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今井中小企業庁振興部長 中小企業団体法案について御
説明いたします。
政府は、
中小企業の振興をはかりますため、昨年の六月内閣に
中小企業振興
審議会を作りまして、そこに
中小企業者の代表者並びに学識経験者に
委員になっていただきまして、
中小企業対策を
審議、検討していただいたのでありますが、その答申としましては、
政府はすべからく
中小企業に対する金融問題、税制問題、合理化問題につきましてなお一層の努力を払いますほか、特に
中小企業の組織強化につきましてこの際新しい
法律を設けるようにという答申をいただいたのであります。
中小企業の
業界として最も望んでおられますことは、もっと金融を円滑化してもらいたい、あるいは税金が重いからもっと減税してほしいということであろうと思います。
中小企業が大
企業に対抗いたしまして生きるためには、どうしても合理化が必要なわけでございまして、従いまして、どうしても金融を受けなければならないということになるわけでございます。ところでわが国の
中小企業の
業界を見ますと、個々の
中小企業が非常に資力が弱いこと、のみならず数が非常に多い上に年々
中小企業者の数がふえる傾向にございまして、従いましてその間どうしても
行き過ぎた競争が行われ、その結果
業界自体が非常に苦しんでおられるということになっております。せっかく合理化をしようと思いまして、金を借りまして合理化をしても、十分その効果が、過当競争の結果、あげられないというふうなことになっております。従いまして今後合理化を進めて参りますにつきましても、あるいはそのために
業界の安定をはかります上におきましても、この際組織を従来以上に強化し、
業界の自覚によりまして団結を強め、一定の規律を作って、それを皆さんが、
中小企業が守っていくということが最も必要である。従いまして、この際
中小企業の団結を強めるための
法律を出したいと
考えたわけでございます。
御
承知のように、
中小企業の組織といたしましては、従来協同
組合法に基く協同
組合と、
中小企業安定法に基く
調整組合と二つございます。協同
組合は、
業界の同志的結合によりまして経済
事業を行うことによって合理化を進める組織でございまして、
中小企業界に正常な競争が行われ、何と申しますか、正しく運営されているときに最も適する仕組みでございます。ところで、先ほど申しましたように、
業界に過度の競争が行われ、その結果非常に
業界自体が不況に苦しんでおるという場合におきましては、今まで認められている
調整組合は、いろいろの意味におきまして内における固め方も足りない、あるいは外に対する力も足りないと、いろいろ
欠点もございましたので、この際
調整組合を廃しまして、もっと団結力の強い商工
組合を認めて、それによりまして
業界の安定をはかっていこうというのが
法案のねらいでございます。
団体法の中には、従来の協同
組合は
業界の自発的な合理化に対する組織として従来
通りに
規定いたしまして、そのほかに、ただいま申しました商工
組合を新しい制度として設けておるのでございます。従いまして、従来の
調整組合を廃しまして、商工
組合を認めたということがこの
法律の第一点であります。
従来の
調整組合はいわゆる
調整事業だけよりできない。共同経済
事業はできないという点につきましていろいろ
業界からも不満があります。つまり設立が二重になっておりますために、その間いろいろむだもありますし、それから
調整事業に伴って当然やらなければならないような共同経済
事業もできないということがありましたので、従いまして、今回の商工
組合におきましては、
調整事業のほかに経済
事業もあわせて行うことができるというふうにいたしたのでございます。
それから第二点といたしまして、いかなる場合に商工
組合を作り得るかということでございますが、工業のみならず、たとえば建築業、あるいは運輸業、あるいは商業、サービス業、こういうあらゆる業種につきまして競争が過度に行われ、その結果
業界が非常に不安定になっておるという場合には設立を認めることにいたしましたのが第二点でございます。
従来の
安定法によりますと、業種を
政令で指定しまして、しかも工業だけに限りまして
調整組合の設立を認めていたのでございますが、商業、サービス業につきましても、もちろん不況に悩んでいる
業界がたくさんあるのでございまして、従いまして、
業界が自主的に自分たちで規律を作り、その不況を克服していきたいという希望をできるだけかなえていくのがやはり筋ではないかと
考えたわけでございます。しかも、
政令でもってその都度その都度業種を指定しております結果、非常に時間的にタイミングが合わない。つまり、ややもいたしますと時期が遅れて
不況克服の効果を減殺するというふうなこともございましたので、今回は、不況によりましてその
業界が非常に困難に直面しておるという
業界につきましては、商工
組合を認めることにいたしたわけでございます。ただしこの
業界の自主的な
調整の意欲というものをできるだけ尊重しなければならないのはもちろんでございますけれ
ども、他方それによりまして
業界自体の
調整が
