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1957-07-10 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年七月十日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 八木 一男君    理事 吉川 兼光君       小川 半次君    加藤鐐五郎君       倉石 忠雄君    小島 徹三君       田子 一民君    田中 正巳君       古川 丈吉君    赤松  勇君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中原 健次君    西村 彰一君       山花 秀雄君  委員外出席者         労働事務官         (労働基準局         長)      百田 正弘君         労働事務官         (労働基準局監         督課長)    鈴木 健二君         労働基準監督官         (労働基準局安         全課長)    山口 武雄君         労働事務官         (職業安定局長         事務代理)   三治 重信君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  松本 岩吉君         参  考  人         (国学院大学教         授)      北岡 寿逸君         参  考  人         (日本鉄鋼連盟         常務理事)   水津 利輔君         参  考  人         (東京大学講         師)      藤田 若雄君         参  考  人         (国民経済研究         協会理事)   松尾  均君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月十九日  委員川島正次郎辞任につき、その補欠として  山下春江君が議長指名委員に選任された。 六月六日  委員仲川房次郎君が死去された。 同月十一日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として淺沼  稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  赤松勇君が議長指名委員に選任された。 七月十日  委員小川半次君、加藤鐐五郎君、田中正巳君、  古川丈吉君、岡良一君及び山崎始男辞任につ  き、その補欠として北村徳太郎君、千葉三郎君、  清瀬一郎君、塚原俊郎君、井堀繁雄君及び多賀  谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員北村徳太郎君、清瀬一郎君、千葉三郎君及  び塚原俊郎辞任につき、その補欠として小川  半次君、田中正巳君、加藤鐐五郎君及び古川丈  吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月十四日  次の委員会開会要求書提出された。    社会労働委員会開会要求書  臨時工問題につき説明を聴取し、質疑をする必  要あるにつき、昭和三十二年七月九日に委員会  を開会致されたく、衆議院規則第六十七条第二  項の規定により左記連名にて要求します。   昭和三十二年六月十四日   社会労働委員長 藤本 捨助殿     社会労働委員 八木 一男マル印            吉川 兼光            赤松  勇            岡  良一            岡本 隆一            栗原 俊夫            五島 虎雄            滝井 義高            堂森 芳夫            中原 健次            西村 彰一            山口シヅエ            山崎 始男            山花 秀雄     ————————————— 五月十八日  一、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法   律案八木一男君外十二名提出、第二十四回   国会衆法第四号)  二、労働者福祉施設資金の運用に関する法律案   (岡良一君外十三名提出、第二十四回国会衆   法第五八号)  三、衛生検査技師法案福田昌子君外一名提出、   第二十四回国会衆法第六六号)  四、母子年金法案長谷川保君外十六名提出、   第二十四回国会衆法第七〇号)  五、最低賃金法案和田博雄君外十六名提出、   衆法第三号)  六、家内労働法案和田博雄君外十六名提出、   衆法第四号)  七、病理細菌検査技師法案八田貞義君外二十   五名提出衆法第四一号)  八、角膜移植に関する法律案中山マサ君外四   十五名提出衆法第四三号)  九、地区衛生組織の育成に関する法律案加藤   鐐五郎君外二十五名提出衆法第四八号)  一〇、社会保障制度、医療、公衆衛生、婦人・   児童福祉及び人口問題に関する件  一一、労使関係労働基準及び失業対策に関す   る件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労使関係労働基準及び失業対策に関する件     —————————————
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。  この際お諮りいたします。本件に関し臨時工の問題について、本日おいでを願っております国学院大学教授北岡寿逸君、日本鉄鋼連盟常務理事水津利輔君東京大学講師藤田若雄君、国民経済研究協会理事松尾均君、以上四君を参考人と決定いたし、その御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認めそのように決しました。  それでは参考人方々より御意見を聴取することにいたします。この際、参考人方々一言ごあいさつ申し上げます。本日はお忙しいところをおいで下さいましてありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。ただ議事規則の定めるところによりまして、参考人方々が御発言なさいます際には委員長の許可を得なければなりませんし、また参考人方々委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますから、以上お含みおきを願いたいと存じます。議事の都合上御意見をお述べ願う時間は二十分以内といたしますから、何とぞ時間厳守をお願い申し上げます。なお参考人方々の御意見の開陳が済みました後、質疑を行うことにいたします。  それでは、まず日本鉄鋼連盟常務理事水津利輔君にお願い申し上げます。
  4. 水津利輔

    水津参考人 私水津でございます。実は一昨日でございましたか、突然電話で臨時工の問題について何か話せというお話がございましたが、どうも突然ではありますし、あまり準備もしておりませんし、大してお役に立たないかもしれませんが、とりあえずということで出てきたわけであります。どうして臨時工問題というのが問題になるかということ、それから使用者立場から見て、なぜ臨時工が必要になってくるかということ、それから今問題になっているようなことから何か対策が必要ではないか、それに対してどういうようなことがあるかというようなことを二、三申してみたいと思います。  このごろ臨時工問題というものが非常に問題になっております。その理由は二、三あるように思うのです。その一つは昨年一カ年の間に臨時工というものの数が相当急速に増加しております。それから臨時工には雇用期限がございますから、本人から見るといつ解職になるかわからないという身分に不安があるということ、それから臨時工賃金が本工に比べてかなり安いということ、それからもう一つ、これはあまり世間で言われていない点でありますが、本工の人たち自己防衛のために臨時工の問題を何とかしなければならないという立場から、強く本工組合がこの問題を取り上げてきたこと、まずこの四つあたりがおもな原因であろうと思います。  そこで三十一年にそれじゃどれくらいの臨時工ができたかということでありますが、この数字はあまり申し上げなくても皆さんすでに御承知かと思いますが、確かにふえておる、製造業平均で本工が四%くらい三十一年度に増しておるにかかわらず、臨時工日雇工を入れて五〇%ないし六〇%増加しておる、そこで本工に比べて臨時工が非常に増加したように一見見えます。鉄鋼業におきましても臨時工だけをとってみますと、二七%増加しておる、あるいは造船業のごときは一四〇%も増加したというような報告があります。そういうようなことから見ると、なるほど本工では増加しないで、臨時工だけでうんと増してしまったのではないかというように受け取れる。しかしこの辺が非常に大事な数字の見方でございまして、三十一年に業界が増加した総人員、本工と臨時工も含めた総人員増加人員の中で、本工の占めた部分臨時工の占めた部分とを分析してみますと、製造業を総平均して、臨時工は総増加人員の中で四三%を占めておる。それから機械工では七五%、電気機械の方では最も多くを占めておりますが、九三%くらい占めたようであります。鉄鋼業では四八%を占めておる。大体鉄鋼業では増加した総人員の中の五二%は本工で増加して、四八%は臨時工でやっているということになりますから、大ざっぱに言って本工と臨時工とほとんど半々の割合人員増加している、こういうことになるわけであります。でありますから、そのおのおので、さっき申し上げた本工で四%、臨時工で六〇%というと十倍にも二十倍にもなるような気がしますけれども、実は本工は本工、臨時工臨時工というように、臨時工が増員の中に占める割合から言うと大体大した差はない、臨時工よりも本工の方でややよけい増加しているということがわかります。しかしいずれにしても、臨時工というものが相当ふえていることは事実です。それでは臨時工がふえたことがいいことか悪いことか、問題にするにはいいことか悪いことか、臨時工ばかりふやしたことはいかにも悪いことのように言う人もおる。しかし私は日本という国は非常に労働人口が余っておりますから、失業者がたくさんあって困っているときでありますから、臨時工であれ本工であれ、とにかく世の中が、産業が盛んになって雇用人員がふえたことは、これは最も喜ぶべきことであると思うのであります。この点は、そういう意味からこの問題を認識すべきであろうと思います。  それから次に、臨時工雇用期間期限があるので非常に不安である、身分が不安である、この点はごもっともでありますが、臨時工の本質がいわゆる臨時工でありまして、臨時工とは何ぞや、それは期限を切って雇っているものである。本工というのは無限に、無制限に、定年制があるものは定年一ぱいまで、定年制のないところでは一生その人の条件さえできれば雇うという前提のもとにある。ところが臨時工は初めから期限をつけておりますから、これはその点において不安であることは本質的なものであります。ただこういうことが問題になると思うのです。大体基準法によって二カ月以上使ってはいけない、二カ月以上使う場合にはさらに更新をしなければならないということになっているから、二ヵ月で打ち切るところもある。さらに二カ月なら二カ月で更新するところもある。人によっては、平均六カ月から一年くらいの期間を続けて勤めている人が大部分を占めてる。中にはそれがだんだんと延びて、更新がずっと累積されて三年あるいは五年というような人が少数おります。しかしこれは例外でございまして、これをもって臨時工の一般的の様相であると見るのは誤まりである。五年も六年も続けて使うくらいなら本工に直せばいいじゃないかという説が出るわけでありますが、それはそういうようなごく少数の異例のものでございまして、それはその人は本採用すべきりっぱな技術を持っておるでしょう。だからそういうのを会社で使っているわけでありますが、会社が本工に採用する場合には非常にめんどうな、非常にやかましい雇用基準というものを会社々々で持っているわけです、その雇用基準に何かの条件でその人が一点でも合格しない、しかしながら技術は非常に優秀であるというような人がおったとした場合に、会社としてはその一つ雇用基準に合わない部分は目をつぶって、そのかわり臨時工というような名であるならば相当長く使っていこうというようなことが起り得るわけであります。これは労使双方は非常に好都合である、そういう場合は長くおることがある。これは統計から見てもごく少数な人であります。そういう点を、十分事実問題に即してこの問題を検討する必要があると思います。  それから賃金が低いという問題、これは確かにそうである。これは全国的に調べたものを見ましても、それから鉄鋼の私の方の事情を見ましても、臨時工というものは、総平均でいきますと本工の五〇%とか六〇%ぐらいの賃金しかもらっていない。これはずいぶん酷使しているというような大きな問題点一つであります。しかしこれもいろいろな事情がありまして、臨時工であるから賃金が低い、それは搾取しているのだとすぐ議論を跳躍することは、非常に考えものであると思います。賃金は何ほどか安いかもしれませんが、同じ一流会社でも、その会社の中に賃金格差というものがあるわけです。いわんや同じ仕事をしておっても、甲の会社に勤めている場合と乙の会社に勤めている場合と、あるいは東京に勤めている場合と地方に勤めている場合と、賃金格差というものは全国的に大きなものがありまして、これは日本の宿命的なものとしてだれでも認めているわけです。ことに臨時工の場合には、先ほど申しますように個人個人をとってみると、必ずしも本工にはなれない何かの理由があって臨時工をやっておる人であります。でありますからほんとうにその労働者のいろいろな労働条件なり身分上の条件というものをそろえて、全く同じ条件の人を本工と臨時工とを比べてみたならば、果して五〇%になるか八〇%になるのか、それはわかりません。だがこれは一がいに六〇%だから搾取しているというような単純な議論でこの問題を解決しようとしても、絶対に解決できない。これは個人々々についてなぜこういうふうになったかということをよく検討して、対策を講じなければならない性格のものであると思うのであります。  それから第四に申し上げました本工の人が自己防衛立場から臨時工問題を非常に強く取り上げておる点であります。これはもう確かに言葉の使い方によると、いかにも本工を悪く言っているようにも見えますが、そうじゃありません。これは組合人自身も公表している言葉であります。従来は、本工というものは臨時工を見ること、自分たち首切り防波堤であるというように見ておる。だから少々賃金は低かろうが、首切りの不安があろうが、見て見ないふりをしておった。これは労働者組合言葉で、その通りである。しかしながらだんだん今日になってみると、本工自身首切りを防ぐ方法は、本工組合が非常に強くなりまして、容易に今日では首切りができないことになったことは事実であります。だから今度は臨時工防波堤にする必要はなくなってきた。ところが賃金格差があり、労働条件等には相当格差がありますから、これをこのままにしておいて、そして臨時工がどんどんふえますと本工の方の賃上げ及び労働条件引き上げの障害になる、うしろから足を引っぱるおもりになる、こういう言葉組合自身が使って、臨時工の問題はわれわれのために傍観するわけにはいかない。だからやはり臨時工の人の労働条件引き上げ、それから組織を作らせて、あるいは賃金を引き上げてわれわれを守っていかなければならない、こういうことから総評を初め多くの組合は、このごろは臨時工問題を労働活動目標主要題目として取り上げてきておるわけであります。そこで本工組合みずから組合員以外の人であるところの臨時工賃上げ問題、労働条件引き上げ問題を使用者側の方に力をもって要求してくるというようになってきたわけであります。これが大きな社会問題化するようになり、本委員会でも取り上げられるようになった一つの動機ではないかと私はそんたくしているわけでございます。  さて、それじゃなぜ臨時工が必要かという点であります。これは時間がありませんから簡単に申し上げますが、臨時工はぜひとも日本に必要である。その一番基本的なものは、一口に言ってみれば日本経済の底が非常に浅いということであります。日本経済というものは短期間に全国的に景気が非常に波動が大きい、不安定である、景気の見通しが非常に困難である。いかなる経営者でも今日自分企業に対して半年後を明確に見通し得る人はないのじゃないかと私は思うのです。みんなまずまず二、三ヵ月のうちで、半年先はぼんやりとながめながらその不安にかられながらやっている。ことに神武景気などと申しますけれども、これは突然と起ってき、そしてわずか一年足らずで、もうすでに今日神武景気なしといわれているわけであります。かくのごとく日本景気というものはもう三カ月かあるいは半年ぐらいでどんどん波動が起きているわけです。従いましてある特殊のものは急に需要が、生産がふえたかと思うといつ落ちるかわからない。ことに会社製品が特殊な製品を作っている会社、あるいは注文生産が主であるような会社、こういうものは相手によりけりでありますから、注文がくると生産をするが、注文がこなくなったらぴしゃっとやめなければならない、しかしその製品をストックしておくわけにはいかないというものもあるわけであります。たとえば鉄で申しましたらレールのごときもの、あるいは特殊鋼のごときものは、みんなお客さんから特殊な寸法のものを注文を受けて初めて作るわけであります。大きなレールなんかはストックしたってだれも買手がありはしません。そういうものはいつ生産が落ちるかわかりません。景気がいいからというので、それを全部本工で採用していくということになったら経費もかさみますし、先ほど申ましたように不景気になったからといって本工を首切ることは今日ほとんど不可能であることは皆さん承知通りでございます。うっかり首切りでもやろうものならば、大争議が起って、尼鋼のように会社がつぶれるという例がざらにあるわけであります。でありますから波に応ずる企業は本工の数は固定して、一時的な生産増加臨時工でまかなうとか、あるいは請負に出すとかということで、その調節をやっているわけであります。この日本の浅い経済というものが根本的に直らない限り、どうしたって絶対に臨時工制度、あるいは請負制度というものが必要なのであります。  それからもう一つは、これも日本の宿命的なことでありますが、労働人口の過剰なことであります。町に失業者があふれている、そういうことから考えると、臨時工でもいいから使ってもらいたいというのは使ってやらなければならぬわけであります。本工ではとても雇い切れないが臨時工なら何とか使っていけるという問題があるわけであります。  それから先ほど申しましたもう一つの大きな問題は、今の本工組合というものが非常に強化されまして、首切りは絶対簡単に承知しない、それから賃下げにはいくら会社が不景気になってもなかなか応じない、ある種の労働組合会社がつぶれたってわれわれはそれとは無関係に賃上げは要求するのだということで堂々とストをやって要求していることは皆さん承知通りであります。そういうように労働組合がこういう方向に強く発達したということ自体が、経営者としては、ことに中小企業企業そのものを守るために臨時工制度というものを相当活用せざるを得なくなった、この特殊な社会情勢というものを十分認識していただきたいと思います。この問題をはずしていくらやったって、それは事実問題として机上の空論に終っちゃうのです。経営者側としては企業を守るということが大事な任務でありますから、企業を守るためには結局どうしても組合側と戦わなければならぬことになってくるわけであります。この点も十分実情に即して御理解を願いたいと思います。  時間がありませんから一言で申しますと、この臨時工がなくちゃならないというのは、残念ながら日本経済の底が浅いということ、過剰人口をかかえているということ、それから労働組合というものが世界中で例のないような違った方向に発達してきたというようなことから、宿命的なむずかしい問題であると思います。もし日本労使関係アメリカで行われておるような一時解雇制度——アメリカ景気が悪くなって生産を調整しなければならないということになったら、経営者はだれにも相談せずにすぐ生産制限いたします。そうしてその生産制限に応じて不要になった労働者をだれにも相談しないですぐ解雇します。それを一時解雇と称しています。その一時解雇も人選はきわめて簡単である。それは先任制度というものがございまして、つまり勤務年限の短かい人、若い人からずっと先に馘首して、もしも景気が復活して人が要るようになったら解雇した人の中から優先的にまた復活するという制度がありまして、労働組合もこれは当然としてこれに協力しております。これを一時解雇制度といっておる。こういうような制度が円滑に労使間に行われるならば、日本は何も経営者が本工に採用することを恐れはしないで、どんどんいい人が見つかったら本工に採用するでしょう。そのかわりに生産を落さなければならなくなったらさっさとその順位によって、経営者の一方的な人事権によって解雇して、組合もすぐさよならで、すぐあしたからまたよそに行って職を見つけるということになれば非常にけっこうなことだと思います。しかしこれはなかなか行われないことであって、直ちに日本で行われるものとは思いません。しかしそういうものが基本になっておるということを認識してもらいたいと思います。  そこであとは対策であります。私はこういうことを申し上げても、経営者がどこまでも臨時工を圧迫していこうとかあるいはこれを固持していこうとかあるいは搾取していこうという考えは毛頭ありません。今日の日本経営者は大いに目ざめなくちゃなりません。だから先ほど申しました一番問題になる点は、やっぱり雇用が不安定であるということ。だからこういう問題についてなるべく経営者の方も誠意を持って対する。そうしてその中のほんとうにいい人はできるだけ早く本工に繰り入れるというような政策をとるべきであると思います。鉄鋼などではどんどんそういうことをやっております。従いまして大企業の方では、今日ではもう全従業員のうち八%くらいの臨時工しか使っておりません。中小企業の方では先ほどのようないろいろな事情がありまして一五%あるいは二〇%というような臨時工を使っておりますけれども、できるだけ早くりっぱな人は本工にしていくというような制度をとるべきである。それから賃金格差についてもなるべく五〇%、六〇%というようなことはしないで、いい人、まじめな人があったらできるだけ本工の賃金個人々々の姿において近づけていくということを努力すべきである。それから一般の本工の人が享受しているところの福利厚生施設というものは、なるべく差しつかえない限り臨時工にも適用していく、あるいは退職手当のような制度もおいおい設けていくというようなこと等、すなわちその企業々々に応じた、その人々に応じた最善のしかも合理的な改善に努力しなければならぬということは当然なことでありますし、経営者も大いに心がけてやっていると思います。しかしながら私はぜひとも皆さんに御了解願っておきたいのは、一部の人たちがやっているように臨時工制度そのものが悪いという点があるからこの制度を全廃すべきであるというような意見は、私は絶対に反対でございます。そういうような考え方でこの問題と取り組んでも絶対にこの問題は解決しません。それからもう一つ賃金格差をすみやかに撤廃して本工と同じにすべきであるという意見、これも絶対に使用者は賛成はできません。これはそれぞれの理由があって格差があるのがほんとうなのです。それをただ一般論で格差を撤廃するようなことは絶対に賛成できないのであります。  以上、時間が来ましたからこのくらいで、あと御質問でもございますれば申し上げます。
  5. 藤本捨助

