運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-15 第26回国会 衆議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十五日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    伊東 隆治君       齋藤 憲三君    椎名悦三郎君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       中村庸一郎君    南  好雄君       横井 太郎君    佐々木良作君       佐竹 新市君    田中 武夫君       田中 利勝君    多賀谷真稔君       永井勝次郎君    帆足  計君       八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁開         発部長)    植田 俊雄君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  讚岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁行政部         振興課長)   吉浦 浄真君         大蔵事務官         (銀行局特別         金融課長)   磯江 重泰君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十三日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  山崎始男君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として鈴  木義男君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員鈴木義男君及び中崎敏辞任につきその補  欠として多賀谷真稔君及び安平鹿一君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 三月十四日  自転車競技法等臨時特例に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一〇二号) 同月十三日  中小企業団体法制定に関する請願(大島秀一君  紹介)(第二〇九一号)  同外七件(河本敏夫紹介)(第二〇九二号)  同(高木松吉紹介)(第二〇九三号)  同(畠山鶴吉紹介)(第二〇九四号)  同(山手滿男紹介)(第二〇九五号)  同二件(逢澤寛君紹介)(第二一二八号)  同外二件(亀山孝一紹介)(第二一二九号)  同(竹内俊吉紹介)(第二一三〇号)  同外三件(渡海元三郎紹介)(第二一三一  号)  同(長井源紹介)(第二一三二号)  同外一件(町村金五君紹介)(第二一三三号)  同(米田吉盛紹介)(第二一三四号)  同(渡邊良夫紹介)(第二一三五号)  同(阿左美廣治紹介)(第二一六六号)  同(有馬英治紹介)(第二一六七号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第二一六八号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第二一六九号)  同外六件(神田博紹介)(第二一七〇号)  同(臼井莊一君紹介)(第二一七一号)  同(菅野和太郎紹介)(第二一七二号)  同外二件(小平久雄紹介)(第二一七三号)  同(椎名悦三郎紹介)(第二一七四号)  同(砂田重政紹介)(第二一七五号)  同(徳田與吉郎紹介)(第二一七六号)  同(中村寅太紹介)(第二一七七号)  同(長谷川四郎紹介)(第二一七八号)  同(濱野清吾紹介)(第二一七九号)  同外六件(林博紹介)(第二一八〇号)  同外七件(福田篤泰紹介)(第二一八一号)  同外十三件(眞鍋儀十君紹介)(第二一八二  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  奄美群島における電源開発に関する件  産業経済基本施策に関する件     —————————————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  奄美群島における電源開発に関し調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。伊東隆治君。
  3. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 奄美群島昭和二十八年の十二月二十五日に日本に復帰いたしまして、ここに満三年半になんなんとしておりますが、政府特別法を設けまして、八年間も米国の軍事占領下にありましたこの地域復興につきまして特別の考慮を払っていただいておりますことは、島民ひとしく感謝いたしているところでございますが、特にこの復興の原動力ともなるべき電力の問題につきましては、いまだに全く手がついていない状態でございまして、大島本島におきましては約五七、八%、あるいはある村のごときは七、八〇%も電燈がついておりますけれども、五つの群島から成っておりまするこの奄美群島の中で、二つあるいは三つの島におきましては、三、四〇%の住民しか電燈の明るさを持っていないというような状況でございまして、平均島民の五二%が電燈をつけておる、こういうみじめな状況であるのであります。しかもこの五二%と申しましても、これも五十ボルト程度でございまして新聞もほとんど読めない状態、しかもまたはなはだしいことは、夜分の手術なんということができなくて、名瀬市の県立病院におきましては、自転車のヘッド・ライトで手術したというようなことがあるほどで、人道的な見地に立ちましても、まことにゆゆしき事態になっておるのであります。県当局におきましても、この電力問題につきましては非常に意を用いまして、これを県営にしようかとか、公営にしようかというような議もいろいろありましたが、結局これを、もちはもち屋だということで九州電力にお願いして、今九州電力が乗り出してきて経営上の責任をとろう、こういうことに相なって参ったのであります。ところが九州電力九州一円の電力経営責任をとっておるのでありまして、壱岐、対島あるいは五島列島あるいは天草その他の離島等において電気事業責任を持っておるのでありますが、いずれも赤字になっておる。そこで今度はわが奄美群島電力問題の経営責任をとるに当りましても、今のところは一応の採算の目標は立っておりますけれども、国の全面的な援助なくしてはその事業の遂行ができないというような事情にあるのであります。そこで私この際、通産当局公益事業局長が見えておりますので、岩武局長から、わが奄美群島電力問題の今後の経営に当って、九州電力に対して金融的にどういうような援助を与えようという考えを持っておられるか、この点を最初お聞きいたしたいと思うのであります。
  4. 岩武照彦

    岩武政府委員 奄美群島電力事情は、今伊東委員からお話がありましたように、きわめて憂慮すべき状態と申しますか、あるいは寒心すべき状態と申しますか、こういうような電力供給量であってはならないという状態と思っております。何せ終戦後長期間放置されておったことと、もう一つ本土からかなり離れておりますために、事情があまりはっきりいたしませんでしたが、九州電力の方で最近経営に参加いたしましてから、やや事態がはっきりして参りました。御指摘のように非常に貧弱な電源しか現在持っておらない。八万の人口を持っております本島で、わずか七百キロ程度の小水力ディーゼルしかない。電燈も御指摘のように五十ボルト程度でございまして、これではとてもなっていないという状況であります。あと徳之島とか沖永良部島ももっと悪い状況のようでございますので、いろいろ調査いたしました結果、この地点にはかなり水力地点もあるようであります。雨も相当に多いところでありますから、ディーゼル発電等でやりますよりも、むしろ水力発電のものを作った方が、将来の電力料金等に及ぼす影響もよくはないかということで調査いたしまして、現在大島電力から本島におきましては約三千キロ程度かの水力発電の計画が提出されております。その資金約五億近くを要するかと思いますので、これについて開銀融資をぜひというお話でございます。私の方も電力供給量のことでございますから、これにつきましては全面的に援助して、開銀当局の方にいろいろ話しております。ただ何せこの会社資本金が千五百万円程度でございます。千五百万円の会社に数億の金融ということは、なかなか実際問題としては困難でございますが、これにつきましては、でき得れば九州電力の方の保証というような形で担保力を増しまして、そして考えていきたい。それからあとの島の方の問題も、これは一挙にできませんので、追々にこれに準じたようなことで開発をして、少くとも電燈あるいは小口動力の方は何とか格好をつけたい、こういうふうに考えております。
  5. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 公益事業局長お話によりますと、開銀からの融資は全面的すなわち百パーセント融資は困難だというふうに承わりましたが、御承知通りすでに喜界島与論島または与路島それに大和村、この四つ地方に対しましては、開銀はすでに百パーセント融資いたしておるのであります。さかのぼって、この大島全体の電力問題をどうしようかということが問題でありましたときには、すなわちこれを性質からいって公営にしよう、あとで県がその経営責任者になろうということすら考えられましたほどに、これはやはり全面的な国の援助がなければとうてい困難だということは、当時から結論が得られておるのであります。  そこでお伺いいたしたいのは、電力事業に対しましては、国のそういう投融資からの融資は大体二〇%、それから特別の場合に何パーセントまでどういう地方にやっておるか、今日までの電力事業に対しまする国の援助ぶりについて一応伺いたいと思います。
  6. 岩武照彦

    岩武政府委員 九電力に対しまして開発銀行から出ます資金は、現在は大体二割四、五分という段階でございます。もっともこれは数年前に開銀資金が相当豊富でありましたころは、四割以上行ったこともございますが、現在は工事量がふえましたのと、開銀資金が減りましたので、そういう状況でございます。もっともその他の自家発あるいは卸売電気業者に対しましては、開銀から五割程度協調融資を伴って融資をしたことがございます。それから公営電気事業の方は、御案内のようにほとんど全額に近いものを地方府県債発行によって資金運用部が引き受けております。これは全部といえば全部国の金になりますが、債券の引き受けでございますから、直接貸しとは若干趣きが違っております。大体そういうのが実情でございます。
  7. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 そうしますと、国が電力事業援助を与える場合には、事業自体困難性にかんがみてやるのか、またその電力経営する主体いかんによって——たとえば、ただいまのお話によれば公共団体経営主体になっておった場合にほとんど国の援助が一〇〇%あったということであります。言いかえれば、公営である場合には一〇〇%やるが、九電のごとき会社経営主体になった場合には一〇〇%やれない、こういうふうにも聞えますが、どんなものですか。
  8. 岩武照彦

    岩武政府委員 その率は別段相手方によって云々というようにきまったものではないと考えております。私が先ほど申し上げましたのは、発電だけをやって、送変電あるいは配電という供給業務を行なっていない、いわゆる公営電気事業のうちの発電部門の問題でございます。ほかに、小さい瀬戸内海の島等におきましては、公営配電のところも一、二ございます。これは奄美大島のように大きな人口を擁しております島とは全然違いまして、わずか五百戸、八百戸というような小さい孤島の供給事業でありますから、これはそういう自治体の借入金あるいは債券等でまかなっておるのでございます。あるいはまた一般会計からの繰り入れでもって一部まかなっておるのでございます。別段、主体公営であるとか株式会社であるとかいう区別によって融資なり援助の率が違うということではなく、そのときの事情相手方主体ケース・、バイケースでおのずからきまってくると思っております。
  9. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 そういたしますと、経営主体またはその事業性質いかんによって融資金パーセンテージがきまるというのではない、その都度ケースバイケースできまるのだというお話であります。そこでわが大島群島の今日までの融資状況を見ますと、喜界島の場合に五千万円、与論島の場合に二千六十六万円、加計呂麻島の場合に五千万円、大和村の場合に千二百万円、四回融資を受けておるのでございますが、いずれも一〇〇%いただいておるわけでございます。その他の大島本島及び徳之島沖永良部島等においても、もとより群島の一環の電力事業ということで、県も九電もそのつもりで経営責任を引き受けて参っておる、こういうような行きがかりがあるのでございます。そこで、ちょうど大蔵省特別金融課長が見えておられますから、四つ地方に一〇〇%融資をいたした当時の事情を伺いたいと思います。
  10. 磯江重泰

    磯江説明員 ただいまお尋ねのその当時の事情というお話……。
  11. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 やはり大島電力は一〇〇%融資しなければ維持経営できないという見地に立たれたのだと思うのですが、さようでございましょうかというのです。
  12. 磯江重泰

    磯江説明員 私も実は当時の事情につきましてはっきりとは承知いたしておりませんけれども、やはり大島とかそういう特殊の事情を考えてそういう措置をとったのだと考えております。
  13. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 ただいま申しましたこの四つ地方経営主体が村である、すなわち、公共団体であるということによって一〇〇%融資があったが、今度は九州電力という営利会社経営主体になったので、特別の考慮はするが一〇〇%の融資ということは、やはり八年間軍事占領下にあった群島だとはいえ困難だ、九電に金融上のめんどうを見てもらいたいという気持がどうも当局にあるように思うのです。やはり経営主体いかんによって融資パーセンテージが違うではないかと思うのであります。しかし、九電当局から通産当局よくお聞きの通り大島電力経営はどうしても一〇〇%でなければ困るのであります。都合によっては大島電力専務喜八氏が見えておりますから、参考人としてその陳述をお許し願いたいのでございます。  公益事業局長、今度は公営から九州電力経営主体が変ったので一〇〇%融資をちょっとしぶっていられるような気がいたしますが、前四回一〇〇%融資がありましたのに、今回は幾分かは九電にやってもらいたいという気持を御説明願いたい。
  14. 岩武照彦

    岩武政府委員 先ほど申し上げましたように、借りる主体が変ったから云云ということはないではないかと思います。むしろ貸すところがどこかということで話が違ってくると思っております。大島電力の方は開発銀行からでございます。開発銀行は、通常協調融資ということで一〇〇%融資を行なった例が少い。あるいはないのかもしれません。そういうのが実情であります。御指摘になりましたような与論島その他の島は村営でございますから、先ほどおあげになりましたのも資金運用部からの転貸だと思います。そういう場合は一〇〇%のこともあり得るかと思います。ただ、今あげられました与論島等四つの島はその点人口も少うございますし、事業の規模も小さいものですから公営で十分できるかと思いますが、それにしましてもいろいろ経営上の難点はあると思います。大島電力の方の本島であるとか徳之島沖永良部島は相当の人口を持っておりまして、私見を述べさしていただきますれば、そういうふうな大きい人口を持っておりまするところは、公電ではなかなかむずかしいだろう、ことに最初企業資金はかりに一〇〇%の融資ができましても、あとの拡張でありますとかあるいは修理でありますとかいうふうな配給業務に伴いまするいろいろな追加資金はなかなか公営ではむずかしいというのが従来の例でございます。従ってそういうふうな経営の将来の発展を持つという弾力性のある見地でありますから、これはやはり株式会社経営の方が私は適当ではないかと思っております。なお資金調達の方法といたしましては、株式会社でございまするから借入金のほかに自己資金、つまり株式の増資を行うということも当然考えられます。おそらくある程度建設が進みますれば千五百万円の資本金ではとうてい足りませんからかなりの増資を必要とするかと思いますが、それらと相待って事業発展を進めたい、こう思っております。
  15. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 ただいま局長の御意見通り、ある時期に達しましたならば増資も必要かと存じております。しかし終戦直後、今の開銀に当るような復金におきまして電力事業に対しまして一〇〇%の融資をやった。奄美大島の場合におきましてはちょうど終戦直後の状況、それ以下です。すなわち夜新聞も読めない、しかも島の五二%しか電燈がついていない、こういうようなみじめな状況にありまする地方電力を興そうというこの際におきましては、ちょうど終戦直後に復金がやりましたように、開銀が、さっきの預金部のあれではなくて今度はやはり銀行でございますけれども、開発銀行が一〇〇%融資をするように当局においてはあっせん願うのが当然じゃないか、かように考えておるのであります。この点局長の御意見をお伺いしたいと思います。
  16. 岩武照彦

