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1957-05-07 第26回国会 衆議院 社会労働委員会診療報酬及び薬価に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月七日(火曜日)     午後二時三十三分開議  出席小委員    小委員長代理 亀山 孝一君       小島 徹三君    野澤 清人君       八田 貞義君    岡本 隆一君       滝井 義高君  小委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政部         財政課長)   柴田  護君         厚生事務官         (医務局次長) 河野 鎮雄君         厚生事務官         (薬務局企業課         長)      畠中 順一君         厚生事務官         (保険局次長) 小山進次郎君         厚生事務官         (保険局国民健         康保険課長)  伊部 英男君     ————————————— 四月二十五日  岡本隆一君同月二十四日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。 五月七日  田中正巳君三月二十六日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。 同日  亘四郎君三月二十七日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  診療報酬及び薬価に関する件     —————————————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長代理 これより会議を開きます。  診療報酬及び薬価に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。滝井君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 今までこの委員会で出た結論的なところを先に御説明して、それから質問に入りたいと思います。  健康保険が通るときに医師待遇改善をやろうということを与党の皆さん方附帯決議をつけられた。それから表現はどうかと思いますが、突如として厚生大臣医師待遇改善をやるということになった。それでは医師待遇改善はいつまでにその具体的な結論を出すのかというと、秋までに結論を出すということが明白になってきた。しからば秋までに結論を出すということになると、医師待遇改善をやるのだから総医療費ワクを当然破らなければ医師待遇改善はなかなかできない。総医療費ワクを破るかといえば破る、こういうことになった。総医療費ワクを破るということ、秋までに結論の出る医師待遇改善で一番問題になるのは国民保険医師待遇改善との関係です。国民保険政府方針としては少くとも三十五年まで四カ年計画でやるということです。池田大蔵大臣考え方は、必ずしも四カ年周で三十五年までにやるということの言明大蔵大臣としてはしないようでございます。しかし一応所管大臣厚生大臣が四カ年間でやろうとおっしゃっておるので、まあまあ大蔵大臣厚生大臣の間の意見の一致を見ない点がありますが、一応われわれとしては厚生当局言明を信頼して昭和三十五年を目途として実現の方途を考えなければいかぬだろう。国民のうち医療保障組織の中に入っていない者は約三千万人、その三千万人の残りの国民医療保障組織に入れる一番重要なにない手は国民健康保険である、こういうことになっておるわけです。今後医師待遇改善をやり、同時に皆保険を未実施の市町村に推進していく段階において、待遇改善をやること、端的な、別な言葉でいえば単価を上げるということでも表現できると思いますが、単価を上げるということになった場合、現在の国民健康保険単価の改訂にたえ得るかどうかということを私たちとしてはまず打診してみる必要があるということを議論してきたわけです。この前の議論の展開は、国民健康保険支出面はとにかくとして——支出というものは直営診療所をやったりいろいろありますが、主たるものは何といっても療養給付費用だ。支出はとにかくとして、まず歳入の面を見ていくと、収入は国の医療給付費に対する二割の国庫補助がある。この二割の負担がふえる情勢にあるのか、減る情勢にあるのかというこの二〇%の国の負担の問題については、またいずれ別の立場から論議をする必要があるだろう。そこでその次に問題になってくるのは被保険者のいわゆる負担能力、ます当面負担能力として問題になるのは保険税あるいは保険料です。これをこの前論議した結果、保険税の中には応能原則応益原則という二つのものがある。応能原則を五〇%、応益原則を五〇%、こういうような工合で現在保険税というものが取られておる。応能原則はそれぞれの所得なり資産に応じて五〇%かけておるのだから、これは問題ないだろう。ところが国民健庫保険という制度の恩典を受ける一切の住民に向ってかかっていく人頭割というか世帯割、そういうものば貧富の差なくかかっていく。その場合に貧しい階層に応益原則五割を持っていっても払えぬだろう。そうするとここに応益原則の五割のうちの幾分かを国が見るという思想が出てくる。これは高田保険局長も、ここらあたりに国が幾分補助金というか、調整交付金というか、そういうものを出すことを自分は個人的には考えておる。個人的に考えておるというその意見は、同時にまたある程度厚生当局としては合理性があるということをお考えになっておることだろう、こう思うわけです。今そこまでこの問題の議論を進めてきたわけです。  そこで今度問題になるのは、国民保険になってくれば、一応現在の制度を基本にして考えていくならば、運営の主体が市町村だということ、そうすると市町村一般会計から国民健康保険特別会計昭和三十年辰においても三十七億程度のものを繰り入れておるということです。まず自治庁お尋ねをいたしたいのは、これは三十年度に繰り入れられておるのですから、三十一年度においても三十二年度においても、おそらく繰り入れられるであろうということが推定せられるわけです。そうすると今年度の一兆一千四百六十一億一千五百万円の地方財政計画の中にそういうものを見られておるかどうか、これをお尋ねします。
  4. 柴田護

    柴田説明員 国民健康保険会計というのは、ずっと特別会計それ自体で独立採算がとれるのだという建前で従来行っておるわけでございます。従いまして表面上は本年度も地方財政計画上は一般会計からの繰出金というものは見ていないということがいえるのでありますが、ただ現在の地方財政計画の基礎は昭和二十九年度の決算分析というものに立っております。その決算分析いたします場合に、昭和二十九年度の消費的経費中その他経費、つまり国津補助負担金を伴いません経費でありますが、この経費分析は一応過去の昭和二十九年度の決算を荒く分析をしておるわけでございます。従ってその中に一般会計からの繰入金が全然含まれていないかといえば、若干疑問はあります。ありますが筋といたしましては大体含まれていないという建前になっております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この地方財政計画の歳出の中の国庫補助負担金を伴わないもの千五百四十五億四千八百万円ですか、この中に幾分入っておるかもしれぬが大体筋として入っていない、こういうことなんですね。そうすると国庫補助負担金を伴う千九十一億八千七百万円のうちには、直営診療所及び保健婦に要する経費十四億四百万円が今までは入ってなかったのですね。昭和三十一年までの地方財政計画の中にはこういうものがなかったと私は記憶している。今年は国民保険がやかましくなったかなにか知らないが、自治庁直営診療所保健婦については入れているのです。これはどうして入れることになったのですか。何かそこにあなたの方に入れなければならぬというような大きな衝撃がどこからか与えられたから入れられたのかどうか……
  6. 柴田護

    柴田説明員 お尋ねでございますが、その点は本来特別会計でやる国民健康保険事業というものをひっくるめて考えておったわけでございます。従って従来はそういうものも一切がっさい特別会計で処理すべきものであるというふうに考えて、はずしておったわけでございます。ところが国民保険の声に刺激されたといえば刺激されたのでありましょうし、合理化が推進されたといえば合理化が推進されたというようにもいえるのでありますが、私たちは後者の立場をとっているのでございますが、国民健康保険会計が果して独立採算が可能かどうかという問題をやはり検討してみる必要がある。そこで厚生省とも何べんも相談をいたしまして、かつ若干の市町村につきまして実際抜き取り調査をやってみましたその結果、保健婦直営診療所というものは便宜国民健康保険事業と一緒になってやっておりますけれども、目的自身としては必ずしも密接不可分のものじゃないじゃないか。直営診療所と申しましても保険給付だけをやっておるわけじゃありませんで、全然ほかの保険に入っていない人もそこへ行って見てもらうということもあるわけでございますし、さらに保健婦に至りましては、これは市町村保健一般のことをやっておりまして、建前といたしましては保険事業が中心でございましょうけれども、何も保険事業だけに限ったことはない、そこでそういうものは市町村衛生業務として保健行政の一環として一般行政範囲内でものを考えるべきじゃないだろうか。そこでそれを切り離して国民健康保険事業療養給付だけを考えてみますと、これは独立採算というものが可能であります。まあ事務費合理化なり、あるいは国庫負担金早期支出という問題がございますけれども、そういう問題さえ片づいてきますならば、給付会計だけで独立採算は可能であるという結論に一応達したのでございます。従いまして給付会計だけにつきましては従来の態度は変えておりません。ただ保健婦とか直営診療所経費につきましては財政計画上計上すべきであるという結論に達しましたので、今年度からそういう形をとるようにしたのであります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 今の考えですが、療養給付費と直診なり保健婦の金を地方財政計画に組んで、療養給付は一応別個だ、療養給付費というのは特別会計が本来にやらなければならぬ、ところが病院施設保健婦というものはこれは一般公衆衛生あるいは保健指導というものをやるので、保健婦や直診の施設費用というものは療養給付費密接不可分ではない、私はこの点自治庁のお考え方に幾分疑問があるのです。実はきょうわざわざ自治庁に来てもらったのはそういう点も少し聞きたいし、先日これは保険局長の御答弁だったと思うのですが、保険局長も大体今の御答弁を裏づけるような御答弁をされた。どういう答弁をされたかというと、一般会計から国民保険特別会計に繰り入れるその繰り入れの費目を限定すべきである、直診を建てるとか、直診の運営費用であるとか、保険施設的なものあるいは事務費の実額、こういうようなものに限定をして出すべきだろうという発言があったのです。今の発言と非常にうらはらの関係で、裏づけるような発言柴田さんはやられたのですが、私は国民健康保険をやるということと直診と保健婦というのはそれは密接不可分でないのじゃないか、密接不可分だという考え方なのですが、国民健康保険直営診療所という形をとっておるというところに密接不可分さを現わしておるなら、もしそれが密接不可分でなくて一般市町村衛生を直診がやるというならば町立病院市立病院にしたらいい。ところが町立病院市立病院も最近は全部切りかえて直診にしつつある。たとえば私なんかの市は市立病院をわざわざ直営診療所のようにしたのです。この点は医務局考え方はどういう考え方なのか。これは所管の問題にも関係してくるのです。直営診療所になればその所管の重点は保険局にかかってくるのです。ところがこれが市立病院ならばあなたの医務局所管になるのです。こういう関係というものは一体厚生省内部はどういう工合に調整してやっておるかというのです。
  8. 小山進次郎

