局長さんからあとで詳しい御
説明を承わります。私は不明で、
計算が誤まっておったら、私はいつでも修正します。しかしながら私の方で、あなたの方の
腹案なるものの
根本をついてみますと、驚くなかれ、
増設分について、四円五十銭を四円十三銭に下げた。一〇〇%
増設について五円七銭を四円五十三銭に下げた、ただこれだけのことなんです。
電灯については
一つも下っておりません。ところがこれはこの
委員会において聞いたことではございませんが、
北電の
説明などを聞きますと、五十キロ以下の
電灯については一切
値上げにならないのだとおっしゃるのですが、これはとんでもない、私
どもはだまされた。
現実に調べてみるとそんなことはありません。二十キロを
単位に私が
調査いたしてみました。私は
計算はそう精密な方ではございませんが、このくらいな
計算はそう間違うわけはないと思う。第一に
使用料金については、一
キロ当り八円十銭を今度は九円五十銭に上げるのであります。一
キロワット・アワーについて一円四十銭
値上りしますと、これはどういう結果になるかというと、二十キロを
単位に
計算すると、完全に四割二分から
値上りになるのであります。二割四分というのは、これは通計からくるところの
計算上の
あやであります。
現実具体的に
家庭用電力を使っている
人たちは四割の
値上げになります。四割の
値上げとは何事でありますか。こういうことを
県民が了解するわけがございません。それから
工業用電力については、先ほど申し上げましたように、平均四割二分であります。二割四分というのは、これは
計算の
あやであります。
計算の
あやというものでありますから、それを
通産大臣は、
眼光紙背に徹する見識をもって
ボーリングをかけていただかなければ、この問題の判定はつきません。
大臣は、
通産当局諸君のこの
あやにもし誤まりを犯すことがあるならば一大事でありますから、今のうちによろしく
ボーリングを
大臣みずからしていただきたい。一八、九%の修正
腹案なるものはいいかげんなものであります。少しも変っておりません。でありますからして、この際少くとも
関電においては、私の
意見から言わしめれば、
火力料金なんか取る権利はありません。
水力だけを取ればいい。
現実具体的に
富山県から
発電した
電力を
融通しておるのでありますから、
水力料金だけを取りなさい、それを
火力料金など取るのは
もってのほかのことであります。これは、私は
地方の
実情を申し上げて
大臣の御
所見を承わるわけでありますが、そこで
富山県、
石川県、
福井県の
県民の
世論を私
ども調べてみますと、先ほど
局長は
聴聞会において何か
条件付の
賛成者が多かったようなことを言うておられるけれ
ども、たった四十人や五十人の
人間で、しかもなるべく
会社側に有利なような
人間がたまたま現われてそれらの
意見をもってその
地方の
世論などと言うに至っては、
もってのほかであります。
認識不足である。実際今
富山県や
石川県や
福井県の人々の叫び声を聞いてごらんなさい。もしこれをあなたの
腹案で査定してごらんなさい。いかなる事態が発生するか、私も想像つきません。大へんな問題であります。これは
委員諸君もぜひ
一つ聞いておいていただきたい。
大臣におかれましては、こんな軽率にこの問題を急がれる必要はない。少くとも、
大臣みずから
ボーリングをして、
実情を調べて、そして納得のいくところでわれわれともよく御
相談になって
大臣はすでに
委員会でもよく
相談をしてやるというお
言葉を賜わっておる。これは私も
賛成だ。この
言葉を曲げないでいただいて、軽率に急がないでいただきたい。その上で御
所見を承わりたいと思うのであります。