    藤本委員長 ありがとうございました。  次に国学院大学北岡寿逸君にお願いいたします。
  6. 北岡寿逸

    北岡参考人 臨時工についてのお話でございますが、この臨時工と関連しました問題に社外工とか下請工とか請負人夫とかいう問題がございます。これは両方とも関連しておりますが、関連さして話しまするとこんがらかりますから、きょうはその問題を除きまして、臨時工の問題に焦点をしぼりましてお話ししようと思います。  臨時工という問題がなぜ問題になるかと申しますると、たとえば日雇い労働でありますれば、毎日々々変動する、だから毎日々々雇うのだ、またほんの一、二ヵ月の仕事でもうなくなるから、それで一、二カ月しか雇わないのだ、そういうふうに仕事が非常に安定しないものだから気の毒だから賃金を高くしよう、こういうのでございますならば、私は臨時工問題というのは今日のような問題にならなかったと思うのです。事実はそうでなくて、ほんとうは相当長く続くにかかわらず臨時工として雇っていく。そしてそれを更新したりして長く使う。それからまたそういうふうに仕事が不安定で、いつやめさせられるかわからぬというにかかわらずかえって賃金は低い。いわば踏んだりけったりのような目にあっているというようなところに、あなた方が臨時工の問題で心配される点があるのだろうと思うのであります。そこで最初に申しましたように、事の性質上臨時である。従って賃金も高い。われわれしろうとが大工を雇ったりする、左官を雇ったりする、これは非常に不安定であるが、そのかわりに賃金が常雇いの人の賃金より高い。こういうことは問題はないから私は論じない。そういうのではなくて、地位が不安定であるにかかわらず賃金が安い、踏んだりけったりされておるところの気の毒な状態にある臨時工につきまして、お話ししたいと思うのであります。  なぜこういう臨時工があるかという根本原因は、これは先ほど水津さんがおっしゃいましたように、日本の問題は大てい人口過剰に帰するのですが、人口が過剰であって労働者の取引力が弱い。何でもかんでも使ってほしい。もし日本労働組合もなく、労働立法もなく、社会保険もなく、事業主もマルクス時代の事業主のように、何でもかんでも労働者を搾取してやれというようなことでございますならば、日本労働者は実にみじめなものであろうと思うのです。ところが日本人はそれほど人間は悪くないし、自分の使っている労働者はちゃんと安定して生活ができるようにするし、政府もまたいろいろな法律を作る。労働組合もその労働組合の力を利用する。いろいろな条件が備わりまして、日本労働者の大部分のものはまあまあとにかく地位も安定し、飯も食えるという賃金になった。ところが元来日本の社会そのものの基盤が  近ごろ底が浅いというようなみやびやかな言葉を使います。私はもっと率直にものを言わなければ気が済まないのですが、もっと率直に言うと、人口が過剰なために非常に取引力が弱い。働く場所に比較して働きたい人間が多いので、何でもかんでも働きたい。そこで政府、労働組合、事業主の努力によって地位は高ければ高いほど、それに漏れる人間ができてくる。すべての人間をみな安定した高い労働条件で働かせるということはできない。これが今日いろいろな方面に現われている。たとえば今賃金はずいぶん上っている。ことに大企業なんかにおきましては、たとえば水津さんの方の鉄鋼業方面では、われわれ大学の先生よりもずっと高い、数倍も高い盆暮れの賞与をお出しになるのですが、そういうふうに非常に労働条件の高い労働者がある反面におきまして、非常に安い中小企業労働者がある。大体今日中小企業労働者は大企業のいい労働者賃金の半分、盆暮れの手当は三分の一もない、四分の一もないといわれている。こういったような賃金格差があって、それが請負というような格好になったり社外工というような格好になりまして、同じところにおってちょっとからくりが違うばかりに、仕事は悪い、賃金は低い、盆暮れの手当はない、地位の保障はないといったような者がある。その一つ臨時工というものがあるのでございまして、この根本原因はかなり私は深いと思う。これを一掃して、すべての労働者を八幡や富士の本工のような、ああいう高い賃金、高い退職手当、高い盆暮れの手当というようなものに持っていくことは困難だと思うのであります。  とはいうものの、いろいろな方面において臨時工の待遇を上げなければならぬと思って、ずっと昔から各方面でやっていると思うのです。たとえば工場法にしましても、できるだけ臨時工も工場法の保護を受けるようにしましたり、それから、これは当然といえば当然ですが、今日の災害保険扶助というものは、これは臨時工でも何も差別がないので、きょう雇われてきょうけがをしましても、けがを受ければめんどうを見る。これだけは臨時工の問題も満足に解決しているのです。しかし健康保険では臨時工を除いてあると思う。そこでその除いてある範囲をできるだけ狭めようとするのですが、どうも事業主の方では何だかんだ言って脱法的にのがれようとする。ここに私は問題があるだろうと思う。しかし問題の一番大きいのは、私は労働組合臨時工というものを組合の中から除いていることだと思う。これが一番今日臨時工の禍根ではないかと思う。それからもう一つは、事業主が福利施設を設けたり、ことに日本の事業主は世界にあまり類のないほど手厚い退職手当を作っているのですが、この退職手当臨時工に及ぼさない。これはもとより理由のあることでございますが、差別待遇をしていることが、臨時工が踏んだりけったりの目にあっているということの一つ理由なんです。その原因が、日本退職手当があまり高過ぎるということにあるのかもしれない。まあ理由はいずれにしましても、退職手当なんかを作っておりながら、臨時工を除くというところに禍根があると思うのであります。  しからばこれをどうするかという対策でございますが、小さい問題から申しますれば、労働基準法の予告手当なんかは、やはり少し階段をつけて、臨時工にも及ぼせばいいと思うのです。全部に三十日ということをするからこれを除かなければならぬ。さらに法律が除く以上にからくりをしましてこれを除くという努力が行われますから、これを少し階段をつければ、臨時工も及ぼすことができると思う。これが第一。  それから社会保険、私はこれも臨時工を含んでいいと思うのです。現に災害保険は——これは性質が違うといえばそれまででありますが、臨時工を完全に含んでおりますし、また極端な臨時工である日雇い労働者に今日失業保険もあるし、また土木建築労働者にも健康保険のようなものはあるのですから、私は臨時工でもそれに相応するように考えれば、社会保険が及ばないわけはないと思う。むしろ失業保険なんかは、臨時工の方が一そう必要ですから、その必要な者に対しましては社会保険を拡大すればいいだろうと思う。これが第二の策。  第三に、先ほど申しました労働組合です。労働組合臨時工を除くことは、これは私はけしからぬと思う。けしからぬと言ってもそれはいろいろ理屈があるのですから、そう言ってもしようがないのですが、その禍根は企業組合にあると思う。自分企業に雇われている者がまとまって、そして自分たちの利益を考えていくが、解雇者、失業者もみな含んだ全労働者組合員にしますれば、こんなことはない。この企業労働組合というものが禍根ですから、これを全廃することはできないまでも含んで、これを少し緩和しまして臨時工失業者も含むという方面に持っていくことがこの問題解決の一番大事な点だと思うのです。  第四には、事業主の退職手当その他福利施設につきましても臨時工を除くのはけしからぬと思う。形式的に臨時工ということのゆえにいろいろな恩典に浴しないということははなはだ不公平ですから、これは私は事業主の方でその制度を変えればいいだろうと思う。  最後にこういう問題につきまして外国ではどうなっておるかということは私はよく知らないのですが、私の知っておる限りで申しますと、まず第一に外国では労働組合関係におきましては臨時工というものはない。労働組合企業別にあらずして失業者も一切含んだ労働者団体でありますから、労働組合臨時工を差別待遇するということはない。新しい者は先に解雇されるという習慣はございます。しかし日本のような一陣の臨時工という身分のもとに踏んだりけったりの目にあわすということはない。先ほど申しましたように私は日本労働組合はその方面に向わなければならないと思うのです。それから外国の労働者保護法には日本のような予告制度はない。労働基準法の予告制度というものは日本だけで、外国には多少はありますが一般的にはございませんから、従ってこの制度による差別待遇はない。それから一番大きな違いは、外国におきまして日本ほど解雇が困難ではない。非常に短かい予告で解雇ができる。私は二十年も前ですが、イギリスの予告制度を調べたことがあるのですが、実に各事業別に区区で驚いた。たとえば土木建築業なんかはわずか一時間前の予告をもって解雇ができる。一般にいえば前日、いい方で一週間で解雇できるので、日本のように解雇が困難でない。そのかわり解雇された者は失業保険があり、労働組合の手当がございますから、日本のように解雇すなわち失業ということはあまり考えない。割合に転職が容易ですから、そういうことは考えないのです。労働者に対する事業主の福利施設も年限によりまして当然ペンションなんか変ってくると思いますが、その他の施設日本のように臨時工を除くといったものはございません。それから社会保険につきましても一部分ございますけれども、日本ほど使っていない。ただ失業保険だけは臨時工は恩典に浴しない。日雇い労働者の失業保険というものは日本だけにあるものでございまして、外国にはない。この点はむしろ日本は発達しておるのでありますけれども、私は日本におきましてはせっかく失業保険があるのですから、その他の臨時工にも保険を及ぼした方がいいと思うのです。  はなはだ雑駁な知識でございますがそんなことで、あとまた質問を受けまして申し上げることにいたします。
  7. 藤本捨助