    小山説明員 医務局の方にお答えをお求めでございますが、その前に一言補足させていただきたいと思いますので申し上げたいと思います。先ほど自治庁柴田課長からお話があった点、及び前回保険局長からお答え申し上げた点は筋として申し上げたわけでありまして、ただ説明言葉として保健婦とかあるいは直営診療所の設置ということが国民健康保険と必ずしも密接不可分関係に立つものでないというような言い方をしておったとすれば、若干言葉が足りなかったわけでございまして、国民健康保険という点から見ますならば、まさしくある意味において密接不可分とでもいうべき関係を持っているのでございます。ただしかしこういった施設利益の及ぶ範囲が必ずしも国民健康保険の被保険者に限られない、広く市町村民全体に性質上及ぶべきものだ、またそうする方がいろいろ行政の能率を高めていく上においても工合がいいというような事情からいたしまして、負担の責任をどちらに持たせるか、一般会計に持たせるかあるいは特別会計に持たせるかという負担の区分を考える場合に、整理上これは一般会計持ちという筋合いであろう、こういうふうな気持を言ったわけでございます。前段の点については決して滝井先生がおっしゃっている考えを否定するという考え方に立っているわけではないのでございます。
  9. 河野鎮雄

    河野説明員 医療機関の本来のあり方からいいますと、これは一般にすべての医療機関一般に開放される、すべての国民対象にするという形のものが望ましいと思います。特殊の対象に限るというようなあり方に立つのは、避くべきではないかというような考え方をしておったわけであります。今の直診にいたしましても、組合でやる場合は別としまして、市町村が直接医療をするということであれば、これはやはりわれわれの立場からいっても市町村経営ということで、ただ会計所属がどちらにいくか、一般会計にいくのであるかあるいは特別会計にいって負担ずるかという技術的な問題、あるいは便宜的な問題ではないかと思うので、それはどちらでなければならないということを、強く一方的に結論を出さなければならぬというふうには考えなくてもいいと思います。ただ筋といたしましては、やはり一般医療機関というものがすべてのその地域における国民対象にするという医療機関であるべきだというふうに考えておる次第であります。
  10. 滝井義高

    滝井委員 どうもそういう答弁では、物事の整理がつかないのです。もし単なる技術上の問題あるいは便宜上の問題であるとするならば、何もむずかしい直営診療所というようなものをつけて市立病院の名前を変えていってごらんなさいよ。市立病院と書いてある上に、国民健康保険直覚診療所何々市立病院と書く。墨で書くだけでも損ですよ。看板代も損ですよ。しかも単なる技術上の問題なら特別会計へ入れる必要はない、一般会計でたくさんだ。というばかりではない、日本病院行政というものを非常に複雑にしている。それはあなた方も御存じのように、とにかく日本病院の数も多いが種類も実に多い。それは国立があり、国立のほかに国に準ずるものとして今の労働福祉事業団なり労災病院厚生年金病院、これもやっぱり国に準ずるものと同じです。それから日赤のようなものがある。それから恩賜財団済生会というのがある。それから農村の厚生連があるでしょう。ここはいわゆる国民健康保険組合と同じことをやっているのです。それから社会福祉事業関係病院があります。それから県立病院があります。市町村立病院市町村直営診療所があるでしょう。それから学校法人病院があるでしょう。それから宗教法人がある。事業主病院がありますよ。それから生活協同組合みたいなものの病院や、医育機関病院がありますよ。こう見ると実に複雑です。こういう点、単なる技術上の問題というようなことであるならば、国民保険というものは直覚診療所は全都市立なり、町立なり、村立でやらせるべきだ。そうして一般会計から、わざわざ財政計画に十四億四百万円というものをことし組んで合理化するというならば、わざわざこれは特別会計へ持っていく必要はない。これは一般会計合理化した方が堂々とこれに出れるのですね。こういう点は自治庁、どういうお考えなのですか。ことし自治庁行政合理化のためにやるというならば、直営診療所をやる必要はない、全部市町村補助金を出して市町村でやらせたらいい。これは同じですよ。そうしますと直営診療所など、何か国民健康保険だけに限られた人しか行けないような感じがするのですね。あなたの今のお説のようにこれは不可分ではない。療養給付保健婦と、それから病院の役割というものは、全町民なり市民なり村民に普遍的に働き得るのだ、そういうことであるならば、わざわざ特定の限られた市民なり、町民なり、村民対象とする国民健康保険が全市民的な、全町民的な、全住民的な保健婦事業病院事業というもりをやらなくても、市町村立にしたらいい。その方が合理的だと思う。大衆わかりがする。ところが何かこれはおれたち病院だぞというものを作っておいて、そうしてその運営というものは経費が足らぬので、その金は一般会計から繰り入れる金でやることが合理的だ、こうおっしゃった。あなたの言うのは結論的にそういうことだ。その点、自治庁はことしの財政計画でわざわざ十四億四百万円あげてくれている。そういう地方財政計画に堂々とあげたからには、私はそういう形の方が合理的ではないかと思うのです。一般会計でやらせる、そうしてこれならばあなたの目も届きやすいし、いいのではないかという感じがするのですが、その点自治庁の見解はどうですか。
  11. 柴田護

    柴田説明員 私は医療行政専門家ではございませんので、あまり詳しいことは存じませんが、自治庁がそういう措置をとりました基本的な考え方は、発生史的に言いますと、直営診療所というものはあるいは国民健康保険事業と不可分であったかもしれません。私個人の考え方では、あるいはむしろ国民健康保険事業というものの普及一つ手段として、直営診療所というものが大きな働きをしてきたのではないかという感じを持っておりますが、いずれにいたしましても、今日の直営診療所というものは被保険者だけではございませんで、ほかの者もそこで医療を受けるというふうな形になっておりますし、お話のように病院的な機能を果しているわけでございます。病院の問題は、現在の財政計画では必ずしも明確になっておりませんので、財政計画の中にぶち込むみたいな格好になっております。そうなりますと直営診療所の現在の実態に立って申しますと、直営診療所だけを切り離して、これを国民健康保険会計の中で始末をするという建前をとるよりほかは、むしろ一般病院と同じ扱いにした方がいいではないかということからこれを分けて財政計画にあげたわけでありまして、私たちといたしましては、むしろ従来の財政計画の計算の仕方というものが間違っておったのではないかというふうに感じておるわけでありまして、今後もそういう方針でいきたいと思っております。
  12. 滝井義高

    滝井委員 私は自治庁の今の答弁の方が筋がはっきりしてきたと思う。そうしますとこれは問題が自治庁から厚生省内部の問題に移るのですが、医務局次長さんの答弁はどうも保険局に引きずられたような、遠慮したような御答弁でありましたが、やはりこれはどうせわれわれは医療法を改正しなければならぬ、今のような複雑怪奇な医療法ではしようがない、しかもこの間偶然発見したように、われわれは公的医療機関というのは国のする国立療養所なんかも公的医療機関であると思っておったが、公的医療機関ではなかった。県と市町村厚生大臣の指定するものが公的医療機関であって、労災病院なんかは公的医療機関ではない、第三の範疇に属するものであって、しかもそれらのものの建設なるものは、何ら医療審議会にかけぬという実態がわかったのです。そうしますと、そういうことは許されないでしょう。今後皆保険をやり、病院配置計画考えるしにおいて許されない、とすればこれは直営診療所も同じです。そういう形で医務局所管外でどんどん勝手に作られていくということになったら、病院配置計画というものはむちゃくちゃです。そうなれば、今柴田さんが言われたように、普及手段としてやっておったという面が濃厚だと私は思う。無医村ならばこれはやむを得ない、あるいは無医部落ならばやむを得ないと思うのです。そういう形で直営診療所を作らなければならぬ。そうでなくて、れっきとした市町村があって、しかも国民健康保険を今後政府が推進しようとするならば、今までの考えでなく、村立をやらすべきだと思う。そうして全市氏的なものにしなければならぬ。ということは、今回の健康保険の改正で明白な保険医療機関になるのです。直覚診療所は単にそこだけの被保険者、一部落、一町市の被保険者だけを対象とするものではない。広くそこの住民に開放するものであるとするならば保険医療機関です。そうすると保険医療機関範疇に入るとすれば、これはある程度病院行政という見地から握っておかないと、保険局行政というものは医務局行政になってしまうのです。そういう点をやはりこの際明白にして——直営診療所は重複しない限りはどしどし作ってもよろしいのです。しかしそれは明日に、病院行政を今後一元化する上においても、やはりあなたの方で直営診療所というものは普通の村立病院として握る、こういう形をとらなければこれは処置なしです。村立があり、町立があり、そうしてへまをしているとおそらく直営診療所町立と二つできるということになりかねない。町村合併なんかが進んでくると、一つの町にまん中には町立があり、周辺には直営診療所がある。そして有機的な連絡というものは全くとられていないということになったら醜態この上もないでしょう。そういう点でやはり今地方行政当局が言われたように、地方財政計画にこういうものが新しく乗せられてくるとすれば、やはり医務局としては十分考えなければならぬと思うが、その点はどうですか。
  13. 河野鎮雄

