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1957-05-13 第26回国会 衆議院 社会労働委員会診療報酬及び薬価に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十三日(月曜日)     午後二時四十九分開議  出席小委員   小委員長 小島 徹三君       亀山 孝一君    田中 正巳君       野澤 清人君    八田 貞義君       岡本 隆一君    滝井 義高君       八木 一男君  小委員外出席者         厚生事務官         (医務局次長) 河野 鎮雄君         厚生事務官         (医務局総務課         長)      熊崎 正夫君         厚生事務官         (保険局次長) 小山進次郎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  診療報酬及び薬価に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  診療報酬及び薬価に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許可いたします。岡本隆一君。
  3. 岡本隆一

    岡本委員 診療報酬の改訂の問題はいろいろな面から検討されると思うのですが、一番集約的に具体的な形でそれをどの程度引き上げるかということを現わすのには、単価幾らにするかというふうな形で現わしていくのが一番わかりやすいと思うのです。そこで一点単価を一円引き上げるについてどれだけの政府財政負担が必要かという問題は委員会でしばしば問題にされて、政府からも一円引き上げるについては百数十億必要だというふうな御答弁があったわけですけれども、どうも私その数字がふに落ちませんので、どういうわけで百数十億になるのかという積算の根拠をもう一ぺん説明していただきたいと思うのです。
  4. 小山進次郎

    小山説明員 ただいまお話のございました点、根拠ということでございますが、その前に一応各管掌別にどんなふうになってどういうことになるからということでお話をさしていただきたいと思います。  まず政府管掌健康保険についてみますと、被保険者分療養給付費が三十二年度の見込みではおよそ三百九十六億六千万円になっております。これがもし一点単価で一円引き上げられたといたしますと、これで約三十三億四千万円ふえるであろうという推計をいたしております。それから被扶養者分では昭和三十二年度の医療費は百八十五億と見込まれておりますが、一点単価で一円引き上げられますと十五億六千万程度の増が出ると見込まれております。従いまして政府管掌では昭和三十二年度の医療費は、被保険者分、被扶養者分両者療養給付費を合せますとおよそ五百八十五億三千万と見込まれているのでありますが、一点単価引き上げますとこの面での増が約四十九億三千万円、こういうことに相なるのであります。それから次に日雇い労働者健康保険におきましては、昭和三十二年度の医療費はおよそ四十二億九千万円と見込まれておるのでありますが、一点単価で一円引き上げられますと約三億六千万円ふえると見込まれているのであります。それから船員保険におきましては、昭和三十二年度の医療費は約二十一億三千万円と見込まれておりますが、一点単価一円増によっておよそ一億八千万円増加すると見込まれております。次に組合管掌健康保険は、昭和三十一年度におきまして約三百七十四億八千万円の医療費を必要とすると見込まれておりますが、これは一点単価の増によりまして約三十一億四千万円増すと見込まれております。次に共済組合は、昭和三十二年度におきまして医療費三百十五億と見込まれているのでありますが、一点単価一円増によりましてさらに二十七億増加すると見込まれております。次に国民健康保険は、昭和三十二年度におきましては四百五十三億三千万円の医療費を必要とすると見込まれておりますが、一点単価一円増によりまして三十九億六千万円さらに増加するものと見込まれているのであります。それから生活保護法医療扶助費は、昭和三十二年度におきまして、これは公費負担分だけでなく患者負担分を入れてのことでございますが、二百四十六億三千万円必要とすると見込まれておりますが、一点単価一円増によりましてさらに二十一億増加すると見込まれておるのであります。結核予防法におきましては、昭和三十二年度におきましてこの予防法公費負担の対象となります医療費総額は三十八億九千万円と見込まれているのでありますが、一点単価一円増によりましてさらに三億三千万円増加すると考えられております。  以上のような工合で、おもな制度の昭和三十二年度における医療費総額は二千七十八億と見込まれておるのでありますが、一点単価増によりましておよそ百七十七億二千万円増加するということに見込まれておるのであります。  以上申し上げましたのはいわゆる公費負担及び患者負担を含めてのことでございますので、これをさらにいわゆる狭義公費負担というものに限って見ますと、総額では百七十七億二千万円の増のうち、公費でふえますものがおよそ百三十五億二千万円ということに相なるのであります。
  5. 岡本隆一

    岡本委員 百三十五億というのは狭義におけるところの公費負担額ですか。
  6. 小山進次郎

    小山説明員 そうです。
  7. 岡本隆一

    岡本委員 ということは組合管掌及び共済組合は、これは公費負担はございませんね。国庫負担はございませんね。
  8. 小山進次郎

    小山説明員 大へん恐縮でございますが、訂正させていただきます。ことさら狭義と申しましたのは、むしろ言葉が逆で、広義の公費負担で、内訳を申しますと、いわゆる狭義公費負担プラス保険者負担というものを加えて、分類上広い意味での公けの負担、それ以外は全部患者持ち出しという、そういうふうな内容で百三十五億というものが、広い意味での公費負担、つまり正確な意味での公費負担保険者負担両方を合せてのことでございます。
  9. 岡本隆一

    岡本委員 保険者負担公費負担とは、これは意味が違うと思うのです。健康保険組合あるいは、共済組合の中には、相当保険経済がゆっくりしておって、附加給付をやっておる、あるいは附加給付だけでなしに、寮を設けたり、いろいろ健康保険の本来の最初出発点とばかなり内容の違った給付をやっているところもあるのですね。さしあたり健保単価一円引き上げによって国の財政にどれだけ影響を及ぼすかということが今までしばしば問題にされておったわけなんですが、組合保険者負担までがその数字の中に入っておるということは、これはおかしいと思うのですね。これは切り離さなければならないと思うのです。そういう意味において、純粋に政府財政負担になるのは幾らかということを私らは尋ねておったわけなんです。ところが、今の御答弁を伺いますと、一体一点単価一円上げたら何ぼ政府財政負担になるのだというて尋ねますと、初めは百四十億だ。だんだん数字が大きくなってきて、百六十億です、百七十億ですというふうな答弁が今まで何回か出て参りました。どうも私はふに落ちないと思って何ぼ繰り返して調べてみても、そういう数字根拠がわからない。それできょうこうして、もう一度議論の蒸し返しのようなことになるけれども、お伺いしたわけなんです。そうすると、純粋に国の財政負担になるのは一体どれだけでしょう。
  10. 小山進次郎

    小山説明員 純粋に国の財政負担になるのはどれだけかということの計算そのものはきわめて簡単なのでございますが、申し上げるまでもなく、たとえば生活保護法負担とか、あるいは結核予防法における負担というようなものは、これはもう問題の余地なく、きわめて明瞭な形で国の負担になるのでございますので、これはそっくりそのままあげられるわけでございますが、それ以外の費目になりますと、たとえば国民健康保険等のごときは、一応国の負担増としましては、総医療費の増加の二割分だけが純粋な形での国の負担だということで考えられるのでありますけれども、ただ、実は現在の単価問題のむずかしさといいますか、悩みというのは、それだけしか国が持ち出しをしないということではなかなか問題の解決がつけにくい。私ども自身でさえ単純に生活保護法とかあるいは結核予防法とかの分とか、もしくは国民健康保険法医療費増の二割だけという、きわめて機械的なやり方では、現在の医療報酬の改善問題というものは解決がなかなかむずかしい。あとはそれぞれ自前でやれということでは解決がむずかしい。そういうような考慮がございますので、純粋の国の負担増を出せと言われるとなかなかむずかしいわけでございまして、ただ、それではこういう前提で計算したとするならば幾らになるかという御要求でもございますならば、これは計算自体は簡単な問題でございますので、きょうすぐにというわけには参りませんけれども、すぐに作業いたしまして、資料として提出させていただく、そういうやり方でやりたいと思います。
  11. 岡本隆一

    岡本委員 国保の場合、これはこの前のこの委員会滝井君が詳しく論議されたので、そういう意味はよくわかる。しかしながらその問題はその問題として、これは別個に考えるべき問題だと思います。単価を一点引き上げたら一体幾らになるか、幾らずつ政府財政負担になるかという場合には、純粋に数字数字として取り扱って、これこれで国保の場合の二割国庫負担の分については引き上げる分何億になります、こういう数字を出して、ただし国保についてはこういう問題が残りますから別途考慮していただかなければなりません——別途考慮しなければならないのはほかにもあるかもしれない、だからそういう問題は問題として残して、そして単価一点引き上げれば何ぼになりますという数字を出してこられるのが、私は正しい態度だと思うのですね。それで単価引き上げに要するところの政府財政負担について何かしらぼやかそう、ぼやかそうというふうな気持保険局におありになるのじゃないかしらんと思う。これは誤解かもしれませんがね。だけれどもこの前の委員会でも組合保険者負担分まで含めて百七十億だというような数字をばっとおっかぶせてきて、それで一点単価引き上げるのにはものすごく金がかかりますという、こういうふうな調子ではきわめて不親切で、僕らはだまされているというふうな、一ぱい食わされているというような感じを受け取るのですが、それで私は私なりにふに落ちない何は、三十年度の何について計算してみて、どうも政府の出してきた数字はおかしい、こう思ったので、きょうこういう問題をもう一度持ち出してみたのです。そこで三十年度と三十二年度の間における保険財政における医療費請求点数医療費の伸びは何億点か、およそ何%くらい伸びているだろうと御想像になりますか。
  12. 小山進次郎