    藤本委員長 ありがとうございました。  次に国民経済研究協会理事松尾均君にお願い申し上げます。
  8. 松尾均

    松尾参考人 時間の都合もありますので簡単に指摘します。あるいは私の報告は以上の二人の先生と少し違うかもしれませんけれども、要点だけ指摘しておきたいと思います。  臨時工と一口に言いましてもいろいろな種類があるということでございます。と申しますのは、工場を建てたり、工場を改造したりあるいは季節的な企業というものはたくさんあるものでございまして、そういうところに臨時工というものは使われるのではないか。それから各工場に行くと、試験的にと申しますか、本工に採用する面に養成工として暫定的に臨時的な労働をさせることもあります。それからこれは特殊な例でありますけれども、定年なら定年で会社をよした場合にあと何年か暫定的に労働させることもあると思います。しかしこういった種類の臨時工経済始まって以来あったことで、ことさら今日の臨時工問題ではないと思うわけであります。今日の臨時工問題というのは、そういう非常に特殊な一時的なものではなくて、またそういうものは数としても少いのではないかと思います。そういった関係からしまして、今日の臨時工問題といわれるものは雇用期間も非常に長い。それから常用工と同じような仕事をしており、量的に非常に膨大になっている。特に最近目立ってきている。そのような種類の臨時工が今日の臨時工問題の焦点ではないかと思うわけであります。特に私たちが注目しなければならぬのは、そういう季節的な特殊的なものではなく、あるいは試験的な退職後の一時的なそういうものではなくて、第三の型と申しますか、第三の種類の臨時工だと思います。特に常用工と同じ労働をしながら雇用期間も非常に長期にわたるというようなものが主としてどういう時期に日本では発生したかということは、臨時工問題を調べてみる場合に非常に重要なことだと思います。それから対策を考える場合も、そういった種類の臨時工がどういう経済から出てきたかということが非常に重要な問題だと思います。その点戦前におきましても戦後におきましても、経済状態と申しますか、それが似通った状態から出てきているということであります。戦前におきましては、大体昭和の恐慌のあと、その第三の種類の臨時工問題が出てきている。それから戦後におきましては、大体ドッジ・ラインのあと、特に朝鮮動乱を境にいたしましてそういった種類の臨時工問題が出てきているということでありまして、これは不思議に共通しているわけであります。そうしますとそのような経済状態を私たちがながめて見ます場合にどういうふうな経済的背景を持っているかと申しますと、まず第一には私はあまり声を大きくして言いたくはありませんけれども、昭和六、七年にしろ、ドッジ・ライン、朝鮮動乱にしろ、主として日本経済がいわば軍需的な色彩を帯びてきた経済時期に登場したということであります。軍需景気というのは、純軍事問題は別問題といたしまして、日本経済としても非常に不安定なものではないか。こういうことはやはり経済的の背景の一つとして指摘を受けるのではないか。それから戦前も戦後も同じでありますけれども、特に終戦直後は顕著でありますけれども、終戦直後は中小企業問題というものはなかったのではないかと思います。おそらく企業格差とか賃金格差を取り上げましても終戦直後は賃金格差はありません。むしろ中小企業が高い場合も統計にも現われておるわけであります。そういう事態からしてみますと、第三の型の臨時工問題が出てきたのは主として企業格差が非常に顕著になって、そうして賃金格差が目立って出てきておる。その上でと申しますか、そういうものを背景として臨時工問題が出てきておるということであります。こういう点は先ほど御指摘の通り賃金格差の問題ときわめて密接な関係があるということを指摘できるのじゃないか。それから先ほど北岡先生が申されましたけれども、社会保険その他広い意味での社会立法が、戦前におきましても戦後におきましても、この臨時工問題が出てくる前にかなり整備されつつある。戦前は不十分だが健康保険の問題、失業保険なんかの問題も出ておると思います。戦後は労働三法その他整備されたわけであります。そうしますとやはり企業家の前ではあんまり言えませんけれども、企業家としましてはちょうど社会保険なり社会立法の負担というものがやはり相当重くのしかかるのじゃないか。そうしますとその企業負担を何とかして軽くしたい、あるいは社会立法というものが非常に抜け穴が多い、日本では適用しない適用するという非常に範囲があるのでありますけれども、そういうものを一応抜ける、回避するというようなこと、そのような社会立法、社会政策の線にその適用なり実施をめぐる費用負担の問題、そういうようなものとも密接な関係があるのじゃなかろうかと思うわけであります。しかし戦前と戦後の違った点は、戦前はやや労働組合の力が弱かった。しかし戦後は非常に強大になっているという関係上、戦前の臨時工問題と戦後の臨時工問題というのは対労働組合と申しますか、そういう点につきましては若干異なっている点があるのじゃなかろうか。それは戦前は非常に規模も組織率も小さくあった関係上、臨時工企業として採用する場合でも、たとえば企業負担を少くするとか、あるいは生産コストを引き下げるとか、そういう面でやや経済的な役割あるいは意味を持って臨時工を採用できたのじゃないかと思いますけれども、戦後は対労働組合という大きなそういう要素その他がございます関係上、そうした対労働組合政策と申しますかそのような性格を一つは帯びているのじゃなかろうか。そうした関係で見ますと、労働組合関係ということで若干違っておりますけれども、やや戦前戦後につきまして経済的背景というものは一致している点があるということ、こういう点を抜きにして臨時工問題なりその対策というものは考えられないのじゃなかろうかと思うわけであります。  ではこの臨時工問題をどのように整理したらいいかということでありますが、私はやはりこの臨時工問題は先ほど申し上げましたように第三のタイプの臨時工だと思いますけれども、この臨時工の非常な差別待遇、低賃金ということが指摘されますけれども、やはりその差別なりあるいは格差なりあるいは待遇の違いなり、そういうものがなぜ差別をつけられるかということ、ここに大きな私たちの注目点があるのじゃなかろうか。その場合に臨時工は非常にずぼらだからとかあるいは非常に労働移動が激しいとか、あるいは老齢者が多いとか、あるいは若い者が多いとか、そういうふうな労働者の性格かどうかというふうなこと、そういう点から果して差別がつけられるかどうか、あるいはつけられているかどうか。それからもう一つ臨時工が非常に雑役労働だとかあるいは運搬とか包装とか荷作りとかそういう補助部門だとかいうようなこと、それから非常に急ぐ仕事、そういうことで差別をつけられているのかどうかという点であります。私はそのような労働者の性格だとか、あるいは作業の中身と申しますかそういうことによって差別がつけられているならわかるような気もいたします。しかしながら事実は本工あるいは常用工と同じような労働をし、同じような部門で仕事をしながら差別をつけられるところに非常に問題があると思います。   〔委員長退席、植村委員長代理着   席〕 そういう点から見ますと、この臨時工問題というのは、やはり臨時工という名をつけられる、あるいは臨時工として採用される、そういうところに大きな、私たちの差別の問題の注目点があるのじゃなかろうか。言いかえますと同じような労働をしながらその待遇は違っているということ、そのことはただ採用するときに臨時工として採用する、そのことによってこの差別を受けているのじゃなかろうか。たとえばこまかい事例は省きますけれども、採用の場合でも、本工の場合は身元保証その他をとりまして丹念に採用試験を行なってとるわけであります。そうしてほとんど定年まで勤めるというような建前じゃなかろうかと思います。ただこの臨時工の場合はそういうことは抜きにしまして、ほとんど腕なりあるいは経験なり技能なりそういうものが中心になっている。それから解雇につきましては、これは古い本に書いてありますけれども、大体日本の資本家と申しますか経営者の方は本工を解雇する場合は非常に道徳的な犯罪を犯しているような気になっているということが本に載っていますけれども、まさしく本工につきましてはそのような気持があるのじゃなかろうか。しかし臨時工につきましては解雇するのが建前でありますので、そういう配慮は全然ない、臨時工解雇するのが当りまえだというようなことになっているのじゃなかろうか。その他賃金にしましても退職金にしましても、臨時工という形式で採用することでそこに非常に大きな差別をつけられているということ、こういう点が臨時工問題としましては一番の差別の原因と申しますか、そういう点について注目しなくちゃならぬ。特に賃金なんかにつきましても、本工は年令あるいは勤続年数によりまして一年々々上っていくわけでありますけれども、臨時工につきましては、賃金、経験その他ほとんど不明確であって、一括幾らあるいは一括一日幾らというふうにきめられる。それから手当につきましても、極端にいいますと家族手当あるいは退職金なんかほとんど臨時工にはないというのが今日の実態ではなかろうか。  それから、そのように本工と臨時工との差別が非常になされておりますけれども、その点、この先生方も指摘されましたように本工組合臨時工を入れてないということはやはり組合として大きな欠点じゃなかろうかと思うわけであります。  そのように臨時工問題を整理していきますと、私たち臨時工対策をどのように考えたらいいかということに触れてみたいと思いますけれども、最初私が申し上げましたように、臨時工のいろいろなタイプがある。非常に委節的なもの、あるいは特にその企業の特殊性によりまして一時的に非常に繁閑があるというようなものにつきましては、臨時工を幾らいじくったところであまり前進しないのじゃなかろうか、そういう企業は仕事自体が不安定であります。従って労働が不安定になるわけであります。当然臨時的な労働にならざるを得ないわけであります。そういうところではやはり仕事自体が不安定でありますので、それをいかに安定するか、別の意味から申しますと雇用をいかに安定するかというような一般的な対策方向ではなかろうか。あるいはそういう仕事でなくてほかに仕事があるかないかという代替の就職率、そういう問題、それから失業保険とか、また往々にしてそういう特殊な、繁閑の激しい企業につきましては、やや前紀的なと申しますか親分子分的な古い関係がありますけれども、そういうことを除くのが一番大きな対策方向じゃなかろうか。  それから第二番目の試験的な養成工的なあるいは一時的に採用した場合の臨時工につきましては、これは私は、退職金の問題であったり、あるいは定年制の問題であったり、あるいは採用につきましての採用条件の問題であったりするだろうと思います。広い意味におきましては、労働協約だとかあるいは社会保障の問題、そういうことを考えなければ、臨時工一般としては考えられないのじゃないかという点であります。  第三番目に、今日の一番の問題として私が指摘した常用工と変りないような臨時工というものに対しましてはどのようなことを考えるべきであるかと申しますと、私はやはり、先ほど臨時工が出てきた背景が何であったかということを言いましたけれども、こういう点が大きな対策方向になるのじゃなかろうか。やはり企業格差とか、あるいはよく言われますように大企業中小企業支配とか、そういう企業格差あるいは賃金格差というような点、それからもちろん経済自体が非常に不安定なものではなくして安定した経済活動をたどるような経済構造なり産業政策をとらざるを得ないのじゃなかろうかということ、それから社会立法というものはやはりあとう限り広く適用するのが、あるいは完全に適用するのが社会立法の趣旨だと思います。幾らかでもけじめを作るのが社会立法の趣旨ではないのじゃなかろうかという点であります。それは大ざっぱな対策でありますけれども、第三の型の臨時工問題としましては私はやはり労働基準法なり労働組合法なりそういうものを全面的に実施していくことじゃなかろうかと思うわけであります。従って今日相当あちこちで臨時工組織化ということが起っておりますけれども、この組織化をはばむ理由はちっともないと思います。それから本工組合におきましても、本工組合臨時工組織に入れるということ、こういうことはもっと促進こそすれ、決して阻害しちゃいけないのじゃないか。それから一番の基本としましては基準法でありますけれども、基準法にいうところの最低賃金制というのは、やはり労働条件の法制化の問題としましては不可避的な問題だろうと思います。やはり最賃制の上でよくいわれる同一労働、同一賃金というような原則をこの際全面的に普及さすべきじゃなかろうかと思うわけであります。以上がこの対策方向として考えられる点でありますけれども、最後に経済一般として臨時工問題というものをどう考えるかということを一言だけつけ加えておきたいと思います。やはり企業としましては、たとえば本工と臨時工とか、あるいはその他の日雇い労働者とか、そういうものを差別したり、あるいは不公平に使用することは、企業としてはおかしいんじゃなかろうか、やはり労働者につきましても、公平な採用、公平な条件の上で、企業は公正に、公平に競争していくべきものじゃなかろうか、あるいは労働者の側から申しますと、やはり同じ労働のものが同じ待遇を受けないということは、労働組織の問題としましても非常に不都合を生ずるのじゃなかろうか、やはり企業は公平な労働条件の上で企業競争するのが日本経済としても生産力の発展の基礎じゃなかろうかと思うわけであります。その点同一労働に従事しながら差別されるということは、日本経済としても合理性を欠いたものじゃなかろうかということ、この点を指摘しておきたいと思います。
  9. 植村武一