    河野説明員 実は直営診療所も今お話に出ました公的医療機関として考えているわけです。ただ一般会計所属か、特別会計所属かという点が違うわけでございますが、公的医療機関という面では同じ扱いをしておるわけです。直営診療所保険局計画するに当っては、医務局とも、あるいは末端においては各府県の衛生担当部局保険担当部局相談をしてやるという建前をとっております。
  14. 滝井義高

    滝井委員 あなたのさいぜんの御説明では技術上、便宜上の問題だと言うけれども、技術上、便宜上の問題ではない。医療行政の根本の問題ですよ。病院保険局所管の中にあって、あなた方はそこの直営診療所のことはタッチできない。それを大きく拡大していけば、たとえば国鉄の病院とか労災病院というものは、あなた方全然内容は知らない。しかも社会局長なんというものは自分所管赤十字病院実態も知らない。そうすれば日本病院行政というものは何をしているかと言わざるを得ない。そういう点で、やはりあなた方が病院行政を一貫して握るためには、わざわざ国の補助金を出す、それが普通の市町村一般会計からやらなければこれはできないという実態です。そうであるとするならば、これは市町村立にしておってもいいじゃないか、何のために直営診療所にしなければならぬか。直覚診療所にしたことによって、村立市立より大きな利益がありとするならば、それを教えてもらいたい。補助金をとるためにというならば、市町村立補助金を出すようにしたらそれでいいのであって、何かそこに、町立病院より直営診療所の方がいいといった点がありますか。
  15. 河野鎮雄

    河野説明員 私先ほど申し上げたのは、あるいは言葉が足りなかったかもしれないのですが、直営診療所をいいということを申し上げたわけではないので、その地域における一般国民対象にした病院であるということを筋を通せば、あるいは筋の通りにいえば、一般会計機関の方があるいは筋が通っているかもしれない。ただそれが一般会計機関でなければ絶対にいけないのだというところまで言わぬでもいいじゃないだろうかというような意味でお答えしたつもりであります。
  16. 滝井義高

    滝井委員 だから、これは現在の国民健康保険財政の状態から見て、病院を建てる力はない。そうすると一般会計のお世話にならなければならぬことは、火を見るよりも明らかです。どこもみな一般会計のお世話にならなければならぬ。そこで自治庁としては、ある程度の地方財政なり地方行政合理化するために、これは一般会計からまかなう方が合理的だという認定のもとに、今年国庫補助負担金を伴うもの千九十一億八千七百万円という地方財政計画の中にわざわざ十四億四百万円というものを一般会計の方に計上してくれているのです。従ってそういう観点から考えるならば、これは町立にして、どこが悪いかというのです。何か町立にしたために非常に国民保険の伸展の上にじゃまになる、欠点になるというならそれを教えて下さい。
  17. 小山進次郎

    小山説明員 これを市町村立にすることが何か悪いかどうかという点でございますが、これは私ども考え方として、これを市町村立にして悪いということはないと思っております。これは市町村立にしてもよろしいし、また直営診療所という形にしてもよろしいというふうに考えているわけでございまして、先ほど来申し上げましたように、国民健康保険の育成とか、あるいは健全な維持をはかっていく点から考えると、直営診療所の方が望ましいということを考えているだけでございます。しかしながらある程度時期がたってその医療機関の基礎もすわった。またいろいろな利用関係も確立していくというようなことになるならば、より広い範囲における公平な利用を確保する意味合いにおいて、これをしかるべき時期においてしかるべき順序を経て市町村立に移るということ、これも一つのやり方でございまして、そこまで行って市町村立に移すということは、それはそれでけっこうだ、こういう考え方でございます。  それからお尋ねではございませんが、それではこれだけをまず全部市町村立にしたらいいじゃないかという点でございますが、これは私理屈としては、確かにそういう理屈が一つ有力にあり得ると思っております。そういう考え方でものを整理するという仕方もあると考えておりますが、ただ実際上のものの運びを考えてみました場合においては、そういった考え方だけでそのことを処してしまうということには、やはり無理がありはしないか、医療機関の一元化の問題はやはり順序から言うならば、こういう零細な医療機関の一元化というところから考えていくべきじゃないので、もとをなすような大病院の一元化という方から整えていく方が、やはり日本医療機関の一元化を考えていく場合には本来の筋道じゃないだろうか、従ってそういうようなもので逐次整理されていくということになれば、ただいまの問題もおのずから落ちつくべきところに落ちつく、かように考えているわけでございます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 病院の一元化ということは、大きなところから論議して今ここまで来たわけです。労災病院のような大きなところを論議し、本委員会で——これは小委員会ですから、いわゆる親の方の委員会で十分論議を尽して実はここまで来ているわけです。ここまで来たというのは、待遇改善の問題を今後やっていく上に、やはり贅肉を切り落していかないと、なかなか財源は出てこない。従って何も無理をして国民健康保険の苦しい財政の中から直営診療所を持っておりますといっていばったところで、あなたの今の言葉に出たように、そんな零細な診療所というものを持ってもしようがないのですね。それならば堂々と一般会計からぐっと金を出させて、りっぱなものを作る方向に持って行った方がいい。そういうふうにして市町村の小さな中で蝸牛角上の争いをやるようなことでは困る。直営診療所特別会計病院を持たしておかなければ、国民健康保険は成り立たぬということは、前時代的なまだ保険思想の普及しないときならいいが、二十世紀の後半になって皆保険を四年でやろうという政府の態度としては、はなはだみみっちいことじゃないかということです。だからそういう点で思い切って、自治庁当局もそれの方が財政計画が組みいいといっているのだから、組みいいなら組みいいことにして、病院のためにもっと財源を得るような方向に持っていったらいいのです。特別会計に入れておったのでは、これは金を出しにくいということは、特別会計の性質というものを、すでに自治庁は去年の五月一十五日に各都道府県に財政再建計画の策定に伴う国民健康保険事業に対する普通会計からの繰り入れについてという通達を出しておる。その中を見ると、国民健康保険に関するいろいろなことは保険税療養給付補助金でまかないなさい。特に一般会計から繰り入れる必要があるならば二年を限界とする。やむを得なければ、庫は認めてやろう。しかしその場合でも財政再建計画の変更を持ってこい、こうなっておる。今地方自治体が財政再建計画の変更のためにいかに苦しんでおるかということは、これは柴田さん一番よく知っていると思う。なけなしの財布の中に少しばかり自然増がふえたというだけで、さてどこに使おうかということで頭を悩ましておる。その苦しい財源の中に直営診療所なり保健婦補助金を今後割り込ましていかなければならぬという地方自治体当局の苦しみというものを当局は考えてやる必要があるということです。これが一般会計なら大手を振って再建計画の中に入っていける。ところが特別会計のものであるということになれば、自治庁当局は特別会計はあと回し、なぜならば特別会計というのは保険料保険給付補助金でまかなうものなんです。病院だってそういうものです。ところが病院はやっていけぬから一般会計から繰り入れてもらうより仕方がない。そうなればできた自然増を何ぼか自治庁の許しを得てつぎ込むより仕方がない。それは許しを受けるにしても、自治庁にとってみれば、特別会計に対する見方、それから一般会計の中の財政のやりくりとどちらをスムーズに考え、それに対して手当をしてやるかといったら、それは一般会計です。特別会計というものはあと回し、財源が余ったら特別会計ということになる。そうしますと、何ということはない、そこで一番苦しい目に合うのはだれかというと、そこの住民であり、直営診療所の恩典を受ける人たちです。ところが直営診療所というのは全市民が恩典に浴するものであるというような言い方を一方にしておる。そういう論理の矛盾のないような行政を、なわ張り争いでなくてやっておくことが必要だ。小は大をかねる。小さいところから大きいところに論議していく方法もあるし、大きいところから小さいところに論議をしていく方法もある。私は大きい方から小さい方に論議してきた。決して小さいところからやっているのではないということです。だからこういう点はもう少し小山さんの方も太っ腹になって、そして医務当局と話し合って、三億ばかり補助金があります。この三億の補助金を削るという意味ではなくて、これを市町村一般会計の中に入れたって大して変ったことはないのです。そして看板だけ国民健康保険直営診療所と書かなくても、何々市立病院と書いておっても住民はそんなことにはちっとも関心を持たないのです。国民健康保険普及段階においては、国民健康保険にも病院が建てられるのだということになれば普及の水を向けられることになる。しかし政府が腹をきめて四カ年でやるのだ、少くとも強制設立をやろうという意気込みを持っておる政府としては、どうも行政が混乱するおそれがあるという点です。特にそういう点が具体的に出てくるのはたとえば保健婦です。もし衛生に非常な関心を持つ市町村で直診にも保健婦を配置しておる、あるいは健康保険課に置いておる。そのほかに一般住民のためにもやはり保健婦を置かなければならぬというようなことも起りかねない。なぜならば特別会計というものは国民健康保険の被保険者対象にするからだ。残りの健康保険の被保険者というものは一応建前関係はないのです。ところが行政をつかさどる市町村長にしてみればそういうわけにいかぬのです。保健婦はやはり柴田さんの言われたように一般会計から出そうかということになる。そうすると直営診療所に限ったことではない、全住民的なものであるならば、直診と保健婦一般会計に入れたらどらか。入れても行政の上にちっとも支障を来たさないと思うが、何か国民健康保険運営の上に、直診を持たなければ、市立病院のあったところをわざわざ直診に書きかえなければ、支障を来たすという点があれば率直に教えてもらいたい。考え得る点は補助金ぐらいのものじゃないかと思う。直診なら補助金が少しよけい出るが、市町村立病院の建設なら少し工合が悪いということじゃないですか。
  19. 小山進次郎

