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1957-04-25 第26回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十五日(木曜日)   午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 西村 直己君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    内田 常雄君       首藤 新八君    田中 角榮君       中村庸一郎君    南  好雄君       村上  勇君    横井 太郎君       春日 一幸君    片島  港君       佐竹 新市君    田中 武夫君       中崎  敏君    帆足  計君       水谷長三郎君    八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         中小企業庁長官 川上 為治君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    今井 善衛君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十五日  委員賀谷真稔君辞任につき、その補欠として  西村彰一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十四日  機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三四号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業団体法案内閣提出第一三〇号)  中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等  て関する法律案内閣提出第一五二号)  中小企業組織法案水谷長三郎君外二十三名提  出、衆法第二号)  中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に  関する法律案水谷長三郎君外二十三名提出、  衆法第七号)  中小企業産業分野確保に関する法律案(水  谷長三郎君外二十三名提出衆法第五号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出、  衆法第六号)     —————————————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  中小企業団体法案中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案中小企業組織法案中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案中小企業産業分野確保に関する法律案及び商業調整法案、以上各案を一括議題とし、質疑を継続いたします。阿左美廣治君。
  3. 阿左美廣治

    阿左美委員 私はこの団体法に対しまして、昨日も参考人からいろいろな意見を伺いまするといずれも強制加入には反対だ、また団体交渉にもやはり反対というような意見がありまして、結局しからばどうするというような、これにかわるべき意見は昨日もないと思うのでございます。そういうようなわけで、中小企業対策というものはきわめてむずかしいと思うのでございます。何人もこれは批判は自由でありますけれども、実際の対策を研究いたしますと、そう簡単にはいかないのが中小企業対策だと思うのであります。要するに今日悩んでおるのは、いずれも生産過剰である、つまり必要以外の品物生産しているのだ、結局はこういうことになると私は思うのでございまして、この中小企業というものが過当競争によって作らなければならないというような立場はどこから生まれておるかということを、たとえば繊維業者関係を申し上げますと、もともと資金がないのであります。戦後資金というものが少しもない業者が融資を受けて設備をし、またそれをもって資材を買い入れてやっておるのですからその経営に無理がある。結局手形取引でございますから、手形を落すために商売をしておるので、実際に利益を得るために商売をしておらぬというのが現状なんであります。そういうわけでありますから、なかなかこの規制がむずかしい。相場が下がったり、利益が薄くなると生産を増大しなければならないという関係になるのでありまして、それはまことに不可解なわけでございまして、そういうことはないはずだと一応考えられるのでございますけれども、たとえば一カ月の手形支払いが一千万あるといたしますと、それに対する支払いを計画しなければならぬ。そうすると売り上げはやはり一千万以上を求めなければならぬ。しかしそれが二割、三割の下落をするというようなことになりますと、翌月はやはり二割、三割の増産をしなければならぬ、こういうのが中小企業現状であるのであります。結局利益がなくなったり、売れなくなると生産を増加する。そうでなかったら振り出した手形が落ちないというのが中小企業現状なんでございますから、こういうようなことをそのままにしておいて対策を立てたところで、これは解決はいたさないと思うのであります。結局買い手のない、必要のないものを多量に生産をして、それを買ってくれ、これを販売しろというようなことでは、いつまでいっても解決はしない、こういうのが中小企業実態なんでございます。そうでありますから、これは団体交渉でいきましても、またどういう対策でいきましても、こういうような根本的の解決をいたさない以上には、どこまでいっても解決をしない。一体経営に無理があるのでありますから、そういうような点から考えてみますと、私どもはどうしても過剰生産ということを何とか考えていただかなければならぬということになりますと、設備制限ということは当然なされなければならぬと思うのでございます。設備制限でございますけれども本法によりますと設備制限が、五十六条にも規定してございますが、新設設備制限ということがないと思うのです。これでは新しく設備したものにどういう取扱いをするかということになると問題になるのではないか、こういうふうに考えられるのでございまして、こういう点に対して修正をしていただきたい、私はこう思うのであります。それはどういうわけかと申しますと、設備制限本法においてもできますし、また使用制限もできるわけでございますけれども、新しく設備をするということに対しては何らの制限がない。新規設備をいたしまして事業をやるということになると、これはアウトサイダーになると思うのです。そういうものをこれからどういうふうに扱っていくか、どういう取り締りをするか、こういうことがきわめて不明瞭だと思うのであり、ます。安定法によりますとはっきりしておるのであります。安定法の二十九条の二に、「通商産業大臣及び当該指定業種に属する事業についての主務大臣は、前条第一項又は第二項の規定により生産設備制限に関する命令をするに際し、又は命令をした後において特に必要があると認めるときは、当該命令有効期間中に限り、省令をもって、当該指定業種に属する産業設備を新たに設けることにつき制限をし、又は禁止することができる。」こういうふうにはっきりしておるのでありまするが、本法には新しく設備禁止するということははっきりうたってない。ここに非常に疑義があるのではないか、こういうふうに考えますが、これはどういうことになるのでしょうか。運営上これはまた政令で特にどういうふうにこれをお扱いになるのですか、一応これをお伺いいたしたいと思います。
  4. 川上為治

    川上政府委員 実はこの問題につきましては、われわれ政府事務当局内部におきましていろいろ議論がありましたわけでございます。というのは、この設備新設禁止許可の問題につきましては、最初からこの新設を押えることは営業許可というようなことに引っかかってくるのではないだろうかそれからまた本来営業者でないもの、たとえば国とかあるいは地方団体とか、そういうようなものにつきましての設備新設を押えるというような問題が出てきはしないだろうかというような問題が出まして、法律論的にいいましてもいろいろ問題があるのではないかというようなことになりまして、それよりもやはりこの五十六条によりまして、設備使用制限ということに対して規制命令を出すというようなことで、この新設許可にかわって十分できるじゃないかというような議論が出まして、この問題については、先ほど申しましたようにいろいろな問題が検討されたのですが、そういうことで全面的にいけるのではないかということで、実は安定法の二の命令をとりやめたというようなことになっておるわけでございます。先ほど申しましたように、どうも営業許可というようなことにこの問題は通じてきはせぬかというような問題が出まして、現在安定法の二十九条の二では認められておるけれども、やはりこの問題についていろいろ疑問があるというようなことで、政府内部でいろいろ意見がありまして、それにかえてこの使用制限ということで十分いけるじゃないかというようなことで、実はそういうようなことになったわけでございます。私自身としましてもこの問題こついては、果してそれがいいかどうかという点ついては実は疑問を持っておりますけれども、いろいろ法制局と相談しておる最中にそういう問題が起きまして、かような次第になったわけでございます。
  5. 阿左美廣治

    阿左美委員 営業許可というようなことのためにそういうことができなかったというふうにお答えをいただいたのでございますが、しかし安定法にはこういうふうに明記してあるのですから、安定法ならできるが、団体法ではできないというようなこともないではないか、こういうふうに考えますので、私は後日この団体法施行になりましていろいろ疑義ができたり、またいろいろの支障を起すおそれがあるのでございますから、この際これをはっきりしていただいた方がよろしいのではないか、こう思うのでございます。新規設備というものを禁止せないのだということになれば、かりに織機なら織機というものを新しくどんどん作りまして、作ったものをどうするか。それを使わせないということもまた法に反するのではないか、こういうようなことになるのでございまして、どういたしましてもこれは安定法に明記してあるように、はっきりしていただくことの方が、後日扱い上非常に疑義がないのじゃないか、こういうふうに考えますので、なるほど一応はこの設備制限もできるのでございます、これは常識的に考えてみても使うことのできないものを生産するはずはないじゃないか、だから新規設備を作るというものはないはずだというふうにも考えられますけれども、なかなか業界はそうでない。やはり新しく作ります。作ったものを使用させないということになれば、これはまた問題になるのじゃないかと考えますので、これは条項をあらためて、新規設備制限禁止ということをここに加えていただくことが私はよろしいと思いますが、なおもう一度あらためてお伺いいたします。
  6. 川上為治

    川上政府委員 先ほど申し上げましたようにこの法律事務当局でいろいろ検討しております間に、安定法の二十九条の二の命令というのはどうも少し問題があるのじゃないかというような議論が実は出まして、こういうことになったわけでございます。私どもの方といたしましては現在すでに認められておるものをやめるというのもいかがかというような疑問も実は持っておりますので、この問題につきましては委員会におきまして御検討していただきたいと思うのでありまして、私どもの方としましては実は法律論的に厳密に解釈しますと、これはやはり抜いて、現在この法律案に載っておりますような使用制限ということだけでいけるのじゃないかというふうに考えましたので、さよう御了承願いたいと思います。
  7. 阿左美廣治

    阿左美委員 安定法では認めておるが、団体法では認めることができないということはどうも納得がいかない。これについて大臣にお伺いいたします。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 調整が行われておる期間に限って新規設備制限をするくらいのことでなければ、実際に調整が有効にできないだろうと私ども考えておって、その点は部内で非常に論議したところでございます。ただ問題はこの団体法の精神が、不況時に中小企業がいかに自主的に事態の克服ができるような組織力を持てるかというところにこの法律重点があり、全体的にそういう線で一応は貫きたい。それでなくてもこれが営業権制限だとか加入命令についても法律上のいろいろな問題がございますし、それから官僚統制になる危険性がないかというようなこの法案に伴って相当心配された意見が出ておるときでございましたので、営業制限というような色彩はできるだけこの際は取った方がいい。そうして実際に調整事業を必要とするような事態のときには、実際問題として工場を作ろうとか設備をしようというような意欲は普通ならないはずでございますので、たまたまそういうのがあっても使用制限というようなことで調整がとれるだろう。法律的にいろいろ疑義を残す問題はこの際できるだけこの団体法で避けて、本来の目的の線を貫くことに重点を置きたい、こういう気持で、今長官から説明されたような経過でこういうふうになったのですが、私たち自身もやはりあなたのおっしゃるところまでいく方がこの効果を上げるのじゃないかという問題は考えておりまして、十分の自信はございませんが、立法の過程でそういうふうになったというふうに御承知願いたいと思います。
  9. 阿左美廣治

    阿左美委員 私はどうしてもこの新規設備制限をしなかったならば過当競争は免れないと考えるのでございます。御承知の通り繊維工業設備臨時措置法によりまして、現在稼動している織機を国も業者も廃棄して買い上げているといような状態でありますから、新しい設備を認めることはどうしても納得がいかない。これなりこの法案を通すと非常な疑義が起るのではないかと考えますので、もし委員会においてこれを修正いたしましたならば、政府におきましてはどういうようにお扱いいただけますか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 すでに安定法においてそこまでは踏み切りをうけておった問題でありますので、やはり営業禁止ではなくて調整期間、一定の期間中だけに限った措置としてどうしても必要だというようなことが委員会で決定されるというときには、政府はこれに異存はないつもりでございます。
  11. 阿左美廣治

    阿左美委員 ある程度納得をいたしたわけでありますが、この中小企業対策中小業者そのもの結束だと思う。ばらばらで結束のできないところ施策を講ずることはできない。金融の道をつけるとしても業者の一致しないところにはその対策はないのであります。中小企業としても結束ができ得れば方法はあると思います。そういう点から考えてみまして、どうしても強制加入が必要ではないか。われわれが長い期間組合経営に悩んでいるのは、業者そのもの結束をしないで勝手なことを言っているということです。結局アウトサイダーにいた方が実際は利益です。まじめな業者結束してふまじめな者がアウトサイダーになっているのが現状なんでありまして、そういうことからまじめな者がなくなればアウトサイターも経営は成り立たないのでありますけれども、まじめな者が犠犠になってアウトサイダーが栄えるというのが現状であります。そういうような点から考えてみますと、中小企業は一致して団結することがすべての対策の根本になると思いますし、これは強制加入は避けられない。私は約四十年組合経営に当っておりまして、組合員に対するところ悩みを知っております。決して私の言うことは空論でもなければ理想でもない。現実に組合経営していく上において非常に困っていることは、組合が一致して経済行為を行うことができないところ悩みがあるのです。これさえできればいかなる対策方法もあるのです。金を借り入れるといたしましても、結束して資金を求めるならば資金は幾らでも得られるのであります。ところ都合のいいときには加入して都合の悪いときには脱退をするということだったら、いかなる人が経営に当りましてもこれは不可能だと思うのでございます。むしろ私は加入をするということよりも脱退を防ぐということ、これはまじめな人が加入いたしましても、やはりふまじめな人がアウトサイダーにおいて勝手なことをやるということになれば、やはりまたそれにならって、まじめな人も脱退するということになる。これではいつになっても、組合の運営というものはまじめに経営ができない。むしろ私は、脱退者をいかにして防ぐかということだと思うのです。脱退者を防ぐということは、結局強制加入において、全部の人が一致して組合を作るということでなかったならば、これはどうにもならぬ。自主的に、強制でなくして一致することができ得るならば、これほどけっこうなことはないのです。しかしながら現在の中小企業におきましては、やはりそういうわけには参りません。ある程度の強制を加えたり法の保護がなかったならば、一致したところの行動はとり得ないのでありますから、どうしても私はこの強制加入ということは必要だと思うのでございます。それで確実なる団体を作って、そうして経済共同行為を行うならば、中小企業といたしましても必ず生きられる道はあると思います。そしてやはりある程度の生産の調節をしなかったならば、現在のように過当競争で、利益のないためにやむを得ず増産をするというような傾向にあっては、中小企業が浮ばれないということは当然のことなのです。そういうようなことを考えてみますと、私は現在のこの団体法は、非常によく研究してできておると思う。なかなかよいところをつかんであります。本法案が通過いたしまして、この線によってやはり業者結束して共同行為を行うならば、完全に生きる道があるのではないか、またそういうふうに経済行為が行えるということになれば、それはすべての資金におきましても、方法はあると思う。また援助の道もあると思います。現在のような中小企業実態においては、いかにしても国の施策を講ずる道はないと私は思う。まずもって完全なる組合を作って、それが共同の、一致したところ経済行為を行うことの上において施策を講ずるということになれば、必ず生きる道があると私は信ずるのでございます。  そこで団体交渉についてでございますが、これはなかなかむずかしいことでございまして、私どもも長年この団体交渉という線においては、いろいろ扱ってみたのでございますけれども、これはなかなかそう簡単にいきません。とにかく相手がお得意様でございます。商行為でございます。それを団体交渉によって解決するということは、なかなか不可能だと私は思うのであります。むしろこの団体交渉よりも、組合組織を健全にするということの方が先であって、組合組織が健全であるならば、そしてそう必要以上の生産をしなかったならば、団体交渉に持ち込まなくも、やはり相当に製品の販路はあると思います。しかし不当なるところ生産をして、それを団体交渉解決しようといっても、それは少し無理ではないか、こういうふうに考えるのでありまして、私どもも今までずいぶん交渉はしてみましたけれども、何回交渉しても、やはり実績を上げたことはない。結局こちらの言い分を通しますと、あなたの方の品物は一応扱わない、こういうことになる。扱わなければこっちは困る。そういうような、点に対しまして、私は一つ社会党の、団体交渉に対するところの御意見を承わりたい。この社会党案でございまするが、これを見ますと、強制加入は好ましくない、こういうような御意見で、すべての解決団体交渉において解決をする、裁定においてこれをやるというようなお考えのようでありますが、この方法において中小企業のすべての解決ができ得るとお考えになっているか、またどういう方法においてこれを解決なさるか、一応御説明を願いたいと思います。
  12. 春日一幸