    ○植村委員長代理 ありがとうございました。  次に藤田若雄参考人にお願いをいたします。
  10. 藤田若雄

    藤田参考人 松尾さんの御意見と大して変りありませんが、私の言葉意見を述べてみます。  今日、臨時工問題といわれている問題は、松尾さんが御指摘になったように、本工と同じ仕事をしており、かつまた形式上は期間が切られておりますけれども引続いて長期に働いている人、就業している労働者、そういうのが問題であって、そのほかの本来の臨時工というものは、これはそれなりに臨時工的な扱いをしてよろしいのだろうと思います。問題は実質的には、本工と同じ労働者臨時工として扱われているというところに問題があるわけであります。そういう制度雇用の仕方がなぜ発生してきたかという歴史的な問題は松尾さんが御指摘になった通りでありますが、この点も松尾さんと変りありませんが、私は問題はどこにあるかといえば、日本雇用政策というものが貧困である、十分でないという点が問題だと思います。つまり社会的な立法としての雇用政策が不十分であるから個別資本の、今問題になるような曲った雇用政策がとられる、そういうことになるのだろうと思います。その臨時工制度というものは、個別資本が持っている内部の身分制度というものが雇用の関係で現われたものが臨時工問題である、そういうふうに考えるわけであります。それでは、なるほど日本の現状というものは、先ほど鉄鋼連盟の方が仰せになったように、外国と比べて特殊なものであります。が、しかし特殊であるからといってそのままで行っていいということには一向ならないわけでありまして、今日そういう曲った制度をどういうような方向で正常なものに直していくかというところに問題がある。そこで直す方法として、これはもちろん一挙に行きませんけれども、考えなければならぬ点を幾つか指摘してみますと、まず第一に退職金制度というものを考え直さなければならぬのではないか、臨時工が差別される点は日常の賃金が低いということも一つありますが、退職金の差別というものが非常に大きい。でありますから、今日現われている一つ方向は退職金を年金化するという方向が出ておりますが、しかしそれはむしろ退職金を強化するという方向であろうと考えます。そうでなしに、年金化する方向がそのままいきなり悪いというわけでありませんが、もっと望ましいのは、たとえば海員関係で現われているように、業者間のプール制を考える必要があるのではないかと思います。つまり個別企業の持っている退職金を社会化する方向をとっていく必要がある。そういうことをまず第一に考えなければならぬと思います。それから社会的な雇用政策をもっと強固に打ち出していくということをやらなければならぬ。しかしまあこの二つの点はさしあたって急にはできない問題であると思いますので、そういうことができないとしても、考えなければならぬ幾つかの点を指摘してみますと、労働組合法の十七条という規定がありますが、これは一般的拘束力の制度といわれております。この制度は、ある学者によれば、これはあまり使われないから削ってしまった方がよろしいという意見がありますが、私はむしろ今日の状態においては、これを残しておいて、むしろこれを活用する方向を考えていくことが必要である、日本労働組合企業組合であって、しかも臨時工を入れていないという点が先ほどから指摘されておりまして、それは事実そうでありますが、しかし最近の傾向を見ておりますと、臨時工組合を結成させる、あるいは臨時工を本工の組合の中に入れていくという方向が出ているわけでありますから、その方向をやはり認める、あるいはその方向を強化する、それに役立つように十七条を改正していく必要がある。この十七条の考え方の基礎には、同種類の労働をしているものに対しては同じ賃金労働条件を考えなければならぬという考え方が基礎でありらますか、労働基準法の考え方というものと、それから労働協約の考え方というものをむしろあわせているのが十七条であります。そこで日本のように保護的な要素を強く持たなければならないところでは、十七条の基準法的精神を強化する必要がある。十七条はこれを読んでみると、本工組合がこの適用を主張するのか、臨時工の方が適用を主張するのか、はっきりしないわけでありますが、しかし十七条の立法精神からいうならばこれは本工組合が主張する性質のものであります。つまり臨時工がおるために、賃金労働条件が低くなる、そこで競争者に対しても同じ条件を適用せよ、こういう主張をするのが十七条の精神であると思いますが、日本の場合にはその可能性はもちろんそのままにしておいて、臨時工の方からもそれが主張できるような立法に変えていった方が適当ではないかと思われます。  それから十七条を適用する場合には、労働協約というものの考え方をもう少し具体的にしていかなければならない。通常日本で労働協約といいますと、賃金協定のことはあまり考えないわけであります。賃金協定と労働協約といわれるものは通常分離しておる。労働協約というのは六法全書のように第一章から何章というようにできておる。賃金協定は別協定になっている。ですから賃金協定の中にも平均賃金だけを書いてある。従って十七条が予定しているような職種別の賃金の協定は書かれていない。そこで適用しようとしても適用できない。だから十七条はだめなんだ、こういう意見もあるわけなんですが、私はそういう考え方は不適当であると思う。賃金協定こそが重要な労働協約であるし、それから賃金協定——平均賃金でありましても、それを決定した場合には、同時に賃金配分というものが職種別になされておる。でありますから賃金配分までをも含めたものが労働協約である、こういう考え方をはっきりとる。そういうことが立法で可能かどうか問題でありますが、考え方としてはそういうところまで問題を考えていくならば、十七条というものは十分活用できる。それが今までの御意見の中にはあまりありませんでしたから、つけ加えておきます。  それからもう一つ基準法の方でありますが、臨時工の問題というのは最初に申し上げましたように、形式でなしに内容の問題でありますから、基準法の二十一条だったと思いますが、雇用期間というものを形式的に考えるような条文を作るならば、臨時工はそこでひっかかってしまう。   〔植村委員長代理退席、委員長着席〕 ですから基準法のその部分についても、実質的な本工、臨時工という名前はついているけれども、実質的には本工であるものをどうするかということを解決していかなければならぬ。そういうことの論理的な前提としては、基準法のずっと初めの方でありますが、四条には同一労働同一賃金の原則が掲げてあるのです。それが実はここでは男女同一労働、同一賃金という問題だけになっているが、日本の場合には男女ばかりでなしに、男子は男子、女子は女子、性が同じ労働者の中でも同一労働、同一賃金の原則を規定する必要があるというように考えております。  簡単でございますが、以上で終ります。
  11. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で参考人よりの意見の御開陳は終りました。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  なおこの際委員各位並びに参考人方々にお願いいたしたいのでありますが、大体理事会の申し合せによりまして一時ころまでに終りたいと思いますので、質疑応答ともに簡にして要を尽されんことをお願いいたします。  なお東京大学講師の藤田先生は十二時半ころから何か御所用がございますので、それをお含みの上で同先生に御質問を先に願えれば幸いと思います。  それでは赤松勇君。
  12. 赤松勇

    赤松委員 藤田参考人の御意見全くその通りだと思います。ただ今御指摘の労組法十七条の臨時工を本工組合に加入さして、労組法十七条を生かしていくようなことを考えたらどうかという御意見でございました。私どももそういうふうに思っているんですけれども、今本工側の方からそういう努力を払うべきであるという御意見でしたが、実情はたとえば名古屋造船におきましては、臨時工が、総数三千五百人おるわけですが、三千五百人の中でいわゆる労働組合員といわれておる本工が千三百人、それから社外工と称される者が千三百人、その他の者が臨時工です。この構成から申しますと、本工から働きかけていくということは非常に困難である。ことにこの場合もっと重要な問題は、この千三百人の者が本来憲法によって与えられておる団体行動権を行使する場合に、事実上臨時工、社外工の存在によってその団結権が効力を失ってしまう、そういうことになるわけなんです。これは非常に大きな問題だと思います。ですから今藤田先生の御指摘の点はそうだと思いますけれども、こういう実態が存在しておるということをお考え下さって、その場合のことにつきましてもいろいろ研究してみたい、こういうように思います。  次に鉄鋼連盟の水津参考人にお伺いいたしたいのです。水津さんの御意見をさっきから拝聴いたしましたが、あなたのお考えになっておるいわゆる臨時工とは本来いかなるものであるべきか。臨時工の概念、定義、そういうものについて一つお伺いしてみたいと思います。あなたは日本経済の底が浅いからというそういう経済的な理由を主として主張されたんですけれども、本来労働問題として考えております臨時工の概念なり定義、臨時工とはいかなるものであるか、こういうことにつきましてあなたの御見解をお伺いしたいと思うのです。
  13. 水津利輔

    水津参考人 私先ほど来申し上げているのは、臨時工の概念というか定義をはっきりしなかったんですが、私は臨時工とは期限を切って雇用している労働者だ、法律的に適切かどうか知りませんが、一応そういうふうに考えております。従いまして先ほど来藤田先生、松尾先生のお話になったように、一部の抜き出したものを対象にしてお話がありましたけれども、私の申し上げておるのは、その他のものも第一型、第二型、第三型と分けられたようでありますが、その第一から第三全部総括したもので申し上げております。
  14. 赤松勇

    赤松委員 よくわかりました。そこでお尋ねいたしますが、第三の型ですね。第三の型は基準法の二十一条ではとめられておると思うのですけれども、基準法二十一条と第三の型とはどういう関係にあるでしょうか。
  15. 水津利輔

    水津参考人 二十一条といわゆる臨時工との法律的解釈につきましては、私法律専門家でございませんのと、それからこの問題についてはかなり法律屋さんにも議論が分れておる点があると思いますので、私ここで明解を申し上げることはできません。しかし私ども経営者が長年やっている実例からは、その基準法の二十一条に違反しておるとは思っておりません。あの二十一条の解釈によって今日までずっと事実は行われておる、これがまた世間も政府も裁判所も認めておると私は解しております。
  16. 赤松勇

    赤松委員 それでは続いてお尋ねいたしますが、二十一条には「日日雇い入れられる者、二箇月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者、試の使用期間中の者」とありまして、さっき藤田参考人が御指摘になりました一、三の点は、いずれもこれに該当するのです。第三の点につきましては、今日常用工と仕事の量も質も同じなんです。そして長いのになりますと、四、五年臨時工といって使われておるわけです。そういうものと二十一条との関係はどうなるかというのですが、それがはっきりしなければそれでけっこうです。ただこういう臨時工——基準法に私は反しておると思うのですけれども、こういう長期にわたって本工と同じような労働の量と質を持っておるところのこの臨時工の存在というものが、本来望ましいものであるかどうか。あなたのおっしゃる日本経済の底が浅いからやむを得ないのだということでなしに、少くともそういうものを次第になくしていく。あなたたちの努力で経済の底をもっと強く深くしてもらわなければならぬと同時に、やはり人権の問題ですから、こういうものはできる限り少くしなければならぬ。われわれは法律違反だと思っておりますけれども、この議論は別といたしまして、これを少くしなければならぬ、こう思っておりますが、それについてあなたはどう思っておられますか。
  17. 水津利輔

    水津参考人 今の点については、結論から先に申し上げますと、あなたの御意見と私同感であります。私がさっき対策のところで、時間がなくなったので切りつめて申し上げましたので、私の考えが不徹底であったかと思いますが、私は事実としては、長期に三年も五年も続けて就業しておるのがいる。しかしそれはごく少数なものであって、特殊な理由があって、そういうふうにされているものであろう。そういう人に対しては会社としてはなるべく——雇用基準にどこかに何か合わない事情があったのかもわからないけれども、できる限り早く本工に採用するような方向に進んでいくべきである。それはすでに鉄鋼などでは相当行われておるということを申し上げたのは、その辺のことを申し上げようとしたのであります。でありますから、またそのほか賃金格差についても、その人その人に応じて実質的に本工とあまり違わないような実情にある人については、なるべく格差を少くすべきであるということを申し上げたのも、その辺に触れたつもりであります。  そこで総括的に申し上げてみますと、藤田先生のお話とそれから松尾先生のお話で、いずれもあのいわゆる第三型の臨時工にしぼって対策等についての御意見がございましたが、それらについては大むね私は両先生の御意見と同感でございます。ただごく一部については、少し何と言いますか言葉をつけ加えたい、あるいはそういうことを実行する条件をもう少し詳しく話し合ってみたいという点はございましたけれども、概括的には大体ああいう考えで私もおるわけですし、今後の経営者はそういう方向に踏み切るべきであるというように思っております。
  18. 赤松勇

    赤松委員 次に北岡先生にお尋ねしたいのですが、今私名古屋造船の例を申し上げましたが、実は臨時工の全体の実態というものが実際よくわかっておりません。そこでいろいろ参考人皆さんにお教えをいただき、私自身も研究しなければならぬと思うのですけれども、それで実態調査をやってもらったわけです。名古屋造船によってその実態調査がここに出てきておりまするが、この工場は臨時工が非常に少くて、社外工が多いということです。私は臨時工もさることながら、社外工の存在の方がもっともっと不道徳であり悪質である、こういうふうに思うんです。これは一つの例ですけれども、私が摘発いたしました東亜合成のある工場におけるできごとなんですけれども、ここでは何々組というのが介在しておりまして、事実上何々組に使用されまする労働者は、先ほど申し上げましたように東亜合成の本工と同じ仕事をやっておるのです。しかも長期にわたり、四年、五年というような長期の勤続者もあるわけなんですけれども、これが賃金台帳を見ますると、本工とやや同じような賃金が払われておる。しかし実態はそうでなくてこの社外工が親方を通じてもらいまするときには、親方というやつが別に会社から何割かをもらうのですけれども、もらいまするときには給料袋の封が切ってあるわけです。それはのりで張ってあるわけです。そこから何がしか抜いてあるわけです。そして本人の判こはちゃんと三文判をとっておきまし、そして本人の領収書を作って会社の方に出しておる。調べてみましたらボーナスが出ておるのですけれども、本人の手に渡らずに全部親方のふところに入っておったという事実があるわけです。これは私が摘発いたしました。これは基準局の方で明白になりました。基準局で幾ら調べても、賃金台帳からはそういう悪質なことをやっておるのが出てこないわけです。  そこで同じような社外工の問題が非常に重要でございまするから、ここで実態調査の結果を申し上げますと、先ほど申し上げましたように三千五百名、このうち本工千三百、社外工が千三百、あとは臨時工、そこで会社よりの賃金が三割いわゆる何々組の親方によってピンはねをされておる。その上なおその下に二階級ボスが存在しておりまして、二階級のボスが作業請負の過程におきましてピンはねをするわけなんです。これは御承知のように近代的な造船工場における一つの例なんです。  ここで世論調査をいたしまして、五百五十六名の社外工を調べました。そして五百十八の回答が出て、三十八は白紙でしたが、この五百十八の回答の中に、残業手当がついておるというものが二百三十四、残業手当がついていないというものが二百二十四、こういう数字が出ております。残業手当が二百三十四に払われておるが、二百二十四には払われていない。健康保険はどうかといえば、入っている者二百七十三、入っていない者二百二、四割が入っていないわけです。特にこの労働者の訴えは、子供が病気で困るあるいは自分たちが病気になった場合には何ら保護が受けられないから、ぜひ健康保険に入れてくれということを再三再四親方に交渉したが、どうしても入れてくれない。先ほど松尾先生、藤田先生も御指摘のように、健康保険に入ればそれだけやはり負担が重くなるという点からこういうような脱法行為をやっておると思われる節があるわけです。それから動続二年で三十代の労働者なんですけれども、この労働者は健康保険の問題につきまして、全体として入れてくれるように頼んだところが、親方の方から、そんなことを言えば首にするぞといっておどかされて、結局は泣き寝入りの状態である。公傷したときは、本工ならば一日の工賃がもらえるのに自分たちは日給の六割である、これはぜひ十割支給してほしい。賃金を見ますると、社外工の平均日給額が十代で三百五十七円、二十代で五百十四円、三十代で五百三十八円、四十代で五百三十円、五十代で五百二十八円、六十代で六百円、平均五百二十二円、こういう数字が出ておるわけであります。借金があるかどうかということに対して答えたものは百四十四で二七%、すなわち四人に一人の割合で借金をしておるこういう実情にあるのでございます。そこで北岡先生どうでしょうか、今臨時工のことが問題になっておりますが、こういう非近代的といいますか、前時代的といいますか、今日なおかつかつての炭鉱労働者の監獄部屋と同じようなものが近代的な造船工場において平気で行われている。これは造船工場だけではないと私は思う。おそらく鉄鉱関係の方でも、私は調べればこういう事実は幾らでも出てくるのではないか、こう思うのでございます。これを一掃するにはどういう法的措置をとったらいいだろうか、このままにしておいていいだろうか、いけないとすればこういうものを克服するためにはどういう法的措置をとったらいいだろうか、これを北岡先生の多年の御経験を傾けていろいろ御教授願いたいと思います。
  19. 北岡寿逸