    小山説明員 理屈としましては滝井先生のおっしゃる理論は非常に筋が通っておるわけでございまして、それについては私ども別の考えを持っておるわけではないのであります。この問題については、絶えず省内で論議されておりまして、少くとも今の筋道としてはそういう筋道で整理していこうじゃないかということになっておる考え方に、今おっしゃったことは合致しておるわけであります。ただそういう考え方に立って考えましても、今直ちにやり方をすベてそういうふうにすることが、実際上国民健康保険普及を促進ずることにプラスになるかどうかということだけじゃなく、日本医療機関普及の上から見てプラスになるかどうかという点については、実はいろいろ実態考えてみると、必ずしも簡単に思い切れないものがあるというのが私どもの実感なんであります。たとえば、多少違っておりますが、かつて児童措置費が完全に地方負担になりまして、同時にそれは完全に財政計画の上で見て出せるようにするというふうにされたことがあるのでありますが、実際の上においてはどうもそれがなかなか困難になって、三年来いろいろ論議された結果また今日の八割国庫負担という形に戻ったのであります。今の関係は必ずしもそれと同じではございませんけれども、まず直診の医療機関という形で発足し、それで根をおろしていく、そして市町村住民から見ても市町村立医療機関を持つことは非常にいいことだということがほんとうにしみ込んだあとでそれを市町村立に移すというような段階を経て行われますと、これは非常に自然に行われますし、また根も深くすわっておりますから、ちっとやそっとのことでは直ちにそれがゆらぐようなことはないことになるわけであります。そういうふうな段階を経ないでいきましたものには、とかく非常に根の弱いものがあるのみならず、いきなり市町村立という格好で作ることになりますと、なかなか作りにくいというような面もあるわけであります。しかしこれはいずれにしても理論の問題ではなくして、現在の日本市町村、特に町村の実態からいって、どういう道を通ることが医療機関を整備していく上において最も効果的かという事実判断の問題になると思うのでありますが、現在のところではそういったような事実判断からいたしまして、今のようなやり方をしておるわけでありますが、筋道の上においてこれでなくちゃならぬというふうな考えは毛頭持っておりません。従ってそういうふうな事実上の条件が変って参りますならば、おのずから先生のおっしゃるようなきれいなものに整理をされる、十分なり得ると考えております。
  20. 滝井義高

    滝井委員 私はすぐそういうことをしてくれということではなくして、行政の運用を円滑にやっていくためにはやはり徐々に悪いところは改めていくことが必要だと思う。すでに地方財政計画の組み方その他において、明らかに国民健康保険の行う主たる事業である医療の問題と、それから直営診療所の経営と保健婦の設置というものが別個の形で地方財政再建計画に組まれた本年からこれは一つの契機だと思う。物事は一つの契機をつかまなければずるずるになると思う。だから私はたまたま自治庁当局から今年から十四億四百万円組みましたということを、先日いろいろ国民健康保険説明を求めたところが聞くことができたので、そこでこれは一つの契機だということできょうはそういう点を質問したのです。これは医務局も十分考えてもらって、さいぜん私が指摘したように、日本病院というのは複雑過ぎるのです。病院範疇一つか二つに整理してもらうことが必要だと思う。これは政府がやらなければ、われわれは次の国会へ医療法の改正を出さざるを得ない。そうしなければ、どういう病院が税金のかかる病院で、どういう病院が税金のかからない病院かという分類さえもできぬ状態です。しかも非課税になるものは赤十字のように営利追求あくなき病院もある、こういう実態です。それを医務当局はやはり公的機閥の筆頭に掲げて知らぬ顔の半兵衛をきめ込んでおるということは、監督上からいってもよくない。それなら全部の私的機関も非課税にしなければいかぬ。そういうことを行わないということが実態であると思う。  そこでそういうことは考えてもらうことにして、次に本論に入ります。今後国民健康保険の未実施の二千七百万の国民普及をしていく、それから同時に、既存の国民健康保険を行なっている市町村財政をも再建をしていく、それと同時にあなた方の方では年次的に給付率の引き上げをやる、たとえば七割くらいを目標にする、同時にその上に医師待遇改善をやって、単価を上げる、こういうことです。これは非常にむずかしいことで、これだけのことをやってのけようというわけなんです。それで、私は、これは柴田さんに診断をしてもらいたいんだが、現在の国民健康保険の段階においてこれが可能であるかどうかということです。今の地方財政の状態から見て、未実施の町村に四カ年間で普及させてしまう。それから、あとで赤字の問題に触れますが、現在の財政を再建する、そうして少くとも段階的にというから四カ年間にやるのでしょうが、そうすると、ことしからやったって、五%ずつ引き上げるならば、厚生当局は七割を目標にして、そうして単価を何ぼ上げるかわかりませんが、単価を上げる。これは一種の手品みたいな状態になるのですが、しかしこれはやらなければならぬ。とすると、現在の地方財政でこれが可能かどうかという認定を、これは少々むずかしいけれども、柴田さんが今までいろいろ地方財政を扱った経験から、一応意見を聞かしてもらいたい。
  21. 柴田護