行き過ぎになる、つまりそれによりまして消費者に迷惑をかけ、あるいは関連
事業者に迷惑をかけるというふうな場合におきましては、この設立の際、いかなる
調整事業を行うかということもあわせて検討いたしまして、消費者に迷惑をかけるとか、かけたというふうな
事業が予想される場合には設立を認めないということにいたしまして、でるきだけさようなことのない限り、
業界の意思を尊重しまして
組合の設立を認め、そこで
調整事業をやってもらうというふうにいたしたいわけでございます。
調整事業につきましては、これは従来の
調整組合における
調整事業とほぼ同様で、つまり工業部門については、あるいは
設備につき、あるいは生産数量につき、あるいは原料の購入
方法、製品の販売
方法につきまして一定の
調整ができる。あるいは販売業者の組織としての商工
組合におきましては、製品の仕入れ、あるいは販売
方法につきましていろいろの
調整ができるということになっておるわけでございまして、価格協定につきましては、これは消費者に最も影響がある問題でございますので、従いまして、たとえば生産に関するいろいろの
調整事業、あるいは販売
方法に関するいろいろの
調整事業をいたしましても、なかなかうまくいかない、このよくよくの事態におきましてはじめて価格協定というものが
考えられるわけでございまして、しかもその際消費者の利益を守るところの
公正取引委員会の同意を得なければやってはならないというふうにいたしておるわけでございます。
次に第三点といたしまして
組合交渉に関する
規定を新しく認めたのでございます。従来の
調整組合におきましても、たとえば、取引関係にございますところの、たとえば、工業で申しますと原料を買う場合、あるいは製品を売る場合につきまして相手方と
団体協約ができるという
規定はあったのでございますが、それだけではまだ不十分である。
中小企業界は非常に
原料高、
製品安ということで悩んでおりますので、従いまして、
組合だけの力では十分いかない。外部の協力も仰がなければならないという場合が非常に多いわけでございまして、外部と話がまとまります場合はこれは
団体協約ということになるわけでございますが、その
話し合いの過程におきましていろいろのむずかしい問題が起る。その際に、
組合が成規の手続によりまして、相手方に
組合交渉の意思を表明いたしました場合におきましては、それを受けました相手方は誠意をもって
措置しなければならないということにいたしたのでございます。その意味は、相手方は正当の
理由がなければこれに応じなければならないということと、さらに進んで誠意をもって
話し合いを進めてほしいという意味でございます。さらに、
話し合いがどうしてもつかないという場合におきましては、このために特に設けられました調停
審議会の
意見を聞いて主務
大臣が両当事者に勧告をすることになっておるわけでございます。ただ、この
組合交渉のやり方につきまして、これは取引関係あるいは競争関係にある
方々と
交渉するわけでございまして、これは通常の商取引の相互形態ということでございますので、普通良識をもって話さなければならないのは当然でございまして、これによりまして、たとえば背景に実力行使的なものがあってはならないと
考えるわけでございまして、従いまして、この
交渉の手続につきましては、
行き過ぎにならないように
法律でもって
規定してあるわけでございます。
交渉ができませんでした場合には、先ほど申しましたように、主務
大臣の勧告ということにいたしておりますが、その際、たとえば労働協約の場合における裁定という制度はとっておりません。これは事が取引の関係に関しますので、従って物事を敏速に解決しなければならないという
趣旨と、それから事柄自体が私契約上の問題でございますので、従ってあくまで両者間で話し合うことが必要ではないか。また第三者による裁定というふうなことになりますと、どうしても裁定せられた
組合だけがある意味におきまして営業が
制限される。そうじゃない場合には営業が
制限されないというふうな、法の前における不公平という問題も起りますので、従いまして、そのような問題はやはり国自体が責任をもって解釈すべきではないか。あとで申し上げますアウト・サイダーに対する規制はやはり国自体で責任をもたなければならないのじゃないかと
考えまして、裁定というふうな制度は全くないことになっております。
次に第四点といたしまして、アウト・サイダーの規制の方式に関しまして、新しく加入
命令の制度を設けたことでございます。商工
組合といたしまして、自分で
調整規定という規律を作りまして
組合員自体がそれを守ろうといろいろと努力をしておるにもかかわらず、なかなか外部に強力なアウト・サイダーがあるために規律がうまく守れない。その結果、
業界自体が非常に不況になっておりますのみならず、ひいては国民経済全体についても影響があるという場合におきまして、アウト・サイダーにもどうしても
組合に協力してもらう必要があるわけでございまして、その協力の
方法といたしましては、従来
中小企業安定法によりますれば、国が直接
命令を出しましてその
組合の
調整に従わしめるというふうにいわゆる服従
命令を出していたのでございます。しかしこの服従
命令と申しますのは、この
命令に違反いたしますれば罰則その他によって取締りを