    小山説明員 ただいま手元資料がございませんので、調査した上で申し上げることにさせていただきたいと思います。
  13. 岡本隆一

    岡本委員 それでは一応私が不審を抱くに至った数的根拠、これを一度あなたの方にも御理解願っておいた方がいいと思うので、数字を申しますからちょっと書いて下さい。  昭和三十年度の健庫保険支払い金高点数に換算していきますと、たとえば政府管掌では、本人は二十五億七千六百万点、家族に対する支払いは十二億八千五百万点です。ところが家族についてはその半額を支払いますから、従って支払った金高点数に直しますと、六億四千二百五十万点になります。それで二十五億と六億四千とを寄せますと、三十二億一千八百万点というのが支払い総額点数に換算したものになります。従って政府管掌のものについては、一点単価一円上げますと、三十年度では三十二億増になるわけです。同じような計算船員保険にしますと、一億一千三百万点、それから日雇いが一億九千万点です。従って政府保険者になっておるところの健康保険については、それらを合計しますと、三十五億二千百万点になるのです。それから、組合は一応政府財政とは直接関係ございませんからはずします。それから社会福祉関係生活保護法、その他の結核予防法、そういうようなものを点数に換算しますと、十八億四千万点になります。それから国保保険者負担分は十六億一千七百万点です。ただし国庫負担は二割ですから、その十分の二は三億三千万点です。そこで、最初政府管掌の三十五億と、それから社会福祉関係の十八億四千万点と、国保の三億三千万点とを寄せますと、五十六億九千百万点になるのです。約五十七億です。だから、昭和三十年度の実績から計算していくと、一点単価一円引き上げることによって五十七億の財政負担政府はなるわけです。そこで昭和三十年度の実績と三十一年度、三十二年度どれだけ請求点数が伸びるかということによって、およその概数は出てくるわけですね。五十七億がたとえば二〇%伸びれば十億ふえるわけですから、六十七億あるいは七十億という何が出てくる。  それからそこから引いてもらわなければならぬものがあるのです。何を引いてもらわなければならぬかといいますと、国立病院国立療養所あるいは国立大学、そういうところは、健康保険からは金を払っても、それはみんな政府のところに返ってくるのです。そういう点で、そういうところへ健康保険財政から支払う金は、一たん保険財政としてはふえても、政府の方へは返ってくる。政府が吸い戻す。この吸い戻す金額が一体何ぼになるかということです。それで私はけさ鈴木さんのところに電話しまして、その吸い上げる金高がおよそ何ぼか一つ調べてもらいたいということ、資料を持ってきていただくようお願いしておいたのですが、持ってきていただいてますか。
  14. 小山進次郎

    小山説明員 まだできていないようです。
  15. 岡本隆一

    岡本委員 これはもう私も全然推定にすぎないのですが、国立病院収入は八十一億四千七百万円です。これは大蔵省で出している「国の予算」という書物で調べたのです。それから国立療養所収入は七十八億三千万円、国立大学の方は文部省所管のやつを何ぼ調べてもわからぬのですが、おそらく同じ程度じゃないかと思います。そこで国立病院とそれから国立療養所を合せますと、百五十九億になります。それに国立大学収入をかりに五十億として加えますと、二百九億、約二百十億がそういう国立医療機関収入になるわけです。そのうち自費患者が何ぼあるか、生活保護法及び社会保険分として何ぼ収入があるかということが問題になるのです。それを知りたいと思ったのですが、知ることができなかったものですから、私は三分の一を自費患者とし、三分の二を健康保険及び生活保護法その他のものというふうな形で概算してみたのですが、そうしますと、その百五十億のうち三分の二が保険関係でありますから、従って約百億が保険関係収入と見ることができる。これを十一円八十銭の平均単価で割りまして、八億四千七百万点という数字を出してみたのです。これを五十七億から八億引きますと、結局四十九億、約五十億というものが政府負担になるという数字になります。そういう五十億というふうな政府財政負担を、今まで百二十億かかります、百四十億かかりますというとてつもなく膨大な数字を吹っかけられてきたわけですが、このほかに小山さんの方で何か政府財政負担になるものをお気づきになりますか。たとえば三十年の数字をこのままでいって、三十年度としての政府財政負担に、そういう計算は誤まっていると思われますか。
  16. 小山進次郎

    小山説明員 ただいまの岡本先生お話を承わって、前段の健康保険船員保険日雇い健康保険及び政府管掌組合健康保険生活保険法、あるいは結核予防法国保、これについてのお話は、これはもう整理の仕方の問題でございまして、そういうお考えによる整理の仕方は一つあり得ると思っております。ただその場合、政府管掌健康保険船員保険日雇い保険については全額政府持ちということで御計算になっておりますけれども全額政府持ちというふうにした場合の実際上の負担関係をどうするかという議論は、また別にあり得ると思いますけれども、それはそういうふうなお考えでの整理ということも、一つの筋道だろうと思っておりますので、そういうことでもう一回先ほどの資料を調整するということは割合簡単なことでございますので、日ならずしてお手元に差し上げられるだろうと思います。  それからこちらの方で上げた部分が収入関係でどうかということになると、これは対応関係がなかなかむずかしゅうございまして、どうも先生がおっしゃったほど単純には対応しにくいので、これは一応別個に検討させていただいて、二つの資料結びつけをどういうふうにするかというのはもう少し研究させていただきませんと、私どもとしては何とも申し上げかねるというのが現在の考え方でございます。
  17. 岡本隆一

    岡本委員 私もこの数字がきわめて大ざっぱなものであるということは最初から申し上げている通りです。しかしながら大体においてこういう程度のものということは、この計算の仕方でわかると思うのです。少くともこうして出してきて、昭和三十二年においてかりに四十億としまして、それを三十年度と三十二、三十三年度の差を求めていったとしても、この三十年度四十億の負担増見込みが三十三年度になってまさか百五十億、百六十億という数字に飛躍するということは考えられないわけですね。だから程度の問題としては六十億かたかだか七十億くらいのものであるということだけは認識してもらっていいと思うのですが、どうですか。
  18. 小山進次郎

    小山説明員 先ほど内訳を申し上げましたので、その内訳を合算すれば大体先生のお求め数字が出ないことはないのでございますが、政府管掌健康保険について申し上げますと、三十二年における一点一円引き上げによるものとして保険者または公費負担分の増額が約四十億でございますから、これは先ほどの先生分類に従えば、全額財政上の負担として考えるものの方に組み込まれるわけであります。それから次の日雇い労働者健康保険は、保険者または公費負担分の増で約三億になります。それから船員保険は同じような分類で一億五千万円増加いたします。それから組合管掌健康保険共済組合は、先ほどの分類から言いまして一応除外して考えられると思いますが、生活保護法は十九億八千万円増でございまして、これは問題なく約二十億の全額が増であります。それから結核予防法が二億六千万円、残ります国民健康保険保険者または公費負担で二十二億増ということに相なりますが、このうち保険者負担分というものが五分の三になっておりますから、それに五分の二をかけますと、先生のお求めの純粋な国庫負担の増というものが出るわけであります。以上合算しますればおそらく先生が先ほどおあげになりました点数から計算したものの、三十二年度における一点単価一円増というものの影響というものは、そうひどい間違いなくつかめるというふうに考えるわけであります。
  19. 岡本隆一

    岡本委員 そういうことになりますと、国保についてはこの前から委員会でも問題が出ているように、あるいはこれについては何らかの手当はしなければならないということは別問題として、一点単価一円引き上げ増に伴うところの政府負担増という数字は、今後ば御訂正していただかなければならぬことになるわけですな。それはお認めになりますね。
  20. 小山進次郎

    小山説明員 それはもう何と申しますか、いわば流儀の問題でありますから、先生流儀のように計算した結果がこうなるという御主張は、りっぱに一つ数字をもって考えられると思います。同時にまた今度の医療費待遇改善の問題については、単に国の財政負担においてケリがつくかどうかということだけを考えておったのではいかぬので、果して全体の医療費負担能力というものを考えても、なおかつそれが考えられるかどうかというところまで、かなりつっ込んだ検討を必要とするくらい、実は根本的な取り上げ方をしておりますので、私どもとしては前会から申し上げたような基礎に従ってやっておるわけであります。従って先生のような御議論が出るのは、私ども感じではもう少し先にしたい。今からあまりそう問題をこじんまりとした格好で論議するということでなく、もう少し根本的に大きく手を広げて検討していきたいという気持がありますので、なまじ小刻ざみにしたところを申し上げないで、全部を洗って計算すればこうだということで申し上げておるわけでありまして、この点、先ほど保険局はどうとかというお話がありましたが、決して他意があってそういうことを申し上げたり、あるいは計算しておるわけではないのでありますから、一つ御了承を願いたいと思います。
  21. 岡本隆一