    春日委員 私ども組織法案によりますると、この協同組合団体交渉をなし得る場合を、あらゆる場合を想定いたして規定をいたしているわけであります。これを抽出して申し上げますと、まず交渉主体となり得るものは、事業調整協同組合、これは二十七条の六、七であります。それから同連合会、それから事業協同組合並びに同連合会勤労事業協同組合、こういうものが団体交渉主体となり得るのであります。なお応諾義務のある相手方についてでありますが、これは政府案と違いまして、組合員取引関係のある業者またはその団体、一切のものを対象とし得るという形に相なっているわけであります。それから相手方に対する応諾義務を、私どもの方は百一条の二項におきまして、一切の取引条件について行うことができる、こういう規定を行なっているわけであります。これは、政府案と違いますところは、組合相手方に示した調整規程、またその案にかかる調整事業に関してのみ、政府案は二十八条で交渉ができると、交渉内容を限定しているわけであります。それからなお、交渉に対して相手方のとるべき措置というこの点につきましては、政府案誠意をもってというわけで、その誠意の限界というものの具体的な明示がありません。私どもは百二条におきまして、相手方は正当な理由がないのに拒否することができないと、応諾を厳格に義務づけているわけであります。従いまして、この交渉のプロポーズをいたしましたからには、相手はやはりこれに対して応諾をしなければならないという、こういう関係で、非常に権威が高められておるわけでございます。こういうような関係法律構成は相なっているわけでありますが、具体的な一つ手続措置といたしましては、個々の経済ケースによる交渉でどうしても話が妥結いたしませんときには、やはりこの法律に準拠いたしまして、相手法律に基いての申し込みを行なって、その場合相手がそれに応諾をし、なお申し込み条件について交渉の結果、妥結いたしますればそれはけっこうでありますが、妥結いたしません場合は、一方もしくは双方の申し立てによりまして、組合に加盟していただくことを要求する場合も、あるいはまたその調整規程に対して服従をしていただくことを要求する場合にいたしましても、これはその次の機関であります中小企業調整委員会調停申請を行うわけであります。そういたしますると、この調整委員会は、やはり国家的な機関の性格を帯びておりまして、中小企業者学識経験者労働者消費者、この四者構成になりまして、公正なる立場から両方意見を聞くのであります。そうした場合、当然委曲を尽し、かつ実情をつまびらかにして両方からその意見が出され、そうしてこの国家機関は第三者的公正なる立場において調停努力をいたします。それでその調停あっせんをいたした結果、双方の歩み寄りができて妥結いたしますればそれで最終的解決がはかり得るわけであります。これは私は相当重視してしかるべき事柄であろうと存ずるのであります。すなわち国家立場で、公正なる立場で、その調停申請を行なった双方に対してそれぞれの調停努力が払われるということであります。その調停の結果、なお満足すべき妥結点に到達いたしません場合には、上部機関とでも申しましょうか、この際さらに上告という形をとって、調停委員会に対して裁定申請を行うことができるという形に相なるわけであります。そうしますと仲裁裁定委員会はこれを再審いたしまして、今までの調停努力とはさらに一段高い角度から、すなわち結論的な勧告を行なっていく。裁判所の判決のような、どちらが正しいかという立場に立って、かくあるべしという裁定を下す。その裁定こそは一つの有権的な効力を持つという形になりまして、法律ではこれは民事契約が成立したものとみなす、こういう形で取扱いをいたしておるわけであります。そういうわけでありますから、政府案ではただ単に団体法の六十条で聴聞ということをいっておりますけれども、これは一方的に官がその当事者の意見を聞くにとどまるのでありまして、これを公正なる立場からいろいろと批判検討する機会もありませんし、また聴聞そのものはそういう意味と目的を持っていないという様子であります。第三者が話を妥結に持っていくための努力を払っていく。しかもそれが国家的規模においてその努力がなされていくということは、正しい主張に国家がくみしていくという意味で私は問題の紛争を解決するために資するところが非常に強いのではないかと考えておるわけであります。なおその場合、両当事者の意見が十二分に反映でき、主張し得る場所がそこに確保される。こういうところに特別の意義があるとお考え下さいまして——すなわち、言いたいところを十分言い尽せるのでありまして、そこで言いたいことを言ってしまって、なおかつその状態において国家機関から仲裁の努力あるいは裁定が下されるという形になりますれば、示談、墾談という形を通じて納得の結果に到達し得る可能性が大いにあるという、こういう工合にこの手続をとりますれば、民主的な手法によって事ごとの団体交渉について相当効果がある措置がとれる、かくのごとく考えるわけであります。
  13. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今御発言の社会党案調停ないしは裁定裁定が下れば団体協約の認証を受けたものとみなすと百二十四条にあります。ところが百二十五条によると、「裁定に不服のある当事者又は利害関係人は、中小企業調整委員会に異議の申立をすることができる。」と書いてあります。これはどういう関係になりますか。今の御説明からいうと、裁定があればそれが最終的であるかのごとき御説明だが、百二十五条によると、さらに異議の申し立てができる、申し立てをどう扱うかということは一向規定がないようですが、どういうことになりますか。
  14. 春日一幸

    春日委員 実はそれは正誤表で訂正してあるのであります。第百二十五条は「本章の規定による中小企業調整委員会裁定に不服のある当事者」というのは「本章の規定による地方中小企業調整委員会裁定に不服のある当事者又は利害関係人は、中央中小企業調整委員会に異議の申立をすることができる。」こういう工合に正誤表で訂正してあると存じます。すなわち、中央地方に労働委員会と同じような構成で、地方調整委員会、中央調整委員会とその機関が二つ持たれるわけであります。従いましてこの場合は最初から裁定申請もできます。しかしまず第一段階として調停申請を行い、その調停妥結しない場合は、その同一機関裁定申請を行うこともできるわけであります。さらに御質問のありました点は、地方の調停委員会において満足すべき裁定が行われない場合におきましては、これを中央機関に上告することができる、こういう形になっておりまして、これはミスプリントに相なっておりますから御了解願いたいと思います。
  15. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それから調停をする機関裁定をする機関はひとしく調整委員会なのですか。
  16. 春日一幸

    春日委員 そうです。これは調停の過程を経てから裁定申請ができる、こういう工合になっておりません。いきなり裁定に持っていくこともできます。これは百二十一条でいきなり裁定申請を行うこともできますし、いきなり裁定を望まないで、この機関によって両者の話し合いを十分尽したい、かくのごとくに双方あるいはまた一方の当事者が考えます場合は、調停の道を選ぶこともできる。これは労働関係調整法とはその趣きを異にいたしておるわけであります。
  17. 阿左美廣治

    阿左美委員 百一条に「代表者又は組合の委任を受けた者」とありますが、これは別に人数も制限はしてないようでごさいますが、委任を受ければ何人でもその交渉に当って差しつかえないと考えてよろしいのですか。
  18. 春日一幸

    春日委員 これは一昨日の御質問にもお答えしてあったところでございますが、いずれにいたしましても法律規定しております通り、第一義的には組合の者が交渉に当る、こういうことであります。それからその当事者だけでは事を欠く場合があります。たとえば経済問題でありますから、商法だとかその他関係法律の関連におきましてよく事情を知っておらなければ適切なる交渉を行うことができないような場合も想像されるわけであります。またこれが府県一単位の調整組合というような場合には、その当事者間だけで話し合うよりも、上部団体である連合会の参画を得て話し合いをした方が、全国的規模において適切なる結論が得られるような場合も想定されます。従って特に学識経験者を必要とする場合、あるいは上部団体の参加を得た方が問題解決のために資するところが多かろうと考えられる場合、さまざまな機会を想定してこういう規定を行なっておるわけであります。しかしながら御指摘のありましたような何十人でもというようなことを、全然考えておりません。あくまでもこれは自主共同団体活動によって問題の解決に進むというのでありますから、人数につきましては別に制限しなくとも、慣習上中小企業者のいろいろな性格から考えまして、相手に脅威を与えるような形において交渉がきまることを想定しておりませんし、あるいはそういうような形をもって交渉に臨むということは、これはすなわち相手が脅威を感ずるから、圧迫を感ずるから交渉には応じないという、いわゆる義務応諾の条項をみずからこわしてかかっているような形になりますので、そういう他人数が相手に示威的な形でもって交渉する、そういうことは全然あり得ないものと考えておるわけであります。
  19. 阿左美廣治

    阿左美委員 私は、この団体交渉に当りまして、最後の裁定を得るまでの期間は相当の期間が必要ではないかと思うのであります。そういうことになりますと、現在の中小企業の経済状態では、そういう期間を待つわけにはいかない。たとえば現在は、こういうことになっております。私ども組合交渉として、各商社に交渉に当りますことは取引の手形期間でございます。大体において手形というものは、常識的に六十日ということが原則になっておるのであります。ぜひその手形期間は六十日にしてもらいたいということを全国の商社に向って交渉した例は幾多あるのであります。そういたしますと、幹部は大体においていろいろ現在の中小企業立場、また金融事情を申しますと了承するのであります。なるべく御期待に沿うようにいたしましょうという一応の返事は得られるのであります。ところが担当者になりますと、幹部が何と言おうが、われわれはある一定の資金を与えられて商売をしておるのだから、もしそういうことであれば扱いを半減するとか、三分の一にする以外には道はないのだ、こういうので絶対に応じない。そういうことになりますと、あなたの商品はどうも買い入れを中止する以外に道はない、こういうふうに断わってきます。そういたしますとやむを得ませんからその悪条件に従わざるを得ない、こういうことになりまして、泣く泣くやはりその条件に従って取引をしておるのが現状なのであります。そういうわけで、何ゆえにそれに従わなければならぬかというと、手形を発行しておりますからその商品をさばいて、その代金においてその手形を落さなければ手をあげることになります。手をあげては大へんですから、やはりその悪条件に従わざるを得ない。こういうことになるのでございまして、どうも社会党の案において団体交渉けっこうでございますが、その交渉が長引いたりすると倒産をしなくちやならないのですが、これはどういたすのでありますか。
  20. 春日一幸