    岩武政府委員 終戦直後から復金見返り資金を通じまして、電力事業は実は司令部から設備資金借り入れを押えられておることはだいぶ長いことであります。どうもあまり占領時代の末期までは国家資金の投入がなかったように記憶しております。もちろんありましてもそれは開発資金の一部だったことは当然であります。復旧資金全体をまかなうわけには当然参りません。それからおそらく当時の日発あるいは九つの配電会社に対しましては金の量も必要とするものの一部だったかと思います。そういうことで正確なことは記憶しておりませんがお話大島電力の方は私たちも極力そういうお話方向へ努力はしたいと思います。ただそれができるという約束はちょっとこの席では今申しかねますが、そういう特殊な事情もありまするし、将来の電力料金の原価に響きます影響もありまするから、できるだけ開銀の六分五厘という低利な金を多量に融資するように努力いたしたいと思っております。
  17. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 今局長開銀からの融資は特別の考慮をしていただくという気持は十分ありがたく存ずるのでありますが、では大体どれくらいの予想であるか、おっしゃられるなら一つ気持だけでも聞いておきたいと思います。
  18. 岩武照彦

    岩武政府委員 その点はまだ開銀と具体的に幾らというような話をする段階になっていないわけでございます。従ってここで今申し上げるわけにはいきませんが、極力よけい出すようにということはお約束したいと思っております。
  19. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 それでは自治庁吉浦振興課長が見えておりますが、今まで復帰いたしまして以来いろいろのめんどうを見ておられる自治庁の御意見をこの機会に伺いたいと思います。
  20. 吉浦浄真

    吉浦説明員 自治庁では奄美大島群島復興に関する事務を担当いたしておりますので全体といたしまして極力予算上の問題あるいは借り入れの問題につきまして今日までやって参ったわけでありますが、特に電源開発の問題につきましては、今伊東委員からも言われた通り非常におくれておりますので、その点につきましては通産省大蔵省及び開発銀行と極力、電源開発が計画通り参りますようにわれわれの方といたしまして推進して参りたい、かように考えておるわけであります。私先ころ現地に参りました。なるほど裸送電であり、真夜中になると停電いたしましていろいろ困っておる。学校の子供も勉強できないというふうな非常に貧弱な電気事情であることをつぶさに見て参りまして、その点につきましては極力関係方面に折衝いたしてやって参りたいと存じております。
  21. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 吉浦課長は先般奄美群島事情調査に行かれて、この電力事情についてもよくごらんになっていただいたようでありますが、電燈の明るさをまだ島民は知らないような状況で、東京あたりあるいは鹿児島あたりに出てくると、電燈というものはこんなに明るいものかということで、電燈というものの光を知ったというくらいのみじめな状況にあるのであります。そういうようなことで内地におきましては敗戦直後といえども国が百パーセントの力を貸し電力事情を今日まで持ってきた。奄美大島は八年間、しかも軍事占領下にあってほとんど顧みられなかった。そういう地域において今や県立病院において手術もできない。自転車のヘッドライトで手術をしておるというがごときことは、全くもってこれは人道問題です。それが名瀬市においてしかりでありまして、山間の僻地においてはいまだに電力のありがたさに浴していない実情でございます。  そこで政務次官にお願いいたしますが、こういう問題は事務的に考えますといろいろの難点もありましょう。また行きがかりもありましょうが、一つこれは政治的にお考えいただいて、通産省として特別の御配慮をいただきたいと存ずるのであります。長谷川政務次官にその点お願いいたしたいのでございますが、政務次官の御意見はいかがでございましょうか。
  22. 長谷川四郎

    長谷川政府委員 奄美大島の全般にわたる電気事情の悪いことはよく聞いておりますし、従って特別なこれに対することを考えなければいけないということもわかっております。しかしただいま伊東さんのお話のような、奄美大島に対しては当然ではないかということが当てはまるかどうかという点には疑問を持っております。従って私たち考え方といたしましては御期待に沿うように早急にこれらを解決つけなければならない、こういうような考え方をもって進んでおり、特に伊東さんの本日の御希望等は、早急に御期待に沿うような方向に向っていきたいと考えております。
  23. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 実は先ほど委員長大島電力専務がちょうど見えておられるので、その実情お話していただくように取り計らっていただきたいということをお願いいたしましたが、だんだん私の質問の中におきまして、そのみじめな状況につきましてはいろいろ申し上げましたから、時間の節約の意味から、その点は省略さしていただきますが、私が特にこの席上をお借りいたしまして、これだけのことを申し上げますことは、とにかく軍事占領下にあって、しかも八年間他の国の胃袋の中にあって、ほとんど溶けかかっておった、消化されかかっておったところの島民は、苦難をなめて、今日本土に帰ったものの、電力は依然として五百キロ——三千キロなければならぬところに五百キロしか島全体にないというようなみじめな状態で、夜新聞が読めない状態だというがごときことは、これは今度また沖繩の復帰の問題、色丹、歯舞、国後、択捉の問題等がありますが、長年戦争によってみじめな状況にあった地域復興状況に対しまして、国が十分の手を貸していただくという一つの態度をこの際示していただくことは、まことに国としての立場からも必要なことだと思いますので、どうか通産当局、また大蔵当局におきましても、融資の問題については特段の御配慮を願いたい。九州電力はなるほど株式会社でございますけれども、これはほとんど半ば国家的な会社であることは御承知通り、しかも離島の多い九州電力責任を持っておりまする九電におきましては、各離島においてみんな赤字を出しておるそうでございます。大島におきましては住用川というかなり大きな川がありまして、初年度において五億一千万円の投資をいたしますと、ここに大きなダムができて、そしてその後は十分ペイできる。開銀としてもペイできないところにむざむざと貸すというようなことはもとよりあってはならないのですが、ペイできるのでありますから、その点も十分一つ当局はさとしていただくことをお願いいたす次第であります。ただいま長谷川次官は、当然というわけにはいかぬというお気持のようですが、私どもその苦難をなめておる者からいえば、国がとにかくこの際、八年間もひどい目にあっておった地域復興だから、一つそういうことをしていただくのは当然じゃないかという気持を、私以上に島民は強く持ってお願いいたしておる次第でございますので、どうか一つ特別の御配慮をいただきますように、この機会にお願いいたしまして私の質問を終りたいと思います。     —————————————
  24. 福田篤泰

    福田委員長 産業経済基本施策並びに私的独占の禁止及び公正取引に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。八木昇君。
  25. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私はこの際主として電気料金の三割頭打ち制度の廃止の問題について御質問いたしたいと思います。なお当然これらに関連いたしまして、東北、北陸両電力会社から申請を予想されますところの料金値上げの問題もあるのでございますが、これにつきましてはあと田中委員の方から御質問があるようでございますので、できるだけ主として三割頭打ち料金制度の廃止問題をめぐって御質問をいたしたいと思います。これらは相当に政治的な問題でありますから、できれば通産大臣の御出席があってからとも思うのでございますが、まだお見えでないようでございますので、あとでもしお見えになれば、一応重複した質問になるかもわかりませんがお許しのほどをお願いいたします。  まず最初に三日ぐらい前の日経新聞に、三割頭打ち制度廃止、通産省内定という見出しで記事が出ております。それからきょうの朝刊の毎日にもそういった趣旨の記事が相当大きく出ております。そこで今日通産省としては、この新聞記事通りのお考えをしておられるかどうかということを最初政務次官、あるいは公益事業局長からでもよろしゆうございますが、お答えいただきたいと思います。
  26. 岩武照彦

    岩武政府委員 日本経済新聞の記事あるいは毎日新聞の記事等は内定というような表現を使っておったかと思いますが、これは内定はしておりません。多分新聞記者の観測だろうと思います。どちらにしょうかと思っている段階でございます。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 議事進行。本案件は非常に重要な問題でございますし、国民注視の的の問題でございますので、至急関係責任者であるところの通産大臣及び経企長官を出席していただくよう御尽力願います。
  28. 福田篤泰

    福田委員長 通産大臣はあと五分ぐらいで出席いたします。宇田長官は他の委員会に出ておりますので、午前中は無理でございます。
  29. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それでは、大臣お見えになりましたら、重ねてその点は明確にしていただくように、私の方から再度質問をいたしますが、しかしこういうことでございましょう。結局三割頭打ち制度というのは、昭和三十年の四月以降一年の暫定措置としてきめられた、それが昭和三十一年の四月以降もさらに暫定措置として一カ年の期限を延長した。こうなりますと、期限は今月の末日をもって切れるわけですね。そうしますと、まだ考慮中でございます、どうしようかというような段階なんということは、常識的に考えて、およそわれわれ想像ができません。しかも電気料金制度というのは、申請に基いて通産省がこれを許可する、こういう旧公益事業令の建前でありますから、事業者の方からの一つの申請手続というものを踏ませるわけでございましょうから、そうなりますと、今どうしようかなんというような、——政府与党側との政治的配慮とか何とかがあるいはあるのかもしれませんが、そういうものは抜きにいたしまして、通産省としての態度は当然きまっているのではありませんか。今きまるにしてもおそ過ぎるのですが、その点もう一度お伺いいたします。率直にお答えいただきたい。そうしませんと、質疑がどうも続きません。
  30. 岩武照彦

    岩武政府委員 私、事務当局といたしまして、ありのままを実は申し上げたわけであります。御指摘のようにこの制度は、いわば行政措置といっても、ちょっと言葉は足りませんが、供給規程できめられた料金に対する例外の認可という形で処理されております。従って供給規程によらなくて、こういうような措置をとっていいかという電気事業者側からの申請を受けまして、これを認可するという手続になるわけであります。過去二回ともそういう手続を繰り返しておりますので、まだ実はざっくばらんに申し上げまして、続けるともやめるともきめておりません。きめてからで十分に間に合う、四月一日でございますから、四、五日あれば間に合うんじゃないか、実はかように思っておりますので、まだ私自身といたしましてもどちらにしますかきまっておらないような状況でございます。あるいは大臣には別のお考えがあるかもしれませんが、事務当局としましてはそういう段階であります。なお今御指摘のありましたのは、電燈料金の三割頭打ちの問題でございます。ほかにも若干の三割頭打ちの措置がございますが、これらも若干いきさつ等は違っておりますけれども、やはり同じ措置で処理することになりますが、それらにつきましても一緒に態度をきめたいと思っております。実は目下寄り寄りどうしたものかと思って頭を悩ましておるというのが実情でございます。
  31. 八木昇

    ○八木(昇)委員 きょうのところはそれで何とか言いのがれができましても、ものの一週間もたたぬうちにはどちらかにお宅の方で態度をおきめになるので、たった一週間前にわれわれが権威ある国会の委員会で質疑をしたときにほんとうの腹を言わないで、そうして案の定われわれが考えておったような措置をしたということになりますと、政治的にわれわれとしては相当追及いたしますから、そこでそういう点は一つ率直にお答えをいただきたいと思います。しかしそれは大臣がお見えになってからなおそういった点についてはお伺いをすることにします。元来三割頭打ち措置なんというような、まことに奇妙な措置が一体なぜ行われたのかということなんですが、法律上の根拠としてはこれは旧公益事業令の四十二条ですかのただし書きに基いて行われたものであろうと思います。それで電気事業というものは国民生活に非常に深い関係を持っておる公益事業であるので、その料金については通産大臣に一々詳細にわたって申請をし、許可を得なければならぬ、その際には法律によって聴聞会を開いて各界の意見を十分に徴した上でやらなければならない、こういうことになっておるのですね。ところがそれをやらないで、しかも国会あたりのやかましい時期にはできるだけ委員会あたりでもざっくばらんなことは言わないでおいて、そうしてどっか法律のすみっこの方にちょっとある特例の処置を持ってきて措置をして、しかもそれが二カ年間続いておる。そうしてまた今後どうするかという問題に実はなってきておるので、こういうふうなあり方自体について何らかの批判もしくは反省をお持ちになっておるか、その点をお伺いしたい。
  32. 岩武照彦