    柴田説明員 非常にむずかしい御質問でございまして、全般的な調査をいたしておりませんので、これが結論だということは申しかねますが、二、三の市町村について実態調査をいたしました結論からは、赤字の原因というのは大きく分けて三つある。赤字の原因の一つというのは、国民健康保険税の徴収が十分じゃない、法律通り取っておらぬ、また法律通り取ろうとすれば取り得るのにかかわらず、不当に低い基準で取っておる、しかも徴収は十分じゃない、これが一つの赤字の原因だと言えるのであります。  それから第二点は、国民健康保険経費、つまり事務費でございますが、事務費につきまして単価が非常に低かった、そのために一般会計からの繰り入れを余儀なくされておった。これは今回厚生当局並びに諸先生方の努力によりまして、非常に大幅に改善を見たのでありますが、この事務費につきまして、ただ単価だけではございませんで、事務のやり方自体にやはり一つの問題があるのじゃないか。たとえば一例をあげますと、国民健康保険税の徴収だけに事務職員を置いておる、これは市町村民税と同じようなものでありますので、やり方によっては市町村民税を徴収する徴税吏員が同じように国民健康保険税を徴税すればいいのであって、やり方一つでは徴税職員というのは倹約できる。特別会計から一般会計へ徴税交付金式なものを出せばそれで一応始末がつくのでありますけれども、こういう点についての技術指導が足りておりません。それが事務費の過不足をめぐる一つの問題になる。それにいたしましても、現在の八十五円の単価というものが妥当であるかといいますれば、財政的な眼から見ますと必ずしも十分ではございませんが、それじゃ八十五円をどの程度まで上げたらいいかということになりますと、やはりそういう問題まで検討しなければならぬのじゃないかということが言えるかと思います。  それから今の問題で、問題点を二つ一緒に言ってしまいましたが、一つ経費合理化が十分じゃないということ、それから事務費単価というものに問題がある。それから非常に困っておりますのは、最近非常によくなりましたが、過去におきまして国民健康保険国庫負担金が非常に支出がおくれた、そのために一時借入金がかさんで、その利子だけで相当な負担になっておるということも言えるかと思うのでございます。  なお、一つ根本的な問題でございますが、これは国民健康保険会計というものを独立採算制ということでやっていきますならば、国庫負担金の出し方というものを考え直していかなければならぬじゃないかという感じを持つのでございます。これは一般会計の中で始末いたしますならば、地方交付税による総合の財政調整力というものがきくのでございまして、それを十分きかしていけばこれは十分まかない得るわけでありますが、特別会計になって参りますと、その調整力がきかない。そこで療養給付医療保障の保障の割合といいますか、この保険の割合というものを現在程度ならばそう大きな財政調整力というものを加えなくてもいいのかもしれませんが、今後給付率を引き上げていくということになって参りますと、どうしても貧弱な町村とそうでない市町村との間の保険会計における財政調整というものを新しい観点で考えていかなければならぬじゃないか。極論いたしますならば、国民健康保険会計だけで一種の地方交付税の、あるいは財政平衡交付金的な負担金の配り方というものが考えられなければならぬ、そういうようなことを考えて参りますと、若干金は要ります。金は要りますが、四年間で計画的にやりさえいたしますならば、別段国民保険が不可能だというふうには私どもは考えておらないのであります。整理の仕方はよほど手ぎわよくやらなければなりませんので、一方でやはりそういったことを考えながら、計画的に、年次的に漸次普及していくということをやりながら、一応今まで生じております赤字というものをきれいにする必要がある、そのきれいにする部分だけにつきましては、どうしても暫定的に一般会計からの繰り入れによって赤字を計画的に消していくという方法は考えなければなりません。従いまして、今度財政計画上若干の始末をいたしましたが、それに伴いまして、今後は国民健康保険会計だけについては赤字が出ないような運営をしてもらいたい、今まで生じた赤字というものは一般会計からの繰り入れによって計画的に消してもらいたい、そういうことを地方団体では申しておるわけでございます。そういうことを考えていきまして、そういう手順を踏んでやって参りますと、御質問の趣旨はそう心配をしなくても達成できるんじゃないか。私甘いかもしれませんが、さような考えを持ちます。
  22. 滝井義高

    滝井委員 今赤字の原因を大きく三つに分けて柴田さんから御説明いただきましたが、私もそういうところにあるだろうということは推定ができます。しかしそれは一応現在の赤字の処理とそれから今後赤字を出さない方策というものはそれでいいと思うのです。ところがその上に現在の国民健康保険の五割の納付というものではどうにもならぬ。たとえば農村地帯では富農は保険を利用するけれども、公費は利用しない、こういう現象が出てくる。従って貧農は何をやっておるかというと売薬を買う、こういう形になっておるのです。従って貧農にまで保険を十分に実施させるということは、皆保険の真面目を発揮することです。そうするとこれをやはり七割くらいに上げなければならぬ、それから今私たちが当面国民保険で取り上げておるのは、給付率を上げると同時に単価も上げるということです。今はなはだしいところは八円と九円でやっておる、全国は健康保険並みで十一円五十銭、十二円五十銭で、さらに二円上るか、三円上るか、五円上るか知りませんが、とにかく上るということです。秋ごろまでに上げるという結論を出しておる。だから来年はおそらくそういう形で出ざるを得ないのです。それで国民健康保険に現在の市町村財政がたえ得るかどうかということになるわけです。これは今の柴田さんの御説明のように、現在、当面出ておる赤字を計画的に一般会計から国民健康保険特別会計に繰り入れながら解消していく、将来は赤字が出ないように合理的な保険料の徴収、賦課、それから事務職員等においても現在徴税吏員等を兼ねておるところが多い、こういう形でやっていけば、将来ある程度赤字は減るでしょう。しかし将来赤字が減るということばかりでなくて、さらに飛躍的に給付をふやす、現在給付は毎年ずっと見ると一割ずつ上っておる。そうすると、給付が一割ずつ上る上に、さらに五分ずつ加えていかなければならぬ。今五割ですから七割にするためには、五先ずつ上げでも四カ年かかる。そうすると、一割五分ずつ年間給付の増を見ていかなければならぬ。そして突如として来年ごろから単価が上っていく。こういう実態の中で、国民保険というものがどういう姿になるか、やっていけるのかということです。この問題を解決しなければ、今自民党の言っておる皆保険というものは絵にかいたもちになる。また国会で附帯決議をし、大臣が言明をした医師待遇改善をやるということもうそになる。そこらあたりの柴田さんの診断はどうですか。そういうことは不可能ということになれば、私はまた質問のやり方を変えていかなければならぬということになる。
  23. 柴田護

    柴田説明員 可能、不可能の問題はもちろんございましょうが、可能、不可能の問題は、詳細な計算をしてみなければわからないのでありまして。ここで可能だと言い切るわけにもいかぬだろうと思います。ただそういう方針政府が進んでおるのでありますから、これは不可能であっても可能にしなければならぬ。可能にするためには、ちょっと申し上げましたように、やはり国民健康保険会計だけの財政調整作業を相当考えていかなければいかぬのじゃないかということを申し上げたわけであります。
  24. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、これは保険当局に伺いたいのですが、現在被保険者何人に対して事務職員一人の割合ですか。
  25. 伊部英男

    ○伊部説明員 おおむね二千人に一人を基準にいたしております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 被保険者二千人に一人ですか。しかし実際はどうなっておりますか。
  27. 伊部英男

    ○伊部説明員 実際もおおむねさようでございますが、ただ市町村によりまして、いろいろ国保事務のやり方が違いますので、その関係市町村ごとに相当の出入りがございます。私どもといたしましては、あらためて整理をしてそろえた姿にして参りたいと思っております。
  28. 滝井義高

    滝井委員 私はある模範的な市を見て参りましたが、その割合でいくと十三人ぐらいのところですが、実際は三十人なんです。ところがそれでなければ保険料がなかなかうまく集まらない、こういう実態があるのです。結局補助金は、事務職員二千人に一人の割合でくるのだから、二万人被保険者がおれば十人分しかないわけですね。そうすると、十人で保険料を集めて全部やる。ある程度税務関係の職員もおりますが、ところが全国的にお調べになってごらんなさい。こういう資料にそういうものが出ておるかどうか知らないが、二万人被保険者がおって、十人で絶対やれないですよ。そうすると、やれないからどういう結果が出てくるかというと、今柴田さんが言われたように法律通りにとれない、徴収不十分ですよ。多分今保険料の徴収は八六か八七ぐらいまでいっている。これは現年度だけかもしれません。過年度から見ていくと、昭和三十一年十月に自治庁のあなたの財政課で調べたのでは、徴収率は七七%です。調定額一百五億五千百六万八千円に対して百五十八億二千六百三十六万二千円、七七%しか過年度分としてはとれていない。これでは医師待遇改善とか七割の給付なんというものは絶対できない。あなた方のまず第一前提として、今後赤字を解消して少くとも独立採算の体制をとっていくためには、まず事務職員の二千人に一人というこの率を切り下げなければだめじゃないか、この点伊部さんの方で、千人に一人で今後皆保険をやっていく上において十分自信が持てるのかどうかということです。
  29. 伊部英男

    ○伊部説明員 事務職員の数については、非常に重大な問題でございまして、今年度大蔵省あるいは自治庁と共同いたしまして、事務費調査を実施いたす予定にいたしております。その際三者相談をいたしまして適正な人員の基準をきめて参りたい、かように存じているわけでございます。ただ見込みといたしまして、二千人程度でおおむねおさめられるのではなかろうか、かような感じでございますが、それらは本年六月に実施をいたします予定の事務費調査で検討いたす予定になっております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 昭和十三年に発足してすでに二十年になんなんとする国民健康保険の事務の実態がまだ政府部内でわからぬ、今から調査するというのはおかしいと思うのです。およそこういうものは、モデル・ケース、模範的なものをあなた方は大体調査を何回もされているはずです。表彰なんかやられているのだが、そういうところは一体どうなっておりますか。
  31. 伊部英男

    ○伊部説明員 表彰を受けましたのは、いろいろな理由で表彰をいたしておりますが、たとえば率先して保険の実施をいたしたとかあるいは保険施設が非常に伸びている、いろいろな理由でやっておりますが、事務職員の数の方が必ずしもそれに合って整理をされているわけではございません。しかしながら大きな中都市程度におきましては、全体としてはむしろ二千人に一人を下回る程度で非常にいい成績を上げている市もございます。たとえば金沢のごときは、被保険者数が約十五万程度だと思いますが、職員は四十六名程度で収納率九九・八%程度の収入を納めております。これは市町村長の熱意あるいは事務担当者の努力あるいは被保健者の種々の協力、特に医療担当者の協力、そういう要素が総合されて出てくるのではなかろうか、かように思っております。
  32. 滝井義高