    岡本委員 あなたの言われるのは保険者負担増という言葉の形においての、質問に対するお答えであればそれは正しかったと思うのです。しかしながらわれわれが尋ねておったのはそういう意味において尋ねておったのじゃなしに、一応組合というものは除外し、そしてまた今日非常に乏しい社会保障関係の費用の中から、どれだけのものを政府が耐え得るかというふうな観点に立って、物の考えを進めていくときに、一体政府財政負担にどれだけ一点単価引き上げ影響するのかというふうな意味において、私たちが聞いたときに、保険者負担分をそのままの形であなたの方からお答えがあったということについて、私はどうも数字に少しぼやかしがあったということを指摘しているわけなんです。それはあなたの言われる意味もよくわかると思うのです。しかしながら組合管掌というものは概して——慨してなんですか、今日保険財政政府管掌に比べて裕福であって、そして一番保険財政の乏しいところの政府管掌健保及び国保、それに見合うように単価が組み立てられておるというところに問題点があるわけなんです。それでたとえば政府管掌の被保険者零細業者のきわめて標準報酬の低い人たち集団である。それからまた国保というものは、これは農業であるとかあるいは小さい零細企業であるというふうなものに関係している人たちで、これも財政的な負担力のきわめて乏しい人たち集団なんです。こういうふうな集団の中で社会保険というものを取り入れていく場合に、非常に裕福な人だけは別にピック・アップして、貧しい人を集団としてやっていく場合に、これに対してそのままなまに、入り用なだけを保険だから君たち全部出すのだというところに無理があると思う。だからそこで政府がある程度財政負担をしなければならぬのじゃないかということは私たち考え、そういう考え方からいろいろな議論が今日進められておるわけです。そういう観点からいくときに、今まで政府の出しておられた数字というものは、そういう意味単価引き上げたらこれだけ要るのですよというふうな形で出してこられるとするなら、かなり間違った出し方であったように私は感じるわけです。だから問題をやはりそのとき取り上げられている具体的な形にマッチした数字を出していただかぬと、そういう意味においてわれわれが、貧しい人たち集団に対して政府がその財政的な裏づけをしなければならないとするならどれだけ要るのだということを聞いておるときに、ぽかんと保険者の全体をひっくるめた数字を出してこられるということは、これはちょっと不親切なやり方だったように思うのですが、だから今後はわれわれの質問にマッチした数字一つ出していただくことをお願いしたいと思うのです。  それからもう一つお伺いしておきたいことは、四月二十一日の朝日新聞に「国民保険の準備急ぐ」厚生省の方針がきまったというふうなことで、こういう問題について秋までに省議をまとめて具体案として出していきたいというふうなことがいろいろ並んでいるわけです。その中であれだけ委員会で問題になった結核医療費をどうするかということが入ってないのです。結核医療費がこの新聞の記事の中で問題になっておるのは、生活保護法結核予防法国保との関係というところで問題にされて、そして結核予防法医療費国民健康保険の被保険者に適用するのかしないのか、国保加入者には適用するのかしないのかというふうな形で結核予防法の何が問題にされているだけで、結核予防費を今度はどうするのか、健保の一番大きな財政負担になって、一番ガンになっている結核予防費というものを一体どうするのかという問題について検討するということば入ってないのですが、結核予防費の問題はどうなっているのでしょう。
  22. 小山進次郎

    小山説明員 ただいま先生が御引用になっておりますのは、おそらく厚生省に設けられました国民保険推進本部の仕事に関連しての記事だろうと思うのでございますが、そこで結核予防法の問題が問題として出ておらないというのはこういう事情からでございます。これは国民保険の推進についてのいろいろな段取りとか何とかを進めるために設けた組織でございますが、この場合に結核予防対策というものをどういう規模で、どの程度にやるかということが日本の医療問題の解決のために非常に重要な問題だということはお互い十分意識して検討したわけなのでございます。ただその場合に、今度の国民保険推進本部の方でやりますのは主として保険の制度と医療制度とをどういうふうに調整をしていくかということを中心にしてやろうということでございましたので、この本部の仕事として結核予防対策の問題を全面的に取り入れるということをしないだけのことなのでありまして、むしろ気持としては国民保険推進本部の仕事を進めるということと事実上並行して結核予防対策を根本的にやろう、その場合でも特に結核医療対策についてはどうしても国民保険の推進ということと結びついていく性質がある。従ってこれは国民保険の問題の中身に取り込んでしまうということでなくて、両方の調整をどういうふうにするかという問題として調整をはかっていこうじゃないかというようなことで、仕事の中に入ってないわけでありまして、これは結核予防対策についてもそうでありますし、それから同じ保険の問題につきましても、たとえば未適用の問題をどうするかとか何とかいう純粋な保険だけで解決する問題もあるわけでございますが、そういったような問題も、それはそれとして重要な問題として解決を進めていく。ただもっぱら保険と医療制度との関連をどういうふうに根本的に調整していくかというのに、この本部の仕事に重点を置こうというような、整理の仕方の一つ流儀と申しますか、それからたまたまそこへ出てこなかった、こういう事情でございまして、国会で大臣とか厚生省当局がたびたび申しております結核予防対策をしっかりやりますということは、おっしゃるように現在また別に進めているわけでございます。
  23. 岡本隆一

    岡本委員 保険財政結核医療費がガンになっているということは、もう保険局でもお認めになっているのでしょうね。
  24. 小山進次郎

    小山説明員 これはもうお説の通り、保険、生活保護を含めまして、日本のこの種の医療保障制度は、いわば結核に虫ばまれているとでもいうべき状態にあることは、仰せの通りだと考えます。
  25. 岡本隆一

    岡本委員 そうすると、結核予防費をどうするかということの解決をつけずしては、国民保険幾ら作っても、それは全部赤字になる。やっていけないのです。今までの政府管掌健保にしましても、あるいは従来の国保にしても、これが赤字になって苦しんでいるのは、結核医療費が非常にかさんできているという点が一番大きな問題なんですね。だからこの結核医療費をかりにごそっと取り除いたら、どの健康保険も全部息を吹き返して、よみがえるのですね。だからこれを手をつけないで保険財政の健全化というものはあり得ないと思うのです。ところが国民保険をやる、そのための準備にいろいろなことを検討するのが、その中で一番問題にしなければならない重要な結核医療費をどうするかということには一指も染めていない。それば勝手にどこなりとやるだろう、こういうことでは私は国民保険をやってもやれっこないと思う。その点、保険局というよりも厚生省全体としてどうお考えになっているかということです。
  26. 小山進次郎

    小山説明員 結核予防対策の、特に医療費の対策をどうするかということは、仰せの通り、これは根本的な問題として考えているわけでございます。ただ先ほど申しましたように、たまたまこれを初めから保険の中の問題として考えていくという前提をきめてしまわないと、つまり結核医療費の問題を解決する仕方としまして、保険の中へ全部押し込んでおいて、いわば財源調整とでもいうか、そういうことで解決していくという考え方もございますし、それからかねてからとっております現在の公費負担という制度をもっと実効のあるものに拡大をして、事実上保険の方に結核医療費負担をかけないということで解決していくという考え方もあるわけでございます。今のところ厚生省はどちらかといいますと、あとの方の考え方をとっておるわけでありまして、結核医療費については何か一つそれなりにまとまった根本的な解決方法を考えていきたい。結果として生活保護なりあるいは医療保険にかける重味というものをそれで減じていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  27. 岡本隆一