    岩武政府委員 電燈料金の三割頭打ちにつきましては、御指摘のように聴聞会を経ました供給規程によって実施されておったわけでございます。半年間実施されておりました。それが三月になりまして、どうも夏料金時代と比べるとかなり上りそうだから何か措置はないかということで、三割以上も払うようでは急激な変化を与えるから、三割程度にとどめるような方法ということで、御指摘の条文によって処理したわけでございます。従って何といいますか、措置自体については聴聞会等にかけておりません。需要家の利益になるというふうなことで、そういう措置をとられたのだと思っております。ところが実際やってみますると、いろいろ当初の期待と反した結果も出ておるようであります。つまり従量電燈で三割以上増加する需要家が相当多かろうというふうに思っていたわけでございますが、最近実態調査をやってみますと、アンペア制をとっております北海道、東北、東京、中部、北陸等におきましては、五アンペア程度のほんとうに電燈料金の負担を重く感ずる階層にはこの三割頭打ちという制度はあまり適用の余地がない。つまり三割以上も上ることが割合に少い、十アンペアといいますと、大体電燈数が二十燈以上になりますが、それくらいの階層から上の方にはこれはかなり適用がある、しかしその辺の階層は住宅ばかりでなくて、むしろ商店あるいは料理屋といいましょうか、そういうふうな施設がかなりあるようであります。そういう需要家がかなりこの制度の便益に浴しておるというふうな実態も判明いたしました。なおアンペア制をとっておりません最低料金制の地域、つまり関西から中国、四国、九州等におきましても三割頭打ちの措置を実行しておりまするが、この方は実は三割以上になる需要家はあまりないようでございますので、それによりまする割引額等も割合に少いようであります。そういうふうな実態も判明いたしておりまするので、実は先ほど来申し上げますように、いかがなものかと思って、実は私自身大いに頭を悩ましておる問題でございます。  それから同じく三割頭打ちでございますが、御承知のように動力の方の公共事業関係あるいは特殊負荷のものにつきましては、これは供給規程の附則に一年間に限って入っております。従ってそれは聴聞会の議は経ておらぬかと思いますが、正式な供給規程として一年間実行されまして、その後電燈の頭打ちと同じような行政措置でやっておる、こういう次第でございます。若干経過も違いますので、御承知かと存じますが、申し上げた次第でございます。
  33. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私の質問に直接的にはお答えにならなかったようでございますが、しかし制度としてはあまりおもしろからぬ制度であるということについてはおよそ間接的にはお認めになっておるのであろうとは思うのでございます。  そこで今大臣がお見えになりましたので大臣にお伺いをいたしたいと思います。元来電気料金が昭和二十九年の十月に改訂をされまするときは、当時政府としてはいわゆる緊縮財政、デフレ政策の強行を一途にやっておられたときであったにもかかわらず、電気料金についてのみは、電気事業の再編成以来三度目の料金の値上げを昭和二十九年十月にやられたわけであります。ところがそのときには条件がついておった、というのは開銀の金利を七分五厘より六分五厘に引き下げる、それから租税特別措置をやり、事業税や固定資産税、法人税の軽減措置をやる、こういうようなことによって昭和二十九年度の原価において四十六億円の圧縮をした、従って各電力会社あたりは一五、六%にも及ぶ料金値上げを要求しておるが、大体一一%程度の値上げでがまんをしてもらいたい、昭和二十九年十月の改訂はこういうことであったと思います。しかしながら当然こういう特別措置その他を今後さらに推進していくことによって、昭和三十年の上期以降の電気料金については、むしろ引き下げる方向に進むべきものである、こういうことであったと私どもは記憶をいたしております。にもかかわらず今度あの一応三割頭打ちという奇妙な措置をしながら進んでこられて、今度はさらにこれをはずすことによって、実質的に三十億程度の料金収入が電力会社にふえる、こういう結果をもたらそうとしておるわけであります。そこであらためてお伺いをいたしますが、日経新聞や毎日新聞あたりに、今度三割頭打ち制度をやめるということに通産省で内定をしたということが、正式に報道せられております。このことは果して事実であるかどうか、この点を大臣から明快にお答え願いたい、こう思います。
  34. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ内定した事実はございません。局長からお答えがあったと思いますが、実態のいろいろな調査を今させておりまして、そうして内部で検討してもらってから、これをどうするかということをきめる順序になっておりますが、まだそこまで行っておりません。どうせ月末までにはきめなければならぬと思いますが、現在全然どうするという方針はきまっておりません。
  35. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういうふうにおっしゃられましても、きょうは三月十五日になっております。今の電気料金の三割頭打ち措置というものは、三月三十一日をもって期限が切れるわけでございます。その前に業者の方から申請をしまして、その申請の結果を待って通産省はこれをきめるという公益事業令の規定でございますが、実際はそういうことではなかろうと私どもは思うわけです。(「その通り」)しかも本来法の精神に忠実であるとするならば、こういうことについてもできる限り——法に必ずしもこういった一時的な措置についての明文はありませんが、法の精神を尊重するならば、こういう措置についても聴聞会くらい開かなくちゃならぬ、こう思うわけです。もし大臣のおっしゃる通りいまだきまっておらぬとするならば、四月一日以降の三割頭打ち制度の廃止ということは、もはや時間的には間に合わぬ、こう理解してよろしゅうございますか。
  36. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、前にこの委員会の運営の問題についての希望を述べたことがございますが、商工委員会はひとり関係法案の御審議を願うということだけの委員会じゃなくて、やはり通産行政全般に関して重要な問題は、もう率直にこの委員会にも御報告をして、皆さんの御意見を聞いてやるというふうな形で、この委員会との関係を円滑にやっていきたい、こういう運営にしたいということを一番最初に述べましたが、今でもそう考えておりまして、一応事務当局の資料がそろって結論をつけるというときになりましたら、料金の問題でございますから政府が勝手にやれる問題であっても一応与党側に相談すると同時にこの委員会にも、こうしたいと思うがという御相談をかけて、それからやりたいと考えておりますので、時間が確かになくなりましたが、私どもも結論を得たら、至急そういう方法で皆さんの御意見も聞いて、この問題を解決したいと考えております。あと時間もわずかでございますが、必ずその間にそういう運営をいたしたいと思っております。
  37. 永井勝次郎

    ○永井委員 関連質問。先般予算分科会で私から大臣に、電気料金の問題を質問いたしましたそのときに、東北電力会社から三割頭打ち取り除きの電力料金値上げの申請が出ているはずであるが、こういうふうにお尋ねしましたら、出ている、北陸の方もそういう問題がある、これは値上げしなければなるまいと考えているというような答弁であったと私は記憶しているのですが、今の答弁を聞いておりますと、値上げのことは全然考えていないのだというような御答弁のようです。先般の答弁とただいまの答弁とはずいぶん話が違うのじゃないか、こう思うのですが、いつの間にそういうふうに変ったか(「君子豹変だ」と呼ぶ者あり)理由を伺いたい。分科会における答弁の記憶を一つ呼び起して答弁していただきたい。
  38. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 分科会において、東北からそういう申請が出ているということは、申した記憶はございません。そういう値上げを希望する問題があると申しただけでありまして、申請は、現在出ておりませんので、当時出ていると言ったはずはございません。  それから今豹変とかいうことですが……。
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 値上げをしなければなるまいという答弁であったと思いますが……。
  40. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 東北、北陸というのは、実際から見て、一番豊水に恵まれているところでありませんし、さらに最近の開発資金の増高というようなもの、それから昭和三十二年度の電力の需給計画から見ますと、この二つは二十億キロワット・アワーくらいの融通を受けなければやっていけないというところでございますので、当然融通電力のコストは大きいのですから、経理の内容は極度に悪化する。従って、それを検討して、場合によったら値上げを許さなければいかぬ事態が起るかもしれぬと申しましたので、その方針がきまっているというふうには申さなかったつもりでございます。
  41. 八木昇

    ○八木(昇)委員 東北、北陸の電力料金値上げ問題については、あと田中委員からも御質問があるようでありますので、これはできるだけ触れませんが、しかしこれにつきましても、どうも従来の政府のやってこられたやり方を見ておりますと、いつも、四月というのは国会の会期中であってどうもうるさい、まあ私どもの想像ですが……。そこでタイミングを若干はずして、そうしてやや時期をずらして、国会がちょうど終ったころ、六月一日ころから実施になるというような傾向が非常に強い。今回もしそういうことを腹のうちのどこかにでもお考えになっているとするならば、これは非常に遺憾なことでありますから、私この際一言だけは議事録に残しておきたいと思う。しかも最近の趨勢は、鉄道あるいは米の消費価格、あるいはガス、さらに続いてガソリンもそうでありますが、こういった国民生活に密接不可分のいろいろなものの値段が、一斉に上ってこようとしているときであればあるだけに、特にわれわれとしては重大な関心を持っているのであります。その点は、もしおやりになるとするならば、公々然と国会の会期中に、参考人もここに呼んで、そうして堂々と国民の前に、果してこの際電気料金の値上げは是か非かということを十分明らかにした上で、最も民主的に措置をせらるることが必要である、こういうふうに思いますので、その点は私切に要望いたしておくわけであります。  そこで今の頭打ち問題に戻るのでございますが、この頭打ちというようなやり方自体にいろいろ矛盾があるということは、政府も十分にお考えになっていると思うのでございますが、これについてお伺いをいたしたい点は、公益事業令の第三十九条二項の四に、電気料金について何か特別のものに差別待遇をするようなことをやってはならないという規定がございます。そうしますと、今度通産省方面でお考えになっておるような考え方でいくと、あるものは残し、あるものは残さない頭打ち制度、こういうことになろうと思うのでございます。それで頭打ち制度を廃止することには私は反対である。それでは料金の値上げになるからです。でありますけれども、頭打ち制度それ自体に非常に内部矛盾をはらんでおる。今申したような点がその一つであると思います。こういうことについてどういう御見解かちょっと承わりたい。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 申しわけないのですが、その規定をあまりよく知りませんので、局長から答弁させます。
  43. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して。局長がお答えになる前に、八木君の質問で大臣が答えなければならぬことに答えてないから、あらためてお尋ねいたします。今の公聴会を開くか開かないかという問題なんですが、由来電気料金を上げる場合、今八木君が言ったように、どうも国会の最中でなしに、国会が終ったあとであき巣どろぼう的にやられる場合が多い。特にこれは先般この前の国会で約束がしてある。と申しますのは、冬料金を夏料金に移行する、こういう名目で値上げをして二百億余の増収をはかられたことがあった。そのときに、なぜ公益事業令に従って公聴会を開かないのか、こういうことを聞いたところ、いやもうそれは差し迫っておりますのでとか、この次は絶対に開きまするからごかんべん願いたいということで、公聴会を開かぬでやってしまった。そのときの答弁と実際に値上げしてからの値上げの状況とはだいぶ開きがある。そこで今度三割の頭打ち解除の問題を審議される場合、あなたが用意されておる電気事業法等々とも関連があるので、これを上げるか上げないかをきめる前に、公聴会を聞く雅量があるかないか。ぜひわれわれは開いてもらいたいと思っておるが、あなたはそういう雅量を示して国会の円満な運営の行えるように協力されるかされないかをちょっと聞いておきたい。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今までの運営がどうであったかよく存じませんが、私自身は公聴会を開くという規定のあるもは公聴会を開きます。しかしそれよりも私の考えを申しますと、そういっては悪いかもしれませんが、公聴会とかいろいろな審議会とかいうのは、どうも政府としては少し責任のがれで、そこでこうしろというからやるんだということで、非常に責任が軽くなる、こういうのが今までの行政の例で、確かにそういう運営は間違いがなくていいというところがあるかもしれませんが、私自身の率直な気持は、国会議員が一番権威を持っておる、もしよその意見を聞きたければ、国会議員個々人が業界の意見を聞いてここに持ってきてここはこうした方がいいという発言が、やはり政治としては一番権威があるものだ、こう思いますので、そういう希望があれば、公聴会を開くというような運営をしますが、できれば重要問題は通産に関してはこの商工委員会の皆様方の意見を聞いて、おれはこうしたいんだがどうか、それでいかぬというのでいかぬということに従う場合もありましょうし、皆さんがいかぬというのを、おれはどうしてもやりたいというので、やってしまう場合があって非難されることがあるかもしれませんが、やはり政治責任というものは明確にするために、政府がやるべきことはやるが、それじゃどこへ相談をかけるかといったら、この商工委員会の皆様方の意見を聞いてやるという方向が一番正しいのではないかと思いますので、そういう料金の重要問題が国会の過ぎたあとで起っても、この委員会に集まっていただいて相談をかけ、審議してもらう、こういう運営の方法を私は必ずやりたいと思います。
  45. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その件について一言委員長に質問します。ただいま大臣からまことにけっこうな御答弁がありましたが、しからば委員長としては、本件審議の円満遂行を期するために、参考人をここへ招致する用意がありますか。
  46. 福田篤泰