    滝井委員 金沢なんかは十五万人で四十六人だそうでございますが、それで九九・八%、非常に徴収成績がいいということになるのでしょう。しかし一般的にいって二千人に一人ということがいいのではないかということですね。これは自治庁の見方はどうですか。特別会計ということになれば、当然その職員の俸給は特別会計でまかなうことになるのでしょうが、今の市町村の実情を見ると相当一般会計でまかなわれているのではないですか。
  33. 柴田護

    柴田説明員 ちょっと先ほど申し上げましたように、一般会計でまかなっているものもありますし、一般会計で持つべきものを特別会計に持たしているものもある。その辺の実情は渾然としております。国民健康保険会計の中で国民健康保険税をとるためにわざわざ職員を置いて、それからついでに市町村税をとっているというようなところもあるわけでありまして、そこのところはすっきりいたしません。いたしませんが、現在の事務費の金額では十分な職員が置けぬというのが一般のでございます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 実はその点なんです。さいぜん柴田さんから、国民保険税なんだから税務職員にやってもらった方がむしろ合理的じゃないかという御意見もあった。私の知っているところでもそういう工合にやっているところもずいぶんある。問題はそうなった場合の会計の区分なんです。職員は、二千人の被保険者について一人だ、こういうような予算の組み方をやるわけです。こういう実態の中で当然国民健康保険会計で出すべきものが、一般会計から給与が支払われている税務職員によって保険料の徴収が行われているということになると——実は事務職員の主たる役割は、保険料の徴収が一番時間のかかるものです。そうしますと、今度大蔵省と厚生省自治庁と三者で調整するということになった場合に、こういうものが非常に私は問題になってくると思う。こういう認定をどういう工合にさばいていくかという今後の一つの争いの種といいますか、水かけ論が出てくるのです。こういう点は、六月に事務費調査をやられるということですが、実態はそういう直営診療所の状態もそうだし、事務職員も今言ったように非常に混淆されている、こういう実態なんです。そして適正な事務費が現在八十五円だ、六十八円六十銭が八十五円になったのだ、実質的には百七円いっております、こう言っても、実態はなかなかわからぬのです。そこらあたりはどういう工合にやっているのですか、どなたでもけっこうですから。
  35. 伊部英男

    ○伊部説明員 百七円は三十年度の決等見込みを被保険者数で割って出した数字でございます。現在の事務費のやり方は被保険者二人当り何円ということで配分しております。先ほど平均して二千人に一人程度ということで申し上げましたが、事務費の配分の方法といたしましては被保険者一人に何円ということで配分しているように記憶しております。
  36. 滝井義高

    滝井委員 そこらあたりは一つ合理的な調査を夏にやってもらいたいと思います。  そこで、厚生省から国民健康保険の指導方針というものを多分出されていたと思うのですが、それを私ちょっと読んでみたら、こういうことを多分書いてあったと記憶します。それは一般会計から国民保険特別会計に繰り入れる額が次第に減少してくる、その減少した分については保険料の引き上げをやれということを多分書いておったと思うのです。きわめてこれは大胆な御説なんですが、これは再建団体であろうと、一般の富裕な団体であろうと、厚生省としては全部そういう方針でいかれる方針なんですか。
  37. 伊部英男

    ○伊部説明員 一般会計繰入金の問題でございますが、厚生省といたしましては、国保会計は、保険料国庫負担金をもってまかなうのを建前としておる、こういう指導方針で参っております。ただこの点はあるいは自治庁の方で御意見があろうかとも思いますが、財政的にも余裕のある市町村が、市町村長あるいは市町村議会が了承して、一般会計から国保会計へ繰り入れて保険料の低減をはかる、あるいは低額所得者の利用を容易にするような措置を考えられる場合には、それはそれでけっこうだろうと思います。しかし指導方針としては、一般会計繰入金というものを当てにしたような指導方針はとらないという考え方をとっております。ただ、ただいま御指摘の点は、一般会計繰入金を、たとえば市町村において減額をいたします際に、国保会計としては当然欠損が出るわけでありますが、その欠損をどう補うかということを考えないで、一般会計繰入金だけを減額するという措置は適当でないという意味でございます。
  38. 滝井義高

    滝井委員 実際に国民健康保険税を上げることが、現在の市町村住民財政負担能力から見て可能かどうかということは、いろいろ議論のあるところだと思います。しかし地方議会の状態を見ると、国民健康保険税を上げるということは非常に困難であるということは、住民税の引き上げと同じ程度に強い反撃が出ております。はなはだしいところは、税というものは応能原則が非常に多く働いております。ところが保険となると、応能原則もさることながら、中以下の階層には応益原則というものがうんと働くわけです。そうしますと、市民税は均等割だけで、そうして御存じの通り所得がないところには市民税は均等割だけしかかからない。ところが保険税というものは、応能応益両方かかってくる。所得がなくとも資産があればかかってくる。それから人頭割と世帯割がかかっていくので、市民税よりもこれが多い場合があり得るわけです。そうしますと、税務職員と国民保険税を取り立てる職員が分れているところは、そういう場合には割合スムーズにいく。ところが税務職員が兼ねておると、きょう市民税を取る、あしたは保険税を取りにいく。そうすると、市民税よりも保険税が高いということで、非常な反撃を受けて、そうして今ちまたに起っておる声は何かというと、市民税よりも保険税は高いというこの声です。そうすると、紙の上で、一般会計からの受け入れがなくなったら保険税を上げなさいということはやさしいですよ。しかし現場でその徴税の事務に当っておる人たちが、そういうことが気やすくできるかというと、不可能なんです。そういう実態がある。そうだとすれば、政府は、特に厚生省は、この一般会計から国民健康保険に三十年度欠損において三十七億繰り入れられた。なるほどさいぜん柴田さんが言われたように、特別会計に金を繰り入れたのですから、交付税交付金の算定の基礎にはならぬが、政府はこの際やはり国民健康保険財政を豊かにするために、一般会計から国民保険に繰り入れた分については、これは交付税の算定の基礎にするということを考えたことがあるかないか。     〔亀山委員長代理退席、八田小委員長代理着席〕
  39. 伊部英男

    ○伊部説明員 国民健康保険関係保険料の基本的な考え方について御説明申し上げたいと思います。  国保の保険料は、いわば医療費はたとい国民健康保険がなくても負担しているはずであります。これは統計的に見ましても家計費の三%ないし四%を負担いたしておるわけでございますので、その三%ないし四%の負担を所得あるいは資産等をも加味して合理的に負担してもらうというのが国民健康保険料の考え方だと思います。従って保険料は全体としていえば新たなる負担ではなしに、より合理的な負担方法ではないか、かように考えるわけでございます。そこで御指摘のように市町村内部におきまして保険料引き上げの際に市町村議会等におきまして問題が起ることも承知いたしておりますが、ただ御承知の通り医療費というものは毎年一割程度ずつ増高する傾向を持っております。健康保険の場合におきましては標準報酬で料率が変っておりますが、料率が変らなくても保険料額は逐年向上いたしておるわけでございます。そこで健康保険の場合に準ずる程度の保険料引き上げはやむを得ないじゃないか、一面から申しますれば負担能力の問題につきましては保険料負担能力と一部負担負担能力と二つ合せて考える必要があるわけでありますが、医療費が一割増高したということは、ある意味においては保険料負担能力もそれだけ増高したという一つの証拠と考えることも可能なわけでありまして、健康保険に準ずる程度の保険料の引き上げはやはり行なっていくべきではないか。これは御指摘のように市町村としてなかなかつらいことはよく承知しておりますが、国保の健全なる発達のためにぜひともやらねばいかぬのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  40. 滝井義高

    滝井委員 第二点の御答弁がないのですが、あなたの方で、一般会計から交付税交付金を三十七億もつぎ込んだような市町村には出すというような考え方をもって検討したことがあるかないかということです。
  41. 伊部英男

    ○伊部説明員 その点は地方自治庁とも数回考え方整理していたのでございますが、現在の地方交付税のやり方では非常に困難だ。というのはまず一般会計繰入金を行なっておる市町村も相当多いわけでございますが、全然行なっておらない市町村もある、あるいは相当多額を出しておる市町村もあればあまり多くない市町村もある。さらにその基礎になります医療給付費市町村によって非常に区々である。そこで基準財政需要を見ます場合には、基準財政需要で医療費がどの程度になるということを見て、その上で基準財政収入がどうなるかということを考える必要があるわけでありますが、たとえば基準財政支出の方の医療費で一定の標準的なワクを設けることは少くとも現段階においては技術的にはなはだ困難ではないか。そこで先ほど財政課長からお話がありましたように費目を限って、その性質が一般会計保険者のみの負担に帰するのは適当でないという費目については一般会計で持ってもらおうじゃないかという考え方整理をしたわけでございます。なおそのほかに市町村の議会において納得の上財政にも余裕があって、あるいはそのほかのいろいろな理由から国保会計に繰り入れるものがあればこれは別の問題として考えたいと思っておるわけであります。
  42. 滝井義高

