○松岡(松)
委員 最近の労働運動の傾向というものは、終戦以来ことごとにストライキという最悪の手段を用いる傾向がある。これは西ドイツにおきましても、もちろん進歩したアメリカあたりにおきましても、かような手段というものはよほどの行き詰まった状態でなければ用いられておらない。進歩した民主主義諸国におきまする労働者の賃金向上、待遇の改善に関する交渉というものは、主として団体交渉によって労使が誠意を尽して妥結ずるというのが、近来の傾向であります。しかるにわが国におきましては、終戦以来すぐストライキに訴えるという傾向がある。しかも最近のいわゆる春季闘争という名にかりて毎年行われる政治的ゼネストの様相というものは、経済闘争の範疇を脱してしまっておる。もちろん経済闘争の様相はないとは言いませんが、それにひっかけまして広範なる勤労大衆をいわゆる革命的な
方向に訓練しているというふうにしか、われわれには受けとれない状況が出てきておるのであります。真に労働者の待遇を改善するために労働者が団結して
企業者と交渉するということは、これは好ましいことであって、忌むべき現象ではございません。もちろん労働者の賃金はその業態によって算出されるものでありまして、労働者の当然受くべきところの配分というものは、その生産の度合いによってきまってくるわけなのであります。それを要求を掲げてはストライキをやる。何でもばかの
一つ覚えのように、ストライキ、ストライキといってかり立てておるこの状況というものは、これは経済闘争ではない。まさにこれは政治的ストライキである。政治的ストライキというものは、一体日本の憲法によって保障されているものかどうかということについては多くの議論があります。憲法二十八条の
規定するところの罷業権なるものは、経済闘争の範疇に限定せらるべきものであって、政治的闘争の範囲まで含むものではない。そこで
政府当局におかれましても、今労使双方に対して話し合いによって誠意ある妥結に向うよう御努力せられておることを承わりましたが、これは
政府といたしましても、すでに日時がもはや逼迫しておるのであります。私どもの
考えからいたしますれば、日夜をいとわず、もっと積極的に
政府自体がこの両者に対して真剣に団体交渉の実を上げることを要望せられると同時、国民にもアッピールせられる必要がある。ことに貯炭の状況などにつきましては、あらゆる報道
機関を活用されて、国民全体にこの実相を明らかにすることが必要である。今中小
企業がわだちのフナのような状態になって置かれておる。重要産業が石炭に困るという実情というものは、国民の大部分は知りません。この実情を国民に訴えられて、そうして業者の誠意と真剣なる努力を要望せられる。国民がこれに
協力する。今やこれが逆行をしておるのであります。
春先になれば春季闘争と、まるで勤労者の行事が五月まで続くのであります。そこで国民はこれを何かお祭騒ぎのごとく喜んでおる人もある、実態を知らない結果からかようなものが生まれてくるのでありまして、
政府当局におかれてはさらに一段の努力を要するものがあるのではなかろうか。総理大臣以下各大臣におかれましては一致結束せられまして、誠意をもって妥結するように
企業者側にも労働者側にも話し合い、
理由のある経済的要求に対しては、お互いにかけ引き算段をしないで、虚心たんかいにこの際話をするよう、全日本のあらゆる機構にアッピールせられて、これに
協力することを求めらるべきはでなかろうかと思うのであります。もしこの対策を一朝誤まるときには、日本の経済のみならず、日本国家全体の機構の上に大きなひびが入ってきはしないかと私は憂うるものでございます。さらに大臣の御所見を承わりたいと思います。