    北岡参考人 ただいまのお話は純粋の下請、これはほんとうの仕事が請負ならばやむを得ないだろうと思うのです。今問題になっておりますのは、社外工といいますのはほんとう請負でないにかかわらず請負のような格好をして、実は事業者が当然負うべき責任を免れておるという問題だろうと思うのです。むしろ差別待遇しているという問題だろうと思うのですが、その問題につきましては労働基準法も職業安定法も失業保険法も、そういうものをできるだけ認めない方針できまっておると思うのです。私が昔監督課長をやっておる時分には、こんな今日の基準法のような中間搾取に関するはっきりした規定はしてなかったのです。鉱山なんかにつきまして、賃金は鉱夫に払うべしという規定だけでございまして、親方に払うことを禁ずるというはっきりした規定はなかったのですけれども、私はこれは中間の者に払ってはいけないのだ、必ず本人に払えということを言いまして、ほんとうに全部のものかどうか知りませんが、私の知っておる鉱山で請負人に賃金を払っているのはなくしました。みな本人払いに強制したと思っております。今日はことにもっとはっきりした基準法の八条、二十四条あり、職業安定法の四十何条かであり、健康保険だって社外工には認めていないのですから、みんな適用があるのだろうと思うのですが、今あなたがおっしゃったように、ほんとうに悪質なことをやっておるのは当然あなた方も摘発できるのでありますが、そうでないものでも私は摘発できるのではないかと思います。でありますから、これは監督官と労働組合がよく歩調を合せてやりますれば、私は今言ったようなことは法律の改正を待たないでできると思います。
  20. 赤松勇

    赤松委員 私は今北岡先生おっしゃったように、いろいろ行政措置でやれとおっしゃっても、正直に言いましてそれは実際にはできません。それはできぬということに政府がなまけているんだということになるでしょうけれども、実際問題としまして今の基準局の人員やその他で力関係から見まして当然これはできません。この法には逃げ道はないと思うんですけれども、法の解釈上まちまちな意見が出ておりますから、これを補う意味において補完的な立法をして、この際さっき言った一、二の点は別としまして、三の形態については厳重禁止するような方法をとらなければだめじゃないか、こういうふうに思っているのですが、松尾先生、藤田先生、北岡先生はいかがでございましょうか、それだけちょっと質問しておきまして、あとは松尾先生に対する御質問を同僚議員からやっていただきまして、私の質問はあとにいたします。
  21. 松尾均

    松尾参考人 私は労働法につきましてはあまり知りませんけれども、私が感じますことは、あまり特別立法じゃなくして、現在りっぱな法があるのでありますからそれでよいんじゃないか、それをむしろ全面的に適用するのがいいんじゃないかと私は思います。
  22. 藤田若雄

    藤田参考人 特別立法を作った方がよいかどうかは私も疑問でありますが、職業安定法ができた当事と今日とはかなり事情が違っておりますから、ただいまのような問題については私は実態調査を行なった上で現行法を改正すべき点があるならば改正した方がよいと考えております。私のわずかに聞いた例でありますけれども、社外工といいましてもいろいろ内容があるのでありまして、労務管理の下請をやらせておるわけですが、実際は仕事をする場合には何も親方というものは関係していない、全く会社の役つき工の監督のもとに仕事をしているというのがかなりおるというふうに聞いておりますが、こういう問題になってくると、これは明らかに違反するわけであります。だからそういう実態をかなり詳細に調査をしてそれに適合した法律改正をやったらよいだろうと思います。
  23. 北岡寿逸

    北岡参考人 先ほど申しましたように純粋のほんとうの下請でございまするならば、これはそういう必要があってやっておるのですから、これを禁ずるわけにいかぬと思います。純粋の必要がないにかかわらず、下請を仮装して現在基準法、職業安定法、それから健康保険なんかを脱法しておる行為、これは私は脱法行為ならば脱法行為の理由があるだろうと思うのです。理由はありましょうけれども、そういったような事業場の多少の不便を押し切っていく、一体労働立法というものは多少その事業主に無理を押してやらせるものなんですから、多少無理を押しても労働者の保護立法を適用させるという趣旨でやっているので、私の知っている限りにおきましては今のところ特に特別立法を作らなければならぬというほどの必要はないように思うのですが、むしろそういう実態を労働組合と監督官庁ではっきり調べて個々にやっていって解決し得る道があるように思います。ただ事業主がこういう脱法行為をします一つの原因は負担が重いということでございますが、これは問題にならない、何といってもぐっと押しつければいいので、それがために強権があるのですから問題なしに押しつければいいのですが、解雇の問題です。本工にしますればいろいろな責任を負わなければならぬ。その責任を免れたい、そういうことでございますならば解雇手当というものにつきまして二つ種類を作っていいわけですし、何とか解決すればいいと思う。今のところ特別立法は必要とは思わない。現行法で解決できるように思いますが……。
  24. 藤本捨助

    藤本委員長 松尾参考人に対する御質問はございませんか——なければ、多賀谷君。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の社外工の問題について赤松委員からお話がありましたから、ついでに社外工の問題について言及したいと思います。実は立法の必要が、あるいはまた実態を調査した上で立法の必要があれば立法すべきだという御意見のようでございますけれども、この職業安定法には抽象的な労務供給に対する禁止の規定しかない。具体的には施行規則の第四条に列記されておる。こういうように立法形式がなっておるようであります。そこでこれはたしか昭和二十七年だったと思いますが規定の改正が行われ、改正は一部改正でありましたけれども、それに基く通牒が大きく改正された。そして従来は職業安定法施行規制の第一項の第四号に「自ら提供する機械、設備、器材」こういうものはみずから所有しておらなければならぬ、こういう通牒でありましたのを、注文主から貸与してもらってもいいのだ、賃貸を受けてもいいのだ、使用賃借でもいいのだ、こういうことになりましたので、実際問題としては設備は要らない。これは注文主が貸与してくれればいい、こういうことに通牒で変りましたので、私はこれを境にして社外工というものが非常に大きく伸びてきたと思う。現実は同じ作業場で隣の者は本工であり隣の者は社外工であるというようなものが出てくる。赤松先生が御指摘になったように、給料袋からピンをはねるなんていうことは現在の法律でも許しませんけれども私は器材、器具、そういうものを単に注文主から借り受けておるのだという形式で同じ作業場に入ってくる可能性を官庁自身が行なっておる。そこで現在のような社外工の実態を見るような状態になったわけですが、こういう点についてはどういうように北岡先生並びに藤田先生はお考えであるか。第四条の改正は「専門的な経験」というのを入れただけでありましたけれども、通牒で大きく改正し、さらにそれまでは産業別認定基準というものを出しておりましたが、その後においては産業別認定基準というものを出したか出さないか。それが改正した当時はなかった。全部廃止したという事情にもあるのではなかろうかというようにも思うのですが、そういう点をお聞かせ願いたい。
  26. 藤田若雄

    藤田参考人 その点については私は非常に簡単ですが、そういう改正のもとに返ったらどうかという点であります。もとに返すといっても、これは数の問題ですから、法律改正のときに押し切られてしまえばそれまでだということでしょうが、私の言っている趣旨は、もとに返すだけで、今日の状態ではやはり抜け道がいろいろできるだろう。ですからやはりその点は現在の実態に合うような立法を考える必要がある。ただしその場合に特別立法という形になるのか、あるいは単に改正で処置できるのかということは調査した結果によらなければわからない。そういうふうに考えております。
  27. 北岡寿逸

    北岡参考人 今の通牒の問題はちょっとこまかくて、実はそこに労働基準局長がおられますから、基準局長あたりに伺った方がいいと思います。私も実はちょうどそのころ経済安定本部にいたものですから、今の設備を持たなければならぬというのを変えて貸与してもいいということにしまして、実はこれによって職業安定法の四十何条ですか、これを骨抜きにし、労働基準法の中間搾取禁止というのを骨抜きにしたいきさつはちょっと知っておるのです。知っておるのですが、これはアメリカさんがちょっと行き過ぎたのです。やはり工場には労務供給というのが必要な場合があるそれを一切中間搾取は相ならぬといってだんびらをひっさげて基準法と職業安定法を作ったのは少し無理があったものですから、民間の陳情を聞いて、それはもっともだというので労働省が通牒を書いたのだろうと思うのです。基準局長がおられますから、基準局長に聞いたらいかがですか。弊害もありますが、理由もあるのだろうと思うのです。問題があまりこまかくなりますから、全然知らぬわけではないのですが、ちょっと申しかねます。
  28. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法律の形式からいいましても、職業安定法の中に労働者供給事業の禁止とこうわざわざ書いておきながら、法律はきわめて抽象的で、あと政令その他にまかしておるという法律技術、あるいは立法当時は実情が十分把握されてなかったから、政令にまかしたかもしれませんけれども、今日においてはむしろこういう監督的な規定は、現在の施行規則程度のものは本法に入れるべきではなかろうか、こういうように考えるのですが、北岡先生どうでしょうか。内容を改正するしないは別として。
  29. 北岡寿逸

    北岡参考人 しかし、今おっしゃったように、施行規則できまったことを通牒ですっかり骨抜きになったような世の中ですから、これは本法に入れましても、また何か骨抜きになるかもしれませんから、法律の形式よりは、もう少し実際よく実態調査をして話し合って、なるほどここまでは無理がない、ここは無理があるという点を労働組合と事業主と監督官庁と三者会談できめる以外に方法がないと思います。
  30. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今赤松先生が御指摘になった名古屋造船の場合に、社外工の千三百というのは、単に昔の労務供給事業的なものが職安法によって切りかわったというような性格ではなくて、やはり本工と同じような仕事をしておる部分がかなり多いのではなかろうか、こう一般的に想像されるわけです。今のような、ピンはねという特殊な場合は現在の法律でもできると思いますが、そういう感じを持つわけです。鉄鋼連盟の水津さんちょっとお聞かせ願いたいのですが、先ほど水津さんのお話によりますと、第三の型といいますか、そういうものについては藤田先生あるいは松尾先生と同意見だということですが、かなり恒久的な雇用を前提条件とした本工の場合と、いわば景気調整的な意味で行う——調整的といいましても、単に季節的なものとか一時的なものというよりも、実際なかなか見通しがつかないから、あるいは二年、三年、四年、こういう場合があると思うのです。そういう場合に、退職の条件というものはともかくとして、普通の労働条件、率直に言うと賃金、家族手当というようなものは同一にすべきではなかろうか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  31. 水津利輔