    春日委員 ただいま阿左美さんの御質問でありまするが、団体交渉によって、あるいは組合交渉によって大企業がその下請企業に対してしっぺい返し的な報復措置を講ずるおそれがある、この点につきましては、政府案社会党案も同様のおそれなしとは断じがたいのであります。この点につきましては、私どもはこの法律の第二条におきまして、この法律の結果そういうしっペい返しを行うような大企業あるいは当事者に対しましては、これは明らかにこの法律の効果を阻害するの行為でありますから、これは中小企業組織化と経営の合理化との促進を阻害するもの、そういたしまして国家は積極的な措置をとるべきものでありまして、これはやはりそれぞれの法律施行いたしておりまする過程において、そういう弊害が著しく中小企業組織化あるいは団体交渉を阻害するというような形になりますれば、それに対する適正な措置もおのずから必要になってくるのではないか。この点は、政府案社会党案も同じような問題について、やはり注意を払わなければならぬと存ずるのであります。  それから同時に今御指摘になりましたタイミングの問題であります。経済は絶えず流動転変をいたしております。こういうような場合に、交渉をしてもなかなか結論が得られない、仲裁だ、裁定だということで時間をかけているうちに問題が解決してしまったり、あるいはその効果を失うという場合も想定されるわけでありますが、私ども社会党案におきましては、中央と地方にこういう国家的性格を持ちまする機関を設置するわけであります。現在安定法による調整組合がいろいろの措置を講じておりまするが、これは中央に一機関があるだけであります。そういたしますると、わが国における経済現象の万般の事柄を、ことごとくこの機関において取り扱わなければなりません。従いまして審問を開始し、審決を行うまでには非常な時間がかかるわけであります。ところが私ども組織法によりますと、中央地方に、一道二府四十三県にこれを置くわけでありますから、従いましてその府県においてむろんその事務局の活動が開始されるわけでありまして、これは非常に能動的にその取扱いが行い得るわけでありますから、現在たとえば労働関係調整法等におきまして、労働問題について相当の紛争が起きますけれどもこれがことごとく能動的に、効率高く処理されている事例にかんがみましても、私は今回の社会党案によりますれば的確に、タイミングに問題の処理がなし得る、そういう能率をこの事務局は持ち得るものと考えておりまするし、なお今後具体的にこういう機関を持ちまする場合、そういうような実情に即し得るような規模と構想で事務局が構成されますれば、すなわち国の予算が相当計上されてそういう機動力を確保するような措置をとりますれば、御心配になるようなことはないと考えておる次第であります。しかし政府案によりますと、これは中央に安定審議会が一つあるだけでございます。地方にはありません。(「調停審議会がある」と呼ぶ者あり)それでは社会党のまねをしてあるようであります。(笑声)
  21. 小笠公韶

    ○小笠委員 春日さんの今の問題は、私は社会党案一つのポイントだと思う。いわゆる団体交渉の問題を早期にけりをつけていく、経済の流れにおきまするタイミングをとっていくという問題は非常に重要な問題であります。今、春日委員の説明によりますと、中央及び地方に調整委員会を置くから、適当な予算をとればこれが事務局の積極的活動と相待って、問題はスムーズに解決していくだろうと言われる。しかも現在の中小企業安定法に基く中小企業定安審議会の例を出して説明されておる。そういう点は、いわゆる問題を迅速かつ正確に解決する保証の説明にはならぬと思う。およそ経済問題に少くとも関係当事者を拘束するような判定を下すことは、一種の裁判行為と同じであります。従いまして非常に慎重かつ精密にやらなければいかぬと私は思います。そういう点から考えますと、いわゆる経済の流れ、経済のタイミングと合うという御説明は、ただいまの御説明では納得いたしがたいのでありまして、私どもは社会党の案のいわゆる形式的に見まして非常に民主的だと言われるが、実質はその間に時間がかかり、いろいろな派生的トラブルを起してきて、経済の安定が果して期待し得られるかどうかという危惧を持っておるのであります。従いまして今の春日委員のあろうという御説明を、もう少し正確かつ公正なる御答弁を願いたい。
  22. 春日一幸

    春日委員 小笠さんはほとんど全生涯を官僚生活を送っておられまして、経済活動、経済行為からもたらされるさまざまな事象については、ほとんど実際の御経験をお持ちになっておりませんので、あるいはそういうような非難めいた難くせをつければつけ得ないことはないと存ずるのであります。しかしながら私どもがこの法案を策定いたしますに当りましては、かねて申し上げております通り、昨年の八月から実にずっと半年をかけて参りました。この間におきましては、中小企業団体の各指導者、学識経験者法律家、またわが党における衆参両院の政策マン等、衆知を網羅いたしまして、そういうような場合についての現象いかんという点について経験者の豊富な経験をも徴しまして、いろいろとこういう構成をいたしたわけであります。そこで申し上げたいのでありまするが、結局ことごとくの紛争がこの手続によるわけではございません。すなわち業者たちは今までは交渉ができなかったのでありまするが、今回この法律ができますると、こういう法律を背景といたしまして、まずフリー・トーキングと申しましょうか、自由な形、いわゆる商談の形で利害関係を持つ者が交渉をいたしまして、妥結に至らざる場合初めてこの調停申請に至るのであり、裁定申請に至るのであります。そういうわけでありまするから、結局この法律の背景といいましょうか、伝家の宝刀といいましょうか、私ども一つ自由に交渉しましょう、それで妥結に至らない場合はこういう国家機関にかけていろいろとお互いの立場を明らかにする、こういう形でありまするから、零細といっては語弊があるかもしれませんが、今まで力の関係において比較的劣った立場にありました中小企業者がこの法律によって力を加えられるわけでありまするから、自由な交渉の場においても相当有利な話し合いができ、なおその妥結を促進する、こういうことは考えられるわけであります。なお申し上げまするが、この法律による大きな深遠なる経済現象のことごとくに対して、何と申しましょうか、腹がへったときに飯を食ったようにすぐ解決ができるとはだれも考えておりません。やはり一つずつ前進をいたしまして、そうして問題の処理をはかっていくわけで、一ぺんに万事が解決できないからやめるとか、あるいはそんな不完全なものかということになりますと、それは一律には断じがたいと存ずるのであります。そういうわけでありまするから、こういうような中央、地方に持つところ機関をできるだけ能動的に、かつその効果を高めていくことによりまして、中小企業立場が大いに強められて、そうしてこれはこれとして相当の効果を期待し得るものである、こういう工合に私どもは確信をいたしておるわけであります。9小笠委員 今のところ政府案及び社会党御提出の両案の団体交渉の大きいねらいは、大企業者あるいは関係業者の間の話し合いによって経済問題を解決する新しい場を作るということにおいては私は同じであります。この設定された新しい話し合いの場によって解決されるような場合、当事者間の話によって解決される場合の多きを期待いたしたいのであります。そこで問題になるのは、いわゆるあっせん、裁定に持ち込む場合が中心になると思うのであります。試みに例を一つ引いてみますと、百人の総同業者がおる、そこで九十人の人々が一つ事業調整協同組合を作っておるという場合を想定し、その調整協同組合において生産数量の調整をやっておる、こういう場合を想定したときに、二つの面が出てくると思う。一つ生産数量の調整に関連して、原料購入あるいは製品販売等に関連する取引系列における間との交渉の問題、第二は外におる十人の個個の人々の同調を求める問題があると思う。こういうふうに一応想定されるのでありまするが、社会党の案によりまするならば、いわゆる取引の上下系列におきまする交渉におきまして話が簡単につけばけっこうでありまするが、つかない場合は、団体交渉による調停もしくは裁定に持っていかなければなりません。同時に、いわゆる員外におる十人の個々に対して、生産設備、数量の調整に関して同調を求めるための団体交渉的な交渉を持ち込まなければいかぬ。ここに団体交渉的要素が上下左右に起ってくることは想定しなければなりません。そういう場合に、話のつくものもありましょうし、話のつかない場合もある。特に同業種の中で員外におる人々は組合加入を欲しないような傾向の人々が多いと考えなければなりません。これは調整の外におって自由なる活動を欲する人々であります。これらの人々が簡単に話し合いに応ずるとは想定できないのであります。またこれまでの日本の実態はそうであります。従いまして、この十人の人々にそれぞれ団体交渉をする場合は、多くの場合においては、いわゆる調停もしくは裁定まで持ち込まなければならぬ場合が多いのではないか、こういうふうに一応想定されるのであります。こういうふうなときに、調停もしくは裁定に長期間かかると仮定しますれば、本体の九十人の事業調整協同組合の本来の目的が時間的に失われると見なければなりません。そういう場合に、今私が御質問申し上げておるように、調停もしくは裁定がスムーズにかつ迅速に行われるということがこの案のみそでなければならぬという意味において、迅速かつ正確に協定もしくは裁決が出、当事者がこれに服従していくことを確保するの道はどこに出てくるか。今春日委員の御説明では、であろうという想像であります。私は、であろうという想像以外の御答弁であったとは理解いたしかねるのであります。そういう意味において、最も社会党案の大事なところでありまするから、いわゆるこういうタイミングの問題に十分間に合うんだという理由を明確にもう一度御説明願いたい。
  23. 春日一幸

    春日委員 問題はこういう工合に集約されるのではないかと考えるわけであります。小笠さんのいわゆる政府案は拙速を選ぶとでも申しましょうか、私どもの方はおそくとも完全でなければならぬ。なるほどタイミングの点については私どもはいききか劣っておる。これは私は認める。しかし巧遅がいいか拙速がいいかという問題は、大いにわれわれは慎重に検討しなければならぬと存ずるのであります。早ければ何でもいいかというと、たとえば交通法規がありますけれども、早ければいいというのならば、ストップの赤信号が出ておろうが、あるいは青信号が出ておろうが、ぴゅっと走っていってしまえば確かにこれは早い。早いけれども、そこのところは必ず交通事故が起る。こういう人を殺傷しても早ければいいというようなことは小笠さんも考えられてはいないと私は存ずるのであります。そこで問題は、この強制加入命令という形がありますと、これは人道でも車道でも何でも早ければいいということで、むやみに走っていってしまって、そこからいわゆる独禁法の基本憲章、憲法におけるそれぞれの保障、こういうものがことごとくじゅうりんされてしまいまして、その結果単なるそういう基的人権だとかなんとかいう原則の損傷ではなく、日本経済におそるべき事態が予測される、このことを私どもは最高度に注意いたしておるわけであります。たとえばこういう事態を想像いたしましょう。百人の中で九十人が一つ調整規程に対して賛成をいたしました。ところが十人は賛成をしなかった。その場合その十人の主張が公正な場合には、これは何といたしましょうか。たとえばこの灰ざらが百円でありまして、百円で売るということについて九十人が賛成した。ところがその十人は賛成をしない。これを調停委員会申請して第三者の公正なる機関が両者の言い分を聞いたとき、たとえば九十人の人たちは、これは手作りで作っておる、そうして非常に幼稚な方法でやっておる。だからこれはどう考えてもその工賃と材料といろいろな関係で百円で売らざるを得ないとする。ところがその十人はこれを八十円で売っておるとするのだが、八十円で売れるという場合については、現在の立場から考えて公正なる理由があるとする。たとえばその製造方法について彼らは独自の研究をしたとかあるいは材料のとり方について非常に生かした、いわゆるむだを省いた製造方法をとられたり、そういう方法でいろいろ原価採算で工賃をとってもなおかつ相当利潤を得て八十円で売れるのだ、こういうことが調停機関において、あるいは裁定の機会において両方から聞いた場合、国家はどういう裁定を下すでありましょう。そうすれば九十人は多数といえどもこれは九人の方が悪いじゃないか、こういう方法をとって、こういう生産手段を用いればこれは八十円で売れるじゃないか、こういう形になってくる。そういたしますとわが国の経済のためによりいい品物を安く売るという経済の基本現象である独占禁止法の精神が生かされてくるのです。だから多少時間はかかっても大事なことは国家経済、国民経済、消費者立場です。肝心な事柄を私どもは主客転倒してはならないと思う。ですからこういう法案なり経済問題を取り扱うときには、やはり拙速を避けて巧遅を選ぶ、こういうことでなければならぬと存ずるのでります。私たちのねらいはそこにありますが、しかしながら経済現象は毎日はつらつとして動いておる。情勢は常に変化しております。従ってタイミングをはずさないように中央地方に機関を設けて、かつその事務局を強化してその機動力を失わしめないような措置をとっていく、こういう工合に御理解願いたいと思います。
  24. 小笠公韶

    ○小笠委員 しつこいようですが、これは社会党案のポイントになるわけでありますから、私は重ねて一つ伺いたいと思いますが、今春日委員の御説明は精巧巧遅でありまして、なかなか捕捉に困難でありますが、いわゆる団体交渉を認める前提は、業界の不況が深刻であり、相当数の人々が生産費を割り、まさに多数の倒産を来たすかもしれないような非常事態にあるのであります。これは社会党案調整事業協同組合の前提もそうだし、政府案の前提条件も同じであります。従いましてたとえば今春日委員の説明のごとく一方において調整組合の方が生産費が高く、員外の方が安いという場合には、そういう調整組合調整能力を認めたことが間違いであります。そういう事態というものは通常の経済競争の可能な事態において考えるものであります。総体的にいわゆる独禁法二十四条に規定する不況カルテルの要件のようにおおむね生産費を割っておるというような論議がありますが、こういうような事態が両法案を通じての調整事業の前提と考えなければならぬと思う。こういう前提に立って考えますときに、私は春日委員の説明は実はおかしいのであると考えざるを得ません。本法の両案のねらいというものは今申し上げましたような状況下にある中小企業に、お互いに臨時措置として調整行為によって一時のしのぎむつけてやろうというところにあると私は思うのであります。その一時のしのぎをつけることによって公正かつ自由な競争態勢の基盤をつちかわせようというのが両案の本来のねらいであるべきだと私は思うのであります。こういう事態に対処していわゆるタイミングの問題というものが重大であります。いわゆる民主的な形のために本体の方が死んでもかまわぬという議論は私は理論として本末転倒の議論考えざるを得ない。論理は当然にそういうふうに動いて参りますので、この点につきましてはこれから詳しく申しませんが、社会党案一つの行き方として認めるのであります。当該中小企業者の行き過ぎの問題についてどうして一時的しのぎを与えるか、そのときタイミングの問題であります。タイミングの問題をどうしてカバーしていくか、ここに問題があると思いますが、その点はどうお考ええですか。
  25. 春日一幸