    岡本委員 そうしますと、ここに国保に加入しておる人に結核予防法公費負担をするかしないかということを検討しようというふうなことが書かれておりますが、そういうふうな考え方というものは、——これは保険制度というものは国保は二割の国庫負担はあります。しかしとにかく自分たちの金を出し合って、そして自分たちの金で相互扶助の形で病気を治していこうというのです。だからこれは被保険者であろうとまた被保険者でない人も、結局自分の金で自分の病気の治療をやっているわけなんです。ところが結核予防法の精神というものは、結核を早く撲滅しなければならない。そのためには開放性の結核をどんどん早く治していかなければならぬ、そうして伝染性をなくさなければいかぬのだ。そのためにはそれに必要な経費というものは国から半分出さなければ、これを個人の負担としていたのではとても病気をなくすことができない。だから公費負担をしましょう、こういうのが精神なんです。だから国民健康保険加入者であろうとなかろうと、自分の金でやっておろうとなかろうと、これは健康保険でも同じことが言えます。健康保険だって自分たちの金を出し合っておる相互扶助の機関です。だからそういうふうな健康保険があろうとなかろうと、保険に加入していようといなかろうと、とにかく国はそういう精神でもって結核予防法というものを打ち立てて、それを十大政策の一つとして何カ年計画で結核撲滅をやるのだ、こう打ち出しておる。国の方針としたならば、当然結核予防法に基く公費負担というものは、保険加入のいかんにかかわらず適用しなければならぬわけです。公費負担はやらなければならぬ。ところが現実においては健康保険の被保険者は全部オミツトだ。そして国保もそうだ。結局自費負担でどうにもならぬのだけ結核予防法で見ていこうという考え方かこの記事の中にはちらついておるわけです。そういうふうな考え方結核予防法というものを運営し、またそういうふうな考え方のワクの中で保険制度というものを運営していく限り、保険制度の赤字、財政の窮乏のガンというものは絶対になくならないと思うのです。だからやはり厚生省自体もだれに遠慮気がねすることなしに、今のような形ではどうしても保険の運営ができないのだ、国が結核患者を施策としてどんどん掘り出すのだ。掘り出して見つけてきては、医療機関の中にぶち込んで治していかなければならぬ。だから今までのような保険制度の保険料では、とてもそれだけの財源はまかない切れないんだ。それは別ワクでやらなければならぬ。別ワクで結核保険をやるのか、あるいは別ワクで政府かそれだけの財政負担をやるのか、それは別途考えてもらわなければどうにもならないんだ。保険の方ではそんなことはどうにもできっこないということを、はっきり打ち出してもらわない限り、国民保険というものはとてもできやしないと思う。そんな形のままで国民保険をやろうとされるならば、診療報酬の改訂なんて夢の夢なんです。そんな財源はどこにもないのです。それで結核医療費という肩の荷をすかしてやることが財源を生み出してくる道だと思うのです。だからそういうふうな方針で別途そういう主張をしていただいておるのか、あるいはまだ考慮中なのか、その辺のことは、どうでしょう。
  28. 小山進次郎

    小山説明員 四月二十一日の朝日新聞にどういう書き方をしておったか、私もう忘れたのでございますけれども、従来の例から見ればそう間違った伝え方はしてないと思います。もしそうであるとすれば、おそらく先生がおっしゃるような印象を与える書き方はしてなかったのではないかと思っております。それで結論を申し上げますと、実は結核対策問題については、先生がおっしゃったと同じ気持で問題を根本から取り上げていこうじゃないか。初めからこれを保険の中の問題としてぶち込んでいくと、結核対策のすなおな取り上げができなくなるおそれがあるから、これはあくまでも別建ての問題として考えていこうじゃないか。そうしてその後で両者の結びつきを考えていこうじゃないか。そういう扱いにしておるわけでありまして、省内での考え方は、今先生のおっしゃったような考え方を中心に進めていこうということになっております。
  29. 小島徹三

    小島委員長 ちょっと小山さんに聞きますが、そうすると結核対策は個個に離してしまって、それだけで研究中なんですか。それがどういうふうに財政負担になっていくとかいうようなことは今研究しておるのですか。
  30. 小山進次郎

    小山説明員 そういうふうな考え方で結核対策の方は案の調整をしようということになっております。作業の方はおそらくまだ漕手はしてないかもしれぬと思いますが、考え方はそういうことで整理していこうということになっておるわけでございます。
  31. 小島徹三

    小島委員長 その作業を急いでもらうというわけにいかぬですか。
  32. 小山進次郎

    小山説明員 ちょっと速記をとめて下さい。
  33. 小島徹三

    小島委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  34. 小島徹三

    小島委員長 速記を始めて。
  35. 岡本隆一

    岡本委員 それでは結核医療費ですが、政府管掌財政の中で結核治療費が、昭和二十八年度の結核実態調査では三三%という数字が厚生白書に出ているのです。ところが昭和二十八年という年は、結核予防法が施行された翌年なんです。まだ実質的に結核予防法が本格的に乗り出していないのです。結核の掘り出しをどんどんやっていないのです。そういう時期で結核治療費が三三%を食っているのです。そうすると、二十九年度、三十年度といよいよ本格的になって、だんだん結核患者を発見して収容し出したというふうな時代に、一体結核医療費が何ぼついているか、何%食っているかということを調査なさっていますか。あるいは概数を握っておられますか。
  36. 小山進次郎

    小山説明員 ただいま手元には持っておりませんか、調査したのがございますので、後日差し上げます。見当を申し上げますと、実は大体あのぐらいを山にして横ばいで、おそらくやや減りつつあるだろうという傾向を示しているはずでございます。
  37. 岡本隆一

    岡本委員 それでは問題をもう少し単価の問題と直接関連性のあるところへ持っていきまして、もう一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、診療報酬の問題については、いろいろな角度から考えていかなければならないと思うのですが、まず第一には、上げる必要かあるかどうかということ。必要があるとするならば、なぜ上げなければならないかという問題です。その次に、上げるのには何をねらいとするかというふうなこと。あるいはどの程度まで引き上げるのが正しいかという問題。あるいは財政的ないろいろな問題から見て、国の財政や地方財政から見てどの程度まで上げられるかというふうなこと。この第四の問題について、ことに国保を中心として、滝井君からいろいろこの間から論議が繰り返されておると思うのですが、私第三の問題で、単価引き上げをどの程度に持っていくのか妥当かというふうなことについての一つの意見を問題として出して、そうしてそれについての政府考え方なり、批判を私は聞きたいと思うのですか、単価引き上げの基準というものは、国立あるいは公立の病院、そういうところの運営に対して、一般財政からの繰り入れの必要がないように、独立採算で十分にやっていける、そこまでの程度にまず第一にしなければならぬと思うのです。それからその次には、しかも公立病院は税金——固定資産税とか、あるいは事業税とか、あるいは利益に対する税が要らないのですから、それでもって一般の民間医療機関ができないようないろいろな事業をやっていけるような程度の利潤、その程度までの単価引き上げがなければ、一般の民間医療機関の運営というものは成り立たないと思うのです。だからそういうふうな点を考えに入れて診療費の単価というものをきめてもらわなければならぬと思う。ところが現在ではそうではなくて国立病院は膨大な一般財政からの繰り入れをもらっている、しかも税金はかからない。それから設備はすべて国の経費でもって建てられて、それに対する償還とか建設資金の利払いとか、そういうふうなものは一切ないというふうな形で国立療養所や病院自体が赤字の形に置かれておって、そんなふうな単価のきめ方では、民間医療機関の設備が近代化されるということはこれは全く不可能だと思うのです。今なぜ単価引き上げをやってくれぬか、こういう声が民間の医療機関や公的医療機関の従業員の中からも出ておりますが、給与の引き上げと同時に設備の近代化ということが問題になっていると思うのです。だからそういうことの目的をうまく達成していくのには、どうしてもその程度単価引き上けがなされなければならぬと私は思うのです。保険局の力では単価問題については、そういう立場からの単価問題の見方をどういうふうにお考えでしょうか。
  38. 小山進次郎

    小山説明員 ただいま岡本先生がおっしゃいましたことは、おそらく一般論として考えた場合には、少くともきめられた単価先生がおっしゃるようなことか満たされていくと言いうことは非常に必要なことだと思っております。ただそれと単価の問題を考える場合の基準といいますかを、直接的に結びつけるということはなかなかこれはむずかしい問題がございまして、私どもが医師の待遇改善の検討をいたす場合には、おそらく一通り全部でき上ったあとで今おっしゃったような考慮もする、つまり姿をひるがえってながめるという場合には、考慮の中に入ってくる一つの因子になると思いますが、さしあたって検討する場合にはこれはなかなかむずかしい、こういうような考えを持っております。
  39. 岡本隆一

    岡本委員 それから診療費の改訂を考えていくのにどういうものさしを今用意しておられるのでありましょうか。
  40. 小山進次郎

    小山説明員 どういうものさしをきめ手にしようかということについて、今いろいろ研究しているわけでございますが、まだこれといったきめ手となるようなものさしをきめかねているというような状況でございます。
  41. 岡本隆一

