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中林参考人 私ただいま御紹介を受けました
日本生活協同
組合連合会の
中林でございます。私たちは
消費者の
立場に立っていろいろ考えるわけでございますが、われわれは
消費者の
立場に立っても、現在の
日本において
中小企業の
振興ということは絶対必要なことであり、このことについては国民だれ一人として
反対するものもないし、今まで大
企業中心にいろいろなことを考えられて、
中小企業のことがなおざりにされていたというような点から見まして、今度の国会において
中小企業の問題が大きくとらえられて参っているということは非常にいいことだというふうに考えるのでございます。そしてまたその弱い
中小企業の
組織化ということも私たちはこの段階においては必要なことだろうというふうに考えているのでございます。しかしながら今度
政府から提案されておりますところの
中小企業団体法を見ますと、その
組織化が法律の力で、つまり権力でいろいろのことをやっていこうという考え方になっております。私たちはそのような権力的なものによって
中小企業の
組織化をやるというような点については絶対に
反対せざるを得ないというふうに考えております。そして現在
政府から提案されておりますところの
中小企業団体法を詳細に
検討しますと、それは
中小企業といっても大資本につながるところの一部の
中小企業を救う、つまり資本
中心の系列化を結局においては促進するだけであって、むしろ多くの救われなくちゃならない零細な
中小企業者、零細業者を
犠牲にして、そうして一切の矛盾を
消費者にしわ寄せされてくるというような懸念が非常に強いというような見地に立って、現在
政府から提案されている
団体法というものについては私たちは
消費者の
立場に立って絶対
反対せざるを得ないというふうに考えるのでございます。従ってまず
政府から提案されておりますところの
団体法について、なぜ私たちは
反対であるということを少しく申し上げてみたいと考えるのであります。
まず第一番に、現在のこの法律が
中小企業対策と
中小企業の
振興というような形で提案されておりますけれ
ども、これに何らの
予算措置も何も考えられていない。三十二年度の
政府予算を考えてみますと、
中小企業関係の
予算はわずかしかふえてなくて、これだけ鳴りもの入りに
中小企業のことをいろいろと言われながら、
予算の面においてほとんど考えられていないということをまず言わなくちゃならない。そしてまたこの
中小企業対策というものにつきまして、私たちは現在の
日本の
中小企業のいろいろの問題の根源がどこにあるかということをやはりいろいろと考えてみなくちゃならない。そのような見地に立って根本的な問題を考えてみますと、やはり一般に言われているように、
中小企業の過多性が一番根本的な問題ではないだろうか。そうしてそれがむしろ失業人口のプールのようにされておるというところに大きな問題がある。
東京においては十五世帯に一軒の割合で商店がある。山形に行きますとそれが十世帯に一軒だ、最近生活協同
組合のことでやかましく問題になりました米子について調べてみますと、七世帯に一軒の商店だというような割合に統計ではなっているのでございます。そうしてこのように商人が非常に多いというにもかかわらず、
政府の
経済五カ年計画を見ますと、昭和三十五年までにその商人をさらに二四%ふやす、そうして八百九十八万にするという数字が出ているのでございます。商人が非常に多いところに問題があるというにもかかわらず、
政府の
経済五カ年計画はさらにそれをふやしていくということになっておるのであります。そのことは昨年出ました労働省の労働統計を見ても、失業人口がどのような面に吸収されておるか、雇用量の増大がどのような面にあるというと、いわゆる第三次産業部門というような面にあることを見ても、そのことがはっきりして参るのではないだろうかというような、このような点に一番大きな矛盾がある。さらに