    春日委員 タイミングの問題はきわめて重大な要素であります。あなたは今非常に緊急な事態と言われておりますけれども、あなたの方の業種は全部の業種を対象として非常緊急の経済行為を認めようとしておられる。ここに重大なる要素があるわけであります。私は今交通整理の問題を申しましたが、交通整理の場合でも緊急非常のものに対しては特別の措置が講ぜられておる。たとえば消防車、救急車、警察の車とかいうものは赤信号があっても走っていっていいのだ。ところがあなたの方の法律では、救急車にも消防車にもトラックにも自家用車にもみな特別措置を認めようとしておる。これでは一体経済の秩序はどこでけじめをつけていくか、重大なことです。それはそういう一つの概念で物事を御理解願わなければならぬと思いますが、具体的な例を申し上げますと、今私が申し上げましたのは、新しい製造方法であるとか、発明発見等のいろいろな事態もあるでありましょうが、そうではなくて中小企業者のグループの中においても比較的有力な事業者とはなはだ弱小な事業者との関係があるのであります。これを一つ調整規程の中で組合から拘束を受けていく場合を想定いたしますと、事態はさらに具体的に御判断願えるのではないかと思うわけであります。先般も申し上げたわけでありますが、服部時計の掛時計を二千円とする。あの時計は非常に精密である。技術、税金一切を含めて二千円で原価採算がとれる。町工場では安い給料、技術の非常に劣っているところの職人、悪い材料、悪い機械で千二、三百円でできるとすれば、しかもその製品はいなかの諸君がけっこうこれで間に合うといって買っていき、需給の関係も保証されているという場合、掛時計は二千円だ、極端な例でかりに日本じゅう二千円で売るべしという不況克服のための共同行為として調整規程が行われた場合、みな服部のものを買ってしまってほかの弱小工場の品物は売れなくなり肝心の保護をしなければならぬ弱小企業者が逆に整理されるという逆現象の生ずることも防がなければならぬ。そういうことはいけないといって調整規程があくまでも民主的にやられていくことになれば、服部さんは二千円、斎藤さんは千九百円、次郎さん、太郎さんというわけで、ずっと言うた通りの格差をつけて、それを調整計画の中にきめていくならば同じことになる。多少は拘束力を持たせていかなければならぬが、その組合の決定が独断的であって断じて承服できない。承服すれば自分の商売はやっていけないという正当な立場に立つ者は、あくまで員外者となって組合の拘束から避難するという立場で保障してやらなければならぬ。そうした場合その組合の外にいる人がその調整規程に服せざるために団体交渉を受けたときは出るところに出て私の理由を言いましょう。私の工場は安い賃金、安い材料でへぼだけれども、いなかのだんなが幾らでも買ってくれるから私の商売は成り立つという場合は正当な理由ではないか。あまのじゃくやへそまがりは制限していかなければならぬ。たとえばみんなが百円に売るものを一人だけ九十円で売ることによって全部の需要を独占できるようなカンニングの行為は制裁をしていかなければならぬ。そういう場合の制裁はどうやっていくか。それは公けの場合のことを言えば、今までは五個しか売れなかったから、これだけの利潤にしかならなかったが、みんなが協定価格を作るものだから、注文が全部わしのところへ来てしまって、一人占めをした。だから販売量がふえたから、これでそろばんが合うのだというような、そういう不公正な、他人を犠牲にすることによって自分の所得が確保されるということに対しては、これは裁定は厳として下る。そういうことは許されない、こういう形で問題の処理がはかられていく。こういうことであらゆる場合を想定して、わが党案は融通無碍、完全無欠であるわけですから、こういうことに一つ御了承を願っておきたい、かように思います。
  26. 小笠公韶

    ○小笠委員 これは非常にこの問題の焦点でありますから、なおあらためて伺いたいと思いますが、ただいまの春日委員の御説明は、いわゆる強制加入あるいは員外規制命令の場合以前の問題でありまして、以前の場合におきましては、同じようなことが言い得ると思います。従いましてこの問題は、春日委員のタイミングが合うんだという御説明に対しては納得いたしかねるということを申し上げまして次会に譲りたいと思います。関連質問が長くなりますので、これでやめたいと思います。
  27. 阿左美廣治

    阿左美委員 一応春日委員の御説明を伺いますと、納得のできるところもありまするけれども、われわれは、やはり今までの体験からいきますると、まずもって自己防衛が先だと思う。しかる後に団体交渉も、これはけっこうでございますけれども、自己の防衛を怠っておって団体交渉に当っても、これは成功しない。私どもは現在そういうような苦難をなめているのです。いかに交渉しても、こちらが弱いのですから、向うに応じられなければ、どちらが困るかというと、こちらが困るのです。そういうような立場においての交渉は、これは成功すべきものでないと私どもは信ずるのです。現在私どもは取引におきましても、不当返品としてこれを拒絶した、拒絶したところが、向うは応じない、応じないで、またこちらへ押し返した、こういうことにおいて公取に提訴したこともあります。公取に提訴いたしますと、そういう産地、そういう組合からは、品物は扱わぬと断わってくるということになりますと、産地の組合員理事長をつるし上げにします。けしからぬ、それではわれわれやっていけないじゃないか、こういうような事態が起りまして、結局こちらの意思を曲げて向うの条件に応じなければならぬというのが現実でございます。そういうような状態において、これは裁定とか交渉とかいいましても必ずこれは期待を持てない。まずもって自己防衛である。組合を強化することである。  それで、いろいろ強制加入ということが非常に問題になっておりますけれども、これに応じない者はむしろ有力者なんです。零細業者ではない。やはり、結局へそ曲りのあまのじゃくがアウトサイダーになって、組合の意に従わないというのが、それがいろいろの災いをなしまして、むしろ組合を裏切って、組合立場を阻害するというような行動をとっているのが、このアウトサイダーです。そういうような者は入れと言っても入らない。常に組合を妨害をしている。こういうような者は、これはどうしても強制的に加入させて、組合の中において共同行為を行わしめるような方法をとらなかったならば、私は同一なる行動はとれないと思う。こういうような点において、まずもって自己防衛が先である。そして完全なる組合組織して、しかる後に団体交渉もけっこうだと思いますが、現在のような状態において、団体交渉のみにおいてこれを解決するということに対しては、私は期待を持てない、こういうふうに考えます。取引というものは、これはなかなかむずかしいものでございまして、理論的にばかり解決はつかぬ。実際にこちらにそれだけの用意がなかったならば、これは遺憾ながら向うの条件に応じなければならぬというのが現状なんでございますから、この点に対してもう少し社会党におきましても御研究が願いたいと思う。ただ団体交渉でいけば解決がつくというのは、労働組合だとかいうような単純なものであればこれは長期にhたって交渉もできますけれども、現方の中小企業という経済能力のないものは、これは長期にわたっての交渉には応じられないのですから、即席にこれを解決しなければならないということになるのですから、どうも団体交渉団体交渉といいますけれども、それだけではどうにもならぬ。私は団体交渉よりもむしろ組合の強化ということが先だと思う。そういうようなことからいいまして、政府案は、団体交渉というものは必要がないというのではございません。けれども、これは相手方をあまり刺激しないような程度においてこれを勧告する、こういうようなことになっております。これは結局は社会党案のように、最後は、こちらの準備が整えば裁定まで持ち込んで、応じない者は、応ずるようにするというような方法考えておりますけれども、現在の段階においては、勧告程度で私はよろしいと思うのでありますが、これに対して社会党さんといたしましても、多少現在の実情を御考慮願いまして、この政府案に御賛成を願いたい。
  28. 春日一幸

    春日委員 今の阿左美さんのようなむちゃくちゃをおっしゃって、困ってしまうのですが、私は重複を避けます。これは基本論になりますが、私第一日に質問いたしました通り、やはりわが国は法律のもとにおいてそれぞれの条章が守られて、そしていろいろな法律関係において矛盾撞着のないように、十分その関係調整が行われた立法をなさなければならぬ。基本法の精神を圧殺するような特別立法は許されない。たとえば、憲法は天皇制を認めている形になるが、それを否定するような法律はいけません。こういうようなことで、公正取引委員会からのお説もありました通り、今まではとにもかくにも、不況カルテル、トラストあるいは合理化カルテル、こういうようなものを容認いたします場合は、これは断じてアウトサイダーの存在が必要である、行き過ぎ是正のためのブレーキとして必要欠くべからざる存在である、今まではそういう形でなければカルテルは容認されなかった、将来も容認する意思はない、もしそのことを行えば大へんなことになる。こういう工合に、独占禁止法の主管責任者であります公正取引委員会が、委員会機関決定によって責任ある意見を述べているのでありますから、それに相反する特別立法を行うことはまことに危険だ、こういう態度を社会党は持っているのであります。そういうわけでありますから、この問題はわれわれがその独占禁止法と憲法との限界において、特別立法をなし得る限界はおのずからあるわけであります。従いまして、この点はそういう工合に御了承を願わなければなりませんが、しかし政府案加入命令があり、今組合を強化せよとおっしゃるけれども、この加入命令組合を何ら強化いたしません。これは一昨日私も質問をいたしたのでありますが、加入命令に服従しなかったからといって何の制裁もない。これは無罪です。加入命令大臣が出したところで、こんなものは何だと言って紙くずかごにほうっても、全然法律には触れないのです。それでその調整計画の中で過怠金を取られるというような心配もあるわけでありますが、この関係は、過怠金を徴収することを定めることもできる、こういう形になっておりまして、過怠金、違約金を取らなければならぬという制裁も何もないわけであります。従いまして今阿左美さんは、せっかく政府案を支持した形で、強化のためにとおっしゃっておりますが、政府案でも、加入命令が課せられるからといって、やはり憲法と独占禁止法の建前において、これに対して刑事罰を課することができないのです。従いまして何の拘束力もない。いうならば気休めです。言うてみるだけのしゃれです。そんなものならば、組合を強化することにはなりません。従いまして、憲法や独禁法の基本憲章を圧殺するようなおそれのある事柄、しかも結果は何の効力もない、そういうようなことはなきさるにしかずというのが、われら社会党の態度であるのでございまして、遺憾ながらせっかくのお勧めでありますが、そのような、憲法と独禁法を殺すような特別立法には、わが日本社会党は断じて賛成するわけには参らないのであります。
  29. 阿左美廣治

    阿左美委員 これは見解の相違でございます。現在の段階においては、団体交渉では決して中小企業というものは救われない、むしろこちらにはね返りがあるのではないかと私ども考えます。われわれは、これに対してはすでに経験済みでございます。決して理想を言っておるわけではない。非常にこちらへはね返りがあって、むしろこちらが犠牲になるということだったので、もう少しわれわれの方を準備して、向うと相当対抗でき得るような状態において団体交渉をするということになればその効果も得られると思いますけれども、むしろ現段階においては逆効果になるのではないか。昨日の参考人からこういう発言があったのはお聞きの通りでございます。この法案が通るようなことがあればわれわれは自己生産をせざるを得ない、こういうことを大商社、大メーカーは考えておるのですから、私は、団体交渉解決をつけようといたしましても解決はつかない、だから現段階においては政府案が最も適当ではないかと考えます。  もう時間も参りましたし、お互いに見解の相違がございますので、私の質問はこれで打ち切ることにいたします。
  30. 福田篤泰

    福田委員長 小平久雄君。
  31. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今の、阿左美委員あるいは小笠委員と社会党側との質疑応答を拝聴して、まず一点だけお聞きします。社会党案では、団体交渉相手方というものが百一条に規定されておるようです。政府案における組合交渉の場合には、中小企業者は対象にならない、つまり相手方にならないわけですが、あなたの方の規定からいうと、「同一業種に属する事業を営む者」、単にこういうふうにうたってあるのですから、中小企業者も含むのですね。
  32. 春日一幸

    春日委員 組合員取引関係がある事業者またはその団体すべてに対して交渉ができるわけであります。
  33. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そうしますと、先ほどタイミングの話がありましたが、中小企業者たる員外者、そういう人が比較的多いという場合には、おそらく個個の員外者と団体交渉をすることになるだろうと思うのです。そういうことは組合にとっても非常に繁雑であり、かつタイミングの点からも非常に手間取って、早急なる解決はできぬことになる。あなたの言うように巧遅一本でいくならばよろしいかもしれぬが、そういう点はどう考えておられますか。
  34. 春日一幸