    岡本委員 単価改訂の問題、診療費改訂の問題は、もうこれはここ半年や一年前から起っている問題ではないのですね。それは御承知でしょう。もう数年前の問題ですね。二八%の租税の特別措置ができたのですら単価問題がきっかけになってできたのであって、もうここ四、五年来の問題ですね。それをまだものさしは何の用意もないのだ、どんなものさしがあるのか探しているのだというふうなたよりないことでは、一国の保険財政を主管しておられる保険局として、あまりのんびり、おっとりのように私たちには受け取れるのです。私は保険局にお願いしたいのは、健康保険というものはもちろんそれは第一には被保険者でしょう。しかしながらその被保険者の治療に非常に長い間協力している保険医療機関というものは、これは健康保険の今日の普及に非常に功績があったと思うのです。それはその間、中には間々いろいろな心得違いをする人があって、そのために保険局医療機関全体を色目で見ているような気もするわけです。しかしその点は健康保険の制度、日本の医療保障が今日まで発達してきたということは、医療機関の協力というものが非常に大きかったと思うのです。だから、保険局の方はその保険制度の発達に協力してきた医療機関にもっと愛情を持ってもらわなければいかぬと思うのです。今長い間単価が据え置きにされて、昭和二十三年に十円だったものが、三十二年といえば十年ですね、十年後にわずか二五%だ。それに対して、いや、いろいろ点数が変っていますからもっと上っています、こう言われても、約五〇%くらいのものでしょう。だから、十年間に五〇%程度単価引き上げ率で、その間、材料費とか物価というものはぐんぐん上っておる。だから実質的にははるかにベース・ダウンになっている。それは医療機関の一部の人は多くの患者を集めて盛大にやって、いわゆる大量生産といいますか、非常にたくさんの患者を取り扱って栄えているかもしれません。しかしながらその陰には長い間協力してきた医療機関が非常にさびれて、ほんとうに生活にも困っているというような医療機関がたくさんあるのです。そういう医療機関の立場を全然考えないで、一部の非常にいんしんをきわめておるごく少数、選ばれた、恵まれた少数、それだけを見て医療機関はけっこうなんだ、あれでいいんだというふうな形で捨てて顧みないというふうなことでは、私は全く協力者に対する愛情に乏しいと思うのです。どういうふうなものさしであなたは考えていくつもりかというのに対して、いろいろあるかもしれぬけれども、まだ考えていないんだというふうなのんきなことでは、日本の全国の医療機関はほんとうの心からの健康保険への協力という気になれないと思うのです。だから、私が近年非常に嘆かわしいと思っていることは、何か厚生省ないしは保険局と日本の医療機関とか対立的な感情になってものを言うときにはついけんか腰にもなりそうだというふうな雰囲気が生まれてきているということなんです。こういうような雰囲気に包まれているということは、やはり保険財政を握っている保険当局の行政の失敗だと私は思うのです。だから当局において温情をもって臨んで、いたずらに今までのような鋭い対立が一そうすごく先鋭化していくのを防ぐように一つ努力していただきたいと思うのです。あるいは非常に失礼なことを言ったかもしれませんけれども、しかしそういうような努力をお願いして、私きょうはこの程度質問を終りたいと思います。
  42. 小山進次郎

    小山説明員 あるいは私の申し上げ方が足りなかったために、岡本先生に何だかこの問題について厚生省当局は熱意を持ってないといったような印象をお与えしたのかもしらぬと思いますが、繰り返し申し上げておりますように、この問題については私ども相当根本的に考えなくちゃならぬという気持ちでいろいろの角度から検討しております。またいたずらにこれをやることによって、負担がこれだけふえるとかいうようなことを言うことによって、何と申しますか、世間の空気というものをことさらこの問題について冷たくしようといったような気持ちは毛頭持っておりません。ただ先生よく御存じのように、この問題は議論の仕方によっていろいろ議論ができるような因子がありますだけに、私どもとしてもいろいろのファクターについて検討して、やはりある程度筋道の通った整理がつくまではこれは何ともまとめて申し上げられないという事情で先ほど申し上げたような言い方をいたしたわけでありますので、この点御了承下さいまして、今後ともいろいろ御指導を仰ぎたいと思います。
  43. 小島徹三

    小島委員長 滝井君。
  44. 滝井義高

    滝井委員 岡本さんからいろいろと御質問がございましたが、私は一応前回の続きで少しやらしてもらいたいのです。  前回までに、医師の待遇改善、具体的にそれが現われたものとしての単価の改訂をやった場合に、その単価の改訂というものがどの程度可能であるか、その可能性を見つける一つのバロメーターとして国民健康保険を対象に一応検討をしてみれば、大体ある程度国民保険の耐え得る限界というものが単価決定の一つの有力なバロメーターになるだろう、こういう考え方に立って、前回とその前のときと二回にわたって国民健康保険を中心に比較的突っ込んだ御質問をいたしました。この前自治庁を呼んだために、きょうの朝日新聞なんかに、自治庁の見解が出たのかどうか知りませんが、出ておるようでございます。問題は、今後いまだ実施をしていない市町村への普及、それからすでに実施している市町村の財政の再建、こういうニつの難問題を抱えて、その上にさらに給付率というものを段階的に現在の五割のものを六割、七割と引き上げていかなければならぬ、さらに今その上に単価の改訂という重荷を負わせる、これで国民健康保険が耐え得るかどうかということです。前二回の質問を通じて、一番問題点となる一般会計から国民保険の特別会計に金をつぎ込み得るかいなかという問題についてずいぶん論議をしましたか、これは原則としては一般会計から特別会計に穴埋めをするということは本筋でないというのが自治庁当局の意見でもあったし、厚生省当局の意見でもあった。それから過去の赤字を年次的に解消をする、一般会計から国民保険の特別会計につぎ込み得る限界というものは、これは直営診療所の設置とか、あるいは保健婦の設置というような住民一般の衛生を向上せしめるものに限る、こういう形になってきておる。そういうことで、とにかく一般会計から国民保険の特別会計に金をつぎ込み得る限界というものについては大体明白になって参りました。結局今後国民健康保険が、待遇改善なり給付引き上げを行なっていくためには——医師の待遇改善給付引き上げを行うという二つの目的を財政再建なり普及という二つの目的とあわせて達成をしていくためには、結局において国庫負担をふやす方向、同時に国民健康保険制度自体にまつわるもろもろの欠陥を是正する以外にない、こういう結論になってくるだろうと思います。これはきょうの朝日新聞等に発表しておる自治庁の見解を見ても大体私たちの意見と軌を同じくしておるようでございます。今岡本委員から結核の問題が出ましたが、結核の療養費の問題は、自治庁当局は再保険ということも考えておるようでございます。これはわれわれも、再保険ということはやはり考えなければならぬ一つの問題だと思います。それから二重加入の問題、これらのものを排除していくことで、幾分財政的な余裕が国民健康保険に出てくるであろうと考えられる。なお今後国民健康保険についてはもっと具体的にこれを検討していかなければならぬ、こう思うわけです。  そこで国民健康保険の問題は一応そういうところで打ち切りまして、私は速急に一つ、今の岡本委員質問に関連をして、二つの資料を文書で出してもらいたい。それは昭和二十六年以来の結核医療費を各社会保険なり生活保護別に、結核医療の実態調査を出してもらいたいということ。いま一つは、さいぜんの小山さんの御答弁によりまして、昭和三十二年度の医療費見込み額は大体二千六、七百億になるということがわかった。ところが医務当局にお願いをした、昭和三十二年度の総医療費幾らなんだということは、まだ資料が出てこない。もうおそらく作業かできておるの、だろうと思いますか、まずその医療費の伸びというものか、最近私たちはプラトーになっておる、いわゆる横ばいの状態である、こういうことを聞かされておる。総医療費のワクを破ってもよろしいという結論がこの前出たのでございますが、一体医療費の伸びはどういう状態になっておるかということ。今の小山さんの推計でも、三十二年度の推計では、社会保険関係と生活保護と結核予防法を入れて二千六、七百億というものが出てきたわけです。そこで二十九、三十、三十一、三十二と、こういう形で総医療費を文書で次会に出してもらいたい。すでに二十五印から九年までのものは、医療費体系の審議の段階で大体出てきている。そこであの二十五年からの分もあわせて今回提出する資料に載せて出していただきたい。これはできるかどうか、それを先に御答弁願いたい。
  45. 河野鎮雄

    ○河野説明員 国民医療費の推移でございますが、三十年度までの分はお出しできると思います。三十一、三十二年の推計はちょっと私どもでは出しかねると思うのでございますが、三十年度まででしたらお出しできると思います。
  46. 滝井義高

    滝井委員 そうするとちょっとおかしくなる。さいぜん岡本君にるる御説明になった一点単価一円上げたときの積算基礎というものは、明らかに昭和三十二年度の政府管掌分は本人三百九十六億六千万円、家族百八十五億、計五百八十五億三千万円——これはちょっと足し算が違うようであるけれども、そういうことを小山さんが御説明になった。三十二年度の推計は、三十一年度の伸びを抑えずして突如として出てくるわけはない。これは一つ医務局の方で、保険局がこういうように三十二年度を出されたわけですから、三十一年度を推計して出していただきたいと思います。
  47. 小山進次郎

    小山説明員 先ほど私が申し上げましたのは、社会保険その他、現存するいろいろな公費負担の制度に関連のあるものを申し上げたわけでございますが、これ以外の分についてはまだ推定とかなんかをするような材料を持っておりませんので、その意味で三十一年度、三十二年度というものを出すことが今のところできない、こう申し上げたわけであります。ただし滝井先生のように、こういう問題について非常に知識を持っておられる方は、おそらく御自分のお考えで、ある種の危険を冒せば、大体このくらいという御推計はできるわけでございまして、その意味で先ほど滝井先生が、三十二年度の総医療費およそ二千五、六百億と、こういうこういうふうに達観的におつかみになっておったのだというふうに私ども拝聴しておったわけでございます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 そうじゃなくて、あなたが今岡本さんに御説明になった総額を足すとそのくらいになる。今あなたの言った資料というのは、あなたの方の統計調査部でやられている資料なんです。あれを推計してごらんなさい、二千六、七百億になる。
  49. 小山進次郎