経済的にこれを見ますと、戦後の特にここ二、三年の大きな現象として現われておりますのは、いわゆる大メーカーが直接の小売にまで進出してきている。そうしていろいろな形で商事会社を作ったり、あるいは販売網を確立したり、あるいはサービス店というようなものを作っております。私たち学生時代は銀座を歩きますといろいろな商店がたくさん並んでおりました。しかしながら現在銀座を歩いてみますと一番目立つのは大きな紡績会社のサービス店あるいは電気メーカーのサービス店がきれいな店を張って並んでいるわけです。そしてまた従来あったところの商店というものがみんな戦後影をひそめて、大きなメーカーとかサービス店とかそういうようなものが軒を並べている。また百貨店に行ってみましても、百貨店は大きなメーカーの陳列所になっており、またいろいろの名店街というようなものが百貨店の中にできてきている。そうして参りますと、結局そのような形で最近流通面の再編成ということが大資本
中心に強行されてきているということが非常に目立って参っている。そしてまた
経済の統計で調べますと、商業マージンが戦前に比べて現在一〇%ないし一五%低下して参ってきております。そのようなことは、やはり流通面におけるところの大資本の支配というようなものが進んできているためにいろいろの
中小企業者が
犠牲にされている。つまり商人は上からは大資本の圧迫を食らい、下においてはそのような失業人口をどんどんと流し込まれる。そこに現在の
日本の流通面におけるところの基本的な問題があるのであって、この点に対して
政府は何ら考えることなくして、ただ法律ですべてのものを解決しようとしているところに私は今度の問題の一番大きな矛盾があるというふうに考えるのでございます。そうしてまた、現在の資本主義
経済のもとにおいては、やはり自由競争ということが建前にならなくちゃならないのにもかかわらず、それが今度の法律を見ますと、全く権力的な統制ということに進んでいこうとしている。これは大きな時代逆行である。特に五十五条におけるところの
加入命令あるいは五十六条におけるところの
員外者の
規制というような点にそれが端的に現われているというふうに私は考えるのでございます。このような商工
組合への
加入命令あるいは
員外者の
規制というようなことになって参りますと、
消費者がこのような
経済の中において自分たちの生活を幾らかでも楽にしょう、安定させようとしてやっておりますところの生活協同
組合、あるいは労働
組合なり婦人団体のいろいろな自由な
経済活動がこれによって
規制されることになって参るのではないだろうかというふうに私は考えるのでございます。そのようなことになりますと、結局
消費者がどのような被害を受けるかということにつきましては、各地の統計を私たちは持っているわけでございます。ここに
一つだけ兵庫県の相生におけるところの統計を私持って参ったのでございますが、二十二、三年まで播磨造船に生活協同
組合がなかったころにおいては、相生の物価は
東京よりも、神戸よりもどこよりも高かった。神戸を一〇〇にしますと二十二、三年ころの
消費者物価指数は相生においては一〇六ないし一〇七であったのです。それが二十三年に生活協同
組合ができましてから、相生の物価はどんどんと下って参りました。そうして二十六年以降においては、今日相生の物価は、神戸を一〇〇にしまして、姫路、竜野あるいは豊岡というようなところと比較してみまずと、一番低くなっております。三十年の統計を見ますと、神戸を一〇〇にしますと、姫路は九五・五、相生は九〇・一、竜野は九三・三、豊岡は九六・九というような工合に統計でも出て参っているのでございます。従ってこのような中において生活協同
組合なり
消費者の自由な
経済活動というものを
規制してくるということは、
消費者の権利をこの法律によってはばんでしまうというようなことになり、これは決して
消費者の生活安定の役には何ら立つところがないのではないだろうか。また二十九条の
組合交渉という問題につきましても、現在の
政府提案の法律においてはいろいろ問題を持っている。たとえば生活協同
組合な
ども交渉を受ける対象になっているのでございますが、このような点についても私たちは十分
検討を加える必要があるのではないだろうか。そうしてこの問題について
中小企業庁の方にもいろいろお会いして私たちが伺いますと、七十二条あるいは七十三条あるいは八十一条、八十二条に安定
審議会とかあるいは調整
審議会の
規定があって、それによっていろいろやっていくということを言われておるのでございますが、私たちはそのような
審議会がどのような性格のものであるか、果してその中に