    春日委員 現実の問題として、ことごとくの紛争がこの法律に基く団体交渉権を行使して解決されるという想定ではないわけなんです。今阿左美さん御指摘の、今までもやってきたんだが効果が上らなかったというお話でありますが、今までは、そういう交渉について、なるほど協同組合法によって一応の基準はありますけれども、それが妥結せなかった場合の規定というものは何にもないわけなんです。ところが今回は、政府案におきましてもわが党案におきましてもその救済方法がことごとく講じてあるわけ下あります。そういうわけでありますから、自由交渉によって満足が得られなかった場合は、やはりこの法律に基いて団体交渉権を行使するのでありまして、団体交渉権を行使するということは、いうならばよほどのことであります。自由交渉という場面は今まで通り許されておるわけであります、問題が経済交渉に関する事柄でありますから。商談が今まで通り行われる場合においてのみこの法律が援用される、こういう工合にお考えをいただきますならば、この場所へ持っていく問題がそんなに山積するというようには考えられませんし、施行いたしました過渡期にあるいはそういう現象があろうかと思いますが、やはりそのときには特別の措置を講じて機動力を高めていくことによって問題の解決をはかり得ると考えます。
  35. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点は実際の事態がどう起るかによって決することでしょうが、これは先ほどの質疑応答に関連してそういう憂いを抱いたものですからお尋ねしたわけです。  次に、川上長官に承わります。もうだいぶ詳しく論議されておりますから大体のことは明らかになったわけでありますが、従って多少こまかくなるかもしれませんが、実際この法案が通過した場合どういうふうに施行されるのかというようなことについて、解説をするつもりで御答弁願いたいと思います。  まず第一に、昨日参考人として出席下きった諸君のごときは、大体この法案をよく読んでおられるし、また理解されておられるというふうに私受け取りました。しかしながら、質疑応答の合間に感じられること、並びに一般商工業者の本法案に対して抱いておる考えは、この法案が成立すれば、一般の商工業者組織が直ちに一段と強化されて、非常に明るい光明を与えるというふうにとっておるように感じられるのです。特に政府側の提案理由等を見ましても、この法案中小企業者組織にとっての一つの基本法案だというようにも説明されている。ところがこの法案をよく見ると、なるほど中小企業団体はこれこれのものだというようなことがうたってあります。うたってありますが、協同組合等はもちろん従来の協同組合法によってやっていくのだということであって、この団体法と銘打たられた法案の内容というものはほとんど大部分新たに作ろうとする商工組合に関する規定だけで、しかもこの商工組合というものは、不況要件の備わった場合にだけできる、また一定の条件のもとに限って組合ができる、従って一般商工業者の期待しておるところ政府の説明なさっておるところと、この法案の内容たる実体とは相当食い違いがあるではないか、どうも私にはそう受け取れてならぬのですが、一体当局者はどういう御所見を持っていらっしゃるか。
  36. 川上為治

    川上政府委員 この法律がかりに通過いたしまして、あらゆる業種につきまして全面的に組合が設立できるかどうかという問題につきましては、またおそらくそういう期待を持っておる方方に対しては、私どもの方としましてはそう全面的に全国的に組合ができるということには必ずしもならないであろうと考えるわけでございます。この設立につきましては、第九条に規定してありますように、過度の競争が行われて非常に業界が不況になっておるという前提がなければなりませんので、おのずから組合設立につきましても限界が私はあると思うのであります。従いまして私どもの方としましては、やはり組合設立についても、ある程度の限界があるわけですが、それかといって組合がそうできないかというと、必ずしもそうでない。組合設立につきましては強制加入命令とかアウトサイダー命令というような場合とは相当違った、それよりも軽い措置をとっておりますので、組合そのものについては、現在中小企業者が相当不況に悩んでおります関係上、私はある程度組合はできるものと考えておるわけであります。それから組合が従来の協同組合制度、その安定法による調整組会制度と比べますと、これははるかに強化されることになります。そういう意味におきまして従来の組合よりも非常な強化ということになりますから、業界の方としても従来より強化された組合そのものに対しては相当の期待が私はできるのじゃないかというふうに考えられるわけであります。現在安定法によりまして業種の指定が行われておるわけであります。この指定された業種のみが調整組合を作り得るわけですが、私どもの方としましては、現在指定されておる業種以外にいろいろな業種について不況の要件が備わっておるものと解釈しております。従いまして指定された業種以外についても相当組合はできるのじゃないか。特に製造関係等につきましては今までよりもはるかに組合はよけいできてくるのじゃないか。また商店街組合あるいはその小売組合についても現在相当過度の競争が行われております関係から、組合そのものにつきましては相当程度できる。従って一般の業界が期待しておることに対して非常に的はずれであったというようなことには私はならないではないかというふうに考えます。しかし業界の方が非常に期待しておる強制加入命令が簡単に出るかあるいはアウトサイダー命令が簡単に出るかという問題につきましては、一部の業界の方で簡単に出ると思っていたらそれは非常に間違いであって、おそらくそういう一部の業者に対しましては非常に的はずれであったということになるかもしれないと思うのであります。
  37. 小平久雄

    ○小平(久)委員 ただいまの御説明によると、相当多数のものができるのじゃないかということですが、多数できるかできないかは、要は第九条の解釈いかんになると思う。いわゆる不況要件を備た工業なり商業なりあるいはサービス業なり、そういうものが現在非常にあるかどうかという判定にかかってくると思うのです。現在調整組合を作っておるもの、これはもちろん業種が指定されておりますが、それが四十七あるということです。これらが当然組織を変更するでしょう。しかしながらそれ以外のものについて長官が相当多数できるであろうと言う以上は、具体的に一体どういう業界がこの第九条に該当する状態に今なっておると御判断なさっておられますか。
  38. 川上為治

    川上政府委員 最近におきましても、たとえば精麦業とかそのほかいろいろな調整組合を作らせてくれ、そういう業種の指定をしてくれというような要求が相当実は出ておるわけでありまして、この前も安定審議会を開きまして、ある程度追加をいたすような審議をいたしております。それ以外のものといたしましても、たとえば問屋についても相当現在不況に悩んでおるものがあるわけで、問屋の方でも何とか調整組合を作らせてくれ、たとえば繊維関係の問屋方面におきましては、ぜひとも作ってもらいたいというような要望があるわけでございます。また商店街の組合についても現在方々でそのような販売についての競争をやっておりまして、商店街そのものとして、共通的な問題で制限をしたいから組合を作らしてもらいたいというような要求が出ております。もちろん商店街について、たとえば価格協定はよほどのときでなれけばできないと思いますけれども、それ以外の問題としましては、一般の小売の問題についても同様でありますが、あるいはおとり販売の制限とか、正札販売とか、正量販売の励行とか、その時間の問題とか、あるいは手形のサイトの合理的な短縮とか、そういういろいろな問題がありまして、そういう点を制限するならば、過当競争の弊がある程度除かれるから、従って組合を作らせてくれというような要望があるわけでございます。私どもはそういうものが果して第九条のこの条文に該当するかどうかという問題については、もちろんこれは慎重に検討しなれけばなりませんけれども、現在の小売業者なり、問屋なり一般の製造業者については、大体中小企業については非常な競争をしておりまして、不況の要件の備わっておるものが相当あるものと私どもは見ておりますので、組合の設立については相当程度でき得るのではないかと考えておるわけでございます。ただ強制加入命令とか、アウトサイダー命令というものについては、これはよほどのことがなれけば簡単にはできない。その点もし一般の業界の方で大きな期待を持っておるならば大きな誤まりであると私ども考えておるわけでございます。
  39. 小平久雄

    ○小平(久)委員 第九条の規定は、これは従来からあった規定ですが、ともかく解釈しようによってどうにでも解釈であるのです。たとえば末尾の方に「その相当部分の経営が著しく不安定となっており、又はなるおそれがある場合に限り、」となっておる。極端に言えば中小企業はいつも動かされる不安とおそれを持っておる。広義に解釈すればこの組合は幾らでもできるということになる。そこで、今ここでたくさんできるかできないか論議しても始まらぬから、ただあなたの心がまえを聞いておきたい。第九条の不況要件はゆるやかに考えて、極力組合を作っていく、認めていく方針なのか、それともある程度相当きつく考えて、組合はよほどの場合でなければあまり作らせぬという心がまえなのか。抽象的であるが、その心がまえを聞いておく以外になかろうと思うから、あなたの心がまえをこの際承わっておきたいと思います。
  40. 川上為治

    川上政府委員 この組合設立とその調整規程の認可は、一面においてうらはらの関係があるものと私ども考えておるわけでございます。従ってその調整規程の認可については相当私どもの方としましては厳密に考えていきたいというふうに考えております。従いましてその調整規程の内容が、たとえば消費者に対しまして不当に悪い影響を与えるとか、あるいはその関連の業界に対しまして不当な影響を持つというようなものにつきましては、その調整規程そのものについては極力認めないという方針でおりますので、そういう内容を持ちました組合というものはなかなか私どもの方では許可はできないというふうに考えておりますが、別に消費者に対しましてもそういう影響はそれほどない、あるいはまた一般の業界についても大した影響はない、ただもちろん不況要件をちゃんと備えていて、そうしてそういうほかの方面に対して影響はないが、ある程度の調整事業をやることによって業界が非常に安定するというようなものにつきましては、私は積極的に組合を作らしていった方がよくはないかというふうに考えておるわけであります。
  41. 小平久雄

    ○小平(久)委員 まあ大体の心がまえ、方針は了承します。そこで商店街の話が先ほど出来ましたが、たとえば商店街の場合は、この第九条と照し合して考えますと、商店街というものはいろいろな業種が入ってできていると思うのです。そういう場合にその商店街の地区というものがあげて第九条なら第九条の条件に該当するというような場合は比較的少いのじゃないかと思う。そうするとこの商店街というものは本法にいわゆる商工組合の一種なんでしょうが、商店街が本法にいわゆる商工組合になるということは、どうも比較的想像されぬような気がするのですが、その辺はいかがですか。
  42. 川上為治

    川上政府委員 商店街組合にいわゆる調整事業が必要であるかどうかという問題になるかと思うのですが、先ほども申しましたように、商店街におきましても業種は違いましてもいろいろな販売の競争をやっておることは事実でありまして、たとえば景品付の販売とか、あるいは特売とか、おとり販売とかいうような、どちらかと申しますと不正な販売行為もやっておりますし、また正札販売とか、あるいは正しい量目で販売するとか、そういうものにつきましてもやはりある程度調整をしなれけばならぬというような問題もございますし、その他時間の問題とかいうものにつきましても商店街として共通の問題がございますので、そういう問題についてやはり調整事業を行う必要があるのじゃないかと思う。特に一定の繁華な商店街等におきましては、そういう問題があるのじゃないかというふうに私どもとしましては考えておりますし、現に商店街のいろいろな団体の方からも、どうしてもそういう問題についていろいろ共通の調整をしなれけばならないから組合を作らしてもらいたいというような要望もありますので、私どもとしましては価格協定とかそういう特殊な問題は別にしまして、やはりそうした方面の調整事業をやる関係から、組合を作らせるということも十分考えられると思っておるのであります。
  43. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今長官の言う商店街の競争という意味ですが、それは商店街同士の、Aなる商店街とBなる商店街の競争というものが大体おもであって、商店街の内部における各業者の競争というよりも、むしろ今言う通り他の商店街との競争ということがいろいろ問題があるのじゃないかと思うのです。ですからこの法案の建前からいうと、商店街自体が要するに不況要件を備えてなれけば組合というものができないのでしょう。だからそこをどう解釈するのですか。
  44. 川上為治

    川上政府委員 先ほどいろいろな例を用いまして申し上げましたが、商店街の内部におきましてやはりそういうような競争関係が起きておる。これは同業種だけじゃなくて、いろいろ異種のものについて、先ほど申し上げました、たとえば正札販売をしないとか、あるいは量目をごまかすとか、あるいは景品付で販売するかとか、そういうような問題が起きていて、そのために商店街は業種については異種ではあるけれどもいろいろなそういう競争をやっているために非常に困っておるというような問題がありますので、やはりそういう問題について調整をする必要があるのじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  45. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点はその程度にしましょう。  なお順を追ってお尋ねしますが、本法の第五条に中小企業者の定義がございます。そこでこれは三百人以下の場合と、それから商業またはサービス業の場合には三十人以下、こういうことになっています。これが原則のようですが、ただ一定地区の、たとえば県なら県単位の商工組合を作る場合に、同種の大企業等の支店であるとか出張所であるとか、特に今度は商業者もできるのですから、いわゆるサービス店というのか出張販売店というのかそういうものもあるので、定款で規定しておけばそういう大企業も入り得るという二とになっていますが、その県なら県の地区でやる場合には必ずしも大企業そのものが入らなくてもいいわけなのです。地区内にある支店なり出張所なりサービス店が入ってくれればその県内の調整はできるわけなのです。ところがこの場合にはこの法だけを見ていくと大企業等が入らなれけばならぬ、しかもそれも定款できめなければ入れない、こういうふうになっておるように私は読むのですが、その辺の大企業の地方支店とか出張所とか、そういうものの取り扱い方はどういうふうになりますか。
  46. 川上為治

    川上政府委員 これは今先生もおっしゃいましたように、やはり支店、出張所でありましても大企業の支店、出張所でありますから大企業扱いにされるわけでございまして、やはり定款で定めなれけば入れないということになると思うのであります。
  47. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そうすると、ある大企業の支店、出張所が全国に何個所かある、こういう場合、県単位に商工組合ができたという場合に、大企業なるものは数個の商工組合に同時に入る、こういう問題が出てくる、一体その大企業はどの商工組合調整規程に従うべきなのですか。
  48. 川上為治

    川上政府委員 A、Bという調整組合があって、そのA、Bの地区に大企業が支店を両方とも持っておるということになりますれば両方とも入り得るということになるわけでございます。(小中委員「どっちの調整規程に従うのか」と呼ぶ)  調整規程につきましてはAの地区におきましてはAの組合調整規程に従う、Bの地一区におきましてはBの商工組合調整規程に従うということになろうかと考えます。
  49. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そういうことになると、その大企業の立場からいえば一貫した方法での営業というものができないわけですね。一貫した方針による営業はできない、極端な場合に価格統制にまで入ったという場合に、Aの支店で売る価格とBの支店で売る価格とは、同じ会社の大企業の製品でありながら値段が違うという問題も今の説明からいうと出てくるわけですね。そういうことですか。
  50. 川上為治