    小山説明員 私が先ほど申し上げましたのは三十二年度の医療費で、いろいろな制度の合計した分が二千七十八億というふうに申し上げたつもりでございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 そうですが。私は二千六百億ぐらいと思ったのだが、二千七十八億ですね。
  51. 小山進次郎

    小山説明員 そうです。
  52. 滝井義高

    滝井委員 この前あなたの御答弁だったか、保険局長の御答弁だったか、自由診療と保険診療との割合は八対二だ、こういうことですね。そうすると二千七十八億で、別に自由診療二割あるとすれば二千五百億になるのですね。これは労災その他いろいろなものが出てくるわけですから、従って二十六年以来の医療費の伸びとその中に含まれている自由診療等がわかれば、これは統計の専門家がいらっしゃるのだから三十一年度の推計が出ないはずはないと思うのです。曽田さんは去年私の質問に対して、昭和三十一年度の医療費を二千九百億だと答弁をしているのです。その後医務局は医療費体系が問題になってくるとがんとして口を緘して総医療費推計の問題を言わなくなった。そして二十九年度二千二百八十億、昭和三十年度は三千二百三十億と発表した。それで私は二十九年度と三十年度を比較して三十年度の方が五十億も少いというのはおかしいじゃないかと言ったら、これは最終的に固まった案ではないのだ、こういうことになって、もう一週間すればできる、もう一週間すればできるということで、まだ持ってこないのですね。そこでこれは持ってこられぬことを追及してもしようがないので、次会までに一つあわせて三十一年度と三十二年度の推計も出してもらいたい、こういうことなんです。どうしてそういうことを言うかというと、総医療費というものかやはり今後の単価決定の上に非常に重大な問題になってくる。というのは現実に総医療費が三十一年度は幾らあるかという推計が出てくれば——すでに三十一年度において現実にそれだけの負担国民がやっていっているのだから、従って問題は非常に処理しやすくなる。三十年度や二十九年度の統計を基礎にして論議をしていると、——もうすでに医療の終っている三十一年度というものが五里霧中では、議論が立たなくなる。そういう点で私はこれは特に医務当局にはごめんどうですが、三十一年度を持ってきてもらいたい、推計してもらいたい、こういうことなんです。できれば私はもう一回そういう問題についてこの国会の終る十八日までの間に、少しおそくなってもこの委員会でやってもらいたいと思うから、ぜひ出してもらいたいと思うのですが、それはできますか。
  53. 河野鎮雄

    ○河野説明員 社会保険政府が直接タッチしている医療費でございますと、これはその後のものもでき得るのではないかと思うのですが、自由診療とそういったものとの比例が一定であるという前提に立てば、古いものを基礎として推定できるわけでございますか、その辺、そう毎年一定しているというような前提に立って推定することが非常に困難なものでありますから、また正式にお出しいたしますということになりますと、正確なものをお出ししたいと思いますので、そういうふうな前提に立ちまして三十年までということで御了承いただきたいと思います。
  54. 滝井義高

    滝井委員 実は三十一年度の医療というものは、もう現在五月ですから終ってしまっているわけです。従って生活保護なり、労災なり、それから社会保険関係、これらのものが結核予防法も含めてわかってしまえば、あとの自由診療なんというものは水かけ論なんです。従ってこいつは三十年度と同じ推計の基礎に立ってよろしい。従って三十一年の社会保険と、今申し上げました生活保護とか、結核予防法とか、労災、こういうものを加えていただけばいい。これは政府関係しているものであるし、やがて決算もくるのですから、決算見込みで出してもらえば私は出ると思うのです。そうすると、三十一年度が出れば、すでに保険局は三十二年度の推計は出されているのですから、それを基礎にしてある程度医務局の見解を加えたものを出していただけばいい、こういうことになるんだと思うのですか、どうですか、それは出ないですか。
  55. 河野鎮雄

    ○河野説明員 保険局の方でも正確な数字は三十一年度分につきましても六月にならないと締め切りができないので、正確な数字が出ないそうでありますが、先ほど御説明申し上げた数字はおそらく予算の数字ではないかと思うのでございます。私どもの方も統計調査部でやったものを利用しているわけでございますが、国民健康調査、患者調査、そういった相当膨大な調査を集計して求めるので、非常に時間がかかるわけでございます。三十年度までですと、先ほど申し上げましたようにお出しできると思うのでございますが、三十一年度以降になりますと非常に白化がない数字になりますので、正式にお出しいたすのは差し控えさせていただきたいと思います。
  56. 滝井義高

    滝井委員 それなら三十一年度と三十二年度は未定稿という形で、責任を持たないでもよろしい、一応統計の専門家に推計してもらったところでよろしいですから出してもらいたい。それをもってわれわれはどうだ、こうだという言質にはいたしません。ただ政策を立てる上において、経済五カ年計画というものを内閣はお作りになっているわけです。その五カ年計画に見合う医療保障四カ年計画というものをお立てになっている当局が、三十一年度、年度の終るまでの統計さえもできないというのでは、日本の統計なんというものは、それでは何も役に立たぬということです。将来の推計なんというものはわれわれが論議しても何も信憑性のあるものではないということになるのです。だからそういう点は、やはり未定、稲でよろしいですから三十一、三十二を出してもらいたいと思います。
  57. 河野鎮雄

    ○河野説明員 一つ統計の方と相談をして検討させていただきたいと思います。
  58. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしてもらいたいのです。そこで次に移りますが、その二つの岡本さんの資料と合して、結核医療費の実態を調査したもの、それから総医療費の推計二十二年度まで、三十一年度、三十一年度は未定稿でよろしいから出していただきたい。  次に、単価改訂の財源としていろいろ検討してきましたか、なかなかいい財源が見つからない。そこでここでお尋ねしたいのは、現在税の二八%というものがある。社会保険収入の七二%を経費と見て、二八%を所得と見る。この二八%というものを撤廃をして、そうして社会保険を厳重な原価計算方式と申しますか、そういう形でやっていく、こういう見方をした場合に、一体現在の二八%の税というものは、単価に直せば何日くらいに相当するものなのか。巷間二八%は三円三十五銭に相当するというようなことがいわれておるわけですが、一体政府の方では何円に相当すると見ておるのか。できればこれは文書でもらいたいのですが。
  59. 小山進次郎

    小山説明員 お求め数字求めたいと思いまして、だいぶ大蔵省の方と相談をしてみたのでございますが、まだ確定的に申し上げるほどの数字は固まっておりませんが、およその見当だけを申し上げて、なお大蔵当局にも確定的な数字を固めてもらうように話し合いを続けていきたいと思っております。  現在までに大体まとまった資料を中心にして検討いたしますと、たとえば年の収入が七十万円の場合を考えてみますと、特例のない場合でございますと、税額が年間に十二万円となるのでございます。これが二八%の特例措置かありますために、八万六千五百円ということに相なっております。これはごく一般的にありそうな場合について申し上げたのでありますか、ただこれは全体を通じで先生かおっしゃったように一点単価の中にこれを溶け込まして計算するとどうなるかということは非常にいろいろな前提があるそうで、その点はもう前提そのものを実は私どもは承知せずに、きょうおよその見当だけでもお話をしたいからということで、一応ざっと大蔵当局に大急ぎで聞いてきた程度のものでございますか、それによりますと、大体思ったより少いのでありまして、二十二銭程度実際上の価値を持っておるだろうというような計算に相なっております。
  60. 滝井義高

    滝井委員 いろいろの前提があるということは、私もそれはそうだと思う。たとえば社会保険の経費を幾らに見るか。今二八%の所得率ということは七二%の経費だ、こう見ておるのです。その七二%の経費というものをどの程度低く見ていくか。たとえば七二ではなくして五五に見、あるいは五〇に見、四〇に見るとか、いろいろの前提があると思うのです。そういう点があると思いますので、今二十二銭程度であるということでございますか、それはいろいろ前提もあるでしょうし、それから今度の税法の改正が行われた三十二年度の改正率でこれは計算したものでしょうか。
  61. 小山進次郎

    小山説明員 さようでございます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 大体それで了承いたしました。もう少しできれば普遍性のある考察をしてもらって、次会までに文書で出してもらいたいと思います。
  63. 小山進次郎

    小山説明員 ただいまの御要求、私どももできるだけやるつもりでございますが、何分事は大蔵当局の問題でありまして、私どもでできることにおのずから限度がございますので、私どもの方で入手できる限りの資料で整備するという程度に御了承願いたいと思います。努めて先生が総合的に判断される場合にお役に立つようにはするつもりでおります。
  64. 滝井義高