    滝井委員 一割ずつ医療費が上っているのは住民負担能力がある程度上っていることを意味するのだという御答弁がありましたが、どうもそうはいかぬと思います。国民所得の伸びと医療費の伸びは、最近では国民所得の伸びのカーブが急になってきていると思います。しかし過去数年国民保険が四苦八苦した段階においては、医療費のカーブの方がぐっと急だったと思います。そうすると医療費の伸びがそのまま負担能力の伸びを示すということは、結論としてはちょっと早計ではないか。  それから交付税のやり方なんですが、一人当りのその地区の自治体の受診率とか一人当りの医療給付費とかいうものは、ある程度の制限——往診をやらないとか、抗生物質を与えないようにするとかいうことで相当違ってくると思います。しかし一人当りの年間の医療費を幾らその市町村が出しているかということをある程度見て、そこに一、二の段階をつけて基準財政収入、支出という関係を見ていけば、そう交付税のやり方についてはむずかしくないのではないかと私は思います。ただ問題は特別会計であるという点について難点があるかもしれませんが、少くとも一国の政府が国策として、あるいは時の政党の重要政策として、一千億減税、国民保険、完全雇用という三本の柱の一つを強力に推進しようという場合に、その必要な財源措置として血の出るような三十七億を一般会計から出しているものを、国が知らぬ半兵衛をきめ込んでいくことは問題があると思う。そういう点でほんとうに皆保険をやろうとするならば、あるいは給付率を七割に引き上げ医師待遇改善をやろうとするならば、そういう点は交付税でも見るという法律改正の親心を示すべきだと思います。この点自治庁の見解はどうですか。
  43. 柴田護

    柴田説明員 全般的に特別会計を御破算にして一般会計の中にぶち込んでやるという考え方一つあるわけであります。そういう考え方に立ちますれば、国庫負担金国庫負担金としてちゃんと出して足らざるものは一般会計で持つのだ、こういうことになるわけであります。ただ現在の建前特別会計でもありますし、そもそも国庫負担金保険税の二つでもって十分これがまかない得るのだということになっているわけであります。従ってそこに出てきますところの一般財源というものは出てくる余地がない。単位費用を組みますとゼロであります。ただいま血の出るような三十七億とおっしゃいましたが、確かに三十七億は血の出るような格好で出ているわけであります。これは交付税の理論から申しますと、現実はそうであるが、しかし理論的に理想を追って全然不可能でない形において一般会計から持ち出しをなくしてできないかといえば、それはできる。そうすれば交付税の理論からいえば後者の説をとらざるを得ない。単位費用を組みましてもゼロになってしまう。現在の形におきましては特別会計をこわして一般会計に入れても、特別会計のままにしておいても、いずれにしても単位費用技術的に組みようがないのであります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 皆保険をやり国民健康保険市町村に今後普及をしていくということになると、単に二割の国庫負担だけでは大して普及しないですよ。あなたの方でことし五百万やるんだとおっしゃっているんですが、私は五百万はなかなかできないと思う。ことしだって三百万台ですよ。今までは二百万台でした。五百万なんというものは、今まで二十年の保険の歩みがあるけれども、やったことがない。やはり人間の作っている法律ですから、特別会計であろうと、法律を変えてやれば、これはむちゃなことでも何でもない、できるわけです。そこでやはり今後の国民健康保険普及ということを考えれば、何らかの形で、交付税交付金をそういう一般会計から繰り入れたものについては出すという方針考えてみることが必要じゃないか。それは二割の国庫負担の上にまた医療給付について二割を出す。その上にまた出すということは財政上の問題からいえば幾分問題があると思います。あると思うけれども、これが重要な国策であるとすれば、あえてその無理をやらなければ、あなた方の指針にうたっているような財政を健全化す、その上に給付率を上げていく、そして医師の待遇の改善をする、これはとても不可能なんです。不可能なことを大臣が言明しておれば、大臣がうそを言っていることになる。神田さんにうそを言わせたくなければ、事務当局がそれだけの知恵をしぼらなければ、神田さんは後世にうそをついた大臣として名を残さなければならないということになるので、忠ならんと欲すれば孝ならずというところもありましょうが、一つ平重盛の気持になって、皆さんに頭をしぼってもらって、自治庁相談をして、何か交付税を出す形をとらざるを得ないだろうと思う。  そこで次にお尋ねをしたいことは、交付税は一つ考えてもらうことにして、今後皆保険をやる上において、自治庁は、ここ二年、長くても三年は出すことはならぬということを自治庁次長の通達で出しているわけですね。そうしますと、これは皆保険をやっていく上においては、伊部さんの言うように理論的には保険税を上げざるを得ないんだが、現実には私は上げ得ないと思うのです。そうすると皆保険は進まぬですわ。あなたの言うように合理化していくということもあると思います。しかしことし厚生省は五百万入れる、こういうことなんですね。そうすると、昭和三十年度で三十七億で、三十一年度は一体幾ら出しているかということです。
  45. 柴田護

    柴田説明員 三十一年度の決算見込みは今照会中でございまして、三十一年度に幾ら出しておりますか、まだ見当がついておりませんが、私の感じでは三十年度とそんなに大差ないのじゃないかという感じを実は持っております。
  46. 滝井義高

    滝井委員 伊部さんの方は幾らぐらいに推定しておりますか。
  47. 伊部英男

    ○伊部説明員 三十一年度の決算につきましては、五月末が出納閉鎖期でありますので、まだ数字を入手しておりませんが、三十一年度の当初予算の合計、当初予算に保険者がいかなる予算を組んだか、その合計では三十四億になっております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その三十一年度の国民健康保険特別会計の予算を組んだときには、一般会計からの繰入額は三十四億の予算を組んでおる、こういうことなんですね。
  49. 伊部英男

    ○伊部説明員 はあ。
  50. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十年度の当初予算において保険者はどの程度の繰り入れの予算を組んでおりましたか。
  51. 伊部英男

    ○伊部説明員 その点はただいま資料を持ち合せておりませんので、後ほど……。
  52. 滝井義高

    滝井委員 では私次には、現在国民健康保険は現金ベースで運用せられておりますね。従って債務発生ベースではないわけです。この前国民健康保険の赤字の実態というものが、結局三十年度で出ておる統計を見ても、現金ベースです。債務発生ベースではないわけです。そうすると、医師に支払われた額だけしか出ていない。医師はすでに診療を行なって、未払いの額というものは全然海の下に隠れてしまって、氷山の一角だけが出てきておるわけですね。で次回には、一つ債務発生ベースというところのもので——これもなかなかわかりにくいと思いますが、それを少し御説明を願いたいと思います。
  53. 伊部英男

    ○伊部説明員 三十年度の診療報酬未払額は全体で十三億一千五百三十七万円、それから二十九年度の診療報酬未払いが約十三億四千万円、そこで国民健康保険の年度区分は、政府管掌健康保険とやや違っておりまして、診療のあった事実の属する日によって区分をいたしております。従って三月三十一日に診療が行われたものは前年度に属するわけであります。ところが支払いの手続からいいますと、三月診療分をおそくも五月の五日ないし十日までには請求書を出してもらわぬと、事務的に出納閉鎖期内に整理がつかぬわけであります。そういういわば事務上のおくれもこの十三億の中にはある程度含まれておると考えております。診療報酬未払いは両年度を通じまして約十三億でございます。従いまして支払った分に今の支払額を加えていただきますれば債務ベースになるわけであります。ただほぼ支払額が同額でありますから、結局三十年度におきます療養諸費の前年度分、過年度分の計がほぼ債務ベースに相当する、こう言っていいと思います。
  54. 滝井義高