    川上政府委員 それは極端な場合におきましてはそういうことになろうかと考えます。それはその地区が違いますし、調整事業そのものが違う、また調整事業の内容が、同じ価格協定についても違うということになればこれはやむを得ないと考えますが、私どもの方としましては、そのA、BならA、Bの調整組合調整事業が、かりに同一の業種である場合におきましては、その調整事業なり調整規程そのものにつきまして、ほんとうにその地方の特殊な事情があれば別でございますけれども、また共通な問題であってどうしても同じような調整規程扱いをすべきだというようなことになれば、それは同じような扱いをするように認可をしたいというふうに考えますが、非常に距離が離れていて、そして調整事業そのものについても同じ業種でありながら非常に違うというような場合におきましては、私はXならXという大企業が、両方調整事業、異なった調整規程に従わなれけばならぬということはやむを得ないことだというふうに考えております。
  51. 小平久雄

    ○小平(久)委員 支店なり出張所なりを取り扱うに当って、それがかりに第五条に規定するそれぞれの条件に支店、出張所そのものが該当するならば、その地区内では中小企業者としての資格があるというようなことについて、当局では何か検討なさっていなかったのですか。何か工合が悪くて、やはり大企業は大企業としてどこまでも扱っていくのだ、初めからそういうことなのですか、どういうことなのですか。
  52. 川上為治

    川上政府委員 私は、大企業が支店、出張所を持っておる場合、その支店、出張所がいわゆる中小企業としての扱いをされていいかどうかという問題については、いろいろ疑問があるのではないか、やはりそういう大企業の支店、出張所というものと一般の中小企業というものとは、資力あるいは信用その他において相当違う点があるというふうに考えますので、やはり原則的には、最初はその中小企業者だけで組合を作るということにした方がよくはないかというふうに考えておるわけでございまして、どうしてもその支店、出張所についてその組合加入さした方がいいという場合におきましては、定款の定めるところによって、そういう大企業の支店も加入きせるということにした方がかえっていいのじゃないか。この問題についてはいろいろ私どもも研究をいたしましたが、やはりその方がいいのじゃないかというふうに考えたわけでございます。
  53. 小平久雄

    ○小平(久)委員 地方などで一番問題になるのは、やはりどちらかというと特に商業の場合などは、大企業の支店なり出張所なり、それが来て廉売をやるというようなことについて、むしろ問題が起りがちですから私は今お尋ねしたのですが、この点はこの程度にいたしましょう。  それから第五条の三号の政令で定める場合ですね。これは原則は三百人あるいは三十人ということになっておりますが、むしろこれよりも多いものを業態によっては中小企業者の中に入れるのだ、そういうような含みでこの政令は作るのですか、それとも業態によってはもっとしぼって、百人以下あるいは十人以下でなれけば中小企業と認めない、そういう場合も想定なさっておるのですか。これはどういう方針で政令をお作りになるのか、これをお尋ねいたします。
  54. 川上為治

    川上政府委員 これは両方の場合を考えておるわけでございまして、たとえば石炭産業について申し上げますと、現在中小企業金融公庫の扱いとしましても従業員千名とそれ以下ということになっておりますが、あるいはその石炭産業とかあるいは金属鉱山とか、そういうようなものにつきましては、私はその中小企業というものは、この三百人というよりももっと多くしなければならぬだろうというふうに考えておるわけでございます。しかしまた一面におきましては、この前からだいぶ問題になっておりますが、オートメーションの非常に発達しておるもの、あるいは非常に大きな資本力を持って、従業員がそうなくてもいいというようなもの、たとえば石油の精製事業でありますとかそういうものにつきましては、これは三百人を落して、もっと低いところできめようというような考えを持っておるわけでございます。従いまして両方ともこれは考えておるというわけであります。
  55. 小平久雄

    ○小平(久)委員 これと関連しまして、第十一条の場合をちょっとお尋ねしておきたいのであります。これは定款で特に定めた場合に組合員になる資格を有する者は次のものであるというふうになっておりますが、第二号の方です。二号の方で特にやはり「政令で」となっておりますが、この政令はどういう内容の政令を今お考えになっておりますか。
  56. 川上為治

    川上政府委員 この二号につきましては、ここにも書いてありますように事業協同組合とか、あるいは企業組合、商工組合とか、あるいは農協とか、そういうようなものはいわゆる資格事業を営むというものではございません、資格事業そのものを行なっておりますので、やはりそういうものにつきましても、定款で定めた場合におきましては加入きせるということでございます。しかしながら中にはこういうものを対象にしない方がいいのじゃないか、する必要はないのじゃないかというようなものもございますので、この政令によりまして、これらのもののうちで特にやはり組合加入させたがいいというようなものだけに限定をするというわけでございます。たとえば生活協同組合とか、あるいは購買組合とか、そういうものにつきましては、いわゆる営利事業を行なっている団体でないのではないかというふうに考えますので、そういうものは組合加入させるというふうには考えていない、しかしながらたとえば農協の販売組合あたりがミカン、カン詰等の製造事業をやっていて、外にこれを販売しようというようなものにつきましては、これはどちらかと申しますと、やはりこの第十一条の中小企業者というようなものに該当すべきものではないかというふうに考えます。またそういうものは組合加入させておいた方がよろしい、また加入させてもらいたいというような意見もございますので、そういうものは政令によって、加入きせるということにいたしたいと考えておるわけでございます。現在安定法によりましても、農協でミカン、カン詰等の製造業をやっておるものにつきましては、やはりこれを加入きせるというような措置をとっておるわけでございます。
  57. 小平久雄

    ○小平(久)委員 消費組合等は定款で定めても組合員にはなれない、こういうことであって、ここに列挙したような各種の組合の場合には政令に定める業種をやっておれば組合員になれる、こういうことのようですが、たとえば鉄道でやっておる購買部というか、それだとか鉄道の弘済会だとか、そういうものはどういう取扱いになりますか
  58. 川上為治

    川上政府委員 これは先ほどちょっと言葉が足りなかったと思うのですが、たとえば生活協同組合、これはこの第二号では別に書いてありませんのでそういうものは入らない、従いまして購買会とかそういうものは入らないというような考えでございます。易ういうものはやはり営利法人とは言えない、営利事業をやっておるというふうには考えられない。やはり事業そのものについての性格がある程度違うのじゃないかと考えますので、そういうものは入れないが、しかし組合交渉相手方にはするという考え方であります。
  59. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今の御答弁から、組合交渉相手方という話が出ましたので、当然これと関連してくると思うのですが、組合交渉相手方については二十九条にうたってあるようです。この二十九条からいえば、今言った購買会あるいは鉄道弘済会というのはみんな相手方となりますか。
  60. 川上為治

    川上政府委員 これは二十九条の第四号で「地区内において資格事業を行う事業者であって、商工組合組合員たる資格を有しないもの」ということで、一応その対象にはなるわけでございます。しかしこれは政令で定めるものに限るということになっておりますので、私どもの方としましては、地方において相当問題があって、摩擦が生じておる、あるいは生ずるおそれがあるというようなものについて、地方長官等の意見を聞いてそれはきめたいと考えております。
  61. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点はそのくらいにしましょう。  次に先ほど阿左美委員との質疑応答がございましたが、第十七条にいわゆる設備制限——先ほどの御答弁から見ますと、長官のお考えはいわゆる設備に関する制限というのは設備使用に関する制限だ、従って新設等をまともに制限するのはどうかと思うから、この使用制限という建前から第二十九条で実質的にその目的を果し得るのじゃないか、こういう御趣旨の御答弁のように私は聞いたのですが、この第十七条に書いてあることをそのまますらっと読めば、別に設備使用制限というようなことは書いてない。設備に関する制限と一般的にうたってあるわけなんです。そこで私のこれを読んだ感じから言えば、当然この新設についても制限ができるのじゃないか。この規定だけでできるのじゃないかと思うのだが、あなたの先ほどの御答弁は、制限という意味はいかにも使用制限なんだ。そういう意味の御答弁をなさっておったようですが、その点一つはっきり答弁願いたいと思います。
  62. 今井善衛

    ○今井政府委員 設備に関する制限というのは、たとえば増設を取りやめようじゃないか、新設を取りやめようじゃないかというような制限ももちろんこれには入っておるわけです。ただしこの新増設の取りやめの制限と申しますと、それは組合員内部でもってお互いに話し合いまして、新増設はやめようじゃないか、これは営業制限でも何でもないから、従いましてそういうような調整規程の認可はできますけれども、たとえばその場合に、新しく営業を始めようという場合の新設制限ということになりますと、今まで営業を開始していないものに対しましては、これは営業制限ということになりますので、従いまして、そのような場合に限りまして新設制限アウトサイダーに及ぼすということはいかがかと思いますので、そういうことはしない。従いまして、新規営業を開始しようというものに対しましては、新しく作りました設備使用制限ということになるわけでございまして、この設備制限というのは新設制限もありますし、あるいは使用制限もありますし、いろいろな場合があるわけでありますが、アウトサイダーに及ぼす場合に限りまして使用制限にしたい、今まではそういうふうに考えていたわけでございます。
  63. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は今ここに安定法を持っていないのですが、安定法の二十九条の二ですが、特にそれを設けて新設制限ができるようにしたのは、それは組合員新設制限するようにできたのですか、そこを説明してもらえませんか。
  64. 今井善衛

    ○今井政府委員 二十九条の二の設備制限は、これは組合員だけじゃなくて、今まで事業を始めていない業者外の人が新しく設備を作ろうとすることを、制限することも禁止することもできたわけでございます。それは少し営業制限的な意味があるんじゃないかということで法制局に難点があったのです。
  65. 小平久雄

    ○小平(久)委員 組合員外の新設制限できたのはアウトサイダーに対する規制命令によってじゃないのですか。そしてその調整規程組合員外のことまでもそういう制限ができるようになっておったのですか。
  66. 今井善衛

    ○今井政府委員 二十九条の二の命令は、アウトサイダー命令が出ました場合に限って、従来事業を始めていない人が設備を作ることも禁止できる、その際に、たとえば国の試験研究機関あるいは地方公共団体の試験場、そういうところまでその命令の効果が及んで、そういう試験までもできなくなってしまう、こういう難点があったわけです。
  67. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今の御答弁からすると、設備制限と第十七条にいわゆる設備に関する制限というのは、アウトサイダーの場合は新設制限まで当然これは及んでおるんだ、ただし員外者に対する場合はこれは含んでおらないんだ、員外者に対して設備新設禁止するということまでやると、これは営業の開始の制限ということになるから、それは含まない、こういうことですね。
  68. 今井善衛

    ○今井政府委員 そのようでございます。
  69. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その問題とも実は関連するのですが、先般来の質疑応答を聞いておりますと、この法案新規開業というものは認めておるのだ、従って一部にある心配、すなわち本法案が成立すると、新規開業ができなくなるのじゃないかという心配に対しては、営業許可制もとっておらないし、別に新規開業については設備制限もしておらぬから、そういう心配はない、大体こういう趣旨の御答弁をなさりておるようですが、実際問題として員外者が仕事を始める、新たに始めた者がある、これは今の答弁からしても設備を新たに持って営業を始めることができる。しかしいわゆる強制加入命令が出た後における新規の開業者というものは、これは何条でありましたか、開業の日において組合員となったものとみなすのだという規定があったと思いますが、そういうことになると、強制加入命令が出た後における開業者は開業すると同時に組合員になったとみなされちゃうわけです。そうすると、そのものは一体実際問題として仕事がやっていけるかどうかということです。規定方法にもいろいろありましょう。それぞれ持っておる能力の操業短縮というか、生産制限を何割やるというような場合には、かりに百の力を持った新規業者が出た場合に、組合として二割の制限をしているといえば、八十の生産だけはあるいはできるかもしれません。しかし組合全体としての生産というものをかりに百と押えるんだ、こういうものがあった場合に、その後に出た新規業者というものが開業と同時に組合員となったとみなされた場合は、すでに組合員となっておった人の持ち分でも譲ってもらうとか何かしなれけば実際問題としては操業ができない、こういう事態の起きる心配もある。ということは、とりもなおさず実質的には新規開業を禁止されるのだ、新規に開業しても、開業と同時に組合に入ったものとみなされちゃって事実上は仕事はできないのだこういうことですね。新規開業の禁止と実質的には同じことになるのだということが想像されるわけなんですが、その辺はどういうことになりますか。
  70. 今井善衛

    ○今井政府委員 ただいまの御質問でありますが、問題は設備についていかなる調整事業をやっておるかという問題にかかわると思います。たとえば設備の増設を禁止するというふうな調整事業をやっております場合には、組合員になりました人はその調整事業に従わなければなりませんので、従いまして、事実上なかなか設備の増設ができませんから、今ある設備を使う以外に仕方がないということになるわけだと思います。   〔委員長退席、横井委員長代理着席〕 ただそういうことになりますと、実際問題として非常に新規業者営業制限をするということになりますので、その際組合としまして一律にさような方法をとることが妥当であるかどうか、この組合設備制限につきまして、たとえばごく少量の設備についてはこの限りにあらずというふうに、ある程度そこに新規業者なりあるいは零細企業者に対しまして多少あたたかみのある例外を認めることが妥当ではないか、かように考えております。
  71. 春日一幸