消費者、特に家庭の主婦の発言がどれだけ認められるかというようなことを考えてみますと、私たちは大きな疑問を持たざるを得ないというふうに考えるのでございます。そうしてこのような権力的な統制をやって参りますと、結局それはやみの温床を作るようなものになるのではないだろうか。戦争中の統制
経済の時代にどのようなやみが横行したか、われわれ国民はやみのために非常に暗い生活をしたのでございますが、そのようなことが再び出てくるんじゃないだろうか。また権力と結びますことは、やはり官僚の汚職の源泉になって参るのではないだろうか。汚職の源泉がこのような統制とつながっておるということは私たちの経験でもはっきりしておるのでございますが、現在の
団体法を推し進めて参りますと、いろいろ
経済の面において権力的な統制をやることによって無理が出てきて、そうして汚職とかやみの源泉を作り、そうしてまたこういうような形で商工
組合とかいろいろの形で統制して参りまずと、結局各
企業におけるところの
企業努力というようなことも削減されて参りまして、結局サービスの低下というような形になって、
消費者なり、あるいは特に家庭の主婦に対する影響が非常に強いのではないだろうかということを私たちは憂えるのでございます。従って、この
団体法というようなものが施行されて参りますと、いろいろそういうような面において
消費者へのしわ寄せがなされてくる。そうしてこのようなことは、この
団体法が国会に提案されておる、そうして現在
審議されておるということを
中心にして、やがてこの法律は国会を通るだろうというようなことを前提としまして、地方ではもうすでにいろいろのことが画策されておるのでございます。二、三日前にも私たちは全国の代表者が集まりましていろいろ伺いましたら、福岡ではこういうようなことがもう業者の間で文書で流れておるとか、あるいは米子ではこういうことがあるとか、あるいは兵庫ではこういうようなことがある。たとえば兵庫県で最近聞きますと、この法律ができたら、製氷
関係の業者の間において
組合を作って、そうして共販制度をしこうというようなことが言われておる。兵庫県においては灘の生活協同
組合が製氷
事業、つまり氷を作る仕事をやっておりまして、そうして一円の
組合員に氷を提供して非常に喜ばれておるのでございますが、その値段がやはり一般の業者と比較して非常に安いということでいろいろ言われておったんですが、これができますと、共販制度はできた、氷は全部プールして一定の価格でこれを売ることにしようというようなことが現在いろいろと言われておる。そうして
組合もこれに加盟しなくちゃいけなくなるのだということで今盛んに勧誘されておる。そういうような共販制度、プール制度というようなことがなされて参りますと、結局それは値段を上げるということになって参るのではないだろうか。現在でもすでに薬品だとかあるいは化粧品だとか、毛糸だとか、書籍だとか、マッチだとか、みそ、しょうゆ、ソース、電気器具というようなものについては協定価格が行われておるのでございますが、最近の新聞を見ましても、マッチの値段が調整
組合において引き上げられるとか、あるいは昨年の秋にみそ、しょうゆの値段が一斉に上げられたとかいうようなことになっておるのでございますが、またプロパンガスの協定価格というようなものとか、いろいろの面において家庭の主婦は日用品、生活必需品の協定価格によるつり上げによって苦い経験を数数持っておるのでございます。従ってこの
団体法によって商業サービス面にまで
一つのカルテル的なものを推し進めてくるということについては、私たちは絶対
反対せざるを得ないというふうに考えるのでございます。私たちは生活協同
組合と申しましても、決して商業者や
中小企業者のことを考えない、生活協同
組合があれば商業者や
中小企業者はつぶしてもいいというような考えは、毛頭持っているのではございませんのであって、そのような
消費者の
経済組織と商業者なり
中小企業者というものは、
日本においては共存していかなくちゃならない。そうしてすべては
消費者へどのようにしてサービスするかということでやっていかなくちゃならない。このような経験はイギリスを初め西欧諸国ではみんな持っているのでございまして、特にそういうような点においては、イギリスの保守党が国民生活の面において果してきた役割につきまして、私は
自民党の諸先生方にも——イギリスその他の西欧諸国、特に福祉国家というようなことを