    福田委員長 この件については後刻理事会に諮りまして、決定いたします。
  47. 岩武照彦

    岩武政府委員 八木委員のお尋ねでございますが、電気料金の内容が差別的であってはならないという規定は、私たちの行政面ではこういうふうに解釈しております。これは同じ条件で供給するものに対しては値段をふやしてはいけない、こういうことだと思っております。従って同じ種類の供給、たとえば従量電燈とか小口電力とかいうような、あるきまったタイプのものについて、AとBの人に対するやり方が違うということはいけない、こういうふうに考えております。  それからついでではなはだ失礼でございますが、加藤委員お話の聴聞会の運営の規定につきましては、実は二通りのやり方を持っております。一つは、会社から供給規程の変更の申請がありましたものを、そのまま聴聞会にかけて皆さんの意見を聞いて、その上で取り入れるべき意見は取り入れ、それを補正せしめて認可するというやり方であります。もう一つは、聴聞会にかける前に、申請書を役所の意向に合うように補正させまして、これなら認可してもいいだろうということで聴聞会にかけて、みんなの意見を聞いてきめる、この二つがあります。どちらがいいか、一長一短がありますが、認可せんとするときは聴聞会にかけるべしとなっておりますから、それならば認可する案を出すべしという法律論がございます。それでは意見の聞きっぱなしで、よく言われておりますように、聞くもん会になってもまずいのでありますから、一応出たままを聴聞会にかけて、その上で役所の方が意見をさんしゃくして調整して認可するというのが最近の先例のようでもございます。  それで御指摘がありました前回の料金認可の際には、申請がありましたのを、聴聞会にかけていろいろ意見を聞いて調整して、実はそのときの調整の内容が夏冬料金一本化ということでありましたので、その件について直接聴聞会にかけておるかどうか知りませんが、実質的には聴聞会に出ました意見を聞いて処理しておる、こういうふうにわれわれは考えております。
  48. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今八木委員電力料金を中心としての問題の質問の最中でありまするが、最近、特にきようの新聞を見ましても、電力の緊急制限問題が非常に大きく出ておりまして、突然に問題を出すようで恐縮でありますけれども、時間の関係上まことにやむを得ない事情がありますので、ちょっと関連してお許しを願いたいと思います。  この電力の緊急制限の問題は、実は昨年の十月ころだったと思いますが、最近の経済拡大に伴って基幹産業のネックが非常に出てきて、そのネックの新たなる一つの現象として電力問題が取り上げられ、このままでいくと、経済拡大に非常に大きな支障を来たすということが、五カ年計画の修正的な意味で論ぜられて、この委員会が緊急に招集され、電力問題をともに取り上げたことがありました。そのときに私ははっきりと、昨年の暮れから今年にかけての第一次の危機が来る、そのときにはおそらく緊急制限くらいの状態が来ざるを得ないだろうということを指摘しまして、私は前の石橋さんを中心に善処を要求しておいたわけであります。御承知のように鳩山内閣から石橋内閣、岸内閣、これは一心同体だということでありますからこれは政策がそのままずっとつながっておるのだろうと思います。従って私は本日のこの事態に対しまして、水田さんにはっきりお伺いしたいと思いますが、今関東を中心にしてとられようとしておりまする電力の緊急制限の問題は、突発的な事故に原因するものであるか、あるいは予測し得た事態に原因するものであるか、新聞の伝えるところによりますると、鶴見の火力の故障であるとかいうようなことが突発事故の原因であるようにいわれております。果してそれが主たる原因でのこの状態であるか、あるいは他の燃料その他の予測し得る原因から、この緊急制限の措置に来たものであるか、お伺いいたしたいと思います。
  49. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今度の緊急制限の問題は私はやはり突発的事故によるものだと思っております。電力の需給が逼迫するという見通しは、もう昨年来私どもも十分認識しておりますので、この事態を回避するためにいろいろな措置をとってきました。石炭の問題でも電力優先でそこに持ってくるようないろいろな措置をとりましたので、今のところは石炭が足らないために電力が不足しているという事態ではございません。やはり水力の問題から来ているのでございますが、これは平年ならば大体きようあたりから雪が解けてくる、ですから三月の半ばまでの対策を十分にやれば乗り切れるというので、大体それを目標にやってきましたところ、一時東北のような問題が起りましたので、急にまた電力を他から融通するというような措置をとって、大体四、五日で済むだろうというのでそういう措置をとってきましたところが、気候の関係で寒くなってますます凍ってきた、そこへもってきて、東京から融通しておったのに発電所の故障が起った、今度は天気の工合はどうかというと測候所の調査によりますると、まだ四、五日は危ない、例年よりも一週間ぐらい雪解けにならぬ時期が続くだろうという、そちらの方の意見も加わりましたので、不測の事態を起してはならぬというので、これは私どもは一つの突発事故として、それではあと二、三日で済むかもしらぬというようないいかげんな対策では問題を起すかもしらぬというので、東京、関西あげて北陸の足らないときにはお互いにがまんをして少しずつの制限をして、そうしてまた東北を助けて大体全国の需要制限を平均したような形でやる、こういう緊急措置をとっておく方がいいというので、そういうふうにきめたわけでございますが、これは天候の異常と、こちらに故障が起ったという問題が原因でこうなったのですからして、そう長続きするものではございませんで、こういう措置だけとって手配しておけば解除される時期は案外早いのじゃないかとも思っておりますが、私どもの責任としてはこういう緊急措置をとっておく方が安全だという結論でそういうことにした次第でございます。
  50. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 水田さんの答弁の様子を聞いていると、こっちから追及する勇気も実は抜けるような格好で困るのですけれども、今の場合水田さん、それは天候のかげんでといわれてそれを突発的理由にするのはちょっと酷ですよ。大体あなたもよく事情を知っておられるように、昨年から予想されておって、これは緊急制限という措置をするかしないかだけの話で、事実上そういう状態に来るのはだれでも少し様子を見ていさえすればわかったのです。今度でも石炭の問題が直接の原因ではないというけれども、それは会社の方から言わせれば石炭を今たかなくて済むなら、それにこしたことはないのでありまして、高い石炭をたく必要はないのであります。逆に言うならば、なるべくならば緊急制限でも強い措置を政府から言うてもらいたいくらいなものですよ。ですからこれを天然現象で片づけられるのは、これは政治の貧困もはなはだしい話でありまして、どうしようもない感じがするのであります。特にこれは根本的には今水田さんは電力の地帯間融通でどうのこうのという話がありましたが、確かに地帯間融通の問題もありましよう。しかし地帯間融通それ自身が現在の法制下においては自分の——これは株式会社でしよう。今東電なら東電は普通の株式会社です。それが自分の東京電力区域内の需要者に対してやれる電力を持っておりながら、それをやらず、何も特別の関係のない東北とか北陸というところに電気を送ってやるということ自身が、——それは需給調整令なり何なり適当に理屈はつけられるでしよう、つけられるでしょうが、それ自身がほんとうは今の電気の法制的な建前からいうとおかしいのですよ。ですからそういう問題で当面を糊塗するということは、私はあまりいいことではないと思います。また同時に今の問題が非常に突発的な事故である、同時にそれが自然現象的な事故であるということにおいては、なおさらでありまして、突発的な事故であるということならば、それは鶴見火力の事故とかいうことに結びつけられるならばまだしも、突発的事故であるといいながら、しかもその原因を自然現象になすりつけられて、一つ政府責任がないような話をされることは、これはよくないことだと思います。従いまして水田さんは、私がここで最初に一般質問をいたしました際にも電力のネック打開——電力が現在の生産拡大のネックの中心となっている一つのネックであることをあげて、このネックの打開に最大の努力を尽すことが、今度の岸内閣の政策大綱の中心にもなっておるようでありましたけれども、その観点からしましても、これを突発事故であり、自然現象であるという見方はやめられた方がいいと思います。これが自然現象であるというならば、ネック打開の政策というものはナンセンスになってくるからであります。時間がありませんし、関連でありますからやめておきますけれども、この際ただ一つだけ注意を申上しげておきたいと思う。私はこのことあるを予測して、今度の岸内閣の経済政策の大綱であるところの予算案に盛られたところの積極政策と一千億の減税というこの基になっておるのが二千億の自然増収だ。二千億の自然増収をするためにはこれまでのような調子で海外貿易が伸展するということと、国内における生産がネックの打開が行われて、打開の効果が今年度に現われて、従って昨年来続いたような生産活動の上昇が続くことを前提とされた経済政策であったはずでしょう。従って私のこの前の質問に対しまして水田さんに、池田さんは簡単に言っておられるが、水田さんはずいぶんつらい仕事を引き受けられた。私から見ると昨年通りの貿易の伸展は困難である。同時に国内の生産ネックを打開して、しかも生産を昨年通りにずっと上げていくという政策はおそらく不可能である。従って水田さんはずいぶんつらい仕事を引き受けられたと言ったわけであります。現にこれは公益事業局長がおるから今すぐわかりますけれども、この間いったように、今年度に三十億キロワット・アワーの不定を電気関係者は予想しておるでしょう。しかも生産の方は三十億キロワット・アワーあることを前提として伸びていくことになっておる。それがなければ従来通り生産が伸びないことになりますから、その三十億の差というのはどうするかというと、私は事実上もし生産を上げることを続けながらやるということであるならば、これは民間や何かこういう緊急制限をしてぐっと引きしぼっておきながら、生産の方に影響させないという方法しかないと思う。その方法いかんといってもまだそれほど心配してもいないから、そのうち考えるという話はこの前あったわけであります。現に今この現象が出てきた。水田さんはこれははっきりお考え願いたいと思います。これは決して一時的現象ではありません。御承知のように今日一千万トンの火力用の燃料が必要であるならば、それは豊渇水によって動く部分はせいぜい百五十万トンから二百万トンくらいでありますから、おそらく絶対量が足りなくなってくることは火を見るよりも明らかである。従って緊急制限的な措置を自然現象的な形で逃げられるならば、今年度の政策は根本からぐらつくことを私は警告せざるを得ないのであります。どうかその意味におきまして、今の現象は鶴見火力に責任を転嫁されても、雪が解けかけてまた凍ったということに転嫁されてもいいですけれども、これが今年度の計画に大きなそごを来たさないように、すぐ緊急対策を立てられんことを要望いたしまして、関連質問でありますから終ります。
  51. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それでは私は簡単にあと一問で終りたいと思います。通産大臣の御答弁によりまして、東北、北陸などの料金の値上げを将来もし行うような事態でも起る場合には、当然この委員会を開いてその審議の機会を持つということ、それからさらにまた三割頭打ちの問題につきましても期限はもう追っておるけれども、この委員会におきましても適切な機会を持ちたいということを明らかにせられましたので、その点につきましては一つお約束の通りにぜひお願いしたいと思います。  そこで最後の一問は全般的な電気料金の推移についてでございます。私の調べたところでは、戦後電気事業の再編成までに六回電気料金の値上げが行われた。それから豊富低廉な電気を供給するという名目のもとにやられました電力再編成後三回の料金値上げが行われた。従いまして戦後九回の電気料金値上げが行われておるのであります。しかも他方電気事業の中身をずっと見て参りますと、私の調べたところでは、たとえば会社の純利益について見ますと、昭和二十七年の上期が二億七千万円、これが三十年の上期は八億五千万円となっている。これは東京電力の例である。そうして東京電力の株の配当金額を見ますと、昭和二十七年の上期が一億九百万円でありましたものが、昭和三十年度の上期には七億八千万、実に七倍に上ってきておる。こう推移を見てきますと、今日の状況からインフレが非常におそれられておるという条件をも加味して考えますと、電気料金の改訂ということは今はとても考えらるべき段階ではないのではないか、こういう意見を実は持つわけでございます。全体的な趨勢としてのお考えを一つ最後に一言端的にお話し願えればと思うわけであります。  それからもう一つ、今の東北、北陸の問題にいたしましても、これは結着するところは電気事業九分割の矛盾が端的に現われておるものであると思うのであります。と申しますのは、再編成当時におきましては、東北は今後電源開発もやるし電気も余っておる。しかも大口工場を作ればあそこは安い電気料金で豊富な電気をもらうことができるというような非常な宣伝でございました。各大会社は東北にどんどん工場を作って、いよいよ工場が完成して電気の供給を受けようとする段階になったら、電気はかつかつで足りない。しかも東京電力から三円でもらった電力を、東北電力は今度は二円で需用家に売らなければならぬ、こういうようなまことに国家的な立場から見てきわめてナンセンスな措置が行われておる。その根源は何か一部手直しというようなことではなくて、やはり九分割の根本的な矛盾の露呈ではないか、こういうふうに考えるのですが、こういう点につきましても端的な御見解を伺いたいと思います。
  52. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 電力料金は御承知のようにコストによってきまることになっておりますので、やはり自己資金を調達し得る程度の利益は確保しなければいかぬ。その利益の確保以内でペイしている限り電気料金を上げる必要は絶対ございません。日本の電力会社状態を見ますると、値上げをしなければならぬ状態であるとは私どもは全然考えておりません。ただ一、二の会社にそういう問題で考慮しなければならぬ問題が起っているだけでございまして、全般的の電気料金を上げるという考えは現在持っておりません。  それから再編成問題ですが、前にもお話ししましたように、いろいろな問題をはらみながらも、とにかく一応ああいう形になって再編成が行われた。実施以来わずか五年でございますので、ここでこれをまたいじるというようなことをやっていい時期か、あるいはそうでなければこの再編成によって料金差、地域差、いろいろな問題が出て、再編成を検討したらいいだろうといわれておることは、それだけそこにいろいろな欠陥が出てきていることを意味しておりますから、この欠陥をどう自主的に除去させるかということがうまくいくのなら、当面の問題はこの需給の円滑化のためにいかに電源開発して供給を潤沢にするかという方向へ私どもとしては全努力を注ぐべきであって、この再編の問題というものは、まだこれがいい悪いと言ってどう変えるかということへ入っていくのには時期尚早ではないか。当分は電力の増産のためにやったいろいろな欠陥は是正するように、融通の円滑化をはかるという方向へいくのがいいのではないかと考えておりますので、再編の問題は、今私どもの考え方としては、これをすぐに検討してどうこうというふうには考えておりません。
  53. 福田篤泰