    春日委員 関連して。これは大へん重大な問題であると考えますので、公正取引委員会にお伺いをいたしたいのでありますが、安定法第二十九条の第二項がこういういわゆる服従命令に該当するものが発せられた後においては新規設備の開設を禁止いたしておるわけでありまするが、それは独禁法の精神と憲法との関係においてどうして安定法においてはそれが許し得るのか、この辺の法理上の解釈をこの際一つお述べを願いたいと思います。
  72. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの御質問は非常にむずかしい問題でございますが、私どもの了承しておる限りにおいては、ごく率直に申し上げますれば、たしか安定法のあの条項は議員立法で、政府法制局を通して提出したものではないと了承しておりますから、一応それで御了解いただければけっこうだと思います。
  73. 春日一幸

    春日委員 それは責任ある御答弁にはならないと考えるわけであります。それでは私どもの見解を申し述べまして、それに対するあなた方の御意見一つ伺いたいと思うのであります。  この安定法では、現在業種が追加されて、四十七業種でありまするか、とにかく何百あるいは何千でありまするか、あらゆる業種業態の中で特定少数のものを選んでおる、少数のものである。従いまして、それに対しましては、その調整計画の効力を確保するために必要欠くべからざる場合は、その新設制限をもなし得る、けれども、このことは全面的な営業禁止することには及ばない、こういうので、憲法の職業選択の自由の原則というその憲章を圧殺するものではない、特定少数のものなら許し得る、こういうことで特にこの議員立法が了承されたのではないかと理解をいたしておるわけでありまするが、われわれのこの見解にもし誤まてるところがあれば一つお述べ願いたいと思います。
  74. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの御見解のように、非常に業種をしぼりまして、そうしてそういう緊急避難の行為をやられるということならばあるいはそういう工合に解釈できるかと私は存じております。
  75. 春日一幸

    春日委員 中小企業庁長官の御答弁を伺いますと、そのアウトサイダーに対する服従命令が発せられた後において新しい者がその設備を行おうとする場合、これはこの団体法では制限することができない。しかしながらただいま阿左美さんの御質問によりますと、これは現実に設備がされて——長官は五十六条の事業活動の制限に関する条項の援用をして、これについてもある程度の規制が行い得ると言われたが、それに対して阿左美さんは、現実の設備ができると、現実にはこれは抑制しがたいものであって、効果はない、従って設備制限の条項を付すべきであるという御主張がありました。それに対する長官の御答弁は、本委員会においてそういう修正が行われる場合も考えておりますから、適当に処理してもらいたい、こういう意味の御回答があったと思っております。私はこのことを非常に重視いたしておるわけであります。と申しますのは、安定法の概念とこの団体法の概念は全然これは違うわけであります。安定法は特定少数のものでありまするから、これは公共の福祉のために、あるいは国家経済の立場においてある程度の制限はなし得る場合があると考えるのであります。ところ団体法の場合は一切の業種を対象といたしておりますから、安定法の二十九条の二の同じ条項が、阿左美さんが要望されたがごとくにもしもここに設けられるといたしますと、これはただいま小平さんが触れられたように、営業の全面的禁止という場合が想定されるわけでありまして、これこそは憲法の職業選択自由の原則を根本的に否定する、こういう事態が予想されるわけであります。こういうことでよろしいかどうか、またそういうような事態をも想定されて、なおかっこの委員会においてそういう修正が行われても差しつかえないと長官はお考えになっているかどうか、その点について川上長官と坂根事務局長御両所から御見解をお述べ願いたいと思います。
  76. 川上為治

    川上政府委員 私は、安定法によって業種が指定されているからということと、この団体法につきましては全面的な業種になっているから、そういうことによってこれを差別的な取扱いをするというふうには実は考えていないわけでございます。ただ問題は、先ほど申し上げましたように、この命令を出している間に限ってこういう制限措置をとっていいかどうかということについて、やはり法律的な疑義が相当政府部内においてありまして、そのために、そういう疑義のある条文を置くよりも、ほかに何か適当な措置はないかというようなことを考えると、第十七条の規定及び第五十六条の規定であわせて措置ができるから——これはもちろん二十九条の二と全く同じような措置はできませんけれども、ある程度目的は達せられるから、それでよろしいじゃないかというような話し合いになりまして、そのためにこの二十九条の二の規定をこれから落したということに私ども考えているわけでございまして、安定法では業種を指定しているから、この団体法では業種を指定していないから、全面的に業種を認めているからというようなことでは実はないわけでございます。
  77. 春日一幸

    春日委員 それでは何のために安定法の二十九条の第二項に該当する条文を、団体法の中で当初は予定されて、それを削除されたか、その理由は一体何であるか、この際明確に御答弁を願います。
  78. 川上為治

    川上政府委員 これは先ほど振興部長からもお話をいたしましたが、要するに第二十九条の二では新規開業の許可というようなことになってきやしないだろうか、それに相通ずるものがあるのじゃないか、そういうことはいわゆる営業制限営業許可というようなことになってきやしないだろうか、従ってこの条文そのものが法律的に疑義があるというようなことで、実はこの規定は削った方がよかろうということになったわけでございまして、最初はわれわれの方としましても、そこまでいろいろ深く検討しないで、もちろんこれも入れていろいろ法制局とも相談しようということであったのですが、法律的に法制局等において検討している間に、この条文についてはへ先ほど坂根事務局長から、これは議員提案だからというようなことでは必ずしもなくて、いろいろ研究しました結果、どうも営業制限営業許可という問題にひっかかるのじゃないかというようなことで、これは政府部内においては落そうということに実はなったわけなんです。ただ私が先ほども申し上げましたように、この条文そのものについては、この当該命令有効期間中という限定を置くならば別に差しつかえないのじゃないかというような議論法律的には成り立ち得るのではないかというようなふうにも私どもの方でも考えているわけなんですが、これは法制局といろいろ相談しました結果こういう結果になったわけでございます。
  79. 春日一幸

    春日委員 タクシー業も営業許可制度なんです。輸送業も営業許可制、酒もたばこも営業許可制度です。それから安定法の第二十九条も設備制限脅している限りは、その業種業態に対しては新規はできない。必要ならば営業許可という実際的な制限をしているわけなんです。現在営業許可ということはなし得るのです。特定少数のものは、すなわち公共の福祉のために、国家経済のために必要であるとするならば、営業許可はなし得るのです。そういう制限を現在やっているのです。今度の団体法で特にそういうことがなし得ない理由がなければならぬのです。その点を明確にお述べ願うのでなければ、これは誤まった判断、誤まった結論を生むおそれがありますので、どうしてこの第五十六条でその効果を期待しなければならなくなったのか、特にその理由が明確でなければならぬと思うのです。これが、一つの具体的な例を申し述べますならば、とにかく設備制限ということは不況克服のために第一段階でなし得る事柄なんです。いろいろの不況状態が起きてくればあなたの方の法律はことごとくの業種業態がこういう設備制限ができる態勢になっておるのです。従いまして第一義的に不況克服の手段としてこの措置ができるのでありますから、そうならば、みんな申請して設備制限をしていくと、この法律がずっと何年か先にこの業種も許可した、この業種も許可した、だんだんやってなおその不況状態が克服されない状況になって、すなわち憲法にいう営業の全面的禁止状態、そういう状態に至らなくともただ一部だけ営業が可能の状態、こういう形になるから、これはわが国の現在の憲法のもとにおいては、そういうふうな設備はでき得ないんだ、こういう工合にわれわれは理解しておるが、違いますか。
  80. 川上為治

    川上政府委員 これは非常にむずかしい問題でありますが、私は先ほども申し上げましたように、これは業種の指定いかんにかかわらず、また全面的なこの団体法のような法律でいきましても、やはりこの二十九条の二項というのは、これは一定のアウトサイダーに対しまして命令を出さなければならぬというような、そういう事態に限って特別に許されたものであるというように考えられるのです。しかしそれも新規開業というようなことになりましては、やはり問題がありますので、これは法律的に見ましても疑義がありますから、これを落すというようなことに実はしたわけなんですが、なかなかこれはむずかしい問題がありますので、法制局ともいろいろ相談しました結果そういうことになったわけでございます。また一面におきましては、こういう特殊な事態で、しかも一定の期間だけだということであれば、これを認めていいのじゃないかというような議論も実は出てくるわけでございます。先ほども申し上げましたように、この問題につきましては政府部内としましては、そういう意見もありましたけれども、慎重に御検討いただきたいということを申し上げたわけでございます。
  81. 春日一幸

    春日委員 これは社会党の組織法案政府団体法案とが違っておるというのは、あなたの方は全部の業種を対象にしておるが、私の方は八十五業種だけを選定しておるわけです。しかもその選定の仕方は過去においてすでにそういう論議を濾過したところの業種だけを対象にしておる。こういうところに本質的な違いがありまして、そこからこの問題が論ぜられておると思うのであります。  そこで、私は最後に公正取引委員会にお伺いをいたしまするが、午前中阿左美さんから希望的質問が行われましたが、やはり調整計画の機能を確保するための措置といたしまして、一切の業種業態に対して服従命令を発せられた後において、安定法第二十九条の二のごとく、新規設備がやはり制限されるというような立法が行われんとして、そうしてそこで公正取引委員会に対して、あなたの方の意見はどうであるかと、その意見を求められた場合に、あなたの方の見解はどうでありますか、この際御答弁願います。
  82. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 これはそのケースによって十分判断していきたいと思いますが、よほど慎重に協議を受けまして、なるべくならば、そういうことの新規開業は抑制されないようにという考え方でもって処理していきたい、こう考えております。
  83. 小平久雄

    ○小平(久)委員 次に承わりますが、これは商工組合協同組合との関係になると思うのですが、第十七条で商工組合の行うところ事業規定されております。もちろん第一の事業としてはいわゆる調整事業、第二項でそのほかに経済事業が行えるということ、それから第三として組合協約ができるということがあるわけですが、これはつまり第一の調整事業をやらないで、経済事業あるいは組合協約、これだけを目的とした商工組合というものはあり得ないわけですか、どういうことになるのですか。
  84. 川上為治

    川上政府委員 第十七条におきましては、商工組合は、第一項によりまして調整事業を行わなければならないということになっております。「次の事業の全部又は一部を行うものとする。」となっております。それから第二項におきましては「商工組合は、前項の事業のほか、次の事業の全部又は一部を行うことができる。」ということになっておりまして、商工組合におきましては調整事業をどうしてもやらなければならない。しかし経済的な共同事業につきましては、これはやってもよろしいということになっておるわけでございますので、商工組合調整事業はどうしてもやらなければいけない。もしその事態がなくなれば、商工組合は解散なりあるいは協同組合に乗りかえるようにしなければならぬということになっておるわけでございます。  それから組合協約につきましては、これはこの法律にもありますように、調整事業に関してということになっておりますので、やはり調整事業に関しない組合協約というものは、この法律のバックによるそういう協約はできないことになっているわけでございます。
  85. 小平久雄

    ○小平(久)委員 この法案からすれば、そういう建前になっておると私も解するのですが、せっかく作った商工組合——これは先ほど来申し上げているように、もちろん不況要件というものがなければ組合自体ができない。商工組合というものはあくまでも調整事業を行うことが本来の使命なんだ、こういうことでありますが、同時にその調整事業が不必要になったならば、組合を存続しようと思えば、わざわざ協同組合組織がえをしなければいけないんだ、そういう建前なんですが、私は一たん組合を作った以上は、調整事業が必要でなくなるならば、調整事業だけは停止しておいて、何もわざわざ組織がえせぬでも、組織は商工組合そのままであって、その他の経済事業を行なっておればよろしいんだ。中小企業組織の強化という問題も、これは要するにふだんから組織を強化しておいて、何も不況などに追い込まれぬようにやることが本来の使命でなければならぬ。しかるにこの法案からいうと、早くいえば病気になったときの手当の措置、臨時の措置なんだ、病気がなおったら解散しちゃえ、あるいは協同組合に乗りかえろ、こういう建前になっておると思うのです。ですから病気がなおっても依然として二度と再びそういう病気、すなわち不況などに追い込まれぬように、そのまま組織組織として、経済事業あるいは団体協約はこの法案では調整事業に関しと、もちろん制限しておりますが、むしろふだんでもできるように、商工組合そのものは存続しておいても一向差しつかえないんじゃないかというふうにも考えられるのですが、それをわざわざまた協同組合組織がえさせるというのはどういう趣旨からでありますか。
  86. 川上為治

    川上政府委員 私どもの方としましては、平時の場合におきましては、この協同組合組織が中心でいくべきものではないかというふうに考えるわけでございまして、この商工組合制度というのは、場合によりましては先ほどもいろいろ問題になりました強制加入の問題とか、あるいはアウトサイダー規制の問題とかいろいろそういう問題がありますので、やはり病気になりましたときにその病気をなおす、そうして健康体に回復されるまでの組合制度であるべきだというふうに基本的に考えておりまして、もし病気が回復したならば、これは協同組合組織でいくべきだ、そういう経済的な共同事業を行うのであったならば、それは協同組合組織でいくべきであるというふうに基本的に考えておるわけでございます。その際に組合交渉ができるかどうかという問題につきましては、現在の協同組合にいたしましても、組合交渉はできることになっておるわけなんですが、ただ相手方に対して、応じなければならぬとか、あるいはその勧告を政府の方でやるとか、そういうような措置につきましては、調整事業に関する限りにおいてそういう措置をとるべきであって、平時の場合において組合交渉をする場合におきましては、別に応諾義務とかあるいは勧告とかいう措置をとらなくてもいいのじゃないかというような考え方から、こういう組合制度に実はいたしておるわけでございます。
  87. 小平久雄