    水津参考人 先ほど第三型については大体先生方の意見と大した意見の差がないと申しましたが、ただしある部分については相当私の方から条件づきで賛成するということをもう一ぺん申し上げます。  それからもう一つは、ほんとうの意味の第三型、つまり常時雇用されて、しかも同一職種である、この二つの要素が完全にそろうという人が真実にあったら両先生のように考えることが大体賛成である、私の意味はそういう意味なんです。問題は、そういうほんとうに二つの要素が同一であると確認されるものが果して何人あるか、それをどうして調べるかというところに非常に大きな実際問題が残っておるということをつけ加えておきます。  それから今のお話の何年もおる者については本工と同一にしてやったらいいじゃないかという点ですが、これはあとになって見れば三年も五年も勤めたということになったわけでありますが、初めから三年契約五年契約をやるという例は私はあり得ないと思うのです。やはり二ヵ月、三ヵ月が積り積って結果的には三年もとうとう続いたということになったのだろうと思います。それでなかったらこれは明らかに違法です。本工の場合だったらもうほんとうに長期でありますから何年勤めたら退職手当をこうするということがいえますけれども、今の場合は結果から見てもわからぬということになるわけです。だからあらかじめ二ヵ月二ヵ月で更新していって、そして累積三年になった場合はこうする、五年になった場合はこうするというようなことを事前に規定として設けることはこれはなかなか問題ではないかと思います。しかしこれは私の個人意見でありますが、そうして累積して五年にもなるという人は、おそらく技術なり一般的な人物としては非常にりっぱな人であるに違いないと思うのです。それでなかったらそれだけ会社が使うはずがない。しかしながら何かその人格全体の中にその会社の本工としての採用基準にどうしても適合しない部分があるというような特殊な人に違いないと思うのであります。そういう人は世の中にたくさんあり得るわけであります。だから本採用はできないというので今日まできているに違いない。そうして結果的に三年も五年も勤めているということになればその会社に対する功労というものは相当なものと思われます。そういう人がやめるときには会社の特殊取扱いとして労務管理上本工の人に準じて適当な臨時処置が講じらるべきものではないか、そういうようにしてこの臨時工問題を個別的に現実に即して処理していくように経営者は考え方を改めるべきである、こういうように私は考えます。
  32. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まあ第三の型といいましても純然と、将来の景気の見通しから本工員として常時ずっとかなり長い間使うのだという意味でもなくして、今とにかく造船景気がいい、しかしこれはごく一時的ではない、きわめて短期的じゃないが、かなり一、二年は続くだろう、しかし一、二年後首を切るということになるとまた大へんだということで雇う。それはほんの一時的、季節的ではない、まあ景気の続く間は置いております。しかし景気の変動がはなはだしい産業であればそういうことを考慮して本工にしない、こういう場合もあると思うのです。私はこれが実際問題としてかなり多いのだろうと思うのです。これの退職条件その他についてはいろいろ議論がある。われわれとしてはぜひ一諸にしてもらいたいと思うけれども、あるいはまた福利施設の場合でもいろいろ社宅なんかを提供せいといいましても、それは無理があるでしょう。しかし賃金とか家族手当その他の諸手当あるいは購買会の利用とか、こういったものは私は同等に取り扱うべきじゃなかろうかと思う。それはむしろ景気調整の役割に非常に貢献しているのですから。逆に北岡先生のお話でいえば不安定であるから、そういうのは給料が高いのが妥当であるかもしれない。しかしそういう状態にならないにしても、一応景気調整のために使う、しかしごく一時的ではない、こういう者については私は日日受ける給料というものはやはり同じであるべきである、こういうように考えるのですがどうでしょうか。
  33. 水津利輔

    水津参考人 今のお話のような特異の例については、私はその人に対しては本工に準ずるというような規定をすることがいいかどうか非常に問題だと思います。その会社労使関係なり労務管理一般的に見て過剰だ、そういう事態が起ったときにはその人に対しては、君に対してはこういうような方法にするのだという特例を作っていく。給与についても、退職手当についてもあるいは厚生施設の利用の方法についても、こういう条件の新例が出てきたものについては今後こういう取り扱いをするという特殊取り扱い内規ですか、規程を随時作っていく、そういうものがだんだんと積み重ねられて、その会社の中にそういうたくさんの例が出てくるということになれば、自然にそれが規程化するようになりましょう。初めから本工に準ずるというような一般的な規定を作れという要求よりも、事実問題としてそういう方向に取扱いの例を作っていくというようにする方が私は現実に即していると思います。事実私の知る製鉄会社の中でもそういう方向にだんだんといっている例が少くありません。
  34. 藤本捨助

  35. 井堀繁雄

    井堀委員 参考人皆さんから大へん貴重な適切な御意見を伺って勉強ができたのでありますが、御案内のように社外工、臨時工の問題はだんだん今後も反対される傾向が顕著で、現状ですらかなり大きな社会問題になると思う。こういう問題を即刻解決するという道がにわかに考えられるかどうかが問題になると思うのですが、一つには先ほど来参考人の四人の方が口をそろえておっしゃられておりまするように、日本経済の特殊事情ともいわれる経済の底が浅い、ことに中小企業、零細企業が非常に多い、こういうところから労働賃金その他の労働条件格差が非常に激しくなってきておる、あるいは労働人口の過剰に対する十分な処置ができていないために起ってきておる現象、あるいは社会立法でも労働組合組織運営の面にまで及んでおるという御意見でありました。先生方の御指摘になりました事柄は一々ごもっともだと思うのであります。ことにこの問題を雇用政策の中にどう取り入れて解決をしていくかということが非常に喫緊な問題になっておると思うのです。たとえば、私のお尋ねいたしたいと思いまするのは、経営者立場を代表されている参考人もおいでいただいておりますので、その方からも御意見を聞かしていただけると思いまするし、学問的に深く御検討をなさっておいでになり、あるいは経済政策の全般的な実態をよくおつかみになっておりまする参考人の方等にせっかくおいで願っておりますから、そういう角度からいろいろ御指摘を賜わりたいと思うのでありますが、それはやはり一つには抜本的な問題に手を染めながら、一つには当面の喫緊な事態をどう解消していくかという二つの角度に立って、積極的に処置をせなければならぬ問題だと思うのです。抜本的な点についてまずお尋ねいたしたいと思いまするが、それはやはり日本の特殊事情は、戦後狭い領土の中に多数の人口が、そうして低い経済の中で押し合いへし合いしているというこの事実を否定することはできまい。この事実にどう善処し、なるべく早い機会に回復するかということにあると思うのです。私はこの問題は社外工の問題、臨時工の問題の解決と不可分の関係にあると思うのです。言いかえますなら、この問題解決の方針が出てくるなら、この問題に大きな道が開けてくると考えたいと思っております。そこで私は経営者側立場から一つお答え願いたいと思いまするのは、先ほど御指摘になりましたように経済の底が浅いし、いろいろな悪条件の中で、日本経済企業の面を通じて目的を達しようとするためには、どうしてもやはり無理な経営が出てくる。それが弱い部分にしわ寄せされてくるということは、今日の法則からいえば余儀ないことだと思うのであります。それにしてもあまり深刻な犠牲が労働者にしわ寄せされているというのは、ただ単に労使関係の問題としてのみ見送ることはできない社外工、臨時工の問題に当面しておると思うのです。この問題を先ほどどなたか御指摘になっておったようでありまするが、そういう事実は認めるけれども、それを直ちに労働者の犠牲によって切り抜けるということは許されないということは、その通りだと思うのです。でありますから経営者立場からするならば、それをかかえて企業の発展をはかろうとする対策企業家の中でも考えられておると思うのでありますが、それを社外工なり臨時工という形において、犠牲をそこにしわ寄せしてくるというやり方のままでもし今後行くとするならば、企業それ自身ジリ貧になるのじゃないか。ここで一つ抜本的に切りかえる必要があるのじゃないかと思われることは、雇用政策の中で考えられると思う。それは企業家の立場から社会的な御協力を願い御意見を出していただく点だと思いますので、その点を伺いたいのでありますが、それは今もお話に出ておりましたが、言葉は多少強過ぎるかもしれませんが、ある意味における産業予備軍の必要を認められて、それを臨時にお使いになっている、またそうせざるを得ないという説のようでありますが、むしろ私はそういう過剰人口、失業もしくは半失業の状態で放置されている多くの労働人口というものを、この機会に職業の再教育とか、次の日本の進むべき新しい企業の発展の段階に備える労働力として——もちろんその地位の安定をどうするかという問題もあると思いますが、企業家としてはそういう者に対する、もっと社会連帯性の中からこういう問題を取り上げていくならば、解決の道がもっとよい方向に見出せるのじゃないか、こういうふうに考えられるのでありますが、そういう点に対する御意見をお聞かせいただけるならけっこうだと思います。  特に北岡先生にお尋ねをいたしたいと思いますのは、北岡先生は戦前の工場法の総元締めで、労働保護に当られた経験を持っていると思いますが、日本の今の姿は非常に大きく革命をしているようでありますけれども、戦前の工場法が労働者の保護立法の唯一のものであったというのに比べて、今は労働基準法あり、労働組合法あり、労調法あり、その他労働立法、社会立法はかなりよいものがあるにもかかわらず、今の社外工の問題なり臨時工の問題は、その保護立法がから回りをしている。一つには、これは当面の問題としてわれわれは提案していきたいと思っておりますが、今の監督行政というものは麻痺していると思う。これに活を入れなければならぬことはわれわれの任務でもあるし、政府の大きな責任でもあると思いますが、それによってある程度解決はつくと私は思う。こういう点に対して北岡先生は、きっと戦前のあの間口の狭い、一つの工場法の中で労働保護に当られた経験を持っておいでになると思いますが、こういう点に対して、今日の保護立法をもっと積極的に正しく運営していくということになれば、今日の社外工の問題、臨時工の問題の悲劇も大半解消してくるのじゃないか、こういうふうに私どもは思われる節が、例を上げるとあると思うのでありますが、先生の立場からそういう点に対するお考えを伺いたい。  それから、先ほど藤田先生の御指摘になっておりました労働法やあるいは基準法に関する問題で、労働組合法の十七条とそれから基準法の四条をあげておいでになったようでありますが、さらに基準法の三条、職安法の三条によりますと、均等の待遇問題についてはかなり私ははっきり言い切っていると思う。この点を伸ばしていけば、今の社外工、臨時工の問題はかなりはっきり浮び上ってくる。まあ少し強く言いますと、今は違法ですよ。しかしそれがやむを得ざる社会悪だというようなことによって、行政的手心が必要であるかいなかという問題は、これは政治問題になるかもしれません。しかし学問的に見ても、私はここら辺である程度問題が解決できるのじゃないかと思いますが、一つ学問的に先生のお考えを伺いたい。  それから松尾先生のお話にございましたが、日本企業、特に中小企業、零細企業の多い中における労働条件が全体的に引き下ってくるというのは、企業全体が、実は雇用政策の貧困だけではなく、存外問題は日本の産業政策なり、あるいは財政政策もそうでありましょうし、税制政策ももちろん関係してくるのでありますが、あらゆる経済の諸政策というものが、今御指摘になったような、全く抜き差しさらぬ悪条件に対応する何らかの新しい強い政策というものが生まれ出ようとしていないじゃないか。そういうものが出てこなければ、こういう問題に対する解決は抜本的に望めぬじゃないか。こういう点に対して、先生の立場からいろいろお調べになっておいでになると思いますが、この臨時工対策として、何か方向だけでも御指摘願えるのじゃないか、こう思っております。非常に多岐にわたって一時にお尋ねをいたしましたが、時間の都合上お許し願います。
  36. 北岡寿逸

    北岡参考人 臨時工、社外工の問題は、先ほど申しましたように、根底は日本過剰人口に基くところの労働者経済的取引力が非常に弱い、それに対して事業主も、労働組合も、政府も、みなでできるだけ上げよう、そのギャップがいろいろなことに現われて社外工となり、臨時工となり、それから中小企業と大企業との賃金格差なり、いろいろ複雑な問題を生じたと私は思う。この問題につきましては、全体的に今お話し申し上げる時間もございませんが、今お尋ね下さいましたことで私ちょっと申し上げたいことは、まず第一に理由なき差別——ほんとう臨時工ほんとうの社外工は問題ないのですが、社外工や臨時工の形において同じ仕事をしている者に対して差別待遇をすることはいけない。この問題につきまして、もしそれが労働基準法、それから社会保険等の労働者保護立法を脱法しようという動機である現状におきましては、私は法律はどこまでも追及すればいいと思う。それは脱法させてはいけない。それは監督官庁と労働組合と事業主と三者一緒になりまして、できるだけこれはなくしたらいい。そうではなくて、景気の変動に適応するために解雇しやすい人を置いておこうという考え、それと、現在安い賃金で使えるのだから、実際安い者が来るのだから、安いのを使っていこう、この考えから、社外工、臨時工というものを使っている場合があると思うのですが、これは経済上の理由があるのですから、簡単にできませんが、この二つの動機で労働者を二つに分けて、片一方には地位が安定し、賃金の高い者があり、片一方は地位も不安定、賃金は安い、これは非常な不公平だと思うのです。これは許されてはならぬと思うのです。しかしながら、それでは法律で直せるかと申しますと、法律ではなかなか直らぬと思うのです。というのは、とにかく景気の変動があるのですから、景気の変動のときに適応しないようなことをすれば、事業主、労働者ともに困るのですから、これは適応しなければならぬ。それからまたやはり社会的の経済事情に適応して、安く使えれば安く使いたいという事業主の考えがあるのですから、これもむげに否認するわけにいかない。これを臨時工、社外工にしわ寄せして、特権的の労働者と、しいたげられた労働者とがあることは私はいかぬと思うのです。これは何とかしてこういうふうな非常に不公平な差別は除かなければならぬと思うのですが、その除くてこは法律にはないように思うのです。これはやはり労働組合でなければならぬと思うのです。先ほどあげられました名古屋造船所なんかの場合の例をとりましても、本工と社外工と臨時工と打って一丸とした一つ労働組合でありますれば、私はこんな差別はないと思うのです。こんな差別が平気で行われておりますのは、本工だけが労働組合を作ってあぐらをかいている、社外工は親方の下にぎゅうぎゅう搾取されているし、臨時工臨時工で非常にみじめである、そういうところに禍根があるのですから、われわれといたしましては、この許すことのできない不公平な待遇というものは、法律よりは、やはり労働組合の手にあるのじゃないか。労働組合が差別待遇している。それからただいま藤田さんがおっしゃいました労働組合法の第十七条の問題も、労働組合の労働協約に臨時工を除いてなければ、臨時工も社外工も労働組合の中に入っておれば問題はないのです。十七条が問題になっているのは、労働組合の団体協定に臨時工、社外工を除いているから、これは適用のしようがない。まず第一に大事なことは、労働組合の団体協定に社外工、臨時工を除かないようにする。すべて一括した一つ労働組合を作ることがいいと思う。しかしその場合においては、景気波動の危険を臨時工、社外工だけに負わして、本工はあぐらをかいている、こういうことは許されないと思う。やはり臨時工も社外工も本工も一緒になって、景気波動というものがあるのですから、その場合のことにつきましてやはり何らか別の基準でその危険を負担する。それから失業保険を完備し、造船とか鉄工所のような景気波動のひどい事業につきましては、もっと程度の厚い失業保険を作るとかなんとか、そういう方法で解決していくべきものでありまして、国も手伝わなければいけませんが、私は今この問題を解決しますてこは労働組合の方にあるんじゃないかという気がいたします。
  37. 藤田若雄