    福田委員長 この際午後二時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後二時六分開議
  54. 福田篤泰

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  産業経済基本施策並びに私的独占の禁止及び公正取引に関し質疑を継続いたします。田中利勝君。
  55. 田中利勝

    田中(利)委員 私は第一にわが国の産業経済発展にとって重要な課題である地下資源の開発問題、第二に繊維製品の生産過剰の問題、第三に地域開発上のアンバランスになっておる東北における電力問題、並びに東北の工業振興政策について順次質問をしたいと思うのであります。大臣が大へんお忙しい事情もよくわかりますので時間の関係上、一問一答の形式を避けまして、総括質問の形をもって進めたいと思うのであります。従いまして、私の質問に対しましては、大臣並びに事務当局よりそれぞれ誠意ある答弁を希望する次第であります。  まず第一に、地下地源の開発問題のうちで石油資源開発計画についてお尋ねいたしたいのであります。石油不足という問題はわが国の経済自立にとって大きな弱点になっておると思うのであります。従いまして、石油資源開発対策については、もちろん政府はしっかりした方針を持っていなければならないはずであります。そこで、わが国において石油資源開発の対象となる第三紀層、並びに白亜紀層を主とする分布状態を見ますならば、これはわが国土の実に三分の一にも及ぶ膨大な地域に及んでおります。しかも沿岸の大陸だなにおいては莫大な鉱産資源が埋蔵されているという事情にあるのであります。しかるに現在までに探査が進められ開発されているものは、その五%程度にしかすぎない状態である。これに対して石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会は、すでに昭和二十八年に、内陸地のうちで石油資源の集約鉱床の画然としているものが五百地域あり、そのうち百五十四地域を早急に試掘すべきことを答申しておるのであります。これに対して、わが国の石油資源開発政策として、さきに石油資源開発株式会社が発足いたし、これら地域の探鉱開発を担当することになったのであります。この探鉱開発が地質的にも物理的にも高度の技術を要することは当然であります。また経済面から見ても、探鉱と開発の計画は長期かつ大規模なものにならなければならないと思うのであります。政府は、昨年本委員会において説明された通り、探鉱開発五カ年計画が設定されまして昭和三十二年度はちょうど第二年度に当るわけであります。そこでまず伺いたいのは、石油資源開発会社に対する昭和三十二年度の国の出資は十五億円計上されている点であります。開発会社の立てた資金計画、また通産当局の立てた資金計画も十八億円を予定されておったはずであります。これが三億円減額されておる。三億円減額するということはきわめて簡単であり容易であるかもしれませんが、これによって五カ年計画の達成目標実現が狂ってしまった、あるいは長期計画というものが全く骨抜きにされてしまった。こういうことは、ただ単に本年度の資金計画の面だけにとらわれて、長期計画の達成をおろそかにし、この三億円の削減がかえって国家百年の大計にとって大きなマイナスになったのではないかと思うのであります。通産当局といたしましても、要求額の十八億円が三億円減額されたことによって開発計画にいかなる狂いができたか、こういう点の御説明をしていただきたいのであります。また地下資源開発のように長期計画なしでは実行不能なる開発に対して、財政投資として何らかの長期的な財政的補償をする必要があるのではないか。この点通産当局の見解を伺いたいのであります。また三十二年度の大陸だなにおける探鉱開発計画、内陸における探鉱開発計画の概要というものを具体的にその方針を明示していただきたい、こう思うのであります。
  56. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 おっしゃられました通り、ことしの石油資源開発会社の計画は、どうしても政府出資を十八億要するということで、通産省はこれをもとにして予算折衝をやりましたが、これも御承知だと思いますが、大蔵省方面の計算から得たいろいろな査定は、大体十億でやっていける、そうして民間の出資をもう少しふやす方法は可能だからというので、計画へはそう大きい響きを与えないでも十八億の当初計画通りの工事はやれるんだということで、両省の意見が食い違っておりましたが、その後事務当局及び会社当局が計画を検討した上で、政府出資が十五億まで確保されるなら、大体当初の計画はやっていけるということになりましたので、私どもは十五億の確保に全力を注いだ。なおそのときにも、この事業を始めてしまって、ほんとうに資金足らずという事態が起ったらどうするかという問題も検討しましたが、資金足らずが起ったというときには政府として融資の方法も何か考えるということで、とりあえず予算を十五億ということできめたわけでございますが、計画自身はこれによってそう狂ってないつもりでございます。  こまかい計画を説明しろというお話でしたから、具体的な問題は事務当局から御説明いたします。
  57. 長谷川四郎

    長谷川政府委員 ただいま大臣から御答弁になったように、十五億だけでやるのではないのでありまして、御承知のように、民間資金が導入されることになっておりますので、民間の方で大体計画としては七億五千万程度のものはできるというような確信を持ってやっているわけであります。従って開発に対しては昨年までというものは大体物理探査に使ういろいろな機械あるいはたとえばドイツとかフランスからの人間も来て探査に当っておったのでありますが、いよいよそれらが軌道に乗ってその採掘ということに本年は重点を置いて参っておりますので、そういう金額が、たとえば三億不足したために計画の遂行がおくれるとか、計画が狂うというようなことだけは絶対ない確信をもって進めておる次第でございます。
  58. 田中利勝

    田中(利)委員 次に第二の問題として、非鉄金属関係の開発についてお尋ねいたします。石油資源の開発につきましては、先ほどお話がありましたように、財政資金の投資が行われておりますが、それにもかかわらず非鉄金属関係の開発は依然として民間企業にゆだねられておるという実情であります。そこで今日銅にしろ鉛にしろ、亜鉛、硫化鉱にしても推定鉱量といわれ、埋蔵鉱量といわれるものは、今日の採掘ベースで進みますならば、命脈少く、このままの状態では、私の理解している点では、鉛が九年、銅が六年、こういうふうに言われておるのであります。従ってこの非鉄金属の開発のためには、あくまでも探鉱によって新たなる鉱床の発見に努めなければならないのでありますが、今日この探鉱による新鉱床の確率というものがどういう状態になっておるか、こういう点をお尋ねいたしたいと思います。  従いましてこれに対する国家の助成というものは、昭和十二年の産金奨励を契機として、探鉱奨励金交付制度が継続されてきたのでありますが、昨年はわずか四千万円、昭和三十二年度には七千万円というものが新鉱床探査補助金の名目のもとに出されておるのであります。しかしわが国の非鉄金属関係工業というものは、現在のように、国内の生産が活発になればなるほど直ちに電気銅その他の非鉄金属製品というものは大量に輸入しなければならないという事態がしばしば起るのでありまして、わが国の基礎産業としてはまことに残念なことと思うのであります。  そこで非鉄金属製品の原価高を国際水準にまで戻すためには、新資源の探査と企業の合理化ということが必要になってくるのであります。特に新鉱床の探査発見ができなければ、今日の企業経営はとうてい維持できない。しかも今日大手筋を見ましても、年間一千万円あるいは二千万円の探鉱資金を投入して、年間二十万トン採掘してわずかに五トンの新鉱床しか発見できないということもしばしば出ているのであります。まして資金の余力の少い全国の中小鉱山のごときは全く探鉱ができない、経営が不安定である。こういうことではわが国の非鉄金属資源開発という長期目的に沿えないのではないかと思うのであります。  私の調べたところでは、中小鉱山は千二百ございますが、ほんとうに探鉱資金が潤沢に投入されますならば、今日の銅の足尾、別子、日立あるいは硫化鉱の柵原、上北、亜鉛、鉛の神岡、こういうような有望鉱山はこの千二百くらいの日本の中小鉱山の中からまだまだ三分の一くらい必ず開発される、かように信じておるのであります。こういう点において私たちは現在の非鉄金属の資源開発に対して政府のとりつつある政策に対して遺憾の意を表するものであります。しかも昨年末に答申された臨時租税調査会の税制改正方針案では、私どもが多年期待をかけておりました鉱床補てん準備金制度の新設というものは見送られてしまっておるのであります。新鉱床の補てんには、現行の租税特別措置法の特別償却制度を拡大することに意見が調整されたように聞いておるのであります。なお調査会の意見としては、金属鉱業、石炭鉱業等の特殊性にかんがみて探鉱用機械設備等の特別償却及び坑道、探鉱費の償却については従来の特別償却制度を拡充すべきものであると説明しております。もとより税制の問題でありますから通産省の所管ではございません。通産省当局といたしまして非鉄金属鉱業の特別償却制度の拡充についていかなる御見解を持っておるか伺いたいのであります。またこの非鉄金属の資源開発という、探鉱しなければならないという一つの性格から考えまして、ただ単に企業努力にのみ依存する、こういう考え方はこの際捨てなければならないじゃないか、かように思うのであります。地下資源の国家的利用政策の立場からいたしまして、非鉄資源開発の長期目的のためには、特に国家の資金調整を強化しなければならない、こういう一つ方向と、また合理的な開発をはかるためには、その資源探査の国家的特別な機関を設けられて、大々的にやる必要があるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、これについて通産当局の御見解を聞かしていただきます。
  59. 長谷川四郎

    長谷川政府委員 鉱床の補てん準備金、こういう点についてしばしば当委員会においても数年にわたって論議が開陳されておるわけでありまして、従って私たちとしましてもその意思を十分に尊重いたしまして鉱床をやりました。また御指摘通り調査会の方からの御意見もございました。両者を相当検討してみました。従いましてこのたび特別償却制度というものを設けてこれによって補てんしていくということが一番いい方法じゃないかという意見でございましたが、果して一番いい方法であるかどうか、御指摘のように中小炭鉱というものがこれによって恵まれるかどうか、こういう点について十分検討をいたしたわけでございます。その結果特別償却という制度によっていくということは、今の日本の税制の上に立って鉱床補てんということができないならば、これでいっても差しつかえないじやないか、それじやどっちが分率がいいかということをやってみましたところが、分率においては私の計算によりますと結局どっちがいいということがないのじゃないか、従って償却制度を拡充されるということの方がかえって将来の中小企業の育成になるのではないか、こういうふうに考えたわけであります。これについてどれくらいの償却が行われたかという点につきましてはあと当局から説明させます。従ってそういうような考え方をもって特別償却制度というものを私たちはとった、こういうことでございます。さらに中小企業炭鉱というものがいかに必要性があるか、御承知のごとく日本が自立経済を行わなければならないという点につきましては、ただ自立経済を行うということは、外国から資源材を持ってきて、その上に立って製造をして、それで自立経済が行われるものではないと私たちは考えております。従って自立経済を行う上に一番ウェートのあるものは何かというならば、すなわち国内資源を生かすということ、これなくして自立経済の確立はできない、こういうふうに考えております。従って中小炭鉱にしましても非鉄金属の重要性というものについては十分われわれも承知し、またその育成に当っておる考え方でございます。こまかい数字の点につきましてはあとから申し上げます。特にガス等のお話がございましたが、私たちも天然ガスというものをもっと高度に利用しなければならない、ただガスというものは燃やすためのガスでなく、半面そのガスをさらに高度に利用していきたい、こういう点についてはその方面についていろいろと研究をし、その指導をしていく考えでありますし、さらにその副成ガスの利用という点については十分これらに検討を加えておるつもりでございます。
  60. 森誓夫