自民党でもいろいろ言っておいでになりますが、福祉国家というものはどういう
内容を持たなくちゃならないかということにつきまして、もう少しお考をいただきまして、このような根本的な矛盾に手を触れることなく、ただ法律の力ですべてを解決していこうというお考えは、私はぜひもう一度御
検討をお願いできないだろうかと思います。私たちは今のこのような流通面における矛盾を何とかみんなの手で排除して、そうして明るい民主的な流通秩序、流通機構というものを打ち立てる努力をどうしてもしなくちゃならない。それをしない限りは、どのような法律を作っても、決して
中小企業者も商人も救われないし、またもちろん
消費者も決して救われるものではないというふうに私たちは確信しているのでございます。前の石橋首相も完全雇用ということを盛んにおっしゃったのでございますが、私たちはやはり
日本においては完全雇用あるいは
社会保障制度の拡充というようなことをもっともっと国会において大きくお考えいただいて、そうして
中小企業者に対しては、税金の問題だとか、あるいは資金の面においてもっともっと考えてやらなくちゃならない面がたくさんあるし、そうしてそういうようなことを考えながら、
中小企業者の自主的な
組織化を進めることが一番よいのではないだろうか、そのような見地に立って
社会党の
組織法を読ませていただきますと、私たちのそのような考え方と基本的な考えにおいて全く合致いたしているのであります。従って私たちが
社会党の先生方に申し上げたいと思いますのは、
社会党はせっかく
中小企業組織法というりっぱな
法律案を国会に提案しておいでになるのでございますので、私はあくまで
社会党としては
社会党の
組織法を通すという努力を百パーセントしていただきたいというふうに考えるのでございます。私たちは
団体法のような権力的な色彩を持つもの、特にこの
団体法が現在の国会に提案される過程におきまして、次官
会議においても、大蔵次官なりあるいは農林次官なり
政府内においても
意見の不統一があったものを閣議において通し、そうして国会においてこれを多数の力で押し切っていこうというようなことをなさるならば、これは国民の議会政治に対する不信を招くことになるのではないだろうか。保守党の
自民党の諸先生方におかれても、
先ほど申し上げましたように、イギリスなりあるいは西欧諸国の福祉国家がどのようにして作られて参ったかというようなことを私は
一つ十分お考えいただきたいというふうに考えるのでございます。最近私たち
消費者といたしましては、
政府の一千億減税ということによって、国民はその新聞を見て非常に喜んでおったのでございますが、すぐ四月一日から鉄道運賃だとか、電気料金だとか、あるいはまた私鉄の貨物の運賃が引き上げられた。そうしてまたこの
団体法が通りまして、家庭の主婦の買いものだとかいろいろの面においてさらに日用品の物価が上ってくるということになりますと、せっかくの一千億の減税も何の効果もない。そうして国民は再び統制時代の暗い気分で生活をしなくちゃならなくなるのではないだろうか。そのような意味において、この
団体法というものは決して多くの零細な
中小企業者を救うものでもないし、結局これは
消費者、勤労者にいろいろの矛盾をしわ寄せして、大資本
中心の
企業の系列化を進めて、そうしてそれにつながるところの一部の
中小企業の上層部の方はこれで救われるかもわからないけれ
ども、多くの零細業者、
消費者は、これによって決して救われることはない、そのような意味において、現在
政府から提案されておりますところの
中小企業団体法案には私たちたとしは絶対
反対である。私たちはこのために昨年の暮れから全国
消費者団体連絡会というものを作ってやって参って、すでに全国に十三の
組織がわずかの間に結成された、このことだけ見ても、全国の
消費者が、この
団体法がどのように
消費者の生活を圧迫するものであるかということを身をもって感じているのではないだろうかというふうに私たちは考えますので、国会の御
審議におかれましても、この
消費者の
立場を十分お考えいただきたい。
消費者の生活を高めていくことが結局現在の
日本において——これは議会の先生方も全部
消費者なんでございますが、
消費者の生活をどのようにして高めるかということでいろいろのことをお考えいただきたいということを申し上げまして、私の
意見といたしたいと思います。