    藤田参考人 現在の法律で十分でないかということでありますが、これだけの規定があれば、もしも労働組合が外国の労働組合のような組織であれば十分できると思います。ただ私が申し上げたい点は、日本労働組合企業組合であるというふうに言って、その労働組合組織あるいは運営の仕方にかなり問題があるのだというふうに考えるならば、それも事実でありますけれども、しかしそういうふうに労働組合をきめつけることによっては何も解決できない。日本労働組合が今日そういう組合からもっと変った方向に転換しようとしているわけですが、日本に必要な労働関係法というものは、そういう組合方向を助長するようなそういう法律でなければならぬわけで、す。労働関係法というものが労使関係を国体交渉を基本とした関係で規律していくということがねらいであるならば、イギリスのような社会でできる関係と、それからアメリカでできる関係、あるいはドイツやフランスというものと、日本とはやはり違うわけです。だから果して不当労働行為制度というものがアメリカのワグナー法でできてきたというのは、やはりアメリカ労使関係ということがあるわけでありまして、日本に必要なのは、日本企業組合の欠点だけが問題であるのではなしに、その欠点を直していこうとすることを助けるような法律ができなければいかぬ。だからそういう観点から言うならば、十七条のような規定の仕方はなくするという考えには私は反対であって、むしろこれは置かなければならぬが、しかしその使い方を考えていかなければならぬ。その使い方についてはここでは明らかになっていないわけです。だから通常の原則から言うならば、本工組合が主張するということが筋でありますけれども、一番初めに申し上げましたように、臨時工の方からも主張ができるということをはっきりこの中に書くようにする。それから臨時工がそういう主張をした場合には、すぐ解雇をするという、解雇でおどかすというやり方が出てくるわけですが、そういうこともこれは不当労働行為になるわけですが、もっとやさしくといいますか、使いやすく、保護を受けるような立法が必要になってくる、そういう意味では、先ほど私が幾つか申し上げたような点は考慮されていいんじゃないか、そういう考えであります。  それからやはり景気の変動の問題ということがあるわけですから、その点については、適切な社会立法というものが日本の場合もっと強力にとられなければならぬ、そうして北岡先生が先ほどちょっと申されましたが、たとえば失業保険、それをもっと額を引き上げるということも考えなければならぬでしょうし、それから職業補導、技能者養成、そういう点についても、もっと十分な政策をとっていく必要があると思います。実際を調べてみますと、職業補導というのは、実は補導でなくて、補導者で技能者養成を行なっているというような質の変化が行われているわけです。こういう点はもう少し実態調査をやって研究をしなければならぬところだろうと思う。そういう雇用政策をやはり強化するということを片方でとらなければ、労働組合の運動というものも順当な形では伸びることはできない。そういうのが私の考え方であります。
  38. 松尾均

    松尾参考人 私に対する、間は、藤田先生が臨時工問題は雇用政策じゃないかということでありましたけれども、それに対して井堀先生は、雇用政策として抜本的な方向はないか、それから緊急的な考え方はないかという点じゃなかったかと思います。その点で、やはり雇用政策は、過剰人口だとか、その他日本の特殊条件の中に私たちは逃げてしまうことはできないだろうと思います。特に井堀先生が指摘された企業格差の問題でありますけれども、やや私は抽象的になりますけれども、特に日本では中小企業問題というものは、非常にやかましく言われております。それから労働運動におきましても、中小企業の労働運動ということが非常に言われております。こうしたことは外国にはおそらく少いのじゃなかろうか。外国の中小企業問題は少いし、外国の労働運動の場合も、中小企業の労働運動と銘打って特に指摘している点は非常に少いのじゃなかろうかと思います。こういう点から考えますと、日本中小企業なり企業格差の問題は、単に資本が多いとか少いとか、あるいは従業員が多いとか少いとか、そうした量的の問題でなくして、やはり量の差と申しますか、それが大きいところは小さいところを支配するというように、これまた抽象的でありますけれども、量の問題が日本では質の問題になっているんじゃなかろうか。賃金なんかにおいてもそうでございまして、低い賃金にあるところはそちらの方を利用するのは当然であります。そのように中小企業問題なんかも、量が質になったのが日本の現状じゃなかろうか。そういう点につきまして、ヌルクセという経済学者がいますけれども、そのようなアジア的なこり固まった経済構造の上でどうして経済を発展させるかという場合には、経済政策だけでは不十分であって、これに社会的な力を加えなくちゃならぬ。その意味はやや組織的に運営するという意味でありますけれども、確かに日本の場合は、失業問題も、臨時工問題もそうでありますけれども、景気がよくなれば失業がなくなるだろうと言われてきました。しかし経済がよくなっても失業はなくなっていないわけであります。それでわかりますように、単に経済政策だけにまかせては失業問題は解決しない。だから、ここに私は社会政策——諸先生が言っておられますように、労働立法なり組合法なり、そういう社会政策の力を借りなくちゃいかぬと思います。これが第一点であります。  それから緊急的な政策はないかということでありますけれども、少くとも雇用に関する限りにおきましても、やはり社会立法なり社会政策の力がどうしてもこの際必要ではなかろうかと思うわけであります。その場合に一番のてことなるのは、私はやはり最低賃金立法じゃないかと思います。しかも最低賃金立法につきましては、いろいろな案なり説なりがあるようでありますけれども、これを業種別に区切ったり、地域別に区切ったりしますと、私はやはり賃金格差なり労働条件格差を生むもとだと思います。この点はぜひ全国一本の最低賃金法にしなければ、雇用政策としても、労働政策としましても、あるいは企業政策としましてもまずいのじゃなかろうかと思うわけであります。そういう点も指摘しておきたいと思います。
  39. 水津利輔

    水津参考人 雇用政策の臨時工対策でありますが、諸先生がずいぶん御指摘になりましたけれども、私はただ一点だけ申しておきたいと思います。それは、この問題は非常に複雑しかも総合的な問題でありますから、国をあげて、政府も、学者も、経営者も、労働者も、みんなが協力して一つの目的に努力しない限り解決しない。ただ法律を作りさえすればいいとか、経営者がしっかりしてやればいいとか、政府の監督を適当にきびしくやればいいとかいうような、部分的な処置では解決しないと思うのです。それについてほかの先生も言われましたが、私はその中で、経営者の方も十分考え直して、従来のような考えでなくして、新しい角度から諸施策をみずからも実行し、政府の政策にも協力するということはもちろん必要であります。ただここにもう一つ労使間として非常に大事なことは、そういうことに対して、労働組合側も十分な誠意と努力をしなくては実際の成績は上らない。幾ら法律を作っても、経営者がどう考えても成績は上らないと思う。結局労使間の問題でありますから、組合側も十分の誠意と熱意を持ってこれに協力しなければだめであると思うのです。たとえば、先ほどもちょっと触れましたけれども、臨時工の問題を、臨時工についてのみ解決するような策はとても出やしないし、また実行もできない。この問題を考えるならば、本工の人も一緒になってどうすればいいかということをやらざるを得ないのであります。ところが、今日の総評を中心とする多くの既成の強い労働組合の人はどうしているか。自分たちのことについては、企業がつぶれてもかまわぬとして賃上げ優先である。これは実力で戦われておる。そうして労使との関係は、どこまでも階級闘争であるというのが、総評等の基本的方針であります。自分たち首切りは絶対承知できない、自分たちの配置転換も絶対に承知できない、自分たち賃上げのストップも絶対承知できないということが基本になっていろいろな労働活動というものが行われている。それを守る一環としてのみ臨時工の問題も捨てておけないということになっておることは、先ほどいろいろな方の説でも証言されておる。ここが労働法の運営にしても、それからその他の労働保護法の運営にしても、非常な難関にぶつつかる大きな問題であるわけであります。でありますから、組合の人は、これは全部とは申しません、一部有力な組合が、労使はどこまでも対立であり闘争であるという考えのもとに、労使関係あるいは雇用関係というものをぐんぐん力で押し切っていくということを改めて、やはり労使協力して企業を守る、産業を守る、経済を守る、その一環として本工は本工、臨時工臨時工としての落ちつくべきところに落ちつけるというような考えに改めていくということがきわめて緊要であるということを申し上げておきたいと思います。
  40. 井堀繁雄

    井堀委員 いろいろ貴重な御意見でございまするので一、二お尋ねいたしたいと思いますが、残念ながら時間の関係でできませんが、北岡先生のお話の中で、これは非常に私どもにとりましても考えなきゃならぬ点があると思いますが、労働組合の今の組織の形態なり、それから運営上の問題は、ひとり臨時工、社外工の問題だけでなくて、他にもいろいろ影響があると思いますが、特に臨時工の問題の解決は、なるほど先生の御指摘のように、労働組合がおおむね企業別な組織の上にだんだん力をたくわえて、産業別的な、あるいは全国的な組織が非常に未熟だという点については、確かにそういう弊害があると思うのであります。しかし、これは急速にできました日本の労働運動ですから、だんだんよくなっていくように私どもは見ております。だんだん発展するだろうと思います。これはもちろん労働組合自身の努力と不断の経験の中に全精力を尽さなければならぬ大きな問題ではありますが、ここで日本労働組合企業別の労働組合から全国的な組織あるいは産業別労働組合組織に伸びていくためにはかなり強い抵抗が今出てきているのじゃないか。一つは行政的な面でありますが、一例をあげますと、公企労法のような法律を作ったということが、企業労働組合日本的だということをいかにも押しつけてきた典型的な一つの事実だと思うのです。もう一つは、経営者側の方もそうですが、さっき何か労働組合のいろいろな欠点について御指摘があったようでありまして、いろいろ御注意いただくことは労働組合としても十分受けて立たれるものと思いますけれども、やはり労働組合というのはどこでもそうだと思うのですが、特に日本の場合は相対的な関係で起ってくる。運営上のよいところが伸びてくるかあるいは悪いところがぐっと表に出てくるかというようなことは、こういう社外工、臨時工のような問題については一つの顕著な事実だと思うのです。だからそういう実際問題の処理の中で日本労働組合が産業別労働組合へ発展していくように仕向けるべきものを、むしろ企業別の中に閉じこもらなければならぬような経営者側の圧力とかあるいは行政的な無理解から、意識的には押しつけていないのかもしれませんが、無意識のうちに日本労働組合の正常な発展を妨げていると思われる事実がたくさんあると思う。臨時工の問題などは確かにそうだと思う。これはある意味においてアベック闘争かもしれぬと思うが、ちょうどアメリカあたりで行われた古参権に近いようなもので、順位が定められているので君たちは解雇の不安がない、従ってここでまかなうのだということは、労働組合にももちろん責任があると思うが、特に公企労法のようなものは早くやめて、一本にしていくような措置が一方においてとられるような政治的な傾向、また世論や学者も——それから臨時工の問題なんかについては、どうも企業労働組合に立てこもって動くまいとするような傾向はこういうところに存外ある。そういう意味では北岡先生の御指摘は一つの急所だと思うのです。しかしねらい方は逆なのじゃないか。こういうような問題に対してアベック闘争をしいるような傾向が一方にあるし、また一方も受けて立つというようなきらいがあると思う。そういう意味で、労働組合が正常な組織へ発展していくようにしていくためには、やはり今度の臨時工のような問題について何か手を打つべきじゃないか。そのためにはむしろ逆に、先生は法律の力に依存することは必ずしも適当でないようにおっしゃられましたけれども、そこら辺でてこを入れていくことによってむしろ日本労働組合が産業別にあるいは全国的の統一的な方向へ伸びていく、こういうふうに考えられぬものでありますかどうか、非常に大事なところなのでちょっと先生の所見を承わりたい。
  41. 北岡寿逸

    北岡参考人 現在の企業別の労働組合があまり統一されてない、これを失業者を含めて職業的でも産業別でもいいですが全労働者を一本にしたいということにつきましては、井堀さんと私は全然同感のようでございますね。ただ問題はどうしたらいいかということになってくると、これは実はちょっとここでざっくばらんに言ってしまうと、私とあなたと意見は非常に違うと思うのです。しかしせっかくですから私は何も責任がありませんから申し上げますが、私はむしろ逆に、現在の日本の戦後の労働組合というものは、いわゆるチェック・オフ制度というものを確立した、これは労働組合が確立したのですが、これによって企業内では非常に強い力を持ったが、一方企業を離れると全く無力になってしまうということで、不自然な発達を遂げたと思うのです。あのチェック・オフ制度をやめてしまえば、一時は企業の中では弱くなりますが、全労働者を一本にしたほんとう労働組合ができますが、あのチェック・オフ制度というものが現在の日本労働組合を不自然にしていると思うのです。これはちょっと言い過ぎですが、またあまり簡単に言ってしまってかえって誤解を起すかもしれませんが、私は結論を簡単に言えば、チェック・オフ制度日本の戦後の労働組合をスポイルした、これがために本工というのは非常に特権的な地位を持ったが、そのかわり社外工というのはひとり押えられてしまって、テープ・レーバーになっておる。これは中小企業と大企業の間に多いのですが、そういうふうな労働組合の中に非常に違ったものができた。これを一つ振り出しに戻って解決しなければいかぬと思うのですが、そうしますとその過渡期においては労働組合は困ると思います。まあ結論を言えばそんなことです。
  42. 井堀繁雄

    井堀委員 どうもありがとうございました。
  43. 藤本捨助

    藤本委員長 これにて臨時工問題に関する質疑は終了いたしました。参考人方々におかれましては長時間まことにありがとうございました。     —————————————
  44. 藤本捨助