確保できるというふうな点はございますけれ
ども、ややもいたしますると国の権力によりまして、アウト・サイダーの協力の精神が薄れてくるという、いわゆる官僚統制的な
欠点があったのでございます。またそのほか、経費やあるいは取締りの面におきましても不公平、イン・サイダーとアウト・サイダーとの間に不公平を生じまして、正直者がばかを見るというふうな結果を招いていたわけでございます。で今度加入
命令を新しく認めましたのは、さような、国が直接やります服従
命令というふうな
措置よりも、その
組合が非常にしっかりしておりまして、しかもこの外部におりまするアウト・サイダーの協力を得ますれば、つまり中へ入ってもらっていろいろ話し合えば、問題は解決する見通しがあるというふうな場合におきましては、国が
中小企業者に限りまして加入
命令を出しまして、そしてその
組合の中に入ってもらって、
組合の中で話し合って民主的に解決してもらいたいという
趣旨でございまして、さような加入
命令を新しく制度として作ったわけでございます。もしこのアウト・サイダーの活動が
中小企業でなくて主として大
企業にあり、
中小企業だけその
組合に入ってもらいましてもうまくいかない、どうしても大
企業の協力を得なければならないという場合におきましては、従来
安定法に認められておりましたアウト・サイダー規制
命令の制度もそのまま残っておりまして、従いまして、このいずれの制度でいくかということは
業界で慎重に検討していただきまして、
業界の方でこれは加入
命令で物事が解決できるという場合におきましては加入
命令の申請がございましょうし、あるいは大
企業の非協力によりまして物事がうまく解決つかないというふうな場合には、どうしてもやむを得ず従来の服従
命令、そういうものの申請があるわけでございまして、従いまして、その申請がありました場合には
政府におきまして安定
審議会に諮りまして、そして
行き過ぎではないかとか、あるいはこれによって物事が十分解決できるかというふうないろいろのことを検討しまして、その結果として結論を出して
命令を発するということにいたしておるのであります。
以上四点が今回の
法律の骨子でございますが、これに関連しましていろいろ問題があるわけでございますが、それに若干触れますと、まず第一には消費者にこの制度によりまして不利益を及ぼさないかどうかという点でございますが、この
法律によりまして、新しく工業のみならず商業、サービス業に対しましても
組合の設立を認めたのでございますので、商業、サービス業におきましても、その
業界安定をはかるために一定の規律を作って、そしてその活動をしていくことを認めたわけでございますが、ややもいたしますと商業、サービス業におきましては、価格協定を作って消費者に迷惑をかけかねないという感もあるわけでございますが、先ほ
どもちょっと触れましたように、価格協定というのはよくよくの場合でなければできない。しかも
公正取引委員会の同意を得なければできないという建前にいたしまして、非常に慎重を期しておる次第でございます。また、この
業界の実情といたしまして、商業、サービス業は、これはサービスなりサービスの
内容なり、あるいは値段によって
お互いに競争しておるわけでございますので、従ってこの価格協定というふうなことは
業界自体としてよくよくの場合でなければできない。ほとんど大部分の
業界におきまして価格協定というのはできないものであるとわれわれはまあさように
考えて、この
法律によりまして消費者の利益を害することはまずまずないと
考えております。
次にこの
法律によりまして統制経済に移行しはしないか、あるいは官僚統制にならないかという点が問題になるのでございますが、私
どもといたしましてはさような懸念は万々ないというふうに
考えております。元来
中小企業は非常に自主独立の精神の強い
業界でございますので、従いましてよくよく不況が深刻になりませんと、自分の手で自分を絞めるというふうなことはしないわけでございますので、従いまして、
組合を作って
調整事業をやりたいということは、これはさような
業界がやむにやまれず持ってこられるわけでございまして、その場合に私
どもとして受け身の立場でもってそれに協力していくという関係にあるわけでございます。あくまでもイニシアチーブは
業界にありまして、役所は受け身の立場でそれに力を貸すという立場にとどまるべきでございまして、また先ほど申し上げましたアウト・サイダーに対する規制の問題にいたしましても、これは
業界としてあらゆる手を尽しましたがどうしてもアウト・サイダーに対してうまくいかない、何とか国の力を借りてやりたいという申請がありました場合に、初めていろいろ慎重に検討いたしまして、国がこのうしろだてになるという性質のものでございまして、従いまして、これによりまして官僚統制に移行するという筋合いでないと、われわれはさように信じておるわけでございます。
大体この商工
組合の設立によりましてこの不況が克服され、さらに団結が強化されることによりまして
中小企業の金融問題あるいは税制問題、あるいは合理化問題、それからほかのあらゆる問題がそれに並行され、かつそれが基盤となりましていろいろの施策が進んで参りまして、
中小企業の振興に寄与するものと確信しております。