    ○森政府委員 ただいま政務次官から大綱についてお話がありましたが、計数等の点につきましてやや詳細なことを申し述べさせていただきたいと思います。鉱床補てん積立金の制度が鉱業用投資の償却繰り上げという形によって置きかえられようとしておるということにつきましては、ただいま政務次官からもお話がありました。このいきさつを申し上げますると、御承知のごとく鉱山の探鉱に遺憾なきを期するためには鉱床補てん積立金制度の方が実にすっきりとして筋の通ったものでございます。年々同量の探鉱をいたしまするにしても、条件が悪くなって参りまするので年々その費用は累加しておる。従って過去に投資したものを百パーセント償却をいたしましても翌年の探鉱に必要な費用は調達できない、こういうことでどうしても鉱床補てん積立金制度の方がわれわれは精神からいって実にわかりいいすっきりしたものだというふうに考えて大蔵当局と交渉いたしたのでございますが、税制の建前からいいますと、そういう将来取得する資産のために引当金を設けるということは従来の税制の思想からいうと画期的な変革であって、大蔵当局としてもそう簡単にこの際それをのむわけにはいかない、しかし探鉱の費用が年々増加していくものであるし、また今後も従来よりももっと大量に費用を投下しなければならないという趣旨はよくわかるので、結果としては一応その目的に合致するような短期の償却の制度を認めるから、一つその点でいろいろな案を出してくれという話になりまして、実は現在まだその折衝をいたしておりまするが、大体もう峠は見えておるのであります。その内容を申し上げますると、今後探鉱のために投資する資金は、探鉱の直接の経費あるいは買山の経費、これも広い意味からいえば一種の探鉱の経費でございます。そういうものは初年度において百パーセント償却できるということ、それから探鉱用の機械類は初年度において九割は償却できるということ、それから主要坑道、これも一応探鉱には相当関係があるので償却上の恩典を認めようというので、主要坑道も従来の償却率よりも五割増しのものを三年間認めようということであります。それから坑内用の固定資産は一定規模以下のものは全部経費とみようということになっております。  以上は今後投資するものについての償却の年限の短縮でございまするが、さらに過去において投資したもの、すなわち鉱業権として今帳簿にあるものですが、鉱業権の償却年限もある程度短縮しようということで、ただいまこまかい事務上の整理を大蔵当局でいたしておるわけであります。これによりますると、大体全国の金属鉱山で償却可能額が七億円以上ふえます。これは従来の償却額に比べまして五割増しとみていいと思います。償却せられる絶対額、総額から見ますると、これはむずかしい計算がありまするので、まだ正確なことは申せませんが、鉱床補てん積立金の制度でわれわれが売上額の一五%あるいは利益の五〇%というものの積み立てを要求しておりましたが、これは絶対額について見ますと、年間二十億円前後のものになるのであります。そこまではいかないかとは思いますが、それにだいぶ近いものになってくるということで、われわれは償却の短縮という思想はあまり好まないのでありますが、結果においてはわれわれが従来主張しておったような高度の償却ができるようになって、これは今後探鉱の促進上大きい効果を来たすことと思われるのであります。それでわれわれとしてもこのように探鉱促進に税制上で非常な恩典が加えられることになりますれば、業界もせっかくの恩典を真に探鉱の促進に生かすようにしなければいけないというので、地下資源開発審議会に来年度からは探鉱部会というものを設けまして、そこで探鉱促進についてのいろいろな方策を検討するわけでありますが、同時にまたこれは各社が今後税制の改正によって受けた恩典を真に探鉱に活用するかどうかということを監視をするというようなこともやっていきたいと考えております。  それからもう一つの問題としましては、従来探鉱の促進のためにどういう措置をとってきておったかということでございますが、これも若干計数的なことを私から申し上げますと、鉱山を大きくしていくことは第一に埋蔵鉱量を確認するということで、そのことがうまく行われなければならないのであります。これは御承知のことだと思いますが、そうしなければあと金融がうまくつかないということで、われわれも鉱業の振興のためには埋蔵鉱量の確認、言いかえれば探鉱ということに一番重点を置いてやってきているわけでありまして、従来とも探鉱奨励金というきわめて直接的な補助金でございますが、探鉱事業に対して大体三分の一、理想は半額でございますが、その程度のものを補助することになっておりまして、その金額は最近は毎年大体二千万円ということでやってきております。これによって十数鉱山か二十鉱山ぐらいがその恩典を受けて探鉱を促進して参っておるわけでございますが、来年度はこれが五千万円というふうに一躍二倍半になったわけでございます。探鉱を直接奨励する制度としましてはそのほかにたとえば鉄資源のごとき国家的に特に重要なものにつきましては、未利用鉄資源の調査事業というものが昭和二十九年を初年度としてずっと五カ年計画で進行しておりますが、これには大体関係府県あるいは関係業界等からの出資を得まして、およそ年間五、六百億円のものが使われております。それによって砂鉄、磁硫鉄鉱等の埋蔵量の調査、言いかえますと探鉱が行われておるわけでございます。直接探鉱の関係としてはそうでございますが、今後われわれがやりたい方策としましては大規模に未開発地域に国費をもって探鉱をやっていくということでございまして、これは地質調査所あるいは通産局あるいは学者、学生等を動員して主要な未開発地域の探査をやるというのでございますが、来年度予算にわれわれこれを提出しましたが、遺憾ながらこれは認められなかったのであります。今後はそういった方向に、国の費用で探鉱を促進するという手としてはそういうことに重点を置いてやって参りたいと考えおります。
  61. 田中利勝

    田中(利)委員 次に繊維関係の生産並びに需要の見通しについてお伺いいたしたいのであります。通産当局の発表によりますと、昭和三十二年度の綿糸生産量見込みは十億五千二百十万ポンドでありまして、三十一年度の十億五千二百三万ポンドに比べると大体持ち合いでありますが、このうち輸出は三億八千四百二十万ポンドで、三十一年度の三億八千二百十四万ポンドと大体同じに予定しております。内需の方では三十一年度の六億二千六百二十万ポンドに対して三十二年度は六億三千七百十万ポンドと見込んで一千万ポンドの内需増加を期待しているのであります。しかるにすでに綿糸関係、綿布織物関係は在庫過剰になっておると思います。従って三十一年度を上回る内需増加が明年度も継続すればともかくとして、もし内需が少しでも三十一年度より下回るとすれば、生産過剰はさらに深刻になるのではないかと思われるのであります。すでに紡績業界では本年六月以降は操短が必至であるというふうに見られております。これは消費者側からも、あるいはさらに国民の立場から考えますならば、過剰生産、過剰在庫になって、その需給のバランスが業界側に不利である、その結果値下りが必至と見られるからその防止策を相談するのではないかというふうに、国民の側からも消費者の側からも見られているのであります。  さらにもう一つの問題として、繊維工業設備臨時措置法によって登録した紡機は九百二万二千五百錘と記憶しておりますが、原綿の割当を受ける資格を持っておる紡機数は七百八十一万九千九百錘といわれておりますが、それの大部分は臨時措置法が実施される前に急いで増設された、いわゆるかけ込み増設であるといわれております。このかけ込み増設に対する原綿割当をいかなる基準をもって行うかということ、それと関連して紡績業界の中小企業関係ではこれが大きな死活問題になっております。  それからもう一つ化学繊維の状態を見ますと、通産省の案といたしまして三十二年度生産見込みは七億六千万ポンドで、三十一年度の七億二千万ポンドより四千万ポンドこえております。しかし現在すでに生産の伸びは、需要が追いつけない状態でありまして、スフ綿の価格は値下りをしておるのであります。わずかにスフ糸の市況はスフ糸紡機がスフ綿設備より下回っているのでまだしっかりしているところがあります。従って不況という大混乱には陥っておりません。しかし臨時措置法の影響でかけ込み増設の登録済みとなったスフ紡機が完成してフル運転に入る四月ごろには、スフ糸にも市況悪化が迫ることは火を見るよりも明らかであります。スフ糸、スフ綿業界に抜き差しならない過剰生産状態がくれば、その影響は一般綿糸業関係に波及するのではないかと思うのであります。私は本日の総括質問におきまして詳しいことは伺わなくてもよろしゅうございますが、次のことは明らかにしていただきたいと思います。  第一に新年度における原綿割当の基本方針をここで明らかにしてもらいたい。端的にいえば、このかけ込み増設の紡機に原綿の割当をするのかどうか、また原綿割当をいわゆる機屋といわれるところの織布専門業者にも割当をするかどうか、こういう点も伺いたいのであります。さらに通産当局の一機構であるところの中小企業庁では、中小メーカーの社会的分業の安定という点から、通産省の繊維行政では大メーカーである紡績会社に比べて小メーカーである機屋に対する原綿割当が非常に不公平であった、こういう事実があり、さらに一コリにつきましては一万五千円から二万円も高いものを使っておった。三十二年度の上期において外貨予算のワクがもし広がるといたしますならば、何らか機屋に対しても原綿割当を認めるかどうか、こういう点であります。  それから第二に、スフ綿は明らかに生産過剰となっておりますが、政府はこれに対して操短を勧告するか、もしするとしたならいつからこれを勧告をやり、そして操短率というものをどの程度に考えているか、こういう点もお伺いしたい。なお聞くところによりますと、スフ業界では臨時措置法の関係で従来のように綿紡機で純スフ糸を紡績できなくなるから、この面の需要量というものはスフ業界に純増加されるので、それだけスフ綿の消費はスフ糸業界に移り、スフ消費量としてあまりふえない、適正な需要供給関係が保たれるといっておりますが、問題は、ことしの春になってスフ糸が生産過剰になるかどうかという政府の見解をここで明らかにしていただきたいと思います。以上。
  62. 小室恒夫

    ○小室政府委員 繊維全体の需給が非常に緩和してきたというか、生産過剰の傾向を一般にはらんでおるということはお示しの通りであります。ただ綿製品につきましては昨年来内需も非常に伸びております。また輸出も相当高い水準で、昨年また今年も推移する見込みでありまするし、最近の契約状況等から見てもそういう感じであります。むろん相場はある程度下っておりますが、採算点等から見ればまだ十分に余裕のある点でありますし、在庫のごときも四十三万コリくらいのところでありまして、それほど危険な状態には現在なっておりませんので、御質問の最初の六月ごろから操短に入るというような点は、全然そういう懸念は私どもは持っておりません。しかしながらスフについては、昨年あるいは一昨年非常にスフ業界が好況であったということを背景といたしまして、かなり無謀な設備の拡張が行われ、当時私どもとしては少しこれはテンポが早過ぎやしないかということで警告を与えたのでありますが、各社それぞれの立場でやはり増設を強行された結果、最近になって非常に生産がふえて参りまして、非常なアンバランスが生じたので、このスフ綿の需給関係については相場も採算点を割っておるような状況でありますし、相当深刻な点があると考えておりますので、スフの紡績業界なりあるいは機屋あるいは輸出業者各方面の専門的見解を現在徴しております。大体においてこれは相当深刻な事態であるという見解が参っておりますが、まだ二、三検討しなければならぬ点があります。しかしながら事態は相当深刻であるということについては、私どももスフ綿の全体の業界と大体同じ認識を持っております。ただお尋ねの操短はいつからやるか、操短率はどうかというような点については、ただいまこの席ではまだお答えできない。事態の認識についてはただいまのようなことで慎重に検討しております。  それから原綿の割当の方針というようなことでありましたが、まだ外貨予算は昭和三十二年度の分は確定いたしておりませんので、昭和三十二年度のことをはっきり申し上げることはまだ私どもの立場としては困難でありまするけれども、先ほど来申したような綿製品の需給関係でありますので、価格を低位に安定させる見地から、外貨予算としては必要な量をたっぷり組んでいきたい。また需給関係に非常な変化が起れば、これは外貨予算の現実の運用面で調節していくということは可能であろうというふうに考えておるのであります。また新増設の紡機に対して原綿や原毛をどういうふうな扱いをするかという点につきましては、今日繊維工業設備臨時措置法に基く審議会でもって各部門別に紡績設備はどの程度の規模が適正であろうかということを審議中でございまして、業界の意見としては綿紡には八百七十八万錘くらいが適正じゃなかろうかという意見も出ております。これも拡張すべきものを含めておると思いますが、まだ審議会としては結論は出ておりません。適正規模ということについて正式な判断というか答申が出て参り、また役所としてもそれが適当だという判断に立ちますれば、そういう数字を前提として原綿の割当等について再検討を加えるということは一方で考えておりますが、他方において、一昨年の十二月に紡機の新増設に対しては警告的な通牒を発しておりますので、その通牒との関係、ただいまの需給関係、また審議会の答申、こういう点を十分参酌いたしまして割当方針を確立いたしたい、こういうふうに考えておるのであります。  また機屋に対する原綿割当というようなお話がありましたが、これは現在でも輸出のリンク制に関連しまして、糸買い布売りの機屋に対しては原綿割当ではございませんけれども、原綿の面である程度の優遇措置を加えて、この制度をさらに拡大するというような点については検討を加えておりまして、大体その方針で参りますけれども、数量等についてはまだ最終的に確定しておるわけではございません。  それから繊維工業設備臨時措置法の施行の結果、綿紡機でもってオール・スフがひけなくなったので、スフ綿の過剰が拍車をかけたという御見解でありますが、それはなるほど算術的に言えばそういうことになりますけれども、スフ綿の生産過剰というものは無謀な設備の拡張ということが最大の原因でありまして、一方紡機の方のも実はスフの紡機が一番最近ふえておるのでありまして、そのスフの紡機が消費するスフ綿の量というものは当然従前に比べて非常にふえております。今のオール・スフを綿紡機でひけないということのマイナスと申しますか、これは大した影響はないというふうに全体としては考えております。  いろいろのお尋ねがありましたので、あるいは落ちておる点があるかと思いますが、そういう点についてはあらためて御答弁申し上げます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの田中利勝委員の質問に関連してちょっとお伺いいたします。  先ほど来田中利勝委員が申し上げておるように、また御答弁にあったように、相当綿製品なんかは生産過剰となるだろう、こういうふうなことが予測せられるわけなんです。そこでいつも申し上げることですが、アメリカとの貿易の関係です。アメリカが輸入制限をしておりましたことについて相当努力をするというようなことが何回もこの委員会において言明をせられましたが、その後どうなっておるのか。それから本年度の話し合いはついたと思うのですが、その結果はどのようになっておるか、お伺いいたします。
  64. 小室恒夫