    ○小平(久)委員 つまりそういう点から、私が冒頭に申したように、この法案中小企業者組織に対する基本法だというようなことを政府側も説明し、一般もそう受け取っておるのですが、むしろ基本の組織というものは協同組合であって、この法案にいう商工組合でないような印象を僕はどうしても受ける。基本の組織というものは、常ふだんにおいて中小企業界が順調に発展するように組織する、その組織が要するに基本的な組織であって、たまたま不況に陥った、たまたま病気になったときにどういうふうにやるかということはむしろ臨時的な措置なんです。どうもそこが私には与党ながら実は理解がいかぬのですよ。その点もう一回今の答弁と関連して説明してくれませんか。
  88. 川上為治

    川上政府委員 中小企業現状につきましては、私から申し上げるまでもなく、わが国におきましては、とにかく何かの業種につきまして常に不況な状態になっておるわけでございますので、この法律におきましては、平時の場合と、それからそういう過度の競争によって病気になっておる場合、両方のその事態に応じてこういう組合組織ができるのだということを実は規定しておるわけでございます。第一条によりましても、この二つの場合に二つの制度ができるということになっておるわけなんですが、第四条におきましては、協同組合組織については現在の中小企業協同組合法の定めるところによるということになっておるわけです。実は、これは大臣からもお話があったと思いますが、われわれの方としましては、第四条から以下に、協同組合関係法律を相当この中に入れるつもりであったわけでございます。そうしてそういう平時の場合の協同組合組織とこの病床にある場合の商工組合制度の両方一つ法律の中へまとめまして、これを基本法にするということにいたしたいと考えていたわけなんですが、遺憾ながら協同組合制度につきましては十分な検討ができませんでしたので、この次の機会に実は譲って、その際に第四条以下にそれを規定しようというふうに考えたわけでございます。
  89. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そうすると、この法案は看板だけは基本法だが、肝心の内容、実質の基本は後日に譲った、とりあえず病気の際の対症療法をうたった、こういうことでよろしゅうございますね。長官はふだんでもこの組合を作っていくというが、ふだんはこの組合というものは作れない。不況組合でなければ作れないでしょう。
  90. 川上為治

    川上政府委員 必ずしも私はそう考えないのです。この第四条によりまして、この協同組合の問題につきましては現在の中小企業協同組合法の定めるところによるということにいたしておりまして、この法律それ自体といたしましては第一条の目的ところでもあるいは第三条におきましても、一応協同組合制度もこの中にぶち込んでおるわけなんですが、ただこれをこまかく全部入れることにつきましてはいろいろとまた検討する問題がありましたので、ことしは間に合わなかった、この次の機会に譲ったということにいたしまして、どこまでもこれは基本法だというふうに考えておるわけでございます。
  91. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点はその程度でよろしいでしょう。次に、本法で一番問題になっておる加入命令規定の五十五条及び規制命令規定の五十六条、この点に関連して若干承わりますが、どうもこの五十五条と五十六条を読んで参りますと、これはなかなかむずかしくて実はわれわれにもはっきりとのみ込めない点があるのですが、一体加入命令規制命令というものは実際問題としてどういうふうに使い分けをなさることになるわけですか。これは加入命令中小企業者に対してだけできるようですが、これは一体どういう使い分けになるのですか、その辺を少し市井の商人がわかるように一つ御説明を願いたいと思います。
  92. 川上為治

    川上政府委員 この五十五条の規定につきましては、これはこの中小企業者だけを相手にするのだ。ということは、やはり商工組合制度そのものが元来特別な場合を除きましては中小企業者だけで組合を作っていろいろな調整行為を行なって、そしてその中小企業者の安定をはかっていくんだというところに基本的な問題があるわけなのですが、中小企業者が実質的にそういう調整規程を設けてそしてやる場合に、しかも自主的に調整事業が可能であるというような場合に、アウトサイダーである中小企業者だけを加入さして、そしてその調整事業を行わしめるというのが第五十五条の基本的な考え方でございます。ところが、どうも中小企業者だけではなかなかうまくいかない、同種の大企業につきましてもこれを何とかアウトサイダー命令を出して、中小企業者が作っております組合調整規程に従わせなければ困るという場合に限りましては、大企業をこの中小企業者組合強制的に加入させるよりも外に置いてその調整規程に従わせるということの方がよろしいんじゃないかというふうに考えますので、そういう場合におきましては、五十六条においてアウトサイダーである大企業者に対しまして規制命令が出せるということにいたしたわけであります。しかしながら、中小企業者でありましても皆が入ってきてなかなか自主的な調整ができないという場合におきましては、加入させるよりもむしろ外に置いて、アウトサイダー側の規制命令を出した方がいいのじゃないかというふうに考えますので、その場合におきましてはこの五十六条においてアウトサイダー側の規制命令を出すということにしたわけでございます。基本的な考え方としましては、中小企業者だけは一つ全部まとまって自主的な調整事業をやってもらいたい、それに対しましてそういう能力のあるものについては国が手助けをしてやろう、それが強制加入命令の基本的な考え方でございます。
  93. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そうしますと、実際問題として、第五十五条または第五十六条、このいずれでやるか、というのは、実際問題にぶつからなければわからぬ、その実際問題によってどちら側でいくのがいいという判断をして、どちらかの条文を適用するのだ、こういうことになりますか、または五十五条と五十六条というものは同時に行われる、とにかく対象が違うのですから、片方は中小企業者だけ、片方は、規制命令の方は中小企業者以外の者でも出せるわけですね。ですから、同時に行う場合がある、そういうことになりますか、どういうことになりますか。
  94. 川上為治

    川上政府委員 私ども考えとしましては、これはその業界の実態に応じましてその組合申請によりまして両方使い分けをしていきたいというふうに考えておるわけでございます。強制加入命令を出してからそのあとで、それがなかなかうまくいかぬときにそのアウトサイダー命令を出すというような考えは別に持っていないわけでありまして、これはその業界の実態に応じて、組合申請によって措置したいというふうに考えておるわけでございます。  それから、強制加入命令も出し八同時にまたアウトサイダー命令も出すというような事態があるかどうかという問題につきましては、私はそういうことはないだろう、ないというふうに考えております。ということは、強制加入命令を出す場合におきましては、各組合が自主的な活動ができるというような場合に限ってそのアウトサイダーといわれる中小企業者だけを入れるということになっておりますので、もしその自主的な調整によってうまくいかないということがはっきりしておるものにつきましてはこの五十六条の命令でいくわけでありますから、そういう両方とも一緒にあれするということは私はないというふうに考えております。
  95. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それは、そうですかね。もちろん自主的に調整ができる場合には五十五条でいく、しかし五十五条で加入命令を出せるものは中小企業者だけですね。ところが五十六条の方は、もちろん定款に定められる場合でしょうが、組合員たる資格を有する中小企業者はもちろん含むのだと思うのだが、中小企業者以外のもの、大企業であるとかいろいろな各種の組合ですね、そういうものに対しても出し得る。そうすると、なるほど今の御説明のように加入命令によって組合自体は自主的に内部的にはうまくいくかもしれませんが、しかし、組合員たる資格は有するが組合に入らない大企業等がある。そのためにどうも調整事業は全般としてうまくいかぬ、こういう場合が想定されるわけなのです。そういう場合には加入命令も出すし、同時に規制命令も出す、こういうことをやらなければ調整事業が全体としてうまくいかぬ、当然そういう場合が想定されると思うのです、が、どうですかそこのところは……。
  96. 川上為治

    川上政府委員 その組合員以外のいわゆるアウトサイダーに、中小企業者と大企業者両方おりまして、その際にいわゆる組合調整事業が、自主的にうまくいくかどうかという問題については、私は非常に疑問があると考えられます。従いましてそういう際には、強制加入命令中小企業者にも出し、同時にまたアウトサイダーである大企業に対しては、五十六条の命令を出すということは、これはないものとわれわれは考えています。
  97. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今の説明ちょっとよく聞き取れなかったのだが、どうもこれはおかしいと思う。それじゃ商工組合内部は、なるほどうまくいくかもしれぬですよ。中小企業者は入れられちゃうのだから、うまくいくかもしれない。しかし中小企業者以外のものが外部にあってその調整事業を乱しておる、こういう場合に、ただし員外者も組合員たる資格は持っている。定款に定めてあるから……。どうしてもこれを何とかしなければ調整事業はうまくいかないという場合には、その調整事業に服させる方途は、第五十六条による以外にはないのですね。それはもちろん団体交渉というか、組合交渉ですか、それがあるかもしらぬが、同時に発する場合は当然考えられませんか。
  98. 川上為治

    川上政府委員 先ほど申し上げましたように、この中小企業者で作っておる組合で、それ以外のアウトサイダー、このアウトサイダー中小企業者と大企業の二つがあったと考えます。その際には中小企業者アウトサイダーだけを入れましても、この組合の自主的な調整事業というのはできない、非常に困難であるというふうに考えます。ということは、アウトサイダーである大企業が外にありまして、非常にこの組合調整事業を阻害する限りにおきましては、この組合調整事業は、たといアウトサイダーである中小企業者だけを入れましても、自主的な調整事業はできないだろうというふうに私は考えますので、強制加入命令アウトサイダー命令が、ともに出るというようなことは万ないというふうに考えております。
  99. 小平久雄

    ○小平委員 それもわかります。今の長官の説明からすると、アウトサイダー中小企業者と同時に大企業者あるいは組合等がある場合においては、加入命令は出さないのだ。それは初めから全般をひっくるめて、要するに員外者全部をひっくるめた調整規程でいくのだ、こう解釈してよろしいのですか。
  100. 川上為治

    川上政府委員 これはアウトサイダー両方いて、しかもこの組合調整に対しましていろいろ妨害なり、あるいはそのために調整事業ができないというような場合においては、さように考えております。
  101. 春日一幸

    春日委員 議事進行について。今小平委員が質問されております問題は、この法律案の核心に触れての、重要な事柄にことごとく触れておられると思うのであります。そこで、私たちがこれを聞いておりましても、肝心の与党である小本委員でも、質問をしなければわからない。なおかつ質問をしても、これは私正直に言うて、小平さんを釈然と納得せしめる回答はないと思う。いうならば、まさにずさんきわまる不確定議案と言ってもいいと思う。私はこの事柄は重大視しなければならぬと思う。私たちは質疑応答を通じて、与野党が共同してこの法律の完璧を期さなければならぬと思う。ところがごらんの通り私どもの方では二人、向うじゃ一人、こういう状態でこの重大問題をお互いにこのまま過していってしまうということは、これは消費生活者の利益とわが国の経済の将来のために、私ははなはだ不安にたえないわけです。それで、私はほんとうに超党派的な意味において、こういう経済行為の今後の基準を律していく、いうならば、わが国における画期的な経済法規がここにできようとしているのです。政府は基本法だと言う。小中さんは、こんなものは臨時措置法じゃないかと言う。ことごとくちぐはぐなんです。いうならば、各条章ともほとんど危険きわまる、乱暴きわまる法案なんです。私たちは、実は本日午後から衆参両院の通産関係委員と、党における政策マンが集まって、この法律案に対するわが党の態度を、時間をかけて検討するという機会を持つことが予定されているのでありますが、今与党と政府との間の質疑応答をすなおに聞いておりましても、これはことごとく私どもは恐怖の念にかり立てられる。実際問題として、これは川上長官いかがでありますか。こういう法律が通って、わが国の経済がめちゃめちゃにいうならばおもちゃ箱をひっくり返すような形になって、責任を感じてあなたがそこで首を百切ったところで、それは罪が償われるものではありませんよ。私は、おそらく小平さんも納得できないと思う。委員長はなおさら不安にたえないと思う。これはほんとうに時間をかけて、もっとしんみり一条一句——弁慶は般若心経を一字一句食べて咀嚼したというけれども、われわれは、少くともこの法律案は三十日に採決するとかなんとかいうむちゃくちゃなことを言わないで、ほんとうにみなが聞いて、与党も野党もしんみり聞いて、そして国家国民のために、われわれがあやまちを犯すことのないようにしなければならぬと思うのです。貴重な御意見をこういう状態で進めても、私はせっかくの御意見が意味をなさぬと考えますから、とにかく冒頭にも申しました通り、少くとも大臣も出てこなければいけませんし、それから首藤氏も小笠氏も、みな理事者が出てきて、しんみりこういう貴重な意見を伺って、そして責任ある判断をしていかなければならぬと思いますから、どうです本日はこの程度で……。
  102. 小平久雄

    ○小平(久)委員 最後に一言。春日委員からのせっかくのお言葉ですが、私は冒頭に申し上げました通り、これはなかなか大部の法案であるし、むずかしい法案でもあるから、一般の商工業者というものが理解しやすいように、市井のほんとうに一介の商人でもわかるように、そういう意味で、初めからお断わりして、その解説を一つお願いするという気持で僕はお尋ねしている。この法案の企図しているところ自体に、私は反対しているわけではない。ただ先ほど来御質問申し上げたのは、一般の誤解があってはいけない。そういう意味で、微に入り細をうがってお尋ねをしたわけです。しかし、せっかく春日委員の御発言もありますので、私はまだまだ、今申したような趣旨においてお尋ねしておいた方がよかろうと思う点が多々ありますが、それらはなお後の機会に譲るといたしまして、本日はこの程度にいたしたいと思います。
  103. 横井太郎

    ○横井委員長代理 本日はこの程度にとどめます。  次会は明後二十七日午前十時より開会することにし、これにて散会いたします。    午後二時一分散会