    滝井委員 厚生当局が間接で工合か悪ければこの際小委員長の方から大蔵省の主税局に一つ計算を命じていただきたいと思います。
  65. 小島徹三

    小島委員長 考慮しておきましょう。
  66. 滝井義高

    滝井委員 小山さんにちょっとお尋ねしておきたいのですが、七人委員会の報告以来薬価引き下げの方策というものがずいぶん論議せられました。二十四国会で健康保険の改正案を政府当局がお出しになったときに、薬価対策として二億くらいの引き下げの予算をれっきとした財源として出されておったわけですが、保険局として何か具体的にそういうものをおやりになっておるのかどうか。これは簡単におやりになっておればなっておる、やっていなければやっていないということでいいです。
  67. 小山進次郎

    小山説明員 いろいろ思いつきを相談しましたが、どうも実際に思いつきをその方面の専門家に相談してみますと、それでは成り立たぬというようなことで、あまり目に見えた方策はとっておりません。
  68. 滝井義高

    滝井委員 いろいろ思いついたけれども、目に見える方策はとっていないということですが、これはいずれなお継続的に調査をさせていただきたいと思いますし、薬務当局からもう少し詳しく聞かしていただきたいと思います。  そこで健康保険単価改訂、待遇改善というものの中に事務の簡素化というものを私たちはやはりどうしても考えなければならぬと思います。どうしてそういうことを申すかというと、実はある程度の病院におきましては、一件当りの請求について十円とか十五円とか二十円の請負制でやっておるのです。一件当りの請求点数が六十点だけと概算して六百四、五十円になる中から二十円とか十五円を払うということは、それだけで一点単価一日分以上を出しておるということになるわけなのです。従って事務が簡素化されるということがきわめて重要なことになってくるのです。この事務の簡素化をされれば医者の人件費にも影響してきます。医師の診療能率にも影響してくる。人件費が削減されて能率が上るということはそれだけ収入がふえることを逆に意味するのだから、この事務の簡素化の問題はきわめて重要な問題です。この前個人的に小山さんに電話をしておきましたが、今回の健康保険改正を契機として省令、政令、療養担当規程が変ってどういう事務の簡素化を厚生省がやられたかということです。
  69. 小山進次郎

    小山説明員 事務の簡素化が非常に大切な問題であって、これが医師の待遇改善の一部をなすほどの重要性さえ持っておるという点については先生仰せの通りだと思って、私どももそのような意味合いにおいてもぜひこれを実現したいということで考えておるわけでございます。今回の省令その他の制定の際にもそういう考慮は加えたのでありますが、何分非常に差し迫った状況のもとで行わなければなりませんでしたので、見るべき事務の簡素化としては一つだけやりまして、あとは引き続いて検討して、その点についての結論が出たらすぐに行うというようなことにしておるのでございます。一つと申しますのは、例の政府管掌等の被保険者が入院いたしました場合においては、医療機関からその旨を通報してもらうことにいたしておりますが、これが実は医療機関にとってはなみなみならぬ事務上の負担になっているというような声が強く出ておりまして、私どもも検訂いたしましたところ、これを廃止したからといって直ちに事務の執行に差しつかえるほどの影響もないということがはっきりいたしましたので、これはとりやめることにいたしたのであります。それ以外のものについても俎上に上せてはおるのでございますが、一面会計上の要求がありましてなかなか簡素化し切れないという点があってまだ結論を得ておりませんが、これは私ども何とかしてこの際簡素化を行いたい。ただ同時にいろいろやっておりますうちに痛感いたしておりますことは、諸先生方一致しておっしゃっておることでありますが、今の診療報酬のようなやり方を続けていくと、この事務の簡素化にもおのずから一つの限度があって、結局この面で非常に困った状態に陥るという感じがしておりますので、何かそこいらの問題を根本的に検討すべき時期がきたのではないかという気持を持って研究しているわけでございます。
  70. 滝井義高