    藤本委員長 次に労働基準問題について発言を求められておりますのでこれを許します。吉川兼光君。
  45. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 労働基準関係で、安全装置に関する問題ですが、たまたま七月の一日から安全週間ということを政府で実施されておることでもありまするし、その安全週間の初日の七月一日に、川崎製鉄の千葉の工場で例のガイデリック・クレーンというのが途中からあの主柱が折れまして、工員がその下敷になって五人死亡し、それからその付近で作業しておりました工員が十数名重軽傷を負っておるという事実のことなんですが、これは当局におきましても調査を進めておるはずでございますから、その事件の概況並びに原因について伺いたい。これは四日でしたか、参議院の社会労働委員会でもこれが問題になったようですが、そのときの局長の答弁なんかによると、原因は調査中であると言って、きわめて簡単に片づけられておるようですけれども、それからすでに一週間もたっておりますし、調査中なんのという簡単な答弁で私は承服できませんから、どういうことについてどういう範囲にまで原因の調査が狭められてきているか。たとえば例の労働安全衛生規則に、三百二十九条でしたか、イロハというふうに十一項目がございますね、このガイデリック・クレーンだけについての規定がございましたね、あの十一項目の中のどういう点に疑点があるというような、具体的な点について御説明をいただきたいのです。ただ、私の質問を急に委員長に許可してもらいまして、あまり時間がないようでございますから、これはまた後日あらためて質問の機会もあることと思いますので、簡単にかつ詳細に一つ要領よくやっていただきたいと思います。
  46. 百田正弘

    ○百田説明員 御質問のございました川崎製鉄所の千葉製鉄所におきまして、御指摘の通り七月一日に、しかも安全週間の第一日目にかような惨事が発生いたしましたことについて、われわれは非常に遺憾に存じておる次第であります。当日川崎製鉄の千葉製作所におきましては、第二高炉の建設工事を実施しておりました。ちょうど七月一日の午後四時十分、前日までに今お話のありましたガイデリックを立て終りまして、これは高さ六十メートル、自重二十トンのその起部に長さ約五十メートルのブームを取り付けまして、それでその七月一日の日にこれを三台のウインチで空荷のまま、何も積みませんで二十センチばかりためしづりをしたのであります。もちろん落成いたしますれば、落成検査を受けて、それに合格しなければ使用してはならないものであることは御承知通りでございますが、約二十センチばかりその落成検査のためのためしづりをいたしまして空荷でつり上げましたところが突然マストの途中が折れ曲った。そうして建設中の高炉の上に倒壊いたしました。そこで付近で作業中の労務者が五名死亡、七名重傷、あとは綱等によりまして頭部を打たれるというようなことで六名の軽傷者を出したことはかえすがえすも非常に遺憾であります。この種の災害につきましてはガイデリックのマストが途中から折れたというような事故は過去において実はいまだあったことがないのでありまして、ただ倒壊をして災害を起した、あるいは幸いにして死傷者を出さなかった事例は昨年等において数件出ております。この途中から折れたということが今までに例のないことでございますので、先般参議院でも答弁いたしましたけれども、この原因はきわめて不可解であるということで、現在われわれの方で専門的機関によりまして調査をいたしておる状況でございまして、大体早くて今週一ぱいくらいには結論が出るのじゃないかと思われますが、今御指摘のようにどういう点に原因があろうと、われわれ専門家じゃございませんが、専門家の意見等を総合してみますと、材質についてどうであったかということが第一の問題であるようでありました。それから工作上に欠陥がなかったかどうか、あるいはまたそれになかったとすれば作業方法自体に何か誤りはなかったか。あるいはその基礎となっている設計自体が書面に出ているところと実際違っておったのではないかといったようなことがいろいろ考えられるわけでございます。その材質の点につきましては、今研究所におきまして、あるいは引っぱり試験と申しますか、あるいは材の組織を調べまして、燐とか硫黄の含有状況というようなものを調べるために顕微鏡で試験をいたします。さらに粘りの点を試験いたしますために衝撃試験等を現在いたしておるような状況であります。実際倒れたところは五カ所ばかり折れているようであります。一つは高炉に当って折れたらしいと思います。最初に力をかけましたときに折れた部分がどういう折れ方をしておるのか、またそこの材質がどうであったかというような点を中心に現在原因を調査中でございます。日ならずしてこの結論は出てくるだろうと思います。従いましてわれわれも稀有の災害のことではございますし、十分に謙虚にこの原因について検討しまして、今後これが対策としてこうした事故が二度と起らないようにどういう対策を講ずればいいか、場合によっては安全衛生規則そのものも再検討をする必要がないかどうか、こういった点につきましてこの原因、研究の結果を待ちまして善処して参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  47. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいま局長の御答弁にもございましたように、この事故は日本のこういうふうな仕事の始まって以来初めてのことでありまして、稀有というよりも全く初めてのことであって、起り得べからざるものが起っておるという意味において私は非常にこれは重大問題だと考えます。そこでその関係の材質の検査でありますとか、たとえばロープの引きの力学の関係でありますとか、そういうことなどについてもわれわれしろうとながら疑問がありますが、調査中のことでありますから、その調査のデータの出てくるのを待っていずれ詳しく質問申し上げたいと思いますが、私がこの際触れておきたいと思うことは、そういう資材の材質であるとか、あるいはロープの引っぱり工合であるとかいういろんなことよりは、もっとどういいますか、人為的とでもいいますか、あるいは職制関係などもその中に含んだ非常な問題がここにあるのではないかと思っております。千葉の労働基準局からあなたの方に報告になりました写しを私は先刻ちょうだいして読んでおりますと、この中にも昭和二十九年の六月に川崎製鉄におきまして無免許の労働者に起重機を運転させて死亡事故を起して、そのときの現場の責任者の陸運課長というのが罰金三万円に処せられたということがここに載っております。これはもうこの通りでありますが、このほかにもたとえば今度の陸運課の現場の職長の田坂修三という人は、ちょっとはっきりした年月日がわかりませんが最近です。この罰金を食った前後に起重機のつりだめしのときにそれをつり落して、そのときには幸いにその辺に人がいなかったから死傷者は出ておりませんが、会社に何千万円かの損害を与えた事実がある。いわばそういう方面の前科がある職長がそのままやはりこの仕事に携わって現場でこの人が指揮をして、このガイデリックのクレーンを操作しておる、しかも今あなたの言われるようにこれはためしづりというのでありまして、あなた方基準局の監督官が立ち会ってその操作を許可していいかどうかという検査をする前の、いわゆる書類で設置届を出して、これがあなたの方で許可になって、それに基いてそこにそういう装置をして、今度は基準局からきて操業の許可というか、作業の許可という、それの検査の前のためしづりのときにこの塔の中に人間が二人乗っておったのです。ためしづりの際に、それを先刻あなたに聞きたかったけれども、それまで聞いておると時間がかかるから言わなかったのですが、私の調査を申しますと、一メートルの四角の塔の中に二人の人が乗っておる。外側に一人塔にくっついておる。そういう状況で、起重機をつり落した前科者の職長が指導しながらためしづりでもって、しかもこの死亡者の中には、このクレーンの検査とは関係のない第二高炉とかいうものを石川島重工業が請け負って横で操業しておる、その高炉に石川島の関係の扶桑工業とかいう何か下請の工員が行って仕事をしておる、その横でこのためしづりをやって、それが倒れてその人が即死しておる、それも即死者の一人。いやしくもためしづりをやる以上は、あなた今六十メートルとか言ったが、正確には五九・七九メートル、約六十メートルですね。それから二十トンからの柱がそこに立って、その作業をやるそばを人払いも何もしていない。検査を受ける前のためしづりという最も危ない作業の際にそういうことをやって、そうしてそれこそその作業には何らの関係もないよその職場の人までがその下敷きになって死んでおる。私はこれは非常に重大でなければならぬと思うのであります。川鉄というのは、私もその付近に住んでおってわかっておりますが、非常に従来労働災害の多い工場であったのですが、最近はだんだんよくなってきて、何でも労働大臣からごく最近非常に安全度が高いからといって表彰をされて、そうして特にその安全週間の初日のものですからえらい宣伝をして、もとは相当ひどかったのがようやく日本の国内水準を幾らか突破したくらいに成績が上ったというので工員に宣伝をして、そうして大安全祈願祭をやったその日にこの事故を起しておる。あなた方の方でその表彰をなさるのはいいけれども、どうもその表彰自体が、数字の上によほど厳密に監督し調査してもらいませんと、ごまかしがよくあるのです。けさの新聞を私ここに持っておりますが、それに載っておりますが、東洋紡の四日市なんかの工場で、無災害の記録を作るので、けがをした女工さんがギプスをはめて工場に出て、これは工場災害ではない——これはけさの新聞にも載っております、あとであなたに差し上げてもいいのですが、安全週間だからといってそういうことをやっている事業家がおるのです。そういうこともちゃんとあなた方の調査の中に出てくるかどうかということなんです。これは私は労働基準行政の問題としてあなたに聞きたい。  それから今の職制の問題でありますが、川鉄の場合、そのガイデリック・クレーンを操業します陸運課というところの課長はどういう人かと思って調べてみますと、これは国鉄の職員ですね。国鉄をおやめになった職員を採用されてその課長にしておる。国鉄の職員でありますから輸送関係その他にはおそらく経験者のようです。三宅何とかという人ですが……。ところがこういう危険な作業を主管します人として、技術からいってあるいは経験からいって適任者であるかどうかということは、これは労働組合でもただいま問題になっております。そういうようなしろうと課長を使って、しかも部長という制度はありますけれども、部長は副工場長か何か兼務して全然現場に現われたことはない、こういう状況です。時間がありませんし委員長からの御注意もありますので、一問一答を避けて私は材料を申し上げますが、そういうような状況でございます。しかもそういう問題が起った原因について会社としてはごく秘密にしておる。緊急対策委員会というものは直ちに持たれて、ただいま局長も言われておったようですが、将来これを繰り返さないという対策の方はやっておりますが、調査委員会というものは持たれていない、調査の機関はないのです。労働組合などから、その調査委員会を早く持って組合代表も入れてくれという要求が出ておるようですけれども、それに対する回答もございません。どうも私はそういう意味において材質云々とか、繰り返すようでありますけれども科学的に研究するいろいろな原因のほかに、そういう労務対策といいますか安全対策といいますか、そういう点において非常に欠けるところがある。いわゆるオートメーション時代でございますけれども、あそこはオートメーションよりは賃金の安い労働者によって、いわゆる人海作業によって、オートメーションのかわりに人の力を使おうということをやっておるとすら言われておるのです。そういうところに対するあなた方の監督なり、またこういう事件が起った場合の調査なりというものは徹底的なものでなければならぬと私は考えます。その点について責任のある御答弁を聞いて、本日はそのくらいでとどめたいと思います。ただし近き将来に必ずもっと詳しく、関係者を参考人あるいは証人等に呼んで問いただす用意をいたしておりますから、それをお含みの上でお答え願いたい。
  48. 百田正弘

    ○百田説明員 ただいま御指摘の通り、単に一つの事故が起ってそのどこに技術的な欠陥があったかということのみでなくして、安全というものは、災害防止というものは、その安全管理の態勢そのものができていなければほんとうの安全にならない、災害防止はできないであります。  この川崎製鉄は、たしか二十六年からだったと思います。二十六年の十二月以降本年の六月ごろまで千葉の監督署としては四十九回ばかりこれを監督いたしておるわけでありまして、特に当初におきまして、先ほどもお話がございましたが、二十九年には起重機の無免許運転をやりまして、司法処分としてわれわれの方で送検いたした事件があるわけでありますが、二十六年から二十九年までは安全という面において非常に成績の悪い工場であったわけでございます。行くたびに何か安全関係の条項の違反というのが多数指摘され、そのつど是正させては参りましたけれども、従来において相当あったわけであります。二十九年にそうした事件が起りまして、それを契機といたしまして千葉の基準局の指導もございまして、安全というものに一つ徹底的に力を入れるということで安全管理の機構その他も作りますし、安全委員会も活動を始めるといったようなことで、ただいまお話もございましたように昭和二十九年において度数率が二三・一であったのが昭和三十年においては六・〇六、昭和三十一年には五・五というふうに、これ自体としては非常に改善されたわけでございます。  そういう関係で、実は安全週間のたびことに優良賞、進歩賞とかいて表彰いたしておりますが、昨年におきましてこの工場はいわゆる進歩賞——これは災害の発生状況が前年と比べて度数率が半分以下になった場合には努力の跡が認められるということで、努力賞的な意味においてそうした表彰を受けたわけでありますが、御指摘のように実は安全週間だけあるいは数字だけをよくするためにいろいろとこれを隠して、休業させるべき者を休業させない、公傷であるべき者を公傷としないという事態があってはせっかくこういうことをやっておりましても何もならないのでございまして、こういった点につきましては従業員等の協力も得て、安全というものがほんとうの習慣となるというまで安全運動を高めていかなければなりませんし、またこうした事件につきましては、われわれといたしましても調査の不十分な点もあろうかと存じますが、徹底的に調査いたしまして、単にその具体的な事件だけではなくして、工場全体としての安全管理が徹底いたしますように努力して参りたい、こういうふうに考えております。
  49. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 今の御答弁でこの際一言私つけ加えておきたいのは、この災害の度数の問題が努力賞とかそういうことのあれになっておるようですが、たとえば自動車事故と飛行機事故のごとき違いで、飛行機事故は度数が少くても一ぺん落ちるとみな死んでしまうというようなことで、今度のごときはおそらく百回も千回もの度数に匹敵するような事故で、何しろこういう方面の仕事が始まって以来の事故ですから、そういう点について冒頭にも私申しましたように、非常にこれは重大だと思っておるのでございます。従って度数が減ることについて努力賞としてやることはよろしいでしょうが、その度数だけでなく、起った災害の内容というものを一つ十分に御認識されまして、これはもう再びあってはならぬようなことであります。きわめて不用意ないわゆる安全管理の問題と思いますから、次回私が質問をもっと詳しくやります際には、十分な調査と当局の方針のごときものを確立しておいていただきたい、それだけを注文しておきます。
  50. 百田正弘

    ○百田説明員 今申し上げました点で落しましたのですが、度数率だけではありませんで、実は強度率も二十九年が六・五八、三十年が一・八一、三十一年が二・〇七というふうに落ちて参っておりまして、度数率、強度率両方でやっていくということであります。強度率が少いということは、死亡災害とか重傷が少かったということで、ただいま御指摘のように、かりに回数が少くても、その起きた災害自体が、そのものとして非常に重要であるものについては、今後私どもも十分検討し考慮して参りたいと考えております。
  51. 藤本捨助

    藤本委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十二分散会