    ○小室政府委員 まだ一月、二月両月しか経過しておりませんので、対米輸入全体の見通しについてはっきりしたことは申し上げられませんけれども、今までのところ対米輸出は順調に進んでおります。ただしこれはワクの中の話であります。それからアメリカ向けの輸出規制によって特に著しく影響を受ける別珍あるいはギンガムというものについて対策を考えなければならぬということでありました。別珍については、できれば中共あたりに市場を見つけたいということ、これについてはできるだけ積極的に援助したい。またギンガムについては、最近スフ関係のギンガム等も相当出ておるようであります。アメリカ以外の市場にできるだけ進出していこうということを考えていきたい。それと同時にそういう対米輸出規制等によって、特に影響を受けておる二つの業界等については、先ほど質問のありました原綿割当では必ずしもありませんが、そういうふうな特別な措置、ある程度の優遇措置というか、そういうものを講じたいと考えておるわけでございます。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 アメリカの輸入制限を受けた分を中共あるいは東南アジアその他の方面に向けていきたい、このような御答弁ですが、それについて相当はっきりした見通しがあるようですが、いかがですか。たとえば中共方面へどういうものがどのくらい出るような可能性があるとか、東南アジア方面へどういうものがいかほど出るような見通しがあるというようなところまではお考えになっていないか。それからアメリカのワク内、こう言うのですが、ワクを広げるということについて今後どのような対策を考えておられるか。それからワク内におけるギンガムとか別珍とかの各割当というか、こういうものはもうきまっておるのですか。
  66. 小室恒夫

    ○小室政府委員 別珍にしてもギンガムにしても、個々の商品の販路開拓の問題でありますので今直ちに私から詳細なことは申し上げられませんが、一例をあげれば別珍のごときは昨年相当まとまった数量が中共に積み出されておるわけであります。出ております品物は私自身も見ましたけれども、対米のものとちっとも遜色のない、いいものが出ております。大体中共の市場をならして見ますと、加工料の高い綿及び化学繊維の製品あるいは合成繊維の製品、こういうものにまだ将来性がある。だんだん向うの方で繊維工業が確立して参りますと、その辺の需要も変ってくるかと思いますが、問題はむしろ見返り品としてどういうものを入れられるかというような点にかかっておるのじゃないか。少くとも当面のところはそういうふうに考えられますので、全然見込みのないことを申し上げておるわけではない。ギンガム等についてアメリカ向けと同じものがほかの方に出るかということは、やはり趣味嗜好の問題もありますので、そう簡単には参らないと思いますが、そういうものもできるだけ販路を見つけていきたい、こういうことであります。別珍、ギンガムの割当方法については、大体従来と同じ方式でいっておるのではないか。高級綿布については、新しくワクがきまった関係で、実はまだ最終的な割当はきまっていない点があるかと存じますが、従来の点と変らないのではないかと考えております。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 アメリカに向けるワクの中でギンガムが幾らとか別珍が幾らとかいうことについてはどうですか。
  68. 小室恒夫

    ○小室政府委員 アメリカ向けの数量は、別珍が二百五十万ヤード、ギンガムが三百五十万ヤードという話し合いがついておりまして、四半期におきまして、大体従来と同じ方式で割り当てております。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 対米の将来の見通しはどうですか。
  70. 小室恒夫

    ○小室政府委員 先般成立した話し合いに対してアメリカは概して好感をもって迎えております。業界の大勢その他の意見も大体はそうであります。国会でも輸入制限運動をやっているような議員さんも相当おりますし、業界の一部にもありますが、アメリカの方で制限すべきだという意見もまだ聞いておりません。そういう状況で本年もまだ一、二カ月しかたっておりませんので、直ちにワクを拡大するようなことも今すぐ取り上げる話としてはむずかしいのではないかという感じがいたしております。しかし将来安定したマーケットがアメリカにできた場合には、当然そういうような話し合いも取り上げられる時期があろうと考えております。
  71. 田中利勝

    田中(利)委員 次に東北地方における電力不足問題についてお尋ねいたしたいのでありますが。午前中同僚議員から電力問題について十分質疑がかわされたのであります。従って私は簡単にお尋ねいたしたいと思います。東北地方電力不足は、特に今年に入ってからは戦後最悪の事態であるというように伝えられておりまして、全くあらゆる産業が半身不随の状態であって、通産当局としてもあらゆる手を打たれて処置されたと思うのであります。もともと東北における電力不足は、政府の無計画性の責任であるということも追及されておりますが、こういうふうに東北の電力不足が今後何年か続く場合どういう対策を立てているかということをまずお聞きしたいのであります。昨年の例を見ますと、年間一億五千万キロワット・アワーを外電融通したのが東北電力としてまるまる赤字経営であったという事態であって、これが東北の電力事情であると思います。ことしになって雪解けになりあるいは幾分か緩和されると思いますけれども、私どもの調べた数字によりますと、明年度の電力需用見込みは、重要産業に六十四億、一般電力等民需に二十六億、合計九十億キロワット・アワー、これに対し供給する電力は、通産省の計算では二十七億キロワット・アワーで東北電力の計算では七十九億キロワット・アワーでありまして、ここに相違がありますけれども、いずれにしてもとにかく電力は不足である。従って東北における近代的工業としての形を作っているあらゆる企業が、年間平均した操業率が維持できない。こういう点が東北の経済発展の大きな阻害となって出ておるのであります。さらに東北の電力は、私から説明申し上げるまでもなく水路式であり、あるいは流れ込み式であるという旧式の水力発電設備であり、しかもこういう悪い条件のもとにあって関西あるいは東京方面の電力事情とは違う東北電力では、四月ごろから一般電力も産業用電力も値上げをするという動きがありますが、通産当局は直ちにそういう値上げを許可するのかどうか。これに関連してお聞きいたしたいことは、政府電気事業法というものを二年も前から国会に提出することを約束しておるけれども、いまだそういうものも用意してないようでありまするが、もし用意しておるといたしますれば、その内容についてどこまで作業が続けられておるかという点もお聞きしたいのであります。なお東北電力の問題は値上げをせずに電力の増加供給策はないのかどうかという点、こういう点もお聞きしたいのであります。どうしても電力の供給というものは全国的に見て一元化策を確立する必要があるのではないか。私は昨年の三月だと思いますけれども、前の高碕経済審議庁長官が、現在の九分割による運営が電力供給の不合理性である、これの統合によりコストを低下することができる、こういうことを言明されたことを記憶しておるのでありますが、こういう考え方に対して、今後とも電力の一元化というものを政府は考え、これを推し進めていくかどうか、こういう点も伺いたいのであります。大体この問題につきましても、午前に同僚委員から質問されたことと重復すると思いますけれども、一応御答弁を願いたいと思います。
  72. 岩武照彦

    岩武政府委員 第一点は、東北地方の需給関係がいつごろになれば安定するかというお話であります。実はこの需給関係の安定という問題は、われわれとしましては非常に予測の困難な問題でございますので、一応東北地方では将来この程度の需用が伸びるだろう、それで大体他地区からあまり融通もなくて何とかする方法いかんということになるわけでございます。御指摘がありましたように、大体夏場は現在でも東北電力はむしろ東京に送るような状況であります。冬場の電力が足りないということが現在の問題です。それで実は昨年末に電源開発計画を改訂いたしました際に、東北の方もその中に入れまして、大体三十五年末になれば何とか格好がつく様子になるのじゃないかという一案を作ったわけでありますが、これが完成いたしまして、そのときに大体われわれ考えておりまするような需用の増加でありますれば、あるいは一応安定するかと思っておりますが、そういうふうにここで申し上げましても、また需用の増加が違ってきますれば、また足りないということになるわけでありますので、あまり大丈夫だとは申し上げたくないわけであります。御参考までに申し上げますと、東北地方の一番の問題点は、非常に大口産業の増加率が高いということであります。再編成後の二十六年以来の状況を見ますと、大体大口の産業が約五倍半くらいまでふえております。こんな傾向はよその地区にはございません。大体二倍半くらいのところでとどまっております。ひとり東北だけが五倍をこえておるということは、東北開発の進展の結果と思っておりまして、非常に喜ばしいことでございますが、同時に電気の方から申しますと、そのピッチに追いついていけないという状況でございます。今申し上げましたように、何とかやや安定した形を得ようと思ってせっかく努力しているところであります。  それからもう一つつけ加えさせていただきますれば、冬場の電力が足らない方策の一つとしまして、やはり東北地方も他地方と同じく火力発電をもってこれに当った方がある程度需給の緩和になるのではないか。といいますのは、水力ばかりですと、大体冬場は三分の一以下に落ちてしまいますので、火力をもって常時運転をいたしました方が安定するわけでございまするから、そういう計画をもちまして、昨年のちょうど今ごろでございますが、八戸に火力発電を作ることに決定いたしました。明年の夏に運転開始の予定でございます。十五万キロでございまするから、ある程度冬場の方も安定するかと思っておりますが、追っかけましてもう一つ、仙台の郊外にやはり十七万五千キロの火力発電を明後年あたりに完成させる予定で、目下工事を急いでおります。この二つができますれば、あるいは冬場のことも、只見系統の完成と相待ちまして、やや安定する、こういうふうに思っております。  それから料金関係の問題になりますると、御承知のように現在東北地方の料金は、平均いたしまして、全国の平均よりも約二割方安いわけであります。現在の料金の基礎になっておりまする原価が、平均しまして全国は五円十銭となっておりますが、東北はキロワット・アワー四円でございます。約二割安いのであります。ところが今後そういうふうな水力を作りあるいは火力を入れて参りますと、これはどうしてもこの原価が上っていく方向ではないかと思っております。どの程度上るかということはわかりませんが、東北地方の今後の新規の水力あたりを見ておりますると、他地方と比べまして、大体は建設費あるいはキロワット・アワー当りの原価も同じでありますが、それにいたしましても、現在の水力の既設のものよりはかなり高いのであります。火力の方も既設の水力よりもだいぶ高い。従ってこれはだんだんに上っていくというふうな方向になるかと思っております。ただ目下の問題はその前にありまして、三十二年度の東北の需給を安定しますためには、火力発電ができるまでの間のつなぎでございまするが、どうしても東京その他の地区から相当大幅な融通を受けませんと、とてもやっていけないという状況でございます。これは四月から六月までは何とか東北自身でやっていけますが、夏場といいますか七月から渇水期が始まりまして、三月ごろまではなかなかむずかしいだろうと思っておりますので、このために東北に対してその他の地区から九億キロワット・アワーの融通を行なっております。われわれといたしまして、この原価が現在の料金原価よりも相当高くなるかと思っておりますので、これだけ東北では原価増の原因となる。ところが東北地方で一番増加しておりまする大口産業のごときは、平均しまして大体キロワット・アワー二円当りの供給料金であります。そういたしますと、かりに四円くらいで買ってきましても、これに送電費を加えれば四円五十銭になりますが、約二円以上の逆ざやになり、それだけ電力会社の損失がふえるということになりまして、この辺から考えてみますると、やはりある程度経営を安定させますためには若干の値上げはやむを得ぬじゃないかと思っております。ただこれはまだ正式の申請書が出て参りませんので、どの程度の幅になりますか、目下のところ実は予測がつきかねますが、いずれにしましても、かりに出て参りましても、われわれとしましては、東北地方は由来料金の安いことで産業を維持しておりますので、少くとも東京よりは安い料金にしなければいかぬ。それからもう一つは、ある程度持続する料金でありませんと、毎年毎年変えるということでは困りますので、少くとも三年間くらいは持続するような料金体系にしなければいかぬだろうかと、こういうふうに考えております。実はまだあまり資料が出て参りませんので、具体的なお答えはできませんが、そういう考え方でおるわけでございます。  それから全国七社化とか再々編成ということになりますると、融通の問題についてはあるいはその方がいいかと思いまするが、いろいろ各地の原価が違いまするので、そういたしました方が東北地方の安い料金が維持できるかどうか、これはちょっと疑問であろうかと思っております。
  73. 田中利勝