    滝井委員 事務の簡素化の問題は莫大な財政負担の軽減になる問題です。単に健康保険ばかりではなしに、健康保険と密接な関係のある生活保護の事務の関係もありますので、次会に保険局と社会局においでいただきまして具体的にお聞きしたいと思います。特に生活保護関係の事務は大臣の公約もありますが、ますます複雑化をたどろうといたしております。大臣が言明しても事務当局がそれを実行しないというようなことなら政治の威令は少しも行われていないということになるのです。健康保険も事務の簡素化をするというのがちっとも行われない。今小山さんから御説明のあった通り、入院した場合医療機関から通報することをやめるという程度では、私たちは大臣の公約としては受け取ることができません。いずれこれは大臣にも本委員会に来ていただいて事務の簡素化問題は論議をしてみたいと思います。  次に実はこの前いろいろ厚生当局から資料を出していただきまして、その出していただいた資料によって単価らしきものを検討してみたわけです。その検討は自民党の案と社会党の案というものではなく、全く厚生省から出していただいた資料を基礎にして、いわば何と申しますか、たたき台的な単価らしいものを出してみたわけです。これは印刷物ができてきておりますので、配付させていただきたい。  先般来当委員会で医務局なり保険局の方から出していただきました資料を基礎にして、一応単価らしきものを求めてみたわけなんです。  まず一番上の欄に書いております満四十九才医療職給与月額、これは超過勤務を含むわけです。今回政府の方の国家公務員の給与法を改訂することによって、医療職というものができたわけです。その医療職の四十九才の人の給与月額、超過勤務を含んだものをそこに持ってきた。四十九才というのはどうして持ってきたかというと、現在全国の開業医の平均年令が満四十九才程度であるということが、先般皆さん方に医務局からお配りになった資料からそういうことが出てきておるわけです。そこで四十九才の医療職の給与月額を出してきた。これによりますと、医員が五万六千五十一円、医長が五万八千二百三十二円、院長が六万五千四百十九円、これを三で割りますと、平均が五万九千九百円になるわけです。もちろん三つのグループを三で割るということは、統計上の問題からいえば、大体四十九才の医員何人をとって五万六千五十一円になったかという内容の分析も必要になってきますが、三つのグループの給与を足して三で割るということは、大して大きな誤差はないだろう、こういう考え方から三で割って五万九千九百円というものが出たわけです。  それから満四十九才の人がやめた場合の恩給年額は、やはり三つのグループ、医員が十八万五百七十六円、医長が十八万七千四百十六円、院長が二十万九千三百四円、それらのものを足して同じく三で割りますと、十九万二千四百三十二円、こうなるわけです。  それから満四十九才の人の退職金を見てみますと、医員が六十万五千八百八十円、医長が六十三万三百六十円、院長が七十万三千八百円、これを三で割ると六十四万六千六百八十円、こうなる。  そこで一番上に出て参りました超過勤務を含む給与月額が五万九千九百円ですから、これを報酬年額に直すには、報酬月額五万九千九百円を十二倍すればいい。それが七十一万八千八百円になる。これを一応aとします。  それから次に問題になるのは恩給の関係でございますが、恩給は若年停止がございます。従って、五十六才以上になりますと、大体全額をもらえるわけです。そこで第二段に書きました四十九才の恩給の平均は十九万二千四百三十二円でございましたので、五十六才以上になりますと、十九万二千四百三十二円に五十六才以上生きただけのものをかければ、そこにその人が死ぬまでにもらう恩給の額が出てくるわけです。ここの数字にあります十九万二千四百三十二円かける二十八マイナス六というのは、二十八年というのは四十九才の人の平均余命率が二十八年になるわけです。二十八年から六年を引くというのは、次の欄からの計算に出てくるのですが、恩給を停止される年数が六年です。従って六年だけを引きますと二十二が出ます。十九万二千四百三十二円かける二十二は四百二十三万三千五百四円になるわけです。それから五十才から五十五才までには、恩給が三割停止されるわけです。七割もらえます。従って十九万二千四百三十二円かけるの十分の七に、三割停止される期間は五年ですから、五をかけますと六十七万三千五百十二円になるわけです。それから平均年令が四十九才ですから、四十九才で恩給をもらうことになれば、五十才までの一年間は、二分の一しかもらえません。若年停止が二分の一あるわけです。従って十九万二千四百三十二円かけるの十分の五かけるの一年で、これは九万六千二百十六円です。このようにそれぞれ出した四百二十三万三千五百四円、六十七万三千五百十二円、九万六千二百十六円を足したもの、これが五百万三千二百三十二円、これをbとします。そうすると退職金は、三段目に書いておきました満四十九才の退職金の平均が六十四万六千六百八十円、これをそのままcといたします。  それから次に問題になるのは、純粋の個人開業医の医業支出です。純粋の医業支出というのは、これはこの前昭和二十七年三月医業経済調査というのを、個人診療所における直接医業支出として、医療費体系として厚生省が出した資料がありますが、直接の医療月額支出です。これは衛生材料費だけです。衛生材料というのは投薬とか、注射薬とか、消毒用の薬品とか、レントゲンのフイルムとか、包帯材料とか、その他の衛生材料、こういうものを純粋の医業支出として二万一千九百三十八円、昭和二十七年三月調査、これが月額ですから一年分は十二倍をします。そうするとさらにこれは昭和二十七年でございますから、当然現在の物価指数でこれを一応スライドさせてみるわけです。ところが衛生材料だけの物価指数の上昇状態というものが明白なものが把握できません。そこで総理府の消費者物価指数を調べてみたわけです。これは都市における総合消費者物価指数です。それが昭和二十六年を一〇〇とすると、二十七年は一〇五になります。一番新しい昭和三十一年をとりますと、昭和三十一年は一一八・四になるわけです。従って月額の純医療支出二万一千九百三十八円かけるの十二カ月分ですから十二かけるの消費者物価指数で、それをそのまま一応補正をしてみますと、一・一三四をかければいい。そうすると、そこに直接の医療支出年額が出るわけです。これが二十九万八千五百三十二年です。これを一応dといたします。  次に出ておりまするのは個人開業医の診療所年間報酬点数です。これは昭和三十一年の一月から十二月までの基金の点数を基礎にして出したものでございます。どうして出したかと申しますと、先般保険局から出していただきました資料は、実は一年間分のものが出ていないのです。昭和三十一年の五月分だけが病院なり診療所の集計が出ていて、一年分の統計がありません。従ってその三十一年五月を基礎にして推計をしていきますと、個人開業医の診療所年間報酬点数が三十三億九千二百四十一万六千七百三十三・九点になるわけです。昭和三十一年度のそれらの診療所の請求窓口の年間を通じての平均を出したいと思いましたが、それがありません。従ってこれはやはり先般厚生省の保険局からわれわれの手元に出してくれました三十一年五月の診療所の請求窓口数を出してみますと、四万一千三百六十一件になるわけです。従って今言いました三十三億九千二百四十一万六千七百三十三・九点を請求窓口数の四万一千三百六十一件で割ると、一施設当りの報酬点数年額の八万二千二十点というものが出るわけです。これをeとします。そうしますと、まず給与の年間報酬であるaと、かぎカッコして、さらに小さいカッコをして、恩給の若年停止を差し引いた総額bプラスの退職年金cを足して小カッコを閉じて、それを二十八年の余命率がありますので、二十八で割ります。そしてかぎカッコを閉じざらに直接医療支出の年額であるdを足しますと、百二十一万九千百士五円といういわゆる全国の診療所の個人開業医の一年間の——適正かどうかはなお検討の余地がありますが、一年間の給料と、それから超過勤務と、恩給なり退職手当の前払いをしたものと純医療支出とを加えた総和が出るわけです。それを一施設当りの診療報酬年間点数で割ってみますと、十四円八十六銭という、まあまあ何と申しますか、かつて二十六年の今井案に幾分類似した点数らしきものが出てくるわけです。  そこで今申し述べましたようなこれらの試算において抜けておる点はどういう点かというと、そこに注に書いてありますような点が抜けておる。分母の側すなわちe、八万二千二十点の側においては、自由診療なり国民健康保険の診療なり労災保険等の収入があるわけですが、それらの信頼すべき統計が見当りません。従ってそれらのものは一応算定に入れてないわけです。純粋の健康保険の基金から支払われる点数だけを基礎としてやっておるわけです。巷間、社会保険診療に対する自由診療の比は八対二であると言われているのですが、信憑性ある具体的な計数の把握というものがきわめて困難でありますので、そういうものは一応考えなくて、純粋の形で社会保険だけでやって入る方がいいのじゃないか、こういう形でこれはどけておる。  それから分子の側すなわちのb側では、純粋の医業支出というものは最近の統計がございません。昭和二十七年三月の医業経済調査を用いる以外に方法がないわけです。これを消費者物価指数で一応補正をしました。しかし現在の稼動点数というものは昭和二十七年三月に比して、医療行為の頻度に大きな変化があります。従って二十七年三月調査の二万一千九百三十八円をそのまま年間に引き直して、そうして物価指数をかけただけでは、実態というものは必ずしも現在の実態に合っていない。医療行為の頻度というものが大きく変化しているという点が、分子の側では当然付加されなければならぬ問題となってくるわけです。それから医療経営における看護婦等の人件費、光熱、水道費、資本利子等を考慮する必要がございます。これらのものは実は考慮しておりません。実は二十七年の実態調査におきましても、厚生省が調べたところによって見ますと、人件費の中で、二十七年三月調査では看護婦が五千二百五十八円くらいに見積っております。それから水道、電力、ガス、薪炭というようなものは、合計したものが三千百三十七円、こういうふうに今なっておる。資本利子等の見積りというのが、これは京都あたりの熱心な人の調査を見ますと、資本利子はやはり年間一分ぐらいと見ても、二万一、二千円程度に見ておるのですが、しかしこういうものはなかなか議論の多いところで、ここでなお今後やるとすれば具体的に討議をしていかなければならぬだろう。それから企業経営の危険率というものを当然考慮しなければならぬ。算定をやるのに一応四十九才の医療職というサラリーマンを基礎にしてやったわけです。そのサラリーマンが保険医療機関という機関を今度は経営することになります。医師は一応今度の健康保険の改正においては保険医療機関において診療に従事をします。しかし一面その医療機関の経営者でもあり得るわけなんで危険率というものを考慮する必要がある。その次に考慮しなければならぬ点は、恩給退職金等を前払いする形をとっておる、その利子を差し引く、この利子はきわめてわずかなものだろう、こういうことです。  そこで一応結論は、単価の結論じゃなくて、現在までに五回ばかりの委員会を開いて厚生省に質疑応答をして、そして厚生省からいろいろ資料を出したものを基礎にして、かつての今井案を参考としながら一応計算した、こういう形でできるだけ大筋だけを出してみると十円八十六残になる、こういう形で出るとすると一応単価の目安は十五円を下らざる額とすることが妥当ではないかという感じがするのです。この際点数道価方式をとっていくと、今度は単価をたとえば十五円なら十五円とやってみると、点数が不合理だということで点数の問題が論議に上り、また単価にはね返ってくるというように、点数単価の堂々めぐりをやっておると日奉れてなお道遠しという観になる。秋までに単価の結論を出しますというのが冬になり、冬来たりなば春遠からじで春になり夏になるということで堂々めぐりをして結論が出ない。そこでこの際急速に大ざっぱな検討をやって一つのたたき台を作ったならば、そのたたき台を基礎にして衆知を結集して何か結論を決河の勢いで作る以外にはないだろう、こういう意味であります。従ってむしろこの際そういうものができたならば、点数単価方式を廃止して、金額表示方式、たとえば初診料何日、虫様突起の手術料何円というような全額表示方式をとることも、この際むしろ問題の紛糾を避ける意味においていいんじゃないか。そういう一定の金額の表示が出るならば、その表示をされた金額に対して総合的な施策をもってすみやかにその単価改訂という命題によって与えられておる待遇改善の問題を解決すべきだ。それは具体的にいえば、税負担をどういう形で軽減していくか、事務の簡素化をどういう工合にやるか、薬品の廉価提供をどういうように具現をしていくかということで総合的な施策で単価問題を解決していくのがいいのじゃないかこういうことで今まで厚生省の出してもらった資料や何かでやってみた、こういうことなんでございます。
  71. 小島徹三

    小島委員長 先ほど申しました通り、この考え方一つの試案でございまして、今後小委員会としましてはこれに基きその他のいろいろなデータに基いて議論した結果小委員会としての一つの案を作りたい、かように思いますし、これは決して確定的なものではありませんので、外に対してこれを発表せられることについては注意をしてもらいたいと思います。  それではこの際お諮りいたします。当小委員会における調査の経過については時期を見て委員会に報告をいたしたいと存じますか、その時期、発表の方法等につきましては小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  72. 滝井義高

    滝井委員 それでいいと思いますが、実は国会も十八日で終ることでございますので、やはりある程度この委員会の結論といったらおかしいのですが、何かそういう目安をつけて、私たちはその出た目安に向って秋までに結論を出す必要があると思うのです。厚生省を前に置いて失礼ですけれども、こういう大問題はもはや厚生省だけではなかなか結論を出し得ない段階だ。これは今までの五回の質疑応答を通じて、あるいは今日の岡本君の質疑を通じて天体明白になっておる。それで自治庁等の答弁を聞いてみても自信がありません。従って国会は国会として独自のこの委員会を作るときに要請をしておったように方向を出す必要がある。だからもう一回今週中の適当な時期を見て開いていただきたい。
  73. 小島徹三

    小島委員長 滝井君の御意思はよくわかりました。その点もすべて小委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 小島徹三

    小島委員長 それではそのように決定いたします。  次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれで散会いたします。     午後五時六分散会