    滝井委員 二十九年度の支払い繰り延べ額が、自治庁の方の計算によると十一億七千七百九十万八千あるわけですね。それから事業繰り越しというか、これは直診か何かの事業繰り越しでしょうな、そういうようなものが七千六百九十二万二千ですか、それから歳入から歳出を引いた赤字というのですか、ところがこの出し方が、見てみると、実質的な黒字団体、形式的収支黒字団体、収支赤字団体、こういうものをごっちゃにして収支差引をしておる。集計が、個々の団体別に赤字は赤字、黒字は黒字で集めていない。それで結局歳入から歳出を引いたものは七億四千七百十八万一千円の黒字になっているんですよ。そういうことをだんだん差し引いていったりして、実質的な二十九年度の赤字というものは五億七百六十四万九千円、こういう少いものになっている。そうすると実質的な赤字というものは、形式的な収支黒字団体と収支赤字団体とのものだけを見て黒字団体のものを差し引かないと、二十九年度の赤字は十四億四千百七十五万九千円、こういうことになっている。そうすると今のあなたの方の二十九年度の未払い額は十三億四千万円。そうすると自治庁の方の支払いの繰り延べ額というのは十一億七千七百九十万八千円、こういうふうに非常に差が出ておるのですね。これは政府管掌の健康保険会計も含まれるので、そのたびごとに数字が違った。国民健康保険自治庁のいろいろの統計とあなたの方の統計と全く違うのです。市町村からいろいろ調べてみてもわからないのです。それで国民保険会計というものは全くわからぬ。わからぬ国民健康保険で、今度は待遇改善の問題と給付引き上げの問題をここで審議していくのですから、これは大へんな事業だと思うのです。医師待遇改善だとよくも大臣は言明をしたと思う。こういう国民健康保険の実体の上に医師待遇改善をかぶせていく場合に一体どういう工合待遇改善をやるのか。だから私は医師待遇改善の天王山は国民健康保険がたえるかどうかという点にあると思う。健康保険というものは政府管掌の親方日の丸です、最後は何といっても政府が責任を持たなければならぬ。それは組合は大企業だったら何とかなるでしょう。問題は自治体が運営の主体である国民保険です。この実態がよくわからない。やればやるほどわからない。そしてまちまちである。給付内容がまちまち、住民の担税能力がまちまち、こういう実態の中でこれをやっていくのですから、これはよほど厚生省が確信のある答弁がなければならぬ。私は三つに分けていろいろ質問しました。しかし、どうも国の負担の二割を上げるという言明をまだ得ておりません。これはいずれ本委員会大蔵大臣なり厚生大臣を呼ばなければならぬと思う。が、ようやく被保険者の公けの原則については幾分これを出さなければならぬということははっきりした。ところが、自治体の一般会計から国民保険特別会計へつぎ込むということについては、現在財政再建団体というものがある、こういう場合に一般会計から特別会計へ出せということは非常に無理があることは明らかです。そうすると一般会計から特別会計に出すということは、これは富裕な市町村はできるかもしれないが、その他のものほそう多くを期待することはできない。自治庁長官の個人的な意見によれば、今年五百万人の国民を皆保険でやるとすれば百億をこえるであろう、地方自治体は百億をこえる金を国民健康保険につぎ込まなければ皆保険はできないだろうという個人的な見解です。私はその個人的な見解は正しいと思う。今年五百万人を入れるとすれば、今後のやっていく都市というものは消費的な大都市と貧弱な市町村です。そうすると、これは住民の担税力というものがもう限界でしょう。従って私はきょうは特に一般会計から国民保険特別会計にどういう工合につぎ込んでいくかということをいろいろ聞いてみたのですけれども、あなた方が自信がある、大丈夫やれるということも言っていないし、国民健康保険特別会計一般会計から繰り入れたものについては、繰り入れる交付税の算定の基礎になるという確信のある答弁も得られなかったわけです。そうすると、これは厚生省は今後秋までに結論をどういう形で得られるか知りませんが、いずれ私たちも、国会も終りますから次会までにこの委員会委員会としての結論を出さざるを得ないだろう。そうするとこれは二円上げても国民健康保険はおそらく七十億くらいは財政支出がふえる。厚生省は三十二年度の医療を幾らに見ておるか知らぬけれども、二百五十億くらいに見ておりますか。(伊部説明員「見ております」と呼ぶ)それじゃ二百五十億くらいに見ておる。そうすると二百五十億に七十億程度とすれば三百二十億のワクになるということです。待遇改善を秋にやって昭和三十三年度から二円上げてもそれは三百億をこえるものを組まなければならぬ。そうすると、今でさえ三十七億出しているものが、この次は最低倍以上出さなければやっていけぬということです。だから、そういう点事務当局が少くとも今年度の国民健康保険の指導方針を出したならば、内閣の方針として待遇改善をやるのだということを言明しているのだから、あなた方は地方自治体にもそれだけの精神的な準備をさせなければならぬでしょう。その精神的な準備ということは具体的にどういう工合にやらせておるかということです。
  55. 小山進次郎

    小山説明員 精神的な準備をどういうふうにやらせているかということでありますが、その前に一体医師待遇改善というものの内容と規模はどうなるかということを固めることが必要なわけでございまして、そのために今せっかく検討しております。従って、そういうふうなものが固まってから次の段階としてそれをどういう方法で負担させ、あるいは支出させていくかということになるわけでありまして、現在の段階でいたずらに地方団体に対して待遇改善をやるのだからどうこうというのも多少ものの運び方として無理がある。でございますからいずれそういうものが固まりましたら次の順序としておっしゃるようなことについてもう少し具体的な形での指導なりあるいはいろいろな手だてを進めていく、かようにいたすつもりでおるわけであります。
  56. 滝井義高

    滝井委員 だいぶ大事なところに来たのですけれども、問題は刻々発展をしていっているわけです。少くとも今年は五百万人ふえる、しかもその大都市では今年加入せしめるやり方というのは、ほとんど三十三年一月を前後として発足するのが多いのです。そうしますと、秋に結論を出せば昭和三十三年度の予算をすぐやらなければならぬ。そうすると、余すところ夏から秋にかけて全部予算を組みますよ、国も。そうすると自治体はその予算にのっとって当然三十三年度の予算を組まなければならない。そうすると、二月、三月というものはみな地方の議会が開かれる。その年の予算をやる。追加予算を出すとか何とかいったってそれはとても間に合いません。少くとも待遇改善をやるといったからにはそれだけの財政的あるいは精神的な準備を物心両面にわたってやらせなければならぬ、六号令をかけなければならぬでしょう。だから、その心がまえがあなた方になくて、ただ国会だけで健康保険との引きかえでやったなんということになれば、これはもう今後の日本医療は大へんなことになります。そういう点、あなたもこの前ここで言明されているのだから、小山さんにも責任があるわけなんだから、いいかげんなことでは済まされぬということです。この点を、誠心誠意、あなた方は私が心配する以上に心配してもらわなければならぬということですよ、行政の責任者なんですから。問題は私は国民健康保険だと思う。そういう点で柴田さんの方にも特に今後ちょいちょい来てもらわなければならぬと思いますが、地方財政の現状から考え国民保険を四カ年間でやるということになった場合に、一体自治体の受け入れの姿はどういう工合になっていくのかということを真剣に一つ考えていただきたいと思うのです。  それで今日は質問をやめますが、この表を最後に簡単に説明だけしていただきたいと思います。
  57. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいまお手元に差し上げました昭和三十年度国民健康保険事業状況というガリ版刷りにつきまして御説明申し上げます。これは前回御要望がございまして作成をいたしたわけでございますが、保険料の階層別に幾つかの保険者を選びましてここにお示ししたわけでございます。全部で二十三保険者でございます。二枚ガリ版刷りがございますが、横に張りますとちょっとみっともないので、こういう形にいたしましてかえって見にくくなったかと思いますが、全部続きでございます。  ここでお示し申し上げました項目といたしましては、三十一年の三月三十一日現在の世帯数、同じく三月三十一日現在の被保険者数、二重加入の有無、直診の有無、三十一年三月三十一日現在の事務職員数、保健婦数、それから次に保険料(税)のところの料税の別は、保険料でとっておるか保険税でとっておるかの違いでございます。一世帯当り調定額として、四千円台のもの、三千円台のもの、二千円台のもの、千円台のもの、幾つかをそろえてあるわけであります。被保険者一人当り調定額、収納率、徴収回数、被保険者一人当り一般会計繰入金、一件当り点数、受診率、一部負担割合、一部負担割合に一般と特別とございます。一般と申しますのは、通常の療養給付はどういうことで扱っておるかということでございますが、特別は、たとえば結核だけは七割給付にしておるとか、小児肺炎だけはどうするかというようなことを考えまして掲げたものでございます。療養給付及び療養費につきまして、一部負担金の支払い方法、保険者徴収、窓口払い、それぞれまるのついているところがその該当しているところであります。保険者徴収は、お医者さんのところへ被保険者が行った場合に、その一部負担をその場で支払わないで、後に保険者がそれを徴収するというやり方のもの、窓口払いは、医者のところへ行ったときに窓口で払う、二つのやり方があるのでありますが、いずれをとっているかということです。併用とありますのは、たとえば、一般療養担当者には窓口払いであるが、直診では保険者徴収を行なっている、あるいはその逆、そういったものを併用ということで掲げているわけでございます。次に給付期間、転帰のみが非常に多いのであります。次に被保険者一人当り費用額、任意給付、経理状況、最後に未払額が掲げてあるわけであります。ここでは未払いのあります保険者は、H町、I町、J町、M町、N村、V町、F村の七カ所になっております。三十年の一世帯当り平均の保険料は二千六百三十五円でございますので、かつ保険料の階層別に保険者を観察いたしましても、約半数程度が二千円から三千円までの間におさまりますので、ここで申しますと、N村あるいはO市程度が、おおむねモードと言ってもよろしいのではないか、こう思っているわけであります。  簡単でございますが、御質問がありましたらまた……。
  58. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。
  59. 八田貞義

    ○八田小委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十六分散会