    田中(利)委員 最後に東北地方における工業振興策というものについて伺いたいのであります。昨年の八月だったと思いますが、衆議院は院議をもって、国政調査のために本委員会が東北各県の商工経済の視察を行なったことがありました。その視察の結果、東北地方の産業の近代化が非常におくれているという点が強く指摘され、かつその対策の必要を強調されておったのであります。すなわち東北六県の生産関係を調べてみますと、全国の九・一%にしかすぎない。これは中国五県の七・八%や四国四県の四・三%よりもやや多いのでありますが、地域の広さから見ると、残念ながら中国や四国よりも以下であるというふうになるのであります。なぜこんなに低いかということは、言うまでもなく、産業構造が農林水産が三九%を占めておる。鉱工業生産は一八%にすぎない。いわば産業の近代化がおくれておるからであります。従ってかような東北の後進性はひいては日本経済の最大の弱点であると私どもも思いますし、この後進性の近代化をはかることがとりもなおさず日本経済の強化となり、発展策となると思うのであります。今日国会においても東北の総合開発が与野党ともにこの問題に取り組んでおるということはけっこうなことであり、また私どもも当然なことだと思うのであります。  なおここで政府に御注意を申し上げたいことは、石橋前首相は五つの誓いの一つとして、生産の増加と雇用の増大ということを公約いたしております。今まで保守党内閣の総理大臣の言葉が信用されなかったということは、結局公約の無視であった。従って政治に対する国民の信頼も寄せられなかったし、ひいては国民の不幸であった。しかし私は、石橋総理大臣のこの公約は東北民とともに、実現されるものと期待しております。今日石橋前内閣と一身同体である岸内閣は、その政策の忠実な継承者であると信じております。こういう意味において、今後の東北開発による新しい鉱工業地帯の造成、育成、こういう問題が当然行われるものと私どもは考えるのであります。このことは当然に東北の農村の二、三男問題と関係してくるのでありまして、ここで私は東北の工業振興政策、こういう問題について政府はいかなる構想を持っておるか、こういう点を明らかにしていただきたいのであります。  特に東北に適した化学工業関係から見るならば、カーバイト工業、硫安苛性ソーダ工業、パルプ、セメント工業、さらに金属工業関係の電気炉、金属製練工業、砂鉄製練工業、木材化学工業、ビート工業等の振興策は考えているのか。考えているとすれば、どのような具体的構想を持っておるか、こういう点もお聞きしたいのであります。  さらに当面の政策として、来年度の予算を見ましても、産業基盤の強化策というものが積極的に相当打ち出されているように承知しております。しかし内容は依然として既設工業地帯の整備であり強化であるということになっておると思うのであります。たとえば工業用水の問題を見ましても、四日市、尼ヶ崎、こういう既設工業地帯に対して三億円も予算の計上をされている。その他道路、港湾などの産業関連施設の整備強化については、北九州、阪神、名古屋、京浜の四工業地帯がおもになっておる。これに比較して東北には八戸、大船渡、秋田、仙北、常磐、新潟等の工業地帯の整備は、今日緊急を要しなければならない問題であるけれども、これに対するどのような対策がとられておるか、またとろうとしておるのか、こういう点もお聞きしたいのであります。中でも常磐工業用水道、仙塩工業用水道、新潟工業用水道、大船渡工業用水道等の早急な実現を要望したのでありますが、この点についてどういうふうな関係になっておるか、これも明らかにしていただきたいと思うのであります。  その次は、福島県では新しい科学技術を取り入れて常磐工業地帯のコンビナート構想が計画されております。こういう構想は単に福島県ばかりでなく、新潟県その他の県においてもどしどし進めておりますが、政府といたしましてもただ隘路打開のために既存の工業地帯の整備強化というだけでなく、東北に新しい工業地帯の造成、育成をする意味において、こういう地方の産業構造を積極的に育成しなければならないと考えますが、政府はどのように考えているか、この点も明らかにしていただきたいと思います。  以上であります。
  74. 植田俊雄

    ○植田政府委員 東北開発につきましては、ただいま御指摘のございましたように、昨年の五月二十八日に衆議院の全会一致の決議がございましたので、その趣旨に従って、経済企画庁を中心に各省と連絡いたしまして、施策の立案とあわせて三十二年度の予算の確保に努めたわけでございます。東北地方については、ただいまお話のございましたように、産業の近代化が非常におくれておるわけでございまして、産業構造の面だけで見ますならば、東北地方はわが国の明治末期または大正初年程度で、いかにも後進的な地域と申すことができるのでございます。単に東北地方が後進的であるということでありますならば、その対策は救済的性格のものであろうかと存じますが、東北地方には未開発の資源が多数存在しているわけでございまして、これらの資源開発は日本経済の拡大と人口問題の解決に役立つわけでございます。こういう御趣旨に基いた昨年の衆議院の決議に従いまして計画を進めて参ったわけでございます。  来年度の予算の表面に出て参りましたのは、まず東北開発公庫の問題でございます。これは金額としては四十五億の源資でございますので、北海道開発公庫とあわせて北海道開発公庫の中で東北分を処理することに相なっておりますことは御承知のことかと存じます。次に東北興業株式会社を改組いたしまして、これに政府は二十五億の資金を確保することになっております。会社の名称を東北開発会社ということに改めて、鉱工業地帯の整備事業も、これが採算ベースの事業である限りは実施できるように改正いたす予定で、ただいま法案を提出いたしておる次第でございます。  次に産業立地条件の整備の問題でございますが、これは各省の予算に計上されておりますので、ただいまのところ的確に東北地方にどれだけの予算が配付されるかということは未決定でございますが、大蔵省の査定段階における話によりましても相当東北地方の公共事業の予算はふえる見込みでございます。こういたしますと、この予算の消化のための何らかの財政措置も必要なわけでございまして、この財政措置の関連からいたしまして、ただいま東北開発促進法というものを政府で立案いたしまして、まだ国会提出までには至っておりませんが、できるだけ早い機会に提出いたしたいと存じておるわけでございます。  次に東北の科学工業についてどういうふうに措置をするかというお話でございますが、先ほど御指摘になりましたような事業は、すべて東北開発の推進のためにぜひ実施を希望する事業でございます。特に砂鉄につきましては、三十一年度の東北開発予算のうちから四百五十万円、それに関係業者及び青森県等の支出がありまして一千万円の調査費で調査いたしたのであります。従来東北の砂鉄は数千万トンしか埋蔵がない、こういうふうに増えられておったわけでありますが、調査の結果は二億四千万トン程度は存在しておるのではないかということの見通しがついたわけでございます。最近砂鉄の製練事業というものが八戸を中心といたしまして脚光を浴びている状況でございます。そのほか金属関係の製造業にいたしましても、先ほど申しました公庫の融資対象として当然考えられるものと考えられますので、民間会社がこれらの地方に立地いたします場合におきまして、公庫からの融資をもってその事業を促進することが可能になるのではないかと考えております。  次に御指摘のございました鉱工業地帯を既成の都市にばかり集中したじゃないかという御質問でございますが、この問題も実は私どもが中心になりまして昨年の暮れに作業いたした問題でありますので、関連してお答え申し上げますが、実はあの制度をやりますときに鉱工業地帯といたしましては、単に対象といたしました四大地域ばかりではございませんで、他の地区も同時にやりたかったのでございます。ところが各省の話し合いができましたのは九月の末でございましたので、四大工業地帯以外の地方にまで手が伸びなかったのでございます。従いまして三十二年度予算に間に合うように作りました計画は四大工業地帯ではございますけれども、今年度も引き続いてああいう制度をいたすことになっておりますので、三十二年度におきましては他の新興工業都市、あるいは将来大きく開発期待される工業都市につきましても同様な計画を作りたいと存じておるわけであります。特に私ども昨年の暮れに四大工業地帯の計画を作りました場合に気をつけました問題は、先ほどもお話がございましたように、人口の都市集中を促進するような意味での計画であってはならないという意味でございました。もちろん既存の工業地帯におきましても関連産業的なものもございますので、そういうものは大都市に集中するのはやむを得ないかと思いますが、他に適当な立地があるにかかわらず従来の惰性で四大工業地帯に工場が集中することは国家としても好ましくないという方向でいたしたのでございます。従いましてあの計画におきましてはさしあたりの隘路打開ということに重点を置きまして、その地方の大規模な開発という意味の計画は盛り込んでいなかったのでありまして、これらの問題は今後各省と相談いたしまして研究いたしたいと存じております。そういう意味におきまして、先ほど御指摘のありました東北地方の工業地帯でございますが、この工業地帯の個々の事業についての調整ということは、三十二年度予算においては間に合わなかったのでございます。私ども常に考えておりますことは、産業が立地したいという状況にあります際に、産業関連施設がそれに伴わないために、せっかくの立地ができなくなるということがあってはならないと思うわけでございます。幸い国土総合開発調整費というのがございまして、産業の立地が確実になって参りますれば、調整費で補いまして産業の立地に支障のないように措置をする考え方を持っておる次第でございます。
  75. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 関連して。東北の開発につきまして当局の御回答があったのでございます。私から申し上げるまでもなく、東北の産業構造は明治の末期、大正の初めのような状態であることは事実であります。ただいまの御答弁の中に産業の立地条件の具備ということがございましたが、今年から問題になりました東北開発の具体化というものは、これはなかなか容易ならぬことでございまして、急いでも相当の長年月かかると考えていかなければならぬのであります。しかるに御承知通り東北の自然条件というものは非常に悪いのであって、東京においてまるで春のごとき今日でも向うでは吹雪が吹いておるという状態で、しかも先ほど政務次官から伺いますると、東北の電力はもう五割しかない。五割の電力ということは工場経営ができないということなのです。電気炉を持っておるものが一週に二回休まれたら電気炉は使えないということになる。そういう状態を勘案いたして参りますると、名目は東北振興の、東北開発ということで、いかにも軌道に乗りそうですけれども、これはよほど当局が腰を入れてもらわぬと、半頭狗肉のような状態に陥ってしまうのじゃないかと考えておる。ところがわれわれといたしましては、東北に近代的な工業を持って参りまして、そこで大きな東北開発の前駆ならしめんとするならば、まず東北で仕事をすることがほかのところで仕事をするよりも条件がいい、そうしてこれはやってももうかる、便利であるということでなければ東北の工業化というものはできない。実際私がやってみて体験的にそう考える。しかるに今東北で一番問題になっておりますのは、先ほどお話にありましたように砂鉄の現地の製錬であるとかあるいは天然ガスの開発をやって、天然ガスを原料とするところの工業、そういうものがわずかに考えられる。ところがこの前も私は質問をいたしたのでありますが、天然ガスの開発は三百数十万円の金を投じて、大体三十一年度において調査をした。三十二年度には新たな天然ガスの調査に対する予算はゼロになっておる。わずかに従来通りの天然ガス調査費というものが二千万円しかついておらぬ。こういうような考え方でもっては東北の開発は百年河清を待つものであって、口では東北々々というけれども、東北に現存するところの近代的工業の一大原動力であるところの天然ガス開発に対しては新たに一文も盛っておらぬ。そういう当局の東北開発に対する根本的な観念を改めざる限り、東北の開発は実質的には進行しないと考えておる。そういう点に対して三十二年度の予算には落ちたから仕方がないが、この天然ガスの開発なら天然ガスの開発をもって東北に大きな近代的産業の原動力をつちかっていくという点に対しては、当局は一体どういう腹がまえを持っておられるか。この際関連して当局の御答弁をお願いしたいと思います。
  76. 森誓夫

    ○森政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、この前にお答え申し上げた通りでございますが、われわれとしては来年度の天然ガス埋蔵地域基礎調査の予算を、簡単におりたというわけではございません。事務的にはあとう限り最後までねばってやったのでありますが、遺憾ながら大蔵省で認められなかったという次第で、われわれもまことに遺憾に存じておるのであります。従ってこうなった以上は、今後さらにまた機会を見て新しい要求を繰り返してやるほかないと思っております。ただ先ほど非常に少額だと申されましたが、二千万円の探鉱補助金をできるだけそういう趣旨を含めまして活用して参りたい。そのほか大企業でいろいろあちらで開発を始めている実例もございますが、そういうものにつきましても、できるだけの役所としての援助をいたしたい。これは大企業に限りません。小さい企業におきましても融資その他の面でできるだけの御協力を申し上げたいが、ただいまのところはそういうことを念じておる次第であります。
  77. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 通産省で一生懸命やったけれども大蔵省で認めなかったのだということになりますと、今度は大蔵省当局の出席を求めてその考え方をたださなきゃならぬと私は思うのであります。しかし大蔵省が認めなかったからだめだったんだといっても、それは一体熱意がどこにかかっておったかということによってきまるのだと思う。通産省の面目にかけて、どうしても東北開発のためにこの予算は通してもらわなければならぬという熱意を示したら四億何がしにまで上っておるところの開発計画というものが、まるまるゼロに落ちるというそんなばかなことはないと私は思う。そういうところの一切の責任大蔵当局に転嫁しておるということは、私は通産当局考え方というものがおかしいと思う。自分の努力が足りないことをたなに上げておいて、大蔵省が許可しなかった、認めなかったからおれの方は仕方がないんだという考え方なら、通産省は一体何をしているか、大蔵省の意思に甘んじて開発計画をやるのですかということになる。それは通産省の名誉にかけてもやらなければならぬということは、あくまでも押していくというところに通産行政の骨というものがあると思うのです。それをまるまるおっことされたのは大蔵省責任であるというなら、何をか通産当局に質問する必要があるか。これは大蔵当局の方から答弁を聞かなければならぬと思う。そういうものじゃないと思う、ほんとうに日本の現状に即して日本の足らざる資源を開発して、ここに近代工業というものを打ち立てて、そうして東北の天地を潤すのみならず、日本の近代工業の一つの原動力にしよう、そのためにことし四百万円の調査費を使っておる、四百万円の調査費を使ってもなおかつ有望な土地があるということがわかっておるのに、これに対する開発調査費をつけ得なかったということは通産省の大きな黒星だと思う。しかも今言うには、二千万円の助成金がついておるということですが、二千万円の補助金というのは、井戸を掘るためにまるまる出すのじゃない、半額しか出さない。あとの半額というものは掘らんとするものの負担になってくる。公共企業体が掘るとすれば半額は負担しなければならぬ、その負担をするという前提のもとにこの二千万円というものが組まれておる。だから半額を負担するときには、よほど的確なる国家調査というものがなければ、公共企業体でも個人でも半額負担で天然ガスというものは掘れるものじゃない。だから、まずそれを開発せんとすれば、その前提として、国家としては国費をもって徹底的な調査をして開発計画を立てて、その上に助成金というものをつけられて、そうして公共企業体がこれを掘るとか、会社が掘るとか、そういうふうなことでいかなければとうてい開発というものはできっこない、私はそう思います。私は今の答弁にははなはだ不満でありますから、今後委員長のお取り計らいによって大蔵当局の出席を求めてその真意をただしたいと思いますから、関連質問はこれでやめておきます。
  78. 福田篤泰

    福田委員長 本日はこの程度でとどめます。  次会は来たる十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会